五感情報に基づく「まち」の個性の抽出ー地上にあって地下にないものー

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U1400 早稲田大学創造理工学部建築学科卒業論文 指導教授 渡辺仁史

五感情報に基づく「まち」の個性の抽出 ー地上にあって地下にないものー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

櫻井 佑衣子

Department of Architecture, School of Science and Engineering, Waseda University


U1402

五 感 情 報 に 基 づ く 「 ま ち 」 の 個 性 の 抽 出 ― 地 上 に あ っ て 地 下 に な い も の ―

櫻 井 佑 衣 子


五感情報に基づく「まち」の個性の抽出 ー地上にあって地下にないものー     Extraction of city characteristics based on information collected from five senses                          -On the ground but underground-

ー3ー


はじめに

0.

東京の地下鉄はたくさんの魅力を秘めている。 一駅一駅違う文化が存在して、まちの個性として 広がっている。 「この駅の上にはどんな世界が 広がっているんだろう。」 まちの個性と地下鉄がもっと繋がれば、地下鉄は もっともっとわくわくする空間になる。 そんな未来への願いからこの研究は始まった。

ー4ー


目次

ー5ー


第一部 . 本文編                            はじめに 0                            研究背景 1 1−1. まちの個性の在処   1−1−1. 駅を中心とした都市構造   1−1−2. 東京における「まちの個性」の特徴 1−2. まちの個性の抽出   1−2−1. 既往研究における「まちの個性の抽出」   1−2−2. 既往研究における「まちの個性の抽出」の比較 1−3. 地上駅と地下駅   1−3−1. 情報の量からみる違い   1−3−2. 地下から地上へ   1−3−3. 地上から地下へ

研究概要 2 2 −1. 研究目的 2 −2. 用語の定義 2 −3. 本研究の位置づけ 2 −4. 研究の流れ

五感キーワード調査 3 3−1. 調査概要   3−1−1. 調査目的   3−1−2. 調査フロー 3−2. アンケート   3−2−1. 概要   3−2−2. 調査方法   3−2−3. 結果 3−3. 分析   3−3−1. 分析方法   3−3−2. 分析結果 3−4. まとめ

ー6ー


検証実験 4 4−1. 検証実験の概要 4−2. アンケート調査   4−2−1. 概要   4−2−2. 結果・分析   4−2−3. まとめ 4−3. フィールドワーク検証   4−3−1. 概要   4−3−2. 結果   4−3−3. 方法   4−3−4. 分析   4−3−5. まとめ

まとめ 5 5−1. 結論 5−2. 展望と今後の課題

おわりに 6 6−1. 謝辞 6−2. 参考文献

第二部 . 資料編

ー7ー


第一部 本文編

ー8ー


研究背景

1.

1-1. まちの個性の在処  1-1-1. 駅を中心とした都市構造  1-1-2. 東京における「まちの個性」の特徴 1-2. まちの個性の抽出  1-2-1. 既往研究における「まちの個性の抽出」  1-2-2. 既往研究における「まちの個性の抽出」の比較 1-3. 地上駅と地下駅  1-3-1. 情報の量からみる違い  1-3-2. 地下から地上へ  1-3-3. 地上から地下へ

ー9ー


1. 研究背景

1−1. まちの個性の在処 1-1-1. 駅を中心とした都市構造

1),2),3)...、 注記を

注 1), 注 2), 注 3)...、

出典写真、表、グラフを fig.1),fig.2),fig.3)...、 と表記する。

日本では、学校や会社に通う人、買い物に行く人、誰かに会いに出かける人など、一日 多くの人々が電車を利用する。 故に通勤ラッシュや電車の少しの遅延からでも、すぐに駅構内が異常に混み合う現象が起

1.1)

きる。

社団法人

1999年における国別の国内鉄道輸送人数では、日本は世界 1 位で 2 218億人/年、

日本鉄道建設業協会

2 位はインドで44億人/年、続いてドイツ17億人/年、ロシア13億人/年 1.1) であ

com/archives/doboku/

り日本は第2位のインドの4倍以上の差をつけた乗車人数であることが分かる。これは、

kaihou/233/24_01.htm

一人当たり年間196回は電車に乗っていることになり、いかに日本は電車と親しみがあ

http://www.nikkenren. archive/tekkenkyo/ 2014/10/21

るかが分かる。

fig.1.1)

社団法人 日本鉄道建設業協会

http://www.nikkenren. com/archives/doboku/

archive/tekkenkyo/ kaihou/233/24_01.htm 2014/10/21

fig.1.1)1999 年における国別の国内鉄道輸送表

(乗車人数)

fig.1.2)

Meiji-Ad

http://meiji-ad.jp/ article/0040.php 2014/10/21

fig.1.3)

産経デジタル

http://www.iza.ne.jp

/kiji/events/photos/140103/

e vt1 4 0 1 0 3 2 1 2 7 0 0 3 2 -p 3 . html

2014/10/21 fig.1.2) 満員電車

fig.1.3) 混み合う駅構内

ー 10 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

1-1. まちの個性の在処

以下、参考文献を


1−1. まちの個性の在処

1. 研究背景

1.2)

志水英樹

『街のイメージ構造』

都市計画の研究者である志水英樹は、著書『街のイメージ構造』1.2) の中で、鉄道と都市 の関係について以下のように述べている。

技報堂出版 P8

日本における首都圏や近畿圏における高度に発達した通勤輸送機関の市民の 日常生活に対する高い密着度は、世界の他の都市には全く見られない現象であ る。このように高度に発達したネットワークの結束点に発生する駅前地区や駅前 広場の空間は、世界の都市の中でも独特の構造を持っている。 日本の都市空 間の中で、われわれの日常生活に根強く結びつきながら " 中心のイメージ " が 保持されている唯一の空間であるかもしれない。

つまり、志水は「駅」が日常生活の中心となるイメージ像であり、これは世界的にみても 日本において顕著にみられる現象であると述べている。

ー 11 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

1-1. まちの個性の在処

1-1-1. 駅を中心とした都市構造


1−1. まちの個性の在処

1. 研究背景

また、志水はケヴィン・リンチの著書『都市のイメージ』1.3) の言葉を引用しながら、 日本における駅とは、まちの象徴的存在であると説明している。 注 1.1) ノード:

ネットワーク図におけ

る線と線を結ぶ接合点・ 集中点のこと。

1.3)

ケヴィン・リンチ 「都市のイメージ」 岩波書店 P8

「ノード注 1.1) は点である。都市内部にある主要な地点である。観察者がその 中にはいることができる点であり、彼がそこへ向かったり、そこから出発したり する強い焦点である。ノードとなるのは、まず第一に接合点である。すなわち、 交通が調子を変える地点、あるいは道路の交差点もしくは集合点、あるいはひ とつの構造が他の構造にうつり変わる地点などである。次に、ノードは単なる 集中点であることもある。つまり街かどの寄合い所とか囲われた広場のように、 なんらかの用途または物理的な性格がそこに凝縮されているために、重要性を もつものである。こうした集中点のノードは、ディストリクトの焦点の縮図となる ことがあり、その影響力はディストリクト全体に広がり、そのディストリクトの象 徴の役割も果たしているのである。」 以上のような、接合点と集中点の両者の性質をあわせ持ったノードの概念を日 本の都市に求めるとすれば、首都圏や近畿圏における鉄道ネットワークに点在 する駅前地区をおいて無いであろう。 つまり、志水は日本においてのノードとは、「駅」に置き換えられ、まちに広がる影響力 を持っていると説明している。 以上二つの引用文より、「駅」とはまちの中心イメージであり、まちの象徴的存在である と言える。 よって、日本において「駅」という場は都市の構造を理解する上でかかせない存在である といえる。

ー 12 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

1-1. まちの個性の在処

1-1-1. 駅を中心とした都市構造


1. 研究背景

1−1. まちの個性の在処

1-1. まちの個性の在処

1-1-2. 東京における「まちの個性」の特徴

1.4)

東京は、人口約 1,300 万人以上をを有する日本有数の都市である。

http://www.kantomania.

ビジネスや政治の中心であり、若者文化の発信地であると同時に、日本のものづくりの文

2014/10/18

化を支える町工場地域や江戸の文化を今に残す風情が残っていたりと、多種多様なまちの

関東マニア

com/prefectural/tokyo.html

個性が点在している都市である 1.4)。 1.5)

前項で述べたように、都市の中心イメージである「駅」は、まちの象徴的存在である。

http://info.jmc.or.jp/

よって、930 駅を有する 1.5) 東京には多くのまちの象徴的存在である中心イメージが点在

2014/10/20

していることになる。さらに東京は、人口は国内第1位であるにも関わらず、面積は国内

1.6)

が点在していると言える。

首都圏への人口集中

この「まちの象徴的存在」とは、そのまちにしかない潜在的なものと捉えることが出来る

2014/10/20

ので、「まちの個性」とも言い換えられる。

地図 info 東京の駅の数 ekiensen.html

都道府県人口ランキングと http://uub.jp/rnk/p_j.html

第45位 1.6) という小ささから、人口密度が高い、つまり狭いエリアにまちの象徴的存在

fig.1.4)

都道府県人口ランキングと 首都圏への人口集中

http://uub.jp/rnk/p_j.html 2014/10/20

fig.1.4)2013 年国内人口密度ランキング

出所 ) 都道府県人口ランキングと首都圏への人口集中 http://uub.jp/rnk/p_j.html

ー 13 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1− 2. まちの個性の抽出

1. 研究背景

既往の研究では、「まちの象徴的存在」つまり「まちの個性」をどのように解釈し、取 り出してきたのだろうか。 「まちの個性の抽出」を行った3つの研究事例を挙げる。 (a) 駅圏ボロノイ図による抽出   1.7)

