親密度・集合密度・時間の変化が 発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する研究 Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,dendity,and time.
1
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
1 はじめに 人は皆、「いつのまにか」会話をしている。 人は皆、「いつのまにか」友達になっている。 人は皆、「いつのまにか」それが当たり前になっている。 コミュニケーションは「いつのまにか」始まるものだ。 もし、「いつのまにか」の始まりが分かったら ... もっと、もっと、 楽しく、気軽に、いろいろな人と、会話ができるかもしれない。 そんな思いで本研究は始まりました。
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もくじ
第1部 本論
5
1. はじめに
2
2, 研究背景
6
2.1 パーソナルスペース
7
2.1.1 パーソナルスペースとは
7
2.1.2 パーソナルスペースを活かした事例
10
2.2 コミュニケーション
11
2.2.1 コミュニケーションとは
11
2.2.2 コミュニケーションを誘発する空間
12
2.3 発話する距離
15
2.3.1 対面角度による発話のしやすさ
15
2.3.2 サービス水準による発話のしやすさ
16
2.3.3 明暗による発話のしやすさ
21
2.4 既往研究から見た本研究の位置づけ
22
3. 研究概要
25
3.1 用語の定義
26
3.2 研究目的
27
3.3 研究フロー
28
4. 調査①
29
4.1 調査概要
30
4.1.1 調査目的
30
4.1.2 調査方法
31
4.2 調査結果
33
4.3 分析・考察
37
5. 調査②
40
5.1 調査概要
41
5.1.1 調査目的
41
5.1.2 調査手順
42
5.2 断面交通量調査
43
5.2.1 調査方法
43
5.2.2 調査結果
44
5.3 本調査
45
5.3.1 調査方法
45
5.3.2 調査結果
47 3
6. 分析
53
6.1 分析方法について
54
6.2 1要素に関する分析
56
6.2.1 親密度と発話する距離
56
6.2.2 集合密度と発話する距離
61
6.2.3 時間と発話する距離
66
6.2.4 1要素に関する分析のまとめ
71
6.3 2要素に関する分析
72
6.3.1 親密度・集合密度と発話する距離
72
6.3.2 集合密度・時間と発話する距離
77
6.3.3 時間・親密度と発話する距離
82
6.3.4 2要素に関する分析のまとめ
87
6.4 3要素に関する分析
88
6.4.1 親密度・集合密度・時間・と発話する距離
88
6.4.2 3 要素に関する分析のまとめ
95
7. 考察
96
7.1 1要素に関する考察
97
7.1.1 親密度と発話する距離
97
7.1.2 集合密度と発話する距離
98
7.1.3 時間と発話する距離
99
7.2 2要素に関する考察
100
7.2.1 親密度・集合密度と発話する距離
100
7.2.2 集合密度・時間と発話する距離
101
7.2.3 時間・親密度と発話する距離
102
7.3 3要素に関する考察
103
7.3.1 親密度・集合密度・時間・と発話する距離
103
8. まとめ
104
8.1 結論
105
8.2 展望
109
9. おわりに
110
9.1 参考文献
111
9.2 謝辞
113
第2部 資料編
114
4
第1部 本論
5
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
2 研究背景 2.1 パーソナルスペース 2.1.1 パーソナルスペースとは 2.1.2 パーソナルスペースを活かした事例 2.2 コミュニケーション 2.2.1 コミュニケーションとは 2.2.2 コミュニケーションを誘発する空間 2.3 発話する距離 2.3.1 対面角度による発話のしやすさ 2.3.2 サービス水準による発話のしやすさ 2.3.3 明暗による発話のしやすさ 2.4 既往研究から見た本研究の位置づけ
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2. 研究背景
2.1 パーソナルスペース 2.1.1 パーソナルスペースとは
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
2.1 パーソナルスペース 2.1.1 パーソナルスペースとは 注 1) ロ バ ー ト・ ソ マ ー: 環境心理学の創始者。デイ ヴィスのカリフォルニア大 学心理学科主任教授。デイ ヴィスには 1963 年である
パーソナルスペースとは、個人の身体を取り囲む、目に見えない境界の内 側にあり、他人に踏み入られると不快に感じる空間のことである。パーソナ ルエリアと呼ばれることもある。1963 年、ロバート・ソマー注1)はパーソ
が、1969 年にはバークレー
ナルスペースを発見し、個人空間は、他者が侵入することができない領域で
のカリフォルニア大学建築
あり、個人を取り巻く目に見えない境界線で囲まれた空間であるとした。ま
学科の客員教授、1970 年 にはワシントン大学建築学 科の客員教授にもなってい る。
注2)エドワード・ホール: アメリカの文化人類学者。 近接学(プロクセミクス) を提唱し、対人距離を論じ たことで有名。
た、建築・都市空間を考える上でパーソナルスペースの重要性を指摘した。 もともとパーソナルスペースの研究は動物行動の研究に由来しており、動物 がもつある特定の距離を保つ傾向から、人に応用されたものである。そして 1966 年、エドワード・ホール注2) は行動観察から人間同士の距離の取り方 は、それ自体がコミュニケーションとしての機能をもつと考え、パーソナル スペースを大きく密接距離・固体距離・社会距離・公衆距離の4つに分類し、 さらにそれぞれを近接相と遠方相の2つに分類した。(図 2.1.1-1)
(図 2.1.1-1)エドワード・ホールが定義したパーソナルスペースの分類
また、パーソナルスペースはよく、テリトリー(縄張り)と同義語のよう に扱われるが、テリトリー(縄張り)は自分の居場所、生活の場を確保する ために他の者の侵入を拒む占有域のことであり、すなわち特定の場所に固定 された空間を意味する。一方、パーソナルスペースは人を中心に円を描くよ うに存在しているため、人と共に移動する空間である。このようにテリトリー (縄張り)とパーソナルスペースには明確な違いが存在する。
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2. 研究背景
2.1 パーソナルスペース 2.1.1 パーソナルスペースとは
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
【日常生活で見られるパーソナルスペースの例】 ■電車 電車の座席に誰も座っていない場合、乗車してきた人は端の席に座る傾向 がある。これは人の体の片側のパーソナルスペースが確実に確保されるため である。したがって、人間は本能的に端の席を選んでいると考えられる。そ してだんだんと席が埋まってくると人々は自分のパーソナルスペースに踏み 入られたと判断する。そして気を紛らわせるために不快感を感じながらも、 携帯電話でメールをしたり、本を読んだり、中吊り広告を眺めるといった行 動をとる。 (図 2.1.1-2) さらに電車で立っているときも、車内の真ん中よりもドア付近の端のス ペースに立っている傾向がある。これもまたパーソナルスペースを確保する ためであると考えられる。(図 2.1.1-3)
(図 2.1.1-2)電車で座る人のパーソナルスペースの例
(図 2.1.1-3)電車で立つ人のパーソナルスペースの例
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2. 研究背景
2.1 パーソナルスペース 2.1.1 パーソナルスペースとは
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
■エレベーター エレベーターに誰も乗っていない場合、四隅から埋まっていく傾向がある。 そして一定の距離を取りながら乗り降りを繰り返している。人が増えて密度 が高まると意味もなくエレベーターの階数表示を見るのも、またパーソナル スペースに踏み入られた不快感を紛らわせるための行動だと言われている。 (図 2.1.1-4)
(図 2.1.1-4)エレベーターでのパーソナルスペースの例
■エスカレーター エスカレーターも混雑していない場合、前にいる人とは2〜3段程度の間 をあけて乗っている傾向がある。これもまたパーソナルスペースを確保して いる事例の一つである。(図 2.1.1-5)
(図 2.1.1-5)エスカレーターでのパーソナルスペースの例
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2. 研究背景
2.1 パーソナルスペース 2.1.2 パーソナルスペースを活かした事例
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
2.1.2 パーソナルスペースを活かした事例 ■ベンチ 公園や広場、駅のホームなどでよくベンチを見かけるが、ベンチとベンチ の距離はパーソナルスペースを考慮して設計されている場合が多い。これは ベンチとベンチの距離を離すことにより、隣のベンチに座っている人に、パー ソナルスペースに踏み入られなくするためである。このように設計すること で快適に過ごすことができる。 ベンチは本来、「安らぐ」ために座ることがほとんどであるため、パーソ ナルスペースに踏み入られることで不快感を感じてしまってはベンチの存在 意義がなくなってしまう。したがってベンチはパーソナルスペースを活かす べきだと考えられる。(図 2.1.2-1)
(図 2.1.2-1)パーソナルスペースを活かしたベンチ
■図書館 図書館には読書スペースとしてテーブルとイスが設置されている。読書ス ペースのテーブルはレストラン等のテーブルよりも向かいの人との距離が長 く取られている場合が多い。これもパーソナルスペースを1人1人が確保し て、穏やかに読書をするためであると考えられる。(図 2.1.2-2)
(図 2.1.2-2)パーソナルスペースを活かした図書館のテーブル
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2. 研究背景
2.2 コミュニケーション 2.2.1 コミュニケーションについて
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2.2 コミュニケーション 2.2.1 コミュニケーションについて 文 1) 広 辞 苑 第 五 版 pp.1004-1005
コミュニケーションは広辞苑文1)によると ①社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達 ②(生物学)動物個体間での、身振りや音声・匂い等による情報の伝達 と、述べている。
文 2) 高 広 伯 彦 = 著、「 次 世代コミュニケーションプ ランニング」 、ソフトバン
また高広伯彦(2012)はコミュニケーションに関して以下のように述べて いる。
ククリエイティブ株式会社 発行、2012 年 注3)4C:広告やマーケティ ング・コミュニケーション
『 「4C 注3)」における Communication は双方向性を持った概念だと思っ て間違いないだろう。(pp.22,23)
研究者によって唱えられた マーケティングミックス の 理 論。4P 理 論 が 企 業 側
『ポケベル事業者がディスプレイ付きのポケベルを売り出したのは、
から見たマーケティング・
単に呼び出し元の電話番号を表示するだけの意図だったのだが、ユー
ミックスであるのに対し
ザーである若年層はそれらを自らの日常的なコミュニケーションとい
て、顧客側から見たマーケ ティング・ミックス、及び 企業と消費者双方が共に生 きる共生マーケティングの 中のミックスとしての 4C 理論がある。
うコンテクストの中に埋め込んで、新しい使い方を発見したわけだ。 これは現在のソーシャルメディアでも同じことがいえる。Twitter や Facebook は ユ ー ザ ー 自 身 の 手 に よ っ て「 開 発 」 さ れ て い く メ ディアだし、実際にプランニングを手掛けるときにも、 「人々が自 ら生み出してくれる」という視点を埋め込む必要があったりする。 (pp.38,39)文2)』 以上のことから、コミュニケーションは双方的に行われるものであり、ポ ケベルや Twitter、Facebook など、時代の流れによって新しく生まれる情報 伝達ツールの存在によってコミュニケーションの取り方が変化するものだと 考えられる。
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2. 研究背景
2.2 コミュニケーション 2.2.2 コミュニケーションを誘発する空間
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2.2.2 コミュニケーションを誘発する空間 コミュニケーションを誘発する仕組みを備えた空間列挙する。 注 3) 図 2.2.2-1 は ピ ク シブ株式会社のオフィス。 画 像 参 照 元:http://www.
