MARKETVIEW | JAPAN RETAIL | 2024年第1四半期
平均賃料は 10エリア中 7 エリアで上昇、 京都もコロナ前の水準を超える
銀座 空室率
前期比 ±0.0% 銀座 平均賃料 前期比
*今期(2024年Q1)より、「ハイストリート賃料」を「平均賃料」に名称変更しました
空室率 前期比 +8.0%
– 空室率は 9 エリア中 6 エリアで前期から低下、平均賃料は 10 エリア中 7 エリアで上昇した。
賃料がコロナ前の水準を上回ったハイストリートは京都の 1 エリアが増え、計 4 エリア (銀座、心斎橋、京都、神戸)となった。
– 空室率低下が最も大きかったのは渋谷で、対前期比 3.4 ポイント低下。スポーツブラン ドやジュエリーなど多様な業態の出店が空室消化に寄与した。また、賃料上昇が最も 大きかった京都は同 14 0 %上昇。訪日外国人の人流増加で出店意欲が高まっていること が主因。
– 空室消化の牽引役は、アウトトドア・スポーツやファッション、ラグジュアリーブラ ンド。特にアウトトドア・スポーツの出店意欲は高く、ニーズは全国のハイストリー トに広がり、面積規模も比較的大きい。
– 全国的に需給バランスはタイトで、空室率が1%以下となったハイストリートは 3エリア となった。今後、空室の減少により出店の動きは鈍化する可能性はあるものの、出店 意欲は旺盛なことから賃料の上昇傾向は続くだろう。
Figure 1: ハイストリート 空室率(上)と 平均賃料(下)
Q4 2019 Q1 2024
牽引役はアウトドア・スポーツ、ファッション、ラグジュアリー
今期( Q1 )、9 つのハイストリートにおける出店面積は 3,911 坪で、対前期比 11 4 %増加。 2023 年で最も面積が大きかった Q1 ( 4,974坪)以降、空室区画の減少とともに出店面積 は減少傾向にあったが、前期に続き2期連続で増加した。今期、最も面積が大きかった 業態はアウトトドア・スポーツで、全体に占める割合は22.6%。健康志向の高まりや訪 日外国人の増加で売上が好調なことが背景にある。当該業態は、今後の出店ニーズに ついても旺盛で、出店先は全国のハイストリートを対象とし、希望面積が 100坪を超え るニーズ数が全体の約 4 割を占める。また、今期はファッションやラグジュアリーの出 店も多かった。ファッションの中では、アパレルや時計・メガネを扱う業態からの出 店ニーズが特に多く、これらの希望エリアは東京、面積は 60坪前後が中心となってい る。
Figure 2:プライムエリア 路面店舗の新規出店面積
物販
銀座と渋谷の空室率が1%以下に
銀座のハイストリートで今期出店を決めたテナントはラグジュアリーブランド、外資 系アパレル、酒類メーカーなどで、いずれも立地はプライムエリア。この他、ハイス トリート全体ではシューズ、ジュエリー、時計・メガネなどのリテーラーから引き合
いがみられた。空室率は対前期比 1 8 ポイント低下の 1 0 %で、 2017 年 Q1 の 0 8 %に次ぐ低 い水準。新たな募集区画は発生したものの、外資系アパレルの契約による大型空室の 消化が空室率低下の主因となった。
一方で、平均賃料は対前期比横ばいの 263,000円/坪。平均賃料は市況をさらに引き上 げるような事例が今期は見られなかった。しかしCBREでは1 年後の平均賃料は今期に対 して+ 1.6 %、対 2019 年 Q4比で 3.5%上回ると予想する。空室が限られる中で複数の入居 希望者が競合する案件が増加する可能性が高まっているため。足元では意欲的な出店 ニーズが増加傾向にある。実際に、コロナ後の売上増加などで資金力が高まったブラ ンドのいくつかはイメージの高級化を目的とした出店に動きだした。また、複数のラグ ジュアリーブランドが検討しているとされる大型案件をめぐる動きも今後具体化する 見込み。
*オープンおよび契約した店舗の総面積 ハイストリート(全国9エリア)のプライムエリアで募集された即入居可能な 区画、および入居可能日が調査時点から 1年半先までのものを対象とする 出所:CBRE、Q1 2024
Figure 3: 銀座
