1999年 早稲田大学理工学部建築学科卒業論文 指導教授 渡辺仁史
駅の改札口における行動特性に関する研究
A Study on Characteristic of Behavior around the gate in a station
g96d183-0 渡辺 愛 g96d184-3 渡辺 千尋
Department of Architecture,School of Science and Engineering, Waseda University
はじめに
何気ない日常のひとコマである、改札を出る(または入る)という 行為。この一つの同様の目的を持った人々が、同じ機能を備えて並ぶ 改札機を前にして、どのような選択行動をとるのか。ただ何となく人 の流れに任せて適当な改札を選択する人もいれば、何らかの理由であ る改札を選択して出ていく人もいる。なかには、どの改札を利用しよ うか一瞬の迷いが生じてしまう人もいるかもしれない。 そのような改札利用における利用者のメカニズムを解明していくこ とで駅の自動改札の入口・出口という2つの相反する機能を兼ね備え ているが上に生じる流動の交錯や、一定時間内に通過できる人数が限 られているために発生する人の溜まりの改善に少しでも役立てること ができたら、というのが本論のきっかけとなった。
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目次 はじめに 1 序論
2
1-1 研究目的
3
1-2 研究背景
4
1-3 研究概要
6
2 改札利用者の行動特性調査
7
2-1 予備調査
8
2-1-1 調査方法
8
2-1-2 調査結果
9
2-2 本調査
14
2-2-1 調査方法
14
2-2-2 調査結果
18
3 出札利用者の行動特性分析 3-1 改札進入時の歩行速度比較 3-1-1 データの算出および結果
20 21 21
3-1-2 歩行速度比較
23
3-2
29
出札利用者の行動特性
3-2-1 定義
29
3-2-2 断面交通量
34
3-2-3 改札機利用率からみる行動特性
39
3-2-4 領域別の改札機利用者数
47
3-2-5 改札機選択率からみる行動特性
54
4 結論
65
4-1 まとめ
66
4-2 今後の展望
67
5 参考文献
70
おわりに
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1
1 序論
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2
1-1 研究目的
駅利用者の改札付近(コンコース−改札)における歩行行動を、歩 行速度、断面交通量、改札機利用率・選択率等の観点からみて、属性 や時間帯、周辺状況の違いが改札利用者の歩行行動にどのように影響 を及ぼしているのかを明らかにし、自動改札の出札・入札の比率や位 置の決定等に役立てることが本研究の目的である。
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3
1-2 研究背景
駅の自動改札は設置時にその数や位置などの基本的なことは決めら れているが、それ以降における出札専用改札口・入札専用改札口の比 率などの決定は各駅ごとの判断に任されている。その操作は経験に基 づくものであり明確な根拠で操作を行っているのではなく、合理的手 法は検討されていないのが現状である。
■自動改札について 大阪に初めて自動改札が導入されたのは1967年(昭和42年) のことで、阪急電鉄北千里駅(吹田市)であった。その後、関西では 自動化がどんどん進んでいった。一方、関東では武蔵野線(1973 年・昭和48年)と京葉線(1986年・昭和61年)の一部を除い て、自動改札化は1990年4月を待つことになる。1990年の時 点で東京を中心に100 km以内でJR,民鉄間での相互利用を可能 とする券売機が導入されたが、非常に連絡の多い関東では既存の自動 改札では情報判断力が追いつかなかった。民鉄・JR両方の東京中心 100 km内の首都圏で乗車券の規格が揃い、JRでは古い自動改札 を再整備した後、1992年4月に山手線内から本格的な自動改札の 導入を開始した。これ以後8年あまりの間に人々の生活に自動改札は すっかり定着した。
■改札の研究について そもそも鉄道駅のような様々な属性の人間が大勢利用する公共歩行 空間を設計・改修する際、その空間の動線計画や安全計画は特に重要 視される。そのためこのような歩行空間における人間の行動と特性に 関する研究が今まで数多く行われてきた。その中の一つとして混雑時 の群集行動に関する研究がある。たとえば中祐一郎氏らによる「交差
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4
群集行動の観測と分析」 (参考文献1)や「交差流動のシミュレーショ ン」 (参考文献 2) 、また古谷誠章氏らによる「多方面群集行動におけ る交錯点の解消モデル」 (参考文献 3)などがある。 こうした人間をそれぞれ個性のない集合体としてとらえて、それが どのように流れるかを考えるというマクロ的に人間の行動特性を調査 研究する一方で、人間それぞれの個性に着目して、それがどのように 動くかを考えるというミクロ的に群集を構成する個々の人間の行動特 性を調査する研究も盛んに行われている。この分野の研究は以前から 行われており、戸川喜久三氏や上原孝雄氏らによる「混雑時における 人間の歩行速度の研究」 (参考文献4)などがあげられる。また人間行 動の傾向を解明しようとする行動科学的な立場にたった多くの経路選 択に関する諸研究もなされている。高木幹郎氏による「建築内におけ る経路選択傾向」 (参考文献5)や原広司氏らによる「展示スペースに おける鑑賞動線の分析に関する研究」 (参考文献 6) 、今井康博氏らに よる「展示空間における観客行動に関する調査研究」 (参考文献7)な ど人間の経路選択行動の研究は人間の利用、生活する様々なスケール の中において数多くの研究がなされている。 しかしながら、マクロ的な交差群集流動の研究に対して群集の交わ りそのものについてのミクロ的な研究はまだ少ないのが現状である。 交錯点の解消の研究においても、その実行に至っては抜本的な平面計 画の改修が必要となるケースが多く、実際の改修として行われていな い場合がほとんどである。そこで、改札口付近における人間の歩行特 性を研究することで、その群集の交わりを解消こそできないものの、 わずかな平面計画の改修によってその混雑時における利用者の負担を 軽減させることはできないか、というのが本研究の入口となった。
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5
1-3 研究概要
図1-3-1 研究の流れ
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6
2 改札利用者の歩行特性調査
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2-1 予備調査
2-1-1 調査方法 研究の足がかりとして、改札口付近において利用者の歩行特性およ び行動特性を観察すべく、次のような条件で予備調査を行った。 調査地点 JR 山手線池袋駅・高田馬場駅・新宿駅の 3 駅 調査日時 5月30日(18:00∼ 18:30) 池袋駅 6月22日(18:00∼ 18:30) 高田馬場駅 6月23日(18:00∼ 18:30) 新宿駅 調査内容 1 出札・入札専用改札機の割合や位置関係 2 改札とホーム階段、コンコースとの位置関係 3 1、2に影響される改札利用者の行動特性 JR山手線主要3駅の改札付近の現況を写真撮影するとともに、改札 付近の空間形態の平面図をスケッチし、改札の出入札状況と目視によ る人の流れの状態を把握し、記録した。
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8
2-1-2 調査結果 調査から得られた情報をもとに、JR山手線各駅でも特に混雑する主 要3駅の改札付近における主な出札・入札利用者の流動を模式化した。
(1)JR 池袋駅北口
出札 入札
図2-1-1 出札・入札流動模式図
・柱の配列に合わせて改札機の出札、入札の割振りを行って いる。 ・規則的に立ち並ぶ柱によって出札、入札の流動が分けられ ている。
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(2)JR 高田馬場駅早稲田口
出札 入札
図2-1-2 出札・入札流動模式図 ・コンコース上の出札、入札の流動を手すりによって分けてい る。 ・朝の混雑時には駅員の誘導が行われている。
(3)JR 新宿駅西口
出札 入札
図2-1-3 出札・入札流動模式図 ・エスカレータおよび出札側からみて右側の改札の前に人の 溜まりができる。 ・コンコースにおける出札利用者の流動が片寄っていない。
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10
■ 考察 JR池袋駅北口では柱によって、出札・入札利用者の流動が比較的う まく分けられているので、交錯は起こりにくい。JR高田馬場駅早稲田 口でも手すりによってうまく分けられているといえるが、それだけで は不十分な点もあり、駅員の誘導による制御が行われている。 JR新宿駅西口ではエスカレータおよび出札側からみて右側の改札の 前等に発生する人の溜まりが原因となり、回避流動がみられる。また、 出札・入札利用者の流動の衝突が起きており、入札利用者が多く絶え 間なく続くために交錯が著しい。 また、3駅を共通して次のようなことがいえる。 ・ 端の改札は使用頻度が低い。 ・ 流動がある程度大きくなると、改札は均一に使用されるよう になる。 ・ 出札利用者と入札利用者で交錯が起こっている。
