食事姿勢からみた食空間の研究 - しつらいの違いと時間経過による評価 -

Page 1

U0509 早稲田大学理工学部建築学科卒業論文         指導教授 渡辺仁史

食事姿勢からみた食空間の研究

- しつらいの違いと時間経過による評価 $ 6WXG\ RQ (DWLQJ 6SDFH %DVHG RQ (DWLQJ 3RVWXUHV $Q (YDOXDWLRQ E\ ,QVWDOODWLRQ RI )XUQLWXUH DQG 7LPH3DVVDJH

日下部 真世

'HSDUWPHQW RI $UFKLWHFWXUH 6FKRRO RI 6FLHQFH DQG (QJLQHHULQJ :DVHGD 8QLYHUVLW\ Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


はじめに 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

はじめに 私がこの研究を行うきっかけとなったのは、なにげない日常生活の中で疑問という か、違和感を感じたからだ。家族や友達との生活の中で、日々食事という場面に対面 する。自宅で家族で囲む食卓。友達と学校の中庭のベンチで食べる昼食。課題に終わ れ電車の中で食べる、携帯栄養食。様々なシチュエーションと食事形態、一緒に食べ る人。実に様々な食事をしているということに気がついた。外食一つにしても、学校 の帰りにふらりと入った牛丼屋と、前もって予約して行ったイタめしやでは大分違う。 また、友達と「さぁお昼を食べよう」と言った時に、どこで、何を食べるのか。す ぐに決まる場合もあれば、お互いの意向を探り合いながらなかなか決まらないことも 多々ある。この二つの差は、相手の食事に対する価値観を知っているかいないのかに よるものだと思う。この食事に対する価値観の違いによって、大幅に食生活は違って くる。夕食はきちんと摂る人。朝食を食べない人。昼食はいつもパンの人。例を挙げ たらきりがないほど、その人の食がある。良い悪いを抜きにして、その人の食が存在 する。その原因となる価値観は、どのような要因によって決まるのか。育ってきた家 庭環境が一番に影響しているように思う。そして、その人の人生観のようなものとも 繋がっていると。趣味趣向から、友達、今の生活環境、経済状態、優先順位などなど、 ありとあらゆる要素が複雑に絡み合ってできているものだと考える。自分が生まれた 頃と、今を比較しても、生活は見違えるように変わった。Fax や電子辞書、携帯にパ ソコン、液晶テレビに食器洗い機など、電化製品だけでも目まぐるしく新製品のラッ シュだ。 食という身近で大切な問題を、ここでもう一度見直す時がきているのではないかと 思い、この研究を始めた。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第 0 章   序 論

0-1 目次 0-2 背景 0-3 目的 0-4 概要

第0章  序論


第0章 序論 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

目次 はじめに 第0章 序論                        2 0−1 目次                       3 0−2 背景                       6 0−3 目的                        9 0−4 概要                       10 第1章 食事空間と姿勢                   11 1−1   食事と空間                  12 1−1−1 食事                      12 1−1−2 食事空間                   13 1−1−3 日本の住宅の食事空間             14 1−2   しつらい                    15 1−3   食事と姿勢の関係               16 1−3−1 坐食と腰かけ食                16 1−3−2 様々な食事姿勢                 17 1−3−3 食事にまつわるエピソ ード           18 第2章 アンケート                      19 2−1   調査概要                   20 2−1−1 調査目的 2−1−2 調査日時 2−1−3 調査対象者                  20 2−2   調査方法                    21 2−3   調査結果                    22 2−3−1 調査票 A                   22 2−3−2 調査票 B                   27 調査票 B の回答例 1, 2                  28 アンケートシート(調査票 A,B)               30

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第0章 序論 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

第3章 実験方法                       33 3−1 実験概要                      34 3−1−1 実験日時・場所                 35 3−1−2 Frame-DIAS Ⅱ                35 3−1−3 実験機材                    36 3−1−4 被験者                     37 3−1−5 食事内容                    37 3−2 測定する食事パターン                38 3−3 基本姿勢                      49 3−4 実験手順                      41 3−4−1 会場セッティング                41 3−4−2 キャリブレーション               43 3−4−3 教示の仕方                   44 第4章 実験結果                       45 第5章 考察                         67 5−1 分析方法                      70 5−2   分析                      70 5−2−1 テーブルの高さ                 70 700 ㎜ ( 被験者 7 名 )  5−2−2 各被験者内の比較                72 5−3   考察                      79 5−3−1 個人差                     79 5−3−2 評価                      80 第6章 展望                         82

おわりに 参考文献

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第0章 序論 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

0−2 背景 昔と今と比べて、生活の環境が大きく変わった。今ではあたりまえとなった携帯や パソコンは 1980 年代あたりから、次々と作られ始めたわけで、今からたったの 20 数 年あまり前のことである。かつては「一家に一台」だったテレビ、ラジオ、電話などが、 今では「一人一台」の時代となり、電話は体に身に付けて持ち歩くものになった。今 後、個人化が進んで家族は解体するのでしょうか?それとも携帯電話の結びつきなど によって新たな大家族が生まれるのだろう。 戦後の家族の変遷を追うと、1950 年代の大家族と自営業者が多く、近隣共同体との つながりが強かった時代、1960 年代の団地が増え、雇用労働者と専業主婦による核家 族化が進んだ時代、70 年代から 90 年代にかけての個室とリビングルームからなる住宅、 少子化、晩婚化の時代、今日に至る携帯電話、家族関係が拡散する時代へと変化していっ た。 一方でメディアはマスメディア、パーソナルメディア、ネットワークメディアと変 化してきた。産業社会も変化してきた。 家族の変化は、これらのメディアや産業の変化が促した結果といえるか。少なくと も影響しているのは確かだ。メディアは家族や社会の変化にどのような影響力をもっ ていたのか。 メディアや産業が発達して、世の中が便利になった。場所を移動するのも、 仕事のスピードもあらゆることで、時間短縮が進み効率よくなった。コミュミケーショ ンの幅も広がった。しかし、その便利さゆえに時間感覚や、人との関係の感覚が麻痺 してきたといえる。 食事の場面にもその影響が反映されてきた。20 代の約7割は「日本人の食生活」は 悪くなっていると認識している ( 図 0-2-1)。私たちの親世代がこどもの時代は、食事中 テレビを見る事や、席をたったり、食べ残したりすることが、いけないことという共 通認識のようなものがあった。それが今は、食事中のテレビは当たり前だし、最近で は食事中の携帯をいじるこどももいる。姿勢もくずれ食べ散らかす。何が一番変わっ たかというと、食事という行為が社会の変化とともに多様化するなかで、存在意義が なくなる傾向にあるということだ。生活習慣病などという病気が叫ばれる世の中にな り、近年事態の危うさに気づき始めたといえる。あるアンケートで半数以上は食生活 に関心があり、もっと改善したいと回答している ( 図 0-2-2)。スローライフ注 1)、スロー フード注 2) といったこともその流れのひとつだろう。 そこで、多様化した社会の中での食事行為がどうあるべきか問われている。

注 1) スローライフ スピード や効率を重視した現代社会と は対照的に,ゆったりと,マ イ - ペースで人生を楽しもう というライフスタイル 注 2) スローフード 食生活を 見直そうとする運動。伝統的 な食材や料理を守り,質の良 い食材を提供する小生産者を 保護し,消費者に味の教育を 行う。イタリアで始まった運 動が世界的に広まった。また, 運動を進める同名の非営利組 織がある。スロー - フード運 動。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第0章 序論 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

日本人の食生活は全体として

図表 0-2- 1 日本人の食生 活は全体として

n=2,015 よくなっている

悪くなっている

70 歳 以上 60 代 50 代 40 代 30 代 20 代 男

女 全体 (%)

80

70

60

50

40

30

20

10

0

0

10

20

30

40

50

60

70

80

(%)

朝日新聞社「全国世論調査詳報(食生活と食品の安全性) 」 調査対象 : 全国の有権者 調査年月 :2002 年 6∼7 月

図 0-2-1 日本人の食生活は全体として

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第0章 序論 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

