平成 元 年度
修 士論 文
町並 みの空間構造 に関す る研究 ∼ 京都 ∼ 指導 渡辺仁史教授
早稲田大学大学院理工学研究科 建設工学専攻建築学専自分野
68E063 松本 哲至
は じめ に
京都 は世界的に も有名 な観光都市 である。多 くの寺社 ・仏閣や史跡 もさ ることながら、市 の中心部 には未だに多 くの町屋 が残 り、それらを中心 と して京都 らしい町並みが形成 されていると考 えられる。 しか し近年の地価高騰や町屋 自体 の老朽化 に伴 う取 り壊 しや立て替 えが 進行 しているにもかかわらず、一部地域 を除いては、京都 らしい町並み を 守 るための京都独 自の基準がないのが現状 である。そればか りか行政 に よ る大規模 プロジェク トゃ従来の高さ制限の緩和など、景観 よ りも土地の高 度不U用 に重 きをお いた開発 が為 されようとしている。 この まま町並みの崩 壊が進 めば、京都 の景観 も他 の都市 と何 ら変 わ りのない ものにな り、そ の 魅力 は失 われるだろ う。 そこで観光都市、京都 の良いイメージを守 るために も新 たなる基準の設 定 が急務 である。けれど、その基準は単 に外壁 をそのまま修復・保存 した り、厳 しい法でがん じがらめにするのでなく、そこに住 む人々や設計者 の 側 にもっと考 える余地 を残 したものにしなければならない、 と考 える。厳 しすぎる法 は都市 の発展 をさまたげるか らである。 また、地価 の高騰 に伴 う土地 の高度利用 も考慮 したものでなければならない。 町の発展 も大切 であるが、その町 にはその町の雰囲気、その町 らしさが ある。何 もすべての町が東京 になる必要はないのであ る。特 に京都 は観光 に大 きく依存 している町であ り、 21世 紀 に向け、 これは真剣 に考 えねば ならない問題である。へたをするとヾ京都 の死活問題 に もな りかねない。 我 々は今、大きな帰路 に立たされているのである。
先 に も書 いた とお り京都 は、世界有 数 の観光都市 であ り、その魅 力 を少 しで も多 く、 で きるだけ良 いかたちで後世 に残 して行 くことが、我 々に与 えられた使命 であ る。
これが この研究 を始 めた きっかけ で あ る。
◇目
次◇
は じめに、
第 1章
序論
1-1 1‐ 2 1-3 第 2章
研究目的 研究背景 研究概要
京都 の空間構造 を探 るための調査
1 2-2
京都 の空間構造 に関す る調査
2-3
考察
京都市民 の意識調査
2‐
第 3章
京都 の空間構造
3-1 3‐ 2 第 4章
イメージの形成過程
結論
4‐ 4‐
おわ りに
参考文献
京都 の空間構造
1 2
調査手法 の有効性 今後 の展望
第ゴ章 序 論
1‐
1
研究 目的
人は町を体験する際、その町の街路空間から知らず知 らずの うちに『 何 かJを 感 じ取 る。 この「何 かJこ そが、その町のアイデ ンティティーで あ り、その町らしさの基になっているものである。もしこの「何かJが ど う いう構造 をもつのかがわかれば、町並みの景観保全問題に対する大きな指 針 となるであろう。 そのための第一歩 として、本研究では京都 の町並みにおける空間の大 き さに注目し、
(こ
こでいう空間 とは、街路 とその両側 に建ち並ぶ建物t さ
らに背景 として見 える風景によって構成 されるものである。)そ の空間 の 構造 を探 る手法を提案することを目的とする。
‐
1‐
1-2
研究背景
□京都 の現状
80年代半 ばよ り、東京 を中心 に始 まった地価高騰 の波 は京都 に も及 び、 平成元年度 の 地価公示額 が 2420万 円/M2の 四条川原 町交差点付近 を 最高 に、市 の 中心部では軒並み 100万 円/M2を 越 えて い る。 これは前 年度 と比べ ると、 およそ 50%と い う地価上昇率 であ る。
(図
1-1)
京都 では古 くか ら市 の中心部 に多 くの人が住 んでお り、それが京都 の特 徴 の一つ に もなっているのだが、近年 の地価 高騰 のあお りを うけて、そ の 様子 も変 わ りつつ あ る。 地価 が上昇す れば、それ に連 れて固定資産税や都市計画税、相続税等 の 土地 の値段 に関係 す る税金が増 え、人 々の生活に少 なからず影響 を与え る。 後述 す るような景観 を守 るための条例 の施 されている地域
(景 観保全 指
定地域 と呼 ぶ)で は、固定資産税 の免除などの特別措置が とられているが、 それ以外 の大部分 の地域では この ような措置は取 られてい ない。そ こで住 民 の側 か らすれば、土地を有効 に活用す るために高度利用 を考 えた り、 そ の土地 を売 り払 って郊外 に もっと大 きな家 を、 と考 えるのは、当然 の成 り 行 き といえる。 売 られた土地は、小 さく切 り分 けられた り、 い くつかが まとめられた り して、今 までの町 の文脈 とは異 なる容積率 一杯 の建物や ガ レージが新 た に 出現 し、町並みが崩 れてい く。
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この よ うな現 実 が あるに も関わ らず、景観保全指定地域 を除 く地域 には
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※上段が平成 元年度、下段が昭和 63年 度 の地価公示 額。単位 は千円/m2.
図
1-1
京都 の地価
-3-
特別な規制がな く、高 さに関する多少 の規制がある以外 は、建築基準法 に 準 じたもの となってい る。
(そ
の高 さ制限も1988年 4月 に従来 の45メ ー ト
ルか ら60メ ー トルに緩和 され、容積率 も900%ま で認められるようにな っ た。) しか し建築基準法 による規制
(中
でも町並みの景観 に大 きな影響を与 え
ると考 えられる斜線制限 に関する規制)は 、日本全国 どこに行 って も同 じ で、京都 のように古 い町並みが残 っているか らといって、特別な措置があ るわけでわない。 更 に、京都市の基本的な方針 として も、景観保全指定地域 と史跡・古社 寺及 びその周辺 の保存が大切で、残 りの大部分 の市街地 に関 しての開発 は 仕方 のないこと、 と考 えているようである。 現在 の まま放置すれば、 やがて京都 の町も他 の都市 と何 ら変 わ りのな い 町並みを持 つ に至 り、京都 の魅力 が失 われて しまう可能性 は大 きい。
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図 1‐
2.現 在 の京都 の町並み -4‐
□京都市 の景観行政
我 々が 日頃見慣 れている都市の景観 は、一朝一夕 に出来上がった もので はない。都市が成立 した古 の昔から、幾多 の変遷 を経 て今 日の姿があるの である。そしてその景観 は、現代 の経済活動や文化活動などの市民生活 の 現 われとしての「現代的景観」、過去 の都市形成 の過程やその時代時代 の 文化 を今に伝 える「歴史的景観」、さらにその都市 の基盤を構成す る地形 。 地貌などの自然的状況が作 り出す「自然的景観」 によ り構成 されている。 しか し、戦後 の経済復興、それに続 く高度経済成長 とい う時代 の流 れの 中で、豊かな生 活 とひ きかえに都市 の貴重 な歴史的 。自然的特性 を急速 に 失 ってしまった。経済的には豊かになった近年、それを反省するかのよ う に、都市の景観 や個性 について論議 を呼 び始 めて きた。 ようや くであ る。 この ような風潮 の中で、 日本 の代表的な古都 といわれる京都においては、 種 々の施策が立案 。実施 されてきた。
