U9414 早稲田大学理工学部建築学科事業論文 指導教授 渡辺仁史 ヽ
ミュ可ジラムにゃける動的展示の写然と将来修三 ,
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1
福原 由香
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1・
U9414 早稲 田 大学理 工学 部建 築学科卒業論 文 指 導教授 渡辺仁 史
ミュ ー ジア ムにお ける動的展示 の現状 と将来像
福原 由香
Department of Architecture,School of Science and Engineering,Waseda University
しめ に `ま
加 速 度 的 な科 学 技 術 の 発 達 が もた ら した もの は 、 メ デ イ アの 進 化 だ け では な い 。芸 術 分 野 の 表 現 形 態 や 表 現 内 容 を変 化 させ るエ ネ ル ギ ー を与 え 、 そ して同 時 に 、 科 学 の 姿 を あ りの ま ま に示 す べ き理 工 学 博物 館 や 、 心 や す ら ぐ芸 術 の 殿 堂 で あ った 美 術 館 な どの展 示 の み な らず 展 示 空 間 の 変 容 を も触 発 す る原 因 と もな っ た 。 2
0世 紀 も残 りわ ず か とな つた 現 在 の この 高度 情 報 化 社 会 に お い て、 これ ら ミュ ー ジ アム の 資 料 はデ ジ タル 化 され 、 また イ ンス タ レ ー シ ョン とい う形 で、 あ る 一 定 期 間 内 に しか存 在 しな い もの へ 、 プ ロ セス を見 せ る と い う概 念 その もの へ と変 わ つ て きて い るのだ 。 す な わ ち 展 示 は 絶 えず変 化 を起 こ し、 ミュ ー ジ アム の 機 能 は 展 示 空 間 。収 蔵 空 間 な ど今 まで と同 じ くしては 語 れ な くな り、建 築 様 式 も変 わ っ てゆ く こ とが考 え ら れ る。
展 示 空 間 の変 容 を余 儀 な くす る現 代 の展示 とは 。 その 展 示 を と りま く環 境 は 今 の ま ま で よいの か 。 メデ イア化 され た ミュ ー ジ アム の あ る べ き姿 とは 。
そ こ で 、 ミュ ー ジ アム に 於 け る新 た な展 示 、 そ して それ に 応 じた展 示 空 間 に つ いて 考 察 す る姿勢 に よ り今 後 の ミュ ー ジ アム の 可 能 性 を探 る こ とを も っ て 、本 研 究 の 目的 とす る。
目次
1
ミュ ー ジ ア ム と展 示 の 定 義
1.1 1.2
ミュ ー ジ アム の 定 義 展 示 及 び展 示 空 間 の 定 義
3
1。
展 示 と い う語 の 持 つ 一 般 的 意 味
2
ミュ ー ジ アム の 建 築
3
ミュ ー ジ ア ム の 位 置
3.1 3.2 3.3 3.4
4
閉 鎖 性 と開 放 性 複 製 か ら偶 発 ヘ 教 育 の空 間 娯 楽 と参 加 性
18
動的展示の 系譜
1 新 しい展示 の 系 譜 4. 1.1 展 示 形 式 の変 容 4.1.2 資料 の変容 4。 1.3 現 代 芸 術 の 意 図 4.2 動 的展示の 定 義 4.3 動 的 展 示 と生 物 園 4。
5
26
動 的 展示 の 分 類 5。
1 5。 5。
5。
時 間 に よ る展 示 の 分 類
1.1 1.2
2 考察 5.2.1 5。 2.2 5。 2.3
分類 方法 動 的 展 示 の現 状
開放性 資 料 と鑑 賞 者 鑑 賞 者 と鑑 賞 者
目次
6
75
動的 展示 と時間
6. 1 時 間 と そ の 種 類 6.1.1 物理 的時 間 6.1.2 個人 的時間 6. 1.3 共 調 した 時 間 6.2 物 理 的 時 間 へ の 共 調
7
動 的 展 示 の 可 能 性 と今 後 の 研 究 の 方 向
7. 1 7.2
動 的展 示 の 可 能 性 今後 の研 究 の方向
おわ りに
参考 文献 一 覧
★ 本 文 中 の 文 章 及 び図 版 の 初 出 は *印 を つ け て示 し、 引 用 文 献 等 を脚 注 に記 した 。 章 ご との 連 番 とな っ て い る。
★ 本 文 中 に於 け る人 名及 び 団 体 名 の 敬 称 は略 させ て い ただいた。
85
1
ミュ ー ジ アム と展 示 の 定 義
「 ミュ ー ジ アム 」 と い う言葉 の 語 源 は 、古 代 ギ リシ ャの 神 々の うち芸 術 と科 学 を司 る「 ムー サ イ 」の 座 で あ る神 殿「 ム セ イオ ン 」に あ る と言 われ て い る。 しか し、 当 時 に於 い ては 収 集 品
(=コ
レク シ ョン )を 展 示
品 と して公 開 す る と い う概 念 は 存 在 せ ず、 近 世 に至 る ま で 、 ミュ ー ジ アム な どの用 語 は 神 々 に 捧 げ るに値 す る品 その もの を指 して いた よ うだ 。 ミュ ー ジ アム と い う語 が 収 集 品 と その 収 集 施 設 な どの総 体 を意 味 して、 現 在 の 人 々 が想 像 す る よ うな形 態 を と る よ うに な った のは
17世 紀 以 降 の こ と で あ り、 その表象 す る内 容 は
時 代 と と もに変 遷 して きた と い え る。 こ こで は 現 代 の 「 ミ ュ ー ジ アム 」 そ して その 中 で扱 わ れ る「 展 示 」の 意 味 す る もの は 何 か 、 定 義 す る。
1。
1
ミュ ー ジ アム の定 義 日本 初 の 「 博 物 館 法 」が 誕生 した の は 戦 後 の
195
1年 の こ と で あ る。 現 在 の もの に至 るまで改 正 しては い るが 、 基 本 的 に は 大 きな変 化 は 見 られ な い 。 こ こ に 法 に於 け る博 物 館 の定 義 を挙 げ る と
,
「 博 物 館 と は 、歴 史 、 芸 術 、 民 族 、産 業 、 自然 科 学 な どに 関 す る資 料 を収 集 し、 保 管 (育 成 も含 む
)
し、展 示 して教 育 的配 慮 の 下 に一 般 公 衆 の利 用 に 供 し、 その教 養 、 調査 研 究 、 レク リエ ー シ ョ ン等 に 資 す るた め に必 要 な事 業 を行 い 、 あわ せ て これ らの 資料 に関 す る調 査 研 究 をす る こと を 目的 と す る機 関 」 ☆1
と して お り、「 公 民 館 及 び図書 館 は 除 く」 こ と も併 記 して あ る。 一 般 的 に 、「 博 物 館 」 と い えば い わ ゆ る日 然 史 博 物 館 や 郷 土 博 物 館 の 類 が思 い うか ぺ ら れ るが 、
★1「
博物館法 J第 2条 {日 本 博物館 協会 )
1
実際 に は左 図
ミュ ー ジ アム と展 示 の 定 義
★2の よ うに美 術館 、動 植 物 園 、水 族 館 も
含 まれ て い る。 これ に対 し、 博 物 館 法 の基 盤 とな つた 国 際 博 物 館 会
(ICOM/1946年
議 美fr館 および 美術博物館
は
ユ ネス コに発足
)の 定 款 で
;
r博 物 館 とは 、 社 会 と その環 境 に つ い ての 物 的 証 拠 を 、 研 究 、 教 育 お よび 娯 楽 を 目的 と して、 収 集 し、 保 管 し、研 究 し、伝 達 し、展 示 す る、営 利 を 図 1.
・ 目的 と しな い 恒 久 的機 関 を い う」
と して お り、博 物 館 の 範時 は
3
,
1. 保 存 修復 の 研 究 機 関 な らび に図 書 館 。資 料 セ ン タ ー 等 に 附 属 す る恒 久 的展 示 施 設
2.
自然 、考 古 、 民 族 学 関 係 の 記 念 物 及 び保 護 地 域 、 な らび に 博物 館 的 性 質 を持 つ 史 跡 ・ 建 築 物 であ つ て収 集 。保 存 ・ 教 育 等 の活 動 を行 っ
3.
て い る もの 植 物 園 。動 物 園 ・ 水 族 日 ・ 生 態 目 な どの よ う に生 き もの を見 せ る施 設
4.
自然 保 護 地 域
5。
自然 科 学 セ ン タ ー お よび プ ラ ネ タ リウム
とい う広 範 囲 に及 ん で い る。 同会 議 で は 博物 館 の 定 義 を現 在 に至 るま で数 回 に渡 り改 訂 して きて い る。 こ こ では 改 訂 す るご とに定 義 が拡 大 され て お り、 で き る限 り多 くの教 育的 施 設 を博 物 館 とい う語 に含 め 、 博 物 館 の発 展 に結 び つ け よ うとす る姿 勢 が うか が え る。 以 上 の よ うに 、 一 口 に博 物 館 とい っ て も時 と場 合 に よ り解 釈 が 異 な り、 この こ とが 定義 を難 し くす る所 以 とな っ て い るの だ が 、本 論 文 では 、 博 物 館 の 可 能 性 を
★2図 ,3『
1。
1
博物館数 の館 種別比較国 。 (『 博物 館 白書 J/日 本博物館協 会 )
国際博物 館会 議定款 J(国 際博物 館会 議 )
ミュ ー ジ アム と展 示 の定 義
1
広 げ よ うとす る
ICOMの
精 神 に則 り、 また 博 物 館 と
い う語 が 発 す る イ メ ー ジの 誤 認 を懸 念 し、上 に 挙 げ た よ うな 目的 を持 つ 可 能 性 が あ る と考 え られ るす べ ての 機 関 を ま とめ て扱 い 、 「 ミュ ー ジ アム Jと 定 義 す る。
1.2
展 示 及 び展 示 空 間 の 定 義 ミュ ー ジ アム の 定 義 を法 に 拠 る と こ ろ を多 く した の で 、 その 機 能 を 法 に 沿 つ て考 え る と、 共 通 して必 要 と な るの は「 展 示 空 間 」で あ ろ う。 この 場 合 の 展 示 空 間 とは 実 に多 くの 意 味 を含 ん で い る。 例 えば 前 項 で述 べ た 水 族 館 や 自然 保 護 地 域 な ど で は展 示 空 間 =収 蔵 空 間 とな り、図 書 館 で は 開架 式 の 書 庫 を意 味 し、 空 間 は 複 雑 に 絡 み 合 う。 と こ ろが 、博 物 館 建 築 を対 象 と した 多 くの 図 書 や 論 文 に於 い ては 、 法 に よ る博 物 館 の 概 念 や 今 後 の 博 物 館 の ビ ジ ョンが 語 られ て い る に もか か わ らず 、 建 築 計 画 へ の 手 が か りと して示 され る機 能 図 や 空 間組 織 図 に左 図 ★4の よ うに展 示 /研 修 /収 蔵 /研 究 /管 理 と い う空 間分 類 が掲 げ られ 、常 識的 な 博物館 ・美術館 の 計画推 進 に終 始 して い る。 さ らに 、 導 線 モ デ ル ☆6を 示 す こ と
︰計□︱
に よ り、 いわ ゆ る博 物 館 の 域 を越 え る こ と を で き な く し、 い っ そ うそ の 可 能 性 の 幅 を 狭 め て しまっ て い る よ
叩
うに 見 え る。前 項 で定 義 した よ うな ミュ ー ジ ア ム の空 間 分 類 を行 うこ とは 同 時 に ミュ ー ジ アム の 細 分 化 を進
爾 ← ・・・
め る こ とに な りか ね ず 、「 人 類 と その 環 境 に つ い て 」 "・
考 えよ うとす る姿 勢 に反 して しま う。 ミュー ジ アムの 空 間 に そ れ ぞ れ 従 来 の よ うな名称 を与 えて扱 うの は望 ま し くな い 。 では 、 ミュー ジ アム と い う機 関が 成 り立 つ た め の絶 対 的必 要条件 とは 何 か と考 え る と、 それは「 資 料 」つ
★4Eコ 1 . 2 女5E]1.
3
美術館 の機能 図 。 (「 tJ腱築 設 計 ノ ー ト 博物 館 ・ 美術 館 J/彰 国 社 博物館の導線 。 (『 建築 設計資 料集成
7J /日 本 建 築 学 会 /丸 善
)
)
1
ミュ ー ジ アム と展 示 の 定 義
ま り「 展 示 品 」 (意 図 的 に収 集 した もの でな い もの も 含 む の で あ えて収 集 品 と呼 ぶ の を さけ る )と 、 そ れ を 鑑 賞 しよ う とす る「 ひ と 」の 存 在 で あ る。 つ ま り、 こ の
2者 の 関 係 に よ っ て生 み出 され る空 間 の存 在 こ そが 、
様 々 な 施 設 を含 む ミュ ー ジ アム の もつ 共 通 の ア イデ ン テ イテ イー と い え るだ ろ う。 この 関 係 を 誘 発 しよ うと す る状 態 を「 展 示 」 と定 義 し、「 展 示 」が行 わ れ る媒 介 と して の 空 間 を あ らた め て「 展示 空 間 」 と呼 ぶ 。
1.3
展 示 と い う語 の もつ 一 般 的 意 味
前項 で ミュージ アム に於 け る展示 が定 義 された が 、 「 展 示 」 と い う語は
2者 の関係性 とい う意 味 で広 く一
般 に も用 い うる。展 示 の概 念 は ミュー ジ アムの 施 設 内 での み定義 され るもの ではな い とい うこ とを確認 して お くため 、 こ こで一 般 的 な「 展示 」の意味 につ い て考 えた い 。 国語辞 典 が与 える「 展 示 」の意 味は
;
商 品 な どを一 般 の人 に見 せ るこ と。デ イス プ レー 。 ★。
てん じ 【展示 】
とな っ てお り、 さらに「
display:く
disPlay」
とは
;
もの を >展 示 す る、 陳 列 す る
;く 感 情 な どを 〉表 に 出 す 、 く能 力 を >発 揮 す る ;く 旗 な ど を 〉広 げ る ;陳 列 、展 示 、 展 示 品 :表 示 、 誇 示 ...・ 7
と多 様 な意 味 を持 って お り、 その語源 は「 通常 と じら れ てい る もの を ひら く」 とい うことに あ る ら しい。
貪 貪
第 2版 J(三 省堂 )
『三 省堂国 語辞 典 「 新 英和中 辞典
第
16版 J(研 究社
)
1
ミュ ー ジ アム と展 示 の 定 義
動 物 行 動 学 で 言 うデ ィス プ レー 行 動 とは 雄 が 雌 を引 き つ け よ うと す る求 愛 行 動 の こ と で、繁 殖 期 の 鳥 が 美 しい羽 を開 い て ア ピ ー ル す る様 ★°な どは ま さ に 英 語 の 語 源 ど お りと い え よ う。 また 、 コ ンピ ュー タの 画 像 が 映 し出 され るス ク リー ン 、 い わ ゆ る CRT★ Sを 一 般 的 に rデ ィス プ レー 」 と呼 ぶ が 、 マ ウス を操 作 してWI
NDOWを
次 々 に あけ て い くと、「 と し られ て い る も
の を ひ ら く」感 覚 が 得 られ るだ ろ う。 以 上 の よ うに「 展 示 」の 包 含 す る意 味 は 様 々 であ る が 、総 合 的 に考 え る と、 もの が た だ 置 い て あ る状態 と は 異 な り、 何 か を す る こ とに よ っ て後 に 何 らか の エ ネ ル ギ ー を波 及 す る状 態 を意 図 的 に つ くる こ と、 もの と ひ と との 関 係 す なわ ち 2者 間 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン、 と い っ た と こ ろ に コ ンセ ン サ ス が 得 られ よ う。 rdi
splay」
と い う単 語 の 示 す よ うに、 また イル カが
音 波 を放 っ て交 信 す る よ うに 、 展 示 は我 々が 考 え る と 写真
1.2
ころ の「 見 せ る 」 と い う視 覚 的 な 表 現 に は と ど ま らな い、
真
1.
真
1.
2
A9写
1
☆8写
5感 で の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンな の であ る。
『デ イスプ レー 』するオオフウチ ョウ。 コンピュー タの「 デ ィスプレー J、
CRT.
2
ミュ ー ジ アムの 建 築
ミュ ー ジ アム は 、 実 際 には どの よ うに つ くら れ て い くの だ ろ うか 。 平 塚 市 博 物 館 の学 芸 員 であ る小 島 弘 義 に よれ ば 、博 物 館 完 成 ま での プ ロ セ ス と して 、左 に示 す 5パ タ ー ン が 挙 げ られ る と い う★1。 Aは 理 念 形 成 を重 視 した タ イ ブ 、 Bは 建物 を つ くる こ とを重 視 した もの 、 Cは 資 料 を優 先 す る型 、 Dは 歴 史 的建 造 物 を 利 用 す る もの 、 E は 長 期 にわ た る館 活 動 の蓄積 を もと に す るタイ ブ 、 と 氏 は それ ぞ れ に 説 明 を加 えて い る。 こ こには 、 「 ミュ ー ジ ア ム を つ くる 」 と い うこ とば の 持 つ 二 重 の 意 味 が 表 れ て い る。 つ ま り、 ひ とつ は ミュ ー ジ アム と い う文 化 的 理 念 を形 成 しよ うとす る心 、 も うひ とつ は 建 物 を 構 築 す る と い うこ と で あ る。 しか し、 ミュ ー ジ アム 設 立 の 理 念 か ら い えば 、 Bの よ うな モ ニ ュメ ン トと して の 博 物 館 は 求 め ら れ て お らず、 Aの よ うに学芸 員 側 と 建 築 家 側 の 態 度 が 一 致 して い るのが 理 想 の姿 で あ ろ う。 理 想 の 姿 を理 解 して い な が ら、 ミュ ー ジ アム 、 と り わ け博 物 館 建 築 に於 け る博 物 館 側
(=学 芸 員 側 )。
芸
術 家 側 と建 築 家 側 での 主 張 の違 いは しば しば 議 論 の 対 象 とな る もの だ 。 左 に挙 げ る写 真 ★2は フ ラ ンク・ ロ イ ド・ ライ トの 設 写真
二_」 2.1
計 に よ るグ ッゲ ン ハ イム 美術 館 で あ るが 、以 下 に この 美 術 館 に関 す る 2つ の 記 述 を引用 して み る。 「 ・ ・ ・ 特 長 あ る外 観 と、 3度 と い う緩 や か な勾 配 を持 つ 螺 旋 型 の ギ ャ ラ リー 、大 きな吹 き抜 け が 、 現 代 の美 術 館 と して 申 し分 な いか と い うと、 そ う で もな い ら しい。実 際 な か に入 っ て み るとわ か る の だ が 、 わ ず か 3度 で あ って も、緩 や か な 勾 配 は 、 壁 面 に掛 か つ て い る作 品 の見 え方 に 微 妙 な影 響 を
写真
★1図
2.1 真 2.1 写真 2.2
カ2写
2.2
博物館完成 までのプ ロセス。
「 博物館概論 J{伊 藤寿朗 +森 田恒之 /学 苑社
グ ッグンハイム美術館西側外観 ./設 計 :フ ランク・ コ イ ド・ ライ ト/1959 スパ イラル状の展示室 .
)
2
ミ ュ ー ジ アム の 建 築
与 え る し、見 る側 に と っ ては 、常 に平 衡 感 覚 を修 正 して い な け れば な らな い た め に 、 作 品 に集 中 で き な いば か りか 、 け っ こ う肉体 的 に も疲 労 と苦 痛 が と もな うの だ 。 ・ ・ ・ 」 ★3 「 ・ ・ 。 (最 新 型 の 美 術 館 は
)建 築 物 や 主 旨 に設
立 者 の 個 性 が強 く反 映 され た もの が 多 い 。 ・・ ・ 内 容 (コ レ ク シ ョ ン )と 器 (建 築 され た コ ン セ ブ トは 、
)が 見 事 に統 一
20世 紀 美 術 史 の モ ニ ュ メ
ン トを作 り上 げた の で あ る。・ ・ ・ 劇 場 、 ミ ュ ー ジ アム・ シ ョップ 、 そ して周 囲 との 有 機 的 な関 係 を感 じさせ る外 観 は 、彼 の 天 オ を ま ざ ま ざ と示 し て い る。
.
