U1008 早稲田大学理工学部建築学科卒業論文 指導教授 渡辺仁史
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響 An Effect of Urban Pedestrianʼ s Behavior on the Cognition on Sence of Time
石井
宏樹
Department of Architecture,School of Science and Engineering, Waseda University
U1008 都 市 歩 行 時 に お け る 行 動 と 認 知 が 感 覚 時 間 に 及 ぼ す 影 響
石 井 宏 樹
目次 Index
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
目次
第
1 部 : 論文編
第
1 章:序章
1
語句の定義
008
2
研究目的
010
3
研究の流れ
011
4
研究背景
012
4-1
4-2
4-3
5
建築における『時間』 4-1-1
時間の中の都市
012
4-1-2
時間軸を見据えた建築
017
さまざまな学問における『時間』 日本時間学会の設立
020
4-2-2
認知心理学における『時間』
021
歩行空間における快適性
022
4-3-1
東京駅周辺における歩行空間の快適性
022
4-3-2
歩行空間における快適性
024
026
5-1 感覚時間に関する既往研究
6
020
4-2-1
既往研究
5-2
012
026
5-1-1
認知心理学的な時間研究の基礎調査
026
5-1-2
場所と感覚時間に関する既往研究
028
距離認知に関する既往研究
030
5-2-1
地上空間における距離認知に関する既往研究
030
5-2-2
地上空間における距離認知に関する既往研究
033
研究の位置づけ
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
034
目次
第
2 章:感覚時間に影響を及ぼす要因の抽出
1
基礎研究
2
036
1-1
歩行に影響する要素
036
1-2
個々の歩行者の条件と平均速度
037
1-3
人間の意識の中にある歩行距離
038
1-4
歩行速度と空間認識
038
実験
1.「歩行速度制限を伴う空間移動実験」
2-1
実験方法
040
2-2
実験結果
046
2-3
考察
053
3 調査
2.「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」
039
054
3-1
調査方法
055
3-2
調査結果
056
3-3
考察
058
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
目次
第
3 章:感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価 3.「感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価」
実験
1
2
3
4
実験場所の選定調査
061
1-1
東京駅周辺地区の歩行空間の概要
061
1-2
選定調査の方法
063
1-3
選定調査の結果
068
1-4
分析 ー主成分分析ー
069
1-5
実験場所概要
072
実験方法
075
1-1
実験概要
075
1-2
実験の流れ
078
結果・考察
082
3-1
結果
082
3-2
考察
091
分析・考察
092
4-1
分析手法
092
4-2
分析 −ラフ集合分析−
093
4-2-1
感覚時間の長い集団の分析結果
093
4-2-2
感覚時間の短い集団の分析結果
095
4-3
考察
097
第
4 章:まとめ
1
まとめ
100
2
展望
101
おわりに
謝辞 参考文献 第
2 部:資料編
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
第 1 章
序章
Chapter 1
1
語句の定義
2
研究目的
3
研究の流れ
4
研究背景 4-1
4-2
4-3
5
5-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
4-1-1
時間の中の都市
4-1-2
時間軸を見据えた建築
さまざまな学問における『時間』 4-2-1
日本時間学会の設立
4-2-2
認知心理学における『時間』
歩行空間における快適性 4-3-1
東京駅周辺における歩行空間の快適性
4-3-2
歩行空間における快適性
既往研究 5-1
6
建築における『時間』
感覚時間に関する既往研究 5-1-1
認知心理学的な時間研究の基礎調査
5-1-2
場所と感覚時間に関する既往研究
距離認知に関する既往研究 5-2-1
地上空間における距離認知
5-2-2
地上空間における距離認知
研究の位置づけ
第 2 章
感覚時間に影響する要因の抽出実験
Chapter 2
1
2
3
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
基礎研究
1-1
歩行に影響する要素
1-2
個々の歩行者の条件と平均速度
1-3
人間の意識の中にある歩行距離
1-4
歩行速度と空間認識
実験 1.「歩行速度制限を伴う空間移動実験」
2-1
実験方法
2-2
実験結果
2-3
考察
調査 2.「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」
3-1
調査方法
3-2
調査結果
3-3
考察
第 3 章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価
Chapter 3
実験 3. 「感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価」 1
2
3
4
実験場所の選定調査 1-1
東京駅周辺地区の歩行空間の概要
1-2
選定調査の方法
1-3
選定調査の結果
1-4
分析
1-5
実験場所概要
実験方法 1-1
実験概要
1-2
実験の流れ
結果・考察 3-1
結果
3-2
考察
分析・考察 4-1
分析手法
4-2
分析
−ラフ集合分析−
4-2-1
感覚時間の長い集団の分析結果
4-2-2
感覚時間の短い集団の分析結果
4-3
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
ー主成分分析ー
考察
第 4 章
まとめ
Chapter 4
1
まとめ
2 展望
おわりに 謝辞 参考文献
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
第二部 Part Ⅱ
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
資料編 Data
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響 An Effect of Urban Pedestrian's Behavior on the Cognition on Sence of Time
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-001-
はじめに
はじめに 時間というものは常日頃から、人間とは引き離せないものである。 時間という概念を創り出したのは人間であるが、 どちらかと言えば、私たち人間は時間に振り回されながら生きている。 時は人を待たず 時は金なり さまざまなことわざが昔から存在するがその中でも、 時が過ぎるのを忘れる ということわざがある。 心地よい、楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまう . そのように感じられることをことわざにしたものである。 歩いている時間を心地よいと思うのはそう多くない。 東京の最果てにある大好きな島を歩きまわる。 東京のど真ん中の丸の内を歩きまわる。 私にとってはどちらも時が過ぎるのを忘れるほど心地よい。 歩行する際にもっと時間を短く感じさせることは出来ないのか。 様々な印象を与える空間で、 他の感覚とは異なり独自の時間感覚器官を持たない人間が、 五感のすべてを最大限に利用し、 特殊な感覚でしか捉えられない時間を、 どのように感じるか。 私は歩行空間において感覚時間に関する研究を行うことにした。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-002-
目次 Index
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-003-
目次
1 部 : 論文編
第
第
1 章 : 序章 1
研究目的
8 9
2
語句の定義 10
3
研究背景 3-1
建築学における『時間』
3-2
さまざまな学問における『時間』
3-3
歩行空間における『快適性』
11 13 14
4
5
既往研究
15
4-1
感覚時間に関する既往研究
16
4-2
認知距離に関する既往研究
16
4-2-1
地上空間における既往研究
17
4-2-2
地下空間における既往研究
24
研究の位置づけ
25 25
6 第
研究の流れ
2 章 : 感覚時間に影響する因子の抽出実験 1
2
25 25 26
基礎研究
26
1-1
感覚時間に関する基礎研究
30
1-2
歩行に関する基礎研究
実験 1.「歩行速度制限を伴う空間移動実験」 〜感覚時間に影響を及ぼす個人的要因の抽出〜 2-1
実験方法
2-2
実験結果
2-3
考察
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-004-
目次
3
第
実験 2.「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」
36
〜感覚時間に影響を及ぼす空間的要因の抽出〜
36
3-1
調査方法
36
3-2
調査結果
37
3-3
考察
38
3 章 : 実験 3「東京駅周辺における空間移動実験」
〜空間的要因の関わりが感覚時間に及ぼす影響〜
40 40 47 48
1
実験空間の選定
49
東京駅周辺基礎調査 - 街頭アンケートによる空間評価 -
49
1-1
調査概要
50
1-2
調査結果
51
1-3
考察
52 56
2
実験方法 57
3
実験結果
57 57
4
結果分析 ー感覚時間モデルの作成ー
第
4 章 : まとめ 1
感覚時間とは
2
展望
58 62 63 64 65
終わりに 謝辞 参考文献
第
2 部 : 資料編
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-005-
第一部 Part Ⅰ
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
論文編 Main Chapter
-006-
第 1 章
序章
Chapter 1
1
研究目的
2
語句の定義
3
研究背景
4
3-1
建築学における『時間』
3-2
さまざまな学問における『時間』
3-3
歩行空間における『快適性』
既往研究 4-1
感覚時間に関する既往研究
4-2
認知距離に関する既往研究
4-2-1
地上空間における既往研究
4-2-2
地下空間における既往研究
5
研究の位置づけ
6
研究の流れ
-007-
第1章
1
序章
語句の定義
■都市歩行 [ 注 1] 松 田 文 子: 序 章
都市空間における実際の状況を考慮した歩行のこと。
現代のアウグスティヌ ス , 北大路書房 (1996) ,
■空間刺激 都市歩行時における、行動と認知に影響する刺激のこと。本研究では、『自由度』 『注 意度』 『スケール感』を空間刺激として定義する。 □『自由度』 歩きやすさ、歩行速度、歩行の促進・阻害に関する「空間刺激」のひとつ。 □『注意度』 情報量に関する「空間刺激」のひとつ。 □『スケール感』 開放感、空間の広がりに関する「空間刺激」のひとつ。 ■感覚時間 ある出来事が生じてから時間がどれくらいの速さで過ぎるのか、あるいはどれくらい の時間が過ぎたのかという主観的時間に関する経験は、心理的時間と呼ばれる。心理 学的時間の研究では、これを外的な時計を使わずに内的な時計によって客観的な時間 を評価させる。その際に計測する時間の長さによって、その評価方法が時間知覚(time perception) 、時間評価(time estimation)の 2 つに分かれる。時間知覚とは、5 秒ほ ど以内の心理的現在の範囲内でのごく短い時間についての評価であり、その範囲を超え た時間は、時間評価と呼ばれている[注 1]。 本研究では、 時間評価による心理的時間のことを『感覚時間』、実際の時間・絶対的時間・ 客観的時間を『物理的時間』と定義する。 また、物理的時間と、感覚時間とを比較した際には、双方の時間にずれが生じる場合 が有る。物理的時間よりも感覚時間が短い場合、物理的時間よりも感覚時間が長い場合、 物理的時間と感覚時間がほぼ等しい場合、のおおよそ 3 つの感じ方がある。「時が過ぎ るのを忘れるほど楽しかった。」というのは、物理的時間よりも感覚時間が短い場合に あたる。 [図 1-1]
感覚時間(心理的時間)
物理的時間
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-008-
第1章
序章
■感覚時間比 物理的時間と感覚時間のずれを割合で表したもの。時間の感じ方が読み取れる。 負の値ほど、時間を長く感じていることを示し、正の値ほど、時間を短く感じているこ とを示す。 感覚時間比 =( 感覚時間−物理的時間 ) / 物理的時間
■個人的要因 感覚時間に影響を及ぼす要因として、個々の歩行者の条件を指す。性別、身長、歩き やすさによる被服状態などの歩行者の状態がこれにあたる。 ■空間的要因 感覚時間に影響を及ぼす要因として、歩行者をとりまく周囲の環境条件を指す。群集、 坂、道路幅員などの経路環境などの環境条件がこれにあたる。 ■作成法 あらかじめ一定の時間を定め、その時間だと感じた時点で報告してもらうという感覚 時間の計測方法。 ■評価法 あらかじめ決められた作業を与え、自分が感じた時間の長さを口頭で評価してもらう という感覚時間の計測方法。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-009-
第1章
2
序章
研究目的 都市空間歩行時においては感覚時間に違いがある。また、感覚時間を変える要因とし
ては、心理的要因、環境的要因があるといわれているが、都市空間での歩行では、目的 の違い・歩行速度・歩行のしやすさなどが影響していると考えられる。 歩行者の行動と認知が、時間感覚にどういった影響があるかを明らかにし、感覚時間 が短く、距離が長い場合でも快適に歩けるような都市空間が備えている条件を探ること を目的とする。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-010-
第1章
3
序章
研究の流れ 本研究の流れを以下に示す。
1
歩行速度を制限した空間移動実験
□ □ □
2
□ ■
速度制限されている実験で、歩行の阻害・促進に関する「空間刺激」であ る、 『自由度』が感覚時間に影響を及ぼすことが分かった。 また、 「被服状態」 「経験」 「歩行速度」の個人的要因が抽出された。
『自由度』 「被服」 「経験」 「歩行速度」
買物行動中の自由歩行者の追跡調査
□ □ □ □ □ □
3-1
4
複数の空間的要因と、歩行時における『自由度』 『情 報注目度』 『スケール感』の 3 つの「空間刺激」が抽 出された。 『自由度』 『情報注目度』 『スケール感』
実験空間選定のための街頭調査 / 東京駅周辺における空間の印象評価
□ □ □
3-2
□ □ □ □ ■
□ ■ 実験空間の決定
□ ■
□ ■
『空間刺激』に対する歩行者の行動と認知が感覚時間に及ぼす影響に関する実験
□ ■
歩行者の空間刺激の認知と感覚時間の関係性に着目して分析を行う。
まとめ:感覚時間が短く、快適に歩ける都市空間の備えている条件の探索
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-011-
第1章
4
研究背景
4-1
建築における『時間』
4-1-1
時間の中の都市
序章
以下は、 「都市の中の時間」[注 1][図 4-1-1-1]にて『都市・建築・空間−時間−人 間』という観念を示したケヴィン・リンチが論じた、著書のねらいと結論である。 [注 1]ケヴィン・リンチ
「外部環境の形態が、どのようにして現在を拡大する柔軟な時間イメージを強化することができ
/東京大学大谷幸夫研究
るだろうか。その知識が、 環境変化の取り扱いを改善するうえで、 どのうように利用できるだろうか。
室 訳: 時 間 の 中 の 都 市 -
環境的時間の意識が、社会や心理の変化となんらかの関連をもっているだろうか。これらを論じ
内部の時間と外部の時間 -
」 ることが本書のねらいである。
, 鹿島出版会 [1975] ,
「効果的行動と内的幸福は、強固な時間イメージによって支えられる。そこに必要なのは、生き 生きとした現在の意識で、それは未来と過去に密接に結びつき、変化を知覚し、運営し、楽しむ
」 ことができなければならない。 「空間と時間は私たちの体験を秩序づける大きな枠組みである。私たちは時間−場所の中で生活し 」 ているのである。 「私たちは、環境をデザインするとき、時間と空間の両面にわたって、その質の配分を考慮しな ければならない。それと同じように、私たちは、環境イメージを空間と時間の両面からーつまり 時間ー場所として考えなければならない。時間−場所の環境イメージは、必要な変化を促進する 役割を果たすことができる。私たちは、心の状態を変化させて世界の躍動を楽しむことができる。
」 また、世界を変化させて私たちの心の構造と調和させることもできる。 ケヴィン・リンチは、従来の人々の時間に対する視点に疑問符を投げかけた。「人々は、 遠い過去には価値を付加し、未来には願望を投影するものの、現在の時間は消化すべきスケジュー
」彼は、本書において空間と時間の両面から環境イメー ルの指標としてしか理解していない。 ジを築いていかなければならないと強く主張している。そこで、これまでの単なる空間 の表現でしかなかった環境デザインに、時間を参加させる様々な方法を提案することで、 現在の環境を生き生きと体験させ、私たちをとりまく都市の環境に新しいアプローチの 可能性があることを示唆した。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-012-
第1章
序章
また、ケヴィン・リンチは、さまざまな側面から『都市・建築・空間−時間−人間』 という関わりについて考察を行っている。次ページ以降、 『歴史、文学・芸術、個人的経験、 地球環境、哲学』と『生理・心理』などのさまざま側面からの考察をまとめる。 □歴史 という側面からの考察 「なぜ、誰のために、としっかりと考慮した上で、効果的に過去を選択することは、未来の建設 」 を促進するものでもある。 として、特定の事物を保護するよりも場所の継続感覚をつくり上げること重視し、人々 が生活しているすべての空間に一世代から二世代にわたる歴史的文脈をはっきり表示す ることを提案した。この継続性は、近い過去と中間的過去ばかりでなく近い未来として おり、必ず直前の状態のなんらかの要素、断片、象徴を保存する。それらは、象徴性、 過去の人間活動との直接的結びつき、過去の環境の総合的感覚を伝えるものであるとし ている。 また、各時代の重複する痕跡が美的に表現される『積層法』を計画的手法として利用 することで、過去の豊かな痕跡を視覚的に累積することができるということを示した。 例として、シラクサの大聖堂ではドリス式の骨組が中世の外壁を突き破って飛び出して いる様子を挙げた。 「それは、さまざまな時代の痕跡を視覚的に重ね合わせた、一種の時間のコラージュで、その中の 」と考察している。 痕跡は互いに修正しあい、 新しく付け加えられた痕跡によって修正されていく。
□文学・芸術 という側面からの考察 景観における時間表現の可能性に対し、原理も明らかにされていないため、ほとんど 開発がなされていないとして、芸術の分野を思索の手がかりとすることを示した。そこ では、音楽、演劇などの時間芸術の持続時間は私たちの環境体験に似通っているとし、 そこに人々の注意が計画的に集中させられるような、急激な変化に応用された場合には 有効であるとしている。一方、もう1つの手法として映像を挙げた。歪曲が前提となっ てしまうが、時間的動きと空間的動きが存在し、観客に対して両者が情緒的につながり 合いが存在することに着目している。このように、景観の内容を制御したり形態を素早 く操作したりすることは出来ないが、環境デザインに有効な類似点を見出すことができ ると考察した。 また、スタウアヘッドの庭園などを例に挙げ、移動に伴う連続的変化を演出するシー クエンスデザインは、変化しない環境においても変化する環境と同じ効果を挙げること ができると言及している。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-013-
第1章
序章
□個人的経験 という側面からの考察 「日常生活に付随する感情においては、歴史的な記念建造物がその中で占めている場所は小さな 」 ものであることに気づく。 と発言し、血縁関係、個人的な経験など、近い過去の連続性の方が、遠く離れた時間よ りも、個人の感情にははるかに強く訴えかけると考察している。 夏と冬の広葉樹の状態を例に挙げ、エピソードのデザインを利用することで、人々の 個人的経験と期待に、共鳴を呼び起こすような対比的状態をつくり出すことと、時間を 不連続的な周期的パターンに組織化することができるとができると考察した。
□地球環境 という側面からの考察 保全という言葉にの説明に、枯渇の危惧される石油資源などを例に挙げ、 「予測の困難な長期的な未来に思いをめぐらして、そのような未来に重要性をもつと思われる資源 」 を現在の時点で維持することである。 と述べた。 汚染されたテムズ川にデザインされたトイレタンクの浮球は、海水の動きを視覚化し ているとして、環境変化の直接表示を利用することで、現在の連続的変貌を劇的に演出 できる、と提案した。
□哲学 という側面からの考察 「魔術、必然的進歩、永遠の実在などに対する信頼の喪失、科学によって開拓された時間と空間 の果てしない展望、歴史を首尾一貫したプロセスとして理解する能力の欠如−これらのすべてが
」 私たちの時間イメージに重苦しい圧迫を加え、個人を疎外し、目的のない現在に閉じ込めている。 「過去と未来は、回想や予想という現在のプロセスとして、現在の中にある。私たちは、現在の 」 中に生きているのであって、他のいかなる時間の中にも生きることはできない。 と述べたうえで、アウグスティヌスの「過去のものごとの現在、現在のものごとの現在、未 来のものごとの現在 」を引用し、自分たちの過去、現在、未来について、現在を中心の軸
としていることを改め強調した。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-014-
第1章
序章
最後に、本研究の扱う分野として『心理・生理』の考察を紹介する。 ■生理・心理 という側面からの考察 「人間の体のサイクルに代表される内部の時間と、社会的、集団的な外部にある時間を調和させ 」 ることが本書のテーマである。 このように述べ、私たちの内部の時間と、社会的な外部の時間には差異があることに 着目し、著書のテーマを述べた。 そのうえで、人間は、外部の時間の連続性と同時性を認識する能力は高いものの、内 部に生物学的な時計が備わっていることで、外部にある持続時間を不正確に認識するこ とがあると指摘した。しかし、現在の中で効果的に活動できるように、頭脳構造におい て知的発明である物理的時間という仮説を用いることで、内部の時間と外部の時間を 「修 正」しているとも述べている。
「心理学上の現在とは、知覚した出来事をただちに秩序づけることにほかならない。時間の知覚 」 は、空間の知覚と同じ構造を持っており、それは印象を分類し対比する。 「時間の中に自己の位置を設定するのに利用できる材料は、例えば空間的な手がかりなどがある 」 が、場所の意識に利用できる材料より遥かに少ない。 時間の知覚は、空間の知覚と同じ構造を持っているとし、そのうえで、例えば空間的 な手がかり、の印象を分類し対比すると述べた。しかしながら、空間の知覚と全く同じ ではなく、時間の知覚は、場所の意識に利用できる材料がとても少ないと指摘している。 「また、空間の知覚と同じように、 つほどの刺激を組織化する。 『現在』はそこに向けられる配慮 」 次第で『短く』も『長く』もなるのである。 先の 「修正」 に関して認知心理学から、 『現在』に向けられる、内部の状態や、外部の誘導、 つまり様々な空間の印象や刺激によって、時間の知覚は『短く』も『長く』もなり、評 価は著しく主観的なものになると考察している。 最終的に、時間について長さが正確で、安定している抽象的時間は正反対であるが、 この内部の時間こそが、人間が生きている、人間らしくある、という感覚なのだとこの 側面からの考察を締めくくっている。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-015-
第1章
序章
『心理・生理』という側面からの考察では、「内部の時間」「生物学的な時計」「『現在』 に対する時間の長さの評価」「空間的な手がかり」などのキーワードを紹介した。 このようにリンチは、試論であり実証的な実験はしていないものの、1975 年という 早い年代に、時間を考慮した空間の認知という概念を示し、大きく人々の知見を広めた といえる。 その後、現在に至るまで様々な認知心理学的な時間の研究がなされている。このよう な学術的取り組みが進んだ結果、時間学という新たな学問領域を確立する動きも見られ るようになった(詳しくは次項を参照)。
そこで、本研究では、リンチの示した心理・生理の側面[図 4-1-2-1]の考察、現在 まで進められている認知心理学からの時間へアプローチなどより、『都市空間内におけ る歩行行動と時間の知覚』に着目してゆくことをここで述べておく。
Space Time
Person
City Architecture
芸術・文学 個人的経験 歴史 地球環境 哲学 生理・心理
図 4-1-2-1 『都市・建築・空間ー人間ー時間』における『生理・心理』
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-016-
第1章
4-1-2 [ 注 ]wikipedia:http:// en.wikipedia.org/wiki/ Main̲Page
[注 2]エアロハウス HP: http://www.aerohouse. net/
序章
時間軸を見据えた建築
時間を建築に取り込んだ例として、スケルトンインフィル、メタボリズム、神宮の式 年遷宮などがある。 これらは建築計画上の時間変化への対応として解釈できる。 □スケルトンインフィル スケルトン・インフィルとは、従来の構造体と内装の耐用年数を予め想定する建築に 対し、躯体はそのままで、外装内装を何度でも入れ替えられるものである。 スケルトンとは柱・梁・床などの構造躯体を示し、インフィルとは間仕切り壁・仕上 げ材・様々な設備の総称である。 パイプシャフトの共用部分への分離や、二重床・二重天井による電気配線の埋め込み などによる修繕工事の簡便さが特徴としてみられる。近年では従来の鉄筋コンクリート 造の集合住宅から、木造住宅にも用いられるようにもなった。定義はおよそ次のような ものとされる。 構造体の耐震性が高い。 建物が長持ちして価値が低下しない。 空間にゆとりがある。 空間が整形で室内に柱型や梁型がでない。 多様な間取りが可能である。 将来のリフォームが容易である。 設備配管のメンテナンスが容易である。 木造においても様々なスケルトンインフィル住宅があるが、上記の定義を完全に満た すような建築は少ない。例として建築家村井正と構造エンジニアのアラン・バーデンに よるエアロハウス[図 4-1-2-1]などがある。
図 4-1-2-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
エアロハウス
-017-
第1章
[ 注 ]wikipedia:
序章
□メタボリズム
http://en.wikipedia.
