はじめに
戦後わが国では、地方部から大都市部へ膨大な人口移動が生じ、急増する都市住宅需要の受け皿として、 都心周縁部や郊外部を中心に大規模な住宅団地が多数開発されました。
今回の計画対象地である江東区大島・北砂地区にも、高度成長期前後に建設された大規模住宅団地が多 く分布しています。大島・北砂の団地群は、都心に近いため通勤通学・生活利便性が高く、高齢者、子育 て世代、外国人世帯など多様な層のニーズを受け止めています。また良く管理された豊かな屋外空間は、 周辺住民にも解放されており、東京都の広域避難場所に指定されるなど、都心近くの貴重なオープンスペー スとして有効に利用されています。その一方で、昭和40〜50年代に開発された他の住宅団地と同様に、 少子高齢化・単身世帯増等の社会構造の変化や、住宅の間取り・設備水準等の陳腐化等に起因する多くの 課題を抱えており、その再生・活用の方向性を指し示す事は喫緊の課題となっています。
この冊子は、早稲田大学建築学科でまちづくりを学ぶ学生たちが、江東区大島・北砂地区に点在する住 宅団地群とその周辺地域を対象として、団地の再生ビジョンを描くとともに、それを契機として現代的な 地域課題の解決を目指すために、「団地再生を契機としたまちづくり・空間デザイン」を提案したものです。
それぞれの案には、学生なりの「大島・北砂地区」への思いやまちづくりのアイディアが込められてい ます。この冊子が、これからのまちづくりを考えるためのアイディア集となって、大島・北砂地区にとっ て少しでも有意義なものになればと願っています。
演習概要
集中作業合宿、現地スタジオでの作業など一連のグループワークを通して、提案をまとめました。5月 上旬の集中作業合宿中には、共同作業、テーマ設定を行いました。その後大学にその成果を持ち帰って、 さらに発展させてまとめ直し、6月初旬の学内講評会を経て、7月に江東区文化センター、ならびに日本 総合住生活株式会社(JS)本社において、それぞれ成果発表会を開催しました。
4/6 オリエンテーション/講義
• 課題説明
• 講義「団地再生の事例」(阿部俊彦先生)
4/13 現地視察/講義
• 団地及びその周辺地区の視察
• 講義「団地の変遷・近年の団地再生活用」(廣兼周一先生)
4/20 エスキス/講義
• ファーストインプレッション発表、グルーピング
• 講義「URによる団地再生の取り組み」(UR都市機構 岡雄一様) 4/27 エスキス/講義
• グループ調査結果に関するエスキス
• 講義「対象地域の都市的課題について」(江東区 高垣克好様) 4/30 東京近郊団地見学会
• 多摩平団地、永山団地、ひばりが丘団地、光が丘団地を見学 5/11〜5/15 集中作業合宿(熱海)
• 作業及び討論、ピンナップとエスキス
• 提案の全体構成案の作成
• 中間発表会
5/18 エスキス/講義
• 提案の精緻化のためのエスキス
• 講義「団地再編(更新・再生)を考える」(関西大学 江川直樹先生)
5/25 学内中間発表会
6/1 エスキス
• 最終提案の骨格の確定
• プレゼンテーション図面の作成
6/8 学内講評会
7/5 成果発表会(江東区)
7/15 最終成果発表会(JS本社)
対象地概要
今年度の設計演習Fは、江東区大島・北砂に点在する、日本住宅公団が開発した大規模な面開発住宅団 地群と、その周辺地域を対象としました。
大島・北砂地区は、各種災害リスクの存在(海抜ゼロメートル地帯に位置することに起因する豪雨時の 浸水リスク、木造密集市街地を中心とした火災リスク・震災時の倒壊リスクなど)、待機児童問題に代表さ れる子育て不安の存在、高齢化の進展による医療福祉ニーズの高まりや変化など、多くの都市的課題を抱 えています。団地の再生をきっかけとして、周辺地域をふくめたまちづくりへと展開し、まち全体を改善 していく事が求められています。
学生達は、地形・水系など土地の持つ潜在力と、様々な人間活動の経緯・様相を読み解きながら、現代 的な地域課題の解決を目指し、かつ地場の存在力を引き出すための多様な波及効果を狙った提案を試みま した。
提案概要 団地再生を契機としたまちづくり・
空間デザイン提案
全9チームの提案概要です。江東区大島・北砂地区を対象として、団地の再生をきっかけとして周辺地域 を含めたまちづくりへと展開し、まち全体を改善する計画提案を行いました。
■ 逃げやすいまち 逃げこめる団地
team ななじ(石綿朋葉、柴田千穂、千葉大輔、日比野絢子、松本慎)
木造密集市街地と住宅団地の混在する北砂地域における段階的な事前復 興プログラムを提案する。このプログラムは「復興準備期」「避難生活期」 「復興始動期」「本格復興期」の4つの段階に分けられ、団地を地域防災の 拠点にすることにより、緑道や公園などのコミュニティ空間創出と沿道整 備による密集市街地の防災性向上を実現する。
team キクマサムネ(下山萌子、田辺一己、リムジョンミン、坂口志歩)
水害リスクを抱える江東区を、水と育つ・生きる街、つまり「育水都市」 として捉えた。その上で、住民に対し声高に訴えかけるような水害対策で はなく、日常的に親しまれる場に潜ませるような「かくれた防災」を実現 するために、「BioSwale」「シンスイ公園」「団地水屋」という三つの段階 的アプローチを提案する。
■ 拓け土間
team DOMADOMA(治田朋実、M E Grosoli、渋谷健太、小木健介、津島英征) 団地のピロティ空間を地域住民で共有する新たな空間所有のありかたを 提案する。住宅団地周辺には用途や規模の異なる多様な機能が個々に点在 しており、各々の特性に応答したシェア空間を挿入する。団地内オープン スペースは新たなコミュニティ空間として、団地周辺は様々なアクティビ ティや出会いを創発する交流の場として再構築される。
