人間行動の視覚化とその活用に関する研究

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「 コンピュー タ・ グラフイ ックス」 とは一体何 か。 この用語 は、今 日ではひろ く用 い られているが 、実 は様 々 な意味 を持 って いる。情報 を引 き出 した り、表示 した りす る、 コンピュー タ本来 の機 能 も、むろん コンピュー タ 。グラフ イックスの領域 に含 ま れる。 … コンピュー タ 。グラフィックスは このほかに もあ まり知 られて いな い重要な機能 を 持 つ。それは、 コンピュー タに情報 を取 り込み、 これ を順 に読 み取 つてい く能力 で あ る。取 り込まれた情報は、 アニメーシ ョンに用 い られるようなスケ ッチ画、もしくは、 種 々の 目的を持 った地図 の よ うな、平面的 な映像 を作 り出す こ とがで きる。 また、機 械 の部品 とか、 自動車 の車体 と言 ったような物体 を描 くための 、立体的 な画像 を作 り 出す こ ともできる。 … したが って、 コンピュー タ 。グラフイックスを定義す るならば、機械 を通 じて行 う、 図形 による 一文字 や数字 によらな い一 伝 達手段 で あ る とい うのが 、最 も適 切 ではな いだろ うか。 一 DoGrcenburg― ― 科学技 術 の進 歩度 が そ の 時代 の文化 を決 める、 とい う ことが社 会 的 に言 われ て い る。 確 か に科 学技術 とい う もの は われわれ の生 活 や、 果 て は 国家 と国家 間 の政 治 に まで 影 響力 が 及 ぶ 。 コ ン ピュ ー タ 。グラ フ ィ ック ス とい う人 間 の叡知 が生 み だ した 素 晴 し い メデ ィア も、視 覚 情 報 を通 して、 そ の よ う に大 きな影 響力 を持 ち初 め て い る。 …

建築 や幾何学 は古 くか ら発 達 した。 とい うのは古代 において建 築 は天文学 と密接 な かかわ りを持 ってお り、季節 を知 るための 天文台 の機能 を備 え る ものが多 かった。 そ のために測量や数学が発達 した。 また、土 地 を平等 に分割す るために幾何学 が発達 し たので あ る。 しか し、画像 と数学、あるい は科学 との関係 は、 ル ネッサ ンス以 降、学 問 の細分化 にともな って、次第 に遊離 して しまってい た。 ところで、 コンピュー タ 。 グラフイックスのメ リ ツ トは、画像 を量子化す ることを前提 と して いることで ある。 だか らこそ、物体 の裏側 を見 た り、画面 の 中 を自由 に移動 した り、簡単 に色 を変 えた りす るこ とが可能 なのである。 また、 自然界 のさまざまな形態 には非常 に数理 にかなっ て形成 されるものが多 いこ とも事実 であ る。それ らは コンピュ ー タとい う道具 が介在 して始 めて可能 になった。 い うなれば理論 と感覚 の融合 である。 一 河 口洋一郎 ―


目次

第一 章

序論 2   4

は じめ に 研 究 目的

第二 章

行動情報 の定義 2.1。

人間行動 について

7

2.2.視 覚化 の ための 行 動情報

第 三章

視覚化 のシステ ム 3.1.視 覚 化 の 意 義 3.2.シ 3。

第 四章

ス テ ムの イ ン タ ー フ ェー ス につ い て

3.視 覚 化 シス テ ム

1.避 難 シ ミ ュ レー シ ョンヘ の 適 用

4.2.流 動 シ ミ ュ レー シ ョンヘ の 適 用 4。 3。

16

17

映像 に含 まれる情 報 へ の適 用

21 30 38

結論 5。 1。

5。

まとめ

2.展 望

あ とが き 使用機器 お よびソフ トウ ェ アー 覧 参考文献 リス ト 参考論文 リス ト 付録

15

視 覚化 の活用 4。

第五章

11

42 44



は じめ に コンピュー タ 。グラフイックスの進化 は、 日で見 える ものをいかに 本物 ら しく見 せるか を基本思想 として きた。 一 般 に コンピュー タ・ グラフ イックスの作 成 にお いては、 フォ ト・ リアリズ ムと時 間的 コ ス トの 削減 を追求す るため に、色 や形 な どの 日 で見 え る もの を描 画 す るこ とに必 要 なデ ー タのみを作成 し、 目に見 えない ものは省略 さ れデー タ化 されない 。 しか しその 一方、研究開発 の場 にお い ては、 サイエ ンティフィック・ ビジュアライゼーシ ョンなどの、少 し異 なっ た コン ピュー タ・ グ ラフイ ックス に対す る認識 がある。それ は実験 や解析 の結果 などの 科学的 デー タ、す なわち本 来 目に見 えな い性 質 の もの を見 えるよう にす るために コンピュー タ 。グラフイックスの 技術 を活用 しよう とい う概念 で、最近 で はグラ フイックワー クステ ー シ ョンなどを中心 とした道具 に よって さまざ まな科 学的 デ ー タの 可視化 が行 われるよ うになって きた。現象 や数 値解析 結果 の可視化 は、主 にス ーパーコ ンピュー タに よる大規模配列 の反復演算 による 流 れの解析 や、ボ リューム レンダリ ングによるCTス キャ ン映像 の解 析 などのよ うに、主 に先進分野 での高度 かつ高価 な手 段 として利用 されて きた。 しか し、 ワー クステ ー シ ヨンをプ ラットホーム とした 最近 のハー ドやソフ トの進歩 と低価格化 によ リビジュアライゼーシ ヨ ンを行 う研究者や技術 者 の負担 が著 しく軽減 された結果、昨今 では、 ビジュ アライ ゼーシ ヨンは さまざまな分 野 に適用 され るよう にな っ て きてい る。 建築 の分野 におい て も、 さまざまな分野 にお い てデー タの視覚化 の 技術 が 利用 されるよ うにな って きてお り、有限要素法 を用 い た構造 解析、都市景観 の検 討 などの分野 では、 すでにその有効性 は十分 に 検証 されてい る。 しか し建 築 の中でのCGの 使 われ方 は、依然 として クライア ン トに見せ る完成予想図、 または コンペ のプレゼンテー ショ ンにお け る差別化 な どに限定 されてい ることが 多 く、設計過程 の道 具 としての利用 とい った、 この技術 の進歩 に十分みあ った活用 が な されてい る とは言 い難 い。

2


た とえば、従来、建築関係 のシミュ レーションの実行結果 はテキス ト形式 または簡単な グラフイックスによって表現 され て きた。 しか し、 シ ミュレーシ ョンを実行す る ことに よって得 られ る結果 は複 雑 かつ多 様 で あ り、 さ らに建 築 にお いては立体的 な挙動 が問題 とな る ことが 多 いため、そ の結果 を図面 と照 ら し合 わせなが ら検討 す るや り方 で は、迅速 かつ 的確 に状況 を把握す ることは困難 で あ った。 ま た、 シ ミュレーシ ョンの行 なわれ る機会 も多様 化 して きてお り、専 門的知 識 を持 たない 者 であ って もその結 果 を理 解す る必要が生 じて きてい る。そ のため建築関係 のシ ミュ レー ションにお い て も、結 果 を視覚的 に表現す ることが重要である と考 えられ る。 つ ま り、機械 と人間、人間 と人間の情報 の伝達手段 との しての コン ピュー タ・ グラフイ ックス技術 の活用 が 、今求 め られ ているので あ る。そ してその実践 として行 われるこれか らの ビジュアライゼーシ ヨ ンにお い ては、 ただ 美 しい画像 を作 った り、そ れ らしい表示 を行 っ た りす るだ けではな く、研究や開発作 業 をよ り効率 よ く行 うために、 ビジュ アライ ゼーシ ヨンに必要な要素 を見極 め ることが重要 で あ る と考 えられる。

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研 究 目的 本論 は、前項 のような背景 をふ まえ、建築計画 における、 コンピュータ 。グラフイツ クス技術 の科学的デー タの可視化への利用 についての試み と考察 について述べ るもの である。本研究 の目的は以下 の二つである。

一般 に静的 な建築空間 にお いて、極 めて動的 な人 間行動 を取 り扱 うために、 人間行動 を支配す るさまざまな要素 (行 動情報 )を 整理 し、そ れ らを有効 か つ 円滑 に人間行動 の視覚化 を行 えるように体系化す る。

1。

2.研 究開発 の場 において必要 な情報 をより効果的かつ有効 に表現 す るために、 目的 1に お いて体系化 された行動 の情 報 を用 いて、人間行動 の様 々 な局面 を コンピュー タ 。グラフイックスによって視覚化す るシステムを提案 し、実 際 にそのシステムを利用 して人 間行動 の分析 を行 う。



