早稲田大学 理工学術院創造理工学研究科 建築学専攻分野 修士論文
ICT 技術を用いた生活状況把握によるアンビエント空間の実現 A Realization of Ambient Space from Behavior Monitoring
Using Information and Communication Technology 岡本 達也 Tatsuya OKAMOTO
0
はじめに
『 使えば使うほど価値が上がる 』 本論文の構成
0.1 0.2
0
はじめに
| 0.1 はじめに
〝 野球のグローブ 〟 〝 辞書や参考書 〟 〝 革ジャン 〟 〝 インターネット検索 〟 …etc. これらのモノには共通点がある。 それは、使えば使うほどその価値が高まっていくということである。 しかしながら、 元来、使っていくほど価値があがるというモノはあまりなく、 多くのものは使っていくことでその価値が下がっていってしまうものである。 その代表例として挙げられるのが建築である。 現在の日本において建築は、新築時が最も価値が高い。 そして、30 年という月日でその価値が0になってしまう。 建築の寿命が 100 年とも言われる現代では非常に問題のある数字である。 そこで、… 使えば使うほど価値が上がる空間の実現。 それこそが、私が現在所属する渡辺仁史研究室に入った時に持った夢である。 発展を続ける情報通信技術を建築空間に導入することで その実現へ少しでも近づきたいという想いから研究を行った3年間。 その集大成として、この研究を行った。
3
もくじ
第 1 部 本論
0 はじめに
2
0.1『 使えば使うほど価値があがる 』
3
0.2 本論文の構成
4
1 研究背景
7
1.1 情報化社会
8
1.2 建築空間のアンビエント化
11
1.3 行動モニタリング
15
1.4 住宅における環境
17
2 研究概要
20
2.1 用語の定義
21
2.2 研究目的
23
2.3 研究の流れ
24
2.3 本研究の位置づけ
25
3 研究方法
27
3.1 センサシステム
28
3.1.1 全体の構成
28
3.1.2 窓開閉距離センサ
29
3.1.3 温熱環境計測センサ
30
3.1.4 スリッパ型 RFID リーダ
32
3.2 実験方法
33
3.2.1 実験概要
33
3.2.2 実験場
34
3.2.3 窓開閉行動の動機アンケート
35
3.3 分析方法
36
3.3.1 分析の流れ
36
3.3.2 温熱環境情報の作成
37
3.3.3 人間行動情報の作成
40
3.3.4 分析手法
41
4
もくじ
4 実験結果
44
4.1 窓開閉行動時の温熱環境情報統計
45
4.1.1 時間情報による窓開閉行動の集計
45
4.1.2 窓開閉時における時間帯と温熱環境の関係性
47
4.1.3 窓開閉時における月と温熱環境の関係性
50
4.2 居住者の歩行履歴統計
56
5考察
58
5.1【分析1】温熱環境情報による窓開閉行動の判断推定
59
5.1.1 モデル式の構築
60
5.1.2 窓開閉行動に関係性の高い要因の抽出
61
5.1.3 窓開閉行動に与える影響度の高い要因の抽出
65
5.1.4 モデルの検証
69
5.2【分析2】蓄積された人間行動情報による個人識別
70
5.2.1 被験者ごとの識別値の算出
71
5.2.2 各実験微の個別値と識別値との比較
72
5.2.3 モデル精度の検証
73
5.3【分析3】人間行動情報・温熱環境による窓開閉行動における温熱心理の推定
74
5.3.1 モデル式の構築
75
5.3.2 各行動パターンごとの窓開閉行動における温熱心理因子の関係性
76
5.3.3 各季節ごとの窓開閉行動における温熱心理因子の関係性
81
5.3.4 各温熱心理における要因同士の遷移ネットワーク
84
6まとめ
90
6.1 まとめ
91
6.2 展望
92
6.3 謝辞
93
7参考文献
95
5
もくじ
第 2 部 資料編
1 温熱環境情報のまとめ 1.1 温熱環境情報のまとめ 1.2 窓開閉時の温熱情報のまとめ
2 人間行動情報のまとめ 2.1 窓開閉行動の動機アンケート 2.2 温熱環境情報・人間行動情報・温熱心理の関係性
6
1
研究背景
情報化社会
1.1
建築空間のアンビエント化
1.2
行動モニタリング
1.3
住宅における環境
1.4
1 研究背景
|1.研究背景 | 1.1 情報化社会 | 1 . 1 . 1 情 報 革 命 に よ る 社会の多様化 「 情報 」 現在、この言葉は広く、価値が認められている。それは、資本主義時代の経営資源として 言われてきた人・物・金につぐ、第4の経営資源として 「 情報 」 が重宝されるほどである。 「 情報化社会 」 という考え方は、1960 年代前半にマッハルプや梅棹忠夫らによって提唱 された 「 情報社会論 」、そして、林雄二郎によって提唱された「情報化社会」などによりそ の思想が着想したとされている 。そして、1990 年代半ばになると、インターネットや携 1)
帯電話の普及に伴い、情報社会や情報化社会の語、概念は広く用いられるようになった。そ の情報化社会や情報社会の概念は、未来の社会像として予測、あるいは提案するべく用いら れる場合もあり、現代社会の特徴であるとされることが多い。 その情報化により人々の生活がどのように変化したのだろうか。 今日の社会を歴史的な変遷のなかで見てみると、「農業の時代」から「工業の時代」へ、そ して「情報・知識の時代」といった大きな社会の変化が見えてくると良く言われる。農業の 時代では土地をもとに作物を生産することを社会の基本とし、18 世紀の産業革命により工 業の時代が始まると、資本設備をもとにモノ(製品)を製造・流通させることが社会の基本 となった。そして情報・知識の時代では、情報システムにより知的財産や様々な知恵やノウ ハウを創造し、共有し、それを活用する社会が実現している。言い換えると、機械化が労働 の代替を目的としたのに対し、情報化は知的活動の代替を目的とし、世界はまさに知識集約 型の社会構造に変化してきているのである。 また、情報化には「効率化」と「ボーダレス化」と「中抜き化」といった本質がある 。 2)
効率化には、経済におけるスピードアップを実現する時間的効果、コスト削減を実現する資 源的効果があります。ボーダレス化には、企業、産業、行政組織、国境の垣根を壊す効果が ある。中抜き化には、生産者と消費者が直結することによる産業構造の中抜きと中間管理職 の役割を変える組織構造の中抜きを起こす効果がある。これらの中で、注目すべきは、「 中 抜け化 」 であると思う。というのも 「 産業構造の中抜け化 」 によりもたらされた、今日の 多様化し続ける生活スタイルや価値観こそ情報革命による最大の産物であると考えるからで ある。どのようなものが多様化したのかをあげはじめたらきりがないが、SOHO などのオフィ ス形態の多様化、音楽データの配信による CD 売り上げの減少などは顕著な例であろう。
8
1 研究背景
| 1 . 1 . 2 パ ー ソ ナ ル フ ァ ブリケーション 多くの場面で推し進められているサービスのパーソナル化は、デザインの分野にも及んで いる。その結果、デザインの全てを職人に委ねるのではなく、自分対応の商品を自分自身で デザイン・作成するという 「 パーソナルファブリケーション 」 の考え方は広まってきている。 この考え方は、「 セルフビルド 」 という表現にも近いかもしれない。 もともと人は、自分が必要とするものを自分でデザインして作りたいと考える。しかし、 人間が大昔から抱いてきたこの欲求は、職人が手作りするよりも効率的に継続的に作ること ができる工場によって、多かれ少なかれ抑圧されてきた。しかしながら、不幸なことにその 効率化された方法では、利用者の個人的な希望や要求をうまく満たすことができない。わず かに形を変えることで、ある程度は我慢させられるだろうと利用者は侮られてきた。そこに、 再び自分で作りたいという欲求が甦り、物作りを望んでいた人々に、それまで工場だけが可 能だった物作りの機会を、パーソナルな製造マシンが与えることになったのである 。 3)
だが、ここでひとつの問題が起こる。素人には、自分求めるモノあるいはデザインがどの 様なものであるかという具現化ができない、あるいはイメージができてもそれを実現する方 法がないということである。そこで、求められるのが情報やツールのオープン化であろう。 これを推し進めている最たる企業の1つが Google である。ツールのオープン化の例を 挙げれば、一昔前までは高価名ソフトであった3Dのモデリングソフトを無料で配布した GoogleSkechup があるだろう。配布がはじまった当初は無料だという印象が強いツールで あったものの、現在では実務のモデリングができるまでのレベルまで昇華されている。ツー ルレベルの向上だけではなく、情報のオープン化の例としてあげられる Google earth との連 携によりモデリングした建物を仮想的に配置することも可能でその機能性はかなり高いと言 える。しかし、GoogleSkechup の高いオープン性は無料という点だけに止まらない。それは、 直感的なインターフェイスによるモデリングができるという点である。これにより、専門的 な知識などがなくても自由にモノのかたちを表現することができるようになったのである。 この2つのオープン性がもたらすものを非常に大きい。 先ほど Google earth を情報のオープン化の例として挙げたが、情報のオープン化は Google に限らず、現代においては知らずに知らずの内に行われている。例えば、Amazon. com で買い物をする度につい衝動買いしてしまいそうになる商品を勧められたことはないだ ろうか。これは、私達のモノを買うや Web 検索を行うといった行動から興味関心を推測し た結果である。つまり、私達は気づかぬ内に一挙手一投足を社会側に記録され、それにより サービスを受けていることが頻繁に行われているのである。 この一挙手一投足を記録することが現在では当たり前となっており、ライフログと言われ、 一般に認知されている。次の項では、このライフログについて述べていくこととする。
