02_Economic Structure_JP (16-12-2016)

Page 1

経済構造 2.1 2.2 2.3

国内総生産と産業構造. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 33 国際統合. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 36 主要産業クラスター.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 38

2

画像 Ypsomed AG, Solothurn


世界でも自由で競争力の高い経済で知られるスイスは、常に他国 との密な経済関係を維持してきました。投資家にとって、スイスは 堅牢な法体系と長期間安定した国家基盤を持つ国であり、総体的 に規制が少なく、研究機関にも近いため、欧州で質の高い製品やサ ービスを提供する事業拠点として選ばれています。

2.1

国内総生産と産業構造

スイスの国民1人当たりの国内総生産(GDP)は世界第4位です(図7) 欧 。2015年の国民1人当たりのGDPは80,692スイスフランに達し、 州連合 (EU) の平均を大幅に上回っています。これは、 フランスより 121 %、 ドイツとイギリスよりそれぞれ95 %、 83 %高い水準です。サ ービス部門はGDPの約70 %を占めています。GDPの25 %を占め る工業部門も経済の要です。キーセクターは化学品、 資本財、 金融 業です。スイス経済は輸出志向が強く、 GDPに占める割合で見る と、 対外貿易は世界で最も高い水準にあります。EUはスイスにとっ て重要な貿易相手であり、 輸出の43 % 、 輸入の64%をEUとの取引 が占めています。スイス経済では中小企業(SME)が多数を占めて います。国内企業総数の99 %以上は従業員数250人以下の企業で す。その一方で、 スイスに拠点を構えている多国籍企業もありま す。 こうした企業は、 国内総生産の約3分の1に当たる付加価値を稼 ぎ出しています。多国籍企業は全雇用者数のうち約3分の1、 すな わち130万人を雇用しています。従業員は意欲にあふれ、 責任感が 強く会社に対する忠誠心も旺盛です。スイスのこのような特質が、 産業やサービス業における品質重視の精神に現れています。

1人当たり国内総生産(名目)2015年 米ドル (図 7)

1 ルクセンブルグ 2 スイス

102'658 80'692

3 カタール

76'169

4 ノルウェー

74'715

5 USA

55'805

6 シンガポール

52'888

7 デンマーク

52'148

8 アイルランド

51'355

9 オーストラリア

51'211

12 オランダ

44'566

13 英国

44'025

16 香港特別行政区

42'421

18 ドイツ

41'288

19 ベルギー

40'357

22 フランス

36'483

24 日本

32'484

25 イタリア

29'852

47 ロシア

9'020

49 ブラジル

8'631

50 中国

7'905

61 インド

1'638

出所:IMD World Competitiveness Online 2016

経済構造

33


スイスの労働者の約75 %がサービス業に従事しています。製造業 部門は22 % (図8)です。先進工業諸国では工業部門の重要性が低 下する傾向にありますが、 スイスでは第二次産業の就業者の絶対 数は過去20年ほど安定しています。

競争力を表す国際指標ではスイスは長年トップクラスにランキン グされています。2016年には世界経済フォーラム(WEF)のランキ ングで8年連続の1位に輝きました(図9)。スイスはイノベーション、 労働市場の効率性、 公的機関の透明性の項目で最高点を獲得して います。

産業構造及び雇用率 2016年度

国際競争力ランキング、2016年 総合評価1-7

図8

(図 9)

産業

(農林業を除く)合計 第2次産業合計 鉱業および岩石や土壌の抽出

就業者(2016年第2四半期)