出札利用者と入札利用者の交錯や溜まりの状況をJR新宿駅西口を例 にとって示す。
図2-1-4 JR 新宿駅西口 北側(左)南側(右)
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出札・入札利用者の両者間で多少の交錯が生じてしまうことは、入 口・出口という2つの相反する機能を兼ね備えている改札の性質上、 避けることはできない。しかし、それによる交錯や改札手前にできる 人の溜まりを減少していくことは、 改札口付近における人間の歩行特 性を研究していくことにより可能であると考える。 人間は同等の目標物が複数存在する場合に、そのなかの1つを選ぶ という行動をとることになる。この複数の目標のなかから1つを選ぶ 際に、様々な選択理由となる要因が考えられる。 今回の改札口に関しては、次のようなことがいえる。 1 最短距離で出ることができる 2 並ぶ人間の列が短い 3 人の流れに乗って進む 4 出札後の目的地に近い 混雑時は、1∼4それぞれの要因で選ぶか、いくつかの要因を組み 合わせて選択することが予想される。よって、混雑した最短距離にあ る改札を避けて、混雑時でも遠回りして比較的人の流れがスムーズで ある改札に向かう者が多いのではないか。また、平常時では特に、1、 4の要因が改札の選択理由として大きく影響してくると考えられる。 以上のことから、改札口付近における行動特性を考える場合には、 始点から目標への歩行距離というものが重要な要素となると思われる。
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そこで今回の研究では改札機選択というものに着目して、歩行速度 を含め、様々な条件下における改札機利用率や場所による改札機選択 率等を比較・分析することで、改札口付近における人間の行動特性を 明らかにしていく。
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2-2 本調査
2-2-1 調査方法 予備調査の結果をふまえ、改札付近の群集流動、それら利用者の行 動特性・歩行特性を時間的および座標的に確認し、分析を行うために 以下のような条件で調査を行った。
調査地点 新宿駅西口改札内 調査時間 9月22日 朝(7:30∼9:30) 昼(12:00∼14:00) 夜(17:15∼19:15) 調査内容 VTR 調査(改札利用者の歩行行動を撮影)
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■ VTR 撮影について すべての改札機を撮影するために広角レンズをつけた2台のカメラ を使用した。
至東口 渋谷→
←池袋
西口
カメラ01撮影範囲 カメラ02撮影範囲
図2-2-1 撮影位置
左図にみられるよう に改札内の天井から下 がっている看板の両側 にカメラを設置した。 (図 2-2-2) また、図2-2-3、4はそ れらのカメラからの撮 影画像である。 図2-2-2 カメラ設置場所 早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
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図2-2-3 カメラ01 撮影映像
図2-2-4 カメラ02 撮影映像
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■調査地点の決定 調査地点の条件として 1 同等の条件の改札が複数存在し、改札機選択の際に改札利用 者に多少の選択肢が与えられていること。 2 大規模ターミナルであり、改札付近において相当量の一方向 流動が発生すること。 3 ハイアングルでの VTR の設置が可能であること。 以上のことをふまえて選定を行った結果、図2-2-1、2に示す新宿駅 西口改札内に決定した。
■調査時間の決定 改札付近の最混雑時の混雑解消もしくは、利用改善を念頭において いるので、主に通勤・通学時を対象とする。これと比較するために非 混雑時にも調査を行い、時間帯による違いを考察する。 よって、朝夕ラッシュ時を含んだ平日の朝・昼・夜のそれぞれ2時 間を撮影することにした。 なお各時間帯とも、流動発生を左右するようなダイヤの乱れはな かったが、何度か数機の改札機の故障による流動の乱れがみられる時 間帯もあった。
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2-2-2 調査結果 ■座標データの生成 1 秒1コマあるいは2コマごとに連続する画像をコンピュータ に取り込む。 2 その画像データから改札付近の流動について抽出する。 3 このデータを 2 次元データ(直交座標)に変換する。 (操作内容の詳細) 上記の1∼3の作業について 1 映像取り込み VTR映像を、秒1コマあるいは2コマの連続する静止画とし て取り込む。 2 流動成分の抽出 画像の人間の頭を目安に「何番目の人・フレーム・X 座標・ Y 座標」の形で流動の様子を数値化する。 3 座標変換 ビデオから得た映像ではパースがかかっているので、これ を平面図で見たような絵にして、分析を簡単にするために 座標変換を行う。 なお、1と3の操作については扱うデータ量が大量であるために、 作業を効率よく行うために渡辺研究室修士卒の先輩である樋口智幸氏 が作成した半自動化プログラムを使用した。 (参考文献8、9)
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■ VTR 画面上によるカウントおよび追跡 朝・昼・夜のそれぞれ10分間、またすべての時間帯おける混雑度 の違いよって1分間を一区切りとした故障中の改札機がなるべく少な い(あるいはない)時間をいくつかを抽出し、VTR画面上でカウント および追跡を行う。 以上の作業によって得られたデータをもとに分析を行う。
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3 出札利用者の行動特性分析
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3-1 改札進入時の歩行速度比較
3-1-1 データの算出および結果 ■歩行速度の算定 生成した座標データをもとに、 コンコースから改札に向 かって直進 している人を対象に各時間帯、群集密度の大きさ、属性別にそれぞれ 20人前後のサンプルを抽出し、VTRの分析の有効な範囲である改札 手前3∼7m付近における各人について1 秒間の歩行距離を求め、歩 行速度を算出した。 (図 3-1-1、表 3-1-1) また、その歩行速度をそれぞれ平均した歩行速度を求め、歩行速度 を比較する際にはその値を用いることにする。
渋谷→
←池袋
出札利用者 入札利用者
西口改札
0
2
10M
図3-1-1 改札口付近歩行軌跡
■群集密度の算定 歩行速度を算出した領域およびそれぞれの時間における16 m2当た りの人数を数え、その面積で割ったものを用いる。
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■歩行速度データ 前記をふまえて各人の歩行速度を算出し、その結果を次の表にまと めた。
表3-1-1 時間帯、属性、群集密度別歩行速度データ 時間帯 属性 群集密度 (人/m2 )
歩行速度 (m/s)
朝
朝
朝
昼
夜
昼
健常者
健常者
健常者
健常者
健常者
高齢者
7.25
2.50
0.25
1.50
1.62
1.75
0.73
1.50
1.10
0.80
1.01
0.62
1.04
1.14
1.35
0.66
0.97
1.42
0.92
1.11
1.28
1.57
1.34
0.78
0.75
1.18
1.30
0.97
1.41
0.15
0.85
0.79
1.81
1.36
1.31
1.62
0.81
0.96
0.88
1.15
1.22
0.71
0.64
0.63
1.05
1.08
1.12
0.52
0.77
1.03
0.89
1.55
0.94
0.44
0.74
1.34
1.18
0.94
0.97
0.49
0.73
1.30
1.22
1.39
1.50
0.49
0.88
1.11
1.19
1.84
0.82
1.08
0.70
0.95
1.03
1.41
1.32
0.82
0.94
0.77
1.11
0.74
1.12
0.82
0.81
1.20
1.27
0.74
1.21
0.60
0.73
0.89
1.09
0.95
0.68
0.65
0.73
0.92
1.10
1.39
1.05
0.76
0.75
0.89
1.42
1.20
0.58
0.77
0.91
1.02
1.06
0.80
0.82
0.72
0.97
1.04
0.52
0.63
1.13
0.90
0.98
0.37
0.71
1.11
0.95 平均 歩行速度 (m/s)
0.79
1.02
1.15
1.16
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3-1-2 歩行速度比較 ■群集密度の違いによる比較 朝( 7:45 ∼8:45)の同じ時間帯での群集密度の違いによる健常 者の歩行速度を比較した。 (表3-1-2、 図3-1-2) 表3-1-2 歩行速度- 群集密度 群集密度 (人/m )
7.25
2.50
0.25
歩行速度
0.79
1.02
1.15
(m/s)
1.4
1.2
1
0.8
0.6 0 2 4 群集密度 ( 人/ m2)
6
8
