子どもの学習空間での自発的行動に与える「香り」の効果

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子どもの学習空間での自発的行動に与える「香り」の効果 Effect on autonomous learning of children in Space filled with fragrance


目次


《本編》 第0章 はじめに 第 1 章 研究背景 1-1 子どもの学習 1-1.1 子どもの学習意欲

002

1-1.2 子どもの学習態度

004

1-1.3 子どもの学習環境

006

1-1.4 子どもの学習空間の建材

007

1-2 香りの歴史 1-2.1 世界での歴史

009

1-2.2 日本での歴史

012

1-3 既往研究

017

第 2 章 研究概要 2-1 用語の定義 2-1.1 「自発的学習能力」の定義

020

2-1.2 「散漫行動」の定義

023

2-1.3 「集中行動」の定義

024

2-1.4 「香り空間」の定義

025

2-2 研究目的

026

2-3 研究フローチャート

027

第 3 章 調査 1- 子どもの学習空間の観察 3-1 調査 1 の目的

028

3-2 調査 1 の方法

029

3-3 調査 1 の結果

035

3-4 調査1の分析

037

3-5 調査 1 の考察

038


第 4 章 調査 2- 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 4-1 調査 2 の目的

039

4-2 調査 2 の方法

040

4-3 調査 2 の結果

049

4-4 調査 2 の分析

061

4-5 調査 2 の考察

062

第 5 章 まとめ 5-1 まとめ

067

5-2 展望

068

第 6 章 おわりに 6-1 参考文献

069

6-2 謝辞

074

1. 保護者案内

075

2. 子どもの様子の観察

076

《資料編》


0

0. はじめに


第 0 章 はじめに

はじめに

アルバイト先の公文式。 最近、子どもたちが騒がしい。 夏の暑かった日、 蚊取り線香を公文で焚いた。 あれ、今日はみんな勉強に集中しているな。 と感じた。 もしかしたら、香りがある空間だったら 子どもたちは勉強に集中するのではないだろうか。 この研究はこんな想いから始まった。

1

0


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1. 研究背景 1-1 子どもの学習 1-1.1 子どもの学習意欲 1-1.2 子どもの学習態度 1-1.3 子どもの学習環境 1-1.4 子どもの学習空間の建材 1-2 香りの歴史 1-2,1 世界での歴史 1-2.2 日本での歴史 1-3 既往研究


第1章 研究背景

1-1.1 子どもの学習意欲 【*1】

小学生を対象とした、過去5年間の全国学力・学習状況調査 *1

『全国学力・学習状況調

によると、「家で、自分で計画を立てて勉強していますか」という

査:教育課程研究セン ター:国立教育政策研

問いに対する、 「全くしていない」の回答比率が減少してきている。 (平成20年度 14.7%→平成25年度 11.5%)

究 所 National Institute

(fig.1-1.1) を見ると、自分で計画を立てて勉強している子が増加

for Educational Policy

しつつある。しかし、未だに約 10%の子どもは勉強していない。

Research』

また、「家で学校の授業の予習・復習をしていますか」という問

http://www.nier.

いに対して、 「全くしていない」の回答比率が減少してきている。

go.jp/kaihatsu/

(予習:平成20年度 26.5%→平成 25 年度 21.7%)(Fig.1-1.2)

zenkokugakuryoku.html

(復習:平成20年度 21.8%→平成 25 年度 16.9%)(Fig.1-1.3) こちらも同様に (fig.1-1.2)(fig.1-1.3) を見ると、予習・復習をし ている子どもは増加しつつある。しかし、約15%の子どもは予習・ 復習をしていない。 以上の2点より、自ら勉強を行う子どもが年々増えつつあること が分かる。しかしながら、未だに10人に1人の子どもは自ら勉強 を行えていないことが分かる。

Fig.1-1.1 家で、自分で計画を立てて勉強をしている子どもの割合 *1

2

1-1.1 子どもの学習意欲

1-1 子どもの学習

1


第1章 研究背景

1 1-1.1 子どもの学習意欲

Fig.1-1.2 家で、学校の授業の予習をしている子どもの割合 *1

Fig.1-1.3 家で、学校の授業の復習をしている子どもの割合 *1

3


第1章 研究背景

1-1.2 子どもの学習態度

1-1.2 子どもの学習態度 【*2】

(Table.1-1.1)の子どもの授業態度の受け方 *2 によると、2003

『授業の受け方 - 1. 学校

年と比べて、回答比率が増加しているのは「黒板に書かれていな

での学習の様子 - 第1

くても、先生の話で大切なことはノートに書く」(2003 年 37.4%

節 小学生の学習行動 -

→ 2006 年 49.2%) 、 「黒板に書かれたことを、きちんとノート

ベネッセ教育研究開発

に書く」(2003 年 82.8%→ 2006 年 89.2%) 、 「授業でわからな

センター研究員 邵勤

いことは、あとで先生に質問する」(2003 年 26.0%→ 2006 年

風 - ベネッセ教育総合

32.3%)などがあげられる。回答比率の増加だけに目を向けると、

研究所』

子どもの学習態度がまじめになってきたといえる。

http://berd.benesse.

逆に 2003 年と比べて回答比率が減少しているのは「マンガをか

jp/berd/center/open/

いたり、文房具で遊ぶ」 (2003 年 33.9%→ 2006 年 25.0%) 、 「近

report/gakukihon4/syo/

くの人とおしゃべりをする」(2003 年 66.3%→ 2006 年 59.2%)

hon2_1_03.html

である。「ぼうっと他のことを考えている」も 2005 年より回答比 率が下がっている(2005 年 40.2%→ 2006 年 35.2%) 。回答比率 の減少だけに目を向けると、授業中の子どもたちの逸脱行為が少な くなってきたといえる。

Table.1-1.1 子どもの授業の受け方 ( 時系列 )*2 2003年 黒板に書かれていなくても、先生の話で大事なことはノートに書く 黒板に書かれたことを、きちんとノートに書く 授業で分からないことは、あとで先生に質問する マンガを書いたり、文房具で遊ぶ 近くの人とおしゃべりする ぼうっと他のことを考えている

4

1

2004年 37.4 32.3 26 33.9 66.3 33

2005年 45.8 87.8 31.6 36.7 66.4 39.3

2006年 46.9 33.3 30.7 26.3 65.9 40.2

49.2 39.2 32.3 25.9 59.2 35.2


第1章 研究背景

1 1-1.2 子どもの学習態度

Table.1-1.2 子どもの授業の受け方 ( 成績の自己評価別 )*2 上位層 黒板に書かれていなくても、先生の話で大事なことはノートに書く 黒板に書かれたことを、きちんとノートに書く 授業で分からないことは、あとで先生に質問する マンガを書いたり、文房具で遊ぶ 近くの人とおしゃべりする ぼうっと他のことを考えている

中間層 57.5 92.9 33.8 20.6 54.7 28.6

下位層 51.1 91.2 33.4 23.5 57.5 31.4

39.6 84.4 29.9 30 65.5 44.1

(Table.1-1.2)は成績の自己評価別にみた授業の受け方 *2 の結果 である。 上位層のほうが下位層より回答比率が高いのは「黒板に書かれて いなくても、先生の話で大切なことはノートに書く」「黒板に書か れたことを、きちんとノートに書く」などである。上位層は授業態 度がまじめであるといえる。 一方、下位層が上位層より回答比率が高いのは「ぼうっと他のこ とを考えている」「近くの人とおしゃべりをする」などである。下 位層が授業に集中していない傾向にあるといえる。 (Table.1-1.1)、(Table.1-1.2) の結果をまとめると、子どもの学習 態度は、子ども全体でみるとまじめになってきたが、成績の自己評 価別の観点からみると上位層と下位層では授業態度に差があること が分かる。

5


第1章 研究背景

【*3】

(Fig.1-1.4) の家庭における学習の状況 *3 より、校外学習をして

『 小 学 生 白 書 Web 版

いない子どもは、どの学年にも約 45%と一定程度存在するが、約

学研教育総合研究所|

55%の小学生は校外学習の場を持っていることがわかる。校外学

学研』

習の場としては専ら、学習塾に通っているか通信教育を受けている

h t t p : / / w w w. g a k k e n .

