博 士 論 文 建築 の設計初期段階 における思考過程 の支援 システムに関す る研究
1998年 10月 早稲田大学大学院 建設工学専攻・建築計画研究
曹
波
.
目
次
一 一
― 一 一
1章
第
一
一
一
一
一
一
―
一
―
一
一
一
―
一
一
―
一
―
―
-1
―
論
序
…
1.1
究
研
背
一
景
一
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
―
一
―
一
一
一
一
…
1
―
‐ ¨
1.2研
目
究
―
的
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
一
一
一
一
一
―
一
一
一
―
一
―
一
一
3
-4 ―
1.3
研
概
究
―
―
―
要
一
一
一
一
一
一
一
一
-6
―
設
支
計
ム
ス
シ
2章 第
一
の
テ
援
方
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
―
一
論
法
-6
2.1
計
事
例
ム
ス
シ
援
支
設
と
の
テ
― ベ
2.2
ー
ス
論
推
方
一
一
一
一
一
一
―
一
一
一
一
一
一
の
そ
状
現
一
一
―
一
―
一
一
―
―
―
法
一
一
一
法
方
一
一
―
一
一
一
一
一
-9
一
‐
二
ベ
2.2.1
ー
一
の
ス
概
論
推
例
事
一
一
一
―
一
一
一
一
―
-11
一 ベ
2.2.2
事
例
事
例
ー
ベ
2.2.3
ス
ー
推
論
推
論
の
特
一 枠
一
一
―
徴
の
ス
9
一
要
一
一
―
一
一
一
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
一
H
一
一
一
組
‐
ベ
2.2.4
ー
の
ス
応
論
推
例
事
一
一
一
用
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
…
―
づ の
2.3
本
位
究
研
…
2.4
と
ま
一
一
一
一
一
一
―
一
―
一
一
一
一
一
一
14
一
け
置
…
…
一
一
13
一
…
―
一
…
…
一
一
一
一
―
…
一
―
…
一
―
一
―
―
一
一
一
一
―
―
…
…
―
…
・
16
め
-17 モ 第
3章
設
思
計
―
3.1
問
題
領
域
の
3.2
設
計
思
考
過
一
一
一
一
一
一
―
一
―
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
一
一
一
一
―
―
― 一
一
義
定
1/一
′
デ
援
支
考
一
一
一
一
一
-17
一
… … の
程
分
一
一
析
…
ー
3.2.1
設
計
3.2,2
設
計
3.3.1
事
例
Ⅸ
Mに
ロ
プ
セ
ス
モ
構
造
思
考
デ
… 一
―
…
…
…
一
一
ル
―
一
一
一
一
一
一
―
…
…
…
一
―
一
一
… 一
一
19
一
一
―
一
一
一
一
‐
…
…
19
一
…
知
の
識
分
一
―
析
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
21
一
― 3.2.3 設計思考 の想起過程 ―事例発想 一一一一 一 一一一―一一 -23 ‐ 26 3.3 設計思考支援 モ デル (Ⅸ M)― 一一―一 …∵一一 ― 一 … に
よ
る
よ
る
モ
ル
デ
ー
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
一
一
一
一
―
一
一
一
一
一
-26
…
一
3.3.2
計
設
支
援
28
式
方
‐
よ
Mに
Ⅸ
3.3.3
設
支
計
援
過
ま
と
め
一
一
―
一
一
―
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
一
30
程
‐
3.4
一
一
一
る
―
一
―
一
一
一
一
―
一
一
…
…
…
…
…
…
…
…
…
一
―
-31
設計事例 の定式化 一一 ―一 ――… …
第 4章 設
計
事
設
計
思
の
例
成
構
要
素
分
析
―
一
一
一
一
―
…
―
―
―
4.1
… … 一一―一一一―一一 …32
一
一
―
一
―
一
一
一
一
一
―
4。
2
の 情
考
報
建
築
法
4.4
定
式
化
一
規
一
一
―
…
一
一
一
―
一
―
一
一
一
―
一
一
一
一
―
一
一
一
一
36
―
…
一 ―
一
一
-33
…
一
―
―
一
―
―
4.3
一
―
一
…
‐
…
38
一
―
-38 の
一
―
例
事
一
一
一
…
4。
4.1
4.4.2
定
式
事
例
化
の
例
定
式
と
ま
本
の
―
の
例
事
知
識
…
…
…
知
識
事
例
の
現
表
技
法
構
成
一
一
一
―
…
…
一
―
一
一
知
識
一
一
一
―
一
一
―
一
5。
2.1
設
計
事
例
5。
2.2
設
計
事
例
の
分
の
内
一
一
―
―
一
一
―
一
一
一
―
一
一
一
―
一
一
一
一
-40
一
‐
― ―
一
-38
一
一
一
-44
一
一
一
―
一
―
一
―
一
―
一
一
一
一
一
―
一
―
一
―
―
一
―
-45
―
一
―
一
一
一
―
―
一
一
-45
一
一
― 一
一
―
一
一
一
一
―
-48
析
―
ー
デ
一
―
一
―
―
一
一
の
一
―
―
― の
2
一
―
一
―
一
5。
一
一 一
一
1
5。
一
一
一
…
一
…
現
表
一
一
一
一
―
―
一
…
5章
第
―
例
一
…
素
要
… ―
一
一
め
基
化
―
―
4.5
の
事
一
―
一
タ
知
部
構
成
識
分
一
一
一
一
一
一
―
一
…
一
―
―
一
―
一
―
… 一
一
―
一
―
…
一
一
一
一
一
-48
一
一
-48
一
類
-50
5。
の
3
例
事
5.3.1
5。 3。
2
5。 3。
3
の
例
事
一
一
避
記
一
の
述
記
一
一
―
―
状
現
―
一
一
一
一
―
一
一
一
一
―
―
一
一
一
―
4
一
一
―
―
一
―
一
―
一
―
一
一
一
―
-50
一
… …50 事例 とクラスー ーーー ー ーーー ーー ーーーーーーーー …… 51 ― 事例 の記述形式 と例―― 一一一 ―― 一――一一 ――一― ‐
5。
―
と
ま
め
―
―
一
―
一
―
―
一
―
一
―
―
―
―
―
―
一
―
―
一
一
―
一
一
―
―
…
一
一
―
―
―
55
― … 建築図面 の記述 と評価方法――一一 一―一 ―一一一一 ――一一 一 56
第 6章
‐ 一
6.1
面
図
建
築
事
例
の
述
記
連
関
一
一
研
一
一
―
一
―
一
一
―
一
―
一
一
―
57
一
究
―
6.2
の
空
間
一
―
―
成
構
一
一
―
―
一
―
―
一
―
一
―
一
一
一
―
-57
一
6.3 空間構成 の記述方法……… … …一 ― 一 …… … … … 一 一 ― 一 一 一 一 -59 …… … 一 ―― ― 一 一 一 ― ―一-62 6。 4 図面 の差異 の評価方法 ― ―一 ―― ―… ‐
の
6.5
複
形
図
雑
一
述
記
一
一
―
一
一
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
…………―――一――――一――――一――一―一――…65 一―――一―‐ 6.6 まとめ‐ “
設計思考支援 システムの枠組 み― 一 一一―一一一一一一一 一
第 7章
…
―
7.1
設
計
7.2
事
例
ベ
ス
シ
援
支
ム
テ
の
枠
み
組
ス
推
―
要
一
―
―
―
論
一
一
一
一
一
一
―
ー
概
―
一
一
一
一
題
問
一
一
―
66
一
― 一
一
一
―
一
―
-68
一
… 一
析
解
一
一
― 一
一
―
―
1
7.2。
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
一
一
一
一
68
―
-69
―
7.2.2
事
例
検
事
例
修
事
例
推
一
一
一
一
一
―
―
一
一
一
一
一
一
―
一
―
一
一
一
―
一
一
一
一
一
―
―
一
一
一
―
一
一
一
一
―
一
一
一
―
索
-71
一
7.2.3
正
―
―
7.2.4
-66
の
論
―
れ
流
一
一
―
―
一
一
一
一
―
一
―
一
一
一
一
-72
一
‐
ル
7.3
ー
一
ル 推
7.3.1
ル
ー
一
一
―
一
一
一
―
一
一
一
一
一
一
一
―
一
一
一
一
一
72
一
論
ル
推
論
の
必
要
性
―
一
一
一
―
一
一
―
一
一
一
―
一
一
一
―
一
-72
-73 ー
一
ル
ル
7.3.2
論
推
機
一
一
一
一
一
…
…
7.3.3
例
事
ー
ル
と
論
推
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
構
論
推
…
…
…
-79
…
…
一
一
一
一
の
ル
一
―
調
協
-81
―
7.4
よ
に
図
一
一
る
一
一
一
一
―
―
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
―
一
一
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
論
推
…
一
の
の
7.4.1
推
図
必
論
…
81
性
要
‐
― 一
の
の
2
7.4。
図
論
推
構
成
論
過
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
81
…
7.4.3
よ
に
図
る
推
… 設
計
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
一
―
…
82
一
…
… 一
7.5
一
一
一 程
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
-87
一
証
検
一
…
…
ベ
7.6
ベ
ー
ス
と
ス
一
ー
一
一
… ベ
7.6.2
知
ー
…
―
…
…
ー
ス
識
一
一
一
一
一
一
89
一
― 一
一
一
…
一
一
一
一
一
―
―
―
一
一
一
一
一
―
一
―
一
…
…
…
…
…
…
―
一
一
一
―
一
…
…
…
一
…
…
89
一
-91
…
…
―
¨ ― 設計思考支援 システムの構築― ―一 一一一 一―一 一 一一一 -92
第 8章
―
―
ス
シ
8.1
設
思
計
ム
テ
援
支
考
の
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
ー
ー
ス
例
事
一
一
一
論
推
…
…
ベ
1.2
ス
例
事
一
一
一
一
―
一
一
一
一
…
―
…
理
管
―
一
一
一
-92
成
構
… ベ
8.1.1
8。
一
一
め
と
ま
一
…
一
・
7.7
一
一
一
… 事例 ベースーーー ー ー ーーーー ーーー ーーー ー ー ーーー 89
1
7.6。
ー
識
知
例
事
一
一
一
一
一
一
一
一
-93
…
…
一
―
-97
一
¨
3
知
一
ー
ス
一
一
一
一
一
… 一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
―
102
―
理
管
識
―
―
一 ベ
1。
8。
―… 1餌 … 8.2 設計思考支援 システムの デー タ構成 …… 一― 一一 一 一一― …
…
1
8.2。
宅
住
ー
ル
規
法
…
…
…
…
一
ル
一
一
一
一
一
一
…
…
104
一
集
採
…
…
8.2.2
…
…
一
の
例
事
の
…
…
…
…
…
一
… 一
理
整
一
一
一
一
一
…
― 一
一
一
110
一
‐ …
…
の
8.2.3
設
計
… 一
と
理
整
則
規
一
一
一
一
一
―
一
一
一
一
115
一
一
集
収
‐
8.3
設
思
計
ス
シ
援
支
考
ム
テ
の
一
―
行
実
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
―
一
118
一
…
¨
8.4
設
計
づ
の
者
位
…
8.5
と
ま
め
一
―
一
一
…
…
…
―
一
け
置
…
一
一
―
一
…
…
―
―
一
一
―
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
1
9。
2
一
一
一
一
一
一
一
一
一
123
一
・
一
―
結
論
今
後
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
望
展
―
一
一
一
一
一
一
一
… の
―
―
一
9。
一
一 一
一
-122
一
一
一
論
結
121
一
― ―
一 一
―
一
一
―
一
一
― ―
9章
第
一
一
一
一
―
―
― 一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
―
…
…
一
一
一
一
一
一
一
…
…
…
…
…
…
-123
― 一
-128
一
‐
考
一
―
一
一
一
―
一
一
一
一
… … ―
一
一
一
130
―
献
文
… 一 一 謝
…
…
―
― 一 参
一
一
一
一
一
一
一
辞
付録 履 歴書 研 究業績 英文概要 博 士論文審査報告書
一
一
一
…
…
…
…
…
…
…
…
… 一 一
一
一
一
―
一
134
第 1章
1
論
章論
第 序
1。
序
研究背景
人 間の思 考活動 を 支援す るこ とは 創造 的 な問題解 決 に携 わ ってい る人間 に とって コ ンピュ ー タが誕生 して以来 の「 究極 の夢」 で あ る。近 年、情報 処理技術 の 急激 な発 展 に支 え られ 、人工 知能技術、知 識 工 学、認 知 工学 、 メ デ イア技 術 、ネ ッ トワー ク技 術 な どを駆使 して、従 来 では不 可 能 と思 われてい た コンピュー タが 人間の創 造 な問題 解 決 ・ 思考活動 を支援 す るとい う研 究 が着実 に進 んで い る。
CAD(COmputer Aided Design)は 本来 、設計 者 が持 つ設 計対象 物 のイメ ー ジを シ ス テ ム にな るべ く自然 な形 で写 し取 り、そ れ を最大 限 に活用 しなが ら設計 者 が 中心 と な って設計者 が持 つ設計対 象物 べ き属性 な どの 情報 を決 定 し詳細 化 して い くた め の 「思考環境」 を提供 す るもので なけれ ばな らない。 しか し、現 在実現 され てい るCADシ ス テ ムは明 らか に形状 情報 に重 きがあ り、 設計 にお け る思考 そ の ものの支援 は行 わ な い し、問題 解決能力 も不足 して い る。 また 、対象領 域 固有 の知 識 が ないた め、設計 者 の意図 を理解 しな い ことは事 実 である。上 述 の問題点 を解決す るため に、近年、CAD シス テ ムの本 来 の 目的 であ る設 計 におけ る思 考 過程 の支援 システ ムの 研究一 知 的な
CADに 関心 が高 まって い る。 知 的なCADと い う概念 は数年前 に世 界 中の会議 、雑誌 上で 議論 され るよ うに な っている。従 来 のCADが 設計結 果 として の対象 の幾何学 的表現 を 支援す るのに対 して、知 的なCADは 設計者 の思考過 程 をよ り直接 的 に支援す る こと を 目的 とす るとい う こ とで あ る。知 的なCAD研 究 には異 なる研 究思想 がある。 システ ム の設計活 動へ の 関与 に関 して、 自動設計
(Automated DeJgn)あ る い は設 計 自動 化
第 1章
序
論
(Design AutomaJon)を 目指 す立場 と、設計 者 を支援 す るまさにCADの 環境 の実 現 を 目指す立 場 が あ る。 それ らの 立場 の相違 は実際 のシステ ムの 性格 や研 究 方法論 に顕 著 に反映 され て い るが 、それで も全体 に共 通す ることは以下 の 点 があ る。 まず、従 来 のCADと 異 な り形状 情報 や技術情報 だ けで な く、設計知識 を扱 う とい う立 場 が極め て 鮮明 である。次 に、製 図や形状 の定義 だ け で な く広 い 意味 での 設計行為 全 般
へ の関 わ
り、 よ り本質的 な部分 での設計支援 を意識 して い る。 建築設計 分野 で も ここ数年、 コン ピュー タ利用 が 急速 に発 展 し、 製 図作業 を中心 に 考 えるCADシ ス テ ムが多 く開発 され るにつ れて、建築設 計部 門 にお い て 、CADシ ス テ ム を導 入 して意匠設計 過程 にお いて、一般 図 (平 、立 、断 )、 詳細図、透 視 図、 日影 図 を中心 とす る図面 をcAD化 した とい うCADシ ス テ ムの利 用 は急速 に普 及 した。 しか し、 この よ う に製図 の道 具、 あ るぃ はプ レゼ ン テー シ ヨンの道具 としてのCADシ ス テ ムの利用 が 普及定着 したのに対 して、建築 計 画 。設計 段 階 にお い て設計 を発想 し、 設 計思考過程 を支援す る システ ム が あ ま り考 えて い ない 。設計者 が製 図 をす るのが任 務 ではな く、建 築 を発想 し展開す るの が設 計 の主 要任務 と考 えると、CADシ ス テム を設 計者 の思考や作業 に馴染 む ような道 具 に変 えて行 くことは期待 される。 しか しなが ら、 現実 に建築 設計 は豊 富 な知識 や 経験 、複雑 な判断、あ るいは高 度 な専 門知 識が要求 さ れ、設計者 の専 門的、経験 的知 識 に基 づ く意思決定能 力 に依存 す るため に、それ ら を システ ム化 す ることは極 めて 難 しい と指摘 され ている。 その理 由 として 、 芸術 的創 造 活動 である 建築設計 は 芸術 、意 味、意志 な どを含 む抽 象度 が 高 い概念 に強 く依存 して いるだ けで はな く、そ の 目標 の 設定、設計 意 図 の具体 化 、設計 作品 の評価 などの設 計 過程 も抽 象 度 が 高 く曖味 であ り、設計 と経験知 識 の規則 を明示的 に持 たな い場合 が 多 い ことな ど非常 に課題 を抱 えて い る。 一 方、人 工 知能 の 分野 にお いて、 エ キ ス パ ー トシ ス テ ム に代表 され る知識 システ ム の問題解 決方法 として 、 ル ー ル ベー ス 推論 (Rule― Based Reasoning)や モ デ ル ベース 推 論 側 ode卜 Based Reasoning)が 広 く採用 され て きた 。 ル ー ルベー ス推論 は領域 専 門 家 の経験 的知 識 に基 づ く ことか ら、効率性 にお いて優 れ て い るが 、知識獲得 とい う難 し い 問題 を抱 えて い る。 モ デルベ ー ス推論 は 対象 とす る システ ム の構造 や構 成要素 の 特 性 に関す る 原理 。原 則 的 な知 識 を利用 す ることか ら、完 成性 の達 成 は容易 で あ るが 、 効率性 にお いて 問題 がある ことが指摘 されて い る。 近年、 ル ールベー ス推論 とモデルベー ス推論 を補完す る新 しい問題解 決方式 として、
2
第 1章
序
論
ベー ス推論 「新 しく発 生 した問題 の解 を過去 に発生 した事例 か ら求 める」 とい う事例 いる。その 方法 の基本概念 は、過去 に経験 し CaSe― Based Reasoning)が 注 目を集 めて の た事例 を事 例 ベース に保存 して お き、新 しい問題が発 生 した時 に、保存 された過去 ベ ース推論 は 類似 の事例 を利用 して新 しい問題 の解 を導 出す る推論 過程 であ る。事例 い 領 知識獲得 の 負荷軽減 と推論 に対す る問題解決過程 の縮約 と規則 が 明示 され な 問題 域 に対 し問題解決能力 の向上な どの点が期待 される。
1。
2
研 究 目的
本研究 の 目的は建 築設計 の思考 プ ロセスの支援 の ために、設計
の初期段階 の構想 設
で きる設計支援 計 に着 日 し、過去の設計事夕1を 利用 して設計者 の能力 を最大限 に発揮 ロセス において創 造的な問題 環境 の構築 である。 これは建築 設計 の初期段階の設計 プ び にコ ミュ 解決能力、す なわち、設計者 に設計思 考 プロセ スを支援 す ることおよ 知 的 ニケー シ ョンを行 うことを目指す。具体的 には次 の 目標 としてまとめられる。
1)設 計事例 に基 づ く事例発想 に よる設計思考支援 モデルを提案す る。提案 したモ デ ルは設計 の 解 の 自動生 成ではな く、類似事例 の推論 お よびその 事例 の学習 を結合 しな みる が ら設計者 の想像力 を誘発す る支援方式 を導入 して設計思考支 援環境 の構 築 を試 ことである。
2)建 築設計 にお け る思考過程 に適用 している事例 ベース推論 とい う方法 を導入す る ことを中心 として、従 来 のルー ルベース推論 お よび近 年発展 中 の図 による推論 を考慮 した推論機構 を統合す る設計思考支援 システムの基礎的枠組 み を示す ことである。
3)提 案 してい る設計思考支援 モ デルとシステム基礎的枠組 みに基 づいて、建築 の 設 計初期段階 における思 考過程 の 設計支援 システム を具体 的 に構 築 し、 価す る ことである。
この 有効性 を評
第 1章
序
論
1.3 研究概要 本論文 の構成 は次 の通 りである。 システムの研究の発展 と現状 を概観 「第 1章 序論」では、研究背景 として設計支援 の支援 、 あ るいは設計 思考過程 の支援 す る上 で、建築設計 の分野 におけ る知的な設計 びに研究概要 として各章で議論 されて に関連 す る研究 か ら、本論文の研究 目的、 なら いる内容 を述べ ている。 システムの方法論 とい うテ ー 「第 2章 設計支援 システムの方法論 」 では、設計支援 の検討 を行 う。特 に、 の マを中心 として、従来の設計支援 システムの現状 とそ 研究方法 ー いて 、 これまで にお こなわれて きた コンピユ 日本 の国内 における建 築設計分 野 にお を す るう えで、本論 文 の研究方 法 タ技術 を用 いた設計支援 に関す る代 表 的な研究 議論 る起源 、原理、枠組 みお よびその応用 において核 心技術 であ る事夕1ベ ース推論 に関す 文 の研究 の特徴 を示 しなが ら本研 な どを示す。 さらに、 そ れらの述説 とともに、本論 究 を位置づ けている。 「第 3章 設計思考 支援 モデル」 では、本研究 て問題解決 を解説 し、建築設計 の思考 プ
で支援対 象 とす る設計初期段階 にお い
ロセスにおいて事例 発想 とい う設計方法 が よ
がないこ とおよび設計 の知識 が ルール形 る。 それ らの 一連 の分析 のことに基 づ 式 で記 述で きない場合 が 多い とい う点 を論述す し、事例発想 を中心 として規 則 いて、建築 設計 に適用 している事例 ベース推論 を導入 モ ル (DCM)を 提案 してい る。 また、DCMに よ 発想 と設計検証 を統合す る設計 思考 デ で きる支援過程 を解説 してい る。 る設計支援過程 において設計者 の創造 的な思考 を発揮 ベー スシステ ムの基盤 となる事例 デー タの 「第 4章 設計事夕1の 定式化」 では、事例 にお いて設計思考 に影響 を与える情報 か 構成要素 に関す る検討 を主な内容 と し、事例 の となる設計者 の設計理念 や思想、 ら構成要素 を定式化す る。 また、設計 の創造活動 柱 る 報、 お よび設計 の思考活動 に影響 す 設計 の思考活 動 を記 述す る設計 意図 に関連す 情 例 から設計 の思考情報 として整 る制約要因 としての法 規 を主要 な内容 として、設計事 く使 われ る こと、設計 の案 に対 す る評価基準
理 している。 る重要な研 究課題 で あ る知識 「第 5章 事例 の知識表現」 では、 まず人 工知能 におけ てその特徴 を簡単 に述べ る。そ して本 シス 表現 の技法 について、代表的 な 5つ を上げ を分 析 し、事例 における知識 の類 型 テムで対象 とす る設計 事例 デー タとその構 成形式
第 1章
序
論
いて設計事例 を を分類 して整理 した上 に、本研究 が オブジ エク ト指向モ デ ルのC持 を用 己述 してい る。 言 「第 6章 建築図面 の記述 と評価 方法 」 では、 問題解決 過程 に図面 の役割
の視点 の 分
の記 述 べ い 類 か ら、推論 役割 の図面 の記述方法 を中心 的述 て る。設 計事夕1の 空 間構成 の類 づ の 方法 お よび空 間 の評価 方法 を提 案 し、そ の 提案 した方 法 に基 く建築 空 間形態 似性 の判別方法 を示 して い る。 「第 7章 設計思考 支援 システ ムの枠 組 み」 で は、事例
ベ ース推 論 とい う方法 を中心
として、従来 のルールベ ース推論 お よび近 年注 目 され て い る 図 による推 論 を付加 した い る 。そ して 、 推論機構 を統合す る設 計思考支 援 システ ム の基礎 的枠 組 み を提 案 して ベー ス 推論、図 に よ システ ムの枠 組 みの基本 的 な構成 で あ る事例 ベー ス推論 、 ル ー ル る推論 、設 計検証及 び 事例 ベー ス と知識 ベ ース につい ておのお のの機能 を詳 しく解 説 してい る。 「第 8章 設計思考支援 システムの構築」 では、提案 した システ ムの枠 組 に基
づいて、
ス テムの構 成 戸建 て住宅 を対象 として 設計初期段 階 にお け る設計思考支援 に関す るシ ベー スお よび領 域知識 ベ ー と機能 を解 説 してい る 。 システ ム は事例 ベ ース推論、事 例 ス を軸 として そ の三 つの 機能モ ジ ュ ール を展 開 し、 ル ールベ ース と図 に よる推論 を事 つ いて例 を通 して解説 し 例 ベ ース推 論 のモジ ュ ー ル と組 み 合 わせ て システムの 構築 に てい る。 そ して、 デ ー タ となる設計 事例 、法規規則 、設計規 則 につい て 、その採集 方 法 を解説 し、採集 した実 デー タの リス トを示 してい る。 「 第 9章 結論」 では、本論文 の研 究成果 を概括 し、 本論文 で提案 した設計思考支援 モデル と研 究方法 の有効性 を考察 して い る。最後、実用 システ ムの 開発 の ために問題 点 と今後 の課題 も示 して いる。
第 2章
早 立
第2
設計支援 システ ムの方法論
設計支援 システムの方法論
2。
1
設計 支援 シス テムの現状 とそ の方法
に、 MITの 研 究 グル ー CAD(COmputer Aided Design)と い うコンセ プ トは1960年 頃 プが提唱 して登場 した ものであ る。MI「 の研究 グ
ル ー プが コンピユー タを設計支援 に用
いて揚 げ られた日標 は、 (1) いることを着想 してCADの 研究 は始 まった。 この計画 にお ー の 形 を媒介 にした コンピユ ー 人間 とコンピユー タの対話による コンピユ タ 利用 、 (21図 ュ レー シ ヨンの三つ に要約 されCAD概 タとの対話 、 (3)コ ンピユー タ支援 による シ ミ 念 は明確 にされ た。
1963年 にSutherlandが 実現 した最初 の 図形処 理 シ
ス テ ムSketchpadは 現在 のCADの 原型
となった 。 それ は 単 なる図形処 理 シ ステムで はな く、対話性 、 どCADに おけ る重要 な概念 を含 んで いた。同時 に発表 され
データ構造 、拘 束処 理 な
たRothの 論文 にお いて も、 設
を提唱 され て い る。 しか しそ の後 の 計過 程 の 記述 とい う今 日か ら見 て も重要 な概 念 となつた。設計 と CAD研 究 の 発展過程 では、幾何 情報 の取扱 い とそ の応 用 が 中心課 題 い う観点 か らの議論 は非常 に少 なか つた。 の 頃 か ら比較 的 よ く研究 さ は 人工 知能 と知識 工 学 の応 用分 野 と して、診断 問題 初期 いる分野 である。 1980年 代 に入 つ れ て きた。 これ に対 して、設計 問題 は研 究 が 遅 れて
シス テムが開発 された。 そ てからはエ キスパー トシステム ブームにの ってさまざ まな る の中で注 目された研究 として、次 の ようなものがあげられ 。 ムは最初 の機械系CADに 人工知 能 1976年 にStanford大 学 にLato面 beら の■ЮPICシ ステ び 的な研究 としてはPreissが フ 技術 による応用す るシステムで あ る。Latombeに 並 先駆
6
第 2章
設計支援 システ ムの方法論
フ レーム理論 をデ ー タ構 造 として採用 す る ことを提案 した。 システム と し 1985年 にCarnegic Me■ on大 学 の Rchak,Srirarnら は統 合化高層 建 築設計 ツ トアー キテ クチ ヤやデ ー てのKADBADEを 開発 したが、 このシステ ムはブ ラ ツクボ の システ ムで あ る。 タベ ース との結合 な ど統合化CADの 観点 を明確 に打 ち出 した最初 J.Gero(1985,1987),富 山(1987),吉 川 (1989)ら が 知 的 なCAD(htelligent Computer CADの 研 究 が盛 んにな っ Aided Design)と い う概 念 を提 唱す した ことによつ て知的 な て いた。 は1991年 よ り1996年 い そ の他、J.Geroが 主催 して い る「AIin Design」 と う国際 会議 が 発表 され ていた 。 まで4回 に開催 され た 。 そ の 中 に建築設計 に関連 の研 究論文 多数
日本 の国内 におけ る建 築設計分 野 にお いて、 1970年 代 か
ら、 コンピユ ー タ技術 を用
いて設計支援 を行 う先 駆的 な研 究 として、 大阪大学 の 笹 田剛史教授 、早稲 辺仁史教授、 東京大 学 の 山田学 助教 授、東京工 業 大学 開 され た。 1975年 日本建築学 会 で も研究 と実践
田大学 の 渡
の青木 義次教授 な どの研 究 は 展
の場 での コンピユー タ利用委員 回が 発
シ ンポジウムが開 催 されたか ら、 足 し、 1979年 同委員会 主催 で 、第 1回 電子計算機 利用 つ いて、代表 的な主要 な研究 は次 の よ 今年 が 20回 に も開催 され た。 それ らの研 究 に うに上げ られ る。 ムの開発 に関す る基礎 的研 究」 大阪大学教授 の笹 田剛史 (1976)は 「建築 設計 システ コンピュ ー タの内部表現 、内部表現 か ら にお いて、設計者 と コ ンピユー タの関係 か ら し、計算 機援用 建築 設計 シス テ ム 外部表現へ の 変換方 法 とデザ イ ンの 評価方法 を整 理 の概念 モデル を提示 した。 コンピュ ー タ技術 を用 いて設計 評価 を中心 に 早稲 田大学 教授 の渡辺 仁史 (1977)は におけ る行動 シ ミュ た 「 人間 の行動 シ ミュ レー シ ヨンとい う形 で展 開 して き 。 建築計画 ー ヨンによる設計 評価 の方法 論 レー シ ヨンに 関す る研究 」 にお いて 、行動 シ ミュ レ シ ミュ レー シ ヨンや居住者 の 行 を確 立 した。 近年、設計 案評価項 目 の一つで あ る避難 シ や三次元 モ デ ル リ ン グシステ ム の 動 シ ミュ レー シ ヨンを事例 に、 空間モデル 構成要 素 ー ヨンのため の 空間記述言 語 の 図形要素 に付加すべ き記述内容 な ど、行動 シ ミ ュ レ シ の枠組 み を提案 した。 計 の 初期段階 におけ る図形 処 京都 工芸繊 維大学 教授 の 山口重 之 (1986)は 「 建築設 ン生成時 の 利用 に関 して、 ス ツケ 理 システムの 開発 に関す る研 究 」 において 、 デザ イ
第 2章
設計支援 システ ムの方法論
。 の重要性 、視覚化 の速 性 簡素性 ) チ の役割 か ら建築的思考 (図 形的、 視覚 的 な思考 の 手法 と方法 を「建築 的 思考支援 シ ス を整理 し、 コ ンピユー タ におけ る図 形情報交 換 テ ム」 として提示 した。 建築設計 過程 で設 計者が 自分 の意図 した建 東京 工業大 学教授 の青 木義次 (1987)は ベー を検討 し、相 関類推 法 を用 いた建 築知識 の 築 空 間 を コ ンピユー タ に伝 える際 問題 さらに、 (1996)生 命 の 自然的 な進 スの生成 と類推 に関す るアプロー チ を提案 した。 とい う遺伝 アル ゴ リズム方 法 を用 いて 設計 の室 配 化過程 を模 倣 して最適 化 問題 を解 く ロ ー ついて生命 の進化 と建築 プラ ンの改良 との 間 のアナ ジ 置問題 に関す る一連 の研 究 に を考 え、進化 プ ロセス を模倣 した プラ
ンの改 良方法 を提 案 した。
の 科学 的視点 か ら建 築 を捉 え、 心的過程 中 筑波 大学 助 教授 の渡辺 俊 (1993)は 認知 モデルにつ いて言及 し、設計 の 科学 で用 い におけ るシ ンボル体系 としての 建 築 のメ タ ロセスの モデル に対応 づ け 、 オブ ジ エ ク ト指向環 境 られ る分析 ― 合成 ―評価 とい うプ る とと もに、 オ ブジ エ ク ト指 向言 語 で統合 化 され る建築 の知 識表 現 モ デ ル を提 案す ステ ム Smalltalkを 用 いて具体 的 な知的CAADシ
(00AMS)の 開発 を行 った 。
企画設計 過 程 で作成 され た多数 の ス 熊本 大学教 授 の両角光 男、位寄 久 和 (1996)は モデ ルの遷移過 程 を分析 し、そ こに共通 して 見 ヶ ッチや模 型写真、 図 面 な ど視 覚表 現 を整理 した。 さらに企画設計段 階 ぃだ され る空 間モ デ ルの 構 成要素 の 分類 とそ の遷 移 モ デ リ ング システ ムが 備 えるべ き建 におけ る発想 や思考 を支 援す る道 具 として三次元 た 的CADの ため の 空間記 述言語 を開発 し 。 築 モデルの空 間記述 モ デ ル作 を提 案 し、知
第 2章
設計支援 システムの方法論
2.2 事例 ベース推論方法 人間が問題解決 を行 う場合、 いつ も原理、原則や規則 に基づ く推論 によるのでは な く、失倍 を含 めて過去 の 経験、特 に類似 した事例 か ら問題 の 解 を類推す る問題解決 を 行うことは多 いである。「新 しく発 生 した問題 の解 を過去に発生 した事例 か ら求める」 とい う事例 ベース推論 case_Based Reasoning)が は1980年 代初 め ごろか ら、主 に認知科 学 の分野 で 研究進め らる。以後 これに関す る研究が広 い分野 で 活発 に行 われる。 さら に、1988年 には、事例 ベース推論 に関す る ワー クシ ヨツプが 開催 されるな ど、静 か に 関心が広が りつつある。近年、事例 ベース推論 に関す る研究 が盛 んになって、広 い 分 野 で実用 の システム もい くつか 開発 された 。設計分野 で も、設計方法論 の ひとつ新 方 法 として、事例ベース推論が注 目を集めている。 一方、人 工知能の 分野 にお いて、エ キスパー トシステ ム に代表 される知識 システ ム の問題解決方法 として、 ルールベー ス推論cule_Based Reasoning)や モ デルベース推論 CMOdel― Based Reasoning)が 広
