アクティベート ・ リーフ No.710
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THE ETHIOPIAN EUNUCH
エチオピアの宦官 ― 使徒行伝 8:26-40 を元に創作 ダニエル・ベンジャミン
んの 7 歳の時に行った手術 のことを、私は決して忘れ ない。それは、私が宦官 1 となっ て、エチオピアの王と王妃に仕え ることが運命づけられた日だった。 もはや、家族を持つことも、 「普通」 の人として見られることもない。常 に特別な決まりに従わねばならな いし、普通の人にはできても、私 には許されないこともあった。 それから長い年月をかけて、私 は王室に仕えるすべを身につけ た。 計 算、読 み 書 き、地 理 を 教 わって、他の民族や地域への興味 がそそられた。また、エジプトの パロや中国の皇帝、インドのラー ジャにも、彼らに仕える宦官がい たことを知った。宦官に会いたけ れば、権力者のもとへ行けばいい ということだ。いつもその近くに いるのだから。 女王カンダケが外国との貿易を 監督する者を必要とした時、他文 化に関する知識ゆえに、私がその 役に選ばれた。そのような職につ けることは嬉しかったが、本当に 欲しかったのは家族だった。私が くつろげる場所、ありのままで受 け入れてくれる場所があるはずだ と思っていたのだ。 国事でエルサレムへ出かけた 際、ユダヤ教に興味があったので、 実際に必要とされているよりも長 く滞在した。そして、できるだけ の情報を集め、経典の巻物もなん とか手に入れることができた。神
殿にも入りたかったのだが、入り 口で止められてしまった。 守衛に尋ねた。 「入れない理由 は何ですか。私が王室の高官であ り、重要な外交上の任務で来てい ることを知らないのですか。 」 返ってきたのは、 「去勢された 宦官が入ることは許されていな い」という冷たい答えだった。 「いったい誰がそんなことを命 じたのですか。 」 「我々の律法がそう命じている 2 のです。 」 自分がこれほど不当な扱いを受 けることに衝撃を覚えた。あの手 術は私に選択の余地のないもの だったというのに、こうして入場 を拒否されたのだ。私がこの宗教 共同体の仲間として受け入れても らえないことはよく分かった。 それでもなお、私はイスラエル の神に好奇心をそそられていた。 そこで、馬車に乗って帰途につい た際、私は経典を読み進め、そこ に書いてある意味を悟ろうとし た。エルサレムを出て荒野の道を 進んでいると、ひげ面のユダヤ人 が近づいてきた。 経典を声に出して読んでいたの で、それがユダヤ人の預言者であ るイザヤの教えだと気づいたのだ ろう。 「読んでいることがお分か りになりますか」と聞いてきたの で、馬車を止め、いったい何者だ ろうと思いつつ、相手を見た。 そして、切実な気持ちでこう答
えた。 「誰かが手びきをしてくれ なければ、どうして分かりましょ う。お乗せしますから、教えてい ただけませんか。 」 私が読んでいた箇所は、これ だった。「彼は、ほふり場に引か れて行く羊のように、また、黙々 として、毛を刈る者の前に立つ小 羊のように、口を開かない。彼は、 いやしめられて、そのさばきも行 われなかった。だれが、彼の子孫 のことを語ることができようか、 彼の命が地上から取り去られて いるからには。 」 「取り去られて」 子孫ができないとは、まるで私自 身の運命のようだった。 「教えて ください。ここで預言者は誰のこ とを語っているのでしょうか。自 分のことですか。それとも、誰か 他の人のことですか。 」 ピリポは、この巻物に書かれた 予言がいかに成就したか、また、 彼がいかにナザレのイエスと出会 い、彼に付き従ったかを説明し始 めた。ほんの数週間前、イエスは 十字架にかかってまでも、すべて の人のために死ぬことをいとわ ず、その 3 日目には死からよみが えったというのだ。 それはすごいことだと思った が、同時にためらいもあった。先 に聞いた、あの私を責める言葉が 忘れられなかったからだ。すると ピリポは、同じ巻物から別の箇所 を見せてくれた。 「主はこう言わ れる、 『・・・わが喜ぶことを選ん
で、わが契約を堅く守る宦官には、 わが家のうちで、わが垣のうちで、 むすこにも娘にもまさる記念のし 3 るしと名を・・・与える。 』 」 私は喜びでいっぱいになった。 私を受け入れてくれる仲間を、あ りのままの私で愛される場所を、 ついに見つけたのだ。 ちょうどその時、小さな池のあ るオアシスを通りかかったので、 すかさず、私の新しい先生に尋ね てみた。 「私が今ここでバプテス マを受けるのに、何か差し支えが ありますか。 」バプテスマという 清めの儀式をぜひとも受けたかっ たのだ。 ピリポはこう答えた。 「あなた が真心から信じるなら、受けて差 し支えありません。 」 ピリポが私のために祈り、バプ テスマを授けてくれた時、私は生 まれ変わって感じた。造り変えら れたのだ。お礼を言おうと思った が、ピリポはいつの間にか消えて いた。どこに行ったのだろう。 ピリポに何が起きたのかは分か らないが、自分に何が起きたのか はよく分かる。私の人生の旅路は、 新たな方向へと向かい始めた。も はや孤独ではない。やっと自分の 家族を見つけたのだ。神の家族を。 1. 宦官:去勢手術を施されて宮廷などに 仕えた者 2. 参照:申命記 23:1 3. イザヤ 56:4- 5
「アクティベート・リーフ」は、英語の「Activated」誌からの記事を翻訳したものです。その他の記事は、ホームページでご覧頂けます。 http://www.activate.jp
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Translated from English Activated Magazine Vol.21-2 p8-9
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