メタボリズムは、当時の日本の人口増加圧力と都市の急速な更新、膨張に応えるもの
org/wiki/Main̲
で、 スケールの大きく、有機的な成長を可能にする柔軟で拡張性の高い構造が特徴であっ
Page
た。 代表的な作品として、黒川紀章の中銀カプセルタワービル[図 4-1-2-2]、菊竹清訓 のソフィテル東京[図 4-1-2-3]がある。 無数の生活用ユニットが高い塔や海上シリンダーなどの巨大構造物に差し込まれてお り、古い細胞が新しい細胞に入れ替わるように、古くなったり機能が合わなくなったり した部屋などのユニットをまるごと新しいユニットと取り替えることで、社会の成長や 時間の変化に対応し、成長を促進することが構想された。空間や機能が変化する「生命 の原理」が、将来の社会や文化を支えるという理念を示す、メタボリズムの一例である。
図 4-1-2-2
黒川紀章:中銀カプセルタワービル
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
図 4-1-2-3
菊竹清訓:ソフィテル東京
-018-
第1章
[ 注 3]http://www. sengu.info/index.
序章
□神宮式年遷宮 伊勢神宮では、20 年という決まったスパンごとに建築が更新されてゆく。式年遷宮
html
は伊勢神宮において行われる定期的に行われる遷宮であり、神宮では、内宮(皇大神宮) ・
伊勢神宮式年遷宮広
外宮(豊受大神宮)の二つの正宮の正殿、14 の別宮の全ての社殿を造り替えて神座を
報本部 公式ウェブ
遷す[図 4-1-2-4] 。
サイト
萱葺屋根の掘立柱建物で正殿等が造られており、塗装していない白木を地面に突き刺 した掘立柱は、風雨に晒されると礎石の上にある柱と比べて老朽化し易く、耐用年数が 短い。このため、原則として 20 年ごとに行われるのである。 古くは 690 年に第 1 回が行われ、1993 年の第 61 回式年遷宮まで、およそ 1300 年 にわたって行われている。
図 4-1-2-4
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
伊勢神宮の式年遷宮
-019-
第1章
4-2 4-2-1
序章
さまざまな学問における『時間』 日本時間学会の設立
[ 注 3]http://wwwsoc.nii.
時間学の分野では、日本時間生物学会が 1994 年に発足し、2009 年 6 月には様々な
ac.jp/jsts2/shushi.html
研究分野の枠を超えて研究を行い、時間額という学問領域の確立を目的とする日本時間
日本時間学会ホームペー
学会が設立された。[注 3][図 4-2-1-1]
ジ
時間に関する研究はこれまでにも多数あったが、そのほとんどは個別の学問領域のな かで行われてきた。時間学の領域においては、文系と理系、基礎理論と応用理論の枠を 取り払った融合的な研究が目指されている。 例えば、人間の時間認知は時計の時間とどのような「ずれ」を見せるのか、といった 問題群や、生物時計のメカニズム、時間管理の社会政策、文化圏ごとの暦の多様性があ る。 また、哲学や物理学で取り組まれてきた「時間とは何か」についての理論研究も、時 間学の大切な基盤となっている。こうした諸分野の研究を「社会的時間と人間的時間の 調和」という視点から体系化するような融合的研究が、時間学の領域では可能となる。 時間学会では、学際的特徴を生かし、近縁の学会との交流や学術集会の合同開催を通し て、時間学の重要性を伝えるとともに、異なる思想や技術を積極的に取り入れている。 これまで、時間学の主流であった理学系、医学系、農学系などだけでなく、これから はさらに数学系、工学系、社会学系などが加わり、総合科学として発展することが学問 の深化につながると期待されている。 また、2010 年 6 月には第 2 回大会が行われ、時間の豊かさとは何か、といった研究が 行われている。
図 4-2-1-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
日本時間学会
-020-
第1章
4-2-1
序章
認知心理学における『時間』
[注 4]松田文子:心理的 時間ーその広くて深いな
前 述 し た 時 間 学 に お い て、1996 年 に は 松 田 文 子[ 注 4][ 図 4-2-2-1]、2008 年
ぞ , 北大路書房 ,[1996]
2009 年には一川誠[注 5][注 6][図 4-2-2-2]が、認知心理学における人間の時間 認知に関する書籍を発行し、「時間認知」が注目を集めている。
[注 5]一川誠:大人の時
これらの書籍は、さまざまな分野において明らかになった時間学を体系立てて説明し
間はなぜ短いのか , 集英社
ている。このようにアプローチすることで、建築学研究もさらに進んでいくと期待でき
新書 [2008] ,
る。 (時間認知に関する研究は次の既往研究にて述べることとする。) 本研究では、 「時間の中の都市」の空間−時間概念と、これらの書籍の認知心理学的
[注 6]一川誠:時計の時
な時間研究に着目し、空間における人間の感覚に目を向けることとする
間、心の時間 , 教育評論社 [2009] ,
図 4-2-2-1
図 4-2-2-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
心理的時間
時計の時間、心の時間
-021-
第1章
4-3
序章
歩行空間における快適性
[ 注 7] 大 手 町・ 丸 の
『歩行空間の快適性』として、人間が五感すべてをもちいて感じる『時間』という指標で、
内・有楽町地区まちづく
その場の総合的な評価が出来るのではないかと検討していく。
り ガ イ ド ラ イ ン 2008: http://www.aurora.dti.
4-3-1
東京駅周辺における歩行空間の快適性
ne.jp/~ppp/guideline/ index.html
本研究の実験空間である東京駅周辺の快適な歩行空間の必要性について述べる。 東京駅周辺である、大手町・丸の内・有楽町地区[以下、大丸有地区]では、古くか
[注 8]大手町・丸の内・
ら首都東京の玄関として、実に計画的に開発が行われてきた。
有楽町地区まちづくりガ
現在では、千代田区、東京都、大丸有地区再開発計画推進協議会、JR 東日本の 4 者
イドライン 2008 , 資料編
により構成される「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり懇談会」が、公共と民間の
p7
協力・協調[P. P. P.]によって都心に相応しいまちづくりを進めることを目的としたガ イドライン[図 4-3-1-1][注 7]に沿って再開発が行われている。そのガイドラインに は将来像として、8 つの目標[表 4-3-1-1]があり、その内の 1 つには「便利で快適に 歩けるまち」という豊かな歩行者空間を創造することが盛り込まれている。 また、2007 年には大手町地区には歩行者の中心となる軸が存在していないとし、回 遊性、快適性向上のため丸の内・有楽町地区の歩行者中心軸である仲通り機能を延伸し、 豊かで快適な歩行の中心軸を形成することを検討した報告書[注 8]が懇談会に提出さ れている[図 4-3-1-2]。 このように、まちづくりの手本となるような都市においても、快適で豊かな歩行空間 が求められている。 しかし、ここでいう「快適で」「豊かな」歩行空間とは、交通量に基づき幅員構成を 求めるような、既往の設計、一様な空間計画で実現されるものではない。より場所にお ける空間の特性や人間の感覚を大切にした計画が必要であると考えられる。
表 4-3-1-1
ガイドライン内の 8 つの目標
将来像として掲げる8つの目標 (1)時代をリードする国際的なビジネスのまち (2)人々が集まり賑わいと文化のあるまち (3)情報化時代に対応した情報交流・発信のまち (4)風格と活力が調和するまち (5)便利で快適に歩けるまち (6)環境と共生するまち (7)安心・安全なまち (8)地域、行政、来街者が協力して育てるまち
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-022-
第1章
序章
[ 注 7] 大 手 町・ 丸 の 内・有楽町地区まちづく り ガ イ ド ラ イ ン 2008: http://www.aurora.dti. ne.jp/~ppp/guideline/ index.html
[注 8]大手町・丸の内・ 有楽町地区まちづくりガ イドライン 2008 , 資料編 p7
図 4-3-1-1
図 4-3-1-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
街づくりガイドライン
大手町仲通り延伸計画
-023-
第1章
4-3-2
序章
歩行空間における快適性
[注 9]文献:http://www.
歩行移動では、電車などの他手段による移動とは異なり、移動自体が目的の一部にな
human.ac.jp/gakusei/
りうることや、周辺空間や周辺環境からの影響を受けやすいことから、移動における快
dayori/memo.php?p=14
適性が必要とされている。 さらに、歩行を日々の運動として捉えると、病気を予防するためにも移動における快
[注 9] 内閣府 「体力・スポー
適性への配慮は欠かせない。有酸素運動である歩行には、体脂肪の燃焼や、末梢血管抵
ツに関する世論調査平成
抗性の低下、インスリン受容体の感受性の改善などにより、肥満、高血圧、糖尿病など
18 年」
のいわゆる生活習慣病の改善や予防に効果があると言われている[注 9]。さらに、現 代人の健康感を示すものとして、内閣府が発表した「体力・スポーツに関する世論調査」 ( 対象 : 全国の 20 歳以上の男女計 3,000 人、有効回答者数 1,848 人 )[注 9][図 4-32-1] がある。ここでは、肥満や運動不足を自覚する人の割合が、1991 年の調査開始以来、 最高となっていることが分かる。
以上のことから、快適で豊かな、歩行を促進するような歩行空間の整備が必要とされ ていることが分かる。そこで、実際に歩いた時間よりも、歩いたと感じられる時間を短 くする可能性に着目したい。 [文]杉山郁夫:移動の
感覚時間を短縮させる、そのような人間の感覚に訴えかける歩行空間こそ、快適で
質の定量化に基づく歩行
豊かなものなのではないだろうか。また、空間快適性が向上見込まれる歩行空間の整備
空間の評価方法 に関する
により、移動の質 (Quality of Transport)[文][表 4-3-2-1]をボトムアップすること
研究(2005)
が可能になるのではないか[図 4-3-2-2]。(
ここでいう移動の質とは、杉山らの研究
による歩行空間の評価方法であり、空間快適性、移動容易性、情報提供性、介助性の 4 要素によって定義されている。) 具体的には、雰囲気が明るく見通しが良い「空間快適性」の向上する歩行空間が整備 されることで、自分のペースで歩きやすいという「移動容易性」、目的地や周囲の状況 が分かりやすい「情報提供性」、周囲の人に気軽に助けを頼める、安心感のある雰囲気 がある「介助性」 、 などの向上による相乗効果で、全体的な移動の質の向上が期待できる。
このように移動の質を向上させることで、より快適に移動することが可能になり、歩 行距離の延長、歩行促進も期待できるのではないか。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-024-
第1章
序章
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運動不足を感じる
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肥満を感じる
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移動の質 Quality
QoT
of Transport
移動容易性(mobility) 空間快適性(amenity) 情報提供性(information) 介助性
(assistance)
快適性の高い空間整備により、時間を短く感じさせることで、 長い時間を歩いても移動の質を維持しやすい空間が期待できるのではないか。
時間
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-025-
第1章
5
既往研究
5-1
感覚時間に関する既往研究
5-1-1
序章
認知心理学的な時間研究の基礎調査
[注 5]松田文子:心理的 時間ーその広くて深いな ぞ , 北大路書房 ,[1996]
ここでは、この後の要因の抽出実験にあたり、認知心理学ですでに明らかとなってい る時間研究の成果を以下に挙げる。[注 5][注 6]
[注 6]一川誠:大人の時 間はなぜ短いのか , 集英社 新書 [2008] ,
■空間的要因の効果 広い空間は時間を長く感じさせる。 大きな音が鳴っていて、それが騒がしいと感じられる際に時間が長く感じられる。
■生理的要因の効果 興奮剤は時間を長く感じさせ、鎮痛剤は短く感じさせる。 体温が高くなると心理的時間は長くなり、平熱よりも下がると短くなる。 心的時計の進み方は身体的代謝に対応する。このため、一日のうちで変動する身体的 代謝は、起床後間もない朝の時間帯には心的時計はゆっくり進み、徐々に早くなって午 後にピークに達し、以後次第にゆっくり進むようになる。
■心理的要因の効果 現在の出来事に対する関心度、動機付けが高くなるほど、時間の経過は意識されない ので、その経過時間は短く感じられる。つまり、時間経過に注意が向くほど、同じ時間 がより長く感じられる。 知覚される刺激がまとまりを持って体系化されているほど、短く評価される。たとえ ば、相互に無関係な映像を次々と見せられるよりも、ストーリーのある映像の連鎖の方 が短く感じられる。
■能動的に行う作業の効果 作業が魅力的であればあるほど、作業の難易度が高ければ高いほど、すなわち活動水 準が高いほど、その作業の経過時間は心理的に短く評価される。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-026-
第1章
序章
■精神テンポの効果 人それぞれが心地よいと感じるテンポを 「 精神テンポ 」 という。個人の精神テンポは 長い年月を経てもあまり変わらない。作業のペースが自分のテンポと異なる場合、心拍 数が上昇する。これはストレスを感じていることを示している。 [注 5]松田文子:心理的 時間ーその広くて深いな ぞ , 北大路書房 ,[1996]
■都市の時間と農村の時間 都市部と比較した際に、農村やその他の地域では時間がゆっくり流れるように感じる、
[注 6]一川誠:大人の時
という場合がある。これは、都市部においては時間を意識させるものが多い、頻度が高
間はなぜ短いのか , 集英社
いなどの理由が考えられる。電車の例で言えば、都市部と郊外では電車に対する感覚が
新書 [2008] ,
違う。3 分おきにホームに到着する電車を常に目にすることで、常に時間を意識する。 こんなことから、 都市では速い速度で時間が流れてゆくように感じられやすいのである。
以上のように、人間の時間の感じ方には、心理・生理的なメカニズムなどによって様々 な特徴がある。 次項では、場所と「感覚時間」に関する既往研究を述べる。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-027-
第1章
5-1-2
序章
場所と感覚時間に関する既往研究
本研究のテーマである「場所と感覚時間」についての既往研究を以下にまとめる。 明るさと音の大きさではその受容器が異なるように物理的属性に対応した受容器が存 [文 1]矢川麻紀子:感
在するが、時間は五感すべてで知覚される高次で非特異な感覚である。矢川らは、この
覚時間による場と人との
ような感覚時間に着目し、さまざまな場で人が感じる時間の長さが人と場との関わりの
交換作用の指標化[1999]
適否を判断する指標となりうるかを考察した。 人の生活する場は、個別の要因の単なる寄せ集めに依存するのではなく、複合された
[文 2]矢川麻紀子:人
複雑な要因の交互作用の結果である。場の環境心理研究において様々な評価方法が存在
と場の関わりと感覚時
しているが、この研究では、心理的問題という尺度から場のアフォーダンスを導くとい
間に関する基礎的考察
う試みがなされている。
[2001]
[文 1]矢川麻紀子:感覚時間による場と人との交換作用の指標化[1999] [文 3]藤本麻起子:歩
被験者を市街地の 2 つの歩行コースにて歩行させ、感覚時間を計測し、心理評価を行っ
行空間における感覚時間
た。結果として、緑視率が大きくなるに従って「好ましい」「のんびりする」イメージ
に関する研究[2004]
が大きくなり、 時刻の刻みはゆっくりし時間を短く感じた。騒音が大きくなるに従って、 「好ましくない」イメージが大きくなり、刻みは速くなり時間を長く感じてた。 つまり、安らぎや快適さが感じられる環境、好ましい景観であれば、長く感じているこ とが分かった。 [文 2]矢川麻紀子:人と場の関わりと感覚時間に関する基礎的考察[2001] 実験場所を広げ、住宅や商店など、都市内のさまざまな 8 カ所の歩行空間で感覚時 間を計測し、心理評価を行った。結果としては、落ち着いている人ほど感覚時間の短い 人が多く出現し、雑然とした場所ほど感覚時間の長い人が多く出現した。しかし、落ち 着いてはいるが楽しくはなく、心が沈んでいる人にとっては雑然とした寂しい場所に来 ると感覚時間の短い人が多く出現した。 以上のように人の感覚時間は人の心理状態によって、また空間の印象によって変化する が、それらの単なる線形結合によるものではないことが分かった。 [文 3]藤本麻起子:歩行空間における感覚時間に関する研究[2004] 実験空間をさらに増やし、計 18 カ所の歩行空間にて、感覚時間を計測し、心理評価 を行った。全体的に、都会的なオフィスでは、単調で飽きる、などの理由から感覚時間 の長い人が多く出現した。商店街では、うるさい、見ていて飽きないなどの理由で感覚 時間の長い人も短い人も、同様に出現した。 さまざまな場所で実験を行ったが、既存研究と同様の傾向が結果から得られた。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-028-
第1章
序章
[文 4]矢川麻起子:人
[文 4]矢川麻起子:人と人の位置関係がもたらす居心地と感覚時間[2002]
と人の位置関係がもた
[文 5]藤本麻起子:照度・色温度を制御した室内における感覚時間の変化に関する
らす居心地と感覚時間
研究[2003]
[2002]
以上の実際の空間を歩行する以外にも、パーソナルスペースや[文 4]、照度・色温度[文 5]などと感覚時間との変化に関する実験が行われており、さまざまな角度から感覚時
[文 5] 藤本麻起子:照度・
間に関するアプローチがなされている。
色温度を制御した室内に おける感覚時間の変化に 関する研究[2003]
以上のように矢川らの研究では、感覚時間が場所と人との交感作用を計測する、心理 的な尺度となりうることを示唆した。 しかし、 「感覚時間」に関する研究は、心理状態や、オフィス、公園などの場所性によっ て感覚時間が変わることを示しているが、具体的に空間の構成要素に着目したものでは ない。 次項では、具体的に空間の構成要素に着目した研究の多い、「認知距離」について述 べることとする。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-029-
第1章
引用[文 6]大野隆造:
5-2
序章
距離認知に関する既往研究
歩行移動時の距離知覚に 及ぼす経路の形状と周辺 環境の影響歩行経路 , 日
5-2-1
地上空間における距離認知に関する既往研究
本建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]
認知心理学的アプローチで、現代都市空間を歩行する人を対象に分析するにあたり、 [ 文 7]MILGRAM S.:
「認知距離」と「認知時間」は強い関連があるといえる。つまり「歩いた距離から歩い
<no title>, Environment
た時間を感じる」わけであるので、以下に、「距離認知」のメカニズムについて、既往
and cognition[1973]
研究をまとめる。
[
その上で、前述したとおり、これらが一致しない現象について検討する。
文 8]SADALLA E.