図3-1-2 群集密度と関係 図3-1-2をみると歩行速度と群集密度は比例関係にあり、 群集密度が 大きくなればなるほど歩行速度は遅くなることがわかる。 この要因としては、一人当たりの改札の通過時間に限界があるため に混雑すればするほど、改札付近において流動の滞留が起こり、利用 者の歩行速度は遅くなるのではないかということが考えられる。
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23
次に、それぞれの歩行速度のヒストグラムおよび分散値を求め、群 集密度別に比較した。
10
分散値
0.010
大
8 6 4 2 0 ∼0. 3∼0. 4∼0. 5∼0. 6∼0. 7∼0. 8∼0. 9∼1. 0∼1. 1∼1. 2∼1. 3∼1. 4∼1. 5∼1. 6∼1. 7∼1. 8∼1. 9
歩行速度(m/s)
図3-1-3 群集密度7.25 (人/ m2)のとき 10
分散値
0.046
8 6 4 2 0
∼0. 3∼0. 4∼0. 5∼0. 6∼0. 7∼0. 8∼0. 9∼1. 0∼1. 1∼1. 2∼1. 3∼1. 4∼1. 5∼1. 6∼1. 7∼1. 8∼1. 9
歩行速度(m/s)
図3-1-4 群集密度2.50 (人/ m2)のとき 10
分散値
0.044
8 6 4
小
2 0
∼0. 3∼0. 4∼0. 5∼0. 6∼0. 7∼0. 8∼0. 9∼1. 0∼1. 1∼1. 2∼1. 3∼1. 4∼1. 5∼1. 6∼1. 7∼1. 8∼1. 9
歩行速度(m/s)
図3-1-5 群集密度0.25 (人/ m2)のとき
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図3-1-3,4,5のヒストグラムをみると、多少の乱れはあるがほぼ正規 分布に従っている形となった。その乱れの要因としては、第一にサン プル数が20人前後という少ないデータをもとに作成したためと考え られる。 これらのヒストグラムによると、グラフの山が群集密度が小さくな るにつれ徐々に右にずれていることから、前記でも述べたように、改 札進入時における出札利用者の歩行速度は、混雑すればするほど遅く なるということが、より強い根拠を以て示すことができた。 また、同図による歩行速度の分散値をみてみると群集密度が大のと きに0 .010と、他の0 .046、0 .044に比べ、かなり低い値 となっている。 これは群集密度大のときにおける出札利用者の歩行速度に、ばらつ きがほとんどみられないということを示している。 その原因としては 混雑してきたときに、改札付近で流動の滞留が発生し、コンコースか ら来る出札利用者がその滞留に飲み込まれることで、限られた速度で しか歩行できなくなるからではないか、ということが考えられる。
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25
■朝・昼・夜の時間帯による比較 今回のサンプルのなかで、群集密度が中(1. 5∼2 . 5 m2 )のと きの朝・昼・夜の時間帯別に健常者の歩行速度を比較した。 (表3-1-3)
表3-1-3 歩行速度- 時間帯
歩行速度 (m/s)
朝
昼
夜
1.02
1.16
1.11
これによると朝・昼・夜の時間帯による改札付近での利用者歩行速 度の差は、あまりみられない。
次に、それぞれの歩行速度のヒストグラムおよび分散値を求め、時 間帯別に比較した。 10
分散値
0.046
8 6 4 2 0
∼0. 3∼0. 4∼0. 5∼0. 6∼0. 7∼0. 8∼0. 9∼1. 0∼1. 1∼1. 2∼1. 3∼1. 4∼1. 5∼1. 6∼1. 7∼1. 8∼1. 9
歩行速度(m/s)
図3-1-6 朝の時間帯
10
分散値
0.116
8 6 4 2 0
∼0. 3∼0. 4∼0. 5∼0. 6∼0. 7∼0. 8∼0. 9∼1. 0∼1. 1∼1. 2∼1. 3∼1. 4∼1. 5∼1. 6∼1. 7∼1. 8∼1. 9
歩行速度(m/s)
図3-1-7 昼の時間帯 早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
26
10
分散値
0.040
8 6 4 2 0 ∼0. 3∼0. 4∼0. 5∼0. 6∼0. 7∼0. 8∼0. 9∼1. 0∼1. 1∼1. 2∼1. 3∼1. 4∼1. 5∼1. 6∼1. 7∼1. 8∼1. 9
歩行速度(m/s)
図3-1-8 夜の時間帯
図3-1-6,7,8のヒストグラムをみると、どの時間帯においても多少の 乱れはあるがほぼ正規分布に従っている形となった。その乱れの要因 として考えられることは、前述の通りである。特に昼の時間帯につい ては、かなりすそ広がりな分布となっており、その原因を以下で考察 する。 同図によるそれぞれの分散値を比較してみると、朝と夜の時間帯で の分散値は0.046、0.040と、非常に似通った値となっている のに対し、昼の時間帯は0 . 116と非常に高い値となっている。 これらのことから考えると、昼の時間帯の改札付近における出札利 用者の歩行速度にはかなりのばらつきがあるといえる。 これについては、朝と夜の時間帯では日頃から改札進入という行為 に慣れている通勤、通学者が利用者のほとんどを占めているのに対し て、昼の時間帯ではその他に、娯楽等が目的の、日頃からあまり駅を つかうことのない利用者が多数含まれているために、この時間帯にお ける出札利用者の歩行速度の差が、激しくなるのでははないかと考え ることができる。
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■健常者と高齢者による比較 時間帯および群集密度共に、同条件(昼・群集密度中=平常時と する)のときの健常者と高齢者の歩行速度を比較した。 (表 3-1-4) 表3-1-4 歩行速度(改札進入時)
歩行速度 (m/s)
健常者
高齢者
1.16
0.71
これより、明らかに健常者に比べると高齢者の改札付近での歩行 速度は遅くなることがわかる。 またこれらと、 平常時の改札内水平路にお ける歩行速度とを比較 してみる。 表3-1-5 歩行速度(改札内水平路歩行時 : 考考文献10 より )
歩行速度 (m/s)
健常者
高齢者
1.07
0.96
表3-1-6 歩行速度比率
高齢者/健常者
改札進入時
改札内水平路歩行時
0.61
0.9
表 3-1-6 より、高齢者の健常者に対する歩行速度の比率は改札進 入時の方が0 . 31小さくなっていることから、改札進入とい う行為は、高齢者にとっては負担になっているのではないかと考え られる。
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3-2 出札利用者の行動特性
3-2-1 分析概要 VTR画面上によるカウントおよび追跡によって得られたデータをも
とに、朝昼夜の時間帯別の比較をし、また交通量、改札機ごとの利用 率、改札機ごとの選択率を出して出札利用者の行動特性を分析する。
■サンプルとした時間帯 (1)朝昼夜の時間帯サンプル 朝(7:30 ∼ 9:30)昼(11:30 ∼ 13:00)夜(17:15∼19:15)それ ぞれ2時間ずつのVTR中から各時間帯を代表とするサンプルとし て以下の各 1 0分間を抽出した。 朝 a 8:15:00 ∼ 8:25:00
昼 a 13:15:00 ∼ 13:25:00
夜 a 18:15:00 ∼ 18:25:00
以降、この朝昼夜の時間帯をそれぞれ朝 a 、昼 a、夜 a とする。
(2)朝の時間帯のサンプル 朝(7:30 ∼ 9:30)の2 時間のVTR中から混雑の度合による比較 等を行うために違いがあると思われる以下の各1分間を抽出した。
朝1 7 : 28 :30 ∼ 7 : 29 :30
朝2 7 : 47 :40 ∼ 7 : 48 :40
朝3 7 : 52 :35 ∼ 7 : 53 :35
以降、これを早い時間帯から順に朝1、朝2、朝3とする。
早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
29
(3)昼の時間帯のサンプル 昼(11:30 ∼13:00) の2時間のVTR中から混雑の度合による比較 等を行うために違いがあると思われる以下の各 1 分間を抽出した。
昼1 12 :29 :50 ∼ 12 :30 :50
昼2 12 :30 :50 ∼ 12 :30 :50
昼3 13 :09 :00 ∼ 13 :10 :00
昼4 13 :57 :00 ∼ 13 :58 :00
以降、これを早い時間帯から順に昼1、昼2、昼3、昼4とする。
(4)夜の時間帯のサンプル 夜(17:15 ∼19:15)の 2時間の VTR中から混雑の度合による比 較 等を行うために違いがある思われる以下の各 1 分間を抽出した。
夜1 17 :15 :45 ∼ 17 :16 :45
夜2 17 :18 :00 ∼ 18 :19 :00
夜3 18 :41 :45 ∼ 18 :42 :45
夜4 18 :47 :10 ∼ 18 :48 :10
以降、これを早い時間帯から順に夜1、夜2、夜3、夜4とする。
なお、それぞれの時間帯における以上の10分間および1分間を 抽出する際には、故障中の改札機がなるべく少ない(あるいはない) 時間であるという点に留意した。
早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
30
■領域の決定 (図 3-2-1) 改札内と改札機を分析の便宜上、以下のような領域に分けた。 A:13 , 14番線ホーム(改札に最も近いホーム)の北側の階段 B:コンコース北側半分弱 C:コンコース南側半分強 D:13 , 14番線ホーム(改札に最も近いホーム)の南側の階段 出札 a:25∼26番の改札機 出札 b:1∼14番の改札機 入札 :15∼24番の改札機
