Diploma Design Sheets 2019

Page 1

卒 業 設 計 2019 建築環境デザイン研究室 江川ゼミ

堀 智哉


あ る 街

□ 生きているという象徴   生きているのだという象徴が欲しい 。   能率中心の考えからすれば、無駄かもしれないがどこまでも広がっていく世界ではそれは何かの拠りどころかもしれない。   どれもこれも互換性のある部品化してしまった近代的なこの世界に、それでも私はここにいると示したい。

□ まちを知り、まちを感じるということ   変容する都市の中で、自分のまちを感じることが少なく感じる。知っていたようで知らないまちは、自分と重なる瞬間がある 。   まちを知り、まちを感じる時、自分がここで生きていると感じられるのではないだろうか 。

コンセプトスケッ チ

□ 京都府京都市左京区高野東開町 東大路高野住宅団地 京都工芸繊維大学

植物園

修学院離宮

下鴨神社

京都造形芸術大学

給水システムとしては現在使用されず 1 階を倉庫として使用しているが

周辺は、高野川や修学院離宮、北白川、下鴨神社などがあり、緑や風趣に富んだ住 環

人と街から切り離されている。

現況 給水塔立面図 S = 1 / 500 0

繊維工場のレンガ造りのボイラー室を改修した集会所、レンガタイルを用いた住棟 や

5

30 (m)

