高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
Introduction
はじめに HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.
はじめに
1
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 はじめに
私は高いところが苦手である。つり橋や片持ち梁、急な階段やエスカレ ーターなどでは思わず足がすくんでしまう。卒業論文にあたり、高所に
おいてデザインがどの程度人の心理に影響を与えるのか、またどの ようなデザインが心理的なストレスを緩和できるのかを研究したい と考え、今回のテーマを選んだ。社会的にも高所におけるデザイン が高所における不安を助長しているといわれていて、その精神的ス トレスを緩和させることは、そこで活動する人間の精神衛生を保つ ための一つの手段であると考えられる。
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はじめに
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
Contents
目次 HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.
目次
3
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
目次 p.1
はじめに
p.3
目次
p.6
第1章 研究目的 1-1 研究目的
p.8
第2章 研究背景 2-1 超高層化 2-2 高層建築とストレス 2-3 高所ストレスの歴史
p.15
第 3 章 語句の定義 3-1 高所ストレス 3-2 精神性発汗量 3-3 遮蔽割合 3-4 遮蔽位置
p.20
第4章 研究の流れ 4-1 研究の流れ
p.22
第5章 基礎研究 5-1 高所恐怖症 5-2 精神性発汗 5-3 皮膚電位計
p.31
第6章 研究方法 6-1 仮説 6-2 パタン化 6-3 ヴァーチャルリアリティ映像作成 6-4 実験 6-4-1 被験者数 6-4-2 被験者の選定 6-4-3 実験器具
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目次
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
6-4-4 実験方法
p.50
第7章 実験結果 7-1 データ処理の方法 7-1-1 精神性発汗量の測度 7-1-2 個人差について 7-2 実験結果
p.63
第8章 考察 8-1 ストレス反応量とパタンの遮蔽割合との関連 8-2 ストレス反応量とパタンの遮蔽位置との関連 8-3 残された問題
p.72
第9章 展望 9-1 展望
p.74
おわりに 参考文献
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目次
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研究目的 Method
chapter 01
01
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研究目的
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1−1 研究目的 視界の遮蔽割合と遮蔽位置からみた高所におけるデザインと高所ストレ スとの関係を、生体反応計測を用いて明らかにすることを目的とする。
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研究目的
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研究背景 Background
chapter 02
02
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研究背景
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2−1 超高層化
Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/
日本における高さ 100m 以上の超高層ビル数は、1960 年代は霞ヶ関ビル ディング(1968 年竣工、高さ 147m)と神戸商工センタービル(1969 年竣 工、高さ 109m)の 2 棟のみであったが、1970 年代末には 30 棟を超えており、 この頃に都市部は超高層化時代に突入したといえる。 2005 年 6 月末時点で、日本で最も高いビルは 1993 年に竣工した横浜ラ ンドマークタワー 70 階建、296m である。 世界で最も高いビルは台北国際金融センター(台北 101、台湾・台北)、 101 階建、508m である。 日本においては、法律上、高さ 60m 以上の高さのビルが高層ビルに該当 し、一般には 100m 以上の高さのビルが高層ビルとみなされている。なお、 現在研究が進められている高さが 1km を超えるビルは、超超高層ビルもし くはハイパービルディングという。
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研究背景
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日本
1980-1990 アジアで超高層ビル・建設ラッシュ ペトロナスタワー・452m・竣工 (マレーシア・1997)
1970 ワールドトレードセンター・417m・竣工 (ニューヨーク・1972) シアーズタワー・442m・竣工 (シカゴ・1974)
1930-1650 クライスラービル・319m・竣工(ニューヨーク・1930) 1960
Metropolitan Life・213m・竣工(ニューヨーク・1909) 1910-1920 Woolworth Build.・241m・竣工(ニューヨーク・1941)
横浜初の超高層ビル・天理ビル・101m・竣工 (1972・昭和47) 大阪初の超高層ビル・大林ビル・120m・竣工 (1973・昭和48) サンシャイン60・239m・竣工(1978・昭和53) 東京都庁・243m・竣工 (1991・平成3) 横浜ランドマークタワー・296m・竣工 (1993・平成5) 阪神大震災・神戸の超高層ビル・震度7に耐える (1995・平成7) 大阪ワールドトレードセンター・256m・竣工 (1995・平成7) 大阪りんくうゲートタワー・256m・竣工 (1995・平成7) 名古屋・JRセントラルタワーズ・245m・竣工 (1999・平成11)
建築基準法により、ビルの高さ・31mに制限 (1919・大正8) 関東大震災(1923・大正12) 終戦(1945・昭和20) 建築基準法の高さ・31m制限徹廃 (1962・昭和37) 日本初の超高層ビル・霞ヶ関ビル・147m・竣工 (1968・昭和43) 神戸初の超高層ビル・貿易センタービル・109m 竣工(1966・昭和44) 日本で超高層ビル・建設ラッシュ始まる 京王プラザホテル・169m・竣工 (1971・昭和46・新宿副都心最初の超高層ビル)
Masonic Temple Build.・20階・竣工(シカゴ・1894) American Surety Build.・21階・竣工 (ニューヨーク・1895) St. Paul Buid.・94m・(ニューヨーク・1899) 1900 エスカレータの実用化(1890) 日本初の近代建築(鉄骨構造)・三井銀行本店・ 竣工(1902・明治35) 世界初の超高層ビル Park Row Building・117m 竣工(ニューヨーク・1900)
年代 世界 1880 シカゴで近代高層ビル(鉄骨構造)建設ラッシュ始まる(シカゴ大火後の再建) 世界初の近代高層ビル・Home Insurance Build. 10階・竣工(シカゴ・1883) エレベータの実用化 1890 Rand McNally Buiid.・36m・竣工(シカゴ・1891) エスカレータの発明(1895) Monadnock Buid.・16階・竣工(シカゴ・1892)
表 2-1-1 世界・日本の超高層ビル歩み
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研究背景
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452m 452m
508m 508m
○ Taipei 101 2004
442m 442m
○ Petronas towers 1998
図 2-1-1 世界一超高層ビルの変遷
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417m 417m
○ Sears Tower 1974
○ World Trade Center 1971-1978
318m 318m
381m 381m
○ Empire Statge 1931 ○ Chrysler 1930 282m 282m
○ Manhattan Company 1930 241m 241m
○ Woolworth 1918 213m 213m
○ Metopolitan Life 1909 186 186
○ Singer 1908 ○ St. Paul 1888
95 95
○ Manhattan Life 1884 ○ Masonic Temple 1882
94 94
107 98 107 98
122 122
○ Park Row 1899
○ World 1890
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研究背景
