U 1011
車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究 A Model of Vehicle Selection at Providing Congestion Information of Train
早稲田大学創造理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2010 年度 卒業論文 1X07A144-5 野田直利
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
はじ め に 電車の混雑はどうにかならないものかと思う インターネットの普及により場所の固有性というものは薄れはじめて早 10 年、し かし家と会社や学校という往復はあと数十年たっても確実になくなりそうもない Skype や Facetime を使えば遥か海の向こうの人とだってタイムラグ無く話せると いうのに、毎日毎日わざわざ時間をかけて電車で移動して会わなければならないと はおかしな話である しかし顔をつきあわせなければ始まらない話や出会いばかりの世の中であることも 確かだ 熱気や情熱は面と向かわなければ感じられないものだ なればこそ、せっかく会うのだから移動の電車で疲弊するようなことは避けられな いものかと思う
では現在進んでいる情報化により混雑緩和へとつながる道筋は存在しないのだろう か 社会全体と同様に駅や電車も情報化している 駅には監視カメラが張り巡らされ、車両にはバネセンサが設置されている 改札は Suica が主流となり、KIOSK やコンビニの会計だって Suica が使える これらの情報をもとに人間の行動を変えることはできないだろうか 「西暦 2010 年 -- 監視カメラのネットが駅を覆い 電子や光が駆け巡っても 混雑が 消えてなくなるほど 効率化されていない近未来」 とある SF 映画の冒頭の言葉のパロディーである 今の世の中の駅にぴたりとはまった言葉だと思う このようなことを考えつつ人間行動と情報建築のエキスパートがそろう渡辺仁史研 究室の門を叩いたのである。
001
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
目次 001 はじめに 002 目次 004 論文編 005
1章 研究概要
006
1-1 研究目的
007
1-2 研究概念
010
1-3 研究の流れ
011
1-4 用語の定義
013
2章 研究背景
014
2-1 鉄道利用状況に関して 2-1-1 乗車率の推移
016
2-1-2 車内行動の推移
017
2-1-3 特定の車両への乗降の集中
019
2-1-4 駅での設備設置にともなう利用者の負担
021
2-2 駅におけるモニタリングと利用者への情報提供 2-2-1 モニタリング
023
2-2-2 情報提供
025
2-3 既往研究の系譜 2-3-1 駅ホームにおける旅客研究
027
2-3-2 車内混雑に関する研究
029
2-4 研究の位置づけ
030
3章 研究方法
031
3-1 本研究で行った調査の概要
032
3-2 実地調査 3-2-1 実地調査の概要
034
3-2-2 車内行動の推移
036
3-2-3 ヒアリング調査
038
3-2-4 各改札の断面交通量
039
3-3 意識調査 3-3-1 意識調査の概要
040
3-3-2 実験的調査
046
3-3-3 アンケート調査
002
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
048
4章 実地調査の結果と分析
049
4-1 実地調査の調査の概要
051
4-2 ヒアリング調査 4-2-1 ヒアリング調査回答者の属性
053
4-2-2 乗車位置決定の理由
054
4-2-3 降車駅に関して
058
4-2-4 乗車時間と乗車位置決定理由
059
4-3 改札の断面交通量調査
060
5章 意識調査の結果と分析
061
5-1 意識調査被験者の属性 5-1-1 性別と年代
062
5-1-2 電車利用状況
064
5-2 実験的調査の結果 5-2-1 要因別の効用値
066
5-2-2 平均化された各要因の重要度
067
5-2-3 水準の拡張
068
5-3 アンケート調査の結果 5-3-1 最長乗車時間
069
5-3-2 乗車位置の固定とその理由
071
5-3-3 車両混雑情報案内に関して
072
6章 車両の混雑情報提供による乗車車両選択モデル
073
6-1 モデルの説明
074
6-2 ケーススタディー
079
6-3 モデルについての考察
080
7章 まとめ
081
7-1 研究のまとめ
082
7-2 課題と展望
084
参考文献
086
おわりに 資料編
003
論文編
第1章 研究概要 1 - 1 研究目的 1 - 2 研究概念 1 - 3 研究の流れ 1 - 4 用語の定義
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
1-1 目 的 車両の混雑情報提供を考慮した利用者の乗車車両選択モデルを明らかにし、車両の 混雑情報の提供を駅ホームの混雑緩和の手法とすることを目的とする。
第1章 研究概要
006
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
1-2 研 究 概 念 本研究は以下の概念に則って進める。 通勤電車で車両を選択する場合、 (図 1-2.1)の通りに二つの行動基準があると考 えられる。 A 移動にかかる時間を最小にするため、降車駅にて階段の近くで降りられる場所乗 車駅ホームで予め移動してから乗車すること。 B 移動の時間の質を向上させるため、混雑していない車両に乗車すること。
原動力となる欲求
乗車位置選択の要因 混
乗車駅 12 9
3 6
移動時間の最小化
移動時間の質の向上
空
降車駅
A
降車後すぐ改札に進めるように降車駅の 階段近くに停車する車両に乗車したい
B
混雑しない車両に乗車したい
図 1-2.1 乗車位置選択の要因
第1章 研究概要
007
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
A,Bともに時間に関する欲求に基づく行動であるといえる。「降車駅で階段付 近に停車する車両」は案内図などで確認することができ、時間により変化すること はない情報である。対して「混雑していない車両」を知るには経験に頼るほかない。 しかし、同じ列車にもかかわらず車両により混雑度が大きく異なること、また時刻 が数十分変わるだけで列車の混雑状況が大きく異なることは通勤、通学の朝、夕ラッ シュでは珍しくない。このような状況では駅利用者が混雑度を勘案して乗車する車 両を決定できているとは考えにくく、降車駅での階段からの距離のみが偏重して勘 案されている状況にあるといえる。
現状
提供時
⃝番線 ⃝△□・☆□⃝ 方面
18:37 ⃝△□ 行き 8
混雑しない車両 に乗りたい
降車駅で階段の近 くに停車する車両 に乗りたい
現状の車両選択の要因
利用者は車両の混雑状況がわからないため 充分な比較は行われていない
7
6 4
降車駅で階段の近 くに停車する車両 に乗りたい
5 3
2
1
⇒
混雑しない車両 に乗りたい
車両混雑情報の提供が行われた場合の車両選択の要因
車両混雑情報が提供された場合 いままで行われなかった比較がなされる
図 1-2.2 混雑情報提供による変化の概念
第1章 研究概要
008
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
現在、荷重を測定することによりリアルタイムで車両に乗車している人数を測定す ることが可能となり、利用者に到着する列車の車両ごとの混雑度を提供するサービス の実現は非常に蓋然性の高いものとなっている。しかし、利用者の車両選択モデルに ついては明らかにされていない。本研究は車両の混雑情報が提供された場合の利用者 の車両選択モデルを明らかにする。
現状 乗車駅
降車駅
乗車位置 混雑した車両を避けたいと考えいても、 どの車両が混雑しているかわからない。 ↓ 降車駅ですぐに移動できるように 階段近くに停車する1号車に乗ろう。
車両混雑度が提供された場合の利用者の車両選択モデル を明らかにする
車両混雑情報案内が実現した場合 乗車駅
降車駅
乗車位置 1号車は降車駅で階段が近いけど混んで いるから乗りたくないな。10 号車は座れ
⃝番線 ⃝△□・☆□⃝ 方面
18:37 ⃝△□ 行き 8
7
6 4
5 3
2
1
⇒
車両混雑度表示案内
るみたいだけど少し遠いな。 ↓ 降車駅で階段から遠くもなく、混んでい ない5号車にしよう。
図 1-2.3 混雑情報提供による乗車位置の変化のイメージ図
第1章 研究概要
009
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
1-3 研 究 の 流 れ 本研究は以下の流れですすめる。
既往文献、社会背景調査
研究テーマ確定
研究方法確定
実地調査
乗降者分布調査 ヒアリング調査 断面交通量調査
意識調査
実験的調査 アンケート調査
分析・考察
車両の混雑情報提供による 利用者の乗車車両選択モデルの構築
ケーススタディー 図 1-3.1 研究の流れ
第1章 研究概要
010
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
1-4 用 語 の 定 義 用語の定義を行う。 ・乗車率 電車の定員に対する乗車人数の比率のこと。混雑率とも。全ての座席、つり革、ポー ルが使用されている状態が定員乗車であり、この時を乗車率 100%と規定している。 各鉄道会社によって算出方法が異なり統一された算出方法は存在しておらず車両内 の人数の実測も困難であるため、車内の状況を目視調査することによる印象測定が 一般的である。 ・混雑度 乗車率は統一の指標でなく、 数値表示は利用者にとってわかりやすい指標ではない。 また、乗車率は目安が設定されてから時間が経過おり実際の利用状況との間に齟齬 が発生している。 本研究では「座れる」 「座れないが混雑しない」「混雑する」「大変混雑する」とい う4つの水準の混雑度を設定した。 ・車両混雑情報 到着する電車の車両ごとの混雑情報のこと。車両ごとの混雑度が4つの水準で色分 けされて表示される。これを利用者に提供するものを混雑情報案内 ( 図 1-4.1) とし、 改札、コンコース、ホーム上などに設置されることを想定している。 ⃝番線 ⃝△□・☆□⃝ 方面
18:37 ⃝△□ 行き 5 10
4 9
3 8
2 7
1
⇒
6
図 1-4.1 混雑情報案内 ・橋上駅 駅舎機能をプラットホームの上階に集中した駅のこと。垂直移動が必要となり維持 費はかかるが、その一方で駅機能の集中や高密化やバリアフリーが図りやすい。都 市圏における駅の大部分はこの形態である。 ・要因 本研究ではコンジョイント分析における選択の原因と定義する。例えば、車を買う 際に考慮される値段やデザインなどのことを要素という。
第1章 研究概要
011
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
・水準 コンジョイント分析で用いられる「要因」の代償の程度と定義する。値段という要 因の 10,000 円、5,000 円などが水準である。 ・効用値 各水準がどのように評価されているかを表す値。好まれている水準はプラスの値で、 好まれていない水準はマイナスの値で表される。 ・部分効用値 各要因の各要素がもつ効用値のこと。 ・要約効用値 各要因別に集約された効用値の値。 ・全効用 その組み合わせがどの程度好まれているかを表す値。各効用値と定数項の合計とし て算出することができる。 ・実験的調査 コンジョイント分析の過程における、被験者がコンジョイントカードを並び替える 調査のことを指す。 ・コンジョイントカード 実験的調査に用いられる被験者が並び替える複数のカードを指す。
第1章 研究概要
012
第2章 研究背景 2-1 鉄道利用状況に関して 2-1-1 乗車率の推移 2-1-2 車内行動の推移 2-1-3 特定の車両への乗降の集中 2-1-4 駅での設備設置にともなう利用者の負担 2-2 駅におけるモニタリングと利用者への情報 提供 2-2-1 モニタリング 2-2-2 情報提供 2-3 既往研究の系譜 2-3-1 駅ホームにおける旅客研究 2-3-2 車内混雑に関する研究 2-4 研究の位置づけ
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
2-1 鉄 道 利 用 状 況 に関して 2-1- 1 乗 車 率 の 推 移 朝夕の通勤、通学ラッシュ時における過剰な混雑が長年問題となっている。電車 の乗車率は複々線、運行ダイヤの効率化、路線の相互直通運転(図 2-1-1.1)など の取り組みにより緩和されつつあったが、1990 年頃以降は大きく変化していない (図 2-1-1.2) 。また、都心回帰の住宅動向はあるものの、通勤、通学に要する平均 所要時間(図 2-1-1.3)も同様に変化していない。以上のように乗車率と乗車時間 という観点から考えるに、近年の電車移動についての情勢は好転していない状況と いえる。 また、利用者のうち 60%が「電車の混雑の度合いは重要度が高い」と考えてい るなか、30%が車両の混雑状況について不満をもっている(図 2-1-1.4)。車両を 大型化して乗車定員を増やすことによる混雑緩和も軌道やホームの制約上これ以上 は不可能であり、駅での利用者が乗降に要する時間を考慮すると停車時間をこれ 以上短縮することも限界にあり、運行ダイヤの高密化もこれ以上は望めない状況と なっている。
図 2-1-1.1 相互直通運転の広がり (出典:平成20年度国土交通白書)
図 2-1-1.2 三大都市圏の乗車率の推移 (出典:平成20年度国土交通白書)
第 2 章 研究背景
014
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
80
平均所要時間(分)
75 70 首都圏
65
中京圏
60
近畿圏
55 50 平成2年
平成7年
平成12年
平成17年
図 2 - 1 - 1.3 通勤、通学の平均所要時 間 の 推 移 (出典:平成20年度国土交通白書)
図 2 - 1 - 1.4 車両、列車の混雑に対す る 重 要 度 と 満 足 度 ( 出典:平成20年度国土交通白書)
第 2 章 研究背景
015
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
2-1- 2 車 内 行 動 の 推移 鉄道利用者の車内での行動は、 かつては読書や音楽鑑賞しか考えられなかったが、 (文献1)稲葉直也、糸賀雅児:電 近年では携帯電話やスマートフォンによる Web 閲覧、メール作業、電子書籍など
車内における情報メディア利用の
様々なメディア利用が考えられるようになってきた。「電車内における情報メディ
実態、三田図書館・情報学会研究
(文献1)
ア利用の実態」
に(表 2-1-2.1)よると読書率は減少傾向にあるものの、本
や電子メディアを利用している割合は増えており、電車内におけるメディア利用の
大 会 発 表 論 文 集 2006 年 度 , 29-32, 2006
拡大が確認できる。電車利用の時間を単なる移動だけの時間とするのではなく、メ ディア利用により学習や情報検索に充てようという動向がみられる。その一例とし て電車内での時間を有効に活用しようとする書籍 ( 図 2-1-2.1) などが見られる。 また、 「二酸化炭素センサによる鉄道車両混雑度推定を用いたウェアラブル学習 (文献2)
システムのための利用者コンテキスト認識」
(文献2)中村友宣、小川剛史、清
によれば、利用者の動作や立位
川清、竹村治雄:二酸化炭素セン
時の場所、及び電車内の混雑度を認識するシステムの開発をおこなっている。展望
サによる鉄道車両混雑度推定を用
として電車内で利用者が学習を行える状況を自動で推定し、学校の授業や企業の研
いたウェアラブル学習システムの
修と連携した効果的な予習復習システムへの活用が考えられている。
た め の 利 用 者 コ ン テ キ ス ト 認 識、 電子情報通信学会技術研究報告 .
