社会的不適応行動に対する建築空間学的関与の方法に関する研究

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平成

°

3年 度 修 士 論 文

社会的不適応行動に対する建築空間学的関与の方法に関する研究 指導 :渡 辺 仁 史 教 授

早 稲 田大学 大 学院理 工 学 研 究 科 野 村亜紀


「 人 間 の 生 に お い て は 、家 は 偶 然 性 を しめ だ し 、連 続 性 に い つ そ うの 考 慮 をは らわ せ る 」 ― ガ ス トン ・ バ シ ュ ラ ー ル ー


目 を欠

1章 1-1

1-2 1-3 1-4 第

2章

2-1 2-2 2-3 2-4 第

3章

3-1 3-2 3-3 3-4 3-5 3-6 第

4章 4-1 4-2

1■

は じと》 に ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ‐ 序 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・

2

研 究 目的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 従 来 の 研 究 と本 研 究 の 位 置 付 け ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 研 究 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5 研 究 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ 6 個人 空 間 理 論 に よ る社 会 的不 適 応 行 動 の分 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 個 人 空 間 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ 8 個 人 空 間 と 社 会 的 不 適 応 行 動 との 関 係 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 個人空 間 形 成 能 力 発 達 段 階 モ デル ・ 社会 的不 適 応行 動 分 析 各論 ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・

11 13 17

住 空 間 に よ る 社会 的 不 適 応行 動 の 解 釈 方法及 び 治療 方 法 ・ 27 住空間 を 取 り上 げ る 意 味 ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ 28 住空 間 の 解 釈 方 法 ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ 31 住空 間 に よ る治 療 方 法 ・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ 35 参考 ・ 住 空 間以 外 の 空 間 に よ る 治 療 方 法 ・ ・・ ・ ・ ・・

39 描 画 に 表 わ され た 住 空 間 の 解 釈 方 法 ・・・ ・・ ・・ ・ ・ 41 描画 に表 わ され た 住 空 間 に よ る 治 療 方 法 ・ ・・ ・ ・ ・・ 45 結論 ・・・ ・ ・・・・ ・ ・

48 本 研究 の 要 約 ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・ 49 今後 の 課 題 と展望 ・ ・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ 51

5オ つりに ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 主

・・

52

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参考文献

・・・

参 考 ケ ー ス ・ ・・ ・ ・ ・ .・ ・ ・

53 54

(社 会 的不 適 応行 動 各 論 ・ 精 神 分 裂 病 )・ ・・ ・ ・・ ・ ・ .・ ・・ 55 梯 難 辮 馨 (急 性 分 裂病 ) 擁難響難篠 (慢 性 分 裂 病 卿

)

霧:(逃 走 距 離 、臨 界 距 離 と行動 )

(社 会 的不 適 応行 動 各 論 ・ 登 校 拒 否 )

難華尋種華(居 間の機能不全)・ ・・・・・・...

56 梯 :榊 警 、:鮮:華:暴 :8:(個 室 を与 え る タ イ ミ ン グ )。 57 (奇 妙 な 空 間 の 存 在 )・ ・・・ ・・ ・ ..・ ・ ・ ・・ 58

藝轟嚢羹 (社 会 的不 適 応行動 各 論 ・ 非 行

)

進ふ 義 夫 菫 鼻 i‐ ‐

59 2;上 62 (住 空 間による治療方法)華華華華華攀・・・・・・・・・・・・・63 (描 画 に 表 わ され た 住 空 間 に よ る 治 療 方 法 )華 ・ ・ ・ ・ 66 靭 華華 :三

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:


ιま し,″boこ 筆 者 は 、人 間 の 社 会 的不適 応 行 動 と建築 (物 )と は 何 らか の 関 係 が あ る は ず だ 、その 関係 を 自分な りに解 明 した い 、 との 目的 か ら建 築 学 を専 攻 し た者 で あ る 。

.建

築 学 科 で 自分 が 学 ん だ こ と を生 かせ 発 展 させ て 行 け る 職 業 と して 、家 庭 裁 判 所 調 査 官 を選 び 、修 ± 2年 進 級 と同 時 に 就 職 した 。現 在 は 、家 事事

件 及 び 少 年 事 件 の 当事 者 に な る と い う形 で 、社 会 的 不 適 応 行 動 (と 言 つて も 、社 会 的 不 適 応 行 動 とは 全 く無 関 係な 当事 者 も い る こ と を 、明 確 にお 断 わ り して お く 。 )を 示 して い る人 達 に 対 し、 援 助 を試 み て い る 身 であ る 。 この た め 、社 会 的 不 適 応 行 動 の 内 容 は 、家 庭 裁 判 所 と関 わ の い り 深 、精 神 障 害 (精 神 分 裂 病 )、 登 校 拒 否 、非 行 に 限 定 され て い る 。関 与 と つ 言 て もで き る だ け 家 庭 裁 判 所 で 実 践 可 能 な形 を考 えた し 、建 築 空 間 と 包括 的 に 言 っ て は い る もの の 主 に 住空 間 を扱 っ て い る 。本 研 究 の 正 確 な 位 置 付けの た め に も 、以 上 の こ と を最 初 に 明 確 に 断 わ っ て お きた い 。 ま た 、社 会 的 不 適 応 行 動 に 対 す る 関 与 方 法 と して は 現 在 、人 間 関 係学 の 中 で も特 に 心 理 学 的 方 法 が 主 流 で あ るため 、建 築 学 と心 理 学 の 、統 と 合 言 うよ りは 折 衷 とな っ た 感 が あ る こ と も否 め な い 。 住 空 間 (建 築 学 の 専 門 外 の 人 に と って は 住 居 と 言 う方 が 分 か りや い す と 思 わ れ る )が 人 間 生 活 形 成 に 大 い に 関与 して い る こ とは 誰 もが 認 め る 。な の に 生 活 の 一 つ の 形 で あ る社 会 的 不 適 応 行 動 に 関 与 す る方 と 法 して 、心 理 学 ば か りが 強 調 され 、住 空 間 学 が な い が しろ に され るの は な ぜ か 。 この 素 朴 だ が 強 い 疑 問 か ら発 し 、 「 空 間 と不 適 応 行 動 と の 関 係 は 存 在 るの す か」 と 自問 自答 しな が ら 、 四苦 八 苦 して その 根 拠 を 個 人 空 間 理 に 論 求 め 、新 し い 提 案 を しよ うとの 気 概 に 支 え られ て ま とめ た の が 、本 論 文 で あ る 。

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■ ― ■ 砥肝 フこ :ヨ I白 勺 「 は じめ に 」で述 べ た よ うに 、現 在 、社会 動 と略す )に

的 不 適 応 行動 (以 下 不適応 行 対す る関 与方法 と して 基本 と され て い るのは 、心 理学 を 中心

と した 人 間 関 係学で あ るが 、人 間 関 係学 の 知 見 を踏 ま えた上 で 、建築

空間

学 を導 入 した 関与方 法_を 提案 す る 。 不 適 応 が適 応 と対 をな す生 活 の 一 つ の 形 で あ る こ とは 誰 しも認め るこ と で あ ろ う。 また 、生 活 に影響 を及 ぼ す もの と して 人 間 関 係特 に 家

族 関係 を

重 視 す るこ と も的 を得 て い る と筆 者 も考 え る 。 しか し、人 間関 係 を考 察す る際 、心理 的 な視点 が 重視 され 、物 理的 な視 点 が 軽 視 され て い る 現状 には 疑 間 を覚 え る 。少数 の 臨床家 が 、人 間関係 が 建 築 空 間 の 形 を取 って表れ こ とに着 目 し始 めて い るが 、心 理 的方法が 活用 され るの と同等の域 まで

至っ

て い る とは 言 い 難 い 。 本 論文では 、関与 を 、包括 的 な行動のメ カ ニ ズム 説 明 、個 々の 行動 (ケ ー ス )の 解釈 、個 々の 行 動 の 治 療 とに 分 けて 考 えて い る 。最終 目的 は 治 療 で あ るが 、適 切 な治療 方 法 をプ ロ グ ラ ム す るため には 、不 適応 の メ カ ニ ズ ム を説 明 し、それ を踏 ま えてケー ス を解 釈す るこ とが 前 提 に な るか らで

ある。 ま ず 行動 の メ カ ニ ズ ム の 説 明 につ い て 、人 間 関 係 の 視点 と結 び 付 い た 、 空 間 関 係の視 点 ―個 人 空 間 (パ ー ソナル ス ペ ー ス )理 論 ― を提 案 る す 。 次 に 解釈 方 法 につ い て 、従 来 は 、専 ら人 間 を素 材 と した心 理 検査及 び 面 に 接 よ るこ とが 多 か っ た 。 これ らの 非 日常 的 な 関 係 の 中 に表 わ され る もの に 意 味 が あ る こ とは 筆 者 も認 め る 。 しか し新 た な視 点 と して 、 日常的 な人 間 関 係 の あ り方 を最 も 顕在化 させ る建築空 間 と して 住空 間 を取 り上 げ 、そ の 解 釈 の ため の 実験 的 な手 引 き を 提 案す る 。 最 後 に 治療 方法 につ い て 、現 況 を述 べ る と 、 ま ず 、社 会 内治 療 (外 来通 院 、専 門機 関 との 連 携 )の 形 を取 り、難 しい 場 合 に 、施 設 内治 療 (入 院、 施 設 送 致 )の 形 を取 る 。 しか し 、施 設 内治 療 の 本 質 は生 活様式 を変 え る こ とで あ ると考 え られ るため 、生 活 様 式 を変 え る 方 法 と して 社会

内 で実 践 可

能 な 空 間的方 法 を提案 す るこ とで 、出来 るだ け社 会 内治 療 を 、 と い う 臨床 の 場 で の 理想 (特 に 非 行 に 関 して は )に 応 え る 一 方 法 と した い 。

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2

σシ 位

従 来 の 不 適 応 行 動 に 対 す る 関 与 方 法 の 研 究 は 、専 ら 理学

人 間 関 係 学 (主 に 心

)の 立 場 か ら為 され て きた 。 そ の な か で も最 近 は 、不 適 応

も 関 係 を重 視 す る 傾 向 (非 言 語 的 関 係 を重 視 す る

者 個人 よ り

傾 向 が 出 て きて ぃ る 。 。 そ の 傾 向 の な か で 、 一 っ の 立 場 と して 家 族 療 法 と い う立 場 が 出 て きた 。 不 適 応 者 に 対 し 、家 族 関 係 調 整 の 立 場 か ら様 々 な ア プ ロー チ方 法 が 考 え 出 され て い る 。今 の 状 況 は 家 族 療 法 家 。石 川 元 に よれ 「 ば 百 花 僚 乱 」 とい う 状 況 で あ り とて も整 理 され て い る とは 言 い 難 い が 、 ァ プ ロー チ 方 法 の一 つ と して 家 族 描 画 法 の 中 で 住 居 の 解 釈 法 が 研 究 され た り、訪 間 家 族 療 法 の 中 で 住 居 操 作 法 が 登 場 した り した 。 しか しこれ らは 、建 築 空 間学 的 な 裏 付 け を 持 た ず 、家 族 療 法 家 の 臨 床 経 験 の 積 み 重 ね に よ っ て 研 究 され て い る 。 一 方 、建 築 学 で は 不 適 応 行 動 へ の 関与 と い う立 場 が 登 場 し出 した の は ご 'る く最 近 で あ が 、 そ れ も例 えば 障 害 者 施 設 の 計 画 と い っ た もの で 、不 適 応 行 動 の メ カ ニ ズ ム 解 明 の 立 場 に 立 っ た もの や 治 療 の 立 場 に 立 っ た もの は 大 変少 ない。 日立 つ もの と して は 、奈 良 女 子 大 学 住 居 学 科 の 湯 川

利 和 に よ る高 層 団地

と犯 罪 との 関 係 に 関 す る 研 究 (湯 川 は これ を 「 犯 罪 空 間 学 」 と名 付 け 、 日 本 社 会 の 動 向 を見 据 え て この 研 究 の 推 進 を訴 えて い る )、 静 岡 大 学 教 育 学 部 の 外 山知 徳 に よ る住 空 間 と登 校 拒 否 との 関 係 に 関 す る 研 究 、神 戸 大 学 環 境 計 画 学 科 の 早 川 和 男 に よ る 日本 の 貧 し い 住 生 活 を 社 会 政 策 問 題 と して と ら えた 研 究 、 が あ る 。 これ らは 建 築 学 に お け る 希 少 価 値 を持 つ 研 と 究 して 、筆

者 に と って大 変

参 考 には な っ た が 、人 間 関係 学 との 結 び 付 き と い う 点 で 不 満足 な もの で あ っ た 。 中 で は 外 山 の 研 究 が 学 際 的 に 研 究 され て い て 傑 出 して い る が 、立 場 は ケ ー ス 解 釈 に 近 く 、建 築 空 間 理 論 ま た 治 療 論 と して は 浅 い 嫌 い が ぁ っ た 。 心 理 学 者 あ る い は 建 築 学 者 に よ っ て 、建 築 心 理 学 の 研 究 も進 ん で は ぃ る が 、不 適 応 行 動 を 扱 っ た もの は 見 当た ら な い 。 そ こ で 、不 適 応 行 動 治 療 の 臨 床 で 役 立 つ よ うに 、人 間 関 係 学 と建 築 空 間 学 が い 互 に 裏 付 け合 うよ う結 び 付 け る こ と を 目標 に 、本 論 文 を ま とめ た 。

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石冴 多電

JJ t共

文 献 研 究 、ケ ー ス 研究 に 拠 つた 。 ケ ー ス は必 ず しも 、家 庭 裁 判所 で 扱 つた もの とは 限 らな い 。 また 、不 適 応者 の 秘 密 を守 るため 、ケ ー スの 本 質 が歪 め られ な い 程 度 に 変 更 が加 え ら れ て い る 。ケ ース を拠 り‐ 所 に して い る場 合 に も 、参 考 と した ケ ー ス を い ち い ち挙 げ て い く形 には して い な い が 、それ ぞ れ に ケ ー ス 番 号 を明示 し、参 考 ケ ー ス と して本 論文 の 最 後 に ま とめ て掲 載 して あ るの で 、適 宜 参照 して ほ しい 。

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-4

大 前 提 で あ る 「 不 適 応 行 動 が 建 築 空 間 と関 係 が あ る 」との考 えの 根 拠 を 、 建 築 学 に お け る個 人 空 間 (パ ー ソ ナ ル ス ペ ー ス

)理 論 に 置 い て い る 。

つ ま り、個 人 空 間 の 異 常 と い う視 点 か ら 、精 神 障 害 (精 神 分 裂 病 )、 登 校 拒 否 、非 行 と い っ た 不 適 応 行 動 の メ カ ニ ズ ム を説 明 して い る 。 さ らに 、 .個 人 空 間 の 異 常

を 、個 人 空 間 の 発 達 段 階 を正 常 に 踏 ん で い な い こ とか ら生

じる もの と考 え 、正 常 な 個 人 空 間 発 達 段 階 の モ デ ル を 提 案 した 。 この 視 点 を臨 床 の 場 (=不 適 応 行 動 治 療 の 現 場 、以 後 の た め に 付 け加 え て お く と 、臨 床 家 =不 適 応 行 動 治 療 の 現 場 に 携 わ る人 、で あ る )に 生 か す に は 、 よ り具 体 的 、実 践 的 に 論 を 展 開 しな け れ ば な らな い 。 そ こ で 、個 人 空 開 発 達 を阻 害 した 要 因 を空 間 と して 顕 在 化 した もの (発 達 を阻 害 した 要 因 そ の もの 、 と 言 っ て い な い こ とに 注 意 して ほ し い )、 及 び 阻 害 の 様 相 を 顕 在 化 した もの と して 、住 空 間 を取 り上 げ た 。臨 の 床 場で 活 用 可 能 な よ うに 、住 空 間 は 、誰 か ら も 同 じ く認 識 され る客 観 的 住 空 間 と 言 え る物 理 的 な 住 空 間 、及 び 、個 人 か ら異 な っ て 認 識 され る主 観 的 住 空 と言 え る描 画 に 表 わ され た 住 空 間 、 に 分 け た 。双 方 につ い て 解 釈 及 び

治療

方 法 を考 察 して い る 。 また 、住 空 間 以 外 の 空 間 につ い て も若 干 考 察 して あ る。 上 の 概 要 に 添 っ て 、本 論 の 章 立 て は 次 の よ うに 、第 2章 「 個 人 空 間 理 論 に よ る 社 会 的 不 適 応 行 動 の 分 析 」第 3章 「 住 空 間 に よ る社 会 的 不 適 応行動 の 解 釈 方 法 及 び 治 療 方 法 」 の 2章 と した 。第 2章 で は 、不 適 応 行 の 動 説明 に 建 築 空 間 学 の 視 点 を導 入 す る こ と を 提 案 した こ とが 、第 3章 で は 、不 適 応行 動 に 対 す る 従来 の 解 釈 方 法 及 び 治 療方 法 を建 築 空 間学 の 視点 で 体 系 整 理 した こ とが 、主 な 内 容 とな っ て い る 。

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2章

イ ヽ江菫 月3孝〒 肇力

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2-■

ιこ ― い て 個人 空 間 (パ ー ソナル スペ ー ス )と い う概 念 の 原 形 には 、文 化 人類 学 者 個

E.T.ホ

ー ル の い わ ゆ るプ ロ ク セ ミックス 理 論 (近 接 空 間論 で 、まず これ か ら説 明す る 。 プ ロ ク セ ミックス 理 論 は 、 E.

)が あ るの

T.ホ ー ル が 自 ら述 べ るには 「 人 間 の 空

.間 利用 に 関す る研 究 及 び学 説 」で あ る。基 本 に エ ソ ロ ジー (動 物 行動 学

)

に よ る「 動物 が生 存 と種の 保 存 の ため に 個 体 同志 の 距離 の 調 整 (ス ペ ー シ ン グ と呼 ぶ )を 行 う」との 知 見 が あ り、人 間 社 会 では よ り複 雑 な形 で 距 離 が重 要 な意 味 を持 つ て い る と して 、心理 的 距 離 (人 間関 係の 親 密 さ )と 物 理 的距 離 とを対応 させ 距 離 を 4種 類 に分 類 した 。親 密 な順 に 、恋 人 同志 な どで 見 られ る密 接 距 離 、友人 な どの 個人 的 関 係 で見 られ る個 体 距 離 、仕 事 上 の 関係や小集団 を相手 とす る ときに見 られ る社会 距離 、公的関 係や講 演 、 演 説 な どで 見 られ る公 衆 距離 、に分 類 し、 それ ぞれ を さ らに遠 方 相及 び 近 接 相 に 分 類 し、計 8種 類 の 距 離 につ い て 、 フ ィー ト単 位 で記述 した 上 で 親 密 さの 程 度 につ い て もさ らに 具 体 的 に記 述 して い る 。 個人 空 間 とは 、上 述 の 個 体 距 離 の 作 る身 体空 間 (「 身 体空 間 」とは 、市 橋秀夫 に よると「 生 き られた空 間 」を意味す る )の こ とで ある。 R.ソ マ ー の 定義 で は も っ と分 か りや す く「 個人空 間 とは 、他人 が 侵入 す る こ とが な い よ うな 個人 の 身 体 を取 り巻 く 目に見 えな い 境 界 で 囲 まれ た 領 域 で あ る 。 これ は 人 間 が どこに 移 動 しよ うと も そ の 周 囲 に 設 定 され 、 占有 され るナ ワ バ リで あ る。 も しも そ の 範 囲 内 に 侵 入 しよ うとす る もの が あ れ ば 、強 い 反 応 を起 こ す 情動的 な意 味 の 込 め られ た空 間 で あ る 。それ は あた か も個 人 を 取 り囲 む 目 に 見 えぬ 気 泡 の よ うな もので あ る 。 」 と述 べ て あ る 。個人 空 間 は必 ず しも球 形 で は な く、各 方 向 に拡が っ て い る もの で もな い 。例 えば 前 方 には 目 を持 つて い るので 大 き くな る。 また 、地 位 、場 所 、親 疎 、性 差 、 時 、な ど、 そ の 場 の 状 況 に 相 応 しい 対人 距 離 を作 るため に 、個 人 空 間 も そ れ に 合 わせ て伸び 縮 み す る。 整理 して述 べ る と 、個人 空 間 の 属 性 は距 離 と境 界 で あ り、状 況 に応 じて 柔 軟 に 調 節 され る (後 述 の ス ペ ー シ ング能 力 と関 わ る )、 と い うこ とで ぁ ・ る。

-8!│11‐

1


個 人 空 間 の 大 きさ と形 は 、接 近 実 験 に よ って 確 かめ る こ とが で きる 。接 近 実 験 とは 、 日標の人 物 に 被験 者 が 接近 して い き 、被 験 者 が そ れ

以上近 づ

く と不 快 に 感 じる位置 で 立 ち止 ま る 、 と い う実 験 で あ る 。その 位 置が 個人 空 間 の 境 界 で あ る 。日標 者 の 身 体 を中心 と して 4方 向 につ きこの 実験 を繰 り返 す と、次 図 の よ うな 個人空 間 が 得 られ る 。

パ ー ソナル・ スペ ースの大 きさと形 '::L7卜

. 1984)

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実験 者を知 らない女子学生 実験 者 と親 しい女子学生

個 人 空 間 の属 性

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人 間 が 外 界 を把握 す る 、 と言 う ときに 精 神 面 が 強 調 され が ち で ぁ るが 、 基 本 に な る 手 段は身 体 で あ るこ と を考 えね ば な ら な い 。人 間は 、生 まれ て か ら身 体 に生 起す る様 々 な現 象 を 通 して 徐 々 に 世 界 を 把 握 して い く。外 界 は 常 に 自己 の 身体 面 に 結 び 付 け られ 、関 係 付 け られ て 、精 神面 に 認識 され て い く。 _ 本 論 文 に 即 して 分 か りや す く言 うと 、こ ぅで ぁ ろ う 。我 々 が 人 間関 係 を 問 題 に して心 的距離 と言 うとき 、身 体 に 基 づ く経 験 で あ る対 人 距 離 と い う 経 験 無 く して 、共通 の 認 識 を持 ち 、抽象 的 概念 で る あ 人 間 関 係 に 立 ち向 か うこ とは 出来 な い 。 しか も心 理 的 な イメー ジ で る距 ぁ 離 は 、常 に 身 体図 式 に フ ィー ドバ ック され て 保たれ て い る 。外 界 が 刻 印 され る身 体 図 式 を手 掛 か りに さ らに 外界 を刻 印す るこ との 繰 り返 しに よ っ て 、人 間は 外 界 一 自己 と他 者 との 関 係 ― を よ り複雑 な形 で 把握 して い く。身 体 図式 に結 び付 いて 身 体空 間 も形 成 され て い く。身 体 空 間 とは 、簡 単 に 言 えば 前述 の よ うに「 生 き られ た空 間 」で あ る 。 E.T.ホ ー ル が この 身 体空 間 を距離の 次 元 を用 い て 4種 類 に 分類 し 、 そ の うちの 個 体距離 が 個 人空 間 に 対 応 す る 、 と考 えて も らえば ょ ぃ の で は な い か と思 う。

