無線タグシステムを使用した連結型スキー場における回遊行動特性

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はじめに 卒論の頃はスケートボードという建築において新しい分野の研究に取り組ん できた.誰も手を付けていない領域の研究をするのは,一番乗りになった気持 ちが味わえ,気分がいい. 卒論の延長で,横ノリスポーツ(サーフィン・スケートボード・スノーボー ドなどなど)の関係性についての研究でもしたいな,と考えていた時期もあっ た. そんな時,無線タグという新しいIT機器を使うと人の行動がいろいろわかっ てっしまうそうだ,ということを知り,誰も手を付けていなくて面白そうかも, と思ったのがこの論文のきっかけだった.


おわりに 建築の中でも,レジャー施設と時代の先端を行くIT機器を組み合わせた研究 ができて面白かったです.今後無線タグが世の中のどのようなところで応用さ れて行くのかを楽しみみにしています.

本研究に際し,無線タグ調査などでお世話になった,苗場スキー場,田代・ かぐらスキー場,西武建設,東芝の皆様にこの場を借りてお礼を申し上げます. こんなにも沢山の企業と大学を交えての研究は,私にとって貴重な経験でした.

また,渡辺仁史先生をはじめ,中村良三先生,山口有次さん,木村謙さん長 らく大変お世話になりました.

最後の最後に長澤夏子さん,小松喜一郎さんに助けていただきました.夜中 に何度も起こしてしまってごめんなさい.でも,心から本当に感謝しています.

高柳さん,最後の一年間はあまりお話しできませんでしたが,それまでの間 に,研究以外にもあらゆる方面でお世話になりました.こんな私の面倒をよく みてくださってありがとうございました.

卒論の頃から直属の上司である福永さん,長らくお世話になりました.

また,レジャーゼミの先輩であり,9Fプロジェクト室の先住民である葛島 さん,丹羽さん,9Fとっても楽しかったです.最初は研究室に馴染めなくて どうなることかと思っていましたが,今ではこんなに住み着くようになってし まいました.9F最高!

二人に代わって今年は,ともやんと9Fでサバイバーしてました.あの自炊 生活は楽しかったなー.

そして,レジャーゼミで一緒に頑張ってくれた森君,大西君,桜井さん,沼 田さん,調査の頃からずっと一緒に作業をしてくれましたね.みなさんがいな ければ,この論文はありません.ありがとうございました.


目次 はじめに

第1章 序論 1.1 研究目的

1

1.2 研究背景 1.2.1 スキー場分類

2

1.2.2 スキー産業

4

1.2.3 スキー用具

10

1.2.4 日本を代表するスキー場

17

1.2.5 連結型スキー場

21

1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究 1.3.1 人間行動調査手法の分類

23

1.3.2 スキー場に関する既往研究

30

1.4 無線タグシステム 1.4.1 名称

32

1.4.2 RF-ID とは

32

1.4.3 IC タグの特徴

34

1.4.4 RF-ID の分類 1.4.4.1 機能による分類

36

1.4.4.2 周波数による分類

38

1.4.4.3 用途により選ばれるタグの種類

40

1.4.5 検知のメカニズム

41

1.4.6 IC タグの用途

44

1.4.7 関連用語集

49

1.5 語句の定義

56

第2章 調査方法 2.1 調査概要

59

2.2 アンケート調査

61

2.3 無線タグ調査


2.3.1 システム機器

63

2.3.2 行動履歴の記録

63

2.3.3 システム概要

64

2.3.4 リーダー設置場所・設置時刻

65

2.3.5 リーダー設置方法

68

2.3.6 使用機材

71

2.3.7 タグ装着方法

76

2.3.8 ログデータの形式

78

2.3.9 バーコードリーダーによる入退場時刻の記録

80

第 3 章 ログデータ分析方法 3.1 利用回数・利用時刻の集計

81

3.2 レストハウス滞在時間の集計

85

第 4 章 分析結果 4.1 アンケート集計 4.1.1 属性単純

87

4.1.2 滑走時に重視する項目

95

4.2 ログデータ集計 4.2.1 リフト・レストハウス集計 4.2.2 苗場・田代 / スキー・スノーボード別集計

98 102

第 5 章 無線タグ調査環境の検討 5.1 リーダー作動時間帯

111

5.2 受信範囲

114

5.3 感知率 5.3.1 感知率の算出

116

5.3.2 感知率結果

117

5.3.3 タグの組み合わせ方

118

5.4 リーダー設置個所の検討 5.4.1 リーダー設置環境

121

5.4.2 リーダー設置図

123


5.5 動作確認

132

5.6 調査改善点

133

6 章 まとめ 6.1 成果・結果

135

6.2 問題点

137

6.3 展望

138

おわりに 参考文献・URL

参考資料


1.1 研究目的

1.1 研究目的 本研究では,無線タグシステムという新しい行動調査手法を用い,これまで は得ることができなかった個人の属性データと一対一で対応した行動履歴を大 量に収集した.記録されたログデータを基に,広範囲にわたる連結型スキー場 を事例とし,多様化する利用客の行動特性を明らかにすることを目的とする. これにより,行動パターンと満足度の関係が今後の施設計画に活用できる.そ れとともに,無線タグシステムの有用性を検証する.

1 -


1.2 研究背景

1.2 研究背景 1.2.1 スキー場分類 地域社会や経済との関係をもとに国内のスキー場を分けると大きく以下の様 に分類できる.

○第一グループ

温泉地のオフシーズン対策や,冬に仕事のなくなる農家の出稼ぎ対策として 開発されたスキー場.古くからの大規模スキー場のほとんどが,このタイプで, 主として地元の旅館や民宿に利用客が泊まることにより地域への経済効果が発 揮された.スキー場供給が足りない時代に出来,問題なく伸びてきた所が多い ため, 「雪が降れば利用客はくる」と考えがちであることや, 「オフシーズン対 策」 「出稼ぎにでるよりはスキー場で働くほうがマシ」という消極的な意識があ るため, 「顧客指向経営」に転換しにくいという問題点を抱えている.すでにそ の地域にとってスキー関連産業が主産業になっているケースがほとんどだが, 交通の便や方法の変化,都会の生活水準の上昇についていけないために,宿泊 客が減りスキー場利用者も減るという大きな問題が発生している.

○第二グループ

主として80年代以降になって,もともと人の住んでいなかった地域に開発さ れたリゾート.過疎化に対して,新しく開設されたリゾートによる雇用創出効 果や大型投資に伴う固定資産税の増収が期待された.豊富な外部資本を投入し た「顧客指向経営」によって市場にインパクトを与え,スキー場産業にも高度 成長をもたらした.大きな投資負担を,経営の減量化によって少しでも小さく しようとしているが,地域での雇用創出などの経済効果はある程度維持されて いる.ただし,経営が不安定な企業のなかには,存続性が不安なケースも出始 めた.

- 2 -


1.2 研究背景

○第三グループ 90年代になって,それまでのスキー場空白地帯にあまり大きくない規模でス キー場を開設し,近隣エリアでそれなりの市場を形成するケースがみられるよ うになった.基本的には雇用創出などによる過疎化の歯止めや,地域の経済活 性化を狙いとしているが,結果的には, 「地域のイメージの上昇,アイデンティ ティの創出」といった効果が最も評価されている.

また,現在のスキー場産業の現状を ) 劔持氏 1) は以下のように説明している

“90 年代後半からは, 「本来必要なメンテナンス・リニューアル」を行う資金が 不足し,施設の陳腐化が進んでしまった.バブル崩壊後も,消費者の生活レベ ルは年々着々と向上していて,いまや一般家庭でもシャワー式トイレが当たり 前なのに,スキー場や宿泊施設のトイレはそうではないという「リゾートと通 常生活の逆転現象」が発生している.お客さまの生活の向上にずっと気づかず に,同業者間での相対比較による傷のなめあいや,低レベルな競争に目を奪わ れた結果が,今日のスキー場産業の「壊滅的危機」を呼んだといえるだろう.” 21世紀に入り,経営の見直しや情報化への取り組みを初めているスキー場 もいくつか見られるようになってきたが,それでも全国626 2)あるスキー場の大 半は依然,現場の「カン」による経営・運営を続けている.

1)劔持 勝:雪国経済フォーラム代表 2)丹羽 洋一:情報ネットワークによるスキー場情報の閲覧効果に関する研究,早稲田大学 修士論文,2001 年度

- 3 -


1.2 研究背景

1.2.2 スキー産業 ○参加人口推移

万人 2000 1800 1600 1400 1200 ski

1000

snowboard

800 600 400 200 0 H5

H6

H7

H8

H9 H10 H11 H12 H13

図 1.2.2.1 スキー・スノーボード参加人口推移

スキー人口はH5年をピークに毎年ほぼ減少の一途をたどっている.H9年 頃から台頭してきたスノーボードは,以来増加を続け,現在はスキー人口の半 分ほどまで増加した.

○参加率

%

20 18 16 14 12 ski

10

snowboard

8 6 4 2 0 H5

H6

H7

H8

H9

H10 H11 H12 H13

図 1.2.2.2 スキー・スノーボード参加率

スキー・スノーボードの参加率は参加人口推移とほぼ同じような増減をた どっている.

- 4 -


1.2 研究背景

○年間平均活動回数 回

10 9 8 7 6 ski

5

snowboard

4 3 2 1 0 H5

H6

H7

H8

H9

H10 H11 H12 H13

図 1.2.2.3 スキー・スノーボード年間平均活動回数

年の平均活動回数はスノーボードの方が圧倒的に多い.

○年間平均費用 千円 140 120 100 80

ski snowboard

60 40 20 0 H5

H6

H7

H8

H9 H10 H11 H12 H13

図 1.2.2.4 スキー・スノーボード年間平均費用

H9年以降,スキーとスノーボードの年間費用の差はあまりみられない.ス ノーボードの方が年間回数が多いことを考慮すると,一回あたりの費用はス キーの方が高いことになる. - 5 -


1.2 研究背景

○参加・消費実態(H 13) 表 1.2.2.5 スキー・スノーボードへの参加消費の実態(H 13)

A 参加人口 (万人) スキー スノーボード

B 参加率 (%)

C 年間平均 活動回数 (回)

E 一回当た り費用 合 計 (円)

D 年間平均費用(千円)

用具等

会費等

F 参加 希望率 (%)

1080

9.9

4.1

24.8

48.5

73.3

17880

17.6

530

4.9

6.2

29.3

50.5

79.8

12870

9.6

参加人口・参加率・参加希望率とも,スノーボードはスキーのほぼ半数であ る.しかし,年間の費用はスノーボードの方が多い.これは,スノーボードの 方が,少数のコアな人がスポーツ自体を支えていると考えられる.

○スキー場動向(H 13) スキー場の索道収入は、前年比 2.9%のダウンとなった。色々と集客対策を 施しているが入場者数の減少に歯止めがかからない。期待されていたスノー ボーダーは、今や入場者の半数近くまで増え、限界に近づいている。ボーダー 用アトラクションの設置は概ね一巡し、魅力的なアトラクションだけが選択さ れるようになっている。ファミリースキーヤーを呼び込もうと、キッズゲレン デ、ソリ専用ゲレンデが増えている。隣接する複数のスキー場が連携し、魅力 あるエリアを形成しようとする動きは顕著である。 「 苗場スキー場」と「かぐら・ 田代スキー場」を 15 分で結ぶ、世界最長の「苗場一田代ゴンドラ(愛称ドラゴ ンドラ)」が登場し注目を集めた。ショートスキー(ファンスキー)、クロスカ ントリー(歩くスキー)、スノーシュー、ソリ、タイヤチューブ、スノーモービ ルなど、多様なスノースポーツが楽しめるようになってきた。ジャンプやト リックなどのセクションを組み合わせた種目を多数集めた「X−GAMES (エックスゲーム)」が開催されるようになり、人気を呼んでいる。今後は、ス ノースポーツをしなくても楽しく過ごすことができるスノーリゾートとして、 独自の魅力を打ち出していくことが重要になっている。 - 6 -


1.2 研究背景

○スキー場関連記事

【東北のスキー場、冬の時代 ブーム去り不況、閉鎖・撤退約20】 スキー場が苦しんでいる.閉鎖や 休止されたり,資本参加していた企 業の撤退などが相次いでいる.中で も東北地方では,約20のスキー場 が廃止や経営撤退などに追い込まれ た.約10年前のスキーブームが 去った後,不況や利用客の減少,レ

図 1.2.2.6 「休業中」という看板が立つ岩手高原スキー

ジ ャ ー の 多 様 化 な ど が 背 景 に あ る .場の入り口。=岩手県雫石町で 関係者は「スキー場は過剰気味で,淘汰は仕方がない」といい,スキー場は「冬 の時代」だ. 「休業中」.岩手山の南斜面にある岩手高原スキー場(岩手県雫石町)の入り 口看板は雪をかぶる. ピーク時は年に約31万人が訪れ,同県では安比高原,雫石に次ぐ人気ス キー場だった.だが98年9月,岩手山付近で震度6弱の地震が発生.経営す る地産トーカン(東京)は「火山活動の活発化」などを理由に休業を町に伝え た. 近くの他のスキー場は営業を続けている.町は何度も再開を求めたが,会社 側は「安全性が確保されない.経済情勢やスキーを取り巻く状況も考えたい」と いう.川口善弥町長は「休業という限りそう受け止めるより仕方ない」と肩を 落とす. 63年にオープンした天元台高原スキー場(山形県米沢市)は昨秋,JTB (東京)や地元業者の出資会社が経営撤退を表明.受け皿が決まらないまま今 シーズンも営業を続けている.91年に約30万人だった利用客は,昨シーズ ンは6分の1に落ち込んだ.累積赤字は約6億円に膨らんでいた. JR東日本(東京)は昨年,資本参加していた県営田沢湖(秋田)から撤退. さらに,八幡平リゾート(岩手)からも今シーズン限りでの撤退を決めた.利 用客の減少などが原因だ.JR撤退後,民間会社や三セクで両スキー場の営業 は続くが利用者の回復が課題だ. 八幡平リゾートは東北新幹線の盛岡開業3年前の79年にオープン.91年 - 7 -


1.2 研究背景

の約30万人をピークに昨シーズンは約16万人まで落ち込んだ.東京から盛 岡まで新幹線で約2時間半,さらに車で約1時間かかる.この距離が利用客離 れに拍車をかけたという. 東北地方にはアルツ磐梯(福島)や大鰐温泉(青森)など第三セクター経営 で巨額の負債を抱えたまま営業を続けるスキー場もいくつかあり,利用客離れ は今後に暗い影を落とす.一方で独自色を出そうと模索を続けるスキー場もあ る. 首都圏からのスキー旅行を扱うJTBサン&サン(東京)は「東北のス キー場は,雪質がいいので自信をもってお客さんにすすめているが, 『東北は遠 い』というイメージがあり厳しい.飛行機で行く北海道の格安ツアーにも魅力 的に負ける.経済状況が好転する気配が見られない中,各スキー場は厳しい状 態が続いている」という.

◆閉鎖・休止した主なスキー場 《閉 鎖》 町営三ツ森(岩手・西根) 00年 利用者減 村営猿橋(岩手・沢内) 00年 老朽化 大湯温泉(秋田・鹿角) 01年 利用者減 市営五分一(福島・喜多方) 01年 赤字続きで 悠久山(新潟・長岡) 99年 利用者減 アクシオム(新潟・守門) 01年 三セク民事再生法申請 飯山国際(長野・飯山) 01年 親会社が撤退 信濃平(同) 01年 利用者減と小規模

《休 止》 ニセコ国際モイワ(北海道・ニセコ) 01年 経営譲渡協議中 石狩平原(北海道・当別) 01年 経営会社が倒産 岩手高原(岩手・雫石) 98年 火山活動の活発化 町営二居(新潟・湯沢) 00年 駐車場なく利用者減 姫木平(長野・長門) 98年 大型スキー場出現など 美しの国(長野・武石) 98年 村営小規模で利用者減 武尊オリンピア(群馬・片品) 01年 利用者減り経営悪化 草津静山(群馬・草津) 99年 利用者減 (2002/02/17 朝日新聞) - 8 -


1.2 研究背景

○スキー場の推移

図 1.2.2.7 スキー場の推移・過去一年の主な倒産や事業撤退

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1.2 研究背景

1.2.3 スキー用具 ○ノーマルスキーとカービングスキー

カービングスキーとは,それまでのノーマルなスキー板に比べてトップと テールが太くサイドカーブがきつくなっているため,より簡単にターンが出来 るスキーのことである.今では,モーグルやネイチャースキーを除くほとんど のスキー板がカービングスキーになっている.従来のノーマルスキーでは,ス キーを選ぶときの基準が「身長 +10 〜 25cm」であったが,カービングスキー の場合「身長=板の長さ」がおよその目安となっている.メーカーによって若 干の違いはあるが,初・中級モデルをイージ−カーブ,中・上級モデルをピュア カーブと呼んでいる.その他にも目的別に,レース用のレースカーブやエキス トリームカーブ,エアカーブなどがある.

図 1.2.3.1 ノーマルスキーとカービングスキー比較

- 10 -


1.2 研究背景

○カービングスキーの種類

カービングスキーは,サイドが短く,トップ部が幅広く,サイドカーブの回 転半径(R=Radius)が小さいのが特徴である.その結果,スキーの操作性,回 転性は,従来のスキー板(ノーマルスキー)に比べて飛躍的に向上し,ごく一 部のスキーヤーにしかできなかったカービングターンが,一般レベルでも体験 できるようになった. カービングスキーには次の 4 つのタイプがある. ・イージイカーブ 快適指向の一般スキーヤー 向き.性質はやさしく,適度な 横ずれにもきちんと対応して くれる回りやすさと,カービ ングの特性を併せ持つタイプ 表 1.2.3.5 イージーカーブ

のスキー.

・ピュアカーブ 中上級者及びレース指向者 向き.イージーカーブに比べる と,スキーのねじれ強度が強 く,回転の方向づけをしっかり 表 1.2.3.6 ピュアカーブ

行える,スポーツタイプのス キー.

・レースカーブ レース指向,レーサー向き. 競技の専用モデルだが,上級者 には意外とすんなり使えるス キーである.ピュアタイプのス 表 1.2.3.7 レースカーブ

キーに比べると,さらに方向づ

けの安定した性能を備えており,このタイプのスキーを使いこなすには正確に 雪面をとらえる技術とパワーが必要である. - 11 -


1.2 研究背景

・エキストリームカーブ フリー志向のスキーヤー向 き.サイドカットは最もきつ く,他のカービングスキーに比 べてさらに短い形状になって 表 1.2.3.8 エキストリームカーブ

いる.そのために従来の滑り方

にとらわれない,自由な発想の楽しみ方が可能である.

http://www.bc.wakwak.com/~wanwan/skiita.htm

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1.2 研究背景

○ファンスキー

1.ファンスキーの定義

長さ約 130cm 以下の短いレジャー用スキー板の総称. (幅の規定は無い)規 定の長さより長いニューコンセプトスキーはファンスキーに含んでいない.ま た,特段のバインディング等の制限は設けず,各メーカーからは比較的簡易な バインディングが開発されている. 欧米では 100cm 以下のスキーを「Skiboard」と呼んでいたが,最近は長さ の規定というよりテイスト(スタイル)でスキーボードとみられる事が多く,長 さはその考え方等によって定義される(World Skiboard Federation).ファ ンスキーであるが,FAN 1)では,130cm 以下のスキー板をファンスキーと規定 している.そのため FAN では,日本においてはファンスキーの中の一カテゴ リー/一スタイルとして Skiboard を捉えている.

2.マテリアル

主にスキー用のブーツ・ファンスキー専用ブーツを使用するが,ビンディン グによっては,スノーボードのハードブーツ・ソフトブーツ・山スキー兼用靴 を使用することもできる.ストックは特に使用しなくても楽しむことができる. 最近ではファンスキー専用ブーツも数多く販売され,こちらを利用する人も増 えてきた.年齢に応じて板を変えなくてよいところが,ファンスキーのもうひ とつの特徴になるが,一部メーカーでは子供用のブーツに対応した,ファンス キーもある.

板の形状も滑り方に応じたものが,各メーカーから販売されている.形状は 大きく分けて 3 種類に分類できる

1)FAN:日本ファンスキー協会 ホームページ参照 http://www.funskier.org/

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1.2 研究背景

・ツインチップ

表 1.2.3.9 ツインチップ

・ラウンドカット

表 1.2.3.10 ラウンドカット

・テールカット

表 1.2.3.11 テールカット

3.歴史

発祥はヨーロッパ.地元の登山家達によって,下山のテクニックであるグリ セード(靴底を滑らせ降りるテクニック)の効率を良くするための用具として 開発れさた.日本には十数年ほど前から輸入され,もともとショートスキーや ミニスキーと呼ばれ親しまれていたが,8 年前にスキー・登山専門店「池袋秀山 荘」を中心に,当時ショートスキー板を扱っていたメーカー数社が集まり, ショートスキーの販売促進を行う組織を結成.この板を多くの人々に親しまれ, 楽しく遊んでもらえるよう総称を「ファンスキー」とした.

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1.2 研究背景

4.短所と長所

長所としては,軽量かつコンパクト,販売価格が安い.長いスキーに比べ,と り回しが楽で,バランスがとりやすく,初心者でも技術の上達が早く簡単に滑 れようになる.また,スキー以外に幅広い楽しみ方も豊富で(下記にて解説) ファンスキーならでは自由な感覚が人気の秘密. 短所としては,斜面の緩い新 雪には板ごと埋ることがあるので滑りにくい.また 100cm 以下の板は DIN 規 格である必要はないため,開放機構のついていないビンディングも多く,外れ にくい反面,捻挫などのケガが起こる可能性がある.

5.遊び方

手軽に楽しめるセカンドスキーとして愛用する人々が増加し,欧米各国では, スキーのトレーニング用として,スクールや一般スキーまで広く活用されはじ める.日本ではスキーヤーだけでなく,インラインスケートやアイススケート, スノーボードの技術を応用して滑走するプレイヤーも現われ,ウインターにお けるアクティブなニューウェイブスポーツとして楽しむ人が増えている.これ はストックを使用せず,スケーティング・カービング・エアメイク・トリック ライディング・ハーフパイプ滑走など幅広く楽しまれている.

6.動向

日本のファンスキー人口約200万人(日本ファンスキー協会調べ)を超え, その多くはスノーボードに次ぎ,ニューウェイブスポーツとして認識され,欧 米諸国以上にファンスキーが普及する土壌にある.アメリカをでもファンス キーの持つ楽しさが追及され,スキーボードの愛称で,ウインタースポーツの なかで最もニュージェネレーションに注目されるアクティブスポーツとなって いる.今後,各国共通のオリジナル競技もつくられ,健全なるスポーツとして 国際交流の実現も近い.

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1.2 研究背景

○ショートスキー

ショートスキーというのは昔からある呼び方であり,今までにあった長いス キーに対して,短い物を総称してこう呼ぶことが多い.

○スキー用具動向

スキー・スノーボード用品の売上げは前年比 2.5%減となった。急成長を続 けてきたスノーボード用品の落ち込みは大きい。平成 13 年〜 14 年シーズンは、 簡単に楽しく滑ることができる短いカービングスキーの登場などで、スノー ボードからスキーへの復帰、ファミリースキーヤーの増加など、若干スキー回 帰の傾向がみられた。ただし、ソルトレークシティ・オリンピックは、長野オ リンピックと同様、用品の売れ行きにはあまり寄与しなかった。スキー、スノー ボードともに、ブランドの選別化が急速に進んでいる。板やビンディング、ブー ツの技術開発は進んでいるが、スノーリゾートライフそのものにあまり変化は みられない。

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1.2 研究背景

1.2.4 日本を代表するスキー場 ○ベース(麓)標高が高いスキー場 表 1.2.4.1 日本全国スキー場麓標高ランキング NO.

ベース標高

エリア

1

浅間2000パーク

1880m

信越

2

チャオ御岳

1810m

信越

3 4

ピラタス蓼科 志賀高原横手山

1760m 1750m

八ヶ岳 信越

5 6

信州湯の丸 八千穂高原

1710m 1630m

信越 八ヶ岳

7 7

志賀高原一ノ瀬 キッツメドウズ大泉清里

1600m 1600m

信越 八ヶ岳

御岳ロープウェイ しらかば2in1

1570m 1560m

中部 八ヶ岳

9 10

スキー場名

○トップ(頂上)標高が高いスキー場 表 1.2.4.2 日本全国スキー場麓標高ランキング NO.