表 2-1-2.1 電車内における情報メディア利用実態の推移(文2より)
MVE 107(554), 49-54, 2008-03-15
図 2-1-2.1 通勤時間を勉強に充てる本
第 2 章 研究背景
016
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
2-1- 3 特 定 の 車 両 への乗降の集中 電車から降車する人が階段付近の車両に多く存在し、電車到着後のわずかな時間
(文献3)青木 俊幸 , 大戸 広道 , 都
にホームの階段付近に集中し、ホームの階段付近において過剰な混雑が発生するこ
築 知人 , 不破 徹 , 尾形 直樹:鉄道
とはよく知られていることである。 「鉄道駅における旅客流動研究に関する研究
駅における旅客流動に関する研究 :
(文献3)
その6」
によれば、最も降車旅客の多い扉では、全体の9%~5%の旅客が
その 5 ホーム階段配置と乗降分布、
集中しており、混雑が階段付近で著しくみえるのは、階段付近の高欄等の障害物に
学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I, 各
よる影響のみならず、乗降旅客の数も非常に多い事 ( 図 2-1-3.1) が原因である。以
種 建 物・ 地 域 施 設 , 設 計 方 法 , 構
上のように述べられ、ホーム階段付近での過剰な混雑原因についても降車客が目的
法計画 , 人間工学 , 計画基礎 1998,
地(降車駅)の混み合ったホーム上での移動を避けるために、降車駅の階段位置を
843-844, 1998-07-30
考慮して乗車位置を選んでいると述べられている。 特定の車両に乗降客が集中してしまうとそれだけ乗降に要する時間が長くなって しまう。 駅での電車停車時間は利用者が乗降に要する時間に大きく左右されており、 乗車降車ともに特定の車両に利用者が集中することは円滑な運行の妨げとなってし まう。とりわけ大都市圏の鉄道 ( 図 2-1-3.2) は 2-3 分程度で1駅を移動し、駅での 停車時間は 30 秒程度であり、停車時間が長くなることは運行の遅延に直結する非 常に大きな原因となっている。特定の車両への乗客集中の緩和は円滑なダイヤ運行 の必要条件であるが、駅員整列乗車やアナウンスといった現場対応の解決策しか行 われていない。
図 2-1-3.1 階段付近に集中する利用者(文献3より)
第 2 章 研究背景
017
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
図 2-1-3.2 間隔の短いダイヤ
(平日の浜松町 18:03 発の京浜東北線の発着時間と周辺のダイヤ)
第 2 章 研究背景
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2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
2-1- 4 駅 で の 設 備 設置にともなう利用者の負担 2006 年にバリアフリー新法が施行され、「どこでも、だれでも、自由に、使い やすく」というユニバーサルデザインが大きく推進されている。新法において一定 規模以上の旅客施設は 2010 年までに 100%のバリアフリー化が目標とされてお り、駅においても急ピッチで工事が進められている。首都圏の駅の大部分は橋上駅 となっており、ホームとコンコースは別階となっているところがほとんどである。 これらの上下階をつなぐエスカレーターやエレベーターの増設がとりわけ多く行わ れている。駅施設は代替がきかないので、使用を継続しながら工事を行うといった 手法がとられる。工事期間中はホームが通常より狭くなるので交錯流やネック部分 の発生(図 2-1-4.1)を招いてしまう。また、利用者対する配慮を行わなければな らないため工事に制約が発生してしまい、必然的に工事期間も長期化(図 2-1-4.2) してしまう。 また、ホーム上に全く新規にエスカレーターを設けるというのは駅の構造やホー ム上の駅員室や売店などの既存施設の配置を考えると困難であり、いままで階段で あった部分の一部をエスカレーターに作り替えるということが大部分である。バリ アフリーは実現できたものの、階段の幅員が減少してしまい、階段部分で激しい対 向流動が発生しホーム上での大規模な滞留や行列の発生につながっている。 また現在では、ホームでの転落事故や電車との接触事故の根絶を目指して可動柵の 設置が進められている。可動柵の設置は接触事故の低減というメリットはあるが、 ホーム上の面積の減少によるデメリット(図 2-1-4.3)もある。とりわけホーム上 の階段付近におけるより一層の混雑や滞留の発生が危惧されている。
図 2-1-4.1 工事による通路幅員の減少
第 2 章 研究背景
019
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
図 2-1-4.2 長期間に渡る工事
図 2-1-4.3 可動柵の設置による狭隘部の発生
第 2 章 研究背景
020
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
2-2 駅 に お け る モ ニタリングと利用者への情報提供 2-2- 1 モ ニ タ リ ン グ ―車両の乗車率を測定する技術― 電車の乗車率は車内の混雑状況を表し目視による測定が正とされ、時間帯別の利 用実態を明らかにすることを目的とした統計的な指標としてしか使われることはな かった。しかし、近年では車両にかかる荷重を測定し、リアルタイムで乗車率を取 得する技術が実現さえている。精度は目視よりも劣るものであるとされているが、 得られた乗車率、乗車人数のデータは冷暖房の調整、ブレーキの調整などに活用さ れている(図 2-2-1.1) 。現在は列車内での機械的な調整のためにしか活用されてい ないが、この情報を利用者に提供するサービスが考案されている。
図 2-2-1.1 車掌が管理する TIMS 画面
第 2 章 研究背景
021
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
―駅において滞留や人の歩行軌跡を測定する技術―
(文献4)鈴木健久、仲川ゆり、酒井
正常な旅客流動の監視や適正なサービスの評価を目的として、駅利用者の歩行軌
淳司:駅をスムーズにご利用いただ
跡や滞留状況のモニタリング技術が研究されている。駅内に偏在する多数のカメラ
く た め に、JR EAST Technical Review
を活用して駅全体の旅客流動の把握や予測に役立てることを目的として、監視カメ
No.24-SUMMER.2008
ラの映像データからリアルタイムで人数と移動方向を抽出する研究(図 2-2-1.2) が早稲田大学と (財) 鉄道技術総合技術研究所の共同により行われている。また、レー ザーセンサーを用いて旅客流動や滞留状況を測定する技術(図 2-2-1.3)の研究(文献4) が行われている。機器は安価ではないが、カメラの映像データと比べて重なりによ る損失が抑えられるために、 正確な行動軌跡や滞留状況の測定を行うことができる。
図 2-2-1.2 映像データより人の位置や歩行軌跡の算出を目指す
図 2-2-1.3 レーザーセンサーにより得られた歩行軌跡と滞留状況(文献4より)
第 2 章 研究背景
022
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
2-2- 3 情 報 提 供 駅や車両において利用者の利便性向上をはかるために様々な情報提示が行われて いる。電光掲示板による発車時刻の掲示や、駅の構内案内、行き先駅のホームの案 内(図 2-2-3.1)などが現在行われている代表例である。また、近年導入され始め た新型車両では、車両内に設置してあるディスプレイに次駅の案内図を表示し、利 用者が降車した後に迷わずにすむ案内(図 2-2-3.2)を行っている。
図 2-2-2.1 構内案内図と行き先駅のホーム案内
図 2-2-2.2 次駅の案内図 「 運 行情報の提供に関する研究・開 発 」(文献5) に よ れ ば お客さまに対する運行情報の提供に関しては、提供した運行情報により、
第 2 章 研究背景
023
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
お 客 さ ま が ご 自 身 で 理 解 し て 判 断、 行 動 し て 頂 く こ と が 大 き な 目 的 で あ る 。 そ の 実 現 の た め に、「 社 内 の 情 報 を オ ー プ ン に 」 し て い く こ と を 基 本 的 な 方 向 性 と し て い る。 な ぜ な ら は 、 運 行 や 事 象 を 把 握 し て い る 鉄 道 会 社 と し て は、 運 行 情 報 に 関 し て お 客 さ ま に 説 明 責 任 を 果 た す と 同 時 に 、 お 客 さ ま ご 自 身 で 判 断 し て 行 動 し て い た だ く か ら に は、 多 く の 速 報 性 の あ る 情報が不可欠だからである。 以上のような取り組みが進められており、運行情報ディスプレイや発車票 LED を利用した在線位置案内などが実現している。また、携帯電話に搭載 さ れ た GPS を 利 用 し た 現 在 地 を 考 慮 し た 運 行 情 報 の 提 供 や 、 視 覚 性 を 高 め た 情 報 提 供 方 法 の 検 討 や、 お サ イ フ ケ ー タ イ 等 に 利 用 さ れ て い る 非 接 触 型 IC タグを利用した運行情報の提供などの実験(図 2-2-2.3)が多く行われ ている。今後とも利用者に対する運行情報の提供は盛んに行われるものと 考 え ら れる。
図 2-2-2.3 利用者に対する情報提供の実験
第 2 章 研究背景
024
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
2-3 既 往 研 究 の 系 譜 2-3- 1 駅 ホ ー ム の 旅客流動に関する研究 本研究と密接に関係する駅ホームにおける旅客流動の研究を以下にまとめる。鉄
(文献6)島田 章義 , 井田 弘仁 , 服
道利用者の多くが乗車する位置をほぼ固定しており、その理由として降車駅又は乗
部 有紀子 , 青木 俊幸 , 都築 知人:
車駅の階段の位置が非常に大きいことが明らかとなっている。そのため、乗降人員、
鉄道駅における旅客流動に関する
とりわけ降車人員の分布が階段付近に集中することとなっている。乗降人員の分布
研究 : その 6 JR 西日本京都線におけ
はホーム上の階段の位置から定量的に予測することが可能となっている。安全や円
る旅客乗降分布に関する研究、学
滑な鉄道運行のために、乗降人員の集中を緩和すること、適切な誘導や流動規制を
術講演梗概集 . E-1 1999, 849-850
行うといった方法が有効であることが明らかとされている。 (文献7)都築 知人 , 青木 俊幸 , 島
・鉄道駅における旅客流動に関する研究 : その 6 JR 西日本京都線における旅客乗降 (文献6)
田 章義 , 小田 雄生 , 村井 孝至:鉄
分布に関する研究
道駅における旅客流動に関する研
プラットホームにおける階段位置と乗降人員の調査を行い、列車各扉の乗降人員
究 : その 7 JR 西日本京都線における
は乗降駅及び目的降車駅の階段配置に大きく影響され、階段直近扉の乗降人員が最
旅客乗降と列車停車時分に関する
大値を示すケースが多いことを明らかにした。とりわけ目的降車駅の階段配置が乗
研究、学術講演梗概集 . E-1, 建築計
降分布に大きく影響を与えていることがわかった。プラットホーム上での安全を確
画 I, 各種建物・地域施設 , 設計方法 ,
保する方法として乗降の分布をなだらかにして特定の扉の混雑を緩和すること、プ
構法計画 , 人間工学 , 計画基礎 1998,
ラットホーム上での降車客と乗車客の分離や的確な制御という2点をあげている。
847-848, 1998-07-30
(文献8)河合 邦治 , 青木 俊幸 , 大
・鉄道駅における旅客流動に関する研究 : その 7 JR 西日本京都線における旅客乗降 (文献7)
戸 広道 , 都築 知人 , 古賀 和博:鉄
と列車停車時分に関する研究
道駅における旅客流動に関する研
階段直近扉の乗降人数と乗降に要した時間、列車の停車時間の調査を行い、停車