■ 生きがいをもち、住まいを広げる小さなはたらき方
team YRA都市機構(久谷理紗、L Mancini、福原由里絵、吉田俊介、Y R Aufa) 高齢者・外国人・主婦など多様な住民が、生きがいを感じながら「小さ くはたらく」ことができるライフスタイルを提案する。団地1階部分に工 房・キッチン・印刷所という3つの「小さな仕事場」を埋め込み、まちの 賑わいを団地に引き込む。主体的な市民活動の連鎖と相互作用によりムー ブメントが形成され、団地とまちが緩やかにつながっていく。
■ 育水都市 -隠されたいつの間にか防災-
■ LINKED PATH
team Oz(田中彩友美、野村祥子、王晶、M Dalda、伊村太朗)
かつて物流拠点であった運河沿いに事前復興のための緑地帯計画と観光 拠点整備を行う。団地の老朽化や居住者の減少に応じて住宅団地を段階的 に緑地空間へと更新していくことで、防災性の確保された豊かな居住環境 が創出される。団地内には観光客が生活体験を出来る拠点を設け、豊かな 緑地空間では地域住民との多様な交流活動が生まれる。
■ 祭りがつなぐまち
team とり(紅林賢、上岡直樹、江本雄弥、成田美沙樹、神谷優梨子) 大島北砂地区に点在する、多くの神社と祭りの存在に着眼するとともに、 地域コミュニティが小名木川によって分断されていることに問題意識を抱 いた。日本の信仰の軸として存在する「稲作文化」を、新たな町の要素と して定着させることにより、「団地」と「地域」という形で分裂していた コミュニティを集約するシステムを提案した。
■ 文化的多様性に富んだ都市像
team コーヒーメーカー(R Lefebvre, 片山雄斗, 鷹野泰地, 今優馨, 吉田裕太) 大島四丁目団地は、外国人居住者が多く、オープンスペースが多様な使 われ方をしている点に注目した。団地のストック活用の方向性として、オー プンスペースを「誰にとっても使い心地よく」、「多様な使われ方が可能に なる」よう再編集し、その場所でのイベントや交流の誘発によって、文化 的豊かさを追求することができるプランニングをめざした。
■ YURUI BOUNDARY
team まもなく(R Carat、李麗婕、森裕哉、稲毛洋也、小木健介)
人々の生業が自然と生まれ存在する場所には、ゆるい空気が流れる。ま ちの中の「ゆるさ」を抽出し、それを用いてかたく隠な空気が漂う団地に 周辺のゆるい空気を吹き込むことを考えた。1・2階は適切に店の配置や 通り抜けを操作し、地域住民の交流が盛んに行われるようにする。また、 3階以上は壁や天井を抜き、用途に合わせた部屋改造を行う。
■ HEALTHY LIVING
team ORTICA(本田理沙、佐藤慧介、石袁吉、A Marconi)
地域住民の健康をサポートする健康拠点及び健康増進プログラムを提案 する。ピロティ、空き部屋、駐輪場、中庭などの空間に健康に関する施設 を取り入れる。「健康」とは社会的な状態も表すという考えのもと、団地
内で人々の間に交流が生まれることを目指した。団地住人の健康的な1日 のモデルケースも示している。
合宿最終発表会風景
江東区発表会風景
各チームの提案
■ 逃げやすいまち 逃げこめる団地
teamななじ(石綿朋葉、柴田千穂、千葉大輔、日比野絢子、松本慎)
■ 育水都市 -隠されたいつの間にか防災-
teamキクマサムネ(下山萌子、田辺一己、リムジョンミン、坂口志歩)
■ 拓け土間 teamDOMADOMA(治田朋実、MEGrosoli、渋谷健太、小木健介、津島英征)
■ 生きがいをもち、住まいを広げる小さなはたらき方
teamYRA都市機構(久谷理紗、LMancini、福原由里絵、吉田俊介、Y RAufa)
■ LINKED PATH
teamOz(田中彩友美、野村祥子、王晶、MDalda、伊村太朗)
■ 祭りがつなぐまち
teamとり(紅林賢、上岡直樹、江本雄弥、成田美沙樹、神谷優梨子)
■ 文化的多様性に富んだ都市像 teamコーヒーメーカー(RLefebvre,片山雄斗,鷹野泰地,今優馨,吉田裕太)
■ YURUIBOUNDARY
teamまもなく(RCarat、李麗婕、森裕哉、稲毛洋也、小木健介)
■ HEALTHYLIVING
teamORTICA(本田理沙、佐藤慧介、石袁吉、AMarconi)
合宿最終発表会
各チームとの質疑応答
北砂地域の復興拠点となる団地-人々 の生活文化を守る場所としてななじ
・非常時、住民は基本的に自分の家にいる ことになっており、東日本大震災の際にも そのような対応をした。果たして団地住民 は避難の際に広場に出てこられるのか、考 慮に入れるとよいだろう。また団地のトイ レの少なさについても考慮してほしい。
・非常時を想定した案であるが、通常時は 広場をどのような用途で使うのか。団地再 生を考える上では、通常時の利用も重要な のでぜひ示してほしい。
・細かいところまで調べられている。木造 家屋は火災が懸念されるが、その対策とし
て道路をどうしていくかが重要だ。道路に ついては、現状ではアクセスの上でも問題 がある。この点についても今後調査して、 提案に含めてほしい。
民族性を互いに理解できる仕組み コーヒーメーカーズ
・とても面白い提案だ。5丁目団地はオー プンスペースが豊富だが、外国の方は日本 人と生活様式が異なることもあり、多様な 空間の使い方が見られる。彼らがオープン スペースをさらに活用するには、どのよう な活動が想定できるか考えてほしい。
