駅前滞留者対策訓練における滞留者の移動経路からみる地域特性

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2013.11.11 古谷誠章研究室 1x10a182 吉岡祐希

駅前滞留者対策訓練における滞留者の移動経路からみる地域特性  目次 □序章

研究背景

第1章 東京都心ターミナル駅における防災対策訓練

第 2 章 広域駅圏防災マップによる地域特性の分析

東日本大震災の際、東京都心部では、地震に

研究フロー

広域駅圏防災マップの作成手法

駅圏防災マップの単純化、及び類型化

よる直接被害は限定されたものの、ターミナ

0.1 研究背景 0.2 研究目的 0.3 論文構成 0.4 既往論文について

□第1章 東京都心ターミナル駅における防災対策  1.1 駅前滞留者対策訓練  1.1.1 駅前滞留者対策訓練の概要  1.2 調査対象の選定

ル駅周辺に帰宅者が集中する事が大きな課題

古谷研既往論文 駅圏ボロノイマップ

広域駅圏防災マップ

これまでの古谷研でのボロノイマップは、日常時に

行政で提供されている防災マップは、帰宅困難者や

として顕在化した。

日常時における人口流動を表す

非日常時に有効な地図の作成

おける人口流動を表しているが、震災時にはターミ

住民など、あらゆる人を対象に作成されているため、

こういったことから、ターミナル駅において

ナル駅への人口が一極集中するため、不十分である

自分がどこに属するかわかりにくい。駅前滞留者の

駅前に集中した大量の人々を避難場所等まで

と考えられる。そのため非日常時に有効な地図の切

ためのシンプルな避難行動地図をビジュアル化し、

誘導する大型の駅前滞留者対策訓練が実施さ

り取り方をする必要があり、駅圏をより広い範囲で

それを地理的・数値的に分析し、類型化した。

れてきた。

捉える広域駅圏防災マップを作成する。

その結果、「遠距離避難型」「近距離避難型」「地区内 残留型」の3タイプに大別できた。(次項左図参照)

1.2.1 駅圏ボロノイマップ

広域駅圏の定義

「遠距離避難型」渋谷・池袋

本研究における広域駅圏とは、ターミナル駅からもっ

統計的資料から、渋谷駅、池袋駅は、駅から近い広

とも近い避難場所を含み、かつ隣接するターミナル

域避難所の面積が十分でなく、さらに遠方への避難

1.4 本研究における分析手法

駅の広域駅圏とかさならない場所で、ターミナル駅

が必要とされ、避難ルートの確立が非常に重要であ

1.4.1 防災マップ

を中心とする直径 3km の範囲である。

ると考えられる。渋谷駅では、遠距離に位置する避

1.2.2 選定方法  1.2.2 広域駅圏マップ

1.3 ターミナル駅周辺における防災対策  1.3.1 避難行動の概要  1.3.2 避難所・避難場所等の概要

1.4.2 駅前滞留者対策訓練に関する資料

難場所への避難を想定した訓練が実施されている。

1.4.3 地域危険度マップ  1.4.4 用途地域図  1.4.5 地図の重ね合わせ

地区内残留地区

避難場所

一時滞在施設

地区内残留地区は、地区の不燃化が進んで

大地震による延焼火災やその他の危険から

帰宅困難者となってしまった人が、帰宅可

おり、地区内に大規模な延焼火災の恐れが

避難する場所。大きな公園や大学等に指定。 能になるまで待機するため一時的に受け入

□第2章 広域駅圏防災マップによる地域特性の分析  2.1 広域駅圏マップとの重ね合わせ

なく、広域的な避難を要しない区域。

2.1.1 地区内残留地区   2.1.2 避難場所      2.1.3 避難所   2.1.4 一時滞在施設

非常時におけるターミナル駅の人口一極集中

資料収集

ヒアリング

2.1.5 駅前滞留者対策訓練時の滞留者移動経路

・防災マップ ( 区・都 )

2.1.6 地域危険度マップ

・都市整備局へのヒアリングデータ

2.1.7 用途地域図

・駅前滞留者対策訓練に関する資料

・6駅を含む区へのヒアリングデータ

2.2 滞留者移動経路との重ね合わせ

・地域危険度マップ

・実態把握としての現地調査

2.2.1 地域危険度マップ

避難所

2次避難所

避難経路

地域に住んでいる住民の方が、地震等によ

避難所に避難した被災者のうち介護が必要

駅前滞留者対策訓練における滞留者の移動

る家屋の倒壊、焼失などで被害を受けた場

とされる高齢者・障害者を受け入れる施設。 経路。

合、一時的に受け入れる施設。

※対象地域の避難住民を受け入れる施設のため、

※対象地域の避難住民を受け入れる施設のため、

帰宅困難者は受け入れられない。

帰宅困難者は受け入れられない。

・用途地域図

2.2.2 用途地域図

れる施設(ホテルやその他民間の施設等) 。

2.3 考察

□第3章 渋谷広域駅圏における避難行動特性の分析 3.1 渋谷駅前滞留者対策訓練の概要  3.1.1 訓練想定

1. 広域駅圏防災マップによる地域特性の分析(第2章)