究 : その 9 乗車位置選択の利用者意
時間と扉最大乗降人員との間には密接な関係が存在することを明らかにし、一般的
識調査、学術講演梗概集 . E-1, 建築
な流率として乗車 1.1 人 / 秒、降車 1.7 人 / 秒という値が与えられることがわかっ
計画 I, 各種建物・地域施設 , 設計方
た。停車時間を短縮する方法として駆け込み乗車をなくす、乗降分布をなだらかに
法 , 構法計画 , 人間工学 , 計画基礎
する、乗降スピードをあげるという3点をあげている。
1999, 847-848, 1999-07-30
・鉄道駅における旅客流動に関する研究 : その 9 乗車位置選択の利用者意識調査(文 献8)
(文献7,8)で明らかになった階段付近での乗降分布の集中の解明のために、利 用者に対して乗車位置選択について利用者の意識を把握するためのアンケート調査 と、路線単位の乗降分布の実態調査を行った。ほとんどの利用者がほぼ同じ位置か ら乗車しており、その理由として降車駅又は乗車駅の階段の位置が 80%を占めて おり、また車内の乗車率も一定の影響力を持つことがわかった。
第 2 章 研究背景
025
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
・鉄道駅における旅客流動に関する研究 : その 10 降車分布(文献9)
(文献9)青木 俊幸 , 大戸 広道 , 都
(文献 5,7,8)で明らかとなった降車人員の分布がプラットホーム上の階段により決
築 知人 , 河合 邦治 , 不破 徹 , 古賀 和
定されることより、降車人員分布予測手法を明らかにした。階段の配置と列車全体
博:鉄道駅における旅客流動に関
の降車人数から各扉の降車人員の推定を行うことができる。
する研究 : その 10 降車分布、学術 講演梗概集 . E-1 1999, 849-850,
・鉄道駅における旅客流動に関する研究 : その 11 乗降分布の予測(文献10)
(文献10)青木 俊幸 , 大戸 広道 ,
(文献9)の降車人員予測手法を用いて、先ず降りる場面を考え、降車側の駅の階
河合 邦治 , 古賀 和博 , 山根 清香 , 都
段配置からの予測を行い、降車駅各駅の降車分布に重みづけをしたうえで重ねあわ
築 知人:鉄道駅における旅客流動
せ、これを自駅の階段配置等を考慮して補正するという手法により乗車分布予測手
に関する研究 : その 11 乗降分布の
法を明らかにした。
予 測、 学 術 講 演 梗 概 集 . E-1, 2000, 1081-1082,
・混雑時のホームにおける乗降方式に関する研究 : その 1 大都市ターミナル駅にお (文献11)
ける乗降形態と規制方法についての実態調査
・混雑時のホームにおける乗降方式に関する研究 : その 2 大阪駅環状線ホームにお (文献12)
(文献11)安田 健一 , 江本 達哉 , 竹村 則雅 , 番匠 一郎 , 島田 章義 , 柴 崎 紳一郎 , 村井 孝至:混雑時のホー
ける乗降形態別旅客行動の実態調査
ムにおける乗降方式に関する研究 :
駅プラットホーム上での乗降形態や流動の規制方法、扉ごとの乗降者人数、列の人
その 1 大都市ターミナル駅におけ
数、乗降に要した時間についての実態調査により乗降分離、片側乗車、自然乗車な
る乗降形態と規制方法についての
どの乗降形態の分類を行った。乗降形態により乗降速度に違いがでることを明らか
実態調査、日本建築学会大会学術
にした。
講演梗概集 1996( 建築計画 1), 861862, 1996-07-30
(文献12)井田 弘仁 , 出井 歩 , 山 田 健介 , 島田 章義 , 林 稔子:混雑時 のホームにおける乗降方式に関す る研究 : その 2 大阪駅環状線ホーム における乗降形態別旅客行動の実 態調査、学術講演梗概集 . E-1, 1997, 727-728,
第 2 章 研究背景
026
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
2-3- 2 車 内 混 雑 に 関する研究
本研究において取り扱う乗車率(混雑率)についての研究を以下にまとめる。本 研究と同様に利用者に混雑情報を提供した際の乗車車両選択モデルについての研究 は存在するが、乗車位置決定の最大の理由である降車駅での階段の位置についての 十分な考慮が行われておらず、複数車両での平均の混雑率を扱っており隣接車両で も混雑率が大きく変わることが珍しくない現状に対応できていない。また、同様の 社会実験は存在するが、これは1車両の路面電車で行われた社会実験なので、多車 両で編成されている都市鉄道への適応は難しい。
・実測調査に基づく鉄道通勤旅客の行動分析(文献13)
(文献13)家田仁、佐野可寸志:
鉄道利用者の混雑に対する肉体的・心理的不快の定量化を行い、乗客の乗車位置選
実測調査に基づく鉄道通勤旅客の
択行動モデルを記述し、これに基づいてホーム上での乗車位置分布を再現するモデ
行動分析、日本行動計量学会大会
ルの構築をしている。
発表論文抄録集 20, 140-143, 199209-21
・電車内における人の立ち位置モデルとシミュレーション(文献14)
(文献14)藤田洋子、高橋幸雄:
電車内における人の立ち位置のシミュレーションを「周囲の乗客からの影響」「車
電車内における人の立ち位置モデ
両の構造による影響」 「乗降時の影響」などを考慮して行っている。混雑度や降車
ルとシミュレーション、2000 年度
人数による平均降車時間などの算出も行っており、車両内の状況から駅ホームでの
日本オペレーションズ・リサーチ
流動の考察を行っている。
学会 秋季研究発表会
( 文 献 1 5) 松 田 博 和、 轟 朝 幸:
・松田博和、轟朝幸:都市鉄道における混雑情報提供による乗車変更行動の分析(文 献15) ・都市鉄道におけるリアルタイムな混雑情報提供の有用性の検討―乗車選択行動モ
都市鉄道における混雑情報提 供 に よ る 乗 車 変 更 行 動 の 分 析、 http://www.trpt.cst.nihon-u.ac.jp/
デルを用いて―(文献16)
PUBTRPLAN/zirei/05_matsuda.pdf、
駅利用者に対して意識調査を行い、その結果を元に駅利用者に対して車両混雑情報
LastAccess 2010/11/05
が提供された場合の乗車選択行動モデルを明らかにした。混雑率、待ち時間、情報 提供場所からの移動距離などを考慮したモデルとなっており、シミュレーションに
( 文 献 1 6) 水 野 隆 二、 轟 朝 幸:
より車両混雑情報の有用性を明らかにしている。しかし、乗車位置決定の最大理由
都市鉄道におけるリアルタイムな
である降車駅階段からの距離については十分な考察がなされていない。
混雑情報提供の有用性の検討― 乗 車 選 択 行 動 モ デ ル を 用 い て ―、 http://www.trpt.cst.nihon-u.ac.jp/ PUBTRPLAN/member/graduate/ outline/2009/mizuno.pdf 、 LastAccess 2010/11/05
第 2 章 研究背景
027
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
・路面電車利用者への混空情報提供の有用性の検証(文献17)
(文献17)轟朝幸、松本修一、松田
高知県の土佐電氣鐵道ごめん線において路面電車の混雑情報を表示する情報板を設
博和:路面電車利用者への混空情報
置してリアルタイムで混雑情報を利用者に提供する社会実験を行い、混雑情報提供
提供の有用性の検証、運輸行政研究
の有効性を示している。都市鉄道にそのまま応用できる例ではないが、混雑情報提
Vol.11、No.1、2008Spring、pp17-24
供に需要が存在していることを明らかにしている。
第 2 章 研究背景
028
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
2-4 研 究 の 位 置 づ け 既往研究により、鉄道利用者の大半は乗車位置をほぼ固定しており、この理由は降 車駅の階段の位置によるものが大きいため降車人員の分布が階段付近に集中すること があきらかになっている。これは利用者が乗降駅での階段配置を充分考慮しているた めであるが、車両の混雑度に関しては変動が大きいため考慮されているとは考えにく い。混雑情報が提供されることにより車両の混雑度が乗降駅での階段配置と同様に考 慮された場合、車両混雑度と降車駅階段の要因のバランスを考慮した乗車車両選択モ デルの研究を行う。既往研究では要因をどちらか片方を択一的なものとして扱ってお り、要因のバランスを考慮した乗車車両選択モデルに関する研究は行われていない。
乗車駅
降車駅
乗車位置 1号車は降車駅で階段が近いけど混んで
⃝番線 ⃝△□・☆□⃝ 方面
いるから乗りたくないな。10 号車は座れ
18:37 ⃝△□ 行き 8
7
6 4
るみたいだけど少し遠いな。
5 3
2
1
⇒
車両混雑度表示案内
↓ 降車駅で階段から遠くもなく、混んでい ない5号車にしよう。
降車駅で階段の近 くに停車する車両 に乗りたい
混雑しない車両 に乗りたい
要因のバランスを考慮した乗車車両選択モデル 図 2-4.1 研究の位置づけ
第 2 章 研究背景
029
第3章 研究方法 3-1 本研究で行った調査の概要 3-2 実地調査 3-2-1 実地調査の概要 3-2-2 車内行動の推移 3-2-3 ヒアリング調査 3-2-4 各改札の断面交通量 3-3 意識調査 3-3-1 意識調査の概要 3-3-2 実験的調査 3-3-3 アンケート調査
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
3-1 本 研 究 で 行 っ た調査の概要 本研究でおこなった調査の概要について述べる。本研究は大別して2種類の調査 として実地調査と意識調査を行った(図 3-1.1)。実地調査では駅ホームにおける 利用者の分布等を明らかにすることを目的として、乗降者数調査、ヒアリング調査、 断面交通量調査を行った。意識調査では利用者が乗車する位置を決定する要因間で のバランスを明らかにすることを目的として、実験的調査とアンケート調査を行っ た。これを分析、考察することにより混雑情報が提供された場合の車両選択モデル の構築を行う。
調査
実地調査
乗降者数調査
車両ごとの乗降者数、列の人数
ヒアリング調査
降車予定駅、乗車場所決定理由
断面交通量調査
改札入構者の断面交通量
意識調査
実験的調査 コンジョイント分析用
アンケート調査
利用実態のアンケート調査
分析、考察へ 図 3-1-1 調査の位置づけ
第 3 章 研究方法
031
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
3-2 実 地 調 査 3-2- 1 実 地 調 査 の 概要 実地調査では駅ホームにおける利用者の分布等を明らかにすることを目的とし て、乗降者数調査、ヒアリング調査、断面交通量調査を行った。各調査の調査方法、 調査日時については各節で述べる。 調査場所:JR 大森駅 (図 3-2-1.1) (図 3-2-1.2) (図 3-2-1.3) (図 3-2-1.4)
図 3-2-1.1 大森駅路線図
図 3-2-1.2 大森駅構内図
第 3 章 研究方法
032
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
図 3-2-1.3 大森駅ホーム図
図 3-2-1.4 調査場所写真
第 3 章 研究方法
033
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
3-2- 2 車 内 行 動 の 推移 ホームにおける乗降人員分布を求めるために車両ごとの乗降者数調査を行った。 調査の詳細は以下の通りである。 ・調査場所:JR 大森駅 1 番線 京浜東北線(南行) ・調査日時:2010 年 10 月 20 日 18:35-19:42 ・調査対象:調査時間内に調査駅を発車したうち 16 列車 ・調査内容:車両ごとの乗車者数、降車者数、再乗車者数、列車到着時の列の人数 ・調査手法 まず乗車者数調査について述べる。調査員の目視によるカウント調査を行った。 ドアごとに 1 名の調査員を配置することが理想であるが、調査員の数が限定され たために以下の通りの調査手法 (図 3-2-2.1)をとった。調査手法を検討するにあたっ ては「ホームにおける通勤降車客分布」(文献 18)を参考にした。