K.:Retrieval prosesses in distance cognition , Memory and Cognition 7, 291-296,[1979] [
文 9]SADALLA E.
K.:The perception
距離知覚に関しての既往研究[[文 6]より引用]
of traversed distance , Environment and
「今までに明らかにされた距離近くに影響を及ぼす要因としては、広域スケールでは場所の地理
Behavior 12(1), 65-79,
的イメージや目的地に対する親近感などが、 歩行スケールでは坂・階段や経路の奥行きの見えといっ
[1980]
た移動時に直接体験される経路の物理的特徴が報告されている。また、移動スケールの大小に関
[
文 10]SADALLA
わらず共通して影響を及ぼす要因としては経路の曲折・交差点の数があり、これらが経路に関す
E. K.:The perception
る記憶情報を増加させたり経路を文節化したりするため距離が長く近くされると説明されている。
of traversed distance-
[文 7 〜 13] 」
intersections
,
Environment and
「距離知覚についての主な既往研究と影響要因についてまとめる。影響要因は、経路の物理的特
Behavior 12(2), 167-182,
徴に関わる「刺激中心要因群」と、被験者本人の年齢や性別、所得差などの「被験者中心要因群」 、
[1980]
。 」 経路や目的地に対するイメージなどの「被験者・刺激中心要因群」に大別される [文 14]
[
文 11]STAPLIN L.
J.:Distance co g n t i o n in urban environments , Professional Gepgrapher 33(3), 302-310,[1981] [
文 12]ALLEN G.
L.:A developmental perspective on the diffects of "subdividing" macrospatial experience , Journal of Experimental Psychology, Human Learnin and Memory 7, 120-132,[1981]
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-030-
第1章
序章
「
[文
Effects of the cognitive
とし、
ら[文
organization of route
場所の意味が影響要因となり、好ましい目的地ほど距離は短く近くされるとしている。また、混
knowledge on judgements
雑している道路[文
of macrospatial distance ,
」 されることも報告されている。
[
文 13]ALLEN G. L.:
]は所得差や階級意識による社会的な居住領域の認識が距離判断に影響する ]や
[文
]は、目的地が街の中心部の方向にあるか周辺かといった
]など障害物のある経路や地形が複雑な経路[文
]はいずれも長く知覚
Memory and Cognition 13, 218-227,[1985] [
文 14]BRIGGS R.:
「一方、歩行移動による距離知覚に影響を与える要因は「刺激中心要因群」に分類されるものが 多く、
[文
]や大野ら[文
]が階段の影響について、上り下りともに距離は平地より
Methodologies for the
も長く知覚されることを報告しており、その理由として上りの歩行に要する身体的エネルギー負
mesurement of cognitive
荷に加え、上り下り両方における勾配のある道路を安全に歩くための情報処理に費やされる労力
distance , Environmental
」 の影響を挙げている。
Knowing, Theories, Research and Methods,[1976] [
文 1 5 ] A P P L E YA R D
D.:Styles and Methods
[文 20]五十嵐日出夫:環境要因を考慮した意識距離に関する研究、土木学会 第 53
of Structuring A City ,
回年次学術講演会講演概要集第 4 部、pp.772- 773[1998]
Environment and Behavior
五十嵐ら[文 20]は、実時間を時間認識の側面から考察し、意識距離に影響を及ぼす
2(1), 100-116,[1970]
と考えられる季節や天気などの周辺環境要因に関する不快感度について評価を行った。
[
その結果、 「地点間を移動する際、諸要素から受ける不快感度が強いほど意識距離は長
文 16]CANTER D.:
Distance estimation in cities
くなる」ということを実証している。
, Environment and Behavior 7(1), 59-80,[1975] [
文 17]LEE T. R.:
[文 21]西出和彦:歩行時における空間の距離認知[1999]
Perceived distance as a
西出ら[文 21]は、歩行時における「主観的な距離」と「客観的な距離」との「ずれ」
function of direction in
を分析し、歩行速度と、経験的な要素、流動的な視点をもつ行為の 3 要素が距離認知
the city , Environment and
に影響を及ぼすことを示唆した。
Behavior 2(1), 40-51,[1970] [文 18]大野隆造:通い慣 れた屋外経路における歩行 者の距離認知に関する研究
[文 22]大野隆造:通い慣れた屋外経路における歩行者の距離認知に関する研究 , 日 本建築学会計画系論文集 No.549, Pp.193-198,[2001]
[2001]
大野ら[文 22]は、通い慣れた屋外経路における距離認知に関する研究を行った。
[
文 19]OKABE A.:
結果として、坂は上りが長く、下りが短く認知されるが、階段は上り下りどちらも長
Distance and direction
く認知される傾向があり、人・自転車の多いところは長く、商店や樹木の多いところは
judgment in a large-scale
短く認知される傾向があること、また、閉鎖的な空間を通ってきた場合、開放的なとこ
natural environment, Effects
ろは短く認知される傾向を明らかにした。
of a slope and winding trail , Environment and Behavior 18(6), 755-772, 1986
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-031-
第1章
序章
[文 20]五十嵐日出夫:
[文 23]大野隆造:歩行移動時の距離知覚に及ぼす経路の形状と周辺環境の影響歩行
環境要因を考慮した意識
経路 , 日本建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]
距離に関する研究、土木
大野ら[文 23]は曲折角度および T 字路などの交差点の形状に注目し、これらと「自
学会 第 53 回年次学術講
動車交通量」および「経路幅」、「視覚情報量」の距離知覚に対する影響について、実際
演 会 講 演 概 要 集 第 4 部、
の街路における実験によって確かめた。
pp.772- 773[1998]
結果として、 「直角曲折」を含む経路と「経路幅」の狭い経路、「自動車交通量」の多 い経路の距離が長く知覚されることが確かめられた。同時に、これらの要因は、各要因
[ 文 21] 西 出 和 彦: 歩
が単独に変化する経路においては多くの人に同様の影響を与えるが、要因同士が混在す
行時における空間の距離
る経路においてはそれらのうちのどれが影響を及ぼすかは人によって異なることが明ら
認知[1999]
かになった。
[ 文 22] 大 野 隆 造: 通 い慣れた屋外経路におけ る歩行者の距離認知に 関する研究 , 日本建築学
「距離認知」 に関する研究は、坂、曲がり角、などの空間の構成要素単体に着目したもの、
会 計 画 系 論 文 集 No.549,
または、 「曲折」 「交通量」「経路幅」などの経路状態、つまり複数の構成要素に着目し
Pp.193-198, [2001]
たものが挙げられる。特に、複数の構成要素に着目したものにおいては、それらのうち のどれが影響を及ぼすかは人によって異なることが明らかになっている。
[ 文 23] 大 野 隆 造: 歩 行移動時の距離知覚に及 ぼす経路の形状と周辺環 境の影響歩行経路 , 日本 建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-032-
第1章
4-2-2
序章
地上空間における距離認知に関する既往研究
地上だけでなく地下空間においても距離認知の研究は進められている。 [ 文 24] 西 出 和 彦: 地
[文 24]西出和彦:地下歩行空間における認知距離に関する研究[2008]
下歩行空間における認知
西出ら[文 24]は、地下歩行空間において距離の認識に関する実験を行った。
距離に関する研究[2008]
その結果、個人差はあるものの、そこに存在する情報の知覚の仕方が大きな影響を与 えていることがわかった。
[文 25]鈴木聡士 : 意識
[文 25]鈴木聡士 : 意識距離の短縮効果を有する歩行空間の創出に関する基礎的研究、
距離の短縮効果を有する
地域学研究第 32 巻第 1 号、pp.173-188[2002]
歩行空間の創出に関する
鈴木ら[文 25]は、地下通路を対象に周辺環境と意識距離の関係について研究した。
基礎的研究、地域学研究
その結果、歩行環境に対して「良い」と感じる空間では意識距離が短縮される傾向が
第 32 巻 第 1 号、pp.173-
あることや、 地下通路環境における意識距離短縮効果を有する空間特性を明らかにした。
188[2002]
[ 文 26] 大 野 隆 造: 地
[文 26]大野隆造:地下鉄駅における主観的な移動距離および深さに影響する環境要
下鉄駅における主観的な
因 , 日本建築学会計画系論文集 No.610,P.87-92,[2006]
移動距離および深さに
大野ら[文 26]は、地下鉄駅において移動の手段や経路の構成、空間のデザインな
影響する環境要因 , 日本
ど、主観的な移動距離や深さの評定に影響を及ぼすと考えられる環境要因に関する研究
建築学会計画系論文集
を行った。
No.610,P.87-92,[2006]
結果として移動の手段においては、エスカレータおよび階段、歩行による水平方向の 移動といった移動手段の異なる地下鉄駅構内の経路において、これら移動方法によって 主観的移動距離が異なることを示した。また、地下鉄駅空間のデザインにおいては、主 観的移動距離および深さに影響する環境要因として以下の 4 つを示した。 1、通路幅の広い経路では主観的に距離を短く、深さ を浅く感じた。2、吹き抜けの 空間では主観的に距離を短く、深さを浅く感じた。3、折り返しのある経路はない経路 よりも距離を長く感じた。ただし、吹き抜け空間では影響されない。4、明るいと感じ られる経路では主観的に距離を短く、深さを浅く感じた。開放感、清潔感、安心感が感 じられる経路においても同様に短く感じられた。
以上のように、地下空間を構成する要素が多くないことと、地下空間における距離認 知の研究が十分に進んでいることから、本研究においては、地下空間ではなく、地上で の感覚時間に関する研究を行うこととする。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-033-
第1章
6
序章
研究の位置づけ
「感覚時間」に関する認知心理学的な時間研究では、リンチの述べた、生理・心理的 なメカニズムによる人間の時間の試論を実証する基礎的なものとして紹介した。 また、 「場所と感覚時間」に関する研究では、「好ましい」などに代表される心理状態 や、オフィスや公園などの場所性によって感覚時間が変わることを示した。 認知心理学的アプローチで、現代都市空間を歩行する人を対象に分析するにあたり、 「認知距離」と「認知時間」は強い関連があるといえることから、「認知距離」に関する 研究についても述べておく。 認知距離に関する研究は、「坂」「曲折」などの空間の構成要素単体に着目したもの、 または、 「曲折」 「交通量」「経路幅」などの経路状態、つまり複数の構成要素に着目し たものが挙げられる。さまざまな構成要素の違いにより、認知距離に変化があることを 示した。
以上より、本研究の位置づけを示す[図 6-1]。「感覚時間」「場所と感覚時間」に関 する既往研究では、人間の『行動』と時間について示したものは少なく、『歩行行動中』 のものはほとんどない。 また、 「認知距離」研究では、空間の構成要素によって認知距離が変化することを示 したが、 『その空間の構成要素をどのように認知したか』に着目したものはない。 そこで、本研究においては、『都市空間の歩行時における行動と認知と感覚時間』に 着目する。
既往研究 場所性
距離認知
感覚時間 行動していない
空間行動中
様々な心理
空間構成要素
本研究 空間構成要素
空間刺激
認知
感覚時間
空間行動中 様々な心理
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-034-
第 2 章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
Chapter 2
1
2
基礎研究 1-1
感覚時間に関する基礎研究
1-2
歩行に関する基礎研究
実験 1. 「歩行速度制限を伴う空間移動実験」 〜感覚時間の個人的要因の抽出〜
3
2-1
実験方法
2-2
実験結果
2-3
考察
実験 2. 「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」 〜感覚時間の空間的要因の抽出〜 3-1
調査方法
3-2
調査結果
3-3
考察
-035-
第2章
1
感覚時間に影響する因子の抽出実験
基礎研究
歩行中の感覚時間の計測を行うにあたり、歩行に関する基礎的な知見をまとめたものを、 この項にて示す。 [注 12]日本建築学会編:
1-1
歩行に影響する要素、感覚時間に影響を及ぼすと思われる要素
設計資料集成 3 , 単位空間 1 , 丸亀
歩行に影響を与える要因は様々なものがある[注 8][表 1-1-1]。 それらを大別すると、 「個々の歩行者の条件」と、 「歩行者をとりまく周囲の環境条件」 の 2 つがある。既往研究との比較でも、感覚時間に影響を与える要素はほぼ網羅して いると思われる。
表 1-1-1
歩行に作用するファクター
感覚時間に影響を及ぼすと考えられる要素[歩行に作用するファクターより引用] 個人的要素 心理状態
不安
焦り
神経質
憂鬱
多忙
陽気
思索
肉体的条件
性別
年齢
体重
身長
歩行力
健康状態
身体障害
被服・装備
衣服
履物
荷物
各種装備
杖
歩行目的
通勤
通学
業務
買い物
食事
散歩
行楽
歩行状態
歩行速度が速い
歩行速度が遅い
視線の方向
経験の有無
その他
光
自然光
人工光
空気
気温
湿度
気流
清浄度
天候
晴れ
雨
曇り
におい
悪臭
芳香
時期
季節
曜日
時間帯
その他
場所
都市の規模
雰囲気
歴史性
風土性
都市の規模
開放感
閉鎖感
経路環境
歩行路幅員
道路幅員
道路幅含む道幅
長さ
形状
路面状態
形態
ボリューム
テクスチュアー
路上駐車
曲折角度
交通量
路上駐車
緑
歩行設備
信号の量
上り坂
下り坂
階段
種類
レベル変化
勾配
視覚環境
店舗
情報量(見もの)
風景の変化
見通し
街路景観
交通量
サイン
対向者
自転車
誘導標識
群集
混雑度合い
種類・速度
BGM
騒がしい
静かだ
その他
環境的要素
空間的要素
音
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-036-
第2章
1-2
感覚時間に影響する因子の抽出実験
個々の歩行者の条件と平均速度
人々は歩行の際に、個々人の条件と、環境的な条件によって歩行速度が変化する[表 1-2-1] 。 [ 文 27] 渡 辺 仁 史: 建 築計画における行動シ 表 1-2-1
ミュレーションに関する 研究[1978]
歩行者の違いによる平均歩行速度一覧
yN
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[ 文 28] 樫 村: 観 覧 空 間における歩行速度の変 化に関する研究[2000]
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都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-037-
第2章
1-3
感覚時間に影響する因子の抽出実験
人間の意識の中にある歩行距離
[注 10]日本建築学会編:
人々は歩行の際に、歩く距離に対しさまざまな意識を持っている[表 1-3-1]。
設計資料集成 3 , 単位空間
距離 600m 〜 800m を例にとると、標準速度 60m /分で歩行する際には 10 分程度
1 , 丸亀
歩行すると、バスなどの代替手段を必要とする時間、距離になると示している。 また、ここに示されている最小単位としては、90%の人が満足する距離として、 200m が挙げられている。さらに、歩くことを問題としない距離として、400m が示さ れている。
表 1-3-1
人間の意識の中にある歩行
人間の意識の中にある歩行距離 計測したもの(距離)
属性
どこで
出典
1220
70%の人が歩いて苦としない距離
業務・目的地まで
歩行者意識調査報告書,東京都総合交通対策室
600~800
バスなどの代替手段が必要な距離
イエデポリ
OECD,楽しく歩ける街,PARCO出版局
720
70%の人が歩いて苦としない距離
業務・鉄道駅まで
歩行者意識調査報告書,東京都総合交通対策室 国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
500
50%の人がそれ以上歩くのをいやがる距離
ブーラドン
500
目的地まで歩いて良いとする距離
目的地
外部空間の設計,彰国社
500
81%の人が歩く距離
イエデポリ
OECD,楽しく歩ける街,PARCO出版局
450
最適歩行時間を5分とした距離
ランコーン・ニュータウン ニュータウンの環境計画,彰国社
400
歩くことを問題としない距離
レーベマルク
300~400
歩く意欲が減少している距離
イエデポリ
OECD,楽しく歩ける街,PARCO出版局
350
歩いても良い距離
なし
住環境の理論と設計,鹿島出版社
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
300
70%以上の人が歩いても良いとした距離
バス停まで
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
300
最大許容歩行距離
空港(IATA)
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
300
100%近くの人がバスターミナルまで歩いてくる距離バスターミナル
歩行者の空間,鹿島出版会
300
市民の90%が満足する距離
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
プーラドン
300
普通に気持ち良く歩ける距離
なし
外部空間の設計,鹿島出版会
200
90%の人が満足する距離(最高距離)
なし
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
1-4
歩行速度と空間認識
[注 10]日本建築学会編:
移動速度の違いによって人が認識している空間は異なる[注 8][文 21]。速度が速
設計資料集成 3 , 単位空間
くなる程、 見えているものの密度は疎になりインパクトのあるもののみ目に入ってくる。
1 , 丸亀
速度が遅くなる程、見えているものの密度は密になり、細かなものも目に入ってくる。 また見ている範囲 ( 視野 ) も速度によって広くなったり狭くなったりする。
[ 文 21] 西 出 和 彦: 歩
また、歩行速度の違いによって認知距離は異なる。
行時における空間の距離
歩行速度と認知距離
認知[1999]
距離を長く感じられる空間→歩行速度が遅い 距離を短く感じられる空間→歩行速度が速い
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-038-
第2章
2
感覚時間に影響する因子の抽出実験
実験 1.「歩行速度制限を伴う空間移動実験」
■実験の目的 歩行速度、肉体条件、経験などの中で、どの要素が時間の感じ方に影響を及ぼしてい るかを明らかにし、感覚時間に影響を及ぼしている個人的要因の抽出を行うことを目的 とする。 ■実験概要 感覚時間に影響を及ぼす要因として、個人的要因と空間的要因がある。そこで、個人 要因の抽出を目的とした実験を行う。この実験では、西早稲田キャンパスの歩行経験が 十分にあると見込まれる、理工学部の学生を被験者とする。同一空間で実験を行うこと、 被験者数を大きくすることで、環境要因を分析対象から排除し、分析を行う。
図 2-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
実験風景
-039-
第2章
2-1
感覚時間に影響する因子の抽出実験
実験方法
■実施日 2010 年 5 月 28 日 ■被験者 早稲田大学建築学科学生[105 名] ■実験場所 早稲田大学西早稲田キャンパス ■機材・用具 アンケート用紙、ストップウォッチ、コースマップ
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-040-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
□実験手順[図 2-1-1] 被験者を速度の異なる 4 グループに振り分ける[100m/ 分、80m/ 分、60m/ 分、 40m/ 分] 。 その際に被験者に教示を行う。 4 グループに 2 人の実験者がつき、1 人の実験者があらかじめ指定したコース[図 2-1-2]を速度を管理しながら、被験者を連れて歩く。 被験者には 5、10 分経過したと思った時点で 2 度挙手をしてもらい、もう 1 人の実 験者に報告してもらう。その際、実験者が物理的時間を記録し、被験者の感覚時間を把 握する。 実験後に、感覚時間・身長・被服条件などをアンケートで答えてもらい、性別・身長・ 被服条件・速度と感覚時間の分析を行い、個人的要因の抽出を行う。 * 速度の制限は、小刻みに通過地点を設け、先頭の実験者に各地点ごとに提示され た時間で歩くように指示した。