早稲田大学古谷研究室『東京 23 区の人口動態からみる専門店集積地の研究一 ボロノ

竹花洋子 他

『東京 23 区の人口動態からみ

る専門店集積地の研究一 ボロ ノイ駅圏マ ッ プに よる人口 の 可視化ー』

日本建築学会学術講演 2011 年

概集

イ駅圏マップによる人口の可視化ー』1.7) においてまちの個性の抽出について以下の    ように述べている。

この研究目的は、「膨大な人口の移動と集積するものとを比較し、都市の 構造を浮かび上がらせようとするもの」である。 その手法として、駅圏ボロノイ図を用いるとことに特徴がある。 「駅の中心を駅点とし、隣駅との等距離を示したもので、この研究において は東京23区に存在する JR、私鉄、地下鉄全ての駅を対象に描いた。」 それらに下記の右図のような「4種の人口種別で色分けし、人口動態を分析 した。」 結果として、位置情報からくる人口動態の特徴を捉える事が出来た。  この『東京 23 区の人口動態からみる専門店集積地の研究一 ボロノ  イ駅圏 マップによる人口の可視化ー』では、駅点を中心としたまちの個性を、人口の移 動と集積から比較し、浮き上がった個性を駅圏ボロノイ図を用いることにより可 視化している。 つまり、まちの個性を抽出するために「人口という情報から、個性を駅圏ボロノ イ図で可視化した」ものである。

ー 14 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

1-2. まちの個性の抽出

1-2-1. 既往研究における「まちの個性の抽出」


1. 研究背景

1− 2. まちの個性の抽出

1-2. まちの個性の抽出

1-2-1. 既往研究における「まちの個性の抽出」

fig.1.5)

竹花洋子 他

『東京 23 区の人口動態からみ

る専門店集積地の研究一 ボロ ノイ駅圏マ ッ プに よる人口 の 可視化ー』

日本建築学会学術講演 2011 年

概集

fig.1.5) 駅圏ボロノイ図プロット例

fig.1.6)

早稲田大学古谷研究室

東京 23 区ーボロノイ研究ー

http://www.furuya.arch. waseda.ac.jp/jp/entry2014/ asia.pdf#search=' SNSを用い

た駅圏の潜在的特性に関する研 究−ジオロケーションが現す東

京 23 区徒歩圏内外の超短期的 人口分布から− '

fig.1.6) 東京 23 区駅圏ボロノイ図

ー 15 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1−2. まちの個性の抽出

1. 研究背景

1.8)

1-2. まちの個性の抽出

1-2-1. 既往研究における「まちの個性の抽出」

(b) ビックデータによる抽出

菊池弘祐 他

『ソーシャル・ネッ トワーキ ング・サービスを用いた都

早稲田大学渡辺仁史研究室による『ソーシャル・ネッ トワーキング・サービ

1 ∼利用者背景の分析と可視

スを用いた都市・建築空間像の抽出その 1 ∼利用者背景の分析と可視化の基本

市・建築空間像の抽出 その 化の基本的手法の解明∼』

日本建築学会関 東支部研究 報 告集

2013 年

的手法の解明∼』1.8) における、まちの個性の抽出について以下のように述べて いる。  「今までの都市の個性の抽出は、ユーザーの質がバラバラであることから、 Twitter を用いて量を確保し、ユーザーの質を均一に上げた。」 手法としては、「Twitter の GPS を用いて地図上に単語をプロットし、つぶ やきの数から、その密度を比較することで、どういった場所にポテンシャル がありうるのかを示す。場所をスケーラブルに観察することで、場所のトレ ンドがわかると考えられる。」 結果として、「東京近辺の GPS をプロットしてみると、主要な駅とその一日 の利用者数から、駅付近に GPS が集中していることが分かった。」 従ってこの手法は「駅周辺のキーワードを抽出できる可能性が高く、ここか ら都市とキーワードの 関係を明らかにできると考えた。」  この『ソーシャル・ネッ トワーキング・サービスを用いた都市・建築空間像 の抽出その 1 ∼利用者背景の分析と可視化の基本的手法の解明∼』では、駅点 を中心としたまちの個性を、Twitter による GPS から浮き上がらせ、キーワード を用いることにより可視化した。 つまり、まちの個性を抽出するために「ビックデータを利用して、GPS を位置情 報として集積させ、キーワードとして表現した」ものである。

ー 16 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1. 研究背景

1−2. まちの個性の抽出

1-2. まちの個性の抽出

1-2-1. 既往研究における「まちの個性の抽出」

fig.1.7)

菊池弘祐 他

『ソーシャル・ネッ トワーキン グ・サービスを用いた都市・建 築空間像の抽出 その 1 ∼利用

者背景の分析と可視化の基本的 手法の解明∼』

日本建築学会関東支部研究報告 集 2013 年

fig.1.7)GPS プロット例

ー 17 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1−2. まちの個性の抽出

1. 研究背景 1-2. まちの個性の抽出

1-2-1. 既往研究における「まちの個性の抽出」

(c) 五感キーワードからの抽出   広島工業大学の浅沼則行による『コイン通りにおける五感全体で感じられるサイ ンの考察』1.9) において、個性の抽出について  広島県の「コイン通り」という、まちの中心であり、象徴的存在からサ イン計画を通して、個性を抽出した。 1.9)

浅沼則行 他

『コイン通りにおける五感全体 で感じられるサインの考察』

デザイン学研究 . 研究発表大会 概要集

2007 年

「現在のデザインは、五感のうちの 1 つ又は2つの感覚だけで計画された ものが多い。今後は五感全体で感じられるサイン計画のあり方を考える必 要がある」という目的である。 手法としては、「コイン通りの五感で感じられるサインについて、現状の サインとこれから必要なサインのアンケートに記述されたものを整理し た。」結果として、「現状のサインでは、視覚以外でのコイン通りらしいサ インが少ないことが分かった。」 今後は、「一定の地域」の範囲に着目し、五感に配慮した特色のある『コ イン通りらしさ』の要件を 含んだサイン計画が必要である」と考えた。  この『コイン通りにおける五感全体で感じられるサインの考察』では、まちの 中心であるコイン通りの個性を、現状のサインとこれから必要なサインの五感ア ンケートから比較し、現状では視覚以外の知覚が表現されていないことを指摘し た。 つまり、まちの個性を抽出するために「五感アンケートを利用して、現状と今後 必要なサイン計画の比較から、情報として五感キーワードで表現した」ものであ る。

ー 18 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1. 研究背景

1−2. まちの個性の抽出

1-2. まちの個性の抽出

1-2-1. 既往研究における「まちの個性の抽出」

fig.1.8)

浅沼則行 他

『コイン通りにおける五感全体 で感じられるサインの考察』

デザイン学研究 . 研究発表大会 概要集

2007 年

fig.1.8)GPS プロット例

fig.1.9)

浅沼則行 他

『コイン通りにおける五 感全体で感じられるサ インの考察』

デザイン学研究 . 研究 発表大会概要集 2007 年

fig.1.9) コイン通りに必要な五感で感じられるサイン

ー 19 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1. 研究背景

1−2. まちの個性の抽出

注 2) 生データ:

ここで前項で挙げた3つの事例から、「まちの個性の抽出の仕方」について比較したい。

が全くされていない

まず挙げられる3つの事例における共通点は、生データ注2)と呼ばれるインプットと、そ

記録されて以来、加工 データのこと。

こから媒体を通して加工された形として、アウトプットがあることである。 相違点については、以下にそれぞれの特徴を示した後、述べる。 (a) 駅圏ボロノイ図による抽出   人口という情報から、まちの個性を駅圏ボロノイ図で可視化した。

fig.1.10)(a) のダイアグラム

(b) ビックデータからの抽出   ビックデータを利用して、GPS を位置情報として集積させ、キーワードとして表現し   た。

fig.1.11)(b) のダイアグラム

(c) 五感キーワードからの抽出   五感アンケートを利用して、現状と今後必要なサイン計画の比較から、情報として五   感キーワードで表現した。

fig.1.12)(c) のダイアグラム

ー 20 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

1-2. まちの個性の抽出

1-2-2. 既往研究における「まちの個性の抽出」の比較


1−2. まちの個性の抽出

1. 研究背景

共通点を掘り下げて見てみると、挙げられる共通点は、まちの個性を抽出するうえで 「情報をインプット」としてそこからアウトプットとして媒体におとしこんでいることだ と分かる。 ・最終的なアウトプットの違いとして (a) はボロノイ「図」 (b) および (c) については、「キーワード」として抽出している。 ・使っている知覚の違いとして (a) および (b) では視覚的な情報についてだが、 (c) は五感すべての情報に注目している。 つまり、(c) はインプットとして位置情報を視覚的だけでなく五感全てで捉え、さらにア ウトプットにも五感全てを用いていると言える。