上原 孝雄 , 渡部 貞清 , 栗山 好男 , 吉田
車両に 1 人ずつ調査員を配置し、10車両編成につき計10人の調査員により
紘一 , 荘野 徳夫:ホームにおける通勤
調査を行った。1度の列車の発着で1つのドアを対象に測定を行い、次以降の列車
降車客分布 : 建築計画、大会学術講演
の発着では順次異なるドアを対象に測定を行った。今回調査した路線の車両は4ド
梗 概 集 . 計 画 系 44( 計 画 系 ), 377-378,
アにつき、4回の測定を重ねあわせた合計人数を車両の乗車人数とした。電車の発
1969-07-23
車時刻、行き先と測定したドア番号は以下(表 3-2-2.1)の通りである。表の通り 車両あたり合計16回の調査を行った。次駅とまりの列車については乗車数が見込 めなかったので調査を行わなかった。 降車人数、 再乗車人数、 列車到着時の列の人数についても同様の方法で調査を行っ た。 表 3-2-2.1 調査を行った列車の発車時刻、行き先とドア番号
第 3 章 研究方法
034
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
4ドア
3ドア
2ドア
1ドア
1度目の列車では 1ドアで測定 2度目の列車では 2ドアで測定 3度目の列車では 3ドアで測定 4度目の列車では 4ドアで測定 5度目の列車では 1ドアで測定
…
時間
順次異なるドアで測定を行う 図 3-2-2.1 調査手法
第 3 章 研究方法
035
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
3-2- 3 ヒ ア リ ン グ 調査 ホームでの乗車位置と乗車理由を明らかにするために、駅利用者に対してヒアリ ング調査を行った。調査の詳細は以下の通りである。 ・調査場所:JR 大森駅 1 番線 京浜東北線(南行) ・調査日時:2010 年 10 月 20 日 19:00-20:00
2010 年 10 月 25 日 18:30-20:00
2010 年 10 月 26 日 18:30-20:00
2010 年 10 月 27 日 18:30-20:00
2010 年 10 月 29 日 18:30-20:00
・調査対象:ホームで列車を待つ利用者 ・調査内容:乗車位置決定の理由、降車駅、コンコースからホーム ・調査方法:口頭によるヒアリング、目視による性別と年代調査 ホームで列車の到着を待つ利用者の中から無作為に選択し、以下の質問を行った。 質問3と質問4については、回答者に回答表(図 3-2-3.1)を見せ、その中から選 んでもらった。 質問1: 「あなたは日常的にこの駅を利用していますか」 質問2: 「降車駅を教えてください」 質問3: 「ホームのこの場所から電車に乗ると思いますが、その理由をこの中から 教えてください」 質問4: 「改札からホームにどの階段を使ったかこの中から教えてください」
・回答依頼総数:不明 ・回答数:111 名 ・有効回答数:101 名
第 3 章 研究方法
036
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
図 3-2-3.1 回答表
第 3 章 研究方法
037
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
3-2- 4 各 改 札 の 断 面交通量調査 乗降人数分布、各改札の入構者の断面交通量調査を行った。調査の詳細は以下のと おりである。 調査場所:中央口改札(図 3-2-4.2) 調査時間:2010 年 10 月 20 日 18:45-18:55、19:15-19:25 調査場所:北口改札 調査時間:2010 年 10 月 20 日 19:00-19:10、19:30-19:40 調査方法:目視によるカウント調査
中央口改札
北口改札
図 3-2-4.1 改札の位置
図 3-2-4.2 中央口改札
第 3 章 研究方法
038
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
3-3 意 識 調 査 3-2- 1 意 識 調 査 の 概要 利用者が乗車する位置を決定する要因のバランスを明らかにすることを目的とし て意識調査を行った。コンジョイント分析による各水準の定量化を目的とした実験 的調査、それに付随して択一的な設問のアンケート調査を行った。 ・調査概要 配布人数:120 人 対象人数:107 人 集計期間:2007 年 10 月 26 日~ 31 日
第 3 章 研究方法
039
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
3-2- 2 実 験 的 調 査 ◆コンジョイント分析についての概説 - コンジョイント分析について コンジョイント分析とはたとえば消費者が商品を選ぶときに、その商品のどのよう な点を重視しているのかを定量的に明らかにする手法である。また要因同士を相対 的に比較できることが特徴的である。SD 法や択一式設問では、その要因が重要で あるか否かを明らかにすることができるが、要因同士の重要度を定量的に算出する ことはできない。この要因同士を相対的に比較点できる点がコンジョイント分析の 優れた点である。アメリカの調査会社のうち 75%が使用経験をもつというほどポ ピュラーであるが、日本ではまだあまり使用されていない。 - コンジョイント分析の利点 ・選択した要因を直接尋ねる SD 法などでは「すべて重要」という回答が非常に多 くなるなど、要因間の相対的な重要度を把握することが困難であった。コンジョイ ント分析では、複数の要因間でいずれの要因が重視されているかを相対化して明瞭 に表現できる。 ・分析結果をもとにシミュレーションができる。 ・被験者は個別のパラメータを意識せず、ひとつの事例として総合的に判断できる ため、現実に即した結果が得られやすい。 すなわちコンジョイント分析、現実に即した結果として要素間の重要度を定量化す ることに適した分析手法である。 - コンジョイント分析の具体的な手順 1.要因と水準の決定 2.直行配列表を使った項目の絞込み 3.コンジョイントカードの作成 4.調査実施 すべての要因・水準の組み合わせではコンジョイントカードが膨大になってしまう ため、SPSS などのソフトを用いて実験計画法に基づいて最低限必要な組み合わせ に絞り込み実験を行う。また、被験者による回答法は以下の種類がある。 ・リッカート方式 ・順位付け方式 ・並べ替え方式(カード式) 本研究では、もっとも正確な結果が得られる「並べ替え方式」を選んだ。
第 3 章 研究方法
040
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
◆調査準備 - 既往調査・資料 コンジョイント分析を行うためには、被験者が乗車する車両を選択する際に検討す る要因を設定した。この作業にあたり文献調査、実地調査の結果を参考にした。 その結果、主な要因として以下が挙げられることが分かった。 1.降車駅での階段からの距離 2.車両の混雑度 3.乗車駅での階段からの距離 4.降車駅での EV までの距離 5.乗車駅での EV までの距離 6.乗車駅でベンチや自動販売機や喫煙所までの距離 7.女性専用車両、弱冷房車など車両の性質 今回は車両の選択に関する調査を行うために、特に1番、2番について着目した。 3 番の「乗車駅での階段からの距離」を取り入れなかった理由であるが、「降車駅 での階段からの距離」と「乗車駅の階段からの距離」の距離で二つのパラメータが 設定されると回答が非常に困難となってしまうためである。 ・時間帯と利用シチュエーション 日常的な使用者が多く混雑が発生し,利用者にある程度の時間的余裕が存在する時 間帯として夕方の通勤通学の帰宅ラッシュを想定した。 ・要因と水準の決定 前項の要因から要因数と生成されるカード数の限界を考慮し、3-2 で行った調査の 結果を踏まえて以下の2つを本研究で用いる要因として設定した。 要因 1:降車駅での階段までの距離 要因 2:車両の混雑度 また、水準は以下の表のように設定した。 図 3-3-3.1 要因と水準の一覧
第 3 章 研究方法
041
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
設定の根拠は以下の通りである。 要因 1:降車駅での階段までの距離 駅での降車人数の分布をとると、階段直近の車両からの降車人数がもっとも多い ことが明らかになっている(文献8) 。また、一般的な列車編成は10車両程度が 一般的であり、このとき駅中央に階段がある場合は階段から6車両程度の距離で最 端の車両まで到達できる。これより1車両以内、6車両程度、およびその中間であ る3車両程度の3つの水準を設定した。 要因2:車両の混雑度 車両を選択する際に最も考慮することが座れるか否かである。また、体が密着し 始めること、 圧迫感を感じることなどが基準としてあげられる。これより「座れる」 「座れないが混雑しない」 「混雑する」 「大変混雑する」という4つの水準を設定した。 混雑度と乗車率の対応はおおよそ以下の通り(表 3-3-1.2)とする。実際の車両内 での利用実態を考慮して適宜調整を行い、鉄道局の指針(図 3-3-2.1)となってい る乗車率より低い値とした。 表 3-3-3.2 混雑度と乗車率と対応
図 3-3-3.1 乗車率の目安(出典:国土交通省 平均混雑率の推移より)
第 3 章 研究方法
042
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
- コンジョイントカードの作成 前項で作成した要因・水準を PC 上のソフトに入力すると、調査で用いられる 12 種類の組み合わせが実験計画法に基づいて生成される。この作業を行うにあたって、 本研究では SPSSver17 を用いた。本調査では精度を高めるためにすべての組み合 わせのコンジョイントカードを活用した。 次に 12 通りの組み合わせを「並べ替え方式」の手法に従い、1 枚 1 枚のカードと して作成した。作成にあたり被験者が、実際の車両をイメージしやすいように言葉 だけではなく写真を付し(図 3-3-3.2) 、また「混雑する 体がふれあい始めるが週 刊誌程度なら楽に読める」 といった具体的な指標を示した。全種類のカードは次ペー ジに収録してある。
カードの条件の種類と手順説明
車両の混雑度 4種類
降車駅で 階段からの距離 3種類
座れる
座れないが混雑しない
混雑する
1車両以内
3車両程度
6車両程度
図 3-3-3.2 カードシートの説明図 CG J
順位 1
…D K
12 枚に切り分けます
乗りたいと思う順番に 並び変えてください
3
11
12
…
カード 乗りたい
カードシートを A∼L の
2
大変混雑する
乗りたくない
順番を回答欄に記入してください
第 3 章 研究方法
043
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
カードシート
A
車両の混雑度
混雑する
B
降車駅で階段からの距離
降車駅で階段からの距離
3車両程度
6車両程度
階段から60m程度の距離 階段まで歩行するのに40秒程かかる
階段から120m程度の距離 階段まで歩行するのに80秒程かかる
車両の混雑度
混雑する
D
降車駅で階段からの距離
1車両以内
1車両以内
座れる
階段から20m以内の距離 階段まで歩行するのに15秒程かかる
F
降車駅で階段からの距離
6車両程度
3車両程度
座れる
階段から120m程度の距離 階段まで歩行するのに80秒程かかる
H
座席に空席があり座れる
3車両程度
6車両程度
座れる
階段から60m程度の距離 階段まで歩行するのに40秒程かかる
J
座席に空席があり座れる
6車両程度
1車両以内
大変混雑する
体がふれあい圧迫感がかかる 窮屈だが携帯の操作は不可能ではない
降車駅で階段からの距離
1車両以内
階段から20m以内の距離 階段まで歩行するのに15秒程かかる
大変混雑する
降車駅で階段からの距離 階段から120m程度の距離 階段まで歩行するのに80秒程かかる
階段から20m以内の距離 階段まで歩行するのに15秒程かかる
車両の混雑度
車両の混雑度 体がふれあい圧迫感がかかる 窮屈だが携帯の操作は不可能ではない
降車駅で階段からの距離
K