1
2
被験者を速度の異なる以下の 4 グループに振り分ける。 □ □ □ □ ■
以下の教示を行ったのち、各グループに 2 名の実験者がつき、1 人が実験経路(図)を速度を 管理しながら、被験者を連れて歩く。
3
□ □ □ □ ■
被験者には 5、10 分経過したと思った時点で 2 度挙手をしてもらい、実験者に報告してする。 ( その際、実験者が時計時間を記録し、被験者の時間の感じ方を把握する。)
4
□ □ □ □ ■
実験後にアンケートに答えてもらい、感覚時間と個人的要素の分析を行う。
図 2-1-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
実験フロー
-041-
図 2-1-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
感覚時間に影響する因子の抽出実験
第2章
ルートマップ
-042-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
□歩行速度の制限 本実験は、基礎研究(本論文 P.38)歩行速度と認知距離の関係より、歩行速度によっ て感じられる距離の長さが異なること着目した。 そこで、被験者を歩行速度の異なる 4 つの集団に分けた。(本論文 P.37)にて前述し た平均歩行速度より、急ぎ足の通勤・通勤・遅い・展覧会、などの数値を参考にし以下 の表[表 2-1-1]のような速度設定を行った。 速度の制限は、小刻みに通過地点を設け、先頭の実験者に各地点ごとに記載された時 間で歩くように提示した[図 2-1-3]。
グループ別の歩行速度 はやい
100m/分
通勤・通学
80m/分
標準速度
60m/分
おそい
40m/分
表 2-1-1
図 2-1-3
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
歩行速度の異なる 4 つの集団
通過時間を記したルートマップ(60m/ 分)
-043-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
□歩行時間の設定 本実験は、感覚時間が 10 分となるまでの物理的時間を記録するものとなっている。 ここで定めた 10 分とは、標準速度 60m /分で、都市圏内での「バスなどの代替手段 を必要」とする、距離 600m 〜 800m を歩行する際にかかるであろう時間である。 □教示内容 教示した内容を、以下の表に示す[表 2-1-2]。感覚時間を把握すること、しっかり とした歩行速度制限を行うことを念頭に置き、教示を行った。
表 2-1-2
教示内容
教示内容 数を数えないこと。 列を乱さないよう歩くこと。 自分の前にいる人から2m以上離れないこと。 アンケート中に被験者同士で相談しないこと。 10分が経過したと思っても、実験終了までついて歩いていくこと。
□アンケート 以下にアンケート項目[表 2-1-3]、アンケート用紙[図 2-1-4]を示す。
表 2-1-3
アンケート項目
アンケート内容 性別 歩行速度 身長 普段と比べた実験時の歩行ペース(歩きたい速度との比較) 実験空間の歩行経験 感覚時間が5分,10分のときの実際の時間 被服条件(歩きやすい、歩きにくい)
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-044-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
3
図 2-1-4
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
アンケート用紙
-045-
第2章
2-2
感覚時間に影響する因子の抽出実験
実験結果
■被験者 早稲田大学建築学生:103 名 ■属性 歩行速度の異なる 4 集団 100m/ 分:25 名 80m/ 分:25 名 60m/ 分:27 名 40m/ 分:26 名 ■実験結果 アンケートの結果の詳細は資料編に示す。 挙手という手段を取ったため、感覚時間が 5 分の場合、周囲の様子に大きく影響さ れたグループがあった。 また、同様の理由で感覚時間が 10 分の場合、その集団内の全員が挙手すれば、実験 が終わることから、まわりに影響された被験者が多くいた。 以上の理由から、『被服条件』『経験』『歩行速度』では、5 分の結果では t 検定によ り有為差が見られたにも関わらず、10 分の結果では有為差が見られなかったという分 析結果が出た。 以上より、感覚時間 10 分ではなく 5 分のデータを用いて結果を示すこととする。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-046-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
■性別 男女別にみた結果を以下に示す[図 2-2-1]。 男女間で t 検定を行ったところ、有為差は見られなかった。性別は感覚時間に影響を 及ぼす要因ではない。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 2-2-1 性別
性別(人)
男
男
女 63
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
40
女
第3四分点
0.09
0.08
最大値
0.43
0.42
最小値
-0.70
-0.55
第1四分点
-0.40
-0.42
平均値
-0.16
-0.15
-047-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
■身長 身長別にみた結果を以下に示す。[図 2-2-2]。 身長の違いで t 検定を行ったところ、有為差は見られなかった。身長は感覚時間に影 響を及ぼす要因ではない。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 2-2-2
身長
身長(人)
170cm未満
170cm未満
170cm以上 51
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
50
170cm以上
第3四分点
0.09
0.05
最大値
0.28
0.43
最小値
-0.55
-0.70
第1四分点
-0.37
-0.40
平均値
-0.14
-0.17
-048-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
■被服状態 被服状態の歩きやすさ別にみた結果を以下に示す[図 2-2-3]。 被服状態で t 検定を行ったところ、有為差が見られた。 歩きにくい服装をしている被験者の方が時間を長く感じていることが分かる。 つまり、被服状態は感覚時間に影響を及ぼす。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 2-2-3
被服状態
被服状態(人) 歩きやすい
歩きやすい 歩きにくい
84
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
17
歩きにくい
第3四分点
0.03
0.19
最大値
0.28
0.42
最小値
-0.70
-0.37
第1四分点
-0.44
-0.26
平均値
-0.19
0.02
-049-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
■経験 実験空間を歩いた経験があるかどうかについての結果を以下に示す[図 2-2-4] 。 経験別で t 検定を行ったところ、有為差が見られた。 被験者が理工学部の生徒であったにも関わらず、校舎の外周付近を歩いたことの無い 被験者が存在した。少数ではあったが、経験のない被験者の方が、より長く時間を感じ ていた。 これより、経験の有無は感覚時間に影響を及ぼす要因であると考えられる。 □感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 2-2-4
経験(人)
経験
経験なし
無し
有り 11
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
第3四分点
経験あり
0.28
0.08
88 最大値
0.37
0.43
最小値
-0.20
-0.70
第1四分点
0.01
-0.41
平均値
0.11
-0.17
-050-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
■歩きたい速度との比較 歩行速度に対し、どう感じたかについての結果を以下に示す[図 2-2-5]。 歩行速度の数値ではなく、被験者が制限された歩行速度に対し、どのように感じたか を指標として分析を行った。ここでは、速いと感じた被験者ほど時間を短く感じている ことが分かる。遅い、少し遅いと感じた被験者については、今回行った歩行速度の制限 によって、歩きたい速度で歩けなかった、つまり自由に歩行できなかったことが原因の 1つとして考えられる。 以上より、歩きたい速度で歩けるか、歩行時の自由度は感覚時間に影響を及ぼす要因 □感覚時間 物理的時間と感覚時
である。また、自由に歩行できなかったという歩行阻害要因が、感覚時間に影響を及ぼ している。
間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 2-2-5
歩行速度に対しどう感じたか
歩行速度をどう感じたか(人) 速い
少し速い 17
普通 14
遅い
少し遅い 16
少し遅い
遅い 32
普通
52
少し速い
速い
第3四分点
0.17
0.03
0.02
-0.06
-0.22
最大値
0.43
0.17
0.25
0.19
-0.13
最小値
-0.63
-0.40
-0.70
-0.52
-0.48
第1四分点
-0.35
-0.24
-0.42
-0.45
-0.44
平均値
-0.04
-0.09
-0.19
-0.23
-0.34
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-051-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
■速度の制限 速度別にみた結果を以下に示す[図 2-2-6]。 [ 文 21] 西 出 和 彦: 歩 行
歩行速度では差が見られた。40m/ 分、80m/ 分、100m/ 分においては、速度が速い
時における空間の距離認
ほど時間を短く感じている。既往研究[文 21]においても歩行速度が速い、遅いの 2
知(1999)
つの場合では、速い方が認知距離が短い、という知見がある。 60m/ 分の集団においては報告方法として挙手という手段を取ったため、周囲の報告 の様子に大きく影響された被験者が多く見られた。60m/ 分のみ値がズレたのはこのよ うな被験者の心理状態が影響していると考えられる。 これより、歩行速度は感覚時間に影響を及ぼす要因である。
□感覚時間
また、40m/ 分、80m/ 分、100m/ 分の集団は、速すぎる、遅すぎるなどの理由から
物理的時間と感覚時
歩行の阻害要因となり、感覚時間と物理的時間に差が出たという見方が出来る。80m
間のずれを割合で表し
/分は、被験者の年齢や通学での移動時の歩行速度を考慮すると、普段歩くペースに最
たもの。時間の感じ方
も近いことが、他の集団に比べ感覚時間と物理的時間に差が出なかったことの理由だと
が読み取れる。
思われる。
負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 2-2-6
速度
歩行速度(人) 100m/分
80m/分 25
60m/分 25
40m/分
40m/分 27
60m/分
80m/分
26 100m/分
第3四分点
0.20
-0.31
-0.02
-0.30
最大値
0.43
0.25
0.07
-0.13
最小値
-0.08
-0.70
-0.28
-0.52
第1四分点
0.09
-0.48
-0.17
-0.47
平均値
0.17
-0.35
-0.09
-0.37
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-052-
第2章
2-3
感覚時間に影響する因子の抽出実験
考察
今回の実験の考察を以下に記す。
□身長 身長は感覚時間に影響を及ぼす要因ではない。 □被服状態 被服状態は感覚時間に影響を及ぼす個人的要因である。また、歩きにくい服装をして いる被験者の方が時間を長く感じていることが分かる。 □経験 被服状態は感覚時間に影響を及ぼす個人的要因である。また、その空間の歩行経験の ない被験者の方が、より長く時間を感じている。 □歩行速度と歩きたい速度との比較 歩きたい速度で歩けるか、歩行時の自由度は感覚時間に影響を及ぼす要因である。ま た、自由に歩行できなかったという歩行阻害要因が、感覚時間に影響を及ぼしている。 □歩行速度の制限 40m/ 分、80m/ 分、100m/ 分の集団は、速すぎる、遅すぎるなどの理由から歩行の 阻害要因となり、感覚時間と物理的時間に差が出た。80m /分は、被験者の年齢や通 学での移動時の歩行速度を考慮すると、普段歩くペースに最も近いことが、他の集団に 比べ感覚時間と物理的時間に差が出なかったことの理由だと思われる。
以上より、今回の実験で、『被服状態』『経験の有無』が感覚時間に影響を及ぼす個人 的要因と抽出された。 また、 『性別』 『身長』は感覚時間に影響を及ぼす個人的要因ではないと判断した。 さらに、感覚時間に影響を及ぼす要因として、『歩行速度の制限』『歩行速度と歩きた い速度との比較』より、自分の歩きたいように歩けない状態、『歩行時の自由度』があ るのではないか、という知見が得られた。 このように考えると、『被服状態』『経験の有無』も歩行を阻害するものとして見るこ とができる。本実験では、『歩行の自由度』に関するものであったといえる。 これは歩行空間の空間的要因にも同じ『歩行の自由度』の属性のものがある可能性が あるのではないか、と考えられる。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-053-
第2章
3
感覚時間に影響する因子の抽出実験
調査 2.「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」
■目的 都市の規模、経路環境、階段の有無、街路景観、嗅覚情報、群集などの中で、どのよ うな空間的要因が感覚時間に影響しているかを追跡調査によって明らかにし、感覚時間 に影響を及ぼす空間的要因の抽出を行うことを目的とする。 ■概要 実験 1 において、個人要因の抽出を行った。そこで、調査 2 として空間的要因の抽 出を目的とした追跡調査を行うこととした。この調査では、買物行動中の対象者の追跡 調査を行うことで実験 1 では得られなかった、日常的な生活の中での感覚時間にせまる。 どのような要因が感覚時間に影響を及ぼすのかを、対象者の発話により空間的要因を 列挙してもらうことで明らかとする。
図3
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
実験風景
-054-
第2章
3-1
感覚時間に影響する因子の抽出実験
調査方法
■実施日 2010 年 6 月 28 日、7 月 2 日、7 月 8 日、7 月 22 日、8 月 5 日、8 月 23 日 ■対象者 早稲田大学建築学科学生[10 名] ■実施場所 丸の内 銀座 秋葉原 ■機材・用具 アンケート用紙、周辺地図、IC レコーダー[図 3-1-1] □調査手順 各場所において、買物を行う対象者に協力を依頼し、1 〜 2 時間程度の追跡調査を行 う。 追跡調査中は自由に買物行動をしてもらい、店舗間の移動など、主に行動の合間で、 時間が長く感じたり、短く感じたり、感覚時間に影響しそうな要因を発話によって列挙 してもらう。 調査中の発話内容の記録から、被験者がどのような空間的要因に興味を持っ たかを把握する。 対象者が買物行動を終了するまで追跡調査を行う。
図 3-1-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
ICD-UX71-S[SONY 社製]
-055-
第2章
3-2
感覚時間に影響する因子の抽出実験
調査結果
■被験者 早稲田大学建築学生:10 名 ■属性 調査場所 丸の内:5 名 銀座:3 名 秋葉原:2 名 ■調査結果 次項に、対象者の発話による、空間的要因の列挙から作成したネットワーク図を示す [図 3-2-1] [図 3-2-2]。 以下の図において、円の大きさが要素の大きさであり、線の長さ、線の太さ影響力・ 関係性の強さを示す。
記入例 要素の大きさ 身長
健康状態
感覚時間
感覚時間
スケール感
線の長さ 関係性の強さを表 す。短いほど強い。
視覚環境
線の太さ 関係性の強さを表 す。太いほど強い。
図 3-2-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
ネットワーク図記入例
-056-
図 3-2-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
視覚環境
健康状態
スケール感
感覚時間
身長
記入例
す。太いほど強い。
関係性の強さを表
線の太さ
す。短いほど強い。
関係性の強さを表
線の長さ
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
感覚時間
要素の大きさ
年齢
陽気
思索
歩行目的
風景の変化
憂鬱
身長
店舗
体重
曜日
レベル変化
上り坂 下り坂
道路幅含む 道幅
歩行路幅員
経験の有無
道路幅員
交通量
ボリューム
都市の規模
雨
閉鎖感
曇り
開放感
時間帯
曲折角度
信号の量
晴れ
天候
見通し
緑
季節
自由度
歩行速度 遅い
視線の方向
歩行状態
感覚時間
歩行速度 速い
時期
荷物
スケール感
視覚環境
歩行力
各種装備
健康状態
肉体的条件
注意度
通勤
心理状態
焦り
情報量 (見もの)
食事
散歩
買い物
不安
神経質
多忙
身体障害
群集
歩行設備
におい
悪臭
芳香
自然光
人工光
歴史性
気温 気流
湿度
雰囲気
風土性
空気
清浄度
関係性の強さを表す。短いほど強い。
線の長さ
路上駐車
混雑度合い
路面状態
経路環境
光
第2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験
A3 で!図 3 − 2 − 1 ネットワーク
ネットワーク図
-057-
第2章
3-3
感覚時間に影響する因子の抽出実験
考察
「歩行路幅員」 「交通量」 「群集」 「混雑度合い」 「路上駐車」 「路面状態」 「緑」 「見通し」 「開 放感」 「閉鎖感」 「店舗」「情報量(見もの)」「風景の変化」「騒がしい」などの空間的要 因が歩行者の発話から多く抽出された。 これより、これらを次項以後で抽出された空間的要因として扱う。 しかし、本調査では都市歩行中の買物行動者に対し、発話を利用して調査を進めたが、 多くの対象者が発話したものは、「曲折」「上り坂」などの具体的な空間構成要素ではな く、 歩きやすい・騒がしい・開放感、などの『自由に歩きにくい』『注意が向けられた』 『目 的地までが遠く見える』といった歩行者の行動と認知に影響するような複数の空間的要 因であった。 そこで、 本研究では、これら複数の空間的要因を「空間刺激」 [図 3-3-1]と定義し、 『自 由度』 『注意度』 『スケール感』の 3 項目にまとめた。
□『自由度』 歩きやすさ、歩行速度、歩行の促進・阻害に関する「空間刺激」のひとつである。 「歩行路幅員」 「交通量」「群集」「混雑度合い」「路上駐車」「路面状態」などがこれに あたる。
□『注意度』 情報量に関する「空間刺激」のひとつである。 「店舗」 「情報量(見もの)」「風景の変化」「騒がしい」などがこれにあたる。
□『スケール感』 開放感、空間の広がりに関する「空間刺激」のひとつである。 「緑」 「見通し」 「開放感」「閉鎖感」などがこれにあたる。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-058-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
本調査から、同じ空間を歩いている場合でも、複数の空間的要因で構成される「空間 刺激」を、どのように認知するかによって、感覚時間に及ぼす影響が変化することがあ [ 文 23] 大 野 隆 造: 歩
ると仮説が立てられる。
行移動時の距離知覚に及
大野ら[文 23]によって明らかにされた、「要因同士が混在する経路においてはそれ
ぼす経路の形状と周辺環
らのうちのどれが影響を及ぼすかは人によって異なる」ことも、このような仮説のもと
境の影響歩行経路 , 日本
にはうまく成り立つと考えられる。
建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]
次章の実験 3 では、これらの「空間刺激」がどのように感覚時間に影響を及ぼすのか、 どのような関係で影響を及ぼすのかを明らかにする。
空間の広がり スケール感
情報に対する注意度 移動容易性に関わる自由度
移動容易性に関わる自由度
情報に対する注意度
空間の広がり スケール感
移動容易性に関わる自由度
情報に対する注意度
均一に進む物理的時間
スケール感
外的刺激により歪められる感覚時間
図 3-3--1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
空間の広がり
空間刺激イメージ図
-059-
訂正します!!
第 3 章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価
Chapter 3
〜空間的因子の関わりが感覚時間に及ぼす影響〜
1
実験場所の選定 −東京駅周辺基礎調査− 1-1
調査概要
1-2
調査結果
1-3
考察
2
実験方法
3
実験結果
4
結果分析 ー感覚時間モデルの作成ー
-060-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
実験 3.「東京駅周辺における空間移動実験」 1
実験場所の選定調査 実験場所を東京駅周辺に設定する。 そこで、東京駅周辺にて空間的要因の評価を街頭アンケートで行うことにより、設定
した実験場所の候補地から実験場所を選定する。 1-1
東京駅周辺地区の歩行空間の概要
[ 注 4] 大 手 町・ 丸 の 内・有楽町地区まちづく
東京駅周辺である大手町、丸の内、有楽町地区では、街の歴史や現在の地区特性を活
り ガ イ ド ラ イ ン 2008:
かしたまちづくりを推進していくため、地区が 4 つのゾーンに分けられている(注 7) 。
http://www.aurora.dti.