人間の生活 の場 である環境 ・空間をどの ように設計す るか、 と言 った問題 を考 え る ときに、 い くつ かのアプ ローチの方法 が あ る。あ る人 は、 自分 のそれ までの仕事 を と お しての経験 や勘 をた よ りに問題 を解決す るだろ う し、 またあ る人 は、設計 のプロ セ ス をモデル化 し、それ に したがってシステ マ テイックに計画 を進めてい くとい った 方 法 をとるであ ろ う。 どのようなア プローチをとるにして も、 各設計段階で 、種 々の意思 決定 を行 い、 そ の評価 をす る必要があ る。そ の決定や評価 の重要な ファクター の一つ に、「人間」 の 行動 が ある。 …空間の中で の人間の行動 の集積 の中 に共通 に内在す る規則性 とか秩序 が、空間 に お け る人間の行動特性 で あ り、 これを明 らかにす ることが 、す なわち建築計画 にお い て人間の行動 を取 り入 れて設計 を進 めてい く第一歩 となる。そ して、 この行動 を一 般 化 し、設計案 が実際 に建設 されたあ とに人 々がそ こでどん な行動 をす るか予想 できる ような道具の一 つが、行動 モデルであ る。 これによって設計者 は、計画案 の比較検討 。 評価 が可能 にな り、設計 へ とフイー ドバ ックす ることがで きる。 一 渡辺仁 史 一

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2。 1。

人 間行 動 に つ い て

人間行動 に特徴的な要素 を的確 に設計評価 のための視覚化 に反映 させるために、 こ れまでの研究事例、特 に渡部仁史 の研究 をもとに、人間行動 とは何 か及 び人間 と建築 空間の関係 についての整理 を行 う。 2.1.1.人

間行動 の定義

まず渡辺 の定義 によれば「行動 とは、一定 の目的や要求が満 たされた状態 に、現在 の状態 を移行 させること。」 「人間の行動 とは、情報処理 システム としての人間が、 行動領域 である空間か ら、 さまざまな情報 を選択的あ るいは強制的 に受け取 り、一定 の情報処理を行 って、 自分 の欲求や行動目標 を定 め、それを充足す る状態 に現在 の状 態 を移行 させるために空間 にたい して働 きかける ものである」 とある。 また、 「具体 的な欲求 をともなわない一般的な身体的状態 の変化 を特 に『行為』 と呼ぶことにす る と、『行動Jと は、行為 の時系列的な連続集合 として表 わす ことができ、F行 為』 も さらに幾 つかの F動 作』 の集合 としてとらえられる」 とも述べ ている。そして行動 。 行為 ・動作 を以下 のように位置づけている。 動作 (acdOn):人 体 の部分 の運動 であ り、肉体的な状態変化 によって観察 さ れる (眼 球運動 。指 の屈伸 など 行為 (activity):人 体全体 の状態変化 を指 し、動作 の集合体 として観察 され る (歩 行 。停止 。着席 など) 行 動 (behavior):目 的 の伴 った 行 為 の 連 続 集 合 と して と ら え る 。 動作 は、行動 に比べ よ り生理的、身体 的であ るのに対 し、行動 は意思決定 的、精神 的な内容 を指 していることが多 い。 )

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2.1.2.空

間 にお け る人間 の行動特性

また、渡辺 は、人間の行動 と空間 とは常 に一対 一で直接的 に対応 してお り、建築計 画 にお いては、両者 の関係 を明 らかにす ることが、重要 な決定評価 の要素 となってい る とし、人間 と空間 との文 寸応 を以下の四つで とらえてい る。 。空間的秩序 行動 の時間的 な規則性 や一定 の傾向 ・空間における流動 どこか らどこへ動 くか とい った 2地 点間 の移動 ・ 空間における分布 どこに位置す るか とい った空間確保、空間定位 。空間 との対応 の状態 どんな気持 ちで行動す るか とい った心理的、内面的状態 2.1.3.空

間 にお け る人間 の流動特性

渡辺 は人間の流動 にみ られる量やパ ターンの傾 向 を特 に流動特性 と定義 し、以下 の 四つ に大別 して い る。 Fl:移 動 とい う目的が強 い流 れ F2:移 動 とい う目的以外 の流 れ F3:移 動中のプ ロセスが 目的 となる流 れ 喜 :流 れが停滞 した状態 表2.1.1は これ らの流動パ ターンを整理 した ものであ る。

Fl:2点 間 の位 置 の移動が行 動 目的 な もの

物 覧 口 貝観

避難 通学・ 通勤

F2:ほ かの行 動 目的 のため に位 置 を移 動す る もの F3:移 動 プ ロセス を行動 目的 とす る もの F4:流 れが停滞 したもの

散策 ハ イキ ン グ 待 ち合 せ 休息

歩行 速度 (m/分 ) 80∼ 150

40∼ 80

50-70 0

表 2.1.1.流 動 の分 類 、建 築 学大系 H

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流動 は人間 の歩行行為 が 中心 となって成 り立 ってお り、それを定 量的に表現す るこ とによって流動 の特性 を説明で きる としている。流動 を表現す る指標 は表2.1.2の とお りである。

人 /日 、人 /時 、人 /分

量 断面交通量

m./rl, n/?,

流 れ の 速 さ 単独 歩行 速度 群衆歩行 速度

人 /m2

流 れ の 濃 さ 流動密度

m2/人

歩行者空 間 モ ジ ュー ル

流 れ の 性 質 流動係 数

人 /m・ 分 、人 /m・ 秒

流 れ の 長 さ 歩幅

Cm

歩行距離

m、

km

歩数

歩行 時 間

秒 、分 、時 間

流 れ の 履 歴 歩行軌跡 、動線

2.1.2.流 動 を表現す る指標、建築学大系

H

2.1.4.空 間 にお ける人間 の分布特性

渡辺 は空間における人 間 の分布 を線的分布、面的分布 の二 つ に大別 し、 さらにその 傾 向 に応 じて集塊 パ ター ン、 ラ ンダムパ タ ーン、拡散パ ターンの三 つ の分布 パ ター ン に分類 してい る。 ラ ンダムパ ターン 歩行 ・休憩 ● ●

● ●

●●

・ ■ド ..

● ●

ろ●

集塊 パ ターン 井戸端会議 。子供 の遊 びなど

● ●

͡

拡散パ ターン 朝礼 ・授業 な ど

図 2.1.3.空 間 にお け る 人間の分布 パ ター ン

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2.1.5。

人 間 の癖

人間は個 々に行動 の癖 を持 ってお り、集団 になると群衆 としての癖 が現 われる。戸 川喜久 二 によって それは以下 のようにまとめ られてい る。 ・左側通行 。左 回 り 。近道 。いの しし口 これ らはいずれも、人間の行動 に密接 にかかわる要素 であ るが 、あ くまで傾 向であ っ て、絶対 的 な法則 ではない。そ のほかに、非常時 の人間が生物 学的本能的 に持 つて い る行動特性 として、退避本能、指光本能、追従本能 などが一般 に知 られてい る。 2.1.6。

群衆行動 につい て

人間行動 の特性 の 中 には、個 々の特性 とい うよ りも、群衆 の密度 や他人か らの影響 で決定 されるような、集団全体 として持 つ ような特性 が あ る。渡辺 はこれを群衆特性 と定義 して いる。 群衆 は群衆 の構成員 の保有 してい る行動 目的 によって 、異 なる群衆特性 を持 つ。 し か し、群衆 について一 般 に言 え ることは、 一方方向 に連続 して歩 いている群衆 を特 に 群衆流 と呼 ぶ とき、群 衆流 にお いては群衆密度 と歩行速度 との 間 に一定 の関係 が あ る とい うことである。

parlθ ―


2。

2.視 覚 化 の た め の 行 動 情 報

2.2.1.シ

ス テ ム における行動情報 の取 り扱 い につい て

本研究 では人 間 の行動 につ いて視覚化 を行 うわけで あ るが、視覚化 を円滑 に、そ し て効果的 に行 うためには個 々の状況 に対応 す るのでは な く、予想 される状況 に的確 に 対応 で きる柔軟性 を持 って い ることが望 ま しい。そ のためには、人間行動 の持 つ情 報 の整理 と体系化 が 的確 に行 われな くてはな らない。前項 までに整理 した、 これ まで に な された行動研究 の成果 を も とに して、本 システムのお け る人 間行動 の持 つ情報 の取 り扱 い について以下 に述べ る。 2.2.2.行 動情報 の定義