く採用 されて きた 。 ルール ベース推論 は領域 専門家の 経
験的知識 に基 づ くことか ら、効率性 において優 れ ているが、知識獲得 とい う難 しい 問 題 を抱 えて い る。モ デ ルベース 推論 は対象 とす るシス テムの構 造 や構成要素 の特性 に 関す る原理 。原則的 な知識 を利用す ることか ら、完成性 の達 成 は容易で あるが、効率 ベース推論 性 において 問題がある ことが指 摘 されてい る。ルール ベース推 論 とモデル を補完す る新 しい問題解 決方式 として、事例 ベー ス推論 は知識獲得 の負荷軽減 と推論 に対す る問題解決過程 の縮約 と規則 が明示 されない問題領域 に対 し問題解 決能力 の 向 上などの点が期待 される。
2.2.1事 例 ベ ー ス 推 論 の概 要 事例 ベー ス推論の 起源 としては、 1980年 代初 め ごろか ら、主 に認知科学 の 分野 で研 究が進め られ た。エール大学 のSchankら のグルー プによる記憶 と想起 に関す る認知科 学的モデルに求めることができる。Schankは その著書 「Dymamic Memory」
において、"
人間が理解 し、学習す るとい う こと」 を想 起 とい う現象 を通 し議論 し、さ らに融通性 のあ る記憶構造 をいか に構造す るか について述べ てい た。Kolodnerは Schankの 長期記 つい て 憶 の認知 モ デルの研究 に基づい て、問題解 決 における事例 ベー ス推論 モデ ルに 議論 してい た。事例 ベ ース推論 とい う用語 はKolodnerが 最初 に使 ってお り、 1980年 代
9
設計支援 システ ムの方法論
第 2章
つて い る。 後半 よ リー般 的 に使 われる よ うにな つて今 日に至 事例 ベー ス推論 の ほか の源 流 は類推 に求 め られ 存 に基 づ く類 推、構 造写 像理論 に基
る。類 推研究 と しては因果関係 の 保
づ く類推、部 分 同一性 に基づ く類推 な どが あ り、
事例 ベース推 論 に影響 を与 えて きたの はCarbonellが 提案
した誘導類推 で あ る。誘導 類
の を す る こ とを基本 として 推 は事例 におけ る解 の 誘導過程 を変換 して 、問題 解 再誘導 いる とい え る。 い る ことか ら、計画 や設計 な どの合成問題 のモデ ル にて きして ベー ス 推論 の ワー クシ ヨツプ 1988年 には、米国 フ ロ リ ダでDARPAの 後 援 による 事例
IJCAI-89に おけ るKobdner が 開催 され、 内外 の 関心 を大 き く集 まるに至 つた 。 また、 した。 日本 で は、 とRLsb∝ kの チ ユー トリアル講演 は事例 ベ ース推論 の啓 に大 き く貢献 1990年 には小林重信 らのKSノ Ⅵ CAR
SWGが 事例 ベ ース推論 の 研究動向 に関す る調 査 研
は盛 んな つて いた。 究 を行 うにつ れて、事例 ベー ス推論 の研 究 と開発 せ る とい う個 々の 人間 に 想起 とは 一群 の知 識 を構造 し、それ を適 当 な時期 に取 り出 し、以前処理 した こ の 生 じる現象 で あ る。専 門家 は新 しい 入力 を受 け取 る と、 そ 評価 とに照 らして理 解す る 。す なわ ち、新経験 が発 生す る 時 に、そ 経験 と照合 し時 に、想起 が発生 して 、新経験 は古
れ ともっと も関連深 い
い経験 を用 いて問題解 決 をす る。想
起 は記憶構 造 の 自動 的修 正 の原 動力 であ る 。理解 とは過去
の経 験 の 中で入 力 に もつ と
か ら、以前 の経 験 を も似 てい る もの を探 し出 し、新入力 と古 い記憶 との相違 示 す検索 に照合 して コー ド化す る ことである。 エ キ スパ ー トシス テ ムの原 点 は専 門家 の問題 解決 の思 考 過程 を真似 るわ け 専 門家 が持 つ 問題解決 の 知識 を集 め 、そ れ を
であ る 。
コン ピュー タ化 す るこ とに よ り問題解 決
しょう とす るのはエ キ スパー トシス テ ムの普通 の 開発手法
である。
の に、過去 に似 た問題 を どの よ 専 門家 の 作業 をよ く観察す る と、新 しい問題 を解 く い い ままでのエ キスパ ー トシ うに解決 した か とい う事 例 を参 照 に して いるこ とが 多 。 め て推論 して ス テ ムの方 法 には、専 門家 の問 題解決 の知 識 だけ に注 目 し、そ れ らを集 とは専 門 い るが、過去 の問題解決 事例 を参考 にす る ことは なか つた。 知的 な問題 解決 家 の知識 を利用 す るだ けでな く、専 門家 の 問題解 決
の 思考過程 を学 ぶ ことで 問題解 決
い アプローチは ー を行う。このような専門家の思考パ ターンをコンピュ タ化すると う 事例ベース推論の原点である。
10
第 2章
設計支援 システムの方法論
2.2.2事 例 ベ ー ス推論 の特徴 次世代知 識 システ ムの基盤技術 として、事例
ベース推論 が期待 された理 由 として以
下の ようにある。
1)知 識獲得 の容易 で 難 しく、 それはエ キ 現実 では 、専門家 の知識 を明確化 してい く作 業 はかな り大変 エ スパー トシステム が スパー トシス テム を開発 す る過程 の 最 も困難 な こ とである。 キ つてい る。事例 はエ ピソー ト 成功す るか どうかは この作業が 旨 くい くか どうかにか か が不在 の問題 として記憶 されてい るので、獲得 は より容易 と見 られる。 ま た、専 門家 てい ないことか ら、過去 の探索 事 領域 では、 検 索 をガイ ドす る理論や方法 が確立 され 例 を有効 に利用す る枠組へ の期待 は大 きい ものが ある。
2)問 題解決の効率化 しているこ とか ら最 適 計画 や設計 な どの合成型問題 は、一 般 に、組合せ問題 を内包 ベ ース推論 で は、問題解 決 の全過程 で 解 の探索 に膨 大な計算量 がかか るた めに、事例 に す ることに よ り、推 論 最適解 の探 索ではな く、過去 に解 いた類似 の事例 を有効 利用 や探索 の問題解決過程 を縮約で きる。
3)問 題解決限界 の拡大 ればならないよう な 現実 には、曖味 な不完全 な情報 か ら、ある程 度 の推測 をしなけ は 問題 に対 してか な 不良設定問題rill defmed problemJも 存在 している。専門家 不良設定 いた知識 システムでは、規 則 り上手 に問題解決 を行 なつてい る。従来 の推論方式 を用 つている。事例 ベース 推 が明示 されな い不良設定 問題 に対 してかな り苦手 の状態 とな いるので、規貝1は その適用 条 論 は知識 を規則 ではな く事例 として持 つこ とを強調 して との兼合 いの 中で暗黙 の うち に 件 を独立 に明示 してい るのに対 し、事例 はほかの事例 に対 して問題 い 適用条件 が決 まる。事例 ベース推論 は規則が明示 されな 不 良設定 問題 解決 に有効 な推論 がで きる。
2.2.3事 例 ベ ース推論 の枠組 事例 ベー ス推論 の 原理 は過去 に行 った推論結 果 をなん らか
の基 準 に基づ いてメモ リ
の強 い 適 と の に格納 してお き、新 たな 問題が発生 した場合、 メモ リか らそ 問題 関連性 よ と るものであ る。 切 な事例 を取 り出 して、必要 なら修 正 を加えて問題 の解 を得 う す
第 2章
設計支援 システムの方法論
について、構 成要素及 び推論 流 れを図2.1に 一 事夕1ベ ース推論 システムの 般的 な枠組 参照 して解説す る。
事例検 索器
み 図2.1 事例 ベース推論 の一般的枠組
・事例 ベース であ り、成功事 例 だけで な く、失敗事例 も含 特徴 づ け られた問題解決事 例 の集 ま り まれ る。 。問題解析 特徴 づ け ルールに よつて問題 の特徴
づ け を行 なう とと もに、予想 され る問題 点 を列
挙す る。 ・事例検索 事例 を格納 した事 例
ベースか ら与 え られた問題 の特徴 と比べ て 、最 もよ く照合す
る
事例 を検索す る。 。事例修正
の違 い を考慮 しなが ら、領域知識 を使 っ い 検索 された事例 を問題 の間で照合 しな 部分 れた問題 の解 とする。 て、事例 の解 に対 して修正を行 な つて与 えら ・事例修復 検索 され た事夕1の 問題
への適用 に失敗 した場 合、領域 知識 また は別 の事 例 を使
い、
るように、対応す る特徴 ルールを変更 す る。 剣敗の原因 を解析 して、同 じ過ち を回避す た す る ことがで きれ ば、 これを与 えられ さらに、修復 ルール に よつて失 敗事例 を修復 問題 の解 として出力す る。
12
第 2章
設計支援 シス テ ムの方法論
。事例格納 器 づ 事例 ベー ス推論 に よる問題 解決 は、 それ 自身 を新 しい 事例 の獲 得 とみ な し、特徴 け を行 な った うえで、成 功事例 として事例 ベース に格納 され る。同様 に 、失敗事例 も 事例 ベー ス に格納 され る。
2.2.4 事 例 ベ ース 推 論 の 応 用 事例 ベー ス推論 システ ムの研究 開発 は、 アメ リカでは 1980年 代後 半 よ り始 ま り、最 っ 初は大学 を中心 に数多 くの試作 システ ムが構築 され、産業界 か ら注 目され るまで にな た。 ここでい くつ かの システム を挙 げ る。 1)Battle Plan Advisor(1988)戦 闘計 画 の提案 と評価 を事夕1ベ ー スで 行 う もので 、戦 闘
の情
お よび作戦 の情 報 を入力 として 、類 似 の戦闘事 例及 びそ の結果 と解 析 を出力 す
る。
2)JUDGE 有罪犯 の 判決 を事 例 に基 づ いて推論 す つ もの で 、犯罪 の記述 お よび違反事実 を入 力 す る と、判決 が出力 され る。50の 事例 を持 つ 。
3)Protos 難聴 の診断 を対象 として 、患者 の兆候 の記 述 を入力す ると、診断が 出力 され る。 120 の事夕1が 格納 され てい る 。既存 の エ キ ス パ ー トシス テ ムの比較 にお いて Protosの 有 用 性 が確認 され て い る。
4)CYCLOPS いて 、 景観設計 領域 にお いて 、新 しい場所 の代 替的 な配置 の生 成 を行 う タス ク にお 日標 を入力す る と、可能 な レイアウ トが出力 される。
一 方、 日本 国内で も、数年前 よ り、 事例 ベー ス推論 システ ムの 研 究 開発 が始 ま り、 近年、事例 ベ ース推論 を利用す る知 的 システ ムの 構築法 に関 す る研 究 が 盛 んに行 なわ れて い る。
1)機 械調整支援 システ ム ベー ス たば こ製 造機械 を対象 として、 ユ ー ザ とシス テ ムの協 調 に基 づ く対話型 事例 推論 システ ム を開発 して い る。
2)プ ラ ン ト診断 システ ム
13
第 2章
設計支援 システ ムの方法論
プ ロセス 診断 を対 象 として、動 的 メモ リ上 での事 例 ベース 診断 の 方式 を提 案 して
い
る。事例 に基 づ く診断 のため に事例 の操作 に関 して色 々 な方法 を提案 して い る。
3)事 例 を用 いた法 的推論 システ ム 事例 を用 いた法的推論 の 計算 モ デ ルの構 築 を目的 として、解釈
の 分析 と事 例 ル ー ル
による事例 の 表現方法 、論 理 の構築方 法 を考察 し、 HELIC― Ⅱとい う推論
エ ンジンを 開
発 して い る。
4)事 例 に基づ く設計支援 へ の展 開 お の 受注 生産 型 の標準 機械製 品 を対象 として 、仕様書 作成、特 別使用 機能 よび機 能 の部品 へ の展 開 をCBRに よ り支援す る対話 型 設計支援 シス テムSUPPORTを 開発 して い る。
2.3本 研究 の位 置 づ け いて設計支援 シ 本章 の前 に従来 の 設計支援 システ ムの研 究、特 に 建築設計 分野 にお ステムの研 究 の現状 とその研究 方法 を述べ た。建築 の 意匠設計 をデザ イ ン生成 とデ ザ ー イ ン生産 とい う三 階段 に分類す れ ば、 つ ま り、 デザ イ ン生成 とは建築 イメ ジの発 想 を中心 として創造 的 な思考 の プ ロセス であ り、 デザ イ ン生 産 とは デザ イ ン生成 に よ る 発想 され た イメー ジを実体 として の建築 に実 現す るプ ロ セスで あ る と理解す れ ば、 図 2.2に 示 す よ うに、次 に研究 目的、研究方法 及 び研究対象 の視点 か ら本 論文
の研究 の 特
徴 を示 しなが らその研 究 の位置 づ け を したい。
設計 支援 システ ム
建築設計
デザ イ ン生成
講帥藩轟暑棄議 義≧
デザ イ ン生産
設計 製図支援 シス テ ム
:茅:蒸
図2.2 本研究 の位置 づ け 14
第 2章
設計支援 シス テ ムの方法論
1)研 究 目的 笹 田氏 の コ ンピュ ー タに よる建築 設計 シ ス テ ムの 基礎概念 モ デ ル の構築 を 目的 とす る研究 が あ り、青木、 両角氏 らの 一連 の建 築空 間モ デ ルの記述 方式 と記述 言語 に関 す る研究 が あ り、渡 辺氏 の 建築 デザ イ ンの ための知 的CADシ ス テ ムの 基礎 的枠 組 み に 関 す る研 究 が あ り、山口氏 の建築 設計 の 図形 処理 に関す る研 究 な どがあるが 、それ らの 研究 に対 して、本論文 では設計 事例発想 に よる設計初 期段 階 における設計 思考 プロセ スの支援 を研究 目的 とす る。
2)研 究方法 世界 中の 会議 、雑 誌 に事 例 ベー ス 推論 に よる建築 設計 に関す る研 究論文 が 多本発 表 され たが 、 しか し、 日本国内に は、従来 の 設計支援 システ ムの研究 は建築 知識 モ デ ル の構築 と知 識 の利用 に よる問題 解 決 な どの 視点 を考 え て設計 を支援 して い る研究 は 多 いが、既存 の設計事 例 を利用 す る設計 思考支援 の内容 に はほ とん ど言及 してい ない 。 本論文 では 、建築構想 設計 の思 考 過程 に適 して い る事 例 ベース 推論 とい う方法 を導 入 す ることを中心 として 、従来 の ル ールベー ス推論 お よび近年発 展 中の 図 に よる推論 を 考慮 した推論機構 を統合す る設計 思考支援 システ ム を構築す ることである。
3)研 究対象 設計初期 段 階 にお け る計 画 と設計 に対 して、それ は設計者 にとつて主 要 な任務 は 設 計条件 の分 析 と建築 の 基本 イメ ー ジの形成 をす る発想 す る段階 で あ る。従 来 の研究 で は設計過程 の図形情報 を主 要 な処理対象 とす る研究 が 多 か ったが 、設計思 考 に役割 を 与 える様 々 な発想情 報
(夕 1え
ば、設計 意図 な ど)を 対象 とす る研 究 は少 な い。 また、
この段 階 にお い て 、設 計条件 を解 明す るた め 、建築 の 様 々 な関連法規 を理 解す る こ と は重 要 な こ とであ る。 従来 の研 究 で も、建 築 の 関連法 規 を支援 す る研 究 は ほ とん どな い。本論文 では、設 計者 の意思決定 に強 く依存 す る設計 初期段 階 における設計 に役 に 立 つ様 々 な発想情報 の 分析 と整 理 お よびそ の 関連法規 の適法性 の検証 を問 題解決 の 対 象 とす る ことで あ る。
15
第 2章
設計支援 システ ムの方法論
2.4ま とめ ーマ を中心 として、設計支援 シス テ 本章 では、設計支援 シス テムの方 法論 とい うテ べ ムの研究の 流 れ、従来 の設計支援 システムの現状 とその研究方法 を述 た 。特 に、 日 コンピュー タ技術 を用 いて設計 支援 を行 う 本 の国内 における建築設計 分野 にお いて、 システ ムの技術 基 研究 について、代表 的な主要 な研究 を上げた。 そ して、次世代知識 において核 心 の 盤 として、設計 システ ム に とつて新 な方法論 であ り、本論文 研究方法 びその応用な どを示 した。 技術で ある事例 ベース推論 に関す る起源、原理、枠組みおよ とい う方面 か ら、 さらに、そ れ らの述説 とともに、研 究 の 目的、研究方法 、研究対 象 本論文 の研究 の特徴 を示 しなが らそ の研究 の位置
16
づ け をした。
第 3章
章援
3支 第 考
設計 思
設計 思考支援 モ デ ル
モ デル
3.1問 題領 域 の 定 義 建築設計 は本来、 計 画、 意匠、構 造、設 備 、施 現代 の複雑 で大規模 か つ高度 な機能 を要求 非常 に広範 にな つて い る。設計 対象 によ
エ ー体 とな つた総 合技術 で あ るが 、
され る建築 の も とで は必要 とされ る知識 が
つて、 さ らに、意匠設 計、構 造設計 、設備 設
の思 考方 式、設計 の知 識、設計 情報 に も異 計 な どの段 階 に よつ て 、設計 の行 為、 設計 べ て の過程 を一 体 となる システ ム化 す る ことは なる形態 と内容 を とる ため、設 計 のす をシ ステ ム化 す るた め に、設計対 象 非常 に困難 である と想 定 で きるだ ろ う。設 計支援 として、設計支援 シス テ ム の構築 を進 をあ る程度 に確定 と分析 をす るの は基 本 な前提 め る。 して 、設 計 の初期 段 階 にお いて構 想設計 を 本研 究 で は、建築 計 画、 意匠設計 に着 目 る こ とで あ る。建築 には複雑 な はた らきが 問題解 決対 象 として設 計思考過 程 を支援 す に対 して おのおの の段 階 の定 義 につい て あ り、多様 な形態 を も っているが 、設計 過 程 を創 る ための計画 と設計 は図 3。 1に 示す よ う 様 々 な解釈す る こ とは多 い。 ここで 、建築 が ら進行す ると理解す ることによつ に、設計過程 を計画 の後段 と設計 の前段 に重な りな
て、本研究 の問題解決対象 を定義 す る。 と設計 前 3。 1の 部分 のよ うな計画段 階 本研究で問題解 決対 象 とする構 想設計 とは、図 いて確定 した設計条件 か ら実施 設計 の展 開 段 とい う段 階であ り、設計 の初 期段階 にお と る設計活動 とす る。 この段階の 設 までの間 に建築 イメー ジを定着 す ることを目的 す 計活動 の主な内容 として、次 の二点があ る。
17
第 3章
E
計画前段
内部的要求 と外 部条件 の把握
計画
―
E
計 画後段 設計前段
設計思考支援 モ デ ル
構翻
形態 の基本 をつ くり方式 を決定
設計
設計後段
細部 の決定 と設 計図面へ の表記
施工
図3.1 設計 プ ロセス
1.建 築条件 の分析 と設定
建築 は 自然環境、 建築技術 。設備及 び もっと広 い社会 環境 との 繋 が りの 中で 、考 慮 すべ き情報 が どん どん増 えてい る。 設計 に有効 な情報 を手 に入れ るため に、それ らの 複雑 な条件 要素が 当面 す る設計 に どんな位 置 づ け とな るか を、 設計 者 が建 築 主か ら提 示 され る要求 に対 して最 も適切 に理 解 し、建築主 と完全 な意 思疎通 を十 分 にはか りな が ら様 々 な建築条件 を分析 し、 総合 して、 設計 目標 を達成す る ための設計 条件 を設 定 す る必要 が ある。 それ らの 条件 を与 条件 と客観 条件、 あ るいは 内部条件 と外部条 件 に分類 してい る 。 与条件 は建築 主や使用者 の立場 か ら建築 に対す る設計 要求 の 必要条件 で あ り、普通 建 築 主 よ りの 考 え方 で表 現 される ので 、建築 的 には必ず しも十分 ではない。 これは設 計 のための 条件 として常 に適当で あ る とは 限 らない 。そ の まま設計 の条件 としたため に
18
第 3章
後 で様 々 な問題 は生 じる場合 は 多 いで あ る。例 え 件 、物 理条件 、心 理条件 な どが あ る 。設計者
設計思考支援 モ デ ル
ば、利用者 の立場 か ら求 める社会 条
が 与 条件 を元 に して さらに 自身の分析 、
判 断 を加 える ことに よつて直接 的 な設計 の課題
を設定 す る必 要 である。
外部条件 は敷地 とそ こに建 つ 建築物 に必然的 にかか
わ つて くる制約事項 な どの諸 条
件 の こ とであ る。 それ は地域 の歴 史 、文化 、人 口
な どの社 会 環境 、土地 、気象 な どの
自然環境 、 道路、隣地 施設 な どの人工環境 の条件
お よびそれ らの条件 を制 約す る法 的
る こ とはか な り高度 な判断 力 と発想 とが 諸規制 を含 む。 これ らの 条件 を理解 と把握 す 要求 され ることにな る。
2.建 築 の空間構成、機 能、形 態 の決定 。 ユ ーム、建築外 観 の概略 の 形 これは設 計条件 を建築空間 に具体化 し、設計 案 のボ リ に定着す る。 それ は総合 化 態、室 内 の平 面配置、部屋 の機 能 と形状 な ど具体 的な構想 階平面計画、 断面計画 、 す る建築 設計 の第 一ス テ ツプ と して敷地計 画、外部 環 境、各 立面計 画 を行 う過程 である。 この過程 で一般 に 多 く設計 者 は頭 に浮かぶ ア イデ イアや イ 号 、文字 な どで表現 し、新 た な発想 を展 開 しさら
メー ジな どを 図、絵 、記
に描 くこ と を繰 り返 して い く。 そ こ
る と同時 に、設計 者 の設計 理 に自在 で適 切 な表現能 力、技 術 といつた ものが 要求 され とい つた ものが 多大 な影響力 をもつ 。 念や建築 思想、直観 力、造 形感 覚、経験、知識 い 的 に寸法 は 表 この段 階 での設計 の特徴 と して、実 施設計 の 展 開 と違 、 あま り具体 としてスケ ツチ、 エス キ ー 現 しない建築 アイデ イアの発想段 階 である。設計 な表現方 法 ス な どの によ り設計案 のイメ ー ジを表現 す る。
3。
2設 計思考過程 の分析
ロセスの思考方式 の三 ここでは、設計 プ ロセスモ デ ル、設計知識 の構造 、設計 プ
つ
方面 か ら設計思考 過程 を解析 す る。
3.2.1設 計 プ ロセスモ デ ル る国際会議 か ら、設計 に 設計方法論 に対 して、 1962年 英国 ロ ン ドンで設計方法 関す か ら主要な代表 的設計 プロセ の 方法論 に対 す る関心が急速 に高 まった。そ の多 く 議論
19
第 3章
設計 思考支援 モ デ ル
スモデルは次 にあげ られ る。
(1)創 造 的思考 の概念的 プ ロセスモデル ので、分析 、総合、評価 のサ イク それ はR.DoWattsの 円筒 モ デ ル な どに代表 され る も ュ レー シ ヨンモデルを概念 的 に説 明 リ ックな思考 の展 開 をす るもの として、思考 シ ミ す る立場 で あ る。
(2)設 計 プ ロセス を作業 の手順 と考 えるプ ロセスモデル 、評価 に の概念 モ それ はBruce Archerな どによつ て提案 され る もの で 、分 析 、総合 モデ ルに発展 させ る もの とす デ ルを基本 に した経験 的作業 に よつて さらに細 か い作業 る。設計 の 長 い経験 の 集積 として、企画段 階、基本設 計段階 、実施
設計段 階、建 設 段
のが る 階などの生産社会で受け入れられている業務の分担を表現したも あ 。 (3)設 計対象 の 内容 が操作 され る情報 の フロー とす るプ
ロセスモ デ ル
それ はC.Alexanderの 提案 す るHIDECS論 理 な どに代表 され 的思考 を情 報 の変換作 業 と捕 え て 、 イ ンプ ッ トされ
る もので 、建築家 の創 造
る情報 と創 造的思考 の ス ク リー ン
と る。 を通 してアウ トプ ツ トされ る情報 の 関係 を明 らか に しよ う す の モ デル 化 一 方、知 識 工 学 の 方法 を用 いてCADシ ス テ ムを 構築 す る には、設計 過程 が最 も基本 的 な課題 となる。設 計論 の研 究 には、建築 や機械
の 分野 で個別 的 に発展 し
て きた。
MLchdが Computer Aided Archtectural Designと
い う論文 に、提 案 者 ・ 検 証者
(Generator― Filter)モ デ ル を示 した。
を基礎 吉川 (1987)は 機械学 分 野 に定着 し、公理 的集 合論
として設計 過程 一般 の 記
る い は設計過 程 モデル論 と 述 を試 み、一 般設計学 を展 開 した。吉川 らの設計 過程論 あ の よ う にどう設計 をすれ ば いいかで は 呼 べ る設計 学 の流 れは経験 主義 的な設計 方 法論 な く、設計 を ど うモデル化す るかが 興味 の対象 で あ る。吉 川
らはCADシ ス テ ム にお け
る設計対象 モデル統合 化 のため の計算 可能 な設計 過程 のモデ
ル を構築 し、 それ をよ り
CADシ ステムを提唱 した。
整合的、合理 的 な もの に洗練 し、知的、統合 的、対話 的な 建築分 野 にお いて 、 1987年 にJ.Geroは 設計過程 を帰納、
演 繹、直観 、経験 、創造 な ど
ら成立す る と仮定 して帰 に基 づ く行 為 の合 わせ として捉 えた り、帰 納、演繹 、導出 か モデル を構築 した。 1989年 にJ.Geroは デ ザ 納、演繹 、導 出 とい う 3要 素 に よる設計理論 イ ンにおけ る創造性 を入工物 の 創造性 とプ ロセスの創 造性
20
とに分 けて論 じる必要性 を
第 3章
性 を説 いて いる。前者 は端的 に 表現 す るな ら歴史的文
設計 思考支援 モ デ ル
脈 におけ る前後 関係 に依存す る
う必 要 が あ る ことを主 張 してい る。 問題 で あ り、 デザ イ ン科学 では 主 に後者 を取 り扱 として、組 み 合 わせ (COmbin の さらに、」.Gero(1992)は 創 造性 を実 現す るため 手法 創 発 (Emergence) ation)、 突 然 変 異 (MutaJOn)、 類 推 (Anttogy)、
諄
3.2.2 設計 知識 の 構造 分析 設計支援 システムの構築す るために、設計 領 域知識
の 整理 と獲得 はシステムの能力
を決定す る最 も困難 かつ 最 も重要な ことである。建築設計
における知識 の よ り深 い 理
を分析す るこ とは設計思考過程 の 解、知識 の効率的 な取 り扱 いの ため、知識 性格
の支
援 の重要 な技術基盤 である。 専 門家が 持 つ知識 には経験 的知識 と理論的知識
とがあ る。経験 的知識 は特定 の型 の
な理解 とは一応分 離 されてい る の 問題解決 に特化 された ものであ り、 その領域 原理的 も「経験知識」 と呼 ば ことか ら、浅い知識 (ShJ10W knOwledge)と 呼 ばれ る。 それ るため に必要 な知識 であ る れる。一方 、理論的 な知識 は問題領域 を根 本的 に理解 す
こ
とか ら、深い知識 (deep knOwledge)と 呼 ばれる。 知識の深 さは相対的 なものである。深 い知識
と浅 い知識 の間 に絶対 的な限界がない。
な知識 であ る。深 い知識 の例 と し 深 い知識 は浅 い知識 の正当性 を説 明す るために必要 モ ル ー 的な規定 と規則 な ど て、構造設計 の数学計 算式、数 学的 シミユ レ シ ヨン デ 、法 ることが で きる「知識」 で を挙 げ られ る。それは各種規準、文献 な どを通 してだれ も得 である。 るときに用い ている知識 と考 え 深 い知識 は専門家 が未経験 な状況 に出会 って熟考す パー トシステムの性能向上 に大 きく貢献 ることがで き、その利 用技術 の 開発 はエ キ ス す るもの と期待 され る。 した知識 で で 一方、浅 い知識 も「経験 知識」 と呼 び、長年 の設計 を通 して 自分 獲得 に依存 してい る。 また、「経験 あ り、 だれ で も得 る こ とがで き ることでは な く、個人 に分類す ることがで きる。規則 的 知識」 は大 き く規則 的明示知識 と規則的不 明示 知識 を言葉 で説 明で きる知識 であ り、 明示知識 は「状況」 と「知識」 との間の因結 果関係 ることは難 しいで あ る。 規則 的不明示知識 はその因結果関係 を言葉 で説明す
21
第 3章
設計思考支援 モ デル
E E
識 識 知 知 い い 深 浅
FIL
識 知 計 設
図3.2 設計知識 の分類
この ような知識 の分類 にヌ寸して、次 の例 として、具体 的 に説明 す る。
知識分類 の例
知識 の分類
風圧力の算定方法
:
W=q*k (q=120h)
原理
w:風 圧力 (kg/m) q:速 度 圧eg/m) h:盤 面 か らの高 さ(m) k:風 力係 数
構造
外壁後退 :用 途地域が第 1種 住宅専用地域 の場合 に、建物外壁後退距離 は lmと なる
規則明示 な知識
規貝1不 明示 な知
高齢者 を含 む家族構成 の場合 に、 高齢者 の居室 を一階 の 日当た り 通風 の所 に配置す る。
<多 極 >や <重 層 >よ りもさ らに意図性 の強い <複 合性 >を 求めてい る。その両方の組 み合わ が もつと緊密 にな しとげ られた時私 は<複 合性 >と い う言葉 を使 い たい と思 う。 それが私 の建 築観 の基本 で もあ るのだ。 (建 築家東孝光)
図3.3 知識分類 の例
22
第 3章
規則 不 明 示知識 は不良設定 問題
設計 思考支援 モ デ ル
であ り、単 に与条件 が 不確定 だ け
でな く、建 築家 に
その も れぞ れ問題 の あ りよ うが 異 な り、設 計行為 の らか は定義 の不 明 な問題 を通 して内容 明 の にも内在 してい る命 題 であ る。設計 思考 より、対 象 に よ り、環境 に よ り、 そ
な問題 へ と変換す る。
が い概念 に は芸 術 、意 味 、意志 な どを含 む抽象度 高 設計 る建築 で あ 動 1造活 的倉 芸術 計作 品 の 評 そ の 目標 の設定 、設計 意図 の具体化 、設 強 く依存 して い るだけで はな く、 に持 た であ り、設計 と経験 知識 の規則 を明示的 く曖味 が高 も抽 象度 程 どの設計過 価な な り困難 で あ とめ た り他 人へ 伝 達 した りす る ことがか ない場合 が多 いので、そ れ をま る。
に ついての 述 の東孝 光 が 自己 の建築観 と設計 基 本手法 な こ とで あ り、 その 文章 だけ を 読 べ る文 に対 して 、規則 の 形式 にま とめ る ことは困難 例 え ば、 図の よ う に、建築 家
んで も よ く理解す るのは困難 で あ る。
それ らの 規貝1不 明示 な経験 知識 に対
とつて は そ して、経 験 が不足 して いる設計者 に
こ とが望 れ らの経 験知識 を簡単 に獲得 す る
ま しい。
3.2.3 設計 思 考 の想 起 過 程 ―事 例発 想
を の の研究成果 として は、想起 とは一群 知識 構 人間の記憶 と想起 に関す る認知科学 門家 で る せ るとい う個 々の人間 に生 じる現象 あ 。専 造 し、それを適 当 な時期 に取 り出 る。 す し、 以前処理 した ことに照 らして理解す は新 しい入力 を受 け取 ると、 そ の評価 に、 れ ともつ とも関連深 い経験 と照合 した時 なわち、新 しい経験が発 生す る時 に、そ の を用 いて問題 解決 をす る。想起 は記憶構造 い 想起が発生 して、新 しい経 験 は古 経験 の の経験 の 中で入力 にもつとも似 ている も とは過去 る。理解 であ の原 力 動 正 自動 的修 して との相違 を示す検索 か ら、以前 の経験 に照合 を探 し出 し、新 しい入力 と古 い記憶
23
第 3章
設計思考支援 モ デル
コー ド化す ることで あ る。 る い が る 建築設計 の創造行 為 の発想 の根源 の一つ として、「模倣」 と う現象 あ 。あ や「影響」 建築家の作品 と他 の作品 との 間 に類似性 が見られ る場合 に、 これを「模倣」 の意味 と見 る。影響 とは精神 に作用 してか ら後、作 品 に結果 と して表 われ る ことで あ り、模倣 とは精神 に共鳴す ることな しに直接外郭 だけを写 し取
つて直接 作品 に表現 す
ることであ る。知識 と技術 を学 ぶことは創造行為 に不可欠なものであ る意味 にお
いて、
の は の すべ ての創造 は模倣 から始 まる とい える。人間の持 つ本能的 な意味 創 造性 人間 い を生み出 し 模倣性が根源 となって、 さらに、 この模倣性 が異 なる文明か ら新 し 文化 は た り、様式 や手法 の模倣 か らひ とつの伝統 を作 り出す。 この意味で、建築 の歴史 模 とい う言葉 は 倣 の歴史であ るといつて過言 ではな い。「建築設計 は模倣 か ら始 まる」 建築設計 の模倣 とい う性格 を表記 している。 い 設計初期段 階 において 、設計者が 何 を考 えて設計 を行 うか 、言 換 えば、設計過程 の 中に設計者 は どんな情報 を使 つて 設計 を行 うか。現実 の建築設計 の思 考過程 をよ く を に入れ た 観察す ると、設計 の初期段階 において構想 設計 のため に、特 に設計問題 手 ばか り時 に、初心者 だけではな く、 あ る程度熟練 した設計者 にとつて も、 とにか くま ず何 かを参考 に したいとい うことは普通 である。 して、 例えば、ある住宅設計 が依頼 され る場合 に、設計者が与 えられ る設計問題 に対 るこ と まず、自身が 与 え られる設計問題 に類似 している設計 を経験 した事例 を想起す の一 が非常 に自然な ことで ある。 そ の経験 した設計 は今回 の問題 に役 に立てるか、そ 部分で も直接 に利用 できるか考 えて 設計 を始 め る。 もし、 自身が
この類似 の設計 を経
験 しなか つた場合 に、他人の設計作品 を想起す る ことも自然 な思考手順
で あ る。
の に、 自身が設 特 に、特殊機能 を持つ設計 問題 に対 して、例 えば水族館 の設計 場合 の を の 計経験 もない し、 自分の記憶 に残 っている事例 もない時 に、既存 設計 事例 資料 が始 まる。 こ 調べ て設計 要点 や設計手法 を参 考 しようとい う考 えを持 って きて、設計 の ように事例発想 の設計思考 過程 は図3.4に 示す。
24
第 3章
設計問題
設計
事例発 想 一
一
ボルチモ ア水族館
大 阪水族館
テネシー水族館 図3.4 事例 の発想過程
25
設計思考支援 モ デ ル
第 3章
設計 プロセスにお いて、設計思考
設計思考支援 モデル
の事例発想過程 は非常 に 自然 な想起過程 であ り、
に他人の 設計事例 、 どこか資料 に設計 事 その想起過程 に、 自身 の経験 した事例、記憶 で に対 して役 に立 て る事夕1を 想起 して設計 を行 う 例 の順 によつて与 えられる設計 問題 あ る。 現実 では、一般 に設計者 はそれ ま