かのどちらかであることがわかる。通信教育を受けている割合は 1

co.jp/kyouikusouken/

~ 3 年生に高く、35%強を数えるのに対し、4 ~ 6 年生になると

whitepaper/201009/

通信教育の割合 30%に減り、代わって学習塾に通っている割合が

chapter2/01.html

高くなる。特に 6 年生では男女とも学習塾の割合が通信教育の割 合を上回っている。

Fig.1-1.4 家庭における学習の状況(家庭教師・学習塾・通信教育の利用)*3

6

1-1.3 子どもの学習環境

1-1.3 子どもの学習環境

1


第1章 研究背景

◆小学校 【*4】

文部省が明治5年に示した学制の実施によって小学校の設置がさ

『四 小学校の普及と就

れた。しかし、設置された小学校の 70%は寺子屋・私塾・郷学校

学状況:文部科学省』

ねどの庶民の教育機関を母体としていたため、小学校の校舎は木造

http://www.mext.

建築であった。*4

go.jp/b_menu/

その後、小学校の校舎は鉄筋コンクリート造へと変わっていく。

hakusho/html/others/

その背景として3つの要因がある。1つ目は、関東大震災の復興事

detail/1317590.htm

業として、耐火性・耐震性に優れている鉄筋コンクリート造が採用 されたからである。2つ目は、大正期から教育の多様化に伴い、多

【*5】

くの教室が必要になってきたからである。限られた土地で教室数を

坂 田 貴 一、 井 上 朝 雄、

確保するために校舎を必然的に高層化するために鉄筋コンクリート

片 野 博「608 戦 前 に 建

造の校舎が増加していった。3つ目は、学区制の廃止である。学区

てられた鉄筋コンク

制が廃止されると、学区主体で小学校建設事業に関われなくなるた

リート造小学校校舎の

め、廃止前に鉄筋コンクリート造化が進んだ。*5

成り立ちの比較 : 福岡市

現在、小学校の校舎が鉄筋コンクリート造であるのは上記の要因

立大名小学校校舎の建

があるためである。

築的価値に関する研究 その 1( 建築計画 )」『日 本建築学会研究報告 . 九 州支部 .3、計画系 (50)』 、 2011 年、pp.29-32

7

1-1.4 子どもの学習空間の建材

1-1.4 子どもの学習空間の建材

1


第1章 研究背景

【*6】

学習塾の歴史は、古く平安時代にさかのぼると言われている。そ

『四 小学校の普及と就

の後、学習塾が隆盛を極めたのは江戸時代に入ってからのことであ

学状況:文部科学省』

る。江戸時代に活躍した数多くの学者は個々に私塾を開校した。私

http://www.mext.

塾の約 70%は寺院・民家を借用したものであった。その後は教育

go.jp/b_menu/

制度の変化に伴い、学習塾の形態も変様していった。*6

hakusho/html/others/

現在の学習塾は送迎の利便性や安全性の点から、駅近くのテナン

detail/1317590.htm

トビルに教室を構える事が多い。*7 テナントビルは遮音や断熱と

【*7】

いった性能、そして経済性が高いことから鉄筋コンクリート造で建

『安全な学習塾を目指し

てられる。*8

ての取り組み』

上記より、初期の学習塾は寺院や民家を借用したものであったた

http://members3.

め木造建築であることが分かった。対して、近年の学習塾の多くは

jcom.home.ne.jp/

鉄筋コンクリート造であることが分かった。

shkk_syutoken/ shutokensibu/kenkyu_ repo/juku/juku_1.htm 【*8】 『ビル進化論』 http://www.kajima. co.jp/news/digest/ mar_2004/tokushu/ index-j.htm

8

1-1.4 子どもの学習空間の建材

◆学習塾

1


第1章 研究背景

1-2.1 世界での歴史 【*9】 吉武利文、川上智子『香

吉武利文、川上智子の著書「香りを楽しむ」(1992 年 )*9 より要 約した。

りを楽しむ』丸善株式 会社、1992 年

◆香りの始まり 香りの歴史は人類が火を使用するようになり、様々な植物を燃や してく中で、偶然とても良い香りがするものを発見したことから始 まった。 古代の人々は香りを宗教の儀式空間の演出のひとつとして使用し ていた。 熱を加えると香りが漂い始め、そしてどこもなしに消えてしまう 香りの特徴が、目に見えなくても存在すると信じられていた神と同 様の存在であると考えていたからである。 つまり、 古代の人々は香りと神を同等の存在として認識したため、 香りは宗教の儀式空間の演出で使用したことが分かる。

9

1-2-1.1 世界での歴史

1-2 香りの歴史

1


第1章 研究背景

1 1-2-1.1 世界での歴史

◆古代エジプト 古代エジプト人は香りを3つの場面で使用していた。 1つ目は儀式のなかで香りを使用した。特に、太陽神ラーのため に古代エジプト人は1日3回香をたいた。1回目は朝、2回目は太 陽が頭上に来る時に没薬を、3回目は太陽が沈む時に16種類の 様々な成分をもつ香をたいた。 2つ目はミイラ作りの際に香りを使用した。古代エジプト人に とって、人間は死んでも魂は残り、冥界で永遠の生命を生きると信 じられていた。そのため死者の霊魂が肉体に戻れるように、ミイラ にする必要があった。ミイラ作りに乳香を除く没薬などの香料が使 用された。これは、乳香は神にささげる香料と認識されていたから である。 3つ目は日常生活のなかで花(ロータス)の香りを使用した。ロー タスは古代エジプト人にとって聖なる花であり、かつ命の源であっ た。つまり、このロータスの香りは太陽神のエネルギーであり、嗅 ぐことによって、そのエネルギーを体内に取り入れようとしていた ためである。 上記3点より、古代エジプト人は香りを儀式空間・ミイラ作り・ 日常空間で使用していたことが分かる。 ◆ギリシア時代 ギリシア人は香りを幅広く使用していた。 ギリシア時代においても香りは宗教儀式で大変重要なものであっ た。なぜならば、ギリシア人は儀式で香りを焚くことで、本来神の ものである香りを、神々に返そうとしていたからである。 さらに、ギリシア時代には新たに人間の健康のために、香りを活 用し始めた。特に香油によるマッサージは、現代のアロマテラピー と同様の考え方で使用されていた。 また、ギリシア時代では香りを空間の演出として使用し始めた時 代でもあった。 上記3点より、古代ギリシア人は香料を神にささげ、健康のため や、部屋での香りの演出など幅広く利用していたことが分かる。

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第1章 研究背景

1 1-2-1.1 世界での歴史

◆ローマ時代 ローマ人は香りを楽しみのために使用していた。 ローマ人はバラ水やバラの香油を好んだ。彼らは、宴会の食事の 前に入浴をして身体に香油や香りの軟膏を塗って楽しんだり、部屋 に赤い香りのバラを敷いたりして楽しんだ。 つまり、ローマ人は日常的に香りを好んで使用していたことが分 かる。 ◆ 11 世紀 この時代の人々は香りを美容と治療のために使用していた。 十字軍の遠征をきっかけに多くの香料や香水技術がヨーロッパに 伝えられた。そして、香りを身につけることを好んだ、この時代の 人々は香水を美容品として使用し始めた。 また、この時代の人々は香りを伝染病に対する予防薬と考えてい た。 上記2点より、11 世紀の人々は香りを自身の美容のために使い 始め、また伝染病の予防薬として使い始めたことが分かる。 ◆ 19 世紀~近代 技術の進歩により、香りは天然香料だけではなく、合成香料も創 作されるようになり約 2000 種類ほどあると言われている。 そのため、19 世紀~近代にかけて香りは美容として、オシャレ として、あるいは自己主張する演出として使用されている。

11


第1章 研究背景

1-2-1.2 日本での歴史

1-2.2 日本での歴史 【*10】

神保博行、の著書「香道の歴史事典」(2003 年 )*10 より要約した。

神保博行『香道の歴史』 柏書房株式会社、2003 年

1

◆香りの伝来 『日本書紀』よると、香りが日本に伝来したのは推古3年(595 年)のことである。淡路島に漂流した流木を、島人が火に燃やした ところ芳香が立ち上がり人々を驚愕させたという。つまり、この流 木は香木だったことが分かる。その後、この流木は都に運ばれ推古 天皇に献上された。現在この香木は日本最古の香木として正倉院に 収蔵されている。 奈良時代の人々は香りを重大な盟約や儀式の空間で使用した。こ れは香木の香りが当時の人々にとってこの世ならぬ芳香であったた め、聖火を祈念していたからであった。 つまり、奈良時代の人々は香りを宗教的空間で使用していたこと が分かる。