ー 21 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

1-2. まちの個性の抽出

1-2-2. 既往研究における「まちの個性の抽出」の比較


1. 研究背景

1−3. 地上駅と地下駅

1-3. 地上駅と地下駅

1-3-1. 情報の量からみる違い

まちの中心イメージであり、象徴的存在である「駅」だが東京においては、 「地上駅」と「地下駅」が存在する。 下記に、JR 線高田馬場駅(地上駅)と東京メトロ高田馬場駅(地下駅)における 駅構内ホーム・階段付近・改札付近・地上出口付近とを比較してみる。

fig.1.13) 高田馬場地上駅と地下駅のホームにおける写真比較

fig.1.14) 高田馬場地上駅と地下駅の改札付近における写真比較

地上の駅では「早稲田口」など、まちの情報から出口の名前を取っているが、地下鉄の出 口は「出口 a」などアルファベットで表すことが多い。

ー 22 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1. 研究背景

1−3. 地上駅と地下駅

1-3. 地上駅と地下駅

1-3-1. 情報の量からみる違い

fig.1.15) 高田馬場地上駅と地下駅出口付近における写真比較

上記の比較写真より、まちとの連結が深い地上駅は、まちの情報をつぶさに感じること が出来るが、地下駅では、地上のまちの情報を案内板や案内地図など、視覚的な情報だけ に頼っている傾向があると言える。 つまり、「地上」と「地下」には同等の情報量がないことが分かる。  近年、「地上のまちの個性と地下鉄空間を結ぶ」傾向が出てきている。 地上と地下とを繋げる方法は以下の2パターンが挙げられ、 一点目は、「地下の空間にいる人に、地上に出てまち歩きを促進させること。」 もう一点は、「地上のまちの情報を、地下の空間にもってゆくこと。」である。 これにより、地下と地上のリンクは強まると考えられる。

ー 23 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1. 研究背景

1−3. 地上駅と地下駅

1-3. 地上駅と地下駅

1-3-2. 地下から地上へ

まず、 「地下の空間にいる人に、地上に出てまち歩きを促進させる事例」について二点 挙げたい。 1.10) 東京メトロ公式 HP

(a) 『東京を歩こう。』1.10)

東京を歩こう http://www.tokyometro.jp/ enjoy/walking/ 2014/10/20

近年東京メトロでは、いつもと違う駅で降りてみて『東京を歩こう。』というスロー   ガンのもと、地上の街歩きを促進しようとする傾向が出てきた。

fig.1.16) 東京メトロ公式 HP 東京を歩こう http://www.tokyometro.jp/ enjoy/walking/ 2014/10/20

fig.1.6)『東京を歩こう』HP 広告

ー 24 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1. 研究背景

1−3. 地上駅と地下駅

1.11) 東京メトロ公式 HP 『color your days』 http://www.tokyometro.jp/ corporate/ad/campaign_01/ cm/2014_october/index. html 2014/10/21

1-3. 地上駅と地下駅

1-3-2. 地下から地上へ

(b) 『color your days』1.11) また同社は『color your days』というスローガンのもと、地上の街歩きを促進しよう   とする傾向も出てきた。広告内ではメトロの沿線エリアを訪れ、東京の魅力を再発見   する姿が描かれている。この広告は「メトロを身近に感じた」と乗降者から多くの共   感・好感を得ている。

fig.1.17) 東京メトロ公式 HP 『color your days』 http://www.tokyometro.jp/ corporate/ad/campaign_01/ cm/2014_october/index. html 2014/10/21

fig.1.17)『color your days』ポスター広告

ー 25 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1. 研究背景

1−3. 地上駅と地下駅

1-3. 地上駅と地下駅

1-3-3. 地上から地下へ

地下鉄の鉄道会社による地上の街歩きを促進だけでなく、近年、地下鉄空間そのものを 地上のまちと繋げようとする傾向が出てきている。 それが、前項の地上と地下を繋げる方法の二点目、 「地上のまちの情報を、地下の空間にもっ てゆくこと。」である。 地上よりも情報量の少ない地下でまちの個性を味わうことで、断絶された地下駅を本来の 都市の中心イメージ、象徴的存在である「駅」へと戻してゆこうというが理由である。

1.12) 仙台市地下鉄東西線 WE http://we-sendai.jp/ 2014/10/21

以下に事例を二点挙げる。 (A) 『仙台市の東西線 WE』1.12)

fig.1.18) 仙台市地下鉄東西線 WE http://we-sendai.jp/ 2014/10/21

fig.1.19) 仙台市地下鉄東西線 WE http://we-sendai.jp/ 2014/10/21

fig.1.18) 仙台市地下鉄東西線 WE マーク

fig.1.19) 仙台市地下鉄東西線 WE デジタルサイネージ

fig.1.20) 仙台市地下鉄東西線 WE http://we-sendai.jp/ 2014/10/21

fig.1.20) 仙台市地下鉄東西線 WE マップ

仙台市の東西線が行っている活動『WE』では、地下鉄空間にあるデジタルサイネージを 使って地上のまちの情報を発信していくシステムを作った。

ー 26 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


1. 研究背景

1−3. 地上駅と地下駅

1-3. 地上駅と地下駅

1-3-3. 地上から地下へ

(B) 『銀座線 沿線駅デザインコンペ』1.13) 1.13) 東京メトロ銀座線 ( 商業エリ ア ) 駅デザインコンペ http://compe.japandesign. ne.jp/metro2014/ 2014/10/21

コンペティションとは企業や団体が時代のニーズを求めて案を募集するものである。   東京メトロでは近年「銀座線の駅デザインコンペ」を実施し、沿線駅圏内の個性を地   下駅で表現することを審査基準の評価項目に入れた。

fig.1.21) 東京メトロ銀座線 ( 商業エリ ア ) 駅デザインコンペ http://compe.japandesign. ne.jp/metro2014/ 2014/10/21

fig.1.21) 東京メトロ銀座線 ( 商業エリア ) 駅デザインコンペ

fig.1.22) 結果発表 / 東京メトロ銀座線 ( 商業エリア ) 駅デザインコ ンペ http://compe.japandesign. ne.jp/metro2014/result.html 2014/10/21

fig.1.22) 東京メトロ銀座線 ( 商業エリア ) 駅デザイン     最優秀賞 包謹慈 ノンスケール株式会社

これらの近年の試みより、「地上のまちの個性と地下鉄空間を結ぶ」時代の傾 向が見られた。

ー 27 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


研究概要

2.

2-1. 研究目的 2-2. 用語の定義 2-3. 本研究の位置づけ 2-4. 研究の流れ

ー 28 ー


2−1. 研究目的

2. 研究概要 2-1. 研究目的

■研究目的    本研究では、「まちの個性」を五感情報により「五感キーワード」として抽出すること を目的とし、その抽出された情報と実際のまちとの整合性を検証する。 そしてその「まちの個性」とは、 「まち」のなかでどのように存在しているかを明らかにする。

ー 29 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


2ー2. 用語の定義

2. 研究概要 2-2. 用語の定義

■フィルター  新宿三丁目の個性を抽出するために、「比較するその他のまち」のこと。  本研究の分析において、「対象とするまち」と「比較するその他のまち」との  共通項目を引き算的に消去する方法を用いる。  このような操作を『フィルターにかける』と言う。

■まちの個性  他のまちにない、そのまちだけが持つ要素で形成されるもの。

■まちの五感  人が普段、意識的または無意識的にまちから感じている五感のこと。

ー 30 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


2−3. 本研究の位置づけ

2. 研究概要 2-3. 本研究の位置づけ

「まちの個性の抽出」に関する既往研究を以下に挙げる。 ■既往研究 (1)  竹花洋子 他

『東京 23 区の人口動態からみる専門店集積地の研究一 ボロ ノイ駅圏マ ッ プに よる人     口 の 可視化ー』  日本建築学会学術講演梗概集 2011 年  まちの個性を抽出するために「人口という情報から、個性を駅圏ボロノイ図で可視化し   た」ものである。

■既往研究 (2)  菊池弘祐 他  『ソーシャル・ネッ トワーキング・サービスを用いた都市・建築空間像の抽出 その 1   ∼利用者背景の分析と可視化の基本的手法の解明∼』  日本建築学会関東支部研究報告集 2013 年  まちの個性を抽出するために「ビックデータを利用して、GPS を位置情報として集積さ  せ、キーワードとして表現した」ものである。

■既往研究 (3)  浅沼則行 他  『コイン通りにおける五感全体で感じられるサインの考察』  デザイン学研究 . 研究発表大会概要集 2007 年  まちの個性を抽出するために「五感アンケートを利用して、現状と今後必要なサイン計  画の比較から、情報として五感キーワードで表現した」ものである。  本研究は既往研究よりまちの五感情報を対象として、被験者に五感キーワードの調査を 行う。本研究と同じく五感キーワードに関する既往研究 (3) では最終的な表現もキーワー ドであるが、本研究はその限りに無い。

ー 31 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


2. 研究概要

2−3. 本研究の位置づけ

本研究では「他のまちとの共通項を引き算的に消して残ったもの」を個性とする。 例えば、対象地で回収された数が多いキーワードが「排気ガス」だったとする。既往にお いては、これがまちの個性になるが、本研究では「排気ガス」が他のまちでも回収出来た 場合、これはまちの個性にはならない。

fig.2.1) 既往における「まちの個性」の抽出方法

fig.2.2) 本研究における「まちの個性」の抽出方法

ー 32 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

2-3. 本研究の位置づけ

また、既往の「まちの個性」というのは「回収した数が多かったもの」を個性とするが、


2. 研究概要

2−4. 研究の流れ

2-4. 研究の流れ

以下に本研究の研究フローを示す。

fig.2.3) 研究フロー図

ー 33 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


五感キーワード調査

3.

