特集
TALK REPORT
蓮沼執太をスタディする 蓮沼執太 大谷能生[音楽家/批評家] 野村政之 [こまばアゴラ劇場/青年団制作 アサヒ・アートスクエア運営委員] 3 月 5 日に開催した「蓮沼執太フィル」の公開リハーサル終了後、蓮沼さんを良く知る大谷能生さん、司会に野村政之を迎えトークイベントを開催しました。 アサヒ・アートスクエアを拠点に、これから一年間続く「蓮沼執太のスタディーズ」*1 のキックオフの意味も込めて、蓮沼さんのこれまでと、現段階でのプロジェクトの構想に ついてざっくばらんに語り合っていただきました。ここでは蓮沼さんのこれまでの活動に触れた前半部分を掲載します。後半はホームページに掲載予定です。
*1:表面「プロセス」を頁を参照
―近況
じゃないですか。そこで、 まぁ、 「電子音楽です」と。
したいじゃないですか。オファーが来て、何をしよ うか考えた時に、そのアルバムの音楽は、自分 1
野村:今日は「蓮沼執太フィル」*2 の公開リハー
大谷:なるほどね。でもそこからさ、例えば DJ を
サルでしたが、トークでは蓮沼くんの活動全体に
含めてだけど、パソコンでやってる方々って、あま
人がパソコン 1 台持ち込んでパフォーマンスするっ
プロフェッショナルの音楽家を迎えて蓮
ついて聞いてみたいと思っています。近況から聞
りバンドを組んだり、リハなんて面倒くさいことを
て域を超えていたんですよね。自分の満足するパ
沼が組織したオーケストラ。蓮沼が指揮
いてみようかな。最近は本当に忙しそうだね。
やりたいと思わないよね。まずそもそも人と会うの
フォーマンスのためには、他の演奏家、人の力を
蓮沼:そうですね。昨年から続く東京都現代美術
が嫌だと。傾向としてそういう人がパソコンで音楽
借りてアンサンブルにしないと無理だと思った。そ
館での展示*3 が 1 月 15 日まであり、それと平行
を作ると思うんだよ。自分一人でやりたいってさ。
れにコンピューターでつくった音楽を、バンドで
して 1 月 1 日には 4 枚 組の CD アルバム『CC
野村:そうですよね。
*2:蓮沼執太フィル
を執り、年 1-2 回の活動を行う。 、石塚 メンバー:蓮沼執太[Conduct] 、イトケン[Drums 周太[Guitar / Bass]
/ Glocken / Ukulele]、 大 谷 能 生
[Saxophone] 、 葛 西 敏 彦[PA] 、木
、斉藤亮輔[Guitar 下美紗都[Vocal] / Tambourine]、Jimanica[Drums]、 、手島絵里子 千葉広樹[Violin / Bass] [Viola] 、K-TA[Marimba] 、三浦千 明[Flugelhorn / Glocken / Trumpet / Cornet] * 3:蓮沼執太展《have a go at flying
from music part 3 |音楽からとんでみる 3》東京都現代美術館/ 2011 年 12 月 10 日[土]- 2012 年 1 月 15 日[日] * 4:「CC OO」[シーシーウー]
4 枚組 40 曲入り 4 時間半にもおよぶ作
品集。蓮沼のここ数年のプロジェクトで 制作した音楽を収録。これまでのアルバ ムのリアレンジ曲、展覧会や舞台、映画 ファッションショー、CM へ提供した楽
曲、ライブ音源などを収録した現在の蓮 沼執太の集大成ともいえるアルバム。
《タイム/ TIME》 * 5:
東京芸術見本市 in 横浜 2012 で発表。
「音楽ライブの中で、演奏空間や演奏者 の身振りと視聴体験の新たな関係を探求
やったらちょっと驚くでしょう。そこで電子音でつ くったものを、全部生楽器に変換、というかアレ
OO[シーシーウー]』*4 をリリースしました。そ ―もう少し音楽よりに
ンジし直した。ドレミに書き直すのは大変でした
やってて。お客さんが来て、直接 CD も売れる。