○京都市の景観行政の歴 史 昭和
4年
昭和 41年
風致地区の制定 古都保存法 歴史的風土特別保存地区
昭和 47年
市街地景観条例 美観地区 特別保存修景地区 巨大工作物規制区域
‐
5-
昭和 60年
三条通 り歴史的界隈景観地区保全
○京都市 の景観行政 の内容 く風致地区 〉 京都 の市街地は東、西、北、の三方 を山で囲 まれ、それらが市街地景観 の背景 になっている。そ して、その山麓 には清水寺、金閣寺、銀閣寺 など の古社寺や名勝、史跡 が集積 している。 この緑豊かな山と歴史的遺産 の集 積地、さらに山麓から平地 にかけて広 がる緑 の多 い住宅地が風 致地区 とし て指定 されていて、その範囲は現在 14300haに 及 んでいる。 風致地区 には第 1種 、第 2種 、第 3種 、及び附則第 2項 地域 とい う4つ の地域があ り、 この地域内で以下の行為 を行 なうためには市長 の許可 を要 す る。 イ。建築物その他 の工作物 の新築、改築、増築 または移転 口.宅 地 の造成、土地の開墾その他 の土地の形質の変更 ハ。木竹 の伐採 二.土 石 の類 の採取 ホ.水 面 の埋立てまたは干拓 へ.建 築物その他 の工作物 の色彩の変更 卜.物 件 の堆積
く古都保存法 〉 (古 都 におけ る歴 史的風土 の保存 に関す る特別措置法 ) 風 致 地区の制度 では開発 の絶対禁上が で きず、そのために生 じる開発 問 題 に対処すべ く制定 された制度 であ る。
‐6‐
歴史上重要な価値 を持 つ史跡、建造物 などの文化財 と、それと一体 とな って古都 の景観 を形作 っている周囲の自然風土を、「歴 史的風土」 として 文化財 と同様 に大切 に保存 していこうとするのが、 この制度 のねらいで あ る。 その方法 としては、歴史的 に意義 のある景観地帯を「歴史的風土保存 区 域」、その中でも特 に重要な地区を「歴史的風土特別保存区域」
0ha)と
(150
して指定。各保存区域 について、それぞれ「保存計画」 を定 め、
歴 史的景観
現代的景観
観
地
′
€rtr ftaflm6s 注 1 美観地区には工作物規制区域を重ねて指定 注2 上記以外 に も屋外広告物法に寄 る地域、近郊緑地保全区域がある
図 1-3
京都市 における各種景観地域制 ‐ 7-
その趣 旨 に反す る現状変更行為 (建 築、宅地造成、木材伐採 などで現 状 を 変更す る行為 )を 制限 してい る。 特 に特別保存 区域 においては、現状 を凍結的 に保存 す るためのよ り厳 し い権利 制限が加 え られている。そのための補償的措置 として、制限 に よ り 開発行為 が認 め られない場合 には、その土地 の買入 を行 なった り、 また特 別保存区域内の土地や家屋 については、法令 に定 め られた範囲 で、固定 資 産税 の課税免除 とい う方法 が講 じらている。
く市街地景観条例 〉 先 の 2つ の制度 は、市街地周辺部 の保全 が 目的であったのに対 し、市 街 地 の景観対 策 として制定 されたのが市街地景観条例 であ る。 この条例 に は 「美観地区」、「特別保存修景地区」、「巨大工作物規制区域」 の 3つ の 制度 が含 まれてい る。
・美観地区
(900ha)
市街地 の景観 に重要な働 きをしている御所、二条城 などの大規模歴史 的 │1両 岸沿いや鴨川 と東山には さまれた市街地、 建造物 とその周辺市街地、鳴り
東山山麓清水 の地域が指定 されている。 この制度 は、市街地 において歴史的景観 と現代的景観 を調和、共存 させ てゆ くこ とを目的 としている。 その内容 は、建築物 の高 さの限度 など数量的なものは基準化 し、建築物 の外観 に関 しては「けばけばしい色彩や過度 の装飾 を避け、その他周辺 市 街地の景観 に異和感 を与えないこ と」 とい うご く常識的な基準 に加え、 各
8-
美観地区の特性 に応 じた「具体的基準」 を定 めている。御所美観地区 の 「具体的基準」 を例 として以下に示す。
御所美観地区】 【 〈特性 〉 この地区 は、京都御所、仙洞御 所 等 の寝殿造風 の建造物群並 びに京都御苑 の豊富 な樹 林 お よび緑地が一体 となって優 れた景観 を形成 し、 この景観が中心 とな り、 さらにその 周辺 に広 がる社寺、明治風建造物 、現代 の建造物群 お よび伝統 的 な町屋群 と渾然 一体 と なってこまやかで陰影 の深 い たたず まい を示 してい る。
〈解説 〉
この地区は豊富な樹林 を有 していることが大 きな特徴で、御 苑内、御苑北側および東 側 においては とくに樹林 の保全 に留意すること、 また建築物の形態意匠も樹 々の緑 に溶 け こむような格別の洗練 された繊 細 なものである必要があ ります。
・特別保存修景地区
(100ha)
京都 に残 る伝統的な町並み とい う歴 史的景観その もの を保全 し、 よ り積 極 的 に修景 してゆ くとい うのが この制度 の 目的である。 京都 の町並みは江戸、明治、大正、昭和 と生 き続け てきた町並みであ り、 そ こにはおのずか ら生 活の跡 が残 っている。 と同時 に、そ のなかには決 し て伝統 の基本 をはず れず、伝統 の心 を活 か した工夫 が見 られる。 こ うした良い変化 をも伝統様式 の範疇 に含 め、 この広 い意味での「伝 統 様式」 を温存 してい る建物 (伝 統的建造物)に ついては、現在 の姿 の ま ま に修理、保全 を図 っている。 しか しモル タル塗 りやアル ミサ ッシなどの 現 ‐
9
代化 によって、伝統的な様式が くずれて しまった建物 (伝 統的建造物以外 の建物)に ついては、「伝統様式」 に準 じて修景 を図 つている。 現在、特別保存修景地区には清水産寧坂地区、祇園新橋地区、嵯峨`鳥 居 本地区の 3つ の地区が指定 されている。 これら3地 区は同時 に国の重要伝 統的建造物保存地区の選定 も受け、国からの援助 も始 まっている。
。巨大工作物規制区域
(6100ha)
この制度 は、京都 タワー問題 の教訓 を生か して制定 された。 巨大 な鉄塔 や長大な高架道路 について届け出制 をひき、そ の規模 、形 態、 意匠をチ ェックしてい る。京都全体 の景観 に影響 を与えるような巨大 な工 作物 について、計画 の段 階で審査す るのが その趣 旨であ る。 市街地 の大部分 が、 この制度 の指定 を受けている。
く三条通 り歴史的界隈景観地区保全 〉 三条通 りは、東海道 の西 の起点 であ り、 また高瀬川 の船着場 に も隣接 し ていた。 そ のために近世 においては交通、物流 の要所 であ り、京都 の 中心 であ った。 しか し大正期 以後、中央郵便局 や繊維 関連商社、金融業社 などの転出 に よ り、三条通 りは都心的機能を喪失 してい った。 現在、 三条通 りには、伝統的町屋 や近代 洋風建築な ど、近世 から現代 に 至 る各時代 の建物 が共存 している。特 に近代洋風建築 は、都心機能 をはた していた当時 の先駆的建物 であ り、文化財 としての価値 も高 い とい え る。 また京都文化財博物館 や YMCAな どの文化施設が集 ま り、伝統的店舗 が
‐
10‐