①蛇行動線によるコミュニケーションの誘発 あえて動線をまっすぐではなく、ぐにゃぐにゃと蛇行させることによって
worksight.jp/issues/388.
強制的に人と触れ合う回数を増やして、コミュニケーションを誘発している
html
例。 (図 2.2.2-1 注 3))
注4)片桐孝憲:ピクシブ
片桐孝憲注4) は実際に(図 2.2.2-1)のオフィスを使用してみた感想を以
株式会社 代表取締役社長
文 3) 参 照 元:http://www. worksight.jp/issues/390. html
下のように述べている。 「実際に歩いてもらったら分かるけど、本当に密集してるから、つい みんなに声をかけたくなるんですよ。(中略)大事なのは、みんなの テンションが上がって、ディスカッションが盛り上がって、コミュニ ケーションが生まれやすいこと。それがオシャレかとか、会社っぽい かどうかは二の次ですね。そういうことはクリエイトに直結しません から。文 3)」 このように蛇行動線にすることによって、会話を誘発することができる。 したがって、コミュニケーションが生まれやすくなる。
(図 2.2.2-1)蛇行動線によってコミュニケーションを誘発している例
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2. 研究背景
2.2 コミュニケーション 2.2.2 コミュニケーションを誘発する空間
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②アクティビティーの視覚化によるコミュニケーションの誘発 日建グループにホームページに以下のように記載されている。 文4)参照元:http://www. nikken.co.jp/ja/archives/ ndvukb000001a3ci.html
「7 棟ある建物群は、研究、講義、管理、図書館・ホール、実験、体 育館とそれぞれ特徴ある機能をもっています。階段室、エレベータな ど移動のための空間は、 「servant space(変わらないもの) 」と位置 づけ、このデザイン思想を各棟共通としました。そのほかの諸室空間 や窓まわりは「served space(変わるもの) 」として、建物用途に合 わせて、最適化した空間構成と形を与えました。 自然光の入る階段室やオープンエンドの廊下、各所に設けたラウンジ、 長さ 250m のキャンパスモールに面したコリドールの列柱空間など は、学生や教員のアクティビティが互いに見えるようにすることで、 キャンパス全体の活気を創るとともにコミュニケーションを誘発する ことを意図したものです。文4)」(図 2.2.2-2 注5))
注 5) 図 2.2.2-2 は 東 京 理 科大学の葛飾キャンパス。 画 像 参 照 元:http://www. nikken.co.jp/ja/archives/ ndvukb000001a3ci.html
(図 2.2.2-2)アクティビティーの視覚化によるコミュニケーションの誘発の例
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2. 研究背景
2.2 コミュニケーション 2.2.2 コミュニケーションを誘発する空間
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注 6) 画 像 参 照 元: https://www.mr-soumu. com/service/planning/ communication.html
③接触ポイントによるコミュニケーションの誘発 人通りの多い主動線に面したロケーションの良い位置にリラックス出来る 空間や、気分転換のスペースを設けて、立ち寄りたくなる雰囲気を作り、自 然発生的にコミュニケーションできる「きっかけ」を作る設計になっている。 (図 2.2.2.-3 注6))
(図 2.2.2-3)接触ポイントによるコミュニケーションの誘発の例
注 7) 図 2.2.2-4 は co-ba shibuya のシェアワークス ペース。 画 像 参 照 元:http:// tsukuruba.com/co-ba/ about.html
④家具のレイアウトによるコミュニケーションの誘発 家具の配置によって、コミュニケーションが生まれやすい、互いが隣斜め の関係で向き合えるレイアウトと、個々のプライバシーを保ちやすい、互い がやや背中を向けるレイアウトの2つの配置が絶妙に入り交じり、個人の作 業場としての機能を保ちつつ、利用者同士の会話や相談が生まれやすい空間 となっている。 (図 2.2.2-4 注7))
(図 2.2.2-4)家具のレイアウトによるコミュニケーションの誘発
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2. 研究背景 2.3 発話する距離 2.3.1 対面角度による発話のしやすさ
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2.3 発話する距離 2.3.1 対面角度による発話のしやすさ 注8)ハンフリー・オズモ ン ド:1957 年 に、 精 神 分 析学会でサイケデリックと いう言葉を紹介した精神科 医。
人と人の対面角度がいかに心理に働きかけるかを精神科医のハンフ リー・オズモンド注8)は説いている。彼によれば、家具のレイアウトには人 間同士の交流を活発にする求心的なソシオペタル配置と、人間同士の交流を 妨げる遠心的なソシオフーガル配置が存在するという。また、 「互いが隣斜 めの関係で向き合えるソシオペタル配置ではコミュニケーションが生まれや すく、互いがやや背を向けて座るソシオフーガル配置では、個々のプライバ
文 5) 参 照 元:http:// layout.net/community/ anzai-learning-ba-01/
シーが優先される文5)」と言われている。 また増田浩一(2006)は対面角度の変化と緊張感の関係性について次の ように説明している。
文 6) 増 田 浩 一 = 著、『 オ フィス空間における緊張感 に関わる要素と快適性に 関わる研究』早稲田大学 渡辺仁史研究室卒業論文、 2006 年
「アンケートでは最も緊張感のない対面角度変化が(90°→0°)と(45 ° →0° )という結果であった。瞬目頻度のグラフ傾向でもっとも緊張 感が減少していると言えたものは、(90°→0°) でありアンケート結 果と一致した。対面角度変化 (90°→ 45°)と (45°→ 90°)に関しては、 瞬目頻度のグラフに大きな動きがなく、瞬目頻度は常に平常値に近い 値を示した。(中略)対面角度変化があった方が、緊張感が減少する とわかった。(p.102)文6)」 さらに羽生大輔(2005)は対面角度の変化とストレスの関係性について 次のように説明している。
文 7) 羽 生 大 輔 = 著、『 対 人状況下におけるストレス 量の予測モデルに関する研 究−精神性発刊量測定によ る感覚の定量化−』早稲田
「人間は対人に対して圧迫を感じると、まず互いの距離を確保しよう と努め、それができない場合は体の向きを変えることで対策をとり、 それでも緩和されない場合はく首を曲げて視線をそらす、という順序
大学渡辺仁史研究室修士論
で対策をとっている。この事実からも、体の向きを変えることによる
文、2005 年
ストレス緩和はよく使われる有効な手段であることがわかる。 (p.85) 文7)
」
以上より、対面角度の変化と緊張感及びストレスの関係性の存在は明らか である。
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2. 研究背景 2.3 発話する距離 2.3.2 サービス水準による発話のしやすさ
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2.3.2 サービス水準による発話のしやすさ 【サービス水準】 文 8) ジ ョ ン .F. フ ル ー イ ン = 著 / 長島正光 = 訳、歩 行者の空間、鹿児島出版会、 1974 年
サービス水準とはジョン .F. フルーインによって作成された歩行者の基準 となる専有面積のことである。歩行者 1 人当たりの占有面積、歩行空間モ ジュールの段階に応じて水準を決める考え方であり、設計者に、歩行空間の 環境の質を決定するための有用な手段を与える。(図 2.3.2-1) ジョン .F. フルーインは自身の著『歩行者の空間』文8)の中でフルーイン は少し大柄な男性を元に、物を持ったり、他の人との接触を避けたり、体を 揺らしたりするための余裕を考え、直径が 60cm、短径が 45cm の楕円を人 体楕円と名付け、歩行者の基準となる占有面積を人体楕円を用いて目安を付 けた。
(図 2.3.2-1)ジョン .F. フルーインによって作成されたサービス水準
文9)松島一剛 = 著『駅構 内通路歩行時のストレスマ ネジメントに関する研究』、 早稲田大学渡辺仁史研究室 修士論文、2009 年
またサービス水準の各段階が実際にどのような感じであるかを示すため に、イメージ写真と質的形の解説を松島一剛(2009)文9) の「駅構内通路 歩行時のストレスマネジメントに関する研究」から引用して以下に記述する。 ■サービス水準 A サービス水準 A の歩行路では、歩行者は、歩行速度が遅い人を追い抜い
たり、自分の好きな歩行速度を自由に選択できるだけの十分な面積がある。 このサービス水準は、ピークや空間的制約のない公共建築や広場に相当する。 (図 2.3.2-2 注9)) 注9)画像参照元:松島一 剛 = 著『駅構内通路歩行時 のストレスマネジメントに 関する研究』、早稲田大学 渡辺仁史研究室修士論文、 2009 年
(図 2.3.2-2)サービス水準 A
