日常身体活動の場としての階段と転倒リスク

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はじめに

日本はリスク回避型の人間が多い。不必要にリスクを回避していることが多いと感じる。私自身、 株や FX などで投資をしようとしてもリスクが高いという風に言われる。リスクっというものはいっ たいなんだ? 不確定なリスクを定量化することが出来れば、あらかじめ対処することが可能である。 それなのに、未確定なリスクに対して実際より大きく確率と損害を見込んでいるために、我々はより 大きな期待値を背負っていると思う。  リスクを防ぐことが他のリスクを招く   ビル・ゲイツ  彼の言葉は現代社会に生じたひずみを的確に表現している。住宅ローンから生じた投機バブルはリ スクを完全に回避したものである。その細分化されたリスクを保証する保険があり、さらにその保険 があり、複雑になってしまったがために、信用収縮が生じ、金の巡りが悪くなり、現在の恐慌に至っ ている至っている。また企業はリスクを回避しようと努力を重ねている。企業は監査以外に内部統制 を置くことになったが、莫大な追加費用が必要となっている。これらはリスクは事前に防ぐと言って いるが、個人個人が胸に手を当てて、社会に対する貢献や正しいことを行っていれば、そのそもこの ようなものは生じなかった。  アリとキリギリスの話があるが、アリは将来のリスクに対応しようと現在を捨てて将来に向けて努 力していた。それに対して、現在の利益のみを追求し、将来を捨てているパターンである。全員アリ の社会というのも非常に変なものであるが、利益のみを追求する現代金融というシステムによって資 本主義社会全般がキリギリス化している懸念を感じる。もちろんその影響は高齢者施設にも影響を与 えており、事故を防ぐために、まだ自分の足で動ける人でも車いすの生活をさせ、かえって日常生活 動作に影響を事例がある。これは転倒・転落というリスクを高齢者施設側が大きく見たために生じた ものである。これは本当に正しいことだろうか?   そのような社会に一石を投じるために、本研究を行った。

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まず、本論文の構成を簡単に述べる。  第1章では、日本での高齢化が進んでいる財政が圧迫しているおり、それによって健康状態の維持 は自らが自分自身が責任を持つという考えになっている。それに対して WHO は高身体活動状態を維 持することが健康によいとしている。階段には事故がつきものであるものの、代謝量はほぼ一定であ るので最もリスクの低いものを選ぶことが重要であると示した。  第2章では、これらを踏まえた上で、環境条件や身体条件がヒールクリアランスの平均値と標準偏 差に関わると仮説をたて、実験を行った。本研究では、身体条件として筋力を、環境条件として踏面 と蹴上を採用した。結果として、それらと筋力との相関が見られなかったが、踏面と平均値に相関が 見られた。また平均値と標準偏差から導かれる安全値というものを導き、それらに対して、ニューラ ル・ネットワークにて分析を行い、安全性能を定量化した。  第3章では、既往研究の中から対応する部分を抜き出し、研究の妥当性を検証するとともに、安全 性能の定量化に向けて、他のリスク要因である踏み外しの観点から述べているものについて最低範囲 と推奨範囲から、リスクを等高線にて図を描いていった。それと本研究を照らし合わせた。状況や場 所によってもリスクは異なるが、妥当な階段があり得る事を示した。これらの結果、安全な階段を示 せ、階段を利用することで高身体活動状態を維持し、健康状態を保つ事が可能であることを示した。  もちろん階段は上下階をつなぐ垂直動線の一部という側面以外にも意匠的な意味合いを持つ。安全 性からすべてが語れる訳ではなく、意匠の兼ね合いから決定されるものである。単に階段の意匠が空 間に持つ意義をプロポーションのみで語れると仮定した場合、安全性とプロポーションが両立する可 能性を第四章で示唆した。  また、資料編には参考資料を載せるとともに、難解であると思われる概念について説明を加えたも のである。

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用語の定義

高身体活動状態(Physical Activity)  体の動きを伴う仕事、移動、家事、娯楽を含んだ身体活動が高い状態を示す。 低身体活動状態(Physical Inactivity)  体の動きを伴う仕事、移動、家事、娯楽を含んだ身体活動が低い状態を示す。 DALY(Disability-Asjusted Life-Year, 障害調整生命年)  国や地域などに住む人々の健康状態を見るために、本来あるはずだった寿命が障害や病気によって  縮小した年数や健康状態を定量化してその国や地域全体で集計したもの。高いほど健康状態が悪い  ことを示している。 ヒールクリアランス  階段の下る際のかかとと段鼻との距離。0 以下となったときに足が階段につくことから危険である  と判断できる。  安全値  通常の動作でどれだけばらつくかの範囲を決めるもので、ばらついてもなお安全かどうかを判断し  うる数字として平均値を標準偏差で割った値である。

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1.1  目的

高齢社会とともに社会福祉へのコストが高騰するともに歳入自体も減少していく。そういった経緯 で我々自身の健康状態は自分自身で管理するという傾向が徐々に芽生え始めている。WHO によると、 低身体活動状態は健康へのリスクとなりうるが、高身体活動状態は健康を維持するものである。しか し、閉じこもりの高齢者、オフィスワーカー、主婦に至っても必要な運動強度を日常生活では得られ ていない。それに対して階段は踏面・蹴上、角度によらず、使用されるエネルギー値は常にほぼ一定 であるとされている。従って、安全な階段であれば、日常生活の中から健康維持の可能性があり得る。  そのために、階段降段時でのリスクを定量化し、階段の段数に応じたリスクを算出できるモデルを 導きだすことで、リスクに見合った階段を納得の上で作る土壌を作ることで、安全に健康維持するた めの階段の指針とする。

身体活動状態

身体活動状態

本研究で目指す身体状態遷移 図 1.1.1 本研究の目的

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4


1.2 背景

高齢社会では、医療費の増大が懸念されており、そのために医療は予防へと強くシフトしている現 状がある。健康増進法においては自己責任において自身の健康管理を明確にさせることが明記されて いる。そのために、医療時に個人負担を増大させることが懸念される。また高齢者福祉に関しても今 のサービスを維持することは政府の財政では困難であるために、健康寿命をのばそうとする動きが出 ている。(1.2.1 高齢社会と医療費)  WHO によるレポートでは、低身体活動状態による健康リスクは全体の 3%をやや上回る程度しか ない。ただし高身体活動状態の効果は他の健康リスクファクターに影響を与えている。そのために 高身体活動状態に状態遷移させることによって健康状態を維持し続けることができると考えられる。 (1.2.2 健康リスクとしての低身体活動状態)  高齢者では、健康状態を維持するためにパワーリハビリテーションを始め、様々な運動介入が行わ れている。この結果は 90 歳以上の超高齢者においても足回りが太くなり、脚力が増加していること を示している。しかしながら、高齢期になって初めて高齢者体操で健康を維持していくのは、弱り切っ た状態で運動するので非常に困難であると考えられる。そのために、若年期から出来るだけ運動介入 を行うのが健康という側面からみた場合、好ましいと考えられる。(1.2.3 高齢期での運動介入)  アメリカでは若年期からでの健康維持のために階段が利用されている。しかしながら、階段から転 落が死亡事故や大腿骨骨折など重大な事故を生じることから、ある程度の安全性を定量的に評価する 必要がある。そこで階段からの転落危険性をリスクとして明示することが階段を利用させるために社 会的に必要になってくる。(1.2.4 階段の健康への寄与とリスク)  それに対して階段では現在でも年間 435 人の死亡事故があり、非常に危険であると一般的には考 えられる。そのためにあまり階段を使わない設計指針を長寿社会対応住宅においても掲げていた。し かしながら、階段は角度によらず、そこで利用される代謝量はほぼ一定である。そのために、高身体 活動状態をキープすることが健康によいという側面で考えると、階段を設計する際は最も低いリスク にし、階段を使わせる配置が望まれる。(1.2.5 既往研究)  リスクマネジメントは金融工学や化学・環境の分野で多々使われているが、一般社会にもその考え 方を適用しようとするものがリスク対応社会である。その中での専門家の役割はリスクやベネフィッ トをを定量化することである。本研究においても健康を阻害する転倒という要因をリスクで捉えてお り、WHO の健康管理の方針と同じであるので、現代的なテーマだと考える。(1.2.6 リスク対応社会)

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1.2  背景

1.2.1 高齢社会と医療費

Australia Austria Belgium Canada Czech Republic Denmark Finland France Germany Greece Hungary Iceland Ireland Italy Japan Korea Luxembourg Mexico Netherlands New Zealand Norway Poland Portugal Slovak Republic Spain Sweden Switzerland Turkey United Kingdom United States G7 EU15 OECD total

日本の総人口は 2007 年 10 月 1 日現在で 12777 万人で、 その内 65 歳以上の高齢者は 2746 万人にものぼる。また、 高齢人口のうち、65 歳から 74 歳までの前期高齢者人口は 1476 万人、75 歳以上の後期高齢者は 1270 万人である。 それぞれの人口に対する割合は、高齢者全体では 21.5%、前 期高齢者では 11.6%、後期高齢者の場合は 9.9%となってい る。また、その高齢化率に関しても、今後も増加の一途を辿 ると予想されている注1。さらに現時点での日本は OECD 加 盟国のどの国より高い高齢化率であるので図 1.2.1.1、日本はど の諸外国よりも高齢化の高い状態を維持し続けることとな る。  この高い高齢化率は医療技術の向上と生まれてくる子ども が少なくなったのが主な原因である。特に今までの医療技術 は少しでも長く生きられることを目的に発展してきた。そ 0

5

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25 %

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のために、日本の平均寿命は 1950 年の男性 50.1 歳、女性

OECD in figure 2008 Demography,

54.0 歳から 2006 年度では男性 79.0 歳、女性 85.8 歳にま

http://www.oecd.org/document/32/0,3343,

でのびている。東北大学大学院医学系研究科教授の辻一郎は

en_2649_34489_41722336_1_1_1_1,00.html 注1 内閣府 , 平成 20 年度高齢社会白書 , 佐伯

「20 世紀後半の医学を一言で特徴づけるなら延命の医学で あったと言える」と主張している注 2。ただし、その高度な

出版 , 2008 年 , pp.2

医療を受けるためにお金がさらにかかってしまう。国民一人

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/

当たりの生涯通して必要な医療費は約 2300 万円であるが、

w-2008/zenbun/20pdf_index.html

その約半分が 70 歳以上で必要になる注 3。これから本格的に

注 2 辻一郎 , のばそう健康寿命 , 岩波アクティ ブ新書 , 2004 年 , pp.19 注3 厚生労働省 , 平成 20 年度厚生労働白書 , ぎょうせい , 2008 年 , pp.8   http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/ kousei/08/index.html

2011$G CDE23F !"

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2015$G CDE27F !"

89.8 ( 91.0 )

23.9 ( 24.2 )

105 ( 110 )

24.2 ( 25.3 )

116 ( 126 )

25.3 ( 27.4 )

47.4 ( 47.3 )

12.6 ( 12.6 )

54 ( 56 )

12.5 ( 12.9 )

59 ( 64 )

12.8 ( 13.8 )

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27.5 ( 28.5 )

7.3 ( 7.6 )

32 ( 34 )

7.5 ( 8.0 )

37 ( 40 )

8.0 ( 8.7 )

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14.9 ( 15.2 ) 6.6 ( 6.9 )

4.0 ( 4.1 ) 1.8 ( 1.8 )

18 ( 20 ) 9 ( 10 )

4.2 ( 4.5 ) 2.0 ( 2.3 )

21 ( 23 ) 10 ( 12 )

4.5 ( 4.9 ) 2.3 ( 2.7 )

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82.8 ( 84.3 )

22.0 ( 22.4 )

101 ( 105 )

23.3 ( 24.3 )

114 ( 121 )

24.8 ( 26.3 )

01234

54.0 ( 54.8 )

14.4 ( 14.6 )

65 ( 67 )

14.9 ( 15.4 )

73 ( 77 )

15.9 ( 16.6 )

5634

28.8 ( 29.5 )

7.7 ( 7.8 )

36 ( 38 )

8.4 ( 8.9 )

41 ( 45 )

8.9 ( 9.7 )

375.6

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789:

人口の減少による税収悪化により、国のプライマリーバラン スが著しく悪化することがすることが懸念されている表 1.2.1.1。 そのために健康管理に関しても自己責任が問われるようにな

は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生 #

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こういった中で高齢化に伴う社会保障費の高騰と生産労働

2002 年 8 月 2 日に施行された健康増進法資料 2 では「国民

国立社会保障・人口問題研究所より #

は当然のことであるので、対処しなければならない。

りつつある。

表 1.2.1.1 社会保障費と国民所得との割合 2006$G CDE18F !"

