2011/11/7
2011 年度卒業論文
古谷誠章研究室 1X08A047-8 久我 淳子
地域再生計画にみる施設活用の効果と可能性の研究
■目次
1X08A093-6 武井 光
■論文の構成
地域再生促進
ストック活用促進
1-1 はじめに 1-2 施設活用の定義
研究背景
第 1 章 研究概要
1-3 研究背景
1-3-2 研究背景 - 遊休施設増加と建築ストック
「地域再生計画にみる施設活用の効果と可能性の研究」
活用の促進 地域再生を意図した施設活用について、
1-5 仮説
Ⅰ. 傾向を把握することで、問題点・実現への障壁を明らかにする。
1-6 論文構成
Ⅱ. 地域にもたらす本質的な効果を明らかにする。
研究目的
1-4 研究目的
研究テーマ
の低下
施設活用による地域再生の試み
第1章
1-3-1 研究背景 - 縮小社会への突入と地域活力
1-7 既往研究
第2章 研究方法
2-3 研究対象 2-4 調査方法•調査内容
Ⅰ. 悉皆調査
Ⅱ. 抽出調査
…対象事例全て(72 施設)について、
…アンケート調査結果を基に、全対象事
アンケート調査を行い、定量的な結
例の中から抽出した事例(9 施設)につ
果を得る。
いて、現地に赴きヒアリング、施設見学
研究方法
2-2 地域再生計画概要
第2章
2-1 研究の構成
等の詳細な調査を行う。
2-5 調査資料集成事例 1,2 次アンケート調査(全 72 施設)
現地調査調査(全 9 施設)
3-2 現地調査データシート
第 5 章 終章 5-1 結論 5-2 展望 5-3 参考文献
■言葉の定義 地域再生計画 … 正確には、内閣地域再生本部によって認定された地域再生計画。地域の自主的かつ自立的な地域再生を総合的かつ効果的 に推進するために、地方公共団体が地域再生計画を作成・申請し、地域再生本部によって認定された計画は、支援措置を受けることが出来る。 (地域再生法で定義する)地域再生 … 近年における急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化に対応して、地方公 共団体が行う自主的かつ自立的な取組による地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出その他の地域の活力の再生。 施設活用 … 建築的操作の有無によって決まるものではなく、その前段階である空間の考え方や使い方そのものを考え直すことであると定 義する。建築的な視点だけではなく、様々な視点や価値観の変化によって空間の質を変えて行く事を施設活用と定義する。
結論 展 /望
結論/展望
4-2 考察
分析 考 /察
分析・考察
第5章
4-1 調査結果一覧 / 分析
第4章
第 4 章 分析/考察
調査内容
3-1 アンケート調査データシート
第3章
第 3 章 調査集成
第 1 章 研究概要
■研究対象事例選定
②施設の余剰空間を地域のオープンスペースとして開放する
第3章 調査集成
地域再生計画認定全事例(1483 計画)
■サンライフ袋井 (静岡県静岡市)
施設活用に関する事例(全 69 計画 79 施設)
1,2 次アンケートで得られた定量的データを記載。
(=1 次アンケート送付)、※被災地を除く
空き部屋など、施設活用する際に発生した施設の
⇒事例間を横断して比較することで分析
う言葉をよく耳にする。
余剰空間を区の倉庫や防災倉庫など地域のための 駐車場
このような取り組みを大まかに説明すると、地域社会の人口規模や経済規模 が徐々に衰退する中で、かつての輝きを取り戻したり、新たな価値を創出する ことで地域の魅力を高め、地域住民の生活や社会的活動を維持していこうとい
1 次アンケート回収事例
■現地調査データシート(抽出調査 7 計画 9 施設)
に開放している。
現地でのヒアリングや施設見学によってで得られた定性的データを記載。 現在進行中事例
⇒事例毎に特徴的な現象を分析
(21 計画 21 施設)
実現済み事例
中止中断事例
(33 計画 39 施設) (11 計画 12 施設)
■悉皆調査
第 4 章 分析 / 考察
□62 計画 72 施設(= 全対象事例)
■分析
・地域再生計画書調査
や改修を行う事で再び施設を維持して行く「施設活用」という取り組みがある。 インフラの整備をはじめとしたハード面での整備や、イベントを起こして地
空き部屋など、施設活用する
2次アンケート回収事例(全 34 計画 44 施設)
際に発生した施設の余剰空間 を区の倉庫や防災倉庫など地 域のための空間として活用す る手法が見られた。
研究目的に沿った以下の3項目を分析する。
・1,2 次アンケート調査
「施設の余剰空間」を「地域の
Ⅰ. 地域再生を意図した施設活用の「障壁」
域を盛り上げていくソフト面での整備があるが、施設活用はその両面に打開策
オープンスペース」に開放し ている。
W.C. WC
Ⅱ. 障壁を乗り越える、地域再生を効果的に進めるための「手法」 現地調査事例(全 7 計画 9 施設)
貸室 長期貸室
長期貸室 期 室 貸室 長期貸室
長期貸室 期 長期貸室 期 室 音楽室
音・準 準準
を示しうるものなのではないのだろうか。
③地域性に合わせた施設活用方法の検討 ■高密度住宅地の地域との関係
しかし、その目標は地域によって異なり、その取り組みも多岐にわたる。 にそぐわなくなったり運営・維持していくことが困難になった施設を用途転用
空間として活用する手法が見られた。 「施設の余剰空間」を「地域のオープンスペース」
校庭
(全 62 計画 72 施設)
うものである。 その中のひとつとして、廃校や遊休化した公共施設など、現在の地域の需要
…施設ではなく、市町村が所有する「倉庫」
■アンケート調査データシート(悉皆調査 62 計画 72 施設)
■本論文について 昨今、日本国内において「まちづくり」や「地域活性化」、「地域再生」とい
■みらい館 大明 (東京都豊島区)
体育館 W.C. 21 212. 12. 会議 会議室 議室 議室 体育 器具庫
211. 工作室 201. 会議室 20 長期貸 長 貸室 貸室 長期貸室 女子更衣室 女子 子更衣 子 衣室 室 物 庫 物品庫 長 貸室 長期貸室 長期貸 長期 208. 2 208 20 08. レクルーム ーム ム 3 203 204 04 4. パソコン室 室 204.