並 ぶ都心 の「歴史文化軸」 とい うこともできる。 こ うした特徴 をまちづ くりに活かすために、近代洋風建築や伝統的町屋 を保存 し、活用 してゆこ うとい うのが、 この制度の基本的な考え方である。 この制度 には「歴史的界隈景観地区」 と「景観重要地域」 の 2つ の地区 が あ り、景観地区内では高 さ 10メ ー トル を越える建築物等、景観重要地 域内 では全ての建築物等 の新築、改築、増築、 または外観 の過半 にわたる 模様替え、さらに景観重要建築物
(16の 近代洋風建築や伝統的町屋が指
定 されている)の 修理等 については、予 め市へ届け出ねばならない。
-11-
□従来 の研究
○街路 の視覚的構造に関する研究 瀬口哲夫・田中禎之/日 本建築学会大会学術講演梗概集
(昭 和
56年
)
豊川市 における 4つ の商店街 を対象 に、道路幅 と軒高の比 D/H、 天空 率、視深度 (評 価 を求 めた地点から見通す ことので きる距離)の 関係 か ら 街路 の閉鎖感 を量的に把握することが 目的である。 SD法 を用 いて現地 で 被験者に評価 させた結果、天空率が 30%を 越えると開放的 に、それ以 下 だと閉鎖的になるとい う結果が得 られた。 しか し30%以 下 で も、遠方 の 山まで見通せるような視深度の深 いところでは開放感 が得 られることから、 街路 の閉鎖感 には、天空率 と視深度が関連 しているといえる。 さらにア ー ケー ドや看板 など建物 の二次輪郭線 も閉鎖感 を規定す る因子 としてあげ ら れる。
○市街地街路 の景観計画に関する研究 武井正昭・田中 智/日 本建築学会大会学術講演梗概集
(昭 和
58年
)
想像上の好 ましい と思 われる都市景観 に関するイメージ と現実 の都市景 観 に関するイメージとの比較を、ス ライ ドを用 い SD法 による調査 を行 な った結果、都市景観 の評価 に強 い影響 を及 ぼす と考 えられる構成要素 とし て
(1)建 物壁面の視野 に占める大 きさ (2)天 空の視野に占める大 きさ
(3)道 路幅 (4)樹 木 の量が抽出された。 ‐
12-
○街路空間のD/Hに 関す る環境心理学的考察 飯塚拓生 。伊藤恭行他/日 本建築学会大会学術講演梗概集
この研 究 の 目的 は、街路空間にお け る道幅 の高 さ
(1989年
)
(D)と そ こに建 ち並 ぶ建 物
(H)の 関係 D/Hが 、その空間での人 の心理 ・評価 にどのような
影響 を与えてい るのか を考察す ること、 さらにその影響 を探 るための方法 として
(1)実 空間を実際 に体験 させて被験者 の評価 を求 める実験 (2)
実際 の街路空間 を写真取材 して、そ のスライ ドを提示 す る実験
(3)CA
Dに よって街路空間を操作 的 に創 り出 し、 CRT画 面 によって提示す る実 験 の 3実 験 を並行 して行 ない、その有効性 を比較検 討す ることで あ る。 その結果、 D/Hが 1∼
1.5の 間 で街路空間 におけるDと Hの 関係 を
よい と思 う評価が高 くなること、 D/Hが
0.5以 下 では実際 の Hよ
さ方向 を過大評価す る傾 向が あること、 D/Hが 1∼ 理評定 がかわる
り高
1.5を 境 に して心
(SD法 による街路景観 に対す るイメ ージ評定 についての
因子分析 よ り)こ とが認 め られた。 また 3つ の実験 の比較検討 の結果、街 路空間 の D/Hの 評定 の よ うな目的 には、今回試 された CRTを 用 いた方 法 が、従来 か ら行 なわれてい た (1)。
(2)の 実験方法 と同様 に有効性
を持 つ こ とが認 め られた。
以上のように、過去 のい くつかの研究 により、街路空間におけ る道幅 と そ こに並 ぶ建物 の高 さの関係、さらに天空率 や樹木 の量などが町並みのイ メージに大 きな影響を与えることが認 められている。
-13
○街並み のイメージ誘発機構 に関す る研究 瀬尾文彰 ・位寄和久他 /日 本建築学会大会 学術講演梗概集
(昭 和
62年
)
配置 や種類 の特定 されていない複数 の記号 を含 んでいる街並の比 較 的 小 さな物理的部分 をシー ン と定義す ると、街並 にお け るイメージ想起 の過 程 は、主体 の何 らかの働 きに よって、記号 の総体か らある構造づ け られ た 記号 の東
(こ
の東 がシー ン)が抽出 され、同時 にシー ンのイメージが想起
される、 とモデル化 で きる。 街並全体 をエ リアと呼 ぶ と、エ リアのイメ ージは、 シーンのイメ ー ジ群 の相互作用 か ら形成 される と考 えられるが、その中間段階 において、 い く つかのイメ ージのまとま りを認識 しなが ら全体 のイメ ージ に至 るとい う段 階的な構造 をもつ と想定 される。そ こで、 この中間段階 においてイメ ー ジ の まとま りとして感 じ取 られる部分 をユニ ッ トとす る と、ユニ ッ トの イ メ ージは複数 のシーンのイメージ群 が あ る主体 の働 きによって東ね られ、形 成 される、 とモ デル化 で きる。 さらにエ リアのイメージは、あ る主体 の働 きによ り複数 のユニ ッ トの イメージ群が相互 に作用 を及 ぼ し合 うことに よ り形成 される、 とモデル化 で きる。 す なわち街並のイメージは、 シーンか らユニ ッ トヘ 、ユニ ッ トか らエ リ アヘ と段 階的なま とま りが互 いに作用 しなが ら形成 されてゆ く、 とモデル 化 で きる。
この研 究 のように、従来 の町並み のイメージの研究 では、町並み を種 々 の記号 の集 ま りとして捉 え、あるい は記号 に分 け、そ のつ なが りを求め る
14-
ことによ り再構成 してゆ くとい うものが多 かった。
-15-
1-3
研 究概 要
本研究 は、京都 の空間構造 を探 るための一つの手法 を提案 し、その手法 がどこまで有効 に働 くかを求 めるべ く、以下の順序で進め られる。
第 1章
序論 研究目的及 び本研究 を行 な うに至 った社会的背景 について述 べ る。
第 2章
京都 の空間構造 を探 るための調査 最初 に京都市民 の京都 に対する意識を探 り、その上で京都 の空 間構造 を探 るための手法を提案 し、調査 を行 な う。そ してその結 果 を考察することによ り、京都 の空間構造を明 らかにしてゆ く。
第 3章
京都 の空間構造 今回用 いた手法 によ り得 られた京都 の空間構造 の特徴 につい て 述べ る。 さらに調査結果 を熟考することによ り、京都 における町 並みのイメージ形成 の過程 についてモデル化 を試み る。
第 4章
結論 今回提案 された手法 の有効性 について検証す ると共 に、本研 究 の今後 の展望 について述べ る。
‐
16‐
第
2章
京都 の空 間構造 を探 るための 調 査
1
京都市民 の意識調査
本研究 を始 めるにあた り、京都 に対 す る意識 を探 るためにア ンケ ー トに よる予備調査 を行 なった。京都 に 3年 以上住 んでいる、 もしくは住 んで い た人 を対象 にア ンケー トを行 なった結果、男性 39人 、女性 42人 の合 計
81人 の被験者 か ら有効解答 が得 られた。 そ の結 果 は以 下 の通 りで あ る。
□被験者 の属性
口″
表 2-1.被 験者 の人数 人
数 (人 )
aン ●J
性 男
42 81
女
合
計
8 ︲ 6 ︲ 4 ︲ 2 ︲ 0 ︲ 8
人数
6 4 2 0
20R
30ft
40R
20R 3峨
50R
年代 1■
図 2
男性被験者 の年代別人数
硫
5喘
年代
E]2-2.
