中国・北京における胡同の保護と更新にみる都市空間の多様性 - 歴史文化保護区9地区の比較-

Page 1

中国・北京における胡同の保護と更新にみる都市空間の多様性 1 章 . 序論

- 歴史文化保護区9地区の比較 -

古谷誠章研究室 1X07A115-5 竹味佑人

1 章 . 序論

3 章 . 調査内容

4 章 . 北京における地区保護計画にみる都市的評価

□研究目的

□調査対象地と選定理由

□保護計画の比較・分類

1-2.1 半透明空間の定義

急激な発展を遂げている中国・北京にお

調査対象を25歴史文化保護地区のうち、調査が困難であった皇城地区お

『北京旧城 25 片歴史文化保護区保護規劃』(fig.3-2) おける対象地 9 地区の保

1-2.2 半透明空間を形成する要素

いて、伝統的な路地空間である「胡同」が、

よび胡同を有さない地区と再開発中である地区を除いた9地区を調査対象

護計画の内容を翻訳し、用途調整、経済・観光、更新方法、緑化計画、設備

1-2.3 半透明空間の性質

どのように保護・更新されているのかを

の地区とした。さらに、それぞれの地区から、代表的な胡同、計22胡同

インフラの5項目を抽出する。それらの項目を地図に落とし込むことで各地

1-2.4 既往研究と本研究

調査する。歴史文化保護区に指定されて

を調査した。

区の保護の傾向を分析する。

過去の半透明空間研究から

いる地区の胡同を比較することで、その

過去の北京の研究から

多様性を明らかにし、その要因について

2 章 . 北京における胡同について

考察する。

1.1. 研究目的と背景  1.2. 既往研究との位置づけ

fig.1-1 胡同写真

2-1. 胡同の定義  2-2. 胡同の起源

2 章 . 北京における胡同について

2-3. 胡同と四合院

□胡同の起源と定義

2-4. 胡同と都市

現在の北京の都市の基礎は元朝によって

2-5. 都市の発展と胡同の変遷

造られ、ほぼ正方形の平面の城郭には東

2-5.1 都市の発展

西南北各3つずつの城門を設けた。そこ

2-5.2 保護政策の経緯   2-5.3 保護整備による再開発の事例 3 章 . 調査内容  3-1. 調査対象地と選定理由  3-2. 調査内容  3-3. 調査結果  3-4. データシート内容     データシート      什刹海地区      南鑼鼓巷      国子監・雍和宮      西四北一条∼八条      阜成門内大街      東四三条∼八条

から城内に向かって九条の縦道と九条の 横道の幹線道路が伸びている。 「胡同」とは南北に走る幹線道路から 四合院 等の住宅地をつなぐ、東西に走 る路地裏空間である。 そこは北京の中心地でありながらも、今

fig.2-1 九経九緯

もなお多くの生活者が存在している。

「北京旧城胡同実録」より

1什刹海地区   后海南沿胡同   三座ࠉ胡同   西僋胡同   畑袋斜街 2南鑼鼓巷地区   南鑼鼓巷 3国子ड・雍和宮地区   五道営胡同   国子ड街   方家胡同   炮局胡同 ۧ楼胡同 4西四北一条∼八条地区   西四北‫ף‬条   西四北二条   西四北四条   西四北八条 5阜成門内大街地区   安平巷   大茶叶胡同   ‫ ؝‬口‫ף‬条 14東四三条∼八条地区   東四三条   東四五条   東四八条 22西琉璃厰地区   西琉璃厰街 23東琉璃厰地区   東琉璃厰街 24大柵欄地区   大柵欄