食生活への関心 図 0-2-2 食生活への関心

食生活にあまり関心がない 関心はあり、問題もあると思うが、特に改善したいとは思わない 関心はあるが、特に問題もないので、改善したいとは思わない 関心があり、もっと食生活を改善したいと思う 関心があり、すでに食生活改善のための工夫を実行している

3%

10%

17%

n=729

13%

57%

農林水産省関東農政局「食生活改善に関するウェブアンケート結果の概要」 調査対象:「あぐりテーブル関東」会員 調査年月 :2001.9

図表 0-2-2 食生活への関心

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第0章 序論 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

0−3 目的 姿勢を悪くする原因(しつらい・時間経過)と食事姿勢の関係を明らかにし、正しい 食事姿勢を導く食事空間の設計の手助けとなる指標を得る。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第0章 序章 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

0−4 概要

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第 1 章   食 事 空 間 と 姿 勢

1−1   食事と空間 1−1−1 食事 1−1−2 食事空間 1−1−3 日本の住宅の食事空間 1−2   しつらい 1−3   食事と姿勢の関係 1−3−1 坐食と腰かけ食 1−3−2 様々な食事姿勢 1−3−3 食事にまつわるエピソ ード

第1章 食事 空間と 姿勢


第1章 食事空間と姿勢 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

第1章 食事空間と姿勢 1−1   食事と空間 1−1−1 食事 食事(しょくじ)とは、食品を食べること。人間が生命を維持し活動や成長をするた めには、栄養素を摂取する必要があり、そのための手段が食事である。食事の時刻・回数・

参考サイト 10)http://ja.wiki pedia.org/wiki/ 食事 ウィキペディア

調理方法・内容などには文化的なものが反映される。日本では、朝食、昼食、夕食の 3回食事をとる習慣が普通である。これは、1 日のサイクルを昼間に活動し夜間は休息 することにあわせたものである。従って、深夜に勉強や業務を行う場合には夜食など をとることがあるし、朝食や昼食の間、昼食から夕食の間に間食をとることもある。 食事には、単に食べること以上の社会的意味が付与されている。同じ釜の飯を食うと いう慣用句にみられるように、複数の参加者が同時にあるいは同内容の食事を取るこ とは、共同体としての帰属意識を持つこと、あるいはそれを強化する意味がある。また、 食事に招待するということは、儀礼の意味もある。食事の対価を参加者の一部メンバ が肩代わりすることで、上下間や男女間の関係の確認が行われていることもある。自 作の手料理を食べるということで特別な関係を意味づける場合もある。 精神的・医学的な側面でいうと、精神的なストレスや異状は食欲の減退や正常な食 事ができなくなる摂食障害の形をとることがある。偏った栄養摂取、不適切な量など 問題のある食習慣は、生活習慣病の原因となることがある。また、医療の一環として 食事制限が行われる場合がある。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第1章 食事空間と姿勢 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

1−1−2 食事空間 食べる営みの場所とは、大きくとらえると空間的要因と、時間的要因と、人間的要 因という三つの要因が有機的に相関し合って、ひとつのシステムを形成している場所 ととらえられる。この三つの空間・時間・人間ともに間の字が使われていることに気 づく。 空間における間とは、もともと日本語では間であり、空間としての間は具体的には 柱と柱の間(あいだ)、壁と柱の間、壁と壁の間の意である。間を取る、間取りとは今 日の設計手法では部屋と部屋を並べる部屋取りとも言うべき、かなり西洋式のやり方 になってしまっているが、本来の日本式は「間(あいだ)取り」としての間取りであった。 時間とは時と時の間である。これも本来は単位時間を足し合わせるものではなく、 始まる時と終わる時の間であっただろう。間をとるとは、そういうことであっただろう。 間あいを取る、間に合う、などはそのへんの感覚をとらえている。 空間と時間と同じように、人間も考えてみると、これは人と人との間をいっている ことになる。人と人との間のあり方、間柄、人と人の関係の取り合いが人間、なので ある。 この、食べる営みの三要因なるものを、最も狭くとらえると、台所という空間、調 理の時間、台所に立つ人間(単数、ときに複数)、である。現代の普通のキッチンは このぐらいのことで設計が始められているように思われるが、じつはこんな程度の見 方では設計にならないはずである。わかりやすいところからいえば、ここでいう人間 とは主婦であり母である時代もあった。がしかし、いまは違う。つまり時代によって、 その人のライフスタイルによって、さまざまであり、高齢化に伴い、台所に立てなくなっ た人もいる。ある一人の人をとっても、状況は変わっていく。今は家庭によっても大 きく違う。母親が料理をしない家、祖母から母から子どもが台所に立つ家など。そして、 つくる人だけでなく、食べる人も関わってくる。食事行為という観点からすれば、つ くる人と食べる人の間のかかわり、すなわち「人間じんかん」が大きな問題となる。 それだけでなく、ここに時間の問題がからんでくる。何時に食べるのか、準備にど れだけ費やし、どのくらいの時間をかけて食べるのか。これまでは、いかに効率よく 調理するかということが重要視されていたが、息抜きや、趣味という人、団欒のとき など。人によっても、その場によっても大きく違うものとなった。一様ではなく、そ れぞれの価値観や環境に合わせて求めるものがかわってきた。食べる営みの場所とし ての空間は、台所空間、キッチン空間の位置や広さ、だけの問題ではなく、生活環境、 自然環境とのかかわりのなかでとらえられるべきである。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第1章 食事空間と姿勢 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

1−1−3 日本の住宅の食事空間 住宅の食事空間は、民族の生活様式を具体的な形として表現している。アメリカの ように歴史がそれほど長くない国でも、いまやアメリカ独自の食事空間をもちはじめ た。日本の住宅の食事空間が、食堂・ダイニングルームとして、特定の空間をもつよ

文 4) 石毛直道 監修 , 山口 昌伴 責任編集 :『「講座  食の文化」第四巻 家庭文の 食事空間 』,p.369 ∼ p.385

うになったのは、第二次世界大戦後である。 日本の住宅は歴史的に考察すると、大きな転換が何回かあった。明治の初めまでは 日本の封建社会の構成が確立されていて、一部に町人の家屋や、農民をまとめる立場 の庄屋の家を除けば、一般の住宅では大きな変化はなかった、と考えている。あると すれば、南北に長く展開する日本列島では、地域差によるもので、囲炉裏を囲むか、 竈で調理するかという、調理場の変化に合わせた食事空間であった。明治10年頃から、 住宅の構成にも変化が現れてきた。その時代の大衆の望みは、対面の場(床の間)を 持つ事、などであった。大正から昭和にかけて、洋風の空間が一般の住宅にも普及した。 終戦とともに、デモクラシーが住宅に入ってきた。とはいうものの、戦後の耐乏生活 では、贅沢なことはできず、合理的とか機能的という概念が住宅に深く打ち込まれた だけだった。戦後20年くらいから、新しい暮らし方を追求しだした。長い間日本人は、 与えられた空間で暮らしてきた。 食事の場についても同様である。戦前の日本の住空間は、精神的な合理性のうえに 成り立っていた。戦後の住宅の価値観は、全てにおいて計量化されたもののうえで表 された。このようなことは、住まいの空間にもあてはめられていて、戦後では食堂は 台所の隣にあって、食事を運ぶのに最短距離にある設計が、もっともよいものとされた。 来客重視だったのが、戦後の民主化により、来客より家族が主となったために、現代 の食事空間は住まいの中で、よい場所に設けられる事が多い。キッチンの存在が住宅 の中で、大きな割合を占めるようになった。料理をつくるだけでなく、そこから家族 のコミュニケーションが生まれ、生活がはじまる。家を家族をつなぐ、ハブとしての 機能を持つものとして考えられるようになった。それと同じく、ダイニングと称され ている場も、食事だけでなく、パソコン作業や勉強、本や新聞を読む場所であったりと、 いくつかの機能を包括していくことが求められている。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第1章 食事空間と姿勢 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

1−2 しつらい しつらいとは辞書では「ある目的のための設備をある場所に設けること」 「部屋の内装や設備などを飾りつける」とある。前者は機能としての意味合いがあり、 後者はその機能に付加価値を付ける行為の事である。もとは室礼(しつらい)と書き