大谷:極端な話、人の顔を見たくない、家から出
けどね。一つずつ、一つずつでしたから。それが
人の顔も見える。僕はそういう場が好きだから、
たくないって人が電子音楽の方向に向かいがちな
2008 年。
誘われるとついついやってしまって。そして 2 月に
んだけど。蓮沼くんはそこからドラマーとか演奏家
野村:ついこないだだね。それが「チーム」の始
なると TPAM[東京芸術見本市]に向けた舞台
を入れてアンサンブルを組み、他人に自分の音楽
まりだったんだ。
作品《タイム/ TIME》*5 の集中的な制作に入っ
をやってもらうって方向に、サクサクっと進んで来
蓮沼:そう。本格的に音楽をパフォームしてみせ
ていきました。この間、ホントにブログやツイッター
たようにみえるんだけど。
始めた。
のプロモーションのためのインストアイベントも
で文字を書く暇もなくてですね[笑]。なのでこう
蓮沼:なるほどね。最初のアルバムについて少し
して新しいプロジェクトについて話す機会は、とて
補足すると、僕は環境音を録音するのも好きで、
―使える音楽、プレイフルな音楽
も貴重で嬉しいですね。
その環境音と電子音楽でアルバムをつくって、そ
大谷:蓮沼くんは色々な方向で仕事をしているん
野村:ちなみに僕はその《タイム/ TIME》とい
して日本ではなくアメリカの小さなレーベル*8 か
ですけど、音楽家の方って自分の曲だけやってれ
う舞台芸術の作品を、蓮沼くんにつくってみない ?
ら発売したんですね。当時は、日本ではどうせ知
ばいいって人もいるわけだよね。自分の曲をちゃ
と企画した人間です。大谷さんと蓮沼くんはとい
られないだろうと思ってた。でも実は日本に卸す
んと作りたいし、自分の音楽が大事ってのがある。
うと、大谷さんが蓮沼くんのフィルでサックスを吹
会社があって、 タワーレコ̶ドとかそれなりのショッ
蓮沼くんと一緒にやっていて思うのが、もちろん
かれています。あと実は昨年の Grow up!! Artist
プで取り扱ってもらえたんですよ。そこで色々な反
曲は大事なんだが、プロセスとか、音楽をつかっ
Project 2011 でダンサーの岩渕貞太さんと、ここ
響があって、自分の音楽が日本でも伝わるんだ、
て何かやる*9 って部分が結構強いなと。要する
で一年間、作品制作に取り組まれたんですよね。
マーケットがあるんだと思った。そのマーケットに
に使えるもんじゃないとしょうがない。ものとして、
大谷:そうなんだよ。ここで去年もやったんだよね。
対して何が出来るのかな、広げたいなと思ったの
媒体って言ってもいいのかな、音楽を使って皆で
が次のステップ。そこで頑張って、次のアルバムは
遊ぶって傾向が最初の頃からあるなと思っている。
―電子音楽家 ?
もう少し音楽寄りにしたんです。僕はたまたまギター
こういう「使える」みたいな言い方をすると、あま
く、様々な形態で詩の言葉のありようを
蓮沼:どこから話せばいいんですかね。
もピアノも少し弾けたので。
りほめてないみたいになっちゃうんだけどね。
探求している山田亮太。それぞれの領域
大谷:そもそも、最初は電子音楽家というくくりで
野村:音楽寄りってのはどういうこと ?
蓮沼:分かる。どんなものでも、何かを「使う」っ
している蓮沼執太。活字や朗読だけでな
で、既成概念にとらわれない活動を行う
やってたよね? それからバンド組んで「蓮沼執太
大谷:楽曲寄りってことかな。ドレミとして譜面に
て考え方は、ネガティブな印象を与えてしまう。
チーム」*6 やったり、「蓮沼執太フィル」とか今
書ける要素が増えたってことかな。
大谷:そう。でも本当は全然そんなことないんだけ
シャルを生かしながら、時間と空間を共
のアンサンブルのパフォーマンスが出てくるわけだ
蓮沼:そうですね。電子音楽というよりは、自分
どね。蓮沼くんに限らずだけど。やっぱりプレイフ
」[野村政 有する方法を考えて実行する。
よね ?