15

広場をもつ 。

白川疎水

給 水塔内観

また、2025 年には団地全体の大規模修繕を控えており、現在では給水システムの整

京都大学

京都御所

高野住宅団地の給水塔は京都市北部において、最も高い建築物であり、

ある団地。 境に恵まれた団地であると共に大学に囲まれた学生の街でもある 。

東大路高野住宅団地

高野川

昭 和 54 年に繊維工場跡地に開発された東大路高野は、京福叡山線茶山駅西口近く に

塔 の魚眼地図

備により使われなくなった給水塔と高架水槽を内包する塔屋が残る。 大文字 南景

西景

北景

東景

鴨川

□ 解体される給水塔

□ 見えなくなる都市

都市は絶え間なく変容し、自分のいる街は知らない間に自分の知らないまちになる。

機能性・合理性 を求めてつくられた 給水塔は、   給水塔システム の進化に伴い、設備 の更新 や

「都市とは、その通りを歩いているひとりの少年が、彼がいつの日かなりたいと思うものを感じ取れる場所で   なくてはならない 」

老朽化などによ って解体されていく 。

□ 多様化する価値観と暮らし

□ 閉鎖的な団地と団地を取り巻く問題   団地の入り口は全て関係者以外立ち入り禁止となり、

変化している。その変化は暮らし方から働き方、都市の在り方にまで影響する。

団地は行き止まりになり通り抜けることができず、まちらしくない 。

□ 京都高野地区に置ける高さ制限

現在の全国の団地が抱える問題と同様の問題を抱えており 、   深刻ではないものの、住民の年齢層的に深刻化するのも時間の問題と言える 。

131m

( 住民の 約 60 % が 60 歳以上 20 16 年調査 ) 55m

□ 再編されてく団地と変容する暮らし

40m

近年、団地再生が活発になりつつあり、これから住戸リノベーションが盛 ん

20m

15m

になっていくと考えられる。   働き方や住まい方など生活環境の多様化が見られる 。

新景観政策の実施により高野地区の高さ制限は、20m→15m に引き下げられ、団地と給水塔は周囲より高いヴォリュームである。

□ 給水塔のタイポロジー

□ まちの塔であるということ

集落の塔は、近代的な思考で作られたものではなく現在では生活の一部分であり、人と生活と塔の距離が

形・高さ・配置・カラーリングなどが様々に異なり、団地や場所によって異なる。

近く感じられる。 Ghardaia

Bologna

Guizhou

Kyoto

Siena

Danchi

Tikal

タンク型

UFO 型

ヌーベルバーグ型

スクエア型

タンクがむき出しの基本形。

タンク型に類似し、タンクとパイプ

UFO 型に似ているが、上部のタン

UFO 型に似ているが、タンク部分

タンクをコンクリートで覆い、4 本

円筒形のものが多い中、箱の形をし

鉄製でコストも経済的であり、都内

部分を一体化して覆った形。

クと支柱部分の間が直線的なデザイ

がアダムスキー型円盤の形に似てい

に分かれた支柱の革新的な形。

たタンクが特徴的である。

から都下まで広く分布する。

鉄製で、カラーリングが豊富。

円盤型

ンでコンクリート製。

る。

枡型

スケルトン型

とっくり型

懐中電灯型

円筒型

ライトハウス型

タンク型に分類され、コンクリート

タンク型に類似し、構造体がむき出

タンク型と共に広く分布するコンク

とっくり型に類似し、タンク部分の

とっくり型が原型とされる、茶筒の

海外で多く見られる形。

製の直線のフォルム。

しのコンクリート製で多く存在して

リート製のとっくりのような形。

先に広がる形と支柱部分の直線的な

ような形。古いもので明治時代から

あまり団地や社宅などには用いられ

ツートーンのカラーリングのものが

いたが、多くが取り壊された。

くびれ部分の位置によって形は多種

形が特徴。

存在するものもある。

ない。

多様となる。

コンクリート製。

コンクリート製あるいはレンガ製。

多い。

フライングソーサー型

待ち針型

八角柱型

十字型

剣型

ボックス型

コリスの駄菓子「フエラムネ」に似

細長い塔体の先に球形のタンクがつ

塔体が八角形の平面を持つ給水塔。

十字の形の塔体を持ち、頂部が枡型

板状で中央部が少し盛り上がったよ

巨大なものが多く、郊外の大規模団

た、円形頂部タンクの真ん中に丸い

いた、待ち針のような形で鋼製。

そのほとんどが沖縄に存在し、台風

に類似される。

うな形状。

地で多く採用される形。

穴が開いた給水塔。都営住宅で多く

団地では採用例が少ないが、工場で

の風圧を軽減するためにこの形が採

十字の形には、機能的な理由はない

ごく一部の公団住宅でしか見られな

コンクリート製で、カラフルな外観

見られたがほとんど解体された。

は採用例が多い。

用されたとしている。

とされる。

い珍しい形。

を持つものが多い。

□ 日本給水党の存在 北海道・東北

7%

7%

にぎわい

伝達

共有

連続性

眺望

広場

浮遊

塔数

38%

42

横浜市

関東

34%

中部

7%

36

福岡市 神戸市

地形

57

東京23区

約 883 基 関西

市 町 村 別 給 水 塔数

1%

九州・沖縄 中国・四国

シルエット

コンクリート製。

フエラムネ型

□ 日本全国に存在する給水塔

現在残る建設年代別給水塔 数

似たものを集めることを進めた 20 世紀から、多様な要素や価値観が混ざりつつある時代へと

San Gimignano

給水塔 からの東 西南北

京都市

28 26

2008 年 10 月結党。傍流に置かれがちな 団地の給水塔

の地位向上を目指し活動。

給水塔ツアーや給水塔に関する展覧会など行う。


□ 給水塔の開放と塔のまちへの変換   閉鎖された給水塔を開放し、給水塔に呼応するように高架水槽のヴォリューム を

第 二 住 宅 団 地

塔へと変え、屋上部にペントハウスを増築し屋上空間を開く。

2020

ペントハウスのプログラム

EV による住戸のアクセスは スキップになっている

EV は塔 ( 屋上 ) への アクセスにもなる

菜園

お風呂

ダイニング

工房

アトリエ

デスク

キャンプ

マーケット

バー

図書

オフィス

スタジオ

ペントハウスのアクセスは 主に EV のみで行う

etc

給水塔による新たな資源と開かれた屋上空間で、外部や他住棟利用者か ら   給水塔と共有空間の維持管理をする仕組みを作る 。 利用者1

利用者 3

周辺住民

学生

受付

高野地区住民

住棟間交流

塔の街 住塔 A

イベント・祭事 住塔 B

維持管理

住民

維持管理

住塔 C

維持管理

住民

住民

バス停利用者 茶山駅利用者

利用者 2 観光客

etc

食塔

利用申請・使用料

収益

集会所

カネボウ跡地 集会所 紅葉

工房塔

etc

祭り 盆踊り

街の塔

他住棟

収益

下鴨神社

叡山電鉄利用者

借塔

東 大 路 通 り

収益

利用申請・使用料

大文字 送り火

給水塔

etc

etc

利用申請

一時的な観光誘致

□ 別構造体の増築による住棟低層部の拡張   屋上部と地上部の間にギャップをつくり、メリハリをつけるヴォリュームを加える 。

SKY CITY S SCALE DANCHI S SCALE

2025

KYOTO S SCALE

塔とペントハウスは ただ上に意識がいくだけの ヴォリューム

現在の均質に積まれた ヴォリューム

スケールにメリハリを付け 浮遊するヴォリューム

住民が外部や他住棟の人と間合いを   図る空間となり、住民同士がたまれ   る小さな場や見る・見られる関係を

湯 け む り 塔

つくる場が立体交差する。

借 塔

露 天 風 呂

また、構造体は既存団地と別構造体 の   鉄骨造を基本とする 。 共 同 浴 場

休 憩 所

□ 住棟間の増築によるヒューマンなスケールの獲得と環境骨格の形成   今後、より進むと思われる空き駐車場のスペースに、周辺を含めた街の人や外部 の

第 三 住 宅 団 地

人も積極的に利用できるプログラムを加える 。

工房

ギャリー

菜園

マーケット

etc

2030

集 会 所 芸大生のシェアハウス

駐車場の間延びした空間

住み込みアーティスト

DIY 好き住民

個 人 工 房

オ ー プ ン 工 房

食 塔

オ ー プ ン テ ラ ス

etc

関係性が団地住戸の 住まい方の可能性を広げる

見る・見られる関係をつくる ヒューマンな空間

工 房 塔

画一的で間延びした住棟の周辺空間 に

シ ェ ア ダ イ ニ ン グ

ヒューマンなスケールを感じられる 間

シ ェ ア キ ッ チ ン

の空間をつくる。   多様なライフスタイルを享受するよ う

展 望 塔

バ ー

カ ー シ ェ ア

な環境骨格を形成し、これからの住 戸   リノベーションなどの可能性を広げる 。 断面スケッチ

屋 上 菜 園

温 室 展 望 台

□ 全国に広がる給水塔による塔の街のネットワーク   現在多く存在する使われなくなった給水塔をただ解体するのではなく、これからの   団地再生やまちづくりのきっかけにする。                   → 給 水 塔 を 介 し た 全 国 的 な ネ ッ ト ワ ー ク の 可 能 性

小 ホ ー ル

給 水 塔

20XX

菜 園 塔

個 室 ス タ ジ オ

劇 場 塔

塔のある街は、まちの人がまちを知り、まちを感じることでこれからの街を考え る   きっかけとなる。まちは住民が考えるものであり住民がつくっていくものである と   考える 。

→ 大事なのは 、 変 容 し て い く 都 市 の 中 で 、 愛 され る モ ノ を 見 つ け る 、     あるいはつ く っ て い く こ と で あ る 感 じ る 。     それはある 種 、 ど う で も い い も の か も し れ ない。

□ 給水塔の転回

□ 塔の街の形成

解体されていく給水塔は本当に解体することでいいのだろうか 。

住まいと密接した塔をもつことにより、意識されなかった給水塔へ意識が向く。

団地の開発と共に建てられた給水塔は、まちを見守ってきた、住民にとっても原風景とし て

--- 給水塔は、この塔の街で一番高い塔である。

実はかけがえのないモノになっていたのではないだろうか 。

塔は、自分がこの街で生きているということを示すモノかもしれない 。

一般的に高い建物を良しとしなくなりつつある京都で、塔はまち全体を感じられる価値のある建築である 。

それは、空を、宇宙を感じる場所かもしれない 。

歩 道 橋

△ 給水塔からの景色 自分の住む街がまちに近いスケールで感じられる

□ 塔によるネットワークの形成

□ 近代化によって生み出されたハコモノの解体

□ 垂直性の意識をつくる

使われなくなった高架水槽を内包する塔屋を、塔へと変換する。

団地というハコを解体して豊かな街並みを作る。

団地の横長に伸びた意識を低層部の増築により、

住塔により小さなまとまりをつくり、塔の街により大きなネットワークを作る。

起伏ある地形のような建築を形成する。

垂直方向への視線を作り、塔と空へ意識を向ける。

□ 塔による中心性と団地の疎と密

□ 塔による団地の活性化 と 団地という枠組みの解体

団地の画一的な配置は、間の空間のほとんどが駐車場を形成しているので、

給水塔・住塔をきっかけに団地を出入りする人が多様になり、

ヒューマンな空間を新たにつくり、疎と蜜な空間を作り出すことでより塔に

団地という敷地境界を見えなくする。

塔の集まりはそれぞれ交信するように住棟間・外部との関係をつくる。

→ 塔という概念的事象を共有する。

均質な高架水槽のヴォリューム

形や高さの異なる塔が、塔の群の風景をつくる

□ ペントハウスによる空中集落の形成

中心性を持たせる。

高さ制限により団地の屋上は価値のある空間であり、   塔の下、それぞれ個性を持った小さな集落のように   空間が展開される。

小さな塔の集落がまちをつくっていく

□ 低層部増築による環境骨格の形成   低層部に、ペントハウスと関係性をもつプログラムや   外部利用者などとの間合いをはかる間の空間、団地住民に   よる住まいの空間を拡張を可能とする余白の空間をつくる。