1,000人

%

4907.50

100 %

1079.7 4.8

22.00 % 0.10 %

1 スイス

5.81

Sc

2 シンガポール

5.72

Sin

3 米国

5.70

US

4 オランダ

5.57

Nie

5 ドイツ

5.57

De

6 スウェーデン

5.53

Sc

7 英国

5.49

Ve

Ja

製造、 加工

681.0

13.88 %

エネルギー

29.6

0.60 %

8 日本

5.48

水の供給と環境汚染除去

18.7

0.38 %

9 香港特別行政区

5.48

Ho

346.5

7.06 %

10 フィンランド

5.44

Fin

17 ベルギー

5.25

Be

20 ルクセンブルグ

5.20

Lu

21 フランス

5.20

Fra

23 アイルランド

5.18

Irla

28 中国

4.95

Ch

39 インド

4.52

Ind

43 ロシア

4.51

Ru

44 イタリア

4.50

Ita

81 ブラジル

4.06

Br

建設会社/建設 第3次産業合計

3,825.8

77.96 %

自動車の売買、 メンテナンス、 修理

649.5

13.23 %

運輸と倉庫

238.7

4.86 %

観光、 宿泊、 飲食など

249.5

5.08 %

IT/通信

162.4

3.31 %

金融サービス・保険業

241.3

4.92 %

60.5

1.23 %

自由業、 科学者、 技術関連サービス

412.0

8.40 %

その他サービス業

332.2

6.77 %

公的機関

204.3

4.16 %

教育や研修

339.6

6.92 %

医療/社会福祉

687.8

14.02 %

不動産・住宅関連

芸術・娯楽・リラクゼーション その他サービス業 出所:スイス連邦統計局 (BFS)、 雇用統計 (BESTA)

96.0

1.96 %

152.3

3.10 %

出所:出典: 世界経済フォーラム、 国際競争力レポート 2016-2017


イノベーションに関してもスイスは世界のトップクラスです。2016 年には世界で最も革新的な国として5年連続でグローバル・イノべー ション・インデックスのトップに輝きました(図10)。 グローバル・イノベーション・インデックス、2016 総合評価0-100 (図 10)

1 スイス

66.3

Schweiz

2 スウェーデン

63.6

Schweden

3 英国

61.9

Vereinigtes Königreich

4 米国

61.4

USA

5 フィンランド

59.9

Finnland

6 シンガポール

59.2

Singapur

7 アイルランド

59.0

Irland

8 デンマーク

58.5

Dänemark

9 オランダ

58.3

Niederlande

10 ドイツ

57.9

Deutschland

12 ルクセンブルグ

57.1

Luxemburg

14 香港特別行政区

55.7

Hongkong SAR

16 日本

54.5

Japan

18 フランス

54.0

Frankreich

23 ベルギー

52.0

Belgien

25 中国

50.6

China

29 イタリア

47.2

Italien

43 ロシア

38.5

Russland

66 インド

33.6

Indien

69 ブラジル

33.2

Brasilien

出所:INSEAD、 グローバルイノベーションインデックス 2016年

「スイスは世界トップのイノベーション 大国です。スイスは特にイノベーショ ン・アウトプットが抜きん出ており、 イノ ベーションにとって理想的な環境を提 供しているほか、 市場と経済の高い成 熟度によって見る者を納得させていま す。 」

経済構造

35


2.2

国際統合

スイスは国内市場の規模が小さく水以外の天然資源に乏しいた め、 企業は工業生産の黎明期から最も重要な販売市場を国外に求 めざるを得ませんでした。企業の多くは産業が誕生した当初から、 最も重要な販売市場を外国に求めざるを得ませんでした。この国 外に対し解放的にならざるをえなかった状況のおかげで、 スイス は世界貿易において重要な役割を担うことになったのです。輸出 はGDPの約32 %を占めています。スイスは最大の輸出国の中で も、 商品およびサービスの輸出ともにトップの座にあります。

経済地域別外国貿易、2015年 輸出入額 単位:十億CHF (図 11)

157.0

EUおよびEFTA

欧州外工業国

転換期経済

25.1 42.2 17.6

49.1 21.5

開発途上国

輸出で成功を収めている工業分野の典型的な例として挙げられる と呼ばれる分野です。高度 のは、 スイスの「国内自動車・航空産業」 に専門化された生産システムや処理システムを持つ企業のネットワ ークは世界ではあまり知られていませんが、 精密工学、 マイクロメカ ニクス、 素材技術や合成樹脂、 繊維などの様々な分野にコンポーネ ントを提供しています。これらのスイス企業はテクノロジーとイノ ベーションの先導者として、 高品質-高精度な製品を生み出す信頼 のおける存在として、 地位を確立しています。 スイスはWTO協定の締結国であり、自由貿易協定を結び、 EFTAの EU & EFTA 一員として、 またEU諸国との2国間協定を通じ、 常に市場の自由化 に取り組んできました。一貫して市場の自由化を推し進めてきた結 果、 市場としての規模は小さいながらも、 スイスは効率の良い交易 Aussereuropäische Industrieländer の中心となり、 経済的に重要な市場へと成長を遂げたのです。 Transformationsländer

