機能空間の配置からみた診療所における医療従事者の行動特性に関する研究

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機能空間の配置からみた 診療所における医療従事者の行動特性に関する研究 Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

山路 桜子


目次


研究概要 1.1 研究目的 1.2 用語の定義

第2章

2 3

研究背景 2.1 社会的背景

5

2.1.1 日本の医療事情

5

2.1.2 日本の医療環境の傾向と今後の見通し

15

2.2 既往研究の系譜

20

2.2.1 看護動線シミュレーションによる病棟評価の検討

20

2.2.2 ICU における看護師の動き

20

2.2.3 医療情報システムを導入した病棟部の看護行為と 動線量について

20

2.2.4 大病院手術室における医療スタッフの 動線に関する研究 2.3 研究の流れ

第3章

20 22

診療所における空間の機能に関する調査 3.1 調査目的

24

3.2 調査概要

25

3.3 調査結果

32

3.4 考察

33

3.4.1 診療所における機能区分

33

3.4.2 機能空間の再定義

43

3.5 まとめ

52

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

第1章


機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査 4.1 調査目的

54

4.2 調査概要

55

4.2.1 診療所における医療従事者の行動特性調査

55

4.2.2 遷移表の作成手順

56

4.3 調査結果 4.3.1 遷移表「看護師」

58 58

4.3.2 遷移表「医師」

62

4.3.3 遷移表「事務員」

66

4.4 考察

70

4.5 まとめ

71

第 5 章 : 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成 「N 診療所におけるケーススタディー」 5.1 モデル化の目的

73

5.2 モデル化の概要

74

5.2.1 遷移表

75

5.2.2 遷移モデル

75

5.2.3 行動特性に基づく機能空間の配置モデル

75

5.3 結果

第 6 章 :

77

5.3.1 遷移表

77

5.3.2 遷移モデル

81

5.3.3 行動特性に基づく機能空間の配置モデル

86

5.4 考察

90

5.5 まとめ

93

まとめ

95

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

第4章


7.1 参考文献

100 7.2 謝辞

98

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おわりに 第7章


第1章 研究概要

1.1 研究目的 1.2 用語の定義


本研究は、診療所において空間を機能別に区分し、医療従事者の行動 調査をもとに行動遷移モデルを作成することを目的とする。

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1.1 研究目的

第 1 章 研究概要

-2-


【注 1-2-1】 総 務 省「 平 成 24 年 (2012) 医療施設 ( 動 態 ) 調査・病院報告 の概況」 h t t p : / / w w w. a j h a . or.jp/admininfo/

(1) 医療施設の種類 □病院 医師又は歯科医師が医業又は歯科医業を行う場所であって、患者 20 人 以上の入院施設を有するも のをいう。

pdf/2013/130909_1. pdfJ-tokkyo

□診療所 医師又は歯科医師が医業又は歯科医業を行う場所 ( 歯科医業のみは除 く。) であって、患者 の入院施設を有しないもの又は患者 19 人以下の 入院施設を有するものをいう。

(2) 本研究における用語の定義 □空間の機能 ある空間が持つはたらきのこと。相互に連携し合って全体を構成してい る空間の各要素や部分が、それぞれ担っている固有の役割をいう。

□機能空間 空間を機能(すなわち空間の担っている役割)別で区分したものをいう。

□遷移 移り変わること。

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1.2 用語の定義

第 1 章 研究概要

-3-


第2章 研究背景

2.1 社会的背景 2.1.1 日本の医療事情 2.1.2 日本の医療環境の傾向と今後の見通し 2.2 既往研究の系譜 2.2.1 看護動線シミュレーションによる病棟評価の検討 2.2.2 ICU における看護師の動き 2.2.3 医療情報システムを導入した病棟部の看護行為と 動線量について 2.2.4 大病院手術室における医療スタッフの 動線に関する研究 2.3 研究の流れ


2.1.1 日本の医療事情

■高齢化 □日本社会の高齢化 日本の医療環境に大きな影響を及ぼすものとして、高齢化が挙げられ る。高齢化の指標として用いられるのが以下の区分である。 【注 2-1-1】 総務省 http://www.toukei. metro.tokyo.jp/ jsuikei/js-index5.htm

人口高齢化の状況を把握する方法として、もっともよく利用さ れるのが、総人口に対する 65 歳以上人口(老年人口)の割 合です。 総人口に占める 65 歳以上人口の割合(%) = 65 歳以上人口÷総人口×100 ※ WHO(世界保健機構)や国連の定義によると、 65 歳以上人口の割合が7%超で「高齢化社会」 65 歳以上人口の割合が 14%超で「高齢社会」 65 歳以上人口の割合が 21%超で「超高齢社会」 とされています。 このように、総務省によると WHO(世界保険機構)に則った区分に おいては日本は 1970 年に高齢化社会に、1994 年に高齢社会に、そし て 2007 年に超高齢社会になった。人口の組成が変わることは、医療に も影響を与える。

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2.1 社会的背景

第 2 章 研究背景

-5-


の高齢化を考量すると、日本はますます高齢者の割合は増えると考えら れる。

【注 2-1-2】 総務省「第 1 回病床 機能情報の報告・提 供の具体的なあり方 に関する検討会 平成 24 年 11 月 26 日」 http://www. mhlw.go.jp/stf/

図 2-1-1 我が国における団塊世代の高齢化(2012)

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また、さらに今後予想される動向としては団塊の世代その前後の人口

第 2 章 研究背景

-6-


【注 2-1-3】 総務省「第 1 回病床 機能情報の報告・提 供の具体的なあり方 に関する検討会 平成 24 年 11 月 26 日」 http://www. mhlw.go.jp/stf/

図 2-1-2 我が国の人口推計 【注 2-1-4】 内閣府「高齢社会白 書」 http://www8. cao.go.jp/kourei/ whitepaper/

2060 年時点では全人口の 39.9%が 65 歳以上となり、2010 年時点の 22.8%から比率の上で約 2 倍近くに増える形となる。

index-w.html

総人口は 2050 年には 1 億人を割り込み 9708 万人、その後もさらに

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□人口の推移

減少を続け 2060 年には 9000 万人を切ると推計されている。そのうち 3500 万人近くが 65 歳以上の高齢者となる。

高齢者人口そのものは団塊の世代との兼ね合わせもあり、2040 年過ぎ でピークを迎えるものの、それより下の世代、そして総人口も減少をし ているため、高齢者比率は増加。2035 年にはほぼ 3 人に 1 人が高齢者 (65 歳以上 )、そして 2060 年には 2.5 人に 1 人が高齢者となる。

第 2 章 研究背景

-7-


るが減少傾向に入る。一方で前期・後期高齢者比率は団塊の世代が後期 に到達し始める 2020 年に逆転し、以降は「高齢者の中でも 75 歳以上 の人数の方が多くなる」状況が継続することになる。2060 年時点では 「65-74 歳」の 2 倍強の数の、「75 歳以上」の高齢者が存在し、全人口 の 1/4 強が 75 歳以上となると言われている。

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また、高齢者人口のピークは 2040 年であり、以降は少しずつではあ