9
1 研究背景
| 1.1.3 ライフログ 企業や行政、ひいてはデザインをする一般の人々が、サービスのパーソナル化に対応する ために必要となる材料こそライフログである。 ライフログでは、コンピューターの「ログ」を取得するように、パソコンでウェブサイト を閲覧したり、自動車や電車で移動したりといった人間の生活全体のログを記録する。そし て、それを基にしてその人の行動パターンや好みを分析し、マーケティングなどに活用され ている。従来のワン・ツー・ワン・マーケティングでは、住所や年齢、購買履歴など限られ た情報から顧客像を推測するにとどまっていたが、このライフログにより生活全般の履歴を 把握できれば、分析精度は格段に上がる。「いつも通る場所にあり、メニューにその人が好 きそうな食べ物が載っているレストランを薦める」といったことも可能になる。 そのライフログの起爆剤となったのが、携帯 GPS や IC カードの普及である。GPS 機能付 き携帯電話や IC カードが全国・全世代に浸透してきたからだ。 ライフログの第 1 の収集経路はウェブサイトである。 「いつ、どんなページを見たか」といっ たログを集める。ただし、人は常時サイトを見ているわけではない。そこで第 2 の収集経路 として携帯電話や IC カードが重要になる。 例えば交通系 IC カードでは、自動改札機やバスの読み取り機などにタッチすれば、いつ どこの駅から乗車してどこの駅で降りたかを記録できる。駅の売店で電子マネーを使った買 い物をすれば、その記録も残る。福岡県の西日本鉄道は、2008 年 5 月に IC カード乗車券・ 電子マネーサービス「nimoca(ニモカ)」を導入したのと同時に、「nimoca 顧客分析システ ム」を稼働させた。個人情報利用の承諾を得た人を対象に顧客情報を集め、分析している。 「駅 を利用しているのに、駅前の A 店を利用している人は少ない」といった動向が分かる。この 結果に基づいて、A 店は駅利用者向けの販促を強化するなどの対策を打つことができる。 しかしながら、ライフログが進化しすぎると、個人の行動がすべて記録される 監視社会 につながる懸念がある。保有するライフログを加盟店や本人以外に公開することには慎重な 立場が必要となる。ライフログは、いわば究極の個人情報なのである。貴重な情報だけに、 それらを扱う事業者の責任は重大である。一方で利用者側にも、自分の行動履歴を積極的に 開示することでより良いサービスを受けようという姿勢がなければ、ライフログは浸透しな いだろう。そして、建築デザインにおける 「 ライフログ 」 の取得こそ 「 行動モニタリング 」 である。
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1 研究背景
| 1.2 アンビエント空間 | 1 . 2 . 1 建 築 空 間 を ア ン ビエント化する意義 建築学とは切り離すことができないものに居住空間や生活空間といった、個人のテリト リーがある。人は今までの歴史の中で、生活形態を大きく変えながら生活してきた。そして、 今後情報革命により建築を含めた動くことのないものは、ネットワーク化し、その中での役 割を追求していくこととなるであろう。これにより実現される建築と従来の建築との大きな 相違点は、「コンテクスト・アウェアネス」と、「ネット接続」である。 「コンテクスト・アウェアネス」は、状況 (context) を察知 (aware) するという意味で、空 間の内外の環境と、そこに居る人間や存在する物体の現状や時間的変化を、センサーやネッ トワークを介してコンピュータが認識することである。それを踏まえて、各所の機器に的確 な制御を行うための技術で、 「第三の波」において M. ワイザーが提唱した「人間がコンピュー タを意識せずに、自然にその機能を使用することができる」を実現するには、不可欠の技術 である。ただし、「自然にその機能を使用する」ということは、「人間の意思と無関係に機器 の制御を行う」とは異なる。空間を考えた上で、おそらくその概念は知らずとも建築という ハードの特性上、ここにアンビエントの考えを内包したのであろう。 情報化された建築空間、つまりアンビエント空間の意義は何であるのか。 それは、効率化・最適化という2つがあると思う。 現代の先進国が抱える問題として少子高齢化、そして人口減少がある。これらの問題を解 決する手段の1つとして「建築空間のアンビエント化」があるのではないだろうか。 例えば、現在高齢者の数が急激に増えたため、介護士が足りないという問題に直面してい る。そんな時、もし個人の体調に合わせたサービスを空間が提供してくれるアンビエント空 間が実現していればどうなるであろう。介護士の労働効率をあげることにより、介護できる 人数は増えるだろう。また、景気の悪化に伴い、夫婦共働きする割合が増えている。その結 果として、保育施設の不足の問題も起こっている。その問題も介護士不足の例と同様にアン ビエント空間の実現により解決の一端を担うことができるであろう。 では、次に効率化という部分について、人口減少の問題という切り口から考えてみよう。 日本を例に出せば、現在1億2千万人という人口数は年々減少しており、最終的には 8 千万 人まで減少すると言われている。といことは、現状のままでは4千万人分の生産量減少が起 こるいうことになる。つまり、国力低下を防ぐためには1人当たりの生産効率が求められる のである。そこで、必要不可欠なことが生産性を高めるためのインフラ整備である。その一 端を担うものこそ「建築空間のアンビエント化」である。 それら2つの理由から今後建築空間のアンビエント化の需要は高くなっていくと考えられ る。次項以降で、現在実現されているアンビント空間の事例を見ることでさらなる理解を進 めていく。
11
1 研究背景
| 1 . 2 . 2 こ れ ま で の ア ン ビエント空間 アンビエント空間は、目的ごとに分けると 「 知的生産性の向上 」、「 生活の快適性向上 」、 「 マーケティング・エンターテイメント性の向上 」、「 安全・安心性の向上 」 という4つに 分類することができる。 先ほど述べたように、情報革命により起こった大きな変化の一つとして大幅な効率化があ るが、その中でも知的生産性の効率化が最大のものであろう。この情報技術を建築空間にお いても適用し、空間全体で知的生産性を向上させようとする動きがでている。 しかし、知的生産性と言っても、多くの種類があり、それに対応する空間も多種多様である。 例えば、インタラクティブに情報を共有したり、交信したりすることができる設備を持つ ことで、膨大な情報をやり取りできる、知のオペレーションルームを実現した「G-SEC LAB」 は、個人の知的生産性を向上させる空間の事例と言えるであろう(図 1.2.2-1)。 また、会議内容の自動記録、会議環境の学習、沈滞化した会議のチアアップを実現した「三 鷹ネットワーク大学における学習する会議室」は集団における知的生産作業の効率化を図る 空間の事例であり(図 1.2.2-2)、フレキシブルな空間作りに作られた自由な間取りと開かれ た空間性により各々の創造性を互いに向上させていく機能をもつ「NOPE‐21 世紀のトキワ 荘」は、創造活動の生産性を向上させる空間の事例と言えるであろう(図 1.2.2-3)。このよ うに多様な知的生産性向上のアンビエント空間が実現されている。 また、建築空間の情報化を生活快適性向上に活かすという動きもある。これは、日常生活 の中の人為的なミスの予防や人間がやる家事などの生活行為の代替えを行い、生活の快適性 も向上させることができるというものである。また、普段何気なく通り過ぎてしまう情景・ 行為を客観的に記録として残してくれることで自分の生活を見直す機会を与えてくれると いったサービスも可能となり、また、自分の生活や動きに合わせて建築空間内が変化するこ とでよりよい住環境を提供するということが可能になる。 生活の快適性を向上させる建築空間の具体事例として「PAPI」( 図 1.2.2-4) がある。PAPI では、「生活の豊かさ 2 倍に、環境負荷半減」の実現を目指し、IT や環境、防犯・防災、健 康などさまざまな分野の最先端技術を盛り込み、未来の生活シーンに合わせた形で実装した 建築である。家中に配置されたセンサーが住まいと人の様々な状況を認識し、「ユビキタス ネットワーク」により、空調や照明、エネルギーなどを自動最適制御し、人と地球にやさし い環境と快適性の両立をめざしている。 また、建築空間の情報化に着目し、生活の快適性向上を目指す動きがある。そのようなも のの一つとして、パナソニックが提案している「空間まるごと一歩先のくらし」( 図 1.2.2-5) というコンセプトがある。これは CEATEC2008 で発表され注目されたものである。ワイヤ レスで自由な配置が可能になったテレビを中心に、部屋中の機器が連携して、生活シーンに 合わせ、照明や空調を調整し最適な視聴スタイルを提供するものである。また、健康機器を テレビとつなげ、生活者の健康状況を管理し、それに従いおすすめの食事メニューやエクサ サイズのアドバイスも行うというものである。様々な家電を生産しているメーカーであるか らこそできる家電のネットワーク化を行った事例である。これらのように、住空間において も建築空間の情報化の動きが進み、実証されつつある。
