MARKETVIEW | JAPAN OFFICE | 2023年第2四半期
東京グレードA賃料の下落は一服も、
+0.3%
GDP成長率 Q2 8pts 前期比+3pts
日銀短観DI(全規模・全産業)Q2
±0.0% 前期比
東京グレードA賃料 Q2
+1.8pts 前期比
東京グレードA空室率 Q2
東京:オールグレード空室率は3 四半期ぶりに上昇
‒ 今期(Q2)のオールグレード空室率は4 9%と対前期比0 3ポイント上昇。新規供給が大きく空室を残したことが主因。ただし 既存ビルで空室消化が進んだため、新規供給の空室はストックの0.7%程度の規模だったが 、空室率は0 3ポイントの上昇に とどまった。オールグレード賃料は対前期比0.2%の下落。空室消化が長引くビルを中心に、賃料調整が続いた。
大阪:テナントの需要は底堅い
‒ 今期のオールグレード空室率は 3.7%と対前期比 0.1ポイントの上昇。昨年竣工したビルへの移転により、大型の二次空室が 複数顕在化したことが主因。ただし、前期に続き、総じて需要は底堅く、郊外からの立地改善や、集約、拡張移転、館内増床な どで一定の空室消化がみられた。オールグレード賃料は対前期比横ばい。大型区画の引き合いは依然として鈍い。
名古屋:オールグレード空室率は3 期連続で低下
‒ 今期のオールグレード空室率は対前期比-0.3ポイントの5.2%と3期連続で低下。昨年に比べ、中小型区画だけでなく、大型 区画に対するニーズも増えつつある。面積帯を問わず空室消化が進んだ結果、空室率は全てのグレードで低下した。オー ルグレード賃料は対前期比+0.4%と2021年Q1以来の上昇。一度引き下げた募集賃料を従前の水準に戻す動きがみられた。
地方都市:既存ビルの空室消化が進み、空室率低下の都市が増加 ‒ 今期のオールグレード空室率は、 10都市中7都市で対前期比低下、 3都市で上昇。前期に続き既存ビルで空室消化が進み、空 室率が低下した都市は前期の5都市から増加した。オールグレード賃料は、 10都市中7都市で対前期比上昇、 3都市で下落。
賃料が上昇した都市では、賃料が割安なビルや、リーシングが好調な新築ビルで募集賃料を見直す動きがみられた。
今後の大量供給により調整局面は続く
東京
オールグレード空室率は3四半期ぶりに上昇
今期(Q2)のオールグレード空室率は対前期比+0.3ポイントの4.9%と3四半期ぶりに上昇した。
今期の新規供給の殆どを占めたグレード A ビルが大きく空室を残したことが主因。ただし、 前期に続き、グレードアップや立地改善を目的とした移転などで、既存ビルでは空室消化が 進んだ。この結果、新規供給の空室は約 5 万坪とストックの 0 7 %程度だったのに対し、空室 率は 0 3 ポイントの上昇にとどまった。グレード A の空室率は対前期比+ 1 8 ポイントの 5 7%と 大幅に上昇したのに対し、供給がなかったグレード A マイナスは対前期比- 0.2 ポイントの 5 0%、ならびに供給がわずかだったグレード Bは対前期比- 0 2ポイントの 4 4%といずれも低 下した。ビルのグレードアップ、立地改善などに対する需要は底堅く、国内企業を中心に、 引き合いは昨年に比べて増えている。中でも、こうした需要で空室消化が進んだ「丸の内・ 大手町」のオールグレード空室率は対前期比- 1 0 ポイントの 1 6 %。 2023 年は下半期にもグ レード A を含む合計 10万坪の竣工が予定されており、空室を抱えて竣工するビルは多いとみ られる。一方、既存ビルでは二次空室の発生が本格化すると予想されるため、市場全体の空 室率は上昇が続くだろう。
グレード A 賃料は前期から横ばいの 34,550 円/坪。 2020 年 Q2 以降続いていた賃料の下落は一 服した。依然としてテナント確保のために賃料を引き下げるビルが見られた一方、空室が 減ったビルでは賃料を引き上げる動きもみられた。ただし、今後の大量供給による需給緩和 により、賃料は緩やかな下落基調が続くとみられる。グレードA賃料は向こう1年間で-1. 4% を見込む。 大阪
テナントの需要は底堅い
今期( Q2 )のグレード A の空室率は、対前期比- 0 7 ポイントの 3 5 %と大幅に低下した。自社 ビルからの本社移転により大型の空室が消化されたことが主因。一方で、グレード B では昨 年竣工したビルへの移転による大型の二次空室が複数顕在化したことなどから、同+0 4ポイ ントの3.9%となった。しかし、前期に引き続き総じて需要は底堅く、郊外からの立地改善や
集約、拡張移転、館内増床などで一定の空室消化がみられた。よってオールグレードでは対 前期比+ 0.1ポイントの3.7%と、市場全体ではほぼ横ばいとなった。年内は新規供給の予定が ないため、既存ビルの空室消化はさらに進むとみられ、 2023年下半期は市場全体の空室率は 低下傾向で推移すると予想。しかし、 2024 年はオールグレードで過去最大の約 10 万坪の新規 供給が控えているため、空室率は再び上昇基調となろう。
今期の賃料は、グレード A で対前期比- 0. 4%の 24 000 円/坪、グレード Bで同横ばいの 14 ,700 円/坪、オールグレードで同横ばいの 14,120 円/坪となった。テナントの動きはみられるも のの、大型区画の引き合いは依然として鈍い。 2024 年には大量供給が控えているため、テナ
ント確保のための賃料調整は続くとみられる。向こう 1 年間の賃料は今期に対しグレードA で 1 3%、グレードBで-1 0%と予想する。
名古屋
オールグレード空室率は3期連続で低下