文 4) 石毛直道 監修 , 山口 昌伴 責任編集 :『「講座  食の文化」第四巻 家庭文の 食事空間 』,p.321 ∼ p.327

かしこまった意味で、形式の定まった一式の行為のための道具立てのセットを意味し ていた。「日本国語大辞典」(小学館)にはしつらいには室礼の字を宛てているけれど も本当は料理と書くのだとある。料理と書いてしつらい。食べ物の調整ばかりではなく、 もっと広い意味での調製注 3)、調整注 4) をいっていた。料理の言葉の使い方も、料理(し つらい)の仕方も少しずつ変化していったと言える。この研究でのしつらいは、食べ 物の調整の次の段階の、家具の調整として料理(しつらい)、食の演出を考えた。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005

注 3) 調製 注文や好みに合 わせて作る事。飼料を調製す る。 注 4) 調整 つり合いがとれ るようにすること。基準に合 うように整えること。日程を 調整する。


第1章 食事空間と姿勢 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

1−3 食事と姿勢の関係 1−3−1 坐食と腰かけ食 立ったまま、あるいは寝転んで食べるのが日常の食事の規範とされる社会は、現在 の世界には存在しないようである。野外でしゃがんで食べたり、立食パーティのよう

文 3) 石毛直道 :『食卓文明 論 チャブ台はどこへ消え た?』,p.71 ∼ p.76

な場面は例外として、どの文化においても、屋内での普段の食事は坐って、あるいは 腰かけた姿勢で食べることになっている。ここでは、地面や床面に膝や尻をつけて、坐っ て食べるのを「坐食」、イスやベンチ状の家具に腰かけて食べるのを「腰かけ食」と表 現する。 人類の初期の生活様式である狩猟採集時代には、坐食が人類の普遍的な食事姿勢で あったと考えられる。現代にいたるまでの、一般的傾向として狩猟採集民族と遊牧民 は、地面や床面にクッションとなる草を敷いたり、敷物を置き、そのうえに直接腰を おろして食事をする坐食が普通である。定住農耕民でも寝台や高い脚をもつ机状の家 具を使用せず、住居内の床面を生活平面として、床に寝具を敷いて寝たり、床面に坐っ て作業をする生活慣習の社会では坐食が普通である。 坐食の食事様式は、床面にじかに食器を並べる方式と、食卓、あるいは食卓に相当 する食事専用の盆、マットなどのうえに食器や食物をならべる方式に大別される。食 卓を使用せず、食器をじかに床面に並べるのは、アフリカ、オセアニア、アメリカ大 陸のおおくの部族社会と、北アフリカ、西アジア、中央アジアのじゅうたんを生活平 面とする社会に一般的である。 イス、ベンチ、スツールなどに腰かけて食事をする腰かけ食は、背の高いテーブル 状の食卓の使用を前提とする。ただし、床面に直接坐らずに、ベンチやスツール状の 腰かけを使用しても、その腰かけの高さによっては坐食と変わらぬこともある。ベッ ド状の寝台を使用し、スツールやベンチなどに腰かけて生活する民族がいるが、それ らの坐具が高さ20㎝前後の背の低いもので、机や台の類とはセットにならず、食卓 を使用しないで食事をする。つまり、腰かけに坐食する社会も存在するのである。 背もたれと肘掛けを備えたチェアは、古代オリエントで王侯や貴族などの権威を象 徴する家具として出現したという。腰かけ食が、まず発達したのはイス、テーブル、ベッ ドを使用し、床面よりも高い生活平面で暮らすようになったヨーロッパである。古代 のギリシャ、ローマでは、饗宴の食事の際には寝台のような寝イスに横たわり、中央 のテーブルの食物を給仕に持ってこさせて食べた事が知られている。ただし、日常の 食事はイス、テーブルで食べたのである。この横たわって食べる宴会の風習は、中世ヨー ロッパにはひきつがれなかった。 ヨーロッパ文明をモデルとした近代化とともに世界各地で、オフィス、学校、兵舎 などの公的機関でイス、テーブルを使用するようになった。それが家庭生活にも浸透し、 イスとダイニング・テーブルで食事をする様式が普及しつつあるのが、現代の世界で ある。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第1章 食事空間と姿勢 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

1−3−2 様々な食事姿勢 一般的に食事の姿勢というと、イスやスツールに腰かけテーブルで食する場合と、 床に座してテーブルで食する場合が思いつく。しかし、立ち食いそばなどに見られる 立位による食事や、公園の芝でしゃがんで食べたり、様々な場所やシチュエーション でそれに合わせた食事姿勢で食事をしている。お祭りの屋台では、歩きながら食べる。 電車に乗りながら、自転車をこぎながら、また走りながらの食事もある。介護に見ら れるように、ベッドの上で体を起こした状態で食べさせてもらったり、ベッドや布団 で横になった状態での食事もある。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第1章 食事空間と姿勢 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

1−3−3 食事にまつわるエピソード ・コミュニケーション手段としての飲食  飲食をともにすることによって、人々の連帯感が促進されるのはよく知られるところ である。  友人たちとの飲食など私的な飲食や、また日本では法事の食事など親族での食事・神 社の祭礼に伴う氏子の直会(なおらい)・会社の宴会などの社会的性格の強い行事に伴う 食事も、コミュニケーション手段として用いられている。 ・カースト制度と食事  「浄・不浄」の概念が発達しているヒンドゥー文化では、食べ物を通じてのカースト間 の汚染を避けるため、個人単位の食事配膳が一般的で、また使い捨ての食器もよく用い られる。下位のカーストの者が使用した食器を使用すると不浄が汚染するので、露天の 飲み物は素焼きのカップで供され、飲み終ったら叩き捨てる。また外食における汚染の 心配がないよう、料理人は最上位のカーストであるブラーマンの仕事とされている。 ・食事中の音  日本では、飲食の際に発せられる音に対しての人々の抵抗は少ない。麺類や汁物をす する音、ビールを飲み干した後の吐息、食べ物をかむ音などは日常生活の中にありふれ た光景であり、音の発生は自然なことと考えられている。特に麺類は、音を立てながら でないとおいしくないと考えている人もいるほどである。  それに比べ欧米では、そのような音は他人に不快感を与えるためにできるだけ音を立 てずに食べることがマナーと考えられている。 ・食育  現代日本の子どもたちの食事は、好きなものを好きなだけ食べるという偏食傾向にあ り、栄養バランスにも偏りが見られる。また、朝食を抜いたり間食をすることによるム ラ食い、柔らかいものを好む傾向から来るあごの未発達なども問題になっている。さら にこのような歪んだ食行動が続けば、将来生活習慣病を引き起こす事も懸念されている。  このような問題に対し、子どもたちに食生活を教育して行こうという、いわゆる「食育」 の概念が広まりはじめている。欧米では数年前からの国を挙げての対策が成果を上げて おり、日本でも今年食育基本法が成立した。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第 2 章   ア ン ケ ー ト

第2章 アンケート 2−1   調査概要 2−1−1 調査目的 2−1−2 調査日時 2−1−3 調査対象者 2−2   調査方法 2−3   調査結果 2−3−1 調査票 A 2−3−2 調査票 B 調査票 B の回答例 1, 2 アンケートシート(調査票 A,B)

第2章  アン ケート


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

第2章 アンケート 2−1 調査概要 2−1−1 調査目的 食事姿勢が最近乱れてきている。では、なぜ食事姿勢が悪くなったのか、姿勢を 悪くする原因を明らかにする。

2−1−2 調査日時 2005 年 7 月 1 日に実施 2005 年 7 月 15 日回収

2−1−3 調査対象者 早稲田大学理工学部建築学科の学生に調査票を配布した

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

2−2 調査方法 正しい姿勢「基本姿勢」を提示し、自分の身近にいる食事姿勢の悪い人を探してき てもらい、調査してもらった。 A. 悪い姿勢をスケッチ・実測してもらい、姿勢が悪くなる要因を4つの項目につい て聞いた。 ながら動作注 2-1) 内的要因注 2-2) 外的要因注 2-3) その他 実家に住んでいる人、対象者がみつかる人は、調査票 A のアンケートを、一人暮ら

