ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究 Actual Condition Survey on Activity Place of Heaven Artists
早稲田大学理工学部建築学科 京極 義昭
はじめに
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
■はじめに 都市におけるコミュニケーションの方法、あるいは情報の 伝達のあり方を考える時、空間や時間の制約からより自由にな ることが、現代社会が指向する一方向であるといってよい。す なわち人々は自分にとって必要な情報を、 いつでもどこでも やり取りできることを目指してきた。例えば今この瞬間に映画 を見たいと思えば、レンタルビデオやインターネット配信など により好きな映画を好きなだけ見ることができる。 ストリートパフォーマンスという「コミュニケーション」の あり方そのものは、そのような社会の流れとは対極にある。 ストリートパフォーマンスは場所、天候、気温、など多くの要 素に影響されやすく、変化するからである。同じ場所で行われ るパフォーマンスであっても、パフォーマーの体調や気分でパ フォーマンスは変化する。自分一人が見たいと思っても他に観 客がいなければ活気のあるパフォーマンスは体験できない。パ フォーマーと観客の身体のみを媒介に伝えられるゆえに、その 演技は生きものであり予測不可能である。しかし、だからこそ 人々はそこに感動を覚え、何かを期待するのではないか。 近年ストリートパフォーマンスが注目され、その価値を都市 に取り入れようとする動きが出てきた。このことが何を意味す るのかを考えようと、路上の劇空間として計画されつつある場 所を調べてきた。本研究が、今後ストリートパフォーマンスが 成熟した都市文化として発展し、認識されるための一助となる ことを期待する。
目次
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
■目次 はじめに 目次
1章 序論
1
1-1 研究目的
2
1-2 研究背景
3
1-3 用語の定義
6
1-4 研究概要
9
2章 ヘブンアーティスト制度
11
2-1 経緯
12
2-2 制度のしくみ
14
2-3 活動場所データベース
18
3章 研究結果
45
3-1 パフォーマーへのアンケート調査
46
3-1-1 アンケート内容
48
3-1-2 結果
51
3-1-3 分析
55
3-2 活動状況の分析
56
3-2-1 活動場所の利用状況
57
3-2-2 パフォーマーの活動状況
60
3-2-3 分析
62
3-3 活動実態調査
63
3-3-1 調査データ
65
3-3-2 観覧時間の分析
72
3-3-3 調査結果
73
3-3-4 分析
74
3-4 ヒアリング調査
75
3-4-1 ヘブンアーティスト事務局
76
3-4-2 大道芸プロデューサー
84
4章 考察・まとめ
88
4-1 考察
89
4-2 まとめ
93
4-3 展望
97
おわりに
98
参考文献
100
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1章 序論 1-1 研究目的 1-2 研究背景 1-3 用語の定義 1-4 研究概要
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1-1 研究目的
■1-1研究目的 東京都のヘブンアーティスト制度によりストリートパフォー マンスの活動空間として新たに認可された場所の利用実態を明 らかにすることで、計画的なストリートパフォーマンス空間と しての評価を行う。また今後ストリートパフォーマンスが、都 市とどのような関係を保ちながらおこなわれていくかを展望す る指標としてそれらを用いる。
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1-2 研究背景
■1-2研究背景 1.現状 現在の日本の路上は道路交通法により許可のないパフォーマ ンス等が禁止されている。これは歩行者天国においても同様で、 警察による取り締まりの対象となる。また公園などの公共スペ ースでは、対応に差はあるものの、アンプによる音楽演奏など で人を集めることを禁じている場所が多い。特に上野公園など では、投げ銭などが発生するパフォーマンスに関して厳しい取 り締まりを行っている。 つまり日本において路上や公共空間でのパフォーマンスは基 本的に違法という前提がある。 一方でまちづくりの一環、あるいは目玉としてストリートパ フォーマンスのフェスティバルを開催する地方自治体や地域の ※1-2.1 自治体では静岡市(大道芸ワール ドカップin静岡)、商店街では横 浜野毛地区(野毛大道芸)の例が ある。
※1-2.2 P7 用語の定義参照。
商店街など ※1-2.1が1990年代から増加している。これはスト リートパフォーマンスに対する社会的認識が、営利目的の大道 芸 ※1-2.2や原宿の歩行者天国※1-2.3などにおける若者文化という 従来の見方から、身体による芸術表現あるいは完成されたエン ターテイメントとして鑑賞にたえるものであるという認識に変 化してきたことが背景にあると考えられる。 つまり路上の人々を引き付け魅了するパフォーマンスは、ま
※1-2.3 原宿の歩行者天国は「ホコ天」の 愛称で呼ばれ、「竹の子族」など若 者の新しい風俗を次々に生み出し た。98年に廃止。
ちの風景を変えるだけのポテンシャルを持っているとして、そ の価値を利用しようという動きが起きているのである。 しかし実際には、パフォーマー側と計画する側、そして観客 のニーズをそれぞれ十分に反映させたパフォーマンス空間は少 ない。
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1-2 研究背景
2.新しいパフォーマンス空間とヘブンアーティスト制度 前述の内容をふまえ、現在の都市におけるストリートパフォ ーマンスのあり方を整理し、3つにタイプ分けした。
1)自然発生型 2)フェスティバル/イベント型 3)機会提供型
1)自然発生型 従来のパフォーマンスのほとんどはこのタイプである。管理 者の許可なしで路上や広場でゲリラ的に行われる。基本的に違 法で取り締まりの対象となる。あらゆる種類のパフォーマンス がなりうる。
2)フェスティバル/イベント型 大道芸フェスティバルやイベントで、決まった期間内でのパ フォーマンス。路上から屋内まで多様な空間で行われる。場所 を使用する許可を主催者がとり、計画的に行われる。出演パフ ォーマーに出演料が支払われる場合が多い。理解しやすい、大 衆受けするパフォーマンスが中心となる。
3)機会提供型 商業施設や自治体がパフォーマーに場所を開放し、そこで行 われるパフォーマンスを場所の魅力として取り入れる、新しい タイプのパフォーマンス形態である。場所の開放の仕方は、完
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1-2 研究背景
全に自由な場合からオーディションを行う場合まで、様々であ る。
※1-2.4 P6 用語の定義参照。
東京都が2002年に始めたヘブンアーティスト制度 ※1-2.4 は 3)のタイプにあたる。しかし東京のような大都市の中で複数 の場所がパフォーマーに解放されること、またその目的がスト リートパフォーマンスという文化そのものを奨励し、育成して いくことにあるという点では非常に珍しく、世界でも前例がな い。
3.既往研究の限界と本研究の視点 ストリートパフォーマンスに関する既往研究では、1)自然 発生型のパフォーマンス空間を調査研究したものがほとんどで ある。 本研究では、新しいパフォーマンス形態が生まれ、都市との 関わりが変化しているなかで、従来の空間特性的なとらえ方や 規制された空間での実態調査だけでは今後を展望するにいたら ないと判断し、ヘブンアーティスト制度を手がかりに、より巨 視的な観点からストリートパフォーマンスを論じていく。
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1-3 用語の定義
■1-3用語の定義 【ヘブンアーティスト】 2002年に東京都がはじめた文化事業で、路上で活動するパ フォーマーにオーディションを行い、合格したパフォーマー にはライセンスを与え公園や地下鉄などでの活動を認可する制 度。またライセンスを取得したパフォーマーを指す。 ヘブンアーティストのヘブンとは、路上パフォーマンスが行 われる「歩行者天国」から名付けられている。
【ストリートパフォーマンス】 本研究では、路上、広場などの屋外、またはそれに準ずる空 間で行われる、身体を媒介とした表現行為を指すものとする。
物品や食品を並べて売るだけのフリーマーケットや露天商は 「身体を媒介とした表現行為」とはみなされないので除外する。 また似顔絵かきなどその場で創作するものに関しては、創作す る過程そのものがパフォーマンスとみなされる場合がある。こ れはパフォーマンスのジャンルではなく個々の事例に関して判 断する必要がある。 また代価の要求を必然とするものは除外する。
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1-3 用語の定義
●大道芸とストリートパフォーマンスについて 大道芸とは本来、街頭、広場、盛り場などにおいて、まった くの野天で、ときには仮設の掛け小屋(ブース)で、芸を見せ、 集まった群集から銭を集めたり、その芸を見せながら商品を売 る
間(こうかん)芸能を総称する言葉である。例としてはガ
マの油売りや南京玉すだれなどがある。 しかし、このような伝統的な芸が少なくなり、路上での芸 を純粋な表現活動として行う場合も多くなった現代においては 「野毛大道芸」「大道芸ワールドカップin静岡」などのように 路上でのパフォーマンス全体の親しみやすい呼び方として用い られることがある。 このように、現代の路上において大道芸とストリートパ フォーマンスの境界は曖昧になってきてはいるが、大道芸の本 来の語源を考える時、ストリートパフォーマンスと同義とする のは適切ではないと考えた。よって本研究では『大道芸』を日 本の伝統的な