トップ標高

エリア

1

志賀高原横手山

2305m

信越

2

おんたけ

2240m

中部

2 4

ピラタス蓼科 チャオ御岳

2240m 2190m

八ヶ岳 中部

5 6

草津国際 御岳ロープウェイ

2171m 2150m

北関東 中部

7 8

表万座 野麦峠

2131m 2130m

北関東 中部

開田高原マイヤ バラギ高原

2120m 2100m

中部 北関東

9 10

スキー場名

長野県の老舗スキーエリア,志賀高原の最も奥に位置しているのがフォー イースター渋峠スキー場.標高2300mの山頂に架かるリフトは日本一高いとい われている.ところが,中央アルプス千畳敷スキー場(標高約 2800 〜 2500 m) が日本一高所のゲレンデである.ただこのスキー場は,駒ヶ岳ロープウェイの 終点に広がる千畳敷がゲレンデで,リフトはなくTバー 1) のみしかない.さら に,滑走距離 1000 mのダウンヒル 2) コースはハイクアップ 3) するしかない, というスキー場とも山岳スキーともとれるようなところである.さらに冬季は 駒ヶ岳ロープウェイは休止となるため,滑走は4月からしかできない.どちら が日本一標高の高い「スキー場」と言えるかは曖昧なところである.

1)Tバー:稼動しているワイヤーに T 字状のものを掛け,そこに腰をあずけて上がって行く というもの.しかし,板は雪面の上を滑っているため.バランスを崩すと転倒する. 2)ダウンヒル:丘の上から颯爽と滑り降りるスキー競技.スキー競技アルペン種目の1つ. 3)ハイクアップ:斜面をリフト等を使わずに徒歩で登ること.ゲレンデによってはハイク アップ禁止の場合もある.

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1.2 研究背景

○標高差が大きいスキー場 表 1.2.4.3 日本全国スキー場標高差ランキング NO.

スキー場名

標高差

エリア

1

かぐら・みつまた・田代

1225m

上越

2

妙高杉の原

1124m

信越

3 4

野沢温泉 北志賀竜王

1085m 1080m

信越 信越

5 6

八方尾根 天元台高原

1071m 980m

白馬 東北

7 8

富良野 ARAI MOUNTAIN

974m 951m

北海道 信越

雫石 草津国際

930m 926m

東北 北関東

9 10

○コース数が多いスキー場 表 1.2.4.4 日本全国スキー場コース数ランキング NO.

コース数

エリア

1

志賀高原

スキー場名

90

信越

2

サンアルピナエリア

41

信越

3 4

ルスツリゾート 赤倉温泉

37 34

北海道 信越

5 6

ニセコ国際 石内丸山

34 31

北海道 上越

7 8

菅平高原 アルツ磐梯

30 29

信越 東北

苗場 上越国際

28 27

上越 上越

9 10

○リフト本数が多いスキー場 表 1.2.4.5 日本全国スキー場リフト本数ランキング NO.

リフト数

エリア

1

志賀高原

スキー場名

66本

信越

2

蔵王

42本

東北

3 3

八方尾根 石打丸山

33本 33本

白馬 上越

3 6

上越国際 苗場

33本 32本

上越 上越

7 8

栂池高原 赤倉温泉

29本 28本

白馬 信越

8 10

野沢温泉 菅平高原

28本 27本

信越 信越

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1.2 研究背景

○輸送能力が高いスキー場 表 1.2.4.6 日本全国スキー場輸送能力ランキング NO.

輸送能力

エリア

1

蔵王

スキー場名

52884人/時

東北

2

苗場

49200人/時

上越

3 3

石内丸山 赤倉温泉

47226人/時 44964人/時

上越 信越

5 6

八方尾根 上越国際

44784人/時 43308人/時

白馬 上越

7 8

野沢温泉 栂池高原

40910人/時 38950人/時

信越 白馬

9 10

安比高原 菅平高原

38040人/時 36326人/時

東北 信越

○日本一古いスキー場

日本に初めてスキーが伝えられたのは,明治 44 年.オーストリア人テオドー ル・フォン・レルヒ少佐によって一本杖の軍隊スキーが陸軍の高田第 13 師団伝 えられたのが始まりで,その場所は上越市の金谷山スキー場であった.その翌 年には,軍隊スキーで講習を受けた旧制飯山中学校の教諭によって長野県に伝 わり,3月には飯山中学の学生がスキーを紹介したのが野沢温泉スキー場の始 まりである.そして,この学生たちが飯山市の建具屋(小賀坂など)にスキーを作 らせたのが長野におけるスキー産業のようである. また,日本一早くスキーリフトが架設されたのは,同じく長野県の志賀高原 丸池スキー場である.

○日本一シーズンが長いスキー場

昨今では人工降雪機の恩恵を受け,11月初旬から滑ることができるスキー場 も増えてきている.しかし,所詮作り物の雪であり,枯草の上に狭いコースを 作り,何とか滑っているようでは本当のスキーの醍醐味には程遠い.そういっ た意味で,自然の雪で本当にシーズンが長いのは,北海道は大雪山系の旭岳ス キー場である.このスキー場は北海道で最も標高が高く,ゲレンデスキーは 11 月初旬〜5月下旬まで,クロスカントリーコースは10月下旬〜6月初旬まで楽 しむことが出来る. - 19 -


1.2 研究背景

○冬に滑れないスキー場

シーズンが長いスキー場がある半面,肝心のトップシーズンに滑れないス キー場というものもいくつか存在する.春スキーがメインとなる山岳スキーゲ レンデはそのようなところが多いが,新潟県の奥只見丸山スキー場はあまりの 積雪量の多さのため,他のスキー場がピークを迎える1〜3月の間は休業と なってしまう.関越道沿線では,谷川岳天神平もシーズン早くから春まできっ ちり滑れるスキー場として知られているが,首都圏からのアクセスがやや不便 なため,ピークシーズンにはお客さんが周辺のスキー場に流れてしまって却っ て穴場になっている.

SNOW People ホームページ(ゲレンデランキング)参照 http://www.iris.dti.ne.jp/~masaya/ranking/index.html アルプス社のメーリングリスト:< コラム:地図こぼれ話 > 第 34 話「日本一のスキー場」 参照

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1.2 研究背景

1.2.5 連結型スキー場 近年,複数のスキー場が提携し,連絡リフト・ゴンドラを設置し,共通リフ ト券の販売などを行っている.このようなスキー場を「連結型スキー場」とし て本研究で扱う.日本国内の連結型スキー場例を以下に挙げる.

○”Mt.Naeba Snow Resort” 「苗場スキー場」〜「田代スキー場」 「かぐらスキー場」 「みつまたスキー場」 を世界最長の「苗場─田代ゴンドラ(ドラゴンドラ)」で連結.

図 1.2.5 Mt. Naeba Snow Resort におけるスキー場連結状況

○湯沢高原・布場スキー場・GALA 湯沢・石打丸山・石打花岡スキー場 3 山共通一日券

○志賀高原 サンバレースキー場・丸池スキー場・蓮池スキー場・笠岳スキー場・ジャイ アントスキー場・東館山スキー場・発哺ブナ平スキー場・寺小屋スキー場・一 の瀬ファミリースキー場・一の瀬タンネの森スキー場・一の瀬ダイヤモンドス キー場・高天ヶ原スキー場・西館山スキー場・一の瀬山の神スキー場・焼額山 スキー場・渋峠スキー場・木戸池スキー場・前山スキー場・奥志賀高原スキー 場・熊の湯スキー場・横手山スキー場 志賀高原には標高 1325 mから 2305 mまで 21 のゲレンデが集結し,71 基の リフト,ゴンドラ,ロープウェイ,さらに各スキー場を結ぶシャトルバスで機 能的に連結した一大スキーリゾートである.全てのスキー場,シャトルバスは 全山共通のリフト券で自由に行き来することができる.

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1.2 研究背景

○八方尾根・岩岳・栂池 3 スキー場共通リフト券「白馬アルペンリゾート」が登場.

○ Hakuba47 ウインタースポーツパーク・白馬五竜・白馬八方尾根・白馬岩岳・ サンアルピナ白馬さのさか・白馬ハイランド・白馬みねかたスキー場 白馬HAPPY7共通リフト券.

○白馬コルチナ国際スキー場・白馬乗鞍

○斑尾高原スキー場・タングラムスキーサーカス 斑尾山共通リフト券

○バラギ高原スキー場・パルコール嬬恋スキーリゾート

○ニセコヒラフ・ニセコ東山・ニセコアンヌプリ 3つのスキーエリア共通のニセコフリーパスポートはIDカードで自動改札機 を通るフリーゲートシステム.

○大山スキー場 西日本一の規模を誇る「大山スキー場」は豪円山,中の原,上の原,大山国 際の 4 つのスキー場の総称.

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1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究

1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究 1.3.1 人間行動調査手法の分類 ○行動調査手法 人の行動を調査する場合,行動を記録されるものによって①画像記録と②非 画像記録に大別される.また,近年では情報・通信技術の高度化に伴い,GPS, 携帯電話,PHSなどに代表される移動体通信システムの利用者が爆発的に増加 しており,それら動体通信による位置情報サービスも実用化され,携帯機器を もつ個人の位置データを特定することが可能になったため,③移動体通信シス テムを利用した位置情報のログデータを用いた調査手法も積極的に研究されて いる. ①画像記録の方法には,目視によるスケッチ,測量機器による人間の位置実 測,写真,8 ミリ撮影,DV 撮影などがあげられる.これらは高速度撮影や赤外 線撮影など,技術の進歩にともなって際限ない可能性の広がりをみせており, これまでは解析が困難であった現象も,正確かつ容易に解析できるようになっ た. ②非画像記録は計数記録と計時記録に分かれるが,両方同時に必要な場合が 多い.計数記録は,ある地点を通過した人数や行列の人数,滞留者の人数・位 置など,人間の数を記録する事に重点を置くもので,画像記録を用いなくても 状況の再現が可能な場合に用いられる. 一方,計時記録は,人間の行動を時系列で捉える必要がある場合に用いられ る.計時は時刻が重要な場合(タイムスタディなど)と,時間が重要な場合(歩 行速度など)があり,目的に応じて時計とストップウォッチを使い分ける必要 がある. ③移動体通信システムを用いた行動調査は,(i)GPS を用いた調査,(ii)携帯電 話・PHS を用いた調査,(iii)RFID(無線タグ)を用いた調査があげられる.

(i)GPS を用いた調査は,世界的に広く利用されて いるという意味で,移動体通信システムの代表といえ る.GPS(Global Positioning System)は人工衛星に より原子時計の時刻のずれを計測することにより緯度 図 1.3.1 ハンディータイプの GPS 機器

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1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究

経度座標を特定するシステムであり,ドップラー効果を利用すれば速度の計測 も可能である.D-GPS(Differential GPS)は,移動局で得られた緯度経度デー タを別途の基地局位置データにより補正することにより精度を向上させている. G P S を利用した行動調査 には,車両の位置や速度を計 測したものや,携帯型の GPS を利用して徒歩,自転車,車 での移動を比較したものな ど,多数あるが,位置特定の

図 1.3.2 GPS 内蔵腕時計

誤差が 50 〜 150m であり,人

図 1.3.3 ハンディータイプ の GPS 機器

間の歩行行動調査には実用的とは言い難い.また,GPS での調査には,次のよ うな問題点をもっている.(1)人工衛星の電波を受信するために常にレシーバー を露出させている必要があること.(2)建物内部,地下街,アーケード,交通機 関の車内など電波を受信できない場所での行動追跡が不可能であること.(3)携 帯できるような小型の機器もあるが,調査のために装置を持ち歩く必要がある こと.

(ii)携帯電話・PHS を用いた調査には,様々な方法があ る.電波の方角,時刻,電界強度,基地局の位置データベー スなどを独立に,もしくは組み合わせて利用するものなど がある.その中で,たとえば,Snap Track の方法は,GPS 電波を携帯電話で受信し,センターに転送して位置特定す るというものである.この方法では,建物内でも 50m の精 図 1.3.4 携帯電話

度が得られたという報告もある.

携帯電話の地上基地局の配置密度は薄いため,基地局の位置から移動局であ る携帯電話の位置を特定することは難しい.これに対して,PHS(Personal Handy Phone System)の電波は微弱であるために,基地局の配置密度が相対 的に高い.都市内ではほぼ 100m 程度の密度で基地局が配置されており,地下 街,地下鉄の構内や,建物内にも配置されている.PHS の位置特定システムは, P H S が受信している基地局の I D と電界強度から位置特定するものである. PHS による位置特定サービスは,1998 年 4 月から開始され,福祉,保安,観 光などに利用されている. - 24 -


1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究

図 1.3.5 PHS 網を利用した位置情報提供機器 1),2)

PHS の問題点は,高速での移動中にデータ送信が困難であることと,基地局 密度が薄い郊外では位置特定精度が落ちることであるが,この点は人の行動調 査に限って考えれば問題ないといえる.

(iii)RFID(Radio-Frequency Identification)にはラ ジオチップなども含まれ,非接触式ICカードはRF-ID の技術をボタン大の大きさに詰め込んだもので,電波 により非接触で読み書きができるものである.主に流 通でコンテナや荷物の確認や管理などに使われている ものである.発信機であるタグを受信機で検知するこ 図 1.3.6 RF-ID システム

とにより,タグが受信機の範囲内にあるかないかを 2

値的に検知できるものである.タグには個別に ID が割り当てられるため,個別の ID の タグの場所を追うことができる.この方法は(1)受信機の感度や発信器の出力を調整す ることにより,精度を調整することができ,GPSや携帯電話を利用した調査に比べ,位 置特定精度の点で有効である. (2)室内でも精度の高い調査ができる. (3)システムが安価 で構築できる.などがメリットとしてあげられる.しかし,問題点として,受信機の配 置した場所にタグがあるかないかがわかるだけという性格上, 位置特定は受信機の配置 密度に依存してしまい, 得られるデータはネットワーク型のトリップデータに限られて しまう.3) 1)写真左 NTT DoCoMoが提供する「いまどこサービス」という位置情報提供サービスで使 用される機器.このサービスは,契約者が自己位置を取得し、インターネットを利用してロ ケーション情報を得ることといまどこサービス契約のPHSを持つ第三者の検索をする事がで きる. 2)写真右 セコムが提供している位置情報・急行サービス「ココセコム」に使用される機器. このサービスは PHS 網を利用して,機器の位置を特定し,位置情報をオペレーターもしくは 地図情報で確認できるとともに,緊急時には緊急対処員と呼ばれる警備会社の社員が急行す る自動車,二輪車,人を対象としたサービスである. 3) 高柳英明,他:無線タグシステムによるスキー場来場者の利用特性に関する研究,日本建 築学会学術講演梗概集,2001/09

- 25 -


1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究 これら移動体通信システムを用いた行動調査は上述したように,例えば交通調査,大 規模集客施設での来場者行動調査など大域的な行動調査を行うには有効であるが, 位置 特定精度の面で高密度の群集の性状を調査するには有効であるとは言い難い.

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- 27 -

群集流動指標と歩行軌跡

行動履歴

群集を上部よりビデオ撮影し,撮影 特定歩行軌跡 した画像から個々の歩行軌跡の位置 座標を抽出する.より正確には手作 業で,また誤差を考慮した上で画像 解析技術を利用すればある程度自動 化できる.

●ビデオ調査

空間や行動を特定し,その中で調査 時間 員が対象とする歩行者を追跡し記録 行動軌跡 する.行われた行動とその順序など 行動履歴 の履歴,かかった時間,経路や軌跡 など.

●追跡調査

1)出典:「建築設計資料集成 人間」 日本建築学会 / 丸善 2003/01 出版 154p 32cm NDC:525.1 ¥9,400(税別) 在庫有 新宿本店 新宿南店 P.P.130

●GPSによる調査

時間 行動軌跡 流速

●無線タグによる調 歩行者に受信器や発信器を持たせて 時間 査 行動してもらい,その位置等を受信 行動履歴 することで,行動履歴や特定の行動 軌跡を記録.

特定の空間内あるいは時間内に,行 行動履歴 われた行動とその順序・かかった時 時間 間などをアンケートして,行動者の 属性 属性,履歴,行動要因を調査する.

●アンケート調査

抽出した多数の行動軌跡の重ね合わ 群衆密度 せから,密度,交錯状態を分析す 交錯方向 る.

設定区間を通過する歩行者の通過時 流速 間を計測する.

●歩行速度調査

調査項目 流量、流率

内容 設定断面で通過人数を手動カウン ターで計測する.

調査手法 ●カウント調査

×

×

×

×

× ×

ト リ ッ プ デ ー タ

歩 行 軌 跡

×

×

×

×

×

×

×

×

収集できるデータの種類 属 大 デ 広 性 量 ー 域 把 サ タ 対 握 ン 精 象 プ 度 エ ル リ ア

表 1.3.7 人間行動調査手法に関する比較分類 1)

×

室 内 調 査 可 能

×

機 材 低 コ ス ト 備考

無線感度を知る必要がある.属性などを アンケートしておく事で行動履歴とマッ チできる.GPSの場合は,所持する受 信機を外部空間に露出する必要があり, また,歩行軌跡は細かな精度のものより 広範囲に渡るものの方が有用である.

追跡可能な人数は調査員の数・追跡時間 による.

調査内容は被験者の申告によるため,記 憶違い,回答違いなどを含む可能性があ る.

ビデオ設置が出来る場所に限られ,広範 囲に渡る場合はカメラの撮影限界もあ る.また,画像より軌跡を抽出する作業 では,座標変換の際の誤差,重なり部は 推計によること,自動化の場合は画像解 像度や背景といった諸条件でも精度が左 右される等,誤差を含んでいる点を考慮 する必要が有る.

得られるデータがいずれも量データであ り,個人の特定が行えない.

1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究

○人間行動調査手法比較


1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究

●カウント調査 スキー場コースの滑走者数などをカウントする場合に用いる.スキー場調査 に関していえば,人の属性はスキーであるかスノーボードであるかなどの道具 別の分類程度しか行えず,個人の属性に関する項目はデータに含まれない.量 としての扱いしか行えない.

●歩行速度調査 あるコースの滑走スピードの計測などに用いられる.主に所要時間を計測し, 移動距離で割ることにより,スピードを算出する.

●ビデオ調査 限定された区間内の滞留・移動に関する調査に適している.スキー場調査に 関しては,リフト乗り場・リフト降り場での人の流れや,ジャンプ台通過の時 間の計測などにも用いられる.また,コースのどの部分を滑走したかなどの調 査に適している.行動のスケールより動作のスケールに近い項目が計測可能で ある.ビデオ撮影のできる範囲は,設置場所を選ぶカメラのレンズで映る範囲 と台数により決まるため,広範囲にわたる行動全てを記録するには適さない.

●アンケート調査 アンケート調査には,口頭・筆記式などがあるが,いずれもアンケート対象 となる行動が行われてから時間が経過してしまうと,記憶に依存するため,不 確かな情報となる.また,大量の行動履歴に関する質問は不可能であり,時刻・ 時間に関する調査も,精度は格段に低下する.本調査と同等の内容をアンケー ト調査で質問するとなれば,リフト回数や利用時間は不正確なものとなり,ま た被験者の負担も大きくなるであろう.

●追跡調査 短距離区間の歩行に関する調査には向いているが,スキー場で被験者の滑走 軌跡を追跡するなどは不可能である.また,終日行動などの長時間に渡る調査 に関しては,一日に1人の調査員が追跡できる被験者数も 1 人になってしまう ため,サンプル数が得られない.

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1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究

●無線タグによる調査 感知率さえ良ければ,終日の施設利用に関する行動履歴を収集するのに最も 適している.スキー場にはリフト乗り場・降り場やレストハウスの入口など,特 定の施設を利用する際に確実に通過する空間が設けられており,無線タグ調査 には極めて適している.また,被験者は小型のタグを携帯するだけなので,と なるスキーヤーやスノーボーダーにとっても,滑走の邪魔にならず安全である. また,GPS による調査と比較しては設備投資に掛かる費用が安価である.

● GPS による調査 スキー場などの広範囲にわたる屋外施設の行動軌跡をたどるのに適している が,人工衛星の電波を受信するためのレシーバーを常に屋外かつ着衣外に携帯 していなければならないため,レストハウスなどの室内での調査は含められな い.また,レシーバーを露出させることで,スキーヤーやスノーボーダーにとっ ても運動の妨げになり危険である.また,設備投資費用に莫大な金額が掛かる という短所もある.また,位置特定の誤差があるため,ゲレンデのどの位置を 滑走したかなどの測定には不向きである.

- 29 -


卒業論文

卒業論文

卒業論文

卒業論文

卒業論文

修士論文

1996

2000

2002

1998

1997

修士論文

2001

1998

修士論文

1998

修士論文

卒業論文

1998

2002

丹羽洋一

卒業論文

1999

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堤正利

小菅瑠香

小林紀亜

石神宣彦

馬場義徳

今井志帆

小森寛子

丹羽洋一

馬場義徳

木崎聡

研究者

年度

中間

無線タグシステムを使用した 連結型スキー宇における回遊行動特性

ミクロ ミクロ

ミクロ

ミクロ ミクロ

スキー場における人間行動に関する研究

スノーボードパーク専用アトラクションの 適正収容能力に関する研究

スキー場におけるフリースタイルスキー に必要な空間に関する研究 -モーグルコースをはじめとする 建築計画学的考察-

ハンディキャップを考慮したスキー場計画 に関する研究

スノーボードインパクト -スキー場に関する区間計画学的考察-

ミクロ

マクロ

情報ネットワークによるスキー場情報閲覧効果 に関する研究

スキー場におけるたまり空間の研究

マクロ

マクロ

スキー場利用客における増減の要因 に関する研究

スキー場における利用者数予測に関する研究

マクロ

スキー場における基盤地域に関する研究

タイトル

視点の大 きさ 調査方法

×

スキーとスノーボードの ヒアリング 共存方法 アンケート

アンケート 障害者スキーヤーの問題 ヒアリング 点と解決法 追跡

アンケート モーグルコースの設計資 ヒアリング 料作成 ビデオ

室内専用パークの適正収 ビデオ 容人数 アンケート

スキーとスノーボードの ビデオ ゲレンデ行動の分析 ヒアリング

流速

流速

×

×

定位・軌跡 属性

ビデオ アンケート

軌跡

属性・履歴

ゲレンデ内滞留の評価

スキー場データ

スキー場データ

地域指標

観光統計 施設概要

扱うデータ

×

×

×

×

×

×

×

△アクセスログ HPコンテンツ

属性・時刻

属性

行動データ

無線タグによる行動履歴 無縁タグ の分析 アンケート

ホームページ閲覧による HPの閲覧履歴 来場客数への効果 アンケート

スキー場・日・時刻別入 *統計データ 場者予測モデル アンケート

来場客数とスキー場各要 *統計データによ 素との相関 る

基盤地域の構成要素と索 *統計データ 道輸送との関係 アンケート

研究内容

表 1.3.8 渡辺研究室における過去のスキー場関連の研究と本研究の位置づけ

×

×

×

×

×

×

×

×

×

事例の傾向

1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究

1.3.2 スキー場に関する既往研究 当渡辺研究室における過去のスキー場関連の研究を以下の表にまとめた.


1.3 人間行動調査手法の分類とスキー場研究

これまでのスキー場に関する研究は大きく2つに分類できる.1つは視点の 大きさをマクロとした来場客数に関する研究.もう1つは,視点の大きさをミ クロとしたスキー場内の設備やスキーヤー・スノーボーダーの動作・滑走に関 する研究である.そして,本研究はその間に位置する終日の行動履歴に関する 研究の位置づけである. 前者は,地域指標やスキー場施設に関するデータ,スキー場が開設するホー ムページのコンテンツに関するデータなどを基に,来場客数との関連性につい てなされた研究である.また,後者は,来場者に対して行ったビデオ・追跡・ アンケート調査などの人間の行動に関するデータを基に行われた研究である. ビデオ調査によって得られるデータは,来場者の位置や軌跡,流れる速度など である.大半の研究は同時にアンケート調査も行っているが,ビデオ調査に よって収集された行動データと,アンケートによって収集された個人属性デー タとをリンクさせた研究は行われていない. 本研究で行った無線タグを用いた行動調査は,今までのような限られた時間 内における滑走などの一連の動きに関する行動データとは異なり,終日の行動 の流れを追うデータが収集できる.どの時間にどのリフトやレストハウスを利 用したのかや,どれだけの時間利用したかなどのデータを大量かつ滑走の妨げ になることなく集めることがで可能である.さらに,来場者の終日の行動履歴 と,アンケートによって得られた個人の属性とを照らし合わせることにより, 来場者を目に見えない属性に分類し,その行動パターンを分析することができ る.

