MARKETVIEW | JAPAN OFFICE | 2023年第1四半期
全国的に引き合いが増加、 既存ビルでは空室消化が進む
+1.3%
GDP成長率 Q1 5pts 前期比 1pts
日銀短観DI(全規模・全産業)Q1
-0.4% 前期比
東京グレードA賃料 Q1
+0.6pts 前期比
東京グレードA空室率 Q1
東京:オールグレード空室率は2 期連続で低下
‒ 今期( Q1 )のオールグレード空室率は対前期比- 0 1 ポイントの 4 6 %と 2 期連続で低下。新築ビルの多くが空室を残して竣工
したものの、既存ビルでグレードアップや立地改善のための移転で空室消化が進んだ。新規需要は 2020 年 Q2 以降最も多い 7 8万坪。オールグレード賃料は対前期比0 3%の下落。空室期間が長引くビルで賃料を引き下げる動きが散見された。
大阪:空室率は年内は横ばい見通し
‒ 今期のオールグレード空室率は3 6 %と対前期比 0 1 ポイント上昇。今期竣工した一部のビルがまとまった空室を残したもの の、既存ビルで空室消化が進んだため、上昇幅はわずかだった。新規供給のなかったグレードA では2期連続で空室率が低下 した。オールグレード賃料は対前期比0 2%の下落。空室消化に時間がかかっているビルで賃料を引き下げる動きがみられた。
名古屋:空室率は全てのグレードで低下
‒ 今期のオールグレード空室率は対前期比-0 2ポイントの5 5%と2期連続で低下。賃料調整で割安感が出てきた高額帯のビル で空室消化が進んだことが主因。立地改善やグレードアップ、拡張のための移転で空室が消化された結果、全てのグレー ドで空室率が低下した。オールグレード賃料は対前期比0.2%の下落。まとまった空室を抱えるビルで賃料が引き下げられた。
地方都市:新規供給のあった都市は空室率が上昇
‒ 今期のオールグレード空室率は、10都市中5都市で対前期比上昇、5都市で低下。空室率が上昇した都市では、神戸を除きい ずれも新築ビルが空室を残して竣工したことが主因。オールグレード賃料は10都市中4都市で対前期比下落、4都市で上昇、
2都市で横ばい。引き続きテナントのビル選定条件は厳しく、フリーレント期間の調整や賃料を引き下げる事例がみられた。
東京
オールグレード空室率は2期連続で低下
今期(Q1 )のオールグレード空室率は対前期比- 0.1ポイントの4.6%と2期連続で低下した。前 期同様、ビルのグレードアップや立地改善のための移転で空室消化が進んだことが主因 。
2023 年の新規供給は過去 10 年の年間平均より約 4 割多い 24万坪。このうち今期は 6.9 万坪が供 給され、その多くが空室を残して竣工した。既存ビルでも減床などでまとまった空室が発生 したものの、新規需要は 2020 年 Q2以降最も多い 7 8 万坪となった。特に、グレード A マイナス では大型空室を抱えたビルで空室消化が進み、2020年Q3以来初の空室率低下となった。同グ レードは他グレードに比べ、過去 1 年で最も賃料調整が進み、相対的に割安感が出たビルが 多くなったことが背景にある。テナントのビル選定基準は依然として厳しいものの、オフィ スの環境改善に対するニーズは底堅く、国内企業を中心に引き合いは全体的に増加傾向にあ る。一方、昨年来の金融を中心とした欧米系企業におけるオフィス需要の減速が、年明けか ら IT など他業種にも広がっている。足元では賃借中のオフィス面積の見直しや、解約も一部 で見られ始めた。従前は欧米系企業からの関心が特に高かった未竣工のグレード A ビルのプ レリーシングの進捗も鈍い。今後も空室を残して竣工するビルは多いとみられ、空室率は再 び上昇に転じると予想する。
グレード A 賃料は対前期比- 0.4 %の 34,550 円/坪。空室期間が長引くビルでは、賃料を引き 下げる動きが散見された。今後も複数の大型供給が控えており、需要獲得のための賃料調整 は進むとみられる。グレードA賃料は向こう1年間で-2.7%を見込む。
大阪
空室率は年内は横ばい見通し
今期( Q1 )のオールグレード空室率は、対前期比+ 0.1 ポイントの 3.6 %となった。今期竣工し た複数の物件のうち、一部でまとまった空室が残ったことが主因。ただし、既存ビルで一定 の空室消化もみられたため、上昇幅はわずかだった。特に、新規供給のなかったグレード A
で空室消化が進み、グレード A 空室率は対前期比- 0 1 ポイントの 4 2 %と、 2 期連続の低下と なった。依然としてオフィスの環境改善に対する企業の意欲は高い。いずれのグレードのビ
ルにおいても、ビルのグレードアップや立地改善を理由とする移転が散見された。老朽化し た自社ビルからの移転も複数みられた。また、一部では拡張のための移転もみられた。立地 に対し割安なビルや、小割対応が可能なビルなどでは時間をかけずにテナントが決定してい る。逆に、こうした移転の動きによりまとまった解約区画を抱えるビルも増えている。しか し、2023 年はQ2以降は新規供給の予定がない。そのため、暫くは既存ビルの空室消化が進み、 市場全体の空室率は横ばいで推移する可能性が高い。一方で、 2024 年はオールグレードで過
去最大の約 10万坪の新規供給が控えているため、同年以降、空室率は再び上昇基調となろう。
今期の賃料は、グレード A で対前期比- 0 6 %の 24,100円/坪、グレード Bで同- 0 3 %の 14,700 円/坪となった。前期に引き続き、空室消化に時間がかかっているビルで賃料を引き下げる 動きがみられた。今後も賃料調整の動きは続くとみられ、向こう1 年間の賃料は、グレード A で-1.5%、グレードBで-1.7%と予想する。
