首都圏における自立型高齢者集合住宅のあり方に関する研究 入居者の生活行動から見る施設特性の調査・分析

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2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究 ー入居者の生活行動から見る施設特性の調査・分析ー

A Study on the Collective House           for Healthy Elderlies in a Metropolitan Area   − An Investigation and an Analysis on the Characteristics of Institutions

in Terms of Resident-Activities −

早稲田大学理工学部建築学科渡辺仁史研究室                    1g01d171-1 横尾 貴之


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

はじめに

私の住んでいる家の近所に、昔からかわいがってもらったおばあちゃんがいた。その おばあちゃんは、自分の息子世帯と同居しており、特に体に不自由があるわけでもなく、 朝早く起きて、学校に行く私によく挨拶をしてくれたものだった。しかし、私が大学に 入学したくらいの時に、そのおばあちゃんが突然いなくなってしまった。亡くなってし まったのかと思い、親に理由を聞くと「老人ホームに入ったらしいわよ。」と言う。痴呆 か何かで、息子世帯が面倒を見るのが困難になったからだと思ったが、おばあちゃんは いたって健康だったという。おばあちゃんが老人ホームに入った理由は定かではないが その頃から、高齢者に多少の興味を持ち始めた。日本の急速な高齢化が騒がれている中、 おばあちゃんのような元気な高齢者が老人ホームに入ってどのような生活を営んでいる のかということを、建築の視点から見ていきたいと思ったのがこの研究のきっかけであ る。

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首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

目 次

目 次

はじめに  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・�・・��1   第1章 序論  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・��4     1-1 研究目的     1-2 研究背景      1-2-1 研究背景      1-2-2 既往研究との位置づけ     1-3 研究概要     1-4 用語の定義   第2章 基礎調査  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・�10     2-1 高齢化問題の現状と将来      2-1-1 高齢化の進展の予測      2-1-2 高齢単身・夫婦世帯の割合の予測      2-1-3 高齢単身・夫婦世帯の借家居住の割合の予測      2-1-4 高齢者の住宅に関わる事故死の割合     2-2 高齢者住宅の種類      2-2-1 民間ホームのジャンル別区分      2-2-2 公的ホームのジャンル別区分      2-2-3 医療ホームのジャンル別区分     2-3 高齢者住宅市場の変遷      2-3-1 高齢者住宅の誕生      2-3-2 1987 年から 2001 年にいたる高齢者住宅の歩み      2-3-3 高齢者住宅の今後の展開     2-4 首都圏における民間高齢者住宅の開設動向      2-4-1 供給数の急増      2-4-2 要介護者向けホームの急増      2-4-3 小規模化      2-4-4 新築から既存建物の再利用へ      2-4-5 居室が狭小      2-4-6 首都圏の自立型高齢者集合住宅の入居金   第3章 調査方法  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・�29     3-1 調査施設      3-1-1 調査対象施設      3-1-2 調査施設立地      3-1-3 調査施設概要     3-2 調査方法      3-2-1 調査の流れ   第4章 調査結果  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・�38     4-1 ヒアリング調査結果      4-1-1 平面計画      4-1-2 居室面積と入居金      4-1-3 入居者の構成      4-1-4 施設の良い点・不満な点      4-1-5 立地環境の相違点

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目 次

4-2 施設内部(共用部分)の利用実態      4-2-1 共用部分を利用する時      4-2-2 施設で最も良く利用される共用部分      4-2-3 各共用部分の利用頻度      4-2-4 各共用部分の滞在時間      4-2-5 各共用部分での過ごし方     4-3 施設外部(周辺利用施設)の利用実態      4-3-1 外出する頻度と人数の割合      4-3-2 外出する頻度と年齢との関係      4-3-3 外出する頻度と外出時間      4-3-4 外出先への主な移動手段      4-3-5 徒歩で外出する際の移動時間      4-3-6 徒歩で外出する際の理由      4-3-7 良く利用する周辺施設      4-3-8 周辺利用施設の利用頻度と距離の関係      4-3-9 周辺利用施設別に見る利用頻度と距離の関係      4-3-10�周辺利用施設の満足度と距離の関係      4-3-11�周辺利用施設別に見る満足度と距離の関係   第5章 分析・考察  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・�82     5-1 入居金に対する入居者の理解      5-2 共用部分の利用実態から見る施設特性      5-2-1 食堂に対する他の共用部分の利用人数の割合と施設特性      5-2-2 共用部分における過ごし方と施設特性      5-2-3 共用部分の利用頻度と施設特性      5-2-4 共用部分における考察     5-3 共用部分の利用が外出頻度へ及ぼす影響      5-3-1 共用部分の利用頻度から見る外出頻度       5-3-2 共用部分の位置関係から見る外出頻度      5-3-3 共用部分の利用頻度別に見る周辺利用施設の利用頻度      5-3-4 共用部分の利用と外出頻度における考察     5-4 まとめ     5-5 自立型高齢者集合住宅の在り方と展望      5-5-1 自立型高齢者集合住宅の在り方      5-5-2 今後の展望   おわりに  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・�・・�99   参考文献・参考資料   資料編

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第1章  序 論

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1-1 研究目的

第1章

首都圏の健常な高齢者を対象とした高齢者専用の集合住宅(自立型高齢者集合住宅) における入居者の施設内部および施設外部での行動特性を明らかにすることを研究の目 的とする。  それによって、今後の自立型高齢者集合住宅の施設計画に役立てる。

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1-2 研究背景

第1章

1-2-1 研究背景  わが国では急速な高齢化が進展しており、2015 年には 4 人に 1 人が、2050 年には 3 人 に 1 人が高齢者になると予測されている(2-1-1 高齢化の進展の予測)。  現在、高齢者の 80%以上が健常高齢者であり、元気で社会的にも十分活躍できる方々 が多数いるが、価値観の変化、住宅事情などから子供世帯とは別に独立して居住する高 齢単身・夫婦世帯が増加している(2-1-2 高齢単身・夫婦世帯の割合の予測) 。  また、借家に居住する高齢単身・夫婦世帯は 2015 年には、現在の約2倍の330万世 帯まで増加することが見込まれており(2-1-3 高齢単身・夫婦世帯の借家居住の割合の 予測)、今後は健常高齢者を対象とした住宅の需要が高まりつつある。

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第1章

1-2-2 既往研究との位置づけ  都市に居住する高齢者に関する研究は、医療施設や余暇関連施設の利用特性を調査し た「都市居住高齢者の生活特性と余暇関連施設の利用特性について」、「都市居住高齢者 の生活特性と余暇関連施設の利用特性について」、「都市居住高齢者の余暇関連施設利用 に影響を及ぼす施設特性について」がある。  また、自立(健常)高齢者に関する研究は、自立した生活を営む高齢者を支える地域 施設の在り方を考察した「自立高齢者の地域生活支援施設のあり方に関する研究(多摩 市コミュニティーセンター内の高齢者スペースにおけるケーススタディ)」と、シニア住 宅と軽費老人ホームのおける入居者の転居前後の生活を一連のものとして、その生活状 況と活動状況を調査した「シニア住宅と軽費老人ホームにおける自立高齢者の欲求と入 居後の適応状況に関する研究」がある。  しかし、自立高齢者のみを対象とした集合住宅における入居者の施設外部および施設 内部の利用特性を、施設の特性と結びつけて研究されたものはない。

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1-3 研究概要

第1章

本研究では、首都圏の自立型高齢者集合住宅において、管理者へのヒアリング・各施 設への実地調査・入居者へのアンケート調査を行い、これらの調査から自立型高齢者集 合住宅における入居者の施設内部、外部の行動特性を明らかにするとともに、その特徴 を施設特性と関連付けてとらえる。

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1-4 用語の定義

第1章

◇自立型高齢者集合住宅    健常で介護を全く必要としない高齢者のための集合住宅。自立型であって    も、緊急時の対応や生活支援サービスなどが提供される。  ◇ライフハウス    (株)生活科学運営が運営する自立型高齢者集合住宅。  ◇シニアハウス    (株)生活科学運営が運営する介護を重視した有料老人ホーム。  ◇ライフ&シニアハウス    上記のライフハウスとシニアハウスが 1 つの建物に併設された施設。  ◇共用部分    自立型高齢者集合住宅において、入居者が自由に出入りできる共用スペー    ス。  ◇周辺利用施設    調査したそれぞれの自立型高齢者集合住宅の周辺に分布する入居者が利用    している施設。

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第2章  基礎調査

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2-1 高齢化問題の現状と将来

第2章

2-1-1 高齢化の進展の予測  2015 年には国民の 4 人に 1 人が高齢者に、また 2050 年には 3 人に 1 人が高齢者となり、 世界で最も高齢化が進んだ国となる見通しである。

高齢者全体

万人 3500

3312 2813

3000 2500

2183

2000

2792 2423

1500

1907

1000

健常高齢者

500 0

280

390

520

2000年

2010年

2025年

要介護高齢者

図 2-1-1 健常高齢者の増加

厚生省国立社会保険・人口問題研究所 「日本の将来推計人口」 (平成 9 年 1 月推計)

2-1-2 高齢単身・夫婦世帯の割合の予測  高齢化が急速に進展する中、高齢者がいる世帯の割合が高まり、2015 年には高齢者が いる世帯の割合は全世帯の約 4 割を占めると推計されている。特に、高齢者単身・夫婦 世帯の割合は全世帯の約 2 割に達すると推測されている。

675 (15%)

1542 (33%)

4641万世帯

平成12年

高齢者単身・夫婦世帯 高齢者を含む世帯 1069 (22%)

2030 (41%)

4927万世帯

平成27年

高齢者単身・夫婦世帯 高齢者を含む世帯 0

1000

2000

3000

4000

5000

6000 万世帯

図 2-1-2 高齢者がいる世帯の割合 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

総務省「国勢調査」 、国立社会保険・ 人口問題研究所平成 10 年 10 月推計を もとに建設省推計

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第2章

2-1-3 高齢単身・夫婦世帯の借家居住の割合の予測  借家に居住する高齢単身世帯・夫婦のみ世帯は 2000 年には約 179 万世帯であったが、 2015 年には約 330 万世帯に増加することが見込まれている。 単位:万世帯

2000年

2015年

持 家    借 家    持 家    借 家 全 体 高齢者単身・ 夫婦 その他

2799 (60.3%)

1842 (39.7%)

3010 (60.9%)

1933 (39.1%)

495 (73.4%)

179 (26.6%)

738 (69.1%)

330 (30.9%)

2304 (58.1%)

1663 (41.9%)

2277 (58.6%)

1603 (41.4%)

図 2-1-3 持家借家別世帯推計

総務省「国勢調査」 、国立社会保険・ 人口問題研究所平成 10 年 10 月推計、 住宅政策の経済効果に関する調査研究 報告書をもとに建設省推計

2-1-4 高齢者の住宅に関わる事故死の割合  階段からの墜落や、スリップ、つまずきによる転倒等による住宅に関わる事故死のうち、 65 歳以上の高齢者の占める割合は約 4 分の 3 にものぼり、その数は、高齢者の交通事故 死に匹敵する。

階段及びステップからの転落及びその上での転倒 154

建物または建造物からの転落

281

265 159

65歳未満

65歳以上 スリップ、つまずき及びよろめきによる同一面上での転倒 155

837

煙、火災及び火災への曝露

531

浴槽等での溺死

491

0

624

2482

500

1000

1500

2000

図 2-1-4 家庭での住宅事情に関わる事故死の割合 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

2500

3000

3500

厚生省「平成 10 年人口動態統計」

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2-2 高齢者住宅の種類

第2章

入居対象年齢を概ね 60 歳以上に限定した健常者向け高齢者住宅(図 2-2-a)と、65 歳 以上を対象とした要介護者向け高齢者住宅(図 2-2-b)の 2 つに大別した。養護老人ホー ムと軽費老人ホーム A 型・B 型を除いて、他の高齢者住宅はいずれも最近急増している。  次に、民間の事業者が行っている高齢者住宅を整理する。 2-2-1 民間ホームのジャンル別区分  a. 入居者の状態(ADL)による区分   ただ単に年齢が高齢の人を対象にして入居させたものや、緊急通報のような基礎   サービスだけの高齢者向け優良賃貸住宅など、健康な高齢者のみが生活できる住宅、   専ら要介護者を対象として食事サービスや介護サービスを提供する介護専用型有料   老人ホームまで、ADLにより区分された高齢者住宅のバリエーションは実に豊富   な品揃えとなってきた。  b. 事業主体による区分   事業主体は、民間ホームでは個人から法人組織である有限会社・株式会社・社会   福祉法人・財団法人・宗教法人・学校法人・NPO 法人まで、医療法人を除いたほとん   ど全ての法人が関与している。   医療ホームでは医療法人や社会福祉法人が事業主体となり、福祉ホームは社会福   祉法人か地方公共団体となる。   民間事業者があらゆる分野に進出できるよう、規制を角牢除する事によって、事   業主体の区分は今後必要なくなるものと思われる。 �  c. 事業方式による区分   事業方式は、マンション分譲と同様の高齢者ケア付きマンションなどの区分所有   権方式や、月額家賃を支払うアパート形態の賃貸方式、高額の入居金を複数年で償   却する有料老人ホームのような終身利用権方式などこれまた様々である。   コーポラティブ方式や株主方式、会員方式など新たな方式も出てきているが、今   後さらに思いもよらない方式で事業化が進展するものと予想する。  d. 介護保険事業者か否か   有料老人ホーム(ケア付高齢者住宅を含む)とケアハウスは、特定施設入所者生   活介護の指定事業者になることができる。有料老人ホームの届出を出していないホー  ムは、指定事業者にはなれないことになっている。   痴呆高齢者を対象としたグループホームは、痴呆対応型共同生活介護の指定事業   者となれる。   これらのホームの入居者が要介護認定を受ければ、介護保険から介護報酬が支給   される仕組みである。    特定施設入所者生活介護の指定を受けていないホームであっても、自由に介護サー   ビスを提供することはできる。自費で利用者が負担するか、訪問介護サービスの指   定事業者などから介護サービスを受けられるからである。 � HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第2章

特徴

入居資格

利用料

介護保険

有料老人ホーム

種類

終身利用権方式によるトータルサービス。

概ね60歳以上

入居金平均500万円/改修ホーム

特定施設入所者生活介護

定員・戸数 349カ所

・健康型

健康型は健常者のみ。限定介護型は一定の

自分のことが

入居金平均3000万円/新築ホーム

要支援 71,400円

36,866人

・介護付き終身利用型

介護サービスのみ。建物設備やサービス内

自身でできる

介護一時金300万円~500万円

介護1 164,700円

平成12年7月現在

・限定介護型

容はホームによってまちまち。

管理費75000円/月額が平均的

介護2 184,800円

(介護保険は介護付き

食費 60,000円/月額が平均的

介護3 204,900円

のみ利用可)

