紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

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U0609 早稲田大学理工学部建築学科卒業論文         指導教授 渡辺仁史

紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究 A Study on a Method of Planning Evaluation of the Kindergarten with Reference to Expose Ultraviolet Radiation

中村 英輔

Department of Architecture,School of Science and Engineering, Waseda University


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

はじめに

紫外線に興味を持ったのは、色素性乾皮症の疾患を知り、外遊びが出来ない子どもに対 し、建築が何か出来ないだろうかと考え始めたことが、きっかけであった。 その解決策を見つけることは、至極難題であった。 建築と日陰、日除け、紫外線を考えた一年だった。

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1. 研究目的

1


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

Purpose

Chapter One

第 一 部

研 究 目 的

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1. 研究目的

2


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

1. 研究目的 1.1. 研究目的 幼稚園園庭における紫外放射防御係数 ASPF(*)と園児の行動のマッチングにより、新 ASPF(*) 1-2 参照 ESFA(**)1-2 参照

たな建築的健康指標となる紫外線曝露蓄積量 ESFA(**)を明らかとし、それを建築計画学 へ導入するための手法を提案する。

1.2. 用語定義  ASPF (*)= Architectural Sun Protection Factor(建築的紫外放射防御係数) :日本大学海洋建築学科教授の川西利昌氏が提案する建築的な紫外放射防 御の指標。天空図に対応した紫外放射分布が「全天日焼けチャート」にドッ トで表されている。このチャートにより、建築物等が創りだす日陰空間 が紫外線をどれだけ遮断したかを算出することが出来る。

(特願 2004-331581) ESFA (**)= Erythema Sky Factor Accumulation(紅斑天空率上の紫外線蓄積量) :筆者が本研究で提案する ASPF 概念上の、紫外線曝露蓄積量を示す指標。 単位は(W・t/m2)。ASPF が日陰空間の紫外線防御評価を担い、ESFA は 対象者がその日除け空間にどれだけ滞在していたかによって紫外曝露量 を評価している。詳しくは 5.0. 参照。     紫外線曝露 = Ultraviolet radiation exposure :対象者(=本研究では園児)が紫外線を浴びること。紫外線曝露と同意 である。紫外放射量は、太陽から地上に降り注ぐ紫外線の絶対量である。 紫外線曝露量は、その対象者の行動した場所の紫外線放射量と滞在時間 に依存する。

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1. 研究目的

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Background

Chapter Two

第 二 部

研 究 背 景

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2. 研究背景

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2. 研究背景 2.1. 研究背景概要 ヒトゲノム計画(1)

2002 年、 ヒトゲノム計画 (human genome project)(1)の成功がビル・クリントン米国大

ヒトのゲノムの全塩基配 列を解読する世界的なプ ロジェクト。

統領の感動的な演説によって高らかに讃えられた。それが象徴するように、近代生物学は

ゲノム(genome)(2)

メカニズムが発見され続けている。そうした発見の中には、従来の概念を覆すものがある。

生物が持つ全遺伝子物 質。すなわち全 DNA 配 列。 (3)参考文献 「紫外線によって誘導さ れる XPC タンパク質の ユビキチン化は UV-DDB 複合体の持つユビキチ ン・リガーゼ活性によっ て行われる」/ Tanaka K, Hanaoka F./ Cell, 121(3): 387-400 (6 May 2005) (4)参考文献 WHO Solar Ultraviolet Radiation Global burden of disease from solar ultraviolet radiation / p11-17

(5)参考文献 海浜で用いる日除けの紫 外放射照度比と天空率 / 加藤剛士(日本大)・川 西利昌 / 日本建築学会大会学術講 演 概集 2004 年,A-2 分冊,p.497

天空率による緩和規 定(6)

ゲノム(2)時代の入り口に到達し、現在まで明らかとされてこなかった様々なヒト体内の 紫外線による DNA 損傷のメカニズム(3)もその一つである。一昔前までは、子どもは 外で真っ黒に焼けるまで遊ぶ事が「健康的」と見なされていた。日に焼けた肌は、「健康」 の象徴であった。「外で遊ぶ」=「健康的」は否定できないが、「外で遊ぶ」=「日に焼け る」という事が必然的に生じるために、「日に焼ける」=「健康的」という図式ができて きたと推測できる。 ところが、子どもが太陽を過度に浴びるという事が特に危険だと言われる時代が来た。 太陽放射線の「紫外線」を過度に浴びる事で、皮膚、目、免疫系の疾患の原因になるので はないかという疫学データが報告され始め(4)、近年、その分子レベルでのメカニズムが 解明されつつある。 医学、生物学、あるいは地球科学、環境学等では紫外線に関連する研究が注目されてい る。それは、医学、生物学では紫外線によって疾患が発生するならば、その治療法を研究 しなければならないからであり、地球科学、環境学では、地球スケールの対策を打ち出さ なければならないからである。それらの学問は社会的に必要とされている。 一方、とりわけ必要とされていないにも関わらず、我々の人間スケールでの対策をする のに適した分野がある。建築学である。建築は必然的に陰を生み出す。その陰は、太陽の 光だけではなく紫外線も遮るのだ。(5) しかし、高層ビルが相次いで立ち並び、日照権の問題が発生し、建築の落とす陰は少な いほうがよい、というのが定説になっている。2003 年 1 月から、建築基準法改正より天 空率による緩和規定(6)が設けられ、天空率の条件を満たす事によって建物を斜線でカッ トせずに計画できるようなった。

建築基準法第 56 条 7 項 より抜粋 「次の各号のいずれかに掲げ る規定によりその高さが制限 された場合にそれぞれ当該各 号に定める位置において確 保される採光、通風等と同程 度以上の採光、通風等が当該 位置において確保されるもの として政令で定める基準に適 合する建築物については、そ れぞれ当該各号に掲げる規定 は、適用しない」

紫外線曝露(7)

1.2. 用語定義参照

紫外線をどれだけ浴びようと、個々の嗜好によるものだと考えているが、その取捨選択 するだけの理解力が未発達な子ども達は「紫外線弱者」であり、社会的に守られていなけ ればならない。つまり、子ども達の活動の場となる環境では、特に、子どもに対し危険と される過度の紫外線曝露(7)から守るような空間が必要である。子どもの外遊びの重要性 も考慮すると、外部空間に対して、ある程度の陰を必要とする空間もある。建築が紫外線 をカットする必要がある。 建築計画における紫外線対策のため日陰デザインの指針が必要である。

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2. 研究背景

5


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2.2. 紫外線概要 (1)1 nm = 10

-9

m

紫外線とは太陽光のなかの 100nm ∼ 400nm(1)の波長の光を指す

さらに波長によっ

て UV-A、UV-B、UV-C に分けられるが最も波長が短い UV-C は空気中の酸素分子とオゾン 層で完全に遮られて地表には届かないとされている。生体にとって問題となるのが UV-A (2)参考文献 紫外線保健指導マニュア ル 2006 , p4

