からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

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Introduction

第零章 はじめに

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第 0 章 はじめに

Qrandum est, ut sit mens sana in corpore sano 4

4

4

4

4

健全な魂は健全な肉体に宿ることを祈る ウウェリナス 『風刺詩集』より

僕はあまり体質的に健康な人間ではない。肉体的にも思想的にも不健全 極まりない生活を送っている。だからこそ少しでも健康に気を使おうと努力 している。例えば健康食品を買ってみたり、サプリメントを使ってみたり…。 もちろんアメリカ産牛肉は口にしない。 これから年をとってから健康に生きられるかどうか、自分自身でも不安 である。というのも自分は体が極めて堅い。現時点でも高齢者並みの身体の 柔軟性を持つ私が将来どうなるか想像に難くない。体が堅いとそれだけ身体 の故障のリスクが増えてしまう。 しかしながら私はかなりの面倒くさがりである。そのために日常生活内 でストレッチやら柔軟性の向上やらが見込める所作を見出すのが必要だと感 じた。

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目次

■第 0 章 はじめに ………………………………………………… 1 ■第 1 章 目的 ……………………………………………………… 4 ■第 2 章 研究概要 ………………………………………………… 6 ■第 3 章 用語の定義 ……………………………………………… 8 ■第 4 章 背景 …………………………………………………… 10 ■ 4-1 高齢化とそれに伴う諸問題 ………………………… 11 ■ 4-2 高齢者の健康維持の試み …………………………… 14 ■第 5 章 基礎調査 ……………………………………………… 16

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目次

■ 5-1 現在の収納計画と身体の柔軟性について ………… 17 ■ 5-2 研究の位置づけ ……………………………………… 19 ■第 6 章 研究方法 ……………………………………………… 21 ■ 6-1 実験概要 ……………………………………………… 23 ■ 6-2 実験方法 ……………………………………………… 28 ■ 6-2-1 実験項目 ………………………………………… 28 ■ 6-2-2 本実験での柔軟性の測定法 …………………… 32 ■ 6-3 分析方法 ……………………………………………… 33 ■ 6-4 実験結果 ……………………………………………… 34 ■第 7 章 考察 …………………………………………………… 40 ■ 7-1 分析 …………………………………………………… 41 ■ 7-2 考察 …………………………………………………… 46 ■第 8 章 まとめ ………………………………………………… 50 ■第 9 章 謝辞 …………………………………………………… 52 ■第 10 章 参考資料 …………………………………………… 55 ■第 11 章 データ編 …………………………………………… 58 ■ 11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋…………… 59 ■ 11-2 関節可動域の測定法………………………………… 75 ■ 11-3 身体の柔軟性とストレッチング ………………………… 82

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Purpose of this thesis

第一章 目的

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第 1 章 目的

の柔軟性を保つ為の収納計画の指針を得ることを目的とする。

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収納動作によるストレッチ効果を明らかにすることで、住宅内でからだ

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Summary of this thesis

第二章 研究概要

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第 2 章 研究概要

基礎調査 実験方法 ����� 収納動作 ストレッチ 柔軟性

評価方法 関節可動域の計測 柔軟性計測

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以下、研究概要をフローとして掲載する。

実験 収納のしつらえと収納場所別による 柔軟性変化+身体負荷の計測

分析 各動作前後の柔軟性の変化 身体負荷

図 3-1 研究概要

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Definition of the technical terms in this thesis

第三章 用語の定義

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第 3 章 用語の定義

WHO の定義によると、「健康とは単に病弱ではないという だけではなく肉体的、精神的、社会的に良好な状態」で ある。本論文では「健康とは肉体的に良好な状態」であ るとする。

柔軟性

柔軟性とはからだのやわらかさを示すものである。本論 文では関節可動域の変化量を柔軟性評価での指標指標と している。

ストレッチ効果

ストレッチ効果とは、からだの柔軟性が向上したと認め られたときにストレッチ効果があったとする。本論文で

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健康

は腰部の関節可動域の変化量と下半身の柔軟性を評価の 対象としている。

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Background

第四章 背景

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4-1 高齢化とそれに伴う諸問題

筋力や持久力、柔軟性が低下してしまう。特に筋力、持久力、柔軟性は、高 齢化によって低下してしまうと、外に出て体を動かす機会が減少してしまい、 結果として運動不足になってしまう。そのためにそれら筋骨格的能力が衰え、 さらに外出する機会が減少するという悪循環に陥る。以下掲載する文章は福 永哲夫氏が「高齢者に必要な体力」という題材で健康ネットという web サイ トに掲載した文章の一部である。

体力とは何か

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高齢者は加齢によって様々な能力が低下する。身体能力で言えば五感と

一般に言われている「体力」とはパワーやスタミナ等、身体が発揮する ことが出来るエネルギー出力量およびそれをコントロールする神経機能を指 す場合が多い。

めには、活動している筋肉まで酸素が十分に供給されなければらない。この 為には肺を中心とする呼吸器官の働きにより体力に充分に酸素を取り込み、 心臓を中心とする循環器の働きにより筋まで酸素が供給され続けなければな らない。この能力は最大酸素摂取量(体内に取り込むことが出来る最大の酸 素量、通常1分間当たりの値を用いる)を測定すれば正確に把握することが 出来る。最大酸素摂取量は加齢とともに減少するが、一方で、運動を定期的 に実施することにより増加し、不活動で減少する。 最大酸素摂取量が大きな人は長時間の運動に優れた能力を発揮でき、疲 れにくいスタミナがあることを表す。このことは、単に長距離走のタイムが 良いとか、スポーツの成績が優れている等にとどまらず、大切なことは、日 常生活での様々な身体活動においても疲れにくい等の優れた能力を発揮する ことが出来ることを意味する。このことからも、呼吸循環系能力は体力の各 要素の中でも健康と最も関係が深い能力と言える。一定以上の最大酸素摂取 量は健康的な生活を維持するために必要条件であろう。 2)筋・骨格系能力 (1)筋、パワー この能力は、関節を介して筋が発揮することが出来る力、速度、パワー

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健康ネ�ト

ジョギングやウォーキング等の身体全体を使う運動が長時間持続するた

http://www.health-net.or.jp/

1)呼吸循環系能力(スタミナ)


4-1 高齢化とそれに伴う諸問題

ジャンプする、速く走る等、日常生活に於ける比較的短時間に筋肉を使うよ うな動作で発揮される能力である。筋が太く血流量が多い筋は力と持久力が あると言うことになる。 これらの能力は、健康と関係が深い。多くの腰痛患者を調べると、姿勢 保持に関係の深い筋力が極端に低下していることが分かる。さらに、その人 たちに筋力を高める運動を処方した結果、腰痛が減少したことが報告されて いる。 (2)関節の可動範囲(柔軟性) 身体は、肘、膝、脊髄など数多くの関節により出来上がっている。これ

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等で表すことが出来る。つまり、重いものを持ち上げる、素早く動く、高く

ら関節の可動範囲が広い人はケガや障害も少なく、優れた運動能力を発揮す ることが出来る場合が多い。この機能は柔軟性とも言われる。柔軟性は関節 をとりまく腱や靱帯あるいは拮抗筋(曲げるときには伸展筋、伸ばすときに

3)神経系能力(巧みさ) 人の動作は筋の収縮が神経の支配を受けて成り立つ。優れた機能を有す る筋肉もその収縮が巧くコントロールされなければ目的とする動作は成立し ない。神経系の機能は全身反応時間の測定など反応時間や、反射時間を計測 することにより推定できる。

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健康ネ�ト

姿勢が悪くなる、その結果としての内臓疾患や腰痛などの弊害を引き起こす。

http://www.health-net.or.jp/

は屈曲筋)が如何に弾力性に富んでいるかにより決まる。柔軟性に欠けると、


4-1 高齢化とそれに伴う諸問題

筋力だけでなく、呼吸循環系能力(筋持久力)や筋の柔軟性が重要である。 特に高齢者の場合、腰部まわりの筋・骨格能力が低下するために腰痛を 引き起こしやすくなってしまう。腰痛を予防し高齢期の健康維持・増進 をすることは重要である。

呼吸循環系能力

高齢期における健康

筋・骨格系能力

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本研究は関節可動域(柔軟性)に着目した。疾患の予防に際しては、

筋力、筋出力 関節可動域(柔軟性) 神経系能力

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健康ネ�ト

http://www.health-net.or.jp/

図 4-1-1 研究背景


4-2 高齢者の健康維持の試み

運動プログラム、パワーリハビリテーションなどが組み込まれている。以下 は高齢者向けの運動プログラムの一例である。 表 4-2-1 高齢者の転倒予防を目指す運動プログラム

指の屈曲・伸展 脳の活性化のための指の刺激 両手の指の押し合わせ 指そらし 腕の上下 基本体操 肩こり予防のための体操 肩回し 腕の開き閉じ 腕伸ばし 柔軟性の向上の体操 腕を押し上げ横曲げ 前屈 片足体重かけ 足の筋力向上 足首の伸展・屈曲 片足上げ 四つん這いから上体反らし 低体力者向け 四つん這い片足上げ 腰部の筋力向上 うつ伏せ片足上げ 仰向け腰上げ 仰向け片足上げ 腹部の筋力向上 腹筋運動 踵上げ 片足膝曲げ 足の筋力向上 足首の伸展・屈曲 足の前後交差 中・高体力者向け 四つん這い腕立て 四つん這い背中の上下屈伸 腰部の筋力向上 うつ伏せ片足膝挙げ うつ伏せ上体挙げ 腹筋運動 腹部の筋力向上

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高齢化によって低下した体力を維持・増進を行うために、高齢者向けの

これらによると、どれも筋力・体力・柔軟性の向上を見込んでおり、そ れだけこれらの要素は健康を左右していると考えられる。従ってこれらの動 作を日常空間で補う事ができれば、高齢者がより健康な生活を営むことが出 来る。

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4-2 高齢者の健康増進の試み 高齢者が健康的な生活を営むためには身体に疾患のないことが重要である。そのために疾患率で一番多い腰痛をターゲッ からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

トにし、腰痛に関係する筋の柔軟性を向上することで腰痛リスクをさらに軽減できると考える。そのために『柔軟性トレーニ ング 理論と実践』において掲載されていた全 45 動作に関してどの筋がストレッチされているかを調べた。また永池(2005) によって報告された日常生活動作内での筋活動と照らし合わせることで、日常生活動作内でストレッチが有り得そうな動作を 導き出した。

表 4-2-1 ストレッチ動作と使用する筋 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45

ハムストリングス ○

脊柱起立筋 ○

股関節内転筋(薄筋以外) 股関節内転筋(薄筋含む)

ヒラメ筋

腓腹筋

殿筋

腸腰筋

大腿直筋

○ ○ ○ ○

表 4-2-2 ストレッチによって使用される筋と日常生活動作に使用される筋との比較

○ ○ ○

○ ○ ○

○ ○

立ち上がり(高) 座り込み(高) 立ち上がり(適度) 座り込み(適度) 立ち上がり(低) 座り込み(低) 立ち上がり(床) 座り込み(床) 立ち(しゃがみ) 座り(しゃがみ) 立ち(仰向け) 座り(仰向け) 歩行(平地) 立脚(平地) 上り(階段) 下り(階段) 上り(スロープ) 下り(スロープ) 立脚(スロープ) 開け(引き戸) 閉め(引き戸) 押す(ドア) 引く(ドア) 作業(床座) 作業(後傾 椅子座) 作業(前傾 椅子座) 作業(立脚) 作業(かがみ) 作業(しゃがみ) 作業(ほうき) 収納動作

前頸骨筋 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

腓腹筋内側頭

ハムストリングス

大腿直筋 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○

○ ○

腹直筋

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

腰腸肋筋 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

大殿筋

○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○

○ ○ ○

○ ○ ○

○ ○

○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○ ○

その結果として腰痛に関係する筋のうち、すべてに関係する日常動作として挙げられるものが、立ち上がり(仰向け) 、座 り(仰向け) 、収納動作であった。このなかでも収納動作は頻度が多く、またしつらえや収納のルールを変えることで効果が 大きいと考えた。