でに著 名 な建築作 品やそ の時代 の建築思想 な
どを
の してい る建築作品 を参考 に し、建築家 設計 思考 背景 として 、特 に既存 の優秀 な類似 え方、経験、教 養 といつた ものを発揮 の方法 を学習 しなが ら、自分 の 建築 に対す る考 が よく用 い られ る。専門家 も過去 の 事 して建築 アイデ イア を発想す る とい う設計方法 である。 例 を極積 的 に利用 していることは事実 の思考過 程 を真 似 るわけ である。 エ キスパ ー トシステムの 原点 は専 門家の 問題解決 をコンピユ ー タ化す ることによ り問題解 決 専門家が持 つ問題解決 の知識 を集 め、それ ムの普通 の開発手法 である。 しょうとするのはエ キスパー トシステ モデル に基づい たきわ めて 自然 な問題解 以上 の解 説 の よう に、人 間の行 う問題解 決 の領域 に適 していると考 えられる。 決方法 である事例 ベース推論 は建築設計
3.3設 計 思考支援 モ デ ル (DCM)
3.3。
1事 例による思考モデル
つ る の 意味 の差 として現実 的な差異 に なが 。 建築の形態 の差異 は機能の差、意匠 差、 を分析す る こ とは主要 な課題 であ る。本論 文 それゆえ、建築 の研究 の中で も建築形態 ら、類似 の設計案 に よつて設計 プ ロ は、建築 の形態 の差異 と類似 性 を理解す る立場か の出発点 とす る。 セスにおける思考過程 を支援 す ることを研究 へ のプロセス とい う論 点か ら、人間 の記憶 と 建築 の創 造行為 は模倣 で は じま り独創 い づいて 、設計 プロセスにお いて設計 思考 に大 き 想起 に関す る認知科学 的モ デ ル に基 る ことは本論研究 の原 点である。本論文が認 役割 を与 え る事例発想 の重要性 を強調す て に適用 している事例 ベー ス推論 を導入 し 、 知科学 と情 報処理学 の立場か ら建築設計 モ ルを提案 す る。提案 したモ デル をDCM(Design 設計事 例 を中心 とす る設計思 考 デ DCMは 前 に議 論 した構想設計 を問題解決 対 case ninking MOdel)を 呼 ぶ こととす る。 を す る創造的 な問題解決 を目指す設計思考過 稗 支援 象 として設計事夕1を 中心 内容 とす び 例検証 三つ部分か ら構成 され る。 る。ⅨMは 図3.5よ うに、事例発想、規則発想及 事
第 3章
設計思考支援 モ デ ル
設計 過程
支援 システム
図3.5 設計思考支援モデル ・事例発想 既存 の設計事例 には設計 の解 だ けで はな く、設計者 の 設計思想 や設計方法 も含 まれ る。類似 の問題 に対 して問題解決 に大 きい役割 を発揮 で きる視点 か ら、設計者が類 似 の事例 か ら問題解決方法 を模倣 や学習す る ことによつて、設計 の創造力 を刺激す る こ とは本 モ デルに議論 した事例発想 の基本思想 である。
DCMに おいて は、大量 の設計事例 が事例 ベ ース に体 系的 に蓄積 されてお り、設計 問 題が発 生 した時 に、事夕1推 論 を通 して問題 に類似 して い る事例 の検 索 を行 う。DCMは 発見 され た事例 に設計 思考 に役 に立 つ様 々 な情報 を通 じて、設計者 にア ドバ イス を与 えた り、設計 ノウハ ウを学習 させ た り、設計思考 の創造力 を誘発す る方式 を用 いて 創 造な問題解決の思考支援過程 を支援す る。
。規則発想 設計過程 において 、設計基本的 な手法、特 に建築法規 に関連す る規則 をよ く把握 す ることは設計 に不可欠 なことで あ る。現実 では、一般 の設計者 が このような設計規 則 を把握 し尽 くす ことは不可能で あ ろ う。設計者 にとつてそれ らの設計規則 を便利的 に
27
第 3章
設計思考 支援 モデル
活用 す る支援 環境 が必要 となる。 は 全 に照合 す る ことは ほ の 一 方、事 例発想 の 場合 に、事例 と与 えられ る 問題 条 件 完 す る問題解 決 は不可欠 で を とん どないの で 、問題 の 条件 に対 して、適合 す る規則 利用 の 則 も領 域知識 ベ ー ス に蓄積 され あ る。 そのた め、規貝1発 想 とは、DCMが 大量 設計規 い に対 して 、 ルールベ ー ス推論 を通 てお り、問 題解決過程 に事夕1の 参 照 が で きな 部分 を発見す る ことによ つて、設計 者 してル ールベ ースか ら問 題解決 に適 合す る設計規 則 せて設計過程 を支援 す る こ とであ る。 に設計 問題 に対す る適用す る設計 規則 を学習 さ
・設計検 証 設計案 に対す る適 合性 の検 証 と評価 は設計
プ ロセスの 基本 な内容 で あ る 。 それ は 日
案 の 中 に選 択す る こ と に係 わる もの 標 と比較 した 時 に解 の適 当性 を判定 した り、代替 な評価 の 基準 と評価 ルールが な である。現 実 では、建 築設計 の 評価 に対 して 、共通 的 を行 う。 そ のため、設 計 の いので 、評価 者 の経験 や教養 な どの ことに よつて 設計 評価 者 に とつて設計評価 の機能 を含 め る支援環 境
が望 ましい 。
いて設計 の適当性 を想定す る こ とに よつて、類 設計検証 とは、既 存 の設計 事 例 にお に対 して検 証 と評価 を行 うことで あ の 似 の設計事 例 を用 いて 、作成 した設 計案 適合性 の二 つ機能 は構成 され る。 まず、 設 る。DCMで は、設計検証 には事例検 証 と規則 検証 を用 い て、類似事 例 と照合 で きる部分 に設 計案 に対 して 、事例 推論 を通 じて類 似事例 に よる検証 は 不充分 の 場合 に、 ル ー ル推論 に 計案 の適合 性 に検証 と評価 を行 う。事例 る こ とで設計 過 程 の評価 を支 よる設計 規則 を用 いてそ の適合性 に検証 と評価 を補完す 援す る。
3.3.2 DCMに
よ る設 計 支 援 方 式
設計支援 方法 論 にお いて、 ふ た
つ 異 なる観 点 が存在 して い る。一 つ は 図3.6に 示す よ
るい は設計 自動 化 (Design AutomaJOn) うに、 自動 設計 (Automated Design)あ ロセスを支援 す る まさにCADの 環境 の実 現 を目指 す問 題解決方 式 と、設計 者 の設計 プ では、従 来 のエ キ スパ ー トシ ステ ムの 方 を目指 す問 題解決方式 があ る。 人 工 知能分 野 の を導出す る問題解決方式 は普通 である。 て 法は、条件 を入力 して、推論 を通 し 問題 解 において 、 自動設計 あ る の 一方、 シス テ ムの設計 活動へ の 関与 に関す る機械 設計 分野 る ことは多 い 。 ム いは設計 自動化 を目指 す立場か ら設計支援 システ を構築 す
28
第 3章
設計思考支援 モデル
支援 システム
図3.6 自動設計の支援方式
しか しなが ら、建 築設計 とい う問題 解決過程 に対 して 、建築設 計 の特徴 によ り、 入 力条件 か ら問題 の解 を導 出す る問題 解決方式 が適 用 で きない 理 由 を次 の 方面 か ら説 明 したい 。
1)建 築設計 は分析 。設計 ・評価 を繰 り返す過程 で あ り、最終 設計案 が作成 される ま で に、 この過 程 は何 回 も行 うか もしれない。設計 解 も何 回 に生成 された り修正 され た りす る。最 終設計案 とい えば相 対 の概念 で ある。 また 、設計解 は一つでは ない、設 計 条件 や コンセ プ トは 同一 で も、発想 を変 えれば別 の案 が考 え られ る。設計 者 によつて 重視す る設計条件 が異 なるため 、 い くつ か設計案が出 来 る。設 計解 の唯一 性 を確認 で きないので、設計 問題 の解 を 自動 的 に導出す ることは意 味 があ ま りないで あろ う。
2)社 会 の発展 と技 術 の進歩 につ れて、 人間の生活 も多様化 と分化 の方 向 をた ど りつ つ あ り、 これ に伴 って建 築 の種類 や 目的 も増 えて きて い る。 生 活 の変化 に対応 して 建 築へ の 要求 内容 も変 わ るため、 そ の時代 と環境 の産物 とす る既 存 の設計事 例 は現在 の 設計 問題 に対 して適用 で きない部分 があるか も知 れない。既 存 の設計事 例 の解 を直接 に利用す ることはその解 の正 当性 が 確保 で きない場合 もある。
3)建 築設計 は美 と精神 的な造形 の過程 で ある。 コル ビュジエ は「建築家が精神 の 純 粋 な創造 によって秩序 を実現 し、形 を通 じて造形 て きな感動 を起 さしめ る。」 とい っ た。建築設計 が建築 を使 ってい る人 間 に精 神 的な造形 を与 える ことは重要 な ことで あ る。建築家 の 目的 は依頼 主 に設計 要 求 を満足す るだけではな く、芸術的 な創 造 を行 う ことで ある。問題 に対 す る設計 解 よ り設計 者 の創造 的 な思 考 を誘発す る ものが望 まれ る。
29
第 3章
設計思考支援 モ デ ル
1譴甜過程
支援 システ ム
図3.7 設計 プロセスの支援方式
べ の を把 建築設計 活動 で は 設計者 が 主 導 をと って設計 を行 うの で設計者 がす て 情報 で 握す るための環境 を提供 しなけれ ばな らない意味 か ら、図3.7に 示す よ うに、本論 提 案す る設計 システ ムの 支援方法 は設計 問題 に対す る設 計 の解 を 自動的 に導 出す
る支 援
方式 で はな く、設計者 を中心 と して シス テ ム と相 互 に対話 しなが ら、設 計者 に設計 過 程 に関す る設計思考情 報 を提示 す る方式 で よ り本質的 な設計支援 を意識す
る設計創 造
ベー ス推論 を通 して類似事 例 性 を刺激す る ことで あ る。 具体 的 にい え ば、DCMは 事例 か ら得 られ る設計解 と設計 方法 及 び設計思 考 プロセス を利用 して設計者 の 想像力 を誘 発す る支援方式 で 、建築設計 に適用 してい る創造的 な問題解決方式 を提唱 す る。
3.3.3 DCMに
よる設 計 支 援 過 程
DCMに 基づ く設計支援 システ ムの 構成 と構 築 につい て第 7章 と第 8章 に具体 的解 説 る す る。 その設計支援 過程 につい て もそれ らの章 に 具体 的例 を挙 げて詳 し く解説す 。 ここで は、DCMに よる設計支援 過程 は図3.5を 参照 しなが ら簡略的 に解説す る。 まず 、設計問題 が発生す る 時 に、設 計者 が与 え られ た 問題 の設 計要求 と条件 に対 し て 、設計支援 システ ムの 指定 して い る方式 に従 って設計 問題 の特徴 を定 式化 して シ ス テ ム に入力す る。 同時 に、設計 支援 システ ムはDCMに よ り設計者 を誘導 しなが ら、 設 ー 計 問題 の要求、条件 、機能 を意識 して 自主的 に最初 の設計 イメ ジを生み出す。
30
第 3章
設計思考支援 モ デル
設計 支援 システ ム が設定 した問題 の特徴 に従 って事例 ベ ー スか ら最適 な類 似事例 を 取 り出す。 設計者 は類 似事例 の 設計解 と設 計手法 が問題解決 に対 して役 立 つ か どうか 判断 し、類 似事例 の設計解 や様 々 な図面及 び設計手法 な どの設 計思考要素 を参照 しな が ら最初 の設計 イ メー ジを修 正 し、新 しい イメ ー ジを発想す る。 与 え られ た問題 の 特徴 と類似 した 事例 に相違 の特 徴 がある場合 に、そ の相 違 に対 し て、設計 支援 システ ム が ル ー ル 推論 の手法 を利用 して 、領域知 識 ベー ス か ら適応す る 設計手法 と法規規則 を取 り出 し、設計者 に提示す る。 設計者 は 提示 した設 計手法 を学 習 して設計 イメー ジを発想す る。 作成 した設計案 に対 して 、設計結 果 の適 合性 の評価 を行 う。評価 は成功事 例検証 と 失敗事例検 証 を含 む。評価過程 で は、事例 ベ ース か ら適用 した 事例 を取 りた して、 そ の事例 の構 成内容 を参 照 しなが ら設計案 の 設計結果 を評価す る 。事例 によ る検証 は 不 充分 の場合 に、 ル ー ル推論 に よる設計 規則 を用 いてその 適合性 に検証 と評 価 を補完 す る。 システ ムは設計者 に評価 と検証 の結論 及 びそ の対 応す る解 決方法 を学 習 させて 設 計案 を修 正 させ る。
3.4ま とめ 本章 では 、設計初 期段 階 にお い て 問題解 決対象 とす る構想 設計 を定義、解 説 した上 で、そ の 問題対象 の特 徴 を分析 した。そ して、設計 プ ロセスモ デル と設計 知識 の構 造 に関 して解析 し、建築 の創造行 為 は模倣 では じま り独創 への プ ロセスで あ る視点 か ら、 人間の記憶 と想起 に関す る認 知科学 的 モ デ ル に基づい て 、事例発 想 が 建築 設計 の思 考 過程 に重要 な役割 を与 える こと を主 張 した。 それ らの一連 の分 析 に基 づい て、建築 設 計 に適用 した事例 ベー ス推論 を 導入 し、事 例発想 を中心 として 規則発想 と設計検証 を 統合す る設計思 考 モ デル
(DCMlを 提案 した。そ して、提案 した設計思考 モ デルの 間
題解決方法 の適合性 を強調 した上 で 、DCMに よる設計 支援過程 におい て設 計者 の創 造 的な思考 を発 揮 で きる支援過程 を解説 した。
31
第 4章
設計事例 の定式化
第 4章 設計事例 の定式 化
設計事例 とは建築実体 とその様 々 な設計 図面 お よび情報資料
を含 む総合体 で あ る。
設計 にお いて設計事例 の再利用 とその システ ム化 のため に、そ
の建築実体 を情報化す
る必要 である。 ここで、現実 の設計事例 を記述す る様 々 な設計 図面 、写真 お 過程 の様 々 な情報構成 の総合体 を事例 として考 え る。巨大化 、複雑化
よび設計
、高度化す る建
で はな く、膨大 か つ過剰 な 築要求 に対す る建築設計 にお いて 、問題 は設計情報 の不足 。 っ と広 い社会環境 との繋 が りの 情報 で あ る。建築 は 自然環境 、建築技 術 設備及 び も に整理利用す る 中で 、考慮すべ き情報 が どん どん増 えて い る。 それ らの情報 を有効 的 ことは設計 システ ム化 の重要 な点 である。 設計事例 の定式化 の 目的 とは、図4。 1に 示す よ うに、実世界
の設計事例 を コンピユー
タの 内部 に処理 で きる形式 に整理す る ことで あ る。 コンピュー タ世界
実世界
定式化 一
char BuildingNalne[20]; char Structure[30]; foalt SiteArea;
foalt BuildingHeight;
図4.1実 世界 の事例 の定式化
32
第 4章
設計事例 の定式化
既存 の設計事例 を再利用 して設 計初期段階 の設計思考 を支援す るため には、以下 の 点 を考慮す る必要 が ある。 1)設 計事例 の必 要 な情報
それ は設計事例 の認識 と表記 のため に、設計事例 の基本 的 な特徴 (建 物 の用途、敷 地条件 お よび建物 の名、地理位 置 な ど)を 記述す る情報 で あ る。 2)設 計思考支援 へ の有用情報 それは設計思考 を支援す るため に、設計過程 にお いて創造 的思考 に関連 の発想情報 (設 計理念、設計 意 図な ど)を 記述す る もので あ る。
3)設 計事例 の整合性 の保守 それは事例構 成 の完全性 と構 成 要素 の 間の無矛盾 を考 えて い る。事例構成 の完全性 は上述 の二 つ の事例 の必要 な情 報 と思 考情報 を整理す る場合 に、事例 を記述す るため に、相対 的完全情報 を考慮す る。 本章 では、設計事例 の構成 要素 を中心 内容 として 、事例 にお いて設計思考 の役割 を 与 える情報 を捉 えて事例 を定式化す ることを議論す る。
4。
1設 計事例 の構成要素
1980年 代 か ら、情 報処 理 の分野 の発展 したオブジ ェ ク ト指 向 の方法論 は実世界 の概
念 を中心 に組織化 されたモデル を利用 した問題解決 のための新 しい思考方法 である。 そ の基本要素 はオブジ ェク トであ り、単 一の実体 の 中 にデ ー タ構造 とその操作 の両方 を持 つ 。最 も重要 な ことは、 オブジ ェ ク ト指向方法 が プ ロ グラムやデ ー タベー スの設 計 に関す る コンピュー タの概 念 だ けでな く、実世界 の概念 を使 って現実 の 問題分析 お よびそ の システ ム化 の設計 に も有効 的な分析方法 で あ るこ とである。 オブジ ェ ク ト指 向 の方法論 の基盤技術 の考 え に よつて、建築 の設計 における設計事例 は問題記述、解 記述及 び方法記述 とい う側面 か ら構成 され ると考 え られ る。 ここでは、設計事例 を目 標 、条件、結果 (設 計案 )、 方法 とい う面 か ら、その構成要素 を分析、整理す る。
1.目 標
設計 目標 とは建築 主か ら建築 に対す る設計 要求 と希望 とい う与条件 を設定す る もの で あ る。与条件 は建築 主 の希望 と要求 を表 した もので あ り、 これは設計 のための条件
33
第 4章
設計事例 の 定式化
として常 に適 当 であ る とは限 らない。設計者 はその与条件 か ら建築 の設計 につい て 間 題 を作成 してい く必 要 がある。 これ ら表 に現 われた問題 や潜在 的問題 も考 えなけれ ば な らない。例 えば、建築主 が使用者 でない場合 に、使用者 の職業 や性格 な どの潜在 的 条件 を考 えなけれ ば、あ ともど りもあるか も知れ ない 。 ここでは、設計 目標 は建築 の 主要用途、規模、構造、予算 、性格 な どを含 む建築 の与条件 か ら構成す る要素 で あ る。 1に 示す。 それ らの要素 を押 。
表4.1 事例 の 目標 の構成要素 建築用 途
専用住 宅、共 同住宅 な ど
規模
家族構成、所要部屋計画 な ど
構造
木造、鉄骨 造、鉄筋 コンクリー ト造な ど
性格
和風、洋式建築 、使用者 の職業 など
2.条 件 条件 とは建築予定 地 にかかわ る敷地、周 辺及 び区域 とい う外部 的で客観 的な諸 条件 で あ る。建築 の設計 で はその周辺環境 につい て考慮 す る ことが重要 である。設計 の初 期段 階 にお いては、計画敷 地 に関す る周辺条件 を分析 す ることによつて設計 をは じめ る。建築物 の存在 が他 の様 々 な施設 に対 して影響 を もた らす時代 になる。それ は周辺 の 区域社会や都市 システ ム に与 える影響 を考慮す る こ とにな しに、その設計 を進 め る ことは不可能 で あ る。 ここで は、それ らの条件 に対 して敷地 とい う中心視点 か ら次 の 表4.2に 敷 地条件 、周辺条件、区域環境 に分類 して整理す る。 隷 .2 事例 の条件 の構成要素 敷地条件
敷地面積、形 状、高低差、方位 な ど
周辺条件
周辺施設、隣接建築、隣接 道路 など
区域環境
用途地域、公共施設、自然環境、都市 システムな ど
34
第 4章
3.結 果
設計事例 の定式化
(設 計案 )
結果 とは作成 した設計案 を記述 してい る もので あ り、そ れは様 々 な図面 、模型、建 物写真、設計 報告書 な どを含 む。 図面 は建築設計 の主 な記述方式 で 建築 を具体化 す る ものである、そ の機能 は設計 の ための思 考手段 としての意味 と他 人 へ の情報伝達手段 とい う役割があ る。建築生産過 程 にお いて 図面 の役割 か ら大 き く分類す れ ば、構想 のための 図面、伝達 のための図面 及 び建築 のための図面 が考 えられ る。本研 究 では、第 一番 目 と第二番 目の 意匠設計 に 関す る図面 を主 な内容 とす る。 それ らの図面 は次 の表4。 3に 示す。 表4.3 事例 の図面 の構成要素
構想図
機能 図、意 図 の 図、 ス ケ ツチ
基本計画 図
配置図、平 面 図、 立面 図、断面 図、透視 図、模 型
4.方 法 方法 とは設計過程 にお いて設計 目標 を達成す るため、使用 した様 々 な方法 と手段 お よび設計 プ ロセスの思考情報 な どを考 えて い る。それは主 な内容 として設計過程 にお いて設計者 の設計理念 、設計意図 な どの思考情報 と問題 の設計条件 を制 約す る法規 か ら構成 され る。 それ らの 内容 は次 の 表4.4に 示す。具体 的 に内容 は次節 で 説明す る。
4 事例 の方法 の構成要素 麹 。 設計思考情報
設計 理念、設計意図 な ど
法規規則
道路斜線、北側斜線、 日影制限な ど
設計手法
高齢 者 の設計 、騒音防止設計 な ど
35
第 4章
設計事例 の定式化
4.2 設計思考情報の分析 設計事例 による設計思考過程 を支援す るため、事例 に存在 す る設計思考情報
を収集、
べ で は 整理す る こ とは重 要 である。 しか し、設計過程 にお いて扱 う き情報 多 量 あ り、 質的 に も極 めて多様 な情報が 複雑 に関連 しあ つて い る。設計 知識
の複雑 さ、膨大 さが
つい て 困難 な ことは事実 である。 知識 を利用 す るため の設計 の思考情報 の定義 と整理 に を の 本論 では、設計 の創 造活動 の支柱 とす る設計者 の設計理念 や思想 、設計 思考活動 記述す る設計意図 に関連す る情報 お よび設計条件 の 関連 の法規 、す なわち設計 活動 を影響す る制 約要 因の法規 を主要 な内容 として、設計事例 か ら設計
の思考
の思考情報 を
捉 えて整理す る。
・ 設計 理念 建築家 の建築 に対 す る理念 は彼 の設計創造 の魂 で あ る。彼 の作 品 と設計手法 築理念 が映 し出 され て い る。設計作 品 を理解す るため には設計 者
には建
の建築思想 と理念 を
理解す る ことが重 要 である。設計事例 を収集す る と同時 に、図面 だ けではな く、建築 家 の建築思想 と理 念及 び設計 思考過程、設計 手法 な どの整理 を行 な
つてい くことが必
要 になる。 てい る ことを述べ 例 えば、図4。 2に 示す設計作 品 か ら建築家 の次 の設計理念 を反応 し ・ い る。 腋 合 的な ものへ 」 とは、私 は複合 的な もの、多極的 な世界 を求 めて旅立 と う。 ・・ <多 極 >や <重 層 >よ りもさ らに意 図性 の強 い <複 合性 >を 求 めてい る。そ の両 方 の組 み合 わが もっ と緊密 にな しとげ られた時私 は<複 合性 >と
い う言葉 を使 いたい
と思 う。 それが私 の建築観 の基本 で もあるのだ。 (建 築家東孝光 )
囲 .2 設計理念 の図例
36
第 4章
設計事例 の定式化
・設計意図 建築家の設計意図の 中 にさらに深 い想像 や精神世界 が図面
か ら直接 よ く理解 で きな
ひとつの重 い 場合 もあ る。その時 に、言葉 は設計意図の伝達 と設計思考 の媒体 の もう 思考 を記述 した り、図面 要 な道具 となるる。それは図面 を補助的 に説明 した り、設計 と結合 にして設 計思考 の想像力 を誘発す る設 計思考 道具である。 を むと、設計者の設計意図 例 えば、図4.3に 示す ような設計作品 に対 して次 の文章 読 をよく理解 で きるだろう。 へ がつの り、大 る 「渦巻 の 中心部 の高 く延 びた部分 か らは、さ らに空 と上昇す 想像 原義郎) 地 と天空へ の無限性 を、建築 の形 にもたせ ることがで きる。」健 築家池
酢 .3 設計意図の 図例
・スケ ツチ 設計 図面 は設計思考 の 固定 と他 人
へ 設計意図 を伝 えるため、内容 が正確 で 、 かつ技
術 的整合性 が とれて い ることが最 も重要 な道具 であ
る。そ れは設計解 を表現す る こと
だけで はな く、設計 思考 の媒体 として新 しい 想像力 を生み出す源
となる。 ここでは、
スケ ッチ、 エ スキ ー ス を含 む構想 設計 な どの様 々 な設計 図面 を整理す
る ことを行 つて
い る。
。設計手法 主が提示す る建築機 は 建築設計 の初期段 階 における構想設計 に対 して、設計者 建築 辺環境 などのすべ ての 能、規模 、性格 な どの要求及 び設計問題 に対 して建築計画、周 といつた ものを発 与条件 を分析 し把握す る。自分 の建築 に対す る考 え方、経験、教養
37
第 4章
設計事例 の定式化
揮 した り、他人の作 品 と経験 も利用 した り、設計案 を定着す ることを行 う。 建築家が長年の設計経験 から独 自の設計手法 をよく使 ってい るのは普通 である。一 般 に、 このような設計手法 は原理、規則 になれない、本 に収集 されてないので、一般 の設計者 はこの設計手法 を獲得す ることが望 ましい。
4.3 建築法規 建築法規 の体系 は法律 、施行 令 、施行規則、細則 と法 律 によつて委任 された地方公 共団体 の条例 とか らな って い る。規制対象 の範囲が広 く、技術的要素 が 特 に多 く複雑 な構成 を してい るのが建築法規 は膨大 な建築関係法令集 で あ る。 設計 プ ロセス にお け る計画、設計 のそれぞれの段階 にお いて各種 の法規制 をチ ェ ッ クし、そ の 内容 を把握 してお くこ とは避 けて通 る ことがで きない要件 であ る。 しか し、 建築物 の用途 に係 る法規制 にい た つては複雑多様化 に対応 して多岐 にわたるため、相 当手慣 れた設計者 で も法 との対応 が 完璧 になされ てい るか との不安 を抱 くことも実情 であろ う。 とくに、経験 の不十分 な設計 者 にとつて該当規制 を探す こ とが 困難 で、そ のため にたいへ んな作業 を行 な う必要 で あ る。 本論 では、設計事例 に使 ってい る規制 を抽 出 して設計思考 の情報 として事例 とい う オブジ ェ ク トに整理 す る。設計 プ ロセス にその事例 は利用 される時 に、設計者がそ の 事例 か らその規制 を使 って設計 を行 な う。与 え られる問題 の条件 と事例 の条件 と照合 で きる場合 に、事例 か らその対応 す る規制 を使 って設計 を進 める。 ここでの法規 の整理 に当 って は、都市計画法 、建築規準法 な どの主 要関連法規 を検 討 し、そ の 中か ら意 匠設計 に際 して必 要 な立地、形態 な ど、建築物理 て きな条件 に直 接 的 に、 また間接 的 に影響 を及 ばす規定 を抽 出 して整理す る。それ らの内容 を第 8章 に表 2の 法規 リス トにあげ られ る。
4.4 定式化 の事例 4.4.1定 式化事例 の 基本要 素 上述の ように議論 したものに基 づいて、それ らの基本的な構成要素 をまとめて次 の 内容 に従 って設計事例 の実体 を整理す る。
38
設計事例 の定式化
第 4章
、 、 、 、 類 類 類 類 嗣 種 種 種 種 < < < <
幅、高低差 ) 幅、高低差 ) 幅、高低差 ) 幅、高低差 )
結果報告
建物高 配置 巨
容積率 建ぺい率 平面図 立面図
図面
断面図 透視図 配置図
39
![
第 4章
設計事例 の定式化
用途地域 高度地区 防火地域 容積率 建ぺい率 道路斜線 外壁後退 高度制限
思 設 計 情 報:3333 考 E≡
設計 手法 意 図図面
欧
.4事 例定式化 の要素
4.4.2事 例 の定式 化 の例 ここでは、以上の解説 のように、新建築住宅特集 か ら採集 された実例 を用 いて事例 の定式化 を目標、条件、結論お よび方法 とい う四つの面から具体的 に解説す る。それ らの解説 を次 の図4.5か ら図4.10ま でに示す。
設計 目標 主要用途 :専 用住宅 家族構成 :夫 婦、子供 3人 室 の配置
:
建物階層
:2階
構造構法 :木 造建枠組壁 工法 建築面積 :100m
図4.5 事例 の例 の 目標
40
第 4章
条件 敷地‐ 敷地面積 :236,53m 敷地形状 :長 方形 敷地高低差 : な し 周辺条件
:Q2m
西側 施 設 :道 路 5。 価
高低差
北側施設 :隣 地
高低差 :0.2m
東側施設 :隣 地
高低差 :0.2m
南側施設 :隣 地
高低差
:0。
2m
区域条件 用途地 域 :第 二種住居専用地域
:50% :1∞ %
建蔽率 容積率
図4,6 事例 の例 の条件
設計結果 (報 告書 ) 建物高 さ :7.Omm 建築面積 :108.31m 延床面積 :182.49m 建蔽率 :45。 79%(50%) 容積率 :77,11%(1007o)
25A 北側斜線 :5m+1.25A
道路斜線
:1。
延床面積 :182.電 h
l階 :1“ ." 2階 :7631 建蔽率
:48.6%
容積率 :99。 37% 室配置
:
1階 配置 :寝 室、和室、食堂、 2階配置 :主 寝室、子供室二 つ
図4.7 事例 の例の結論 (報 告書)
41
設計事例の定式化
第 4章
図4.8 事例 の例 の結論
設計事例 の定式化
(図 面)
設計手法 5
IF 第一種住居専用 地域
西側 に道路があ る
TIIEN l.建 物 を北側 に配置 し、
前面道路 がある
南面 に庭 にす る。
道路斜線 :1.25A
2.西 狽1の 部屋 の窓 に西 日が
当 た りやす いことに注意。
図4.9 事例 の例 の方法
(法 規 ・設計手法 )
42
第 4章
設計思考情報 設計 主題
触覚 空間へ の試行 ここでは「安心感/開 放感」 「空間の変動/ 連続」、 または「家脚 個人」 「 日向 ぼっこ/
一
緑陰」 など、 日常的な ことを触覚的 な切 り口 で整理 しデザ イ ンの基準 としてい る。
設計意図 西側道路 か ら見 る と、敷 地 は斜 め に二 つ され 西南方向 に開か れてい る。 金属板 の クレー の 屋根 に並 んで、 そ の隣 の切妻壁 フレーム には 時 間の経過 と共 に蔦 が絡 ま リグ リー ンの屋根 を形成す る予定 である。 そ の 下 にア ウ トドア リ ビング と して のデ ッキ空 間、玄関へ の アプ
ローチ空間、車庫 を兼ね た前庭 がある。
図4.10 事例 の例 の方法 (設 計理念 ・主題 ・意図)
43
設計事例 の定式化
第 4章
設計事例 の定式化
4.5 まとめ 本章 では、設計事例 の構成要素 を中心内容 として、事例 において設計思考 に役割 を 与 える情報 を捉 えて事例 の定式化 を行 った。 ここで、オブジェク ト指向の方法論 の基 盤技術 の考 えによつて、日標、条件、結果、方法 とい う面 か ら、設計事例 の構成要素 を分析、整理 した。 また、設計 の創造活動 の支柱 とす る設計者 の設計理念や思想、設 計 の思考活動 を記述す る設計意図 に関連す る情報お よび設計条件 の関連 の法規、すな わち設計 の思考活動 を影響す る制約要因の法規 を主要 な内容 として、設計事例か ら設 計 の思考情報 を捉 えて整理 した。そ して、事例 の基本的な構成要素 を全体的 にまとめ て示 した。最後、採集 された実例 を用 いて定式化 された事例 の構成 を図面 を示 しなが ら解説 した。
“
第 5章
事例 の知識表現
第 5章 事例 の知識表現
5。
1
知識表現 の技法
人 間 の知的行動 を コンピュー タで実現す るため に、人間の知 的活動 によつて獲得 さ れた知識 を コンピュー タにどう表現す る ことは人工 知能 にお け る重 要 な研 究課題 で あ る。知識 の表現 としては、表現 が分 か りやす く便利 な ことを 目的 とした方法 と、推論 時 の効率 を目標 とした方法 が あ る。知識 システ ム を構築す る場合 に、問題対象分野
が
もって い る様 々 な特徴 の うちで 、問題解決 に影響 を及 ぼす条件 を直接的 に記述 で きる ことが 望 ま しい。人工知能領域 にお いて種 々の知識表現法が 提案 されてい る。 ここで 、 べ る。 代表 的な知識表現 の方法 として 、次 に 5つ を上 げ てその内容 を簡単 に述
1)述 語論 理
2)プ ロ ダクシ ヨン・ システ ム 3)意 味 ネ ッ ト 4)フ
レー ム
5)オ ブジ エク ト指向
・ 述語論理 る 思考 の表現法 として最 も強力 な手法 の一 つ として述語論理 (Predicate Logiclが あ 。 と そ の うちで も特 に一 階の述語論 理 は人工知能研 究 の初期 か ら推論 や問題表現 の手段 して利用 され て きた。論理 の 強力 な点は形式 的 に体系 が整備 され てい るため、具体 的 な対象 を述語 を用 いて記述す れ ば、あ とは論理 的推論機構 に よつて事実 を推論す るこ
45
第 5章
事例 の知識表現
とが可 能 となる ことで ある。一 階 の述語論理 を用 いた有名 な推論法 はRobinsollの 導 出 原理 (Resoluion Principle)で あ り、そ の導 出原理 を用 いることによつて事 実 の検証 が 可能 となる。 述語論理 による知識表現 は理論 的基盤 に基 づい た推論 システ ム を実現 で きることを 最大 の特徴 とす るが、人間 の持 つ 柔軟 な情報処理能力 との整合性 は低 い し、 実用 的 な シス テ ム を構築す るこ とは困難 である。
・ プ ロ ダクシ ヨン 。システム プ ロ ダクシ ョン・ システ ム (Producdon System)は エ キスパ ー ト・ システ ム構築 の 手法 として最 もよ く利用 される システ ムで あ る。 プ ロ ダクシ ヨン
。システ ムは プ ロ ダ
クシ ョン・ ル ール 、 いわゆる推論規則 の集合 と、推論 の各時点 で求 める事柄 の集合 と、 それ らを用 いて新 らな推論 を行 う推論機構 で構成 され る。 プ ロ ダクシ ョン・ ル ー ルは一般 に
IF
条件部
■EN
結論部
とい う形 をとる。条件部 には複 数 の記述 を論理積 (AND)、 論理和
(OR)で 結合 で
きる。 プ ロ ダクシ ョン・ システ ムは非常 に単純 な表現形式 で あ るため、理解 しやす い知識 表現で あ る。 また、各ル ール を独 立 に解釈 で き、 モ ジ ュール性 が高 い ため、新 たなル
ー
ルの獲得、既存 のル ー ルの修 正、削 除が容易 に行 えるが、 ル ー ル 間の関連 が不明確 で あ るため、 システ ムの推論 の不矛盾 や整合性 を守 るこ とは困難 で あ る。
・意味 ネ ッ トワー ク 各事物 やそれ らの 関係 をグラ フの形 で示 そ う としたのがQulllianの 意味 ネ ッ ト
(Semantic Network)で ある。意味 ネ ッ トでは、問題領域内 に含 まれ る個体 、概念 、 状態 な どをオブジ ェ ク トとす る。 オブジ ェ ク トをノー ドとし、 オブジ ェ ク ト間 に関係 を枝 とす るグラフ構造 として知識 を表現す る。 意味 ネ ッ トワー クは直観性 に優 れ、表現構造 に単純性
。一様性 があ り、理解 しやす
い表現形式 で あ る。 また、知識 の 追加、修 正 も容易 で あ る。 しか し、機能 の異 なる記 述が 同一 ネ ッ トワー ク内 に混在す るため、推論 に複雑 な処理が必要 となる。
46
事例 の知識表現
第 5章
。フ レ ー ム
フ レーム (FraFne)理 論 は典 型 的 な状況 や オブ ジ