12
1 研究背景
空間の情報化は、流通におけるマーケティングの手段として、機能している。 商品に RFID タグや人体通信機器を使用することで、誰がどのようなものを購入するのか、 あるいは、興味があるのかといった情報を収集することができ、商店側も顧客側も欲しい情 報を整理することができる。これは既に Suica などの電子マネーの普及により、公開はされ てはいないが技術的環境的に既に充分可能である。 また、docomo により「i コンシェル」がある。これは携帯電話がまるで " 執事 " や " コンシェ ルジュ " のように、一人ひとりの生活をサポートするサービスである。利用者の様々なデー タ ( 生活エリア情報、スケジュール、電話帳など ) により自分の生活エリアや趣味嗜好に合 わせた情報を適切なタイミング、方法で届けたり、携帯電話に保存されているスケジュール を自動で最新の情報に更新したり、電話帳にお店の営業時間などの役立つ情報を自動で追加 するものである。このような流れは携帯電話業界において大きな流れとしてあり、また広告 効果が期待できることから広告業界からも注目されているものである。これらのように、マー ケティングの手段としてのアンビエント空間が注目されていると言える。 空間の情報化は、離れた場所に住む家族の安全・安心も提供することを可能とする。建築 空間が情報化されることにより、人間の生活行動が情報化させることになる。つまり、生活 者が元気に生活をしているのかを情報として得ることができるのである。具体的な事例とし ては、ポットの使用歴をメールで離れた家族に伝えるサービスや赤外線カメラ・サーモグラ フィを用いることで生活行動を把握し、もしものケースでは、消防局に連絡するなどのサー ビスもある。これらは家具の一部や空間の一部だけを使ったものであり、アンビエント空間 と言えるものではまだないが、独居高齢者が増え社会問題になっている現在、このようなサー ビスはより注目されていくであろう。また、都市空間に視野を広げると、子供の安全を提供 することも行われている。具体的な事例としては、子供に RFID カードを持たせ、学校や塾、 駅でそのデータを読取り、保護者に子供のいる場所と時間をメールで連絡するサービスがあ る。また、都市空間に RFID 受信機を各所に設置する事により、子供の位置をより細かく把 握するというサービスも行われている。これらのように、情報技術が安心・安全に使われて おり、今後、より情報化された建築空間が求められていくであろう。
図 1.2.2-1 G-SECLAB
図 1.2.2-4 NOPE
図 1.2.2-2 学習する会議室
図 1.2.2-3 PAP I
図 1.2.2-5 空間まるごと一歩先のくらし
13
1 研究背景
| 1 . 2 . 3 ア ン ビ エ ン ト 空 間の将来 以上のように現在、多方面からアンビエント建築の提案と実証が行われている。これらか らわかるように、それまで把握することのできなかった情報を共有・提供することにより、 より良い活動を支援する空間を求めている。情報化によりそれまでの人間が認識することの 出来なかった多量の情報を共有、提供、選択することができるようになった。そして、空間 が情報化されることにより、それが実際の活動により近いところで行われるようになるので ある。それにより、それまで以上の活動が行われ、より高いレベルで生活を行えるようにな るのである。今後、高齢化や人口減少などによる人員不足などの理由によりアンビエント建 築は求められていくであろう。アンビエント建築の構築のためには、ネットワークの形成や 技術力、システム構築などまだ多くの問題があり、一般に普及するまでにはまだ時間はかか ると考えられる。しかし、今後、多方面からによる研究・開発・整備が行われれば、充分に 実現することが可能なものである。その重要な技術の一つとして、行動モニタリングがある。 次にこの行動モニタリングについて考えていきたい。
14
1 研究背景
| 1.3 行動モニタリング | 1 . 3 . 1 行 動 モ ニ タ リ ン グの意義と歴史 アンビエント社会、及びアンビエント建築を実現していく上で重要な要素である行動モニ タリングについて考えていきたい。 行動モニタリングとは、人間の行動に関して見えていない情報を見えるようにすることで ある。建築分野においてはもちろん、それ以外の分野においてもはっきりと見えていない人 間の行動を把握することはとても重要である。建築分野においては、人間の行動・接触・滞 在といった様々な状態を情報化技術によって客観的な数値として得た結果からモデル化、シ ミュレーション、検証などを経て客観的な立場から建築空間の設計提案等を行うことができ る。また、それらの情報を用いることで、時間変化するモデル、アンビエント空間、動的に 変化する空間・都市というものが実現できると考えられる。では、どのような行動モニタリ ングがこれまで行われてきたのか、考えていきたい。 これまでの行動モニタリングにおいては、ビデオ・カメラなどを使用して人間の行動を観 察するのが主流であった。それらの方法では、人間の眼と手によってデータ収集・分析を行 うので莫大な時間がかかり、〝モニタリング→モデル化 + 更新→シミュレーション→検証〟 という流れを一度分断・独立させて各範疇で分析せざるをえなかった。そのためさらに行動 モニタリングの一連の流れに統合する作業が必要であったため、特定のシチュエーションに おける一般解を求めることが現実的であり、主流であった ( 図 1.3.1-1)。しかし、現在にお いては、行動モニタリングを行うためのセンシングデバイスの小型化、低消費電力化が進み、 自由に生活している 被験者の長時間にわたる追跡も可能となってきており、行動モニタ リングで取得できるデータの量・質共に向上してきている。また、取得したデータを分析・ マイニングする技術も同じく発達しており、様々なデータからより速く正確に人間の行動を 把握することが可能となってきている。こういった変化により、このモニタリングの流れを 同時並行で処理しながら、相互に関係を持ってリアルタイムに行動モニタリングを行うこ とができるようになり、そのことは場面場面に応じた特殊解を求めることを可能にした ( 図 1.3.1-2)。
図 1.3.1-1) これまでの行動モニタリングシステム
図 1.3.1-2) これからの行動モニタリングシステム
15
1 研究背景
| 1 . 3 . 2 発 展 す る 行 動 モ ニタリングシステムの比較 行動モニタリングでは、スケールにより都市スケール・建築スケール・空間スケールと大 きく 3 つに分けることができると考えられる ( 図 1.3.2-1)。都市スケールでの行動モニタリ ングでは、携帯電話におけるデータの送受信記録や GPS といった手法を用いたモニタリン グがある。都市スケールでの人間に焦点をあてたモニタリングはもちろん、都市に焦点をあ てたモニタリングも可能で、人間行動により都市評価をすることもできると考えられる。建 築スケールでの行動モニタリングでは、RFID アクティブタグや GPS などを用いた手法があ る。学校や商業施設などでの人間行動を把握することで建築における全体像について考える ことができる。空間スケールででの行動モニタリングでは、人体通信機器や RFID パッシブ タグなどを用いた手法ががある。空間スケールでのモニタリングをさらに詳細な種類分けす ると、「歩行行動モニタリング」「活動状況モニタリング」「接触行動モニタリング」という 3つに分類することができる(図 1.3.2-2)。歩行行動モニタリングによるデータは、空間に おける人のいる場所を継続的にモニタリングすることで、人の移動、つまり歩行行動により 人の位置と時間を記録したものである。方法としては、床面に格子状に RFID タグを並べ貼 付け、その上をスリッパ等の RFID リーダを装備したものを装着した人が行動するなどが考 えられる。活動状況モニタリングによるデータは、空間における人の活動を局所的にモニタ リングすることで、人が行っている活動の内容と時間を記録したものである。他の二つの行 動モニタリングのアプリケーション的な側面が強いものである。接触行動モニタリングによ るデータは、人とモノとの接触行動、つまりモノを使う行為を記録するものである。方法と しては、モノに RFID タグを貼付け、それを指輪型等の RFID リーダを装備したものを装着 した人が行動するなどが考えられる。 本研究で使用する「スリッパ型 RFID リーダ」は歩行行動を、Arduino を基に作成した各 種センサシステムは活動状態モニタリングに分類できるであろう。
図 1.3.2-1) スケールごとの比較
図 1.3.2-1) 空間スケールでの比較
16
1 研究背景