3-1. 調査概要  3-1-1. 調査目的  3-1-2. 調査フロー 3-2. アンケート  3-2-1. 概要  3-2-2. 調査方法  3-2-3. 結果 3-3. 分析  3-3-1. 分析方法  3-3-2. 分析結果 3-4. まとめ

ー 34 ー


3ー1. 調査概要

3. 五感キーワード調査 3-1. 調査概要

3-1-1. 調査目的

■調査目的  地下鉄の駅圏域におけるまちの個性を五感ごとにキーワードとして抽出し、まちの個性 における人間の五感イメージの存在を明らかにすることを目的とする。 本研究ではケーススタディとして、地下鉄新宿三丁目駅を対象地とする。

ー 35 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3ー1. 調査概要

3-1. 調査概要

3-1-2. 調査フロー

■調査フロー図  下記はこの調査におけるフロー図である。 この調査では、まちの個性を五感ごとにキーワードとして抽出するために、被験者にアン ケートを行い、分析手順を通して最終結果を導き出す。

新宿三丁目駅の

五感キーワードの 抽出

その他の駅の

五感キーワードの 抽出

fig.3.1) 調査フロー図

ー 36 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3ー2. アンケート

3. 五感キーワード調査 3-2. アンケート

3-2-1. 概要

■調査概要  「まちの個性としての五感情報の抽出」を決定する為の調査として、地下鉄新宿三丁目 駅と東京の他の地下鉄駅に対するイメージをアンケートにより収集した。

■調査日  2014年 6月20日から8月20日

■調査対象  建築学科学生 122名(20代男女、男:85名・女:37名)

ー 37 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3ー2. アンケート

3. 五感キーワード調査 3-2. アンケート

3-2-2. 調査方法

■アンケート調査手順  調査1では、調査方法としてアンケート調査を用いる。 回答者に下記の手順に従い、対象としたそれぞれの駅のまちについて回答してもらう。

1)東京メトロ新宿三丁目駅(全員に共通)および、各自が比較的良く利用する東京の地   下鉄の駅を一つ取り上げる。   注意事項として、西早稲田駅は回答が集中すると思われるので、対象地から除く。 2)対象としたそれぞれ 2 つの駅の地上の歩行圏について、その駅を含む地上のまちの   印象をもっとも特徴付けていると思われる空間的要素を、それぞれ 50 枚ずつ ( 計   100 枚)をカメラで撮影する。   空間的要素とは、視覚的な風景や建築のファサードだけではなくて、そのまちを構成   する文化や情報など多面的なものを取り上げるのが望ましい。写真として捉えるのは   難しい、風や匂い、五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を通して感じられるもの   をイメージ(まちらしさ)として表現することが望ましい。 3) 写真については、それぞれ 50 枚の写真を順不同で構わないので、「新宿三丁目」「各   自が選んだ駅名」のフォルダーに保存する。   次に、それぞれ 50 枚の写真の中から、各自が最もそのまちを代表すると思われる写   真を一枚ずつ選出して、ファイル名の頭に @ マークをつけておく。 4) 本調査では、回答が視覚的イメージに集中することを想定し、アンケートではまち のイメージについて五感ごとに回答してもらい、視覚以外についてのまちのイメージも十 分数抽出した。 5) アンケート調査成果物は、すべての内容を一枚の CD-ROM に保存する。

ー 38 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

3-2. アンケート

3-2-2. 調査方法

■1人分アンケート調査成果物まとめ  A: 新宿三丁目駅の地上写真 50 枚  B: 新宿三丁目駅の地上写真 50 枚から一番まちらしさを感じた 1 枚  C: 新宿三丁目駅の地上で感じた五感を、それぞれキーワードで表現したもの  D: 各自が比較的良く利用する東京の地下鉄の駅の地上写真 50 枚  E: 各自が比較的良く利用する東京の地下鉄の駅の地上写真 50 枚から一番まちらしさを   感じた 1 枚  F: 各自が比較的良く利用する東京の地下鉄の駅の地上で感じた五感を、それぞれキー   ワードで表現したもの

CD-ROM

各自

【視覚 / 聴覚 / 嗅覚 / 味覚 / 触覚】  キーワドで表現したもの

fig.3.2) 成果物 CD-ROM 内イメージ図

ー 39 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

この項では、最終結果のための分析に使用するアンケート調査の成果物、前項で記した C と F について記す。

新宿三丁目駅

視 覚

その他の駅

ー 40 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

視 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 41 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

視 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 42 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

視 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 43 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

視 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 44 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

視 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

fig.3.3) 結果【視覚】

ー 45 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

聴 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 46 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

聴 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 47 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

聴 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 48 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

聴 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

fig.3.4) 結果【聴覚】

ー 49 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

嗅 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 50 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

嗅 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 51 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

嗅 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

fig.3.5) 結果【嗅覚】

ー 52 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

味 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 53 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

味 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 54 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

味 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

fig.3.6) 結果【味覚】

ー 55 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

触 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 56 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

触 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

ー 57 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−2. アンケート

新宿三丁目

触 覚

3-2. アンケート

3-2-3. 結果

その他のまち

fig.3.7) 結果【触覚】

ー 58 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3ー3. 分析

3-3. 分析

3-3-1. 分析方法

この調査の最終目的は「新宿三丁目特有の五感情報」である。 これは、回答者全員が答えた「新宿三丁目の五感情報」から、各自で選定した東京の地下 鉄駅上で答えた「他のまちの五感情報」を引き算的に共通項目を消してゆき、残ったもの を「新宿三丁目特有の五感情報」とした。 つまりこの調査においては、下記のイメージ図のように、 「他のまちの五感情報」をフィ ルターとして使う。 新宿三丁目特有という、他のまちとは共通しない個性を抽出するために「新宿三丁目の五 感情報」をフィルターに通した。

池 窪

町 錦 糸

高 田 馬 場

中 野

荻 ・

神宮

fig.3.8) 分析方法イメージ図

ー 59 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3ー3. 分析

3-3. 分析

3-3-1. 分析方法

この調査における分析方法は、下図の枠内である STEP1 から STEP4 までで示した部分 にあたる。

その他の駅

fig.3.9) 分析方法フロー図

この調査におけるそれぞれの分析方法を、STEP ごとにを次にまとめてに記す。

ー 60 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-1. 分析方法

この調査の分析においては、Microsoft Office Excel を使用した。 回収出来た新宿三丁目のキーワードの個数は837個、フィルターとして集まったキー ワードは821個あり、これらを五感ごとに類似した言葉、つまり「キーワード」から、 「グ ループ化」を行った。下記にグループ化の手順を記す。

一人一人の元データを五感ごとに Microsoft Excel で列に並べる。

ガラス

データに「フィルター」ツールを使 い、同じ文字を含むキーワードだけ 自動的に選出する。

同じ文字を含むキーワードに自動選出されなかったが、 同じ意味を含むキーワードを手動で選出する。

fig.3.10) キーワードのグループ化イメージ図

ー 61 ー

Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-1. 分析方法

STEP2 では、STEP1 で「類似した言葉を五感ごとにグループ化したもの」の優位を決 定する。 まず、新たに「グループ名」と「グループが含む類似した言葉の個数」を示した表を作成 し、その後下記のような手順で優位を決定する。

五感ごとにグループ分けされたデータ の、グループ名とグループが含む類似 した言葉の個数の表を作成する。

データに「フィルター」ツールを使 い、降順を選択。ここで数が多い方 が上位にあがる。

グループが含む類似した言葉の個数をより多く含むグ ループが、共通して人が感じた知覚のキーワードで あることから「優位がある」と定める。

fig.3.11) 五感ごとのグループの優位決定イメージ図

ー 62 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-1. 分析方法

STEP3 では、STEP2 までで五感ごとに分かれていた「グループ」データを全て合わせる。 下記にその全データの中からグループの「優位を決める」ための手順を記す。

五感全ての「グループ」を並べたデータに「条件付き

書式」ツールを使い、同じ文字を含む「グループ名」 を自動的に選出する。

自動的に選出されたグループは赤く色がつく。 これは、知覚関係なく、五感内で共通して出た グループ名が赤く示されていることになる。

赤く示された五感内で共通して出たグループを優位が あると決め、上位に移動させる。

例えば、上から二番目のグループ名「人」はグループ

個数が4なので、五感の内4つの知覚で共通して出た 言葉であることが分かる。また、キーワード個数 ( 類

似した言葉の個数 ) が54であることから、4つの知 覚で54個のデータがとれたことが分かる。

fig.3.12) 全グループにおける優位決定イメージ図

ー 63 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-1. 分析方法

STEP4 では、3-3-1 の最終目的の位置づけで述べたように、 「新宿三丁目」から「フィルター」 を引き算的に共通項目を消してゆくため、STEP3 までで整理した両データを使用する。 つまり、STEP4 で抽出された結果が最終結果になる。 下記に「新宿三丁目」のデータを「フィルターにかける」ための手順を記す。

新宿三丁目

フィルター

STEP3 の「条件付き書式」と同じ手順で、「五感全て合わせた新宿三丁目データ」と「五感全て合わせたのフィルターデータ」 のなかで、同じ文字が入ったグループ名が自動的に選出され、共通項が黄色で示される。

新宿三丁目

フィルター

両データの共通項が黄色であり、これは「フィルター」にひっかかったグループ名であることを指す。 つまり、黄色以外のデータが今回の最終結果であり「新宿三丁目の個性の五感情報」であると言える。 fig.3.13) 新宿三丁目をフィルターにかけるイメージ