」
☆4
この よ うに それ ぞれ 全 く異 な る意 見 が 述 べ ら れ 、 あ ら た め て博物 館 の 設 計 の 難 し さ を知 ら され る。双 方 の 言 い分 の 正 誤 が こ こで判 定 で き る もの では な いが 、 た だ ひ と つ い え るの は 、 ミュ ー ジ アム の ア イデ ン テ ィテ ィ ー が 資 料 と人 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョンに よ る教 育 に あ る以 上 、 その 関 係 を妨 害 す る よ うな 状 況 を つ くっ て は い け な い と い うこ と で あ ろ う。 しか し、 その 妨 害 を 恐 れ 、 また企 画 展 に 於 け る フ レ キ シ ビ リテ ィー を追 求 す るあ ま り、 近 年 の 多 くの 博 物 館 は 展 示 空 間 を 箱 形 の 大 空 間 とす るワ ンル ー ム ・ ミュ ー ジ ア ム ★5と もい うべ き形 を と って い る。 ワ ンル ー ム は決 して批 判 され る べ き もの では な いが 、 資 料 の入 れ 替 えの ス ピ ー ドが ます ます 加 速 しつ つ あ る現 在 、便 利 さだ け が セ ー ル ス ポ イ ン トとな る よ うな ミュ ー ジ アム 写真
が今 後 増 加 す る可 能 性 が あ るの で、 注 意 しな ければ な
2.3
らな い 。
★° 「 アメ リカの美術館 J(美 術出版 社 貪4『 _卜 .ラ ンナー 9.79J(伊 ァ
★6写 真 2.3
}
東順 二 /東 京 書籍 )
ワンルーム・ ミュージアムの例、オルセー美術飽。 19世 紀に建てられた駅舎を改造し、 19世 紀美 術 の展示館 と した美術館 で、展示品 と建築 がマ ッチ している。
2
ミュー ジ アム の 建 築
か の ポ ン ピ ドー ・ セ ン タ ー ★6で さ ぇ、「 異 質 の もの を並 べ て あ る感 じで、 ア ン サ ンブ ル と しての 効 果 が な ぃ 」 ★7と 批 判 され て い る。
博 物 館 側 と建 築 家 側 の くい 違 い の 原 因 は 、 強 い て い うな らば 、互 い の 表 現 の形 態 の 違 い に あ ろ う。学 芸 員 写真
2.4
は ミ ュ ー ジ アム の 理 念 を「 展 示 」 で表 そ うと し、建 築 家 は「 建 築 Jで 表 す 。 この くい 違 いは と り もな お さず 展 示 と建 築 がば らば らに存 在 す る現 在 の状 況 を物 語 る もの で あ る。 しか し、 ミュ ー ジ アム は資 料 を 入 れ るた め の 箱 では な い は ず だ 。
図
,6写
2.2
2.4 図 2.2
,7『
真
ポ ンピ ドー 国際芸術 文化 セ ンター外観 。 同平面 図 e/設 計 :R・ ピアノ +R。 ロジ ャース /1977
博物飽 と美術館 J(相 神 忠夫/中 公新 書 )
3
ミュ ー ジ ア ム の 位 置
ミュ ー ジ アム は 1章 で述 べ た よ うに様 々 な役 割 を担 っ て い るが 、 その 最 も ベ ー ス とな る べ き部 分 は 、常 に 「 教 育 的配 慮 」 であ り、 この配 慮 が ミュ ー ジ アムが 他 の 施 設 、例 えば デ パ ー トや ア ミュ ー ズ メ ン トパ ー ク と い ったエ ン タ ー テ イ メ ン ト的 施 設 と比 べ 、 よ り文 化 的 と唱 わ れ る理 由 とな つ て い る。 では 、 この 「 文 化 的 」で あ る こ との 意 味 は 何 なの か 、 ミュ ー ジ アム で の「 教 育 」 とは ど うい う もの な の か と い うこ と を 考 え、 ミュ ー ジ アム の 置 か れ る べ き位 置 を 明 らか に し て い きた い 。
3. 1
閉 鎖 性 と開 放 性
日本 に於 い て 、「 美 術 館 」「 博 物 館 」 「 図 書 館 」 と い う こ とば を耳 に して 、受 動 的 な 、社 会 科 見 学 的 イメ ー ジ を持 た な い と言 い され る人 は果 た して何 人 い るだ ろ うか 。 特 に いわ ゆ る博 物 館 は 、「 博 物 館 行 き 」 と い うこ とば が 示 す とお り、古 くて使 い もの に な らな い 資 料 の 倉 庫 と い うカ ビ 臭 い イメ ー ジか ら脱 しされ ず に い る。 その背 景 に は 、資 料 を珍 重 しす ぎた 結 果 の ミュ ー ジ アム の 開 鎖 性 が あ る。 本 来 、 ミュ ー ジ アム の 辞 書 に は 閉鎖 性 と い うことば が あ っ ては な らな いの だ が 、 明 治 時代 に「 輸 入 」 され た 美 術 館 は 官 製 の 色 濃 い もの で あ り、事 実 閉 鎖 的 で あ つ た 。 その 後 博 物 館 法 の制 定 な どに よ り美 術 館 ・ 博物 館 も変 革 を 余 儀 な くされ た が 、 未 だ に 学 術 的 に 立 証 さ れ た 資料 しか展 示 しな い と い う態 度 を残 して い る よ う だ 。 た と えば こ こに 、弥 生 時 代 の壺 の か け ら ら しき
1
つ の 陶 片 が 発 見 され た とす る。 す ると博 物 館 で は す ぐ に これ を館 の 管 理 下 に置 き、厳 重 に保 管 しつ つ 研 究 を 進 め 、歴 史 的 に 立 証 され た こ と を確 認 してか ら、特 別 展 示 室 の ガ ラ ス ケ ー ス 内 に納 め る ★1。 こ うして 鑑 賞 者
写真 3.1
★1写
真
3.1
ガラス ケー ス での展 示 。
3
ミュ ー ジ アム の 位 置
の 目 に触 れ る よ うに な るまでか な りの月 日を要 す るば か りで な <、 見 る人 に 1つ の 解 しか与 え られ な い状 態 を作 っ て しま っ て い る。 立 証 で きな い 場 合 や 、 展 示 す る に 値 しな い と み な され た場 合 、 も し くは最 新 の 設 備 を導 入 した展 示 室 に 於 い て も展 示 す るの が恐 ろ し く思 え るほ ど非常 に貴 重 な 資料 で あ った 場 合 は 一 般 の 目 に ふ れ る機 会 さえ失 わ れ る。 こ うして博 物 館 は 常 識 的 な もの ば か りにな っ て い った の だ 。 柴 田敏 隆 は 、博 物 館 来 館 者 の 様 態 を下 図 の よ うに示 ・ して い る。
11館 杵教 ※
弱
氏 に よれ ば 来 館 者 は
個人的
悼物 館 へ の要求 の 度 合 強 い
3.1
ぅ´ 集 団 的
図
2
:
① 博物 館 へ の要求 が な く、ふ ら りと立寄 つた 人 ②軽 い指向 を もつ 人 、知人 の薦 め で きた人 ③ 明 確 な問題 意識 を持 って教 わ りに くる人 ④ 研究 者 もし くは 高度 な専門家 と して来館 す る人 に分 類 で き、①② の来 館者が圧倒的 多数 を占め るとい う。 この 分類 は図書館 等 に於 いて も適用 し うるが 、数 少 な い③④ の来 館者 が意 図を持 っ て学芸員 と接 触 じ展 示 され て い な い 資料 を見 た り、閉架 式 の書庫 に入 った りす るのに対 し、 そ の他大勢の来 館 者 がマス コ ミ的 対 応 を強 い られ るの では、 ミュ ー ジ アムが開 かれ て い る とは い えず、開鎖 性 を秘 め てい ると いえよ う。 これ に対 し、 民主 制 の貫かれた アメ リカでは、 個人
t2Ela.
1
来 館者 の様 態 。 {柴 田敏 隆
)
10
3
ミュ ー ジ ア ニ つ 位 置
の コ レク シ ヨ ンが ミュ ー ジ アム の 始 ま りで あ り、 従 つ て非 常 に 自 由 な ミュ ー ジ ア ム づ く りが 行 わ れ て ■ ろ =
。 物 理 学 者 オ ッ ベ ン ハ イ マ ー 博 士 が 提 唱 開 館 した サ ンフ ラ ン シ ス コ の エ ク ス プ ロ ラ ト リア ム は 、 館 書 の 科 学 装 置 を 自 由 に 試 す こ と が で き る。 当然 の ご と く、 あ らゆ る セク シ ョ ンの 装 置 が 、 時 に乱 暴 な こ ど もた ち の 扱 いに よ り損 傷 す るが 、 館 内 の 充 実 した 修 理 部 で メ ン テ ナ ンス を遂 行 して くれ る 。 しか も、 そ の 展 示 つ 妻 作 。修 理 工 場 ま で も展 示 と して公 開 し て い る 。 ☆こ rァ フ ィラデ ル フ イアの プ リ ー ズ 。タ ツチ ・ ミ ニ ー シ ム は 、 その 名 の 通 り体 験 重 視 の チ ル ド レ ン ズ ミ ニ ー ジ アム で あ る。 こ こでは 様 々 な 展 示 物 を 体 を 使 っ て 試 す こ とが で き るほ か 、 コ レ ク シ ョンの 一 つ の 各 国 民 族 衣
2週 間 の 期 間 を定 め て貸 し出 され て い る :“ また 、 ニ ュ ー ヨー ク に あ る PoS・ 1は 、 も と も ヒ パ プ リ ック・ ス ク ー ル で あ つた 建 築 を そ の ま ま利 電 L
装等 が
た もの で 、収 蔵 品 を持 た な いオ ル タ ナ テ イブ ・ ミ ュ ー ジ アム であ る
(4章 参 照 )。
らの ア ー テ イス トに提 供 す る
内部 の ス タジオ を 各 コ か と い うア ー テ イス ト ‐イ
ン・ レジデ ンス 制 度 を と り、 自国 の 文 化 に 接 触 させ て それ を創 造 の 糧 に して も ら うと と も に 、 生 の 現 場 を 見 た い と い う来 館 者 の 要 求 に 応 え て い る。 ア ー テ イス ト も来 館 者 も館 内 で刺 激 を 受 け る と い う意 味 で 、 こ こ で ・・ は芸 術 家 も鑑 賞 者 も並 列 に 置 か れ て い る の だ 。 これ ら の ミュ ー ジ アム で は 、 その 主 導 権 が 来 館 者
:こ
委 ね ら れ てお り、展 示 資 料 に 対 す る考 え 方 と共 に 、 真 に開 放 的 な ミ ュ ー ジ アム で あ る と い え よ う。 写 真 3.6
3.
真 3.
8
★5写
5
写 真 3.
4
真
3.
3
写真 ★4写
2
★° 写 真 3.
エ クスプ ロラ トリアム外観 。 公開 されて い る工房 の様 子 . プ リー ズ・ タッチ・ ミュー ジアム の様 々な衣装 コ レクシ ョン 。 ハ ンデ ィキャ ップの 人 々が使 う器具 を試 す コー ナ ー 。
PoS。 1(Pro」 ect Studio l)外
観.
3
3. 2
ミュ ー ジ アム の位 置
複製 か ら偶発 ヘ 常 識 的 ミュ ー ジ アム が 開 放 的 ミュ ー ジ アム を 目標 に す る こ とを 避 け て い た か と い うと、 そ うい うわ け では な い 。 す で に 述 べ た よ うに資 料 を珍 重 す るあ ま り、 ま た資 料 に 関 す る研 究 を優先 す るあ ま り、聞鎖 的 に な ら ぎ る を得 な か っ た の だ 。 しか し展 示 と い う行 為 は け つ して実 物 や 完 成 され た もの だ け を介 して成 立 す る もの では な く、複 製 品 や 資 料 の 途 中経 過 も「 教 育 的 配 慮 」 をす る素 材 と して 十 分 な威 力 を発 揮 す る もの と思 わ れ る。 近 年 の 多 くの ミュ ー ジ アム が複 製 品 や模 型 ・ 写 真 な どを設 置 して い る と ころ を み る と、 ミュ ー ジ アム 側 も そ の 有 用 性 に気 づ い て い る ら しいが 、実 際 に は 、 いか に も申 し訳 な さ そ うに 「 複 製 」と い う注 意 書 きが つ け られ 、 実 物 の 代 用 品 と して存 在 して い るだ け で あ る。 複 製 品 の 有 用 性 を 、 もの を存 在 させ る とい う為 だ け に 使 っ て い る その 状 況 は 、 「 設 置 Jで あ っ て r展 示 」 で は な い 。 展 示 とは 資 料 と人 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョンを 誘 発 す る装 置 な の で あ るか ら、複 製 品 で あ る こ と を発 見 した 来 館 者 を して 「 な ん だ偽物 か 」 と言 わ しめ 、折 角 の 展 示 が 逆 に 深 い コ ミュ ニ ケ ー シ ョンの 妨 げ とな る よ うで は意 味 が な い 。 開放 的 ミュ ー ジ アム をめ ざ して 行 つ た こ とが裏 目 に で て し ま うと い うこの 悪 循 環 の 根 源 の 1つ に 、 来 館 者 の「 複 製 嫌 い す る態 度 」が あ る。 複 製 に つ い て 語 る とい うこ とは 、 オ リジ ナ ル の 存 在 を認 め て い る と い うこ とだ 。 確 か に「 複 製 技 術 時 代 の 芸 術 Jの な か で ヴ ァル タ ー・ ベ ンヤ ミ ンが 論 じ る よ う に 、 オ リジ ナ ル に 対 す る複 製 の 自立 性 は認 め ら れ な け れば な らな い 。 と こ ろが 、現 代 では 更 な る技 術 革 新 に よ り、
2つ の 差 は ほ とん ど見 受 け られ な いば か りか 、
複 製 =オ リジ ナ ル で あ ると い う考 え も現 れ て きた 。 た と えば 、 CDが そ うで あ る。 レ コー デ イング ・ ル ー ム で演 奏 され て い る音 が オ リジ ナ ル と い えな くは な いが 、 元 々 コ ン ピ ュ ー タで入 力 され た 電 子 音 で あ れば 、 12
3
大 量 生 産 され た CD=オ
ミュ ー ジ アム の 位 置
リジ ナ ル な の で あ る。 フ ロ ッ
ピ ー ・ デ イス クの 状 態 で流 通 して い る「 ソフ ト」 に し て も同 様 で、 デ ジ タ ル に複 製 され た の は ま さに「 ソ フ “I saw the Yeuo¬ v Horlzon,・ Toshlblro A● レ311996
11 26
ト」の 部 分 で あ っ て 、 「 ハー ド Jの 形 態 には左 右 され な い 。 それ は 、デ ジ タル フル カ ラ ー コ ピ ー で複 写 した イチ ゴ が 本 物 と同 じ くら いお い しそ うに見 えます 、 と い うこ と とは 異 な る意 味 での複 製 で あ る。 また 、 長 い 問オ リジ ナ ル と複 製 との 差 が非常 に重 要 視 され て きた美 術 界 に於 い て も、変 革 が起 きた 。左 に ・ 挙 げ る 2つ の写 真
6は
、 「 ォ ル ラ ン ドの夢 」と い う名
の 1つ の 作 品 で あ る。 これ は 、 コ ン ピ ュ ー タ通 信 を使 用 して 互 いの 作 品 に 加 筆 して い く「 連 画 」 CG作 品 で あ る。 この 作 品 では 、 加 筆 され た その段 階 の全 て がオ ・ The Houso of tlle Goldftsh.・
RIoko Nakamura 1993.11 29
リジ ナ ル で あ り、 時 間 を追 うご とに変 化 して い き、複 製 し よ うの な い もの で あ る。 また あ る段 階 の複 製 を行 った と して も、未 来 での 価 値 は全 く保 証 され な いの だ 。 今 ま で の セオ リー で は 、 媒 介 とな るメデ イアの数 が 増 え るほ ど情 報 の 質 が悪 くな っ て い く、複製 と して価 値 が 下 が つ て い くと され 、 いか にオ リジ ナル に 近 い 複 製 を生 み 出 すか とい うこ とが 議 論 の 中 心 とな っ て い た 。 しか しオ リジナ ル ー 複 製 と い う二 元 論 的 概 念 は す で に
写 真 3。 7
価値 を 失 い 、 2者 が 連 結 され るプ ロ セス 、個 体 間 の 関 係 が 注 目 され る よ うに な つた 。 2章 での 博物 館 の 定 義 では 、 「 資 料 を収 集 し J「 物 的 証 拠 を Jと 表 記 され て い るが 、 モ ノが あ っ て こ そ ミュ ー ジ アム 、 と い う時 代 では な くな つた 。 今 こ そ実 体 信 仰 を 捨 て るべ き と きな のだ。
★° 写 真 3。
7
『 オ ルラ ン ドの 夢 J(安 斎 利 洋 +中 村 理 恵子 /1994) 13
3
3
ミュ ー ジ アム の 位 置
教育 の空 間 ミュ ー ジ アム での教 育 の 全 ては 、 展 示 空 間 で行 わ れ る行 為 、 つ ま り資 料 と人 と い う 2者 間 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン に あ る と もい え る。 しか し前 項 で述 べ た よ うに 、 プ ロ セ ス が ア ー ト化 し、実 体 信 仰 が 捨 て ら れ る とい う こ とは 、物 体 と しての 資 料 の存 在 が薄 れ て い くと い う
2者 」の 確 立 が怪 し くな っ て しま う。 絶 対 的 権 威 を もった「 資 料 」は な くな り、「 人 Jだ け こと で もあ り、 「
が浮 遊 す る可 能 性 が あ る。 ・ ・・ で は 、 ミュ ー ジ アム には 何 が 残 され て い るの か 。来 館者 は何 を求 め に くる の だ ろ うか 。
中原 祐 介 は「 事 物 と記 憶 Jと い う文 章 の な か で次 の よ うに 述 べ て い る。 「 今 も し、『 表 現 形 式 』 と い う概 念 を拡 張 して 用 い るな ら、 額 縁 絵 画 は 二 重 の『 表 現 形式 』 を も つ に 至 っ た と い うこ と もで き よ う。 一 つ は カ ンヴ ァス に描 か れ た絵 画 と い う形 式 で あ り、 も うひ と つ は それが どの よ うな 場 所 で ど う い う状 態 に置 か れ て 人 々の 眼 に触 れ る よ うに され て い るか とい う ★7 展 示 の 形 式 で あ る。 」 絵 画 とい う 1つ め の 形 式 つ ま り物 体 と しての 資料 が 失 わ れ た と き に残 る もの 、 そ れ は展 示 の形 式 す な わ ち
r環 境 」 で あ ろ う。今 まで の 概 念 か らす れば 、 確固 た る資 料 な く して の 展 示 形 式 は あ り得 な い 。 しか し、非 実体 化 した ミュ ー ジ アム に 残 され た た だ 1つ の 道 は 、 「 環 境 」 の確 保 な の だ 。 何 か を思 惟 し、発 想 し、 自 己 の記 憶 との結 び つ きを ス ム ー ズ に 行 わせ る「 環 境 」、 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン しや す い シチ ュエ ー シ ョ ンで あ る 。 過 去 の ミュ ー ジ アム では この シチ ュエ ー シ ョ ン を静 寂
★7『
芸術慎楽 部
1973.11.号
J(フ
ィル ム アー ト社
)
14
3
ミュ ー ジ ア ム の 位 置
な空 間 を保 つ こ とで守 ろ うと した が 、 そ うい っ た受 身 の環 境 では な く、「 観客 をイ ンヴ ォル ヴメ ン ト (包 み ★8ょ ぅな積極 的な環 境 が 必要 とな って い 込 む )す る 」 る。来 館者 が対 象 と してい る資料 に よ り近 い 立 場 に立 て る よ うな 、言 い 換 えれば 、表面 的 な情報 の背 後 に潜 んだ情 報 の存 在 を認 識 させ るよ うな 、考 えや す い環境 をつ くる ことが 大 切 なのだ 。 その形 態は 、資 料 の存 在 した 環 境 を克 明 に再現 す る もの であ った り、 資 料 と呼 べ る よ うな もの が な い環境 と しての空 間の な か に置 か れた 自 己を再考 す ることに よ り、 その環境 の 中心 は何 か とい うことを考 え る装置 で あ つ た りと、様 々 に考 え られ よ う。 ミュ ー ジ アム での教育 とは 、「 ど うい う環 境 で その モ ノが存 在 した か 」 ☆3を 考 え させ ることで あ って 、教 え る こ とでは な い 。 ミュ ー ジ アム に於 い ては「 作 品 と 環境 は不可 分 」 ★10と い うことが い え、資料 を ガラス ケ ー ス に閉 じこめ 、来館者 に機械 的 な対話 を強 い るよ うな こ とが あ っ ては な らな い 。 そ して同時 に 、 その資 料 が置 かれ る空 間 へ の十分 な配 慮 が必要 で あ る ことが 証 明 され る もの で あ る。 ミュ ー ジ アムの空 間 は 非常 に 多大 な意味 を持 っ てお り、教育 方針 を左右 す る ことに もな るのだ 。
3.4
娯楽 と参 加 性 一 般 的 に 、教 育 と娯 楽 は 対 局 の 立 場 を と っ て い る と み ら れ て い るの だ が 、 ミュ ー ジ アム は その
2つ の 役 割
を同 時 に 果 た さな くては な らな い 。 しか し、 教 育 とい うこ とば を打 ち 出 した た め 、 日本 に 於 け る受 動 的 な教
★8「 '°
博物館の 風景 J{倉 田公 裕 /六 興出版
)
「博物館 か ら ミューズ ラ ン ドヘ J(上 田篤/学 芸出版社 )
★1°
同上 。 15
3
ミュー ジ アム の 位 置
育 イ メ ー ジ と重 な り、 ミュ ー ジ アム を 『 つ ま らな い も の 」 と考 え させ て い るの も事 実 で あ る。娯 楽 の 要 素 が 教 育 と い う壁 の 陰 に隠 され て しま っ て い る状 態 な の で あ る。 「 つ ま らな い もの 」 とい うイ メ ー ジが定 着 して い る限 り、 ミュ ー ジ アム の 存 続 は 危 うい 。 では 、 この イメ ー ジ を打 破 す る為 に 、 ミュ ー ジ アム は何 を す れば よいの だ ろ うか 。 山 崎 淳 子 の資 料 に よれ ば 、 ミュ ー ジ アム 388館 中 80館 、約 24%に す ぎな い動 物 園 ・ 水 族 館 ・ 植 物 園
の
3者
60%以
上 を 占 め た とい う。 こ ヴ の 集 客 力 の 秘 密 は 、「 理 Jの 魅 力 に あ る。 これ
が、 その利 用客数 では
らの ミ ュ ー ジ アム では 、 資 料 は常 に 変 化 し、新 鮮 な魅 力 を 持 つ て い る。 同 じ資 料 で も、剥 製 に され て しま え ば 来 館 者 に とっ ての その 魅 力 は とた ん に失 わ れ るの だ 。 また 、 その資 料 が 生 命 を も った もの で あ る こ とか ら、 当然 な が ら先 に述 べ た「 環 境 Jが 整 え られ 、資 料
(=