高齢化社会を向かえるなかで、医療費が莫大になっていくの

涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康状 態の維持につとめなければならない」と明記されており、そ れが国民の責務であるとされている同法第二条。また、国、都道 府県、市町村などの自治体、健康事業実施者、医療機関は国 民の健康増進のために互いに連携し、協力しなければならな

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5


1.2  背景

い同法第五条とあり、健康事業実施者には健康保険法や母子健康 法、労働安全衛生法、老人保健法などの規定により健康増進 5000

事業を行う者同法第六条であるので、メタボリック症候群になる と企業にも責任が及ぶ可能性が高い。

介 4000 護 保 険 料 の 月 3000 額 2000 1.00

先に述べた辻一郎は 2003 年 5 月 19 日の朝日新聞では、 各都道府県ごとの介護保険料の平均月額を集計されたデータ から、要介護期間と介護保険料の年数は強く相関しているこ とを見出した図 1.2.1.2。つまり、要介護期間が長くなれば介護 2.00 3.00 要介護期間

4.00

図 1.2.1.2 要介護期間と介護保険料の月額 注4 『のばそう健康寿命』pp.28-32

保険料は高くなるというものであるが、高齢者になった場合 でも要介護となることを事前に予防していくことが家計に とっても重要であると主張している注 4。  さらに、ある政治家も「何もしない人の分の金(医療費) を何で私が払うんだ」という発言がなされており、「病気の

注5 2008 年 11 月 20 日 経済諮問会議

予防をきちんとすべきだという趣旨。予防に力を入れると医

第25回会議 pp.11

療費全体が収まる」と説明している注5。

http://www.keizai-shimon.go.jp/ minutes/2008/1120/shimon-s.pdf

また、厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会が介護 報酬を上げる方針をした。それを 2008 年 12 月 27 日に全 国紙注6 がこぞって介護サービスはこれから自己負担額は増 加し、サービス水準は著しく低下していくと取り上げた。つ まり、国の方針として、要介護・要支援になるまでの間は自 分自身で自助努力をしなくてはならない方針へと向かってい

注6 産経新聞、日本経済新聞、読売新聞、朝

る。

日新聞

これらの要人の発言や国の方針から見ても国民の義務とし て考えられ、個人が健康状態を維持することが責務となって いくと考えるのは妥当である。

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6


1.2  背景

1.2.2 健康リスクとしての低身体活動状態  本節では、WHO にて体を動かさないことが健康リスクになりうるとしたレポートの概要を述べ る。参照したのは、WHO Health Report 2002- Reducing risks, promoting healthy life である。その 中で、健康リスクとして低身体活動状態注1のリスクや高身体活動状態の効用について言及している 4- Quantifying Selected Major Risks to Health, Physical Inactivity を資料編 5.1.3 にて掲載する。なお、 このレポート全文は http://www.who.int/whr/2002/en/whr02_en.pdf にて一般的に配布されている。  潜在的な健康リスクはほぼ無限に存在し、経済状況や社会構造によってもリスクの重みが変化して いる。先進国の傾向として、低身体活動状態や飲酒など個人に起因する要因が大きくなっているため に、近年の健康リスクファクターとして、高血圧、喫煙、飲酒、低身体活動状態、肥満、高コレステ ロールなど、日常生活に起因する因子が多くなっている pp.6。それらから生じる疾患を挙げた表 1.2.2.1 にてまとめた pp.57。  低身体活動状態の人は世界中の成人 17%であり、また適切な運動がとれていない人は全世界で 41%になっている。それに対して高身体活動状態になるとグルコース代謝が良くなるために、体内脂 肪を抑え、血圧を下げる効果がある。そのために、健康への効果は定量化できなかったものの、高身 体活動状態の効果の範囲は多岐にわたり、腰痛や転倒・転落、ストレスや循環器系の病や一部のがん、 糖尿病のリスクを逓減する。さらに筋骨格系の健康状態を良くするとともに、抗うつを減少させると している。  逆に低身体活動状態によって 190 万人もの人が亡くなる上に、1900 万の DALY 注2を引き起こし ていると推定される。低身体活動状態は乳がんや大腸がん、直腸がん、糖尿病の約 13%(SD 3)、ま た虚血性心疾患の 22%を引き起こしていると推定されている pp.61。また図 1.2.2.1 には先進国におい て DALY に影響を与えるリスクファクターの大きさと、高身体活動状態が影響を与えるリスクファク ターを示した pp.83。  先進国では体を動かさない低身体活動状態になることが多く、そのために健康が脅かされることに なる。それに対して高身体活動状態では、むしろ健康へのリスクを減少させ、その効果は多岐に渡る ために、定量化できない。従って自身で健康管理を行うには低身体活動状態を高身体活動状態に推移 表 1.2.2.1 日常生活習慣に起因する健康リスクファクター !"#$%#&'

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7


1.2  背景

させ、高身体活動状態な人は出来るだけその状態を維持させることが望ましい。このことから本研究 では、出来るだけ体を多く動かすのが好ましいと考えた。 注1 Physical Activity を高身体活動状態、Physical Inactivity は低身体活動状態と訳し、本論文に掲 載した。本来運動を加えて訳すべきなのだろうが、その概念が英語と少々異なり語弊が生じる可能性 が高い。Physical Activity には運動という概念はなく、体の動きを伴う仕事、移動、家事、娯楽を含 んだ概念であり、Physical Inactivity はそれらが低い状態である。それに対して、日本語にある運動 の意味では娯楽で体を動かすという意味合いが大きい。 注2 DALY(Disability-Asjusted Life-Year, 障害調整生命年) 国や地域などに住む人々の健康状態を見るために、本来あるはずだった寿命が障害や病気によって縮 小した年数や健康状態を定量化してその国や地域全体で集計したもの。高いほど健康状態が悪いこと を示している。

タバコ 高血圧 飲酒 コレステロール 肥満 野菜果物を食べない 低身体活動状態 ドラッグ 安全でない性行為 貧血 0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

高身体活動状態が与える影響に関与するリスクファクター 図 1.2.2.1 先進国での DALY に影響するリスクファクターの割合

身体活動状態

身体活動状態

本研究で目指す身体状態遷移 図 1.2.2.2 高身体活動状態と低身体活動状態の状態遷移図と本研究の目的

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8


1.2  背景

1.2.3 高齢期での運動介入

能力を高めよう とするもの 学習療法 高齢者体操

高齢者雇用

高齢期の健康維持の試みとして学習療法・高齢者体操、高 齢者雇用、集う場の形成、ICT を挙げた図 1.2.3.1 が、運動介入

集う場の 形成

を 目 指 す も の

はそのうちの学習療法・高齢者体操に属する。高齢者体操に 関しては、最近の研究により意義があることが言われており、 加齢により衰弱していくのではなく、体を動かさない状況に 体が慣れていることが判明している。Fiatarone 注 1 は 90 歳 以上の超高齢者に対しても、運動介入によって足が太くなり、

ICT

筋力が増したことを確認している。そこで「これまで老化と 考えられてきたことの多くは単なる運動不足にすぎなかった

図 1.2.3.1 高齢者健康維持の取り組み 注 1  Maria A. Fiatarone et al:Exercise Training and Nutritional Supplementation for Physical Frailty in Very Elderly People, The

ことが証明さた」と主張している。また、パワーリハビリテー ション注2 は高齢者の自立を促し、さらには加齢による衰弱 を平均的な衰弱と同等になるように運動介入をしている例で

New England Journal of Medicine, Vol.330,

もある図 1.2.3.2。体を動かさないことによって廃用性症候群が

pp.1769-1775

生じてしまうことから運動介入を行い、加齢に伴う必要以上 の身体能力の低下を抑えようとするものである。この考え方

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を応用して大河内注3、永池注4は日常生活の中から筋力を維 持するという指針のもと研究を行っており、日常生活の中で

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も筋力維持・向上という視点では日常生活内でもあり得ると

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報告している。

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ただし、このような運動介入による高齢者に筋力維持・向 上をして日常生活動作を向上させ、さらには健康維持につな

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げようとする姿勢は、ある種危険な要素を含んでいる。高齢

図 1.2.3.2 パワーリハビリテーションの目的

者に対して運動介入による効果は出ているものの、衰弱し

注2 介護予防・自立支援・パワーリハビリテー

きった高齢者を日常生活に復帰できるために運動介入を行

ション研究会 , パワーリハビリテーションガイ

い、リハビリテーションをすることは、継続的に自分の身体

ドブック , 医歯薬出版 , 2004 年

状態よりやや上回った負荷を与えることになる。そのために

注3 大河内重敬:高齢者の筋力維持を目的と

持続的に行うには高齢者に過度な負担を強いることになる。

した日常生活における動作の負荷に関する研究

自己の能力を向上させる努力は続けなければならない。

̶高齢者用運動プログラムと生活動作の負荷に

それに対して貯筋という概念が福永注5 によってなされて

関する研究̶, 2005 年度卒業論文

いる。これは高齢期での筋力低下は避けられないという前提

注4 永池俊也:筋力低下を予防する住空間の デザイン―日常生活動作時の腰部周りの筋活動 量計測―, 2005 年度修士論文

のもと、若年期から筋力を維持していこうとする考え方であ る。それと同様に本研究では、高齢者に過度な運動を強いる 事は酷であると考えたことから、若年期から健康維持への取 り組みが好ましいと考える。

注5 福永哲夫:中高齢者の筋力維持増進 貯 筋のすすめ , 体力科学 , 第 51 号 , pp.58, 2002 年

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9


1.2  背景

1.2.4 階段の健康への寄与とリスク

注 1 塚本玲三 , ドクター塚本の階段健康法 , 講談社 , 2007 年 pp.24

前項では、若年期からの健康増進が好ましいとした。それ に対して、生活習慣病が多いアメリカでは、健康作りのため に階段を利用する例が多い。クーパーは 1968 年に「階段上

注 2 宇野英隆 , 古瀬敏:住宅階段利用時のエ ネルギー負担に関する検討 , 日本建築学会論文 報告集第 345 号 , pp.115-121, 1984 年 11 月

注3 WHO Health Report 2002- Reducing risks, promoting healthy life, pp.61,83

がりがエアロビクス・エクササイズに最適である」と提唱し ている。また、アメリカ呼吸器疾患協会が高層ビルの駆け上 がりレースを主催している。そして若い頃から階段を使うこ とで筋力、体力が落ちずに、代謝量も活発な状態を保つ事が でき、肥満にもならずに血液の循環もよく、健康体そのもの であるので、階段を使うという習慣が健康に寄与する注1。  さらに階段は日常生活で利用するので、容易に高身体活動

表 1.2.4.1 転倒・転落のリスク要因 リスク要因

有意/計*

状態の状態に遷移させ、健康を維持していくことが可能であ

相対リスク

範囲

筋力の低下

10/11

(またはオッズ比)の平均** 4.4

転倒の既往

12/13

3.0

1.7 ∼ 7.0

歩行機能の低下

10/12

2.9

1.3 ∼ 5.6

8/11

2.9

1.6 ∼ 5.4

8/8

2.6

1.2 ∼ 4.6

6/12

2.5

1.6 ∼ 3.5

関節炎

3/7

2.4

1.9 ∼ 2.9

日常生活動作障害

8/9

2.3

1.5 ∼ 3.1

バランス機能の低下 補助具の使用 視覚機能の低下

抑うつ 認知機能障害 80歳以上

1.5 ∼ 10.3

3/6

2.2

1.7 ∼ 2.5

4/11

1.8

1.0 ∼ 2.3

5/8

1.7

1.1 ∼ 2.5

*単変量解析で転倒発生に対する相対リスクまたはオッズ比が優位な結果を示した研 究の数/その要因を検討した研究の合計 **前向き研究では相対リスク、後ろ向き研究ではオッズ比 American Geriatric Society etc.: J Am Geriatr Soc 2001 ; 49 (5) : 664より

注4 泉キヨ子 , エビデンスに基づく転倒・転 落予防 , 中山書店 , 2005 年 , pp.3

ると考えられる。階段では踏面・蹴上によらず、エネルギー 代謝量はほぼ一定である注2 ことから、高身体活動状態に状 態遷移をさせることが可能であると考えられる。またリスク としては低いものの低身体活動状態は糖尿病、肥満、腰痛、 高血圧などの生活習慣病になり、結果として DALY を高めて しまう危険性がある注 3。  逆に階段を使うときに生じるリスクは踏み外し、つまづき による転落である。高齢期になると脳や身体機能が衰えるた めにバランスを失ったり、思った場所とは異なる場所に脚を 出してしまい、踏み外しやつまずきが生じてしまう注 4。こ れらの事故は大腿骨骨折や最悪の場合死亡事故を招いてしま う。けががなくとも、恐怖から階段を使わなくなり、その結 果、日常生活活動の低下を招くという結果を導く。  それに対して、建築の対応としてバリアフリーを設計の指 針としてきた。また、高齢化に伴う筋力低下が生じてしまっ た場合でもそのまま生活ができ、介護が必要になった際にも 介護に必要な空間をあらかじめ確保する長寿社会対応住宅が 指針としてある。  ただし、万人に平等に同じ空間は望ましいのかは疑問が残 るものである。階段を利用することは若年者にとっては健康

図 1.2.4.1 長寿社会対応住宅のイメージ

に良いと述べた。しかしながら、長寿社会対応住宅は階段を

5.1.2 長寿社会対応住宅にて加筆

使わない指針を掲げている。先ほども述べた通り、老化とい うのはある程度自己管理が出来るものである。それならば、 階段を利用させるのが好ましいと考えられる。

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1.2  背景

1.2.5 既往研究  階段の寸法を決定する際に経験的に用いられる   2R+T=600 R: 蹴上 T: 踏面  という式は、17 世紀後半に F. ブロンデルが上がりやすい階 段注 1 ということを経験的に表したものである。これと同じ ように、近代以前での階段の研究は上がりやすいという視点 から研究がなされていた。それ以外にも提案がなされている 図 1.2.5.1 階段の寸法体系の式

図 1.2.5.1

川村かお里 , 高橋亮一 , 直井英雄:昇降動作形

ぎない。つまり現代以前ではエスカレーターやエレベーター

態より見た階段・斜路の適切とされる寸法条 件に関する検討 , 日本建築学会学術講演梗概集 E-1, 1999 年 , pp739-740 より引用 注1 オリジナルの式は     2R+T=24 [inch]

注2 古瀬敏:階段と住宅内の安全性 , 建築雑 誌 Vol.102, No.1265, pp.64-65, 1987 年

が、結局は経験的に用いられる前式を変えたものに過

など垂直移動方法が階段やスロープ以外になかったために、 上がりやすさという観点階段の寸法が決定された。  建築人間工学という観点から安全性を考えるという視点で 研究が行われたのは 1960 年以降で、アメリカの農場建築の 階段事故の研究とイギリスの床の滑りや摩耗から派生した研 究がある。しばらくして、イギリスでメートル法が採用され てから住宅寸法が再検討され、また、アメリカでは消費者 保護行政から階段事故の実態調査が行われた経緯がある注 2。

注3 平成 18 年度人口動態統計 , 厚生労働省

また、日本では 1970 年頃から古瀬、永田、宇野らが階段の

第18表 家庭内における主な不慮の事故の種

研究を行っている。階段での事故は下る際に致命的なものが

類別にみた年齢別死亡数・構成割合 より

集中しており、現在でも年間死亡事故が 435 件も生じてい る注 3。従って、階段というのは危険であると考え、長寿社 会対応住宅においては、住宅設計の指針として、利用頻度の 高いものは同一階に置き、なるべく移動距離を短くすること という指針を掲げている。このことはもちろん加齢によって 筋力やバランス感覚や関節感が衰えた際にも家を引っ越さず に済む高い安全性を提供しようとするものである。  それに対して近年、筋力トレーニングなどのように高齢者 に対して、身体的な負荷を与える試みが積極的に見られるよ うになり、ここ十数年の間に様々な研究によってその有効性