大変混雑する
降車駅で階段からの距離
階段から120m程度の距離 階段まで歩行するのに80秒程かかる
車両の混雑度
車両の混雑度 体がふれあい圧迫感がかかる 窮屈だが携帯の操作は不可能ではない
降車駅で階段からの距離
I
座れないが混雑しない 降車駅で階段からの距離
階段から60m程度の距離 階段まで歩行するのに40秒程かかる
車両の混雑度
車両の混雑度 空席はないが体は触れあわず 楽に新聞を読める
座席に空席があり座れる
G
座れないが混雑しない 降車駅で階段からの距離
階段から20m以内の距離 階段まで歩行するのに15秒程かかる
車両の混雑度
車両の混雑度 空席はないが体は触れあわず 楽に新聞を読める
体がふれあい始めるが 週刊誌程度なら楽に読める
E
座れないが混雑しない 空席はないが体は触れあわず 楽に新聞を読める
体がふれあい始めるが 週刊誌程度なら楽に読める
C
車両の混雑度
L
車両の混雑度
混雑する
体がふれあい始めるが 週刊誌程度なら楽に読める
降車駅で階段からの距離
3車両程度
階段から60m程度の距離 階段まで歩行するのに40秒程かかる
第 3 章 研究方法
044
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
◆実験的調査の実施方法 作成したコンジョイントカードを使用して実験的調査を行った。12 枚の条件が異 なる車両が記入されているコンジョイントカードを、被験者が乗りたいと思う順に 並び替えてもらいその順番を回答してもらった。被験者の負担を軽減するために、 コンジョイントカードは全て切り離した状態で配布を行った。基本的に調査時に調 査人は対面せず、被験者にアンケート用紙を読んでもらい、自力で回答してもらっ た。 また今回の調査では、知人を通じて調査対象へコンジョイントカードの配布をおこ ない、 対象者の年齢構成比率が駅利用者の年齢構成比率と近くなるように留意した。 配布した教示文章、コンジョイントカードは資料編に収録している。
第 3 章 研究方法
045
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
3-3- 3 ア ン ケ ー ト 調査 利用者の鉄道利用に対する意識を明らかにすることを目的としてアンケート調 査を行った。設問と選択肢は以下の通りである。配布したアンケートは資料編に 収録している。 質問1 あなたの性別と年齢を教えてください。
1 □男性
2 □女性
年齢[ ]歳
質問2 通勤、通学の帰宅時で電車を利用する時間を教えてください。
1 □通勤、通学で電車を利用しない。(→ Q 7へおすすみください。)
2 □ 10 分以内
3 □ 10 分以上 30 分未満
4 □ 30 分以上 60 分未満
5 □ 60 分以上 90 未満
6 □ 90 分以上〜 120 分未満
7 □ 120 分以上
質問3 通勤、通学の帰宅時の乗換の回数(電車、バス、モノレール含む)を教えてくだ さい。
1 □ 1 回
2 □ 2 回
3 □ 3 回
4 □ 4 回
5 □ 5 回以上
6 □乗り換えをしない
第 3 章 研究方法
046
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
質問4 通勤、通学の帰宅時に利用する路線のなかで、一番長く乗車する路線での乗車時間 を教えてください。
1 □ 10 分以内
2 □ 10 分以上 30 分未満
3 □ 30 分以上 60 分未満
4 □ 60 分以上 90 未満
5 □ 90 分以上〜 120 分未満
6 □ 120 分以上
質問5 通勤、通学の帰宅時にホームで電車に乗車する位置について教えてください。
1 □何号車に乗車するかを決めていて、いつもその場所で乗車する
2 □何号車に乗車するかを決めているが、乗る場所は多少前後する
3 □何号車に乗車するかを決めていないが、おおよそ同じ場所から乗車する
4 □どの車両に乗車するか明確に決めておらず、場所もまちまちである。
5 □その他[
(→ Q 7へおすすみください。) (→ Q 7へおすすみください。)
]
質問6 通勤、通学の帰宅時にホームで電車に乗車する場所を決めている第1の理由を教 えてください。
1 □ 乗車する車両が混雑しないこと
2 □ その場所が乗車する駅の階段から近いこと
3 □ 降りる駅での停車位置が階段から近いこと
4 □ その他[
5 □ 特に理由はない
]
第 3 章 研究方法
047
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
質問7 以下の図のような「車両の混雑度表示案内」が実現された場合に参考にするか、ま た実際に乗車する車両の変化ついて教えてください。 ⃝番線 ⃝△□・☆□⃝ 方面
18:37 ⃝△□ 行き 5 10
4 9
3
2
8
7
1
⇒
6
1 □ 乗る車両を選ぶ際の参考にし、実際乗る車両も変わると思う
2 □ 乗る車両を選ぶ際の参考にするが、実際乗る車両は変わらないと思う
3 □ 参考にしない
4 □ わからない
5 □ その他[
]
第 3 章 研究方法
048
第4章 実地調査の結果と分析 4-1 実地調査の調査の概要 4-2 ヒアリング調査 4-2-1 ヒアリング調査回答者の属性 4-2-2 乗車位置決定の理由 4-2-3 降車駅に関して 4-2-4 乗車時間と乗車位置決定理由 4-3 改札の断面交通量調査
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
4-1 実 地 調 査 の 概 要 調査の結果、以下の通りの乗者分布と列車到着時の列の人数分布 ( 図 4-1.1)、降 車分布 ( 図 4-1.2) を得た。なお、各ドア別の計測値データについては資料編に収録 する。 乗車人数分布は 10 車両 7 車両 4 車両に明らかなピークが存在し、列の人数もお おむね乗車人数と同様の傾向を示している。乗車人数と列の人数の差が大きい車両 は 10 車両、6車両、7車両、4 車両となっておりこれはホーム上の階段場所(図 4-1.3)と一致する。 降車人数分布は 10 車両 6 車両 4 車両に明らかなピークが見られ、これも同じく ホーム上の階段と一致している。乗車人数分布に比べて大きな差がある分布となっ ている。2-4 節で述べたとおり青木らの研究(文献9)により朝ラッシュ時におけ る駅ホームでの降車分布は階段付近に強く集中傾向があることが明らかとなってい るが、 同様の傾向が夕ラッシュでも存在することが確認できた。このことから夕ラッ シュにおいても利用者は降車駅の階段配置を充分考慮した乗車位置選択を行ってい るといえる。
図 4-1.1 乗車人数分布
第 4 章 実地調査の結果と分析
049
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
図 4-1.2 降車人数分布
図 4-1.3 ホームの階段配置図
第 4 章 実地調査の結果と分析
050
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
4-2 ヒ ア リ ン グ 調 査 4-2- 1 ヒ ア リ ン グ 調査回答者の属性 ヒアリング調査の回答者の属性は以下の通り(表 4-2.1)( 図 4-2-1.1) ( 図 4-2-1.2) である。ヒアリング調査を行うにあたっては乗降者数とヒアリング回答者の割合 ( 図 4-2-1.3) が等しくなるように留意した。
図 4-2-1.1 ヒアリング調査回答者の性別
図 4-2-1.2 ヒアリング調査回答者の年代
第 4 章 実地調査の結果と分析
051
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
18.0% 16.0% 14.0%
12.0% 10.0%
8.0%
6.0% 4.0% 2.0%
10
9 8 7 6 5 4 3 2 1
0.0%
図 4-2-1.3 車両ごとのヒアリング調査回答者数と乗降者数のそれぞれの対象者総数 における割合
第 4 章 実地調査の結果と分析
052
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
4-2- 2 乗 車 位 置 決 定の理由 ヒアリング調査の結果から以下の通りの乗車位置決定理由の割合 ( 図 4-2-2.1) を得た。乗車位置決定の第1理由が「降車駅の階段から近いこと」であり、これ が回答者全体の 59% を占め、これとくらべると「乗車駅の階段から近い」こと や 「電車が混雑しない」 ことはそれぞれ10%と7%という非常に小さい値であっ た。このことから現状として車両の混雑率は乗車位置の決定の大きな理由とは なっていないことが明らかとなった。また、20%の人が「その他」として回答した。 その他の内訳としては「特に理由がない」というものが最も多かった。また「ホー ムの疎の場所がすいていたから」という理由もあった。それ以外は「乗り過ごし て戻る途中」 「上司から電話があり下車しただけ」といった例外的な状況による ものであった。不明は、理由の複数回答が大半であった。
図 4-2-2.1 乗車場所決定理由
第 4 章 実地調査の結果と分析
053
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
4-2- 3 降 車 駅 に 関 して 各車両と乗客の降車駅の相関を明らかにすることを目的として、乗客の降車予定 駅についてヒアリング調査を行い、以下の通りの結果(表 4-2-3.1)を得た。降車 駅の割合(図 4-2-3.)では蒲田、川崎、横浜といった他路線との乗換駅が大きな割 合を占めており、乗換路線が存在しない駅で降車する乗客は少ない。 表 4-2-3.1 車両別の降車予定駅の割合
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図 4-2-3.1 降車駅の割合
第 4 章 実地調査の結果と分析
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2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
車両別の各駅で降車する大森駅での乗車人数(図 4-2-3.2)では、降車駅ごとにより 明確に異なるピークを確認することができた、このピークの位置は車両別の各駅ごとの 降車予定人数(図 4-2-3.3 〜 7)でグラフ中に示した階段の位置とおおよそ一致するこ とが明らかになった。図示にあたってはデータ数が多い上位5駅を選択した。このこと から 4-1 で示した通り、夕ラッシュにおいても利用者は降車駅の階段配置を充分考慮し た乗車位置選択を行っているといえる。なお、個人ごとのアンケート回答データは資料 編に収録する。
図 4-2-3.2 車両別の各駅で降車する大森駅での乗車人数
図 4-2-3.3 車両別の蒲田駅で降車する大森駅での乗車人数
第 4 章 実地調査の結果と分析
055
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
図 4-2-3.4 各車両の川崎駅で降車する大森駅での乗車人数
図 4-2-3.5 各車両の鶴見駅で降車する大森駅での乗車人数
図 4-2-3.6 各車両の横浜駅で降車する大森駅での乗車人数
第 4 章 実地調査の結果と分析
056
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
図 4-2-3.7 各車両の東神奈川駅で降車する大森駅での乗車人数
第 4 章 実地調査の結果と分析
057
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
4-2- 4 乗 車 時 間 と 乗車位置決定理由 降車駅を大森駅からの乗車時間として対応させ、乗車位置決定理由とのクロス集 計(表 4-2-4.1)を行った。この結果、乗車時間が長くなるにつれて乗車位置決定 の理由として 「電車が混雑しないこと」 が選ばれる確率が高くなりうることがわかっ た。しかし本調査では、 「電車が混雑しないこと」を選択した人の総数が多く無い ため他の論拠で補強する必要がある。 表 4-2-4.1 各駅の大森からの所要時間
表 4-2-5 乗車時間と乗車位置決定理由のクロス集計
第 4 章 実地調査の結果と分析
058