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1.4 無線タグシステム

1.4 無線タグシステム 1.4.1 名称 無線タグ,IC タグ,RF-ID タグ 近年では名称の区別はほとんどなく,いずれも固有IDを発信するタグのこと を指す.RF-ID の別称として,AIDC(Automatic Identification & Data Capture)という名称が欧米では一部で使用されている.なお,ほとんどのも のは,IC チップに個体を識別する ID の情報や,個人情報などを格納している. IC タグは,「非接触型 IC タグ」とも呼ばれる.

1.4.2 RF-ID とは Radio Frequency Identification の略.無線通信を利用した非接触による 自動認識技術であり,一般的には非接触型 ID 識別システム等と呼ばれる. 「個 別情報を持つタグが,ある範囲内に存在するかどうかを,電波を使って検知す るシステム」ということになる. 対象物に取り付けられる小型のインレット(アンテナ付きICチップ)と,イ ンレットに電波を発信して情報を読み取ったり,新たな情報を書き込んだりす るリーダー・ライターとの間で,非接触による情報更新が可能である.ICチッ プ自体に情報が書き込まれているため,読み取り装置さえあればどのような場 所でもデータ内容を確認することができる.従来技術(特にバーコード)と比 べ,情報の収容要領が大きい,情報の更新や追加が可能,複数個体の一括認識 が可能,透過性がある等の特徴を備えており,バーコードに変わる次世代の個 体認識技術として期待されている.RF−IDを使用することにより,目標物 の所在確認,追跡,履歴情報等の追加書き込みが可能となり,オペレーター・ システムへの負担の軽減が図れるようになる.

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1.4 無線タグシステム

○部品構成の定義 1) ・ An antenna or coil(アンテナとコイル) ・ A transceiver (with decoder)( 送受信機) ・ A transponder (RF tag) electronically programmed with unique information(ユニークな情報をプログラムされているトランスポンダ)2)

○ RF-ID 技術を利用した非接触 IC タグシステム

非接触ICタグシステムは,主にデータキャリアとなるICタグ,および IC タグリーダー・ライターから構成される.ICタグはメモリなどのICチップ とアンテナから構成され,その種類はそれぞれ電池を必要とするタイプと必要 としないタイプや,形状にもカード型や円筒型など様々なものがある. 近年,物流ニーズの高度化に対するバーコードシステムの限界化や非接触IC 技術の急速な進歩,低価格化に伴い,ロジスティクス分野における RF-ID シス テム適用への期待が非常に高まってきている.

図 1.4.2 非接触 IC タグシステム図

1)The Association for Automatic Identification and Data Capture Technologies ホームページ参照 http://www.aimglobal.org/technologies/rfid/what_is_rfid.htm 2)衛星用語として「電波周波数を変換して受・送信する中継機」のような書き方をされてい る場合もあるが,個体認識の世界では「電波にユニークな情報を盛り込みつつ自動的に出す」 もしくは「電波を受信した時点でその電波をエネルギーに変え,内部の IC が持つ情報を変更 する」といった自動処理機構のようなものに相当すると考えられる.

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1.4 無線タグシステム

1.4.3 IC タグの特徴 バーコードシステムと比較して,非接触 IC タグシステムは電波・電磁波で交 信するため,汚れ,ほこり等の影響を受けにくく,障害物(金属等を除く)が あってもデータの交信が可能などの特徴がある.

表 1.4.3.1 IC タグの特徴 No

比較項目

利用媒体 バーコードシステム ICタグシステム

1 データ量

約20バイト(*2)

64〜数百バイト

2 書込み

不可

可能

3 読取距離

〜10cm程度

〜1m程度

4

認識する範囲(目安)

幅5cm×距離10cm 程度の空間

5

認識できる状態

幅15cm×距離1m 程度の空間 移動状態で認識 可能

静止状態

6 輻輳制御(*1)

不可

可能

7 透過性

なし

可能

8 データ保護機能

なし

可能

9 汚れ・振動・磨耗等

影響大

基本的に影響なし

10 荷物の有無識別

対応困難

対応可能

11 価格

数円

数百円〜数千円

(*1) 同時に複数個を認識するための制御方法 (*2) 据置型の特殊システムとしては大容量のものもある.

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RF-IDシステムの優位点 ・詳細情報を必要な時点 で書き込み(再書き込 み)できるため、きめ細 かい管理が可能。 ・カード(タグ)に情報 を持たせることによる上 位システム負荷軽減 (ネットワークインフラ 構築/強化等 投資不 要) 荷物認識手段の柔軟性 拡大

読取可能エリア内の複数 商品の同時認識が可能 ダンボール内にあるもの を開封せずに確認可能 端末認証対応が可能。情 報を書き換えるエリア/ 端末の制御が可能 信頼性向上 荷物管理場所のロケー ション管理可能


1.4 無線タグシステム

○非接触 IC タグのメリット

図 1.4.3.2 非接触 IC タグ

○非接触式 通信距離は標準で 1 ㎝〜 100 ㎝ 図 1.4.3.3 非接触イメージ

○被服可能 遮蔽物(金属は除く)が入っても認識でき る.

図 1.4.3.4 被服可能イメージ

○小型・薄型 張り付け可能な商品や製品の幅が広がる. 図 1.4.3.5 小型・薄型イメージ

○環境性 汚れ・振動・衝撃等に強く,環境性に優れて いる.

図 1.4.3.6 環境性イメージ

○耐久性 経年変化が少なく長期間にも耐えられる. 図 1.4.3.7 耐久性イメージ

○書き換え可能 一旦書き込んだ情報に新たな情報を加えた り,書き換えができる.

図 1.4.3.8 書き換え可能イメージ

○移動中 移動中でも読み書き可能である. 図 1.4.3.9 移動中イメージ

○複数同時読み取り 複数個同時に読み取りが可能である. 図 1.4.3.10 複数同時読取イメージ

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1.4 無線タグシステム

1.4.4 RF-ID の分類 RF-ID システムは, ・タグの機能的な違い ・使用する周波数による違い によってその特徴を別々に考えることが多い.

1.4.4.1 機能による分類 移動する対象(人やもの)に付帯させるタグの機能によって,システムの構 成が大きく変化する.つまり,受信範囲や運用に関してはタグの機構に依存す るところが大きく,それぞれ用途によって使い分けられている,というのが現 状である. タグの機能による区別は主に3種類で, ・ アクティブ(Active) ・ パッシブ(Passive) ・ セミパッシブ(Semi-Passive) である.

○アクティブ(Active) タグから電波が周期的に発信され,受信機がその場の各チェック位置に置か れている時に,その受信機の検知範囲内に発信機が存在する・しないを周期的 にモニタするものである.種類によっては発信機からどのくらい離れているか まで測定出来るものもあるが,これはまだ精度や安定性を確保出来ておらず, 現時点ではまだ改良段階と見るべきかもしれない. このタイプは,タグに電池など何らかの電力が内包されていて,それを使っ て電波を発するため,検知範囲が後の 2 種類と比べ広い.また,基準となるポ イントに置かれる受信機から電波が出ないという点でも,他の 2 種類とは異 なっている.これにより,検知の時間間隔も他の 2 種類より一般的によいとさ れる.

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1.4 無線タグシステム

○パッシブ(Passive) タグはアンテナ(もしくはコイル)と IC チップで構成され,タグから電波を 発する機構がなく,一方,発信機(この発信機は受信機能も持つ)がチェック 位置に設置されたものである.なお,タグが発信機に十分接近して,その電波 をエネルギーとして IC 内のメモリに入っている登録情報(主に ID)を折り返 し発信機に電波で送信し,発信機側が持っている受信機でその登録情報を読み 取る,というのが一般的である. このタイプは「タグが発信機に接近すると,その電波をエネルギーとして IC 内のメモリに入っている登録情報(主に ID)を折り返し発信機に電波として送 信」する.電波の強度やタグの大きさといった制約で,通常はほぼ発信機と接 触するか,かなり近い(10cm 程度の)位置でしか検知が出来ない.但し構造 が IC 部分を除いて単純で,IC そのものも 1cm 四方程度(最近では数 mm のも のもある)で小さく,また,アンテナ(もしくはコイル)は導線のみなので,形 状をいろいろ変えて作ることができる.カード型,棒型,立方体型,フィルム 状,など,タグの種類が多いのも特徴といえる.

○セミパッシブ(Semi-Passive) 基本的にタグはアンテナ(もしくはコイル)と電力部分を持ち,チェック位 置に発信機(受信機能付き)を設置して使用される.タグ自体は発信機からの 電波を一定以上に得られる位置になるまで,電波を発しない. 「タグが発信機に ある程度接近し,その電波をエネルギーとしてIC内のメモリに入っている登録 情報(主に ID)を折り返し発信機に電波として送信し,発信機側が持っている 受信機でその登録情報を読み取る」という通信方法自体は Passive と同様であ る.Semi-Passive といわれる所以は,先の通信手順のうち,タグ内の「IC 内 のメモリに入っている登録情報(主にID)を折り返し発信機に電波として送信」 する時に,タグの中にある電力部分を使って電波を強化して発信する,という 点である.また,ICを動かす電力もそのタグ内の電力を使って動かされるため, 比較的電波が弱い状況でも電波を発信機側に送ることが出来るので,その検知 範囲は Passive と比較すれば大きい(10 数センチから 2 〜 3m 程度).また,形 状も Passive 同様,種類が多く存在する. Semi-Passive は「Passive と同じ構造で,ある基準位置からの距離が一定 の範囲内にあれば Active になる」という点で他の 2 つと異なる.Active と Passive のちょうど中間的なものといえる. - 37 -


1.4 無線タグシステム

1.4.4.2 周波数による分類 使われる周波数も,一般的に使用される RF-ID システムには総務省(旧郵政 省)で定められたものがあり, ・ 135kHz ・ 13.56MHz ・ 900MHz ・ 2.45GHz などがある.

表 1.4.4.2 RF-ID の分類 伝送方式

静電結合

電磁結合

電磁誘導

マイクロ波

密に結合した電 磁誘導の相互誘 導作用を利用

電磁誘導作用を 利用

マイクロ波帯の 電波を利用

光通信を利用

動作原理

静電気の誘導作 用を利用 〜数mm −

〜数cm 400〜530KHz

〜5m 2.45GHz

〜数10cm 近赤外線

リーダライタの アンテナとタグ との距離が極め て密となるた め、電気的なノ イズや混信に強 い

近距離の磁束結 合のため、ノイ ズに強い

〜1m 125〜135KHz 13.56MHz ・水、油や塵埃 などの影響に強 く、工場・道路 などの環境でも 利用可能 ・使用目的に応 じてタグ形状を 成型しやすい

・通信距離が長 く、離れた距離 からIDを読み取 れる ・長距離型 (1m〜) は電 池内蔵型が主流

無線LANなど、 電波による混信 がない

通信距離 周波数

特徴

国際標準 ISO/IEC 10536 ISO/IEC 10536 ISO/IEC 14443 規格 ISO/IEC 15693 (非接触IC カード) ARIB標準 規格 (*1)

ARIB STD-T60 RCR STD-38 ARIB STD-T82

RCR STD-1 RCR STD-29 ARIB STD-T81 RCR STD-38

(*1) ARIB 標準規格:社団法人 電波産業会(Association of Radio Industories and Businesses)が策定する電波利用システムの基本的要件をまとめた標準規格 http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/ic-card/index3_4.htm 株式会社 日立製作所 ホームページ参照

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1.4 無線タグシステム

○概要

・ 周波数が低いほど受信範囲は広い. ・ 周波数が低いほど回折するので,障害物が送・受信機間にあっても電波が 届き,高いほど障害物に弱くなる.周波数が高いほど水分などの影響も受 けやすい. ・ 周波数が高いほど多量の情報を送信できる.また,短い時間間隔で検知を 行うことができる. ・ 同じ送信範囲であれば,周波数が高いほど受信側が取得するエネルギーは 高い. 以上のような特徴がある. なお,周波数が同じ場合,混信が発生するので,異なるシステムで同じ周波 数の RF-ID システムを使用する場合は,正しく動かなくなる場合がある. また Semi-Passive では, ・ 基準位置→タグ:低い周波数 ・ タグ→基準位置:高い周波数 とされることが多い.これは, ・ 呼び出しはなるだけ範囲を広く,方向にも依存しない方法で呼び出す ・ 情報はデータ量を多くする ことができるなど,さまざまな利点があるためである. なお,高周波数での使用は電波法で規制があり,ある一定の出力以上を室外 で使用するのは禁止されている.

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1.4 無線タグシステム

1.4.4.3 用途により選ばれるタグの種類 1.4.4.1 で述べたハードの特性を踏まえ, 「システムを安価に構築しなければ ならないか・多少高価でも許容範囲内に収まるか」 「遠方を計測するか・しない か」等によって,測定の方法に得手・不得手があり,先に述べる3種類から選 択して使い分けられる.

実際にタグとして「識別したい多数の移動体」に付けるものの数量が膨大で あったり,使用後直ちに破棄される場合(例えば生産システムで,品物がベル トコンベアで運ばれるような環境において,どこに品物があるかを特定の地点 でチェックする機能をRF-IDシステムで構築するような場合は,非常に短い期 間で使用されるが,使用後タグは必要なくなるため,廃棄される),Active タ グのような高価かつ遠距離検知可能なものは使用されず,Semi-Passive や, Passive が使用される.Semi-Passive は,例えば空港の手荷物搬送で使用さ れる場合,形状がばらばらなものの搬送ルートのチェックで,タグと基準位置 が数 10cm 程度離れる場合など,Passive では受信出来ない場合に使用される. その他のケースだと,マラソン走者の通過ポイントで,誰が通過したかを チェックするタグでも,Semi-Passive を使用したものがある. Suica 1) は Passive タグであり,基準位置の発信器にほぼ密着させて認識さ せる.また,先の搬送システムのようなものでも,常にある平面を品物が接触 して移動するような場合は Passive の方が安価なことから,Passive を選択す ることが多いと考えられる. 逆に本研究のスキー場調査のような,人間が自由に移動出来る条件下での位 置測定などの用途の場合は,Semi-Passive,Passive では受信範囲が十分では ないため,Active タグを使うことになる.但し,Active タグは電力の寿命が 短く,また,その電力の維持のため電池交換などの負荷が大きいので,他の2 つと比べ,人の手間・電池購入費などでコストが高くなる. 現在これらの計測は,以上のように「どちらかが優位でどちらかが淘汰され る」という関係ではなく,それぞれの条件に応じ,使い分けて使用されている. 以上のような理由で,様々なな種類のタグが世の中で使用されている.

1)スイカ.IC カード内蔵の定期券. “Suica”とは「Super Urban Intelligent Card」の頭 文字から名づけられた.さらに“スイスイ行ける IC カード”の意味も込められている.

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1.4 無線タグシステム

1.4.5 検知のメカニズム ○ Passive タグのメカニズム

IC アンテナ

据え付けの発信機 (受信機能もあり)

手持ちのカード (IC,アンテナあり)

図 1.4.5.1 パッシブタグの構成

電流が流れる

カードがある範囲に来ると, 据え付けの発信機からの 電波をエネルギーにして, カードの中のICが動作 →情報を記憶 電波による電流で 折り返しICに登録 された情報を送信

情報を記憶したら,折り返し カードから発信機にIC内の 情報を送信→コンピュータで 通過を管理 図 1.4.5.2 パッシブタグの検知メカニズム

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1.4 無線タグシステム

○ Semi-Passive タグのメカニズム

電池

IC アンテナ

据え付けの発信機 (受信機能もあり)

手持ちのカード (IC,アンテナあり)

図 1.4.5.3 セミパッシブタグの構成

電流が流れる

カードがある範囲に来ると, 据え付けの発信機からの 電波をエネルギーにして, カードの中のICが動作 →情報を記憶

情報を記憶したら,折り返し カードから発信機にIC内の 情報を,電池のエネルギー を利用して送信→コンピュータ で通過を管理

図 1.4.5.4 セミパッシブタグの検知メカニズム

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1.4 無線タグシステム

○ Active タグのメカニズム

据え付けの受信機

手持ちのICタグ (IC,アンテナ,電 池あり,電波発信)

図 1.4.5.5 アクティブタグの構成

カードからは常に一定周期で 電波を発信し,カードの中の ICの識別情報を送信 →受信器が記憶

図 1.4.5.6 アクティブタグの検知メカニズム

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1.4 無線タグシステム

1.4.6 IC タグの用途 ○規模による分類 1)小規模なクローズドシステム (主に Re-Use)

図 1.4.6.1 クローズドシステム例

2)大規模なオープンシステム (主に One Way-Use)

図 1.4.6.2 オープンシステム例

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1.4 無線タグシステム

○分野による分類

表 1.4.6.3 分野別 IC タグ用途分類 セキュリティ分野

入退室管理/ビルの玄関通門管理/

交通分野

鉄道乗車券/バス/スキー場/駐車場管理

プリペイドカード

プリペイドカード/自動販売機/イベント入 場券/レジャー

不正防止、EAS

図書館/贋物防止/レンタル産業

物流分野

製品入出庫管理/コンテナ・パレット管理/ 食品鮮度管理/リサイクル/環境/レンタル 衣装

FA分野

工場内自動搬送システム/倉庫管理/工具管 理(識別)/

その他

動物の個体識別(家畜の管理・伝書鳩レー ス)/ 各種の動物実験 /ドキュメント管 理・検索/

○将来実現が近いアプリケーション

住民基本台帳カード 免許書・パスポート 航空手荷物用バゲッジタグ 国際宅配荷物 物流 病院での患者認識タグ (患者認識用さらに点滴バッグとの コンビネーション等で RF-ID の用途がある)

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1.4 無線タグシステム

○用途事例 ・公開事例① 空港手荷物の管理

【システム概要】 非接触ICタグを利用した航空手荷物の識別.タグにはIC回路が内蔵され ており,ユニークな識別番号及び旅客の行き先とともに手荷物をチェックイン した日時,重量などの情報を記録し管理する. イギリスの航空会社がドイツのミュンヘン 及び イギリスのマンチェスター からロンドンのヒースロー空港へ向かう航空旅客の荷物75,000個の識別テスト を行なった. 【特徴】 ・取扱いスピードアップ ・紛失防止,セキュリティアップ ・情報の変更,追加可能

図 1.4.6.4 空港手荷物管理の概要

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1.4 無線タグシステム

・公開事例② 物流管理

図 1.4.6.5 物流管理のフローチャート

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1.4 無線タグシステム

・公開事例③ アパレル SCM 管理

図 1.4.6.6 アパレルSCM管理のフローチャート

http://www.dnp.co.jp/cmc/cmc_item/ictag/index.html 大日本印刷株式会社ホームページ参照

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1.4 無線タグシステム

1.4.7 関連用語集 表 1.4.7.1 IC カード関連用語集(アルファベット順)

A ALC

ALU

Application Load Certificateの略。アプリケーションロード証明書。MULTOSにアプ リケーションをロードする際に必要となる証明書の事。この証明書の情報とMSM Controls Dataの情報が一致しなければ、カードにアプリケーションをロードできない。 Application Load Unitの略。MULTOSカード上に搭載されるアプリケーションの形。 ALCを用いて、実際にはこのALUをカード上にロードする。ALUは、カードアプリケー ション開発ツールを使用して作成されたMELオブジェクトを、ALUジェネレータで生成す る。アプリケーションコード部とデータ部に分かれており、アプリケーション製造者は、 データ部の個人別データは作成できないため、個別データのないALUテンプレートとして イシュアに渡される。データ部の個人別データはイシュアによって生成され、ALUテンプ レートのデータ部に挿入されて、カード個別のALUとなる。

B B-CASカード

2001年12月に本放送が開始されたBSデジタル放送において、SAC(限定受信システム) における本人確認用ICカードのこと。これを利用して放送局はだれが番組を見ているのか を特定したり、有料放送のスクランブル解除等を行う。将来的にはBSデジタル放送の利点 である双方向性を活かし、放送と連動したサービス、例えばTVコマースにおける決済な どへの適用が考えられている。

C cdma2000

次世代携帯電話「IMT2000」の方式のひとつ。

D -

-

E EMV仕様

ETC

ユーロペイ/マスターカード/ビザ・インターナショナルの3社がICカードの相互運用性 を図るため、共同で取り決めた共通仕様。以下の3編からなる。ISO/IEC 7816 上に決め られた電気機械的特性や端末との通信プロトコルなどを規定している。 ・スマートカード 仕様編 ・スマートカード端末仕様編 ・スマートカードアプリケーション仕様編 Electronic Toll Collection Systemの略で、有料道路自動料金収受システムの事。IT Sの一環(「ITS」項の開発分野2)。現在有料高速道路の料金所で行われている料金の 受け渡し手段を、現金や回数券の手渡しによる手段から料金所に設置した道路側アンテナ と車両に搭載した車載器の間での無線通信による料金情報のやり取りに変更することによ り、係員とやり取りすることなく料金の支払いが行われるシステム。これにより、料金所 をノンストップで通過することが可能となる。

F -

-

G Gloval Platform

マルチアプリケーションICカード運用管理インフラの標準化団体。Visa Open Platform の後継団体であり、VisaCardだけではなく様々なICカードを共通で利用できるようにす るためのインフラの共通化を推進している。

H -

-

I IMT2000

ITS

次世代携帯電話の総称で、この方式にはNTTドコモ、Jフォンが選択したW-CDMA、KDDI が選択したcdma2000がある。UIMを加入者識別IDとして活用する。「International Mobile Telecommunications 2000」の略。 ITS:Intelligent Transport Systems。国土交通省が推進する、最先端の情報通信技術 を用いて人と道路と車両とを情報でネットワークすることにより、交通事故、渋滞などと いった道路交通問題の解決を目的に構築する新しい交通システムの事。以下の9つの開発 分野により構成される。 1.ナビゲーションシステムの高度化 2.自動料金収受システム 3. 安全運転の支援 4.交通管理の最適化 5.道路管理の効率化 6.公共交通の支援 7.商用車 の効率化 8.歩行者等の支援 9.緊急車両の運行支援

J Java Card

Sun Microsystemsが開発したJava言語から、カードに必要な機能のみ を切り出してカードのIC上で動かせるようにしたJavaVMのサブセットを載せた カードの事。マルチアプリケーション対応が可能。

Java Card Forum (JCF)

Javaカードの仕様策定や普及推進を図る団体。

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1.4 無線タグシステム

K -

-

L LDAP

Lightweight Directory Access Protcolの略。ディレクトリサーバーにアクセスする ためのプロトコル。X500というDBアクセスの規格を、TCP/IP上で速く動作させるために 軽くしたもの。

M MAOSCO

Mondex

Mondexパース

MULTOS

MULTOS KMA

MULTOSにおいて、仕様策定や普及推進を進める団体。株式会社化された。MULT OSスキームを管理する。 電子マネーのひとつ。中央発行型で、転々流通性を持つ事が特徴。これにより、発行者/ 管理者を通す事なく個人間のバリューのやり取りが可能。イギリスのNational Westminster Bankが開発し、 Mastercard社がそれを買い取って普及を目指してい る。取引の度に通信が発生せず、オフラインで行えるため通信コストやインフラへの負担 が少なくてすむ。 Mondexバリューを扱うためのICカード上に載せるアプリケーション。 ICカードにおけるマルチアプリケーションを実現するための、プログラム蓄積型CPU 付ICカード搭載用OSである。元々は、イギリスNat West銀行によって開発された が、現在はMondex Internationalが知的所有権を所有し、管理/運用をMAOSCOが 行っている。 MULTOSは、次のような特長を持つ。 ㈰複数のアプリケーションを搭載 出来る。→汎用OSだから可能 ㈪搭載したアプリケーションは、ファイアウォールで完 全に分離される。 ㈫アプリケーションの組込/削除が、安全に行える。→証明書による 運用 ㈬ICチップに依存しない。→仮想マシンで、チップの差を吸収 MULTOSのスキームにおいて、認証を行なうための鍵データを発行/管理する鍵登録 局(認証機関)の事。

N -

-

O ORSE

(財)道路システム高度化推進機構。主な事業内容はETC(有料道路自動料金収受システ ム)の標準化、普及促進等。

P PIN PKCS

PKI

Personal Identification Numberの略。ICカードの持ち主である事を確認するための 暗証番号。 Public Key Cryptography Standardの略。RSADSI社が定める、公開鍵暗号技術の規 格群。一部はインターネット標準規格化の組織であるIETFの規格文書に採用され、イン ターネット標準となっている。 Public Key Infrastructureの略。公開鍵暗号を用いた技術・製品全般を指す言葉で、 RSAや楕円曲線暗号などの公開鍵暗号技術、SSLを組みこんだWebサーバ/ブラウザ、 S/MIME・PGPなどを使った暗号化電子メール、デジタル証明書を発行する認証局(CA)構 築サーバなどが含まれる。