| 1. 4 住宅に住まう | 1 . 4 . 1 住 宅 に 求 め ら れ るもの 日本人は 「 農耕民族 」 であるなどと表現されることがある。 農耕民族は、農耕するためには必ず一定の土地が必要で、農地の近くに村を形成し、定住 生活をします。それにここは誰それの土地と厳格に取り決めをします。そのため、農耕民族 は自分の土地に対する愛着を強く持つ傾向があります。この愛着を強く持つという部分が日 本人に近いとされるところである。言い換えれば、日本人はとても帰属意識が強い国民性で ある。元気な若者であっても、家でのんびりするのが好きなどということはそれを示す最た る例ではないだろうか。そんな日本人の国民性があるからこそ、住宅に求める部分が強いと 思われる。 経済の発達に伴い、住宅内では、家庭生活の合理化・効率化が進んだ。しかしながら、そ の一方で、生活の質に対する問い直し、たとえば環境に対する配慮や生活技術の継承に目が 向くようになっている。よりよい生活をしたいという欲求は人間誰もがもつものである。ア メリカの心理学者マズローは生活欲求を、最も下位段階としての生理欲求からはじまって、 安全欲求、帰属・愛情欲求、尊敬・自己顕示欲求、最も高位の段階として自己実現欲求の5 つの段階に分類して、順次欲求が発展することを示したが、高次レベルの欲求になるほど自 己の価値観と深くかかわりをもつことから、われわれはやはり生活の質について今一度問い 直し、真の住生活の向上を図ることが大切なのである 。 4)
より良い生活に必要なものとして、最たるものであり、誰しもが思うものとして「居心地」 だあろう。「居心地が良い」という言葉を住宅環境で良く使われる言葉で言い換えれば、「快 適」という言葉になるであろう。 まとめると、帰属意識の高い日本人にとって帰属するモノとして最たる例である住宅は重 要な意味をもち、その住宅の質向上こそ生活の質向上につながると考えられる。そのため、 住宅環境の質向上が求められ、そこで住宅環境における「快適」ということについて考える 必要があるということになる。では、このあとは「快適」という言葉に注目して、話を進め ていくこととする。
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1 研究背景
| 1 . 4 . 2 「 快 」 ・ 「 適 」 空間 住宅に限らず空間を考える際によく使われる言葉に 「 快適 」 という言葉があるが、それは どういう意味なのだろう。辞書で引いてみると、「心身に不快に感じられるところがなく気 持ちがいいこと」と書かれている。これでは、まだまだ意味が抽象的であるので、 「快」と「適」 という2つの言葉に分解してみよう。そうしてみると、意味が理解しやすくなる。「快」とは、 「より積極適に好ましい状態」という意味であり、一方「適」は、「不快な刺激がない状態」 という意味とされている。つまり、「快適」という言葉、「+であるという快の状態」と「− ではないという適の状態」の二つの側面をもっているということになる 。 5)
その快適について住宅内で考える際には、より積極的に「快」な状態を実現していくこと も重要であるが、その前にまず当たり前品質やとも言い換えられる「適」の実現が必要であ ると考えられる。 では、「適」空間の実現にはどのような要因があるのであろう。よく使われる住宅の与条 件として使われるものに、自然環境、法制度等の社会、文化、人の住要求、地理的環境、技 術という6つがある。 本研究では、人間の視点から住宅空間を考えることに主眼を置いているので、空間におけ る人間について考えていく。 建築は主として人間が使用するものであり、その建築の使用目的に沿って、そこで行われ る人間の生活をとえることが建築の設計計画の第一歩であることは言うまでもない。である からして、住宅の場合もそこで行われる生活の特性のとらえる必要がある。まず人間は動作 することにより日常生活を営んでいて、そこにはどの動作を妨げないだけの空間が必要であ る。また、人間は五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)損保が多くの感覚器官を通じて外 界の事物を見分け生活しており、そこには生理的空間がある。さらに空間は単に一人の人間 が使用するものではなく、通常は、複数の人間の集合を包み込んでおり、人間と人間の関係 が要求する心理的空間は、民族や文化の違いによってさまざまである 。 4)
良い空間とは人間が単に行動しやすく、使いやすいというだけで決定されるのではなく、 温度、湿度、明るさ、静けさなどの室内環境や、部屋のプロポーション、色彩、テクスチャー などの心理的影響も重要な要因である。しかし、住居にとっては生活行動がスムーズに行わ れることが第1条件であり、まずその住居で営まれる人間の生活行動をしっかりと把握する 必要がある。特に現代における生活の様相は家族の変容、高齢化、ライフスタイルの太陽か、 情報技術の家庭への侵入などさまざまな生活行動にかかわる変化があり、それらをとらえる ことが今後の住居の設計の第一歩であろう。
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1 研究背景
| 1.4.3 窓というスイッチ これまで、住宅における「快適」という言葉について考えてきたが、その「快適」を住宅 ないで実現する際に、着目するものとして「窓」があるのではないだろうか。というのも、 窓は、『室内に光りと空気を入れるために壁、又は屋根にあけた開口』であり、建物の眼で あると同時に鼻でもあるわけである。そんな機能を持つ窓の使用により、人々は住宅の環境 をより良いものへと変化させる。これまで使ってきた言葉を用いれば、「快適」な環境へと 調節するのである。 これは、窓開閉という行動であり、建築内での環境調節について考える際には大きな意味 を持つ行動である。環境調節行動は、換気ともいわれる。 換気は、室内空気と外の新鮮な空気が入れ替わることである。室内空気は種々の原因で汚 れることがある。換気することにより室内の空気を清浄に保つ。近年の住宅は機密性がよく なった結果、換気量が少なくなり、汚染物質による空気環境の問題がより多く生じるように なってきている。また、シックハウス問題は、室内で発生した微量名ホルムアルデヒドや不 揮発性ガス(VOC)などの有害化学物質を、微量であるが長期間吸い込むことが原因であり、 換気不足によるところが多い。その換気の方法は、機械換気と自然換気とに分けられる。 機械換気方式では、給気、排気ともに機械力を利用した第1種換気方式が最も確実な方法 である。住宅では、台所、浴室、トイレのように汚染ガス、蒸気、臭気など汚染物質が発生 するところで、発生した汚染物質をすぐに排気するように機械による排気(給気は自然式) を行う第3種換気方式が用いられる。給気のみ機械により新鮮空気を供給するものを第2種 換気方式という。換気により温度・湿度の異なる室内空気と外気が入れ替わることは冷暖房 負荷となるため、省エネルギー的には全熱(顕熱、潜熱)交換式の換気扇を用いることが望 ましい。流入口が風上側にない場合は袖壁を利用し、風を導くなどの配慮も必要となる。 温度差換気は空気の温度差による密度差から生じる対流によるものであり、上下方向に窓 があると有効である。換気量は上下の窓の距離に比例し、内外温度差の平方根に比例する。 片面しか開口部がとれない場合、上下に開口部を設置し、温度差換気を利用することも有効 である 。 5)
このように多くの換気の種類が存在するが、その中でもはじめに記述した窓開閉は大きな 意味をもつ。というのも、窓開閉には単純な換気という以上の意味を持つからである。晴れ ていて天気が良いから、暑いわけではないが風に当たりたいなど物理的な要因ではなく、心 理的な要因で窓を開けるということは誰しもが経験したことがあるのではないだろうか。こ のように多くの意味を持つ窓開閉は、行動という解釈だけではなく、空間を変化させたいと いう心理の現れという風に解釈することができるだろう。つまり、窓開閉行動をする理由を 解き明かすことができれば、それは空間内における「快適」における「適」を実現していく ことができると考えられるのである。窓は「空間のおける不快信号」のスイッチとしての機 能を有すると言えるのである。
19
2
研究概要
用語の定義
2.1
研究目的
2.2
研究の流れ
2.3
本研究の位置づけ
2.4
2
研究概要
|2 研究概要 | 2.1 用語の定義
++ 背景 ++ * アンビエント空間 「 建築空間の生命化 」 や 「 建築空間の最適化 」 とも言い換えられる。 これは、建築空間自体がロボティクス化され、建築空間が 「 今だから・どこだから。誰だ から 」 といった滞在者の状態にあったサービスを空間自らが判断し、提供することを目標 とした建築空間のことである。 * 行動モニタリング 人間や動物の行動を観察し、その行動についてモデル化やシミュレーションを行うことで 把握し、行動の一連を体系化すること。 *『快』と『適』 快は、より積極的に好ましい状態のこと。適は、不快な刺激がない状態のこと。