↓ BとCの領域分けは、入札改札の中心からコンコースの 直進方向に平行な線を引いて決定した
C B D A
26 25 24 23 22 21201918 17161514 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
出札 a 入札
出札 b
図3-2-1 新宿駅西口模式図
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31
■言葉の定義 以降の分析で使用する言葉の定義を行う。 (1)断面交通量 領域別出札断面交通量: ある一定時間(1分間)において、あらかじめ決めた断面(A、 B、C、D)をそれぞれ通過した出札利用者人数。 出札断面交通量: ある一定時間(1分間)において、あらかじめ決められた断面 (A、B、C、D)を通過したそれぞれの出札利用者人数をすべて合計 した人数。 入札断面交通量: ある一定時間(1分間)において改札を入札してきたすべての 入札利用者数。 全体断面交通量: ある一定時間(1分間)における出札交通量と入札交通量を総 合した利用者数。
(2)領域別出札交通量比率(%) 出札断面交通量に対するある領域の領域別出札交通量の占める 割合。
(3)改札機利用率(%) ある一定時間において、出札利用者全員に対するそれぞれの出 札専用改札機が利用された人数の割合。
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32
(4)近遠方改札機選択率(%) A・Bを起点として出札 bの改札機を利用した場合、C・D を起 点として出札aの改札機を利用した場合を遠方改札機を選択した とし、逆にA・Bを起点として出札aの改札機を利用した場合、C・ D を起点として出札bの改札機を利用した場合を近方改札機を選 択したとしたときの割合。
図3-2-2 近遠方改札機選択率説明図
■相関係数について 入札交通量と B、C の断面交通量との関係および出札、入札、全体 交通量と改札機選択率との関係を表すため、相関係数を用いる。 相関係数の評価は以下の通りとする。 表3-2-1 相関係数の評価
相関係数 r
評価
0.0≦ r ≦0.2 0.2≦ r ≦0.4 0.4≦ r ≦0.7 0.7≦ r ≦1.0
ほとんど相関がない やや相関がある かなり相関がある 強い相関がある
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33
3-2-2 断面交通量 ■出札断面交通量 出札者による混雑の度合をはかるために、1分間のサンプル時間ご とにあらかじめ決めた断面(A、B、C、D)を通過した出札者数(時 間内に出札をしようとして通過した者を指す)をそれぞれ数え、また その時間ごとに合計人数を出した。以降、この合計人数を全体出札断 面交通量として扱う。さらに、それらの平均をそれぞれ朝昼夜の時間 帯ごとに出し、表にまとめた。 (表 3-2-2) 表3-2-2 サンプル時間別領域別出札断面交通量(人/分) サンプル時間帯
A
B
C
D
全体
朝1(07:28:30∼07:29:30)
0
30
27
12
69
朝2(07:47:40∼07:48:40)
35
50
100
81
266
朝3(07:52:35∼07:53:35)
66
51
78
88
283
朝の平均出札断面交通量
34
44
68
60
206
昼1(12:29:50∼12:30:50)
0
37
53
3
93
昼2(12:30:50∼12:31:50)
26
42
117
76
261
昼3(13:09:00∼13:10:00)
21
34
116
68
239
昼4(13:57:00∼13:58:00)
5
37
107
9
158
昼の平均出札断面交通量
13
38
98
39
188
夜1(17:15:45∼17:16:45)
18
14
70
47
149
夜2(17:18:00∼17:19:00)
23
19
56
40
138
夜3(18:41:45∼18:42:45)
48
12
44
130
234
夜4(18:47:10∼18:48:10)
35
22
74
54
185
夜の平均出札断面交通量
31
17
61
68
177
表3-2-2より、朝昼夜の全体の平均出札断面交通量を比較すると、朝 が最も出札者が多いことがわかる。
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34
■領域別出札断面交通量 電車の主要な到着直後か否かを判断すべく、 サンプル時間ごとにA、 B、C、D の出札断面交通量の比率をグラフに示した。
朝1
朝2
朝3
A
17% 0%
13% 30%
D B
D
44%
C
23%
31%
A B 19% C
39%
B
C
18%
28%
38%
昼1
A
D
昼2
昼3
昼4
A
A
0%
10%
D 3%
57%
29% B
C
40%
D
A
B
16%
9%
28% D
夜2 12%
D
A
B 9%
C
D
B 14% C
47%
40%
68%
夜3
夜4 21%
A
A
55%
23% B
C
17%
29%
3%
14%
49%
45%
32%
B
C
C
夜1
A
D 6%
D
B
5%
C
19%
19%
29%
A
D
B 12% C
40%
図3-2-3 サンプル時間ごとの領域別出札断面交通量比率(%)
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35
A、D の出札断面交通量の比率が比較的大きい際には、改札に一番 近い13、14番線(山手線、総武線)の電車が到着した直後である と予想できる。また、B、Cの出札断面交通量の比率が大きい際には、 その他の(コンコース奥の1∼12番線)ホームの電車が到着した後 であると予想できる。 図 3-2-2 より、いくつかの状況パターンに分類することができる。
・朝1、昼1、昼4: A の出札断面交通量の比率、D の出札断面交通量がいずれも他の 時間に比べ極端に小さい。つまり、改札に一番近い13、14番 線ホームの電車到着直前、あるいは到着後しばらく時間が経った時 と思われる。 ・朝3: 他の時間に比べてA、B、C、Dの出札断面交通量の比率にあまり 差がみられない。これは、13、14番線ホームからもその他の(コ ンコース奥の)ホームからも同じように出札者がきている状況とい える。 ・夜3: Dの出札断面交通量が他の時間では大きくても32%以下である のに対し、夜3のDの割合は全体の55%を占めている。Aの出札 断面交通量の比率もサンプル時間内では2番目に多い21%という 割合を占めている。これは13、14番線ホームの電車から降車し た出札者の流れの非常に大の時であるといえる。
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36
・朝2、昼2、昼3、夜1、夜2、夜4: いずれの時間もB、Cの出札断面交通量の比率がA、Dの出札交通 量よりやや大で、最も多いパターンである。どの(朝、昼、夜の)時 間帯にもこのパターンがあり、全体の出札者の大小はあれど、どち らからも極端な出札者の流れがない、平常の状態であるといえる。 ■入札断面交通量 入札者による混雑の度合をサンプル時間で比較するために、その時 間ごとにその時間内で入札した入札利用者数を数え、その合計人数を 出した。またそれらの平均を朝昼夜時間帯ごとに出し、それらの数を 表にまとめた。 (表 3-2-3) 表3-2-3 サンプル時間別入札断面交通量 サンプル時間帯
入札全体(人/分)
朝1(07:28:30∼07:29:30)
153
朝2(07:47:40∼07:48:40) 朝3(07:52:35∼07:53:35)
167 259
朝の平均入札断面交通量
193
昼1(12:29:50∼12:30:50)
159
昼2(12:30:50∼12:31:50) 昼3(13:09:00∼13:10:00)
183 168
昼4(13:57:00∼13:58:00)
140
昼の平均入札断面交通量
163
夜1(17:15:45∼17:16:45) 夜2(17:18:00∼17:19:00)
262 238
夜3(18:41:45∼18:42:45)
307
夜4(18:47:10∼18:48:10)
248
夜の平均入札断面交通量
264
表3-2-3より、朝昼夜の全体の平均入札断面交通量を比較すると、こ の場合、夜が最も入札者が多いことがわかる。
早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
37
■全体交通量 1分間のサンプル時間ごとにその時間内における出札交通量と入札 交通量を合計し、表にまとめた。また、それを全体断面交通量とした。 さらに、朝昼夜時間帯ごとにその平均を出した。
表3-2-4 時間帯別全体断面交通量 サンプル時間帯 朝1(07:28:30∼07:29:30) 朝2(07:47:40∼07:48:40) 朝3(07:52:35∼07:53:35) 朝の平均全体断面交通量 昼1(12:29:50∼12:30:50) 昼2(12:30:50∼12:31:50) 昼3(13:09:00∼13:10:00) 昼4(13:57:00∼13:58:00) 昼の平均全体断面交通量 夜1(17:15:45∼17:16:45) 夜2(17:18:00∼17:19:00) 夜3(18:41:45∼18:42:45) 夜4(18:47:10∼18:48:10) 夜の平均全体断面交通量
合計(人/分) 222 433 542 399 252 444 407 298 350 411 376 541 433 440
表 3-2-4 より、朝昼夜の平均全体断面交通量を比較すると、この場 合、昼が最も全体断面交通量が少ないことが分かる。
