中国深圳市の城中村における開発動態の研究
1x08a002 青沼 克哉
―福田区 3 事例による比較調査から―
1x08a053 胡 敏
1. 1 研究背景 第一章 序論 1. 1 研究背景
2.3 城中村発生と変容 (参考) 『中国の都市における「城中村」の改造に関する一考察』 2009 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 孫立ほか 『 ア ク ト 城 中 村 ・ 新 都 市 抹 消 の 法 学 』 2008 上原 雄史 INAX 出版 10+1 No.50
■都市化に付随して起こる大量の労働人口の流入
1. 2 研究目的
都市の急速な発展に付随して起きる周辺地域のスラム化現象。
1. 3 調査日程
その特徴、問題として、貧困層の居住する過密化地域であること、
■城中村の生成と変容プロセス
不衛生、福祉的サービスの欠如、治安の悪化などといった点が 第二章 調査地概要 2. 1 深圳概要 2. 1. 1 深圳市概況
挙げられるが、その本質は発展した都市に押し寄せる、大量の 労働人口の流入である。
2. 1. 2 歴史
全世界的に見てもこの現象は普遍的な都市現象と言える。
2. 1. 3 統計資料
■中華人民共和国広東省深圳市
2. 2 城中村概要 2. 2. 1 中国における城中村現象 2. 2. 2 城中村に関する関連研究
和国の広東省に属する。
2. 3 城中村の発生と変容
深圳市は、30 年前までは人口僅か2∼3万人の農村地域であっ
2. 3. 1 城中村発生のメカニズム 2. 3. 2 法制度の変遷 2. 4 深圳市における城中村 2. 4. 1 深圳市福田区の村一覧 2. 4. 2 深圳市福田区の城中村管理エリア 2. 4. 3 管理エリア内の城中村一覧
る。
城中村(village in the city)とは、深圳を含む中国華南地域
2. 5. 2 松下電器机電深圳へのヒアリング
に多く見られる都市現象のことであり、極端に密集した賃貸住
3. 3 調査方法 3. 4 調査対象地 3. 4. 1 ቫ厦村 3. 4. 2 沙埔༈村 3. 4. 3 田面村
第四章 調査結果 4. 1 全体配置図 4. 1. 1 ቫ厦村
つとして挙げられる。外来人口が人口の大半を占める深圳にお
田畑を奪われた村民は、 生業を農業から賃貸住宅 の経営に乗り換える。 共同開発地借地権が与え られた宅地部分だった土 地に、賃貸アパートをあ らん限りの密度をもって 建てる。
2005∼ 城中村の再開発
20XX 城中村の消滅
開発が飽和状態に近づい てくると、開発の矛先を 城中村地区に向け、再構 築される。 城中村周辺のインフラ設 備や居住環境は整備さ れ、グリット状都市幹線 道路、大規模なコンドミ ニアムやショッピングセ ンターなどが作られる。
近い将来訪れる、城中村 の抹消̶̶。 地権が保証されるのは一 世代のみであること、ま た、行政による圧力や村 民自らの意思により完全 なる都市化が完了する。
■国家土地管理政策(1986年6月25日実行、2004年8月28日第二次修正) ⥖⭨㟵☼⤸㸢␉
城中村の形成に影響する根本的な要因としては、中国独自の
・土地の所有形態は都市と農村に分けられる。
都市・農村の二元的な管理制度が挙げられる。
・都市の土地は国が所有し、農村の土地は村民委員会が集団で所有する。
都市部とは違い、住民による土地の共同所有が認められてい
■国家建設征用土地条例(1982年5月22日)
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る農村部が急速に都市化され、収容される過程において補償費
・経済発展に伴い市街地を拡大する為に、 コストが居住地域よりも安価な耕地を対象として、国による土地の収用を行う。
の高い宅地部分が収容されずに取り残されることで、都市の中
・収用した土地の所有権は国に属し、利用組織が使用権のみを有する。
の村、城中村が形成される。
・土地収用の賠償基準が定められている。
4. 2 城中村内アンケート調査結果
住区であるという点で、城中村は非常に普遍的な構造を持って
5. 4 考察
行政によって経済特区に 指定され、インフラの整 備とともに都市化の波が 押し寄せる。 行政は農村の土地を収容 する際に、買収額がかさ ばる宅地の部分を避け、 安く買収できる田畑部分 を率先して買収する。
・中華人民共和国の基本的な土地管理法。
ある。しかし、都市に付随して生成する外来人口の高密度な居
5. 3 アンケート結果分析(3 事例比較)