ー 64 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

■結果

視 覚

右図は、新宿三丁目駅の五感イメージの視覚 の表のグループのみ取り上げたものである。 なお、グループに所属する類似するキーワード の数を「個数」と表示している。

■分析・考察  一番多くのキーワードを内包しているグルー プは「人」であった。これは人が密集する新宿 であるということと、街歩きをしている視点 ( 人の視線の高さ ) から見える景色の大部分を 占めることが原因だと考えられる。 二番目に多かった「ビル」は、新宿のスカイラ インを象徴するものであり、視界の上部分を占 めていることが上位である原因だと考えられ る。 三番目に多かった「看板」については、このデー タ内に、「商業的広告する看板」と「行為を禁 止する看板 ( 駐輪禁止 / 客引き禁止など )」の 二種類存在した。 今回のケースは商業的広告に使われている看板 である。 これら上位に見られる傾向として、 「人」と「看 板」だけでは商業が栄えている他の東京の都市 にも見られるが「ビル」というビジネス機能も 併用している都市は新宿特有と言えるかもしれ い。 fig.3.14) 優位の高いグループ【新宿三丁目 / 視覚】

ー 65 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

■結果

聴 覚

右図は、新宿三丁目駅の五感イメージの聴覚 の表のグループのみ取り上げたものである。 なお、グループに所属する類似するキーワード の数を「個数」と表示している。

■分析・考察  一番多くのキーワードを内包しているグルー プは「車」であった。これは新宿三丁目駅周辺 を横断する四車線大通り「新宿通り」と「明治 通り」が存在し、時間帯に関係なく常に多くの 車が行き来している音が、脇の歩道を歩く人々 の耳に入って来るからだと考えられる。 二番目に多かった「人」は、データ分析してみ ると「若い人の声」「しゃべり声」など、視覚 同様に回答者の耳元で聞こえる可能性が高い音 だと考えられる。 三番目に多かった「足」については、人の足音 が意味に含まれる。二位である「人」が出すも う一つの音である。 これら上位に見られる傾向として、 「車」と「人」 が出している音が主立っている。 これは、新宿三丁目が大通り沿いであり、人と 物の交通の要になっていることが原因と考えら れる。

fig.3.15) 優位の高いグループ【新宿三丁目 / 聴覚】

ー 66 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

■結果

嗅 覚

右図は、新宿三丁目駅の五感イメージ嗅覚の 表のグループのみ取り上げたものである。 なお、グループに所属する類似するキーワード の数を「個数」と表示している。

■分析・考察  一番多くのキーワードを内包しているグルー プは「排気」であった。これは、聴覚でも述べ たように大通り沿いに位置し、絶えず車が行き 交うことから、その排気量も多いことが分かる。 二番目に多かった「商業」は、デパートという 言葉が多く見られた。デパートの匂いという、 複雑な匂いを多くの人が感じた。 例えば、大通り沿いに立ち並ぶ大型商業施設の 扉の開閉の瞬間に一階売り場から漏れ出す化粧 品や革製品の匂いかもしれない。 三番目に多かった「香水」については、人が都 市特有に現れる臭いを、匂いで消すという現象 であると考えられる。 これは通りすがる人の瞬間的な匂いの場合が多 く、記憶に残りやすい。 これら上位に見られる傾向として、「人」から 発生する香水や、「車」から発生する排気、「商 業」から発生するお店の匂いなど、他の知覚に も見られたような同じものからの発生が多い。 fig.3.16) 優位の高いグループ【新宿三丁目 / 嗅覚】

ー 67 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

■結果

味 覚

右図は、新宿三丁目駅の五感イメージ味覚の 表のグループのみ取り上げたものである。 なお、グループに所属する類似するキーワード の数を「個数」と表示している。

■分析・考察  一番多くのキーワードを内包しているグルー プは「居酒屋」であった。これは、回答者の多 くが新宿三丁目の居酒屋に入ったことがあると いう記憶から来ているかもしれない。 それに加えて、商業とオフィスの融合した街と いうことで、会社帰りや友達との集まりに使わ れることが多いというのも要因の一つである。 二番目に多かった「酒」は、居酒屋に付随して 出て来る単語で、居酒屋で「酒」を飲むのが新 宿三丁目で見られることの多い行為である。 三番目に多かった「外国」については、「異国 の味」という言葉が多く見られた。普段日本の 食卓には並ばないエスニックな味が、新宿では 多くの店が出店していることが考えられる。 これら上位に見られる傾向として、「味」を感 知する器官だが、具体的な品名が出て来るわけ ではなく、記憶から店名などが出てきている可 能性が高い。 また、「人」から発生したものが味覚だけ上位 に入ってこなかった。 fig.3.17) 優位の高いグループ【新宿三丁目 / 味覚】

ー 68 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

■結果

触 覚

右図は、新宿三丁目駅の五感イメージ触覚の 表のグループのみ取り上げたものである。 なお、グループに所属する類似するキーワード の数を「個数」と表示している。

■分析・考察  一番多くのキーワードを内包しているグルー プは「かたい」であった。これは、ビルやアス ファルトなどほとんど人工物で出来たまちであ ることが考えられる。 二番目に多かった「ざらざら」は、ただ「ざら ざら」と書かれた場合と「建物のざらざら」と 素材感を表現するものがある。 三番目に多かった「人」については、キーワー ドの中身を見てみると、過密な都市での「人」 と「人」のぶつかりが多い。 これらに見られる傾向として、 「実際に触れ合ったものの対象物」 「皮膚から伝わる環境」 「視覚から見た触覚」 のどれかに含まれていることが挙げられる。

fig.3.18) 優位の高いグループ【新宿三丁目 / 触覚】

ー 69 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3−3. 分析

3. 五感キーワード調査 3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

■ STEP1 および STEP2 分析結果・考察  五感それぞれのキーワードをグループ化したときだけでなく、五感全体を通しても以下 のように様々な傾向が見られた。 ・知覚を超えて、共通する「源」があること。  例えば「車」というキーワードにおいては、視覚では「車」聴覚では「エンジン」嗅覚   では「排気ガス」と、色々な知覚で感じているが、すべて同じキーワードから派生して  いる。  この知覚に関係なく共通する源として「車」「人」「看板」などが挙げられた。 ・五感キーワードのなかには「時間帯」という情報も含まれている。  例えば、ネオンや居酒屋の呼び込みなどは、夜の時間帯の情報を含む。 ・次の STEP 以降で「新宿三丁目」と「他のまち」とを比較する余地が見られた。

ー 70 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

以下に STEP 3における「新宿三丁目」と「フィルター」の両グループから優位を決め た結果を記す。赤くなっている部分が、両方でグループ名が一致したものである。つまり それ以降が精査すべきデータになっている。

新宿三丁目

フィルター

fig.3.19) グループ共通項目

Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

ー 71 ー


3−3. 分析

3. 五感キーワード調査 3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

ー 72 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3−3. 分析

3. 五感キーワード調査 3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

ー 73 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3−3. 分析

3. 五感キーワード調査 3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

ー 74 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3−3. 分析

3. 五感キーワード調査 3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

ー 75 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3−3. 分析

3. 五感キーワード調査 3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

ー 76 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

下記の五感情報は、グループに所属していない単独の言葉で、STEP4 の作業であるフィ ルターにかけたも後も残った「珍回答」である。 これは本研究の最終結果としては扱わず、フィルターにかけた後も残った「複数のキーワー ドを含むもの」を最終結果として扱う。

fig.3.20) フィルターをかけて残ったもの「珍回答」編

ー 77 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−3. 分析

3-3. 分析

3-3-2. 分析結果・考察

よって、下記の複数のキーワードを含むグループが「新宿三丁目の個性の五感情報」が 最終的な結果になる。 視覚 ( 青 )、聴覚 ( オレンジ )、嗅覚 ( ピンク )、味覚 ( 緑 )、触覚 ( 紫 ) で色分けしてある。

fig.3.21) フィルターをかけて残ったもの「最終結果」編

ー 78 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−4. まとめ

3-4. まとめ

最終結果である「新宿三丁目の特徴として抽出された各グループ」を以下のようにキー ワードに分解した。

fig.3.23) 最終結果の五感情報の分解

ー 79 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


3. 五感キーワード調査

3−4. まとめ

3-4. まとめ

「新宿三丁目の五感キーワード」から「他のまちの五感キーワード」の共通キーワード を引き算的に消去することで、以上のような最終結果が出た。 以下に最終結果の五感の割合グラフを記した。このグラフから、人はまちの個性を五感の 中でも、特に視覚から取り入れていることが分かる。 また、聴覚が 11%と比較的低く、他のまちと多くの音が一致していることが分かる。  この調査によって、「人はまちを五感で感じている」という裏付けが出来ただけでなく、 「新宿三丁目におけるまちの個性を五感ごとにキーワードとして抽出し、まちの個性にお ける人間の五感イメージの存在を明らかにする」ことも出来たといえる。

fig.3.22) 最終結果の五感の割合グラフ

ー 80 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


検証実験

4.