女性被験者 の年代別人数
‐
17‐
□調査結果
問 1.京 都 の中で最 も「京都 らしい」 と思 う場所 はどこです か。 表 2-2. 京者Fら しい と思 う場所 b― 男性
c― 女 性 30歳 以下 場 人 数 (人 所
風山 御所 古 い町並み 鴨川 金 閣寺 祇園 清水坂 京都産業大学 京都 タワー 哲学 の道 東寺 八坂神社
7 3
2 1
嵐山 御所 八坂神社 大原 岡崎 桂離宮 上賀茂 里 島り ‖ 祇園 清水寺 大文字 西山 東山 古 い町並み
人数
(人 ) 1
祇園 四 条 河原 町 二条城 東山 先斗 町 八瀬
所
2
3 2 1
1島 JII
場
31歳 以上 4
a― 男性 30歳 以下 場 人 数 (人 ) 所 嵐山 清水 寺 哲 学 の道 東寺 町並 み
d― 女性 31歳 以上 場 所 人 数 (人 ) 風山 9 1 河原 町 御所 嵯峨野 高雄 哲 学 の道 天竜 寺 西陣 室町 洛西
-18‐
問 2。 その場所 を頭 に思 い浮 かべ て下 さい。何 が見 えます か。 表 2-3.京 都 らしい場所 に見 えるもの a― 男 性 30歳 以下 見 え る もの 人数 (人 )
b― 男性
││
2
1
9 6 3 2 1
OJ
2
C
‘ヽ
4
d― 女性 31歳 以上 見 える もの 人 数 (人 ) 山 ││ り 橋 緑 自然 古 い 町並 み 紅葉 寺 庭園
2 1
1
││ り 紅葉 山 木々 観光客 橋 古 い町並み 道路標識 京都 タワー 桜
紅葉 寺 山 ││ り 緑 古 い 町並 み 庭園 橋 石畳 木々 白砂利 白壁
4 3
3
c― 女性 30歳 以下 見 え る もの 人数 (人 )
見 え る もの 人 数 (人 )
5
6
り 古 い町並み 橋 山 木々 寺 桜 まいこ さん 五重 の塔 清水 の舞台
31歳 以上
‐
19‐
問 3。 その場所 の雰囲気 を一言 で言 って下 さい。 表 2-4.京 都 らしい場所 の雰囲気 a― 男 性 30歳 以下 人数 (人 雰 囲気 つ
1
c― 女性 30歳 以下 人数 (人 雰囲気
d― 女性 31歳 以上 人 数 (人 ) 雰 囲気 4 つ
1
静か に ぎやか 美 しい 自然 のんび り 淋 しい くさい
7
4 う∠
¨ 2
美 しい 静か 落ち着 き 狭い のんび り 神秘的 心が洗 われる 情緒あ る 古い 懐 か しい ほが らか くつ ろ ぎ
静か 歴史的 雄大 美 しい 落ち着 き 自然 心 が洗 われる のどか ゆ とり
‘ υ ■ ︼ ハ 2 1■
( う∠
静か に ぎやか 落ち着 き 情緒あ る やす らぎ さわやか
b― 男性 31歳 以 上 人 数 (人 ) 雰 囲気
1
わ くわ くする
-20-
間 4。 その場所 を色に例えるとどんな色でしょうか。 表 2-5.京 都 らしい場所 の色 a― 男性 30歳 以下 色 人 数 (人 ) 3 2
1
人数
(人 )
縁 グ レー 赤 オ レンジ ピン ク 紫
31歳 以 上
色
3 2 1
3 2 1
8
緑 赤(ワ イ ン) グ レー 茶 黄土 紫 紺 透明
人 数 (人 )
7
(A)
d― 女性 9
緑 茶 赤 青 金 自 オ レンジ み ず いろ
人数
みずいろ 青
c― 女性 30歳 以下 色
色
1 3 2 1
7
茶 緑 赤 み ず いろ オ レンジ 黄 青 紺 グ レー 白
31歳 以 上
b‐ 男性
‐
21‐
間 5。 京都 の中であなたが「変 わってほしくない」 と思 う場所 を挙げて下 さい。 表 2-6.京 都 の中で変 わってほ しくない場所 a― 男性 30歳 以下 場
所
b― 男 性 人数 (人 ) 2
岩倉 岡崎 祇園 北 山通 り 京福 電 車 寺社 高雄 宝 が池 東山 南座
c― 女 性
1
30歳 以 下 所
人 数 (人 )
4 3 2
古 い町並み(高 いビル を建 てないで欲 しい) 寺社 すべ て 嵐山 鴨川 祇園 京都産業大学周辺 京都 らしさ 清水寺 山々 (緑 ) 特 にな し 久世橋公 園 中心部 路地
所
人数 (人 )
東山 古 い 町並 み (高 い ビル を建 て な い で欲 しい) 清水 寺 すべ て 特 にな し 岡崎 大原 野神 社 上 賀茂 下賀茂 祇園 御所 三千 院 寺社 東山 山々
d― 女 性 5
場
場 つ
つJ
鴨川 嵐山 哲 学 の道 先斗 町 古 い 町並 み 山々
31歳 以 上
2
1
31歳 以 上
場
所
嵯峨 野 古 い 町並 み (高 い ビル を建 て な い で欲 しい) 嵐山 鴨 JII 大文 字 山々
すべ て 特 にな し 京都大学周辺 高雄 哲学 の道 洛北
人数 (人 ) 4
3
2
1
-22-
ロ ア ンケ ー ト結果 よ り
問 1.性 別、年令 を問わず、嵐山が最 も「京都 らしい」場所 として挙げ ら れた。特 に女性 では、 40%近 くの人が嵐 山 を挙げている。 問 2.問 1で 嵐山 を挙げた人が多 かったためか山、川、橋、紅葉を思 い浮 かべ た人が多 い。全体的 に自然 なものが多 く見 られる。 問 3。 「静か」 とか「落ち着 き」 とい う雰囲気 を答えた人の多 い中で、男 性 30歳 以下 と女性 31歳 以上で「 にぎやか」 と答 えた人が多 く見 られ る。 これは室町や西陣など問屋街 の雰囲気 として挙げ られたもので、職 と住 の近接 している京都 の姿が浮 かんで くる。 問 4.1/3以 上の人が緑 と答 えている。実際 の京都 の町中 には緑が少 な い に もかかわらず、 このような解答が得 られたのは、「京都 らしい」 と して想起 された場所が、京都 の中でも緑 の多 い地域だったためと推測 さ れるが、それ以外 にも周 りを山で囲 まれていて、山がす ぐ近 くにある と い うことの影響 もあると考 えられる。 問 5.古 い町並みを残 したい とい う解答が多 く、特 に高 いビルを建 てな い で欲 しい とい う気持ちが強 い ようである。その他 は概ね景観保全指定 地 域 に指定 されている地域が変 わって欲 しくない場所 として挙げ られて い る。
‐23-
□京都 のイメージ
これらを通 して、京都 に長年住 む人が考 えている京都 らしい場所 を想 像 す ると、「 川 の向 こうに山
(紅 葉 している方が よい)が あ り、橋 がかか っ
ている。そのような風景が、川の手前 の古 い町並みの中から望 める。J と い つた像 が浮かんで くる。 東、北、西 の三方 を山に囲 まれ、市街地の東 と西 の端 に大 きな川 の流 れ る京都 の地形的な特質の影響が このア ンケー トからもうかがわれる。
図 2-3。 京都 のイメージ
-24-
2‐
2
京都 の空間構造 に関する調査
□調査手法の提案
京都市民 に対す る意識調査から考 えて、彼 らが京都 らしい と思 ってい る 場所、変 わつて欲 しくない と思 っている場所 は、周 りを取 り巻 く山やり :lな どの 自然景観や古 くからの町並みだ といえる。 この町並み は、河原町通 り や四条通 りといった大通 りではな く、祇日界限 や先斗町のような大通 りか ら一本裏 に入 った町並みである。 また、従来の研究 によ り街路空間 における建物 の高 さと街路幅、街路 の 奥行 きが町並みのイメージに大 きな影響を与えることが認 められている。 そ こで、町並み における建物 と街路 によって構成 される空間の大きさに 注目した調査手法 を提案 し、以下 の要領 で調査 を進 める。
‐25-
□調査方法
《準備》
(1)ま ず街路 とそ こに建 ち並ぶ建物 の高 さの関係 を表現す る模型 を 1/
