耕す建築 ~小さな場の連なりで暮らしの地形を造成する~
従来のような「開発」ではなく、まち並みや風景を引き継ぎながら「耕す」ように建築する。
より長い時間軸で基礎をもとに建築を更新し、地域の中での自律的な生活を営むことで新たな循環の可能性を提案する。
福井県坂井市三国町
住宅・銭湯・カフェ M� 後期
京都工芸繊維大学修士設計学内講評会 奨励賞
安島地区は観光地として有名な雄島の南東に位置する漁村である。 安島地区では高齢化・過疎化が進み、地区東側ではニュータウン化が進む現状がみられるが、一番重要なのはこの地区の人々のための計画であ るということである。
町の外から移住する人々が少しずつ増えている中で、この場所で暮らす本来の良さを認知したうえで暮らしてもらえるよう、この地域の生活を 自律的に営みながら、地域内での新たな循環を生む。
痕跡の遺る風景
細い路地のために重機による大掛かりな解体が困難であり、更地にはそこにあった わずかな痕跡がみられる。
その痕跡を手がかりとして、小さな菜園や物置として周辺の住人が使いこなす風景 が垣間見られた
対象敷地において、��年後と��年後のこの地域における人々の生活の未来像を提案する。
phase1(��年後):滞在促進施設や生業を持続させる施設による場の魅力の認知拡大 phase2(��年後):地域におけるインフラや地場産業の持続可能な状態(地域内循環型社会)
基礎により醸成されるまちの風景
��年以内に基礎の新設・増し打ちと木造部分の改修を行い、��年後には基礎を活かしながら住人が自律的な生活を営む風景を目指す。 建築(主に基礎)が少しづつ新たなインフラ(ランドスケープ)を創り出すことで、既存の風景を継承しながら醸成されるまちの在り方を提案する。
既存の基礎を遺す基礎の新設・増し打ちにより本来の地形を象る基礎を手がかりに部分的に建築が立ち上がる
基礎が長い時間軸の中で、地形に寄り添いながら醸成される。 その基礎が場所の痕跡として、住人の新たな生活の手がかりとなる。
��度以上で良好な擁壁等でない限り建築不可の範囲基礎の増し打ち・新設による地形の変化
崖条例により、高さ�m以上かつ、斜面の勾配が��度を超える崖について、通常は劣化のない安全性を確認できる擁壁でない限り、その範囲に建築はできない。この地域では建築基準法制定以前に 建築された住戸があり、その条件を満たせていない。また、石垣や擁壁が今後劣化する可能性も十分に考えられる。
基礎の増し打ち・新設により、そのような��度勾配の条件をクリアすることが可能となる。
斜面地における基礎あるいは擁壁
貫としての水平材 住み手が建築に手を加えられるように簡易なジョイントを用いる。手を加えることが躯体の補強になるよう、添え柱や貫の考え方を応用した形とした。 これらの板材はデジタルファブリケーションを活用し加工、住まい手が自由に壁面を構成することが可能となる。
添え柱と貫の考え方を応用したジョイント
平面詳細図 S=�:�
立面詳細図 S=�:�
地域内循環を生む木材の流れ
ランドスケープ
フェーズ2における地域内循環型社会を考えるにあたり、林業従事者の利潤を生むため、地域の木材(特に間伐材やB材)をデジタルファブリケーションを活用 し、板材として活用する。また、建材として使用した後に枕木やコンポストとして、盛り土のランドスケープに活用する。
屋根: スレート横葺き アスファルトルーフィング
構造用合板 t=��mm
防水シート
通気胴縁 t=��mm ポリエチレンフォーム保温材 t=��mm
構造用合板 t=��mm
床: 地中蓄熱式幅射床暖房 モルタル金ゴテ押さえ t=��mm
表面硬化材塗布
床: ワックス ナラフローリング t=��mm 下地合板 t=�.�mm 構造用合板 t=��mm 断熱材(GW) t=��mm
床: 構造用合板 t=��mm
壁:
外壁用水平材(スギ) t=��mm
防水シート
通気胴縁 t=��mm
ポリエチレンフォーム保温材 t=���mm
仕上げ用水平材(スギ) t=��mm
基礎が地形を象ることで、失われつつある海への方向性・そこに存在した地形を 身体的・精神的に感じながら暮らす豊かさを獲得する。