で弾いた生楽器の音の要素を増やした。まぁ、そ
ルであって、使えるものが大事。どんどん変えて
蓮沼:そんな前から始める ?
れも最終的にコンピューターに取り込むんで、電
行けたりとか。それを使って人と関わるとか。モノ
大谷:そういえば何でだろうって思ってさ。
子音楽っちゃ電子音楽なんですけどね。
としての作品だけじゃなくて、そういった音楽を使
蓮沼 :え∼と、これをインタビューなんかで言う
大谷:そんなことを言ったら今は全部電子音楽だ
う、音楽で遊ぶ、そんな現場を作って行く。作品
と、すぐ「嘘だ∼」とか言われるんだけど。僕は
ろ。マスタリングもパソコンでできるんだから。
があって、それをもう一度ライブなりでリプレゼン
二人をきっかけに、音楽、詩、演劇、ダ ンス…異なる背景を持つ出演者のポテン
之]*公演の広報文より抜粋 出演:石塚周太、大崎清夏、木下美紗 都、権藤知彦、Jimanica、ジャン=フィ
リップ・マルタン、鈴木雄介、関口文子、 玉木紘子、中島佳子、福留麻里、毛利 悠子、渡辺敬之、蓮沼執太、山田亮太 、山田亮太 スタッフ:蓮沼執太[音楽] [詩] 、葛西敏彦[音響] 、池田野歩[音 響]、髙田政義[照明]、佐藤恵[舞台 監督]、藤谷香子[衣装] 、藤田卓仙[ア ソシエイトメンバー] 、野村政之[プロ デュース] * 6:バンド編成でライヴ・パフォーマン スを行うときの名義。5 ∼ 6 名のメンバー で、国内外でライブ公演を行っている。 * 8:ファーストアルバム《Self Titled》
レーベル Western Vinyl[US]
* 9:蓮沼の多様な活動はホームページ を参照 http://shutahasunuma.com/
イベント情報
INFORMATION [その他のイベント|04 月 05 月]
「森は海の恋人とフォレストヒーローズ」
2
3
4
5
6
トするときに、これを使って何かしてみようという
こういう風になりたいというビジョンをもっていない 人間なんですよ。最初は単にコンピューターで音
―アンサンブル、 パフォーマンス
感覚っていうかな。蓮沼くんのそこが面白いよね。
楽を作っていたから、電子音楽家だろうと。
大谷:それまではライブ自体はやってたの ? 人前
蓮沼:おお ! 自分のやりたいことが言葉になってる。
大谷 : へー。MAX とか使って?パッチ組んで?
で 1 人パソコン広げてとか。
そう。そこはやっぱり意識的。それにしても能生は
蓮沼:そうですね。趣味程度ですけど。パッチっ
蓮沼:ちょっとやってた。2006 年とか 7 年。
やっぱり言葉のプロだな[笑] 。
ていうと皆さん分かりづらいかもしれないですけ
大谷:そうか。今みたいに本格的に、人前でパ
。 大谷:お前ナメンなよ[笑]
ど。要はそれでパソコンをシンセサイザーみたいに
フォーマンスしたいって思ったのはなぜ ?