22.9 22.4

新興諸国

輸入

121.7

2.2.1 物品とサービスの貿易 欧州はスイスにとって最大の貿易相手です(2015年)。輸入の3分の 2、 輸出の約45%をEU諸国との取引が占めています。ドイツは伝統 的にスイスの最も重要な輸出入先です。主要輸入先の第2位はイ タリア、 第3位はフランスです。米国はスイスにとって2番目に大き な貿易相手であり、 フランスがにれに続きます。経済ブロック別で みると新興工業国は輸出の33 %、 輸入の18 %を占めています。

43.0

Schwellenländer

Entwicklungsländer

輸出

出所:連邦税関局 (FCA) 2016年

「スイスは外国人投資家にとって魅力的 な立地です。2014年の対内直接投資によ る資本ストックは、 トータルで7560億スイ スフランに上りました。 」


2.2.2 直接投資 スイスは世界市場との最も強力なネットワークのなかの一つとし て世界中で認識されています。2014年の海外直接投資は1,056億 CHFでこれは、 GDPの165 %に上りました。これに対して、同年のオ ランダの対外直接投資は対GDP比76 %、 英国は56%でした。対外 直接投資を行っているスイス企業は国外の子会社や事業部門で約 300万人の雇用を生み出していますが、 これらの企業はスイス国内 においても重要な雇用主となっています。スイスの対外直接投資 は金額ベースで世界10位以内です。米国に対して直接投資を行っ ている国々の中で、 スイスは第8位にランクされており、 スイスの直 が2014年の米国への直接 接投資の18.1 % (1,915億5,300万CHF) 投資です。

また、 スイス自体も海外の投資家、 とりわけEU (全体の77.7 % と米国の投資家にとって魅力的な投資先と 、 5,871億9,300万CHF) いえます。スイスにおける米国人投資家の資本ストックは13.2% 、 997億4,800万CHFに達しています。

直接投資 による資本ストック、2014 (図 12)

2014年末の資本ストック

スイスの対外 直接投資

スイスの対内直接投資

百万CHF

%

百万CHF

%

1,056,265

100.0 %

755,785

100.0 %

460,531

43.6 %

587,193

77.7 %

英国

58,894

5.6 %

25,726

3.4 %

ドイツ

33,618

3.2 %

24,387

3.2 %

合計 EU

オランダ

97,137

9.2 %

178,211

23.6 %

127,401

12.1 %

188,510

24.9 %

フランス

33,621

3.2 %

39,818

5.3 %

イタリア

16,243

1.5 %

4,258

0.6 % 1.3 %

ルクセンブルグ

スペイン

8,636

0.8 %

9,596

オーストリア

7,621

0.7 %

59,557

7.9 %

その他欧州

36,549

3.5 %

12,192

1.6 %

オフショア金融センター

18,758

1.8 %

n.a.

n.a.

9,328

0.9 %

n.a.

n.a.

北米

232,334

22.0 %

99,497

13.2 %

米国

191,553

18.1 %

99,748

13.2 %

ロシア連邦

カナダ

40,780

3.9 %

-251

0.0 %

中南米

192,823

18.3 %

44,463

5.9 %

13,583

1.3 %

n.a.

n.a.

ブラジル オフショア金融センター

158,317

15.0 %

46,090

6.1 %

アジア、 アフリカ、オセアニア

134,028

12.7 %

12,439

1.6 %

9,183

0.9 %

3,915

0.5 %

シンガポール

日本

17,314

1.6 %

n.a.

n.a.

中国

20,340

1.9 %

n.a.

n.a.

香港特別行政区

5,913

0.6 %

n.a.

n.a.

台湾

1,818

0.2 %

n.a.

n.a.

インド オーストラリア

4,512

0.4 %

n.a.

n.a.

15,640

1.5 %

n.a.

n.a.

