流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
はじめに
私は大学生になってから東京中を随分と歩き回ったように思う。もちろん、 まだまだ行ったことのない場所は多いが、早稲田大学が大都市の中心部に立地 していたため、また、購入した定期券を生かすべく、2大ターミナルである新 宿、渋谷に接続する各鉄道を利用して気軽に出かけることが出来た。どこへ行 くにも、まずターミナル駅へ出なければいけないということもあったが、ター ミナル駅ならば友達と待ち合わせるにも、時間をつぶすにも、買い物をするに も便利であった。しかし、難点を一つ言えばとにかく人が多いことである。 まるでスクランブル交差点の中にいるような錯覚さえ起こす改札付近を通る と、どうしても人にぶつかりそうになる。そういう人に限って通路の真ん中で 堂々とこちらを向いて突っ立っていたりする。避ける気ゼロである。なぜこん な所に立ち止まっているのか。今、私にとっては邪魔者だが、逆の立場だった らどうか。それが本研究を始めたきっかけである。
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
□第 1 章 序論 1-1
研究目的
1-2
研究背景
1-3
語句の定義
1-4
近年の駅における新しい試み
1-5
既往研究
□第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析 2-1
研究方法
2-2
分析方法
□第 3 章 立ち止まり行動の分析結果 3-1
分析結果 1
3-2
分析結果 2
□第 4 章 モデル化 4-1
行動モデルの提案
4-2
モデルの検証
□第 5 章 まとめ 5-1
まとめ
参考文献
資料編 駅調査資料 立ち止まりのサンプルデータ (南口)(東口) p-flo ソースコード
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 1 章 序論
目次
はじめに 第 1 章 序論 1-1 研究目的
3
1-2 研究背景
4
1-3 語句の定義
5
1-4 近年の駅における新しい試み
8
1-4-1 空間の多様化、多機能化
8
1-4-2 駅施設の複合化
10
1-4-3 駅施設における課題
11
1-5 既往研究
12
1-5-1 駅における流動と滞留に関する研究
12
第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析 2-1 研究方法
17
2-1-1 調査方法
17
2-1-2 歩行軌跡データの抽出方法
20
2-1-3 座標データの有効範囲と対象領域の設定
22
2-2 分析方法
23
2-2-1 分析の対象時間と対象データの設定
23
2-2-2 立ち止まりに影響する要素[仮説]の設定
24
2-2-3 立ち止まり行動のフロー図
25
2-2-4 流動の影響要素の設定
26
2-2-5 行動分析における設定
27
2-2-6 予測回避行動の扱い
42
2-2-7 分析用プログラム p-flo の作成
43
-1-
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 1 章 序論
目次 (つづき) 第 3 章 立ち止まり行動の分析結果 3-1 分析結果 1
46
3-1-1 立ち止まり行動の基礎分析 3-2 分析結果 2
46 53
3-2-1 立ち止まり行動の特性分析
53
3-2-2(仮説 1)に関する分析結果
59
3-2-3(仮説 2,3)に関する分析結果
60
3-2-4 有効な時間平均の算出
72
3-2-5(仮説 4,5)に関する分析結果
86
3-2-6(仮説 6)に関する分析結果
91
第 4 章 モデル化 4-1 行動モデルの提案
92
4-1-1 行動特性と仮説の整合性
92
4-1-2 モデル式の提案
93
4-2 モデルの検証
95
第 5 章 まとめ 5-1 まとめ
97
5-1-1 まとめと展望
97
5-1-2 今後の課題
98
おわりに 参考文献 資料編
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第 1 章 序論
1-1 研究目的
本研究は駅改札前における歩行者の流動と立ち止まり行動の関係を明らかに することで、流動の影響下における立ち止まり行動をモデル化することを目的 とする。
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第 1 章 序論
1-2 研究背景
近年、増々大型化・複合化する鉄道のターミナル駅においては、利用者の 目的も様々でこれまでの旅客流動という効率的に人を流す考え方だけでは対処 しきれない問題が増えてきている。特に改札付近では、目的地に向かって進む 行動とその場に留まる行動が併発し両者が互いに不快を感じる場面が少なくな い。 こうした流動や滞留に関する問題を扱った研究は数多くなされてきている が、その多くはそれぞれの行動を別々のものとして扱っており、双方の関係を 研究したものはない。一人の人間が流動の一部にも滞留する人にもなりうるこ とから、互いにどういった影響を受けているのかという視点での研究が必要で ある。 しかし、流動が時間によって動的に変化することから、これまでの利用者数、 空間の規模などの固定の数値から唯一無二の値が返されるようなモデルは再現 性が低いため望ましくない。特に、歩行者一人一人がその時々の周囲の状況を 判断して行動が決定されるような、エージェント型のシミュレーションシステ ムを念頭に置いた行動特性の分析が必要である。
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第 1 章 序論
1-3 語句の定義
本論文においては以下のように語句を定義する。 対象とする人、人物について 歩行者:人間が歩行する場合の個人、集団の総称 群集:人間を集団としてとらえたもの 立ち止まる人:記録データから立ち止まることが確認された人 行動について 立ち止まり:5 秒間以上速度 30cm/s 以下の状態が続き、場所の移動を行って いない状態のこと。また、その状態に至る行動。 滞留:立ち止まり行動を含む、滞って動かなくなった状態。 流動:歩行者の流れ、群集歩行 歩行軌跡:人間が歩行した履歴を線分として表したもの。頭の位置の X,Y 座標 を歩行者の位置座標を代表する値として用いる 歩行空間:人間が移動するための空間 対象空間について 対象範囲:歩行者の軌跡を調査するために設定した範囲。本研究では VTR に よって撮影した空間の中から、5.4m*5.4m の範囲を設定し、一定時間内に通 過する全歩行者の歩行軌跡を抽出した。 対象時間:調査対象から、解析のために歩行軌跡データを抽出した時間 歩行および立ち止まり行動に関するパラメータ 歩行速度:歩行者の移動方向への単位時間あたりの移動距離(m/ 秒) 群集密度:歩行空間内に単位面積あたりに存在する歩行者数(人 /m2) 立ち止まりの初期位置:立ち止まりを開始した位置 侵入時の視野:立ち止まる人が対象範囲に侵入した直後、初めて調査対象とし て観測された時点での視野
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第 1 章 序論
言葉の意味 「立ち止まる」、「滞留」、「滞る」は辞書(大辞林 第二版(三省堂))による と以下のように記されている。 たちどまる【立ち止 ( ま ) る / 立ち留まる】 (動ラ五[四]) 〔古くは「たちとまる」〕 (1) 歩いて来た人が止まる。 (2)〔「たち」は接頭語〕その場にとどまる。また、宿泊する。 [可能]たちどまれる たいりゅう ̶りう【滞留】 (名)スル (1) とどこおること。その場にとどこおって、移動・進展しないこと。停滞。 (2) 旅行先にしばらくとどまること。逗留。滞在。 とどこおる とどこほる【滞る】 (動ラ五[四]) 〔「とど」は「とどまる」の「とど」と同源〕 (1) 物事が順調に進まない。停滞する。 (2) 支払うべき金がたまる。延滞する。 (3) すがりついて行かせない。 (4)(性格が)ためらいがちである。
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第 1 章 序論
「滞留」と「立ち止まり」の区別について これまでに歩行者の滞留について研究した論文では、滞留は『場所の移動を 行っていない状態のこと(今井 修士論文)』 『一つの流れのある断面において、 上流からそこへの流入率が、そこから下流への流出率を上回っている状態(佐 野 博士論文)』などの様に定義されており、歩行者が立ち止まった後の状態 を指している。本研究では歩行者が立ち止まりに至るまでの状態も扱うことか ら、「滞留」と区別して「立ち止まり」という言葉を用いることにした。 柱・壁付近で立ち止まる人について 本研究では流動の中で立ち止まる人の行動特性をみるため、あらかじめ流動 をさけて柱や壁付近で立ち止まる躯体依存型の立ち止まりは扱わない。そのた め、記録された歩行者の座標データにも含まれていない。 停止状態の判断について 歩行者は立ち止まる場所を決定した後も、完全にその場に立ち尽くすという ことはなく、ゆっくりと場所をずらしたり、前後に振れたりする。その状態を 座標データで追っていくと、停止の見極めが困難となる。そのため、1 秒間に 半歩程度の動き(30cm/s)をほぼ停止として扱うことにした。 継続時間 5 秒以上の設定について 今井氏の論文では滞留は『停止状態が 3 秒以上続くこと』ととしているが、 本論文では前述のほぼ停止状態である速度 30cm/s の継続時間で算出すること にしたため、3 秒ではその場に立ち止まったとは考えにくく、5 秒以上とした。
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第 1 章 序論
1-4 近年の駅における新しい試み 1-4-1 空間の多様化、多機能化 多くの利用者が移動し交流する駅空間は近年様々な機能、利用方法をもった 空間をその内部に取り込みつつある。 とうきょうエキコン(1987 年 7 月~ 2000 年 11 月) 「駅を単なる乗車の場所としてだけではなく、かつての「停車場」のように ゆとりと憩いの場として再生したい。」このような東京駅の強い意欲から、JR 東京駅丸の内北口ドームで始められた。第1回の「ケルンザ−少年少女合唱団」 以来、クラシック音楽、世界の民俗音楽などを中心に、整理券方式で料金無料 のフリーコンサートを開催。年間おおよそ 8 回のペースで 2000 年 11 月に終 幕するまで 246 回開かれ、駅のオアシスとして多くのファンを集めた。 JR 仙台駅においても、東北の文化、伝統芸能を広く発信するステージとし て「みちのく駅コン」が開催されており、みちのくの文化を再発見する機会と して多くの人々の支持を受けていた。(図 1.4-1)
図 1.4-1 エキコンの様子
東京ステーションギャラリー 駅を薫り高い文化の場として利用者に提供したいという願いのもと、1988 年東京駅にギャラリーが誕生した。 「小さくとも本格的な美術館」をモットにー、 絵画だけでなく、建築、鉄道、デザイン、など様々な催しごとが開催され人気 を集めている。
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第 1 章 序論
改札内での店鋪展開 各駅において最適な事業を構築し、駅構内に新しい商業スペースが生み出さ れている。近年では、コンビニ、居酒屋、服飾店、書店などその分野は大きく 広がり、利用者のニーズに応える形式で、魅力的な店舗を展開している。駅の 好立地によるあらゆる可能性を探っており、店舗展開だけでなく、e- ビジネ スとしても注目され、より一層の「利用しやすさ、快適さ」を開発しつつある。 (図 1.4-2)
図 1.4-2 e-@station
Media�Court メディアコート(2000 年 12 月ー) 「歓迎と情報発信」をコンセプトにした東京駅内の約 1000 ㎡の複合商業ス ペース。情報発信(イベント)スペース、書店、喫茶店、雑貨店の 4 つのエ リアで構成されている。イベント開催がない時にはテーブルと PC 端末をセッ トで数台設置し、自由使用で待ち合わせスペースとしてくつろぎの場を提供す る。駅の情報発信機能の強化とともに駅のランドマークとして期待されている。 また様々な新商品などの発表、展示、プロモーションを実施し、21 世紀での 駅の新しい可能性を追求している。 (図 1.4-3)
図 1.4-3 JR-Break.com
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第 1 章 序論
1-4-2 駅施設の複合化 駅ビルの発達 大手百貨店等と複合化した JR 京都駅、JR 名古屋駅をはじめ、駅の利便性を フルに活用した大型の駅ビルが相次いで開業している。単一機能の駅から多機 能を持った駅へと、そのスタイルは大きく変化しつつある。また大都会に限ら ず、郊外の駅にも生活密着型駅ビルが次々にオープンしている。人々の暮らし をサポートする機能性、行政の窓口を設置する地域社会に根ざしたサービスを 備えるなど暮らしに便利な駅ビルが増加している。(図 1.4-4)
図 1.4-4 駅ビルポータルサイト 駅パラ
地域施設等との複合 駅ビルとの複合化が盛んになる一方で、新しい理念が導入されていく駅もあ る。地方自治体等と共同で計画を行い、駅に公民館や図書館等を合築すること で、町の機能の一部を併設した駅が誕生している。地域色を反映した個性豊か な駅もあり、地元住民にも支持されはじめている。今日では都内においても保 育園等との複合化が行われ、注目されている。
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第 1 章 序論
1-4-3 駅施設における課題 今後の駅施設における課題 JR 東日本フロンティアサービス研究所では次世代の駅として、視覚的・機 能的なだけでなく、駅全体として快適な空間を構築することが重要となってき ており、駅のトータルデザインにおいて心理的・生理的影響を考慮した「適切 な情報提供」、「快適な移動の実現」、「駅環境の快適性向上」が課題となるとし ている。ここでいう、快適な移動の実現とは移動のスムーズ化はもちろんのこ と、流動負担の軽減も含まれており、単純な人の移動だけでなく、流動の中に おける人が受けるストレスも研究対象となっている。 また、今後のチケットレス、キャッシュレスなどの新しい決済システムが チェックゲートなどの簡易な出入口の開設を可能とすることで、これまで分離 されていた、ラチ内外の人の動きがより複雑化することが予想される。駅空間 の複合化・多様化に伴う利用者の複雑な行動の解明がますます重要になると考 えられる。(図 1.4-5)
図 1.4-5 SmartStation 構想とチェックゲート JR フロンティアサービス研究所 HP より
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第 1 章 序論
1-5 既往研究 1-5-1 駅における流動と滞留に関する研究 駅に関する研究は流動、滞留などの人間の行動に関するもの、エスカーレー タやサイン計画などの設備計画に関するもの、駅と周辺施設との関係など様々 な研究がなされている。以下は、人間の行動に関する研究についてまとめてい る。 「 従来の研究を見ると、流動に関するものと、滞留に関するものに大別される。
駅における流動に関する研究は、1960∼1970年代から旅客の流動に 関する研究が行われている。主に、旅客の流動の現象面の解明を主眼とするも のと、予測手法の開発を主眼とするものがあるが、研究件数は後者の方が圧倒 的に多い。 前者の主要なものとしては、駅通路に見られる交錯流動に関するものがあり、 東京理科大の上原孝雄らは通路、交差点、駅コンコースなどの公共的歩行空間 を対象に、交錯流動現象及び、対向流動のすれ違い現象に関する研究を行って いる。また、三重大の中祐一郎らは交錯流動の構造をモデル化し、そのシュミ レーションを行っている。 後者の旅客の流動の予測手法の開発を主眼とするものには、上述の上原孝雄 らが待ち行列理論を基礎とするモデルで、流動シュミレーションを行っている。 これが、駅における流動シュミレーションの最初のものである。鉄道総合研究 所の安藤恵一郎は、通路をメッシュに分割してそのメッシュごとの人口分布の 推移を調査し、通路の流動状態の予測を行っている。工業技術院製品科学研究 所の中村和男は、鉄道駅の通路の物理的条件・旅客の属性と旅客の行動特性の 関係に着目し、これをモデル化した流動シュミレーションを行っている。 駅における滞留に関する研究は、喜田建築設計室の黒田浩史らが、歩行者空 間計画に関する基礎的研究として、立ち止まり現象の観察調査を行い、立ち止 まり現象発生の空間的分布特性についての研究を行っている。また、鉄道総合 研究所の大戸広道らは、鉄道駅における待ちの発生に関する調査を行っている。 範囲を駅以外に拡げてみると、筑波大学の土肥博至氏らが広場空間における 滞留行動の解析を行っている。これは 3 ヶ所のキャンパスと 2 ヶ所の公園を 調査し、屋外滞留空間について物理的環境条件と滞留行動の検討により、12 変数を選定し、主成分分析、重回帰分析などを行い、滞留行動が物的変化に 敏感に反応していることを示した。特に、緩やかな地表面勾配や滞留装置、地 表面素材が滞留行動の誘引に有効であることが明らかになった。また、北海道 大学の横山尊雄らは都市における待ち合わせ行動の傾向について、都市生活者 - 12 -
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 1 章 序論
らが日常的に利用する待ち合わせ場所の選択理由、及びその場所についてアン ケート調査を行い、自由で選択的な人間行動を情報のひとつとして、都市生活 における待ち合わせの行動の秩序的把握を行っている。」 (梅沢力:「駅における待ち合わせ行動予測モデル」より抜粋) また、当研究室では人を効率的に流すという従来の旅客流動の考え方ではな く、より快適な駅空間を考えるために、1997 年頃から駅における滞留行動に 注目して研究がなされている。次項でそれぞれについて詳しく取り上げる。
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 1 章 序論
駅改札口前における待ち合わせによる滞留行動の研究 (中丸 隆二:1997 年早稲田大学) この研究では駅における滞留行動についての基礎的な行動特性がまとめられ ており、滞留行動を柱や壁付近に発生する『柱・壁依存型』とそれ以外の『独 立型』に分類している。中丸氏は論文中で、「 一般にスムーズな人間流動を 考慮する際、柱などの構造物はその妨げになると考えられるが、柱が少なくな ると依存型滞留より流動の妨げになると考えられる独立型滞留を招きやすいと いうことになる。よって待ち合わせによる滞留者が多くなると考えられる空間 において、スムーズな流動を優先して柱を減らすことは、独立型滞留の誘発し 逆に混雑を招くこともあり得るといえる。」という流動の結節点における滞留 者の問題点を指摘している。(図 1.5-1)