3.1,2 訓練内容   3.1.3 時系列でみる滞留者行動

3.2 池袋駅前滞留者対策訓練との比較

乗降客数上位6つのターミナル駅の比較・分類 新宿・渋谷・東京・池袋・上野・品川

3.2.1 訓練想定  3.2.2 訓練内容   3.2.3 時系列でみる滞留者行動

3.3 滞留者移動経路の分析結果  3.4 考察

駅前滞留者対策訓練の様子

□第4章 結論 4.1 結論 4.2 展望

研究目的 本研究は、震災時に滞留者が多く発生する主

参考文献 東京都区部における避難場所の空間的圏域構成に関する研究  首都大学東京 荒木優 2007 防災シミュレーション教材の開発に向けての取組み  情報知識学会 桑名杏奈 2013 首都圏に建つ超高層キャンパスと地域連携による地域防災  工学院大学 久田嘉章 村上正浩 2008 大学を地域防災拠点とした地域防災に関する研究 ‐新宿駅周辺滞留者対策訓練‐ 工学院大学 小宮山甫 2010 東京都統計情報       東京都都市整備局 都立一次滞在施設一覧    各区役所 HP ハザードマップ 首都直下地震等による東京の被害想定 東京都

2. 訓練における避難行動特性の分析(第3章) 長距離で複雑な避難経路を持った駅圏を抽出し考察する

要ターミナル駅に着目し、それらの駅でこれ まで実施されてきた「駅前滞留者対策訓練」 の実態把握から、それぞれの駅における滞留 者の避難行動と地域特性との関係性を明らか にする。その上で、都心部における滞留者に よる混乱を軽減するための手法を提示するこ とを目的とする。

結論・展望 滞留者の混乱を軽減するための地図のビジュアル化 [渋谷広域駅圏防災マップ]


2013.11.11 古谷誠章研究室 1x10a182 吉岡祐希

駅前滞留者対策訓練における滞留者の移動経路からみる地域特性  第 3 章 渋谷広域駅圏における避難行動特性の分析 一日平均乗降客数

避難場所―数 ―面積

渋谷

―有効避難面積 ―避難計画人口 渋谷駅

避難所―数 2次避難所―数

なし

一時滞在施設―数

遠距離避難型

訓練参加人数 訓練参加団体数 駅から最も近い避難場所の 一人当たりにおける避難有効面積 駅圏内の避難場所の 一人当たりの避難有効面積の平均値

一日平均乗降客数

駅近の避難面積不足

―避難計画人口

駅周辺の一時滞在場所が多い

駅前滞留者想定人数 地区内残留地区―駅圏占有率

参加団体

時間的変異

渋谷駅 震災時想定時刻

震災時想定時刻

AM11:00

PM15:10 ∼

[ 震災想定 ]

[ 徒歩帰宅支援 ]

47 団体

[ 町内会・商店会 ]

能者を誘導開始。

震源の深さ約 10km 風速 15m

104 団体

国道 20 号方面の帰宅可

M6.9 渋谷駅

池袋駅

渋谷駅

渋谷区内の 26% が

[ 駅周辺民間事業者 ]

震度 6 強

駅前滞留者想定人数

―避難計画人口 避難場所―数

池袋

―面積 ―有効避難面積 ―避難計画人口

池袋駅

避難所―数 2次避難所―数 一時滞在施設―数

遠距離避難型 池袋駅との比較

駅近の避難面積不足

遠距離に避難場所が多い

地区内残留地区―駅圏占有率

震災時想定時刻 PM17:00 ∼

AM11:00

[ 帰宅困難者誘導 ]

く、また、渋谷駅に特徴的に見られるのが

[ 初動対応 ]

駅周辺に残った帰宅困難

駅周辺民間事業者の参加である。渋谷では、

大型商業施設6カ所

者を事業所・商店会等が

駅構内6カ所に滞留

渋谷駅

渋谷駅

者発生。

訓練参加人数

連携して、一時滞在施設 へ誘導する。

訓練参加団体数

[ 一時滞在施設 ]