早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
38
3-2-3 改札機利用率からみる行動特性 (1)時間帯(朝、昼、夜)別の10分間の改札機利用率 朝昼夜の時間帯の改札機利用率を比較するため、朝a、昼a、夜aの サンプル時間ごとに10分間、出札利用人数を改札機番号1∼16、 25∼26の改札機それぞれについて調べた。
8:15-8:25 30
25
20
15
出札専用改札機 出入札兼用改札機
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-4 朝a の改札機利用率(%) 13:15-13:25 30
25
20
15
10
出札専用改札機 出入札兼用改札機
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-5 昼a 改札機利用率(%) 18:15-18:25 30
25
20
15
10
出札専用改札機 出入札兼用改札機
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-6 夜a 改札機利用率(%)
早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
39
3つの時間帯における共通条件として、以下のことがいえる。 ・ 山手線、中央線等の主要な電車が到着する時間をはさんでい ること。 ・ 朝夜は通勤通学のラッシュ時間枠で、その時間帯の特徴がわ かる時間枠であること。
図3-2-5、図3-2-6、図3-2-7のグラフで各時間帯に共通していえるこ とはグラフ上で1∼14に2つの山ができることである。 これは端の改札機(1∼4、25∼26)は A、B からの出札者に よって利用されやすく、中程の改札機(11∼14)はコンコース (C、D)からの出札者によって利用されやすいためと考えられる。 また15∼16は出入札兼用改札機であるが、夜の10分間では出 札として利用されることがない。 (図 3-2-7) これは夜の時間帯は他の時間帯に比べ入札者が多いため(表3-2-3) 入札用として利用されてしまうからと考えられる。
図3-2-7 改札機利用率説明図
早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
40
(2)朝の時間帯における1分間の改札機利用率 朝の時間帯内の混雑の度合等による違いでの改札機利用率を比較す るため、朝1、朝2、朝3のサンプル時間ごとに1分間、出札利用人 数を改札機番号1∼14、 25∼26の改札機それぞれについて調べ た。 072830
30
25
割合(%)
20
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-8 朝1の改札機利用率 (%) 074740 30
25
割合(%)
20
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12
13 14
15 16 17
18 19 20
21 22 23
24 25 26
図3-2-9 朝2の改札機利用率(%) 075235 30
25
割合(%)
20
15
朝1 7:28:30 ∼ 7:29:30 朝2 7:47:40∼7:48:40 朝3 7:52:35 ∼7:53:35
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12
13 14
15 16 17
18 19 20
21 22 23
24 25 26
図3-2-10 朝3の改札機利用率(%)
早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
41
(3)昼の時間帯における1分間の改札機利用率 昼の時間帯内の混雑の度合等による違いでの改札機利用率を比較す るため、昼1、昼2、昼3のサンプル時間ごとに1分間、出札利用人 数を改札機番号1∼14、25∼26の改札機それぞれについて調べ た。 122950
30
25
割合(%)
20
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11
12
13
14
15
16 17
18
19
20
21 22
23
24
25
26
図3-2-11 昼1の改札機利用率(%) 123050 30
25
20
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-12 昼2の改札機利用率(%) 130900 30
25
20
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-13 昼3の改札機利用率(%) 135700 30
25
20
昼112:29:50∼12:30:50 昼212:30:50 ∼ 12:30:50 昼313:09:00 ∼13:10:00 昼413:57:00∼ 13:58:00
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-14 昼4の改札機利用率(%) 早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
42
(4)夜の時間帯における改札機利用率 夜の時間帯内の混雑の度合等による違いでの改札機利用率を比較す るため、夜1、夜2、夜3のサンプル時間ごとに1分間、出札利用人 数を改札機番号1∼14、25∼26の改札機それぞれについて調べ た。 171545 30
25
割合(%)
20
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-15 夜1の改札機利用率(%) 171800 30
25
割合(%)
20
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
改札機
図3-2-16 夜2の改札機利用率(%) 184145 30
25
割合(%)
20
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-17 夜3の改札機利用率(%) 184710 30
25
夜117:15:45∼ 17:16:45 夜217:18:00∼ 18:19:00 夜318:41:45∼18:42:45 夜418:47:10 ∼ 18:48:10
割合(%)
20
15
10
5
0 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
図3-2-18 夜4の改札機利用率(%) 早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
43
朝1は特定の改札機の利用率が高く、朝2は凹型(出札bの中央の 改札機の利用率が低く、端の改札機の利用率が高い)のグラフ、朝3 は平均型(どの改札もほぼ同様の利用率)のグラフとなっている。 昼1は特定の改札機の利用率が高く、昼2、昼3はやや凹型の平均 型のグラフ、昼4は中程(10∼14)の利用率が特に高いグラフと なっている。夜1、夜2、夜4は凹型のグラフ、夜3は平均型のグラ フとなっている。
(平均型の場合) (凹型の場合)
図3-2-19 グラフの型による改札機利用状況 ■全体断面交通量との関係 同じ時間帯でこのような違いがみられるのは、ひとつは流動の量等 の周辺状況の違いによると考えられる。そこで全体断面交通量と改札 利用率がどのように関係しているのかを調べる。 ここで、昼の時間帯を例にとってみることにする。表 3-2-4 より昼 1、昼4、昼2と昼3の順に全体断面交通量が大であることを考慮す ると、全体断面交通量が大である程利用率は均等に近くなるのではな いかと考えられる。 このことから、全体断面交通量と改札利用率の平均化の関係に着目 してその関係を明らかにする。
早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
44
すべて均一に利用された場合の各改札機の利用率を求めると、16 機の改札が出札に利用されているので、100 / 16 = 6 . 25(%) となる。この値と各時間帯の各改札機の利用率との差を求め、それを 平均した値を改札機利用率のばらつき度とし、断面交通量と改札機利 用率の関係を下図に示す。 改札機利用率 8 のばらつき度 6
4
2
0 200
全体断面 交通量(人/分) 図3-2-20 全体断面交通量と改札機利用率の関係1 300
400
全体断面 交通量(人/分) 800
500
600
改札機利用率 のばらつき度 10
全体断面交通量 改札機利用率のばらつき度
8
600 6 400 4 200 2
0
0
図3-2-21 全体断面交通量と改札機利用率の関係2
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45
図3-2-21は全体断面交通量を大きい順に並び換え、その増加と利用 率のばらつき度との関係をみた。 図3-2-20、21より、全体断面交通量が増加すると改札機利用率のば らつき度が小さくなることがわかる。また、これらの相関係数を求め た結果、0.86になり、強い相関関係にあることがわかる。ゆえに、 改札付近の混雑度が増すにつれて改札機利用率が平均化するといえる。 しかしこれらについては、利用者が少人数の際に求めた利用率の正 確性が、利用者が多人数のときに比べて低くなる、という要因も多少 関係してくるので、さらに多くのデータを収集してその関係性を明ら かにしていく必要がある。
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46