Q -

-

R -

-

S S/MIME

SSL

メールの通信プロトコルであるMIMEにセキュリティ機能を載せたもの。CA局から発行さ れた証明書を用いて、メッセージの署名と暗号化を行なう。MS-Outlookや、 Netscape-Messanger等で利用が可能。 Secure Socket Layerの略。WWWサーバとブラウザ間で暗号化した通信を行なうため の、プロトコル。米NetscapeCommunications社が開発し、IETFに提案した。正式な インターネット標準ではないため、V3.0を基本にTLSとしてIETFにて取り纏めている。通 信の暗号化には共通鍵方式暗号(DES)を用い、相手の認証と共通鍵(セションキー)の受 け渡しに公開鍵方式暗号(RSA)を用いる。

T -

-

U -

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1.4 無線タグシステム

V Visa Cash

Visa Open Platform VPN

クレジット会社である「Visa International」が開発した電子マネーである。実際にバ リューと呼ばれる価値を流通させるのではなく、度数データをやりとりする形となる。個 別発行型のため、個人間の流通性は持たない。 Visaとして採用する事としたJavaCardのためのカードと端末用のICカードベースのアプ リケーションの制作・展開を促進するための団体。門戸を広くしたGloval Platformとし て、発展的に解消。 Virtual Private Networkの略。本来オープンなインターネット環境の中で、通信デー タを暗号化する事でセキュアな通信を実現する。

W 次世代携帯電話「IMT2000」の方式のひとつ。Wideband code division multiple accessの略。 マイクロソフトが開発した、ICカード上で稼動するAPI。アプリケーション共有の Windows for Smart Cards ファイルシステムを持つ事が特徴。VB,VCといった既存の開発環境が利用できる事が 強み。 W-CDMA

X X.509

認証局が発行するデジタル証明書のフォーマットに関する国際標準。載せる項目は、利用 者の識別名、利用者の公開鍵、証明書の有効期限、シリアル番号、認証証明機関名、認証 証明機関のデジタル署名である。

Y -

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Z -

-

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1.4 無線タグシステム

表 1.4.7.2 IC カード関連用語集(あいうえお順)

あ行 アイデントラス

イシュア(MULTOS) イシュア(Mondex) オリジネータ

世界中の銀行が結集して、インターネットでのB2B電子商取引を安全に行なうために「信 頼される第三者」としての機能を提供するために設立された。共通仕様の策定・実証テス トの実施・ルートCAの設立を目的とする。バンクオブアメリカ、シティグループ、ドイ ツ銀行、三和銀行等が設立時に出資。 クレジット会社等実際にカード発行するにあたっての責任者。発行したカード、ロードし たアプリケーションの管理責任を負う。MULTOS KMAに登録が必要。 Mondexにおいては、「Mondexパース」の発行者を意味する。 1国に1つだけ存在するMondexバリューの発行体。通貨制度における日銀の役割を果た す。イシュアに対してMondexバリューの発行が可能で、アクワイアラからバリューを買 い戻すライセンスをMondex Internationalから与えられている。

か行 カード提供者

チップをカードベースに埋め込み、提供するもの。 暗号化方式のひとつ。暗号化と復号化を同じ鍵と呼ばれるデータで実現する。公開鍵方式 暗号に比べて鍵長が長くても、処理が比較的早い。一つ盗まれると全ての相手に対して別 共通鍵方式暗号 の鍵の配布しなければならない等、鍵の管理に充分注意が必要。代表的なものに、DESが ある。 ドイツが国家で推進しているクローズドループ型電子マネー。推進母体は、「ZKA(ド ゲルトカルテ イツ金融業界連合会中央信用委員会)」。利用するICカードには、電子マネー機能の他 に銀行POS機能(日本におけるデビット)を持たせてある。 暗号化方式のひとつ。暗号化の鍵と復号化の鍵が別のものとなる。ひとつだけでは利用で きないため、暗号化の鍵をインターネット上に公開して、その鍵で暗号化した情報を送付 すれば、復号化の鍵は秘密鍵として非公開にする事で、その情報を復号化できるのは、公 公開鍵方式暗号 開鍵と対になる秘密鍵を持つ者だけとなり、他者にその情報を盗まれる事がなくなる。但 し、処理が遅いため、多量の情報を処理するのには、向かない。代表的なものに、RSAが ある。 国際規格ISO7816/144 ICカードの規格を規定した国際規格。7816が接触型、14443が非接触近接型を 43 規定している。 別名クローズドループ型。電子マネーのバリューが移動する時に、必ず発行者/管理者を 通すやり方。取引の度に通信が発生するため、オフラインでの取引が出来ない(個人間で 個別発行型 の取引ができない)、通信コストがかかる、等のデメリットがあるが、全ての取引を管理 しているためICカードを破損したり紛失した時のバリューの保証が出来る点や、不正な取 引には使用できないといったメリットもある。 1枚のカード・ベースに接触/非接触の両機能を有したICチップを埋め込み、どちらの コンビネーションカード 通信方法でも稼動可能なもの。1チップとなるため、データ/アプリケーションの共用が 可能になる。(日立におけるICカード分類)

さ行 カード状のベースに磁気ストライプを貼付して、そこに情報を記録する。携帯性の良さや 安価である事から、銀行のキャッシュカードやクレジットカードとして普及している。但 磁気カード し、記録された情報がほぼ丸出し状態のため、データを読み取られたり、コピーされたり する事で偽造カードが作りやすい。また、記録できる情報量が少ないため、用途が限定さ れる、複数アプリケーションの対応が出来ない等の制限がある。 the Next generation Ic Card System Study group 略称:NICSS。国や地方自治体で のICカードの利用が本格化する時代に対応するため、ICカードシステムがもたらす利便性 の向上を図る事を目的に、民間企業17 社が公共分野における次世代ICカードシステムの 次世代ICカードシステム研 共通プラットフォームの検討とその普及推進に向けて設立。下記が、理事会社 NTTコ 究会 ミュニケーションズ、NTTデータ、NTTドコモ、沖電気工業、オリンパス光学工業、 共同印刷、コニカ、シャープ、ソニー、大日本印刷、デンソー、トーキン、東芝、凸版印 刷、トッパン・フォームズ、日本アイ・ビー・エム、日本交通公社、日本電気、日立製作 所、富士総合研究所、富士通、富士電機、松下電器産業、三菱電機、リコー インターネットなど高速大容量のデータ伝送に対応した新方式で、NTTドコモなどが開 発した「日欧方式」と米クアルコム社などが開発した「米国方式」が主要な国際規格。二 次世代携帯端末 方式は互換性がないが、多くの技術を共有しているため両方式に対応した携帯端末を開発 することが可能で、疑似的な「世界統一規格」となる。 業務のオンライン化に伴い、多種多様なアプリケーションを実行するにあたって、全ての シングルログイン/シングル ユーザID/パスワードを記憶するのは煩わしいため、ひとつだけ憶えれば後はサーバやIC サインオン カード内に記憶させた各アプリケーション用のID/パスワードを、アプリケーションにア クセスすると自動的にセットする機能を持たせたもの。

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1.4 無線タグシステム

スーパーキャッシュ

スーパー電子政府

スマートカード

生体認証

接触型(データ蓄積方式) 接触型(プログラム蓄積方 式) 接触型(ロジックカード)

NTTが開発した個別発行型の電子マネー。トークン(バリューの固まり)型の識別可能なバ リューを用いて、センター型管理で常に電子マネー(バリュー)単位で発行額・残高を管 理することにより、最終的に利用者個々の保有する電子マネー残高を把握でき、電子マ ネー単位での偽造・改竄を検出できるようにしている。対応の公衆電話を利用して、バ リューのロードが可能。 ミレニアム・プロジェクトの一環として、省庁・自治体、企業、個人の、それぞれの相互 間がネットワークで有機的にむすび、行政手続きを電子化し、インターネットを活用した 幅広い行政サービス(業務)を実現するもの。これにより、個人や企業は役所に出向かな くても(例えば自宅から)色々な申請ができたり時間・空間にとらわれることなく、行政 サービスを受ける事が可能となる。また、省庁・自治体も手続きが電子化され、効率良く サービスの向上が図る事が可能。 ICカードのこと。ヨーロッパでは、スマートカードと呼ぶ方が一般的。 指紋・網膜パターン・虹彩・顔貌・声紋等、個々人で異なる特徴をもつ身体の一部や行動 パターン等の情報を用いて、利用者本人である事を認識するやり方。これまでは専用の装 置が必要なことや心理的な抵抗感から、あまり広まっていなかったが、指紋については装 置の安価化が進んだ事やセキュリティの重要性について社会的認知度が高まった事もあ り、最近改めて見直されている。 接触型ICカードにおいて、単機能ではあるがCPUを持ちアプリケーションを実行可能 なもの。 接触型ICカードにおいて、CPUを持ち標準OSを搭載しマルチアプリケーションの実 行が可能なもの。 R/Wの読取部とカード側の外部端子が物理的に接触して通信を行なう接触型ICカード の内、データを保管する等の用途に用いられる、CPUを持たずワイヤードロジックで動 作する単機能のもの。

た行 楕円曲線暗号

中央発行型

ディレクトリ

電子商取引推進協議会

電子署名・認証法案 転々流通性 登録局(RA)

楕円曲線上の演算規則を利用した新しい公開鍵暗号技術。RSAと比較して、高速化できる 上鍵長を短く出来るため、次世代公開鍵暗号として注目されている。 別名オープンループ型。電子マネーのバリューを管理するにあたり、発行したバリューの やり取りをその都度管理する事なく、発行したバリューの総量管理を行うやり方。バ リューが「匿名性」「譲渡性」を持ち、現在の貨幣流通の仕組みに最も近い。カードの紛 失や破損に対しては、取引の記録が残らないため、バリューの保証ができない。 PKIにおいて、証明書の内容を保管する役割を持つ。ネットワークにおいては、ネット ワーク上でメールアドレス・ユーザID・電話番号等のユーザ情報/サービス情報等を保管 するDBの事をさす。LDAPは、これとのアクセス用プロトコルを定めたもの。 企業間電子商取引関係では企業間電子商取引推進機構(JECALS)が、企業−消費者間電 子商取引関係では電子商取引実証推進協議会(ECOM)が、また、電子データ交換関係で は産業情報化推進センター(CII)が、それぞれ活動を行なっていたが、JECALS及び ECOMに関しては多くの成果を上げ、平成12年 3 月をもって終了。このため、従来別々の 組織において行われてきた、電子商取引やXML/EDI、STEP等の標準化を推進していくた めに、「電子商取引推進協議会」を設立。 同協議会は、安心して電子商取引が実現でき るためのルール作りや政府への提言、ユーザのニーズに基づいた国際標準等の制定・維 持・管理をおこない、電子商取引の推進と国際的に貢献し得る成果を目指し活動を行う。 電子署名に一般社会の捺印と同じ効力を認め,電子署名が本人のものとの証明書を発行す る民間の認証機関に対し,国が基準を設けて認定できる制度。外国の認証機関も基準を満 たせば認定される。平成12年5月24日付けで成立。平成13年4月1日施行。 バリューを利用者の間で自由に移動させる事が可能な性質のこと。 Registration Authorityの略。PKIにおいて、認証を行なうにあたって請求者が本人で ある事を確認し、正しければCAに証明書の発行を依頼する。組織としては、認証局と兼 ねる場合が多い。

な行 日本ICカード推進協議会

日本ネットワークセキュリ ティ協会

IC カード推進に積極的意思をもつ有力企業・業界団体・金融機関等が一堂に会し、利用 者利便性の向上をIC カードによるマルチペイメントスキーム構築により実現するととも に、IC カード利用スキームの仕様統一を目的として設立。 金融機関、流通業界、鉄道 会社、メーカ、郵政省等が参加。 ネットワーク・セキュリティ製品を提供しているベンダー、システムインテグレータ、イ ンターネットプロバイダーなどネットワークセキュリティシステムに携わるベンダーが結 集して、ネットワーク・セキュリティの必要性を社会にアピールし、かつ、諸問題を解決 していく場として設立。

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1.4 無線タグシステム

日本においてMondexの普及を図るため、組織された推進協議会。 (1)Mondexスキーム に関する商品開発の検討(2)日本におけるMondexスキームの運用規程等の検討(3)日本に 日本モンデックス推進協議会 おけるMondexスキーム実用化に必要な各種契約雛形の検討(4)Mondexスキーム実用化に (MXJ) 向けた各種プロジェクトの支援(5)Mondexスキーム関連機器の日本仕様等の検討 (6)Mondexスキーム関連各種プロトコル・接続仕様の検討等を行なう。 参加企業とし て、三和銀行、JCB、マスターカード、日立等。 Certificate Authorityの略。PKIにおいて、利用者や下位CAに対して、デジタル証明書 やデジタル署名を公的に証明する役目を持つ。証明書要求に対して、CAの公開鍵を含ん 認証局(CA) だ証明書にデジタル署名を行なったものを、発行する。なお、RAと証明書の発行業務を 行なうIA(Issueing Authority)から構成されるとする考え方もある。 個人やコンテンツの正当性を証明するCAを認証する(公的に存在を証明すること)ため 認証書(デジタル証明書・デ に必要となる証明書。実際には、証明する公開鍵の所有者情報が含まれているデジタル ジタルID) データの事である。

は行 ハイブリッドカード

ハッシュ

バリュー 非接触遠隔型(ICタグ)

1枚のカード・ベースに非接触チップ(+アンテナ)と接触チップ(+外部端子)を持た せたもの。双方のチップが独立しているため、データの共有は出来ない。(日立における ICカード分類) メッセージダイジェストを作成する際に用いられる関数。入力データの長さに関わらず、 同一長の出力結果を出す。一方向のみの暗号化が可能で出力結果から入力値を算出する事 が不可能であり、2つの異なる数値をハッシュにかけた場合、同じデータとなる可能性が 非常に小さい。これで出力された結果を発信元と受信先で比較する事で、メッセージの改 竄を検証できる。代表的なものに、MD5,SHA-1等がある。 電子マネーにおいて、金額に相当する価値のこと。 物を自動識別する目的で作られた非接触型IC。製品番号や車両番号などを記憶させ、あ る地点を通過するとその情報が読み取れるようにする。通常の非接触ICカードより通信 距離が長くなるが、通信可能な情報量は制限される。チップとアンテナの配置が確保でき れば良いため、サイズ・形状については自由度が高い。

非接触型(プログラム蓄積方 非接触ICカードのうち、CPUを持ちアプリケーションの稼動が可能なもの。 式) R/Wとカード内のICチップが、直接接触する事無く通信を行なう非接触ICカードの 非接触近接型(ロジックカー 内、データを保管する等の用途に用いられる、CPUを持たずワイヤードロジックで動作 ド) する単機能のもの。 ネットワーク・セキュリティにおいて、社内LAN(イントラネット)のようなクローズされ た環境とオープンなインターネットの環境との分岐点におかれ、ポートやIPアドレス等に ファイアウォール よるフィルタリングを行なう等の機能を有する。ハード的に実現する製品とサーバ内のソ フトウェアとして実現する製品がある。 ベルギーが国家で推進しているクローズドループ型電子マネー。オランダ、スイス、オー ストリア、カナダにて、別ブランド名で展開されている。ベルギーのバンクPOSネット プロトン ワーク統括会社「Banksys」が推進母体。電子マネー機能の他に、交通決済機能、 テレホンカード機能も併せ持っている。

ま行 指紋照合方式のひとつで、指紋画像全体ではなく、指紋の紋様の特徴点(マニューシャ) で比較をする方式。 マルチモーダル 複数の生体認証方式を組み合わせて、認証精度等を向上させる技術。 MULTOSの日本での普及促進を図るため、会員企業に対してMAOSCOとの手続き代行や日 本語での情報提供、また会員企業の意見を取り纏めてMAOSCOに向けての標準化提案等、 マルトス推進協議会(MPA) 日本におけるCA局設立計画推進等を行なう。日立、DNP、富士通、NTTデータ、マス ターカード、マイカルカード等が参加。 「新しいミレニアム(千年紀)の始まりを目前に控え、人類の直面する課題に応え、新し ミレニアム・プロジェクト い産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むこととし、これを新しい千年紀のプロジェク ト。」政府広報より。 マニューシャ方式

や行 -

-

ら行 リライトカード レーザーカード ローコストカード

カードフェースに情報を電子的に一定の回数書き換えられるカード。 レーザ光線を応用した読取り装置を組み込んだカード。記憶容量が磁気カードやICカー ドに比べて極めて大きいのが特色で、カードに蓄積可能な情報量はICの約250倍といわ れる(2メガバイトの場合、240万字)。 メモリだけを搭載した、低コストで製造することができるカード。

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1.4 無線タグシステム

わ行

ワンストップ行政サービス

ワンタイムパスワード

住居地にとらわれず、自分にとって利用しやすい窓口或いは各所に設置された情報端末の 1カ所(郵便局24,000カ所、コンビニエンスストア48,000カ所、あるいは行政書士事務 所36,000カ所など)にて、住民票の写し、登記簿謄抄本、課税証明、所得証明、印鑑証 明などの申請手続や交付が可能となる行政サービス。将来的には、インターネット経由で 個人のPC等を利用したサービスの提供も検討している。 郵政省が郵便局でのサービス 提供を目指し実験中。アメリカでは、“WINGS”という名称で同様にサービス提供実験 中。マレーシア、シンガポールでは、実運用に入っている。 パスワードを盗まれる事を防ぐため、トークンと呼ばれるパスワード生成装置もしくはプ ログラムを用いてアクセスする度に異なるパスワードでログインする方式。サーバ側にも トークンと同様の機能を持たせ、例えば時間をキーとしてパスワードを設定して、サーバ にそのパスワードと時間から正しいものである事を認識させる。

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1.5 語句の定義

1.5 語句の定義 ログ [[ l o g ] コンピューターの利用状況や通信の記録.本調査の場合,記録用PCに蓄積 された来場者の行動履歴を指す.

ログデータ 調査後に記録用PCに蓄積されたコード化された行動履歴.

行動履歴 調査対象のスキー場来場者の終日行動のなかで,特定施設(リフト・休憩施 設)が利用された場所と時刻を記録したもの.

無線タグシステム スキー場来場者の行動を調査するためのサーバー,プログラム,タグなどで 構成されるシステム.

無線タグ ⇒ I C タ タグ

I C タ タ グ [ I C t a g ] g] 記憶装置と無線通信の機能をもつタグ(付け札).在庫管理や盗難防止などの 目的で用いる.カード型やラベル型など,さまざまな形状がある. RFID タグ.無線タグ.

RFID [radio frequency identification] IC と小型アンテナが組み込まれたタグやカード状の媒体から,電波を介して 情報を読み取る非接触型の自動認識技術.複数の媒体の情報を一括で読み取る ことや,内蔵された IC への新たな書き込みが可能で,情報を消去して媒体を 再利用することもできる.セキュリティーや生産・在庫・物流管理,交通,レ ジャー施設など幅広い分野で活用され始めている. - 56 -


1.5 語句の定義

タグ 無線タグシステムを用いた本調査で使用した送信機.

リーダー 無線タグシステムを用いた本調査で使用した受信機.

トリップ 人がある目的をもってある地点からある地点へ移動する動きのこと.交通用 語である.本論文では,ある地点からある地点への移動という形式で表現され る種類のデータをトリップデータと呼ぶ.

A/L (Arrive/Leave) L ログデータの一部で,タグがリーダーの受信範囲内に入った時刻を表すのが 「A」,受信範囲内から離れた時刻を表すのが「L」.

バグ [[ b u g ] コンピューターのプログラムにおける誤りの箇所 . 本研究では,ログデータ内で Arrive が 2 回連続して記録されているデータの 部分や,Leave が 2 回連続して記録されているデータの部分を指す.

ノイズ [[ n o i s e ] まぎれ込んだ無関係なデータ. 本研究では,タグ所持者がリーダー付近に滞在し続けたにも拘わらず,タグ がリーダーの受信範囲を何度も出入りしたと感知されたために記録された余分 な A/L データのことを指す.

連結型スキー場 以前は個別に独立していたスキー場を,ゴンドラなどで連結し,共通リフト 券なども販売するなどして拡大されたスキー場を指す.

ski/board スキー / スノーボード - 57 -


1.5 語句の定義

long ski 滑走道具を4分類に分けた場合に,ノーマルスキー・カービングスキー・モー グルスキーの3道具を指す.

short ski 滑走道具を4分類に分けた場合に,ショートスキー・ファンスキーの2道具 を指す.

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2.1 調査概要

2.1 調査概要 本研究では,スキー場利用客の終日行動データを収集するために,田代ス キー場の入場口 2 箇所にて,スキー場利用客 385 人に対し以下の 3 つの調査を 依頼した.1人の被験者につき,3 つの調査全てに協力を依頼した.

○調査内容 1)アンケート調査 2)無線タグ調査 3)満足度調査

○調査の流れ アンケート記入 タグ配布(入場時刻記録) ↓ 滑走(リフト・レストハウスの利用時刻データ記録) ↓ タグ返却(退場時刻記録) 満足度回答

○調査地 田代・かぐらスキー場: 〒 949-6212 新潟県南魚沼郡湯沢町二居田代高原 ・営業時間 リフト・ロープウェー(土・休日)7:30 〜 17:00 ゴンドラ(土・休日)7:45 〜 16:00 苗場 - 田代ゴンドラ(ドラゴンドラ)( 土・休日)8:00 〜 16:30 ・駐車場 1,050 台

苗場スキー場: 〒 949-6292 新潟県南魚沼郡湯沢町三国 ・駐車場 7,000 台 - 59 -


2.1 調査概要

○調査日時 2002 年 2 月 16 日(土) 7:00 〜 17:20

○調査日の気象状況(湯沢町) 天候:晴れ 平均気温:0.2℃ 最高気温:5.3℃ 最低気温:-2.9℃ 平均風速:0.8m/s 日照時間:6.5 時間

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2.2 アンケート調査

2.2 アンケート調査 ○アンケート人数(田代スキー場入場者) ・田代ロープウェー山麓駅からの入場者 185 人 ・苗場 - 田代ゴンドラからの入場者 200 人 調査協力依頼は,アンケート配布開始から順次田代スキー場入場者に対して 行った.

○アンケート配布場所・時刻 ・田代ロープウェー山麓駅内 ロープウェー乗り場前 7:00 〜 9:50 ・苗場 - 田代ゴンドラ 1) Naeba Station 8:50 〜 11:40 (記入はゴンドラ内で行い,記入済みアンケートシートは Tashiro Station にて回収)

○アンケート項目 表 2.1.2.1 アンケート項目 基本属性に関して

性別 年齢 郵便番号 来場回数 同伴者数(男女別) 当日の滑走道具 宿泊場所

滑走技術に関して

スキー技術レベル スノーボード技術レベル

滑走スタイル

①自分の技術に合ったコースを繰り返し滑る

(重要度)

②より高い技術のコースに挑戦する ③簡単なコースを楽しむ ④地形や雪質の変化を楽しむ ⑤長いコースを一気に滑る ⑥いろいろな種類のコースを滑る ⑦スピードやスリルを楽しむ ⑧ジャンプや技を練習する ⑨空いているコースを滑る

苗場-田代ゴンドラに関して

ゴンドラに乗車し田代スキー場へ行く理由

満足度に関して

田代スキー場の満足度

苗場-田代ゴンドラを知ったメディア

1)苗場-田代ゴンドラ:苗場スキー場と田代スキー場の連絡ゴンドラとして2001-2002シー ズンに新設された.全長 5,481m,8 人乗りの世界最長のゴンドラである.所要時間約 15 分. 「ドラゴンドラ」はその愛称である.スキー場利用客以外の観光目的でも乗車可能.ドラゴン ドラ往復料金(1 名/大人:¥1,800 子供:¥900)

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2.2 アンケート調査

技術レベルに関する項目は,以下の基準で選択回答とした.