間芸能のみを指すものとする。
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1-3 用語の定義
【パフォーマンス空間】 パフォーマーと観客が占める空間をさす。
パフォーマンス空間
【観客】 10秒以上立ち止まり、パフォーマンスを鑑賞した人とする。
【観覧時間】 観客が立ち止まってから、パフォーマンス空間を立ち去るまで の時間とする。
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1-4 研究概要
■1-4研究概要 ヘブンアーティスト制度によってパフォーマンスが認可され た場所を評価するために、まずパフォーマーがどのような視点 で活動場所を選ぶかを調べる必要がある。次に個々の場所の特 徴から、観客の属性やパフォーマンスの形態をまとめる。 さらに実際に活動がどの場所でどの程度行われているか、観 客の状態に関して分析する。 また、パフォーマーとフェスティバルなどを計画するプロ デューサーへのヒアリングを通して、将来考えられるパフォー マンスの形態に関してまとめる。 以上の調査、分析から現在の計画的ストリートパフォーマン ス空間を評価し、将来の展望について論じる。
1章 序論
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
1-4 研究概要
ヘブンアーティスト制度 の経緯と仕組みを調査
調査方法の設定
アンケート調査
パフォーマーの重視する 選択要素の分析
活動状況調査
ビデオによる実態調査
観覧時間による分析
場所ごとの特性分析
考察・まとめ
図1-4.1研究概要フローチャート
ヒアリング調査
将来の計画を調査
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2章 ヘブンアーティスト制度 2-1 経緯 2-2 制度のしくみ 2-3 活動場所データベース
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-1 経緯
■2-1経緯 ○ヘブンアーティスト制度の沿革 従来の都の文化政策は利用者の固定化などの問題があり、 より多くの人が参加し、文化を育成していくタイプの事業が 2000年末ごろから計画されていた。 2001年6月の第二回定例都議会で、公共の場所を若手の芸 術家などに解放し、文化のすそ野を広げる政策に関しての提案 があり、石原都知事はこれを積極的に支援していくことを表明、 ヘブンアーティスト政策への具体的な動きが始まった。石原 都知事はニューヨークの地下鉄での音楽演奏をイメージしてお り、2001年8月には都の文化部などの担当者がニューヨーク ※2-1.1 ヘブンアーティスト制度のさきが け と して 2 0 0 1 年 1 0 月 に 上 野 公 園で行われたストリートパフォー マンスのフェスティバル。
を視察した。同年10月には上野恩賜公園でテアトル・ド・リュー 東京2001 ※2-1.1が行われ、石原都知事が視察、制度実現への 大きなはずみとなった。 2002年4月よりヘブンアーティストの募集が開始され、書
「テアトル・ド・リュー東京2001」
類・ビデオ選考(第一次審査)を経て、同年7月30日より五
■日時
日間にわたって公開オーディション(第二次審査)が都庁都民
平成13年10月19日(金)か ら21日(日)まで ■場所 上野恩賜公園 ■出演者 内 外 招 待 アー テ ィス ト と 選 考 アーティスト39組 ■主催 東京都、(財)自治総合センター ■後援 フランス大使館
広場で行われた。 この結果140組のヘブンアーティストが誕生し、同年9月 より活動が始まった。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-1 経緯
○第1回審査の状況
1) 応募期間 平成14年4月22日(月)∼平成14年5月31日(金) 応募総数 647組(パフォーマンス部門:292組、音楽部門:355組)
2) 第一次審査実施 平成14年6月中旬 第一次審査通過 247組(パフォーマンス部門:149組、音楽部門:98組)
3)第二次審査実施 平成14年7月30日(金)∼平成14年8月3日(土) 第二次審査通過 140組(パフォーマンス部門:115組、音楽部門:25組)
4)第二次審査追加実施 平成14年10月3日(木)、平成14年10月15日(火) 最終合格者 154組(パフォーマンス部門:126組、音楽部門:28組)
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-2 制度の仕組み
■2-2制度の仕組み ○審査 ヘブンアーティスト制度は都のオーディションに合格したパ フォーマーに認可された場所でパフォーマンスできるライセン スを発行するシステムとなっている。 審査は音楽部門とパフォーマンス部門に分かれており、大道 芸のプロデューサーや音楽関係者などそれぞれの専門家によっ て行われる。(図2-2.1参照)
図2-2.1 東京都のパフォーマー募集告知 オーディションは当初年一回を予定して いたが、2002年11月現在、第二回目が 2003年1月に予定されており、募集が始 まっている。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-2 制度の仕組み
○応募資格 東京を拠点に、音楽やパフォーマンス等の分野で活動してい るアーティスト(ジャンルは問わない) ○活動場所 ●公園 上野恩賜公園・代々木公園・井の頭恩賜公園 光が丘公園・シンボルプロムナード公園 ●地下鉄大江戸線駅 都庁前駅・新宿西口駅・上野御徒町駅 ●都庁 都民広場・展望室 ●その他 東京体育館(広場)・江戸東京博物館(広場) 東京国際フォーラム(プラザ)
○活動条件 1. .CD・カセットテープ等の販売行為はできない。 2. 投げ銭を受けることは認められるが強要することはできな い。 3. 火気・刃物等の危険物を使用したパフォーマンスはできな い。 4. アンプラグド(アンプを使用しない方法)での展開を原則 とする。 5. 演奏・パフォーマンスに必要な機材の搬入等は各自で行う。 6. その他、所定の管理条件に従う。(第二回募集告知より)
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-2 制度の仕組み
○活動方法 ライセンスを取得したパフォーマーは、それぞれ希望する活 動場所でパフォーマンスを行う。活動は1コマ一時間ごとの 予約制になっており、東京都のヘブンアーティスト事務局に希 望する日にち、場所、時間を連絡する。予約は先着順であるが、 1ヶ月に予約できるコマ数に制限がある。 活動日はまずパフォーマーは各活動場所の管理事務所でヘブ ンアーティストの看板(ボード)を受け取る。これに各自が名 前などを書き入れ、活動中に提示することでヘブンアーティス トとしての証明となる。 前の活動時間に他のパフォーマーの予約がある場合は、パ フォーマー同士で看板の受け渡しを行い、その日の最後のパ フォーマーが管理事務所に届ける。(図2-2.2参照)
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-2 制度の仕組み
上野公園で11月9日11時
はい
からやりたいのですが
あいています
日にち、場所、 時間を予約
パフォーマー
ヘブンアーティスト 事務局
今日予約した
はい
○○です
どうぞ看板です
管理事務所で
パフォーマー
活動場所
看板を受け取る
管理事務所
看板を提示して 活動する
図2-2.2 活動のしかた
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
■2-3活動場所データベース ヘブンアーティスト活動場所として認可された13施設に関 して、パフォーマンスに影響すると考えられるデータと特徴を まとめた。 なお、データは2002年11月現在のものである。
表2-3.1 活動場所一覧
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
上野恩賜公園
○対象 全パフォーマ ○活動日 全日 ○活動時間 ①11:00∼12:00 ②12:00∼13:00 ③13:00∼14:00 ④14:00∼15:00 ⑤15:00∼16:00
○所在地 東京都台東区上野公園池之端3丁目 ○交通 JR・地下鉄銀座線・日比谷線上野駅下車徒歩2分 京成線京成上野駅下車徒歩1分/有料駐車場 ○付属施設 公園案内所、野球場兼競技場、ボート場、野外ステージ、子供の遊び場 ○周辺施設 国立西洋美術館、国立科学博物館、国立博物館、都美術館、東京文化会館、 上野の森美術館、恩賜上野動物園、アメヤ横町、映画館
○特徴
上野公園の大きな特徴はその周辺施設の充実度にある。美術館、博物館、 動物園などの施設を訪れる人々は年齢層が幅広く、また比較的時間にゆと りのある人々が多いことが予想できるため、観覧者として理想的と考えら れる。活動場所は最も人通りの多い広場に面した「噴水池前」と「小松宮 像前」「五条天神前」の三ケ所である。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
五条天神前
小松宮前
図2-3.1 上野恩賜公園活動場所
噴水前
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
代々木公園
○対象 全パフォーマ ○活動日 全日 ○活動時間 ①11:00∼12:00 ②12:00∼13:00 ③13:00∼14:00 ④14:00∼15:00 ⑤15:00∼16:00
○所在地 渋谷区代々木神園町神南二丁目 ○交通 JR山手線原宿駅/営団地下鉄千代田線代々木公園駅下車徒歩3分、 小田急線代々木八幡駅下車徒歩6分、駐車場(有料) ○付属施設 陸上競技場、サッカー・ホッケー場、野外ステージ、 サイクリングコース(中学生以下)、幼児用サイクリング広場 ○周辺施設 NHK放送センター、国立代々木競技場、
○特徴
