フランク・ロイド・ライトの内部空間特性

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フ ラ ンク 。ロ イ ド 0ラ イ トの建 築 にお け る 空間解析手法 に関す る研 究 ` \、

Study on the Spatial Analysis Method in Frank Lloyd Wright Houses

平成7年 度 修士論文

指導 :渡 辺仁史教授 早稲 田大学大学 院理工学研究科 建設工学専攻建築学専門分 野 関澤麻 里


目次 1 2

研 究 目的 .… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … …2

研 究 背景 。 … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … ¨3 2‐ 1 。 3 現在 までのフランク・ロイ ド・ ライ ト研究 .… …………………………………………“ ・ 2‐ 2 建築形態 空間記述及び関連事項 に関する研究 .… ……………………………………… ・3 2‐ 3「 メタモフォーゼによる屋根 の造形論」 .… ………………………………………………¨ ・3 つ い て。 3 幾何 学 的変 形 に … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … …5 3‐ 3‐

4 5 6 7

1 幾何学的変形 の種類 .… ……………………………………………………………………… ・5

2

幾何学的変形の例 .… ………………………………………………………………………… ・7

研 究 方 法 .… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … …

H

研 究 結 果 .… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … 14 5‐ 1 データ表 .:… …………………………¨ …………………………………… 14 ……… ……… …… ー 5‐ 2 居間 と各隣接空間の間のデ タ比 .… ……………………………………………………・15 考 察 .… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … 19 6‐ 1 19 居間―各隣接空間の間の数値上の関係 .… ………………………………………………。 よ 6-2 各数値 り.… …………………………………………■ ・…………………………………¨21 結 論 .… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … 22 7-1 まとめ … ・ ¨ ¨ ・… ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・¨ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・…・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・… ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・22 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … の 7‐ 2 今後 展望 .… ………………………………………………………………………………・23 ....・

早稲 田大学建築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修士論文


はじめに

もしも故人である建築家が今 なお存命で、設計活動 を行 っていたとするならば、90年 代 の い ま、 どのような建築を設計 していただろう。 建築 における作家の「らしさ」とは一体何 だろ う。 「 らしさ」を数式で表す ことはで きない んだろうか。

そのようなことを考 えたのが この論文の始 まりである。

例えばフランク・ロイ ド・ライ ト。少 し知 っている人なら、彼 の作品であま り知 られてい ない ものを見 て もす ぐにライ トの設計 だとわかるような強い個性、 「 ライ トらしさ」が彼の作 品 にはある。我々は何 を根拠に「 この建築はライ トっぽい」と判断す るのであろうか。壁 のレ ンガや木材か窓のステンドグラスか床 のグリッドか ? ならば壁にレンガや石が使 われていてステン ドグラスがきれいで床 にグリッドがひかれて いる建築 は全てライ トっぽいのかと言 うと、そうとは言い切れない。材料 などの直接 の視覚的 な要素だけがライ トらしさの要素ではな く、ぱっと見 ではわからない ようなものが大 きく作用 しているのであろう。 では「ライ トらしさ」の要素 とは一体何なのか。 作家の個性 とは何 を指すのか。 同一作家 による個別の作品は、何 を共通項 として持ち、何 が各作品毎の特性 となっている のだろ うか。

建築 における特性を解明す る。 この論文 はそのための足掛か りとして始めたものである。

早稲 田大学建 築学科 渡辺仁 史研 究室 1995年 度修 士論 文

1


T'

ffiNEFE


1

研 究 目的

本研究の 目的 は、 フランク・ ロイ ド・ ライ トの建築 における特性 とい うものを定量的 に解明す るため、ライ トの住宅 にお け る内部空間構成 とい う側面、特 に空 間内の天丼高 の 変化 に着 日 し、天丼 高が変化す る空 間の寸法的特性 を明 らかにす ることを 目的 とす る。

早稲 田大学建築学科渡辺仁 史研究室 1995年 度修士論文

2


2

研究背景


2

研究背景

本研究 は「 フランク・ロイ ド・ ライ トの建築 の特性」 と「建築 にお け る特性 とい うものの 定 量的評価」 とい う 2点 を問題 に してい る。それぞれの立場 につい ての背景 について記す。

