Arj 02 izumi kitagawa fukunaga

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「空間ぞのストヌリヌ」

キヌワヌド 空間 オヌプン・スク゚ア・プロゞェクト プラン アサヒ・アヌトスク゚ア

Research Journal Issue 02 スク゚アのポテンシャル

泉倪郎矎術家│北川貎奜矎術䜜家│犏氞敊矎術家│叞䌚坂田倪郎アサヒ・アヌトスク゚ア 泉倪郎│ Taro IZUMI矎術家

1976 幎奈良県生たれ。独特のナヌモアず鋭い批評性を䜵せ持぀映像䜜品で泚目を集める矎術䜜 家。2010 幎のアサヒ・アヌトスク゚アレゞデンスプロゞェクトでは、空間党䜓を生かした倧芏暡なむ ンスタレヌション䜜品《くじらのはらわた袋に隠れろ、ネズミ》を発衚。䞻な個展に「勇たしいあくび」 hiromiyoshii、2011 神奈川県民ホヌルギャラリヌ、2010など。䞻なグルヌプ展に「六本朚クロッシ 、 「こねる」 森矎術通、2013、 日本郵船海岞通倉庫、 「ペコハマトリ゚ンナヌレ 2011」 ング 2013 展アりト・オブ・ダりト」 氎戞芞術通、2007など。 2011、 「倏ぞの扉 ─ マむクロポップの時代」

http://taroizumi.com/

北川貎奜│ Takayoshi KITAGAWA矎術䜜家

1974 幎倧阪府生たれ。環境や建物自䜓に手を加え空間そのものを新しい颚景ぞず倉換させおいく䜜品 を制䜜しおいる。2012 幎 1 月、オヌプン・スク゚ア・プロゞェクトに参加し、アサヒ・アヌトスク゚アにお個

Potential 展「フロアランドスケヌプ─ 開き、぀ないで、閉じおいく」を開催。これたで、倧地の芞術祭 越埌劻有

アヌトトリ゚ンナヌレ 2003、取手アヌトプロゞェクト 2006、旧䞭工堎アヌトプロゞェクト 2007、黄金町

バザヌル 2008, 2011 、氎ず土の芞術祭 2010、六甲ミヌツ・アヌト芞術散歩 2010、あいちトリ゚ンナヌレ

2010、せんだいメディアテヌク開通 10 呚幎事業、囜際芞術センタヌ青森 2012 幎床アヌティスト・むン・

レゞデンス「Storyteller ─ 識る単䜍」等に参加し䜜品を発衚しおいる。

http://www.takayoshikitagawa.com/

犏氞敊│ Atsushi FUKUNAGA矎術家

1980 幎広島生たれ。ドむツ・ベルリン圚䜏。音や擬音語に関する䜜品を制䜜しおいる。近幎は、蚀葉の擬

音・擬態衚珟を衚した「文字」や「音声」を甚いお、日々の生掻で耳にする音の珟象を「暡倣」 し、その擬䌌

的な音を知芚的に䜓隓させる事を詊みおいる。これたで、囜内倖で様々なプロゞェクトや展芧䌚に参加。 䞻なものに、旧䞭工堎アヌトプロゞェクト2007、20 Eventi Arte Contemporanea in Sabina,Italy 2007、

Hiroshima Art project 2008、䞭之条ビ゚ンナヌレ 2011 などがある。2013 幎 1 月、アサヒ・アヌトスク゚ア にお個展「ハリヌバリヌコヌラス ─たちなかの亀響、墚田ず浅草」を開催した。

http://www.atsushifukunaga.com

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「空間ぞのストヌリヌ」 泉倪郎│Taro IZUMI ×北川貎奜│Takayoshi KITAGAWA×犏氞敊│Atsushi FUKUNAGA

収録オヌプン・スク゚ア・プロゞェクト

2013 犏氞敊「ハリヌバリヌコヌラスたち

アサヒ・アヌトスク゚アは 2012 幎 1 月、高さ 6 m、総面積玄 260m2

なかの亀響、墚田ず浅草」関連むベント

のメむンフロアを䞭心ずしたあらゆる空間を、公募で遞ばれた䞀名

クロストヌク vol.3「空間ぞのストヌリヌ」

組のアヌティストに蚗す「オヌプン・スク゚ア・プロゞェクト 以䞋、

2013 幎 2 月 2 日土 テキスト構成 䞭島ふみえ島貫泰介坂田倪郎

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OSP 」をスタヌト。この空間でしかできない経隓を創出する䜜品や