図 1.5-1 改札口からの距離と滞留者の人数(平均)
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第 1 章 序論
駅における待ち合わせ行動予測モデル (梅澤 力:1998 年早稲田大学) この研究では、改札口付近における待ち合わせ行動について、待ち合わせ行 動の分類と滞留者の位置を予測するモデルを作成し、待ち合わせを考慮に入れ た平面計画の検討を行っている。予測モデルは、改札からの距離を主なパラメー タとし、平面要素から待ち合わせのポテンシャルマップを作成することで、想 定した人数の待ち合わせ位置を予測するものである。また、駅における待ち合 わせ空間が少ないことから、待ち合わせ行動が改札付近で行われていることも 述べられている。(図 1.5-2)
図 1.5-2 新宿西口の待ち合わせ分布予測
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第 1 章 序論
駅構内における滞留行動に関する研究 (今井 志帆:2000 年早稲田大学) この研究では、ラチ内のコンコースで発生する滞留行動全般について、行動 の種類を分類し、交通弱者と健常者というパラメータから、滞留行動の発生を 予測するポテンシャルモデルを作成している。また、論文中で「 交通弱者の 多くは流動上に滞留する傾向にあり、壁や柱などの影響力は受けにくい。しか し流動上に滞留することは、流動する人、滞留する人の両者にとって不快を与 えてしまう原因である。(中略)歩行中に目的地までのルートを理解できなく なり、仕方なくその場に立ち止まってしまう、という一つの行動パターンを想 定することができる。」という流動上で発生する滞留の問題点が指摘されてい る。 しかし、流動と滞留の関係については明かされず、ポテンシャルモデルでは 主に壁や柱などの建築的要素による影響を受けやすい滞留行動と、対象者の属 性から滞留が予測されている。(図 1.5-3)
図 1.5-3 新宿南口での滞留の分布予測
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
2-1 研究方法 2-1-1 調査方法 調査の場所と日時 本研究では柱や壁に依存しない立ち止まり行動が頻発する様子を、時系列 を持った座標データとして捉えるために以下の条件で調査を行った。なお、今 回の調査では、早稲田大学 金山健一氏および鉄道総合研究所との合同調査で 行ったが、ここでは本研究に関するもののみを記す。 調査日時: 2003 年 10 月 11 日土曜(祝日)、12 日日曜 調査場所:JR 新宿駅 南口および、東口改札前 調査内容:VTR 撮影 撮影時間:11 日 22 時より 12 日 22 時まで 駅営業時間中 終日撮影
通勤利用客の扱いについて 本研究では待ち合わせや、友人同士の会話などの理由による立ち止まり行動 を扱うため、通勤利用客の多い平日では実態をつかみにくいと考え、連休中の 祝日と日曜日を調査日時に設定した。
記録方法 駅舎天井の梁部分にビデオカメラを設置し、流動及び立ち止まり行動が頭上 から観察できる下向きのアングルで撮影を行った。これは歩行者を可能な限り を真上に近い方向から撮影することで、歩行軌跡を抽出する際の誤差を小さく するためである。また、VTR を用いた歩行軌跡の調査ではレンズの歪みから 誤差が生じるため、通常は広角レンズを使用しないが、今回の調査では、十分 な天井高が得られない場所もあり、やむを得ず使用し、コンピュータへの取り 込み時点で歪みを補正した。 新宿南口改札入り口 カメラ設置数(3 台)(図 2.1-1) 新宿東口改札入り口 カメラ設置数(4 台)(図 2.1-5)
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
新宿南口カメラ設置場所
Uカメラ
Rカメラ
Sカメラ
図 2.1-1 設置位置と撮影方向
図 2.1-2 R カメラの映像
図 2.1-3 U カメラの映像
図 2.1-4 S カメラの映像
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
新宿東口カメラ設置場所
Tカメラ 路カメラ
早カメラ
Vカメラ
図 2.1-5 設置位置と撮影方向
図 2.1-6 T カメラの映像
図 2.1-7 路カメラの映像
図 2.1-8 早カメラの映像
図 2.1-9 V カメラの映像
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
2-1-2 歩行軌跡データの抽出方法 撮影した映像から歩行者の位置座標を抽出するため、映像をコンピュータに 取り込み、NIHImage と半自動化プログラムである HiguchiMacro を使用して 座標データを生成した。 以下に手順を示す。 1. 映像をコンピュータに映像データとして取り込む FinalCutPro を用い、取り込み時間を記したバッチリストを読み込ませ、バッ チ取り込みを行う。 (図 2.1-10)
2. レンズの歪み補正
図 2.1-10 FinalCutPro の設定画面
調査の際に広角レンズを使用したため、AdobeAfterEffectsProfessional のレ ンズ補正フィルタにより修正する。なお、その後の作業を効率よく進めるため、 抽出が困難である範囲を除外するようマスクも作成した。 (図 2.1-11)
図 2.1-11 AfterEffects の作業画面
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
3. 歩行軌跡の抽出作業用のムービーファイルの作成 AfterEffects のプロジェクト(コンポジション)からフレームレート:3 フレー ム / 秒で QuickTime ムービーを書き出す。 (図 2.1-12)
図 2.1-12 ムービーの出力設定
4. ムービーからの座標データ取り込み
NIHImage で先ほどのムービーを読み込み、HiguchiMacro を使って画像上 の頭を目安に「何番目の人、フレーム番号、X 座標、Y 座標」の形で歩行者の 軌跡を数値化する。 (図 2.1-13)
図 2.1-13 NIHImage での作業画面
5. 座標変換
ビデオの映像ではパースがかかっているため、2 次元データ(直交座標)に 変換する。座標変換プログラム shazoukun を MacOSX で動作するようにした shazoukun-perl 版を作成して変換を行った。 (図 2.1-14)
図 2.1-14 shazoukun-perl の実行画面 - 21 -
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
2-1-3 座標データの有効範囲と対象領域の設定 座標データの有効範囲の設定 ソフトウェアでゆがみ補正をしても、画面周辺部は画像が荒くなり、分析の 際に誤差が発生しやすいため、抽出した歩行書の軌跡の中で有効とする座標範 囲を設定した。 画面中央部分、横 6600mm ×縦 6600mm の範囲に入る座標データを有効 な座標データとし、この範囲を座標データの有効範囲とした。(図 2.1-15 点 線枠内) 対象領域の設定 本研究では流動を避けて柱や壁付近で立ち止まる躯体依存型の立ち止まりは 扱わないため、依存型の人が壁からの影響を受けるとされる 1.2m の範囲を除 外し、歩行者の立ち止まり行動が記録できる部分、横 5400mm ×縦 5400mm を対象領域と設定した。(図 2.1-15 赤塗り潰し内)
対象領域 座標データが有効な範囲
対象領域 座標データが有効な範囲
座標を取り出した範囲
座標を取り出した範囲
p-floプログラムで表示される範囲
p-floプログラムで表示される範囲 Sカメラ
Tカメラ
図 2.1-15 座標データの有効範囲と対象領域(左 S カメラ、右 T カメラ)
図 2.1-16 カメラから見た対象領域(左 S カメラ、右 T カメラ)
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
2-2 分析方法 2-2-1 分析の対象時間と対象データの設定 分析に用いる映像データ 調査で設置した 7 台のカメラのうち、立ち止まりの様子が観察しやすく、 改札からの距離などが同条件であるカメラをそれぞれ南口と東口からピック アップし、S カメラ(南口)と T カメラ(東口)の映像データを分析に使用す ることにした。 立ち止まり行動の基礎分析 終日の記録データから歩行者の密度や、立ち止まり方に違いがあると思われ た、07:00(朝),14:00(昼), 20:00(晩)の時間帯について分析を行った。 南口と東口双方のカメラで調査担当者や工事に伴う流動の調整などが発生しな い時間を確認し、08:15~08:45、14:45 ∼ 15:15、21:00 ∼ 21:30 の 30 分 間をそれぞれ分析の対象時間とした。 立ち止まり行動の特性分析 立ち止まりの行動の基礎分析の結果から、南口・東口それぞれの時間帯で、対 象領域内で立ち止まる人を 10 人ずつ、合計 60 人を無作為抽出した。立ち止 まりがおこった時点での周囲の状態から分析を進めるため、立ち止まるまでの 10 秒間の有効範囲内の全ての人の座標データを得た。
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
2-2-2 立ち止まりに影響する要素[仮説]の設定 立ち止まろうと考えた人(その時点では歩行者)が実際に立ち止まるまでに どのような条件から判断を下すか、以下のような仮説を立て、それぞれについ て実測した値から分析を進めた。 (仮説 1)対象領域内に登場した際の視野の中で立ち止まる (仮説 2)流動の多い場所を避ける (仮説 3)定常的な流動のある場所を避ける (仮説 4)数秒間人が通らなかった場所に立ち止まる (仮説 5)人数に応じた広さの領域を探す (仮説 6)隙間として空く領域と流動との境界に止まる なお、立ち止まる人は立ち止まる場所を決定してからそこへ向かって歩き出 すのではなく、歩行している状態から始まり、歩行しながらそれぞれの条件判 断を繰り返し、最終的に立ち止まる場所を確保するまで停止しないものとする。 つまり、最後の判断が下された場所 = その人がその時点で立ち止まることが可 能であった場所となる。
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
2-2-3 立ち止まり行動のフロー 前項のそれぞれの仮説が立ち止まりに至るまでにどのような順番で繰り返さ れるのかをフローチャートで表すと以下のようになる。(図 2.2-1) 待ち合わせ 会話 迷い
立ち止まる理由の発生
荷物の整理 …
立ち止まる場所の検出
視野内の領域を確認
特定の位置の状態を確認
(仮説2)
多い
流動の量
少ない
(仮説3)
ある
流動が今後も
発生する可能性
(仮説4)
ない
(仮説5)
動作に必要な面積
不十分
十分
(仮説1) 視野内で立ち止まり
できない
できる
(仮説6) 立ち止まる場所の確保
できない
できる 停止
図 2.2-1 立ち止まり行動のフロー
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
2-2-4 流動の影響要素の設定 本研究では対象領域内で立ち止まった人が流動から受ける影響の要素を 3 つ設定し、分析した。 1. 流動を構成する歩行者の密度 2. 流動がはっきりした方向を持っている度合い 3. 流動の方向が持続する度合い 1 と 2 は立ち止まった場所における流動の多さが立ち止まりに影響している という(仮説 2)から、「影響範囲内の密度」と影響範囲内に侵入する「流動 の方向性」とそれぞれ定義した。 3 は流動が定常的にあると立ち止まりにくいという(仮説 3)から影響範囲内 の「流動の方向転換率」と定義した。
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2-2-5 行動分析における設定 人間の視野 人間は、水平方向でおよそ 180 度(左右それぞれ 90 度)、垂直方向でおよ そ 130 度(上下それぞれ 65 度)の視野の中で対象を検出できるが、鋭敏な 視覚はこれよりもずっと狭い範囲に限られている。最も鮮明な中心視は中心か ら 1 度∼ 2 度の範囲で、視線中心から 10 度離れると視力は中心の 75%、30 度離れると 50%になるとされている※。(図 2.2-2, 図 2.2-3) ※視覚情報処理ハン ドブック 日本視覚
中心視
学 会 編 朝 倉 書 店
傍中心視
2000.9.
2° 20°
近周辺視
60°
周辺視
180°
図 2.2-2 人間の視野
図 2.2-3 対象の大きさと識別距離
中心から 30 度より広い範囲の周辺視は対象の動きをとらえることが得意で あるとされているが、立ち止まる人が自分が立ち止まる場所を探す際には、そ の点を正確に見るためにある程度鮮明な視野を利用していると考えられ、本研 究では有効な視野に含めなかった。
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視野の設定 本論文では立ち止まる人が対象範囲に侵入した直後、初めて調査対象として 観測された時点での視野を「侵入時の視野」とし、これを以下の図のように中 心から 30 度振れた正三角形の領域とした。距離は周囲の混雑状況によって変 わることが予想されたが、対象範囲が 5.4m 四方なので最大値をとって 8m の 範囲とした。(図 2.2-4, 図 2.2-5)
8000mm
60°
図 2.2-4 視野の範囲
対象領域
Aの侵入時の視野
立ち止まる人A
Bの侵入時の視野
立ち止まる人B
図 2.2-5 侵入方向による視野の違い
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サービス水準 サービス水準の基準は、歩行者 1 人当たりの占有面積(歩行者空間モジュー ル)の段階に応じて水準を決めてゆく考え方である。立ち止まり行動も立ち止 ※歩行者の空間 J・
まる際に占有可能な面積によって行動が変化することが予測され、同時に周囲
J・フルーイン 鹿
の流動の状態を的確に区別できる水準によって分析を進めることが望ましいと
島出版会 S49.12
考え、得られた密度からそれぞれのサービス水準を割り出した。 歩行路における基準は以下のように設定されている※。(表 2.2-1) 表 2.2-1 水平路・階段のサービス水準
本研究の調査データからは、サービス水準 A ∼ E までの状態が確認された。 (図 2.2-6)(図 2.2-7)
図 2.2-6 サービス水準 A の状態
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図 2.2-7 サービス水準 E の状態
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対象領域のグリッド分割 有効な座標データを持つの歩行者の軌跡から、流動の時系列変化を分析する ため対象領域をグリッド状に分割した。グリッドの間隔は 600mm で、縦 10 個×横 10 個の合計 100 個のグリッドを作成した。(図 2.2-8)グリッドの間 隔は人間の肩幅にあたる距離で、次項の影響範囲との関係やプログラムの計算 負荷からこれ以上グリッドを細かくすると、変化を捉えることが難しくなると 考え、このように設定した。また、各グリッドは次項で説明する影響範囲内の 流動から、その点において生じる負荷の値をもつ。
600mm
600mm
5400 mm
5400 mm
図 2.2-8 グリッドの大きさ
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周囲の流動から影響を受ける範囲の設定 本研究では歩行者が対象とする領域内のある1点に立ち止まった際に、その 点が周囲からどのような影響を受ける場所であったかを分析するため、その点 を中心に、ある大きさの領域を設定し、その領域内に侵入する他の歩行者の速 度ベクトルからその合成値をその点における流動の負荷とした。 この領域について、立ち止まった状態の人が、体を動かすことなく静止した まま、他の歩行者をやり過ごすことができる領域の限界に置き換え、その領域 の内側に他の歩行者が侵入して来た場合は、立ち止まったいた人が、何らかの 心理的・物理的反応を起こす必要が生じる(流動から影響を受ける)ものとし て影響範囲を設定した。 J.J.Fruin「歩行者の空間」における人体楕円(図 2.2-9)では、他人を邪魔 しないで間を通り抜けられる緩衝空間の直径は 120cm で、通り抜けの限界と されており、これを採用し、各グリッドに設定した。
図 2.2-9 フルーインの人体楕円
※建築資料集成 日
図 2.2-10 歩行帯と知覚帯※
本建築学会編 丸善 株式会社
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人体の設定 本研究においては独自のプログラムを用いて分析を進めるが、その際、人体 寸法や前述の人体楕円などを正確に再現するとプログラムの設計上負荷がかか りすぎるため、文献による実測値を参考に簡略化したモデルを使用した。(図 2.2-11. 図 2.2-12) 600mm
200mm
400mm
図 2.2-11 簡略化した人体のモデル
通り抜け領域
接触領域
400mm
1200mm
図 2.2-12 人体楕円の設定
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立ち止まりの位置の設定 立ち止まりの初期位置を立ち止まりを開始した場所と設定するが、全ての場 所について、流動の状態を把握することはプログラム上難しいので、設定した グリッドの中で最も近いものを立ち止まりの位置とした。(図 2.2-13)立ち止 まった場所の状態を表す値として、この立ち止まったグリッドの値を用いる。
立ち止まった人
立ち止まったグリッド
図 2.2-13 立ち止まった位置と立ち止まったグリッド
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立ち止まりの誘発者の設定 本研究においては、2,3 人のグループで立ち止まる場合、グループ内で先に 止まった人を立ち止まりの誘発者であると定義する。(図 2.2-14)立ち止まり の誘発者となるのは多くの場合グループの先頭に立って歩く人と同一人物で あるが、グループ全体はグループ内の誰かが立ち止まったことをきっかけに立 ち止まる傾向がある。グループ内で最初に立ち止まった人から、最後に立ち止 まった人までの時間は長くて 1 秒程度で、誰を立ち止まりの誘発者としても 周囲の状態に大きな変化はないが、最初に立ち止まりが可能と判断した人物が グループ全体の立ち止まりを発生させたと考え、立ち止まりの誘発者とした。
stop!