3-2-4 領域別の改札機利用者数 領域ごとの出札専用改札機の利用状態を知るため、それぞれの1分 間のサンプル時間内で出札専用改札機を利用した人があらかじめ決め たどの場所(A、B、C、D)を通過したのかを VTR 画面上で追跡し、 改札機別、時間別、領域別に分けてまとめる。
C
B
D
A 26 25
出
14 - 1
入
出
(1)A からの出札専用改札機利用者数 1分間にAを通過して出札した人をサンプル時間ごと、改札機ごと に数え、時間別に合計を出した。 (表 3-2-5)
表3-2-5 A からの出札改札機ごとの利用人数 A
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15∼24(入札) 25 26 計
朝1 朝2 朝3 昼1 昼2 昼3 昼4 夜1 夜2 夜3 夜4
1
1 1
1 1
1
1 2
2
1 1
1
1 1 1
1
1 1
2 2
0 13 26 44 24 29 56 0 5 16 23 2 16 20 1 3 9 4 14 12
9 6 26 12
18 11 45 28
表3-2-5より、このサンプル時間のとき、Aからの出札者は7番から 26番にわたり出札専用改札機を利用することが分かる。
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47
また、すべての出札専用改札機のうち26番のみが、Aからの出札 者が0人である朝1、昼1を除いた他のすべてのサンプル時間におい て利用されていることが分かる。この改札機はAから出札に向かう際 に最も近くにある改札機である。よって、これは最短時間(あるいは 最短距離)で出札しようとする人がどんな場合においても存在し、そ の改札機を利用すると考えられる。 昼4の場合、合計で3人しかAから出札した人がいないにもかかわ らず、比較的遠くの7番、12番を利用した人が存在する。これは表 3-2-4より全体断面交通量が少なめであることを考えると、 目的地へ向 かうのにその改札機を利用した方が近いと考え、改札内を横に移動す るのも困難ではなかったために、 そのような行動をとったと思われる。 (図 3-2-21 )
図3-2-21 A からの改札機利用模式図
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48
(2)B からの出札専用改札機利用者数 1分間にBを通過して出札した人をサンプル時間ごと、改札機ごと に数え、時間別に合計を出した。 (表 3-2-6) 表3-2-6 B からの改札機ごとの利用人数 B
1
2
3
4
5
6
7
朝1 朝2 朝3
8
9 10 11 12 13 14 15∼24(入札) 25 26 計 1 3
1
昼1 昼2 昼3 昼4 夜1 夜2 夜3 夜4
1
1
1
1
2 2
14 6 20 15 6 24 8 2 17
3
1 5 2 3
17 22 16 14
8 7 14 16
26 37 32 36
7 14 8 14
3 12 3 1
14 27 12 17
1
1
2
1 1 1
1
表3-2-6より、これらのサンプル時間のとき、Bからの出札者は7番 から26番にわたり出札専用改札機を利用することが分かる。 また、すべての出札専用改札機のうち25番、26番がすべてのサ ンプル時間において利用されていることが分かる。この改札機はBか ら出札専用改札機に向かって直進した際に最短時間(あるいは最短距 離)で利用できる改札機である。よって、これは最短時間(あるいは 最短距離)で出札しようとする人がどんな場合においても存在し、そ の改札機を利用すると考えられる。 また、Aから出札した人と同様に比較的遠くの7番から14番を利 用した人が存在する。これは以下のような理由が考えられる。 ・目的地へ向かうのにその改札機を利用した方が近いと考え改札内 を横に移動するのも困難ではない状況であったために利用した。 ・改札内に存在するひとのの流れや溜まり、改札機の利用状態、改 札機の故障等の周囲の要因に影響を受け、意志に反してその改札 機が利用できなかった。 (図 3-2-21) 早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
49
図3-2-22 B からの改札機利用模式図
(3)C からの出札専用改札機利用者数 1分間にCを通過して出札した人をサンプル時間ごと、改札機ごと に数え、時間別に合計を出した。 (表 3-2-7)
表3-2-7 C からの改札機ごとの利用人数 C
1
2
3
4
朝1 朝2 朝3 昼1 昼2 昼3 昼4 夜1 夜2 夜3 夜4
5
6
1
1
7
8
9 10 11 12 13 14 15∼24(入札) 25 26 計
1 2
1 3
1 7 3
1 2 2 4 13 6 11 12 15 19 2 11 9 8 8
1
2
1
2
1 1 1 3 9 9 6 10 15 5 5 18
5 2 2
1 4 2 2
3 8 1 4
1
2 10 17 23
10 22 17 12
13 19 19 13
9 21 17 17
6 6 8 11 8 11 14 20 3 5 9 11 6 5 8 11
14 17 11 14
10 13 11 10
2 3
3 1 1 1 3
27 79 41 37 1 100 101 98 61 101 58 1 63
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表3-2-6より、このサンプル時間のとき、Cからの出札者は4番から 26番にわたり出札専用改札機を利用することが分かる。 また、すべての出札専用改札機のうち9番から14番がすべてのサ ンプル時間において利用されていることが分かる。Cから出札専用改 札機に向かって直進した際に最短時間(あるいは最短距離)で利用で きる改札機は10番から14番である。よって、これは直進して最短 時間(あるいは最短距離)で出札しようとする人がどんな場合におい ても存在し、 その改札機を利用すると考えられる。9番の改札機は、 全 体の出札改札利用者が多いために10番から14番の改札機のみでは それらの人に対応できず、利用されたと考えられる。 また、それ例外の4番から8番、25番26番を利用した人につい ては以下のようなことが予想される。 ・目的地へ向かうのにその改札機を利用した方が近いと考え意識 的 に選んだ。 ・改札内に存在するひとの流れや溜まり、改札機の利用状態、改札 機の故障等の周囲の要因に影響を受け、意志に反してその改札機 が利用できなかった。 (図 3-2-23)
図3-2-23 C からの改札機利用模式図 早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
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(4)D からの出札専用改札機利用者数 1分間にDを通過して出札した人をサンプル時間ごと、改札機ごと に数え、時間別に合計を出した。 (表 3-2-8)
表3-2-8 D からの改札機ごとの利用人数 8
9 10 11 12 13 14 15∼24(入札) 25 26 計
朝1 4 1 4 1 朝2 19 12 19 9 朝3 16 13 16 9
D
1 1 5 11 11 3 8 10 11 3
12 95 88
昼1 1 昼2 13 9 12 7 昼3 2 7 13 8 昼4 2 3
7 8
夜1 夜2 夜3 夜4
1
5 12 7 8
2
8 9 18 8
3
6 6 15 12
4
5
6
2 5 7 2
7
8 8 1
2 5 5 3 6 2 6 12 11 13 16 7 6 5 5
6 2 1
4 2
1
1
3 68 61 10
1 2
4
1
2 1 5 12 5 1 1
7
1 3
1 2 1
37 48 121 54
表3-2-8より、このサンプル時間のとき、Dからの出札者は1番から 13番にわたり出札専用改札機を利用することが分かる。 また、すべての出札専用改札機のうち3番と6番がすべてのサンプ ル時間において利用されていることが分かる。Dから出札専用改札機 に向かう際に最も近くにある改札機は1番2番である。しかし、それ は利用されないのに3番、6番がどの時間でも利用される理由として は、基本的にはB、C、Dからの出札者と同様に最短時間(あるいは最 短距離)で出札しようとする人がどんな場合においても存在し、最も 近い改札機を利用すると考えられるが、1番2番は使いづらいために 利用されなかったのではないかと考えられる。
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52
また、Dから遠い改札を利用した人の理由としては以下のようなこ とが予測される。 ・目的地へ向かうのにその改札機を利用した方が近いと考え意識的 に選んだ。 ・改札内に存在するひとのの流れや溜まり、改札機の利用状態、改 札機の故障等の周囲の要因に影響を受け、意志に反してその改札 機が利用できなかった。 (図 3-2-24)
図3-2-24 Dからの改札機利用模式図
■まとめ 以上のことからそれぞれの領域を出発した人は周囲の人の流れ等に 影響されて利用する改札機を選択する傾向があると考え、以降でそれ らの関係を明らかにしていく。
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53
3-2-4 改札機選択率からみる行動特性
出札a
出札b
朝・昼・夜の時間帯の違い、出札断面交通量、入札断面交通量の違 いによる改札機の選択行動の特性を探るべく、改札機選択率を求め、 それらの関係性を明らかにする。 ここではA・B を起点として出札bの改札機を利用した場合、C・D を起点として出札aの改札機を利用した場合を遠方改札機を選択した とする。逆に A・Bを起点として出札 aの改札機を利用した場合、C・ D を起点として出札bの改札機を利用した場合を近方改札機を選択し たとする。その比率を近遠方改札機選択率として以下で用いる。