塔の見える場所が自分の住む街であると感じる

S = 1 : 400

↓ 決められた街区の感覚を溶かしていく

0

4

12

24

48 (m)


ギ ャ ラ リ ー

ブ ッ ク ス ペ ー ス

駐 輪 場

レ ン タ ル ル ー ム 駐 輪 場

大文字送り火のシーン

塔の中の空間

立体交差する空間

京都を一望するシーン

公 園

住 棟 接 続 テ ナ ン ト

駐 輪 場

マ ー ケ ッ ト 住 棟 接 続 テ ナ ン ト

塔 と 山 が 京 都 の 空 を 高 く 見 せ る

搬 入 口

塔 に よ り 見 え る 景 色 と 空 間 が 異 な る

駐 輪 場

駐 輪 場

待 合 カ フ ェ バ ス 停

均 質 的 で あ っ た 建 築 と 空 間 が 多 様 性 を 感 じ さ せ 、 街 ら し く な る

給 水 塔

壁 面 の 見 え 方 を 下 げ る こ と で 塔 を よ り 高 く 見 せ る

下 屋 の よ う な 空 間 が

マ ー ケ ッ ト

団 地 住 戸 と の 間 合 い を は か る

ヒ ュ ー マ ン な ス ケ ー ル が

駐 輪 場

給 水 塔 を 囲 む よ う に し て

見 る ・ 見 ら れ る の 関 係 性 を つ く る

低 層 部 が に ぎ わ う

S = 1 : 200

0

2

6

12

24 (m)

断面図

駅を降りると塔の街が出現する

給水塔の周辺に ひとけ が感じられる

塔は絶え間なく様相を変える

中景

遠景

まちを感じ、まちを知り、自分がここに生きているのだと感じる

近景

全景

塔 の 群 が 風 景 を つ く る

ま ち の 塔 劇 場 塔 食 塔

黒 い 塔 の 群 が

塔 が 住 棟 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ と な る

菜 園 塔

赤 い 塔 を 際 立 て る

工 房 塔

谷 間 に 塔 が 見 え る 地 形 の 先 に 塔 が 在 る 見 え 方 を つ く る

現 在 の 高 さ 制 限

展 望 塔

重 な り が 豊 か な 街 並 み と 街 の 奥 行 き を 感 じ さ せ る

山 並 み の よ う に 連 な る エ ッ ジ

( 1 5 m )

集 会 所

塔 を 際 立 た せ る よ う 、

低 層 に 抜 け を つ く り

立 面 の ス ケ ー ル を 分 割 す る

か ろ や か な 門 を つ く る

京 都 ら し さ の あ る ス ケ ー ル


Tou no aru machi .

塔のある街

関西大学環境都市工学部建築学科四年生

Location : Sakyo-ku SakyoKyoto city,

敷地面積 : 7,8902 ㎡

Site Area : 7,8902 ㎡

主な用途 : 集合住宅、複合施設

Main Use : Apartment, Composite facilities

建築面積 : 5,724 ㎡

ua15-0101 堀智哉 student, Dept. of Architecture, Faculty of Environmental and Urban Engineering, Kansai Univercity, fourth grader

建 15-0101 堀 智哉

所在地 : 京都府京都市左京区東開町  東大路高野住宅団地

Building Floor Area : 5,724 ㎡

延床面積 : 6,805 ㎡

Total Floor Area : 6,805 ㎡

キーワード : 塔 , 空 , 浮遊 , 団地

2. 塔の調査

Keywords : Tower, Sky, Floating ,Apartment Complexes

従 前

2.1 集落の塔

従 後

集落の塔は、まちの塔であり、機能的ではない。集落の塔が街に対して、 人に対してどのように振舞っているのかを分析し、給水塔をまちの塔として 機能をもたないかけがえのないものとして変えられないか模索する。 Danchi

fig.01 メインパース fig.01 メインパース

0. はじめに

fig.05 塔をもつ集落からの構成要素の抽出

生きているのだという象徴が欲しい。 能率中心の考えからすれば、無駄かもしれないがどこまでも広がっていく世 界ではそれは何かの拠りどころかもしれない。どれもこれも互換性のある部 品化してしまった世界に、それでも私はここにいると示したい。  絶え間なく変容する都市の中で、街を知り、街を感じたとき、私はこの街 で生きていると感じられる、そんな塔の街を提案する。  塔は、私の生命の象徴かもしれない、空と大地を感じる場所かもしれない、 宇宙を感じる場所かもしれない。

fig.09 従前従後アイソメトリック

4. 設計の概要

2.2 東大路高野住宅団地における給水塔

4.1 塔と空中集落  空中に浮遊する塔の集落を形成する。

均質な高架水槽のヴォリューム

塔はそれぞれの住棟とペントハウスのア

計画敷地の東大路高野住宅における給水塔は、現在給水システムとして使 用されておらず、1 階部分を倉庫として使用している。  塔は街と人から切り離されてしまい、高野地区で最も高いこの塔は、高さ 制限が更新されたこともあり解体される日も近いと考えられる。  給水塔の上からの景色は、まちに近いスケールでまちを感じられる大変価 値のあるものである。

イデンティティであり、かつての団地で

塔 と 山 が 京 都 の 空 を 高 く 見 せ る

形や高さの異なる塔が、塔の群の風景をつくる

は希薄になっていた住棟間での交流が生

塔 に よ り 見 え る 景 色 と 空 間 が 異 な る

まれ、小さな塔の空中集落があつまり、 まちを形成していく。

均 質 的 で あ っ た 建 築 と 空 間 が 多 様 性 を 感 じ さ せ 、 街 ら し く な る 壁 面 の 見 え 方 を 下 げ る こ と で