第 2 章 研究背景

-8-


【注 2-1-5】 社会実情データ図 録(2007 年 2 月 19 日 収 録、2009 年 4

日本は高齢化が急激に進み、2005 年国勢調査の高齢化率 20.2%は【図 2-1-3】中の他の先進国を上回って世界一となった。

月 14 日 更 新、 国 連 2004 年 改 定 値 か ら 2008 年 改 定 値 に 変 更、 及 び 韓 国 追 加、 2011 年 5 月 5 日 国 連 2010 年 改 定 値 に 変 更、 及 び 中 国 追 加、5 月 20 日 2100 年までの推計に図を 延 長、2012 年 2 月 9 日社人研新将来推 計で更新、2013 年 7 月 12 日国連 12 年改 訂で更新) http://www2. t t c n . n e . j p / honkawa/1157.html

図 2-1-3 主要国における人口高齢化率の長期推移・将来推計

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□諸外国との比較

日本は戦後、ベビーブームと急速な少子化の進展により団塊の世代が 生まれた。近年平均寿命の伸びと少子化の進展が顕著であるが、さらに 団塊の世代が65際以上となるため近年急速なスピードで高齢化が進展 しており、この急速な高齢化の進行が日本の大きな特徴となっている。 将来推計としては、今後も欧米諸国を上回って世界一が継続すると 予測されている。また日本を追って他の途上国・先進国も高齢化に突入

第 2 章 研究背景

-9-


どのバランスを乱す。 日本の問題点は、急激な変化に制度や対策が追いつかない点である。 少子化対策も合わせ、先々を見据えた政策が求められる。

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すると考えられるが、極度な高齢化は社会の納税や医療・介護・福祉な

第 2 章 研究背景

- 10 -


□日本における医療費の動向・今後の見通し 人口推計より、各保険者の加入者数 (0~74 歳 ) の減少と高齢者医療費 (「75 歳以上の医療費」と「65~74 歳の医療 費」) の増加が予想される。 そのため、各保険者の高齢者医療費を支えるための負担は増加すること が見込まれる。 【注 2-1-6】 「 医 療・ 介 護 を 取 り 巻く現状 ( 参考資料 ) 平成 23 年 5 月 19 日 厚生労働省」 http://www.cas. go.jp/jp/seisaku/ syakaihosyou/ syutyukento/dai7/ siryou1-2.pdf

図 2-1-4 医療費の動向・今後の見通し

特に働くことが可能な現役世代が多く加入する被用者保険では、高齢

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■医療費(この間に医療保険の話入れようかな?!背景5より)

者医療費を支える負担が既に支出全体の 4 割を占めているが、将来的 には 5 割を超える見通しである。

現役世代の高齢者医療費を支える負担の増加の理由は、前に述べたよ うに①高齢者の 1 人当たり医療費の増加、②高齢者の増加、③現役世 代人口の減少、と 3 つの要因によるものである。

第 2 章 研究背景

- 11 -


日本は諸外国よりも高齢化率は高いが、医療費は低い状況にある。た だし、高齢化の進展や、医療の高度化に伴い、医療費は今後とも増大し ていく見込みである。 【注 2-1-7】 「 医 療・ 介 護 を 取 り 巻く現状 ( 参考資料 ) 平成 23 年 5 月 19 日 厚生労働省」 http://www.cas. go.jp/jp/seisaku/ syakaihosyou/ syutyukento/dai7/ siryou1-2.pdf

図 2-1-5 医療費全体の伸びの要因〜高齢化比率との相関〜

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□諸外国との比較

図 2-1-6 G7 諸国における総医療費と高齢化率の状況

第 2 章 研究背景

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「 医 療・ 介 護 を 取 り 巻く現状 ( 参考資料 ) 平成 23 年 5 月 19 日 厚生労働省」 http://www.cas. go.jp/jp/seisaku/ syakaihosyou/

医療費の今後の増加に反して、医療保険加入者数の将来見通しは減少 の一途を辿ると予測されている。その理由は上で述べた少子高齢化であ る。医療費を支える医療保険の加入者数が人口に対し減少することが原 因である。

syutyukento/dai7/ siryou1-2.pdf

図 2-1-7 医療保険加入者数の将来見通し

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【注 2-1-8】

図 2-1-8 医療給付費の将来見通し

第 2 章 研究背景

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国民医療費は 1990 年代に大きく増加し、そのため政府の財政難も深刻 化した。そのため政府は 2000 年代以降、予防医療に関する啓発活動や 後発医薬品の利用促進などの医療費抑制政策を取り続けている。

【注 2-1-9】 http://www.bk.mufg .jp/houjin/riseupclu b/2014/04/post-20 .html

図 2-1-9 医療費抑制に関連した主な政策

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□医療法・政策の動向「医療費抑制」

2014 年 4 月診療報酬部分に消費税率の引き上げ分が反映されたが、 薬価等は減額改定された。70 ~ 74 歳の医療費の窓口負担率は特例措 置でこれまで 1 割とされていたが、2014 年 4 月から 2 割に引き上げ られた。団塊の世代が 75 歳を迎える 2025 年には、医療費の増大が懸 念されており、効率的な地域の医療連携、慢性期患者や終末期患者の在 宅療養支援強化など、今後も医療費の抑制に向けたさまざまな施策が打 ち出されることになるだろうと言われている。

第 2 章 研究背景

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■病院数・病床数 □病院数・病床数の変遷 病院数・病床数の総数は平成2年をピークに減少している。

【注 2-1-10】 「 医 療・ 介 護 を 取 り 巻く現状 ( 参考資料 ) 平成 23 年 5 月 19 日 厚生労働省」 http://www.cas. go.jp/jp/seisaku/ syakaihosyou/ syutyukento/dai7/ siryou1-2.pdf

図 2-1-10 医療費抑制に関連した主な政策

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

2.1.2 日本の医療環境の傾向と今後の見通し

図 2-1-11 医療費抑制に関連した主な政策

第 2 章 研究背景

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日本の病床数は、諸外国と比較すると多くの病床数を有している。そ の数は OECD 諸国と比較しても群を抜いており、人口あたりの病床数 の観点から見ると日本は医療環境が整っていると言える。

【注 2-1-11】 総務省「第 1 回病床 機能情報の報告・提 供 の具体的なあり方に 関する検討会 平成 24 年 11 月 26 日」 http://www. mhlw.go.jp/stf/

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□諸外国との比較

図 2-1-12 OECD 諸国の病床数について

第 2 章 研究背景

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□我が国における医師数 近年医師数は毎年増加しており、現在でも医学部の定員は過去最大へ と拡大されているため今後も医師数の増加が見込まれる。 【注 2-1-12】 総務省「第 1 回病床 機能情報の報告・提 供 の具体的なあり方に 関する検討会 平成 24 年 11 月 26 日」 http://www. mhlw.go.jp/stf/