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第1章 研究背景

1 1-2-1.2 日本での歴史

香木とは *11 『香木とはーコトバン ク』 https://kotobank.jp/ word/ 香木 -263101

「こうぼく 【香木】 よいかおりのする木。また,香道で使用される,芳香を放つ木。 沈香(じんこう) ・白檀(びやくだん)など。 寺院で,厠(かわや)を出て手を洗った後で,清めのために手 で触れる香木の棒。 」 (大辞林第三典 https://kotobank.jp/word/ 香木 -263101 より 引用)*11

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第1章 研究背景

1 1-2-1.2 日本での歴史

◆平安時代 これまで香りは「宗教の香り」として仏前に供えられていただけ であった。平安時代に入ると、人々は香りを部屋に炊き込めたり(空 薫) 、服に焚き込めたりした。平安時代の人々にとって香りが知性 感性のかたちであり、自己の美意識の表現、または貴重な香料を入 手できる身分であるといった証になっていたからである。 つまり、平安時代の人々は香りを自分自身を表現するために使用 していたことが分かる。 ◆鎌倉時代~室町時代 鎌倉時代から室町時代に入ると戦国時代に突入する。この時代、 武士は貴族より権力を持っていたため、香りは貴族より武士に使用 されるようになった。この時代の武士は香りを空間に焚き込めて使 用していた。武士にとって香りは心を鎮静するものとして認識され ていたからである。 つまり、鎌倉時代から室町時代の武士は香りを戦場に行く前の心 の鎮静薬としていたことが分かる。 ◆香道の始まり 安土桃山時代に入ると人々は香りを遊び道具として使用し始め た。 「香道」の始まりである。 「香道」は「華道」 「茶道」と同様に 日本の伝統的な文化として発展していくことになる。 「香道」は、香木をたいて、その香りを鑑賞し、一定のルールにのっ とって行われる遊びのことである。 つまり、安土桃山時代の人々は香りを鑑賞し遊び道具として使用 していたことが分かる。

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第1章 研究背景

1 1-2-2.1 香道とは

香道とは 【*12】 『香道とは - コトバン ク

』https://kotobank.

jp/word/ 香道 -62850

「こう ‐ どう 【香道】 香木をたいて、香りを賞翫する芸道。香合わせ・薫物 ( たきもの ) 合わせなどがある。香。 」 (大辞泉 http://kotobank.jp/ より引用)*12

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第1章 研究背景

1 1-2-1.2 日本での歴史

◆江戸時代 江戸時代の人々は香道を更に発展させ、 「組香」を考案させた。「組 香」 は2種類以上の香木の香りの違いを組み合わせ、文学的なストー リーを作るという遊びである。 また、江戸時代に線香が製造されると、使いやすさと便利さから、 釈尊の入寂後の霊前で使用されるようになる。 つまり、江戸時代の人々は香道で複雑な香りを楽しみ、霊前では 手軽な線香を使用し、香りを日常的に使用していたことが分かる。

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第1章 研究背景

①【香りがもたらす、心身機能への効果】*13 【*13】 一之瀬巳幸、田口直彦、 山口光國、黒塚美文子 「香りがもたらす、心身 機能への効果」 『第44回日本理学療法 学術大会』、pp2-113

香りと作業能力とストレスの関係性を明らかにすることを目的と している。 結果として、香りの有無で有意な差を認めた。香りがあることで 身体作業に効果をもたらした。また好ましい香りは心身にプラス効 果を与え、ストレス軽減に効果をもたらすことが明らかになった。 ②【香りによる生理・心理的効果】*14

【*14】 木戸眞美「香りによる 生理・心理的効果」『国 際 生 命 情 報 科 学 会 』、 2002 年、pp148-154

脳波以外に手や足などの身体の末梢での香りの効果を調べること を目的としている。 結果として、ペパーミント、ジャスミン、ローズマリー、ひのき は覚醒効果が、ラベンダー、レモンには鎮静効果があることが明ら かになった。またローズは人により覚醒・鎮静の 2 面性が認めら れた。しかし、香りに対する感受性が人により異なることや香りの 心理効果が身体末梢に変化として現われるには複雑な過程があるた め、香りの効果は散漫であったことが明らかになった。

③【夏季のオフィス空間における香りの効果】*15 【*15】 阿 波 一 馬、 松 原 斎 樹、

夏季室温緩和設定オフィスで現場実験を行い、 香りが「温冷感」 「作

柴 田 祥 江、 合 掌 顕「 夏

業能力」「総合的快適感」に与える影響の検討を目的としている。

季のオフィス空間にお

結果として以下の 3 つのことが明らかになった。

け る 香 り の 効 果 」『 人 間・ 環 境 学 会 誌 第 33 号 Vol.17 No.1』、2014 年、pp67

1) 香りは温熱環境要因に配分されていた注意資源を減少させる効 果が明らかになった。 2) 香りは「感情刺激」として作業能力に影響を与えるが、長期間 香りに暴露される場合はその香りを特に好む人のみ効果があること が明らかになった。 3) 香りは総合的快適感に対して「感情刺激」の性質が働くことが 明らかになった。

17

1-3 既往研究

1-3 既往研究

1


第1章 研究背景

1 1-3 既往研究

④【香りの強度変化パター ンに基づく心理的効果の検証】*16 【*16】 瀬 川 遼、 宮 下 広 夢、 坂 内 祐、 岡 田 謙「 香 り 強 度変化パターンに基づ く心理的効果の検証」 『日本バーチャルリア リ テ ィ 学 会 論 文 誌 』、 pp531-536

香りの強度変化3パターン(1/f でゆらぎに応じるパターン・ラ ンダムに香りの強度を変化させるパターン・一定の強度で香りに応 じるパターン)と心理的効果関係性を明らかにすること目的として いる。 結果として、一定の強度で香りに応じるパターンが最もリラック ス効果があるとことが明らかになった。

⑤【自己選択した香りがメンタルワーク時のパフォーマンスや気分 に及ぼす影響】*17 【*17】 中野詩織、有冨 美代子、 綾部早穂「自己選択し た香りがメンタルワー ク時のパフォーマンス や気分に及ぼす影響」 『日本バーチャルリアリ ティ学会論文誌』、2010 年、pp537-544

7種類の香りから参加者自身が「好きな香り」「頭がすっきりす る香り」の2つを選び、それぞれ選択した香りがメンタルワーク時 のパフォーマンスや気分にどのような影響を与えるかを明らかにす ることを目的とする。 結果としてメンタルワークの遂行時に、参加者の主観で選択した 「頭がすっきりする香り」を提示した場合は、課題成績が向上する ことが明らかになった。 「好きな香り」を提示した場合には、作業 パフォーマンスへの影響はなかったが、課題遂行の負荷によって気 分が落ち込む程度を少なくさせる心理的効果があることを明らかに した。

18


第1章 研究背景

1 1-3 既往研究

⑥【室内環境の快適性と単純作業パフォーマンスに関する考察一室 【*18】 合 原 妙 美、 岩 下 剛「 室 内環境の快適性と単純 作業パフォーマンスに 関する考察一室内の気 温及び香りによる覚醒 がパフォーマンスに及 ぼす影響一」『日本建築 学科環境系論文集、第 572 号、pp75-80』2003 年

内の気温及び香りによる覚醒がパフォーマンスに及ぼす影響一】*18 気温あるいは香りが、人の覚醒状態、快適性および事務作業パ フォーマンスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 結果として、2つのことが明らかになった。 1)気温22〜24℃の条件では周囲気温がやや低く、涼しいと感 じるため被験者を覚醒させ、大半の被験者のパフォーマンスを高め ることが明らかになった。 2)パイン精油の香りへの知覚・嗜好の差により大別された被験者 のパフォーマンスと主観申告は異なる傾向になることが明らかに なった。パインの香りが許容出来る被験者は適度な香りのある条件 で、におい許容度や覚醒感を高くなることが明らかになった。

既往研究①、②、⑤は香りと心身との影響について述べられいる。 既往研究③、⑥ではオフィス空間での香りと心身との影響について 述べられている。既往研究④では、香りの強度の変化と心身の影響 について述べられている。 本研究では、学習空間での香りと自発的学習能力の影響について 調査する。

19


2

2. 研究概要 2-1 用語の定義 2-1.1「自発的学習能力」の定義 2-1.2「散漫行動」の定義 2-1.3「集中行動」の定義 2-1.2「香り空間」の定義 2-2 研究目的 2-3 研究フローチャート