䌁画を展開しおきた。 本プロゞェクトに参加したアヌティストの犏氞敊、北川貎奜、そしお 前身ずなる「レゞデンス・プロゞェクト」に参加した泉倪郎が集い、 それぞれが「スク゚アのポテンシャル」にどのようにアプロヌチし たのか、語り合っおもらった。 䜜品玹介│ 1 │ 犏氞敊「ハリヌバリヌコヌラス たちなかの亀響、 墚田ず浅草」

犏氞 ─ アサヒ・アヌトスク゚アの䜍眮する墚田、浅草゚リアの

街の颚景を、この空間に音ずしお凝瞮し、再珟するこずで、このた ちの別の姿を浮かび䞊がらせるこずを目指した䜜品です。墚田、 浅草の街なかを歩き回り、たくさんの街の音を録音したした。それ を 70 ∌ 80 名の協力者の方々に、聎きながら暡倣しおもらい、音 声に眮き換えおいただきたした。いわゆるオノマトペ。擬音語です ね。その音をこの空間に様々に配眮しおいたす。壁際に 7 ぀のサ ラりンドのスピヌカヌがありたす。䟋えば、今聎こえたのが「救急 車」ですね。こうした音がグルグル回っおいたす。頭䞊にも 30 台 ほど MP3 プレヌダヌを吊っおいたしお、様々なたちの音でこの空 間を満たしおいたす。40 分で音が䞀呚したす。 䜜品玹介│ 2 │ 泉倪郎「クゞラのはらわた袋に隠れろ、 ネズミ」

泉 ─ 僕は「アサヒ・アヌトスク゚ア レゞデンス・プロゞェクト」に

参加し、2010 幎 1 月に個展「クゞラのはらわた袋に隠れろ、ネズミ」 を発衚したした。4 F のメむンフロアにコンパネや角材を倧量に぀ かっお、すごく倧きな「すごろく」のようなシステムを぀くり、そこで 僕が毎日サむコロをふっお、止たった目の指瀺に埓っおある行為を する。それを䌚期䞭ずっず続けたした。その指瀺は様々で「すごろ く」に倉化が加わるものや、ただ絵の具をかぶったりずか、笑うだ

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泉倪郎│Taro IZUMI ×北川貎奜│Takayoshi KITAGAWA×犏氞敊│Atsushi FUKUNAGA

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䜜品玹介│ 1 │犏氞敊 「ハリヌバリヌコヌラス ─ たちなかの亀響、墚田ず浅草」

2013 幎 photo: Ken Kato


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けだったりずか、䌚堎が毎日倉化したり、しなかったりずいう䜜品で すね。その暡様を毎日撮圱し、垞蚭の倧きなスクリヌンに远加しお 行きたした。 坂田 ─ 䌚期はどの皋床だったのですか。 泉 ─ 2 週間ぐらいですね。 犏氞 ─ 2 週間も毎日  。結構倧倉ですよね。 泉 ─ そうですね。 「すごろく」の䞭には小さなゲヌムが幟぀も

现かく含たれおいお、これは自転車の車茪で䜜ったルヌレットです ね。色が車茪の䞭で分かれおるんですが、サルやらゟりやら幟぀ か皮類があるんですね。このルヌレットを回しお、止たったずころ の動物に僕がなっお、それで䞋の檻に入れられるっおいう  。 䌚堎 ─笑 泉 ─ この写真は「倪った」埌ですね。スゎロクの䞭に「倪る」ず

いう指瀺があり、䜓の䞭に䜕か入れた埌ですね。 坂田 ─ すごろくの指瀺がここに色々ず曞いおありたすね。 「テヌ

プ」、 「色」、 「倪る」、 「氎」、 「目」ずいうのもありたすね。それに 「倏」、 「䌞びる」  。無茶な指瀺が重なっお行っお、 泉 ─ そうですね。自分でも䜕をするか分からないけど曞いおお

いたものがあっお。どんどん䞍自由にはなっおいくんですけども、 その䞭でどういう颚にやっお行くか。そこがこの䜜品の面癜いずこ ろです。 坂田 ─ 5 階は䜕をやっおいたのですか。 泉 ─䞊から俯瞰しお䞋のむンスタレヌションを芋る、ずいうのが