図 2-1-13 医師数の年次推移

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■医師を取り巻く環境

第 2 章 研究背景

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諸外国との比較において、日本の医師数は OECD 諸国平均医師数を 大きく下回っていることがわかる。年々医師数が増加しているのはこれ を受けた政府の意向であり、世界的に見ても先進国の中で医師数が少な い日本は医師数の増加に向けた政策を行っている。

【注 2-1-13】 総務省「第 1 回病床機 能情報の報告・提供 の具体的なあり方に関 する検討会 平成 24 年 11 月 26 日」 h t t p : / / w w w . mhlw.go.jp/stf/

図 2-1-14 医療費抑制に関連した主な政策

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□諸外国との比較

第 2 章 研究背景

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うに諸外国に比べ OECD 平均を大きく下回る程少ない医師数、OECD 諸 国と比較しても群を抜いた人口あたりの病床数を看ており、その背景に は医師の過酷な労働環境が存在している。病床百床あたりの医師数も看 護職員数も、以下の図にて示されるように他の国と比べ大幅に少ないこ とが分かる。人口千人あたりの比較でも他の国と比べ低い傾向が見られ る。また、以下のように将来高齢化に伴い患者数が増えることが予想さ れているが、何らかの対策を投じることが必要である。

【注 2-1-14】 「 医 療・ 介 護 を 取 り 巻く現状 ( 参考資料 ) 平成 23 年 5 月 19 日 厚生労働省」 http://www.cas. go.jp/jp/seisaku/ syakaihosyou/ syutyukento/dai7/ siryou1-2.pdf

図 2-1-15 医療分野についての国際比較

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上で述べたように、日本は医師数は増加しているとはいえ、以下のよ

図 2-1-16 医療環境の今後の予測

第 2 章 研究背景

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【注 2-2-1】 「看護動線シミュ レーションによる病 棟評価の検討」 日本建築学会大会学 術講演梗概集 ( 北海 道 ) 2013 年 8 月 高瀬大樹

2.2.1 「看護動線シミュレーションによる病棟評価の検討」 病院とそこで働く看護師の関係を分析するツールとして看護動線シ ミュレーションを提案している。入院患者の配置によって看護動線量に 違いが出ることを、シミュレーションによって明らかにしている。計画 の意図を使われ方の面から分かりやすく伝えたり、想定する施設の使い 方を共有化したりするためのツールとして有効と考えられる。その他に、 異なる病棟プランの評価や、諸室の配置検討の際に、看護師の移動 履 歴という動的な要素を取り入れたシミュレーションに よって、より現 実に即した評価が可能になると考えられる。ただし、看護動線は看護効 率を評価する指標の一つであり、より多面的な指標から評価する必要が ある。

【注 2-2-2】 「ICU における看護 師の動き」 医療関連感染 2008 年 7 月 村野大雅

2.2.2 「ICU における看護師の動き」 ICU における現状の把握のために、ある ICU の調査からそこで働く看 護師の業務と動線を明らかにした。ベテラン看護師と新卒看護師の比較 により、作業の効率化について考察している。

【注 2-2-3】 「医療情報システム を導入した病棟部の 看護行為と動線量に ついて」 日本建築学会大会学 術講演便概集 2005 年 9 月 細貝麻美

2.2.3 「医療情報システムを導入した病棟部の看護行為と動線量につい て」 医療情報システムを導入している TH 病院における看護業務のタイム

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2.2 既往研究の系譜

スタディ調査から、病院の滞在時間は約 40%であること、看護業務の 中では記録やカンファレンスの時間が多く取られていること、そして記 録業務を病室等でも容易に行えるようにすること等が課題であることが

【注 2-2-4】 「 大病院手術室にお ける医療スタッフの 動線に関する研究」 日本建築学会九州支 部 研 究 報 告 第 48 号 2009 年 3 月 幸康史

明らかとなった。

2.2.4 「 大病院手術室における医療スタッフの動線に関する研究」 手術室内においての実際の手術に立ち会い、機器物品の使用実態と医 療スタッフの行動実態を把握するための調査を行った。スタッフの動線

第 2 章 研究背景

- 20 -


時間であった。これが意味するのは従来のように全体の規模や構成だけ を操作するのではなく、室内レイアウトや使用状態にまで踏み込んだア プローチを試みる必要があるということではないか、ということであっ た。

■以上のように、既往研究においては病院での看護師や患者の動線に関 する研究は多くなされているが、診療所の規模でのものはほとんどみら れない。また、本研究は空間のもつ機能に着目し、医療従事者目線での 調査・分析を行う。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

の長さに最も影響を与えていたのは室面積や機器物品密度ではなく手術

第 2 章 研究背景

- 21 -


高齢化が進む日本

医療費問題

病院数の変遷

医師が置かれる環境の変化

診療所における空間の機能に関する調査(第3章)

機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査(第4章)

行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成(第5章)

図 2-3-1 研究フロー

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2.3 研究の流れ

第 2 章 研究背景

- 22 -


第3章 診療所における機能空間に関する調査

3.1 調査目的 3.2 調査概要 3.3 調査結果 3.4 考察 3.4.1 診療所における機能区分 3.4.2 機能空間の再定義 3.5 まとめ


本調査では、次章にて医療従事者の動線を追う前段階として、診療所 における医療従事者の行動特性を明らかにし、診療所の機能空間を分類・ 定義付けし、区分することを目的とする。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

3.1 調査目的

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 24 -


診療所の、診察室を除く医療従事者の行動する全範囲(すなわち診療 所の待合室、診察室を除く全範囲)を次のような内容で撮影を行う。

■調査内容:診療所において、診察室と待ち合い室を除く全範囲にビ デオを設置し、医療従事者の行動範囲を観察する。観察調査から、診療 所における空間ごとの機能を明らかにする。

■調査日時:2014 年 8 月 18 日、19 日、27 日〜 30 日 午前診療時間 8:30 〜 12:00/ 午後診療時間 13:30 〜 18:30

■調査対象:N 内科循環器科クリニック

□用途・規模 診療所・大断面集成材 (SPC 工法 ) 構造 □敷地面積 778.20㎡ □最高の高さ 9.530m □最高の軒高 8.640m □診療所延べ面積 312.18㎡ □申請建築面積 235.12㎡ □容積率 200% 312.18/778.2x100=40.13 <200 □建蔽率 60% 235.12/778.2x100=30.21 <60

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3.2 調査概要

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 25 -


図 3-2-1 N 内科循環器科クリニック外観 北側外観

図 3-2-2 N 内科循環器科クリニック外観

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

□外観

西側外観

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

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【注 3-2-1】

N 内科循環器科クリ

ニックホームページ

より

図 3-2-3 N 内科循環器科クリニック内観

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□内観

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

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ビデオカメラ1「Sony 製 Action Cam AS30V」 ビデオカメラ2「Sony 製 SDR-SR8」 ビデオカメラ3「Sony 製 DVC-013」 ビデオカメラ4「Sony 製 DVC-014」

【注 3-2-3】 「Action Cam」Sony http://www.sony.jp/ actioncam/

図 3-2-6 ビデオカメラ1 「SONY 製 Action Cam AS30V」

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■調査機材:デジタル HD ビデオカメラ4台

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

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Gopro http://gopro-nippon. comMap