注 2-1) ながら動作 食事中 にテレビを見たり本を読ん だり、食事以外の事をしな がら食べる時の、どの動作 のこと 注 2-2) 持病の腰痛や、太っ たことにより姿勢がたもて なくなり悪くなった。など という、病気や、体格、心 理など内面的なこと 注 2-3) 外的要因とは、テレ ビの位置や、家具の配置な ど、食事空間の外的環境の こと。

しで対象者を見つけにくい人、また見つけられない人には、調査票 A のかわりに調 査票 B を用意した。 B. 様々な姿勢での食事を見つけてくる

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

2−3   調査結果 調査票 A と調査票 B で共通の設問は調査票 A の結果としてまとめる。

2−3−1 調査票 A □対象者が観察中に食べていた食事内容について、姿勢と食事内容の関係を聞いた ところ、 28% の人が食事内容が姿勢に影響をあたえていると答えた。 つまり、約 70% の割合では食事内容は姿勢に影響を与えないという結果となった。 □観察してきてもらった対象者の座り方は、82% と大半がイス座であった。残り 17% の人が床座で、そのうち 7% の人があぐらをかいていた。 □食事をしていた時の、視線の方向は、64% の人が正面で、残りの 36% 人が斜めの 方向を向いて食事をしていた。 □背もたれのあるイスで食事をしていた人の中で、背もたれによりかかって食事し ていた人は 34%。 □机やイスに肘をついていた人は全体の 31% □食事中の手の位置を聞いたところ、59% の人が両手とも机の上で食事をしていた。 □ 35% の人が脚を組んで食事していた □イス座のひとで、浅く腰かけてしたのは全体の 20% で、深く腰かけていたひとが 40% にも及ぶ □食事中の姿勢が前傾ぎみだった人(猫背や前屈みの人)が全体の 48% と約半数。 後ろに反っていた人は 12% であった。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

□食事に使用していたイス・テーブルを実測してきてもらったところ 座面とテーブル高さの差尺の平均が 281.2 ㎜ コンパクト建築設計資料集成の差尺の規定内であった。正しいとされる、イス・テー ブルで食べているにもかかわらず、姿勢が悪いということになる。 □調査対象者に、食事において何を大事にしているのか順序をつけてもらったとこ ろ、図 2-1 のようになった。(調査票 A と調査票 B を合わせた結果)

࢓Ǹ৔ǦȘ߳෥૷

7. 6. 5. 4. 3. ౧૷ 2. 1. 0. /. . /

0

1

2

3

4

5 6 図 2-1 食に対する重要度

‫ږ‬ඌ

8つの項目中、場所は6番目で、食事というと味や健康など身体に直接結び付く。 その次は、一緒に食事する人など団欒というイメージが食事にたいしてあるようだ。 「食事」は食べる行為だけではないので、食事の向上というのを考えると、場所に対 する意識をもっと上げていく必要がある。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

□姿勢を悪くする原因 4つの項目、ながら動作・内的要因・外的要因・その他、について調査してもらっ たところ以下のような結果が得られた。(図 2 ー 2,3,4)

ながら動作 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 テレビ

携帯

パソコン

本・新聞

勉強

会話

その他

図 2-2 ながら動作

ながら動作は、テレビが約 60% を占めている。次いで、会話、新聞・雑誌となっ ている。テレビが食事の間についている事が、当たり前となってきたことがわかる。 食に対する重要度の項目でもわかったように、食という要素に人との関わりがある ことがわかる。この数年で騒がれていた、家族の団欒・コミュニケーションという ものが浸透した結果だろう。 新聞・雑誌は食事の習慣になっている人がいる。そして、少しでも時間を節約し たいということと、食事の意味合い・食事に対する価値観が変わってきたことを表 している。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図 2-3 内的要因

内的要因は、体格が1番であった。やはり姿勢は体格に大きく影響されることが わかる。続くのは、身体の体調面である。持病の病気を抱える人や、疲れなど。内 的要因は、他のに比べて、まんべんなく様々な原因が姿勢に影響しているのがわかる。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図 2-4 外的要因

外的要因は圧倒的な結果で、テレビが1番となった。8割近くを占める。 イスやテーブルの高さや、食事スペースも上がった。がしかし、食事に対する意識 の中に食事中にテレビを見てはいけない、よくないという認識があるのだろう。そ れと同時に、外的要因とされる空間の認識、位置づけが低いためである。

その他に上がった原因 人の視線 元々の姿勢の良い・悪い 姿勢に対する意識 その日の天気ー暑い・寒い 生活が不規則ー生活の乱れが姿勢に影響する など。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

2−3−2 調査票 B 調査をしたのが大学生なので、キャンパス内での食事行動を調査した人が多かっ た。そのため、昼食時の写真が多く、地面や芝、コンクリートの塀やベンチなど、 屋外のちょっとした段差のあるところをイス変わりにし、食事している風景が多かっ た。 大学内の写真でも色々な場所で食事していて、自宅の食事風景でもダイニングセッ トのようなものだけではなかった。一人暮らしの学生が多いので、テーブルがかなっ たり、ベッドで食べたりしている人もいた。 食事の環境について、大抵の人は知識を持っている。どういう場所でとか、どう いう風に食べるとよいなどのイメージは持っているだろう。 しかし、実際の食事は日々行われ、どんどん日常化しているように思う。生活に とけ込みすぎて、改めて考えたり、意味付ける人が減ってきたといえる。その場し のぎの食卓がそこかしこにあふれている。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

調査表 B の回答例 1

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

調査表 B の回答例 2

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

2 " ) 5 0'!2 4$ " * -0 5 1 -* #3

¦ § IgZ -1B3D8 ¦ §UM IVh£w C ^¤ gZ

0 i F

@ C :; ?8B<6 = > = 7 ?9 5 & ( %-) . "

¦ §gZ p

!

+

/( % ,+ A

z ¥£n !%-)

¤

IH #f( # /, zs

¦ §j gZC I {0 i & gZ p -[_0 c C _ V C M _ +YO . .| c C _ £7@< ~ ,¡*M ~0' % ¤

V C M _ £oqC Ce C m ¤

+YO £ I0 + X

$

0 Cx CukC}C;64B ¤

_

¦ §j yEy d% Y0 v )+ F Ey IgZ0p -[_ ." .0t- P0\

% 37 #

*4

+&

<6 =( 1> <6 & "% @ -5

2,

2,

2,

;6 $ 8+ !& 0?

$

A: A: A: B6 )9 C C (/ C . ! '

% #

¦ §j I N0dI - )+ F ST K

+G# F

¢ )

] ar z kC I -z Q JC` I=9D Rl£2A?DCbWC:>B5¤ ¢ L Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第2章 アンケート 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第 3 章   実 験 方 法

3−1 実験概要 3−1−1 実験日時・場所 3−1−2 Frame-DIAS Ⅱ 3−1−3 実験機材 3−1−4 被験者 3−1−5 食事内容 3−2 測定する食事パターン 3−3 基本姿勢 3−4 実験手順 3−4−1 会場セッティング 3−4−2 キャリブレーション 3−4−3 教示の仕方

第3章  実験  方法


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

第3章 実験方法 3−1 実験概要 プレ実験 機材のセッティング場所・方法の検討 キャリブレーションできるか 各ポイントが撮影できるか

会場セッティング

本実験

キャリブレーション注 1)

注 3-1) キャリブレーション キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン と は、 Fame-DIAS Ⅱのソフト上で 3D 空間を構築するために行う作業 のこと。撮影したコントロール ポイント注 3-2) に、既知の実座 標を入れることで、DLT 法によっ て 3D 座標を計算し、3D 空間を 構築する。

教示

デジタイズ

注 3-3) デジタイズ 撮影した反 射マーカーの画面上の位置を、 数値化する作業。自動デジタイ ズと手動デジタイズがある。

注 2)

グラフ・図の作成

分析

考察 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

3−1−1 実験日時・場所 10/10( 月 ),16(日)の 2 日間 場所は、早稲田大学理工学部 55 号館 S 棟 2F- 第3会議室 追加実験を、10/29(土)に早稲田大学理工学部 9F E 系サロン で行った。