だがホームによってまちまち

介護4 225,000円 介護5 245,400円

民 間

1割は利用者負担 高齢者ケア付きマンション 介護型や賃貸型マンションの高齢者バージ

概ね55歳以上

公認価格3,000万~5,000万円

ョン。サービスの内容はホームによってま  入居時点では

管理費 60,000円/月額が平均的

ちまち。介護サービスなしが多い。

食費 60,000円/月額が平均的

健常者

対象外

3,000戸

在宅サービスを利用

サービス内容はホームによって違う ので、価格もまちまち グループリビング

高齢者が身体機能を補うため、お互いの生

年齢制限なし

生活費、家賃、管理費が必要

活を共同化、合理化して共同で住まう居住

対象外

若干

在宅サービスを利用

形態。コレクティブハウジングもこれに近 い形態。 高齢者向け優良賃貸住宅

バリアフリー使用で、緊急時対応サービス

原則60歳以上

の付いた賃貸住宅。所得階層に応じて家賃 自分のことは 補助。平成12年度からLSAを派遣。

月額家賃8万~42万円 敷金家賃の3ヶ月

対象外 在宅サービスを利用

平成12年度計画 15,000戸

自分で出来るか 同居者がいる

シニア住宅

終身年金保険を活用し、年金を家賃に用い るシステム。

シルバーハウジング

原則60歳

一時払い終身年金保険料3,000万円

自分のことは

前後。月額家賃との併用もあり。

自分で出来るか

基礎サービス費等38,000円/月額

同居者がいる

食費 60,000円/月額が平均的

バリアフリー化対応、生活指導相談、安否

60歳以上

住居費 所得によって費用に格差

確認,緊急時対応のLSAを配置した公営住宅 東京都は65歳以上 高齢者生活福祉センター

介護支援施設、居住機能及び交流機能を総 合的に含む施設

60歳以上

利用者負担額は所得に応じて0~

ある程度自立でき 30,000円を負担

対象外 在宅サービスを利用

都市基盤整備公団が 港北・稲毛の2カ所で 供給 243戸

対象外

11807戸

在宅サービスを利用

平成12年3月末

対象外

平成12年度計画

在宅サービスを利用

1,000カ所

ている人 ケア付き高齢者住宅

地方住宅供給公社が行う有料老人ホームと

概ね60歳以上

入居金  3,000万円前後

同様のシステムで、サービスを提供する

自分のことが

介護 時金  300万円前後

特定施設入所者生活介護 要支援 71,400円

茨城、東京、神奈川 兵庫、広島で供給

ホーム

自身でできる

管理費  80,000円前後

介護1 164,700円

1,500戸

食費  60,000円前後

介護2 184,800円 介護3 204,900円

介護4 225,000円

介護5 245,400円

ホ |

1割は利用者負担 保険加入者ホーム

簡易保険、厚生年金加入者向けの

65歳以上

入居金  3,000万円前後

特定施設入所者生活介護

有料老人ホームと同様のシステムで

年金受給者・簡易 介護一時金  300万円前後

要支援 71,400円

サービスを提供するホーム

保険被保険者

管理費  80,000円前後

介護1 164,700円

食費  60,000円前後

介護2 184,800円

256戸

介護3 204,900円 介護4 225,000円 介護5 245,400円 1割は利用者負担 ケアハウス

経費老人ホームの一種

60歳以上

(経費老人ホーム)

食事等の介助が必要で、所得に応じて事務

所得制限なし

生活費、事務費、管理費で70,000

特定施設入所者生活介護

円から120,000円/月額ほど

要支援 71,400円

費が変動

一時金を300万円ほど徴収するホー

介護1 164,700円

バリアフリーの居住機能と食事・入浴・緊

ムもある

介護2 184,800円

急時対応を行う福祉機能を併せ持つ

平成12年度計画 90,000戸

介護3 204,900円 介護4 225,000円 介護5 245,400円 1割は利用者負担

経費老人ホーム

A型 食事の提供あり 給食型

A型

B型 食事の提供なし 自炊型

60歳以上  A型所得制限

B型 養護老人ホーム

A型 60,000円~170,000円前後

対象外

(食費含む)

在宅サービスを利用

B型 40,000円/月額 心身・経済的理由で在宅での生活が困難 生活保護者

65歳以上

所得に応じて0~8万円

A型  15,264人 B型  1,808人 (平成6年10月現在)

対象外 在宅サービスを利用

67,505人 (平成6年10月現在)

図 2-2-a 健康で自立した生活を送る人のための高齢者住宅

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第2章

2-2-2 公的ホームのジャンル別区分   公的ホームは、根拠法に基づいてつくられる。それゆえに、縦割り行政の弊害と   も思われる名残が見受けられる。  a. 老人福祉法に規定するホーム   老人福祉法の規定によって制度化された施設で、従来は措置の一環で、入所者を   行政判断て決めていたものである。   所得や家族状況、本人の健康度などによって入居の可否や経費負担が決定されて   いた。しかし、介護保険の施行によって特別養護者人ホームはケアハウスと同様、    直接契約で入居できるように変わった。�   I. 老人福祉施設    特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホーム(A 型・B 型)・ケアハ     ウスがこれに分類される。   II. 在宅福祉施設    高齢者生活福祉センターは離島や僻地に限定されていたが、その枠組みは外さ     れ、全国的に開設できることとなった。  b. 公営住宅法に規定するホーム   公的賃貸住宅に高齢者の特性を配慮して設計されたもので、安否確認や緊急通報   などの基礎サービスがついた住宅。シルバーハウジング。 �  c. その他   シニア住宅認定制度に基づいたシニア住宅や、高齢者の居住安定の確保に関する   法律に基づく高齢者向け優良賃貸住宅がある。   また、旧郵政省管轄の簡易保険加入者向けホームや旧厚生省社会保険庁管轄の厚   生年金保険加入者ホームもある。 2-2-3 医療ホームのジャンル別区分   果たしてこれも " 住まいの場 " として捉えるべきか否か難しい。治療を目的として  入居(入院)して、治療が完了した時点で退去(退院)するのが本来の目的であるなら、  " 住まいの場 " からは除外すべきものであろう。しかし、実態として高齢者が長期間生  活しているのであるから、住宅として捉え居住空間の充実を図るべきものなのかもし  れない。社会的入院などといわれ、いわば社会の必要悪として存在しているこの分野  を、病院として扱うのか住宅として扱うのか議論する余地は多いが、これこそ住宅の  ジャンルに入れ、その質の充実を図っていくべきであろう。   a. 療養型病床群    長期療養を目的とした病院で、一定の基準で介護職員が配置されている。 �   b. 老人保健施設    脳卒中や骨折などの後遺症のリハビリを目的とした施設で、本来は自宅と病院の   中間的位置に置かれた施設。

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第2章

今では長期入所の高齢者が多い。  このように分類を試みたが、このように分類が難しいことが、高齢者住宅の実態を如 実に表しているともいえる。  縦割り行政から生まれた高齢者住宅と、医療の長期入院から作り出された変則的入院 施設と、そして民間の種種雑多な形態をもつ住宅とが混在しているからである。  今後、これを整理統合していかないと、実際利用する高齢者にとってわかりづらく、 自分に最も合った形態の住宅に、辿りつけない高齢者が多く出現する。

種類

内容

入居資格

利用料

有料老人ホーム

要介護状態となっても介護サービスを受け 介護付き終身利用 介護付き終身利用権型

・介護付き終身利用型

ることの出来るホーム

・介護専用型

一時介護室、特別浴室、機能訓練室、食堂

権型65歳以上 介護専用型

トイレ 居室面積 13m2以上 民

70歳以上

グループホーム

推定約2,000人

入居時の介護一時金に含まれる

要支援 71,400円

管理者

介護専用型

介護1 164,700円

計画策定担当者

1,000万円~3,000万円

介護2 184,800円

生活相談員

月額利用料 20万円~30万円

介護3 204,900円

機能訓練指導員

異なる

(食事や上乗せ横出しサービスなど

介護4 225,000円

介護職員

一切含む)

介護5 245,400円

看護職員

1割は利用者負担

3:1基準

ホ ム

戸数・スタッフ

ホームによって

間 |

介護保険 特定施設入所者生活介護

痴呆高齢者を対象に、5~9人を1単位

痴呆対応型共同生活介護

平成16年提供見込み

(ユニット)として共同で生活するホーム 自立者も自費負担 (食事や上乗せ横出しサービスなど

65歳以上

月額利用料 20万円~30万円

介護1 242,700円

3,200カ所

個室、居間、食堂、厨房、浴室

で入居できるが、 一切含む)

介護2 247,500円

管理者

居室面積 7.34m2以上

主に要介護1以上

介護3 252,300円

介護職員

介護4 257,400円

3:1基準

介護5 252,200円

夜間は1名

1割は利用者負担 長期療養型病棟群

長期療養が必要と認められた要介護者

65歳以上

介護保険1割負担プラス食材費

介護療養型医療施設

介護保険以外は有償

介護1 357,900円

21.3万床

介護保険適用

介護2 371,700円

医師100:3

それ以外は有償

介護3 385,500円

看護婦6:1

介護4 399,300円

介護職員6:1

介護5 413,100円

薬剤師、レントゲン医

1割は利用者負担

師、臨床検査技師

介護保険1割負担プラス食材費

介護老人保健施設

平成16年提供見込み

介護保険以外は有償

病室面積 1人あたり6.4m2以上

要介護1以上は

病床数 4床以下

ホ |

平成16年提供見込み

ケアマネ 老人保健施設

看護医療管理下で機能訓練等が必要な

65歳以上

療養室 1人あたり8m2以上

要介護1以上は

介護1 264,000円

29.7万人分

1室4床以下

介護保険適用

介護2 279,000円

常勤医師1名

機能訓練室、浴室、食堂、談話室

それ以外は有償

介護3 294,000円

入居者:看護職員:

介護4 309,000円

介護職員 50:6:10

介護5 324,000円 1割は利用者負担 特別養護老人ホーム

常時介護が必要な要介護者

65歳以上

介護保険1割負担プラス食材費

介護老人福祉施設

介護保険以外は有償

介護1 238,800円

36万人分 非常勤医師1名

1室定員4人以下

要介護1以上は

1人あたり床面積10.65m2

介護保険適用

介護2 252,000円

食堂、浴室、サービスステーション

それ以外は有償

平成16年提供見込み

介護3 265,500円

50:02:14

介護4 279,000円

栄養士、生活相談員

介護5 292,200円

機能回復訓練指導員

1割は利用者負担

図 2-2-b 介護を必要とする人のための高齢者住宅

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2-3 高齢者住宅市場の変遷

第2章

2-3-1 高齢者住宅の誕生  高齢者の住まいの場として「高齢者住宅」が登場したのは、1970 年代に入ってからで ある。当時は「要介護」という言葉の認識はなく、介護サービスを提供する発想すらな い時代であった。  食事サービスと日常生活サービスの提供が主なサービスで、看護婦がスタッフとして 健康管理に加わり、緊急時対応が取れる安心感が入居者に喜ばれていた。人生の終焉を 迎える場としての存在意義より、むしろ「老後を楽しく過ごす、第 2 の人生のスタート」 の場として、シンボリックな「憧れの高齢者住宅」の時代であった。  健康で自立した高齢者を対象とした住宅で、ここへ入居することは、人生のすごろく のコールを意味し、ある種のステータス性を持っていた。 1980 年代に入ると、これら高齢者住宅の入居者の中に、要介護者がポツリポツリと現れる。 次第に介護サービス付きが高齢者住宅のスタンダードとなり、有料老人ホームの一部で 介護一時金を徴収する傾向が見うけられ、それに伴ってステータス性は徐々に薄れていっ た。  所得の高い層に偏っていた高齢者住宅の入居者は、中間所得者層のニーズに対応でき るようバラエティーに富んだ高齢者住宅が開発供給されていった。

2-3-2 1987 年から 2001 年にいたる高齢者住宅の歩み  ■バブル期に向けてブーム   有料老人ホームをはじめとした高齢者住宅のバブル期以前と、それ以降の歩みをた  どると、大きなうねりの時代であったことがうかがえる。(図 2-3-2-a)  1987 年は、有料老人ホームのブームで幕を開けた。この年、 (社)全国有料老人ホー   ム協会が開催したホーム開設セミナーには、開設を目指している事業者が多数集まっ  た。一方、入居を希望する人たちの相談会も数多く開催され、高齢者は豊かな老後を  求めて有料老人ホームに殺到した。   この年から始まった有料老人ホームブームは、1980 年代にオープンし、入居者の集  まりの悪かったホームを満室にし、さらに新たに開設されたホームをも軒並み 100%の  入居率を達成させた。有料老人ホームを造ればまたたく間に入居者が一杯になる時代  である。   当時は中曽根総理大臣の民間活力路線や、規制緩和に関心が高まった時期であった。  開発規制を受けていた市街化調整区域に第 1 号の有料老人ホームがオープンしたのも  この時期である。有料老人ホ-ムは造れば売れる、入居金も右肩上がりで高騰する一  方で、バブルの火種ができつつあったことが、今にして思えば気付かされる。   後に倒産する「マスターズハウス武蔵野」が、居室部分を分譲方式で、共用部分と  ソフトサービスを会員権方式とする高齢者向け住宅を発表し、また、4 億円の入居金価  格で募集した超高級な「サクラビア成城」、同様に 1 億円から 2 億円の価格を付けた「ラ  イフニクス高井戸」のオープンもこの時期にあたる。  大企業の進出も顕著で、建設・鉄鋼・商社・生保・損保・銀行といった企業が、新規  事業開発や事業の多角化戦略の一環として、有料老人ホーム事業に大挙参入し、この  14 年間で有料老人ホームはおよそ 2.5 倍に増加した。入居率は 70%そこそこで推移し  ていたものが、1991 年にピークに達し 78.7%まで上昇した。(図 2-3-2-b)

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第2章

高齢者住宅の主な動き

とりまく社会動向

1987年 ウェルハイム東京(医薬品会社日本ケミファ子会社(株)ウェルライフ)オープン (昭和62年) 市街化調整区域に初の有料老人ホームローズヴィラ水戸((財)安寿苑)オープン

86/8厚生省設置運営指導指針改正 協会への相談 ホームをつくりたい     85年222件→87年276件 ホームへ入居したい    85年1300件→87年2700件

1988年 分譲・会員制マスターズハウス武蔵野((株)豊栄土地開発)オープン (昭和63年) 佐倉ゆうゆうの里((財)日本老人福祉財団)380戸オープン 最大規模の中銀ライフケア港北(中銀マンシオン(株))443戸オープン 入居金4億円のサクラピア成城(東高ハウス(株))オープン

有料老人ホームブーム(1990年まで) 首都圏で有料老人ホーム着工ラッシュ 「さらば子供達よ」ホーム広告コピーに注目集まる 福祉ビジョン国会提出

1989年 センチュリーライフ大宮公園(長谷工の子会社(株)センチュリーライフ)オープン 有料老人ホーム花盛り―開始前に予約殺到 (平成元年) 東急建設・ミサワ・北拓銀行出資の(株)ライフシステムズが1億円のライフニクス高 大手企業進出盛ん「終身介護」をうたいより豪華に 井戸をオープン 厚生省ゴールドプラン策定 1990年 (平成2年)

新日鉄の子会社(株)サンビナスがサンビナス立川をオープン 伊勢の郷入居者がサービスを不満として提訴、その後閉館 (財)千代田生命健康開発事業団のラピドール御宿オープン 医師が経営するアクティバ放漫経営で倒産 神奈川県住宅供給公社ケア付高齢者住宅ヴィンテージヴィラ横浜入居倍率平均3倍

地価高騰で有料老人ホームのブームが加速 シルバーマンションさらにリッチに 5000万円から1億円に需要 厚生省設置運営指導指針改定 10年間で有料老人ホームが2倍 福祉8法改正

1991年 (平成3年)

三菱地所・明治生命・横浜銀行など菱明ロイヤルライフ(株)を設立しロイヤルライ フ多摩オープン 伊豆ヘルスケアクラブ(ヘルスケア(株))オープン

有料老人ホームブーム下火に、バブルが生んだ豪華な老後 埼玉県有料特別基準―終身介護が条件 有料老人ホームが法的な位置付けに シルバーサービス振興会有料老人ホームにSマーク

1992年 (平成4年) 1993年 (平成5年)

WAC事業第1号奈良ニッセイエデンの園(ニッセイ聖隷事業団)オープン マスターズハウス武蔵野倒産 類似施設グラニー大和(伸こう会)オープン 公団初のシニア住宅ボナージュ横浜1期120戸競争倍率2.7倍 清水建設系(仮)ビバリーコート京成谷津(ビバリージャパン)地元住民の建設反対 運動で中止 ビバリーコート三鷹オープン 広島県住宅供給公社サニーコート広島オープン 入居金4億円の聖路加レジデンス(三井不動産等デベロッパー4社出資会社)1期64戸

分譲マンション不振で、有料老人ホームへの転用打診多く なる 公正取引委員会有料老人ホーム5ヶ所に不当表示の警告 地方自治体老人保健福祉計画策定

1994年 (平成6年)

完売オープン 倒産競売ホームを取得改築サンシティー東川口(ハーフセンチュリーモア)オープン 兵庫県・茨城県住宅供給公社シニア住宅オープン

経営難に喘ぐ有料老人ホーム急増 介護コスト上昇が響き弱小ホームは倒産も 有老協に会員ホームの指導勧告業務・入居者基金設置 厚生省新ゴールドプラン策定

1995年 (平成7年)