図 3-2-7 ビデオカメラ2 「SONY 製 Gopro HERO2」

図 3-2-8

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【注 3-2-4】

ビデオカメラ 3 「SONY 製 DVC-013 」

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

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「SONY 製 DVC-014 」

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

図 3-2-9 ビデオカメラ 4

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 30 -


診療所の空間の機能区分を明らかにするために、医療従事者の行動抽 出を次のように行う。

動画より、医療従事者(本調査対象では、医師・看護師・事務)の行 動を抽出する。例として「歩く」「患者と話す」「血圧を測る」などの、 行動(〜を行う)を意味する行動ワードがどの場所で抽出されたのかを 記録していく。その際、その場所で特に多く見られた行動を抽出するこ ととする。 ただし、対象とする場所は、間仕切りがあり機能が自明である「診察 室」、「待合室」、「レントゲン室」、「受付・事務所・裏動線」を除く。

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■医療従事者の行動抽出の手順

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 31 -


使用した動画の参考としてタイムラプス画像の例ととそれに付随して 抽出された行動のワードを以下のように示す。

処置する / カルテを置く

図 3-3-1 医療従事者の行動抽出の例 【タイムラプス】

歩く

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

3.3 調査結果

図 3-3-2 医療従事者の行動抽出

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

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3.4.1 診療所における機能区分

【本診療所における機能区分】 分析の結果より、本診療所の機能を0番〜7番に区分する。

0:待つ 1:事務作業を行う 2:診察する 3:交わる(相手と何らかの行為をする / 通過する) 4:通る(移動する) 5:準備する 6:処置する 7:レントゲンを撮る

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

3.4 考察

図 3-4-1 診療所における機能空間

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 33 -


Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

図 3-4-2 診療所の機能区分

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 34 -


本空間はビデオ調査の対象外であるが、機能は待合室の名の通り診察・ 処置・受付を「待つ」場所である。医療行為を「待つ」医療従事者の方 と交わらない、医療行為の及ばない場所をこの分類とした。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「待つ」

図 3-4-3 診療所における機能抽出【0】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 35 -


受付、カルテ置き場やコピー機、パソコンなど医療従事者のみが作業 する場所。裏動線としての要素も含まれる空間である。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「事務作業を行う」

図 3-4-4 診療所における機能抽出【1】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 36 -


本空間はビデオ調査の対象外であるが、機能は待診察室の名の通り医 師が診察を行う場所である。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「診察する」

図 3-4-5 診療所における機能抽出【2】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 37 -


本空間においては、患者を看護師が誘導する、看護師同士が会話する、 事務員から看護師にカルテを渡すなどの相手に何らかの働きかけをする 行為が多く見られた。また、目的の場所へ行くために通過する、考え事 をしながらうろうろする等の行為も見られた。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「交わる(相手と何らかの行為をする / 通過する)」

図 3-4-6 診療所における機能抽出【3】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 38 -


本空間は、主に次の目的地点への移動のために使用されていた。③「交 わる」とは異なり、この空間内で何か作業をするということはほとんど 見られなかった。基本的に通過にのみ使用され、廊下的な機能が見られ た。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「通る(移動する)」

図 3-4-7 診療所における機能抽出【4】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 39 -


本空間は主に看護師が使用する空間であった。処置のための器具の準 備・洗浄・消毒などを行ったり、パソコン入力や書類の書き込みなどの ナースステーション的な役割をもっている。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「作業する」

図 3-4-8 診療所における機能抽出【5】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 40 -


本空間は、診察室外での「処置行為」を行うための空間である。心電 図や身長の測定など特殊な機械やベッドが必要である場合や、血圧を測 るなど看護師が行うことができ診察室で行う必要のない場合などでこの 空間の使用がみられた。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「処置する」

図 3-4-9 診療所における機能抽出【6】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 41 -


本空間は「レントゲンを撮る」という行為に特化した空間であった。 その他の行為がこの空間内で行われることはなく、また逆に「レントゲ ンを撮る」という行為がこの空間の外で行われることはない。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「レントゲンを撮る」

図 3-4-10 診療所における機能抽出【7】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 42 -


観察調査にて区分した機能空間を、さらに一般化するために再定義する。

0:待つ 1:事務作業を行う 2:診察する 3:交わる(相手と何らかの行為をする / 通過する) 4:通る(移動する) 5:準備する 6:処置する 7:レントゲンを撮る

各機能空間を以下のように名称を再定義する。

0:待合空間 1:事務空間 2:診察空間 3:土間的空間 4:廊下的空間 5:作業空間 6:処置空間

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

3.4.2 機能空間の再定義

7:特殊検査空間

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 43 -


「待つ」 本機能空間は、「待つ」という行為に代表されるように待合室を主と した、「待合空間」の名の通り医療行為を「待つ」場所である。さらに、 医療行為の及ばない空間をこの分類とした。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「待合空間」

図 3-4-11 診療所における機能区分【0】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 44 -


「事務作業を行う」 本機能空間は「事務作業を行う」という行為に代表されるように事務 作業やカルテの管理、また受付など、患者への医療行為には直接的に関 わらない事務的な作業を主にする場所である。基本的には事務員・看護 師など医療従事者しか立ち入れない場所であることが多い。今回は裏動 線の要素も含まれる空間である。

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■「事務空間」

図 3-4-12 診療所の機能区分【1】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 45 -


「診察する」 本機能空間は診察室の名の通り、医師が診察を行うための場所である。 医師と患者は会話をし、患者は適切な処置や検査を受ける。診療所など の医療空間の中核をなす機能空間である。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「診察空間」

図 3-4-13 診療所の機能区分【2】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 46 -


「交わる(相手と何らかの行為をする / 通過する)」 本機能空間は、相手と対面する、またその相手に何か渡す等何らかの 行為をしたりする一方、ただ通過するといった機能も持っている。その 多様性と要素から今回は「土間」という言葉を用いることにする。

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■「土間的空間」

図 3-4-14 診療所の機能区分【3】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 47 -


「通る(移動する)」 本機能空間は、主に次の目的地点への移動のために使用される。③「交 わる」とは異なり、この空間内で何か作業をするということはほとんど なく、基本的に通過にのみ使用されるため「廊下」同様の機能とみなす ことができる。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「廊下的空間」

図 3-4-15 診療所の機能区分【4】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 48 -


「作業する」 本機能空間は主に看護師が使用する場所であり、ナースステーション と呼ばれることもあるこの機能空間は、処置や治療のための器具の準備・ 洗浄・消毒などを行ったり、パソコン入力や書類の書き込みなどを行う。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「作業空間」

図 3-4-16 診療所の機能区分【5】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 49 -


「処置する」 本空間は、診察室外での「処置行為」を行うための空間である。考え られるケースとしては、例えば心電図や身長の測定など特殊な機械や ベッドが必要であったり、血圧を測るなどの看護師が行うことができる 処置であるため診察室で行う必要のない場合などが考えられるが、いず れも病院によっては診察室内で行う場合もあり、病院・対象ごとに便宜 的に分けているに過ぎないことが多い。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「処置空間」