と UV-B であり、より波長が短い UV-B は皮膚、眼への影響が強いとされる。(2) 紫外線の 強さは、時刻

2-2-1 や季節、さらに天候、オゾン量によって大きく変わる。近年、「オ

ゾンホール」といったキーワードをよく耳にするが、オゾンは、地上付近から 50m 以上 の高さにまで広く分布しており、このオゾン層が紫外線をさえぎって、地球上の生命を守っ ている。紫外放射量は、太陽高度角、天気、オゾン全量、大気の汚れの程度などに応じて

(3)参考文献 紫外線保健指導マニュア ル 2006 , p10

変化しているが、他の条件が同じ場合、オゾン層の厚さが 1% 減ると、地上紫外線量は約 1.5% 増えると言われている。(3) このオゾン層を破壊する化学物質が「フロン」である。フロンは、塩素と炭素、フッ素

オゾン成層圏(4) 地球の大気の鉛直構造に おいて上限50 km までの 大気圏に位置するオゾン 層。対流圏と中間圏の間 に位置する。

でできた化合物の総称で、変質しない、燃えない、毒性がない、しかも役に立つという性 質があり、スプレーの噴射剤、エアコンや冷蔵庫などの冷媒、断熱材の発泡、半導体 の 洗浄など、幅広く使われていた。 ところがフロンは地上付近の空気中では壊れにくく、そ のままオゾン成層圏(4)まで上昇し、その後そこで紫外線を浴びて壊れる。その際フロン は塩素原子を放出するが、これが連鎖反応的にオゾンを破壊する。

(5)ex.

オゾン層の保護のための ウィーン条約 (1985.3) オゾン層を破壊する物質に 関するモントリオール議定書 (1987.9)

WMO

(6)

World Meteorological Organization

UNEP

(7)

United Nations Environment Programme (8)参考文献 Executive Summary, Scientific Assessment of Ozone Depletion: 2002

このメカニズムが判明してから、オゾン層を守る世界的なムーブメントが起きた。塩素 原子を含むフロンなどのオゾン層破壊物質の大気中への放出を抑制するため、世界的に協 調して、それらの生産や輸出入を規制する対策がとられた。(5)  その結果、世界気象機関 (WMO)(6)や国連環境計画 (UNEP)(7)などによる報告(8)によれば、成層圏中の 塩素量の 合計は 21 世紀中頃には 1980 年以前のレベルに戻ると予想されている。 日本上空のオゾン全量は、1980 年代を中心に減少が進み、その後はほとんど変化して いないか、緩やかな 増加傾向がみられる。気象庁による 1990 年から 2005 年の平均オゾ ン全量を 1980 年以前と比較すると、国内 4 観測 地点の平均で 1.8%、札幌では 3.5% 減少 している。(9)

(9)参考文献 環境省 - 地球環境・国際 環境協力 HP http://www.env.go.jp/ earth/ozone/h15pamph/ index.htm ,p4

図 2-2-1 UV インデックスの時期の違い

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2. 研究背景

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2.3. 紫外線と疾患の関係の報告 (1)参考文献 WHO Solar Ultraviolet Radiation Global burden of disease from solar ultraviolet radiation /p20-26 (2)参考文献 紫外線と皮膚癌 / 竹之内辰也 / 県立がんセンター新潟病 院医誌 (0549-4788) 42 巻 2 / p47-51(2003.09) (3)参考文献 紫外線保健指導マニュア ル 2006 , p16

紫外線によって引き起こされる疾患を

2-3-1 に示す。

WHO の報告(1)によると、皮膚癌が世界的に白人を中心に急増傾向にあるのは、紫外 線曝露がその主因とされている。ただ、日本人において紫外線と皮膚癌の因果関係を示し た疫学データは乏しいと言われている。(2) 日本人では皮膚癌罹患率、死亡率共に緯度と の間に有意な相関はみられず、紫外線による皮膚癌発生の仮説は成立しない。すなわち、 紫外線が強い緯度の低い地域ほど、紫外線が弱い緯度の高い地域よりも皮膚癌の罹患率、 死亡率の両者が高くなるといった傾向が見られない。これらのデータから、一般的に、 「日 本においては」紫外線と皮膚癌の関係因果関係はないだろう、ということが言われてきた。 日本人をはじめ有色人種は白色人種に比べて紫外線の影響が少ないということが分かって いる。(3) しかし、現時点での皮膚癌の疫学データは精度、分類法などの点で決して満足できるも のではなく、今後の改善が必要であると考えられている。それは、近年の光生物学、光免 疫学などの著しい研究の進歩により、皮膚の紫外線傷害の機構が分子、細胞レベルでも次

(4)参考文献 光皮膚科学 日やけから 発癌へ / 堀尾武 / 皮膚の科学 (1347-1813) 2巻4号/ p261-268(2003.08)

第に明らかとなっており、紫外線発癌のメカニズムが解き明かされつつあるからである。 最近の医学研究によって、紫外線照射のみで生理的に生じうる皮膚の光生物学的反応(サ ンバーン、サンタン)、光老化及び紫外線発癌の病態が明らかとなった。(4)  このように、紫外線発癌に関して新たな事実が次々と判明しつつある。皮膚癌のような 慢性疾患を現在の疫学データのみで判断するのは非常に危険であると考えられる。

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2. 研究背景

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子ども(1)

本研究では、幼児期 (生後1年ないし   1年半から満6歳 )を念頭に置 いている。

紫外線曝露蓄積量

(2)

用語 紫外線曝露量(2.1. 定義参照 )に 曝露時間を掛けた量。

サンバーン(3) = sun burn 図 2-4-1

2.4. 子どもに対する紫外線の有害性 子ども(1)の皮膚はデリケートである。皮膚は、生後から成人するまで、成長という過 程を経るために、皮膚疾患の予防医学上、子どもの皮膚を保護することは重要なものとな る。子どもの時ばかりでなく、将来の皮膚の状態を決めるのが、紫外線曝露蓄積量(2)で ある。、日焼け(サンバーン(3)・サンタン(4))だけでなく、しわ、しみ、皮膚癌等の光老 化反応(5)を起こさせないためにも子どもの紫外線対策は重要である。(6) 特に紫外線の強いオーストラリアでは、特定の学校で SunSmart(7)方針に従った対策

サンタン(4) = sun tan 図 2-4-1

光老化反応(5)

紫外線による肌の老化。 老化には加齢による生理 的老化と光老化がある。 (6)参考文献 子どものスキンケアの意 義 / 佐々木りか子 / Derma.(1343-0831)95号 / p1-5(2004.12) SunSmart(7) ビタミン D(8) 脂溶性ビタミンの1つで 血液中のカルシウム量の 調節に関係する。 骨粗鬆症

厚生省の発行する (13)引用 サンスクリーン使用に よるビタミン D3 生成へ の影響 子供の骨形成に 異常はおこらないか?/ 藤原留美子、長沼雅子/ 日本小児皮膚科学会雑誌 (0286-9608)15 巻 1 号 p61-65(1996.05)

が奨励されている。 また、日本でも、特に乳児への紫外線の危険性を危惧して 1998 年から母子健康手帳(8) から「日光浴」という表現から、「外気浴」という表現に置き換わった。(図) 一方で、ビタミン D を生成するのに紫外線が必要であるから、紫外線を全く浴びない と健康を保てないという見解もある。すなわち、日光浴をしないと体内でビタミン D を 生成できないから佝僂(クル)病(11)等の疾患を引き起こすというものである。確かに、 ビタミン D は骨形成に必要な栄養素であり、日照の乏しい地方に発症しやすいのは事実 である。しかし、現在の医学的見解では、これは遺伝的要素に大きく依存していることが 分かっている。(12)。子どもが一日にどの程度日光浴が必要であるかという医学研究は 既に報告されており、例えば乳児においては、