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
4-3 断 面 交 通 量 調 査 断面交通量調査の結果、以下の通りの値を得た。 表 4-3.1 各改札の 1 0分あたりの入構者の断面交通量
第 4 章 実地調査の結果と分析
059
第5章 意識調査の結果と分析 5-1 意識調査被験者の属性 5-1-1 性別と年代 5-1-2 電車利用状況 5-2 実験的調査の結果 5-2-1 要因別の効用値 5-2-2 平均化された各要因の重要度 5-2-3 水準の拡張 5-3 アンケート調査の結果 5-3-1 最長乗車時間 5-3-2 乗車位置の固定とその理由 5-3-3 車両混雑情報案内に関して
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
5-1 意 識 調 査 被 験 者の属性 5-1- 1 性 別 と 年 代 被験者の年齢構成と男女の割合は以下の通りであった。今回の調査では、被験者 の年齢構成が駅利用者の年齢構成比率と近くなるように留意した。 表 5-1-1.1 被験者の属性 男性 女性 総計
10代 3 2 5
20代 13 3 16
30代 11 25 36
40代 9 21 30
50代 6 6 12
60代以上 2 4 8
不明 1 1 2
総計 45 62 107
図 5-1-1.1 被験者の年齢構成
図 5-1-1.2 被験者の男女の割合
第 5 章 意識調査の結果と分析
061
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
5-1- 2 電 車 利 用 状 況 被験者の通勤、通学で電車を利用する時間と乗換時間は以下の通りであった。 2-1 で述べた通り首都圏の平均通勤時間が60分程度であることを考えると、今回 の被験者層は平均的な通勤者よりも短い通勤、通学時間の層であるといえる。また、 被験者の大半が乗り換え回数は2回までとなっており、3回以上の乗換をするもの は 10%以下であった。 表 5-1-2.1 通勤通学の帰宅時での電車利用時間
図 5-1-2.2 通勤通学の帰宅時での電車利用時間
表 5-1-2.2 通勤通学の帰宅時での乗換回数
第 5 章 意識調査の結果と分析
062
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
図 5-1-2.3 通勤通学の帰宅時での乗換回数
第 5 章 意識調査の結果と分析
063
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
5-2 実 験 的 調 査 の 結果 5-2- 1 要 因 別 の 効 用値 コンジョイント分析によって得られた各要因のなかの水準の選ばれ具合とその程 度を以下に示す ( 表 5-2-1.1)。グラフの中で、プラス値をしめしているものはその 水準であった場合選ばれやすいことを示し、マイナス値を示していることはその水 準であった場合選ばれにくいことを示す。 『車両の混雑度』のグラフ(図 5-2-1.1)を見た場合、「座れる」は大きなプラス を示し、 「座れないが混雑しない」は小さいプラス、 「混雑する」は小さいマイナス、 「大変混雑する」は大きいマイナスを示している。これは、 『乗車する車両の混雑度』 が「座れる」であるときは大変選ばれやすく、「座れないが混雑しない」場合は選 ばれやすく、 「混雑する」場合は選ばれにくく、「大変混雑する」場合は選ばれにく い、ということである。 『降車駅で階段からの距離』のグラフ(図 5-2-1.2)についても同様で「1 車両以 内の距離」は大きいプラス、 「3 車両程度の距離」はごく小さいプラス、「6 車両程 度の距離」は大きいマイナスを示している。これは、「1 車両以内の距離」とは選 ばれやすく、 「3 車両程度の距離」は少し選ばれやすく、「6 車両程度の距離」は選 ばれにくいことを示している。 各車両の効用値が「車両の混雑度」と「降車駅での階段からの距離」に対応した 効用値と定数値を足し合わせた値として算出することができる。 表 5-2-1.1 車両の混雑度の要約効用
第 5 章 意識調査の結果と分析
064
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
各水準の効用値
図 5-2-1.1 車両の混雑度の要約効用
各水準の効用値
図 5-2-1.2 降車駅で階段からの距離の要約効用
第 5 章 意識調査の結果と分析
065
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
5-2- 2 平 均 化 さ れ た各要因の重要度 コンジョイント分析を行った結果の各要因の重要度について以下に示す(表 5-22.1) 。重要度は合計が 100 になるように算出した各要因の重要度のことで、この値 を比較することで各要因がどの程度重視されているかを測ることができる。この結 果(図 4-2-3.1)から、車両を選択する際には「車両の混雑度」が「降車駅での階 段からの距離」と比べておよそ 2 倍重要であるといえる。なお、個人別のコンジョ イント分析の結果については資料編に収録する。 表 5-2-2.1 重要度
図 5-2-2.1 重要度のグラフ
第 5 章 意識調査の結果と分析
066
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
5-2- 3 水 準 の 拡 張 5-2-2 では降車駅の階段からの距離の水準として「1車両以内」「3車両程度」 「6車両程度」における効用値が明らかになった。これらの間の「2車両」や「5 車両」という間の距離の水準の効用値を算出することを考える。 まず、 「1車両以内」 「3車両程度」 「6車両程度」をそれぞれ「0車両」 「3車両」 「6車両」とおきなおす。これに線形近似を行い、近似式を求めた ( 図 5-2-3.1)。 車両を基準とした距離は、比例尺度であり効用値は間隔尺度であるため論理的な 矛盾は発生しない。また決定係数 R2 =0.99となり、非常に妥当性の高い近似 だと言える。これをもとに水準間の補完を行ったところ以下の結果となった(表 5-2-3.1) 。
図 5-2-3.1 距離の水準の線形近似 表 5-2-3.2 補完後の効用値
もう一方の要因である車両の混雑度は強制的に乗車率に置換して線形近似によ り補完をおこなうこともできる。しかし乗車率に対する利用者の意識は線形的な 比例関係ではなく、ある一定の閾値を境界にして変化するものだと考えられこれ は順序尺度としての意味が強く、線形近似には適していない。これをふまえて混 雑度の水準は近似による補完は行わなかった。
第 5 章 意識調査の結果と分析
067
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
5-3 ア ン ケ ー ト 調 査の結果 5-3- 1 最 長 乗 車 時 間 通勤、通学における単一路線での最長乗車時間(図 5-3-1.1)について以下の通 りの結果を得た。被験者のうちのほとんどが60分以内の乗車時間となっており、 60%程が30分以内である。
図 5-3-1.1 単一路線での最長乗車時間の分布
第 5 章 意識調査の結果と分析
068
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
5-3- 2 乗 車 位 置 の 固定とその理由 乗車位置の固定の有無(図 5-3-2.1)とその理由(図 5-3-2.2)について以下の 通りの結果を得た。乗車位置固定の理由の有無は固定がある被験者だけに質問を 行ったものになっている。 回答者のうち 55%が乗車する場所を決めており、「乗る場所を決めておらず場所も 前後する」という人は10%程度しか存在しておらず、回答者のうちの大半が毎回 の利用で固定した乗車位置をもっていることが明らかとなった。乗車位置決定の理 由についても 4-2-2 で求められた駅でのヒアリング調査結果と同様に「降車駅での 階段からの近さ」が車両選択の第一理由であることが確認できた。また「車両の混 雑度」を考慮して乗車位置を決定している人は20%程度しか存在しておらず、混 雑度を考慮した乗車位置選択は行われていないといえる。
図 5-3-2.1 乗車位置固定の有無
第 5 章 意識調査の結果と分析
069
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
図 5-3-2.2 乗車位置固定の理由
第 5 章 意識調査の結果と分析
070
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
5-2- 4 車 両 混 雑 情 報案内に関して 車両の混雑度表示案内(図 5-3-3.1)が実現した場合に参考にするか、また乗車 する車両が変化するかの有無は以下の通り(図 5-3-3.2)となった。参考にすると 答えた人が 80%以上を占め、また 46%の人が実際に乗車する車両も変わるという 回答をした。参考にしないという人はわずか 14%であった。これより、車両混雑 情報の提供には確実な需要があるといえ、利用者の乗車位置を変化させる可能性が あるといえる。
図 5-3-3.1 車両の混雑度表示案内
図 5-3-3.2 車両の混雑度表示案内を参考にするか
第 5 章 意識調査の結果と分析
071
第6章 車両の混雑情報提供による乗車車両選択モデル 6-1 モデルの説明 6-2 ケーススタディー 6-3 モデルについての考察
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
6-1 モ デ ル の 説 明 5-2 の分析により明らかとなった結果により乗車車両選択モデルの構築を行う。 車両ごとの「混雑度」と「降車駅で階段からの距離」に応じた効用値と定数の合計 を計算する。なお、この乗車率とは前駅を発車した直後の乗車率のことである。各 車両の全効用に従って降車駅ごとの乗車人数分布が形成される。以下には要約効 用値(表 6-1.1) (表 6-1.2)および定数(表 6-1.3)と全効用の算出方法の例 ( 図 6-1.1) を掲載する。具体的な計算例などは次節のケーススタディーで述べる。 表 6-1.1 車両の混雑度の要約効用値
表 6-1.2 降車駅で階段からの距離の要約効用値平均
表 6-1.3 効用値の定数項
)
)
混雑度が「混雑する」 降車駅で階段からの距離「4 車両」 車両の混雑度 の効用値
全効用 =
という車両の全効用の算出方法
降車駅で階段からの距離 の効用値
+
定数項 +
図 6-1.1 全効用の算出方法の例
第 6 章 車両の混雑情報提供による乗車車両選択モデル
073
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
6-2 ケ ー ス ス タ デ ィー 6-1 で構築したモデルをもとにケーススタディーを行う。ケーススタディーによ る値と実測した乗車数を比較するために、ケーススタディーを行う駅として大森駅 を設定する。実際の車両の混雑度(表 6-2.1)と車両の各駅での停車位置から最短 の階段までの距離(表 6-2.2)をもとに計算を行う。なお、この乗車率の値とは大 森発の列車の、前駅出発後の乗車率のことである。
表 6-2.1 2010 年 10 月 18 日 19:20 大森発の列車の車両の乗車率と混雑度
(車掌の列車情報管理システムの画面に表示された値を用いた)
表 6-2.2 車両の各駅での停車位置から最短の階段までの距離(車両)
第 6 章 車両の混雑情報提供による乗車車両選択モデル
074
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
◆実際の計算 川崎駅で降車する人を、例にとって計算を行う。まず 10 号車の全効用の計算 を行う。10 号車は停車位置から階段までの階段の距離は「3 車両」なので効用値 [0.165] を、車両の混雑度は「座れないが混雑しない」なので [1.322] を、定数項 として [6.5] を、これらを合計すると車両の全効用がもとまり、[7.987] となる。 同様の計算を他の車両でも行ない、各車両の全効用(表 6-2.3)を求めた。乗車車 両選択の際に重要となるのは他の車両との比較であるので、最大値となる車両の全 効用に対する割合を付した。ここでは 6 号車、3 号車が最大値として [9.732] をとっ た。 表 6-2.3 各号車の全効用値と最大値に対する割合