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2. 研究背景 2.3 発話する距離 2.3.2 サービス水準による発話のしやすさ
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■サービス水準 B サービス水準 B の歩行路においては、正常な歩行速度で歩くことができ、
大部分が同じ方向に歩いている流動ならば他の人を追い抜くことができる。 対向流や交差流のあるところでは、衝突の可能性がわずかながらあり、歩行 速度や交通量がわずかに減少する。このサービス水準にあたる設計として は、交通ターミナルやあまり厳しくない程度のピークがたまに生ずる建物と して、かなり高い水準に相当する 。(図 2.3.2-3 注9))
(図 2.3.2-3)サービス水準 B
■サービス水準 C サービス水準 C の歩行路においては、歩行者が各自の歩行速度を選択し
たり、追い抜いたりする自由度は制限される。交差流や対向流の存在すると ころでは衝突の生じる確率が高く、相手に接触することを避けるため、歩行 の速度や方向を頻繁に修正することが必要となる。このサービス水準に当た る設計は、適度な流動性のある交通に相当する。このタイプの設計例は主と して、面積が制約されており、厳しいピークの生じるような交通ターミナル、 公共建築、あるいはオープンスペースに用いられる。(図 2.3.2-4 注9))
(図 2.3.2-4)サービス水準 C
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2. 研究背景 2.3 発話する距離 2.3.2 サービス水準による発話のしやすさ
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■サービス水準 D サービス水準 D の歩行路においては、歩行速度の遅い人を追い抜いたり、
衝突をさけることが困難なため、大部分の人の歩行速度は制限され低下する。 対向流や交差流に巻き込まれてしまうと衝突の危険にされされ、その動きは 極度に制約を受ける。このサービス水準での設計は、最も混雑する公共空間 のみである。(図 2.3.2-5 注9))
(図 2.3.2-5)サービス水準 D
■サービス水準 E サービス水準 E の歩行路においては、事実上、すべての歩行者は自分の
通常の歩行速度では歩けず、足取りも頻繁に変えなければならない。この範 囲の下限ではもはやずり足でしか前進できない。ゆっくり歩いている人を追 い抜くための余裕などもない。逆方向に歩いたり、横切ろうとする人があれ ば、非常に迷惑がかかることになる。この設計交通量は、その歩行路は可能 容量の限界に近くなっており、そのため流れが頻繁に停止したり中断したり する。この範囲の水準は、最も混雑するところでのごく短いピーク時にのみ 適用されるべきである。このサービス水準を適用できる例としては、スポー ツ・スタジアムや鉄道施設において、短時間に大量の人間が退場しようとす る時があげられる。それらの設計条件にこのサービス水準を設定する場合に は人の流れがクリティカルになる部分に十分な滞留収容面積を設け、歩行路 の付属的な施設にも細心の注意を払わなければならない。(図 2.3.2-6 注9))
(図 2.3.2-6)サービス水準 E
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2. 研究背景 2.3 発話する距離 2.3.2 サービス水準による発話のしやすさ
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
■サービス水準 F サービス水準 F の歩行路では、すべての歩行者の歩行速度は極度に制約を
受け、前進はずり足でしかできなくなる。歩行者相互の接触は頻繁に起こり、 避けられない。流れは、前の人が動いてはじめて進むことができるといった ように断続的となる。このサービス水準は、もはやコントロールを失った「交 通マヒ」の状態であると言える。このサービス水準は、歩行路の設計に適用 すべきではないと考えられる。(図 2.3.2-7 注9))
(図 2.3.2-7)サービス水準 F
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2. 研究背景 2.3 発話する距離 2.3.2 サービス水準による発話のしやすさ
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【サービス水準による発話のしやすさ】 増田浩一(2008)は密度と発話のしやすさの関係性を次のように明らか にしている。 「既往研究文 10)により、発話の頻度は、発話者の周囲に滞在する人の
文 10)稲水伸行 = 著、 『オー プンスペースの動的密度感
密度に影響することが示されている。この文献によれば、オフィス空
に関する研究』東京大学も
間の密度(単位面積あたりの従業員数)によって行動・コミュニケー
のづくり経営研究センター ディ スカッションペー
ションのパターンが大きく変わる。密度が高すぎると、仕事で関連す
パー , 227, 2008 年
るメンバーで集まりにくくなる。場合によっては、意図せざる接触も 多すぎてストレスを感じてさせることになる。一方、密度が低すぎる
文 11)増田浩一 = 著、『幼 児の発話を生む空間要素と
と、あちこち動き回らなくなってしまい、意図せざる出会いやコミュ
密度』 、早稲田大学渡辺仁
ニケーションが少なく なってしまう。(p.22) 文 11)」
史 研 究 室 修 士 論 文、2008 年
「 幼児は、自分を中心に 0-1m 範囲の幼児の滞在数により発話が促進 されている。 この範囲の幼児数が 4 人程度であると発話しているこ とがわかった。(p.127) 文 11)」 注 10) 周 辺 幼 児 数: あ る 任意の幼児から、1 メート ルづつ 広げた範囲に存在
また増田浩一(2008)が本論中文5) に掲載している 0-1m 範囲の周辺幼 児数注 10) と発話との関係性説明する回帰式は以下である。
する幼児の数のこと。増田 による造語。
「 (図 2.3.2-8)から滞在累計時間と周辺幼児数 (0-1m) の時間 (t: 分 ) を考慮した関係は次式で与えられる。 y = ( -0.0003 t +0.0111 ) x + ( -0.00038 t + 0.2268 ) (y = 発話可能性、x = 周辺幼児数、t = 遊び開始からの時間 )(p.125)」
(図 2.3.2-8) 発話累計時間と周辺幼児数 単回帰分析結果 切片と説明変数の時間変化
以上より発話のしやすさと密度、すなわちサービス水準は密接な関係にあ る。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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2
2. 研究背景 2.3 発話する距離 2.3.3 明暗による発話のしやすさ
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
2.3.3 明暗による発話のしやすさ 明暗と発話のしやすさの関係性について黒川光流(2005)は次のように 説明している。 文 12)Hogg, M. A. & Abrams, D. 1988 Social
「部屋が暗い場合、没個性化により人の行動は影響を受けることが示
ident ificat ion: A so cial
唆されている(Hogg & Abrams, 1988)文 12)。Gergen & Barton(1973)
psychology of intergroup
文 13)
relations and group
は、暗い部屋にいる男女は、タッチングなど、通常はある程度制
processes. London:
御されている親密な行動をとりやすいことを示している。また Carr
Rouutledge.
& Dabbs(1974)文 14) は、部屋の明るさが会話の親密さに及ぼす効
文 13)Gerden, K. J.,
果を検討した。その結果、暗い部屋では会話の親密さが高まることが
Gergen, M.M., & Barton, W. H. 1973 Devience in the dark. Psychology Today, 7, 129-130. 文 14)Carr, S. J. & Dabbs, J., & Miller , S. J. 1976 Effects of room enviroment on self-disclosure in a counseling analogue. Journal of Counseling Psychology, 23, 479-481. 文 15)Gofford, R. 1998 Light, decor,
示された。Gofford(1988)文 15) も同様に、暗い部屋ではプライベー トな会話が促進されることを示唆している。 以上のように、部屋の明るさも部屋の環境の1つとして、コミュニ ケーションの活発さや相手に抱く印象に極めて需要な役割を果たして いると考えられる。特に未知の者同士が会話をする場合、明るい部屋 では覚醒水準が高まり、自意識過剰にさらされることも示唆されてお り(Mehrabian, 1971 岩下・森川訳 , 1981)文 16)、明るい部屋よりも コミュニケーションが活発になり、また両者の関係を親密なものと捉 え、相手に対して良好な印象を抱くと予想される。(p.25)文 17)」
arousal, comfort and communication. Journal of Environmental Psychology, 8, 177-189.