stop
stop? 立ち止まりの誘発者
図 2.2-14 グループにおける立ち止まりの誘発者
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影響範囲内の密度の設定 本研究では影響範囲内に存在する歩行者の数をグリッドの影響範囲内の密度 と定義した。 歩行者の歩行速度にそれほど違いがないことを考えれば、この値は歩行者の 速度ベクトルの長さの和と比例するが、他の歩行者が立ち止まっている場合に その歩行者の速度が最小となり、立ち止まりやすいと評価できてしまう。分析 上このような評価は望ましくないと考え、歩行者の歩行速度ではなく密度を採 用した。(図 2.2-15)
密度で評価した場合
速度の和で評価した場合
≒
=�0
=�0
v
≒
=�2
=�2v v
≠
=�1
=�0
図 2.2-15 密度と速度の和による評価の違い
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各グリッドにおける流動の方向性の設定 本研究では設定した影響範囲内に侵入した歩行者の速度ベクトルの和を、 流動の方向性として定義し、以下のようにして単位時間ごとに求めた。(図 2.2-16) ベクトルの和はそれぞれのベクトルの x 成分と y 成分の和から、同一方向で あれば強め合い、逆方向であれば打ち消しあう結果となる。この計算によって 求められたベクトルは方向を持つが、流動の方向性としては実際の向きではな く、任意の方向にはっきりした流動があるということを評価するためベクトル の長さをとった。方向は次項で述べる方向転換率の計算時に利用する。
v1
v3
グリッドA
グリッドA
v2
v3
v1
+
=
v2
v3
グリッドAにおける流れの大きさ
図 2.2-16 複数の歩行者がグリッド A に侵入した場合の流れの大きさ
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各グリッドにおける流動の方向転換率の設定 本研究では流動の方向性のベクトルが直前の状態からどれだけ方向を変えた かを流動の方向転換率として定義し、以下のようにして単位時間ごとに求めた。 (図 2.2-17) 直前の流動の方向性のベクトルから現在の流動の方向性のベクトルへの最小 方向の回転角度を求めるため、角度による計算ではなく、単位ベクトルの差を 用いた。それぞれのベクトルを方向性 1 の単位ベクトルとし、現在のベクト ル - 直前のベクトルによって方向転換率を表すベクトルを得る。このベクトル の方向性(長さ)は最小値 0.0 が 0°回転、最大値 2.0 が 180°回転に値する。
直前のフレームの速度ベクトル 最小方向の回転角度
大きさ1の単位ベクトル
v t�1
vj
vt
現在の速度ベクトル
2.0 = 180°
vi 0.0 = 0°
流れの方向転換率
図 2.2.-17 ベクトルの差による流れの方向転換率の求め方
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時間平均の算出方法 本研究においては、ある瞬間の流動の状態が立ち止まる場所の決定に影響 するという仮説の元、各グリッドにおける流動の影響要素は密度、流動の方向 性、流動の方向転換率ともに 1/3 秒ごとの座標データから計算される。だが、 立ち止まる人は数秒間の流動の変化からもその場所の状態変化を読み取り、立 ち止まる場所の決定に役立てているとも考えられる。そこで、影響範囲内の密 度、流動の方向性、方向転換率それぞれの、1 秒間、2 秒間、3 秒間、4 秒間、 5 秒間の平均を求めた。なお、5 秒より大きい値での平均は立ち止まる人が対 象範囲に登場してから立ち止まるまでに平均値が求まらない場合があるため、 5 秒までとした。 本 研 究 に お け る 時 間 平 均 の 求 め 方 は、 X1, X 2 , X 3 ,� X n と い う デ ー タ が あ っ た 場 合 の、Xn に お け る k 秒 間 の 平 均 を と る 場 合、
(X n� k �,�,� X n � 2 � X n�1 � X n ) / k のようにして求めた。なおその時点におい て時間をさかのぼって流動の変化を読み取ることは可能だが、時間を先取りす ることはできないので、その時点より後のデータは含まない。※前後の値をと るいわゆる移動平均法とは異なる。(表 2.2-2) 表 2.2-2 1 秒間の時間平均の算出例 X n� 3
X n� 2
X n�1
1セル=1フレーム, 1セル間=1/3sec
0
0
0
0
0
0
795.3389215
0 0 0
0 0 0
0 0 0
0 0 403.8378387
0 0 679.1656646
607.9514783 0 178.7176544
795.3389215 795.3389215 161.9413474
0 0
0 0
0 0
403.8378387 403.8378387
679.1656646 679.1656646
178.7176544 178.7176544
161.9413474 0
586.4349921 586.4349921
683.3871524 683.3871524
158.4960567 158.4960567
573.5817291 573.5817291
0 0
0 0
0 0
0
0
0
0
1214.043245
0
0
…
時間経過
…
Xn
…
Yn � (X n � 3 � X n� 2 � X n �1 � X n ) / 4 0
0
0
0
0
0
265.1129738
0 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
0 0 134.6126129 134.6126129
0 0 361.0011678 361.0011678
202.6504928 0 420.5737193 420.5737193
467.7634666 265.1129738 339.9415555 339.9415555
0
0
0
134.6126129
361.0011678
420.5737193
285.9611063
195.4783307 195.4783307 0
423.2740482 423.2740482 0
476.1060671 476.1060671 0
471.8216461 471.8216461 0
244.0259286 244.0259286 404.6810816
191.1939097 191.1939097 404.6810816
0 0 404.6810816
…
Yn
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隙間領域の設定 本研究においては、対象領域内を通過する歩行者が 2 秒、3 秒間に歩行した 領域を取り除き、歩行者の通過がなかった範囲で立ち止まることが可能であっ た場所を 2 秒、3 秒間の隙間領域として定義する。これは、歩行者が、立ち止 まるために必要な領域を確保するという仮説をもとに設定した。歩行者が歩行 した領域は歩行者の接触領域にあたる直径 600mm の範囲であるが、立ち止 まる場所を確保するには直径 1200mm の通り抜け領域を採用する必要がある。 以下に立ち止まりが可能な隙間領域の例を示す。(図 2.2-18)
時間tに立ち止まる人xが領域の境界に立った場合(接触せず)
歩行者n
歩行者m
時間tの座標
時間t-1/3の座標
時間t-2/3の座標
時間t-1の座標
立ち止まる人xが1秒間歩行者と 接触せずに立っていられた領域
図 2.2-18 1 秒間の隙間領域の算出
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
所属する隙間領域の設定 歩行者の歩行した領域を取り除くことによって、立ち止まりが可能である隙 間領域が求められるが、立ち止まる人は必ずしも隙間領域内に立ち止まってお らず、数秒前の歩行者の軌跡の上に立ち止まっている場合もあった。この場合、 より短い時間で隙間領域を考えれば領域上にいると考えられる。しかし、隙間 領域を求める時間を短くすると歩行者の軌跡も短くなり、隙間領域同士がつな がってしまい、どの領域付近に立ち止まっていたかという判断ができない。 隙間領域上に立ち止まっていない場合は、立ち止まるために必要な領域を確 保せずに立ち止まってしまった、もしくは、立ち止まった場所がその領域の延 長上にあるため、領域内まで入り込まずに立ち止まり、自分が立ち止まること で時間経過後に領域が広くなることを見越したのではないかと考えられる。本 研究では仮説に基づき後者の考え方を採用するが、立ち止まる人が減速や停止 によって自らの縄張り領域を拡張するという点については、より詳細な分析が 必要であるため今回は検討せず、立ち止まった場所が隙間領域の延長上にある という観点から、所属する領域求めた。 所属する領域は立ち止まっている人が立ち止まった時点で向いている方向 (180°)で最も近い位置にある領域とする。(図 2.2-19)
所属する隙間領域
180°
図 2.2-19 立ち止まった人が所属する隙間領域
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
所属する領域の重心までの距離の設定 所属する領域の中心部分にどれだけ近かったかという距離を求めるため、領 域の中心から立ち止まった人の体の中心までの距離を求めた。(図 2.2-20)
A(x2, y2)
Lc = √(x2-x1)^2 + (y2-y1)^2
X(x1, y1)
図 2.2-20 所属する領域の重心までの距離
所属する領域の境界までの距離の設定 所属する領域の境界付近で止まる傾向が見られたため、所属する領域の 境界との距離を求めた。立ち止まった人の体の中心から所属する隙間領域の 境界までの距離で、最も近いものを所属する領域の境界との距離とした。(図 2.2-21)
B(x2, y2)
Lb = √(x2-x1)^2 + (y2-y1)^2
X(x1, y1)
図 2.2-21 所属する領域の巨魁までの距離
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
2-2-6 予測回避行動の扱い 歩行者の障害物回避行動では「2 歩先を考える」といった、歩行者の位置か らの対象の予測と回避が行動の1つとしてあげられる。立ち止まり行動にお いても、目標とした場所における時間的変化を予測して、立ち止まる場所を決 めているとも考えられる。しかし、本研究で扱っているのは実際に立ち止まっ た人の座標データであり、予測して回避行動などをとった後の結果のデータか ら分析をすすめている。そのため、立ち止まり行動において、歩行者がその場 所を他の歩行者が通過すると予測したために避けたとしても、実際に歩行者が 通っていれば結果的に歩行者が通ったというデータが残るために、本研究では 立ち止まれる場所としての評価は低くなる。(図 2.2-22)問題は、他の人が通 ると予測して回避したにもかかわらず、そこを人が通らなかった場合だが、そ のような事象がどれほどの確率でおこるかというデータはなく、また、実際に あまりおこらないことであると考えられるため、本研究では考慮しない。 実際に立ち止まり行動をシミュレーションとして再現するには、そうした回 避行動も必要となるが、立ち止まり行動のみをモデル化するにあたっては、回 避行動を考慮する必要はないという立場である。
!
