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ジム・ワグナー軍曹：機上の護身術

詠春拳ユニバース WTUni ver s e

ドクター・チウ・チー・リン、少林洪家の生きたレジェンド

S t e v e n S e a g a l H E L I OG R A C I E

スティーヴン・セガール。合気道を改革した男。グレイシー柔術

合気道：野村先生インタビュー

自然の伝統

日系移民： ` ブラジル武芸の歴史「自然」の伝統

指導士ジョルダンアウグスト

日系移民：` ブラジル武芸の歴史「自然」の伝統

チン・ナの技を使うには関節についてだけでなく、解剖学全般の深い知識が必要です。チンは捕まえる、ナは制御するという意味です。つまりチン・ナは敵から身を守るために相手を掴み、押し、外し、コントロールするということです。少林拳ではチン・ナの技は相手の攻撃を封じるために使われます。この技の起源はほぼ少林寺創設時からと言われていますので、長期にわたって一般の人々の間でも広めれれてきた技と言えます。チン・ナの適用には相手を無力にするために緻密なコントロールが必要となります。チン・ナの基本技は次の５つです。筋肉や腱の裂傷、骨はずし、呼吸のブロック、血管ブロック、気の道を押す。

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「問題を生み出した時と同じ意識レベルではその問題は決して解決できない。」アインシュタインの格言「意識が脳によって生成されるのではなく、脳が意識を受け入れるのだと思う。」グラハム・ハンコックの格言「まず、地球はエネルギー体であるということ。そこから形のある世界ができる。この地球がエネルギー体であるという前提から始めないと我々はそのエネルギーを絶対に感知するいことはできない。」カルロス・カスタニェダの格言対称物が視界から隠されているからといって、それは目に見えないものではないのです。実際目に見えないとしても、他の手段をとれば見えないということが不可能ではないわけです。見えないといっている人のほとんどは見ようとしていないのです。子供の頃から我々は環境内の総意と受けた教育によって導かれるのですが、現実の世界を受けとめることこそが、真の有り様なのです。現実に起こっていることからだけで全てを判断していると、困難な物事をあきらめてしまう癖がついてしまうのは当然です。極端な例をあげればこのあきらめは、見えない事象を敏感に察知してしまう人ほどそれを受けとめたくないという強い反発心を持ってしまい、その人は対極する落とし穴へはまりそれにしばられてしまうのです。この二局面の世界を乗り越えれる力を完全に失ってしまいます。見えないという不安と全ての論理は調和がとれていると堅く信じるという相反する感覚をもってしまうのは不思議ではないのですが、そのままにしておくと愚鈍の地にはりつけられ苦しむ結果となるわけです。主観で話すと論争の種になってしまうので客観論でいうと、見えないことを受けとめるのは不可能ではなく、エネルギーの源を客観的にひもとくツールを利用しながらの検証があれば可能なのです。例えば血圧をはかるときには血圧計を使うとか、ガイガーカウンターを使って放射能物質の有無を認識できるなどです。現実はひとつの感覚というフィルターを通し、全ての先入観をふるいにかける事前処理の記述なのです。見えないものをあしらうというのは、虚空へ飛び込んでゆく、すなわち我々のとらわれすぎているものとは反対にあるところを模範とし、この世の定石から脱出することからこころみてみるということ。今まで考え及ばなかったところの扉をあけるための意識を十分に持ち、見えていることと見えないものをも理解する両面性もしくはそれすらもこえる新しい世界感を受けとめるということ。意識のパラダイムというものは、我々が論理を中心にした教育を受けてきたために信念のみでは形成されません。なので、何か別のもの（宗教的産物から理論を導く）などで代用してしまうか、せいぜい二極の事象の中で、まるでチューインガムを伸び縮みさせるかのようにバランスがとれているかのようにおもいこんで、おさめてしまうかである。人生という向かい風にいどむには、結合は不可欠であり、同様に節制は無限にいどむということです。私がe-Buntoのおかげで学んだことは、自然シャーマンにおける科学、要するに目に見えないものをツールや客観性を利用して可能性へと導くことです。見えないものを「科学」で立証しようとするとせっかくの我々の総意は乱されてしまいます。この見えないものへの旅で最も印象に残ったのが、まず古いしがらみにしばられている不条理で不適切な輩たち、化学者、技術者、量子物理学者といった人々が「魅力」や「自然シャーマン」に熱狂的に刺激されていったことです。近代のツールやサイエンスを使わずにどんなふうに彼らがそれに到達したのかというのをここで説明するのは難しいのですが、とにかく、それにはこの世界へととけこみ、はじめることが肝心です。

カルロス・カスタニェダは、彼のその堅い良識という世界を打ち破るために千の災難を通過し、古代トルテカ帝国のシャーマンのビジョンに触れることから始めたそうです。彼がこの過程で学んだことに関しての記述は、２０世紀哲学界に最も強い影響を与えたと言われています。私もカルロスと同じく人類学に興味を持つものであり、自分からかけはなれているとおもわれることの中から発見もあり、そこからこの今まで話をすすめてきた二極の間を渡す橋が確かに存在すること、ただそれは個人が内面的に発見することなのです。それはもがいた挙句に自分の意識をとてつもなく巨大な内面の世界へ投入し、皆がそうであるように実行に移せるための個人の内臓するエネルギーというのはそう多くはないのも事実です。しかし、全てが不可能ということはありません。達成を望む力さえもてれば、必要な力なのですから、きっとエネルギーは生み出せる。。現代人は、一般的に内在する自分自身との全てのつながりを失ってしまっています。そんな自分というものが存在することを否定し、単なる頭脳のある生物というものに置き換えてしまっています。機械とそれをあやつるエンジニアの立ち位置をまちがえたまま、探求するはずだったものが封印されてしまっています。しかしながら科学そのものは、最先端というところへ到達するたびにその扉を開き、我々の日常であたりまえになっていることを打ち砕いていっているというのも事実です。私たちはそれらの道具を開発してきたのに（コンピューターが、店頭で販売をはじめる日もそう遠くないかもしれません）日常の中で私たちはそういう道具から誘発されている事象を認知することができないのです。私たちは時空が浸透性次元だということは知っていますが、それを伝播する力があることを理解できないのです。なぜなら本当の魔術はマグナス効果で「偉大なる物」をあやつることができれば、私たちは我々自身が偉大なる者になることができるということなのです。シャーマンが確実に内在する力から、際限なく広がる時空の果てまでワープして火や、空気、水、土などに変換する時、宇宙を揺り動かすことができていたのです。なぜなら物質のはるかむこうに、意識、精神があり、その我々の中に介在するものはこの宇宙が全て創造したものにほかならないからです。古代の人々から学んだこと: 我々の存在というダイヤルである意思を動かすためには必要な周波をあわせなければなりません。ただこの周波数をあわせるのは、非常にむつかしく、無理だろうといわれています。しかし隠れた科学の世界では、境界線を越えるには我々の実存を変換することだけが可能にするといい、まずはそれを信じ実行すること。これは本当です。成せばなる！何度でも！

日本の武芸歴史ブラジルの近代武芸の歴史ジョルダン・アウグスト指導師タケオ・ナガキ氏は、１９６０～８０年代にかけて武芸の歴史について重要な研究を行った偉大な歴史学者であり、彼の研究は現在我々が行っていることの重要なベースとなっている。彼は１９９４年に初めてブラジルの雑誌「キアイ」で小川先生の文書を紹介した人物でもある。彼は武芸の心得はなかったが、小川先生の友人であり、翻訳やアイヌ文化の探求など、先生の手助けをした。小川先生の名前が広く知られるようになったのは彼のおかげであるのは疑いなく、また常に小川一家の経歴について語ることに専念していた。

多くの日本人移民をブラジルに移送した笠戸丸

明治維新の訪れとともに、日本の伝統文化は大きな変化を遂げた。これまでの身分制度は廃止され、新しい制度が加わった。兵役が義務付けられ、農地改革も行われた。一方で天皇は絶対君主となった。経済面では政府は工業化を推進し、資本主義が始まった。原料と消費促進の必要性から日本は隣国の中国やロシアと戦争を始めた。その勝利は国に繁栄と資本主義国家をもたらした。文化的な面でも、国民の識字率が上昇し、書籍、新聞や雑誌の刊行の他、宗教、科学、イデオロギー、文学や芸術に関する研究も盛んになった。お歯黒は禁止され、一部の階級にしか許されていなかった乗馬が解禁となった。国民は髷を切り、侍など一部の階級にしか許されていなかった苗字を義務付けられた。帯刀が禁止され、外国人を含む、階級間の結婚も許されるようになった。人身売買が禁止され西暦が導入された。日本は国民の西洋化にいそしんだ。鉄道網が整備され、蒸気船、自動車やガス燈が導入された。赤れんが造りの建物が建設された。これらは西洋のイデオロギーを学ぶ事によって増幅された。国民は近代化を切望していたのだ。このような状況のなか、政府は民意に沿った憲法を新たに制定する必要性に迫られた。だが、１８８９年１月１１日の法によりほぼ全権が天皇の手にあった。日本人の海外移住が正式に始まったのは明治元年（１８６８年）であった。第一陣はハワイ、オーストラリアとニュー・カレドニアに向かった。１８９７年には日本の１８県で移住者組合が創設されていた。翌年にハワイは米国の領土となり、外国人の移入が禁止された。そのため移民船は米国本土、カナダやオーストラリアへと向かった。しかしオーストラリアでも２０世紀初めごろに日本人移民を締め出す政策をとった。その後他の

日本の武芸

上：初めてのブラジル航行を企画した水野龍（中央）下：ブラジル移住を推進する宣伝左：ブラジルのサントス港の笠戸丸。移民名簿

当時の写真：日本から到着したブラジル移民

移民コントロールポイント

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国も似たような政策を取りだした。日本人が仕送りのために働き続ける姿勢や欧米諸国との習慣の違いなどが差別の対象となった。日露戦争後、多くの移民が太平洋を渡り、北米、特にカリフォルニアに集中した。そのため、初めて日本人とアメリカ人の子供たちが対立した事件が起こったのはサン・フランシスコだった。これは親をも巻き込む事態となり、結局日本人専用の学校が建設された。日本はこれを人種差別と受け取った。日本は極端な人口増加の問題に直面していたが、これまで日本人移民を受け入れてきた国々が制限を設けはじめたため、移民先を南米に転換していった。１８９４年、ブラジルのモライス政権時代、日本の外務大臣の特命を受けたエノモト・タダシ議員はブラジルを訪れ、ペルナンブーコ、バイア、ミナス、サンパウロなどを駆け巡った。そしてブラジルは日本人の移住に最適であるとの結論に達したが、コーヒーの価格の下落やカヌード戦争により、移住は延期された。こうして日系移民はペルーに到着した。当時の杉村ブラジル大使が新聞に寄稿した現地の様子は移住を希望している人々を熱狂させた。夢を叶えるのに理想の土地であると思えたのだ。水野龍は移住斡旋会社「皇国殖民会社」を設立し１９０８年４月２８日神戸を出発した笠戸丸は、７９２人の日本人開拓者たちを乗せてブラジルへと旅立った。インド洋を渡り、アフリカ南部に到着、そこから大西洋に出て６月２８日にサントス港に到着した。当時のブラジル大統領はアフォンソ・ペナだった。小川先生の最も古い日本人生徒たちの供述や記録によると、この船にはヤブヅキ家の血を引くナカミネ・エイイチが乗船していたという。その出自から彼はヤブヅキ・エイイチと名乗ることも多かった。ブラジルに連れてこられた「宇宙・自然」の子孫たちは４人程度だった。ヤブヅキ、タヨヅキ、カワヅキ、ヤマヅキ。日本人の苗字は「名は体を表す」のことわざ通りである。その人のみでなく、祖先の事も苗字によって知ることができるのである。明治維新前は侍など特定の地位のものしか苗字を許されなかったが、それ以降すべての日本人がそれを持つこととなった。日本には２７万個の苗字が存在するといわれる。例え