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Basic Research

第五章 基礎調査

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5-1 現在の収納計画と身体の柔軟性について

ルゴノミクス』をあげる。ここでの収納についての記述についてふれておく。

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現在最も一般的に使われている設計資料として『建築設計資料集成』と『エ

図 5-1-2 収納棚の寸法

図 5-1-1 手の届く範囲

『建築設計資料集成−人間』や『図説エルゴノミクス』によると、収納高さは、 身長の高さの比率によって適切な収納の高さを決定している。また適切な収 納高さは、今までに筋活動と腰部モーメントの大小によって示されている。 ただしこれに関しては、断面方向において評価しているものである。平面方 向に関しては立位姿勢での手の届く範囲ということで評価されているだけで ある。 200

50 x

x

20

160

120

cm 130 120 110 100 90 80 70 60 50

80

40 0 40 120

:上体を曲げずに 手の届く範囲 :上体を曲げて 手の届く範囲

0

40

80

80

40

00

40

80

120

y

80

80

40

y

0

60 50 40 30 20 cm 筋活動及びエネルギー代謝からみた立位

40

作業点の評価  ◎:最もよい

y

○:比較的よい

80 100 120 40

0

40

80

●:よくない  なし:最もよくない�����

120

図 5-1-3 立位姿勢でものに他の届く範囲

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図 5-1-4 立位姿勢の作業評価

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5-1 現在の収納計画と身体の柔軟性について

はその動き自体もしつらえによって変えてしまった場合、ストレッチ効果が 見込めるのではないだろうか」(図 4-2-4)。 立位姿勢で日常的に手の届く範囲を超えた場所に収納するという動きは ストレッチ効果が仮にあるとすれば、健康的な生活のためにはしつらえを変 化させて所作を変化させることが求められる。さらに収納動作は一日の中で も頻度の多いものであるので、その効果が大きいと見込まれるものである。 したがって収納計画を変化させることで、ストレッチ効果を生み出す空間は 必要である。 本研究は収納計画を変化させることで柔軟性が変化するかどうかという

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ここで一つ仮説を立てる。「立位姿勢で日常的な収納動作を行う際、また

ことの検証である。

100% ストレッチ効果 のある収納場所

85% 日常的に使用する 収納場所

40% 20% 0% 図 5-1-4 ストレッチ効果のある収納の仮説

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5-2 研究の位置づけ

論から本研究の位置付けを行う。

牛山 (2003) は、立ち上がり動作において適切なしつらえの提案を行っ た。松井(2004)は収納動作において適切な計画の提案を行った。これ らの論文において共通して言えることは、腰部関節モーメントの大小が 腰痛を引き起こす原因と考え、腰部負荷を逓減しようとするものである。

それに対し、大河内(2005)は腰部周りの筋力が低下することで腰椎 への負担が増大するというメカニズムに着目した。高齢者向けに行われ

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これまでに渡辺仁史研究室行われていた研究及び腰部に関しての医学

ているパワーリハビリテーションの体操の腰部関節モーメントと牛山 (2003)と松井(2004)の研究において得られた腰部関節モーメントを 比較することで、回避すべき危険な動作と逆に体を鍛えられるのに有効 な動作というものに分別した。また永池(2005)の研究では高齢者は身 体が衰えることによって ADL が低下し、結果として QOL が低下するとい う事例から、筋電計を用いて日常生活動作を計測することで、からだの 筋力を年齢による低減程度までに抑える空間を提案した。 これらの論文では、共通して言えることは、身体を動かすことでむし ろ健康を維持しようとする空間を提案している。

医学論文において腰部に関する研究では、体を屈ませたときに腰を捻 るまたは傾かせるという動作は危険であるという指摘がなされている。 レネ・カイネは『カイネ博士の腰痛ガイド 正しい腰痛の治し方』にお いて、椎間板と輪状線維は屈曲や圧縮よりもねじりに弱いと表現してお り、体を屈ませる動作を行うと腰を捻りやすくなるので、椎間板損傷の 可能性が増すとしている。ISO:11226 においても、腰部の屈みと捻りの 回避(20°)ということが示されている。これらのことにより、腰部故 障リスクを増してしまう要因としては屈む状態で腰を捻る、または負荷 がかかっている状態で腰を捻る、急激に腰を捻るという動作が危険な動 作であるということが言える。

本研究では、健康を増進する収納動作を考えている。本研究では柔軟 性に着目している。柔軟性は故障や転倒のリスクを逓減させる。また動

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5-2 研究の位置づけ

で、高齢者特有の廃用性症候群などの悪循環を防ぐ事ができる。このよ うな観点から柔軟性を高める空間は重要である。

1st 2nd

渡辺仁史研究室既往研究 腰部負荷の回避 腰部周りの筋の向上

腰部に健康で安全な 収納動作

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作が滑らかになるので自発的に動く機会が増加する。柔軟性が増すこと

医学論文で報告されている危険動作 屈み+傾き 屈み+捻り

図 5-2-1 研究の位置づけ

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Research Method

第六章 研究方法

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第 6 章 研究方法

において、柔軟性の変化を計測するために動作計測実験を行った。

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高さ、収納場所、セットバックの有無を考慮した 12 種類の収納動作前後

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6-1 実験概要

東京都港区 国際医療福祉大学付属三田病院 動作解析室

■実験日程

プレ実験: 本実験:

10 月 7・8 日

若年健常者 1 人

10 月 12 日

若年健常者 8 人

10 月 13 日

若年健常者 9 人

10 月 14 日

若年健常者 8 人

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■実験場所

■実験で使用したシステム・装置など

<三次元動作解析装置> ・

VICON MX(VICON MOTION SYSTEM 社 図 6-1-1)を用いた。

赤外線カメラを 10 台使用し、カメラで各マーカーごとの三次元位置座 標を認知し、被験者の動作を計測した。

マーカーは、直径 15mm 程度の台に直径 10mm 程度の球がついている。マ ーカー表面にはガラス粒子が入っているテープで覆われており、カメラ から発せられる赤外線に反射し、カメラがマーカーを認識する。

床反力板は、今回は収納動作のみに使用した。被験者の床にかかる反力 や体重心のブレを測定するのに用いる。

図 6-1-1 VICON MX のシステムとカメラ

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6-1 実験概要

HOME ERECTA(エレクター株式会社)を用いた。棒の高さは 1900mm と 1000mm のものを使用し、これらは 2.5mm 間隔で高さを調節することが できる。今回はワイヤーラックの面の大きさは 1200mm × 600mm のもの と 450mm × 450mm のものを使用した。また、ワイヤーラックが赤外線を 反射しないように、すべて色が黒のものを使用した。

<実験ウェア> ・

マーカーを出来るだけ正確な位置に貼り付けられるように、体にフィッ トする水着と水泳キャップを用いた。これについても赤外線の反射を抑

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<ワイヤーラック(収納棚)>

えるために黒やグレーなど、暗い色のものを用意した。

<収納物> ・

収納するものとして、直径 150mm ほどの皿を使用した。またこの皿に関 しても赤外線を反射しないようにつや消しスプレーを表面に塗ることに した。

図 6-1-2 実験風景

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6-1 実験概要

マーカーについて、いくつか変化した箇所があるので、本研究で使用したマー カーの種類について以下に掲載する。 左側すべて対称

TOH

RHead

左側すべて対称

LHead LFSHD

LFSHD

XIP LFELB

LFELB

C7 RBSHD

LBSHD

LBELB

TH12

Riri

Liri

L5

RASI Lradius

LASI Lradius

RHIP Lhmp

LHIP Lhmp

RKNE

LKNE

RANK

LANK

RMP

LMP

LBELB

<前から見た図>

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■マーカーの種類について

Luruna

Ruruna

<後ろから見た図>

図 6-1-3 マーカー位置

図 6-1-4 Workstation において認識されるマーカー Bachelor's Thesis 2006

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6-1 実験概要

プレ実験において同様の収納対し一回の収納動作の前後に柔軟性の計測 を行い、その後柔軟性を疲労によって戻すために食器洗いをしてもらう。そ の後にまた同様に収納動作と柔軟性の確認を行なった。この実験の問題点と しては、柔軟性の確認のための動作テストが収納動作と比較し、動作の割合 が大きいために、収納動作による柔軟性の変化が明らかに出来なかった点で ある。その改善として、収納動作を 10 回にし、一日に収納動作を 4 回、柔 軟性の確認のための動作を 5 回に制限した。 そのために実験動作項目にばらつきが出ないように、3人で 12 動作を補

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プレ実験

うように任意にグループ分けを行った。

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6-1 実験概要

柔軟性の確認1

以下の図に計測の流れをまとめた。

・左側屈 ・右側屈 ・前屈

関節可動域の確認 柔軟性の確認

実験動作1 ・収納動作を10回行う ・腰部関節モーメントの計測

柔軟性の確認2

・左側屈 ・右側屈 ・前屈

機材の準備 ・三次元動作解析装置(VICON)の起動 ・カメラを同期化させるためにリンクする ・カメラのキャリブレーションを行う ・反力板のキャリブレーションを行う

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■計測のながれ

関節可動域の確認 柔軟性の確認

実験動作2 ・収納動作を10回行う ・腰部関節モーメントの計測

実験の準備 ・被験者の身長に合わせて棚の高さを変える ・被験者に着替えてもらう ・マーカー貼り

実験

柔軟性の確認3

・左側屈 ・右側屈 ・前屈

関節可動域の確認 柔軟性の確認

実験動作3 ・収納動作を10回行う ・腰部関節モーメントの計測

柔軟性の確認4

・左側屈 ・右側屈 ・前屈

関節可動域の確認 柔軟性の確認

実験動作4 ・収納動作を10回行う ・腰部関節モーメントの計測

柔軟性の確認5

・左側屈 ・右側屈 ・前屈

関節可動域の確認 柔軟性の確認

図 6-1-5 実験フロー

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6-2 実験方法

本研究では収納の種類の要素として、①収納棚の高さ× 2 種類、②収 納位置× 3 種類、③セットバックの有無× 2 種類、計 12 実験動作項目 を考えた。以下にそれらの決定方法を説明する。

<高さ> 高さは『建築設計資料集成』、及び松井(2004)の研究を参考に決定した。 『建築設計資料集成』においては、収納の適正高さを 115% 以上、100 ~ 85%、

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6-2-1 実験項目

85 ~ 40%、40 ~ 20%、20% ~ 0% の範囲に収納棚の高さを分けて評価している。 それによって松井がそれらの場合における収納動作時の腰部関節モーメント を計測したが、それによると最も腰部関節モーメントが少ない収納場所は身 長に対して 85% と 100% であったとしている。また、基礎調査にも挙げたが、 医学的に腰を曲げた状態で腰を捻るのは危険な動作である。そのような観 点から健康的にストレッチ効果が望める収納場所として高さ方向では 85% と 100% に設定した。

図 6-2-1-1 収納棚の寸法

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6-2 実験方法

収納場所を左、左間仕切りあり、正面の 3 つに設定した。 左・左間仕切りありの収納場所の場合、体から横に 600mm 離れた場所に収納 することになる。これは『建築設計資料集成』の立位姿勢でものに手が届く 200

50 x

x

20

160

120

80

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<収納位置>

40 0 40 120

:上体を曲げずに 手の届く範囲 :上体を曲げて 手の届く範囲

0

40

80

80

40

00

40

80

120

y

80

80

40

y

0

40 y 80 100 120 40

0

40

80

120

図 6-2-1-2 立位姿勢でものに手が届く範囲

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6-2 実験方法

収納棚のセットバックを 300mm と 0mm に設定した。 この場合のセットバックはキッチンの収納を想定している。『図説 エルゴノミクス』によると、システムキッチンの収納棚は 300mm ほどセ ットバックがみられるために、これを採用した。