歩行軌跡として得られる座標データ
自分以外の歩行者の軌跡
図 2.2-22 予測回避行動と歩行軌跡
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
2-2-7 分析用プログラム p-flo の作成 分析プログラム 時系列の座標データからグリッド周辺の状態や、流動の変化などを読み出す 作業は算術計算だけでは手続きが膨大となる。また、流れが実際に変化したり、 立ち止まる様子を観察することは、立ち止まり行動の特徴を見つけ出すことに もつながると考え、立ち止まり行動を視覚的に表現・分析する専用のプログラ ムを作成した。 役割ごとに複数のプログラムを作成したので、それぞれについて説明する。 p-flo…メインの分析プログラム。座標データを読み込んで、アニメー ションとして再生・保存することができる。モードを切り替えることで、 分析結果の出力やモデル検証を行うことができる。 LogModifyler…座標データと平面プランの座標をあわせるために使用 する。座標データの変換プログラム。 LogConverter…p-flo から出力された分析結果を、表計算ソフトで読み 込める形式に変換するプログラム。 ※ 1Java Technology http://
いずれのプログラムもプログラム言語は JAVA ※ 1、開発環境は Eclipse ※ 2 を使用した。
java.sun.com/ ※ 2eclipse.org http:// www.eclipse.org/
図 2.2-23 JAVA 言語のロゴ
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図 2.2-24 eclipse 起動時のスプラッシュ
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
分析プログラムの使用方法 1.Eclipse 開発環境を立ち上げる。(図 2.2-25)
図 2.2-25 Eclipse 起動直後の画面
2.LogModifyler で座標データを修正する。 NIHImage か ら 出 力 さ れ た 座 標 デ ー タ を、 平 面 プ ラ ン の 座 標 と あ わ せ、 LogModifyler に読み込ませる。 変換が終了すると「done」ダイアログが出るので ok を押して終了する。(図 2.2-26)全てのログデータを変換するまで繰り返す。
図 2.2-26 「done」ダイアログ
3.p-flo で全ての人を表示して実行 平面プラン、全ての人の座標データ、立ち止まる人のリストを用意して実行す ると、座標データに基づいて動く人のアニメーションムービーが出力される。 (図 2.2-27)
図 2.2-27 p-flo を全ての人のデータで実行
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第 2 章 立ち止まりの行動調査・分析
4.p-flo の分析モードで実行 立ち止まる人を除いたログデータと平面プランを読み込み、実行すると、時間 ごとの各グリッドの流れの大きさ、方向転換率、立ち止まる人の視界に入るグ リッド、立ち止まる人から最も近いグリッド、群集密度の 5 つのデータがロ グファイルとしてそれぞれ出力される。(図 2.2-29)
図 2.2-28 p-flo を分析モードで 実行した場合の出力画面
図 2.2-29 出力されたログファイル(枠内)
5.LogConverter でログを変換 出力された 5 つのログデータをそれぞれ LogConverter にかけ、tab 区切りテ キスト形式のログデータを得る。(図 2.2-30)
図 2.2-30 変換されたログファイル(枠内)
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
3-1 分析結果 1 3-1-1 立ち止まり行動の基礎分析 立ち止まる場所の傾向 それぞれの時間帯において、立ち止まった人を全て抜き出し。その座標を平 面プラン上にプロットした。( 全ての人が右方向を向いているが、人型が配置 されているだけで向きは関係がない。) さらに、全体を 1m メッシュに区切り、 メッシュあたりの立ち止まり人数を計算して 14 段階に色分けした。(図 3.1-1 ∼ 12)
図 3.1-1 南口 8 時頃の立ち止まり位置プロット
図 3.1-2 南口 8 時頃の立ち止まり人数
図 3.1-3 南口 14 時頃の立ち止まり位置プロット
図 3.1-4 南口 14 時頃の立ち止まり人数
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
図 3.1-5 南口 20 時頃の立ち止まり位置プロット
図 3.1-6 南口 20 時頃の立ち止まり人数
図 3.1-7 東口 7 時頃の立ち止まり位置プロット
図 3.1-8 東口 7 時頃の立ち止まり人数
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
図 3.1-9 東口 14 時頃の立ち止まり位置プロット
図 3.1-10 東口 14 時頃の立ち止まり人数
図 3.1-11 東口 20 時頃の立ち止まり位置プロット
図 3.1-12 東口 20 時頃の立ち止まり人数
※一部本研究で対象としない建築要素付近の立ち止まり行動がプロットされているが、分析データ からは除いてあるため、無視していただきたい。
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
7 時の時間帯における立ち止まり場所は、南口、東口どちらの改札とも数が 少なく、また全体に散在していることがわかる。しかし、14 時や 20 時の時 間帯では立ち止まる場所に偏りが生じていることがわかる。特に、南口では 14 時の時間帯、東口では 20 時の時間帯において立ち止まる場所が集中して いる箇所がはっきりと見受けられる。 終日の立ち止まり重ね合わせ 南口、東口それぞれの時間帯における立ち止まりの位置を重ね合わせて終日 の傾向を見た。(図 3.1-13, 図 3.1-14)
図 3.1-13 南口の立ち止まり人数終日重ね合わせ
図 3.1-14 東口の立ち止まり人数終日重ね合わせ
南口では対象領域の左下付近に偏りができている。一方、東口では立ち止ま り位置は全体的に分散しており、対象領域の右側にやや偏りがある程度である。 このことから、立ち止まり行動は時間帯によって立ち止まる場所に偏りがで きることがあるが、終日の傾向は場所によって異なり、一概にどの場所に立ち 止まるという傾向は見いだせないといえる。
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
時間帯別の立ち止まりの人数 30 分間に立ち止まった人の人数(柱・壁付近の立ち止まりを除く)を時間帯、 改札別に比較した。(図 3.1-15)
立ち止まり人数(人)
120
100
80
60
40 立ち止まり人数(人) 20
0 700
1400
2000
時間 南口
東口
図 3.1-15 時間帯別の 30 分間の立ち止まり人数(南口と東口)
南口、東口のどちらも時刻によって立ち止まりの人数が変動していることが わかる。特に東口では 1400 と 2000 の立ち止まり人数がほとんど変わってい ない。
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
群集密度と立ち止まり人数の関係 各時間帯の対象領域における群集密度を求め、30 分間の立ち止まり人数と 比較した。(図 3.1-16 ∼ 18) 立ち止まり人数(人)
140 120 100
y = 111.44x + 15.45
80 60 立ち止まり人数(人) 40 20 0 0
0.2
0.4
0.6
0.8
2
群集密度(人/m )
相関係数 0.770441894
南口
線形 (南口)
図 3.1-16 群集密度と立ち止まり人数(南口)
立ち止まり人数(人)
140 y = 218.66x + 27.672
120 100 80 60 立ち止まり人数(人) 40 20 0 0
0.2
0.4
0.6
0.8
2
群集密度(人/m )
相関係数 0.898739952
東口
線形 (東口)
図 3.1-17 群集密度と立ち止まり人数(東口)
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
立ち止まり人数(人)
140 120 y = 90.611x + 42.921
100 80 60 立ち止まり人数(人) 40 20 0 0
0.2
0.4
0.6
0.8
2
群集密度(人/m )
相関係数 0.561354144
南口と東口
線形 (南口と東口)
図 3.1-18 群集密度と立ち止まり人数(南口と東口)
群集密度と立ち止まりの人数では南口、東口ともに、密度が高いと立ち止ま りの人数が増える傾向にある。相関係数もそれぞれ、南口 0.77、東口 0.89 と 強い相関を示している。しかし、南口と東口をあわせたグラフでは相関係数は 低く、また、密度 0.5 付近を境に立ち止まりの人数は減少傾向にあるともとれ る。 これは時間帯によって待ち合わせなどの行為が集中する時間と、乗り換え等 で改札付近を通過する人が多くなる時間の違いによるものと思われる。しかし、 実地調査中の観察では同じ時間で南口と東口の利用状況が異なることもあり、 時間のみではなく利用者の属性等の面からの検討が必要であると考えられる。
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
3-2 分析結果 2 3-2-1 立ち止まり行動の特性分析 立ち止まりの継続時間と立ち止まった場所の流動の方向性の関係 立ち止まる時間が長くなると考えられる場合に、より方向性のない流動の場 所を選ぶ傾向があるかを調べるために立ち止まり継続時間と流動の方向性の関 係を求めた。(図 3.2-1) 立ち止まり継続時間(秒) 700 600 500 400 300 200 立ち止まり継続時間(秒) 100 0 0
100
200
300
400
500
600
700
流れの方向性
相関係数 0.221750798
全てのデータ
図 3.2-1 立ち止まりの継続時間と流動の方向性
表 3.2-1 立ち止まりの継続時間と流動の方向性 因子名
10
20
30
60
80
平均
67.59386953
110.7265919
154.1249431
81.28527247
376.1422112
計(Ti)
1081.501912
664.3595516
1387.124488
568.9969073
1128.426634
Ti2 データ数
1169646.387 16
441373.6138 6
1924114.345 9
323757.4805 7
1273346.668 3
Ti2/n
73102.89917
73562.26897
213790.4828
46251.06865
424448.8892
ΣXi2
388259
227288
646859
163005
637169
因子数
1
1
1
1
1
危険率
0.05
分散分析表 要因 級間(因子間) 級内(誤差) 合計
変動
自由度
262061.5631 1231424.391 1493485.954
分散 4 36 40
65515.39079 34206.23309
分散比 1.915305629
確率 0.129018196
立ち止まりの継続時間と流動の方向性の間には相関がない(0.22)ことが わかった。また、10 秒区間のデータの一元分散分析でも有意な差は見られな かった。(表 3.2-1)このことから、立ち止まる時間を見越して、方向性の弱 い場所を選ぶことはないといえる。
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
グループ人数と立ち止まりの継続時間の関係 グループの構成人数によって立ち止まりの継続時間に差があるかを分析し た。(図 3.2-2)
立ち止まり継続時間(秒) 700 600 500 400 300 200 100 0 (100) (200)
1
2
3
5
グループ人数(人) 図 3.2-2 グループ人数と立ち止まり時間(箱髭グラフ) 表 3.2-2 グループ人数と立ち止まり時間 1人
2人
3人
5人
平均(秒)
44.1538
69.7083
50.5000
71.0000
標準偏差
43.4536
142.7511
42.1983
8.4853
最大値
167
588
112
77
最小値
5
5
8
65
グループ人数ごとの立ち止まり継続時間は平均 44 ∼ 71 秒とあまり幅がな く、各グループごとに平均値の差の検定を行った結果も有意な差があるとはい えないという結果になった。(表 3.2-2, 表 3.2-3)このことから、グループ構 成人数と立ち止まりの継続時間には差がなく、全体の平均として 56.3 秒であ るといえる。
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
表 3.2-3 グループ人数別の立ち止まり時間検定結果 平均
変動(Sx)
分散
44.1538
47205.38462
1888.2154
3人
69.7083
468690.9583
20377.8678
自由度
26.9216
1人
危険率
0.05
tcal
0.8417
---->
生起確率
t-表値
2.0555
---->
判定
平均
変動(Sx)
分散
1人
44.1538
47205.38462
1888.2154
3人
50.5000
8903.5
1780.7000
自由度
30
危険率
0.05
合成標準偏差
43.2469
tcal
0.3240
---->
生起確率
t-表値
2.0423
---->
判定
平均
変動(Sx)
分散
2人
69.7083
468690.9583
20377.8678
3人
50.5000
8903.5
1780.7000
自由度
26.8172
危険率
0.05
tcal
0.5674
---->
生起確率
t-表値
2.0555
---->
判定
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0.4076
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
0.7482
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
0.5753
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
グループ人数と立ち止まった場所の流動の方向性の関係 グループの構成人数によって方向性の強い流動の場所で立ち止まることがあ るかを調べるためにグループ人数ごとの流動の方向性を分析した。(図 3.2-3) 方向性 700 600 500 400 300 200 100 0 (100) 1
(200)
2
3
5
グループ人数(人) 図 3.2-3 グループ人数と方向性(箱髭グラフ) 表 3.2-4 グループ人数と方向性 1人
2人
3人
5人
平均
71.90489383
123.5364635
134.8731162
0
標準偏差 最大値 最小値
153.5985472 491.6350272 0
191.0908971 579.9560328 0
227.8927183 548.4706009 0
0 0 0
表 3.2-5 グループ人数と方向性の分散分析結果 因子名 平均
1人 2人 3人 71.90489383 123.5364635 134.8731162
計(Ti)
1869.527239
2964.875125
809.2386971
Ti2
3495132.099
8790484.506
654867.2688
26
24
6
134428.1577 724241
366270.1877 1206132
109144.5448 368820
因子数
1
1
1
危険率
0.01
データ数 Ti2/n ΣXi2
分散分析表 要因 級間(因子間) 級内(誤差) 合計
変動 自由度 41080.66825
2
1689350.11
53
1730430.778
55
分散 分散比 確率 20540.33412 0.644412134 0.529034487 31874.53037
グループ構成人数が増えると流動の方向性の平均も高くなるが、平均値の幅 は小さく、一元分散分析では有意な差は見られなかった。(表 3.2-5) このことから、グループ構成人数と流動の方向性の間には差がなく、グループ 人数が多い場合に方向性の強い流動のある場所でも止まってしまうということ はないと考えられる。 - 56 -
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
サービス水準と立ち止まった場所の流動の方向性の関係 サーズス水準が C,D などの混雑した状況では立ち止まる場所として、より方 向性の強い流動の場所であっても選択する傾向があるのではないかと考え、こ れについて分析した。(図 3.2-4)
方向性 700 600 500 400 300 200 100 0 (100) (200)
A
B
C
D
E
サービス水準 図 3.2-4 グループ人数と方向性(箱髭グラフ) 表 3.2-6 グループ人数と方向性 A
B
C
D
E
平均
22.32431734
115.567292
172.3980739
130.0797381
157.0938983
標準偏差 最大値 最小値
75.66171754 274.854507 0
229.7615093 548.4706009 0
214.3683298 579.9560328 0
183.8534122 389.6305943 0
166.3610959 274.7289573 39.45883931
特に、サービス水準 A が他の水準と比べて特に平均値が低かったため、差 の検定を行った。(表 3.2-7 ∼ 9)
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
表 3.2-7 サービス水準 A と C の差の検定 平均
変動(Sx)
分散
A
22.3243
131667.9965
5724.6955
C
172.3981
781214.2741
45953.7808
自由度
20.1948
危険率
0.05
tcal
2.8404
---->
生起確率
t-表値
2.0860
---->
判定
0.0101
(両側検定) 平均値に有意な差が認められる
表 3.2-8 サービス水準 B ~ C の分散分析結果 因子名 平均
B
C
D
E
115.567292
172.3980739
130.0797381
157.0938983
計(Ti)
1040.105628
3103.16533
650.3986905
314.1877967
Ti2
1081819.718
9629635.065
423018.4566
98713.97156
9
18
5
2
120202.1908 542525
534979.7259 1316194
84603.69132 219812
49356.98578 77033
因子数
1
1
1
1
危険率
0.05
データ数 Ti2/n ΣXi2
分散分析表 要因 級間(因子間)
変動 自由度 21783.54436
3
級内(誤差)
1366421.406
30
合計
1388204.951
33
分散 分散比 確率 7261.181453 0.159420397 0.922767092 45547.38021
表 3.2-9 サービス水準 A と B ~ E の差の検定 平均
変動(Sx)
分散
A
22.3243
131667.9965
5724.6955
B-E
150.2311
1388204.951
42066.8167
自由度
44.5736
危険率
0.05
tcal
3.3295
---->
生起確率
t-表値
2.0154
---->
判定
0.0018
(両側検定) 平均値に有意な差が認められる
A と C では有意な差が認められた。(表 3.2-7) B ∼ E は分散が同じであったため、一元分散分析を行ったところ、有意な差 は見られなかった。(表 3.2-8) A と B,D,E それぞれでは有意な差は見られなかったが、A と B ∼ E とでは有 意な差が見られた。(表 3.2-9) このことから、サービス水準による流動の方向性は A とそれ以外で差があ ることがわかった。
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
3-2-2(仮説 1)に関する分析結果 視野と立ち止まり位置の関係 侵入時の視野は立ち止まる人ごとに異なるため、視野内とそれ以外の対象領 域の比も異なる。それぞれのケースについて対象領域内で視野の領域が閉める 割合の平均を求めると 44.3% となる。(図 3.2-5)