このうち、本実験で主に着目する丸の内ゾーン、有楽町ゾーン西側の街並みを特徴づ
ne.jp/~ppp/guideline/
ける重要な要素として、整然と連続的に建ち並ぶ建物群がある。この連続的な街並みを
index.html
活かした「街並み形成型」のまちづくりが目指されている[表 1-1-1](注 4)。 表 1-1-1 「街並み形成型」まちづくりのルール 通り・広場
コンセプト
中間領域の形成
【都心景観軸】 ・街区に整然と建物が建ち ・お濠の水面と皇居の緑を 楽しみながら、快適に散 (街並み調和型) 並ぶ街並みの尊重 策できる中間領域を形成 ・スカイラインの統一性に する。 配慮 ・歩道のしつらえ、 低層部 ・皇居外苑やお濠に面する の表情、沿道部の表出機 景観、周辺建物へ配慮し 能、歩行者ネットワーク たファサードの創出、素 材・色彩等を勘案した秩 の連続性等に配慮する。 序と風格ある街並みの形 成 日比谷通り
丸の内駅前広場 【象徴広場】 ・周辺の大街区に、整然と ・地区の「表玄関」として 周辺 の機能や景観に配慮しな 建ち並ぶ建物群による心 (街並み調和型) 象風景の継承及び再構築 がら、広場の囲われ感を 創出する中間領域を形成 ・整然としたなかにも潤い する。 や憩いのある広場環境の ・歩道部のしつらえ、低層 維持 部の表情、沿道部の表出 ・広場を囲む対称性に配慮 し、素材・色彩等を勘案し 機能、歩行者ネットワー クの連続性に配慮する。 た、風格ある景観の維持 行幸通り
【象徴軸】 ・東京駅と皇居を結ぶ軸と ・象徴軸としての風格と歩 して象徴性・ゲート性の 行者空間の充実による親 配慮による、素材・色彩 しみやすさに配慮した中 等を勘案した、風格ある 間領域の形成を図る。 空間構成の継承 ・歩道のしつらえ、低層部 ・植栽・舗装等による親し の表情、沿道部の表出機 みやすい街路の形成 能、歩行者ネットワーク の連続性等に配慮する。 ・アイストップ・ビスタ景 の保全
(街並み調和型)
仲通り
【アメニティ・賑わい軸】 ・街区に整然と建物が建ち ・アメニティ・賑わい軸と して育成用途の連続感、 並ぶ街並みを再構築し、 ヒューマンスケールの創 ヒューマンスケールの 出、街のコモンスペース 「憩い」空間を創出 ・建物両側の親密感のある、 を演出する緑等、通りを 挟んで歩車道一体となっ 活力に満ち、魅力ある街 た中間領域を形成する。 並みを実現 ・建物低層部は、立地特性 ・歩道の車道側への拡幅に よる歩行者空間の充実や や建物の特性に応じて店 歩車道の一体感のあるし 舗や飲食店を誘導して賑 つらえ、低層部の表情、 わいのある通りとして整 沿道部の表出機能、歩行 備 者ネットワークの連続性 等に配慮する
(賑わい形成型)
大名小路
【業務・交流軸】 ・地区内の3つの拠点を結 ・業務・交流軸として歩行 び、地区内の人の流れを 者空間や情報・交流機能 誘導する主要な軸 の充実及び丸の内ゾーン での風格ある景観イメー ・ 「表通り」としての性格 ジの継承、有楽町ゾーン に配慮し、ビジネス街の での賑わい機能の連続性 玄関口としての空間構成 等に配慮した中間領域を と活気や賑わいの醸成 形成する。 ・歩道部のしつらえ、低層 部の表情、沿道部の表出 機能、歩行者ネットワー クの連続性に配慮する。
有楽町駅前広場 周辺
・銀座、日比谷地区と連携 ・地区の玄関口としての機 する有楽町地区の拠点 能に配慮し、商業機能や 文化・交流機能が充実し ・ターミナル機能を充実し た多様な機能が融合した つつ、沿道部に賑わい機 中間領域を形成する。 能を誘導し、活動的な歩 行者空間を形成 ・歩道のしつらえ、低層部 の表情、沿道部の表出機 能、歩行者ネットワーク の連続性等や特に線路沿 いの補助 97 号線の歩行 者環境整備に配慮する。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-061-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
また、この地区においては、日比谷通り、行幸通り、仲通りなど、人々の歩行移動に おける軸が設定されており、それぞれの軸の特徴を活かした、「街並み形成型」のまち づくりのルールによって歩行空間が形成される[注 4]。 [ 注 4] 大 手 町・ 丸 の 内・有楽町地区まちづく
以上より、本実験においては、丸の内・有楽町ゾーンの多様な軸に着目し、実験場
り ガ イ ド ラ イ ン 2008:
所の候補地を定め、街頭調査による空間評価アンケートを行ってゆくこととする[図
http://www.aurora.dti.
1-1-1] [図 1-1-2]。
ne.jp/~ppp/guideline/ index.html 丸の内ゾーン、有楽町ゾーン西側 街並み形成型
八重洲ゾーン、有楽町ゾーン東側 公開空地ネットワーク型 大手町ゾーン 公開空地ネットワーク型 N
0
図 1-1-1
50 100 150 200
300
400
500m
4 つのゾーン
内堀通り
晴海 通り
仲通り
日比谷通り 行幸通り
日比谷通り
大名小路 永代通り
JR有楽町駅
馬場先通り
大名小路
JR東京駅
日本橋川沿い
図 1-1-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
6 つの軸
-062-
第3章
1-2
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
調査方法
■目的 前章では、歩行の阻害感・自由感に起因する歩行時の『自由度』、周辺情報量とその 認識量に起因する『注意度』、空間の広がり・開放感に起因する『スケール感』 、の 3 つを「空間刺激」と定義した。その上で、『自由度』『注意度』『スケール感』の「認知」 の仕方が感覚時間に影響を及ぼすと仮説を立てた。実験 3 では、実験場所を東京駅周 辺に設定し、以上のことを明らかとする。 そこで、物理的な測定数値によって実験場所を選定するのではなく、『自由度』 『注意 度』 『スケール感』に関する空間的要因をどう「認知」したのか、その場にいる歩行者 に評価してもらう。これらを参考にすることで、空間刺激に対する「認知」の仕方がよ り多様になるように、実験場所を選定することを目的とする。 ■概要 前項で示した東京駅周辺の概要より、実験場所の候補地を決定し、街頭調査をアンケー トにて行う。アンケートでは、調査 2 にて明らかとなった、歩行の阻害感・自由感に 起因する歩行時の『自由度』、周辺情報量とその認識量に起因する『注意度』、空間の広 がり・開放感に起因する『スケール感』、の 3 つの「空間刺激」に関する空間的要因を どう認知したのか、その場にいる歩行者に評価してもらう。 最終的に、主成分分析をこのアンケート結果に用いて分析することで、実験場所を選 定する。 □実施日時 2010 年 9 月 13 日(月曜日) 9:00~12:00
14:00~17:00
□実験場所の候補地の選定 前項にて示した東京駅周辺の概要より、以下の 2 点を考慮して実験場所の候補地の 選定を行った。 ・東京駅周辺の歩行空間の軸となる日比谷通り、永代通り、仲通り、大名小路、馬場先 通り、などを含めた東京駅周辺の街路を網羅する。 ・第 2 章の基礎研究にて示した「人間の意識の中にある歩行距離」から、「90% の人が 歩いても良いとする距離」200m と、「目的地まで歩いて良いとする距離」500m の間 の距離を「快適に歩くことができる距離」と設定し、実験場所の候補地とする。 以下に 1 〜 20 までの実験場所の候補地を記した地図と、場所の写真を示す[図 1-2-1] [図 1-2-2]。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-063-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
1
4 5
2
6
3
7
10 1 11 12 1
8
9
13
17 18 14
20
19
15
16
0m 0m
図 1-2-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
50m
100m
250m
N ↑
500m
実験場所の候補地
-064-
第3章
図 1-2-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
実験場所の候補地の写真
-065-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
□アンケート[図 1-2-3] 質問項目 ◇ 性別 ◇ 年齢 ◇ 職業 ◇ 訪れた目的 ◇ 訪れる頻度 以下は、歩行の阻害感・自由感に起因する歩行時の『自由度』、周辺情報量とその認 識量に起因する『注意度』、空間の広がり・開放感に起因する『スケール感』、の 3 つを「空 間刺激」に関する、今までの調査で抽出された空間的要因の一部である。抽出された要 因の中から東京駅周辺の空間に該当するものを取捨選択し、回答数を向上させるため質 問項目を最低限にした結果、以下の項目となった。 『スケール感』 ◆ 歩道の広さ ◆ 開放感 『自由度』 ◆ 車通り ◆ 歩行者の多さ 『注意度』 ◆ 店舗の多さ ◆ 情報量、見るものの多さ ◆ 騒がしさ
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-066-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
現在早稲田大学で建築学を学んでいる石井宏樹と申します。卒業論文で、東京駅周辺をテーマに研究しようと 考えております。東京駅周辺を訪れる人の意識調査にご協力お願いします。なお、本アンケートは、卒業論文の 業基礎調査以外に使用することはありませんので、 ご理解のほど、 ご協力お願いいたします。 当てはまるところのチェックボックス
に、チェック
または、答えをご記入ください。
性別
男性
女性
年代
10代
20代
30代
40代
50代
60代
70代
自営業
その他
職業
会社員
専業主婦
学生
本日、 この場所に来た目的をお教えください。
仕事
ショッピング
その他
この場所にはどのくらいの頻度で来られますか?
ほぼ毎日
毎日ではないが良く来る
たまに来る
ほとんど来ない
現在いる場所から受ける印象について、以下の形容詞対から近いものに○をつけて下さい。 例) 車通りが多い
1
2
多いにそう思う
3
4
5
特に何も思わない
車通りが少ない
多いにそう思う
歩道が狭い
1
2
3
4
5
歩道が広い
閉鎖的
1
2
3
4
5
開放的
車通りが少ない
1
2
3
4
5
車通りが多い
歩行者が少ない
1
2
3
4
5
歩行者が多い
店舗が少ない
1
2
3
4
5
店舗が多い
見るもの(情報量)が少ない
1
2
3
4
5
見るもの(情報量)が多い
寂しい
1
2
3
4
5
騒がしい
アンケートは以上です。お忙しい中、 ご協力ありがとうございました。 nom
speed
図 1-2-3
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
nowdo
place
アンケート用紙
-067-
第3章
1-3
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
調査結果
■実施日時 2010 年 9 月 13 日(月曜日) 9:00~12:00
14:00~17:00
■有効回答数 60 名 ■属性 20 カ所の実験場所候補地につき 3 つの回答を得た。 性別、職業、年齢は以下に示す[表 1-3-1][表 1-3-2][表 1-3-3]。 ■実験結果 アンケートの結果の詳細は資料編に示す。 表 1-3-1
性別
性別
人数[人]
割合[%]
男性
32
53.33%
女性
28
46.67%
表 1-3-2
年齢
年齢
人数[人]
割合[%]
20代
20
33.33%
30代
15
25.00%
40代
13
21.67%
50代
10
16.67%
60代
2
3.33%
表 1-3-3
職業
職業
人数[人]
割合[%]
会社員
45
75.00%
専業主婦
4
6.67%
学生
9
15.00%
無回答
2
3.33%
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-068-
第3章
1-4
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
分析ー主成分分析ー
[ 文 6] 石 村 貞 夫:SPSS
街頭調査より得られたアンケートをもとに、項目の評価に重みをつけ、『自由度』 『注
による多変量データ解
意度』 『スケール感』を総合得点化することで、実験場所の選定をする。このために主
析とその手順 , 東京図書
成分分析を行った(使用ソフト名:SPSS Statistics 17)。
(1997)
主成分分析とは、いくつかの指標に重みをつけて総合指標を計算しなければならない とき、 「総合指標の分散(情報量)を最大化する」という考え方で重みを定める方法である。 以下に結果を示す。 まず、分散に着目する。 第 1 因子の情報量は 40.287%、第 2 因子の情報量は 22.427%、第 3 因子の情報量は 15.512% である。したがって第 1 因子から第 3 因子までの情報量は 78.226% となる [表 1-4-1] [表 1-4-2]。 表 1-4-1 説明された分散の合計 説明された分散の合計 初期の固有値
抽出後の負荷量平方和
成分 1
合計 2.820
分散の % 40.287
累積 % 40.287
合計 2.820
分散の % 40.287
累積 % 40.287
2
1.570
22.427
62.714
1.570
22.427
62.714
3
1.086
15.512
78.227
1.086
15.512
78.227
4
.710
10.139
88.366
5
.366
5.229
93.595
6
.268
3.831
97.426
7
.180
2.574
100.000
因子抽出法: 主成分分析
表 1-4-2 共通性 共通性 歩道の広さ
初期 1.000
因子抽出後 .876
閉鎖ー開放
1.000
.866
車通りの多さ
1.000
.846
歩行者の多さ
1.000
.748
店舗の多さ
1.000
.758
情報量の多さ
1.000
.769
寂しいー騒がしい
1.000
.613
因子抽出法: 主成分分析
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-069-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
次に、因子負荷量の大きい値に着目する[表 1-4-3]。第 1 因子は店舗、情報量、騒 がしさといった変数に、第 2 因子は車通り、歩行者の多さ、第 3 因子は歩道、開放感 に関連している。 これより、第 1 因子=「注意度」、第 2 因子=「自由度」、第 3 因子=「スケール感 」 と名付けることとする[表 1-4-4]。
成分行列 表 1-4-3 成分行列 成分 歩道の広さ
1 -.731
2 .054
3 .582
閉鎖ー開放
-.765
-.179
.498
車通りの多さ
-.210
.865
-.230
歩行者の多さ
.509
.629
.304
店舗の多さ
.661
-.555
.113
情報量の多さ
.814
-.031
.325
寂しいー騒がしい
.545
.286
.484
因子抽出法: 主成分分析 a. 3 個の成分が抽出されました
表 1-4-4
実験場所候補地の因子得点
主成分分析 3因子 場所
自由度
注意度
スケール感
1
1.199
0.459
0.378
2
0.295
-1.083
0.636
3
-0.317
-0.608
0.292
4
0.149
-1.628
-0.985
5
0.009
-0.421
-0.816
6
1.220
0.281
0.734
7
-1.354
0.293
1.575
8
-0.843
-0.358
0.989
9
0.734
-0.809
0.481
10
0.363
-1.000
-1.123
11
-1.452
-0.569
0.427
12
0.023
-0.404
-0.610
13
-1.958
1.640
-1.478
14
1.273
1.548
1.575
15
1.283
1.733
-0.859
16
0.181
-0.325
-1.895
17
0.697
-0.997
0.440
18
-1.355
-0.049
1.073
19
0.660
0.868
-0.421
20
-0.807
1.429
-0.414
因子得点の低いもの 因子得点の高いもの 選定された実験場所
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-070-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
以上より、20 ある実験場所候補地から以下の点を考慮した上で、それぞれの因子得 点[表 1-3-4]が高い、普通、低い値をそれぞれ、 『自由度』 『注意度』 『スケール感』から、 得点の高さの組み合わせが異なるように選択し、6 カ所の実験場所を決定した。 また、水色に塗られた番号が選定された実験場所を示す。 考慮した点 ・東京駅周辺では、日比谷通り、行幸通り、仲通りなど、人々の歩行移動における軸 が設定されており、それぞれの歩行空間の軸の特徴を活かした、「街並み形成型」のま ちづくりのルールによって歩行空間が形成される。これより、同じ印象を受けやすいと 考えられるため、連続した通りを選ばないこととした。 ・被験者に、歩行距離から歩行時間を推測させないために、同じ距離の場所は選ばな いこととした。
選定結果より、20 の実験場所から『自由度』『注意度』『スケール感』3 つの因子得 点を 3 軸の座標空間上にプロットし、選定された実験場所を示す[図 1-4-1]。
2
7 14
スケール感 Z Data
1
6 1
0 -1 -2 2
18
8
15
1
9 19
11
2 3
17 12 5 10
13
4
16
X
0
ta Da 度 意 注
-1
-2
2
P lace Number : 1 P lace Number : 2 P lace Number : 3 P lace Number : 4 P lace Number : 5 P lace Number : 6 P lace Number : 7 P lace Number : 8 P lace Number : 9 P lace Number : 10
図 1-4-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
20
1
0
-1
-2
ta Y Da 度 自由 P lace Number : 11 P lace Number : 12 P lace Number : 13 P lace Number : 14 P lace Number : 15 P lace Number : 16 P lace Number : 17 P lace Number : 18 P lace Number : 19 P lace Number : 20
実験場所候補地の因子得点
-071-
第3章
1-5
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
実験場所概要
以下に実験場所の地図、写真を示す[図 1-5-1][図 1-5-2]。 「街並み形成型まちづくり」を参考に 6 箇所の実験場所の特徴を記述する。 ここにて、実験場所候補地番号を実験場所番号へ変更する。 例)実験場所候補地番号→実験場所番号:特徴の記述。 4 →①: [294m]大通りである日比谷通り沿いの、空間の広がりが大きい歩行空間 である。 【都心景観軸】として、街区に整然と建物が建ち並び、スカイラインの統一性 に配慮がなされている。 3 →②: [189m]行幸通り広場付近の歩行空間である。【象徴広場・象徴軸】として、 整然としたなかにも潤いや憩いのある広場である。また、地区の「表玄関」としての景 観と、東京駅と皇居を結ぶ軸として象徴性・ゲート性、2 点の配慮による、素材・色彩 等を勘案した、伝統的な風格が感じられる。 7 →③: [209m] 大名小路、仲通りを横切り、日比谷通りへと向かう空間である。ヒュー マンスケールで親しみを感じさせる。また、整備が行き届いており、整然としている。 11 →④: [375m]仲通り沿いの歩行空間である。【アメニティ・賑わい軸】として、 街区に整然と建物が建ち並ぶ街並みを再構築し、ヒューマンスケールの「憩い」空間を 創出している。また、建物低層部は、立地特性や建物の特性に応じて店舗や飲食店を誘 導して賑わいのある通りとして整備されている。 20 →⑤: [364m]有楽町駅前広場周辺へと飲食店が連なりながらのびてゆく歩行空 間である。沿道部ににぎわい機能を誘導し、活動的な歩行者空間を形成している。 14 →⑥: [325m]有楽町駅前広場周辺から日比谷通りへとのびる歩行空間である。 有楽町のにぎわいが顕著に表れている。
また、以下のように、実験場所の候補地を決定する際に実験場所の距離を決定した。 第 2 章の基礎研究にて示した「人間の意識の中にある歩行距離」から、「90% の人が 歩いても良いとする距離」200m と、「目的地まで歩いて良いとする距離」500m の間 の距離を「快適に歩くことができる距離」と設定し、実験場所の候補地とする。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-072-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
0(デモ)
1
2
3
4
6
5
0m 0m
50m
図 1-5-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
100m
250m
N ↑
500m
実験場所
-073-
第3章
図 1-5-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
実験場所の写真
-074-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
実験 3.「東京駅周辺における空間移動実験」 2
実験方法
1-1
実験概要
■実験目的 異なる実験場所を歩行した際に、時間の感じ方が異なることを明らかにした上で、前章 で得られた仮説である、以下の 3 項目について明らかとする。 歩行の『自由度』に対する「認知」の仕方(歩行阻害感、歩行自由感)が感覚時間に 影響を及ぼすこと。 歩行中の『注意度』に対する「認知」の仕方(周辺情報量とその認識量)が感覚時間 に影響を及ぼすこと。 歩行空間の『スケール感』に対する「認知」の仕方(開放感、空間の広がり)が 感覚時間に影響を及ぼすこと。 さらに、 『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケールの大きさ』という、認知された 3 つの空間刺激の組み合わせが感覚時間に影響を及ぼすことを明らかとする。 ■実験概要 街頭調査にて選定した東京駅周辺の 6 カ所の実験場所を、21 名の被験者に歩行して もらい、感覚時間に関するアンケートを行う。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-075-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
□実施日時 2010 年 10 月 05 日(火曜日) 2010 年 10 月 15 日(金曜日) 9:00~12:00
14:00~17:00
□実施場所 東京駅周辺(大手町、丸の内、有楽町) □被験者 早稲田大学生: 8 名 建築学生:13 名 □必要機材・用具 ストップウォッチ アンケート用紙 ルートマップ
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
図 1-1-1
実験風景
図 1-1-2
実験風景
-076-
第3章
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
図 1-1-3
実験風景
図 1-1-4
実験風景
図 1-1-5
実験風景
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
-077-
第3章
1-2
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
実験の手順
次項に実験のフローを示す[図 1-2-1]。 □実験手順 東京駅周辺の街頭アンケートをもとに選定した 6 カ所を実験場所とする。 まずはじめに、 『経験の有無』という個人的要因を考慮し、被験者には実験前に全て の空間を歩行してもらう。 次に、教示[表 1-2-1]を行ったのち、実験場所以外で 1 度、実際に指定されたルー トを歩行し、それにかかった時間を自身で確かめるという、デモンストレーションを行 う。この歩行が、その空間を移動する時間の目安となる。 1.