さらに増田浩一(2006)は照度と緊張感の関係について次のように説明 している。
文 16) メ ー ラ ビ ア ン A. 岩 下 豊 彦・ 森 川 尚 子 ( 訳 ) 1981 ヒューマンスペース
「照度が高いと瞬目頻度も比例して高くなることが分かった。つま
川島書店
り、明るいとより緊張するということである。(中略)瞬目頻度の差
文 17) 黒 川 光 流 = 著『 初
が大きい順に 700 ルクス、150 ルクス、400 ルクスと並んだ。以上
対面時の会話において部屋 の環境が発話および印象に
のことから緊張感が最も減少する照度は 700 ルクスであるというこ
及ぼす影響』2005 年
とがわかった。照度は緊張感に大きく影響しており、対面初期の緊張
文 6)増田浩一 = 著、 『オフィ
感は照度があるほど高まるが、時間が経過するにつれ、照度があるほ
ス空間における緊張感に関 わる要素と快適性に関わる
ど緊張感は減少するとわかった。(p.102)文 6)」
研究』早稲田大学渡辺仁史 研究室卒業論文、2006 年
以上より、明暗と発話のしやすさは密接な関係にあるということが既往研 究から明らかにされている。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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2
2. 研究背景
2.4 既往研究から見た本研究の位置づけ
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
2.4 既往研究から見た本研究の位置づけ 【パーソナルスペースと発話する距離】 パーソナルスペースと本研究の発話する距離の大きな違いとしてはパーソ ナルスペースはスタティック(静的)であることに比べて発話する距離はダ イナミック(動的)に、その人のその時のその状況によって常に変化すると いう点である。パーソナルスペースは万人に共通であるかのように、一定尺 度として捉えられているが、実際にはその人のその時のその状況によって テーラーメイドに人と人の距離は変化するはずである。本研究は、パーソナ ルスペースは一定の値で固定されているが故に、様々な状況に適応できない という問題点を指摘し、人と人の距離に対して新しい尺度を提案する。また パーソナルスペースはこれ以上近付かれたら不快に感じるという「ネガティ ブ」な意味合いを持ち合わせているが、発話する距離は声をかけるという「ポ ジティブ」な行動を意味する。(図 2.4-1) ʥʄʞɻʮ
ʩĜʕʢ˃ʑʲĜʑ ʑʗʞɻʛʇ
ିโ
ʵʐʞɻʮ
ཡሇȳɥࢯᆋ ༑โ
ʘɼʢʷʛʇ
(図 2.4-1)パーソナルスペースと発話する距離の違いを表したダイアグラム
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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2
2. 研究背景
2.4 既往研究から見た本研究の位置づけ
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
【親密度・集合密度・時間と発話する距離】 ■親密度 福田ら(2010)は親密度と発話頻度の関係について以下のような説明を している。 文 18) 福 田 寛 泰、 太 田 直 哉、野澤昭雄『発話頻度に
「日常的に親交のあるペア(FR)は1回の会話が長く続くことがわか り、面識のないペア(UF)は長い会話があまり続かないということ
よる話者の親密性の推定』 2010 年
がわかった。このことから FR が会話をする時の方が発話継続時間に 延長傾向が見られることが明らかとなった。FR の発話延長時間の和 と発話の平均時間の値が UF の値を上回る結果となあり、親密性を推 定する要因の1つとなると考えられる。(p.2)文 18)」
文 10)稲水伸行 = 著、 『オー プンスペースの動的密度感 に関する研究』東京大学も のづくり経営研究センター ディ スカッションペー
■集合密度 2.3.2 サービス水準による発話のしやすさでも記載したが、稲水伸行 (2008)文 10)により、発話の頻度は、発話者の周囲に滞在する人の密度に影
パー , 227, 2008 年
響することが示されている。
文 6)増田浩一 = 著、 『オフィ
■時間
ス空間における緊張感に関 わる要素と快適性に関わる 研究』早稲田大学渡辺仁史 研究室卒業論文、2006 年
本研究では時間帯によって明るさが変化するため、明暗による発話のしや すさは時間帯の変化による発話のしやすさと同義と扱うこととする。そのう えで 2.3.3 明暗による発話のしやすさでも記載したが増田浩一(2006)文 6) は照度は緊張感に大きく影響しており、対面初期の緊張感は照度があるほど 高まるが、時間が経過するにつれ、照度があるほど緊張感は減少するという ことを明らかにした。 このように〈親密度と発話〉〈集合密度と発話〉〈時間と発話〉の関係性に ついてはそれぞれすでに研究されており、その関係性についても明らかにさ れている。しかし、 〈親密度・集合密度・時間と発話〉という3要素すべて との関係性についてはまだ明らかにされてはいない。 本研究では、 〈親密度・集合密度・時間の変化によって発話する行動〉が どのように変化するかを明らかにする。その変化を今回は声をかける〈距離〉 で比較検討することとした。(図 2.4-2)
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2. 研究背景
2.4 既往研究から見た本研究の位置づけ
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
IJపდɂཡሇij ൎჶߍɅɢɥཡሇɈȱɞȳȯ
IJୠਗდɂཡሇij
Ⴈॸ࢞
ʍĜʫʑஈɅɢɥཡሇɈȱɞȳȯ
IJ૪࠰ɂཡሇij ცڧɅɢɥཡሇɈȱɞȳȯ
(図 2.4-2)既往研究から見た本研究の位置づけを表すダイアグラム
既往研究から見た本研究の位置づけを要約すると、 〈親密度・集合密度・ 時間の変化によって発話する行動が変化するかどうかを、声をかける距離で 比較検討し、また、その距離がパーソナルスペースのようなスタティックな ものではなく、ダイナミックにその人のその時のその状況によってテーラー メイドに変化することを明らかにする〉ということになる。 パーソナルスペースに代わる、人と人の距離に関する新しい尺度を提案す ることが本研究のオリジナリティーである。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
3 研究概要 3.1 用語の定義 3.2 研究目的 3.3 研究フロー
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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3
3 研究概要 3.1 用語の定義
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
3.1 用語の定義
■パーソナルスペース 個人の身体を取り囲む、目に見えない境界の内側にあり、他人に踏み入ら れると不快に感じる空間のこと。またスタティックな距離の一定尺度のこと。 ■コミュニケーション 社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達、また(生物 学)動物個体間での、身振りや音声・匂い等による情報の伝達を表す。本研 究では「直接、顔を合わせて会話すること」と定義する。 ■サービス水準 サービス水準とはジョン .F. フルーインによって作成された歩行者の基準 となる専有面積のこと。 ■親密度 a 一般的なカフェのテーブルの幅にあたる 50cm を基準とし、向かい合っ て会話をする際の2人の距離が 50cm 未満の場合の2人の親密度を表す。 ■親密度 b 一般的なカフェのテーブルの幅にあたる 50cm を基準とし、向かい合っ て会話をする際の2人の距離が 50cm 以上の場合の2人の親密度を表す。
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3 研究概要 3.2 研究目的
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
3.2 研究目的
発話する距離が親密度・集合密度・時間の変化で伸縮することを明らかに したうえで、グラフィック化し、従来のパーソナルスペースに代わる新しい 尺度として提案することを目的とする。
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3
3 研究概要 3.3 研究フロー
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
3.3 研究フロー
コミュニケーションって
人見知りなんです、私 ... 。
どうやって生まれるんだろう ... ?
基礎研究
基礎研究
*コミュニケーションを誘発する
*パーソナルスペースに関する
空間に関する文献調査
文献調査
コミュニケーションを誘発する空間とは
パーソナルスペースは一定尺度として捉えられているが
すなわち会話を誘発する空間だ!
人との距離は様々な要因で伸縮するはずだ!
発話する距離の伸縮が知りたい!
基礎調査
*OB・OG 会の動画観察調査
本調査
*交通断面量調査
*発話する距離の測定調査(親密度・集合密度・時間の変化による 発話する距離の伸縮を明らかにする調査)
分析
*正規分布曲線の比較による分析
考察
実験結果のグラフィック化
展望 コミュニケーションを誘発する
空間設計への応用
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親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
4 調査① 4.1 調査概要 4.1.1 調査目的 4.1.2 調査方法 4.2 調査結果 4.3 分析・考察
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4
4 調査① 4.1 調査概要 4.1.1 調査目的
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
4.1 調査概要 4.1.1 調査目的 発話する距離がその人のその時のその状況によって常に変化するというこ とを明らかにすることを目的とする。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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4
4 調査① 4.1 調査概要 4.1.2 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
4.1.2 調査方法 [調査日時] 2014 年 6 月 28 日の 18:00 〜 21:00 の間 [調査場所] 早稲田大学西早稲田キャンパス 63 号館1階食堂 [調査器具] ビデオカメラ 2 台 sony HDR-SR8(図 4.1.2-1) sony DCR-SR100(図 4.1.2-2) 三脚2台
(図 4.1.2-1)sony HDR-SR8
(図 4.1.2-2)sony DCR-SR100
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4
4 調査① 4.1 調査概要 4.1.2 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
また、ビデオカメラは(図 4.1.2-3)のように配置する。
N ビデオカメラ①
ビデオカメラ②
早稲田大学 西早稲田キャンパス 63 号館
OBOG 会 会場 受付
(図 4.1.2-3)ビデオカメラの配置図
[調査内容] 早稲田大学渡辺仁史研究室の OBOG 会の様子をビデオカメラで撮影し、 歓談の様子を観察した。
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4
4 調査① 4.2 調査結果
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
4.2 調査結果 調査結果は動画の画像データ(図 4.2-1)〜(図 4.2-12)で示す。
(図 4.2-1)ビデオカメラ①の映像 – 1
(図 4.2-2)ビデオカメラ①の映像 –2
(図 4.2-3)ビデオカメラ①の映像 –3
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4
4 調査① 4.2 調査結果
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
(図 4.2-4)ビデオカメラ①の映像 –4
(図 4.2-5)ビデオカメラ①の映像 –5
(図 4.2-6)ビデアカメラ①の映像 –6
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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4
4 調査① 4.2 調査結果
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
(図 4.2-7)ビデオカメラ②の映像 –7
(図 4.2-8)ビデオカメラ②の映像 –8
(図 4.2-9)ビデオカメラ②の映像 –9
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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4
4 調査① 4.2 調査結果
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
(図 4.2-10)ビデオカメラ②の映像 –10
(図 4.2-11)ビデオカメラ②の映像 –11
(図 4.2-12)ビデオカメラ②の映像 –12
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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4
4 調査① 4.3 分析・考察
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
4.3 分析・考察
[分析方法] OBOG 会で録画した動画、人が他者に声をかける様子を観察した。 [考察] ①会話をするときは、初めは会場の奥まで進まず、入り口付近で集まる傾向 がある。 (図 4.3-1)そして時間が経過するにつれて、会場の奥でも集まる ようになる。 (図 4.3-2)
(図 4.3-1)OBOG 会の様子①
(図 4.3-2)OBOG 会の様子②
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4
4 調査① 4.3 分析・考察
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
②真正面から声をかけても(図 4.3-3)、時間が経過するにつれて若干、横 並びになる傾向がる(図 4.3-4)。
(図 4.3-3)OBOG 会の様子③
(図 4.3-4)OBOG 会の様子④
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4
4 調査① 4.3 分析・考察
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
③初めはテーブルなどの周りに集まる傾向があるが(図 4.3-5) 、時間が経 過するにつれて、その傾向は薄れる(図 4.3-6)。
(図 4.3-5)OBOG 会の様子⑤
(図 4.3-6)OBOG 会の様子⑥
以上より、発話する距離がその人のその時のその状況によって常に変化す ることが明らかになった。 調査②では、親密度・集合密度・時間にの3要素に焦点を当てて、それぞ れの関係性についてさらに詳しく調査・分析を行う。
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親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
5 調査② 5.1 調査概要 5.1.1 調査目的 5.1.2 調査手順 5.2 断面交通量調査 5.2.1 調査方法 5.2.2 調査結果 5.3 本調査 5.3.1 調査方法 5.3.2 調査結果