第 2 章 研究概要

2-1.1 「自発的学習能力」の定義 【*19】 新村出『広辞苑 第六版』

「自発」については、辞典で以下のように述べられている。

岩波書店、2008 年

「じ - はつ【自発】:自ら進んで行うこと。自然に起こること。」 【*20】

( 『広辞苑第六版』より引用)*19

『漢語林 新版』 大修館書店、2001 年

「じ - はつ【自発】 :他の力によらず自分で進んですること。自然に そうなることを表わす。」 ( 『漢語林 新版』より引用)*20

以上2つの辞典より、「自発」は「他の力によらず、自然に自ら 進んで行うこと」という意味を有した言葉として理解出来る。 「自発」は「他の力によらず、自ら自然に進んで行うこと」と定 義できる。

20

2-1.1 「自発的学習能力」の定義

2-1 用語の定義

2


第 2 章 研究概要

「がく - しゅう【学習】 :まなびならうこと。経験によって新しい知 識・技能・態度・行動傾向・認知様式などを習得すること、および そのための活動。」 ( 『広辞苑第六版』より引用)*19

以上 1 つの辞典より、 「学習」は「新しい知識・技能・態度・行 動傾向・認知様式などをまなびならうこと」という意味を有した言 葉として理解出来る。 「学習」は「新しい知識をまなびならうこと」と定義できる。

21

2-1.1 「自発的学習能力」の定義

「学習」については、辞典で以下のように述べられている。

2


第 2 章 研究概要

「のう - りょく【能力】 :物事をなし得る力。はたらき。心身機能の 基盤的な性能。ある事について必要とされ、または適当とされてい る資格。 」 ( 『広辞苑第六版』より引用)*19 「のう - りょく【能力】 :物事をなしとげることのできる力。はたら き。 」 ( 『漢語林 新版』より引用)*20

以上 2 つの辞典より、 「能力」は「物事を成し遂げることのでき る力」という意味を有した言葉として理解出来る。 「能力」は「物事を成し遂げることのできる力」と定義できる。 3つの意味をまとめると、 「自発的学習能力」は「自発的」に「学習」 「能力」を付け足した造語であり、本研究では「子どもが他の力に よらず自ら進んで新しい知識をまなびならうことのできる力」と定 義する。

22

2-1.1 「自発的学習能力」の定義

「能力」については、辞典で以下のように述べられている。

2


第 2 章 研究概要

「散漫」については、辞典で以下のように述べられている。 【【*21】 『明鏡国語辞典第二版』 大修館書店、2010 年

「さん - まん【散漫】:とりとめのないさま。しまりのないさま。」 ( 『広辞苑第六版』より引用)*19 「さん - まん【散漫】 :集中力に欠けて、しまりがないこと。まとま りのないこと。」 ( 『明鏡国語辞典第二版』より引用)*21

以上2つの辞典より、「散漫」は「集中力が欠けるさま」という 意味を有した言葉として理解出来る。 「散漫」は「自発的学習能力が低下していること」と定義できる。 「散漫行動」は「散漫」に「行動」を付け足した造語であり、本 研究では「子供の自発的学習能力が低下した際に起こす行動」と定 義する。 上記の定義の解釈より、『立つ』『喋る』『よそ見をする』といっ た行動は『散漫行動』として捉えることができる。よって、この3 つの行動を『散漫行動』として扱う。

23

2-1.2 「散漫行動」の定義

2-1.2 「散漫行動」の定義

2


第 2 章 研究概要

「集中」については、辞典で以下のように述べられている。 「しゅう - ちゅう【集中】 :ひとところに集まること。また、集まる こと。 」 ( 『広辞苑第六版』より引用)*19

以上 1 つの辞典より、 「集中」は「集中力が満ちるさま」という 意味を有した言葉として理解出来る。 「集中」は「自発的学習能力が向上していること」と定義できる。 「集中行動」は「集中」に「行動」を付け足した造語であり、本 研究では「子供の自発的学習能力が向上した際に起こす行動」と定 義する。 上記の定義の解釈より、『集中行動』は『散漫行動』の対義語と して扱う。

24

2-1.3 「集中行動」の定義

2-1.3 「集中行動」の定義

2


第 2 章 研究概要

「香り」については、辞典で以下のように述べられている。 「かおり【香り】:よいにおい。芸術品などの、何となく感じられる よい感じ。 」 ( 『広辞苑第六版』より引用)*19 「かおり【香り】:よいにおい。(すぐれた)特性の示す雰囲気。」 ( 『明鏡国語辞典第二版』より引用)*21

以上 2 つの辞典より、 「香り」は「特性の示す雰囲気がある、よ いにおい」という意味を有した言葉として理解出来る。 「香り」は「特性の示す雰囲気を醸し出す、よいにおい」と定義 できる。 「香り空間」は「香り」に「空間」を付け足した造語であり、本 研究では「人間がどことなく香りがあると感じられる空間」と定義 する。

25

2-1.4 「香り空間」の定義

2-1.4 「香り空間」の定義

2


第 2 章 研究概要

本研究では、香り空間における子どもの自発的学習能力への影響 を明らかにし、新たな子どもの学習空間の可能性を示すことを目的 とする。

26

2-2 研究の目的

2-2 研究の目的

2


第 2 章 研究概要

本研究の流れをフローチャートで以下のように示す。

問題発見

子どもの散漫行動が多くなってきている

仮説

子どもの学習空間を香り空間にすれば、子どもの自発的学習能力が高まる

子どもの学習について

基礎調査

子どもの学習意欲 子どもの学習態度

香りの歴史について 世界の香り 日本の香り

子どもの学習環境 子どもの学習空間の建材

目的

調査 1

香り空間における子供の自発的学習能力への影響を明らかにし、 新たな学習空間の可能性を示すことを目的とする

子ども普段の学習時の行動調査

基礎調査

香りの選定

調査 2

香り空間における子どもの自発的学習能力の調査

結果

香り空間と子どもの自発的学習能力の関係を明らかにする

27

2-3 研究のフローチャート

2-3 研究フローチャート

2


3

3 . 調 査 1 ー子どもの学習空間の観察ー 3-1 調査1の目的 3-2 調査1の方法 3-3 調査1の結果 3-4 調査1の分析 3-5 調査1の考察


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

調査1として本章では、「調査2—香りと子どもの学習空間の観 察・調査—」を行う前段階として、普段の学習時から、散漫行動の 傾向にある子どもの選定を行う。そのため調査 1 では、普段の学 習時の子どもたちの様子をビデオカメラで撮影する。そして、撮影 した動画を観察し、第 2 章で定義した散満行動を基に散漫行動の 傾向にある子どもを選定することを目的とする。

28

3-1 調査 1 の目的

3-1 調査1の目的

3


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

次の内容で調査を行った。 ◆場所 :公文式南大沢5丁目中央教室 ◆日時 :2014 年 9 月 29 日 ( 火 ) 14 時〜 18 時 ◆調査方法 :ビデオカメラ撮影 ◆調査機材 :ビデオカメラ (録画用、SONY 製 DCR-SR100)(Fig.3-2.1) (録画用、SONY 製 HDR-SR8)(Fig. 3-2.2)

【*22】 『DCR-SR100 | ソ ニ ー』、 http://www.sony.jp/ support/handycam/ products/dcr-sr100/

Fig.3-2.1 DCR-SR100*22 【*23】 『HDR-SR8 |

ソ ニ ー』、

http://www.sony.jp/ support/handycam/ products/dcr-sr100/

Fig.3-2.2 HDR-SR8*23

29

3-2 調査1の方法

3-2 調査1の方法

3


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

3 3-2 調査1の方法

◆ビデオカメラの位置

ビデオカメラの設置基準は、 十分に子どもたちを映すことが出 来る場所とした。また、落下時を考慮し、子どもたちの安全が確保 できる場所にビデオカメラを設置した。

教材置き場

採点の場

採点の場

かばん置き場 採点の場

スタッフ控え室

出入口 くつ置き場

Fig3-2.3 カメラの位置と設置の様子

30


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

3 3-2 調査1の方法

◆調査基準 子どもの自発的学習能力を測定する調査基準として、以下の3つ をデータとして収集した。 ①立つ回数 ②喋る回数 ③よそ見をする回数 立つ回数は先生に質問する等の勉強に関するために立った回数を 除いた回数とした。 喋る回数は先生に質問する等の勉強に関するために喋った回数を 除いた回数とした。 よそ見をする回数は首・体が横を向いた回数とした。