代々木公園は、道路を挟んで森林公園地区と、陸上競技場、野外ステージ などを備えた広場地区とに分かれている。 活動場所は森林公園地区の噴水前と広場地区のイベント広場の2ケ所であ る。広場地区では楽器を演奏したり読書をしたりとそれぞれの人が思い思い に利用している。広場地区では屋台などが入り口付近から多く存在し、賑や かな印象をうける。 野外音楽堂横のイベント広場では週末などに様々な催しが開かれるなど、 人が集まる場所としての利用実績がある。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
噴水池前
イベント広場
図2-3.2 代々木公園活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
井の頭恩賜公園
○対象 全パフォーマ ○活動日 全日 ○活動時間 ①11:00∼12:00 ②12:00∼13:00 ③13:00∼14:00 ④14:00∼15:00 ⑤15:00∼16:00
○所在地 武蔵野市御殿山一丁目、吉祥寺南町一丁目、 三鷹市井の頭三・四・五丁目、下連雀一丁目、牟礼四丁目 ○交通 JR中央線吉祥寺駅下車 徒歩5分 京王井の頭線井の頭公園駅下車 徒歩1分 / 駐車場(有料) ○付属施設 野外ステージ、競技場、テニスコート、プール、ボート場 ○周辺施設 三鷹の森ジブリ美術館(西園野外ステージ)
○特徴
井の頭公園は、井の頭池とその周辺、雑木林と自然文化園のある御殿山、 そして運動施設のある西園と、西園の南東にある第二公園の4区域に分か れている。 目立った周辺施設はないものの、吉祥寺駅からの道筋に雑貨店や 飲食店などが多く存在し、気軽に散歩できる公園として付近の住民に親しま れている。 パフォーマンススペースは野外ステージと西園野外ステージの2ケ所。野 外ステージ周辺はもともと、週末にストリートミュージシャンやフリーマー ケットを開く人々も多く、公園の中でも賑わいがある場所である。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
野外ステージ
西園野外ステージ
図2-3.3 井の頭恩賜公園活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
光が丘公園
○対象 全パフォーマ ○活動日 全日 ○活動時間 ①11:00∼12:00 ②12:00∼13:00 ③13:00∼14:00 ④14:00∼15:00 ⑤15:00∼16:00
○所在地 練馬区光が丘二・四丁目、旭町二丁目、板橋区赤塚新町三丁目 ○交通 東武東上線成増駅下車徒歩15分、営団地下鉄有楽町線営団成増駅下車徒歩13分、 都営地下鉄大江戸線光が丘駅下車 徒歩5分 ○付属施設 野球場、競技場、テニスコート、弓道場、モニュメント「光のアーチ」、 水景施設 (噴水)、デイキャンプ場、バーベキュー広場、ゲートボール場、 少年サッカー場 ○周辺施設 都営住宅
○特徴
光が丘公園は米軍跡地に作られた、東京北部でも特に大きい多用途公園で ある。この公園に隣接して総戸数1万戸以上、人口4万人以上の「光ヶ丘団 地」がある。スポーツやウォーキングをする人でにぎわうが、園内は広いた め人が密集しているという状態はない。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活動場所
図2-3.4 光が丘公園活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
シンボルプロムナード公園
○対象 全パフォーマ ○活動日 全日 ○活動時間 ①11:00∼12:00 ②12:00∼13:00 ③13:00∼14:00 ④14:00∼15:00 ⑤15:00∼16:00
○所在地 東京都港区台場1丁目/2丁目、江東区青海1丁目/2丁目 有明2丁目/3丁目 ○交通 ゆりかもめ:「お台場海浜公園」∼「有明」の各駅下車 りんかい線:「東京テレポート」「国際展示場」下車、 海上バス:日の出桟橋から「青海」「有明」下船 ○付属施設 ○周辺施設 国際展示場(東京ビッグサイト)、東京都水の科学館
○特徴
シンボルプロムナード公園は臨海副都心に生まれた海上公園のひとつで、 有明地区と青海地区の各エリアを「夢の大橋」で結ぶ広大な公園である。 また接続する「水の広場公園」や「有明西ふ頭公園」は、親水護岸が整備 され、この地区の憩いの場となっている。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活動場所(北)
活動場所(南)
図2-3.5 シンボルプロムナード公園活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
都民広場
○対象 全パフォーマ ○活動日 平日 ○活動時間 ①11:00∼12:00 ②12:00∼13:00 ③13:00∼14:00 ④14:00∼15:00 ⑤15:00∼16:00
○所在地 東京都新宿区 ○交通 JR新宿駅西口下車徒歩10分、大江戸線都庁前駅下車 ○付属施設 都庁第一、第二本庁舎 ○周辺施設 新宿中央公園、NSビル、京王プラザホテル、新宿住友ビル、新宿モノリス、 新宿三井ビル
○特徴
都庁第一本庁舎の足元に位置する都民広場は、扇形の開放的な空間で活動 場所は2ケ所設けられている。ヘブンアーティストの選考会場となっただけ に広さは十分だが、新宿の歓楽街からは遠く、周辺はオフィスビル街である ため人通りはそれほど多くない。通行人層としては都庁関係者か都庁の見学 客が大半である。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活 動 場 所 ( 南 ) 活動場所(北)
図2-3.6 都民広場活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
都庁展望室
○対象 音楽 ○活動日 平日 ○活動時間 ①12:00∼13:00 ②13:00∼14:00 ③14:00∼15:00 ④15:00∼16:00 ⑤16:00∼17:00
○所在地 東京都新宿区 ○交通 JR新宿駅西口下車徒歩10分、大江戸線都庁前駅下車 ○付属施設 都庁第一、第二本庁舎 ○周辺施設 新宿中央公園、NSビル、京王プラザホテル、新宿住友ビル、新宿モノリス、
○特徴
都庁展望室は認可された活動場所の中で、地下鉄を除けば唯一完全な屋 内空間である。北塔と南塔それぞれの展望室で活動が許可されている。地上 45階の眺望を無料で楽しめるため都庁見学の際に多くの人が訪れる。2ケ 所ともフロアの中央に喫茶スペースがあり、静かで落ち着いた雰囲気の空間 である。 展望室ではヘブンアーティストとは別にコンサートなども催されることが ある。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活動場所
図2-3.7 都庁展望室活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
都庁前駅
○対象 音楽 ○活動日 火曜日 ○活動時間 ①12:00∼13:00 ②13:00∼14:00 ③14:00∼15:00 ④15:00∼16:00 ⑤16:00∼17:00
○所在地 東京都新宿区西新宿2ー8ー1 ○交通 都営地下鉄大江戸線都庁前駅構内 ○付属施設 ○周辺施設 都庁、住友ビル、ホテルセンチュリーハイアット、新宿中央公園、三井ビル
○特徴
都庁前駅は新宿西口の超高層ビル街の真ん中にあり、都庁周辺ビルの最寄 り駅になっている。改札口は一ケ所で、改札口を入って30mほど進んだと ころに活動場所を設けてある。 ビジネス街のため昼間の利用客は新宿西口駅と比べると多くない。駅構内 の通路空間のため人が溜まりにくい。 「ヘブンアーティスト公演」のポスターが貼ってある。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活動場所
図2-3.8 都庁前駅活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
新宿西口駅
○対象 音楽 ○活動日 水曜日 ○活動時間 ①12:00∼13:00 ②13:00∼14:00 ③14:00∼15:00 ④15:00∼16:00 ⑤16:00∼17:00
○所在地 東京都新宿区西新宿一丁目3番地先 ○交通 都営地下鉄大江戸線新宿西口駅構内 ○付属施設 ○周辺施設 JR新宿駅、西武新宿線西武新宿駅、歌舞伎町
○特徴
新宿西口駅は新宿西口ロータリーの北側にあり、丸ノ内線新宿駅、JR新 宿西口、西部新宿駅に近い。地下4層構造の地下1階、西口広場方面改札を 入って20mほどの所が活動場所となる。 数分ごとに電車を降りた客が一気に改札に向かうが、その流れのすぐ横に 位置するようになっている。活動場所の壁面には「ヘブンアーティスト公演」 というポスターが貼られている。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活動場所
図2-3.9 新宿西口駅活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
上野御徒町駅
○対象 音楽 ○活動日 木曜日 ○活動時間 ①12:00∼13:00 ②13:00∼14:00 ③14:00∼15:00 ④15:00∼16:00 ⑤16:00∼17:00
○所在地 東京都台東区四丁目4番地先 ○交通 都営地下鉄大江戸線上野御徒町駅構内 ○付属施設 ○周辺施設 上野公園、上野動物園、京成上野駅、千代田線湯島駅、アメヤ横町
○特徴
銀座線上野広小路駅∼日比谷線仲御徒町付近に位置し、両駅とJR御徒町 駅とで乗り換えができる。 現在認可されている地下鉄駅構内で唯一、改札外に活動場所が設置されてい る。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活動場所
図2-3.10 上野御徒町駅活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
東京体育館
○対象 パフォーマンス ○活動日 全日 ○活動時間 ①12:00∼13:00 ②13:00∼14:00 ③14:00∼15:00 ④15:00∼16:00 ⑤16:00∼17:00