3−1−2 Frame-DIAS Ⅱ 注 3-4) 動作解析とは、身体の各部分(腕、脚、胴体など)や人間の扱う用具(つえ、ラケット、 ボールなど)の位置を数値化し、それらを客観的に評価する解析方法である。主に、 リハビリテーションにおける回復過程の診断・評価や、スポーツにおける選手間の 運動技術の比較などに役立てられる。

注 3-4)Frame-DIAS Ⅱ FrameDIAS II は、ビデオ画像から解 析ポイントを自動または手動で デジタイズする、ビデオ動作解 析システム。 様々な画像ソース を用いて、幅広い用途に使える。 ( 株式会社ディケイエイチ )

具体的な手順は、動作をビデオ撮影し、解析の対象となる部分の画面上の位置を 数値化する。この数値化作業をデジタイズといい、各時刻のビデオ画像からマウス を用いて行う。本システムのデジタイズには、手動式と自動追尾式の2つのモード がある。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

3−1−3 実験機材 テーブル・イス Home ERECTA(エレクター株式会社)

注 3-5)

というワイヤーシェルフを、テーブル・

イス(肘掛けイス)として使用した。奥行 350 ㎜シリーズの間口 1200 ㎜のワイヤー

注 3-5)ERECTA   様 々 な パ ー ツを自由に組み合わせることに よって、好みの棚がつくれる、 ワイヤーシェルフの名称(エレ クター株式会社)

シェルフで、ポストが高さ 450 ㎜と 800 ㎜の2セットを使用。肘掛けイス以外の時の イスには、座面が直径 295mm、高さ 400 ㎜のスチールイスを用いた。 食器 反射マーカーの自動検知の邪魔にならないように、黒色の食器に黒色のお箸を使 用する。お茶碗、汁碗、主菜・副菜・漬け物の皿とお箸を、エレクターのワイヤーシェ ルフの上に、330 ㎜ 360 ㎜の黒いシートを敷きそのうえに置いた。 テレビ Mac の iBookG4 の 14inch をテレビとして代用 5 分から 10 分ごとに終わる短編ものの DVD を使用 ビデオカメラ(4台)・三脚 デジタルビデオカメラ4台と、三脚4脚を使用 DV テープで撮影 布・突っ張り棒 黒い布(110 ㎝幅 10m と 150 ㎝幅 30m) 突っ張り棒(最大 280 ㎝まで伸びる)

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

3−1− 4 被験者 被験者は主に 20 代学生で、2回実験を行った。動きを比較するために全員、テー ブルの高さ 700 ㎜で実験した。また、パターンを比較するために、それぞれもう一 つのパターンで実験を行った。 参考にテーブルの高さ 400 ㎜の床座、TV 左 45 でも実験した。

表 3-1-4 被験者

属性

注 3-6)

a

性別 女

20 代

身長 ( ㎝ ) 157

b

20 代

c

d

e

f

年齢

利き手

注 3-7

実験パターン

A-2

A-1

177

A-2

A-3

20 代

173

A-2

A-3

20 代

166

A-2

B

20 代

171

A-2

C-1

20 代

168

A-2

C-2

g

20 代

162

A-2

C-3

h

20 代

177

A-2

A-4

i

30 代

168

A-2

A-4

j

20 代

163

A-2

A-4

注 3-6) 図 3-4-2 を参照 注 3-7) 左利きのの人の場合左右 反転して、右利きと同じ扱いと した

注 3-3)図3­4­2を参照

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

3−2 測定する食事パターン  コンパクト建築設計資料集成によるとテーブルの高さとイスの座面の差尺の機能寸 法は、男性が 280 ∼ 300、女性が 270 ∼ 290 ㎜である。また、アンケートの被験者が 使用していたテーブルとイスの差尺の平均は 281 ㎜と規格内である事がわかった。悪 い姿勢の人を観察したが、テーブル・イスの被験者は機能寸法に見合っていたにも関 わらず、姿勢が悪かった。そこで、3種の高さで実験を行うことにした。 アンケート結果により、テレビが姿勢を悪くする一番の原因ということがわかっ た。また、全体の3割の人が、両肘または肩肘をテーブルやイスの肘掛けに付いて いて、身体が傾き姿勢が悪くなることも、アンケートから明らかになった。そこで 高さ 700 ㎜のテーブルで、テレビと肘掛けイスのパターンも行い、全部で6パター ンのしつらえで実験を行った。 □ 1 テーブルの高さ 床から 600,700,800 ㎜の高さのテーブルの 3 パターン □ 2 テレビ 座っている位置から、左右 90 (参考までに、左 45 も撮影)の2パターン テレビまでの距離は、テレビ画面の高さの 5 ∼ 7 倍と推称されているので、テレ ビ画面の高さの 6 倍の距離とした。 今回はテレビではなく、14 インチ型のノートパソコンで代用した。高さ 215 ㎜な ので、イスから 1290 ㎜の距離(215 ㎜ 6=1290 ㎜)で、見ながら実験を行った。 □ 3 肘掛けイス Home ERECTA(エレクター株式会社)のポスト 450 ㎜のものを使用し、被験者 は一人で、イスの座面からの肘頭位置がコンパクト建築設計資料集成において 240 ㎜であったので、肘掛けは高さ 240 ㎜、幅 60 ㎜に設定した。肩幅が 400 ㎜なので 座面の幅も 400 ㎜とし、座位殿幅以上なので問題はない。イスの座面の高さは 400 ㎜である。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

A- テーブルの高さの違い(床からの高さ)

A-1 600 ㎜

A-2 700 ㎜

参考

A-3 800 ㎜

図 3--2-1 食事パターン

A-4 400 ㎜

B- 肘掛け

テーブル 700 ㎜ C-TV の位置(イスの中心から)

C-1 TV 左 90

C-2 TV 右 90 参考

C-3 TV 左 45 図 3--2-1 食事パターン

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

3−3 基本姿勢 1. 少し浅めに座る 2. 基本的にはテーブルの下で脚を組まない 3. 背もたれにはもたれない  握り拳1つ分(5∼12cm)の空間。 テーブルと体の間に拳 1 つ分。背もた  れと体の間にも拳 1 つ分  背もたれから約 8 4. 食事のマナーとしても背中を伸ばして食事中はテーブルの上に手を置く為 、  肘は 90 ∼ 100 度となる

図 3-3 基本姿勢

図 3-3 基本姿勢

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

3−4 実験手順 3−4−1 会場セッティング 食事動作を撮影するために、ある程度の広さと高さの空間を確保し、以下の順序 でセッティングする □ 1 黒い布を会場に張る   食事動作をビデオ撮影後、Frame-DIAS Ⅱで身体の各ポイントをデジタイズする  時に、身体のポイントに付けた反射マーカー

注 3-8)

が自動検知されるように、マーカ

ーの背後を黒くする必要がある。これは、このソフトに撮影した画像を取り込んだ

注 3-8) 反射マーカー 球状の発 砲スチロールに、反射テープを 巻いたもの。自動デジタイズの 検知が容易になる。

時に 0 ∼ 255 の明るさでデジタル化され、マーカーの明るさと背景の暗さの差を読  み取り、反射マーカーを検知するためである。カメラ4台から被験者を映した時に、  背後が黒くなるように、会場に黒い布を張った。4本の突っ張り棒を床と天井の間  に張り、三方にひもを通し、そのひもに黒い布を通した。カメラの配置上、被験者  の背後の一方は布が必要なかった。 □ 2 カメラ設置 DV テープをカメラに装着し、三脚にカメラを取り付ける。カメラのレンズ高さを 床から 700 ㎜の位置に設定。下図のように、四隅に三脚に取り付けたカメラを設置。

黒い布

図 3-4-1 実験会場平面(キャリ ブレーション位置)

キャリブレーション位置

1100

600

600

つっ張り棒 ビデオカメラ 図 3-4-1 実験会場平面(キャリブレーション位置)

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

□ 3 印付け 床に、三脚に対するカメラの角度、三脚位置、突っ張り棒の位置、キャリブレーショ ン位置、テーブルとイスの位置をビニルテープで印を付ける。万が一、場所がずれ た時のため、また DV テープ交換の時のために印をつけておく。 □ 4 床に黒い布を敷く。 □ 5 テーブル・イスを置く。 テーブルに使用するエレクター(二台)の高さを 400 ㎜と 700(600,800)㎜に 組み立てる。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