三井建設系アメニティーライフ八王子オープン 京都に賃貸型テンダーライフひえいオープン シニア住宅制度民間も設置可

東京都有料老人ホーム等にサービス内容明示義務付け 厚生省有料老人ホーム健全育成及び処遇の向上に関する検 討会苦情処理に第3者機関設置を提言

1996年 (平成8年)

サンシティー神奈川オープン サンライズ岡山倒産入居者生活の場を奪われる 東京都住宅供給公社明日見ライフ南大沢オープン 民間シニア住宅第1号シニアドーミー城北公園オープン

介護保険法案国会審議開始 厚生省事務次官特養開設をめぐる収賄事件

1997年 (平成9年)

シニア住宅制度廃止 有料老人ホーム設置に際し、シルバーマーク・有老協への入会受理用件を削除 ベネッセ グループホーム事業着手 類似施設実態調査 京都ゆうゆうの里(日本老人福祉財団)412戸オープン

シルバーマークへの行政関与の撤廃 ケアプラン作成モデル事業開始 24時間型巡回ホームヘルプ各地で開始 グループホームに補助金

1998年 公団シニア住宅「ボナージュ稲毛海岸」オープン (平成10年) 松下電工「ナイスケア・大和田」オープン 高齢者向け優良賃貸住宅制度開始

ケアマネジャー試験開始、受験講座のブーム加熱 有料老人ホーム等のあり方検討会報告書で類似施設を含め て定義の見直しを提言 介護保険法案可決

1999年 有料老人ホーム介護一時金の調整開始、入居者との交渉が難航するホームも出る (平成11年) 伸こう会民間ホーム初のISO9000取得 類似施設の多くが有料老人ホームに転換 住宅供給公社のシニア住宅9ヶ所を有料老人ホームに認める

介護保険の基準作りと介護報酬に事業者戦々恐々 在宅介護大手事業者が吸収合併に急展開 厚生省が介護報酬の実態調査 介護報酬の仮単価発表 ケアプラン作成ソフトブーム

2000年 ベネッセ伸こう会を買収 (平成12年) グループホーム高入居率を維持 東電・三菱電機・サンヨーなど大手企業が有料老人ホーム事業に参入 神鋼ケアライフの複合型高齢者住宅募集好評 民間高優賃貸住宅供給開始(東京・神奈川・北九州市) サニーライフ君津無届で定員倍増で県が指導

ゴールドプラン21策定 介護報酬の全容固まる 介護保険施行開始 採算悪化の在宅サービス大手事業者が拠点整理し事業規模 を縮小 有料老人ホーム公正取引委員会から7年間で5回目の警告

2001年 オリックス介護住宅事業に進出 (平成13年)

介護保険在宅利用7割と不振、施設は待機者 高齢者の居住の安定確保法公布

図 2-3-2-a 高齢者住宅の変遷

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第2章

年次

昭和・平成

ホーム数

増加施設

定員(人)

入居者(人)

入居率(%)

1987年

62年

148

8

12,354

9,148

74.0%

1988年 1989年 1990年

63年 元年 2年

141 151 173

22 14 18

14,428 15,742 17,420

10,715 12,177 13,515

74.3% 77.4% 77.6%

1991年 1992年 1993年

3年

200

27

19,936

15,680

78.7%

1994年

4年 5年 6年

228 246 250

28 18 4

23,529 25,463 25,563

17,570 18,260 18,651

74.7% 71.7% 73.0%

1995年 1996年 1997年

7年 8年 9年

254 275 286

4 21 11

26,301 20,146 30,148

19,058 20,660 21,316

72.5% 70.9% 70.7%

1998年 1999年 2000年

10年 11年

287 303

1 16

31,142 34,024

21,824 24,182

70.1% 71.1%

12年

349

46

36,855

26,204

71.1%

図 2-3-2-b 有料老人ホーム数と入居者

■ バブル崩壊後に噴出した問題点   しかし、このブームも神奈川県住宅供給公社の「ヴィンテージヴィラ横浜」がオー  プンした 1991 年を境に急降下をたどり、「アクティバ」倒産を機に、ユーザーが有料  老人ホームの程営の危うさを感じ始める。   厚生省(現厚生労働省)は「アクティバ」倒産は、経営者の放漫経営に原因がある  と判断し、新規参入にあたっては、事業者や経営計画を事前にチエックできるよう、   シルバーサービス振興会のシルバーマークを有料老人ホームにも適用する。しかしブー  ムの去ったホーム経営は、いずれも厳しい状況に陥り、入居率はこの時期から低迷が  始まる。シルバーマークを取得したホームの倒産危機も出現し、ホームの長期経営計  画を判断することの難しさが露見する。   1993 年に住宅・都市整備公団(現都市・基盤整備公団)がシニア住宅「ボナージュ横浜」  の募集を行い、平均競争倍率 2.ワ倍と高倍率を付けたが、オープンしてみると入居率  は 50%に達しなかった。   有料老人ホームでは、介護サービスを無料で受けられる契約が、実際は料金を徴収  されたといった苦情が増え、公正取引委員会から 5 ホームが不当表示で警告を受けた  のもこの年である。

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第2章

■評価されるホームの出現   有料老人ホームをはじめとした高齢者住宅は、ユーザーの不信感を払拭できないま  ま、バブル時代に計画したホームがバブル崩壊後続々とオープンする。入居者が集ま  らず経営悪化が噂されるホームが増力ロするこの時期に、入居者の信頼を得たホーム  が現れる。   地方住宅供給公社のケア付き高齢者住宅と、都道府県知事に有料老人ホームの届出  を出さない、小規模で低額の入居金で入ることのできる有料老人ホーム類似施設であ  る。   地方住宅供給公社は都道府県が出指して開設した団体であり、その事業は公共事業  的イメージが強いことから、事業主体の信頼性が高いと評価されていた。都道府県や  住宅金融公庫からの建設補助や長期間にわたる低利融資などによってイニシャルコス  トが低く押さえられた結果、比較的安い入居金で入れるメリットがある。   一方の有料老人ホーム類似施設は、事業主体の信頼性に多少難はあるが、要支援・  要介護状態になってしまった高齢者まで対象を広げ、入居一時金を 200 ~ 500 万円、   月々の支払いを 20 ~ 30 万円に抑え、割安感を前面に出した商品が入居検討者に好評  であった。従来の有料老人ホームが健康な高齢者を対象とし高額で高級なイメージで  あったものから一転して、身体状況は問わず、誰でも、どのような状況でも入居でき  る庶民的なホームとして評価された。   1995 年シニア住宅認定制度が制定され、民間事業者が建設する高齢者住宅事業に対  して初めて、国県市から建設補助などを受けられるシステムができる。しかし有料老  人ホームとの区分け上、食事サービスなどを外部の事業者との提携や斡旋によって提  供することとした。将来日常生活全般にわたっての安心の担保は、制度としての限界  を超えるため、ユーザーの信頼を得ることは難しかった。補助金を出す側の自治体も  財政難で取り組み姿勢は消極的であったが、このシニア住宅の認定制度が依拠する「建  築物性能等認定事業登釜哀規程」が廃止された平成 12 年 9 月までの間に 15 件(うち  民間は 10 件)が認定された。   民間事業者のうち供用開始されたのは 2 社 3 件であった。いずれも建設補助金は受  けていない。   建設省(現国土交通省)は高齢者の住宅は 250 万戸必要との試算から、「高齢者向   け優良賃貸住宅」制度を新たに設け、1998 年からシニア住宅に取って変わり、 「高優   賃」 制度が開始された。しかしここでも財政難から自治体の家賃補助や利子補給など  の補助金が確保できず、供給戸数は微増したに過ぎない。  ■介護保険施行開始   2000 年 4 月介護保険がスタートした。高齢者住宅のうち有料老人ホームとケアハウ  スは「特定施設入所者生活介護」、グループホームは「痴呆対応型共同生活介護」とし  て介護保険居宅サービスの指定対象となる。   介護一時金を徴収している有料老人ホームは、介護保険との重複部分を入居者に返  還しなければならない。介護一時金のうち重複部分はいくらが妥当か、ホームと入居  者の間で話し合いが幾度となく持たれてきたが、すっきりと合意したホームは少ない。  もともと、介護一時金の算定に疑問を抱く入居者も多く、ホームの信頼感があらため  て問われる場でもあった。   神奈川県内に 70 棟とも言われた有料老人ホーム類似施設は、厚生省にとって不快   の種であった。法の網をくぐり、有料老人ホームではないと主張するホームに対して、  介護保険施行を絶好の機会として指導強化に努めてきた結果、類似施設の大手事業者  の多くが有料老人ホームの届出を提出した。 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第2章

■多様なニーズに対応する高齢者住宅   ブームが始まってからのこの 14 年間、倒産も数多くあったが、ユーザーの志向は大�� ��きく変わりつつも高齢者住宅そのものから離反してはいない。かえっていろいろなニー ��ズに合った、多様な形態の高齢者住宅を待ち望んでいるように感じられる。   規制緩和がよりー層進められている今日、この 14 年間の歩みを冷静に分析し、新た ��な高齢者住宅の開発に向けて、よりー層の努力が関係者に求められている。   この時期にこそ、ユーザーの信任を得る商品開発と経営内容をガラス張りにするルー  ル作りを確立しながら、不足している高齢者住宅の供給と、アイテムを増やし多様化  に対応できるような努力が事業者に求められている。

2-3-3 高齢者住宅の今後の展開  ■高齢者住宅の絶対量の不足   2001 年 4 月現在、65 歳以上の高齢者は 2254 万人となり全人口に対して 17.7%、5.6  人に 1 人が高齢者となった。このうち要介護高齢者は 280 万人と予測されている。   全国の世帯数は 4554 万世帯、うち高齢者のみ世帯は 624 万世帯(13.7%)で、その  中の 307 万世帯は高齢者が一人で生活している世帯である。前年より 37 万世帯が増加  したこととなる。(2000 年国民生活調査)   高齢者人口の増加に対して高齢者の住まいの場は、特別養護老人ホーム 36 万人、老  人保健施設 29.7 万人、療養型病床群 19 万人で要介護者向け施設の合計 84.7 万人分(高  齢者比率 3.7%)。   ケアハウス 10.5 万人、養護老人ホーム等 6.5 万人、シルバーハウジング 1.5 万人、  有料老人ホーム 3.5 万人、グループホーム 2.5 万人、高齢者生活福祉センター 3 万人  で、健常な高齢者も含めた住居の合計は 27.5 万人分(1.2%)。高齢者住宅全ての合計  では 112.2 万人分、4.9%に過ぎない。しかもこの数値はゴールドプラン 21 の目標値  も含んでおり、現実の供給実数はさらに下回っている。   ヨ一口、ソパ諸国の高齢者住宅の供給は、高齢者に対しておよそ 10%と言われている。   90 歳以上の高齢者の半数が自宅に住み続けるスウェーデンでも 9%強の高齢者住宅  がある。日本の 4.9%はそのおよそ半分にあたる。現在供給されている戸数と同等の数、  100 万~ 120 万の戸数が不足している状態といえる。   不足する高齢者住宅に対してどのような商品開発を行い供給していくか、大きな課  題が 21 世紀に持ち越されたことになる。  ■民間の更なる開発努力に期待   有料老人ホームは、入居金の高額化が原因で入居率が低迷しているホームも見受け  られる。建設費の 4 分の 3 が補助金として出るケアハウスは、民営化がささやかれ始  めたが、事業主体が社会福祉法人に限られていて、サービスが画一的で硬直化してい  るといわれている。   有料老人ホームやケアハウスだけでは高齢者住宅の不足をカバーすることができな  い現状である。   このような状況で、低額で、家族的介護を売り物にし、しかも ADL を問わない高齢  者住宅(従来、類似施設といわれていたホームで、後に有料老人ホームの届出をする)  が供給され始め、その入居率は極めて高い。フレキシブルな発想で、新たな高齢者住  宅を開発すべく、民間事業者への期待は大きい。 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第2章

■ケア付き住宅とケア無し住宅   介護サービスをホーム内スタッフが提供する有料老人ホームと、生活サービスの大  半を紹介やアウトソーシングしたシルバーハウジングや高優賃住宅の 2 極分化が、今  後よりー層明確化するものと思われる。   多くの有料老人ホームやケア付き高齢者住宅では、入居すれば将来の要介護に対す  る不安が解消されるよう、ホームスタッフが日常生活全般にわたってお世話してくれ  る。そのために、入居者の既往症や趣味、嗜好品から家族構成、緊急連絡先、さらに  財産状況や年金の受取額、葬儀の取り扱いまでこと細かに、本人の希望に添ってサー  ビスを提供している。   この費用は、前払い一時金やその都度払いで精算されるが、介護保険制度で、特定  施設入所者生活介護や痴呆対応型共同生活介護の指定サービス事業者になれば、介護  費用の 9 割は介護保険で直接給付され利用者の負担は軽くてすむ。   従来、費用がかかるとはいえ、入居すれば将来の様々な問題を一挙に解決できるも  のとして、ケア付き住宅が支持されてきた。   一方、シルバーハウジングや高優賃住宅では、専用のホームスタ、ソフはいないので、  入居者個々に対してサービスの提供はしていない。緊急時対応と約 30 戸に 1 人配置さ  れる LSA(ライフサポートアドバイザー)による安否確認が基礎サービスとしてある程  度だ。   日常生活とりわけ介護や食事サービスは外部の事業者を斡旋したり、取次ぎによっ  て賄っている。入居者はバリアフリーが施された住宅を賃借りすることが第一義であ  り、入居しただけでは日常生活全般にわたる将来不安の解消にはならない。がしかし、  自主自立した考えのもと、笠域の介護保検サービスや自立援助サービスを有効に利用  することによって、また自身の判断でサービスを選択し、その都悪妻用を支払うこと  により、ケア付き住宅より安価な費用で生活が可能となる。   自宅に住み続ける高齢者が 9 割、高齢者住宅に移り住むものは 1 割と推測されている。  高齢者住宅はこのように 2 極分化の仕分けがなされていくものと思われる。概ね介護  保険施行後 5 年~ 10 年間は、介護保検サービスヘの量や質への不満からケア付き高齢  者住宅へのニーズが高まり、その後介護保険制度が安定してきて以降は、ケア無し高  齢者住宅の供給が増加するものと思われる。不足する 100 万戸強の供給は高齢者住宅  業界にとっては大きなインパクトになるものと考えられる。

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2-4  首都圏における民間高齢者住宅の開設動向

第2章

首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の民間高齢者住宅は、2002 年 1 月の時 点は 287 ホーム 20,318 戸が供給されている。  定員数はホームによって表示がまちまちなので正確な数はつかめないが、2 人入居や介 護居室の複数利用などを考慮すると 28,000 人が入居できるキャパシティーがあると推察 される。平均入居率は 71%に達していると見込まれるので、約 2 万人が民間高齢者住宅 で生活しているものと推計できる。  首都圏の高齢者人口は 2000 年 470 万人であることから、民間高齢者住宅は 0.4%のシェ アーを占めることになる。特別養護老人ホームや老人保健施設ほどの数には達していな いが、民間高齢者住宅の占める割合は、社会に大きく影響を与えるまでに大きな市場と なってきた。1990 年から 2001 年に至る約 10 年間の、首都圏の民間高齢者住宅の開設状 況分析から、高齢者住宅のニーズがどのように変化してきたかをみる。

