学校施設および周辺地域での児童の生活行為の実態についての研究 ―学校・地域オープンスペースの横断的評価視点の導入―

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2010/11/11 卒業論文発表会 古谷誠章研究室 1X07A107-8 髙橋宇宙

■ 研究テーマ 学校施設および周辺地域での児童の生活行為の実態についての研究  ―学校・地域オープンスペースの横断的評価視点の導入― ■目次   第 1 章

第4章

1-1 研究目的

4-1 結果分析

1-2 研究背景 ―研究背景̶

―分析[Ⅰ]―

少子高齢社会の現状

都市空間利用状況分析

学校統廃合による地域社会への影響

用途別利用状況分析

―視点̶  地域と学校の関係に意識的な取り組み

―分析[Ⅱ]―

時間割から見る児童の生活実態

学校内行動性質 - 全体分析

児童にとっての都市地域空間という視点の導入

学校内行動性質 - 校舎内分析

既往研究・横断的評価の導入

学校内行動性質 - 校舎外分析

―仮説̶

学校内行動調査分析

仮説[Ⅰ] 仮説[Ⅱ]

男女別行動分析

資料:学校建築年表

都市空間・学校内行動性質比較分析

第2章

4-2 考察

2-1 研究対象学校

―考察[Ⅰ]―

研究対象学校選定理論

都市空間利用状況について

東京都23区におけるオープンスペース導入校リスト

用途別利用状況について

Google Earth を用いた都市分析方法

仮説[Ⅰ]についての検証

82校分析結果基礎データ

分析結果分類の試行

―考察[Ⅱ]―

研究対象校5校基礎データ

学校内行動性質について  学校内行動調査について

2-2 調査・研究方法

都市空間・学校内行動性質比較分析について  仮説[Ⅱ]についての検証

調査項目概要

使用用語の定義  調査方法 A-1

C-1

2-3 学校周辺地域分析図

―横断的評価̶

横断的評価指標に基づく各校のデータシート

横断的評価視点による指標の検討

第3章     3-1 ∼ 5 調査結果

4-3 結論    4-4 展望

―各調査対象学校データシート集―

参考文献

3-1 千代田区立麹町小学校  3-2 杉並区立杉並第四小学校  3-3 杉並区立杉並第十小学校  3-4 杉並区立高井戸小学校  3-5 練馬区立光が丘夏の雲小学校

■使用する言葉の定義 行動規模=行動の人数規模。 動的行動=大きな移動、動きを伴う種類の行動。おにごっこ、サッカー等。 静的行動=大きな移動、激しい動きを伴わない種類の行動。おしゃべり、読書等。 ※本研究で行動性質という場合、特に「動的」と「静的」の二つの性質をさす。