…乳児の骨形成…横浜の場合について計算したところ、1 日に必要な日光浴時間は 2.2 分 …(13) とある。一日に必要なビタミン D を生成するのに必要な日光浴時間は、通常の日常生活 をしている限り、必要な日光浴量は知らずと浴びているのである。 一般的に、子どもの紫外線対策の重要性がいくつか挙げられているが、その理由大きく 3つに分類できる。(14)

(14)参考文献 先導生命科学研究支援セ ンター / 松田尚樹 / 全学 教育「人間と環境」 太 陽紫外線と健康

1. 生涯に浴びる紫外線の 80%を青年期までに浴びる。 2. 年少期に浴びた紫外線量が、成人後の皮膚癌罹患率と相関する。 3. 子どもは紫外線の危険性を知らない。 日本では、幼稚園に通う子どもが多く、園児の外遊びも推奨されているために、日本中 の園児が紫外線の強い午前 10 時∼ 12 時を含む時間に外遊びをし、紫外線を浴びている。 その個々の蓄積量は微々たるものであっても、将来の疾患発生のリスクを徐々に高めてい る事には違いない。 その外遊びを対象とした紫外線対策は、社会的効力を持ち、社会健康を維持するために 必要な措置である。

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2. 研究背景

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

2.5. 幼児保護者の紫外線対策の実態 2.4. に述べた通り、子どもに対する紫外線の有害性が報告されているが、その対策はど うだろうか?子どもが紫外線対策をするかどうかは、その保護者の紫外線対策の関心度に 依存している。 (1) 4. アンケート調査 参照

筆者が調査した 環境省の報告書

1

の結果 、

が推奨する紫外線対策が充分に浸透しているとは言い難い。

(2)

2.5.1

環境省の報告書(2)

紫外線保健指導マニュア ル 2006

いわゆる 1990 年代後期に若者を中心とした「ガングロブーム」は、賛否両論があるだ ろうが、基本的には個々の嗜好である。日焼けサロンで人工的に紫外線を過度に浴び、 「健 康的な小麦色」に体を焼くことが、真の意味では健康を害する事になろうとも、その健康 を害する疾患を発症するリスクが社会問題となるほど高くなければ、それは、個々の自由 という事になるのだろう。紫外線を過度に浴びようと、敏感に浴びないように気にしよう とも、その選択はわれわれに与えられている。 しかし、子どもは、紫外線に対し「弱者」である。子どもは、どの選択するべきなのか、 理解に基づいた判断を下す事ができない。一般的には、この判断は、その保護者がその選 択権をもっていると言われているが、アンケートの結果(図)を見る限り、子どもの対策 より、保護者自身の対策の方に力を入れている。保護者の子どもに対する紫外線対策の関 心度をどうやって高めていけばよいだろうか?社会的なアピールが必要である。

2.5.1

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2. 研究背景

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2.6.  建築計画における紫外線対策の実態 建築的な紫外放射の遮断による紫外線対策を述べている論文は、唯一、日本大学海洋建 築工学科教授の川西利昌氏の研究にみることが出来る。しかし、建築計画学における研究 は、見当たらない。 しかし、ごく

かではあるが、独自の視点で紫外線対策を試みた施設も存在する。

紫外線対策に力を入れている幼稚園では、紫外放射防御のために園庭にテントを設置し 埼玉県 T 幼稚園(1)

本研究の調査は全てをこ の幼稚園にて行った。紫 外放射防御施設として、 大型日除けテントを設置 している。5. 参照 (2)参考文献 紫外線保健指導マニュア ル 2006 p25

ている。 2-6-1 本研究が実験対象として選択した埼玉県 T 幼稚園(1) にも園庭全体の 敷地面積のほぼ 1/2 を覆う大型のテントが設置されている。しかし、テントに限らず、そ ういった日陰を創りだす紫外放射防御施設を設計するためのガイドラインが現在ない。つ まり、機能を評価できないまま設計に至っているという段階である。 紫外線保健指導マニュアル 2006(2)には、紫外線による影響を防ぐ手段として、「日陰 を利用する」ということを述べているが、そういった日陰を創るための具体的な研究はな い。 一方、海外での取り組みを見てみると、紫外線対策の先進国であるオーストラリアでは、 日陰を積極的にデザインと結びつけるための研究が進んでいる。日陰デザインのためのガ

(3)参考文献 Tumbull DJ. Parisi AV / Effective shade structure / Med J Aust. 2006 Jan 2;184(1):13-5

イドラインの必要性があると共に、建築美より日陰のもつ紫外線防御的機能が重要である といわれはじめている。(3)それを推奨するガイドラインは作成されているが、建築計画 的な定量的な記述のあるガイドララインは未だない。

2-6-1 紫外放射防御のためのテント

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2. 研究背景

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2.7. 本研究の位置づけ 紫外線曝露と疾患を関係付ける論文は、 医学論文の中に多く見られる。 例えば、 PubMed (1) PubMed

(1)

米国国立医学図書館 (NLM: http://www.nlm.nih.gov/) に 所蔵されている世界約 70 カ国、4,800 誌以上の 雑誌に掲載された文献を 検索できる医学文献デー タ ベ ー ス。1950 年 以 降 に 登 録 さ れ た 約 1,600 万件の文献データが収録 されている

を検索してみると、世界中から投稿された多くの医学論文を見る事ができる。 一方、建築学における「紫外線」キーワードを含む論文は、海洋建築学、建築環境工学 系等で検索する事ができる。しかし、建築計画系論文集の中で、建築計画によって紫外放 射量を定量的に調節する手法について言及した研究はない。 本研究は、建築計画系で初めて、紫外線曝露を考慮した空間設計の有効な指標の提案を 試みている。今後、建築計画において、社会健康を保つための1つの手法として確立する ための楔となることと期待している。 紫外線対策の基本方針は、「オゾン層破壊を防ぐ」「個々の紫外線対策」「子どもに過度

(2)参考文献

先導生命科学研究支援セ ンター / 松田尚機  全学教育「人間と環境」 / 太陽紫外線と健康

(2) の紫外線浴びさせない」 という事が言われている。地球スケールでの紫外放射防御から、

急にスケールダウンして個人スケールでの紫外線曝露対策という点で、大きなギャップが ある。建築スケールでの紫外線防御の可能性を示し、従来のギャップを埋めるのが本研究 である。

UV

建築計画と紫外線調節のイメージ図 樹木の密度

樹木の配置

技術のサポート

樹木の種類 反射も考慮 都市の経度緯度

図 2-7-1 本研究の位置づけ

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2. 研究背景

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Outline

Chapter Three

第 三 部

研 究 概 要

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3. 研究概要

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

3. 研究概要 3.1. 研究フローチャート (幼稚園の選択) 紫外放射防御設備を備えた幼稚園を選択。紫外線の有害な波長を透過させない素材を使っ たテントを備えている。

4.アンケート調査

(アンケート調査) 園児保護者に対し、紫外線対策の実態を紙面にて調査、考察。

5.紫外線曝露に関する  建築的研究手法

(調査、分析) 建築計画によって調節できる紫外線曝露蓄積量ESFA(Erthema Sky Factor Accumularion : 紅斑天空率による紫外線曝露蓄積量 ) の概念の提案。以下、この概念に基づき調査、分 析を行う。

5.1.  (調査A)

5.2.