倧切な䜜品のモチヌフだったんですね。䞋でみおいる颚景ず、䞊 からみる颚景が違うっおいう状態が、この建物の構造䞊から楜しい だろうなず思っおいお。お客さんには 4 階、5 階䞡方ありたすよず 5 䌝えお、奜きなタむミングで䞊がっお芳おもらっおいたした。

䜜品玹介│ 3 │ 北川貎奜「フロアランドスケヌプ ─ 開き、 ぀ないで、 閉じおいく」

北川 ─ 僕が参加したのはオヌプン・スク゚ア・プロゞェクトの第

䞀回。 「フロアランドスケヌプ ─ 開き、぀ないで、閉じおいく」ずい う展芧䌚で、4 F のメむンフロアに䞀぀の倧きな床を䜜りたした。僕 はこれたで屋倖の颚景や建物に手を加えた䜜品を䜜っおきたした

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䜜品玹介│ 2 │泉倪郎 「クゞラのはらわた袋に隠れろ、 ネズミ」

2010 幎


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が、宀内空間に倧掛かりに取り組むのはこの時が最初でした。屋 内空間だから、壁に穎を開けるこずが出来ない、テヌプすら貌れな いず蚀われお最初はどうしようかなず悩みたした。僕が普段、建築 ずか颚景に手を加えるずいう堎合、空間に䜕かしらの連続性をもた せるわけです。䟋えばある倧きな穎を掘るず蚀っおも、呚囲の颚景 ずの連続性のなかから、新しい穎を぀くり䜜品にしおいく。それで、 アサヒ・アヌトスク゚アでは、連続性をもたせながら、加工可胜な建 築的芁玠を远加するこずにしたんですね。それが䞀枚の倧きな床 です。それを眮いお、そこを加工する事によっお䜕か空間に察し おアプロヌチできるんじゃないかず思いたした。その床には、様々 な穎を開けお、僕がこれたで色々な堎所で制䜜しおきた䜜品のア むデアを入れお行く。倩井には、この空間の特城である、たくさん 照明機材がありたす。屋倖で生たれた䜜品が、屋内に䞊んだ時に、 このコントロヌル可胜な照明の効果で、その意味合いが倉わっお、 空間も倉容しおいくのではないか、そんなこずを思っお制䜜したし た。たた倉庫や控え宀、 トむレなども空間的に面癜いので、順路の 䞀぀にしお、様々な空間を䜿うこずも詊みたした。 アサヒ・アヌトスク゚アに぀いお

坂田 ─ 埌半はアヌティストの皆さんがこの空間に察しおどのよ

うに向き合い、構想を緎り、䜜品を制䜜しおいったのか、こちらで 質問を甚意させおいただきたしたので、䞀問䞀答圢匏で進めおさ せおいただきたす。最初にアサヒ・アヌトスク゚アに぀いお基本的 な玹介をさせおいただきたす。このあたりは元々アサヒビヌルの ビヌル工堎があった堎所です。ビダホヌルがオヌプンしおいたこ ずもありたした。この゚リアに 1989 幎に竣工したのが、いた私たち のいるこの 5 階建おの建物、正匏名称は「スヌパヌドラむホヌル」 ずいいたす。蚭蚈はフランスのデザむナヌ、フィリップ・スタルクず 野沢誠。1 階から 3 階たではレストランが営業しおおり、4 階ず 5 階 がパヌティヌスペヌスのような蚭蚈です。有名な屋䞊の金のオブ or 」。フランンス埌で「黄金の炎」 ゞェは「フラムドヌルflamme d’

を意味したす。2004 幎からこの 4-5 階の名称を「アサヒ・アヌトス ク゚ア」ずし、アサヒビヌル・メセナ芞術文化掻動支揎の拠点ずし お、アヌトスペヌスずしおの掻甚が始たりたす。以降、斜蚭管理の

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䜜品玹介│ 3 │北川貎奜 「フロアランドスケヌプ─ 開き、 ぀ないで、 閉じおいく」

2012 幎 photo: Takumi Ota


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正面巊アサヒグルヌプ本瀟ビル│右スヌパヌドラむホヌル│ photo: Gosuke Sugiyama (Gottingham)

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垞勀スタッフが入り、音響や照明などのテクニカルの蚭備を幎々 拡充しおいっお、珟圚はダンス、挔劇、矎術などどんな催しにも察 応できるようなアヌトスペヌスになっおいたす。 プロゞェクトに参加する以前の印象 犏氞敊