出所:スイス国立銀行 (SNB) 、 直接投資 2015年

経済構造

37


2.3

主要産業クラスター

絰済的な観点では、 クラスターは一定の地域内で近接する製造業 者、 サプライヤー、 大学などの研究機関、 設計者やエンジニアなどの サービスプロバイダー、 そして商工会議所などの関係機関によるバ リュ—チェーン(例: 自動車製造)に沿った共通の取引関係を通じて 生まれるネットワークと定義され、 自動車製造などがその一例です。 クラスターを形成する企業や機関は供給、 競争あるいは共通の利害 を通じて結びついています。こうしたネットワークがクラスターと呼 ばれるのは、 1つ以上のバリューチェーンに沿って活動を相互に補完 したり、 関連し合っている多数の企業が集まっている場合に限られま す。そうなって初めて成長の基盤が築かれ、 サプライヤーや専門の サービスプロバイダーを誘致でき、 関係するすべての企業の競争優 位につながるのです。 スイスにはこのような産業クラスターが複数存在しており、 国際的 に見ても重要な産業クラスターとされています。以下では最も重 要なスイスの業界別クラスターを簡潔にご紹介します。クラスター は重複する場合があるため、 掲載した数字はあくまで参考としてご 覧ください。 2.3.1 ライフサイエンス:化学/製薬、バイオテクノロジーおよ びメディカルエンジニアリング ノバルテイス、 ロシュ、 シンジェンタなど大成功を収めている世界的 なコングロマリットと中小企業がスイス北西部で独特な産業クラスタ ーを形成しており、 バーゼルとその周辺地域が国内外の製薬会社や 化学会社の拠点として選ばれています。スイスの化学・製薬産業は 事実上、 特殊化学品に特化しており、 国際市場を視野に入れて活動 しています。製品ポートフォリオのおよそ4分の3をライフサイエン ス製品 (生体の代謝過程に作用する製品)が占めています。また、 国 外での売上高は全体の98 %に達しています。化学品・医薬品はスイ スの最も重要な輸出品であり、 物品輸出の42 %を占めています。ス イスに拠点を置く医薬化学会社は、 数多くのセクターで世界屈指の 地位にあり、 約42,000人もの従業員を抱えています。対GDPセクタ ーシェアは4 %に上ります。スイスでこれを越えるのは機械金属産 業のみです。 ノバルテイス、 ロシュというメガ・ファーマ (巨大製薬企業)や近年 スイスに進出をしたCSLベーリング、 UCB、 グレンマーク、 バイオジ ェン・アイデックなどがもたらす波及効果によって、 バーゼル、 ベル ン・フリブ—ル•ヌーシャテル地域、 レマン湖周辺にバイオテクノロ ジーのクラスターが形成されました。2015年末現在、 バイオテク ノロジー開発企業は219社、 バイオテクノロジー供給会社60社、 従業員約15,000人を抱えています。バイオテクノロジー企業力 にれほど集中している地域は世界でも例を見ません。スイスの バイオテクノロジー企業の半数以上は従業員数20人未満の小規 模企業です。これらの企業にとっては、 スイス国内や近隣諸国の 大手企業と地理的に近いことがメリットとなっています。スイスに 本社を置く国際大手企業であるアクテリオン、 アムジェン、 バイオ ジェン・アイデック、 クルーセル、 メルクセローノは欧州で業界をリ ードしています。

医療技術企業も数多くスイスにあります。医療技術セクターはメー カー約350社、 サプライヤー約500社、 販売-流通260社以上、 専門サ ービスプロバイダー約330社で構成されており、 これらの企業は主 にレマン湖地方、 ベルンからビールにかけての一帯、 バーゼル地 域、 チューリヒ都市圏に拠点を置いています。スイスで生産される 製品の75 %が輸出され、 これはスイスの輸出全体の5.2 %に相当し ます。2015年の純売上高は約149億スイスフランでした。R&D投 資、 成長率、 利益率は平均をはるかに超えています。医療技術分野 においては合計約51,400人の従業員数を雇用しています。これは 労働人口に占める割合が1 %に相当し、 他のどの国より高い水準を 示しています (ドイツ:0.4 %、 英国、 EU、 米国:0.2 %). 従業員数が最 も多いのはシンセスで、 口シュ・ダイァグノスティックスゃジョンソ ン&ジョンソン・メディカルがそれに続きます。世界で事業展開して いるスイス企業としては、 このほかにイプソメド、 ソノバ(補聴器)、 ス トローマン(歯科用インプラント)などが挙げられます。ジンマー、 メ ドトロニック、 ビーブラウン、 ストライカーなどの大手外資系企業も 存在感を示しています。 www.s-ge.com/invest-lifesciences ライフサイエンスの拠点としてのスイス 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語、 スペイン語、 ポルトガル語、 ロシア語、 中国語、 日本語 www.scienceindustries.ch スイス化学・製薬・バイオテクノロジー工業連合会 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語 www.medical-cluster.ch メディカルエンジニアリング・ネットワーク 言語:言語: ドイツ語、 英語 www.fasmed.ch メディカルエンジニアリング・ネットワーク 言語: ドイツ語、 フランス語