ӄ䚃௦㜑਼

ഭᆀⴁ・䳽઼ᇞ

ഭᆀⴁ㺇 ᠿᾬ㜑਼

㾯㔖㜑਼

⛞ተ㜑਼

Ӱࡩ⎧ൠ४

ᯩᇦ㜑਼ ⮁㺻ᯌ㺇

ই䪬啃ᐧ

ਾ⎧ই⋯㜑਼

㾯ഋेаᶑ̚‫ޛ‬ᶑ

йᓗẕ㜑਼

ই䪬啃ᐧ ᶡഋ‫ޛ‬ᶑ

㾯ഋे‫ޛ‬ᶑ བྷ㥦ਦ㜑਼ ᆹᒣᐧ ᇛ䰘ਓཤᶑ

㾯ഋेഋᶑ 㾯ഋेҼᶑ 㾯ഋेཤᶑ

什刹海地区

用途調整 -

観光 ○

更新方法 -

中庭・胡同への緑化 -

インフラ 下水

南鑼鼓巷地区

住+商

-

中庭・胡同

エネルギー

国子監地区

住+商

-

中庭・胡同

エネルギー

西四北一条∼八条

-

中庭

エネルギー

阜成門内大街地区

住+商

-

中庭・胡同

下水+エネルギー+配線

東四三条∼八条

-

-

中庭・胡同

下水+エネルギー

西瑠璃

◇詳細に記載

中庭・胡同

エネルギー

東瑠璃

住+商

-

中庭・胡同

エネルギー

大柵欄

住+商

◇詳細に記載

中庭・胡同

下水+エネルギー

ᶡഋӄᶑ ᶡഋйᶑ

fig.4-1 各項目と各地区マトリックス表

ᶡഋйᶑ̚‫ޛ‬ᶑ

䱌ᡀ䮰޵བྷ㺇

□用途調整

故宮

□経済・観光

□更新方法

□緑化計画

□設備インフラ計画

皇城地区(14地区)

東交民巷地区 ᶡ⨹⪳ৠ

胡同を有さない地区

㾯⨹⪳ৠ㺇 ᶡ⨹⪳ৠ㺇 བྷḥℴ

㾯⨹⪳ৠ

བྷḥℴ

住居への計画

計画有り

詳細な計画有り

四合院中庭+胡同

エネルギー

商業への計画

計画なし

計画有り

四合院中庭

下水

記載なし

記載なし

下水+エネルギー

住居と商業の計画

鮮魚口地区

記載なし

下水+エネルギー+配線

再開発中の地区

fig.4-2 各項目色分け地図

5項目の中で、特に用途計画・観光に対する計画に傾向が見られる。故宮の北 0

1

2(km)

側と南側で観光地としての計画が見られるが、北側は宗教建築や良質な住宅 fig.3-1 調査地 9 地区一覧および北京内での位置

□胡同と四合院

街・自然環境、南側は古くからの商業街と、観光資源としているものが異な っている。

旧北京の伝統的な住宅は、四合院と呼ばれる民居である。1 つまたは複数

□調査内容・結果

の中央の中庭のまわりを低層の建築で囲うように構成される。一般的には、

調査内容および調査結果として、以下の4点がある。

主の住宅は、南に直面しており、激しい北風を遮るように設計され、かつ、

a. 文献資料(中国語) 中国国内で入手した文献資料調査 (fig.3-2,3-3)

太陽の光が主室に降り注ぐことを可能にしている。

b. 文献資料(日本語) 日本国内にある文献資料調査

□保護と都市構造の関係についての分析・考察 城壁であった第二環状道路と故宮(天安門)の前を通る長安街・前門大街、 都市の再開発地区、および現在指定されている保護地区を重ねあわせること

c. 現地調査(立面写真) 現地で撮影した胡同の連続立面写真 6118 枚

西琉璃厰      東琉璃厰

d. 現地調査(8mm 魚眼レンズ写真) 現地で撮影した胡同の 8mm 魚眼レ

大柵欄

ンズ写真 1216 枚

4 章 . 北京における地区保護計画にみる都市的評価

※ c.d. の撮影位置は下図参照 (fig.3-4)