(調査B)

5.3.  (分析C)

6.結果・考察 7.結論

8.展望

幼稚園園庭に設定した各ポイントでの魚眼天空写真撮影を行う。1/ASPF 値の分布図作成 により、幼稚園園庭における紫外放射分布を算出。 園庭における園児の行動追跡調査を行う。行動軌跡図、行動分布図作成をする。 調査番号AとBにより、園児の紫外線曝露蓄積量を算出。 (考察・結論) ESFA 値を評価するための考察。 (展望) 一連の調査、分析から、設計段階において設計空間の ESFA 値のシミュレートができる。 紫外線曝露を考慮した新しい日陰デザインのため指標となる。

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3. 研究概要

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ア ン ケ

Questionnaire Survey

Chapter Four

第 四 部

ト 調 査

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4. アンケート調査

14


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

4. アンケート調査   4.1. アンケート調査詳細「対象、場所、日時、人数」  園児の保護者に対して、紫外線対策について、以下の概要のアンケート調査を行った。

埼玉県 T 幼稚園(1)

本研究の調査は全てをこ の幼稚園にて行った。紫 外放射防御施設として、 大型日除けテントを設置 している。5. 参照

対象   : 埼玉県 T 幼稚園(1)に通う園児の保護者 調査人数 :  377 人に調査を実施し、 307 人の回答を得た。 回答率 81.4% であった。 調査日時 : 2006 年 10 月 2 日∼ 10 月 6 日の 5 日間。 調査方法: 紙面

4-1-1 によるアンケート調査。T 幼稚園職員に協力をお願いし、

保護者への連絡書類とともに配布をして頂く形をとった。

○アンケート作成のポイント (2)参考文献

紫外線保健指導 マニュアル 2006 /p24

環境省で推奨されている対策(2)が、紫外線対策が最も必要である子どもに対し、実際 にどの程度行われているかを調査できるよう、アンケートを作成した。

2006 ・① 園児 / 保護者の年齢 衣服で覆う ①・ 日傘を使う、帽子をかぶる ②・ 日焼け止めクリームを上手に使う ③・ 日陰を利用する ④・ サングラスをかける ⑤・ 紫外線の強い時間帯を避ける ⑥・

・② 園児 / 保護者の紫外線対策の関心度  ・③ 園児 / 保護者の服装の丈の長さ ・④ 園児 / 保護者の服装の色の濃さ ・⑤ 園児 / 保護者の帽子の着用 ・⑥ 園児 / 保護者の日焼け止めクリーム塗布 ・⑦ 園児 / 保護者の使用しているクリーム SPF の強さ ・⑧ 園児 / 保護者の使用しているクリーム PA の強さ ・⑨ 園児 / 保護者のその他対策(日陰、サングラス等)

4-1-1

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4. アンケート調査

15


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

4.2. アンケート調査結果・考察

4.2.1. 棒グラフで見た結果(縦軸人数)

アンケートの質問項目毎の人数を、子ども、保護者別にグラフ化した。

4-2-2

(1)

4--2-1

紫外線対策 長 袖 の 関心度

着用

色の濃い服

帽 子 着

用 日焼け止め SPF の クリーム

強さ

PA の強さ

そ の 他 対策

4-2-2 早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

4. アンケート調査

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

4.2.2. 保護者自身に対する紫外線対策と園児に対する紫外線対策の比較 質問項目の回答を横軸に、その回答中の子どもに対してと保護者自身に対しての割合を 縦軸にとり、グラフ化した。

4-2-3

(2)

以外の質問項目で、保護者自身の方が、子どもに対して行う紫外線対策より も防御性の高い対策を行っていることがわかった。日常生活においては、子どもの紫外線 曝露よりも保護者自身の紫外線曝露に対する関心の方が高いことがうかがえる。 唯一、

のみ、子どもの方の対策の度合いが強かった。登園時には、T 幼稚園

の方針として帽子着用の推奨もあることから、習慣として、このような対策が定着してい

4--2-1

ることが言える。

紫外線対策 長 袖 の 関心度

着用

色の濃い服

帽 子 着

用 日焼け止め SPF の クリーム

強さ

PA の強さ

そ の 他 対策

4-2-3 早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

4. アンケート調査

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

4.2.3. 保護者年齢別に見た紫外線に対する関心度の比較 紫外線に対する関心が保護者の年齢によって違うのではないかと言う仮説の基、保護者 0

の 年 齢 に よ っ て、 回 答 者 を 3 つ の グ ル ー プ(30 0

(3)グラフ詳細は、 資料編 p ○を参照

、31 35 、36

その保護者が行っている子どもの紫外線対策の傾向を見た。 0

0

0

0

4-2-3

0

0

) に 分 類 し、

3

に 関 し て、30

グ ル ー プ が 子 ど も に 対 し 最 も

気を使っているという結果となった。

以外の(図)についても、微々たる差ではあ

る も の の 30 中 で 36

グ ル ー プ が 子 ど も の 紫 外 線 対 策 を よ り 実 行 し て い る。 ま た、

グループが

を 他 グ ル ー プ よ り 多 く 選 択 し て い る。 し か し、 こ の

結果からは、保護者年齢別による子どもの紫外線対策には、さほど大きな傾向が見られな

4--2-1

いと言えるだろう。

紫外線対策 長 袖 の 関心度

着用

色の濃い服

帽 子 着

用 日焼け止め SPF の クリーム

強さ

PA の強さ

そ の 他 対策

4-2-3 早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

4. アンケート調査

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

4.2.4. 紫外線対策に関心があるグループ別にみた紫外線対策の比較P 保護者の紫外線対策に対する関心度によって回答者を 4 つのグループ 0

0

0

0

に 分 類 し、 そ の 保 護 者 グ ル ー プ が お こなっている子どもの紫外線対策の傾向を見た。 0

0

0

0

以 外 で は、 全 て

4-2-4

4

グループが他のグループよりも紫外線

対 策 を し て い る こ と が 読 み 取 れ る。 特 に、

に 関 し て は、 グ ル ー

プ間で最もその差が大きく、子どもの紫外線防御のための主要な手段となっている。 に関しては

グループの子どもの

ない理由として考えられるのは

の頻度の割合が高く

そのグループの子どもが

をしてい

るという理由で帽子の着用を徹底していないからではないか。しかし、

グルー

プはサンプル数 13 名であり、回答者数 307 名に対し 4%程度のグループであることから、 サンプル数の少ないことも影響しているだろう。 の 中 で、 目 を 引 く の は、 いということである。