2‐

1

現在 までの フランク・ ロイ ド・ ライ ト研究

現在 まで国内外 において、フランク・ロイ ド・ ライ トに関 して建築 は もちろん、生 い立 ち か ら教育、人間像、 はたまたライ ト研究者 についての研究 に至 るまで実 に広範囲 にわたって 様 々 な研 究が行 われている。ライ ト建築 につい ては、詳細 、装飾 な ど意匠的側面か らの研 究が 多 く、また平面、空間構成 に関 して も形態 の分類・分析研 究 が主であ り、空間の定量的 な解析 や数理的 な法則性 につい ての研究 は少 ない。

2‐

2

建築形態 ・空間記述及び関連事項に関する研究

現在 まで建築空間の記述 に関 しては、室同士 の相対的 な位 置関係 をグラフ論的観点 か ら位 相的 に取 り扱 う方法 、室 の集合 を記号列 に置 き換 えて全体 の構成 を記述す る方法、あるいは空 間構成記述言語 を用 いてその構成 の仕組 み を示す方法 など、様 々な提案がなされて きてい る。 これ らの研究 は空間の構成 とい う、 建築 の全体 において階層 的 に上位 とみ なされる点の記述 に 重 きを置 いてい る。

2‐

3「 メタモ フォーゼによる屋根 の造形論」

本研究 は「 フランク 。ロイ ド・ ライ トの全 ての住宅建築 に共通 の住宅原型が存在 し、各住 宅 はその原型 の変数的要素 にそれぞれ異 なる '変 数

1が

与え られた結果である」 とい う仮定 の

上で進 めてい る。 「全 ての屋根形態 は陸屋根 か 筆者 は論文「 メタモ フォーゼによる屋根 の造形論」において、 ら変形 して派生 した ものである」と仮 定 し、 変形方法 として様 々 な変形用語 を屋根形態 に次 々 に適用 して変形す るとい う造形方法 を示す ことができた。 その「変形」 を本研 究 において特性 のパ ラメー タの変化 と対応 させ て考 えれば、屋根 の造 形同様 、ライ トの特性 を踏 まえた様 々 なライ ト的建築設計 が可 能 になる と考 え られ、前述 した 青木 の研究 はまさ しく特性 として空 間構成 に注 目 したそれの一例 で あると考 えられ よ う。

早稲 田大学建築学科渡辺仁史研 究室 1995年 度修士論文 3


図 1「 メタモフォーゼによる屋根の造形論」による造形の例

早稲 田大学建 築学科 渡辺仁 史研 究 室

4

1995年 度修 士論 文


3

幾何学的変形 につい て


3

幾何 学 的 変 形 につ い て

ここではこの研究の前提に大 きく関わる変形 とい う操作 についての考察 を述べる。

3‐

1

幾何学的変形の種類

図 2は 、様 々 な幾何学的変形 の間の関係 を要約 したものである。 この中の変形 の種類 の 各々は、自身よ り下位 にある変形 を全て包含 している。一般 に、形のタイプの ヴォキャプラ リー と、それに適用する変形 とを選定することによ り、デザインの全ての可能性を規定 した系 を指定 できると言える。 一 般変 形

rゴ ム 板 」 の 変 形

線 形変 形

アフィン変形

相似変形

31き

透視変形

伸ば し ズラシ

拡 大縮 小

固有口型変形

鏡像変形

図2

幾何学的変形 の系統 図

等値変形

一 般変形 は、線 の結合 関係 が保 持 される連 続変形 と、保 持 され な い非連続 変形 に分類 され る。 連続変形 は線 形 変形 と「 ゴム板 」 の 変形 に分類 され る。 線 形変形 は、 ア フ イン変形 と透 視 変形 に分類 され る。 ア フィン変形 … 幾何 学的 な平行 関係 は維持 され る。相似 変形 、引 き伸 ば し、ず ら しな ど。 透視変形 … もと もと平行 だ った線 は一点 に収束 す るが 、縦横 比 は保持 され る。 線 形変形 …線 形 が保 持 され る。 ア フィン変形及 び透視 変形。 「 ゴム板」 変 形 …線 の結合 関係 は保持 され るが 、線 形 が保 持 されない。