図 1.2.5.2 デンマークでの階段の事例

が検証されてきた。デンマークやスウェーデンにおいても、

青木務:高齢者と階段に関する研究―デンマー

階段を使う方が体のためにはよいという発想があり、積極的

クやスウェーデンの高齢者施設を視察して―, 神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究既往 第1巻第1号 , 2007, pp.163-168 より引用

に階段を利用している。それとともに、踊り場や階段の途中 に椅子を設置し、疲れたときに休憩できるスペースを設ける ことで、階段を利用したいと思わせる工夫をしている図 1.2.5.2。 また、高齢者への運動介入は関節が安定し、関節疾患や痛み

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1.2  背景

の予防・改善に役立ち、身体の動きがスムーズになる。更に、 精神的にも自信がつくため、高齢者が様々な活動に対して積 極性が増すとの報告はなされている。  永池注4(2005) によれば、住宅内の動作の中でも、階段や スロープでの歩行動作は、高齢者用に開発された適度に負荷 のある運動プログラム注 1.2.5.3 と比較すると、過剰な負荷はな いため、身体を損傷する危険はそれほどないと考えられる。 そのため、日常生活の中に、階段の昇降動作を積極的に取り 図 1.2.6.3 運動プログラムの一例

入れることは健康増進、疾患予防の観点からみると有効であ

大河内重敬:高齢者の筋力維持を目的とした

るといえる注 1.2.5.1。

日常生活における動作の負荷に関する研究 ,

さらに階段でのエネルギーという観点からみた負担は古瀬

2005 年度卒業論文 より

ら注 5(1984)によると踏面、蹴上、角度によらずほぼ一定 の値を示すものである。つまり、健康維持のためには循環器 の健康状態を保つのが好ましいが、階段昇降時の循環器への 負担はほぼ一定である。以上のことから考えても高身体活動

表 1.2.5.1 階段・スロープでの筋活動量 $CDE?FG LM

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注4 永池俊也:筋力低下を予防する住空間の デザイン―日常生活動作時の腰部周りの筋活動 量計測―, 2005 年度修士論文

注5 宇野英隆 , 古瀬敏:住宅階段利用時のエ ネルギー負担に関する検討 , 日本建築学会論文 報告集第 345 号 , pp.115-121, 1984 年 11 月

状態の状態に移行する、または維持するという観点から見て 階段は優れていると考える。  ただし、階段での転落は重大な事故となりうることからむ やみに寸法を決めるべきではない。安全性能を定量的に評価 した上で安全性を確認した上で階段を利用するのが好まし い。  以上の事から本研究では安全性能を定量的に評価するとい う視点が重要であると考えた。それに際して、階段降段時の 方が重大事故になりやすいので、リスクが高い。そのために も、階段下りのリスクを推定する。階段からの転落はつまず きと踏み外しがあるが、つまずきの観点から階段のリスクを 述べた上で、今までの既往研究に照らし合わせて適切な寸法 を選択することにする。

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4.


1.2  背景

1.2.6 リスク対応型社会  階段を利用するリスクは転落であり、これは短期的なもの である。それに対して使うことのメリットとしては長期的に 短期

長期

階段を 利用する場合

○健康寿命の向上 ○循環器の健康維持 × 高齢期の対応

○空間を有効に活用できる × 転落リスクの増加 × 階段利用に伴う疲れ

○高齢期の対応 階段を 利用しない場合

× 階段にかわる垂直動線が必要 × 生活活動量維持が難しい

○日常事故の防止

図 1.2.6.1 階段を利用する欠点と利点

及ぶので、我々は短期的にしか評価せずにいた。短期的に見 ていたために、階段を使うことは危険であり、使うべきでは ないという結論に落ち着いてしまう。それに対して階段を使 わないリスクとして、低身体活動状態になりやすくなるので 死に至る病になるリスクを高める可能性を示唆した。  ニコラス・バーは非対称情報の経済学からケインズ的な経 済モデルではモラル・ハザードと呼ばれる状況が生じると敷 衍した上で、 「保健医療政策の第一の目的は健康の増進であっ

注 1 『福祉の経済学̶21世紀の年金・医療・

て、健康は医療だけではなく、他の奥のものから得られる。

失業・介護̶』 ニコラス・バー著 菅沼隆訳、

従って医療政策は医療のみを考えるのではなく、他のものに

光生館 2007 年 pp.61

も焦点を当てるべきである」と主張する注 1。健康を増すた めにも医療政策を医療費だけ見るのではないということであ るが、その際には消費者自身が善し悪しの判断を下さなけれ

注2 リスク対応型社会を構築するために http://rcpor2.sfc.keio.ac.jp/introduction/risk_ general/www_risk/right.htm

ばならない。そこでリスクという軸が重要である。また、消 費者の特徴として、リスクとベネフィットを自身の中から総 合的に判断して直感的に決定する傾向がある。そのような時 代においては、専門家は1つのリスクについて解明すること で定量化をし、消費者はそれらを総合した上で判断を下すと

リスク

いう社会モデルがリスク対応型社会注2である。 消費者自体が自身に 適切なものを選択する

人によってもリスクによる損害の大きさの軸は異なるもの の、1*10-3 から 1*10-6 以内のものであれば、リスクとベネ フィットを兼ね合いによって決定できるものであると経験的 に言われている。この範囲より小さい確率は損害確率を極端 に抑えるために、余計なコストがかさみ、この範囲より大き

評価軸 A 評価軸 B 評価軸 C 評価軸 D

専門家

図 1.2.6.2 リスク対応型社会における専門家 と消費者の役割

い確率は損害を減らすための費用対効果が期待できるもので あるからである。  これらリスクマネジメントを社会に適応しようとする状 況、または健康を阻害するという観点でリスクを定量化しよ うとする試みは WHO の方針や社会の方針と合っており、現 代的なテーマである。

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44


2 本論

階段は事故事例が多く、致命的な事故が下りに集中していることから 70 年代から研究がなされて いた。厚生労働省の人口動態統計(H18)によれば、階段からの転落による死亡事故は 435 人と多 い。また、階段昇降時の事故の大きさから考えると降りの方が大きな事故につながりやすく既往研究 も多い。例えば、永田はヒールクリアランスや視野、主観評価から踏面の最小寸法を靴の長さの割合 で求めている。古瀬らは、拇指球が踏面内に完全に接地できる寸法から踏面寸法の最低基準として 210[mm] としている。さらに近年の研究では、階段の定量的な安全性の計測のために、布田らは感 覚評価で階段の踏み外しやすさを評価し、踏面寸法が小さくなると感覚評価が低くなり、蹴上げが大 きくなると、段鼻から離れて着地する傾向があると述べている。ただし、これらの論文は下りを安全 性を評価したものであるが、定量化までに至っていない。(1 序論)  それに対して、階段の安全性をつまずきという視点で考える上では、かかとと段鼻との距離につい てその距離が保たれていれば安全であるが、その一方で降りる動作のばらつきが大きい場合にはかか とが段鼻に引っかかる危険が考えられる。そこで本研究においては、階段降段時のヒールクリアラン スの平均値と標準偏差に着目し、ヒールクリアランスの平均値をヒールクリアランスの標準偏差で 割った安全値というものを想定し、この数字が程度安全性能を定量化しうる可能性があるとして研究 を行った。そして、ヒールクリアランスの平均値と標準偏差は身体条件と環境条件に左右されるとい う仮説を立てた。(2.1 実験への仮説)  身体条件として筋力がヒールクリアランスの平均値と標準偏差に影響していると仮説を立てたもの の、筋力とは関わりがないことが判明した。階段の転落事故はそもそも事象として非日常的に起こり うるものなのか、それとも加齢とともに筋力以外にも関節感が低下していくが、それによる誤差が大 きいのが原因かは判明しなかった。それに対して環境条件として踏面・蹴上を上げたが、これらはヒー ルクリアランスの平均値とある程度相関があることがわかった。これらから回帰式を求めようとした が、少なくとも歩きやすさにも関係するためにヒールクリアランスは線形ではなく非線形であり、パ ラメータは少なくとも 2 つあると考えられる。今までの研究にヒールクリアランスを数学的に解明 したモデルがないために、今回はニューラル・ネットワークにて解析を試みた。その結果、ヒールク リアランスの標準偏差は角度によって変化することがわかった。また階段で危険であろうと考えられ るものは平均値が大きくとられていることがわかった。これは、被験者が危険を感じたために、故意 に足を前に出したためにヒールクリアランスが大きくなってしまったと考えられる。ヒールクリアラ ンスの平均値はその寸法の慣れ、標準偏差はバランスと影響していると考えられる。そのために、平 均値が低い、または標準偏差が大きいものは危険であると判断した。(2.4 分析)  それに対して、平均値と標準偏差が通常の分散と比べて大きいものは危険を感じていたり、階段を 下る際にバランスを崩しやすいことを示している。さらに、リスク対応型対応社会に最低限適応でき る基準として 1*10-3 がある。この数字を片側検定にかけ、3.1 以下であるものは危険あると確認した 上で、棄却した。本実験では階段下りのつまずきを定量化した。(2.5 本実験での結論)

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4-


2 本論

2.1 実験への仮説  高齢者は階段を降りる際に足を前に大きくとり、そのため にヒールクリアランスは大きくなり、逆に若年者は階段を下 りる際には高齢者ほど前には出さないためにヒールクリアラ ンスは小さくなる。このことだけを考えると高齢者の方が安

表 2.1.1 転倒・転落のリスク要因 リスク要因

有意/計*

相対リスク

範囲

筋力の低下

10/11

(またはオッズ比)の平均** 4.4

1.5 ∼ 10.3

転倒の既往

12/13

3.0

1.7 ∼ 7.0

歩行機能の低下

10/12

2.9

1.3 ∼ 5.6

8/11

2.9

1.6 ∼ 5.4

8/8

2.6

1.2 ∼ 4.6

バランス機能の低下 補助具の使用 視覚機能の低下

6/12

2.5

1.6 ∼ 3.5

関節炎

3/7

2.4

1.9 ∼ 2.9

日常生活動作障害

8/9

2.3

1.5 ∼ 3.1

抑うつ 認知機能障害 80歳以上

3/6

2.2

1.7 ∼ 2.5

4/11

1.8

1.0 ∼ 2.3

5/8

1.7

1.1 ∼ 2.5

*単変量解析で転倒発生に対する相対リスクまたはオッズ比が優位な結果を示した研 究の数/その要因を検討した研究の合計 **前向き研究では相対リスク、後ろ向き研究ではオッズ比 American Geriatric Society etc.: J Am Geriatr Soc 2001 ; 49 (5) : 664より

全な下り方をしている。しかしながら、高齢者の事故件数の 方が多いのは説明できない。  ヒールクリアランスに関わる条件として、身体条件と環境 条件がある。環境条件は踏面、蹴上の他に段鼻の色などの視 認性もある。それに対して、身体条件は多数存在する。筋力 の低下、歩行機能の低下、バランス能力の低下、関節炎、抑 うつ、日常生活動作障害などがリスクファクターとして上げ られている。その中でも筋力の低下がオッズ比として大きい。  これに対して加齢とともに、階段降段時によろめく可能性 があり、そのためにヒールクリランスの標準偏差が大きくな ると考えられる。また、転倒・転落の研究からも筋力の低下 リスク要因として大きなウエイトを占める事から、筋力が ヒールクリアランスの平均値と標準偏差に関わっており、ま

平均値の移行

ばらつき

たそこから安全値という定量評価が可能なのではないかと考 え、研究を行った。  この平均値と標準偏差に分けて分析を行うという考えは金 融工学の企業のデフォルトリスク算定に用いられる際に使わ れる確率微分方程式(Stochastic Differential Equiation)と 同じ発想である。また、そのヒールクリアランスの平均値と

図 2.1.1 確率微分方程式による株価の推移 の解明と予想

標準偏差の説明変数をうまくとって挙げれば、今までの研究 から身体能力の移行はわかっているので、確率微分方程式か らモンテカルロ・シミュレーションにて経年変化で転落を考 える事が可能である。

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45


2.2 実験

2.2.1 実験方法 実験日程 2008 年 10 月 15 日 実験場所 茨城県つくば市立原 1  独立行政法人 建築研究所 ユニバーサルデザイン実験棟 被験者 男性 2 名、女性 3 名 実験に用いた機材 デジタルビデオカメラ 2台 三脚 2脚 デジタルカメラ 1台 図 2.2.1.1 実験に用いた階段

上履き 5足 スリッパ 5足

表 2.2.1.1 被験者の属性

あらかじめ作成した LED マーカー 120 個 単管 反力板 DKH 社製 階段寸法 12 パターン ・蹴上(150mm, 175mm, 200mm, 225mm)

表 2.2.1.2 実験に用いた階段パターン

・踏面(200mm, 250mm, 300mm) マーカー 動きを邪魔せずに光を出すものとして LED でマーカーを作 成した。3mm の白色 LED を使用し、電池ホルダーをコード で適当な長さにし、ハンダで固定した。LED は点灯する電 圧の範囲が狭いために、あらかじめ電池の電圧を調べ、それ に合った LED を選択する必要がある。特に光の三原色のう ち青が含まれているものは点灯する電圧が高く、それ以外の ものは電圧が小さい。 デジタルビデオカメラの撮影 階段のヒールクリアランスとともに階段降段時の足の運び方

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46


2.2 実験

全体を撮影したかったので、2 つのカメラを使用した。1つ は、実験動作全体を映し出すものとして利用した。もう1つ は、降段時の足を極力歪みなく撮影するために階段の 4 段 目に横方向をそろえ、5 段目に高さを合わせた。 マーカー貼付け位置 計測点は人間生活工学のホームページに掲載されている「日 本人の人体計測データベース 1992-1994」において、足先点、 図 2.2.1.2 実験に用いた上履き、スリッパ、

腓側中足点、踵点(ただし場所は出来るだけ地面に近づけた)、

マーカー

外果下端、膝蓋骨中央点(ただしマーカーが映りやすいよう に足の外側に同じ高さで付けた)、転子点である。 脚力の計測方法 反力板を垂直方向に取り付け、動的筋力測定に用いられるて こ式ウエイトマシーンのように利用できるようにした。身長 の約 6 割となる場所に置き、固定した。  階段を利用する際に利用する筋は速筋ではなく、遅筋であ