が紫外線対策に対する関心度に相関していな

と言うのは、紫外線対策に対する関心度に関係なく、誰

でも気軽にできることから、選びやすかったと考えられる。

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

4. アンケート調査

19


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

4--2-1

紫外線対策 長 袖 の 関心度

着用

色の濃い服

帽 子 着

用 日焼け止め SPF の クリーム

強さ

PA の強さ

そ の 他 対策

4-2-4

4-2-5

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

4. アンケート調査

20


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

4.3. アンケート調査結論  以上の調査により、子どもよりも、保護者が自身に対して効果のある対策を行っている 事が言える。(ただし、帽子の着用は子供の方が着用率が高い)また、保護者年齢別によ る紫外線対策に顕著な差は見られなかった。 紫外線対策に関心度の高いグループほど、実際に対策をしている。しかし、日陰を歩く という対策は、紫外線対策の関心度に関わらず、どのグループも行っている。 子どもに対して紫外線対策が十分行われていない現状に対し、日陰対策の促進が、最も 一般的に受け入れられるといえる。

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

4. アンケート調査

21


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

Results and Consideration

Chapter six

第 六 部

結 果 ・ 考 察

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

41


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

6. 結果・考察 6.1. ASPF 測定のための魚眼天空写真撮影(調査A)の結果・考察 6.1.1 紫外放射防御施設備有り(大型テント有り)の場合 幼稚園設置の大型テントを張った状態で、魚眼天空写真撮影をし、¹⁄ASPF ポテンシャ 1/ASPF ポテンシャル図 (1)

建築的紫外放射防御係 数 ASPF の 逆 数 は、 天 空紫外放射が日除け内 部に入射する割合を表 わし、紫外天空率 UVSF (Ultraviolet Sky Factor) と同値である。

全天日焼けチャート(2)

ル図(1)を作成した結果、(図6-1-1)のような結果となった。テントの中(Y れば入るほど紫外放射量は軽減するが、テント内でも X

13)に入

33 の南方位は 1/ASPF 値 = 0.5

以上の等高線が入り込んでいる。それは、紫外放射量分布を表す全天日焼けチャート(3) のドットが南方位に集中していることに起因する。 とは言うものの、テント内(0 テント外(0

X

36、13

X

36、0

Y

13)での 1/ASPFave. = 0.169636 、

Y)での 1/ASPFave. = 0.716278 であり、テントの有無によっ

て園児に届く紫外放射量に顕著な差が見られた。(図6-1-2)

図6-1-1 1/ASPFポテンシャル memo1

NO_TENT

memo2

X_axis 0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

22

24

26

28

30

32

34

36 average

0 0.218304 0.299525 0.635895 0.353407 0.312203 0.368067 0.378764 0.449287 0.791601 0.418384 0.453645 0.505151 0.466323 0.484152 0.527338 0.565769 0.711965 0.793582 0.855784 2 0.735737 0.732171 0.740887 0.802298 0.666403 0.752377 0.751189 0.729794 0.413233 0.771395 0.766244 0.807448 4 0.645008 0.700079 0.770998 0.801506

0.86252 0.825674 0.861727 0.921949 0.942552 0.943344 0.926704

0.77813 0.754358 0.700475 0.859746 0.753962 0.812599 0.803883 0.866878 0.866482 0.919176 0.885103 0.933043 0.969889 0.914818 0.942948

6 0.608954 0.631141 0.754358 0.807845 0.706815 0.639065 0.690174 0.843106 0.839144 0.816561 0.795563 0.879952 0.894216 8 0.645008 0.601426 0.750792 0.797147 0.738906 0.631537 0.741284 0.816561 0.820919 10 0.705626 0.646197 0.761886 0.816165

0.71038

12

0.77496 0.788035 0.821712 0.886688 0.836371

0.72187 0.689382 0.769017 0.717116

14 0.833994 0.858954 0.883914 16 0.764263 0.881537

Y_axis

0.79794 0.832409

0.87916 0.885103 0.881537 0.944136 0.861727 0.900951 0.757984

0.85103 0.853407 0.856973 0.853803 0.920365 0.824089 0.366086 0.91046

0.87599 0.832013 0.913233 0.905705 0.524168

0.8958 0.916799 0.889461 0.892235 0.894612 0.865689

0.87401 0.892631 0.916006 0.680269

0.93225 0.861331 0.879556 0.911648 0.939778 0.946513 0.969097 0.958399 0.940967 0.969097 0.963946 0.949683 0.954834 0.931062 0.812203

0.98019 0.974247 0.959588 0.964342 0.987718 0.980983 0.979002

1

0.54794

1 0.996434 0.985737 0.970681 0.972662 0.951268 0.885103 0.641442

1

20 0.847068 0.951268

1 0.991284

1 0.997227 0.997623 0.999208 0.984945 0.940571 0.780507

0.85935 0.894216 0.772187 0.668384 0.764659 0.666799

1

0.62084 0.861727 0.486926 0.251585 0.680666 0.344295

1

1

1 0.998415 0.996038 0.990491 0.987322 0.987322 0.955626 0.937797 0.933439 0.856181 0.678288

22 0.919968 0.965531

1

1

1

24 0.995642 0.999208

1

1

1 0.999208 0.977021

26

1

1 0.999604 0.994849 0.960777 0.903724 0.784073 0.675119 0.319334 0.231379 0.237322

0.98851 0.997227

28 0.911252 0.940967 32

1 0.984945 0.981775 0.930269 0.719889 0.894216 0.9687 0.930269

0.9271 0.846672 0.570919

0.52813 0.384311

0.67393

0.834251

1 0.993265 0.984548 0.974247 0.913629 0.457211 0.199287 0.198494 0.206418

0.76981 0.954437

0.37916 0.472266

34

0.96355 0.944532 0.856577 0.530111

0.91878 0.799525 0.886292 0.754358 0.384311

0.36252 0.453249 0.580824 0.206022 0.211173 0.181458

data_keishiki memo1

1

1

0.98019

18 0.826466 0.936212 0.982567 0.989699 0.979002 0.987322

30 0.512678

1

TENT

memo2

X_axis 0

2

4

0 0.026293 0.012796 0.055566

10

12

0 0.004908 0.000526

6

8

0

14

16

4

18

0 0.002805 0.000876

2 0.093953 0.106925 0.082034 0.082209 0.092902 0.076951 0.044347 0.036284 0.029974

0.01525

20

22

24

26

28

30

0.07625

36

0.3064 0.514816 0.731294

0.19597 0.309731 0.470293 0.671522 0.169636

0.07625 0.069413 0.076425 0.076074 0.086066 0.092726 0.094479 0.110781 0.134795 0.218231 0.296409 0.409118 0.106399 0.14724 0.144611 0.154252 0.154427 0.170554 0.179318 0.199125 0.250484 0.339529 0.476428 0.304998

12 0.191938 0.241544 0.280107 0.301843 0.278179 0.358986 0.458023 0.428575 0.441721 14 0.257671 0.581775 0.610171 0.651013 0.653117 16 0.090448

34

0.09816 0.160562 0.288521 0.492379 0.712363

0.02454 0.047327 0.041893 0.044523 0.047152 0.059597 0.069238 0.072919 0.082735 0.129537

0.05837 0.050482

32

0.00929 0.017879 0.020859 0.040491 0.052761 0.121123 0.190361 0.353377 0.691329 0.02454 0.031902 0.047678