2.3.2 機械、電子工学、金属工業 機械、 電子工学、 金属工業 (MEM) はスイス最大の産業部門であ り、 321,000人が働くスイス経済の柱です。2014年、 同産業が創出 した付加価値は全体の約9 %でした。 スイスの機械・電気・金属産業には、 サブセクターにおいて世界のト ツプを走る企業が数え切れないほどあります。MEM産業製品のお よそ80 %は輸出にあてられ、スイスの輸出総額の31 %をMEMが 占めています。 ザウラー、 リーター、 シンドラー、 ABBなど有名な金属・機械産業の大 手企業は、 ほぼすべてのカントン(州)に拠点を置いています。チュ ーリヒ⁄アールガウ州、 ティチーノ⁄ヴァレー州、 ライン峡谷、 スイス 中央部を中心に、 世界有数の成長を遂げています。製造原価の安 い国に対抗するため、 大半の企業は技術革新と品質に的を絞り、 世 界市場における地位の維持と拡大に努めています。機械、 電子工 学、 金属工業が今日でも国際市場で競争力を持つのは、 進んだ改 革と新技術を活用しているからこそです。 スイスの時計産業は、 主にジュネーブからシャフ八ウゼンに至るジ ュラ地方(「時計メーカーのベルト地帯」 と呼ばれています)を中心 に、 ミッテルラント、 ティチーノ、 ヴアレーに拠点を置いています。一 部の立地は、 ミッテルラント、 ティチーノ、 ヴァリスにもあり、 これらの 地域ではジュネーブ、 ビール、 またラ・ショー=ド=フォンが時計製造 の三大中心地となっています。スウォッチグループ、 IWCシャフハウ ゼン、 ローレックスSA、 リシュモンSA、 LVMHグループなどの企業は 本社拠点をここに置いています。 スイスの時計産業は高度技術が 深い分業化によって実現している高度な製品を生産しています。 このため中小企業が多く、 1社当たりの平均従業員数は70人未満で す。2015年現在、 約600社に59,000人が勤めています。企業と就業 者の95 %はジュラ地方の9つの州に集中し、 時計産業クラスターを 形成しています。スイスの時計メーカーは、 特に高級時計の分野に おいて世界市場で抜きん出た地位を獲得しています。スイスで生 産される時計の95 %は輸出され、 2015年の輸出額は215億スイス フランでした。

2.3.3 ICT(情報通信技術) スイスは、 ITコミュニティーに必要なインフラ設備の開発に関し高 い評価を得ています。OECDの調査によると、 固定ブロードバンドの 人口普及率は52 % であり、 オランダ、 デンマークを抜いて世界のト ップに立っています。14歳以上人口の85 %以上がインターネット を使用しています。また、 世界経済フォーラムがまとめたITネットワ ーク整備指数(2016年版)で、 スイスはフィンランド、 シンガポール、 スウェーデン、 オランダ、 ノルウェーに次いで第7位につけていま す。 公式統計によれば、 スイスの情報通信技術(I CT)セクターは 18,000社を若干上回っており、 これは企業総数の3.3 %に相当しま す。ICTセクターでは、 総就業者数の4 %に相当する160,000以上の 人々が業務に従事しています。 チューリヒからボーデン湖にかけての地域には、 IBM、 グーグル、 マ イクロソフトなどの有名ぽ企業がスイス連邦工科大学チューリヒ校 とその研究所、 チューリヒ大学などを取り囲むように拠点を置いて います。これらの企業にとっては、 大学に近いことが拠点選びの決 め手になりました。ベルンやルツェルンにもITセンターが誕生して います。ノーザーエンジニアリングやコアシステムズといったスイ スのIT企業は市場をリードする存在です。IT業界で従業員数が多 いのは、 シ—メンス、 デル、 HP、 ロイタ一などの外国企業です。非常 に高い教育を受け、 専門的技能を持つ数力国語に堪能な労働力は 外資系IT企業がスイスに拠点を設ける重要な理由のひとつで 、 す。 www.s-ge.com/invest-ict スイスの概要-ICT拠点として 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語、 スペイン語、 ポルトガル語、 ロシア語、 中国語、 日本語 www.s-ge.com/data-centers スイスのデータセンターの概要 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語、 スペイン語、 ポルトガル語、 ロシア語、 中国語、 日本語 www.bakom.admin.ch スイス連邦通信局 (OFCOM) 言語:独, 英, 仏, 伊 www.ictswitzerland.ch 情報通信セクター統括団体 言語: ドイツ語、 フランス語