生 物 )と その 環 境 との 密 接 な関 わ りが 手 に取 る よ うに 理 解 で き る。 さ ら に すば ら しい こ と に 、 特 に 動 物 園 で は 、 観 客 が 投 げ た リン ゴ を ゾ ウが受 け 取 つて 食 べ る と い うよ うな 、 付 加 価 値 が つ い て い る 。 資 料 と来 館 者 は 明 らか に コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン し、双 方 向 の対 話 を楽 し ん で い る。 両者 は い わ ゆ る「 イ ンタ ラ クテ イヴ 」な 関 係 な の で あ る。 確 か に 、 「 餌 を与 え な いで くだ さ い 」 の 看 板 を見 て見 ぬ ふ りを す る人 は多 い 。水族 館 で も、 「 タ ッ チ 。ゾ ー ン 」 を つ くるな ど して よ リラ イ ヴ な 感 覚 を 出 そ うと試 み て い る し、植 物 園 で はオ ジ ギ ソ ウ に 触 れ よ うとす る人 が 後 を絶 た な い 。 そ れは 、絵 画 と人 に於 け る内 在 的 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン とは異 な る、参 加 性 の あ る環 境 な の だ 。 そ して この 参 加 性 が 、 ミュ ー ジ アム をお も しろ くす る鍵 な の で は な いか 。 資 料 を ガ ラス ケ ー ス に陳 列 す る展 示 に満 足 して は い け な い と気 づ いた ミュ ー ジ アム の な か には 、施 設 内 で の 体 験 学 習 や ワ ー ク シ ョ ップ を行 うと ころ もで て きた が 、結 果 的 に学 校 と同 じ受 身 の 教 育 を つ け させ て い る 場 合 が 多 い こ と も否 め な い 。 す で に 述 べ た よ うに、 資 料 の 環 境 を観 客 自 身 が 作 り上 げ て い くよ うな積 極 的 参 16
3
ミュ ー ジ ア ム の 位 置
加 を促 し、 自 ら その お も しろ さを開 発 させ る よ うに導 くこ とが 重 要 で あ ろ う。 ミュ ー ジ アム に 於 い ては 、 資 料 ・ 環 境 へ の 積 極 的 参 加 が 行 わ れ る こ とに よ り、 教 育 が娯 楽 に 変 わ り うるの だ 。 今 ま で と意 味 の異 な る積 極 的参 加 を呼 び か け る こ と に よ り、 ミュ ー ジ アム に面 白味 を持 たせ る こ とが で きれば 、
ICOMの
定義 す る「 慰 楽
(enjoy)」
、
博物 館 法 の い う rレ ク リエ ー シ ョン 」の 面 が 強 化 され る こ とに な る。
17
4
動的展 示の系譜
ミュ ー ジ アム を と りま く事象 に関 す る考 えが政 め ら れねば な らな いこ と、 ミュ ー ジ アム 自身 が ある局面 に 立た され て い るこ とが 自明 したが、何 よ りも変 化 した のは 、 その 変革 を促 す原 因 とな った「 展 示 J自 身 で あ る。 この 章 か らは、最 近 の ミュー ジ アム に於 け る展示 の 何 が、 また どの よ うに変 わ つてきたの か 、考察 を進 め る。
4.1
新 しい展 示 の 系 譜
中 原 祐 介 の指 摘 す る よ うに
★1、 「 示 展 」と い う語 の
な か に は 、「 資 料 」 と 『 展 示 形 式 」が 含 まれ て い る。 こ こ で 、 ミュ ー ジ ア ム の DNAに 刺 激 を与 えた 物 質 を 内包 して い る可 能 性 の あ る この 両者 そ れ ぞ れ に つ い て 考 え る。 確 認 して お くが 、 こ こ で い う「 展 示 形 式 」と は 、 表 面 的 な もの を指 す 。
4.1.1
展 示形 式の変 容
資 料 とな るもの の範 囲 の広 さに応 じ、 ミュー ジ アム を舞 台 に繰 り広 げ られ る展 示の形態 も多様性 を見せ る はずなの だが 、残念 な ことに 、資料 の多様性 に展 示 形 式 の多 様性 が 追随 して い な いのが 現状 であ る。 しか し、 近年 にな っ てよ うや く、ただ資料 を陳列 す るこ とに終 わ らな い 、新 しい展 示 形式が現 れ て きた よ うだ。 江戸 東京 博物 館 では 、資料 につ い ての詳細 を記 す た め、文字 で説明す る従来 の パ ネル方式 に加 え、写 真 の よ うな映 像 に よる解 説 を行 ってい る。映 像 には音 を伴
・
13. 31'照 . 18
4
動 的展示 の系譜
う もの も多 いが 、 これ ら の装 置 か ら発 せ ら れ る音 が 反 響 し、 時 に よ り大 空 間 で あ る展 示 室 を 一 体 化 す る と い う不 思 議 な 効 果 を発 揮 す る こ と もあ る。 また 、 展 示 室 以 外 に『 映 像 ラ イ プ ラ リー 」 、 「 映 像 ホ ー ル 」が 設 け ら れ 、江 戸 東 京 に 関 す る映 像 作 品 が 楽 しめ る よ うに な っ て お り、 さ ら に「 収 蔵 庫 か らの メ ッ セ ー ジ 」 とす る
真
4.1
プ ー ス を設 け 、 展 示 で きな い 貴 重 な 収 蔵 資 料 の 情 報 を ★2 提 供 して い る の は 興 味 深 い 。
T―
BRAIN CLUB(東
京国際美術館内
)は
絵 画 な どの 実 体 と して の 収 蔵 品 を持 た な いが 、 500 点 以 上 の 名 画 を画 像 デ ー タ ベ ー ス 化 し、「 ハ イ ビ ジ ョ ン・ ギ ャ ラ リー 」 で 自 由選 択 的 に 鑑 賞 させ て い る。 こ こ では 他 に 40名 収 容 の 「 ハ イ ビ ジ ョ ン 。シ ア タ ー J や 、 CG・ ビ デ オ ・ 音 楽編 集 の た め の「 写真 4.2
ィング ・ ラ ボ 」な ど も設 置
AVエ デ イテ
され て い る。 ★3
文 京 ふ る さ と歴 史 館 で は 、 「 土 器 バ ズ ル 」な る展 示 形 式 が見 ら れ る。 バ ラ バ ラ に な つ て い る土 器 (も ち ろ ん 複 製 で あ る )片 を組 み 合 わ せ 、 時 間 内 に元 の 形 状 を 復 活 させ る と い うもの で あ る。 また同 館 に は 、歴 史 的 資 料 と と もに 、 コ ン ピ ュー タ
(MAC)が
置かれ てい
る。 これ は 「 文 京 文 化 財 検 索 」「 文 京 歴 史 探 検 室 」 写真 4.3
「 文 京文 学 館 」 と い う 3つ の シ ス テ ム を 内 蔵 した もの で 、展 示 で き な い 資 料 を見 た り、 ク イ ズ に応 答 しな が ら学 ぶ こ とが で きた りす るほ か 、文 化 財 の 管 理 ・ 研 究 用 に も使 え る画 期 的 シ ス テ ム で あ る。 どち ら も来 館 者
(特 に子 供
)の 好 奇心 を そ そ る展 示 形 式 で あ るが 、 郷
土 資 料 館 な ら では の 落 ち つ い た 雰 囲 気 を 壊 さな い よ う に その表 面 的 な 色 や 材 質 に 気 を 使 っ て い る点 に好 感 が
☆2写
真 4.
1
写真 4. 2 力3写 4. 3 真 写真 4. 4
映 像 に よ る解説 。 (江 戸東 京博物 館 ) 『映 像 ライプ ラ リー J。
(同 上
)
rハ イビジ ョン・ ギ ャラ リー J。 「 ハ イ ビジ ョン・ シアター J。
(T― BRAIN CLUB/東
京 国際 美 術館
)
(同 上 )
19
4
・ 持 て る。
動的展示 の系 譜
4
以 上 の よ うな 、 特 に モ ニ タ ー を使 った ものや「 映 像 ラ イ プ ラ リー 」 と い っ た映 像 に よる 展 示 形 式 は こ こ数
写真 4.
年 でか な り数 を伸 ば して き て い る。
また 、 以 前 は 静 寂 の 空 間 と思 われ て い た ミ ュー ジ ア ム に、 意 図 的 に BGMを 使 用 す ると こ ろ も現 れ て きた 。 川 崎 市 市 民 ミュ ー ジ アム で は 、展 示 室 入 日 か ら第 一 写真 4.6
の 常 設 展 示 に至 る ま での プ ロ ム ナ ー ドに 、 BGMを 流 して い る。 幻 想 的 な音 と適 度 な照明 に よ る演 出 で 、展 ・ 示 空 間 へ の 期 待 を高 め て い る。
5
西 洋 ア ン テ ィー ク美 術 館 の 日本展 示 室 では 、 古来 の 日本 建 築 を再 現 す る と と もに 琴 曲 を流 し、 小 さい展 示 室 な が ら思 索 に 浸 れ る空 間 を 作 ろ うと して い る。 ・
6
この よ うに 、 先 に挙 げ た 江 戸 東京 博 物 館 の 例 も含 め 、 「 音 」 も展 示 の環 境 を作 る展 示 形式 の 1つ と い え よ う。 写真
4.7
写真 4
4。
1.2
資料 の 変 容 次 に 、 展 示 の 中心 とな る べ き資料 その もの に つ い て 考 察 す る。
2章 で定 義 され た よ うに ミュ ー ジ アム は その 形 態 を 問 わ な い もの で あ るか ら、 当然 その資 料 とな る もの も、 自然 史 博 物 館 では「 蝶 の標 本 」であ っ た り、理 工 学 博 物 館 で は「 電 気 」 で あ った り、美術 館 で は「 ピ カ ソの 絵 」 で あ っ た り、水 族 館 では 「 イ ソギ ン チ ャ ク 」 で あ
真 4.
写 真 4.
5 6
彙4写
『 土器 バ ズ ル J。
MACに
(文 京 ふ るさと歴史 館
)
よ るシステ ム 。 CRTを テ ー マ カラー
材 で囲ん で いる。結 子 も同系 色 。 (同 上 彙6写
真
4.
真 4.
7 8
☆5写
(lF:赤 茶 色 /2F:著
草色 )を 者色 した金属
)
音 のプ ロム ナ ー ド。 (川 崎 市市民 ミュー ジアム ) 日本屈示 室 の様子 c(西 洋 ア ンテ ィー ク美術 館 )
20
4
動的展示 の系譜
っ た りと実 に様 々で、範囲が狭 め ら る もの ではな い 。 しか し、 これ ら資料 の なか で、近 年 に な って現 れ 、 「 展 示 」の概念 を拡 張 させ る存 在 とな った と思われ る もの は 少 な い。新 しい資料 とは何 か 。 それは と りもな お さず、単な る置 いて あ るだ けの資料 ではな くな つた 、 「 資 料 」か ら「 展示 形 式 」を含 め た「 展示 」へ の脱 皮 を終 えた「 資料 」の こ とであ る。 いや 、既 に それ らを 「 資 料 」と呼ぶ ことはか なわ ず、 3。
3で 述 べた よ う
な 「 環 境 Jで あ るとい えよ う。
3
現 代芸 術 の 意 図
特 に現 代 芸 術 に於 い ては上 の よ うな傾 向 が 顕 著 に 見 ら れ 、 「 環 境 」 その もの が展 示 で あ るとす る もの が 多 い 。 今 、「 資 料 」 と 『 展 示 形 式 」の
2つ に分 割 して話
を 進 め た が 、 これ らの 芸 術 に対 して その両 者 に 分 割 す る こ と は困 難 で あ るば か りでな く、 そ うす る こ と 自体 無意 味 なのだ。 こ の よ うな芸 術 の 存 在 に よ り展 示 を再 考 す る向 きが 現 れ た の で あ るか ら、 現 代 芸 術 に共 通 す る ア イデ ン テ ィテ ィー を探 求 す るの が得 策 で あ ろ う。 こ こ で あ らた め て現 代芸 術 へ の流 れ を ざ っ と振 り返 つて み る。 芸 術 の 流 れ は 一 口 に い え る もの では な い が 、 こ こ では 空 間 的 影 響 を与 え る可 能 性 の あ る もの を 拾 い上 げ る こ と に す る。
そ も そ も美 術 作 品 は 、物 語 を伝 え るため の 絵 画 、写 真 と同 意 義 の 絵 画 、美 的感 覚 を追 求 す る鏡 で あ つた 。 しか し、 そ れ ら を追 求 す るこ と 、 また既 成 の様 式 に 疑 間 を懐 いた 芸 術 家 た ち は 、 その 思 想 を表現 す る手 だ て と し て の 芸術 、 コ ンセ プ チ ュ アル ・ ア ー ト★7を 生 み 出
★7写
真
4.9
コ ンセブ チ ュ アル・ ア ー トの例 、 「 ひ とつ の 、 そ して三 つ の摘 子 J(ジ ョセフ・ コスー ス /
1965) Oι
4
動的展示 の系 譜
した 。 その中 で 、 絵 画 や 彫 刻 と いった 制 度 的 ジ ャ ンル を嫌 った 姿 勢 が 、 その 制 度 か ら逃 れ空 間 へ と展 開 して ★8と ぃ ぅ形 で の 「 場 」の 芸 術 ゆ くイ ンス タ レー シ ョン を登 場 させ る こ とにな った 。 この イ ンス タ レー シ ョ ン は 、 一 つ の 表 現 形 式 を指 向 す る もの では な い 。空 間 そ の もの を作 品 と して扱 う「 空 間 展 示 Jに よ り、作 品 と 鑑 賞 者 の 古 典 的 関 係 を崩 そ うとす る よ うな 、脱 様 式 と い う立 場 の 芸 術 で あ る。 その性 質 上 恒 久 的 でな い 作 品
写真 4.10
が 殆 ど で 、 あ る 一 定 期 間 内 に しか存 在 し得 な い この 芸 術 は 、収 集 品 を持 た な いオ ル タナテ ィヴ 。ミュ ー ジ ア ム ★9の 発 達 を促 す原 因 と もな つ た 。 そ して 、 作 品 の 時 間 /空 間 的 変 化 の な か に 作 者 の 意 図 が 隠 され て い る と い う、 3章 で挙 げた よ うな プ ロ セ ス ・ ア ー ト★1° と もい うべ き芸術 が 出 現 し、 さ らに そ の プ ロ セ ス に 、観 客 を参 加 させ よ うとす る試 み もで て きた 。 いわ ゆ る「 イ ンタ ラ クテ イヴ・ ア ー ト」で あ る。 カ ー ル ・ シム ズ は MITの メデ イア ラボ 出 身 の CG アー テ イス トと して活 躍 中 で あ るが 、 その 彼 が発 表 し た作 品 ★11の 展 示 の 様 子 と、 作 品 に 対 す る伊 藤 俊治 の コ メ ン トを こ こ に挙 げ る。 「・ ・・ 鑑 賞 者 は 数 学 的 な 方程式 に関 す る知 識 を 全 く持 た な い ま ま、 16個 の モ ニ タ ー 上 に現 れ る イメ ー ジ を純 粋 に 美 学 的 、 感 覚 的 、心 理 的 に選 択 す る こ とが で き る。 一 方 、 コ ンピ ュー タの 側 は 、 イメ ー ジ に関 す る判断 力 を持 た な い ま ま、 その セ
写真
4.12
★° 写 真 4.10 ★° 写 真 4。 11
インス タ レー シ ョンの例 、「 野営地 へ 」 (松井 智恵/1985) オ ルタナテ ィヴ・ ミュー ジアムの例 、 P3art and environment。
芸術 と環境分 野 におけ る実
験的な 《ラボ》 とな る ことを目指 す 、と唱 っている。先 に述 べ た Po
S.1も オ ル タナ テ ィヴ
・ ミュー ジ アムであ る。写 真はデ ヴ ィッ ド・ シルヴ ィアン&ロ バー ト・ フ リップに よるイ ンス タ レー シ ョン『 Redelnp 彙ユ° 3.2参
照.
★11写
12
真 4.
「 Cenetic
t i onJが
lmagesJ{カ
行われ て い る様 子 。
ール・ シムズ/1991)
22
4
動的展 示 の系譜
レク シ ョンを純 粋 に 数学 的 に処 理 して しま う。 こ う した 関 係 に お い て鑑 賞 者 は
16の 個 体 で形 成 さ
れ る群 の 中 か ら、 ひ とつ の 個 体 を選 択 す る と い う “淘 汰 "の 役 割 を 知 らず に果 た す こ とにな り、 そ う した 意 味 で鑑 賞 者 の 価 値 基 準 は 最 重要 な 環 境 要 12 因 と して作 用 して ゆ くと い え るだ ろ う。 J★
同 様 な 例 を も うひ と つ 挙 げ る。 コピ ー マ シ ン を ツ ー ル と して制 作 活 動 を続 け て い る 松 本 英 樹 は 、川 崎 市 市 民 ミュ ー ジ アム で「
Earth
Flag Project」
と い うイ ンス タ レー シ ョ ☆ 13こ ン を展 開 した 。 れは 、 共 存 を テ ー マ に 地 球 の 旗
のデ ザ イ ン を FAXで 募 集 し、 電 送 され た 全 て の FA
Xを 張
り合 わ せ て展 示 す る と い う、 実 験 ワ ー ク シ ョッ
プ で あ る。 空 間 、 人 種 、言 語 の枠 を超 えた全 て の 人 が 作 者 と して作 品 に 参 加 可能 で あ り、 募 集 期 間 中 に行 わ れ る展 示 では 日増 しに 旗 が 大 き くな るの が見 て取 れ る。 こ こ で は 、 全 て の 人 の イメ ー ジ を つ な げ て い くこ とに よ り、 ア ー テ イス ト松 本 英 樹 に よ る意 図 的操 作 の 機 会 は 失 わ れ る。教 育 を 目的 と した もの の 1つ の 姿 で あ つ た ワ ー ク シ ョップ と い う形 式 さ え、 芸 術 表 現 の 仲 間 入 りを果 た したの だ 。
これ らの 作 品 で は 鑑 賞 者 の 参 加 を 受 け入 れ るば か り か 、 作 品 が 観 客 に よ っ て作 られ る、 つ ま り鑑 賞 者 が 作 品 を形 成 す る「 環 境 」 とな るの で あ る。 こ うい っ た イ ンタ ラ ク テ イヴ・ ア ー トでは 、 その テ ク ノ ロ ジ ー 性 に では な く、 作 品 が 変 容 して い く過 程 ・ 観 客 の 参 加 性 に 作 者 の 意 図 が あ る。 この イ ン タ ラ ク テ イヴ性 は 、 か つ て ア ラ ン・ レネ監 督 が映 画「 去 年 マ リエ ン パ ー トで 」 に 於 い て示 した よ うな 潜 在 的 な イ ン タ ラ ク テ イヴ性 で は な く、 参 加 に よ る リア リス テ ィッ ク な もの な の で あ
★12『 ■13図
InterCommunication No 7 J(NTT出 版 4。 1 ワークシ ョップヘの参加を呼びかけるハガキ.(松 本英樹/1994) )
23
4
動的展示 の系譜
る。 そ して リアル な 参 加 に よ るその 変 化 の偶 発 性 が 、 制 度 的 な ア ー トを よ り開 放 的 に した と い え る。 山 口 勝 弘 が 指 摘 す るよ うに、「 イ ン タ ラ クテ イヴ と い うの は 、 全 て プ ロ セス の 中 で成 立 す る行 為 」 ★14な の であ る。
動的 展示 の定義
こ うして新 た な r資 料 」を挙 げ る と、新 しい展示 傾 向 の原 因 は結果 的 には科学 技術 の進歩 に あ るよ うに見 えるが 、 その ル ー ツは け っ してテ ク ノ ロ ジ ー に よる も の では な く、「 プ ロセス 」や『 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン 」 とい う概 念 にあ るよ うだ。 そ して、新 た な展 示形式 で あ る「 映 像 」『 音 」、 クイズや ゲ ーム 形 式 も見逃 すわ けには いか な い 。 これ らに共通 す る要 因は 何 だ ろ うか 。意識の変容 、 あ るシ ー ク エ ンスか らあ るシ ー クエ ンス ヘ の位相・ ・ ・・ ・ 。そ れは 展示 が流 れ 動 くこと 、 つ ま り「 時間 」 では な いだ ろ うか。プ ロセス 、 つ ま り何 かが進行 す る ため 、双 方向 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンが 行 われ るため に は 、時 間 が必要 であ る。映 像や音 には 、必 ず時間軸 が 持 たせ られ る。「 土器 パ ズル Jに は、「
60秒 以内 」
とい う時 間 的制限 が付 け ら れ ていた 。 これ らの展示 は 全 て、 4次 元的 に存 在 す る。 ミュー ジ アムの展示 を変 化 させ た 要 因の ひ とつ は、時間軸 の 介 入 だ つた の だ。 ここで 、 これ らの よ うに時間軸 を もつ 展示 を、「 動 的展 示 」 と定義 す る。
4.3
動 的 展 示 と生 物 園 ミュ ー ジ アム が変 容 しつ つ あ る要 因 と して「 動 的 展
r1r I 1 nt e rCommun i cat i on t'lo?J tNTTSffi) 24
4
動 的 展 示 の系 譜
示 」が あ るわ けだが、す べ ての ミュ ー ジ アム に於 いて
r動 的 」が真 に 新 しい もの で あ るとは言 い きれ な い 。 「 動 的 」と い う名 の示 す とお り、動物 園・ 水族 館・ 植 物 園等 の生物 園 では、「 動 的 Jな 資料 が基 本 で あ り、 また来館者 は そ れ を望 ん でい る。 しか し、生物 園が ミュ ー ジ アムの 範時 にいれ られ る こ とを知 るひ とは 、少 な いの ではな いか 。我 々は 、 ミ ュー ジ アム のな か で、 それ らの生物 園 を特別 視 しては い な いだ ろ うか 。 つ ま り、「 動 的 Jな ことはやは り、 ミュ ー ジ アム に と っ て重大 な要 で あ るの だ 。生物 園 も、当た り前 と考 えられ て きた生 物 以外の「 動 的展示 」が出現 す る可能 性 が残 され てい る以上 、 ミュ ー ジ アムの な か で除外視 す るわ けには いか な い。
25
5
動的展 示の分類
ミュー ジ アム に於 け る展示 、 さらには ミュー ジ アム を も変 化 させ よ うとす る「 動的展示 」の存在 が明 らか にな つた わ けであ るが 、 ここでは その分類 を試 み る と と もに展 示 の効果 を考察 す る。
1
時 間 に よ る展 示 の 分 類 下図
5.1・ 1は 、 展 示 資料 の 見 せ 方 の例 で あ る。 上
段 の「 一 面 」 と下 の 「 多 面 」で は明 らか に資 料 の 見 え る範 囲 が 異 な り、鑑 賞 者 の受 信 す る情 報 が 異 な っ て く る様 子 が うかが え る。 しか し、 この 図 には「 時 間 」が 存 在 しな い 。
客
角
滉
凛
角
1/2
角
ヽ
ヽ
“ 閻 翻 u 冊 押
示 物 の
床 置台
晨示 台
度
ヽ
展
フを増
一面
の
ノ イ罐
平
見 え る 面
翡 靱 一 / 夢 珀 辞 /
■ 水
ン ,― ケ ー ス
弥
,面
展示台
図 5。
立 て ケー ス
つ り詢
1
資料 が 実 体 で あ る場合は図 の よ うな分類が 有効 で あ るが 、空 間展示 や 動 的展示 も同時に扱 う場合 、他 の エ レメ ン トも必要 とな る。 視覚 方 向的 エ レメ ン トは上 図 にゆ ず ると して 、 こ こ では動 的展示 の共 通要 因 であ る「 時 間 Jを 考慮 しな く てはな らな い。 そ こで 、鑑 賞 す るとい う行為 を時 間軸 に 沿 つ た「 情報 の 流 れ Jと み な し、展 示 を パ タ ー ン化 す る。
貪1図
5.1
展示資料の基 本 的 な見 せ方 .