0.07362 0.078704 0.044698 0.051359 0.038037 0.035583 0.038388 0.037161 0.034181 0.028572 0.046801 0.066959 0.057844 0.075548 0.115864 0.195619

6 0.064505 0.066083 0.032954 0.024014 0.028572 8 0.074847 0.056442 0.060649 0.054339

10 0.099738 0.097985 0.099212 0.091675 0.103419 0.118494 0.148818 0.139353

Y_axis

0.85103

0.7187 0.784469 0.869651 0.775357 0.840729 0.784469 0.824881 0.856973

0.42244 0.430678 0.447856 0.459776 0.484141

0.46258 0.519548

0.54479 0.513764 0.424193

0.66118 0.775642 0.737254 0.787561 0.766527 0.730243 0.746369 0.760742 0.776869 0.786334 0.769156 0.763722 0.618585 0.351624

0.58756 0.818762 0.850314 0.858201 0.839271 0.889578 0.888526 0.886423 0.885196

0.87871 0.890104 0.896414 0.893083 0.879236 0.872224 0.846457 0.762145 0.360564

18 0.069063 0.649436 0.875905 0.901848 0.916397 0.909736 0.934451 0.931296 0.934626 0.931822 0.929017 0.921305 0.917448 0.925161 0.892908 0.864337 0.816659 0.719901 0.464684 20

0.09518 0.735326 0.928842 0.938132 0.950577 0.942865 0.958641 0.957764 0.950051 0.954784 0.946195

22 0.345664 0.844179 0.955485 0.971436 0.973715 0.972488 0.966528

0.90325

0.65224 0.123226 0.808771 0.647858 0.335147 0.638042 0.548471

0.96425 0.942689 0.937957 0.891155 0.041017 0.009991 0.137775 0.758464 0.373009 0.208941 0.513238 0.249082

24 0.930069 0.980376 0.977922 0.974416 0.976344 0.974942 0.957238 0.934276 0.901848 0.874328

0.79615

0.716278

0.40421 0.312185 0.365647 0.563195

26 0.954258 0.966528 0.976695 0.978448 0.978974 0.957063 0.930069 0.874854 0.735676 0.525333 0.209467 0.144611

0.18966

28 0.880638 0.931296 0.965477 0.967931 0.964425 0.936029 0.867141 0.426997 0.187556 0.077301 30 0.387558 0.752504 0.926388 0.937957 0.926914 0.848736 0.565649 32 0.391414 0.548997 0.898167 0.781601 0.824722 0.714291 0.401756 34 0.365998

0.51429 0.559689 0.149694 0.164944 0.142508

図6-1-2

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

42


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

6.1. ASPF 測定のための魚眼天空写真撮影(調査A)の結果・考察 6.1.2. 紫外放射防御施設無し(大型テント無し)の場合 幼稚園設置の大型テントがなかったらと仮定して、魚眼天空写真のテント部分に数えら 全天日焼けチャート のドット(¹)

紫外放射の強さを面積密 度のドットに置換してい るので、ドットの数が紫 外放射量となる。

1/ASPF ポテンシャル図(1)

れる全天日焼けチャートのドット(¹)をカウントして(図⁶-¹-³)、¹⁄ASPF ポテンシャル図(2) を作成した結果、1/ASPF ポテンシャル図を作成した結果(図6-1-4)のような結果となっ た。図6-1-1 と比べ、テントが張ってあった場合に覆われていた天空部分の紫外線放射が 著しく高まっている。等高線が滑らかでないのは、魚眼天空写真のテント部分をデジタル 画像処理して天空と見なしたことが大きく起因しており、、画像処理の精度による問題が 大きいと考えられる。 テントが有った場合(1/ASPFave. = 0.169636 )に比べテント範囲(0 Y

X

36、0

13)では 1/ASPFave. = 0.757984 となり、紫外放射量の著しい増加が認められる。し

かし、建物高さによる紫外放射遮断の効果も見られ、建物周辺の 0 となり、建物からから離れた 13

Y

2 では、0.645863

Y(1/ASPFout = 0.832451)よりも低い値となった。建

物による紫外放射遮断の効果が見られる。

環境省の「紫外線保健指 導マニュアル」や世界保 健 機 関(WHO) で 示 し ている紫外線対策の解説 では、UV インデックス のランクを 1 から 11+ と し、11 以上はまとめて 11+ と表記している。気 象庁の紫外線情報では、 これらに加えて紫外線の ごく弱い早朝や夕方の値 を表現するために 0 を、 ま た、 日 本 で は し ば し ば UV イ ン デ ッ ク ス 12 や 13 といった値が観測 されるため、実情に合わ せて 13+ まで表示してい る。

図6-1-3

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

図6-1-4

6. 結果・考察

43


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

6.1. ASPF 測定のための魚眼天空写真撮影(調査A)の結果・考察 6.1.3. 空間評価 紫外放射防御施設が有る場合、園庭全体における建築的紫外放射防御係数 ASPF 値は 2.16、 紫外放射防御施設ない場合の ASPF 値は 1.25 であった。 紫外放射防御施設の有無で、 その比をとると 2.16/1.25 = 1.73 である。つまり、テントを設置したことで、テントを つける前よりも、紫外線による紅斑発生時間を、1.73 倍遅らせることができる。テント による紫外線防御の機能を示す指標となる。(図6-1-6) その逆数 1/ASPF は紫外天空率 (Ultraviolet Sky Factor) と同値で、 前者の 1/ASPF 値は 参考文献(1) 紫外線保健指導マニュア ル 2006

0.462、後者の 1/ASPF 値は 0.799 である。先ほどの結果と意味することは同じだが、空 間に降り注ぐ紫外放射量である。 空間評価に適しているのは防御係数である ASPF であるので、直接空間評価のみ行いた い場合には ASPF の手法に従い、天空図に置いて天空を遮る建築的遮断物がない場合の紅 斑発生時間に比べ、どれだけ長く外にいられるかを示すのに有用だろう。

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

44


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

6.2.  園児の行動軌跡調査のためのビデオ撮影(調査B)の結果・考察 6.2.1. 園児の行動軌跡   調査日当日の午前 9 時に園庭にいた園児のうち、カメラで確認できた 23 人をヒー ルクリックで追跡調査した。 (図6-2-1) 23 人の園児の行動軌跡のグラフ(図6-2-2)の結果、             1. 園庭の一部の場所で外遊びをする園児   2. 園庭全体で外遊びをする園児    に分類できる。軌跡の密度を見れば一目瞭然である。 顕著な軌跡は、p1、p9、p15、p17、p18、p23 に見られるようなリレー遊びである。 園児が白線を引き、白線上に沿ってリレー遊びをしている。これらの軌跡繰り返しをして いることから、リレー遊びをしている園児は、軌跡が似通っている。 また、p14、p10、p19、p22 は砂場で砂遊びをしている。砂遊びをする園児も行動軌 跡が似通っている。4人中3人が鉄棒遊びと組み合わせている。  (22<X<26 写真有るといい)  その他の園児は、鬼ごっこ、サッカー、…等の遊びをしている。