3−4−2 キャリブレーション □ 1 キャリブレーション撮影 会場のセッティング終了後、Frame-DIAS Ⅱのソフト上で3D 空間を構築するた めに、キャリブレーションを行う。キャリブレーションは2種類あるが、今回は3 次元 DLT、スタティック・キャリブレーションを行った。  スタティック・キャリブレーションは、撮影空間内に 6 点以上のコントロールポイ  ントが必要である。今回は 9 カ所の位置で、高さを 4 段階で、全部で 36 点のコン  トロールポイントを撮影した。標準較正ツール

注 3-9)

と呼ばれる、較正器を用いた。

キャリブレーションする 9 カ所に、標準較正ツールを移動しながら、4台のカ メ  ラで撮影した。 □ 2 デジタイズ

注 3-9) 標準較正ツール 三次元 動作解析に不可欠な較正を行う ための装置。高さ約 2.5m の範 囲をカバーするもので、垂 下式 の標点用バーには経年による反 りや変形と揺れを防ぐために 2 本のカ ーボン製パイプを使用し ている。

撮影した全 36 点のコントロールポイントをデジタイズし、既知の座標値を入力す る。 これで、ソフト内に3D 空間が構築された。

図 3-4-2 キャリブレーション

図 3-4-2 キャリブレーション

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第3章 実験方法 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

3−4−3 教示の仕方 一人あたりの実験時間は約 30 分ほどである。反射マーカーの自動検知のため、被 験者には上下黒い服を着てもらった。反射マーカーの位置がポイントからずれない ように、身体にフィットした黒い服を着用。 □ 1 被験者に、上下黒色の服を着てもらう □ 2 被験者に反射マーカーをとりつける    身体の各ポイント、全 14 カ所に取り付けた □ 3 普段通りに食べてもらう      条件として、「15 分ほどで食べて下さい」と伝え、あまりに食べ終わるの      が速い人がいないようにした。厳密に 15 分ということではないので、時間      にとらわれて、動作に影響することはない。 □ 4 実験終了    15 分経過または、食事が食べ終わったら終了とする。その後、反射マーカー     を取り外し終了。

左肩

背中

右ひじ

左ひじ 左手首

左腰 左膝 左足首

図 3-4-3 反射マーカー取り付け 位置

右肩

右腰

右手首

右膝 右足首

背面から

右側面から 図 3-4-3 反射マーカー取り付け位置

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

被験者 a

パターン 600㎜

c d

800㎜ 肘掛け

b

e f g

800㎜

TV90 左 TV90 右 TV45 左

被験者

パターン

b

800㎜

d

肘掛け

a

c

e f

g

600㎜

肘掛け

⃝ ⃝

⃝ ⃝

背中と腰のZ軸に対する曲げ角度 右ひじー右肩ー右腰 の相対角度 XY座標 XZ座標 YZ座標 XZ座標 ⃝

TV45 左

d

g

⃝ ⃝ ⃝

TV90 左 TV90 右

パターン 600㎜ 800㎜

e f

800㎜

被験者 a b c

背中ー腰 直線の軌跡 右腰ー右肩ー右ひじ 直線の軌跡 XY座標 XZ座標 YZ座標 XZ座標 YZ座標 ⃝

⃝ ⃝

右ひじ,左ひじの原点からの距離の変位 左右肩の距離 Z軸方向の変位

合成成分の変位

800㎜

TV90 左 TV90 右

TV45 左

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005

Y軸成分

⃝ ⃝ ⃝




第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−3 背中ー腰角度 机高さ 600 ㎜

図4−4 背中ー腰角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005



第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−6 背中ー腰角度 机高さ 800 ㎜

図4−7 背中ー腰角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−8 背中ー腰角度 机高さ 800 ㎜

図4−9 背中ー腰角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−10 背中ー腰角度 机高さ 700 ㎜ 肘掛有り

図4−11 背中ー腰角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005



第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−13 背中ー腰角度 机高さ 700 ㎜ TV90 度左

図4−14 背中ー腰角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−15 背中ー腰角度 机高さ 700 ㎜ TV90 度右

図4− 16 背中ー腰角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005



第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−18 肘位置変位 机高さ 800 ㎜

図4−19 肘位置変位 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−20 腰ー肩ー肘角度 机高さ 800 ㎜

図4−21 腰ー肩ー肘角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005



第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−23 肘位置変位 机高さ 800 ㎜

図4−24 肘位置変位 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−25 腰ー肩ー肘角度 机高さ 800 ㎜

図4−26 腰ー肩ー肘角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005



第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−28 肘位置変位 机高さ 800 ㎜

図4−29 肘位置変位 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−30 腰ー肩ー肘角度 机高さ 800 ㎜

図4−31 腰ー肩ー肘角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005



第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−33 両肩の Y 軸に対する角度 机高さ 700 ㎜ TV90 度左

図4−34 両肩の Y 軸に対する角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005



第4章 実験結果 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図4−36 両肩の Y 軸に対する角度 机高さ 700 ㎜ TV90 度右

図4−37 両肩の Y 軸に対する角度 机高さ 700 ㎜

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005



第 5 章   考 察

5−1 分析方法 5−2   分析 5−2−1 テーブルの高さ 700 ㎜ ( 被験者 7 名 )  5−2−2 各被験者内の比較 5−3   考察 5−3−1 個人差 5−3−2 評価

第5章  考察


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

第5章 5−1 分析方法 6 つのそれぞれのしつらいのパターンによって、姿勢の動きが異なってくるので、 その動きの特徴がわかりやすいように座標軸ごとに分析した。ムービーから計算し た身体の各ポイントの3D 座標から、関節角度や身体部位の位置座標変位のグラフ を作成し、各しつらいの動きの特徴が顕著に現れるパターンにおいて分析を行った。 さらに、肩や腰などのデジタイズしたポイントや、ポイント間の直線などの軌跡を 記録し、データの数値だけではわかりづらいところを、補足する。そのパターンの 動きの特徴を、可視化することで、データからでは読み取りにくい、個人の動きの 癖なども観察できる。 [座標軸ごとに見るしつらいの違い] 1.テーブルの高さの違い ・テーブルの高さ 600 ・テーブルの高さ 700 ・テーブルの高さ 800 これら3つの高さの違いは、背中と腰の曲げ角度に差が出てくるので、被験者の 右側真横からみた YZ 座標における、背中と腰のポイントを結んだ直線について、分 析する。 2.テレビの位置による違い ・TV の角度右 90 ・TV の角度左 90 食事中にテレビがあることで、身体がテレビの方向を向くので、腰を捻る姿勢が 予測できる。よって左右肩の XY 座標での傾きに注目する。食事の時間にも違いが でてくるのではないかと考える。 3.肘掛けの有無による違い ・肘掛けのイス この場合、肘掛けに肘をつくと身体が横にずれるため、真後ろからみた XZ 座標か ら分析する。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

□時間経過 食事は、思った以上にエネルギーを消耗する。食べ始めた頃と、食べ終わる頃には、 身体状況やしつらいも状況が変わってくる。お腹が満たされて後傾したり、食べ終 わるに従い、食べることと座ることに疲労したりする。食べ始めてから食べ終わる までの約15分間の間に、姿勢がどのように変化していくかを分析するために、以 下のようにグラフを作成した。時間の経過に伴い姿勢が崩れてきて、動きの幅は大 きくなり姿勢が悪くなると考えている。

□分析グラフ 食事空間・食事行為を、姿勢を中心に置き、時間経過というパラメータを使い、空間、 しつらいが食事姿勢にどのように影響しているのか、時間が経過することで姿勢に 変化がみられるのか、について分析を行った。 各被験者の実験の食事時間(実験時間)を T とする。食事時間 T を3等分し、 t1=1/3T t2=2/3T t3=T と す る と、t=0 ∼ t1 の 時 間 を T1,t=t1 ∼ t2 の 時 間 を T2,t=t2 から T の時間を T3 とする。 全体を 3 当分した時間の各データの平均値をだした。 算出された3つの平均値からグラフを再び作成し、グラフの要素・特徴を明確に した。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