小さな塔の集落がまちをつくっていく

塔 を よ り 高 く 見 せ る

fig.10 塔の群のダイアグラム

4.2 団地スケールの細分化

下 屋 の よ う な 空 間 が 団 地 住 戸 と の 間 合 い を は か る

均質的な団地のハコ型のヴォリュームを起伏のある地形のように鉄骨造の

ヒ ュ ー マ ン な ス ケ ー ル が

給 水 塔 を 囲 む よ う に し て

見 る ・ 見 ら れ る の 関 係 性 を つ く る

低 層 部 が に ぎ わ う

増築により団地のスケールを異なるものへと変え、ヒューマンな空間と間合 fig.06 給水塔からの景色

3. 提案

いの空間をつくる。 断面図

3.1 住まいが塔を持ち、街が塔を持つ fig.02 コンセプトスケッチ

1. 計画の背景と目的

私は自分の住んでいる街が知らない間に自分の知らないマチに変わってい

まいが塔をもち、塔の群のまちの風景をつくる。

るとよく感じる。 塔のある街

生活に近い塔をもつことで、今まで意識の向かなかった給水塔を街の塔と

1.1 京都と団地と塔  京都は新景観政策により高さ制限が設けられ、高野地区の高さ制限は 20m

3.2 給水塔をきっかけとした団地再編、まちづくりの展開

から 15m へと引き下げられ、団地住棟の 20m と給水塔の 40m より低いも のとなった。周囲より高い塔と団地の屋上空間はこれからの京都にとって価 値のあるものだと考える。

fig.11 構造ダイアグラム / 地と図のダイアグラム

塔の存在は、街から見ることで自分がこの街に住んでいることを自覚させ と感じさせることである。

塔を解体するのではなく、これからの団地再編やまちづくりのきっかけとす

塔のある街は、 「私の、誰かの、生きている象徴」なのである。 fig.12 ヴォリューム操作のダイアグラム

20m

1.2 解体される給水塔

代の遺産が、街の大事な構成要素に成りうるということである。 る。街を知り、街を感じるということことは、自分がここに生きているのだ

給水塔は、全国に多種多様に存在し、団地の原風景とも言える。ただ給水

40m

15m

は給水塔から始める団地再編に過ぎないの

かもしれないが、ここで大事なことは、給水塔というある種どうでも良い近

ることで、給水塔を介した全国的なネットワークの可能性を考える。

131m

55m

5. まとめ

住棟のもつ使用されていない高架水槽のヴォリュームを塔へと変換し、住

して意識も向ける。

fig.13 断面図

fig.03 京都高野地区における高さ制限

近年、団地再編と共に多くの給水塔が給水システムの進展により解体され

利用者1

利用者 3

周辺住民

学生

ている。団地を支えてきた給水塔は、街を見守ってきたかけがえのないもの でもあり、近代の遺産でもあるとも言える。

住棟間交流

塔の街 住塔 A

イベント・祭事 住塔 B

維持管理

住民

維持管理

住塔 C 住民

維持管理

住民

バス停利用者 茶山駅利用者

利用者 2 観光客

ある種どうでもいいと言えるものが、実は大事なのではないだろうか。

受付

高野地区住民

etc

食塔

利用申請・使用料

収益

集会所

カネボウ跡地 集会所 紅葉 叡山電鉄利用者

借塔

工房塔

etc

祭り 盆踊り

街の塔

他住棟

収益

下鴨神社

収益

利用申請・使用料

大文字 送り火

給水塔

etc

一時的な観光誘致

利用申請

etc

fig.07 塔のある街の運営の仕組み

現在残る建 設 年 代 別 給 水 塔 数

塔と団地と京都という関係性を利用した空間が塔の街に仕組みをつくる

中景

遠景

北海道・東北

全景

fig.14 遠景から近景へのシーン

劇 場 塔

1%

九州・沖縄

食 塔

菜 園 塔

塔 が 住 棟 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ と な る

工 房 塔

展 望 塔

7%

谷 間 に 塔 が 見 え る 地 形 の 先 に 塔 が 在 る 見 え 方 を つ く る

中国・四国

7%

近景

塔数

関東

約 883 基

34%

現 在 の 高 さ 制 限

壁 面 を 低 く 見 せ る こ と に よ り 、

山 並 み の よ う に 連 な る エ ッ ジ

塔 を 際 立 た せ る

( 1 5 m )

集 会 所

関西

38%

中部

京 都 ら し さ の あ る ス ケ ー ル

7%

fig.04 解体が進む給水塔の調査

fig.08 景色や空間体験を価値を見出したイメージパース

塔 を 際 立 た せ る よ う 、

低 層 に 抜 け を つ く り

立 面 の ス ケ ー ル を 分 割 す る

か ろ や か な 門 を つ く る

fig.15 北立面図


The Whole Presentation Sheet □ 給水塔の開放と塔のまちへの変換   閉鎖された給水塔を開放し、給水塔に呼応するように 高架水槽のヴォリュー ムを