早稲 田大学建築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修 士論 文 5


アフィン変形 は一般的に次のような式で表される。

3     3

0 α   ′

+ + ノ ノ υ α , + 十 χ  χ

0 α , 一  〓 一 X Y riりヽ︱、

この式 によ り、各点 (x,y)│こ 対応 した新 たな点

(X,Y)が 決 まる。係 数 の値 を適 当に決

め ることで、平行移動、反転、 回転、拡大・縮小が行 える。

早稲 田大学建 築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修士論文

6


3‐

2

3‐ 2‐

幾何学的変 形 の例

1

デュ ー ラ ーに よる顔 の例

デ ュ ー ラー は著書 「人体 の 比 例 につい ての四書」 (Four Books of Human Proportion,Durer,

1528)に お い て、人 間 の顔 の輪 郭 を水平方向 の作 図線 と共 に示 し、それ らの 間隔 を変 え て非線 形 の歪 み を加 える こ とによ り、様 々 な表 情 を作 り出 した (図 3)。 これ らの うち引 き伸 ば しと ず ら しの変形 は幾何 学的な平行 関係 が維持 され るアフィン変形 で あ り、透視 変形 にお い ては元 の平行線 が 一 点 に収東 す る よ う に変形す るが 、全変形 共 に線 形 変形 で ある。

悟1層丼 鍾 ︲、 ・

1ヽ

││` 、 べ 1

図3 3-2‐

2

デ ュー ラーの変形 による顔 の例

ガ リレオによる動物 の骨 の例

ガ リ レオは大型 の動物 と小型 の動物 の対応す る骨同士 を比較 し、それらが大変異なるプ ロポー シ ョンを持 って い ることを指摘 した

(図 4)。

骨 の一般的な形 は共通 して

い るものの、両端の丸 まった部分 やその 間の部分 の太 さ、 長 さな どの寸法比 には違 いが見 られる。 デュー ラーの顔 の絵 の 中 において幾何 学的な平行 関係 もしくは縦横比が 保存 されてい たのに対 し、 これ らの大小 の骨 の図の 間 に はその よ うな比率 の 関係 の維持 は見 られない。先述 した 「 ゴム板変形」 の例 と見 て良い だろ う。

早稲 田大 学建 築学科 渡辺仁 史研 究室

7

1995年 度修 士論 文


3‐ 2‐

3

ダー シー・ トンプソンに よる魚の例

生物学者 ダー シー・ トンプソ ンは、「成長 と形態 につい て」 (On Growth and Fom,D=Arcy ■ ompson,1942)と 題す る著書 の 中で、一見異 なって見 える様 々 な有機的形態が同 じ一般的な タイプの事例 と して見出される ことを説明 した。そ して線形変形 を含めた連続変形 の概念 を用 いて様 々 な魚の事例 を作 り出 した

(図 5)。

この例 では、魚 の形態 がはめ込 まれた枠 とグリッ

ドに歪み をかけて変形 してい るが、これはグリッ ドの歪 ませ方 を変数、形態 を魚 たらしめる要 素 を定数 として様 々 な種類 の魚 の形 を作 ったパ ラメ トリックデザ イ ンの一例 で あると言 え よ う。

図 5

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3-2-4 ライ トの住宅平面構成 の例 異 なる建物 の平面図 は、対応す る各部屋 の形 が違 って も、その隣接条件 が等 しければ非線 形 の連続変形 に関 して同値 で ある と言え る。例 えば図 6で は、円 で主 要 な空間を表 し、線 で重 要 な隣接関係 を示す ことによって隣接条件 のダイアグラムを示 してい る。

図 6

これは図 7に 見 られるように、ライ トの住宅 の平面図 において幾通 りかに実現 されてい る もので ある。先述 した変形 の概念 を用 いて説明す れば、ライ トによる これ らの平面形 は、非線 形 の連続変形 に関 して全て同値 で あると言 うことになる。実際、ライ トの幾 タイプかの住宅、 特 に年代 的に近 い作 品において この種 の同値性 を見 いだせることは多 い。

早稲 田大学建築学科 渡辺仁史研究室 1995年 度修士論文 9


図 6

早稲 田大学建築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修 士論 文 10


In

ffinfr*


4

研 究方 法

ライ トのユー ソニア住宅の 図面 。写真 を収集 し、その うち断面 の情報 が得 られ、居 間空間 内 もしくは隣接空間 と天丼高 に変化 がある作品につい て それ らの室寸法 を求めた。

●研究対 象 ライ トのユー ソニ ア住宅の うち、居 間の空間内 または隣接空 間 との 間 に天丼高差が認め ら れ、なおかつ天丼 に傾斜 がない もので、図面 か らある程 度 正確 な断面情報が得 られるものを研 究対象作 品 とす る。 研究対 象 空間は次 の通 りとす る。 ・居 間