ば、田、川、野、谷、坂などが付く苗字は住んでいた所の状況を表す。田中は田んぼの中に住んでいたのであろう。また、田中の苗字は関西に多く、田んぼの多い地域であったこととも一致する。我々は、苗字を選ぶことはできないが、名前は両親によって決められる。名前はその時代を象徴するもので、太平洋戦争時代は「勝」や「洋」の字が多く用いられた。終戦後は「和」が流行した。経済成長期には明、清、誠、女性は恵、幸、節などで、子が付く名前が多かった。近年では漢字そのものの意味よりもイメージや音の響きが好まれる傾向にある。ブラジルに渡った武芸の子孫たちの名前は、「自然の人々」が暮らしていた村の名前によるものである。山、川、太陽（たよ）、藪。これ；に月が加えられて形成される。彼らの神秘的な宗教が常に核となっていた。ナカミネ・エイイチは、ブラジルで武芸の人々について初めて語った人物であった。小川一族は小川ひろし、小川かずお、小川のぶあき、と母方のいとこにあたるヒラヤマがいた。エイイチ・ナカミネの様々な事に対する知識の深さは他の移民たちを驚かせた。病人を治したり、難しい状況での的確な判断を行ったりした。エイイチは１９４０年までブラジルに居住し、その後日本に帰国した。残された移民たちは、彼に教わった通りに薬草などを栽培した。当時の話を聞かされてきた６０代の男性たちは、彼のことをナカミネサマと親しみを込めて呼び、話をする。ある時、ある家の娘が精神に異常をきたし、包丁を持って皆を殺すとわめきたてた。そこでナカミネは、日本語ではない、誰も聞いたことのない言葉で呪文を唱え、憑依した悪霊を取り去ってその女性を落ち着かせた。そしてその場にいた人間にこのことは誰にも言わないようにと戒めた。当時日本人移民とブラジル警察の間でもめ事が起きつつあったからだ。

ハワイとアメリカにおける移民計画第一弾ののち、南米大陸への移住は極端に増加した。多くの人、特に働き者の農業従事者は、豊潤な土地に大きな期待を寄せた。

その歴史的起源が明らかでない「自然村」の様相はこの現在の日本の写真とよく似た物であったと考えられる。真冬は大雪に包まれる日本北部。丸太と藁で出来た家屋は大雪に耐えられるよう作られている。風の流武芸は、１９３５年にサントス港に上陸した小川一族によってブラジルに伝えられた。彼らは北海道川村の出身であった。パナマに定住し、農業を営んだ。そして他の移植者たちとともに剣術の稽古を始めた。数々の爆撃で破壊された日本の天皇やその臣下たちはアメリカによる占領を受け入れざるを得なかった。だが地球の反対側、サンパウロでは多くの日本人入植者たちが事実を認めようとしなかった。狂信的な国粋主義集団が現れ、日本は本当は大戦に勝ったと言い張った。「臣道連盟」と呼ばれたその集団は日本が負けたと信じる入植者に対し、裏切り者として血の粛清を行った。一方、セルソ・フォンセカが現存するブラジルの雑誌「イスト・エ」に書いた文章によると、終戦後サンパウロにいた日本人の８０％が勝利を信じていた。２６００年の歴史を持つ帝国部隊が負けるはずはないと信じていたのだ。彼らにとっては降伏のニュースも裏切り者の日本人たちの助けによって作り上げっられたでっちあげであった。この国粋集団は、罰として２３人の同胞を殺害した。彼らの唯一の罪は敵国の勝利を認めたことだった。この臣道連盟と特攻隊と呼ばれた殺人者たちの物語は、作家でジャーナリストであるフェルナンド・モライスの作品で語られており、最近映画化もされた。キカワというサンパウロでクリーニング店を営む６０代の男が、同胞への脅迫などの罪で警察に連行されたが、どんな脅し文句も通用しなかった。服役中誰も彼に日本の降伏を信じさせることはできなかった。彼にとってはアメリカの見え透いたプロパガンダに過ぎず、すべては日系移民をだますための戦術であると信じていた。そのため、降伏したのはアメリカであると証明するために多大な数の新聞を作製し、写真のねつ造も行った。また、本当の事を言っている日本人は皆裏切り者であるとみなした。彼らをどうすべきか？特攻隊によって粛清されるべきである。ただしブラジル的バイオレンスも添えて。臣道連盟は粛清すべき同胞のリストを作り、特攻隊のグループをいくつか作って割り当てを行った。そして恐ろしい攻撃が始まった、負けを認めた負け組たちはしばしば家族の目の前で殺害された。国粋主義者による被害者は、死者２３人、負傷者１４７人であった。日系人社会は恐怖におののき、ブラジル当局は対応に追われた。臣道連盟の一味とされた３万1３８０人の日本人が連行され、事情聴取が行われた。

日本の武芸この犯罪の動機が日本の敗戦を受け入れない事であると知ったサンパウロ州の検事ジョゼ・カルロス・マセド・ソウサは、１９４６年６月、日系人社会で最も影響力のある人物数名をを呼び、説得を試みた。彼らの天皇への忠誠心を利用して理解させることができると信じた。だが、それは全くの失敗に終わった。そこに集まった５００人以上の日本人は誰も敗戦を受け入れなかった。それどころかサンパウロ州政府に対し何らかの形で日本敗戦のニュースを流すのを阻止するよう要求した。その傲慢な態度はブラジル国民の怒りをかった。いずれにせよ警察はブラジル軍との協力で数都市で連盟の特攻隊やリーダーたちを逮捕し、彼らの犯罪を阻止することに成功した。ほどなくして臣道連盟は解体され、半世紀近く忘れ去られていたが、フェルナンド・モライスのルポルタージュによって再びよみがえった。臣道の行為によって、過剰反応した一部のブラジル人が、罪のない日本人をリンチするという事件も起きた。トゥパという村では戦場のような状態になったという。モライスはある日系２世と話しをしているときに連盟の事を初めて知った。ただし、本人の弁では、しっかりとした事実の証明がなければ本にしないと決めていたという。中にはあまりの事ににわかには信じられないものもあったからた。作品には出てこないが、作者はある元臣道のメンバーにインタビューした時のことを語っている。その男性に彼は「あなたは日本が勝ったと思いますか？」と尋ねた。この作家はそのときまさにソニーのラップトップとニコンのカメラで取材を行っていた。それに対してこの男性は「あなたは、戦争に負けた国が、世界第二の技術大国になると思いますか？」と聞き返した。非常に独特な東洋的論理である。モライスは２０００年の５月「汚れた心」の脚本を書き終えたころ、「殺人者」にインタビューする機会を得た。トクイチ・ヒダカ、「トゥパの７人」の写真の一番右の男だ。このインタビューを取り付けるのに２年かかり、さらに自宅前で3日間待たされた。家に入ってよいとの許可が出た時、この作家は文字通り車から飛び出して、家に飛び込んだ。数時間にわたり話し、写真を撮影してメモを取った。すべてが終わり、満足して最後の質問「あなたは今でも日本が戦争に勝ったと思いますか？」と尋ねると、この８０歳の老人は不可解な表情をして首をこちらに向け、作家が持参したソニーのパソコンとニコンの最新式カメラを指して言った。「日本が戦争に負けていたらこんな洗練されたものがつくれますか？」臣道連盟は、日本人学校２００校の閉鎖、出身国の言語使用禁止、集会やラジオの所有の禁止といった日系移民のおかれた複雑な状況から生まれた。戦後、元軍人であったジュンジ・キカワは

Artes de Japón 、同胞たちに２６００年もの間無敵であった帝国軍が負けるはずはない、と原理主義的な演説を繰り返した。そしてサンパウロの日系人コミュニティーは「勝ち組」と「負け組」に分かれて対立した。前者は特攻隊を結成した。殺戮は１９４６年１月２日にトゥパで7人が殺されたのに始まった。彼らはサンパウロ市内に本部を設けていたが、基本的には内陸部で活動した。1年間で数百の暴行事件が起きたが、殺害されたのは２３人にとどまった。特攻隊は侍式の訓練を受けており、銃器の扱いは得意ではなかったためとみられる。それでもブラジル史上もっとも奇妙な反プロパガンダ活動として記録されている。日本の勝利を見せかけるため、世界のあらゆる国の新聞の記事やスタンプの偽造、これらの記事は常に日本の勝利を報じていた。日本は戦争に勝ち、帝国の

日本の武芸

領土はオーストラリアからベトナムまで拡大、これらの土地の一部を購入することさえできると主張していた。このような状況で小川ヒロシは、臣道連盟に追われていた移民たちに護身術の指導を行っていた。このことが小川兄弟の護身術がブラジル移民の間で広がるきっかけとなった。ブラジル時代の小川一家には様々な出来事が起こった。１９５２年に小川ヒロシは小さなグループに小川家の伝統を教えた。そのグループにはロペルト・クニオ、アラキ・マサオ、ミズナガ、アベ・ヒデイチ、パウロ・ヨリキ、ヒデヨシ、ミノル・ナガタメ、トシミツ・ムラモト、ケンイチ・イザワ、イサオ・ホリビ、ミヨシ・マスダとサダオ・エビハラがいた。１¬）ブラジルにおける武芸道が始まる。

前世紀初頭に撮影された自然家族の写真

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１９５４年、ヒロシとカズオは仲たがいして兄弟の縁を切る。ヒロシは家族とともにジャカレイに移住する。この時期についてはさまざまな話が語られているが、そのソースは移民や過去の武芸履修者によるもので、真実なのか、空想の産物なのかは調べる由もない。２）ブラジルを訪れたクニシ・トミオは信じられない技を持つ日本人の話を聞き、興味を持って小川ヒロシの家を訪れる。理由は不明だがクリシは小川ヒロシを横柄で欺瞞であると訴える。そこでヒロシは日系人の信用を失い追放される。彼は妻と末息子と共にマリンガに移住するが、この息子はその数か月後に栄養失調と肺炎で病死する。さらにその数日後、妻は現地の同胞の助けで日本に帰国、ヒロシは妻にも見放されてしまった。地域の日系社会におけるヒロシに対する誹謗、中傷が始まる。３¬¬）ヒロシは苦悩していた。地元の地主たちと交わり、警備や農作業に従事した。また彼はパーティや会合で武芸の技を披露し、出席者を喜ばせた。４）１９５７年、地主の一人と意見が合わず、新しい生活を求めてベレンに移住。この時から母方の苗字であるクラモト姓を名乗る。１９６１年、ジャカレイに戻り臣道連盟の元メンバーの脅迫を受ける。５¬）これに対してヒロシは、人違いであろうと答えた。６）１９６２年、パラナに戻ったヒロシは武道を通じて現地の軍人と親交を深めるようになる。これで自信をつけたヒロシは、土地を購入、臣道連盟との諍いを避けるため改名したが、「この地での新たな死者は、臣道連盟のメンバー一人の死を意味する」と語った。新しい姓名はヒデイチ・ウスダ、で生き残りをかけて商売にいそしんだ。７）１９６３年、自らの農場で、武芸のグループを再編するが、自警団を組織したとヨシナガによって告発される。その嫌疑が晴れたのち、ヒロシは日本に一時帰国するが、一族の紛争に巻き込まれ、結果、日本の家族とは絶縁関係となった。８）１９６４年、精神的な拠り所の必要性を感じたヒロシは、唯一の友人であったモトシマ・ススムに手紙を送った。彼はとある借金の返済の代わりとして、タヅキ・シンユキを連れてきた。シンユキはヒロシとともにエブント、現在はお力とよばれる北海道の古い教義の実践を開始した。９）最初の頃は毎週火曜日に集まり、精霊に風の話を訊くなどした。ヒロシは信頼できる仲間と共に成長し、ブラジルでの新たな歴史が始まった。１０）以前サンパウロのサントスに居住していたカズオは、後にも臣道連盟のメンバーから脅迫を受けていた。小川カズオは、小川サブローの息子で、いつか復讐は起きると予期していた。そのため彼はさまざまな地を転々とし、１９７５年にゴラニアに着いた。ほどなくしてネロポリスの農民たちと親交を深めていった。カズオはブラジルに渡った兄弟の中で最もよく訓練された人物で、また彼にアドバイスを求める人も多かった。臣道連盟が自分をそっとしておいてくれないことはわかっていた。彼はいくつかの名前を使い分け、様相も２カ月ごとに変えていたと