・動線の計画だけでコミュニティを生むこ とは難しいので、ハード面だけでなくソフ ト面の提案もほしい。
・オープンスペースの使用頻度調査は、目 視観測によるとのことだが、団地は時間に よって人の流れが変化するので、その点に は留意する必要がある。
祭りがつながる街
とり
・「米を作る」という行為を通じてつながり を作るというアイデアは面白いが、担い手 となる住民をどう引き込んでいくのかにつ いても、ぜひ考えてほしい。
・次のステップとして、神社にもヒアリン グするなどして、歴史的な文脈を掘り下げ て分析すると良いだろう。
・住宅団地は、完成当初は地域の中で「異 質なもの」とされていたが、今後はむしろ 地域の歴史を守っていく場所となるとすれ ば面白い。地域の人のニーズによる裏づけ があるとなお良い。
・周辺の神社の神輿はどこに保管されてい るか、神輿の蔵は通常どのように利用され ているか、祭りを共同で行っているか、な どについても調べると良い。
観光団地
・私たちが思いつかない斬新な発想だ。こ の提案で運河というリソースにどれくらい ポテンシャルがあると考えているか、どの
くらいの手ごたえを持っているのかを教え てほしい。ぜひこの続きを見てみたい。 ・非常に大規模な計画だ。この提案の最終 的な目的は、人を地域に沢山呼び込むこと なのか?団地の住民の方にこの計画のメ リットをどう説明するかについても、考え てほしい。
・人々に「この街に住みたい」と思わせる 要素は、最終的には「運河」と「緑」だ。 今後さらに具体的に踏み込んだ提案を期待 したい。
・団地に長く住み、担ってきた人々が少な くなっていく事には不安がある。移り住ん だ人がどのように担い手となりえるか、示 してほしい。提案のスケール感を考え直す と、団地はそれほど大幅に壊さずに済むの ではないか。
YURUI BOUNDARY まもなく
・「ゆるい」と「かたい」という言葉を分析 で使用しているが、その境目の判断につい て、もう少し明確にした方が良い。
・パースでは、非常時には飛び降りて避難 するように表現されているが、避難梯子を 使用するなど、より現実的な手段もあるは ずだ。
・上階住民の動線計画など、より具体的に 提案して示してほしい。
いきがいを持ってはたらく
・私たち(JS)の業務に一番近い提案だと思 う。発想も方向性も良いと思うが、「いつ・ どこで・誰が」このような活動を推進して いくのかについて、深めていくと良いだろ う。高齢者が活動の支えとなるような可能 性もあると思う。
・ソフト面の提案がメインのチームだ。先
程のコメントにもあったが、「誰が中心と なってやるのか」については、やはり気に なるところだ。地場産業を活かすのであれ ば、DIYレベルでなく地場産業を復活させ
る勢いで、団地ごとに特色を出して競い合 うなど、提案が展開していくと面白い。
・現実の問題に素直に向き合った良い提案。 3団地それぞれの良さがあるので、そうし た団地ならではの良さについても、提案に 取り込んでほしい。
・団地と周辺地域の長期的な将来像につい ても表現できるとよい。
育水都市-隠されたいつのまにか防 災キクマサムネ
・各自治体では、「高いところ・建物の屋上」 に逃げるように指示しているが、この「団 地水屋」提案と、そうした現行の方針との 関係性についても示してくれると良い。
・一時避難施設だからという理由づけだけ ではなく、この提案によって作りだそうと している価値についても示してほしい。
・「ボックスカルバート」によって道路の中 の空間に水を貯める発想は既にあるが、提 案のように勾配で水を流すのは難しいので
はないか。通常時の交通に支障はないのか についても考慮する必要がある。 ・治水機能が必要であることをメリットと とらえ、街中に水や緑を配置していくこと ができるのではないかという興味深い提 案。折角団地まで「シンスイ公園」を引っ 張ってくるのなら、その水を活用すること を考えてもよいのではないか。技術的な問 題も含めて、提案を深めていってほしい。
DOMA for the city
DOMADOMA
・ここで言う「土間」とは、本当の土間で はなく不特定多数の人が出入りできる場所 のこと。「YURUIBOUNDARY」の提案と発 想が似ているような気がした。これからの 時代に、団地がサステイナブルであるため には「地域との連帯」が大事ということを 説得的に示すことができれば、提案の意図 がわかりやすくなるだろう。
・団地内では中学生たちが部活動をしてい る姿も見られ、それなりに活用されている ようだ。この状況からどうすればさらに空 間性を向上させ、オープンスペースの活用 を促進することができるか。例えば、ろう 学校での提案の中で、どのような活動をし ていくか具体的に見せてほしい。
Healty Living
ORTICA
・JSでも生活支援アドバイザーなど、高齢
者を外に引き出すような、健康のための取 り組みを行っている。団地を地域の健康拠 点として再生していくというのは、良い考 えだと思う。
・団地として「ヘルシーリビング」を売り にするのであれば、サイクリングロードな どを作るだけでなく、遊び心を持たせ、魅 力向上につなげていくことが必要だ。団地 での「ヘルシーリビング」が今後大きなムー ブメントとなるようなイメージが描けると 良い。
学内講評会
各チームとの質疑応答
Diverse+City コーヒーメーカーズ