今期( Q2 )のオールグレード空室率は対前期比- 0 3 ポイントの 5 2 %と、 3 期連続での低下と なった。今期は新規供給が無く、既存ビルでの空室消化が新たに発生した空室の規模を上 回った。 IT 関連企業や人材派遣業などによるビルのグレードアップ、立地改善、拡張のため の移転で空室が消化された。また、昨年に比べ、中小型区画だけでなく 300坪超の比較的大 型の区画に対するニーズも増えつつある。面積帯を問わず空室消化が進んだ結果、全てのグ レードで空室率は低下した。ただし、来期の新規供給は大型ビルを含む 1 7万坪。一四半期で、 1993年の調査開始以降の年間平均を約3割上回る。既存ビルでは二次空室の発生も予想される ため、市場全体の空室率は再び上昇するとみられる。
今期の賃料は、グレード A で対前期比- 0.2 %、グレード B で同+ 0 3 %、オールグレードで同 + 0.4%となった。オールグレードの賃料上昇は、 2021 年 Q1以来となる。賃料が割安な中小型
のビルをはじめとして、一度引き下げた募集賃料を従前の水準に戻す動きが見られ、全体の 平均値を押し上げた。ただし、賃料の上昇は一時的なものとなろう。大型供給による需給緩 和によって、グレードを問わず賃料は緩やかな調整が続くとみられるためだ。向こう 1 年間
の賃料は今期に対しグレードAで-1 7%、グレードBで-0.7%を見込む。
地方都市 (札幌・仙台・さいたま・横浜・金沢・京都・神戸・高松・広島・福岡)
既存ビルの空室消化が進み、空室率低下の都市が増加
今期(Q2)のオールグレード空室率は、10都市中7都市で対前期比低下、3都市で上昇し た。空室率が低下した都市は前期の 5 都市から増加した。前期に引き続き、既存ビル で空室消化が進んでいる。今期、低下幅の最も大きかった都市は京都で対前期比- 1.2 ポイント。昨年竣工したビルで、集約移転による大型の空室消化がみられた。次いで 神戸が同-0 9ポイントとなった。神戸ではリーシングにやや時間を要していた築浅の 物件で複数のテナントが決まった。いずれも、新規開設やビルのグレードアップ、立 地改善など前向きな理由による移転である。また、全国的に同一ビル内での増床が散 見された。コスト高を背景とした移転費用の節減が一因であろう。一方、横浜では、 みなとみらいで大型空室が複数顕在化した。 100 坪を超える面積帯の引き合いは鈍い 状況が続いている。福岡では今期 3 棟の新規竣工があった。うち 1 棟はほぼ満室で竣工 したものの、他 2棟はまとまった空室を残しての竣工となった。ただし、前期竣工した ビルの空室消化が順調に進んだため、上昇幅は+0.2ポイントにとどまった。
賃料上昇の都市、半数を超える
今期( Q2 )のオールグレード賃料は、 10 都市中 7 都市で対前期比上昇、 3 都市で下落と なった。賃料が上昇した都市が半数を超えたのは、コロナ禍以降では 2020 年 Q2と 2021 年 Q4のみ。需給が逼迫している札幌では、対前期比+ 0 3 %と 7 期連続の上昇となった。
仙台でも同+ 0 1 %と 3 期連続の上昇。建て替えのための立ち退き移転が進んでおり、 相場より割安なビルで賃料の底上げがみられた。福岡では対前期比+ 0 1%と、小幅な がら 7 期ぶりに賃料が上昇した。ワンフロアで大型の面積を確保でき、かつ賃料水準 が手頃なビルや、リーシングが好調な新築ビルで募集賃料を見直す動きがみられた。 一方で、大型の空室が比較的多い横浜や金沢では、前期に引き続き、下落が続いている。
4 : 各都市のマーケット指標
各グレードの基本的な定義
オールグレード
グレードA グレードAマイナス グレードB
立 地 東京:主要5区*中心 大阪、名古屋:オフィスエリア内
東京23区の オフィスエリア内 東京23区の オフィスエリア内
大阪市、名古屋市の オフィスエリア内
本社
東京都千代田区丸の内2-1-1
当社が独自に設定した 全国13都市の オフィスエリア内
金沢
金沢市鞍月5-177
AUBE II
076 239 4041 名古屋 名古屋市中区錦3-20-27 御幸ビル
052 205 6541
原則として上記基準を満たすもの とするが、ビルのランドマーク性、 スペック等を総合的に勘案して選定
調査概要
*主要5区:千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区 **大阪、名古屋は350坪以上
調査対象 当社が独自に設定した全国13都市のオフィスエリア内にある原則として延床面積1,000坪以上、 かつ新耐震基準に準拠した賃貸オフィスビル
調査時点
空室率 空室は集計時点で即入居可能であるものを対象
想定成約賃料 対象ビルのサンプル調査に基づく想定成約賃料(共益費を含む、フリーレント等のインセンティブは考慮しない)
新規供給面積 各期間内に竣工したビルの賃貸面積
新規需要面積 各期の稼働床面積(テナント使用面積)の前期差
グレードA対象ビル 東京:98棟 大阪:29棟 名古屋:11棟(2023年6月末時点)
Contacts
大久保 寛 マネージングディレクター リサーチヘッド
hiroshi.okubo@cbre.com
岩間 有史
ディレクター オフィスチームリーダー
yuji.iwama@cbre.com
五十嵐 芳生
ディレクター オフィスチームリーダー
yoshitaka.igarashi@cbre.com
二之宮 久美子
アナリスト オフィスチーム
kumiko.ninomiya@cbre.com
022 262 5651
082 243 9321
横浜市西区北幸1-11-15
横浜STビル
045 316 4311
092 472 1711
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