31


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

3 3-2 調査1の方法

Fig3-2.4 立つ写真

Fig3-2.5 喋る写真

32


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

3 3-2 調査1の方法

Fig3-2.6 よそ見をする写真

33


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

3 3-2 調査1の方法

◆調査1の流れ 以下のような手順で調査1を行った。 1. 南大沢5丁目中央教室のスタッフに普段の学習時における散漫行 動が多い傾向にある子どもを選出してもらった。 2. 選出された6人の子どもの普段の学習時における散漫行動をビデ オカメラで撮影した。 3. 撮影したビデオカメラの映像を分析、考察した。

34


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

3-3 調査1の結果

3-3 調査1の結果 普段の学習時から、散漫行動が多い子どもを、スタッフに選出し てもらった。 内訳は、以下の通りである。

Table.3-3.1 スタッフによって選出された子ども達の情報

被験者ID A B C D E F

学年 年長 2年 2年 3年 2年 4年

性別 女 男 女 女 女 男

スタッフに選出してもらった散漫行動が多い傾向にある子どもの 人数が6人であったため、本調査ではこの6人の子どもを調査対象 とする。

35

3


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

3 3-3 調査1の結果

スタッフによって選出された6人の散漫行動が多い子どもの普段 の学習時をビデオ撮影し、自発的学習能力の調査基準を用いて表に まとめた。 内訳は、以下の通りである。 Table.3-3.2 選出された子ども達の普段の学習時における 散漫行動の回数

被験者ID A B C D E F

立つ回数

喋る回数 1 3 6 6 3 10

36

14 21 5 17 44 17

よそ見する回数 16 26 30 60 88 54


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

選出した散漫行動が多い子どもを被験者として、散漫行動の回数 から普段の学習時における散漫行動について分析する。 (Table.3-3.1)より被験者を選出することが出来た。 (Table.3-3.2)より、全ての被験者が普段の学習時において、散 漫行動の回数が最も多かったのはよそ見回数であった。次に被験者 C を除く全ての被験者の散漫行動の回数が多かったのは喋った回数 であった。 下記の (Table.3-4.1) は、 (Table.3-3.2) をグラフ化したものである。

Table.3-4.1 普段の学習時における各被験者の散漫行動の回数

37

3-4 調査1の分析

3-4 調査1の分析

3


第 3 章 調査1 - 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 -

調査1より、散漫行動が多い子どもを6人選出をすることが出来 た。 散漫行動が多い子どもを被験者として、普段の学習時における散 漫行動を調査してみると、全ての被験者の散漫行動の回数が最も多 かったのはよそ見をする回数であった。次に喋る回数。最後に立つ 回数が続いた。 これより、散漫行動が多い子どもは、学習時において自発的学習 能力が無くなると、よそ見をすることが多い傾向であることが分 かった。 このことより、本調査では3つの散漫行動における比重の関係性 が 「よそ見をする>喋る>立つ」 であることが明らかとなった。 次の章の調査2では、この結果を用いて香り空間における子ども の自発的学習能力への影響を明らかにしていく。

38

3-5 調査1の考察

3-5 調査1の考察

3


4

4. 調査2

ー香りと子どもの学習空間の観察・調査ー

4-1 調査2の目的 4-2 調査2の方法 4-3 調査2の結果 4-4 調査2の分析 4-5 調査2の考察


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

調査1では普段の学習時から、散漫行動の傾向にある子どもの選 定ができた。 調査2として本章では、調査1で選定された散漫行動の傾向にあ る子どもが普段の学習空間と香り空間とでの行動の違いを撮影す る。そして、結果から香り空間における子供の自発的学習能力への 影響を明らかにする。 調査1で選出された散漫行動の傾向にある6人の子どもを、調査 2でも被験者として調査対象とする。

39

4-1 調査2の目的

4-1 調査2の目的

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

次の内容で調査を行った。 ◆場所 :公文式南大沢5丁目中央教室 ◆日時・調査内容 : 2014 年 10 月 3 日 ( 金 )14 時〜 18 時 アロマディフューザー ( アースリズムの香り ) の調査 2014 年 10 月 7 日 ( 火 )14 時〜 18 時 お香 ( ヒノキの香り ) の調査 2014 年 10 月 10 日 ( 金 )14 時〜 18 時 お香 ( スギの香り ) の調査 ◆実験機材 :カメラ (録画用、SONY 製 HDR-AS30V)(Fig.4-2.1) (録画用、ELMO 製 QBiC MS-1 )(Fig.4-2.2) アロマディフューザー ( 香り演出用、無印良品製、超音波アロマディフュー ザー11SS)(Fig.4-2.3) アロマオイル ( 香り演出用、dōTERRA 製、アースリズム) (Fig.4-2.4) お香 ( 香り演出用、土佐竜製、四万十ひのき森林香 ) (Fig.4-2.5) ( 香り演出用、清明堂謹製、水車杉線香 )(Fig.4-2.6)

40

4-2 調査2の方法

4-2 調査2の方法

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-2 調査2の方法

【*24】 『 デ ジ タ ル HD ビ デ オ カメラレコーダー アク ションカム』 http://www.sony.jp/ actioncam/products/ HDR-AS30V/

Fig.4-2.1 HDR-AS30V*24

【*25】 『ELMO "QBiC" MS-1 もっとも小さい、超広 角デジタルムービーカ メラ』 http://www.elmoqbic. com/ms1/jp/style/

Fig.4-2.2 QBiC MS-1*25

【*26】 『音波アロマディフュー ザー11SS 約直径 80×高さ140mm | 無印良品ネットストア』 http://www.muji. net/store/cmdty/ detail/4548718940066

Fig.4-2.3 超音波アロマディフューザー11SS *26

41


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-2 調査2の方法

【*27】 『dōTERRA』 http://mydoterra.biz/ brend.html

Fig.4-2.4 アースリズム *27

【*28】 『天然四万十ひのき森林 香』 h t t p : / / w w w. t o s a r y u . com

Fig.4-2.5 四万十ひのき森林香 *28

【*29】 『やさと産杉の葉を使っ た伝統工芸品』 http://www.shokokai. or.jp/08/084631S0019/

Fig.4-2.6 水車杉線香 *29

42


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4-2 調査2の方法

◆香りの選出

以下の理由により3つの香りを使用した。 アロマオイル・アースリズムの香り dōTERRA 社プロダクトガイドによると、 「アースリズムのウッディーで上品なあたたかい香りは、心を落ち 着かせ安心感をもたらしてくれます。スプルース、ローズウッド、 フランキンセンス、ブルータンジーのエッセンシャルオイルが絶妙 なバランスで配合されており、心と体にやさしく働きかけます。」 とある。 つまり、dōTERRA 製アースリズムの香りには心を落ち着かせる 効果があると言える。心が落ち着くということは突発的な行動は起 こさない。 それゆえ、調査2でアースリズムの香りを使用した。 お香・ヒノキ、スギの香り 森林浴をすることで、ストレス、季節感の喪失や運動不足等の問 【*30】

題を解決し、また心身のくつ ろぎ、活力が回復すると言われている。

『森林環境の回復効果に

*30

本研究では、上記の記述で述べられている森林浴の効果を香り

関する国内研究の動向』

で演出するためにヒノキ・スギを使用する。

http://ci.nii.ac.jp/

森 孝博によると

els/110009613003.pdf?i

「森林浴がすがすがしく感じるのは、フィトンチッド(Phytoncide)

d=ART0010078077&typ

の効果によるものであると言われています。(中略)フィトンチッ

e=pdf&lang=jp&host=

ドとは植物から発散されるテルペン類等の揮発性物質であり、植物

cinii&order_no=&ppv_

はその生命を維持するため、また自らの成長を促すために、フィ

t yp e=0& l a n g _

トンチッドを幹や葉から大気中に放出しています。この揮発して いる状態のテルペン類等を浴びることを森林浴(Ablution with

【*31】 『フィトンチッドと森林 浴について』 http://www.forest. rd. pr ef. gifu. lg. jp/r d/

4

phytoncides)といい、最近ではずいぶんと私たちの中に定着して きています。」 とある。*31 つまり、植物から発散されるテルペンを浴びることで、森林浴状 態になったと言える。

43


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-2 調査2の方法

Fig.4-2.7 主な樹種の精油量の変化 *31 テルペンは精油の主な構成成分である。(Fig.4-2.7) よりテルペン が含まれているヒノキ、スギの香りを使用する。