図 2.2.1.2 脚力の測定風景

るであることから、被験者には徐々に力を加えていくように 注意をさせた。

図 2.2.1.3 マーカー貼付け位置

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47


2.2 実験

2.2.2 筋力データの集計方法 &#

筋力は徐々に力を加えていくように被験者にお願いした。

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そのために、2通りのグラフがあった。  1つはあるところでピークを迎え、そこから減衰していく ものである。そのときの最大筋力はピーク時、また急激に低 下している時から脚を放すために力を抜いていると考え、そ #"$%&#

図 2.2.2.1 筋力の採用方法1

のときまでの値を平均値として採用した。 '()*

もう1つは、最後まで右肩上がりに上昇している場合であ る。この場合では、まだ最大筋力としてはまだ大きくあるだ ろうが、このデータでは判断がつかないために、最大筋力、 平均値ともに一番大きい値を採用した。

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図 2.2.2.2 筋力の採用方法 2

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48


2.2 実験

2.2.3 ヒールクリアランスの計算方法   階 段 を 下 る 動 作 の 映 像 を AVI 形 式 に 書 き 出 す た め に、Ulead VideoStudio 12 を 使 用 し、 そ の 後 DKH 社 製 FrameDiasIV にて貼付けた身体のマーカーの位置をデジタ ルデータ化した。これから各動作時の段鼻とかかとの距離を 計算していった。この際、映像が一コマ 1/30 秒であるので、 点で計測すると誤差が非常に大きくなる。また、返し足に よって、よりヒールクリアランスが小さくなる危険性があっ 図 2.2.3.1 Ulead VideoStudio 12

た。これらの対策として、ターゲットの上の段に足をつけて から、ターゲットの下の段に足がつくまでの間に、かかとと 段鼻との距離を最小にする点をとり、その前後の点を採取す る。その点から最小の点に引いた線との距離を求め、これら 3 つの数字の内最も小さいものをヒールクリアランスとして 採用した。以下に数式の概要を示す。

図 2.2.3.2 FrameDiasIV の操作画面

また FrameDiasIV を操作する際に注意した点を掲載する。 ・マーカーを自動判別してくれる機能があり、その方が手で 一コマ一コマ追跡するよりより正確であったので、その機能 を主に使用した。 ・実験室の明度の関係でマーカーの光が点ではなく、1 フレー ムに線となってしまった場合が多い。その際には、最も動き が少ない方の線にマーカーがあったと想定して、マーカー張 りを行った。 ・実験室の明度が低かったことにより、カメラが 2 コマで次 のフレームとなってしまった場合があった。その際には、1 図 2.2.3.3 ヒールクリアランスの計算方法

つ飛ばしでマーカーを張りを行い、後で中間を埋めるという 作業を行った。 ・降段動作を全体計測したために、計測するポイントを一段 上にずらした。そこで、ターゲットとする段鼻の手前と後ろ の中心点を原点と定める事にした。

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49


2.3 実験結果

筋力を反力板によって得て、グラフ化し、そこから前項で述べたように処理を行い平均値を筋力と して得る事が出来た。また、ヒールクリアランスに関しても、降段の一動作のみを計測し、かかとの 軌跡から最も近い点を計算し、その前後の点を引いた線との距離と比較し、最も小さいものをヒール クリアランスであるとみなして計算することにした。  2.3.1 で掲載したグラフは反力板で計測した脚力を表している。縦軸の単位はニュートン [N] であ る。横軸は秒 [s] である。各被験者は 20 秒で計測し、その中で有効なデータのみを使って平均化し たものを筋力として用いた。なお 1[N] が 9.8[kg*m*s-2] である。  2.3.2 では、ヒールクリアランスの一覧を掲載した。ヒールクリアランスは前項で計算手法のとお り計算したものである。  また、ヒールクリアランスの平均値を標準偏差で割った安全値という値を想定した。これは通常の 動作でどれだけばらつくかの範囲を決めるもので、ばらついてもなお安全かどうかを判断しうる数字 として考えた。  これらにより、ヒールクリアランスの平均値、標準偏差を踏面、蹴上、筋力で説明を試みた。

ばらついた分の動き  = 標準偏差

平均的な足の動き  = 平均値

段鼻とかかとの距離 = ヒールクリアランス

図 2.3.1 ヒールクリアランスの意味

図 2.3.2 正規分布を仮定した際のヒールクリアランスの分布

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2.3.1 筋力の実験結果

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最大値

2765.78

2990.74

1112.3

1112.3

被験者2

2732.07

被験者4

740.754

被験者3

被験者5

平均値

780.786

3000.9

662.957

727.823

図 2.3.1 各被験者ごとの筋力の結果

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2.3.2 実験結果

表 2.3.2.1 階段を降りる際のヒールクリアランスと筋力の結果 =>?#$ !"#$ ' ( ) 1 / 2 0 4 3 '. '' '( @A

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2.4 分析

2.3 での実験結果を受けて、筋力とヒールクリアランスとの相関を見てみた。しかしながら、筋 力との相関を示さなかった。これは、単に被験者が若年者で、筋力がバランス能力の低下に及ぶま で低下しているのか、階段から転落するほどのばらつきが関節覚の低下に起因するのか、それとも 階段降段時によろめくのは、日常確率事象から離れた、特殊な状況であるのか。転落を経年変化で 捉える上ではこれらの要因が考えられる。(2.4.1 筋力とヒールクリアランスの相関)  それに対して、環境要因とヒールクリアランスの相関は、ヒールクリアランスの平均値の際に踏 面と相関を示した。相関を見出したものの、線形でない可能性が極めて高く、2 次回帰曲線を用い ている例はあるが、まだ明確なモデルを見出せていないので、本研究ではニューラル・ネットワー クにて解析を行った。(2.4.2 ヒールクリアランスと蹴上・踏面との相関)  ニューラル・ネットワークにてヒールクリアランス平均値、標準偏差、安全値を適宜学習させ、 それらから踏面 200mm から 300mm、蹴上 150mm から 225mm までのそれぞれの値を示した。 平均値はほぼ線形に決まるものであるが、標準偏差は角度による二次曲面である可能性があり得る ことを示唆している。ヒールクリアランスの平均値の傾向として、危険だと認識されているものが 安全であるという傾向を示していた。これは、階段が安全であるということを示すのではなく、危 険であるから被験者が降段の際に意図的に足を前に出し、ヒールクリアランスを大きくとった可能 性が高い。標準偏差は身体のよろめきやすさを表すので、大きいものは危険であると判断できるで きる。また、安全値が小さいものは降段時によろめいた際に足が段鼻に引っかかりやすくなるので 危険であると判断できる。これらの傾向からつまずきのリスクを潜在的なリスクを明らかにしてい くのが望ましいと考えられる。(2.4.3 ニューラル・ネットワークによる分析)

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-4


2.4 分析

2.4.1 筋力とのヒールクリアランスとの相関  本実験動作によって1つの階段につき、3 回の降段動作を 得る事ができた。そこからヒールクリアランスを採取し、平 均値と標準偏差を計算した。そのデータと筋力と比較する事

表 2.4.1.1 筋力との相関

で、五人の中で筋力との傾向があるかどうかを見極める事に

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67@

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567B

5679

67B

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567?

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567?

567B

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これらの散布図は各階段ごとに傾向がばらばらになってお り、一概に筋力と相関があるとはとうてい言えなかった。

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567A

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567A

67A

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234

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567A

67?

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本実験においては、仮説として筋力という指標を用いたも

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567B

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5679

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234

567B

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67?

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567?

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67D

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567:

従って、階段からの転落の可能性を経年変化で捉える上で 以下の2つが明らかにすることが重要になってくると考えら れる。 1 高齢化にともなって階段から降段する際に何らかの原因 でよろめいてしまう。そこで滑りまたはつまづきが生じてし まい、階段から転落してしまう。 2 自分自身の場所を認知する深部感の運動覚が衰えている ために足を出す際に、誤差を生じてしまい、つまずいてしま う、または滑り落ちてしまう。 3 高齢者の階段からの転落はよろめくことで転落するが、 よろめくというのは事象としては日常動作の延長にはないた めに、そもそもよろめく際の確率分布が異なる。 本研究では、転落の経年変化まで捉えられなかった。

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図 2.4.1.1 階段1のヒールクリアランスの平均値と筋力との相関

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-5


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図 2.4.1.3 階段 3 のヒールクリアランスと筋力との相関

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図 2.4.1.4 階段 4 のヒールクリアランスと筋力との相関

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図 2.4.1.5 階段 5 のヒールクリアランスと筋力との相関

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図 2.4.1.6 階段 6 のヒールクリアランスと筋力との相関

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2.4.1 筋力とのヒールクリアランスとの相関

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図 2.4.1.7 階段 7 のヒールクリアランスと筋力との相関

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図 2.4.1.8 階段 8 のヒールクリアランスと筋力との相関

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図 2.4.1.9 階段 9 のヒールクリアランスと筋力との相関

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図 2.4.1.10 階段 10 のヒールクリアランスと筋力との相関

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図 2.4.1.11 階段 11 のヒールクリアランスと筋力との相関

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55


2.4.1 筋力とのヒールクリアランスとの相関

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図 2.4.1.12 階段 12 のヒールクリアランスと筋力との相関

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56


2.4 分析

2.4.2 ヒールクリアランスと蹴上・踏面との相関  ヒールクリアランスは身体条件以外にも環境条件から影響 を受けている。そのために、ヒールクリアランスの平均値と 標準偏差と階段の踏面と蹴上の相関を見た。その結果、ヒー ルクリアランスの平均値と踏面との相関が大きく、また蹴上 との相関もあるということがわかった。  踏面が長くなるに従ってヒールクリアランスの平均値が小 さくなるのは、歩く際に足を前に出すことが必要になり、降 段時に前に進んでいく必要があるために降段の時、歩く速度 が早くなってしまうために、ヒールクリアランスが小さく なっていると考えられる。  また、蹴上が大きくなるにつれ、ヒールクリアランスの平 均値が大きくなるのは、被験者が危険を感じたために、余裕 を持って降段するために足を上げ、前にだし、巻き込むよう にして階段を下りたものと考えられる。

図 2.4.1 平均値と標準偏差の意味

また、筋力との相関を示さなかったものの、ヒールクリア ランスは踏面や蹴上から影響を受けるのは明らかである。歩

表 2.4.1.1 HC と踏面・蹴上との相関

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のパラメータとして外部要因と内部要因があり、外部要因と しての関数パラメータに踏面と蹴上がある。外部要因をまと める関数自体はある点をピークを持つ偶関数で少なくとも非 線形である。  ただし、今までの研究からみてもヒールクリアランスの平 均値と標準偏差が数学モデルに当てはまるかはなされていな い。そのためにも非線形で解析を行う上で、非線形多重回帰 分析を行うのはあまりにも困難と考え、本研究ではニューラ ルネットワークにて解析することが妥当である。

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57


2.4.2 ヒールクリアランスと蹴上・踏面との相関

図 2.4.2.1 上履き着用時での踏面とヒールクリアランス平均値との相関

図 2.4.2.2 スリッパ着用時での踏面とヒールクリアランス平均値との相関

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58


2.4.2 ヒールクリアランスと蹴上・踏面との相関

図 2.4.2.3 上履き着用時での蹴上とヒールクリアランス平均値との相関

図 2.4.2.4 スリッパ着用時での蹴上とヒールクリアランス平均値との相関

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59


2.4.2 ヒールクリアランスと蹴上・踏面との相関

図 2.4.2.5 上履き着用時での踏面とヒールクリアランス標準偏差との相関

図 2.4.2.6 スリッパ着用時での踏面とヒールクリアランス標準偏差との相関

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5/


2.4.2 ヒールクリアランスと蹴上・踏面との相関

図 2.4.2.7 上履き着用時での踏面とヒールクリアランス標準偏差との相関

図 2.4.2.8 スリッパ着用時での踏面とヒールクリアランス標準偏差との相関

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5:


2.4.2 ヒールクリアランスと蹴上・踏面との相関

図 2.4.2.9 上履き着用時のヒールクリアランス平均値

図 2.4.2.10 スリッパ着用時でのヒールクリアランス平均値

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6.


