柏秀樹のビッグマシンを自在に操る2014年度版

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ち! ありが

理由

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エンストして失速! そのまま バイクを倒しそう

エンストしてしまうのはクラッチ操作がラフな証拠。スロットルをオンオフしながら クラッチミートをしているようでは、 クラッチ盤の微妙なつながり加減をいつまで も習得できないのだ。 そこで車体垂直+アイドリング回転で歩く速度以下を維 持するように徹底練習したい。車体垂直ならエンストしても転倒しない。左右フ ルステア (ハンドルをいっぱいに切った状態) が維持できるなら、 クラッチ操作 がうまくできている証拠だ。

極低速の クラッチ操作を

理由

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速度調整がうまくいかなかったり ブレーキ時のショックでバランスを崩しそう

解決

!

ち! ありが

強く効かせるだけがブレーキングじゃないぞ

! 解決

車体が垂直ならフロントブレーキ入力 が少々ラフでも簡単には転倒しないの だが、 そんな事態を防ぐため、垂直を徹 底するとともにラフなフロントブレーキ 入力を改善しよう。 ブレーキはクラッチ と同じくラフに扱うと急激な姿勢変化 をもたらすのでバランスを崩しやすい。 じんわりとレバー入力することを意識化 して習慣化すれば、 Uターン時のミスは 防げる。 まずは直線でのブレーキじんわ り入力を徹底練習しよう。

足着きの悪さを理由にしない! Uターン達成ライン

Uターンを構成する各要素

合計

メカ知識

マシン

体格

ライテク

体格ハンデを持つライダーにとってUターン 克服は大きな壁。でも、 それを様々な方法で クリアしている人が多いのもまた事実だ。U ターンは、左図のように各要素が絡んで達 成する。体格ハンデをカバーするために、小 型バイクで腕を磨く人や、大型バイクで取り 回し練習を徹底的にやる人もいるし、 サッサ とバイクから降りて向きを変えることでヨシと

特別

柏秀樹のビッグマシンを自在に操る 編

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「無理をしない」 で Uターンがうまくなる!

するライダーもいる。要は少々手間取っても 周囲に迷惑を掛けず、転倒しなければ良い だけのこと。今回紹介する内容を確実に実 行すれば大半のUターン時の転倒は避けら れるはずだ。体格を言い訳にしないことが素 敵だと思うし、逆に体格に恵まれていても、 ラフな操作能力のまま乗り続けている例が 多いのも、 また事実なのだ。


この3つを克服しよう

あなたがUターンを   恐れる理由 Uターンが苦手に思えるのは、主に転倒につながる3つの操作がその原因。 まずは、 その3つが何かを、 しっかりと理解してほしい。

速度を出して回るUターン は、車体をバンクさせてい るので転倒リスクが高い。 しかもスピードに依存した 乗り方なので、 クラッチやス ロットル、 ブレーキの微妙な 操作加減が習得できない。 滑りやすい路面や低速トル クが薄いバイクなどでは、 さ らにリスクが高くなる。そん な事態を防ぐには、 じれった くても平坦路で両足を出し たまま、車体をほぼ垂直に してハンドルフルロックでU ターンすればいいのだ。

ち! ありが

寝かせている最中に バランスを崩してバイクを 倒しそう

1 理由

! 解決

バイクを まっすぐにして 曲がれば いいじゃない!