本 システムでは、人間行動 の視覚化 とそ の解析 を行 うわけであるが、そのためには、 人間行動 を構成す る多種多様 な情報 を取 り扱 い、それ を的確 に処理 しなければな らな い。本 システムにおい ては、 これ らの人 間行動 の さまざまな局面 を支配す る情報 を総 称 し、 これを行動情報 と呼 ぶ こととす る。 行動情報 の体系化 に当たっては、渡辺 の定めた行動体系 を基本 としている。 これは、 人間行動 を行動科学的 に捉 えた彼 の定義 が 、人間行動 の視覚化 にお いても有効 で あ る と判断 したためで あ る。そ のため、行動情報 を構成す る各 クラスは彼 の定義 した、行 動 の時間的 な規則性や一定 の傾 向 を表 わす 空間的秩序、 どこか らどこへ動 くか とい っ た 2地 点間の移動 を表 わす空間における流 動、 どこに位置 す るか とい った空間確保 や 空間定位 を表 わす空間 にお け る分布、 どんな気持 ちで行動す るか とい った心理的内面 的状態 を表 わす空間 との対応 の状態、 とい う空間 にお け る人間 の行動特性 の定義 に準 じて以下 の四つ に大別 される。 。人間 の 目的や属性 による時 間的 な規則性 などの空 間的秩序 に関す る情報 のクラス 。歩行速度やベ ク トルなどの流動 に関す る情報 のクラス ・ 三次元空間座標 や分布 パ ターンなどの分布 に関す る情報 のクラス ・各時点 におけ るまたは行動 をとお しての心理的情報 のクラス 視覚化 のシステムにおける各 イ ンス タンス は、すべ て上 記 のいず れかのクラスに属 す る。次項 にそれぞれのクラスの具体的 な構成 を示す。


◆人間の 目的や属性 による時間的 な規則性 などの空 間的秩序 に関す る情報 のクラス このクラスは以下 のサブクラスによって構成 されている。 ・個人 または集団 の 目的 避難、通勤 。通学、買 い物、観覧、散策、 … ・個人 の性別、年齢 。個人 の属性 健常者、障害者、 … ・集団の属性 。空間の属 性 屋外空間、屋内空間 。空間の機能 による属性 通路、駅構内、広場、博覧会場、… ◆歩行速度 やベ ク トル などの流動 に関す る情報 のクラス このクラスは以下 のサブクラスによって構成 されている。 ・個人 の歩行速度 ベ ク トル ・群衆歩行速度 。流動 の静的要素 歩行軌跡、通過地点 の経緯、… ◆三次元空間座標 や分 布 パ ターンなどの分布 に関す る情報 のクラス この クラスは以下 のサ ブクラスによって構成 されてい る。 ・個人 の各時点 にお け る空間座標 ・分布 の状態 線的、面的 。分布 のパ ターン 集塊、 ラ ンダム、拡散 ・集団の密度 ◆各時点 にお け るまたは行動 をとお しての心理 的情報 のクラス このクラスは以下のサブクラスによって構成 されている。 ・個人 の状態 正常、異常、非常 。個人 の心理 的生理的状態 疲労、空腹 、ス トレス、…


しか し実際 には、ある地点 におけ る人間 と空間 との対応関係 とい って も、必ず しも すべ て定量的 に表現 で きるとは限 らない し、刻 々 と変化す る対応関係 を明確 に分類 す ることは難 しい。その ため本 システムにお け るこの定義 は、あ くまで近似 や仮説 に も とず く便宜的な もので あ る。 これは、 この よ うな事象 の単純化 や抽象化 は、近似的 で あ るにして も事 象 の分析 に対す る結論 を導 き出す ことを可能 に し、それによって視 野 を広 げ、新 しい理論 の誕生 へ の手 がか りになる とい う判断 によるもので あ る。 なお、行動 における人間 の癖 とい った ものは、む しろ シミュレー シ ョンなどのル ー ルに属すべ き情報 であると判断 し、 この分類 か らは除外 している。

空 間 的秩 序 に 関 す る ク ラ ス 人 間の 目的や属 性 に よる時 間的 な規則性 を 表 わす情報 ・個 人 または集 団 の 目的 ・個 人 の性別 、年齢 ・個人 の属性 ・ 集 団 の属性 l空 間 の属性 ・空 間 の機能 に よる属性

心 理 的状 態 に関 す る ク ラス 人間の空間との対応 におけ る心理状態 に関 す る情報 。個人 の状態 ・個人 の心理的、生理的状態

空 間 に お け る流 動 に 関 す る ク ラ ス 人間の空間における移動 に関す る情報 。個人 の歩行 速度 ベ ク トル ・群衆歩行速度 ・流動 における静的要素

分 布 に関 す る ク ラ ス 人間 と空間の位置関係 に関す る情報 。個人 の各時点 にお け る空 間座標 ・分布 の状態 。分布 のパ ターン ・集団の密度

図 2.2.1.行 動情 報 の 定義

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3.1.視 覚 化 の 意 義

人間行動 の研 究 において最 も重要な課題 は もちろん現象予測 とその精度 であるが 、 これを設計や研究開発 の工学的手段 として評価す る場合 には数学的 な計算精度 だけ で な く、実験的手法 との相対的な能力や予測結果の もたらす情報 量な どをどう取 り扱 う かが問題 となる。また、具体的な問題 を解決す る手段 であるためには分析 を行 うプ ロ セス と視覚化 を行 うプロセスをつなぐイ ンターフェースの充実 も必要 となる。例 えば、 建築 における人間行動 の研究 を支援す る手段 として行 われる行動 モデルの コンピュー タによるシミュレーシ ョンは、通常実験 では計測不可能 な規模 や性 質の情報 を取 り扱 うことができるため、人間行動 の流 れを把握するのにたいへ ん有効 である。そ して流 れの現象 を理解するうえでは、圧力あるい は速度などを表示す るなどして、流 れを可 視化 することは必要不可欠 である。また、行動研究における人間の挙動 は、歩行速度 や群衆密度などのような、本来可視的な要素であって も、その特性 を定量的に捉え る ために、数値化 されていることが多 い。 もちろんそれは、人間行動 を客観的に評価 す るために不可欠 ではあ るのだが、それらの要素 を主観的、直観 的 に把握 し、行動研究 に活用 で きるとい う点 において、 コンピュー タ 。グラフイックスによる情報 の視覚化 の意義 は大 きい と考 えられる。


3.2.シ ス テ ム の イ ン タ ー フ ェ ー ス に つ い て

本研究 におけ る視覚化 のシステムは、視覚化 に一般的 に予測 される計算機 の負荷 を 考慮 して、基本的 にUNⅨ 上で動作することを前提 に構築 されてい る。 しか し、本研 究室の コンピュータ設備 のうち、多 くの部分 をパーソナル コンピューター (Macintosh) が 占めてお り、それらを有効 に活用 する必要性 から、本 システムは動作環境 をuNⅨ 上に限定 す る ものではない。画像生成 に と もなう大量 のデー タの転送が可能 で、 UNⅨ 上 と同種 の処理が実行可能 であればシステムヘ組み込 めるもの としている。つ ま り、本 システムは、それぞれの プロセス を分担す る機械 が、 コンピュー タ・ ネッ ト ワークによって互 いに リンクされている限 り、その動作 と有効性 を保証する もので あ る。