100の スケールで作成す る。 (2)今 回 の調査 では大通 りではな く、裏通 りの空間 に重 きをお くため に 街路 の幅 は、 3M、 4M、 6M、 8M、 に対 して 4M、
10Mの 5通 りとし、それぞ れ
6M、 8M、 10M、 12M、
14Mの 6通 りの高 さの
建物 を、左右同 じ高 さで並 べ る。 また空 間 の大 きさを相対 的 に把握す る ために、人 の大 きさ (高 さ 1.7M、 幅 0.4M)に 相当す る もの を街 路 の中心 に置 く。
(3)そ の模型 の街路 の中心 に、超小型 カメ ラを人の 目の高 さに相当す る 高 さ (地 上約 1.5M)に 置 き、街路 の軸方向へ水平 に眺 める。そ して その時 に模型 の内部 にで きている空間を写真 に撮 る。
(4)こ の時点 で街路 の幅 と建物 の高 さの関係 を表す 30通
りの写真 が 得
られる。
これ らの写真 を用 い て、以下の調査 を行 な う。
-26
《調査方法》
(1)同 じ街路 の幅 を有す る 6通 りの空間の うち、最 も京都 らしく思 え る 空間 を被験者 に選 んで もらう。同時 にそれを選 んだ理 由やその空間か ら 受 け る印象 などを尋 ねる。
(2)こ の調査 をそれぞれの街路 の幅 に関 して行 なう。
(3)(1)。 (2)に よ り得 られた 5つ の空間の中か ら、 さらに最 も京 都 らしい ものを選 んで もらい、その理 由や雰囲気 などを尋 ねる。
(4)(3)で
選 ばれた写真 に透明 の塩 ビ板 を重ね、そ の空間が さらに被
験者 の もっている京都 のイメージに近 づ くように自由 に絵 を書 き込 んで もらう。そ の際 に被験者 のイメージがわ きやす くなるように、 こ とばで 簡単 かつ抽象 的なきっかけ を与える。
(5)絵 を描 き込む過程 で、被験者 と会話 をすることによ り、被験者 の心 象 にあ る京都 らしい空間を探 る。
□被験者 の属性 表 2-7.被 験者 の人数 性
ワJ
人
数 (人 )
男 rフ
寒
合
計
2C
被験者 の年代 は、男性が 11人 とも20代 、女性 は 9人 の うち 2人 が 50 代、残 り7人 が 20代 であった。
-27-
□調査 結果
同 じ街路 の幅 をもつ6通 りの空間 の中か ら京都 らしい ものを選 んで もらった。 そ の結果 は以下 の様 になった。 表 2-8.京 都 らしい空間 の大 きさ
a― 男 性 足
C
1
4
14M 1
1
2
0
2
1 ´ヽ
つJ
3
10M
´も
4
1
さ
12M
10M
8M Z
rt
幅
5 4
つJ
路
3M 4M 6M 8M
高
の う∠
街
物
6M
4M
1
5
1
C
b― 女性 建
4M
物
6M
3
10M
2
4
10M
8M 1
(
2
さ
12M
14M 2
1
1
1
1
2
うZ
う∠
1
´も
2
2
nU
路
4M 6M 8M
百田 市Ψ
街
3M
高
の
0
0 2
。男性 は街路幅が、 3M∼ 6Mで はD/H(Dは 街路幅、 Hは 建物 の高 さ)≦ 1 となる高 さを選んでいるが、 8Mで はD/H≧ 1の 高 さを選び、 10Mで は H/D<1と H/D>1の ものとにわかれる。 ・女性 も概ね男性 と同 じような結果 を示 しているが、街路幅が 10Mに なると バ ラつ きがみ られる。
‐28-
姜ぺ螺終 期 ′ 卜 D博
枢
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‐30‐
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-31‐
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-32-
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ヽ ︱ ヽ ヽC轟 妖 C 颯 囁 ・
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週ヽ
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)
0
‐33‐
○ イ ンタビュー よ り
・街路幅が 3M及 び 4Mで は、路地や古 くからの町並みの残 った場所 を思 い浮かべ る人が多 く、「狭 い」 とか「窮屈」 といった雰囲気 で捉えられ ている。特 に女性の方が『狭 さJを 強 く感 じているようである。男性 は、 狭 い中にも『 空の広 が りJを 感 じているようである。 ・街路幅 6Mあ た りから女性 を中心 に街路 を広 く感 じるようにな り、思 い 浮 かべる場所 が変わ り始めた。そして街路幅 8Mで 、大半の人が大通 り を思い浮かべ るようになった。 ・街路幅が 8M、
10Mに なると、幅が広すぎて京都 らしくないという意
見 が多 く、 また最近の京都のイメージとして捉 えられたようである。
‐34-
京都 らしい として選 ばれた5つ の空間 の うち、最 も京都 らしい ものを選 んで もらった。その結果 は以下 のようになった。 表 2-14.最 も京都 らしい空間 a― 男性 建
4M
物
6M
10M
8M
rヽ
´ヽ
´も ρも
´し
´し
ρU
´も
(
´し
C
0
´ヽ
0
10M
2
(
14NI rt
0
rt
6M 8M
12M rヽ
路
1
nし
2 2
rt
´υ
3M 4M
百田 市Ψ
衝
さ
高
の
b― 女性 建
6M
10M
8M rt
´し
rt
♂も
rt
1
14M
0
1
0
0
0
1
0
0 0
rt
´も
0
aU
10M
1
12M
rt
8M
rt
2
さ
rt
3M
4M 6M
高
の
´し
街 路 幅
4M
物
1
0
0
。男性はD/H≦ 1と なる建物の高さを選んでいるのに対 し、女性 は街路幅 に 関係 なく最 も低 い ものを選 んだ人が多 い。
-35‐
○最 も京都 らしい空間及 び回答例
3M× 4M】 【
NO.4 23歳
男 京都在住 3年 ・ 背景 は ビルで悪趣味 な看板 がある。 ・ 道 の 両側 には木造建築が並 んでい る。 。現代 と過去が マ ッチ してい るイメー ジ。 ・ 道 が狭 くて閉鎖的。路地 の雰囲気。
〈祇園近辺 〉
10 21歳
く先斗町、木屋 町 〉 男 京都在住 10年 。道路 の両側 に窓のた くさんある木造家屋 が並 び、壁 には共産党のポス ターがある。 ・ 背景 には4、 5階 建 の雑居 ビルが見 える。 NO。
13 28歳
く清水坂 の路地 〉 女 京都在住 28年 。木造平屋 が並 び、屋根 の線 はそろってい るが軒 には多少 の段差 がある。 ・ 道 は まっす ぐでな くてもいいが奥行 きがある。遠 くに山が見 える。 NO。
【3M× 8M】
NO.3 24歳
男 京都在住 5年 ・背景 にはビルが見える。 ・軒が迫っているイメージがある。 ・道を登 り坂 にした方が良い。 ・奥行 きがある方がよい。
く二年坂等東山 あた り〉
-36‐
【3M×
12M】
12 26歳
く祇園新橋 。白川あた りの路地 〉 男 京都在住 14年 ・路地 の奥 に狭 い道があ り、舞こさんが歩 いてぃ る。その奥 に三 階建 のたばこ屋 がある。 ・ 道 の両側 にお茶屋 さんの格子 が並ぶ。 ・ 石畳 の路地。 ・ 路地裏 か ら表路地 を見 たイメー ジ。 NO。
NO.20 23歳
く石塀小路 〉 女 京都在住 3年 。道 の片側 は竹 でで きた垣根 、片側 には料亭 とその 看板 がある。 ・ 道 の奥 には細 い路 地があ り、その奥 に家 の塀 があ り上か ら木 がのぞ いてい る。 ・ 道 は石畳。