転倒につながる本質を キチンと理解しておく

Uターン時の転倒理由は大きく分け

て3つ。ひとつは車体の傾斜。ある程

度スピードを出して勢いで旋回する人

ほど道が狭いと途中で怖くなって転倒

する例がよくある。周囲がサクサクと

やってバタンというパターンも多い。

U ターンするから、自分もつられて

モタモタしても転倒しないのがいちば

ん。速度を落として車体を垂直に近く

すれば、転倒確率は減少する。足が届

かないなどの理由で自信がなければ

﹁降りてやればいい﹂。降りてやるの

も立派なUターンだし、降りてやる取

り回しの能力は、乗ってやるUターン

の基礎にもつながる。

もうひとつはスロットル操作とク

開けたり戻したりしつつ、クラッチをつ

ラッチ操作がラフだから。スロットルを

すくなるのは当然。まずは安全安心な

ないだり、切ったりすればエンストしや

車体垂直と歩く速度以下で正確な半ク

ラッチ操作の集中練習をしよう。

操作をすると転びやすいが、特にフロ

最後はブレーキ操作。バイクは急な

ントブレーキは利きが鋭く、ガツンと

かけた時は姿勢変化も大きいので転倒

確率がグンと高まる。普段から優しい

フロントブレーキ操作を習慣化してお

けば、その危険は大幅に減るはずだ。

合って転倒する。これを防ぐためには、

実際にはこれら3つの理由が絡み

繊細な操作の習得が必須。Uターンの

達人への道はそこから始まるのだ。

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まっすぐ走れないうちは Uターンで曲がれるワケがない 低速で直進ができなければUターンはできない。極論だが大 筋では当たっているだろう。 Uターンに必要なバランス感覚は クラッチ、 アクセル、 ブレーキと身体による補正の組み合わせ なのだから。安全安心の垂直状態でこそ各操作の完成度が チェックできる。不安を感じる状態でチェックは無理と言うもの。 クラッチの断続、 アクセルのオンオフ、 ブレーキ入力の微妙な 操作を垂直で賢く習得するのがキモだ。

発進はアイドリング 一定回転で セテリスパリバス (他の 条件を一定にという意 味) がポイント。発進時 にパワーが増減すると クラッチミートの練習に ならないので、 アイドリン グ厳守で条件を合わせ るのだ。

フェザーグリップで 繊細なスロットルコントロール

つま先で支えるくらいが まっすぐバランスを会得しやすい

グリップから手を浮かせるのでフローティング・グリップ=FGとも呼ぶが、思わず 強く握っている状態は危険であり疲労も早く来る。だから5分または5㎞に一 回、 強く握ってからグリップから手を浮かせるリラックス方法を停車時や直線走 行で行う。アクセルの繊細操作もここから始まるのである。

実際にはロールバランスと ステアバランスで まっすぐ走っている 速度が出るほど車輪回転の遠心力で安定性が増し、逆に低速になるほど不 安定になる。 そこでバランスをとるわけだが、車体を左右に振ってバランスを取 る (ロールバランス) こともできるし、 ハンドルを左右に切ってバランスを取る (ス テアバランス) ことも可能だ。だが、 実は無意識にその両方を使ってバランス補 正しつつ直進しているものである。バランスが取れないのはその対応力が不足 しているため。 まずは両足を出したままでロールバランス、 そしてステアバランス を練習し、 後に合流させると、事の本質が見えてくる。

体力、 体格に頼るとコ トの本質が不明確に なりやすい。 目的はバ ランス能力アップだか ら、垂直を体感しやす いつま先立ちで練習 する。両足先が着かな いなら足の届く車両へ 変更するのが理想だ。

確実に 着きたいほうの 足を着くには 止まった直後に ハンドルを 少し切る

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「無理をしない」 で Uターンがうまくなる!

逆操舵を有効利用して低速バランス能 力&チェック能力を高める賢い方法がこ れ。停車は両足先の同時着地が理想 だが、 どうしても左右どちらかに偏りやす い。着きたい方の足を着けるようになり たいのならば、停車してからグイッとハン ドルの右を前へ押す。すると車体が右に 傾斜して右足が着ける。逆も同じだ。そ うならない場合は車体垂直の完成度が 低い証拠と判断していい。


﹃バイクを寝かすと倒れそう ﹄だって?

まっすぐ走れば   バイクは倒れない 直線走行ではUターンできないが、実は必要なことが数多く詰まっている。 まずは直線バランスを確認し、無駄なUターンミスを避ける第一歩としたい。

両足先がギリギリの人も両足が余裕で着く人も、 まずはエン ジンを始動せずに両方のつま先だけで車体垂直維持にトラ イしよう。かかとで支えると車体が斜めでも気が付きにくいた めだ。車体をわずかに左右に振って、 もっとも軽い位置を探る。 そこが垂直だ。両足先が短時間でも宙に浮くぐらいがベスト。 目線は前で両手の力をギュッと入れてからスッと抜き、上半身 がリラックスできるよう呼吸を管理 (BC=ブレスコントロール) 。 できればロングブレスで。積極的なBCこそリラックスの有無 を知りつつ垂直基準が保てる大きなポイントとなる。

車体を立てる 「垂直基準」を 身につけよう

腰がズレてる人 が意外と多い

後ろ姿は自分ではなかなかチェックできな いが、足着き確保のため片方にずれたま ま走行しているライダーを見かけることが ある。走り出したらシート中央に座り直す ように習慣化しよう。クセで片方の肩が 下がる例もある。左右対称を心がけて正 常なバランス感覚を高めたい。