できるんですよ。シンセサイザーは買うと 40 万、
蓮沼:日本の HEADZ というレーベルから誘わ
―いい音楽
50 万円とかするんですが、今はパソコン一台と
れてアルバムを出したら、リリースパーティーで何
蓮沼:付け加えると、そこで純粋に音楽が良くな
ちょっとしたスキルがあれば、タダで電子音楽が
かやってくれと。要は冠イベントみたいな。そこで
いとダメじゃんってのがありますよね。音楽を 「使っ
作れる。学生のとき、それで遊んでて、そこから
バンドを作ったんですよ。パフォーマンスのための
て」終わりではなく。
自分の作品をつくろうと思ったのが、そもそもこう
チームとして、「蓮沼執太チーム」ってよんで。
野村:バランスの話だよね。音楽を使う場合に、
した活動をするきっかけですね。そしてアルバムを
大谷:そこは受け身だったんだね。
その音楽自体の良さも必要だと……以下、後半に続く
つくってみると、どういう内容ですかって聞かれる
蓮沼:そう。受け身。でも来た球は面白く打ち返
[構成・文:坂田太郎]
1:《have a go at flying from music part 3》 installation view 2:《What's wrong with looking at the practice?》以上、東京都現代美術館 2012 3: 蓮沼執太チーム 山口情報芸術センター 2012 年 3 月 11 日 4: 蓮沼執太フィル《ミュージック・トゥデイ・ラ フォーレ》2012 年 3 月 20 日 5:《タイム》神奈川芸術劇場 中スタジオ 2012 年 2 月 19 日 6:「蓮沼執太のリハーサル」会場風景 7:トークの様子 左から、大谷、蓮沼、野村 撮影:後藤武浩[ゆかい]写真 1,2,4,5 /丸 尾隆一[YCAM]写真 3
アサヒビール環境文化講座 「 森は海
Tel. 03-03-5439-4520[企業メセナ
化現象の根源に迫る(仮)」
予約・問合せ|
の恋人とフォレストヒーローズ」
協議会]
日時| 5 月 16 日[ 水 ]13:00 開 場 /
e-mail:praxgarden@gmail.com /
日 時| 4 月 6 日[ 金 ]18:00 開 場 /
主催|公益社団法人企業メセナ協議会
13:30 開演 料金|無料
Tel. 03-3851-1749
18:30 開演
協賛|アサヒビール株式会社
講演者|中澤高清[東北大学大学院
主催| PRAX-GARDEN
理学研究科教授] 他
企画・制作| PRAX-GARDEN+ 落合
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講師|畠山重篤氏 問合せ|アサヒビール株式会社 社会
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予約・問合せ|
環 境 部 Tel. 03-5608-5195 / Fax.
ア サ ヒ・ ア ート・ フェス ティバ ル
e-mail: studyab@asahibeer.co.jp /
03-5608-5201
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主催|アサヒビール株式会社 公益社
日時| 4 月 14 日[ 土 ]12:30 開 場 /
ASAHI ART FESTIVAL2012 ネットワーク会議
Tel.03-5608-5202[公益財団法人ア
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墨田区・北本市ご当地映画 「くそガ
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日時| 5 月 26 日[ 土 ]18:30 開 場 /
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13:00-18:40 *交 流 会 19:00-20:30
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主催|公益財団法人アサヒビール学術
19:00 開 演 5 月 27 日[日]12:30
後援|林野庁 墨田区
4 月 15 日[日]10:00 開場/ 10:30-
日時| 4 月 22 日[日]*時間の詳細は
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開 場 / 13:00 開 演、16:30 開 場 /
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料金|無料[交流会 1,000 円]
料金|前売
出演|全国 51 のアート関連団体ほか
映のみ]/前売 3,000 円[17:00- イ
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振付|岩淵多喜子/田畑真希/磯島未
予 約・ 問 合 せ| e-mail:
ベントあり]
日時| 5 月 18 日[ 金 ]19:00 開 場 /
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日時| 2012 年
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開 場 / 14:00 開 演、17:30 開 場 /
予約・問合せ|
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4 月 11 日[ 水 ]17:
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00-19:30[19:30- 交流会]
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主催|(合)SUMIDA 制作所
18:00 開演
料金|無料[交流会 1,000 円]
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*詳細は http://www.sumida-seisakujo.
料金|前売 4,000 円/当日 4,000 円
co.jp / Tel. 080-4141-0458[三上]
出演|澤田澄子氏/熊谷眞一氏/牧田
特別協賛|アサヒビール株式会社
com/ http://kuso-gaki.com/
創案|杉野信之
主 催|日本女子体育大学ダンスプロ
演出・振付|林千永[日本舞踊]
デュース研究部
隆氏/鷲田清一氏/荻原康子
助成|財団法人 アサヒビール芸術文
予約・問合せ|
化財団
公益財団法人アサヒビール学術振興
音楽|落合敏行[楽器演奏]
協賛|アサヒビール株式会社
e-mail: mecenat@mecenat.or.jp /
*詳細は http://www.asahi-artfes.net/
財団 環境シンポジウム「 地球温暖
*出演者の詳細は WEB でご確認ください。
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