有賀 提案には幾何学的な斜めの動線や緑 地があるが、それぞれの計画地でどのよう なアクティビティを想定しているのか。例 えば子どもたちの他に、両親や祖父母など が、オープンスペースでどのような新しい アクティビティを行えるのか。全体の配置 計画的なニュアンスは伝わってきたけれど も、そのあたりをきちんと示してほしい。
矢口 分析はうまくできていると思うが、 提案への展開が唐突だ。斜めの幾何学的な 動線を提案に用いているが、最も特徴の濃 い場所に対して、デザインが不足している のではないか。
阿部 広場のデザインには問題があるの で、そこを先ずは直す必要がある。一方で、 それだけで多様性を生むためのデザインと なるかというと、難しいように思う。この
提案だと、ランドスケープの提案をしただ けに見えてしまう。もう少し文化を生み出 すようなプログラムを、最後に入れたらよ かったのではないか。
逃げやすいまち 逃げ込める団地
に示してくれると、提案の全体構造がわか りやすくなる。
有賀 もし私が江東区長だったら、危険度 の高い地域に「逃げやすい空間」を残せる ように努めるだろうし、そのために目の前 にある団地にどう協力してもらえるかと考 えたくなるだろう。逆にURの立場だった ら、周辺の「逃げやすいまち」を作る際に、 団地に新規住民を呼び込めるのかを考える かもしれない。提案にあたっては、区長や URをどのように説得できるか、その辺ま で含めてアイディアを見せられれば良い。 佐藤 復興の時は「なんでもできる」。例 えば奥の方に庭や共用スペースを作りたい ということだって、きちんと提案すれば実 現できる。だから、「これができないから こうする」というのではなく、「このよう な地域を作りたい」というアプローチで提 案することが大切だ。現状では、大きなマ スタープランが足りていない。
廣兼 周辺の密集市街地は機能が低下して いると言っているが、一方で団地が絶対に 大丈夫かというと、そういうわけでもなく て一定の被害が予想される。「(団地と地域 が)全体でうまく成り立つ」といった表現 にするほうがよいだろう。
LINKED PASS
山村 全体像がわかりにくい。個別プロ ジェクトの位置づけを、大きな敷地図の中
吉田 詳細提案では、川沿いの小学校も団 地の再編成に巻き込んでいたと思うが、そ のことがプレゼンテーションから全く伝 わってこなかったのが残念。
有賀 提案全体の構造がややつかみにく い。既存の緑地に手を入れる場所がある一 方で、団地の再編をするところもあり、ま た川の結節点ではアーバンリニューアルも する。そのような様々なプロジェクトの中 で、メインのプロジェクトとして団地の再 編を位置づければ良い。フランクフルトの 団地再開発プロジェクトのイメージに近 い。さまざまな緑が連担し、さらには中心 市街地の再生事業ともつながっていく。 山村 提案の核である団地再編計画のキー プランがないことが残念。大スケールの配 置図、透視図はあるが、主要提案部の空間 性が読み取れるスケールの平面図がない。 佐藤 表紙は面白そうな図だ。ただしあく まで扉絵であって、現況や将来を示してい る図面ではない。また、団地を減築して公 開化するというのは、表現として入れてお くべきだ。
YURUI BOUNDARIES
まもなく
有賀 ゆるいバウンダリーの「作り方」に ついて、口頭で説明はあったが、具体的な プロジェクトについて図に描いて説明する べきだ。雰囲気では伝わって来ると思うが。
後藤 中間発表時の断面図のほうが数段魅 力的だった。とても良かった表現が、学内 最終発表でなくなってしまっていることが 残念だ。
佐藤 提案要素として、中間発表ではコン テナを使っていた記憶がある。コンテナが 持っている強さ、上を通って逃げていく等
の奇抜な発想をやめてしまった。そのよう な提案をさらに深め、表現するべきだった。
廣兼 真ん中のプランは何を表しているの か分かりにくい。大事な絵であることはわ かるが、周辺を描いていないので、周りと の関係性がよみとれない。
有賀 抽出したパターンランゲージを表現 するところで、プレゼンテーションボード が終わっている。テーマに対応した絵を もっと描かないといけない。
祭りがつなぐまち とり
有賀 1/100くらいの縮尺で、全部の関係 性を見せる表現が必要。稲作コミュニティ が生み出された元々の話があると良かっ た。
阿部 提案が、結局小学校単位になってし まった。氏子の範囲等についても調べてい たので、提案に含めた方が良かった。
佐藤 水田は水が巡回していないといけな い。団地の中の水田では、水がどのように つながって、どのように流れるのかもっと 考えてみると良い。稲は放っておいて育つ というものではない。例えば鴨とかトンボ とか、生き物のことも考えなければならな い。
山村 個別の提案に留まらず、それらを幾 つかのストーリーでひも付けていくべき。
冨田 川の観念と橋のリアリティの整合性 を考える必要がある。
杉浦 もっと田んぼに象徴性をもたせる提 案であってほしい。田んぼの位置づけにつ
いて考えを深めるべきだ。
生きがいをもち、住まいを広げる小 さなはたらき方
YRA 都市機構
吉田 「小さな仕事場」について真面目に 考えると、顧客層をどこに決めるかが重要。 例えば、提案の中に出てきた「ものづくり」 は外向きだが、「団地マガジン」は内向き。 やるのであれば、全ての「小さな仕事場」で、 外向きと内向きのビジネスを両方考えた方 が良い。
有賀 ストック活用事業は従来からURが 取り組んでいるが、団地の課題解決を、場 所と空間に落とし込むことが重要だ。その 意味でこの提案は、完成度が高く好感がも てる。提案の「小さな会社」の将来ポテン シャルはかなり高いのではないか。外向き のビジネスの可能性を見せてくれたことも 良い。このようなことを、団地が持ってい る制約を壊すことによって実現可能と明確 に言えると、さらに良い提案になる。