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と 社

3直 反 3ダ行 動

l関 係

個人 空 間 の 特性 は 、身体 性 を帯 び た空 間 で あ る こ と 、分 か りや す く言 え ば その 内部 が 身体 に 属す る よ うな 反 応性 を持 っ て い るこ とで あ る 。例 えば ・、空 い て い る と他 人 が 気 に な らな い の に 電 車 に 乗 って い る と き 、込 ん で く .る と不 快 感 を感 じ出す 。その 不 快 感 は 、た とえ触 れ られ て い な くて も触 れ られ て い るの と同 じ程 度 の 不 快 感 で あ る。 そ の 不 快 感 を ど う処 理 す るか と 言 えば 、他人 を人 間 と して 扱 うの で な く物 と して 扱 うこ とに な る 。 これ らの 例 は全 て 、個人空 間 へ の 侵入 を許 す の に 不 相応 な 関 に 係 属す る 他人 か ら、 侵入 され た ときの こ とで あ る 。つ ま り個 人 空 間 とは 、原 始的 に は 排 他 的な空 間で あ る 。 しか しまた 、あ る程 度親 密 な 関 係 に あ る他 人 に 対 しては 、我 々 は個 人空 間 に 侵 入す るこ とを許 すだ け で な く 、個 人空 間 を共 有す る こ とが で きる 。 個人 の 個人 空 間が共 有 され る こ とで 、今度 は その 個 々人 に と っ て の 生

活圏

が 拡大 され る。つ ま り個 々人 の テ リ ト リー が 形成 され る 。 以 後 、本 論 文 では テ リ トリー の 語 を使 用 して い くが 、個 人 空 間 とテ リ ト リー との 違 い につ い て 、 R.ソ マ ー が 次の よ うに整 理 して い る もの を引用 す る。 「 テ リ トリー は 目に見 え る し動 か な い もの で あ っ て 、家 を 中心 に し て い る 傾 向が あ り、相 互作 用 す る人 を調節 す る もの で あ る 。 これ に 対 し個 人空 間は 、 日に見 えな い し動 か せ る し、身体 を中心 に して い る傾 向が あ り、 個人 が どれ く らい接 近 して 相 互 作用 す るか を調 節 す る もの で あ る 。 「 」 個 人 空 間 は 、持 ち運び 出来 るテ リ トリー で あ る 。 」 個人 空 間 を 、能動 的 に (受 動 的 に で な く )共 有 す る能 力 を 身 に 付 る け と 同時 に 共 有対 象 を拡 大 す る (=発 達 )の と並 行 して 、テ リ トリー も、 家族 (住 空 間 )、 友人 (近 隣 ・ 学 校 空 間 )、 社 会 (広 域空 間 )へ と拡 大す る 。 日常生 活 での 人 間関 係 及び社 会 関 係 に 適応 して い る状態 とは 、お ぉ むね こ こに述 べ た よ うな状態 で ある と思 われ る。つ ま り、人 間は 、適応生 活 を送 っ て 行 くため に テ リ トリー を拡 大 す る こ ととテ リ トリー 内の人 と 「 間 うま く つ い や て く 」 こ とを 同 時 に 行 っ て 行 かねば な らな い が 、 どち ら も 個人空 間 ・ 共 有 能 力が発 達す る こ とが 前 提 に な って い るの で あ る。

-11-一 一


個 人空 間 と不 適応 行 動 とが ど うい う関 係 が あ るか と言 えば 、基 本 的 に は 適 応 行 動 で は 発達 して い る個 人 空 間 共有 能 力 及 び そ れ に よ っ て 形 成 され る テ リ トリー が 、年齢 不 相応 の 発 達 段 階 に 留 ま っ て い るこ とで 不 適 応行 動 に 陥 っ て い る 、 とい うこ とで あ る 。未 発達 の 様 相 に よ っ て 、示 す 不 適応 行 動 の 形 が 異な っ て くる と思 われ るが 、それ につ い て は 各 論 で 扱 う 。 .次 節 では 、正 常な 個 人空 間 形 成 能 力発達 段 階 の モ デ ル を提 案 して い る 。 こ こで 、不 適応行 動 分 析 の 各 論 に 入 る前 に 、個 人 空 間 に 侵入 され た と き に 取 る行 動 と距 離 とを 対 応 させ て 考 察す るため に 、 ェ ソ ロ ジー に よる 知見 を 紹 介 して お く。 H.ヘ デ ィガ ー が 提案 した 、逃 走 距 離 と臨 界 距 離の概 念 で あ る 。ヘ デ ィガ ー は 、被捕 食 動 物 が 捕食 動 物 に近 付 かれ た と きの 行動 を 観察 した 。まず 、捕食動物 との 距 離 が 縮 まる と危 険 を察 知 して逃 げ 出す が 、 この ときの 距 離 を逃 走 距 離 と名 付 けた 。 しか しこの 距 離 が さ らに 縮 ま

り、

生 存 が 脅 か され ると一 転 して 反 撃 を しよ うとす る 。 この ときの 距 離 を臨

距 離 と名 付 け た 。 エ ソ ロ ジス トは 、この距 離 を人 間 に適 用 しよ うと して ぃ い が な 、被捕 食 動 物 ―捕食 動 物 とい う関 係 を 、精 神 の 安定 を 脅 か され る者 一精 神 の 安 定 を 脅 か す 者 と い う関 係 に 、置 き 換 えて み ては ど うで あ ろ うか 。そ して 、動 物 の 逃 走 及び 反 撃 とい う行動 を 、人 間 の 自閉 ・ 逃 走 及 び 攻 撃 と い う行 置 き換 えて 、不適応 行 動 を考 え よ うと思 う。

-12-

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A tt FE5形

育ヒ カ

ヨヒ fデ ごル この モ デ ル は 、小林 重 信 が 「 子 ど も部 屋 とその 発達 を と らえ るため の一 つ の め や す 」 と して提案 した もの を原形 に 、個 人 空 間理 論 と発 達 心理 学 理 論 と を加 味 し、用 語 を建 築 空 間 学 的 に翻 訳 して 、筆者 が 提 案 す る もので あ ・る 。 「 個人空 間 形 成能 力 の 発達 」 と い う概念 は 、市 原秀 夫 や 外 山 知 徳 に よ っ て 「 テ リ トリー 形成能 力 の 発達 」 と い う言 葉 で既 に 提 案 され て い るので 、 これ につ い て 筆 者 の もの と比 較 して 批評 を加 えて お きた い 。

(1)人 間 が空 間 に ど う対 処 して い るか と い う現 象 を観 察 し、時系 列 的 に 記 述 す る形 で示 され て い るた め 、 よ り整 理 され た形 に した い と思 い 、発 達 段 階 を表 の 形 に し、 さ らに螺 旋 状 の 発達 過 程 を図 示 した 。

(2)「 テ リ トリー 」の 意 味 が判 然 と しな い 。例 えば市橋秀夫 の 論文 では 、 精 神 分裂 病 の症 状 を説 明す るの に 、「 テ リ トリー 」「 パ ー ソナル スペ ー ス 」 「 ナ ワ バ リ」「 身 体空 間 」 が混 同 され て 使用 され て い る 。そ こで 、

2-2で

述 べ た よ うに 、まず 「 個 人 空 間 」共 有 能 力 の 発達 が 先 行 して 「

テ リ トリー 」が拡大 され る 、 との プ ロセ ス を明 示 した 。 この プ ロセス か ら、各発達 段 階 を踏 む過程 で 「 個 人空 間共 有 」→ 「 テ リ トリー 拡大 」 と 螺 旋 状 に 両 者 を巡 る発 達 段 階 を想 定 した また 、 「 形 成能 力発 達 」の 意 味 が判 然 と しな い 、づ ま り、能 力 が 発 達 す るの か 、形 成 され る空 間 そ の もの が 発 達す るの か が 曖 味 で あ ったが 、 この よ うに整 理す る こ とで 、個 人 空 間 共 有 能 力 とテ リ トリー と い う空 間 そ の もの との両 方 が (前 者 が 先 行 して )発 達 す るこ とを 明示 して い る 。

(3)「 個人 空 間は親 の 空 間 で 包 装 され て い るか ぎ りは 発 病 が 阻止 され る が 、思春 期 の生 物学 的 圧 力 で あ る親 か らの離 脱 衝動 に さ らされ る と、大 きな危 機 を迎 えるこ とにな るだ ろ う。巣立 ち 、巣 作 り、出立 、は い ず れ も 自前 の 個 人 空間の み で他者 と立 ち 向か うこ とを意 味す る 。 」 (市 橋 秀 夫 ) 「 テ リ トリー 形 成能 力 の 発 達 段 階 を経 て 、親 の 手 、親 の 日、親 の 気 配 を必 要 とせず 、 自力で 自分 の い る空 間 を手 な づ け 、テ リ トリー と し て 形 成 して 行 け るよ うにな つ て 初 め て 一 人前 の 大 人 にな る 。 」 (外 山知

-13-


徳 )と あ る こ とか ら も、個人 空 間 発 達の最 終 日標 が 「 個 の 確 立 」「 親 か ら の 分 離 Jと い う曖味 な意味 に 留 ま っ て い る嫌 い が あ る。 そ こで 、個人共 有 能力 を 受 動 的 な もの (対 象 に 共 有 され る 、対象 の 個 人 空 間 に含 まれ る こ とに耐 え る能 力 )か ら、能 動 的 な もの (対 象 と共 有 す る 、対 象 の 個人 空 間 を含 む 能 力 )へ と発 達 す る もの と し、 しか も対 象 に よ って ズ レが あ る もの と す る こ とで 、従 来 示 され て い た 「 確 立 」「 分 離 」の 概 念 を、よ り空間 的 に 明確 な形 に整 理 した 。 また 、 「 共 有 能 力 」 は 説 明概念 で あ るが 、「 共 有 (状 態 )」 は 説 明 概 念 でな く、 日に見 えな い が空 間 的 に実在 す る もの で あ る 、とい うこ と も示 せ た もの と思 う。 個 人 空 間 異 常 の 様 相 の 違 い は不 適 応行動 分 析 各 論 で詳 述す るが 、基 本 的 に は 、個人 空 間 の 共 有 能 力 が 未 発 達 なた め に 、年 齢 相 応 の テ リ トリー を持 て な い こ とか ら、不 適 応行 動 に 陥 る 、と考 えた 。 そ して第 3章 で は 、個 人 空 間 形 成能 力 を育 む 空 間 と して 住空 間 を取 り上 げ 、住空 間 を解 釈 す る こ と で どの発達 段 階 に 留 ま って い るの か を把握 し、住 空 間 を操 作 す る こ とで 治 療 的 効 果 を及 ぼ す た め の 、 モ デ ル と して適 用 す る こ と も 目的 とす る。 また 、 モ デ ル に 出 て くる 「 生 活 空 間 」と 「 テ リ トリー 」との 違 い に つ い て 述 べ てお く と、 「 生 活空 間 」は適 応 して い るか して い な い か を問 わ ず 人 間 が 現 に生 活 を営 ん で い る空 間 の こ とで あ り、「 テ リ トリー 」は 他人 と個 人 空 間 を共 有 す るこ とがで き る生 活 空間の こ とで あ る。適 応 した 生 活 を営 ん で い る人 間 に と つ て は 、 「 生 活 空 間 」 =「 テ リ トリニ 」で あ るが 、適 応 で きな い 人 間 に と っ て は この 等 式 は 成立 しな い 。 この モ デ ル の 長 所 は 、従 来 は 、不 適応行 動 の 要 因 分析 の 際 、 まず 、個 人 の 要 因 と個 人 を取 り巻 く環 境 の 要 因 とに 分 けて 、 さ らに それ らの要 因が 心 理 的 要 因 、社 会的要 因 、な ど に 分 断 して考 察 して きて い た のが 、個人 空 間 と生 活空間 との関わ りとい う、空間的 要因で全て考 察 で き、説 明が即 解 釈 、 治 療 に結 び 付 くことで ある。短所は 、筆者 の 力不足 で大 ざっぱ な もの に な つ て い るこ とで あろ うか 。 次 頁 に 発 達 段階 の 表 を、次 々頁 に 螺旋 的 発達 過 程 の 図 を 、掲 載 す る 。

-14-


A牢

ァリトリー 個人空間の共有対象と共有の仕方 時

コロ 自 コ ]口 』Vし ‰ ア

の拡大範囲

C C4し

つ 霧奥

"E

ー勘

受コ

"リ

2

3

準備期

(卜 ´ 1歳

諦 劃

1∼ 2歳

Room

積極的に働き掛ける (作 る、壊 す )の対象となること 物を試みるための対象として、 素材感に富むこと

2∼ 3歳

llou se

家族成員

意味空間 として働 く (空間 の演 出要素と機能 とが整合 して い る )こ と

3∼ 4歳

l{e i ghbou r

家族成員 近隣の友人

Garten

4

5

調整期

6∼ 9歳

過渡期

9∼ 12歳 School-

12∼ 15歳

School―

Social

7

決定期

15∼ 18歳

Schoole80Soc ia

形成期

18か

家族成員 以

家族成員 脚

枷 員 新 しし域人

-15-

所有空間に責任が持てること 自己表現が可能なこと

● ●肌 排融

人間関係と空間関係との結び付 き方が把握できること

所有空間にプライバシーが与え ■ること らオ

● 撒球眺こと の嘔D と 避│)る こと と

他者 と関わることとプライバ シ ー を守ることとの双方を可能に

間を 則 く

するための空間操作ができる間 翻 鰤

家族成員 新 しし域人

枷 員 所属集団成員 異性 (配 偶 者

所有感 を持てること 自己中心性 と仲間 との接触可能 性 との双方が保たれ ること

I

Social

自由な活動が可能であること 意味空間として働く (空間の構 成要素と機能とが整合している )こ と

● ● ●

8

認知 (見 る、なめ る、開 く、触 る )の対象となること

家族成員 新 しい友人

School

Group

6

● ●

4∼ 6歳 Kinder-

父母 (1キ に母)

)

自己の欲求にかな う空間を求め る、獲得する 自由自在に空間操作する


育ヒ カ

リ 段

リ ー

FIEL図

イl劃 A=ヒ :苦 】 ヲIラ 見え fJヒ ブJ イ固

A牢

間 要 │ラ肯 育ヒ :力

リ 大

リ ー 力

能動的

多 ヽ

有仕

才舌

受動的 各

-16-


2-4 2-3ま

多)fFrイ ■ 言命

で を総 論 と して 、 ここ で は不 適 応 行 動 分 析 の 各 論 に 入 りた い 。 この 節 で 各 論 と い う設 定 で 分析 して い る こ と 自体 を、 2-2で 述 べ た よ

うに 、個 人 空 間発 達 の 阻害 の 様相 に よ り示 され る 不 適応 行 動 の 形 が 異 な っ て く る 、 と い うこ との説 明 と した い と思 う。 これ は 筆者 自身 の 大 胆 と も言 え る仮 説 で あ るが 、あなが ち 仮説 で もな さ そ うで あ る と思 え る こ とを米 沢 慧 が書 い て い るの で 、 ここ で 引用 してお く。

(1989年

に起 こった コ ン ク リー ト詰め 殺 人 事 件 の 犯 人 の 少 年達 の 住

居 につ い て )「 家 族 とい う関 係 そ の もの が希 薄 で あ る 。別 の 場 所 で述 べ る 目黒 中学 生 の よ うな 親殺 し 、家 族 殺 人 には至 らな い 。 」

(1989年

に起 こった 警 察官 刺 殺事 件 の 犯 人 の 「 住居 の 位 相 につ け な

か つ た 」部 屋 につ い て )「 仕 事 に 就 くので もな く生 活す る場 所 と して で も な く、 フ リー ター の 浪費 の 部 屋 で しか なか っ た 。 ・ ・・ も し部 屋 が 住居 の 位 相 に つ い て い た と した ら 、犯行 の 動機は別 の もの に な って い た は ず で あ り、犯 行 は 鎮 め られ たか も しれ な い 。」

(1)精 神 障害

(精 神分裂 病

)

(ま ず 初 め に 、精 神障害 と して 躁 鬱病 を取 り上 げ な い 理 由 につ い て述 べ

て お きた い 。それ は 、筆者 が 卒業 論 文作成 中 にお 世話 に な っ た 精 神科 医 徳 田 良 仁 氏 が 、 「 精 神 分裂病 で は空 間感覚 に 障害 が 起 こ り、躁鬱 病 では 時 間 感 覚 に障 害 が起 こ る 」とお っ しゃ っ た こ とが理 由 に な つて い る 。躁鬱 病 と て 、精神 分 裂 病 (以 下 「 分 裂 病 」 と略 す )と 同 じ く人 間関 係 へ の 不 適 応 状 態 で あ るか ら、同 じ理論 が 適 用 で きな い の で は理 論 の 有用 性 に も疑 間 が 生 じる ところで あ るが 、筆 者 の 力不 足 とい うこ とで 今 は省 く こ とに す る 。 ) さて 、分 裂 病 の症 状 の 特 徴 と して 、自己が 侵入 され る と い う感 覚 と他 人 へ 自己が 漏 洩 す る と い う感 覚 を持 つ とい うこ とが あ る。具 体 的 に 言 うと「 自分 の 考 えが全て 他 人 に 知 られ て しま う。 」「 自分 の 中 に 他人 が入 つ て く る。夜 中にな ると操 縦す る 。 」とい う妄想 な どで あ る。また 、 自閉的行動 ・ 思 考 をす る と い う特 徴 もあ る 。 これ は 、他人 と関 わ りを持 つ こ とを避 け 、 我 々の 常識 的 な理 解 が不可 能 な思 考 をす る と い うこ とで あ る 。 個 人 空 間 は 、自己 と他人 との 境 界 を形作 り、そ の 境界 を侵 され る と身 体

-17-一


が 侵 され た よ うな 感 覚 を起 こ す 、 と い う性 質 を持 っ た空 間 で あ る 。その 境 界 に よ っ て 我 々 は 侵 され る心 配 の な い 自己 固 有 の 身 体 図 式 、身 体 空 間 を保 つ 。人 間 は 、 自己 の 身 体 図 式 、身 体 空 間 を 侵 され る恐 れ が な い と きで な い と 、他 人 に 個 人 空 間 へ の 侵 入 を許 す こ とは で きな い 。 しか し、 健 常 者 は 、 状 況 に 応 した 正 確 な 距・離 測 定 感 覚 を も と に 他 人 を 押 し戻 し 、適 切 な 距 離 を お い た 境 界 を形 成 で き るた め (市 橋 秀 夫 は この 過 程 を 「 ス ペ ー シ ン グ 」 と 呼 ぶ )、 状 況 に応 じて 個 人 空 間 へ の 侵 入 を許 し、 場 合 に よ っ て は 共 有 して 社 会 に 適 応 した 生 活 を して い る 。 と こ ろ が 、分 裂 病 者 は 、 ス ペ ー シ ン グ 能 力 に 異 常 を来 た して い るの で 、 適 切 な 他 人 との 距 離 及 び 境 界 を伴 う個 人空 間 を 、維 持 で きな くな っ て しま っ て い る 。 そ の ため 、「1己 へ の 侵 入 と 自己 の 漏 洩 と い う病 的 感 覚 を持 っ て し ま い 、 そ れ に よ っ て 自己 の 身 体 が 侵 され る と い う恐 怖 か ら 、 自閉 と い う行 動 を取 る 、 と説 明 で き る 。 自開 と い う行 動 が 、個人 空 間 を維 持 で きな い た め に 、代 償 的 に 物 理 的 空 間 へ 完 全 に 依 存 す る と い う行 動 で あ るこ と を示 す 具 体 的 ケ ー ス と して:ケ ■ :

:ス :III(急

性 分裂病

)及 び:ケ ::■│ス :121(慢 性 分 裂 病 )を 挙 げ る 。他 に 、前 述 の

逃 走 距 離 、臨 界 距 離 と距 離 侵 害 時 の 行 動 が 顕 在 化 した ケ ー ス と して,ヶ :■ :ス

:

挙 げ るが 、この 行 動 は 急 性 分 裂 病 に 、 よ り顕 在 化 す る 、 また 、空 間 の 障 害 は 「 分 裂 病 ら し い 分裂 病 (い わ ゆ る破 瓜 型 )」 (市 橋 秀 夫 )に 表 わ れ

131を

る こ とが 多 い と い う。 で は な ぜ 、 スペ ー シ ン グ能 力 に 異 常 を来 た す (は っ き り言 え ば 距 離感 覚 が 狂 う )の で あ ろ うか 。 こ こで は 、 G.ベ ー トソ ン と D.ジ ャ ク ソ ンの 「 二 重 拘 束 説 」 を援 用 し た い 。彼 らは 分 裂 病 者 の 親 子 間 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を 研 究 し、 分 裂 病 は 2 つ の 背 反 す る命 令 の も とに置 か れ ジ レ ン マ に 陥 る (二 重 拘 束 状 況 病 す る と い う説 を提 案 した 。 二 重 拘 束 状 況 とは 、次 の ①

)中 で 発

6つ の 構 成 要 素 か ら成 る 。

2人 以 上 の 人 物 (被 害 者 と 少 な く と も母 親 を 含 む加 害 者

)

② 体 験 が 反 復 され る こ と ・ ③ 第 1の 命 令 。 「 ∼ した ら罰 を 受 け る よ 」 「 ∼ しな か っ た ら罰 を受 け る ― -18-―


よ 」の い ず れ か 。 ④ 第 1の と矛 盾す る、 よ り象 徴 的 レベル あ る い は 非 言 語 的 レベ ル での第

2の 命令 ⑤被害者が その場か ら逃れ るこ とを禁止す る第 3の 命令 ⑥ 以 上 の シー クエ ンス は 、不 完 全 で も、 どこか ら始 ま っ て も 、被害者 が 二 重 拘 束 状況 を学 習 して しま えば 、被 害 者 に パ ニ ック を引 き起 こす 。 以上 の 構 成 要素 の うち 、下 線 を 引 い た もの が 空 間 的要 素 に 対 応 す る と思 う。つ ま り、言語的 コ ミュニ ケ ー シ ョンが 示す 内容 と、空 間的 コ ミュニ ケ ー シ ョンが 示 す 内容 とに 矛 盾 が あ れ ば 、発病 要 因 とな るの では な い か 。