表参道・原宿のハイストリートで今期出店を決めたテナントは、表参道のプライムエ リアではラグジュアリーブランドや外資アパレル、ショールーム、セカンダリーエリ アでは日系アパレルなどがみられた。この他、ハイストリート全体では、外資系・日系 アパレルやチョコレートなどのリテーラーから引き合いがみられた。空室率は対前期 比1 1ポイント低下の1.8%。
平均賃料は対前期比 1 0%上昇の 200,800円/坪。通行量が回復した竹下通りで出店意欲 が高まったことが主因。なお、今期、表参道のセカンダリーエリアでは日系の大手ア パレルの出店が決まった。日本のブランドに対するインバウンド需要の高まりが背景 にあると考えられる。ただし、一般的に日系アパレルはコスト意識が高い。当該契約 の賃料はコロナ前よりやや低い水準だったようだ。
新宿のハイストリートでは、プライムエリアで物販店舗がオープン。この他、同じく セカンダリーエリアでシューズやリユースのリテーラーや、飲食店舗などの引き合い
がみられた。空室率は対前期比 0.3 ポイント低下の 5.5 %。平均賃料は 9 期連続横ばいの 170,000円/坪。
Figure 4: 表参道・原宿
空室率 空室率 平均賃料
出所:CBRE、Q1 2024
Figure 5: 新宿
6: 渋谷
渋谷のハイストリートで今期( Q1 )出店を決めたテナントは、プライムエリアではス ポーツブランドやジュエリー 、セカンダリーエリアではキャラクターグッズなどが あった。この他、ハイストリート全体では、ドラッグストアやコスメなどのリテーラー の引き合いがみられた。空室率は対前期比 3.4ポイント低下の 0.4%と、東京のハイスト リートで最も低い水準。空室率低下の主因はスポーツブランドによる大型空室の消化 だった。複数業種の入居希望者が競合するなか、当該リテーラーの高い賃料負担力が 決め手となったようだ。また、平均賃料は対前期比3.4%増の 139,000円/坪で、2023 年 Q3 以降 3 期連続で上昇した。主因は井の頭通り、渋谷センター街の賃料相場の上昇。建設 中の募集区画で複数の入居希望者が競合したことや、賃料負担力が高めのカプセルト イショップやドラッグストアの高い出店意欲が相場に影響した。 関西
全エリアで賃料上昇、京都はコロナ禍前を10.0%上回る
心斎橋のハイストリートで今期出店を決めたテナントは、ラグジュアリーブランド、 スポーツブランドなどで、いずれも立地はプライムエリア。この他に、ハイストリー ト全体では、外資系アパレル、スポーツブランド、ドラッグストアなどのリテーラー の引き合いがみられた。空室率は対前期比 1 3 ポイント低下の 1.7 %。空室率低下の主因 はスポーツブランドによる大型空室の消化だった。平均賃料は 244,000円/坪で、対前
期比+ 8.0 % と 5 期連続で上昇 。 コロナ禍直 前( 2019 年 Q4 、 198,000 円/坪 )に対して +23 2%の水準となった。賃料上昇の主因は、心斎橋筋に対するスポーツブランドやス トリート系アパレルの出店ニーズと、インバウンド需要の取り込みを目的として道頓 堀に対する出店ニーズが周辺相場を押し上げたこと。また、長堀通りの北側でも賃料 相場は上昇傾向にある。プライムエリアの空室が枯渇状態にあることや、新規供給物 件についてリーシングが順調に進んでいることが影響しているようだ。
出所:CBRE、Q1 2024
Figure 7: 心斎橋
空室率 平均賃料
出所:CBRE、Q1 2024
関西
梅田のハイストリートでは茶屋町でカプセルトイショップが出店を決めた。今期の 平均賃料は 123,000 円/坪と 、 対前期比 7.9 % 上昇 。 現状では梅田駅周辺のハイスト リートに募集区画はないものの、スポーツブランドやキャラクターグッズなど同エ リアを選好するリテーラーの賃料負担力が高まっているため、賃料相場は上昇傾向 にある。
京都のハイストリートで今期( Q1 )出店を決めた事例は把握されなかったものの、複 数ある供給予定の募集区画に対して外資系、国内系物販テナントなどの強い引き合 いがみられた。空室率は対前期比 0 1 ポイント上昇の 3 4 %。小規模な飲食店の閉店に よる空室発生が主因。一方で、平均賃料は 110,000円/坪で対前期比 14.0%上昇。コロ ナ禍直前(2019年Q4、100 000円/坪)に対して+10. 0%の水準となった。今期は四条 通りのほぼ全域で賃料相場は上昇 。 訪日外国人の人流増加に伴い 、 出店意欲が高 まっていることが背景。