「建 築設 計資料 集成
4J(日 本建 築学会 /丸 善
)
26
5
5。
1.1
動 的展示 の分類
分 類 方法 展 示 空 間 に於 け る「 情 報 の流 れ 」 を発 生 させ るエ レ
1-2 1-1
エー 1
囚日○
I-1
メ ン トは 、
I I
鑑賞者
Ⅲ
その 他 (対 象 資 料 以 外 の資 料 等
対象資料
)
3つ の 範時 に 分 け る こ と が で き るの で、 基 本 的 に こ の 3種 を記 号 化 し、 展 示 を表 現 す る。 の
1-1、 映 像 の I-2、 鑑 賞 者 を
対 象 資 料 の うち 静 的 な資 料 を左 図 の よ うに 連 続 的 に 変 化 して い る もの を
正 -1、 その 他 の 情 報 が 流 入 しな い よ うな 空 間 構 成 の 皿 -2
場 合 を Ⅲ -1、 流 入 す る場 合 を Ⅲ -2の よ うに記 号 化 す る と 、 これ らの 組 み合 わ せ に よ り展 示 の パ タ ー ン を 表 す こ とが で き る。 例 えば 、 ① 一 般 的絵 画 ② 映 像 に よ る解 説
★2
③ ハ イ ビ ジ ョ ン ・ シ ア タ ー '3
①
の 展 示 は 、 そ れ ぞ れ 左 の よ うに表 され る。矢 印 は 情 報 の 流 れ を示 し、 Ⅲの 記 号 は 情 報 が 流 れ て い る場 面 、 シ ー ク エ ンス を囲 っ て い る こ とに な る。
②
さ ら に、非連 続 的 な変 化 をす る よ うな動的 展 示 や鑑 賞者 間 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンの こ と も考慮 し、下 記の 通 りに詳細規 則 を取 り決 め る。
③
I
対象 資 料 ・ 静 的 展 示 資 料 は I―
aの よ うに表 す 。
・ 動 的 展 示 資 料 は I―
a'の
よ うに表 す 。
★2江
戸 東京博物館 の展示 を示 した。 4.1.1参 照 。 ■3T_BRAIN CLUBの 展示 を示 した。同上 。
27
5
動的 展 示 の分 類
5分 以 上 の サ イ ク ル で変 化 が 終 了 す る もの 、 または 連 続 的 に変 化 す る もの は I― I―
a
I― a'
よ うに表 す 。
囚
何 ら か の 作 用 で変 化 す る と 、 I―
IA引
I― b
□
bの よ う
に な る。 アル フ ア ベ ッ トは ABC・ ・ ・ の
日
I― a"
a"の
順 に現 れ る。
I.
鑑賞者 来 館 者 は Ⅱ ― aの よ うに表 す 。 学 芸 員 な ど展 示 資 料 の補 助 的 役割 を持 つ 人
l― a I― b
〇
は I―
bの よ うに表 す 。
空 間 展 示 の鑑 賞 の 場 合 は 、 Ⅱ ― Cの よ うに
◎
表 され る。 資 料 ― 鑑 賞 者 間 の 情 報 の 流 れ は 水平 方 向 の
I― c
三
〇
!
矢 印 で示 す 。 鑑 賞 者 間 の情 報 の 流 れ は 垂 直 方 向 の矢 印 で 示す。
エー
その 他 (対 象 資 料 以 外 の 資 料 等 ) 。その 他 の 情 報 が 流 入 しな い 場 合 は Ⅲ ― aの
a
よ うに 表 す 。 。その 他 の 情 報 が 流 入 す る場 合 は ■ ― bの よ
■―b
うに表 す 。
lY-a
+
IV-b
t.. ' +
※ 情 報 の流 れ は Ⅳ ― aの よ うな 矢 印 で示 した 。 ※資 料 を通 した 鑑 賞 者 間 の情 報 の 流 れ は Ⅳ ― bの よ うな点線 矢 印 で示 した 。 ※ シ ー クエ ンス は棒 線 で連 結 され 、 通常 の場 合 そ
Ⅳ― c
レ
の 間 隔 は I―
a分 (1ポ イ ン トとす る )と
る。
※ シ ー クエ ンス が繰 り返 され 連続 して い く場 合 は Ⅳ ― cの よ うな矢 印 で表 す 。 ※ 資 料 と鑑 賞 者 の 相 互 の 働 きか け に よ るシ ー ク エ ンス は 水 平 方 向 へ 加 え る。 ※ 鑑 賞 者 と鑑 賞 者 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンに よ る シ ー ク エ ンス は 垂 直 方 向 へ 加 え る。 ※ 資 料 へ の情 報 の流 れ と資 料 か らの 情 報 の流 れ が 28
5
レ
V― a
動的展示 の分類
同 時 に起 こ るシ ー ク エ ンスは 、 V― aの よ うに [情 報 の 流 れ が 分離 して起 こ る シ ー ク エ ン ス分
+2ポ
イ ン ト]の 間 隔 を あ け て水 平 方 向 に加 え
る。 ※鑑 賞 者 間 の現 実 の コ ミュ ニ ケ ー シ ヨ ン と資 料 を ー こ 通 した コ ミュ ニ ケ ー シ ヨ ンが 同 時 に起 るシ ク ェ ン ス は 、 V― bの よ うに [資 料 を通 した情
+2 報 の 流 れ が 分 離 して起 こ るシ ー ク エ ンス分 ポ イ ン ト]の 間 隔 を あ け て垂 直 方 向 に加 え る。
せによ 以 上 の 記 号 を用 いた シ ー ク エ ンス の 組 み合 わ の様 り、静 的 ・ 動 的 な どを問 わ ず に展 示 の 時 間 的 変 化
V― b
子 が 示 され るで あ ろ う。 また 、 この パ タ ー ン化 は ミュ ー ジ アム 内 の 展 示 に 限 しう らず 、 2章 で述 べ た よ うな 一 般 的 展 示 全 般 に適 応 る。
5。
1. 2
動 的展 示 の 現 状 こ こで 、 実 際 の 展 示 パ タ ー ンを表 示 し、動 的 展 示 の 現 状 を 示 す 。 以下 に い くつ か 注 記 を して お く。 ※ サ ンブ ル数 は
166と
した 。
※現 在 の ミュ ー ジ アム で の 動 的展 示 だ け では サ ン ム ブ ル 数 が 少 な い と思 わ れ るの で 、 ミ ュー ジ ア 般 的 内 の 展 示 と して置換 で き る もの と して 、 展 示 も任 意 に取 り上 げ た 。 ★4の よ うに、 同 施 設 。場 所 に於 ※左 に挙 げ る展 示 い て同 様 の 展 示 方法 で あ る と み な され る展 示 が 複 数 見 られ る場 合 は ひ とつ の 展 示 サ ンブ ル と し て扱 つ た 。 写
=5。
彙4写
※鑑 賞 者 間 の情 報 の流 れ に つ い て は 、 展 示 の積 極
1
真 5.1
「 A/V
CAFEJ
. (T-BRAIN CLUB} 29
5
動 的 展 示 の分 類
的 な働 きか け に よ リ コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン が 成 立 して い る と み な され る場 合 の み表 示 した 。 ※ 鑑 賞 者 に つ い て は、 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン提 携 者 の展 示 ・ 鑑 賞 者 を問 わ ず 、必 要 最 低 限 の 人 数 を 示 した 。 ※分 類 の 結 果 、 サ ンブ ル 数 の多 い パ タ ー ン順 に示 した 。 ※ 左 図 の よ うな レイ ア ウ トで表 示 した 。 。 166サ ンブ ル 中 の サ ンブ ル数 ・ パ タ ー ン で示 され る展 示 の実 際 Fll ・実 際例 の写 真等 ・ パ タ ー ン図 。そ の パ タ ー ンの 展 示 に 対 す る コ メ ン ト
30
5
動 的 展 示 の分 類
NO. 1 サ ンブ ル 数
:53
例 :モ ニ タ ー 映 像展 示 (江 戸 東 京 博 物 館
)
開 けた 展 示 空 間 で の 一 般 的映 像 展 示 形 式 。 モ ニ タ ー を配 置 す る装 置 の 材 質 や 形状 に は 気 づ か いが 見 られ る。
TVモ
ニ タ ー 、 ス ク リー ン 、 CRTな ど を開 けた 空
間 に設 置 し、多 くの 視 線 を 集 め よ うとす る ご く一 般 的 な展 示 形 式 で 、 サ ンブ ル 数 も圧 倒 的 な 数 値 で あ る。 T
Vな どは 設 置 も簡 単 で扱 い や す く大 空 間 を必 要 と しな い 為 、 店 頭 に置 い て そ の 映 像 と音 で客 寄 せ をす る場 合 も多 い 。 ミ ュ ー ジ アム で も、例 の よ うに従 来 の 展 示 資 料 を い か し、 そ の 補 助 を す る形 式 が多 く見 ら れ る。 し か し、 この 機 械 的 雰 囲 気 で 、 特 に歴 史 系 博 物 館 な ど落 ち つ い た 雰 囲 気 の 空 間 を 壊 さな い よ う留 意 しな ければ な らな い 。 また 、音 を伴 う映 像 が 殆 どな の で 、空 間 的 配 慮 が 必 要 で あ る。 31
5
動 的 展 示 の分 類
NO.2 サ ンブ ル 数
例
:11
:ア ム ラ ッ ク ス シ ア タ ー (ア ム ラ ッ ク ス
トヨ タ
)
小 シ ア タ ー 。 シ ア タ ー に は 別 の 展 示 室 か ら階 段 で 入 る形 だ が 、 シ ア タ ー 空 間 は 他 展 示 空 間 か ら完 全 に 分 離 して い る。
閉 鎖 的 空 間 で鑑 賞 者 を モ ニ タ ー や ス ク リー ンに 注 目 させ る、 シ ア タ ー 型 で あ る 。 一 般 的 な映 画 館 もこの パ タ ー ン で表 せ よ う。 開鎖 的 空 間 と して は平 均 的 に この パ タ ー ンが 最 も広 い 展 示 空 間 とな っ て い る。 放映 時 間 が長 く、鑑 賞 者 の た ま りの た め固 有 の 空 間 ・ 座 席 や 映 像 に 伴 う防音 設 備 な どが 必 要 で 、他 展 示 の 流 れ と関 連 の な い空 間 配 置 に な るの が 殆 どで あ る。 そ の た め か 、 この 空 間 内 の デ イテ ー ル は 、 連 続 的 空 間 の 展 示室 と同 様 には 統 一 され ず 、 この 空 間 だ け雰 囲 気 が 異 な る場 合 が多 い 。 ス ク リー ン主 体 な の で、 照 明 には か な りの配 慮 が 必 要 とな る。鑑 賞 者 は 展 示 上映 が終 了 す る まで空 間 内 に い る こ と を強 要 され る と い つ た こ とが 多 く、 空 間内 で の鑑 賞 者 の 自由度 は 極 端 に低 い 。 32
5
動的展示 の分類
NO.3 サ ンブ ル数
例 :「
:10
A/Vラ
イ プ ラ リー 」
(TEPIA)
プ ー ス に 一 人 ず つ 入 り、 その 中 で映 像 を 選 択 し 自 由 に 鑑 賞 す る 。「 予 約 室 」 も完 備 。 ブ ー ス は ラ イ プ ラ リー 室 に ま と め て配 置 さ れ 、 鑑 賞 者 は ラ イ プ ラ リー 室 入 国 の 受 付 に 記 名 し て 入 室 す る 。
展 示 室 で公 開 され て い る もの だ け が資 料 では な い 、 と い う立 場 で実 体 至 上 主 義 に対 抗 す るよ うに現 れ た映 像 ラ イ プ ラ リー 形 式 。操 作 が 簡 単 で 使 いや す い と い う ポ イ ン トは押 さ え ら れ てい るの だ が 、映 像 =モ ニ タ ー
=照 明 反 射 =暗 い 個 室 とい う図 式 に 乗 っ て し ま いが ち で あ る。 また ラ イ プ ラ リー と い う名 の 示 す と お り、静 か で あ る こ と が 第 一 条 件 の よ うに考 え られ て お り、 そ の結 果 閉鎖 的 な 空 間 に落 ち つ い て し ま うと、 一 般 的 に ラ イプ ラ リー の 利 用 者 は ソ フ トの 内 容 に高 い 関 心 の あ る者 だ け にな っ て い くよ うだ 。「 実 体 Jに 負 け るの は 、 そ れ が「 虚 体 」 で あ る と い う理 由 だ け でな く、 展 示 空 間 に も問 題 が あ るか らな の だ 。 パ タ ー ン NO.2に
比
べ 、鑑 賞 者 の 自 由 も空 間 的 自由 も利 くの で あ るか ら、 ラ イ プ ラ リー と して特 別 扱 いせ ず 、 他展 示 との 連 続 性 に於 い て空 間 づ <り を考 えた 方 が よ いの では な いの だ ろ うか 。 ミュ ー ジ アム に 限 らず 、 最 近 の 主 要 公 共 施 設 では こ うい っ た ラ イプ ラ リー を設 け て い る と こ ろが多 くみ られ るが 、 PLANの
上 でメ イ ンの 導 線 か ら遠 く
離 れ た り端 に よせ た りな ど、安 易 に扱 わ な い よ う注 意 を必 要 とす る パ タ ー ンで あ る。 33
5
動 的 展示 の 分 類
NO.4 サ ンプ ル 数
例
:8
:映 像 展 示 「 暮 ら しの舞 台 」 (文 京 ふ る さと歴 史 館 ボ タ ン を押 す と 、 2台 の モ ニ タ ー か ら映 像 が 流 れ 出 す シ ステ ム 。 手前 には
)
3人 ほ ど座 れ る椅 子 が
置 か れ て い る。
ボ タ ン を押 して モ ニ ター を作動 させ る装置 で、 よ く 見 か け ら れ るパ タ ー ンで あ る。他 に も鑑 賞 者 が 近 づ く と作 動 す るな ど、 パ リエ ー シ ョ ンは 多 いが 、 これ らの 装 置 は 鑑 賞 者 と資 料 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョンの た め と い うよ り も、 不 必 要 に 音 を出 して他 展 示 を鑑 賞 す る来 館 者 の 邪 魔 を しな いた めや ミュ ー ジ アム 側 の省 エ ネル ギ ー 的 姿 勢 の現 れ とい っ て よ いだ ろ う。映 像 ソ フ トの 長 さ に よ っ ては NO.2の
空 間 に近 づ い て い く。 34
5
動 的 展 示 の分 類
NO.5 サ ンプ ル 数
:8
例 :「 と み ん ず J(都 立 日比 谷 図 書 館
)
東 京 に 関 す る様 々 な案 内 ・ 情 報 が 簡 単 な 操 作 で 見 ら れ る検 索 型 情 報 提 供 シ ス テ ム .タ ッチ パ ネル で操 作 し、 情 報 の プ リン ト ア ウ トも可 能 な装 置 で あ る。 都 庁 、 新 宿 駅 、武 道 館 他 様 々 な 場 所 に 設 置 され て い る。
静 止 画 情 報 を 次 々 と引 き 出 す 一 般 的 デ ー タ ベ ー ス シ ス テ ム を 、鑑 賞 者 が 自由 に 使 用 す る パ タ ー ン .ミ ュー ジ アム で所 蔵 す る資 料 を見 せ るほ か 、 上 の よ うに公 共 団 体 が シ ス テ ム を 作 る例 も多 い 。 また 最 近 で は ハ イ ビ ジ ョン・ ミ ュー ジ アム と称 してデ ジ タ ル 化 され た名 画 を様 々 な施 設 で鑑 賞 させ て い る。 ソ フ トの 内 容 が多 岐 に 渡 っ て お り、 多 くの人 の 眼 に触 れ る よ う開 放 的 な空 間 に展 示 され るの は 喜 ぶ べ き こ とだ が 、 一 つ の 展 示 と して完 全 に独 立 し て しまい 、「 流 れ 」が な くな つて い る場 合 が 多 い 。
35
5
動 的展示 の分 類
NO.6 サ ンプ ル 数
:7
例 :「 十 字 架 の聖 ヨ ハ ネ の た め の部 屋 」 (ビ ル ・ ヴ ィ オ ラ /「 人 間 の 条 件 」展 /ス パ イ ラ ル ギ ャラ リー ) 雪 山の 乱 れ た映 像 が 大 きな ス ク リー ンに 映 し出 され 、 寒 々 しい風 音 と ノ イズ が 暗 い 展 示 空 間 に響 い て い る 。 中 央 の 小 部 屋 の様 子 は窓 か ら の ぞ き見 る こ とが で き る。 ヨ ハ ネの た め の さ さや か な生 活 道 具 が 置 か れ た 小 部 屋 か ら詩 を朗 読 す る声 が 聞 こ え るが 、 ノイ ズ に 消 され て聞 き難 い 。 風 音 は か な りの ポ リュ ー ム で 、 隣 の展 示 室 に ま で影響 を与 え て い る。
何 らか の 視 覚 的 展 示 が あ り、 さ らに BGMを か け て 展示 空 間 を 一 体 化 させ 環 境 展 示 とす る タ イプ で あ る。 上 の 例 の よ うな 一 時 的 な イ ンス タ レー シ ョンや 企 画 展 覧 会 な ど で は意 図 的 に BGMを 利 用 す る例 も増 えた が 、 常 設 展 では まだ まだ 少 な い パ タ ー ンで あ り、 この よ う な 他 感 覚 的 展 示 は 今 後 の 発 展 を期 待 す る。た だ し、 間 題 とな るの はや は り隣 接 す る展 示 室 へ の 影 響 で あ り、 上 の 例 もそ うで あ るが 、 関 連 の な い 隣 接 展 示 の 鑑 賞 を 妨 害 して は な らな い 。 しか し、 展 示 を流 れ と して鑑 賞 させ る場 合 、 隣 接 展 示 との 関係 が どの よ うな もの な の か を把 握 してお けば 、 空 間 的 に効 果 の あ る展 示 室 群 が 組 め るだ ろ う。 36
5
動 的 展 示 の分 類
NO。 7 サ ンプ ル数
:7
例 :ミ ュ ー ジ ッ クテ ス タ ー (タ ワ ー レコ ー ズ ) ヘ ッ ドホ ン を装 着 しボ タ ン を選 択 す る と、店 で 売 られ て い る CDを た め じ聞 きで き る装 置 で 、大 手 レ コー ド店 で は か な リー 般 化 して き て い る。 こ
1装 置 に つ き 10枚 の CDが テ ス トで き るが 、 装 置 に よ っ て CDが 1枚 に 限 られ る場 合 も
の 例 では
あ る。装 置 に は CDジ ャ ケ ッ トが 同 時 に展 示 され て い る。
パ タ ー ン NO.5の
情 報 が 動 的 な情 報 で あ る場 合 の
パ タ ー ン で あ り、 NO.5と
それ ほ ど扱 いが 変 わ って
い な い と思 わ れ る。 音 楽 主 体 の 時 は この パ タ ー ンを 取 り、 必 然 的 に ヘ ッ ドホ ン着 用 と な る こ とが 多 い 。 その 場 合 聴 覚 的 な 他 情 報 が 得 ら れ な いの で 、他 感 覚 での情 報 を操 作 す る と、 違 う形 での 空 間認 識 が 得 ら れ て効 果 的 で あ ろ う。
37
5
動 的展 示 の 分 類
NO。 8 サ ンブ ル数
:5
例 :『 映 像 ラ イプ ラ リー 」 (江 戸 東 京 博 物 館
)
江 戸 東 京 に関 す る情報 を 、 ク イ ズ 形 式 で楽 しむ ボ ック ス タ イ プ の ラ イプ ラ リー 型 。設 備は 整 っ て い るが 、 28ボ ッ ク ス全 てが 展示 室 か ら隔離 され 、 地 下 に ま とめ られ て い る。
パ タ ー ン NO.3の
資料 の 上映 時 間 が短 くな つ た も
の で 、 形 と しては 同 じボ ック ス タ イ プ の映 像 ラ イ プ ラ リー 形 式 とな る。 NO.3と
くら べ 回 転 数 が早 く、 導
線 が 交 錯 し複 雑 な は ず なの だ が 、 NO.3と
同 じ扱 い
を受 け て い る こ とが 多 い 。上 の例 では 、同 じフ ロ ア に
NO.3と
この NO。
8が 混 在 し、実 際 には その 違 い
は ソ フ トだ け とな っ て い る。
38
5
動的 展示 の分 類
NO.9 サ ンプ ル数
:4
rll:AVエ デ イテ イン グ・ ラボ ラ ト リー 術館
(東 京 国 際 美
)
ビ デオ 編 集 。デ ジ タ ル ミュ ー ジ ック制 作 の た め の ス タジオ で、 狭 い空 間 に様 々 な 機 材 が 置 か れ て い る。 この よ うな 部 屋 も含 め て ミュ ー ジ アム とす る同 館 の 性 質 上 、 この ス タ ジオ も展 示 の 一 つ と し た 。「 ス タ ジ オ 」 の た め 、 ギ ャラ リー とは ガ ラ ス で完 全 に仕 切 られ 、 他 の 情 報 か らは 遮 断 され て い る。
開鎖 空 間 で資料 を使 い 、 どん どん資料 を変 化 させ て い くパ タ ー ン で 、一 般 的 には コンピュー タ ゲ ーム が挙 げ られ る。 この よ うな パ タ ー ン で問題 とな るのは 、鑑 賞者 の関心 が 思 った 以 上 に資料 に向 け られ る場合 で あ る。鑑 賞者 の 熱中度 と、他 展示 との 関連 に よる情報 操 作 を秤 に掛 け て よ く見極 め ることが必要 であ る。世 界 に入 りす ぎ て しまい 、空 間認識 す らな くして しま うよ うな構 成 は で きれば 避 けた い もの で あ る。 それは ソ フ トだ け にか か ってい る問題 ではな い 。 39