【3M× 14M】
NO.11 25歳 男 京都在住 5年 く上七軒 〉 ・路地 の イメー ジが 強 い。 ・側面 には格子、背景には広 めの道 をは さんで壁がある。 ・ 奥行 きがある方が よい。 ・ 高 い建物 はほ しくない。 【4M× 4M】
NO.2 21歳 男 京都在住 21年 ・側面 に縦の線 (建 物の境界線)と 大矢来がほしい。 ・ 背景の建物 もあまり高くない。 ・街路 に垂直に交わる路地がある方がよい。 ・古い京都 のイメージがある。
-37
7 25歳 男 京都在住 25年 く上七軒 〉 ・ 全体 に古 い 町屋 (2階 建)の 並 ぶ イメー ジ。 ・ 背景 には近代 的な ビル、遠 くに山が見 える。 ・ 活性 には奥行 きがほ しい。 NO。
・ 道 には水 が打 ってある。 ・ 電柱 がある方 が良い。
NO.9 26歳
〈南禅 寺 ・衣 笠 あた りの 古 い住 宅街 〉 女 京都在住 26年 。家が密集 している感 じ。 ・ 道の両側 は瓦ののっかた木の塀で、上から木がのぞいている。その奥 に家が見える。 ・ 道の奥 には大 きな道路 をはさんで高いビルがある。遠 くに山が見える。 ・ 道には水が打 ってある。 ・ 電柱 はないほ うが よい。
‐38‐
・
【4MX14M】
NO.5 25歳
女 京都在住 25年 ・ 道の片側 が塀、片側が格子。 ・ 背景 は暗 く一つだけ提灯がある。 ・ 道 は石畳。
〈祇園新橋・ 白川あたりの路地 〉
′
【6M× 4M】
NO.14 54歳
女 京都在住 54年 ・ され い なプテイックが並 びその前 には並木がある。 ・ 奥 には大通 りがあ り、 さらに奥 に山がある。山にはお寺が見 える。
NO.18 55歳
〈木屋 町通 り〉 女 京都在住 55年 ・ 伝統 的町並 の 中 に近代 的な建物 が混 じってい る。屋 並はそろ っていない が、そんな に 高 い建物 はない。 ・ 道 の片側 に川が流 れ、並木 がある。緑 は絶対 に欠 かせない。
‐39‐
【6M× 8M】
NO.1 25歳
男 京都在住 25年 ・ 背景 には建物、その奥 に山がある。側面 には格子戸 がほしい。 ・新 しい京都のイメー ジでも、 これ くらいの高 さまでなら許せる。
NO.6 25歳
く川端今 出川下がる東傾1の 路地 〉 男 京都在 住 8年 。つ なが つた軒 の線。家 の前 には植木。 。道 の片側 は軒 のつ ながる古 い家、片側 は学生 マ ンシ ヨン. ・ 背景 には道路 をはさんで2階 建 くらい (木 造 ではない)の 家 がある。 ・ 電柱 はない方 が良 い。
【6M× 10M】 く油小路六角あたり〉 男 京都在住 24年 ・ 奥行 きのある道沿いに2階 建 の町屋 と2、 3階 建のビルが混 じつている。 ・ 奥の方 に高いビルと電柱 が見 える。さらにその奥 に山がある。
NO.19 25歳
【6M× 14M】
NO.17 22歳
‐
く四条河原 町か ら西 を見 た感 じ〉 女 京都在住 4年 ・道の両側 に背の高いビルが立ち並び、窮屈 な感 じが あ る。 ・週路の奥行 きは広 く、遠 くに山が見える。
-40‐
【8MX4M】
16 23歳
〈御所沿いの烏丸通 り〉 女 京都在住 23年 ・ 活性の片側 は壁で上から木がのぞき、片側 には木逸 階建 くらいの店舗兼住宅が並んで NO。
い る。
【8M× 6M】
15 25歳 女 京都在住 25年 。手前 に近代 的な ビルが並 び、大通 りを こえると古 い低 い建物 が奥 の方 まで並 んでいる。
NO。
【10M× 10M】 く市役所 の近 く〉 8 25歳 男 京都在住 25年 。道 の両側 の建物 は3階 建 くらいで、1階 が店舗 になってい る。 背景 には幅 の広 い川 をはさんで3階 建 くらいのマ ンシ ョン (切 妻屋根 )が NO。
並 び、その奥 に山が見 える。
‐41‐
○ イ ンタビュー より
・建物のファサー ドの認識 はかな り強 く、すぐにイメージが浮かぶようで、 まずファサー ドから描 き始める人が圧倒的に多かった。 ・これに対 して背景の認識 はうすいのか、「背景には何かありませんか ?」 という質問に初めて描 き始める人が大半で、「何 もない。」 と答 える人 もいた。 ・多 くの人が、町並みがずっと続 く奥行 きのある空間を思い浮かべてい る ようで、町並みの奥 に広 い道路や川があり、その奥 に建物や山などがあ るというパ ターンが多 かった。 ・京都 らしい空間 として思 い浮かべ られる場所 は様々だったが、自分の家 の近所や良く知 つている場所 を思 い浮かべる人が多かった。
‐42‐
表 2-15。 建物 の表面 に描 かれた もの 男性
女性
合計
5
7
12
格子等
5
1
6
1
4
つJ
町屋 ・ 土 塀 等 庇
4
4
並木
00
新 しい 建 物 植木等
1
2
1
2
電柱
2
1
表 2-16.背 景 に描 かれた もの 男性
女性 4
山
合計
4
‘ υ
高 い ビル
高 くな い建 物 高 くな い塀
5
8 6
0
5 2
・ 町並 みに奥行 きがあ ると答 えた人は男性 7人 、女 性 6人 の計 13人 。
道路 に描 かれたもの
・ 背景 の認識 は男性 の方が強 い。
‐43‐
2-3
考察
○「最 も京都 らしい空間」 として、すべ ての男性が D/Hが 1以 下の もの を挙 げている。従来 の研究 により、裏通 りや横丁 のような街路 では、 D
/H<1で 親密で居心地のよい空間が演出されることが認められてお り、 これは納得 のゆ く結果 だ といえる。 これに対 し、女性 は街路幅 に関わ ら ず、最 も低 い建物 を選ぶ傾向にある。また「京都 らしい空間」 の雰囲気 として、女性の方が「窮屈な」、「狭 い」 という感 じを強 く抱 いている。 これ らのことには、男女 の身長の差 が影響 しているのではないだろうか。 今回の被験者 の平均身長 は男性 が約 175cm、 女性 が約
160cm
で、 およそ 15cmの 差 があ り、当然視点 の高さもそれだけ違 って くる。 この差 が町並みの見 え方 に大 きな影響 を与えると考 えられる。特 に街路 幅 3M、
4Mで は、ほとんどの人が古 い町並みの残 る路地 を思 い浮かベ
た。 これらの町並みには庇 があ り、身長が 15cm高 いか低 いかが重要 な問題 となるのである。す なわち、女性 は視点 の位置が低 いために庇 に 視線 を遮 られて、庇 から上の認識が うす くなる。そのために町並みか ら 受け る「窮屈 な」、「狭 い」 とい った印象が強 くな り、 D/Hの 小 さい 空間を選んで しまう。また庇 で空間が切られるために、女性 は建物 の高 さよ りも庇 までの高 さをその街路空間の大きさとして捉え、庇 の高さは どこで も大体同 じなので、「最 も京都 らしい空間」 として街路幅 に関係 な く最 も低 い建物 を選ぶ傾向が見 られたと推測できる。
○京都 は盆地なので、理論的 には南以外 のどの方向 に向かって も背景 に山
-44