(以 後 1)

。居 間隣接空間 :食 堂

(以 後 d)

玄関及 び他 の緩衝空間

(以 後 c)

上記以外 の隣接空間 (以 後 r)

●収集 デー タ 天丼高 h、 床面積 S、 空間体積 V

●デー タ計測方法 いわゆる図面起 こ しか らは床 面積、空間体積 の計測 は困難 で あるため、マ ッキ ン トッシュ 上 アプリケー シ ョンfOrm Zを 用 いて計測す る方法 を採用 した。平面図をスキ ャナで読 み込み 、 それを下敷 きとして断面図か らメー トル法 に換算 した寸法値 にて各内部空間のモデ リングを行 い、fom Zの 面積 。体積計測機能 を用 いてデー タを求 めた。

早稲 田大学建 築学科 渡辺仁 史研 究室 11

1995年 度修 士論 文


●対 象住宅 O Bernard schwarz邸 O George Sturges邸 OJarnes christic邸

OJohn Pew邸 OLoren Pope邸 O Andrew Armstrong邸

O Lloyd Lwis邸 O Van Duscn邸 OJ.J.Garison邸 O Malcolm willey邸

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●デー タ処理 得 られたデータを次 のように加工 し、分析 した。 ○居間 と各隣接空間の間の各数字の比 。天丼高比 : h1/hd,h1/he,hノ