16-


3.3。

視 覚化 シス テム

サイエ ンティフィック・ ビジュアライゼ ー ションで取 り扱 われる情 報量 は、 一般 的 に膨大 な もので あ り、人間行動 の視覚化 において もそれは例外 ではない。それ ら大 量 の情報 を取 り扱 うために、 デー タのや り取 りはすべ て コンピュー タ 。ネッ トヮー ク を 経由 して行 うもの とする。 これは、 このシステ ムのインタラクティビテイが保証 され、 現実 に利用可能 な手段 であ るためには不可欠 であ る。 コンピュー タ・ ネ ッ トワー クを経 由 して視覚化 システムヘ と送 られ る行動情報 は視 覚化 のプ ロセスが理解 で きる形式 にあらか じめ変換 されている必要が あ る。本 シス テ ムでは 、その形式 としてUNIX用 にはdmフ アイル 形式、Macintosh用 にはRIBフ アイ ル 形式 を採用 して い る。dmフ ァイルは、 3Dグ ラフイ ックス作成用 の パ ッケ ージソフ ト ウェアで あ る リンクスの、映像化 プロセス と外部 ファイル とのデー タのや り取 りを規 定す ることを目的 と した、 メタ構造 で記述 された ファイル形 式 である。RIBフ アイル lRcnde.11lan lntcrface Bytcstrcam)は 3Dグ ラフイックス作成用 のパ ッケ ージソフ トウェ アであ るRendcrManの 映像 ソ ースの ファイル形式 で あ り、や は リメ タ構造 で 記述 され ている。 いずれの ファイル も、アスキー形 式 のテキス トファイ ルであ るので、 エ デ イ ターなどで手軽 に編集す ることが可能 であ る。 こうして作成 されたソース ファイルに、 モ デラーで あ らか じめ作成 されてい るラ イ ブラリのなかか ら選択 された形状 デー タを リンクし、 シミュレー シ ョンの実行結果 や 分析結果 などの行動情報作成部 によらないが視覚映像化 に必要 な さまざまな要素 (カ メラ方向や光源)の 設定 を行 う。 これで一応 、視覚化 へ の最低 限 の準備 は整 ったわ け で あるが、本 システムは視覚化 の 目的 に合 わせて、柔軟 で多様 な画像 の作成 を指向 し ている。そ のため、必 要 に応 じて、 ここまでで作成 されたファイルにさらに情報 を追 加す るこ とによって、 目的 とす る画像 に必 要 な様 々 な効果 (歩 行者 の視覚的環境 の表 示 など)を 付加す るこ とが可能 であ る。 こ う して視覚化 のための最終的 なファイル が 作成 されるのであ るがここ までが視覚化 の前処理 で あ る。 こう して作成 されたファイ ル を視覚化 プ ロセスの本体 である レンダラーヘ と引 き渡 し、計算 を実行す ることによって画像 の生成が実行 される。


このように、本 システムで は媒介 となる フ ァイルによってデー タの受 け渡 しを行 う こ とによ り、比較的容易 に効果的 な映像表現 を行 うことが可能 となって い る。 生成 された画像 は、画像 フ ァイル に静止画 として記録 す るか、 また は圧 縮動画形 式 のフ ァイル (Quickdmcな ど)や v「Rに 動画 として記録 される。通常 は 、 この ままの ス タイルで建築設計評価 の場 に提供 されるので あ るが。本 システ ムは、完成 した画像 も しくは画像群 に、 さらに画像処理 を行 うような オプシ ョン も提供 してい る。

COMPUttER INEttWORK MA:N‐ PROCESS

視覚化 の実行

媒 介 フ ァイ ル

画像 情報 シ ー ン構 成 な どの 前 処 理

PRE‐ PROCESS 画像 処 理 な どの後処理

媒 介 フ ァイ ル

画像 情 報

RMINAL PROCESSOR DIGITAL MEDIA L:BRARY 行 動情報

図 3.1.シ ス テ ム概念 図


第 四章

視覚化 の適用

本章 では具体 的 な視覚化 の実行結果 を示 し、 システムの活用法 とその有効性 につい て検証 を行 った。本研究で実際 に行 ったのは以下 の 3つ の検討例 で あ る。 ◆避難 シミュレー ションヘ の適用 ネ ッ トワー ク型群衆行動 シミュレーションの実行結果 のパー ソナル コンピュー タによる視覚化 ◆流動 シ ミュレー シ ョンヘ の適用 実座標型人間流動 シミュ レーシ ョンの実行結果 のワー クステ ー シ ヨンによる 視覚化 ◆映像 に含 まれる情報へ の適用 ビデオ映像 によるサ ンプルの分析 とその評価

par19-



4。

1.避 難 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ヘ の 適 用

システムの適用 として、 まず初 めに、ネ ッ トワー ク型群 衆行動 シミュレー シ ョンの 実行結果 の視覚化 とそ の分析 を行 った。具体的 には、広 島厚 生 年金会館 の大 ホール か らの避難行動 をと りあげ、そ の避難行動 シ ミュレー ションを行 ない、避難時 におけ る 群衆行動 に特徴的な挙動 の視覚化 を試み た。 4.1.1.避 難行動 シ ミュレーシ ョンについて

4。

1.1。

1.シ

ミュレー シ ョンの枠組

シ ミュレー ションはSmdltalk上 で記述 されてお り、UNIX上 で実行 されてい る。今 回 のシ ミュレーションは避難者 の行動 を視覚化す ることが 目的 で あるため、そ の行動 は 逐 一記録 される必要が ある。そ のためすべ ての避難者 は独立 して存在 していな くて は な らず、 かつそれぞれ の避難者 は次 々に変 わる 自らの状態 を保持 していかなければ な らない。 GPSS等 のシ ミュレー シ ョン言語 においては、すべ ての変数 が大域 に存在 し てい るために、 この よ うな避難者 を多数扱 うことはほとん ど不可能 であ る。 さらに各 避難者 に周 りの環境 に応 じて歩行速度 を変 えた り、避難経路 を決定 してい くような複 雑 な行動 をさせ るには、 オブジ ェク ト指向の考 え方が必 要 となって くる。 smdlttlkは オブジ ェク ト指向が最 も純粋 に表現 された言語 であ る。そのためSmdlttlkに よるシ ミュ レーシ ョンにおいては、避難者 の行動 を設定 して しまえば、後 はその設定 に従 って行 動す るような避難者 を必要なだけ発生 させれば よ く、避難者が い くら増えてもシステ ムを基本的 に書 き換える必要 はない とい う利点がある。 4.1.1.2.シ

ミュレーシ ョンの設定

この シ ミュレー シ ョンは空 間 の扱 いはネ ッ トワー ク型 、流動 の扱 い は待 ち行列 型 、 流動 の表現 は一方向型 である。 また、 シミュレーションを行 な う範囲 は、 ホール及 び ホ ールか ら観客 が避難 す る際 の避難経路が含 まれる部分 に限定 した。 さらに避 難経 路 上 で人 の滞留 が起 こるであろう待 ち行列 (こ こか らは‖ QuEUE"と す る)の 個所 を設定 した。 避難者 はそれぞれ固有 の歩行速度 を持 って いて、 1.5m/s標 準偏差0。 1の 正規分布 で 与 えてある。 これは避難者 の性別、年令 のばらつ きを考慮 した ものであ る。 ただ し避 難行動 では群衆が発生 す るので、避難者 の歩行速度 はその部分 の群衆密度 によって常 に変化 す るようにした。


(避 難者 の歩行速度 )

=(1.5*1÷

min

の部分 での群衆密度 )) (避 難者固有 の歩行速度 )

*1:流 動係数

(そ

(人

/mos)

シ ミュレー シ ョンはホールのすべ ての座席 に人 が座 っている状態 か ら始 め られる。 ホ ー ルの内部 を、避難す る方向 などによって60の エ リアに分害Jし た。各 エ リアはそ のエ リアに属 す る避難者が通過 す るQIIEUEが 1個 所 のみ存在す るよ うに分割 した。 エ リア内の避難者 は、 シ ミュレーシ ョン開始後、次式 で与え られた間隔 でQUEIIEに 到達す る。 (QUEIIEへ の到達間隔) =(エ リア内でQIIEUEか ら最 も離れている座席 か ら QUEUEま での距離 ) ÷ (エ リア内 の座席数 ) ÷ (避 難者 の歩行速度 )

QUEUEに 到達 した避難者 はそのQUEUEを 次式 で与 えられた時間をかけて通過 す る もの とす る。

(QUEUEの 通過時間) =1÷ (1.5*1× (QUEUEの 開 口幅)) *1:流 動係数 (人 /mos)

QUEUEと QUEUEと は避難経路 に添 って リンクしてお り、各QUEUEは リンクしてい るQuEUEの 名前 とそこまでの距離 の情報 を持 って い る。避難者 はQUEUEを 通過す る ときにその情報 を聞 き、そ のQUEUEに リンクして い るQuEUEが 複数存在す る場合、 次 の式 を各QUEIIEご とに行 ない、 もっとも早 く通過 で きるであろうQUEUEを 選択す る。 (次 のQUEUEを 通過 す るのに必要 な時間)

=(次 のQUELIEの 待 ち人数)× (QUEUEの 通過時間 +(次 のQUEUEま での予想到達時間

)

)

避難者 はQUEUEを 通過す る と次 のQUEUEま で歩行状態 にあるわけ だが、そ の間の 歩行速度 はその群衆密度 に影響 を受け る。そ こで次 OQUEUEま での距離 を短 く区切 り、 その区切 りご との所要時間 の合計 を次 のQUEUEへ の至1達 時間 とした。 (次 のQUEIIEへ の到達時間)

=Σ ((各 区切 りの長 さ)÷

(避 難者 の歩行速度 ))