2-4-1 供給数の急増  '00 年から始まった介護保険制度と時期を同じくして、民間高齢者住宅の開設が急増し ていることが分かる。(図 2-4-1)  '90 年以前に開設された高齢者住宅は、入居時には健常な人を入居対象とし、その人が 将来要介護状態になったら介護サービスを提供し居住を継続保証するもので、終身利用 権方式が主流であった。通常一般型や介護併設型と呼ばれているものである。その対価 は 5000 万円から 7000 万円、中には 1 億円を超えるものもあり高額なホームが主流を占 めていた。概ねバブル崩壊時期 ('91 年)までの民間高齢者住宅の入居対象は、高額所 得者や資産家であり、しかも健常者を対象としたものが中心であった。  この時期、要介護者を対象とした介護専用型の供給は 2 割に満たなかった。介護を目 的としたナーシングホーム系の高齢者住宅は極めて僅かしか供給されておらず、要介護 者を自宅で家族が介護しているケースが多かった。この僅かな介護専用型高齢者住宅も 入居金は 2000 万円から 3000 万円で、やはり入居対象は高額所得者や資産家であった。  '91 年から '95 年にかけて年間開設数が 10 ホーム前後と供給が低迷するが、介護保険 制度制定の動きが出始めた '98 年頃から、入居時に自立や要支援・要介護などの ADL を 一切問わないまま入居を認めるホームが増え始め供給数が急増する。  行政判断で介護サービスが給付される従来の措置制度から、自らがサービスを選択す る契約制度への切り替えが、高齢者住宅の供給を伸ばしたと考えている。すなわち身体的・ 経済的に生活の維持が困難と判定されれば入所できた従来の制度から、要介護状態になっ た時、自分で介護サービスをどのように、またどれだけ受けるかを決定し、費用負担も しなければならなくなったからである。自宅で生活を継続しながら介護を受けるか、施 設に移り住んで介護を受けるかの、いずれかの選択を迫られることとなったのである。 自宅で継続して居住し満足とは言えない介護保険サービスに頼るか、自由を拘束される 特別養護老人ホームなどの施設に入所するか、このいずれにも共感できない人々が自由 な生活と一定の介護サービスが保証され、しかも安価な高齢者住宅への入居を検討し始 めた結果が、高齢者住宅の供給を推し進めることになったと考えられる。

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第2章

3,000

2,691 戸数

2,500 2,000

ホーム数

50 1,274

1,000

0

53

1,566

1,500

500

2,849 60

19

301 8

791

881

10

10

1,025

583

277 7

909

9

13

24

1,103 22

50 40 30 20 10

9

0

90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年

図 2-4-1 首都圏における民間高齢者住宅の供給数

2-4-2 要介護者向けホームの急増  ホームのタイプを、入居者の身体状況区分により図 2-4-2-a のように分類した。この 分類のもと、民間高齢者住宅の開設経過をたどる。(図 2-4-2-b)  '90 年以前は、圧倒的に自立者を対象にした一般型が多く供給されていた。また、介護 型を併設したホームも多くみられ、この 2 つのタイプが 8 割を占めている。その後も供 給数は毎年 1 ケタ台を低迷するが、この傾向は続く。  '98 年から介護型が、'00 年からは ALL 型が急増する。'00 年介護保険制度の施行により、 それまで要介護者は自宅か施設かの選択だったが、低額の入居金で入れる民間高齢者住 宅がその選択用支の一つに加えられた。  '02 年 1 月現在、一般型 79 ホーム・介護型 89 ホーム・併設型 42 ホーム・ALL 型 73 ホー ムが開設されている。一般型及び併設型の合計は全ホームの 4 割程度と、シェアーは急 激に落ちている。それに対して入居時点から介護サービスが受けられる介護型と ALL 型 は急増している。  介護保険が開始されることにより、自宅で生活を継続しながら介護サービスが受けら れると予測し、介護保険制度に期待した高齢者は多かった。要介護者が民間高齢者住宅 へ移り住むケースが増えたのは、在宅サービスの質及び量の不足から、介護保険制度に 全てを頼ることはできないと高齢者自身が判断したからではないだろうか。 入居時には身の回りのことが自身で出来る状態 ①一般型

であり、将来入居者の必要に応じて介護サービ

②介護型

スが提供されるホーム 入居時には要支援または要介護状態である人が 対象となるホーム

③併設型

①及び②の両方を併設していて、それぞれが直接 入居者を募集するホーム

④ALL型

自立・要支援・要介護といった身体状況は一切 問わない。しかし、感染症患者は入居できない。 図 2-4-2-a 民間高齢者住宅の身体状況に基づく区分

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第2章

30 28

25 20

17

15 10

18

9

5

4 2 1

併設型 9

7

2 1

3 2 1

5 4 1

1

6 5 3 2 1

2 1

7

7

3

3

5 3 1

一般型

介護型

14

7

0

ALL型

20

8 5

5 2

90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年

図 2-4-2-b 高齢者住宅タイプ別の年間開設状況

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第2章

2-4-3 小規模化  一棟あたりの住戸数をみてみると、'80 年代までに開設されたホームの平均は 125 戸  とその規模は大きい(図 2-4-3)。  10 年以上前に開設された高齢者住宅の多くが、アメリカのリタイアメントコミュニ ティーやインディペンデントリビングを模して作られてきたからだ。大規模で豪華そし て高額なホームであって、人生の功なり名を遂げた人が入居するといったシンボリック なものであった。ここでの生活は「人生すごろく」の上がりを意味している。プール・ ダンスホール・シアターなどを完備したホームも珍しくなく、300 戸 400 戸とその威容を 競い合って建 設されてきた。  しかし、バブル崩壊と時を同じくするように、規模の縮小化や既存建物を改修して再 利用するケースが多くなり、自ずと入居金も低下してくる。1 ホーム当たりの平均住戸数 は減少傾向をたどり、'98 年以降は 50 戸台までに規模が縮小されてきた。  '93 年にはビバリーコート三鷹(172 戸 20 室)、- 94 年には中講ライフケア希望が  丘(161 戸)、'95 年にはゆうらいふ横浜(126 戸)・ライフコミューン青葉台(106 戸)・ アメニティーライフ八王子(156 戸 9 室)・ジョイステージ八王子(旧サンスーシー八王 子 104 戸 54 室)、- 96 年にはサンシティー神奈川(347 戸)などの大型ホームがバブル 崩壊以降も依然として開設されている。しかしこれらのほとんどはバブル期に事 業計 画が立てられたものである。この後 150 戸を越える大型ホームの開発は影をひそめるこ ととなる。  イギリスのシェルタードハウジングやスウェーデンのサービスハウスといったヨー ロッパ型の中・小規模で既存建物の再利用が中心となり、併せて提供されるサービスも 小さな単位での介護サービスが中心で、家庭的な雰囲気をもったホームが多くなってく る。

140 125 120

114

100 88 82

79

80

70

65

60

1ホーム当たり平均戸数 53

40

38

40

91年

92年

50

54

54

00年

01年

20

0 ~90年

90年

93年

94年

95年

96年

97年

98年

99年

図 2-4-3 新規開設高齢者住宅の平均戸数

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第2章 2-4-4 新築から既存建物の再利用へ  有料老人ホームという言葉から受ける印象は、豪華で高額な入居金を支払う大規模な マンション風の住宅を連想する。しかも新築は当然で既存建物を改修したホームのイメー ジなど全く無かったと言っていい。バブル期までに開設や計画された有料老人ホームの ほとんどが新築である。しかしこの傾向は '97 年を境に既存建物を再利用する高齢者住 宅が新築を上回り始める。(図 2-4-4)  '98 年からわずか 4 年間の供給数は 104 ホームで、これは全供給数の 4 割に相当する。 社宅や寮を転用したもので、食堂や浴室はそのまま利用されている。規模にもよるが通 常 1 ホームあたりの改修費用は 5 千万円から 1 億円が費やされる。エレベーター工事と デイルームの新設、手すりの取付けが主で、段差の角牢消などバリアフリーは決して十 分とはいえないものもある。1000 m2以上の老人福祉施設に義務付けられているスプリン クラーなどの消防設備は既存建物の改修ということで、必ずしも開設時に取り付けられ ていない。  昨年末、「ライフコミューン上大岡」で入居者の部屋からタバコの火の消し忘れが原因 でぼや騒ぎがあった。消防の指導でスプリンクラーは '07 年までに設置する約束になっ ており未設備だった。この建物は建設会社のフジタが独身寮として利用していたもので、 高齢者住宅として建物は現代風で好評であったが、用途に適した十分な改修がなされて いたわけではないことが判明した事故であった。

60

50

40

4

34

40

30

20

既存 新築

40

1 16

10

18

1

2

0

4

6

7

6

91年

92年

93年

3 9

90年

94年

16

6

8

7 2

8

8

95年

96年

97年

98年

99年

0 ~90年

10

5

00年

13

01年

図 2-4-4 高齢者住宅新築と既存の割合

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第2章

2-4-5 居室が狭小  独身寮の 1 室の面積は 6 畳一問の間取りが多く、10 ~ 15 m2程度しかない。居室内には 洗面やトイレ、お風呂の設備が整っていないホームが多い。まさに寝室と食事を提供す る賄い付き下宿の高齢者版である。家具を持ち込もうにもスペースが狭く使い慣れた家 具は持ち込めないため、自宅の延長線上にある住まいとはいえない。施設に移り住むと いった印象が拭えないのはこのためである。  しかしイニシャルコストを押さえているので入居金は必然的に安くなり、500 万円前後 が主流となっており、中堅所得者層にとっては何とか払える範囲内に納まっている。  既存建物を再利用するプラス効果とマイナス効果があり、現在はプラス効果(安さ) が勝っていると利用者が判断しているように思われるが、狭い居室は家族の来訪を拒み、 介護サービスの質のチェックを妨げ、何よりも本人の安定した生活を困難にさせる。望 ましい居室環境からほど遠い現状はいつまでも支持されるとは思えない。  最低居住面積(現状 13 m2)の引き上げを設置運営標準指針に盛り込むべきである。最 低でも 18 m2ないし 20 m2が確保されれば、水回りの設置や家族の同宿が可能となるので、 このレベルの基準確保を厚生労働省に期待したい。ちなみにスウェーデンのグループリ ビングは 35 m2、デンマークの高齢者住宅は共用スペースを含んで 65 m2が基準となって いる。

入居金(円/m2)

2-4-6 首都圏の自立型高齢者住宅の入居金  2-4 において首都圏の高齢者住宅の動向を見て来たが、ここで、首都圏の自立型高齢者 集合住宅の入居金と周辺マンションの家賃とを比較してみる。入居金は各施設の償却で 除して月ベースに変換した。  このグラフをみると、高齢者住宅の価格設定はある程度物価に影響されていることが わかるが、いずれにしても、入居者にとって高額であることに変わりはない。

16000 14000 12000 10000 8000 6000

4000 入居金(円/m2) 2000 0 0

1000

2000

3000

4000

周辺マンションの家賃(円/m2)

y = 3.4268x - 683.44 R2 = 0.4364

図 2-4-6 首都圏の自立型高齢者集合住宅の入居金と周辺マンションの家賃相場                     (入居金は償却期間で除したもの)

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第3章  調査方法

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3-1 調査施設

第3章

3-1-1 調査対象施設  株式会社生活科学運営が企画・運営する首都圏の自立型高齢者集合住宅(ライフハウス) のうち一般居室(自立高齢者の居室)が多い下記の5施設を調査対象とする。   ■ライフ&シニアハウス日暮里   ■ライフハウス所沢   ■ライフハウス浦和   ■ライフ&シニアハウス南浦和   ■ライフ&シニアハウス港北2

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第3章

3-1-2 調査施設立地  ■ライフ&シニアハウス日暮里

□病院  日暮里上宮病院  下谷病院  佐藤医院  同仁病院  土田病院  三ノ輪病院  浅草寺病院  浅草国際病院  聖愛病院  浅草病院  安倍医院  江原病院  関川総合病院  名倉病院

岡田病院  高橋外科産婦人科  飯土用内科

デイリーヤマサキ  サンクス

□図書館  日暮里図書館  国際こども図書館  根岸図書館  荒川図書館

□スーパー  イトーヨーカドー  マルエツ  ライフ  セイフー  エヌマート

□コンビニ  セブンイレブン  ミニストップ  ローソン  ファミリーマート

□公園  荒川公園  入谷南公園  金竜公園  日暮里南公園

荒川自然公園  東盛公園  上野公園 (上野動物園/   上野恩賜公園) □その他  荒川区役所  浅草寺  国立西洋美術館  国立科学博物館  東京国立美術館

R=1500m

病院 図書館 コンビニ スーパー 公園 その他

※図右下の R=1500 mは図中の緑色の円の半径を示す。 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第3章

■ライフハウス所沢

□病院  所沢中央病院  所沢胃腸病院  緒長病院  防衛医大付属病院  市民医療センター  双葉病院  国立身障者   リハビリセンター □図書館  所沢図書館  所沢市役所図書館

□コンビニ  ファミリーマート  サンクス  セブンイレブン  デイリーヤマザキ □スーパー  ダイエー  西友  ドイト  マルチョウ  オザム  マルイチ  コープ

□公園  所沢航空記念公園  北の台公園 □その他  市民文化センター  老人福祉センター

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R=1500m

病院 図書館 コンビニ スーパー 公園 その他

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第3章

■ライフハウス浦和

□病院  小国病院  三愛病院  林病院  秋葉病院

□スーパー  ダイエー  エンゼル  マルエツ  ヨーカドー

□コンビニ  ファミリーマート  サンクス  ローソン  セブンイレブン  ampm  ラブリーマート

□公園  別所沼公園  荒川公園

R=1500m

病院 図書館 コンビニ スーパー 公園 その他

□その他  公民館  市民プール

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第3章

■ライフ&シニアハウス南浦和

□病院  青木医院  秋葉病院  わかくさ病院  秋葉病院  川久保病院  浅野胃腸病院

サンクス  ローソン  セブンイレブン  ミニストップ

□その他  公会堂  公民館

□スーパー  丸広  マルエツ □図書館  西友  さいたま市  ライフ    文化センター  ヨーカドー  クィーンズ □コンビニ  シヅオカヤ  ファミリーマート

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R=1500m

病院 図書館 コンビニ スーパー 公園 その他

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第3章

■ライフ&シニアハウス港北2

□病院  昭和大   横浜市北部病院  河野歯科  片山クリニック □コンビニ  サンクス  デイリーヤマザキ  ローソン □スーパー  オリンピック  あいたい  モザイクモール港北

□公園  茅ヶ崎公園  せせらぎ公園  大原みねみち公園  葛ヶ谷公園  東方公園  鴨池公園  都築中央公園  山崎公園  八所谷戸公園

R=1500m

病院 図書館 コンビニ スーパー 公園 その他

□その他  独逸学園

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第3章

3-1-3 調査施設概要

ライフ&シニア �ハウス日暮里 立地条件

日暮里駅から徒歩15分

設立年月

2003年6月

延床面積

7,078.50m

居室面積

25.52m2~63.28m2�

居室数

共用施設

テナント

2

ライフハウス所沢

ライフハウス浦和

所沢駅から徒歩約10分

武蔵浦和駅から徒歩約7分

1994年12月

1993年4月

2

5,806.33m

2

4,300.17m

21.75m2�~62.68m2�

55.90m2�~99.00m2�

一般居室 41室 介護居室 44室

一般居室 41室

一般居室 58室

食堂 多目的室 食堂(機能訓練室併用) 談話室 一般浴室(男女) 特別浴室 介護浴室 健康相談室 サークル室 トランクルーム 駐車場 駐輪場

食堂 集会室 大浴場(サウナ付) 一時介護室 フロント トランクルーム 駐車場 駐輪場

保育園 クリニック

クリニック 自然食品店

食堂 談話室 フロント 一時介護室 (ライフハウス棟内) 大浴場(サウナ付き) 多目的室 (クラブハウス棟内) 駐車場 駐輪場

クリニック

ライフ&シニア �ハウス南浦和

ライフ&シニア �ハウス港北2

南浦和駅から3分

仲町台駅から15分

2001年9月 2

2003年11月 2

4,491.32m

5,551.50m

32.61m2�~83.86m2�

31.68m2�~84.94m2�

一般居室 65室 介護居室 15室

一般居室 41室 介護居室 36室

食堂兼多目的室 食堂(機能訓練室併用) 一般浴室 介護浴室 健康相談室

食堂兼多目的室 食堂(機能訓練室併用) 多目的室 喫茶ラウンジ 談話室 談話コーナー サークル室 一般浴室 介護浴室 健康相談室 駐輪場

クリニック

クリニック

※各施設にテナントとして入っているクリニックは入居者への往診が可能

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3-2 調査方法

第3章

3-2-1 調査の流れ(フローチャート)

