本書は森山大道・中平卓馬から、90年代以降の新潮流を作った佐内正史からホンマタカシまで、「生きること」と「写真」が切っても切れない10人の写真家を語る、写真の核心に触れる本です。戦後写真の黄金時代から、荒木経惟・篠山紀信の時代を経て、次世代写真家=佐内正史、藤代冥砂、長島有里枝、蜷川実花、大橋仁、ホンマタカシに継がれていった《日本写真》とは何かが、写真家の生き方を通じて見えてきます。いわば欧米の写真表現とは一線を画する、コンセプトや意味からの自由さや、意識と無意識のはざまの感覚などの、日本の写真ならではの表現を、著者はこの本で《日本写真》と呼び、その独特な豊かさ・面白さを、言葉の力で紡いだ、今までにない、魅力的な写真論です。写真の不思議さを体現する中平卓馬の写真的覚悟を後書きとして括る本書は、読む人に写真家という不思議な力をもった人たちへの強い興味を喚起させ、人間の感受性の奥深くに問いかけます。