で、都市骨格と保護地区との関係を分析する。 ■観光地の計画 →観光資源:宗教建築や良質な住宅街・自然環境 →都市構造上の理由で再開発を免れた地域

平安大街

4-1. 保護計画の比較  4-2. 保護計画にみられる分類

■住宅地の計画

再開発の歴史から

fig.2-2 胡同に対して閉鎖性を持つ四合院

前門大街

■観光地の計画

5 章 .9地区の胡同空間の比較による分析・考察

□都市の発展と胡同の変遷

5-1. 連続立面写真による比較

元代に形成された胡同は、北京に数多く

→観光資源:古くからの商業街

5-1.1 立面構成要素の抽出

存在していたが、新中国成立以降、危改

5-1.2 9地区における構成要素の比較

事業によって急激な勢いで取り壊された。

5-1.3 考察

そして近年、旧城における胡同・四合院

胡同の変容における傾向

が残っている地区を保全する目的で 25 の

9地区の胡同の比較による保護区の類型(多様性)

歴史文化保護地区が指定された。その後、

5-2. 連続魚眼レンズ写真による比較

保護地区は拡張し、現在33地区が指定

5-2.1 胡同の空間構成の比率分析

されている。保護区指定された胡同は観

5-2.2 空間構成の比率分析からみる胡同の開放性と閉鎖性

光資源として商業化による機能転換が見

5-2.3 シークエンス分析による胡同の変容に関する考察

られるなど、多様な展開が見られる。

→地区の特徴によって再開発を免れた地域  fig.3-2『北京旧城 25 片歴史文化保護区保護規劃』

6-1. 立面写真からみる開口 / 設備の分布による考察  6-2. 魚眼レンズ写真からみる2次境界面の比較による考察     6-3. 小結 7 章 . 結論 参考文献 謝辞

fig.3-3『北京旧城胡同実録』

北京市規劃委員会

北京市規劃委員会、北京市城市規劃設計研究院

清華大学建築学院編燕山出版社

北京建築工程学院中国建築工業出版社

2001 年

2008 年

第二環状道路 :第二環状道路、長安街、前門大街 :再開発によって取り壊された胡同地区 :現在指定されている保護区

故宮

:再開発が起こりやすいエリア

立面写真撮影範囲 約100m

fig.4-3 主要道路、再開発地区、保護地区の重ね合わせ地図

城壁であった第二環状道路と故宮(天安門)の前を通る長安街・前門大街、

四合院

都市の再開発地区の重ね合わせより、胡同の取り壊し・再開発と旧城の交通 胡同 fig.2-4 歴史文化保護区 (33 地区 )

5-3. 小結 ᖺ௦ ᖺ

⬌ྠࡢᩘ ඖᮅ ̻

᫂ᮅ ̻

Ύᮅ ̻

長安街

fig.2-3 四合院 「北京の胡同」より

交通網の整備から

6 章 . 胡同空間の商業化・観光化における都市的影響の分析考察

故宮

→地区の特徴によって再開発を免れた地域

4-3. 保護と都市構造の関係についての分析

ฟ඾ ᯒὠᚿࠊ㍴౮ ிᖌ஬ᇛᆓᕰ⬌ྠ㞟 ிᖌᆓᕰᚿ✏ ໭ிᪧᇛ⬌ྠ⌧≧୚Ṕྐኚ㑄ㄪᰝ◊✲ ྠୖ ྠୖ ྠୖ ྠୖ ྠୖ fig.2-5 北京の胡同の数の変化

大通り 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 6m 撮影方向

網は、城壁であった第二環状道路と故宮(天安門)の前を通る長安街・前門 大街を中心に起こっていることがわかった。

四合院

魚眼写真撮影ポイント

更に保護地区を重ね合わせると、故宮の北側に大きく存在する保護区は、地 理的な位置上の理由で都市の再開発が及ばなかった地域であり、故宮に対し

fig.3-4 立面写真、魚眼レンズ写真撮影ポイント

て東西と南に位置する保護区は、文献から、歴史的特徴が存在していること から、それが結果として再開発をかろうじて免れた理由と考えられる。

fig.3-5 連続立面写真

北京における一見まばらな保護区指定は、都市構造の影響を受けた都市再開 発と、その地区の有する歴史的特徴の影響があるため、故宮を中心とした方

fig.3-6 魚眼レンズ写真

角によって保護計画に傾向が見られることがわかった。


Turn static files into dynamic content formats.

Create a flipbook
Issuu converts static files into: digital portfolios, online yearbooks, online catalogs, digital photo albums and more. Sign up and create your flipbook.