古谷誠章研究室 及川 輝 1X07A031-4 飯塚 哲平 1G06D701-9
◆ドローイングの分析
◆詩の分析
John Hejduk 研究
対象
ドローイング
詩/エッセイ
観察者
観察者 Hejduk
作家 Hejduk
‒自伝的作品集『Mask of Medusa』1947-83 年における手法〈Mask〉とその設計意図‒
研究概要
研究構成
アメリカの建築家 John Hejduk(1929-2000) は自伝的作品集『Mask of
J.Hejduk は、主体と客体の双方向からの視点をもつという特徴がある。そこで、建
Medusa』 、また 1979 以降の Mask プロジェクト名にとどまらず、Mask の重
築史家 Michael Hays が J.Hejduk とラカンの関係から Wall House の壁について論考
要性について言及している。本論は、『Mask of Medusa』を全訳し、ドローイ
の際に用いたラカンの図式を引用して論を構成する。M.Hays の作品論をさらに発
ングの分析/詩の分析を通じて J.Hejduk の意図を追っていくことで、Mask を
展させ、J.Hejduk の作家像をラカンの図式を用いて論考していく。
明らかにしていくことを目的とした作家研究である。
◇作家としての J.Hejduk
◇観察者としての J.Hejduk
「Texas House」や「Diamond House」な ど を ド ロ ー イ ン グ を 通 じ て 思 考 し
J.Hejduk の詩/エッセイは、実際の空間とは異なる独自の視点(創造的空間
ていく段階で、基本的な建築のヴォキャブラリーやその関係性が検討され
体験)で描かれる。J.Hejduk の創造的空間は言語化され、イメージの蓄積がお
た。ドローイング上でヴォキャブラリーを視覚化、その関係性を分析した結
こなわれ、自身の建築でフィードバックされる。詩/エッセイを読む私たちは、
果、何かを欠如させるような手法が得られた。
建築空間/都市空間のリアルな表情ではなく、J.Hejduk の視点で描かれた空間
つまり、「作家 J.Hejduk」の視点では、ドローイングに何かを隠す(マス
のイメージを体験することになる。
クする)ことで観察者に多元的な解釈を生む意図が示された。
つ ま り、 「観 察 者 J.Hejduk」の 視 点 で は、観 察 者 が 詩 / エ ッ セ イ と い う J.Hejduk の仮面(マスク)を覗いて対象を見ることで創造的空間体験をさせて
欠如を引き起こす手法 ◇シークエンス/視界の分析
いたことが示された。
◇形態の分析
対象 ラ・ロッシュ
◆序論
観察主体
眼差し 像
他者
⇒相似形の反復
像
研究背景/目的
⇒視界の制御
時代背景―Colin Rowe を主軸に
〈主体側から見る〉
思想背景―Jacques Lacan について
3/4
1/1
⇒不完全な輪郭
マイケル・ヘイズ ハーバード大学終身教授
「視の領野のダイアグラム」
研究概要/構成
1/2
⇒シークエンスの多肢化
◇図面表現の分析
◇意図の分析 イタリア式庭園の引用
十月の
滑り出したオートバイが
暮方の
砂利を踏みしだく
ラ・ロッシュは
棚の上の
理性にを向けている
磨きこまれたブガテイの自動車
沈める庭石の
腐れゆくかずかずの絵画
暗がりの儀式
自動車置場の中で
冷え冷えとしたホールの
蒼白い薔薇の香り
空いたまま説教壇
赤いチョークの粉
沈黙の聖歌隊
敷居の上の
透き通らぬ黒の大理石の
子供等は滑る
朧ろの暖炉
滑り下る
葬儀車の灯が点り
曲った斜路を
静寂の
タキシードが動く
白
すり抜ける
死者の置かれる台
金属製の扉
龕の中の隼
音を立てて締まる
壁の色合は
パースベクティヴに響く反響
移ろう
軈て消え入り ひとつの啓示
薄桃色から桃色に
何も言わぬのが最善なのだ
藤色から茶褐色に
今 夜が明ける
革手袋は釦をかけたまま
ここ ホワイト博士広場
研究構成
ラ・ロッシュ邸での体験
⇒客体化
⇒情報の削減
1.1 『Mask of Medusa』Frame 1-7 概要
序論
1.2 考察 1.3 小結「J.Hejduk の2つの視点−作家/観察者」
②観察者・J.Hejduk ドローイング
詩/エッセイ
詩/エッセイ
・思想背景―ジャック・ラカンについて 作家としての Hejduk
観察者としての Hejduk
(客体)
(主体)
2.1 分析対象/方法 2.2 Frame2-4 における設計意図
Bye House による建築化
ドローイング
・時代背景―コーリン・ロウを主軸に ・研究概要/構成
創造的空間体験の言語化
⇒引用
①作家・J.Hejduk
ラカンの図式による評価
・研究背景/目的
◆第2章 ドローイングの分析
詩「ラ・ロッシュ」による
Italian Garden
⇩
◆第 1 章 John Hejduk の思想
⇩
公園では
「私は、観察者の頭の中の問題を解こうとしています。」J.Hejduk
欠如
仮面
対象の建築/都市 (客体)