例えばこうい う例がある。個室 を与えられてい る児童の押 し入れに、家 が狭 いために兄弟の布団が入れ て ある。布団の出 し入れの度にその兄弟が 立ち入 ることになるので本人は嫌が ってい るのだが 、両親はそのことが兄 弟 関 係 を持 つ た め に 良 い こ とで あ る と思 っ て い る し本 人 に そ う言 い 聞 か せ て い る 。 この 場 合 、与 え られ た 個 室 は 自立 を促 す メ ッセ ー ジ で あ る し 、置 か れ る 布 団 は 兄 弟 関 係 の 美 名 の 元 に 実 は 自立 を拒 む メ ッセ ー ジ で あ る 。 こ の こ と を 、個 人 空 間 の 概 念 で よ り深 く考 察 す る と 、次 の よ うに な る 。 発 達 の 初 期 の 段 階 で は 、 自己 の 所 有 物 は 自己 の 個 人 空 間 内 に 、他 人 の 所 有 物 は 他 人 の 個 人 空 間 内 に 存 在 す る こ とで 、 自己 と他 人 との正 確 な距 離 感 覚 が 養 わ れ るは ず で あ る 。それ が 恐 らく この 場 合 、他 人 の 所 有 物 に 対 す る 距 離 を 、 自己 の 個人 空 間 を形 成 す る距 離 と 他 人 の 個 人 空 間 が 形 成 して い る 距 離 の どち らに結 び 付 け れ ば 良 い か 、混 乱 して しま うだ ろ う 。 しか もこの 配 置 は 変 え られ る こ とが な い 限 り空 間 │リ メ ッセ ー ジ と して 発せ られ 続 け る し、 住 空 間 の 他 の 要 素 に も 同 じ よ うな 矛 盾 した メ ッセ ー ジ が込 め られ て い るだ ろ う。 この よ うな 逃 げ る こ との で きな い 状 況 に 置 か れ る中 で 、本 人 が 分 か らぬ うち に ス ペ ー シ ン グ 能 力 に 狂 い が 生 じ始 め 、 そ の 狂 つ た 距 離 感 覚 で 生 活 空 間 を測 定 す る無 理 が 限 界 に 達 した と き に 、発 病 す るの で は な い か と考 え られ る 。 市 橋 秀 夫 は 分 裂 病 患 者 につ い て 「 恐 ら くテ リ ト リー 形 成 の 機 会 を奪 わ れ 続 け て き た 」 と評 して い るが 、 こ れ は正 し い 。 テ リ ト リー 形 成 以 前 に 、個 人 空 間 の 共 有 能 力 の 基 本 で あ る ス ペ ー シ ン グ 能 力 が 狂 っ て い るた め 、個 人

-19-


空 間 の 距 離 も 境 界 も維 持 しえ な い こ との 表 わ れ が 分 裂 病 の 症 状 で あ る 。 そ して ス ペ ー シ ン グ能 力 の 狂 い は 、最 初 の 生 活 空 間 で あ る住 空 間 が 加 担 す る 二 重 拘 束 状 況 に よ っ て 引 き起 こ され る、 と ま とめ られ る と思 う 。

(2)登 校 拒 否 登 校 拒 否 の 特徴は 、不登 校 (行 きた くな い の で は な く、行 きた い と思 つ .て い て も行 けな い )の 他 、 自分 の 個 室 へ の 閉 じ籠 も りが見 られ る こ とで 、 前者 の 後 に 後 者 が表 わ れ るこ とが 多 い 。また 、閉 じ寵 も り行動 は 、既 に 個 室 が あれ ば そ こへ 閉 じ籠 も り、個 室 が な い 場 合 も自分 で 個室 化 して 閉 じ籠 もる 、 と い う形 を取 る 。個室 化 は 、 ドアに 鍵 を取 り付 け る と い う行 動 、 ド アが な い 場 合 は つ つ か い 棒 を した り家具 を バ リケ ー ド代 わ りに す る 、 と い う行 動 に よ る 。個室 に 無 理 に 侵 入 した とこ ろ 、押 し入 れ に 閉 じ籠 も っ て し ま った 、 と い う例 も報 告 され て い る 。 彼 らの 自閉 行動は 、分裂病 者 の 症 状 に見 られ る 、 ま さ しく身 体 をち ぢ こ め る こ とで個 人空間 を守 る行 動 で は な い 。筆 者 の モ デ ル を適 用 す る と、拡 大 され たテ リ トリー で あ る個室 (Room)に 閉 じ籠 もるこ とで 個人空 間 を守 っ て い るだ け 、不適応 の 程度は軽 い 。 また 、個室 化 の 手段 に見 られ るよ うに 、 物 と空 間 との 関係が 把 握 で きて い る こ とは 、少 な く と もHouseの 段 階 まで テ リ ト リー が拡 大 され て い る こ と を示 して い る 。他人 の 侵入 に 敏感 で あ っ て も、他 人 へ の 漏洩 を感 じる こ とが な い と い うところ も 、病 的 で な い 。 つ ま り個人 空 間形 成 能 力が 、分 裂 病 の よ うに基 本 か ら狂 って い る訳 で は な い が 、 School以 下 House以 上 の 発 達段階 に 留 ま っ て い るこ とが 原 因 で あ ると思 われ る。ではなぜ 、年齢不 相応 にその 段階 に留 まって しまった の か 。 こ こで は ケ ー ス を挙 げ なが ら 、登 校拒否 と住 空 間 との 関係 に 関 す る外 山 知 徳 の 研究 を 参考 に 考 えた い 。外 山 は 、登 校 拒 否児 の 住空 間 に 見 られ る特 徴 と して 、 (か な り単 純 化 して い る との こ とだが )次 の 3つ を挙 げて い る。 ① 居 間 が居 間 と して 機能 して い な い 例

1:居 間が主 要 な動線 で 分 断 され 、滞 留す る場 所 とな りえな い

2:家 族 成 員 で 居 間 と心 得 る場 所 が 違 うた め 、集 う場 所 とな りえな → い一

-20-


② 空 間 を与 えるタイ ミングの悪 さ 例 1:早 過 ぎる→:グ 警 :暮 :3: 例 2:遅 過 ぎ る→夕 :華:表:霧 例

3:突 然 で あ る→夕 :警 贅 餞

③ 奇 妙 な 空 間 の存 在 例 :奥 へ の空 間 の 展 開 を機能 とす る玄 関 が 、入 る と逆 に 行 き止 ま りに 追 い 込 まれ た 印象 を与 え る他 、正 面 か ら見 る と押 し入 れ に 嵌 め 込 ん だ よ うに見 え る仏壇 が 、実 は押 し入 れ な どな く廊 下 に 背 を 向け

て突き出した状態で置かれている→輩:義:茎

:専

:

外 山 は 、家 族 成 員 が 「 人 と家 と の 関 係 の 状 態 」 を 認 識 す る能 力 に 欠 けて い る こ とが 登 校 拒否 児 を生 み 出す 、 と述 べ て い る 。 そ して 、:ケ :書 :ス 161帯 18: に つ い て タ イ ミング の 基 準 を考 え る た め に 「 テ リ トリー 形 成 能 力 の 発 達 」 の 概 念 を (た だ しタイ ミングの 判 断 の 仕 方 に は 言 及 して い な い )、 豪 191に つ い て は 「 空 間 知 障 害 」の 概 念 を提 唱 して い る 。

2-3の

:羅

個 人空間形 成 能 力発達 段 階 モ デ ル を適 用 して 、上 記 の よ うな住

空 間 が どの よ うに個 人 空 間発達 を 阻 害 し、登 校 拒 否 行 動 生 起 に 関 わ つて い るか を説 明 で きる。それ は 、 モ デ ル で示 した 住 空 間 に必 要 とされ る機能 が 満 た され て い る段階 まで で 、個人 空 間 の 共有 能 力発達 が 留 ま っ て しま う 、 と い う説 明 で あ る。 こ こで 注 意 してお きた い のは 、 それでは 住空 間 にモ デ ル に 示 され た機 能 を機 械 的 に 与 えるよ うにすれ ば 、登 校拒否 が 防 げ るか ど言 えば 、そ うでは な い と い うこ とで あ る。外 山知 徳 が 繰 り返 し強 調 し、筆 者 も個 人 空 間の機 能 につ い て 述 べ た よ うに 、個人空 間 の あ り方 と人 間 関 係 の あ り方 とは (相 互 作 用 的 に )結 び付 い て い るの が 正 常であ る こ とに留 意 す るこ とが必 要 で あ る 。矛 盾 が あ るな らば 、前 述 の よ うに 分裂 病 に 移 行 す る 可 能性 もあ るの で あ る 。例 えば 、居 間 を居間 ら し く しつ らえ な が ら も、 そ こへ 家 族 が集 ま ろ うと しな け れ ば 、実際 の 対人距 離 と、居間 ―共有 一が 意 味す る距離 とに 、 混 乱 が 生 じる に違 い な い 。 ① の 場 合 、居 間 と して 機能す る か しな い か は 、 モ デル で言 う意 味空 間 の 問 題 で あ るか ら、個 人 空 間の 発達 は House∼ Ne18hbOurの 段 階 で とどま っ て い る と考 え られ る 。 どち らの 段 階 な のか は 、機 能 しな い 理 由 を考 える と

-21-一


良 い 。 つ ま り動 線 が 問 題 で あれ ば 、構成 の 問 題 で あ るか らNeighbourで あ る し 、例 えば家 具 が 置 い てお らず 居 間 と い う感 じが しな い の な らば 、演 出 の 問 題 で あ るか らHouseで あ る 。 ③ の 場 合 は どち ら とは 言 えな い が どち らか で あ るこ とは 確 か で あ る 。 ② の タイ ミングの 問 題 は 、所 有 感 の 問題 つ ま りKinder― Garten段 階 と関 .係 が あ る。登 校 を止 め るに して も始め るに して も 、彼 が登 校 と い う行 動 に 絡 ん で 個室 を必 要 と した とい う視 点 か ら考 えた い 。つ ま り登 校 に 対 す る考 えを意 志 表示 す るため に 個室 を必 要 と した と い うこ とで ぁ る 。前 者 の 場合 は 、 自分 の 個 人 空 間 相 当 の Kinder― Gartenの 段 階 へ 戻 つ てや り直 さね ば Sc hoolに まで テ リ トリー を拡 大 で きな い 、 との S.0.S。 で あ る と解 釈 で きる 。後 者 の 場 合は 、所有空 間 が与 え られ る (Kindcr― Garten段 階 に 住空 間 が 移 行す る )こ とで 今度 は 個 人 空 間が ス ム ー ズ に School段 階 に 移 行 しSc hoolに まで テ リ トリー を拡 大 で きた 、と解 釈 で きる 。 どの 場 合 も、年 齢 に 応 して 生 活 空 間は拡 大 せ ざるを得 な い 、学 齢 期 に な れ ば 学 校 に まで生 活 空 間 は拡 大 せ ざ るを得 な い のだ か ら、 それ に適 応 す る ため の 予 備演 習 空 間 とな る住 空 間 を形成 しな けれ ば い けな い 、 と い うこ と を示 唆 して い る。 また 、私 見 で あ るが 、個室 化 の 仕 方 に 、留 ま って い る 段 階 で の 個 人 空 間 形成 能 力 が 最 大 限 に 反 映 され るの で は な い か と思 う。 簡 単 に 言 うと 、 一 般 的な 見 方 とは 逆 に 、個 室 に鍵 を掛 け る場合 よ りも、 あ る部屋 を家 具 そ の 他 で 個室 化 す る場 合 の 方 が 、不 適 応 の 程度 が 却 つ て軽 い と い うこ とで あ る 。 そ の 他 、登 校 拒否 児 が学 校 に行 きた い と思 うの に 行 けな い と い うこ と も 一 般 的 には理 解 しが た い こ とで ぁ る と思 われ る 。が 、個 人 空 間 が 身 体 性 を 帯 び た 空 間で あ るこ と 、侵入 され た ときに 情 動 的 な反 応 を引 き起 こ す 空 間 で あ る こ と、 を考 え る と、登 校 拒 否 児 に と っ て 学 校空 間 が 、行 きた くて も 居 る こ とに耐 え られ な い 生活 空 間 で あ るこ とが理 解 で きる 。 登 校 拒 否 とは 、個 人 空 間 の 共 有 能 力が Schoolの 前発達 段 階 に 留 ま っ て い る 、それ は家 族 成 員 が 形成 して い る住空 間 が その段 階 に 留 ま っ て い るか ら で あ る 、 と い うこ と を示 すた め 、 自 らの留 ま っ て い る発 達 段 階 に 応 した テ リ トリー 形 成 能 力 を 発 揮 して 個 室 を作 る行 動 で あ る 、 とま とめ られ る 。

-22-


い み し く も外 山知 徳 が登 校 拒 否 児 を「 個室 の 機能 を見 抜 き 、 自 らの 精神 安 定 の ため に そ の 性 能 を発 揮 させ る 能 力が あ るの だ か ら、か な りま と もで あ る 。それ にふ さわ しい空 間 が な けれ ば 自 ら個 室 化 と い う空 間 創造 をや っ ての け るの だ か ら、大 した 建 築家 で さえ あ る 。 」と評 して い る。 登 校 拒 否 児 は 、 自 らの個 人 空 間 の レベ ル を 、家 か ら出 な い と い う行 動 に 。よ つ て家 族 に示 し続 け るこ とで 、家 族成 員 の 個人 空 間共 有 能 力 (そ して こ れ は もち ろん家族成 員 の 人 間 関 係 と結び 付 い て い る )の レベ ル の 低 さ を訴 えか け改 変 を迫 っ て い ると思 われ る 。

(3)非 行 「 非 行 」は 前述 の 2行 動 と違 っ て 法 律的 な定 義 で あ る 。す な わ ち未 成年 者 の 違法行 為 を指 して い る。 とは 言 つて も表 われ るのは 実 に 多様な行動 で 、 しか も仮 に 違 法でな い とされ て も健 全 とは 言 えな い 行動 で あ る こ とは 、誰 もが 認 め る こ とで あ ろ う。そ こで 、非 行 に どの よ うな 行 動 の 種 類 が あ るの か につ い て は説 明 を 省 く こ とに す る 。 上 述 の よ うに非行 には 多様 な行 動 が 含 まれ るため 、包 括 的 に 考 えるこ と は適 切 で な い か も しれ な い 。 しか しあ えて考 え る と次 の二 つ に な ろ う。非 行 で は 前述 の 2行 動 に 比 べ る と、逃 走 距離 、臨界 距 離 の 存 在 が よ り顕 在 化 して い る こ とが 一つ の 特徴 で あ る 。非 行少 年 の 逃 走 行 為 、攻 撃 行 為 は容 易 に 想 像 で き るこ とで あ ろ う。 また 、臨界距 離 が 攻 撃 と い う形 をは っ き りと 取 るの に 対 し 、逃走 距離が 内 へ の 逃 避 一 自閉 一 と い う形 を取 る こ とが 余 り な く、外 へ の逃 走や 行 動範 囲 の 拡 大 とい う形 を取 る 、こ とが も う一つ と し て注 目され る 。 これ らの こ とか ら、非 行 の 特 徴 と して 、行 動 に原 始的 な 個人 空 間の あ り 方 が比 較 的大 きく表 われて い るこ と 、行動 が 外 向的 、攻撃 的 で あ るこ と、 が 挙 げ られ る 。 前者 に 対 しては 、行 動が身 体性 を 強 く帯 び て い る と解釈 で き るが 、これ は 、非 行 少 年 は 自己 を言語 で 表 現 す るこ とが 一 般 的 に 不 得 手 で あ る、 と い う臨床 的見 解 と通 じる ところ が あ る 。また 、非 行 の一 つ に シ ン ナ ー 乱用 が あ り、矯正 が 難 しい とされ て い るが 、 シ ン ナ ー が 及 ぼ す 作 用 が 身 体的な も の で あ る事 実 か らで シ ンナー ヘ の 強 い 依存性 が 説 明 で き る 。

-23-

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後 者 に 対 しては 、個 人 空 間 の 大 き さが 健 常者 と 比 較 して 大 き い

(=臨 界 距 離 が 大 き い )、 個 人 空 間 共 有 能 力 を上 回 る とこ ろ まで 生 活空 間 を拡 大 す る 、 と解釈 で きる 。そ して 、生 活 空 間 を過 剰 に 拡 大 す るの に

引 っ張 られ て

個人 空 間が大 き くな るの で は な い か 、と も考 え られ る 。

F.キ ンゼ ル の 、

個 人 空 間 の 大 きさに 関 して は 、 A. いが 。

(非 行 少 年 では な

)刑 務 所 囚人の 身 体緩 衝 帯 (個 人空 間 と同 義 と考 えて よ い )の 研究 が

あ る 。それ に よ る と、狂 暴 な 囚人 は そ うで な い 囚 人 の 約 4倍 の 身

体緩衝 帯 を持 つ 、 と報 告 され て お り、これ ら囚 人 は 他人 の 接 近 に 対 して 通 常の人 よ りも耐 え られ な い傾 向 を持 ち 、接 近 に対 して 攻 撃 的 な行動 を触 され 発 るの だ 、 と結 論 して い る 。 この 他 に 、凶悪 な非 行 、犯 罪 につ い て 「 人 を人 と も 思 わ な い 」と い う形 容 が 用 い られ るこ とが あ る 。 これ は 2-2で 述べ た よ うに 、個人 空 間 に 侵入 され た 人 間 が 取 る行 為 と して 人 を と 物 して 扱 うこ と が あ る 、 と い うこ とか ら理 解 で き る 。人 一 倍大 き い 個人空 に 間 侵入 され 、 しか も共 有 能 力が低 い となれ ば 、不 快感 か ら物 を 相 手 に して い るつ も りで 凶行 に 及 ん で しま うこ と も考 え られ る 。 個 人 空 間 の 共有 能 力 が 年 齢 不相 応 に 低 い と い う解 釈 は 、非 行 が 違 法行 為 で あ る定義 と一 致す る 。法律 では 、共有す るこ と =守 ることだか らで あ る 。 また 、生活空 間が過 剰 に 拡 大 され る とい う例 は 、不 純 異性交 遊 や 、暴 走 族 の 集 団 、暴 走 族 が 自分 達 の 拠点 とは遠 く離れ た場 所 に の 族 名 前 を大書 して く る と い っ た 行 動 に 見 られ る 。 で は 、非 行 に 見 られ る こ の よ 勉強部屋 (個 室) うな 個 人 空 間 の 異 常 は 、 ど う し て 生 じ るか 。東 京 都 が 昭 和

39

一 般 な し

あ り

年 に 行 っ た 調 査 で 右 の よ うな 興 味 深 い 結 果 が 出 され て い る 。 こ の 調 査 は 、小 、 中 、高 校 生 で 非 行 歴 の な い 子 を持 つ 家 庭 (一 般

)を 同 じ数 だ け 選 び

同 じ 時 期 に 調 査 した もの で あ る 。

不明

32.(

0.:

一 般

非 計

1∞

な し

あ り

206

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不明

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1∞ Я

勉強机

非 行 群

生IJあ り1不 明1 計

群 )と 非 行 歴 の あ る子 を 持 つ 家 庭 (非 行 群

な し

あ り

不明

2

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ilH rE o fr ,!'+ Etg-t. t, O a 6S,ya y6 o ^ l2O7/o-lf " 昭和39年 ,東 京都調査 #

一-24-―


勉強 部 屋 、勉 強 机 ともに 、それ ら を持 た な い こ と と非 行 との 間 に 高 い 相 関 関 係 の あ るこ とが 示 され て い る 。 この 結 果 につ い て 、小川 信 子 は 、 「 自分 の 居 場 所 を住 宅 の 中に持 っ て い るか 、廊 下 の 片 隅 にで もよい 、 自分の

机を

持 ち 自分 の 生 活 空 間 を持 っ て い るか 、カリト行 化 へ の 重 要 な 一 つ の 要素 と し て表 われ て い るの で あ る 。 」と述 べ て い る 。

.ま た 、臨床的 見解 として 、家庭裁 判 所調査官の 話 と 、警察 庁 少 年課 の 人 々 の 話 を挙 げ る。 「 夏 、狭 い 部 屋 で は 暑 さが ひ ど い ため 子 ど もの 夜 の 多 くな る 。風 呂が な い の で

外 出が

2時 間 もか けて銭湯 へ 行 く。住 居 の な かで 社 交

や 勉強 の 場 が持 て な い の で 、溜 ま り場 へ 行 くよ うに な る 。あ る い は 、住 居 が 狭 い ため 外 で 勉 強 部 屋 を 借 りる と 、そ の 場所 が 溜 ま り場 に な り、非 に 行 繋 が る 。 」「 非 行 少年 問 題 は 、第 一 に 家 庭 での監 督 と教 育 が 必 要 で あ り、 第二 に そ の うえで 少 年 自身 の 空 間 が 必 要 で はな い か 。 」 さ らに 、家 庭 裁 判所 調 査 官 廣 井 亮 一 の 論文 「 描 画療 法 と して の 間取 り図 の 活 用 」 に 取 り上 げ られ て い るケ ー ス は い ずれ も 、少 年 が 居 心 地 の い 良 個 室 を求 め て い るが か な え られ な い ケ ー ス で あ る 。その うちの 1つ を 襲 基 :業 して 挙 げ る 。 この ケ ー ス に つ い て 廣 井 は 「 少 年 に は 物 置 代 わ りの 部 ::1奪 :と 屋 しか 与 え られ て い な い ・ ・ ・ これ らの こ とが 家 庭 内 に お け る 少 年 の 心 居 地 を悪 く し、 少 年 が 家 を避 け 不 良 仲 間 との 付 き合 い を続 け る こ と を促進 し て い る と も考 え られ る 。 」 と コ メ ン トして い る 。 少 年 自身 の 空 間 と い う観 点 か ら非 行 少 年 の 住 空 間 に つ い て 特 徴 を見 て き た が 、他 に 家 族 の 空 間 と い う観 点 か ら も考 え るた め 、前 述 の コ ン ク リー ト め 詰 殺 人 事 件 の主 犯 格 の少 年 の 住 居 を :難 :難 :基 華二 華:と して 挙 げ る 。 この 住 居 につ い て 米 沢 慧 が 示 した 解 釈 は 次 で あ る 。 「 この 間 取 りか らは 母親の孤 軍 奮 闘 して きた 様 子 は 垣 間 見 る こ とは 出来 る 。けれ ど 、給 料 も 入 れ ず ギ ャ ン ブル 好 き だ と い う父 親 の 影 は 薄 い 。家 族 の 空 間 と して は ほ とん ど死 ん で い る よ うに 見 え る 。家 族 四 人 の 居 所 が ど こ に も見 当た らな い 。確 か な存 在 は グ ラ ン ドピア ノ や ソ フ ァの 置 か れ た 場 所 に しか な い 。 そ の 隙 間 に 家族 が 散 らば っ て い るだ け の よ うで あ る 。 ・ ・ ・ ガ キ に あ て が っ た 部 屋 が 子供部 屋 に な る の で は な い 一 そん な 教 訓 垂 れ を して しま い か ね な い 「 」 彼 らが 投 棄 した の は 家 族 の 身 体 、そ して 住 宅 の 廃 棄 に ほ か な らな か っ た の だ 。」