・スキー 1 . 上級 コブが難なく滑れる (SAJ 1級程度以上) 2 . 中上級 急斜面のショートターンができる (SAJ 2級程度) 3 . 中中級 常に板を揃えて滑ることができる (SAJ 3級程度) 4 . 中初級 中斜面をころばずに滑ることができる(SAJ 4級程度) 5 . 初級 初めて、2〜3回滑ったことがある (SAJ 5級程度以下)

・スノーボード 1 . 上級 スイッチスタンスでカービングターンができる(SAJ 1級程度以上) 2 . 中上級 スイッチスタンスでドリフトターンができる (SAJ 2級程度) 3 . 中中級 カービングターンができる (SAJ 3級程度) 4 . 中初級 中初級 ドリフトターンができる (SAJ 4級程度) 5 . 初級 初めて、2〜3回滑ったことがある (SAJ 5級程度以下)

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2.3 無線タグ調査

2.3.6 使用機材 ○リーダー(受信機):21 台 ・リフト 15 台 ・レストハウス 6 台

○バーコードリーダー(入退場時刻の記録):2 台 ・田代ロープウェー山麓駅 1 台 ・苗場 - 田代ゴンドラ Naeba Station 1 台

○ノート型(ログデータ記録用):23 台 ・東芝製 DynaBook 14 台 リフト設置 7 台 レストハウス設置 5 台 アンケート配布場所設置 2 台 ・Libretto 9 台 リフト設置 8 台 レストハウス設置 1 台

○タグ(発信器):800 個 ・2 秒タグ 200 個 ・6 秒タグ 600 個

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2.3 無線タグ調査

○ DynaBook 仕様

機種名

東芝 DynaBook Satellite2250 SA60C/4

型番

S/L2250/14-64-10C8

CPU

Celeron/600MHz

メモリ/ハードディスク

64MB/10GB

ディスプレイ

14.1インチTFT液晶

OS

Windows 98

その他

LAN/CD-ROMドライブ

キャッシュメモリ

32KB(1次キャッシュ、CPUに内蔵)、128KB(2次キャッシュ、CPUに内蔵)

BIOS ROM

512KB(フラッシュROM)、ACPI1.0b、APM1.2、Plug and Play 1.0a

<表示機能> ビデオRAM

2.5MB

グラフィック アクセラレータ

Trident Cyber9525DVD

解像度:表示色数

1,280x1,024ドット:256色、1,024x768ドット:65,536色、800x600ドッ ト:1,677万色、640x480ドット:1,677万色

<補助記憶装置(固定式)> フロッピーディスク

3.5型(1.44MB/1.2MB/720KB)

CD-ROM

最大24倍速CD-ROM、12/8cmディスク対応、ATAPI接続

対応フォーマット

音楽CD、CD-ROM、CD-R、CD-RW、マルチセッション(PhotoCD、CDエクスト ラ)

PCカードスロット

TYPE ×2スロットまたはTYPE ×1スロット(PC Card Standard準拠、CardBus対 応)

ネットワーク機能

100Base -TX/10Base -T(自動認識、Wake On LAN対応)

サウンド機能

PCIバス接続サウンドシステム(16ビットステレオ)、ステレオスピーカ内蔵、全 二重対応、3Dサウンド対応

インタフェース

・シリアル(RS-232C 9ピンD-sub、非同期115,200bps(ハードウェア仕様)、 16550A互換)×1 ・パラレル(セントロニクス、25ピンD-sub ECP対応)×1 ・RGB(15ピンミニD-sub 3段)×1 ・USB×1 ・PS/2(6ピンミニDINマウス/キーボード共用)×1 ・LAN(RJ45)×1 ・マイク入力(3.5mmモノラルミニジャック)×1 ・ヘッドホン出力(3.5mmステレオミニジャック)×1

セキュリティ機能

パワーオンパスワード、インスタントセキュリティ、セキュリティロックスロット

省電力機能

ディスプレイ制御、HDD制御、CPU制御、ハイバネーション機能、スタンバイ機能

<電源> バッテリ

リチウムイオン(バッテリパック)

駆動時間

約1.6時間(省電力制御あり)

充電時間

約2〜3時間(電源OFF時)/約4〜10時間(電源ON時)

ACアダプタ

AC100V〜240V、50/60Hz

環境条件

温度5〜35℃、湿度20〜80%(但し結露しないこと)

外形寸法(突起部含まず)

14.1型TFT液晶:316mm(幅)×262.5mm(奥行)×48.9mm(高さ)

質量

約3.2kg(バッテリパック装着時)

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2.3 無線タグ調査

○ Libretto 仕様

機種名

Libretto 50CT

型番

PA1237xx

プロセッサ

Pentium 75MHz

メモリ(最大)

16MB(32MB)

ハードディスク

810MB

<表示機能> ディスプレイ

6.1inch TFT 640×480

グラフィック アクセラレータ

C&T 65550

ビデオRAM

1MB

PCカードコントローラ

Toshiba ToPIC95/97

IrDAコントローラ

UART 16550(SIR)

USBコントローラ

(None)

Modem

(None)

LANコントローラ

(None)

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2.3 無線タグ調査

○バーコードリーダー仕様

機種名

CCD バーコードスキャナ

型番

CMX85T-PS, CMX85T-USB

対応パソコン

Windowsパソコン(PS/2)/USBインターフェース対応パソコン

接続コネクタ

MiniDIN 6Pin/USB"A"

読取バーコード

JAN/ EAN/ UPC/ Interleaved 2 of 5(ITF)/ CODABAR(NW-7)/CODE39/ CODE128/ Industrial 2 of 5/Matrix 2 of 5/China Post 2 of 5/ MSI Plessey/UK Plessey/IATA/Telepen/ CODE32/ CODE11/CODE93/

読取深度

0〜50mm (最小幅0.38mm,PCS=0.9)

読取口幅

82mm

読取幅

最大110mm(最大深度のとき)

PCS値

0.3以上

電源

DC5V±5%(パソコン本体より供給)

消費電流

読取時:80〜95mA, 待機時:10mA

読取確認

ブザー音(音量調整)およびLEDランプ

インターフェース

キーボードウェッジ/USB

光源

赤色LED 660nm

読取センサ

CCDイメージセンサ2048ピクセル

分解能

0.127mm

走査速度

200スキャン/秒

ケーブル

約1.7mストレート

本体寸法

約 166 × 90 ×68.4 mm(左図参照)(握部水平状態のとき)

重量

本体165g

温湿度条件

動作時: 0〜40℃ 5〜95% 保管時:-10〜60℃ 5〜95% いずれも結露なきこと

MTBF

20,000時間

図 2.3.6.1 バーコードリーダー寸法(単位:㎜)

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2.3 無線タグ調査

○リーダー仕様

機種名

Spider Reader

<Capabilities> Simultaneous identification (collisionavoidance)

500 tags @ 7 second beacon intervals

Communication protocol

Standard wired Ethernet or 802.11b wireless

On-line range control

Provides digital control of readers read range

Operating frequency

303.8MHz

<Read Ranges> Helical antenna

Up to 150’

Omni angle antenna

Up to 350’

YAGI antenna

Up to 1000’

<Physical Characteristics> Length

5.0 inches

Width

4.8 inches

Height

1.5 inches

Weight

16 oz.

Case

Aluminum with powder coat

Mounting

Ceiling or wall mount provision or desktop operation

Optional enclosure available for NEMA4 applications <Environmental> Operating temperature

0℃ to 75℃

Storage temperature

-25℃ to 75℃

Operating humidity

95%

Storage humidity

98%

○タグ仕様

機種名

Spider Tag

<Capabilities> Transmission rate

7seconds

Operating frequency

303.8MHz

Identification range

Up to 300’

Unique codes

Over 4 billion

Battery life

3-5 years

<Physical Characteristics> Length

2.4 inches

Width

1.2 inches

Height

0.4 inches

Case

Plastic

<Environmental> Operating temperature

0℃ to 75℃

Storage temperature

-25℃ to 85℃

Operating humidity

95%

Storage humidity

98%

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2.3 無線タグ調査

2.3.7 タグ装着方法 被験者が携帯するタグの仕様は以下の通りである.

○タグの種類 タグ(送信機)は常に一定の間隔で電波を発信している.その間隔が 2 秒間 隔のタグと ,6 秒間隔のタグの 2 種類を今回の調査では使用した.

調査で仕様したタグ 800 個の内訳: ・2 秒タグ 200 個 ・6 秒タグ 600 個

○タグの組み合わせ タグの感知率向上の目的と,タグの組み合わせによる感知傾向の違いを検 証する目的のため,被験者は 1 人につき 2 つのタグを携帯した.被験者には,首 から掛けられる紐の輪に 2 つのタグを通した状態で配布を行った. 配布場所とタグの組み合わせの数量は以下の通り.

田代ロープウェー山麓駅での配布: ・「2 秒タグ +6 秒タグ」の組み合わせ 85 組 ・「6 秒タグ +6 秒タグ」の組み合わせ 100 組

苗場 - 田代ゴンドラ Naeba Station での配布: ・「2 秒タグ +6 秒タグ」の組み合わせ 100 組 ・「6 秒タグ +6 秒タグ」の組み合わせ 100 組

一般来場者が携帯する以外に,調査員も調査時間内にタグを携帯した.これ は,調査員が実際にリフトに乗車,またはレストハウスを利用した記録(調査 員自身の申告)に対して,ログデータが正常に記録された割合をみることによ り,タグの感知率を求めるためである.

調査員への配布: ・「2 秒タグ +6 秒タグ」の組み合わせ 15 組 - 76 -


2.3 無線タグ調査

○タグの携帯方法

タグは,衣類の奥深くにしまい込んでしまうと,感知範囲が狭くなる傾向が ある 1).そのため,ウェアーの中でタグが 2 個付けられた紐を首から下げる方法 を基本とし,携帯するよう被験者に依頼した.被験者にとって首から下げる方 法が不都合な場合は,ウェアーのポケットに入れるなどタグが外部に露出しな い範囲で,別の携帯方法も選択可能とした. 本調査で使用したタグは,防水加工が施されていない.タグを外部に露出し たまま携帯していると,被験者が転倒した際などにタグに雪や水滴が付着し, 故障の原因となる.また,首に掛けた紐が,滑走中やリフト乗車中に何らかの ものに引っかかると大変危険であるため,感知範囲は狭まるが,タグはウェ アー内に携帯する事とした.

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2.3 無線タグ調査

2.3.8 ログデータの形式 記録用のノートPCには,以下のかたちでログデータが保存される.

○ファイル形式 テキストファイル

○記録内容 以下の内容の文字列データが「,」又は特定のアルファベットを間に挟んだ形 式で記録される.1 列目から 5 列目までの文字情報が 1 回の行動履歴に対して 1 行に修められる.感知された行動記録の数だけ,記録データの行が加えられる.

1 列目:アルファベット A 又は L (Arrive データか Leave データかの区別) 2 行目:被験者 ID 番号 (被験者1人につき 2 個のタグを所持しているため,1人の被験 者が正常に感知されれば,一度の行動で 2 つの行動データがそれ ぞれ 1 行ずつ記録される.その場合は,1 行ずつ別の ID 番号が記 録される) 3 列目:リーダー番号(名称はそれぞれ事前に設定可能) 4 列目:日にち(西暦年/月/日) 5 列目:時刻(時間/分/秒) 下記のいずれか ・Arrive データの場合,リーダーの感知範囲にタグが進入した時刻 ・Leave データの場合,リーダーの感知範囲からタグが外れた時刻

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2.3 無線タグ調査

1 列目:「L」Leave データ 2 列目:ID 番号 JSLXOZX 3 列目:リーダー番号 No.5 4列目:日にち 2002 年 2 月 16 日 5 列目:時刻 9:25:22

図 2.3.8 実際のログデータレイアウト

図 2.3.8 第1行目のデータは以下を意味する. 「ID 番号 JSLXOZX の来場者が,2002 年 2 月 16 日 9:25:22 にリーダー No.5 の感知範囲内から感知範囲外部へ離れた(Leave)」

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2.3 無線タグ調査

2.3.9 バーコードリーダーによる入退場時刻の記録 ○使用概要

アンケートとタグの配布場所である:

・田代ロープウェー山麓駅 ・苗場 - 田代ゴンドラ Naeba Station

の 2 箇所で,被験者の入場時刻と退場時刻をバーコードリーダーを用いて記 録した.2 個 1 組にして配布したタグには,それぞれタグに固有の ID 番号が認 識できるバーコードラベルが添付されている.タグに添付されているバーコー ドラベルにバーコードリーダーをかざす操作によって,タグのID番号を読み取 り,番号を読み取った時刻(入場時刻・退場時刻)を記録する.

○記録データ形式

バーコードリーダーもログデータ記録用のノート型PCに接続し,2.3.8のロ グデータと同じフォーマットの記録形式でデータはテキストファイルに保存さ れる.

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2.3 無線タグ調査

2.3 無線タグ調査 2.3.1 システム機器 無線タグ(RF-ID:Radio Frequency IDentification)は小型の発信機(タ グ)から発せられる無線を受信機(リーダー)で検知するものである.タグの 検知はリーダーの電波の届く範囲にある/ないの 2 値的に行われる. タグの寸法は,40 × 25 × 8mm 程度と携帯していても運動の邪魔にはなら ない大きさである.リーダーは下図のように,アンテナ付きの受信機と、パソ コンの組み合わせとなる.

リーダー

タグ

図 2.3.1 無線タグシステム使用機器(受信機:リーダー,発信機:タグ)

2.3.2 行動履歴の記録 受信ログ端末において,無線タグ所持者が受信機(リーダー)付近を通過す る毎に,タグのシリアル番号,到着時間,離脱時間,受信リーダー番号をログ として記録・蓄積する.また,記録時間の単位は秒とする.

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2.3 無線タグ調査

2.3.3 システム概要 無線タグを利用することにより、来場者がどのようにリフトを乗り継ぎ、ど この休憩施設に立ち寄ったかを調べることが可能となる。「Naeba-Tashiro Gondola」を中心とする新設リフトによって、来場者の行動が昨年と比較して どのように変化したのかを把握する。

具体的には、各リフト乗り場(又は降り場)や各休憩施設の出入り口ににリー ダーを設置し、来場者にはタグを配布することで、各リーダー毎に、いつ、ど の来場者がリフトに乗ったか、又は休憩施設を利用したかが把握できる。この リフト・休憩施設毎のデータを全て集計することにより、来場者ごとに、スキー 場内で一日を通してどのような行動をとったかが把握できるようになる。

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2.3 無線タグ調査

2.3.4 リーダー設置場所・設置時刻 以下の表の通り,各リフトの乗り場に 1, または 2 台のリーダーを,各レスト ハウスの出入り口に1台のリーダーを設置した.一昨年のプレ調査にて,スキー 場という気象環境条件の厳しい場所での無線タグ調査は,主に外気温の低さが 原因となり,システムに不具合が発生する可能性があることが予想された. よって,被験者のスキー場内における一日の行動を把握する上で,特に重要と 思われるリフトには,予備の意味づけで 2 台目のリーダーを配置した.各レス トハウスの出入り口は一箇所であり,レストハウスに設置するリーダーはその 出入り口の場所に設置した. 調査員によるリーダーの設置作業は,スキー場の営業時間開始前から行い, 基本的には来場者がリフトに乗車する以前に設置は行った.しかし,一部リフ トでは,感知が正常にされない不具合が発生したため.ログデータの記録開始 時刻が遅れた.

表 2.3.4.1 リーダー設置場所・時間 リーダー№

リフト・レストハウス名称

ログ記録開始時刻

ログ記録終了時刻

2 田代第3ロマンス

8:55

15:29

3 田代第4ロマンス

8:28

14:29

5 田代第6ロマンス

8:02

15:06

6 田代第7ロマンス

10:20

14:31

7 田代第7ロマンス

9:13

11:48

8 田代第8ロマンス

10:39

15:04

9:34

13:52

11 田代第2高速

9 かぐら第4ロマンス

9:39

15:13

12 田代第2高速

8:52

15:13

13 田代第2ロマンス

8:00

15:44

14 田代第2ロマンス

9:31

15:44

15 田代第1高速

8:39

15:33

13:13

15:23

17 かぐら第1高速 A レストランアルム

8:48

15:21

B とんかつ ぶなの木

10:08

14:36

C 田代ラーメンコーナー

9:42

15:59

D レストラン アリエスカ

9:44

15:18

9:02

15:10

10:01

14:47

D2 カレーハウス白樺 E 和田小屋

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図 2.3.4.2 リーダー設置個所ゲレンデ地図

2.3 無線タグ調査

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2.3 無線タグ調査

また,麓から山頂にかけて,ゲレンデを大きく4つのエリアに分割し,エリ

図 2.3.4.3 PQRSエリア振り分け図

ア名PQRSを下図のように設定した.

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2.3 無線タグ調査

2.3.5 リーダー設置方法 ○リフト箇所

リーダー: リフト小屋の壁面に接着させ固定 平面位置は乗客がリフトに乗車する位置前方 アンテナ 2 本を垂直平行に立て,乗客の進行方向に対して開いた方向に 固定 水滴が付着しないようアンテナ部分を除く本体部をビニールで覆う 設置高さは乗客の平均的な胸部の位置 ログデータ記録用PC(ノート型): リフト小屋室内の卓上に設置 ログデータ記録用ソフトを常時起動させておく

リーダー・PCを繋ぐ接続ケーブル: リーダーをリフト小屋室外,PCをリフト小屋室内に設置するため, ケーブルはリフト小屋窓のサッシュを数ミリ程度開けた状態にし,その 隙間に通す.

リーダー・記録用PCの電源: ノート型PCはバッテリー起動を行わない リフト小屋内のコンセントを使用

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2.3 無線タグ調査

図 2.3.5 リフト小屋にリーダーを設置する際の模式図

- 69 -


2.3 無線タグ調査 ○レストハウス箇所

リーダー: レストハウス出入り口付近の室内部に水平に寝かせた状態で設置 アンテナ 2 本は間の角度を 90°に開く 2 本のアンテナ棒が含まれる平面がレストハウス利用者が入室時・退室 時進む進行方向に対して垂直と保つ方向に固定

ログデータ記録用PC(ノート型): リーダー付近の適当な場所に設置 レストハウス利用者が誤って操作してしまぬように,段ボールなどで覆 い被験者の目に触れさせない ノート型PCは,物理的に閉じた状態でもログデータ記録用ソフトを起 動状態に維持できるようセッティングする

リーダー・記録用PCの電源: ノート型PCはバッテリー起動を行わない レストハウス内のコンセントを使用

- 70 -


3.1 利用回数・利用時刻の集計

3.1 利用回数・利用時刻の集計 1)文字の置換

図 3.1.1 生ログデータ(テキスト状態)

ログデータは上図のようなリーダーごとに蓄積されたテキストデータであり, 今後Microsoft Excelでファイルを展開するために以下のように文字の置換を 行う. A,IDCABDW,spider13,2002-02-16T09:10:32Z ↓ A,IDCABDW,spider13,2002-02-16,09:10:32

2)Excel ファイルに読み込む

図 3.1.2 生ログデータ(エクセルファイル)

Microsoft Excel にデータを読み込む際に,「,」と「+」の箇所で列を区切 る.また,各列のデータ内容と,設定する表示形式は以下の通り. 第1列:「A/L」データ (文字列) 第2列:タグ ID (文字列) 第3列:リーダー名 (文字列) 第4列:日にち (日付) 第5列:受信時刻 (時刻) - 81 -


3.1 利用回数・利用時刻の集計

3)バグデータの削除

ごくまれに,リーダーが1つの ID に対し,2 回続けて Arrive(A)を記録した り,2 回続けて Leave(L)を記録することがある.そのような場合には,時系列 順で前者を削除した.なお,この作業は各リーダーごとに分割したままの状態 で行った.

4)ノイズデータの削除

○目的

タグを所持した被験者がリーダー付近に滞在した場合,リーダーは数メート ル程度の受信範囲内にタグが出入りするのを感知する.その場合,ログデータ には数分以内に同じ ID の「A/L」データを大量に記録してしまう.このような データは,後に行動履歴を集計する際に不要になる.本調査での集計の目的は, 被験者のリフト・レストハウスの利用回数であるので,受信範囲付近に滞在し 続けたデータは削除する.逆に,対象とするリフト・レストハウスからいった ん離れたと見なすことができれば,次に同じ ID が記録された場合,利用の回数 を重ねたと判断する.

○削除の基準

ある一定の時間,リーダーが同一の ID を感知していなければ,その ID タグ は , 対象とするリフト・レストハウスをいったん離れたとみなす.1つのリフ ト・レストハウスを利用し,その後いったん離れて再び利用したと判断する時 間間隔の基準を以下の要因で設定した.

リフト設定時間: 「リフトの所要時間」 + 「同じリフトを連続して利用する場合の最短コース滑走時間」 - 82 -


3.1 利用回数・利用時刻の集計

レストハウス設定時間: 「レストハウス最寄りのリフト所要時間」 + 「レストハウス最寄りのリフトを連続して利用する場合の最短コース滑走時間」 + 1 分間

○設定時間

上述の基準から導いたノイズ削除のために設定した基準時間は以下の表の通 りである. 表 3.1.3 リーダーごとのノイズ削除に使用する設定時間 1) 最寄りの リフト所要時間(s)

リーダー№

最短距離コースの 斜距離(m)

最短コース 滑走時間(s)

ノイズ削除の 設定時間(s)

2

4:52

659

1:34

6:26

3

6:32

1,060

2:31

9:03

5

4:42

499

1:11

5:53

6,7

6:52

926

2:12

9:04

8

2:18

441

1:03

3:21

9

4:58

662

1:35

6:33

11,12

3:00

1,000

2:23

5:23

13,14

7:40

1,031

2:27

10:07

15

4:31

1,287

3:04

7:35

17

5:05

1,063

2:32

7:37

A

3:00

1,000

2:23

6:23

B,C

7:40

1,031

2:27

11:07

D,D2

4:31

1,287

3:04

8:35

E

5:22

423

1:00

7:22

5)ID の統一

これまでの余分なデータ削除の作業を行うことにより,ログの生データは各 ID の終日の行動データに変換された.この段階では,本調査において 1 人の被 験者につき 2 つのタグを配布したので,1人の被験者の行動履歴が 2 つの ID の ログデータとして重複している状態である.この 2 つの ID のログデータを,1 人の被験者につき 1 つの行動履歴に合成する.最初のステップとして,ひとつ ひとつのログデータ(データ 1 行分)に含まれる ID の文字列部分に.新たにペ ア番号を振る.

1) 表 3.1.1.3 最短コースの滑走時間(s)とは,最短距離コースの斜距離(m)を平均 7(m/s)の 速度で滑走した場合の所用時間である.

- 83 -


3.1 利用回数・利用時刻の集計 FYYAQWL

113

DZSMSAL FRTPYFV

114

KHBHOWW EKKJGAN

115

EKGOCZD ↑

タグID

ペアNo.

図 3.1.4 1人の被験者が持つ 2 つの ID を1つのペア番号にまとめるイメージ図

6)再削除

タグIDをペア番号に振り直したログデータに,再度バグデータの削除とノイ ズデータの削除を行う.この作業を完了した時点で残ったデータが,1人の被験 者が 2 つのタグによって得られた,終日の行動履歴である.分析に用いること ができる状態まで整理されたデータと言える.現時点のデータには被験者が リーダーの受信範囲に「入った/出た」の意味を示す「A/L(Arrive/Leave)」 データは両方とも残されている.

7)施設利用回数・時刻のカウント

リフトやレストハウスの利用回数と利用時刻の集計をログデータから行う場 合は,再削除の完了したデータの Arrive データのみを抽出し,5)の ID 統一で 決めた被験者番号(ペア No.)・利用施設(リーダー No.)・利用時刻を集計し た.

- 84 -


3.2 レストハウス滞在時間の集計

3.2 レストハウス滞在時間の集計 レストハウスの利用開始時刻は,3.1.1-7)の手順で求められるが,レストハ ウスにおける滞在時間の算出は,以下の要領で求める.

1)レストハウスデータの読み取り方

レストハウスの利用の場合,基本的に,レストハウスに入場した時刻に 「Arrive/Leave」データを1つずつ記録し,レストハウスを退場した時刻に再 び「Arrive/Leave」データを 1 つずつ記録する.

「A/L」

ペアNo.

リーダー名

日付

時刻

入場時のArriveログ

A

10

spiderA

2002.2.16

11:17:45

入場時のLeaveログ

L

10

spiderA

2002.2.16

11:18:07

退場時のArriveログ

A

10

spiderA

2002.2.16

12:26:50

退場時のLeaveログ

L

10

spiderA

2002.2.16

12:27:05

図 3.2.1 レストハウスのログデータの意味づけ (例:ペア No.10 の被験者1人分のレストハウス A における整理された状態のログデータ)

2)滞在時間の算出

上図の意味から,レストハウスの滞在時間算出は 1 行目の時刻と 4 行目の時 刻の差で求める.