2.4.2 ヒールクリアランスと蹴上・踏面との相関

図 2.4.2.11 上履き着用時のヒールクリアランス標準偏差

図 2.4.2.12 スリッパ着用時のヒールクリアランス標準偏差

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64


2.4.2 ヒールクリアランスと蹴上・踏面との相関

図 2.4.2.13 上履き着用時の安全値

図 2.4.2.14 スリッパ着用時の安全値

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6-


2.4 分析結果

2.4.3 ニューラル・ネットワークによる分析

注 1 http://ja.wikipedia.org/wiki/ ニ ュ ー ラ ルネットワーク

ニューラル・ネットワークとは、人間の脳神経系を抽象化 し、情報の分散処理システムとしてとらえたモデル注1 であ る。この情報処理構造を利用する事で非線形多重回帰分析が 可能であり、ネットワーク構造を設定し、そこから説明変数 と目的変数を学習させ、適切なモデルを構築させ、結果を出 力することが出来る。  本研究においては、ニューラル・ネットワークを Excel ア ドインである富士通社製 NeuroSIM/L にて実行した。また、 説明変数に蹴上・踏面。目的変数にヒールクリアランスの平 均値と標準偏差、それに安全値を設定し、誤差が 10%以内 に収まるように適宜学習させた。また各目的変数別にパーセ プトロン数を変えて検証し、最も少ないものを採用した。各

図 2.4.3.1 脳神経系のシナプス

パーセプトロンはヒールクリアランスの平均値は 2、ヒール クリアランスの標準偏差は 3、安全値は 4 であった。  ヒールクリアランスの平均値は通常かかとが通る軌跡から 求められるものである。そのために、遠いものであれば安全 で、近いものは危険であるということを示している。  これらの結果、安全と思われている階段はヒールクリアラ ンスの平均値が低く、危険と通常なら感じる階段は平均値は 大きかった。これらの傾向は、階段降段時に被験者が危険を

図 2.4.3.2 抽象化されたパーセプトロン

感じたために、意図的に足を前に出し、ヒールクリアランス を大きくとった可能性が高い。また逆に普段から使い慣れて いる階段では、危険を感じていないので、ヒールクリアラン スを小さくとり、降段を早めたと考えられる。  また、ヒールクリアランスの標準偏差は、普段行っている 動作からどれだけばらつくかを示しているので、身体のバラ ンスの崩しやすさを表していると考えられる。そのために、 この値が大きいのは危険である。ヒールクリアランスの標準 偏差は大まかな傾向としては、角度に依存していると考えら れる。

図 2.4.3.3 階層型ニューラルネットワーク

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65


2.4.3 ニューラル・ネットワークによる分析

平均値 上履き 225mm

200mm 蹴 上 175mm

150mm 200mm

250mm 踏面

300mm 36mm 以上 31mm 以上 35mm 以下 26mm 以上 30mm 以下 21mm 以上 25mm 以下

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225mm

200mm 蹴 上 175mm

150mm 200mm

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300mm

踏面 図 2.4.3.4 ニューラル・ネットワークによる平均値の変化

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66


2.4.3 ニューラル・ネットワークによる分析

標準偏差 225mm

上履き

200mm 蹴 上 175mm

150mm 200mm

250mm 踏面

300mm 7mm 未満 7mm 以上 9mm 未満 9mm 以上 11mm 未満 11mm 以上 13mm 未満

225mm

スリッパ

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200mm 蹴 上 175mm

150mm 200mm

250mm

300mm

踏面 図 2.4.3.5 ニューラル・ネットワークによる標準偏差の変化

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67


2.4.3 ニューラル・ネットワークによる分析

安全値 上履き 225mm

200mm 蹴 上 175mm

150mm 200mm

250mm 踏面

300mm 4.6 以上 4.1 以上 4.5 以下 3.6 以上 4.0 以下 3.1 以上 3.5 以下 2.6 以上 3.0 以下

スリッパ

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225mm

200mm 蹴 上 175mm

150mm 200mm

250mm

300mm

踏面 図 2.4.3.6 ニューラル・ネットワークによる安全値の変化

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68


2.5 本実験での結論

階段の安全性をつまずきという視点で考える上では、かかとと段鼻との距離についてその距離が保 たれていれば安全であるが、その一方で降りる動作のばらつきが大きい場合にはかかとが段鼻に引っ かかる危険が考えられる。そのために基本的には安全値の高いものが好ましい。また、ヒールクリア ランスの平均値の大きいものは階段に慣れておらず、将来平均値が小さくなり、転落リスクが高まる と考えられる。同時に標準偏差が大きいものは降段時にバランスを崩しやすい階段であると考えられ る。その上で安全値の低いものはバランスを崩した際に足が段鼻につき、つまづきやすいことを示し ている。これらを総合して本実験での結論を述べる事にする。(2.4 分析)  本来危険であるが、故意にヒールクリアランスを大きくしている範囲や、標準偏差が大きくバラン スを崩しやすい階段を定めるために、平均値や標準偏差の平均値と標準偏差を考える事にした。平均 値から 1.7 倍した範囲外の片側に累積確率が 0.05 となることからこれらの範囲を棄却することにし た。また、安全値に関しても、安全値 3.1 以下となるものはリスク対応型社会の観点からしても累積 確率が 1*10-4 以上となるために、危険であると判断できる。(2.5.1 安全範囲の確定)  これらの結果を図化し、安全性能を定量化したところ、履物ごとに安全な階段の寸法体系というの もは異なることがわかった。また踏面と蹴上が小さいものが安全である傾向を示している。ただしこ れはつまずきという観点から定量化を試みたので、実際では転落リスクとして踏み外しも存在する。 従って、実際に階段を設計する際には、これらのリスクも考慮に入れ、総合的に判断する必要がある。 (2.5.2 安全範囲)

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69


2.5 本実験での結論

2.5.1 安全範囲の確定方法  平均値の大きいものは慣れていない階段で危険を感じてい るために、階段降段時に足を大きく前を出したためにヒール クリアランスが大きくなった可能性があると考えた。また、 標準偏差が大きいものについても、通常以上に降段時にばら つきを生じやすい動作の寸法体系であると考えられる。これ らを棄却する。  まず平均値で大きいものを棄却するために、各階段で得ら れた平均値の平均値と標準偏差を導きだし、有意確率 0.05 とし、片側検定を行った。標準偏差が 1.7 倍の際に片側に有 意差が得られるということであるので、平均値から得た平均 値にその標準偏差の 1.7 倍したものを足し、少なくともこの 範囲のものは慣れていないと考える事にした。  標準偏差についても同様に考え、片側検定で標準偏差の平

図 2.5.1.1 標準正規分布

均値にその標準偏差の 1.7 倍以上となる数字が有意であると

表 .2.5.1.1 各棄却値

考え、階段降段時に通常以上にばらついた動きを生じやすい

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と考えた。  また、リスク対応型社会においてはリスクの許容範囲とし て 1*10-3 以下という基準があるために、これ以上のものは 大きいものとして考えた。

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6/


2.5 本実験での結論

2.5.2 安全範囲  今までの分析から危険な範囲を棄却する。それぞれの平均 値から標準偏差の 1.7 倍の範囲のうち、余った片側に累積確 率が 0.05 残ることから、基準として平均値と標準偏差を 1.7 倍した数字を設定し、それを上回っているものは危険と判断 した。平均値が高いものは慣れていない階段であると判断で きるため、また標準偏差が大きいものは階段降段時に動きの ばらつきが大きく、よろめく可能性が高いため、危険である 注1 リスク対応型社会を構築するために http://rcpor2.sfc.keio.ac.jp/introduction/risk_ general/www_risk/right.htm

と判断できる。  また、リスクマネジメントとして求められる事故発生確率 として、1*10-3 以下から 1*10-7 が基準として存在する 注1。 そのために、累積確率が 1*10-3 以上のものは危険であると 判断できる。また、その累積確率は平均値の標準偏差 3.1 倍

上履き

の片側がちょうどその範囲内になるために、安全値 3.1 以下

225mm

のものは危険であると判断できる。  これらより平均値 35.2[mm] 以上、標準偏差 13.9[mm] 以

200mm

上のものは危険であると判断し、また安全値 3.1 以下のもの

蹴 上

は棄却することにした図 2.6.2.1。

175mm

また、安全性能にはダイレクトに安全値が対応する。従っ 150mm 200mm

250mm

300mm

てこれら危険な範囲を棄却した上で、安全性能を評価するの が好ましい。これらの観点から、安全値から棄却する範囲を

踏面 スリッパ

重ね合わせて安全値を提示した図 2.6.2.2。

225mm

これらの結果安全な階段というのは限られてくることがわ かる。踏面が長くなると、ヒールクリアランスの平均値に対

200mm

して、ヒールクリアランスの標準偏差が大きくなってしまう

蹴 上

ために、安全値が減少してしまう。また、踏面が長く蹴上が

175mm

大きいものより踏面が短く蹴上が小さいものの方が安全であ 150mm 200mm

250mm

300mm

踏面

図 2.5.2.1 安全範囲

ることを示唆している。  ただし、本研究では階段降段時でのつまずきの観点から定 量化を試みている。他に階段のリスクを決定するファクター

注2 古瀬敏 , 遠藤佳宏 , 宇野英隆:安全性よ

として、踏み外しがある注2。階段からのすべりでは、身体

り見た階段の踏面・蹴上の最低寸法について

のバランスを支える拇指球と段鼻の位置が関わるので、階段

―階段利用時の安全性確保に関する研究 1

の踏面が短いと危険である可能性がある。

―, 日本建築学会計画系論文報告集第 356 号 , pp.24-29, 1985 年 10 月 注3 大嶋辰夫 , 宇野英隆:使用者から見た安 全な階段に関する研究 , 日本建築学会計画系論

従って、今研究では履物によって適切な階段寸法があるこ とが示唆されたものの、他のリスクも考慮に入れなければな らないと考えられる。

文集 第 521 号 , pp.159-165, 1999 年 7 月

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6:


2.5 本実験での結論

安全値 上履き 225mm

200mm 蹴 上 175mm

150mm 200mm

250mm 踏面

300mm 4.6 以上 4.1 以上 4.5 以下 3.6 以上 4.0 以下 3.2 以上 3.5 以下

スリッパ

3.1 以下または危険なもの

225mm

200mm 蹴 上 175mm

150mm 200mm

250mm

300mm

踏面 図 2.5.2.2 危険な範囲を除いた安全値

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7.


3.1 既往研究との対応

本研究では健康維持のためには階段を利用する事が望ましいということを近年の医学の傾向から指 摘した上で、階段でのエネルギー代謝量はほぼ一定であるという前提のもと、階段のつまずきの安全 性の定量化を試みた。階段のつまずきという観点から見ると、踏面と蹴上は短ければ段鼻とかかとが ぶつかる可能性が低くなるものである。また、安全な範囲は蹴上の大きいものと小さいものに別れて いることが判明した。それら以外にも階段の転落事象としてすべりによる転落があり得る。階段降段 時に母指球が階段の段を超えてしまうと、自重を支えずづらくなり、そのために、転落の可能性があ り得るというものである。これらの研究も参照しながら健康増進として利用できる安全な階段寸法体 系を見極めていくことが必要である。(2 本論)  そのためにも、古瀬ら(1985)、永田(1992,1993,1994)、宇野ら(1999)の論文の概要を掲載 しながら、対応する点や本論文を評価する上で注意することを留意した。  これらの結果(図 3.1.4.1)、踏面寸法は 230[mm] から 265[mm]、蹴上寸法は 180[mm] 以下が好 ましいと考えられる。また最も良い階段の組み合わせは踏面 240[mm]、蹴上 170[mm] であると考 えられる。(3.1.4 既往研究を踏まえた上での安全性の結論)

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45


3.1 既往研究との対応

3.1.1 古瀬ら(1985)との対応 注 1 古瀬敏 , 遠藤佳宏 , 宇野英隆:安全性よ

古瀬ら注1(1985)は踏面と蹴上の最低寸法を決定するた

り見た階段の踏面・蹴上の最低寸法について

めに、実験室で作成した階段図 3.1.1.1 を用いて、被験者の動き

―階段利用時の安全性確保に関する研究 1

をビデオで分析するとともに、階段降段時にかかる反力を多

―, 日本建築学会計画系論文報告集第 356 号 ,

分力プラットフォームを用いて解析をしている。

pp.24-29, 1985 年 10 月

まず、階段降段時の解析では、拇指球と階段の段鼻の関係 を指摘している。拇指球が階段の段鼻を超えてしまうと、階

210

段降段時にバランスがくずれ、踏み外しが生じてしまうので、

195 蹴上 180

古瀬らは、実験結果から拇指球の接地位置を2次回帰曲線か

165

ら求めている。

150 180

210

240

270

300

330

踏面

図 3.1.1.1 古瀬ら(1985)で実験として用い られた階段 30 種類

この式から階段を踏み外す踏面寸法を 183[mm] と指摘し 注2 古瀬敏 , 宇野英隆 , 遠藤佳宏:階段使用

ている。ただし、この際でも階段降段時に故意に足をひねり、

時の安全性確保に関する研究̶その3̶, 昭和

無理に拇指球を踏面に残そうとしている例が見られたと報告

57 年度に本建築学会学術講演梗概集(計画系),

している。このことから、拇指球が完全に踏面内に収まる寸

pp.1225-1226

法として、210[mm] を挙げている。  また多分力プラットフォームによる階段降段時の反力で は、蹴上寸法が 180[mm] を超えた部分から、線形的に増加

210

傾向になることを示した。この力が大きいと、階段降段時に

195 180

150

必要とされる筋力が大きいことを示しており、そのことから、

古瀬ら(1985)による 古 古瀬 瀬ら(1 (198 ( 985) 98 )による )

165

蹴上は 180[mm] 以下が望ましいと述べている。

安全な 安全 な階段 な 階段の寸 階段 階 寸法体系 寸 安全な階段の寸法体系 180

210

240

270

300

330

ただし、踏面が長ければ蹴上を大きくしても安全性は損な

図 3.1.1.2 古瀬ら(1985)での結果と上履き

わないという以前のデータ(古瀬ら注2, 1982)から階段の

着用時の安全値との比較

勾配として、38 度であれば安全であると推測している。  これらに対して、安全値と古瀬らの結果を比較したものが 図 3.1.1.2 である。ただし、実験条件を考え、スリッパ着用 時は比較出来ないと考えた。ここでは、古瀬らの挙げた安全 で踏面 210[mm]、蹴上 180[mm] から踏面 270[mm]、蹴上 210[mm] へとのびる直線が部分が安全値の推移と対応して いる。古瀬らは主に踏み外しという観点から安全な階段の範 囲を決めているが、これらと一部同様な傾向が見られる。

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4-


3.1 既往研究との対応

3.1.2 永田(1992、1993、1994)との対応 注1 永田久雄:階段からの転落要因に関す

永田注1(1992)は加齢に伴う身体バランス能力が低下す

る基礎的な考察̶階段の安全性からみた踏面・

る事から転落を論じている。直立する被験者の床を滑らせる

蹴上寸法の評価に関する研究 その1̶, 日本 建築学会計画系論文報告集 , 第 439 号 , pp.7380, 1992 年 9 月

ことで、バランス維持能力を計測しており、高齢者がバラン ス維持能力が若年者と比べて 3 割以上も低くなることから、 わずかなきっかけで転落する危険性を述べている。

表 3.1.2.1 実験に用いられた階段

また、階段の踏み外し、つまづきを解明するために、ヒー

!"

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()%&&' *+%,-.'