5
動的展示 の分類
NO。 10 サ ンブ ル数
:4
rll:自 転 車 シ ミュ レー シ ョン (電 力館 )
床 に固定 され た 自転車 に乗 り、 日前 の モ ニ タ ー に映 し出 され た街 中 を走行 し目的 地に到着 す るシ ミュ レー シ ョン。 自転車 を早 くこげば映 像 の速度 もそれ に つ れ早 くな る。
│「
¬
パ タ ー ン NO。
9が 開 放 的 な空 間 にな った パ タ ー ン
で 、共 に 最 近 の 科 学 技 術 の発 達 に よ り、理 工 学 系 博物 館 や 現 代 美 術 に は こ うい った タ イプ が増 加 して い る。 鑑 賞 者 の 介 入 に よ リ リアル タ イム に 変 化 して い く資 料 か ら得 ら れ る新 しい情 報 と、外 空 間 か らの 情 報 で 、新 旧 の 情 報 が 交 錯 す る展 示 空 間 は鑑 賞 者 の興 味 を そ そ る が 、 展 示 に よ り鑑 賞 者 の 滞 在 時 間 が 非 常 に 異 な るの で、 特 に この よ うな 開 放 的 展 示 空 間 の 場 合 、展 示 内 容 に あ わせ た 空 間 設 計 が 必 要 とな ろ う。 40
5
動 的 展 示 の分 類
NO。 11 サ ンプ ル 数
:4
例 :ウ ェ イ テ イン グ モ ニ タ ー
(Bunkamura)
エ レ ベ ー タ ー ホ ー ル に 設 置 され た モ ニ タ ー に は ニ 絶 え ず 映 像 が 流 さ れ 、「 待 ち 」空 間 で の コ ミュ ケ ー シ ョ ン の 手 助 け を し て い る。
1日 量
:
展 示 形 式 と して は NO。
1と
同 じで あ るが 、 その空
間 的配 置 または ス ク リー ン な どの 大 き さの た め鑑 賞 者 パ ー 間 の コ ミュ ニ ケ ー シ ヨ ン を可 能 に して い る タ ンで あ る。上 の 例 で解 る よ うに 、展 示 の「 場 所 」が もの を 言 うタ イ プ で もあ り、 他 に は 新 宿東 ロ アル タビ ル の 大 ス ク リー ン な どが挙 げ ら れ る。 しか し調 査 した 中 には 、 積 み上 げ た モ ニ タ ー の 置 か れ て い る床 に こ ど もた ち を 直 接 座 ら せ るこ と に よ り、映 像 の 作 りあ げた『 時 間 」 ニ の流 れ る同 一 空 間 に い る こ と を認 識 さ せ 、 コ ミ ュ ケ ー シ ョ ン を 可能 に して い る、 とい う例 も見 ら れ た (こ ど もの 城 )。 この よ うな 「 場 所 」を生 み 出 す た め には 、 そ の 場 所 が 既 に持 つ て い る 「 力 」を 利 用 す るだ け で な く、鑑 賞 者 の 5感 を刺 激 す る よ うな 空 間 に よ る積 極 的 訴 えが 可 能 で あ る。 41
5
動 的展 示 の 分 類
NO。 12 サ ンブ ル数
:4
例 :デ ー タ ベ ー ス (リ ビ ングデ ザ イ ン セ ン ター OZ0
NE内
リピ ン グ情 報 バ ンク )
住 ま いに 関 す るデ ー タが得 られ る画 像 デ ー タ ベ ー ス シス テ ム 。 鑑 賞 者 は手 元 の リモ コ ンで画 面 操 作 す る。 吹抜 脇 に斜 に設 置 され て い る。
く
目
パ タ ー ン NO。
7に
も う一 人 の鑑 賞 者 が 介 入 し、資
料 の 変 化 の合 間 に コ ミ ュニケ ー シ ョ ン を と る パ タ ー ン で あ る。関 心 の あ る情 報 を得 、 そ の 場 で さ ら に新 た な 情 報 を得 る こ とが で き る便 利 さで、 こ うい った 装 置 は 様 々 な施 設 で受 け入 れ られ て い るの だ が 、鑑 賞 した映 像 。音 な どに関 す る会 議 を交 わ す コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を起 こ させ る よ うな 例 は まだ 多 くは な い 。 42
5
動 的 展 示 の分 類
NO. 13 サ ンブ ル数
:3
例 :車 窓 か らの 立 体映 像 (平 野 治 朗 /東 京 国 際 美 術 館
)
た だ 横 に流 れ て い るだ け の新 幹 線 の車 窓 か らの 映 像 が 、 作 者 に よ る特 殊 メ ガ ネを か け る (資 料 に 対 す る働 きか け とみ な す )と 、
3D映 像 に変 化 す
る。
I │ 「
目J竪≡12」
資料 を通常 の 状態 で鑑 賞 す るの では な く、例 の よ う に何 らか の インタ ー フ ェ イス をとお して鑑 賞 す る場 合 の パ タ ー ン であ る。 この イ ンター フ ェイスの作用 で、 対象 資料 だ けでな く、空 間 認 識 も、動 作す る前 と異 な って くる場 合が あ り興 味深 い 。資料 に よ り鑑 賞者 自身 が変 化 して しま うよ うな 、 か な りの 積極性 を持 った 娯 楽 的 か つ 教 育 的 展示 と い え よ う。 NO.4の よ うな義 置 で上映 時間 が 長 い場 合 もこの パ タ ー ンと な るが、上 の 例 の よ うな鑑 賞者 自身 が変 化す る よ うな タ イプ と比 べ 、展示 効果 は 低 い と思 わ れ る。 43
5
NO。
動的展示 の分類
14
サ ンブ ル 数
:3
例 :「 時 の 連 鎖 」 (宮 島 達 男 /原 美 術 館 そ れ ぞ れ「
)
IN」 「 OUT」 とだ け書 か れ た ド
アが少 しの 距 離 を 置 い て並 ん で い る。 「
INJの
ドア を開 け て 中 に 入 った 観 客 は 暗 や み に包 まれ る こ と に な るが 、 赤 い 光 が ち らち ら とす る様 子 が 見 られ る。 デ ジ タ ル 数 字 は ハ イス ピ ー ドな変 化 を し な が ら も、 その 光 で半 径
2m弱 の 半 円形 空 間 の 壁
の 内 側 の 鎖 とな り、観 客 を 出 口 へ と導 く。
: A―
│
動 的 展 示 が主 とな った空 間展示 の パ ター ンで あ る。 例は視 覚 的 に訴 え る動的展 示 であ るが 、他 に音 その も の を展 示 と し、 あ る空間内 での み成 立 させ てい る よ う な空 間 展示 もこの パ ター ンと な る。 どち ら もパ タ ー ン NO.6に 比 べ 空 間 の持 つ 情報量 は 少 な くな るが 、必 然的 に「 動的 J資 料 に関心 が向 け られ るの で、 ス トレ ー トな 空 間 的表 現 と して展 示効果 は 高 い と思 わ れ る。 この よ うな パ タ ー ンでは 、完 全な閉 鎖 的空 間 が 求 め ら れ よ う。 44
5
動 的 展示 の 分 類
NO. 15 サ ンプ ル 数
:3
例 :「 サ ー マ ル ・ イメ ー ジ ヤ ー J(rは か るの可 能 性 」 展 /TEPIA) 「 物 体 が その 温 度 に応 して放 射 して い る赤 外 線 を検 出 し、 熱 画 像 と して表 示 す る 」 シス テ ム 。 大
きな ス ク リー ンはエ ン トラ ンスか ら も日に付 くが 、 検 出装 置 は ス ク リー ン そば に仕掛 け られ てお り、 来館者 は ス ク リー ンに近 づ いて初 め て、 自分 の熱 を と ら えて い る装 置の存 在 に気 づ くこ とにな る。
歴
亜
距
≡
謝
蔓
∃
レ
も と も と作 動 して い る資 料 に 対 し鑑 賞 者 の 興 味 を 引 か せ 、 さ ら に鑑 賞 者 の 介 入 に よ り資 料 の 変 化 が リアル タ イ ム に起 こ つ て い くパ タ ー ン 。 パ タ ー ン NO.10 に近 い が 、 鑑 賞 者 が存 在 しな くて も時 間軸 を持 つ て い る、 と い う点 で異 な る。 も と もと作 動 して い るの で鑑 賞 者 の 目 に 映 りや す い と い う利 点 と、 既 に上映 され て い るの で鑑 賞 者 の 介 入 の 余 地 は な い と半1断 さ れ その シ ス テ ム に気 づ か れ な い こ と もあ る、 と い う欠 点 を同 時 に内 在 して い る。後 者 の状 態 に陥 らな い た め の 空 間 的 配 慮 が 必 要 で あ る。 45
5
動 的展 示 の 分 類
NO.16 サ ン ブ ル数
:3
例 :ク イズ コー ナ ー (プ ラザ
エ クウス )
タ ッチ セ ン サ ー の 画 面 に よ る、競 馬 に関 す る静 止 画 ク イ ズ 。機 器 は 一 般 的 だ が 、 周 囲 の環 境 は 競 馬 ゆ か りの イ ギ リス の町 並 み を再 現 す る もの で 、 ク イ ズの 内容 と リンク して い る。
︱︱ ︱ ︱ 一 機 械 で静 止画 情 報 を引 き出 して い くパ タ ー ン で、 パ タ ー ン NO.12と
近 いが 、 ス ム ー ズ な人 の 流 れ を必
1音 要 とす る導 線 上 に 機 器 を置 くな ど、 を伴 わ な いせ い
か さ らに雑 な扱 い を受 け て い るのが 目 に 付 いた 。静 止 画 で あ っ て もパ タ ー ン NO。
12な
ど と シス テ ム は 変
わ らず 、 また鑑 賞 者 間 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン の た め の資 料 前 の 空 間 、例 えば 座席 な ど も必 要 と して い る この パ タ ー ン では 、与 え られた 資 料 機 器 が あ るか ら と い つて その 展 示 空 間 づ く りをお ろ そか に して はな らな い 。
46
5
NO。
動 的展示 の 分 類
17
サ ンブ ル数
:3
例 :「 未 来 工 房 」 (ア ム ラ ック ス
トコ タ )
グ ラ フ イック ・ コ ンピ ュー タ に よ る カ ー ・ デ ザ イ ン体 験 。 広 い空 間 を ガ ラ ス で仕 切 っ た中 に設 置 され て い る。利 用 者 の 見 る画 像 が 別 の モ ニ タ ー に も映 し出 され るが 、 背 中 側 の ガ ラ ス 面 に陽 て られ てい る た め 他 の 来 館 者 か らは 見 づ ら い 。
□:
ヽ
く NO.12が
閉 鎖 的 にな つた パ タ ー ン 。鑑 賞 者 が 資
料 を変 化 させ 、楽 しん で い く過 程 に そ れ な りの 時 間 が か か る と判 断 され た 場 合 、 つ ま り資 料 の 内容 に 鑑 賞 者 を途 中 で飽 き させ な い と い う自信 が あ る場 合 、 この よ うに閉 鎖 的 な空 間 を取 る こ とが 多 い よ うだ 。 上 の 例 は 内 容 が 珍 し い と い う こ と もあ り、 半 予 約 制 を取 るほ ど の 人 気 ぶ りで あ るが 、 閉 鎖 空 間 と した結 果 展 示 に 興 味 が いか な くな る こ と もあ るの で、 注 意 しな けれ ば な ら な い 。 上 の 例 は 、 他 情 報 の 入 らな い空 間 構 成 と な っ て は い るが 、 ガ ラス 壁 の た め『 暗 さ 」は な く、 他 の 鑑 賞 者 の 興 味 を 引 く こ とが で きて い る。 47
5
NO。
動 的 展 示 の分 類
18
サ ン ブ ル数
:3
例 :パ ソ コ ン ゲ ー ム (こ ど もの 城
)
一 般 的 ゲ ー ム 型 で は あ るが 、展 示 は アナ ロ グ な 遊 び 道 具 満 載 の 開 放 的 な プ レイ ホ ー ルの 中 で、 C
RTや 椅 子 な ど装置 の雰 囲気 を周 りの環 境 に合わ せ て い る。
く 開放 的 な空 間 が 、 モ ニ タ ー に映 し出 され る映 像展 開 に没 頭 して しま いがち な 一 般 的 ゲーム 型 を、 コ ミュ ニ ケ ー シ ョンの あ る パ タ ー ンに変 えた例 であ る。対戦型 でな い ゲ ーム は 、鑑賞者 個 人 の世界 に 入 り込 みがち で あ るが 、周 囲 の環 境や展 示 のデ イテ ー ル に よ り、「 流 れ 」の展示 に 変 換 可能 であ る ことが 現 れ てい る。 この よ うな パ タ ー ンの 場 合、音 に つ いて は特 に問題 と しな くて もよい。逆 に開放 的 な展 示空間 に音 を響 かせ て環 境 的展 示 に まで高 め よ うとす る よ うな積極 的姿勢 が求 め られ るの では な いだ ろ うか 。 48
5
動 的 展 示 の分 類
NO.19 サ ンプ ル数
例
:3
:ブ レイ ング コー ナ ー
(NTT
コ ミュ ニ ケ ー シ ヨ
ン・ ワ ー ル ド ) 一 般 的 対 戦 型 ゲ ー ム 。相 手 とな る鑑 賞 者 の 様 子 は 分 か らな いが 、 コ ン ピュ ー タ を通 して相 手 の 動 きが 伝 わ つ て くる。 コ ンピ ュ ー タ を相 手 に す る場 合 と異 な り、 動 きが 読 み づ ら い の が特 長 。
写 真 で解 る よ うに、 シ ス テ ム 内 での コ ミュ ニ ケ ー シ ョンは あ るが 、 現 実 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンは 得 られ な ぃ タ イプ で あ る。 しか し、 この よ うに現 実 の コ ミュ ニ ヶ ― シ ョ ン を遮 断 して し ま うと、 動 きが コ ン ピ ュー タ と違 うか ら と い つ て対 戦 型 の 意 味 が あ るの だ ろ うか 。 相 手 の現 実 世 界 で の様 子 が 全 く見 えな い こ と で「 ヴ ア ー チ ェ アル 」的 世 界 を 高 め よ うと して い る と思 わ れ る が 、 展 示 空 間 が 中 途 半 端 に な りや す い パ タ ー ン で あ り、 注 意 した い と こ ろ で あ る。 49
5
動 的展 示 の 分 類
NO.20 サ ンブ ル 数
:2
例 :カ ー シ ミュ レー シ ョン (科 学 技 術 館
)
自動 車 運 転 席 に 似 せ た 装 置 に乗 り込 み、 72イ ン チ X3面 マ ル チ ス ク リー ンに 映 し出 され る実 写 に あ わ せ て ハ ン ドル を切 る。「 自動 車 」展示 室 に
あ るが 照 明の 関係上 他 の展 示 とは隔離 され る配置 とな つ て い る。
パ タ ー ン NO.4が
開 鎖 空 間 に な つ た パ タ ー ンで あ
る。 一 般 的 に これ らの パ タ ー ンでは 間 放 的空 間 が 多 く 見 ら れ るの だ が 、資 料 装 置 が大 が か りに な る場 合 や 、 照 明 の 関 係 等 で 、 例 の よ うに開 鎖 型 を と る場 合 もあ る よ うだ 。 しか し、先 に 述 べ た よ うに 、 この パ タ ー ン で は鑑 賞 者 が資 料 に介 入 して い る とは 言 い きれず 、閉 鎖 的 空 間 が 鑑 賞 者 を飽 き させ る可 能 性 が 高 い 。上 の例 で も、 シ ュ ミ レー シ ョン とは い え映 像 に あ わせ て鑑 賞 者 が ハ ン ドル を切 るだ け で 、映 像 その 他 に変 化 が 見 られ るわ け で は な い 。
50
5
動 的 展 示 の分 類
NO.21 サ ンプ ル 数
:2
例 :『 収 蔵 庫 か らの メ ッ セ ー ジ J(江 戸 東 京 博 物 館
)
タ ッチ バ ネ ル に よ る操 作 で、 収 蔵 資 料 の ハ イ ビ ジ ョ ン 画 像 や 情 報 を引 き出 す こ とが で き る、
2人
掛 けの ボ ック ス タ イブ映 像 ラ イプ ラ リー .展 示 室 とは 階 が 異 な る、 図書 室 前 ロ ピー に設 置 され て い る。
静 止 画 情 報 を鑑 賞 者 が 自 由 に 引 き出せ る一 般 的 ラ イ プ ラ リー タ イ プ で 、 パ タ ー ン NO.5の
空 間 を 囲 った
パ タ ー ン で あ る 。 ボ ックス タ イプ の ラ イプ ラ リー は多 く見 ら れ るが 、 静 止 画 対 象 の もの は 開 放 的 空 間 とな る こ とが 多 く、 こ の パ タ ー ン の サ ン ブ ル 数 は 2と 少 な く な っ て い る。 同 じラ イプ ラ リー タ イ プ で も、静 止 画 と 動画 で開 鎖 /開 放 そ れ ぞ れ の サ ンブ ル 数 に 差 が 現 れ る の は 、 資 料 自身 の 持 つ 時 間 が 考 慮 され て い るた め とみ て よ い だ ろ う。 この 例 で は 、 貴 重 な 資 料 を一 般 公 開 し て い る点 は 見 習 うべ き で あ る が 、 ボ ッ クス が 展 示 室 と 関 係 の な い 場 所 に設 置 され て い るの は 問 題 で あ る。 51
5
動的展示 の分 類
NO.22 サ ンブ ル 数
:2
例 :レ ー ザ ー ア ク テ ィプ (バ イオ ニ ア AVフ ロ ン ト ) 受 付 で希 望 の LDを 選 ぶ タ イプ の 一 般 的 AVラ イ プ ラ リー だ が 、「 シ ョー ル ー ム Jの た め 大 通 り に面 し開 放 的 。 鑑 賞 者 は 通 りに向 か って ガ ラ ス 越 しに 座 る形 とな る。 高性 能 イヤ ホ ー ン 、 ポ デ ィソ ニ ック 等 の身 体 感 覚 に 訴 え る設 備 が整 って い る。
]
開 放 型 の 映 像 ラ イ プ ラ リー 形 式 。 パ タ ー ン NO.3 で述 べ た よ うに 、 長 め の映 像 等 を選 択 して鑑 賞 す る映 像 ラ イ プ ラ リー 形 式 は 一 般 的 にボ ッ ク ス タ イ プ の 開 鎖 空 間 と な る こ と が 多 く、 この パ タ ー ン の よ うに 開 放 的 な もの は 珍 しい 。 上 の例 は シ ョー ル ー ム と い うこ と も あ り、 資 料 で楽 しむ 鑑 賞 者 の 姿 もが 道 を行 く人 に と っ ガ ては 「 農 祟 」 と な っ て い るわ け だ が 、資料 が 呼 ん だ 鑑 賞 者 の 姿 が また 鑑 賞 者 を呼 ぶ 、 と い う考 えは ミュ ー ジ アム に於 い て も積 極 的 に取 り入 れ られ る べ き で は な い だ ろ うか 。 52
5
動 的 展 示 の分 類
NO。 23 サ ンブ ル数
:2
例 :パ ソ コ ン ゲ ー ム (こ ど もの 城 一 般 的 ゲ ー ム 型 。 パ ソ コ ンは
)
16台 並 置 され て
い る が 、 「 コ ン ピ ュ ー タ ブ レイ ル ー ム 」 と い う部 屋 に 全 て配 置 され 他 展 示 と の 関 連 は な い 。
く 一 般 的 ゲ ー ム タ イ プ の パ タ ー ン NO。
18が 閉 鎖 型
にな つ た パ タ ー ンで あ る。 資 料 との コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ンと 同 行 者 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンが 同 時 に得 られ る が 、 展 示 が 独 立 して い て、 他 情報 の 得 ら れ な い パ タ ー ンで あ る。 上 の 例 で は 、 他 の 展 示 と分 離 され ては い る が 、 パ タ ー ン NO.18と
同 様 に装 置 の配 色 や 素 材 を
他 の 展 示 と あ わせ 、雰 囲 気 作 りを して い る。
53
5
動的展示 の 分 類
NO.24 サ ンプ ル数
:2
ど4■︰“ ,
(NTT 1994)
例 :ト ー ル ・ セ ンサ ー ・ ワール ド
客
コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン
壁 に埋 め 込 まれ た 多数 の 小 型 モ ニ タ ー の 前 に 観 が 立 つ と同 時 に 、 天丼 に と りつ け ら れ た セ ンサ
ー が働 き、観 客 の 日線 の 高 さに画 像 が 移 動 す る 。 コ ン パ ニ オ ン に よ り、誘 導 及 び説 明 が為 され る 。
学芸 員 等 の補 助 要 員 が つ い た バ 示空 間 に 於 いて 、鑑 賞 者 でな い学 芸 員 や コ
パ タ ー ン NO.5に タ ー ン 。展
ン パ ニ オ ンの 存 在 が 確 かめ ら れ る と、鑑 賞 者 は そ の 資 料 に対 しよ りい つ そ うの 興 味 を持 つ もの で あ る。 さ ら に 図 で解 る よ うに 、 資 料 の 説 明 を通 しての人 と人 との 会 話 、 コ ミュ ニ ケ ー シ ョンが 得 ら れ るわ け で あ るか ら、