神戸 のハイストリートでは 、 今期 、 プライムエリアに日系アパレルの大型店舗が オープンした。この他、ハイストリート全体では、シューズやドラッグストアなど のリテーラーの引き合いがみられた。空室率は対前期比 0 5 ポイント上昇の 4 7 %。大 手アパレルのエリア内移転によって発生した移転元の空室が空室率上昇の主因。一 方で、平均賃料は 109 500 円/坪で、対前期比 4 8 %上昇。コロナ禍直前( 2019 年 Q4 、 95,000 円/坪)に対して+ 15.3 %の水準となった。前期と同様、旧居留地エリアを中 心としたラグジュアリーブランドの高い出店ニーズがみられていることが背景。た だし 、 それ以外のエリア 、 業種では賃料相場に影響する目立った動きはみられな かった。
8: 京都
空室率 平均賃料
出所:CBRE、Q1 2024
9: 神戸
空室率 平均賃料
名古屋
賃料は5期連続の横ばい
栄のハイストリートでは今期( Q1 )セカンダリーエリアでスポーツ用品の大型店舗が オープン。その他、出店を決めた事例は把握されなかったものの、出店ニーズは、 外資系アパレル、アウトドア・スポーツなどのリテーラーでみられた。空室率は6 期
連続の0.0%、平均賃料も5期連続横ばいの71 000円/坪となった。
出店ニーズはあるものの、既存物件の募集区画は枯渇しているため、需要は長らく 潜在化している。一方で、コロナ前に出店したリテーラーが、コロナ禍を経て余剰感 が増した面積の適正化に動く可能性がある。もしそうなれば、現状ではタイトな需 給環境が少しは緩和され、賃料相場もわずかながら下がる可能性がある。
福岡
賃料は2期連続で上昇
天神のハイストリートでは今期、セカンダリーエリアで食物販などの出店が決定した。
この他に、ラグジュアリーブランド、日系アパレル、ジュエリーなどのリテーラー の引き合いがみられた。空室率は対前期比 1 4ポイント低下の 1 6 %。インバウンド向け の食物販がオープンしたことによる空室消化が主因。また、平均賃料は 58,200 円/坪
で、対前期比+ 3.6 %と 2 期連続で上昇。新築物件の募集区画で見られた強い引き合い により、賃料相場は上昇した。
プライムエリアでは、ラグジュアリーブランドやアパレル、スポーツブランドなど のリテーラーが拡張移転先を探す動きがみられている。既存店舗の売上が回復する 一方で、入居中の施設内では拡張余地がないことが理由。ただし、検討できる区画は 限られるため、一部のリテーラーで今後開発される物件を検討する動きがみられてい る。
10: 栄
出所:CBRE、Q1 2024
Figure 11: 天神 出所:CBRE、Q1 2024
出所:CBRE、Q1 2024
調査概要
エリア ハイストリート
空室率 調査対象
• 都心の目抜き通りで、路面店舗が集積するエリア
• エリアを「プライムエリア」と「セカンダリーエリア」に分類
• 「プライムエリア」の物件を対象とする。物件数は次の通り。
銀座(146棟)、表参道・原宿(239棟)、新宿(60棟)、渋谷(67棟)、心斎橋(182棟)、京都(179棟)、 神戸(107棟)、 栄(52棟)、天神(193棟)
• 対象フロアは1階を入口とする路面店舗として賃貸されている区画(上層階を含む)
• 空室は調査時点で即入居可能であるものが対象(新築施設は開業済みのものが対象) 賃料
調査対象
平均賃料 (ハイストリート賃料)
プライム賃料
• 「ハイストリート」に設定した複数の基準点に路面店舗を想定
• 想定する賃貸区画はワンフロア面積が200m²程度
• 賃料の想定は1階のみを対象
• 「ハイストリート」に設定した複数の基準点における想定成約賃料の上限と下限の平均値 (共益費を含み、フリーレント等のインセンティブは考慮しない)
• 「ハイストリート」に設定した複数の基準点における想定成約賃料の最上限値 (共益費を含む、フリーレント等のインセンティブは考慮しない)
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