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5
5 調査② 5.1 調査概要 5.1.1 調査目的
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
5.1 調査概要 5.1.1 調査目的 調査①の結果をふまえ、発話する距離と親密度・集合密度・時間の関係性 を詳しく分析し、グラフィック化することを目的とする。
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5
5 調査② 5.1 調査概要 5.1.2 調査手順
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
5.1.2 調査手順 ①カウンターを用いて 5 分間の通過歩行者の人数を 2 回計測し、その平均 の人数を求めた。 ②また、その歩行者が一定区間を歩く歩行速度をストップウォッチを用いて 計測し、その歩行者 20 人の平均から、その場所における歩行速度を求めた。 ③その計測した断面交通量と歩行速度から、計算次の式を用いて歩行者の専 有面積をそれぞれ求め、その場所のサービス水準を割り出した。 (①〜③: 断面交通量調査) ④調査は2人1組で行った。まずは2人の親密度を測り、親密度 a と親密度 b に分けた。 ⑤次に発話する距離を計測した。1人は立ち止まったまま、もう1人は相手 に歩ずつ近付いていき、自分のタイミングで声をかけるようにした。このと き、立ち止まったままの人はケータイなどを見ていてもらい、相手が近付い ていることに気付いていない体で統一した。また役割を入れ替えて同じ測定 を行った。 ⑥ ⑤の測定を昼の時間帯でサービス水準 A の空間で行った。 ⑦ 次に⑤の測定を昼の時間帯でサービス水準 B の空間で行った。 ⑧ 次に⑤の測定を夕方の時間帯でサービス水準 A の空間で行った。 ⑨ 次に⑤の測定を夕方の時間帯でサービス水準 B の空間で行う。また人 と人の距離は目から目の距離を測定し、身長差がある場合は斜辺距離を測定 した。 (④〜⑨:発話距離測定調査)]
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5
5 調査② 5.2 断面交通量調査 5.2.1 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
5.2 断面交通量調査 5.2.1 調査方法 [調査日時] 2014 年 9 月 17 日・19 日・21 日の 11:00 〜 21:00 の間 (異なる曜日・異なる時間において各場所計8回の計測を行った。) 注 11) 参 照 元:http:// www.jreast.co.jp/ passenger/
[調査場所] 新宿駅周辺(できるだけ人の多い街で調査を行った方が有効な値を取るこ とができると考えたため、JR 1日平均乗車人員1位の新宿駅周辺を選んだ。) (図 5.2.1-1 注 11))
( 図 5.2.1-1)JR 1日平均乗車人員 2013 年版
[調査器具] カウンター ストップウォッチ メジャー [調査内容] カウンターを用いて 5 分間の通過歩行者の人数を 2 回計測し、その平均 の人数を求めた。 また、その歩行者が一定区間を歩く歩行速度をストップ ウォッチを用いて計測し、その歩行者 20 人の平均から、その場所における 歩行速度を求めた。 〈計算式 : 面積 (㎡ / 人 ) = 歩行速度 (m/ 分 ) / 交通量 ( 人 / 分・m) 〉
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5
5 調査② 5.2 断面交通量調査 5.2.2 調査結果
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
5.2.2 調査結果 調査結果は(図 5.2.2-1)で示す。
(図 5.2.2-1)断面交通量調査結果
(図 5.2.2-2)歩行者空間モジュールによるサービス水準
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5 調査② 5.3 本調査 5.3.1 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
5.3 本調査 5.3.1 調査方法 [調査日時] 2014 年 9 月 22 日 14:00 〜 18:30、9 月 26 日 13:30 〜 18:00 [調査場所] 新宿駅周辺(モザイク通り(図 5.3.1-1)・JR 新宿駅東口前(図 5.3.2-1))
(図 5.3.1-1)モザイク通りの様子
(図 5.3.1-2)JR 新宿駅東口前の様子
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5 調査② 5.3 本調査 5.3.1 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
[調査器具] メジャー [調査内容] 発話する距離が親密度・密度・時間の変化で伸縮することを明らかにする ため以下の手順で調査を行った。 ①調査は2人1組で行った。まずは2人の親密度を測り、親密度 a と親密度 b に分けた。 (図 5.3.1-1)
(図 5.3.1-1)テーブルの広さの目安(2人席の場合)
② 次に発話する距離を計測した。1人は立ち止まったまま、もう1人は相 手に歩ずつ近付いていき、自分のタイミングで声をかけるようにした。この とき、立ち止まったままの人はケータイなどを見ていてもらい、相手が近付 いていることに気付いていない体で統一した。また役割を入れ替えて同じ測 定を行った。 ③ ②の測定を昼の時間帯でサービス水準 A の空間で行った。 ④ 次に②の測定を昼の時間帯でサービス水準 B の空間で行った。 ⑤ 次に②の測定を夕方の時間帯でサービス水準 A の空間で行った。 ⑥ 次に②の測定を夕方の時間帯でサービス水準 B の空間で行う。また人 と人の距離は目から目の距離を測定し、身長差がある場合は斜辺距離を測定 した。 (図 5.3.1-2) 斜辺距離
水平距離
(図 5.3.1-2)斜辺距離と水平距離
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5
5 調査② 5.3 本調査 5.3.2 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
5.3.2 調査結果 [調査結果] 12 人 17 組の調査結果を以下の(図 5.3.2-2)〜(図 5.3.2-18)で示す。 また(図 5.3.2-1)では調査結果の見方を示す。
昼の時間帯で調査を行ったときと夕方の時間帯 で調査を行ったときの距離の差を表す。ピンク はプラス値、水色はマイナス値、黄色は変化が 無いことを表す。昼の時間帯の値から夕方の時 間帯の値を引いているので、ピンクはお昼の時 太郎→花子は太郎が花子に近付き声をかけたことを表し、 花子→太郎は花子が太郎に近付き声をかけたことを表す。
間帯の方が発話する距離が伸びており、水色は お昼の時間帯の方が発話する距離が縮んでいる ことを表す。
サービス水準 A で調査を行ったときとサービス水準 B で調査を行ったときとの距離の差を表す。 ピンクはプラス値、水色がマイナス値、黄色は変化が無いことを表す。サービス水準 A の値から サービス水準 B の値を引いているので、ピンクはサービス水準 A での値の方が発話する距離が 伸びており、水色はサービス水準 A での値の方が発話する距離が縮んでいることを表す。
親密度を表す。 カッコの中の 数字は向かい 合って会話を するときの値。
(図 5.3.2-1)調査結果の見方
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5
5 調査② 5.3 本調査 5.3.2 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
(図 5.3.2-2)結果1
(図 5.3.2-3)結果 2
(図 5.3.2-4)結果 3
(図 5.3.2-5)結果 4
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5 調査② 5.3 本調査 5.3.2 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
(図 5.3.2-6)結果 5
(図 5.3.2-7)結果 6
(図 5.3.2-8)結果 7
(図 5.3.2-9)結果 8
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5 調査② 5.3 本調査 5.3.2 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
(図 5.3.2-10)結果 9
(図 5.3.2-11)結果 10
(図 5.3.2-12)結果 11
(図 5.3.2-13)結果 12
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5 調査② 5.3 本調査 5.3.2 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
(図 5.3.2-14)結果 13
(図 5.3.2-15)結果 14
(図 5.3.2-16)結果 15
(図 5.3.2-17)結果 16
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5 調査② 5.3 本調査 5.3.2 調査方法
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
(図 5.3.2-18)結果 17
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52
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6 分析 6.1 分析方法について 6.2 1要素に関する分析 6.2.1 親密度と発話する距離 6.2.2 空間密度と発話する距離 6.2.3 時間と発話する距離 6.2.4 1要素に関する分析のまとめ 6.3 2要素に関する分析 6.3.1 親密度・空間密度と発話する距離 6.3.2 空間密度・時間と発話する距離 6.3.3 時間・親密度と発話する距離 6.3.4 2要素に関する分析のまとめ 6.4 3要素に関する分析 6.4.1 親密度・空間密度・時間・と発話する距離 6.4.2 3 要素に関する分析のまとめ
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
53
6
6 分析 6.1 分析方法について
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.1 分析方法について
調査結果から得られたデータを正規分布曲線に表し、比較することで分析 を行った。正規分布とはデータの分布を表した連続的な変数に関する確率分 布のことである。 (図 6.1-1)でグラフの見方を示す。
頂点に位置する値が一番、確率の高い値となる。 本研究では、この値を比較することで分析を行う。
縦軸は「確率密度」を表す。数字が大きいほど、 確率が高いことを意味する。単位は (%) 横軸は「距離」を表す。 単位は (cm) (図 6.1-1)正規分布曲線の見方
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
54
6
6 分析 6.1 分析方法について
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
また(図 6.1-2)では正規分布曲線から得られた1番確率の高い値に関す る分析表の見方を示す。
a: 親密度 a を表す A: サービス水準 A を表す N: 昼 (noon) を表す →aAN は親密度 a の組がサービス水準 A の空間 で昼の時間帯に発話する距離を表す。
差を表す。この場合 は aAN ‒ bAN の値が 10 であることを表す。
番号と色はそれぞれの グラフとの対応を示す。
b: 親密度 b を表す B: サービス水準 B を表す E: 夕方 (evening) を表す →bBE は親密度 b の組がサービス水準 B の空間 で夕方の時間帯に発話する距離を表す。
(図 6.1-2)分析表の見方
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
55
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.1 親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.2 1要素に関する分析 6.2.1 親密度と発話する距離 正規分布曲線を比較し、親密度と発話する距離の関係を分析した。(図 6.2.1-1)〜(図 6.2.1-8)でそれぞれの正規分布曲線を示す。
⑴
98
aAN (図 6.2.1-1)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
87
bAN (図 6.2.1-2)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
56
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.1 親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑵
88
aAE (図 6.2.1-3)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
86
bAE (図 6.2.1-4)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
57
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.1 親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑶ 73
aBN (図 6.2.1-5)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
90
bBN (図 6.2.1-6)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
58
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.1 親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑷ 68
aBE (図 6.2.1-7)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
75
bBE (図 6.2.1-8)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
59
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.1 親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
また親密度に関する分析表(図 6.2.1-9)から以下の3点が明らかになっ た
(図 6.2.1-9)親密度に関する分析表
・ 〈aAN〉と〈bAN〉の差と〈aAE〉と〈bAE〉の差はプラス値を表しているが、 〈aBN〉と〈bBN〉の差と〈aBE〉と〈bBE〉の差はマイナス値を表している。 このことより、 集合密度が低いときは親密度が高い方が発話する距離が伸び、 集合密度が高いときには親密度が低い方が発話する距離が伸びる傾向がある ことが明らかである。 ・ 〈aAN〉と〈bAN〉の差は 11、また〈aAE〉と〈bAE〉の差は2である。こ のことから集合密度が低いときは親密度が高い方が発話する距離が伸びると いう傾向は昼の時間帯の方が顕著に表れやすいことが明らかである。 ・ 〈aBN〉と〈bBN〉の差は -17、また〈aBE〉と〈bBE〉の差は -7 である。 このことから集合密度が高いときは親密度が低い方が発話する距離が伸びる という傾向は夕方の時間帯の方が顕著に表れやすいことが明らかである。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
60