-25-


ここ まで 見て <る と、非 行少年の 住空 間 の 問題点 は 、登校 拒否児の よ う に 個室 あ る いは居 問 その もの が 問題 を学 んで い るの ではな く、個室 と居 問 あ る い は食堂 (他 の よ うに 兄 弟 の 個 室 と い うこ と も あ る )と の 関 係 に 見 出 され るのでは な い か と思 われ る 。 しか も登 校 拒 否 児 の よ うに 関 係 に 矛 盾 が 見 られ るの で は な く、家族 が バ ラ バ ラで あ る と い う家 族 関 係 。が 直 接 的 に 空 間 関 係 に も反 映 され て い る 、 と思 わ れ る 。 だ か ら非 行少年 の 住空 間 は 、人 間 関係 (そ れ が い く ら望 ま しくな い 状 態 で も )と 空 間関係 との 結び 付 きを把 握 させ る とこ ろ までは 、機 能 で きて い るの だ ろ う。これ は 発達 段 階 では School― Groupの 段 階 で あ る 。正 常 には こ こか らSchool― sOcialの 段 階 へ 移 行 す るの だ が 、彼 らの 場 合 、次 の 段 階 で 挫 折す る 。つ ま り住 空 間 が 、彼 らの 所有 す る 部 屋 に正 常な意 味 で のプ ラ イ バ シー を与 えて い な い ため に 、共有 能力は School― Groupの

段階で 留 まるが 、

代 償 的 に生 活空 間 が 過剰 に 拡 大 して い く。 な ぜ 生 活 空 間 が過 剰 に 拡 大 す るの か 、その理 由 は 、この 段 階 まで 発達 が 達 成 され る と、空 間 を拡 大 す る方 が 共有 す るよ りも容易 で あ るか らか も し れ な い 。 つ ま り発 達 の 加速 度 の 問題 で あ る 。発 達 段 階の表 で School― Group 以 降 の 段 階 を比較 す る と、 テ リ トリー 拡 大 能 力 の 方 は 対象 が School― の 範 囲 で 拡 大 して い く もの な の に 反 し、 個人空 間共 有 能 力 の 方 は そ れ まで とは 打 っ て 変 わ って急 激 に 受動 的 → 能動 的 に 変 化 を迫 られ るこ とが 窺 われ る 。 こ う して 、プ ラ イ バ シー を保て る空 間 が 家 族 との 繋が りを持 つ 形 で 与 え られ る こ とが な い ため に 生 じる二つ の 能 力 の ズ レ が 、SOcialに なれ な い 行 動 ― 社 会 的 逸脱行 動 と して の 非 行 の 要 因 と な る もの と 、 ま とめ られ る 。

―-26-一

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3章

FED Oこ よ

モ 直 応 会 白勺 ィ ヽ う

-27-

理識 ブア 法


3 -

4五

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ト リ 'る 驀雲 じ機

第 2章 で考 察 して きた 個人 空 間 の 異 常 の 内容 は 、要 約 す る と発 達遅 滞 で あ る 。個 人空 間 の 発 達 を促進 あ る い は阻害 す る もの は 生 活空 間 で あ る と い う考 えの 元 に 、個人 空 間形 成 能 力発 達段 階 モ デ ル を組 み 立 てた が 、 モ デ ル を見 れ ば 発達 段 階 の 相・ 当後 ま で 、生 活空 間 の 中 に 住空 間 が 占め る割 合 が 大 き い こ とが分 か るだ ろ う。 そ こで 不 適応行動 に 対 す る 解 釈方 法 及 び 治療 方 法 と して 住空 間 を取 り上げ た 訳 で あ る 。 何 にお い て も 、把 握 す るた め には 把握す る対 象 が 何 か に表 わ れ な けれ ば な らな い 。そ の 対 象 が 、本 論 文 が 取 り上 げた不 適 応 行 動 の よ うに 治療 の 対 象 で あ る時は なお さ らで あ る 。何 か しらの 異 常 が表 われ て い る もの で あ る と同 時 に 、操 作す るこ とで治 療 が で きる もの で な くて は な らな い 。 本 論 文 で は 、上述 の 表 われ る対 象 及び 操 作 の 対 象 と して 、始 め に 挙 げ た 理 由か ら、生 活空 間 の 中で も住 空 間 (客 観的 住 空 間 と しての 住 居 及 び主 観 的 住空 間 と して の 描 画 に表 され た 住空 間 )を 取 り上 げ る こ とに した 。 つ ま り、個 人空 間 の あ り方 が 住空 間 に 表 われ 、住 空 間 の あ り方 が 個 人空 間 の あ り方 を 規定す る 、 と い う考 えが基 本 に あ る 。順 序 が 逆 に な ったが 、

2-3の

個人 空 間形 成 能 力発 達 段 階 モ デ ル も、 この 考 え を基本 に 編 み 出 さ

れ た もの で あ る。 上 述 の 住空 間 と個 人 空間 との 相互 作用 関 係 につ い て 、簡単 に プ ロセス を 図示 す る と次 の よ うにな る (記 号過 程の原単 位 )。 記 号 の 対 象 (個 人 空 間 の 相 互 関 係 ) 記号

=表 わ れ

(住 空 間 の 形 成 記 号 の 効 果 =新 し い 記 号

(個 人 空 間 の 形 成

)

新 しい 記 号 の 効 果

(新 し い 住 空 間 の 形 成 一-28-―

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:

)


住空 間 に よ る解 釈 は 、上 図 の 過 程 が どの よ うに な って い るか を 、住空 に表 われ た ものか ら把 握す る こ とで あ り、住 空 間 に よ る治 療 は

、記 号 の 対

象及 び 記 号 を操 作 して 、住空 間 の 形 成 → 個 人 空 間 の 形成 と い う連

鎖反応 を

引 き起 こ させ 、個人 空 間 の 発 達 を 促進す る こ とで あ る 。 住 空 間 の あ り方 が 個人空 間 に 表 われ る表 わ れ 方 につ い て さ らに 説

明 を加

・えて お く。空 間は 、空 間同志 の 相互 関係か ら と らえ るこ と しか で き

ないこ

とは 自明 で あ るが 、個人空 間 も同 じ く、共 に生 活 して い る成

員の個人空 間

との 関 係 か ら相互 的 に しか と らえ られ な い 。本 人 の 個人 空 間 その

もの か ら

関 係 を考 え るこ とは 不 可能 で あ る 。共 に生 活 して い る成 員 の 個人 空 と 間 本 人 の 個 人 空 間 との 関 係 を見 るた め の 空間 と して 取 り上 げ るの には 、主 な生 活空 間 で あ る (理 由 は 前述 の 通 り )住 空 間 が 最 適 で あ る 。 逆 に 、個 人空 間 の あ り方 が 住 空 間 に表 われ る表 われ 方 につ い て は

、次 の 図 を見 て い ただ きた い 。正 常 な 家 族 成 員の 個 人 空 間 の 相互 関 係 の 発 達 を 、 っ 大 ざ ぱ に 図示 した もので あ る 。

この 図 か ら考 えれ ば よ り分 か りや す い が 、住 空 間 とは 、家 族 成 員 個 々人 が 共 有 した 個 人空 間 に よ り形 成 され る 個 々人 の テ リ トリー で る あ と同 時 に 、 家 族 の 個 人 空 間 で あ る 。 これ は 、個 人 の 個 人 空 間 と 同 じ性 質 を つ 持 と思 わ れ る 。米 沢 慧 が 、 コ ン ク ー ト詰 め 殺 人 事 件 の 現 場 と な っ た 住居 につ いて こ う書 い て い るの は 正 し い 。 「 そ れ を二 人 は 幼 い 頃 か ら鍵 っ 子 だ っ た とい う 理 由 で は 説 明 に な ら な い (筆 者 ― しか し今 まで は この よ うに 説 明 され る こ とが ほ とん どだ っ た の で あ る )。 た しか な こ とは 、家 族 の 身 体 そ の もの が 何 か で 崩 壊 して い た と しか ぃ ぃ ょ うが な い 。 」 この 場 合 、家 族 の 崩壊の様 ― -29-―


相 が住 空 間 に表 われ て い るの で あ る 。 この よ うに執拗 に 「 表 われ

Jを 利 用 しよ うとす るの は 、言 語 的 治 療活 動

よ りも非 言 語 的治療 活 動 の 方 が 有 効 で あ る と思 われ る場 合 で あ る 。人 間 像 は 、言 語 で 表 され る ものが全 て で は な い こ とが 多 い か らで あ る 。心 理療 法 の基 本 とされ る精神 分 析学 で は これ を無意識 の重 視 と言 い 、精 神 分析療 法 。が開 発 され た 。 しか しこの よ うな 難 解 な概念 を持 ち出 さな くと も、 日常的 な生 活 の 場 で あ る住 空 間か ら今 まで 気付 かな か つ た人 間 像 を気 付 く こ とが で きれ ば それ に越 した こ とは な い 。 多木 浩 二 は 次 の よ うに平 易 に言 つ て い る 。 「 確 か に住 み 手 は 自分 の 家 を 隅 々 まで 使 い こな し装 飾す る に もか かわ らず 、 自分 の 家 に 含 まれ て い る意 味 に つ い て 正 確 に語 る こ とが で きな い 。彼 は 自分 の 行動 の ご く一 面 しか理 解 して い な いの で あ る 。 とこ ろが 我 々が 他人 の 家 を訪れ て み る と、その家 は 住 み 手 が 決 して 意 識 的 に語 らぬ 側 面 を語 り始 め る 。 ・ ・ 家 を読 む こ と は家 人 を読 む こ とに な るが 、 そ の 像 は家人 自身 に と って も未 知 の 肖像 と い っ

て よい 。 とき__に 畦 翌生主墜と立墜壁塑璽塑狙五L≧量ころ う。マ リオ・ プラー ツは 、 フ ァー ニ ッ シ ン グの文 化 を辿 りな が ら、極 め て 明確 に 、家 は 人 な り とい う古 い諺 を肯定 して い る 。彼 は『 あな たの家が どの よ うに見 えるか言 つ て ご らん な さ い 。あ な たが どん な 人 間か話 して あげ ます よ 。』 と も書 い て いる。 」 建 築 空 間 学 か ら も 、住空 間 と い う物理 的 な 非 言 語 を重 視 して 治 療 して い く姿 勢 を も っ と打 ち 出 して 良 い と思 うの で あ る 。大 切 な の は 、住 空 間 か ら の 手 法 を開 発 して い く こ とで あ る 。

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3-2

FE■ の

適 切 な解 釈 の ため には 、住 空 間 の 演 出要 素 及 び 構 成要素 の 持 つ 解 した上 で 、住居 や 間取 り図 (建 築 学 で は 平 面 図 解 読 で き る よ うに な らねば な らな い 。

意 味 を理

)か ら家 族 成 員 の 生 活 を

治 療 の ため の 解 釈 と して基 本 とな るの は 後 者 の 方 で あ る 。前 者 を駆 使し っ い 後者 を行 て く訳 だが 、その際 注意せ ねば な らな いの は 、生 活 を て 、個 々 の 要 素 を 繋 ぎ合 わ せ る の で な く全 体 像 と して

サ ー ビス

サ ー ビス

総 合 的 に把 握 す る こ と で あ る 。鈴 木 成 文 は 、

書庫

そ の 具 体 的 方 法 と して

1'か な 分

生 活 と空 間 との 関 係 を

フアレンス

=口

図 式 化 して 表 わ して み る こ と を提 案 して い る 。 右 に 図 式 化 の 例 を示 す

(図 書 館 )。

基本的 な空間の相互関 係 を示す固式

基本的な人の流れ

(1)空 間 の 演 出要 素 及び 構 成 要 素 が意 味 す る もの 建築家 渡 辺武 信 及 び 家 族 画 研究 者 日比 裕 泰 の 著 書 を参考 に ま とめ

たも

の を次 に 示 す 。 ① 演 出要 素 テ ー ブル :テ ー ブルの ど こに 誰 が 座 るか に よ っ て 、家 族 の 序 列が表 わ (食 卓 )・

れ る 。その際 、テ ー ブル が ど う配置 され て い るか に も注意

空席 は 成 員 の 不 在 を視 覚 化 す る (特 に 丸 い テ ー ブル )。 机 :家 庭 内での 孤 立 あ る い は 独 立 を表 わ す 。 こ た つ :家 庭 の 温 か さの 象 徴 。 椅子 :そ の 椅子 に座 る者 の 、椅 子 の あ る空 間 にお け る居心 地 を象

徴す

る。 ソフ アー :空 間 に 向 き を与 え る 。向 きに よ っ て空 間 を と 前 後 ろに 区切 る (背 の あ る方 が 後 ろ )。 家 庭 的 雰 囲気 の 象 徴 。 ベ ッ ド :寝 室 を・ 専 用 化す る 。専 用化 が 進 む と就 寝 前 の 居 間 と化す 。

-31イ で    ” .   一 h卍 ・

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家 具 :そ れ を所 有 す る成 員 の 性 格 、身 分 、生 育 史 を表 わ す 。空 間 を遮 断す る。 本 棚 :所 有 す る成 員 の (主 に

)知 的 な 部 分 の 生 育 史 を表 わ す 。

鍵 :自 由 に 出入 りで き る者 を特 定 す る 。鍵 の 共 有 は 、人 間 関 係 を結 ぶ こ との 象 徴 で あ る 。

.

照 明 :空 間 の 中 心 を作 る 。 カ ー テ ン・:「 引 く 」 と きは 「 遮 る もの 」、 「

引 か れ た 」後 は 「 見 られ

る もの 」。生 活 を 舞 台 に 見 立 て る と 、 「 開 く 」 こ とは 開 幕 を 、 「 閉 じる 」 こ とは 終 幕 を 、意 味 す る 。 流 し :母 親 の 存 在 感 の 象 徴 。 冷 蔵 庫 :中 の 密 度 が 、家 族 の 空 間 が 住 空 間 で 完 結 して い る か い な い か を表 わ す 。飢 餓 感 の 象 徴 。 食 器 :食 器 の 構 成 が 食 生 活 の 特 徴 を表 わ す 。見 え る 物 で あ る ため に 、 象 徴性 が強 い 。 鋸 、 ス コ ップ 、包 丁 :攻 撃 的 衝 動 の 象 徴 。 テ レ ビ :社 会 へ の 参 加 意 欲 を 示 す 。 神 棚 ・ 仏 壇 :家 族 の 記 憶 を 継 承 す る もの 。合 理

的 思 考 で は 割 り切 れ な

い 生 活 感 情 に 対 す る抵 抗 力 を与 え る 。 ② 構成要素 屋 根 :独 立 して 家 を構 え る こ との 象 徴 。非 日常 性 と展 望 。 天 丼 :個 人 空 間 の 大 き さの うち 、高 さ を表 わ す 。 これ との 比 較 で 、高 す ぎは 開 放 感 か 落 ち 着 きの な さ 、低 す ぎは 圧 迫 感 か く つ ろ ぎ を 与 える。 壁 :仕 切 り。保 護 (特 に 背 に した と き )。 窓 との 関 係 で 意 味 が 規 定 さ ■る 。 オ 窓 :外 を 見 る (そ れ も密 や か に )。 壁 との 関 係 で 意 味 が 規 定 され る : 階 段 :階 上 に い る と き と階 下 に い る と き との 気 持 ち を 切 り替 え させ る 。 階 上 と階 下 を結 ぶ もの 。 ドア :空 間 同志 を繋 ぐ。外 開 きは 押 し出す 。内開 きは 迎 え入 れ る 。襖 ・ 障 子 :空 間 同志 を繋 ぐ 。気 配 を 伝達 す る 。

-32t,


縁 側 ・ テ ラ ス ・ ポ ー チ :内 外 の 中 間 領 域 。非 公 式 な 接 客 空 間 。 庭 :感 情 を密 か に 発 散 す る対 象 . 玄 関 :送 迎 の 場 。私 的 空 間 へ の ロ ック 。

(2)生

活の初歩的解読法

鈴 木 成 文 の 「 住 ま い 方 調 査 」 の 研 究 成 果 を 参 考 に 解 読 法 の 例 を挙 げ る 。

(例 は 核家族 を想 定 して い る 。 ) ① 右 は二室 住 宅 の 2つ の 住 み 方 で あ る 。台 所 の 位置 が 、生活 の 仕方 を規 定す る 。 △

副 室 食事 型 は食事 室 が 安 定 す る代 わ りに

副 室食tT・ 型

寝 室 の 分 解 (子 ど もが小 さ い 頃 には一 室 で 寝 て い たのが 、大 き くな る と二室 に 分 解 す るこ と )が 妨 げ られ る 。主室 食 事 型 に な る。

51C型 で あ る 。 当時は画 期 的提案 で あ っ た DKを 設 けた

② 右 は 公 営 住宅標準 設計

こ とで 、食 寝分離 が 可能 に な った 。 また 、 それ まで 襖 で仕 切 られ る こ とが 多か っ た 居 室 (寝 室 )を 壁 と押 し入 れ で仕 切 った

訂F脳汁旧L

は 寝室 は 分解 しや す い が 食 寝 分 離 が 犠 牲

こ とで 、両室の独 立性 が 保 たれ るこ とに な った 。 ③ 右 は 2DKに お け る典型 的 な 住 み 方 で あ る。

DKで は 座 式 の 食 事 、 DKと

6畳 は 一

体 化 して 居 間 、南 室 は 夫 婦 寝 室 、北 室 は 子 供 の 寝 室 兼 勉 強 部 屋 とな る が 、独 立 性 は 必 ず し も高 くな い 。

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④右は

2DKに

お け る居 間 確 保 (最 近

重 視 され て い る )の 住 み 方 で あ る 。 北 室 は 子 供 の 個 室 と して 良 <整 え ら れ て い る 。南

6畳 は 、襖 を ア コー デ

オ ン カ ー テ ン に 変 え 、カ ー ペ ッ トを 敷 き 、 DKと 一 体 化 した 居 間 と して 使 わ れ るが 、夫 婦 の 寝 室 を 兼 ね る 。

注 意 す べ きは 、生 活 を 解 読 す る 際 に 、部 屋 の 機 能 を 固 定 的 に 解 読 す るの で は な く 、 流 動 的 に 解 読 す る こ とで あ る 。例 えば 、同 じ 部 屋 が 、机 を置 け ば 客 間 と な り、布 団 を 敷 け ば 寝 室 に な る 、 と い う可 変 性 が 日本 の 住 宅 に は あ つ た 。 そ して それ は 、現 代 も 例 に 挙 げ た 主 室 食 事 型 住 宅 な ど に 引 き継 が れ て い る 。 多 木 浩 二 の 文 章 を 引 用 す れ ば 、 「 上 田篤 が 氏 日本 と 西 洋 の 家 の 中 で の 物 の 現 わ れ 方 を 区 別 して 、前 者 を 劇 場 型 、後 者 を 博物 型 館 と名 付 け 。 ・ ・ た しか し劇 場 型 と い っ て も 、物 が あ らか じめ 用 意 され た 舞 台 に役 者 と して 登 場 す るの で は な く 、物 の 登 場 が 空 間 の 始 ま りで る こ あ と を忘 れ て は な ら な い 」 の で あ る 。 この よ うな 日本 の 住 空 間 の 性 は 質 、空 間 の 狭 さ に よ る もの で は な <、 多木 も言 うよ うに 、 も っ と民 族 性 に 関 わ る本 質 的 な も の で あ る と 思 われ る 。 こ こ で 出 て く る 「 物 」は 、本 節 の 「 演 出 要 素 」 と 同義 と考 え て よ い だ ろ う 。 この 視 点 は 、次 節 で 論 じ る 治 療 方 法 に も生 か され る つ 。 ま り、 構 成 要 素 よ り も演 出 要 素 を ど う利 用 す るか が重 視 され る こ とに な る 。

-34-


3--3

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才台 療

臨床 家 の 果 たす べ き役割 は 建 築 家 とは 異 な り、住空 間 を一 か ら設計 す る 訳 で は な い 。その代 わ り、留 ま っ て い る発 達 段 階が どの 辺 りか 、発達 を阻 害 して い る要 因が 何 か 、それ が 住 空 間に どの よ うに 表 われ て い るか 、 を見 抜 い た うえで 、発達 を促 す よ うに 住空間 を操 作す る こ とを求め られ る 。 手 順 と して は 、次 が 理 想 的 で あ ろ う。 ① 家 庭 訪 問 して 観 察 す るか 、間 取 り図 を 描 い て も ら う (こ の 場 合 の 注 意

点 につ い ては 3-5を 参 照 の こ と )か 、の い ずれ か に よ っ て 、住空 間 の 基 本 的解釈 を行 う。 3-2を 参照 。

②家族成 員全員に 、住空間 を どの よ うに 使用 して い るか につ い て 尋 ね る 。 これ に よ って 解 釈 が よ り家 族 関 係 と結 び 付 い た もの に な る し 、登

校拒

否 児 の 住空間 で あ った よ うに 、家 族 成 員 に よ っ て 同 じ空 間 の とらえ 方 が違 うと い う異 常 の 形 が 分 か ること もあ る 。 こ こ までは 住 空 間の 現在 を解 釈 す る作 業 で あ る。 ③ 次 に 、住空 間 を時 系列 的 に 解 釈す る作業 に 移 る 。引 っ越 しの 有無 、家 族 成 員 の 変 化 、部 屋の 模 様 替 え 、等 につ い て尋 ね る 。 ④ 付属 的 な質問 と して 、乗 用 車 の 利用 状況 につ い て尋 ね る 。 (幼 少 期 か ら乗 用 車 で移 動 す るこ とが 多 い と、テ リ トリー 拡 大 能 力 に 比 較 して 拡 大 対 象 が 大 きす ぎ しか も 分 散 す るので 、発 達 段 階 の 初期 で ス ペー シ ン グに 混 乱 を来 た す 恐れ が あ るため ) ⑤ 以 上 に よ って 、住 空間 の 様 相 を把握 した ら、 それ が 個人空 間 形成 能

発 達 段 階 の どの 段 階での 異 常 に 当た るか を判 断す る 。判 断 の 際 には 、 示 され た 不適 応 行 動 の 分 類 か ら考 える こ と もで き る