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54
■ A + B の近遠方改札機選択率
出札a
出札b
それぞれのサンプル時間の1分間の中でAとBを通過してそれぞれ の改札機を利用した人数を出札a、出札bに分けて合計し、時間内にA あるいは B を通過して出札した人の総人数を全体として、比率(%) を出した。 表3-3-9 朝におけるA +B の近遠方改札機選択率(%) 出札a(近) 出札b(遠)
朝1 100.0 0.0
朝2 88.2 11.8
朝3 86.3 13.7
全体 88.8 11.2
表3-3-10 昼におけるA +B の近遠方改札機選択率(%) 出札a(近) 出札b(遠)
昼1 96.2 3.8
昼2 83.3 16.7
昼3 92.3 7.7
昼4 79.5 20.5
全体 87.0 13.0
表3-3-11 夜におけるA+ B の近遠方改札機選択率(%) 出札a(近) 出札b(遠)
夜1 87.5 12.5
夜2 94.7 5.3
夜3 89.5 10.5
夜4 86.7 13.3
全体 89.5 10.5
(1)時間帯ごとの比較 朝、昼、夜の選択率を全体で比較するとどの時間帯もほぼ同じくら いの割合であることがわかる。よって、A+Bの近遠方改札機選択率 は時間帯で違いがあまりなく、どの時間帯でも遠方の改札機を選択す る人の存在が確認できる。 しかし、 朝昼夜共にサンプル時間ごとにみていくとそれぞれに極端 な差がみられ、出札b(遠方)の選択率の最大と最小では朝は13.7 %、昼は16.7%、夜は8.0%の差がある。この差は電車到着時か 否か等の違いによる交通量の変化によるものと思われる。 他の時間帯に比べて夜の選択率にあまり差がみられなかったのは、 他の時間帯程に混雑度の差等の選択率に影響を与えると思われる要因 の大きな違いがないためと考えられる。
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55
(2)出札交通量との関係
出札a
出札b
出札者が増加すると、出札a(近方)には2個しか改札機がないため、 選択の幅の広い14個の改札機が並ぶ出札 b(遠方)へ向かう人が増 えるのではないかと予測をたてた。 そこで、出札交通量とA+Bの出札bの選択率との相関関係を調べ た。 (図 3-2-25)その結果、相関係数は+0 .57で、かなりの正の相 関関係がある(表 3-2-1)といえる。
25
A+Bの出札b選択率(%)
20
15
10
5
0 50
100
150
200
250
300
出札交通量(人)
出札交通量(人/分)
図3-2-25 出札交通量−A+B の出札b選択率1
さらに、出札交通量とA+Bの出札bの選択率との関係性をより明 らかにするために、図 3-2-26 のようなグラフを作成した。
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56
出札a
出札b
出札交通量(人/分) A+Bの出札b選択率(%)
400
25.0 出札交通量 A+Bの出札b選択率
300
20.0 15.0
200 10.0 100
5.0
0
0.0 図3-2-26 出札交通量ーA+B の出札b選択率2
これらのことからわかるように、 出札交通量の増加にともなってA + B の遠方改札機(出札 b)選択率は増加すると考えられる。 これは出札交通量が増加すると出札aに改札機の処理能力以上の出 札者が殺到し、 たまりが形成されるためにそのたまりを避けようとす る出札者が遠い方の出札 b に向かうためと考えられる。 (図 3-2-27)
出札交通量=大のとき 出札交通量=小のとき
図3-2-27 出札b選択率模式図
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57
(3)入札交通量との関係
出札a
出札b
入札者が増加すると出札b(遠方)の改札機が視界に入らなくなった り、出札 b(遠方)の改札機へ向かおうとしても入札者の流れによっ て行く手を妨げられたりする可能性が高くなり、出札 b(遠方)改札 機を選択する人が減少するのではないかと予測した。 そこで、入札交通量とA+Bの出札bの選択率との相関関係を調べ る。 (図 3-2-28) その結果、相関係数は+0.11で、両者にはほとんど相関関係はな い(表3-2-1)といえる。つまり、入札交通量の増減はA+Bの遠方改 札機選択率にほとんど影響がないと思われる。
25
A+Bの出札b選択率(%)
20
15
10
5
0 100
150
200 250 入札交通量(人)
300
350
入札交通量(人/分)
図3-2-28 入札交通量ーA+B の出札b選択率
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58
出札a
(4)全体交通量との関係
出札b
出札入札に関わらず、 全体的に交通量が増加すると自らの意志とは 関係なく、全体的な大きな流れに左右されて改札機を選ぶのではない かと考え、その両者の関係を探るべく、全体交通量と A + Bの出札 b の選択率との相関関係を調べた。 (図 3-2-29) その結果、相関係数は+0.46で、両者はかなりの正の相関関係に ある(表 3-2-1)といえる。
25
20
15
10
5
0 200
300
400
500
600
全体交通量(人/分)
図3-2-29 全体交通量ーA+B の出札b選択率
さらに、全体交通量とA+Bの出札bの選択率との関係性をより明 らかにするために、図 3-2-30 のようなグラフを作成した。
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出札a
出札b
全体交通量(人/分) A+Bの出札b選択率(%)
800
25.0 全体交通量 A+Bの出札b選択率
600
20.0 15.0
400 10.0 200
5.0
0
0.0 図3-2-30 全体交通量ーA+B の出札b選択率2
これらのことからわかるように、全体交通量の増加にともなってA + B の遠方改札機(出札 b)選択率は増加すると考えられる。 これは今回の調査で抽出したサンプルにおける全体交通量に対する 出札交通量の割合の平均が0.5であることから、 前述の出札交通量が 増加による出札 b 選択率の増加の場合と同じ要因が考えられる。 もしくは、そういった混雑度が増すにつれてひどくなると予想され る流動との衝突からくる歩きにくさにも関わらず、遠距離にある改札 を選択する利用者が存在していると考えられる。
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60
■ C + D の近遠方改札機選択率
出札a
出札b
それぞれのサンプル時間の1分間の中でCとDを通過してそれぞれ の改札機を利用した人数を出札a、出札bに分けて合計し、時間内にC あるいは D を通過して出札した人の総人数を全体として、比率(%) を出した。 表3-3-12 朝におけるC+ D の近遠方改札機選択率(%) 出札a(遠) 出札b(近)
朝1 5.1 94.9
朝2 1.8 98.2
朝3 0.0 100.0
全体 1.5 98.5
表3-3-13 昼におけるC+ D の近遠方改札機選択率(%) 出札a(遠) 出札b(近)
昼1 0.0 100.0
昼2 2.4 97.6
昼3 0.0 100.0
昼4 0.9 99.1
全体 1.0 99.0
表3-3-14 夜におけるC+ D の近遠方改札機選択率(%) 出札a(遠) 出札b(近)
夜1 1.0 99.0
夜2 0.7 99.3
夜3 1.7 98.3
夜4 0.9 99.1
全体 1.1 98.9
(1)時間比較 朝、昼、夜の選択率を全体で比較するとどの時間帯もほぼ同じくら いの割合である。よって、C+Dの近遠方改札機選択率は時間帯で違 いがあまりなく、どの時間帯でも遠方の改札機を選択する人の存在が 確認できる。 しかし、その割合は極めて少なく、最大でも朝1の5 . 1%で、朝 3、昼1、昼3では0%である。A +Bの遠方改札機選択率に比べて C + D の遠方改札機選択率が少ないのはひとつには C、D にとって遠 い側の出札 a には改札機が2個しかないが近い側の出札 b には14個 の改札機があり、選択の幅が広いことがあげられる。
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61
(2)出札交通量との関係
出札a
出札b
出札交通量とC+Dの出札aの選択率に影響を与えていると考え、両 者の相関関係を調べる。 (図 3-2-31) すると、相関係数は−0.30で、やや負の相関関係がある(表3-21)といえる。つまり、出札交通量の増加にともなって C + D の遠方 改札機選択率はやや減少すると予測ができる。 これは出札交通量が増加すると出札aに改札機の処理能力以上の出 札者が殺到し、溜まりが形成されるために、敢えてそのような出札 a を選択しようとする人が減るためと思われる。
6
C+Dの出札a選択率(%)
5
4
3
2
1
0 50
100
150
200
250
300
出札交通量(人)
出札交通量(人/分)
図3-2-31 出札交通量ーC+D の出札a 選択率
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62
出札a
(3)入札交通量との関係
出札b