車体がまっすぐなら、 他の練習をするにも安心

車体が垂直ならクラッチ、アクセル、

ないもの。車体垂直による安心感を有

ブレーキが少々ラフでもなんとか転ば

効利用するのがココでの狙いだ。

まずはエンジンを始動せずに両足を

出したままでのバランス取りを徹底し

て欲しい。走り出す前のことで何のこ

とはないようだが、少しでも両足が浮

いている時間を多くするようにしなや

かさを保つため、身体全体の力を抜く。

そしてゆっくりと長く呼吸する。鼻で

素早く大きく吸って、息を口からゆっ

くり吐く。脱力しながら息を吐く時間

を主体にするのだ。できれば両肩を大

きく上げ、両手をギュッと握ってから、

両肩を落としつつ吐く。特に手と上半

身を脱力しながら息を吐く方がより効

果的なのだ。エンジンをかけての様々

な練習でちょっと息詰まったら、こう

したリセットが実に効果的であること

を覚えておきたい。

次にエンジンを始動して、ゆっくり

とクラッチをミートする。エンジン回

転もアイドリングか+500回転程度

に留めたい。クラッチミートについて

は後に詳しく解説するが、まずはまっ

すぐふらつかないように発進すること

に専念しよう。ハンドルに力を入れず、

両足が出ているからこそ転びにくいし、

左右対称になって直進バランスがとり

やすいことを知ることができる。

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5m

5m

兄弟それぞれの段階で 5mずつ走ってみる

5m

3兄弟のクラッチ位置を確実に身に付けるための練習方法をひとつ。アイドリング発進で最初の長男は特に落ち 着いて、 できるだけふらつかずに5mの間3㎞/hの一定速度になるようにクラッチ位置を固定する。 ここでスイスイ とレバーを離してしまう例が多いが、 それだと半クラが覚えられない。 しっかりと同じ速度をキープしよう。5mを通過し たら、 レバー先端で1ミリだけレバーを緩めて次男の位置で固定。速度にして5㎞/h固定が目安だ。 そして5m走っ たらさらに1㎜レバーを緩めて三男に。 もちろん、 ここでも5m走る間クラッチを維持をすること大切に。

レバーを 扱いやすいように 調整しておきたい

アイドリング回転で クラッチのつながりを体感しよう

まずはレバーの距離から。 グリップ に対して45度ぐらいで握ったとき に4本の指が届き、第一関節でレ バー操作ができるようにダイヤル で調整。それが適正距離の目安 だ。調整機能がない場合はショッ プなどに相談したい。

スロットルを開け閉めしながらクラッ チミートするとエンストしやすいし、 い つまでも正確なクラッチミートが習得 できない。写真のように車体垂直、 両足出しのままアイドリング回転で 動きはじめの長男から次男、三男の 流れを段階的に練習して、 クラッチ のつながり方を身体に刻み込もう。 ド キドキしない笑顔でできるなど、 自分 なりのモノサシをそこに作れると楽し くなるし、達成度が正確にチェックで きる。アイドリング回転で行うことが 大前提だ。

高さも大事で写真は悪い例。手 首が下がるほどレバーが上がって いるとハンドルを切った時にヒジ や肩の動き、つまり上体の動きを 制限しやすい。軽くヒジを外に出し てグリップ4 5 度 握りをした時に ちょうどよい高さに設定すること。 レバー位置は、 スラスト方向つまり 横方向も、 レバーホルダーの位置 を調整することで可能だ。写真で 指をさしているのはホルダーを1㎝ ほどステム側に移動させた状態。 お好みのレバー位置を決める際 にここも使おう。

人気のホンダNC700シ リーズは左右レバーの位 置調整機構を持っていな いのが泣き所。 その対策と してユーザー間で話題の 社外パーツがU-KANAYA のアルミビレットレバー (左 右セッ ト1万1664円∼ htt p://u-kanaya.com/) だ。 色も計42パターンから選べ、 他車種用も豊富に揃う。

NC700用の アジャストレバー

ベテランの人も ぜひ挑戦を ここで紹介している練習は一見簡単に 見えるが、実際に試してみるとベテラン でもギクシャクしたり、 ふらついたりする ことが多い。 しかし、 そこで改善すべき 点が見えてきたらベスト。できるかどうか だけではなく、質のアップを常に考える ことが大事だ。