が見 えるはずであ る。 に もかかわ らず今 回の調査 では山だけでな く背景 自体 をす ぐに思 い浮 かべ た人は少 な く、背景 の認識 が弱 いこ とが うかが われる。特 に女性 にそ の傾向が強 い。 しか し、ち ょっとしたきっかっ け を与 えるこ とによ り山や ビル を思 い浮 かべ るこ とか ら、心象 の中 には背 景 が存在 しているこ とがわかる。 これは、街 を歩 くに しても、車 で移動 す るに しても人 の注意 は比較的近 くにあ り、普段 の生活 において背景 を 意識 す ることが少 ない か らだ と思 われる。 また女性 の方が背景 の認識 が 弱 いのは、一点 に意識 の集中す る とい う女性 の特徴 に因 る ものだろ う。 さらに京都 の街路 は碁盤 目状 で、直線 が多 く見通 しが よい。 この ため に 町並み に奥行 きを感 じる人が多 いのだろ うが、そ れが逆 に背景 に対 す る 意識 を弱 めていると考 えられる。
ONO。
7、
NO。
19の 被験者のように、建物 のファサー ドに三階の屋根瓦
を描 く例が見 られた。 しかし実際 に三階の瓦が見 えることはな く、 これ は京都 の町並み には瓦屋根 が欠 かせない とい う一般的な観念が出来上が っているためだと推測 できる。その意味 で、 ファサ ー ドに町屋 や古 い町 並みを思 い浮かべた人で屋根瓦を描かなかった人の意識の中にも、漠然 と瓦 の存在 があると考 えられ、実際 に思 い描 いている建物 の軒 までの高 さは、選 ばれた建物 の高 さよ り低 くなると思 われる。
○建物 のファサー ドに関 しては、やは り格子戸や出格子、大矢来な ど古 い 町屋 のイメージで捉えられているようである。 しか もそれらの要素 はフ アサ ー ドいっぱいに描 かれ、庇な どは描 かれない。 これは庇 から下 の部 ‐45‐
分 が強 く意識 されているからだと考 えられる。
○全体 として空間の大 きさを正確 に把握す るのが難 しい ようであ った。 こ れは、調査 に用 いた写真 の街路幅が実際 よ りもかな り広 く見えるためで、 相対 的 に建物 の高 さも実際 より高 く感 じるようである。特 にNO.8の 被 験者 は、幅が 10メ ー トルの街路空間 の写真 から幅 50メ ー トル もあ る 街路 空間を思 い浮かべ ている。イ ンタ ビューによ りある程度 はその原 因 を探 り、 どれ くらいの街路幅 を想起 しているのかはつかめるが、 これは 是正 しなければならない問題 である。
‐46‐
の空 間構 造 第θ章 蔵卜
3-1
京都 の空間構造
今回の調査 によ り、以下 のことが京都 の空間構造 の特徴 として得 られた。
ろ―ぢ】 【 京都 において、路地は昔から「 ろ―ぢJと 呼ばれ、子供の遊 び場 や主婦 の井戸端会議、さらには地蔵盆の会場など、町内のコミュニティーを保 つ ための重要な共同空間 として、その役割 を果たしてきた。今回の調査 を通 しても、京都 らしい場所 の雰囲気 として「適当に狭あて、ろ―ぢみたい」 と答 える人が多 く、京都 に住む人にとって、路地は「 最 も京都 らしい空間 の一つ』 として強 く意識されていることがわかる。 このことから考 えて、京都 らしさを保存するためには、まず「 ろ―ぢ」 の保存 が大切だと言える。 奥行 き】 【 京都 の空間の雰囲気 として『 奥行 きJが 挙げられる。 これは京都 の もつ 碁盤目状の街路パ ターンに因るものであり、路地も含 めた町並みの基本的 構造は守 らねばならない。 背景】 【 京都 の町並みにおいて、「 背景Jは 余 り強 く認識されていないようで あ るが、総合的に見 るとやは り背景 に見 える山は重要であり、その眺望 を遮 るような高い建物 は作 るべ きでない。 庇】 【 京都 らしい町並みの空間を保つためには、「 庇Jの 存在が4ヽ 叫欠である。 これは、庇が人の視線を遮 り空間の大きさを限るためで、建物の高さ以上 に重要な要因だと思われる。また庇 から下は特 に強 く知覚 されるので、そ のデザインもかなり重要だと言える。
D/H≦ 1】 【 京都 らしい空間を表す一つの基準 としてD/H≦ 1と いう値が得 られた。 この傾向は街路幅が細 いほど顕著である。 しかし意識調査からもわかる と お り余 り高い建物 は好 まれていない。 -47‐
【8メ ー トル】 街路幅が 6メ ー トル くらいから思い浮かべ る場所が裏 から表 に変わ り始 め、 8メ ー トルになると表通 りのイメージにな り、空間の構造が変わる よ うである。今回の調査 では、街路幅 をかな り広 く感 じる傾向があったため に一概 には言えないが、街路幅「 8メ ー トルJを 表通 りと一本裏 の道の境 日とで きるであろう。 さらに京都 の空間構造 と直接関係 はないが、次 のことがわかった。 背差】 【 従来行 なわれてきた空間のイメージを扱 う研究では、被験者 を性別で分 け、その結果 として性別 による差は無 いものとして扱 うものが多 かった。 しかし今回の調査 により、身長の差 による見 え方の違いが空間のイメー ジ に影響 を与えることが認められた。今後 この ようなイメージの研究行な う 際 には、「性差」だけでなく、身長の差すなわち「 背差Jも 考慮 しなけれ ばならないだろう。
‐48‐
3‐
2
町並 み の イ メ ー ジ形成 過程
人 は町並み を体験 し、そ こか ら何 かを感 じとる。 この「 何 かJが 町並 み の イメー ジの基 になる ものである。 町並み を体験 した直後、人 は種 々雑多 な「 何 か』 を感 じとってお り、 ま とま りが ない。 しか し時間 を経 る うち に、 またその町並み を思 い浮 かべ る 度 に、それ らは整理 されまとま りをもったものにな り、人 の心 に保 たれる。 この まとま りが想起 され、再認識 されたものが町並み のイメ ージで あ る。 心理学 にお いて記憶 は 〈記銘 〉→ く保持 〉→ く再生 または想起 〉→ く再 認識 〉の過程 をとる とされている。そ の意味で、町並みのイメージは、記 憶 の上 に成 り立 つ ものだと言える。 そ こで町並み のイメ ージ形成 の過程 を知 るには、記憶 として保持 され た ものが如何 に想起 されてゆ くかを知 ればよい とい うことになる。 今 回の調査 では、被験者 に建物 のファサー ドを自由 に描 いて もらった。 これは、被験者が記憶の中に保 たれて い るものを想起 してゆ く過程 であ り、 この過程 を考慮す ることによ り、町並み のイメージ形成過程 のモデル化 を 試み た。
-49-
● 京都 の 町並 み の イ メ ー ジ形成 過程 │
(1)ま
ず 自分 の 視線 よ り下 に あ る 部
分 を意 識 し、漠 然 と した空 間 の 大 き さ を思 い 浮 かべ る。 特 に 街路 の 幅 を 強 く意識 し、空 間の上 限 の存在 (庇 ) を何 とな く感 じてい る。
(2)意 識 は上方 に移 り、天空 へ の 空 間 の広 が りを思 い浮 かべ てゆ く。 こ の ときに庇 の存 在 を強 く意識す る。 しか し庇 よ り上 では 軒 の 線 は余 りは つ きりせず 、空 の広 が りに意識が ゆ く。す なわ ち庇 よ り下 で は町 並 み が 図 で背 景 が地 に、庇 よ り上では町 並 みが地で背景 が図 になってい る。
‐50‐
(3)意 識 はさらに奥へ とのびてゆ く。 町並 み の奥 の方 では 、縦 の線
(建
物
の境界線 な ど)は 消 え横 の線 (街 路、 庇 、軒 の線 な ど)が 強調 され、奥行 きを生 まれる。
・
(4)建 物 の フアサー ドにある要素の うち、強い印象 を与えて い る もの (格 子、大矢来 など)が 想起 される。
ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ■、 ■│ヽ
‐
51-
(5)町 並み の空 間内 にあ る付 加的要 素 (人 、車 な ど)が 加 わ り、 イメ ー
ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ
ジが固 まる。 ′ ′ ′
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:、
京都 の中でも、祇固や新橋 のように紅殻格子 が連続 して並ぶような町並 みでは、 フアサ ー ドの一体 感 によ り印象 が強 ゅ られるために、
(4)が
(1)よ りも先 になることもあると思 われる。
‐52‐
第4章
i結
諦 針
4-1
調査手法の有効性
□問題点
○あらか じめ用意 した写真 における街路 の幅が、実際 よ りもかな り広 く見 えるために、空間の大きさをつかみず らそ うであった。 被験者へ のイ ンタビュー を通 して、実際 に彼 らが思 い描 いている空間 の 大 きさをある程度 は推測で きるものの、空間の表現方法 については一層 の 工夫が必要 だと思 われる。
○今回の調査 には、各空間 につ き人の目の高 さ
(地 上
1.5M)で 街路 の
軸 に水平 に見 た写真 だけを用 いた。また建物 の高 さも一定 にそろえたため に、軒 の出がなければ屋根 に勾配があるかどうかの認識がで きない。そ こ で、空間 を出来 るだけ簡単 に表現するとい う目的によ り、屋根 の勾配 は表 現 しなかった。 しか し人が町並みを体験 する時、その視線 は上を向いた り 下 を向いた りと空間中をさまようものである。その証拠 に実際 にはほとん ど見えない三階の屋根 をかな り強 く意識 している被験者がいた。 屋根 に関 しては、それが実際 にはほとんど見 えな くても、そこに存在 す るとい う安心感が、町並みのイメージに影響 を与えていると考 えられるの で、 このことを考慮 した手法 の開発が求められる。
○街路空間の奥行 きについても一つのパ ター ン (視 点 の位置から50M) しか用意できなかった。あまり奥行 きを長 くすると、 さらに空間の大 きさ ‐53‐
の把握が難 しくなると判断 したためである。街路幅が広 く見 えるのと同様 に、 これはカメラの特性によるものだと思われるが、やは り町並みの空間 を見せ アンケー トをする調査方法 を用 いる場合、いかにその町並みを実際 の ものに近い形で被験者にブレゼンテーションするかが最 も重要で最も難 しい問題であろう。
○今回は筆者の知人 を対象 として調査 を行 なったために、比較的早 く相手 の気持 ちを開かせることがで きた。しか し一般の人 を対象 に調査 を行 な う 場合 には、如何 にうまく相手 の気持ち を開かせてゆ くかが本調査手法 の重 要な課題 となろう。
‐54‐
□調査手法 の有効性
今回提案された方法 を用 いることにょり、 3-1で 述べたような 6つ の 要素が京都の空間構造の特色 として得 られた。また町並み空間の研究 を行 なう際 には、被験者の身長 を属性 として扱 わねばならないという今後 の同 様 の研究 に対する示唆 を得 た。さらに3‐ 2で はア ンケー ト結果 を考慮 す ることにより町並みのイメージ形成過程 のモデル化 を試みた。 どちらもあ くまで筆者の主観 によることは否めず、先 に述べたような問題点もある。 しかしそれらを考慮 に入れて も今回提案 した調査手法 は、町並みの空間構 造を探 るのにかな り有効であるといえるだろう。
‐55‐
4‐
2
今後 の展望
人が町並みか ら何 を感 じ、 どのようにイメージを形成 してゆ くのかとい う問題 は非常 に興味深 い問題である。 もしそれが解明できれば意図的 にイ メージを操作することによ り、自由に町の雰囲気 を演出できるか らである。 このテーマ は、今 までにも多 くの研究者 により扱 われて きたが、十分な解 答 を得 られていないのが現状 である。 とい うの も対象が町並み とい うとて も大 きな空間であ り、それを人間の心 とい う複雑極 ま りない ものを通 して 見 なければならないことが、 この問題 を難 しくしているといえる。 今回の研究 では、京都 を対象 に町並み の空間構造 を探 る手法 の提案 を試 み、筆者の主観 により6つ の空間構造 の特色 とイメージ形成 のモデルが得 られたが、結果的には、町並み を被験者 にブレゼンテーションす ることが いかに難 しいかを改 めて感 じるに終 わった観がある。 今後 の展望 としては、
(1)町 並みを被験者に見せる方法 の工夫 (2)今 回得 られた空間構造の特色 とイメージ形成 のモデルを客観化す る ことによ り、京都 の町並み保全 に少 しでも役立てること が求 められるであろう。
‐56-
お わ りに
全 国 には、京都以外 に も伝統的な町並みの残 る所 がた くさんある。そ の 町並みの中には、昔から受け継がれて きた日本人の知恵 や生活が、おの ず と残 っているはずである。 しか しなが ら明治の開国以来百数十年、急激 な 洋風化 によ り、それらも過去 の ものとな りつつある。 古 よ り日本人 は、外国の文化 を取 り入 れ、自分たちの文化 にうまく融合 させてきた。その意味では。 日本的洋風化 だったといえるだろう。 しか し 近年 の情報化 はめざましく、外国の文化 に日本的加工 を施す前 に次 の新 た なものが入 つて くる。そのために単 なる模倣 で終 わって しまうのである。 全 国的にまちづ くりや村 お こしが叫 ばれている昨今、自分たちの住 む 町 を、村 を見つめ直す よい機会 ではないだろうか。馬鹿 の一つ覚 えのような 博覧会 だけが、 まちづ くり、村おこ しではないのである。一人一人が 自分 たちの町を、村 をす こしで も良 く保ちたいとい う気持ちが大切なのである。
失 くしてから気付 くものは多 く、そのときはすでに手遅 れなのです。
最後 になって しまい ましたが、 2年 間、私 の好 き放題 な行動 に、小言 一 つ な しに面倒 を見 て下 さった渡辺仁 史教授 と研究室 の皆様 にこころか らの 感謝 を申 し上 げ ます。 また、京都市 の景観行政 について詳 しく説明 して下 さった京都市役所都市計画局風 致課 の方 々及 びア ンケ ‐ 卜調査 に快 く応 じ て くれ たAtomic
Cafe、
Up's Club、
とみ美容室 の従
業員の皆様、そ して私の素晴 らしい仲間に、本当にあ りがとう。 さらに 6・
303で 12年 の上に大学そして大学院までの長きにわた り、私 を支 えて ・
くださつた両親 に最上級 の感謝 をお くります。
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当 本
様 皆
よ嗜 ヨ ン■
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参考文献
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書籍】 【
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2)西 川幸治、保存修景研究会 :「 歴史の町なみ」 昭和 54年
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16)武 田信寛 :「 建築のイメァジ形成 プロセスに関する研究」
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冊子】 【
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