車両の全効用の合計に対する各車両の全効用の割合が乗車者数分布となる。これ をモデルによる乗車者数の割合として調査による乗車者数の割合(図 6-2.1)を比 較する。乗車者数が最も多い車両は6号車で、この車両は全効用が最大となってい る。しかし他の8号車、3号車も 6 号車と同様に全効用は最大となっている。こ れより車両の混雑情報の提供を行った場合に、6号車の乗車者数をこれらの車両へ 乗車者数を移すことが期待できることがわかる。
図 6-2.1 川崎駅を降車駅とした場合のモデルによる車両選択者数の割合と調査に よる乗車者数の割合
第 6 章 車両の混雑情報提供による乗車車両選択モデル
075
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
同様にその他の駅についても効用値の算出を行い、以下の通りの結果 ( 表 6-2.4) ( 表 6-2.5) を得た。 表 6-2.4 降車駅ごとの各車両の全効用
表 6-2.5 降車駅ごとの全効用最大値に対する各車両の割合
第 6 章 車両の混雑情報提供による乗車車両選択モデル
076
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
また、川崎駅の例で行ったモデルによる車両選択者分布と調査による乗車人数分 布び比較(図 6-2.1)と同様の図示をデータ数が多い他の上位 2 駅(横浜駅、蒲田駅) についておこなう ( 図 6-2.2) ( 図 6-2.3)。横浜駅、蒲田駅については川崎駅と同様に、 乗車者数が最も多い車両と全効用が最大となる車両は一致している。また、他の車 両でも全効用が最大となる車両は存在しており、利用者に対して混雑情報が提供さ れた場合にこれらの車両に乗車人数を分散させることが期待できる。
図 6-2.2 横浜駅を降車駅とした場合のモデルによる車両選択数の割合と調査によ る乗車者数の割合
図 6-2.3 蒲田駅を降車駅とした場合のモデルによる車両選択数者数の割合と調査 による乗車者数の割合
第 6 章 車両の混雑情報提供による乗車車両選択モデル
077
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
次にデータ数が多い 2 駅 (東神奈川駅、鶴見駅)についても同様の考察を行ったが、 乗車者数が最も多い車両と全効用が最大となる車両は一致しなかった。これらの駅 では調査でのデータ数が満足な数ではなかったためだと考えられる。(東神奈川駅 降車者数 N =9、鶴見駅の降車者数 N=6)
図 6-2.4 鶴見駅を降車駅とした場合のモデルによる車両選択者数の割合と調査に よる乗車者数の割合
図 6-2.5 東神奈川駅を降車駅とした場合のモデルによる車両選択者数の割合と調 査による乗車者数の割合
第 6 章 車両の混雑情報提供による乗車車両選択モデル
078
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
6-3 モ デ ル に つ い ての考察 6-2 で示したとおり車両混雑情報の提供を行った場合に、最も乗車者数が多い車両 から他の車両へ乗車者数を分散させることが期待できることがわかった。また、ど の駅においてもモデルによる乗車選択人数分布が調査による乗車人数分布図が現状 よりもなだらかになっている。本モデルは利用者に対して車両の混雑情報が提供さ れ、利用者が車両の混雑情報を考慮して乗車車両を選択すると想定した場合の乗車 分布図なので、この結果は混雑情報提供の有用性を示すものだと言える。 ケーススタディーでは乗車駅を固定して、いくつかの降車駅別の乗車人数分布の 算出を行った。しかし本モデルが行ったのは利用者が選択する車両の考慮のみで、 選択した車両への移動中に電車が到着した場合などの考慮は行っていない。目的の 車両まで移動する前に電車が到着した場合は、その途中の車両に乗るものと予想で きる。混雑情報が提供された場合の乗車分布を得るには移動中に電車が到着した場 合の乗車車両位置をあきらかにする必要がある。
第 6 章 車両の混雑情報提供による乗車車両選択モデル
079
第7章 まとめ 7-1 研究のまとめ 7-2 課題と展望
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
7-1 研 究 の ま と め 本研究では各調査で以下のことを明らかにした。 ・実地調査 夕方、夜にかけての帰宅ラッシュ時の鉄道利用者のうち 59%が、降車駅の階 段の位置によって電車に乗車する場所を決定しており、降車駅の階段の位置を十 分知っている。 ・実験的調査 コンジョイント分析により、乗車車両選択モデルのもととなる車両の混雑度、 降車駅で階段からの距離の効用値を定量的に示した。 ・アンケート調査 夕方、夜にかけての帰宅ラッシュ時に回答者のうち 74%が電車に乗車する場 所をほぼ固定しており、位置決定の最大理由は降車駅での階段の位置で 55%を 占めている。車両の混雑度を考慮して乗車場所を選択している利用者は 18%し か存在しなかった。これらにより、現状として車両の混雑度は乗車位置選択に考 慮されていないことが明らかになった。しかし、回答者のうち 46%車両混雑情 報の提供により乗車位置が変わると回答した。これにより混雑情報は価値が低い わけではないことが示された。 ・ケーススタディー 構築したモデルにより算出された車両選択者数の分布と、実地調査で得られた 乗車者数分布の比較を行い、車両混雑情報の提供が車両の混雑緩和に有効である ことを示した。 これらを統括すると、利用者に対して車両混雑情報を行うことは車両の混雑緩和 に対して有効性をもつ。これを本研究の結論とする。
第 7 章 まとめ
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7-2 課 題 と 展 望 7-1 で述べた通り、本研究は利用者に対して車両混雑情報を行うことは車両の混 雑緩和に対して有効性をもつことを示した。これついての課題と展望について述べ る。 ◆課題 ・乗車車両選択特性の要因と水準に関して 「車両の混雑度」と「降車駅での階段からの距離」という 2 要因計7水準のみし か取り入れられていない。とりわけ「乗車駅での階段からの距離」という要因に着 いての考察が行えておらず、他要因・他水準を取り入れてモデルを補強していく必 要がある。 ・車両の混雑度 本研究では「列車到着時の混雑度」のみを取り入れている。しかし実際の鉄道利 用状況を考えると、乗車時間全体における混雑度を取り入れていく必要がある。 ・駅での混雑の緩和 車両における混雑度の緩和の可能性を示すことができたが、乗車位置の変更は乗 車駅、降車駅双方のホーム上での流動に関わってくる。本研究では全く触れること ができなかったが、これらについての影響も明らかにする必要がある。 ・車両の混雑情報提供の有効性に関して 本研究では車両全体における混雑度の変化を定量的に明らかにするには至ってお らず、またサインなどの情報提供方法についても考察が行えていない。社会に対し て「車両の混雑情報提供」を提案していくためには、車両やホームにおける混雑や 流動に関する影響を精確に示す必要がある。
第 7 章 まとめ
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◆展望 ・ 「車両の混雑情報提供」の可能性 背景で示した通り「車両の混雑情報提供」は非常に蓋然性が高いといえるが、未 だ実現には至っていない。本研究は「車両の混雑情報提供」の実現にむけての1歩 となることを願う。 ・アンビエントと Smart behavior の創造にむけて 降車駅と許容できる混雑度を空間が判断し、各自の最適な乗車車両が提案され、 個々人が最適な行動をとり、全体としても過剰な混雑や流動がなくなる。このよう に空間と人間が情報を通して呼応し、空間、人間ともに最適な系へ移行してゆくア ンビエント空間と Smart behavior の概念が提唱されている。本研究がその実現に 繋がる1歩となることを願う。
第 7 章 まとめ
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参考 文 献 ( 文献1) 稲葉直也、糸賀雅児:電車内における情報メディア利用の実態、三田図書館・情報学会研究大会発 表論文集 2006 年度 , 29-32, 2006 ( 文献2) 中村友宣、小川剛史、清川清、竹村治雄:二酸化炭素センサによる鉄道車両混雑度推定を用いたウェ アラブル学習システムのための利用者コンテキスト認識、電子情報通信学会技術研究報告 . MVE 107(554), 49-54, 2008-03-15 ( 文献3) 青木 俊幸 , 大戸 広道 , 都築 知人 , 不破 徹 , 尾形 直樹:鉄道駅における旅客流動に関する研究 : そ の 5 ホーム階段配置と乗降分布、学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I, 各種建物・地域施設 , 設計方法 , 構法計画 , 人間工学 , 計画基礎 1998, 843-844, 1998-07-30 ( 文献4) 鈴木健久、仲川ゆり、酒井淳司:駅をスムーズにご利用い ただくために、JR EAST Technical Review No.24-SUMMER.2008 ( 文献5) 角田史記、柳澤剛:運行情報の提供に関する研究・開発、JR EAST Technical ReviewNo.16,pp65-71 ( 文献6) 島田 章義 , 井田 弘仁 , 服部 有紀子 , 青木 俊幸 , 都築 知人:鉄道駅における旅客流動に関する研究 : その 6 JR 西日本京都線における旅客乗降分布に関する研究、学術講演梗概集 . E-1 1999, 849-850 ( 文献7) 都築 知人 , 青木 俊幸 , 島田 章義 , 小田 雄生 , 村井 孝至:鉄道駅における旅客流動に関する研究 : その 7 JR 西日本京都線における旅客乗降と列車停車時分に関する研究、学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I, 各 種建物・地域施設 , 設計方法 , 構法計画 , 人間工学 , 計画基礎 1998, 847-848, 1998-07-30 ( 文献8) 河合 邦治 , 青木 俊幸 , 大戸 広道 , 都築 知人 , 古賀 和博:鉄道駅における旅客流動に関する研究 : その 9 乗車位置選択の利用者意識調査、学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I, 各種建物・地域施設 , 設計方法 , 構 法計画 , 人間工学 , 計画基礎 1999, 847-848, 1999-07-30 ( 文献9) 青木 俊幸 , 大戸 広道 , 都築 知人 , 河合 邦治 , 不破 徹 , 古賀 和博:鉄道駅における旅客流動に関す る研究 : その 10 降車分布、学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I, 各種建物・地域施設 , 設計方法 , 構法計画 , 人間 工学 , 計画基礎 1999, 849-850, 1999-07-30 ( 文献10) 青木 俊幸 , 大戸 広道 , 河合 邦治 , 古賀 和博 , 山根 清香 , 都築 知人:鉄道駅における旅客流動に 関する研究 : その 11 乗降分布の予測、学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I, 各種建物・地域施設 , 設計方法 , 構法 計画 , 人間工学 , 計画基礎 2000, 1081-1082, 2000-07-31
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2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