300

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<セットバックの有無>

図 6-2-1-3 システムキッチンのセットバック

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6-2 実験方法

図 6-2-1-4 間仕切りなし、セットバックなし

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以下想定した収納を図示する

図 6-2-1-5 間仕切りあり、セットバックなし

図 6-2-1-6 間仕切りなし、セットバックあり

図 6-2-1-5 間仕切りあり、セットバックあり

表 6-2-1-1 実験項目の一覧 実験項目番号

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

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高さ 100% 85% ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

位置 左 ○

左間仕切

正面 ○

○ ○ ○

セットバック なし ○ ○ ○ ○ ○

300あり

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

31


6-2 実験方法

実験動作においてからだが動く場所から 側屈時の関節可動域と前屈時の Rhmp または

Rhmp Lhmp

Lhmp 高さ(図 6-2-2-1)の変化を見ること にした。関節可動域の計測は VICON MX によっ て計測された関節場所からバイオメカニズ ムの理論に基づき計算した。

図 6-2-2-1 hmp の位置

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

6-2-2 本実験での柔軟性の測定法

関節可動域に関して、実験動作計測の都合上異なる方法で関節可動域の 計測を行ったので、この点に触れておく。 また実験時の関節可動域測定に本来なら望ましい他動可動域の計測(図 6-2-2-2)を行うことが出来なかったために自動可動域(図 6-2-2-3)を測 定した。実験時にマーカーを貼り、カメラによってその場所を追跡すること で、動作を計測しているが、他動可動域の計測は関節を動かす人によってマー カーがさえぎられ、計測が出来ないためである。ただしこれらによる影響は 若年者であれば少ないと報告されているために、差はないと考える。 また、実験動作時に身体を固定することが同様の理由でできない。その ために本来なら側屈時に身体を倒す側の腕を下に伸ばしつつ体を倒す動作で あるが、プレ実験時に体を前に倒してしまう例があった。その動作を体を前 に倒さない動作を行なうために、身体を倒す側の腕は下に伸ばし、その反対 側の腕は上に伸ばした状態で体を倒してもらうことにした。

図 6-2-2-2 本来の側屈の測定法

Bachelor's Thesis 2006

図 6-2-2-3 採用した側屈の測定法

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

32


6-3 分析方法

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

■ VICON のデータ処理について データ処理の流れを、以下の図にして示す。

Workstationでの作業 マーカーの付け 利用データの選定 データの補完 ノイズ除去のフィルター処理

C3D形式で書き出し

前屈の場合 ASCII形式で書き出し

分析作業

BodyBuilderでの作業 モデルの設定 マーカー位置の挿入 各種データ出力のための計算

ASCII形式で書き出し 分析作業 図 6-3-1 データ処理の流れ

Bachelor's Thesis 2006

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

33


6-4 実験結果

各被験者ごとに側屈の最大値を実験動作ごとにまとめた。 表 6-4-1-1 被験者グループ 1 左屈曲最大値

表 6-4-1-2 被験者グループ 2

右屈曲最大値

左屈曲最大値

右屈曲最大値

7-a

54.104

64.121

9-a

86.18

90.284

7-b

59.033

64.793

9-b

86.243

70.845

9

58.127

62.264

8

88.412

83.716

5

55.725

65.346

11

85.718

68.456

6

55.575

61.64

3

85.285

73.989

3-a

51.88

64.918

4-a

89.825

76.704

3-b

56.231

66.245

4-b

86.849

74.056

1

57.313

62.332

7

84.782

70.593

4

56.322

67.313

5

84.169

71.093

12

57.482

62.938

2

83.118

69.647

2-a

56.658

60.468

12-a

79.511

68.802

2-b

54.259

58.363

12-b

82.656

70.466

10

56.606

59.264

6

84.705

68.682

8

59.873

60.45

1

82.61

70.405

11

57.565

61.217

10

81.201

72.142

表 6-4-1-3 被験者グループ 3 左屈曲最大値

表 6-4-1-4 被験者グループ 4 左屈曲最大値

右屈曲最大値

右屈曲最大値

10-a

69.673

55.936

12-a

70.308

74.181

10-b

67.86

52.181

12-b

73.318

74.214

9

68.102

52.694

7

72.994

76.642

4

70.98

52.672

8

74.193

75.586

8

67.677

51.593

3

72.867

74.926

12-a

63.826

56.497

11-a

63.314

59.183

12-b

63.248

58.606

11-b

66.459

59.062

1

64.935

61.57

5

65.28

58.642

7

65.787

61.331

1

65.593

61.777

5

66.232

62.078

10

67.236

61.846

2-a

68.084

72.325

9-a

62.525

63.34

2-b

70.6

78.205

9-b

68.335

63.284 65.23

6

68.708

76.367

6

66.848

11

68.259

78.777

4

62.171

63.89

3

63.878

79.724

2

66.73

60.442

Bachelor's Thesis 2006

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

6-4-1 側屈の各被験者グループごとの最大値

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

34


6-4 実験結果

左屈曲最大値

図 6-4-1-6 被験者グループ 6 左屈曲最大値

右屈曲最大値

右屈曲最大値

5-a

79.686

69.265

10-a

5-b

74.656

68.855

10-b

3

75.306

67.579

12

9

77.758

67.925

5

12

73.948

69.684

1

1-a

72.306

61.875

9-a

69.237

76.853

1-b

71.559

62.434

9-b

70.461

82.655

8

73.218

62.512

3

66.406

84.603

10

73.244

65.088

11

71.057

86.645

2

73.749

62.747

7

78.726

82.23

6-a

56.496

64.286

6-b

57.389

66.451

11

57.721

64.606

4

57.504

66.517

7

57.807

65.632

図 6-4-1-7 被験者グループ 7 左屈曲最大値

6-a

71.688

87.22

6-b

60.489

59.593

4

63.973

70.585

2

67.469

83.268

8

77.295

80.536

図 6-4-1-8 被験者グループ 8 左屈曲最大値

右屈曲最大値

右屈曲最大値

1-a

59.502

63.845

12-a

65.544

55.928

1-b

57.769

63.61

12-b

64.086

53.444

4

62.124

61.948

4

63.225

55.238

5

62.302

63.889

7

61.936

55.98

11

60.924

63.525

8

63.717

53.035

65.954

63.657

1-a

48.198

46.066

64.072

1-b

50.899

51.153

62.05

3

54.699

51.366

9

53.764

52.349

5

55.478

51.048

10-a

68.326

58.399

10-b

68.95

61.22

11

68.231

63.178

6

69.667

63.801

2

68.161

63.651

7-a 7-b

64.165 8

61.382

2

64.595

64.736

9

63.614

63.226

6-a

65.022

71.163

6-b

68.852

72.06

12

68.049

71.71

3

65.463

69.088

10

67.589

69.717

Bachelor's Thesis 2006

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

図 6-4-1-5 被験者グループ 5

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

35


6-4 実験結果

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

表 6-4-1-9 被験者グループ 9 左屈曲最大値

右屈曲最大値

5-a

74.338

76.099

5-b

75.864

75.221

1

75.791

72.632

7

76.817

69.657

11

76.607

74.617

Bachelor's Thesis 2006

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

36


6-4 実験結果

前屈時の hmp 高さに関しても同様に実験動作ごとにまとめた。 表 6-4-2-1

表 6-4-2-2

表 6-4-2-3

被験者グループ 1

被験者グループ 2

被験者グループ 3

7-a

229.253

9-a

-15.2264

10-a

197.703

9-b

3.28162

10-b

7-b

163.841 156.74

9

175.949

8

14.8384

9

5

186.876

11

11.5571

4

121.175

6

173.541

3

7.95605

8

101.693

3-a 3-b

219.615

4-a

226.477

4-b

-23.2578

12-a

-20.2241

12-b

118.027

179.28 166.966

1

218.219

7 -19.0762

1

163.643

4

240.561

5 -25.0743

7

178.827

2 -20.1873

5

156.828

12

207.341

2-a

224.613

12-a

58.5673

2-a

2-b

230.026

12-b

36.8613

2-b

150.983 155.326

6

31.2045

6

234.385

1

60.1915

11

140.162

209.531

10

25.5203

3

148.941

10

233.727

8 11

150.83

表 6-4-2-4

表 6-4-2-5

表 6-4-2-6

被験者グループ 4

被験者グループ 5

被験者グループ 6

5-a

1.5896

1-a

91.1764

5-b

20.4905

1-b

86.0447

12-a

3

19.8557

9 12

4

113.599

25.9917

5

88.9998

32.5933

11

94.0498

1-a

8.68341

7-a

142.445

1-b

26.1349

7-b

111.56

8

9.53381

8

110.907

10

9.60361

2

105.862

2

0.17987

9

102.55

6-a

26.6205

6-a

-37.2896

6-b

40.5235

6-b

-39.8632

11

26.7764

12 -36.5938

4

32.5254

3 -24.5605

7

42.8203

10 -28.2947

Bachelor's Thesis 2006

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

6-4-2 前屈時の hmp 高さの最小値

207.968

12-b

248.92 7

227.863

8

239.451

3

250.049

9-a

197.676

9-b

218.288 6

262.628

4

259.953

2

262.478

11-a

188.549

11-b

190.733 5

191.217

1

201.077

10

254.852

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

37


6-4 実験結果

表 6-4-2-8

表 6-4-2-9

実験グループ7

実験グループ 8

実験グループ 9

10-a

-6.30545

12-a

162.361

5-a

10-b

-8.62152

12-b

147.83

5-b

191.191 204.055

12 -25.5664

4

160.608

1

226.025

5 -39.9946

7

142.716

7

178.854

1 -32.1812

8

121.094

11

183.241

9-a

182.088

1-a

260.547

9-b

174.965

1-b

274.341

3

153.306

3

262.649

11

97.0665

9

255.622

7

83.452

5

236.35

6-a

29.3735

10-a

6-b

14.503

10-b

210.197 166.547

4

18.3141

11

164.629

2

10.8742

6

161.024

8 -11.0022

2

184.115

Bachelor's Thesis 2006

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

表 6-4-2-7

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

38


6-4 実験結果

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

6-4-3 収納動作の腰部モーメント

なお、本論文の分析には用いないが、X 軸方向(前後屈)における腰 部関節モーメントの指標値を掲載する。ここにおける指標値とは、 Indicator= 腰部関節モーメント [N*m]/(身長 [cm] ×体重 [kg]) によって示される。また Y 軸方向(側屈)と Z 軸方向(回旋)に関す る腰部モーメントは計算プログラムにより異なる値が求まってしまうこ とが学会で発表されているために、ここで計算される値は適切ではない。 従って今までの研究通り X 軸方向の腰部関節モーメントに関してのデー タを掲載する。 ここで計算された値は大河内(2005)において計測された身体負荷の 基準値である 0.796 という数字と比べはるかに低くなっており、この収 納動作が腰痛という観点からして安全であるということがいえる。