○所在地 東京都渋谷区千駄ヶ谷1-17-1 ○交通 都営地下鉄大江戸線「国立競技場」A4出口 JR中央線「千駄ヶ谷」下車徒歩1分 ○付属施設 体育館、屋内プール、研修室、トレーニングルーム ○周辺施設 新宿御苑、国立能楽堂、国立競技場
○特徴
東京体育館は千駄ヶ谷駅を出るとすぐ正面に見える。活動場所は入口前の 広場で、見通しがいい。 東京体育館周辺の通行人の多くは、体育館の利用者と陸上競技場方面に向 かう通勤客である。利用客は催しによって様々だが、一度体育館の中に入っ てしまうと終わるまで出てこない場合が多い。また通勤客が帰宅するのが5 時以降のため、通常のヘブンアーティスト活動時間では見ることができない。 そのため活動開始から1ヶ月程で、1時間活動時間をずらす処置がとられた。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活動場所
図2-3.11 東京体育館活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
江戸東京博物館
○対象 全パフォーマ ○活動日 全日 ○活動時間 ①11:00∼12:00 ②12:00∼13:00 ③13:00∼14:00 ④14:00∼15:00 ⑤15:00∼16:00
○所在地 東京都墨田区横網1-4-1 ○交通 都営大江戸線両国駅(江戸東京博物館前) A4出口徒歩1分 /JR総武線両国駅 西口下車徒歩3分 ○付属施設 展示室、ホール、図書室、会議室、飲食施設 ○周辺施設 両国国技館
○特徴
江戸東京博物館の活動場所はピロティとなった非常に大きなスケールの空 間である。しかし周国技館の他には、周辺に集客力のある施設はなく、博物 館の利用客の他に観客となる通行人がいない。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活動場所
図2-3.12 江戸東京博物館活動場所
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
東京国際フォーラム
○対象 パフォーマンス ○活動日 火曜日 ○活動時間 ①11:30∼12:30 ②12:30∼13:30
○所在地 東京都千代田区丸の内三丁目5番1号 ○交通 JR線有楽町駅下車徒歩1分/東京駅より
徒歩5分(京葉線東京駅と地下1階コ
ンコースにて連絡)、地下鉄有楽町線有楽町駅と地下1階コンコースにて連絡、日比 谷線銀座駅下車徒歩5分/日比谷駅下車徒歩9分、千代田線二重橋前駅下車徒歩5 分/日比谷駅下車徒歩9分・丸ノ内線銀座駅下車徒歩5分、銀座線銀座駅下車徒歩 5分/京橋駅下車徒歩5分、三田線日比谷駅より徒歩7分、駐車場(有料) ○付属施設 ホール、会議室、ギャラリー、ショップ、レストラン ○周辺施設
○特徴
旧都庁舎跡地に建てられた総合情報文化施設。パフォーマンススペースは ホール楝と船型アトリウムのガラス楝に挟まれた、プラザ(中庭スペース) である。プラザには数十本の植木とベンチが配置され、通り抜けも可能なた め開放的な公共空間となっている。 通行人層としては丸の内という場所柄ビジネスマンが多い。そのため活動 時間も昼休みの時間帯にあわせて設定されている。
2章 ヘブンアーティスト制度
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
2-3 活動場所データベース
活動場所
図2-3.13 東京国際フォーラム活動場所
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3章 研究結果 3-1 パフォーマーへのアンケート調査 3-1-1 アンケート内容 3-1-2 結果 3-1-3 分析
3-2 活動状況の分析 3-2-1 活動場所の利用状況 3-2-2 パフォーマーの活動状況 3-2-3 分析
3-3 活動実態調査 3-3-1 調査データ 3-3-2 観覧時間の分析 3-3-3 調査結果 3-3-4 分析
3-4 ヒアリング調査 3-4-1 ヘブンアーティスト事務局 3-4-2 大道芸プロデューサー
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1 パフォーマーへのアンケート調査
■3-1パフォーマーへのアンケート調査 ヘブンアーティスト約40名に活動場所に関するアンケート 調査を行った。
調査目的 パフォーマーが活動場所を選ぶ際に、どのような要素を重視 しているかを調べる。またパフォーマンスの形態、ジャンルご との重視する要素の特徴を分析する。
調査方法 場所の広さなど活動場所を選択する際に影響すると思われる 要素を「選択要素」とする。それぞれの選択要素に関して重視 する度合いを1∼5の五段階で評価してもらい、数値化する。 (図3-1.1)
←意識しない 天候 気温 風 場所の広さ 場所の形状
重視する→
1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5
・ ・ ・
図3-1.1 アンケート例
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1 パフォーマーへのアンケート調査
数値化の方法 アンケートを集計し、各選択要素について1∼5の数字に 選んだ人数をかけたものを重視度とし、比較する
場所の広さ 1 2 3 4 5
:
:
:
:
:
選んだ人数 A B C D E (人)
1 A+2 B+3 C+4 D+5 E =重視度
1
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1-1 パフォーマーへのアンケート調査/アンケート内容
●3-1-1アンケート内容 選択要素の項目 既往研究とパフォーマーへのプレアンケート調査から、選択 要素の項目を以下のように決定した。
1.自然条件 -天候/気温/風/時間帯 屋外で行われるストリートパフォーマンスでは、自然条件か らパフォーマンスが大きく影響を受ける。天候の良し悪しでパ フォーマンス自体が行えなくなることもあり、最も重要な条件 と予想される。 『風』は特にジャグリング(ボールやこん棒などを空中で操 る芸)やアクロバットなど肉体のバランス感覚が重視される芸 を考慮して項目に入れた。
2.空間な条件 -場所の広さ/場所の形状/路面の状態 各自のパフォーマンスにあった、場所の空間的な条件を重視 するかを調べる。
3.観覧者に関する条件 -通行量/客層 パフォーマンス空間はパフォーマーと観覧者がいてはじめて 成立する。とりわけ路上でのストリートパフォーマンスは観覧 者とのコミュニケーションがとりやすいことが大きな特徴であ り、活動場所の選択にも強く影響することが予想される。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1-1 パフォーマーへのアンケート調査/アンケート内容
4.周辺環境の条件 -騒音/他のパフォーマーの存在/店鋪の有無 ストリートパフォーマンスでは観客を集めることからパ フォーマンスが始まるため、音楽などを用いて注目を集めるパ フォーマーも多い。また紙芝居など肉声のみで行うパフォーマ ンスではある程度の静寂さが必要となる。このような音環境の 重視度を調べる。 また、既往研究ではストリートミュージシャンの選択する要 素として他のパフォーマーの存在、店鋪の状態等が上がったた め、本研究においても選択要素として調査する。
5.その他の条件 -規制の有無 本研究では路上パフォーマンスに対して規制が存在する従来 のパフォーマンス空間とともに、活動が認可された空間に関し て特に研究を進めていく。そのため現在の段階でパフォーマー の活動に対して、規制の有無がどのように影響しているかを調 べる。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1-1 パフォーマーへのアンケート調査/アンケート内容
パフォーマンスの形態によるタイプ分けについて パフォーマンスのジャンル分けは、一般的にはそのパフォー マンス形態によって行われているが、実際のパフォーマンスで は例えばマジックとパントマイムが組み合わされたり、各人で 呼び方が違ったりと細かく定義するのは難しい。 ヘブンアーティスト制度では応募の際、「音楽」と「パフォー マンス」という分け方を行っているが、その境界は曖昧であり、 どちらにも含まれる形態のパフォーマーも存在する。 本研究のアンケート調査ではその基準をパフォーマー自身の 判断により決定した。すなわち複数の選択肢から各人が自分の パフォーマンスに含まれると考える項目を選ぶ形式にし、複数 回答を認めた。 これは今後計画的なパフォーマンス空間を考える上で、パ フォーマーと観覧者、場所の所有者のそれぞれのニーズをいか に満たしていくかが大きな課題となると判断し、そのためには パフォーマー自身が自分の表現にあった場所を選択するという プロセスが認められることが必要だと考えたためである。
本研究では集計された結果より、多くのパフォーマーに選択 された、 音楽/曲芸/パントマイム に関して部門分けを行いグラフ化した。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1-2 パフォーマーへのアンケート調査/結果
●3-1-2結果
図3-1.2 選択要素別の重視度(全体)
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1-2 パフォーマーへのアンケート調査/結果
図3-1.3 音楽型
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1-2 パフォーマーへのアンケート調査/結果
図3-1.4 パントマイム型
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1-2 パフォーマーへのアンケート調査/結果
図3-1.5 曲芸型
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-1-3 パフォーマーへのアンケート調査/分析