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2−2 高所恐怖 畑山俊輝:感情心理学パースペクティブ
恐怖は、回避行動や逃避行動を引き起こし、危険な脅威から身を守るた
- 感情豊かな世界 北大路書房、2005.2
めに不可欠な情動である。しかし恐怖をもつには不合理な対象であったり、 恐怖が不合理なほどに強すぎたりすれば、生活に支障を生じる。男性が女 性に接触できないほど恐怖をもっては困るし、カエルが怖くてカエルが出 そうな道をとおれないようでも困るのである。 「特定の恐怖症 (specific phibia)」は ①ある特定の対象や状況、出来事に対して、不合理な強い恐怖が喚起され、 長期間にわたって持続する ②恐怖がふだん、対象や状況などの回避や逃避につながる、あるいは恐怖 に耐えることで苦しい苦痛を感じる ③その結果、生活に支障を生じる などの症状を示す恐怖症である (DSM-IV-TR:American Phychaiatric Association, 2000)。 恐 怖 に は 厄 介 な 点 が あ る。 ワ ト ソ ン と レ イ ナ ー (Watson & Rayner, 1920) は幼い男の子にシロネズミ恐怖の条件付けを行ったが、この例に端 的に示されているように ①少ない回数で学習がすばやく成立する、 ②他の類似した属性をもつ刺激によっても同様な反応が起こる「凡化」が 生じやすい、 ③いったん学習した恐怖の対象に対して逃避や回避行動が生じることで消 去の機会が奪われ、恐怖が持続、固定されやすい、 という特徴である。 恐怖のこうした特徴は、危険度の高い不安定な環境で生存するためには 必要な安全機構である。しかし、比較的安定した環境の中で、恐怖をもた ないほうが望ましい対象に恐怖をもつようになったり恐怖が過剰になった りすれば、適応的な行動さえも制限される結果になる。 特定の恐怖症の対象は、無視、動物、高所、対人的な状況から傷、雷 のような自然現象まで多岐にわたっており、ウォルピとラング (Wolpe & Lang, 1969) の恐怖対象調査質問紙 (The Fear Survey Schedule) には 108 もの対象が含まれている。高所恐怖症 (acrophobia; fear of heights) も、 特定の恐怖症の一つである。
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研究背景
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2−3 イメージの感情喚起 畑山俊輝:感情心理学パースペクティブ
□現実体験へのシュミレーションとしてのイメージ体験
- 感情豊かな世界 北大路書房、2005.2
われわれはイメージによってある程度は現実に匹敵する感情が喚起され ることを経験的に理解している。そうした体験の主観的側面だけでなく、 イメージのもたらす感情効果は、心拍、皮膚電気反応、筋電図などの心理 生理学的な指標を用いた基礎的な研究によっても確認されてきた。感情を 喚起する状況のイメージ想起は、おおむねその状況に見合った感情を生み 出すだけでなく、イメージによって喚起される感情が異なれば、それに応 じて各種心理学的指標も異なるパターンを示すことが認められている。 こうした感情を喚起するイメージの心理学的効果に関しては、シェイク をクンゼンドルフ (Sheikh & Kunzendorf, 1984) に詳細な展望がある。た とえば不快感情のイメージ想起でいえば、自分が氷の中に手を入れると ころをイメージすると、直接体験させたときと同様に心拍数が上昇する (Craig, 1968)。恐怖場面をイメージ想起したときの心理生理学的反応パ ターンは、直接経験におおよそ一致し、その心拍数や皮膚伝導度が上昇す る (Crossberg & Wilson, 1968)。その際、恐怖場面にいる自分を外から観 察するようなイメージより、その場にいる自分の視点を通したイメージ想 起のほうが、皮膚伝導度の上昇が大きい (Bauer & Craighead, 1979)。ま たねずみ恐怖をもつ学生にねずみがいる場面をイメージさせると、中性場 面をイメージさせた場合に比べて、ベースラインからの心拍数と皮膚電気 反応に大きな変化が現れることも確認されている。 快感情に関して、バルナら (Varana, 1993;Witvliet & Varana, 1995) が喜びとリラックスという 2 つの快感情を誘発する場面のイメージが、感 情の主観的体験、身体反応、そして顔の表情に関する筋活動にどのように 影響をもたらすのかを検討している。それによると、喜びの場面のイメー ジはリラックス場面のイメージよりも心拍数を増加させること、リラック スと喜びのイメージは両方とも眉をひそめるといったしゅう眉筋の活動量 を減少させ、喜びのイメージは笑顔を作り出す大頬筋の活動量を増加させ ることが確認された。つまり喜びやリラックスといった快場面のイメージ は、それぞれの感情の特徴に応じて、身体的覚醒と顔面の表情筋の活動の 変化をもたらしたのである。われわれは楽しい場面をイメージするだけで、 思わず笑顔になったり険しい表情が緩んだりしてしまうのである。 このように、われわれのイメージ上の経験は、実体験に匹敵する感情 喚起効果を持ちうることは確かなようである。しかし注意しなければなら ないのは、こうした感情的なイメージ体験は不安定なところがあり、必ず しもいつでも誰にでも同じような効果をもたらすわけではないということ である。イメージがもたらす感情効果の強さにはいくつかの要因が関与し ていると考えられるが、その一つがイメージを想起し体験する能力、すな
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研究背景
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わちイメージ能力の個人差である。イメージ能力の個人差である。イメー ジ能力には、鮮明性、イメージ統御性、イメージ経験への没入の 3 つの 次元がある。この中ではイメージ鮮明性が最もよく研究されている。一般 に、強い感情がともなうイメージ想起時の心理生理的反応は、イメージを いかに鮮明に経験できるかという能力にかなり依存する (Miller et al, 1987)。没入性も重要であり、イメージの体験的な迫真性との関連がしば しば指摘されている。イメージ能力のほかにも、あとで述べるように、イ メージ体験への意味づけ、身体反応への注意の向け方も効果を大きく左右 する要因となってくる (Lang, 1979)
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研究背景
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語句の定義 Definition
chapter 03
03
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語句の定義
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3−1 高所ストレス 本研究では「人が高所において感じるもの」を高所ストレスと定義する。 これには「高所によって精神的・肉体的に負担となる刺激や状況」と、逆 に「特有のスリル感」が存在するが、これは人によって異なる。皮膚電位 計では高所ストレスの反応を測定することはできるが、この二つのうちど ちらが強いのかを特定することは難しい。
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語句の定義
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3−2 精神性発汗量 宮田洋:新生理学 1 生理心理学の基礎
本研究における高所ストレスによる精神性発汗量とは、高所ストレスに
北大路書房、1998.5
よって生じた皮膚電位計の反応量を示すものとする。反応量のグラフには 陰陽二相性波と陽性波の 2 種類があり、陰陽二相性波の場合は、陰性波成 分と陽性波成分の振幅の絶対和を反応量とし、陽性単相性波の場合には立 ち下がり時点を基線とした各反応の頂点時までの振幅を反応量とする。
刺 激
反応量
陰陽二相性波
刺 激
反応量
陽性波
図 3-2-1 皮膚電位計の反応量
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語句の定義
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3−3 遮蔽割合 本研究では遮蔽割合を、「視界の角度のうち、手摺など遮蔽物の角度の 占める割合」と定義する。単位は百分率。 視界の角度とは、断面でみたときの、水平方向から床端部までの角度を 指す ( 図 3-3-1 参照 )。
水平方向
視界の角度
床端部
遮蔽物の占める角度
遮蔽物 遮蔽割合 = 遮蔽物の占める角度 / 視界の角度 ×100(%)
図 3-2-1 遮蔽割合の定義
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語句の定義
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3−4 遮蔽位置 遮蔽物の位置を示す。視点を中心とした角度であらわす。単位は度。 遮蔽位置①は、断面でみたときの、水平方向から上部遮蔽物の対角線の 交点までの角度を指す。 遮蔽位置②は断面方向からみたときの、水平方向から下部遮蔽物の外側 上端部までの角度を指す ( 図 3-4-1 参照 )。