5−2   分析 5−2−1 テーブルの高さ 700 ㎜ ( 被験者 7 名 ) 被験者の個人差を考慮するために、被験者には基準となるパターンとしてテーブ ル z の高さが 700 ㎜で食してもらった。つまり、被験者には、2回実験に参加して いただき、テーブル 700 ㎜ともうひとつのパターンで実験を行ってもらった。 そこで、食事姿勢の基本という位置づけにこのテーブル 700 ㎜がある。もう一つ のパターンと比較するためにも、この 700 ㎜のテーブルで食べる姿勢の基準をつく る必要がある。 この実験は被験者の数が少なく一般的な食事姿勢まで定義はできないが、撮影し たビデオや割り出した座標から姿勢の特徴を考えてみた。 食事姿勢は、全身をまんべんなく動かすというより、腰からしたの下半身は安定 していて、腰より上の、肩や背中、肘などの動きで特徴づけられている。足首、膝、 左右の腰のポイントはほとんど動きがなく固定されている。つまり。食事をする姿 勢として、下半身が安定していることは条件なわけで、今回は取り上げていないが、 イスの形状も重要であることがわかる。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図5−2−1 テーブル 700mm 曲げ角度:YZ                    図5−2−1 テーブル 700mm 曲げ角度 ;YZ

上半身の姿勢は、どのような要因によって影響を受けているのか。被験者7人の、 テーブル 700 ㎜で食した時の、t=T1,T2,T3 の三つの時間の平均の背中 - 腰 直線の Z 軸に対する曲げ角度のグラフ(図 5-2-1)を見ると、直線的に徐々に曲げ角度が減っ ていて、背中が垂直に近づいているのがわかる。そして、他のパターンに比べると、 グラフが山形でも谷型でもなく直線的なので、時間経過の影響をあまり受けていな い事がわかる。 軌跡図や VTR の目視によって、身体の動きの激しい人や、お箸を持つ手しか動か さないなどの比較的固定された格好で食べる人など、それぞれに特徴が見られた。 さらに、右で箸を持つため座り位置から、両肩も少し後方に旋回する。 このように、同じ状況下でも人それぞれによって動作に異なる特徴が現れる。食 事姿勢において自然と自分にとって食べやすい座り方を身につけ、それが習慣となっ ている。その善し悪しに関係なく個人の癖となっている事が、万人向けのしつらい の難しさの理由である。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

5−2−2 各被験者内の比較 被験者 a テーブル 600 ㎜ 700 ㎜の時に比べ、600 ㎜の時は前傾姿勢となっている(図 5-2-2)。テーブルの 高さが低いため、食べ物を口に運ぶ時以外は身体を起こしているので、曲げ角度が 180 に近いところで落ち着いていて、時折かがむような動きをする。被験者 a 以外 の2人を加えた3人の平均(図 5-2-3)をとると、700 ㎜ ,800 ㎜の平均にあまり差 はなかった。

図 5-2-3 被験者 a テーブ ル 600,700mm の背中と腰 の角度の時間平均の推移 図 5-2-2 被験者 a テーブル 600,700mm の背中と腰の曲げ角度の時間平均の推移

図 5-2-4 テーブル 600mm 背中と腰の曲げ角度の時間 平均の推移

図 5-2-3 テーブル 600mm 背中と腰の曲げ角度の時間平均の推移

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

被験者 b テーブル 800 ㎜ 被験者 b は , 被験者 c とは違い、800 ㎜の時の方が 700 ㎜の時より前傾姿勢に なっている。左肘 - 左肩 - 左腰(左利き)の相対角度のグラフ(図 5-2-5)を見ると、 700 ㎜に比べ 800 ㎜の方が肘が身体から離れている。左右の肘の床からの高さのグ ラフ(図 5-2-6)を見ても、800 ㎜の時の利き手側の左肘が一番床から離れていて上 がっている。つまり、食事をするのにテーブルが高くて、肘を上げないといけない という事が分かる。700 ㎜に比べ、800 ㎜の時は肘を約 200 ㎜高く上げている。

図 5-2-5 テーブル 800mm 背中と腰の曲げモーメント の時間平均の推移

図 5-2-4 テーブル 800mm 背中と腰の曲げ角度の時間平均の推移

被験者 c テーブル 800 ㎜(図 5-2-9) Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図 5-2-6 右肘ー右肩ー右 腰の総体角度の時間平均の 推移:XZ

図 5-2-5 右肘 - 右肩 - 右腰の相対角度の時間平均の推移 ;XZ

図 5-2-7 テーブル 800mm 右肘・左肘の原点からの距 離の時間平均の推移

図 5-2-6 テーブル 800mm 右肘・左肘の原点からの距離の時間平均の推移

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

被験者 c テーブル 800 ㎜ この被験者は、800 の方が 700 に比べて背中と腰の曲げ角度が浅く背が起きてい る。背中と腰の曲げ角度の時間平均の推移のグラフ(図 5-2-7)において、t=T2 の 時が平均値で言うと一番身体が起きていた。右肘 - 右肩 - 右腰の相対角度のグラフ(図 5-2-8)も、t=T2 の時に平均で肘が最も上半身に近くなっていた。グラフが山型の 場合は、食事時間が長めの人が多く、谷型の場合は食事時間が短い。山型の被験者 b は、700 ㎜のテーブルでの食事時間が 12 分で、谷型の被験者 c は、700 ㎜のテーブ ルでの食事時間が 7 分であった。

図 5-2-8 テーブル 800mm 背中と腰の曲げモ ーメント角度の時間平均の 推移

図 5-2-7 テーブル 800mm 背中と腰の曲げ角度の時間平均の推移

図 5-2-9 テーブ 800mm  右肘ー右肩ー右腰の相対 角度の時間平均の推移

図 5-2-8 テーブル 800mm 右肘 - 右肩 - 右腰の相対角度の時間平均の推移 ;XZ

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

図 5-2-10 テーブ 800mm 右肘・左肘の原点からの距 離の平均時間の推移

図 5-2-9 テーブル 800mm 右肘・左肘の原点からの距離の時間平均の推移

テーブルの高さの違いによる姿勢の変化において、同被験者でテーブルの高さを 変化させた場合、高さによって前傾の度合いが変わる。グラフの位置は、テーブル の高さが 600 ㎜と 700 ㎜ ,700 ㎜と 800 ㎜のいずれの場合も、上下どちらかにシフ トしたような2つの折れ線になっていた。グラフの形状がほぼ同じであるというこ とは、テーブルの高さは姿勢に大きな影響を与えなかったと言える。 h

図 5-2-11 テーブル 背中 と腰のまげ角度の時間平均 の推移

図 5-2-10 背中と腰の曲げ角度の時間平均の推移

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

被験者 d 肘掛けイス 肘 掛 け イ ス の 場 合、 前 記 の a ∼ c の 被 験 者 と や は り 様 子 が 違 っ て い る( 図 5-2-11)。被験者の真後ろから見た、背中と腰の Z 軸に対する角度は、テーブルの高 さが 700mm の時は食事時間中ほぼ垂直で、800mm の時は、食事中ずっと左側に傾 いていた(図 5-2-12)。t=T3 のときにはより左側に傾いている。食事が終盤に差し 掛かり、肘を付く時間が長くなっている様子がうかがえる。

図 5-2-12 肘掛けイス背 中・腰 直線の Z 軸に対す る絶対値角度の平均時間推 移

図 5-2-11 肘掛けイス 右肘 - 右肩 - 右腰の相対角度の時間平均の推移 ;XZ

図 5-2-13 肘掛けイス背 中・腰直線の Z 軸に対する 絶対角度の平均時間推移

図 5-2-12 肘掛けイス背中・腰 直線の Z 軸に対する絶対角度の平均の時間推移

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

TV テレビを見ると、両肩を結んだ面がテレビの方へ向かい、両腰は安定しているので、 身体がテレビの側へねじれる。食事をしているので、ずっとテレビに向かうのでは なく、小刻みにテレビを見ている。700mm の時に比べて、小刻みに激しく回旋して いるのがわかる。 両肩・両腰の移動距離の総和によっても、テレビを見るときは、肩を激しく動か しているのがわかる。軌跡からも肩の動きを読み取ることができる。 被験者 e TV90 左 被験者 f TV90 右 左右の違いは、箸の持つ手に関係している。普通右手で箸を持つので、食事動作 をしていると、右肩が左肩より前に出ている。よって肩は左側に開いているので、 左にテレビがあった方が自然だ。軌跡からも、右にテレビを置いた時ははっきりと 違いが出たが、左側にテレビがある時は、一見 700mm の時と同じ軌跡に見える。