長期貸室
116. 会議室 会 室 長期貸室
205. 2 05. レクルーム 205 20 ク ーム ム
W.C. W C
115. 文化教室 文 教室 文化教 室 長 長期貸室
W.C W.C. C
オ オーディオル オルー ルー ル 101.. オーディオルーム 10 102. 1 02. レクルーム レクルー ク ーム ム
閉鎖 閉鎖 東昇降 降降口
1 和室 103 103.
中 央 玄 関
113. 11 11 13. 3 小和室 小和 和室 室
作業場 場場場
ロッカー室 ロロロ 室室
管管管管理事務所 管 管管管 所所
区倉庫
室室室 放送室
Ⅲ. 施設活用が地域に与える「効果」(地域再生計画で定められた定義では
サロン
106 10 106. 6. 会議室 会議室 室 06. 会議 長期貸室
W.C. C 期 室 長期貸室
■抽出調査
我々は、本研究において、地域再生を意図して行われた施設活用が地域に与
みらい館 大明
捉えきれない効果)
□7 計画 9 施設
える影響をテーマとして設定し、建築と地域社会の接続性について考えていき
④施設の段階的活用
・現地ヒアリング調査
たい。
番町市民活動センター 池の里市民活動センター
■考察
・現地施設見学調査
定性的分析
□中央図書館麻機分館 ■アンケート分析
Ⅰ.「障壁」
定量的分析
□現地調査分析
小学校余裕教室→一部施設活用
①既存施設と要求規模のギャップ
■研究背景 研究背景Ⅱ. 遊休施設増加と建築ストック活用の促進 このような背景のもと、地域再生を意図した施設活用が盛んに行われるよう になってきた。
考察 / 結論 ■調査内容
後利用している
□1次アンケート
□2 次アンケート
回答:62 計画 72 施設
回答:34 計画 44 施設
①地域の有事に備えることができる →中規模施設の実現率が極端に低い。
等
〈抽出調査〉
(実現した計画、中断中止した計画)
□現地調査 内容:地域再生計画担当者・施設管理者へ
設活用の意義ではなく、 その他にも、施設活用が地域社会にもたらす本質的な効果があるのではないか。
第2章 研究方法
「地域再生計画認定事例」 (内閣府) 認定された地域再生計画(全 1483 件)をもとに事例を絞り込む。
歴史や文化を次世代に継承することが出来る。
③異種コミュニティの接続 地域住民と離れた地域の人々が交流するイベントが発生したり、地域の子供と高齢者が放課後に日常的に 交流するなど、以前は見られなかった異種コミュニティの接続を進めることが出来る。
実現した計 画の目標
施設活用が地域に与えた影響)等
第5章 終章
中止中断 した計画 の目標
意見聞き取り)等 ・中止中断の理由(1 次アンケート回答)
□現地調査対象リスト
→「ギャップ」が障壁となる。これは適切な建築的操作、地域再生主体の 考察Ⅰ.「障壁」
ウンドや施設を地域の恒例行事や集いで使いたいと
施設活用の特性の十分な理解によって乗り越えることができる
施設周辺地域
施設名
機能
延べ床面積
竣工
17.東京都豊島区
高密度住宅地
みらい館大明
市民活動施設
4070㎡
S40年
いう地域住民の意向と折り合わず、民間企業が撤退
28.静岡県静岡市①
高密度住宅地
番町市民活動センター
市民活動施設/特別教育支援
4122㎡
S58年
し施設活用に至らなかった。
28.静岡県静岡市②
郊外住宅地
中央図書館麻機分館
図書館/地域集会所
1660㎡
S59年
29.静岡県袋井市
郊外住宅地
サンライフ袋井
市民活動施設
749㎡
S47年
32.大阪府寝屋川市①
高密度住宅地
池の里市民交流センター 市民活動施設/埋蔵文化資料館等 3002㎡
32.大阪府寝屋川市②
郊外住宅地
明徳地域交流センター
46.広島県三次市
中山間地域
粟屋西自治交流センター 地域集会所/発達児童相談
47.広島県三次市
中山間地域
横谷ふるさとセンター
未活用
1788㎡
H8年
48.広島県神石高原町
中山間地域
安田いこいの家
地域集会所/高齢者介護
872㎡
S55年
S53年
3770㎡(うち377㎡利用) S47年
地域集会所
1045㎡
Ⅱ. 地域再生本部の定める基準をクリアし、一定の客観性・質・量を兼ね備えた 地域再生事例である
■小結