3)レストハウスのログデータが 6 行以上の場合

レストハウス滞在中に,何らかの理由で(食事の追加,トイレの使用,公衆 電話の使用 等)リーダーの受信範囲に進入してしまった場合,滞在のとぎれ 目ではないのに,ログデータが記録されてしまう.このようにして,1 人の被験 者の1つのレストハウスにおけるログデータが 6 行を越える場合,連続して滞 在したのか,もしくは一度退場してから再来場したのかを判断しなければなら ない.そのためには,1人の被験者のあるレストハウスで最初に感知されたロ グデータの時刻と,最後に感知されたログデータの時刻の間に,他のリフト・ レストハウスでの感知履歴があるかないかを調べる必要がある. - 85 -


3.2 レストハウス滞在時間の集計 「A/L」

ペアNo.

リーダー名

日付

時刻

A

8

spiderA

2002.2.16

11:16:54

L

8

spiderA

2002.2.16

11:17:42

A

8

spiderA

2002.2.16

12:21:48

L A

8 8

spiderA spiderA

2002.2.16 2002.2.16

12:22:05 15:19:04

L

8

spiderA

2002.2.16

15:20:08

spider13&14 14:54:36 のログデータあり.

図 3.2.2 1人の被験者のレストハウスにおけるログデータが 6 行である場合のサンプル

上図のように,1つのレストハウスのログデータの間に,他のリフトひ乗車 したことを示すログデータが存在する場合は,1回目の来場時のレストハウス滞 在時間算出は,1 行目の時刻と 4 行目の時刻の差で求める.上図のサンプルの場 合は,5 行目・6 行目の時刻が,2 回目に同じレストハウスを訪れた時のもので ある. (2回目にレストハウスを利用した時の退場時刻のログデータが存在しな いが,これは 2 回目にレストハウスに滞在している間に,リーダーが回収され, ログの記録を終了したためである.)上図のサンプルの場合は,同一レストハウ スの利用回数は 2 回とみなす.

- 86 -


4.1 アンケート集計

4.1 アンケート集計 4.1.1 属性単純 ○性別

ski

board

不明 1%

不明 2%

女 31% 女 41% 男 57% 男 68%

図 4.1.1.1 スキー男女比

図 4.1.1.2 スノーボード男女比

いずれの種目も男性が 6 割前後を占め多くなっている.スノーボードの方が スキーより女性の比率が高い.

○年齢層 naeba

tashiro

50.00%

40.00%

30.00%

20.00%

10.00%

0.00% 10代

10代

20代

20代

30代

30代

40代

40代

50代

50代

60代

不明

前半 後半 前半 後半 前半 後半 前半 後半 前半 後半 前半

図 4.1.1.3 入場ゲート別の年齢層

運動を目的とするため,若い 20 代・30 代の年齢層が利用客の8割を占め,半 数弱が 20 代後半に特に集中している.その一方,10 代の利用客が極端に少な い理由としては,自動車を運転してのアクセスができないことなどが考えられ る. - 87 -


4.1 アンケート集計 ○居住地域 表 4.1.1.4 入場ゲート別来場者の居住地域(都道府県単位) 地方

都道府県

naeba

tashiro

北海道 計 関東

関東 計 中部

中部 計 近畿

4人 6人

5人 23人

9人 29人

栃木県 千葉県

2人 22人

6人 23人

8人 45人

埼玉県

39人

21人

60人

東京都 神奈川県

57人 31人

54人 20人

111人 51人

新潟県

161人 4人

152人 9人

313人 13人

山梨県 静岡県

1人 11人

1人 11人

16人

9人 2人

京都府 3人 3人

近畿 計

2人

8人

1人

2人 1人

1人 3人

1人

1人 4人

13人 200人

20人 184人

33人 384人

2人

福岡県 九州 計 不明 計 総計

北海道 20%

関東

25人 2人 3人 3人

6人 熊本県 長崎県

0%

1人

茨城県 群馬県

大阪府 三重県 九州

総計

1人

中部

40%

近畿 60%

九州

不明

80%

100%

naeba

tashiro

図 4.1.1.5 入場ゲート別来場者の居住地域(地方単位)

利用客は日本全国から訪れている.主に利用客は8割が関東からであり,中 でも東京都を中心とする首都圏からの利用客がその大半を占める.今回調査を 行った苗場スキー場,田代・みつまたスキー場は新潟県に位置するが,特に苗 場側の利用客は関東北部の近県からの利用は少ない.周辺施設も充実している 大型スキー場は,首都圏からの利用客数が全体の利用客数に大きく影響すると 考えられる.一方,新潟県や群馬県等の近県からの利用客は田代側が数的に多 い.その要因として,田代側は駐車場から入口ゴンドラまでのアクセスに時間 が掛からない等の利点が挙げられる.

- 88 -


4.1 アンケート集計 ○滑走道具 naeba 0%

10%

20%

tashiro

30%

40%

50%

60%

普通のスキー カービングスキー モーグルスキー ファンスキー ショートスキー フリースタイルスノーボード アルペンスノーボード 不明

図 4.1.1.6 入場ゲート別当日の滑走道具

alpine ski 0%

20%

short ski

freestyle board 40%

60%

alpine board 80%

不明 100%

naeba

tashiro

4.1.1.7 入場ゲート別当日の滑走道具(スキー/スノーボードに大別)

滑走道具はフリースタイルスノーボードが全体の 44%と最も多い.しかし, 普通のスキーとカービングスキーを合計すると,フリースタイルスノーボード にほぼ迫る数になる.近年浸透してきているファンスキーとショートスキーの 合計は全体の 13%であった.入場ゲート別に比較すると,苗場側は6割がス キーであり,反対に田代側は6割がスノーボードである.

- 89 -


4.1 アンケート集計 ○宿泊 日帰り 0%

苗場プリンスホテル

20%

40%

その他宿

60%

不明

80%

100%

naeba

tashiro

図 3.1.8 入場ゲート別宿泊状況 図 4.1.1.8 入場ゲート別にみた宿泊施設

苗場側からの利用客は,4割が同敷地内の「苗場プリンスホテル」の宿泊者 であり,全体の7割が宿泊者と,苗場スキー場は宿泊型のスキー場といえる.一 方,田代側からの利用客は6割が日帰り客であり,田代スキー場は日帰り型の スキー場である.このことから,田代側は宿泊せずに日帰りできる近県からの 利用客が多くなっていると考えられる.

○来場回数 ski

board

7

8

40%

30%

20%

10%

0% 1

2

3

4

5

6

9

10

〜20

〜50 〜100 回目

不明

図 4.1.1.9 滑走道具別にみた来場回数

初めての利用客が 30%と最も多く,5 回目以内が 71%と大半である.逆に, 10 回以上の高リピーターに関しては,苗場側の利用客が 23%,田代側の利用客 が 15%と利用回数に差がみられた. - 90 -


4.1 アンケート集計 ○スキー技術レベル

上級 0%

20%

中上級

中中級

40%

中初級 60%

初級 80%

100%

当日スキーヤー (195人)

当日ボーダー (61人)

図 4.1.1.11 滑走道具別スキー技術レベル

調査当日のスキーヤーの方が,スノーボーダーより技術のレベルが高い.し かし,上級者の割合にはあまり差がみられないのは,スキー技術が上がってか らスノーボードに転向した人が多いのではないかと考えられる.

○スノーボード技術レベル

上級 0%

20%

中上級 40%

中中級

中初級 60%

初級 80%

100%

当日ボーダー (179人)

当日スキーヤー (32人)

図 4.1.1.12 滑走道具別スノーボード技術レベル

調査当日のスノーボーダーの方が,スキーヤーより技術レベルが高い.しか し,スキーヤーの半数以上はスノーボード初級者であり,挑戦してみたことが ある程度の人多いと考えられる.

- 91 -


4.1 アンケート集計 ○グループ人数

ski

board

50.00% 40.00% 30.00% 20.00% 10.00% 0.00% 1人

2人

3〜5人

6〜10人

11〜20人

〜100人

図 4.1.1.10 滑走道具別にみたグループ人数

スノーボーダーと比較して,スキーヤーは 6 人以上の大人数のグループの方 に分布が偏っている.逆に,スノーボーダーは 2 人での来場客が多かった.ス キーヤーもスノーボーダーも,3 〜 5 人のグループが最も多くなっている.

- 92 -


4.1 アンケート集計 ○ドラゴンドラに乗る理由

naebaのみアンケート

ドラゴンドラが新しく出来たから いろいろなコースを滑りたい 話題性があるから ゴンドラの景色を見てみたいから 苗場スキー場が混んでいるから 乗った人の評判が良かったから 内場スキー場のコースに飽きた 休憩も兼ねて 0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

図 4.1.1.13 苗場側ゲートからの入場者における連絡ゴンドラの乗車理由(複数回答)

ドラゴンドラに乗って田代スキー場へ行く理由としては, 「 ドラゴンドラが新 しく出来たから」という理由が最も多かった.この理由は次年度以降はドラゴ ンドラが新設ではなくなるため,徐々に減少する.それにつぐ理由としては, 「いろいろなコースを滑りたい」という理由が多く挙げられた. 「苗場スキー場が混んでいるから」 「苗場スキー場のコースに飽きたから」と いう苗場スキー場に対する不満から田代スキー場に行くという理由はほとんど 得られなかった.

- 93 -


4.1 アンケート集計 ○ドラゴンドラを知った理由

naebaのみアンケート

テレビCM 口コミ テレビ番組 新聞・雑誌 パンフレット・チラシ スキー場に来て知った インターネット その他・不明 0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

図 4.1.1.14 苗場側ゲートからの入場者における連絡ゴンドラの認知媒体(複数回答)

「テレビCM」の回答が群を抜いて多く得られた.ついで「口コミ」の回答が 多く得られた.1 位の「テレビCM」と3位の「テレビ番組」を合計すると,テ レビ媒体による宣伝効果はかなり大きいといえる.

- 94 -


4.1 アンケート集計

4.1.2 滑走時に重視する項目 ○ノーマルスキー(64 人) 全く重視しない

あまり重視しない 0%

10%

どちらともいえない 20%

30%

40%

やや重視する 50%

60%

かなり重視する 70%

80%

90%

100%

①自分の技術に合ったコースを繰り返し滑る ②より高い技術のコースに挑戦する ③簡単なコースを楽しむ ④地形や雪質の変化を楽しむ ⑤長いコースを一気に滑る ⑥いろいろな種類のコースを滑る ⑦スピードやスリルを楽しむ ⑧ジャンプや技を練習する ⑨空いているコースを滑る

図 4.1.2.1 ノーマルスキーヤーが滑走時に重視する項目

カービングスキーに対して,全体的に強く重視する項目が少ないのが特徴で ある.

○カービングスキー(74 人) 全く重視しない

あまり重視しない 0%

10%

どちらともいえない 20%

30%

40%

やや重視する 50%

60%

かなり重視する 70%

80%

90%

100%

①自分の技術に合ったコースを繰り返し滑る ②より高い技術のコースに挑戦する ③簡単なコースを楽しむ ④地形や雪質の変化を楽しむ ⑤長いコースを一気に滑る ⑥いろいろな種類のコースを滑る ⑦スピードやスリルを楽しむ ⑧ジャンプや技を練習する ⑨空いているコースを滑る

図 4.1.2.2 カービングスキーヤーが滑走時に重視する項目

ノーマルスキーに比べ, 「スピード・スリルを楽しむ」が重視されている.よ りアグレッシブな滑りを求めて作られた板なので,コンセプトと合致した傾向 がみられる. - 95 -


4.1 アンケート集計

○ショートスキー・ファンスキー(49 人) 全く重視しない

あまり重視しない 0%

10%

どちらともいえない 20%

30%

40%

やや重視する 50%

60%

かなり重視する 70%

80%

90%

100%

①自分の技術に合ったコースを繰り返し滑る ②より高い技術のコースに挑戦する ③簡単なコースを楽しむ ④地形や雪質の変化を楽しむ ⑤長いコースを一気に滑る ⑥いろいろな種類のコースを滑る ⑦スピードやスリルを楽しむ ⑧ジャンプや技を練習する ⑨空いているコースを滑る

図 4.1.2.3 ショートスキーヤー・ファンスキーヤーが滑走時に重視する項目

板が短いために,回転などの技やジャンプが容易にこなせ,滑走時にも「ジャ ンプや技を練習する」が他のスキーと比較して重視されている.また, 「より高 い技術のコースに挑戦する」を重視する割合が低く ,「長いコースを一気に滑 る」「空いているコースを滑る」の割合が高くなっている.

○フリースタイルスノーボード(168 人) 全く重視しない

あまり重視しない 0%

10%

どちらともいえない 20%

30%

40%

やや重視する 50%

60%

かなり重視する 70%

80%

90%

100%

①自分の技術に合ったコースを繰り返し滑る ②より高い技術のコースに挑戦する ③簡単なコースを楽しむ ④地形や雪質の変化を楽しむ ⑤長いコースを一気に滑る ⑥いろいろな種類のコースを滑る ⑦スピードやスリルを楽しむ ⑧ジャンプや技を練習する ⑨空いているコースを滑る

図 4.1.2.4 フリースタイルスノーボーダーが滑走時に重視する項目

他の滑走道具と比較して,「空いているコースを滑る」が最重要視されてい る.スノーボードは,スキーに比べて滑走時にコースを横に広く使いながら滑 る特性が原因になっていると考えられる. 「ジャンプや技を練習する」も他の道 具と比較して重視する割合が最も高く,逆に「スピードやスリルを楽しむ」は 重視の度合いが低くなっている. - 96 -


4.1 アンケート集計

○アルペンスノーボード(10 人) 全く重視しない

あまり重視しない 0%

10%

どちらともいえない 20%

30%

40%

やや重視する 50%

60%

かなり重視する 70%

80%

90%

100%

①自分の技術に合ったコースを繰り返し滑る ②より高い技術のコースに挑戦する ③簡単なコースを楽しむ ④地形や雪質の変化を楽しむ ⑤長いコースを一気に滑る ⑥いろいろな種類のコースを滑る ⑦スピードやスリルを楽しむ ⑧ジャンプや技を練習する ⑨空いているコースを滑る

図 4.1.2.5 アルペンスノーボーダーが滑走時に重視する項目

サンプル数が少ないためはっきりとはしないが, 「長いコースを一気に滑る」 が特に重視されている.ジャンプや技を楽しめないような道具の構造なので, アグレッシブにスラロームすることが醍醐味だからであろう.以外にも「ス ピードやスリルを楽しむ」を重視する割合が低くなっている.その他には, 「自 分の技術に合ったコースを繰り返し滑る」が他の道具に比べ,最も重視されて いる.

- 97 -


4.2 ログデータ集計

4.2 ログデータ集計 4.2.1 リフト・レストハウス単純 1)リフトのべ利用回数 (回) 400 350 300 250 200 150 100 50 0 No.12

No.13&14

No.15

No.09

No.17

図 4.2.1.1 リフトのべ利用回数

リフトの感知された利用回数は,田代麓のリフトが最も多かった.苗場側の 麓のリフト No.12 は苗場からの利用者が必ず乗車するはずであるにも拘わら ず,回数が少ないのは感知の問題である.

2)リフト利用回数(時系列) (回) 80 70 No.09

60

No.12

50 40

No.13 &14

30

No.15

20

No.17

10 0 8:00:00

9:00:00

10:00:00 11:00:00 12:00:00 13:00:00 14:00:00 15:00:00

図 4.2.1.2 時系列でみたリフト利用回数の推移

田代麓のリフト No.13&14 は入場時・昼食時・退場時に利用回数が増加して いる.また,感知された回数は少ないが,苗場側麓のリフト No.12 は入場時に やや回数が増加している. - 98 -


4.2 ログデータ集計

3)同一リフト利用回数

0%

20%

40%

60%

11

No.12

No.13&14

80%

3

95

45

100%

1

28

1

9 9

1回 2回

No.15

36

33

8

3回

23

4回 No.09

62

15

17

No.17

8

7

0

5回以上

2

図 4.2.1.3 同一リフト利用回数(単位:人)

同一リフトで繰り返しの乗車が多かったのは中腹のリフトNo.15と田代麓の リフト No.13&14 である.逆に繰り返しの乗車が少なかったのは山頂のリフト No.9であった.これは山頂の広いゲレンデへ行くまでの連絡的な意味合いがあ るためと考えられる.

4)レストハウスのべ利用時間

(hh:mm:ss) 90:00:00 75:00:00 60:00:00 45:00:00 30:00:00 15:00:00 0:00:00 A

B

C

D

D2

E

図 4.2.1.4 レストハウスのべ利用時間

レストハウスの利用時間はレストハウス A が極めて多かった.レストハウス A は苗場側の連絡口の目の前に位置しており,苗場側から利用客は全ての人が 目にすることや,新設されたばかりであることが理由と考えられる. - 99 -


4.2 ログデータ集計

5)レストハウス利用人数(時系列) (人) 50 45 40

35

30

25

20

D2 E

15 10 5 0 8:00:00 9:00:00 10:00:00 11:00:00 12:00:00 13:00:00 14:00:00 15:00:00 16:00:00

図 4.2.1.5 時系列でみたレストハウス利用人数の推移

リフトの利用は大きく分けて,昼食時と午後の休憩と思われる時間に大きな 山がある.レストハウス A は正午前と田代スキー場を退場する前に利用のピー クが特にみられた.

6)同一レストハウスの利用回数 0%

20%

40%

60%

80%

100%

110

A

8

B

26

7

C

42

9

1

1

3

1回 2回

88

D D2

E

7

32

18

52

0

3回

0

0

図 4.2.1.6 同一レストハウス利用回数(単位:人)

レストハウス D2 は複数回利用者の割合が高かったのに対し,レストハウス E は複数回利用する人は1人もいなかった.レストハウス A に関しては複数回 利用者の数は少なくなかったが,全体の利用者数が多かったために割合として は低くなっている. - 100 -


4.2 ログデータ集計

7)レストハウス最長利用時間

(人) 120 100 80 60 40 20 0 No Rest

〜0.5h

〜1h

〜1.5h

〜2h

〜2.5h

2.5h〜

無感知

図 4.2.1.7 レストハウス最長利用時間

休憩がなかった人は,休憩をとらなかった人と感知が正常に行われなかった 人とを含んでいるため,人数が多くなっている.また,30 分以内の休憩者は, リーダーを回収する時刻前の15時あたりにレストハウスに入り,リーダー回収 後に退室したために,滞在時間が測定できなかった人を含んでいるため,人数 が増している.休憩時間で最も多いのは 30 分〜 1 時間の時間帯であった.休憩 が長い人では 3 時間以上レストハウスに滞在していた人もいた.

- 101 -


4.2 ログデータ集計

4.2.2 苗場・田代 / スキー・スノーボード別集計 1)苗場・田代 / スキー・スノーボード分類の構成比

田代-board 29%

苗場-ski 33%

田代-ski 19%

苗場-board 19%

図 4.2.2.1 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類の構成

苗場側からのスキーヤー 124 人,苗場側からのスノーボーダー 73 人,田代 側から入場のスキーヤー 71 人,田代側から入場のスノーボーダー 107 人であ り,苗場側からの入場者はスキーヤーが多く,田代側からの入場者はスノー ボーダーが多かった.以上の 4 分類別にゲレンデの行動を分析する.

2)ゲレンデ総滞在時間 0%

20%

苗場-ski

4

17

苗場-board

3

7

40%

60%

30

80%

38

100%

17

5 3

13

3

1h〜 2h〜 3h〜

14

14

12

4h〜 5h〜

田代-ski

15

7

19

30

6

1

6h〜 7h〜

田代-board

13 3

12

27

52

8

8h〜 9h〜

図 4.2.2.2 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別にみたゲレンデ総滞在時間(単位:人)

苗場からのスキーヤーは特に滞在時間が短く,5時間未満の人が約 8 割であ る.苗場からの人はいずれも 3 〜 5 時間の滞在がほとんどであり,2,3 時間以内 の極めて短い滞在も17%ほどある.この特に滞在時間が短い層の来場目的をみ ると,ドラゴンドラ乗ることが目的の人の割合が高かった.逆に,田代からの 来場者は,6 〜 8 時間の滞在が 7 割を占めている. - 102 -


4.2 ログデータ集計

3)総レストハウス利用時間(休憩時間) 0%

20%

苗場-ski

40%

36

60%

80%

33

100%

44

10

1 No Rest

苗場-board

25

13

21

10

4

0h〜 0.5h〜

田代-ski

23

19

15

12

2

1h〜 2h〜

田代-board

25

23

30

20

9

図 4.2.2.3 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別にみた総レストハウス利用時間(単位:人)

苗場からのスキーヤーは,9 割以上が 1 時間未満しかレストハウスを利用し ていない.逆に,田代からのスノーボーダーは,2 時間以上の利用者が 1 割程 度,1 時間以上が 3 割弱と,レストハウスの利用時間が長い人が多かった.

4)総滞在時間に占める総レストハウス利用時間の割合 0%

20%

苗場-ski

30

40%

60%

27

80%

36

100%

14

5 2 No rest

苗場-board

21

12

15

12

4

2

0%〜 10%〜 20%〜

田代-ski

22

23

18

4

11

30%〜 40%〜

田代-board

24

33

34

9

33

図 4.2.2.4 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別にみた 総滞在時間に占める総レストハウス利用時間の割合(単位:人)

スキー場にいる時間のうち,レストハウスにいる時間が20%以上の人が苗場 からの利用客に多く見られる.特に苗場からのスノーボーダーは,3割以上の人 が総滞在時間の 20%以上の時間をレストハウスで過ごしている.逆に,田代か らのスキーヤーは,スキー場にいる時間の中でレストハウスにいる時間の割合 が低い人が多い.

- 103 -


4.2 ログデータ集計

5)リフト総乗車回数 0%

20%

40%

60%

苗場-ski

58

29

苗場-board

34

17

80%

100%

16

14

4 12

0回 1回 2回 3回

12

6

3 1

4回 5回

15

田代-ski

17

9

11

5

6

3 221

6回 7回 8回

田代-board

20

19

18

18

15

6

3 2 24

9回

図 4.2.2.5 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別にみたリフト総乗車回数(単位:人)

苗場からの利用客と田代からの利用客に大きな差がみられるが,スキーヤー とスノーボーダーには乗車回数の差はあまりみられない.苗場からの利用客は, リフト乗車回数が 2 回以下の人が 8 割強なのに対し,田代からの利用客は,半 数弱が 3 回以上の乗車回数である.これは,滞在時間そのものの影響が大きい と考えられる.

6)同じリフトの繰り返し乗車最高回数 0%

20%

苗場-ski

58

苗場-board

34

40%

60%

80%

39

100%

21

4 11

0回 1回 2回 3回

19

17

21

4回 5回

田代-ski

15

23

17

12

22

6回 7回 8回

田代-board

20

25

25

21

10

22 11

9回

図 4.2.2.6 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別にみた同じリフトの繰り返し乗車最高回数(単位:人)

同じリフトを繰り返し一番多く乗車した回数は,苗場からの来場者より田代 からの来場者の方が多く,スキーヤーよりスノーボーダーの方が多いという傾 向がはっきりみられる.苗場と田代に関する違いは,スキー場の総滞在時間の 影響と総リフト乗車回数の影響が大きいと考えられる.しかし,スキーヤーと スノーボーダーの違いは,種目そのものの傾向の違いであると考えられる.ス キーヤーとスノーボーダーの総リフト乗車回数の違いよりも,同じリフトを繰 り返した回数の方が大きな差がみられる.スノーボーダーの方が,スキーヤー よりも同じリフトを繰り返し乗車する傾向が強い. - 104 -


4.2 ログデータ集計

7)レストハウス総利用回数 0%

20%

苗場-ski

40%

60%

36

80%

100%

63

20

4 1

12

3

0回 1回

苗場-board

25

33

2回 3回

田代-ski

23

22

18

2

4回

6

5回 田代-board

25

43

17

10

6

5 1

6回

図 4.2.2.7 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別にみたレストハウス総利用回数(単位:人)

レストハウスの利用回数は,田代の方が複数回利用する人の割合が高い.こ れは,田代からの来場者の方が総滞在時間が長いことが影響していると考えら れる.