駅圏内の避難場所の 一人当たりの避難有効面積の平均値

・青山学院大学 ・国学院大学

―避難計画人口 避難場所―数

上野

―面積 ―有効避難面積 上野駅

―避難計画人口 避難所―数 2次避難所―数

訓練参加人数 訓練参加団体数 駅から最も近い避難場所の 一人当たりにおける避難有効面積 駅圏内の避難場所の 一人当たりの避難有効面積の平均値

一日平均乗降客数 駅前滞留者想定人数 地区内残留地区―駅圏占有率 ―避難計画人口 避難場所―数

新宿

―面積 ―有効避難面積 ―避難計画人口 避難所―数 2次避難所―数 一時滞在施設―数 訓練参加人数

駅近に巨大な避難場所

近距離避難型

一時滞在施設―数

駅近に巨大な避難所 住民と滞留者を考慮した避難計画

一日平均乗降客数 駅前滞留者想定人数 地区内残留地区―駅圏占有率

新宿駅

訓練参加事業者が道に沿って、放射状に分 散して存在しているため、より広域に避難 誘導可能となっている。

駅から最も近い避難場所の 一人当たりにおける避難有効面積

上野駅

町内会・商店会の参加数が渋谷の方が多

震災時想定時刻

一方で、参加事業者が点在している池袋駅 では広域避難が難しい。

・国連大学本部 ・こどもの城 ・国立代々木競技場 震災時想定時刻

小結論

AM11:00 [ 滞留者誘導 ] 路上に発生した滞留 渋谷駅

渋谷駅の地域特性を生かした

者は商店会・警官の 誘導に従い、路上に

段階的避難が行われている。

滞留している人は安 全な大通りへ移動す

民間事業者・地元住民の誘導

る。

により遠距離避難訓練の実現。

池袋・渋谷駅ともに、駅から最も近い避難場所の一人当たりの有効避難面積が小さい という問題を抱えているが、渋谷では駅周辺の民間事業者が帰宅困難者を受け入れる一 時滞在施設として提供したり、また広域避難場所までの誘導を行うことで、多方向に避 難する訓練を実現できている。しかし、池袋では民間事業者による一時滞在の規模が小 さく、またその後の広域避難が1カ所のみと限定されている。渋谷はルートが多方向に 設定されているため、震災時に柔軟に対応できると予想される

震災時想定時刻 PM15:00 ∼ [ 徒歩帰宅支援 ] 時差帰宅の開始。国 渋谷駅

道 246 号方面の帰宅 可能者を誘導。 帰宅沿道の都立高校 における情報・飲料 水・トイレの提供を 行っている。

訓練参加団体数 駅から最も近い避難場所の 一人当たりにおける避難有効面積 駅圏内の避難場所の 一人当たりの避難有効面積の平均値

地区内残留地区―駅圏占有率 ―避難計画人口 避難場所―数

東京

東京駅

なし

―面積

なし

―有効避難面積

なし

―避難計画人口

なし

避難所―数 2次避難所―数 一時滞在施設―数 不明 不明

駅から最も近い避難場所の 一人当たりにおける避難有効面積

なし

駅圏内の避難場所の 一人当たりの避難有効面積の平均値

なし

一日平均乗降客数

地区内残留地区―駅圏占有率 ―避難計画人口 避難場所―数

品川

―面積 ―有効避難面積 品川駅

―避難計画人口 避難所―数 2次避難所―数 一時滞在施設―数 訓練参加人数 訓練参加団体数 駅から最も近い避難場所の 一人当たりにおける避難有効面積

第4章 結論・展望  池袋・渋谷駅ともに、駅から最も近い避難場所の一人当たり の有効避難面積が小さいという問題を抱えているが、渋谷では 駅周辺の民間事業者が帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設と して提供したり、また広域避難場所までの誘導を行うことで、 多方向に避難する訓練を実現できている。しかし、池袋では民 間事業者による一時滞在の規模が小さく、またその後の広域避

巨大な地区内残留地区

駅前滞留者想定人数

地区内残留型

訓練参加人数 訓練参加団体数

避難場所と地区内残留地区

一日平均乗降客数 駅前滞留者想定人数

難が1カ所のみと限定されている。渋谷はルートが多方向に設 定されているため、震災時に柔軟に対応できると予想される。  池袋駅が抱える問題を解消するためには、渋谷駅における避 難モデルの導入が不可欠なだけでなく、ビジュアル化された池 袋駅周辺の防災情報を事前に公開されていれば、多方向避難が 実施されるのではないだろうか。

駅圏内の避難場所の 一人当たりの避難有効面積の平均値

[渋谷広域駅圏防災マップ] ミクロな一時避難、そして広域避難所への遠距離避難


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