遮蔽位置①
遮蔽位置②
遮蔽物
図 3-3-1 遮蔽位置の定義
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語句の定義
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研究の流れ Flow
chapter 04
04
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研究の流れ
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4−1 研究の流れ
1
パタン化
2
VR 映像の作成
3
実験:HMD での VR 映像/皮膚電位計での計測
4
VR 映像を見た時の精神性発汗量を計測
5
高所ストレス反応量と遮蔽割合と遮蔽位置との関連を考察
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研究の流れ
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基礎研究 Basic Study
chapter 05
05
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基礎研究
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5−1 精神性発汗 宮田洋:新生理学 1 生理心理学の基礎
精神的に興奮すると掌や足底に汗がにじみ出る。試験答案を書いている
北大路書房、1998.5
さなかに、手指の汗でペンが滑り非常に焦ったという報告も聞く。他方、 夏場に止めどなく出る不快な発汗もある。このように発汗には精神性発汗 と温熱性発汗の2種類が知られている。精神性の発汗部位は掌と足底であ り、温熱性の発汗部位は掌・足底の部位を除いた全身の皮膚がそれに相当 する。精神性発汗は生体が緊急時に際して対処する行動ー戦うか、逃げる かーと密接に関連した発汗といわれている。闘争時の掌発汗は、武具を手 から離れないようにしっかり握るという目的にかなうものであり、闘争時 の足底発汗には地面を蹴る際の摩擦を大きくするという目的にかなうもの である。また掌が適度の汗で湿れば、手先の操作は容易になり、触覚の弁 別力も優れたものになる。これら精神性発汗はいずれも太鼓の祖先の名残 りー環境に対する進化の行動的適応ーだとされている (Edelberg、1972)。 一方、全身の温熱性発汗は体温の過上昇を防ぎ、体温の恒常性を維持する 生理的な反応であり、この温熱性の発汗無しに、生命活動を維持すること は不可能である。
表:5-2-1 皮膚電気活動 (EDA) の生物学的な意義
1. 掌と足底の汗腺活動増加 = 把握力とバランス ( 摩擦 ) の増加 把握力とバランス ( 摩擦 ) の増加 = 俊敏な動きを可能にする ( 逃走 / 闘争 )= 生存力が増す 2. 皮膚の湿潤 = 切り傷を受けにくい このように、脅威状況に遭遇したとき、脳は交感神経を介して、皮 膚を適切な湿潤レベルに調節する。比喩的にいえば、皮膚は " 最初の心 理的な防御機構 " とみなすことができる。
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基礎研究
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表:5-2-2 汗の種類と特徴
株式会社スキノス HP http://www.skinos.co.jp/jp_ver5/info /sweat_jp.htm
温熱性発汗
体温調節のため、暑いときや運動中にかく
精神性発汗
感動したとき、興奮や、緊張したときにかく
味覚性発汗
料理を味わうとすぐ出るが食べ終わるとすぐにひく
不感蒸泄(散)
常時皮膚を潤す
温熱性発汗
精神性発汗
不感蒸泄(散)
発汗部位
右記以外の全身の皮膚
手掌・足底部の皮膚
全身
発汗刺激
温熱性刺激
精神性刺激
なし
発汗量
多い
少ない
一定
発汗潜時
長い
短い
-
エクリン腺
エクリン腺
組織液の水分
汗腺
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基礎研究
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5−2 皮膚電位計 宮田洋:新生理学 1 生理心理学の基礎
1.EDA とはなにか
北大路書房、1998.5
精神性の発汗を電気的に捉えたものが皮膚電気活動 (Electrodermal activity:EDA) である。皮膚電気活動の測定法には、掌や手指に装着した 一対の電極間に微弱な電流を流し、皮膚の見かけ上の抵抗変化を調べる通 電法 (Exosomatic method) と、微弱な電流を流すことなく、一対の電極間 の電位差を直接測定する電位法 (Endosomatic method) とがある。いずれ も交感神経支配下の汗腺活動を電気的に測定して、被験者の情動状態、認 知活動、情報処理過程を評価する方法である。 < 名称 > 通 電 法 及 び 電 位 法 の い ず れ を 使 用 し て も、 記 録 上 は 一 過 性 の 反 応 (Response) と緩徐な変動 (Level) が観察される。通電法で測定される一 過 性 の 反 応 に は、 皮 膚 抵 抗 反 応 (Skin resistance response:SRR) と 皮 膚コンダクタンス反応 (Skin conductance response:SCR) がある。また 通電法で測定される緩徐な変動には、皮膚抵抗水準 (Skin resistance level:SRL) と皮膚コンダクタンス水準 (Skin conductance level:SCR) が ある。抵抗反応 ( 水準 ) とコンダクタンス反応 ( 水準 ) の相違点は測定 単位系のみにあり、いずれも通電法であるという点では同じである。通 電法で測定される SRR、SRL を合わせて皮膚抵抗変化 (Skin resistance change:SRC) とよび、SCR、SCL を合わせて皮膚コンダクタンス変化 (Skin conductance change:SCC) とよぶ。電位法で測定される一過性の反応には、 皮膚電位反応 (Skin potential response:SPR) であり、同じく電位法で測 定される緩徐な変動は、皮膚電位水準 (Skin potential level:SPL) であ る。SPR と SPL を合わせて皮膚電位活動 (Skin potential activity:SPA) とよぶ。さらに SRC、SCC と SPA を合わせて皮膚電気活動 (Elctrodermal activity:EDA) とよぶ。
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基礎研究
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表:5-3-1 皮膚電気活動 (EDA)
通電法
電位法
皮膚抵抗変化 SRC
皮膚コンダクタンス変化 SCC
皮膚電位活動 SPA
一過性の反応 ( 皮膚電気反応 ) EDR
皮膚抵抗反応 SRR
皮膚コンダクタンス反応 SCR
皮膚電位反応 SPR
緩徐な変動
皮膚抵抗水準 SRL
皮膚コンダクタンス水準 SCL
皮膚電位水準 SPL
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基礎研究
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2.EDA の測定法
北大路書房、1998.5
①準備 EDA を測定するには電極、電極糊、増幅装置、記録器が最低限必要であ る。加えて、音・光の刺激提示装置や磁気記録装置などあれば申し分のな い測定が出来る。被験者は外部の物音、実験者や検査者動きに敏感であり、 その影響は EDA に直接反映する。したがって測定時には被験者を防音室に 隔離すると良い。脳波の測定室を利用するのも一つの方法である。被験者 を隔離する防音シールド室内の温度は、気温による温熱性発汗を抑制する ために、22±1℃の範囲内に保つことが望ましい。上記のような測定室条 件を確保できない場合には、出来るだけ静かな部屋を利用すれば良い。 < 電極の装着 > EDR は精神性発汗部位である掌、手指、足指から測定できる。SPA の測 定では、一側掌の小指球部または第2指か第3指の腹側部 ( 中節掌面 ) に 探査電極を配し、同側の前腕屈側部に基準電極を配して、それぞれテープ で固定する。電極の装着部位は前もって酒精綿で清拭し乾燥させておく。 乾燥が不十分なことは、表皮が湿潤していることを意味する。表皮の湿潤 は汗孔閉鎖を引き起こし、汗腺機能を妨害するので,EDA 測定には具合が 悪い。
中節
小指球
単極配置 前 前 腕 部 基準電極
肘 図:5-3-1 SPA 測定の標準電極配置 (Venables & Christie,1980)
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基礎研究
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②分析法
北大路書房、1998.5
