□コルテ・ディ・カドーレ教会プロジェクト
Carlo Scarpa 研究 2011 Corte di Cadore 教会にみる恊働 ー協同者 E.Gellner を所与と捉える設計手法ー
スカルパの友人で建築家でもあるエドアルド・ゲルナーがイタリアの石油会社 agip 総帥エ ンリコ・マッテーイから社員の為の療養地として全てを任されたのがコルテ・ディ・カドー 1X08A180-6 渡邊めぐみ
レ開発プロジェクトである。この計画は 4 箇所に分かれた 263 もの住宅群、2つのホテル、 教会、600 人の子供のためのキャンプ施設、キャンプ場、スポーツ施設、サービス施設から
□目次
なる一大プロジェクトであった。しかし計画の途中で施主亡くなったため途中で打ち切られ
第 0 章 序論
ることとなった。ゲルナーは最初に計画地周辺の地形や自然を丹念にトレースし、その上か
0-1. 研究背景
0-2. 研究対象選定
0-3. 研究目的
0-4. 研究構成
第 1 章 Carlo Scarpa の恊働
1-1. Carlo Scarpa の恊働作品歴
1-2. 恊働者からみる C. Scarpa
第 2 章 コルテ・ディ・カドーレ
2-1. コルテ・ディ・カドーレ開発プロジェクト
2-1-1. 住宅
らマスタープランを決めていった。 ゲルナーは計画の最中に起きた諸事情から、スカルパに計画の中の一つの教会の設計協力を 申し出る。教会はヴィレッジの中のビューポイントになり中心となる重要な建物であった。
□研究背景・目的 カルロ・スカルパはスタッコをはじめとするイタリアの伝統的職人技を蘇らせた建築家であるが、自身の 作品もまたその職人技に支えられていた。協働を積み重ねることでスカルパは自身の知識を増やし、デザ インを発展させていった。カルロ・スカルパの経歴には数多くの協働制作活動があり、その活動は多岐に
2-1-2. ホテル
渡る。しかしスカルパの協働に焦点を当てた研究は少ない。主な理由としてスカルパは自ら文章を残さな
2-1-3. 複合施設
かった為、協働制作における過程が記録されている資料がほぼないという点が挙げられる。今回入手した
2-1-4. キャンプ場 2-1-5. 教会
資料 Carlo Scarpa e Edoardo Gellner La chiesa Cote di Cadore は協働者エドアルド・ゲルナーによる手
2-2. 教会について
記でありスカルパとの協働作品であるコルテディカドーレ教会の設計過程が克明に述べられている。故に
2-2-1. 外観
本研究ではスカルパの数ある協働作品の中からコルテディカドーレ教会を研究対象とする。以下に挙げる
2-2-2. 内観 2-2-3. 図面
venezia
corte di cadore
幾つかの条件からこの作品はスカルパのその後の経歴に大きく影響を与えた可能性が考えられる。
2-2-4. 工程表…8 の phase(phase 0) 2-3. 恊働者 Edoardo Gellner
第 3 章 C. Scarpa と E. Gellner 3-1. 二者の共通点
3-2. 二者の差異
3-3. 設計過程
3-3-1. E. Gellner の呈示した 5 つの初期条件 3-3-2. 二者の恊働の過程 3-3-3. 設計項目
3-4. 小結
・展示改修計画を中心に活動を行ってきたスカルパにとってほぼ初めて手掛けた新築である ・教会計画が行われた 1950 年代はスカルパがその後名作と呼ばれるようになる作品を数多く手 掛けている ・歴史的建造物が立ち並ぶヴェネチアと開拓地であるコルティナ周辺は場所の持つコンテクス トが大きく異なる ・スカルパの協働活動は弟子や職人とのものが多く、友人で建築家であるエドアルドゲルナー と対等に協働を行ったのは特異な例である