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.2 集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.2.2 集合密度と発話する距離 正規分布曲線を比較し、集合密度と発話する距離の関係を分析した。 (図 6.2.2-1)〜(図 6.2.2-8)でそれぞれの正規分布曲線を示す。
⑴
98
aAN (図 6.2.2-1)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
73
aBN (図 6.2.2-2)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
61
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.2 集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑵
88
aAE (図 6.2.2-3)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
68
aBE (図 6.2.2-4)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
62
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.2 集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑶
87
bAN (図 6.2.2-5)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
90
bBN (図 6.2.2-6)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
63
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.2 集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑷ 86
bAE (図 6.2.2-7)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
75
bBE (図 6.2.2-8)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
64
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.2 集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
また密度に関する分析表(図 6.2.2-9)から以下の2点が明らかになった
(図 6.2.2-9)密度に関する分析表
・ 〈aAN〉と〈aBN〉の差と、〈aAE〉と〈aBE〉の差と、〈bAE〉と〈bBE〉の 差がそれぞれプラス値を示していることから、集合密度が低い方が発話する 距離が伸びる傾向があることが明らかである。しかし〈bAN〉と〈bBN〉の 差がマイナス値を示していることから親密度が低く、昼の時間帯のときはこ の限りでない。 ・ 〈aAE〉と〈aBE〉の差が 20 と、一番差が開いている。このことから集合 密度が低い方が発話する距離が伸びる傾向は親密度が高く、夕方の時間帯の 方が顕著に表れやすいことが明らかである。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
65
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.3 時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.2.3 時間と発話する距離 正規分布曲線を比較し、時間と発話する距離の関係を分析した。(図 6.2.3-1)〜(図 6.2.3-8)でそれぞれの正規分布曲線を示す。
⑴
98
aAN (図 6.2.3-1)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
88
aAE (図 6.2.3-2)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
66
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.3 時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑵
87
bAN (図 6.2.3-3)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
86
bAE (図 6.2.3-4)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
67
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.3 時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑶ 73
aBN (図 6.2.3-5)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
68
aBE (図 6.2.3-6)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
68
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.3 時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑷
90
bBN (図 6.2.3-7)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
75
bBE (図 6.2.3-8)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
69
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.3 時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
また時間に関する分析表(図 6.2.3-9)から以下の2点が明らかになった。
(図 6.2.3-9)時間に関する分析表
・ 〈aAN〉と〈aAE〉の差と、 〈bAN〉と〈bAE〉の差と、 〈aBN〉と〈aBE〉の差と、 〈bBN〉と〈bBE〉の差がそれぞれプラス値を示していることから、昼の時 間帯の方が夕方の時間帯よりも発話する距離が伸びる傾向があることが明ら かである。 ・ 〈bBN〉と〈bBE〉の差が 15 と、一番差が開いている。このことから親密 度が低く、集合密度が高いときに昼の時間帯の方が夕方の時間帯よりも発話 する距離が伸びる傾向が顕著に表れやすいことが明らかである。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
70
6
6 分析 6.2 1要素に関する分析 6.2.4 1要素に関する分析のまとめ
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.2.4 1要素に関する分析のまとめ 1要素に関する分析を(図 6.2.4-1)でまとめた。
集合密度
(図 6.2.4-1)1要素に関する分析のまとめ
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
71
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析
6.3.1 親密度・集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.3 2 要素に関する分析 6.3.1 親密度・集合密度と発話する距離 正規分布曲線を比較し、親密度・集合密度と発話する距離の関係を分析し た。 (図 6.3.1-1)〜(図 6.3.1-8)でそれぞれの正規分布曲線を示す。
⑴
98
aA (図 6.3.1-1)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で発話する距離の正規分布曲線
73
aB (図 6.3.1-2)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
72
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析
6.3.1 親密度・集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑵
92
bA (図 6.3.1-3)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で発話する距離の正規分布曲線
79
bB (図 6.3.1-4)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
73
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析
6.3.1 親密度・集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑶
98
aA (図 6.3.1-5)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で発話する距離の正規分布曲線
92
bA (図 6.3.1-6)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
74
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析
6.3.1 親密度・集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑷ 73
aB (図 6.3.1-7)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で発話する距離の正規分布曲線
79
bB (図 6.3.1-8)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
75
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析
6.3.1 親密度・集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
また親密度・集合密度に関する分析表(図 6.3.1-9)から以下の2点が明 らかになった。
(図 6.3.1-9)親密度・密度に関する分析表
・ 〈aA〉と〈aB〉の差と、 〈bA〉と〈bB〉の差の変化が少ないことから、親 密度が変化しても、集合密度による発話する距離の伸縮に対してあまり影響 を与えないことが明らかである。 ・ 〈aA〉と〈bA〉の差がプラス値を、 〈aB〉と〈bB〉の差がマイナス値を示 していることから集合密度が低いと親密度が高い方が発話する距離は伸び、 集合密度が高いと親密度が低い方が発話する距離が伸びる傾向が明らかであ る。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
76
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.2 集合密度・時間と発話する距 離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.3.2 集合密度・時間と発話する距離 正規分布曲線を比較し、集合密度・時間と発話する距離の関係を分析した。 (図 6.3.2-1)〜(図 6.3.2-8)でそれぞれの正規分布曲線を示す。
⑴
98
AN (図 6.3.2-1)サービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
86
AE (図 6.3.2-2)サービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
77
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.2 集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑵
79
BN (図 6.3.2-3)サービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
74
BE (図 6.3.2-4)サービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
78
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析
6.3.2 集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑶
98
AN (図 6.3.2-5)サービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
79
BN (図 6.3.2-6)サービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
79
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.2 集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑷
86
AE (図 6.3.2-7)サービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
74
BE (図 6.3.2-8)サービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
80
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.2 集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
また集合密度・時間に関する分析表(図 6.3.2-9)から以下の 3 点が明ら かになった。
(図 6.3.2-9)密度・時間に関する分析表
・ 〈AN〉と〈AE〉の差と、 〈BN〉と〈BE〉の差から、集合密度が変化すると、 時間による発話する距離の伸縮に対してかなりの影響を与えることが明らか である。 ・ 〈AN〉と〈BN〉の差と、 〈AE〉と〈BE〉の差から、時間が変化すると、集 合密度による発話する距離の伸縮に対して若干の影響を与えることが明らか である。 ・ 〈AN〉と〈BN〉の差と、〈AE〉と〈BE〉の差から、昼の時間帯の方が夕方 の時間帯に比べて若干、発話する距離が伸びる傾向が明らかである。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
81
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.3 時間・親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.3.3 時間・親密度と発話する距離 正規分布曲線を比較し、時間・親密度と発話する距離の関係を分析した。 (図 6.3.3-1)〜(図 6.3.3-8)でそれぞれの正規分布曲線を示す。
⑴
89
aN (図 6.3.3-1)親密度 a の組が昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
81
aE (図 6.3.3-2)親密度 a の組が夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
82
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.3 時間・親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑵
92
bN (図 6.3.3-3)親密度 b の組が昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
79
bE (図 6.3.3-4)親密度 b の組が夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
83