hr

。床面積比 : s1/sd,Slノ Se,S1/Sr ・空間体積比 : V1/Vd,Vlノ Ve,Vlノ Vr

○居 間 と各隣接空 間の間のデー タの比 。天丼高比対床 面積比 の比

:治

・ 天丼高比対空 間体積比 け ヒ

,豊 業を

+芸 岩

業│

,論 ,器

早稲 田大学建築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修士論文 13


5

研究結果


5…

1

デ ー タ表

得 られたデータを表 に示す。

h!/hd

oom heights Bemard Scf,rwarz

height ratios

195C

N

L:Vh,S,V

D:Nh,S,V,w

1.E

2925

195C

l.4444444

37.86 110.74

37.05 72.25

4225

960C Georges Sturges

1925

1.4285714

1

1.236363〔

340C James Christie

2088

1800 2025

195C

2038 2131

2688 Andrar Armstrong

1988

2075 2925 L!Oyd Lewis

2069 2144

10.84

39_35

21.14

360C

4300

J

J Garrison

1950

1975

2075

Malcolm Willey

195C

1.02 1.53

1.88 2.81

3.49 5.24

1925

30.53

9.23

1.43 3.31

82.31

17.77

4.63

7100 1.2662835

2644

2088

2088

1.27

31.23

23.87 49.84

5.24 10.94

1.31

1.125

7900+1800

1400

1.1111111

225(

2025

21.8(

13.86

1_27 5_9G 7.55 1.11

1.58 1.75

28.067

8300+260( )+630( 1.045633 1.2613796 1.2764137 1.0437626 1.4096386 1.2352137

3431

2131

2688

2131

15.84 54.3[

5.24 11.17

3_08

2.71

3.02

5.7〔

4_87

2700

1300 1988

370C 1988

1.82

9.48

10.2フ

4.07

25.01

20.41

2355

238C

3613 38.59 140.11

1.0362494 1.1749067

1.3333333

1

1.0506329 1.2650602

1.3333333

2

8_27

1.28

1.61

5.]4 6.57

5.8〔

3.7( 6.8〔

2519

2144

2144

1.17

39.74

16_68 36_62

11.64

2.38

33.21 3800+40〔 6900+100C

2.73

100.11 Van Dusen

195C

20.1

49.18〔

Loren Pop€

h1/hr

Rl h,S,V,w S:/Sd S:/Se S:/Sr 颯′Vd V1/Ve Viノ Vr

2750

82.57 John Periv

ENrh,S,v,w

1.17 3.41 3.01

260C

195C

1_33

18_92

18.64

49.192

36.346

1_02 1.35

2625

1975

960C 2075

26.63

15.92

16.8

69.904

31.442

34_86

830C

7900 1950

1.33

1.33

2.87

3.2(

8.93

2600

195C

25.63 65.356

7.86 16.50G

6.027

2300

800

早稲 田大学建 築学科 渡辺仁 史研 究 室 14

2.22

1.27 1.59 2.01

10.8

1995年 度修 士論 文


5‐

2

居 間 と各 隣 接 空 間 の 間 の デ ー タ比

各隣接空間について居間との間の1)天 丼高比対床面積比の比、2)天 丼高比対空間体積 の 比 の比をまとめ、その分布をグラフに示す。

早稲 田大学建築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修士論文 15


5‐ 2‐

1

居間―食堂間 height ratio/surface area ratio

0こヽ一 二

1.80 1.60 1.40 1.20 1.00

0.80 0.60 0.40 0.20 0.00

1.00

0.00

2.00

3.00

SI/Sd

height ratio/volume ratio 2.00

1.50 1.00

0.50 0.00

1.00

0.00

2.00

3.00

4.00

VI/Vd

h!/hdr=Rh〕

Bernard Schwarz Georges Sturges James Christie John Pew Loren Pope Andrew Armstrong Lloyd Lewis Van Dusen J J Garrison Malcolm Willev

S1/Sd(=RS)

VI/Vd(=RV) RS/Rh RV/Rh

1.50

1.02

1.53

0.68

1.02

1.27

1.31

1.66

1.03

1.31

1.61

3.02

4.87

1.88

3.02

1.17

2.38

2.73

2.03

2.33

1.33 1.33

1.67

2.22 3.96

1.26

1.67

3.26

2.45

2.98

早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修士論文 16


5‐ 2‐

2

居間 一玄 関間 height ratio/surface area ratio 2.00 1.50 1,00

0.50 0.00 0.00

height ratiolvolume ratio 2.00 1.50 Φ〓ヽ一 〓

1.00

0.50 0.00

2.00

0.00

4.00

6.00

8.00

VI/Ve

h1/he(=Rh) Bernard Schwarz Georges Sturges James Christie John Pew Loren Pope

Andrew Armstrong Lloyd Lewis

S1/Se(=RS)

VI/Ve〓 (RV) RS/Rh

RV/Rh

1.50

1.88

2.81

1.25

1.88

1.27

5.96

7.55

4.71

5。

1.28 1.82 1.17

5.14 4.07

6.57 5.60

4.03 2.24

3.41

3.01

2.91

96

5.15 3.08 2.57

Van Dusen J J Garrison Malcolm Willev

早稲 田大学建 築学科 渡辺仁 史研 究 室 17

1995年 度修 士論 文


5‐ 2‐

3

居間 一他 隣接 空間間 height ratio/surface area ratio ■  ♂

2.00 1.50 ﹄〓ヽ一 二

. ■

1.00 0.50

0.00

5.00

0.00

10.00

SI/Sr

height ratio/volume ratio 2.00 1.50 ■. ■

1.00 0.50 0.00 0.00

5.00

10.00

15.00

V1/Vr

2     1

2     2 3     4

3 6

7 0

1.58

1.75

5.85 3.76

9.40 6.86

3 3

2 0

7 2

9 5

3 3

3 9

Van Dusen J J Garrison Malcolm Willev

3 3

1.82

Andrew Armstrong Lloyd Lewis

1.11 1.61

3 6

1.50 1.43

4 2

Bernard Schwarz Georges Sturges James Christie John Pew Loren Pope

VI/Vr(=RV) RS/Rh RV/Rh 3.49 3.49 3.24 3.31

Si/Srr=RSヽ

hi/hr(=Rh)

1.58

5.84 3.78

1.35

0.77

1.02

2.01

1.25 6.71

1.58 8.12

10.80

早稲田大学建築学科渡辺仁史研 究室 1995年 度修士論文 18


6

考察


6

考察

研 究結果 に対す る考察 を述べ る。

6‐

1

居間―各隣接空間の間の数値上 の関係

●居 間 一食堂間の関係 居 間 一食堂間の関係 については p.15の ような結果 を得 た。 天丼高比 h1/hに 関 しては、最大値

1.61、

最小値 1.17、 平均値 1.39が 求 め られ、居 間―食堂

の 間の天丼高 の比 はは安定 してお り、居 間 に入 るときの天丼高 の急激 な変化 はないと言え る。 これ らの数字 は 1.17∼ 1.33の 間の グルー プと、1.50∼ 1.61の 間のグルー プ 2群 に分 け ること がで きる。 後者 は Loren Pope邸 お よび Bcrnard Schwarz邸 、前者 はその他 4邸 である。 Loren Popc邸 および Bcrnard Schwarz邸 の居 間 はいず れ も 2面 以上 の開口 と高窓があ り、食