■第1章 1-1 研究背景 少子高齢化などの社会的状況の変化は、学校制度および施設 に大きな影響を及ぼしている。過疎地域の統廃合、廃校等は その典型であると言える。これらの学校の再配置は、地域コ ミュニティなど、学校と地域の関係を再考する段階にである ということを浮き彫りにした。また、1998年に三重県で 初めて導入された学校選択制も学校統廃合を加速させる側面 を有するため、学校と地域関係を見直すという視点において 見逃すことができない。  地域における学校のあり方について、空き教室の地域開放、 複合施設化など、様々な試行錯誤が行われている。しかしな がら、これらの地域開放などは、地域住民、あるいは施設利 用者との交流という間接的な教育効果を期待されている側面 はあるものの学校教育と直接的に結びついているとは言えな い。つまり、言ってみれば地域の大人の側の目線で学校施設 の利用を考える、地域にとって学校施設がどうあるべきか、 どのように使われるべきかの議論であり、ハードとしての学 校施設を学校とらえていると言える。また「開かれた学校」 についての議論の中には、学校の運営に保護者をはじめとす る地域住民が関与することなど、いわゆる「コミュニティス クール」が存在する。しかしながら、どちらにしてもこれら 「学校開放」の議論の中でとりあげられている「学校」は児 童にとっての学校とは本質的に異なるものを扱っている。つ まり、ここで開放されている「学校」は児童の生活の場とし ての学校のことではない。学校を「開放」することを議論す るなかに、児童の側の視点を導入し、児童の生活の場と射手 の学校あるいは教育を地域に開放、あるいは拡張していくこ とも盛り込まれる段階にある。  学校の地域におけるあり方の議論のなかで、特に教育、生 活という視点から地域との関係を再考する。学校建築におい て教育の方法と密接に関連するのは特にオープンスペースで あり、現在オープンスペースの導入は数多く行われており、 ばらつきはあるものの20% 程度に達してるといわれてお り、東京都23区については83校(全体の8%)がオープ ンスペースを導入しており、新築のものは多くがオープンス ペースを導入する傾向にある。これらのオープンスペースに ついては数多くの既往論文が存在し、その有効性は多くポジ ティブにとらえられている。しかし、これらの研究は、特に オープンスペースのみについて調査されているものが大半で あり、学校内の、他の空間についての論文は多くない。また、 校舎内、校舎外、敷地外を児童の生活という一つの同一軸上 に存在するととらえ、並列してその役割を論じたものは見受 けられない。本研究では、地域と学校の連関を期待する立場 から、調査対象を学校内の、特に教室前のオープンスペース に限る事なく、校舎内、学校敷地内、学校敷地外を連続的に 調査を行う。学校敷地内の様々な空間がどのように使われて いるか、その行動のスケールに着目し、明らかにしていくと ともに、都市に存在する公園や空き地、河川敷といった都市 空間はの使われ方の実態をその使用頻度や使用方法を調査す る事によって明らかにする。また、遊ぶという児童の日常の 生活行為について、地域と学校建築の補完関係はどのように 成立しうるか、あるいはそのような補完関係が存在するのか を検証する。都市空間の学校教育、児童生活における役割の 指針の一端となるような横断的な視点を導入し、児童にとっ ての周辺地域のあり方、周辺環境に対する学校敷地内のあり 方など、地域と学校の関係のうち、特に児童の生活行為に着 目した提言を行う事が目的である。

■第4章 分析・考察

1-2 研究目的

ⅰ . 高密度都市地域

ⅱ . 住宅地地域

仮説[Ⅰ]の検証

「児童にとっての学校を開く」とは ①地域の状況と児童の都市空間利用の連関

児童の生活、教育の場が地域に展開していくこと議論すること。

②都市オープンスペースの数量データに有効な値は有るか ③児童館や小学校等の利用は、地域の状況と連関するか。 利用無し

利用無し

地域利用の可能性を探る。

14%

38%

0HW

都市空間と学校空間で、児童の生活の場として担う役割が補完

5HV

ⅲ . 広域 O.S 近接地域

オフィス群等が隣接し、都市 O.S の極端に少ないも

しあう部分があるかを検証する。

利用あり

利用あり

62%

86%

都市 O.S 利用割合

その他

都市 O.S 51%

のを高密度都市地域、住宅地が多くを占めるものを

37%

その他

住宅地地域、広大な都市 O,S を持つ地域を広域 O.S

都市 O.S

49%

63%

児童館利用割合

合計面積:24091㎡

合計面積:22625㎡

平均面積:4818㎡

平均面積:1740㎡

平均距離:583m

平均距離:413m

空地数:5

空地数:13

児童館

近接地域とした。それぞれは都市 O.S の合計面積、

仮説[Ⅰ] :

仮説[Ⅱ] :学校の内外にオープンスペースとしての機能を持つ空

([W

その他

55%

94%

公園の合計面積が近似していても、公園の個数が少ないと、利用

A-2 学校周辺地域実態分析

が少なくなる A-1 学校周辺地域分析で把握された全て

つ事により、児童の様々な生活行為の要求を許容している。

の公園総計72カ所を訪問し、図面のス ケッチ、写真撮影を行い実態の定性的な 把握を行った。

■第 2 章 , 第3章

公園の利用が少ない地域では、児童館の利用割合が大きい。 地域状況と児童の生活は、その都市公園の利用の仕方、他施設へ の依存という形であらわれた。 仮説[Ⅱ]の検証