坂田 ─ プロゞェクトに参加する以前に、この建物や空間に察し

おどのようなむメヌゞをお持ちでしたか。

音響空間のプランニングのためのテスト

2012 幎 9 月

北川 ─ 倖芳の印象が匷くお。ずにかくバブルなむメヌゞですね 笑。

犏氞 ─ バブルな感じですよね。有名な建築なので、建物自䜓は

知っおいたんですけど、入れるかどうかは知らなかった。 泉 ─ 僕もこの建物の䞭にアサヒ・アヌトスク゚アがあるずは知ら

北川貎奜

なくお。最初の打合せのずきに、この呚りをりロりロしおいたら電

プラン怜蚎のための暡型

話が鳎っお「あの、ただですか」ず。 「どこに行けばいいのか、分か

2011 幎 12 月

らないのですが」ず蚀ったら、 「目の前にあるそこに入っおくれ」ず 蚀われお、それでやっず「あ、ここなんだ」ず分かりたした笑 ファヌストむンプレッション最初の印象

坂田 ─ 実際に空間の䞭に入っおみおどんな感想を持たれた

したか。

泉倪郎 䌚堎でのプラン怜蚎の様子

2009 幎 12 月

泉 ─ ずにかく黒いなっお思いたした。壁の終わりがどこで、どこ

が曲がっおいるのか良く把握できなくお、図面で確認しお初めお、 空間が楕円圢であるこず、奥に倉庫があるこずが理解できたした。 䜜品制䜜を進めるなかで、アサヒ・アヌトスク゚アの“内蔵”がどん どん広がっおいくようなむメヌゞがありたした。 坂田 ─ 内蔵っぜいですか。 泉 ─ 少しファンタゞックな話になっおしたいたすがクゞラに飲み

蟌たれたずしたら、こんな感じなのかなず。僕にずっおここはずおも 内蔵っぜい。内蔵ずいうより、䜓内かな。ここは倖から隔離されお いお、1 F で゚レベヌタヌに乗ったあたりで、倖郚ずの関係が途切 れる感芚がありたす。蚪れた人を非日垞的な状態にするのに、ずお も適した堎所ですね。挔劇公挔やダンス公挔にはすごく向いおい るず思いたす。

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犏氞敊│ドロヌむング│ 2012 幎 7 月 公募資料より

北川貎奜│ドロヌむング│ 2011 幎 5 月 公募資料より

泉倪郎│ドロヌむング│ 2009 幎 ** 月

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犏氞 ─ 倩気の良い日に、ここから倖に出るず倪陜の光がすごく

目に痛いんですよね。僕の堎合、逆にこの閉ざされた空間を倖に ぀なげようずしたんですね。ベルリンから来おみお、意倖ずちょう どいい倧きさの空間だなず思いたした。もっず広い空間を想像しお いたした。空間の広さは、今回「音」が玠材の䜜品だったのもあり、 そこたで気にならなかったですね。 北川 ─ 家が近いので近くを良く通るんですね。名前も「スク゚

ア」だし、勝手に正方圢や立方䜓だず思い蟌んでいたんです。初 めお図面を芋た時に驚いたのが、スク゚ア正方圢ではないこず。 倖芳から分かりづらいのですが、この建物は長方圢なんです。内 郚空間は壁面が曲面で楕円圢。スク゚アずいうような、カチッずし たものじゃない。倖芳や名前から受ける印象ず、実際の建物や空間 にギャップがあり、非垞に曖昧な堎所ですよね。ちょっず䞍思議な 感芚がありたす。 䜜品プランに぀いお

坂田 ─ この空間を䜓隓したあず、どのように䜜品の準備をしお

いったのですか。空間に察しおの実際的なプランはありたしたか 泉 ─ 僕は実はホワむトキュヌブではあたり展瀺したこずがなく

お、なぜか倉庫ずかトむレずか、倉な堎所を䟝頌されるこずが倚 かったんです。ですからアサヒ・アヌトスク゚アはたしかに特殊な 空間なんですけど、僕にずっおはすごく敎えられおる堎所なんで す。ものすごく掗緎されおもいる。ある意味やりやすすぎる堎所。 坂田 ─ そうした堎所に察しお、どのようにアプロヌチされたの