表 6-4-3-1 腰部関節モーメントの表 グループ1 グループ2 グループ3 グループ4 グループ5 グループ6 グループ7 グループ8 グループ9 平均

標準偏差

グラフ 0

0.0004

0.00027

4.1E-05

0.00105

0.00083

0.00049

0.00038

0.00047 0.00016

6.2E-05

0.0005

0.00037

12

0.00104

8.2E-06

0.00079

0.00098

0.00127

4

0.00129

3.7E-06

0.00053

0.00102

0.0007

0.00163

0.00028

0.00069

0.00045

0.00022

0.00069

6

0.00117

0.00045

0.00043

0.00062

0.00129

0.00147

0.00058

6.2E-05

0.00049

0.00075

0.0005

5

0.00143

0.00066

0.00105

0.00046

0.0011

0.0009

0.00038

0.00081

0.00037

10

0.00177

0.00181

0.00082

0.00033

5

0.00103

0.00026

0.00047

0.00093

0.00065

10

1

0.00191

0.00072

0.00057

0.00053

0.0022

0.00132

2.2E-05

0.00093

0.0008

9

0.00107

2E-05

0.00107

0.00133

0.00234

0.00104

0.00129

0.00065

0.0011

0.00065

3

0.00236

0.00058

0.0009

0.00152

0.0017

0.0011

0.00052

0.00028

0.00112

0.0007

7

0.0013

0.00085

0.00132

0.00129

0.00132

0.00181

0.00115

0.00069

0.00116

0.00036

8

0.00156

0.00117

0.00104

0.00135

0.00146

0.00183

0.00037

0.00068

0.00118

0.00048

2

0.00182

0.00123

0.00084

0.00163

0.00133

0.00196

0.0006

0.00149

0.00136

0.00047

0.00053 0.00014

0.00068

0. 0005

0. 001

4

6

1

9

3

7

8

2

0.002 0.0018 0.0016 0.0014 0.0012 0.001 指標値 0.0008 0.0006 0.0004 0.0002 0 12

4

6

5

10

1

9

3

7

8

2

項目

図 6-4-3-1 腰部モーメントと誤差 Bachelor's Thesis 2006

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

0. 002

12

実験項目番号別の腰部関節モーメントの指標値

11

0. 0015

11

実験項目番号別の腰部関節モーメントの指標値

0.00093

指標値

11

39

0. 0025


Examination of these deta

第七章 考察

Bachelor's Thesis 2006

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

40


7-1 分析

は実験動作前後で実験動作の変化量を決めるというものである。これは関節 可動域を始め柔軟性が動作の前後で変化しやすいということからこの方法が ありうる。もう1つの方法は、実験の最初に計測する関節可動域や柔軟性を 基準として定める方法である。この方法では、間接可動域は実験項目の準備 中に元に戻ってしまうと考えた場合である。 これらのデータの解析方法に関して本論文では前者を採用し、後者を棄 却した。後者の場合、ばらつきが大きくなってしまうためである。

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

実験において得られたのデータに関して2つの取り扱い方がある。1つ

柔軟性の確認5

動作4

柔軟性の確認4

動作3

柔軟性の確認3

動作2

柔軟性の確認2

動作1

柔軟性の確認1

これらの差を分析対象として扱う 図 7-1-1 分析方法

Bachelor's Thesis 2006

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

41


7-1 分析

7-1-1 実験動作前後の左側屈の体幹角度の変化量の一覧

実験項目番号

8 2 7 9 10 1 4 12 11 3 5 6

高さ 100% 85% ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

位置 左

セットバック

正面

左間仕切

300あり

1 3.3 -2.4 4.9 -0.9 2.3 1.1 -1.0 1.2 -2.3 4.4 -2.4 -0.1

なし

○ ○

○ ○

○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

2 2.2 -1.1 -2.1 0.1 -1.4 -2.1 -3.0 3.1 -2.7 -0.4 -0.6 2.0

3 -3.3 2.5 0.9 0.2 -1.8 1.7 2.9 -0.6 -0.4 -4.4 0.4 -1.9

被験者グループ 4 5 6 1.2 1.7 9.8 4.6 0.5 3.5 -0.3 0.3 7.7 5.8 2.5 1.2 1.6 0.0 0.3 -0.7 -4.7 -0.2 3.5 3.0 -3.8 3.1 0.3 4.7 -1.3 0.6 -4.1 -1.2 -5.0 -1.5 0.9 -11.2

変化量

7 1.8 -1.5 -1.3 -0.9 0.6 2.7 -0.9 -1.5 -0.7 3.8 1.7 1.4

8 -2.8 3.2 -1.8 -1.0 2.1 -1.7 4.4 -0.8 -1.4 -2.6 0.2 3.8

9 1.0 -0.1 -0.2 1.5

平均値

標準偏差 -15.0

1.7 1.2 1.0 0.9 0.5 0.1 0.1 0.1 0.0 -0.5 -0.7 -0.8

4.0 2.6 3.3 2.3 1.7 1.7 3.2 2.5 2.4 3.3 2.2 4.6

-10.0

-5.0

変化量(degree) 0.0

5.0

10.0

15.0

8

2

7

9

10

1

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

表 7-1-1-1 実験動作前後の左側屈時の体幹角度の変化量の一覧

4

12

11

3

5

6

表 7-1-1-2 実験動作前後の左側屈の体幹の角度での項目ごとの差の検定

1

左側屈データ(収納前後の差)の平均値

2

3

4

5

6

7

8

9 10 11 12

1

8.0

6.0

3× ×

左側屈角度差

4.0

4× × × 5× × × ×

2.0

6× × × × ×

0.0

7× × × × × × -2.0

8× × × × × × × 9× × × × × × × ×

-4.0

10 × × × × × × × × ×

-6.0 8

2

7

9

10

1

4

12

実験項目番号 平均値

11

3

5

6

11 × × × × × × × × × × 12 × × × × × × × × × × ×

図 7-1-1-1 実験動作前後の左側屈の変化量とその誤差

Bachelor's Thesis 2006

Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

42


7-1 分析

7-1-2 実験動作前後の右側屈の体幹角度の変化量の一覧

高さ 100% 85% ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

実験項目番号

4 2 1 10 3 8 5 12 11 7 9 6

位置 左 ○

左間仕切

セットバック

正面

300あり

なし

○ ○ ○

○ ○ ○

○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

1 2 5.0 -2.6 -2.1 -1.4 -3.9 1.7 0.9 1.7 1.3 5.5 1.2 12.9 3.1 0.5 -4.4 1.7 0.8 -15.3 0.7 -3.5 -2.5 -19.4 -3.7 -1.8

3 0.0 5.9 3.0 -3.8 0.9 -1.1 0.7 2.1 2.4 -0.2 0.5 -1.8

被験者グループ 4 5 6 -1.3 1.9 11.0 -3.4 -2.3 12.7 3.1 0.6 0.1 2.6 -0.7 -1.3 1.9 -1.1 0.1 -2.7 -0.4 -0.4 0.0 1.8 -0.1 -1.8 2.0 2.4 -0.9 -4.4 -0.1 0.3 5.8 1.9 2.2 -27.6

7 1.8 -0.1 5.1 2.8 0.2 -2.9 -1.3 -2.5 2.0 0.7 1.0 0.6

8 -1.7 2.7 -0.2 0.6 -2.6 -2.0 1.9 -0.4 -0.4 0.4 -1.5 0.9

平均値

9

変化量

標準偏差 -30.0

1.8 1.5 0.8 0.7 0.7 0.5 0.4 -0.2 -0.6 -0.9 -2.0 -3.7

-2.6

-0.9 5.0 -3.0

4.5 5.5 3.0 2.2 2.5 5.2 1.5 2.4 5.8 2.3 7.5 9.9

-25.0

-20.0

-15.0

変化量(degree) -10.0 -5.0 0.0

5.0

10.0

15.0

4

2

1

10

3

8

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

表 7-1-2-1 実験動作前後の右側屈時の体幹角度の変化量の一覧

5

12

11

7

9

6

表 7-1-2-2 実験動作前後の右側屈の体幹の角度での項目ごとの差の検定 右側屈データ(収納動作前後の差)の平均値

1

10.0

2

3

4

5

6

7

8

9 10 11 12

1 2×

5.0

3× × 右側屈角度差

4× × × 0.0

5× × × × 6× × × × ×

-5.0

7× × × × × × 8× × × × ○ × ×

-10.0

9× × × × × × × × 10 × × × × × × × × ×

-15.0 4

2

1

10

3

8

5

12

実験項目番号 平均値

11

7

9

6

11 × × × × × × ○ × × × 12 × × × × × × × × × × ×

図 7-1-2-1 実験動作前後の右側屈の変化量とその誤差

Bachelor's Thesis 2006

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7-1 分析

7-1-3 実験動作前後の前屈の hmp 高さの変化量の一覧

実験項目番号

7 11 5 8 6 9 10 12 2 1 4 3

高さ 100% 85% ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

位置 左 ○

左間仕切

セットバック

正面

300あり

なし

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

1 -31.6 -15.1 -42.4 9.773 -55.7 -53.3 9.115 -12.3 5.413 -1.4 20.95 6.862

2 4.182 26.78 -1.82 30.06 -27.4 18.51 -33 -21.7 3.071 1.624 3.034 23.18

3 -0.45 -10.8 -22.5 -62.1 -0.15 -45.8 -7.1 -12.3 4.343 -15.6 -42.7 -2.04

被験者グループ 4 5 6 16.2 -30.9 19.89 0.156 5.05 2.184 18.9 -24.6 2.668 0.85 -0.65 31.48 13.9 -2.57 64.95 24.4 -3.31 20.61 0.92 -3.73 66.3 31 3.269 40.95 -8.5 -5.05 64.8 17.45 -5.13 12.53 5.905 27.55 62.28 18.27 12.03 42.08

変化量

7 -98.6 -85 -33.7 -40.4 -14.9 -7.12 -2.32 -19.3 -18.5 -25.9 -11.1 -28.8

8 -19.6 -45.6 -24.2 -41.3 -49.2 -4.92 -43.6 -14.5 -26.1 13.79 -1.75 2.102

平均値

標準偏差

9 -12.3 -17.0 35.9 -7.95 -14.5 32.7 12.86 -12.7 21.5 -9.0 34.9 -8.9 38.3 -6.4 29.4 -1.7 32.8 -0.6 23.9 2.4 27.6 34.83 3.6 18.4 8.0 30.6 9.2 20.7

-150

-100

変化量(mm) -50 0

50

100

7

11

5

8

6

9

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

表 7-1-3-1 実験動作前後の前屈の hmp 高さの変化量の一覧

10

12

2

1

4

3

表 7-1-3-2 実験動作前後の前屈時の hmp 高さの変化での項目ごとの差の検定 前屈データ(初めと収納動作後の差)の平均値

1

60.0

2

3

4

5

6

7

8

9 10 11 12

1 2×

40.0

前屈時の手の高さの変化量

3× × 20.0

4× × × 5○ × × ○

0.0

6× × × × × 7○ ○ ○ ○ ○ ×

-20.0

8× × × ○ × × ○ -40.0

9× × × × × × ○ × 10 × × × × × × × × ×

-60.0 7

11

5

8

6

9

10

12

2

実験項目番号 平均値

1

4

3

11 ○ × × ○ × × × × × × 12 × × × × × × × × × × ×

図 7-1-3-1 実験動作前後の前屈の hmp 高さの変化量とその誤差

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7-1 分析

各動作前後の各関節の変化量について、動作項目の「高さ」 「収納位置」 「セットバックの有無」ごとにグループにわけて、それらの間に統計的 に有意な差があるか検証した。以下は、差の検定、及び一元配置分散分 析の結果である。

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

7-1-4 実験動作の項目ごとの検定

表 7-4-1-1 実験動作前後の左側屈の項目ごとの検定 差の検定の項目 各収納動作において収納高さの分析 収納位置においての分析 セットバックの有無においての分析

検定方法 P(T<=t) 片側 t 境界値 片側 差の有無 0.067657017 1.661226179 なし t検定 一元配列 0.633090793 3.09434256 なし t検定 0.083904745 1.66140353 なし

表 7-4-1-2 実験動作前後の右側屈の項目ごとの検定 差の検定の項目 各収納動作において収納高さの分析 収納位置においての分析 セットバックの有無においての分析

検定方法 P(T<=t) 片側 t 境界値 片側 差の有無 t検定 0.348664219 1.661226179 なし 一元配列 0.238453985 なし t検定 0.247423206 1.661585429 なし

表 7-1-4-3 実験動作前後の前屈時の hmp 高さの項目ごとの検定 差の検定の項目 各収納動作において収納高さの分析 収納位置においての分析 セットバックの有無においての分析