基礎調査 文献調査

高齢者住宅に関する 既往研究の調査

首都圏の自立型高齢者集合住宅の 入居金と周辺マンション家賃との比較

自立型高齢者高齢者住宅の概要把握 ヒアリング調査

入居者の構成

施設の特徴

アンケート調査

入居者の施設内部(共用部分) の利用実態

入居者の施設外部(周辺利用施設) の利用実態

分析

入居者の施設内部(共用部分) の行動特性分析

入居者の施設外部(周辺利用施設) の行動特性分析

考察 今後の展望

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第4章  調査結果

※アンケート調査概要  ライフハウス浦和  期間:9 月 10 日(金)~ 9 月 16 日(木)  回収枚数:38 枚  ライフ&シニアハウス南浦和  期間:9 月 22 日(水)~ 9 月 30 日(木)  回収枚数:43 枚 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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4-1 ヒアリング調査結果

第4章

4-1-1 平面計画  ■ライフ&シニアハウス日暮里    �12 階 ���一般浴室   7 階~ 11 階 ライフハウス(自立型)   �4 階~ 6 階 シニアハウス(介護型)   �2 階~ 3 階 一般居住(賃貸)     1 階  �共用フロア(食堂・多目的室)         /テナント

メイン エントランス

食堂

クリニック

厨房

E.V. フロント エントランス

エントランスホール

保育園

多目的室

1 階平面図

エントランスが 2 つあることが特徴である。   どちらのエントランスから入っても居室までのエレベーターに乗るまでにそれ   ぞれ、食堂、エントランスホールといった共用部分を通る動線になっている。   また、入居者が外出する際にフロントからすべて見えるようになっている。

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第4章

■ライフハウス所沢   4 階~ 12 階 居室(自立型)     3 階  �居室・一般浴室     2 階  �居室・多目的室(集会室)     1 階  �共用フロア         (食堂・エントランスホール)         �/テナント

集会室

吹抜

居室

2 階平面図

E.V. フロント

食堂

エントランス ホール

クリニック

エントランス

1 階平面図

入居者が外出する際に、フロントから見えるのは日暮里、所沢、浦和、港北に   共通している。   所沢の大きな特徴は、吹き抜けになっているエントランスホールである。

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第4章

■ライフハウス浦和   2 階~ 7 階 居室(自立型)     1 階  居室(自立型)        ��共用フロア(食堂・多目的室)         /テナント

クリニック

多目的室

食堂 居室 居室 居室 居室 E.V. エントランス エントランスホール

居室 居室

1 階平面図

食堂と多目的室が隣接している。   エントランスホールとその他の共用部分(食堂・多目的室)との距離がだいぶ ����離れている。

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第4章

■ライフ&シニアハウス南浦和   4 階~ 9 階 居室(自立型)     3 階  居室(自立型)・一般浴室        ��共用フロア(食堂・多目的室)        ��ルーフテラス     2 階  居室(介護型)     1 階  エントランス・テナント

居室 居室 浴室

居室 多目的室

E.V. エントランス ホール 居室

食堂

ルーフテラス

3 階平面図

1階がエントランスのみで、3階にあるフロントを通らずに居室へ行ける。   エントランスホールと食堂が隣接している。

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第4章

■ライフ&シニアハウス港北2   4 階~ 6 階 居室(自立型)     3 階  居室(自立型)・一般浴室     2 階  居室(介護型)     1 階  居室(介護型)・テナント        ��共用スペース         (食堂・多目的室)

シニアハウス

食堂

厨房 浴室

E.V. テナント

クリニック

事務室 エントランス ホール

エントランス

1 階平面図

エントランスからエレベーターに乗るまでの動線に食堂が含まれていない。   広いエントランスホールにはグランドピアノなどが置いてあり、ここでは他の施設   の多目的室のような使われ方をしている。

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第4章

4-1-2 居室面積と入居金  各施設の単位面積あたりの入居金を求め、さらに償却である 10 年で割ることによって、 1月あたりにかかる単位面積あたりの入居金を算出した。  ■ライフ&シニアハウス日暮里

室面積 34.10m2

居室数 4 (0-0-0-0-0-0-1-1-1-1-0) (← 1    階数    10 →)

38.91m2

4 (0-0-0-0-0-0-1-1-1-1-0)

43.19m2

4 (0-0-0-0-0-0-1-1-1-1-0)

44.51m2

4 (0-0-0-0-0-0-1-1-1-1-0)

48.81m2

4 (0-0-0-0-0-0-1-1-1-1-0)

53.97m2

5 (0-0-0-0-0-0-1-1-1-1-1)

54.40m2

4 (0-0-0-0-0-0-1-1-1-1-0)

54.72m2

4 (0-0-0-0-0-0-1-1-1-1-0)

69.75m2

4 (0-0-0-0-0-0-1-1-1-1-0)

69.82m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-0-0-1)

70.29m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-0-0-1)

78.63m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-0-0-1)

91.26m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-0-0-1)

52.0344m2 (全体平均)

41 (総居室数)

入居金 2639万円×1(7階) 2646万円×1(8階) 2652万円×1(9階) 2658万円×1(10階) 平均 2648.7500万円 1m2あたり 77.6760万円 2941万円×1(7階) 2948万円×1(8階) 2955万円×1(9階) 2962万円×1(10階) 平均 2951.5000万円 1m2あたり 75.8545万円 3322万円×1(7階) 3330万円×1(8階) 3338万円×1(9階) 3346万円×1(10階) 平均 3334.0000万円 1m2あたり 77.1938万円 3389万円×1(7階) 3389万円×1(8階) 3397万円×1(9階) 3405万円×1(10階) 平均 3395.0000万円 1m2あたり 76.2750万円 3744万円×1(7階) 3753万円×1(8階) 3762万円×1(9階) 3771万円×1(10階) 平均 3757.5000万円 1m2あたり 76.9822万円 4275万円×1(7階) 4085万円×1(8階) 4094万円×1(9階) 4104万円×1(10階) 4224万円×1(11階) 平均 4156,4000万円 1m2あたり 77.0132万円 4164万円×1(7階) 4174万円×1(8階) 4184万円×1(9階) 4194万円×1(10階) 平均 4179.0000万円 1m2あたり 76.8199万円 4338万円×1(7階) 4348万円×1(8階) 4358万円×1(9階) 4368万円×1(10階) 平均 4358.0000万円 1m2あたり 79.5504万円 5347万円×1(7階) 5360万円×1(8階) 5372万円×1(9階) 5385万円×1(10階) 平均 5366.0000万円 1m2あたり 76.9319万円 5473万円×1(11階) 平均 5473.0000万円 1m2あたり 78.3873万円 5559万円×1(11階) 平均 5559.0000万円 1m2あたり 79.0866万円 6141万円×1(11階) 平均 6141.0000万円 1m2あたり 78.1000万円 7249万円×1(11階) 平均 7249.0000万円 1m2あたり 79.4324万円 165143万円(入居金の総和) 平均 4027.8781万円 1m2あたり 77.4080万円 1月あたり(円) 6450.6667

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

��44


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章

■ライフハウス所沢    室面積 21.75m2

居室数 1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

23.19m2

1 (0-1-0-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

23.31m2

1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

23.74m2

1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

23.85m2

1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

24.30m2

4 (0-4-0-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

24.53m2

1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

25.79m2

1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

26.55m2

1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

28.10m2

1 (0-1-0-0-0-0-0-0-0-0-0-0)

36.00m2

2 (0-0-0-1-1-0-0-0-0-0-0-0)

43.26m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-0-0-0-1)

44.03m2

7 (0-0-0-0-0-1-1-1-1-1-1-1)

.

45.00m2

2 (0-0-0-0-1-0-0-1-0-0-0-0)

45.54m2

3 (0-0-0-0-0-0-0-0-0-1-1-1)

48.60m2

33 (0-0-0-3-1-5-5-3-5-4-4-3)

入居金 1240万円×1(3階) 平均 1240.0000万円 1m2あたり 57.0115万円 1300万円×1(2階) 平均 1300.0000万円 1m2あたり 56.0587万円 1330万円×1(3階) 平均 1330.0000万円 1m2あたり 57.0571万円 1360万円×1(3階) 平均 1360.0000万円 1m2あたり 57.2873万円 1360万円×1(3階) 平均 1360.0000万円 1m2あたり 57.0231万円 1400万円×1(2階) 1360万円×3(2階) 平均 1370.0000万円 1m2あたり 56.3786万円 1410万円×1(3階) 平均 1410.0000万円 1m2あたり 57.4806万円 1480万円×1(3階) 平均 1480.0000万円 1m2あたり 57.3866万円 1570万円×1(3階) 平均 1570.0000万円 1m2あたり 59.1337万円 1590万円×1(2階) 平均 1590.0000万円 1m2あたり 56.5836万円 2130万円×1(4階) 2160万円×1(5階) 平均 2145.0000万円 1m2あたり 59.5833万円 3160万円×1(12階) 平均 3160.0000万円 1m2あたり 73.0467万円 2670万円×1(6階) 2700万円×1(7階) 2730万円×1(8階) 2760万円×1(9階) 2790万円×1(10階) 2820万円×1(11階) 3050万円×1(12階) 平均 2788.5714万円 1m2あたり 63.3334万円 2700万円×1(5階) 2790万円×1(8階) 平均 2745.0000万円 1m2あたり 61.0000万円 2780万円×1(10階) 2810万円×1(11階) 2840万円×1(12階) 平均 2810.0000万円 1m2あたり 61.7040万円 2910万円×1(4階) 2890万円×2(4階) 2920万円×1(5階) 2970万円×1(6階) 2950万円×4(6階) 3000万円×1(7階) 2980万円×4(7階) 3030万円×1(8階) 3010万円×2(8階) 3060万円×1(9階) 3040万円×4(9階) 3220万円×1(10階) 3070万円×3(10階) 3120万円×1(11階) 3100万円×3(11階) 3480万円×1(12階) 3330万円×2(12階) 平均 3047.2727万円 1m2あたり 62.7011万円

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

��45


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章

50.33m2

2 (0-0-1-1-0-0-0-0-0-0-0-0)

52.20m2

2 (0-0-0-0-1-0-0-1-0-0-0-0)

54.90m2

2 (0-0-0-1-1-0-0-0-0-0-0)

62.68m2

8 (0-0-0-1-1-1-1-1-1-1-1-0)

45.1760m2 (全体平均)

75 (総居室数)

2990万円×1(4階) 3020万円×1(5階) 平均 3005.0000万円 1m2あたり 59.7059万円 3150万円×1(5階) 3220万円×1(8階) 平均 3185.0000万円 1m2あたり 61.0153万円 3260万円×1(4階) 3290万円×1(5階) 平均 3275.0000万円 1m2あたり 59.6539万円 3780万円×1(4階) 3810万円×1(5階) 3840万円×1(6階) 3870万円×1(7階) 3900万円×1(8階) 3930万円×1(9階) 3960万円×1(10階) 3990万円×1(11階) 平均 3885.0000万円 1m2あたり 61.9815万円 206303万円(入居金の総和) 平均 2750.7067万円 1m2あたり 60.8887万円 1月あたり(円) 5074.0583

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

��46


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章

■ライフハウス浦和    室面積 55.90m2

居室数 12 (2-2-2-2-2-2-0)

62.10m2

16 (1-3-3-3-3-2-1)

62.12m2

3 (0-1-1-1-0-0-0)

63.40m2

21 (3-4-4-4-3-2-1)

65.90m2

6 (0-1-1-1-1-1-1)

99.00m2

1 (0-0-0-0-0-0-1)

62.3146m2 (全体平均)

59 (総居室数)

入居金 2620万円×2(1階) 2660万円×2(2階) 2690万円×2(3階) 2720万円×2(4階) 2740万円×2(5階) 2760万円×2(6階) 平均 2698.3333万円 1m2あたり 48.2707万円 2920万円×1(1階) 2960万円×3(2階) 2990万円×3(3階) 3020万円×3(4階) 3040万円×2(5階) 3190万円×1(5階・バルコニー付き) 3060万円×1(6階) 3210万円×1(6階・バルコニー付き) 3230万円×1(7階・バルコニー付き) 平均 3037.5000万円 1m2あたり 48.9050万円 3010万円×1(2階) 3040万円×1(3階) 3070万円×1(4階・バルコニー付き) 平均 3040.0000万円 1m2あたり 48.9375万円 3060万円×1(1階) 3010万円×2(1階) 3120万円×1(2階) 3070万円×3(2階) 3140万円×1(3階) 3090万円×3(3階) 3160万円×1(4階) 3110万円×3(4階) 3280万円×1(5階) 3130万円×2(5階) 3300万円×1(6階) 3150万円×1(6階) 3220万円×1(7階) 平均 3120.0000万円 1m2あたり 49.2114万円 3210万円×1(2階) 3230万円×1(3階) 3250万円×1(4階) 3270万円×1(5階) 3290万円×1(6階) 3310万円×1(7階) 平均 3260.0000万円 1m2あたり 49.4689万円 4820万円×1(7階) 平均 4820.0000万円 1m2あたり 48.6869万円 180000万円(入居金の総和) 平均 3050.8075万円 1m2あたり 48.9582万円 1月あたり(円) 4079.85

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

��47


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章

■ライフ&シニアハウス南浦和    室面積 32.61m2

居室数 1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0)

32.90m2

2 (0-0-2-0-0-0-0-0-0)

33.40m2

1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0)

35.71m2

5 (0-0-0-1-1-1-1-1-0)

41.48m2

5 (0-0-0-1-1-1-1-1-0)

42.99m2

5 (0-0-0-1-1-1-1-1-0)

48.15m2

10 (0-0-0-2-2-2-2-2-0)

48.48m2

1 (0-0-1-0-0-0-0-0-0)

49.67m2

5 (0-0-0-1-1-1-1-1-0)

50.80m2

5 (0-0-0-1-1-1-1-1-0)

52.76m2

5 (0-0-0-1-1-1-1-1-0)

57.07m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-1)

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

入居金 1940万円×1(3階) 平均 1940.0000万円 1m2あたり 59.4910万円 1960万円×2(3階) 平均 1960.0000万円 1m2あたり 59.5745万円 1981万円×1(3階) 平均 1981.0000万円 1m2あたり 59.3114万円 1960万円×1(4階) 1990万円×1(5階) 2020万円×1(6階) 2050万円×1(7階) 2080万円×1(8階) 平均 2020.0000万円 1m2あたり 56.5668万円 2630万円×1(4階) 2690万円×1(5階) 2720万円×1(6階) 2750万円×1(7階) 2780万円×1(8階) 平均 2714.0000万円 1m2あたり 65.4291万円 2650万円×1(4階) 2710万円×1(5階) 2740万円×1(6階) 2770万円×1(7階) 2800万円×1(8階) 平均 2734.0000万円 1m2あたり 63.5962万円 2970万円×2(4階) 3030万円×2(5階) 3060万円×2(6階) 3090万円×2(7階) 3120万円×2(8階) 平均 3054.0000万円 1m2あたり 63.4268万円 3000万円×1(3階) 平均 3000.0000万円 1m2あたり 61.8812万円 3100万円×1(4階) 3130万円×1(5階) 3160万円×1(6階) 3190万円×1(7階) 3220万円×1(8階) 平均 3160.0000万円 1m2あたり 63.6199万円 3130万円×1(4階) 3160万円×1(5階) 3190万円×1(6階) 3220万円×1(7階) 3250万円×1(8階) 平均 3190.0000万円 1m2あたり 62.7953万円 3290万円×1(4階) 3320万円×1(5階) 3350万円×1(6階) 3380万円×1(7階) 3380万円×1(8階) 平均 3344.0000万円 1m2あたり 63.3814万円 3960万円×1(9階) 平均 3960.0000万円 1m2あたり 69.3885万円

��48


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章

59.68m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-1)

66.01m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-1)

66.61m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-1)

83.86m2

1 (0-0-0-0-0-0-0-0-1)

47.2414m2 (全体平均)

50 (総居室数)