空室率は全てのグレードで低下
今期(Q1)のオールグレード空室率は対前期比- 0.2ポイントの5 5%と、 2期連続で低下した。
昨年下期から賃料調整が進んだ結果、割安感が出てきた高額帯のビルでまとまった空室が消 化されたことが主因。今期の新規供給は空室を抱えて竣工したものの、中型ビル一棟のみ。 既存ビルでも、減床などで空室が発生したものの、空室消化面積がこれを上回り、空室率は 全てのグレードで低下した。テナントの動きは、今期も立地改善、ビルのグレードアップ、 もしくは拡張のための移転が比較的多く見られた。また、今後の業容拡大を見越し、オフィ スの拡張余地を確保するため、まとまった空室を残すビルへ移転するケースも見られた。
方、海外の景気後退懸念などを受け、製造業では昨年下期からオフィス投資に慎重な企業が 散見されている。このことで今後は、全体的な空室の消化ペースが鈍化する可能性がある。 また、 2023 年下期には大型供給が控えており、既存ビルでは二次空室の発生も予想される。
このため、今後、空室率は再び上昇基調に転じる可能性が高い。
今期の賃料は、グレード A で対前期比- 0 2 %の 26,450 円/坪、グレード B は 3 期連続横ばいの
14,300円/坪となった。今後の需給緩和に伴い、いずれのグレードも賃料は調整が進むと予 想。向こう1年間の賃料は今期に対しグレードAで-2.8%、グレードBで-1.0%を見込む。
地方都市 (札幌・仙台・さいたま・横浜・金沢・京都・神戸・高松・広島・福岡)
新規供給のあった都市は空室率が上昇
今期( Q1 )、オールグレード空室率は、 10都市中 5 都市で対前期比上昇、 5都市で低下し た。空室率が上昇した都市では、神戸を除き、いずれも新築ビルが空室を残して竣工 したことが主因。横浜、福岡はいずれも対前期比で2 0ポイント以上の上昇がみられた。
どちらの都市も既存オフィス面積の 4%強に相当する大量供給だった。また、全国的
に 100 坪未満のテナントの動きは活発なものの、大型区画の動きは鈍い。横浜では、 複数の既存ビルで減床により大型の空室が顕在化した。一方、新規供給のなかった都 市では、既存ビルの空室消化が順調に進んでいる。札幌では、前期に引き続き、再開 発に伴う立ち退き移転や拡張移転が散見された。また、コールセンターの新設や郊外 からの移転ニーズもみられる。そのため、空室率は 1 %未満と三大都市を含む全都市 の中で最も低い。さいたまでは、新規開設や立地改善、拡張移転の動きが活発だった。 今期は大型ビルで空室消化が進み、空室率は対前期比- 1 1ポイントと大きく低下した。
引き続きテナントのビルの選定条件は厳しい
今期( Q1 )のオールグレード賃料は、 10都市中 4 都市で対前期比下落、 4 都市で上昇、 2 都市で横ばいとなった。新規供給のあった横浜や福岡のほか、築浅のビルでも空室を
多く抱える金沢で賃料は下落した。全国的に引き合いの件数は増えてはいるものの、 引き続きテナントのビルの選定条件は厳しい。フリーレント期間の調整や募集賃料を 引き下げる事例もみられている。一方、需給が逼迫している札幌では、賃料は対前期 比+0 4%と6期連続で上昇した。
各グレードの基本的な定義
オールグレード
グレードA グレードAマイナス グレードB
立 地 東京:主要5区*中心 大阪、名古屋:オフィスエリア内
東京23区の オフィスエリア内 東京23区の オフィスエリア内
大阪市、名古屋市の オフィスエリア内
本社
東京都千代田区丸の内
金沢
金沢市鞍月5-177
調査概要
原則として上記基準を満たすもの とするが、ビルのランドマーク性、 スペック等を総合的に勘案して選定
当社が独自に設定した
AUBE II
*主要5区:千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区 **大阪、名古屋は350坪以上
調査対象 当社が独自に設定した全国13都市のオフィスエリア内にある原則として延床面積1,000坪以上、 かつ新耐震基準に準拠した賃貸オフィスビル
調査時点
空室率 空室は集計時点で即入居可能であるものを対象
想定成約賃料 対象ビルのサンプル調査に基づく想定成約賃料(共益費を含む、フリーレント等のインセンティブは考慮しない)
新規供給面積 各期間内に竣工したビルの賃貸面積
新規需要面積 各期の稼働床面積(テナント使用面積)の前期差
グレードA対象ビル 東京:97棟 大阪:29棟 名古屋:11棟(2023年3月末時点)
Contacts
大久保 寛 マネージングディレクター リサーチヘッド
hiroshi.okubo@cbre.com
岩間 有史
ディレクター オフィスチームリーダー
yuji.iwama@cbre.com
五十嵐 芳生
ディレクター オフィスチームリーダー
yoshitaka.igarashi@cbre.com
二之宮 久美子
アナリスト オフィスチーム
kumiko.ninomiya@cbre.com
03
076 239 4041 名古屋 名古屋市中区錦3-20-27
御幸ビル
06 6292 1800
052 205 6541
広島市中区袋町3-17
011 231 6931
082 243 9321
仙台市青葉区中央1-2-3 仙台マークワン
022 262 5651
092 472 1711
横浜市西区北幸1-11-15
横浜STビル
045 316 4311
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