14%
86%
視野内で立ち止まった
視野内で立ち止まらなかった
図 3.2-5 視野内で立ち止まった割合
これに対し、実際に侵入時の視野内に立ち止まった割合は 86.2% と非常に 高い結果となった。このことから、視野の設定が信頼のおけるものであったと いえ、(仮説 3)の成立する確率が得られた。
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
3-2-3(仮説 2,3)に関する分析結果 流動の方向性と立ち止まりの頻度 立ち止まった瞬間(0s)の流動の方向性と立ち止まりの頻度は次のように 求められた。(図 3.2-6) 割合(%)
100.00 90.00 80.00 70.00 60.00 50.00 40.00 割合(%) 30.00
2
R = 0.5062
20.00 10.00 0.00 0sec
~100
~200
~300
~400
~500
~600
72.22
3.70
7.41
3.70
7.41
5.56
流れの方向性
0sec
累乗 (0sec)
図 3.2-6 流動の方向性と頻度(立ち止まった瞬間)
平均値 103.78 で、0 ∼ 100 の区間に 72.22%の人が集中している。その他 の区間では 5 人程度で差異が見られない。このことから、流動の方向性の強 い場所を避けるという(仮説 1)の分布が得られた。
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
流動の方向性と立ち止まりの頻度(1 秒~ 5 秒間の時間平均) 流動の方向性と立ち止まりの頻度を時間平均で求めた。(図 3.2-7 ∼ 11) 割合(%)
割合(%)
100.00
100.00
90.00
90.00
80.00
80.00
70.00
70.00
60.00
60.00
50.00
50.00
40.00 割合(%)
40.00 割合(%)
30.00
30.00 2
R = 0.7964
20.00
0.00 1sec
2
R = 0.9282
20.00
10.00
10.00 ~100
~200
~300
~400
~500
~600
61.11
22.22
3.70
3.70
3.70
5.56
0.00 2sec
~100
~200
~300
~400
~500
62.96
18.52
9.26
7.41
1.85
流れの方向性
1sec
累乗 (1sec)
2sec
図 3.2-7 流動の方向性と頻度(時間平均 1 秒) 割合(%)
割合(%)
100.00
90.00
90.00
80.00
80.00
70.00
70.00
60.00
60.00
50.00
50.00
40.00 割合(%)
40.00 割合(%)
30.00
30.00 2
R = 0.9558
20.00
2
R = 0.8964
20.00
10.00
3sec
累乗 (2sec)
図 3.2-8 流動の方向性と頻度(時間平均 2 秒)
100.00
0.00
~600
流れの方向性
10.00 ~100
~200
~300
~400
~500
62.96
22.22
5.56
5.56
3.70
0.00
~600
4sec
~100
~200
~300
~400
~500
59.26
18.52
12.96
7.41
1.85
流れの方向性
3sec
~600
流れの方向性
累乗 (3sec)
4sec
図 3.2-9 流動の方向性と頻度(時間平均 3 秒)
累乗 (4sec)
図 3.2-10 流動の方向性と頻度(時間平均 4 秒)
割合(%)
100.00 90.00 80.00 70.00 60.00 50.00 40.00 割合(%) 30.00 R2 = 0.9132
20.00 10.00 0.00 5sec
~100
~200
~300
~400
~500
57.41
24.07
9.26
7.41
1.85
~600
流れの方向性
5sec
累乗 (5sec)
図 3.2-11 流動の方向性と頻度(時間平均 5 秒)
時間平均の間隔を長くすると徐々に、度数分布が滑らかになるが、5 秒間の 時間平均でも依然として 57.41% の人が 0 ∼ 100 の区間に入っていることが わかる。2,4,5 秒の近似曲線の傾きはほぼ同じである。
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
流動の方向転換率と立ち止まりの頻度 流動の方向転換率と立ち止まりの頻度は次のように求められた。 (図 3.2-12)
割合(%)
100.00 90.00 80.00 70.00 60.00 50.00 40.00 割合(%) 30.00 R2 = 0.7769
20.00 10.00 0.00 0sec
~0.25
~0.5
70.37
11.11
~0.75
~1
~1.25
~1.5
~1.75
~2
5.56
3.70
1.85
7.41
流れの方向転換率
0sec
累乗 (0sec)
図 3.2-12 流動の方向転換率と頻度(立ち止まった瞬間)
平均値 0.321 で、0 ∼ 0.25 の区間に 70.37% の人が集中している。その他 の区間の人数も少なく、これは流動の方向性とほぼ同じ分布である。流動の方 向転換率が低いということは流動の向きが変わらないもしくは、存在しない(0 である)ということであるから、流動の方向性の分布で 0 の値が多かったこ とを考えれば、当然の結果とも考えられる。
- 62 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
流動の方向転換率と立ち止まりの頻度(1 秒~ 5 秒間の時間平均) 流動の方向転換率と立ち止まりの頻度を時間平均で求めた。(図 3.2-18 ∼ 22) 割合(%)
割合(%)
100.00
100.00
90.00
90.00
80.00
80.00
70.00
70.00
60.00
60.00 50.00
50.00
40.00 割合(%)
40.00 割合(%)
30.00
30.00
2
R = 0.8564
20.00
0.00 1sec
R2 = 0.9699
20.00 10.00
10.00 ~0.25
~0.5
~0.75
~1
~1.25
~1.5
~1.75
~2
53.70
22.22
12.96
1.85
1.85
3.70
1.85
1.85
0.00 2sec
~0.25
~0.5
~0.75
~1
53.70
27.78
11.11
5.56
~1.5
~1.75
~2
1.85
流れの方向転換率
流れの方向転換率
1sec
~1.25
2sec
累乗 (1sec)
累乗 (2sec)
図 3.2-18 流動の方向転換率と頻度(時間平均 1 秒) 図 3.2-19 流動の方向転換率と頻度(時間平均 2 秒) 割合(%)
割合(%)
100.00
100.00
90.00
90.00
80.00
80.00
70.00
70.00
60.00
60.00
50.00
50.00
40.00 割合(%)
40.00 割合(%)
30.00
30.00 2
R = 0.9206
20.00
0.00 3sec
2
R = 0.898
20.00
10.00
10.00 ~0.25
~0.5
~0.75
~1
53.70
24.07
16.67
3.70
~1.25
~1.5
~1.75
0.00
~2
1.85
4sec
~0.25
~0.5
~0.75
~1
55.56
20.37
18.52
3.70
流れの方向転換率
3sec
~1.25
~1.5
~1.75
~2
1.85
流れの方向転換率
累乗 (3sec)
4sec
累乗 (4sec)
図 3.2-20 流動の方向転換率と頻度(時間平均 3 秒) 図 3.2-21 流動の方向転換率と頻度(時間平均 4 秒) 割合(%)
100.00 90.00 80.00 70.00 60.00 50.00 40.00 割合(%) 30.00 R2 = 0.9548
20.00 10.00 0.00 5sec
~0.25
~0.5
~0.75
59.26
22.22
12.96
~1
~1.25
3.70
~1.5
~1.75
~2
1.85
流れの方向転換率 5sec
累乗 (5sec)
図 3.2-22 流動の方向転換率と頻度(時間平均 5 秒)
時間平均の間隔を長くすると徐々に、度数分布が滑らかになり、流動の方向 性とほとんど同じ分布で近似曲線も似通った傾きをもっていることがわかる。 また、2 ∼ 5 秒では近似曲線の傾きに大きな差が見られない。5 秒間の時間平 均でも 59.26% の人が 0 ∼ 0.25 の区間に入っている。 - 63 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
グリッドの影響範囲内の密度と立ち止まりの頻度 グリッドの影響範囲内の密度と立ち止まりの頻度は次のように求められた。 (図 3.2-23) 割合(%)
100.00 90.00 80.00 70.00 60.00 50.00 40.00 割合(%)
2
R = 0.8422
30.00 20.00 10.00 0.00 0sec
~0.25
~0.5
64.81
~0.75
~1
~1.25
31.48
~1.5
~1.75
3.70 密度(人/m2)
0sec
累乗 (0sec)
図 3.2-23 グリッドの影響範囲内の密度と頻度(立ち止まった瞬間)
平均値 0.25 で 0 ∼ 0.2 の区間に 64.81%の人が集中しているが、0.4 ∼ 0.8 の区間にも 31.48%と分布の幅があることがわかる。0.8(人 /m2)はグリッ ドの影響範囲内に大体 1 人、人がいることになる。このことから、グリッド 付近の密度は他の2つの流動の要素(方向性と方向転換率)と比べ、緩やかな 分布となり、人が1人くらいいても立ち止まることがあるということがわかっ た。
- 64 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
グリッドの影響範囲内の密度と立ち止まりの頻度(1 秒~ 5 秒間の時間平均) グリッドの影響範囲内の密度と立ち止まりの頻度を時間平均で求めた。(図 3.2-24 ∼ 28) 割合(%)
割合(%)
100.00
100.00
90.00
90.00
80.00
80.00
70.00
70.00
60.00
60.00
50.00
50.00
40.00 割合(%)
40.00 割合(%)
2
R = 0.868
30.00 20.00
20.00
10.00 0.00 1sec
R2 = 0.9909
30.00
10.00 ~0.25
~0.5
~0.75
~1
~1.25
~1.5
~1.75
68.52
9.26
14.81
1.85
1.85
1.85
1.85
0.00 2sec
~0.25
~0.5
~0.75
~1
~1.25
62.96
20.37
7.41
5.56
3.70
密度(人/m2)
1sec
~1.5
~1.75
密度(人/m2)
累乗 (1sec)
累乗 (2sec)
2sec
図 3.2-24 グリッド内の密度と頻度(時間平均 1 秒) 図 3.2-25 グリッド内の密度と頻度(時間平均 2 秒) 割合(%)
割合(%)
100.00
100.00
90.00
90.00
80.00
80.00
70.00
70.00
60.00
60.00
50.00
50.00
40.00 割合(%)
40.00 割合(%)
2
R = 0.8399
30.00 20.00
20.00
10.00 0.00 3sec
2
R = 0.9791
30.00
10.00 ~0.25
~0.5
~0.75
~1
~1.25
~1.5
62.96
16.67
12.96
1.85
1.85
3.70
0.00
~1.75
4sec
~0.25
~0.5
~0.75
~1
~1.25
~1.5
61.11
22.22
7.41
3.70
3.70
1.85
密度(人/m2)
密度(人/m2)
累乗 (3sec)
3sec
~1.75
4sec
累乗 (4sec)
図 3.2-26 グリッド内の密度と頻度(時間平均 3 秒) 図 3.2-27 グリッド内の密度と頻度(時間平均 4 秒) 割合(%)
100.00 90.00 80.00 70.00 60.00 50.00 40.00 割合(%)
R2 = 0.9791
30.00 20.00 10.00 0.00 5sec
~0.25
~0.5
~0.75
~1
~1.25
~1.5
61.11
22.22
7.41
3.70
3.70
1.85
~1.75
密度(人/m2)
5sec
累乗 (5sec)
図 3.2-28 グリッド内の密度と頻度(時間平均 5 秒)
時間平均の間隔を長くすると徐々に、度数分布が滑らかになるが、3,4,5 秒 のあたりでは近似曲線の傾きにあまり違いが見られない。
- 65 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
流動の方向性と流動の方向転換率の関係 立ち止まり場所における流動の方向性と流動の方向転換率の分布が似通って いいたため、時間平均ごとに相関を求めた。(図 3.2-29 ∼ 34) 方向転換率
方向転換率
2
2
1.8
1.8
1.6
1.6 y = 0.0015x + 0.1688
1.4 1.2
y = 0.0013x + 0.1455
1.4
2
R = 0.1958
2
R = 0.2785
1.2
1
1
方向転換率 0.8
方向転換率 0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0 0
100
200
300
400
500
600
方向性
相関係数 0.442534137
0sec
0
100
200
300
0.527724196
線形 (0sec)
400
500
600
方向性
相関係数 1sec
線形 (1sec)
図 3.2-29 流動の方向性と方向転換率(時間平均 0 秒) 図 3.2-30 流動の方向性と方向転換率(時間平均 1 秒)
方向転換率
方向転換率
2
2
1.8
1.8
1.6
1.6 y = 0.0015x + 0.0912
1.4
y = 0.0014x + 0.1141
1.4
R2 = 0.4791
1.2
2
R = 0.4339
1.2
1
1
方向転換率 0.8
方向転換率 0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0 0
100
200
300
400
500
600
方向性
相関係数 0.69219112
2sec
0
100
200
300
0.69219112
線形 (2sec)
400
500
600
方向性
相関係数 3sec
線形 (3sec)
図 3.2-31 流動の方向性と方向転換率(時間平均 2 秒) 図 3.2-32 流動の方向性と方向転換率(時間平均 3 秒)
方向転換率
方向転換率
2
2
1.8
1.8
1.6
1.6
y = 0.0014x + 0.1248
1.4
y = 0.0016x + 0.0921
1.4
2
R = 0.4242
2
R = 0.4719
1.2
1.2 1
1
方向転換率 0.8
方向転換率 0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2 0
0 0
100
200
300
500
方向性
相関係数 0.651272393
400
4sec
600
0
100
200
300
0.686944327
線形 (4sec)
400
500
600
方向性
相関係数 5sec
線形 (5sec)
図 3.2-33 流動の方向性と方向転換率(時間平均 4 秒) 図 3.2-34 流動の方向性と方向転換率(時間平均 5 秒)
- 66 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
立ち止まりの瞬間(0sec)では弱い相関を示しているものの、散布図を見る 限り相関はないと考えられる。 時間平均 1 秒でも相関があるとはいいがたい。しかし、時間平均 2 秒以降は 強い相関があり、散布図からも正の相関が伺える。このことから、立ち止まり 場所の流動の時間変化を見ると流動の方向性の強い場所では流動の方向転換率 も大きい場所が選ばれているといえる。つまり、流動の方向性が強く一定で変 化しない場所や、流動の変化の極端に激しい場所を避けているといえる。 参考としてサンプル 145750 の 23 フレームにおける流動の方向性と流動の 方向転換率を時間平均 4 秒と 5 秒で抜き出してみたが、相関は見られなかった。 (図 3.2-35, 図 3.2-36) (なお、1 ∼ 5 秒のサンプルにおいては危険率 0.01 の棄却検定で棄却できた 標本を 1 つ取り除いた) 方向転換率
2 1.8 1.6 1.4 1.2 1 方向転換率 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0
200
400
600
800
1000
方向性
相関係数 0.087957586
4sec
図 3.2-35 サンプル 145750 の 23 フレームにおける 流動の方向性と方向転換率(時間平均 4 秒) 方向転換率
2 1.8 1.6 1.4 1.2 1 方向転換率 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0
200
相関係数 -0.009593631
400
600
800
1000
方向性 5sec
図 3.2-36 サンプル 145750 の 23 フレームにおける 流動の方向性と方向転換率(時間平均 5 秒)
- 67 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
流動の方向性とグリッドの影響範囲内の密度の関係 (図 3.2-37 ∼ 42) 密度(人/m2)
密度(人/m2)
1.6
1.6
1.4
1.4 y = 0.0017x + 0.0803
1.2
y = 0.0019x + 0.0549 2
R = 0.6604
1.2
2
R = 0.6664
1
1
0.8
0.8
0.6 密度(人/m2)
0.6 密度(人/m2)
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0 0
100
200
300
400
500
600
方向性
相関係数 0.816353784 0sec
0
100
200
300
0.812622809
線形 (0sec)
1sec
図 3.2-37 流動の方向性とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 0 秒)
400
500
600
方向性
相関係数
線形 (1sec)
図 3.2-38 流動の方向性とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 1 秒)
密度(人/m2)
密度(人/m2)
1.6
1.6
1.4
1.4
1.2
1.2
y = 0.0025x + 0.015 2
R = 0.7484 y = 0.0022x + 0.0307 R2 = 0.6877
1
1
0.8
0.8
0.6 密度(人/m2)
0.6 密度(人/m2)
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0 0
100
200
300
400
500
600
方向性
相関係数 0.829270391
0
300
400
500
600
方向性
0.865095431 3sec
図 3.2-39 流動の方向性とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 2 秒)
線形 (3sec)
図 3.2-40 流動の方向性とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 3 秒)
密度(人/m2)
密度(人/m2)
1.6
1.6 1.4
y = 0.0023x + 0.0138 2
1.2
200
線形 (2sec)
2sec
1.4
100
相関係数
y = 0.0025x + 0.0073
1.2
R = 0.7113
1
2
R = 0.693
1
0.8
0.8
0.6 密度(人/m2)
0.6 密度(人/m2)
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0 0
100
200
300
400
500
方向性
相関係数 0.843378866 4sec
600
0
100
200
300
0.832440753
線形 (4sec)
5sec