4120万円×1(9階) 平均 4120.0000万円 1m2あたり 69.0349万円 4228万円×1(9階) 平均 4228.0000万円 1m2あたり 64.0509万円 4334万円×1(9階) 平均 4334.0000万円 1m2あたり 65.0653万円 5315万円×1(9階) 平均 5315.0000万円 1m2あたり 63.3794万円 120308万円(入居金の総和) 平均 2406.1600万円 1m2あたり 50.9333万円 1月あたり(円) 4244.4417

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

��49


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章

■ライフ&シニアハウス港北2

31.68m2

3 (0-0-0-1-1-1)

34.66m2

3 (0-0-0-1-1-1)

35.05m2

3 (0-0-0-1-1-1)

39.97m2

3 (0-1-1-1-0-0)

40.90m2

3 (0-0-0-1-1-1)

48.73m2

3 (0-1-1-1-0-0)

51.16m2

5 (0-1-1-1-1-1)

51.23m2

2 (0-0-1-1-0-0)

51.35m2

3 (0-1-1-1-0-0)

57.62m2

2 (0-0-0-0-1-1)

57.85m2

1 (0-0-1-0-0-0)

61.41m2

2 (0-0-0-0-1-1)

61.43m2

1 (0-0-1-0-0-0)

66.68m2

3 (0-0-0-1-1-1)

76.19m2

2 (0-0-0-0-1-1)

77.89m2

1 (0-0-1-0-0-0)

84.94m2

1 (0-0-1-0-0-0)

50.6798m2

41

(全体平均)

(総居室数)

2210万円×1(4階) 2230万円×1(5階) 2250万円×1(6階) 平均 2230.0000万円 1m2あたり 70.3914万円 2440万円×1(4階) 2460万円×1(5階) 2480万円×1(6階) 平均 2460.0000万円 1m2あたり 70.9752万円 2470万円×1(4階) 2490万円×1(5階) 2510万円×1(6階) 平均 2490.0000万円 1m2あたり 71.0414万円 2760万円×1(2階) 2810万円×1(3階) 2850万円×1(4階) 平均 2806.6667万円 1m2あたり 70.2193万円 2890万円×1(4階) 2910万円×1(5階) 2930万円×1(6階) 平均 2910.0000万円 1m2あたり 71.1491万円 3390万円×1(2階) 3450万円×1(3階) 3480万円×1(4階) 平均 3440.0000万円 1m2あたり 70.5931万円 3590万円×1(2階) 3650万円×1(3階) 3680万円×1(4階) 3700万円×1(5階) 3730万円×1(6階) 平均 3670.0000万円 1m2あたり 71.7357万円 3650万円×1(3階) 3690万円×1(4階) 平均 3670.0000万円 1m2あたり 71.6377万円 3580万円×1(2階) 3630万円×1(3階) 3670万円×1(4階) 平均 3626.6667万円 1m2あたり 70.6264万円 4150万円×1(5階) 4180万円×1(6階) 平均 4165.0000万円 1m2あたり 72.2839万円 4040万円×1(3階) 平均 4040.0000万円 1m2あたり 69.8358万円 4410万円×1(5階) 4440万円×1(6階) 平均 4425.0000万円 1m2あたり 72.0567万円 4290万円×1(3階) 平均 4290.0000万円 1m2あたり 69.8356万円 4740万円×1(4階) 4760万円×1(5階) 4780万円×1(6階) 平均 4760.0000万円 1m2あたり 71.3857万円 5460万円×1(5階) 5490万円×1(6階) 平均 5575.0000万円 1m2あたり 73.1723万円 5480万円×1(3階) 平均 5480.0000万円 1m2あたり 70.3556万円 6020万円×1(3階) 平均 6020.0000万円 1m2あたり 70.8736万円 147820万円(入居金の総和) 平均 3605.3659万円 1m2あたり 71.1401万円

1月あたり(円) 5928.3417

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

��50


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章 4-1-3 入居者の構成  ■ライフ&シニアハウス日暮里   平均年齢  男性:75.6 歳 女性:71.9 歳   入居者数  41 名

男女の構成

10%

入居者構成

0%

29% 男性

20%

女性 71%

70%

単身 夫婦 親子 姉妹

■ライフハウス所沢   平均年齢  男性:73.7 歳 女性:76.4 歳   入居者数  90 名    入居者構成 4%

男女の構成

4%

28%

男性

18%

単身 夫婦

女性 72%

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

親子 74%

姉妹

��51


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章

■ライフハウス浦和   平均年齢  男性:78.12 歳 女性:74.51 歳   入居者数  74 名

入居者構成

男女の構成 5%

17

5%

男性 女性

55%

35%

57

単身 夫婦 親子 姉妹

■ライフ&シニアハウス南浦和     平均年齢  男性:76.33 歳 女性:77.31 歳   入居者数  76 名    男女の構成

5%

入居者構成

3%

23 男性 女性 53

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

34%

58%

単身 夫婦 親子 姉妹

��52


2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章

■ライフ&シニアハウス港北2     平均年齢  男性:74.60 歳 女性:75.40 歳   入居者数  39 名

入居者構成

男女の構成 10%

6

0% 男性 女性 33

26% 64%

単身 夫婦 親子 姉妹

全体的な傾向として、入居者の構成は男性より女性の方が多く、また夫婦や親子、兄 弟(姉妹)で入居する人よりも、単身で入居する人が圧倒的に多いということが分かる。

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首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

第4章

4-1-4 施設の良い点・不満な点

(%) 30

27.9

25

良い点 不満な点

20

18.8 16.3

15

13.3

11.3

10

7.9

7.9

5.4

5

0

3.8

3.3

事 業 概経 要営 や内 容

立 地 条 件

3.8 0.8

0.4 支 払 い 費 用

7.1

6.7 5.8

契 約 書 等 の 内 容

2.5 2.5 1.9 2.1 1.9 1.3 1.7 0

居 室 の 広 さ や 質

食 事 サ | ビ ス の 内 容

食 事 以の 外サ | ビ ス 内 容

ス タ ッ入 フ居 の者 へ の 対 応

介 護 サ | ビ ス の 内 容

介指 護定 保を 険受 サけ |て ビい スる のこ と

共 用 部 分 の 内 容

身な 元し 引で きも 受契 け約 人で き る

全施設における既存のアンケートによると、入居者が施設に対して特に満足している 点として順番に、   ■立地条件   ■支払い費用   ■居室の広さや質 が挙げられ、中でも立地条件は不満に思っている人も少なく、かなり満足していると思 われる。 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第4章

一方、不満な点として特に目立つのは、   ■共用部分の内容   ■食事サービスの内容 であり、特に共用部分への不満が高くなっている。4-1-3 の入居者の構成で分かった通り、 単身で入居している人たちが圧倒的に多いため、入居者が入居者同士の“交流”を求め ていると考えられる。しかし、施設内で最も交流が行われるであろう共用部分において 不満を感じている人が多数いるということは現在の共用部分の使われ方、規模、もしく はその配置の仕方などに問題があると考えられる。  以上のヒアリング調査をふまえて、自立型高齢者集合住宅の特徴を定量的にとらえる ため、不満の多かった施設内部(特に共用部分)および、満足している人の割合の高か った施設外部(立地特性)における入居者の行動特性を明らかにする。調査方法は入居 者へのアンケート調査とし、調査対象は、前述の5施設の中で特に共用部分、および立 地に違いの見られたライフハウス浦和とライフ&シニアハウス南浦和とした。 ライフ&シニアハウス 南浦和

ライフハウス浦和 1993年4月

設立年月日

2001年9月

4,300.17m2

延べ床面積

4,491.32m2

58室

居室数

65室

立地

□駅から徒歩3分 □交通量の多い大通りに  面している

エントランス から共用部分 までの動線の タイプ

垂直型

□駅から徒歩10分 □交通量の少ない閑静な  住宅街

水平型

エントランス   食堂 エントランスホール   多目的室

□フロントがエントランスから  見える。 □エントランスから共用部分の  動線が水平である。 □食堂と多目的室が隣接してい  る。

□エントランスが1階、フロン  トが3階にあるため、フロン  トを通らずに内部へ入れる。 □エントランスから共用部分の  動線が垂直である。 □エントランスホールと食堂が  隣接している。

図 4-2 アンケート対象施設概要 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第4章

4-1-5 立地環境の相違点  4-1-4 においてアンケート調査対象施設として選んだライフハウス浦和、およびライフ &シニアハウス南浦和の立地環境を、それぞれの最寄り駅から施設、および施設から最 も近くにある病院までを比較し、その相違点を調査した。  ■駅-施設間   □浦和(武蔵浦和駅から徒歩約 10 分)

ラ イ フ ハ ウ ス 浦 和

5 2

4 3

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1

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第4章

1

駅から出てすぐの歩道はかなり広いが、  自転車の交通量が多い。

2

こちらも歩道はかなり広めになってい   るが、車の交通量がやや多め。

3

先ほどの広い歩道も少し進むと一気に狭  くなってしまう。車の交通量も比較的多  いため、歩行者は少し危険を感じるかも  しれない。

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第4章

4

きちんと整備された歩道はないが、車も  ほとんど通らないため特に危険を感じる  箇所はない。

5

車も人も入居者の出入り以外はない。

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第4章

□南浦和(南浦和駅から徒歩約 3 分)

1 2

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ライフ&シニアハウス 南浦和

3

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第4章

1

駅を出るとすぐ商店街になっている。  車はほとんど通らない。

2

こちらも交通量は少ない。

3

施設のエントランスは大きな道路に面し  ているが、歩道は広く設けられている。

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第4章

■駅-病院間   □浦和(施設から徒歩約 10 分)

4

3 1 2

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ラ イ フ ハ ウ ス 浦 和

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第4章

1

ライフハウス浦和  エントランス

2

車はほとんど通らない。

3

狭いながらも歩道が確保されている。  交通量はそれほど多くない。

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第4章

4

病院に近づくにつれて、歩道もちゃん  と整備されている。

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第4章

□南浦和(施設から徒歩約 20 分)

1 4

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3

2

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第4章

ライフ&シニアハウス南浦和  エントランス

車の交通量が多いわりには、歩道がか  なり狭く、危険を感じる。

歩道は先ほどに比べ、広くなったが、  緩やかな斜面になっている。

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第4章

こちらも斜面になっていて、高齢者に   とっては歩くのに少々大変な箇所であ  ると思われる。

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第4章

両施設の立地環境をまとめると、   ◇浦和は全面道路の交通量がほとんどないのに対し、南浦和は交通量の多い大きな    道路に面して立地している。   ◇浦和は周辺の土地が平地であるのに対し、南浦和は土地の起伏が激しい。   ◇両施設とも車の交通量の多い道路には、きちんと整備された歩道があるが一部例    外もあり、車の交通量が多いにも関わらず歩道が無い、狭いなど高齢者や子供に    危険な箇所が見受けられる。  ということが言える。

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4-2 施設内部(共用部分)の利用実態

第4章

ライフハウス浦和・ライフ&シニアハウス南浦和の2施設に共通する共用部分として 食堂・多目的室・エントランスホールに注目し、その利用実態を調査した。

ライフハウス浦和

クリニック

ライフ&シニアハウス南浦和 居室

多目的室

居室 浴室

食堂

居室

居室

多目的室

居室 居室 居室 E.V. エントランス エントランスホール

居室

E.V. エントランス ホール

居室

居室

食堂

ルーフテラス

1 階平面図 3 階平面図

4-2-1 共用部分を利用する時   施設内の共用部分を利用する際の理由は、“外出する前後”が最も大きい。つまり共  用部分はエントランスとの位置関係が重要だと考えられる。

18%

外出する前後

9%

46%

サークル活動などが あるとき 気が向いたとき

27%

その他 図 4-2-1 入居者が共用部分を利用する時

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第4章

4-2-2 施設で最も良く利用される共用部分  どちらの施設も“食堂”が最も利用されていることが分かる。つまり、入居者同士の 交流は“食堂”で最も行われていると考えられる。

浦和

南浦和 0%

3%

18%

26% 43% 56%

多目的室

18%

36%

食堂

エントランスホール 利用しない

図 4-2-2 入居者が最もよく利用する共用部分

4-2-3 各共用部分の利用頻度  ■エントランスホール   浦和の方が“毎日”利用している割合が圧倒的に大きい。

浦和

南浦和 10%

14%

30%

14%

20%

毎日

58%

4~5日

14% 40%

2~3日 1日未満

図 4-2-3-a エントランスホールの利用頻度

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第4章

■食堂   浦和の方が南浦和に比べ、“毎日”利用している割合が大きい一方、利用頻度が“1  日未満”の割合も大きい。   また、利用頻度が“4 ~ 5 日”の割合は南浦和の方が圧倒的に多いため、総合的に考  えると浦和も南浦和も食堂を利用する頻度に大きな違いはないと言える。

浦和

南浦和 5%

14% 21%

48%

21%

毎日

58%

4~5日 26%

7%

2~3日 1日未満 図 4-2-3-b 食堂の利用頻度

■多目的室   多目的室の利用頻度は両施設とも、大きな差はなかった。

浦和 25%

南浦和 25%

14% 29%

毎日

8% 43% 42%

14%

4~5日 2~3日 1日未満

図 4-2-3-c 多目的室の利用頻度

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第4章

4-2-4 各共用部分の滞在時間  ■エントランスホール   エントランスホールでの滞在時間を比較すると、浦和より南浦和の方が滞在時間が  圧倒的に長いことがわかる。

浦和

南浦和

0%

10%

33%

40%

67%

30分以下

50%

30分~1時間 1時間以上 図 4-2-4-a エントランスホールでの滞在時間

■食堂   両施設とも最も割合の多い滞在時間は“30 分~ 1 時間”である。滞在時間“30 分以下”  の割合は両施設間に大差は見られないが、滞在時間“1 時間以上”の割合は浦和の方が  かなり多い。

浦和

南浦和 5% 29%

29%

32%

63% 42%

30分以下 30分~1時間 1時間以上 図 4-2-4-b 食堂での滞在時間

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第4章

■多目的室   浦和では“1 時間以上”滞在している人の割合が 90%を超えているのに対して、南  浦和では 20%も満たない。また、浦和では滞在時間“30 分以下”の人の割合が 0%で  あることから、南浦和より浦和の方が多目的室が有効に利用されていると考えられる。

浦和

南浦和

0% 8%

17%

17%

30分以下 30分~1時間

92%

1時間以上 図 4-2-4-c 多目的室での滞在時間

4-2-5 各共用部分での過ごし方  ■エントランスホール   浦和の方が“一人で過ごす”割合がかなり多い。逆に、南浦和の方が“色々な人と  過ごす”割合が多いため、エントランスホールでは浦和より積極的に交流が行われて  いることがわかる。

浦和

南浦和

14% 27% 46% 29%

57%

一人で過ごす 27%

決まった人と過ごす 色々な人と過ごす

図 4-2-5-a エントランスホールでの過ごし方

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第4章

■食堂   食堂では両施設とも“一人で過ごす”割合はそれほど多くなく、“決まった人と過ご  す” 割合も“色々な人と過ごす”割合も大差がない。つまり 4-2-2 で述べたように入  居者同士の交流は食堂で最も行われていることが裏付けられた。

浦和

南浦和 15%

20%

38%

45%

一人で過ごす 35%

47%

決まった人と過ごす 色々な人と過ごす 図 4-2-5-b 食堂での過ごし方

■多目的室   多目的室は、主にサークル活動などに使われることが多いため、その性質上“一人  で過ごす”割合は両施設とも 0%であった。   それ以外の項目も、大差はなかった。

浦和

南浦和 0%

0%

40%

46% 54%

60%

一人で過ごす 決まった人と過ごす 色々な人と過ごす 図 4-2-5-c 多目的室での過ごし方

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4-3 施設外部(周辺利用施設)の利用実態

第4章

4-3-1 外出する頻度と人数の割合   両施設とも外出する頻度は“2 ~ 3 日程度”が最も多い。   外出頻度が 1 日未満の人が一部浦和で見られたものの、両施設とも外出する頻度に  対する人数の割合に大差は見られなかった。