++ センサシステム ++ * Arduino(アルデュイーノ) 単純な入出力を備えた基板と Processing/Wiring 言語を実装した開発環境から構成される システムで、自分自身でセンサをカスタマイズできること・安価で大量に生産できること が特徴である。 * 窓開閉距離計測センサ Arduino の基盤に赤外線距離センサを取り付け、窓の開閉距離を計測するセンサシステム。 * 屋内温熱環境計測センサ Arduino の基盤に各種センサを取り付け、空間内における温度、湿度、照度といった温熱 環境を計測するセンサシステム。 * 屋外温熱環境計測センサ Arduino の基盤に各種センサを取り付け、屋外の温度、気圧、風速、風向、雨量といった 環境データを計測するセンサシステムであり、2階ベランダ部に設置した。 *スリッパ型 RFID リーダ 建築空間内にいる居住者が RFID タグリーダを携帯し、床下に敷設されたパッシブ型 RFID タグの ID を歩行動作の中から読み取り、これをリーダに接続された PDA のメモリカード 内にに蓄積するというセンサシステム。
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2
研究概要
++ 研究方法 ++ * 人間行動情報 歩行履歴を基に作成した住宅内における行動のデータ。 * 温熱環境情報 温度・湿度・照度・風速などの空間内及び屋外の温熱環境のデータ。 * 時間差・湿度差 窓開閉時での温度・湿度と基準値(前日の平均値、当日の午前3時時点、窓開閉時の屋外 での温度・湿度)との差。 * 行動パターン 歩行履歴から作成した 「A:活動状態 」、「B:活動→滞在 」、「C:滞在→活動 」、「D:滞在 」、「E:屋外から帰宅 」 という5つの住宅内での行動の種類。 * PMV 予測温冷感申告という意味の快適性を表す指数で、1970 年デンマーク工科大学の Fanger 教授によって発表された理論である。 * PPD 予測不快者率と意味の人間がある暑い寒いの状態の時に何%の人がその環境に不満足かを 表すのに用いられる指標。
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研究概要
| 2.1 研究目的 情報通信技術の発展に伴い、リアルタイムな人間生活の把握が可能となり、アンビエント 空間の実現が期待されている。「今だから、どこだから、誰だから」というコンセプトを基 にするアンビエント空間の実現には「空間が人間の空気を読む」ことが求められる。しかし ながら、人間状態の把握のためには生理・心理・行動・空間環境という要素のデータが必要 となるものの、情報通信技術の発展をもってしても心理情報の取得は難しいと考えられる。 そこで、必要となるのが行動・生理・空間環境データから人間心理を読み解くことである。 本研究では、ICT 技術(Arduino・RFID)を用いて人間行動情報・空間環境情報をデータ として取得することで、人間行動と温熱環境から窓開閉行動における温熱心理を読み取るこ とができることを明らかにする。また、温熱環境情報からの窓行動判断の推定および蓄積さ れた人間行動情報より個人の識別を行う方法を確立し、アンビエント空間の実現に向けての システムを提案することを目的とする。
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2
研究概要
| 2.3 研究の流れ 以下に、本研究の流れを示す。
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2
研究概要
| 2.4 本研究の位置づけ 本研究の位置づけ及び意義について、「 空間制御 」・「 窓開閉 」・「 行動モニタリング 」 と いう3つの視点から考えたいと思う。 まず、「 空間制御 」 の視点から考えてみる。 これまで建築分野において特に環境分野において空間の制御について考えられてきた。そ の際に使用されてきた理論に 「 ファジィ制御 」 がある。ファジィ制御は、ファジィ集合論 に基づいて制御モデルや制御系を構成する方法である。ファジィ集合論は、点がある集合に 属するか属さないかのいずれかとなる通常の集合論と異なり、中間の状態を許容した集合論 である。これにより、自然言語が有するあいまいな表現 に対しての中間的な値を対応させ ることができる。言語で表現された論理によって対象となるモデルや制御系を組み立てて行 くためコンピュータプログラムとの親和性が高い。また、自然言語を利用できるため、熟練 者の知識や経験を活かした制御システムの再現に適していると言われている。 この理論を使用した研究として、杉浦ら が行ったものがある。計測される温熱状態を基 6)
に温熱環境指標である PMV の値を算出し、その値によりファジィ理論を導入したシステム により空調を制御し、快適性の確保と省エネルギーの両立を確率したと結論づけている。ま た、最近では、サーモグラフィ技術を使用した人感センサ機能のついたエアコンも発売され ており、空調の視点からの制御はかなり高いレベルに達している 。 7)
しかしながら、これらの制御の方法は、空間の環境状態からのものでしかなく将来的に求 められる 「 アンビエント空間 」 では、まだまだ足りない部分が多いと考えられる。その足り ない部分を補完するものとして考えられるのが人間の行動および行動主の判別である。最近 のエアコンシステムでは人の動きをセンサリングすることができるが、その行動の意味性の マイニング及び行動の主を判別することはできていない。 そこで、住宅全体での人間行動・行動状態とリンクした温熱環境状態・窓開閉における動 機という要素それぞれデータとして取得することで、新しい 「 空間制御 」 の方法を提示する ことができると考えられる。
図 2.4) 三菱電機 ルームエアコン霧ヶ峰ムーブアイの 3D ムーブアイシステム
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2
研究概要
次に、「 窓開閉行動 」 の視点からである。 これまで、環境系の研究において多くの 「 窓開閉行動 」 に関する研究がなされてきている。 鈴木ら による研究では、窓開閉行動の要因をアンケートにより取得した要因をデータと 8)
する因子分析を行うことで明らかにしている。研究の結果、窓開放行為の理由としては空気 を入れ換えたいや室内が暑いかたなどの物理的要因の他に外気にふれたいや天気が良いなど 外界とのつながりへの欲求という心理的な条件が重要となること、そして、窓閉鎖行為の要 因としては、クーラーをつけるや虫などの侵入を防ぐためなどを生起要因とすることが多い ことを明らかにしている。 また、浅輪ら による研究では、複数の住宅において窓開閉及び冷房使用の行動特性を室 9)
内及び屋外の温熱状態を計測することで明らかにしている。研究の結果、窓開閉行動に起因 する要素は多く、また住宅ごとにその要因に差異にあることとまとめている。この結果を踏 まえると、窓開閉行動を住宅ごとで読み解くことは、住宅ごと、また、個人ごとにサービス を提供するアンビエント空間の実現に繋がると考えられ、その意味性は高いと思われる。 そこで、これまでのように温熱環境状態を単一で計測する、窓開閉の動機に関するアンケー トを行うなどのように単一なデータによる一時的なデータではなく、「 窓開閉行動 」 前の人 や環境の状態を一連の流れのあるデータとして見る必要あると考えられる。 本研究では、時系列的に人間行動・空間環境・窓開閉の動機という複数のデータを取得し、 それらのデータによるネットワーク分析から窓開閉行動における人間行動・空間環境・窓開 閉の動機の関係性をみることでより精度の高い行動特性が把握できる考えられる。 最後に、「 行動モニタリング 」 の視点から考えてみる。 これまで、渡辺仁史研究室では多くの行動モニタリングをテーマとして研究がなされてき た。大塚ら
10)
は、指輪型 RFID リーダを使用してヒトとモノとの接触行動をモニタリングし
て、そのデータから接触行動モデルを作成することで住宅内における行動ネットワークを把 握した。また、遠田ら
は、スリッパ型 RFID リーダによる歩行行動追跡システムを作成し、
11)
そのシステムにより空間内の歩行行動を可視化及び把握することを実現している。このよう に空間内で活動する人間行動を多様な側面からモニタリングを行ってきており、行動モニタ リング精度は高くなっている。 しかしながら、これまでの行動モニタリングでは足りていない部分があるように思われる。 それは、行動している場面による空間環境の状態である。人間の行動は多くの要素から構成 されており、単純な人間行動のモニタリングだけでは取得できる情報が限定されてきてしま うと考えられる。これからは、人間行動、生理状態、空間環境など計測可能なデータをクロ スさせて扱う必要がある。それを実現するインフラは、様々な分野でセンシングの技術が発 展により可能となってきている。 そこで、本研究では人間行動と温熱環境という2つの状態をセンシングし、マイニングす ることで、『心理』というこれまで情報通信技術をもってしても取得が難しかった情報をモ ニタリングすることができると考えている。
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3
研究方法
センサシステム
3.1
実験方法
3.2
分析方法
3.3
3
研究方法