Bachelor's Thesis 2006

検定方法 P(T<=t) 片側 t 境界値 片側 差の有無 t検定 0.432438911 0.333186272 なし 一元配列 0.886798858 なし t検定 0.00152271 1.660550879 あり

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45


7-2 考察

でストレッチ効果をすることが可能かの検討を行って来た。確かにセッ トバックのある収納が下半身のストレッチ効果に有益であるということ は表 7-1-4-3 からいえそうでもある。しかしながら得られたデータはど れも標準偏差が極めて大きく、信頼できるデータとは言い難い。従って ここではなぜこの実験において信頼できるデータが計測できなかったと いうことを考察する。 その理由を端的に挙げると 3 つほど考えられる。

1

関節可動域の計測は容易に変化しやすいために個人差が大きい。

2

右左側屈の場合、骨盤を固定しなかったために前後傾が生じてしまい、

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

これまで実験動作の前後の変化量で関節可動域の変化を計測すること

側屈角度の誤差が生じてしまった。 3

関節可動域計測の動作は空間との関係性がないために計測時の関節可 動域の最大値は被験者に依存される。

これらを後の項目にて詳しく説明する。

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46


7-2 考察

関節可動域に関する問題点としては二つある。 まずは被験者のグループ分けを柔軟性に応じて分類しなかった点であ る。まず関節可動域は容易に変化するということはプレ実験においても 検証したことである。このときの問題点が関節可動域のために行った動 作が関節可動域を広げていて、実験動作内にストレッチ効果を生み出す ものがあったのかどうかが不透明であった。そのために、収納動作を多 くし、関節可動域の確認のための動作の割合を逓減させた。その反省点

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

7-2-1 関節可動域に関する考察

を生かし、本実験において、被験者に一日に4動作と限定し、3人で全 12 動作を行うという実験しかできなかった。そのために全動作を一人で 行えなかったために、個人個人での関節可動域の変化の傾向が異なって

にからだの柔軟性でグルーピングが出来なかったことが、関節可動域を うまく計測できなかった点としてまず挙げられる。 もう一つの原因としては、ストレッチの効果には急性効果と慢性効 果の二つが存在するが、急性効果という一時的な効果しか計測できな

Stretch)と呼ばれ、今回はこの計測を行った。この効果としては筋・神経・ 関節の結合組織の弾性や伸長性反射の結果としてそのストレッチを継続 している間、柔軟性が向上するというものである。それに対し、慢性効 果は恒久的な伸長(Practic Stretch)と呼ばれる。筋・神経・関節の 結合組織の弾性や伸長性反射が長期間に渡った場合、それに応じて変形 することで、柔軟性の向上が長期間にわたって持続するものである。そ のために、この方法では真に柔軟性が向上したかどうかの判断が容易で ある。 以上のことをまとめると、本実験において収納動作において関節可動 域を計測し、ストレッチ効果を計測するのであれば実際の家にこの収納 をつくり、そこで実際になるべく多く使ってもらい数ヶ月単位で追跡調 査をすることで柔軟性が変化したかどうか判断することが望ましいと思 われる。

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47

参照 Page.86

かったのも原因の一端を担っている。急性効果は一時的な伸長(Erastic

ストレ�チングの理論

柔軟性が同じであるひとはいません」と言われており、この被験者ごと

http://www.hssr.ne.jp/intelligence/Free/hr_fr_1.htm

しまった。 「柔軟性は日によって、時間帯によっても異なり、だれ一人


7-2 考察

この原因としては二つ考えられる。左右側屈時に前傾が生じてしまう 場合と骨盤を計測の都合上固定できなかったということである。 右側屈と左側屈のように腰部を傾ける場合、前傾が生じてしまい、正 確な計測が出来なかった可能性がある。腰椎の関節構造上、前屈が生じ てしまうと捻る・傾けるという動作がしやすくなる。なぜなら、立位の 場合背骨と背骨をつなぐ椎間関節が動きを制限しているが、前屈時の場 合、その制限が少なくなるためである。プレ実験においては腕を挙げず に体を左右に傾けていただけであった。ここで左右側屈時に前傾が生じ

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

7-2-2 側屈時の前後傾

てしまい、結果として関節可動域の正確な値が出なかった。それに対す る改善案として、ラジオ体操の側屈と同じ動作をしてもらうことにした。 体を倒す反対の腕を頭の上を通す以上、体を前後傾することが少ないと 考えたためである。 また、『関節可動域測定法 改定第 2 版』においては、「骨盤の側方 傾斜を防ぐために骨盤を固定する」という表現がなされている。この方 法では骨盤を固定し Z 軸方向と骨盤と背骨の付け根である部位の S1 棘 突起と首に近い C7 棘突起の角度を測っている。しかしながら三次元動 作解析システムを用いた方法では骨盤を固定してしまうとその人が赤 外線カメラの邪魔となり被験者のマーカーが映らないのでこの方法を採 用することは出来なかった。ただし今回用いた三次元動作解析システム (VICON MX)に関しては 3 次元関節角度計算もサポートしており、骨盤 を固定できなかったために、実験に誤差が生じてしまったということは 考えにくい。 以上のことから、僅かに生じてしまった前後屈と骨盤を固定できな かったということが左右側屈時の体幹角度計測が正確に出来なかったと 思われる。そのために、三次元動作解析システムを用いずに従来の関節 可動域の計測方法で用いられているフレキシブル・ゴニオメーターや万 能角度計などを用いるほうが正確ではないが実験誤差が少なくなるので はないだろうか。

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7-2 考察

関節可動域の計測動作が空間と対応した動作ではないために、被験者 が関節可動域の最大値を判断するということが問題として考えられる。 これまでに三次元動作解析装置を用いた実験には空間と人間の動作の 関係性から身体負荷や筋の活動を計測してきた。これらの動作は空間に よって規定されるものである。例えば、松井(2004)による収納動作に おいては、高さから収納動作を規定している。また牛山(2003)による 立ち上がり動作に関しても座位の高さやしつらえから立ち上がり動作を 規定している。これらの事例では空間と人間の動作が対応している。

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

7-2-3 空間と動作の関係性

しかしながら本実験において、関節可動域の計測においては空間と人 間の動作が対応していない。そのために、関節可動域の最大値を採取す る動作が被験者に任せられることになる。そのために、関節可動域の計 測動作中に被験者が手を抜き、本来の関節可動域の最大値が計測できな かったという可能性が考えられる。そのことが誤差という結果を生じて しまった可能性が考えられる。 これに対する対処としては、関節可動域の計測において被験者以外の 人が被験者の関節を動かし関節可動域を計測する他動可動域による方法 が望ましいと考える。

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49


Summary

第八章 まとめ

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第 8 章 まとめ

データのばらつきが大きいために行うことは出来なかった。ばらつきが大き い原因としては、 1

関節可動域は一時的に変化しやすい。計測動作度に測る計測手法で はその効果の持続性を明らかにすることができなかった。

2

被験者の柔軟性などに関する個人差についての特性を知る必要があ る。

3

骨盤を固定して計測する必要があり、様々な空間の特性をはかるに は、その手法が必要である。

4

被験者に関節可動域の最大を委任したことで、関節可動域計測に誤

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

本実験において収納動作にストレッチ効果があるかという検証は、実験

差が生じてしまった。 と挙げられる。 それに対する改善策として、 1

収納を実験の収納に変えてもらい長期間で追跡調査を行い、関節可 動域の変化を立証する。

2

関節可動域の確認の際に骨盤を固定する計測方法を用いて、機材と してはフレキシブル・ゴニオメーターや万能角度計を関節可動域の 確認に用いることで、計測誤差を軽減する。

3

個人個人の柔軟性変化の特徴を把握した上で実験を行う。

ということが考えられる。

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Gratitude

第九章 謝辞

●本文使用書体/ NF モトヤシーダ 1

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52


状況�打破��真�社会生活�難��営����出来�人間����

�塊�強者��復讐���感情�現���������������

���弱者�強者����妬��嫉���������������

����������世界�別��������思�弱者�願望�

��僕������超人��姿��������感�������

���������������自分���業務�紹介������

的���������週八十時間���極��厳��労働時間���

���������������理由�行����������刺激

風��������少����足������理解���������

� � � � � � � � � � 僕 � 彼 � � 近 � � � 努 力 � � �� � � � � �

�����������去年���������時�思�����

��������������能力�要約力���不足�感����

��������主張������超人������������� ���実際�大��変������������気����最初��

���戯言�呼���程度����一通�飄��吐�捨����

���書�終��今��改善����思��

�真�受��������������������������二

��担当者�怒��二��������������人�怒��螺旋

����健全�魂�健全�肉体�宿�����本当�異��意味�格言 週間�終�������������飽�������������

�留�������������������行���人���呪縛 分�������� ■■■

���逃������������九九 九. 九九九九九九�����自

���僕�生活�荒�������気���� 四月恒例�脱力感 五月恒例�花粉症 六月恒例�発情期 七月恒例��院試

��������本論文�多��人�協力�����成�遂���

�������何��付��自��逃�道�作���������

��逃������監視�続�����人����多大�迷惑���

��身�����退却��������人間�私�����両脇�固

八月恒例�夏��

������超人����最低限社会的�生活�営����出来���

��思����八王子合宿�一人�提出一週間前���一人倒���

��大��壁�����������大��壁�������前��

���気������今年�九月�終��������就職活動��

聞�������自分�不甲斐���感�����

渡辺先生�二年越��論文���������������申�訳

���������折���自分�所属�������先輩���� ������企業����聞����企業��������参加�� �������������企業�何�����������知��

53

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������ 長澤����何��������自分���������僕�的確 ��������迷��子羊�救���������������� ����� 国際医療福祉大学�勝平����無理����押�付������ 本当�申�訳������ 被験者探��������探�����高校時代�友人�廃人�多 �中学時代�友人�連絡���首�縦�振��������凹��� �時��自�人材派遣会社�称��友人������������� 人�連�������大河内���松井���本当�������� ����������迷惑��������特���������� �申�訳������ ����話相手�������王���放課後�校舎裏�来��� ���� ���何���経済的�����������住����住居�住 ������困���������提供�����親�感謝���� ��特�週八十時間���作業���������親父�尊敬��� �得������� �����研究室�����皆������������

��� ����������������� DJ Tiësto Ferry Corsten ���������� �聞���必要����������皆�

���������触���������������鳴�����

�嫌�顔一�見����見���怖���������������

�� Network Walkman �������������� 最後��������������集��忙��時���疲��僕

C D

尻尾�振���������������甚�疑問����

菊地 � 弘祐 自宅��記�

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他���資料�印刷����必要�紙������������� ���

���葉加瀬太郎���東儀秀樹��� Bon Jovi ��� Sarah Brightman

曲�歌����音楽�演奏�����自分�励��続�����

��������

���僕�特�大変������思����動�続��������

U S B


Bibiography

第十章 参考資料

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55


第 10 章 参考資料

1)

Measuring Flexibility, K.Burton, Applied Ergonomics, Vol.22, No.5 Page.303-307, 1991

2)

腰に優しい姿勢と動作―腰痛の自己管理― , 赤羽秀得、尾﨑心正 , 手 術医学 , Vol.20, No.2, Page.160-167, 1991

3)

ISO 11226:2000(E), International Organization for Standard, 2000

4)

立ち作業と座位作業での腰痛対策のポイント , 瀬尾明彦 , 働く人の安 全と健康 , Vol.1, No.6, Page.570-571

5)

リズムストレッチの考え方と方法 , 石川由希子 , Training Journal, 2002 October, Page.16-17

6)

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

■参考論文

ストレッチング時の伸展強度の違いが柔軟性に及ぼす影響 2(80% 伸展強度と主観的伸展強度の比較), 黒岩純 , 科学 / 人間 , No.34, Page69-78, 2005

7)

腰に負担のかからない健康なすまいの研究 , 牛山琴美 , 2003 修士論文

8)