一般に EDR の測度には反応振幅、反応の時間変数、出現頻度がある。測 度は研究目的によって選択する。 (1)SPR の振幅 SPR には極性を異にする単相性の反応や多相性の反応が出現するので、 反応の計測は若干煩わしい。一般的に刺激に対して出現した陰性波と陽 性波の振幅は、反応の立ち上がり、立ち下がり時点を基線として、各反 応の頂点時までを、また陰陽二相性波は刺激時点を基線として、陰性波 の頂点時までと陽性波の頂点時までをそれぞれ求める。単位はミリボル ト (millivolt:mV) である。反応の極性を無視した変化幅を反応量として (magnitude) として計測する方法もある.この場合は陰性波成分と陽性波 成分の振幅の絶対和が反応量となる。EDR は刺激呈示後 3 秒以内に出現し た反応を計測の対象とする。 (2)SPR の時間変数 陰性単相波と陽性単相波の場合には、刺激呈示から SPR が出現するまで の時間を反応潜時 (latent time)、反応出現時点から反応の頂点時までの 時間を頂点時間 (peak time) という。陰陽二相性波の場合は、反応出現時 点から陰性波成分の頂点時までの時間を、また反応出現時点から陽性波成 分の頂点時までの時間を頂点時間 (peak time) という。 ③標準値 生化学的な測定や検査による正常値や異常値という概念は、情動指標と しての EDR に少なくとも現時点では適用できない。ただし、被験者の状態 像を把握する観点からいえば、無刺激時に EDR が散発的に出現しているか ぎりでは取り立てて問題視する必要はない。これに対してなんら外的刺激 が存在しないにもかかわらず、EDR が持続的に多発している場合には、そ の背景に不安などの情動因子の存在を十分推測できる。刺激に対する反応 に慣れが生じにくい場合も事態は同様である。
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基礎研究
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振幅 刺 激
潜時 頂点時間
陰性波
刺 激
振幅 ( 陰性波 )
振幅 ( 陽性波 )
潜時
反応量
頂点時間 ( 陰性波 )
頂点時間 ( 陽性波 )
陰陽二相性波
刺 激
振幅
潜時 頂点時間
陽性波 図:5-3-2 SPA の測度
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基礎研究
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研究方法 research methods
chapter 06
06
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研究方法
31
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
6−1 仮説 高所ストレスを感じる空間にはさまざまな空間要素 ( 表 6-1-1) が含ま れており、これを系統化し各要素による高所ストレスの不安反応を計測す るのは難しい。そこで高所ストレス要素を視覚情報のみに限定したとき、 不安反応は視界の遮蔽割合および遮蔽位置に大きく関わってくるのではな いか ( 図 6-1-1)。
表:6-1-1 高所ストレスをもたらす空間要素 空間 窓
手摺
階段
床
照明
構造的不安
透明度 面積 位置 数 開閉 仕様
高さ 透明度 奥行き 材料 仕様
勾配 段数 材料 蹴上の仕様 蹴上の有無 踏面の仕様
面積 透明度 材料 幅 外部突出
照度 彩度 数 位置 高さ 幅
材料 築年数 密度 揺れ
角度
自然現象など
その他
天候 音 風 雨 揺れ 高さ
近隣建物の明るさ 近隣建物の密度
昼夜
遮蔽位置
遮蔽割合
遮蔽物
図:6-1-1 遮蔽割合と位置
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研究方法
32
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
6−2 パタン化
a:幅 b:床から上端まで a
c:床から下端まで d:外部の突出
b
c
d
図:6-2-1 遮蔽物の4つのパラメーター
手摺、腰壁などを4つの寸法の組み合わせでパタン化する。法規などを 基に以下の寸法で 92 通りにパタン化した。 a:0cm、2cm、5cm、10cm、30cm、40cm b:10cm、45cm、75cm、110cm、130cm、300cm c:0cm、60cm、70cm、105cm、115cm、125cm d:0cm、50cm、100cm
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研究方法
33
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 表:6-2-1 4つの寸法の組み合わせ 92 パタン 映像番号
状況 0
全面窓
a幅
b上端まで 0
c下端から床面 0
d突出 0
遮蔽割合(%) 0
0
1
全面窓
0
0
0
50
18.8
2
全面窓
0
0
0
100
34.2
3 段がある
30
10
0
0
14.5
4 段がある
30
10
0
50
33.6
0
100
5 段がある
30
10
48.5
6 ひざまで
30
45
0
0
20.5
7 ひざまで
30
45
0
50
39.6
0
100
8 ひざまで
30
45
54.5
9
手摺壁
10
75
0
0
13.5
10
手摺壁
10
75
0
50
32.5
0
100
11
手摺壁
10
75
47.8
12
手摺壁
40
75
0
0
36.2
13
手摺壁
40
75
0
50
55.3
14
手摺壁
40
75
0
100
70
15
手摺
5
110
0
0
19.5
16
手摺
5
110
0
50
38.4
17
手摺
5
110
0
100
53.7
18
手摺
10
110
0
0
24.8
19
手摺
10
110
0
50
43.8
20
手摺
10
110
0
100
59.1
21
手摺
20
110
0
0
35.1
22
手摺
20
110
0
50
54.2
0
100
23
手摺
20
110
69.3
24
手摺
40
110
0
0
54.3
25
手摺
40
110
0
50
73.3
手摺
40
0
100
26
110
88
27
手摺
5
110
70
0
13.9
28
手摺
5
110
70
50
32.8
29
手摺
5
110
70
100
48.1
30 31
手摺 手摺
10 10
110 110
70 70
0 50
19.1 38.1
32
手摺
10
110
70
100
53.3
33
手摺
20
110
70
0
29.2
34
手摺
20
110
70
50
48.3
35
手摺
20
110
70
100
63.3
36
手摺
40
110
70
0
47.7
37
手摺
40
110
70
50
66.8
38
手摺
40
110
70
100
81.5
39
手摺
5
110
105
0
6.8
40
手摺
5
110
105
50
25.7
41
手摺
5
110
105
100
41
42
手摺
10
110
105
0
11.8
43
手摺
10
110
105
50
30.8
44
手摺
10
110
105
100
46.1
45
手摺
20
110
105
0
21.6
46
手摺
20
110
105
50
40.7
47
手摺
20
110
105
100
55.8
48
手摺
40
110
105
0
39.5
49
手摺
40
110
105
50
58.6
50
手摺
40
110
105
100
73.3
51
手摺
5
130
0
0
31
52
手摺
5
130
0
50
49.9
53
手摺
5
130
0
100
65.2
54
手摺
10
130
0
0
37.7
55
手摺
10
130
0
50
56.7
56
手摺
10
130
0
100
72
57
手摺
20
130
0
0
49.9
58
手摺
20
130
0
50
69
59
手摺
20
130
0
100
84.1
60
手摺
5
130
70
0
25.4
61
手摺
5
130
70
50
44.3
62
手摺
5
130
70
100
59.6
63
手摺
10
130
70
0
32
64
手摺
10
130
70
50
50.9
65
手摺
10
130
70
100
66.2 43.9
66
手摺
20
130
70
0
67
手摺
20
130
70
50
63
68
手摺
20
130
70
100
78.1
69
手摺
5
110
105
0
6.8 25.7
70
手摺
105
50
71
手摺
5
110
105
100
72
手摺
10
5
110
110
105
0
11.8
73
手摺
10
110
105
50
30.8
100
41
74
手摺
10
110
105
75
手摺
20
110
105
0
21.6
76
手摺
20
110
105
50
40.7
77
手摺
20
110
105
100
55.8
78
手摺
5
130
125
79
手摺
5
130
125
50
28.8
80
手摺
5
130
125
100
44.1
81
手摺
10
130
125
0
46.1
0
9.9
16.1
82
手摺
10
130
125
50
35.1
83
手摺
10
130
125
100
50.4
84
手摺
20
130
125
0
27.4
85
手摺
20
130
125
50
46.5
86
手摺
20
130
125
100
61.6
87 眼の高さ
1
300
110
0
183.7
88 眼の高さ
1
300
110
50
202.5
89 眼の高さ
1
300
110
100
217.9
90 眼の高さ
1
300
60
0
193.5
91 眼の高さ
1
300
60
50
212.3
92 眼の高さ
1
300
60
100
227.7
HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.