(2-4参

照 )。

そ の 異 常 を住空 間 に フ ィー ドバ ック して 、住空 間 に どの よ うな表 われ 方 を して い るか を詳 細 に 、か っ 、住空 間全 体 との 関 係か ら検 討 して い く (平 面 図 を描 く及び 3-2の 図式化 をす る と検 討 しや す い )。 ⑥ 年 齢 相 応 の 発 達 段 階 に 住 空 間 を移行 させ るべ く、家 族 成 員 の 操 作 と住 空 間 の 操 作が連 動 して 働 く よ うに 、表 われ に 対す る具 体的 な 操作方 法 を考 え実 施す る 。 上 述 ⑥ に 当た る実 際 の 建築 空 間 的治療 活 動 は 、臨床 家 と家 族 成 員 とが

-35-


同で設 計 す る形 に な る 。家 族 成 員 全 員 (不 可 能 な らば 両 親 だ けは 必 ず )に 空 間設 計 の 課 題 を課 して 合 同で 実 施 させ 、臨 床 家 が それ に 介入す る とい う 形 を取 る。通 常 の 設 計 の よ うに 設 計者 が 先 導 す る形 を取 らな い 。な ぜ な ら ば これ は 治療 活動だ か らで あ る 。宮 脇檀 が 「 物 は 常 に 有 効 で す 。た だ し、 こ働 い て くれ

けれ ば単 な る物 で しか あ りませ ん 。 」と述 べ て い るよ うに 方 法 と して 用 い る ときは な お さ ら 、家 族成 員 の 治 療 に 始め な い とい けな い か らで あ る 。動 機付 けが で きた 家

、空 間 を治 療 の

対 す る動 機 付 け か ら 族 成 員が 設 計 課 題 に

取 り組 む 際 に 、よ り有 効 に空 間 が 働 くよ う援 助 す るこ とが

役割 にな る 。

さて 、龍鶏 乗 峰は 、課 題設 定 の 注意 点 と して 次 の こ とを 挙げて い る。 ① 家 族 の 内的力動 に 並 行 して

家 族 の 力動 に タ イ ミング を 合 わせ 、最 も効 果 が あ る と われ 思 る段 階 で 設定 す る。 ② 家 族 の 外 的力動 に 並 行 して 家 族 の ライ フサ イ クル 、季 節 、年 度 、学 期 、誕生 や 結婚

な どの 記 念 日の 区切 りや 変 化 に 意 味 付 け を して 、心 理 的猶 予 と期 待 を 持たせて 実 施す る 。 ③ 家 族 の 受 容 を取 り付 け る 唐 突 的強 制 的 な 課 題 と して は 紹介 しな い 。事 前 に 可 能性 や 示 唆 してお く。 疑 問や 不 安 に よる抵 抗 は 最小 限 に 留め て 課 題 設 定対 象 はお お む ね 次 の よ うな もの に な る 。

必要性 を

実 施す る。

① 食 堂 及び 食卓 「 食 」が意 味 す る とこ ろ は 、個 人空

間 の 最 も身 体性 を帯 び た 部 分

で あ り、これ を 共 に す る こ との 意 味 は 大 き い 。住 空

間 と個人 空 間 発 達 段階 とを対 応 させ て 考 え る と 、居 間 よ りも食堂 の 方 が プ ライ ベ ‐ 卜な分 (拡 大 範 囲 が 狭 い )、 ょ り基 本 的 な発達 段 階 に 影 響 を及 ぼ す と思 われ る 。建 築 家 の 視 点 か らも 、渡 辺 武 信が 「 設 計者 の 立 場 で 住 宅 を考 え る場 合 、 ・・ ・ 食 事 の 場 の 具 体 性 を手 掛 か りに ス ター トす る 」「 ど うい う食 事 の 仕 方 を す るか 、が 家 族 の ライ フス タィル を 、 従 って住 宅 の あ り方 を決定 す る 」と述 べ て い る 。

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また 、臨 床 的 に も、 不適 応 者 を生 み 出す 家 族 に は 食事 を す る場 が 乱 雑 で あ る こ とが 多 い こ とが 観察 され る 。 そ こで 、食 堂の 模 様 替 え 、食器 の 新 調 、座 席 の 位 置 を変 える 、食 卓 の 位置や 角 度 を変 え る 、照 明 を工 夫 して 求 心 性 を演 出す る、 な ど の 課 題 を設 定 す る 。同 時 に 食 事 を必 ず 家 族 一 緒 に 取 る 、な どの 課 題 を 設 定す る 。 ② 間取 りの 変更 動 線 的 に 問 題 が あ る 場 合 や 、所 有空 間 の 有無 や プ ライ バ シーの 問 題 が あ る場 合 、この課 題 が設 定 され る。また 、部屋 替 え も含 まれ る 。 住 空 間 の 構 成要素 を操 作 す るこ とは 難 しい ため 、演 出要 素 に よ っ て 行 う。最 もよ く用 い られ る演 出要 素 は 家 具 で あ る 。 また 、 2章 で 挙 げ た 「 奇 妙 な空間 」は 、臨 床家 が 多少 強 い 行動 に 出 る こ とに な っ て も 、機能 と演 出 とが 整 合 す るよ うに 変 更 しな け れ ば な らな い だ ろ う。 既 存 の 構 成 要素 を聞 取 り変 更 に 当た っ て どの よ うに活 用 す るか に つ い ては 、構 成要素 に よ っ て 固定 され る空 間 が 次 の 4類 型 の どれ に 当た るか 、か ら考 え る と、演 出要素 の 配 置 法 が 限 定 され て 、考 えや す い で あろ う。

(3)一 体型

(b)2分 割型

(d)′ につ い て よ り分 か

(c)分 節型

(d)居 問固定型

りやす く説 明す る と 、次 頁 の よ うに な る 。

各演 出要素 の意味す るとこ ろは 、 3-2を 参照 され た い 。 か な り大掛 か りな模 様替 えが必 要な場 合 もあ る 。 また 、一 部 だ け では 効果が薄 い こと もあ るので 、必要 の な い部 屋 で も清 掃 した り家

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具 の 配 置 を 変 えた りす る こ と もあ る 。

斜 線 の 部 分 が 、可 変 的 問 仕 切 り を 動 か し うる 範 囲 を示 す 。 個 室 相 互 の 広 さ を調 節 で き る 。

「 ∼ 家 大 改 造 」 「 建 築 ∼ 年 記 念 大 掃 除 」な ど と 称 し 、年 末 や 年 度 末 、夏 休 み 後 半 な どに 数 日間 か け て 実 施 す る 。 臨 床 的 に は 、費 用 小 ・ 労 力 大 が 、抵 抗 小 ・ 効 果 大 で あ る と の こ とだ が 、 そ の 形 が 最 も個 人 空 間 共 有 体 験 に 繋 が りや す い か らで あ ろ う。 具 体 的 な 治 療 方 法 例 と して 、:擁 :壺 :基 :li藝 (思 春 期 挫 折 閉 じ籠 も り )を 挙 げ る 。 こ の ケ ー ス の {6)課 題 に見 られ る よ うに 、治 療 の た め の 空 間 設 計 の 課 題 は 、狭 義 の 設 計 だ け で な く物 の 使 用 法 ま で 課 題 設 定 され る こ とが 特 徴 で あ る 。 この 点 で は 狭 義 の 設 計 よ り厳 密 で あ る が 、反 面 、部 屋 の 機 能 を 固 定 して 考 え る必 要 が な い 。 こ れ は 、前 節 で 述 べ た 演 出要 素 の 重 視 を突 き 詰 め た 考 え で あ る 。簡 単 に言 え ば 、治 療 の た め の 住 空 間 操 作 で は 、物 の 配 置 に留 ま ら ず 物 の 使 い 方 の レ ベ ル まで 考 慮 が 必 要 な の で あ る 。

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で は 、 日常的 生 活空 間 で あ る住空 間 を取 り上 げ て きた が 、 こ こ

で は 非 日常 的空 間 で あ る住 空 間 以 外 の空 間 を治 療 に どの よ うに利 用す るか につ い て 述 べ る 。

.分 裂 病 に対 す る治療 的 戦 略 と して は 、市 橋秀 夫 に よ る と次 の よ うな もの である。 第 1に まず 、相 手 の (個 人 )空 間 には い るこ との 儀 式 と許 しを必 要 とす る 。そ のため には 、治療 者 の 自信 と安心 感 を与 える能 力 と精 妙 な 距 離感覚 、 身 体空 間 へ の 理 解 、が必 要 で あ る 。第 2に 、治 療 者 が 侵入者 で な く安全 な 人 間で あ り、保護 、救 助 す る者 と して 現 われ た と い うメ ッセ ー ジ を送 り続 け るこ とが重 要 で あ る 。第 3に 個 人 空 間 の 共有 で あ る 。外来 に 患 者 が 来 る こ とは 、治 療 者 の 身体 空 間 に 入 る こ とを意 味 して い るか ら、治 療 が 成功 す る可 能 性 を示 唆 して い る 。 「 患 者 は 初 診 の 場 で 、 自己 の 身 体空 間 を侵 され 破 壊 され るの か 、保 つ て くれ るの か を見 定 め よ う とす る 。従 つて 、治療 の 導 入 は 、非 言 語 的 レベ ル で 患者 の 空 間 を保証す る こ とか ら始め な けれ ば な らな い 。安心 を送 り届 け る と い う操 作 は 、そ もそ も空 間 を 一 方 が 与 え 、治 療 者 の 空 間 を 貸 す と い う こ とな く して は達 成 で きな い 。 」 と述 べ られ て い るが 、 これ は 家 庭裁判 所 で の 臨 床 に も当ては ま る と言 え るだ ろ う。 次 に 、家 庭裁 判所 で の 調査室 を利 用 した 例 を

ユ彗嚢 と して 挙 げ る 。 この 方 法 を取 つ た廣 井 亮 一 は 次 の よ うに コ メ ン トして い る 。 「 間 取 り図 Bに は部 屋 の 使 い 方 を決め て お らず 、空 自 の一 室 を設 けた こ :攀 :薫 轟

とな どか ら、この家族 には 変化 の 可能性が か な り残 され て い る と判 断 した 。

IP(問

題 と見 な され た 者

)が 描 い た間 取 り図 Bが 、 IPが 認 識 す るこの

家 族 に 合 う家 族 構造 だ とすれ ば 、空 自の一 室 は 、 この 家 族 シス テ ム を補 足 す る何 らか の 要 素 で あ る と考 え られ る。そ して

IPが この 空 自 の 一 室 を 「

誰 かが来 た ときに 使 う部 屋 」と定 義 した こ とを利 用 して 、そ こ を調査 官 の ポ ジ シ ョン と見 立 てた 。 そ れ に よ っ て 、少 な く と も IPか らは 抵 抗 を受 け ず に 、援 助 す る こ とが で きる と考 えた訳 で あ る 。

-39-


さ ら に 、面 接 室 の 空 間 的 構 造 を 、

IPの 間 取 り図 に 表 現 され た 家 族 空 間

に置 き 換 え る こ とに よ っ て 、家族 面 接 の 構造 を設 定 し家 族 面接 を 実 施 した 。 こ の よ うに して 、家 族 内 に お け る 調 査 官 の ポ ジ シ ョン を維 持 す る こ とで 、 調 査 官 は 「 家 族 の 一 員 」 と して 参 加 す る こ とに 成 功 して い る 。両 親 は 、そ の よ うな 面 接 の 過 程 で 、・ 調 査 官 に 対 す る構 え を徐 々 に 崩 し始 め て い る 。 」 。 これ は 、別 節 に 述 べ る間 取 り図 に よ る 治 療 を応 用 した もの で あ る 。不 適 応 者 が 家 族 及 び 他 者 に 対 して 持 っ て い る主 観 的 な 空 間 的 配 置 及 び 距 離 (不 適 応 者 の 個 人 空 間 が 、家 族 が 共 有 して い る個 人 空 間 及 び 他 者 の 個 人 空 間 と どの よ うな 位 置 関 係 に あ るか

)を 、 「 あ な た の 家 族 が 生 活 じや す い 」間 取

り図 で 表 わ して も ら い 、そ の 位 置 関 係 を調 査 室 に も持 ち 込 む こ とで 、非 日 常 的 空 間 を 日常 的 空 間 に 近 づ け る こ とに 成 功 した 例 で あ る 。 非 日 常 的 空 間 の 設 定 に 意 味 が あ る とす る立 場 (村 瀬 孝 雄 よ うに 述 べ らオ ■て い る 。

)か ら も 、次 の

「 面 接 の 場 の 物 理 的 特 性 に 面 接 者 が どの 程 度 な しん で い るか 、落 ち着 い た 自然 な 気 持 ち で い られ るか 、が 大 事 で あ る 。私 見 だ が 、面 接 室 には さ り 気 な く 、面 接 者 の 好 み や 関 心 が 反 映 され て い る よ うな 、個 人 的 な 所 有 物 が 置 か れ て い る こ とが 望 ま し い よ うだ 。絵 や 、置 物 や 、壁 飾 りと い っ た 類 で あ る 。 こ う した 人 間 的 側 面 を感 じ させ る もの は 、面 接 へ の 不 安 を 軽 減 させ る 働 き を 持 つ よ うで あ る 。 」 個 人 空 間 の 共 有 能 力 が 一 般 的 に 弱 い 不 適 応 者 が 、面 接 者 が 拡 大 した テ リ ト リ ー (面 接 者 が 所 属 す る集 団 が 形 成 す る空 間 )に い き な り入 る こ とは 大 変 な こ と な の で あ ろ う。 しか し、 面 接 者 個 人 の 個 人 空 間 に ま ず 入 れ ば 良 い と い うこ とに な れ ば 、不 安 は 大 分 軽 減 す る に 違 い な い 。上 述 の 「 個 人 的 な 所 有 物 」は 、面 接 室 が そ れ ほ ど拡 大 され た テ リ ト リ ー で は な い こ とを 示 す た め の 仕 掛 け で あ る と考 え られ る 。 そ の 他 、カ ウ ンセ リ ン グ な どで は 面 接 時 の 位 置 関 係 と して 、面 接 者 と被 面 接 者 とが 向 き 合 うの で は な く 90度 の 角 度 で 面 接 す る こ とが 多 い が 、 こ れ は 個 人 空 間 が 前 方 向 よ りも横 方 向 に 小 さ い こ と を利 用 して い る もの と 思 わ れ る 。 侵 入 の 恐 れ を与 え る こ と な く観 察 す る こ とが 可 能 だ か らで る あ 。

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描画 に表 され た住空 間は 、誰 に も同 じく認知 され る客観的な 住 空 間 と違 っ て 、個人 に主 観 的 に 認 知 され た 住空 間 で あ る。 しか も、 後 述 す るが 、不 適 応 の 程 度 が 高 い ほ ど、客 観的 認 知 像 と主 観 的認 知 像 との ズ レ が 大 きい 。

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人 の 内的 世 界 を重 視 す る臨 床 の 場 で は 、今 まで 考察 して きた 物理 的 な 住 空 間 よ りも、む しろ 描 かれ た 住 空 間 の 方 が重 視 され て きた 。 とは い ぇ 、

不 適 応 行 動 の 解 釈手 法 に 、描 か れ た住 空 間 が 用 い られ 始 め た の は 最近 の こ とで あ る 。それ も、 こ こで 主 に 論 じる よ うな 、住 空 間 その もの を単 独で 描 か せ る手 法 は 多 くな い 。家族 を描 か せ た 中 に登 場 した 住空 間 を 扱 った り、 人 物や 樹木 を描 かせ るの と並 行 して 住空 間 を描 かせ た り、 と い う手 法 が 多 か つた 。 しか し、住 空 間が家 族 関 係 を表 わ す と い う考 えは 、建 築 学 と変 わ らな い 。 物 理 的 な 住 空 間 と主 観 的な 住 空 間 の 利 用 方法 につ い て 考 え る と 、物理 的 住 空 間 の 方 は 発達 阻 害 の 原因 を 把 握 す るため と発 達 を促 進 す るため の 操 作 に 利 用 し、主 観 的住 空 間の方 は 発 達 阻害 の 様 相 を把握 す るため と物理 的 住 空 間操 作 の 代 用 方法 と して 利 用 す るの が 良 い と思 われ る 。た だ し 、代用 方 法 と して 利 用 す る場 合 は 、前 述 、後 述 の よ うに 、正 確 に 物 理 的 住 空 間 を把 握 す るこ とは 難 しい こ とに注 意 が必 要 で あ る。実 際 の 広 さや 位 置 を確 かめ な が ら主 観 的 認知 と物 理的認 知 との 違 い に 着 日 して 解 釈 す る方 が 、む しろ 望 ま しい と思 われ る 。従 って 、描画後の 質 問 セ ッシ ョンは 大変重 要 で あ る 。 描 画 に 表 され た住 空 間が主 に 何 を表 わ す か につ い て は 、他 に 描 かれ た も の との 比 較 か ら、か え って明 瞭 に な って きた ところ も あ る。 通 説 とな っ て い るの は 、「 不 適応 者 の 家庭 状 況 が 投 影 されや す く、不 適 応 者 が

自分 の 家

族 や 家 族 関 係 を全体 と して どの よ うに 認 知 し、それ に 対 して どの よ うな 感 情 や 態 度 を有 して い るか を理 解 で き る 。 」「 イメ ー ジの レベ ル で は な <現 実 レベ ル で の 家 族全 体 の 相互 作 用 が 反 映 され る 。人 物 が 表 現 され な い ため に 、家 族 画 に 反 映 され るよ うな リアル な 内容や 微 妙 な ニ ュ ア ンス が余 り表 い 現 され な 。 」とい うもので あ る 。 さ らに こ こ では t描 画 に表 され た住空 間 を、 「 家 屋 画 」 と 「 間 取 り図 ―-41-―


(い ず れ も臨 床 の 場 で 呼ばれ て い る名 で 、建 築 学 か ら呼 べ ば 、前 者 は簡 単 な外 観 及 び 内観 パ ー ス 、後者 は 簡単 で あ るが 家 具 類 は 詳 細 に 描 かれ た平 面 図 、で あ る。 「 簡単 な 」の意 味 は 、縮尺 を気 にせ ず フ リーハ ン ドで 描 く、 と い う意 味 で あ る。 )と に 分 け て 、双方 の 表 わ す もの の 違 いや 建 築空 間 学 的解 釈 方 法 の 概要 につ い て整 理 、考 察 した い 。

.(1)家

屋画

「 家 の 絵 を 描 い て下 さ い 」 「 あな たの 家 の 絵 を描 い て下 さ い

」 との教 示

に よ っ て捕 か れ るが 「 あなた の 家 の 絵 を描 い て下 さ い 」と教示 して 描 かれ る もの で あ っ て も、正 確 に 描 か れ る場合 は ほ とん どな い こ とに 注意 を要 す る 。歪 め られ る要因 と しては 、次の よ うな もの が あ る 。 ① 最 も不快 、あ る い は快 い 意 味 を持つ 家 の 側 面 を 強 調 す る傾 向が あ る 。 強 調 は 、部分 と釣 り合 い の 誇張 か 縮小かの いずれ か に よ って行 われ る 。 ② 過 去 、現 在 、未 来 、の い くつ か の 住居 を 複 合 的 に 表 す 傾 向 が あ る 。 稀 に 、全 く違 う絵 を描 く こ とが あ るが 、 これ は 、現 在の家 族 関係 に 強 い 不 満 を抱 いて い るこ との 表 われ で あ る 。 解 釈 に 当た っては 、 3-2で 挙げた住空 間 の 要素 の 解 釈方法が 役 に立 つ 。 要 素 が 描 かれ ず輪郭 だ けの場 合 は 、家族 関 係 に 空 虚 感 を 抱 い て い ると解 釈 で きる。 また 、パ ニ スペ クテ ィプの 観 点 か らの 解 釈 方 法 と して は 、例 えば 鳥 眈 図 や 下 か ら見 上 げた もの は 、本 人 が 家 族 との 間 に 距 離 を 感 じて い る こ との表 われ で あ る と考 え られ る 。特 異 な例 と して 、 い わ ゅ る 3重 パ ー スペ クテ ィ ブ と呼 ばれ る描 き方 が あ り、 これ は 、家 の 4つ の 側 面 を同 時 に 描 <と い う もの で あ る 。 これ は 自己の全 表 層面 を完 全 に 構 成 しよ うと した もの と解 釈 され る 。 私 見 で あ るが 、描 画 に高 度 な 建築 学的技巧 (バ ラ ンス 、パ ー スペ クテ ィ ブ 、な どが正 し く表 現 され て い る )が 施 され て い れ ば い るほ ど 、筆者 の 論 理 か ら考 えれ ば 不適 応 の 程度 は 軽 い と思 われ る 。それ は 、個人 空 間の共 有 能 力 と まで は 言 わ な い に して も 、スペ ー シ ン グ能 力 に は 異 常が な い こ と を 表 わ して い るか らで あ る 。 HTP(House― Tree―

T.バ

PersOn)法

の 作 成者 J.

ック も、 臨床 的見 解 か ら次 の よ うに述 べ て い る (筆 者 とは 逆 に 、両

-42-


者 は 関 係 が な い と言 わ んばか りで あ る所 は 残 念 で あ るが )。 「 特 殊 能 力 で あ る『 建築 学 的技巧 』 とも言 え る もの を 、良 好 な釣 り合 い 関 係 の 評 価 と切 り離 す こ とは 非 常 に 困難 で あ る こ とが 分 か っ た 。 」

(HTP法

で は 、釣 り

合 い や パ ー ス ペ クテ ィブが 得 点 化 され 解 釈 の 対 象 に な る。 )

(2)間 取 り図

.