実験場所を実験者が先導して歩行し、被験者には先導者が止まる地点まで自由な
速度で歩行してもらう。その際、被験者は各自が持つストップウォッチを経過時間を見 ないように、実験者に見せるために計測する。 2.
歩行後、各自のストップウォッチを回収し、経過時間を把握する。
3.
実験場所の空間的要因の評価のアンケートを行う。
以上の実験行程 1、2、3 を 6 カ所の実験場所で行う。 これらのアンケートの結果をもとに分析を進める。
□教示内容 実験 1 で得られた感覚時間に影響を及ぼす個人的要因より、『被服状態』『歩行速度』 を考慮し、歩きやすい服装、自由なペースでの歩行を教示で示した[表 1-2-1]。
表 1-2-1
教示内容
教示内容 歩きやすい服装で参加すること。 指示された地点から、 目的地に向かって歩くこと。 自分のペースで歩くこと。 周囲のものは自由に見ても良いが、途中で立ち止まらないこと。 時間を数えないこと。時計を外し、時間を見ないこと。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-078-
第3章
1
2
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
実験前に、被験者に全ての空間を歩行してもらう。 □ □ □ □ ■
教示を行ったのち、実験空間以外で 1 度、実際に指定されたルートを歩行し、それにかかった時 間を自身で確かめるという、デモンストレーションを行う。
実験空間を実験者が先導して歩行し、被験者には先導者が止まる地点まで自由な
4
□ □ ■
□
□
□ □
□ □ ■
歩行後、各自のストップウォッチを回収し、経過時間を把握する。
■
□
□
実験空間の空間的要因の評価のアンケートを行う。 □ □ □
□ □ □ □ ■
■ □ □ □ □ ■
33
□ □ ■
を見ないように、実験者に見せるために計測する。
□
□ □ □
速度で歩行してもらう。その際、被験者は各自が持つストップウォッチを経過時間
32
□ □ □ □ □ ■ □ □ □ □ □ ■ □ □ □ □ ■ □ □ □ □ □ □ □ ■
□ □ □ □ ■
31
□ □ □ □ ■
以上の 1~3 の実験行程を実験空間 6 カ所で行う。これらのアンケートの結果をもとに分析を進める。
図 1-2-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
実験フロー
-079-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
□アンケート アンケート用紙を以下に示す[図 1-2-2]。
本日は実験にご協力いただきありがとうございます。 【実験後】にお答えください。 以下のアンケートにお答えください。 日付:
2010/
/
NUMBER:
名前:
性別:
女 ・ 男
場所:
年齢:
歳
感覚時間
DISTANCE: SPEED:
:
TIME:
時間の感覚の感じ方に関する質問です。 ( 該当するものに○をつけて下さい。 ) まったく分からなかった
ほぼ正確に時間がつかめた 1
2
3
4
5
空間のイメージに関する質問です。 1
「歩行時の自由度」に関する質問です。 自由度が低い
1
多いにそう思う
3
4
5
特に何も思わない
自由度が高い 多いにそう思う
車通りが少ない
1
2
3
4
5
車通りが多い
歩行者が少ない
1
2
3
4
5
歩行者が多い
路上駐車が少ない
1
2
3
4
5
路上駐車が多い
信号の量が少ない
1
2
3
4
5
信号の量が多い
1
2
3
4
5
路面状態が良い
5
情報量・注意度が高い
路面状態が悪い 2
「歩行時の注意度」に関する質問です。 情報量・注意度が低い
1
多いにそう思う
2
3
4
特に何も思わない
多いにそう思う
緑が少ない
1
2
3
4
5
緑が多い
店舗が少ない
1
2
3
4
5
店舗が多い
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
見るもの(情報量)が少ない 寂しい 3
2
見るもの(情報量)が多い 騒がしい
「歩行時の空間の広がり (スケール感)」に関する質問です。 スケールが小さい 空間に広がりがあまりない
1
多いにそう思う
2
3
4
5
特に何も思わない
スケールが大きい 空間に広がりがある 多いにそう思う
閉鎖的
1
2
3
4
5
開放的
歩道が狭い
1
2
3
4
5
歩道が広い
1
2
3
4
5
(車道も含む)道幅が狭い
(車道も含む)道幅が広い
道のりが遠くに感じた
1
2
3
4
5
道のりが近くに感じた
風景が全く変化しなかった
1
2
3
4
5
風景が著しく変化した
図 1-2-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
アンケート用紙
-080-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
□実験場所概要 以下に実験場所の地図、写真を示す[図 1-2-3][図 1-2-4]。
0(デモ)
1
2
3
4
6
5
0m 0m
50m
図 1-2-3
100m
250m
実験場所
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
N ↑
500m
図 1-2-4
実験場所の写真
-081-
第3章
3
結果・考察
3-1
結果
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
■実施日時 2010 年 10 月 05 日(火曜日) 2010 年 10 月 15 日(金曜日) 9:00~12:00
14:00~17:00
■実施場所 東京駅周辺(大手町、丸の内、有楽町)6 カ所 ■被験者 早稲田大学建築学科学生:13 名 大学生: 8 名 ■実験結果 次項より、被験者 21 名、実験場所 6 カ所の全 126 データを結果のグラフにて示す。 また、アンケートの結果の詳細は資料編に示す。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-082-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
■実験場所別 実験場所別にみた結果を以下に示す[図 3-1]。 特に 4 の仲通り沿いの実験場所では特に短く、6 の有楽町駅から日比谷通りに向かう 空間では、長く感じられていることが分かる。実験場所 4、6 の感覚時間は、他の空間 と有意な差があることが t 検定により分かった。 これより、 歩行空間の違いによって感覚時間が異なる場合があることが分かる。 しかし、同じ実験場所でも、人によって感じ方は変わる[図 3-2]。これは、その空 間をどのように認知したかによるものではないだろうか。 □感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理
図 3-1
的時間 実験空間番号 第3四分点
実験場所別にみた感覚時間
1
2
3
4
5
6
0.21
0.21
0.17
-0.13
0.17
0.22
最大値
0.33
0.41
0.35
0.18
0.46
0.57
最小値
-0.32
-0.42
-0.38
-0.30
-0.33
-0.25
第1四分点
0.00
-0.06
-0.08
-0.25
-0.04
0.13
平均値
0.07
0.08
0.01
-0.16
0.07
0.15
人数
21
21
21
21
21
21
他の値に比べ絶対値の大きい値を示す
図 3-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
実験場所 6 の感覚時間
-083-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
■空間刺激別『自由度』 『自由度』の評価数値の異なる集団別にみた結果を以下に示す[図 3-4]。 自由度が低いと認知した場合、時間を長く感じ、高い場合は短く感じている傾向が見 てとれる。 傾向をより分かりやすく見るために、評価を、「低い」「普通」「高い」の 3 集団に分 けたグラフを次項に示す。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 3-4
低い
自由度の評価数値でみる感覚時間
やや低い
普通
最大値
0.28
0.57
0.28
0.21
0.41
最小値
0.06
-0.32
-0.15
-0.35
-0.42
第1四分点
0.11
0.10
-0.02
-0.20
-0.25
平均値
0.16
0.15
0.08
-0.10
-0.03
8
40
19
31
28
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
0.16
高い
0.20
人数
0.23
やや高い
第3四分点
-0.05
0.19
-084-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
■空間刺激別『自由度』 『自由度』評価の異なる 3 集団別にみた結果を以下に示す[図 3-5]。 検定をおこなったところ、「低い」「普通」「高い」のすべての組み合わせに有意な差 があった。 これより、 空間刺激『自由度』の認知の仕方は感覚時間に影響を及ぼすことが分かる。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 3-5
自由度の評価数値でみる感覚時間
低い
普通
高い
第3四分点
0.23
0.16
0.17
最大値
0.57
0.28
0.41
最小値
-0.32
-0.15
-0.42
第1四分点
0.10
-0.02
-0.21
平均値
0.15
0.08
-0.05
人数
48
19
59
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-085-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
■空間刺激別『自由度』 『自由度』が大きく影響したものとして、「実際の歩行速度と自分の歩きたい速度の比 較」した評価数値別にみた結果を以下に示す[図 3-6]。 歩きたい速度より遅いと感じている場合には、感覚時間が長いことが分かる。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 3-6
速い
第3四分点
歩きたい速度との比較別にみる感覚時間
少し速い
0.20
普通
0.24
少し遅い
0.19
遅い
0.18
0.30
最大値
0.29
0.33
0.46
0.29
0.57
最小値
-0.24
-0.25
-0.35
-0.32
0.10
第1四分点
-0.01
-0.14
-0.13
0.03
0.12
平均値
0.08
0.05
0.03
0.06
0.24
6
8
83
22
7
人数
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-086-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
■空間刺激別『注意度』 『注意度』の評価数値の異なる集団別にみた結果を以下に示す[図 3-7]。 注意度が低いと認知した場合、時間を長く感じ、高い場合は短く感じている傾向が見 てとれる。 傾向をより分かりやすく見るために、評価を、「低い」「普通」「高い」の 3 集団に分 けたグラフを次項に示す。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 3-7
注意度の評価数値の異なる集団別にみた感覚時間
低い
やや低い
普通
やや高い
高い
第3四分点
0.23
0.26
0.16
0.18
0.16
最大値
0.27
0.41
0.22
0.46
0.57
最小値
-0.15
-0.33
-0.15
-0.42
-0.35
第1四分点
0.15
0.15
-0.02
-0.22
-0.19
平均値
0.16
0.16
0.07
-0.01
-0.01
8
22
18
32
46
人数
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-087-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
■空間刺激別『注意度』 『注意度』評価の異なる 3 集団別にみた結果を以下に示す[図 3-8]。 検定をおこなったところ、 「低い - 高い」 「低い - 普通」の組み合わせに有意な差があっ た。 これより、 空間刺激『注意度』の認知の仕方は、感覚時間に影響を及ぼすことが分かる。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 3-8
注意度の評価数値でみる感覚時間
低い
普通
高い
第3四分点
0.25
0.16
0.18
最大値
0.41
0.22
0.57
最小値
-0.33
-0.15
-0.42
第1四分点
0.15
-0.02
-0.12
平均値
0.16
0.07
0.02
人数
30
18
72
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-088-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
■空間刺激別『スケール感』 『スケール感』の評価数値の異なる集団別にみた結果を以下に示す[図 3-9]。 スケール感が小さいと認知した場合、時間を長く感じ、高い場合でも長く感じている 傾向が見てとれる。 傾向をより分かりやすく見るために、評価を、「小さい」「普通」「大きい」の 3 集団 に分けたグラフを次項に示す。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 3-9
注意度の評価数値の異なる集団別にみた感覚時間
小さい
やや小さい
普通
やや大きい
大きい
第3四分点
0.27
0.17
-0.00
0.18
0.21
最大値
0.57
0.30
0.26
0.35
0.41
最小値
-0.33
-0.35
-0.30
-0.38
-0.42
第1四分点
0.07
-0.15
-0.11
-0.23
-0.08
平均値
0.15
0.01
-0.05
0.02
0.08
人数
15
47
13
27
24
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-089-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
■空間刺激別『スケール感』 『スケール感』評価の異なる 3 集団別にみた結果を以下に示す[図 3-10]。 結果の傾向から、既往研究にて、開放感のある広い空間では時間を長く感じるという 知見がある。 空間刺激『スケール感』の認知の仕方は、感覚時間に影響を及ぼすことが言えるので はないだろうか。
□感覚時間 物理的時間と感覚時 間のずれを割合で表し たもの。時間の感じ方 が読み取れる。 負の値ほど時間を短 く感じていることを示 し、正の値ほど時間を 長く感じていることを 示す。 感覚時間比 =( 感覚時 間−物理的時間 ) / 物理 的時間
図 3-10
スケール感の評価数値でみる感覚時間
小さい
普通
大きい
第3四分点
0.19
0.00
0.21
最大値
0.46
0.26
0.41
最小値
-0.25
-0.30
-0.42
第1四分点
-0.13
-0.10
-0.10
平均値
0.06
-0.03
0.08
人数
62
13
51
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-090-
第3章
3-2
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
考察
以上の結果から考察を行う。 異なる実験場所を歩行した際に、時間の感じ方が異なることを明らかとなった。 さらに、前章で得られた仮説である、以下の 3 項目についても明らかとした。 歩行の『自由度』に対する「認知」の仕方(歩行阻害感、歩行自由感)が感覚時間に 影響を及ぼすこと。 歩行中の『注意度』に対する「認知」の仕方(周辺情報量とその認識量)が感覚時間 に影響を及ぼすこと。 歩行空間の『スケール感』に対する「認知」の仕方(開放感、空間の広がり)が 感覚時間に影響を及ぼすこと。
そこで、上記で明らかとした「認知」の仕方だけでなく、 『自由度』『注意度』『スケー ル感』という、 「認知」された 3 つの項目の組み合わせに着目し、感覚時間の分析を行 うこととする。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-091-
第3章
4
分析
4-1
分析手法
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
森典彦:ラフ集合と感性 ,
『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』という、「認知」された 3
海文堂出版(2004)
つの項目の組み合わせと感覚時間の長さに着目し、 『自由度の高さ』『注意度の高さ』 『ス ケール感の大きさ』の「認知」の仕方と感覚時間との関係性を明らかにするために、ラ
* 項目の組み合わせを「決
フ集合分析を用いることとする。
定ルール」と呼ぶ。
ラフ集合の決定的な利点は、「項目の組み合わせ * による評価が可能」ということで ある。人は感性において、非線形な判断をすることが多いために、各属性の独立性を前 提とする多変量解析などの線形的な分析では求められないことが多い。しかし、ラフ集 合分析を用いれば変数が単独ではなく、組み合わせで求められる意味で、非線形な問題 にも対処できる。 たとえば、多変量解析にかけると[図 4-1-1]のような、項目ごとにどのような係数 のとき最も好まれるかという結果を得ることができる。しかし今回のような、感性によ るアンケート調査の場合、数値では表わすことができない。また多変量分析のように細 かい記述は、対象をより精密に特定するものの、本質が見極めにくくなりやすいという 欠点を持っている。ラフ集合分析は、「対象の集合をうまく特定できる範囲で情報を荒 くすることで、対象の集合の程よい記述を求められる手法」である。
□ C.I. 値について ラフ集合では、評価指標として C.I. 値を用いる。これは、同じ決定属性を選んだサン プルのなかで、決定ルールが占める割合を表している。
□決定属性 ラフ集合分析をする際、対になる決定属性が必要となる。“感覚時間が長い” “感覚時 間が短い” とし、ラフ集合分析にかけた。また、このラフ集合ソフトウェア Ver.1.0 で 使用できるサンプルの上限数が 100 であるため、サンプルはこの上限を超えない数で、 “感覚時間が正確” なものを除外して行った。
図 4-1-1
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
今までの重回帰分析による結果
-092-
第3章
4-2 4-2-1
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
分析 感覚時間の短い集団の分析結果
以下に「感覚時間が長い」集団の分析結果を示す[図 4-2-1]。 □項目が 1 つの場合 まず、組み合わせのない、項目が 1 つの場合に着目する。 項目が 1 つの場合、「自由度が低い」「スケール感が大きい」「注意度が高い」 「注意 度が低い」 「スケール感が小さい」「自由度が高い」などが多くの割合を占める。 上位の、特に「自由度が低い」「スケール感が大きい」といった項目は、実験 1 や既 往研究にて示したように、時間を長く感じさせやすいと言える。 また、 「注意度高い」「注意度が低い」など、一見矛盾した項目が存在するが、これは 項目の組み合わせによるものであると理解できる。 □項目が 2 つの場合 次に項目が 2 つの組み合わせに着目する。 項目が 2 つの場合、「注意度が低い - スケール感が大きい」「自由度が低い - スケール 感が小さい」 「自由度が低い - 注意度が低い」が時間を長く感じる組み合わせとして挙 げられる。 『スケール感』が大きい場合には、 「注意度が低い」と時間を長く感じる。また、 『スケー ル感』が小さい場合には、「自由度が低い」と時間を長く感じることが分かる。 長い
自由度
a1
小さい
注意度
c3
スケール感
大きい
C.I.値 a1
0.605
c3
0.500
b3
大きい
b3
0.474
b1
小さい
b1
0.474
小さい
c1
0.447
大きい
b1c3
0.447
小さい
a1c1
0.447
小さい
a1b3c1 0.421
c1 b1c3 a1c1
小さい 小さい
a1b3c1 小さい a3
大きい
大きい
a3
a3b1c3 大きい
小さい
a1b1
小さい
小さい
a1b1c3 小さい
小さい
大きい
図 4-2-1
感覚時間が長い場合
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
大きい
0.316
a3b1c3 0.316 a1b1
0.132
a1b1c3 0.105
-093-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
□項目が 3 つの場合 最終的に組み合わせが 3 つの場合に着目する。 今回の実験では、以下のように認知した場合が、時間を長く感じている。 「自由度が低い - 注意度が高い - スケール感が小さい」 「自由度が高い - 注意度が低い - スケール感が大きい」 「自由度が低い - 注意度が低い - スケール感が大きい」 「自由度が低い」「スケール感が大きい」といった項目は、実験 1 や既往研究にて示 したように、特に時間を長く感じさせることに影響している。 しかし、 「自由度が高い」場合でも時間を長く感じることはある。「注意度が低く、ス ケール感が大きい」場合がこれにあたる。 『スケール感』が大きい場合には、 「注意度が低い」と時間を長く感じる。また、 『スケー ル感』が小さい場合には、「自由度が低い」と時間を長く感じることが分かる。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-094-
第3章
4-2-2
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
感覚時間の短い集団の分析結果
以下に「感覚時間が短い」分析結果を示す[図 4-2-2]。 □項目が 1 つの場合 まず、組み合わせのない、項目が 1 つの場合に着目する。 項目が 1 つの場合、 「注意度が高い」「自由度が高い」「スケール感が小さい」「スケー ル感が大きい」などが多くの割合を占める。 上位の、特に「自由度が低い」「注意度が高い」といった項目は、時間を短く感じさ せやすいと言える。 また、 「スケール感が大きい」「スケール感が小さい」など、一見矛盾した項目が存在 するが、これは項目の組み合わせによるものであると理解できる。 □項目が 2 つの場合 次に項目が 2 つの組み合わせに着目する。 項目が 2 つの場合、「自由度が高い - 注意度が高い」「注意度が高い - スケール感が大 きい」 「自由度が高い - スケール感が小さい」が時間を短く感じる組み合わせとして挙 げられる。 『スケール感』が大きい場合には、 「注意度が高い」と時間を短く感じる。また、 『スケー ル感』が小さい場合には、「自由度が高い」と時間を短く感じることが分かる。
短い
自由度
b3
注意度 大きい
a3
大きい
a3b3
大きい
大きい
c3
C.I.値 b3
0.895
a3
0.842
a3b3
0.763
小さい
c1
0.500
小さい
a3c1
0.474
大きい
c3
0.395
大きい
c1 a3c1
スケール感
a3b3c1 大きい
大きい
小さい
a3b3c1 0.395
b3c3
大きい
大きい
b3c3
a3b3c3 大きい
大きい
大きい
a3b3c3 0.263
a1
小さい
a1b3c3 小さい
a1 大きい
c2 図 4-2-2
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
0.395
0.132
大きい
a1b3c3 0.132
普通
c2
0.105
感覚時間が短い場合
-095-
第3章
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