●3-1-3分析 図3-1.2からの分析 「天候」、「通行量」が最も高く、次に「時間帯」、「規制の有無」 「場所の広さ」「場所の形状」などが高くなっている。パフォー マーが何か一つの要素ではなく様々な要素に関して自分にあっ た場所を選んでいることが分かる。
図3-1.3, 3-1.4, 3-1.5からの分析 音楽型のパフォーマーが周囲の騒音を重視すること、また場 所の広さや形状をあまり重視しないことが分かる。これは楽器 演奏という形態からあまりスペースを必要としないことが理由 であると考えられる。 また曲芸型のパフォーマーが風を意識することもグラフから 読み取れる。
全体的には予想していたほどタイプごとに、形態との関係性 が読み取れるかたちで結果が分かれるということはなかった。 これは前述したように、あるジャンルで括ることが難しいパ フォーマーが多いためであると考えられる。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-2 活動状況の分析
■3-2活動状況の分析 調査目的 ヘブンアーティスト制度で活動が許可された場所は、様々 な条件によりその利用状況に差が生じている。どの場所でパ フォーマーは多く見られるのか、またライセンスを取得したパ フォーマーがどの程度ヘブンアーティストとして活動している かを、活動開始から約2ヶ月間の記録から分析する。
調査方法 東京都のホームページに公開されているヘブンアーティスト の活動予定表(図3-2.1)から分析する。
図3-2.1 東京都のホームページ上で閲覧できる予定表
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-2-1 活動状況の分析/活動場所の利用状況
●3-2-1活動場所の利用状況 平均利用コマ数の分析 ヘブンアーティストの活動時間は1時間を一コマとして、 一日5コマ(東京国際フォーラムのみ2コマ)となっており、 ヘブンアーティストはその活動時間の中から希望する時間帯を 選ぶ。
各場所においてヘブンアーティストによるパフォーマンスが 行われている頻度を示すため、平均利用コマ数を求める。なお 平均利用コマ数は
(利用されたコマ数) (活動認可日数)=(平均利用コマ数)
とする。同一パフォーマーが同じ場所を2コマ以上予約する 場合があるが、これは別のものとしてカウントする。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-2-1 活動状況の分析/活動場所の利用状況 表3-2-1.1 各活動場所の利用コマ数 ※網カケの部分は活動休止日
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-2-1 活動状況の分析/活動場所の利用状況
コ マ 数
図3-2-1.2 平均利用コマ数
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-2-2 活動状況の分析/パフォーマーの活動状況
●3-2-2パフォーマーの活動状況 ライセンスを取得したストリートパフォーマーの中で、ヘブ ンアーティストとして活動を行っている人数の割合を調べる。
2002年夏に行われたヘブンアーティスト第一回オーディ ションでは140組のパフォーマーが合格した。 ヘブンアーティストの中でも、海外の大道芸フェスティバル 等に参加するベテランパフォーマーから、学生や会社員まで、 ストリートパフォーマンスのキャリアや目的は多様である。 活動開始から2ヶ月間の間の活動実績で積極的に制度を活用 しているパフォーマーがどのくらいの割合でいるかを音楽とパ フォーマンスのタイプごとに分析する。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-2-2 活動状況の分析/パフォーマーの活動状況
総数 音楽 パフォーマンス
未活動
1回活動
2回以上活動
25
9
1
15
125
62
21
32
図3-2-2.1 パフォーマーの活動状況
図3-2-2.2 パフォーマーの活動の割合
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-2-3 活動状況の分析/分析
●3-2-3分析 図3-2-1.2からの分析 地下鉄駅構内の3ケ所と東京国際フォーラムは毎週1回だ け活動が認可されているため、他とくらべて平均利用コマ数が 高くなる傾向にある。 地下鉄で比較すると新宿西口駅の利用率が高いことが分か る。 公園では上野公園の3ケ所、井の頭公園野外ステージ、代々 木公園イベント広場など、従来からパフォーマンスが行われて 来た場所の利用率が高くなっている。 図3-2-2.1, 3-2-2.2からの分析 パフォーマンス部門のパフォーマーの半数がヘブンアーティ ストとしての活動を行っていない事が明らかとなった。一方音 楽部門では6割以上のパフォーマーが2回以上パフォーマンス を行っており、より精力的に活動している。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3 活動実態調査
■3-3活動実態調査
調査目的 ヘブンアーティスト活動場所での実際のパフォーマンスを調 査する。ビデオ撮影により観客の観覧行動を数値化し、場所の 特性分析の方法について提案を行う。
調査方法 ビデオカメラによる定点からの撮影を行う。その際パフォー マンス空間全体をとらえ、観客の動きが把握できるように撮影 した。 撮影した映像からパフォーマンス時間、パフォーマンス空間 の最大面積、最大観客数、観覧時間を調べ、データ化し分析する。
調査場所 □活動場所のタイプ分け
活動場所データベースより12ケ所の活動場所を以下のように 分類した。展望室は屋内空間として今回は除外する。
1.公園 上野恩賜公園/代々木公園/井の頭恩賜公園/光が丘
公園/シンボルプロムナード公園 2.地下鉄駅構内 新宿西口駅/都庁前駅/上野御徒町駅 3.広場 都民広場/東京体育館/江戸東京博物館 4.オフィス街 東京国際フォーラム
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3 活動実態調査
□タイプ別の実態調査
活動場所の利用状況から、各タイプごとに利用率の高い場所 を選び、実態調査を行う。
1.上野公園、代々木公園 2.新宿西口駅 3.都民広場 4.東京国際フォーラム
上野公園での実態調査はビデオ不備から観覧時間の正確な調 査が行えなかったため、後日代々木公園での調査を行った。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-1 活動実態調査/調査データ
●3-3-1調査データ 以下の日程で調査を行い、各回の観客数などのデータと、場 所ごとの特徴を整理した。 次頁から各回のパフォーマンス状況の特徴をまとめる。
表3-3.1 調査日程 調査日
活動場所
パフォーマンス形態
9月22日(日) 上野恩賜公園
音楽パフォーマンス(三味線)
10月4日(金) 都民広場
音楽パフォーマンス(三味線)
10月3日(木) 都民広場
10月5日(土) 代々木公園 10月5日(土) 新宿西口駅
10月8日(火) 東京国際フォーラム
ジャグリング
音楽パフォーマンス(三味線) 音楽(アコーディオン) ダンス
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-1 活動実態調査/調査データ
●活動場所の状況
●活動場所 上野恩賜公園小松宮像前
●パフォーマンスタイプ 二人組の津軽三味線の演奏パフォーマンス/アンプ使用 ●演技時間 15分
●最大観客数 150人 ●パフォーマンス空間
●特徴
最大面積90㎡
休日ということもあり、様々な客層の通行人が確認された。の んびり歩いている人が多い。 演奏開始から観客の輪が大きくなり、最後まで観覧する観客が 多かった。パフォーマンスに対する反応も非常に良い。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-1 活動実態調査/調査データ
●活動場所の状況
●活動場所 都民広場
●パフォーマンスタイプ 二人組のジャグリングショー/アンプ、マイク使用 ●演技時間 14分 ●最大観客数 87人 ●パフォーマンス空間
●特徴
最大面積400㎡
通行量はまばらで、サラリーマンや都庁の見学者が多い。歩行 速度は比較的遅い。ツアー客が時々大量に行き来するが、時間に 制約があるため、足をとめる人はほとんどいない。パフォーマー は実績があり、演技としての完成度が高いためか、集まった観客 は最後まで鑑賞する人が多かった。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-1 活動実態調査/調査データ
●活動場所の状況
●活動場所 都民広場
●パフォーマンスタイプ 二人組の津軽三味線の演奏パフォーマンス/アンプ使用 ●演技時間 15分
●最大観客数 33人 ●パフォーマンス空間
●特徴
最大面積300㎡
通行量は少ないがゆっくり歩いている人が多い。見渡しがいい 場所のため、パフォーマーの近くによらず、遠巻きに鑑賞してい る人が多かった。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-1 活動実態調査/調査データ
●活動場所の状況
●活動場所 代々木公園
●パフォーマンスタイプ 二人組の津軽三味線の演奏パフォーマンス/アンプ使用 ●演技時間 14分 ●最大観客数 64人 ●パフォーマンス空間
●特徴
最大面積55.2㎡
イベント広場で別のイベントが行われていたため、路上スペー スでのパフォーマンスとなった。広場ではないため、溜まってい る人は少ないが、通行量は安定してある。急いでいる人は少ない。 単なる楽器演奏ではなくコミカルなショーとしてつくられている ためか、観客は期待感を持って最後まで立ち止まってみている人 が多い。パフォーマンス空間が大きくなり、若干通行に支障がで ていた。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-1 活動実態調査/調査データ
●活動場所の状況
●活動場所 新宿西口駅