|3 研究方法 | 3.1 センサシステム | 3.1.1 全体の構成 本研究で使用したセンサネットワークは、環 境 デ ー タ を セ ン シ ン グ す る 「 セ ン サ ノ ー ド 」 と 、 センサノードからデータを受信してインターネット上のサーバへ送信す る 「 ハ ブ ノ ー ド 」 と の 2 種 類 の ノ ー ド で 構 成 さ れ て い る 。 いずれのノードも 、 計測 したデータを送受信するために 、 無線シリアル通信を用いることとした 。 無線シリアル通 信の実装には 、XBee モジュール (Digi International K.K. 杜 XBee RF Module) の透過モード (Transparent Mode) を用いた 。XBee モジュールは Arduino XBee Shield を介して Arduino と 接続した 。 XBee は IEEE802.15.4( 低通信レート向けの規格 ) に準拠しているが 、ZigBee に準拠した ものとそうでないものとが提供されている 。ZigBee に準拠していないものであっても 、 ベン ダーが提供するファームウェアの設定により 、ZigBee と同様のセンサーネットワークを構築 する事が可能である 。 各々の XBee モジュールには固有のネットワーク ID を設定し 、 セン サノードはハブノードに設定したネットワーク ID のモジュールに対して随時計測値を送信 する 。 ハブノードはこれを受信すると 、 データ記録用の中継サーバに対して即座にデータを 転送する 12)。 ハブノードは、Arduino 基盤に XBee Shield と Ethernet Shield を連結することで作成した 。 ハブノードの Arduino 基板上で動作させるプログラムは 、DHCP 機能を備えたネットワー クルータに対して動的にローカル IP アドレスを取得しにいく機能を持つため 、 停電からの 回復時やネットワークアドレスの重複に対して問題が少なく 、 ネットワークルータとイーサ ネットケーブルで接続して AC 電源を接続するだけで - ブノードとして機能するように設計 されている 。
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3
研究方法
| 3 . 1 . 2 窓 開 閉 距 離 計 測 センサ 窓開閉をセンシングするために窓の開閉距離を計測するセンサを、Arduino の基盤に赤外 線距離センサを取り付けることで作成した。 ■ 赤外線距離センサ(シャープ、GP2Y0A21YK) ・ 赤 外 線 L E D と P SD(Posit ion Sensit ive Detector) を 使 用 し て、 非 接 触 で 距 離 を 検 出 し ている。 ・ 仕 様 書 に よ れ ば 、測距範囲は 10 ∼ 80cm である。
図 3.1.2) 窓開閉距離センサ外観と設置状況
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3
研究方法
| 3 . 1 . 3 温 熱 環 境 計 測 セ ンサ | 3 . 1 . 3 . 1 屋 内 温 熱 環 境 計測センサ 室内の温熱状態をセンシングするため、Arduino の基盤に各種センサを取り付けることで 空間内の温度、湿度、照度を計測するシステムを作成した(図)。 各センサの概要は以下の通り。 ■ 温 湿 度 セ ン サ ( S e n sirion 社 ,sHrI7x) ・ セ ン サ I C か ら の デ ジ タ ル 出 力 を Arduino の デ ジ タ ル 入 力 端 子 で 受 け 取 り、 こ れ を 処 理 す る ことでデータを取得している 。 ・ 温 度 セ ン サ は 、 仕 様 書 に よ れ ば 計 測 範 囲 は 40-+120( ℃ )、25( ℃ ) に お い て 計 測 精 度 は ± 0 . 5(℃ ) であり 、 分解能は 0.01(℃ ) である 。 ・ 湿 度 セ ン サ は 、 仕様書によれば計測範囲は 0-100(% RH)、 計測精度は ± 1 . 8 - 3 ( % R H ) 、 分解能は 0.03(%RH) である 。 ■ 照 度 セ ン サ ( 浜 松 ホトニクス ,S9648-100) ・ セ ン サ 部 で 生 じ た電圧降下量を数値化することでデータを取得している。 ・ 照 度 セ ン サ は 、 図 2 中の回路により計測された値を電位差に換算したもの を 用 い る こ と で 照 度 に 換 算 す る 。Arduino は 10bit の AD コ ン バ ー タ を 実 装 し て い る の で 、 ア ナ ロ グ 入 力 か ら 得 ら れ る 数 値 は 0-1023 ま で の 整 数 で 取 得 さ れ る 。 セ ン サ は 5( V) の 電 位 差 を 持 つ 回 路 に 実 装 さ れ て い る の で 、 こ の 1 0 2 4 段 階 の 整 数 値 を 0-5( V ) も し く は 0-5,000(mV ) の 数 値 に 変 換 し 、 降 下 電 圧 量 に換算する 。 ま た 、 い ず れ の セ ン サ も 、Arduino 基 盤 か ら 供 給 さ れ る 5V 電 源 に 並 列 に 接 続 さ れている。
図 3.1.3.1) 屋内温熱環境計測センサ外観
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3
研究方法
| 3 . 1 . 3 . 2 屋 外 温 熱 環 境 計測センサ 空間内の人間の状態を考える上で、屋外の温熱環境を計測することも重要であると考え、 屋外の温熱状態をセンシングするため、屋内温熱環境計測センサと同様に Arduino の基盤に 各種センサを取り付けることで屋外の温度、気圧、風速、風向、雨量をを計測するシステム を作成した(図)。各種センサについては、以下の通り。 ■ 温度センサ(→ 3.2.3.2 屋内温熱環境計測センサ該当部を参照) ■ 風向 、 風速 、 雨量センサ (Sparkfun 社 ,WeatherMeters) ・風向センサは 、 向きに応じてセンサ部の抵抗値が変わる仕組みになっており 、 その 降下電圧の値から北を 0(° ) として時計回りに 22.5(° ) 間隔で方位を得る 。 ・風速センサは 、 センサ部の回転数に応じて風速が決定される仕組みになっており 、 仕様書によれば 、 センサ部の 1 回転を 2.4(km/h) とし 、 単位時間あたりの回転数か ら風速を計算する 。 ・雨量センサは 、 転倒升の上部に設けられた漏斗から雨が流れ落ち 、 転倒升が 1 回転 倒すると 0.02794(mm) の降雨とし 、 単位時間あたりの転倒回数から雨量を計算す る 。 ■ 気圧センサ (VTI テクノロジ一社 SCP-1000) ・気圧センサは 、 仕様書によると計測範囲は ±2.5kPa( 相対値 ) ∼ 3.3MPa( 絶対値 )、 計測精度は 0.030 ㌦ a) である 。
これらのセンサは、Arduino のアナログ入力端子もしくはデジタル入力端子に接続し 、 各センサからの計測値を取得している 。 このセンサノードは建築外部 ( 二階テラス部分 → 3.3.2 実験場のセンサ配置図を参照 ) に設置した 。 なお 、Arduino 基板上で稼働させる計 測用のプログラムは 、 センサの提供元などから配布されているコードを 、 本研究の目的に応 じて適宜書き換えたものを用いている 。
図 3.1.3.2) 屋外温熱環境計測センサの外観及び設置状況
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3
研究方法
| 3 . 1 . 4 ス リ ッ パ 型 R F I D リーダ 歩行履歴をデータ取得することで、空間内における居住者の生活状態を把握するセンサシ ステム。 「スリッパ型 RFID リーダ」による歩行行動追跡システムでは、建築空間内にいる居住者が RFID タグリーダを携帯し(図 3.1.4)、床下に敷設された RFID タグのユニーク ID を歩行動 作の中から読み取り、これをネットワーク上のサーバに蓄積するというシステムを採用して いる。 ■ PDA:東芝社製 PDA(OS:Windows Mobile 2003 SE、CPU:520MHz、 RAM:128MB、CF カードスロット・IEEE 802.11b 搭載)のものを用いた。 ■ PDA:Hewlett Packerd 社製の PDA(OS:Windows Mobile5.0、CPU:520MHz、 RAM:128MB、CF カードスロット・IEEE802.11b 搭載) ■ RFID リーダのアンテナ部は、 ・小型アンテナ:Omron 社製 CF タイプリードライトユニット(13.56(MHz) 帯、アン テナサイズ:35.0 × 50.0 × 2.0(mm) 、消費電力:発信時約 175(mA) 以下) ・大型アンテナには Welcat 社製のもの(51.5 × 70.0 × 3.0(mm)) ■ RFID タグ:日特エンジニアリング社製(70 × 75(mm))。
図 3.1.4) RFID タグの埋設例とスリッパ型 RFID リーダの外観
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3
研究方法
| 3.2 実験方法 本実験は、日常生活中における屋外及び屋内空間の温熱環境情報、住居者の人間行動情報 を開発したセンサシステムにより取得することで、 1.温熱環境情報による窓開閉行動の判断推定 2.蓄積された人間行動情報による個人識別 3.人間行動情報・温熱環境情報による窓開閉行動における温熱心理の推定 と い う 3 つ の こ と を 明 ら かにすることを目的にしている。