44


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4-2 調査2の方法

◆カメラ、香りの位置

ビデオカメラの設置基準は第3章の調査1で明記している。 香りの設置基準は、 全ての子どもたちが必ず通り、香りを嗅ぐ ことが出来る場所とした。

採点の場

採点の場 採点の場 スタッフ控え室

Fig4-2.8 カメラ・香りの位置と設置の様子

45

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-2 調査2の方法

◆調査基準 第3章の調査2と同様に、子どもの自発的学習能力を測定する調 査基準として、以下の3つをデータとして収集した。 ①立つ回数 ②喋る回数 ③よそ見をする回数 立つ回数は先生に質問する等の勉強に関するために立った回数を 除いた回数とした。 喋る回数は先生に質問する等の勉強に関するために喋った回数を 除いた回数とした。 よそ見をする回数は首・体が横を向いた回数とした。

46


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-2 調査2の方法

Fig4-2.9 立つ写真

Fig4-2.10 喋る写真

47


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-2 調査2の方法

Fig4-2.11 よそ見をする写真

48


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

調査2では調査1で選出した6人の散漫行動が多い子どもを被験 者として 4 つの香り空間(香りなし・アースリズム・ヒノキ・スギ) でビデオ撮影し、自発的学習能力の調査基準を用いて各被験者ごと に表にまとめた。 内訳は、以下の通りである。

以下に、被験者 A の1回の学習時における、散漫行動の回数を 示す。 Table.4-3.1 被験者 A の各香り空間における散漫行動の回数 被験者A 香りなし アロマオイル・アースリズムの香り お香・ヒノキの香り お香・スギの香り

立つ回数

喋る回数 1 0 0 0

14 8 1 1

よそ見をする回数 16 6 4 6

Fig.4-3.2 被験者 A の各香り空間における散漫行動の回数

49

4-3 調査2の結果

4-3 調査2の結果

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-3 調査2の結果

Fig.4-3.3 被験者 A の各香り空間における散漫行動の回数

50


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

示す。 Table.4-3.4 被験者 B の各香り空間における散漫行動の回数 被験者B 香りなし アロマオイル・アースリズムの香り お香・ヒノキの香り お香・スギの香り

立つ回数

喋る回数 3 3 3

-

21 25 6 -

よそ見をする回数 26 35 40 -

Fig.4-3.5 被験者 B の各香り空間における散漫行動の回数

51

4-3 調査2の結果

以下に、被験者 B の1回の学習時における、散漫行動の回数を

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-3 調査2の結果

Fig.4-3.6 被験者 B の各香り空間における散漫行動の回数

52


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

示す。 Table.4-3.7 被験者 C の各香り空間における散漫行動の回数 被験者C 香りなし アロマオイル・アースリズムの香り お香・ヒノキの香り お香・スギの香り

立つ回数

喋る回数 6 3 2 2

5 15 0 0

よそ見をする回数 30 21 26 20

Fig.4-3.8 被験者 C の各香り空間における散漫行動の回数

53

4-3 調査2の結果

以下に、被験者 C の1回の学習時における、散漫行動の回数を

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-3 調査2の結果

Fig.4-3.9 被験者 C の各香り空間における散漫行動の回数

54


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

示す。 Table.4-3.10 被験者 D の各香り空間における散漫行動の回数 被験者D 香りなし アロマオイル・アースリズムの香り お香・ヒノキの香り お香・スギの香り

立つ回数

喋る回数 6 3 0 0

17 16 8 1

よそ見をする回数 60 28 23 5

Fig.4-3.11 被験者 D の各香り空間における散漫行動の回数

55

4-3 調査2の結果

以下に、被験者 D の1回の学習時における、散漫行動の回数を

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-3 調査2の結果

Fig.4-3.12 被験者 D の各香り空間における散漫行動の回数

56


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

示す。 Table.4-3.13 被験者 E の各香り空間における散漫行動の回数 被験者E 香りなし アロマオイル・アースリズムの香り お香・ヒノキの香り お香・スギの香り

立つ回数

喋る回数 3

-

5 0

よそ見をする回数 88 3 24 4 14

44

Fig.4-3.14 被験者 E の各香り空間における散漫行動の回数

57

4-3 調査2の結果

以下に、被験者 E の1回の学習時における、散漫行動の回数を

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-3 調査2の結果

Fig.4-3.15 被験者 E の各香り空間における散漫行動の回数

58


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

示す。 Table.4-3.16 被験者 F の各香り空間における散漫行動の回数 被験者F 香りなし アロマオイル・アースリズムの香り お香・ヒノキの香り お香・スギの香り

立つ回数

喋る回数 10

-

3 0

よそ見をする回数 54 22 30 15 22 17

Fig.4-3.17 被験者 F の各香り空間における散漫行動の回数

59

4-3 調査2の結果

以下に、被験者 E の1回の学習時における、散漫行動の回数を

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-3 調査2の結果

Fig.4-3.18 被験者 F の各香り空間における散漫行動の回数

60


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

調査2では4つの香り(香りなし・アースリズム・ヒノキ・スギ) 空間における子どもの散漫行動の回数を調査した。 (TableTable.4-3.1、Table.4-3.4、Table.4-3.7、Table.4-3.10、 Table.4-3.13、Table.4-3.15) をまとめて、以下の3つの項目で比較 し分析する。 ◆よそ見をする回数 4 つの香り空間を比較すると、被験者 B を除く全ての被験者は香 りなし空間ではよそ見回数が最も多かった。対して、被験者 A を 除く全ての被験者のよそ見回数が最も少なかったのはスギの香り空 間だった。 ◆喋る回数 4 つの香り空間を比較すると、被験者 B、C を除く全ての被験者 は香りなし空間では喋った回数が最も多かった。対して、被験者 E を除く全ての被験者の喋った回数が最も少なかったのはスギ空間で あった。 また、2つの香り(アースリズム・ヒノキ)空間を比較すると、 アースリズム空間の方がヒノキ空間より全ての被験者の喋った回数 が多かった。 ◆立つ回数 4 つの香り空間を比較すると、被験者 E を除く全ての被験者は香 りなし空間では立った回数が最も多かった。対して、被験者 B、E を除く全ての被験者の立った回数が最も少なかったのはスギ空間で あった。

61

4-4 調査2の分析

4-4 調査2の分析

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

調査2の分析より以下のことが考えられる。 被験者 B を除く全て被験者の散漫行動のどれを見ても、回数が 最も多かったのは、香りなし空間であった。 それに比べ、スギの香り空間では被験者 A を除く全ての被験者 の散漫行動のどれを見ても、回数が最も少なかった。 また、アースリズムの香りと香りなし空間を比較すると、被験者 B のよそ見をする回数、被験者 C の喋る回数を除く全ての被験者の 散漫行動のどれを見ても、アースリズムの香り空間の方が散漫行動 が少なかった。 更に、ヒノキの香り空間と香りなし空間を比較すると、被験者 B のよそ見をする回数、被験者 F の喋る回数を除く全ての被験者の 散漫行動のどれを見ても、ヒノキの香り空間の方が散漫行動が少な かった。 故に、子どもの学習空間において香り空間は、子どもの自発的学 習能力を高めると考えられる。 また、4つの香り空間で子どもの散漫行動の回数を比較したとこ ろ、特に子どもの自発的学習能力を高める香り空間はスギの香り空 間であった。

62

4-5 調査2の考察

4-5 調査2の考察

4


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-5 調査2の考察

Fig.4-5.1 全被験者の各空間でのよそ見をする回数

Fig.4-5.2 全被験者の各空間での喋る回数

63


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-5 調査2の考察

Fig.4-5.3 全被験者の各空間での立つ回数

【*32】 『フィトンチッドと森林 浴について』 http://www.forest. rd. pr ef. gifu. lg. jp/r d/

Fig.4-5.4 主な樹種の精油量の変化 *32 「調査2の方法 ◆香りの選出」より、森博行は 「植物から発散されるテルペンを浴びることで、森林浴状態になっ たと言える。テルペンは精油の主な構成成分である。つまり、ヒノ キとスギとで森林浴効果を比べると、(Fig.4-5.4) より精油量にテル ペンが多く含まれているヒノキの方が森林浴効果が高い」 と言っている。*32 つまり、成分で比較するとスギよりもヒノキの方が森林浴効果が 高く、心身の安らぎを与えると言える。 しかし、本調査結果より、子どもの学習空間において、子どもの 自発的学習能力を高めるのは、ヒノキではなく、スギだということ が明らかになった。