堂を含む行 き止 ま りの居 間であるとい う共通点 がある。この 2邸 は梶 山典子 によるライ ト住宅 の空間構成分類 において 8分 類 され る居 間 タイプの うち同 じ14タ イプに分類 されてい る。 天丼高比対体積比 の比 の分布 図 を見 てみると、体積比 1.53∼ 2.73の 間のグルー プと、3.96∼ 4.87の 間のグルー プ (後 者 の Loren Pope邸 、M」∞lm Wlley邸 の 2邸 )に 分 け られる。前 者 の

グルー プにおいては分布図中で右下 が りにプロ ッ トされる傾向 が見 られ、 後者 の 2邸 はその傾 向か らは独立 してい る ように見 られ る。

●居 間 一玄関間の関係 居 間 一玄関間の 関係 については p.16の ような結果 を得 た。 天丼高比 h1/hに 関 しては、最大値

1.82、

最小値

1.17、

平均値 1.41が 求 め られた。Bemard

Schwarz邸 の 1.50と Andrew Armstrong邸 の 1.82を 除けば 1.17∼ 1.28で 安定 してい る。 Loren Pope邸 とJalnes Ch五 sde邸 の天丼高比 h1/hは それぞれ 1.28と 1.27で あ った。 この 2邸

は両方 ともL字 型平面 の住宅 であ り、玄関か らの居 間へのアプロー チ、 居 間 と食堂の位置関係 など平面構成的 に類似 してい る。天 丼高比対床面積比 の比 Sysに つい て も5.14に 対 し5.96と 、 他 の住 宅 の数値 に比 較す れば近い数値 を得 てお り、h1/hと 併 せ てみた場合 こ とさら空間的類似 性 が見 られる。 天丼高比対体積比 の比 の分布 図 にお いては、図中左側 の 2点 のグル ー プと、右側 の 2点 の グルー プ、及 び残 りの 1点 (Andrew Armstrong邸

)に 分け られ る。Andrew Amstrong邸 は天

井高比 が 1.82と 際 だって高 いが、これは玄関の 1988mmか ら居 間の 3613mmと い う変化 の大 き さを示 してい る。

早稲 田大学建築学科渡辺仁 史研 究室 1995年 度修士論文 19


●居 間―他空間間の関係 居 間―他空間の 関係 についてはp.17の ような結果 を得 た。 天丼高比 hnに 関 しては、最大値

1.82、

最小値

1.H、

平均値 1.43が 求 め られた。

数値 間 にはば らつ きがあるが、Van Dusen邸 とJ.J.Garison邸 においては、各天丼高寸法 が異 なるにも関 わ らず天丼高比 hvhは 同値 の 33を 得 た。平面構成 的 に共通点 はないが 、両 1。

窓に沿 った部分 が低 くなるとい う空間のヴオリュー 邸 とも居 間空間内 に天丼高の変化 が あ り、 ム的形態 が類似 している。 天丼高比対体積比 の比 の分布 図 を見 てみると、V1/V卜6.86の Andrew Amstrong邸 の点以下 のグルー プは右上が りの線 に集中 してお り、その点を超 えると右下が りのグルー プが見 られ る とい う 2傾 向が認 め られる。これはある程度 までは天丼高が床面積 の広が りに対応 して高 くな るが 、それ以上広 くな って も天丼高 はひたす ら高 くな らずある比以下 に押 さえ られてい るので はない か と考 え られる。 図中左側 の 3点 のグルー プ、中央 の 2点 のグルー プ、その他 の点 のグルー プに分 け られ る。

早稲 田大学建築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修士論文

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6‐

2

各数値 より

研 究対象住宅総数が少数 であるため 、デー タ間の相 関が明確 に確認 で きるものは多 い とは ない。しか し、中 には確 かに数値的 な傾 向あ るいは類似性 が認 め られる ものが あ り、また平面 構成 上の特性 と併 せて考 えたときも内部空間特性的 にも同類 として分類 してよい と思われる も の も見 られた。それ こそが、特性なのではないか と考 え られる。 6‐ 1の 考察 に 本研究 において は平面構成 か らは見 出 せない独立 した数値 的な傾向 を検証 し、