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言われる。柔道を習っていた友人たち、特にグンタロウ・クラモトとキシオ・サガに勧められて、護身術の同好会を作ったが、剣術は教えなかった。この術の唯一の教え子はサガだった。腸の不調を訴えてゴイアニア中心にある病院に入院、その二日後に肺炎で亡くなった。彼の生前に起きた様々な出来事は、その武芸とともに今日でも影響を与えている。 11）通夜の時でさえ、家族の紛争は続き、パラナに居住していた小川姓を名乗る家族は完全に決裂してしまった。その憎悪ぶりは最たるもので、関係を断ち、それぞれが日々の生活に従事した。その時、キシオ・サガの招へいを受けたキバシ・ヒラヤマが、活動を続けるためにゴイアスに到着した。サガが彼の滞在費用を持った。１９８８年、キバシはこの地を去り、パラナに戻った。その際１１人の生徒に師範の資格を与えたが、その中にはタケシ・ハセガワ、ヒデオ・オカサ、アキラ・サガ、ジョルダン・アウグスト、タケシ・サトウ、タミ・サトウらがいた。１２）武芸履修者のなかで、今回話を聞くことができたのは以下の通り。Roberto Kunio Araki, Massao Mizunaga, Aby Hideichi, Paulo Yoriki Hideoshi, Minoru Nagatame, Toshimitsu Muramoto y Kenichi Izawa, Isao Horibi, Miyoshi Massuda, Sadao Ebihara, Ryoichi Fujisaka, Mauro kogaki, Luiz Higashi, Paulo Yamamoto, Sérgio Okiyama, Takeshi Hinomori, Takeshi Hasegawa, Hideo Okaza, Akira Sanga, Jordan Augusto, Takeshi Sato, Tami Sato, Toshio Matsumoto, Yasuy Sugimoto, Misay Hatsumi, Luis Kitahira, Susumo Maeda, Jorgy saito, Meitoku Sugino, Moichi Iwata, Kishio Sanga, Kuramoto Hatsue, Akiko Oseki, Murata Miguel, Sugiro Umeno他。１３）２００４年、小川ヒロシはサンパウロで亡くなった。常に新しい人生に期待を抱いていた彼は、少なくとも１０回以上名前を変えていたことがわかっている。１４）備考：本文の内容については、取材を受けた人の意志のいかんに関わらず、その真偽性を保証する術は我々は持ち得ないことをご理解頂きたい。

ブラジルに到着した自然の最初の仕事は主に材木の輸出だった。当時の写真。

シンユキ先生とミチ・ホソカワ「自然」文化の後継者シンユキ先生人生の中で、なにか不思議な力によって創造された人間に出会う時がある。もちろん、ここでいう不思議な力とは宗教的な意味ではなく、普通とは違うという意味合いである。シンユキ先生（彼はこう呼ばれることを好まなかったが）は、目に見えない物を見る術といったことに大きな変革をもたらした人物であることはまちがいない。そのため、多くの生徒やエブントを学んでいる経験主義や実用主義の専門家がそれらの事について研究している。彼の視点、経験や意識により世界中の多くの人が彼の思考や能力を研究している。彼は常に非常に簡潔な方法で、「宇宙は我々に耳を傾ける、、、、。」と話していた。私は修業時代に、いつか彼の話をきちんと理解するようになれば、彼のようになれるだろうかと思っていた。彼の人生は、自己探求、遭遇、立証など、成功に満ちていた。そして、人間の成長は常に上昇することであると説き、人間として最高の高みに達するまでは絶えず進んでいかなければならないことを示した。

日本の武芸ミチ・ホソカワ我々にとっての永遠のシンボル。一点に向かって進む大きな四角い石。その見透かすような視線と二つとない確固たる姿勢は、偉大なるマエストロと共にあることで、その存在をさらに大きなものにした。私の指導師であったホソカワ先生は、例を挙げて、私に自分自身を思い起こし、整理することを教えてくれた。「あなたば、自分自身の道を行きなさい。他の者のように群れになって歩き、自分の事しか考えないようになってはいけません。」と私を諭した。ホソカワ先生は見えるものと見えないものの境界線を超越していたといえる。この二つの世界は同じ思考に存在すると考えていた。その堅固で、辛辣な思考で、いかに経験を積んだ人間であっても、常に修練を積むことが大切であることを強調した。これが人間の相互理解に重要な方法であるといぅ現実が理解できる。これはお互いに交流して接するための通貨であるといえる。「日常から離れたければ、自分が非日常になるように努力すること」という非常に有効な言葉もかけられた。この二人によってなされた事を言葉にするというのは非常に奇妙な経験であった。「目に見えるものを歪曲してはいけない。人生の法則の思考は、迷うことなく表現すること。類似やセオリーや空想によって説明されるものではない。現実を生きることによって成長がある。世界とは、現実であり、それぞれの思考は行動によって表現される。言葉ではなく、生きるのだ、、。これが極意である。

小川ヒロシ（左）下：風の流指導師の巻物指導師ジョルダン、ブラジルにて

日本の武芸

指導師ジョルダン、日本とブラジルの道場における画像

右：日本から来たエブントの生徒たちと。

指導師ジョルダン、日本およびブラジルで。

指導師ジョルダン、ブラジルにて。

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このボビナムについての新しいＤＶＤで、パトリック・レベットがベトナム棒術をご紹介いたします。あまり知られてはいませんが、ベトナムの伝統格闘技のなかで棒術は最も重要な武器のひとつです。ボビナムの学校では棒の使い方と棒に対する反撃の技だけを教えています。でもマエストロレベットは棒術に関する様々な動きを２巻のＤＶＤで教えてくれます。第１巻ではウォームアップや棒術用の特別な筋トレ、基本理論、扱い方、防御、ブロック、逃げ方や闘いのテクニックなどを教えます。このビデオはとてもユニークな方法で、ベトナム棒術をくまなく、完全にレクチャーしてくれます。

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スティーヴン・セガールは全盛期にはシュワルツェネッガーとスタローンに次いで、アクション映画の稼ぎ頭だった。彼の映画はアメリカの年間興行収入ランキングのトップに常に位置していた。現在彼は６４歳で、身長１９１センチ、体重は１００キロを超える。合気道の七段を有するほか、空手、柔道とクンフーでも黒帯を取得している。

Mónica Gail Rodríguez & Pedro Conde

武道映画スティーヴン・セガールスティーヴン・フレデリック・セガールは、１９５２年４月１０日、ミシガン州ランシングに生まれる。格闘技との最初の出会いは決して良い思い出ではなかった。７歳のときに空手家と喧嘩をしてノックアウトされたのだ。青年期にカリフォルニア州フラートンに移住し、そこで松濤館空手のサカモト先生に師事、先生の紹介で糸東流のデムラ・フミオ氏と出会う。その後カリフォルニアのオレンジ・カウンティで合気会を主宰するイシサカ氏と出会い、そこから合気道の修練に励む。父が軍人であったため、１７歳で東京に引っ越す。そこで合気道の師匠磯山博氏と出会い、合気道の創始者である植芝盛平の道場に連れていかれる。その教え方に強いインパクトを受けた彼は、これが自分の進む道だと確信する。西洋人にとって日本社会に溶け込むことは簡単ではなかった。しかし彼の最も特徴的な性格はその頑固さにあった。長い試練の末、アジア人以外の外国人として初めて、日本人向けの道場を東京に開くに至った。そこの名前は天心道場で、現在は元妻でやはり師範である藤谷美也子が経営している。彼女との間には長男剣太郎と長女文子がいる。複数の道場で、計２０００人近い生徒を抱えたこともあり、その中にはジェームズ・メーソンやショーン・コネリーといった著名な俳優も含まれている。１５年の日本滞在で彼が目指したものは精神と体を鍛える武士道精神であった。

１９８４年、ロスアンジェルスに戻った彼はそこで格闘技と俳優や政治家のボディガードのための学校を開いた。美也子と別れたセガールはアドリエーン・ルッサと結婚するが長続きせず、次に女優でモデルのケリー・ルブロックと結婚し３人の子供をもうけた。この結婚のおかげでスティーヴンはハリウッドで最も影響力のある代理人マイケル・オーヴィッツと知り合う。彼は大の格闘技ファンであった。そのおかげで、デビュー作「刑事ニコ・法の死角」でいきなり主演し、共同脚本・共同プロデュースを手掛けることとなった。ワーナーブラザーズによって撮影が開始された時は、誰も興味を示さなかった。撮影所を訪れるメディアもなく、国内市場を視野に入れていたため、この作品の未来はあまり明るい者とは言えなかった。ついに公開の日が訪れた。評論家たちは映画館に駆け付けたが、その態度は偏見に満ちており、最後まで我慢できるかわからないなどと述べる者もいた。だが、終わってみると、映画はさほど悪い出来ではなかったのだ。そのせいか、作品の批評はこの手の映画としては比較的好意的な評価を得た。中には、「新しいプロトタイプのアメリカンヒーロー」「単に筋肉質の

ヒーローではなく、新しいダーティーハリー」などという評価もあった。 NVUU年のデビュー作は成功し、新しいヒーロー誕生となった。彼はデビュー作に細心の注意を払い、脚本とプロデュースにも関わった。監督、脚本はあのチャック・ノリス主演「野獣捜査線」のアンドリュー・デイヴィスが手掛けた。観客が筋肉だけのヒーローにうんざりしていた時にタイミングよくセガールが現れたのか、いずれにせよ、映画は大ヒットとなった。制作会社にとっては非常に収益の上がる映画で、セガールの将来を保証するものであった。この映画は世界中で大ヒットした。記者会見でセガールは必ず次のようにコメントした。「私はランボーやコマンド―のようにプラスチックでできたよ

武道映画

うなヒーローは好きじゃない。私が好きなのはニコのように泣くことがある男だ。プラスチックのヒーローが泣く所は見れないだろう。だが私の役は、家族を思い、他人の事を気遣う人間である。」また映画初出演について訊かれると次のように答えた。「私は俳優のジェームズ・メーソンと知り合いなので、以前から映画に出演する機会はあった。だが、それをしなかったのは本当に納得できる映画に出会うまではと思ったからだ。未熟な状態でこの世界に入りたくなかったし、今の時代に合った脚本も重要だった。小さい頃から映画が好きだった。私にとって映画で最も大事なのはストーリーだ。ただファンタジーとバイオレンスだけの殺し合いの映画は作りたくなかった。こういった映画を見に行った子たちが、その後、誰かを殴っても血が出ないと思ってしまうような、そんな映画は作りたくなかった。そんなのは嘘だ。誰かを殴って床に倒したら、血が流れるさ。これが現実であり、それが私が見せたいものなんだ。」

武道映画そのため映画のアクションの振付も彼自身が行った。セガールによると、スクリーンの技は、素早く、シンプルで、明確かつ簡潔であることが重要であるという。２作目の「ハード・トゥ・キル」は興行収入が４５００万ドル以上と格闘技映画史上第６位となった。セガールは観客の期待を裏切らなかった。オーヴィッツもワーナーも彼に機会を与えたことは間違いではなかった。その後「死の標的」も「アウト・フォー・ジャスティス」も興行的には成功したが、彼のイメージはイタリア系アメリカ人の冷徹で無表情な警官というジョン・ウェイン風のステレオタイプが定着してしまった。しかしながら、５作目にあたる「沈黙の戦艦」では新しいイメージを作り上げた。ユーモアと激しいアクション満載のこの映画はかなり厳しい観客も評価し

武道映画た。世界中でN億５千万ドル以上の売り上げを得た本作は、彼の最高傑作でもある。これに次ぐのが「沈黙の要塞」で、この作品では彼のヒューマニズムと環境保護の姿勢という今まで見られなかった側面が露わになった。ここでも彼はプロデュース、主演と監督をこなしている。彼は初期の頃から監督業に携わっているが、サウンドトラックの製作にかかわった事すらある。「沈黙の戦艦」の成功を受けて、制作会社は、ケイシー・ライバックが登場する続編を製作した。今回の舞台は海上ではなく鉄道だった。プロモーションで世界中をまわったスティーヴンは、訪問先のスペインで、メディアに対し、制作会社との意見の違いがあることに触れた。「私がやりたいのは違うタイプの映画だ。今度はドラマをやりたいが、それ

は私だけの判断ではなく、制作会社が私に違う役を与えようとという気がなければだめだ。」また彼は極端に暴力的な映画やキャラクターを嫌っていた。「暴力のための暴力には断固反対だ。私の映画には常に、誠実さ、家族や環境保護の大切さというメッセージが含まれるよう気遣ってきた。」ファンには違うメッセージとイメージを伝えたいと思っているが、映画会社との関係でなかなかそうはいかないと話した。「私が伝えたいメッセージを含めるには社会派ドラマの方が向いているのは明らかだ。だが、良かれ悪しかれ、私はアクションスターで、そういう役ばかりオファーが来る。しかも毎日のようにプロデューサーや脚本家と台本からなるべく暴力シーンを減らすために議論しなければならないが、たいていの場合最終決定権は彼らにあるんだ。」