矢口 アーケード部分に対する提案が欲し い。せっかく広い店先スペースがあるので、 提案している「小さなもの」との関係性が 描き出せると良い。きっちり分けるんじゃ なくて、ゆるく使っていく提案をすること で、オープンスペースのデザインにもなる。
育水都市 隠されたいつのまにか防災 キクマサムネ
冨田 中庭の平面デザインは「かっこい い」。かっこいいというのは、必ずしも褒 めていないのだけれども。なぜこのような デザインになったのか、説明できないとい けない。
杉浦 平面図と断面図が対応しているよう に見えず、関係性が読み取れない。水がた まるのは良いとして、どのようなプログラ ムがあるのかを読み取れるようにしてほし い。「シンスイ公園」での色々なアクティ ビティがわかるように。また、Bio Swale は水を貯めるだけではなくて、歩いていて 気持ちのよい場所になるとか、集まれる場 所になるとか、そのような説明が必要だ。 それによって地域をどのように再編してい くかを示せればいい。
吉田 浸透率パレットの提案は面白い。浸 透率を上げるだけなら面積を確保すればい いのだが、この提案は住民の人が一つパ レットを買って、自分のところに置いたり とか、展開性がある。
後藤 断面図の屋上庭園が寂しい。屋上庭 園は、ユニテみたいにもう少しリッチにで きないのか。
拓け土間 DOMADOMA
吉田 前よりも面白い絵が出てきた。だが もっと踏み込むと、土間は普通屋根がか かっている。土間の空間性を継承すると、 団地と団地の間に屋根を掛けて、雨の時に 集まれる場所にすることも考えられる。
有賀 表現として、パースには、周辺と一
階部分の関係性が表現されていないと非常 にわかりにくい。全体的に、図表現に問題 があるのでは。
後藤 この平面は狙ってやっているなら非 常にいいんだけれども。セジマさんみたい。
山村 ようやく平面図で、全体のDOMAら しさが表現されてきた。くわえて、パース
でもDOMAの空間性を表現してほしい。
杉浦 しつらえの要素によってDOMAの感 じを図面に表現できていない。DOMAの中 で時間や用途、使う人によって可変性があ るかを見せられるといいのでは。
HEALTHY LIVING
ORTICA
廣兼 健康はとても大切なテーマ。ここの ところ団地の「朝活」ということで、朝食 の提供もセットでやれれば、などと考えて いる。私の会社の社員はなかなか真面目に とりあってくれないが(笑)。壁を抜くと 言っていたが、かなり耐震補強をして保っ ているということを考えてほしい。特に壁 は、簡単に抜いたりはできない。逆に、床 を抜く場合には補強がやりやすい。
吉田 大きな図が、色使いも含めて、健康 になれそうな雰囲気を表現できていない。
君たちの思想を図面に表現してもらいた い。朝はここで何をして、昼はここで何を するなど、様々なことが図面上に表現され ないと。
山村 提案してくれた健康プログラムは、 いずれも良いと思う。最後の部分は、空間 をみせつつ説明してもらっても良かった。
阿部 屋外もデザインすればよかった。ア クティビティが出てきた中で、全体の平面 図に表すとか。現状では屋外空間について は、既存の図面から少し変える程度の表現 しかできていないが、例えば走っている姿 を見せるとか、野菜が見えるようにしたり とか。
杉浦 この提案の核はアクティビティやプ ログラムだが、その内容がプレゼンテー ションから直感的に読み取れない。ラジオ 体操はこことか、走るコースはこことか。 どのような行為が発生しうるのか、アク ティビティがわかるプレゼンテーションに してくれるとよい。
成果発表会(江東区)
各チームとの質疑応答
逃げやすいまち 逃げ込める団地 ななじ
・ 団地の駐車場には空きも多いので、緑化 するというのは良いアイデア。もしヒアリ ングをしたのであれば、内容を教えて欲し い。あるいはヒアリングでなくても、自分 たちがどう思ったか教えて欲しい。
ななじ 団地が建設された当時は、団地内 で生活が完結することが想定されていた。
しかし現状を見ると、団地の住民が周辺の 商店街を日常的に利用するなど、実態は大 きく異なる。団地から周辺地域への出入 りをしやすくなるように整備しなおすこと は、災害時のみならず日常時においても必 要だ。また、団地周辺にはオープンスペー スが少ないので、周辺住民が団地に入りや すくすることにも意義がある。
・ 北砂地区の課題をよく勉強している。こ の提案の方向性は、行政の方針とも概ね一 致するが、具体的な手法を教えて欲しい。 密集住宅地には空地が点在している。空地 の創出はなかなか実現が難しいのだが、具 体的なアイデアはあるか。
ななじ 密集市街地の住民は、長年この地 に住みつづけている高齢者が多い。それら の方々が団地内の老人ホームに入り空き家 になった際に、敷地の住宅を高層化し、連 鎖的に創出していくという手法を想定して いる。
隠されたいつのまにか防災 キクマサムネ
・ 水害に対する地域住民の危機意識が低い との指摘があったが、根拠があれば教えて ほしい。また、「団地水屋」に関しては良い 案だと思うが、水屋に転用する際のインフ ラ設備等、災害時のライフラインの共有に ついてどう考えているのかお聞きしたい。 学生 ヒアリング調査では、水害時の避難 場所を半数以上の人が知らなかったことか ら、水害に対する危機意識は不十分と考え た。災害時のライフラインについての考え 方としては、熊本地震でも比較的短期間の うちに団地のライフラインが復旧したの で、大きな問題は無いと考えた。