NO.5等
の よ うな 一 人 で の 検 索 に比 べ ると、 資 料 に
対 す る理 解 の差 は 格 段 で あ ろ う。 さ ら に そ の 会 話 で発 せ ら れ る 「 音 」 が 他 の鑑 賞 者 を刺 激 し、 特 に こ の よ う な 開 放 的 空 間 では 効 果 的 で あ る。 こ こで もまた 、 展 示 空 間 での資 料 と鑑 賞 者 、 そ して コ ン パ ニ オ ン と の コ ミ ュ ニ ヶ ― シ ョ ン 自 体 が展示 とな るの で あ る。 54
5
動 的 展示 の 分 類
NO.25 サ ンブ ル 数
:1
・ ガ イ ダ ン ス 映 像 (リ ビ ン グ 例 :ラ イ フ ス タ イ ル ラ ボ リ ピ ング情 報 バ ン デ ザ イ ン セ ン タ ー OZONE内 タ
)
ペー ス内 に、 キ ッチ ン・ バ ス な ど住 宅 の モデ ル ス 各 ゾー ンに沿 つた ガイダ ンス映 像装 置 を設置 して い る。 ボ タ ンを 押 す と映 像 が流 れ る。
を 空 間 展 示 の 中 で 、 さ ら に鑑 賞 者 が 自 由 に資 料 映 像 といつ 流 す こ と が で き る パ タ ー ン .資 料 に介 入 す る、 て もパ タ ー ン NO.4の
よ うな 一 回 の み の資 料 変 化 で
示 あ るが 、 他 感覚 的 に 感 じ ら れ る空 間 の 中 での動 的 展 の存 在 は 大 きな 意 味 を持 つ と思 わ れ る 。 しか し上 の 例 の 場 合 は 、 ス ペ ー ス が 狭 く動 的 展 示 の 必 要 とす る時 間 だ け そ の 場 に落 ち つ く こ とが で きず 、 また 、 リア ル な モデ ル ス ペ ー ス の 空 間 に映 像 が 負 け て しま っ て い る よ うな感 が あ つた 。 55
5
動 的展示 の分類
NO.26 サ ンブ ル数
:1
例 :双 方 向 デ ジ タル ・ アー ト (NTT シ ョ ン・ ワ ー ル ド 1994)
コ ミュ ニ ケ ー
映 像 の 連 動 して い る 2つ の モ ニ タ ー が 、 長 さ 1 m前 後 の 金 属 製 立 方 体 の両 端 に それ ぞ れ と りつ け ら れ て い る。 両 側 か ら鑑 賞 で き るが 、 「 双 方 向 」 に映 像 を 操 れ るの は 片 端 の 鑑 賞 者 の み で 、 も う片 端 では映 像 が 変 化 して い く姿 を見 るに と ど ま る。 その配 置 方 法 に よ り、両 側 の 鑑 賞 者 は 同 行 者 でな く、 何 の 関 係 も持 た な い 他 人 にな る こ とが 多 い。 立 方 体 は パ ー テ イシ ヨンに 埋 め込 まれ て い るが 、 見 て い るだ け の鑑 賞 者 は 、 10Cmの
わ ず か な隙
間 か ら反 対 側 の鑑 賞 者 の 行 動 を感 じ る こ とが で き、 自分 が 鑑 賞 して い る映 像 を操 つ て い る ら し い 人 間 の存 在 に 気 づ く こ と にな る。
鑑 賞 者 間 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンと い うの は 、殆 どが 同 行 者 に よ る もの で あ る。 しか しこの 例 の よ うに 、 全 くの 他 人 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョンを誘 発 す る よ うな 展 示 も希 に 存 在 す る。 しか も空 間 的操 作 に よ り誘 発 して い る この 例 は 、非 常 に貴 重 で あ り、 また 見 習 うべ き展 示 形 式 で あ ろ う。
56
5
動 的 展 示 の分 類
NO.27 サ ンプ ル数
:1
例 :「 イ ン タ ラ ク テ イヴ TVラ ウ ン ジ 」 ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン・ ワ ー ル ド
(NTT 1994)
コ
広 め の 空 間 に 大 ス ク リー ン を配 置 し、 コ ン パ ニ オ ン は 観 客 に ス ク リ ー ンの 映 像 を 見 させ た 後 、 そ れ ぞ れ の観 客 の 手 元 の コ ンピ ュー タの扱 い方 を指 導 す る。
冬
パ タ ー ン NO。
24で 鑑 賞 す る資 料 が動 的 に な つた
もの で あ る。 これ らの コ ン パ ニ オ ンに よ る説明 型 は 、 資 料 に対 す る理 解 は 非 常 に早 く、 また疑 間 な どが 解 消 され るの で、先 端 的 展 示 資料 の 扱 い 方 が解 らな い場 合 な ど は 歓 迎 され るが 、同 時 に 展 示 す る側の 思 考 を鑑 賞 者 に 押 しつ け て しま い 、鑑 賞 者 の 自 由な 発想 を阻 害 す る可 能 性 もあ る。
57
5
動 的 展 示 の分 類
NO.28 サ ンブ ル数
:1
例 :『 住 空 間 シ ミュ レー シ ョン 」 (リ ビ ング デ ザ イ ン セ ンター OZONE内
リビ ン グ情 報 バ ンク )
「 平 面 図 を 見 て もわ か りに くい立 体 的 な 空 間 イ メ ー ジ を、 コ ン ピュー タ グ ラ フ イッ クス に よ っ て
70イ
ン チ大 画 面 の中 に
3次 元 で展 開 す る シ ス テ
ム J。 シ ミュ レ ー シ ョン を行 う空 間 は独 立 して い る。家 族 の 意 見 を聞 き、 ア ドバ イザ ー が コ ン ピ ュ ー タ操 作 を行 う。 予約 制
1回
90分 ¥5,000。
〇八YO
囚
○
饒
パ タ ー ン NO.27で
鑑 賞者 が増加 した パ タ ー ンで
あ る。 しか し、鑑 賞 者が実 際 に資料 に触 れ るこ とが で きず、 NO.27よ
りさらに展 示 す る側 (こ の 場合 ア
ドバ イザー )の 意 志 で情報 が左右 されや すい とい えよ う。映 像 を鑑賞 し、 ア ドバ イザ ー と共 に複数の鑑 賞者 が コ ミュ ニ ケ ー シ ョンし、 ア ドバ イザ ー が資料 に手 を 加 え るとい う、企業 シ ョウル ーム な どで見 られ るパ タ ー ンで あ る。
58
5
NO。
動 的 展示 の分 類
29
サ ンプ ル数
:1
例 :「 文 京 歴 史 探 検 室 」 (文 京 ふ る さと歴 史 館
MACを
)
使 つた 資 料 検 索 ・ ク イ ズ 等 の シ ス テ ム .
装 置 の配 色 等 に非 常 に 気 を使 い 、 周 囲 の 展 示 か ら 浮 か ず に 、 か つ 複 数 の 鑑 賞 者 を 同 時 に 引 きつ け る こ とに成 功 して い る 。 実 際 に シ ス テ ム を 利 用 して い る鑑 賞 者 は CRTの 画 像 を見 つ つ 操 作 して い る が 、 高位 置 に 設置 さ れ た モ ニ ター に よ り、他 の 来 館 者 は 同 画 面 を鑑 賞 で き る。
沐。 パ タ ー ン NO。
12の 形 式 で、 さらに実 際 に資料 に
触れ て いな い鑑賞者 も注 目 させ よ うとす るパ タ ー ン で あ る。 この よ うな形 式 を試 み よ うとす る展 示は多 いの だが 、 モ ニ タ ー の位 置 に 問題が あ り、 その モ ニ タ ー と 資料 との関連 が明確 で な か つた り、他の鑑 賞者 の と ど まる余 地が な か つた りと その空間 的 問題 で実 際 には こ の パ タ ー ン とな っ て い る ものは少 な い。同 じ装 置 を設 置 していて も、他の鑑 賞 者 の 視線 を集 め る ことが で き るか ど うか は展 示の空 間 配 置 にか か ってい るとい っ て もよいだ ろ う。 59
5 華 ≧ヾ ︶
゛ 守
t
動的展示 の分類
NO。 30 サ ンブ ル数
:1
例 :『 エ ス セ シ ポ ー ル 術館
I」
(キ ー ス ・ ソ ニ ア /原 美
)
TVモ ニ タ ー と電 話 機 が 一 体 と な っ た屋 外 展 示 作 品 。 どち ら も「 本 物 」 で、 モ ニ タ ー では 通 常 の プ ロ グ ラム が 放 映 され 、電 話 も実 際 に利 用 で き る。
イ
こ 「L上TII三 「 ____ │
卜に ︲
¬
∃ ﹁
L F
L_____」 60
5
動 的 展示 の 分 類
図 で解 る よ うに、 TVと 、 電 話 をか け て い る鑑 賞 者 と遠 く離 れ た 空 間 に い る人 との 資料 を 通 した 関係 の 両 方 を、 も う一 人 の 鑑 賞 者 が 眺 め て い る状 態 で あ る。 客 観 的 に 転 じ全 体 をDtめ て い る鑑 賞者 は 、 「 展 示 」が 、 その 空 間 で 完 結 され て い な い こ とを知 る に至 る。 資 料 に介 入 して い る鑑 賞 者 の姿 が その ま ま展 示 とな っ て い る、 つ ま リプ ロ セ ス が展 示 で あ るとい う作 者 の 概 念 が よ く表 現 され て い る展 示 と い え よ う。
61
5
動的展示 の分類
Earth Flag Project」
(松
NO.31 サ ンプ ル数
例 :「
:1
本 英 樹 /川 崎 市 市 民 ミュ ー ジ アム )
4章 参 照 。行 わ れ て い るの は ミュ ー ジ アム の
472ピ
1
もの広 さ を もつ 「 逍 通展 示 空 間 」で 、 他
の イ ベ ン トや 展 示 も同空 間 で鑑 賞 で き る。
○
・ ビ
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¬ 「
「 ==.ツ =21
作 者 と鑑 賞 者 の 積 極 的働 き か け に よ るワ ー ク シ ョッ プ形 式 の 展 示 であ る 。 一 般 の 手 に よっ て作 られ て い く 展 示 、 そ して その 変 容 ぶ りを鑑 賞 す る こ とに よ り、 世 界 に果 て しな く広 が っ て い く展 示 空 間 の 可能 性 が 感 じ ら れ 、 既 存 の 展 示 形 態 を想 像 して いた 鑑 賞 者 に と っ て は 衝 撃 的 な こ と で あ る。 しか し、 この パ タ ー ン に も、
FAXを
送 つ た側 の 人 は発 信 者 と して機 能 す るが 、実
際 で き あが っ た 展 示 を その 場 (離 れ た空 間
)で 鑑 賞 す
る こ とが で きず取 り残 され て し ま うと い う欠 点 が あ る。
62
5
動的展示 の分 類
NO.32 サ ンブ ル 数
例
:rィ
:1
ン タ ラ ク テ イヴ 。ブ ラ ン ト・ グ ロー イ ン グ 」
(ク リス タ・ ソ ム ラ ー +ロ ラ ン・ ミニ ョノ ー /N
TT/1CC Gallery) 「 8-Dグ ラ フ イック・ コ ンピ ュ ー タ ング ラ フ イッ ク ス
(シ リ コ
)に よ る仮 想 空 間 上 での 、仮 想
植 物 体 の 成 長 の 原 理 と、 リアル タ イ ム に起 こ る変 化 や 変 異 をテ ー マ と した イ ンス タ レー シ ョン で あ る。 」
く 63
5
動的展示 の分類
コ ン ピ ュ ー タ に よ る二 次 元 空 間上 で成 長 す る この 仮 想 植 物 が 、 実 際 に観 客 が近 寄 っ て触 れ る こ との で き る
5種 の 生 きた植 物 と結 ば れ 、 その手 を動 か す こ と に よ っ て観 客 は 、前 面 の ス ク リー ンに 映 し出 され て い る、 プ ロ グ ラ ム 化 され た
25種 以 上 の植 物 の 仮 想 的 成 長 に、
直 接 リアル タ イム に 作 用 を及 ぼ す と い う もの 。展 示 空 間 での 資 料 との コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン・ 仮 想 植 物 を 通 し ての 他 観 客 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョン に よ る情報 の 交 錯 の 中 で 、鑑 賞 者 は 深 い 思 考 の 渦 へ と巻 き込 まれ る こ と だ ろ う。 展 示 空 間 は 暗 や み に 包 まれ て い るが 、植 物 を
照 らし出す わずかな光 と、 スク リー ンによる光 で空間 内の様子 を把握する ことができる。
64
5
NO。
33
サ ンブ ル数
例
動 的展 示 の分 類
:1
:rvIRTUALITY」 ー シ ョ ン・ ワ ー ル ド
(NTT 1994)
コ ミュ ニ ケ
対 戦 型 VRマ シ ンに よ る エ ン タ ー テイ メ ン ト.
4人 の 観 客 は HMD(ヘ
ッ ド・ マ ウ ン テ ッ ド・ デ
ィス プ レイ )が 映 し出 す 仮 想 空 間 の 中 で、 自 ら手 に した レ ー ザ ー ガ ンに よ る対 戦 を繰 り広 げ る。 4 人 が 限 に して い る画 像 は 、 そ れ ぞ れ の側 に あ る モ ニ ター で コ ン パ ニ オ ンや 他 の 観 客 が確 認 す る こ と が で き る。現 実 空 間 は仮 想 空 間 にほ ぼ 対応 して作 られ て い るが 、 仮 想 世 界 に 入 った 観 客 には 、 コ ン パ ニ オ ンの声 は 聞 こ え て も現 実 空 間 は感 じ ら れ な い
.
(図
:
次頁
)
対 戦型 ゲ ー ム が 大 が か りに な っ て さ ら に体感 的 に な った もの で 、 テ ー マ パ ー ク な ど で最 近 見 られ る パ タ ー ン で あ る。 仮 想 世 界 に 入 つた 観 客 は 、定 位置 の 回 りを わ ず か に 動 くだ け で、作 られ た対 応 展 示 空 間 と い うの は実 際 に は 必 要 の な い もの で あ るが 、現 実 に も仮 想 世 界 に もほぼ 同 じ空 間 が存 在 す るの に対 し両 方 の 世 界 で の 参 加 者 の 動 きが 全 く異 な る と い う その ギ ャ ップ を、 他 の鑑 賞 者 が コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン の ネ タに して い る点 は 、装 置 を た だ 並 べ るに終 わ ら せ な か った この 展 示 に 於 け る空 間配 置 の 勝 利 と い え よ う。 また 、仮 想 世 界 に しか 視 界 が 開 け て い な い 参 加 者 に声 を か け る コ ン パ ニ オ ン と参 加 者 の 動 きの ギ ャ ップ が 、 い っ そ う展 示 空 間 の 2重 性 を あ らわ に して い る。
65
5
動的 展 示 の 分 類
/4
﹁ ヨ ﹁
◎ ρ 面 。 。 」 “
5
2
動的展示 の分 類
考察 以 上 、 様 々な パ タ ー ンが 与 え られ た が 、動 的 展 示 は これ らの パ タ ー ンに 限 ら れ る こ とは な い 。 サ ンプ ル数 1と な っ た パ タ ー ンが 多 く見 ら れ る こ とか ら考 え る と、 今後 も多 様 な展 示 パ タ ー ンが 与 え ら れ るで あ ろ う。 こ の新 し い パ タ ー ンが 動 的 展 示 の 可 能 性 で もあ るわ け だ が 、 これ らの パ タ ー ン分 類 か ら考 察 され る こと を述 べ る。 パ タ ー ン の図 上 で の 水 平 方 向 へ の 伸 び は 、資 料 と鑑 賞 者 の 相 互 の働 きか け に よ る、空 間 の 時 間 的 移 行 を表 して い る。 同様 に 、 垂 直 方 向 へ の伸 び は 、鑑 賞 者 と鑑 賞 者 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョン に よ る 、空 間 の 時 間 的 移 行 を表 して い る。 そ の 結 果 、 両 方 向 へ の 伸 び は 、 同 空 間 で得 られ る情 報 の 変 化 を 表 す こ と に な る。 基 本 的 に は 、 シ ー ク エ ン ス の数 が 増 え る と と もに バ タ ー ン全 体 の 占 め る面 積 が 増 加 し、 展 示 空 間 に 4次 元 的 に 蓄 積 され た情 報 量 が 増 して い く様 子 が分 か る。静
⑤
AЮ
三
的展 示 ④ ⑤ と比較 して み る と、明 ら か に 面 積 が 広 く、 情 報 の 幅 が 広 が る可 能 性 が あ る と い え よ う。 また 、 シ ー ク エ ンス の 連 続 は時 間 の 推 移 を示 す の で 、 その 数 が 多 くな れば 時 間 は 物 理 的 に 経 過 す る こ とに な る。 しか し動 的 展 示 では 、 「 資料 か ら情 報 を得 る 」シ ー ク エ ン ス と「 資 料 へ 情 報 を送 る 」 シ ー ク エ ンスが 同 時 に 発 生 す る場 合 や 、鑑 賞 者 間 の 現 実 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン と 資 料 を通 した コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン とが 同 時 に 起 こ る場 合 もあ り、 シ ー ク エ ンス の 数 が その ま ま コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョンの 多 さを示 す わ け で は な い 。 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンに 注 目 して 2つ の パ タ ー ン を比 べ た と き、 同 じ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン状 態 に至 る ま での シー ク エ ン ス 数 が 少 な いほ ど 、素 早 く コ ミュ ニ ケ ー シ ョンが とれ る と い うこ とを示 し、 リア ル タ イム 度 が 高 い と い え よ う。
67
5
動 的展示 の分 類
しか し、 こ こで注意 した いのが NO.1の よ うな バ タ ー ンで あ る。 ここで 、 一 般 的絵画 の よ うな静 的資料 の範時 に いれ られ る、文章 によ る説 明 パ ネル を展示 の 一つ と して パ タ ー ン化 す る と、鑑賞者 が読 む時間 を必 要 とす ることを考 えると、⑥ の よ うに表 され る。す る と、動 的展示⑦ と同 じシ ー ク エ ンス 面積が与 え られ 、 ⑦ の よ うな パ タ ー ンでは 動 的展示 と しての効 果 が十 分 に発 揮 され て い な いとい うことが い え る。動 的展示 の 持 つ 情報量 が 、静 的展示 の持 つ 情報 量 よ り必 ず しも多
◎ ◎ ⑩ ① ⑫
日日回o9 ё
⑦
い とは い えず 、展示 が必 要 とす る時間 が長 ければ情報 が多 く流 れ るとは いい され な い。重 要 な のは 、展示空 間 でいかに考 え させ るか とい うことで、多 く情報 を流 す こ とが本来 の 目的 では な い。 ③⑨ の よ うに サ イクル 長 で分類 された動的展 示 を静 的展 示 とと もに⑩ の よ うに 一 括 して表 す とす ると、 パ タ ー ン が絞 ら れ て くる。 NO。
4の よ うな、変 化が 1
回 で終 わ る展示 も、 これ に含 め てよ いと思 わ れ る。 ま た、場 合 に よ り変化 す る空 間 内の人数 を、 コ ミュニ ケ ー シ ョンの可 能 性 の有 無 とい う点 を考慮 した上 で「 人 」 と「 2人 以 上 Jの
1
2種 に しぼ り⑪⑫ の よ うに表 し、
さらに リアル タ イム性や 空 間 展示 か否 か と い うことは ここでは考 えず 分 類す ると、次頁 の よ うな 8パ ター ン に まとめ られ よ う。
68
5
pattern
α
β
動的展 示 の分類
γ
(1)
(2)
数値
24
□
64
○
(3)
○
│
(4)
○
○
5
1
│
(5)
(6)
レ
1訂 HttH翌 │レ
(7)
レ
(8)
レ
21
○
○
○
○
○
○
10
○
○
18
69
5
この 8パ タ ー ンは 、 5。
動 的展 示 の 分 類
1. 1で 挙 げた 情 報 の 流 れ
を発生 させ る エ レメ ン ト、 す な わ ち展 示 空 間 での 情 報 の受 信 及 び 発 信 源 の 有 無 また は変 化 に注 目 した もの で あ る。 つ ま り、1。
その他 の 情 報 が 得 られ るか 、 2.