述べ た通 りの結果が得 られた。 しか しLoren Pope邸 とBernard Schwarz邸 の例 など数値的 に近 くなおかつ平面構成的 にも類似性 の見 られる例 もあ り、これは空間構成分析 において平面構成 に天丼高比及 び床面積比 を導入す る とい う概念 の有効性 を示唆 してい る もの と思われる。 現段 階 ではデー タの中か ら一般的 な法 則性 あるいは傾 向 を見 出す こ とは困難 で あるが、 ユー ソニ ア住宅全作 品についての図面及 び正確 な内部空間寸法 を入手 し全 てのデー タを入力す ることができれば、デー タ間の相関に よる分類 が可能 にな り、各住宅分類毎 の、ひいて はユー ソニ ア住宅全体 におけ る内部空間の法則性 をよ り明 らかにする ことが可能 になると思われ る。

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7

結論


7 7‐

結論

1

まとめ

本研究 では、 フランク・ロイ ド・ ライ トのユ ー ソニア住宅 を研 究対 象 に、その内部空間を 天丼高 の変化 とい う視点 か らとらえ、隣接する空間 で天丼高 に変化 の ある室同士 の天丼高比、 及 びそれ と各床 面積比 。 体積比 との関係 を調査・分析す ることによ り、内部空間の定 量的 に評 価 し、平面構成 か らは得 られ ない よ うな数値 上の傾向 を検証 した。建築 におけ る幾何学的及 び 構成 上の特性 とい うものの解 明 のためのの布石 としての一手法 を提案 した ものである。 本研究 は一作 家 の「作家性」、すなわ ち作品群 におけ る特性 を定量的 に解明す るための一ス テ ップとして、建 築の特性 の一 要素 と して内部空間 に着 目 し、その特性解析 の一方法 を提案 し た ものである。建築的個性が非常 に強 く明確 であるとい う点 でフランク・ロイ ド・ライ トを研 究対象 に選定 したわけであるが、本研究 は作家研究 とい うよ りは方法論、あるいは提案 とい う 性質 の もので ある。

早稲 田大学建築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修士論文

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7‐

2

今後 の展望

今後全 ユー ソニ ア住宅 に関す る居 間及び隣接空間デー タを入力、解析す ることによって よ り正確 な数値的傾向及 びそれによる分類 が可能 となるであろ う。また、 本研究 は居間の天丼高 と隣接空 間の関係 を分析 したものであるが、玄関・緩衝空間・台所 。寝室な ど他 の空間同士 の 空間特性や、内部空間 と庇 の関係 な どについて も同様 に研究す ることによ り、空間全体 にお け る定量的 な特性 とい うものが見え て くるのではないか と思われる。

早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1995年 度修士論文

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参考 文献

書籍 フランク・ ロイ ド・ ライ ト全集 vol.6 MONOGRAPH 1937‐ 41、 A.DoA.EDITA Tokyo フラ ンク・ ロイ ド・ ライ トの住宅 vol.6 USONIAN HOUSESI、 A.D.A.ED「 A Tokyo ライ トの住宅、遠藤

楽、彰国社

建築 の形態言語、 ウイリアム・ ミッチェル、鹿 島出版会 パ ソ コンによるグラフイックス とデザイ ン、田中四郎、一橋 出版

FRANK ILOYD WRIGHT architect,■ c Muscum of Modern Art,1994

new五 ght

style,Carla Lind,Harper&Row

Frank Lloyd Wright,Taschen 勁 e Fountainhead,Ayn Rand

CD― ROM、 ビデオ 獅 e Ultimate Frank Lloyd Wright,Byron Preiss Multimedia

Fifth Avenuc,Frank Lloyd WHght and the Story ofthe Guggenheim Museum

論文 Fo L.ラ イ トの住宅 の空間分析 (そ の

1)∼

(そ

の 4)、 船越徹 。積 田洋 。梶 山典子、昭

和 63年 ∼ 1990年 日本建築学会大会学術講演梗概集

早稲 田大学建築学科渡辺仁史研 究室 1995年 度修士論文

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おわ りに

本論文 を執筆す るにあたって、渡辺仁史先生 と研 究室 のD、 M2、 Mlの み な さんには貴重な助言、励 まし、 ご協力 を頂 き本当 にあ りが とうご ざい ま した。



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