武道映画その後オフレコで、もう少し自由の利く制作会社と仕事をする可能性を示唆した。１９９６年「エグゼクティブ・デシジョン」が公開されたが、驚くべきことにセガールは脇役にまわり、主役はカート・ラッセルだった。多くのファンはこの映画に騙されたと感じた。なぜなら、ポスターや宣伝では準主役級の扱いであったのに、実際には重要な役とはいえ完全に脇役であったからだ。同年「グリマーマン」が公開され、こちらは本当に主役を演じた。元ＣＩＡの無頼漢刑事で、敵の骨を折りまくるアクションという点ではこれまでと変わらなかったが、今回はユーモアという彼のこれまでのキャラクターにはない新しい要素が取り入れられた。だがそれにもかかわらず、興行成績は芳しくなかった。１９９７年、環境問題を扱った「沈黙の断崖」を撮影。

環境保護局の調査官がケンタッキーの有毒廃棄物の違法投棄と戦うストーリーだった。この映画は世界で興行的に大失敗だった。ハリウッドでは金脈としての彼の価値に対する信用度が薄れていった。事実、その翌年に撮影された「パトリオット」は初めてワーナー以外の製作で、米国では直接ビデオシネマとして販売された。（その後ほぼ世界中の映画館で上映された。）またこの作品の続編も彼自身によって製作・出資され、撮影はモンタナにある彼の農場で行われた。これで彼の映画人生も斜陽に入ったかと思われたが、マトリックスシリーズなどのプロデューサーで、セガールとも仕事をしたことがあるジョー・シルバーはまだ彼にチャンスを与えた。「電撃」で北米映画界に復帰した。セガールは格闘技映画俳優という型にはめられたくなかった。そのためなのか、監督の意向なのか、今までの映画よりもずっと格闘シーンが少なかった。世界的に興行成績はよく、８千万ドルの収益を上げた。だがこの成功にも関わらず、その後彼の俳優人生を軌道に乗せることはできなかった。

トム・サイズモアやデニス・ホッパーと共演しサンフランシスコで撮影された「沈黙のテロリスト」では格闘シーンがほとんどなかった。そのためアメリカでは最初からＤＶＤで発売された。ヨーロッパではいくつかの国で映画館にて公開、スペインではフィルマックスが配給した。２００２年にはヒップホップのスターであるジャルールと共演した「奪還」が撮影されたが、興行成績は２千万ドル程度だった。刑務所ネタはあまりにもありふれており、惹きつけるものがなかった。このあたりから彼の俳優人生は下り坂を迎えた。「「撃鉄」、「沈黙の

標的」など作品の質はどんどん低下していった。２０１０年、ロバート・ロドリゲス監督の「マチェーテ」で久しぶりに世界的に映画出演する。この映画ではトーレスという悪役を演じたが、堕落して良心のかけらもない男を演じた。２０１０年から１２年にかけてはチャック・ノリスのようにテレビシリーズに出演したが、ノリスのように成功はしなかった。その後は直接ＤＶＤで発売される低予算映画のプロデュースを行いながら、「実録、スティーヴン・セガール警察２４時」というテレビシリーズに出演していた。この番組は最初の２シーズンはＡ＆Ｅで放映されていたが、その後法的問題が起きたため、このテレビ局は第３シーズンの放映を中止し、他の局で放映された。その問題とは彼が政界の最も過激なグループに関与してしまったからである。過激な移民政策をとるジョー・アルパイオの支持者３千人が

武道映画彼を支持した。アリゾナ州は移民政策に関しては最も保守的な州のひとつであり、何も犯罪を犯していなくても、身分証明を提示する義務がある。証明を所持していなかった場合、犯罪者とみなされ、強制送還の対象となる。セガールは不法移民はアメリカで最も大きな問題であるとして、全米で最もハードなシェリフと言われるアルパイオと協力関係にあった。アリゾナ以外でもセガールはニューメキシコ、テキサスとルイジアナで不法移民対策の自警団に協力している。セガールによると、アメリカの問題はイスラムテロではなく、国境が開かれていることであるという。そこからありとあたりゅタイプのテロが侵入し

てくるという。もし彼がアリゾナ州知事となれば、国境問題に集中したいとも言っている。セガールは、国内に居住している不法移民の１０～２０％が凶悪犯であると断言している。セガールとアルパイオは人道的活動家の非難の対象となった。セガールはテレビ番組でアルパイオは人種差別主義者であるかとの問いに対してそれを真っ向から否定した。そして、犯罪を犯せば、メキシコ人でもアイルランド人でも中国人でも逮捕されるのは同じであると述べた。さらにロナルド・レーガンの言葉を引用し「国境が守られなければ、国はないも同然だ」と述べた。実際のところジョー・サンパイオは法廷で彼の政策が人種差別的であるとの判決を受けたため、緩和することを余儀なくされた。一方セガールは、アリゾナ州知事に関心があることを公にしたが、彼の政治との接点として興味深いのは、ウラディミール・プーチンロシア大統領との交友関係である。彼は米国籍であるが、父方の祖父母はロシア移民であった。過去にはロシア国籍を取得していると話したこともある。また、映画界から外交部門に転身する可能性もあった。とある報道によると、プーチンはセガールに、カリフォルニアとアリゾナの同国領事館の名誉領事になって両国の橋渡しをするよう提案したという。また彼は最近セルビアの国籍も取得している。同国の大統領および首相と会談を持ったセガールは、セルビアを第２の祖国と感じ、国の発展のために全力を尽くすと宣言した。スティーヴン・セガールが非常に多才な人物であることは疑う余地がない。格闘技のプロであるだけでなく銃器の扱いもエキスパートである。また鍼灸、禅、漢方薬にも詳しい。俳優、プロデューサー、監督、環境保護や仏教を擁護し、音楽のバンドと共に世界中でコンサートも行う。さらに政治の世界にも興味を示しているようだ。他になにが残っているのだろう？彼の考え方を支持するかどうかは別として、一つだけ言えるのは、非常に正直で、自分の考えを表すことを恐れない人物であるということだ。間違っていることもあるだろうが、自分の意見を述べるときには、非常に正直で勇気ある人物である。文：モニカ・ガイル・ロドリゲス、ペドロ・コンデ

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クンフー

ドクター・チウ・チー・リン少林洪家の生きたレジェンド多くの映画ファンにとっては数々のクンフー映画でおなじみの顔です。仕立て屋を演じた映画「クンフーハッスル」ではその存在感を露わにしていました。他のクンフースターと違い、彼は単に映画の中だけでなく、その家系も著名なクンフー一家で、真のマエストロであり他の誰よりも少林拳を象徴する人物といえるでしょう。アクション界の３大スター、ブルース・リー、ジャッキー・チェンとジェット・リーを個人的に知っているマエストロもほかにはいないでしょう。

クンフーの家系１９４３年１月、中国広東省に生まれたマエストロは、中国で最も有名なクンフーの家系に生まれました。父親のチウ・コウ（１８９５－１９９５）は伝説的な指導師であるラム・サイ・ウィンに４歳の時から小林洪家指導を受けました。その体に残された数々の傷跡は両親の厳しい教育によるものでした。マエストロは格闘技の総合的な識者であり、国際的に知られる格闘、中医学、漢方歴史や哲学の大家であるだけでなく、舞踊や書道にも通じた人物です。クンフーの大家の家系に生まれた事に大きな責任感を抱き、厳しい修行のうえ大きなの成果を得ました。彼の父親は、かなり若い時から少林寺の僧侶の伝統と摂理を説き、少林拳を総合的に訓練しました。

虎鶴拳それゆえ、マエストロはわずか８歳で洪家のシンボルともいえる虎鶴拳をマスターしていました。これは彼の父親が６０年代に中国の武術大会で優勝した技で、これにより広東スタイルの武術として認められるようになりました。この成功は観客や連盟職員の注目を浴びました。これが当時の師範たちに広まり、その素晴らしさが認識され、公式なフォームとなりました。

後継１５歳でチウ・チー・リンは民間療法師とカイロプラクティックの資格を取得しました。チウ家に伝わる薬草や中医学の総合的な知識を得た若きマエストロは父親の手伝いを始めるようになりました。１９６５年父親のチウ・コウは７０歳を迎え、教職を退いて息子を後継者に据えました。２８歳の時、マエストロは香港のネイサンストリートにクンフーの学校を開校。１年後にはチャン・ユック・リンと結婚しました。息子のケビンは父親と共に映画俳優の道に進み、子役でデビュー、映画「７匹の虎の決闘」で子役を演じ、その際蛇拳を披露しましたが、その後クンフーよりもコンピューターに興味を示すようになり、現在ではコンピューターの世界で著名な人物となっています。７０～８０年代の映画

７０年代のアジア映画ブームにより、チウ・チー・リンは俳優としてまた格闘技のスタントとして大活躍しました。彼は映画の主人公になるというつもりはなく、あくまでわき役や映画作りに協力する立場に徹していました。撮影中に他の俳優が怪我をした時など、彼の医学知識がしばしば役立ちました。ブルース・リー、ジャッキー・チェン、ジェット・リーといった著名な俳優たちの格闘シーンに協力したり、彼らの怪我を治療したりしました。彼が主要キャストとして出演しているのが、１９８１年の「７匹の虎の決闘」だけであるのは残念なことです。２００３年にはスティーヴン・チョウと共演し上海で撮影された「クンフー・ハッスル」が公開されました。７０歳を超えた今でも映画出演を続けています。

父の遺産チウ・チー・リンは、洪家少林拳を維持し、発展させて拡大するという父の望みを叶えようと努力しました。彼は素晴らしい遺産ともいえるこの武術を伝えていくことを決意しました。現在彼はこの素晴らしい伝統的武芸を広めるため世界中を旅しています。世界各地に精鋭の弟子を持ちセミナーを開催しています。彼の公式な後継者は、スイスのマーティン・セヴァーです。

マスメディアに多数出演中国政府は彼の存在を重視し、例えば小林南家の寺院再建の責任者に任命したり、２００１年には博物館の開館にも関わりました。彼の人気ぶりは世界中のマスメディアへの出演の多さから見て取れます。世界中の雑誌の表紙を飾った他、アメリカＮＢＣ、香港ＴＶＢさらに日本のＮＨＫやＴＢＳの番組にも数多く出演しています。アメリカの中国系新聞も彼の人生や洪家についてしばしば報道しています。

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偉大なるヒューマニズムと謙虚さ偉大なるマエストロチウ・チー・リンを個人的に知る機会があった人は皆驚かされると言います。７２歳という年齢にも関わらず、非常にエネルギッシュで情熱的、明るいキャラクターであるということです。そして常に教え、回答し、人を助ける一方で、ユーモアのセンスも忘れない人物なのです。

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WT Universe 詠春拳ユニバースビデオ今月、アルフレド・トゥッツイと国際武道の協力により、ＤＶＤ第１巻が発売されます。今回はシウニムタオ（ＳＮＴ）あるいは９つの道を選択しました。ＳＮＴは詠春拳ユニバースや詠春拳の基本です。これらを理解することはその後に来るもののための基本的な条件です。人々が行うシークエンスを観察することで、どのような動きが可能であるかが理解できます。動きを間違って覚えると、その後の上達も間違った方向に行ってしまいます。ＷＴＵの動きは基本的なものから、それ以外へのものへと応用する事ができ、その相互作用の理解を助けます。ＷＴＵのビデオには現在の状況から必要と思われるエクストラも収録しました。さらにこのビデオではチサオの第一の動きも収録しています。アルフレド・トゥッツイに感謝します。

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「我々にインスピレーションを与える人々」Ｇ．Ｉ．グルジエフと詠春拳今月の記事より、皆さんに「我々にインスピレーションを与える人々」をお送りします。彼らの仕事、哲学や概念などを語ります。その一人が、Ｇ．Ｉ．グルジエフです。皆さんの中には、この「師匠」がどのようにして詠春拳と関わってきたのだろうと思われるかもしれません。もちろん全ての人が我々のインスピレーションの源である詠春拳と直接かかわっているわけではありません。彼らはその教授法や表現法において我々の人生になんらかの刺激を与えた人物です。そして彼らには共通点があります。それは彼