| 3.2.1 実験概要 ■ 屋内温熱環境・窓開閉行動の計測 ・実験日時:2010 年1月 21 日(木)∼ 2011 年1月 20 日(木) ■ 屋外温熱環境の計測 ・実験日時:2010 年5月 15 日(土) ∼ 2011 年1月 20 日(木) ■ 行動ネットワークの計測・窓開閉行動の動機アンケート ・実験日時 1)夏季:2010 年6月1日(火)∼ 7月7日(水) 2)冬季(床暖房なし):2010 年 11 月 11 日(木)∼ 2010 年 12 月 15 日(水) 3)冬季(床暖房あり):2010 年 12 月 16 日(木)∼ 2011 年1月 15 日(水) 【 1)37 日間 2)35 日間3)31 日間 計 103 日間 】 ・被験者:3名(50 代の男・女各1名、30 代男性1名)
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3
研究方法
| 3.2.2 実験場 実験を行った住宅の平面図及び、センサの配置を以下に示す。
図 3.2.2-1) 実験場の外観及び内観
図 3.2.2-2) 実験場平面図及びセンサの配置
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3
研究方法
| 3 . 2 . 3 窓 開 閉 行 動 の 動 機アンケート 窓開閉の心理と人間行動及び温熱環境との関係を読み解くためにアンケートを行った。 アンケートでは、窓開閉行動を起こす前の行動を流れとしてわかるように作成した。アン ケートの詳細な内容は、以下に示す通り。
図 3.2.3) 実施した窓開閉行動の動機アンケート
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3
研究方法
| 3.3 分析方法 | 3.3.1 分析フロー 以下に、本論文で行う分析の流れを示す。
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研究方法
| 3 . 3 . 2 温 熱 環 境 情 報 の 作成 | 3 . 3 . 2 . 1 相 対 温 熱 環 境 値の作成 屋内環境センサにより取得した屋内の 「 温度 」・「 湿度 」 及び屋外環境センサにより取得 した屋外の 「 温度 」 より、「 温度差 」・「 湿度差 」 という相対的な値を算出した。 作成した理由としては、温熱における感覚においては、「 温度 」・「 湿度 」 といった絶対 的な値だけではなく、窓開閉行動前の状態推移が関係すると考えたためである。 これは、刺激の弁別閾は基準となる基礎刺激の強度に比例することを見いだした。「 ウェー バー・フェヒナーの法則 」 の考え方に基づいている。わかりやすい例えを使えば、同じ温度 の東京に帰ってきたとしても寒い北海道からと暖かい沖縄からとでは感じ方が違うのと同じ である。 ■ 温度差 * 温度差a = 窓開閉時の温度 − 窓開閉行動前日の平均室内温度 * 温度差b = 窓開閉時の温度 − 窓開閉行動当日の午前3時の室内温度 * 温度差c = 窓開閉時の温度 − 窓開閉行動時の屋外温度 ■ 湿度差 * 温度差a = 窓開閉時の温度 − 窓開閉行動前日の平均室内温度 * 温度差b = 窓開閉時の温度 − 窓開閉行動当日の午前3時の室内温度 * 温度差c = 窓開閉時の温度 − 窓開閉行動時の屋外温度 基準の温度として午前3時の温度を使用した理由としては、住宅内において最も活動して ない時間を選んだためである。室内においては、活動状態にあると室内の温熱環境が変化し てしまうため基準としては扱えないためである。 これらにより、温度差a・湿度差aにより前日からの温熱環境変化を、温度差b・温度差 bにより 1 日の中での温熱環境変を、温度差c・湿度差cにより屋外との温熱環境との差を データして使用できるようにした。 作成したデータなど、次項以降の分析で温熱環境情報として使用するデータを以下に示す。 * 照度 :窓開閉時の室内照度 ※ * 温度 :窓開閉行動時の室内温度 ※ * 湿度 :窓開閉行動時の室内湿度 ※ * 温度差:窓開閉行動時の室内温度と基準温度との差(a∼c) * 湿度差:窓開閉行動時の室内湿度と基準温度との差(a∼c) * PMV :窓開閉行動時の温熱環境情報により簡易的に算出した予測温冷感申告 * PPD
:窓開閉行動時の温熱環境情報により簡易的に算出した予測不快者率
(PMV・PPD の算出方法については、3.3.2.2 で詳細に記述する) ※ 「 室内∼ 」 については、2階のセンサ位置によるものである。
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3
研究方法
| 3 . 3 . 2 . 2 簡 易 的 な 快 適 評価指標の計算 温熱環境状態を統合的に把握するため、快適性を評価する指標として使用されている 「PMV 値 」・「PPD 値 」 を簡易的に計算し、次項以降で行う分析に使用した。 ■ PMV(Predicted Mean Vote, 予測温冷感申告) PMV は、快適性を表す指数で、1970 年デンマーク工科大学の Fanger 教授によって発表 された理論である 14)。 PMV 値を計算することによって、温度環境に関する 6 要素(空気温度、 平均輻射温度、相対湿度、平均風速、着衣量 、代謝量)の組み合わせに対する快適度を求 めることができる。それぞれの要素の具体的な内容は以下の通りである 13)。 ・ 空気温度 :気温のことで、温度計で示される値のことである. ・ 相対湿度 :空気中の水分量のことである。湿度の違により感じる暑さが異なる。 汗の蒸発が快適性に影響している。 ・平均放射温度:壁や天井、床、家具などと人体の輻射授受を示す温度直接伝わる熱の こと。放射温度の値が室温よりも高いと、周囲から受ける熱放射による 暑さを感じ、逆に室温より低いと涼しさを感じる。 ・ 平均風速 :空気の動きのことで、温度が同じでも気流が強くなるほど寒く感じる。 ・ 活動量 :活動が活発さのことであり、身体から発生する熱量のこと。 作業の内容によって体感温度はかなり変わる。椅子に腰掛けた状態の 単位面積あたりの人間の代謝量 (=58.2W/m2) を 1Met とする。人体の表 面積は成人女子で 1.5381.8m2 程度、成人男子で 1.7381.9m2 程度である。 活発な活動ほど Met 値は高くなる. ・ 着衣量 :clo 値とは着衣の断熱・保温性を示す指標である。つまり着ている服の 種類や量のことである。皮膚表面の温度が下がると寒く感じるが、服を 着ると皮膚表面から熱量が逃げにくくなり、皮膚表面温度が上がり、暖 かく感じる。着衣の面積や厚さによって熱抵抗がかわる。3 ピースのスー ツを着た状態の熱抵抗 ( = 0.155(m2・K)/W) を 1cro とする。 服を着こむほど clo 値は高くなる。 表 3.3.2.2)PMV 計算における要素の値
PMV 算出式:PMV =(0.303e - 0.036M + 0.028)×(M - W - Ed - Es - Ere - Cre - R - C) ※ M:代謝量(W/m2) Ere:呼吸による潜熱損失量(W/m2) W:機械的仕事量(W/m2) Cre:呼吸による顕熱損失量(W/m2) Ed:不感蒸泄量(w/m2) R:放射熱損失量(W/m2) Es:皮膚面よりの蒸発熱損失量(w/m2) C:対流熱損失量(W/m2)
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3
研究方法
■ PPD(Predicted Percentage of Dissatisfied、予測不快者率) PPD 指数は、人間がある暑い寒いの状態の時に何%の人がその環境に不満足かを表すのに 用いられる。この指標は、オフィスなど通常人が居住する比較的快適温度範囲に近い温熱環 境を評価するのに適している。PMV が− 2 ∼+ 2 の範囲内の温熱環境評価に用いるのがよ いとされている。ISO の標準では、PMV が± 0.5 以内、不快者率 10%以下となるような温 熱環境を推奨している。 PPD 算出式:PPD = 100 - 95exp - ( 0.03353PMV 4 + 0.2179PMV 2)
図 3.3.2.2) PMV と PPD との関係
本論文における計算では、計測した 「 温度 」・「 湿度 」 及びを 「 風速 」・「 代謝量 」・「 着 衣量 」 の一定値を使用した。算出方法としては、簡易的な計算であるため誤差は発生するが、 原本の研究 13)によれば誤差が出るもの指標値の分布は正規分布となることがわかっている。 よって、今回は特別な誤差の修正を行わないで妥当性のあるデータとして扱えると判断した 。
15)
・ 室内温度 :屋内環境計測センサにより取得した温度 ・平均放射温度:屋内環境計測センサにより取得した温度 ・ 相対湿度 :屋内環境計測センサにより取得した湿度 ・ 代謝量 :「 1Met 」 で一定 ・ 着衣量 :1∼6、9∼ 12 月− 「 0.5clo 」 7・8月− 「0.3clo」 で一定 ・ 風速 :「 0.2 m/h」 で一定
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3
研究方法
