学校校舎の木質構造化に関する研究 2007 その2

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学校校舎の木質構造化に関する提案 Proposal on Wood Structurizing of Schoolhouse その2

構法プロトタイプの提案

正会員 ○川原重明* 正会員 稲山正弘** 正会員 古谷誠章*** 正会員 小池啓介**** 正会員 青山章一、山口和弘***** 正会員 杉下浩平、梶田知典、小森陽子、清水壮輔、 永沢ゆき、丸山傑****** 正会員 甘粕敦彦、桑尾重哉、森田祥子*******

2. Proposal on Prototype of Structure Method ○KAWAHARA Shigeaki* INAYAMA Masahiro** FURUYA Nobuaki*** KOIKE Keisuke**** AOYAMA Shoichi, YAMAGUCHI Kazuhiro ***** SUGISHITA Kohei, KAJITA Tomonori, KOMORI Yoko, SHIMIZU Sosuke, NAGASAWA Yuki, MARUYAMA Suguru****** AMAKASU Atsuhiko, KUWAO Shigeya, MORITA Sachiko*******

・固定荷重(DL) 屋根荷重 1,300 N/m2 床荷重 2,400 N/m2 外壁 900 N/m2 内壁 900 N/m2 ・積載荷重(LL) 床用 柱・梁用 地震用 2階床 2,300 2,100 1,100 ・地震力(KL) 地震地域係数 Z=1.0 振動特性係数 Rt=1.0 重要度係数 I=1.25 標準せん断力係数 Co=0.2 1ラーメンフレーム当たりの地震力 層 60kN 2 136kN 1

図1軸・伏図及び設計荷重 図1軸・伏図及び設計荷重 2.建築法規 2.建築法規に関する確認 (2)耐力壁 はじめに 建築法規に関する確認 木造学校校舎の構法のプロトタイプとして、 RC と木造はエキスパンションジョイントに 構造用合板をビス止めした耐力壁とした。 標準品及び規格品を利用しローコストの構造 より構造的には分離しており、高さ 13m、軒高 4.構造設計 とすると共に、意匠性を損なわずに、かつ施工 さ 9m 以下であるので、木造部の構造計算ルー 4.構造設計 (1)解析方法 を容易とする構法を開発した。本提案では、そ トは、集成材等建築物のルート1とした。また、 (1) 1)入力荷重:鉛直荷重は負担幅によって等分 の1で検討したモデルプランに本構法を採用 1000m2 毎の別棟としているため、燃え代設計 布荷重をラーメンフレームに加え、地震力 し、構造設計を行いその可能性を検討した。 は行わない事とした。 は屋根及び2階床(構造用合板+ビス止 め)を剛床と仮定し、ラーメンフレーム及 1.構造計画 3.構造概要 1.構造計画 3.構造概要 び耐力壁に水平力を加えた。 (1)構造形式は、その1で提案された、桁行方 (1)ラーメンフレーム 2)解析方法 向:ラーメン構造、梁間方向:耐力壁構造 接合を検討するに当たり、ローコスト化及び ①ラーメンフレーム:接合部実験の結果から とする。 意匠性を考慮し、以下の条件を設定した。 得られた、回転剛性を用いて、材端バネと (2) RC と木造の間にエキスパンションジョ ①中断面構造用集成材(樹種:欧州赤松、JAS してモデル化し、市販の任意系骨組解析ソ イントを設け、各構造毎に構造計算を行う。 E105-F300)を用いる。 フトを用いて応力解析を行った。また、接 (3)2 階床は、その1で提案された浮床構造の ②接合金物は、既製品の接合金物または、極 合部の許容耐力はモーメント M 及び軸力 床仕様とする。 力溶接の少ない接合金物とする。 N に対しては、実験結果から誘導した短期 (4)躯体を構成する各部材は、一般的に住宅用 ③仕口加工を極力少なくし、接合金物は工場 許容耐力とした。せん断力 Q に対しては、 として使用される中断面構造用集成材(樹 で予め取り付けられるデイテールとする M、N とは別機構で抵抗するため、計算に 種:欧州赤松、JAS E105-F300)とし、 (現場作業の省力化を図る)。 より接合部の許容耐力を算出した。 耐力壁も構造用合板を用いた耐力壁とする。 ④意匠性に配慮し、金物は露出させない。 図 1 に構造設計に用いた軸・伏図及び設計荷 これらの要求性能を満足する接合として、古 ②耐力壁及び水平構面:「木造軸組工法住宅 の許容応力度設計」((財)日本住宅・木材技 重を示す。尚、一般地域を想定し、積雪荷重は 代長押ラーメン(図 2)と鋼鈑ビス止めラーメ 術センター)に準じ、任意ビス配置の耐力壁 考慮せず、また、水平力は、風荷重<地震荷重 ン(図 3))を採用し、各々の接合に対して検討 及び水平構面の短期許容耐力を計算した。 であったため、風荷重の検討は省略した。 を行った。