第 4 章 設計の詳細分析 4-1. 恊働前 phase0
4-2. 3週間の基本設計
4-3. 基本設計の詳細
前述の通り、改修計画を多く扱っていたスカルパにとってはほぼ初めて手掛ける初期条件が少ない新築で
□エドアルド・ゲルナーとの協働
4-3-1. 三角屋根
4-3-2. 尖塔の位置
あるという点で異質である。 「私はこれまで多くの新築を建ててこなかった。美術館を中心に展示改修計
4-3-3. アプローチキャットウォーク
画を行ってきた。文脈を強要されるときおそらく仕事はより簡単なものになるでしょう。」コンテクスト
エドアルド・ゲルナー
4-3-4. リブ
4-3-5. 平面形状
を重視した設計を特異とするスカルパは、コルテディカドーレ教会において何を設計の足がかりとしたの
第2次世界大戦後コルティナダンペッツォの地移り住み、生涯の渡ってコル
4-3-6. 平面モジュール
だろうか。ここでひとつの仮設が浮上する。スカルパの設計において協働者の存在が所与として扱われて
ティナの地で制作活動を続けたアルペン建築家であり、ランドスケープデザ
4-4. 5年間の実施設計 4-5. 実施設計の詳細 4-5-1. 尖塔の高さ
いたのではないか。その所与に対するスカルパの応答(=設計手法)を明らかにすることを目的とする。 つまるところ協働設計手法論である。
イナーであった。
4-5-2. 尖塔のデザイン 4-5-3. 尖塔の金属球の直径 4-5-4. 柱
Carlo Scarpaに関する既往研究
4-5-5. 祭壇 4-5-6. ステンドグラス
作家論・設計手法論
展示・改修計画論
■社団法人日本建築学会梗概集(1983) 設計意図とその反映に関する研究1 古谷誠章/穂積信夫
■社団法人日本建築学会梗概集(1999) 建築物の細部の意匠的決定要因に関する研究 : カルロ・スカルパを実例とした形態分析の試み 那須太樹
■社団法人日本建築学会梗概集(1984) 設計意図とその反映に関する研究2 古谷誠章/穂積信夫
■社団法人日本建築学会梗概集(2000) 改修設計におけるデザインの決定要因に関する研究 : カルロ・スカルパを実例とした試み 那須太樹
■社団法人日本建築学会梗概集(1985) 設計意図とその反映に関する研究3 古谷誠章/穂積信夫
■社団法人日本建築学会梗概集(2002) カルロ・スカルパの展示空間にみる差異化と統合 (その1) (その2) 是永美樹/田辺泰/八木浩二/那須聖
■社団法人日本建築学会梗概集(1986) 設計意図とその反映に関する研究4 古谷誠章/穂積信夫
■2001年度卒業論文 Piet Mondrian展のCGによる再生と展示経路の分析を中心として 梶野竜二/古谷誠章
第 5 章 結論と展望
■社団法人日本建築学会梗概集(1988) 設計意図とその反映に関する研究5 古谷誠章
■2004年度卒業論文 パラッツォ・アバテリス州立美術館における断片化と再構成 油木啓裕/高橋陽子/古谷誠章
5-1. 制約の中の設計
■社団法人日本建築学会梗概集(1989) 設計意図とその反映に関する研究6 古谷誠章
■2006年度卒業論文 CARLO SCALPA研究 : 内部空間に存在する「背景」或いは外部 高橋玲奈/古谷誠章
5-2. 展望
■社団法人日本建築学会梗概集(1990) 設計意図とその反映に関する研究7 古谷誠章
■2008年度修士論文 距離変形論ーquerini stampaliaの庭の距離知覚についてー 印牧洋介/古谷誠章
■社団法人日本建築学会梗概集(1992) 設計意図とその反映に関する研究8 古谷誠章
■2006年度卒業論文 カルロ・スカルパ研究 : ガヴィーナ・ショールームにおける設計手法 織田ゆりか/古谷誠章