専門的ノウハウを持つ熟練労働力が豊富なこの地域には、 時計産 業に類似した技術を必要とする異業種企業が続々と進出していま す。この「精密機器クラスター」 には、 特にここ数年存在感を著しく増 している医療技術が含まれます。マイクロメカ二クスと光学を中 心とするクラスターも、 スイス東部とベルン地方に誕生していま す。 www.s-ge.com/invest-mem スイスの概要 - 機械・電気・金属産業拠点として 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語、 スペイン語、 ポルトガル語、 ロシア語、 中国語、 日本語 www.swissmem.ch SWISSMEM工業会 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語

経済構造

39


2.3.4 クリーンテック クリーンテックには環境汚染を低減し、 天然資源や自然体系の持続 的な利用を可能にする技術、 プロセス、 物品およびサービスが含ま れます。クリーンテックの適用領域は全経済セクターにおよび、 更 にはバリューチェーン全体に影響を与えます。スイスは、 資源の限 られた小さな国として、 早くから環境保護に注目してきました。廃棄 物収集、 ミネルギー(省エネ)基準、 下水処理場、 廃棄物からのエネル ギー回収などは、 スイス人にとって当たり前のことです。厳しい法規 制により産業に関するソリューションが進み、 長年にわたって貴重 な経験が蓄積されてきました。このことが、 斬新で革新的な開発の 原動力となっています。今日クリーンテック・セクターにはおよそ これは全労働人口の4.5 %に相当 530,000人が従事しているとされ、 します。総付加価値額は推計490億スイスフランで、 GDPの4.2 %に 相当します。スイスのクリーンテック企業の38 %が製品およびサー ビスを輸出しています。 このセクターの特徴は、 スタートアップやス ピンオフから大手多国籍企業まで多種多様な企業が混在している ことです。 www.s-ge.com/cleantech Export Promotion Cleantech 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語 www.cleantech.admin.ch クリーンテックに関する政府の情報 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語 www.swisscleantech.ch Association of the Swiss Cleantech Industry 言語: ドイツ語、 フランス語

2.3.5 本部機能 スイスには外国企業のグローバル本社と地域本社が集中していま す。欧州企業がスイスにグローバル本社を設置しているのに対し、 米国企業はスイスに地域本社を置く傾向があります。KPMGが 2016年に行った調査によると、 850社以上の多国籍企業が本社そ の他の中枢機能をスイスに置いています。これらの企業の75%は 北米と欧州の企業です。続いて日本(11%)、 中国(4%)、 その他アジ ア太平洋地域からとなっています。スイスに移転した企業の代表 例として、 eBayやバイオジェン、 ボンバルディア、 ゼネラルモー夕ー ズ、 日産自動車、 グーグル、 IBM、 クラフトなどが挙げられ、 企業の本 拠地としてスイスが魅力的であることを示しています。 拠点を選定する上での重要なポイントとして、 有利な税制、 優秀な 人材、 高い生活水準、 立地の良さなどが挙げられます。経済的な意 味での中立性も重要です。 いずれの欧州市場もスイスに本社を置 くことに安心感を覚えています。スイスは国の安定性、 法的安定性 とともに、 人と環境の安全性についても高い評価を得ています。企 業はまた、 生活水準の高さや優れた教育制度も評価しています。 更に、 研究機関や顧客に近接していること、 信頼できる租税条約な ども利点として挙げられます。狭い地域に極めて高い多様性を秘 めたスイスは、 テストマーケッ卜としても理想的です。