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らがみなぞれぞれ独自の道を作り上げたということです。誰もが、全ての裏に潜んでいる真実について独自の考えを持っています。彼らは人の模倣をすることはなく、また中には、無名だった、あるいは現在そうである人、さらに批判されている人もいます。中には他人に敬意を持たず、またその人の著書や行為を見ずに意見したり、また人から聞いた話を調べることなく話す人もいます。本物のマエストロは、しばしばその人自身のイメージを伝えることがあり、それが日常の固定観念にとらわれた人を驚かせ、偏見を生むことになります。フォームと内容の違いを区別できない人はこの道に向いていないと言えるでしょう。いずれにせよＧ．Ｉ．グルジエフは詠春拳と非常に関係の深い人物といえるでしょう。彼は長い欧州の旅に出るにあたり、２０世紀初頭に生家を出て、モスクワ、トルコ、ドイツを回り、最終的にはフランス、パリ近郊のフォンテーヌブロウに落ち着きました。（最期に彼はここで埋葬されることになります。また彼はそこで「人間の調和発展スクール」を開校しました。それが現在我々が詠春拳と呼んでいるものです。ロシアでは人々は速やかに学びましたが、フランスでは講演などを行うにとどまりました。機は熟しておらず、彼はグルジエフムーブメントを教え始めましたが、この事については後述します。私は、人間の強さとはなんだろう？意識がひどく動揺したときでも耐えうる能力とは？と自問したことがあります。その当時私はＰ．Ｄ．ウスペンスキーの著書「奇跡を求めて」と出会いました。その難解さといったらありませんでした。しかし驚いたことに、「奇跡」についての記述は客観的で、簡潔

WT Universe に叙述されていました。その散文体に私は非常に惹かれたのです。この著作でウスペンスキーは、ギリシャ系コーカサス人の教育法について説明しています。ある新聞の記事でモスクワのバレエの中で「魔術師たちの闘い」というタイトルの場面が彼の眼を惹いたとしています。それは１９１５年、第一次世界大戦の初期でした。数学者でジャーナリストのウスペンスキーは、インドに渡ったものの、「奇跡」の探求には至りませんでした。そのため懐疑的になってはいましたが、「マエストロ」と会う決心をしました。最初の会合で、彼の考えは完全に変わってしまいました。マエストロの名前はグルジエフです。私にとって「奇跡を求めて

」という作品は自己探求の道への最初の灯でした。このことは、この世界に全く無縁であった私が初めてそのカギを手に入れたときに気づきました。全く新しい概念が私の前に広がっていったのです。この本の客観的な言葉遣いが、私を魅了したのは間違いありまん。私は不明瞭な表現や信者による神の定義などにうんざりしていたのでした。このウスペンスキーの著書は、ワークについての本ではありませんが、自己観察について、などの助言は書かれています。自己観察では３つのセンター（感情のセンター、知性センターと体のセンター）を自覚し、それらを時間と共にシンクロさせるのが目的です。これは私にとって全く新しいコンセプトでした。これまで、どんな哲学者も心理学者も著名な秘密結社も、誰もこのような事に言及しませんでした。

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グルジエフは人間は少なくとも理論上は３つの精神を所有していると提唱しました。なぜなら人間は十分な発達を遂げず、それらをつなげることができないというのです。私はさっそく自己観察を始めました。３つの精神について瞑想し、そしてもちろんそれらをシンクロさせるよう努力しました。しばらくたってから、私はウスペンスキーが言ったように３つのセンターの目覚めを実感しました。訓練によって本当に理論どおりにシンクロさせる能力を向上させ、本当の目覚め、或いは自己観察を得たのです。まさに、意識とは、その概念を知るための方

WT Universe 法でしかなかったのです。３つのセンターのシンクロの限界を自覚しつつ、自分はただ一つのセンター（思考のセンター）にいることを意識しました。そしてその時まで私は自覚することに全力を尽くしました。そしてグルジエフとその起源について調べ続けました。この件についてはまた後程。伝統と「伝統」ひと口に伝統といっても今日では様々な捉え方が存在します。１．しばしば伝統は、時代遅れ、または単に古い価値観や意見と結び付けられます。これらの価値観は一般的には断片的な物で、その部分だけが取り出され、現在の状況や思考には合わないものも多くあります。でもこれを支持する人たちにとっては非常に魅力的なものでもあります。

WT Universe ２．２つ目は、人によっては、学び方も含めて、これまでと全く同じ通りに行う事を意味します。これらは「代々受け継がれてきたもの」として公的に認知されている事も多くあります。３．「伝統」他と区別するために太字で表します。この場合は純粋に完全な伝達（違う方法ではなく）を意味し、単にその要素と内容を伝えるものです。こちらもまた後述します。伝統といえば、詠春拳または伝統詠春拳における伝統とはなんでしょうか？

詠春拳とは？その人の能力の成長度合いによって効果が発揮される人間の一連の原理です。では伝統詠春拳とは？様々な場所の様々な時代に発展したため、人によって様々な解釈があるため、厳正には行われていない運動。詠春拳における伝統とは原理のことです。これらの原理を理解するためには、教えられた通りの型や練習に必要とされる道具に固

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WT Universe 執してはいけません。また、棒や剣などの伝統的な道具や実践に使われる武器などにこだわる必要もありません。今行ってる事の上達の重要性を理解し、また同じ道具でも使い方によって違いがあるということも知る必要があります。さて、ここでテーマとなるのは原理です。能力のある人であれば、特別に作られたプログラムやほかの流派のフォームも知るべきでしょう。ＷＴＵにおける伝統に関しては、詠春拳の動きや直感的な部分を重視しています。思考と感情もＷＴＵの分野です。これらの要素は互いに調和させる必要があります。ひとつの分野だけが特別に上達しても短期的な成功はありますが、アンバランスで納得のいかないものとなり、不測の事態にも備えられません。伝統について長くかかわっていると、調整という言葉を耳にします。これらの点を深く理解するためにいくつかのポイントを上げていきましょう。・まず喜びがある。この点については深く学ばない傾向にあります。違った意見の人もいると思いますが、良い人間になるにはそれを望むことだと考えていても、この段階では単に楽しんでいるだけです。

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・第２には、「利用」があります。ここで人々は目の前にある道具を使おうとしています。効果的に理解するための準備ができています。これは性急さとエゴによるものです。・３つ目は発展です。ここでは自分自身との調和がとれ、知識も十分となり、個人を確立できるようになります。マエストロにとって必要な能力と仕事は次の通りです。１．目的に合わせたやり方を行う十分な経験２．その人個人の状況にあわせて、成長させられる能力。３．その人の習得のプロセスを観察し、必要な時に必要な助言ができる。このように、伝統は、特定の場所、時間にとらわれずに、人間の能力を発展させることができるのが分かります。重要なのはその知識を正しく伝える能力であるといえます。

ＷＴＵの近況先日ＷＴＵアルハンブラのインタビューでもお伝えした通り、我々は２０１６年９月１６日で５周年を迎えます。これから新しいフェーズに入るＷＴＵは時空を超えた存在です。また、我々は３つの伝統の新しい時代の先駆者でもあると考えています。ＷＴＵはいかなる政治、宗教やその他の団体にも属しておらず、我々自身が人間の能力を３つの点を調和させて発展することだけを目的とした機関なのです。中心の動き：瞬間の流派頭脳の中心：意識の科学中心の感知：心の道我々は今後２冊の本を刊行する予定です。「思考の断片、未知との遭遇」「ＷＴＵガイド、ＷＴＵ詠春拳の狙い」本日はこれでおしまいです。

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現実に基づいた戦術

アメリカの同時多発テロ以降、多くのことが変わった。そのひとつは、飛行機内でのセキュリティーのコンセプトだ。乗客はこれまでのようにテロリストのいいなりになるというルールは通用しなくなった。乗客一人ひとりが、強い兵士となるよう訓練され、自己防衛し、さらに他の乗客を守らなければならない。本誌でもおなじみのジム・ワグナーは、この点について様々な角度から考察した。自分がテロに巻き込まれた時、どのように対処できるか、興味がある読者には、ぜひこの記事を読んでいただきたい。

ジム・ワグナー護身術現実に基づいた戦術機上護身術１９７０年代、アラブのテロリストたちはイスラエルを攻撃し、破壊しようと試みた。だが、戦闘では埒があかなかったため、テロ行為に転じた。だが、イスラエルの航空機をハイジャックすることは困難であることに気づいた。同国の航空セキュリティーシステムは強固で、そのため世界で最も安全な飛行機とみなされていた。そこでテロリスト達は、より安易な標的である欧米の航空機の乗っ取りを行った。７０年代から８０年代にかけてはハイジャック全盛期と呼べるだろう。当時のテロリスト達は、飛行機をハイジャックして友好国などに着陸させ、仲間の解放などを要求したが、世界中に報道されて目的が達せられると人質を解放した。あの時代には飛行機をビルに激突させるなど、テロリスト達も思いつかなかっただろう。２００１年９月１１日、これまでにないタイプのテロが発生した。以前と同じく、テロリストたちの本来の標的はイスラエルであったが、やはり堅固なセキュリティーシステムを避け、アメリカの

ジム・ワグナー

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飛行機を狙った。ただし、今回は交渉も人質解放も一切行われなかった。自爆飛行機という、新しくかつ恐ろしいタイプのテロが起きたのだ。６０００人以上が亡くなるという大惨事であっただけでなく、格闘技の世界でも最も劇的な新時代到来となった。攻撃の理由はなんだったのか？同年１０月１８日、英米軍のアフガニスタン攻撃のさなか、アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンは、テロの理由は米国のイスラエル支援の結果であると発表した。

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ナイフによる機上での攻撃この日、4機の米国の旅客機が、ナイフやカッターで「武装」したアラブのテロリスト達にハイジャックされた。１機目のアメリカン航空１１便は、ニューヨークのワールドトレードセンター北棟に激突した。18分後、今度はユナイテッド航空１７５便が、南棟にぶつかった。続いて、これらのテロ攻撃で最も大胆な作戦といえるペンタゴンへの攻撃（アメリカン航空７７便）が起きた。

護身術４機目のフライト、ユナイテッド航空９３便は目的に達することはできなかった。米国諜報局によると、この飛行機はホワイトハウスか議事堂を目指していた可能性が高いという。だが、乗客たちの反撃によりテロリスト達のたくらみは失敗に終わったという。その一週間後当時のジョージ・Ｗ．・ブッシュ大統領は、同国議会で乗客のひとりトッド・ビーマーを英雄であると評した。ビーマー氏は９３便のハイジャック直後に妻に電話した。すると彼女はニューヨークやワシントンＤＣで起こっていることを彼に伝えた。彼は自分たちにも同じ事が起きているのに気付いた。そして彼は妻に他の乗客とともになんとか攻撃を阻止すると話した。そして他の乗客たちも家族と連絡をとり、それぞれに同じことを伝えた。飛行機を取り返す、と。

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あなたに起きたらどうする？歴史的見地からして、テロリストは成功した攻撃は繰り返すことが多い。米国のテロでは彼らの期待どおりの効果が得られた。自爆飛行機の前には巨大なビルもたちうちできず、何の罪もない人々が恰好の標的となる。経済は停滞し、人々は恐怖にさいなまれる。そしてそれはすぐに怒りへと変わる。したがってこのような事が繰り返されるのは不可避であると言える。問題は、もし次のハイジャックがあなたの搭乗した飛行機だった場合、あなたはテロリストに対抗する準備ができているか？自己防衛ができるか？という点である。私は米国の特殊精鋭部隊のメンバーであり、世界中の警察および軍隊の反テロ部隊のトレーナーという立場上、反テロ対策の国家機密を漏らすわけにはいかない。しかし、私の経験をもとに、こういった状況での格闘家の対処法など、有益な助言を行うことはできる。可能性は低いが、９３便の乗客のような状況に直面した場合活用できる。

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警察・軍隊的な見地から警察や軍の特殊部隊が飛行機の中で行う作戦は管状攻撃と呼ばれる。この表現はバスや電車の場合にも使われる。言い換えれば、狭い通路での動き、活動である。このような特殊な状況での戦いは特別な訓練を必要とする。機内での様々な攻撃法を学ぶ前に、3つのフェーズがあることを学ばねばならない。それは戦前・戦中・戦後、である。ほとんどの格闘技では殴ったり蹴ったりする闘いそのものだけを重視し、準備とその後の対処については注目されない。機内で戦うためのトレーニングではこれら３つのフェーズが非常に重要である。

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現実に基づいた戦術

トレーニングの場所理想は本物の旅客機の中で訓練することであるが、特殊部隊にでも所属していない限りはそうもいかない。ただし、それに類似した環境を自分で作ることは可能だ。私が昨年ブラジルの航空部隊を訓練した時は、格納庫に椅子を並べ、チョークで絵を描いて、飛行機の内部に見せかけた。あなた方も同じようにして狭い環境での訓練を行うことができるだろう。もちろん私の生徒たちはその後ブラジル航空の機内でも演習を行ったが、この練習のおかげて実際に乗り込む前にすでに行動の仕方を把握していた。もしもっと正確にしたければ、板などを使って壁を作ったり、友達に乗客の役をやってもらうこともできる。