研究方法
34
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
それぞれの遮蔽率を計算し、突出が手摺で隠れて見えないものといった 見え方が同じものなどを除外し、また遮蔽率を補正したうえで、92 パタン を 30 パタンにしぼった。遮蔽率の計算法は以下に示す。
camera α=α1+α2+α3+α4
α1
tanα=1700/(200+a) tanα1=(1700-b)/(200+a) tan(α1+α2)=(1700-c+x)/(2 ここで (200+a):(1700-c+x)=a:x x=a(1700-c)/200
a x α2 b c
α4
α
α3
tan(α4+α5)=(200+a+d)/170 tanα5=(200+a)/1700
α5 以下Excelを用いて計算
200
mm
a
d
図:6-2-2 遮蔽率の計算法
mera α=α1+α2+α3+α4
α1
ここで (200+a):(1700-c+x)=a:x より x=a(1700-c)/200
a x α2 α4
α
α3
tanα=1700/(200+a) tanα1=(1700-b)/(200+a) tan(α1+α2)=(1700-c+x)/(200+a)
tan(α4+α5)=(200+a+d)/1700 tanα5=(200+a)/1700
α5 以下Excelを用いて計算
200
a
d
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研究方法
35
実験番号
全面窓
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 -
映像番号
状況
a幅
b上端まで
c下端から床面
d飛び出し
0 全面窓 0 0 0 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 1 1 全面窓 0 0 0 2 9 手摺壁 10 75 0 3 15 手摺 5 110 0 4 16 手摺 5 110 0 5 18 手摺 10 110 0
-
0 50 0 0 50 0
表:6-2-2 4つの寸法の組み合わせ 6 21 手摺 20 110 092 パタン 0 7 27 手摺 5 110 70 0 28 状況 手摺 a幅5 b上端まで 110 c下端から床面 70 d飛び出し 9 実験番号8 映像番号 9 30 手摺 10 110 70 全面窓 0 全面窓 0 0 0 0 10 33 手摺 20 110 70 0 1 1 全面窓 0 0 0 50 11 39 手摺 5 110 105 0 2 9 手摺壁 10 75 0 12 40 105 100 3 15 手摺 5 110 0 0 13 51 130 0 4 16 手摺 5 110 0 50 14 54 130 5 18 手摺 10 110 0 0 15 57 130 6 21 手摺 20 110 0 0 16 60 130 7 27 手摺 5 110 70 0 17 61 130 50 8 28 手摺 5 110 70 9 18 63 130 9 30 手摺 10 110 70 0 19 64 手摺 10 130 70 50 10 33 20 110 0 20 66 20 130 70 11 39 手摺 5 110 105 0 21 72 10 0 12 40 手摺 5 110 105 100 10 110 105 50 22 73 13 51 手摺 5 130 0 0 23 75 20 110 105 14 54 手摺 10 130 0 0 24 78 5 125 15 57 手摺 20 130 0 0 25 79 125 50 16 60 手摺 5 130 70 0 26 81 10 125 0 17 61 手摺 5 130 70 50 27 18 28 19 29 20 30 21
22 23 24
82 手摺 63 84 64 手摺 85 66 手摺 87 眼の高さ 72 手摺 手摺 73 75 手摺 78 手摺
29 30
85 手摺 87 眼の高さ
25 26 27 28
79 81 82 84
手摺 手摺 手摺 手摺
10 20 10 20 / 10
130 130 130 300 110
125 70 125 70 125 70 110 105
10 20 5
110 110 130
105 105 125
20 /
130 300
125 110
5 10 10 20
130 130 130 130
125 125 125 125
50 0 0 50 50 0 0
50 0 0
50 0 50 0 50 0
遮蔽割合(%)
0 18.8 13.5 19.5 19.5 24.8
35.1 13.9 17.5 遮蔽割合(%) 19.1 0 29.2 18.8 6.8 13.5 17.3 19.5 31 19.5 37.7 24.8 49.9 35.1 25.4 13.9 32.3 17.5 32 19.1 37 29.2 43.9 6.8 11.8 17.3 20.7 31 21.6 37.7 9.9 49.9 28.8 25.4 16.1 32.3
33.6 32 27.4 37 41.4 43.9 100 11.8
20.7 21.6 9.9
28.8 16.1 33.6 27.4
41.4 100
HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.
研究方法
36
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
6−3 ヴァーチャルリアリティ映像作成
VR【バーチャル - リアリティー [virtual
1
VR 映像の背景用画像を撮影
2
VR 映像の背景を作成
3
VR 用の CG を作成・レンダリング
4
VR 映像作成
reality]】 コンピューター技術や電子ネットワーク によってつくられる仮想的な環境から受 ける、さまざまな感覚の疑似的体験。
図:6-3-1 VR 映像作成までのフローチャート
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研究方法
37
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
1. 早稲田大学理工学部 51 号館屋上での撮影 VR 映像の背景となる写真を早稲田大学理工学部 51 号館屋上から撮影。 撮影日時:2005 年 10 月 7 日 ( 金 )11 時 撮影場所の高さ: 天候:晴れ
図:6-3-2 VR 映像の背景用画像
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研究方法
38
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
2.VR 背景画像の作成 1 の 5 枚の写真を合成し VR 映像の背景をつくる。
図:6-3-3 VR 映像の背景画像
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研究方法
39
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
3.VR 作成・レンダリング
light
background
slab
camera
図:6-3-3 3ds max パースペクティブ
① CG 上にスラブ、遮蔽物をつくり、手摺内側下端部から手前に 20cm、高 さ 170cm の点にカメラを配する。 ②ここに 2. の背景画像を半球面に貼付ける。
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研究方法
40
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
light
t=0s slab
camera
railing
background t=5s 図:6-3-4 3ds max 断面図
③始線を水平方向から上 30 度、終線を床端部としてカメラを回転させる。 ④各パタンごと 1 秒につき 30 フレームで 5 秒間レンダリング。150 枚の画 像を作成、
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研究方法
41
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
4.VR 映像作成 150 枚の画像を1秒間 30 フレームで5秒間の映像に変換。
VR 映像サンプル
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研究方法
42
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
6−4 実験
各映像パタン HMD ( ヘッドマウントでディスプレイ )
皮膚電位計
AD コンバーター
解析計測ソフト
図:6-4-1-1 実験模式図
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研究方法
43
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
6ー4ー1 被験者の選定 http://www5b.biglobe.ne.jp/ ~yuustar/sub_swt.html
汗は持続的に拍出するのではなく、1分間に数回から十数回の不規則 なリズムをもって,あたかも間歇泉のように拍出する(発汗波:sweat expulsion)。手掌・足底の発汗を同時に計ると、全部に同期した発汗波が 見られる。これが中枢からの精神性発汗の命令の表れである。では、手掌・ 足底の汗は一般体表面の汗とは全く同期しないのかというと、そうではな く、一部に同期した波が観察される。この事実から,温熱性発汗と精神性 発汗の両方の中枢機序の間には、部分的な相互干渉があると考えられてい る。手掌・足底の発汗にもいくらか温熱要因の影響が認められ、低温環境 でも発汗が止まり、高温環境下では抑制される。
電位 (mv)
stress
被験者 A 発汗波の周期が短い → × 被験者には適さない
時間 ( 秒 )
電位 (mv)
stress
被験者 B 全ての映像に対してストレスを感じない 実験映像に没入しない → × 被験者には適さない
時間 ( 秒 )
電位 (mv)
stress
被験者 C 発汗波の周期が長い 温熱性発汗の干渉が少ない 映像にストレスを感じた →○被験者に適する 時間 ( 秒 )