●パフォーマンスタイプ アコーディオンの生演奏 ●演技時間 13分11秒 ●最大観客数 9人 ●パフォーマンス空間
●特徴
最大面積10.8㎡
活動場所が改札内にあるため、通行人は地下鉄の乗客のみとな る。数分おきにホームから上がってきて大量に改札口に向かう人 の流れがある。(写真右から左への流れ)歩行速度は速い。 一曲づつ説明を挟みながら時には観客のリクエストに答えて演 奏を行う。駅側が設置した椅子に座る人以外は1、2曲で去って いく人が多い。また観客はほとんど電車を降りた人である。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-1 活動実態調査/調査データ
●活動場所の状況
●活動場所 東京国際フォーラム(プラザ)
●パフォーマンスタイプ 五人組のダンスチーム/アンプ使用 ●演技時間 7分30秒 ●最大観客数 80人 ●パフォーマンス空間
●特徴
最大面積1500㎡
12時30分からの活動で、プラザ(中庭)には昼食からかえっ てきたサラリーマンが多くいた。小雨が降っていたため観客は ホール棟(写真奥)の周辺に雨を避けるように集まっていた。 昼休みの時間帯ではゆったりと観覧しているが、1時をこえる と足早に立ち去る人が多かった。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-2 活動実態調査/観覧時間の分析
●3-3-2観覧時間の分析 調査目的 ビデオ撮影から観客の観覧行動を数値化し、場所ごとの傾向 性を分析する。
調査方法 演技が全体の演技時間の半分まで終わった時点での観客か ら、無作為に10人を選び、その観客がそれぞれいつ観覧を始め、 いつ観覧を終えたのかを調べ、観覧時間としてまとめる。これ を全体の平均観覧時間として分析する。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-3 活動実態調査/調査結果
●3-3-3調査結果
観覧
活動場所
パフォーマンス形態
A 都民広場
ジャグリング
C 代々木公園
音楽パフォーマンス(三味線)
B 都民広場
D 新宿西口駅
音楽パフォーマンス(三味線)
E 東京国際フォーラム
音楽(アコーディオン) ダンス
図3-3-3.1 演技時間と平均観覧時間
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-3-4 活動実態調査/分析
●3-3-4分析 図3-3-3.1 演技時間と平均観覧時間のグラフより Dの駅構内でのパフォーマンスでは平均観覧時間が6分と他 の例に比べて短かったが、これは駅という場所が、ある場所に 向かうための空間であることが要因と考えられる。しかし一方 で駅は通行客が一定の間隔で通路にあふれるという特性を持っ ている。そのような場所で行われうるパフォーマンスは、短い スパンで演技(演奏)を行える音楽型である。調査においても 一曲ごとに観客が入れ代わる場合が多く確認された。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4 ヒアリング調査
■3-4ヒアリング調査 調査目的 ストリートパフォーマンス空間の計画が実際にどのようにす すめられてきたか、問題点とこれからの展望についてヒアリン グを行う、
調査方法 以下の方々にヒアリングを行った。
1.東京都生活文化局文化振興部事業推進課内 ヘブンアーティスト事務局
2.大道芸プロデューサー橋本隆雄氏
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-1 ヒアリング調査/ヘブンアーティスト事務局
●3-4-1ヘブンアーティスト事務局へのヒアリング
この制度が始まった背景からお聞きしたいんですが。
今までの東京都の文化政策というのは特定の人だけが利用 して、リピーターは多いのですがすそ野が広がりにくいもので した。無名で活躍の場がない芸術家の人だとかをバックアップ するような、新しいことをやろうという考えが平成12年ごろ からありました。公共の場所を発表の場として整備して一定の ルールのもとでやったらうまく活用できないかと。まず東京都 のもっている施設で取っ掛かりを作ってうまく解放していきま しょうと。これがベースなわけです。 具体的になってきたのは毎年4回行われる定例都議会の、6 月の第二回に議員さんの方から若い人に発表の場を与えて文 化のすそ野を広げていくのはどうですかという提案がありまし た。それで石原都知事がそういうことを積極的にやっていくと いう答弁をしたのです。 知事の頭の中にはもともとニューヨークの地下鉄のライセン ※3-4-1.1 MUNY(Music under New York)。ニュー ヨークでの公共交通機関での文化事
ス※3-4-1.1というのが頭にあったんです。そういうのを参考にし ながら東京独特のものをつくろうと。
業、Art for Transitプログラムのひと つ。地下鉄公社が毎年春に行なうオー ディションでライセンスを与えられた
視察などはされたんですか。
ミュージシャンが、駅構内での演奏を 認められている。
文化部と実際に施設を管理する部署の担当者が去年(平成 13年)の8月にニューヨークに視察にいきました。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-1 ヒアリング調査/ヘブンアーティスト事務局
活動場所はどのように決定されたんでしょうか。
活動場所は実際にパフォーマーがやりたい場所とは限らない わけです。最初は土台づくりだから、活動場所の確保を優先さ せた面があります。ある程度人の流れがあること、利用のお客 さんに邪魔にならないように溜まるような場所があることが最 低条件です。あとは管理面で常時対応ができる場所というので 選んでいます。 これはあくまで取っ掛かりだから今回選んだ場所での検証を 踏まえて、将来民間とかに広げていく時のフレームづくりにす ることを考えています。
パフォーマーにヒアリング等は行いましたか?
直接ヒアリングというのはしていません。
音楽部門が応募は若干多いとお聞きしていたんですが、実際は パフォーマンス部門よりも合格者はかなり少ないですね。これ はどういうことなんでしょうか。
まず応募の段階でこの制度に対する誤解がかなりあった様で す。つまり路上での営業許可というとらえ方をする人がいまし て、例えば占いとか手相とかというのは完全に商売なわけです。 でもこの制度で目指しているものは違います。それを勘違いし て、特にパフォーマンス部門ではマッサージ師の人とか実際に
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-1 ヒアリング調査/ヘブンアーティスト事務局
いました。 音楽部門ではギターの弾き語りというのが多かったです。今 回これを契機に彼等を排除するのではという
が
を呼んだら
しく、それで取りにきた人がけっこういました。
ライセンスをもっていないと取り締まれるという危機感にから れて来たと?
そうですね。もちろん今回の制度は本来締めだしが目的では ないんです。音楽部門はそういうことで危機感にかられて来た 人が多かったから、なかなか人に聞かせるというレベルに達し ている人が少なかったんです。だから合格者も少なかった。
実際に活動が始まって、施設側からの反応は
最初はよけいな仕事が増える、というイメージがありました。 でも実際どうかというと、いまでもゲリラ的にやっている場合 がありますが、そういうのを排除しようとすると、演技の途中 でなんで止めるんだ、とお客さんまで敵にまわしてしまいます よね。かといって規則ですから放っとくわけにもいかない。対 応が難しかったわけです。 でも制度が始まれば、ライセンスを持っていればできますか ら、次の募集に応募されたらどうですか、というアナウンスが できます。お客さんの方にもヘブンアーティスト制度が定着す れば、納得してもらえます。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-1 ヒアリング調査/ヘブンアーティスト事務局
対応ができるわけですね。
そうですね。管理の面でもいいし、お客さんも楽しんでいる ということで反応は案外いいですね。
パフォーマーからはどうですか。
アーティストの方にはちょっとまでシステム面が強く、窮屈 に感じられていると思うんですが、これから活動が進んでいけ ば、例えば複数のアーティストでセッションするとか、一日借 り切って交代でやるとかもできると思います。演技時間が長い 人もいれば短い人もいますから。
事務局としては自主的に運営されることを望んでいると?
そうです。こちらとしては誰がいつどこでやるかということ だけ押さえておいて、あとはそれぞれでやっていただくと。今 後は各場所で予約などもできるように進めています。場所に よって管理事務所があいている時間もまちまちなので調整が少 し難しいんですが。
現状で問題点と改善策は。
地下鉄や屋内の活動場所などの活動時間をずらす等の処置を 場所に応じて行っています。
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-1 ヒアリング調査/ヘブンアーティスト事務局
あとは最初の場所の選定が、アーティストの希望する場所と は必ずしも一致していないということです。井の頭公園の西園 野外ステージなどは駅から遠いんですね。実際に利用されてい ないという現状をどうこちらでテコ入れしていくか。すぐ廃止 してしまうか、残していくのか。場所が今後増えていけば自然 に淘汰されていくということもあるでしょう。 また芸人さんによっては、例えば火を吹くパフォーマンス をする人が、ヘブンでは危険ということでできないですから※ ※3-4-1.2 火を吹くなどのパフォーマンスは禁止 されている。 P15 2-2制度の仕組み/活動条件の項 参照
、ヘブンの時と他の場所でやる場合と芸を変えるらしいん
3-4-1.2
ですね。そういった制約もあるわけですから、なるべくアーティ ストにとって魅力的な制度になるようにしていく必要がありま すね。
ヘブンアーティストへの出演依頼であるとか、活動場所の提供 というのはあるんですか?