図 3-4-17 診療所の機能区分【6】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 50 -


「レントゲンを撮る」 本空間は、レントゲン、MRI などの求められる空間的制約が非常に 大きい検査などに特化した空間である。そのため、その他のことがこの 空間で行われることは基本的にはなく、逆にここで行われる行為はこの 空間でしかできない。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

■「特殊検査空間」

図 3-4-18 診療所の機能区分【7】

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 51 -


診療所における空間ごとの機能が明らかになり、診療所の機能空間が 分類・定義付けされた。また、さらに一般化を図るため第4章に向け機 能空間の再定義を行った。以降第4章・第5章にて機能空間について考 察を進める。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

3.5 まとめ

第 3 章 診療所における空間の機能に関する調査

- 52 -


第4章 機能空間における医療従事者の行動特性に 関する調査

4.1 調査目的 4.2 調査概要 4.2.1 診療所における医療従事者の行動特性調査 4.2.2 遷移表の作成手順 4.3 調査結果 4.3.1 遷移表「看護師」 4.3.2 遷移表「医師」 4.3.3 遷移表「事務員」 4.4 考察 4.5 まとめ


本調査では、5章にて医療従事者目線の診療所における機能空間の結 びつきに関する一般化したモデルを作成するための前段階として、診療 所における医療従事者の行動特性を明らかにすることを目的とする。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

4.1 調査目的

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 54 -


4.2.1 診療所における医療従事者の行動特性調査

診療所の、診察室を除く医療従事者の行動する全範囲(すなわち診療 所の待合室、診察室を除く全範囲)を次のような内容で撮影を行う。

■調査内容:診療所において、診察室と待ち合い室を除く全範囲にビ デオを設置し、医療従事者の動線を調査する。観察調査から、診療所に おける機能空間の配置を分析する。

■日時:2014 年 8 月 27 日〜 30 日、9 月 3 日〜 6 日 午前診療時間 8:30 〜 12:00/ 午後診療時間 13:30 〜 18:30

■調査場所:N 内科循環器科クリニック

■調査機材:第3章に使用したものと同じ機材を使用する。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

4.2 調査概要

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 55 -


3 章にて考察、3.4.2 にて再定義した空間の区分に則って調査を行う。 その機能空間の区分間の移動をカウントし整理することを目的とする。 □定義:機能空間間の移動・・・ある機能空間から別の機能空間へ、 機能空間間の境界線を通過することを移動とみなす。同一機能空間区分 内の動きは移動とみなさない。

□作成手順:空間間の移動の回数をカウントする。その際、医療従事 者を「看護師」「医師」「事務員」の3職種に区分する。医師の人数は 1~2 人 , 看護師は 2 人 , 事務員は 2~3 人であるが、人数に関わらずこの 3区分に則って移動のカウントを行う。

□遷移表:上記のカウントを整理するために遷移表を作成する。図 4-2-1 に遷移表の例を示す。ある機能空間から別の機能空間への移動を、 移動前 (from) 移動後 (to) の碁盤状の表に当てはめていく。

□その他付帯させる情報:日時 , 単位時間あたりの患者の人数 , 各医 療従事者数 ただし、患者の人数は診察室に入った人数として記録する。

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4.2.2 医療従事者の遷移表の作成手順

図 4-2-1 遷移表

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 56 -


また、この遷移表の作成にあたって対象時間の選定を行った。候補 となる時間帯は午前診療時間 8:30 〜 12:00/ 午後診療時間 13:30 〜 18:30 の内から1時間であったが、観察調査より本調査期間では最も年 齢等様々な患者が多いということでこの時間帯を選定した。

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□分析対象時間の選定

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 57 -


4.3.1 遷移表「看護師」

調査で作成した看護師の遷移表を以下に示す。 a)

□対象 看護師

□日時 2014 年 9 月 3 日 ( 水曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 10 人

【総医療従事者数】「看護師」 3 人

「医師」 1 人 「事務員」 2 人

図 4-2-2 遷移表【看護師】 2014 年 9 月 3 日 ( 水曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

4.3 調査結果

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 58 -


□日時 2014 年 9 月 4 日 ( 木曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 10 人 【総医療従事者数】「看護師」 3 人 「医師」 1 人 「事務員」 2 人

図 4-2-3 遷移表【看護師】 2014 年 9 月 4 日 ( 木曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

b) □対象 看護師

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 59 -


□対象 看護師

□日時 2014 年 9 月5日 ( 金曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 10 人 【総医療従事者数】「看護師」 3 人 「医師」 1 人 「事務員」 2 人

図 4-2-4 遷移表【看護師】 2014 年 9 月 5 日 ( 金曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

c)

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 60 -


□対象 看護師

□日時 2014 年 9 月 6 日 ( 土曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 13 人 【総医療従事者数】「看護師」 3 人 「医師」 2 人 「事務員」 2 人

図 4-2-5 遷移表【看護師】 2014 年 9 月 6 日 ( 土曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

d)

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 61 -


a)

□対象 医師

□日時 2014 年 9 月 3 日 ( 水曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 10 人

【総医療従事者数】「看護師」 3 人

「医師」 1 人 「事務員」 2 人

図 4-2-6 遷移表【医師】 2014 年 9 月 3 日 ( 水曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

4.3.2 遷移表「医師」

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 62 -


□対象 医師

□日時 2014 年 9 月 4 日 ( 木曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 10 人 【総医療従事者数】「看護師」 3 人 「医師」 1 人 「事務員」 2 人

図 4-2-7 遷移表【医師】 2014 年 9 月 4 日 ( 木曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

b)

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 63 -


□対象 医師

□日時 2014 年 9 月5日 ( 金曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 10 人 【総医療従事者数】「看護師」 3 人 「医師」 1 人 「事務員」 2 人

図 4-2-8 遷移表【医師】 2014 年 9 月 5 日 ( 金曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

c)

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 64 -


□対象 医師

□日時 2014 年 9 月 6 日 ( 土曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 13 人 【総医療従事者数】「看護師」 3 人 「医師」 2 人 「事務員」 2 人

図 4-2-9 遷移表【医師】 2014 年 9 月 6 日 ( 土曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

d

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 65 -


a)

□対象 事務員

□日時 2014 年 9 月 3 日 ( 水曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 10 人

【総医療従事者数】「看護師」 3 人

「医師」 1 人 「事務員」 2 人

図 4-2-10 遷移表【事務員】 2014 年 9 月 3 日 ( 水曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

4.3.3 遷移表「事務員」

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 66 -


□対象 事務員

□日時 2014 年 9 月 4 日 ( 木曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 10 人 【総医療従事者数】「看護師」 3 人 「医師」 1 人 「事務員」 2 人

図 4-2-11 遷移表【事務員】 2014 年 9 月 4 日 ( 木曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

b)

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 67 -


□対象 事務員

□日時 2014 年 9 月5日 ( 金曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 10 人 【総医療従事者数】「看護師」 3 人 「医師」 1 人 「事務員」 2 人