図:6-4-1-1 VR 映像に対する発汗の個人差
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研究方法
44
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
本研究では、 ① VR に対する没入性(イメージ能力の個人差) ②高所に対する反応(恐怖もしくはスリルを感じる) ③発汗波の周期 ④温熱性発汗との相互干渉 という個人差の問題があり、精神性発汗量の精確な実験データを得るた めに、本実験の前に、発汗波の周期が遅く、温熱性発汗による相互干渉の 少なく、かつ VR 映像に何らかの反応を示す被験者を選定する実験を行った。
□選定実験 < 実験場所 > 早稲田大学理工学部 55 号館 S 棟 9 階 10 号室エンパイラメントサロン
< 被験者 > 20 代前半学生男女 31 人
< 実験方法 > 1. 皮膚電位計を用いて、閉眼状態での精神性発汗を 1 分間計測。 2.VR 映像のサンプルを HMD を通して見てもらい、皮膚電位計を用いて精神 性発汗を計測。
6ー4ー2 被験者数 選定のための実験により得られたデータを視察的に分析し、発汗波の周 期が遅く、温熱性発汗による相互干渉の少なく、かつ VR 映像に何らかの 反応を示す 9 名 ( 男3名、女6名 ) の被験者に本実験を行った。
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研究方法
45
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
6ー4ー3 実験器具 □ヘッドマウントディスプレイ ( 以下 HMD)
図:6-4-3-1 HMD とその装着方法
□皮膚電位計 本実験で使用した電位計はスキノス社の SK-SPA で、電位法をとっている。 電極は手掌・手首内側・肘外側にゲル電極を介して装着した。手掌 - 肘外 側の電位から手首内側 - 肘外側の電位を引くことで手掌 - 手首内側の電位 差を計測する。
図:6-4-3-2 皮膚電位計
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研究方法
46
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
□ゲル電極 ゲル電極はディスポーザブル電極を使用した。
ラベル
電極素子
ゲルカバー
粘着ゲル 図:6-4-3-3 ゲル電極
□ AD コンバーター タ−トル社の TUSB-1612ADSM-S を使用。
□計測解析ソフト 松山アドバンス社製の LabDAQ-PRO TL で解析。
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研究方法
47
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
6ー4ー4 実験方法 < 実験日時 > 11 月 1 日 ( 火 ) 〜 11 月 7 日 ( 月 ) 9:00 〜 21:00
< 実験時間 > 30 分×二日/人
< 実験場所 > 早稲田大学理工学部 55 号館 S 棟 9 階 10 号室エンパイラメントサロン
< 実験手順 > 1. 皮膚電位計を用いて、閉眼状態での精神性発汗を 1 分間計測。 2. 各パタンの基準となる、遮蔽物のない全面窓の VR 映像を HMD を通して 見てもらい、皮膚電位計を用いて精神性発汗を計測。 3. 各パタンの VR 映像を HMD を通して見てもらい、皮膚電位計を用いて精 神性発汗を計測。 4. 1分間の休憩の後再び 3. を、計 5 回行った。
図:6-4-4-1 実験の様子
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研究方法
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
< 映像の見せ方 > HMD を装着してもらい、最初の 30 秒間は静止画、30 秒後に 5 秒間 VR 映像、 残り 25 秒間に最初と同じ静止画を見せた。
picture
movie
picture
calm
stress
calm
0
30
35
60s 図:6-4-4-2 映像の見せ方
図:6-4-4-3 実験で用いた静止画
< 映像の順序 > 被験者には、VR 映像 30 パタンをランダムに並べ替え、1人につき 10 パ タンを見せ、3 人で全パタンをみる。被験者数が 9 人のため、1 パタンに つき3人が見ることとなる。ランダムに並べる方法は、Microsoft Excel の RAND 関数を使い、乱数を映像 30 パタンの割り当て、それら二行を乱数 の昇順に並べ替えることでランダムとした。
大阪市立大学インターネット講座 「スポーツと健康のサイエンス」 保健体育科研究室 http://koho.osaka-cu.ac.jp/vuniv
< 慣れによる反応量の低下 > 一般に感覚的・精神的刺激を数回繰り返して行うと、 それに対する慣れ が生じて次第に反応が起こらなくなる。これは精神性発汗にも認められる。
2000/sports2000/miyagawa2000-1.html
VR 映像を繰り返し見るとこの慣れの現象により反応量が低下するため、本 実験では 1 回につき 5 パタンの映像とし二日間に分けて見せた。
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研究方法
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
実験結果 experiment result
chapter 07
07
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実験結果
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
7−1 データ処理の方法 7ー1ー1 精神性発汗量の測度 皮膚電位計は電位法による測定で、SPR では単相性だけでなく多相性の 反応がある。そのため精神性発汗量の測度は反応の極性を無視した変化幅 を反応量としてとして計測した。この場合、陰性波成分と陽性波成分の振 幅の絶対和が反応量となる。刺激呈示後 3 秒以内に出現した反応が計測の 対象となる。
7ー1ー2 個人差について 基準となる全面窓の反応量を 1 として各パタンの反応量の比率(不安反 応比)を出すことで個人差をなくし一般化した。。
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実験結果
51
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
7−2 実験結果 90 回の実験で得られたデータのなかで、有用なものは 70 データ であった。個人差はあるものの遮蔽割合と反応比との散布図は右肩 下がりのものとなった。
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実験結果
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
被験者 A 22 歳女性
全面窓 1 3 4 14 15 16 23 26 27 28
有効ではないデータ
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実験結果
53
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
被験者 B 22 歳女性
全面窓 2 6 7 10 20 22 24 25 29 30
有効ではないデータ
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実験結果
54
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
被験者 C 22 歳女性
全面窓 2 6 7 8 10 11 16 21 27 29
有効ではないデータ
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実験結果
55
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
被験者 D 23 歳女性
全面窓 2 3 7 10 14 16 21 22 24 27
有効ではないデータ
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実験結果
56
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
被験者 E 23 歳女性
全面窓 1 5 9 17 18 20 22 23 24 28
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実験結果
57
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
被験者 F 23 歳女性
全面窓 2 3 4 13 14 15 19 25 26 27
有効ではないデータ
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実験結果
58
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
被験者 G 25 歳男性
全面窓 1 2 11 13 15 19 20 23 25 26
有効ではないデータ
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実験結果
59
高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
被験者 H 25 歳男性
全面窓 2 5 6 8 12 17 18 28 29 30
有効ではないデータ
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実験結果
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
被験者 I 24 歳男性
全面窓 5 8 9 11 12 17 19 21 25 30