鑑 賞 者 の 働 きか け に よ る対 象 資 料 の変 化 、 資料 と鑑 賞 者 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンが 得 られ るか 、 3.鑑 賞 者 同 士 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンが得 ら れ るか 、 に つ い て注 目 した 結 果 と しての分 類 とな る。 それ ぞれ を α、 β、 γ と して○ 印 を つ け て表 示 した 。
166サ
ンブ ル を この 8パ タ ー ン に分 類 す ると、右
の 数 値 の よ うに分 け られ た 。
5.2.1
開放 性 そ の 他 の 情 報 の流 入 の有 無 は 、 一 般 的 に 展 示 空 間 の 開 放 度 を示 して い る と い え よ う。破 線 で囲 まれ た シ ー クエ ンス の 展 示 は他 展 示 等 の 情 報 も入 り、 一 度 に得 ら れ る情 報 も多 くな るの だ が 、展 示 その もの につ い ては 開 放 性 が あ れ ば よい と い うわ け では な い 。 閉鎖 的 な 空 間 が 対 象 資 料 へ の集 中 を促 す 場 合 もあ り、逆 に他 展 示 との 関 連 を 示 唆 した い 場 合 は 空 間的 連 続 性 を みせ るな ど 、建 築 的 操 作 が ミュ ー ジ アム 内 の情 報 の 流 れ を支 配 す るカ ギ に な る とい うこ とは い うま で もな い 。 分 類 で は 、 開 放 性 展 示 空 間 とな つた もの は ンブ ル 、 閉 鎖 性 展 示 空 間 は
111サ
55サ ンブ ル で あ った 。 開
放型 が 圧 倒 的 に 多 くな つた 理 由は 、 ミュ ー ジ アム が 展 示 の「 流 れ 」を多 少 な りと も意 識 して い る と い うこ と 以 外 に も、展 示 の 回 転 が速 い 現 代 では 、 閉 鎖 空 間 よ り 開 放 空 間 の 方 が フ レ キ シブ ル で あ る点 に もあ ると思 わ れ る。
5。
2.2
資 料 と鑑 賞 者 この分 類 に よれば 、展 示 空 間 の時 間 的 推 移 が これ だ
70
5
動的展示 の分類
け多 様 にな つ て きた 原 因 は 、資 料 と鑑 賞 者 の 関 係 の 変 化 に あ る と い え る。
(1)∼ (4)の
よ うな パ タ ー ン
に よ り今 ま で眺 め るだ け に と ど ま っ て いた 鑑 賞 者 は 、
(5)∼ (8)の
よ うな 形 で資 料 を変 化 させ る こ とが
で き る と い う権 利 を 得 た 。資 料 と鑑 賞 者 が 、 展 示 空 間 で コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を行 っ て い る。 この よ うな コ ミ ュニ ケ ー シ ョンが可 能 な 展 示 は 、「 イ ンタ ラ クテ イヴ 性 の あ る展示 」 と言 わ れ る。 一 般 的 に この 「 イ ン タ ラ クテ イヴ 」は 、 「 相 互 作 用 の 」『 双 方 向 性 」 と訳 され 使 わ れ て い る。最 近 世 間 を 賑 わ す 存 在 とな っ て い る よ うだ が 、 その理 由 は テ ク ノ ロ ジ ー の 発 展 に あ る。 パ ソ コ ン 通 信 や 、各 メデ イアの 統 合 いわ ゆ る「 マ ル チ メ デ イア 」に よ るテ レ ビ 会 議 な どの 出 現 に よ り、 この 語 は 突 如 注 目 を浴 び る こ と とな った の だ 。 しか し現 在 は 、単 に コ ン ピ ュー タ に対 して 呼 び か け ら れ る、情 報 を選 択 で き る 。自由 に組 み合 わ せ られ る と い うだ け の 装 置 や ソ フ トに まで 「 イ ン タ ラ クテ ィヴ 」 と い う名 が 付 け られ て い る と い った 状 況 で あ る。 しか しこの「 イ ン タ ラ クテ イヴ 」な 状態 と い うの は 、 今 に 始 ま っ た こ とで は な い 。 4章 の 動物 園 の 例 の よ う に 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョンが生 まれ れば 、 ど こに で も存 在 す るの だ 。 逆 に言 えば 、 パ ソ コ ン を通 して会 話 す る 行 為 は イ ン タ ラ クテ イヴだ が 、 相 互 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンが 行 わ れ て い な い 装 置 は 真 の イ ン タ ラ ク テ イヴ性 を持 ち 合 わせ て い な い とい うこ と に な る。先 の分 類 で 静 的 展 示 と同 類 とみ な され た 、 一 回 き りで変 化 が終 わ る装 置 だ け でな く、 い くつ か の 選 択 肢 か ら映 像 を選 ん で呼 ぶ だ けの よ うな 展 示 も、真 の イ ン タ ラ クテ イヴ展 示 と い うこ とは で きな い 。資 料 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンが あ る、 と され た 展 示 は 総数の
40%を
166サ
ンブ ル 中
73と
、
上 回 っ て お り、 動 的 展 示 の 中 で もその
イ ン タ ラク テ イヴ性 が 注 目 され て い る こ とは 明 らか で あ るが 、 テ ク ノ ロ ジ ー に魅 了 され て い るに す ぎな いの で あ れ ば 問 題 で あ る。
71
5
動 的展示 の分 類
重 要 なの は 、 いか に意 識 が変 化 す るか と い うことだ 。 情報 の変 化 に鑑 賞者 の 意 識 が つ いてい き、 一つの 展 示 に対 す る深 い 思考 を得 る ことは求 め られ るが、 ハ イ = テ ク ノ ロ ジ ー 、 イ コー ル効果 的な展示 とい うわ け では コ な い 。 む しろ それ を、展 示 空間内 での鑑賞 者間 の ミ ュ ニ ヶ ―シ ョ ンを派 生 させ る方向 に利用 す るな ど した 方 が賢 明 では な いだ ろ うか 。実際 には 、資料 との コ ミ ュ ニ ヶ ― シ ョ ンを鑑 賞 者 問 コ ミュニ ケ ー シ ヨンに変 換 して い る例 は 、 73サ ンプ ル中 28サ ンブ ルで しか な い。
5.2.3
鑑 賞 者 と鑑 賞 者
f美 術 館 に於 け る鑑 賞 者 行 動 の研 究 J☆ 5で は 、 そ の 行 動 を表 す 尺 度 と して「 時 間 Jが と りあ げ られ て い る。 「 著 者 に よれ ば 、来 館 者 に よ る ア ンケ ー トの 結 果 、 属 性 等 と行 動 の 関 係 」 の うち 、同 行 者 数 と滞 在 時 間 と の 間 に関 係 が 見 ら れ る こ とが 明 らか に な つ た とい う。 こ れ は 、同 行 者 つ ま リー 緒 に 鑑 賞 す る相 手 が存 在 した た め 、垂 直 方 向 に シ ー ク エ ンスが 連 な つ て い き、滞 在 時 間 が 長 くな つた と も考 え ら れ な い だ ろ うか 。 特 に 日本 の 美 術 館 の 展 示 空 間 は静 寂 の イ メ ー ジ が 強 く、 他 の鑑 賞 者 が い るか ら と い つ て 、 展 示 空間 内 に 於 い て滞 在 時 間 に影響 が で るほ どの コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン を取 つ て い る とは 思 えな いの だ が 、 そ う い つた 結 果 が で て い るの は 興 味 深 い もの で あ る。 あ る いは 、 全 て の 展 示 空 間 を 通 過 した 後 、沈 黙 を破 っ て同 行 者 た ち と会 話 を交 わ す の か も しれ な い 。 ミュ ー ジ ア ム の カ フ エは 息 抜 き空 間 で あ るば か りでな く、展 示 の 記憶 に よ る思 索 の 場 で あ り、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 場 で あ るの だ 。 窮 屈 な 静 寂 の 中 で な く、 くつ ろ い で堂 々 と会 話 もで
★5「
美衛館 に関 す る基礎 的考 察 ―鑑 賞者行 動の研 究
― J(今 井康 博 /渡 辺研究室 卒業 論文
)
72
5
動 的展示 の分類
のミ き る よ うな 展 示 空 間 を推 奨 す るか の よ うに 、最 近 ★° ー ン ★7 ュ ー ジ アム では 、原 美 術 館 や ス パ イ ラル ガ デ で の よ うに 、 カ フ エで紅 茶 を味 わ いなが ら展 示 を鑑 賞 は、 き る よ うな と こ ろ も見 ら れ る。 こ うい つた 展 示 空 間 を呼 動 物 園 で は 当た り前 の 姿 で あ る し、 もと も と、客 って い ん で コ レク シ ヨ ンを 見 せ る と い う展示 形式 を持 も た 中 世 ヨー ロ ツ パ では 、 優雅 な 音 楽 を演 奏 す る とと に会 議 を楽 しん で いた に違 い な い 。 また 日本 で も、 平 うな安 土 安 時 代 の 絵 あ わ せ や 、 山 口勝 弘 の指 摘 す る よ ★° は、 い 桃 山時 代 の 見 せ 物 的 な 屏 風 絵 の置 か れ て た環 境 つ と開 現 代 の ミュ ー ジ ア ム の 一 般 的 な 展 示 環 境 よ りず か れ た もの で あ つた の では な い か 。 写真 5。 3
対 象 資 料 の あ る場 を離 れ て コ ミュ
ニ ケ ー シ ヨ ンす る
るな 場 合 は 、 左 図 の よ うに表 され るの だが 、資 料 の あ い しに関 わ らず 、 垂直 方向 ヘ シ ー クエ ンス が 延 び て く こ とに は か わ りが な い 。人 は 、 ミュ ー ジ アム での
コミ
ュ ニ ヶ ― シ ョ ンを求 め て い るの で あ る。 ニ しか し、 先 の分 類 で 、資 料 に タ ッチせ ず コ ミュ ケ ー シ ョ ン して い るの は 、 わ ず か
写 真 5。
5例 しか な い 。展 示 空
み出 ン 間 に於 い て 、 展 示 自体 が コ ミュ ニ ケ ー シ ヨ を生 して い る もの は 実 際 には少 な く、 そ れが いか に困 難 な
4
9 ё
こ とで あ るか を表 す結 果 とな つた と い え よ う。 の で、 動 的 展 示 は そ れ 自体 時 間軸 を必 要 とす る もの な い 対 象 資 料 を鑑 賞 す る こ とに よ り「 同 時 間 を過 ご して ンの生 ま る 」 と い う意 識 が 高 ま り、 コ ミュ ニ ケ ー シ ヨ れや す い空 間 を作 る こ とに 一 役 買 う こ とが で き るの で な い だ ろ うか 。 `ま
ンに ー 人 、 そ して資 料 との 積 極 的 な コ ミュ ニ ケ シ ョ こ よ り、真 に 開 か れ た ミュ ー ジ アム とな る可 能 性 が 、
貪° 写真 5.2 ★7写 5.3 真
す ることが で きる。 原美術館 の「 カフ エ・ ダ ー ル 」。庭日 に設置 された展示 を鑑賞 ー 一望 できる カフ ェには 、環 境音 ス パ イ ラル ガーデ ンの 「 ス パ イ ラル カ フ エ J。 広 いギヤ ラ リ を 楽 もか けられて い る。
'°
弩r]真 5。
4
洛 中洛外 国屏風 (部 分 )米 沢市 所蔵 。
73
5
動 的展 示 の 分 類
こに 示 され て い る。 動 的 展 示 は そ の 可 能 性 を さ ら に 拡 張 す る こ とが で き るの だ 。
74
6
動 的 展 示 と時 間
前 章 の分 類 で 、動 的 展 示 の 可能 性 の
3つ の軸 が 明 ら
か に な った が 、 その パ タ ー ン図 に 於 け るシ ー ク エ ンス の もつ 「 時 間 」は 様 々 で あ り、 「 時 間 長 」 に よ る分 類 の 余 地 は な い もの と思 わ れ る。展 示 自身 が 必 要 とす る
'時
間 」と、 鑑 賞 者 が 必 要 とす る 「 鑑 賞 時 間 」、 ま た
展 示 空 間 内 で情 報 が 行 き来 す る「 時 間 』は 全 て異 な つ て い る。 では この 様 々 な 「 時 間 」 とは ど うい うもの で あ るの だ ろ うか 。 こ こ で は さ らに、 動 的 展 示 の 定 義 の 基 とな った「 時 間 Jに 関 連 して追 求 す る。
6.1
時 間 と その 種 類
4章 に於 い て 、 「 動 的 展 示 」は 、 「 時 間 軸 を もつ 展 示 」 と定 義 され た 。展 示 それ ぞ れ が 固 有 の 時 間軸 を も っ て い る と い うこ とは 、 多 数 の 展 示 を抱 えた ミュ ー ジ アム に は 、 そ の 展 示 と同 数 の 時 間軸 が存 在 す る こ と に な る。 正 確 に い うな らば 、 常 に 同 数 の 時 間 軸 が 存 在 す るの では な い 。 同 章 で述 べ た イ ン タ ラ ク テ ィヴ・ アー トの よ うに 、来 館 者 の 参 加 が 確 認 され た と き に 初 め て その展 示 が 展 示 と して成 立 す る もの もあ る。 ボ タ ン を 押 す と映 像 が 流 れ 出 す 装 置 等 もその 範 時 に い れ られ よ う。 この よ うな「 時 間 づ け され た 展 示 」の 有 無 が 、 ミ ュー ジ アム 内 の 軸 数 を左 右 す る こ と に な る。 軸 が 多 数 存 在 した り、軸 数 が 変 化 した りす る と い う こ とは 、 一 体 ど うい うこ とな の で あ ろ うか 。
宇波 彰は著 書 の中 で、次 の よ うに述 べ て い る。 ★ 1
「 時間 につ いて は重 大 な思 い違 いが い くつ か あ り その最 た る ものは 、時 間 は 1つ だ とい う考 え方 で あ る。 (中 略 )人 間 は異 な つた さまざまな ことを
☆lr文
化 と しての 時間 J(宇 波彰 /TBSプ
リタ ニ カ )
75
6
動 的 展 示 と時 間
す るが 、 その 際 、無 意 識 の うち に 、 そ して時 には 意 識 的 に 、 さ ま ざ まな 種 類 の 時 間 を表 現 し、 また それ に 参 加 して い るの だ 。 」 さ ら に 氏 は 、「 さ ま ざ まな種 類 の 時間 」 を r時 間 の 地 図 」 ★1と 称 した 左 の よ うな曼 陀 羅 で論 じて い る。氏 や メニヽ“ ︵ EES ‘κヽ卜ヽ n3撻︶
E奮S ‘К ヽトヘn‘単 ︶ ︵ EES●“ E燎〓 e や騒
に よれ ば 、 広 範 囲 な 現 象 を カ バ ー す る時 間 に は 、 8つ の 種 類 が 考 え ら れ る と い う。 我 々が 一 般 的 に 言 う「 時 間 」 とは す な わ ち 、 ニ ュー トンの 提 唱 した「 物 理 的 時 間 」 を意 味 す る が 、 他 に も、心 理 的 状態 に 依 存 され る 「 個 人 的 時 間 』 、生 命 体 の リズ ム が 説明 され る「 生 物 的 時 間 」、「 デ 。ジ ャ・ ヴ 」 に 代 表 され る よ うな「 形 面 上 的 時 間 」、 物 語 に も似 る神 話 的 な「 聖 な る時 間 」、 文 明 が 作 り上 げ た 体 系 で あ る 「 俗 な る時 間 」、 基 層 文
無 意 識 的 に現 れ る時 間
図
6.1
化 に対 応 す る「 ミク ロ の 時 間 」、 そ して
'共
調 した 時
間 」 が 存 在 す る と い うの だ 。 さ ら に 、 そ れ らの 時 間 が 混 在 す る状 態 の 「 メ タ時 間 」が あ り、本 当の 意 味 での 時 間 で は な く、 様 々 な時 間 的 出 来 事 を抽 象 した もの を 意 味 す る と い う。 氏 の よ うに 、 時 間 の種 類 が 多 数 あ る とす る説 は 多 く 見 受 け ら れ 、 そ れ ぞ れ の 説 で時 間 につ い て の 分 類 が 行 わ れ て い る。 しか し、 ア フ リカ研 究 者 の E・ E。 エ バ ンス =プ リチ ャ ー ドが 言 うよ うに その分 類 は 「 困 難 に 満 ち て い る 」 ら し く、研 究 者 らの 説 は 1つ に 収 東 す る こ と な く、 定 説 が 現 れ て い な い の だ が 、 こ こ では字 波 氏 の 説 の もとに進 めた い。
6. 1
1
物理的 時間 上 の 図 の よ うに 、様 々 な 時 間 軸 が 存 在 す る とは い え、 我 々 が そ れ に つ い て考 え よ うと す る と き、 知 らず知 ら ず の うち に あ る時 間 軸 に依 存 して して きた と い え る。
★1図
6.1
時間の地 図 .(同 上 )
76
6
動 的展 示 と時 間
「 物 理 的 時 間 」で あ る。「 物 理 的 時 間 」だ けが 数学 的 解 答 を 得 て い るば か りに 、我 々は その 罠 には ま っ て き た 。 日付 変 更線 を越 え る と きに時 計 の 時 刻 あわ せ を す るあ の 不 思 議 な 感 覚 は 、誰 もが味 わ っ て い るこ とだ ろ う。 ミ ュ ー ジ アム を語 る と き も例 外 で は な い 。
論 文「 展 示空 間 と鑑 賞 行 動 」では 、 プ リジ ス トン 美 術 館 と出 光 美術 館 そ れ ぞ れ に 於 け る「 鑑 賞 速 度 』に つ い ての 考 察 が 為 され て い る。 以 下 に 同 論 文 よ り抜 粋 す ・ る。
2
『 鑑 賞 時 間 の 表 し方 に は
2通 り考 え られ る。
1.滞 在 時 間 /作 品 数 2.歩 行 距 離 /滞 在 時 間 図
1は 1作 品 に 対 す る鑑 賞 時 間 で 、 速 度 を と ら え る もの で あ るが 、 (中 略 )“ 読 み 物 "と “絵 "を
6.2
同 一 と と ら え る こ とは 、 無 理 が あ る 。 それ故 、出 光 美 術 館 での 1は 除 いた 。 」 「 (プ リジス トン美 術 館 の
)第 2展 示 室 は 、鑑 賞
空 間 的 役 割 よ り も、 つ な ぎ と して の “通 路 的 "役 割 が 多 く、両壁 面 にか け ら れ た 作 品 を中 央 に立 っ て 、 一 度 に鑑 賞 す る傾 向 が強 い 。 故 に 、第 2展 示 室 を除 い て考 慮 す べ き で あ る。 」 r
●
F当
凛
■
“
―
神
¶ 囁呼掛│“ t鰤
図 6.3
以 上 の よ うに次 々 と対 象 展 示 室 を少 な く し、考 察 に 苦 労 して い る。 こ こ で考 察 を難 し く して い る原 因 は もち ろん 、 時 間 軸 の多 様 性 を考 えず 、 ミュ ー ジ アム での 事 象 を す べ て物理 的 時 間 に 於 い て考 え よ うと して い る こ とに あ る。 しか し、 ミュ ー ジ アム に は様 々 な 種 類 の 時 間 が混 在 し、 氏 の い うと こ ろの「 メ タ時 間 」の 中 に あ り、氏 も
貪2「
展 示空間 と鑑 賞行動 ―プ リジス トン美 術館・ 出光 美術盤 ― J〔 前田克 弘/渡 辺研 究室卒業論 文 )
6.2 図 6.3
図
プ リジス トン美 術館平面図 。 出光 美術館平面 図 .