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.3 時間・親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑶
89
aN (図 6.3.3-5)親密度 a の組が昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
92
bN (図 6.3.3-6)親密度 b の組が昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
84
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.3 時間・親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑷
81
aE (図 6.3.3-7)親密度 a の組が夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
79
bE (図 6.3.3-8)親密度 b の組が夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
85
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.3 時間・親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
また時間・親密度に関する分析表(図 6.3.3-9)から以下の 3 点が明らか になった。
(図 6.3.3-9)時間・親密度に関する分析表
・ 〈aN〉と〈aE〉の差が7、〈bN〉と〈bE〉の差が 13 と、親密度 b の方が 距離の差が大きいことから、夕方の時間帯に比べて昼の時間帯の方が発話す る距離が伸びるという傾向は、親密度が低い方が顕著に表れやすいというこ とが明らかである。 ・ 〈aN〉と〈bN〉の差の絶対値と、 〈aE〉と〈bE〉の差の絶対値にあまり変 化がないことから、時間が変化しても、親密度による発話する距離の伸縮に 対してあまり影響を与えないことが明らかである。 ・ 〈aN〉と〈bN〉の差がマイナス値を、 〈aE〉と〈bE〉の差がプラス値を示 していることから昼の時間帯では親密度が低い方が発話する距離が若干伸 び、夕方の時間帯では親密度が高い方が発話する距離が若干伸びる傾向が明 らかである。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
86
6
6 分析 6.3 2 要素に関する分析 6.3.4 2要素に関する分析のまとめ
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.3.4 2要素に関する分析のまとめ 2要素に関するまとめを(図 6.3.4-1)で表した。なお、○は影響を与える(与 えられる)ことを表し、△は影響をあまり与えない(与えられない)ことを 表す。
与えられる 与える
集合密度
集合密度
(図 6.3.4-1)2要素に関する分析のまとめ
(図 6.3.4-1)2要素に関する分析のまとめより、発話する距離に対して影 響を与えやすいのは〈集合密度〉〈親密度〉〈時間〉の順番であることが明ら かである。
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
87
6
6 分析 6.4 3 要素に関する分析
6.4.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.4 3要素に関する分析 6.4.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離 正規分布曲線を比較し、親密度・集合密度・時間と発話する距離の関係を 分析した。 (図 6.4.1-1)〜(図 6.4.1-8)でそれぞれの正規分布曲線を示す。
⑴
98
aAN (図 6.4.1-1)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
68
aBE (図 6.4.1-2)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
88
6
6 分析 6.4 3 要素に関する分析
6.4.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑵
88
aAE (図 6.4.1-3)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
75
bBE (図 6.4.1-4)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
89
6
6 分析 6.4 3 要素に関する分析
6.4.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑶
98
aAN (図 6.4.1-5)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
86
bAE (図 6.4.1-6)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
90
6
6 分析 6.4 3 要素に関する分析
6.4.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑷
87
bAN (図 6.4.1-7)親密度 b の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
75
bBE (図 6.4.1-8)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
91
6
6 分析 6.4 3 要素に関する分析
6.4.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑸
98
aAN (図 6.4.1-9)親密度 a の組がサービス水準 A の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
90
bBN (図 6.4.1-10)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
92
6
6 分析 6.4 3 要素に関する分析
6.4.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
⑹ 73
aBN (図 6.2.1-11)親密度 a の組がサービス水準 B の空間で昼の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
75
bBE (図 6.2.1-12)親密度 b の組がサービス水準 B の空間で夕方の時間帯に発話する距離の正規分布曲線
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93
6
6 分析 6.4 3 要素に関する分析
6.4.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
3要素のうち1要素は共通、残りの2要素は対となる組合わせの差の比較 によって分析を行った。 (図 6.4.1-9)の分析表から以下3点が明らかになっ た。
(図 6.4.1-9)親密度・密度・時間に関する分析表
・ 〈aAN〉と〈aBE〉の差が 30 と、他に比較してかなり大きいことから、親 密度 a のときは集合密度と時間の変化が発話する距離に対してかなり影響を 与えることが明らかである。 ・ 〈aAE〉と〈bBE〉の差が 13、 〈aAN〉と〈bAE〉の差が 12、 〈bAN〉と〈bBE〉 の差が 12、 〈aAN〉と〈bBN〉の差が8、と変化が少ないことから、夕方の 時間帯に親密度と集合密度の変化が発話する距離に対して与える影響力と、 サービス水準 A のときに親密度と時間の変化が発話する距離に対して与え る影響力と、親密度 b のときに集合密度と時間の変化が発話する距離に対 して与える影響力と、昼の時間帯に親密度と集合密度の変化が発話する距離 に対して与える影響力はあまり変わらないことが明らかである。 ・ 〈aBN〉と〈bBE〉の差が -2 と、他に比べてかなり小さいことから、サー ビス水準 B のときは親密度と時間の変化が発話する距離に対してほとんど 影響を与えないことが明らかである。
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6
6 分析 6.4 3 要素に関する分析 6.4.2 3要素に関する分析のまとめ
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
6.4.2 3要素に関する分析のまとめ [親密度 a の場合] 集合密度と時間の変化が発話する距離に対してかなり影響を与える。 [親密度 b の場合] 集合密度と時間の変化が発話する距離に対して若干、影響を与える。 [サービス水準 A の場合] 親密度と時間の変化が発話する距離に対して若干、影響を与える。 [サービス水準 B の場合] 親密度と時間の変化が発話する距離に対してほとんど影響を与えない。 [昼の時間帯の場合] 親密度と集合密度の変化が発話する距離に対して若干、影響を与える。 [夕方の時間帯の場合] 親密度と集合密度の変化が発話する距離に対して若干、影響を与える。
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親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
7 考察 7.1 1要素に関する考察 7.1.1 親密度と発話する距離 7.1.2 集合密度と発話する距離 7.1.3 時間と発話する距離 7.2 2要素に関する考察 7.2.1 親密度・集合密度と発話する距離 7.2.2 集合密度・時間と発話する距離 7.2.3 時間・親密度と発話する距離 7.3 3要素に関する考察 7.3.1 親密度・集合密度・時間・と発話する距離
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7
7 考察 7.1 1要素に関する考察 7.1.1 親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
7.1 1要素に関する考察 7.1.1 親密度と発話する距離 親密度と発話する距離に関しては 3 点の分析結果が得られた。3点それ ぞれに対して考察を行う。 ①[集合密度が低いときは親密度が高い方が発話する距離が伸び、集合密度 が高いときには親密度が低い方が発話する距離が伸びる傾向がある] →被験者に対してヒアリングを行ったところ、親密度が高い人に対しては遠 くから声をかけることも多いが、あえてひっそりと近付き、驚かすこともあ るという意見があった。では、どういう状況で遠くから声をかけ、どういう 状況でひっそりと近付くのか。それは相手に気付かれやすい状況がどうかで あると考える。相手に気付かれやすい状況ではひっそりと近付いても意味を なさないからである。つまり①の分析結果が得られた理由としては、集合密 度が低いときは相手に気付かれやすい状況であるため、親密度の高い人に対 して遠くから声をかけるが、集合密度が高いと相手に気付かれにくい状況で あるため、親密度の高い人に対して近付いて声をかけるからであると考えら れる。 ②[集合密度が低いときは親密度が高い方が発話する距離が伸びるという傾 向は昼の時間帯の方が顕著に表れやすい] →②の分析結果が得られた理由も、①同様、昼の時間帯は夕方の時間帯に比 べて明るいので、相手に気付かれやすい状況だと考えられるためであると考 えられる。 ③[集合密度が高いときは親密度が低い方が発話する距離が伸びるという傾 向は夕方の時間帯の方が顕著に表れやすい] →③の分析結果が得られた理由も、①同様、集合密度が高く夕方の時間帯は 相手に気付かれにくい状況であるため、親密度の高い人に対して近付いて声 をかけるので、それに比べると親密度の低い人に対しては遠くから声をかけ るためであると考えられる。
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7
7 考察 7.1 1要素に関する考察 7.1.2 集合密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
7.1.2 集合密度と発話する距離 集合密度と発話する距離に関しては 2 点の分析結果が明らかになった。 2点それぞれに対して考察を行う。 ①[集合密度が低い方が発話する距離が伸びる傾向があることが明らかであ る。しかし親密度が低く、昼の時間帯のときはこの限りでない] →集合密度が低いということは人が少ないということである。集合密度が低 い方が発話する距離が伸びる傾向があるのは、人が少ないため人目をあまり 気にしないで、遠くから大きな声でも声をかけることができるためだと考え る。また親密度が低く、昼の時間帯ではこの傾向が見られない理由は、2.3.3 明暗による発話のしやすさでも述べたように、明るい方が緊張感が高まる傾 向があるためだと考える。ただでさえ、親密度の低い人に対して声をかける ことは少し緊張することであるため、さらに明るさの効果で緊張感が増した ことで発話する距離が縮んだと考えられる。 ②[集合密度が低い方が発話する距離が伸びる傾向は親密度が高く、夕方の 時間帯の方が顕著に表れやすい] →集合密度が低い場合は見通しが良いため、比較的、発話する距離が伸びる と考えられる。また親密度が高く、夕方の時間帯の方がこの傾向が顕著に表 れやすい理由は以下の2点から推測できる。 まず 2,3,3 明暗による発話のしやすさでも述べたように暗い方が相手に対し て良好な印象を抱くと予想されるとある。このことから夕方はより、相手に 対して親密度が上がると予想される。 さらに 7.1.1 親密度と発話する距離では集合密度が低い場合は親密度が高い 方が発話する距離が伸びるという傾向が愛らかになっている。 この2点から集合密度が低い方が発話する距離が伸びる傾向は親密度が高 く、夕方の時間帯の方が顕著に表れやすい理由が説明できる。
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98
7
7 考察 7.1 1要素に関する考察 7.1.3 時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
7.1.3 時間と発話する距離 時間と発話する距離に関しては2点の分析結果が明らかになった。2点そ れぞれに対して考察を行う。 ① [昼の時間帯の方が夕方の時間帯よりも発話する距離が伸びる傾向がある] →昼の時間帯の方が夕方の時間帯に比べて明るいため、物理的に声をかける 相手を見つけやすい状況であるからであると考えられる。 ②[親密度が低く、集合密度が高いときに昼の時間帯の方が夕方の時間帯よ りも発話する距離が伸びる傾向が顕著に表れやすい] →①同様、昼の時間帯の方が夕方の時間帯に比べて明るいため、物理的に声 をかける相手を見つけやすい状況であるからであると考えられる。
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7
7 考察 7.2 2 要素に関する考察 7.2.1 親密度・集合密度と発話する 距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
7.2 2要素に関する考察 7.2.1 親密度・集合密度と発話する距離 親密度・集合密度と発話する距離に関しては 2 点の分析結果が明らかに なった。2点それぞれに対して考察を行う。 ①[親密度が変化しても、集合密度による発話する距離の伸縮に対してあま り影響を与えないことが明らかである] →発話する距離に対して〈集合密度〉→〈親密度〉→〈時間〉の順番で影響 を与えるので、集合密度が与える影響に親密度が与える影響が打ち消されて しまっていると予想されるため、親密度が変化しても、集合密度による発話 する距離の伸縮に対してあまり影響を与えないと考えられる。 ②[集合密度が低いと親密度が高い方が発話する距離は伸び、集合密度が高 いと親密度が低い方が発話する距離が伸びる傾向がある] → 7.1.1 親密度と発話する距離の①と同様、集合密度が低いときは相手に気 付かれやすい状況であるため、親密度の高い人に対して遠くから声をかける が、集合密度が高いと相手に気付かれにくい状況であるため、親密度の高い 人に対して近付いて声をかけるからであると考えられる。
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7
7 考察 7.2 2 要素に関する考察