図6-2-1

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

45


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価指標に関する研究

図6-2-2 その1 園児の行動軌跡

P01 行動軌跡

P07 行動軌跡

P02 行動軌跡

P08 行動軌跡

P03 行動軌跡

P09 行動軌跡

P04 行動軌跡

P10 行動軌跡

P05 行動軌跡

P11 行動軌跡

P06 行動軌跡

P12 行動軌跡

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

46


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価指標に関する研究

図6-2-2 その1 園児の行動軌跡

P13 行動軌跡

P19 行動軌跡

P14 行動軌跡

P20 行動軌跡

P15 行動軌跡

P21 行動軌跡

P16 行動軌跡

P22 行動軌跡

P17 行動軌跡

P23 行動軌跡

P18 行動軌跡

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

47


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

6.2.  園児の行動軌跡調査のためのビデオ撮影(調査B)の結果・考察 6.2.2. 園児の行動分布 各園児の外遊びした時間内において、園庭の xy 2 次元座標上にどのような分布をして いたかを描くために行動分布図を作成した。(次ページ図6-2-3)外遊びした時間 Tan に対 し園庭上を覆う各メッシュに滞在(3)していた時間 Tbn の割合を描いている。 23 人の各園児についてみれば、2つの行動分布パターンが見られた。

1. 園庭の一部のに分布が偏る(遊具遊び、リレー遊び) 2. 園庭全体に分布する。()

本研究では、調査日当日の午前 9 時に園庭にいた園児のうち、カメラで確認できた 23 人をヒールクリックで追跡調査したために、そのサンプルの選び方に多少の問題はある。 一つ例を挙げれば、午前 9 時の時点で園庭にいる子は、最も早い時間帯に登園するグルー プなので、そのグループは他の時間帯に登園するグループにはない特性を持ち合わせてい る可能性がある。しかし、自由遊びは 9 時時点ではすでに始まっており、集団による遊び も発生していたことから、特殊なグループを抽出したとは言い難い。

(1)参考文献 異なる調査日における園 児の居場所の年齢段階に よる比較̶保育所におけ る園児の居場所の反復性 に 関 す る 研 究( そ の 2) ̶ 山田あすか日本建築学会 大会学術 概集 2005 年9月

また、園児の居場所となる回数が多い場所、その比率は年齢毎に類似しており、調査日 による反復性は高いと言われている(1)から、本研究の調査日における行動分布も反復 性があると考える。 本研究の目的は、行動の分布から紫外線暴露量を算出し、建築計画へ導入することであ るから、行動分布については本研究で得た 23 人の行動分布を用い考察する。

p1、p9、p15、 p17、p18、p23

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

48


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

(図6-2-3) その1 園児の行動分布

P01 行動分布

P07 行動分布

P02 行動分布

P08 行動分布

P03 行動分布

P09 行動分布

P04 行動分布

P10 行動分布

P05 行動分布

P11 行動分布

P06 行動分布

P12 行動分析

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

49


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

(図6-2-3) その2 園児の行動分布

P13 行動分布

P19 行動分布

P14 行動分布

P20 行動分布

P15 行動分布

P21 行動分布

P16 行動分布

P22 行動分布

P17 行動分布

P23 行動分布

P18 行動分布

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

50


紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

23 人の自由遊びの中で、各々の外遊びをした時間を 1 としたときの行動分布を合計し た。23 人各々が外遊びをした時間に差があるので、外遊びをした時間を

える必要がある。

そうすることで 23 人の行動分布を均等に扱うことが出来る。 その結果、(図 6-2-4)のような分布図を作成することが出来た。23 人中リレーをして た園児が 6 人いるので、 (図 6-2-5)のように、その分布の最大値を操作する必要がある。 分布の割合の最大値を、23 名の外遊びしていた平均時間に対して 0.2%∼ 01%、2%∼ 10%まで変化させた。0.4%、0.6%、0.8%の行動分布図が後の 6.3.(分析 C)で有効になっ てくることから、これらの3つの平均をとって 0.6%(図 6-2-4)を採用することとする。

図6-2-4

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6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究 rate=0.08 全サンプル平均行動分布図 の検討の流れ

rate=0.008

図図

rate=0.06

rate=0.04

rate=0.02

rate=0.01

rate=0.006

rate=0.004

rate=0.002

rate=0.001

図6-2-5 早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室  2006 年度卒業論文

6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

6.3. 園児の紫外線曝露蓄積量 ESFA 算出(分析C)の結果考察 6.3.1. 紫外放射防御施設の有無による園児の紫外線曝露蓄積量 ESFA 値の差 紫外放射線御施設によって 23 名の園児全てにおいて紫外線曝露蓄積量 ESFA 値は軽減 された。

図6-3-1 関連のある2群の母平均の差の検定と推定 t 検定(パラメトリック検定のある t 検定)で、テントの張った状態と、テントを閉じ た状態での、園児の曝露した紫外線量に差があるか検定した。どちらの群も正規分布をし ていた。この結果、P 値が目的とする危険率(5%)以下であるので、 「曝露量に差がない」 とする帰無仮説を棄却する。上側検定では、境界による判定では t 値が境界値以上の時、 帰無仮説は棄却される。したがって、 「園児の紫外線曝露蓄積量 ESFA 値は、、テントがあっ た場合の方がなかった場合よりも蓄積する ESFA 値が少ない」という対立仮説が採用され る。95%信頼区間は 0.348466 ∼ 0.934479 で 0 が含まれないことからも帰無仮説が棄却 される。 園庭の敷地面積に対し、1/2 を紫外放射防御施設である大型テントで覆うことによって、 施設設置前より、園児の ESFA 値が減少していることが言えた。

6.3.2. 空間面、行動面からの評価 6.2.2. で得られた園児 23 人の(図 6-2-3)行動分布図と、1/ASPF ポテンシャル図(図) から次ページの(図6-3-1)を得る。 空間的に紫外放射量が強い所と園児の行動分布が重なっ

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6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究 テントあり                          テントなし

(図6-3-1)その1 1/ASPFポテンシャル図 と各園児の行動分布の マッチング

P01 行動分布 テントあり                          テントなし

P02 行動分布

テントあり                          テントなし

P03 行動分布

テントあり                          テントなし

P04 行動分布

テントあり                          テントなし

P05 行動分布

テントあり                          テントなし

P06 行動分布

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6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究 テントあり                          テントなし

(図6-3-1)その2 1/ASPFポテンシャル図 と各園児の行動分布の マッチング

P07 行動分布 テントあり                          テントなし

P08 行動分布

テントあり                          テントなし

P09 行動分布

テントあり                          テントなし

P10 行動分布

テントあり                          テントなし

P11 行動分布

テントあり                          テントなし

P12 行動分析

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6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究 テントあり                          テントなし

(図6-3-1)その3 1/ASPFポテンシャル図 と各園児の行動分布の マッチング

P13 行動分布 テントあり                          テントなし

P14 行動分布

テントあり                          テントなし

P15 行動分布

テントあり                          テントなし

P16 行動分布

テントあり                          テントなし

P17 行動分布

テントあり                          テントなし

P18 行動分布

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6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究 テントあり                          テントなし