( 文献11) 安田 健一 , 江本 達哉 , 竹村 則雅 , 番匠 一郎 , 島田 章義 , 柴崎 紳一郎 , 村井 孝至:混雑時のホー ムにおける乗降方式に関する研究 : その 1 大都市ターミナル駅における乗降形態と規制方法についての実態調 査、日本建築学会大会学術講演梗概集 1996( 建築計画 1), 861-862, 1996-07-30 ( 文献12) 井田 弘仁 , 出井 歩 , 山田 健介 , 島田 章義 , 林 稔子:混雑時のホームにおける乗降方式に関する 研究 : その 2 大阪駅環状線ホームにおける乗降形態別旅客行動の実態調査、学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I, 各種建物・地域施設 , 設計方法 , 構法計画 , 人間工学 , 計画基礎 1997, 727-728, 1997-07-30 ( 文献13) 家田仁、佐野可寸志:実測調査に基づく鉄道通勤旅客の行動分析、日本行動計量学会大会発表論 文抄録集 20, 140-143, 1992-09-21 ( 文献14) 藤田洋子、高橋幸雄:電車内における人の立ち位置モデルとシミュレーション、2000 年度日本 オペレーションズ・リサーチ学会 秋季研究発表会 ( 文献15) 松田博和、轟朝幸:都市鉄道における混雑情報提供による乗車変更行動の分析、http://www. trpt.cst.nihon-u.ac.jp/PUBTRPLAN/zirei/05_matsuda.pdf、LastAccess 2010/11/05 ( 文献16) 水野隆二、轟朝幸:都市鉄道におけるリアルタイムな混雑情報提供の有用性の検討―乗車選択 行 動 モ デ ル を 用 い て ―、http://www.trpt.cst.nihon-u.ac.jp/PUBTRPLAN/member/graduate/outline/2009/ mizuno.pdf 、LastAccess 2010/11/05 ( 文献17) 轟朝幸、松本修一、松田博和:路面電車利用者への混空情報提供の有用性の検証、運輸行政研究 Vol.11、No.1、2008Spring、pp17-24 ( 文献18) 上原 孝雄 , 渡部 貞清 , 栗山 好男 , 吉田 紘一 , 荘野 徳夫:ホームにおける通勤降車客分布 : 建築 計画、大会学術講演梗概集 . 計画系 44( 計画系 ), 377-378, 1969-07-23
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2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
おわ り に バファリンの半分はやさしさでできていることは世の中に広く知られていることだが、この論文もバファリ ンと同様に半分はやさしさでできている。
まず第一にこのような自由なテーマでの卒業論文執筆の機会と素晴らしい環境を与えた下さった渡辺仁史教 授に感謝の念を表したいです。ありがとうございました。 常に的確なアドバイスとおいしいお菓子と栄養ドリンクをくださった林田先生ありがとうございました。人 間と行動と建築と情報というエキスパートに巡り合えたことに感謝しています、コンジョイント分析に関して 助言くださった長澤さんありがとうございました。 テーマがなかなか決まらず、決まってもまた変わり…を繰り返して最終的にテーマが固まったのは論文提出 まで1ヶ月を残す時期…それまで進めていた群衆映像解析に満足がいかず、放り出した時に怒ることなく対応 してくださった行動ゼミの先輩方ありがとうございました。特に担当者のこじこじさんありがとうございます。 自分の TA や PJ だけでもとても忙しいなか、調査の手伝いや分析や執筆の手伝いでなんども徹夜してくださっ て本当にありがとうございました。こじこじさんがいなければ、エクセルの2軸グラフは書く事はできません でした。とりあえず糖分でお返ししたいと思います。 駅での調査に協力してくださった、西さん、坂田さん、おっちーさん、まっちょ、まーしー、じゃんぼさん、 木戸さんありがとうございました。おかげさまで卒論を完成に至らしめることができました。 同じゼミで苦楽をともにした行動ゼミ M0 のジョン、ししょー、ガースーありがとう。 ヨゴちゃん、卒論期間中は一番話して気がするありがとう。卒論終わったら麻雀打とう。 かんなり、末期はなんか邪魔しちゃってたきがするけど、話す人がいて楽しかったよ! まーしー、ゆで卵ありがとう!ぴーちゃん、一緒にタバコありがとう! S 棟のみんなもありがとう! M0 のみんなお疲れ様。みんなと一緒に卒論に取り組めて本当にいい思い出がたくさんできた!笑いあり泣き ありの卒論だった気がするけど、仲間って大事だね!って思えた。うぇい! 毎日終電だったり帰らなかったりしたけど、たまに帰る日には風呂と美味しいご飯を用意してくれた母にあり がとう。 職場の人にアンケートお願いしてくれた父にありがとう。自分ひとりではこんなに総数集められなかっ た。本当に家族に感謝。そしてなにより家族といえば(まだ家族ではないけれどw)卒論期間中に最も支えて くれた彼女の奈青にありがとう。忙しい中、2回も調査に協力してくれて、さらには親に職場でアンケート配 布をお願いしてもらった。卒論も精神もとても支えられたと思う。本当にありがとう。これからもよろしく。
はじめにでは攻殻から言葉を借りたが、おわりにではクレヨンしんちゃんから言葉を借りたいとおもう。 「一人でデカくなった気でいる奴は、デカくなる資格は無い」 卒論を書いたぐらいでデカくなったつもりはないが、そんなに小さいわけじゃないとおもう。その大きさが自 分だけのものではないという幸せに感謝して。
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資料編
資料 # 1 乗降者分布調査データ 資料 # 2 ヒアリング調査データ 資料 # 3 アンケート調査データ 資料 # 4 コンジョイント分析データ 資料 # 5 実験的調査票
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資料 # 1 乗 降 者 分布調査データ
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資 料 # 2 ヒ ア リ ン グ 調 査 デ ー タ
資料編
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資料編
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資料編
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資料 # 3 ア ン ケ ート調査データ
資料編
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資料編
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資料編
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資料 # 4 コ ン ジ ョイント分析データ
資料編
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資料編
R022
野田直利
野田直利
までメール(書式は問いません)
その場所が乗車する駅の階段から近いこと 降りる駅での停車位置が階段から近いこと その他[ 特に理由はない
2□ 3□ 4□ 5□
]
参考にしない わからない その他[
3□ 4□ 5□
Q1[性別:
] [年齢:
] Q2[
] Q3[
] Q4[
FAX 使用時記入欄(FAX でお答えいただく方のみご記入ください。03-5286-3276)
]
乗る車両を選ぶ際の参考にするが、実際乗る車両は変わらないと思う
2□
車両の混雑度表示案内サインのイメージ 乗る車両を選ぶ際の参考にし、実際乗る車両も変わると思う
1□
]
以下の図のような「車両の混雑度表示案内」が実現された場合に参考にするか、ま
乗車する車両が混雑しないこと
1□
た実際に乗車する車両の変化ついて教えてください。
Q7
]
通勤、通学の帰宅時にホームで電車に乗車する場所を決めている第1の理由を教え
5□その他[
(→Q7へおすすみください。)
4□どの車両に乗車するか明確に決めておらず、場所もまちまちである。
(→Q7へおすすみください。)
3□何号車に乗車するかを決めていないが、おおよそ同じ場所から乗車する
2□何号車に乗車するかを決めているが、乗る場所は多少前後する
1□何号車に乗車するかを決めていて、いつもその場所で乗車する
通勤、通学の帰宅時にホームで電車に乗車する位置について教えてください。
てください。
Q6
Q5
お忙しい中大変恐縮ですが、ご協力お願いいたします。
・裏面の「FAX 使用時記入欄」を記入し、裏面のみを(03-5286-3276)まで FAX
・nodanaotoshi@gmail.com
・依頼者にこの用紙を手渡し
提出方法は以下のいずれでもかまいません。
TEL/FAX:03-5286-3276
〒169-8555 東京都新宿区大久保 3-4-1 55N-801
nodanaotoshi@gmail.com
渡辺仁史研究室 4年
早稲田大学 創造理工学部 建築学科
本アンケートに関してご質問がありましたら、以下の連絡先までお願いします。
人が特定される形で発表されることは一切ありません。
なおこのアンケート調査の利用は学術目的のみに限り、データは集計して用いるために個
タを活用してまいりますので、アンケート調査にご協力いただけると幸いです。
即座に混雑度偏りの解消の実現につながることはありませんが、指針のひとつとしてデー
車両では混雑度が大きく偏ることがあり、この偏りの解消を目指しています。この研究が
私は卒業論文として、駅や電車の混雑に関する研究をしています。電車の前方と後方の
渡辺仁史研究室 4年
早稲田大学 創造理工学部 建築学科
電車、駅利用についてのアンケート調査
⃝アンケートの説明
年齢[
]歳
分以上 90 未満
5□60
分以上∼120 分未満
分以上 30 分未満 6□90
3□10
分以上
分以上 60 分未満 7□120
4□30
回
2□2
回
3□3
回
4□4
回
5□5
回以上
6□乗り換えをしない
分以内 分以上 90 未満
1□10 4□60
分以上
分以上 60 分未満 6□120
3□30
カド
順位
2
3
4
5
6
7
8
9
10
12
乗りたくない
11
以上でアンケートは終了です。ご協力ありがとうございました。
乗りたい
1
夕方から夜にかけての帰宅時、とりたてて急いでいるわけではないが寄り道 をするつもりもない。ホームに続く階段にさしかかり、電車のどの車両に乗 車するかを考えているところだ。 前の電車は先程発車したようで、次の電車はいますぐに来るというわけでは ない。乗りたいと思う車両の位置までホーム上を移動する時間はありそうだ。
状況
「車両の混雑度」の条件は4種類、「降車駅で階段からの距離」の条件は3種類となっています。
の車両カードを乗りたいと思う順に並べて、その順番を解答欄に記入してください。
何車両程の距離か」という2つの条件が記されています。以下の状況を想定して、12枚
次ページの 12 枚のカードにはそれぞれ「車両の混雑度」と「降車駅で階段からの
分以上∼120 分未満
分以上 30 分未満 5□90
2□10
通勤、通学の帰宅時に利用する路線のなかで、一番長く乗車する路線での乗車時間
1□1
通勤、通学の帰宅時の乗換の回数(電車、バス、モノレール含む)を教えてくださ
分以内
2□10
1□通勤、通学で電車を利用しない。 (→Q7へおすすみください。 )
並び替えアンケート Q8
2□女性
通勤、通学の帰宅時で電車を利用する時間を教えてください。
1□男性
あなたの性別と年齢を教えてください。
を教えてください。
Q4
Q3
い。
Q2
Q1
をつけてください。Q1 では年齢の記入をお願いします。
Q1∼Q6までは選択式アンケートです。あてはまる項目を選んで□にひとつだけチェック
選択式アンケート
答欄に順番を記入してください。
並び替えアンケート(Q8)は、12 枚のカード説明図を参考にして並び替えを行って、回
他」を選択する場合は理由などもあわせて記入してください。
選択式アンケート(Q1-Q7)は、項目をひとつ選んでチェックをつけてください。「その
アンケートは選択式(Q1-Q7)と並び替え(Q8)の2種類計8問あります。
2010 年度 早稲田大学 渡辺仁史研究室 卒業論文 車両の混雑情報提供による利用者の乗車車両選択モデルに関する研究
資料 # 5 実 験 的 調査票
資料編 R024