エク トを表現す るため のデ ー タ構造
である。意味 ネ ッ トワ として、Minskyに よ り提案 され た知識表現 の方式 来 か ら提案 され たい くつ かの知識 表現法 を集大成
ー クな どの従
した ものである。
一 つ の フレームが 一つのオ 一般 的な フレームはス ロ ツ トの 集合 として構成 され る。 レーム名 を用 いて識別 され る。 ス ロ ツ ブジ ェク トに対応 し、 ユ ニー クに付 け られ た フ のである。属性 はス ロ ツ ト名 で特 トはオ ブジ エク トの特徴 を属性埴 の組 で表現 した も ロ の にあ り、値 に関す る制約 な ど、値 の種類 定 され る。 また、 フ アセ ツ トは ス ツ ト 中 を決 め る ものであ る。 フ レーム は構造 化 され た記述 の 階層 的表現 が可能 である。
また、各 フ レーム にはス
ロ ッ ト値 に、手続 きや デーモ ンを記述 で き、極 めて強力 な表現能力
を持 つ 知識表現 で
あ るが、知識 の独 立性 が低 い とい う問題 が あ る。
。ォブジ ェ ク ト指 向 が中心 的役割 を果 の フ レーム型 の知識表 現 では、知識 の階層 性 と性質 や手続 き 継承 つて定義 され るクラス用 のオブ た した。 オブ ジ エク ト指向 に同 ∝卜Oriented)言 語 によ 変数 の値 を ジ ェク トはオブジ エ ク ト自体 に与 え られ た内部変数 (instance variable)と 計算 す るため の手続 き
(メ
はクラ ソ ツ ド:Method)を もっている。具体 的 な対象 の表現
スオブジ ェク トの イ ンス タンス として生成 され、 イ
ンス タンスの もつ 変数値 はクラス
が持 つて い るメ ソ ツ ドを継承す る ことによつて計算 され 従来 の コンピユ ー タ言語 では、 一般 にプ
ロ グラム とデー タは独立 してお り、 プ ロ グ
ラムが主導 してデ ー タ処理 を行 う流 れであ つた。 オブ 手続 きをパ ッケ ー ジ化 した もので、 オブ ジ 業 を進 める とい う、 デ ー タ主導 の
る。
ジ エク ト指向 とはデ ー タとそ の
エ ク トの 間 に メ ッセ ー ジを交換 しなが ら作
パ ラダイ ム に立 つた新 しい考 え方 であ る。
カプセ ル化 (情 報 隠蔽)、 継承 ー ォブ ジ ェ ク ト指 向技術 の基礎 として、 デ タ抽象、 エク ト指向 は問題解 決 の柔軟性 や信 メカニズム な どの向上 の特徴 が あ るため、 オブ ジ む知識 の表現 力 と柔軟 的 な問題解決 頼性 な どを飛躍 的 に向上 させ る考 え方 であ り、富 能力 も向上 で きる有力 な方法 として期待 を集
47
めている。
第 5章
事例 の知識表現
5.2 事例 の知識構 成 の分析 5。
2.1 設計事例のデータ構成
とい う4元 組で 前 に述べ たように、本研究 では設計事例 を目標、条件、結果、方法 モ ルを定着す るため、 これ らのお 構 成す ることによつて、 コンピュー タ内部 に表現 デ のおのの構成要素 に対 して対応す るデー タ性格 を分析す る必 要があ る。 ー タの性質 を記述 日標部 において、建物用途、規模 、構造 な どの各要素 に対 してデ す るため、属性形式 を用いて表現 で きる。 して属性形式 でデー 条件部 において、敷地の面積、標高 、前面道路な どの要素 に対 を記 で の タの性質 を表現 で きるが、敷地 の形状 な どの要素 に対 して画像 表現形式 図面 述す る必要があ る。 結果部 において、設計結論 とす る設計案に対 して、様
々な図面 と設計報告 など形式
で記述す る。条件部 のように、画像 の表現形式 と属性形式 を用
いて表現す る必要があ
る。 て ルールの形式 で記述 方法部 において、建築法規 と設計規則 に関す る内容 に対 し 、 の めのスケ ツチやエス す る必 要がある。発想情報 に関す る内容 に対 して、設計発想 た の 理念及 び キース などの記 述 は画像 の表現 形式 が必要であ り、設計 主題や設計者 建築 設計 意図の解説 な どの内容 に対 して文字列形式 で表現す る必 要
である。
など 上 に議論 の ように、設計事例 のデー タ構成 は属性、文字列、図形 、画像、規則 のに対応す の多様 なデー タ性格か らなる。 それ らのデー タ性質 を記述す るために、そ る柔軟 な知識表現形式が必要である。
5。
2.2設 計 事 例 の 内部知識 分類
している異なる知識類 本節 では、知識 工学の立場 か ら、設計事例 が設計活動 に関連 ー か ら分析 し、事 型 か ら構成す る。 ここで、事例 の各部分お よびそのデ タの構 成形式 例 の知識 の構成 は以下のように分類 して整理す る。
1)属 性型知識 それが文字列 の形 で設計条件 を記述す る知識類型 で あ る。例 えば、建物
の構造 :木
の や照合な どの操作 の 造 な ど。属性 型知識 は事例 の基本的 な特徴 を表現 し、事例 検索 ー ルの型 で構造化 され る。 場合 に役割 を果 たす知識 である。基本的表現法 はテ プ
48
第 5章
事例 の知識表現
2)幾 何 型知識 それが建物 の形状 、空間的配置 を表 わす知識 で 、幾何構造 を明 らかにす る。幾何型 知識 は事例 の一 つ 内容 として主 に設計 の結論 を表現 し、利用者 に展示 しなが ら設計発 想 に役割 を果 たす知識 である。基本 的表現法 は幾何構造 の 方法 で表現 され る。
3)数 式型知識 それが建物 の物理 的作用、条件 を表 わす知識 で、建築 の 数理的な設計 を規定す る。 例 えば、構造計算、 開 口面積率計算 な ど。数式型知識 は事例 の方法部 の 内容 として、 設計 の方法 を解説 して役割 を果 たす知識 で ある。基本的表現 は通常 の式記述 を計算 の 原則 に従 って関数 の 型で表現 され る。
4)規 則型知識 それが設計 プロセスにお い て設計規則 、手法、法的規制 な どを表 わす知識 で、設計 の手順 を扱 う。例 えば、建築 の各種 関連 の法規 な ど。規則型知識 は事例 の方法部 の 内 容 として 、設計条件 に対応す る問題解決方法 を記述 し、利用者 に設計方法 を示 し、設 計能力 の 向上 に役割 を果 たす知識 で あ る。基本 的表現法 は「IF..THEN..」 型で表現 さ れる。
5)説 明型知識 それ は設計 の文章化可能 な構造 を表 わす知識 で 、設計 の考案、工 夫、意 図 を記述す る もので あ る。説明型知識 は事例 の方法部 の内容 として 、設計 図面 に対 して設計者 の 設計意 図 や考案 を文字型 で補充 的 に記述 して利用者 の発想 に役割 を果 たす知識 である。 基本的表現法 は文字列 の型 で表現 され る。
6)概 念型知識 それ は建築 の関連 分野 の教養 的知識 で 、専用用語 な どの もので ある。例 えば、第
1
種住居専用地域、鉄 筋 コ ンク リー ト造 な ど。概念型知識 は事例 の 目標、条件部 の属性 を記述す るために、対象 の表現 の一慣性 や入力 の効率性 な どに役割 を果 たす知識 で あ る。基本 的表現法 はテ ーブルの型 で構造 される。
7)画 像型知識 それは設計作品 の 実体や模型 の 写真 と図面 を表 わす知識 である。画像型知識 は事例 の結論部 や方法部 と して、設計 の結果 や設計 の思 考情報 を記述 し、利用者 に展示 しな が ら設計発想 に役割 を果 たす知識 で あ る。その点 を考 える と、画像型知識が幾何型知 識 と同 じ役割 を果 たす。設計 の初期段 階 にお け る構想設計 とい う問題領域 に設計 の具
49
第 5章
体的 に寸法 をあまり表現 しないため、画像型知識
事例 の知識表現
のほ うが幾何型知識 よ りよく使 われ
る。
5。
3
5。
3.1 事例の記述の現状
事 例 の記 述
述 は事例 の特徴記 述 であ り、 事例の表現 は一般 に問題記述 と解記述か らな る。問題記 の結論、主張、行 は 属性 ―値 のペ アの集 ま りからなるのが一般的である。解記述 事例 をプロダクシ ヨンルールと 動、決定、解法 などの問題 のタイプに応 じて異 なる。事例 がルールの結論部 に相 比較す ると、特徴記 述部が ルールの前提部 に相当 し、解記述部 のに対 して、事例 はイ ンス タンス記 当す る。 ルールは変数 を伴 うパ ター ン記述である であるのに対 して、事例 は大 き 述 である ことが異 なる。ルールは小 さいな知識 の断片 ロ シ ヨンルール形式 で表 な事実 である。 したが つて、事例 を記述す るために、 プ ダク 現す るのは困難 であると判断で きる。 の表現法 はまだ確立 一 の 事例 の記述 と事例 ベースの構造法 について、 と くに 定 形式 の によつて、 の されてい るとはい えない。ある問題状況が与え られた場合、 そ 事例 構成 のために、複 これに関連深 い事例 の検索が効率 よく系統 的 に行 われる必要がある。そ つ の基準 か らそれ を区別 し得 る 数の事例 に共通す る特徴 を抽出 して一般化 し、か 共通 としては、意味 ネ ットワー 特徴 によ り、索引付 け を行 う場合 が多 い。具体 的な表現法 るが、 フレーム形式 で ク、木構造、 フレーム、オブジェク ト指向の表現 な ど考 えられ 表現 され るシステムが多い。
5。
3.2 事 例 とク ラ ス
よび内容構成 とい う立場か ら、 設計事例 とい う もはその組織構 造、知識類型 の構成お い と比較す ると、次 のこと ォブジェク ト指向 プログラミングにおけるクラス と う概念 が明らか になる。
1)組織構造 るクラスは、 オブジエク ン ロ 単純 に考 えれ ば、 オブジエク ト指向 プ グラ ミ グにおけ ソッ ド :medlod) トの内部状態 を記述す るデー タ及 びそのデー タ処理を行 う操作 (メ ー の 応す る操作 か の両方 により構 成 され るものに対 して、設計事例 も内部 デ タとそ 対
50
第 5章
事例 の知識表現
らなる もの と考 えられる。事例 の 目標部 と条件部 は事夕1の 内部状態 を記述す るもので、 方法部 は内部状態 を操作す るものであると考 えるのは非常 に自然 で あ る。
2)知 識類型の構成 オブジェク ト指向のクラスでは、多様 な性格 のデー タを共存 して記述 で きることに 対 して、設計事例 には、属性、文字列、数式、図形、画像、規則 な どの多様 な知識類 型 とデー タ性格の設計知識 を含 むため、 オブジェク ト指向のクラスの概念 を用 いて事 例 を記述す ることに適用す ると考 えられる。
3)内 容構成 その点 は 1)と
2)に 述べ た内容 に似てい る。 オブジェク ト指向 のクラスでは、 オ
ブジェク トの多様 な性格のデー タを共 に記述す るだけでな く、デー タに関す る操作 も 共存 して記述で きるため、オブジ ェク トの内部組織 の構造化、複雑 なプログラミング もで きる ことに対 して、設計事例 では、 日標、条件、結果、方法 とい う構造 か ら構成 されて、多様 な知識類型 とデー タ性格 の設計知識 を含 む膨大的なオブジェク ト実体 で あ ることで、 オブジ ェク ト指向の方法 を用 いて事例 を記述す ることに適用す ると考 え られる。
5。
3.3 事例 の 記 述 形式 と例
知識 の表現法 は知識 システムにおい て中心的課題 の一つであ り、問題領域 に適用す る知識表現法の選択 が システムの能力 を決定す るといって も過言ではない。事例 ベー ス推論 による設計支援 システム を構築す るため、知識工学 の立場 か ら設計知識 の表現 について、次 の点 を考慮す る必要 である。
1)知 識表現力 の強 さと柔軟性 まず、設計事例 の構成内容 の立場 か ら、設計 に関す る概念 と設計 の意図を直接 に記 述す る必要 となる意味で、設計知識 を素直、自然 に表現 で きなければならない。つ ぎ、 設計事例 の多様 なデ ー タ性格 の立場 か ら、事例 が属性、文字列、画像、規則 などを含 む多様 なデー タ性格 を記述で きなけれ ばならない。 この ような視点 によつて設計事例 を記述す るため、知識表現法 についてその表現力 の強 さと柔軟性 は設計 の問題解決 に 重要な ことである。
2)知 識利用 の便利性 と効率性 知識 の利用 に対 して、知識 を直接利用す ることと、知識 を用 いて新 しい知識 を導 出
51
第 5章
事例 の知識表現
て を進め る意 す ることが二つ面あ る。前者 では、設計事例 の内容 を直接 に利用 し 設計 いはどう推論す るか とい う 味 で、設計 の問題 に役 に立 てる事例 をどう検索す るかある ことである。後者では、事例 の内部 に一部 の知識 が適用 しない時 に、問題解決 に適用 のように記述 さ す る知識 を導 出 しなければならない。その両者 の問題解決 のため、そ で れた知識 に基づいて、問題解決 の推論 のために、その結果 が設計者 にとつて有意味 つ 々 を あ るためには、単純 に推論がで きる とい うだけでな く、設計 の も 様 な側面 反映 したものでなければならない。 この問題 は実 に様 々な意味 をもっている。 る 上に述べ た分析 に基づいて、 オブジェク ト指向モデルを用 いて設計事例 を表現す セ ー のは適用 していると考 えられる。 また、オブジエク ト指向方法 は抽象 デ タ、 カプ ル化 (情 報隠蔽)、 継承 な どの利点 も持 つため、強 く知識 の表現力 と柔軟的 な問題解 決能力 も向上できる有力 な方法 として期待 で きる。 本論文 では、オブジェク ト指向言語 のC++を 用 いて設計事例 を記述 して事例 構築 を行 う。次 に設計事例 の記述 を示す。
│││││││││││││││││││││││││llllllllllllllllllllllllllllllllll
〃ChOuSeCase設 計 事例 class (〕 HOuseCase {
public:
CHouseCase(){}; ∼CHouseCase(){};
//
Objective Cstring m-strBuildingUse;
Cstring m-strFamilY; CString m-strRoomPlan; CString m-StnrcturalForm;
int m-strFloor; Float
m-fBuildingAreaPlan;
〃建物用途 〃家族構成 〃室 の配置 〃建築構造 〃階層 〃計 画建築面積
//Condition float m-fSiteArea; Cstring m-sffSiteForm;
〃敷 地面積 〃敷 地形状
CEntry strSouth; CEntry strNorth;
〃南 側 施設 〃北側 施設
52
ベースの
第 5章
CEntry strEast;
CEntry strWest;
CStHng m_strUseRegion; CString m_HightRegion; CStHng tttrFireZone; ΠOat m fFloorAreaRatioPlan;
Float m fBuildingCoveragePlan;
CDrawing aDrawing;
〃東側施設 〃西側施設 〃用途 地域 〃高度地区 〃防火地域 〃容積率 〃建ぺ い率 〃図面
〃ConClusion
Float m fBuildingArea Float m fFloorAre鶴 Float m_fFloorAreal; Float m fFloorArea2; Floatin fFloorArea3; Float m BuildingHcight;
Float m iFloorAreaRatio; Πoat m fBuildingCoverage;
〃建築面積 〃延床 面積 〃1階 面積 〃2階 面積 〃3階 面積 〃建物 高 〃容積率 〃建ぺ い率
〃酉己置
CStHng m_strLoyoutl; CSt五ng mヒstrLoyout2; CSt五 ng mヒ strLoyout3; CSt五 ng m_strLoyout4; CString m_strBaselnent;
〃配置 1階 〃配置 2階 〃配置 3階 〃配置 4階 〃配置 地下
〃MethOd
CRule aCodeRule; CRule aDesi♂ Rule;
〃法規 ルール 〃設計 ルール
void lnitialize();
void GetDrawing(CString strNarne,int type); void SetDrawing(CString strNallne,int type);
void GetRuleo; void GetRuleo;
B00LGetCase(int); B00LSetCasc(intゝ B00LFFind(CString strFind);
53
事例 の知識表現
第 5章
protected:
int
RecodelD;
CString m-strCaseName; CString m-strAddress; CString m-strDesinger; CString m-strowre;
〃登録 Id 〃事例名 〃住所 〃設計者 〃所有者
); Class CDrawing{ intRecodelD; CString FloorDrawing; CString TateDrawing; CString SectionDrawing; CString hespectiveDrawing; CString SiteplanDrawing; CString ItoDrawing;
〃平 面 図 〃立面 図 〃断 面 図 〃透視 図 〃配置 図 〃意 図図面
GetDrawing0; SetDrawing0; DeleteO; )
ll
)v- )v,
,7
Class CRule{ intRuleID; CString RuleName; SetRuleO;
GetRule0; Delete0; )
Class CEntry{
int RecodelD; int tpye; CString strName;
Float width; Float height;
〃登録D 〃方位 〃施設名 〃幅員 〃高低差
}
/////////
54
事例 の知識表現
第 5章
事例 の知識表現
5.4 まとめ 本章では、 まず、人工知能におけ る重要な研究課題 とす る知識表現 の技法 について、 代表的 な知識表現 の方法 の 5つ を上げてその特徴 を簡単 に述べ た。そ して、設計 事例 の構成内容 お よびそのデー タの構成形式 か ら分析 し、事例 において知識 の類型 の構成 を分類 して整理 した。設計事例 に属性、文字列、数式、図形、画像、規則 などの多様 な知識類型 とデー タ性格 の設計知識 を記述す るために、 オブジェク ト指向モ デルを用 いて設計事例 を表現す るのが適用 してい ることを述べ た。最後、 オブジェク ト指向言 語 のC++を 用 いて設計事例 を記述す る例 を示 した。
55
第 6章
建築図面 の記述 と評価方法
第 6章 建築図面 の記述 と評価方7
とす ることは もっ 建築の空間構成 を中心 とす る意匠設計 では、図を基本的 な思考手法 るには、製 図 ム とも基本 的 なものである。設計支援 のための知的CADシ ステ を構 築す にお いて図 を考 える問題解 作業 にお い て図 による問題解決 ではな く、設計 の空間思考 いて、設計事例 の図面構成 を分 決 は重要 な不可欠 な ものである。第 4章 と第 5章 にお ると、本研究 において、設計 事 析 した。問題解決過程 に図面 の 役割 の視点 から分析す 例 の図面 は問題解決 過程 に次 の二 つ役割 があ る。
1)伝 達役割 の か ら事例 の 設 それ は利 用者が設計過程 にお いて事例 ベ ース に保存す る設計案 図面 るこ とである。 を 計者 の設計 意図 を理解 し、その 設計図面 を参照 しなが ら設計 発想す が簡単 である画像 その 目的の ための図面 の記述 に ついて、外 部表現が直観 、内部表現 の形式 で記述す るのは有効である。
2)推 論役割 それ は推論 システ ムが与 える設計 問題 に対 して最適設計事例
を検 出す るため、推論
こ とである。具体的言 えば、推論 過程 において事例 の 図面の類似 性 を判別、推論す る して、多数 の 設 システ ムが 与 える設計 問題 に対 して、事例 ベースの事例 の図面 を比較 の 記述 について、外 部 の の 計案 か ら最適設計事 例 を検出す ることである。 そ 目的 図面 で きない ため、図面 の記述方法 表現が直観 、内部表現 が簡単 で あ る画体 の 形式が適用 を考 えなければならない。 本章 には、伝達役 割 の図面 の記述 方法 に
ついて、特 に述べ る必要 がない。推論役 割
の図面 の記述方法 を中心的述べ る。
56
第 6章
6。
建築図面 の記述 と評価方法
1建 築図面記述 の関連研究
建築設計 の分野で は、人 工知能の 手法 を用 いた図 の研究 について幾つかが あげられ る。服部 は住宅 プランのn―LDKの ように記号化 された建築 の空間構成 を記述す る形式言 語 (生 成文 法)を 提案 し、その 図形記述言語 の可能性 を述べ た 。青木 は建 築空間分析 のためのス キーマ グラマー による一連 の研 究 において 、建築設計 における 図式性 の概 念 の重要性 を議論 して、文法規貝Jや そ の導 出過程その ものが建築形態 の特徴や意味 を 反映 した もの となるよ うにする とい う視点 でスキーマ グラマー とい う概念 とこれに基 づ く空間分析方法 を提案 した。さらに、SALと い う建築平面記述言語 で平面構成 を機械 的に記号列 で表記す る方法 を提案 し、その文法 を満足す る平面 か どうかを判 定す るパー ジ ング方法 を述べ、与 えられる平面 を規定 してい る文法 を構成す る方法 を示 した。 それらの研究 において、 いろい ろの問題 点が残 つている。青木氏が提案 したSALと い う建築平面記 述言語 を用 い る問題解決 において、SAL表 現 と平面図 との関係 1対 1の 対 応 とならない場合 がある。例 えば、次 の図6.1に 対 して、 この平面 を表現 す るSAL表 現 が 2つ 存在 してい る。図中 に示 した「+d+/tx/nZ」 と「+d+/tn/1XZ」 とい う 2種 の表現 が可能である。
d:土 間
z座 敷
t茶 の 間
正寝室
n
d X
x:次 の 間
Z
図6.l SAL表 現 の例
6。
2
事例 の空間構成
設計事例 の構成 につい て 設計条件 及 び空 間構成 の 関係 を事 例特徴 の主要内容 として 事例 をまとめた。その 設計事例 の項 目構成 について第 4章 と第 5章 に示 した。本節 で は、設計事例 の空間形 態 に着 目 し、それ らの異 なる事例 の空間形態の差違 を求める こ とによって 設計事例 の類似検 索 を行 う。そのために、 まず、問題対象 とす る設計事 例
57
第 6章
建築図面 の記 述 と評価方法
に対す る空 間形態 につ いてつ ぎの ような区域 空間、敷 地空間
お よび建物 空 間 を分類 し
て分析す る。 ・区域空間 とその周辺施設 か らなる空 間である。 区域空間 とは図6.2に 示す ように建築物 の 敷地 なる周辺施設 に これは建築物 の敷地 とその周辺施設 に相互 に影響関係 をもた らす。異 の北側 に道路が あ よって異 な る建築形態 を設計す る ことが可 能 になる。例 えば、敷地 は異な り、異 なる建 築 る場合 と敷地 の北側 に隣地があ る場合 に、北側 斜線 の計算方法 形態 を設計す る可能である。
図6。 2
区域空間
。敷 地空間 敷 地空 間 とは敷 地 の形 、お よび敷地 の 内部要素
の構 成 か らなる ものであ る。敷 地
の形 は建物形 態 の設計 に影響 を与 える。敷 地空間 にお
い て 図6。 3に 示す よ うに検討 す べ
きことは住 宅 に対 して一 般 に建物 、庭、車 庫 な ど主 な要素
図6.3敷 地空間
。建築 空 間
58
をどう配置す る ことであ る。
建築図面 の記述 と評価方法
第 6章
建築空間 とは常識 的な意味 で、建物 の外 部形態 とその内部
の空間 の単位、 種類 お よ
びその相互関係 か らなるものである。建築 の空 間構成 の理解 の方法 は規模、距離 関係、 の内部室 の位 置 は 隣接、用途 、行動 上の意味 な どが多 いが、 ここでの主 な関心事 建物 隣接関係 と通路連接関係 とい うことである。 つ なが るとい う空間の単純
1)隣 接関係 は 図6.4の (め に示す ように室 と室 の間 に直接 に
な位置関係 である。 υ連結関係 は 図6.4の (b)に 示 す ように室 と室 の間 に ドアな
どによる直接 に移動 の可 能
性 を持 つ連接関係 である。
A室
A室
B室
B室
一
(b)室 の 通路連接 関係
(a)室 の位置隣接 関係
図6.4建 物 の室 の隣接 と連接関係
の 上述 の空 間構成 とい う問題 領域 に対 して、本論 の 第 7章 に区域空 間では敷地 周辺 に対 して、敷地 施設 を設定す る方式 を通 して あ る程度 に問題解決がで きる。敷 地空間 い の形状 の類似性 を判別す るため 、形状 を完 全 にマ ッチする処理 方式 は困難 であると う点 を考慮 す ると、敷地 の形 状 を基本 的形状 として
い くつかに分類 して、与 えられ る
問題敷地の形状 の類似性 を判別 す る時 に、基本 の参照 して分類 す
ることに よつてそ の
敷地の形 の類似性 を求める ことを対応 している。 本章 にお いて、建築空間 とい う問題 を中心的議題 としてそ
の空間形態 の類似性 を求
めるために、次 に述べ る空間構成 の記述方法 と評価方法 を考 える。
6。
3
空間構成の記述方法
を理解 し把握す るた 本研究で は、異 なる建築 に対 して、それ らの空間形態の差 異性 の めに、従来 の形式文法 による空 間構成の記 述方式 と異 なつて、前節 で議論 した建築 の さの面 を と 内部室 の隣接 と連接関係 とい う空間構成 に対 して記述 の簡素 さ 実現 容 易
59
第 6章
建築図面 の記述 と評価方法
の さの面 を 内部室 の 隣接 と連接 関係 とい う空 間構成 に対 して記述 の 簡素 さ と実現 容 易 を 意識 した記 述方式 を用 いて空 間構成 の 形式定義 を考 える。 ここで 、問題記 述 簡略 化 い して表現 す るため に、次 の条件 を前提 に して空 間構成 の記述方式 を考 えて る。 1)住 宅 プラ ンを問題対象 とす る。
2)常 識 な意味 の室 を空間単位 として、その形状 は長方形 として考 える。 3)空 間 の具体 的寸法 を表現 しない。 住宅 で も都市型 と地方型 に分 け て、記述 の簡略化 のため 、都市 型住宅 都市 型住 宅 は 広 い敷地 が 得 られ に くい ため、玄 関 ホ が 多 い 。L・
を対象 とす る。
ー ル式、居 間中央式 な どのプラ ン
DoKを 生活 の 中心 にお いた ものが 見 られ る。
以上 の議論す る上で、次 の示す よ うな記述方式 で空 間構成 を定義す る。
S=(Σ 、 V、
A、
P)
ただ し、 Σ :建 築空間で常識 的な意味 の室 とい う具体 的 な空 間単位 の集合 であ る。
V:室 の類型 の集合 である。室 の空間単位 を次 の類 型 に定義す る。あ る室空 間が必ず一つの室 の類 型集 に属す る。
B:私 室 L:居 間 W:洗 面 、浴室、便所 DK:台 所、食事所 H:玄 関 ホ ール A:空 間の接続 を記述す る操作 関数 の集合 である。 ここで次 の操作 関数 を定義 してお く。 Above(X,y):X∈ Σ、 y∈ Σ 且 つ 室xが 室yの 上 にあ るとい う二 つの室 空間の位置隣接 関係 を定義す る。 Left(x,y):X∈ Σ、 y∈ Σ IL・つ
室xが室yの 左 にある とい う二 つ の室 空間の位置 隣接 関係 を定義す る。
60
第 6章
建築図面 の記述 と評価方法
MOVe(X,y):X∈ Σ、 y∈ Σ 且 つ 室xと 室yの 間 に直接 に交通 の可能性 を持 ち連結 関係 を定義す る。 ここで、 この 関数 にふ たつ のパ ラメ ー タの順番 の関係 が ない 。 つ ま り、Move(x,y)=MOVe(y,x)
P:Aで 定義 した関数関係 に よ り、指定 した条件 をすべ て満 たす操作 関数 の集合 で あ る。 ここで 、図65を 例 示 として上述 の空 間記述方法 を説明 す る。図中 に(外 の符号 を室 の名 を とす る 。()内 の符号 を室 の 類型 とす る 。太 い記号 「 ―」 は二 つ室 の 間 に通路 が あ るこ とを示す。 そ の場合 に空間記述 Sは 次 に示す。
《DK) │
b(B)
図65
S={Σ 、 V、 Σ :{a,
A、
C(II)
e(W)
d(L)
【B)
│
空 間構成例 1
P}
b, C, d, e, f}
V:B={b, f〕
L={d} W={e} DK={a} H={C} P:{ Abov∝
a,b)Above(C,d)Abovec e,f)
k光 (a,C)1」 KC,e)L■ (b,d)L光 (d,f)
Move a,c)MoVet b,d)MOV∝ C,d) Move c,e)MoVe d,f) 〕
61
第 6章
6。
4
建築 図面 の記述 と評価方法
図面 の差異 の評価方法
設計過程 にお いて 、異 なる建 築 に対 す るそれ らの空 間 の差異 を把握す
る ことは建 築
空間 の理解 の ため重 要 の ことで あ る 。 しか し、異 な る建築 空 間 の差異 に対 して、そ 評価尺度 は 極 めて曖味 で、体系 化 され た方 法 が ない状 況 であ る 。本論文
の
で は、それ ら
の建築 空 間の 差異 を判別 す るため、 室空間の型 とその連接 関係 に着 日 して次 の評価 尺 度 を考 える。 1)室 の類型 の評価
であ の 室 の類型 の評価 で は、ふた つ の 建築 の空間構 成 につい ての室 の 同 じ類型 評価 る。評価方法 として、任意 の二 つ の 建築 の空 間構成
S2=(Σ
2、
V2、
A2、
:Sl=(Σ
l、
Al、
Vl、
P2)に 対 して、 室 とい う単位 空 間の構 成集
(Σ
Pl)と
Σ2)の 間
l、
にすべ ての 室 につい て 同 じ類型 の 室 か どうか照合す る 。照合 した結果 は例 えば建築 空 める。 間Slと S2の 場合 に、次 の計算式 を用 いて二 つ空 間構成 の室 の類 型 の類似値 を求
k
︲ 5Σ 〓
k
︲ 5Σ 〓
室 の類型 の類似度 =1-
I p(Si,u1) - /(siuk)] (式 6.1) 2 [ψ (■ ,Uk)+ψ (ち ,Uk刀
ただ し、関数 ψ6ち Ukソ よヽ空 間構成 Siに ついての室 の類型Ukに 属す る室 の数 で あ る。 こ こ で 、 Siと 助 は 異 な る 二 つ の 空 間 構 成 で あ り、 Ukは 前 に 定 義 し た 室 類 型 要素 であ る 。 この 式 によ り、同 じ類型 の 室 が 多 い 場合 に は式 の 値 予
{B,LW,DK,H}の
の つ が 1に 近 くな り、同 じ類型 の 室 が 少 ない場合 には 0に 近 くな る。 ま り、室 の類 型 類 似度 は 0か ら 1ま での値 となる。
2)室 の連接 関係 の評価 室 の連接 関係 の評 価 では、 ふ た つ の 建築 の空 間構成 に対 して、位置
の隣接 関係 と通
路 の連結関係 を含 む室 の 連接 関係 の 評価 を行 うこ とである。 そ の評価方 法 意 の二 つの建 築 の 空 間構成
:Sl=(Σ
l、
Vl、 Al、
Pl)と S2=(Σ 2、
として、任 V2、 A2、
P21に 対 して、操作 関数集 の 間 に全 ての構成関数 の照合 を行 う。 その照合過程 では、 照合 され るふたつ の 関数 にお のお のの室 パ ラメー タを同 じ類型 か ど うか比較す
62
る。
第 6章
建築図面 の記述 と評価方法
の空間構成 Slと S2の 場合 に、次 に定義す る。 ・ 隣接照合規貝J: もし、Slの 関数Above(X,y)X,y∈ Σl且 つ x⊂ vl,y⊂ v2 S2の 関数 Above(a,b)a,b∈ Σ2且 つ a⊂ v3,b⊂ v4 且つ
vl=v3,v2=v4, vl,v2∈ Vl v3,v4∈ 碗
則 :関 数Above(X,y)と 関数Above(a,b)は 照合す る。 ここで 、x⊂ vは x室 力ヽ類型 であ ることを示す。次 の解説 で も同 じ意味 で あ る。 もし、Slの 関数Let(x,y)X,y∈ Σl且 つ x⊂ vl,y⊂ v2 S2の 関数Lftca,b)a,b∈ Σ2且 つ a⊂ v3,b⊂ v4 且つ
vl=v3,v2=v4, vl,v2∈ Vl v3,v4∈ η
則 :関 数Left(x,y)と 関数Lftca,b)は 照合す る。
室 の 隣接 の類似度 を、 これ らの照合規則 によつて、次 の計算式 を用 室 の 隣接 の類似度 =2]乳 (Sl,S2)/(N【 Sl)+N【 S2))
いて求 める。
(式
6.2)
ただ し、 N【 Sう は空 間構成 Siの 関数集合 PJこ 含 まれ る隣接 関係関数 の数
の の Msl,S2)は Slの 関数集合 Plと S2の 関数集合 P2に 含 まれる隣接 関係 関数 間 照 合数
・ 連結照合規則
:
もし、 Slの 関数Move(X,y)X,y∈ Σl且 つ x⊂ vl,y⊂ v2
S2の 関数Move(a,b)a,b∈ Σ2且 つ a⊂ v3,b⊂ v4 且つ
vl=v3,v2=v4, vl,v2∈ Vl v3,v4∈ 碗
則 :関 数Move(X,y)と 関数Move(〔 わ)は 照合す る。
いて 求 める。 室 の連結 の類似度 を、 これ らの照合規則 によつて、次 の計算式 を用 室 の連結 の類似度 =NM(Sl,S2)/(NKSl)+NKS2))
(式
6.3)
ただ し、
NxS)は 空 間構成 Sの 関数集 合 PJこ 含 まれ る連結 関係 関数 の数 の 間の 照 Цβ l,S2ソ まslの 関数集合 Plと S2の 関数集合 P2に 含 まれる連結関係 関数
63
第 6章
建築図面 の記述 と評価方法
鴫β l,S2)は Slの 関数集合 Plと S2の 関数集合 P2に 含 まれる連結関係 関数 の 間の 照 合数
6。
5
複 雑 図形 の 記 述
本章 では 、簡単 な建築空 間の形態 を問題 対象 として問題解 決 の過程 を解説 した。 さ らに複雑 な形状 を考慮 す る場合 に、問題解 決 のため にほか の制 約関数 が必 要 とす る 。 例 えば、図6.6の 空 間形態 とい う問題 を記述 す るために、 単位空 間の室 の境界線 に対 す る操作 関数 を必要 とな る。 ここで 、空 間の 形式記述 におい て境 界線 に対す る操作関 数 を述べ る。
a
C
b
d
図6.6 空間構成例2
S=(Σ 、 V、
A、
P)
A:{Line above(x,y):室 xの 上側境 界線 が室 yの 上側 境界線 と同 じ Line below(x,y):室 xの 下側境界線が室 yの 下側 境界線 と同 じ Line below_above(X,y):室 xの 下側境界線が室y の下側境界線 よ り上 にある }
そ して、 図66の 場 合、そ の空 間記述 Sの 生 成 関数 集 Pを 次 に示 して問 題 を記述 で
きる。
64
第 6章
g= (>, v. A.