/0

122

032

4565

/4

472

082

1061

/1

432

422

1768

うと、危険なものであればヒールクリアランスを大きくとっ

/9

442

412

9561

てしまうので、安全に動作する傾向が見られるために、寸法

ルクリアランスをとり、4 種類の階段表 3.1.2.1 について検証を 行った。これらの結果、ヒールクリアランスだけをみてしま

注2 永田久雄:視野に基づく踏面・蹴上寸法

は決められないと結論している。また、必要最低寸法は、履

の検討̶階段の安全性からみた踏面・蹴上寸法

物の種類や長さによっても変化するために、一概に決定でき

の評価に関する研究 その2̶, 日本建築学会

ないとしている。

計画系論文報告集 , 第 444 号 , pp.61-66, 1993

また、1993 年 注2 では階段降段時に踏面が見えないこと

年2月 注3 永田久雄:主観的評価に基づく踏面・蹴 上寸法の検討̶階段の安全性からみた踏面・蹴 上寸法の評価に関する研究 その3̶, 日本建 築学会計画系論文報告集 , 第 456 号 , pp.145152, 1994 年 2 月

で誤って踏み外したり、つまずいてしまうことから、アイ マークレコーダーから階段の段鼻が見えなくなる範囲を計算 した。これらの結果から、必要な寸法は蹴上 140[mm] から 200[mm] を想定して、踏面は 260[mm] から 320[mm] が好 ましい図 3.1.2.1 と結論している。  さらに 1994 年注 3 では、被験者が階段を下る際に歩きづ らいかどうかを評価する階段降段時の心理評価を行った。そ こから、歩きやすい階段の評価をしている。各履物ごとの歩 きやすさを鑑みて、ハイヒールが最も危険に感じられ、また その最も歩きやすい階段の組み合わせから順に逓減していく 等高線のようなグラフであることから、踏面 300[mm]、蹴 上 155[mm] の階段から楕円状にある歩きやすさが示された としている図 3.1.2.1。

図 3.1.2.2 ハイヒール着用時での歩きやすさ

250

200

永田(1993)

150 150

200

250

300

350

図 3.1.2.1 永田(1993)との対応

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46


3.1 既往研究との対応

250 永田(1994)

200

150 150

200

250

300

350

300

350

図 3.1.2.3 男性の歩きやすさの分布と上履き着用時の安全値との対応

250 永田(1994)

200

150 150

200

250

図 3.1.2.4 ローヒールを履いた女性と歩きやすさの分布と上履き着用時の安全値との対応

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47


3.1 既往研究との対応

本研究では、ヒールクリアランスの平均値と標準偏差から安全値というものを設定し、安全性能 について言及している。また、永田(1992)ではヒールクリアランスでは、被験者被験者が危険 を感じてしまう階段は、故意にヒールクリアランスを大きくしてしまうので、安全な寸法を導けな いとしていたが、通常とは異なるものを検定し、それらを棄却したことで、定量化を試みた。  また、図 2.1.2.1 では本実験によって得られた安全値と永田(1993)との比較を示した。 踏面について対応する部分は見出しにくいが、蹴上の安全な範囲だろうと推定されるものは同じで あろうと考える。  また、図 3.1.2.3 と図 3.1.2.4 には本実験によって得られた安全値と永田(1994)で得られた歩 きやすさを比較したものである。この図ではあまり対応は見受けられない。しかしながら、歩きや すさを示した図は平均値と反転したものと対応している。ここでも歩きにくいものはヒールクリア ランスを大きくとる傾向が見受けられる。   250 永田(1995)

200

150 150

200

250

300

350

図 3.1.2.5 男性の歩きやすさと上履き着用時のヒールクリアランス平均値

250 永田(1994)

200

150 150

200

250

300

350

図 3.1.2.6 ローヒール着用時の女性の歩きやすさとスリッパ着用時のヒールクリアランス平均値

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44


3.1 既往研究との対応

3.1.3 宇野ら(1999)との対応 注1 大嶋辰夫 , 宇野英隆:使用者から見た安

宇野ら注1(1999)は階段の不安に感じる点をアンケート

全な階段に関する研究 , 日本建築学会計画系論

によって明らかにした上で明らかにした上で踏面と蹴上の異

文集 第 521 号 , pp.159-165, 1999 年 7 月

なる階段で被験者に気付かれないように、ビデオ撮影をし、

表 3.1.3.1 実験での階段寸法

この歩行軌跡から安全性の解析を行っている。その方法は、

!"

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'(

)*

階段上昇時につま先と段鼻の通過距離と降段時のヒールクリ

+

+,-

.+/

-0,,,

1,0-

アランスを踏面ごと、蹴上ごと、勾配ごとに集計し、それら

1

+.-

.1-

-0,-2

110+

から平均値の回帰直線をとるとともに、標準偏差の3倍から

.

+.1

.1/

-0,-2

110+

求めた求めた2次回帰曲線を求めている。これらの結果から

,

+3-

.+-

-0/,4

1403

平均値を標準偏差の 3 倍引いた値が 0 となるものを危険で

/

+3/

.,-

-0/+/

1301

あるとしている。  ただし、実験室で行っている本実験と普段と同じ状態で階 段を下る被験者とで、そもそものデータの質が異なるために、 一概に当てはまっているかどうかは言えなが、それを留意し た上で、比較を試みる。  この実験においても、ヒールクリアランスの標準偏差の回 帰式は少なくとも非線形ではないことを表している。本研究 に置いても平均値は踏面と蹴上によってほぼ線形で決まると

図 3.1.3.1 宇野らによる安全な階段の範囲

考えられるが、標準偏差では角度による偶関数である可能性 可能性が高い事を示唆していた。これらの傾向は本研究にお いても確認できる。  また、実験の結果では、平均値を平均値の 3 倍で引いた 値を基準にし、階段の安全な範囲として、勾配 0.46(24.7 度) から 0.50(26.6 度)、蹴上は出来るだけ 157[mm]、また踏 面を 317[mm] 以上としている。蹴上の傾向としては、大ま かには本研究では同様の傾向を示しており、安全値の傾向と しても角度が関わりあることは同様の傾向を示している。

図 3.1.3.2 宇野らによる勾配とヒールクリア

階段の蹴上は蹴込距離という足を着く場所で評価を行って

ランスとの相関

いたので、本論文とは異なるので、一概に同等な評価は出来 ない。また、踏面も、ヒールクリアランスではなく踏み出し た側の足の距離から結論を述べていたので、本研究と結果が 異なっていると考えられる。  ただし本研究では実験室で行ったためにヒールクリアラン スを故意に大きくさせた可能性はあり得る。逆に宇野らの実 験では日常生活での公共施設で撮影を試みたものであるの で、下る際にケイデンスを速めているもの可能性もあり、住 宅内においては異なる可能性が高い。

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48


3.1 既往研究との対応

3.1.4 既往研究を踏まえた上での安全性の結論  本研究では古瀬ら(1985)との結果はほぼ合致する結果を得た。しかしながら、永田(1992、 1993、1994)とは異なる結果を示している。これは、階段からの踏み外しという観点から結論を得 ているからである。また、宇野ら(1999)とは、一部同じ傾向が示すデータがありつつも、公共施 設で普通に階段を下る人を撮影したために、ケイデンスが異なるために住宅と同じ前提ではないと考 えられる。  それに対して、本研究ではつまずきは踏面が短いものの方が転落する可能性が低いと結論づけたも のの、つまずき以外にも転落するリスクとして踏み外しのリスクがあり、このリスクは宇野ら(1999)、 古瀬ら(1985)においても大きいと考えている。ただし、これらのつまずきが多いとするデータ自 体も長寿社会対応住宅(1995)以前のものである可能性が高い。そもそも日本では土地が少ないた めに、蹴上が高く踏面が短い階段が構造的に多いために、踏み外しが多い可能性がある。  これをふまえた上で、本研究では踏み外しとつまずきは潜在的に同等のリスクであると考え、古 瀬らの基準、さらに永田の下りやすさの指標から安全性を考えた。踏み外しという観点から古瀬ら (1985)は足が踏面に収まる範囲として 210[mm] 以上と掲げている。同様に永田(1993)は高齢 者が途中で休むという可能性を鑑みて踏面寸法を 260[mm] するべきだとしている。つまり最低限の 基準を挙げたのが古瀬で、そこから永田が推奨される寸法を挙げていると考えられる。そこで、これ らの値を安全値と同様に評価するために 6 等分したものが図 3.1.4.1 である。これによると、踏面寸 法は 230[mm] から 265[mm]、蹴上寸法は 180[mm] 以下が好ましいと考えられる。また最も良い階 段の組み合わせは踏面 240[mm]、蹴上 170[mm] であった。 250

200

150 200

250

300

350

図 3.1.4.1 安全値と既往研究を対比したもの

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49


3.2 今研究での成果と展望

本研究では、階段の安全性能を定量化するために、踏面 200[mm]、250[mm]、300[mm]、蹴上 150[mm]、175[mm]、200[mm]、225[mm] の 12 パターン、上履きとスリッパの履物ごとに 3 回あ たりヒールクリアランスを採取し、その平均値と標準偏差の説明を試みた。ヒールクリアランスの平 均値と標準偏差は筋力との相関を示さなかったもののものの、踏面との相関が示唆された。ただし、 ヒールクリアランスは歩きやすさによって変化すると考えられるので、ある適当な点から逓減してい くグラフであり、非線形であると考えられる。そのために、ニューラル・ネットワークにてパーセプ トロンに学習させ、踏面 200[mm] から 300[mm]、蹴上 150[mm] から 225[mm] の範囲内のヒール クリアランスの平均値、標準偏差、安全値の予想を得る事が出来た。これらから安全でないと思われ る範囲をヒールクリアランスの平均値と標準偏差から見出し、また安全値からもリスク社会対応型社 会の観点から危険な範囲を導いていった。これらから履物ごとに安全な階段寸法の組み合わせは異な ることが判明した。  これに対して、実際の階段では踏み外しに関してもリスクが存在する。それらのリスクは既往研究 から推測した。これらの結果、踏面寸法は 230[mm] から 265[mm]、蹴上寸法は 180[mm] 以下が好 ましいと考えられる。また最も良い階段の組み合わせは踏面 240[mm]、蹴上 170[mm] ということ が判明した。  本研究では高身体活動状態を保ち続けることが健康状態を維持することが出来るとした上で、階段 での代謝量は踏面・蹴上によらずほぼ一定の値を示すという前提のもと、安全性能の定量化を行った。 安全性能の高い階段を用いて、設計上の工夫をして使う頻度を高めれば高身体活動状態になる可能性 があり、健康状態が維持できることを示唆している。

ただし、本研究では、階段での総合的な転落リスクと階段からの転落を経年変化で捉えるという ことが出来なかった。階段の転落では、すべりもあるために、これらと総合して評価する必要する必 要があったが、本研究ではそれが出来なかった。本研究と同様にして、段鼻の位置と母指球の距離を 取り、その平均値と標準偏差を階段の踏面、蹴上、または身体のパラメータから説明変数をとり、本 研究と同様に回帰分析を行う事で、リスクの定量化が可能であると考えられる。  さらに身体のパラメータからヒールクリアランスの平均値や標準偏差を定量化することで、リスク を経年変化で捉える可能性を示した。本実験では筋力という指標で説明を試みたが、筋力との相関が なかった。これ以外の身体条件のパラメータから転落の原因を追及し、他のも検討し、転落の経年的 にみたファクターを明らかにする必要がある。  これらから総合的にみた転落リスクを経年的に見た上で階段を評価し、その中から個人の利益との 兼ね合いで適切な階段寸法を選択するのが好ましいと考えられる。

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4/


4.1 階段の安全性とデザイン

本研究では、階段を日常的に使うことが健康維持に良いと考えた上で、エネルギー代謝の観点から 見ると踏面・蹴上によらずほぼ一定の値を示している点から、最も安全な寸法を選び、設計上の工夫 で日常的に使うようにするのが良いとした。  しかしながら、文学的な意味としては、上の階と下の階をつなぐ動線という意味を超えてある種舞 台的な演出がある。さらに意匠的な意味においても、緩やかに階同士をつなぐだけではなく、空間に 立体感も与え、プロポーションにも関わってくる。  そのために、ルイス・バラガンの建築注1から寸法が明らかになっているものを抜き出し、リスク の低いものでもデザインとして用いられるプロポーションがなりうるかを検討したい。ルイス・バラ ガンを挙げた理由として、図面を描かずに施工し、何度も壊しながら考えて建築を創ったという逸話 が残っていることから、基準に縛られず空間を設計した人であると考え、階段のプロポーションと比 較するには好ましいと判断した。  次頁には本研究で示された安全性とルイス・バラガンの建築から抜き出した階段から角度で空間の プロポーションを示している。これによると本研究で示された安全性はベストではないものの、ある 程度モデュールとしてデザインと両立できることを示している。従って安全性とデザインを両立させ よう時には、空間のプロポーションから階段のなだらかさを導いた上で、リスクから具体的な寸法を 定める手法を提案し、本研究の締めとしたい。

注1 齋藤裕 , CASA BARAGAN, TOTO 出版 , 2002 年 なお採用したのでは、バラガン邸書斎(pp.45)、バラガン邸玄関ホール(pp.59)、ギラルディ邸階段ホール(pp.221)

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45


4.1 階段の安全性とデザイン性

イラレから A3

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6.