7
6
動的 展 示 と時 間
述 べ て い る よ うに 、 それ らの 混 合 した 種 類 の 時 間 を物 理 的 時 間 な どの
1本 の軸 に あ わせ よ うとす る こ とは不
可 能 な の であ る。 来 館 者 の 滞在 時 間 は ミュ ー ジ アム の 魅 力 を 計 る指標 とい わ れ るが 、物 理 的 時 間 を要 求 す る よ うな動 的 展 示 は その指 標 を覆 す 存 在 とな り うる。 また その存 在 に よ り、今 後 の ミュ ー ジ アム では 来 館 者 は ます ます 多 くの 時 間軸 に触 れ る こ と にな り、 物 理 的 時 間 だ け に 則 った 考 察 は ミュ ー ジ アム 設 計 に効 果 を発 揮 す る とは 思 えな い.
2
個 人的時 間
ミュ ージ アム の構 成要素 には 、「 展示 』だ け でな く 『 ひ と 」が あ った こ とを忘 れ てはな らな い。 そ こで注 目 した いの が、「 個 人的時 間 」であ る。 「 個人 的時間 の最 初の焦 点 は、時間の経験 で あ る」 と宇波 氏 は述 べ て い る。「 眠 くな った 」「 お腹 が空 い た Jと いつた よ うな身体の リズム で示 され る生 物 的時 間 と、時間 が「 飛 ぶ よ うに過 ぎる 」 rの ろの ろ進 む 」 と感 じられ るの は別 の こと であ り、個人的時間 は よ り 主観 的 であ ると して いる。朝 一 番 に図書館 に来 たは ず なの に、 も う閉 館 時 刻 を告 げ るチ ャ イムが鳴 つ てい る と い うエ ビソ ー ドは 、主観 的 な個人 的時間 と物 理的時 間の差 異 を示 す もの であ り、美術 館 での「 その 絵好 き な の ?ず いぶん ゆ っ くり見 てたね 。 」「 え ?そ う ?J とい うよ うな会 話 は 、あ る人 の個人 的時間 と別 の人 の 個人 的時間 の差 異 を示 す もの であ る。 資料 を鑑 賞 し、対 話 を行 う中 で、鑑賞者 は 自 らの時 間軸 を形成 して い く。 これ が 、 ミュー ジアム に於 け る 鑑賞 者 の「 個人 的 時 間 」であ る。 動 的展示 の定 義 r時 間軸 を持 つ 展示 」での r時 間 』 は、決 して『 物 理 的 時間 」 とは限 らな い。 78
6
3.4で
動的展示 と時間
述 べ た よ うに、動 物 園 や 水 族 館 ・ 植 物 園 の
新 鮮 な魅 力 は 、 その 資 料 が「 生 」で あ り『 物 理 的 時 間 」 の影 響 を受 け て い な い 、 「 個 人 的 時 間 」 を持 つ と こ ろ に あ る と い って も よ い だ ろ う。 「 ひ と Jで は な い が 、 その行 動 に 予測 が つ か な い 、 「 個 人 的 時 間 」を持 つ 生 物 た ち は 、 観客 に と っ てか な り刺 激 的 な 存 在 な の だ 。 この よ うに 、 ミュ ー ジ アム に 於 い て は 、観客 以 外 に も、「 個 人 的時 間 」の 発 生 す る要素 が 存 在 す る。
1.3
共 調 した時 間 先 の字 波 氏 の文 章 で の 「 参 加 」 とは 、 資料 との 対 話 に よ る来 館 者 の 個人 的 時 間 の 形 成 以 外 に 、 まだ 意 味 を 持 たせ て い る。観 客 の 積 極 的 参 加 に よ る時 間軸 発 生 の 可 能 性 、 つ ま り先 に述 べ た よ うに「 時 間 づ け され て 』 成 立 す る動 的 展 示 の 存 在 で あ る。 しか し、 その よ うな 動 的展 示 の 中 には 、 動 的 展 示 と して成 立 した 時 点 で 、 そ の展 示 が 持 た され た 固 有 の 時 間軸 に よ っ て逆 に 来 館 者 を支 配 す るよ うに な る もの もあ る。 例 えば 、 押 しボ タ ンを 選 ん で映 像 を モ ニ タ ー に 呼 ん だ 場 合 を考 えれ ば よい。 個 人 的時 間 を 、映 像 の 持 つ 時 間 軸 に シ ン ク ロ ナ イ ズ させ た の だ 。 この よ うに 、 あ る時 間 軸 を持 つ もの に シ ンク ロ ナ イズ す る時 間 、 これが 「 共 調 した 時 間 」 で あ る。 「 共 調 した時 間 」は 、 この 映 像 の 例 の よ うな 近 年 に な って 現 れ た もの だ け では な い 。先 に挙 げた 美 術 館 で の 会 話 は 、 二 人 が 話 し始 め る ま では 互 いの 個人 的 時 間 に 則 り行 動 して いた が 、 会 話 す る こ と に よっ て両 者 の 間 に「 共 調 した 時 間 」が 現 れ た 例 で あ る。人 は 昔 か ら、 会 話 す る こ と、行 動 す る こ と に よ り時 間 を共 有 して お り、「 共 調 した 時 間 」 を持 て な い人 は 妨 害 者 と いわ れ 、 集 団 に溶 け込 め な くな る こ と もあ る。 『 共 調 す る 」た め には 必 ず
r2者 」 が 必 要 で あ るが 、
これ らの 例 の よ うに どち らか が「 ひ と 」 で あ る必 要 も
79
6
動 的 展 示 と時 間
な い 。「 映 像 」 と「 サ ウ ン ド・ トラ ッ ク 」 も「 共 調 し た 時 間 」 を 持 ち あ っ て い る。 これ らの こ と を総 合 す る と、 「 共 調 した 時 間 」は 、 あ る時 間 軸 を持 つ
2者 、 動 的 な 2者 が 存 在 した上 で成
立 す る もの で あ る と い え よ う。
2
物理 的時間への共 調 「 共 調 した 時 間 」が 動 的 な
2者 に よ っ て作 られ る と
す る と 、 ミ ュ ー ジ アム に 動 的 展 示 が 増 加 す るに つ れ 、 「 共 調 した 時 間 」が 増 え る可 能 性 が あ る。 前 項 に お い て支 配 と い う語 を用 いた が 、 「 共 調 した 時 間 」が敬 遠 され る べ き な の では な い 。 ひ とは 、 会 話 を楽 しみ、 そ の 中 で学 ん で い く。 問 題 は「 物 理 的 時 間 」 へ の共 調 で あ る。 ひ とは 、 「 物 理 的 時 間 」 に 身 を投 げ入 れ る こ とに よ っ て 、 「 個 人 的 時 間 」を 失 っ て い っ て い るの では な い だ ろ うか 。 一 般 的 に「 物 理 的 時 間 」 を持 つ 音 楽 を聴 い た リテ レ ビ を 見 た りす る行 為 に お け る楽 しさは 、 それ 自身 の 内 容 、 つ ま り情 報 の 与 え る楽 し さが 「 物 理 的 時 間 」の 制 約 を忘 れ さ せ て い るか らで あ つ て、 「 物 理 的 時 間 」 を 楽 しん で い るの では な い 。 しか し、 現 代 では 、 その 物 理 的 時 間 に 共 調 す る こ と を楽 しむ よ うな 風 潮 さ え現 れ て きた 。 「 ウ ゴ ウ ゴ 。ル ー ガ 」 ★3と ぃ ぅ子 供 向 け TV番 組 が あ った が 、 これ は 、 30分 の 間 に 如 何 に 時 間軸 をた く さん 持 た せ ら れ るか 、 ヽヽうよ うな番 組 に 感 じられた 。 と に か く多 数 の プ ロ グ ラム が 組 み込 まれ て い るの だ 。
★3写
真
6.1
子 供 向 け TV番 組 rゥ ゴ ゥ ゴ 。ル ー ガ Jの シ ー ン。 {フ ジ テ レビ )
80
6
動 的 展 示 と時 間
ひ とつ の 番 組 の 中 で多 くの プ ロ グ ラムが 組 まれ る手 法は「
Sesame Street」
で確 立 され 、殆
どの 子 供 向 け番 組 が この手 法 に則 つ て い る。「
ame StreetJが
Ses
放 送 開始 して 20年 以 上 経
過 して い るに も関 わ らず 、 未 だ に主 流 を保 って い るの だ が 、「 ウ ゴ ウ ゴ 。ル ー ガ 」の 場 合 は 、 CM並 の 異 常 な 回 転 数 で 、考 え る隙 も与 えな いほ どだ 。 しか もプ ロ グ ラム の多 くが CGに よ る もの で 、機 械 的 な声 優 の 声 と と もに、 テ ク ノ ロ ジ ー が 生 ん だ「 高度 情 報 化 社 会 的 雰 囲 気 」 に拍 車 を か け る。 今 の子 供 は生 まれ た と きか ら この よ うな ハ イ =ス ピ ー ドな状 況 に置 か れ 、画 面 に映 し出 され た プ ロ グ ラ ム に 即 座 に『 共 調 で き る 」の が 、 当た り前 の こ と と な っ て い るの か も しれ な い 。深 く考 え る時 間 つ ま り「 個 人 的 時 間 Jが あ るは ず もな く、 次 か ら次 へ と与 え られ た プ ロ グ ラ ム に共 調 して い く。 そ して この「 即 座 に共 調 で き る能 力 」 に憧 れ たの か 、 大 人 た ち が この 番 組 を好 む よ うに な り、 視 聴 率 を 一 般 的 子 供 向 け番組 か ら大 き く引 き離 した張 本 人 とな っ た の で あ る。 しか し、 「 物 理 的 時 間 Jに 共 調 す る こ と に 憧 れ て い る とい うこ とを、 両 者 と も気 づ い て い るの だ ろ うか 。 「 個 人 的 時 間 」が 「 物 理 的 時 間 」 に と って 変 わ られ るの を 、黙 認 す るわ け には い か な い 。 だ か らと い つ て、
r共 調 した時 間 」 を 無 くす わ け に もいか な いの だ 。
81
7
動 的 展 示 の 可 能 性 と今 後 の 研 究 の 方向
1
動的 展示 の可 能性 ミュ ー ジ アム に は 、 様 々 な時 間 が 流 れ て い る。 さ ら に今 後 の ミュ ー ジ ア ム では 、動 的展 示 の持 つ 固 有 の 時 間軸 に よ り、特 に 今 ま での ミュ ー ジ アム には 存 在 しな か った と思 わ れ る種 類 の時 間 ―物 理 的 時 間 ― の 流 れ る 空 間 が 増 加 して して い く こ とが考 え られ る。 それ に 伴 い 、 来 館 者 も、 静 的 な 絵 画 を鑑 賞 す る こ とに よ っ て得 て いた 個 人 的 時 間 の 軸 1本 だ け を、 ミュ ー ジ アム の 中 で持 ち続 け て い く こ とが で きな くな る。 来 館者 は 、 展 示 空 間 に流 れ る時 間 を生 み出 しそ して参 加 し ミュ ー ジ アム で多 様 な時 間 軸 に 触 れ る。
5章 の パ ター ン は 、 異 な る情 報 が 異 な る方向 に流 れ 、 異 な る時 間 軸 が発 生 して い るシ ー ク エ ンスの 連 続 と し て表 され て い る。 動 的 展 示 は 、圧 倒 的 な 情 報 量 を瞬 間 的 に生 産 ・ 処 理 し、 シ ー ク エ ンス の 時 間 ・ 情 報 を圧 縮 す る。 その 反面 、距 離 の 隔 た りを縮 め 、空 間 を 仮 想 的 に ど こ ま で も繋 げ て ゆ く。 これ ら の シ ー ク エ ンス が 連 結 され る空 間 に 、 異 な る種 類 の 時 間 軸 が 交 差 す る こ と にな る。 この 高 度 情 報 化 社 会 に 於 い て ミュ ー ジ アムが 為 す べ き こ とは 、時 間 軸 の 多 様 な 切 り替 えを「 個人 的 時 間 」 へ の ス イ ッチ と して利 用 す る こ とだ 。 時 間軸 の ズ レに よつ て起 こ る接 点 を 、考 え る源 とな り うる情 報 が 流 入 す る窓 口 と して認 識 す る。 テ ク ノ ロ ジ ー に 支配 され て い るか の よ うに 見 え る動 的 展 示 の 集 合 体 と しての 空 間 も、 演 算 機 と しての コ ンピ ュー タが 列 座 す るオ フ イス とは 性 質 の 異 な る もの な の で あ る。 情 報 の圧 縮 度 の 異 な る様 々な空 間 の ふ れ合 う地 点 が 、 鑑 賞 者 の 思 考 段 階 が 上 昇 す る場 とな る。 これ は 、 固 有 の 時 間 軸 を持 つ 、動 的 展 示 の 可 能 性 で あ る。 しか もこれ らの 動 的展 示 は均 質 的 に 一 本 の 動 線 上 に並 べ られ るわ け で もな く、来 館 者 の 判断 で その 流 82
7
動 的展 示 の 可 能 性 と今 後 の 研 究 の 方 向
れが 決 定 され て いか な け れ ば な らな い 。今 後 の ミュ ー ジ アム は 、 動 的 展 示 と静 的 展 示 、 そ して ひ とが もつ 時 間 軸 の 交 錯 す る、 非 均 質 空 間 とな っ て い く こ とだ ろ う。
7.2
今後 の研究 の方向 我 々 は 、 ミュ ー ジ アム に出 向 <こ とに よ り何 らか の 刺 激 を受 け た り知 識 を得 た りして い る。 しか し、 ミュ ー ジ アム と他 の 施 設 との 差 は 、 その 刺 激 な り知 識 な り の あ る種 の 情 報 を受 信 させ るだ け に終 わ らず 、 来 館 者 が 思 考 を巡 らす こ との で き る環 境 を提 供 す る と こ ろに あ った 。 そ して 、 今 後 の ミュ ー ジ アム では 、 積 極 的 環 境 づ く り、 さ ら に様 々 な 時 間 軸 の 中 での 、
1.展 示 空 間 以 外 か らの 情 報 2.資 料 と鑑 賞 者 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン に よ る情 報 3.鑑 賞 者 間 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンに よ る情 報 の時 間 的 操 作 に よ る環 境 づ く りが 求 め ら れ る こ とが 明 らか に な った 。 で は 、 その操 作 す べ き「 情 報 」 とは 何 な の か 、 また 来 館 者 は 展 示 か ら どの よ うに情 報 を得 て い る の か 。
1章 で述 べ た よ うに、 展 示 とは 5感 での コ ミュ ニ ケ ー シ ョン で あ り、鑑 賞 者 が 感 覚 を ど の よ うに 使 つ て情 ‐ 報 を得 て い るか が 重 要 に な っ て くる と思 わ れ る。 さ ら に 、 テ ク ノ ロ ジ カル な動 的 展 示 の 乱 入 で 、 展 示 に於 け る感 覚 に関 す る考 察 が急 が れ る こ と に な る。 鑑 賞 者 が 思 考 を巡 らす状 況 を つ くる、 と い う点 で ミ ュ ー ジ アム 自身 が現 代 美 術 と似 か よ つ て い る と い え る が 、全 感 覚 に訴 えか け る よ うな その 環 境 づ く り、表 現 方 法 では か な り差 を付 け ら れ て しま っ て い る。
H・ フ ォシ ー ヨ ン は 、全 ての 芸 術 の なか で建 築 だ け が持 っ て い る特 権 と して 、 「 一 つ の 内 部 的 な 世 界 を構 築 で き る こ と 」 を挙 げた '1.し か し、 必 要 と す る空 間
貪1「
形 の生 命
J(H・
フ ォシ ー ヨン/岩 波 書 店
)
83
7
動 的 展 示 の可 能 性 と今 後 の 研 究 の 方 向
を ど こ まで も広 げ て い くことの で き る、 FAX―
Tの
AR
よ うな現代 美 術 と比 べ 、確 実 に範 囲が限定 され る
建 築 は 、今 とな っては その権利 が義務 で しか な くな っ て しま う可能性 さ えあ るの だ。内部 的世界が要求 され る住 宅 等 では その権利 を使用 で きよ うが、 ミュ ー ジ ア ム では権利 が あだ とな る こと もあ る。全 く自由な発 想 で進 化 し続 け る現 代 美術 と比 べ 、 ミュ ー ジ アムは その 空 目 的 創 造 力 に於 い て明 らか に後 れ を とって い るとい っ て よ いだ ろ う。 作 品 と鑑 賞者 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンに危機 を感 じた 芸 術 家 た ちは 、 その表 現 方法 に ニ ュー・ メデ イアを取 り入 れ るこ とに よ り、関係 を活性 化 し、プ ロセス 化 し た ア ー トの概念 をよ り強 く打ち出 そ うと した。 この ニ ュー・ メデ イア こ そが 、か つ てポ ー ル・ ヴア レ リー が 『 覚 悟 して いた 」、芸 術 の概念 その もの を も変 え る、 「 魔 術 的 方法 」なの だ 。 ハ イ =テ ク ノ ロ ジ ー が生 み 出 した現 代 の動的展示 は、 人 間 の 持 つ 知 覚 能 力 をは るか に越 え、資料 と鑑賞者 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンの イ ンター フ ェイスが 透明化 して ゆ く兆 しを見せ て い る。展示空 間 での情報 のや りと り が 、 どの よ うに r人 間知 覚 J「 機械 知覚 Jさ れ てい る か を考 察 す る ことが 、新 しい ミュ ー ジ アム の姿 を知 る 手 が か りとな る と思 わ れ、 また今後 の研究 の 方向 で も あ る。
84
おわ りに
動 的 展 示 の 可 能 性 か ら ミュ ー ジ アム の新 し い 姿 を探 る、 と い うテ ー マ を持 っ て研 究 を進 め た が 、型 には め られ た ミュ ー ジ アム の 異 な る側 面 か らの 研 究 と い うこ とで視 点 が ミク ロ な 部 分 に 向 け られ 、具 体 的 な ミュ ー ジ アム の 姿 を提 案 で きず に 終 わ つた こ とは 誠 に 遺 憾 で あ る。 しか し、展 示 空 間 の での「 情 報 」 と い う考 え方 は 今後 の ミュ ー ジ アム に 於 い て非 常 に 重 要 な意 味 を持 つ と思 わ れ る し、 さ ら に ミク ロ な 『 感 覚 」 につ い て の 研 究 は 、 メデ イア と建 築 の 共 存 とい う大 きな課 題 の 上 で、 何 らか の解 答 を 出 して くれ る もの と期 待 して い る。 ミク ロ な 視 点 での 研 究 は 様 々 な 分 野 か らの ミュ ー ジ アム の ビジ ョンを知 る こ と にな った が 、 建 築 分 野 と そ の他 の 分 野 での ビ ジ ョンが 非 常 に異 な っ て い る こ と に 驚 いた 。
2章 で述 べ た よ うに 、 ミュ ー ジ アム が 『 箱 」
に され て し まわ な い よ う、建 築 分 野 か らの 積 極 的 な 変 革 が待 た れ るば か りで あ る。
最後 に 、 御 指 導 くだ さ った 渡 辺 仁 史 教 授 、研 究 論 文 に つ い て右 も左 も解 らな か つ た 私 を根 気 よ く導 い て くだ さ った 木 村 謙 先 輩 、 相 談 に乗 っ て くだ さ つ た水 越 英 一 郎先 輩 、 平 野 え りか さん 、 長 沢 夏 子 さん 、 浅 井 美 都 さ ん 、 谷 井 淳 二 君 、親 切 な解 説 を して くだ さった コピ ー ・ ア ー テ イス トの松 本 英 樹 さん 、 そ して母 で あ る福 原 洋 子 に こ こ に 謝 意 を 表 し、 論 文 を締 め く く りた い 。
参考 文献一覧
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戦 略 的 創 造 の た め の情 報 科 学
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道 具 と メ デ イアの 政 治 学
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山 口勝 弘
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NEW MEDIA 1990 12月 NEW MEDIA 1991 7,9月
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マ ル チ メ デ ィア・ フ ロ ン テ ィア '93
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UR Na 6 VIRTUAL REALITY InterCommunication NQ 7 InterCommunication NQ1 0 ASAHIパ ソ コ ン M125 ED GAME MAGAZINE Ver.3 ヴ ィー ナ ス ・ シテ ィ
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ベ ヨ トルエ 房
NTT出 NTT出
版 版 朝 日新 聞 社 ソ ニ ー ・ マ ガ ジ ンズ
柾悟郎
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人 間 と空 間 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン
(株 (株
号
くヘ ル メ ス
早 川書房
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ミッシ ェル ・ セ ー ル
法政大学出版 部
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あいた
木村敏
文 化 と しての時 間
宇波彰
時 間 と空 間の 誕 生
ゲーザ・ サモ ン
青 土社
時 間 の パ ラ ドッ ク ス
中村 秀 吉
中 公新春
考 え る愉 しみ
中村雄 二郎
青土社
生 さ ら れ た家
多木浩二
青土社
開か れ た作品
ウ ン ベ ル ト・ エ ー コ
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芸術 の 論理
川 野洋
早 稲 田大 学 出 版 部
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回転 す る表 象 ア ー トラ ンナ ー 9。
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現 代企画室
伊藤順二
東 京 書籍 美 術 出版 社 美術 出版社
)
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