。 「 あ なた の 家 の 間 取 り図 を描 い て 下 さ い 」 と教 示 して 描 かれ た 間取 り図 と 、 「 (あ な たの )家 を描 い て 下 さ い 」と教 示 して 描 かれ た 間 取 り図 とで は 、解 釈 が 異 な つ て くる。後 者 の 場 合 、家 庭 状 況 に な ん らか の 葛 藤 が あ る こ とを 、家 庭 状況 の 全 体 を構 成 す る ことで 示 した い との 欲求 の われ で あ 表 る と解 釈 で き る 。 つ ま り、間 取 り図 は 家屋画 と違 い 住空 間 を構 成 す る スペ ー ス が 全 て表 わ れ るため 、家 族全 体 を鳥 耽的 な 視 点 で 把握 で き る し 、現 実 的 、多 面 的 な家 族 力動 の 把握 が 可 能 で あ る 。 どち らに して も 、家 屋画 と 同 じ く、物理 的 住空 間 とは ズ レが 生 じる恐 れ が あ る。まず は 描かせ るままに してお いて 、後 で部屋 の 使 い方 を聞 く中で 、 広 さや 位置 を確 認 して い くの が 良 い だ ろ う 。 ズ レ が あ る場 合 に は その意 味 を本 人 に 考 え させ るの が 良 い (治 療 に まで 発 展 す る可 能性 が あ る )。 しか し、家 屋画 ほ どはズ レ は 大 き くな い と思 われ る 。家屋 画 に 比 べ 、空 間 同志 を整 合 す るよ うに 構成 す る こ とが 要 求 され るか らで あ る 。逆 に 言 え ば 、例 えば分 裂 病者 に 家族画 (家 屋 画 、間 取 り図 を含 む )を 描 か せ る こ と が 危 険 で あ る こ とが 指 摘 され て い る よ うに 、間取 り図 を適 用 す る対 象 は 、 空 間 の 構成 要 素 と空 間 の 機 能 との整 合性 が 把 握 で き る発達 段 階 に達 して い るか につ い て 、吟味 され るべ きで あ ろ う。 解 釈 に 当た って は 、基本 的 に は

3-2が

参 考 に な る と思 われ る 。 しか し、

同 じ く家 族 関 係 が 記 号 過 程 を通 じて 表 され る に して も 、空 間 へ の 表 わ され 方 と描 画 へ の 表 わ され 方 には な ん らか の 違 い が あ る と思 わ れ る 。 それ が ど う違 うか に つ い て は 本 論文 で は 考 察 で き な か っ た の で 、間 取 り図 特 有の解 釈 方 法 につ い て こ こ で は 次 の よ うに整 理 す る に 留 め る 。

① 部 屋の配 置 配 置 関 係 では ご近 接 して い るか 、あ る い は 、離れ て い るか 、 を 解釈 す

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るに 当た り、「 誰 の 部 屋 と誰 の 部屋 が 」と い う視 点 が 重視 され る。遠 近 だ けで な く、対 称 関 係 (線 対 称 、点 対 称

)に も注 意 す る 。

②部屋割 り 思 春 期 の 少年 の 個 室は 、家 族 内 にお け る個の 確 立 と 、それ に基 づ い た 社 会 へ の 旅立 ち と い う、 自立 の 課題 と して と らえ る こ とが で きる 。

2人 以 上 の 家族 成 員が使 用 す る場合は 、家 族 内 の 連 合 関係 が 示 唆 され る。

壁 の 描 画 線 の 大 さや強 さに注 意 を要す る。 ③ 部 屋 の 大 きさ 相 対 的 な大 き さは 、勢 力 の 大 き さを示 唆す る 。 ④ 全 体 の 印象 描 画 線 の 状態 。細 部 まで 描 い て い るか い な い か 。粗 雑 か丁 寧 か 。彩 色 して い る場合 は 色 か ら受 け る印象 も重 要 。 建 築 空 間学 での平 面 図の解 釈 と違 うところは 、平 面 図 で は図 を 元 に 3次 元 的 に解 釈す るが 、間取 り図 で は 2次 元的 に専 ら構図 と して 解釈す るため 、 面 積 や 境 界 や 対称 関 係 か らの 視 点 、描画 と して の 印象 が 重 視 され る と い う とこ ろで あ る と思 わ れ る 。間 取 り図 を物理 的 住空 間 把 握 の 代用 と して 用 い る と きは 、描 画後 の 質 問 セ ッシ ョンの 中で 3次 元 的 に空 間 の イメ ー ジ を膨 らませ 、それ を解 釈 す るよ う努 力す るこ とが 求 め られ る 。 最 後 に 、筆 者 の まだ 少な い 臨 床 経 験か らの提 案 で あ るが 、間取 り図の 家 族 画 と して の 弱点 (微 妙な 関 係 が表 わ され な い )を 補 うため に 、間取 り図 と合 同家 族 画 とを折 衷 してみ るの は ど うで あ ろ うか 。 つ ま り、間 取 り図 を 描 い て も ら っ た後 に 、 「 そ の 家 で あ なた の 家 族 が 何 か を して い る ところ を 描 い て下 さ い (つ ま り上 か ら見 た 図 に な る )」 と教 示 す る方 法 で あ る 。

―-44-―


3-6

手苗 画

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0こ

節題 は 実 の とこ ろは 「 住 空 間 を 描 画 に表 わ す こ とに

よ る 治療 方 法 」 と し た 方 が正 しい と言 え る (住 空 間 を 前 面 に 出す ため に この よ うな 節題 を 挙 げ た )。 それ は 、治 療 方 法 と して 、物 理由 住空 間 を操作 す る代 わ りに 描 画 ,な と い う行 為 を取 るか らで あ る 。 この 方 法 は 、元 は 最 近 の 住 宅 事 情 に即 した 現 実 的方 法 と して 提 案 され た もの で あ る 。物理 的 な 住空 間 を治 療 的 に 活用 しよ うと して も 、対 象 で あ る 住 空 間 が 、狭 略な マ ンシ ョン で あ っ た り、定 形 した 化 建 て 売 り住 宅 で あ っ た り した 場 合 に 、物 理 的 に 操 作 す る こ との 限界 を 見 越 して 提 案 され た 。 3 -3で 述 べ た よ うに 、構 成 要 素 の操 作が不 可能で も、演 出要 素 の 操作 に よ っ て か な りの 効 果 が上 げ られ る と予 想 され る し、物 理 的操 作 を加 え る方 が 働 きか けが連 続 す るの で望 ま しい と思 われ る 。が 、後 に 述 べ る よ うに 対 象 を 選 べ ば 効 果 は 十分 期 待 で き る し 、描 画研 究 の 積 み ね 重 を発 展 応 用 させ や す い と い う利 点 が あ る 。 実 際 に は 、家 族 成 員 に 家 の 絵 を 描 い て も ら い そ の 違 い を検 証 す る 中 で 互 い の 家族 に 対 す る考 え方 を治 療 的方 向へ 収 東 させ て ぃ く方 法や 、不適 応 者 に 家 の 絵 を 描 い て も ら い 実 際 との 違 いの 意 を 味 考 え させ る 中で 気 付 き を起 こ させ る 方 法 が 一 般 的 で あ る 。 こ こ では 、家 庭 裁 判 所 の 非行 臨 床 にお け る 間 取 り図 の 活 用 (廣 井 亮 一 に よ る )を 例 に 挙 げ る 。 こ れ は 、現 在の 住 居 の 間取 り図 を描 かせ た 後 、次 の よ うに 教 示 して 描 か せ る 間取 り図 で あ る 。 「 次 に 、あ な たの 家 を 新 し く建 て 変 え る と しま す 。 現 在 の あな た の 家 族 が 住 み や す い 問取 りを考 えて 自由 に 描 い て 下 さ し1。 」 この 間取 り図 に 表 わ され る もの は 、第 一 に 、描 い た 者 が 言 語 で は 表 現 で き な い 欲 求 で あ る と思 われ るが 、それ 同時 に 、家 族 成 員の 個 人 空 間 に 対 ,と す る 認知 の 転 換 も表 わ され て い る 。その 転 換 の 方 向 は 間取 りで 表 わ され る た め に 、理 想 的 、イ メ ー ジ 的 な もの では な く現 実 的 、具 体的 な 方 向 と な る と考 え られ る 。転 換 に よ っ て 、現 在 の 不 適 応 を もた ら して ぃ る 個 人空 間 関 係 を 打 破 す る第 一 歩 を踏 み 出す こ とに な る 。 後 は基 本 的 に は 3-3で 論 した 住 空 間操 作 と 同 じよ うに 、表 われ が もた

-45-


らす 記 号 過 程 の 連鎖 反応 を利 用 して い くの だ が 、表 われ の 形 が 異 な る と い うこ とで あ る。 治 療 者 は 、現在 の 住空間 の 間 取 り図 と新 しい 問 取 り図 とを 比 較 して 、新 しい 問 取 り図 に 表 われ て い る もの を解 釈す る 。 こ こ で は 比 較 が 重要 な解 釈 方 法 とな るので 、現 在 の 住 空 間 の 間 取 り図 か ら実 の 住 空 間 を イ メー ジす る ときに 、それ 程厳 密 さは 要 求 され な い 。次 に 治 療 者 は 、新 し い 問取 り図 に 表 わ され た もの を家 族成 員 に 伝 え る 方法 を考 え る 。それ は 、間 取 り図 を家 族成 員 に 見 せ なが ら今後 の 家 族 の 指 針 を間 接 的 に 伝 え る方 法 を取 るこ と も あ る し、家 族 成 員 に 新 しい 間 取 り図 を描 かせ て 相 互 の 類 似点 や 相違点 を検 討 す る方 法 を取 る こ ともあ る 。 い ず れ も、家 族 成 員個 々人 の 家 族 に対す る 考 え方 を 知 る こ とは 、家族 の 自発 的 な変 化 を引 き起 こ す 治 療 効 果 が あ る こ とを利 用 した もの で あ る。 ここ までで 治療 活 動 を終 了 す る こ と もあ るが 、家 族 の 変 化 が 住空 間 に生 か され に く い 現実 的 な問題 が あ る場 合や 、不 適 応 の 程度 が 重 い 場合 に 、新 しい 住 空 間 作 り (住 空間の 操 作

)の 代 わ りと して 、家 族 成 員 全 員で共 同 じ

て 新 し い 問取 り図 を描 くよ う指 示 す る 。 実 際 の 治 療 例は 、前述 3-4で も挙 げ た 華 :妻 :基

:I:華 :を 参 照 の こ と。

この 方法は実用的で経 済的 で あ るが 、若千の批 評 を加 えてお こ うと思 う。 まず 言 え るのは 、個人空 間 に 対 し、専 ら精 神 的 側 面か ら操 作 を加 え身 体 的 側 面 か らの 操 作 を行 わ な い の で 、重 篤 な個 人 空 間 の 障害 を持 った対 象 に は適 用 で きな い の で はな い か 、 と い うこ とで あ る 。 この 方 法 が 非 行少 年 を 対 象 に して い るこ とは 示唆 的 で あ る 。つ ま り、非 行少 年 は 個 人 空 間 の 発達 遅 滞 が 軽 度 で あ る と 2-4で 述 べ た こ との 裏 付 け と と らえ られ る。

しか し、この 方 法 が 身体 的 側 面 に全 く働 き掛 け な い と い うこ とは な い 。 と い うの は 、 日本 人 に と っ て は 個人 空 間は 2章 で 述 べ た よ うに 境界や 距 離 が 属 性 で あ るだ けで な く、動 作 、作 法 、 と い っ た もの も属 性 で あ ると も考 え られ るか らで あ る。 多木 浩 二 は 日本 の 空 間 につ い て 「 輪 郭 の な い場 所 を 儀礼 的 =象 徴 的身 体 が使 い こ な す と き 、それ を基 盤 に 外 面 的 な 空 間 と して の 家 が 浮 上 す る 」「 座 敷が 対 面 の 儀 礼 に そ っ て生 まれ 、茶 室 が 作法 と結 び 付 い て い るの は 、一 つ の 例 の よ うに 思 われ る 」 と述 べ て い る 。

-46-―


これ ほ ど古 風 な空 間 論は現 代 住 宅 を対 象 と して は 無 意 味 で あ る と思 う向 きが あ るか も しれ な い が 、動 作 、作 法 は 個人 空 間 の 属 性 の 中で もかな り高 次 元 で あ るが (し た が って 、 あ る程 度 発達 して い な けれ ば な らな い )、 実 は基 本 的 な エ テ ィケ ッ トと深 く関 わ って い るの で は な い か と思 われ る 。 こ れ を親 子 双 方 にに身 に 付 け させ る こ とは 、非 行 少 年 に 欠 けて い る個 人空 間 共 有 能 力 を発 達 させ る こ とに も繋 が

'る

の で は な いか 。

「 難華華聾彗葬 で 母 が IPの 電 話 を立 ち聞 き した り机 の 中 を覗 く こ と もな くな り 。・ ‐物理 的 に IPの 個 室 を与 える こ とが で きな くて も 、両親 が I Pの プ ライバ シー を守 つて お り、その こ とが IPに と っては『 個室 』 と し て 機 能 して い る 」と述 べ られ て い るこ とは 、 3-3で 重 視 され た 物 の 使 い 方 を 問 題 と して い る と い うよ り、む しろ作 法 、 エ テ ィケ ッ トを 問題 と して い る と い うべ きで あ ろ う。 個 人 空 間 に 対 し、 この よ うな 働 き掛 け も可 能 で あ る と い うこ とで あ る 。

一-47-―


4章

―-48-―


4‐ ― (1)人

フト 石汗 多電

`つ

∃薯 斎勺

間 が社 会 的 に適 応 した 生 活 を営 ん で い くには 、 テ リ ト リー が 年 齢

相 応 に 拡 大 して い か な けれ ば な らな い 。テ リ ト リー 拡 大 の 基 底 に は 、個 人 空 間 形 成 能 力 の 発達 が あ る 。形 成 とは 具 体 的 に 、他 人 と適 切 な 距 離 を 取 つ て (ス ペ ー シ ング )個 人 空 間 を共 有 す る こ とで あ る 。共 有 能 力 発 達 の 方 向 は 、共 有 対 象 の 拡 大 、及 び 、受 動 的 共 有 か ら能 動 的 共 有 へ 、 の 2 つ で あ る 。個 人 空 間形 成 能 力 の 発 達 は 、生 活 空 間 が 年 齢 相 応 の 機 能 を 満 た す こ とで 促 進 され 、満 た さな い こ とで 阻 害 され る 。生 活 空 間 は 生 活 を 共 に す る成 員 の 個 人 空 間 の 共 有 状 態 に よ っ て規 定 され る もの で あ る こ と に 注 意 せ ね ば な らな い 。 テ リ ト リー 、個 人空 間 、 生 活 空 間 の 関 係 に つ い て は 個 人 空 間形 成 能 力 発 達 段 階 モ デ ル を参照 。

(2)個 人 空 間 の 異 常か ら不 適 応 行 動 の メ カ ニ ズ ム を説 明 す る と次 の よ う にな る 。 ① 精 神 障 害 (精 神 分裂 病

):生 活 空 間 が 発 す るメ ッセ ー ジ と他 の な ん ら

か の メ ッセー ジ との二 重 拘 束 状 況 に よ っ て ス ペ ー シ ン グ 能 力 が 狂 い 、 個 人 空 間 が 維 持 で きな くな り、極 端 な 自閉 行 動 及 び 自我 障 害 が 現 われ る。 ② 登 校 拒 否 :家 族 成 員が 個 人 空 間 を共 有 す るた め の 仕 掛 け作 りを怠 っ て い る た め 、住 空 間が満 た す べ き機能 を満 た して お らず 、テ リ ト リー を 学 校 に拡 大 で きな い 。留 ま っ て い る個 人 空 間 形 成 能 力 を示 す 形 で 個 室 化 行 動 に出 る 。 ③ 非 行 :家 族 成 員 の 個人 空 間 関 係 が 、保 護 しつ つ プ ラ イ バ シー を与 え る 関 係 にな つて い な いため 、個 人 空 間共 有 能 力 が 発達遅 滞 で あ る代 償 に 、 テ リ ト リー を拡 大 しよ う と して 失 敗 した 行 動 。個人 空 間 の 身 体 性 が 前 面 に 出 る こ と と 、個 人 空 間 が 大 き く侵 入 者 を 物 化 す る こ とが 特 徴 。

(3)不

適 応 行 動 解 釈 ・ 治 療 の 対 象 と して 住 空 間 を取 り上 げ た の は 、対 象

と して 実 在 す る もの を取 り上 げ る 目的 か らで あ る 。個 人 空 間 形 成 能 力 発 達 段 階 の か な り後 期 まで 、生 活 空 間 に しめ る住 空 間 の 割 合 が 大 き い こ と に も よ る 。個 人 空 間 の あ り方 が 住 空 間 に 表 わ れ 、住 空 間 の あ り方 が 個 人

-49-


空 間 の あ り方 を規 定 す る 。 こ の プ ロセ ス は 記 号 過 程 に よ る 。

(4)住 空 間 の 解 釈 とは 、記 号 過 程 を住 空 間 に 表 わ れ た もの か ら把 握 す る こ とで あ り、住 空 間 に よる治 療 とは 、記 号 過 程 の うち記 号 の 対 象 及 び 記 号 を操 作 して 、住 空 間 の 形 成 か ら個 人 空 間 の 形 成 と い う連 鎖 反 応 を 引 き ・ 起 こ す こ とで あ る 。 この 原 則 は 、客 観 的 住 空 間 (狭 義 の 住 空 間 )で も主 観 的 住 空 間 (描 画 に表 わ され た 住 空 間 )で も変 わ らな い 。

(5)客 観 的 住 空 間 の 解 釈方 法

:住 空 間 の 構 成 要 素 及 び 演 出要 素 の 意 味 を

基 本 的 知 識 と して 駆 使 し、要 素 の 総 和 と して 把 握 す る の で な く総 合 的 に 、生 活 を把 握 す る。演 出要 素 の 使 わ れ 方 に よ り、部 屋 の 機 能 は 流 動 的 に 変 化 す る こ とに も注 意 す る 。 また 、住 空 間 を時系 列 的 に把 握 す る こ と 。発 達 阻害 の 要 因 とそ の 表 われ を把 握 して 治 療 に 繋 げ る 。 客 観 的 住 空 間 に よ る治 療 方 法 :家 族 の 力 動 に添 い 受 容 を取 り付 け 、 住 空 間 設 計 の 課 題 を課 す る 。治 療者 は 共 同 で これ を行 う他 、解 釈 を治 療 に反 映 させ発 達段 階 を高 次 に移行 させ るべ く、介入 助言 を して い く 。 発 達 遅 滞 の 様 相 及 び原 因 を把 握す る に 当た つ て は 、個 人 空 間 形 成 能 力 発 達 段 階 モ デ ル を参 照 の こ と。

(6)主 観 的 住 空 間 の 解釈方 法

:客 観 的住空 間 の 解釈 方 法が基 本 に な る が 、

2次 元 的 に構 図 と して把 握 され る とこ ろ が 異 な る 。描 画 後 の 質 問 セ ッ シ ョ ン に よ つ て 、客観 的 住 空 間 の 実 情 及 び それ との相 違 点 に つ い て 把 握 す る 。空 間認 識 ・ 表現 能 力 と現状 認 識 能 力 とは 関係 が あ る 。 主 観 的 住 空 間 に よ る治 療 方 法 :個 人 空 間 の主 に精 神 的 ・ 身 振 り的 側 面 に 働 き掛 け るた め 、発 達 遅 滞 が重 篤 な 対 象 に は不 向 き 。不 適 応 者 本 人 が 、住 空 間 を どの よ うに認 識 し、どの よ うな変 化 を望 ん で い るか を 、 家 族 成 員 に描画 に よ つて伝 え るこ とで 、家 族 成 員 の 自発 的変 化 を促 す 。 そ の 変 化 が 個 人 空 間 関係 に 及 び 、本 人 の 発 達 を 促 す 。

(7)住 空 間 以 外 の 日常的空 間 で も 、不 適 応 者 の 個 人 空 間 に 合 わせ て 治 療 者 の 個 人 空 間 を操 作 す る こ とで 、効 果 が 期 待 で き る 。

-50-


4-2

ま ず 文 献 研 究 の 点 に つ い て 、研 究 室 に 通 うこ とが ほ とん ど不 可 能 な 状 態 で あ つ た た め に 、個 人 空 間 に 関 す る 新 しい 文 献 を用 い る こ とが で き な か っ た の は 大 変 残 念 で あ った 。 ま た 、 ケ ー ス 研 究 の 点 で も 、筆 者 が 家 庭 裁 判 所 で の 仕 事 で 扱 つ た ケ ー ス を 素 材 に 考 察 を進 め る の が 理 想 的 で 、 そ の こ と を お 約 束 して 就 職 した 事 情 も あ っ た の だ が 、実 際 は 、家 庭 裁 判 所 の 調 査 の 実 務 に な じむ ため の 新 しい 勉 強 で 精 一 杯 で 、 とて も ケ ー ス を筆 者 独 自 の 研 究 材 料 とす る 余 裕 は な か っ た 。 こ れ らの 事 情 の た め 、提 案 した 仮 説 に 大 胆 す ぎ る と こ ろ もあ る こ と と 思 う。 また 、描 画 に表 わ れ た 住 空 間 の 解 釈 方 法 と して 、個 人 空 間 の 異 常 を把 握 で き る よ うな方 法 を是非 と も 提 案 した い と 考 えて い た の だ が (具 体 的 に は 、 バ ラ ン ス 、 パ ー ス ペ ク テ ィブ 、 ス ヶ ― ル 、画 用 紙 と 描 画 の 配 置 関 係 、 を考 えて い た )、 出来 ず しま い で 終 わ つ て しま っ た 。 そ の た め に 、描 画 と 個人 空 間 との 関 係 は ほ とん ど考 察 して い な いの で 、第

3章 後 半 が 付 け加 え の よ

うに な つ て しま っ た 。 こ れ か らは 、建 築 空 間学 で の 新 しい知 見 を必 要 に 応 して 吸 収 す る 中で 、 家 庭 裁 判 所 調 査 官 と して ケ ー ス を 見 る 日 も磨 きな が ら 、現 在 の とこ ろ の 考 え を ケ ー ス を用 い て 検証 し 、 よ り臨 床 に 有 用 で 適 切 な 考 え を ま とめ て い く い 作 業 を 続 け て きた い 。 社 会 的 不 適 応 行 動 を建 築 空 間 学 の 視 点 か ら見 る 臨 床 家 は まだ まだ 少 数 派 で あ る 。筆 者 自身 、建築 学 を学 ん だ 者 で あ る と い う 自覚 も 臨 床 家 で あ る と い う 自覚 も どち ら も確立 で きて い な い 状 態 で あ る が 、生 活 を 形 と して 示 し て くれ る もの は 住 空 間 以 外 に な い 、 と い う思 想 は 信 して い る 。 また この 、 思 想 は 徐 々 に臨 床 家 及 び そ れ 以 外 の 人 々 に も浸 透 して い き 、ひ ぃ て は 々 人 が 生 き る こ とに 与 え る住空 間 の 影 響 の 大 き さに 目覚 め て くれ る もの と 信じ ている。

-51-


´

JL3 要L) ヒ) ↓〔二

就 職 と 大 学 院 在 籍 ・ 研 究 とが 両 立 で き る は ず が な い 、 と 、既 に 退 学 届 を 用 意 して い た 去 年 3月 の 終 わ り、渡 辺 先 生 が 「 残 る つ も りな ら 、研 究 室 の 方 は 一 向 に 構 わ な い か ら 」 とお っ しゃ っ て 下 さ っ た 。・ ・ あ の 先 生 の 一 言 と 、筆 者 の 現 勤 務 先 で あ る 奈 良 家 庭 裁 判 所 そ して 高 等 裁 判 所 、最 高 裁 判 所 の 、在 学 OKと の お 許 しが な け れ ば 、筆 者 は この 論 文 を ま とめ る こ とは な か っ た の で あ る 。仕 事 を しな が ら 論 文 を ま とめ る こ とは や は り大 変 で 、 しか も 7月 か らは 研 究 室 と遠 く離 れ た 奈 良 で の 生 活 だ った が 、周 りの 方 々 に 支 え られ て 提 出 に こ ぎ 着 け る こ とが で きた 。 研 究 室 に と っ て は 、研 究 室 の た め に は