□項目が 3 つの場合 最終的に組み合わせが 3 つの場合に着目する。 今回の実験では、以下のように認知した場合が、時間を短く感じている。 「自由度が高い - 注意度が高い - スケール感が小さい」 「自由度が高い - 注意度が高い - スケール感が大きい」 「自由度が低い - 注意度が高い - スケール感が大きい」 「自由度が高い」「注意度が高い」が多いといった項目は、実験 1 や既往研究にて示 したように、特に時間を短く感じさせることに影響している。 しかし、 「自由度が低い」場合でも時間を短く感じることはある。「注意度が高い - ス ケール感が大きい」場合がこれにあたる。 『スケール感』が大きい場合には、 「注意度が高い」場合だと短く感じる。また、 『スケー ル感』が小さい場合には、「自由度が高い」場合だと短く感じることが分かる。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-096-
第3章
4-3
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
考察
本実験においては、異なる実験場所を歩行した際に、時間の感じ方が異なることを示 した上で、以下の仮説を明らかとした。 歩行の『自由度』に対する「認知」の仕方(歩行阻害感、歩行自由感)が感覚時間に 影響を及ぼすこと。 歩行中の『注意度』に対する「認知」の仕方(周辺情報量とその認識量)が感覚時間 に影響を及ぼすこと。 歩行空間の『スケール感』に対する「認知」の仕方(空間の広がり)が感覚時間に影 響を及ぼすこと。 また、 「認知」された『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』の組 み合わせと「感覚時間が短い場合」と「感覚時間が長い場合」に着目して分析を行うこ とで、 『自由度』 『注意度』 『スケール感』の 3 つの「空間刺激」の関係性に対する「認知」 の仕方が感覚時間に影響を及ぼすことを明らかとした。
以下に、 『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』のうち、2 項目、3 項目の組み合わせとそのときの C.I. 値 を示した表を、それぞれ、感覚時間の長い場合 と短い場合で示す[表 4-3-1][表 4-3-2][表 4-3-3][表 4-3-4]。 それにより、 『自由度』『注意度』『スケール感』を 3 つの軸とした、3 つの「空間刺激」 の組み合わせが表す感覚時間のグラフを示す[図 4-3-1]。 『自由度の高さ』 『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』がそれぞれ、矢印の向きに 小さい、普通、高い、の 3 段階で示され、そのときの感覚時間が長い場所、短い場所 の特徴を示すものである。 このグラフは、3 項目の組み合わせが座標軸にプロットされ、2 項目の組み合わせは、 直線で示される。また、その集団に占められる割合の高さを示す C.I. 値 の値が大きい ほど、プロットされた点、直線は、太く示される。また、2 項目の組み合わせで感覚時 間が長い場所では直線が黄色い点線で、また、短い場所では茶色い実線で示される。2 項目の組み合わせで感覚時間が短い場所では点が黄色で、また、長い場所では茶色い実 線で示される。また、プロットされた点は、感覚時間の長い場合だと、短い場合だと紫 色で示される。 グラフより、示された直線上にプロットされた点は、時間の同じ感じ方をしているこ とが分かる。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-097-
第3章
表 4-3-1
3 項目の組み合わせと CI 値
感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価
表 4-3-2
2 項目の組み合わせと CI 値
組み合わせ
2項目
(感覚時間の短い場合) 組み合わせ 短い
(感覚時間の短い場合)
3項目 C.I.値
短い
a3b3c1
自由度 1
注意度 1
-1 a3b3c1 0.395
a3b3
1
a3b3c3
1
1
1 a3b3c3 0.263
a3c1
1
a1b3c3
-1
1
1 a1b3c3 0.132
b3c3
a3b3c2
1
1
0 a3b3c2 0.105
a3c2
a3b1c1
1
-1
-1 a3b1c1 0.079
表 4-3-3
スケール感
3 項目の組み合わせと CI 値
自由度
注意度
1
自由度
0.763
-1 a3c1
0.474
1 b3c3
0.395
0 a3c2
0.105
2 項目の組み合わせと CI 値
(感覚時間の長い場合)
a1b3c1
C.I.値 a3b3
1
表 4-3-4
(感覚時間の長い場合)
組み合わせ 3項目 長い
スケール感 1
組み合わせ 2項目
注意度
スケール感
C.I.値 長い
自由度
注意度
-1
1
-1 a1b3c1 0.421 b1c3
a3b1c3
1
-1
1 a3b1c3 0.316 a1c1
-1
a1b1c3
-1
-1
1 a1b1c3 0.105 a1b1
-1
a1b2c1
-1
0
-1 a1b2c1 0.053 a1c2
a2b1c3
0
-1
1 a2b1c3 0.053 a2c3
スケール感 -1
C.I.値 1 b1c3
0.447
-1 a1c1
0.447
-1
a1b1
0.132
-1
0 a1c2
0.053
0
1 a2c3
0.053
自由度
+1 スケール感 +1 −1
0
+1
注意度
−1
−1
感覚時間が長い 感覚時間が短い
点、線の太さが太いほどC.I.値が大きいことを示す
図 4-3-1 「空間刺激」の組み合わせが表す感覚時間のグラフ
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-098-
第 4 章
まとめ
Chapter 4
1
まとめ
2
展望 終わりに 謝辞 参考文献
第4章
1
まとめ
まとめ 本研究は、 歩行者の行動と認知、時間感覚に着目し、以下のことを明らかとした。
実験 1 歩きたい速度で歩けない、という歩行時の阻害感や自由度の制約が、大きく感覚時間 に影響を及ぼしている。 実験 2 都市歩行時に空間が与える刺激として、『自由度』『注意度』『スケール感』があり、 それに対し、以下のような仮説を立てた。 歩行の『自由度』に対する「認知」の仕方(歩行阻害感、歩行自由感)が感覚時間に 影響を及ぼす。 歩行中の『注意度』に対する「認知」の仕方(周辺情報量とその認識量)が感覚時間 に影響を及ぼす。 歩行空間の『スケール感』に対する「認知の」仕方(空間の広がり、開放感)が感覚 時間に影響を及ぼす。 実験 3 実験 2 の仮説を明らかにした。 また、 「認知」された『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』の組 み合わせと「感覚時間が短い場合」と「感覚時間が長い場合」に着目して分析を行うこ とで、 『自由度』 『注意度』 『スケール感』の 3 つの「空間刺激」の関係性に対する「認知」 の仕方が感覚時間に影響を及ぼすことを明らかとした。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-100-
第4章
2
まとめ
展望
本研究では、歩行という行動中における感覚時間、また、都市空間の与える刺激に 対しての認知と感覚時間、この 2 点に着目した。 そこで、都市空間の与える刺激の「認知」の仕方と、感覚時間との関係性を明らかに し、感覚時間が短く、距離が長い場合でも快適に歩けるような都市空間が備えている条 件を探った。 条件を明らかにすることはできなかったものの、歩行の阻害感・自由感に関する『自 由度』 、周辺情報量とその認識量に関する『注意度』、空間のひろがり、開放感などに関 する『スケール感』などの「認知」の仕方の組み合わせが、感覚時間に影響を及ぼすこ とが明らかとなった。被験者数を大幅に増やすことで、感覚時間の短い組み合わせが明 らかとなることが期待される。 しかし、本研究では、歩行目的のない状態での空間移動という基礎的な実験であった ため、日常の場面を想定しきれていないという課題がある。 今後の感覚時間研究では、買物など、歩行の目的を持った場合での調査が必要である。 本研究では要素が複雑となってしまい扱うことは出来なかったが、買物行動者の心理状 態か、行為か、空間的要因か、何が感覚時間に大きく作用するものかを明らかにすれば、 飛躍的に研究手法が発展するだろう。 また、通勤などで、あらかじめかかる時間の予測のついた状態では、どのように時間 を感じるだろうか。時間は予測でき知っている状態であるが、時間をどう感じたかどう かについては変化しうるものである。これらの調査方法の検討も必要であろう。 「島じかん」なる観念もある。人によって抱くイメージは違うであろうが、それが何 なのか、 何が影響しているのかを探ることで興味深い結果に結びつくこともあるだろう。 また、複数の都市において感覚時間の違いを計測することで、都市性の違いが浮かび 上がってくるかもしれない。
いずれにせよ、感覚時間研究の数はまだ少ない。 時間感覚とは、五感刺激とは異なり、独自の感覚器官がない。複数の要因に左右され る場合もあれば、なにか1つの要因にのみ影響されることもある、それゆえに非常に複 雑で、線形モデルのように単純に表すことのできないものである。 複雑であるがゆえに、丁寧に、地道に仮説と検証とを繰り返していくことが感覚時間 研究には必要であると感じられた。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-101-
おわりに
おわりに ----- 謝辞 ----「睡眠」から船出した私の研究は早くも座礁した。その後、 「歩行数増加、歩いて健康」 という浮き輪に捕まりながら漂流していた私を拾い上げたのは「感覚時間」という巨大 な帆船であった。歩みは速いものではなく、風を受けながらきまぐれに進む・・・ ここで、船長からクルーを紹介する。 まずは、仁史先生、このような研究の場を与えていただき、ありがとうございました。 夏子さん、常に的確なアドバイスでここまで導いていただき、本当に助かりました。 楽しく強く健康な夏子さん、八王子での体力には本当に驚かされました。新入りへのク ルーへの「杯を乾かす」という儀式であやうく私は漂流するところでした。忘れません。 また飲みにいきましょう。 林田さん、 常に温かく見守っていただき、ありがとうございました。海老狸とエスカッ プが私を救ってくれました。 西氏、もう一度あのたこ焼きが食べたいです。オカタツ氏、航海中に歌った love you only、私たちのテーマソングです。馬淵氏、プリンターが動きません。笑。ダイエット なんてやめてさっさと飲みにいきましょう。エロジマシ、探し物はなんですか?ポケッ トに入ったミニマックですか?奥津氏、またあのスタバに行きたいです。親分!! JJ さん、もう悪ふざけはしないので麺珍に行きましょう。オッチーさん、CDTV をご 覧のみなさん・・笑。いつも配慮をありがとうございます。たばこをせびってごめんな さい、かわ D さん、木戸さん、ゆりゆり、まーしー、しょうへい、かんなり氏、まっちょ・ ・ うわ多い・・富田氏、ドロップが足りません!ゆかりさん、UD でサノケンがなければ 私は論文を書けませんでした。ししょー、餃子が食べたいです。の D、コスプレぼくは 大丈夫です。じょん、今度泊まりにいきます。ガースーはギースー?ばーちー?すぎた つさんのタイピングに憧れます。たすけさん、いつもお疲れさまです。ジャンボさん、 いつもお世話になっております。ジャンボリー!笑。すみません。おー、向野くん! 小笠原航海中に出会った菖蒲さん、被験者の方々、ほんとうにありがとうございまし た! 父、母、そして家族、つねに気遣ってくれたおかげで今の体調があります。ありがと う。おじいちゃん、今度お見舞いにいきます。 そして田名網祐さん、坂田礼子大先生、ほんとうにありがとうございます。 研究を進める、論文を書き上げる、常にお二人の助力があったからこその論文です。 論文でここまで積極的にやれて、本当に幸せでした。 ありがとうございました。 ただただ、ありがとうございました。 11 日のプレゼンは残っていますが、あとはおふたりの修論です。 精一杯応援させていただきます。 ー第 1 部航海を終えて。ー
2010 年 11 月 8 日
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
ー第 2 部航海へー
石井宏樹
-102-
参考文献
ー参考文献ー ■既往論文 [論文
]杉山郁夫:移動の質の定量化に基づく歩行空間の評価方法 に関す
る研究(2005)
[論文 1]矢川麻紀子:感覚時間による場と人との交換作用の指標化[1999]
[論文 2]矢川麻紀子:人と場の関わりと感覚時間に関する基礎的考察[2001]
[論文 3]藤本麻起子:歩行空間における感覚時間に関する研究[2004]
[論文 4]矢川麻起子:人と人の位置関係がもたらす居心地と感覚時間[2002]
[論文 5]藤本麻起子:照度・色温度を制御した室内における感覚時間の変 化に関する研究[2003]
[論文 6]大野隆造:歩行移動時の距離知覚に及ぼす経路の形状と周辺環境 の影響歩行経路 , 日本建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]
[論文 7]MILGRAM S.:<no title>, Environment and cognition[1973]
[
論
文 8]SADALLA E. K.:Retrieval prosesses in distance cognition ,
Memory and Cognition 7, 291-296,[1979]
[
論
文 9]SADALLA E. K.:The perception of traversed distance ,
Environment and Behavior 12(1), 65-79,[1980]
[
論
文 10]SADALLA E. K.:The perception of traversed distance-
intersections , Environment and Behavior 12(2), 167-182,[1980]
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-103-
参考文献
ー参考文献ー ■既往論文 [ 論 文 11] STAPLIN L. J.:Distance cogntion in urban environments , Professional Gepgrapher 33(3), 302-310,[1981]
[ 論 文 12]ALLEN G. L.:A developmental perspective on the diffects of "subdividing" macrospatial experience , Journal of Experimental Psychology, Human Learnin and Memory 7, 120-132,[1981]
[ 論 文 13]ALLEN G. L.:Effects of the cognitive organization of route knowledge on judgements of macrospatial distance , Memory and Cognition 13, 218-227,[1985]
[ 論 文 14]BRIGGS R.:Methodologies for the mesurement of cognitive distance , Environmental Knowing, Theories, Research and Methods,[1976]
[ 論 文 15]APPLEYARD D.:Styles and Methods of Structuring A City , Environment and Behavior 2(1), 100-116,[1970]
[ 論 文 16]CANTER D.:Distance estimation in cities , Environment and Behavior 7(1), 59-80,[1975]
[ 論 文 17]LEE T. R.:Perceived distance as a function of direction in the city , Environment and Behavior 2(1), 40-51,[1970]
[論文 18]大野隆造:通い慣れた屋外経路における歩行者の距離認知に関す る研究[2001]
[ 論 文 19]OKABE A.:Distance and direction judgment in a large-scale natural environment, Effects of a slope and winding trail , Environment and Behavior 18(6), 755-772, 1986
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-104-
参考文献
ー参考文献ー ■既往論文 [論文 20]五十嵐日出夫:環境要因を考慮した意識距離に関する研究、土木 学会 第 53 回年次学術講演会講演概要集第 4 部、pp.772- 773[1998]
[論文 21]西出和彦:歩行時における空間の距離認知[1999]
[論文 22]大野隆造:通い慣れた屋外経路における歩行者の距離認知に関す る研究 , 日本建築学会計画系論文集 No.549, Pp.193-198,[2001]
[論文 23]大野隆造:歩行移動時の距離知覚に及ぼす経路の形状と周辺環境 の影響歩行経路 , 日本建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]
[論文 24]西出和彦:地下歩行空間における認知距離に関する研究[2008]
[論文 25]鈴木聡士 : 意識距離の短縮効果を有する歩行空間の創出に関する 基礎的研究、地域学研究第 32 巻第 1 号、pp.173-188[2002]
[論文 26]大野隆造:地下鉄駅における主観的な移動距離および深さに影響 する環境要因 , 日本建築学会計画系論文集 No.610,P.87-92,[2006]
[論文 27]渡辺仁史:建築計画における行動シミュレーションに関する研究 [1978]
[論文 28]樫村:観覧空間における歩行速度の変化に関する研究[2000]
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-105-
参考文献
ー参考文献ー
■参考文献
[注 1]エアロハウス HP:http://www.aerohouse.net/
[注 2]伊勢神宮式年遷宮広報本部 公式ウェブサイト:http://www.sengu. info/index.html
[注 3]http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsts2/shushi.html
日本時間学会ホームページ
[注 4]大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドライン 2008:http:// www.aurora.dti.ne.jp/~ppp/guideline/index.html
[注 5]大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドライン 2008 , 資料編 p7
[注 6]文献:http://www.human.ac.jp/gakusei/dayori/memo.php?p=14
[注 7]内閣府「体力・スポーツに関する世論調査平成 18 年」
[注]wikipedia:http://en.wikipedia.org/wiki/Main̲Page
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-106-
参考文献
ー参考文献ー
■参考文献
[文 1]ケヴィン・リンチ/東京大学大谷幸夫研究室訳:時間の中の都市 - 内 部の時間と外部の時間 - , 鹿島出版会 [1975] ,
[文 2]松田文子:心理的時間ーその広くて深いなぞ , 北大路書房 , [1996]
[文 3]一川誠:大人の時間はなぜ短いのか , 集英社新書 [2008] ,
[文 4]一川誠:時計の時間、心の時間 , 教育評論社 [2009] ,
[文 5]日本建築学会編:設計資料集成 3 , 単位空間 1 , 丸亀
[文 6]石村貞夫:SPSS による多変量データ解析とその手順 , 東京図書(1997)
[文 7]森典彦:ラフ集合と感性 , 海文堂出版(2004)
[文 8]石村貞夫:SPSS による分散分析と多重比較の手順 , 東京図書(1997)
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-107-
第二部 Part Ⅱ
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
資料編 Data
基礎研究 Data
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-109-
資料編
時間の感じ方が普段と変わるさまざまな場面[ブレインストーミングによる]
感覚時間が長い場合 時間が遅く過ぎ去ったと感じる場合
夜
天候気候
昼
感覚時間が短い場合 時間が速く過ぎ去ったと感じる場合
天候気候
昼 晴れた日
気持ち
不安 笑っている
湿度
考え事をしている
気温
体調
酔っている
天候
わくわくしている
空腹
歩行状態
気持ち
不安 焦り
川のそば
緊張
ショッピング
場所
体調
ナビをしてもらっている時
あり
なし
興味の有る場所
周辺環境
往路か復路か
人の流れの方向
信号の量
群衆密度
人ごみ
歩行環境
何も考えていない時 考え事をしている時 見知らぬ場所
曲がり道 往路か復路か
目的地 考え方
寄り道をしている
商店街
睡眠不足
人ごみ
下北沢ぶらぶら ディズニーランド
空腹
今、 自分がどれくらい 歩いたか自覚している時
森 腹痛
何も考えずに歩けるとき
歩行環境
信号の量
〜しながら
風景が変わる
サンダルをはいた時
歩きやすさ あえて 「歩く」 という手段をとった時
人がいるかいないか
新しい靴を履いた時 探し物をしながら デート中
直線かどうか
〜しながら
坂
迷っている時
同じ風景
ヒールを履いている時
歩きやすさ
空いている
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
音楽を聴きながら 友人といるとき 話しながら
-110-
資料編
歩行目的別における時感の感じ方とその理由[ブレインストーミングによるもの]
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都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
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-111-
実験 1 Data
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-112-
資料編
100m/ 分
80m/ 分
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-113-
資料編
60m/ 分
40m/ 分
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-114-
第2章
感覚時間に影響する因子の抽出実験
実験 1 結果生データ A3 × 5 枚 80m/分
16 ○
80m/分
17
○
80m/分
18
○
○
○
○
○
○
○
○
○
80m/分
19
○
○
○
○
80m/分
20
○
○
○
○
80m/分
21 ○
80m/分
22
○
○
80m/分
○ ○
○
○ 無回答
○
無回答
○
○
○
23
○
○
80m/分
24
○
○
80m/分
25 ○
○
○
60m/分
1 ○
○
○
60m/分
2 ○
○
○
○
60m/分
3 ○
○
○
○
60m/分
4 ○
○
○
○
60m/分
5 ○
60m/分
6 ○
60m/分
7 ○
60m/分
8 ○
60m/分
0.02 04:53
293
-0.05
10:27
627
○
-0.03
05:10
310
-0.10
11:00
660
○
-0.07
05:20
320
-0.13
11:20
680
○
○
-0.16
05:49
349
-0.23
12:15
735
○
○
0.03 04:50
290
-0.17
11:44
704
無回答
○
○
○
0.10 04:30
270
0.05 09:29
569
○
○
-0.17
05:52
352
-0.02
10:09
609
○
○
○
○
○ ○
○
無回答
○
○ ○
○
○
無回答
○
0.07 04:40
280
-0.02
10:12
612
○
○
0.19 04:02
242
0.08 09:12
552
○
○
-0.02
305
0.03 09:41
581
○
○