■2005年度卒業論文 ヴィッラ・オットーレンギー研究 : <枠=既存物件>を仮定する設計手法 (その1) (その2) 水野裕太/印牧洋介/古谷誠章
■社団法人日本建築学会梗概集(1995) 設計意図とその反映に関する研究9 古谷誠章
■2006年度卒業論文 Carlo Scarpa研究 : 仮設展示計画における最小限要素による空間構成の分析 篠田朝日/古谷誠章
■2007年度卒業論文 カルロ・スカルパ研究2007 : 「ブリオン家の墓」にみる所与と既存 荒木聡/古谷誠章
■1984年度卒業論文 スカルパの建築要素の分類 栗原万寿美/穂積信夫
■2007年度卒業論文 Carlo Scarpa研究 : スケッチから読む質感差異 渡邉祥代/古谷誠章
■1984年度卒業論文 カルロ・スカルパ研究 古田敬/山内浩幸/穂積信夫
■2008年度卒業論文 C.Scarpaのスケッチ上のあいまいな線に見る思考過程確立の分析 小林玲子/古谷誠章
4-5-7. シャンデリア 4-5-8. アプローチ 4-6. 小結
第 6 章 資料編 6-1. 翻訳 6-2. ドローイング 参考文献/既往研究 謝辞
カルロ・スカルパとの関係 カルロ・スカルパとはヴェネチア大学時代に交友関係を持ちそれは仕事の協同に繋がる。最 初はヴェネチアのリドのマスタープランのための設計競技(1946)で部門は別であったが同 展示・改修計画+新築計画論 ■社団法人日本建築学会梗概集(1991) 建築構成要素の際だちと統合にみるカルロ スカルパの建築的手法 柏田恭志/鈴木信宏
プロジェクトに携わった。その後コルテ・ディ・カドーレ協会の実現計画(1956-1961)の
新築計画論 ■2002年度卒業論文 カルロ・スカルパ研究 : 空間が与える心的統一感とその構造 吉田州一郎/佐野哲史/古谷誠章
アンビルド計画論
ドローイング・表現手法・記譜法論
■2006年度卒業論文 Carlo Scarpa研究2006−未構築への考察− 中嶋勇介/古谷誠章 ■2008年度修士論文 <思考形式>としてのドローイング ーカルロ・スカルパから読替えるー 水野裕太/古谷誠章
日本との関係性 ■2008年度卒業論文 Carlo Scarpa 研究 2008−Banca Poporare di Verona のファサードにみる設計意図とその反映− (1) (2) 金光宏泰/國分足人/古谷誠章
協力を依頼する。
■2009年度修士論文 転相する建築−CARLO SCARPAの記譜法を通じて− 荒木聡/古谷誠章
■2009年度卒業論文 CARLO SCARPA研究2009:1969年を経た陰影におけるドローイング分析 斎藤信吾/中村碧/古谷誠章
2人の建築家の共通点と差異 駆け出しの頃の2人は似ている。スカルパはムラーノ島でガラスデザインを手掛けているこ
■2006年度卒業論文 カルロ・スカルパ研究2006 : 都市空間からの考察 吉田秀樹/古谷誠章
ろ、ゲルナーはイストリアの父親の会社でプロダクトやインテリアのデザインを手掛けてい
■2010年度卒業論文 Carlo Scarpa研究2010−ガラス器デザインに見る創作の発露− 田村正/古谷誠章
た。40 年代に共にヴェネチア建築大学で知り合い建築の仕事に携わるようになっていく。し
■2010年度卒業論文 Carlo Scarpa研究2011 Corte di Cadore 教会にみる恊働 ー恊働者Edoardo Gellner を所与と捉える設計手法ー 田村正/古谷誠章
かし後に、ゲルナーの興味は都市スケールのデザインまで拡大していくのに対し、スカルパ は建築を設計すると同時に接合部など小さな部分を突き詰めていったのは大きな違いである。