これはかなりあります。 まず、イベントなどへの出演以来。それと商業施設の広場と か公共的なスペースをヘブンアーティストの活動場所として自 由に使ってほしいという話と2つあります。 民間の施設も大道芸に関して興味があって集客によさそうだ と思っても、大道芸人がどういう人たちなのかイメージがつか ないわけです。連絡もとれない。イベント会社とかに頼むと仲 介料で予算の折り合いがつかない。そこにヘブンアーティスト というリストがあって、東京都が、まあいってみればバックに
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-1 ヒアリング調査/ヘブンアーティスト事務局
ついていると。そういう安心感というのがあるようです。 アーティストの活動はあくまで自主的なものですから常に芸 人がいるということには必ずしもなりませんよ、という風に話 していますが、それでもぜひ、というところも多いです。 今までは路上なら警察がでてきて、民間ならガードマンが出 て来たわけですが、でも一定のルールでできるなら認めていき ましょうという感じが民間にも出て来ている様ですね。これは いい方の反応ですね。 東京都でこのような制度を始めて、民間の方にこんなに話が ※3-4-1.3 2002年10月25日正午に東京丸の内 仲通りで東京都主催の路上パフォーマ ンスが行われた。警視庁が道路使用を 許可し、ヘブンアーティストによる初 めての公式路上パフォーマンスが実現
およぶとは思っていませんでした。アーティストとしても場所 が増えますからいい傾向だと思います。 役所では昼間の時間が基本になりますが、民間であれば24 時間管理のところもありますから、夜間でもできますよね。サ
した。
ラリーマンなどがアフターファイブで時間を気にせず見てくれ
「ヘブンアーティスト IN Maru
ますから夜間というのはやりたいアーティストも多いですよ。
nouchi」 ■日時
投げ銭もはいるでしょうし。
平成14年10月25日(金) 午後12時15分から13時まで ■場所
活動場所は今後ふえていきますか。
丸の内仲通り(約900m) ■出演者 ヘブンアーティスト と海外アーティスト10組 ■主催 東京都
広がっていくと思いますね。こちらはフレームだけを作れば 後は各自で出来るような形にしたいと考えています。
■共催 大手町・丸の内・有楽町地区再開発 計画推進協議会 特定非営利活動法人 大丸有エリア
歩行者天国はどうなりますか。
マネジメント協会 ■協力 三菱地所(株)
この間の丸の内※3-4-1.3は路上での活動の取っ掛かりです。警
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-1 ヒアリング調査/ヘブンアーティスト事務局
察というのは根本的に人の集まるのを嫌うから、警察との交渉 は必要です。でも実際見てしまえば印象が悪いはずがないんで す。警察が心配しているような得体の知れないというか、無茶 をするような人はヘブンアーティストにはいませんから。 両者が歩み寄っていかないといけないと思います。まずは銀 座(の歩行者天国)に限らず道路での活動を何とかできないか 進めています。 その他は今は特には考えていません。
全国の自治体からも問い合わせがありますよ。都道府県レベ ルから市町村レベルまで様々です。 東京都としては大道芸の認識を変えていこうというか、文化 事業として東京全体がこれで活気づくというのを目指していま すが、地方は活性化目指しての産業政策といった流れが強い。 公の場でできるというのは今まであまりなかったから、実際ど うなのか様子見といったところでしょうか。 ※3-4-1.4 静岡市では1993年から、演技許 可申請書を提出し、許可されたパ フォーマーに市内の公園など3ケ 所を解放している。許可証は5年
静岡※3-4-1.4などでもこういった制度はやられていますが、大 道芸ワールドカップの時しか人がこない。開放されてもふだん 活動が成り立たないようです。
間は有効となり、午前10時から 午後9時までの間にパフォーマン スが行なえる。
今後どのようにこの制度の評価を決めていくのか、その判断基 準はどうお考えですか。
この制度も賛否両論あります。 ある種誤解があって、お上がやることじゃない、という意見
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-1 ヒアリング調査/ヘブンアーティスト事務局
もあります。 実際に見ていただければ理解してもらえます。やはりそうい う風に理解が広がっていくことが大事だと思います。 観る側の意識、レベルが高くなっていくことが重要で、場所 の提供者、観客、パフォーマーそれぞれのレベルが相乗的にあ がっていくこと、育っていくことが成功だと思います。 (2002年11月 東京都庁にて)
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-2 ヒアリング調査/大道芸プロデューサー
●3-4-2大道芸プロデューサー 橋本隆雄氏へのヒアリング
ヘブンアーティスト制度における橋本さんの役割は
コンセプトを出したということだよ。石原都知事はあんまり 大道芸というのは見たことなくて、ニューヨークとかパリの地 下鉄みたいなのをやろうとしてた。でもパリの地下鉄とかは芸 人が車両を渡り歩いて、音楽を演奏したりして客に投げ銭をも らうスタイル。 ※3-4-2.1 P12 ヘブンアーティスト制度の沿 革参照
そこで去年上野でテアトルドリュー ※3-4-2.1 というのをやっ て、一日都知事に見てもらった。それでああこういうレベルの 高いものなのか、それじゃあこういう大道芸を文化として東京 の都市にとりいれましょう、ということでヘブンアーティスト がはじまった。
海外の大道芸の現状について
パリなどでも大道芸が行われているのはポンピドーセンター など3ケ所程度。そこら中でごろごろいるわけではない。パリ は街全体が観光地だからそこらへんの道で大道芸を始めると観 光客の邪魔になる。レベルの高い大道芸を日常的にやっている 場所はほとんどない。大道芸のフェスティバルでみなやるんだ。 ニューヨークやパリの地下鉄以外ではモントリオール、 チューリッヒ、シカゴなどでライセンス制度があるがこれは税
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-2 ヒアリング調査/大道芸プロデューサー
金を払わせるために発行している。 だから東京都のヘブンアーティストは都市のなかで自由に演 技できる非常に画期的なものだ。
ヘブンアーティスト制度について
上野公園や井の頭公園が開放されたということが大きい。上 野公園は大道芸の聖地みたいなものだ。多くの有名な芸人が上 野でスタートした。上野公園は都の管理で芸人などの排除を警 察に頼んでいたわけだ。国有地とかじゃないから条例をかえる 必要がない。都が認可すればすぐできるようになる。何でも認 めてしまうと問題があるからヘブンアーティストというレベル の高い芸人だけ許可する。 代々木公園も大道芸を楽しみに待つ人が出てきて、芸人がく るようになれば第二の上野になるかも知れない。
いま芸人が一番やりたい場所はまず銀座の歩行者天国、それ から新宿の歩行者天国だね。歩行者天国というのは世界でも珍 しい。銀座は最初から目をつけていて、都知事にもホコ天で大 道芸やらないでどうする、と話していた。この間丸の内でアピー ※3-4-2.2 P81 参照
ルのためのイベント ※3-4-2-.2をちゃんと許可とってやったんだ けど、あそこは人が多いから認可されれば成功するよ。歩行者 天国は警察の管轄だからどうなるかわからないが。
日本の都市は人口が密集している非常に特殊な都市だ。大
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-2 ヒアリング調査/大道芸プロデューサー
道芸人は人がいる所でないとできない。他の国ではまず人がい ない。東京で1200万人、横浜でも380万人もいる。また東 京はビジネス街(ダウンタウン)と歓楽街が密接している。ビ ルの中に2万人とか常にいるでしょう。その人たちがアフター ファイブで遊びの気分になっておりてくるから、大道芸という アトラクションは向いている。
これから大道芸が行われうる場所はどのような空間でしょうか
大道芸のあり方は変化している。横浜のみなとみらいのク イーンズスクエアは私がプロジェクトチームに入って、設計段 階から関わった。変な噴水とかスタチューとか置くのは止めて、 ただ広場にしなさいっていったんだ。だから大道芸向きの空間 になっている。 いま他にもいくつかの再開発のプロジェクトに関わってい る。バブルが弾けて、いかに
けようかというのから、ゆとり
だとか、文化というのものに皆が注目するようになったんじゃ ないか。だから企業とかが大道芸を取り入れようとする。 ※3-4-2.4 パリの副都心ラ・デフォンス (フランス)
新しい丸ビルとかビルのオーナーが認可すれば私有地だから すぐできる。その場所にあった芸人をヘブンアーティストの中 からさらに選んでやればいい。芸人も人の多いところでできる し、企業はにぎわいをつくりたい、両者のニーズが合う。
フランスのラ・デフォンス※3-4-2.4はそういうスペースを考え てつくっているらしいが、人はこない。ヨーロッパの人はああ
3章 研究結果
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
3-4-2 ヒアリング調査/大道芸プロデューサー
いう新しいのが嫌いなんじゃないかな。ヨーロッパの建物は基 本的にレストアだから大きい空間をあらたにつくることはでき ないけど、日本はまだ再開発も多くて大道芸に向いた空間を設 計段階からつくることができる。 (2002年10月 渋谷Bunkamuraにて)
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4章 考察・まとめ 4-1 考察 4-2 まとめ 4-3 展望
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4-1 考察
■4-1考察 ○3-1アンケート調査(3-1)の結果に関する考察 天候、通行量を重視する傾向が全体でみられた。 音楽型では場所の広さや風を他のタイプほど重視しないことが 分かった。これは音楽演奏というパフォーマンス形態が直接的 な空間野広さや肉体のバランス感覚をさほど必要としないため と考えられる。 全体としてどの要素も重視度が極端に低いということはな かった。これは演技に影響をおよぼす要素が多く、複雑な条件 下でストリートパフォーマンスが行われているためと考えられ る。
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4-1 考察