-0.37
○
○
-0.50
07:31
451
-0.31
13:03
783
○
○
-0.47
07:20
440
-0.46
14:33
873
○
無回答
無回答
-0.50
07:31
451
-0.33
13:15
795
○
410
-0.49
14:53
893
-0.40
06:59
419
-0.38
13:45
825
○
○
○
-0.48
07:25
445
-0.32
13:11
791
○
○
○
○
-0.32
06:35
395
-0.20
11:57
717
○
○
○
○
-0.61
08:03
483
-0.50
14:58
898
9 ○
○
無回答
○
-0.42
07:05
425
-0.48
14:50
890
60m/分
10 ○
○
○
-0.70
08:30
510
-0.50
15:00
60m/分
11 ○
○
○
○
○
○
-0.17
05:50
350
-0.05
10:30
630
60m/分
12 ○
○
○
○
○
○
-0.26
06:18
378
-0.18
11:49
709
60m/分
13
○
○
○
○
○
-0.08
05:25
325
0.08 09:10
550
60m/分
14
○
○
○
0.25 03:45
225
0.10 09:03
543
60m/分
15
○
○
0.08 04:35
275
0.10 09:03
543
60m/分
16 ○
60m/分
17
○
60m/分
18
60m/分
無回答
○
○
○ ○
○
○
○
○ ○
○
○
○
○
○
○
900
○
○
○
○
-0.30
06:30
390
-0.34
13:23
○
○
○
○
○
-0.37
06:50
410
-0.25
12:28
748
○
○
○
○
○
-0.55
07:45
465
-0.27
12:39
759
19
○
○
○
○
○
-0.51
07:32
452
-0.28
12:49
769
60m/分
20
○
○
○
○
-0.33
06:40
400
-0.11
11:07
667
60m/分
21 ○
○
○
○
○
-0.63
08:10
490
-0.50
14:58
898
60m/分
22
○
○
○
○
○
-0.35
06:45
405
-0.19
11:53
713
60m/分
23
○
○
○
○
○
-0.33
06:40
400
-0.26
12:34
754
60m/分
24 ○
○
○
○
-0.48
07:23
443
-0.39
13:55
835
60m/分
25 ○
○
○
○
○
○
-0.47
07:21
441
-0.21
12:06
726
60m/分
26 ○
○
○
○
○
-0.46
07:19
439
-0.21
12:07
60m/分
27 ○
○
○
○
-0.46
07:18
438
-0.49
14:55
895
40m/分
1 ○
40m/分
2 ○
40m/分
3 ○
40m/分
4 ○
40m/分
5 ○
○
○
○
40m/分
6 ○
○
○
40m/分
7 ○
○
40m/分
8 ○
40m/分
9 ○
40m/分
10
40m/分
11 ○
40m/分
12 ○
40m/分
13 ○
40m/分
14
○
40m/分
15
○
40m/分
16 ○
○ ○
○
無回答
無回答
○
○
○ ○ ○
○
○
○
○
○
803
727
○
○
0.15 04:15
255
-0.03
10:18
618
○
○
○
○
○
0.10 04:30
270
-0.25
12:30
750
○
○
○
○
○
0.43 02:52
172
-0.03
10:20
620
○
○
0.43 02:52
172
-0.00
10:02
602
○
○
0.17 04:10
250
-0.07
10:41
641
○
○
○
0.03 04:50
290
-0.13
11:20
680
○
○
○
0.22 03:55
235
0.10 09:00
540
○
○
○
0.20 04:00
240
0.06 09:24
564
○
○
○
0.37 03:10
190
0.08 09:10
550
○
○
○
0.42 02:55
175
0.08 09:12
552
○
○
○
○
0.17 04:09
249
-0.07
10:42
642
○
○
○
○
0.28 03:37
217
-0.00
10:01
601
○
○
○
○
○
0.16 04:12
252
-0.50
15:00
900
○
○
○
○
○
-0.08
05:25
325
-0.42
14:10
850
無回答
無回答
0.05 04:45
285
0.00 10:00
600
○
○
0.18 04:05
245
0.17 08:20
500
○
0.08 04:35
275
-0.04
○
○
○
○
○ ○
○
○
○ ○
○
○
○
○
○
無回答
無回答
無回答
無回答
○ ○ ○
○
10:22
622
18
○
○
○
○
○
○
0.16 04:12
252
0.08 09:10
550
40m/分
19
○
○
○
○
○
○
0.17 04:10
250
-0.07
10:40
640
40m/分
20 ○
○
○
○
○
0.08 04:35
275
-0.11
11:07
667
40m/分
21 ○
○
無回答
40m/分
22
○
○
40m/分
23
○
○
40m/分
24
○
○
40m/分
25
○
○
40m/分
26 ○
○ ○
40
○
○
○
○
0.12 04:25
265
-0.12
11:10
670
○
○
○
0.08 04:35
275
-0.04
10:25
625
○
○
0.09 04:32
272
0.04 09:37
577
○
○
0.09 04:32
272
0.04 09:37
577
○
0.17 04:10
250
0.07 09:17
○
0.17 04:10
250
0.01 09:52
592
-0.15
346
-0.16
694
無回答
○
無回答
○ ○
○ 63
無回答
○
無回答
40m/分
合計
○
無回答
○
○
17
無回答
○
○
○
無回答
51
○
○ 50
○
○ 84
17
○ 88
12
17
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
14
16
32
52
88
11
557
結果:実験 .1
40m/分
○
○
06:50
○
○ ○
○
05:05
-115-
資料編
実験 .1
検定結果 (5 分間)
『性別』の違いによる感覚時間の差 有意差なし
『身長 170cm 未満、以上か』の違いによる感覚時間の差 有意差なし
『経験の有無』の違いによる感覚時間の差 有意差あり
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-120-
資料編
実験 .1
検定結果 (5 分間)
『実際の歩行速度と歩きたい速度との比較』の違いによる感覚時間の差 等分散かどうか
等分散でない
サンプル間に差があるか
有意差あり
どのサンプル間に差があるか
有意差あり
有意差あり
有意差あり
有意差あり
『歩きたい速度との違い』 : 「遅い - 少し速い」 「遅い - 速い」 「少し遅い - 少し速い」 「少し遅い - 速い」で有為差がみられた。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-121-
資料編
実験 .1
グラフによる結果 (10 分間)
性別
身長
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-122-
資料編
実験 .1
グラフによる結果 (10 分間)
被服状態
経験の有無
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-123-
資料編
実験 .1
グラフによる結果 (10 分間)
歩きたい速度との比較
速度
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-124-
資料編
実験 .1
検定結果 (10 分間)
『性別』の違いによる感覚時間の差 有意差なし
『身長 170cm 未満、以上か』の違いによる感覚時間の差 有意差なし
『経験の有無』の違いによる感覚時間の差 有意差なし
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-125-
資料編
調査 2 Data
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-126-
資料編
調査中の歩行軌跡 6/28
銀座
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
sample no.1
-127-
資料編
調査中の歩行軌跡 7/02
銀座
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
sample no.1
-128-
資料編
調査中の歩行軌跡 7/08
丸の内
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
sample no.2
-129-
資料編
街頭調査 Data
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-130-
資料編
9/13
街頭調査ーアンケートー
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-131-
第3章
東京駅周辺における空間移動実験
街頭調査 結果生データ A3 × 1 枚 23
8 女
20代 学生
買い物
まれに
4
5
4
4
4
4
3
24
8 女
20代 会社員
仕事
頻繁に
5
5
4
3
4
3
3
25
9 男
50代 会社員
仕事
まれに
5
5
4
1
1
1
3
26
9 男
30代 会社員
仕事
毎日
5
5
5
3
4
4
4 3
27
9 男
40代 会社員
仕事
たまに
5
4
5
5
1
3
28
10 男
20代 会社員
仕事
たまに
4
3
5
3
4
3
3
29
10 女
30代 会社員
仕事
まれに
4
5
4
4
1
1
4
30
10 男
40代 会社員
仕事
毎日
4
4
5
4
1
1
3
31
11 女
40代 その他
その他
まれに
5
5
4
1
1
1
3
32
11 男
40代 会社員
仕事
毎日
4
5
3
1
4
3
3
33
11 女
30代 専業主婦
買い物
まれに
5
5
3
3
5
4
3
34
12 女
20代 会社員
買い物
まれに
5
1
5
1
4
1
3
35
12 男
30代 会社員
仕事
毎日
5
3
4
1
4
4
4
36
12 女
40代 専業主婦
買い物
たまに
5
3
5
3
3
4
4
37
13 女
20代 学生
バイトの面接
まれに
3
4
1
4
5
4
4
38
13 男
50代 会社員
その他
たまに
1
1
4
1
4
4
3
39
13 女
20代 学生
買い物
たまに
1
1
4
4
4
4
3
40
14 男
30代 会社員
仕事
たまに
5
3
5
5
1
5
4
41
14 男
50代 会社員
仕事
頻繁に
4
3
4
5
5
5
5
42
14 女
20代 会社員
仕事
頻繁に
4
1
4
5
3
5
5
43
15 男
50代 会社員
買い物
毎日
3
4
5
4
4
4
4
44
15 女
20代 学生
買い物
たまに
1
4
5
5
5
5
4
45
15 女
20代 学生
買い物
まれに
1
1
5
5
3
3
5
46
16 男
50代 会社員
仕事
たまに
1
1
5
4
1
1
5
47
16 女
20代 学生
買い物
たまに
5
4
4
4
1
1
1
48
16 女
50代 会社員
仕事
まれに
4
3
3
3
3
4
3
49
17 女
20代 学生
ライブ
まれに
5
5
4
3
3
4
3
50
17 女
30代 無回答
買い物
たまに
5
5
5
4
1
1
4
51
17 男
40代 会社員
仕事
たまに
5
4
5
3
1
1
5
52
18 女
30代 会社員
仕事
毎日
5
4
4
4
4
5
3
53
18 女
30代 専業主婦
買い物
たまに
5
5
4
3
4
1
4
18 男
40代 会社員
仕事
毎日
5
4
4
3
3
3
3
19 女
40代 会社員
その他
まれに
4
1
4
5
1
1
1
56
19 女
20代 会社員
仕事
毎日
4
4
5
5
5
5
5
57
19 男
20代 会社員
仕事
毎日
4
1
4
5
3
3
3
58
20 男
30代 会社員
仕事
たまに
3
3
4
3
4
4
3
59
20 男
20代 会社員
仕事
毎日
4
4
1
4
4
4
4
60
20 男
30代 会社員
仕事
頻繁に
1
1
4
3
5
5
5
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
結果:街頭調査
54 55
-132-
資料編
街頭調査
ー主成分分析ー
FACTOR /VARIABLES 歩道の広さ 閉鎖ー開放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗の多さ 情報量の多さ 寂しいー騒がしい /MISSING LISTWISE /ANALYSIS 歩道の広さ 閉鎖ー開放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗の多さ 情報量の多さ 寂しいー騒がしい /PRINT INITIAL KMO EXTRACTION FSCORE /PLOT EIGEN ROTATION /CRITERIA FACTORS(3) ITERATE(99) /EXTRACTION PC /ROTATION NOROTATE /SAVE REG(ALL) /METHOD=CORRELATION.
因子分析 記録 出力の作成日付
02-10-2010 18:31:19
コメント 入力
データ
C:\Documents and Settings\健康ゼ ミ\デスクトップ\winishii\20101001 項目数12.sav
アクティブ データセット
データセット2
フィルタ
<なし>
重み付け
<なし>
分割ファイル
<なし>
リソース
作成された変数
Kaiser-Meyer-Olkin の標 本妥当性の測度 Bartlett の球面性検定
.571
近似カイ2乗
44.454
自由度
21
有意確率
.002
共通性 歩道の広さ
初期 1.000
因子抽出後 .876
閉鎖ー開放
1.000
.866
車通りの多さ
1.000
.846
歩行者の多さ
1.000
.748
店舗の多さ
1.000
.758
情報量の多さ
1.000
.769
寂しいー騒がしい
1.000
.613
因子抽出法: 主成分分析 説明された分散の合計 初期の固有値
作業データファイル内の 行数 欠損値処理
KMO および Bartlett の検定
24
抽出後の負荷量平方和
成分 1
合計 2.820
分散の % 40.287
累積 % 40.287
合計 2.820
分散の % 40.287
累積 % 40.287
2
1.570
22.427
62.714
1.570
22.427
62.714
1.086
15.512
78.227
3
1.086
15.512
78.227
欠損値の定義
MISSING=EXCLUDE: ユーザー欠損値は 欠損として取り扱われます。
4
.710
10.139
88.366
使用されたケース
LISTWISE: 統計量はすべての変数に 欠損値がないケースに基づいています。
5
.366
5.229
93.595
6
.268
3.831
97.426
シンタックス
FACTOR /VARIABLES 歩道の広さ 閉鎖ー開 放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗 の多さ 情報量の多さ 寂しいー騒がし い /MISSING LISTWISE /ANALYSIS 歩道の広さ 閉鎖ー開放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗の多 さ 情報量の多さ 寂しいー騒がしい /PRINT INITIAL KMO EXTRACTION FSCORE /PLOT EIGEN ROTATION /CRITERIA FACTORS(3) ITERATE (99) /EXTRACTION PC /ROTATION NOROTATE /SAVE REG(ALL) /METHOD=CORRELATION.
.180
2.574
100.000
プロセッサ時間
0:00:00.469
経過時間
0:00:00.485
必要な最大メモリ
7692 (7.512K) バイト
FAC1̲5
成分得点 1
FAC2̲5
成分得点 2
FAC3̲5
成分得点 3
7
因子抽出法: 主成分分析
[データセット2] C:\Documents and Settings\健康ゼミ\デスクトップ\winishii\20101001項目 数12.sav Page 13
Page 14
因子のスクリー プロット
成分プロット
3.0
2.5
車通りの多さ
1.0
歩行者の多さ
2.0
0.5
2
固 有 1.5 値
寂しいー騒がしい
歩道の広さ
の 成 分
情報量の多さ
0.0 閉鎖ー開放
店舗の多さ
-0.5
1.0 -1.0 -1.0
0.5
-0.5
0.0
1 の成分
0.5
5 1.0 1.0 0.
.0
.5 -1
0.0 -0
分 3 の成
0.0 1
2
3
4
5
6
7
成分番号 成分行列
a
主成分得点係数行列
成分
成分
歩道の広さ
1 -.731
2 .054
3 .582
歩道の広さ
1 -.259
2 .034
閉鎖ー開放
-.765
-.179
.498
閉鎖ー開放
-.271
-.114
.459
車通りの多さ
-.210
.865
-.230
車通りの多さ
-.075
.551
-.212
歩行者の多さ
.509
.629
.304
歩行者の多さ
.181
.401
.280
店舗の多さ
.661
-.555
.113
店舗の多さ
.235
-.353
.104
情報量の多さ
.814
-.031
.325
情報量の多さ
.289
-.020
.300
寂しいー騒がしい
.545
.286
.484
寂しいー騒がしい
.193
.182
.446
因子抽出法: 主成分分析
3 .536
因子抽出法: 主成分分析 成分得点
a. 3 個の成分が抽出されました
成分得点共分散行列 成分 1
1 1.000
2 .000
2
.000
1.000
3 .000 .000
3
.000
.000
1.000
因子抽出法: 主成分分析 成分得点
Page 15
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
FACTOR /VARIABLES 歩道の広さ 閉鎖ー開放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗の多さ 情報量の多さ Page 16
-133-
実験 3 Data
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-134-
資料編
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-135-
資料編
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-136-
資料編
実験 1 結果生データ A3 × 20 枚 23
8 女
20代 学生
買い物
まれに
4
5
4
4
4
4
3
24
8 女
20代 会社員
仕事
頻繁に
5
5
4
3
4
3
3
25
9 男
50代 会社員
仕事
まれに
5
5
4
1
1
1
3
26
9 男
30代 会社員
仕事
毎日
5
5
5
3
4
4
4 3
27
9 男
40代 会社員
仕事
たまに
5
4
5
5
1
3
28
10 男
20代 会社員
仕事
たまに
4
3
5
3
4
3
3
29
10 女
30代 会社員
仕事
まれに
4
5
4
4
1
1
4
30
10 男
40代 会社員
仕事
毎日
4
4
5
4
1
1
3
31
11 女
40代 その他
その他
まれに
5
5
4
1
1
1
3
32
11 男
40代 会社員
仕事
毎日
4
5
3
1
4
3
3
33
11 女
30代 専業主婦
買い物
まれに
5
5
3
3
5
4
3
34
12 女
20代 会社員
買い物
まれに
5
1
5
1
4
1
3
35
12 男
30代 会社員
仕事
毎日
5
3
4
1
4
4
4
36
12 女
40代 専業主婦
買い物
たまに
5
3
5
3
3
4
4
37
13 女
20代 学生
バイトの面接
まれに
3
4
1
4
5
4
4
38
13 男
50代 会社員
その他
たまに
1
1
4
1
4
4
3
39
13 女
20代 学生
買い物
たまに
1
1
4
4
4
4
3
40
14 男
30代 会社員
仕事
たまに
5
3
5
5
1
5
4
41
14 男
50代 会社員
仕事
頻繁に
4
3
4
5
5
5
5
42
14 女
20代 会社員
仕事
頻繁に
4
1
4
5
3
5
5
43
15 男
50代 会社員
買い物
毎日
3
4
5
4
4
4
4
44
15 女
20代 学生
買い物
たまに
1
4
5
5
5
5
4
45
15 女
20代 学生
買い物
まれに
1
1
5
5
3
3
5
46
16 男
50代 会社員
仕事
たまに
1
1
5
4
1
1
5
47
16 女
20代 学生
買い物
たまに
5
4
4
4
1
1
1
48
16 女
50代 会社員
仕事
まれに
4
3
3
3
3
4
3
49
17 女
20代 学生
ライブ
まれに
5
5
4
3
3
4
3
50
17 女
30代 無回答
買い物
たまに
5
5
5
4
1
1
4
51
17 男
40代 会社員
仕事
たまに
5
4
5
3
1
1
5
52
18 女
30代 会社員
仕事
毎日
5
4
4
4
4
5
3
53
18 女
30代 専業主婦
買い物
たまに
5
5
4
3
4
1
4
18 男
40代 会社員
仕事
毎日
5
4
4
3
3
3
3
19 女
40代 会社員
その他
まれに
4
1
4
5
1
1
1
56
19 女
20代 会社員
仕事
毎日
4
4
5
5
5
5
5
57
19 男
20代 会社員
仕事
毎日
4
1
4
5
3
3
3
58
20 男
30代 会社員
仕事
たまに
3
3
4
3
4
4
3
59
20 男
20代 会社員
仕事
毎日
4
4
1
4
4
4
4
60
20 男
30代 会社員
仕事
頻繁に
1
1
4
3
5
5
5
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
結果:街頭調査
54 55
-137-
資料編
実験 .3
検定結果
実験空間の違いによる感覚時間の有意差があるか 等分散かどうか
等分散
サンプル間に差があるか
有意差あり
どのサンプル間に差があるか
有意差あり
有意差あり
有意差あり
有意差あり
有意差あり
有意差あり
実験空間: 「1-4」 「2-4」 「3-4」 「5-4」 「6-4」で有意差がみられた。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-158-
資料編
実験 .3
検定結果
『自由度』の高さの違いによる感覚時間の差 等分散かどうか
等分散でない
サンプル間に差があるか
有意差あり
どのサンプル間に差があるか
有意差あり
有意差あり
有意差あり
『自由度』 : 「低い - 高い」 「普通 - 低い」 「普通 - 高い」で有為差がみられた。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-159-
資料編
実験 .3
検定結果
『注意度』の高さの違いによる感覚時間の差 等分散かどうか
等分散でない
サンプル間に差があるか
有意差あり
どのサンプル間に差があるか
有意差あり
有意差あり
有意差なし
『注意度』 : 「低い - 高い」 「普通 - 低い」で有意差がみられた。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-160-
資料編
実験 .3
検定結果
『スケール感』の大きさの違いによる感覚時間の差 等分散かどうか
等分散である
サンプル間に差があるか
有意差なし
『スケール感』 :有為差がみられなかった。
『歩きたい速度との比較』の速さの違いによる感覚時間の差 等分散かどうか
等分散でない
サンプル間に差があるか
有意差なし
『歩きたい速度との比較』 :有為差がみられなかった。
都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
-161-