佐藤 地震の問題はわかりやすく切迫性が あるが、水の問題はややわかりにくい。学 生たちはそのことに着目して、実際に地域 を動きまわって調査し、提案作成を試みて きた。Bio Swaleの計画などを通して、日 常から防災について意識する機会があれば いいのではないかということに最初から一 貫して取り組んできた。
拓け土間 DOMADOMA
・ 土間を大きいものから小さいものまで 作っておりとても良いと思う。もし本当に 実現した場合、箱だけ作っても仕方がない と思うが、どう人と人をつなごうと考えて
いるのか。
DOMADOMA 例えば南側にある商店街で は、徐々に活気がなくなり店も抜けてきて いる。また周辺には小規模な工場も多いが、 継業問題があり、閉鎖が相次いでいる。こ のような状況では、地域に蓄積されていた ノウハウが失われてしまう。そうした危機 感をもつ地域住民にアプローチしていくこ とを考えている。
・ 6丁目団地は旧耐震建築物。しかもかな り大規模なピロティを持つ建築で、提案の 通りに再整備すると、耐震的には弱くなる と思うが、その点についてはどのように考 えているか。
DOMADOMA 今あるストックをどう活用 するかを中心に考えてきたので、耐震性に ついての想定は弱いというのが正直なとこ ろ。これから、そこも加味して考えていき たい。
生きがいをもち、住まいを広げる小 さなはたらき方
YRA 都市機構
・ 4丁目団地を的確な視点で見ており感心 した。4丁目団地は、建物が壁状に立ちは だかっていて、外部の人が入りにくい構造。 昔は団地内で生活が完結するように、団地 を地域と溶け込ませないように、という考 え方があったように思う。それがそのまま、 今のような状態になってしまっている。ま た、ソフト面のなかなか難しいところに切 り込んでいる点もよかった。
・よく考えられたアイデアだと思う。「小さ
育水都市2016年7月5日 於 江東区文化センター大研修室
な」というのがキーワードと思うが、なぜ そのワードに重点を置いたのか、教えてい ただきたい。
YRA 居住者自らが、地域を巻き込みなが ら自分たちの手で団地を作り変える。そう した「小さな」意思を引き出し、まとめあ げていく計画となることを意図した。
山村 団地に働く場所を作るという提案。 団地というのは一義的には居住の場だか ら、働く場所というのはイメージしづらい かもしれない。学生たちはヒアリングなど を通して、団地には必ずしもフルタイムの 労働ではない、ちょっとした労働を通して、 社会に参加・貢献したいと考えている方が 多くいることをつかんだ。主婦・高齢者・ 外国人など多様な居住者がいるのがこの団 地の特徴だが、「小さな仕事場」はそういっ た多様な住民の社会参加を促進するきっか けを創りだすきっかけを提供する場だ。
LINKED PASS
OZ
・ ここに住んでいる方は、高齢者や外国人 が多い。高齢者が増えると外出しない人が 多くなると思うが、そういった人々を外に 出すような仕掛けは考えているのかについ て教えて頂きたい。
OZ 共同菜園や共同キッチンで住民が交流 するように考えている。
・ 私は以前、川の担当をしていたので、か なりハードルが高いのは事実だと思うが、 非常に面白い提案だ。今後更に勉強して、 これが実現できるようなことを見据えて建
築の仕事について頂ければ。
佐藤 私の外国人の友人は、日本の団地ほ ど安心してゆったり生活できる場所はない
と言っていた。欧州の団地は、危なくて生 活できるような場所ではない。日本の団地 は世界的にかなり特異なので、ツーリズム に可能性を見出すこともできるのではない
か。そういう発想でこのチームは取り組ん できた。他の観光地とは大分イメージが違 うが、新しい視点としてそういう発想もあ りうるのではないか。
祭りがつなぐまち
とり
・ この計画では、かなりの量の米が収穫で きると思うが、これだけの米をどう地域の お祭りに生かすのかの構想を聞かせてほし い。
とり 餅つき大会で餅にしてもらうこと や、お酒をつくって商店街で売ってもらう ことなどを考えている。
・「 舞台」の提案はとても面白いと思った。 観客席など舞台を観る側の視点からの提案 は何かあるか。
とり 川沿いの田んぼの段差や桟橋、対岸 から舞台を観ることを想定している。
Diverse+City コーヒーメーカーズ
・ 団地内の住民と団地外の住民との交流に ついて、現状では団地外の住民はペットを つれて来らられないなど色々な制約がある
が、その点どう考えているのか。またイン ド人は固まる傾向にあり、なかなか日本人 と交流することはないが、その点どのよう に考えているか。
コーヒーメーカーズ 既存の制約について
は、必要に応じて緩和しつつ、団地住民に 迷惑をかけないようなルール作りを考えて いく必要がある。今回提案した各種のアク ティビティは、できるだけ住民の生活を侵 害しないものを選択している。外国人と日 本人の交流可能性については、オープンス ペースが多様なライフスタイルが接合する 場所と考えている。例えば、今回提案して いる共同イベントを通して育ったインド人 の子供が、その後継続的に日本人とコミュ ニケーションをとれるのではないかと考え た。
・ 広場を重要視されているということで、 インド人と日本人が考える広場の違い、広 場に対する認識の違いから、こういった提 案をすれば交流が生まれるのではないか、 ということがあれば教えて頂きたい。 コーヒーメーカーズ 広場の使い方そのも のには、大きな差異はみられなかった。た だそれぞれ少しずつ違う場所で、同じよう なアクティビティをしている。新たなイベ ントなどを通して、これらを結びつけるこ とができるのではないかと考えた。