2-1 調査対象学校

①内外の行動規模・性質の差異に傾向が見られるか。

B-1 都市空間利用アンケート

全国小学校

周辺地域の状況と、児童の

がっこう  なか   こうじまちしょうがっこう

児童の生活において、学校敷地外、都市

学校の中とおなじように①などとかきこんでね

そと   あそ   ば

麹町小学校

∼外の遊び場アンケート∼

年  組

男 ・ 女

東郷公園

みぎ   ず  こうじまちしょうがっこう

生活実態の連関を調べると

東京都23区内小学校

☆右の図は麹町小学校のまわりです

᪥๓

いう観点で調査対象校を選

②どこでよく遊んでいますか。  またはむかし遊んでいましたか。 ず

例 とうごうこうえん

清水谷公園

あそ  かた        き

あそ  かた

①どういう遊び方をしますか(いくつ○をつけてもいいです) そと  ともだち  あそ

うち  ともだち  あそ

そと  ひとり   あそ

うち  ひとり   あそ

1. 外で友達と遊ぶ  2. 家で友達と遊ぶ  3. 外で一人で遊ぶ  4. 家で一人で遊ぶ

れい

としょかん

どろけい

じどうかん

いっしゅうかん       うち  そと  あそ      なんにち

1. 七日  2. 六日  3. 五日  4. 四日  5. 三日  6. 二日  7. 一日  8. 遊ばない あそ  ば

れい

が類似性と差異を持つこと

ついても問い、その傾向を抽出すること

やく

6にん

ふん

検証の際に用いられる。 B-2 都市空間利用アンケート  こうしゃない

∼校舎内アンケート∼

よんかい   年  組

4階

男 ・ 女

みぎ        ず  こうじまちしょうがっこう

やす   じかん         ばしょ         き

あそ               ばしょ   なまえ   か

①どこでよく遊びますか?その場所の名前を書いてください。

さんかい

ばしょ           おな  いろ

3階

ひとつの場所のことは、同じ色のところにかいてください。

一つ目

二つ目

三つ目

一つ目

二つ目

三つ目

一つ目

二つ目

三つ目

おーぷんすぺーす なに      あそ

例 おしゃべり

2階 ず   か        れい

図の書きかたの例

さんにん

ると認識しているものを抽出しする点に

2

距離基準線

400m 500m

を対象とし、その周辺地域

おいて、ある長期的な学校空間の使用状

1.2km 四方の範囲を定量化

況を把握することを目的とする。

し、地域の様相を一視点で

86%

1人

19%

16%

17%

1人 2∼3人

1人 2∼3人

1人 15%

7人以上

2%

1%

7%

6%

7人以上

1人

18%

16%

4∼6人

4∼6人

4∼6人

22%

22%

29%

2∼3人

30%

35%

7人以上

1人

4%

27%

2∼3人 7人以上

2∼3人

4∼6人

69%

32%

36%

7人以上

4∼6人

71%

34%

32%

2∼3人

都市空間が一様でなく、場所の選択可能性をもつことが様々な行

いう傾向から、実証された。

する目的で行う。また、アンケート調査

にかい なんにん         あそ

③何人ぐらいで遊びますか?

1

300m

静的行動

81%

仮説Ⅱは、都市、校庭、校舎内で異なった行動を許容しやすいと

においては、児童が日常的に使用してい

②そこで何をして遊びますか?

目黒通り

200m

静的行動

間がどのように使用されているかを調査

ばしょ   なまえ                      みぎ  ず   あそ  ばしょ

100m

95%

動規模を許容している

場所の名前がわからなかったら、右の図で遊ぶ場所を○してください。

Google Earth をもちいて、東

緑ヶ丘児童館

動的行動

97%

校舎内および校舎外(校庭その他)の空

☆右の2つの図は麹町小学校です

東急東横線

動的行動

ありがとうございました!

■休み時間にあそぶ場所について聞きます。

スを有する小学校全83校

7人以上

4∼6人

利用実態、生活実態を抽出し、仮説Ⅰの

あそ  ばしょ

こうじまちしょうがっこう

京都23区のオープンペー

81%

も目的とする。これは児童の都市空間の

⣙ࠉࠉࠉศ ④どんな遊び場所がほしいですか?じゆうにかいてください

麹町小学校

学校名

動的行動

82%

③よくいく遊び場までどのくらいかかりますか。

を同時満たす地域として2

目黒区立碑小学校

行動規模

がっこう  あそ

5. 図書館に行く   6. 児童館に行く   6. 学校で遊ぶ    7. その他

②一週間のうち、家の外で遊ぶのは何日くらいありますか。

④何人ぐらいで遊びますか?