″ИBc22======


各避難者が、 以上の操作 を この建物 の外 に出 るまで繰 り返 し避難 は完了す る。 この 際、避難者 は避難 して きた際 に通過 してきたQUEUEの 名前 とその通過時刻 とをファイ ル に出力 す る。避 難者が全 員外 に避難 し終 わると、各QUEUEは そ のQUEUEを 通過 し た避難者 につい ての情報 を出力 す る。その内容 は、避難者がそのQUEUEを 通過 した時 刻 と避難者が どのQUEUEか らそのQUEUEに 来 たかである。そ の後、各QUEUEご とに 最大何 人滞留 していたかを出力す るように した。 4。

1.2.視 覚化 へ の準備

このシ ミュレー シ ョンの出力結果 だけで も、避難完了 までの所要時 間や、建物 の ど の部分 に滞留 がで きるかなどの追跡調査 は可能 である。 しか し、数字 を見 て建物 の平 面図 と照 らし合 わせ、滞留 してい る個所 を想像 す るよ りも、実際 に人が避難 してい る のを画面 で見 たほ うが 容易 に状況 を把握す ることがで きる。そ こで、 このシミュレー ションにおけ る群衆 の行動 を支配す る各要素 を、第 一章 で定義 した行動情報 にあて は めて視覚化 のための準備 を行 う。 このシミュレーシ ョンで取 り扱 った行動情報 は、 群衆密度 歩行速度 時系列 的な空間座標 であ る。前述 したとお り、 これ らの行動 情報 は、視覚化 のシステム に引 き渡 され る 前 に、 シ ミュレーシ ョンシス テ ム内でのデ ー タ形式 か ら視覚化 のための一般的なデ ー タ形式 に、あ らか じめ変換 してお く必要があ る。

23======


4。

1.3.視 覚化 の プ ロセス

こうして生成 されたファイルをシステム内の視覚化 のプロセスに引 き渡す ことによっ て画像 を生成す るのであ るが、 この視覚化 においてはレンダラー にMacRenderunを 採 用 した。 この レンダラー は、パー ソナル・ コンピュー タをプラ ッ トフオーム として い るため、視覚化 に用 い るには計算処理速度 の点 で問題 がある。 しか し、今回 のシミュ レーシ ョンの取 り扱 う内容が視 覚化 の側 か ら見 て比較的単純 で あ ることと、研 究室 で 最 も多 く稼働 して いる機種 での視覚化 の能力 の限界 を確認す る必要性 か ら、採用す る こ ととなった。 したがって、 ホールや群衆 の形状 デー タの作成 もMacintosh上 のソフ ト ウェ ア (Dimensions Presenter Professional)で 行 って い る。 なお 、 ハ ー ドウ ェ アには MacintoshIIfxを 用 いている。視覚化 システムにおけ る大 まかな手続 きを以下 に示す。

1)シ

ミュレーション結果 のか ら送 られ た行動情報 にモ デラーで作成 された人 間 の 形状 デー タを リンク して視覚化 された画像 におけ る避 難群衆 のブ ロ ックのRIBttL

を作成す る。 2)モ デラー で平面図な どか ら作成 したホール 自体 のデー タに、 シ ーンのライテ イ ングやオブジ ェク トの ア トリビュー ト等 の視覚効果 を設定 したRIB■ leを 作成 し、 避難行動が行 われる周辺環境 の画像 のブ ロックを作成す る。 3)各 プロックを連結 して最終的 に作成 したRIB■ leか ら画像 を生成す る。

page24〓〓〓〓=


4。

1.4.視 覚化 された画像 に よる避難行動 の分析

難概況 の視覚化 ホール全体 の避難過程 を描 写す る、 コンピュー タ 。グ ラフイックス による、 パー ス ペ クティブな画像 の アニメ ー シ ョンの作成 を行 なった。 図 4。 1.2図 4.1.3に その経過 の 静止画出力 を示す。避難行動全体 を検討、評価す るための もので あ るので、館 内 の避 難者全員 を出力 し、 ホ ール のデイテールは簡略化、床 や壁 などは必要 に応 じて除去 、 半透過 とした。 この検討例 は、避難行動全体 の流 れを把握す るのに有効 で あ った。 4.1.4.1.避

図 4.1.1.ホ ール の概 要

図 4.1.2.避 難 開始時 の ホ ール概 況

5-


図 4.1.3.避 難 開始 よ り57秒 経 過時 の ホ ール概 況

図 4.1.4.群 衆密度 による表示

図 4。 1.4は 避難す る人間をを群衆密度 によって色 わけす ることよって、 ホールの避難 概況 をさらにわか りやす く表示 している画像 である。

pa翼 26=〓 〓〓〓


4.1.4.2。

そ の他 の検討例

避難概況 の視覚化 の結果か ら確認 された、群衆 の発生 や滞留など、特徴的な状況 が 見 られた地点及 び時点 をとりあげ、視点や視覚効果な どを変 えて、その部分 を強調す るような表現 を行 なった。図 4.1.5か ら図 4.1.7に その静止画出力 を示す。 これによ り ホール各部 にお ける状況、特 に図 4。 1.6で は、ホ ール 2階 後部 か らの避難通路 の異常 な混雑 と、その通路先 の階段直前 における鋭角 な屈折部分 の危険性 を、イメージと し て分 か りやす く伝えることが出来 た。

図 4.1.5.客 席前面 か らの腑観 による客席部分 の避難概況

図 4.1.6.ホ ール後部 か らの視点 によるデ ッキの避難状況

pttr27=====


この ように最初 に状況 を設定 して しまえば、表計算 ツ ールでデー タか ら図表 を作 成 す るように、比較的手軽 に連続的な画像 を作成 で き、 また通 常 のCADAll用 の際 と同様 に、 自由 に観察者 の視点 を変更 した り、必 要 な要素や見 せ た い部分 のみ を表示す る こ とが可能 であ るため、多様 な表現 が可能であ る。

図 4.1.7.避 難 開始後24秒 経 過時 の客席後部 の状況

page2θ =====



4.2.流 動 シ ミ ュ レー シ ョ ンヘ の 適 用

次 に、実座 標型人間流動 シミュレーシ ョンの実行結 果 の視覚化 とそ の分析 を行 っ た。具体 的 には、幅員5mの 仮想 の通路 におけ る人 間 の双方 向流動 をと りあげ、そ の 流動 シ ミュレ,シ ョン を行 ない、流動時 におけ る歩行者 の環境 について、 さまざまな 角度 か ら視覚化 を試みた。 4.2.1.シ

ミュレー シ ョンについて

このシ ミュレー ションも、 やは りSmalltalkで 記述 されている。 また、 シ ミュレー ショ ンの方式 は、人間 の扱 い は個人型、空間の扱 い は実座標型 であ る。 シミュレーション 上の各個 人は、左 回 りの特性 を与え られてお り、 おのおのが設定 された行動情報 に基 づいた判 断 によって行動す る。 シミュレー シ ョンはuNⅨ 上で実行 され、体 系 的 に整 理 された人 間の行動 お よび人間の行動 と対応す る空間 の情報 が ネッ トヮー クを経 由 し て視覚化 システムヘ と送 られる。 このシミュレーシ ョンで取 り扱 った行動情報 は、 個人 の空間座標 歩行速度 行動 の 目的 (目 的地の方向) 属性 (健 常者 ―障害者) 対応 の状態 であ る。 これ らの情報 は、視覚化 のシステムに受け渡 される前 に、 シミュ レーシ ョ ンシス テ ム内でのデー タ形 式 から視覚化 のための一般的なデー タ形式 にあらか じめ変 換 してお く必要が あ る。

page3θ ―


4.2.2.視 覚化 の適用

図 4.2.1は 通路 の断面交通量 が0.8人 /m・ 秒で左側通行 な どの統制 をとらず に行 った シ ミュレーシ ョンの実行結果 を視覚化 した映像 で ある。 この映像 では、対応 の状態 が す れ違 い または前 がつ まったために状況判断中 とな り歩行速度 に影響 が 出 てい る歩行 者 ほ ど明 るい色 で表示 を行 ってい る。画面 中央部 と左 方向で顕 著 にそ の現象 が起 こっ てい ることが確認 される。