建築図面 の記述 と評価方法
P)
I i {a, b, c, d} P I { above(a, b) above(c, left(a, c) left(c, d)
d)
Line-above(a, c)
Line-below(b, d) Line-below-above(a, c ) )
6。
6ま
とめ
本章 では 、問題解 決過程 にお いて 図面 の 伝達 と推 論役割 の 視点 の 分類 か ら、推論 役 割 の 図面 の 記述方法 を中心的述 べ た 。 まず 、問題対象 とす る設 計事例 に対 す る空間形 態 につい て 区域空 間、敷地 空 間 お よび建物 空間 を分類 して分析 した。建築 の 空間形 態 の差異 と類 似性 とい う特徴 を理 解 し把 握す る こ とによつ て、設計 事例 の空 間構成 の 記 述方法 お よび空 間 の評価方法 を提案 し、そ の提案 した方法 に基 づ く建築 の 空 間形態 の 類似性 の判 別方法 を示 す。 さら に、 それ らの議論 した 方法 につ いて具体的例 を挙 げ て そ の 内容 を解説 した。
65
第 7章
設計思考支援 システムの枠組 み
第 7章 設計思考支援 シス テムの枠組 み
7.1
設 計 支援 シス テ ム の枠 組 み概 要
事例 ベース推論方法 は問題 に適用す る類似事例 を検索す る方式 で効率的 に問題解決 に役割 を発揮 してい るが、 しか し、検索 された類似事例 が 問題 に照合 で きない内容 に ベース推論 を補 対 して、 ほかの推論方法 (例 えば、ルールベース推論)を 用 いて事例 いて、設計 完す る必要 となる。 一方、建築設計 の思考過程 の支援 とい う問題解決 にお の空間思考 において 図 を考 える問題解決 は重要 な不可欠な ものであ る。 本章 では、第 3章 の設計思考支援 モ デル (DCM)と 第 5章 の事例 の知識表現方法 な どを議論 した方法 に基づいて設計初期段階 に思考過程 の支援環境 の構築 を目指 し、建 築構想設計 の思考過程 に適 している事例 ベース推論 とい う方法 を導入す ることを中心 として、従来のルールベース推論 お よび近年発展 中の図 による推論 を考慮 した推論機 構 を統合す る設計思考支援 システムの基礎的枠組 みを提案す る。提案 した
システム枠
組 みは製図作業 を中心 に考 えるCADシ ステムの機能 を満足 させるものではな く、推論 と学習 しなが ら設計思考過程 を支援す る可能 とす ること目的 とす る。提案 した統合化 す る推論機構では、上述の 3種 の推論方式 は一つが失敗 したら、 ほかに切 り換 えると い う弱 い結合形態 ではな く、互 い に協調 を取 りなが ら相補的 に実行す ることによ り、 全体 として、信頼性 が高 く、 かつ効率的 な問題解決 を目指す。
DCMに 基づいて設計支援 システム枠組 みは推論 ベース推論、ルール推論、図 による ベース と知識 描論、設計検証、ユ ーザイ ンタフェース及 び事例 システ ムの構成 は図7.1に 示す。
66
ベースか ら構成 される。
第 7章
ュ ーザ イ ンター フ エス
設計思考支援 シス テ ムの枠組 み
事例 ベース推論
図●よ│る 1推 論
■ル推論│■ ン ジツ
剛 .1.シ ス テムの構成
67
第 7章
設計思考支援 システ ムの枠組 み
7.2 事例 ベース推論 事例 ベース推論機能 は問題の解析、事例 の検索、事例 の修 正か らなる一連 の推論過 程 を実行す る。事例 ベース推論 はルール推論エ ンジンを通 して領域知識 を参照 しつつ、 必要 に応 じてユーザ に判断 を求 めなが ら推論 を進 める。 ここでは、本論 における事例 ベース推論 の中心課題 である問題解析、事例検索、事例修正の各機能 を述べ る。
7.2.1問 題解析 問題解析 は与 えられた設計問題 を分析す る上 に、問題 の特徴 づ け を行 うことで ある。 問題 の特徴 づ けの 目的 として、問題解決 に適用 す る類似事例 を効率的 に検索す るため、 問題特徴 づ けは与 え られた設計問題 に対す るすべ ての属性 ではな く、問題解決 に役割 を果 たす属性 を特徴 づ けなければならない。 そのために、前 の よ うに議論 した設計事夕1の 構成 に目標 と条件 の ように、計画 され る建築 目的、機能、規模、敷地、周辺環境 などの様 々な建築条件及 び建築主の要求 を 記述す る特定のテンプ レー トを定義 してお り、ユーザが このテ ンプレー トに従 ってイ ンタフェース を通 じて知識ベースの概念知識 を参照 しなが ら設計問題 を定式化す る。 このテ ンプレー トの主要な項 目を図7.2に 示す。 問題 テ ンプレー ト 主要用途 :専 用住宅
家族構成 :夫 婦、子供 3人 構造構法 :木 造 2階 建枠組壁工法 建築階数 :2 敷地面積 :236,53m 建築面積 :108.31m 延床面積 :182.49m 建蔽率 :50% 容積率 :100% 用途地域 :第 一種住居専用地域 防火地域 :な し 高低差 :0 東側施設 :隣 地 高低差 :0 南側施設 :隣 地 西側施設 :道 路5.Clm 高低差 :0 高低差 :0 北側施設 :隣 地
囲
.2 問題 テ ンプ レー ト
68
第 7章
設計思考支援 システムの枠組み
7.2.2事 例 検 索 事例検索 では、問題解決 に最 も役割 に与 える と見 られる事例 を検索す るために、間 題特徴づ けで定式化 された問題特徴 に従 って事例 ベース に記憶す る事例 の中か ら、そ の特徴 が照合 または部分照合 して い る事例 を取 り出す。設計問題 がある事例 と完全 に 照合 で きれば、その事例 を問題 の解 として結果 を出力する。その時 に事例 ベース推論 も終了で きる。 しか し、事例ベ ース に記憶 された事例が設計問題 を部分 にしか照合 で きない場合が多いので、事例 の類似検索方法 を考 える必要である。 類似事例 の検索 のために、問題 と事例 の間での属性名及 び属性値 の一致お よび不一 致 の程度 を何 らかの方法 で尺度化す ることは必 要である。属性名及 び属性値 はその相 対的 な重要度 に応 じて順序づ け または重みづ けられることが必要であ る。多 くの事例 ベース推論 システムの開発 につい て、事例 の類似検索方法 に関 して通用的な定着 した 方法がない、おのおのの問題分野 に適応 してい る検索方法 は考 えられる。本論 では次 の検索方法 によつて類似度が高 い事例 の検索 を行 う。
(1)キ ー ワー ドによる検索 キー ワー ドによる検索 では、 まず、ユーザが問題 の特徴 の 中 にい くつかの重要 と思 われる属性 を検索 キー ワー ドとして指定 し、その問題属性 と照合す る類似事例 の検索 を行 なう。次 に、与 えられる問題 を参照 しなが ら照合 された類似事例集 に最適的 な事 例 を選ぶ。あ るいは、他 の方法 を用 いて検索 された事例集 か らもっとも役 立つ事例 を 選 ぶ。 キー ワー ドによる検索 は最 も基本的な検索方法 であ る。その方法 には、多 くの特徴 を指定す れば、類似 の候補事例 の数 は少 な くなる。 しか も、指定す る特徴 が多 くなる と、一致す る候補事例 が存在 しない可能性があ る。少数 の特徴 を指定す ると、た くさ んの候補事例 が出る可能性があるので、事例 の類似検索 の意味 がな くなる。問題 の特 徴 をどう指定す るか、それをしっか り把握す ることは困難な ことである。特定の場合 に この検索方法 は適用 で きることで ある。
(2)重 みづ けによる検索 ユーザが与問題 の特徴 につい て、問題解決 に役立つ程度 を判断 して問題 の各特徴 に 重みづ け をす る。 システムがそれ らの重みを用 いて、次式 の類似度 の計算方法で事例
69
第 7章
設計思考支援 システムの枠組 み
ベース に各事例 の類似度 を計算 し、同時 にしきい値 とい うパ ラメー タを導入 して、 こ の しきい値 よ り大 きい事例 を類似事例集 に移す。類似事例集 か ら類似度 が高 い順 に候 補事例 を選ぶ。 もし選 ばれた事例 が適正でない場合 には、類似度 の順 によつて次 の類 似事例 を選ぶ。 ユーザが与 えられた問題の特徴 に重みづ け をして、 システムがそれ らの重みを用 い て検索 を行 う。その手順 は以下の通 りである。 step l:ユ
ーザが与え られた問題 の各特徴 について問題解決 に役立つ程度 を判断 して問
題 の各特徴 に重みを与 える。 stp宏 システムはこれ らの重み に従 って、次 の式 を用 いて事例 ベース に各事例 の類似 度 を計算す る。
類似度
=
Σ
(WF[i]*MD[i])/Σ WF[i]
i=1
ここで 、
(式
7.1)
1=1
WF:重
み
MD:マ ッチ度 ■ 問題特徴 の数 マ ッチ度 は問題 の特徴 が事例 の特徴 とマ ッチす る場合 には 1、 マ ッチ しない場合 に は 0と 定義 される。 step 3:類 似度 の順 に事例 をソー トして、 しきい値 とい うパ ラ メター を導入 して、 この
しきい値 よ り大 きい事例 を類似事例集 に移す。 step 4類 似事例集か ら類似度 が 高 い順 に補助事例 を選 ぶ 。 もし選 ばれた事例 が適正で
ない場合 には、類似度 の順 によつて次 の類似事例 を選 ぶ 。
(3)キ ー ワー ド+重 み による検 索 まず、 ユ ーザが問題特徴の重 み を定義す る上に、重 みによる類似事例 の検索 を行 う。 次 に照合 した類似事例 に検索 キ ー ワー ドを指定 し、類似事例 の検索 を行 な う。 この よ うな検索方法
(1)と (2)を 併 せ て、あ る程度 に検索効率 を改善 で きる。
(4)図 に よる検索 上 に述べ た方法 で は、与 えられ る問題 の一般属性特徴 に従 って事例 ベー ス に記憶す
70
第 7章
設計思考支援 システ ムの枠組 み
る事例 の 中か ら検索 す る。設計事例 の空 間幾何特徴 に関す る検索方法 を言 及 して い な い。図 を基本 的な思考手法 とす る建築設計 の空間思考 にお いて、図 を考 える問題解決 は重要 な不可欠な ものである。図 による類似事例 の検索 は本論 の もう一 つ重要な特徴 で あ る。そ の具体 的 な内容 は7.4節 で解説す る。
7.2.3事 例 修 正 検索 された候補事例 を現在 の 問題状況 に適合 させ るため に、事例修 正 を行 う。候補 ベ ー ス を用 いて事 事例 と設計問題 の特徴 の 間で照合 しない相違 を考慮 しなが ら、知識 例 の解 に対 し修 正 を行 い、修 正 した事夕1を 問題 の解 とす る。 しか し、建築設計 にお
い
ては、設計事例 の結論 とす る図面 を修 正す ると、設計者 の設計意図 と設計案 の整合性 を守 るこ とが非常 に困難 になる。 また、修正 して も修正案が最適解 で あ るとは限 らな い。そ れ らの問題点 を考慮 す る と、本 システ ムでは設計問題 に設計解 とす る図面 を直 接修 正す るのではな く、問題 に対 応す る設計規則 を修 正 し、設計者 に修正 した設計規 則 を学習 させて事例修 正 を行 う。例 えば、事例 に敷地 の用途地域が第 一種専用住居 地 域 で あ り、設計問題 の用途地域 が 第 二種専用住居 地域 で あ る場合 に、第 二種専用住居 地域 に関す る規則 を事例 の設計 規則 に替 える。 つい ては、第 事例修 正 の手順 は以下 の とお りで あ る。そ の具体 的な例 とす る解説 に 7.3.3節 の 図7.Hを 参 照す る。
1)設 計 問題 の特徴 に対 して推論 の関連 の特徴 を推論条件集合 として作成す る。 また、 設計 問題 の特徴 と事例 の特徴 の相 違点 を取 り出 し、特徴 の相違集合 を作成す る。
2)相 違 した特徴 に対 して修 正 問題対象 を特 定 して、 ル ール推論 エ ンジ ンを起動 して 修 正 問題 に対応す る設計規則集合 を作成す る。
3)ル ー ル推論 エ ンジ ンに適用 された ル ー ル集合 を修 正事例 に登録す る。
4)適 用 されたル ー ル を解釈 し、修正 した事例 の相違点 と設計規則 と手法 を利用者 に 提示 して学習 させ る。
71
第 7章
設計思考支援 システムの枠組み
7.2.4事 例推論 の流 れ
の 上のように述べた事例ベース推論過程 において、問題解析、事例検索、事例修正 の 各機能の動 き過程には、それらの各段階におけるデータの流れを次 図7.3に 示す。
_…
■ト
一
デ ー タの流れ 処理 の 流 れ
3.事 例推論 の過程 剛 。
7.3 ル ー ルベー ス推論 7.3.1 ルール推論の必要性 事例ベース推論 は新 しい問題解決 の方式 として知識獲得 の容易
と問題解決過程 の短
縮 な どの利点 があるが、 その推論能力 の限界 がある。例 えば、事例推論
の過程 におい
て、事例 の照合が充分 で きない場合 に、対応す る問題点 を解決す るため、様 方式で推論過程 に相補す る必要 となる。事例
々な推論
ベース推論過程 において、検索 された類
似事例 に対 して問題解決 に役 に立たない内容 に関 して領域知識 を用
いて事例修正 を行
まなけ を う。領域知識 を効率的 に利用す るため、問題解決 に適用す る推論方式 絞 り込 ればならない。 ールベース に格納 し、ルー 多 くのエ キスパー トシステムでは、知識 をルール形式 でル ムで ルに基づいてルールベース推論 を行 うことよ り問題解決 を行 ってい る。本 システ は、事例 に設計規則 と法規規則 のル ール形式 を用 いて記述す ることよ り、効率的 な推
72
第 7章
設計思考支援 システ ムの枠組み
論 のために、 ルールベース推論 を絞 って事例 ベース推論 と相補 しなが ら統合的 な推論 機構 を考 える。
7.3.2 ル ー ル推論機構 ルール推論機構 はワー キ ングメモ リ (Working Melnory)、 ルールベース (Rule Bぉ e) お よび推論 エ ンジン (hferenceEngine)か ら構成 される。図7.4に 示す。
ワーキ ングメモ リ
(WOrking memory)
ー
ンー ジン││ 1推 論■― Cinfeenccll鈍 inc)
差異 条件 集合
適用 ル ー ル集合
ル ー ルベ ー ス
(rule base)
剛 .4 ルール推論機構
。ル ー ル ベ ー ス
ル ー ルベ ー スは プ ロ ダクシ ョンル ールの基本 的な形式 を用 い て建築家 の持 つ 設計 ノ ウハ ウや設計規則 や法規規則 を記憶 す るル ー ル集合 で あ る。そのル ールの基本 的な形 式は
IF前 提
TIIEN結 論
(あ る いは行動 )
で あ り、IF― TIIENル ー ル とも呼 ばれ る。前提 の部分 を前提部 や条件部、結論 の部分 も結論部 や行動部 とい う。IF― TⅢNル ール に よる法規規則 の表現例 を以下 の 図7.5に 示 す。
73
第 7章
IF
設計思考支援 システ ムの枠組 み
用途地域 が 第 1種 住居専用 地域 で あ る
■ EN外 壁後退が lmと なる
酌 .5 ルールの例
ル ールの前提部 には複 数 の記述 を論理積
(AND)と 論理和 (OR)で 結合 して与 える
こ とがで きる。例 えば、次 の図7.6に 示す ル ールではその両 者 が 組 み合 わせ た形 で用 い られ ている。
用途 地域 が 第 1種 住居専用 地域 で あ る
IF
AND m
前面 道路 がある 道路斜線 :1.25Aと なる
囲 .6 ル ー ルの例
。ワーキ ングメモ リ ワーキ ングメモ リは推論過程中 において短期作業空間であ り、推論 の各時点で求 まっ てい る事柄 とルールの集合、問題及 び推論 の結果 の問題解が一 時的 に格納 される。 ワー キ ングメモ リの初期状態 は観察 によつて、あ るいは利用者へ の質問 によつて明 らかに された既存 の事実の集合 により構成 される。推論 エ ンジンによ リルールのが実行 され ることによつて、 ワー キ ングメモ リの内容が更新 される。そ して、適用可能なルール が な くなつた時点で処理 を終了 し、その時点 におけるワーキ ングメモ リの内容が最終 的な結果 となる。 ヮーキ ングメモリでは、問題解決 に役割 を与 えることによ り、事柄 を基本条件集合 と差異条件集合 に分類す る。ルール を適用 ルール集合、解 ルー ルに分類す る。基本条
74
第 7章
設計思考支援 システムの枠組み
件集合 は問題 の推論条件 か らなる もので あ る。差異条件集合 は問題 と類似事例 の特徴 の相違条件 か ら整理す るもので ある。適用 ルール集合 は類似事例 のルール集合 か らな る ものである。 ここでは、次 の図7.7に 示す ように、設計事例 を例 として、上 に述べ たワーキ ングメ モ リお よび基本条件集合、差異条件集合、適用 ルール集合、解 ルールの概念 を解釈す る。
基本条件集合 主要用 途 :専 用住宅
家族構成 :夫 婦、子供 3人 構造構法 :木 造 2階 建枠組 壁 工法 建築階数 :2 35m 敷地面積 :2∞ 。 建築面積 :120m 建蔽率 :60% 容積率 :10Cl% 用途地域 :第 一種住居専用 地域 防火地域 :な し 高低差 :0 東側施設 :隣 地 :隣 地 高低差 :0 南側施設 西側施設 :道 路5.肺 高低差 :1.2m 高低差 :0 北側施設 :隣 地
囲
.70ワ
ー キ ン グメモ リの例 (基 本条件集合 )
差異条件集合 1.家族構成 :夫 婦、子供2人 、老人 2.西 側施設 :道 路5.Om 高低差 :1.2m
7(b)ワ ー キ ングメモ リの例 (差 異条件集合) 剛。
75
第 7章
設計 思考支援 システ ムの枠組 み
適用 ル ー ル集合
IF AND AND
第 一種住居専用地域 前面道路 がある 隣地 と道路 の高低差 >lm
TIIEN道 路 斜 線
IF
:(H-1)+1・ 25A
高齢者 が い る
TIIEN l.玄 関前 の段差 、 ス ロー プ 2.居 室 を一 階 の 日当た り、
通風 な どの所 に配置
囲 .7(c)ワ ー キ ングメモ リの例 (適 用 ルール集合 )
。ル ー ル推論 エ ンジ ン 本 システ ムのルー ル推論 エ ンジ ンの構成 はワー キ ングメモ リ初期化 、 ル
ー ル照合、
競合解消及 びワーキ ン グメモ リ更新 の 四 つ の部分 を考 えてい る。
1)ワ ー キ ングメモ リ初期化 ヮー キ ン グメモ リ初期化 では、事例修 正或 い は設計検証 か らの設計 問題 の推論条件 集合 を基本条件集合 として、設計 問題 と類似事例 の特徴 の相違条件集合 を差異条件集 ー 合 として、類似事例 のル ール集合 を適用 ル ー ル集合 としてワー キ ング メモ リの 関連 デ タを作成す る。図7.7に 示 した例 を参 照す る。
2)ル ー ル照合 ル ー ル照合
(―h)で は、差異 条件集合 を主 キ ー として、基本条件集合 を結合 しな
が ら、 ル ー ルベース にすべ てのル ー ルの条件部 の照合 を行 う。条件 を満 たすすべ ての 競合 ル ー ル を求 める。
3)競 合解消 76
第 7章
競合解 消
(con■ にtresolution)で
設計 思考支援 システ ムの枠組 み
は、 ル ー ル照合 の結果 に対 して適用可能 なル ールが
複数個 が あ る場合 には、実際 に適用 す るル
ール を決定 す るため、 ルー ルの競合解 消 を
行 う必要 となる。 ルールの競合解消 の方法 として、
ル ー ル優先順位、 フアース ト・マ ッ
ラ ンダム ・セ チ、最近実行 ルール、条件部 の複雑 さ、条件指定 、類似度 に よる選択 、 ール優先順 位 づ け レクシ ヨンな どの競合解消 の方法 をあげ られ るが、本 システ ムが ル の方法 を用 いて、ル ールの優先度 を定義 してお き、競合 ル
ー ルが発 生 した ら、そ の 中
の優先順 位 の最高 の もの を選択 して推論 の解 を収束 させ る。 てル ー ルの優 ル ールの優先度 の定義 については、経験 的 にル ー ルの有効度 を判定 し 先度 を決 め る。次 の 図7.8に 示す よ う に、定義 した
ル ー ルの優先度 を例 として上 げ る。
優先度
)v* )v& 規貝12
第一種住居 専用地 域 道路斜線 :1.25A
卿 ¨ F
1F THEN
第一種住居専用地域 北側斜線 :5m+1.25Ln
1
1
力慇員14
1F AND TIIEN
第一種住居 専用地域 道路 との高低差>lm
2
道 路 斜 線 :(H-1)+1。 25A
酌 .8 ルール優先度の例
4)ワ ー キ ングメモ リ更新 ルール集合 の更 ヮーキ ングメモ リ更新 はワーキ ングメモ リに条件集合 の更新 と適用 ールの手続 き部 に基づい 新 の二つの機能 を含 む。条件集合 の更新 では、選択 され たル へ ルール集合 の更新 で て条件集合 の内容 を更新 して推論終了の方向 進行 させ る。適用 べ てのルールの ー は、ルールベースか ら選択 されたル ールに対 して適用 ル ル集合 にす は次 の図7.9に 示す の 類似照合 を行 う。Aル ールとBル ールがあ る場合 に、類似照合 定義 ように説明す る。
77
第 7章
設計思考支援 システムの枠組 み
A(条 件)⊆ B(条 件)
Aル ール とBル ールが類似す る
9 ルールの類似照合の規則 酢。 ここで 、類似照合規則 を説明す るため に、図7.10に 示す よ うに、規則 2の 条件 が規則
4の 条件 に含 まれるため、規則 2と 規則 4が 類似 した ことが検証 で きた。
類似照合
規則 2 第一種住居専用地域
TIIEN
道路斜線
:1.25A
1.第 一種住居専用 地域
▲可 ︱ ︱ ⊂ 一
1F
力巳貝14
1F AND ■EN
第 一種住居専用地 域 道路 との 高低差 >lm 道路斜線 :(H-1>1.25A
1.第 一種住居専用 地域
2.道 路 との高低差>lm
10 ル ールの類似 照合 の例 酌 。
類似照合 された ル ール と選択 された ル ールの優先度 を比 較 し、優先度 が 高 いル ール は低 い もの を代 替 して適用 ル ール集合 の更新 を行 う。例 えば、図7。 10の 例 の場合 に、 規則 4は 規則 2を 代替 して適用 ル ール集合 の更新 を行 う。
ルール推論 エ ンジンが前向き推論方式 で行 う。その推論制御 に関 して、 ワーキ ング メモ リの差異条件集合 にルールベースのルール と照合で きない条件 しか存在 しない時 に、或 いは、空 になる時 に、推論 を終了す る。
78
第 7章
設計思考支援 システムの枠組 み
7.3.3事 例 推論 とル ー ル推論 の 協 調 本論 では、効率的 な推論 のため に、 ルールベース推論 と事例 ベース推論 は互 い相補 して統合的 な推論方式 を提案す る。提案 した方式 では、一つ推論 が失敗 した ら、 もう 一つ推論方式 に切 り換 えるとい う弱 い結合形態 ではな く、互 い に協調 を取 りなが ら相 補的 に実行す ることにより、全体 として、信頼性 が高 く、かつ効率が向上 な どの統合 的な問題解決 の実現 に向けることを考 える。 第7.2節 と第7.3節 において事例 ベ ース推論 とルールベース推論 を別 々に解説 した。 こ こでは、図7.Hに 示す例 を参照 しなが ら例 を通 して事夕1推 論 とルール推論 エ ンジンの 協調推論過程 を説明す る。次 の手順 は図7.11の 数字順番 に合わせている。 (1)事 例推論 はまず、設計問題 に対 して特徴づ けを行 う。図の左 上部 のように、特徴
づ けた問題特徴 に対 して類似事例 の検索 を行 う。 (2)事 例推論 の事例修 正では、設計問題 と類似事例 に対す る特徴差異集、設計問題 に
対す る法規の関連 の特徴集及 び事例 のルール集 を取 り出 してル ール推論 エ ンジ ンに伝 送す る。 ルール推論 エ ンジンを起 動 させ る。 (3)ル ール推論 エ ンジンが上述 の集合 に対 して基本条件集合、差異条件集合 および適
用 ルール集合 を作成 してワーキ ン グメモ リに初期化す る。 (4)ル ール推論 エ ンジンがワーキ ングメモ リの差異条件集合 の 1敷 地 と道路 の高低差
は1.2mlを 主キー として基本条件集合 の
1第 一専用住居地域、西側道路 は加
│ と結合
し、ルールベース に照合す る。 また、競合 ルールに対 して競合解消 を行 う。競合解消 の結果 として[Rule8]を 選択 した。 (5)ワ ーキ ングメモ リ更新 では、 [Rluc8]が IRub2]と 類似照合 で きた。優先度が高 い [Rlue8]は IRlue2]を
代替 してワーキ ングメモ リの適用 ルール集合 の更新 を行 う。ルール
推論 の結果 の適用 ルール集合 を事例推論 に転送す る。 (6)事 例推論 は事例修 正 を続けて修 正事例 を作成す る。
79
じ ¨饉蕉嶽興 六︻ くR. ︼ , 日︼ ∧熙車 担C黎壇 掏増毬 ヾ埒築嶽壇口根 氣ョ 殴”山J脚︱麒
∞聖 ●“
ruEtsETE
l墨
氣 譴経縫橿
鮨目 営
80
. 卜国 騨呵 羅撻C鯖響 へ lへ N組 鞘尽椰 ︼日
EFSSSS
趾聰鱚餞 雪
E{t{fll({l{{l(
S ^ 奮0¨ 排掻似︵ じ や●民掛 ¨錮熙臨相︵
︻¨繁窯蜜壇 くR. Ю総築壼壇口糧 筆雲眠苺山Jロー態
fioIoo s...... '.
軍蹄円総
一 一 一儡Ⅷ栃厠癬 浄︲
六守じ ¨繁熊幽剌 凛甲ロ ︻ くR. 日︻ ∧報申柾C壼壇 N増毬 ゛ぐ築嶽錮目握 筆増 民費山゛椰 ︱態 ﹄
縫ヽ 魚怒 ぐ 婆 ミ ーミ
l
密中 ヽヽ ヽ キ ー ト
… ‖ 墨 畢 言言 言 ぅ
錮
ヽ
設計思考支援 システ ムの枠組 み 第 7章
第 7章
7.4 7.4。
1
設計思考支援 システ ムの枠組 み
図 に よ る推 論
図 の推論 の必 要性
事例推論 過程 にお いて、設計 の条件 を記述す る属性特徴 をマ ッチ対象 と考 えて、類 似事例 を探 索す ることを行 っていた。 しか し、空間構成 を中心 とす る建築 設計 に対 し て属性特徴 だけ考 える問題解決 は不充分 で あ り、空間形態 の類似性 を考慮 した類似事 例 の探索 は重要な こ とである。建築 の 空間構成 を中心 とす る意 匠設計 では 、図 を基 本 的な思考手法 とす る ことは もっとも基 本的な ものである。設計支援 のため の知的CAD システムを構築す る には、製 図作業 において図 による問題解決で はな く、 設計 の空 間 思考 において図 を考 える問題解決 は重要な不可欠 なものであ る。 人工知能 の研究 で は、今 まで知識 表現 の手段 としては、主 に言語 的表現 を用 いてい たが、 しか し、対 象が 空間的状 況 であ る場合 に、人間 の思考過程 を純粋 に言語的表現 だけ を使 った論理的 な過程 としてモ デル化 す るのでは不充分 で あ り、問題 解決能力 も 限界がある ことが認 識 されて きた。近 年、人工 知能の分野 で図 を積極的 に活用す る 図 による推論 (Diagra― aticReasoning)へ の関心が高 まっている。 本節 は、 図の推論 を考慮 した第 6章 では提案 した空間構成 の記述方法 と空 間形態 の 類似性 の判別方法 に基 づいて、事例 ベース推論 による設計支援 システム に導入 しシス テムの事例 の類似性 に関す る検索機能 を拡張す ることにおいて述べ る。
7.4。
2
図 の推 論 の構 成
本章 に提 案 した システム枠組 みにおいて 、建築 の 図面 を考慮 した推論機能 につい て は図7.12に 示す ように、空間構成 の記述方法、図の類似判別、図の類似検索 か ら構成 な る。 第 6章 において、設計事例 の空間構成 の記述方法 および空 間の評価方法 について 具 体的 に解説 した。 ここでは、問題解決の過程 の視点か ら、空間記述過程、 図の類似 判 別、図の類似検索 を含 む図の推論過程 を述べ る。
81
第 7章
設計思考支援 システ ムの枠組 み
図7.12 図による推論の構成
7.4。
3
図 に よる推 論 過程
1.図 面 の記述過程 図面 の記 述過程 で は、与 え られ た設 計 問題 に対 して、 建築 の 図面配置 に つい て、 あ る程度 的 定着 した場合 に、図7.13に 示す流 れの よ う に、 まず 、図面 の配置 を位 置関係 関数 と移動 関係 関数 に 変換 し、 それか ら、 図面関係 図 か ら図面 を記述す る 関数集 を作 成す る。 設計事例
③
〆
ヽ
台所
図 の関係 〆
ヽ
Above(a,d)Above(b,d) Above(C,C)Above(e,0
寝室
Left(a,b)Left(b,C)
ヽ
〆
浴室 寝 ゝ
、 エン 去
〆
居間
関数記述
Left(d,C)Left(d,0 (位 置関係 )
(位 置関係 )
Move(a,d) Move(b,d) Move(b,c) Move(d,e) Move(d,0
(移 動 関係 )
図7.13 図面 の記述過程
82
(移 動 関係 )
第 7章
設計思考支援 システムの枠組 み
ムの推論機構 は設計者 と対 その よう な図面 か ら関数 までの記述過程 には、本 シス テ いて述べ たように行 う。一方、 話 しなが ら協調的 に行 う。図面 の記述方法 は第6。 2節 にお いる。 設計事例 の図面記述 が前 に事例 ベースに保存 されて
2。
図の類似判別
の に記述関数 を比較す る 図の類似 判別 は、設計問題 の 図面記 述 と事例 の図面記 述 間 の と の ことである。図の 類似判別方法 で は、第63に 述べ た室 の類型 の評価 室 連接関係 に 的 に例 を挙げ て図の類 似 評価 の二 つ 方法 を中心 として行 う。 ここで 、次 の よう 具体 判別過程 を解説す る。 の を室 の名 をとす る。() 図7.14と 図7.15は 二 つ空間構成図面 である。図中 に()外 符号 つ の に通路があ るこ とを示す 。 内の符号 を室の類型 とす る。太 い記号 「 一」 は二 室 間 7.15の 対応す る形式記述である。 四 .16は 図7.14の 対応す る形式記 述で あ り、図7.17は 図
Xl(H)
yl(DK) y2(H) 1 1 日
x2(DK) x3(W) 日
ヽ
ヽ
x6(B)
x5(L)
x4(B)
y4(B)
y3(VV)
y5(L)・・ y6(B)
図7.15 空間構成例2
図 7.14 空間構成例 1
5, ヽ X
1 6 x
P
A4 x︲
, ¨ 切 3 ヽ ︲ ︲ ︲ x ︲ l V , x 国5 ﹁︲ x3 x 2 ︲ i x
、 l 1,〓 〓 〓K 〓
xBLWDH ΣI
S
〓1 1 lΣV
〕
図7.16 空間の関数構成例
83
1
第 7章
尋 :::Li勢 │;♂ II尋計
設計思考支援 システ ムの枠組み
'y5,yq
1}
〕
図7.17 空間の関数構成例 2
1)室 の類型 の類似度計算
第 6章 の式6.1に よつて、空間構成 Slと S2に 対 す る室の類型 の類似度 の計 算 の流れ は 次 ので あ る。
(動 ,Uk刀 呂 [ψ Q'Uk)‐ ψ
室の類型 の類似度 =1‐
γ = 1-一
二
[ψ (・ ,Uk)+ψ (ち
,Uk)f
ζ
γ=(ψ (Sl,B)― ψ(S2,B))2+(ψ (sl,L)― ψ(S2,L))2+(ψ (sl:DK)― ψ(S2,DK)ア +(ψ (Sl,VE卜 ψ(S2,D)2+(ψ (sl,H)‐ ψ(S2,H))2
=(2-2)2+(1_1)2+(1_1)2+(1_1)2+(1…
1)2
=0 ζ=(ψ (Sl,B)+ψ (S2,B))2+(ψ (sl,L)+ψ (S2,L))2+(ψ (sl,DK)+ψ (S2,DK))2
+(ψ (Sl,D+ψ (S2,W))2+(ψ (sl,H)+ψ (S2,H))2 =(2+2)2+(1+1)2+(1+1)2+(1+1)2+(1+1)2
=32 貝口
:
室 の類型 の類似度 =1-γ ノζ=1‐ 0/32=1
84
第 7章
設計思考支援 システムの枠組み
2)室 の隣接 の類似度計算
前に定義 した空間構成 Slと S2を 例 として説明する。図7.18に は隣接照合過程 を示す。 その図 に両側 の関数 リス トが空 間 Slと 空間 S2を 生成す る操作関数集 であ る。そのふ たつの関数 集の間 に照 合処理の結果 として 、矢線 で繋 いでいる関数 は上か ら順番 に照 合す ることを示す。矢線 で繋が って い ない関数 は照合 で きないこ とを示 す。第 6章 の 式62に よつて、照合 の結果 により室空間の隣接関係 に対する隣接類 似度 は次 の結果 と なる。 ここで、 町 Sl,S2)〓 3
N【 Sl)=7
NKS2)=7 則 :室 の隣接 の類似度 =2*3/(7+7)=3/7
S2
Sl Abovc(Xl,X4) Above(X2,x5) Above(X3,x6)
Above(yl,y4) Above(y2,y5) Abovc(y3,y6)
Lcft(xl,X2)
Left(yl,y2)
Left(x2,x3)
LeftKy2,y3)
Lcft(x4,x5)
Leftcy4,y5)
Left(x5,x6)
Lft(y5,y6)
図7.18 隣接照合 の例
3)室 の 連 接 の類 似 度 計 算
図7.19に は連結照合 の過程 を示す。図7.18の 隣接照合過程 のように、矢線で繋 いでい る関数 は上 から順番 に照合す る ことを示す 。矢線 で繋 が ってい ない関数 は照合 で きな いことを示す。第 6章 の式6。 3に よつて、照合 の結果 により室空 間の連接関係 に対す る 連接類似度 は次 の結果 となる。 ここで、 D亀KSl,S2)=5
NMKSl)=6
NKS2)=6 則 :室 の連結の類似度 =2*5バ 6+6)〓 5/6
85
第 7章
設計思考支援 システムの枠組 み
S2
Sl
Move(xl,x2) Move(xl,x5)
Move(y1,y2) Move(y2,y5) Move(y3,y5) Move(y1,y5)
Move(x2,x3) Move(x2,x5) Move(x2,x6) Move(x4,x5)
Move(yl,y4) Move(y5,y6)
図7.19 連結照合の例
3.図 による類似事例 の検索 本章7.2.2中 に述 べ た事例 の類似検索 につい て、与 えられ る問題 の一般属性特徴 に従 っ て事例 ベ ース に記憶す る事例 の 中 か ら検索す る。 ユ ーザが与 問題 の特徴 につい て、 間 題解決 に役 立 つ程度 を判断 して 問題 の各特 徴 に重みづ け をす る。設計支援 システ ム が それ らの重み を用 い て、 (式 7.1)の 類似度 の計算方 法 で事例 ベース に各事例 の類似 度 を計算 す る。
ここでは、建築 の空間形態 とい う特徴 に着 日し、与 え られ る問題 と既存 の設計事 例 において それ らの建築空 間の差異 を求めることに よつて事例 の類似検索 を行 う。事 例 の空間形態 を考 える類似事例 の検索過程 は図 に示す ように次 の手順がある。
1)建 築 の空間形態 の定義 与 えられた問題 に対 してそ の空間形 態構成 の 形式記述 を作成す る。それ は空 間形 態 の類型、空間形態 の隣接関係、空間形態 の連接関係 の定義 を含 む。
2)空 間形態の類似度 の計算 それ は前 に述べ た空 間評価 方法 を用 いて問題 の空間形 態 と事例 ベース に事例 の空 間 形態の差異の評価尺度 を求める。そ れは空間の類 型類似度、隣接類似度 、連接類似 度 の計算 を含 む。 また、 それぞれ の属性 につ いて問題解 決 に役立 つ程度 を判 断 して問題 の各特徴 に重 みづ け をして、計 算 された類似度 を合わせて、次式 の類似 度 の計算方 法 を用 いて設計問題 と事例 の空間形態 の類似性 を求める。
R=(Wl*Rl+W2*R2+W3*R3)/3 ただ し、Rl:室 の類型照合 に関す る評価尺度
86
(式
7.2)
第 7章
設計思考支援 シス テ ムの枠組 み
R2:隣 接 照合 に関す る評価尺度 R3:連 結照合 に関す る評価尺度 Ⅷ :Riに 対 す る特徴 重 み
3)事 例 の類似度 の計算 の の 式7.2に よ り得 られ た 空 間形態 の 類似度 を用 いて事例 の一般特 徴 類似度 計算方 法 (式 7.1)を 併 せて次 の 式 を用 いて 設計事例 の類似事 例
類似度 =[(Σ
の検索 を行 う。
Wi*Mi)+Wi+1*R]/(Σ Mi)+1
i=l
(式 7.3)
i=1
ただ し、Ⅷ とMi、 Rは 式7.1と 式7.2を 参照す る。