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実験結果
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
表:8-2-1 各パタンの反応比と平均値 実験番号
反応比①
反応比②
反応比③
平均反応比
1
1.061181435
0.618
0.839590717
2
1.101265823
0.986970684
0.940455342
1.009563949
3
0.772151899
1.159609121
0.5
0.810587006
4
0.573289902
0.833333333
0.703311618
5
0.407407407
0.400843882
0.404125645
6
0.161825726
0.46234676
7
0.886075949
1.094570928
0.520833333
0.833826737
8
0.610053313
0.898148148
0.709281961
0.739161141
9
1.101265823
0.855902778
10
0.248945148
0.047026279
11
0.776846915
0.614711033
12
0.613861386
13
0.986970684
1
14
0.196202532
0.299674267
0.520833333
0.338903377
15
0.364820847
0.624031008
0.177083333
0.388645063
16
0.642732049
0.329113924
17
0.27189642
0.443037975
0.62962963
18
0.257383966
19
0.11195735
0.384364821
1.209302326
20
0.164556962
0.872093023
21
0.774261603
0.817974105
22
0.124472574
1.018987342
23
0.926160338
1.19379845
24
0.556962025
1.185654008
25
0.487433359
0.782849239
26
0.319218241
0.814236111
27
0.040084388
0.241042345
28
0.782700422
0.262152778
29
0.041493776
0.675925926
30
0.341964966
0.312086243
0.9785843 0.513134851
0.269702093 0.695778974 0.306930693 0.993485342
0.485922987 0.448188008 0.128691983 0.568541499 0.518324993 0.590192644
0.727476118 0.571729958
0.364583333
0.828180707 0.871308017
0.557003257
0.609095285 0.566727176
0.170138889
0.150421874 0.5224266
0.367775832
0.361731845 0.341964966
有用でないデータ
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実験結果
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考察 consideration
chapter 08
08
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考察
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
8−1 ストレス反応量と遮蔽割合との関連 □遮蔽位置によるパタンのグループ分け 遮蔽物下部に開口がある場合、遮蔽割合のほかに開口の割合が反応比に 影響を及ぼすと考えた。そのため先ず実験を行った 30 パタンを 2 グルー プに分けた。遮蔽物下部に開口がないパタンをグループ A、遮蔽物下部に 開口があるパタンをグループ B とする。
グループ A
グループ B 図:8-1-1 グループ A とグループ B の模式図
ストレス反応量と遮蔽割合との関連を調べるため、グループ A 及びグルー プ B における遮蔽割合と反応比の散布図を図 8-1-2 に示す。反応比は被験 者 3 人分の平均値をとった。図の直線はグループ A の散布の近似直線を表 している。
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考察
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図:8-1-2 グループ A 及びグループ B における遮蔽割合と反応比の関係
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考察
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
石村貞夫:すぐわかる統計解析 東京図書、1993.2
□相関係数 相関係数とは、2 変数間の関係の強さをあらわす係数で、散布図 で 2 つの変数が右肩上がりの傾向を示すときには正の相関があると いい、逆に右肩下がりの傾向を示すときには負の相関があるという。 相関係数が 0 に近づくほど 2 つの変数の間に因果関係が希薄である ことになる。相関係数が取りうる値の範囲は -1 から 1 までである。
表:8-1-1 相関係数が取りうる値の範囲とその相関性
相関関数r
0 ≦ r ≦ 0.2 0.2 ≦ r ≦ 0.4 0.4 ≦ r ≦ 0.7 0.7 ≦ r ≦ 10
⇔ ⇔ ⇔ ⇔
ほとんど相関がない やや相関がある かなり相関がある 強い相関がある
表:8-1-2 グループ A 及びグループ B における遮蔽割合と反応比との相関係数
遮蔽割合 反応比 グループ A
遮蔽割合 反応比
1 -0.72895
1
遮蔽割合 反応比 グループ B
遮蔽割合 反応比
1 -0.48841
1
グループ A における遮蔽割合と反応比との相関係数は -0.72895 である ことから遮蔽割合と反応比には強い負の相関があるということができる。 つまり遮蔽割合が高いほど反応比は低くなり、このことから遮蔽割合が高 いほど高所ストレスが緩和されることがわかる。
グループ B における遮蔽割合と反応比との相関係数は -0.48841 であり、 やや相関があるといえる。これは遮蔽割合のほかに遮蔽位置の影響が出て くるためだと考えられる。
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考察
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石村貞夫:すぐわかる統計解析
□回帰直線
東京図書、1993.2
回帰直線とは説明変量から目的変量を予測するものであり直線で表され る。 実測値
予測値
b1 x+b0 この式を回帰直線といい、傾きを回帰係数という。 y = -0.0161x + 0.9936 本実験での下部開口無しのパタンにおける遮蔽割合と反応比との回帰直 線は上記のように表される。
□決定係数 回帰直線の当てはまりの信頼性を示すものが決定係数で、決定係数 R*2 が 1 に近いほど回帰直線の当てはまりがよい。決定係数は相関関数の累乗 で表される。回帰直線は予測に役立つかを調べる方法に、分差分析表があ る。これは 仮説:回帰直線は予測に役立たない に対し、分散分析表を利用してこの仮説を検定する方法である。分散分析 表を作成すると、分散比が求まり、それが F 境界値を上回ったときに仮説 は棄てられ、回帰直線の有用性が認められる。
表:8-1-3 グループ A の分散分析表 変動要因 グループ間 グループ内
変動 自由度 分散 観測された分散比 F 境界値 5880.226391 1 5880.22639 131.4701523 4.1959717 1252.34767 28 44.7267025
観測された分散比> F 境界値 より回帰直線は予測に役立つと考えられる。 2
決定係数 R =0.5314
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考察
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8−2 ストレス反応量と遮蔽位置との関連 ABEK @ WASEDA University
□差の検定
http://www.aoni.waseda.jp/abek/
実験群と対照群との間に意味のある差異があることを検証する方 法で、統計的に有意な水準を満たしているかどうかを検定する。実 際の分析では、行なう前に母集団の特性についてなんらかの予想 がなされている。こうした仮説が分析で得られた結果(つまり、標 本統計量)と整合的であるかを調べるのが仮説検定である。森田 (1974) によれば,仮説検定は以下の手順で行われる。 1) 検定する仮説を設定する。 2) 検定で用いる統計量と検定する際の判定基準を決定する。 3) 標本から検定統計量を計算し、判定基準に照らして仮説の採否 を決める。 検定にあたっては予想を対立仮説、予想に反する仮説を帰無仮説 という。実際の検定では、検定は帰無仮説が棄却されるかどうかを 調べる。帰無仮説が棄却されるならば,その逆の対立仮説が採択さ れる(すなわち,実験者の予想が的中した)ことになる。仮説が決 まったとして,次に問題になるのが棄却・採択する基準である。こ こでは検定仮説(帰無仮説)が正しいとして、検定統計量の分布全 体を棄却域と採択域に分割し、帰無仮説が棄却域に入る確率を検定 の有意水準とする。有意水準は1%や5%といった小さな値を想定 する。検定の際、検定統計量が棄却域に入る、すなわち検定を行う 分布からはめったに生じない事象が発生した、ということにより検 定仮説は間違っている(棄却する)という結論となる。検定統計量 が棄却域に入り、仮説を棄却したとき、統計的に有意であるという 表現を用いる。
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考察
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□同じ遮蔽割合をもつパタンでの比較 ストレス反応量と遮蔽位置との関連を調べるため、グループ A・ B において同じ遮蔽割合をもつパタンでの比較を行った。本研究で は A グループ、B グループを比較したときに同遮蔽率であるものは 7 組 14 パタンであった。