トレーニングの道具同時多発テロのテロリスト達はナイフやカッターで武装していた。だが、これまでに銃器が使われたことがあるのも考慮せねばならない。我々格闘家はナイフや偽物のピストルによる訓練をすでに行っている。これらの武器は相手を打ち負かすのに適した道具である。トレーニングをよりリアルにするために（アメリカの警察はこれを現実を基にした訓練と呼んでいる）すべての参加者は、実際に戦うときの服装を身に着ける必要がある。テロリストはプロテクターの上から普通の服を着ているだろうし、乗客は旅行者の恰好をしているであろう。より現実に即した装備をすることで、訓練はさらに現実味を帯びるはずである。

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ハイジャックの前にここに「戦前」の助言をいくつか挙げる。ドアに近い席を選ぶこと。インターネットにせよ航空会社のカウンターにせよ、席を選ぶときは、ファーストクラスでもない限り、ドアの側、翼の上を選ぶこと。この部分は最も耐久性があるというだけでなく、機体の真ん中に位置しているため前方・後方どちらで問題が起きても素早く対処できる。常に通路側の席をとること。窓際や人の間では意味がない。緊急事態には人が妨げになる。素早く立ち上がったり、逃げるためには通路側の方が好都合である。手錠を持っていくこと。旅客機では金属製の手錠の持ち込みは禁止されているが、緊急時に備え、靴紐、幅広の粘着テープなどで代用できる。怪しげな乗客を観察すること。相手に気づかれないように、常にだれか怪しげな人物がいないかを見極めること。次の攻撃は必ずしもアラブのテロリストとは限らない。テロリストは男女、人種、国籍を問わず存在する。それよりも不審な行動を重視すべきだ。ナーバスな人、怯えている人、怒った風にみえる者、不必要なまでになにかに集中している者など。他の乗客になんらかの合図を送っている者に注意を向けろ。闘いにふさわしい服装。動きやすい服、長ズボン、そして蹴ったり、走ったり歩き回ったりしやすい靴を選ぶこと。ハイジャックの最中

護身術もしあなたが将来ハイジャックに巻き込まれたら、生き残るという保証はない。昔流のテロリストであれば交渉を試みるであろうし、「今時」であれば人質ごとビルに突っ込むかもしれない。同時テロ以降、テロリストの意図を知る術はない。もし機内で戦うつもりであれば、以下に挙げる戦術や技を使って自分や他人の命を守るための参考にして頂きたい。テロリストに罠を仕掛ける。通常テロリストは飛行機を乗っ取るために席を立ち、大声をあげたり暴力行為を行って乗客や乗員を脅しにかかる。人々の恐怖に乗じて、できるだけ早く飛行機のコントロールを取ろうという戦術である。一度乗っ取られるとその後乗員乗客が反撃するのは困難である。軍隊の戦術では、敵が罠をしかけてきたら、危険地帯にとどまることなく相手を攻撃するよう教える。これにより敵は守りに入るため、罠を阻止する可能性が高まる。

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支配すること。アメリカの警察官は皆、「統率の存在」という言葉の意味を教えられる。つまり自らの姿勢（自信）、命令口調（ほかの乗客に自分に従うよう明確に指示する）そして献身の姿勢（自分の使命を確固たるものとし、周りの者に安心感を与える）キックは限定的なもの。飛行機の座席は普通の椅子より高く、通路は非常に狭い。（平均成人の前腕の長さ程度）そのため攻撃は前方蹴りか膝による打撃程度にとどめられる。横蹴りや廻し蹴りは不可能である。目指すべくは前蹴りか膝蹴りで、相手の鼠径部を攻撃することである。ここは体の重心となる部分なので、相手の動きを止めたり、倒したりすることができるだろう。

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シンプルな攻撃。なるべくシンプルで強力な殴打や肘打ちをすること。もし平手で攻撃するのであれば、目、喉、首などを狙うこと。何らかの盾で防御する。同時テロのテロリストたちは、ナイフやカッターを所持していた。それ以降、武器になり得るものの持ち込みのコントロールが強化されたとはいえ、テロリストがナイフなどの凶器を持っている可能性はある。その場合に身を守る盾がわりとして、例えばジャケットを腕に巻き付ける、アタッシュケース、かばん、さらに機内誌を丸めることなどが挙げられる。なんでも武器にする。もちろん通常の武器やナイフの類は持ち込みが禁止されているが、それ以外の物で代用は可能である。例えば金属のバックルが付いた太いベルト、ボールペンや万年筆、ブーツや携帯電話、さらに開けていないコカ・コーラの缶や塩、砂糖、コショウなど。航空会社は武器になり得る尖ったものなどは持ち込ませてくれないが、我々のファイティングスピリッツだけは禁止することはできない。周りにあるものを利用する。例えばボーイング７４７のような旅客機の中では、我々が自由に動けるスペースは、トイレの近くや非常口付近のスペースなど非常に限られている。したがって、狭いスペースで訓練して、どの技が使えてどれが駄目かを見極める必要がある。また周りにあるものを利用する戦術を学ぶことも重要だ。シートの背につかまってバランスを保つ、テロリストの頭を上部の荷物入れの壁に打ち付ける、またはシートの間にテロリストを押し付けて身動きできないようにするなど。前述したように、機内での可能性を確認するためには同じ環境を作ってトレーニングする以外にない。拘束する。これからのハイジャック犯がすべて同時多発テロと同様であるとは限らない。精神疾患のある複数、または単独犯である可能性もある。テロリストを捕まえることができたら、次はどうするのか？一般の格闘家があまり考慮しないのは「戦後」についてである。当座の危険は回避したものの、ここで拘束という点が浮上する。目的地に着くまで、ずっと犯人の上に座っているのか？それともなんらかの対策をするのか？私個人的には、テロ対策によく利用されるナイロン製の手錠を必ず機内に持ち込む。だが、靴紐、粘着テープやベルトなどで代用することも可能である。非常事態に備えた袋を携帯せよ。私は旅客機に乗る時緊急事態に備えて必ず小さな袋を持参し、前方の座席の下に入れておく。その中身は次の通りである。救急セット、懐中電灯、水、非常食（プロテインバー）、ホイッスル、ナイロン製手錠、武器として使える物（ノーコメント）、また中身をみられないように紙を詰めている。

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グループ行動の作戦。もし誰かと一緒に旅する場合、何か起きたときのそれぞれの役割を事前に決めておくことも重要である。事前に訓練を行う方が、突然考えるよりも良いということはいうまでもない。自分たちの間で暗号を取り決める、（例えば、「私はあなたの囚人だ。」と言うとその仲間が最初に攻撃する、など）。手の合図や使う技などを事前に取り決めておくことも重要である。これらの事は必ず小声で話し合うこと。隣にテロリストが座っていないとも限らないからだ。

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厳しい訓練により実戦が楽になる。同時多発テロ以降、格闘家たちが次のように話すのをよく耳にした。「もし私にこんなことが起きたら、絶対に戦う。決して飛行機をビルに激突させたりしない。」格闘家の姿勢としては良いことであるが、果たして、本当に直面した場合的確に行動できるのか？これまで訓練してきた格闘技は本当に実戦に役立つのか？体力的な面だけでなく、精神的にも準備ができているか？結局闘いの９０％は精神面によるものだ。命がけで戦ったことがあるか？アドレナリンが上昇するのを感じたことがあるか？自分を最高の状態に持っていくカギは、敵よりも訓練を積むことである。同時テロの犯人の一人は、米国のジムでナイフを使った格闘やその他の武道を習ったが、はからずも指導に当たった教師は、このテロリストは非常に礼儀正しく、よく練習していたという。またアフガニスタンのカンダハールでも訓練をしていた彼らは、まさに死ぬ覚悟でトレーニングを行っていた。従って訓練を行う時には、いつか彼らのような敵と戦う可能性も考慮して行うべきである。

テロリストに勝利を与えてはならない。４機の飛行機が激突してから４日後、私はカナダ行のフライトに乗るつもりだったが、残念ながらキャンセルとなった。政府により海外からのフライトの入国が許可されなかｔったからだ。２週間後、私はロンドン市警察の訓練のためにヨーロッパに飛んだ。その後、この記事の写真の準備のためにマドリッドに移動した。私の友人たちは家族は私が飛行機に乗ることを心配していたが、私はなんとも思わなかった。テロリストたちの目的通り、恐怖にさいなまれて生きるつもりはなかった。同時多発テロは恐ろしい出来事であるが、このようなテロに遭う確率は非常に少ない。テロリストに傷つけられたり、殺されたりするより、雷に打たれる可能性の方が高いだろう。一方で、自分は絶対にこのような犯罪に巻き込まれることはないという確信を持つこともできない。私はこの記事であなた方に飛行機内で問題が起きた場合の対処法を教授した。あとはあなた方の訓練次第だ。成功を祈る。

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野村先生インタビュー

野村先生インタビュー国際武道（以下ＢＩ）：いつ頃合気道を始められましたか？野村和夫（以下ＫＮ）：１９６９年、田中万川師範の指導を受けました。６段を受けたのは１９８２年です。ＢＩ：合気道とはどんな武道ですか？ＫＮ：合気道は日本古来の柔術を基にした近代的な武道です。植芝盛平師範によって創設されました。彼は大先生とも呼ばれています。ひとつの武術を彼は道に変えたのです。技の修練により、精神面の基盤を作ることにより、生きるべき道を教えてくれます。

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大先生は合気道の修練と世界平和は個々の人間と繋がっていると考えていました。現在、合気道は世界中に広まり、多くの人が習っています。ＢＩ：あなたの経験から、合気道とは？ＫＮ：愛と平和の武道です。人と戦うのではなく、自分自身を掘り下げていくライフスタイルですね。練習によって、より完璧な人格形成の目標を定める事に役立ちます。難しい目標に達するためには神のような性質、完璧な精神を持つことです。大先生は常に「精神修養は死ぬまで続く」と言っておられました。ＢＩ：今の世の中は危険と暴力に満ちています。「愛と平和の武道」を適用するのは困難ではありませんか？

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ＫＮ：暴力という問題に直面するとき、ひとによっては武器の必要性を訴えます。またある人は、ただひたすら避けるべきだといいます。武術においては、ただ暴力をふるうのではなく、正しい力の使い方をします。合気道の場合は、技ではなく次の段階の道に進みます。合気道の練習によって、暴力からどのように身を守り、対処するかという最終的な問題の答えを見つけることができるのです。ＢＩ：田中万川師範の教えの基本は、現在のあなたの練習にどのように影響していますか？ＫＮ：合気道は我々に多くの事を教えてくれます。特によく言われたのは「下から入れ」という事でした。腰を低くして、頭を下げ、下から入るのです。この方法は日常生活にも適用できます。ことわざに、実るほど頭垂れる稲穂かな、というのがありますが、つまり、人間として成長するほど、節度を保つという。まさにその通りです。ＢＩ：合気道の実践によって得られることは？ＫＮ：合気道は自己防衛と健康保持に有益な武道です。心の安らぎを培い、精神をリラックスさせます。人間関係が良くなり、自分の周りにあるものへの感謝の気持ちがより大きくなります。重要なのは技ではなく、その人の生き方なのです。

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ＢＩ：合気道と他の武道との違いは？ＫＮ：合気道は他の武道とかなり違う点がたくさんあります。戦って勝つ、というものではないのです。人格形成を完成させるための訓練といえるでしょう。安らぎと自分自身をより高める探求です。これが合気道の特徴です。合気道では練習相手と協力し合うことが重要です。つまり双方が一つの動きに集中しなければいけないということです。技で最大限の結果をだすために受けは投げにエネルギーを与えます。重要なのは誰が強いかではなく、動きを完成させることにあるのです。その完成のために重要なことのひとつは、力づくではなく、状況に応じてうまく力を使うということです。

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ＢＩ：合気道における上級レベルとは？ＫＮ：合気道は繰り返しです。ひとつの技を何度も練習します。なぜなら、何も考えずに技を行えるようにする必要があるからです。そうすれば心が自由になり、動きについて気にする必要もなくなります。型を自然に行えるようになるのです。このような状況は、無限の可能性を秘めています。限界はなにもない、それが武道の根源なのです。ＢＩ：合気道における「気」とはどのようなものですか？ＫＮ：気とは、意識とエネルギーに基づいていると思います。相手の動きを意識し、その人の気と交じり合う。これは宇宙のエネルギー（自然界にある全てのエネルギー）と交じり合うことでもあります。気には繋ぐ力があります。たとえ相手が敵であっても意識を発達させることができるのです。またその恩恵を認知することでもあります。