4-1. 検証実験の概要 4-2. アンケート調査   4-2-1. 概要   4-2-2. 結果・分析   4-2-3. まとめ 4-3. フィールドワーク検証   4-3-1. 概要   4-3-2. 結果   4-3-3. 方法   4-3-4. 分析   4-3-5. まとめ


4. 検証実験

4−1. 検証実験の目的

4-1. 検証実験の目的

本編第三章における「新宿三丁目の個性としての五感キーワード」が「新宿三丁目らし い」かどうかを検証することを目的とする。

本研究における検証実験の流れについて以下にフローを記す。

fig.4.1) 検証実験研究の流れ

ー 82 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

4-2. アンケート調査

4-2-1. 概要

■アンケート調査目的  本編第三章で抽出した「新宿三丁目の個性としての五感キーワード」が「新宿三丁目ら しさ」象徴するものとして一定の評価を得る事が出来るかを検証する。

□実施日  2014年 10 月29日 □実施人数  新宿三丁目の来街歴の長い14人 ( 20代男女、男:7人・女:7人 )

■アンケート調査の概要  調査方法は本論第三章で最終結果で抽出した「新宿三丁目の個性としての五感キーワー ド」と「他のまちの五感キーワード」から「新宿三丁目らしい五感キーワード」を選んで もらった。 内容としては、全問題の半分を「新宿三丁目」とし、あとの半分は「その他のまち」で構 成することとした。 また本論第三章で最終結果として出たの以下の五感キーワードの割合グラフより、この比 率を維持したまま、出題した。 この「新宿三丁目」のキーワードの出題については、次ページに記す。 また「他のまち」のキーワードの出題は、公平性を重視し、Microsoft Excel の「ランダム」 ツールを用いて無作為に選んだ。 このアンケート検証の正解率が高ければ高 いほど、本論第三章で抽出した五感キー ワードへの信頼度が高いことになる。

fig.4.2) 本編三章最終結果の五感キーワードの割合グラフ

ー 83 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4ー2. アンケート調査

4-2. アンケート調査

4-2-1. 概要

アンケート検証を行う上で、新宿三丁目の特徴として抽出された「各グループ」を、 同じくアンケートに出題される、その他のまちとの抽象度を揃える為に、以下のように 「キーワード」に分解した。

fig.4.3) キーワード選出

ー 84 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

4-2. アンケート調査

4-2-1. 概要

以下に実際に使用したアンケート用紙を記す。

fig.4.4) アンケート用紙

ー 85 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

4-2. アンケート調査

4-2-2. 結果・分析

この検証における結果を以下に記す。

視 覚 質問キーワード

回答者

合計回答数

平均値

fig.4.5) 検証結果 1【視覚】

視覚全体正答率:83%

ー 86 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

聴 覚 質問キーワード

4-2. アンケート調査

4-2-2. 結果・分析

回答者

合計回答数

平均値

fig.4.6) 検証結果 1【聴覚】

聴覚全体正答率:80%

嗅 覚 質問キーワード

回答者

合計回答数

平均値

fig.4.7) 検証結果 1【嗅覚】

嗅覚全体正答率:80%

ー 87 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

味 覚 質問キーワード

4-2. アンケート調査

4-2-2. 結果・分析

回答者

合計回答数

平均値

fig.4.8) 検証結果 1【味覚】

味覚全体正答率:63%

触 覚

質問キーワード

回答者

合計回答数

平均値 fig.4.9) 検証結果 1【触覚】

味覚全体正答率:7 3% ー 88 ー

Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

4-2. アンケート調査

4-2-2. 結果・分析

以下に、本アンケートによる結果を項目ごとに、横棒グラフで記した。 縦が出題キーワードで横棒が回答した人数を示しており、グレーのバーで表示されている 項目が「新宿三丁目の五感キーワード」にあたる。

視 覚 出 題 キ ー ワ ー ド

回答人数 fig.4.10) 検証結果 2【視覚】

視覚の結果では「上空空間の高い密度」「ざわざわ」が 11 人、「看板が街 を形成」「新宿御苑」が 8 人と数値が高かった。

ー 89 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

4-2. アンケート調査

4-2-2. 結果・分析

聴 覚 出 題 キ ー ワ ー ド

回答人数 fig.4.11) 検証結果 2【聴覚】

聴覚の結果では「信号」「横断歩道」が全員回答、「わいわい」「バイク」 も 10 人以上と数値が高かった。 これらは新宿三丁目の、大通りに囲まれている立地が関係していると考えら れる。

ー 90 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

4-2. アンケート調査

4-2-2. 結果・分析

味 覚 出 題 キ ー ワ ー ド

回答人数 fig.4.12) 検証結果 2【味覚】

味覚の結果では「高級料理店からチェーン店まで」が 11 人「流行の味」 が 9 人と数値が高かった。新宿区のなかでは特に高級店が揃う区域である と同時に、気軽なファストフードも揃っていることが原因であると考える。 また、テレビや雑誌などに取り上げられるような「今話題の」流行の味を取 り入れていく傾向がある。

ー 91 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

4-2. アンケート調査

4-2-2. 結果・分析

嗅 覚 出 題 キ ー ワ ー ド

回答人数 fig.4.13) 検証結果 2【嗅覚】

嗅覚の結果では「都会」が 13 人「くさい」が 12 人「化粧品の匂いの拡散」 「洋服屋」が9人と数値が高かった。 「都会」や「くさい」という抽象的な表現にも関わらず多くの人が選択した のは、単独の匂いだけではなく、さまざまな匂いが混ざり合って出来ている 匂いだからだと考えられる。

ー 92 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−2. アンケート調査

4-2. アンケート調査

4-2-2. 結果・分析

触 覚 出 題 キ ー ワ ー ド

回答人数 fig.4.14) 検証結果 2【触覚】

触覚の結果では「かたい」が 10 人、「ひびわれた道路の凹み」「高級店の 大理石の床」が 9 人と数値が高かった。 また、「マンションビルのタイル張り」は他のまちの情報だが、多くの人が 選んだ。これは、タイル張りという言葉に反応したと思われる。  これらの検証結果のグラフより、被験者が他のまちではなく「新宿三丁目の五感キーワー ド」を選んだ確率が、視覚 83%、聴覚 80%、嗅覚 80%、味覚 63%、触覚 73%、つま り五感全体で75.8%と高い数値であることが分かった。 また、正解・不正解のキーワードなかにも傾向があり、これは「まち歩き」をしていない 状態であり、被験者の新宿三丁目への固定概念で回答していることが原因の一つとして考 えられる。

ー 93 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4−2. アンケート調査

4. 検証実験 4-2. アンケート調査

4-2-3. まとめ

前項での結果・分析より、本編三章の最終結果として抽出された「新宿三丁目の個性と しての五感情報」の信頼性の調査で被験者が、他のまちではなく新宿三丁目を選択した確 率が、75. 8%も存在することが分かった。 よって、この五感キーワードが信頼性は高く、 「新宿三丁目の個性としての五感キーワード」 が「新宿三丁目らしさ」象徴するものとして一定の評価を得る事が出来たといえる。

ー 94 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4−3. フィールドワーク検証

4. 検証実験 4-3. フィールドワーク検証

4-3-1. 概要

■フィールドワーク検証目的  前項より、本編第三章で最終結果として抽出した「新宿三丁目の個性としての五感情報」 の信頼度が高いことが分かったうえで、実際に新宿三丁目をフィールドワークし、 「どの キーワードを、どこでどの五感を使って、どのように感じたか」を検証する。 それを本検証実験の最終成果物として「五感マップ」を作成することを目的とする。

□実施日  2014年 10 月31日 AM 7時∼ PM 12時

■フィールドワーク検証概要  本研究で抽出された「新宿三丁目の個性としての五感キーワード」が「どのキーワード を、どこでどの五感を使って、どのように感じたか」を検証する為に、対象地でフィール ドワークを行い、地図上に情報をプロットしてゆく。 ここでプロットする情報は ・五感キーワード ・位置情報 ・写真 ・時刻 である。 このフィールドワークの検証により、本研究で抽出された「新宿三丁目の個性としての五 感キーワード」が実際に新宿三丁目ではどこでどのように感じられるかが明らかになる。

ー 95 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

4-3. フィールドワーク検証

4-3-1. 概要

以下は、本検証でプロットを行う際に使う新宿三丁目のマップである。 検証前に地図から情報を得すぎないように、国土地理院の基盤地図情報サイトより ・街区 ・建物 ・道路縁 ・新宿三丁目区域 ・鉄道 ・標高点 のみを表記したマップを使用した。 また、「新宿三丁目」の街区を赤い線で囲った。fig.4.15)

fig.4.15) 使用した新宿三丁目マップ

ー 96 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

4-3. フィールドワーク検証

4-3-2. 手順

フィールドワークをする際の方法を以下に記す。 1) まちを五感で感じる。 2) 感じた「新宿三丁目の個性としての五感キーワード」を手書きでマップにプロットする。 3) そのキーワードに関連すると思われる要素をカメラで撮影する。

fig.4.16) フィールドワーク手順イメージ図

この手書きのマップをもとに、Rhinoceros、Grashopper を用いてデジタルデータに落と し込む。 この方法については、次ページより記す。

ー 97 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

五感キーワードの情報を、点的に分布しているものと、線的に分布しているものに分け、 Rhinoceros にデータを入力し、Grashopper 上で、「色相」「彩度」「明度」「透明度」など を五感ごとに区別して表現した。 以下に Grashopper のシステム図と操作画面を記す。

fig.4.17)Grasshopper システム図

Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

ー 98 ー

4-3. フィールドワーク検証

4-3-2. 手順


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

4-3. フィールドワーク検証

4-3-2. 手順

fig.4.18)Rhinoceros と Grasshopper 操作画面

ー 99 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4−3. フィールドワーク検証

4. 検証実験 4-3. フィールドワーク検証

4-3-3. 結果

次ページより、以下の順序でフィールドワークの結果を記す。 P 100 【あさ】    「新宿三丁目における個性」の五感キーワード及び、それに関する写真 P 101 【あさ】    「新宿三丁目における個性」の五感プロットマップ    視覚 ( 青 )、聴覚 ( オレンジ )、嗅覚 ( ピンク )、味覚 ( 緑 )、触覚 ( 紫 ) で示す。 P 102 【ひる】    「新宿三丁目における個性」の五感キーワード及び、それに関する写真 P 103 【ひる】    「新宿三丁目における個性」の五感プロットマップ    視覚 ( 青 )、聴覚 ( オレンジ )、嗅覚 ( ピンク )、味覚 ( 緑 )、触覚 ( 紫 ) で示す。 P 104【よる】    「新宿三丁目における個性」の五感キーワード及び、それに関する写真 P 105【よる】    「新宿三丁目における個性」の五感プロットマップ    視覚 ( 青 )、聴覚 ( オレンジ )、嗅覚 ( ピンク )、味覚 ( 緑 )、触覚 ( 紫 ) で示す。

