ローナン・キーン
受難日から復活祭（イースター）までの日々について考 える時、ほとんどの場合、私たちはイエスの弟子たちの ことを想い浮かべます。彼らは、師であり親友でもあった 人、同胞を救済するために神から遣わされたと信じていた
人を、突然失ったのです。どれほど落胆し、おびえ、混乱 したことでしょう。でも私は、それがサタン（悪魔）にとっ てどんな時間だったのか、考えたことがありませんでした。 あなたはどうでしょうか。
イエスが十字架で死んだ直後、すべてが闇に包まれました。
太陽は雲で覆われ、大地は激しく揺れ、建物は崩れ、神殿 の垂れ幕は裂け、町には幽霊かと思われる人たちまで現れた のです。十字架刑が行われたことを知らなかった人にとって でさえ、恐怖と絶望に満ちた一日となったことでしょう。
でも、サタンは大喜びだったに違いありません。神の御 子が殺され、その働きが止められたのですから。もはや救 いの話はなく、世の光もありません。イエスの遺体が墓に 納められ、入口には重い石が転がされて、番兵たちが配置
された時、サタンは鼻で笑っていたことでしょう。ただ、 言うまでもなく、サタンが勝利したと思いこんでいたのも、 ほんの束の間でした。
聖書には、こうあります。「キリストは、肉では殺され ましたが、霊では生かされたのです。こうしてキリストは、 捕らわれの霊たちのところへ行って宣教されました。」 1 イ エスは死者の世界に下っていき、そこで捕らわれている人 たちに救いを宣べ伝えられたのです。そこは、サタンにとっ て裏庭と言える場所なので、イエスが語るメッセージを彼 が耳にしなかったはずがありません。十字架で死なれたこ とは、神の計画の一部であり、むしろ、それこそが、勝利 をもたらすためにイエスと父とが選ばれた方法であったと いうメッセージです。そして、イエスは死んだけれど、死 に対して勝利されたので、誰でもイエスを信じる人に救い と永遠の命を与えることができるようになったのです。
イエスは死ぬ前に、弟子たちにこう言われました。「あ なたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。 わたしは既に世に勝っている。」 2 それは、イエスだけでは なく私たちにとっての勝利でもあり、その勝利こそが、復 活祭で私たちが祝うものなのです。
1. 1ペトロ3:18-19 聖書協会共同訳
2. ヨハネ16:33 新共同訳