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ＢＩ：合気道を練習するにあたっての助言は？ＫＮ：まず大事なのは呼吸です。また、練習で大切なのは筋肉だけではなく、リラックスも大事です。我々の力は体の中心（丹田）から発せられます。体の重心を下げて、中心を安定させます。一度で我々の丹田から、意識が放たれます。ＢＩ：武器を使った訓練はどうですか？ＫＮ：最初から武器を使用すると、型や動きの習得に影響を与えてしまいます。正しい動きを身に着けてから、武器を使って学ぶのは良いことだと思います。武器を使うことで、違った視点から見ることもできるからです。ＢＩ：上達のために重要なポイントは？

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ＫＮ：自惚れないこと。どんなに頑張っても完璧にはなれないという事を理解する。いつでも、誰でも上達は可能ですが、忍耐と粘り強さを持って練習し続けなければなりません。また、他の人の良い動きを観察し、真似することも大事です。そして自分の能力を客観的に見る事も重要です。自分の長所と短所を見極めることです。ＢＩ：合気道初心者に対するアドバイスはありますか？ＫＮ：最初から色々な技の詳細を考えるのは大変です。これらを全て学んだ時にレベル１に達します。しかしながら、多くの人がそこに到達する前に止めてしまいます。合気道は非常に多彩な面を持つ格闘技で、あらゆる可能性があ

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ります。そのため、合気道を表面的にしか学ぼうとしない傾向があります。真剣に練習しなければ、ただの動きでしかありません。ですから、私のアドバイスは、詳細にとらわれず、ひとつひとつの型に感情を込めて上達することです。誰も最初から完璧にはできませんから、周りを良く見て、できる限り努力することです。ＢＩ：その他のレベルはどのような感じですか？ＫＮ：レベル１は基本技の習得です。体と集中力を強化します。レベル２は、考えて、上達の目標を定めます。目的達成のために必要に応じて調整できる柔軟性が養われます。落ち着き、体力も精神も安定します。したがって気の流れもスムーズになります。レベル３は、「練習」です。日本語では稽古と言います。このレベルにおいては道場でも日常生活でもすべてが稽古です。考えたり、行ったりするあらゆる事が稽古につながるのです。すべてが稽古、したがって型はありませんが、完全なものなのです。これが武道です。あなたの気はすべてと交わります。物事を見たり、聞いたり、触ったり、匂ったりする前に感じるのです。それぞれのレベルを簡単にまとめると次のようになります。１．堅固さ２．コントロール３．繊細さ（相手は戦う前にすでに負けている。）ＢＩ：相手はすでに負けているとはどういう意味ですか？以前、勝ち負けではないとおっしょいましたが？ＫＮ：目的は戦わずして勝つ、戦っては勝たないという意味です。私の稽古はこの原理が基本です。ＢＩ：この原理はどのように稽古するのですか？ＫＮ：周りの人間に対して、真の優しさを与えて、自分を訓練することです。家族や道場の人たちから始めるのです。自分の周りにある現実を意識することができます。ＢＩ：野村師匠、ありがとうございました。合気道は単にひとつの視点から見るものではありません。植芝大先生によって作られた世界的視野を焦点に充てています。

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歴史

２００９年１月２９日偉大なるエリオ・グレイシーは９６歳でこの世を去りました。格闘技の概念を変え、常に改革を続けることに専念した人生でした。彼の死から７周年の今年、様々な観点から追悼を込めて記録を掘り起こしていきたいと思います。グレイシー一族の家長として、２０世紀の格闘技に新たなパラダイムを形成した彼は、非常に個性的でありながら、古風な面も持ち合わせる人物でした。この記事では彼とのインタビューの再現のほか、史上最も長い闘いといわれるサンタナとの試合のエピソードなどをお届けします。文：マルセロ・アロンソ写真：マルセロ・アロンソ、ホリオン・・グレイシー、武道インターナショナル資料。

エリオ・グレイシー「柔術伝説」「エリオ・グレイシー、柔術の生ける伝説、崩れることなき信念の物語」グレイシー柔術は、決して優れたマーケティング戦略によって広がったわけではありません。しかしながら実証を交えたその長所のプレゼンテーションはまるでコカ・コーラの宣伝部長が仕掛けたかのように巧でした。少なくともここ数十年で世界の格闘技界に革命を起こしたこのスタイルの真実を知らない多くの者はこのように考えているでしょう。ブラジリアン柔術を含めた様々な総合格闘技は、今日本誌に登場するこの人物の存在がなければ現在の形ではありえなかったでしょう。本誌は欧州のみならず世界中で、どこよりも早くこの一家の才能に注目しました。米国のＵＦＣに先立ってこの偉大なマエストロの経歴や歴史を執筆していたのです。エリオの決断力と意志の強さが、この一家を思ってもいなかったような高みに押し上げました。コ

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ンデ・コマによって日本古来の武道を基に、明確な規定と技の確実性を作り上げたその功績は多大です。そのゆるぎない信念は、やはり優秀な格闘家である息子たちにも受け継がれました。リングの侍と呼ばれるヒクソン、ＵＦＣで打撃の技を追求した才能と伝説の男ホイス、バーリ‘トゥードなどブラジル国内では無敵を誇るホイラーなど。彼らにはどんな共通点があるのでしょう？彼らは全員、そして各々が幼少期からエリオの訓練を受けていました。彼らは皆エリオの血を継いでいますが、彼の女性遍歴により母親は何人かいます。柔術に関わるグレイシー一族の系譜は長く、すべてを列挙するのは至難の業です。また現在ヨーロッパで指導についているホリオン・グレイシー、そして後継者と呼ばれる長男の

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カルロス・グレイシー。ＵＦＣの創始者でありカリスマ指導者である彼は、本誌でもしばしば登場して頂いています。そしてこれらのストーリーは全て、ある人物、ブラジリアン柔術の功績を世界的レベルで表彰されたこの人から端を発しているのです。エリオとは太陽という意味ですが、彼はまるでギリシャ神話の太陽神のように今世紀の格闘界で自ら発する光で輝くのです。８６歳の今もその内側からほとばしる力強さと柔軟な思考は若い世代のそれのようです。彼の意見はしばしば文脈を離れて独り歩きし、その激しさや融通のなさが批判の的となることもあります。それは当然のことではありますが、一方で彼は第一次世界大戦前に生まれたわけですから、世代の違いは考慮すべきだと思います。７２年間に及ぶ格闘技の修行を続けてきたことは彼の実力の裏付けで、その知識と経験の豊富さは疑う余地がありません

歴史。彼の同性愛や女性に対する考え方は現代社会の意見とはへだたりがあるかもしれません。彼の巨匠としての価値は格闘技の中にあり、そしてこの記事は現在・未来の格闘家に対するプレゼントなのです。またこのインタビュー記事の掲載は本誌からのささやかな敬意の表明でもあります。この偉大な格闘家は我々の敬意と称賛を受けるにふさわしい人物だと考えるからです。この記事にはヴァウデマー・サンタナとの死闘の様子も語られています。史上最長の闘い！３時間４５分に及ぶ死闘！すでに４１歳だったエリオが２６歳の若者と対決！彼はこの闘いに敗れましたが、規則のない試合では技で上回った彼が本当の勝者でした。この記事に掲載の当時の写真はホリオン・グレイシー氏提供の貴重な資料です。ぜひ読者の皆さんにその素晴らしさを認識して頂きたいと思います。体力の衰えを逆手に取り、防御の技を発展させるなど、今日までに世界で最も有能な格闘家と呼ばれているグレイシー。８２年の人生

のうち７２年を柔術に捧げてきたエリオ・グレイシーはスポーツ界の生ける伝説と言えるでしょう。事実、柔術界で唯一、流派や学校などを超えて尊敬されている人物なのです。本誌ブラジル支局のマルセロ・アロンソが独占インタビュー。マエストロが明瞭かつユーモアを交えて、家庭や愛情についての問題、バーリトゥードや無敵について語ります。インタビュー

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国際武道（以下ＢＩ）：なぜ柔術に興味を持たれたんですか？エリオ・グレイシー（以下ＨＧ）：小さい時は体の弱い子供で、クラスを休むこともしばしばでした。私が二十歳の時、兄が柔術のクラスを始め、私は面白半分に見に行ってました。そして１年半後には、見ていただけなのにすべての理論を暗記してしまっていたのです。ある日兄が、ブラジル銀行の頭取マリオ・ブラントのクラスに遅刻してしまったので、私は大胆にも「マリオ、兄が来るまで私が代わりをしましょうか？」と尋ねると、彼は喜んで承認しました。一方の兄も非常に多忙であったので喜んでくれました。結局最終的には私がその学校のクラスを引き受け、兄はその後クラスで教えることはありませんでした。ＢＩ：では、技はどのようにして生まれましたか？ＨＧ：私にはなにかを作り出すような才能はありませんでした。ただ、適応の必要性は感じていたのです。これらは体による訓練で生み出されたものであって天分ではありません

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。私がした事といえばジャッキを使ってあまり力をいれずに訓練できるようにしたことです。実戦で勝つためには相手が疲弊するのを待ったわけです。ＢＩ：柔術を習得した後は前ほど喧嘩好きではなくなりましたか？ＨＧ：柔術を学んだものは我慢強くなります。問題が起きないことを理解しているからです。もし誰かに怒鳴りつけられた場合、なんでもないのだという確信が持てなければ、ナーバスになって喧嘩を始めてしまうでしょう。でも、もし小さい子供に不細工だとか、悪口を言われても笑って済ますでしょう？私にとっては普通の男性も子供と同じ、どうってことはない。この考え方が他人に対して平静を保つコツです。ＢＩ：バーリトゥードで敗れた著名な柔術家についてどう思われますか？ＨＧ：誰の事ですか？私の息子たちのうち３人はチャンピオンでまだだれにも負けていませんよ。（ヒクソン、ホイスとホイラー）ＢＩ：あなたの息子さんのうち最も軽量であるホイラー（６４キロ）でもバーリトゥードで、マーク・カーのような巨漢（１１５キロ）を倒せると思いますか？ＨＧ：時間はかかるでしょうが、問題はないでしょう。でも８０キロ台のヒクソンやホイスがいるのだから、カーを倒すのに６０キロのホイラーを出す必要はないでしょう？ＢＩ：ヒクソンはファミリーのなかでも群を抜いていると聞きますが、本当ですか？ＨＧ：いいえ、そんなことはありません。彼の技は他の兄弟と同じです。皆同じだけの力量があります。

ＢＩ：ブラジルではグレイシー一家の歴史をあなた、カールソンとヒクソンという３つの時代にわける人が多いですが、そう思いますか？ＨＧ：いいえ、全くそうは思いません。カールソンは強くて良い格闘家でしたが、私がチャンピオンと認識しているような技には程遠かったです。彼の唯一の本格的な試合はヴァウデマー・サンタナとの闘いでした。カールソンは常に従順さに欠けていました。ＢＩ：ビトール・ベルフォートやムリオ・ブスタマンテのような新世代をどう思いますか？ＨＧ：柔術はこれまでもそしてこれからも成長していきます。現在の柔術の問題は、私の息子たちは別として、抵抗、力と準備に基づいているのです。私の息子たちはそれら

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によっていない、例えばヒクソンは一日でリオ中の強豪たちを相手にすることができる。ホイラーも同じです。ＢＩ：ビトール・ベルフォートやマーク・カーのように複数の格闘技を習得することについてはどう思われますか？ＨＧ：それ自体は問題ないと思います。ただ、２つの格闘技を学んでもどちらも不完全であれば問題です。例えばビトールはマイク・タイソンと戦えば、一瞬でノックアウトされ

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るでしょうし、柔術でヒクソンと戦えば同じことが起こるでしょう。ＢＩ：あなたは競技としての柔術に反対ですか？ＨＧ：私が作った柔術は競技のためではなく、個人が自分に自信をつけるためのものです。エリートであれ、女性、子供であれ。ＢＩ：毎日のプログラムについて教えてください。ＨＧ：毎朝７時に起きます。１０時間の睡眠の後にね。それから一日中止まることなく動いています。柔術の練習やその他の用事をします。ＢＩ：今でもクラスをされていますか？ＨＧ：はい、今でも個人レッスンをいくつか行っています。高いですよ！ＢＩ：８６歳でそのバイタリティーを保つ秘訣は？ＨＧ：夜遊びもしないし、酒もタバコもやりません。時間外に食事をしたことも一度もありません。５０代で出来た事が、今はよりよく出来るようになりました。自分が気持ちいいいと感じたことしかやりたくありません。もう肉やチョコレートの味も忘れました。時