第 二 住 宅 団 地

塔へと変え、屋上部にペントハウスを増築し屋上空間を開 く。

2020

ペントハウスのプログラム

EV による住戸のアクセスは スキップになっている

EV は塔 ( 屋上 ) への アクセスにもなる

菜園

お風呂

ダイニング

工房

アトリエ

デスク

キャンプ

マーケット

バー

図書

オフィス

スタジオ

ペントハウスのアクセスは 主に EV のみで行う

etc

給水塔による新たな資源と開かれた屋上空間で、外部 や他住棟利用者か ら   給水塔と共有空間の維持管理をする仕組みを作る。 利用者 3

利用者1 周辺住民

学生

受付

高野地区住民

住棟間交流

塔の街 住塔 A

イベント・祭事 住塔 B

維持管理

住民

維持管理

住塔 C

維持管理

住民

住民

バス停利用者 茶山駅利用者

利用者 2 観光客

etc

食塔

利用申請・使用料

収益

集会所

カネボウ跡地 集会所 紅葉

工房塔

etc

祭り 盆踊り 他住棟

収益

下鴨神社

叡山電鉄利用者

借塔

街の塔

収益

利用申請・使用料

大文字 送り火

給水塔

etc

etc

利用申請

一時的な観光誘致

□ 別構造体の増築による住棟低層部の拡張   屋上部と地上部の間にギャップをつくり、メリハリを つけるヴォリュームを加える 。

SKY CITY S SCALE DANCHI S SCALE

2025

KYOTO S SCALE

塔とペントハウスは

現在の均質に積まれた ヴォリューム

ただ上に意識がいくだけの ヴォリューム

スケールにメリハリを付け 浮遊するヴォリューム

住民が外部や他住棟の人と間合 いを   図る空間となり、住民同士がた まれ   る小さな場や見る・見られる関 係を

湯 け む り 塔

つくる場が立体交差す る。

借 塔

露 天 風 呂

また、構造体は既存団地と別構造 体の   鉄骨造を基本とする 。 共 同 浴 場

休 憩 所

□ 住棟間の増築によるヒューマンなスケールの獲得と環境骨格の形成   今後、より進むと思われる空き駐車場のスペースに、 周辺を含めた街の人や外部の

第 三 住 宅 団 地

人も積極的に利用できるプログラムを加え る。

工房

ギャリー

菜園

マーケット

etc

2030

集 会 所 芸大生のシェアハウス

駐車場の間延びした空間

住み込みアーティスト

DIY 好き住民

個 人 工 房

オ ー プ ン 工 房 オ ー プ ン テ ラ ス

etc

関係性が団地住戸の 住まい方の可能性を広げる

見る・見られる関係をつくる ヒューマンな空間

工 房 塔

画一的で間延びした住棟の周辺空 間に

シ ェ ア ダ イ

ヒューマンなスケールを感じられ る間

シ ェ ア キ

の空間をつく る。   多様なライフスタイルを享受する よう

カ ー シ ェ ア

な環境骨格を形成し、これからの 住戸   リノベーションなどの可能性を広げ る。 断面スケッチ

屋 上 菜 園

□ 全国に広がる給水塔による塔の街のネットワーク

□ 生きているという象徴

現在多く存在する使われなくなった給水塔をただ解体 するのではなく、これからの

生 きて いる のだ とい う象 徴が 欲し い。

団地再生やまちづくりのきっかけにする。                  → 給水塔を介した全国的な ネットワークの可 能性

能 率中 心の 考え から すれ ば、 無駄 かも しれ ないがどこまでも広がっていく世界ではそれは何かの拠りどころかもしれな い。

菜 園 塔

ど れも これ も互 換性 のあ る部 品化 して しま った近代的なこの世界に、それでも私はここにいると示したい 。

□ まちを知り、まちを感じるということ 20XX

変 容す る都 市の 中で 、自 分の まち を感 じる ことが少なく感じる。知っていたようで知らないまちは、自分と重なる瞬間がある 。    ま ちを 知り 、ま ちを 感じ る時 、自 分が ここ で生きていると感じられるのではないだろう か。

コ ンセ プ ト スケッ チ

□ 京都府京都市左京区高野東開町 東大路高野住宅団地 京都工芸繊維大学

植物園

修学院離宮

下鴨神社

京都造形芸術大学

給水システムとしては現在使用されず 1 階を倉庫として使用しているが

周辺は、高野川や修学院離宮、北白川、下鴨神社などがあり、緑や風趣に富んだ 住環

人と街から切り離されている。

きっかけとなる。まちは住民が考えるものであり住民がつくっていくものである と   考え る。

→ 大事なのは、変容していく都 市の中で、愛されるモノを見つける 、     あるいはつくっていくことで ある感じ る。

現況 給水塔立面図 S = 1 / 500 0

繊維工場のレンガ造りのボイラー室を改修した集会所、レンガタイルを用いた住 棟や

5

それはある種、どうでもいい ものかもしれな い。

30 (m)

15

給水塔 内観

また、202 5 年には団地全体の大規模修繕を控えており、現在では給水システムの 整

京都大学

京都御所

ある団地 。

広場をも つ。

白川疎水

高野川

高野住宅団地の給水塔は京都市北部において、最も高い建築物であり、

境に恵まれた団地であると共に大学に囲まれた学生の街でもある。

東大路高野住宅団地

塔の 魚眼地 図

塔のある街は、まちの人がまちを知り、まちを感じることでこれからの街を考え る

昭和 54 年に繊維工場跡地に開発された東大路高野は、京福叡山線茶山駅西口近くに

□ 給水塔の転回

備により使われなくなった給水塔と高架水槽を内包する塔屋が残る。 南景

西景

鴨川

北景

給水塔システムの進化に伴い、設備の更新や   老朽化などによって解体されていく。

な くて はな らな い」

□ 多様化する価値観と暮らし

一般的に高い建物を良しとしなくなりつつある京都で、 塔はまち全体を感じられる価値のある建築である。

それは、空を、宇宙を感じる場所かもしれない。

給 水塔か らの 東西 南北

団地の入り口は全て関係者以外立ち入り禁止となり、   現在の全国の団地が抱える問題と同様の問題を抱えてお り、

131m

55m

40m 20m

15m

深刻ではないものの、住民の年齢層的に深刻化するのも時間の問題と言える 。

□ 塔によるネットワークの形成

□ 近代化によって生み出されたハコモノの解体

( 住民 の約 60 % が 6 0 歳以上 20 16 年 調査 )