1年 間 しか 貢 献 せ ず 自分 の や りた

い こ とだ け は ち ゃ っ か りや っ て しま うとい ぅゎ が ま ま 娘 、勤 務 先 で は 、職 業 人 と学 生 の 身 分 をか け も ち す る 不 届 者 で あ っ た が この 、 論 文 を 完 成 した こ と を心 か らの 感 調lの しる し と す る こ とで 、許 して い た だ きた ぃ と思 う 。 就 職 か ら修 論 ま で 至れ り尽 くせ り、温 か く助 言 を して 下 さ った 渡辺 仁 史 先 生 に は い く ら感 調iし て も し足 りませ ん 。 ま た 、御 自分 の こ とで も十 分 忙 し い の に 、遠 距 離 の 中 い ろ い ろ と 協 力 して くれ 、励 ま し合 っ た 、家 泉 IE樹 君 、本 瀬 貴 品 君 、鄭 裕 静 さ ん 、 ど う も あ りが と う 。 それ か ら 、論 文 を 介 し て 繋 が れ た 先 輩 方 、愛 し い 後 輩 の 皆 さん 、 あ な た が た とぉ 知 り合 い に な れ て 良 か った 。 そ して 、筆 者 が 在 学 で き る よ う大 変 お 骨 折 り下 さ り、必 ず 修 了 す る よ う に と励 ま し 、協 力 して 下 さ っ た 奈 良 家 庭 裁 判 の 所 皆 様 、就 職 前 か ら い ろ い ろ と協 力 して 下 さ っ た 自川 康 夫 調 査 官 、廣 井 一 亮 調 査 官 に も 、 この 場 を お 借 り して 厚 く御 礼 申 し上 げ ま す 。 皆 さん か ら受 け た あ ふ れ ん ば か りの恩 恵 を 、今 度 は 家 庭 裁 判 所 を訪 れ る 人 々 に 還 元 して い か な けれ ば 、 と思 い ま す 。 建 築 学 科 で 過 ご した 6年 間 の 中 で 、渡 辺 仁 史 研 究 室 で学 ん だ 間 は 、建 築 学 を学 ん で い て 良 か っ た と思 わ せ て ぃ た

最後の

だ ぃ た 、最 も恵 まれ た

充 実 した 貴 重 な 時 間 で した 。本 当 に あ りが と う ご ざ い ま した 。 平成

-52-

2年

4年 2月

野村亜紀


「 東京大学JAt開 講座 「 笏疋」」 「建築 計画 」 「建築心 理入門 」 ・

参 令フ ト月 に〕 虻他

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―-53-―

(星 和 書 店

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)


―-54-―


)

臨 界 距 離 と行 動

﹁自 我 が 狭 ま って棒 のよう にな って し ま った。 自 分 の立 って いる地点 が な く な って し ま って ⋮ ⋮自

分 が エンピ ツ のよ う に削 られ て し ま った。 昨 秋 、 ジ ャ コメ ッテ ィの作 品 の写 真 を新 聞 で み て、 それ が

あ ま り にも 自分 に似 て いる の で衝 撃 を うけ ま し た。 そ の写 真 は、 地 面 の立 って いる点 だけ で立 って い て、 肉 が そげ 落 ち、 他 の人 と の繋 りが ま ったく持 て なく て、 か ろう じ て立 って いる。 私 は首 だけ で ア

ップ ・ア ップ し て いる感 じ な の です 。 自 分 の考 えが伝 わ る感 じ な のです 。 そ んな馬 鹿 な こと はな いと

思 いなが ら も 人 に自分 が 筒 抜 け にな って いる感 じ にな ってな り せ ん。 が で 気 持 不 安 ま 定 ⋮ ⋮ な に か 落 。 。 ち ついて いら れ ま せ ん。 と ても あ せ る のです 刻 一刻 が 待 て な く て追 いまく られ る よ うな のです な 。 にかじ りし り と あ せ る ん です 。 自分 の居 場所 が あ り ま せ ん な わば り を引 く も のが私 にな く な って し 。 ま った のです 。 自分 が 透 明 にな って相 手 が自 分 の裸 の芯 に触 れ てく る よう で落 ち つかな いのです 前 、 、 は人 に対 し て自 分 を ださず 、 そ う、 自 閉 的 で いら れ た ん です け ど そ の時 は よ か った ん です け ど あ 。 る とき から抑 え ら れ な く な って し ま って⋮ ⋮ な にか爆 発 し て吹 き 飛 ん で し ま った と めど も なく な っ て し ま って外 にで て し ま う ん です ﹂。

、 在院 二五年 になる男子分裂病者。硬 く緊張 した表情 で壁 にむ か って定 位置 に座 り 膝 をゆす って終 、 、 日をす ご して いた。あまり にも部屋 で の定住性が目立 つため 畳 一五帖 の六人部屋 に移 したと ころ 、 。 畳 一帖分 の領域 を自分 の居 場所 に定 めてそ の場所 を動 かな か った 移 した後 ややあ ってから 真剣 な

前 の部屋 に移 して下 さ い﹂ と何度も困惑状態 で 繰 り 表情 で額 に汗を浮 かべなが ら足踏 みをし つつ、﹁ 非分裂病者︶が仕事 の休 み の日 に大 の字 に寝 て 返 した。どう いう理由な のか尋 ねると、同室 の患者 ︵ しま い、そ の人 の足が自分 の領域 に侵 入してくる ので休 めな いと いう のであ った。部屋 は充分 広く、 、 自分が少 し移動す ればく つろげ る場所 はあ る のに、他人 の足が伸 び てく るだけ で容易 に不安 困惑が 引き起 され た。

二 一歳 の女子。 疏通性 なく拒絶的 で活 発 な幻覚妄想状態 にあ る。 病棟 の隅 に体 を硬 く し身 を寄 せて、

話 し かけ ようと近寄 ると強 い不安 を示 し怯 える。 さら に近付く と大声 をあげ て攻撃 の構 えをみ せる。

夜問救急 で搬送された男 子分裂病者.診察 を開始 しようとす ると突然逃げ だし、 トイ ンの中 に入り

込 み内 から施錠 した。迎 え にゆき、ド アを ノ ックす ると突然中 から飛びだし、大声 で叫 んで飛び かか ってき た。

一 -55-―

)

ス:纂 (急 性 分 裂 病 舛 )

1舛 響ス:21(慢 性 分 裂 病

ゲ 事業彗1(逃 走 距 離 、

18 (社 会 的 不 適 応行動 各 論 ・ 精神分 裂 病 )cP。


症例  十七歳、女性 生来、真面日、几帳面、内向的.知能 は正常。﹁細 かい仕事﹂ を好み、﹁メカ﹂に強 い。遺伝負因は認めな い。父親 ︵ 運転手、 潔癖︶、母親 ︵ 過干渉︶、兄と四人暮らし。両親の仲 は悪く、親 子間の信頼関係 は希薄o小学校五年以来、﹁担任が変わ った﹂、 ﹁友人とうまく いかな い﹂を理由 に不登校.中学は ﹁お情け﹂ で卒業し、現在高校の通信教育を受けている。 症例1の住居は第7図 に示した。居間 に相当する部分が主要な動

2階 プ ラン

線 で分断され、むしろ玄関 ホー ルあるいは階段 ホー ルとしての役割 、しか果たせず、さらに家具配置 から見ても、とうてい滞留する空間

Iギ

症例  十七 歳、男性

生来、潔癖 。強迫的。知能 は正常。遺伝負因 は認 めな い 夜 . 泣 き、指 し ゃぶり、絨黙が みられた ︵五歳︶o父親 ︵心理 学 的 に家庭 で ′ 不在し、母親 ︵も のの管理が できな い、 ものが捨 て

られな い︶、弟 二人 と五人暮 らし。事実上、患者が 二人 の 弟 の

世 話をしてきたo小学校 三年 の時、転居後、 グ ラスでいじめら

れるよう にな った。 小学校 四年 のとき ふたたび転 居︱転校 、同

様 にいじめられ、次第 に回数 が少 なくな った。小学校 六年 、中

学 一年 と登校する も、中学 二年 の時 、﹁宿題 をやらな か った﹂、

﹁腹が痛 い﹂を理由 に、よく欠席 し、中学 三年 の五月 から は違

続 的 に不 登校。  一応中学 を卒業 し現在 は職 に就 いて いる。

症 例 2の住居 は第 8図 に示 した。 この症例 では、﹁居間 はど こ?﹂

と のわれわれの質問 に、患者 は、 ダ イ ニング キ ッチ ンの隣 りの、本

来 なら応接 間兼用 ともと れる部屋がそう であると述 べ、母親 はダ イ

-56-

ニング キ ッチ ンが居間だ と言 い、ま た父親 の生活 ぶりは、彼 にと っ

ダイニング キッチ ン

にはなり得な い。

て自分 の寝室 を居間 と心得 て いるよう にみえると い った具合 で、家

カーボー ト

族 の共通 空間 とし ての ﹁居間﹂ は、確固とし て存在 しな いことが明 ら かにな った。

D

(男 ,1畷

20.■

症例

第 8図

7日 症例 1 ‐ IL(女 ,17歳 ) 第

関 玄 口 居間

)

(社 会 的 不 適 応 行 動 各 論 ・ 登 校 拒 否

(居 間 の 機 能 不 全 )lcP.20


小学校 五年 から登校拒 否が始 ま った A子は幼稚園 の時 に個室 を与えられた。 も っと も、 A子 はそ の個室 を個室 とし て使 う ことが できな か った。だ からず っと両親 と 一緒 に寝 て いた のだが、 四年生 の時 に父親 に無 理 やり個室 で寝 るよう に仕向けられた のである。恐らく、それが A子 を登校拒 否 に向 かわせる ひと つのき っかけとな った であ ろうと思 わ

夕帯繁警

沢 山 の大きな アイド ルボ スターと、思 い出 の品 々で所狭 じと飾 りた

へ行 けるよう にな った のである。自 分 のも のにな った部屋を B子 は

出 たのでお兄さんの部 屋 はB子 の部屋 にな った。同時 にB子は学校

ある。 B子が中 二にな ったとき、お兄さんが遠隔地 に就職 し て家 を

ど、それは五 つ年上 のお兄さん の部 屋 に置 かせ てもら って いた ので

も個室 はおろ か、自分 の部屋 さえ無 か ったo自 分 の机 はあ ったけれ

小学校 五年 に登校拒 否が始 ま った B子 には中学生 にな って

れる。 A子 にと って、 四年生 にな っても個室 は早 過ぎたのである。

CP.21 (個 室 を与 え る タ イ ミン グ )

てた。 そこ には自分 の部屋 を得 た喜びが い っば いあ ふれて いたo B 子 にと っては、自 分 の部屋 を得 る のが遅過 ぎたよう である。 お兄さ

ある。

C君 のお兄 さんもお姉さん

た途端、彼 は自分 の部屋 にこも って出 て来 なくな ってしま った ので

んが進学 で家 を出た こと によ ってC君 は突然自分 の部屋 を得 た。得

ま で自分 の フト ンさえな か ったと いう。十 四歳 にな った時、お兄さ

てもらうと いう生活だ った のである。 それど ころか彼 は九歳 になる

の机 はお兄さんの部 屋 に置 かせてもら い、 お姉 さんの部屋 で寝 かせ

自分 の部屋 も与 えられな か ったo中 一にな ってはじめても った自分

られた。し かし末子 のC君 は十 四歳 になるま で自分 の コー ナーも、

も、 まず自分の勉強 コー ナーを与えられ、次 いで自 分 の部 屋 を与え

んの部屋 に置 かせ てもら って いた机 は、自分 の コー ナー にならな か ったものらし い●

X8: :舛 :撃

-57-―


症例  十 二歳、男性 生来、内 向的、人づ きあ いが悪 い。知能 は正常。遺伝負因 を 、 大入し 認 めな い。祖 母 ︵とく に問題 は感 じられな い︶ 父親 ︵ 過干渉 、世間体 を気 にする︶ い、 やさし い、 お人好 し︶、母親 ︵ 。 と 四人暮 らし。両親、祖母とも農業 に従事 し昼間 は家 にいな い

CP.21 )

(奇 妙 な 空 間 の 存 在

十歳年上 の兄 は結婚 し、五歳年 上 の姉 ︵大学生︶ は下宿じとも 、 に独立 して いる。小学校 五年 から ﹁担任が変 わ った﹂ ﹁頭 痛が 、 す る 一を理由 に、断統的 に不 登校。中学 一年 の発熱以来 ま っ たく登校 しなくな った。

登枝拒否児 の住居 に認 められる第 二の特徴 とし て、そ の家庭 の間

題 の存在 を象徴するような奇妙 な空間 の存在 をあげ ておきた い。 た

とえば、奥 への空間 の展開 を予想させるはずの玄関が、  一歩 足を踏

み入れた途端、逆 に行 き詰 まり に追 い込まれてしま ったような感 じ

を抱 かせる場合 ︵ 症例3 ︿第 9図﹀ の玄関がそれ にあたる︶と か、

同 じ症例 で、 正面 から見る かぎり、押 し入れ に嵌 め込んだとし か思

えな い仏壇 が、裏 に回 ってみると実 は押 し入れなどなく、廊下 に背

を向 け て突きだしたまま置 かれて いるまさ に ■一 oFく な空 間 の使 い

方 ︵ 第 9図 の平面図を参照︶など である。

― -58-―

症例 3の住居 は第 9図 に示した。 このよう に居間 は歴然 として存

1押 入れに入れ込 まれた よ うに見える仏壇

在 しながら、両親 が夜 は離 れ に寝 るた め、 母屋 は祖 母と患者 の二人 だけと いう寒 々し い印象 を与える暮 らし ぶり である。

(男 ,13歳 )

症例 3 F.Y。

9日 第


(社 会的不適応行動 各論・ 非行 )

襲 藝 攀(窃 盗 藝 嚢 攀

CP

)

本件

26

嗜、 ¨一¨

少年 19歳

25

土木作業員

窃盗

非行行動 少年は中学校 を卒業 してか ら,近 隣の不良仲間 とつ きあ うようにな り 家 ・ 出 をしては単車 の窃盗,シ ンナー吸引を繰 り返 し鑑別所 に収容 された。 その 後,保 護観察 に も付されて,自 宅で しば らく安定 したが,家 を離れて住込み で仕事 が した い と言うて,土 木作業員 として働 きだ した。作業所 の寮に住込 み・ 週末に帰宅 していたが,徐 々に帰宅す ることもな くな り,再 び不良仲間

とたむろするようになっだ.本 件はj少 年が年上の不良仲間と共に侵入盗を 1

起 こ し,逮 捕 され再び鑑別所 に収容 された ものである。 家族 家族 は,母 ,兄 .少 年 の 3人 家族 .父 は少年が中学 2年 時に病死 して い る その後 ,母 がスナ ック勤め をして家計 を支 えてい る。兄は学業成績 もよ く,

大学に在籍している。母は,「 できの良い兄」と「できの悪い弟」と ・ あから

さまに言う。兄弟仲は小さい頃から悪く。兄は非行を繰り返す少年を冷たし 』 態度で見離 してお り ・ 鑑別所に少年が収容 されて も一度 も面会に行かなか た。少年 はその ような兄にひけめ を感 していた (図 aは 少年 が描 いた動的家 族 画 で あ る).

-59-


iよ つ ι ι

尾 9都E

:

2

調査 官 は鑑 別所 で の面接 で少 年 に間取 り図 Aを 描 い て もらった (図 年 の 家 は新興 住宅地 の 2

1)。

”︱ ︶り  ,■

問取 り図

LDKの マ ン シ ョンで あ る。 6畳 の和 室 が 2室 あ り ,

それ を兄 と少 年 が それぞれ 使 用 し,母 は リビングの一 角 にべ・ ンドを置 い て い る。 少年 の 部 屋 と兄 の部屋 の 大 きさは同 じだが,少 年 の 部屋 は,窓 が な く仏 壇や 母 の 箪 笥 な ど も置かれ て。物 置替 わ りに使 われ て い る。

次に,少 年に間取 り図 Bを 描 くように指示 した ところ,「 新聞の広告 に載 っ て い るように描 けば いいの ですか」 と言い なが ら,少 年が1苗 いた間取 り図 B が図 2で ある。現在の家 と同様 にマ ンシ ョンを描 いた。少年 は「 マ ン シ ョン の ほ うが近所づ きあい をしな くて済むか ら気楽だか ら」 と言 う。家 の壁 を大 く描 いた。 また.玄 関をは さんで少年 の部屋 と兄の部屋 を対等な位置に もっ て きた。母 の部屋だけ を右上 に離 してい ることも特徴的である。 それ ぞれの 部屋 に窓 も設 けて,応 接間 も置 いた。少年 によれば,現 在の兄の部屋 の よ う に窓に面 して い る部屋が欲 しい と思 ってい るので,こ の ように描 いた とい う。 母の部屋 を右上 に置 いたことについては,母 は夜の仕事 をしてい るの で静 か な端 の部屋 を母用に した とい う。応接間 と台所 を別 に したの は:家 族 3人 で くつ ろげ る場所 が欲 しかったか らだ とい う。

-60-


間取 り図 の 活用 少年 が鑑 別 所 に収容 され て い る間 に,母 と裁 判所 で面接 を した。 そ こで 調 査 官 は,少 年 が 描 い た間取 り図 を示 しなが ら,母 に次の よ うに伝 えた。まず 少年 が現在 の 家 で落 ち着 い て 生活で きな い理由 を,間 取 り図

,

Aを 利用 して

,

窓 の な い物 置 替 わ りの部 屋 で は居心地が 悪 いの では な いか と強調 した。次 に

,

間取 り図 Bを 示 して,少 年 は兄 と同 じよ うな「居 `己 、 地の良 い部屋」で生活 し たい と望 んで い るよ うだ と伝 えた。 さらに,.少 年 が,落 ち着 いた場所 に母用 の部屋 を作 ってや りたい と望 んでい ることや。家族 が皆 で くつ ろげる居 間が 欲 しい と述べ たことなどをその まま伝 えた。 この ように面接 を行 った ところ,母 は今 まで少年 を粗末に扱 い,兄 ばか り に期待 をかけて きたことな どを反省 した。 また,非 行 を繰 り返 して迷 惑 しか かけない と思 っていた少年 が,母 のこ とや家族 の ことをこれほ ど心配 してい るとは思わなかった と述べ ,今 後は少年 が落ち着ける家庭 に してあげたい と 語 った。(こ の 事例は,再 び保護観察を継続するとい うことで終 了した。約

1

年半 を経過 したが,少 年 の状態は良好である。) 検討 この事例 では,母 は優秀 な兄ばか りに期待 をかけ,あ か らさまに少年 を疎 ん していた。少年 と兄 との 同胞葛藤 も顕著に認め られた。 それは,兄 には快 適 な部屋が与 えられてい るの に対 して,少 年 には物置替わ りの部屋 しか与え られていない ことなどに現れていた。 これ らの こ とが家庭 内にお け る少年 の 居心地 を悪 くし、少年が家 を避 け不良仲間 とのつ きあい を続 けるこ とを促進

.

してい るとも考えられる。 少年 の間取 り図 B(図

2)に は,少 年 自身の部屋 を兄 と対等な場所 に持 っ

て くる ことで,現 在の 兄 との勢力関係 を変化 させ ,家 族内における少年 の位 置を明確にす ることを望 んで い ることが示 されてい る。 そ こで,少 年 の描 い た間取 り図の変化を利用 して,母 との面接 にお い て,家 庭内で少年は兄 に比 ヽ べ て粗末に扱われてい るこ とや,少 年は「 窓がある居′ 地 の よい部屋 」 を求 し めてい ることなどを指摘 しなが ら,少 年 の メッセー ジを伝 えた。 さらに少年 が母用の部屋や居間を描 い たことを使 って,少 年 が母親思 いであ り家庭 を気 遣 ってい ると肯定的に意味 づ けた。その結果,母 は少年 に対す る今 までの態 度 を反省す る と共に,「 で きの悪 い息、 子」 とい う少年への否定的な認識か ら ,

「親や家族思 いの息、 子」 とい う少年の肯定的な側面 を認識す るように変化 し た もの と思われ る。

-61-


空き 地

大 小屋

紀 両親の部屋 ⑩

アパート の建 つ路 地 の奥 に位

置 した モ ルタ ル造 二階建 て。玄関を は い った左

の八畳洋間 はグ ラ ンドピ アノが置 かれ て いる。

ここでビ ァ ノの個人 レ ッスンが行われ た。

奥 の三畳間 はA の妹 の部屋。右手 の台所 はせ まく家族 四人が食事 でき るテープ ルを置く ほど

の スペ ー スはな い。 回り階 段を上が った 二階 の 手前が A の四畳半 の部屋 であ る。 ここは中 学 の

同級生 の恋人 ︵ 事件 の仲間 でもあ った D ・一七 歳 の姉︶ と、高校中退後 に 一時期を半ば 同棲 生 活を おく った部屋 でもあ る。隣室 は両親 の寝室

だ ったが、 母親 はかな り以前 から 一階 で独 り寝 て いた。

-62-

1階 空き,IL

P.25 )IK「 (コ ン ク リ ー ト詰 め 殺 人 事 件


(住 空 間 に よ る治 療 方 法 は小 児喘息 がひ ど く数回 の 人退院 を繰

り返す . 小学 入 学時 に校医 よ り,運 動 をや りなが らの 並 行治療 が 効 果 あ る と指 導 が あ り,少 年 ソフ ト ボ ール・ チームに 入れ るe「 男 は た

くま し くな い くて は け な い 」 が 父 親 の 当時 の 方 針 (希 望 ?)で あ ったか ら ,父 親 は 諸 手で IPの 尻を 叩 い た.結 果は 1年 余 りで挫 折 ,小 学 2年 の 春 腹痛 を訴 えて練 習や 登校 を渋 った為 ,母 親 の

強 い希 望 で ソフ トボ ール をや め て ス ィ ミン ・ ス グ

クール に 通 い 始 め る.し か し 3ケ 月 しか 続 か ず ,以 後 自然 消滅 の 形 に な った.そ の頃 には ,

CP.38 1.ケ ー ス l

喘息 の 症状 もな くな り,

これ とい った 問

廼 も起 こさずほぼ順 調 に 小学 。中学 を卒 業 し高 校 に 入 学す る,成 績 は 中 の 上 ,大 人 し く引込 み 思案 の性 格 で あ り,い じめの 対象にな った こ と

∼思春期挫折 閉 じこ もり∼

(1)イ ンテ ー ク

も幾度 か あ った.活 発 で優等 で通 した 5つ 上の

K男 は 高 校 1年 ,成 績 も上位 で入学 した.担 任 の教師 か ら カ ウ ンセ リングの 依頼が あ ったのは

姉 とは ,学 校や周囲 では ぃっ も比較 され 強 い

等意識 を持 つに 至 る.