1990∼2004 急速な拡大
1980∼1989 城中村の萌芽
能している。
4. 1. 3 田面村
5. 1 再開発された城中村 5. 2 アンケート結果分析(都市部との関係性)
高密賃貸住宅群
深圳の城中村の一つ、ቫ厦村 (Gangxia 村 )。
いて、城中村の安価な賃貸住宅群は外来人口の受け皿として機
城中村は中国独自の社会背景がもたらした特殊な都市現象で
4. 3 松下信興機電(深圳)アンケート調査結果
都市化によるオフィスビルや
■都市と農村の二元的な管理制度
宅群が、都市全体に点在しているということが大きな特徴の一
4. 1. 2 沙埔༈村
第五章 城中村の開発動態と都市部との関係性
∼1980 中国南部の農村地域 農村、漁村が広がる全く 都市化されてない状態。 深圳の場合は人口2∼3 万人程度が住んでいた小 さな漁村。
全人口の約 85% が深圳以外の土地からやってきた外来人口であ
2. 5. 1 城中村管理組合へのヒアリング
3. 1 調査概要
高層ビル群が建ち並ぶ深圳の街並み
指定されて以来急激に発展し、現在では人口 1400 万人にも昇り、
■大都市における外来人口の受け皿として機能する城中村
3. 2 調査対象地選定方法
宅地部分
高級マンション、自然公園など
たが、1980 年に鄧小平による経済開放政策によって経済特区に
2. 5 現地ヒアリング調査
第三章 研究内容
田畑部分
深圳市は中国南方の珠江デルタの東岸に位置し、中華人民共
ቫ厦村の俯瞰写真。非常に高密度な居住地帯。
■深圳経済特区農村社員建築用地暫行規定(1982年9月17日) 㔪䉲ⲿ⭙㝎㎸▋㔣㴗⯼➟㱫☼㵃㨾⥂⛊ ・旧村を再開発、再利用する際に、 「近接原理」 に基づき各村の新範囲を指定し、村民に対して土地を分配し、新しく建設を行う。 ・失地した農民の生計問題を解決する為に、新村の中から一定な土地を与え、集団経済を発展させる。
いるとも言える。
■深圳特区内農村規劃の強化に関する規定(1986年6月27日)
1. 2 研究目的
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・三人以下の世帯で共有される土地においては、建築面積は150㎡を超えてはならない。 ・三人以上の世帯で共有される土地においては、建築面積は240㎡を超えてはならない。
安価な家賃相場により外来人口の受け皿として機能している 城中村であるが、整備された都市部と比較したときの収益性や
都市
農村
景観のギャップ等の理由から城中村は徐々に、行政やディベロッ 第六章 城中村の空間構成と居住環境
パーによって再開発されているのが現状である。決して新しい
6. 1 路地の使われ方の分類
とは言えない手法による再開発によって城中村のような外来人
6. 1. 1 ቫ厦村 6. 1. 2 沙埔༈村 6. 1. 3 田面村 6. 2 ቫ厦村配置詳細図 6. 3 ቫ厦村部分詳細図 6. 4 考察
口の受け皿としての機能を持つ居住地域は都心から郊外へと追
土地制度
都市の全ての土地の所有権は国に属する。
村落の土地の所有権は村落の集団所有 都市化の過程で、国は農民の生産手段である
メインストリートから路地が村の隅々まで伸びている。
農地を徴用することはできるが、農民の生活
いやられていくことになる。
手段である宅地を徴用することはしにくい。
他地域からの外来人口によって支えられている現在の深圳の
したがって、現在の城中村の住宅用地は今で も村の集団所有に属する。
経済的な活力を今後も保っていくためには、現在の城中村の立 地条件や家賃相場、住民のライフスタイルをできるだけ維持し
第七章 結論
ていくような再開発の方針が必要と思われる。
7. 1 全体の考察
本研究では、深圳における城中村の周辺都市部に与える影響、
7. 2 展望
都市のコミュニティは末端の行政の出先機関 社会管理制度
である「街道委員会」が管理し、管理のため の一切の費用は政府の財政が負担する。
村落のコミュニティは村民の自治組織である 「村民委員会」が管理し、管理のための一切 の費用は村集団が負担する。
城中村内での経済、生活動態の調査を行う。城中村が都市に対 して果たす機能の実態、高密度居住空間における生活動態を明 らかにすることで、城中村の将来的な再開発方針の一端を示す ことを目的とする。
路地からの見上げ写真。
(参考) 『非正規住房市場下深圳城中村居住形態特徴及演化研究』 2010 王鵬 『城中村の形成過程における法規制』 黎庶旌 『中国人口問題のいま ー中国人研究者の視点からー』 2006 若林敬子(著)向井紀美(訳) ミネルヴァ書房