使われなくなった高架水槽を内包する塔屋を、塔へと変換する。

団地というハコを解体して豊かな街並みを作る。

団地の横長に伸びた意識を低層部の増築により、

住塔により小さなまとまりをつくり、塔の街により大きなネットワークを作る。

起伏ある地形のような建築を形成する。

垂直方向への視線を作り、塔と空へ意識を向ける。

近年、団地再生が活発になりつつあり、これから住戸リノベーションが 盛ん

塔の集まりはそれぞれ交信するように住棟間・外部との関係をつくる。

になっていくと考えられ る 。

□ 塔による中心性と団地の疎と密

□ 塔による団地の活性化 と 団地という枠組みの解体

団地の画一的な配置は、間の空間のほとんどが駐車場を形成しているので、

給水塔・住塔をきっかけに団地を出入りする人が多様になり、

ヒューマンな空間を新たにつくり、疎と蜜な空間を作り出すことでより塔に

団地という敷地境界を見えなくする。

→ 塔という概念的事象を共有する。

□ 給水塔のタイポロジー

□ まちの塔であるということ

集 落の 塔は 、近 代的 な思 考で 作ら れた もの ではなく現在では生活の一部分であり、人と生活と塔の距離が

形・高さ・配置・カラーリングなどが様々に異なり、団地や場所によって異なる。

近 く感 じら れ る。 Bologna

Guizhou

Kyoto

Siena

Danchi

Tikal

UFO 型

円盤型

フライングソーサー型

ヌーベルバーグ型

スクエア型

タンクがむき出しの基本形。

タンク型に類似し、タンクとパイプ

UFO 型に似ているが、上部のタン

UFO 型に似ているが、タンク部分

タンクをコンクリートで覆い、4 本

円筒形のものが多い中、箱の形をし

鉄製でコストも経済的であり、都内

部分を一体化して覆った形。

クと支柱部分の間が直線的なデザイ

がアダムスキー型円盤の形に似てい

に分かれた支柱の革新的な形。

たタンクが特徴的である。

から都下まで広く分布する。

鉄製で、カラーリングが豊富。

ンでコンクリート製。

る。

枡型

スケルトン型

とっくり型

懐中電灯型

円筒型

ライトハウス型

タンク型に分類され、コンクリート

タンク型に類似し、構造体がむき出

タンク型と共に広く分布するコンク

とっくり型に類似し、タンク部分の

とっくり型が原型とされる、茶筒の

海外で多く見られる形。

製の直線のフォルム。

しのコンクリート製で多く存在して

リート製のとっくりのような形。

先に広がる形と支柱部分の直線的な

ような形。古いもので明治時代から

あまり団地や社宅などには用いられ

ツートーンのカラーリングのものが

いたが、多くが取り壊された。

くびれ部分の位置によって形は多種

形が特徴。

存在するものもある。

多様となる。

コンクリート製あるいはレンガ製。

八角柱型

十字型

剣型

ボックス型

細長い塔体の先に球形のタンクがつ

塔体が八角形の平面を持つ給水塔。

十字の形の塔体を持ち、頂部が枡型

板状で中央部が少し盛り上がったよ

巨大なものが多く、郊外の大規模団

た、円形頂部タンクの真ん中に丸い

いた、待ち針のような形で鋼製。

そのほとんどが沖縄に存在し、台風

に類似される。

うな形状。

地で多く採用される形。

穴が開いた給水塔。都営住宅で多く

団地では採用例が少ないが、工場で

の風圧を軽減するためにこの形が採

十字の形には、機能的な理由はない

ごく一部の公団住宅でしか見られな

コンクリート製で、カラフルな外観

見られたがほとんど解体された。

は採用例が多い。

用されたとしている。

とされる。

い珍しい形。

を持つものが多い。

北海道・東北

市 町 村 別 給 水 塔数

1%

九州・沖縄

7%

関東

約 883 基

34%

連続性

眺望

広場

浮遊

38%

中部

7%

36

福岡市 神戸市

関西

42

横浜市

塔数

京都市

28 26

形や高さの異なる塔が、塔の群の風景をつくる

□ ペントハウスによる空中集落の形成   塔の下、それぞれ個性を持った小さな集落のように   空間が展開される。

□ 低層部増築による環境骨格の形成

低層部に、ペントハウスと関係性をもつプログラムや   外部利用者などとの間合いをはかる間の空間、団地住民に

2008 年 10 月結党。傍流に置かれがちな 団地の給水塔

の地位向上を目指し活動。

給水塔ツアーや給水塔に関する展覧会など行う。

中心性を持たせる。

高さ制限により団地の屋上は価値のある空間であり、

□ 日本給水党の存在

57

東京23区

中国・四国

共有

ない。

コンクリート製。

待ち針型

コリスの駄菓子「フエラムネ」に似

□ 日本全国に存在する給水塔

伝達

コンクリート製。

フエラムネ型

多い。

にぎわい

均質な高架水槽のヴォリューム

タンク型

7%

□ 垂直性の意識をつくる

□ 再編されてく団地と変容する暮らし

働き方や住まい方など生活環境の多様化が見られ る。

新 景観 政策 の実 施に より 高野 地区 の高 さ制 限は 、2 0 m→15 m に引き下げられ、団地と給水塔は周囲より高いヴォリュームである。

△ 給水塔からの景色 自分の住む街がまちに近いスケールで感じられる

団地は行き止まりになり通り抜けることができず、まちらしくない 。

□ 京都高野地区に置ける高さ制限

Ghardaia

現在残る建設年代別給水塔数

□ 閉鎖的な団地と団地を取り巻く問題

変化 して いる 。そ の変 化は 暮ら し方 から 働き方、都市の在り方にまで影響す る。

地形

塔は、自分がこの街で生きているということを示すモノかもしれない 。

似 たも のを 集め るこ とを 進 めた 20 世 紀か ら、多様な要素や価値観が混ざりつつある時代 へと

シルエット

- -- 給水塔は、この塔の街で一番 高い塔であ る。

実はかけがえのないモノになっていたのではないだろう か 。

機能性・合理性を求めてつくられた給水塔は、

「 都市 とは 、そ の通 りを 歩い てい るひ とり の少年が、彼がいつの日かなりたいと思うものを感じ取れる場所で

東景

住まいと密接した塔をもつことにより、意識されなかった給水塔へ意識が向 く。

団地の開発と共に建てられた給水塔は、まちを見守ってき た、住民にとっても原風景と して

□ 解体される給水塔

□ 見えなくなる都市

都 市は 絶え 間な く変 容し 、自 分の いる 街は 知らない間に自分の知らないまちになる。

San Gimignano

□ 塔の街の形成

解体されていく給水塔は本当に解体することでいいのだろ うか 。

大文字

よる住まいの空間を拡張を可能とする余白の空間をつくる。

小さな塔の集落がまちをつくっていく

塔の見える場所が自分の住む街であると感じる ↓ 決められた街区の感覚を溶かしていく

温 室


ギ ャ ラ リ ー

ブ ッ ク ス ペ ー ス

駐 輪 場

レ ン タ ル ル ー ム 駐 輪 場

大文字送り火のシーン   東 大 路 通 り

塔の中の空間

立体交差する空間

京都を一望するシーン

公 園

住 棟 接 続 テ ナ ン ト

駐 輪 場

マ ー ケ ッ ト 住 棟 接 続 テ ナ ン ト

塔 と 山 が 京 都 の 空 を 高 く 見 せ る

搬 入 口

塔 に よ り 見 え る 景 色 と 空 間 が 異 な る

塔 駐 輪 場

駐 輪 場

待 合 カ フ ェ バ ス 停

均 質 的 で あ っ た 建 築 と 空 間 が 多 様 性 を 感 じ さ せ 、 街 ら し く な る

給 水 塔

壁 面 の 見 え 方 を 下 げ る こ と で 塔 を よ り 高 く 見 せ る

下 屋 の よ う な 空 間 が

マ ー ケ ッ ト

ヒ ュ ー マ ン な ス ケ ー ル が

駐 輪 場

食 塔

イ ニ ン グ ッ チ ン

団 地 住 戸 と の 間 合 い を は か る

給 水 塔 を 囲 む よ う に し て

見 る ・ 見 ら れ る の 関 係 性 を つ く る

低 層 部 が に ぎ わ う

展 望 塔

バ ー

S = 1 : 200

0

2

6

12

24 (m)

断面図

展 望 台

小 ホ ー ル

給 水 塔

個 室 ス タ ジ オ

劇 場 塔

歩 道 橋

給水塔の周辺に ひとけ が感じられる

駅を降りると塔の街が出現する

塔は絶え間なく様相を変える

中景

遠景

まちを感じ、まちを知り、自分がここに生きているのだと感じる

近景

全景

塔 の 群 が 風 景 を つ く る

ま ち の 塔 劇 場 塔 食 塔

黒 い 塔 の 群 が

塔 が 住 棟 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ と な る

菜 園 塔

赤 い 塔 を 際 立 て る

工 房 塔

谷 間 に 塔 が 見 え る 地 形 の 先 に 塔 が 在 る 見 え 方 を つ く る

現 在 の 高 さ 制 限

展 望 塔

重 な り が 豊 か な 街 並 み と 街 の 奥 行 き を 感 じ さ せ る

山 並 み の よ う に 連 な る エ ッ ジ

( 1 5 m )

集 会 所

S = 1 : 400

0

4

12

24

48 (m)