図 5-2-13 テーブル高さ 700mm TV90 左 両肩の z 軸に対する角度の時間平均の推移 ;XY

図 5-2-14 テーブル高さ 700mm 両肩の z 軸に対する角度の時間平均の推移 ;XY

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

5−3   考察 5−3−1 個人差 体格や、その人固有の姿勢の癖・特徴を考慮するため、今回の実験では基準を設 けその基準と比較する事で解決した。 基準の一つは、「第3章 実験方法の3節『基本姿勢』」である。 もう一つは、テーブルの高さが床から 700 ㎜のパターンである。被験者にはこの 700 ㎜のパターンと、もう一つのパターンの2種実験した。床から 700 ㎜のパター ンとの違いを比較することで、その違いを他の被験者のパターンと組み合わせ比較 することによってその考察をした。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

5−3−2 評価 反射マーカーを取り付けた身体の6つの各ポイント(腰・背中・右肩・左肩・右腰・ 左腰)の移動距離の総和を算出した。値が大きいほど動いたことになり、基本姿勢 からのずれが激しいということになる。6つのしつらいパターンごとに、各ポイン トの移動距離の総和の小さい順に順序付けを行った(表 5-3-1)。 表 5-3-1 各パターンごとにおける身体の各部位の移動距離の総和の順位

600

800 肘掛けイス TV90 左 TV90 右

2 背中

5485

8615

腰 2476

背中 4683.5

3130 腰 2901 腰

4635 背中 6015 背中

腰 2443.833333

700

パ タ ー ン

移動距離の総和

小さい 1 腰

1228

背中 6174

背中

3 右肩

4 左肩

14230

18234

左肩 8421.5

右肩 11093

左肩 10351.83333

4721

左肩

右肩 11050

左ひじ

8147 左肩 8875 左肩

8537 右肩 9303 右肩

9253

10929

5 右ひじ

大きい 6 左ひじ

24509

29679

左ひじ 13014.5

右ひじ 20479.5

10246 左ひじ 10104 左ひじ

17278 右ひじ 15520 右ひじ

左ひじ 13413.33333

右肩

17110

右ひじ 19174

右ひじ

28865

すると、各ポイントの全パターンにおいての順位を足し合わせて平均すると、腰、 背中、左肩、右肩、左ひじ、右ひじの順に動きが大きくなった。腰はほぼ固定位置 を保ち、背中の動きの支点となる。左右の肩・肘のポイントが両者とも右の方が動 きが激しいのは、多くの人が右利きであるためである。 6つのポイントの移動距離の総和の順位は、しつらいが変わってもほぼ同じ結果 となった。身体の各ポイントの動きの大きさの度合いに、相対的な差はみられない ということになる。しかし、移動距離の総和を数値的にみると値に違いがあるので、 次に身体の各ポイントごとの移動距離の総和を、しつらいの違いによって順位をつ けた(表 5-3-2)。

表 5-3-2 身体の各部位ごとにおける各しつらいパターンの順位 各ポイント 小さい

移 動 距 離 の 総 和

ͬ‫؂‬

‫؂ی‬

ͬǿǥ

‫ی‬ǿǥ

லੈ

‫ڮ‬

0

RT7.Ň‫ی‬ 71.1 ీџǞȤȹ /.024

ీџǞȤȹ 6/25 6.. 620/,3

RT7.Ň‫ی‬ /330. ీџǞȤȹ /5056

ీџǞȤȹ 6315 RT7.Ň‫ی‬ /./.2

ీџǞȤȹ 2413 6.. 2461,3

RT7.Ňͬ /006 5.. 0221,611111

1

RT7.Ňͬ /.707

RT7.Ň‫ی‬ 6653

5.. /7/52

6.. /1./2,3

RT7.Ňͬ 250/

6.. 0254

5.. //.3. 6..

RT7.Ňͬ 7031 5..

6.. 0.257,3 4..

5.. /12/1,11111 RT7.Ňͬ

RT7.Ň‫ی‬ 4./3 5..

RT7.Ň‫ی‬ 07./ ీџǞȤȹ

3

//.71 4..

/.13/,61111 4..

023.7 RT7.Ňͬ

/5//. 4..

4/52 4..

1/1. 4..

4

/201.

/6012

06643

07457

64/3

3263

/

2

大きい

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第5章 考察 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

これを各ポイントごとのパターンの順位を、足し合わせて平均をとると、肘掛け イス、TV90 左、800mm、TV90 右、700mm、600mm の順に全体のポイントの動 きが増えた。 肘掛けは、食事中に肘掛けに肘を置き上半身が安定してしまうので、動きが少な くなる。 TV90 左が次いで動きが少なかった。これは、右利きの人が多いため右で箸を使う と、自然と右肩が左肩より前に出てきて、身体が左に開いている。そのため、TV が 左にあると右に比べて元々身体が左に開いているので動きが少なくなる。また、TV を見る時首を回旋させて見るので、ある程度角度がつかないと、姿勢に影響しない。 それに加え、TV があると TV を見ている時動きが止まるので、移動距離の総和はそ れほど大きくならなかった。また、角度が大きくなりすぎると TV を見ないで聞くよ うになるので、姿勢への影響が少なくなる。 800mm は、テーブルが高いと前傾姿勢にはならず、食べる方の肘が他の場合に比 べて上がる。食べるたびに肘が上がるので、利き手の動きが大きくなる。その反面、 あまり前傾姿勢をとらないので他のポイントはそれほど動かない。 800mm の時より、TV90 右の方が利き手の肘の動きが大きかった。テレビが右側 にあると、左に開いている身体を右に向けなければならない。左肘の変位も大きく なる。右腰の移動距離の総和は他のパターンの中で一番少ない。つまり、右腰を中 心に回旋の分析をしなくてはならない。 700mm は全体の中で、2番目に動いているパターンとなった。各ポイントでそれ ぞれ順位が異なる。全体では動きは激しいが、右肘はあまり動いていなかった。食 べる行為において利き手の肘は重要である。右肘に負担が少ないという点において は、700mm のテーブルの高さは食事に向いていると言える。 600mm は動きが最も大きかった。テーブルが低いと、食べ物を口に運ぶたびに前 に大きくかがむ。他のパターンよりもかがむ回数が増える。また、かがむ角度も深 いので変位が大きくなる。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


第 6 章   展 望

第6章  展望


第6章 展望 食事姿勢から見た食空間の研究 ̶しつらいの違いと時間経過による評価̶

第6章 展望・問題 この研究では多くの被験者に実験に参加してもらうことができず、姿勢としつらえ の関係の一般解のようなものまで到達することはできなかった。体格の差や、元々の 姿勢の良い悪い、またその人その人が持つ癖があることがわかり興味深かった。簡単に、 個人の姿勢を測り分類することができたら、その人に対して固有のデザインのイスや テーブルだけでなく、部屋や住宅などにもつなげていけたらよいと思った。 今回は食事中の姿勢と時間経過・変化した生活に注目して、食を改めて研究をしたが、 食事というものは、基礎調査にもあるように、食に関する行動全てを包括する、広義 の食事としてとらえる事ができる。捉えていく必要がある。食を全体的にデザインする、 スローフードのようなフードスタイルとでもいうのか、そのようなものと建築がどの ように関わっていくのかを明らかにしていく事で、人にやさしい新たな空間を生み出 すことにつながると思う。

Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2005


Turn static files into dynamic content formats.

Create a flipbook
Issuu converts static files into: digital portfolios, online yearbooks, online catalogs, digital photo albums and more. Sign up and create your flipbook.