7.5 設計検証 設計検証 とは、既 存 の設計事例 にお いて設計 の適当性 を想定す ることに よつて、作 こ 成 した設計案 に対 して類似 の設計事 例 を用 いて設計案 の適合性 に検証 と評価 を行 う とである。設計検証の 目標 として、作成 された設計 の 案 に対 して 設計結果 の 適合性 に評 価 を行 い 、現存 の 失敗事例 の問題 点 を排 除す る こ とを目指 す。設計検証
は 図7。 20の 示
す ように、 事例検証 と規則検証 の二つ機能 は構成 され る。 まず 、設計案 に対 して、事 例推論 を通 じて類似事例 を用 いて、類似事例 と照合 で きる部分 に設計案 の適合性 証 と評価 を行 う。事例 による検 証 は不充分 の場合 に、 ル
に検
ール推論 による設計規貝1を 用
いてその適合性 に検証 と評価 を補完す ることで設計過程 の評価 を支援す る。 設計検証 の手順 は次 の とお りで あ る。 (1)設 計案 の 問題記 述 に対 して、事例
ベー ス推論 を起 動 して、事例検索 を通 して類似
事例 を取 り出す。 で きる設計 と ② 既存 の類似事例 の設計結果が適 合性 を想定す るため、類似事例 照合 問題 の特徴 に対 して、その対応す る設計 も適合 であると判定す る。 o)設 計問題 の特徴 に対 して推論 の関連 の特徴 を推論条件集 合
として作成す る。 また、
今回の設計 と類似事例 の相違 に対 して、特徴 の相違集合 を作成す る。
87
第 7章
設計思考支援 システムの枠組 み
・く 》 〔 〕 言 三 Ξ ≡ 至 三 二
][〔 IIIIIIIIIこ :―
図7.20 設計検証 の枠組 み
る適 用 ル ー ル 集合 を作 成 )ル ー ル推論 エ ン ジ ンを用 い て 、 特 徴 の 相 違 集合 に対 応 す
る。 す“
6)設 計案 の条件、結論 に対 して推 論 された適用 ル ール集合 を用
い て設計 の法規 との
適法性 を評価 す る。評価 で きない点 に対 して、そ の対応す る法規規則 を設計者に提 示 しなが ら設計構想 の修 正 を行 う。
設計検証 には成功 設計事例 と失敗設計事例 が ある。事例
ベース において成功設計 事
れる 例 だけ保存 で はな く、失敗設計事 例 も保存 してい る。設計検証 の場合 に、与えら では 、 設計問題 が失敗事例 と類似照合 で きた ら、失敗事例検 証 を行 う。失敗事例検証 ベースの事例 と照合す る。照合 与問題 の条件 とその設計 の結論 をキ ー として失敗事例 せる。 す る事例 があれ ば、その事例 の失敗点 の分析 と対応解決方法 を設計者 に学習 さ
88
第 7章
設計思考支援 システムの枠組 み
7.6 事例 ベース と知識ベ ース 7.6。
1 事例ベース
事例 ベー スは設計 事例 を集 めて格納 す るもの である。 それは成功事夕1と 失敗事例 を 含 む。事例 を効率的 に管 理、利用す るために、本 システ ムで は事例 の特徴 を記述す る 目標 と条件 とい う属性 部分 を基 本事例 とし、事例 の結 論 と方法部分 を補助 事例 として 分害lし て 管理 す る。事 例 の構成 と記 述は第 4章 の 「設計事例 の 定式化」 と第 5章 の 「事例 の知識表現」 にお いて述べ た よ うに対応 してい る。
7.6.2 知識 ベ ー ス 知識 ベー ス とは設計過程 に必要 な建 築 と設計 知識 か らなる。そ れは事例 ベース推 論 過程 とルール ベース推論 過程 におい て必要不可欠 な役割 を果 た してい る。事例 ベー ス 推論 におい て、事例 の検索 の場合 に意味的照合 を最適 化す るためには、概 念階層的知 識 の利用が不 可欠であ る 。類似 によって事例 の修 正 を行 うために法規知識、設計知 識 などの領域 知識 の整備 が必 要で あ る。 ルー ルベース推 論 におい て、設計規則や法規 規 則 な どの ルール知識 も不可 欠である 。 ここで 、知識 ベ ースは図7.21に 示す ように、 概 念知識、法規知識、設計知識お よび知識 の知識 などを分類整理 して構成 される。
図7.21 知識ベースの構成
。概念知識 概念知識 は建築 の 専 門用語 や概念 な どの知識 で ある。 建築概念 と用語 の 間 に矛盾 を 生 じさせ ない ため に、 シ ス テムで用 い る専 門用語 を統 一 し、 定義 して管 理す る。例 え
89
第 7章
設計思考支援 システムの枠組 み
ば、第一専 用住居地域 、近隣商 業地域な どである。問題特徴 づ け及 び推論 の対話過程 ー 中に、利用者 がそれ らの概念知識 を利用 して簡単 に入力 で き る。概念知 識 は関係 デ タベース形式 で表現 される。
・法規知識 法規知識 は法律、施行令 、施行規貝1、 細則 と法 律 によつて 委任 された地方公共団体 の条例 とか らな つて い る法的 な規則 であ る。 ここで、建 築基準法 な どの法規 を知識 対 象 とす るが、 それ らの全 部の内容 で はな く、建築物及 びその 敷地が周辺 施設 に関連 す る関係 の法規 を中心内容 として法規知識 を考 えている。 事例 と領域知識 を共存す る事例 ベー ス推論 システムに、両者知識 の表現形式 と推論 過程 の協調 を考 える必要がなる。本 システ ムに、法規規則が ルール形式 で獲得 しやす い、事例 と知識 ベース に共存す るなどの点 を考 えて、 それ らの 知識 を活用 す るため、 本 システムはIF..THENル ールの方 式 で事例 と知識 ベースの 法規 を統合的 に記述す る。 法規知識 の役 割 として、事例修 正や設計検証 に、事例 ベース推論 で行 き詰 まった場 合 に、法規知識 を活用 し、適用す るルールを用 いて事例修正 をした り、設計 案 の適法性 を検証 した りして推論 を補完す ることである。 ・設計知識 設計知識 は建築設計 に設計 者 な どの 長年 の経験 に基づ いて得 られる一般 の設計手法 に関連 す る設計 ノウハ ウであ る。設計 知識 の記述 方式 として、法規 規則 のよ うに、
F..THINル ールの方 式 で事例 と知 識 ベースの 設計規則 を統 合的 に記述す る。設計知識 の役割 として も、事例修 正や設計検証 に、事例 ベ ース推論 で 行 き詰 まった場合 に、設 計知識 を活 用 し、適用 す るルー ル を用 いて 事例修正 を した り、設計案 の適法性 を検 証 した りして推論 を補完す ることで 、 システムの統合的 な推論過程 に役割 を果 たす。。
・知識 の知識 知識 の知識 とはシ ステムの推論過程 にお いて必要 的な規則 とい う知識 であ る。そ れ をほか類 型 の知識 と比 較す ると、直接 に利 用者 に提示 す る知識 ではな く、 システムの 自身の内部 処理 のため に使 う知 識 とい う面 か ら知識 の 知識 と呼 ばれる。例 えば、事例 ベース推論 の場合 に事例 の類似検索 の ための類似度 を計 算す る規則 (第 7.12章 の式7.1 を参考 )、 ルール ベ ース推論 の場合 にルールの照合 の優先度 を付け る規 則 (第 7.3.2章
90
第 7章
設計思考支援 システムの枠組み
の図7.8を 参考)、 図 に よる推論 の場合 に空 間 を記述す る規則 (第 6.3章 の空間構成 Sの い で いら 定義 を参照 )な どを挙 げられる。それ らの知識 の記述 方式 は関数 と う形式 用 れる。
7。
7
ま とめ
な 本章 では、第 3章 の設計思考支 援 モデル (DCMlと 第 5章 の事例 の知識 表現方法 どを議論 した方法 に基 づいて設 計初期段階 に思考過程 の支援環境 の構築 を 目指 し、建 ることを中心 築構想設計 の 思考過程 に適 して い る事例 ベース推論 とい う方法 を導入す として、従来 のルールベ ース推論 お よび近年発展 中の図 による推論 を考慮 した推論機 システム枠 構 を統合す る設計思考支援 シス テムの基礎 的枠組 みを提案 した。そ して、 組 みの基本的 な構成 とす る推論 ベー ス推論、 ルー ル推論、図 による推論 、設計検証 、 に核 及 び事例 ベ ース と知識 ベース に ついておのおのの機能 を詳 しく解説 した。本論文 の を中 心 の位置つ け る事例 ベー ス推論 につ いて、問題 の 解析、事例 の検索、事 例 修正 ついて重 み つ 心 として述べ た。特 に、事例 ベース推論 の中心課題 とす る事 例 の検索 に げや図の類似判別 な どの事例 の 類似検索方法 を解説 した。事例
ベース推論 を補完す る
ために、ルー ルベース推論 を絞 って事例 ベース推論 と相補 しなが ら統合 的な推論機構 ー エ を考 えた上で、 ルール推論 の構成 としてのワーキ ングメモリ、推論 ンジンお よびル ルベースにつ いて詳 しく解説 した。 図 による推論 について、事例 の空 間形態 の類似性 を求めるために、空間構成 の記 述方法 を提 案 し、その提案 した方法 に基
づ く建築 の 空
いて図 に よ 間形態の類似性 の判別方法 を示 した。 さらに、そ れ らの議論 した方法 を用 る推論 を考 えた事例 の類似検索方法 を述べ た。 また、それ らの三つの推論 の協調過程 いる領 も解説 した。最後、 システムの 推論過程 において必要不可欠な役割 を果 た して 域知識 についてその構成、役割 お よび記 述方式な ども述べ た。
91
第 8章
設計思考支援 システムの構築
第 8章 設計 思考支援 システムの構築
8.1 設計思考支援 システムの構成 いて設 計思考支 援 本論文 は前 に提案 したシス テ ムの枠 組 に基 づ く設計初 期段階 にお シス テ ム の開発 を行 ってい た 。初 めの 開発 はSUN
SPARCワ
ー ク ステ ー シ ヨン上 に
Motifと C言 語 の環境 で 設計支援 システ ム を 開発 して い たが、近 年 の
パ ソ コ ンの性能 の
が低 価 向上 に伴 い急 速 に発展 して きた 。処 理速度 が速 い 、記憶装置 が大容量化 、価格 ` ー ル も非常 に豊 々 格化 な どことに な つて きた。 ま た、Windows95に 関 す る様 な応用 ツ パ ソ コ ンの 富 で あ る こ とに よ つて 、 シス テ ム の実 用 性 と将 来性 を考 慮 した上 に、
Windows95に Visual C++に よつてシス テ ム を移 した。 ス ムの構成 と機能 を述 第 7章 にお いて システ ムの 枠組設計 の視点 か ら設計支 援 シ テ べ たが、本章 で は、具体 的 な設計支 援 シス テ ム を実際 に作成 す る視点 か ら本設計支 援 ベー ム シス テ ムの 構 成、機能 お よび運 行 を解説す る。開発 した設計支 援 システ は事例 ス推論 、事例 ベ ース管理 お よび知識 ベース管理 な どの三 つ の 大 きな機能 モ ジュール か ら構成 され る。次 では、 それ らの 内容 を解説す る。
92
第 8章
設計 思考支援 システムの構築
8.1.1事 例 ベ ー ス推論 ムの最 も主流 であ り、問題定義、事例検索 、 事例ベース推論 モジユールとは本 システ る。 また、事夕1ベ ース推論過程 を補助 して 事例修 正 とい う機能 を中心 として構 成 され ー ベース推論 と図 に よる推論 はその事例 ベース推論 完全的な問題解決 に協 調す るル ル の機能モジュールに含 まれ る。それ らの機能 は図8.1に 示す。
問題特 徴 入力
事例 ベー ス推論 図 の特徴 の検索
差異集 の作成
図8.1 事例ベース推論の機能構成 は 8.2か ら図 8.6ま で参 照 しなが ら作成 した 事例 ベース推論 の機能 について、本節 に 図 の画面 であ り、図8.3に 示 し システム を解説す る。図8。 2に 示 した ものが 事例 の問題入力 つ の 方法 を示す 。検索 した た画面 が シ ステムの事 例 の類似 検索 につい ての重み げ 検索 した内容 を示 した。 図8.3の 画面 にはシス テ 結果 とす る類似事夕1が 図8.8か ら図8。 13に 示 には システムが与 ムが与 えられ る問題 の図面 の定義 をす ることを示 した。図8.4の 画面 る過程 と結果 を示 した。図8.5の 示 えられる問題 の図面 と事例 の図面 の類似度 を計算す を示 した。 した画面 が事例修正 についての条件差異集 と対 応規則集
93
第 8章
設計思考支援 システムの構築
図8.2事 例推論 の問題入力
図8。 3事 例推論 の事例検索方法 の設定
94
第 8章
設計思考支援 システ ムの構築
図8.4事例推論 の事例 の図面定義
図8.5事例推論 の事例図面 の類似計算
95
第 8章
図
8。
6事 例推論 の事例修正
96
設計思考支援 システ ムの構築
第 8章
8。
設計思考支援 システムの構築
1.2事 例 ベ ー ス 管 理
事例 ベー ス機能は事例 の新規入力、検索、修 正、削除、格納 な どを行 う事例
ベー ス
管理機能 である。それは図8.7に 示す。
図8.7 事例ベース管理の機能構成図
事例 ベー ス管理で は、事例 の入力、追加、事例 の検索 、事例 の修 正及 び事例 の削 除 の機能 を提供 し、事例 ベ ース管理 を行 う。 これ らの操作 は前 に述べ た同 じ用語 の内容 と違 う意味 を持 ってい る。 こち らの操作 は事例 ベース を管理す る意味 であ る。前 に述 べ た同 じ用語 の操作 は事例ベース推 論 の意味であ る。事例 ベ ース管理 で は、事夕Jの 入 力 や追加 は事例ベース に事例の 入力 を行 う。事例 ベー ス推論 で は、問題 の定義 とは新 しい問題 を解 決す るため、問題 の特 徴 を定義 して 入力す る。事例 ベース管理 では、事 例の検索 は利用者の要求 による検索 のキー ワー ドを検索 目標 として事例
ベース に捜す。
検索 の結果 として一つ 事例 だけ で あ る。事例 ベース推論 では、事例 の検索 は与 えられ る問題 の特徴 を目標 として事例 ベ ー スに類似事例 を捜す。検 索 の結果 は成功す る場合 に類似事例集であ る。事例ベース管理 では、事例 の修正は既存 の事例 を修正 してか ら、 元 の事例 を削 除 して修正 した事例 を保存す る。事例 ベース推 論 では、事例 の修正は修 正 した事例 を新 しい事例 として保存 し、元 の事例 もそのまま残 る。 事例 を効 率的に管 理、利用す るため に、本 システムで は事例 の特徴 を記述す る目標 と条件 とい う属性部分 を基本事例 と し、事例 の結論 と方法部 分 を補助事例 として分割 して管理す る。
97
第 8章
設計思考支援 システムの構築
として システム を 事例 ベースでは、図 8.8か ら図8.13ま で参照 しなが らシステムの例 の が 解説す る。図8.8に 示 した画面が事例 の基本属性 を示 した。図 9に 示 した画面 事例 の立面 図面 を示 設計結果 の平面図面 を示 した。図 8.10に 示 した画面 が事例 の 設計結 果 した。図8.Hに 示 した画面が事例 の設計結果 の透視図面 を示 した。図 12に 示 した画面 8。
8。
が事例 の 設計方法 の設計 意図の内容 を示 した。図8.13に 示 した画面 が事例 の法規規則 を示 した。
図8.8 事例 の基本情報
98
の 設計方法
第 8章
図8.9 事例 の 図面
図8.10 事夕1の 図面
99
(平 面 )
(立 面 )
設計思考支援 システムの構築
第 8章
図8.11 事例 の建物 の風景
図8.12 事例 の設計意図
100
設計思考支援 システ ムの構築
第 8章
図
8。
13 事例 の法規規則
101
設計思考支援 シス テ ムの構築
第 8章
8。
設計思考支援 システムの構築
1.3知 識 ベ ー ス 管 理
領域知識 ベースは概念知識 、法規知識、設計 手法及 び知識 の知識 か ら構 成 される。 これ らの知識類型の定義 と記述方法 について、第 章 の7.6.飾 に解説 したが、ここでは、 知識 ベースの構築 と管理 の立場 か ら解説す る。 知識 ベー ス管理機 能 は新規入力、検 索、修正 、削除、格納 などを行 う機 能か ら構 成 される。その構成 は図8。 14に 示す。
図8。 14 領域ベース管理の機能構成図
知識 ベ ース管理 で は 、図8.15か ら図8。 16ま で のシステ ムが提示 した図面 を参 照 しなが らシス テ ムの例 と して システ ム を解説す る。図 15に 示 した画面が 領域知識 ベース の 8。
概念知識 の入力、修 正、削除、検 索 な どの機能 を示 した。 図8。 16に 示 した画 面 が領 域 知識 ベー スの法規知識 の入力、修 正、削 除、検索 な どの機能 を示 した。
102
第 8章
設計思考支援 システムの構築
図8.15 領域 ベースの管理 の概念知識管 理機能
図8.16 領域ベースの管理 の法規知識管 理機能
103
第 8章
8。
2
設計思考支援 システムの構築
設計 思 考 支援 シス テ ムの デ ー タ構 成
8.2.1 住宅事例の採集 設計事例 は事例 ベ ース推論 システム において最 も重要 な内容で あ る。現 実中 にお け る建築 の範囲 が非常 に膨 大である。建築 の用途、機能、規模 などの要素 だけ分類 して も、それらの分類 に関連す る建 築事例 も膨 大 であ る。有用 な設 計事例 を収集す るこ と は設計思考支援 のため、 システ ムの機能 の向上の 最 も重要な ことであ る。本節 にお い て、住宅設計事例 の収集方法 を述べ て収集 した事例 リス トを示す。
1.事 例 の収集方法 本論文では次 の視点 を考 えて相対小 さい範囲 に事例 を収集す る。 ・戸建 て住宅 住宅設計 において戸建 て住宅 を対象 として事例 を収集す る。 ・密集型 大都市 は土地が狭 い、建物 が密集 で ある。敷 地 の環境 条件 は地方 よ り厳 しいので 、 設計 に空 間の有効的 な利用 に工夫 が必 要 となる。大都市 の設計事例 を利用す る事例 ベー スはその有用性 の評価 で きると考 えられるため、東京 圏、大阪、京都 などの都市地 区 の設計事例 を中心 として事例 の採集 を考 えた。 ・発想型 設計初期 の発想段 階 におい て、図面 の具体的 な寸法 をあまり表現 しない構想設計 を 支援す るため 、設計 のアイデイアと設計意図 を表現す ることを中心 とす る「新建築 の 住宅特集」 などに載せ る設計事例 が適合で きる と考 えられる。
2.設 計事例 リス ト 以上 の点 に基づい て、設計 個性、特 別敷地条件、高齢 者な どの様 々 な面 を考 える上 に、今 までの段階 において、近年 の 「新建築の住 宅特集」や 「住宅建築」 を中心 と し て、 100個 の住宅設計事例 を採集 して実験事例 として事例 ベースに実装 した。その中に、 設計者 による設計風格 の事例 が 51、 高齢者 に向 けの事例 が 6、 小 さい住宅が 11、 複合世代 に向けの住宅 が 8例 、併用住宅が 8例 、木造 の特徴 の住宅が 4例 、生活 の 再 興 に向け (神 戸地震)の 再建住宅が 5例 、 ほかが 表8。 1に 挙げ られる。
1()4
18例 などあった。そ れ らの内容 を
第 8章
設計思考支援 シ ス テ ムの構築
表8。 1設 計事例 リス ト (1) No
建物名
設計者
所在地
設計期間
設計 主題
1
刀ヽ日向 の家
東孝光
東京都文京 区
1981
複合的 な ものヘ
2
栗辻邸
東孝光
東京都世 田谷 区
1981
複合 的 な ものヘ
3
羽根本 の家
東孝光
東京都世 田谷 区
1982
複合的 な ものヘ
4
成城 の家
池原義郎
東京都世 田谷区
1982
5
松 ケ丘の家
池原義郎
埼玉県所沢市
1986
心 との対話
6
温 室 の あ るコンプ
林雅子
東京都世 田谷区
1990
併用住宅(住 宅十事務所)
併用住宅 (病 院 +住 宅)
レックス 7
角 の ない角 の 家
林雅子
東京都練馬区
1991
時 と地 の 中 に棲 む
8
クロスプランの家
林雅子
千葉県
1991
ロス 日常 と非 日常 のタ
9
三四郎 の家
出江寛
滋県長浜市
1991
尊厳 の 回復
10
新大久保 の家
加藤義夫
東京都新宿区
1991
゛ ・サステイナフル社会 に向か う がイア
HOUSEl
古見演良
東京都 世 田谷区
1991
建築 の関係性―場 との対話
12
富が丘 の家
更田邦彦
横浜市
1991
小住宅
13
小路 の 家
竹原義二
大阪府生野区
1992
レタ 開カ 都市住宅
14
阿佐谷 の家
東孝光
東京都杉 並区
1992
複合的 な ものヘ
15
碧蓉居
川口通 正
東京都 中野 区
1992
狭小都市 型 の和風住宅
16
目自の 家
小林弘
東京都新宿区
1992
勢 亀裂 をもつ都市住宅
17
上 目黒 の家
袴田喜夫
東京都 目黒 区
1992
小 さな一 体 空間
18
四つ木 の家
難波和彦
東京都葛飾 区
1992
併用住宅 (住 宅+工 場 )
19
南砂 の家
難波和彦
東京都江東区
1992
併用住宅 (住 宅+倉 庫)
20
ドラキュラの家
石 山修武
千葉市
1993
敗者復活
21
KA邸
入江正之
東京都武蔵 野市
1993
内 と外 の空 間
22
HA邸
入江 正之
東京都武蔵 野市
1993
内 と外 の空 間
F―
105
設計 思 考支援 システ ムの構築
第 8章
表 8。 1設 計事例 リス ト (2) No
建物名
設計 者
所在地
設計期 間
設計 主題
23
鴻巣 の家
林雅子
埼玉県鴻巣市
1993
時 と地の中 に棲 む
24
浜松 の 家
林雅子
静岡県浜松市
1993
時 と地の中 に棲 む
25
千駄木 の 家
大江 匡
東京都文京区
1993
核家族 か ら各家族ヘ
26
中京 の家
岸和凛F
京都市 中京 区
1993
ーフ゛に 都市 をラドスタ
27
天沼 の 家
伊坂重春
東京都杉 並区
1993
素材へ の “まなざし"
28
゛ ゛ ゛ ク リーンシ ュウト
安山宣 之
千葉市若葉区
1993
触覚空間へ
29
/Jヽ
井口浩
東京都小平市
1993
環境共生へ
゛ 二セ ーヒ゛ ン ク 「 うらこ
30
中塚 ハウス
原広司
東京都 中央区
1993
2重 写 しと様相
31
大塚邸
新家長浩
鎌倉市
1993
空間、空洞、空地
32
FUNES
前 田紀真
千葉県船橋市
1993
小説 、 建築 香水 、
33
書架 の家
前 田光 一
東京都調布市
1993
書架 の 家
34
漂 う舎
谷川勲
大阪市
1993
さ象 の字宙 光が′
35
東ケ丘の家
本間至
東京都 目黒区
1993
光 が漂 う心象 の宇宙
36
瀬 田の 家
本間至
東京都世 田谷 区
1993
市街地 に建 つ住宅
37
上祖 師谷 の家
田中雅美
東京都 世田谷区
1993
記憶 と都市 の狭 間で
38
DANCING WEDGE
竹 山聖
大阪府豊中市
1993
浮遊す る断片
DEAIL
今村雅樹
東京都新宿 区
1993
光 と色彩 の風景
HOUSE
板井宝 一 郎
埼 玉県
1993
中高層 ビルの狭間で
41
大穴 の街角
黒沢隆
千葉県船橋市
1993
大穴 の街角
42
西原 の家
廣 田豊
東京都 渋谷区
1993
色
43
王子 の住 宅
富永譲
東京都北区
1993
身体―内なる 自然―の容器
方舟 抱 邑
上 田徹
東京都 世田谷区
1993
39
Y―
40
T―
44
106
父 4世 帯へ の共存(祖 父母、 弟) 子供、 母、 夫婦、
第 8章
設計思考支援 システムの構築
表8.1設 計事例 リス ト (3) 建物名
設計者
所在地
設計期 間
設計 主題
HOUSE
板井宝 一郎
東京都府中市
1993
複合家族 の住宅
46
大泉学園の家
大野 正 弘
東京都練馬区
1993
複合世帯住 宅o世 帯)
47
押木 田の診療所
平倉直子
名古屋市
1993
併用住宅(住 宅+診 療所 )
48
柏木 の家
黒川哲郎
東京都小金井市
1993
森 の 国 の 再生
49
余 自の家
横河健
横浜市
1993
玄関 の な い住宅
50
官 山の家
坂倉研究所
大阪府豊中市
1993
KES構 法 の展開
51
桜井 の家
坂倉研究所
大阪府豊中市
1993
KES構 法 の展開
52
障子 の 家
田中兼次
東京都大 田区
1993
障子様 々
53
木 の方舟
石 山修武
東京都 三鷹市
1994
究極 の 家
54
Mor邸
入 江 正之
東京都杉 並区
1994
内 と外 の空 間
55
代 沢 の家
大江 匡
東京都世 田谷区
1994
核家族 か ら各家族ヘ
56
箱 の家 1
難波和彦
東京都杉 並区
1994
箱 の家
57
箱 の家2
難波和彦
埼 玉県与野市
1994
箱 の家
58
箱 の家 3
難波和彦
東京都世 田谷 区
1994
箱 の家
59
下鴨 の 家
岸和郎
京都市左京区
1994
建築 の装置化
ω
S邸
青木淳
東京都世 田谷区
1994
窓 としての動線体
61
0邸
青木淳
東京都世 田谷区
1994
2世 帯住宅
62
大亀谷 の家
丸谷勝也
京都市
1994
開放 された傾斜地
63
中野本 町 の家
大野 正博
東京都 中野区
1994
8.4に 住まう
64
大船 の住宅
富永譲
横浜市
1994
小 さい住宅 の構造 の選択
65
東大泉 の住宅
富永譲
東京都練馬区
1994
小 さい住宅 の構造 の選択
66
上流生 の家
岡田哲史
川崎市
1994
複合世帯 の界面 の膨 らみ
No 45
I―
107
第 8章
設計思考支援 システムの構築
表8。 1設 計事例 リス ト (4) No
建物名
設計者
所在地
設計期 間
設計 主題
67
トラフ
玉置順
京都市右京区
1994
高齢化住宅
68
白鳥の家
藤森修
川崎市
1994
直営方式 の可能
69
宝塚 の家
岸和郎
兵庫県宝塚市
1995
浮遊す る屋 外 空 間
70
南河 内 の家
竹原義二
大阪富 田林市
1995
風 と光
71
狭 山の家
袴 田喜夫
埼玉県狭 山市
1995
小 さな3階 建 ての 家
72
大和 田の家
永 田習民
東京都杉 並区
1995
小 さ く作 る
73
永福 田の家
永 田習民
東京都杉 並区
1995
小 さ く作 る
74
高 山 さんの家
佃彰六
東京都江戸 川区
1995
小住宅
75
世 田谷 の家
深沢俊 一
東京都世 田谷区
1995
小住 宅
76
藤仁坊
橋本之隆
東京都調布市
1995
複合家族 の住宅
77
赤松公園の家
平倉直子
東京都世 田谷区
1995
夢 のあ る暮 らし(高 齢)
78
小金井 の住 まい
平倉直子
東京都小 金井市
1995
夢 の ある暮 らし(高 齢)
79
石神井 の住 まい
平倉直子
東京都練馬区
1995
夢 のあ る暮 らし(高 齢)
80
常磐台 の住 まい
平倉直子
東京都板橋区
1995
夢 の あ る暮 らし(高 齢 )
81
大 きい木箱
葛西潔
東京都青梅市
1995
併用住宅(住 宅十倉庫)
82
ノコギ リ 屋根 の家
高俊民
東京都世 田谷区
1995
木造住宅
83
三 鷹 の家
佐藤文
東京都 三鷹市
1995
木造住宅
84
佐藤 の家
黒川哲郎
東京都小平市
1995
森 の 国 の再生
85
繁柱 の家
深尾精 一
東京都杉 並区
1995
木造住宅
86
木月
泉幸甫
川崎市
1995
土壁 の活用 ヘ
87
楓宅
泉幸甫
埼 玉県浦和市
1995
土の可能性
88
田園調布 の家
吉村順 三
東京都世 田谷区
1995
併用住宅(住 宅十茶室)
108
第 8章
設計思考支援 システムの構築
表8.1設 計事例 リス ト (5) No
建物名
設計者
所在地
設計期 間
設計 主題
89
KA・ KO。 1
安山宣之
埼玉県川越市
1992
怠情胎 内
90
川又邸
杉千春
東京都 中野区
1996
複合的な家族へ 共存
91
大 山町 の家
野口昌夫
東京都渋谷区
1996
3m幅 の3層 空間K/Jヽ 住宅)
森南 の家
伊藤真 一
神戸市東灘 区
1996
生活の再興 に向け‐狭小住宅 に光 と風
H邸
花田佳明
神戸市東灘区
1996
生活 の再興 に向け‐ちさい家
山下邸
森崎滋
神戸市長田区
1996
浅 山邸
森崎滋
神戸市長 田区
1996
KUBE FOUR HOUSE
松本 明
神戸市東灘区
1996
)\,7
安山宣之
東京都 中野 区
1996
非四角空間における非視覚性
92
93
94
95
96
97
生活の再興 に向 け―木造 3階 の 再建
生活 の再興 に向け―RC
IWINWALL工 法 の 住 宅 生活 の再興 に向け-4住 宅 の協 調再建
98
7 =,tt, 7
神奈川県
塚本 由晴
1996
敷地 をつ くる
99
堤 の家
仙台市
深瀬啓智
1996
建築家 の 自邸
1(XD
下井草 の家
田中謙次
東京都杉並区
1996
ルリスヘ の技術 ナカラ
109
第 8章
8。
2.2
設計思考支援 システムの構築
法 規 ル ー ル の整 理
建築法規 は建築設 計過程 の一 つ必 要 な不可欠 条件 で あ る。本論 文 には、 法規 の用 途 から二 つ概念 があ る。一つは設計事例 中 に設計 条件 に関 して使 われた法規規則 であ り、 もう一つ は 事例 ベー ス 推論 の過 程 に与 え られ る問題 に対 して知 識 ベー スか ら取 り出す 問題解決 に関連す る法規 規則 で あ る 。前者 は設計 事例 に関連 して事例 内部 に格納 され る もの あ り、後者 は事 例推論 を補完す るた め に知識 ベ ース に格 納 される ものである。 本節 では、知識 ベー スの法規 ル ー ル につい て整理 を行 う。
1)整 理方法 ここでの 法規 の整 理 に当 っては、都 市計画法 、建築規 準法 な どの主 要関 連法規 を も ととして、そ の 中か ら意 匠設計 に際 して必要 な立 地、形態 な ど、建築物 理 て きな条 件 に直接 的 に、 また間接 的 に影響 を及 ばす規定 を抽 出 して整理す る。
2)法 規 ル ー ル リス ト 現段 階 に は、敷地 と建物 を 中心 内容 とす る法 規 関連 の 規則 を81個 整理 して知識 ベ ー ス に実装 した。それ らの内容 を表 8。 2に 挙 げ られ る。
110
第 8章
設計思考支援 システムの構築
表 8.2法 規 リス ト (1) No
規
則
名
区 域 分類
法
規
号
1
道路定義
共通
建基法 42.(1)
2
接 道義務
共通
建基法 43.(1)
3
私道 の定義
共通
建基令 144-4(1)
4
2項 道路 に接続 す る場合の隅切 りの規定
共通
建基令 144¨ 4(2)
5
道路 内 の建築制限
共通
建基法 44.(1)
6
道路 内 の建築制限
共通
建基法 44.(1)
7
前面道路 の幅員 12m以 上の容積率制限
第 1種 住居専用地域
建基法 52.(1)
8
前面道路 の幅員 12m未 満 の容積率制限
第 1種住居専用地域
建基法 52.(1)
9
前面道路 の幅員6m以 上 12m未 満 でまた 幅員 15以 上の道路 に接続する容積率制限
第 1種 住居専用地域
建基法 52.(3)
10
敷地 が計画道路 に接 する容積 率制限
第 1種住居専用地域
建基法 52.(1)
前面道路 に壁面線 の指定ある容積率制限
第 1種 住居専用 地域
建基法 52.(1)
12
建 べ い率制限
第 1種住居専用地域
建基法 52.(1)
13
外壁 の後退
第 1種 住居専用地域
建基法 54
14
絶対高 さ制限
第 1種住居専用地域
建基法 55。 (1)
15
道路斜線制限
第 1種 住居専用地域
建基法 56.(1)
16
北側斜線制限
第 1種 住居専用地域
建基法 56。 (1)
17
日影制限
第 1種住居専用地域
建基法 56.(2)
18
建物用途制限
第 1種 住居専用地域
建基法 48
19
前面道路 の幅 員 12m以 上の容 積 率制 限
第 2種 住居専用地域
建基法 52.(1)
20
前面道路 の幅 員 12m未 満 の 容 積 率制限
第 2種 住居専用 地域
建基法 52.(1)
21
前面道路 の幅 員 6m以 上 12m未 満 でまだ 幅員 15以 上の道路 に接続 する容 積 率制限
第 2種 住居専用地域
建基法 52.(3)
22
敷地 が計画道路 に接する容積 率制限
第 2種 住居専用地域
建基法 52.(1)
第 8章
設計思考支援 システムの構築
表 8.2法 規 リス ト (2) 貝J 名
No
規
23
建 べ い 率制限
第 2種 住居専用地域
建基法 52.(1)
24
絶対高 さ制限
第 2種 住居専用地域
建基法 55,(1)
25
道路斜線制限
第 2種 住居専用地域
建基法 56.(1)
26
北側斜線制限
第 2種 住居専用地域
建基法 56.(1)
27
日影制限
第 2種 住 居専用地域
建基法 56.(2)
28
建物 用途制限
第 2種 住居専用地域
建基法 48
29
前面道路 の幅員 12m以 上の容積率制限
準住 居地域
建基法 52.(1)
30
前面道路 の幅員 12m未 満 の容積率制限
準住居 地域
建基法 52.(1)
31
前面道路 の幅員 6m以 上 12m未 満 、 また 幅員 15以 上 の道 路 に接続 する容積 率制 限
準住居 地域
建基法 52.(3)
32
敷地 が計画道路 に接 する容積 率制限
準住居 地域
建基法 52.(1)
33
建 べ い率制限
準住 居地域
建基法 52.(1)
34
絶対高 さ制限
準住居 地域
建基法 55。 (1)
35
道路斜線制限
準住 居地域
建基法 56.(1)
36
北側斜線制限
準住居地域
建基法 56。 (1)
37
日影制限
準住居地域
建基法 56.(2)
38
建物 用途制限
準住居地域
建基法 48
39
前面道路 の幅員 12m以 上の容積率制限
近隣商業地域
建基法 52.(1)
40
前面道路 の幅員 12m未 満 の容積 率制限
近隣商 業地域
建基法 52.(1)
41
前面道路 の幅員6m以 上 12m未 満 、また 幅員 15以 上の道路 に接続する容積率制限
近隣商業地域
建基法 52.(5)
42
敷地 が計画道路 に接する容積率制限
近隣商業地域
建基法 52.(6)
近隣 商 業地域
建基法 52.(7)
近隣商 業地域
建基法 53.(1)
43 44
区域 分類
前面道路 に壁面線 の指定 がある容 積率制 限 建 ぺ い 率制限
112
法
規
号
第 8章
設計思考支援 システ ムの構築
表8.2法 規 リス ト (3) 貝J 名
区域 分 類
法
規
号
No
規
45
道路斜線制限
近隣商業地域
建基法 56.(1)
46
隣地斜線制限
近隣商業地域
建基法 56.(1)
47
日影制限
近隣商業地域
建基 法 56.(2)
48
建 物用途制限
近隣商業地域
建基 法 48
49
前面道路の幅 員 12m以 上 の容積率制限
商業地域
建基 法 52.(1)
50
前面道路の幅員 12m未 満 の容積率制限
商業地域
建基法 52.(1)
前面道路の幅員 6m以 上 12m未 満 、 また 幅員 15以 上の道路 に接続 する容積率制限
商業地域
建基法 52.(5)
52
敷地 が計画道路 に接する容積率制限
商業地域
建基法 52.(6)
53
前面道路 に壁面 線 の指定 がある容積率制 限
商業地域
建基法 52.(7)
54
建 ぺ い率制限
商業地域
建基法 53.(1)
55
道 路斜線制限
商業地域
建基法 56.(1)
56
隣 地斜線制限
商業地域
建基 法 56.(1)
57
日影制限
商業地域
建基法 56.(2)
58
建物用途制限
商業地域
建基法 48
59
前面道路 の幅 員 12m以 上 の 容積率制 限
準 工 業地域
建基法 52.(1)
ω
前面道路 の幅員 12m未 満 の容積率制限
準工業地域
建基法 52.(1)
61
前面道路の幅員 6m以 上 12m未 満 、また 幅員 15以 上の道路に接続 する容積率制限
準工 業地域
建基法 52.(5)
62
敷地 が計画道路 に接する容積率制限
準工 業地域
建基法 52.(6)
63
建 べ い率制限
準 工業地域
建基 法 53.(1)
64
道路斜線制限
準工 業地域
建基法 56.(1)
65
隣地斜線制限
準工業地域
建基法 56.(1)
66
日影制限
準工 業地域
建基法 56.(2)
113
第 8章
設計思考支援 システムの構築
表8.2法 規 リス ト (4) No
規
則
名
区域分類
法
規
号
67
建物用途制 限
準工業地域
建基 法 48
68
前面道路 が2本 場合 の斜線制限
各用途地域 に 共通
建基法 56.(4)
69
前面道路 が4本 場合 の斜線制限
各用途地域 に共通
建基法 56.(4)
70
前面道路 の反対側 に公 園場合 の斜線制限
各用途地域 に共通
建基法 56.(4)
71
前面道路 が水面場合 の斜線制限