A−1

動的行動

上智大学

なんにん         あそ

A−1

14%

を調査する目的で行う。使用頻度などに

新宿通り

なに      あそ

学校周辺地域分析図

動的行動

19%

れい

③そこで何をして遊びますか?

A-1 学校周辺地域分析

動的行動

5%

半蔵門駅

ミレニアムコートガーデン

できるだけたくさんかいてください!

■遊び方について聞きます

3区をまず限定した。

静的行動

3%

鳥ヶ淵公園 麹町小

ばしょ   なまえ

みぎの図にかきこんでください わかれば場所の名前もかいてください

定する。分析の適応可能を

調査対象校

静的行動

19%

一番町児童館

例のように、その場所でやることと線でつなげてください

分類された中から選ばれた調査対象候補校

校舎内

静的行動

18%

あそ                               あそ

れい               ばしょ             せん

あらかじめ考え、地域状況

校庭

静的行動

地域空間がどのように使用されているか

さいきん        そと  あそ

にちまえ

東京都23区内オープンスペース導入小学校

都市

行動性質

やす  あそぶ  ばしょ           き

■外で遊ぶ場所について聞きます ①最近ではいつ外で遊びましたか?

東急大井町線

その他

仮説[Ⅰ]の検証

2-2 調査・研究方法

間は存在し、場所のスケール、立地等、それぞれ異なる要素を持

2−3

6%

45%

平均面積、個数等によって選定された。

児童が利用する都市空間とは、多くは公園として存在し、その量 が多ければ児童生活上での都市空間利用も増加する。

児童館

C-1 行動観測調査

visual 化する。

児童の日常的な行動のうち、特に意識さ

全ての学校について左のよ

れていないものを調査し、アンケートと

うなデータシートを作成し

補完的に扱う。

結論 ・地域に利用可能な場所がなければ教育や生活が展開することが 難しい。児童館などの施設がその一部を担うことになる。 ・都市空間と学校では、許容する行動については異なる役割、補 完性を持っている。 横断的指標による評価軸

600m

目黒線

N

scale=1/8000

0HW

Ϩ 5HV 都市空間選択率 100%

0

都市空間選択率 100%

0

10

([W

Ϫ 5HV 都市空間選択率 100%

横断的評価視点により設定

都市空間選択率 100%

0

10 1

0

10 0

10

公園等分布表

面積[ ㎡ ]

10000 9000 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 1296 0 0 100

た。

8967 総面積

911 200

300

425 400

860 500

444 600

12903㎡

平均面積

2150㎡

平均距離

390m

この分析をかけた83校を、 数値的データ

700

距離[ m ]

都市公園分布図

都市 O.S

児童館

路線

幹線道路

いくつかのタイプに分類し、 その中から調査対象校を選 定する。

20

①行動名(じゃれ合う、おしゃべり…)

4日

20

4日

20

4日

20

4日

空地数

利用日数

空地数

利用日数

空地数

利用日数

空地数

利用日数

行動偏向 10

行動分散 100

行動偏向 10

行動分散 100

行動偏向 10

行動分散 100

行動偏向 10

行動分散 100

0

0

0

0

100%

100%

100%

100%

②行動時間(○時○分) ③行動規模・構成(学年・性別)

校舎内選択率

校舎内選択率

校舎内選択率

校舎内選択率

都市空間選択率 100%

都市空間選択率 100%

都市空間選択率 100%

都市空間選択率 100%

行動偏向 10

行動分散 100

0 10

④行動場所

行動偏向 10

10 10 4日 利用日数

100% 校舎内選択率

行動分散 100

0

0

20 空地数

行動偏向 10

10 0 4日 利用日数

100% 校舎内選択率

行動分散 100

0

0

20 空地数

行動偏向 10

10 0 4日 利用日数

100% 校舎内選択率

0

20

4日

空地数

利用日数

100% 校舎内選択率

辺地域の行動許容性の傾向 が表される。その地域の要

行動分散 100

0

0

20 空地数

された評価軸で、都市と周

求、傾向が読み取られる。


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