ー 100 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-








4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

本検証の新宿三丁目フィールドワーク及び、写真と五感マップについての分析を以下に 記す。  「新宿からの緩やかな坂」や「建物に囲まれた自然」 「禁止を促す看板」 「上空空間の密度」 「ひび割れたコンクリートの凹み」「商業施設名」など、人が介入していない、動かないオ ブジェクトのキーワードがプロット出来る。 次に、あさ、ひる、よるの各時間帯ごとに観察されたキーワードについて、次ページより 記す。

fig.4.19) 上空空間の高い密度

fig.4.20) キャッチ禁止

fig.4.22) コンクリートの凹み

fig.4.21) 新宿からの緩やかな坂

fig.4.23) 建物に囲まれた自然

ー 107 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

4-3. フィールドワーク検証

4-3-4. 分析


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

4-3. フィールドワーク検証

4-3-4. 分析

【あさ:フィールドワークの分析】 ・人通りは少なく、観光客などはまだ居ない状態。fig.4.26) ・新宿三丁目は靖国通り、明治通り、新宿通りと大通りが交差し合う場所なので、 「バイク」 の通りは午前中でもエンジン音が絶えず聞こえていた。 ・この時間に開店しているのは、ファストフード店、午前中も営業している末広町の小さ なお店がほとんどである。fig.4.24) 次第に大きな商業施設がちらほらと開店し始める状態である。fig.4.27) ・飲食店が軒を連ねているということもあり、開店前独特の前日のごみの「すっぱさ」が 鼻についた。fig.4.28) ・放置自転車が朝からいたるところで目につく。fig.4.25)

fig.4.25) 放置自転車

fig.4.24) チェーン店

fig.4.27) 商業施設開店前

fig.4.26) 大通り

fig.4.28) すっぱい

ー 108 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

4-3. フィールドワーク検証

4-3-4. 分析

あさ

fig.4.29)「あさ」分析用五感マップ

【あさ:五感マップの分析】 朝はほとんどの店が開店前ということと、人通りが少ないことから、比較的五感プロット は少ない印象を受けた。 ①の末広町では、午前中は「仕込み」をする店が多く見られた。前日のすっぱいゴミの嗅 覚と、ひびわれたコンクリートの凹みという触覚から、ピンクと紫の色合いになっている。 ②は新宿三丁目のなかでもひと際大きい商業施設の伊勢丹がある。この日の開店は 10 時 半だったので、開店したばかりであった。お客さんはまだ入っていないものの、既に一階 の化粧品の匂いが拡散していた。 ③新宿三丁目と歌舞伎町の間に位置する「靖国通り」は朝から交通量が多くバイクの音が 絶えない。交差点を曲がってから、加速し、次の交差点で止まるまでの間、連続的に聞こ えることを示している。

ー 109 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4−3. フィールドワーク検証

4. 検証実験

④新宿三丁目を横断する大通りは数多くあるが、なかでもこの「新宿通り」はまちの中心 部分を通っており、多くの「ざわざわ」が集まるところでもある。 ⑤新宿東口ルミネ前は、駅直結型の商業施設であるが、朝は開店していなので、比較的人 は少ない。 本研究では、あさの検証を 10 時に行っているが、もう少し前のラッシュの時間を検証し たら、オフィスに向かう人々で「ざわざわ」していた可能性が考えられる。 ⑥朝の時間はほとんど開店していないが、「ファストフード」は午前中の朝早くから開店 している特徴がある。これが、あさの五感マップのなかでも数少ない「味覚」になる。 ⑦人が介入していないキーワードのなかでも、この触覚キーワードである「新宿からの緩 やかな坂」はプロットのなかでも大きな面積を占めている。 ⑦はそのなかでも特に標高差の激しい通りである。 坂というのは「点」の情報ではないので、必然的に連続的な紫色になった。

ー 110 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-

4-3. フィールドワーク検証

4-3-4. 分析


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

4-3. フィールドワーク検証

4-3-4. 分析

【ひる:フィールドワークの分析】 ・オフィス街ということもあり、ランチの時間になるとたくさんのスーツ姿が現れる。  集団で、「お得なランチ」が食べられるお店へと向かう。 ・外国人観光客や、高校生、中年女性の層もこの頃から現れ始め、伊勢丹など一階に化粧  品売り場が設けられている建物の開閉が激しくなる。故に「化粧品の拡散する」匂いが  充満し始めていると考えられる。 ・大型商業施設が開店し始め、床材である「高級店の床の大理石」が現れる。エントラン スの豪華さを象徴していると考えられる。 ・昼間になると人の量が徐々に増えてくるので、四つ角の多い新宿三丁目では人と車によ る交通の停滞が起き始める。

fig.4.30) 新

fig.4.32) 商業施設名

fig.4.31) 地下から上がって     広がる世界

fig.4.33) 商品にふれる

fig.4.34) 高級店の床

ー 111 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

4-3. フィールドワーク検証

4-3-4. 分析

ひる

fig.4.35)「ひる」分析用五感マップ

【ひる:五感マップの分析】  朝の五感マップに昼の要素⑧と⑨がプラスされるかたちである。 この二つは、ランチの時間になり、あさに比べて味覚である緑が増える。 青い視覚が増えているのは、 「ざわざわ」で、スーツ姿の人々が、新宿三丁目付近のオフィ スから一斉に新宿三丁目に向かってきたことが原因だと考えられる。 また、四つ角交差点には、触覚の紫が増えている。 これは人が増えたことで、交通が滞っていることを示しており、出会い頭に人と人がぶる かることで触覚が発生する。

ー 112 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

4-3. フィールドワーク検証

4-3-4. 分析

【よる:フィールドワークの分析】 ・様々な店の排気口からの「けむりっぽさ」が増える。fig.4.38) ・昼までは誰も座らなかった町中にある小さなくぼみや、石の腰掛けに人が座り始める。 ・多くの飲み屋が開店し「わいわい」が突発的に増える地域があった。 これらには、大きく分けて以下の2種類の地域があった。 一種類目は、新宿三丁目の南側 (IDC 大塚家具ショールーム付近 ) で、歩行者天国の四つ 角交差点を中心に「チェーンの飲み屋」が軒を連ねている。 ここでの特徴は、大学生など客層が若く、飲み屋への勧誘が多く見られた。 「個室ありますよ」というのが一言目に多い。 また、この付近では味が「こってり」した飲食店の看板が多く、若い層で賑わいをみせて いる。fig.4.37) 二種類目は、新宿三丁目のなかの末広通り付近で、「老舗の飲み屋」が軒を連ねていた。 ここでの客層の特徴は、会社帰りのスーツ姿の集団が多かった。fig.4.39) 一店舗一店舗の面積が狭いため道路にはみ出して「立ち飲み」している人が多く見られた。 焼き鳥を店頭で焼いていたり、厨房が丸見えだったりと、チェーンの飲み屋では見られな い風景があった。fig.4.40)

fig.4.36) 商業施設名 ( ネオン )

fig.4.38) けむりっぽさ

fig.4.37) こってり

fig.4.39) わいわい

fig.4.40) 肉の煙

ー 113 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4. 検証実験

4−3. フィールドワーク検証

4-3. フィールドワーク検証

4-3-4. 分析

よる

fig.4.41)「よる」分析用五感マップ

【よる:五感マップの分析】  基本的には、朝と昼の五感マップに夜の要素がプラスされるマップになるが、昼には開 いていた商業施設が閉まり始めるという点で違いがある。 様々な五感がプラスがされるが、なかでも飲み屋から発生する「わいわい」と「ざわざわ」 はマップに大きな変化をもたらした。 その代表的な場所が、①の末広町と⑪の歌舞伎町付近、⑩の新宿三丁目南側の飲屋街であ る。 また、駅前も混雑がピークに達し、「わいわい」と「ざわざわ」が入り交じったオレンジ 系の黄色になっている。 味覚の緑も一番多くなり、若者をターゲットの中心とした安くて「こってり」した味の看 板に電気が灯る。 これらの傾向より、よるが「新宿三丁目の個性における五感キーワード」が一番多く現れ ているといえる。

