アクティベート ・ リーフ No.771
唯一無二の歪んだ器 築紫 裕子
う
ちには、デザインも色も同じの取っ手付きスープ
それで、体験工房に電話をして事情を話
皿が二つあります。ただ、片方はちょっと歪んで
すと、スタッフさんは欠けていることに気
いて取っ手の部分が少し欠けており、もう片方は歪みも、
づかずに工程を進めてしまったことを何度
ざらつきも、欠けたところもない、完璧な器です。歪ん
も詫びてくれ、まったく同じものを作って
でいる方は私が作ったもので、もう一つは陶芸教室のス
郵送してくれることになりました 。 そうい
タッフさんが作ってくれたものです。
うわけで、うちには同じ器が 二つあるので
去年、京都に行った時に、息子と一緒に陶芸工房を訪
す。
れ、陶器作りの体験をさせてもらったのでした。私はスー
でも、スタッフさんが 作り直してくれた
プ皿の本体を作ったのですが、あとは、釉薬などの指定
器が届いて、私はまたびっくりしてしまい
をしただけで、取っ手をつけたり、焼いたりする残りの
ました。なぜならそれは、私が作った器と
工程はスタッフさんが終えてくれました。焼き上げるの
は違って、完璧に形が整い、表面もツルツ
にも時間がかかるので、私が作った作品は後日郵送で自
ルだったからです。私が作ったものは少し
宅に送られてきました。
歪みがあり、ざらざらしていました。 でも
ところが、箱を開けてみるとショックなことに、器の
私は、その手作り感をとても気に入ってい
取っ手の部分が少し欠けていたのです。欠けた部分の上
ました。
に釉薬が塗られて焼き上がっていたので、配達の途中に
そこで、新しく届いた完璧な形のものは、
欠けたのではなく、どうやら残りの作業の過程で欠けて
キッチンのカウンターに置き、お菓子など
しまったようです。
を入れておく器として使うことにしました。
DDDDDDDDDDDD
子
DDDDDDDDDDDD そして自作の歪んだ器は、冬の朝におかゆを食べる時
るのなら、きっと神様も同じようにひとりひと
に使うことにしました。取っ手のところは少し欠けた
りの人間を愛おしく感じて下さっているのでは
ままですが、私はその歪みと手触りがたまらなく好き
と考えた時、どうして神様が、こんなに不完全
で、その器を手にすると、何か心がほっこり暖まるの
で失敗ばかりする私たちを愛してくれるのか、
です。
少し分かったような気がしました。
その器は、私の還暦の記念に作ったものでした。大
自分が心を込めて作ったものは、その歪みさ
学生になり、親元から離れて大学に行っている息子と
えも愛おしいのです。だったら、自分の欠けた
一緒に陶芸体験ができたのは、私にとって特別な思い
ところばかりを気にして、くよくよするより、
出でした。息子は飲み物用のカップを作り、私は寒い
神様の愛を素直に受け止めて幸せでいる方が、
冬の朝におかゆを食べるための器を作りました。色も
神様もどれほど喜ばれることでしょう。
形も私の望みどおりに出来上がりました。何よりも嬉
この気持ちと京都での陶芸体験が重なった
しかったのは、その器には、京都での素敵な思い出が
時、私は神様の愛を今までとは違ったレベルで
込められていることでした。
感じることができました。神様は私たちが完璧 だとか、美しいとか、いい子でいるから愛して
手作りの歪みがこんなにも愛おしいものだとは
くれるのではありません。私たちは神様の唯一
思ってもいませんでした。スタッフさんの作ってくれ
無二の手作り作品だから、神様にとって特別で
た美しい器も素敵で、感謝しているのですが、自分の
あり、愛おしい存在なのです。
思いを込めて作った歪んだ器が、どういうわけかとて も愛おしいのです。 この経験を通して、神様が私たちをどう見ているか を改めて考えさせられました。聖書には、神様が最初 の人間であるアダムとエバを造られた時、地のちりを とって人をご自分の形にかたどって造られたと書い
「わたしは限りなき愛をもってあなたを 愛している。」 ― 聖書 エレミヤ 31 章 3 節
てあります。 「神は自分のかたちに人を創造された。すな わち、神のかたちに創造し、男と女とに創造さ れた。」 「主なる神は土のちりで人を造り、命の息を その鼻に吹きいれられた。そこで人は生きた者 となった。」 ― 聖書 創世記 1 章 27 節、2 章 7 節
神様は人間を、特別な思いを込めて造られているに 違いありません。ひとりひとりの人間は、神様の手作 りの作品で、唯一無二の存在なのです。 自分で作った陶器の器がこんなにも愛おしく感じ
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