入札者が増加すると出札a(遠方)の改札機が視界に入らなくなった り、出札a(遠方)の改札機へ向かおうとしても入札者の流れによって 行く手を妨げられたりする可能性が高くなり、出札a(遠方)改札機を 選択する人が減少するのではないかと予測した。そこで、入札交通量 と C + D の出札 a の選択率との相関関係を調べる。 (図 3-2-32) すると、相関係数は−0.24で、やや負の相関関係がある(表3-21)といえる。つまり、入札交通量の増加にともなって C + D の遠方 改札機選択率はやや減少すると予測ができる。 これは入札交通量が増加すると入札者の流れが大になり、出札 aに 向かうのが困難になるためと思われる。
6
C+Dの改札a選択率(%)
5
4
3
2
1
0 100
150
200
250
300
350
入札交通量(人)
入札交通量(人/分)
図3-2-32 入札交通量ーC+D の出札a 選択率
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63
出札a
(4)全体交通量との関係
出札b
全体交通量とC+Dの出札aの選択率に影響を与えていると考え、両 者の相関関係を調べる。 (図 3-2-33) すると、相関係数は−0.34で、やや負の相関関係がある(表3-21)といえる。つまり、全体交通量が増加すると C + D の遠方改札機 選択率は減少すると予測できる。
6
C+Dの出札a選択率(%)
5
4
3
2
1
0 0
100
200
300
400
500
600
全体交通量(人)
全体交通量(人/分)
図3-2-33 全体交通量ーC+D の出札a 選択率 ■まとめ 改札機の選択の際には、無意識に選択する場合の他に、交通量が増 加するにつれ、遠方の改札機を選択する人が減少することから、交通 量の影響を受けて利用したいと思った改札機が利用できずに他の改札 機を選択する場合と、交通量が小のときに遠方の改札機を選択した人 が存在することから、交通量の変化に関わらず目的地に近いと思われ る改札機を意識的に選ぶ場合があることがわかる。 早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
64
4 結論
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65
4-1 まとめ
■歩行速度 ・群集密度との関係 今回調査地としたJR新宿駅のサンプル時間内では、歩行速度と群集 密度は比例関係にあることが分かった。この要因は群集密度の増加に より、改札付近において流動の滞留が起ころためと考えられる。
・朝昼夜の時間帯比較 朝昼夜の時間別の歩行速度のヒストグラムおよび分散値によって、 朝夜よりも昼の歩行速度の方が数値のばらつき度が大きいことが分 かった。 今回の調査対象地としたJR新宿駅のような通勤通学に利用さ れる駅では特に、朝夜のラッシュ時と昼の平常時で特性の違いが大き いと思われる。この違いは日常的に改札を利用している人とそうでな い人の歩行特性の違いといえる。
・健常者と高齢者の比較 両者の速度を比較することによって、同じ改札内でも、健常者に比 べ高齢者にとって改札進入という行為は負担がかかるものであるとい うことが速度という数値を通して明らかにすることができた。改札前 は人の流れの交錯が起こりやすい場所であり、周囲にいる人を早めに 判断してうまくよけることのできない高齢者にとっては精神的にも肉 体的にも極めて負担のかかる空間だといえる。
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66
■断面交通量 ・出札断面交通量について 朝昼夜の出札断面交通量の平均を比較することから、今回調査地と したJR新宿駅のサンプル時間内においては、朝>昼>夜の順に小にな ることが分かった。
・領域別出札断面交通量について 領域別出札断面交通量を出すことによって、領域ごとの出札交通量 の比から、主に電車到着状況のおおまかな分類分けができた。今後 データを増やしていけば、更に詳しく領域別出札断面交通量と電車到 着状況との関係を突き詰めていけると思われる。
・入札断面交通量について 今回調査地としたJR新宿駅のサンプル時間内においては、入札の変 化があまりみられなかったが、朝昼夜の入札断面交通量の平均を比較 すると夜>朝>昼の順に小になることが分かった。
・全体断面交通量について 今回調査地としたJR新宿駅のサンプル時間内においては、夜>朝> 昼の順に全体断面交通量の平均は小になる。朝、夜はともに通勤通学 のラッシュ時間を選んだが、夜のほうが朝よりも全体断面交通量が大 となった。
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■改札機利用率 改札機利用率を調べた結果、改札利用者は混雑してくると改札機を 一様に利用するようになるが、比較的混雑の少ない場合においては特 定の改札機の利用率が高まることが示された。これはつまり、混雑時 はほとんどの改札機は有効に機能しているが、非混雑時には使われな い改札機が多くあるということである。
■改札利用状況 いくつかの領域に分けて改札機ごとの利用人数を調べた結果、最短 時間(あるいは最短距離)で出札しようとする人、自らの意志に反し て出札する改札機を選んだ人、利用する改札機を意識的に選択してい る人が存在することが分かった。
■改札選択行動 ・時間帯比較 今回調査地としたJR新宿駅のサンプル時間内では、朝昼夜の時間帯 による行動の違いははっきりとはみられなかった。しかし、同時間帯 内のサンプル時間ごとに比較をした場合、近遠方改札機選択率には大 きな差がみられた。
・交通量と遠方改札機選択の関係 相関係数の値により、改札利用者の断面交通量がA+Bの遠方改札機 選択には影響すると確認された。しかし、C+Dの遠方改札機選択との 間にはあまり関係性がみられなかった。この違いはA+Bの近方改札機 は2個と少ないのに対し、C+Dの近方改札機は14個と比較的多いと いう違いによると思われる。
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4-2 今後の展望
今回は改札口における行動特性を明らかにする、ということが本質 的な目的だったにも関わらず、いくらかは新宿駅西口に特化したもの になっていると思われる。 ひとつにはデータの不足による分析不足が原因と思われる。 よって、より多くの駅の改札口の空間形態や特徴を捉え、さらに一般 的な改札口における行動特性を明らかにすることが今後の課題である。
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5 参考文献
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1)中裕一郎「交差流動の構造∼鉄道駅における旅客の交差流動に関 する研究(1)∼」 :日本建築学会論文報告集 258 号 2)中裕一郎「交差流動の観測と解析 その1観測と解析の方法」 :日 本建築学会大会学術講演概要集 E 分冊 3)古谷誠章他3名「多方向群集流動における交錯点の解消モデル その1 国鉄渋谷駅北口での観測と解析」 4)戸川喜久三氏・上原孝雄氏ら「混雑時における人間の歩行速度の 研究」 5)高木幹郎氏による「建築内における経路選択傾向」 6)原広司氏らによる「展示スペースにおける鑑賞動線の分析に関す る研究」 7)今井康博氏らによる「展示空間における観客行動に関する調査研 究」 8)樋口智幸・渡辺仁史他 4 名「駅における群衆密度変動の時系列分 析」日本建築学会大会学術講演概要集 E 分冊 9)樋口智幸・渡辺仁史他 4 名「電車発着パルスからホームにおける 群衆密度波形を動出する 駅における群衆密度変動の時系列分析その 2」日本建築学会大会学術講演概要集 E 分冊 10)矢田章他3名 「駅構内における高齢者の行動特性-歩行速度と 経 路選択行動 -」 日本建築学会学術講演梗概集 11)日吉昭彦 「移動の情報統制 - 自動改札のメディア論」 成城大 学 学長章懸賞論文受賞論文 12)佐野友紀他3名「駅の改札口における群衆流動に関する研究 自 動改札と有人改札」 :日本建築学会大会学術講演概集 13)青木俊幸・大戸広道・他 3 名「鉄道駅における旅客流動に関す る 研究その 4 待ちの発生」 :日本建築学会大会学術講演概集 早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 1999年度卒業論文
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14)樋口智幸 「駅コンコースにおける人間流動の研究」 渡辺仁史 研 究室卒業論文 15)北野寧彦 「改札口の利用者数の予測手法に関する研究」 渡辺 仁 史研究室度卒業論文 16)小谷泰史「駅の改札口における人間流動に関する研究 自動改 札 と有人改札の比較」 渡辺仁史研究室卒業論文 17)玉井勝士「群集の相互作用に関する研究 - 進入角度による歩行 難 易度の変化」 渡辺仁史研究室卒業論文 18)佐藤英彰「駅空間における視覚障害者の歩行に関する研究 - 視 覚 障害者があたえる群集の歩行変化」 渡辺仁史研究室卒業論文
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おわりに
この論文を書き上げるにあたり、 調査にご協力してくださったJR 総研の青木さん、河合さん、薄田さん、何かと相談にのっていただい た渡辺研究室の諸先輩方、いろいろ協力してくれた卒論生の皆様、的 確なアドバイスをして下さった渡辺先生、そして様々な面において何 かと至らない私達を、最後まで面倒を見てくださった林田先生と担当 の玉井さん、佐藤さんに心より感謝します。
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