(図6-3-1)その4 1/ASPFポテンシャル図 と各園児の行動分布の マッチング

P19 行動分布

テントあり                          テントなし

P20 行動分布

テントあり                          テントなし

P21 行動分布

テントあり                          テントなし

P22 行動分布

テントあり                          テントなし

P23 行動分布

テントあり                          テントなし

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6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究 6.3.3.ESFA 値の算出 紫外線に対しての空間評価と、園児の行動分布から ESFA が蓄積していくグラフを描ける。ESFA はグラ フが描く積分量である。テントがある場合と、ないと想定した場合において、6.3.1 より統計的に 2 群の差 が明らかになった。このグラフを利用し、ESFA の許容を超えない設計を目指す事が出来る。ESFA は、そ の単位が W・t/m2 である事から、最小紅斑量 (MED)()UV-B 照射から約 24 時間後に肉眼で認められる紅斑 反応を起こすのに必要な最少照射量 との互換性がある。1MED=210W・t/m2 であるから、ESFA を MED 表示する事で、その評価を健康指標 と結びつける事が出来る。建築計画において、ESFA 値を 1MED 以下に抑える事が出来れば、健康的な外遊 びを保障することとなる。ある外遊の時間中の ESFA 値を 1MED 以下にするためには、対象空間の動線空 間と、建築が生み出す日陰空間のパランスを計画する事が必要である。

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6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

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6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

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6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

ESFA p01 p02 p03 p04 p05 p06 p07 p08 p09 p10 p11 p12 p13 p14 p15 p16 p17 p18 p19 p20 p21 p22 p23

No_Tent 2.108 1.710 1.220 0.171 0.276 0.286 1.028 0.700 0.701 2.150 0.994 1.304 1.289 1.101 1.624 0.133 2.624 2.220 0.783 0.207 0.212 1.645 1.287

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Tent 0.195 0.901 1.007 0.028 0.245 0.259 0.786 0.514 0.060 1.767 0.861 0.474 0.498 0.513 0.163 0.026 0.355 0.221 0.502 0.108 0.110 1.297 0.127

6. 結果・考察

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

結 論 Conclusion

Chapter Seven

第 七 部

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7. 結論

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

7. 結論 本研究は、紫外線曝露蓄積量 ESFA を建築的紫外放射防御係数 ASPF 値による園庭空間 評価と園児の行動特性の2つの視点から算出する手法を示した。建築的な紫外放射防御 が有効な時と有効でない時では、ESFA 値に有意な差が見られ、すなわち建築計画学的に ESFA 値を調節する手法が新たな健康建築を生み出す1つの指標となる可能性がある、と 結論付けられる。

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7. 結論

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

展 望 View

Chapter Eight

第 八 部

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8. 展望

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

8. 展望 本研究は、建築的紫外放射防御係数 ASPF 概念の上、既存の幼稚園園庭における紫外放 射量のポテンシャル図を実測の魚眼天空写真撮影によって明らかにし、また、実際の園児 の行動を追跡する事で、園児毎の紫外線曝露蓄積量 ESFA 値を算出した。既存の幼稚園、 0

0

0

実際の園児の行動、と述べたのは、今後、こうした研究の先には、設計前に CAD 上でシミュ 0

0

0

レートする事が可能であると考えているからである。 (1)ex. A&A

まず、計画段階において、CAD で建築物を 3 次元上に構築する事で、天空図が簡易に

VectorWorks12 や

作成でき(1)、 日焼けチャートと重ね合わせることで、 その空間における 1/ASPF ポテンシャ

AutoCAD 2006 等の主要 CAD ソフトで既に作成 可能である。

ル図(2)を描く事ができる。そして、その CAD 上の建築計画において、人間行動シミュレー

Autodesk

1/ASPF ポテンシャル図(2)

紫外天空率 UVSF ポテン シャル図と同意。

人間行動シミュレー ター(3) Sim 等

ター(3)を稼働させる事で、その空間に属する人々の ESFA 値を算出する事ができる。日 除けを生み出す空間設計と、日除けとなった空間の動線計画をデザインすることは、健康 空間の新たな手法となっていくと考えられる。 また、本研究で使用した「全天日焼けチャート」は、太陽高度 60 度という条件で、一 年の中で紫外放射量が最も強い瞬間を想定して研究を行ったが、今後、より多くの高度に 対応した全天日焼けチャートが完成すれば、時刻も考慮した人間行動シミュレーターと連 携する事で、フレキシブルな計画が生まれるだろう。  幼稚園、保育園、または小学校といった、子どもが一日の多くの時間属する空間におい て必要な指標であるとして研究を進めてきたが、それ以外の空間でも、多くの人が集まる 夏場のイベント会場や、公共の施設において、計画段階でこうした指標を考慮に入れる事 が望ましいと考えられる。 この手法が一般的になると、社会的に多くのメリットがある。例えば、この指標を用い る事で、IC タグ等の行動履歴を基にした、生活スタイルによる紫外線曝露蓄積量の推定 に役立ち、紫外線関連疾患の疫学データの分類に幅を与え、より精密なデータの蓄積が期 待できる。そのことにより、疫学的な紫外線の有害性が明らかとなり、社会全般の紫外線 による疾患の予防対策が一層強化されば、建築は日除けデザインを当然のように考えた新 たなデザインを生み出す事となるだろう。

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8. 展望

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

謝 辞 Address of thanks

Chapter Nine

第 九 部

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9. 謝辞

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紫外線曝露を考慮した幼稚園の計画学的評価手法に関する研究

9. 謝辞 多々行き詰った私の研究も締めくくりまでたどり着くことが出来ました。 まず第一に、渡辺仁史先生に感謝します。「建築以外にも専門分野を持ちなさい」とい う言葉が、とても印象に残っています。研究中は、ご迷惑を多々お掛けしました。また、 私自身が、進路で悩んでいるときも快く対応して頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。 日本大学海洋建築工学科教授の川西利昌先生には、この論文の根本を支えて下さいまし た。学外の学生である私に対し、きめ細かい御指導をいただきました。先生の ASPF の概 念なくして私の論文の完成を見ることはなかったでしょう。心よりお礼申し上げます。 紫外線健康評価ににつきましては、京都大学医学研究科教授の小泉昭夫先生、慶応義塾 大学医学部衛生学公衆衛生学教室教授の大前和幸先生に助言頂き、大変得がたいものとな りました。 長沢さんには、健康空間ゼミを通して、私の無鉄砲な計画に指針を与えて下さいました。 長沢ゼミの独特なスタイルはとても居心地が良かったです。最後の最後まで叱咤激励あり がとうございました。 林田さん、遠田さんは他ゼミにもかかわらず、鋭い意見を頂きました。また、実験を快 く受け入れて下さったT幼稚園の職員の皆様、多大なご協力ありがとうございました。 そして、健康空間ゼミ担当の

藤さん、最後までありがとうございました。浅野さん、

大竹さん、松井さん、大河内さん、日下部さん、菊池さん、佐古さん、松島君、本田さん、 また熱い「健康」討論会をよろしくお願いします。それと星君、君の論文で多くを学ばせ てもらいました。研究室の皆さん、楽しい日々をありがとう。 最後になりましたが、早稲田大学へ4年間通わせてくれた家族へ感謝の意を表したいと 思います。

2006.11.08

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9. 謝辞

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