YURUI BOUNDARIES
まもなく
・ かたい団地をゆるくしていくということ で、地域の方々とのコミュニケーションを
生みだしていくということだが、具体的に 外の方々との交流の形はどのようにするの かを教えて頂きたい。
まもなく 周辺住民が通り抜けやすくなる ようにしたり、団地が孤立している状況を 変えて、周りの下町の雰囲気を取り込んで いきたい。
・ 団地の建物自体に関して、今回の提案で は壁や天井を抜いたりしていると思うが、 建築基準法などを考えると改修をしながら 住民が住み続けることは難しいとか、一斉 に住人に出てもらってから工事をするな ど、より具体的な方法も考えてもらえれば さらに良かった。
HEALTHY LIVING ORTICA
・ これまでの発表は地域コミュニティの醸 成という視点からの発表が多かったと思う が、この班が「健康」に目をつけた理由を 説明してほしい。
ORTICA 北砂5丁目団地は巨大なオープ ンスペースを有するので、運動などのアク ティビティができるのではないかと考え た。また、高齢者の方々にヒアリングをし た際に、非常に不健康な食生活をしている 高齢者が多いことを知り、そこに問題を感 じた。
・経営的に成り立つ事業であり、好感を持っ た。儲からないと、企業も資金を出してく れない。これを北砂団地だけではなく全体 のシステムとして考えてくれると、さらに 良いと思った。
・UR都市機構が大手のコンビニと提携した と聞いたが、この案と関係がありそうなの で調べてみると良い。空き店舗に色々な機 能を挿入していくことも、可能性があるの では。
後藤 先ほどビジネス感覚がある、といっ たコメントがあったが、その点で私も面白 いと思う。また、民間ビジネスの視点だけ ではなくて、この提案で江東区全体の医療 費が下がるということをプレゼンをすれ ば、さらに良かった。
・この提案は、URが考えている都市づくり の方向性とも合致する内容だと思うので、 ぜひとも研究を続けてブラッシュアップ し、再び江東区に発表する機会があればと 思う。
最終成果発表会(JS本社)
各チームとの質疑応答
いるか。
逃げやすいまち 逃げ込める団地 ななじ
・「団地のようなまち」とはどういう意味か。 エリア全体が団地と同じような環境を備え ながら安全になるということか。
ななじ 団地は面的に建物をつくることで 空地を生み出している。団地を先例として 連鎖的に建て替えを行い、空地を有したま ちをつくっていくことを意図している。
・ 密集市街地の改善は、ハードで大規模に 行うことが主流で、お金も時間もかかる。
それとは少し異なる、密集市街地改善の変 え方のヒントを示して頂いた。
・ 駐車場が多くあることを利用して、入り やすくなるというのは良いアイデアだ。
佐藤 区役所では「団地は地域に対して閉 じようとしている」との声が聞かれたが、 特定の地域の周辺住民を取り込むことは可 能か。
・密集市街地との連携であれば、地域を絞っ て入居者を入れるということはできると思 う。
育水都市 隠されたいつのまにか防災
キクマサムネ
・ 住民をターゲットに色々提案をされてお り、計画の中身が親しみやすい。居住者の 計画や運営への参加に関してはどう考えて
キクマサムネ 団地の自治がしっかりして いるということもあり、水屋の運営には住 民の参加が期待できる。一方で当計画は、 住民の無意識に訴えかけるものとなること を意図しており、住民が主体的にものをつ くることは考えていない。
・ 災害時に重点を置いているが、これは周 囲の人々に向けた提案なので、日常の使い 方についても考えてほしい。日頃団地の住 民の方がコミュニティ形成のために使うこ とを考えていたらより良かったと思う。
・震災の時も含めて、エレベーターが止まっ た時、上階の部分では高齢者が避難できる のか。
キクマサムネ 江東区では隣の住人が避難 の際に高齢者を助けてくれるという制度が ある。また熊本県の水害では数時間で電気 が復旧したので、ライフラインは早期に回 復することを想定している。
拓け土間 DOMADOMA
・ 閉鎖性的な団地を地域に開いていくとい う提案。その為にピロティを活用するのは 良いと思う。単にピロティとしての転用だ けでなく、住棟からはみ出すような空間デ ザインがなされているのかについてお聞き したい。
DOMADOMA 外部との視線のつながりや 光の通り方を考えて半屋外空間の設計をし ている。
・ 現状のピロティはあまり面白くない空間
だが、ここに地域の文化を入れ込んできた 点が良い。
・ 団地の方が先にできたのだが、今となっ ては閉鎖的に見えてしまう。そうした問題 に対応する為に、こういう方法もあるのか と思って聞いていた。もう少し中庭との関 係が考えられていれば、さらに良かった。
生きがいをもち、住まいを広げる小 さなはたらき方
YRA 都市機構
・ 団地一階部分の店舗は、計画された当初 はよく使われていたが、時代の移り変わり とともに寂れてきた。こういった提案に よってふたたび使われるようになり、にぎ わいが戻ればすばらしい。
・ この班は、働く仕組みをしっかり考えて いるのがいいと思った。工房とキッチンと 印刷所というのがあったが、印刷所という 発想はなかなかいい。