浦和 23%

南浦和 0%

4% 27%

41%

1日未満

46%

2~3日程度

27%

4~5日程度

32%

ほぼ毎日 図 4-3-1 各施設の入居者の外出する頻度と人数の割合

4-3-2 外出する頻度と年齢との関係   外出する頻度が多いからので年齢が低い、もしくは少ないので年齢が高いと考えが  ちだが、必ずしもそうとは限らない。両施設とも“81 ~ 90 歳”でほぼ毎日外出してい  る入居者が見られる。

ほぼ毎日 4~5日程度

浦和 2~3日程度 1日未満

60~69

0%

20%

40%

60%

80%

100%

70~75 76~80

ほぼ毎日

81~90

4~5日程度

南浦和

2~3日程度 1日未満 0%

20%

40%

60%

80%

100%

図 4-3-2 各施設の入居者の外出する頻度と年齢との関係 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第4章 4-3-3 外出する頻度と外出時間   両施設ともほぼ毎日外出する人の外出時間は“1 時間以上”が最も多く、毎日でもか  なり遠くまで外出する人の割合が大きい。   南浦和では、“1 日未満”は全くいなかった。

ほぼ毎日

浦和

4~5日程度 2~3日程度 1日未満

10~20分

0%

20%

40%

60%

80%

100%

20~30分

30~1時間

ほぼ毎日

1時間以上

4~5日程度

南浦和

2~3日程度 1日未満 0%

20%

40%

60%

80%

100%

図 4-3-3 各施設の入居者の外出する頻度と外出時間との関係

4-3-4 外出先への主な移動手段   両施設とも外出先の移動手段としては“徒歩”が一番多い。   南浦和の方が施設から駅までの距離が近いため(約 3 分)、“電車”を利用する入居  者の割合は浦和より多い。 5%

浦和

南浦和

0% 13%

6%

5% 34%

11%

13%

42%

徒歩 電車 タクシー

13%

37%

21%

バス 福祉サービス 自転車

図 4-3-4 各施設の入居者の外出先への主な移動手段 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第4章

4-3-5 徒歩で外出する際の移動時間   4-3-4 より徒歩で外出する入居者が最も多かったことから、徒歩で外出する際の移動  時間を調査した。   どちらも“1 時間以上”が最も多く、次に“30 分~ 1 時間”が多いことから、施設  からある程度距離の離れたところも徒歩で利用しているということが分かる。   浦和の方が“1 時間以上”、“30 分~ 1 時間”の割合の 2 つとも南浦和より大きい。  つまり、 浦和の方が南浦和より周辺利用施設が遠距離にあるということが推測でき   る。これは、 4-3-3 の考察と一致する。

浦和 12%

南浦和

0%

11%

47%

36%

21%

1時間以上

41%

30分~1時間 20~30分

32%

10~20分 図 4-3-5 各施設の入居者の外出する際の移動時間

4-3-6 徒歩で外出する際の理由   徒歩で外出する理由として最も多かったのは“健康に良いから”であったが、それ  ほど差がなく“よく行く外出先が近所”が 2 番目になっている。つまり、入居者は健  康への志向を持ちつつ近所への外出を行うことが多いと考えられる。

1% 6%

健康によいから

7% 36%

11%

よく行く外出先が近所 道が整備され歩きやすい 時間に余裕がある

10%

交通費がかからない 29%

寄り道ができる 交通手段が他にない

図 4-3-6 各施設の入居者の徒歩で外出する際の理由とその割合 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第4章

4-3-7 良く利用する周辺施設   両施設とも良く利用する周辺施設は“スーパー”と“病院”であった。   浦和と南浦和の大きな差は“公園”と“図書館”である。浦和は近くに別所沼公園  という大きな公園があるのに対し、南浦和は近くに大きな公園はない(3-1-2 参照)ため、  その差が大きく出ている。逆に、南浦和では近くに図書館があるのに対し、浦和には  ないため公園と同様の傾向が見られる。

浦和

南浦和

0% 2%6%

7%

スーパー

1%

10%

33%

病院

12%

コンビニ

2%

10%

48%

10%

公園

4%

14% 25%

郵便局 図書館

16%

銀行 その他

図 4-3-7 各施設の入居者が良く利用する周辺施設

4-3-8 周辺利用施設の利用頻度と距離の関係   各周辺利用施設を地図上にプロットし、その利用頻度と距離の関係のみに着目した。  アンケートでは利用頻度は 1 ~ 4 の 4 段階で評価してもらった。(資料編参照)   基本的に距離が遠いほど利用頻度は低くなっているが、両施設とも一部例外が見  られ、それは 4-3-9 で検証する。   周辺利用施設で最も遠いものは 1200 mを超えており、かなり遠くの施設まで徒歩で  利用していることが分かる。 浦和

南浦和 600m

600m 1200m

利用頻度 (回/週)

3.1~4.0 2.1~3.0 1.0~2.0

1350m

利用頻度 (回/週)

3.1~4.0 2.1~3.0 1.0~2.0

図 4-3-8-a 各周辺利用施設への距離と利用頻度

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第4章

さらに、両施設の周辺利用施設についてX軸を距離、Y軸を利用頻度としてその関  係をグラフで表した。その結果、同じ距離の周辺利用施設に対して、浦和の方が利用  頻度が高い。つまり、全体的に見ると南浦和よりも浦和の方が周辺利用施設の利用頻  度は高いと言える。

高 大

4.0

浦和

3.5

線形 (浦和)

南浦和 線形 (南浦和)

3.0

利 用 頻 度

2.5 2.0

低 小

1.5

1.0 0

500

1000

1500

距 離(m) 図 4-3-8-b 周辺利用施設の利用頻度と距離の関係

4-3-9 周辺利用施設別に見る利用頻度と距離の関係   4-3-8 において利用頻度が 2.1 以上(週 2 ~ 3 日以上)の周辺利用施設をその種類別  に点でプロットした。   4-3-7 で明らかになった通り、両施設ともスーパー・病院が利用頻度が高く、病院に  限って言えばその距離が比較的遠くても利用頻度は高い。これらの周辺利用施設に対  する満足度は 4-3-11 で明らかにする。 浦和

南浦和 600m 600m

1200m

病院 コンビニ スーパー 公園

1350m

病院 スーパー

図 4-3-9-a 利用頻度の高い周辺利用施設の種類と位置(利用頻度 2.1 以上)

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さらに、利用頻度が 2.0 以下の周辺利用施設もその種類別に地図上にプロットした。  利用頻度が高い周辺利用施設に比べ、施設から近距離に分布していることがわかる。  その満足度は 4-3-11 で明らかにする。

浦和

南浦和 600m

600m 1200m

図書館 コンビニ 公園 郵便局 銀行 公民館

1350m

図書館 コンビニ 公園 郵便局 銀行 公民館

図 4-3-9-b 利用頻度の低い周辺利用施設の種類と位置(利用頻度 2.0 以下)

4-3-10 周辺利用施設の満足度と距離の関係   周辺利用施設に対する満足度を 1 ~ 5 段階で評価してもらい、その結果を地図上に  プロットして満足度と距離の関係のみを見た。   遠いから満足度が低いという傾向は全く見られず、両施設とも遠い周辺利用施設に  も比較的高い満足度が得られている。特に、浦和では周辺利用施設のほとんどに高い  満足度が得られていることが分かる。

浦和

南浦和 600m 600m 1200m 4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

1350m

4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

図 4-3-10-a 周辺利用施設の距離と満足度

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第4章

さらに、周辺利用施設の満足度と距離の関係をその利用頻度別に分類した。   両施設とも利用頻度が週 1 日未満の周辺利用施設では、ほぼすべての距離に対して  高い満足度が得られているが、利用頻度が多くなるに連れてその満足度は下がってい  く傾向にある。一部例外も見られるが、それは 4-3-11 で検証する。

浦 和

南浦和

週1日未満

週1日未満

600m

600m

1200m

1350m

4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

週2~3日

4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

週2~3日

600m

600m 1200m

1350m

4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

週4~5日

4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

週4~5日

600m

600m 1000m

1350m 4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

ほぼ毎日

4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

ほぼ毎日

600m

600m 1200m 4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

4.1以上 3.1~4.0 2.1~3.0 1.1~2.0

図 4-3-10-b 利用頻度別に見る周辺利用施設の距離と満足度 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第4章

4-3-11 周辺利用施設別に見る満足度と距離の関係   4-3-10 において満足度が 3 以上の周辺利用施設を、その種類別に点でプロットした。  (図 4-3-11-a)さらに両施設に共通する周辺利用施設ごとの施設からの距離の平均を求  めた。(図 4-3-11-b)  両施設とも病院、公園といった健康に関係のする周辺利用施設は多少距離があっても  高い満足度が得られている。   逆に郵便局、銀行といったそこまで利用頻度が高くない周辺利用施設は約 600 m周  辺に分布していないと高い満足度は得られない。   また、コンビニはどんなに近くにあっても満足度は 3.0 未満で、入居者にとってコ  ンビニは便利だという意識は希薄だと思われる。

浦和

南浦和 600m

600m 病院 図書館 コンビニ スーパー 公園 郵便局 銀行 公民館

1200m

1350m

病院 図書館 コンビニ スーパー 公園 郵便局 銀行 公民館

図 4-3-11-a 満足度の高い周辺利用施設の種類と位置(満足度 3 以上)

公園

1200

病院

970

銀行

630

公民館

600

スーパー

595

郵便局

590

図書館 0

500 200

400

600

800

1000

1200

1400 m

図 4-3-11-b 満足度 3 以上の周辺利用施設別の距離の平均値

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第5章  分析・考察

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5-1 入居金に対する入居者の理解

第5章

基礎調査により、首都圏(東京・神奈川・埼玉)における自立型高齢者集合住宅の入 居金をその償却期間(月)で除した値と、周辺マンション家賃の平均値を単位面積あた りの値で比較したがその結果、相関が 0.66 となり入居金と周辺マンション家賃は中程度 の相関があることがわかった。  また、ヒアリング調査(4-1-2)により今回調査した5施設の入居金を明らかにした。 そこで、基礎調査における(2-4-6)グラフの中で、今回調査した5施設の位置を下に示

入居金(円/m2)

した。(赤い○で囲った。)

16000 14000 12000 10000 8000 6000

4000 入居金(円/m2) 2000 0 0

1000

2000

3000

4000

周辺マンションの物価(円/m2) 家賃

y = 3.4268x - 683.44 R2 = 0.4364 図 5-1 首都圏の自立型高齢者集合住宅の入居金と周辺マンションの家賃相場                     (入居金は償却期間で除したもの)

なお、4-1-4 の施設の良い点・不満な点のアンケートの結果“支払い費用”が施設の立 地条件に続いて 2 番目に良い点という結果になっており、図 5-1 で示された周辺マンシ ョン家賃との相関がある入居金設定が入居者に納得のいくものであることがわかる。

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5-2 共用部分の利用実態から見る施設特性

第5章

4-2 での施設内部に対するアンケート調査において、入居者の共用部分の利用実態を明 らかにしたが、自立型高齢者集合住宅における入居者の行動特性を把握するために、そ の結果を各施設の共用部分の配置の仕方に応じて分析した。

5-2-1 食堂に対する他の共用部分の利用人数の割合と施設特性  4-2-2 から共用部分で最も利用されているのは食堂ということがわかった。そこで、食 堂に対するエントランスホールおよび多目的室の利用人数の割合を見るために、食堂の 利用人数の割合を 100 として、残りの 2 つの利用人数の割合を算出した。

浦 和

南浦和

エントランスホール

食堂

多目的室

エントランスホール

食堂

15m2

90m2

60m2

12m2

130m2

多目的室 50m2

100%

100%

100%

100%

100%

100%

80%

80%

80%

80%

80%

80%

60%

60%

60%

60%

60%

60%

40%

40%

40%

40%

40%

40%

20%

20%

20%

20%

20%

20%

0%

0%

0%

0%

0%

0

図 5-2-1 食堂に対する他の共用部分の利用人数の割合

この結果を見ると、浦和では多目的室が、南浦和ではエントランスホールが食堂につ いで利用人数の割合が大きくなっている。  ここで、各施設の平面と照らし合わせると、浦和では食堂と多目的室が、南浦和では 食堂とエントランスホールが隣接していることがわかる。

クリニック

多目的室

居室 居室 浴室

食堂

居室

居室

多目的室

居室

食堂と隣接

居室 居室 E.V. エントランス エントランスホール

E.V. エントランス ホール

居室 居室

浦和 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

居室

食堂

ルーフテラス

南浦和

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第5章

ここで言えることは、食堂を除く共用部分は食堂と隣接している方が利用する人数が 多いということである。つまり、逆を言えば、食堂以外の共用部分の利用人数を多くす るためには食堂と隣接、もしくは食堂までの動線内に共用部分を配置すればよいという ことが言える。  また、どちらも食堂に近接していながら浦和の多目的室に比べ南浦和のエントランス 2 ホールの方が利用する人数の割合が小さいのは、その浦和の多目的室が約 60 m�あるの 2 に対して、南浦和のエントランスホールが約 12 m�しかないので、その規模(面積)が

関係していると考えられる。

5-2-2 共用部分における過ごし方と施設特性  4-2-5 で共用部分における入居者の過ごし方の実態を明らかにしたが、ここでもう一度 整理する。 色々な人と過ごす 決まった人が過ごす 一人で過ごす

浦 和

南浦和

エントランスホール

食堂

多目的室

エントランスホール

食堂

多目的室

15m2

90m2

60m2

12m2

130m2

50m2

100%

100%

100%

100%

100%

100%

80%

80%

80%

80%

80%

80%

60%

60%

60%

60%

60%

60%

40%

40%

40%

40%

40%

40%

20%

20%

20%

20%

20%

20%

0%

0%

0%

0%

0%

0%

図 5-2-2 共用部分における過ごし方

4-2-5 では、エントランスホールに着目すると浦和の方が一人で過ごす割合が多くなっ ており、逆に南浦和では色々な人と過ごす割合が多くなっていて、エントランスホール での入居者同士の交流は浦和に比べ、南浦和の方が活発であるということがわかった。  ここで、浦和と南浦和のエントランスホールの配置の仕方を比較すると、浦和はエン トランスホールが食堂と離れているのに対し、南浦和は食堂と隣接している。

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第5章

多目的室

クリニック

居室 居室 浴室

食堂

居室

居室

多目的室

居室 居室 居室 E.V. エントランス エントランスホール

E.V. エントランス ホール

居室 居室

食堂と離れている

食堂と隣接

浦和

ルーフテラス

食堂

居室

南浦和

つまり、エントランスホールにおける入居者同士の交流は、エントランスホールと食 堂が隣接している南浦和の方が、エントランスホールと食堂が隣接していない浦和より 多く行われているということが言える。言い換えれば、エントランスホールにおいて入 居者同士の交流を積極的に行わせるには、エントランスホールと食堂を隣接させる、も しく食堂をエントランスホールの近くに配置させればよいということが言える。  図 5-2-2 で食堂に注目すると南浦和の方が浦和よりわずかながら一人で過ごす割合が 小さいことから、食堂と他の共用部分とを近接させる効果については、エントランスホ ールでの過ごし方に限らず、食堂における過ごし方にも多少の影響を及ぼすと考えられ る。 5-2-3 共用部分の利用頻度と施設特性  4-2-3 で入居者の各共用部分の利用頻度を明らかにしたが、そこでも述べたようにエン トランスホールの利用頻度に着目すると、毎日利用している人の割合が南浦和に比べ浦 和の方が圧倒的に多いことがわかる。

1日未満 2~3日 4~5日 毎日

浦 和

南浦和

エントランスホール

食堂

多目的室

エントランスホール

食堂

多目的室

15m2

90m2

60m2

12m2

130m2

50m2

100%

100%

100%

100%

100%

100%

80%

80%

80%

80%

80%

80%

60%

60%

60%

60%

60%

60%

40%

40%

40%

40%

40%

40%

20%

20%

20%

20%

20%

20%

0%

0%

0%

0%

0%

0%

図 5-2-3 各共用部分の利用頻度 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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第5章