○活動状況の分析(3-2)の結果に関する考察 公園の活動場所の利用状況では上野公園、井の頭公園など以 前よりパフォーマンスが行われていた場所の利用が多かった。 新しく認可されてもほとんど利用されていない場所もあり、同 じ公園という役割を持つ場所であっても、パフォーマーのニー ズに合うかどうかは条件により大きく変化することが分かる。 地下鉄駅構内の利用は週一回とはいえ、利用頻度は高く、駅 構内がパフォーマーにとって魅力的な活動場所となる可能性が ある。
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4-1 考察
○活動実態調査(3-3)の結果に関する考察 4タイプに分けた活動場所のうち、新しい活動場所である3 タイプに関して考察する。
・地下鉄駅構内-新宿西口駅 活動場所は通路空間で狭く、天井も低い。通行量は多い。電 車から降りた客が数分に一度通り過ぎる。足をとめる人は少な く、観覧時間も短い。客層は場所柄多様である。 音楽演奏は短いスパンで何曲も演奏できるため、客層に合っ ている。
・広場-都民広場 活動場所は広く開放的である。周辺に集客性の高い施設がな いため通行量は少ない。客層は観光客か周辺ビル関係者である。
・オフィスビル周辺-東京国際フォーラム 活動場所は建物の
間の公共空間で、通行量は平日は昼間の
時間帯はサラリーマンなどでにぎわう。その間であれば足を止 める通行人も少なくない。オフィス街のため、比較的静寂で落 ち着いた雰囲気がある。
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4-1 考察
○ヒアリング調査(3-4)の結果に関する考察 ストリートパフォーマンスの現代社会における潜在的な需要 が非常に高いことが今回のヒアリングで分かった。 同時に今までパフォーマーのニーズと場所の管理者、観客の ニーズをつなげるシステムや場がなく、今回のヘブンアーティ スト制度がその役割を果たすものとして注目されていることが 明かとなった。
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4-2 まとめ
■4-2まとめ1 今後認可される可能性のある場所のパフォーマンス空間とし ての可能性を、考察であげた3つのタイプの活動場所の現況か ら予測する。
1.駅構内 駅という場所の特性上、集中力を要する、演技時間の長いパ フォーマンスは向かない。音楽演奏などは一回の演奏時間が少 ないため、次々に異なる観客を得やすい。 また、屋内空間のため天候に左右されない利点がある。 しかし、問題点として基本的に移動空間として設計されてい る駅構内では、人が溜まりやすく、かつ通行の邪魔にならない 場所を選ぶのが困難である。
2.広場 大規模施設の周辺、あるいは施設内につくられた広場では、 面積の大きい、開放的な活動場所を確保できるが、施設の利 用者以外の人が通行しない場合が多いため、にぎわいのあるパ フォーマンス空間をつくるためには、施設周辺の環境の集客力 に左右される。 都民広場の例をみても都庁を訪れる人以外が活動場所を通行 することは少なく、歓楽街からも離れているために広さに見合 うだけの集客が望めない。しかし、ヘブンアーティストのオー ディション会場となった場合など、イベント的なパフォーマン ス空間としての可能性は考えられる。
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4-2 まとめ
3.オフィスビル周辺 都市空間において常に一定の人数が同時に集まる場所とし て、オフィス街とその周辺の商業施設はパフォーマンス空間と して今後期待できる。 東京国際フォーラムでは昼休みの時間が活動時間となって いるが、民間施設の場合、帰宅に向かう通行人を期待できる 夜間の活動も許可されるであろう。公園や、歩行者天国とは異 なる雰囲気を持つ空間では、従来には見られなかった多様なパ フォーマンスの可能性がある。
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4-2 まとめ
■4-2まとめ2 ストリートパフォーマンスを都市の中に計画的に取り入れよ うとする時に、都市あるいは建築との関わりという視点からは、 いくつかのやり方が考えられる。すなわち、
a.都市または建築に変化を加えることなく演技空間をつくる b.都市または建築に何らかの変化を与えて演技空間をつくる c.計画段階から演技空間を想定して都市または建築をつくる
の三つのタイプである。
ヘブンアーティスト制度はa.のタイプで、パフォーマーに 自主的な活動を促すという点では半計画的ともいえる。 b.では、大道芸フェスティバルなどで商店街を歩行者天国 にする例がある。ストリートパフォーマンス空間を生み出すた めに都市の形やシステムに具体的な変化を加えるのは個人では 難しい。従ってこのタイプでは計画的ストリートパフォーマン ス空間を大規模に展開するイベント型のものが多い。 c.は近年のストリートパフォーマンスへの社会的な認識、価 値観の変化を最もよく示すタイプである。これは商業施設など でストリートパフォーマンス(屋内でのパフォーマンスも含む) を行うスペースを確保し。その場所で行われるパフォーマンス そのものを空間の価値を高めるものとして利用する。 横浜みなとみらい地区の開発では、大道芸フェスティバル を多くプロデュースしてきた橋本隆雄氏がプロジェクトに参加
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4-2 まとめ
※4-2.1 吹き抜けを利用したパフォーマン ス。(野毛大道芸)
し、ランドマークタワーの吹き抜けなどに実際にその意見が反 映されている。毎年春に開催される野毛大道芸では、実際にこ れらの空間がパフォーマンスポイントとして使用 ※4-2.1されて いる。これはバブル期の計画だが、現在進行している他の再開 発プロジェクトにも橋本氏は参加しており、計画する側のスト リートパフォーマンスに関する関心の高さを伺わせる。
このように、ストリートパフォーマンスと都市との関係はよ り密接なものに変化し、そこから新たな都市空間が生まれ始め ていることが、本研究をとおして明らかになった。
4章 考察・まとめ
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
4-3 展望
■4-3展望 研究をすすめる上で浮き彫りになった問題点は、ストリート パフォーマーという存在の定義の難しさである。パフォーマン ス内容と目的の多様さは、おおまかな分類すらも難しく、偏っ た見方で研究を進めてしまったという反省がある。 また、今後の課題としては、より具体的なパフォーマンス空 間の選定基準の確立が必要である。パフォーマー、観客、場所 の管理者それぞれのニーズが満たされ、多様性のあるパフォー マンス空間の計画のために、後続の研究に期待したい。
おわりに
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
■おわりに 謝辞 論文執筆にあたり、多くの方々に御協力頂きました。この場 を借りてお礼申し上げます。 まず研究室に入れていただき、好きなテーマで論文を書かせ て下さった渡辺仁史先生、ありがとうございました。そしてい つも静かな口調で、最後まで丁寧にご指導くださった担当の田 口さん、ありがとうございました。 木村洋平さん、川井さん、長沢さんには研究の内容について 深い洞察をいただきました。 藍さん、渋谷さん、齋藤さんには楽しい研究室での徹夜の仕 方について深い洞察をいただきました。研究室の諸先輩方にも いろいろなところでお世話になり、人見知りな僕の研究室生活 を価値的なものにしていただきました。 卒論生の仲間には何度も励まされました。卒論後のカラオケ が楽しみでここまで来れました。 パントマイムの先生であるハッピィ吉沢さん、パントマイム サークル舞☆夢☆踏(マイムトウ)のみんなには大学生活を通 じてお世話になりました。 このような形でマイムトウで学んだことを発表でき本当にうれ しいです。 橋本さん、事務局の吉田さんにはお忙しい中、貴重なお話を していただき、ありがとうございました。 最後に何度も無断外泊してしまいましたが、何もいわず見 守っていてくれた家族に感謝します。
おわりに
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
パントマイムと建築と この研究に着手したきっかけは、大学1年の時に何を間違 えたか、パントマイムサークルに入ってしまったところから始 まります。 それ以来建築学科パントマイム専攻の学生として学業と練習 に励み、東京都から大道芸のライセンスをもらったりしました。 卒論は自由なテーマでいいとは聞いてはいたものの、大道芸 の話で1冊かけるとは思いませんでした。何度も後悔しまし たが、研究を進めれば進めるほど、このテーマが面白いことが わかり、最後までやって良かったという気持ちと、もっと建築 や都市計画に関して、あるいは演劇や文化史に関して勉強すれ ば良かったという反省の気持ちが共存しています。 やり残した事だらけではありますが、多くの方の力を借りて 「自分にしか書けない卒論を」という当初からの目的はなんと か達成できた気がします。ありがとうございました。 2002.11.11
参考文献
ヘブンアーティスト活動場所の利用実態に関する研究
■参考文献 ○参考文献 大道芸イキイキ空間 にぎわいづくりの全ノウハウ 高田佳子 学芸出版社 1992
大道芸および場末の自由 平岡正明 開放出版社 1995
現代の劇空間 小谷喬之助 彰国社 1975
野獣系でいこう!! 宮台真司 朝日新聞社 1999
○参考論文 パフォーマンス空間における観客の行動特性に関する研究 伊藤倫子 早稲田大学渡辺仁史研究室卒業論文 1997
パフォーマンスを誘発する空間の研究 落海達也 山田直子 早稲田大学渡辺仁史研究室卒業論文 1999
繁華街におけるストリート・パフォーマンスの実態とその発生場所の空間特性 コミュニケーションを誘発する都市空間に関する研究 阪田弘一他4名 日本建築学会計画系論文集 2001
○参考URL 東京都ヘブンアーティスト http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/bunka/heavenartist/
大道芸ワールドカップ in 静岡 http://www.daidogei.com/index.html
野毛大道芸 http://www.nogedaidougei.com/
Music under New Yok http://www.mta.nyc.ny.us/mta/aft/muny.htm