各用途地域 に共通
建基令 131
72
敷地 と道路 に高低差 がある斜線制限
各用途地域 に共通
建基法 56.(4)
73
敷地 がに公園に接する場合の斜線制限
各用途地域 に共通
建基令 135
74
敷地 と高低差がある斜 線制限
各用途地域 に 共通
建基法 56.(4)
75
建築物の耐火措置
防火地域
建基法61
76
隣地境界線 に接する外壁 の制限
防火地域
建基 法 65
77
建築物の耐火措置
準防火地域
建基法 62
78
木造建築物 の 防火 措置
準防火地域
建基 法 62
79
屋根 の防火措 置
22条 地域
建基 法 62
80
外壁 の防火措 置
22条 地域
建基 法 62
81
木造建築物 の 防火 措 置
22条 地域
建基 法 62
114
第 8章
8。
2.3
設計思考支援 システムの構築
設 計 規 則 の 整 理 と収 集
設計規貝Jと は建築 設計 にお いて一般 的 な基本 方法 や建 築家 の長 年経験 した設計 の ノ ウハ ウであ る 。法規 のル ールの よ う に、本論文 に は、その用 途 か ら二 つ 概念 が ある。 一つ は設計 事例 中 に設 計 条件 に 関 して使 われた設計規 則 で あ り、 もう一つ は事例 ベ ー ス推論 の過程 に与 え られ る問題 に対 して知識 ベ ー ス か ら取 り出す問題解 決 に関連す る 設計規則 で あ る。前者 は設計事 例 に関連 して事例 内部 に格納 される もの あ り、後者 は 事例推論 を補 完す るため に知識 ベ ー ス に格納 され る もので あ る。本節 で は、知識 ベ ー スの設計規則 につい て整理 を行 う。
1)整 理方法 建築家 の個人 の設計 ノウハ ウを収集す るのは困難 な ことと予想 したので 、本論 では、 現段階 に設計 にお いて一 般的 な基本 手法 を着 目 し、教科書 や 設計専 門書 な どか ら、意 匠設計 に関連す る基 本 的 な設計規則 を収集 して整理す る。
2)設 計 規則 リス ト 現段 階 に は、 もっ とも基本 的な設計 手法 に着 目 して、知識 ベー ス に実装 した。そ れ らの内容 を表8.3に 挙 げ られる。
115
第 8章
設計思考支援 システ ムの構築
表8.3設 計規則 リス ト (1) No
規
則
分
名
類
1
住宅構成 の要 因
住 宅基本
2
住生活 の 関係分類
住 宅基本
3
室配置 の考慮要 因
配置計 画
4
玄関 の位 置配置要点
配置計 画
5
玄関設計 要点
基本設計
6
玄関照 明 と採光要点
基本設計
7
アプ ロー チ の 設計 要点
基本設計
8
アプ ローチの設計 の 身障者 と高齢者 の考慮 要因
基本設計
9
廊下設計 要点
基本設計
10
階段 設計 要点
基本設計
夫婦寝室位置 配置要点
配置計 画
12
夫婦寝室設計要点
基本設計
13
子供部屋位 置配置要点
配置計 画
14
子供部屋機能設計要点
基本設計
15
老人部屋位 置配置要点
配置計 画
16
老人部屋機能設計要点
基本設計
17
居 間位 置 配置要点
配置計画
18
居 間設計 要点
基本設計
19
台所 と食事所位置配置要点
配置計 画
20
台所 と食事所設計要点
基本設計
21
浴室洗面位置 配置要点
配置計画
22
浴室洗面 人動作 と寸法
基本設計
116
第 8章
表
8。
No
規
則
設計思考支援 システムの構築
3設 計規則 リス ト (2) 名
分
類
23
浴室洗面 トイレ設計 の身障者 と高齢者 の考 慮要因
基本設計
24
トイ レ位置配置要点
配 置計 画
25
ト イレ人動作
と寸法
基本設計
26
トイレ設計 の 身障者 と高齢者 の考慮要因
基本設計
27
吹抜 けの形態 と特性
基本設計
28
吹抜 けの空 間設計要点
基本設計
29
トップライ トの効用 要点
基本設計
30
テ ラスの タイプ と機 能特性
基本設計
31
屋 上庭 園 の設計 要点
屋上設計
32
屋上 アプ ロー チ タイプ と機 能特性
屋上設計
33
敷地形状 に関す る配置要点
敷地配置
34
敷地条件 (傾 斜 と高低差 )に 関す る設計 要 占
敷地配置
35
地下室設計 の考慮要因
地下室
36
地下室 の通風 と採 光 要点
地下室
37
地下室 の 防水 と防湿 要点
地下室
38
二 世帯住宅空間分割 パ ター ン
二 世帯住宅
39
二世帯住宅構造 に関す る設計要点
二 世帯住宅
40
二世帯住宅空法的チ ェ ック要点
二世帯住宅
41
室内騒音許容値概要
騒音防止設計
42
戸建住宅 の音響性能設計基準
騒音防止設計
43
騒音防止配置計画考慮要素
騒音防止設計
44
117
第 8章
8。
3
設計思考支援 システムの構築
設計思考支援 シス テ ムの実行
ここで、仮定 の設計問題 として収 集 した 「新建築 の住宅特 集」 の設計事例 を例 と し て作成 したシステ ムの動作 を通 じて 図8.17を 参 照 しなが ら設計支援 の過程 を具体的 に 説明す る。図8.18に 開発 された設計支援 システムの運行 の実例 を示す。 1)設 計 が依頼 され る時 に、設計者 が問題 の設計要求 と条件 に対 して、本 システム に
提供 される問題特徴づ けのテンプ レー トを用 いて設計 問題 を定式化 を行 う。本 シス テ ムは建築専 門用語 と図面 の参照 な どさまざ まな補助入力 の対話 機能 を提供 している。 ユーザがそ の補助機 能 に従 って必要な設計 デー タのみを意識 しなが ら簡単 に入力で き る。今 回仮定問題の特徴設定の主 な内容 を図8.17の A部 分 に示す。 助設計者が、問題 に対 して自身 の経験 によつてシステムが提供す る事例検索方法 を選 択す る。 システムが選 ばれた検 索方法 に従 って事例 ベ ースか ら最 も類似 した事例 をシ ステム画面 に取 り出す。類似事例 は図 17の B部 分のよう に、 「触覚空間へ の試行」 と 8。
い う設計 主題、図面か ら解釈文 までの外部 と内部空間 の構成 な ど設計意図 、西側道路 に関す る設計手法、第一種住居専用地域 に関す る法規規則 とい う設計思考情報 を示 し、 利用者 に学習 させ なが ら、設計想像力 を誘発す ることを試みる。 3)高 齢者 を含 む家族構成、西側道路 の高低差 とい う問題特徴 の相違 に対
して、 シス テ
ムが ルール推論 エ ンジ ンを用い て、知識 ベ ースからそれに対応 す る高齢者 に関す る設 計手法 と道路高低差が ある法規 規則 を探索 し、設計規則 の修 正 を行 う。設計者が修 正 した設計規貝Jを 学習 で きて設計 を行 う。図8。 17の C部 分 に示す。
o設 計者 は 自身の建築修養 と経験 を踏 まえて、設計条件 と類似事例及 び提示 される設 計手法 を利 用 して統合 的 に思考 して設計創 造 を行 なう。設計者 が検索 した類似事例 の 設計解 と設計手法が問題解決 に対 して役 立 たない と判 断 した場 合、 この類 似事例 を捨 ててほかの候補事例 を利用 して、2)-4)を 繰 り返 してシステム を動作 させ る。 5)作 成 した設計案 に対 して、設計者が システムの設計検証機能 を選んで、 システム が
ルール推論 エ ンジンを用 いて設計結果 の評価 を行 う。 システム は検証 の結 果 と対応 す る解決方法 を画面 に示 し、設計 者 に学習 させて設計 を行 う。 また、シス テ ムが作成 し た設計案 に失敗事例 ベースに事例 の照合 を行 って、照合 した事例 の欠点 の 分析 を設 計 者 に学習 させ る。
118
第 8章
設計思考支援 システムの構築
設計問題 主要用途 家族構成 構造構法 敷地面積 建築面積 建蔽率 容積率 用途地域 北側施設 西側施設 東側施設 施設
設計手法5
専用住宅 母、夫婦、子供2人 木造 2階 建枠組壁 工法 206,32m
60%
(A)
第一種住居専用地域 北側隣地である
IF
lCXl%
第 一種住居専用地域 高低差 :o 隣地 道路6師 高低差 :1 隣地 高低差 :0 高低差 :0 隣地
IFI I■ 西側に道路があ│る ●■
THEN■ 建物を ,こ 配置ILヽ 十ス‐■│ ■│■ 南薔 酵 `側 │ヨ
)・
法規規則8
第一種住居専用地域 前面道路がある 隣地 と道路の高低差 >lm THEN道 路斜線 :(H-1)+125A
IF
1■
高齢者がいる
THEN l玄 関前の段差、スロープ 2.居 室 を一階の 日当た り、
通風 などの所に配置
検索
1法 規規則 3 法規規則2
建築 目標 と条件
'a
建築 目標 と条件 主要用途 :専 用住宅 家族構成 :夫 婦 、子供 3人 構造構法 :木 造 2階 建枠組壁工法 敷地面積 :236.53m 建築面積 :10831m 建蔽率 :50% 容積率 :lCX% 用途地域 :第 一種住居専用地域 西側施設 :道 路 5 flm 高低差 :o2m 北側施設 :隣 地 高低差 :0.2m 高低差 :0.2m 東側施設 :隣 地 南側施設 :隣 地 高低差 :0.2m
枷 r
1事 認
IF
THEN
設計手法5 西側に道路がある ●‐ ■│ l「 配置 し、■ 1.建 物を北側‐ 南面 に庭にす るよ ││‐ 2西 側の部屋の窓に西■が やすい ことに 当│た リー
第一種住居専用地域 前面道路 がある 道路斜線 :125A
│‐ │‐ │
設計思考情報 設計意図 西側道路 か ら見ると、動Itは Nめ
I「
設計意図
設計結論 設計結論
)
北側斜線 :5m+125A 延床面積 :1824〔h l「 皆 : 10609 2F皆
覚空間への試行
レーの クリーンシェッドは二つの対をなす屋根か ここでは「安心自 開放感」 「 らなる。金属板のグレーの屋根 とステンレ 変動ノ 連続」、 または スワイヤに蔦 をはわせたグリー ンの屋根で ある。 グリー ンの屋根 はそのまま折れ下が つてグリー ンのフェンス とな り、外部空間 を囲い込んでいる。その下にアウ トドア・ リビングとしてのデ ッキ空間、玄関へ のア ローチ空間、車庫 を兼ねた前庭がある
建物高さ :7604111m 建築面積 :108.31m 延床面積 :182.49m 建蔽率 :45.79%(50%) 容積率 :77.H%(lKXあ
設計主題
:7631
建蔽率 :486% 容積率 :9937% 1階 配置 :寝 室、和室、食堂、 ―、お風呂 2階 配置 :主 寝室、子供室二つ
図8.17シ ス テムの実行例
119
人」「日向ぼっこ慮 など、日常的なことを触 な切 り口で整理 しデザイ 基準 としている。
昼 Ⅸ C t 製 く 小 く ヽ 曽 “図
II曹▼ H墨 尽椰
憔終軍椰
▲曇11
尋 器 く卜 1Кハ
120
設計思考支援 シス テ ムの構築 第 8章
第 8章
8。
4
設計思考支援 システムの構築
設 計 者 の位 置 づ け
ロセ 建築設計 は設計条件 を満 たす過程 において設計者が 自身の創造 力 を発揮 す るプ スであ る。本 システムは設計案 の 自動的生成ではな く、設計 者 の創造力 を誘発す る よ うな設計支援環境 の構 築 を目指 して いる。本 システムの推論 の 過程 中 にお いて、設計 者がシステムの動作 に介 入す るだけではな く、 自身の才能 を使 って最終設計案 を作 成 す る不可欠 な重要な役 割 を果た して いる。 そのために、本 シス テムが提案 される設計 支援 の枠組 における各機能部分の役割及 び相互協調関係 を図8。 19に 示す。
設計過程
推論過程
条件設定
問題分析
事例検索
システ ムの動作
設計者役割
問題 の設定 と入力
事例 ベース 知識 ベース 概念知識 専 門用語
問題分析 と 入力
1.事 例 の検索
1.検 索方法選択
2.類 似事例 出力
2.類 似事例有効
類似事例
知識 の知識
類似事例
法規規貝J 設計規則 知識 の知識
類似事例
法規規則 設計規則 知識 の知識
性判定 構想設計 事例修 正
1.問 題 と事例 の
1.設 計条件、類
特徴差異判別 2.設 計規則取得
似事例、設計 規則 の利用 2.設 計案作成
1.設 計 と事例 の
設計案生成
設計検証
差異判別 2.設 計規則取得 3.設 計案検証
1.設 計条件、類
似事例、設計 規則 の利用 2.設 計案修 正
図8。 19設 計支援過程 の協調関係
121
第 8章
設計思考支援 システムの構 築
8.5 まとめ 本章 では 、提案 したシステ ムの枠組 に基づい て、住宅建築 を対象 として 設計初期 段 階 にお いて設計思考支援 システ ムの 開発 について 、そのシス テム構成 とそれらの機 能 を解説 した。本シ ス テムの開発 はパ ソコンのWhdows95に VIsud
C‐「+と
い う環境 で行 っ
ていた。設計支援 シス テムが事 例 ベース推論、事例 ベ ースお よび領域知識 ベース を軸 としてその三 つの機能 モ ジュール を展開 し、 ルー ルベース と図 による推 論 を事例 ベ ー ス推論 のモ ジュール に統合 させ てシステム を構築 した。そ して、システム デー タで あ る設計事例、法規規則、 設計規則 について、その採集方法 を解説 し、採 集 した実 デ ー タの リス トを示 した。そ の中に、 システムの 中心 デー タであ る設計事例 の採集 につ い て、「住宅特集」 に設計事例 の 有用性 と凡例性 を想定 で きるた め、大都市 は土地が 狭 い、建物 が密集である。敷地 の環境 条件 は地方 よ り厳 しいので、設計 に空 間の有効 的 な利用 に工 夫が必要 となるとい う面 を考慮 して、「住 宅特集」 などか ら大都市 を中心 とす る設計事例 を 100例 を採集 して システ ム に実装 した。 また、法規規則が 81例 、 設 計手法 力ヽ3例 も採集 して システ ム に実装 した。そ して、実設計事例 を結 合 しなが ら本 システムの運行 を通 して、提案 した方法 による設計思考支援 の過程 も述べ た。最後 に、 本 システムの運行過程 において 、設計者 の位置づ けを示 した こ とを通 して、設計者 が 主導 をとる設計活動 に設計者 の想像 力 を誘発す る柔軟的 な支援方式 で、建築設計 に適 用 してい る創造的な問題解決方式 を構築す ることを示 した。
122
第 9章
論
章論
第 結
9
結
本論文 で は 、建築 設計 の 思 考 プロ セスの 支援 のた めに、設 計 の初 期段 階 の 構想設計 に着 目して 、過去 の設計事例 を利用 して設計者の能力 を最大限 に発揮 で きる設計支援 環境 の構築 を目指 して い る。そ のため に、本論文 では 建築 の初 期段 階 の設 計 の思考 過 程 に適用 して い る事例 ベ ース推論 とい う方法 を導 入す ることを中心 として、従来 のル ー ルベース推 論 お よび近 年発展 中 の図 に よる推論 を考慮 した推論 機構 を統合 す る設計 思 考支援 シス テ ムの基礎 的枠 組 み を提案 した こ と、提案 した方法 に基 づ く具 体 的 な設計 思 考支援 システ ム を構築す る ことを論 述 した。 本章 では 本論 の知 見 と特徴 お よび各 章 の結論 をまとめ る。
9。
1
結論
本論文で研究成果 と得 られた知見 を踏 まえて以下の結論 をまとめる。
1)事 例発想 による設計思考支援 モ デルの提案 人間は必 要 な規則が欠け ている時 に事例 を利用 して問題解 決 を行 うことが 事例 ベ ー ス推論 の考 え方 の源 になってい る。建築 の創造行為 は模倣 では じまり独創 へ のプロ セ ス とい う論 点 に基づい て、設計 プロセスにおいて設計 思考 に大 きい役割 を与 える事例 発想の重要性 を強調す ることは本論研 究の原点 であ る。本論文が 認知科学 と情報処理 学 の立場 か ら建築設計 に適用 してい る事例 ベース推論 を導入 して、設計事 例 を中心 と す る事夕1発 想 による設計思考 モ デル を提案 した。本論文では、建築設計 に簡単 には規
123
第 9章
結
論
則形式 として まとめ られ ない 設計 ノウ ハ ウを蓄 積す る設計 図面 、 設計意図 、設計 主 題 な どの設計 思考情報 を事例概念 に統合す る上 に、事例 推論 を通 して設計者 にア ドバ イ ス を与 えた り、設計 ノ ウハ ウを学習 させ た り、設計思 考 の創 造 力 を誘発す る方式 で 柔 軟 な問題解 決 の思考支援 システ ム を試 みた 。具体 的 な設計支援 システ ムの 構築 と開発 を通 して、提案 した方法 は設計初期段 階 にお い て思考 プ ロセスの 支援 に有 効 な ことが 実証 され た こ とを明 らか に して い る。 一 方 、事例発想 が重要 な設計手段 とす る建築 設 計領 域 にお いて 、その 関連 の研 究 はほ とん どない ため 、本研 究 の創意性 と有用性 を 明 らか に した 。 さらに、本研 究 の成果 は 知的 な設計支援 システ ムが あ ま り進 んで い な い 建築設計領域 において知 的な設計支援 のための新 しい方向性 を示 した。
2)統 合的 な設計支援 システ ム枠組 みの構築 本研究 で は、建築構想 設計 の思考過 程 に適 して い る事 例 ベ ー ス 推論 とい う方法 を導 入す る ことを 中心 として 、従来 のル ー ルベース推 論 お よび近 年発展 中の 図 による推 論 を考慮 した推論機構 を統合する設計思考支援 システ ムの基礎 的枠組 み を提案 して い る。 提案 した システ ム枠組 み は製図作 業 を中心 に考 え るCADシ ステムの 機能 を満足 させ る ものではな く、推論 と学習 しなが ら設計思 考過程 を支 援す る可 能 とす る こ とを考 え て い る。本論文 における提 案 した統合 化す る推論機 構 では、上 述 の 3種 の 推論方式 は一 つ が失敗 した ら、ほか に切 り換 える とい う弱 い結合形 態 ではな く、互 い に協調 を取 り なが ら相補 的 に実行す る ことによ り、全 体 として 、信頼性 が 高 く、かつ 効率的 な問 題 解決 を目指す ため、 シス テ ムの推論 効率 が期待 で きる。 さら に、提案 したシス テ ム 枠 組 み を基 づ いて 、具体 的 な設計 支援 システ ムの構築 と開発 に よ つて、建築 設計 の思 考 過程 の支援 システム を実用化す る技術 基盤 を確 立 した ことを明 らか した。
3)問 題解 決能力 の向 上 ー 現実 の建 築設計 の 分野 には デ ー タベ ース の問題解 決方 法 を用 い て、設計 事例 をデ タベースに集 め るシス テ ム例 があ るが 、そ れ らの 方法 が本論 文 で用 い る事例 ベー ス 推 論方法 と比 較す ると、 い くつ か 不 同点 が あ る。そ の 中 に以下 に よ うな二 つ の重要 な点 を挙 げて解説 す る。 つ 検索能力 :一 般 の デ ー タベ ース方法 で は、正 確 な検索 条件 の入 力 が要請 される。 まり、ある検 索条件 をキ ー として検索 を行 う場合 に、検索条件 と完 全 に照合 で きるデ ー
124
第 9章
結 論
夕が検索 される時に検 索結果が出るが 、完全 に照合す るデー タがなければ 、検索結 果 が出ない。本 システムで 用 いた事例 ベース推論方法 では、検索条件 と完全 に照合す る デー タがな くて も、部分的 な照合が許 され るので、検 索条件 に近 い予想 の 類似 の結 果 は出られ るため、デー タベース方法 よ りもっと柔軟的検索能力 を持 つ。 問題解決 能力 :デ ー タベー ス方法 で は、デー タの保存 、検索 を 中心機能 とす る問題 解決過程 であ り、検索条件 と完全 に照合す るデー タが検索 される時 にも、検索結果が 出ない時 に も、問題解 決過程 は完成 した こ とである。本 システムでは、学 習 を融合 し た推論方式 で あ り、検索 条件 と完全 に照合す るデ ー タがな くて も、類似 の問題解 を示 す だけでは な く、関連 す る問題解決方法 も利用者 に提示す るとい う学習 と推論 を統合 する問題解決過程 である。以上から、本論文で用 いた事例ベース推論方法 はデー タベー ス方法 よ り柔軟的で知的問題解決能力 を持 つ。
以下に、本論 の各章でえ られた知見、成果 を要約 して本論文の結論 とす る。 「第 1章 序論」 では、研究 背景 として設計支援 システムの研究 の発展 と現状 を概観 した上で、建築設計 の分野 における従来 の設計支援 システムでは、知的な設計 の支援、 あるいは設計思考過程 の支援 が 困難 で あ る こと、 また 問題解決能力 も不足 で あ るとい う問題点 を指摘 した。そ して、本論 文 の研究 目的、ならびに研究概要 と して各章 で議 論 されている内容 を述べ ることともとに、本研究 の必要性 を明 らかにした。 「第 2章 設計支援 システムの方法論 」 では、設計支援 システムの方法論 とい うテ ー マ を中心 として、従来の 設計支援 システムの現状 とその研究方法 の検討 を行 つた。特 に、 日本の国内 における建築設計分野において、 これまでにおこなわれて きた コンピュー タ技術 を用 い た設計支援 に関す る代 表的 な研究 を上 げた うえで、設計 システムにお け る次世代知識 システムの技術基盤 として、本論文 の研 究方法 において核心技術 であ る 事例 ベース推 論 に関す る起源、原理 、枠組 みお よびその応用 などを示 した。 さらに、 それ らの述説 とともに、研 究 の 目的、研究方法、研究対象 とい う方面 か ら、本論文 の 研究 の特徴 を示 しなが ら本研究 を位置づ けた 「第 3章 設計思考支援 モ デ ル」では 、今 回の システムで支援対 象 とす る設計初期段 階 において問題解決 を「 構想設計」 として定義、解説 した。 その特徴 で ある設計 プ ロ セスモデル と設計知識 の構造 に関 して「建 築 の創造行 為 は模倣 では じまり独創 へ の プ ロセス」 とい う視点から、建築設計 の思考 プロセ ス において事例発想 とい う設計方法
125
第 9章
結
論
が よ く使 われる こと、設計 の案 に対す る評価基準 がな いこ とお よび設計 の 知識 が ル ー ル形式 で記述 で きない場 合 が多い とい う点 を論述 した。以上 か ら人間の記憶 と想起 に 関す る認知科 学的モデル に基づいて 、事例発想が建築設計 の 思考過程 に重要 な役割 を 与 えることを明 らかに した。それ らの一連 の分析 のこ とに基 づ いて、建築設計 に適用 している事例 ベース推論 を導入 し、 事例発想 を中心 として規則発想 と設計検証 を統 合 す る設計思考 モ デル
(DCM)を 提案 した。 このモ デルの問題 解決方法 の 適合性 を強調
した上で、DCMに よる設計 支援過程 において設計 者 の創造的 な思考 を発 揮 で きる支援 過程 を解説 した ことなどに よつて、本論 で提案 した方法が建 築設計思考 を支援す る適 用性 と有効性 を明 らかに した。 「第 4章 設計事例 の定式化」 では、事例 ベー スのシス テムの基 盤 となる事例 デー タ の構成要素 に 関す る検討 を主な内容 とし、事例 において設計 思考 に影響 を与 える情報 から構成要素 を定式化 した。ここではオブジェク ト指向の方法論 により、 日標、条件、 結果、方法 とい う面か ら、設計事例 の構成要素 を分析、整理 した。 また、設計 の創 造 活動 の柱 となる設計者 の設計理念 や思想、設計 の思考 活動 を記 述す る設計 意図に関連 す る情報、お よび設計 の 思考活動 に影響す る制約 要因 として の法規 を主 要 な内容 と し て、設計事夕1か ら設計 の 思考情報 と して整理 した。 これ らを事例 の基本 的な構成要素 として全体 的 にまとめ て示 した。最後 に、採集 された実例 を用 いて定式化 された事例 の構成 を図面 を示 しなが ら解説 した。 この ように整理 した ものによつて 、設計思考 過 程支援 に有効情報がで きた ことを明 らかにした。 「第 5章 事例 の知識表現」 では、 まず人工知能 におけ る重要な研究課題 であ る知識 表現 の技法 に ついて、代 表的な 5つ を上げてその特徴 を簡単 に述べ た。 そ して本 シス テ ムで対象 とす る設計事例 デー タとその構 成形式 を分析 し、事 例 における知識 の類 型 を分類 して整 理 した。事 例 デー タが 属性、文字列 、数式、図形、画像、規則 などの 多 様 な知識類 型 と性格 を持 つ ことお よび事例構造 の複合性 を持 つ ことか ら、 これ らの 設 計知識 を記述 す るために は、オブジ ェ ク ト指向モ デルが適 してい ることを明 らかに し た。 また実際 にオブジェク ト指向言語 のCI+を 用 いて設計事例 を記述す る例 を示 した。 「第 6章 建築図面 の記述 と評価方法 」 では、問題解決過程 に建 築設計 の特徴 を考 え て図面 の伝達 と推論役割 とい う視点 か ら、推論役割 の図面の記述方法 を中心的述べ た。 まず、問題対象 とす る設計事例 に対す る空 間形態 につ いて区域 空間、敷地空間お よび 建物空間 を分 類 して分析 した。建築 の空間形態 の差異 と類似 性 とい う特徴 を理解 し把
126
第 9章
結 論
握す ることによつて、設計事例 の空 間構成 の記述方法 お よび空 間の評価方法 を提案 し、 その提案 した 方法 に基づ く建築 の空 間形態 の類似性 の判別方法 を示す こ とによつて、 提案 した建築図面 の記述 と評価方法 の有効性 を明 らかにした。 「第 7章 設計思考支援 シス テムの枠 組 み」 で は、事例 ベース推論 とい う方法 を中心 として、従来 のルールベ ース推論 お よび近年注 目 されている 図 による推論 を付加 した 推論機構 を統合す る設計思考支援 システムの基礎 的枠 組みを提 案 した。そ して、 シス テムの枠組み の基本的な構成 である事例 ベース推 論、ルール ベース推論 、図 による推 論、設計検 証、及 び事例 ベース と知識 ベー ス についておのおのの機能 を詳 しく解説 し た。更 に、本論文 の核心 で あ る事例 ベース推論 について、問題 の解析、事例 の検索 、 ベース推 事例 の修正 を中心 として述べ た。事例 ベース推論 を補完す るために、ル ール 論 を利用 した統合的な推論機構 を考 えた上 で、 ルール ベース推論 の構成 と してのワー キ ングメモ リ、推論エン ジ ンお よびル ールベース について詳 しく解説 した。図に よる 推論 では、事例 の空間形態 の類似性 を求 め るために、提案 した空間構成の 記述方法 と 空間形態 の類似性 の判別 方法 に基づ いて、図 による推論 を用 いた事例 の 空間形態 の類 似検索方法 を述べ た。さ らに、それ らの三つの推 論 の協調過程 について も解説 した。 また、 シス テムの推論過程 にお いて必要不 可欠な役割 を果た してい る領域 知識 につ い てその構成 お よび記述方式 などにつ いて も述べ た 。それ らの一連 の議論 のことによつ て、提案 した システムの枠組 み は設計思考支援 システ ムの構築 と開発 の技術 基盤 を確 立 した ことを明 らか した。 「第 8章 設計思考支援 システムの 構築」 で は、提案 した方法 に基づい て、戸建 て 住宅 を対象 と して設計初期段階にお け る設計思考 支援 システ ムの構成 と機能 を解説 し た。設計支援 システムは事例 ベ ース推論、事例 ベース および領域知識 ベー スを軸 と し て その三つの 機能 モジュ ールを展開 し、 ルールベ ース と図 に よる推論 を事例 ベース推 論のモジュール と組 み合 わせてシステム を構築 した。そ して、 デー タとなる設計事例、 法規規則 、設計規則 につ いて、その 採集方法 を解 説 し、採集 した実デー タの リス トを 示 した。 ここで用 いたデ ー タである設計事例 の採 集 について は事例 の有用性 と凡例性 か ら、大都市 の事例 で は土地が狭 く、 また建物が密集 している場合 では敷地 の環境 条 件 が よ り厳 しい ことが多 く、設計 に際 して空間を有効 に利用 す るための工夫 がなされ てい るとい う点 を考慮 して、住 宅を特集 した建築雑誌 などか ら大都市 での 設計事例 を を中心 に 100例 を選 択 して システム に実装 した。 また、法規規則 は81例 、設計手法 に
127
第 9章
結
論
いて は43例 を採集 して実 装 した。具 体的 な設計思 考支援 シス テ ムの構築 と運行 を通 し て、本論文 で 提案 した方 法 を設計初 期段 階 での設 計思考 の支 援 に適用 した ことを明 ら か に した。 「 第 9章 結論」 で は、本論 文 で え られた研究 成果 と知 見 をまとめ る うえ に、各章 で え られた知見 、成果 を要 約 して本論 文 の結論 とした。 また、 本論文 の研 究成果 の創 意 性 、有用性 、将来性 を 強調 した 。最後、実 用 システム の 開発 の ため に問題 点 とす る 今 後 の課題 も明 らかにされ ることを示 した。
9。
2今 後 の展望
本論文 で は、提案 す る方法 に基 づ い て建築 の 設計初期 段 階 にお け る設計 思 考支援 シ ス テ ム を構築 す ることに よって、提 案 した方法 の 有効 を実証 で きるが、 そ の一方、 実 用 システム の 開発 にあ たっては 、 い くつ か の課題 が 出 て きて い る。 これは 次 の点 を考 慮 す る必要が あ る。 まず、構 築 した設 計思考支援 システ ム をある程度 と範 囲で評価 しが 、 システムの 実 用化 のために 、広 い範 囲 におい て シ ス テ ム を評価 す る必要 となる。その ため に、初 心 者 の学 生か ら、あ る程 度経験 した設計者 まで に、研 究 場所 だ け ではな く、 実際 の設 計 部 門で システ ム を試行 させ る上 に、 システム方法 や機能 な どに対 して評 価 を行 う。 異 なる利用者 か らシス テ ムの性能 に対 して意見 を収集 し、 システムの機能 の改善 を行 う。 事例検索 での重み づ け の検 索方法 に は、事例 類似性 の 判定 のた め、設計 者が 自身 の 経験 を用 いて 事例 の重 み づ けを行 う が 、それ は経 験不足 の設計者 に とっては困難 な こ とで ある。 そ の 問題解 決 のため 、設計要素 の重み を 自動的 に設 定す る方法 を研 究す る 必 要 で あ る。 設計事例 の空 間形 態 に関す る記述 と評価方法 につい て は、現段 階 では、単純 的な平 面 の空間形態 を考 えて事 例 の空間形 態 の類似性 を分析 し、事 例 の 簡単 な 図面 の類似 検 索 を行 って い るが 、空 間構成 を 中心 内容 とす る建築設 計 の支援 のため に、 もっと複 雑 な空 間形態 を考 えなけれ ばならない 。その複雑 な 図面 の記述 方法及 び類 似検索 の対 応 も必 要 で ある。 設計事例 を用 い た 設計思 考へ の 支 援 とい う枠組 で は、事例 構成 の 整理及 び対象 とな る事例 の選択 はシステムの設計支援 能力 を向上 させ る重 要な ことで ある。現段 階 では、
128
第 9章
結
論
事例 の構成 要素 につい て、建築家 の理念、 スケ ッチな どの構想 設計 を含 む設計図面 、 思考過程及 び図面解 説 の コメ ン トな どの設計思考情報 をまとめて いるが 、 それ らの 内 容 を簡単 に手 に入れるため、建築家 と経験 がある設計 者 の協力 が必 要 とな る。事例 対 象 の選択 について、現 段 階で も、一 つの設計事例 の全 体 を単位事例 として 整理 して い るが、 これか ら、屋根、階段 、窓、玄 関、 ドー ムな どの 建築 の部 品設計 を事例対象 と す る必要がある。そのため、事例 の複合 と階層構造 に関す る研究が課題 となる。 事例 ベー ス推論 を補完 して 問題解決 システム を完全 な ものにす るためには、領域 知 識 ベースは不 可欠な もの である。領 域知識 の獲得 とそのシステムの構築 の難 しさを考 慮 して、現段階では、 領域知識 の 中、獲得 が容易 な概 念知識 と法規知識 か ら優先的 に 獲得 を行 った 。事例修 正 のための設計知識 の整理 について、法規 の規則 を中心 として 設計手法 をまとめてい るが、広い意味 の設計手法 を整理することが必要 となる。 今後 の課題 として 、 これらの問題 を解決 し、建築 の設計初期段 階 におけ る思考過程 の支援 ために、実用 の設計思考支援 システムの開発 を考 えてい る。
129
参考文献
参考文献
1)吉 川弘之、富山哲男 :イ ンテリジ ェン トCAD(上 ),朝 倉書店,1989
2)吉 川弘之、富山哲男 :イ ンテリジ ェン トCAD(下 ),朝 倉書店,1989 3)吉 川 弘之、木村文彦 :設 計 とCAD,1993,朝 倉書店、 1993 4)笹 田岡1史 :「 建築設計 システムの 開発 に関す る基礎的研究」,京 都大学学位論文,1976 5)渡 辺仁史 :「 建築計 画 における行動 シ ミュ レー シ ョンに関す る研究」 ,早 稲 田大学学位論文
,
1977
6)山 口重之 :「 建築設計 の初期段階 における図形処理 システムの開発 に関す る研究」,京 都大学
学位論文,1986 7)渡 辺俊 :「 知識工学 に基づ く建築デザ イ ンプロセスに関す る研究」,早 稲田大学学位論文
,
1993
8)青 木義次 :相 関類推 法 を用 い た建 築知識 ベ ー スの生 成 と類推 ,日 本建築 学会計 画系 論文集
,
No.398,pp.62-71,1988 9)JoS.GeЮ (cd.):Artirlcial lntclligcnce in Dcsign'92,1992 10)J.S.Gcro(ed。 ):Artiflcial lntcnigcncc in Design'94,1994
H)Akarna,V.,ten Hagen,P.and Tomiyalna T磁 .:htelligent CAD systems
Ⅱ :hplementation
lssucs,SpHnger― Verlag,Bcrlin(1989).
12)GcЮ ,J.ed:KnowlcdgcEngineeHng in Computcr AidedDesign,North― Holland,Amstcrdarn(1985)。 13)GcЮ ,J.cd:Expert System in Computcr AidcdDesign,North― Holland,Amstcrdarn(1987). :Practical Expc五 cncc嗣
14)Ten Hagcn,P.and Veckalnp,P.cds:Intelligcnt CAD System IⅡ Evaluation,SpHngcr― Vcrlag,Bcrlin(1991).
15)Yoshikawa,H.and Gossard,D.eds:Intclligcnt CAD,I,North―
Holland,Amstcrdam(1989).
16)Yoshikawa,H.and Holdcn,T.eds:Intclligcnt CAD,Ⅱ ,North― Holland,Amstcrdam(1990)。
17)SuthCrlana I.:SKETCHPAD― A Man― Mchinc Graphical Communication System,in Proc.of SpHng Joint Computcr Coni EEE/ACM,pp.329-346(1963)。 18)Ross,D.andRodHgucz,J.:Theoretical Foundations for thc Computer‐ AidcdDcsign System,in PЮ c.of SpHng Joint Computer Coni IEEE/ACM,pp.305… 322(1982). 19)Ncwsomc,S.,Spillcrs,Wo and Finger,So cds。 :Dcsign口 にory188,Sp五 nger― Verlag,Bcrlin(1988). 20)Latombe,J.C.:Artiflcial intelligcncc in Computcr aidedDesign,コ J.J.,I.Ed。 ,CAD Systcm:Proc.IFIP Working Con■
に TROPIC system,in Allan,
Design,1976,p.61,Amsterdam,
North― Holland(1977).