7.2.2 集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
7.2.2 集合密度・時間と発話する距離 集合密度・時間と発話する距離に関しては3点の分析結果が明らかになっ た。3 点それぞれに対して考察を行う。 ①[集合密度が変化すると、時間による発話する距離の伸縮に対してかなり の影響を与える] →発話する距離に対して〈集合密度〉→〈親密度〉→〈時間〉の順番で影響 を与えるので、密度が変化すると、時間による発話する距離の伸縮に対して かなりの影響を与えると考えられる。 ②[時間が変化すると、集合密度による発話する距離の伸縮に対して若干の 影響を与える] →発話する距離に対して〈集合密度〉→〈親密度〉→〈時間〉の順番で影響 を与えることから、集合密度が与える影響に時間が与える影響が打ち消され てしまっていると予想される。したがって時間が変化しても、集合密度によ る発話する距離の伸縮に対してあまり影響を与えないと考えられる。 ③[昼の時間帯の方が夕方の時間帯に比べて若干、発話する距離が伸びる傾 向がある] →昼の時間帯の方が夕方の時間帯に比べて明るいため、視認度が上がり、声 をかけやすい状況であるからと考えられる。
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7
7 考察 7.2 2 要素に関する考察 7.2.3 時間・親密度と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
7.2.3 時間・親密度と発話する距離 時間・親密度と発話する距離に関しては3点の分析結果が明らかになった。 3 点それぞれに対して考察を行う。 ①[夕方の時間帯に比べて昼の時間帯の方が発話する距離が伸びるという傾 向は、親密度が低い方が顕著に表れやすい] → 2.3.3 明暗による発話のしやすさでも述べたように明るい方が緊張感を抱 きやすいと予想される。また、2.3.1 対面角度による発話のしやすさでも述 べたように、人間は対人に対して圧迫を感じると、まず互いの距離を確保し ようと努めるので、緊張感を抱いている際にも対人に対して距離を確保する と予想される。したがって、昼の時間帯の方が相手との距離を取ると考えら れる。さらに親密度が低いほうが相手に対して緊張感を抱きやすいと予想さ れるため、この傾向が顕著に表れると考えられる。 ②[時間が変化しても、親密度による発話する距離の伸縮に対してあまり影 響を与えない] →発話する距離に対して影響を与えやすい順に〈集合密度〉→〈親密度〉→〈時 間〉であることから、親密度が与える影響に時間が与える影響が打ち消され てしまっていると予想されるため、時間が変化しても、親密度による発話す る距離の伸縮に対してあまり影響を与えないと考えられる。 ③[昼の時間帯では親密度が低い方が発話する距離が若干伸び、夕方の時間 帯では親密度が高い方が発話する距離が若干伸びる傾向がある] →昼の時間帯では親密度が低い方が発話する距離が若干伸びるという傾向は ①で説明できる。夕方の時間帯では親密度が高い方が発話する距離が若干伸 びる傾向に関してはこれの逆であると考えられる。
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7
7 考察 7.3 3要素に関する考察
7.3.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
7.3 3要素に関する考察 7.3.1 親密度・集合密度・時間と発話する距離 親密度・集合密度・時間と発話する距離に関しては3点の分析結果が明ら かになった。分析結果の考察を行う。 ・親密度 a の場合、集合密度と時間の変化が発話する距離に対してかなり影 響を与えるという傾向に対して、集合密度の影響力は強く、また時間の変化 を明暗の変化と捉えた場合、明暗の変化は相手に抱く親密度に対して影響を 与えるため、親密度 a の場合、集合密度と時間の変化が発話する距離に対し てかなり影響を与えるという傾向があると考えられる。 ・サービス水準 B の場合、親密度と時間の変化が発話する距離に対してほと んど影響を与えないという傾向に関して、密度が与える影響が一番強いため、 サービス水準 B の場合、親密度と時間の変化が発話する距離に対してほと んど影響を与えないと考えられる。
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親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
8 まとめ 8.1 結論 8.2 展望
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8
8 まとめ 8.1 結論
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
8.1 結論
[1要素に関する発話する距離の伸縮] ・サービス水準 A のとき、親密度 a は発話する距離は伸び、親密度 b は発話 する距離は縮む。逆にサービス水準 B のとき、親密度 a は発話する距離は 縮み、親密度 b は発話する距離は伸びる。 ・サービス水準 A の方がサービス水準 B よりも発話する距離が伸びる。 ・昼の時間帯の方が夕方の時間帯より発話する距離が伸びる。 [2要素に関する発話する距離の伸縮] ・発話する距離に対して影響を与えやすい順に〈集合密度〉→〈親密度〉→〈時 間〉である。 [3 要素に関する発話する距離の伸縮] ・親密度 a の場合、集合密度と時間の変化が発話する距離に対してかなり影 響を与える。 ・サービス水準 B の場合、親密度と時間の変化が発話する距離に対してほと んど影響を与えない。 またこの結果を用いて、親密度・集合密度・時間の変化による発話する距離 の伸縮をグラフィック化すると次ページのようになる。(図 8.1-1)〜(図 8.1-7)
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8
8 まとめ 8.1 結論
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
(図 8.1-1)は白線で囲まれた8つの立方体がそれぞれ aAN・aAE・aBN・ aBE・bAN・bAE・bAN・bBE の8つのパターンを表している。また黒線で 囲まれた六面体は白線で囲まれた8つの立方体の頂点が唯一全て接する点を 中心に、8つのパターンそれぞれの発話する距離の標準偏差を対角線として 成り立っている。つまり、この六面体がいびつであるほど発話する距離が 3要素の違いによって伸縮していることを表す。さらに六面体の内部に位置 する立方体はそれぞれ対角線の長さを 20cm ずつで区切り、色を変化させ ており、距離のものさしの役割を果たしている。またグラフィック作成には Sketch Up を用いた。 さらに(図 8.1-2)〜(図 8.1-7)は(図 8.1-1)の6平面を表している。
y
A
z
B E
N
a
b x
(図 8.1-1)3要素による発話する距離の伸縮を表した x-y-z 図
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8
8 まとめ 8.1 結論
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
y
A
B
E
N
x
b
a z
(図 8.1-2)3要素による発話する距離の伸縮を表した x-y 平面図
y
A
B
a
b N
E
z
x (図 8.1-3)3要素による発話する距離の伸縮を表した y-z 平面図
z
E
N
A
B a
b
x
y
(図 8.1-4)3要素による発話する距離の伸縮を表した x-z 平面図
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8
8 まとめ 8.1 結論
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
y
A
B
E
N b
a
x
z
(図 8.1-5)3要素による発話する距離の伸縮を表した x-y 平面図
y
A
B
a
b N
E
z
x
(図 8.1-6)3要素による発話する距離の伸縮を表した y-z 平面図
z
E
N A B a
b
x
y
(図 8.1-7)3要素による発話する距離の伸縮を表した x-z 平面図
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8
8 まとめ 8.1 結論
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
8.2 展望
本研究で親密度・集合密度・時間の変化による発話する距離の伸縮を明ら かにした。しかし、本研究では 10 〜 20 代の男女 12 人 17 組で調査を行っ ており、万人に共通する距離の尺度として定義するにはまだ、不十分である。 さらに性別の違い・年齢の違い・性格の違い・出身地の違いなどを考慮する べきである。 また親密度・集合密度・時間の変化による発話する距離の伸縮を明らかに したことで、それぞれの状況における発話しやすい距離の傾向を導くことが 可能となった。 本研究の結果を用いて、それぞれの状況に適した発話しやすい空間を設 計することで、コミュニケーションを誘発する空間の仕組みを新たに提案し たい。 具体的な例としては、飲食店が挙げられる。従来の飲食店は一緒に来店し た連れとしか会話をしないが、テーブル等の配置に発話しやすい距離を応用 することで、その時に居合わせた他の客との交流を生む可能性が考えらる。 また、その時、その状況における発話しやすい距離のデータを蓄積していく ことで、一番適した距離を先回りして予想することが可能になると考えられ る。 また逆に発話してはいけない空間に応用することで、発話を抑制させる効 果が期待できる。例えば図書館など静かに利用しなければならない空間での テーブル配置を、発話しないと思われる最低限の距離で設計することで、空 間を効率的に利用することができる。日本のような狭い土地に建築が密集す る地域ではかなり有効だと考えられる。 本研究の結果が、その人、その時、その状況における発話しやすい距離を その都度読み取り、適応していく空間の仕組みへの第一歩になることを期待 する。
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9 おわりに 9.1 参考文献 9.2 謝辞
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9 おわりに 9.1 参考文献
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9.1 参考文献
文1)広辞苑第五版 pp.1004-1005 文2)高広伯彦 「次世代コミュニケーションプランニング」 ソフトバンククリエイティブ株式会社発行 ,pp.22,23,pp.38,39,2012 年 文 3)コミュニケーションを否応なく誘発する全長 250 メートルの「机の森」 http://www.worksight.jp/issues/390.html(2014/10/15 閲覧) 文4)アクティビティの視覚化によるコミュニケーションの誘発 h t t p : / / w w w. n i k k e n . c o . j p / j a / a r c h i v e s / n d v u k b 0 0 0 0 0 1 a 3 c i . h t m l (2014/10/15 閲覧) 文5)コミュニケーションオフィス http://layout.net/community/anzai-learning-ba-01/(2014/10/15 閲覧) 文6)増田浩一 『オフィス空間における緊張感に関わる要素と快適性に関わる研究』 早稲田大学渡辺仁史研究室卒業論文 ,p.102,2006 年 文7)羽生大輔 『対人状況下におけるストレス量の予測モデルに関する研究−精神性発刊量 測定による感覚の定量化−』 早稲田大学渡辺仁史研究室修士論文 ,p.85,2005 年 文8)ジョン .F. フルーイン = 著 / 長島正光 = 訳 「歩行者の空間」鹿児島出版会 ,1974 年 文9)松島一剛 『駅構内通路歩行時のストレスマネジメントに関する研究』 早稲田大学渡辺仁史研究室修士論文 ,pp.18-20,2009 年 文 10)稲水伸行『オープンスペースの動的密度感に関する研究』 東京大学ものづくり経営研究センター ディスカッションペーパー , 227, 2008 年 Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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9
9 おわりに 9.1 参考文献
親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
文 11)増田浩一 『幼児の発話を生む空間要素と密度』 早稲田大学渡辺仁史研究室修士論文 ,p.22,p.127,2008 年 文 12)Hogg, M. A. & Abrams, D. 1988 Social identification: A social psychology of intergroup relations and group processes. London: Rouutledge. 文 13)Gerden, K. J., Gergen, M.M., & Barton, W. H. 1973 Devience in the dark. Psychology Today, 7, 129-130. 文 14)Carr, S. J. & Dabbs, J., & Miller , S. J. 1976 Effects of room enviroment on self-disclosure in a counseling analogue. Journal of Counseling Psychology, 23, pp.479-481. 文 15)Gofford, R. 1998 Light, decor, arousal, comfort and communication. Journal of Environmental Psychology, 8, pp.177-189. 文 16)メーラビアン A. 岩下豊彦・森川尚子 ( 訳 ) 「ヒューマンスペース」川島書店 ,pp.281-289,1981 年 文 17)黒川光流 『初対面時の会話において部屋の環境が発話および印象に及ぼす影響』 p23,p25,2005 年
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9
9 おわりに 9.2 謝辞
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第2部 資料編
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資料編 グラフィック化した動画のタイムラプス画像を載せる。
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資料編
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資料編
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資料編
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資料編
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資料編
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資料編
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資料編
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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親密度・集合密度・時間の変化が発話する対人距離の伸縮に及ぼす影響に関する関する研究
資料編
Study of distance between two persons starting conversation based on change in intimacy,density,and time.
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