8)最高到達エリア 0%

20%

苗場-ski

39

苗場-board

24

40%

60%

17

80%

29

17

100%

39

21

11

P Q

田代-ski

田代-board

3

24

16

19

21

40

R

25

S 30

図 4.2.2.8 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別にみた最高到達エリア(単位:人)

苗場からの来場者も,田代からの来場者も,スキーヤーの方が山頂(S エリ ア)まで行く確率が高い.特に,苗場からのスキーヤーは,総滞在時間が田代 からのスキーヤーに比べて半分程度しかないにも拘わらず,高い確率で山頂(S エリア)まで到達している. 苗場からの利用客は,いずれも苗場からの入口に当たる P エリアのみでしか 滑走していない人が 3 割以上いる. 田代からのスノーボーダーは苗場側の麓(P エリア)までの利用客が多い.田 代からのスキーヤーは,田代側の麓(Q エリア)までしか行かない人の割合が 高い. - 105 -


4.2 ログデータ集計

9)総滞在時間別にみた満足度

0%

苗場-ski

4h未満 4〜7h未満

20%

2

8

苗場-board

60%

80%

15

2 4

4

24

17

2 4

4h未満 1

1

8

5

11

12

9

1

7h〜

100%

21

11

7h〜

4〜7h未満

40%

1 12

大不満 やや不満

2

普通

田代-board

田代-ski

4h未満

1

4〜7h未満

1

7h〜

2

6 1

4h未満

9

1

7h〜

4

24 1

8 2

大満足

15

5 1

4〜7h未満

やや満足

2 20

11

5

24

13 19

図 4.2.2.9 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別, 総滞在時間別にみた満足度(単位:人)

苗場からの来場者は,スキーヤーもスノーボーダーも 4 時間未満の滞在者よ り 4 時間以上の滞在者の方が満足度が高い.逆に,田代からの来場者は,スキー ヤーもスノーボーダーも 7 時間未満の滞在者より 7 時間以上の滞在者の方が満 足度が低い.いずれにしても,4 〜 7 時間の滞在者が満足度が最も高い層であっ た. ただし,苗場スキー場からの来場客の 7 時間以上のサンプルと,田代スキー 場の 4 時間未満のサンプルは,サンプル数が少ないため,考察には含んでいな い.

- 106 -


4.2 ログデータ集計

10)総レストハウス利用時間別にみた満足度

0%

20%

No Rest

苗場-ski

0h〜 0.5h〜

40%

6 1

7

4

3

1h〜

60%

苗場-board

2

18

1

9

4

4

2h〜 No Rest

6 17

10

1

100%

9

9

3

80%

1 1

3

6

0h〜

12

4

0.5h〜

2

1h〜

1

4

5

9

4

1

2h〜

1

6

5

1

3

1

1

大不満 やや不満

1

普通 No Rest

1 1

3

田代-ski

0h〜 0.5h〜

1

1h〜

10

5

10

2

10

2

田代-board

0h〜 0.5h〜 1h〜 2h〜

7 1

5

1

8

5

1

7

16

1 1

10 10

1 1 2

10

6 2

大満足 2

1 1 1

やや満足 4

3

2h〜 No Rest

8

8 3

4 3

図 4.2.2.10 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別, 総レストハウス利用時間別にみた満足度(単位:人)

レストハウスを一度でも利用した人に関しては,苗場からのスキーヤー・ス ノーボーダー,田代からのスキーヤーはレストハウスの滞在時間が長くなるほ ど満足度が上がる傾向にある.しかし,田代からのスノーボーダーは,レスト ハウスの滞在時間が 1 時間以上の人より 1 時間未満の人の方が満足度が高かっ た.

- 107 -


4.2 ログデータ集計

11)最高到達エリア別にみた満足度

0%

苗場-board

苗場-ski

P

20%

1

4

Q R

P

1

Q

1

R

1

100% 5

8

2

7

6

3

12 9

5

6

15 5

7

6

8

5 7

5

S

80%

13

3

2 1

60%

9

2

S

40%

1

7

8

4

3

大不満

2

2

やや不満 普通

田代-ski

P

3

Q

1 1

R

1

S

1

田代-board

13 5

3

Q

1

R

1 3

8 9

3

8 4

大満足

8

14

3

3

5

4

4

P

S

4

やや満足

9

16

16

9

12

6

図 4.2.2.11 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別, 最高到達エリア別にみた満足度(単位:人)

スノーボーダーは,苗場からの来場者も田代からの来場者も山頂(S エリア) まで到達した人が最も満足度が低い.逆に,田代からのスキーヤーは,山頂(S エリア)の満足度が最も高い. 全体的には田代スキー場の方が満足度が高い.

- 108 -


4.2 ログデータ集計

12)総滞在時間別にみた総レストハウス利用時間

0%

20%

苗場-ski

4h未満

12

100%

12

2

27

1

8

2

4h未満

14 6

5

7

7h〜

80%

21

13

4〜7h未満

4〜7h未満

60%

16

7h〜

苗場-board

40%

12

1

5 10

1

4

No Rest 0h〜

1

0.5h〜 田代-ski

4h未満

1

4〜7h未満

12

田代-board

7h〜

5

10

7h〜

8

13

4h未満 4〜7h未満

1h〜

6

5

1

7

1

2h〜

4 9 11

10 13

14 16

7 13

2 7

図 4.2.2.12 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別, 総滞在時間別にみた総レストハウス利用時間(単位:人)

苗場からのスキーヤー・スノーボーダーと田代からのスノーボーダーは,総 滞在時間が長くなるほど総レストハウス滞在時間も長くなる傾向がある.しか し,田代からのスキーヤーに関しては,そのような傾向は読みとれない.

- 109 -


4.2 ログデータ集計

13)総滞在時間別にみた最高到達エリア

0%

20%

60%

22

4h未満 苗場-ski

40%

11

4〜7h未満

4 12

苗場-board

7 27

3 9

4h未満

5

9

4〜7h未満

2

10

1

7h〜

8

12

8

1

4h未満 田代-ski

100%

18

10

7h〜

田代-board

80%

P

1

Q R

1

S 4〜7h未満

1

13

7h〜

2

9

10

8

4h未満

17 4

11

4〜7h未満 7h〜

8

5

7 9

16 24

8 22

図 4.2.2.13 苗場・田代 / スキー・スノーボード分類別,総滞在時間別にみた最高到達エリア(単位:人)

いずれの分類に関しても,総滞在時間が長いほど山頂へ到達する割合が高く なる傾向にある.

- 110 -


5.1 リーダー作動時間帯

5.1 リーダー作動時間帯 ○リーダーの未作動

本システムを用いた調査は昨年度のシーズン 1)から継続して取り組んでいる ものではあるが,予想される調査環境上のいくつかの問題点などから,リー ダーの未作動や感知範囲の縮小が原因と考えられる行動記録データの一部欠損 がみられた.

○行動履歴欠損箇所

・リーダー No.8 は終日作動が確認できなかった. ・リーダーNo.2,No.3,No.5,No.6,No.7は全てがモバイルPCを割り当て た箇所であり,データの欠損が多くみられた.

○行動履歴補完箇所

リーダー N o . 1 1 もデータの欠損が多くみられたが,予備としてリーダー No.12 を設置していたため,データの補完を行うことができた.本調査では, 終日の利用客の行動を把握するにあたり,特に重要な箇所と思われるリフトに は,予備として 2 台目のリーダーを設置していたが,この策の効果が得られた 部分であるといえる.

1)昨年度のスキーシーズン終わりである 2001 年 5 月 1 日に,本調査のプレ調査にあたる無 線タグシステムを用いた行動調査を行った.ゴールデンウィーク中であり,本年度の調査時 と比較して外気温は格段に高い日であった.. < 2001 年 5 月 1 日の新潟県湯沢町の気象情報> 天気:晴れ,降水量 0 ㎜,平均気温 15.1℃,最高気温:24.3℃,最低気温:8.0℃,平均風速: 2.1m/s, 日照時間:9.2 時間 気象庁 電子閲覧室(気象庁運営)ホームページ参照 http://www.data.kishou.go.jp/

- 111 -


5.1 リーダー作動時間帯

○システム誤動作の原因

原因となる問題点として,以下の項目などが挙げられる.

・厳しい気象条件(スキー場という極めて外気温の低い環境) 昨年度のプレ調査時と比較して格段に低い気温 ・システムがダウンした場合の復旧にかかる時間 リーダー設置範囲が広大なため,システムダウンを短い間隔で定期的に確 認するための調査員が不足 ・金属との干渉 リーダーは金属が付近にあると干渉を起こし,感知が鈍くなる特徴を持つ. リフト小屋の外壁は金属でできており,少なからず影響を受けているはず である. ・モバイルPCの耐久力不足 本年度・昨年度の両調査を通じ,モバイルPCを割り当て,室外に設置し

たリーダーは 9 割がプログラムの誤動作を起こしていた.

- 112 -


時間

- 113 -

E

D2

D

C

B

A

17

15

14

13

12

11

9

8

7

6

5

3

2

Naeba

Tashiro

リーダー 設置場所№

03 10

7:00

16

56

05

02 06

8:00

08

28

22

39

9:00

54

10

08

57

58 07

52

56

13 33

31

19 22

10

55 00

50

39 45

30

23

31 16

53 03

46

41

44

42

05 14

28

39

55

53 05

11:00

47 48

49

59

1200

28

30

56

06

04

13:00

36

29

57

12

14:00

25

31

39

39

図5.1.1 設置場所別リーダー作動時間帯一覧表

57

56

20 14

10:00 51

56

58

18

34

29

28 22

09 13

07

13

13

06

08

15:00

44

44

07

02 03

16:00

08

17:00

18:00

リーダー未作動時間帯

リーダー作動時間帯

18

5.1 リーダー作動時間帯

○システム作動時間帯


5.2 受信範囲

5.2 受信範囲 受信機を中心として,どの範囲までタグの発する無線が感知されるのかを測 定した。受信機に対し,アンテナは下図のように取り付けられている.このア ンテナの取り付け方法は,大半のレストハウスにて設置を行った場合と同じで ある. 左

アンテナ正面

背面 右 図 5.2.1 受信機設置方向図

タグの受信範囲の測定は 3 通りに場合分けして行った.受信範囲は,受信機 を中心として各方向にタグを所持した被験者が受信機から遠ざかる方向に離れ て行き,ログ記録端末がタグの無線を感知しなくなった時点で測定を行った. それぞれの場合の受信範囲は下図の通りである.

○着衣下に吊り下げ携帯(於ゲレンデ) アンテナ正面 10 8 5.7 6

正面斜め左

4

2.8 左

2

6.7

2.8 6.7

0 2.8

背面斜め左

正面斜め右

2.8 4.9

背面斜め右

背面

図 5.2.2 着衣下に携帯した際の受信範囲(於ゲレンデ,単位:メートル)

- 114 -


5.2 受信範囲

○着衣外部に吊り下げ携帯(於ゲレンデ)

アンテナ正面 10 7.7 8

正面斜め左 6.3

6

正面斜め右 6.3

4 左

背面斜め左

6.7

2 0

6.3

6.7

6.3 6.3

背面斜め右

背面

図 5.2.3 着衣外部に吊下携帯した際の受信範囲(於ゲレンデ,単位:メートル)

○着衣外部に吊り下げ携帯(於駐車場)

正面斜め左

アンテナ正面 10 7.9 8 7

6

7

正面斜め右

4 左

背面斜め左

6.6

2 0

6.6

7

7

背面斜め右

8.3 背面

図 5.2.4 着衣外部に吊下携帯した際の受信範囲(於駐車場,単位:メートル)

衣服の中にタグを入れた場合は,衣服の外に下げた場合と比較すると受信範 囲が大幅に狭くなる.特に斜め方向の受信範囲が狭くなっている.次に,ゲレ ンデの雪上で測定した場合と駐車場の雪がない場所で測定した場合とで比較す ると,駐車場で測定を行った方が全体的に受信範囲が広く,背面方向の受信範 囲が比較的広がった.

- 115 -


5.3 感知率

5.3 感知率 5.3.1 感知率の算出 1)乗車時刻の申告

本調査では,ログデータ収集の対象となる一般来場客以外に,調査員も同様 にリーダー設置時間内にタグを携帯した.調査員は自らがリフトに乗車した時 刻・乗車したリフト番号,レストハウスに入場した時刻を記録する.

2)調査員のログデータの抽出

全てのリフト・レストハウスのログデータから,調査員が携帯した ID 番号 のログデータのみを抽出する.

3)感知率

感知率は以下の計算で求める.回数の集計はタグ 2 個 1 組のペア数でカウン トするのではなく,それぞれのタグの ID ごとにカウントする.感知率を算出す る際に用いる実際の乗車時刻データは,リーダー設置完了後のリーダー稼働時 間内の記録に限る.

感知率 =

[正常にログデータが取れた回数] [調査員が実際にリフト・レストハウスを利用した回数]1)

1)調査員が実際にリフト・レストハウスを利用した回数:正常にログデータが取れた回数と 調査員が実際にリフト・レストハウスを利用したがログデータが正常に取れていなかった回 数を足し合わせた回数である.

- 116 -


5.3 感知率

5.3.2 感知率結果

表 5.3.2 リーダーごと・全体の感知率 リーダーNo.

ログデータ数

実際の施設利用回数

感知率

2

4

6

0.67

3

6

6

1.00

5

4

4

1.00

6,7

5

5

1.00

8

0

5

0.00

9

8

8

1.00

11,12

20

23

0.87

13,14

37

42

0.88

15

10

16

0.63

17

5

5

1.00

A

12

15

0.80

B

10

10

1.00

C

11

11

1.00

D

13

13

1.00

D2

5

8

0.63

E

10

11

0.91

全体

160

188

0.85

感知率はリーダー No.8 を除いていずれも 6 割以上であった.特に,レストハ ウスに設置したリーダー(A 〜 E までの6箇所)は室内ということもあり,平 均して感知率が高くなっている.室内であると感知率が高くなる要因としては, 室温はリーダーや記録用PCの作動保証温度条件を満たしていることと,レス トハウスのリーダー設置位置と利用客の通行位置が接近しているということが 挙げられる.レストハウスでありながら,リーダーD2の感知率が低かった原 因は,入り口付近にリーダーを感度が最も良くなるような状態(アンテナの角 度と設置位置)で固定できるスペースが全くなかったため,やむを得ず食券自 動販売機に密着させて固定したためと考えられる.よって,室内においては リーダーの感知には問題がないと言える.リフトに関しては,リーダー No.8 が 終日全く作動していなかったため,感知率が0になっている.その他のリフト も感知率はいずれも 0.6 以上ではあるが,この感知率は調査員が機器の動作確 認を行った場合など,他の利用客と同じ条件でリフトに乗った場合以外も計算 に含めているので,実際の感知率は,更に低いと考えて良い.しかし,感知率 が 1 となっているリフトもいくつかあり,これらのリフトは厳しい気象条件の 下ではあるが,完全に未作動の状態にはなっていないことを意味している. よって,スキー場という厳しい気象条件下では,リーダーは作動してはいるが 感知範囲が非常に狭まっている状態にあるケースが多いと考えられる. - 117 -


12

いずれかのタグが 感知した ログデータ数

- 118 -

26

320 44

68 190

6

96

A B

C D

D2

E

136 100

14 15

17

24 252

12 13

58

0

36 124

80 30

10

42 16

0.60

0.00

0.53 0.65

0.25 0.68

0.38

0.31 0.16

0.08 0.11

0

11 2 28

156

84

8 9

126

116

144 216

408 74

62

404 220

60 590

20

8 6 14

5

6 7 0.14

取れたログデータのうち 両方のタグが 感知した割合 8 12

両方のタグとも 感知した ログデータ数

10

54

6 10

8

6 8

88

12

94 160

206 56

16

136 30

32 168

両方のタグとも 感知した ログデータ数

0.70

0.10

0.65 0.74

0.50 0.76

0.26

0.34 0.14

0.53 0.28

0.50

0.35

1.00 0.71

1.00

0.75 0.67

取れたログデータのうち 両方のタグが 感知した割合

6秒タグ+2秒タグの組み合わせ

2 3

リーダーNo.

いずれかのタグが 感知した ログデータ数

6秒タグ+6秒タグの組み合わせ

表 5.3.3.1 「6 秒タグ +6 秒タグ」の組み合わせ方と「6 秒タグ +2 秒タグ」の組み合わせ方別にみた いずれかのタグが感知を行ったログデータ数に占める両方のタグが感知を行ったログデータ数の割合 (組み合わせの比較により,色が濃い方が感知の割合が高い)

5.3 感知率

5.3.3 タグの組み合わせ方

○ 2 秒タグと 6 秒タグの組み合わせ方による感知割合の違い


5.3 感知率

本来,発信間隔の異なるタグを組み合わせると,タグの感知の精度が下がる 傾向があるはずであったが,前項の表の結果からは, 「6 秒タグ +2 秒タグ」の 組み合わせ方の方が,組み合わせた 2 つのタグが両方とも感知を行う割合が高 かった. 理論的に, 「6 秒タグ +2 秒タグ」の組み合わせ方については,感知の精度が 下がり両者のタグとも感知を行わなくなるという危険性も考えられる.しかし, 「6 秒タグ +6 秒タグ」の配布人数が 200 人, 「6 秒タグ +2 秒タグ」の配布人数 が 185 人であり,配布人数の少ない「6 秒タグ +2 秒タグ」の方が全てのリー ダーにおいてログデータの個数自体が多かったということから, 「6 秒タグ +2 秒タグ」の方が感知の精度そのものが良かったという結果になった.

- 119 -


5.3 感知率

○ 2 秒タグと 6 秒タグによる感知割合の違い

表 5.3.3.2 「6 秒タグ +2 秒タグ」の組み合わせで使用したタグに関して, いずれかのタグが感知を行ったログデータ数に占める 2 秒・6 秒タグが感知を行ったログデータ数の割合 (色が濃い方が割合が高い) 6秒タグ+2秒タグの組み合わせで得られた行動履歴のうち

リーダーNo. 2 3

いずれかのタグが 感知した ログデータ数 8 12

2秒タグが 感知した ログデータ数

6秒タグが 感知した ログデータ数 8 10

2秒タグが 感知している割合

6秒タグが 感知している割合

6 10

1.00 0.83

0.75 0.83

5

8

8

8

1.00

1.00

6 7

6 14

6 14

6 10

1.00 1.00

1.00 0.71

8 9

156

140

70

0.90

0.45

11

20

16

14

0.80

0.70

12 13

60 590

42 478

50 280

0.70 0.81

0.83 0.47

14 15

404 220

388 166

152 84

0.96 0.75

0.38 0.38

17

62

56

22

0.90

0.35

A B

408 74

334 66

280 64

0.82 0.89

0.69 0.86

C D

144 216

114 200

124 176

0.79 0.93

0.86 0.81

D2

116

112

16

0.97

0.14

E

126

110

104

0.87

0.83

大半のリーダーの場合,2 秒タグの方が感知を行っている割合が高い.これ は,2秒タグの方が短い時間間隔で電波を発信しているため,比較的早いスピー ドでリーダーの受信範囲内を通過した場合にも,感知を行う可能性が高まるか らである.しかし,リーダーをスキー場のゲレンデ内に設置し,スキーヤーや スノーボーダーが計測地点付近をを通過したかどうかを調査するなど,更に速 いスピードの移動を感知する必要がある場合は別のシステムをを使う,

- 120 -


- 121 -

屋内

屋内

屋内

屋内

A ダイナブック

B ダイナブック

C ダイナブック

D ダイナブック

E ダイナブック

屋内

屋内

半屋外

17 ダイナブック

D2 リブレット

屋外

半屋外

14 ダイナブック

15 ダイナブック

半屋外

屋外

12 ダイナブック

13 ダイナブック

半屋外

11 ダイナブック

屋外

屋外

7 リブレット

8 リブレット

屋外

屋外

6 リブレット

9 リブレット

屋外

屋外

3 リブレット

5 リブレット

屋外

屋外

リーダー設置場所①

1 リブレット

PC

2 リブレット

リーダーNo.

公衆電話台

食券販売機側面

公衆電話裏

公衆電話上

カウンター上

カウンター上

乗車小屋内壁

乗車小屋内壁

リフト小屋外壁

リフト小屋外壁

乗車小屋内壁

乗車小屋内壁

リフト小屋外壁

リフト小屋外壁

リフト小屋外壁

リフト小屋外壁

リフト小屋外壁

リフト小屋外壁

リフト小屋外壁

リフト小屋外壁

リーダー設置場所②

850㎜

1,250㎜

1,150㎜

1,150㎜

750㎜

800㎜

1,050㎜

1,250㎜

1,150㎜

800㎜

1,050㎜

1,050㎜

1,250㎜

800㎜

1,200㎜

1,150㎜

1,200㎜

設置高さ

-9℃

-6℃

-6℃

-7℃

-7℃

-5℃

-5℃

-7℃

-9℃

-7℃

-6℃

外気温(午前)

-4℃

-5℃

-5℃

6℃

3℃

-1℃

1℃

外気温(昼)

表 5.4.1 リーダー設置環境・作動状況一覧 (色が濃い部分は,リーダー設置環境として条件の悪い部分である.)

-4℃

-1℃

-1℃

-1℃

-1℃

-2℃

-2℃

-4℃

-2℃

-5℃

-5℃

外気温(午後)

△(13:00以降)

×

×

×

×

×

×

×

×

作動状況

5.4 リーダー設置箇所の検討

5.4 リーダー設置個所の検討

5.4.1 リーダー設置環境


5.4 リーダー設置箇所の検討

明らかに記録用PCにリブレットを用いた箇所のリーダーが未作動状態にな る確率が高いことが分かる.ただし,リーダー D2 はレストハウスにされていた ため,作動していた.よって,周辺気温が高く保証動作環境下であれば,リブ レットを使用しても,正常に作動すると言える.リーダー No.9 は記録用PCが リブレットであったが,正常に作動していた.ただしその理由は不明である. また,リーダー No.11 は記録用PCがダイナブックであり,さらに同じリフ トに設置されたリーダー No.12 は正常に終日作動しているにも拘わらず,原因 不明に終日未作動の状態であった.外気温も時系列に沿って,-7℃,-5℃,1℃と常に氷点下の外気温環境下ではあったが,リーダーNo.15はさらに低い9℃,-4℃,-4℃の気象条件下でも正常に作動していた. 全体的に,設置高さによる作動状況の差はみられなかった.

- 122 -


5.4 リーダー設置箇所の検討

5.4.2 リーダー設置図 ○リーダー No.1

○リーダー No.2

図 5,4,2,1-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,2-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,1-2 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,2-2 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,1-3 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,2-3 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,1-4 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,2-4 リーダー設置状況外観

- 123 -


5.4 リーダー設置箇所の検討

○リーダー No.3

○リーダー No.5

図 5,4,2,5-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,3-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,5-2 リーダー設置状況外観

○リーダー No.6,7

図 5,4,2,3-2 リーダー設置状況外観 図 5,4,2,6,7-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,6,7-2 リーダー設置状況外観

- 124 -


5.4 リーダー設置箇所の検討

○リーダー No.8

○リーダー No.11,12

図 5,4,2,8-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,11-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,8-2 リーダー設置状況外観

■№9

○リーダー No.9

図 5,4,2,11-2 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,9-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,11-3 PC 設置状況

図 5,4,2,9-2 リーダー設置状況外観

- 125 Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.


■ № 13,14

■ № 11,12

5.4 リーダー設置箇所の検討

○リーダー No.13,14

○リーダー No.15

図 5,4,2,13,14-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,15-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,15-2 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,13,14-2 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,15-3 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,13,14-3 リーダー設置状況外観

- 126 Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.


5.4 リーダー設置箇所の検討

○リーダー No.17

○リーダー A

図 5,4,2,17-1 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,A-1 リーダー設置施設外観

図 5,4,2,17-2 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,A-2 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,17-3 リーダー設置状況外観

図 5,4,2,A-3 リーダー設置状況内観

- 127 Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.


5.4 リーダー設置箇所の検討

○リーダー B

○リーダー C

図 5,4,2,B-1 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,C-1 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,B-2 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,C-2 リーダー& PC 設置状況

図 5,4,2,B-3 リーダー設置状況内観

- 128 Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.


5.4 リーダー設置箇所の検討

○リーダー D

○リーダー D2

図 5,4,2,D-1 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,D2-1 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,D-2 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,D-3 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,D2-2 リーダー設置状況内観

図 5,4,2,D-4 PC 設置状況

- 129 Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.


5.4 リーダー設置箇所の検討

○リーダー E

○ドラゴンドラ苗場側駅舎

図 5,4,2,E-1 リーダー &PC 設置状況

図 5,4,2,18-1 タグ&アンケート配布・回収状況

図 5,4,2,E-2 リーダー &PC 設置状況

図 5,4,2,18-2 タグ&アンケート配布・回収状況

図 5,4,2,E-3 リーダー &PC 設置状況

図 5,4,2,18-3 タグ&アンケート配布・回収状況

- 130 -


5.4 リーダー設置箇所の検討

○ドラゴンドラ苗場側駅舎外観

図 5,4,2,19-1 ドラゴンドラ乗車の待ち行列

図 5,4,2,19-2 ドラゴンドラ乗車の待ち行列

5.4.1 では同じリフトに設置したリーダー No.12 は正常に作動していたにも 拘わらず,リーダー No.11 が全く作動していなかったが,設置状況の写真を見 ると,リーダー No.11,12 は設置のされ方自体が全く異なっている.写真上か らはどちらのリーダーが No.11 であるかは不明であるが,おそらく設置の方法 の影響を受けているということが言える. また,リフト小屋の壁にガムテープで接着し,固定しているリーダーが数多 くあるが,固定方法が極めて不安定であるため,以後リーダーの固定方法は検 討し直す必要がある.