意外と 出来ない もんだよ

愛車のエンスト限界を 知っておくとUターンで 恐くなくなる Uターン中のエンストは確かに怖い。だけど、 エンストする限界ギリギリのところが分 かっていれば、恐れずに躊躇なくUターンができるはずだ。 そのために、実際どのくら いでエンストするかを体感しておくといい。 たとえば1速・直線走行・ノークラッチ・時速 20㎞/h一定というシチュエーションで、 アクセルを戻さずにリヤブレーキを徐々に踏 んで行く。すると速度が落ちていき、限界が訪れるとエンストする。 これを繰り返せば、 自分の愛車がどこでエンストするかを身体で覚えることができ、 ギリギリまでコントロー ルできるようになるのだ。

特別

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「無理をしない」 で Uターンがうまくなる!


今日を最後に エンストとさよなら 解決法は半クラ3兄弟 Uターンや低速バランスのキモが半クラッチ。半クラが上手くなるとクラッチが痛まず、 滑らかさもアップし、燃費だって良くなるので1石3鳥以上だ。

違いはわ ず か 数 ミリ だが 個 性の分 か れた 半ク ラ 3兄 弟 さぶろーくん 三男

じろうくん 次男

はじめくん 長男

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クラッチのつながり始めをイメージしやすいように、2台の扇風機をクラッチ板に例えてみよう。空気 がクラッチ板の間のオイルに相当する。 クランク側に見立てた片方の扇風機 (ピンク) を回して、 ス プロケット側に見立てたもう1台の回っていない扇風機 (緑) を近付けていくと、 ある程度近付いた ところでゆっくり回り始める。 ここが長男のつながり “はじめくん” だ。時速にして約3㎞/hで、歩くより もゆっくり。 しっかり反復練習して、 この位置を思い通りにキープできるようになっておきたい。

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さらに扇風機を近付けると、 スプロケット側の扇風機 (緑) の羽は少しずつ回る速度を上げていく。 それでもクランク側と比べると半分くらいだ。 この辺りが次男の “じろうくん” 。長男の場所からレバー 先端で1㎜ほど緩めたところで、速度は5㎞/h程度まで達しているはず。動き出したバイクに安心し て、 そのままスッとクラッチを離してしまいがちだが、 しっかり固定して車速を一定に保つのがキモ。 ここでふらつきがなければ理想的な状態だ。

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さらに近付けて両方の扇風機の羽の回転速度がほとんど同じになったところが、三男の “さぶろー くん” である。 クラッチ位置は次男のところからさらに先端で1㎜離したあたりだ。 ここでは歩くよりも 速い7㎞/hくらいの速度になっている。 ちなみに三男に至った段階でスロットルを開けることが多い のだが、 ここでもアイドリングのままクラッチをキープできるようになりたい。最終的に長男、次男、三 男のどの位置でも思い通りに固定できるまでトレーニングしよう。

Uターンの原点は ココにある

ここではUターンテクニックの要の

ひとつ、クラッチ操作について考えて

みよう。ご存じの通り、Uターン中の

エンストはかなり危険なもの。それを

避けるために身に付けておきたいのが、

正確なクラッチ操作だ。

私は半クラッチを3段階に分けて使

えるようになることを推奨していて、

それを分かりやすいように〝半クラ3

兄弟〟と仮に名付けている。つながり

はじめの〝長男〟と、そこからもう少

しつなげた状態の〝次男〟、そしてほ

合だ。これを状況によって使い分ける。

とんどつながっている〝三男〟という具

るし、深いバンクまで持ち込むUター

例えば発進では当然長男が必要にな

ンでは次男と三男を使い、そして滑ら

かなシフトワークは三男が主役となる。

どれかひとつができればいいのではな

く、意識してすべてを使いこなせるよ

うになることが重要なのだ。

もちろん、それは簡単にできるよう

になるものではなく、正しい順序で繰

り返し練習することが不可欠である。

詳細については上記に譲るが、もうひ

とつ大切なことは、力を抜いてリラッ

クスして、楽しみながら練習をするこ

とだ。目を三角にして必死にやるとう

まくなったような気になるが、緊張し

た状態で練習しても重要な情報は脳に

刻まれない。むしろ転んでケガをする

可能性が高くなるだけだ。バイクを楽

しみながら練習をする余裕がほしい。

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