小学校利用予定の民間業者の施設利用計画が、グラ
市町村
■中山間地域
でいる
→余剰空間の歴史資料庫的利用、施設を活用することで伝統的な習慣や祭事を維持できるなど地域固有の
定であった)
→適切な手法をとることで、改修後も社会変化に対する柔軟性(建築の冗 考察Ⅱ.「手法」 長性)を持つことが出来る
観光促進や特産品の製造販売、企業誘致による産業 復興など経済的利益を得るという目標は達成されに
→地域の有事に備える、地域固有の歴史・文化の継承、異種コミュニティ 考察Ⅲ.「効果」
くい。
の接続という地域再生計画で目指す地域再生にはなかった効果がある
H10年
Ⅱ.「手法」
■結論
①積極的な減築や使用領域の制限 ■施設規模別延べ床面積の変化
施設活用を「経済的利益をもたらす」地域再生を果たすための手段ではなく、 ■明徳地域センターの改修
地域住民の日常生活の質を向上させるようなある種「社会福祉的」な効果を持 つものとして認識することで、各地でより効果的な施設活用が促進されると考
17. みらい館大明
28①. 番町市民活動センター 32①. 池の里市民交流センター
える。
■展望
■「地域再生計画」を対象とする妥当性 Ⅰ. 制度として確立されることにより、日本全国の地域再生事例を網羅的に含ん
②地域固有の歴史・文化の継承
→施設活用によって施設利用者は、他世代・広範囲に拡張されることがわかった。また施設活用によって
状況、活用前後での施設内イベントの変化、
■郊外住宅地
…内閣府地域再生本部によって (H17 年度ー H22 年度 = 第 1 回∼18 回認定申請)
→余剰空間の倉庫的利用、建築の冗長性により地域の危機や社会の変化に柔軟に対応することが出来る。
小学校→農林水産加工施設(食品製造・直売施設へ転用する予
のヒアリング(= 施設活用の経緯、施設利用
■高密度住宅地
■研究対象
奈良県天川村(旧天川西小学校)中断中止
□調査風景
施設見学(= 改修箇所の確認、利用者からの
力の再生(快適で魅力ある生活環境の整備)」という目標を達成する事だけが施
■40.
■施設活用によって目指した目標
見する。
地域再生計画に掲げられた「地域経済の活性化」「雇用機会の創出」 「地域の活
→施設の規模と、計画の要求規模にギャップがあった。
②経済的・経営的指針と地域住民との意識のギャップ(特に中山間地域で)
対象:7 計画 9 施設
■仮説
小学校の機能を維持したまま、図書館と地域集会所に転
Ⅲ.「効果」
施設連携の有無、住民参加のプロセスについて
設活用の傾向や問題•障壁を整理し、施設活用を効果的に進めるための方法を発
⇒「障壁」、「手法」 、「効果」の発見
→少子高齢化により余裕教室が生じた。この余剰教室を、 用した。
〈悉皆調査〉
■研究目的
「悉皆調査(俯瞰的視点) 」、「抽出調査(仰視的視点)」双方からの調査
・地域住民が活用施設を使 い、小学生も授業や放課
住民参加の有無など
(= 仰視的視点)双方の視点から調査することによって、地域再生を意図した施
■行政へのヒアリング結果
る障壁
内容:施設活用実現状況、改修度合い、 内容:施設基本情報、施設活用による達成項目、
地域再生を意図した施設活用を取り巻く事象を悉皆的(= 俯瞰的視点)、抽出的
■横谷ふるさとセンター(計画中止)からみ
■施設規模別計画実現率
研究背景Ⅰ. 縮小社会への突入と地域活力の低下
28②. 中央図書館麻
29. サンライフ袋井
本研究で見た「地域にもたらされる効果」は、あくまで施設内や施設の至近のエリアに限
32②. 明徳地域交流センター
定したものであった。
46. 粟屋西自治交流セ
47. 横谷ふるさとセン
ンター
ター
48. 安田いこいの家
大規模な施設で減築が多く見られる。施設を必
管理者の地元自治会が管理できる規模にし、施設を
今後は、施設活用を行うことによって生じた周辺環境・周辺施設の変化や、広域的な人の
要規模に調節するために「減築」しているので
維持できるように、1F のみ利用領域とし、1-2 階間
流れの変化を調査することで、施設活用を媒介としてより広域的なエリアにもたらされた
はないか。
の動線を改修によって遮断し・使用領域を制限した。
効果や可能性について研究することで、施設活用の効果をより体系的に研究していきたい。