塔 を 際 立 た せ る よ う 、

低 層 に 抜 け を つ く り

立 面 の ス ケ ー ル を 分 割 す る

か ろ や か な 門 を つ く る

京 都 ら し さ の あ る ス ケ ー ル


E N D


卒 業 設 計 展 パ ネ ル 2019 建築環境デザイン研究室 江川ゼミ

堀 智哉


塔 の

あ る 街



生きているという象徴

生きているのだという象徴が欲しい。     能 率 中 心 の 考 えか ら す れ ば 、 無 駄 か も し れ な い が 、 どこ ま で も 広 が っ て い く 世 界 で は そ れ は 何 か の 拠 り ど こ ろ か も し れ な い 。    ど れ も こ れ も 互 換 性 の あ る 部 品 化 し て し ま っ た 近 代 的 な こ の 世 界 に 、 それでも私はここにいると示したい。


まちを知り、まちを感じるということ     変 容 す る 都 市 の 中 で 、自 分 の ま ち を 感 じ る こ と が 少 な く 感 じ る 。

知っていたようで知らないまちは、自分と重なる瞬間がある。   まちを知り 、 ま ち を 感 じ る 時 、 自 分 が こ こ で 生 き て い る と 感 じ ら れ る の で は な い だ ろ うか。


□ 京都府京都市左京区高野東開町 東大路高野住宅団地 京都工芸繊維大学

植物園

修学院離宮

下鴨神社

東大路高野住宅団地 京都造形芸術大学

高野川 京都御所

昭和 54 年に繊維工場跡地に開発された東大路高野は、京福叡山線茶山駅西口近くに ある団地。 周辺は、高野川や修学院離宮、北白川、下鴨神社などがあり、緑や風趣に富んだ住環 境に恵まれた団地であると共に大学に囲まれた学生の街でもある。

白川疎水

繊維工場のレンガ造りのボイラー室を改修した集会所、レンガタイルを用いた住棟や

京都大学 大文字

広場をもつ。 また、2025 年には団地全体の大規模修繕を控えており、現在では給水システムの整 備により使われなくなった給水塔と高架水槽を内包する塔屋が残る。

鴨川


□ 京都高野地区に置ける高さ制限 131m

55m

40m 15m

20m

新景観政策の実施により高野地区の高さ制限は、20m→15m に引き下げられ、団地と給水塔は周囲より高いヴォリュームである。


□ まちの塔であるということ

集落の塔は、近代的な思考で作られたものではなく現在では生活の一部分であり、人と生活と塔の距離が   近く感じられる。 San Gimignano

Ghardaia

Bologna

Guizhou

Kyoto

Siena

Danchi

Tikal

シルエット

地形

にぎわい

伝達

共有

連続性

眺望

広場

浮遊


□ 給水塔のタイポロジー   形・高さ・配置・カラーリングなどが様々に異なり、団地や場所によって異なる。 タンク型

UFO 型

円盤型

フライングソーサー型

ヌーベルバーグ型

スクエア型

タンクがむき出しの基本形。

タンク型に類似し、タンクとパイプ

UFO 型に似ているが、上部のタン

UFO 型に似ているが、タンク部分

タンクをコンクリートで覆い、4 本

円筒形のものが多い中、箱の形をし

鉄製でコストも経済的であり、都内

部分を一体化して覆った形。

クと支柱部分の間が直線的なデザイ

がアダムスキー型円盤の形に似てい

に分かれた支柱の革新的な形。

たタンクが特徴的である。

から都下まで広く分布する。

鉄製で、カラーリングが豊富。

ンでコンクリート製。

る。

枡型

スケルトン型

とっくり型

懐中電灯型

円筒型

ライトハウス型

タンク型に分類され、コンクリート

タンク型に類似し、構造体がむき出

タンク型と共に広く分布するコンク

とっくり型に類似し、タンク部分の

とっくり型が原型とされる、茶筒の

海外で多く見られる形。

製の直線のフォルム。

しのコンクリート製で多く存在して

リート製のとっくりのような形。

先に広がる形と支柱部分の直線的な

ような形。古いもので明治時代から

あまり団地や社宅などには用いられ

ツートーンのカラーリングのものが

いたが、多くが取り壊された。

くびれ部分の位置によって形は多種

形が特徴。

存在するものもある。

ない。

多様となる。

コンクリート製。

コンクリート製あるいはレンガ製。

多い。

コンクリート製。

フエラムネ型

待ち針型

八角柱型

十字型

剣型

ボックス型

コリスの駄菓子「フエラムネ」に似

細長い塔体の先に球形のタンクがつ

塔体が八角形の平面を持つ給水塔。

十字の形の塔体を持ち、頂部が枡型

板状で中央部が少し盛り上がったよ

巨大なものが多く、郊外の大規模団

た、円形頂部タンクの真ん中に丸い

いた、待ち針のような形で鋼製。

そのほとんどが沖縄に存在し、台風

に類似される。

うな形状。

地で多く採用される形。

穴が開いた給水塔。都営住宅で多く

団地では採用例が少ないが、工場で

の風圧を軽減するためにこの形が採

十字の形には、機能的な理由はない

ごく一部の公団住宅でしか見られな

コンクリート製で、カラフルな外観

見られたがほとんど解体された。

は採用例が多い。

用されたとしている。

とされる。

い珍しい形。

を持つものが多い。

□ 日本全国に存在する給水塔

□ 日本給水党の存在 北海道・東北

1%

九州・沖縄

7%

塔数

34%

中部

7%

36

福岡市 神戸市

38%

42

横浜市

関東

約 883 基 関西

57

東京23区

中国・四国

7%

市町村別給水塔数

京都市

28 26

2008 年 10 月結党。傍流に置かれがちな 団地の給水塔

の地位向上を目指し活動。

給水塔ツアーや給水塔に関する展覧会など行う。


□ 3 段階による増築

ph 00 1   給水塔の開放 と 塔とペントハウスによる空中集落の形成  ペントハウスのプログラム

EV による住戸のアクセスは

EV は塔 ( 屋上 ) への

ペントハウスのアクセスは

スキップになっている

アクセスにもなる

主に EV のみで行う

菜園

お風呂

ダイニング

工房

アトリエ

デスク

キャンプ

マーケット

バー

図書

オフィス

スタジオ etc


ph 00 2

空中集落を浮遊させる住棟低層部の拡張

SKY CITY S SCALE DANCHI S SCALE KYOTO S SCALE

現在の均質に積まれた ヴォリューム

塔とペントハウスは ただ上に意識がいくだけの ヴォリューム

スケールにメリハリを付け 浮遊するヴォリューム


ph 00 3

工房

ギャリー

芸大生のシェアハウス

駐車場の間延びした空間

見る・見られる関係をつくる ヒューマンな空間

菜園

マーケット

住み込みアーティスト

etc

DIY 好き住民

関係性が団地住戸の 住まい方の可能性を広げる

etc


運営・維持の仕組み

利用者1

利用者 3

周辺住民

学生

受付

高野地区住民

住棟間交流

塔の街 住塔 A

イベント・祭事 住塔 B

維持管理

住民

維持管理

住塔 C 住民

維持管理

住民

バス停利用者 茶山駅利用者

利用者 2 観光客

etc

食塔

利用申請・使用料

収益

集会所

カネボウ跡地 集会所 紅葉

工房塔

etc

祭り 盆踊り

街の塔

他住棟

収益

下鴨神社

叡山電鉄利用者

借塔

収益

利用申請・使用料

大文字 送り火

給水塔

etc

一時的な観光誘致

利用申請

etc


ph 0XX

□ 全国に広がる給水塔による塔の街のネットワーク     現 在 多 く 存 在 す る 使 わ れ な く な った給水塔をただ解体するのではなく、これからの     団 地 再 生 や ま ち づ く り の き っ か けにする。                                 → 給水塔を介した全国的なネットワークの可能性