ですか。 泉 ─ 空間が持぀栌奜良さを残さない方がいいんじゃないかず

思っお、わりず匷匕に制䜜を進めようずしたずころがありたした。僕 はそれたで、その堎所でどう芋せたら䞀番良く芋えるかずいうこず を考えお制䜜しおいたんですけど、ここでの展芧䌚では、はじめお 逆らっおみたした。それが自分にできるんだ、ずいうこずにこの機 䌚に気づけたこずが、倧きかった。 坂田 ─ スタッフずの情報共有はどうされたしたか。 泉 ─ アむデアは決たっおいるけれども、䜜っお行く過皋は明確

に決めずにやろうず思っおいたした。あらかじめこちらの意図を䌝

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えるために、むラストみたいなものを描いお枡しおいたんですけ ど、それがあたりにも僕にしか分からないずいうか。倜䞭にノリノリ になっお描いたような、蚳の分からないスケッチで   。 坂田 ─ ただ、このぐらいの䜜品芏暡ずなるず、ある皋床の蚈画

性がないずできないんじゃないかなず思うんですが。 泉 ─ そうですね。そこはい぀も人を困らせおいるずころで 。

ずはいえ、絵を描くずいったら少し倉かもしれたせんが、やりなが らかたちが決たっおいった方が面癜くなるんじゃないかず思いたし た。䜜品によっおはあらかじめプランをきちんず立おお䌝えおない ず、 ぐちゃぐちゃになっおいくずは思うんですけど。 坂田 ─ 北川さんずは䞀緒に暡型をみながら、スタディヌをしたし

たよね。 北川 ─ 僕は建築孊科出身です。建築っお、スケッチや暡型、図

面ずいった手順を通しお、色々なこずを分析、怜蚎しおいきたすし、 そのプロセス自䜓が評䟡の察象にもなるずおも重芁な郚分なんで すね。泉さんや犏氞さんがすごく面癜いのは、そのリスキヌさなん ですよ。僕はどうしおもある皋床バランスを取っおしたう。ずはい え、結果が分かっおしたうず面癜くないから、スケッチではこうなっ おいるけど、どうなるのかわからない領域に䜜品の着地点がある ずい぀も思っおいたす。 犏氞 ─ 僕は公募に出す前にアサヒ・アヌトスク゚アを実際にみ

たこずはなかったんですけど、挔劇やダンス、音楜のステヌゞずし おも䜿っおいるのを知っお、音を䜿う僕の䜜品にドンピシャだなず 思っおプランを出したした。そういう意味ではすごく今回の䜜品に 適した空間でした。 導線の蚭定ずビュヌポむント

坂田 ─ アサヒ・アヌトスク゚アは、仕切りのないスペヌスですか

ら、展芧䌚の床に、アヌティストそれぞれが鑑賞者の導線も考えな いず行けたせん。たた倩井高のある吹き抜け空間なので、䞊階の

5 F からはガラス越しに眺めるこずができる。あたりない空間の構 成だず思いたす。こうした空間の特城を螏たえお、お客さんにどの ように䜜品を䜓隓しおもらいたいず思っおいたのでしょうか。 泉 ─ 先ほどこの空間が胎内みたいだず話をしたんですけど、本

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犏氞敊│蚭営颚景│ 2012 幎 9 月

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圓の意味で䜜品のなかに人を入れたかったずいうのもありたした。 僕は「映像に觊る」ずか「映像のなかに入る」ずいうこずをなぜか感 芚的に欲しおしたっおいるんですね。必ずしも䜓が入らなくおもい いんですけど、混乱するくらいには䜜品のなかに人が入っお来お 欲しい。そういうこずを考えたずきに、䞀芋䜕を芋おいいのか分か らない混沌ずした状態を䞋の階に぀くっお、䞊の階から芋たらわり ず敎頓されお芋えるずいうのは面癜いんじゃないかず思いたした。 䞋の階からも䞊の階からも空間を芋られるこずが、アサヒ・アヌトス ク゚アの空間的なメリットだず思いたす。 坂田 ─ たしかに 4 階で䜜品を䜓隓しおいる時に、泉さんの䞖

界に迷い蟌んでしたっお、空間党䜓がどうなっおいるのか芋通せ ない感じがありたした。犏氞さんの䜜品は、逆に芖芚的な芁玠を 排し、暗闇に音だけを䜿った䜜品でした。受付ずなる 4 F ゚レベヌ タヌホヌルで、䌚堎内ずは異なる音をあえお流しおいたしたよね。 ゚レベヌタヌから降りた瞬間から䜜品䜓隓が始たっおいるような、 そんな導入の぀くり方でした。 犏氞 ─ 4 F ゚レベヌタヌホヌルを䜿っお、倖郚ず内郚を繋げた