身体の負担からみた収納行動とデザインの研究-腰部負荷を中心とし た収納計画評価- , 松井香代子 , 2004 学士論文

9)

高齢者の筋力維持を目的とした日常生活における動作の負荷に関する 研究―高齢者用運動プログラムと生活動作の腰部負荷の比較― , 大河 内重敬 , 2005 学士論文

10) 筋力低下を予防する住空間のデザイン-日常生活動作時の腰部周りの 筋活動量計測- , 永池俊也 , 2005 修士論文

■参考文献 11) ディテール別冊 デザイナーのための人体・動作寸法図集 , 小原二郎 , 彰国社 , 1984 12) カリエ博士の腰痛ガイド 正しい腰痛のなおしかた , レネ・カリエ著 , 荻島秀男訳 , 医歯薬出版株式会社 , 1985 13) デザイナーのための生活動作とインテリアスペース図集 , 小原二郎監 修 , 上野義雪著 , 彰国社 , 1987 14) 図説エルゴノミクス , 野呂影勇ほか , 日本企画協会 , 1990 15) 柔軟性トレーニング その理論と実践 , Christopher M. Norris 著 , 吉永孝徳、日暮清訳 , 大修館書店 , 1999 16) ストレッチングマニュアル , Michael J. Alter 著 , 山口英裕訳 , 大修 館書店 , 2002

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第 10 章 参考資料

Norkin、D. JoyceWhite 著 , 山田昇、園田啓示、中山孝、吉田由美子訳 , 協同医書出版社 , 2002 18) 建築設計資料集成[人間], 日本建築学会編 , 丸善 , 2003 19) 人間計測ハンドブック , 産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門 編 , 朝倉書店 , 2003 ■参考 web 20) ストレッチングの理論 http://www.fssr.ne.jp/intelligence/Free/hr_hf_1.htm

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

17) 関節可動域測定法 可動域測定の手引き 改定第 2 版 , Cynthia C.

21) 健康ネット http://www.health-net.or.jp/

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Several Deta in this thesis

第十一章 デ�タ編

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

論と実践』という本を参考にした。次頁からストレッチ動作がどの筋・ 関節に働くかを一覧にしたものである。

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からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

柔軟性のリサーチを進めるにあたって『柔軟性トレーニング その理

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

ストレッチング 部位

ハムストリングス 脊柱起立筋

ストレッチング 部位

薄筋以外の股関節内転筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ2

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ1

ストレッチ3

ストレッチング 部位

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薄筋を含む股関節内転筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

ストレッチング 部位

薄筋を含む股関節内転筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ5

ストレッチング 部位

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ4

ヒラメ筋 筋腓腹

ストレッチ6

ストレッチング 部位

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左側ハムストリングスと殿筋 右脚の腸腰筋と大腿直筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

ストレッチング 部位

股関節の内旋筋と外旋筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ8

ストレッチング 部位

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ7

薄筋を含む内転筋

ストレッチ9

ストレッチング 部位

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広背筋 腰方形筋 腹斜筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

ストレッチング 部位

脊椎 腹斜筋 右足の股関節内転筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ11

ストレッチング 部位

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ10

腰椎 脊柱起立筋

ストレッチ12

ストレッチング 部位

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腰椎 腹部

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ13

ストレッチング 部位

殿筋 梨状筋

ストレッチング 部位

前脛骨筋 足指伸筋 足関節

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ14

ストレッチ15

ストレッチング 部位

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大腿直筋 腸腰筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ16

ストレッチング 部位

ハムストリングス

ストレッチング 部位

足部の外がえし筋 外側靭帯 足関節

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ17

ストレッチ18

ストレッチング 部位

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足底筋膜 足指屈筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ19

ストレッチング 部位

胸椎 広背筋

ストレッチング 部位

薄筋を除いた内転筋 殿筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ20

ストレッチ21

ストレッチング 部位

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ハムストリングス

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

ストレッチング 部位

ハムストリングスと臀部 股関節屈筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ23

ストレッチング 部位

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ22

首の後ろの組織

ストレッチ24

ストレッチング 部位

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頸部側屈筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ25

ストレッチング 部位

胸筋 三角筋前部

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ26

ストレッチング 部位

肩関節回旋筋

ストレッチ27

ストレッチング 部位

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胸筋 三角筋前部 肩関節外旋筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

ストレッチング 部位

手関節伸筋および屈筋

ストレッチング 部位

胸筋 三角筋前部 肩関節内旋筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ29

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ28

ストレッチ30

ストレッチング 部位

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上腕三頭筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ31

ストレッチング 部位

大腿直筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ32

ストレッチング 部位

殿筋 股関節屈筋

ストレッチ33

ストレッチング 部位

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股関節屈筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

ストレッチング 部位

脊椎回旋筋 股関節外転筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ35

ストレッチング 部位

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ34

脊椎後部組織

ストレッチ36

ストレッチング 部位

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腰方形筋 腹斜筋 広背筋

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

ストレッチング 部位

脊椎 股関節外転筋

ストレッチング 部位

薄筋を含む股関節内転筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ38

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ37

ストレッチ39

ストレッチング 部位

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三角筋外側 肩甲骨間筋 鎖骨両端の関節

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ40

ストレッチング 部位

股関節内転筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ41

ストレッチング 部位

ハムストリングス

ストレッチ42

ストレッチング 部位

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胸筋 三角筋前部 Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.

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11-1 柔軟性ストレッチの動作と使用する筋

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ストレッチ43

ストレッチング 部位

大腿直筋

柔軟性トレ�ニング その理論と実践

ストレッチ44

ストレッチング 部位

股関節内転筋

ストレッチ45

ストレッチング 部位

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肩甲骨挙上筋

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11-2 関節可動域の測定法

掲載されていることをのべる。

関節角度測定 関節角度測定(goniometry)という用語は、角度を意味する gonia と 測定を意味する metron という 2 つのギリシア語に由来するものである。 したがって、関節角度測定とは角度の測定、特に骨によって構成される ヒトの関節に生じる角度の測定を指す。万能角度計を使う場合、測定し ようという関節の近位と遠位の骨にそくてい機器を当てることで測定値

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

『関節可動域測定法 可動域測定の手引き 【改定第 2 版】』において

が得られる。関節角度測定は、特定の関節肢位と関節の可動可能な全角 度という両者を決定するために用いる。

て重要である。典型的な包括的評価では、最初に記録を調べたり、対象 者への面接によって、現在の症状や職能的能力、職業・レクレーション 活動、既往歴などについて正確な情報を得ることから始める。一般に、 面接に続いて軟部組織の形状や皮膚の状態を評価するために観察を行 う。皮膚温や軟部組織変形の質、解剖学的構造に関連した局部通の兆候 を決定するには愛護的な触診を用いる。下肢長や周径、身体容積などの 身体計測が指示されることもある。 評価中に被験者に自動運動を行わせることで、検者は以上運動をスク リーニングでき、また運動しようとする被験者の意欲について情報を得 ることができる。異常な自動運動 が観測された場合、検査は間接制限 の原因や関節の最終域感(end-feel)を決定するために他動運動を行う。 可動可能な自動および他動運動の範囲を測定し、記録するために関節角

関節可動域測定法 可動域測定の手引き 改訂第2版

関節角度測定は、関節とその周囲軟部組織の包括的な評価の 1 つとし

度測定を用いる。また、関節の異常な拘縮肢位を正確に記録するために も関節角度計測を用いる。損傷を受けた解剖学的構造を明らかにするた めに、関節角度測定を行うとともに抵抗を加えた等尺性収縮や特殊なテ ストを行うこともある。そのために支持されることが多いのは、筋力や 神経学的機能を評価するテストである。レントゲンや CT スキャン、生 化学的検査が必要なこともある。

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11-2 関節可動域の測定法

・機能障害が発現しているかどうかを決定する ・診断を確立する ・治療ゴールを設定する ・リハビリテーションゴールに向けての進捗が得られているかどう かを評価する ・治療方法を変更する ・患者の動機付けを高める ・特定の治療手技や治療方法、たとえば運動療法や薬物、手術の効 果を調査する

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

関節角度測定のデータは他の情報とともに以下の事項の基礎となる。

・装置を型どったり、機器を適用する

関節運動と骨運動 関節の動きは1つの関節面とそれに相応する関節面の動きの結果とし て起こる。関節運動(arthrokinematics)は関節面の動きに着目すると きに用いる用語である。関節面の動きには滑り(slide または glide)、 軸回転(spin)、転がり(roll)がある。並進運動である滑りは、壊れ た車輪車輪が滑るときのように、一方の関節面が他方の関節面上を滑る 動きのように、一方に関節面が他方の関節面上を滑る動きである。軸回 旋は回る動き(角運動)であり、コマが回る様子に似ている。動く骨の 関節面のすべての点は、固定した運動軸の周りを一定の間隔で回ってい るタイヤの動きに似ている。一般に、人体では滑り・軸回旋・転がりが 相互に組み合わさって起こり、結果として骨体の動きとなる。

関節可動域測定法 可動域測定の手引き 改訂第2版

関節の動き

骨運動(osteokinematics)は関節面の動きではなく、骨体のうごき を述べるときに用いる用語である。一般に骨体の動きは、あたかも固定 した運動軸を軸として生じた回転性の動きとして述べられる。関節角度 測定では骨体の回転性の動きによって生じた角度を測定している。しか し、ある種の並進運動には回転性の動きに伴い、運動中に運動軸のわず かな変位が生じる。にもかかわらず、ほとんどの臨床家は回転性の骨運 動の記載が十分に正確であることがわかっており、骨運動学的動きを測

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11-2 関節可動域の測定法

関節可動域 関節が動きうる範囲(可動可能な角度)を関節可動域(ROM ; Range Of Motion)という。横断面での回旋を除いたすべての ROM 測定の開始 肢位は解剖学的肢位である。ROM を記載するために 3 つのシステムが使 われている。0 − 180°システム、180 − 0°システム、360°システムの 3 つである。 0− 180°システムでは、身体が解剖学的肢位にあるとき、上下肢は

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

定するのに関節角度測定を用いている。

屈曲―伸展、内転―外転に関しては 0°であるとする。四肢の関節が 回旋に関して内側―外転に関しては内側(内方)と外側(外方)の中 180°に向かって弧を描く。この 0 から 180°システムは世界で広く使 われている。1923 年に Silver が最初に提唱したこのシステムは、Cave と Roberts、Moore、アメリカ整形外科学会(AAOS ; American Academy of Orthopaetic Surgeons)、アメリカ医師会(AMA ; American Medical Association)など、多くの識者からその使用を支持されている。

関節可動域に影響する因子 正常 ROM は個々人によって異なり、年齢や性別、運動が自動または他 動でなされたかなどの要因に影響される。

年齢

関節可動域測定法 可動域測定の手引き 改訂第2版

間にあるとき、回旋の ROM は 0°であるとする。ROM は 0°から始まり

四肢と脊柱の ROM に対する年齢の影響を決定するために多くの研究が 行われている。研究者の間では、新生児や乳児、2 歳までの幼児の四肢 関節の ROM に年齢の影響があるという一般的な合意がある。この影響は 間接や動きに特異であるが、性の影響を受けていないようである成人に 比べて、幼児群は股関節の屈曲・外転・外旋、脚関節の背屈、肘関節の 動きが大きい。これらの年齢群では股関節伸展、膝関節伸展、底屈の制 限は正常であると考えられる。AAOS や AMA、Boone と AAzen が公表して

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11-2 関節可動域の測定法

ている。そのため、新生児や乳児、2 歳までの幼児に対しては、可能な 限り年齢に相応した標準値を使うべきである。 幅広い年齢群を調査しているほとんどの研究者は、高齢群は若年群に 比べて四肢の ROM が若干少なかったと報告している。成人と新生児や乳 児、幼児を比較した研究の知見のように、高齢者の加齢に相応した ROM 変化は関節や運動の特異性があるが、その影響は男女に異なって現れて くる。Allander らは手関節の背屈と掌屈、股関節の回旋、肩関節の回旋 の ROM は加齢とともに減少したが、母指の中手指節(MCP)関節屈曲の ROM には一貫した減少は見られなかったとしている。Roach と Miles は、