「850社を超す国外企業がスイスに本 社を設置しています。 」


2.3.6 金融サービス また、 スイス経済にとって重要なのは、 保険会社、 法律事務所、 コン スイスの金融センターは、 経済の要であるとともに世界屈指のク サルティング会社、 保証や信託系企業、 貨物や保安ビジネスなど ラスターです。スイスにはおよそ270の銀行のほか、 200の保険会 の、 様々な商品関連サービスの存在です。スイスの大銀行や州の 社、 2,000の年金基金があります。金融機関の大多数はチューリヒ、 銀行、 多彩な外国銀行は地域センターで天然資源取引の資金調達 ジュネーブ、 バーゼル、 ルガーノに拠点を置いています。2015年度 に特化しています。これらの企業は天然資源の調達のための融資 の直接付加価値は、 銀行では300億スイスフラン、 保険会社では を行い、 円滑な取引を保証しており、 営業上のリスクや与信リスクを 270億スイスフランとなり、 総額で約600億スイスフランに達しまし カバーしています。商品取引の総額は、 スイスのGDPの4 %を占め た。これはスイスのGDPの9.3 %に相当します。金融セクターの雇 ます。 用人口は212,000人近くに達します。スイスの労働人口全体の 5.5%程度を占めています。このうち118,000人が銀行、 53,000人 過去数年間に天然資源取引は継続的に重要になってきています。 が保険会社、 残りはその他の金融機関に勤務しています。金融行 スイスの大手企業のうち商社4社が上位5位以内に入っています の重要性は大学などの課程にも反映されています。金融機関とス (2015年) 。これらは、 Glencore International (1位)、 Vitol (2位) イスの主力大学の共同で設立したスイス・ファイナンス基金は、 教 、 Cargill International (3位)、 Trafigura (4位)です。 育と金融に関する研究を促進しています。 国際比較すると金融センターとしてのスイスは高く評価されてお り、 極めて競争力が高いです。コアコンピテンシーは個人客を相手 にした資産運用会社です。グローバルに事業展開しているUBSとク レディスイスの大手2行に加え、 地方銀行や専門サービスを提供す る金融機関も多数存在しています。スイスには85行の外資系銀行 が拠点を置いており、 スイスで管理されている有価証券のうち51 %は外国人が保有しています。 保険業界の成功要因および基礎条件としては、 国民所得が高いこ と、 保障に対するニーズが強いこと、 安定した老齢年金制度、 国際 的なネットワークを誇るオープンな保険センター、 信頼の置ける規 制環境、 再保険ビジネスの国際的なノウハウなどが挙げられます。

www.vsig.ch スイス貿易連合会 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語

www.gtsa.ch ジュネーブ通商輸送協会 (GTSA) 言語:英語 www.lcta.ch ルガーノ商品取引協会 言語:言語: ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語 www.zugcommodity.ch ツーク商品取引協会(ZCA) 言語:英語

金融機関というテーマについてのこの他の情報およびリンクは Seite 100ff. www.s-ge.com/financial-center 金融センターとしてスイスの統計その他データ 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語、 スペイン語、 ポルトガル語、 ロシア語、 中国語、 日本語 www.svv.ch スイス保険協会 言語: ドイツ語、 英語、 フランス語

2.3.7 貿易とコモディティ スイスは原材料の世界で最も重要な取引プラットフォームです。 世界の石油製品の約3分の1がジュネーブ経由で取引されていま す。このほか、 ジュネーブは穀物、 油糧種子、 綿の取引で世界第1位、 砂糖の取引は欧州第1位を誇ります。ツーク市は鉱業製品の商取 引センターです。スイスが天然資源に乏しい内陸国であることか ら、 この優勢な地位は一目見ただけでは驚かせます。しかし、 欧州 の中心に位置するスイスは、 コーヒーや綿の交易が始まった頃か ら、 様々な交易路が交わる場所でした。スイスが後に国際的な金 融センターになったのも、 古くからの地の利があったからです。比 較的低い税率に加え、 貿易会社は立地の良さ、 充実したインフラ、 外国との交通の便を重視します。

経済構造

41


Turn static files into dynamic content formats.

Create a flipbook
Issuu converts static files into: digital portfolios, online yearbooks, online catalogs, digital photo albums and more. Sign up and create your flipbook.