かったずいうのがありたす。゚レベヌタヌに乗るず䞀回閉ざされお ちょっず身構えおしたうんですけど、倖の音を再床流すこずで、空 間に入っお来たずいうむメヌゞが少し薄らいでくる。ビュヌ・ポむン トに関しおは、僕にずっおは 4 F の空間党䜓が䞀぀の䜜品なので、 いろんなずころがビュヌポむントずいうかリスニング・ポむントに なっおいたす。堎所によっお想起される堎面や颚景が倉わっおくる ような空間を぀くりたかったずいうのはありたすね。 北川 ─ 䜜品ができる前に、犏氞さんに「どんな䜜品を぀くる

の」ず聞いたら、 「音だけで䜕もないものを぀くりたす」 っお蚀っお たしたよね。芖芚性のある䜜品を぀くっおいる人は、なにかしらの ビュヌ・ポむントを想定しお぀くったりするので、この蚀葉には驚き たした。僕の堎合、最初に思い぀いた絵がビュヌポむントに近くお、 そこから導線を考えお、そのスケッチを立䜓空間に぀なぐのが䞀 番スタンダヌドな制䜜方法だけど、犏氞さんの䜜品にそのような前 提や蚭定がないのが面癜いなず。 坂田 ─ 北川さんの「最初に思い぀いた絵」に぀いお聞かせおい

ただけたすか。 北川 ─ パッず思い぀いたのは䞊の 5 階から 4 階を芋䞋ろした俯

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「空間ぞのストヌリヌ」 泉倪郎│Taro IZUMI ×北川貎奜│Takayoshi KITAGAWA×犏氞敊│Atsushi FUKUNAGA

Research Journal Issue 02 スク゚アのポテンシャル

泉倪郎│蚭営颚景│ 2010 幎 1 月

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「空間ぞのストヌリヌ」 泉倪郎│Taro IZUMI ×北川貎奜│Takayoshi KITAGAWA×犏氞敊│Atsushi FUKUNAGA

Research Journal Issue 02 スク゚アのポテンシャル

瞰した時の絵だけど、ただ芋おみたいのは実際にその堎でどうい う䜓隓になるかなんです。実際にどういう现かな䜓隓になるのか は絵に描けない。そこが面癜い。 坂田 ─ 4Fの空間では、 入口すぐに䜜品である床に䞊る階段を眮

くのではなく、ぐるりず迂回させるように誘導しおから䞊げるような 導線でしたよね。あれも䜓隓ずしおすごく倧事だったなず思いたす。 北川 ─ 䜜品に匕きがあるかないかで芋え方が党然違っおくるん

ですよ。普通、絵画の展瀺だず必ず匕きがありたすよね。䜓隓型の 展瀺っお匕きがないケヌスが倚くお。空間を䜿う䞊で、䜜品ぞの距 離感をどう蚭定するのかが、䞀番面癜いずころなのでそこは倧事 にしたい。今回の犏氞さんの展瀺は、゚レベヌタヌで入口に䞊が るず䜕もビゞュアル的な芁玠がないなかで倖の音が流れおいお、 それがあたかも䜜品ぞの匕きになっおいるようで面癜いなず思い たした。時間軞の䜜り方も党然違っおいお、入口はかなりゆっくり した音なんだけど、䌚堎に入るずちょっず短瞮したり蚀語化された 音になっおいる。やっぱり、それはビゞュアル・アヌティストの切り 口なのかなず思いたした。 坂田 ─ 今回、アサヒ・アヌトスク゚アの空間にた぀わるお話を䌺

いたした。オヌプン・スク゚ア・プロゞェクトは、空間を生かしお、䜕 かを生み出そうずいう䌁画ですから、今埌も今回のような話を少し ず぀積み重ねられればず思っおいたす。みなさん、本圓にどうもあ りがずうございたした。

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「空間ぞのストヌリヌ」 泉倪郎│Taro IZUMI ×北川貎奜│Takayoshi KITAGAWA×犏氞敊│Atsushi FUKUNAGA

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北川貎奜│蚭営颚景│ 2012 幎 1 月

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「空間ぞのストヌリヌ」

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