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

いる値によれば、幼児群の平均値は成人の平均値から 2 標準以上異なっ

若年群(25 歳〜 39 歳)と高齢群(60 歳〜 74 歳)では股および膝関節 の自動運動の平均値は高齢群にわずかな減少(3 〜 5%)が一般的に見 動弧の 15%以下であった。Boone らは、股関節と膝関節の動き、足関節 の手いくつ、内反、外反を研究した。20 〜 21 歳と 61 〜 69 歳の年齢群 の比較では、動きや性差を基準として加齢の影響をみると、ROM は増加 もしくは減少している場合もあれば、不変の場合もあった。 四肢と同じように、脊柱への加齢による影響にも運動特異性があるよ うである。加齢によってどの程度の ROM 変化が起こるかは、研究者によっ てかなり異なった結論が得られている。Moll と Wright は 15 〜 24 歳に かけて胸腰椎の可動性(屈曲・伸展・側屈)の初期増加がみられ、、25 歳〜 34 歳以上になると加齢によって徐々に減少するとしている。彼らは、 運動にもよるが 70 歳代の脊柱の可動性を 25 〜 52%減少させる因子は年 齢のみであると結論している。Loebl は、胸腰椎の可動性(屈曲・伸展) は 10 歳ごとに 8°減少するとしている。Fitzgerald らは、腰椎の側屈 と伸展は 20 歳ごとに減少するが、回旋と前屈には差異はみられなかっ

関節可動域測定法 可動域測定の手引き 改訂第2版

られていたとしている。股関節伸展の ROM を除いて、これらの減少は運

たと報告している。Youdas らは、男女ともに 10 歳ごとに頸部伸展の自 動運動が約 5°、側屈と伸展が 3°減少すると結論づけた。

性差 四肢および脊柱の ROM に対する性の影響も間接および動きに特異的で ある。Boone らは、21 〜 69 歳の女性は同年齢の男性に比べて股関節の

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11-2 関節可動域の測定法

外転と外旋は同年齢の男性よりも少なかった。Beighton らは、アフリカ 人の研究において、0 〜 80 歳の女性は同年齢の男性よりも可動性が大き かったとしている。Moll と Wright は、女性の胸腰椎の左側屈は男性の それよりも 11%大きかったとしている。その一方、胸腰椎屈曲と伸展の 可動性は男性のほうが女性よりも大きかったとしている。O’Driscoll と Thomenson は男性では年齢が頚椎 ROM 変化の 57 〜 70%を説明するの に対して、女性では 44 〜 64%にすぎなかったとしている。 ROM が制限されているかどうかを決定するには、理想的には特定の関 節に対して同様の年齢、性別、同じ測定方法を使った研究から得られた

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

伸展は少なく、屈曲は大きかったとしている。1 〜 29 歳の女性の股関節

ROM 値と比較すべきである。すべての年齢や性別に関連した正常値が確 立されていないので、そのような比較は困難であることが多い。このよ の ROM と比較すべきである。対側も同様に制限があるとすれば、個々人 の ROM は AAOS のハンドブックやその他の標準的な教科書にある ROM 平 均値と比較する。しかし、それらの本の多くは、平均値が導き出された 対象群を明確にしていなかったり、測定肢位や計測機器の種類を明らか にしていない。

自動可動域 自動可動域(自動 ROM あるいは AROM ; Active Range Of Motion)とは、 ひけんしゃが介助されることなく関節の自動運動を行ったときの ROM で ある。自動 ROM を行わせることによって、検者はひけんしゃの運動しよ うとする意思、協調性、筋力、ROM についての情報を得ることができる。 自動 ROM 中に痛みが生じた場合、それは筋や腱もしくはそれらの骨への 付着物などの収縮、もしくは「収縮した」組織の伸長によるものであろ

関節可動域測定法 可動域測定の手引き 改訂第2版

うな状況下では、問題となっている関節の ROM はその個人の対側の関節

う。痛みは靭帯や関節包、関節囊などの非収縮組織の伸長もしくは挟み 込みによることがある。自動 ROM を容易にかつ痛みなく行うことが出来 れば、その運動に対してそれ以上の検査を行う必要ないだろう。しかし、 自動 ROM が制限され、痛みがあったりぎこちない場合、その問題を明確 にする検査を含めた身体的検査を行うべきである。

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11-2 関節可動域の測定法

他動可動域(自動 ROM あるいは PROM ; Passive Range Of Motion)と は、被験者の力によらず、検者が関節を動かした時の ROM である。被験 者は力を抜いたままで、運動のためには何ら能動的な役割を果たすこと はない。正常には、他動 ROM は自動 ROM よりわずかに大きい。それは、 各関節には随意運動コントロール下にない小範囲の可動域があるからで ある。正常な自動 ROM の最終位での付加的な他動 ROM は、外力を和らげ、 関節構造を守ることに役立っている。 他動 ROM の測定によって関節面の健全さ、関節包そして靭帯や筋の伸 展性についての情報を得ることができる。これらの組織を重点的に検査

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

他動可動域

するには、自動 ROM よりも他動 ROM を測定すべきである。他動 ROM は自 動 ROM とは異なり、被験者の筋力や協調性に影響されることはない。他 力(自動 ROM)に対して、関節構造によって規定される運動の量(他動 ROM)についての情報を得ることが出来る。筋力低下などの障害がある 場合、自動 ROM および他動 ROM はかなり異なることがある。

最終域感 他動 ROM の量を測定する関節の独自の構造によって決まる。関節によっ ては特定方向の最終 ROM を関節包が制限する構造になっており、また靭 帯が制限する構造になっている関節もある。その他、運動の正常な制限 要素には筋の緊張、軟部組織の近接、関節面の接触がある。 ROM を制限する構造はその種類によって独特の感じがあり、これは検 者が他動 ROM を行うときに感知できる。他動 ROM でそれ以上動きを妨げ るものとして検者が受ける感じを最終域感という。最終域感の特性を決

関節可動域測定法 可動域測定の手引き 改訂第2版

動 ROM 及び自動 ROM の比較によって、被験者が関節運動を生起できる能

定する能力を培うには実践と感受性を必要とする。ROM の最終位を感知 し、正常および異常な各種の最終域感を判別するために、最終域感の決 定はゆっくり注意深く行わなければいけない。ROM の最終位を決定する 能力は ROM 測定を安全かつ正確に実施するために必須である。

脊柱の関節可動域測定 屈曲

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11-2 関節可動域の測定法

価を行っている検者もいる。この指先端と床、または前屈による測定で は、脊柱と股関節の屈曲が含まれており、脊柱屈曲のみを分離し、測定 することは困難である。そのために、この方法は胸腰椎の測定方法とし ては薦められないが、全身の柔軟性の評価としては使用することができ る。

側屈 基本的測定肢位 被験者に立位をとらせ、頚椎、胸椎、腰椎の屈曲・伸展・回旋が 0°

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

最終可動域で被験者の中指先端と床の間の距離を測定し、胸腰椎の評

になるようにする。

骨盤の側方傾斜を防ぐために骨盤を固定する。 角度計の当て方 1

角度計の支点は S1 棘突起の後面上に合わせる。

2

近位アームは床に対して垂直になるように当てる。

3

遠位アームは C7 棘突起の後面に当てる

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関節可動域測定法 可動域測定の手引き 改訂第2版

固定

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11-3 身体の柔軟性とストレッチング

抜粋する。

1.柔軟性とは 走る、飛ぶ、投げる、打つといったパフォーマンスは、特定の関節の柔 軟性と非常に関連があると考えられています。最低限度の柔軟性は、明らか に競技生活の鍵を握っていると言えますが、そのレベルは競技の特性によっ て異なるものと思われます。さらに各競技の特性によって異なるものと思わ

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ここではストレッチングと柔軟性に関して簡潔に述べられているものを

れます。また、各競技のエリートと呼ばれる選手がどの程度柔軟性に優れて いるのかと言うことや、トレーニングによってどの程度柔軟性を改善できる のかと言ったことについては、ほとんど知られていません。しかし科学的な

柔軟性には、ライトとジョーンズによって提唱された静的柔軟性と動的 柔軟性の二つがあります。静的柔軟性というのは正常な関節の可動域を測定 し評価するもので、容易に比較することが出来るものです。しかし動的柔軟 性というのは、量的にそれを測定し評価することが困難なものです。 静的柔軟性は、骨幾何学、関節包、靭帯、腱、骨格としての結合組織、腱 鞘といった様々な構造組織によって制限を受けます。しかしこの制限因子の 中に筋肉の成分は含まれていません。 ある学者は、" 動作の効率は、ある程度柔軟性によって決定される " と言っ ています。このことは前に述べたように、柔軟性は激しい運動でのオーバー ストレイン(筋肉が過度に引き伸ばされること)による筋線経の障害を防止 することにつながると言うことです。効率的でスムーズな動きとは静的柔軟 性ではなく、動的柔軟性に優れているということを意味しています。もし動 的柔軟性が不足していれば、関節、靭帯、筋肉、結合組織などにストレスを 与えることになり、それらの障害を引き起こすようになります。

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ストレ�チングの理論

に欠かせない要素であることは多くのコーチや指導者が認識しています。

http://www.hssr.ne.jp/intelligence/Free/hr_fr_1.htm

裏付けがなくても、柔軟性はほとんどの競技においてパフォーマンスの向上


11-3 身体の柔軟性とストレッチング

柔軟性が不足すると、肉離れなどの筋損傷を非常に起こしやすくなりま す。このことがコンディショニング・プログラムのなかに必ず柔軟性改善の プログラムが含められる大きな理由になっています。陸上競技のコーチや指 導者は、板のように硬くなったハムストリングスの筋肉を持つスプリンター をよく見かけます。その様なスプリンターのほとんどがハムストリングス の肉離れを経験していたり、今後発生する可能性が高いと言っても過言では ありません。さらにハムストリングス、股関節屈筋、そして腰筋の柔軟性に 乏しい選手は、姿勢ストレス症候群と呼ばれるものや腰部障害との関連性を

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

2.柔軟性の不足

持っていると考えられます。多くのコーチや指導者は適切な柔軟性改善のプ ログラムによって、この種の障害の発生を低下させることが出来ると言えま す。

組織の顕微鏡的な撮傷が引き起こされるために生じる " と言われており、ま た " 筋肉痛はストレッチングによって軽減できる " とも言われています。

3.ストレッチング ストレッチとは " 伸ばす " とか " 引っ張る " という意味で、ストレッチン グとは文字どうり身体各部の筋肉や腱を引き伸ばすことです。人間だけでな く犬や猫をはじめ他の動物達もストレッチングを行います。いろいろな姿勢 やポジションでストレッチングを行うと、背筋だけではなく全身の筋肉や腱 を引き伸ばすことができます。" あくび " や " せのび " をすると気分が一新 され爽快な感じになりますが、さらに全身の筋肉や腱を伸ばすと気分爽快に なるだけでなく、生理学的にも様々な効果のあることが知られています。ス トレッチングには、バリスティック(弾道的)、スタティック(静的)、ベア (パッシブ)、PNF ストレッチングなどがあります。 < 1 >バリスティック・ストレッチング バリスティック・ストレッチングは、準備体操や柔軟体操の一部として

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ストレ�チングの理論

ングを妨げることになります。筋肉痛は " 激しい筋収縮によって筋肉と結合

http://www.hssr.ne.jp/intelligence/Free/hr_fr_1.htm

筋肉や腱の障害とともによく起こる筋肉痛は、筋力強化とコンディショニ


11-3 身体の柔軟性とストレッチング

るものです。しかしこの方法は反動を使ったりリズミカルに動かして筋肉や 腱を伸ばそうとするために、予期せぬ大きな力が筋肉や腱に働くことがあり ます。 コントロールできない大きな力が筋肉や腱に働くと、当然筋肉や腱は擦 傷を受ける可能性があります。すなわち細かい筋線経や毛細血管の断裂が生 じます。一度小さな断裂が生じるとこれが契機となって、さらに大きな力が 加わったときに大きな損傷が起こることになります。また筋肉は急激に引き 伸ばされると逆に収縮しようととする性質があります。これはストレッチ・