4.2 既往研究及び参考文献

本論文の文中に参照した既往研究及び参考文献を、各章ごとにまとめて記す。また、文中指定はな いが、関連する論文・書籍についてはその後に示す。

1.2.1 高齢社会と医療費  図1.2.1.1 OECD 各国の高齢化率   OECD in figure 2008 Demography, OECD© 2008 - ISBN 9789264055636   http://www.oecd.org/document/32/0,3343,en_2649_34489_41722336_1_1_1_1,00.html  注1 内閣府 , 平成 20 年度高齢社会白書 , 佐伯出版 , 2008 年 , pp.2   http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2008/zenbun/20pdf_index.html  注2 辻一郎 , のばそう健康寿命 , 岩波アクティブ新書 , 2004 年 , pp.19  注3 厚生労働省 , 平成 20 年度厚生労働白書 , ぎょうせい , 2008 年 , pp.8   http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/08/index.html  表 1.2.1.1 社会保障費と国民所得との割合   国立社会保障・人口問題研究所 / 社会保障関係 / 社会保障給付金 / h18 年度 / 第 18 表 給付と   負担の見通し  図 1.2.1.2 要介護器官と介護保険料の月額   辻一郎 , のばそう健康寿命 , 岩波アクティブ新書 , 2004 年 , pp.31  注 4 辻一郎 , のばそう健康寿命 , 岩波アクティブ新書 , 2004 年 , pp.28-32  注5 経済諮問会議第 25 回会議 , 2008 年 11 月 20 日 pp.11   http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/1120/shimon-s.pdf

1.2.2 健康リスクとしての低身体活動状態   WHO Health Report 2002- Reducing risks, promoting healthy life, pp.61   http://www.who.int/whr/2002/en/whr02_en.pdf

1.2.3 高齢期での運動介入  注 1  Maria A. Fiatarone et al:Exercise Training and Nutritional Supplementation for Physical     Frailty in Very Elderly People, The New England Journal of Medicine, Vol.330, pp.1769-1775  注2 介護予防・自立支援・パワーリハビリテーション研究会 , パワーリハビリテーションガイド   ブック , 医歯薬出版 , 2004 年  注3 大河内重敬:高齢者の筋力維持を目的とした日常生活における動作の負荷に関する研究̶高   齢者用運動プログラムと生活動作の負荷に関する研究̶, 2005 年度卒業論文  注4 永池俊也:筋力低下を予防する住空間のデザイン―日常生活動作時の腰部周りの筋活動量計   測―, 2005 年度修士論文

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67


4.2 既往研究及び参考文献

注5 福永哲夫:中高齢者の筋力維持増進 貯筋のすすめ , 体力科学 , 第 51 号 , pp.58, 2002 年

1.2.4 階段の健康への寄与とリスク  注 1 塚本玲三 , ドクター塚本の階段健康法 , 講談社 , 2007 年 pp.24  注 2 宇野英隆 , 古瀬敏:住宅階段利用時のエネルギー負担に関する検討 , 日本建築学会論文報告   集第 345 号 , pp.115-121, 1984 年 11 月  注3 WHO Health Report 2002- Reducing risks, promoting healthy life, pp.61,83  注4 泉キヨ子 , エビデンスに基づく転倒・転落予防 , 中山書店 , 2005 年 pp.3

1.2.5 既往研究  図 1.2.5.1 階段の寸法体系の式   川村かお里 , 高橋亮一 , 直井英雄:昇降動作形態より見た階段・斜路の適切とされる寸法条件に   関する検討 , 日本建築学会学術講演梗概集 E-1, 1999 年 , pp739-740 より引用  注2 古瀬敏:階段と住宅内の安全性 , 建築雑誌 Vol.102, No.1265, pp.64-65, 1987 年  注3 厚生労働省 , 平成 18 年度人口動態統計 , 第18表 家庭内における主な不慮の事故の種類   別にみた年齢別死亡数・構成割合  図 1.2.5.2 デンマークでの階段の事例   青木務:高齢者と階段に関する研究―デンマークやスウェーデンの高齢者施設を視察して―,    神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究既往第1巻第1号 , 2007, pp.163-168  図 1.2.6.3 運動プログラムの一例   大河内重敬:高齢者の筋力維持を目的とした日常生活における動作の負荷に関する研究 ,2005   年度卒業論文  注4 永池俊也:筋力低下を予防する住空間のデザイン―日常生活動作時の腰部周りの筋活動量計   測―, 2005 年度修士論文  注5 宇野英隆 , 古瀬敏:住宅階段利用時のエネルギー負担に関する検討 , 日本建築学会論文報告   集第 345 号 , pp.115-121, 1984 年 11 月

1.2.6 リスク対応型社会  注 1 『福祉の経済学̶21世紀の年金・医療・失業・介護̶』 ニコラス・バー著 菅沼隆訳、光   生館 2007 年 pp.61  注2 リスク対応型社会を構築するために   http://rcpor2.sfc.keio.ac.jp/introduction/risk_general/www_risk/right.htm

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6-


4.2 既往研究及び参考文献

2.1 実験への仮説  表 2.1.1 転倒・転落のリスク要因   泉キヨ子編集 , エビデンスに基づく転倒・転落予防 , 中山書店 , 2005 年 , pp.3

2.2.1 実験方法  マーカー張り付け位置 人間生活工学 / 日本人の人体計測データベース 1992-1994   http://www.hql.jp/project/size1992/point3.html  注1 塚本玲三 , ドクター塚本の階段健康法 , 講談社 , 2007 年 pp.33

2.4.3 ニューラル・ネットワークによる分析  富士通社製 NeuroSIM/L   http://software.fujitsu.com/jp/product/db/neurosim/  図 2.4.3.1- 図 2.4.3.3   http://www.eb.waseda.ac.jp/murata/kentaro.matsukura/openhouse/neural1.php

2.5.2 安全範囲  注1 リスク対応型社会を構築するために   http://rcpor2.sfc.keio.ac.jp/introduction/risk_general/www_risk/right.htm  注2 古瀬敏 , 遠藤佳宏 , 宇野英隆:安全性より見た階段の踏面・蹴上の最低寸法について―階段   利用時の安全性確保に関する研究 1―, 日本建築学会計画系論文報告集第 356 号 ,pp.24-29,     1985 年 10 月  注3 大嶋辰夫 , 宇野英隆:使用者から見た安全な階段に関する研究 , 日本建築学会計画系論文集   第 521 号 , pp.159-165, 1999 年 7 月

3.1.1 古瀬ら(1985)との対応  注1及び図 3.1.1.1 古瀬ら(1985)で実験として用いられた階段 30 種類   古瀬敏 , 遠藤佳宏 , 宇野英隆:安全性より見た階段の踏面・蹴上の最低寸法について―階段利用   時の安全性確保に関する研究 1―, 日本建築学会計画系論文報告集第 356 号 ,pp.24-29, 1985   年 10 月  注2 古瀬敏 , 宇野英隆 , 遠藤佳宏:階段使用時の安全性確保に関する研究̶その3̶, 昭和 57 年   度に本建築学会学術講演梗概集(計画系),pp.1225-1226

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68


4.2 既往研究及び参考文献

3.1.2 永田(1992、1993、1994)との対応  注1及び表 3.1.2.1 実験に用いられた階段   永田久雄:階段からの転落要因に関する基礎的な考察̶階段の安全性からみた踏面・蹴上寸法の   評価に関する研究 その1̶, 日本建築学会計画系論文報告集 , 第 439 号 , pp.73-80, 1992 年 9   月  注2及び図 3.1.2.1 永田(1993)との対応   永田久雄:視野に基づく踏面・蹴上寸法の検討̶階段の安全性からみた踏面・蹴上寸法の評価に   関する研究 その2̶, 日本建築学会計画系論文報告集 , 第 444 号 , pp.61-66, 1993 年 2 月  注3及び図 3.1.2.2 ハイヒール着用時での歩きやすさ、図 3.1.2.3 男性の歩きやすさの分布と    安全値との対応、図 3.1.2.4 ローヒールを履いた女性と歩きやすさの分布と安全値との対応、    図 3.1.2.5 男性の歩きやすさとヒールクリアランス平均値、図 3.1.2.6 ローヒール着用時の女性   の歩きやすさとスリッパ着用時ヒールクリアランス平均値   永田久雄:主観的評価に基づく踏面・蹴上寸法の検討̶階段の安全性からみた踏面・蹴上寸法    の評価に関する研究 その3̶, 日本建築学会計画系論文報告集 , 第 456 号 , pp.145-152, 1994   年 2 月

3.1.3 宇野ら(1999)との対応  注1及び表 3.1.3.1 実験での階段寸法、図 3.1.3.1 宇野らによる安全な階段の範囲、図 3.1.3.2  宇野らによる勾配とヒールクリアランスとの相関  大嶋辰夫 , 宇野英隆:使用者から見た安全な階段に関する研究 , 日本建築学会計画系論文集第 521  号 , pp.159-165, 1999 年 7 月

4.1 階段の安全性とデザイン性  注1 齋藤裕 , CASA BARAGAN, TOTO 出版 , 2002 年

関連図書  岡田光正 , 森田孝夫 , 柏原士郎 , 鈴木克彦 , 現代建築学 建築計画1, 鹿島出版会 , 2002 年  武藤芳輝 , 転倒予防の知識と実践プログラム , 日本看護協会出版会 , 2006 年  中原英臣 , 三屋裕子 , 運動セラピー 生活習慣病は運動不足病! , 法研 , 2002 年  長崎浩 , 動作の意味論 歩きながら考える , 雲母書房 , 2004 年  三好春樹 , 生活リハビリ体操 人が動くということ , 雲母書房 2000 年  成瀬悟策 , 動作療法 まったく新しい心理治療の理論と方法 , 誠信書房 , 2000 年  関なおみ , 時間の止まった家 「要介護」の現場から , 光文社新書 , 2005 年  土屋和人 , Excel VBA パーフェクトマスター , 秀和システム , 2007 年

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69


4.2 既往研究及び参考文献

ニューラル・ネットワークとは ,  http://mikilab.doshisha.ac.jp/dia/research/report/2005/0909/006/report20050909006.html  社団法人 日本経済団体連合会 , 高齢者雇用の促進に向けた取組みと今後の課題 , 2008 年 11 月   18 日 , http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/080.pdf  健康増進法 , http://www.ron.gr.jp/law/law/kenko_zo.htm

関連論文  小林一久:ドイツにおける社会保障制度改革の現状 , 財務省財務総合政策研究所「ファイナンシャ  ル・レビュー」, pp.113-134, 2006 年 9 月  川初清典:高齢者の健康づくりに効果的な住居内階段の仕様について , 住宅総合研究財団研究年報  No.23, pp.217-226, 1996 年  新井武史 , 大渕修一 , 小島基永 , 松本侑子 , 稲葉康子:地域在住高齢者の身体機能と高齢者筋力向上  トレーニングによる改善効果との関係 日本老年医学会雑誌 , No.43-6, 781-788, 2006 年  大塚研一:統計でみる健康 , 京都大学医療技術短期大学紀要別冊健康人間学 , No.10, pp.10-15,    1998 年  高岡浩一郎 , 応用数理サマーセミナー 2006「確率微分方程式」講演 確率微分方程式の基礎 , 応  用数理 ,Vol.17, No.1, pp.21-28, 2006  塩野谷明 , 中村和男 , 長谷川光彦 , 三宅仁:住居を利用した有酸素性運動およびトレーニングのた  めの基礎的研究 , 長岡技術科学大学研究報告 , Vol.20, pp.119-128, 1998 年  H.Luukinen, M. Herala, K.Koski, R. Honkanen, P. Laippala, S.-L. Kivelä:Fracture Risk Associated  with a Fall Acording to Type of Fall Among the Elderly, Osteoporos Int, Vol.11, pp.631-634, 2000  Tahir Masud, Robert O. Morris:Epidemiology of falls, Age and Aging, Vol.30, S4, pp.3-7, 2001  千田益生:下肢筋力の経年変化̶用手力量計による計測̶, リハビリテーション医学 , Vol.24, No.2,  pp.85-91, 1987 年  大西明宏 , 江原義弘:住宅内階段の降段歩行時のヒールクリアランスの分析に基づいた安全な階段  寸法を算出する数式モデルの開発 , バイオメカニズム学会誌 , Vol.29, N0.3, pp.152-159, 2005

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64


4.3 あとがき

去る 2008 年 11 月 10 日に亡くなった伊藤清先生の確率微分方程式、またマイロン・ショールズ とブラック・フィッシャーがノーベル経済学賞を受賞する契機となったブラック・ショールズの微分 方程式など、数学とファイナンスから多大な影響を受けていると自分自身では思っている。数学とい うものは奇妙なもので、徹底された科学でありながら、どこかしら美しさを秘めている。おそらく具 体的ではない抽象的なものに人間は惹かれる。だから近年のパッケージ建築と呼ばれるライトフレー ムでガラス張りの建築が増えているし、そもそも近代主義はマックス・ウェバーの挙げる禁欲的プロ テスタンティズムに影響を受けているので、数学的な抽象性を帯びているのは当たり前である。抽象 化というのは形を捨てることであり、抽象化の最たる例は情報だけを取り出す今の情報化社会である。  ただし日本の風土として、日本古来のアニミズム信仰が根強い。そのために、モノにある種の魂を 見出していくのが名残として残っている。その最たる例がロボットやアニメーションであり、細部ま で徹底的にこだわり続ける日本のものづくりの職人である。そのために日本はサイエンスよりエンジ ニアリングの方が強い国であり続けた。そのために建築家も職人的な存在となっている。  渡辺研究室の研究は多岐にわたっているが、基本的にはサイエンスとエンジニアリングにまたがる 複合領域にある。建築を情報という視点で抽象化された存在を語り、具体的なものにフィードバック する。そのために、実用性も考えつつ科学的方法論から研究を進めている。何かしらのシステムを提 案し実証実験を行う人が多い中、僕は非常にサイエンス寄りで異例だったと思う。  そこで研究をしていて思った事はサイエンスは経験主義を超えられるかという問いである。おそら く巨匠と呼ばれるクラスの建築家は自分自身で莫大な経験と自信を持っている。それに対抗するため には科学的方法論に基づいたデータで莫大な時間をかけて立証するしかない。しかしながら、デザイ ン部門の OMA とともにマーケティングや調査を行う AMO のおかげで成功を収めているレム・コー ルハースの事例を見ると、一応の意味はあると思われる。AMO は先進的なことをやろうとするとき に非常に役に立つと言っていた。  それに対して、自分の研究は先進的だろうか、建築家の推測の範囲内だろうか? それは発表のと きにわかることだろう。