図 4-2-12 遷移表【事務員】 2014 年 9 月 5 日 ( 金曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

c)

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 68 -


□対象 事務員

□日時 2014 年 9 月 6 日 ( 土曜日 ) 11:00~12:00 □人数 【総患者数】 13 人 【総医療従事者数】「看護師」 3 人 「医師」 2 人 「事務員」 2 人

図 4-2-13 遷移表【事務員】 2014 年 9 月 6 日 ( 土曜日 )

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

d)

11:00~12:00

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 69 -


単位時間あたりの各機能空間の同士の遷移の回数が数値化できた。ま た、単位時間あたりの診察室に入る患者数がほとんど変わらないといっ た傾向がみられるが、これは待合空間にて待っている人数にはほとんど 影響されず、診察室にて医師が診察する速度に依存していることがわか る。以上より、各空間の医療従事者の行動における機能空間の結びつき の強さが明らかになった。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

4.4 考察

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 70 -


単位時間あたりの各機能空間の同士の遷移の回数を調査することで、 各空間の医療従事者の行動における機能空間の結びつきの強さが明らか になった。この結果を用いて、第 5 章では診療所における行動遷移モ デルの作成を試みる。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

4.5 まとめ

第 4 章 機能空間における医療従事者の行動特性に関する調査

- 71 -


第5章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成 「N 診療所におけるケーススタディー」

5.1 モデル化の目的 5.2 モデル化の概要 5.2.1 遷移表 5.2.2 遷移モデル 5.2.3 行動特性に基づく機能空間の配置モデル 5.3 結果 5.3.1 遷移表 5.3.2 遷移モデル 5.3.3 行動特性に基づく機能空間の配置モデル 5.4 考察 5.5 まとめ


本章の目的は、医療従事者目線の診療所における機能空間の結びつき に関するモデルを作成し、医療従事者の目線で機能空間の結びつきやそ れぞれの行動特性を考察できるようにすることである。その一例として 「N 内科循環器科クリニック」のケーススタディを行う。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

5.1 モデル作成の目的

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 73 -


今回は「N 内科循環器科クリニック」を対象としてケーススタディを 行う。本章は以下の流れで構成される。

①遷移表の作成 ②遷移モデルの構築 ③行動特性に基づく機能空間の配置モデルの構築

3 章にて再定義した機能空間の区分に則って調査を行う。4 章の調査と 同様に以下のように移動を定義した上で、第 4 章のデータを使用しモ デル化を試みる。

■定義:機能空間間の移動・・・ある機能空間から別の機能空間へ、 機能空間間の境界線を通過することを移動とみなす。同一機能空間内の 動きは移動とみなさない。

■対象者 診療所に勤務する看護師、医師、事務を対象とする。

■モデル化の対象とする調査日時 2014 年 9 月 3 日 ( 水曜日 )~ 9月6日(土曜日) 11:00~12:00

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

5.2 モデル化の概要

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 74 -


対象者ごとにその機能空間の区分間の移動の回数をを整理することを 目的とする。 ■作成手順:遷移表の作成手順は第4章に記載の通りである。本章で は、第4章にてまとめたデータを対象者ごとに足し合わせる。

5.2.2 遷移モデル ①の遷移表を図面に還元し、目視で分かりやすくすることを目的とす る。 ■作成手順:対象の診療所における機能空間の区分の番号をそれぞれ行 き来可能なものどうしを矢印で結び、その機能空間間の遷移の回数を矢 印の太さにて表現する。

5.2.3 行動特性に基づく機能空間の配置モデル ②にて作成したモデルを更に一般化する。空間のもつ機能のみを抽出 し、医療従事者ごとの目線で機能空間の結びつきやそれぞれの行動特性 を考察できるようにすることを目的とする。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

5.2.1 遷移表

■作成手順:②にて作成したモデルより、区分番号を空間のもつ機能に 置き換える。一般化する目的から、調査対象の診療所の配置の要素はな くすものとする。また、足し合わせた遷移の回数を以下のように 0 〜 10の数値で示す。この目的は、遷移の回数を分かりやすく数値化する ことである。

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 75 -


b=1 ← 0<a<10 b=2 ← 10<a<20 ・ ・ ・ b=10 ← 90<a<100

ただし a はそのある機能空間から別の機能空間への遷移の回数の評価 とし、数値が大きい程遷移の回数が多いことを意味する。 b は総遷移回数の中である機能空間から別の機能空間への遷移の回数の 占める割合とし、 b=100( その空間間の遷移の回数 / 全体の中で最も多かった空間間の遷 移回数 c) とする。ただし今回は全医療従事者の動線の③➡⑤への遷移が最も多く、 c=124 であるといえる。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

遷移回数の評価 a:b=0 ← a=0

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 76 -


5.3.1 遷移表

■人数 【総患者数】 43 人

【総医療従事者数(のべ)】「看護師」 12 人

「医師」 5 人 「事務員」 6 人

a) □対象 全医療従事者 0 0 1

2

0 0

2 F R 3 O M 4

1

53 118

109 47

124

TO 3

4

5

6

118

43

24

35

7

7

109 83

66

7

38 30

5

122

20

6

34

34

7

4 図 5-3-1 遷移表【全医療従事者】

4

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

5.3 結果

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 77 -


0 0 1

2

0 0

2 F R 3 O M 4

1

52 95

85 46

99

TO 3

4

5

6

108

38

24

35

7

52

83 77

59

7

38 30

5

112

20

6

29

34

7

4 図 5-3-2 遷移表【看護師】

4

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

b) □対象 看護師

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 78 -


6

5

1

0

6

4

0

図 5-3-3 遷移表【医師】

0

0 0 0 0

0

4 7 2

7 0 0

F R 3 O M 4

0 7

1

1 0

6 0 1

0 0

0

6 4 0

1

2

TO 3

5

7

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

c) □対象 医師

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 79 -


0 0 1

2

0 0

2 F R 3 O M 4

1

17 17

1

25

0

TO 3

4

1

0

6

9

1

0

0

7

25 0

0

0 0

5

9

0

6

1

0

7

5

0 図 5-3-4 遷移表【事務員】

0

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

d) □対象 事務員

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 80 -


■人数 【総患者数】 43 人 【総医療従事者数(のべ)】「看護師」 12 人 「医師」 5 人 「事務員」 6 人

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

5.3.2 遷移モデル

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 81 -


5

7 7

5

34 20 24

53 0 0

38 30

118 122

47

35

43

34

109 124 118

83 66

109

図 5-3-5 遷移表【全医療従事者】

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

a) □対象 全医療従事者

・①⇔②、①⇔③、③⇔⑤の遷移が特に多くみられた。 ・④⇔⑦、④⇔◎の遷移は少なかった。 ・①⇔◎の遷移はみられなかった。 ・他は②➡③、③➡②、◎➡③の順に多く、他もまんべんなく遷移がみ られた。