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

従来から行われているもので、適切に行えば柔軟性を養う上で十分効果があ

リフレックス(伸張反射)と呼ばれ、生理的機構によって起こる防御反射の 一種です。すなわち筋肉が急に引き伸ばされると筋肉の中にある筋紡錘とい う受容器が圧迫され、この刺激が知覚神経、脊髄後角を経て脊髄の中枢に伝

この場合に伸ばそうとする筋肉が逆に収縮することになり、これをさらに 伸ばそうとすると一層強い力で引き伸ばす必要があります。このために再度 ストレッチ・リフレックスが誘起されます。結局悪循環が繰り返されて、先 述の理屈で筋肉を痛めてしまうことになります。 このような理由からバリスティック・ストレッチングは慎重に行う必要 があります。しかし弾みをつけたりリズミカルにからだを動かすことは自然 な動作とも考えられるので、ストレッチ・リフレックスを引き出さないよう に動作のスピードをスローにして、息を吐きながら動作を繰り返します。そ うすればバリスティック・ストレッチングの効果を引き出すことができます。

< 2 >スタティック・ストレッチング スタティック・ストレッチングとは、反動をつけないで静かに行うスト レッチングのことです。からだの柔軟性の面だけから考えると、スタティッ ク・ストレッチングもバリスティック・ストレッチングも効果に差がないと 言われています。スタティック・ストレッチングの研究の先駆者の一人であ る運動生理学者の H.A.Devries は、スタティック・ストレッチングはバリス

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反射的に筋肉を収縮させることになります。

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わり、神経細胞を介して脊髄前角、運動神経、そして筋肉と逆に伝達されて


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ていると言っています。 ・消費エネルギーが少なくてすむ ・安全である ・筋肉痛の予防とその回復に効果がある (1)ストレッチングの方法 1.ストレッチングする筋肉の選択とポーズづくり まずどの筋肉をストレッチングするのか、ストレッチングする筋

からだの柔軟性を維持する収納計画に関する研究

ティック・ストレッチングと効果に差がないばかりか、次の 3 つの点で優れ

肉を選択します。スポーツ活動のウオームアップやウオーム・ダ ウンでは、、そのスポーツで実際によく使う筋肉や腱を選択します。 また仕事中や仕事の後では、重く、だるく感じる部分の筋肉に対

行います。 2.主働筋と措抗筋を交互にストレッチングする 関節には、関節を伸ばす筋肉と曲げる筋肉が括抗してついていま す。例えば、上腕二頭筋と上腕三頸筋、大鹿四頭筋とハムストリ ングスという様に、主働筋と括抗筋があり、主働筋(曲げるため の筋肉、伸ばすための筋肉)が緊張して収縮すると括抗筋が弛緩し、 リラックスするという相反神経支配という関係にあります。筋肉 を十分リラックスさせてからストレッチングするとストレッチ 効果が大きくなると言われているので、主働筋と桔抗筋を交互に ストレッチングするとより効果的です。 3.筋肉を強くストレッチングしない 筋肉や腱はある程度緊張が感じられるところまでストレッチしな いと、ストレッチングの効果を引き出せないと言われています。 逆に緊張が全く感じられない程度のストレッチングであっても効 果があがらないし、無理にストレッチングしすぎても痛みが出る だけで、筋肉や腱を痛めてしまうことになります。緩すぎず、強 すぎず筋肉をストレッチングすることです。 4.マイペースでリラックスして行う

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合わせて筋肉を伸ばしやすいポーズをつくってストレッチングを

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してストレッチングを行います。そのストレッチングする筋肉に


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ても異なり、だれ一人柔軟性が同じである人はいません。ですか らストレッチングは、自分のペースで行うようにします。からだ の柔らかい人と一緒にやると、ついついオーバーストレッチング になりやすいものです。その日の状態、そのときの状況に合わせ てリラックスして行います。リラックスした状態がとれないと言 うことは、筋肉の緊張が異常な状態であり、ストレッチングの効 果を余り期待できないと言えます。そんな日にも無理なくできる 範囲で、ストレッチングをすることです。

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柔軟性には、当然個人差があります。また日によって、時間滞によっ

5. 段階的に息を吐きながら行う 筋肉のストレッチ・リフレックスを引き出さないために、ゆっ くり長く息を吐きながらストレッチングを行います。そして

て息を止めたり息を詰めないことです。最初は、息を吐きな がら 5-10 秒間保持します。次に一度筋肉をリラックスさせて から、今度は 10-15 秒間保持すると言うように、少し休息を 入れながら徐々にストレッチングの時間を伸ばして繰り返し ます。そして最終的には 1 分間ぐらい保持できるようにしま す。筋肉が硬くなっていると、長く息を吐き続けることが難 しくなります。しかし筋肉が柔らかくなるにつれて、長く息 を吐き続けることができます。息を吐き続けられる時間に合 わせてストレッチングすると効果的です。 < 3 >ベア・ストレッチング ベア・ストレッチングは、二人で組になって行う方法です。この方法は組 体操のように二人組の一方が相手の筋肉や腱を伸ばしてやることから、パッ シブ・ストレッチングとも言います。ふざけ半分に行うと筋肉や腱を痛めて しまいます。パッシブ・ストレッチングは、全身をリラックスさせて行いま す。そのために息を長く吐いて筋肉をリラックスさせながら、相手に他動的 に筋肉や腱を伸ばしてもらいます。息を吐ききったり、緊張を感じるように なれば、一度リラックスして再度息を吐いてストレッチングを繰り返します。 パッシブ・ストレッチングは、一人で行うスタティック・ストレッチングよ

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ちよく引き伸ばされているのを感じとるようにします。けし

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ストレッチングをしている部分に意識を集中し、筋肉が気持


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ポーツなどでは、一人で行うストレッチングにパッシブ・ストレッチングを 組み合わせて行うと効果的です。

< 4 >PNFストレッチング PNFというのは、"Proprioceptive Neuromuscular Facilitation" と言 う頭文字をとったものです。" 日本語では固有受容性神経筋促適法 " と呼ば れ、ことば的に難しいのでPNFストレッチングと呼んでいます。もともと PNFは、PNFテクニックとして脳血管障害や脳性麻痔リハビリテーショ

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りも効果的であると考えられます。パートナーがたやすく得られるチームス

ンで機能回復訓練の手段として用いられているもので、古くからあるテク ニックです。PNFテクニックは、文字どうり神経の通いをよくするテクニッ クであるわけです。

こしたことで運動神経が麻痔し、自分の意志どうりに手足を動かせなくなり ます。この場合、上肢のPNFテクニックとして、肩や上腕部に抵抗を与え、 麻痔した筋肉の収縮を引き出します。筋肉に刺激を与えることで収縮という 反応を引きだそうとします。筋肉の反応を引き出せれば、肩や腕を動かすこ とができるようになります。脊髄の中枢に近い部分であれば、神経もかなり 通っているので、まず中枢に近い部分に刺激を与えて上腕部を動かし、神経 を通わせるのです。そして徐々に刺激、抵抗の与える部分を肘、前腕、手首 へと末梢部に移動させます。同時に腕を動かす方向にもポイントがあり、非 常に熟練を要するテクニックです。こうして脊髄の中枢部から抹消部に刺激 (抵抗)を与えながら動かし、神経を抹消まで通わせようとするのが本来の PNFテクニックです。 このPNFテクニックを応用したものがPNFストレッチングです。P NFストレッチングは、" 脊髄前角細胞の抑制ということに基づいたもので、 感覚の活性化を減少させると同時に、筋収縮の緊張も軽減させることで筋の 伸長に対する抵抗を取り去る " というものです。もっと解りやすく説明する と、" 筋肉が最大にリラックスしていれば、筋肉を最大に引き伸ばすことが できる " ということです。

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の動きを取り戻すためにPNFテクニックを用います。脳の血管に障害を起

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例えば、脳血管障害で半身が麻痔してしまった患者には、麻痔した手足


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すると、その後反対の筋肉(括抗筋)に正常範囲以上の強い反応が引き起 こされるという " シェリントンの法則 " を応用したものです。この主働筋 と括抗筋の最大の収縮を交互に繰り返していくと、個々の誘導で筋肉の収縮 が前よりも徐々に強くなって行きます。したがってストレッチした筋肉をこ のような形で連続的に収縮させていくと、漸進的により強い収縮が生じるよ うになります。このような筋肉の生理学的反応をもっと解りやすく説明する と、" 筋肉が最大に収縮すると、その後最大にリラックスする " ということ です。ストレッチングした筋肉を最本に収縮させると、次に自ずと最大のリ

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PNF ストレッチングのテクニックは、最大抵抗に対して筋肉が最大に収縮

ラクセーションが得られるので、何度も筋肉を最大に収縮させた後、さらに ストレッチングをしてフォローして行くわけです。PNF ストレッチングがス タティック・ストレッチングなど他のストレッチングと異なる点は、他のス

抗による最大収縮を用いることで、筋力も同時に高めることができるのです。 今のところ、PNFストレッチング以上に優れた柔軟性改善のテクニックは ないと考えられます。 (1)ストレッチングの方法 1.

PNF ストレッチングは、ストレッチング→筋肉の最大収縮→ストレッ

チングを繰り返す。 2. PNF ストレッチングには、次のいずれかのテクニックを用いる。 【ホールド・リラックス】 このテクニックは、まず伸ばしたい筋肉をパートナーがパッシ ブにストレッチし、6 カウント保持します。その後続いて最大に ストレッチしたポジションでパートナーが抵抗を与え、それに対 して最大のアイソメトリック・コントラクション(等尺性の収縮) を 6 カウント行い、筋肉を収縮させることに集中します。次に一 度リラックスした後、もう一度パートナーがパッシブにストレッ チし、6 カウント保持します。この後再びアイソメトリック・エ クササイズを行い、同じ手順を 3 - 5 回繰り返します。パッシブ・ ストレッチングは、-回目より二回目、二回目より三回目という ように徐々に筋肉が伸ばされていき、アイソメトリック・エクサ

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が、PNF ストレッチングはパートナーの力をかりて柔軟性だけでなく最大抵

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トレッチングは単に筋肉を伸ばすことで柔軟性を獲得しようとするものです


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【スロー・リバーサル・ホールド・リラックス】 このテクニックは、まず伸ばしたい筋肉をパートナーがパッシ ブにストレッチし、6 カウント保持します。その後続いて最大にス トレッチしたポジションでパートナーが抵抗を与え、それに対し て最大のアイソキネティツク・コントラクション(等速性の収縮) を行います。 アイソキネティツク・コントラクションは、等速性の収縮であり、 一定のスピードで筋肉を収縮させるということです。ここでは 6

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サイズをする位置が変わってきます。

カウントのアイソキネティツク・エクササイズを用います。した がってパートナーが 6 カウント等速に動かして、ストレッチした 筋肉を収縮させます。次に一度リラックスした後、もう一度パー

回繰り返します。パッシブ・ストレッチングは、一回目より二回目、 二回目より三回目という様に徐々に筋肉が伸ばされて行き、アイ ソキネティツク・エクササイズのスタートポジションが変わりま す。 3.ベア・ストレッチング中に、痛みを引き出さない。 4.ストレッチングする筋肉を意識して収縮させるために、正しいボディ・ メカニズムを使う。 5.規則正しい手順に従って繰り返す。

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再びアイソキネティツク・エクササイズを行い、同じ手順を 3 - 5

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トナーがパッシブにストレッチし、6 カウント保持します。この後


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