図 4.2.1.断 面交 通量0.8人 /m。 秒 の 状況

これだけでも行動 の一般的な性質を視覚化す ることは可能であるが 、今 回 の検証 に おいては、 こうして作成 された映像 にさらに適当な画像処理を行 うことによ り、 さま ざまな要素 の抽出 とその解析 を行 った。

gF


4.2.2.1.歩 行 者 の不可視領域 の抽 出 とそ の解析

双方向流動 におけ る特定 の歩行者 の不可視領域 を抽出す るために、歩行者 の存在 す る空間座 標 の歩行者個 人 の属性 か ら算出 された視点高 さに、照度 の減衰 しない点光源 を設定 し、そ の光 によって空間 に投影 され た影 の部分 を視覚化 した。 この画像 にお い て、影 の部分 は歩行者 か ら見 た不可視領域 を表 わす。 その映像 を画像処理 によって二 値化す る ことに よ り、領域 の抽 出 を行 った。 図 4。 2.2に その図 とそ の 時点 にお ける歩 行者 か ら見 た視界 を示す。

図 4.2.2.特 定 の 歩行者 (画 面左 下)の 歩行者 の不 可視領域

page32==〓 〓=


また、時系列 的 に連続 した 歩行者 の不可視領域 を総加平均 した後、画像処理 によっ てそ の不連続 な部分 を補間す ることによって、流動 の中 におけ る動的 な要素 を静的 な 映像 に変換 し定量的な分析 を行 った。 この方法 によれば作成 された領域 の不可視度映像 を構成す る各 ピクセルの明度 によっ て、そ の ポイ ン トの一定時間 におけ る不可視度 を表 わす こ とが可 能 で あ る。図 4。 2.3 は通路側面に壁 が ある とした ときの不可視領域 とその不可視度 を表 わ した図で あ る 。 この図 においては明度 が低 い部分 ほど不可視 となる時間的比率 が高 いこ とを示 し、 あ るピクセルの明度50で あれ ば、そ の点 が一定時間内 にお い て半分 の間 は不可視 で あ る こ とを表 わす。

二r ﹂r ・ Ы l lじr︲﹂rL

図 4.2.3.健 常者視 点 か らの壁面 の不 可視 度 図 ヱr F 卜 ︲ i b

図 4.2.4.障 害者視点からの壁面の不可視度図 こ れ らの映像 群 はすべ てデ ー タソ ー スか ら送 られ て きた行 動情 報 に よって制御 さ れ て い るた め行 動 情 報 の 変化 や 変 更 に よる結 果 の解 析 も可 能 で あ る 。 図 4.2.4は 注 目 す る歩行 者 を身体 障 害 者 で あ る と想 定 した と きの (属 性 =障 害 者 )に よって選択 され た 視 点 高 さの不 可 視 領 域 とそ の不 可 視度 を表 わ した 図 で あ る。 ま た健 常 な男 性 の視 点 か らの不 可視領 域 を減 じる こ とに よって作成 され た健 常 者 と障害 者 の可視領 域 の差 異 を 図 4.2.6に 示 す。

======================================================page33====


図 4.2.5。 健常者 と障害者 の不可視領域 の比較

図 4.2.6.視 点 の高 さによる可視領域 の差

page34-


4。

2.2.2。

画像情報 の定量化 とそ の分析

また表 4。 2.7は 健常者 と障害者 の歩行平面 か らのそれぞれの11ご との高 さ別の不可 視度平均 をそれぞれの高 さ別 の ピクセルの明度 の平均 として算出 した表 であ る。 この ように、生成 された画像 をさらに図表化す ることによる きめの細 か い分析 も可 能 であ る。 これによれば、通常 の視点 に比べ て車椅子 からの視点 においては、地上2m以 上 の高 さにお いて も多 くの不可視領域が存在 す ることが定量的に確認 された。

圏 ∼loo圏 ∼200■ ∼300回 ∼400

0 9 0 8 0 7 0 6 0 5 0 4 0 3 0 2 0 1 0

︵ S︶絆ヨ憚や C撻粋黙 旨 ゛誉鶏せ陣測

100

〇 〇 ︼ ,r

O∞︱

001

0寺 ′

〇一7

〇 〇 日 ,︲

〇∞ 7

007

0゛ 7

0 一7

可 視 率 帯 (%)

表 4.2.7.健 常者視点

(左 )お

よび障害者視 点

(右 )に

おける高 さ別壁面可視 領域存在比率

pttβ

35-


4.2.2.3。 融合 モデ ルによる歩行 者 の対人環境 の検討

融合 モデル とは、集団 にお け る人間を取 り巻 く環境 を評価す るため に、筆者 が提 案 す るモデルで ある。融合 モデ ル においては、集団 を構成 す る各個 人 はそれぞれ自分 の 属性、状況 に応 じた特性 を持 つ 、支配空間 を持 つ。 この支配空 間 はその特性 に応 じた 範囲 と形状 を持 ってい る。個人 の保有す る支配空間 は、 一種類 に限定 されるもので は な く、 た とえば聴覚 の及 ぶ距離 の支配空間 と識別視覚 の及 ぶ距離 の支配空間、 とい っ たように複数 であるこ とが多 い。各 々の持 つ支配空間の うち、影響 を及 ぼ し合 うもの 同士 は、互 い に融合 しす る。 これをコンピュー タ・ グラフイックスで視覚化す るこ と によって、集団 にお け る人間 の空間的環境 の評価、特 に空間的環境 の境界 の検 出が可 能 となる。 図 4.2.8は 流動 シミュレーシ ョンの結果 に、融合 モ デル を適用 し、歩行者 の歩行時 に お け る空間的なわば り環境 について、視覚化 を行 った もので あ る。 ここで言 うなわ ば りとは、高橋鷹志 の提唱す るパ ーソナルスペースのような もので、人間の持 っている、 他人 との間 に状況 に応 じて 自分 の好 ましい適当な距離 を保 とう とす る習性 を表 わす も のであ る。その際、進行方向 の違 う歩行者 の支配空間 に、それぞれ赤色 と青色 をわ り あててあるので、境界 部分 が紫 色 の部分 として視覚化 されてい る。 この画像 にお い て は、紫色 の濃 い部分 ほ どそ してその部分 が広 い ほど、空間的 なわば り環境 が侵害 され てい る、つ ま り摩擦 が生 じて い る空間であることを示 して いる。

図4.2.8.融 合 モ デルによる空間的環境 の境界 の表現

page36=====



4。 3。

映像 に 含 ま れ る 情 報 へ の 適 用

最後 に、実際 の人間行動 の調査結果へ の システムの適用 を行 った。具体的 には、 商 店街 におけ る人間 の流動 を記録 した ビデオ映像 によるサ ンプルの、視覚化 による分 析 と評価 を行 った。 4.3.1.ビ

デオ映像 につい て

この適用例 に用 い られた ビデオ映像 は、 当研究室 の行 動調査 のため に昭和62年 に東 京都 中野 の アー ケ ー ド商店街 で撮影 された ものである。録画方 式 はvideO Hi8で 、ア ー ケ ー ドにおけ る人間の流動 の定点観測 を行 った ものであ る。当時、 この ビデオサ ン プ ルの解析 は、歩行速度 などの目に見 える情報 を、直接画像 か ら抽出す ることによって 行 われた。 4。

3.2.視 覚化 の手順

まず、MacintOshの 画像処 理 ソフ トで映像 に含 まれる、 人間の空間的 定位 や歩行 の ベ ク トルなどの行動情報を抽出す る。 こ うして抽 出 された情報 を視覚化可能な形式 のフア イルに記録 し、視覚化 のシステムに引 き渡 す。視覚化 のシステ ムにお い ては、 こう し て作成 されたファイルに、 モデラーで作成 された形状 デー タと、視覚化 の 目的 によっ て要求 される情報 をリンクさせ、視覚化 を実行 す る。ただ し、 この適用例 においては、 さらに実写 との合成 を行 うために、 ビデオ映像 とコンピュー タ・ グラフイックスの カ メラ情報 (画 角 な どの画像 の見 え方 を決定する要素)の 調整 を行 う必要 が ある。なお、 ビデオ映像 に関す る検討例 につい ては、 モ デラーはMacintoshの Fom― z、 視覚化 プロ セ スにはuNIXの LINKSを 採用 してい る。


4.3.3.コ

ンピュー タ・ グラフイックス とビデオ映像 の合成 による人間行動 の評価

図 4.3.2は この ビデオ映像 の あ る フレーム 図 4.3.1よ り抽出 され た人間の行動情報 を もとに、 コンピュー タ・グラフィックスを用 いてその状況 を再現 したもので あ る。 図 4.3.3は 図 4.3.2を も とに して、 さらに融合 モ デルを適用す る こ とによって、流動 にお け る人間 の空間 に対 す る環境 を視覚化 したものであ る。図 4.3.4は 、 こうして得 られ た空 間情報 を、 ビデオ映像 と合成 したものであ る。