図 3.2-41 流動の方向性とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 4 秒)
- 68 -
400
500
600
方向性
相関係数
線形 (5sec)
図 3.2-42 流動の方向性とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 5 秒)
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
立ち止まりの瞬間(0sec)や 1 秒の時間平均では散布に偏りがあるものの 大変強い相関を示している。時間平均 2 秒以降でも強い相関があり、散布図 からも正の相関が伺える。 これは歩行者間の歩行速度に大きな差がないことを考えると、密度が高く なった場合も方向性が一定の割合で強くなっていることから、密度の高い場所 では歩行者の交錯があまり発生していない場所に立ち止まっていることがわか る。 参考としてサンプル 145750 の 23 フレームにおける流動の方向性とグリッ ド付近の密度を時間平均 4 秒と 5 秒で抜き出したところ、同様に高い相関が 見られ傾きもほぼ同じだったことから、これは立ち止まった場所に限らず、対 象領域内全般に言えることであると考えられる。(図 3.2-43, 図 3.2-44) 密度(人/m2)
3.5 y = 0.0024x + 0.1061
3
2
R = 0.5667
2.5 2 1.5 密度(人/m2) 1 0.5 0 0
200
400
600
800
1000
方向性
相関係数 0.752764442
4sec
線形 (4sec)
図 3.2-43 流動の方向性とグリッドの 影響範囲内の密度(サンプル 145750 の時間平均 4 秒)
密度(人/m2)
3.5 3 y = 0.0026x + 0.0873
2.5
2
R = 0.5851
2 1.5 密度(人/m2) 1 0.5 0 0
200
相関係数 0.764929911
400
600
800
1000
方向性 5sec
線形 (5sec)
図 3.2-44 流動の方向性とグリッドの影響範囲内の 密度(サンプル 145750 の時間平均 5 秒)
- 69 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
流動の方向転換率とグリッド付近の密度の関係 (図 3.2-45 ∼ 50) 方向転換率
方向転換率
2
2
1.8
1.8 y = 0.8569x + 0.1049
1.6
2
R = 0.2753
1.4
y = 0.5754x + 0.1421
1.6
2
R = 0.2924
1.4 1.2
1.2 1
1
方向転換率 0.8
方向転換率 0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2 0
0 0
0.5
1 密度(人/m2)
相関係数 0.524714181
0.5
1
0.540742062
図 3.2-45 流動の方向転換率とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 0 秒)
方向転換率
1.5
方向性
相関係数
線形 (0sec)
0sec
0
1.5
1sec
線形 (1sec)
図 3.2-46 流動の方向転換率とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 1 秒)
方向転換率
2
2
1.8
1.8
1.6
1.6
1.4
1.4
1.2
1.2
1
1 y = 0.5754x + 0.1033
方向転換率 0.8
R = 0.4758
0.6
y = 0.4975x + 0.1301
方向転換率 0.8
2
R2 = 0.4221
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0 0
0.5
1
1.5
方向性
相関係数 0.689760251
2sec
0
0.5
1
0.649714721
線形 (2sec)
図 3.2-47 流動の方向転換率とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 2 秒)
方向転換率
1.5
方向性
相関係数 3sec
線形 (3sec)
図 3.2-48 流動の方向転換率とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 3 秒)
方向転換率
2
2
1.8
1.8
1.6
1.6
1.4
1.4
1.2
1.2 y = 0.478x + 0.1521
1 方向転換率 0.8
y = 0.5044x + 0.1245
1
2
R = 0.3799
2
R = 0.4428
方向転換率 0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0 0
0.5
1 方向性
相関係数 0.616365269
1.5
4sec
0
0.5
1
0.665431950
線形 (4sec)
図 3.2-49 流動の方向転換率とグリッドの 影響範囲内の密度(時間平均 4 秒)
- 70 -
1.5
方向性
相関係数 5sec
線形 (5sec)
図 3.2-50 流動の方向転換率とグリッドの影響範 囲内の密度(時間平均 5 秒)
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
どの時間平均でもかなり相関がある結果となった。 参考としてサンプル 145750 の 23 フレームにおける流動の方向転換率とグ リッド付近の密度を時間平均 4 秒と 5 秒で抜き出したところ、相関はあまり 見られなかった。(図 3.2-60, 図 3.2-61)
方向転換率
2 1.8 1.6 y = 0.1258x + 0.2675
1.4
2
R = 0.1342
1.2 1 方向転換率 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
密度(人/m2)
相関係数 0.36638347
5sec
線形 (5sec)
図 3.2-60 流動の方向転換率とグリッドの 影響範囲内の密度(サンプル 145750 の時間平均 4 秒)
方向転換率
2 1.8 1.6 1.4 y = 0.1072x + 0.2943
1.2
2
R = 0.1021
1 方向転換率 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
密度(人/m2)
相関係数 0.319555197
5sec
線形 (5sec)
図 3.2-61 流動の方向転換率とグリッドの 影響範囲内の密度(サンプル 145750 の時間平均 5 秒)
- 71 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
3-2-4 有効な時間平均の算出 瞬間の値と時間平均の値の違い これまでに、分析によって立ち止まる場所の流れの影響に関する要素[流れ の方向性、流れの方向転換率、グリッド付近の密度]の立ち止まった瞬間と瞬 間から時間間隔分さかのぼった時間平均の各分布が求められた。ここで、瞬間 の値に対する時間平均の値について述べる。 立ち止まった瞬間のその場所の状態は、立ち止まるという行為が遂行された その瞬間であるという点において立ち止まりの判断理由の値として最も確かで あるといえる。しかし、その瞬間の情報量は僅かであり、対象領域全体では判 断基準にならない場合がある。 例えば、サービス水準 A の状態で立ち止まったグリッドの密度の値と同じ かそれ以下の値のグリッドと、それより大きい値のグリッドの割合を見ると次 のようになる。(図 3.2-62)
26%
74%
止まったグリッドの値以下のグリッド
止まったグリッドの値より大きいグリッド
図 3.2-62 立ち止まったグリッドの密度以下のグリッドが 全体に占める割合(サービス水準 A)
7 割以上のグリッドが同じ条件か、それよりも良い条件で存在していたとい うことになる。この場合、他の2つの影響要素がほぼ比例関係にあることを考 えれば、立ち止まる場所の絞り込みは容易ではない。 人間がどのように立ち止まる場所を見つけ出すかを改めて考えると、立ち止 まった瞬間に良い条件だったことはもちろんであるが、その何秒か前、そこへ 行き着く前からその場所の状態を比較検討していたはずである。この「行き着 くまでのどれくらいの時間が考慮されているか」がわかればより多くの情報か ら選ぶべきグリッドを見つけ出すことができる。これが、(仮説2)を証明す るために必要である時間平均の考え方である。 - 72 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
必要な情報量の取り出し 時間平均を長くとって多くの情報を得ると、同時に全体の情報量も多くな る。以下の図は南口、東口それぞれの 1 分間の座標データの重ね合わせだが、 既に図からは何も読み取れなくなっている。1 分では長過ぎると言える。(図 3.2-63, 図 3.2-64)
図 3.2-63 1分間の歩行者の軌跡重ね合わせ(南口)
図 3.2-64 1分間の歩行者の軌跡重ね合わせ(東口)
- 73 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
また、本研究では座標データとしてカメラの画面内に登場してから 5 秒程 度で停止に至るサンプルもあり、判断に 10 秒もかけていないことが予測され る。ここで、立ち止まったグリッドの密度の値以下のものとそれより大きい値 のグリッドの割合を 5 秒までの時間平均で見てみる。(図 3.2-65) 割合(%)
100 90 80 70 60 50 40 割合(%) 30 20 10 0 0
1
2
3
4
5
時間平均の間隔(秒) 止まったグリッドの値以下のグリッド
図 3.2-65 立ち止まったグリッドの密度以下のグリッドが全体に占める割合
2 ∼ 3,4 秒あたりが低となっていることがわかる。5 秒で止まったグリッド の値以下の割合が増え始めている点は、それ以降全体が平均化されていくため、 100%に近づく折り返し点と考えられる。
- 74 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
立ち止まったグリッドの値以下(立ち止まりやすい)のグリッドとそれより 大きい値(立ち止まりにくい)のグリッドの割合を方向性、方向転換率につい て見ると以下のようになる。(図 3.2-66, 図 3.2-67) 割合(%)
100 90 80 70 60 50 40 割合(%) 30 20 10 0 0
1
2
3
4
5
時間平均の間隔(秒) 止まったグリッドの値以下のグリッド
図 3.2-66 立ち止まったグリッドの方向性以下のグリッドが全体に占める割合
割合(%)
100 90 80 70 60 50 40 割合(%) 30 20 10 0 0
1
2
3
4
5
時間平均の間隔(秒) 止まったグリッドの値以下のグリッド
図 3.2-67 立ち止まったグリッドの方向転換率以下のグリッドが全体に占める割合
グラフから、0 秒から 4 秒にかけて立ち止まりやすいグリッドが減少し、5 秒で傾きが逆になっているのがわかる。
- 75 -
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
立ち止まりやすいグリッドの割合の増減について 前項で、立ち止まりやすいグリッドの割合が増減することを確認したが、こ の点について次のような説明を与えることができる。 例としてグリッドを 5 × 5 マスに簡略化した正方形グリッドの周辺密度の 図を示す。(図 3.2-68)
=
t=0sec
0
0
3
15
0
10
0
1
0
=
22
t=3sec
=
t=5sec
24 止まったグリッド 以下の値のグリッド
止まったグリッド より大きいの値のグリッド
図 3.2-68 立ち止まりやすいグリッドの割合の時間平均ごとの変
- 76 -
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
まず、立ち止まった瞬間(t=0sec)では、立ち止まった場所の値以下のグリッ ドは他に歩行者がいない場所を含み、それなりの数がある。また、その場に歩 行者がいたグリッドとの差は大きい。 次に、3 秒の時間平均(t=3sec)を考える。他の歩行者の3秒前の状態がそ れぞれのグリッドに加味され、歩行者がいなかったために低い値をとっていた グリッドは値が上がる。また、立ち止まったグリッドには人が侵入していない ため、立ち止まった瞬間の状態とほぼ同じ状態を維持し、総じて立ち止まった グリッドの値以下のグリッド数は減少する。 5 秒程度の状態(t=5sec)では歩行者の流動が交錯し、密度の高い場所が現 れるが、5 秒間の平均値となるため、幾分平均化された値となる。全体的にグ リッドに値が入るために密度が低い(白い)グリッドは少なくなる。一方立ち 止まったグリッドでは人が存在するため、値が上がり、立ち止まったグリッド の値以下に入るグリッドも増え割合も増す。しかし、全体では値が均質化しつ つあり、止まったグリッドの値以下とそれより大きい値の差が(色の濃さ)縮 まりつつある。 これより時間平均を長くしていくと、より多くの歩行者の軌跡が考慮され て全体がほとんど同じ状態のグリッドになり、止まったグリッドの値以下のグ リッドの割合は 100%に近づく。 この割合の増減は全体の群集密度が高ければ高いほどすぐに増加に転じると 考えられる。
- 77 -
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
止まりやすいグリッドと止まりにくいグリッドの差 止まったグリッドの値以下の割合の折り返し点を見つけることができた が、それぞれのデータは平均化されていくので、止まったグリッドの値以下(止 まりやすいグリッド)のデータとそれより大きい値のグリッド(止まりにくい グリッド)のデータを比べた場合に、両者に差がない点が現れることも考えら れる。 そのため、立ち止まった場所と立ち止まらなかった場所のグリッドで差があ るかを調べた。(表 3.2-9) 結果、全ての場合について有意な差があるという結果になった。これはより 長い時間平均で差がなくなるものと考えられる。
- 78 -
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
表 3.2-9 各時間平均ごとの立ち止まったグリッドと 立ち止まらなかったグリッドの差の検定(方向性) 0sでの差の検定 平均
変動(Sx)
分散
止まった
103.7812
1716027.512
32377.8776
止まらなかった
320.4540
41095193.77
82355.0977
自由度
85.4334
危険率
0.05
tcal
7.8374
---->
生起確率
t-表値
1.9883
---->
判定
0.0000
(両側検定)
平均値に有意な差が認められる
1sでの差の検定 平均
変動(Sx)
分散
止まった
108.6498
1284337.575
24232.7844
止まらなかった
266.2945
30101596.04
60323.8398
自由度
84.6788
危険率
0.05
tcal
6.6065
---->
生起確率
t-表値
1.9886
---->
判定
0.0000
(両側検定)
平均値に有意な差が認められる
2sでの差の検定 平均
変動(Sx)
分散
止まった
95.1842
737837.8045
13921.4680
止まらなかった
237.1813
20144339.16
40369.4172
自由度
90.4528
危険率
0.05
tcal
7.7174
---->
生起確率
t-表値
1.9867
---->
判定
0.0000
(両側検定)
平均値に有意な差が認められる
3sでの差の検定 平均
変動(Sx)
分散
止まった
95.4028
733803.2919
13845.3451
止まらなかった
231.4990
13355348.16
26764.2248
自由度
77.0832
危険率
0.05
tcal
7.7307
---->
生起確率
t-表値
1.9913
---->
判定
0.0000
(両側検定)
平均値に有意な差が認められる
4sでの差の検定 平均
変動(Sx)
分散
止まった
113.6526
711147.6345
13417.8799
止まらなかった
230.9673
14391993.63
28841.6706
自由度
80.0057
危険率
0.05
tcal
6.7047
---->
生起確率
t-表値
1.9901
---->
判定
0.0000
(両側検定)
平均値に有意な差が認められる
5sでの差の検定 平均
変動(Sx)
分散
止まった
111.3388
586602.2593
11067.9672
止まらなかった
206.8665
11562835.43
23172.0149
自由度
79.2470
危険率
0.05
tcal
6.0260
---->
生起確率
t-表値
1.9905
---->
判定
- 79 -
0.0000
(両側検定)
平均値に有意な差が認められる
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
立ち止まった瞬間の値と時間平均の値の差 立ち止まった瞬間(0s)のデータと時間平均のデータについて値が同じで あるかを比較した。0s とそれぞれの影響要素の時間平均の値とを比較した。 (表 3.2-10 ∼ 12) 結果、全ての組み合わせについて差がない、つまり 0s と同じ値の標本であ るという結果になった。 表 3.2-10 グリッドの方向性の値による差の検定 グリッドの方向性の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0s
103.7812
1716027.512
32377.8776
1s
108.6498
1284337.575
24232.7844
自由度
106
危険率
0.05
合成標準偏差
168.2419
tcal
0.1504
---->
生起確率
t-表値
1.9826
---->
判定
0.8808
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッドの方向性の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
103.7812
1716027.512
32377.8776
2s
95.1842
737837.8045
13921.4680
自由度
91.4654
0s
危険率
0.05
tcal
0.2936
---->
生起確率
t-表値
1.9864
---->
判定
0.7697
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッドの方向性の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
103.7812
1716027.512
32377.8776
3s
95.4028
733803.2919
13845.3451
自由度
91.3203
0s
危険率
0.05
tcal
0.2864
---->
生起確率
t-表値
1.9864
---->
判定
0.7752
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッドの方向性の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0s
103.7812
1716027.512
32377.8776
4s
113.6526
711147.6345
13417.8799
自由度
90.4895
危険率
0.05
tcal
0.3390
---->
生起確率
t-表値
1.9867
---->
判定
0.7354
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッドの方向性の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0s
103.7812
1716027.512
32377.8776
5s
111.3388
586602.2593
11067.9672
自由度
85.4436
危険率
0.05
tcal
0.2664
---->
生起確率
t-表値
1.9883
---->
判定
- 80 -
0.7905
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
表 3.2-11 グリッドの方向転換率の値による差の検定 グリッドの方向転換率の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0.3215