ー 114 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4−2. フィールドワーク検証

4. 検証実験 4-2. フィールドワーク検証

4-3-4. 分析

fig.4.42) 新宿三丁目フィールドワーク     「昼」「夜」写真比較

上記は新宿三丁目フィールドワークにおいて、同じ要素を「昼」と「夜」を写真で比較 したものである。 同じ対象でも時間帯からくる環境の変化で、キーワードが大きく違うことが分かった。 これらの写真比較から、まちの個性のキーワードは静的なものではなく、時間によって変 化する動的なものであると言える。

ー 115 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


4−2. フィールドワーク検証

4. 検証実験 4-2. フィールドワーク検証

4-3-5. まとめ

このフィールドワーク検証におけるまとめを以下に3点挙げる。 ①本編三章の五感キーワード調査の際に、『五感キーワードの中には「時間帯」の意味を  含むものがある』という分析より、今回は朝・昼・夜に分けて調査を行った。  この三種類の五感マップに大きな変化が見られたので、有効な結果を得る事が出来たと  いえる。  また、検証日が金曜のハロウィンということもあり、夜の賑わいが普段よりも大きかっ  たことが考えられ、普段の平日、土日祝日との比較などの検証の余地が見られた。

②新宿三丁目という小さな区画のなかにも、様々な「場所性」の区分分けが出来ることが 分かった。 これは時間ごとに変化し、常に動き続ける特徴がある。理由として、店の開店時間・閉店 時間の違い、人々の来街時間の違いが挙げられる。

③本編三章において、最終結果としてのグループで残った五感キーワードはフィールド ワークにより多く発見することが出来たが、同じく残った「珍回答」はなかなか見つける ことが出来なかった。 最終結果としての選択の裏付けにもなったといえるが、同時に「まちの見つけにくいマイ ノリティな個性」としての可能性も出てきたので、今後検討の余地がある。

本検証において、 「新宿三丁目の個性としての五感キーワード」が実際に新宿三丁目で「ど のキーワードを、どこでどのように感じたか」をフィールドワークにより検証し、最終成 果物として「五感マップ」を作成することが出来た。

ー 116 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


まとめ

5.

5-1. 結論 5-2. 今後の課題と展望


5. まとめ

5−1. 結論

5-1. 結論

都市空間は、その「まち」を象徴する様々な五感情報で溢れている。 そういったもので、「まちの個性」は形成されており、人々は普段、意識的・無意識的に それを五感で感じている。 本研究では、 「まちの個性」を五感情報により「五感キーワード」として抽出しただけでなく、 その抽出された情報と実際のまちとの整合性をフィールドワークにより検証した。 そして、 「まちの個性」とは、人間の都市生活の営みにより時間ごとに変化してゆくこと が明らかになった。

ー 118 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


5. まとめ

5−2. 展望

5-2. 展望

まちの象徴的存在である、駅。その駅の出口は、まちの入口でもある。  地上駅は随所にまちの情報を感じることが出来る。 しかし地下鉄空間は、地上に一駅一駅「まちの個性」が存在するにも関わらず、一様に無 個性である。 つまり、この「まちの個性」から抽出された五感情報は、地下鉄空間にこそ利用価値があ ると考える。 このように考えられる理由は以下の三点が挙げられる。 一点目は、地下はまち情報量が、地上より圧倒的に少ないこと。 二点目は、地下にはたくさんの出口が存在し、自分がどの出口から地上に出るかを取捨選 択する機会があること。 三点目は、近年、実際にまちと地下鉄を繋げようとする時代の傾向があるという背景があ ること。 これらの理由より、地下鉄空間に利用価値があると言える。 以下に地下のまちマップを、五感マップに置き換えたときのイメージ図を記す。

fig.4.1) 地下空間に置かれた五感マップイメージ図

ー 119 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


5−2. 展望

5. まとめ 5-2. 展望

目的地が特に決められていない場合での、初めて降り立つ地下鉄駅では、地上出口を選 択する際、今まで人々は「おもしろそう」と感じたところを、地図に記載されている店舗 名等だけで、直感的に選択していた。 この選択に「五感マップ」を使った場合、自分が「おもしろそう」と感じたそのまち特有 の五感情報から、創造的に選ぶ事が可能になる。 またこの五感マップは、時間ごとに動くので、常にリアルタイムに地上の五感情報を入手 出来る。このことにより、来街歴に関係なくそのまちの魅力を地下にいながら発見するこ とが出来る。 地上に出てまち歩きが促進されれば、地上と地下のリンクを強く出来たとも言える。  つまりこの研究によって、地下鉄空間が地上の「まちの個性」を伝える場となり、まち の新たな魅力を発見する手段の一つとなり得る。

しかし本研究では、空間把握の能力に長けている建築学科の学生を被験者としたため、 他の職業や年齢層に関する検討はできていない。 今後、実際の地下と地上のまちとのリンクを強くする運動に役立て、より汎用性のある指 標とするためには、新宿三丁目だけでなく様々なまちを対象にすること、マップ時間帯の 幅を広げること、フィルターのデータ数を増やし、より精密な抽出を行うなど、検討して いく必要がある。

ー 120 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


おわりに

6.

6-1. 謝辞 6-2. 参考文献

ー 121 ー


6−1. 謝辞

6. おわりに

ー 122 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


6−2. 参考文献

6. おわりに 6-2. 参考文献

参考文献 1.1) 社団法人 日本鉄道建設業協会 http://www.nikkenren.com/archives/doboku/archive/tekkenkyo/kaihou/233/24_01.htm 2014/10/21 1.2) 志水英樹 『街のイメージ構造』 技報堂出版 P8 1.3) ケヴィン・リンチ 「都市のイメージ」 岩波書店 P8 1.4) 関東マニア http://www.kantomania.com/prefectural/tokyo.html 2014/10/18 1.6) 都道府県人口ランキングと首都圏への人口集中 http://uub.jp/rnk/p_j.html 2014/10/20 1.7) 竹花洋子 他 『東京 23 区の人口動態からみる専門店集積地の研究一 ボロ ノイ駅圏マ ッ プに よる人口 の 可視化ー』 日本建築学会学術講演梗概集 2011 年

ー 123 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


6−2. 参考文献

6. おわりに 6-2. 参考文献

参考文献 1.8) 菊池弘祐 他 『ソーシャル・ネッ トワーキング・サービスを用いた都市・建築空間像の抽出 その 1 ∼ 利用者背景の分析と可視化の基本的手法の解明∼』 日本建築学会関 東支部研究報 告集 2013 年 1.9) 浅沼則行 他 『コイン通りにおける五感全体で感じられるサインの考察』 デザイン学研究 . 研究発表大会概要集 2007 年 1.10) 東京メトロ公式 HP 東京を歩こう http://www.tokyometro.jp/enjoy/walking/ 2014/10/20 1.11) 東京メトロ公式 HP 『color your days』 http://www.tokyometro.jp/corporate/ad/campaign_01/cm/2014_october/index.html 2014/10/21 1.12) 仙台市地下鉄東西線 WE http://we-sendai.jp/ 2014/10/21 1.13) 東京メトロ銀座線 ( 商業エリア ) 駅デザインコンペ http://compe.japandesign.ne.jp/metro2014/ 2014/10/21

ー 124 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


6−2. 参考文献

6. おわりに 6-2. 参考文献

参考文献 1.13) 東京メトロ銀座線 ( 商業エリア ) 駅デザインコンペ http://compe.japandesign.ne.jp/metro2014/ 2014/10/21

ー 125 ー Extraction of city characteristics based on information collected from five senses -On the ground but underground-


第二部 資料編

ー 126 ー


三章五感キーワード調査:新宿三丁目以外のまちのグループ結果

資料編

以下より、第一部本編三章の五感キーワード調査におけいて省略していた「新宿三丁目以 外のまち」をグループ化し優位を決めた結果を、五感ごとに記す。

視  覚

ー 127 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:新宿三丁目以外のまちのグループ結果

資料編

聴 覚

ー 128 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:新宿三丁目以外のまちのグループ結果

資料編

嗅  覚

ー 129 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:新宿三丁目以外のまちのグループ結果

資料編

味 覚

ー 130 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:新宿三丁目以外のまちのグループ結果

資料編

触 覚

ー 131 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


資料編

三章五感キーワード調査:最終結果詳細

以下より、第一部本編 第三章 五感キーワード調査の STEP 4において、最終結果の省略 をしていないデータを記す。 セルの色が青が「視覚」オレンジが「聴覚」ピンクが「聴覚」緑が「味覚」紫が「触覚」 である。 「新宿三丁目」とフィルターとして扱われる「その他のまち」の順番に記す。 また、黄色いセルは「新宿三丁目」と「その他のまち」との共通グループ名である。

新宿三丁目

ー 132 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:最終結果詳細

資料編

ー 133 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:最終結果詳細

資料編

ー 134 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:最終結果詳細

資料編

fig. 資料 .6) 省略なし最終結果      新宿三丁目編

ー 135 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:最終結果詳細

資料編

その他のまち

ー 136 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:最終結果詳細

資料編

ー 137 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:最終結果詳細

資料編

ー 138 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:最終結果詳細

資料編

ー 139 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:最終結果詳細

資料編

ー 140 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


三章五感キーワード調査:最終結果詳細

資料編

fig. 資料 .7) 省略なし最終結果      その他のまち編

ー 141 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 142 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 143 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 144 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 145 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 146 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 147 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 148 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 149 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 150 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 151 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 152 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


被験者による「印象的な新宿三丁目の写真」

資料編

ー 153 ー Extraction of city information as individuality collected from the five senses -On the ground but underground-


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