- 131 Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.


5.5 動作確認

5.5 動作確認 本調査では,調査時間内にリーダー・記録用PCの動作確認を行った.調査 員が 2,3 時間間隔で各リーダー設置場所巡回し,調査員の持つタグを正常に感 知するかどうかを確認した.しかし,確認の際に,被験者が通常通過する位置 よりも近いた距離に進入することになるため,被験者のログを正常に感知して いない状態であることを把握できなかったケースがあった. 今後は,調査員はいったん被験者と全く同じ条件でリーダー付近を通過し, その直後に調査員自身のログデータが正常に記録されているかどうかを確認す る必要がある.つまり,リフトであれば調査員自身がいったんリフトに通常通 り乗り,その後,記録用PCに立ち戻り,調査員自身のログデータが残されて いるかを確認することが望まれる.おそらく,この確認作業は2人一組で行う 方が効率がよい.また,この方法を可能にするためには,リーダーがタグを受 信し,記録用PCがログデータを順次記録している最中(PC画面には様々な タグのログデータが追加され,テキストデータが流れている状態)に,調査員 のログデータを視覚的に確認できることが必要である.具体的には,調査員の ログデータのみ,自動でテキストに色が付くなどの機能が求められる. また,被験者のタグが正常に感知されているかどうかの判断には直接繋がら ないが,リーダーと記録用PCがシステムダウンしているかどうかを判断する に当たっては,リフトにタグを装着する方法も考えられる.リフトが一周する 時間の間隔で,記録用PCにリフトに装着したタグが感知されていれば,誤動 作は起きていないことが確認できる.ただし,この方法は,リフトに装着した タグの回収方法が問題であり,タグを装着したリフトが必ずしもリフト終了時 に乗り場・降り場で停止するわけではないので,回収が難しい.

- 132 -


5.6 調査改善点

5.6 調査改善点 ○無線タグシステムに関して

何より,スキー場という厳しい気象条件下での感知率の向上が望まれる.氷 点下の外気温や湿度に耐えられる機構上の性能が求められる.また,リーダー に防水加工が施されていることが望ましい. 氷点下の気温下や,雪や雨の天候でも屋外にリーダーを常時設置しておくこ とが可能になれば,機材の設置を調査当日の早朝に行う必要がなくなり,最も 早い時刻に入場した来場者の行動データも,入場直後の 1,2 時間分が記録でき ないということがなくなる.また,退場時も同様に,リフト終了時刻の 1,2 時 間前からリーダーの回収を行う必要がなくなることにより,来場者の最後の1 本のリフトの乗車履歴まで記録が可能になり,終日の行動データを完全に把握 できるようになる.また,数日間リーダーを設置し続けることが可能になれば, 曜日別の行動データの収集や,シーズン内の時期別の行動データの蓄積が行え, 新しい比較・分析が可能となる.

○アンケート配布時間帯に関して

本調査では,苗場側からの入場者は,8 人乗りのドラゴンドラが常に回転し 一定間隔で人が流れている状態だったため,調査協力依頼の作業が,ゴンドラ に乗り込む人の流れのスピードに対し追いつかず,必然的に何人かに1人の割 合のスピードでしか調査依頼を行えなかった.結果としては配布時間帯が延長 され,さまざまな時間帯に入場した人の行動データを収集できた.一方,田代 側からの入場者に関しては,田代ロープウェー山麓駅からロープウェーは15分 に 1 便しか発車せず,ロープウェーを待つ利用客が滞留していたことで,アン ケート配布を開始してから来場した利用客の大半に調査依頼を行うことができ た.その結果,短時間で調査依頼が 185 人分終了し,同じような時刻に入場し た利用客ばかりの行動データを収集することになった.今後は,時間帯ごとの 来場者数をカウントし,その比率に応じて単位時間あたりの調査依頼人数をあ らかじめ決定しておくことが望ましい. - 133 -


5.6 調査改善点

○調査人員数に関して

本調査では,リーダーや記録用PCの設置・回収を調査当日に全て行わなけ ればならなかった(前日からの設置は機材の耐久性に関する考慮から困難であ る)ため,短時間で全ての機材のセッティングを行う必要があった.また,調 査時間内のシステムダウンなどの誤動作を防ぐため,できるだけ頻繁に全ての リーダー・記録用PCの定期点検を行う必要があった.以上の理由から,本調 査では大量の調査人員を要した.しかし,前日からの機材設置が可能になるか, 調査員以外のスキー場従業員などの第三者によっても簡単にシステムの動作確 認が行える,もしくは遠隔で動作確認できるような仕組みができれば,調査人 員は格段に削減できるようになる.

○動作確認

5.5の内容と同じく,調査員は調査員自身が他の被験者と全く同じ条件でリー ダー付近を通過した際のログデータを確認する必要がある.また,調査員のロ グデータが視覚的になど,容易に確認できる機能が求められる.もしくは,リ フトの場合は,リフト自身にタグを1つ付着させておくことにより,リフトが 一周する時間の間隔で,タグが感知されていれば,リーダーと記録用PCは正 常に稼働していることが確認できる.しかし,この方法は,リーダーと記録用 PCが誤動作をしていないことは確認できるが,着衣下にタグを携帯している 被験者のログデータを正常に感知しているかどうかの確認としては,不十分で ある.よって,先に述べた方法が望ましい.

- 134 -


6.1 成果・結果

6.1 成果・結果 本スキー場研究では,無線タグシステムを用いることで,スキーヤーやス ノーボーダーの滑走行動を邪魔することなく,人間の行動履歴を把握すること ができた.更に,個人属性項目とログデータを照らし合わせることで,人の属 性ごとにトリップ式の行動特性を明らかにした.

苗場側からの利用客は,連結型スキー場の利用客であり,苗場プリンスホテ ルを中心とする宿泊者が多く,田代スキー場内の滞在時間は短い.その中で,複 数日に渡って滑走・休憩・その他施設の利用を目的に,幅広くスノーレジャー を楽しむ傾向がある.また,田代側からの利用客は,単独型スキー場の利用客 であり,日帰り客がほとんどで,旧来のスキー場の楽しみ方に近く,滑走を重 視する特徴がみられた. ・苗場側からのスキーヤーは,スキー場総滞在時間が短いにも拘わらず,山 頂エリアまでを一通り回遊する. ・苗場側からのスノーボーダーは,スキー場総滞在時間に占めるレストハウ スの滞在時間の割合が非常に高い.また,中腹エリアまでの到達が多くみられ た. ・田代側からのスキーヤーは,スキー場総滞在時間が長いにも拘わらず,レ ストハウスの滞在時間が短く,休憩をあまり取らずに滑走している傾向がある. ・田代側からのスノーボーダーは,1つのリフトを繰り返し乗車する人の割 合が高い.また,中腹エリアまでの到達が多くみられた. 以上のように,さまざまな行動パターンがスキー場には混在していることが 把握できた.

スキー場内には昔と異なり,実に様々なリクエストがある.もはや,スキー 場の存在自体が特別ではなくなってしまった今,1つのリクエストに応えられ るだけではスキー場は生き残ることができない.リフトが大量に設置し,利用 客にとって滑走という単一の項目だけを満たすだけでは,様々なリクエストに 応えられない.様々な利用者の要求に応えてこそ選ばれるスキー場になるので ある.本研究で取り上げた事例からも,利用客の多様な行動・リクエストに対 応できるスキー場の提案として,連結型スキー場は有効な手段であるといえる. - 135 -


従来のカウント調査やビデオ調査では,ボリュームを捉えるにとどまり,個 を把握することはできなかった.また,追跡調査では,終日行動を見ようと思 えば,1人の調査員は一日につき1人の被験者しか追うことができなかった. それでは今の多様化するリクエストの中で,細分化されたグルーピングの特徴 をつかめるほどのサンプル数を獲得できない.これまでは,大量の行動データ を個人属性とマッチさせた状態で収集することは不可能であったが,無線タグ を用いることにより,それが可能になった.

また,研究の位置づけとしても,本研究は利用者の終日行動を把握する内容 であり,総入場客数などのマクロな視点の研究と,リフトのキャパシティーや たまりの行動,ジャンプ台やゲレンデの設計などの利用客の動作に関連するよ うなミクロな視点の研究とのちょうど中間に位置しており,今まで手つかずの 領域であった部分を開拓した.

- 136 -


6.2 問題点

6.2 問題点 無線タグのシステム自体はさらなる進化が求められる.スキー場に限っては, 厳しい気象条件に耐えられない限り,完全に行動を追うことは困難である.

スキー場のような大規模施設において,無線タグシステムは施設利用の履歴 までしか得られないので,ゲレンデコースの分岐点でどちらに滑っていたのか などのデータを収集し,コースのレイアウトやプロフィールなどの設計に関す る部分に応用することはできない.そのような提案を行う場合は,他の調査手 法が適当である.また,無線タグシステムの感知範囲は数メートルであり,タ グの発信間隔も今回の調査で使用したものは 2 秒間隔であるので,歩行者をは るかに上回るスピードの対象物には用いることは難しい.

アンケートやタグの配布時間が今回田代側のサンプルに関して偏ってしまっ た,今後は母集団になんらかの偏りがみられないよう,サンプルを選ばなけれ ばならない.

- 137 -


6.3 展望

6.3 展望 利用客の行動やリクエストが多様化してきているとこうことは,スキー場以 外の様々なレジャー施設に関しても同様のことが言える.ショッピングセン ターやアミューズメントパークも,もはや単一の機能だけでは利用客の多様な リクエストを満たしきれなくなり,様々な機能の複合化があちらこちらで図ら れている.このように,1つの施設の中に,様々な要求をもつ利用客が存在す る中で,それぞれの個を認識した行動データを収集することは非常に需要に なってくる.トリップ式の行動が行われる施設であれば,無線タグ調査は応用 が極めて有効である.テーマパークなどは,エリア内にそれぞれ独立したアト ラクションがあり,それらの入口・出口などの利用者が必ず歩いて通るチェッ クポイントとなるような場所があるからである.他にも,複合型のショッピン グセンターや万博などでの応用が期待できる. 今回は利用者のID番号だけの情報しかタグには入力されていなかったが,タ グに更に多くの情報を詰め込み,シミュレーションなどを行うことで,リアル タイムで個人の属性と対応した行動履歴を収集することも可能になり,それを 用いてシミュレーションなどを行うことで,混雑予想や来場客の属性に合わせ たサービス・イベント・ナビゲーションまでも可能になると考えられる.

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【スキー場危機相次ぐ黒字は1割安比もアルツも夢破れ】 2003.2.15 朝日新聞 冬のスポーツ真っ盛りの1月末、岩手県安代(あしろ)町にある日本有数の ゲレンデ、安比(あっぴ)高原スキー場の売却を、リクルートが発表した。8 0年代のスキーブームでゲレンデ数は急増したが、最近は客が年々減っている。 各地のスキー場経営は苦しくなるばかりで、経営を断念する運営会社も相次ぐ。 「スキー場危機」に、もがく雪国を歩いた。(鈴木淑子、是永一好) 猪苗代湖を臨む福島県磐梯(ばんだい)町のアルツ磐梯スキー場は、1月末 の平日、ゼッケンをつけた、おぼつかない滑りの少年少女の集団が目立った。 「東京日帰り圏」を武器に93年に開業し、ピークは約70万人を集めた東北 有数のスキー場だが、昨季は45万人まで低落。 「数年来、正月明けはいつもこ んな風景」と地元の人々は話す。特に平日は、懸命に誘致した関東などの中学、 高校の修学旅行客が頼りなのだ。 ここにはかつて、カレーの注文でもサービス料をとるレストランもあった。 当初は高級感で売っていた。 「以前は『子供はよそへ行ってくれ』と言わんばかりだったが、いまじゃ、背 に腹は代えられないんでしょう」 近くのペンション経営者は、そうつぶやく。 アルツは、88年にリゾート法の第1号指定を受けた「磐梯清水平リゾート」 の中核施設。バブル期の余韻のなかでの過大投資を、運営会社は回収しきれず、 02年10月、民事再生法の適用を申請した。負債総額は約950億円だ。 再建案は、住友信託銀行などの取引金融機関による債権放棄が柱。認められ ても、残る約20億円の債務弁済には、集客増が不可欠なのだ。 鬼怒川(きぬがわ)温泉で知られる栃木県藤原町には、吹き溜(だ)まった 雪に閉ざされたスキー場「メイプルヒル」がある。 第三セクターの運営会社が99年に破産し、その後、閉鎖状態が続く。豪雪 地帯でないので、人工降雪機などが必要で、もともと運営費は重い。 管財人は「開発費数十億円の何分の一で手に入れられますよ」と必死に買い 手を探す。国有林を借りているので、売れない場合は、植林して復元しないと いけないが、その費用がないからだ。 経済産業省の外郭団体、自由時間デザイン協会の調査では、年に一度でもス キーをしたスキー参加人口は、93年の1860万人をピークに、01年の1 080万人まで減った=グラフ。スキー場へのアンケート(回答数約230)で は、 「01年は黒字」がわずか9.9%。苦しい経営事例が浮き彫りになってき


た。 リクルートは1月31日、子会社が経営する安比高原スキー場や併設ホテル を、北海道内でスキー場を経営する加森観光(本社・札幌市)に売却すると発 表した。 リクルートの江副浩正(えぞえ・ひろまさ)元会長が陣頭に立って、81年 に開業。1シーズンの集客数は150万人をピークに、いまは90万人前後ま で減少。それでも全国有数の規模だが、経営再建途上のリクルートには、足か せとなっていた。 加森観光はこれまでも、経営破綻(はたん)したアルファリゾート・トマム <北海道占冠(しむかっぷ)村>、サホロ<北海道新得(しんとく)町>など のスキーリゾートの運営を引き継いでいる。加森公人社長は「バブル期の新設 ラッシュで、スキー場は供給過剰となった。専業でさえ生き残りが厳しいのだ から、多角化で手を出した異業種企業が頓挫(とんざ)するのは当たり前」と 話す。

■存続へボード解禁も 「残念ながら、スキー場存続の危機です。3月3日よりボーダーにも解禁しま す」 「スキーヤーのために設計したゲレンデ」と、これまでスノーボード客を拒ん できた尾瀬岩鞍(いわくら)スキー場(群馬県片品(かたしな)村)が昨年末、 ホームページに載せた「お詫(わ)び」だ。従来のファンからは、抗議が相次 いだ。 「スキー中・上級者好みのコースを売り物に、強気で鳴らしたあの岩鞍です ら、ボードを迎え入れるのか⋯⋯」 すでに昨季、ボードの全面解禁に踏み切った草津国際スキー場(群馬県草津 町)の従業員も、驚きを隠さない。 降りる方向に背を向けることも多いボーダーの存在が、スキーヤーには怖く、 事故も起きやすい。ボード解禁は硬派スキーヤーやファミリー客の敬遠を招き かねない。 だが、昨季の岩鞍の客数はピーク時の半分に満たない30万人。広報担当者 は「売上高の減少はそれ以上。方針変更で、今季は多少なりとも集客増につな げたい」と話す。 スキー場経営最大手のコクド(本社・東京)は、36億円を投じ、新潟県湯 沢町の苗場スキー場と隣接の田代スキー場などを結ぶ、全長5.5キロのゴン ドラを01年末に開通させた。 「世界最長」との宣伝効果で、01〜02年シー


ズンの来場者は前季比7・6%増の267万人だったという。 関西の代表的スキー場の一つ、ハチ北高原スキー場(兵庫県村岡町)は今季、 「キッズパーク」を新設。メリーゴーラウンド状にソリを引く遊具を導入するな どした。朽木(くつき)スキー場(滋賀県朽木村)も800万円かけて、ベル トコンベヤー式のソリ用リフトを置き、例年を上回る入場客を集めているとい う。いずれも、ファミリー層に照準を合わせた人気回復策だ。 スキーのワールドカップ元日本代表で、日本のフリースタイルスキーの草分 けである白川直樹さん(47)は話す。 「カービングスキー登場など用具は進歩したが、どのスキー場の指導員も教え 方が30年前と同じ。新しい世代が求めるものを提供する努力を、スキー場は 怠っている」

「高い」「面倒」と敬遠 スポーツコンサルタント佐藤由夫さん(51) スキー客減少の要因は、主軸の20〜25歳人口が縮小したほか、景気悪化 でファン全般が来場頻度を減らしたためだろう。根本的には、楽でないことを 敬遠する、日本人の意識の変化が大きい。 スキー場は遠く、たどり着くまでが面倒だ。そのうえ交通、用具、リフトな どに、費用もかさむ。1回のスキーの一人あたりの平均費用は、約1万800 0円。調査した全28スポーツのなかで、ダイビング、グライダーに次いで3 番目だ。それだけの金を出すなら、もっと簡単に、より大きな楽しさを、と、若 者がテーマパーク、高級レストラン、携帯電話などに傾斜した。 リフト代とほぼ同料金のテーマパークは、受け身のままで、気楽に夢の世界 に入れる。だが、スキー、スノーボードは寒い中で努力して習熟度を上げない と、面白くならない。 楽でないことを避ける精神は、スキーだけでなく、日本のスポーツ全体の危 機にもつながる。 ただ、悲観ばかりしなくてもよい。例えば、スキー場に中高年者が回帰し始 めている。私は、彼らを支援する非営利法人の理事だが、温泉や自然探勝を兼 ねたツアーに注目が集まっている。料金に見合ったサービスの質向上などの経 営努力とともに、楽しませる「演出」の工夫が、重要だ。


参考文献 □論文 1)小森寛子,他;無線タグシステムを利用した大規模集客施設利用者の行動特性 に関する研究,日本建築学会学術講演梗概集,2002/03 2)高柳英明,他;無線タグシステムによるスキー場来場者の利用特性に関する研 究,日本建築学会学術講演梗概集,pp.285-286,2001/09 3)葛島知佳,他;スキー場における情報提供に関する研究,日本建築学会学術講 演梗概集,pp.839-840,2001/09 4)堤正利;スノーボードインパクト - スキー場に関する区間計画学的考察 -,早稲 田大学修士論文,1997 5)丹羽洋一;情報ネットワークによるスキー場情報閲覧効果に関する研究,早稲 田大学修士論文,2001 6)朝倉康夫,羽藤英二,大藤武彦,田名部淳;PHS による位置情報を用いた交通 行動調査手法 , 土木学会論文集,No.653, pp.95-104,2000/07 7)喜村祐二,朝倉康夫,羽藤英二;PHS の位置特定機能を用いたイベント観客の 行動調査,土木学会第 55 回年次学術講演会論文集,Ⅳ -348,2000/09 8) 矢田勝俊,加藤直樹,羽室行信;顧客の購買履歴からのデータマイニング, pp.169-178,共立出版,2000 9)山口有次;利用者行動からみたレジャー施設に関する建築計画学的研究,早稲 田大学博士論文,2000

□書籍・雑誌 1)月刊レジャー産業資料 No.422,綜合ユニコム株式会社,2001 年 11 月号 2)月刊レジャー産業資料 No.368,綜合ユニコム株式会社,1997 年 5 月号 3)月刊レジャー産業資料 No.355,綜合ユニコム株式会社,1996 年 4 月号 4)レジャー白書 2002,自由デザイン協会 5)レジャー白書 2001,自由デザイン協会 6)スノービジネス No.86,日本ケーブル株式会社,2001/ 春号 7)スノービジネス No.89,日本ケーブル株式会社,2001/ 冬号 8)スノービジネス No.92,日本ケーブル株式会社,2002/ 秋号


□分析 1)菅民郎;アンケートデータの分析,現代数学社,1998 2)菅民郎;多変量統計分析,現代数学社,1996 3)内田治;すぐわかる EXCEL による多変量解析,東京図書株式会社,1996 4)石村貞夫;SPSS による多変量解析の手順[第2版],東京図書株式会社,1998 5)村田吉徳;実用例題でわかるEXCEL 2000 VBAマクロの使い方<入門編>,株 式会社技術評論社,1999 6)日経 PC21(簡単!エクセルでデータ分析), 日経 BP 社,2001 年 11 月号


参考 URL □スキー場 1)苗場スキー場:http://www.princehotels.co.jp/naeba/ski.html 2)かぐら・みつまた・田代スキー場:http://www.princehotels.co.jp/ski/ kagura/ 3)ニセコフリーパスポート(ニセコ全山共通券) :http://www.niseko.ne.jp/ 4)志賀高原索道協会:http://www.shigakogen-ski.com/index.shtml 5)八方尾根観光協会:http://www.hakuba-happo.or.jp/index2.htm 6)斑尾高原スキー場:http://www.madarao.jp/ski/madaski.html 7)タングラムスキーサーカス:http://www.tangram.jp/ski/index.htm 8)白馬乗鞍スキー場:http://www.valley.ne.jp/~hakunori/ 9)ガーラ湯沢スキー場:http://www.gala.co.jp/TopPage.htm 10)湯沢高原スキー場:http://www.yuzawakogen.com/ski/index.html

□スキー用具 1)カービングスキーの種類:http://www.bc.wakwak.com/~wanwan/ skiita.htm 2)変幻自在、スキーワールド:http://eco.goo.ne.jp/wnn-o/files/tokusyuu/ ski/main.html 3)SkiBoarding(スキーボードの紹介):http://chimi3.dyndns.org/onion/ skiboarding.html 4)最近のスキー情報:http://home.catv.ne.jp/kk/minx2/nowdays-ski.html 5)モーグル:http://www.kusa.ac.jp/~l04l032/seminar1.html 6)MOGUL SKIING:http://www.nsknet.or.jp/~kaneda/contents/ mogul.htm 7)ファンスキー @ コラム:http://ski.pos.to/column/funski1.html 8)F.A.N 日本ファンスキー協会:http://www.funskier.org/

□気象 1)電子閲覧室:http://www.data.kishou.go.jp/


2)気象データベース・リンク集;http://www.hir-net.com/link/database/ weather.html

□ RF-ID(英文) 1)AIM;http://www.aimglobal.org/ 2)What is RFID?;http://www.aimglobal.org/technologies/rfid/ what_is_rfid.htm 3)RF-IDシステム全体の情報に関して;http://www.aimglobal.org/technologies/rfid/ 4)特にRF-IDシステムの概要;http://www.aimglobal.org/technologies/rfid/ what_is_rfid.htm 5)動作原理や,使用周波数に関して;http://www.aimglobal.org/technologies/rfid/resources/RFIDCharacteristics.pdf 6)RF-ID システムで使用される用語に関して;http://www.aimglobal.org/ technologies/rfid/resources/RFIDGlossary.pdf 7)Texas Instruments;http://www.ti.com/tiris/default.htm

□ RFID(和文) 1 ) 社 団 法 人 日 本 自 動 認 識 シ ス テ ム 協 会 ( A I M J a p a n );h t t p : / / www.aimjapan.or.jp/index.html 2)Texas Instruments 登録認識システム アプリケーション・プロファイル(実 用例);http://www.tij.co.jp/jmc/docs/tiris/application/index.html 3)日経 BP 2002 年 2 月 25 日号(No.816) ;http://ne.nikkeibp.co.jp/NE/2002/ 020225/tokushu.html 4)Suica しくみ;http://www.sens.ee.saga-u.ac.jp/wakuya/lecture/ computer_h14/data-020614/asahi-020609.jpg 5)無線タグ形状;http://www.elect.chuo-u.ac.jp/kunii/contents/research/ its/ssl/second.html 6)大日本印刷株式会社(製品・技術紹介) ;http://www.dnp.co.jp/semi/j/tag/ 7)大日本印刷株式会社(IC タグ);http://www.dnp.co.jp/cmc/cmc_item/ ictag/index.html 8)IC カード関連用語集;http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/ic-card/ yougo/yougo2.htm#R


9)株式会社 日立製作所(IC カードについて) ;http://www.hitachi.co.jp/Prod/ comp/ic-card/index3_4.htm 10)RF-ID ラベル・タグ;http://www.toppan-label.com/nws/02.htm 11)IC カード;http://www.jra.net/pal2/card.html 12)寿フォーム印刷株式会社(RF-ID);http://www.kotobuki-fp.co.jp/rfid/ aboutrf-id/index.htm


第 1 章 序論


第 2 章 調査方法


第 3 章 ログデータ分析方法


第 4 章 分析結果


第 5 章 無線タグ調査環境の検討


第 6 章 まとめ


参考文献・URL


参考資料


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