18.96237586
0.3578
1s
0.3154
9.886164068
0.1865
自由度
96.4528
0s
危険率
0.05
tcal
0.0607
---->
生起確率
t-表値
1.9850
---->
判定
0.9517
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッドの方向転換率の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0.3215
18.96237586
0.3578
2s
0.2659
5.611075672
0.1059
自由度
81.8407
0s
危険率
0.05
tcal
0.6000
---->
生起確率
t-表値
1.9897
---->
判定
0.5502
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッドの方向転換率の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0.3215
18.96237586
0.3578
3s
0.2787
5.484302472
0.1035
自由度
81.2909
0s
危険率
0.05
tcal
0.4631
---->
生起確率
t-表値
1.9897
---->
判定
0.6445
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッドの方向転換率の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0.3215
18.96237586
0.3578
4s
0.3048
4.630672126
0.0874
自由度
77.4287
0s
危険率
0.05
tcal
0.1829
---->
生起確率
t-表値
1.9913
---->
判定
0.8553
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッドの方向転換率の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0.3215
18.96237586
0.3578
5s
0.2862
4.17536361
0.0788
自由度
75.2610
0s
危険率
0.05
tcal
0.3922
---->
生起確率
t-表値
1.9921
---->
判定
- 81 -
0.6960
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
表 3.2-12 グリッド内の密度の値による差の検定 グリッド内の密度の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0s
0.2528
7.110803331
0.1342
1s
0.2608
6.982163936
0.1317
自由度
106
危険率
0.05
合成標準偏差
0.3646
tcal
0.1143
---->
生起確率
t-表値
1.9826
---->
判定
0.9092
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッド内の密度の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0s
0.2528
7.110803331
0.1342
2s
0.2447
5.425453416
0.1024
自由度
106
危険率
0.05
合成標準偏差
0.3439
tcal
0.1212
---->
生起確率
t-表値
1.9826
---->
判定
0.9037
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッド内の密度の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0s
0.2528
7.110803331
0.1342
3s
0.2528
6.08864165
0.1149
自由度
106
危険率
0.05
合成標準偏差
0.3529
tcal
0.0000
---->
生起確率
t-表値
1.9826
---->
判定
1.0000
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッド内の密度の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0s
0.2528
7.110803331
0.1342
4s
0.2798
5.478310735
0.1034
自由度
106
危険率
0.05
合成標準偏差
0.3446
tcal
0.4083
---->
生起確率
t-表値
1.9826
---->
判定
0.6839
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
グリッド内の密度の値による差の検定 平均
変動(Sx)
分散
0s
0.2528
7.110803331
0.1342
5s
0.2873
5.351816054
0.1010
自由度
106
危険率
0.05
合成標準偏差
0.3429
tcal
0.5229
---->
生起確率
t-表値
1.9826
---->
判定
- 82 -
0.6022
(両側検定) 平均値に差があるとはいえない
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
サンプルごとの値の差と選びやすさ ここで、それぞれのサンプル間の値の違いについて考える。 例としてある標本の値 x について、全体の平均が低い場合(平均値 =50)の 値 x=10 と、平均が高い場合(平均値 =500)の時の値 x=10 では、全体に対 してその点の選びやすさが異なる。この選びやすさを順位として求め、立ち止 まりやすいと判断されるグリッドの中で、実際に立ち止まる場所が 0s の分布 と同じくより低い値を選びやすい状態にあったかを比較することにした。それ ぞれの影響要素について次のような結果が得られた。(表 3.2-13 ∼ 15)
表 3.2-13 方向性によるグリッドの選びやすさの一元分散分析 方向性によるグリッドの選びやすさの一元分散分析 因子名 平均
0sec
1sec
2sec
3sec
4sec
5sec
21.16666667
28.68518519
26.94444444
27.14814815
32.81481481
35.49019608
1143 1306449
1549 2399401
1455 2117025
1466 2149156
1772 3139984
1810 3276100
計(Ti) Ti2 データ数
54
54
54
54
54
51
Ti2/n
24193.5
44433.35185
39204.16667
39799.18519
58147.85185
64237.2549
ΣXi2
78943
100273
78689
78918
99208
100876
因子数
1
1
1
1
1
1
危険率
0.05
分散分析表 要因 級間(因子間) 級内(誤差) 合計
因子A
変動 自由度 6625.824476 266891.6895 273517.514
1sec
5 315 320
2sec
0sec 1sec
分散 分散比 確率 1325.164895 1.564031247 0.16989058 847.2752049
3sec
4sec
5sec
有
有
2sec 3sec 4sec 5sec
- 83 -
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
表 3.2-14 方向転換率によるグリッドの選びやすさの一元分散分析 方向転換率によるグリッドの選びやすさの一元分散分析 因子名 平均
0sec
1sec
2sec
3sec
4sec
5sec
37.40740741
42.59259259
49.85185185
50.94444444
50.75925926
50.96078431
2020 4080400
2300 5290000
2692 7246864
2751 7568001
2741 7513081
2599 6754801
計(Ti) Ti2 データ数
54
54
54
54
54
51
Ti2/n
75562.96296
97962.96296
134201.1852
140148.1667
139131.1296
132447.0784
ΣXi2
104126
132232
173626
185429
186519
173271
因子数
1
1
1
1
1
1
危険率
0.05
分散分析表 要因 級間(因子間)
変動 自由度 8859.688331
5
級内(誤差)
235749.5142
315
合計
244609.2025
320
因子A
1sec
0sec 1sec 2sec 3sec
分散 分散比 確率 1771.937666 2.367599216 0.039506762 748.4111561
2sec
3sec
4sec
5sec
有
有
有
有
4sec 5sec
表 3.2-15 密度によるグリッドの選びやすさの一元分散分析 密度によるグリッドの選びやすさの一元分散分析 因子名 平均
0sec
1sec
2sec
3sec
4sec
5sec
15.88888889
24.07407407
25.27777778
26.14814815
29.83333333
32.84313725
858 736164
1300 1690000
1365 1863225
1412 1993744
1611 2595321
1675 2805625
計(Ti) Ti2 データ数
54
54
54
54
54
51
Ti2/n
13632.66667
31296.2963
34504.16667
36921.18519
48061.5
55012.2549
ΣXi2
39484
70112
69375
74248
85645
91479
因子数
1
1
1
1
1
1
危険率
0.05
分散分析表 要因 級間(因子間) 級内(誤差) 合計
変動 自由度 8883.393704 210914.9303 219798.324
因子A
1sec
2sec
0sec
5 315 320
分散 分散比 確率 1776.678741 2.653457499 0.022849962 669.5712072
3sec
4sec
5sec
有
有
有
1sec 2sec 3sec 4sec 5sec
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
方向性は 3 秒を境に 0s と平均値の異なる選びやすさとなっていることがわ かった。 方向転換率は 1 秒を境に 0s と平均値の異なる選びやすさとなっていること がわかった。 密度は 2 秒を境に 0s と平均値の異なる選びやすさとなっていることがわ かった。 以上の結果は同時にグリッドの割合のグラフの低により近い値であることか ら、流れの影響要素の有効な時間平均を見つけることができた。 流れの影響要素の有効な時間平均
方向性:3 秒 方向転換率:1 秒 密度:2 秒
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
3-2-5(仮説 4,5)に関する分析結果 隙間領域の立ち止まり (仮説 4)の隙間の領域に立ち止まることについて分析した。隙間の領域は 他の歩行者の軌跡を対象領域からくりぬくことで表されるが、0 ∼ 1 秒の歩行 者の軌跡では、全体がひとつながりの領域として扱われてしまい。比較が難し かったため 2 ∼ 4 秒の範囲について分析を行った。 隙間領域の立ち止まり数 立ち止まった場所が隙間領域に乗っていたかそうでないかの割合をサービス 水準ごとに比較した。(図 3.2-69) 割合(%) 100
80 60 40 20 0
2s
3s
4s
サービス水準A
90.47619048
76.19047619
61.9047619
サービス水準B-E
66.66666667
57.57575758
39.39393939
全体
75.92592593
64.81481481
48.14814815
領域の検出時間(秒)
図 3.2-69 各時間間隔ごとの隙間領域上に立ち止まる割合
全体の隙間領域に乗っていた割合は 2 秒では 75.92% と多くの人が隙間領域 に乗っているが、4 秒では 48.14% と大きく減少している。また、サービス水 準別に比較すると、A では 4 秒であっても 61.9% の人が領域上にいるのに対 して、B-E では 2 秒でも 66.6% である。
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
隙間領域、対象領域で対象とするデータ 流動の影響要素の分析から、1 ∼ 3 秒までの周辺の情報を立ち止まりの判断 に利用していることがわかっている。隙間領域についてみると、4 秒間のもの では全体の割合が 50%を切っている、領域の分布が他と異なるなどの傾向が 見られ、これ以降は隙間領域を認識できないと考えられる。2 秒間のものと 3 秒間のものに関しては、どちらも隙間を認識できていると考えられるが、デー タ分析中に 2 秒間の時の隙間領域が 3 秒間のものではなくなってしまい、近 隣の領域を所属領域とする例もあったため、本研究では隙間領域に関するデー タは 2 秒間のものを採用することにする。 サービス水準ごとの隙間領域の面積 隙間領域の判定では、サービス水準 A の場合に全体がひとつながりの領域 として認識・計測されやすく、得られたデータも他のサービス水準と比べて明 らかに差があったため、サービス水準 B ∼ E の場合と分けて求めた。 サービス水準 A の隙間領域の面積 頻度(人)
35 30 25 20 15 頻度(人) 10 5 0 ~5
~10
~15
~20
~25
~30
2
面積(m ) 2sec(領域上)
図 3.2-70 隙間領域の一人当たり面積と度数分布 ( サービス水準 A)
サービス水準 A では明確な傾向は見られなかった。平均は 12.59m2 であっ た。(図 3.2-70) - 87 -
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
サービス水準 B ~ E の隙間領域の面積 隙間領域の面積は領域内で立ち止まったものに関しては次のような結果が得 られた。(図 3.2-71) 頻度(人)
35 30 -1.0036
y = 9.4908x
25
2
R = 0.7143
20 15 頻度(人) 10 5 0 ~2
~4
~6
~8
~10
~12
~14
2
面積(m ) 2sec(領域上)
累乗 (2sec(領域上))
図 3.2-71 隙間領域の一人当たり面積の度数分布 ( サービス水準 B-E)
一人当たりの面積は平均 3.567m2 の広さであった。 (サービス水準 A を含めた全体の場合:一人当たりの面積は平均 7.75m2 と なった。)
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第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
グループ人数別の隙間領域の面積
面積(m2) 16 14 12 10 8 6 4 2 0 1
2
3
5
グループ人数(人) 図 3.2-72 グループ構成人数ごとの一人当たり面積(箱髭グラフ) 表 3.2-16 グループ構成人数ごとの一人当たり面積(サービス水準 B-E) 1人 平均 標準偏差
2人
3人
5人
5.007708333 4.987410552
3.821988636 2.451792828
1.495520833 1.123829245
0.409625
最大値
13.464375
7.7403125
2.896458333
0.409625
最小値
0.015
0.2646875
0.195208333
0.409625
グループ人数が増えると一人当たりの面積は減っていることがわかる。(図 3.2-72)特に 3 人以降で面積が非常に小さくなっている。しかし、このデー タに関しては、隙間領域上であり、かつ、サービス水準 B-E という条件のデー タをグループ構成人数ごとに比較しているため、サンプル数が少ない点も考慮 しなければならない。
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
隙間領域外で立ち止まった人の所属領域の面積 所属領域から離れて立ち止まった場合について面積を求めた。(図 3.2-73)
頻度(人) 35 30 y = 4.9772x-1.276
25
R2 = 0.6957 20 15 頻度(人) 10 5 0 ~2
~4
~6
~8
~10
~12
2
面積(m ) 2sec(領域上)
累乗 (2sec(領域上))
図 3.2-73 所属領域の面積度数分布(サービス水準 B-E)
2 秒の時のサービス水準 B-E では一人当たりの面積 2.09m2 であることがわ かる。これは、十分な隙間領域を確保できない場合に領域から離れて立ち止ま り、自らの縄張り領域によって領域を拡張していると考えられる。所属領域に 通り抜け領域の面積 1.13m2 を単純計算で加算すると 2.09+1.13=3.22m2 と なり、隙間領域内に立ち止まった場合の面積 3.56m2 に近い値となる。 (サービス水準 A を含めた全体の場合:一人当たりの面積は 2 秒で 3.36m2 と領域内で立ち止まった場合の半分以下の広さであることがわかる。)
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 3 章 立ち止まり行動の分析結果
3-2-6(仮説 6)に関する分析結果 隙間領域の境界からの距離 隙間領域に立ち止まらなかった場合でも、隙間領域の近辺に立ち止まってい ることが多く、また、隙間領域内であっても領域の中心に立っているわけでは ないことから、隙間領域の境界からの距離を求めた。(図 3.2-74) 頻度(人) 35
30
25
20
15 頻度(人) 10
5
0 ~-500
~0
~500
~1000 ~1500 ~2000 ~2500 ~3000 ~3500
隙間領域の境界からの距離(mm) 2sec
図 3.2-74 隙間領域の境界からの距離(内側を正の値とする)
全体では平均値 309.84mm となり、成人の平均的な歩幅の半分ほど隙間領 域の境界から内側にとまることが多いことがわかった。
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第 4 章 モデル化
4-1 行動モデルの提案 4-1-1 行動特性と仮説の整合性 行動特性の分析から得られた結果を、それぞれの仮説についてまとめると以 下のようになる。 (仮説 1)対象領域内に登場した際の視野の中で立ち止まる 86.2%の割合で侵入時の視野の中で立ち止まることがわかった。 (仮説 2)流動の多い場所を避ける グリッドの影響範囲内の密度が低い場所を選ぶことがわかった。 流動の方向性では値が小さく、はっきりとした流れがある場所を避け ることがわかった。 (仮説 3)定常的な流動のある場所を避ける 流動の方向転換率では流動の変化の極端に激しい場所を避けることが わかった。 (仮説 4)数秒間人が通らなかった場所に立ち止まる それぞれの影響要素について 1 ∼ 3 秒の時間平均の値が立ち止まり場 所の判断として有効であることがわかった。 (仮説 5)人数に応じた広さの領域を探す 人数によって立ち止まる領域の広さは狭くなる傾向にあり、むしろ自 由に動き回れる1人での立ち止まり行動で広い面積を確保していること がわかった。混雑した状況では平均して 3.567m2 の広さを確保している が明確な傾向は見られなかった。 (仮説 6)隙間として空く領域と流動との境界に立ち止まる 流動とそれに対する隙間状の領域の境界から 300mm 程領域の内側に 立ち止まることがわかった。
- 92 -
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第 4 章 モデル化