作家としての Hejduk
観察者
(客体)
(主体)
観察者から見た像
観察者 (主体)
⇒欠如によって隠す(マスク)
観察者から見た像
⇒仮面(マスク)を覗く
2.3 データシート 2.4 分析
▼
2.4.1 シークエンス/視界の分析
1 章 Hejduk の思想
2.4.2 形態の分析 2.4.3 図面表現の分析
◆結論「1947-83 年にみる手法<Mask>とその設計意図」
・『Mask of Medusa』Frame 1-7 概要
2.4.4 意図の分析
以上より2つ図式を右で示した一つの図式にまとめる。その際に重なる「欠
・小結「J.Hejduk の2つの視点−作家/観察者」
2.5 考察
①作家・J.Hejduk
②観察者・J.Hejduk ドローイング
如」と「仮面」の部分を『Mask』という一つの言葉でまとめる。 『Mask』は「何
2.6 小結「作家としての J.Hejduk」
詩/エッセイ 欠如 仮面
対象の建築/都市
かを隠す」と同時に「覗かせる」ものであり、J.Hejduk の作品において、この
▼
3.1 J.Hejduk の詩について
観察者
(客体)
(主体)
観察者から見た像
⇒仮面(マスク)を覗く
⇩
の神秘性は、本質的な両面性としての建築の神秘性である。」と述べている。 ドローイング
ヘイダックの意図
観察者
この「両面性」は、Diamond House のアクソメにみる二次元−三次元の同時性や、
(背景には言語)
3.3.1 「ラ・ロッシュ」の分析
John Hejduk の作家像
Wall House の壁にみる反射する金属面とくすんだ灰色の壁面の同時性に見る
3.3.2 「ドーソンヴィル伯爵夫人へ」の分析
詩/エッセイ
−詩にみる観察者 J.Hejduk という「両面性」が、自らの設計姿勢において体
3章 詩の分析
現されたものであり、背反する二つの秩序の「両面性」にこそ、新たな建築の
3.3.5 「パラディオ・プラン」の分析
可能性をみていたのである。
観察者としての Hejduk
作家としての Hejduk
3.5 小結「観察者としての J.Hejduk」
対象の建築/都市
⇒
3.4 考察
ドローイング
ことができる。つまり、手法<Mask>は、ドローイングにみる作家 J.Hejduk
▼
3.3.4 「オランダの室内」の分析
(主体)
D.Libeskind は『Mask of Medusa』の序論にて、 「J.Hejduk のプロジェクト
作家としての Hejduk
3.3.3 「P.S.47 BX.1936」の分析
観察者から見た像
Mask>であると結論づける。
3.2 分析対象/方法 3.3 分析
観察者
⇒欠如によって隠す(マスク)
隠すと同時に覗かせることで観察者の頭の中に空間を創造させる手法が<
2 章 ドローイングの分析
◆第3章 詩の分析
(客体) 作家としての Hejduk
観察者としての Hejduk
(客体)
詩/エッセイ
(主体)
『Mask』
(客体)
▼
⇒
観察者としての Hejduk
private:反射する金属
(主体)
◆結論
隠すと同時に覗く 『Mask』という手法
結論「1947-83 年にみる手法<Mask>とその設計意図」
▼
▼
public:くすんだ灰色
展望「1979 年以降のプロジェクトにみる両面性−建築と身体」
結論/展望
Diamond House B
Wall House
John Hejduk の作家像
◆参考文献
ドローイング 観察者から見た像
詩/エッセイ
一次資料
二次資料
Mask
(別冊)資料編
『Mask of Medusa』全翻訳(480 頁) 『Nothing Less Than Literal』5 章翻訳(172-203 頁)
作家としての Hejduk
観察者としての Hejduk
(客体)
(主体)
主要参考文献 John Hejduk 『Mask of Medusa』 (Rizzoli.1985)
ジャック ラカン 『ジャック・ラカン 精神分析の四基本概念』 (岩波書店 .2000)
John Hejduk 『Such Places as Memory』 (The MIT Press .1998)
コーリン・ロウ 『マニエリスムと近代建築』 (彰国社 .1981)
Peter Eisenman 『John Hejduk: 7 Houses』(The MIT Press.1980)
アンソニー ヴィドラー 『不気味な建築』(鹿島出版会 .1998)
Mark Linder 『Nothing Less than Literal』 (The MIT Press.2005)
磯崎新、柄谷行人、浅田彰、岡崎乾次郎 『モダニズムのハード・コア』(太田出版 .1995)
K. Michael Hays 『Architecture's Desire』 (The MIT Press.2009)
ビアトリス・コロミーナ『マスメディアとしての近代建築』(鹿島出版会 1996) ヴァルター ベンヤミン『複製技術時代の芸術 』 (晶文社 1999)