図 4.3.1.ビ デォか ら得 た画像

図 4.3.2.ビ デオの 画像 情報 の コ ンピュー タ 。グラフ イ ックス に よる再現

page39======


図 4.3.3.流 動 モ デ ル の 適 用

図 4.3.4.ビ デオ映像 に対す る視覚化 された情報 の付加

この ような処理 を施す こと によって、周 囲の環境 との比較 を行 うよ うな、従来 に な い多角的 な行動 の評価 を行 うこ とが可能 となった。 これによ り支配領域 に様 々 な値 を 代入 した画像 で、そ こ に発生 した干渉領域 を比較 す ることによ り、歩行者 が この状 況 にお いてどのような支 配領域 に もとず いて行動 しているか、 もしくは特定 の支配領 域 を仮定 した場合それが どの程度侵害 されて いるか などを視覚的 に確認す ることがで き る。

pagyθ =〓 =〓=



5。 1。

ま とめ

以上の例 にあ げ たような検 討結果 は、ふ たたびネッ トワー クを経 由 してシミュレー シ ョンや分析 を行 うシステムヘ とフィー ドバ ックされる。実際 の計画 にお いては、 こ の応 答 を繰 り返 す ことによってよ りよい条件 が効果的 に誘導 されてい くで あろう。 以下 に各視覚化 の検討例 に対す る考察 を述 べ る。 5.1.1.避 難 シ ミュ レーシ ョンヘ の適用

避難 シミュ レーシ ョンの視 覚化 については、表やグラ フ等 の数値 に よる出力結果 で は困難 であ った避難 の概況や視覚的な状況 が、 コンピュー タ 。グラフイックスで視 覚 化 す ることによ り的確 に把握 す ることが可能 になった。 これは避 難計画 を検討 し評価 す る うえで大変有効 である。 分 か りやす い 映像 であるた め、専門知識 がない もので も、結果が把 握 しやす くな っ て いる。 このため、 シ ミュ レーション技術 者 と設計者が、日で見 ることによ り、 どこ をどう直せばよいか、客観的 に判断 で き、共通 のイメージを持 つこ とが可能 となった。 異常個所等 のチェックなど、実行結果 をシ ミュレーシ ョンのシス テ ム 自体 の欠陥 や 不適切な部分 を発見 し、 フイー ドバ ックす る際 にもその表現力 は有効 で あ る。そのた めシ ミュレーシ ョンを行 な う技術者 にとって も、開発 の補助 としての有効 な手段 で あ るこ とが確認 された。 視覚化 に採用 したハー ドウ ェアについては、 パーソナルユースの コ ンピュー タを使 用 したため、実行時間がかか り過 ぎるなど、 このシステ ムの持 つ本来 の潜在力 を発 揮 す るのに多少問題 が あ った。 しか し、最近 ではパーソナル・ コンピュー タもその計 算 速度 の高速化 が進み、 ワー クステー シ ョン との能力差 はほとん ど無 くな って きてい る ため、将来 の適用 に関 しては問題 は少 ない と考 えられ る。 ただ 、 これか ら必要 とされ るで あろ う、対話型 の イ ンター フェイスに よる リアル タイ ムの視覚化 を行 お う とす る な らば、やはグラフイックス 。ワー クステ ーシ ョン級 の計算能力 を確保 したい ところ ではある。

2=====


5。

1.2.流 動 シ ミュレー ションお よび映像 に含 まれる情報 へ の適用

これ らの適用例は、「見えない ものを見 えるようにする」 という、サイエ ンティフィッ ク・ ビジュアライゼ ーションの基本 的 な姿勢 を、 いわば忠実 に再現 した ものとなった。 流動 シ ミュレーシ ョンの適用例 の方 は、本来見 ることので きな い シ ミュレー シ ョン空 間 にお け る、不可視領 域や人間 の空間的環境 とい った、現実世界 で も見 ることので き ない要素 の視覚化 を行 った。それ とは逆 に、映像 に含 まれる情報へ の適用例 の方 では、 日に見 える現実 の映像 から、 さらに目に見 えない要素 を取 り出 して視 覚化 を行 って い る。 こ う した利用法 は、単 に美 しく面 白い だけではない、 さまざまな可能性 を秘 め た 情報伝達 メディア としての、 コンピュー タ・ グラフィックスの面 目役如 とい った とこ ろで あ ろ う。

pagyg===〓 =


5。 2。

今 後 の展 望

5.2.1.デ

ー タソース イ ンター フェースの充実

本研究 におい ては、視覚化 を行 うための情報 の整理 を行 ったわけで あ るが、現況 に お いてはそ のデータはシミュ レーションに よる計算結果や調査 または実験 によって 収 集 された ものなどに限 られて い る。今後 の展開 としては、行動研究 にお いては複雑 で 大量 な人 間の動 きを取 り扱 わなければならないため、最近行 われ始 めて いるような写 真 や ビデオ映像 か ら必 要 な情報 を抽出す る技術 を活用 して得 られたデー タを、研究 分 析 に有効 なかたちに再構成 して視覚化す る ようなデー タソース イ ンター フェースの 開 発 。導入 が必要 になって くる と考 えられる。第 三の適用例 では、 ビデオ映像 のサ ン プ ルか ら情報 を得 てい るが、本 システムが分析 の有効 な手段 で あ るためには、先 に述 べ た ような技術 の応用 によるプ ロセスの 自動化、効率化 が不可欠 となるであ ろ う。 5。 2。

2.VR(Vtttual Rcality)の 行動 の視覚化 へ の導入

人間行動 の研 究 は人間の挙 動 について取 り扱 う研究 で あ るため、そ の状況 におか れ た人間が どう感 じるか とい ったことも重要である。そのためには、再現 モ デルや予 測 モ デルで得 られた結果 を観察者 自らが仮想流動空間に入 り込み体性感覚 を利用 しつ つ その状況 を把握 す ることを可能 にす るような行動情報 の視覚化 におけ るvR的 なアプ ロ ーチ も行 ってい く必要性があ る と考 られる。 5.2.3。

学習 によるデー タベ ースの進化 と問題解決

今 回一応 の人 間行動 の視覚 化 に関す る情報体系 の整理 を行 ったわけ であ るが、 こ れ らの人間行動学 で取 り扱 われる各要素 は、行動研究 の進化発展 とともに、その体系 も 変化 してい くであ ろ う ことが容易 に想像 される。 また、視覚化 自体 を行 ってい くこ と によるノウハ ウの蓄積 によって も、 システ ムの情報体系 が変化 を迫 られる ことにな る であろう。大量 の情報 を処理 し、効率的 に視覚化 を行 って い くためには、 これ らの 変 化 に対処的 に取 り組 むのではな く、AI的 な発想 の導入 による、 システムの 自己学習 に よるデー タベースの管理が必要 になって くるであ ろ う。

イ=====


5。

2.4.シ

ス テ ムの リアル タイ ム化、対話型化

本 システムは、使用可能な計算機 の処理速度 の限界、各 プ ロセス間 の情報受け渡 し の 自動化 の不備 な どの理由に よ り、 システ ム全体 としては、対 話型 ではな く一方通行 型 の環境 となって い る。 システムが真 に行動研究 に寄与す るためには、情報 の入力 か ら画像 の生成 までの操作 の単純化 と処理 の高速化 による、 シス テ ムのイ ンタラクテ イ ビテイの向上が不可欠 である。 よ り統合的 なシス テ ムの開発 と、 グラフイックス 。ワ ー クス テーシ ョンなどの高速 な計算機 の導入 が待 たれるところで あ る。