々魚を食べるくらいです。グレイシーダイエットを開発した兄のカルロスは、これを続けたら２０年寿命が延びると言っていました。その通りだと思います。このダイエットのおかげで、私は頭痛も腹痛も一度も起こしたことはありません。ＢＩ：インポテンツに革命的効果があるというバイアグラについてはどう思いますか？ＨＧ：私はまだ必要としていませんが、必要な人にとっては素晴らしい薬なのでしょう。おかげさまで、精力は不足したことがありません。今までにないほど体調はいいです。１０年前から風邪ひとつ引いていません。ＢＩ：性に関して続けますが、今まで何人の女性を愛してきましたか？ＨＧ：一人の女性たりとも愛したことはありません。愛とは脆弱なもので、私はその弱さを持ち合わせていないのでね。愛とはセックスの事です。私の考えでは子孫を作るための手段でしかない。私はこれまでの彼女たちに、子供は欲しいかと常に尋ねました。もし答えがノーであれば、性関係はありませんでした。ＢＩ：同性愛者に柔術を教えようと思いまｓか？ＨＧ：男らしい態度をとればね。でもそれが大統領だとか知事などの類であれば、全員去勢して、アマゾンに送り込んでやります。ＢＩ：あなたとサンタナの壮絶な戦いについてお話ください。ＨＧ：１９５５年のことです。史上最も長い闘いで、３時間４５分に及びました。私は４２歳、教え子だったヴァウデマーは２６歳でした。私は耳にかなりひどい炎症を抱えなが

ら試合を行いました。ＢＩ：ヴァーリトゥードに反対する人がいますが、どう思われますか？ＨＧ：ヴァーリトゥードは私が教えるスタイルです。格闘技は血みどろの戦いではなく、我々は技で相手を倒せることを実証しました。グラブを使うボクシングでは年に１０人ほどが亡くなっています。素手で殴るほうがグラブを使うよりも損傷の度合いが低い。その衝撃は１３０キロに達し、脳の血管を破壊するのです。ＢＩ：現在のファミリーの後継者は誰になるでしょう？ＨＧ：今のところは誰もいないでしょう。私の息子たちはあと１０年くらいは無敵だと思います。今私はホリオンの息子たち、普段最もコンタクトのある家族、をトレーニングしています。ＢＩ：最近行われた柔術世界選手権についてどう思われましたか？ＨＧ：あれはなんの世界選手権でもあり得るが、柔術でないことは確かです。私にとって柔術とは、私が７０年前から全ブラジルで教え、行ってきたもののことです。内容を変更し、制限時間やポイント制度を作った時点で、私の柔術ではなくなりました。強くてより体重の重い者に有利な規則です。ＢＩ：でも制限時間がなかったらどうやって選手権を行うんですか？ＨＧ：皆そういう言い訳をする。だが、この規則というやつは力の強い者に有利なだけで

歴史、このシステムの効果を見せることはできない。この規則では相手を捕まえて戦えないようにすることだけだ。それに対して私の柔術は勝つために技を使うものであって、受け身ではない。ＢＩ：師匠、今日は貴重なお時間をありがとうございました。ＨＧ：こちらこそ、ありがとう。エリオ・グレイシー対ヴァウデマー・サンタナ史上最も長い闘いエリオ・グレイシーはリオ・デ・ジャネイロ中心部にあるグレイシー柔術アカデミーの事務室で、窓から入る４月の暖かい陽光を浴びながら、執務を行っていた。いまだにブラジル最強の男という異名で呼ばれていたものの、彼は柔術の教育や学校経営の仕事を楽しんでいた。ここのクラスには守衛からブラジル大統領まであらゆる人が参加していた。そしてその朝、まさに彼は事務作業を行っていたのだ。ひよっとしたら、週末は息子たちと海辺で過ごそうとか、または所有する山の牧場で車を走らせたり、馬に乗ったり果ては非公式にリングから引退して以降行っている精神修養を行うか。だが、４月の陽気の静けさは数人の訪問者によって突然さえぎられた。

歴史挑戦状「よう、元気かい、師匠」数人の友人が大声で挨拶しながら、エリオの事務所にどかどかとやってきた。その一人の手には新聞が握られておりそれを頭上でひらひらと見せながら言った。「師匠、ヴァウデマーが、新聞各社にお前なんかなんでもない、もう終わってるって手紙を送りつけてるらしいよ。」エリオはその手から新聞をもぎ取り、その記事を読み始めた。それを読むにつれ、彼は冷静さを失っていった。ヴァウデマー・サンタナの事はよく知っていた。彼は授業料の代わりにアカデミーで雑用を請け負ったり、エリオや他のコーチの練習相手をしていた。エリオはなぜヴァウデマーがグレイシー一家の成功に嫉妬するブラジルの小規模な格闘技団体と仲良くなったのか理解できなかった。また、なぜ誰もグレイシー家のメンバーと直接対決する勇気はないのに、愚弄や批判の末にヴァウデマーがアカデミーの仕事を辞めることになったのか理解できなかった。それでもこんな事は予想だにしていなかった。記事はエリオをはじめとしたグレイシー一家を酷評していた。新聞を読み終えて机の上に置いたとき、彼の手は怒りで震えていた。

応酬その日の夕方にはエリオは新聞に応酬の手紙を掲載した。彼のバトルスタイルと同じように何ひとつ漏らすことなく。サンタナに男らしく自分の宣言を維持するように, そして新聞紙上ではなく正々堂々と戦うよう挑発した。その後数週間にわたって、エリオの家族や友人が代わる代わる訪れて思い直すよう説得した。。「もう何年も戦ってないじゃないか。」「まず誰か生徒に戦わせて、時間をかせげ。その間練習して、もし奴が勝ってもそこで戦えばきっと勝てるさ。君だって昔、木村と戦うためには

まず加藤を相手にしなければならなかったじゃないか。」など。だが、エリオは聞く耳を持たなかった。彼は柔術の習得によって激しい感情をコントロールする術を誰よりも知っていた。だが、彼はなんといってもブラジル人だ。「男気」「名誉」に対する侮辱は受けて立つのが正当とされていた。しかも彼個人だけでなく、家族や生徒、さらに彼が人生をかけて作り上げてきた格闘技そのものの名誉がかかっていたのだ。格闘家としての理性は、準備が必要だと言っていた。だが、男としては、一刻も待つことができなかった。すぐに試合を企画した。時間制限も休憩もルールもない闘い。５月２４日、リオ中心部にあるＹＭＣＡ本部。その当時比較的新しかったテレビも含めてすべてのメディアが集合した。試合の数日前からエリオの家族や友人の心配は増幅した。耳に炎症を起こした彼は高熱を発し、十分な練習ができなかったのだ。試合の１週間前には体重が３キロ落ちていた。決闘闘いの日は来た。エリオは大勢の観衆の声援を受けてアリーナに出た。患い、熱もあったが、自信を持ってリングにあがり、サンタナと向き合った。レフェリーの説明は最小限だった。実際ルールは何もなかったからだ。エリオはサンタナの目をじっと見つめた。自分を侮辱したこの男の目には、「恐怖」しかみられなかった。他の男には、サンタナは強大な敵に見えたろう。石工の仕事で鍛えられたその筋肉の張りは、石切の機械がなかった時代の象徴のようだった。だが、エリオが見たのは、この場にいたくないと懇願する男の目だった。試合開始の合図が出され、エリオはサンタナに襲い掛かった。この男は完全に冷静さを失っていた。エリオに背を向けて群衆の方に向かって走り出したのだ。エリオは彼の腕と足を掴んで、リングに叩きつけた。「戦え、臆病者。でないと脚をへし折ってやるぞ。」とエリオは自分に挑戦状を叩きつけておきながら、逃げ隠れしようとする男を罵った。サンタナは恐怖のあまり身動きができなかった。そこでまた背を向けて逃げようとした。そこでまた観衆は彼を掴んでリングに戻した。その逃げ回る光景は、まるで蜂の巣を踏んでし

まい、そこから出てきたたった一匹の蜂に怯えて逃げ惑う男のように滑稽であった。サンタナをリングで追っているうちに、エリオは体調不良のために体力が低下していくのを感じた。結局エリオはサンタナを捕まえ、二人とも転がり落ちた。エリオは脚をサンタナの体に巻き付け、腕で相手のくるぶしを固定し、攻撃の余裕を与えないようにした。床に転がりながら、エリオは相手に激しいパンチの雨を降らせ、反撃を誘った。これでサンタナが動こうとすれば、絞め技をかけて、試合を終わらせることができるはずだった。しかしながら彼はすでに「待ち」の作戦をとっていた。この戦法はまさにエリオから教わったもので、それ故サンタナは彼の作戦には乗らず、むしろ機会があれば反撃をおこなっていた。ただしその姿勢のため効果的なパンチとは言えなかった。そして１時間が過ぎたころ、サンタナが今まで一度も聞いたことのないある音が聞こえ始めた。はじめは信じられなかった。聞こえてくる音の正体に確信が持てなかった。でもそれは本当だった。サンタナは生まれて初めてエリオが疲れで呼吸を荒げるのを聞いたのだ。彼は興奮していた。あのマエストロが息苦しそうにしている？途端にサンタナの体に今まで感じたことのない自信がみなぎった。エリオ・グレイシーは息苦しそうに疲れを見せている。サンタナは、友人らに勧められて、新聞社にこの話を持ち込んで以来初めて、生き残るどころか、勝てる可能性を見出した。サンタナはエリオの疲弊をいいことに、彼に教わった技を使った。自分の１５０キロ近い体重をエリオの体に乗せ、彼が動こうとするのを阻止した。そしてエリオの頭に頭突きを浴びせかけたため、彼の眼

歴史は腫れあがり、開かなくなった。時間は過ぎていき、エリオの準備不足は際立ってきた。一方でサンタナの背中に踵でキックをくらわすなど、経験をいかした攻撃も行った。二人の男が床で戦っているうちに休憩もなく２時間が過ぎた。その戦いぶりに観衆は両者に声援と拍手を送った。二人とも疲れでうめき声を上げ、汗が目に滴っていた。こうして３時間が過ぎた。二人とも体力の限界を超えており、自尊心だけが体を動かしていた。相手を打つ効果的な技で、なんとかこの闘いを終わらせようとしていた。ついに３時間４５分がたち、両者とも疲弊しきっていた。膝をつき、それぞれに息を整え、戦い続けようとした。その時、疲れで視線が停止していたエリオに対し、サンタナはいきなり立ち上がって彼の顔に向かって脚を蹴り挙げた。脚は目標に命中し、エリオは倒れた。戦いは終わった。エリオは観衆が自分のの名前を叫んでいるのを聞いて目を覚ました。試合に負けて、しばらく当惑していた。しかしすぐに自分がチャンピオンであり続けることに気づいた。３０年間で負けたのはこれが２度目。ファンにとっては彼のこれまでの功績に影を落とすものではなかった。モハメッド・アリがフラジエやノートンに負けた時と同じで、エリオ・グレイシーも人間であるということを証明したまでだ。この闘いは、彼の価値を下げるどころか、むしろ英雄伝説を作りあげることとあった。誰もこんなに長い試合を行ったことはなかったのだから。スポーツ評論家たちはこれを史上最も長い試合と称した。ボクサーたちがプロテクターなしに戦っていた時代にはこれぐらいの長い試合もあった。だか、それらの闘いでは短い休憩が許されていた。だが、エリオもサンタナもそんなことはできなかったのである。ローマ競技場での戦いの時代でさえ、こんな長い試合は記録されていない。この試合の数日後、サンタナはグレイシーアカデミーを訪れ、エリオに、もしあなたの体調が完璧であれば、簡単に私に勝てただろう、と彼の強さを認め祝福した。事実その数か月後、エリオの甥カールソンがサンタナを倒し、ブラジル最強の男のタイトルをグレイシー家に取り戻した。エリオがアカデミーの実務に戻ったとき、５００人からの若者が新規入学の列を作っていた。４１歳で体調が良くなかったグレイシーが、２６歳で体調万全の屈強な男から身を守り続けた術を習おうとしていたのだ。エリオは幸せだった。自分の行動を世間が認めてくれたのを感じていた。

２００９年１月２９日偉大なるエリオ・グレイシーは９６歳でこの世を去りました。格闘技の概念を変え、常に改革を続けることに専念した人生でした。

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