・運営の人材は確保するのが難しい。だが、 それぞれ得意なことがあり、得意なことで あれば積極的になれる。団地に何千人も住 んでいる中で、それぞれが少しずつ得意な ことを出し合っていくことは、これからの 団地を考えていく上で重要なのではないか と思った。
・ 団地をあまり大規模に触らず、コンパク トですぐにでもできそうな提案。かつ新し いコミュニティを作れそうでいいと思っ た。一番難しいのが運営のところで、そこ がもう少し詰められれば実現できそうだ。
LINKED PASS
・ 団地を周辺の運河と結びつけながら観光 スポットにしていくという発想は斬新だ。 かなり大掛かりに建て替えていて、建築学 科らしい元気さがあって良い。一方で、人 口が減るので躯体だけ残すというのは少し 寂しい。確かに日本の人口は減るだろうが、 東京都のこの地区で本当に人口が減るの か。その辺のストーリーの想定をもう少し 精緻にできればよかったのでは。
・ 提案の50年ビジョンとURとの関係を もう少し説明して頂きたい。最後のボード が薄くて少し見づらいことが残念。
OZ 50年後には団地の躯体は老朽化して おり必ず建て替えか改修は必要とされるの で、その際に人が来る要素を作った上で団 地を公園化する意味はあると考えた。
祭りがつなぐまち
とり
・ 祭りを調べて、そこから収穫に発展し、 水田を持ってきて団地で稲作をしようとい う提案。親水のことを考えている班があっ たので、組み合わせたら面白いのでは。
・ ランドスケープを地域で管理していくこ とのきっかけを作っている提案だ。これは JSの方への質問だが、実際に実現できそう
か。またランドスケープの造園事業を地域 に任せる可能性があるのかお聞きしたい。
JS 実例として町田の団地で田んぼをやっ
ている事例はある。住民が稲刈りまでやっ て餅を作ってイベントをやっている事例も あるので、可能だと思う。
JS 町田の事例はまだ続いている。団地内 を改修してランドスケープを作ることは やっているが、団地の外に滲み出していく 事例はまだない。団地側で畑を作り、地域 住民に管理をただ任せることは難しいの で、地域の人々のやる気を醸成するなどの プロセスが必要だと思う。
佐藤 団地をつなぐメリットはあるか。そ れぞれの団地が繋がってくると面白いと思 うが、団地側からすると繋げて何かメリッ トはあるのか。
・ どちらかというと、繋げてメリットがあ るようにストーリーを作っていくことが大 事。「ななじ」の提案のように、周りの環 境を改修して、防災性能が上げていくよう にできればよい。
Diverse+City コーヒーメーカーズ
・ この提案は実際に住んでいる人の行動パ ターンを分析して具体的にどう行動するか を提案しているところが面白い。建築学よ りも社会学の提案のようで、違う視点を感 じられて良かった。
・ 我々にはない視点で貴重なデータを集め ているので、今後の団地分析の参考になり そうだ。
・ 住民にヒアリングした内容が散りばめら れていたが、どこでどんなことを聞いたの かまとめていただけると一次情報として非
常に有用だ。
YURUI BOUNDARIES
まもなく
・ 実現性という意味で、どの程度検討され ているのかを聞きたい。自由に壁を抜くこ とは私たちもやりたいが、この提案ではど の程度検討されているか。
まもなく 1・2階の壁を全て壊すのでは なく、構造上計算した上で抜けるものは抜 いていく。
・ 実際に全てできるかというと難しいと思 うが、ピーコックを木質化するなど現実性 の高い提案もたくさんあってよかったと思 う。
・ 若い人が団地にどのようなイメージを 持っているのかが気になる。今回は「かた い」がネガティブな要素としてあったと思 うが、他のネガティブ要素やポジティブ要 素を教えていただきたい。
まもなく 「暗い」「閉鎖的」「均一的」は ネガティブな要素。その一方で、「多様な 人が同じような暮らしをして同じような価 値観で共有部分を活用していること」や「子 供や高齢者を核として広い世代のつながり ができている点」は良い部分と感じた。
HEALTHY LIVING ORTICA
・この 提案は、団地に住む具体的な生活の 仕方、それぞれの住民を結びつけて考えて いる点が素晴らしい。多様な人々がどう結
びつけられるかを考えることは難しいのだ が、この提案ではかなり具体的に考えられ ており参考になる。
・ これまでの提案の中で一番実現性の高い 提案。JS全面バックアップのもとやってみ てもいいのではないか。
・ 運営方法としてどう関わるか、このシス テムをどうマネジメントしていけるかを しっかり考えてもらえれば、JSもその一端 を担える可能性がある。
・ 高齢者や子育て世代など、世代によって それぞれの生活の軸があるが、例えば高齢 者と子育てをしている親子はかなり密接に 結びついているはずだ。それらをリンクで きるようにできればさらに良かった。
早稲田大学創造理工学部建築学科
佐藤滋 (早稲田大学理工学術院教授) 後藤春彦 (早稲田大学理工学術院教授) 有賀隆 (早稲田大学理工学術院教授) 矢口哲也 (早稲田大学理工学術院教授)
廣兼周一 (早稲田大学非常勤講師) 富田宏 (早稲田大学非常勤講師) 杉浦榮 (早稲田大学非常勤講師) 吉田道郎 (早稲田大学非常勤講師) 阿部俊彦 (早稲田大学非常勤講師) 山村崇 (早稲田大学理工学術院助教)
益子智之 (早稲田大学大学院・修士課程) 山崎優介 (早稲田大学大学院・修士課程) 竹下佑 (早稲田大学大学院・修士課程) 平澤道郎 (早稲田大学大学院・修士課程) 五味尭穂 (早稲田大学大学院・修士課程)
千葉大輔 治田朋実
RCarat
早稲田大学創造理工学部建築学科 2016年7月