塔 の あ る 街 は 、 ま ち の 人 が ま ち を知り、まちを感じることでこれからの街を考える     き っ か け と な る 。 ま ち は 住 民 が 考えるものであり住民がつくっていくものであると   考える。

→ 大 事 な の は 、 変 容 し て いく都市の中で、愛されるモノを見つける、       あ る い は つ く っ て い く ことである感じる。       そ れ は あ る 種 、 ど う で もいいものかもしれない。


従 前


従 後


□ 塔による住棟間のネットワークの形成

均質な高架水槽のヴォリューム

形や高さの異なる塔が、塔の群の風景をつくる

小さな塔の集落がまちをつくっていく



□ 疎と密をつくり、塔に中心性をもたせる

画一的であった図と地の関係に豊さを出す


S = 1 : 400 0

2

6

12

24 (m)


□ 団地と別構造体による鉄骨造の増築

増築部分を基本、軽量鉄骨造とし団地への負担を最小限にする


塔 と 山 が 京 都 の 空 を 高 く 見 せ る 塔 に よ り 見 え る 景 色 と 空 間 が 異 な る

均 質 的 で あ っ た 建 築 と 空 間 が 多 様 性 を 感 じ さ せ 、街 ら し く な る 壁 面 の 見 え 方 を 下 げ る こ と で 塔 を よ り 高 く 見 せ る

下 屋 の よ う な 空 間 が 団 地 住 戸 と の 間 合 い を は か る

ヒ ュ ー マ ン な ス ケ ー ル が 見 る・見 ら れ る の 関 係 性 を つ く る

給 水 塔 を 囲 む よ う に し て 低 層 部 が に ぎ わ う

断面図


□ 空と塔へ意識を向ける

のびたヴォリューム

垂直性を出す

視線の重心を下げる

既存の団地のヴォリュームを低層部の増築により分割し、 視線の重心を下げることにより、空と塔へ自然な視線の流れをつくる


□ 地形のようにハコモノを崩す


ま ち の 塔

劇 場 塔 黒 い 塔 の 群 が 赤 い 塔 を 際 立 て る

谷 間 に 塔 が

地 形 の 先 に 塔 が 在 る 見 え 方 を つ く る

現 在 の 高 さ 制 限

展 望 塔

山 並 み の よ う に 連 な る エ ッ ジ

( 1 5 m )

塔 を 際 立 た せ る よ う 、 立 面 の ス ケ ー ル を 分 割 す る


塔 の 群 が 風 景 を つ く る

食 塔

見 え る

菜 園 塔

重 な り が 豊 か な 街 並 み と

塔 が 住 棟 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ と な る

工 房 塔

街 の 奥 行 き を 感 じ さ せ る

集 会 所

低 層 に 抜 け を つ く り か ろ や か な 門 を つ く る

京 都 ら し さ の あ る ス ケ ー ル

S = 1 : 400


大文字送り火の展望塔

光の差す幻想的な塔内


立体交差する住空間

京都を一望する露天風呂


遠景から近景へ

街を知る、街を感じる視点の流れ


□ 街という認識と意識の変化

塔の見える場所が自分の住む街であると感じる ↓ 決められた街区の感覚を溶かしていく


こ 駅 こ を は 、 私 の 街 で あ る 。

降 り る と 塔 が 見 え る 。

遠 景



塔 一 の 本 下 の で 赤 は い 、 塔 ひ が と 伸 け び が る 色 。 濃 く 感 じ ら れ る 。

中 景



こ そ 黒 塔 の の い が 街 中 塔 群 の で は を 塔 、 時 成 赤 で 間 す あ い と 。 る 塔 共 。 が に 際 光 立 に つ よ 。 っ て 様 相 を 変 え る 。

近 景



私 京 塔 は 都 の こ と 上 こ い か に う ら 生 き て い る 。

街 を 知 る 。

私 の 住 む 街 が 感 じ ら れ る 。

全 景



私は自分の住んでいる街が知らない間に自分の知らないマチに変わっ ているとよく感じる。 「塔のある街」は給水塔から始める団地再編に過ぎないのかもしれない が、ここで大事なことは、給水塔というある種どうでも良い近代の遺 産が、街の大事な構成要素に成りうるということである。 塔の存在は、街から見ることで自分がこの街に住んでいることを自覚 させる。 街を知り、街を感じるということは、自分がここに生きているのだと 感じさせることである。 塔は、私の生命の象徴かもしれない、空と大地を感じる場所かもしれ ない、宇宙を感じる場所かもしれないのである。 塔 の あ る 街 は 、「 私 の 、 誰 か の 、 生 き て い る 象 徴 」 な の で あ る 。








模型からみる

scale=1/400 to scale=1/100


塔の街が現れる


SCALE = 1/400


団地に現れる新しい振る舞い


SCALE = 1/100


全体の変化を掴む


従前

従後

SCALE = 1/400


従前


従後
























塔と増築部の検討


some study models


study model A-1

study model A-2

study model A-3

study model B


study model C-1

study model C-2

study model C-3

study model D


study model E-1

study model E-2

study model E-3

study model E-4


study model F-1

study model F-2

study model G

study model H


い つ し か 現 代 の 日 本 に お い て 、空 は 遠 い 存 在 と な っ た 。塔 は 、都

そ れ は 都 市 的 な 調 和 や 集 合 へ の 参 加 を 拒 絶 し 、都 市 を 相 対 化 す どこまでも空へ宇宙へと延びる塔の姿にこの街で生きるちっ い ま 一 度 、空 を 、街 を 、感 じ よ う で は な い か 。


、都 市 の 境 域 に 根 を お ろ し た 道 祖 神 的 な 性 格 を つ よ く 示 し て い る 。

す る こ と に 存 在 意 味 を も ち 、都 市 の 道 標 と し て 結 界 を 形 成 す る 。 ぽけな自分の姿を重ねてみたくなるときがある。


塔 の

あ る 街


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