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 82 -


7 4

6 7

0

4

35 34 38 30

20

5

52 46

0 0

4

24

108

99 95

29

3

83

1

38

112

6

77 59

85

2

図 5-3-6 遷移表【看護師】

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

b) □対象 看護師

・③⇔⑤、①⇔②、①⇔③、③⇔②の移動が特に多くみられた。 ・④⇔⑦、④⇔◎の遷移は少なかった。 ・①⇔◎の遷移はみられなかった。 ・他は⑤➡③、③➡⑤、③➡①の順に多く、他もまんべんなく遷移がみ られた。

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 83 -


7

1

1

0

0

4

0 0 0

5

0 0

0 0

1 1

0

4 1 1

1 0

1

0

6 7

6 4

3 6 7

2

図 5-3-7 遷移表 【医師】

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

c) □対象 医師

・①⇔②、②⇔③、③⇔⑥の遷移がほとんどであった。 ・基本的に医師は②にいることが多かった。 ・◎⇔①、◎⇔③、◎⇔④、④⇔⑤、④⇔⑥、③➡①の遷移はみられなかっ た。 ・レントゲン技師がいないため、レントゲンを撮る際には多くの空間の 遷移を経て医師が⑦までいかなければならなかった。

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 84 -


7 0

0 0 0

0

4 0

0 0

5

0 0

1

0 0

0 0

9

17 17

6 1 1

9

25 25

0

3 0 0

2

図 5-3-8 遷移表【事務員】

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

d) □対象 事務員

・③⇔①、①⇔②、③⇔⑤のの順で遷移が多くみられた。 ・基本的には事務員は①にいることが多かった。 ・◎⇔③、③⇔⑥も遷移がみられ、その他の遷移はみられなかった。

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 85 -


■人数 【総患者数】 43 人

【総医療従事者数(のべ)】「看護師」 12 人

「医師」 5 人 「事務員」 6 人

a) □対象 全医療従事者

1 1 3 1

3 1

2

2

3

4 3

4 0

0

4

10 10

5

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

5.3.3 行動特性に基づく機能空間の配置モデル

10 8 9

6

7

10 図 5-3-9 【全医療従事者】

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 86 -


1 1

3 1

9 4 0 0

3 4

7

5 7 8

2 2 1

7

8

3 4 10 5

3

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

b) □対象 看護師

図 5-3-10 遷移表【看護師】

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 87 -


1 1

1 0 0 0

0 0 0 0 0

1 0

1

1 1 0

1

1

1

1

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

c) □対象 医師

0

1

1

図 5-3-11 遷移表【医師】

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 88 -


0 0

0

0 0

0 0 0 0

2 2

0 0

1 1

0 0 3

1 1 1 1

0

3

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

d) □対象 事務員

図 5-3-12 遷移表【事務員】

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

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□【看護師】 最も多くの遷移をしていたのは看護師であり、 本診療所においては まず③「交わる」を介した遷移が非常に多く、その内の多くの割合を看 護師の遷移回数が占めていたことが明らかとなった。基本的には看護師 は⑤「作業空間」におり、事務は①「事務空間」、医師は②「診察空間」 であり、互いに用事がある際は③「交わる」空間で互いに顔を合わせす もしくは相手の空間に行っていた。その移動に際する空間の遷移が最も 多かったのが看護師であった。

このような空間配置は、医療従事者の人数が少なく大病院のようにシ ステムで整備されているのとは異なり、個人が互いに配慮して連携して いく工夫がなされ、空間が上手く活かされていることがわかる。 既往研究に看護師のみに着目した研究が多かったのも納得できるが、 上記のように個人が互いに配慮して連携していく工夫を考慮に入れるな らば診療所においては他の医療従事者が上手く互いの負担を減らせるよ うな機能配置の工夫を考えることができるのではないか。

□【医師】 医師は基本的に②「診察する」空間におり遷移はそれほど多くはみら れなかったが、本診療所においては、レントゲン技師がいないことから

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

5.4 考察

医師がレントゲンを撮りにいかなければならなかった。その際に他の多 くの機能空間を通過しなければならないことが分かる。これは他の機能 空間をただ「通る」ことだけに使用することとなり、医師の負担が大き いと共に、空間の混雑を生んでしまう可能性がある。モデルにより、例 えばレントゲン室を診察室と隣接する形で配置することがその問題の解 決となるのではないかという提案と考察が可能である。

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 90 -


事務員は基本的には①「事務空間」にいたが、医師や看護師に渡す物 がある際などは、事務員が相手のいる空間に移動して顔を合わせている ことがわかった。また、事務員は①「事務空間」から出る際に機能空間 の機能そのもののためにその空間に行くということはほとんどなく、上 記のようにそこにいる人のために移動していることが多いことが明らか となった。

□【全体】 本診療所では上記【看護師】でも述べたように③「土間的空間」が非 常に有効に働いているように思われる。③「土間的空間」は、④「廊下 的空間」の要素も兼ねることができる。そのため、本診療所では③「土 間的空間」が意図的に作られているが④「廊下的空間」のみで機能空間 どうしが繋がれている場合もある。しかし、その場合は別の機能空間へ 向かうために一度「通る」ための空間を通らなければならないため移動 距離が伸びることが予測される。

■モデル作成により看護師、医師、事務の目線から診療所の機能空間の 配置に関して問題点を明らかにし、改善のための提案を行うことができ る。現状の機能空間の配置の評価は本論文では行わないが、考え得る問

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

□【事務員】

題点から例として以下のような機能空間の提案をする。

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 91 -


問題点と改善案:【医師】「特殊検査空間が医師と患者しか使用しないの に診療空間から遠いため、特殊検査空間を診察空間に近づける」

4 7 7

0 0 0

35 34 20 24 38 30

5

53 47

118 122

109

1

124 118 109

43

83

2

6

34

3 66 5 5

7

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

□提案の例

図 5-3-13 機能配置の提案

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 92 -


医療従事者目線の診療所における機能空間の結びつきに関するモデル を「N 内科循環循環器科クリニック」を例として作成し、医療従事者の 目線で機能空間の結びつきやそれぞれの行動特性、配置に関する考察が できるようになった。

診療所の機能配置を考える上では、今後高齢化から特に地方の診療所 は医療従事者の数が減少し、患者の数が増加していくことが見込まれる 中、少ない人数でも上手く診療所をまわしていくことは非常に大切な点 であると考えられる。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

5.5 まとめ

第 5 章 行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成

- 93 -


第6章 まとめ


本研究は、 診療所内の空間を機能別に区分し、医療従事者の行動調 査をもとに行動遷移モデルを作成すること目的とした研究であった。

本研究における「空間の機能」とは、ある空間が持つはたらきのこと で、相互に連携し合って全体を構成している空間の各要素や部分が、そ れぞれ担っている固有の役割をいう。また「機能空間」とは、空間の機 能(すなわち空間の担っている役割)別で区分したものをいう。 以上の定義をもとに、3 章において「診療所における空間の機能に関 する調査」、4 章において「機能空間における医療従事者の行動特性に 関する調査」、5 章において「行動特性に基づく機能空間の配置モデル の作成」を行った。