64


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

4 4-5 調査2の考察

Fig.4-5.5 被験者 A、B、C、D が2つの香り空間で喋った回数 また、2つの香り(アーリズム・ヒノキ)空間を比較した。 よそ見回数で比較すると、2つの香り空間における子どもの自発 的学習能力の差異はほぼ無いと考えられる。しかし、第3章におい て、3つの散漫行動における比重の関係性を 「よそ見回数>喋った回数>立った回数」 としたため、ここでは喋った回数で比較する。 (表 4-5.4)より、喋った回数で比較すると、ヒノキの香り空間 の方がアーリズムの香り空間より子どもの自発的学習能力が高いと 言える。 アロマ・アーリズムの香りは複数の精油をブレンドしたアロマオ イルであるが、お香・ヒノキの香りは純粋なヒノキ一種を使用した お香である。 つまり、複数の香りをブレンドした香り空間よりも、一種の純粋 な香り空間の方が、子どもの自発的学習能力が高いことが明らかに なった。

65


第 4 章 調査2 - 香 り と 子 ど も の 学 習 空 間 の 観 察 ・ 調 査 -

香り空間では子供の自発的学習能力が高くなることが明らかに なった。つまり、香り空間における子供の自発的学習能力への影響 が本研究で明らかとなった。 また、子どもの自発的学習能力が最も高くなるのは、スギの香り 空間である。加えて、複数の香りを使用するよりも、一種の香りを 使用した方が子どもの自発的学習能力が高くなることが明らかと なった。

66

4-5 調査2の考察

以上のことを総合して、考えられることを以下に述べる。

4


5

5. まとめ 5-1 まとめ 5-2 展望


第 5 章 まとめ

5 5-1 まとめ

5-1 まとめ 本研究では、香り空間における子供の自発的学習能力への影響を 明らかにし、新たな学習空間の可能性を示すことを目的とした。 調査1では、普段の学習時における子どもの散漫行動をビデオカ メラを用いて調査した結果、子どもは学習時において自発的学習能

力が無くなると 「よそ見をする>喋る>立つ」 といった行動をしやすいことが分かった。 調査2では、4つの香り空間(香りなし・アースリズム・ヒノキ・ スギ)での子どもの散漫行動をビデオカメラを用いて調査した結果、 以下の事柄が明らかになった。 1. 香り空間は子どもの自発的学習能力を高める影響がある。 2. 香り空間で最も子どもの自発的学習能力を高めたのは、スギの 香り空間であった。 3. 複数の香りを使用するよりも、一種の香りを使用した方が子ど

もの自発的学習能力が高くなる。 以上の3つのことより本研究では、香り空間における子どもの自 発的学習能力への影響が明らかになった。この結果より、香り空間 は子どもの学習空間を設計する際に考慮すべき新たな事柄として示 すことができた。

67


第 5 章 まとめ

5 5-2 展望

5-2 展望 本研究より、香り空間では子どもの自発的学習能力が高まったこ とが明らかとなった。また、複数の香りを使用するよりも、一種の 香りを使用した方が子どもの自発的学習能力が高くなることが明ら かとなった。加えて、本研究で調査した4つの香り空間では、スギ の香り空間が最も子どもの自発的学習能力を高めることが明らかと なった。つまり、子どもの学習空間に最適なのは、一種のスギの香 り空間であることが分かる。 本研究によって今後子どもの学習空間が香り空間になれば、子ど もが嫌々勉強することがなくなり、自ずと学習をするようになるだ ろう。 また、 子どもが学習する空間の建材や内装材がスギ・ヒノキといっ た無垢材で出来ていたら、子どもの自発的学習能力が向上するだろ う。 【*33】

更に国産のスギ・ヒノキといった無垢材を子どもの学習空間の建

『産の木材を使用して、

材や内装材で使用することによって、山村地域の活性化に貢献出来

元気な森林を取り戻そ

るだろう。*33

う!: 政 府 広 報 オ ン ラ イン』 http://www.govonline.go.jp/useful/ article/201310/3.html

68


第 6 章 おわりに

6. おわりに 6-1 参考文献 6-2 謝辞

6


第 6 章 おわりに

1) 『全国学力・学習状況調査:教育課程研究センター:国立教育政策 研究所 National Institute for Educational Policy Research』 http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html (2014 年 10 月 26 日閲覧 ) 2) 『授業の受け方 - 1. 学校での学習の様子 - 第1節 小学生の学習行動 - ベネッセ教育研究開発センター研究員 邵勤風 - ベネッセ教育総 合研究所』 http://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/gakukihon4/syo/ hon2_1_03.html (2014 年 10 月 16 日閲覧 ) 3) 『小学生白書 Web 版 学研教育総合研究所|学研』 http://www.gakken.co.jp/kyouikusouken/whitepaper/201009/ chapter2/01.html (2014 年 10 月 16 日閲覧 ) 4) 『四 小学校の普及と就学状況:文部科学省』 h t t p : / / w w w. m e x t . g o . j p / b _ m e n u / h a k u s h o / h t m l / o t h e r s / detail/1317590.htm (2014 年 10 月 18 日閲覧 ) 5) 坂田貴一、井上朝雄、 片野博「608 戦前に建てられた鉄筋コンクリー ト造小学校校舎の成り立ちの比較 : 福岡市立大名小学校校舎の建築 的価値に関する研究 その 1( 建築計画 )」 『日本建築学会研究報告 . 九 州支部 .3、計画系 (50)』 、2011 年、pp.29-32 (2014 年 10 月 29 日閲覧 ) 6) 『四 小学校の普及と就学状況:文部科学省』 h t t p : / / w w w. m e x t . g o . j p / b _ m e n u / h a k u s h o / h t m l / o t h e r s / detail/1317590.htm (2014 年 10 月 18 日閲覧 )

69

6-1 参考文献

6-1 参考文献

6


第 6 章 おわりに

6 6-1 参考文献

7) 『安全な学習塾を目指しての取り組み』 http://members3.jcom.home.ne.jp/shkk_syutoken/shutokensibu/ kenkyu_repo/juku/juku_1.htm (2014 年 10 月 16 日閲覧 ) 8) 『ビル進化論』 http://www.kajima.co.jp/news/digest/mar_2004/tokushu/index-j. htm (2014 年 10 月 18 日閲覧 ) 9) 吉武利文、川上智子『香りを楽しむ』丸善株式会社、1992 年 10) 神保博行『香道の歴史』柏書房株式会社、2003 年 11) 『香木ーコトバンク』 https://kotobank.jp/word/ 香木 -263101 (2014 年 10 月 26 日閲覧 ) 12) 『香道とは - コトバンク』 https://kotobank.jp/word/ 香道 -6285 (2014 年 10 月 26 日閲覧 ) 13) 一之瀬巳幸、田口直彦、山口光國、黒塚美文子 「香りがもたらす、心身機能への効果」 『第44回日本理学療法学術大会』 、pp2-113 http://ci.nii.ac.jp/naid/130004580140 (2014 年 10 月 18 日閲覧 ) 14) 木戸眞美「香りによる生理・心理的効果」『国際生命情報科学会』 、 2002 年、pp148-154 http://ci.nii.ac.jp/els/110001080206.pdf?id=ART0001236113 &type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_ sw=&no=1414875686&cp= (2014 年 10 月 18 日閲覧 )

70


第 6 章 おわりに

6 6-1 参考文献

15) 阿波一馬、松原斎樹、柴田祥江、合掌顕「夏季のオフィス空間にお ける香りの効果」 『人間・環境学会誌 第 33 号 Vol.17 No.1』 、2014 年、pp67 16) 瀬川遼、宮下広夢、坂内祐、岡田謙「香り強度変化パターンに基 づく心理的効果の検証」『日本バーチャルリアリティ学会論文誌 』、 pp531-536 http://ci.nii.ac.jp/els/10027645550.pdf?id=ART0009789840 &type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_ sw=&no=1414875998&cp= (2014 年 10 月 18 日閲覧 ) 17) 中野詩織、有冨 美代子、 綾部早穂「自己選択した香りがメンタルワー ク時のパフォーマンスや気分に及ぼす影響」 『日本バーチャルリア リティ学会論文誌』 、2010 年、pp537-544 http://ci.nii.ac.jp/els/10027645567.pdf?id=ART0009789841 &type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_ sw=&no=1414876108&cp= (2014 年 10 月 18 日閲覧 ) 18) 合原妙美、岩下剛「室内環境の快適性と単純作業パフォーマンスに 関する考察一室内の気温及び香りによる覚醒がパフォーマンスに及 ぼす影響一」『日本建築学科環境系論文集、第 572 号、pp75-80』 2003 年 http://ci.nii.ac.jp/els/110004088169.pdf?id=ART0006352680 &type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_ sw=&no=1414876192&cp= (2014 年 10 月 18 日閲覧 ) 19) 新村出『広辞苑 第六版』岩波書店、2008 年 20) 『漢語林 新版』大修館書店、2001 年 21) 『明鏡国語辞典第二版』大修館書店、2010 年