また、4-2-1 において共用部分を利用するのは外出の前後が最も多いということから、 それぞれのエントランスとエントランスホールの位置関係を見た。  すると、毎日利用する人の割合が多かった浦和はエントランスからエントランスホー ルへの動線が水平であるのに対し、南浦和はエントランスからエントランスホールに行 くためには、エレベーターを用いなくてはならない。つまりエントランスからエントラ ンスホールへの動線が垂直である。

クリニック

多目的室

居室 居室

食堂

浴室

居室

居室

多目的室

居室 居室 居室 E.V. エントランス エントランスホール

E.V. エントランス ホール

居室 居室

エントランスから水平

浦和

居室

食堂

ルーフテラス

エントランスが1階にあるため垂直

南浦和

特に、南浦和ではエントランスから各居室へ行く際に、エレベーターで 3 階にあるフ ロント、および共用部分を通らずに行けるという特徴があるため(4-1-4 参照)、外出す る際に必ず通るエントランスと居室へ行くためのエレベーターの動線内にエントランス ホールがある、浦和の方がエントランスホールの利用頻度は多いと考えることが出来る。  つまり、エントランスホールをはじめ、その他の共用部分もエントランスと居室へ行 くエレベーターの動線内に配置すると、その利用頻度が多くなるということが言えるの ではないか。

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第5章

5-2-4 共用部分における考察  5-2-1 から 5-2-3 までの分析結果を整理する。   ◇食堂以外の共用部分の利用人数を多くするためには食堂と隣接、もしくは食堂ま    での動線内に共用部分を配置すればよい。   ◇エントランスホールにおいて入居者同士の交流を積極的に行わせるには、エント    ランスホールと食堂を隣接させる、もしく食堂をエントランスホールの近くに配    置すればよい。   ◇エントランスホールをはじめ、その他の共用部分もエントランスと居室へ行くエ    レベーターの動線内に配置すると、その利用頻度が多くなる。  上の 2 つから言えることは、最も入居者同士の交流が行われている食堂を中心として、 エントランスホールおよび多目的室を配置すれば、その利用人数が多くなり、また一人 で過ごす割合も少なくなって入居者同士の交流が積極的に行われるということである。  さらに 3 番目から、利用する人数だけでなく、その利用頻度も多くするためには、そ れらの共用部分をエントランスから居室へのエレベーターの動線内に配置すればよいと いうことが言える。  以上をまとめると、   ◆自立型高齢者集合住宅において入居者同士が積極的に交流できるための共用部分    の配置は、エントランスから居室へのエレベーターの動線内に食堂を中心として、    その周辺に集中させて配置させる。 と言える。

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5-3 共用部分の利用が外出頻度へ及ぼす影響

第5章

4-2-2 から 4-2-5 においては共用部分の利用実態、4-3-1 から 4-3-11 においては周辺 利用施設の利用実態を明らかにした。  4-2-1 で共用部分は外出する前後で最も利用されているという結果が出たことから、 “共 用部分を多く利用する人は、外出する頻度も多い”ということが言えるのではないか。  この仮説の真偽を確かめるために、4-2 および 4-3 で明らかになった利用実態をもとに、 さらにそれぞれの共用部分の利用頻度別にその外出頻度を集計・分析した。

5-3-1 共用部分の利用頻度から見る外出頻度の考察   共用部分の利用頻度別(週 3 回以下と週 4 日以上)に外出頻度(1. 週 1 日未満 2. 週 2 ~ 3 日程度 3. 週 4 ~ 5 日程度 4. ほぼ毎日)を集計した。  両施設も、全体的に見ると週 4 日以上共用部分を利用している入居者の方が外出する 頻度は多いと言える。  ■エントランスホール   浦和の方が南浦和よりわずかにエントランスホールの外出頻度が高い。これは 5-2-3 において、エントランスと居室へのエレベーターの動線内にエントランスホールがある 浦和の方が、エントランスホールの利用頻度が高い”という考察から説明できるのでは ないか。つまり、外出の前後に必ず通るエントランスまでの動線内にあるエントランス ホールを多く利用するということは、それだけ外出する頻度も高いと言える。

2.5

浦和

3.25

週3日以下

週4日以上 2.5

南浦和

3

0

1

2

3

4

図 5-3-1-a エントランスホールの利用頻度別に見る外出頻度

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第5章

■食堂   とくに南浦和の食堂は、食堂の利用頻度が高いと外出する頻度が高いという関係が  顕著に現れている。

2.5

浦和

2.75

週3日以下

週4日以上 2.5

南浦和

3.36

0

1

2

3

4

図 5-3-1-b 食堂の利用頻度別に見る外出頻度

■多目的室    南浦和の多目的室では差が見られなかったが、多目的室の利用頻度別に見ても外   出頻度が 3.5 と高いため、多目的室を利用する人は外出する頻度も比較的高いとい   うことが言える。

2.11

浦和

2.67

週3日以下

週4日以上 3.5

南浦和

3.5

0

1

2

3

4

図 5-3-1-c 多目的室の利用頻度別に見る外出頻度

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第5章

5-3-2 共用部分の位置関係から見る外出頻度の考察  図 4-3-8-b において、南浦和よりも浦和の方が周辺利用施設の利用頻度は多いという ことが言えた。これは、浦和が交通量の少ない静かな住宅街に面している一方、南浦和 は交通量の多い大通りに面していて、周辺利用施設までに危険な箇所があると推測でき る(4-1-5 参照)が、これも外部環境要因に加えて 5-2 で考察した共用部分の位置関係か ら説明できるのではないか。つまり、5-3-1 のエントランスホールと同じ理由で、外出の 前後に必ず通るエントランスまでの動線内にあるエントランスホールを多く利用すると いうことは、それだけ外出する頻度も高く、周辺利用施設の利用頻度も高くなるという ことが考えられる。

5-3-3 共用部分の利用頻度別に見る周辺利用施設の利用頻度  さらに、共用部分の利用頻度が外出頻度だけでなく、周辺利用施設にどのような影響 を及ぼしているのかを見るために、共用部分の利用頻度別に周辺利用施設の利用頻度を 見た。周辺利用施設は、特に利用頻度の高かった病院・スーパー・公園を対象とする。

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第5章

■病院   浦和の多目的室以外は、各共用部分の利用頻度が多いと、病院の利用頻度が多いと  いう結果が得られた。入居者で病院を利用している人のほとんどは、特に体のどこか  が悪いというのではなく、定期検診や薬をもらいに毎週通っている。これは、決まっ  た日に外出するという、共用部分における入居者同士の交流の中で発生した習慣になっ  ている、と考えることができる。  □エントランスホール

1.75

浦和

2.5

週3日以下

週4日以上 1.5

南浦和

2.33

0

1

2

3

4

□食堂

1.6

浦和

2 週3日以下

週4日以上

1

南浦和

1.75

0

1

2

3

4

□多目的室

2

浦和

1.5

週3日以下

週4日以上 1

南浦和

2

0

1

2

3

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4

図 5-3-3-a  各共用部分の利用頻度別 に見る病院の利用頻度

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第5章

■スーパー   スーパーに関しては、病院と全く逆の結果になった。つまり、共用部分の利用頻度  が少ないほど、スーパーの利用頻度が高いという結果になった。スーパーを利用する  ということは食堂を利用せずに、各自の居室で自炊をして生活している入居者が多い  と考えられ、共用部分の利用頻度はスーパーの利用頻度に影響を及ぼさないためこの  ような結果になったと思われる。  □エントランスホール

2

浦和

1.75

週3日以下

週4日以上 3

南浦和 2.25

0

1

2

3

4

□食堂

1.65

浦和

2

週3日以下

週4日以上 2.5

南浦和

2.25

0

1

2

3

4

□多目的室

2.0

浦和

1.25

週3日以下

週4日以上 3.5

南浦和

2.75

0

1

2

3

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4

図 5-3-3-b  各共用部分の利用頻度別 に見るスーパーの利用頻度

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第5章

■公園(浦和のみ)   公園は病院と同様、各共用部分の利用頻度が多いと、病院の利用頻度が多いという  結果が得られた。公園に行く目的として考えられるのは、散歩や軽い運動など健康に  関わるものである。健康に関わる施設という点では病院と共通している。つまり、入  居者同士の交流におけるキーワードは“健康”と言えるのではないだろうか。  □エントランスホール

1

週3日以下

浦和

週4日以上

3

0

1

2

3

4

□食堂

2.5

週3日以下

浦和 4

0

1

2

3

週4日以上

4

□多目的室

1

週3日以下

浦和

週4日以上

3

図 5-3-3-c  各共用部分の利用頻度別 0

1

2

3

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4

に見る公園の利用頻度

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第5章

5-3-4 共用部分の利用と外出頻度における考察  5-3-1 から 5-3-3 までの分析結果を整理する。   ◇共用部分を多く利用している入居者は、外出する頻度も高い傾向にある。   ◇共用部分の利用頻度は、周辺利用施設の利用頻度にも影響を及ぼしていると考え    られる。   ◇周辺利用施設の中でも、病院・公園といった健康に関わる施設は、共用部分の利    用頻度が多いと、その施設の利用頻度も多くなる。  特に、3 つ目に関しては病院や公園が施設から比較的遠くに位置していたにもかからわ ず、利用頻度・満足度ともに高い数値が得られた。つまり、入居者の交流の中で、健康 維持に関わる情報交換といったことが行われているとも考えられ、それが病院などの利 用頻度と共用部分の利用頻度を関連づけているのではないだろうか。  以上をまとめると、   ◆入居者が共用部分を多く利用する、つまり共用部分における入居者同士の交流が    多く行われるほど、入居者の健康に関連する施設の利用頻度が高くなる。 と言えることができるのではないか。

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5-4 まとめ

第5章

本研究で明らかになったことを簡潔にまとめると、   ◆自立型高齢者集合住宅において入居者同士が積極的に交流できるための共用部分    の配置は、エントランスから居室へのエレベーターの動線内に食堂を中心として、    その周辺に集中させて配置する。   ◆入居者が共用部分を多く利用する、つまり共用部分における入居者同士の交流が    多く行われるほど、入居者の健康に関連する施設の利用頻度が高くなる。

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5-4 自立型高齢者集合住宅の在り方と展望

第5章

5-4-1 自立型高齢者集合住宅の在り方  5-1 から 5-3 まで、首都圏における自立型高齢者集合住宅の実態について分析、考察し てきた。  入居者は、残りの人生を楽しむための投資として高い入居金を払って高齢者集合住宅 で生活をしている。居室では、一般的な集合住宅と全く変わらない、一般の人と同じよ うな生活を送っているのだ。しかし、集合住宅全体の生活では、一般的な集合住宅と違 う点がある。それは、共用部分の存在である。健康で元気な高齢者がわざわざ高い入居 金を払って、高齢者集合住宅に移り住むのは、人間同士の交流を求めているからであり、 高い入居金のほとんどは、いざというときの安全とこの共用部分への投資である。  本研究では、共用部分の利用実態をそれぞれの施設の特性、および周辺の環境と結び つけて考察した。その結果、共用部分での入居者同士の交流が積極的に行われるであろ う共用部分の配置の仕方、また共用部分の利用が外出する頻度にまで影響を及ぼしてい るのではないかという結論に達した。  高齢者になってからの不安というのは、やはり健康面での不安が一番であろう。しかし、 その不安を一人で抱え込むのではなく、集合住宅の中でおなじ不安を持った入居者同士 で分かち合うことが、不安からくるストレスなどを解消してくれるだろうし、より健康 な生活が営めるのではないか。  そのためには、自立型高齢者集合住宅というのはやはり“共用部分での入居者同士の 交流”というものにもっと力を注ぐべきであると思う。入居者同士の交流が積極的に行 われることによって、お互いの不安を取り除き、さらに外出する頻度が増え、最終的に は“健康”につながるのではないか。  入居者が身体的な面だけでなく、精神的な面においても健康でいられる集合住宅。そ れが自立型高齢者集合住宅の在り方だと考える。

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第5章

5-4-2 今後の展望  今回の研究で、自立型高齢者集合住宅における入居者の行動の実態が把握でき、さら に施設に関する在り方を提案したが、現在高齢者の都心回帰が進んでいる一方で、首都 圏のマンションは、高層・大型化が進でおり、高齢者集合住宅も高層化が進むと考えられ、 さらに共用部分に求められるニーズの変化などが予想される。  今後ますます自立型高齢者集合住宅の必要性が高まりつつある中で、高層もしくは大 型で入居者同士が積極的な交流ができ、より健康と結びつけられる生活が営める空間を 模索していくことが、今後の高齢化社会に必須であると考える。

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おわりに

本研究を終えることが出来たのは、たくさんの人の協力があったからだと思っていま す。  生活科学運営のスタッフの皆様。お忙しい中、施設内の見学やヒアリング調査や貴重 な資料をいただきまして本当にありがとうございました。特に、総務の早川さん。入居 者の方々の負担の大きさから、一度はあきらめかけたアンケート調査を私の知らない間 に実施していてくれて驚きました。ほんと感謝しています。  ライフハウス浦和およびライフ&シニアハウス南浦和の入居者の皆様。皆様のアンケー トの協力がなかったら本研究を行うことができませんでした。ありがとうございます。  全国有料老人ホーム協会のスタッフの皆様。売っている資料をタダでいただいたりと、 いろいろお世話になりました。  ゼミの河内さんは言葉では言い尽くせないほどお世話になりました。河内さんは、論 文のテーマが全く決まっていなかった 4 月からいろいろなアドバイスをしていただき、 また僕が行き詰まって相談をもちかけると、一緒に悩んで、一緒に考えてくださって、 本当に助かりました。これからもおなじ研究室のメンバーとして、よろしくお願いします。  同じ卒論生のみんなとは、喜びや苦しみを分かち合うことができたし、みんなの存在 が論文を書く時の心の支えになりました。  中間発表などで的確なアドバイスをしてくれた研究室の先輩方もありがとうございま した。  そして、この卒論の全編を通してご指導をしてくださった渡辺先生に、心から感謝申

し上げます。

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首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

参考文献・参考資料

□自立高齢者の地域生活支援施設のあり方に関する研究   ―多摩市コミュニティセンター内の高齢者スペースにおけるケーススタディ― ����田中裕基,登張絵夢,上野 淳,竹宮健司    計画系論文集 NO.562 P.165 2002 年 12 月�  □シニア住宅と軽費老人ホームにおける          自立高齢者の欲求と入居後の適応状況に関する研究   澤岡詩野 計画系論文集 NO.564 P.251 2003 年 2 月�  □都市居住高齢者のかかりつけ医療施設の利用特性について   都市居住高齢者の地域施設利用構造に関する研究 その1   浅沼由紀,谷口汎邦,天野克也 計画系論文集 NO.488 P.121 1996 年 10 月�  □都市居住高齢者の生活特性と余暇関連施設の利用特性について   -都市居住高齢者の地域施設利用構造に関する研究 その2-   浅沼由紀,天野克也,谷口汎邦 計画系論文集 NO.492 P.119 1997 年 2 月�  □都市居住高齢者の余暇関連施設利用に影響を及ぼす施設特性について   -都市居住高齢者の地域施設利用構造に関する研究 その3-   浅沼由紀,谷口汎邦,天野克也 計画系論文集 NO.507 P.111 1998 年 5 月�  □会員ホームガイド 輝 No.21 全国有料老人ホーム協会  □高齢者住宅の将来�/�老人住宅に関する研究会�編著 社会保険福祉協会  □高齢者の世帯状態の将来推計�:�1990-2010 年�/�厚生省人口問題研究所�編集                                厚生統計協会  □高齢者のための住宅�/��地域社会研究所  □(株)生活科学運営 http://www.seikatsu-kagaku.co.jp/  □厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/ �  □社会福祉医療事業団 ワムネット �http://www.wam.go.jp/ �  □財団法人高齢者住宅財団 http://www.koujuuzai.or.jp/ �  □社団法人全国有料老人ホーム協会 http://www.yurokyo.or.jp/  □株式会社タムラプランニング&オペレーティング                    http://www.tamurakikaku.co.jp/index.html  □住宅すまいWeb http://sumai.judanren.or.jp/

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.

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2004年度 卒業論文

首都圏における自立型高齢者集合住宅の在り方に関する研究

資料編

HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.


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