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株式会社木質環境建築 東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授・工博 早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科 教授・工修 有限会社スタジオナスカ一級建築士事務所・工修 東京大学大学院農学生命科学研究科 早稲田大学大学院創造理工学研究科 早稲田大学大学院創造理工学研究科(当時)

キーワード:学校校舎、木質構造、ラーメン、耐力壁、コスト

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Timber Environment Construction Co., Ltd Assoc. Professor, Grad. School of Agriculture Life sci., Univ. of Tokyo, Dr. Eng. *** Prof., Dept. of Architecture, Waseda University, M. Eng. **** NASCA Co.LTD, M. Eng. ***** Graduate Student, Grad. School of Agriculture Life sci., Univ. of Tokyo ****** Graduate School of Architecture, Waseda University ******* Graduate School of Architecture, Waseda University (before) Keyword: Schoolhouse, Timber Construction, Rigid Frame, Shear Wall, Cost

ビス接合(木-鋼板)

構造用集成材

36-φ6、L60

(E105-F300)

ウェブ材120×390 対称異等級集成材 E105×F300

柱材120×390 対称異等級集成材 E105×F300 パネリードP6×180 (ウェブとフランジの接合)

梁材:2-89×450

ビス接合(木-鋼板) 72-φ6、L60

鋼板:t=9 400 × 850

ドリフトピン Φ12

タツミ製 テックワンP3金物 TH-33

パネリードP6×180 @300 (フランジ同士の接合)

HTB 接合(鋼板-鋼板)

(SS400)

9-M22(F8T) 鋼板:t=9

フランジ材120×120 同一等級集成材 E105×F345

400×400

柱材:2-89×450

(SS400)

構造用集成材

パネリードDP7×230 @65 (柱とフランジの接合)

HTB 接合(鋼板-鋼板) 5-M22(F8T)

(E105-F300)

図 2 古代長押ラーメン

図 3 鋼板ビス止めラーメン

表1 接合部の検定 M kN・m 34.1 61.8 95.9

長期 DL+LL 地震力 KL 短期 DL+LL+KL *添字aは許容耐力 表2 梁たわみ/層間変形角の検定 2F梁のたわみ:長期(DL+LL) 1/480 > 1/500 NG 層間変形角:地震力(KL) 1/177 < 1/120 OK

Ma kN・m 42.1 84.1 84.1

(3)部材及び接合部の検定 3)部材及び接合部の検定 鋼板ビス止めラーメンの場合の検定結果を 表 1,2 に示す。尚、部材断面は、応力に対して は接合部の耐力で決定されるため、変形に対し て確認を行った。 長 期 時 ( DL+LL ) の 変 形 及 び 短 期 時 (DL+LL+KL)の設計モ-メント M に対して、 満足しない結果であった。これは、中通り(Y2 通り)のラーメンフレームの長期荷重の負担が 大きい為、満足しない結果となった。 また、古代長押ラーメンも同様の結果であっ た。 (4)考察 (4)考察 断面を上げ、接合部の剛性・耐力を上げて対 応する事も可能であるが、中断面集成材を主と

M/Ma 0.81 0.73 1.14 表3 コスト比較

延床面積 集成材使用量 m3/m2 金物使用量 kg/m2 コスト比較

N kN 5.3 18.5 23.8

m2 m3 t

Na kN 17.0 34.0 34.0 プロトタイプ ① 486.7 74.0 0.15 4.66 9.6 0.86

N/Na 0.31 0.54 0.70 大断面工法 ② 486.7 73.6 0.15 6.88 14.1 1.00

Q kN 78.9 59.4 138.3

Qa kN 88.1 160.2 160.2

Q/Qa 0.90 0.37 0.86

①/② - 1.01 1.01 0.68 0.68 0.86

して使用する事が本構法の目的であるので、鉛 法で一般的に用いられるドリフトピン接合で 直荷重を以下のいずれかの方法で処理するこ 設計した場合との比較を行った(表 3)。集成材 とによって、本ラーメンフレームで対応は可能 使用量は両者でほぼ変わらないが、金物の使用 量は約 2/3 程度となる。また、全体のコストで と考える。 ①鉛直荷重負担用にラーメンフレームの際 見た場合、大断面工法に比べ、本構法は約 15% に、床梁を受ける柱、梁を添える。 程度コストダウンが可能と考える。 ②ラーメン柱の位置に床の大梁を掛け、小梁 6.今後の展開 をラーメンフレームと平行に掛ける(この 6.今後の展開 場合、大梁は大断面集成材となる。また、 本構法は、木造と RC をエキスパンションジ バルコニーの跳ね出しは、外部に柱を設け ョイントによって別棟とし、木造のみに注力し 検討を行ってきたが、今後は、両者を一体とし て対応する) 。 た、より合理的な混構造を検討して行く予定で ある。 5.コスト比較 5.コスト比較 このモデルプランを用いて、プロトタイプ (鋼板ビス止めラーメンの場合)と、大断面工


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