4-1-2 モデル式の提案 得られた行動特性から、それぞれの分布をもとにモデル式を求めた。 各行動特性から立ち止まり行動が最も起こりやすいと考えられる条件を 100 としてこれを立ち止まりの評価値 P とした。 なお、隙間領域の面積はサービス水準 A においては差異が見られず、サー ビス水準 B ∼ E の状態についてもそれほど明確な関係があるとは言えなかっ たため、モデル式を求めなかった。 (1) 侵入時の視野内で立ち止まる割合から立ち止まりの評価値 Pv=86.2 を得た。 (2) グリッドの影響範囲内の密度を Gd( 人 /m2)、立ち止まりの評価値 を Pd1 とする。時間平均 2 秒の分布の近似式 y = 63.472x^-1.79(R2 = 0.9909) か ら、Gd>0.25 で Pd1 =(63.472(Gd/4)^-1.79)*1.579 ≒ 1198.538*Gd^-1.79、Gd<=0.25 で Pd1 =100 を得た。 を得た。 (3) 流 動 の 方 向 性 を Fd、 立 ち 止 ま り の 評 価 値 を Pd2 と す る。 時 間 平 均 3 秒 の 分 布 の 近 似 式 y = 63.317x^-1.8294 (R2 = 0.9558) か
ら、Fd > 100 で Pd2 = (63.317(Fd/100)^-1.8294)*1.772 ≒
511427.465*FD^-1.8294、Fd<=0.25 で Pd2 =100 を得た。 (4) 流 動 の 方 向 転 換 率 を Ft、 立 ち 止 ま り の 評 価 値 を Pd3 と す る。 時 間 平 均 1 秒 の 分 布 の 近 似 式 y = 56.422x^-1.7768(R2 = 0.8564) か ら、Ft > 0.25 で Pt1 = (56.422(Ft/4)^-1.7768)*1.575 ≒ 1043.444*Ft^-1.7768、Ft <=0.25 で Pt1 =100 を得た。 (5)隙間領域上で立ち止まる確率は領域の検出時間 2 秒で 0.759 となる が、本研究では領域外で立ち止まる場合も含めてモデル化するため、隙 間領域の境界からの距離の分布を用いた。 隙間領域の境界からの距離の分布は 0 ∼ 300mm 区間が最も多く、山 なりのグラフとなっていたため、区間 0 ∼ 300mm を境にそれぞれの近 似式から、立ち止まりの評価値 Pb1 を求めた。隙間領域の境界からの距 離を l(mm)とする。 - 93 -
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第 4 章 モデル化
区 間 以 下 で は y = 0.4824e^0.7098x(R2 = 0.9319) か ら l<300 で、 Pb1 = (0.4824e^0.7098(l/300))*5.960 ≒ 2.8753*e^0.002366l を得た。 区間以上では y = -10.905Ln(x) + 18.624(R2 = 0.7976)から l>300 で、 Pb1 =(-10.905Ln(l/300) + 18.624)*5.369 ≒ 58.548Ln(l/300) + 100 を得た。 l=300 のとき , Pb1 = 100 である。 以上の式から 各グリッドにおける全体の立ち止まりの評価値 P は Gd>0.25, Fd > 100, Ft > 0.25, l<300 のとき P = a*Pv + b*(1198.538*Gd^-1.79) + c*(511427.465*FD^-1.8294) + d*(1043.444*Ft^-1.7768) + e*(2.8753*e^0.002366l) の様に求められた。 本研究においては a = b = c = d = e = 0.2 として設定した。
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第 4 章 モデル化
4-2 モデルの検証
モデル式からの画像変換 モデル式を分析プログラム p-flo に組み込み、モデルと実測値の違いを検証 した。 p-flo には隙間領域の境界を検出する機能を実装していないため、ビットマッ プ画像の演算で境界を検出し、同様に画像に変換した各式の立ち止まりの評価 値の重ね合わせで、モデル式の値を表現した。各グリッドは、グリッドの間隔 600mm から 600mm の正方形グリッドで表した。 それぞれの式から求められる各グリッドの立ち止まりの評価値を 256 段階 に変換し、RGB 値における G,B 値に設定することで、立ち止まりの評価値を 画像上の赤色の濃淡に置き換えた。さらにそれぞれの画像を 20% ずつ乗算(塗 り重ね)することで、一つの統合画像を得た。(図 4.2-1)なお、視野の確率 点数 Pv はプログラムの都合上今回は割愛した。
図 4.2-1 評価値の統合画像の例
図 4.2-2 立ち止まり位置検出画像の例
ま た、 濃 淡 で は 判 断 が 難 し い 場 合 が あ る の で、 最 も 濃 い 値(RGB 値 =255,64,64)を基準として許容量 100 の色域を抽出した立ち止まり位置の検 出画像を得た。(図 4.2-2)
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第 4 章 モデル化
モデル出力結果 モデルによって最も立ち止まりやすいと判断された場所と実際に立ち止まり が発生した場所が一致する確率は 0.667 となった。 以下にモデルの出力例を示す。(図 4.2-3 ∼ 6) 結果が一致した例
図 4.2-3 サンプル 144657
図 4.2-4 サンプル 210633
結果が食い違った例
図 4.2-5 サンプル 083645
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図 4.2-6 サンプル 210414
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第 5 章 まとめ
5-1 まとめ 5-1-1 まとめと展望 これまで流動と滞留はお互いに関係のある行動という認識をされながらも、 両者を切り離して研究が進められてきた。特に流動の中での立ち止まりは、立 ち止まった人が流動に与える影響はもちろんのこと立ち止まる本人にとっても 負担が大きいという問題点も指摘されていたが、立ち止まる場所は偶然に決ま り、場所の特定ができないために対策も難しいと考えられてきた。 本研究においては立ち止まり行動が流動によって決定されていると考えるこ とで、立ち止まる場所をある程度特定できるようになった。また、周囲の状況 の時間的変化を短時間に限定して取り出すことで、より精度の高い結果を得る ことができた。 今後の展望としては、流動の入力から立ち止まり場所を出力できるように なったことから、より長時間の座標データを使用して時間帯による立ち止まり 場所の偏りを確認することができ、ターミナル駅のような流動の変化の激しい 場所では時間帯ごとのデータを用いることで、歩行者の誘導や、改札口の出入 り口比率などの調整を計ることも考えられる。 流動のシミュレーションシステムへ組み込むことで、これまで人数、面積な どの大まかな数字で計算されて来た混雑の度合いや、歩行者・滞留人の干渉負 荷などを正確に求めることもできるであろう。
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流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
第 5 章 まとめ
5-1-2 今後の課題 本研究においては、歩行者が実際に歩いた軌跡をもとに立ち止まり場所を割 り出している、そのため、検証で用いたデータは本来別の場所のデータを用い る必要があったと思われる。しかし、歩行者の軌跡を取り出す作業は現在のと ころ容易なことではなく、新規計画施設では不可能なため、本研究で得られた 成果を別な場所ですぐに試すことは難しい。行動特性をエージェント型の流動 のシミュレーションシステムへ組み込み、連動させるなどの対応が必要である。 立ち止まり行動によっては、混雑した状況で立ち止まれる場所が少ないため に、小さな隙間領域を自分自身が立ち止まることによって領域を拡張している、 あるいは、あきらめて強引に立ち止まったと思われるものもいくつかあった。 こうした行動についてはより詳細な分析が必要であり、各モデル式の重みづけ の再調整なども行う必要がある。 本研究における立ち止まり行動のモデルでは立ち止まる人があらかじめ決 まっているため、1/100 の確率でいずれかのグリッドで立ち止まることになっ ている。シミュレーションシステムへの応用や他の空間への適用の際は発生理 由等による立ち止まりの発生率などのデータも必要であると考えられる。
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2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
参考文献 論文 空間における行動特性の研究 中村良三
日本建築学会学術講演梗概集
1969
都市における待ち合わせ行動の傾向について 横山尊雄
日本建築学会学術講演梗概集
1969
広場に於ける人の分布ー駅コンコースに於ける場合ー 足立孝
日本建築学会学術講演梗概集
1969
ターミナル圏域の歩行施設計画に関する研究(1)∼(8) 紙野佳人
日本建築学会学術講演梗概集
1970
駅構内における旅客流動シュミレーション 上原考雄
鉄道技術研究報告
1971
梅田ターミナルにおける群集流動シュミレーション 宗本順三
日本建築学会研究報告
1972
建築計画における行動シュミレーションに関する研究 渡辺仁史
学位論文
1975
交差流動の構造ー鉄道駅における旅客の交錯流動に関する研究(1)ー 中祐一郎
日本建築学会論文報告集
1977
群集対向流動の性状(1)∼(4) 上原考雄
日本建築学会学術講演梗概集
1978
鉄道駅における旅客の交錯流動に関する研究 中祐一郎
鉄道技術研究報告
1978
広場における滞留者の行動性状(1)∼(2) 上原考雄
日本建築学会学術講演梗概集
1979
建築空間における歩行のためのシュミレーションモデルの研究(1)∼(4) 岡崎甚幸
日本建築学会論文報告集
1979
多方向群集流動における交錯点の解消モデル(1)∼(2) 古谷誠章
日本建築学会学術講演梗概集
1979
信号待ちする群集の分布性状について 川道麟太郎
日本建築学会学術講演梗概集
1979
シミュレーションモデルを利用した群集流動特性の研究ー混雑時の不快感分布につい てー 忠末裕美
日本建築学会関東支部研究報告書
1983
群集の歩行速度と群集密度との関係に関する研究 西田佳弘
日本建築学会近畿支部研究報告集計画系
1984
行為尺度の研究ー対人認知における行為と距離 高橋鷹志
日本建築学会大会学術講演梗概集
1984
日本建築学会大会学術講演梗概集
1984
対人距離の再考 高橋鷹志
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
群集の歩行速度と群集密度との関係に関する研究 ( 第 2 報 ) 西田佳弘
日本建築学会近畿支部研究報告集計画系
1985
歩行者の経路探索行動と空間特性 安藤恵一郎
日本建築学会学術講演梗概集
1990
大量輸送機関のターミナルにおける人間行動に関する研究 鄭姫敬
日本建築学会学術講演梗概集
1990
鉄道駅における旅客流動に関する研究ーその2待ちの発生ー 大戸広道
日本建築学会学術講演梗概集
1992
「立ち止まり」現象の観察調査ー歩行者空間計画に関する基礎的研究ー 黒田浩史
日本建築学会学術講演梗概集
1992
都市空間における待ち合わせ場所のイメージ構造に関する研究 桜井康雄
日本建築学会学術講演梗概集
1992
鉄道駅における旅客流動に関する研究ーその1ホーム上の流動人員ー 青木俊幸
日本建築学会学術講演梗概集
1992
コンコースにおける停止者の分布状況に関する研究 鄭姫敬
日本建築学会学術講演梗概集
1992
待ち行動を含む群集歩行シミュレ - ションモデルの研究 松下聡
日本建築学会計画系論文集
1992
地下街における広場的空間に関する研究 山田功次
日本建築学会学術講演梗概集
1993
待ち行動を対象とした映像データベースに関する研究 石渡一史
早稲田大学理工学部建築学科卒業論文
1993
複合商業施設における休憩スペースと誘因面積に関する研究 中川純平
早稲田大学理工学部建築学科卒業論文
1993
巣鴨駅構内における高齢者の行動特性に関する研究 林淳蔵
日本建築学会学術講演梗概集
1993
鉄道ターミナルにおける行動特性に関する研究 鄭姫敬
日本建築学会学術講演梗概集
1993
交通弱者の利用を考慮した駅の施設計画に関する研究 切敷香澄
日本建築学会学術講演梗概集
1993
待ち合わせ場所に関する研究ー構成物・位置と認知度の関連性について 織田大助
早稲田大学理工学部建築学科卒業論文
1994
たたずみ・集いの発生機序からみた街路空間の解析に関する研究 久保田敦
日本建築学会学術講演梗概集
1994
待ち合わせにおける行動と場所の認識 吉富良輔
日本建築学会学術講演梗概集
1996
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
群集ベクトルを用いた人間流動の解析 中丸隆二
日本建築学会学術講演梗概集
1997
群集流動の評価指標に関する研究 梅澤力
日本建築学会学術講演梗概集
1997
Small-Urban-Spaces における人の滞留行動と空間構成要素に関する数理的モデルの提 案 今井拓也
日本建築学会学術講演梗概集
1997
「 滞留」を意識した駅前利用者の行動調査 田村佳愛
日本建築学会学術講演梗概集
1998
環境要素としての人の流れや滞留が経路認知に及ぼす影響 大澤昭彦
日本建築学会学術講演梗概集
2000
環境要素の影響力と人間の滞留、移動行動の関係 慎蒼樹
日本建築学会学術講演梗概集
2000
駅舎のコンコース・待合室の流動と滞留に関する研究 鎌田康嗣
日本建築学会学術講演梗概集
2000
駅と地域の関係に関する研究その6 河合秀智
日本建築学会学術講演梗概集
2000
広場状空間における歩行者の流動と静止の相互作用 田中裕基
日本建築学会学術講演梗概集
2000
群衆流動横断時の歩行特性に関する研究 佐野友紀
日本建築学会学術講演梗概集
2000
本厚木駅前広場における歩行者の流動について 山根高志
日本建築学会学術講演梗概集
2000
時刻レイヤーによる交流・滞留と空間構成に関する研究(その 1) 坂井猛
日本建築学会学術講演梗概集
2001
時刻レイヤーによる交流・滞留と空間構成に関する研究(その 2) 古川亜矢子
日本建築学会学術講演梗概集
2001
時刻レイヤーによる交流・滞留の空間構成に関する研究(その 3) 日宇泰之
日本建築学会学術講演梗概集
2001
群集流動における歩行集団の抽出方法と視覚化 佐藤航
日本建築学会学術講演梗概集
2001
群集交差流動における歩行領域確保に関する研究 高柳英明
日本建築学会計画系論文集
2001
歩行者の回避行動シミュレーションモデル 朝田伸剛
日本建築学会学術講演梗概集
2001
街路空間における滞留行動に関する研究 吉野真也
日本建築学会学術講演梗概集
2001
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
エージェントベースモデルを用いた歩行者行動のモデル化(その 1) 壬生田喜貴
日本建築学会学術講演梗概集
2001
エージェントベースモデルを用いた歩行者行動のモデル化(その 2) 桶野俊介
日本建築学会学術講演梗概集
2001
駅構内における滞留行動に関する研究 今井志帆
日本建築学会学術講演梗概集
2002
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
書籍 歩行空間 かくれた次元 エドワード・ホール
みすず書房
1970.1
鹿島出版会
S49.12
鹿島研究所出版会
S47.9.30
鹿島出版会
S54.7
歩行者の空間 J・J・フルーイン 人間の空間 - デザインの行動的研究 R・ソマー 歩行者空間の計画と運営 R・ブランピラ /G・ロンゴ 歩行者空間 建築思潮研究所
建築資料研究社 1987
歩行者革命 W・J・ディー /S・ブライネス 鹿島出版会
S52.10
人と人との快適距離 パーソナル・スペースとは何か 日本放送出版協会
1990.10.
生きものの迷路 空間 - 行動のマチエール アブラアム・A. モール
法政大学出版局
1992.3.
彰国社
1982
人間行動 新建築学体系 11 環境心理 乾正雄・渡辺仁史
人間の行動とコンピュータ : コンピュータ・シミュレーションによる解明 M. アプター
日本能率協会
1972
泉文堂
1983.3.
同文館出版
1970.7.
蒼樹書房
1995.4.
福村出版株式会社
1992.11.
ナカニシヤ出版
2000.4.
システムと行動 松田正一 人間行動のモデル ハーバート /A. サイモン 生物群集の多変量解析 小林四郎 空間移動の心理学 長山泰久 人間行動の心理学 原岡一馬
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
環境行動のデータファイル 高橋鷹志 + チーム EBS
彰国社
2003.9.
彰国社
S50.11.
人間と環境 人間 建築 環境六書編集委員会 建築資料集成 日本建築学会編
丸善株式会社
人間 - 環境系のデザイン 日本建築学会編
彰国社
1997
コロナ社 ,
2001.5.
講談社 ,
2003.4.
朝倉書店 ,
1996.12.
共立出版株式会社
1993.12.
朝倉書店
2000.9.
コロナ社
1999.6.
サイエンス社
1990.4.
流れ、流体 流れの力学 基礎と演習 松岡祥浩 なっとくする流体力学 木田重雄 流れの可視化入門 可視化情報学会 ベクトル解析 平居孝之 視覚情報 視覚情報処理ハンドブック 日本視覚学会 視覚情報の基礎理論 パターン認識問題の源流 飯島泰蔵 視覚情報処理の基礎 乾敏郎
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
JAVA 新 JAVA 言語入門 シニア編 林晴比古
ソフトバンクパブリッシング 2002.3
Eclipse による Java アプリケーション開発 水島和憲 2003.10 統計 すぐわかる統計解析 石村貞夫
東京図書
1993
講談社
2001.6
Excel で簡単統計 小椋将弘
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文
流動の影響を考慮した立ち止まり行動のモデル化に関する研究
おわりに
あーようやくこのページまでたどり着きました。なんと長かったことか。直前になって噴出す る問題の数々に、手を出せずに困り果てること…? 00 回。自分の不勉強さを痛感しました。 この論文はこんな人々に支えられて書かれました。 渡辺仁史先生 3 年間を通じて適切に御指導いただきました。 林田先生 最後にすがる思いの僕に「お前大丈夫?寝た方がいいよ」と体のことまで気遣って くださいました。 木村さん プログラミングの基礎から遥々海外からの iChat まで魅惑のコンピュータの世界を 教えていただきました。 長澤さん 長野調査での 120km/h 御指導以来、いつもピリッと鋭い指摘をしていただきました。 小松さん 1 児の父とは思えない生活で都心居住の快適さを身を以て証明してくださいました。 おかげでここ数日大学に… 研究室で修論励まし合う会の皆様。 渋谷くん お抱え運転手なんて言ったら怒られるだろうなー。でも車の中でのディープトーク は意外とまじめで、みんなを気遣う優しい姿を見つけました。 斉藤くん 最近シュールだよね。シュールすぎてよくわかんないときもあるけどさ。人生に シュールは必須だね。永沢くんがどう思うかは別としてさ。 牛山さん うっしーはいいね。黙々と徹夜作業をしながらも、その合間に 9 時間の長編映画試 写会に申し込む勇気が、やっぱり人とは違うよね。もーわけわかんないなー。 超即戦力歩行者戦隊 アタマクリッカーの皆様。 熊倉くん あなたがいなければこの修論は書けませんでした。本当にありがとう。これからも 歩行者レッドとしてみんなを引っ張っていってください。 片倉くん なんだかんだいっていろいろお仕事してもらいました。仕事の正確さはピカイチで すね。さすが歩行者ブルー。 金山くん Windows のことはとりあえず歩行者ブラックに質問してました。これからもメカ ニックとして基地(白テーブル)を守ってください。 平岡さん 歩行者ピンク。どちらかと言うとテーマが遠いのに手伝ってくれました。 羽生くん なかなか理解不能の言動がはじめは面白いなと思っていました。行き過ぎない程度 に脇を固めてください。歩行者イエロー。 加藤さん 意外と接点がなかったけど、ひょっこり現れてはニコニコしていてなんとなく安心 しました。 その他研究室のみなさん、調査に協力してくれた福西くん、川島くん、突然の調査を快諾いた だいた鉄道総合研究所の青木さん、佐藤さん、山本さん。本当にありがとうございました。 最後にこれまで僕を支えてくれた家族と愛すべき人たちに感謝します。 2004.2.5
2003 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 修士論文