71


第 6 章 おわりに

6 6-1 参考文献

22) 『DCR-SR100 | ソ ニ ー』http://www.sony.jp/support/handycam/ products/dcr-sr100/ (1014 年 10 月 27 日閲覧) 23) 『HDR-SR8 |

ソ ニ ー』http://www.sony.jp/support/handycam/

products/dcr-sr100/ (1014 年 10 月 27 日閲覧) 24) 『デジタル HD ビデオカメラレコーダー アクションカム』 http://www.sony.jp/actioncam/products/HDR-AS30V/ (2014 年 10 月 22 日閲覧 ) 25) 『ELMO "QBiC" MS-1 - もっとも小さい、超広角デジタルムービーカ メラ』 http://www.elmoqbic.com/ms1/jp/style/ (2014 年 10 月 22 日閲覧 ) 26) 『音波アロマディフューザー11SS 約直径80×高さ140m m | 無印良品ネットストア』 http://www.muji.net/store/cmdty/detail/4548718940066 (2014 年 10 月 22 日閲覧 ) 27) 『dōTERRA』 http://mydoterra.biz/brend.html (2014 年 10 月 22 日閲覧 ) 28) 『天然四万十ひのき森林香』 http://www.tosaryu.com (2014 年 10 月 22 日閲覧 ) 29) 『やさと産杉の葉を使った伝統工芸品』 http://www.shokokai.or.jp/08/084631S0019/ (2014 年 10 月 22 日閲覧 )

72


第 6 章 おわりに

6 6-1 参考文献

30) 高山 範理「森林環境の回復効果に関する国内研究の動向」 『人間・環境学会誌』 2012 年、pp.158-170 http://ci.nii.ac.jp/els/110009613003.pdf?id=ART0010078077 &type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_ sw=&no=1414594328&cp= 31) 『フィトンチッドと森林浴について』 http://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/rd/rinsan/9811gr.html (2014 年 10 月 22 日閲覧 ) 32) 『フィトンチッドと森林浴について』 http://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/rd/rinsan/9811gr.html (2014 年 10 月 22 日閲覧 ) 33) 『産の木材を使用して、元気な森林を取り戻そう!:政府広報オン ライン』 http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201310/3.html (2014 年 11 月 1 日閲覧)

73


第 6 章 おわりに

6 6-2 謝辞

6-2 謝辞 仁史研究室に私を迎い入れてくれた仁史先生には本当に感謝の気持ちで いっぱいです。卒論以外のことで多大なるご心配をおかけしておきながら、 9月下旬まで卒論の題材が決まらず焦っていた私に様々なアドバイスをして 頂き、また香り空間演出のために多数の香りセットを貸して頂き本当に感謝 しております。あと1年宜しくお願い致します。 良三先生、林田先生、小林先生方には卒論の題材決定をする際に大変お世 話になりました。ありがとうございました。 りょうじさんグループのりょうじさん、あいささん、TOM さんあさみさん、 毎週卒論テーマ変わってすみませんでした。りょうじさん、毎回様々なアイ ディアを出して頂いてありがとうございました。りょうじさんグループ楽し かったです!あいささん、チーズフォンデュ会最高でした!また研究室でや りましょう! TOM さん、TOM さんの笑顔神々しいなと毎回思ってました。 あさみさん、不健康な生活をしていた私たちに差し入れしてくれた野菜ジュー スありがとうございました!あれで健康になった気がします。 そして、柳瀬さん!本当にすみませんでした。意味の分からない日本語を 添削して頂いたり、またよくわからない私の裏卒論テーマであるピンク卒論 を承諾してくださったり、私の態度が悪かったり本当に柳瀬さんには申し訳 なかったです。でも柳瀬さんが担当でやりたいこと全部やれたので感謝して います。ありがとうございまし た。 M0 のみんな、共に楽しい夜を過ごせていい思い出が出来たよ! みほ、ゆいこ、「〜時に起こして」って頼んで起きなくてごめんなさい。まい まいの笑顔は私の癒し!さくの禁断トークまた聞かせてね!わだめとはこれ から思い出作っていくから覚悟しておいてね! ゆるぎ兄さん、八王子イジリありがとう。でも、八王子は宝塚に負けてない と思うよ。戸張、君の低音ボイスの「いらっしゃいませ〜」に何回も笑わし てもらったよ。ありがとう。あっくん、あっくんが意外に優しいことが分か れてよかった。あと、意外にもみんなのこと思ってくれてるよね。池ちゃん、 池ちゃんが学校来なさすぎて心配しようと思ったけど、池ちゃんは一人でも 出来る子って知ってるから心配するのやめた。笑 家族のみんなサポートありがとうございました。二日にいっぺん帰ってく る私のために美味しいご飯を用意してくれたお母さん。温かいお風呂を用意 してくれたお父さん。クッキー差し入れしてくれたのぶちゃん。遠いメキシ コから応援メッセージくれたえりちゃん。みんなの協力があっていい論文が 書けました! 論文終わるまで会わないと宣言してくれたラマラマーン(彼氏)。君のこの 宣言のおかげで、死に物狂いで論文書けたと思う。ありがとう。 公文式の先生方と子どもたち。皆さんの協力があってこの論文を書くこと が出来ました。ありがとうございました。 この論文執筆に関わって全ての皆様、ありがとうございました! あと謎の1年、学校生活楽しみます!

松川祥子

74


資料編 1 保護者へのお知らせ 2 子どもたちの様子の観察 ( 被験者 A の様子 )


資料編

1 保護者へのお知らせ

75


香りなし

立つ

喋る

よそ見をする

START 0'00''

1'00''

よそ見をする

よそ見をする

喋る

2'00''

76 喋る

よそ見をする

よそ見をする

喋る

3'00''

資料編

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子 )

立つ


香りなし

立つ

喋る

よそ見をする

4'00''

5'00''

77 よそ見をする

よそ見をする

6'00''

資料編

喋る

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子)

よそ見をする


香りなし

立つ

喋る

よそ見をする

7'00''

喋る

喋る

よそ見をする

8'00''

78 9'00''

喋る

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子)

よそ見をする

資料編

よそ見をする


香りなし

立つ

喋る

よそ見をする

10'00''

よそ見をする

喋る

よそ見をする

11'00''

79 喋る

よそ見をする

喋る

12'00''

よそ見をする

資料編

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子)

喋る


香りなし

立つ

喋る

よそ見をする

13'00''

喋る

よそ見をする

14'00''

80 喋る

15'00''

資料編

よそ見をする

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子)


香りなし

立つ

喋る

よそ見をする

FINISH 15'39''

81 資料編

2. 子どもたちの様子の観察


アロマディフューザー・アースリズムの香り

立つ

喋る

よそ見をする

START 0'00''

1'00''

よそ見をする

よそ見をする

喋る

2'00''

82 喋る

3'00''

資料編

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子 )


アロマディフューザー・アースリズムの香り

立つ

喋る

よそ見をする

4'00''

喋る

喋る

よそ見をする

5'00''

83 喋る

喋る

6'00''

よそ見をする

資料編

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子)

喋る


アロマディフューザー・アースリズムの香り

立つ

喋る

よそ見をする

7'00''

よそ見をする

よそ見をする

喋る

FINISH 07'37''

84 資料編

2. 子どもたちの様子の観察


お香・ヒノキの香り

立つ

START 0'00''

喋る

よそ見をする

1'00''

喋る

2'00''

85 よそ見をする

3'00''

資料編

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子 )


お香・ヒノキの香り

立つ

喋る

よそ見をする

4'00''

5'00''

86 6'00''

よそ見をする

資料編

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子)

よそ見をする


お香・ヒノキの香り

立つ

喋る

よそ見をする

FINISH 6'59''

よそ見をする

87 資料編

2. 子どもたちの様子の観察


お香・スギの香り

立つ

START 0'00''

喋る

よそ見をする

1'00''

よそ見をする

2'00''

88 よそ見をする

3'00''

資料編

よそ見をする

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子 )


お香・スギの香り

立つ

喋る

よそ見をする

4'00''

5'00''

89 6'00''

資料編

喋る

2. 子どもたちの様子の観察(被験者 A の様子)


お香・スギの香り

立つ

喋る

よそ見をする

7'00''

よそ見をする

よそ見をする

よそ見をする

FINISH 07'07''

90 資料編

2. 子どもたちの様子の観察


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