表:8-2-1 グループ A・B において同じ遮蔽割合をもつパタン
遮蔽割合 14 19 21 25 29 32 41
反応比 A 0.8338267 0.9785843 0.8281807 0.485923 0.6090953 0.128692 0.5667272
B 0.7033116 0.8395907 0.57173 0.4041256 0.2697021 0.448188 0.3617318
図:8-2-1 グループ A・B において同じ遮蔽割合をもつパタン
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考察
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表:8-2-1 グループ A・B の反応比の差の検定
平均 分散 観測数 ピアソン相関 仮説平均との差異 自由度 t P(T<=t) 片側 t 境界値 片側 P(T<=t) 両側 t 境界値 両側
グループ A 0.633004168 0.07979619 7 0.663785468 0 6 1.48616568 0.093892705 1.943180274 0.18778541 2.446911846
グループ B 0.514054269 0.04074193 7
「2 つのグループの平均は等しい」という帰無仮説を立て、グルー プ A・B の反応比の差の検定を行った。 仮に棄却域を 1%(0.01) としたとき、片側,両側の P(T<=t) はど ちらも 0.01 よりも大きいことが分かる。 t境界値は片側、両側とあるが、どちらの数値よりも「t」の絶 対値 1.48 はこれを下回っている。 したがって、「2つのグループの平均は等しい」という帰無仮説を 採択する。 今回の研究では、高所ストレスを緩和するためのデザインの指標 を得るために、各寸法からデザインのパタンを決め、遮蔽割合を算 出した ( 遮蔽割合をもとに実験を行うパタンの設定をしていない )。 そのためグループ A・B 内で、近似した遮蔽割合のパタンが 7 組と 少なく、期待した結果が得られなかったと考えられる。
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考察
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8−3 残された問題 実験方法にも記したように今回の実験では ① VR に対する没入性(イメージ能力の個人差) ②高所に対する反応(恐怖もしくはスリルを感じる) ③発汗波の周期 ④温熱性発汗との相互干渉 という個人差の問題のため、本実験に適する被験者が 31 人中 9 人と限 られた。②~④の個人差に関しては適した被験者を多く集めることが肝要 だが、①に関しては、VR 映像の現実感をより高めることで、被験者の没入 感を高めることはできる。本研究ではできるだけ静かなところを選び、実 験を行ったが、不安反応は聴覚からの刺激も大きく影響するため、音刺激 を加えた VR を用いることにより現実感を高めることが可能となる。また VR 映像をみせる際には HMD 以外にも、視野全体に映像が映るプロジェク ターを用いた実験手法などが考えられる。 また映像への慣れにより不安反応が出ないといった原因から、有効な数 値が得られなかった実験が 90 回中 20 回あったため、実験のおける映像の 見せ方が再考される。
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考察
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展望 view
chapter 09
09
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展望
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9−1 展望 本研究では手摺や腰壁を遮蔽物とみなし、遮蔽割合というとらえ方で研 究を進めた。しかし仮説でも述べたように、高所ストレスをもたらす空間 要素は多分にあり、それらが高所ストレスに与える影響、またその空間要 素間の相関関係については未だに明らかにされていない。高層建築が建ち 並ぶ現代において、超超高層建築技術が進歩し、高さが 1km を越える建築 物ができる日もそう遠くない。これらが解明され相関関係が分かることで、 高所ストレスが緩和され、なおかつ自由度の高いデザインがなされること を願う。
表:9-1-1 高所ストレスをもたらす空間要素 空間 窓
手摺
階段
床
照明
構造的不安
透明度 面積 位置 数 開閉 仕様
高さ 透明度 奥行き 材料 仕様
勾配 段数 材料 蹴上の仕様 蹴上の有無 踏面の仕様
面積 透明度 材料 幅 外部突出
照度 彩度 数 位置 高さ 幅
材料 築年数 密度 揺れ
角度
自然現象など
その他
天候 音 風 雨 揺れ 高さ
近隣建物の明るさ 近隣建物の密度
昼夜
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展望
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Epilogue
おわりに HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.
おわりに
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□参考論文 「高所空間のデザイン要素と不安反応の計測方法 ー建築空間とストレスに関する研究 (1) ー」 著者:内田 貴之、長澤 夏子、渡辺 仁史 2005 年 日本建築学会
「気分変動が生理心理学的指標に及ぼす影響」 著者:寺門 正顕、山岡 淳 1999 年 日本生理心理学会
□参考文献 「ギブソン心理学論文集」 著者:J.J. ギブソン 2004 年 勁草書房 「感情心理学パースペクティブ - 感情豊かな世界 -」 著者:畑山俊輝 2005 年 北大路書房
「新生理学 2 生理心理学の基礎」 著者:宮田洋 1998 年 北大路書房
「新生理学 1 生理心理学の応用分野」 著者:宮田洋 1998 年 北大路書房
「新生理学 1 新しい生理心理学の展望」 著者:宮田洋 1998 年 北大路書房
「すぐわかる統計解析」 著者:石村貞夫 1993 年 東京図書
「進化しすぎた脳」 著者:池谷祐二 2004 年 朝日出版社
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おわりに
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高所ストレスを緩和する建築に関する研究 - 視界の遮蔽とストレス反応の計測に関する分析 -
おわりに
今回卒業論文を終えるにあたり、たくさんの人に支えられてきたことに この場を借りて深く感謝の意を表します。
先ず家族へ。父、母、妹たち、そして祖父母、家を出て 5 年間、電話を かけてくれたり、荷物を送ってくれたり、手紙に絵を描いて送ってきてく れたりと、いつもいつも応援してくれてありがとう。ここまでこれたのは みんながいたからです。ほんとうにありがとう。
ご指導頂いた渡辺先生をはじめ、健康空間ゼミの方々、実験に協力して して頂いた研究室の方々に御礼申し上げます。とくに雨の日も風の日も叱 咤激励していただいたゼミの BOSS 長澤さん、ありがとうございます。朝 に電話がかかってきたときは一瞬で眼が覚めました。そして、公私共にお 世話になった内田さん、ありがとうございます。内田さんには卒論だけで なく人生のノウハウも教えてもらったような気がします。最後の最後まで 面倒を見ていただいた大竹さん、ありがとうございます。そのタフさに勇 気付けられました。
そして約 2 週間、苦楽をともに過ごした卒論生。ちょっと病的だった徹、 最後まで季節感のなかったタンクトップ篤、終始マイペースだった社長小 沼、寝顔が素敵城戸ちゃん、ジーパンセクハラにもめげなかった日下部さ ん、われらのブレインあいざわくん、いつも帽子被ってたマイペース浅木 さん…そして N 棟組のみんな…朝比奈さん、麻木ちゃん、番ちゃん、大河 内君、引田君…おつかれさまでした!
--------------------------------------------------2005.11.19 S 棟合宿 / 一度しかできなかったキムチ鍋 / それによくあったドラフトワン / 負担かけすぎたサーバー / ぺろぺろ / 思 い出したくない盗難 / 今度は盗まれないぞチャリ / 何かと使ったデジカメ / 隙を見せたら撮られる写真 / いつの間にか 共有物のプーさん寝袋 / 寝床が増えたマットレス / 結局寝なかった白タク / なかなかお目にかかれなかった風呂 / もっ と使えばよかった給湯器 / 合宿で買ったメガネ / 意外と行かなかったマック / よく行ったローソンとサンクス / 朝うどん / レトルトっぽかったカレー / やっぱり最高早稲田弁当 / 共に乗り切ったハイライトメンソール / 全員の見ちゃった寝顔 / 一週間で1瓶あいたコーヒー紅茶 / 俺の好みのほうがかわいいヘアビューティ / 思い出満載思い出研 / 話題の中心 nobuo/ みんなフル活用 takano フォルダ / アメリカショウゴ / 見苦しいギャランドゥ / 見苦しい土座衛門 / セクシー穴あき ジーパン / 我慢できず買っちゃった帽子と T シャツ / 癒しと希望をもたらした朝日 / スーパー i-tune/ 最高性能デルコン / とその相棒オレンジマウス / 必需品フラッシュメモリ / 戸山公園風 / 中国人社長風 / タンクトップ風 / 清子様風 / パパ 風 / 幼稚園生風 / 白目イビキ風 / 筋肉痛になったストラックアウト / みんなで見たスリラー / たまにみた mixi/ 世界の 山ちゃん /kakushigo papa docchi?/ 履きっぱなしスリッパ / ダッチの話 / 胃薬 / 葛根湯 / 使う場所間違った香水 /・・・ みんなみんなプライスレス!
HITOSHI WATANABE LAB. WASEDA UNIV.
おわりに
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