,

9月 の 中頃 で あ る.『 K男 は 6月 よ リパ ラ バ ラ と

父子

休 み 始 め 2学 期 に 入 って登校 しな くな った.本 人

姉 の方は比較的 可愛が ったが ,

IPに は辛 く 当たることの方が多 か った。 (父 親)「 男は強 く

も カ ウ ンセ リン グを受 け る こ と に は 否定 的 で な い ,是 非 登校 させたい.』

あるべ きだ」 (IP幼 少期),「 男 は 自分 で歩 く

(2)家 族構成

べ きだ」(現 在)が 父親の方針で

あ り,IPの 将 来な どに関する父親の期待や希望は薄 く曖味で

公 務 員 の 父 親 (46歳 ),事 業 主 婦 の母 親 (44 歳 ),銀 行員 の 姉 (21歳 )。 それ に K男 ‐ (16歳 )の

ある.高 校進学の選択 も,「 自由に しろJと 余 り 干渉 しなか った.放 任分離度 は高 い.

4人 核家族 で あ る.住 居 は 市街地 に ある 3DKの 公団住 宅 だが ,家 族年齢には狭 す ぎる環境 で あ る. 父親 は 転動 の あ る職種で ,そ こに入 って 5年 目と な るが ,そ の時点 では住居 変 更 の 計画はなか った (父 親 ).

母子

密着 性は極めて強い。病的症 状を訴えると

,

母親は ょく肩代わ りを して IPの 欲求を充た し

てやる.呼 称は,「 Ooち ゃん」のままである。

(3)面 接契約 初回 と 2回 目の セ ッシ ョンは ,両 親合同 で相 談 室 で 持 つ.契 約 は この 2回 を含 ます 。筆者 の いつ

ものプ ログラムにのって,週 1回 1ク ール 5回 の 2ク ール言 +10回 とする。

(4)家 族 アセスメント ①

IPも

K男 (以 下 IP) IPは 未熟児出産でもあ り体 も弱 く,幼 少期

-6`3-

優 しい心配症の母親 と感受性の強 い気弱の IP の気質は ,よ く似て い る. ④

姉弟

大学 卒業後近 くの銀行 に就職。 IPと は年齢 的な隔た りもあって ,共 通 の話題 が ない (姉 ). 健康 .性 格 ,成 績 ,周 囲の評価共に IPと は相 反 してい る為か 。双方に優越 。劣等の対意識が あ る.「 姉 と言 うよ りは ,お ば さん の 感 じ


や ……」 (IP),「 ふ ざけ て・ お ば さん "と 呼

に書き合同でフィー ドバ ックす るとい うロール

ばれ るのが一 番 しゃ くに さわ るJ(姉 )

プ レィを楽 しくやる.

両親

トランプ

知的度 ′冷静度共に高い夫婦 で ある.父 親 は た.「 ふ っと,主 人 に敵意感 み た い な憎 悪 感 み

面接の合間を利用 して ,息 抜 きによ く トラン プをす る. ・ ヒンミン'と ぃ ぅグ ームが あ る が ,役 割 が勝敗によって変わ る もので ある.最

たいな ものを感 じることが度 々あった」 と ,母

下位 になる度にみんなの前で罰ゲームを して

親 は言 う。仕事に対 しては絶対的 自信を持 って

隣 の部屋

いて周囲の信頼 も高 い。

ればな らないと言うルールに し,時 間を忘れて

どちらか とい うと独断的 に家族を引 っ張 って き

⑥ 部屋 図 1で 明らかな よ うに 現家屋 はこの家族 に ,′

,

(IPの 部屋)で 一回分謹慎を しなけ

や ったこともある. ③

呼称

とっては狭す ぎる.IPの 部屋 と両親の部屋 と

第 4回 セ ッシ ョンの後半 に ,人 物相互 の・ 呼

の間にはは らきりとした境界 が な い し,両 親 の

・ を話題にする.全 員が「おか しぃ 。不満 び名

部屋 は家族 の居問 ,両 親 の寝室 ,応 接間

だ 。変えたいJと 意見一致。 「誰か一人だけ変え

(?)

を兼ねてい る.IPは 日中ほ とん どその部屋 で

るのは恥 しい。みんなでやれば恐 くな い」を合

フ ァ ミコン (実 際 にはか な り高度 なゲ ーム)を

言葉に変更することにする.練 習期間 は ,2週

していて ,夜 は眠 るまで間 の襖 を開けた ままイ

間 とする.変 更前の呼称で特 に 目立 って不釣合

アフ ォンでテ レビを見ている.寝 入 った頃に母

いであったのは次のよ うである.

親 はスイ ッチを切 って換を閉め る.父 親 は 早 く

対 IP

母親 「・ ぼく', ・ ooち ゃん'」 こ ・ 」 姉「・ ぼく', ちょん

対母親

IP「

帰れば先に眠 るが ,大 抵は夜遅 くになる.何 と な くこの様な毎 日が ここ 1年 以上続 いている. カウンセ リングを初めて 1ケ 月後 くらいか

ら,・ 週 に 1∼ 2度 夜遅 くまでテ レビを見な い で

° ', こ おぃ ち ょっと'」

設計図 第 5回 のセ ッィョンで ,こ こ数年 の間 に家屋

IPの 方 か ら換を開め るとい う行動が出て くる。

新築を考えたいと父親が話 し出し,流 れはそれ

しか し,母 親 は換 の 向 こ うで何を しているのか

を機会 に大きく変わることになる.

気がか り ともヽう。

急 きょ,新 築家屋 の理想 の設計図を描 くこと

'ご

(5)面 接経緯

に した.家 の大きさや間取 り,形 や材料 ,費 用

最終的 に面接は 9回 で終 了 した。最初の 4回 は

や建設時期な ど,話 が 沸隣 して 3時 間半 に も

IPに モ ラ トリアム (不 登校 .休息 期間)を 与 え る目的 も含め ,1ケ 月を主 に家族機能 の活性 と緊

な った。結局筆者は中座す るかたちで帰 り,次 ‐ 回までにその・ 理想 の家屋 を完成するとい う

張緩和 にブ レィセ ラピーを実施 した。

ことに した

世代間分離の一モデ ル として この 両部屋 と間の 換を有効 に利用 した.

第 6回 には,大 まかな設計図が完成 していた。 父親 は ,モ デルハウスの設計図も持 って帰 り

① 家族絵画

家族 は大 きく動 いた。そ の セ ッシ ョンの後 半

,

絵画で コ ミュニケーシ ョンを取 る。 IPと 姉

で ,現 在の住居 の部屋模様替えの課題を紹介す

が IPの 部屋 で思い を込 めて絵 をか く,反 対側 で両親 も同様 に絵を か く。 10分 後 に交換 して

.

相手の絵に対す る感想を 二人で相談 しなが ら裏

る. (6〕

課題

.

図 1の ように ,IPと 両理 の部屋には出入 口が

―-64-一


一つ しかない。家具を移動 して境界を明確 にかつ 強化 し,出 入 口を 2つ にす ることで各部屋の機能

を相互に独立させることにした。条件は,必 ず全 員が 協力することである.

IPの 部屋

両親 の部屋、 兼居 田

にか け て 全員で実施す る.

(7)変 革 課題 は 見事に実行 され ,第 7回 セ ッシ ョンでは 家 が広 、な った感 じである.全 員 の表情 が 明 る い. 話題 は まだ 。新築家屋 の こ とであ る。 姉 は ビア ノ を置 く場所 が決 まらない とい う。 父親 は ,車 庫 を 家屋 に組 み込 むか 別途 に建 て るか (姉 や

J_警

IP用 の

車 の収納 の こ と),費 用や スペ ー ス の 点 で迷 って

担 贅

い るとに こやかに言 う。新たな家族 設計 へ と家族 は動 きだす . 中間 の 休憩で ,姉 のだ した コー ヒーを飲ん で い

。:食 卓

台所 :

る と,

│。

γll」 』 :

‐ ●

■日

"=“

0

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IPが 筆者 と二人だけ で話 したい と申 し出

る.後 半 1時 間を独立 した彼 の部屋 で分離面接 を

:

す る.期 待通 り,登 校 の意志 を明 らかに す る.

(8)再 登校 4日 後 の 月曜 よ り IPは 登校 した。担任 の 教 師 とは事前 に受け入れ の体制を とるべ く連携 を して 一

おいた.

(9)フ ォ ローア ップ 相談室 で 両親合同の面接を 1回 ,担 任教師 との

勉強

連携を 1回 .IPと の個別面接 (第 7回 セ ッシ ョ :

ンで約束 が で きて いた)を 2回 実施 した.以 後 問 題 な し.

独 立 した IPの 部屋 図

1

(6Dは ,普 段は居問 が 客 あれば応接間。夜は両親の部屋とする。 ② 隣の押し入れのある部屋 (6畳 )・ は,普 段は ① 床の間のある部屋

,

IPの 勉強部屋とプライベ ー ト・ルーム,兼 家 族 の所 有物 の保管場所 に も当て る.

Э 第3の 部屋 (4畳 )は ,普 段は姉のプライ ベート ・ルーム。兼必要なときの母親の・ 駆け 込み部屋'(「 女部駒 と命名)'と する。 Э テ レビは食堂 に移動し。食堂に も居間の兼用 をさせる。 (こ の結果 フ ァ ミコ ンは使わ な く なった。 「 もう事業や」と IP)

e

第 6同 と第 71ロ セ ッションの間の土曜と日曜

-65-

.


(描 画に表わ された住空間による 治 療 方 法

KF P

IP 17歳 本件

39

)

46

工員

窃盗

非 行行動

IPの 初発非行 は,中 学 3年 時 の 原付車 の窃 盗。高校 入学 直後 に単車 の窃 盗 で謹慎処 分 を受 け てか ら登 校 しな くな り,暴 走族 に入 り暴 走行 為 を繰 り返 し

,

保護 観 察 に 付 され た。 その 後 高校 に 復学 したが ,近 隣 の不 良仲間 と共 に 自 動 車窃 盗 を繰 り返 す よ うに まで な り少 年院 に 致 された。約 半年 後に仮退 院 を '基 したが,約 1カ 月後 には以前 の 不 良仲間 と再 び 自動車 の 窃 盗 を起 こ して逮 捕

され ,2回 目の 鑑 別 所 に収容 され た。その事 件の 審判 では IPに 弁護 士 がつ き

,

試験 観 察 に付 され た。

IPは 中学校 や 高 校 の教 師 に 悪者扱 い され た と被害感 を抱 き,保 護 司 も自分 の こ とを悪者扱 い す るだ けだ と嫌 い,裁 判所 に対 して も少年 院送 りに した と 恨 ん で いた。 さ らに IPを 守 る立 場 の弁護 士 に も打 ち解 けず 構 え て い た。 家族 家族 は,父 ,母 ,兄 ,IPの 4人 家族。父 は 高卒 以来工 場 で働 き,現 在 では 工 場長 として現 場 を任 され て い る。 母 も同 じ工 場 の 事務員 を して い る。

両親

共 に非 常 に生 真 面 目で ある.IPが 問題 を起 こす よ うになってか ら,肩 身 の 狭 い思 い をしてお り近所づ きあ い も少 な くな り孤 立 して い る。 両 親 も IPが 悪 く な ったの は,教 師や 警察 の せ い だ と訴 え,弁 護士 をつ けたの も IPを 守 ってや りたか ったか らだ とい う。

IPは 家庭内ではおとな しく,反 抗をすることもな く我が ままを言 うこ とも ほ とんどない。夜間外出す る時に も「友達の家 に行 くか ら′ 、 己 配 しなくて もい い」 と言って,親 を安心させてか ら出掛ける。兄は全く問題がなく 勉強に打 ち込んでいる。IPと 兄は仲が よく,IPは 両親に注意されると,兄 の部屋に逃 げ込んでしまう。

-66-


試験観 察の 経 過 審判 で IPは 試験 観 察 (一 定 の 期 間 ,調 査官が 少年

と家族 に援助 を与 え。 そ

の結果 を踏 まえて処 分 を決定 す るこ と

)に 付 され た。

IPと この家族 には,上 位 者

(生 活歴 にみ られ る教師 ,警 察 官,保 護

観察 官 など)に 対す る反 発が顕 著 で,上 位 者 と 対立的 な関 係に陥 っ て しま うこ とが 特徴 的 であ った。 今 回。 家族 は 弁 護士 をつ けて

裁判 所 に対抗 しよ うとす る動

きを不 したので,調 査 官 はその 動 きをその まま利 用 す るこ と を考 えた。 そ こ

で調査官が,家 族とI'あ 僣まえ役を演し,家 族と弁護士の連合 関係を強化さ せ るこ とで,弁 護士 とい う上位者に対す る肯定的な認 識 を持続 させ るこ とを :

i

目的 とした。しか し約 1カ 月後に,父 が IPの 指導の仕方 め を ぐって弁護士 と │

けんか をして しま うとい うハ プ ニ ング を起 こ した。その

直後 に,IPは 再び非

:

行 を起 こ し逮捕 されて 3回 目の鑑別所 に収容 された。それ以 来,家 族は弁護 士の指 導 に も拒否的 になって しまった。調査官は,弁 護士 とも対立的になっ て しま うこの家族に,今 後 どの ように関わってい った らよいのだ ろ うか と途

: 1.

方に くれた。 間取 り図

IPが 3回 目の鑑別所 に収容 された後,調 査官は改めて家族アセス メン か ト ら始め るために,IPに 動的家族画 を描 いて もらった (図 b)。 しか し IPは 描 き始め るまで長 い問考 え込み,描 写 の線 も非常に弱々 しかった 。 その結果.・ IPは 人物 が表現 され る描画に対す る抵抗が強 い と思われたので ,間 取 り図 A を描 い て もらった ところスムー ズに描 いた (図

4).IPの 家 は,衛 星都市の工

業地帯 にあ り,会 社 の工場 に隣接 した社 員察に併 設 してい る。

その ため兄の 部屋だけが社員食堂 を挟んだ離れ た部 屋になってい る。IPは 両親の部屋の隣 の一室 を与 えられて い るが,机 を兄の 部屋に ち 持 込んで そこで過 ごす ことが

一 -67-―


誡61っ

0コ

4

多 い。IPは 独 立 した 自分 の部屋 が 欲 しい と望 んで い るが,両 親 に要 求 す るこ ともしな い こ とな どが明 らかにな った。

さらに,IPに 間取 り図 Bを 描 い て もらった ところ,図 5の ような 間取 り図を描 いた。4

LDKの マ ン

ションである。4つ の部屋 の うち

,

和室は両親の部屋だと特定 した力t 他 の部屋につ いては決めなかった。 興味深 いことに,両 親の部屋 の向 か いに位置す る空自の一室 を描 い たの で,そ れについて尋ねた とこ ろ,IPは 考えた末に「 この部屋は 誰かが来た時に使 う部屋だと思 う」 口]

5

と答えた。

-68-一


ロ コ C

試験観察におけ る間取 り図の活用

1

再犯後 の審判で,IPは 再度 の 試験観 察 に付 された。そ こで調査官はこの家 族 に解 け込むために,IPの 問取 り図 を次 の よ うに活用 した。IPの 間取 り図 B (図

5)に 表現 された空 自の一室 に調査官 のポジシ ョンをとることで,こ の家

族に参加す ることを考 えて,家 族面接の構造 を設定 した。 つ ま り,面 接室 と い う空間 を家族空間に見立 て,実 際 に問取 り図の ように家族 にポジシ ョン

'

とらせ ,調 査官はその空自の一 室 に相 当する部分にポジシ ョンをとって初回 面接か ら実施 した (図

c)。

この ように して家族面接 を続ける うちに,母 が 「今

まで都合 の悪 いこ とは,調 査官 に打 ち明けなかったけれ ど,今 後はあ りの ま まを伝 えようと思 う」 と語 り始め た り,父 か らは父自身の生活歴の 中で も ,

IPと 同 じよ うに上位者に対 して反発 して きたことなどが語 られた。 この よ うに して調査 官が家族 との シ ョイニ ング (jOining)に 成功 した頃に

,

今度は両 親に対 して,新 しい家 の 間取 り図 を描 いてみ るこ とを提案 した

(約

1カ 月経過 ,第 4回 面接 )。 父が描 いた問取 り図 Bが 図 6,母 が描 い た問取 り 図 B力 '図 7で ある。

IPが 描 いた間取 り図 と両親が描 いた問取 り図を,家 族面接の場でお互 いに 見 て もらい。それぞれの感想を述 べ て もらった。両親は IPの 間取 り図 を見な が ら,「 家族全員で話がで きるこんな居間が欲 しい」 ,「 やは り子供部屋が 2つ 必要 か な」などと話 し合っていたが,IPは 黙って聞 いてい るだけだった。調 査官は,そ れぞれの 間取 り図の相違点 をあえて強調 した うぇで,唯 ―の共通

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'


二お

6

=夜

′ イ ド ●じ

口 Q

7

点 と して誰 の 間 取 り図 で も IPと 兄 の 部 屋 を特 定 して い な い こ とを け 付 加 えて お い た.

IPは 仕事 に は 休 まな い で 通 い 始 め たが ,深 夜 まで遊 び まわ って い る。その 点 に つ いて ,家 族 面接 (約 2カ 月経 過 ,第

6回 面接 )で 話 し合 い を させ た と

ころ,IPは 両親に対して 「夜遊びをするなとそんなにうるさく言われればや りた くなる。それにお母さんが僕の電話を立ち聞きしたり,机 の中を探し回

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ることは今後やめて欲 しい」とはっきり述べた。両親は IPが これほ どはっき りと自分の意見を言ったのは初めてだ と驚いていた。さらに IPは ,で きれば 、 自分 も兄の ような部屋が欲 しい と両親に要求することがで きた。 次の面接

(第

7回 面接)で 調査官は,両 親 とIPの 3人 でひとつの新 しい家

の間取 り図を描 いてみるように提案 した。まず父が家の外枠を描 き,間 取 り を 4つ の部分に仕切り,子 供部屋のスペースを大 きくとった。それ を見てい た母が「子供の部屋が大 きすぎて私たちの部屋が小 さくなりすぎる」 と言っ て,IPに「書 き換えるよ」と同意を求めたところ,IPは うなずいた。母は父 が描 いた仕切 りを消 し,両 親の部屋のスペースを大 きくした。 さらに父 と母 は「IPが 描 いた ような大 きな居間があるといいね」と話 しながら居間 を描い た。 そして母は各部屋の ドアの場所 を居間のあるほ うに集めた。みんなが居 間に集 まりやす くするためだ とい う。IPは それを見ているだけで書 き加 えよ うとは しなかった。最後に,父 が IPに 対 して 「お まえならどちらの部屋 を使 いたいか」と尋ねたところ,IPは 両親の隣の部屋を選んだ。できあがった間 取 り図 を皆で見つめながら,両 親は「 こんな家が持 ちたい」 と述べ た。 その後,両 親は IPに 独立 した個室を与えようとしたが,経 済的に不可能だ った。しか し,母 は IPの 電話を立ち聞 きしたり,机 の中を覗 くこともな くな り,父 は IPの 帰宅が遅 くなっても詮索することもな くなった。調査官は,こ の ような両親の変化を評価 し,物 理的に IPの 個室を与えることがで きなくと も,両 親が IPの プ ライバ シー を守っており,そ のこ とがすでに IPに は「個 ‐ 室」として機能 していると伝えた。IPの 状態 も徐々に安定 し始め,夜 遊 びも 少な くなってきた。IPは 18歳 を迎え,仕 事で稼いだ金で自動車学校 に通 い始 め今後の就職に備えることが決まり,試 験観察を終了した

(約

4カ 月経過).

(伝 え聞 くところによると,そ の後少年は免許を取得 し,仕 事 に精動 してい

るとい う)。 検討 試験観察では,権 威的上位 者を否定的に認識し,対 立的な関係に陥 ってし まうIPと 家族に対 して,そ の悪循環 を解決するこ と,ま たそれ と並行 し■

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17歳 の IPを 徐 々に家族 か ら自立 させてい くことも目標iこ した。

調査官はこの家族に解 け込むために,IPが 描 いた間取 り図 B(図 用 した。IPは 間取 り図

5)を「1

Bに は部屋の 使い方 を決めてお らず,空 自の一 室 を設

けたことなどか ら,こ の家族 には まだ変 化 の可能性がかなり残 されてい ると 判断 した。IPが 描 いた間取 り図 Bが ,IPが 認識するこの家族 に合 う家族構造 だ とすれば,空 自の一 室は,こ の家族 システム を補足す る何 らかの要素であ ると考えるこ とがで きる。そ して IPが この 空自の一 室 を 「誰かが来 た時に 使 う部屋」と定義 したことを利用 して,そ こ を調査官の ポジション と見立てた。 それによって,少 な くと も IPか らは抵抗 を受 けずに,援 助することがで きる と考えたわけである。 さらに,面 接 室の空間的構造 を,IPの 間取 り図に表現 された家族空間 に置 き換 えるこ とによって,家 族面接 の構i告 を設定 し家族面接 を実施 した。 この ようにして,家 族内における調査 官のポ ジションを維持することで,調 査官 は「家族の一 員」 として参 加す ることに成功 してい る。両親はその ような面 接の過程で,調 査官に対す る構 えを徐 々に崩 し始め て い る。 次に,父 と母 に も新 しい間取 り図 を描 いて もらうこ とによって,家 族成員 各自の家族 に対する認識 の違 い を明確にす ることに した。その 目的は,こ の 家族は基本的には絡み合 い家族 (enmeshed family)で あると判断 したか ら である。そ こで調査官 はそれぞれの間取 り図の特徴 を強調 し,そ れぞれの 立 場の相違 を明確 にす るこ とで,IPと 両親の絡 み合 い状態 を解消 してい った。 その結果,IPは 両親に対 して直接,不 満 と要求 を主張 で きるように変化 した。 以上の経過 を踏 まえた うえで,最 後に,家 族合同で一枚の間取 り図を描 く ことを提案 したわけであ る。 これ はそれ ぞれの立場 の 違 いを前提 として,な おかつ「 ひ とつの新 しい家族」 を共同 して作 りあげ る とい う課題 を家族に与 えたこ とを意味する。その 後・ 両親は IPに 個室を与えようと努力した り,IP に干渉するこ ともな くな り,良 効果が示唆 された。調査官は,そ の ことがす でに家族内 に「 IPに とっての個室」 力 きあがって い ると評価 した。 `で

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