21)PreiSS,K.:Data Frarnc Mo“ l forthc Enginccnng Design PDccss,Design Studes,Vol.1,No.4,pp. 231-243,(1980). 22)Rchak,D。 ,Howard,H.and S五 ram,D.:Archit∝ tureof an integratedknowlcdgebasedenviЮ nlncnt
130
参考文献 for structural engineeHng applications,in GcЮ ,J.ed。 ,knowlcdgcenginec五 ng in Computer― Aidcd
Design,PЮ c.l141P WG5.2 Working Con■ ,pp.89-124(1985). 23)Ullman,D.Diettcrich,T.and Stauffer,L.: A Model of tte Mechanical Design Press Basedon EmpiHcal Data,in Artiflcial lntclligencc in EnginccHng,Dcsign and Manufacu五 ng,pp.33-52(1988).
24)田 中幸吉 :知 識工学,朝 倉書店,1983
25)上 野晴樹 :知 識工学,オ ーム社,1989 26)溝 口理 一郎 :エ キスパー トシステム、朝倉書店、 1993 27)岩 井介 な ど :知 識 システ ムエ学、 コロナ社 ,1991 28)特 集 「設計 とAI」 ,人 工知能学会誌,Vol.7,No.2,1992 29)吉 川 弘之 :一 般設計学説 ,人 工知 能学会誌 ,Vol.2,No.3,pp.273-279(1987). 30)冨 山 哲男 ,桐 山 孝司 ,吉 川 浩之 :知 的CADの 現状 と未来 ,人 工知能学会誌 ,Vol.7,No.2, pp. 187-195(1992).
31)長 澤 勲 :設 計支援のパ ラダイムとイ ンテリジ ェントCAD,イ ンテリジェン トCAD(上
),
113-141,朝 倉書店(1989) 32)長 澤 勲 :設 計 エ キスパ ー トシステム,情 報処理,Vol.28,No.2,pp.187‐ 196(1987). 33)岸 義樹 :設 計 の思考 モ デル :概念操 作 とイ ンテ リジ ェン トCAD,イ ンテリジェン トCA pp。
D(上 ),pp.142-181,朝 倉書店(1989)。 34)渡辺仁史 :マ イ コンによる建築計画 の作 り方、鹿島出版会、 1983 35)渡辺仁史 :建 築計画 とコンピュー タ、鹿 島出版会、 1983 36)渡 辺仁史 :CAD入 門、 日本実業出版社 、 1998 37)R.DoCoyneな ど (渡 辺俊訳 ):デ ザイ ンの知識工学、 オー ム社 、 1994 38)大 崎康 生 :建 築分野 におけるAIへ の期待 と課題 ,人 工知能学会全 国大会,1994 39)渡辺俊、渡 辺仁史 :建 築 設計 のための 知識表現 モデ ルに関す る研 究,日 本建築 学会計画系 論 文集,No.443,pp。 71¨ 77,1993 40)青 木義次、大佛俊泰 :ス キ ーマ グラマー による空 間分析の方法論 と都市 プラ ンヘ の応用 ―建 築空間分析 のためのス キーマ グラマー に関す る研究 その ―、 日本建築計画系論文集,No. 446,pp99-109,1993
41)青 木義次 :建 築平面記 述言語 と空 間構成 解析方法,日 本建築計画系論文集,No。 494,pp 153-159, 1997
42)青 木義次 :プ ラ ン作成 と遺 伝進化 との アナ ロジ ー,日 本建築計 画系論文集 ,No.481,pp151-156, 1996
43)青 木義次 、満 田 :イ メ ー ジの共有化過程 における連想語 を介入 した支援 ツー ルの 開発 ,第 17 回情報 。システム・利用 ・技術 シンポ ジ ウム論文集 ,1994 44)服 部琴 生 :建 築 の空 間構 成 を記述す る形式言語 (生 成文法 )の 可能性 、 日本建築計画系論 文 集 、 No.446,pp89-97,1993
45)堤 和敏、河村廣、谷明 :ニ ユー ラル ネ ッ トワー クを利用 した「設計 ノウハ ウ」 のシステム化 に関す る研 究,日 本建築学会構造系論文集 ,No.473,pp.207∼ 215 46)横 沢正人、 渡辺俊、 渡辺仁史 :学 習 によるオフイス環境 と人間行為パ ターンの獲得 ,第 13回 情報 。システム・利用 ・技術 シンポジウム論文集,1990 。 47)松 山達也、奥 田宗幸 な ど :初 期エスキ ースにお け る知識表現 モデルの構築,第 16回 情報 シ ステム・利用・技術 シンポジウム論文集 ,1993 48)下 川雄一 、両角光男、位寄和久 など :知 的CADの ための空 間記述言語 の開発 ,第 18回 情報 ・ システム・利用 。技術 シ ンポジウム論文集 ,1995 49)岡 元英公、両角光男 、位寄和久な ど :初 期段階の設計思考 を支援す るcADシ ステムの開発
131
,
参考文献 第18回 情報 。システム・利用・技術 シンポジウム論文集,1995 50)RichardJunheCcd。 ):CAAD futures 1997
51)Chang― K∞n Choi(ed):COmputing in Civil andBuilging Enginee五 ng,1997
52)小 林 重信 :事 夕1バ ー ス推論 の現状 と展望 ,人 工 知能学会誌 ,Vol.7,No.4,pp.559¨ 566,1992 へ 53)中 村孝太郎 ,小 林 重信 :対 話型事例 ベ ー ス推論 モ デ ル と機械調 整支援 の 適 用 ,人 工 知 能 学会誌 ,Vol.4,No.6,pp.704-713,1989 54)新 田 克己 ,ほ か :事 例 を用 い た法 的推論 とその並列化 ,情 報処理 ,90-AI-69,1990 55)中 村孝大郎 、小林重信 :事例 に基づ く操作 的診断 知識 の生 成お よび経験 的診 断知識の 洗練化 、 人工 知能学会誌 ,Vol.7,No.5,1992
56)安 信千津子 :ル ー ルベ ース推論 と事例 ベ ー ス推論 の統合化 の方法、 人工知能学会誌 ,Vol.7, No.6,1992 57)服 部雅 一 、 田中利 一 、末 田直道 :事 例 ベ ース推論 による機械設計 ,人 工 知能学会誌 ,Vol.9No。 pp.82∼
1
90,1994
58)仲 谷善雄、築 山誠、福 田豊生 :事例 ベ ー ス推論 による設計集団内 での設計知識 の 共有 の支援 人工知能学会誌 ,Vol。 10,No.2,pp.250‐ 261,1994 59)渡 辺博芳 、奥 田建 三 :事 例 ベース推論 に よるプ レス加 工工 程設計 支援 ,電 子情 報通信学会論
,
致覇志D― II Vol.J78-D― II,No.29pp.340-348,1995
60)山 口高平 :事 例 に基づ く推論 とモデ ル推論 の統合 に基づ く知識獲得支援 システ ム、人工知 能
学会誌 ,Vol.H,No.4,pp.585∼ 598,1996 61)Kolodner,J.and Riesbeck,C.:Case― BasedReasoning IJCAI-89 Tutorial-lИ A2(1989). 62)Kolo(hcr9 J.L。 ,Simpson,R.L.and Sycara9 K。 :A Pro∝ ss Mod of Casc― Basod Rcasoning in PЮblcin Solving,IJCAI-85,pp.284-290(1985).
63)HarnmOnd,K.:CHEF:A Modelof Casc― BascdPlalming,AAAI-86,pp.267-271(1986). 64)SimpSOn,R.L.:A computer Model of Casc―
basedRcasoning in Problem Solving:An lnvcsttgation
in thc Domain of Dispute Mcdiation,Doctoral Dissertation(Tccho Repo No.GIT― CIS-85/18),Sch001
oflni and Comput.Scicnce,Gcorgia lnst.of Tcch.,Atlanta,GA(1985)。
65)Riesbcck,C.K.and Schank,R.C.:Inside Casc― BasedReasoning,LawrenceErboum Assosiates (1989)。
66)Baino W.:Casc― BascdRcasoning:A Computcr Modclof SubieC● VC Asscssment,Ph.D.¶ Dcpt.of Computo Scicnce,Yale Univ。
hcsis,
(1986)。
67)Branting,L.Ko andPortcr,B.W.:Rules and Precedentsas Complemcntary Warrants,AAAI‐
91,pp.
3-9(1991)・
68)Golding,A.R.andRoscnbl∞ m,Po S:Improving Rule― BascdSystem ttK)ugh Casc― Based Rcasoning,AAAI-91,pp.22-27(1991)。 69)RttallnOney,So A.and Lcc,H.U.:Prototype― BascdRcasoning:An htcgratedAppЮ achto Sol宙 ng Largc Novel Problems,AAAI-91,pp.34-39(1991)。 70)新 田克 己 :エ キ スパ ー トシ ス テ ム にお け る知 識 表現 と推 論 、情 報 処 理 、Vol.28,No.2,1987 71)薦 田憲 久 、大 川 剛直 、安 信 千津子 :エ キ ス パ ー トシ ス テ ムの 設計 と開発 ,昭 晃 堂 ,1997
72)E.Yourdon:オ ブ ジ ェ ク ト指 向 シス テ ム 設計 、 (株 )ト ッパ ン、 1995 73)J。 ラ ン ボ ー 、 M。 ブ ラハ な ど :オ ブ ジ ェ ク ト指 向方法 論 0剛 、 (株 )ト ツパ ン、 1992 74)岩 崎 由美 :図 に よる推 論 と定性推 論 、 人工 知 能学 会誌 、Vol.9 No。 2,pp183-189,1994 75)中 谷 善雄 :図 に よる推 論 の 研 究 の 最 新 動 向 、 人 工 知 能学 会誌 、 Vol。 9 No.2,pp210‐ 215,1994 76)聞 一 夫 、安 西 祐 一 郎 :空 間的 関係 の 推 論 と学 習 、 人工知 能学会誌 、 Vol.9 1994
132
No。 29pp205-209,
参考文献 77)角 康之、堀浩 一、大須賀節雄 :テ キス トオブジェ ク トを空 間配置す ることによる思考支援 シ
ス テム、人工知能学会誌、Vol.9
No。 1,pp139… 147,1994
78)太 田利彦 :設 計方法論、丸善株式会社、 1981 79)ピ ー タ G。 ロウ :デ ザ イ ンの思考過程、鹿 島出版会、1990 80)池 辺陽 (主 査 ):設 計方法I:設 計方法、彰 国社、 1968 ケースス タデ イ、彰 国社、 1971 81)池 辺陽 (主 査 ):設 計方法Ⅱ:設 計 プ ロセスノ 82)池 辺陽 (主 査 ):設 計方法Ⅲ :設 計 プ ロセスノ 道具 の提案、彰国社、 1974 83)太 田利彦 (主 査 ):設 計方法Ⅳ :設 計方法論ノ 道具 の提案、彰 国社、 1981 84)建 築術編集委員会 :建 築術 1-企 画 の まとめかた、彰国社、 1976 85)建 築術編集委員会 :建 築術 2-空 間 をとられる、彰国社、 1976 86)建 築術編集委員会 :建 築術 2-設 計方法 を探す、彰国社、1976 87)建 築術編集委員会 :建 築術 4-要 素 を設計す る、彰国社、 1976 88)J.ChHStOpher Jones(池 辺陽 訳 ):デ ザ イ ンの手法、九善株式会社、1975 訳 ):デ ザ イ ンとは何 か、彰国社 ,1977 一 90)池 辺陽 :デ ザイ ンの鍵 人間・建築 ・方法 ,丸 善株式会社、1979 91)新 建築社 :新 建築住宅特集,1990-1997 92)新 建築社 :現 代 日本建築家 シリーズ ー池原義郎 93)新 建築社 :現 代 日本建築家 シリーズー林雅子 94)新 建築社 :現 代 日本建築家 シリーズ ー東孝光 89)P.J.グ リヨ :(高 田秀三
95)池 原義郎 、上松祐 二 :池 原義郎 のデ イテールー理性 と感性 の詩 の統合、彰国社 ,199o 96)石 山修武 :住 居論、新建築住宅特集、 1995‐ 1996(連 載) 97)日 本建築技術者指導 セ ンター :基 本建築関係法令集,1994 98)建 築文化 :建 築法規 チ ェックリス ト (1995-1997年 度版)、 彰国社 99)建 築申請実務研究会 :建 築 申請,新 日本法規 ,1981 1∞ )細 田茂 :建 築法規実務 マニ アル,学 芸出版社 ,1989 101)広 岡隆 :判 例・建築基準法 ,有 斐閣,1990 102)彰 国社編 :現 代住宅 の設計手法、 1975 103)川 崎清 な ど :設 計 とその表現空間の位相 と展開、鹿 島出版社 ,1990 104)中 島一 など :建 築設計 ―設計 と意図の表現、共立出版社 105)北 浦かほる :イ ンテリアの発想、彰国社 ,1991
106)渡辺仁史 :ハ ンデ ィブ ック建築、 オー ム社、 1996 107)岡 田光正 な ど :建 築計画、鹿島出版会、 1991 108)Martin v。 :高 齢者住宅 の企 画 と設計、鹿島出版会,1990 1")大 庭孝雄 :木 造住宅の設計法、学芸出版社 ,1985
HO)彰 国社編 :木 造住宅の形 と骨組、1979 ■ 1)日 本建築学会編 :建 築 の騒音防止設計 、彰国社 ,1991 H2)ラ イナー ウオロフ :傾 斜地住宅、集文社、1979 ■3)吉 田桂 二 :二 世帯住宅 の ノウハ ウ、彰 国社 ,1985
H4)伊 藤真一 :地 下室の作 り方、彰国社 ,1996 H5)佐 藤守男 :和 風 の居間、彰 国社 ,1977 H6)赤 沢義一郎 :玄 関テラス、彰国社,1977 H7)赤 沢義一郎 :子 供部屋、彰国社,1977 H8)永 森 一夫 :浴 室洗面 トイ レ設計 マニュアル、1983
133
辞
謝
本論文 を作成す るにあた つて、数多 くの方 々 にお世話 にな りました。 早稲 田大学教授渡辺仁史先生には研究 の は じめか ら論文 をま とめるまで、終始一 貫 して親切丁寧 な ご指導 を賜 りましたばか りでな く、常 に大所高所からに示唆 に富 む ご 意見 をいただ き、建築 における知的設計思考支援 に関す る理解 を深 める研究機会 を与 えていただ きましたことを心から感謝 いた します。 早稲 田大学教授古谷 誠章先生、筑波大学 助教授渡辺俊先生 には、 ご多忙 の 中、快 く 審査 をお引 き受けいただ き、貴重な ご助言 とご指導 をい ただ きましたことを感謝 い た します。渡辺俊先生には、渡辺仁史研究室 の助手 であ った時か ら、長 きにわた り、励 ましご助言 い ただ きました ことを感謝 い た します。 日本工業大学教授伊藤庸 一先生には、研 究 ばか りでな く、 日本での生活 にいたる ま で大変お世話 にな りまして、ご指導 とご激励 をいただ きました ことを感謝 いた します。 また、早稲 田大学渡辺仁史研究室、現早稲 田大学理工学総合研究 センター訪問研 究 員林田和人、現名古屋市立大学助手佐野友紀 、同研究室 の博士課程の高明秀、木村謙、 山久瀬健、長澤夏子 、橘木卓 の各氏 には本論文作成 のあた りご助言お よび 日本語 の校 正 をしていただいたことを感謝の意 を表 します。 井上宇市 フェローシ ップ、渥美国際奨学 金財 団などの奨学生 として本論文 を進め る 中、大 きな経済的援助 を感謝 いた します。 最後 にな りましたが 、研究活動 を行 うにあた り、理解 と最良 の環境 を与 えて くれ ま した両親、親友お よび数多 の先輩、知人友 人 に、深 く感謝 します。そ して、 日々の研 究 と生活 の中で励 まし支 えて くれた妻 疱春 に心か ら感謝 します。
134
歴
履
書
波 姓 名 :曹 生年月 :1957年 5月 31日 本籍地 :中 国武漢市華 中理工大学西一区87号 現住所 :日 本神奈川県川崎市宮前 区宮前平3-4-3,1-11
1976年 7月 1978年 3月 1982年 2月
1986年 9月 1990年 12月 1993年 4月 1998年
10月
1982年 3月 1990年 3月
歴 学 中国湖北省孝感市第 1高 等学校卒業 中国武漢大学計算機科学系入学 上 卒業 同 中国華中理工大学大学院修士課程入学 上 修了 同 早稲 田大学大学院理工学研究科博士後期課程 建設工学専攻建築計画研究入学 上 在学中 同 研 究 歴 主 としてデータベースの理論 と応用 に関す る研究 に従事、 1986年 8ま で。 主 として、建築CADシ ステムに関す る研究 に従事、
1992年 4月 まで。 1993年 4月 ∼主 として、建築設計支援 システムに関す る研究 に従事
職 1982年 1987年
3月 10月
中国華中理工大学助手 中国華中理工大学専任講師
歴
研究業績
究
業
績
論文 事例 ベ ー ス推論 による設計 初期段 階 にお ける思考過 程 の支援 システム に関す る研 究、 日本 建築学会計 画系論文集No.496、 1997.6、 渡辺仁史 1。
2.An Expolt Systcm of SuppoFting Dcsign]hinking PЮ ccsses for hitial Stagc of AEhitcctural Dcsign、 Ъ c Sevcnth htemational ConfeFenCC On Computing in Civil and Buildng Engincenng,
Seoul,Korea, 1997,8、
IIitoshi Watanabe
3.A Stu"of an htelligent Architectural Ctt Systeln bascd on Casc Based Rcasoning、
htemational
ConfcrcnccCAD/CG195 By SPIE,China,1995,10,Hitoshi Watanabc
4.図 による推論 を考慮 した事例 の類似検索 に関す る考 察、 日本建築学会 第20回 情報 ム・利用 ・技術 シンポジウム論文集、1997.12、 渡辺仁史 など
。シス テ
5.事例 ベース推論 による設計空間の 獲得支援 システム に関す る研究、 日本建築学会第 18回 情 報 システム利用技術 シンポジウム論文集、 1995.12、 渡辺仁史 など 事例 ベース推論 による建築法規支援 システムに関す る研究法規、 日本 建築学会第 17回 情 報 システム利用技術 シンポジウム論文集、1994.12、 渡辺俊、渡辺仁史 など 6。
講演 設計思考過 程 の支援 シ ス テムの開発 、 日本建築 学会大会学術 講演梗概集 、 1997.9、 渡辺 仁 史 など 7。
8.設計初期段 階 における設計思考過程 の支援 に関す る研究、 日本建築学 会大会学術講演梗 概 集、 1996.8、 渡辺仁史 など 9.設計 空間の 事例化 お よびイ ン ター フ ェース の作 成、 日本建築 学会大 会学術講演 梗概集 、 1995。 9、 渡辺仁史 など
研 究業績
事例 ベース推論 による知的建築法規支援 システムの考察、 日本建築学会大会学術講演梗概 集、 1994.9、 渡辺俊、渡辺仁史な ど 10。
そ の他 (論 文 ・講演 )
。 視覚弱者 の視野 を考慮 し得 る建築設計支援 システムの構築 につい ての研究、第20回 情報 システム・利用 ・技術 シンポジウム論文集、1997.12、 橘木卓、渡辺仁史 など H。
12.建 築情報概念 モデルの提案及 びシステムモ デルの作成、 日本建築学会第 18回 情報 システム
利用技術 シンポジウム論文集、 1995。
12、
高明秀、渡辺仁史 など
13.情 報 ネ ッ トワー クを利用 した「学生相互啓発」建築学習支援 システムに向けて、 日本建築
学会大会学術講 演梗概集、 1998.9、 酒井隆満、渡辺仁史 な ど 14.運 動― 視 覚系 の空 間認知 の 特性、 日本建築学会大会学術 講演梗概 集、1998.9、 山本陽一 、
渡辺仁史 など 15.情 報伝達 。空間移動 の機能発達 に基 づ く<人 の集 ま り>の 変化 ・多様性 につい ての考察、
建築学会全国大会学術講演梗概集、1997、 小西繭、渡辺仁史 など 16。
3次 元 仮想 空間 を用 い た実験 方法 に関す る研 究 、建 築学 会 全 国大会学術講 演梗概 集、
1997.9、
遠藤寛子、渡辺仁史 など
17.岬 1997.9、
に よる建築作 品 デ ー タベー ス の提案 と運用 、建築 学会全 国大会学術講 演梗概 集、 酒井隆満、渡辺仁史 など
18.建 築情報 の獲得手段 につい て、 日本建築 学会大会学術講演梗概集、1996.8、 高明秀、渡 辺
仁史 など 19.建 築計画 における情報 の概念 と管理手段 に関す る研究(そ の 1)、
日本建築学会大会学術 講
演梗概集、1995。 9、 高明秀、渡辺仁史な ど 20.協 調設計 におけるアプ リケー シ ヨン間空間構 成デー タモデル(そ の 学術講演梗概集、 1995。 9、 木村謙、渡辺仁史 な ど
1)、
日本建築学会大 会
21.協 調設計 におけるアプ リケー シ ヨン問空間構 成デー タモ デル(そ の 2)、 日本建築学会大 会 学術講演梗概集 、 1995.9、 橘木卓、渡辺仁史 など
2
Study on Thinking Processing Support System for the Initial Stage of Architecture Design
by
Bo
CAO
of computer aided drafting systemn the construction of the ttrinking support system for design is become more and more concem. However, the architecture design needs a lot of knowledge, experience and complex justification, which are strongly depend on the special knowledge and experienceof designer. In
In the field of architecture design,
fact, it
is difficult to obtain the practical
as the great development
knowledge of architecture and to ftanslate it into rules
for constructing an expert system. The purpose of this study is to construct an expert design environment for designers to bring out their creativity by providing previous design cases. The main contents of this thesis can be summarizedas following: 1. Propose a model of support desrgn thinking which is based on design case creative to bring out the imaginationof the designer in their thinking process.
2. Describe a system framework which is based on the Case-Based Reasoning(CBR) as well as integrated the raditional Rule-Bascd Reasoning(RBR) and the developmental DiagrammaticReasoning(GR). Stage
of
and the situaion
of
3. Infoduce a supporting system which is used the proposed model for the Initial ArchitectureDesign This thesis is organizedas follows:
In Chapter 1, "Infroduce", the background and necessary of ttris study CAADare introduced.
In Chapter 2 , "methodology of support desrgn system", some conventional CAAD system
are analyzed, specially, we
will inroduce some computer application
system which are
of our proposed method which is based on the knowledge system. Moreover, the CBR,the main techniques of developed
in ttre field of architecture in Japan,
and express ttre original points
the study, its fundamental and applications are introduced.
In Chapter 3, "model of support thinking processing of design" . the active of architecture design is said as the processing begin from imitation then to creative, the processing of architecture design thinking is usually as a design case creative, there are usually not valuation standard for ttre design result, and ttre design knowledge usually can not be expressed by rule. Therefore, case creative can be considered as an important role in the processing of design
thinking. tn this reason the CBR, which is proved to be suitable to the architecture design is innoduced to our system, and a model of support design ttrinking which integrated case creative, rule creative and design check is proposed. Moreover, the integration of the problem
solving of the model will be estimated and we will show how to use the system to aid designer to bring out their creativethinking.
In Chapter 4, "definition of design case", we will special discussion the construction of casewhich is the base element of the case base system. In this study, design case is formulated by 4 elements iN objective, condition, result and method wittr the methodology of object-orientated. In the other hand, some information such as the design conception, thinking of the designer, expression of design objective in ttre thinking processing, and the architecture code which is used to conffol the facts of design ttrinking process are described as design thinking information of case in our system.
In
Chapter
5,
"knowledge expression
of case", by
analysis real design case and
is
consffuction, the knowledge type of case will be classified in attribution, text, equation, figure, image, rule, and etc. In order to express various kinds of desrgn knowledge effectively, we
will
prove that in the 5 methods of the knowledge expression, object-orientated is the best method
for our system, and will show an example of design case described by the object-orientated languageC++.
In Chapter 6, "mchitecture plan expression and valuation method", the plan expression method from the view to show and refer the plan in the processing of solving problem will be introduced in the chapter. The space structure of a design case is defined into domain spirce, plan space and building space. The expression and valuation method is proposed by analysis the furthers of the distinctness and similarity of the building space structure.
In Chapter 7, "framework of the system", we will proposed a framework of ttrinking support system which is based on the CBR and also integraied the traditional RBR and the developmental GR. Moreover, about the CBR, we will innoduce the functions of problem analysis, case searching and case modify. The functions of RBR such as working memory, inference engine, and rule base will be infioduced in detail. In order to found out the similmity of the space stucture of case, we propose a expression method of space sfucture by GR. Heren the method of similmity searching by the use of the proposed method will be intoduced. Moreover, we
will
express
how to cooperate the 3 inference methods in
ttre system, and the
important conception of domain knowledge which is used in these inference processing, its construction and function will also be introduced.
In Chapter 8n "consffuction of system", we will inroduce a supporting design system based on our proposed methods. The system includes 3 modules: CBR, Case Base and Knowledge Base. In the other hand, we will also introduce how to collect the detail data about case, code, design rule in the system. We have selected 100 design cases in the big city from architecture magazine, and install them into our system. Moreover, 81 code rules, 43 design rules are also installed. By running of the system, we will show what can the designer do and how to aid the designer thinking by ftre use of the system, so that it can be proved that the
is a powerful aiding system which can bring out the designer's creativity in their design active, and it is a creative problem solving method which is most suitable to
proposed model
architecturedesign. The Chapter 9 is the summary of the conclusions of all the chapters.
早稲 田大学大学院理工学研究科
博 士論文審査 報告書
論
目
文 題
建築 の設計初期段 階 にお ける思考過程 の支援 システム に関す る研究
申 曹
請 者 波
建設工学専攻 ・建築計画研究
1998年 10月
建築設計分野 では ここ数年、 コンピュー タ利用 が急速 に発展 し、製図作業 を中心 に 考 えるCADシ ス テ ムが多 く開発 される とともに、 CADシ ステムの本 来 の 目的 であ る 設計 にお ける思考過程 の支援 に関心 が 高 まってい る 。 しか し、現実 の建築設計 は豊 富 な知識 や経験 、複雑 な判 断、あるい は高度 な専 門知識が要求 され、設計 者 の専 門 的、経験 的知識 に基づ く意思決定能力 に依存 す るために、そ れ らをシス テ ム化す る ことは極 めて難 しい状 況 で ある。本論 文 は、建築設計 の思考 プロセス を支援す るた めに、建 築設計 の初期段階 に着 目し、過去 の 設計事 例 を利用 して設計者 の 能力 を最 大限 に発揮 で きる設計支援環境 を構築 してい る。その要点 は次 にまとめ られる。(1) 設計事例 に基づ く事例発想 による設計 思考支援 モ デ ルを提案す るこ とによって、設 計者 の創造力 を誘発 す る支援 方式 を導 入 して設計思考支援環境 の構築 を試 みる。(2) 事例 ベー ス推論 を基盤 として従来のル ールベ ース推論 および近年発展中の 図 による 推論 を統 合す る設 計思考支援 システ ムの基礎 的枠組 み を示す。 (3)設 計初期段階 にお ける思考過程設計支援 システムを構築 し、 この有効性 を評価す る。 現実 には、建築設計分野 において、人工 知能技術 を用 いた設計思考 の支援 に関す る 研究 は極 めて少 な く、著者 の研 究成果 はこの分野 における先駆的 な役割 を果 たす も の とい える。 第 1章 は「序論」 であ り、研究背景 として設計支援CADシ ステムの研究 の歴史 と現 状 を概観 した上 で、建築設計 の分野 における従来 の 設計 シス テムの 問題 を指摘 し、 これを解 決す るため、知的な設計 の支援、あ るい は 設計思考過程 を支援す る研究 が 不可欠 で あ ると してい る。そ して、本論文 の研究 目的、 ならびに研 究概要 を述べ る とともに本研究 の位置づ け を明 らかに してい る。 第 2章 は「設計支援 システ ムの方法論」 として、設計支援 システムの方法論 とい う テーマ を 中心 と して、従来 の設計支援 システムにお ける研究方法 の検討 を行 ってい る。特 に、 日本 の国内 にお け る建築設計分野 におい て、 これ までに行 われ て きた コ ンピュー タ技術 を用 い た設計支援 に関す る代 表 的な研究 およびその研究方法 をと り あげなが ら、本研究 の核心技術 であ る事例 ベ ース推 論 の重要性 とその適用 可能性 を 明 らか にしてい る。 第 3章 は「設計思考支援 モ デル」 として、対象 とす る設計 の初期段階 にお け る問題 解決 を「 構想設計」 として定義 してい る。そ の特徴 である設計 プロセスモ デル と設 計知識 の構造 に 関 して「建築 の創造行 為 は模倣 で始 まる独創 へ の プ ロセス であ る」 とい う視 点 か ら、建築設計 の思 考 プロ セス におい て は、事例発想 とい う設計方法 が 行 われて い るこ と、設計 の知識 がルー ル形式 で記述 で きない場合が 多 い とい う点 を 指摘 してい る。 この なかで人間の記憶 と想起 に関す る認知科学的モ デルに基 づい て、 事例発想 が建築設計 の思考過程 に重 要 な役割 を与 え る ことを明 らか にして い る。 こ れ らの一 連 の分析 をもとに、建 築設計 に適 してい る事例 ベー ス推論 をシス テム に導 入 し、事例発想 、規則発想 と設計検証 を統合 す る設 計思考支援 モデ ルを提 案 して い る。 この モデルの問題解決方法 の適合 性 を確 認 した上で、 これを利用 して設計者 が
創造的 な思考 を発揮 で きる設計支援過 程 を解説 して い る。以上の こ とによって、本 論 で提案 した方法が建 築設計 思 考 を支 援す るのに適 してい る ことお よびその有効性 を明 らかに してい る。 第 4章 は「設計事例 の定式化」 として、事例 ベースシステムの基盤 となる事例 デ ー タの構成 要素 に関す る検討 を主 な内容 とし、事例 におい て設計思考 に影響 を与 える 情報 か ら構成要素 を定式化 して いる。 オブジ ェク ト指向の方法論 に よ り、 日標、条 件、結果、方法 とい う面 か ら、設計事例 の構成要素 を分析、整理 してい る。 さらに、 設計 の創 造活動 の柱 となる設計 者の設 計 理念 や設計 思想、設計 の思考活動 を記述 す る設計意 図 に関連す る情報、お よび設 計 の思考活動 に影響す る制約 要因 と しての 法 規 も事例 の基本 的な構 成要素 と して定式化 してい るが、 これ によって設計 思考過程 における知識 を操作可能 な方法 で記述 で きる ようにした点 は評価 に値す る。 第 5章 は「事例 の知識表現」 として、人工知能 における重要な研究課題 であ る知識 表現 の技 法 につ いて、代表的 な 5つ を上げてその特徴 を簡単 に述べ た上で 、本 シス テムが対 象 とす る設計事例 デー タとそ の構成形式 を分析 し、 事例 にお ける知識 の類 型 を分類 して整理 して い る。事例 デー タが、属性、文字列、数式 、 図形、画像、規 則 などの 多様 な知識類 型 と性格 を持 つ ことか ら、 これ らの設計知識 を実際 に記述 す るために、オブジェク ト指向言語 のC++を 用 いてい るが、設計分野 で このような統合 的な表現 は初 めの試 み として評価 で きる。 第 6章 は「建築図面 の記述 と評価方法」 として、問題解決過程 に建築設計 の特質 で あ る図面 の提示 と推論 とい う視 点か ら、推論 のための図面 の記述方法 を中心 に述 べ てい る。設計事例 に対 す る空 間形態 に ついて建物空 間 を分析 し、建 築 の空 間形態 の 差異 と類似性 とい う特徴 を理解 し把握 す るこ とによつて、設計事例 の空間構成 の記 述方法 お よび評価方法 を提案 してい る 。その提案 した方法 に基づ く建築の 空間形態 の類似性 の判別 方法 を示す ことによつて、提 案 した建築図面 の記述 と評価 が可能 で あ る ことを明 らかに してい る。 第 7章 は「 システムの枠組 み」 として、 これまで示 して きた設計思考支援 モ デル と 事例 の知識表現 方法 に基づい て 、事例 ベース推論 とい う方法 を中心 として 、従来 の ルールベ ース推論 お よび近年注 目され てい る 図 による推論 を統合す る設計 思考支援 システムの基礎 的枠組 みを提案 してい る。そ して、 シス テムの枠組 みの基 本的 な構 成 であ る事例 ベ ース推論、 ルー ルベー ス推論 、図 に よる推論 、設計検証、及 び事例 ベース と知識 ベ ース についてお のおの の機能 を詳 し く解説 してい る 。更 に、本論文 の核心 で あ る事 例 ベー ス推論 について 、問題 の解析 、事例 の検索、事例 の修 正 を 中 心 として述べ てい る。特 に、事例ベース推論 の中心課題 であ る事例 の検索 について、 重 みづ けや図の類似判別 な どの事例 の 類似検索方法 を新 たに提案 し解説 してい る。 図 による推論 で は、事例 の空間形態 の 類似性 を求 め るために、空間構成 の記述方法 に基づ く建築 の 空間形態 の類似 性 の判 別方法 を用 い て事例 の 図面 に 関す る類似検索 方法 を述 べ てい る。 さ らに、 システムの推論過程 において必要不可 欠 な役割 を果 た
してい る領域知識 につ いてその構成、役割 お よび記 述方式 な ども述 べ てい る。 これ らを統合 して提 案 した シス テ ムの枠組 みは著者 の独創的 なものであ り、設計思考 支 援 システムの構築 と開発 の技術 基盤が確 立で きた ことを明 らか してい る。 づいて、戸建 て 第 8章 は「システムの構築」 として、提案 した システムの枠組 に基 い 住宅 を対象 として設計初期段階 における設計思考支援 シス テムを作成運用 して る。 システム構成 は事例 ベ ース推論 、事例 ベース お よび領域知識 ベース を軸 と してそ の 三つの機 能モジ ュール を展開 し、ルー ルベー ス と図 による推論 を事例 ベー ス推論 の モジュー ル と組 み合わせてシス テム を構築 してい る。そ して、デー タとなる設計 事 ー 例、法規 規則、設計規則 につい て、そ の採集方法 を解説 し、採集 した実 デ タの リ ス トを示 してい る。 ここで用 い たデー タであ る設計事例 の採集 については事例 の 有 用性 と凡例性 か ら、大都市 の事 例 をと りあげ たが、 ここでは土地が狭 く、 また建物 が密集 してい る場合 に敷地 の環境条件 が よ り厳 しい ことが多 く、設計 に際 して空 間 を有効 に利用す るための工 夫 が なされ ている とい う点 を考慮 して、住宅 を特集 した 建築雑誌 な どか ら大都市 での設計事例 をを中心 に 100例 を選択 して システム に実装 し てい る。 また、法規規則 は81例 、設計 手法 は43例 を採集 して実装 してい る。 この シ ステムの構築 と運用 を通 して、提案 したモデ ルが設計活動 において設計者 の創造 力 を誘発す る柔軟 的な支援方式 で あ り、建築設計 の初 期段階 を支援す る実用 的な問題 解決方式 であ る ことを示 してい る。 第 9章 は「結論」 であ り、各章 において得 られた結果 を要約 している。 以上 を要す るに本論文 は、建築の設計初期段階 における思考 プロセスの支援 のため に、過去 の設計事例 を利用 して設計者 の能力 を最大 限 に発揮 で きる よ うな設計支援 環境 を具体 的 に構築 し、 これ を建築設計 の思考過程 に適用 して、そ の有効性 を確 か めたものであ る。そのために、事夕Jベ ース推論 とい う方法 を導入す る ことによつて、 い 従来 のル ールベ ース推論 お よび 図による推論 を考慮 した推論機構 を統合す る新 し 設計思考 支援 システムの基礎 的枠組 み を提示 したが 、 これは知的な設計支援 シス テ ムの研究 があま り進 んでい ない 建築設計 分野 におい て、新 しい実用 的な手法 と方 向 性 を示 した ものであ る。本論文 は設計 プロセスの情報化 が進 む中で 、建築計画研 究 の発展 に大 きく貢献す るもので あ り、博 士 (工 学)の 学位 として価値 ある もの と認 め られる。
1998年 10月 (主 査
)
審査員 早稲 田大学教授 早稲 田大学 教授
工 学博士 (早 稲 田大学)
渡辺仁 史
筑波大学助教授
工 学博士 (早 稲田大学)
古谷誠章 渡辺 俊