3 章における、「診療所における空間の機能に関する調査」とは、4 章にて医療従事者の動線を追う前段階として、診療所における医療従事 者の行動特性を明らかにし、診療所の機能空間を分類・定義付けし、区 分することを目的とした調査であった。その結果、診療所における空間 ごとの機能が明らかになり、診療所の機能空間が分類・定義付けされた。

4 章における、「機能空間における医療従事者の行動特性に関する調 査」とは、5 章にて医療従事者目線の診療所における機能空間の結びつ

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

6.1 まとめ

きに関するモデルを作成するための前段階として、診療所における医療 従事者の行動特性を明らかにすることを目的とした調査であった。その 結果、単位時間あたりの各機能空間の同士の移動の回数が数値化できた。 これにより、各空間の医療従事者の行動における機能空間の結びつきの 強さが明らかになった。

5 章における、「行動特性に基づく機能空間の配置モデルの作成ー N 診療所におけるケーススタディー」は、医療従事者の診療所における機

第 6 章 まとめ

- 95 -


間の結びつきやそれぞれの行動特性、配置を考察できるようにすること が目的であった。その結果、診療所において医療従事者の目線で機能空 間の結びつきやそれぞれの行動特性が明らかになった。

以上によって、診療所において空間を機能別に区分し、医療従事者の 行動調査をもとに機能空間間の遷移モデルをケーススタディとして作 成・分析を行うことができた。このモデルが、診療所の新築・リノベー ションを行う際などに、その診療所の規模に合わせた機能空間の配置の 指標となることを展望とする。

本モデル化の最終目標は、既存の空間の使い方を見るということのみな らず、そこからまた新しく診療所や病院を設計するときに役立つ指針を 導き出し、既存の建物の行動観察から現状の医療施設を見直し、新たな 設計指針を立てるための手段となることである。

診療所の機能配置を考える上では、今後高齢化から特に地方の診療所 は医療従事者の数が減少し、患者の数が増加していくことが見込まれる 中、少ない人数でも上手く診療所をまわしていくことは非常に大切な点 であると考えられる。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

能空間の結びつきに関するモデルを作成し、医療従事者の目線で機能空

第 6 章 まとめ

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第7章 おわりに


参考文献 1)「看護動線シミュレーションによる病棟評価の検討」 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 北海道 ) 2013 年 8 月 高瀬大樹

2)「ICU における看護師の動き」 医療関連感染 2008 年 7 月 村野大雅

3) 「医療情報システムを導入した病棟部の看護行為と動線量について」 日本建築学会大会学術講演便概集 2005 年 9 月 細貝麻美

4) 「 大病院手術室における医療スタッフの動線に関する研究」 日本建築学会九州支部研究報告第 48 号 2009 年 3 月 幸康史

参考電子文献

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

7.1 参考文献

1) 総務省「人口構造を表す指標」10/22 閲覧 http://www.toukei.metro.tokyo.jp/jsuikei/js-index5.htm

2) 総務省「第 1 回病床機能情報の報告・提供 の具体的なあり方に関する検討会 平成 24 年 11 月 26 日」10/22 閲覧 http://www.mhlw.go.jp/stf/shing i/2r9852000002nakzatt/2r9852000002naq4.pdfshingi/2r9852000002nakzatt/2r9852000002naq4.pdf

第 7 章 おわりに

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http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html

4) 社会実情データ図録 10/22 閲覧 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1157.html

5)「医療・介護を取り巻く現状 ( 参考資料 ) 平成 23 年 5 月 19 日 厚生労働省」10/22 閲覧 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/syutyukento/dai7/ siryou1-2.pdf

6)「統計に見る医療機関の市場動向と今後の行方」10/22 閲覧 http://www.bk.mufg.jp/houjin/riseupclu b/2014/04/post-20 .html

7)「Gopro」Sony10/18 閲覧 http://gopro-nippon.

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

3) 内閣府「高齢社会白書」10/22 閲覧

「Action Cam」Sony110/18 閲覧 http://www.sony.jp/actioncam/

第 7 章 おわりに

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この論文を書き上げるに当たって、こちらでお礼を言うのではとても 足りないくらい多くの方々に助けられました。渡辺仁史研究室に入り、 物事の捉え方や考え方、価値観など多くを 学ぶことが出来たことを心 から嬉しく思います。

まず、この論文を執筆する機会を与えてくださり、大変親切にご指導 いただきました渡辺仁史先生。私の無茶なスケジュールに多大なるご配 慮を頂き、また親身になって多くの相談に乗って頂き本当にありがとう ございました。先生の毎回のご指導は本当にいつも納得させられ、新し い知識を教えて頂きました。本当にありがとうございます。

小林恵吾先生。いつも非常に的確で鋭いアドバイスを頂きましてあり がとうございます。発表の際、いつも丁寧にコメント頂き感謝しており ます。

中村良三先生。会議においてアドバイスをたくさん頂きました。休み 時間にたくさん声をかけて頂き、ありがとうございます。

林田和人先生。たぬき煎餅を差し入れて頂いたり、会議において鋭く 新しい視点からのアドバイスを頂きました。ありがとうございます。

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

7.2 謝辞

そして、本調査に多大なるご理解とご協力を頂いた中村内科循環器科 クリニックの皆様に御礼を申し上げます。快くお願いを聞いてくださり、 多くの知恵と協力を頂きました院長の中村泰先生をはじめ、何度も親身 に相談に乗ってくださった奥様の知恵さん、お仕事中にも関わらず暖か いお言葉や助言をくださった病院スタッフの皆様、ご理解・ご協力頂き ました患者の皆様に、深く感謝を述べたと思います。

第 7 章 おわりに

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文の書き方や考え方など多くのことを学ばせて頂きました。ありがとう ございます。

伊永さん。グループ会議でのテーマ決めから最後まで大変お世話にな りました。困った時はいつもすぐに対応頂き、鋭いアドバイスをたくさ ん頂き大変参考になりました。ありがとうございます。

その他 4 月からお世話になりました伊永グループの先輩方。佐藤さん、 柳瀬さん、小野山さん。定まらない思考を導いて頂きありがとうござい ます。

そして、担当でご指導頂ました小峰さん。ここで感謝を述べるのでは足 りないくらい、大変親切に、丁寧にご指導頂きました。本当にありがと うございます。小峰さんのおかげで無茶なスケジュールでこの論文を完 成することができました。本当にお世話になりました。ありがとうござ います。

りょうじさん、のぞみさん、愛彩さん、名美映さん、麻美さん、陳さ ん、トムさん、いっしーさん、植村さん。先輩方には本当にたくさんア

Relationship between behavioral characteristics of medical workers and clinic floor planning based on functions.

豊富な知識からたくさんの手助けを頂きました馬淵さん。基本的な論

ドバイスや励ましを頂きました。感謝しております。

一緒に論文を書き上げたあっくん、わだめ、ゆるぎ、池ちゃん、まい まい、みほ、さっちー、ゆいこ、とばり。皆がいたから楽しく論文を書 き上げることができました。ありがとうございました。

また、心身ともに支えてくれた国広くん、離れていても応援してくれ支 えてくれた両親に感謝を述べ、謝辞とさせて頂きます。

第 7 章 おわりに

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