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あ とが き この論文 は、 1992年 と1993年 の情報 。システム・利用 ・技術 シンポジウムで発 表 した、 「行動情報 の視覚化 とその活用 に関す る研究」、「行動 シミュレー ショ ンの視覚 化 に関 す る研究」 に加筆修正 し、 さらに新 しい視覚化 の適用例 も盛 り 込 んで、 まとめ た ものです。 このテ ーマ にと りかか り始 めた1992年 の春 か ら現 在 に至 る までの、研究室 の計算機環境 の変化 ははたい へ んな もので した。そ の ため、好奇心 の旺盛 な私 としては、 ついつい次 か ら次へ と新 しい アプリケー シ ヨ ンや計算 機 に手 を出 して しま う ことにな りました。 この論文 の作成 に用 い られ ているソ フ トウ ェアやハー ドウ ェアが、なかば散文的 ともい え るほどに多種多 様 で あ る のは、実 はこうい う事情 が裏 側 にあ ったこと も原因 の ひ とつ です。 し か し、 こ れからの研 究開発 の場 にお い ては、単 に規格 や機械 を統 一 してい くだ けではな く、多様 な もの、個性 的な ものの存在 を許容 しなが ら、それ らを統合 してい く環境が不可欠 となって くる と予想 され ます。 そうい う意味 で は、 さま ざまな機 械環境 に触 れ、それ らを連携 させて統合的 に研究 の対 象 に取 り組 んで 得 られた今回の経験 は、私 が これか ら取 り組 んでい きたい と考 えてい る、統合 的 な設計支援環境 の開発 に とって、大変有益 な もの とな りました。 本論 で述べ た視覚化 のシステムはい ろんな意味 でまだ まだ未完成 です。 さらに 改良そ して活用 されて質量 ともに情報 が蓄積 され、建 築計画へ とフイー ドバ ッ クされる こ とに よっては じめてその真価 を発揮 できる もの と考 えます 。そうい う意味 で 、 この研究 テーマ は、今後 の 自分 の研 究活動 の中で、統合的 な設計支 援環境 の 開発 の一貫 として継続 的 に取 り扱 って い くべ きであ る し、そ うで きれ ば幸 いで あ ると考 えています。 さて、やっと謝辞 までたど り着 きました。卒業論文 が画像 による提出だった こ ともあ り、 これだ け のボ リュー ムの ものに取 り組 んだ のは、私 にとって事実 上 初 めての 経験 で した。 しか し、 なん とかこうしてまとめる ことがで きたのは、 渡辺仁志 先 生 をは じめ、 なにか と私 に助言や協力 をして下 さった研究室 の皆 さ んのおか げだ と思 ってお ります。 と くに、卒業論文 の 指導 に始 まって今 日に至 るまで、研究全般 にわたって示唆指導 して くだ さった 渡辺俊先 生 、本研究 にお け るシ ミュ レー シ ョンの作成 と実行 を快 く引 き受けて くれた龍 野君 には特別 に 感謝 の意 を表 したい と思 い ます。みなさん、 どうもあ りが とうご ざい ました。 平成6年 2月 H日

今 日も深夜 のメデ イアラボにて

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参考文 献 リス ト [1]渡 辺仁史 :新 建築学体系 H― 環境心理― 、1982、

彰国社

[2]広 瀬道孝 :Vinual Tcchnology Labo■ atory

-2ビ ジ ュ アライ ゼ ー シ ョン ー 、 1992、

工 業 調査 会

[3]月 尾 嘉男 :Vi■ ual Tcchn010gy LaboLatory

-7:リ ア リテ イを再考 させ る仮想現 実感 ― 、 1992、 工 業 調査 会 [4]広 瀬道 孝 :バ ー チ ャル リア リテ イ応 用 戦略 、 1992、

オ ー ム社

[5]高 橋 研 究室 :形 の デ ー タ フ ァイ ル ー デザ イ ンにお け る発想 の道 具箱 一 、 1984、 彰 国社 [6]阿 久津 邦男 :歩 行 の科 学 、 1975、 不 味堂 [7]田 村 秀 行 :コ ン ピュー タ画像 処理 入 門、 1985、 総研 出版 [8]中 嶋 正 之 [9]竹村 伸 一

:C言 語 に よる画像 処理 、 199o、 昭晃 堂 :CGレ イ 。トレー シ ン グ、 1990、 オ ー ム社

[10]A.Watt、 ヽ1.Watt:Advanced Anirnation and Rendering″ rechnics、 1992、 Addison

Wesley

[11]D.Greenberg:コ ンピュー タ 。ィ メ ー ジ ー コン ピュ ー タ 。グ ラフ イ ックス の視 覚世界 ― 、 1982、 広 済 堂 [12]小 城浩 之 :xH/PC98レ ン ダ リ ン グ技 法 、 1993、 山海 堂

M.D.Pugh:集 合行 動 論 、 1973、 東 京創 元社

[13]J.B.Peny、

[14]N.J.Smelscr:集 合行動 の 理論 、 1973、 誠信 書 房 [15]B.Rudoお ky:人 間 のため の街路 、 1973、 鹿 島 出版 会 [16]M.Mcrleau― Ponty:行 動 の構 造、 1964、 み すず書房

[17]R,M.Downs、 DoStea:環 境 の 空 間的 イメ ー ジ 、 1976、 鹿 島出版 会 [18]人 間 工 学 ハ ン ドブ ック編 集委 員 会 :人 間工 学 ハ ン ドブ ック、 1966、 金 原 出版 [19]樋 口忠 彦 :景 観 の構造 、 1975、 技 報 堂 [20]S.Carr:city Signs and Lights、 1973、 Ashilcy/Myer/Snlith lnc.

[21]浅 沼 強 :流 れ の 可視化 ハ ン ドブ ック、 1977、 朝倉 書 店 [22]A.Goldberg and D.Robson:Smalltalk-80 The Language and its Enplemcntal [23]A.Goldbcrg:Smalltalk-80 The lnteract市 c PrOgramming Environment

24]John.J.Frdn:歩 行 者 の 空 間 ― 理 論 とデザ イ ンー 、 1974、 鹿 島出版 会 〔 [25]S.UpStill、

BoSullivan:The Rcndeman Companson

― A Programmcrs Guidc to Rttisuc computcr Graphics一 、 1991、

構 造 計 画研 究所

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使 用機器 お よび ソフ トウ ェ アー 覧 一 使用機器 一 。Computer Sun Sparcstation470

Apple Macintosh lrx 8M 150MB

Apple Macintosh呻 40 AV 24M 5∞ MB 'V「

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Sony Betacam ・ Color Output Mitsubishi color p五 nter s340-10

― 使用 ソフ トウェアー 。

Modeler

VIDI DimensiOns P℃ senteF PrOfessional ■nageaMcasurement Fom‐ z

LINKS L‐ shappe o Rendetr

PIXER MacRenderMan

LINKS O mage Processing

Adobe Photoshop&Premire Fusion Recorder e Data Transfer

lnterCom NFSshare

NCSAtlenet


参考論 文 [26]高 橋鷹志 :空 間 の知的尺度 に関す る研究、東京大学学位論文

[27]大 野隆造 :環 境視 の概念 と環境視情報 の記述法 環境視情報 の記述法 とそ の応用 に関す る研究 (そ の1)、 日本建築学会計画系論 文集 第451号 :pp85… 92、 1993 [28]渡 辺俊 :建 築計画 に関す る知識表現 の枠組 み、早稲 田大 学修士論 文、 1986 [29]縄 田浩 :歩 行― 空間系 にお け る内面的負荷 モ デルに関す る研究、

早稲田大学修士論文、 1987 [30]佐 野友紀 :空 間 における人 間行動 の表現 に関す る研究、 早稲田大学修士論文、 1992 [31]志 多宏彦 :移 動空間の「不U用 度」 に関す る研究、早稲 田大学修士論文、 1990 [32]鵜 沼宗利 ほか :CGア ニメーシ ョンのための人間行動 シミュレー シ ョン、 第 8回 NICOGRAPH論 文集 :ppH2‐ 123、 1992 [33]小 松喜 一郎、渡辺俊、渡辺仁 史 :行 動情報 の視覚化 とそ の活用 に関す る研究、 第十五 回 ・ システ ム・利用 ・技術 シンポジウム :3-2 pp127-132、 1993 [34]龍 野洋幸、小松喜 一郎、渡辺俊、渡辺仁 史

:

行動 シミュ レーションの視覚化 に関す る研究、 第十五回・ システム・利用 。技術 シンポジ ウム :3-7 pp125-130、 1992

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付録1

-ビ デ オー 視 覚 化 シス テ ムの 人 間行 動 に対 す る適 用 例 このビデオは本論文 における視覚化 の適用例 をビデオ映像 にまとめた ものである。 人間行動、特 にその人間の動 きを扱 うとい う本研究 の性質上、事象 を時系列的に捉 え、動画 によって表現することは不可欠 で ある。本論に掲載 してある画像 の多 くはこ れらの映像 の一部 である。 1.避 難 シミュレーションヘ の適用

ネ ッ トヮーク型群衆行動 シミュレーションの実行結果のパーソナル コンピュー タに よる視覚化 2.流 動 シミュレーションヘ の適用

実座標型人間流動 シミュレーションの実行結果 のワークステーションによる視覚化 3.映 像 に含 まれる情報へ の適用

ビデオ映像 によるサ ンプルの分析 と評価

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付録2

-デ ジ タルライプ ラリーー このライプラリーは、本研究 をとお して作成 された、静止画や動画 をデジタルメディ アに して ま とめた ものであ る。 ただし現在 の ところ、 ライプラ リー の動作環境 は Macintosh上 に限られ、その保存形式 は静止画 はPictフ ァイル、動画 はQicktimeで ある。

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