decet imperatorem stantem mori. 責任ある者は立ったまま死ぬ事がふさわしい。

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4.4 謝辞

偶然建築に入り、偶然渡辺研に入って、なぜか 4 年間過ごしてしまった。最初の 2 年間は何をし てもいいかわからず、何も出来なかった。それを支えてくれた当時 M2 だった皆さん。よく拉致られ ましたが、かまってくれてありがとうございます。同期だったはずの麻木ちゃん、まよ、きどちゃん、 大河内さん、徹さんには常日頃から優しくして頂けました。深くお礼を申し上げます。ですが、卒業 なされた方からも今でもいじられるのはなんでなのでしょうか?  佐古、大塚、俺もお前らのこと嫌いだからな(笑) たわ D、ひわいさん、いつも笑わしてくれま した。そして奇人変人揃いの M2 の中に1人ウサギが紛れ込んでいる、増田さん、あなたも同類です。 研究室のささやかな笑顔を振りまく本田さん、小原さん、いやされます。森村さん、中田並のキラー パス、イチローのレーザービーム、アンディ・ロディックの弾丸サーブ並みの鋭い一言が僕の心を締 め付けます。ありがとうございます。阿礼さん、旅のときの黄色い姿が忘れられません。ひで、生き てる? 迷惑をかけた松井さん、大河内さん、論文書けたよ。人間やれば何でもできる!  僕は 10 月に実験をやっていたので、卒論生とほぼ一緒に分析をしたりしていました。ですから、 M0 のヤツらと論文書いたような気がします。田名網、俺は短く太い人生を送る! 俺の生き様をと くと見るがいい! だが、研究室自由人の座はお前に譲ろう。FrameDias 仲間の仁、西、森谷、N 棟 に行くといつもいた M0 情報ゼミ 4 人集、M2 は誰もいないのに、作業する仲間がいて良かったです。 なぜか池内先生も一緒に作業をしていた仲ですよね。ありがとうございます。みんなのマスコットの 松島さん、忙しいときに無理難題を押し付けて申し訳ない。   渡辺先生、ありがとうございます。おかげで Windows ユーザーから Mac ユーザーに進化しました。 旧石器時代から弥生時代くらいの進化です。ですが、Linux(Ubuntu)ユーザーに進化しそうです。 長澤ボス、ありがとうございました。大変ご迷惑をおかけしました。人間、日々成長はするようで す。林田ボス、ありがとうございます。思えば、最初の年は行動ゼミにおりましたが、どうすればい いのかわかりませんでした。ですが、一緒につくばに行った帰りに、お前案外真面目だからな、とさ らっと言われたことで、やや自信がつきました。遠田さん、よくサシで飲みましたが、最近呑んでま せんな。お互いに時間がありませんからね。さて、これからどうしようか。"To be or not to be, that is problem" それにしてもなぜマヨからツメを噛むクセ治った? とか言われるんでしょうか?  建築研究所の布田先生、実験させてくださりありがとうございます。また、準備不足が否めないの に実験室を貸してくださり、感謝しております。永田先生、無知な私の妄言を大人な対応をしてくだ さりありがとうございます。研究の方法論が出来てませんでした。本当に自分の無知を今になって悔 やむ次第です。本当に申し訳ありません。また実験の参加していただけた、佐古さん、シンさん、ハ ルカさん、山中さん、小原さん、さらにはムダな時間になってしまいましたが、平居さん、阿礼さん、 池内仙人、本当にありがとうございます。  さらにマクロという素晴らしいツールを開発したマイクロソフトの方々、さらには Macintosh と 開発してくださった方々。そもそもパソコンがなければ研究できませんでした。本当にありがとうご ざいます。それとともに、DKH、富士通のソフトがなければ分析ができませんでした。斜陽の帝国 の SONY、電気を作ってくれる東京電力、数えていったらキリがありません。

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6:


4.4 謝辞

Megu He estudiando castellano un poco, quizá estén muchos errores en mi carta. Lo ciento que no ya aprendirlo. Yo estabá perdido hasta conocerte claramente, pero tú me diste la mapa de la vida. Tú cambiabas mia. ¡Haria alguien para tí! Muchas gracias para apoyarme veridaderamente. Yo he esatado contigo en el funio, quizá nunca obvidaré el paisaje que muchas luces illuminaron la ciudad de Minatomirai. He estado feliz veridaderamente. La experiencia y el tiempo que yo estabá contigo he divertido muy bien. Pero tengá la ansiedad que tú vorviera a tu patria, Paraguay. Tu extencia es tan importante para mí. Es muy triste para mí que tú vuelve tu casa real. Ahora, has estado en el otro lado de río grande, pero te quiero para siempre. Quiero que ir a ver a tí. ¡Hasta luego, mí ángel! Envió muchos vesos.

と一通りお礼とお詫びをする人たちを挙ましたが、さて、これからどうしようかな。まぁ、人生な んとかなる。希望を捨てないこと、常に前向きに考え行動を起こすこと、即断即決。これらを決して 忘れないこと。

Attendre et espérer! Alexandre Dumás "Le comte de Monte Cristo"

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5.1 序論範囲

5.1.1 階段の規定

表 5.1.1.1 階段の規定

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T+2R=650 R/T=22/21 T+2R=550 R/T=6/7

建築基準法

150

203

図 5.1.1.1 階段の規定

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5.1 序論範囲

5.1.2 長寿社会対応住宅のまとめ

図 5.1.2.1 長寿社会対応住宅

長寿社会対応住宅は利用頻度の高い玄関、便所、洗面所、浴室、脱衣室、居間・食事室、寝室は同 一階に置き、垂直移動を少なくするとともに、これらの部屋を出来るだけ近づけることで、部屋の間 の段につまずく可能性を少なくするものである。長寿社会対応住宅は転倒防止という側面以上にも、 同じ家に永く住み続けられるように配慮されたものである。

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5.1 序論範囲

5.1.3 WHO Health Report 2002 WHO Health Report 2002- Reducing risks, promoting healthy life 4. Quantifying Selected Major Risks to Health  Physical Inactivity Opportunities for people to be physically active exist in the four major domains of their day-to-day lives: at work (especially if the job involves manual labour); for transport (for example, walking or cycling to work); in domestic duties (for example, housework or gathering fuel); or in leisure time (for example, participating in sports or recreational activities). In this report, physical inactivity is defined as doing very little or no physical activity in any of these domains. There is no internationally agreed definition or measure of physical activity. Therefore, a number of direct and indirect data sources and a range of survey instruments and methodologies were used to estimate activity levels in these four domains. Most data were available for leisure-time activity, with fewer direct data available on occupational activity and little direct data available for activity relating to transport and domestic tasks. Also, this report only estimates the prevalence of physical inactivity among people aged 15 years and over. The global estimate for prevalence of physical inactivity among adults is 17% , ranging from 11% to 24% across subregions. Estimates for prevalence of some but insufficient activity (<2.5 hours per week of moderate activity) ranged from 31% to 51% , with a global average of 41% across the 14 subregions. Physical activity reduces the risk of cardiovascular disease, some cancers and type 2 diabetes. These benefits are mediated through a number of mechanisms (22). In general, physical activity improves glucose metabolism, reduces body fat and lowers blood pressure; these are the main ways in which it is thought to reduce the risk of cardiovascular diseases and diabetes. Physical activity may reduce the risk of colon cancer by effects on prostaglandins, reduced intestinal transit time, and higher antioxidant levels. Physical activity is also associated with lower risk of breast cancer, which may be the result of effects on hormonal metabolism. Participation in physical activity can improve musculoskeletal health, control body weight, and reduce symptoms of depression. The possible effects on musculoskeletal conditions such as osteoarthritis and low back pain, osteoporosis and falls, obesity, depression, anxiety and stress, as well as on prostate and other cancers are, however, not quantified here. Overall physical inactivity was estimated to cause 1.9 million deaths and 19 million DALYs globally. Physical inactivity is estimated to cause, globally, about 10‒16

% of cases each of breast cancer,

colon and rectal cancers and diabetes mellitus, and about 22% of ischaemic heart disease. Estimated attributable fractions are similar in men and women and are highest in AMR-B, EUR-C and WPR-B. In EUR-C, the proportion of deaths attributable to physical inactivity is 8‒10% , and in AMR-A, EUR-A and EUR-B it is about 5‒8% .

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5.2 本論範囲

5.2.1 実験に使った資料 ■実験番号について 実験をスムーズに進めるために、実験

■階段の説明

番号を作成致しました。

実験番号

階段パターン

R=蹴上

200

225 200

10 9

175 150

4 3

T=踏面

250

300

5 2

6 1

11 8

12 7

階段の蹴上と踏面を自由に変えられるものです。 そのために、少々使い方を説明致します。

履物の種類

蹴上と踏面が別々に動くので、そのやりかたに

「くつ」とスリッパ

くつ

ついて簡単に説明します。

被験者晩後

■踏面を変える場合

1 1 23

1、階段横に止めてある台 を外します。

めます。

1、階段横に付けてある万 力を外します

回数 3 回 履物 2 種類

2、下げる場合なら、台を 外します。

4、適当な高さになったら、台を入れ、万力を付ける

被験者 5 人

図 5.2.1.2 階段の寸法の変え方

図 5.2.1.1 実験番号について

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図 5.2.1.3 ビデオカメラ撮影上の注意

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寸法を調節します。

■蹴上を変える場合

階段 12 種類

計 360 回計測

3、段を引っ張るか押して

4、  1と2でやったようにねじを固く締め、台を入れ階段を安定させる

回数

階段番号

2、階段横にあるねじを緩

3、下降か上昇にレバーを 回し、ジャッキを動かす


5.2 本論範囲

5.2.1 実験に使った資料 ■フォースプレートのセットアップ(TRIAS の場合)

フォースプレートの画面(Z 軸にかかる力) 脚力(N)

1、TRIAS を起動させる

フォースプレートが認識されてない場合

認識 テンプレートから新規作成 左から 2 番目のものを選択でお k

15 秒

1秒

時間(S)

認識させる 初めてつなぐものが出たか? →入れる

テンプレートから新規作成で 前回作ったものがないとき

設定→計測の設定→フォースプレートの FP1、FP2 にチェックでお k を押す

0秒 1秒

設定→フォースプレートの設定→レンジをすべて 10000 にする

測定を開始する 「では、ゆっくりと前の板に足をつけて のばすようにして力を入れてください」

■フォースプレート感度の設定 設定→フォースプレート仕様 にて感度を設定する。

フォースプレートの画面(Z 軸にかかる力) 脚力(N)

感度 Fx 7.453

その間、力を入れてもらう

Fy 7.499

1秒

Fz 3.914 0秒 1秒

15 秒

測定を開始する 「では、ゆっくりと前の板に足をつけて のばすようにして力を入れてください」

「はい、ありがとうございました。 足をおろしてください」

その間、力を入れてもらう

図 5.2.1.4 フォースプレート使用時の実験者用の資料 15 秒

「はい、ありがとうございました。 足をおろしてください」

図 5.2.1.5 反力測定装置 TRIAS の使い方

■脚力測定 実験室の横にある応力測定室にて脚力を測定します。 フォースプレートという力を測定できる機材で計測致します。 まず、足場に使われる単管で囲まれている中に入り、「それでは、ゆっくりと前の板に 足をつけてのばすようにして力を入れてください」と実験者が言いますので、 いったら、 足を前の板に付けてゆっくりと力を入れてください。 測定時間はおおよそ 10 秒です。

図 5.2.1.6 筋力測定時の被験者用資料

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15 秒

時間(S)


5.2 本論範囲

5.2.1 実験に使った資料

図 5.2.1.

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5.2 本論範囲

5.2.1 実験に使った資料

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5.2 本論範囲

5.2.1 実験に使った資料

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5.2 本論範囲

5.2.2 ヒールクリアランスの計算に用いた数式

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5.2 本論範囲

5.2.3 正規分布での平均値と標準偏差の意味  確率分布において標準偏差はばらつきを示している。例えば、標準偏差が小さくなると、確率分布 が尖状となるが、標準偏差が大きいとなだらかになる。それとともに正規分布の場合、確率密度分布 は平均値と標準偏差のみで決まるものである。従って、標準偏差というのは平均値からどれだけば らつきが生じやすいかを示すとともに、正規分布範囲内にどれだけ累積確率を網羅できるかを示し ている。例えば、平均値から標準偏差±1つ分の範囲内には約 68%、2つ分では 95%、3 つ分では 99.7%の確率が範囲内に入ることになる。

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このことからヒールクリアランスで何らかの結果で異なる可能性があるものを標準偏差 2 つ分で 5%の危険水域にて検定を行った。  同様に、平均値で危険を感じているために過剰にヒールクリアランスをとっているものを標準偏差 1.7 個分の片側 5%の危険水域にて検定を行った。

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5.2 本論範囲

5.2.4 ニューラル・ネットワーク  ニューラル(neural)とはニュートン(neuton)のことで、神経細胞を接続するシナプスにナト リウムイオンの受け取りがあると、電位差が生じて、それによって情報が伝達される。しかしそれに は閾値が存在して、強さによって情報が伝わるか伝わらないかが決定する。この振る舞いをコンピュー ター・サイエンスに応用したのがニューラルネットワークである。

図 5.2.4.1 ニューロンを模したパーセプトロンとシグモイド関数 図 5.2.4.2 ニューロンの構造

ニューロンはシナプスがのびていて、他のニューロンと結びついており、そこに化学物質によって 情報が伝達し、次に伝えるかどうかが決定する。同様にパーセプトロンも、複雑に入り組んだパーセ プトロン同士結びついており、閾値を再現するために、シグモイド関数が組み込まれている。  ニューラル・ネットワークは遺伝的アルゴリズムとは異なり、最適な状態に近づけることは出来な いが、実際のデータから学習させ、それに近い振る舞いを行うことが可能である。つまりゴールが決 まっており、それに合うように周りを変えていくのがニューラル・ネットワークである。ただし、回 帰分析ではないので、関数化されないために、モデルが正しいのかということが検証できないという ことが難点である。それに対して、遺伝的アルゴリズムは評価の軸を加えたものを交配させていく過 程で、よりよいものが生まれていくというものである。つまり、ゴールは決まっていないが方向性が 合っているという時に用いられる。そのために、建築設計で多々用いられている。  宇野ら(1999)はヒールクリアランスの平均値や標準偏差が 2 次回帰曲線に従うのではないのか と仮定した論文は見受けられたものの、明らかに当てはまりが悪く、単純な関数に従うかどうかも定 かではないので、本研究では、ニューラル・ネットワークを用いて解析した。  各パーセプトロン構造は次頁から示す。

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5.2 本論範囲

5.2.4 ニューラル・ネットワーク

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図 5.2.4.3 上履き着用時のヒールクリアランス平均値と踏面・蹴上のパーセプトロン構造

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5.2 本論範囲

5.2.4 ニューラル・ネットワーク

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図 5.2.4.4 上履き着用時のヒールクリアランス標準偏差と踏面・蹴上のパーセプトロン構造

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5.2 本論範囲

5.2.4 ニューラル・ネットワーク

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図 5.2.4.5 上履き着用時の安全値と踏面・蹴上のパーセプトロン構造

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5.2 本論範囲

5.2.4 ニューラル・ネットワーク

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図 5.2.4.6 スリッパ着用時のヒールクリアランス平均値と踏面・蹴上のパーセプトロン構造

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5.2 本論範囲

5.2.4 ニューラル・ネットワーク

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図 5.2.4.7 スリッパ着用時のヒールクリアランス標準偏差と踏面・蹴上のパーセプトロン構造

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5.2 本論範囲

5.2.4 ニューラル・ネットワーク

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