| 3 . 3 . 3 人 間 行 動 情 報 の 作成 窓開閉距離センサにより取得した窓開閉時刻を基に、窓開閉行動前 60 分間の行動状態を 分類した。 スリッパ型 RFID リーダにより取得したタグ取得時刻、取得タグナンバーから最終滞在ゾー ン 、ゾーン遷移数(ゾーンを移動した数)、取得タグ数を時間帯(窓開閉時刻前0 ∼ 10 分、 11 ∼ 30 分、31 ∼ 60 分)ごとに集計した。そのデータ取得状況から行動のパターンを以 下の5つに分類した。また、行動パターン説明内に出てくる 「 活動状態 」・「 滞在状態 」 に ついては、「 活動状態:活動量が多い状態 」、「 滞在状態:活動量が少ない状態 」 と定義し ている。分類方法については、以下を参照。 * 行動パターンA:活動状態 * 行動パターンB:活動状態 → 滞在状態 * 行動パターンC:滞在状態 → 活動状態 * 行動パターンD:滞在状態 * 行動パターンE:屋外から帰宅
図 3.3.3) 行動パターンの分類方法
作成したデータなど、次項以降の分析で人間行動情報として使用するデータを以下に示す。 * 行動パターン:窓開閉行動前の行動状態(A∼Eの5パターン) * ゾーン遷移数:窓開閉行動前のゾーン移動数(a∼c) * 最終ゾーン :窓開閉行動前 10 分間に最も滞在していた時間が長いゾーン (A∼ J の 10 分類)
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3
研究方法
| 3.3.4 分析手法 | 3 . 3 . 4 . 1 温 熱 環 境 情 報 による窓開閉行動の判断推定 本分析では、温熱環境情報による窓開閉行動の判断を推定するため、温熱環境情報(温度・ 湿度・照度・温度差・湿度差)を説明変数、窓開閉行動を目的変数としたロジスティック回 帰分析を行った。 ロジスティック回帰分析は、ベルヌーイ分布に従う変数の統計的回帰モデルの一種である。 連結関数としてロジットを使用する一般化線形モデル (GLM) の一種でもある。ロジスティッ ク回帰分析は、医学や社会科学でよく使われている。 ロジスティック回帰モデルは、以下のような形式である。
ここで、n 個のユニットと共変動 X があり、以下のような関係にある。
結果のオッズ(1 から確率を引いたもので確率を割った値)の対数は、説明変数 Xi の線 形関数としてモデル化される。これを次のようにも表せる。
β パラメータの推定はオッズ比に重大な影響がある。性別のような 2 値の説明変数の場合、 e β は例えば男性と女性の結果のオッズ比の推定である。推定には最尤法を使うことが多い。 ロジスティック回帰モデルは単純パーセプトロンと等価である。このモデルの拡張として多 分割(polytomous)ロジスティック回帰がある。複数カテゴリの従属変数や順序のある従属 変数を扱う。ロジスティック回帰による階層分けを多項ロジットモデルと呼ぶ。 ロジスティック回帰分析では、 ・ 従属変数があり、なしという2値をとる場合 ・ 独立変数は、連続値でも、名義変数でもよい という、他の多変量解析に比べ、制約の少ない解析手法であり、今回の分析がこの条件に 当てはまるため採用した。また、ロジスティック回帰分析の利点として、各独立変数に対し てオッズ比が計算されることがあげられる。このオッズ比は、各独立変数の影響、すなわち 単位あたりの変化がもたらす確率の変化を評価したものである。このオッズ比により、各食 行動において、ある独立変数が他の独立変数に対しどのくらい効いているかがわかる 16)。 本研究では、分析ソフト SPSS を使用した 17)。
41
3
研究方法
| 3 . 3 . 4 . 2 蓄 積 さ れ た 人 間行動情報による個人識別 実験により得られたデータから、ID 番号に対応するゾーンの遷移として歩行行動データ を変換し、1 次のマルコフプロセスに基づく遷移確率表を作成することで、これを遷移確率 ダイヤグラムとして被験者の行動モデルとする 18)。 遷移確率表作成上の留意事項としては以下の通りである。まず、同じゾーン間の遷移につ いては再帰などを考慮しない。また、本来ならば空間的にあり得ないゾーン間遷移について は、空間的につじつまが合うような最短経路で、途中に必要なゾーン遷移データを補完する (例:図 1 で「A → D」と続く場合には、「A → B → D」とする)。連続するデータ間に 60 秒以上のインターバルが生じたとき、これを「立ち止まり」と判断する。連続するデータ間 に 3600 秒以上のインターバルが生じたとき、これを「外出」と判断する。 被験者ごとの全実験日程歩行行動データにより作成された遷移確率表を 10 行 10 列の行 列計算することで各被験者の識別値として算出する。作成された各被験者の識別値と1日ご とのデータから作成された遷移確率表に算出した値と比較し、値の近い被験者の行動と判定 する(図 3.3.4.2)。
図 3.3.4.2) 人間行動情報からの個人識別方法のフロー
42
3
研究方法
| 3 . 3 . 4 . 3 人 間 行 動 情 報 ・温熱環境情報による窓開閉行動における温熱心理の推定 1章でも述べたように窓開閉行動には多くの要因があり、その要因同士が複雑にからみ あっていると考えられる。 そのため本研究では、人間行動・温熱環境といった要因と考えられる多くのデータ間にあ る因果関係をそれぞれ読み解くことで窓開閉行動を起こした温熱に対する心理を明らかにす ることを考えた。そこで、前提知識に基づくモデル構築とデータからの学習の両方の側面を 持つことで、不完全なデータや観測不能なデータにも対応可能な分析手法であるベイジアン ネットワークによる分析によりそれらを行うこととした。 ベイジアンネットワークは、因果関係を確率により記述するグラフィカルモデルの一つで、 複雑な因果関係の推論を有向グラフ構造により表すとともに、個々の変数の関係を条件つき 確率で表す確率推論のモデルである 19)。 特徴としては、因果的な特徴を有向グラフ(矢印を用いたリンク)によるネットワークと して表し、その上で確率推論を行うことで、複雑でかつ不確実な事象の起こりやすさやその 可能性を予測することができる。これまで蓄積された情報をもとに、起こりうる確率をそれ ぞれの場合について求め、それらを起こる経路に従って計算することで、複雑な経路を伴っ た因果関係の発生確率を定量的に表わすことが可能となる。 ベイジアンネットワークでは、経路については、循環するような経路は扱わず、非循環有 向グラフのみを扱うことができる。有向グラフを用いずに無向グラフで表現する方法は、マ ルコフネットワークと呼ばれている。 確率変数 A、B、C の間の条件付依存性を A → C、B → C と表し、リンクの元となる親ノー ドを A や B、リンクの先にくる子ノードを C とする時、A が起こる確率を P(A)、A が既に起こっ たときに C となる条件付確率を P(C¦A) のように表すこととすると、C が起こりうる確率は、 P(A,B,C)=P(C¦A,B)P(A)P(B) となる。色々な因果関係に対し、グラフ上の各ノードに対応する 確率変数として表現する方法やルールが定められている。複雑な系においても、各ノードに おける条件付確率表やベイズの定理等を用いながら、それぞれの確率を計算でき、確率的な 依存関係をモデル化できる 20)。 本分析では、センサシステムにより取得した温熱環境情報(照度・温度・温度差・湿度・ 湿度差)及び人間行動情報(ゾーン遷移数・最終滞在ゾーン・行動パターン)、そして、ア ンケートにより取得した窓開閉行動の動機を要素としてベイジアンネットワークによる分析 を行い、最終的に窓開閉行動の動機(〝暑い〟・〝寒い〟・〝空気が悪い〟等の温熱心理)を読 み解く因果関係のネットワーク構造を明らかにする。 また、本研究においておこなったベイジアンネットワークによる分析では、Naive Bayse (Microsoft 社 Microsoft Office 2007 用 Microsoft SQL Server 2005 データ マイニング ア ドイン)を使用した 21)。
43
4
実験結果
窓開閉時の温熱環境情報統計
4.1
居住者の歩行履歴統計
4.2
4
実験結果
| 4 . 1 窓 開 閉 時 の 温 熱 環境情報の統計 「 窓開閉行動の判断推定 」 のモデル式に導入する独立変数の設定、及び、ロジスティック 回帰分析を行う際のデータの分類するため、窓開閉時の温熱環境及び時間情報ごとに集計を した。 | 4 . 1 . 1 時 間 情 報 に よ る 窓開閉行動の集計 | 4 . 1 . 1 . 1 時 間 帯 ご と の 窓開閉回数 時間帯ごとに窓開閉数を集計してみると、以下のように8∼ 11 時、12 ∼ 15 時の窓開閉 回数が多いことがわかる(図 4.1.1.1)。このデータをアンケートの集計結果と照らし合わせ てみると、掃除などの家事の中で空気の入替えを行ったことによるものであると考えられる。 このように、各時間帯において窓開閉回数にばらつきがあること、時間帯ごとの窓開閉の動 機が違うことからデータの分類の仕方において時間帯によって切り分けることが有効である と考えられる。
図 4.1.1.1) 時間帯ごとに集計した窓開閉行動の回数
| 4 . 1 . 1 . 2 各 月 ご と の 窓 開閉回数 月ごとの窓開閉回数を見てみると、6月の湿気が高い月に窓開閉回数が多いことがわかる が、それ以以外の傾向を見ることができなかった。 そこで、より詳細に傾向をみるために次項以降で月ごとに簡易的に算出した環境評価指標 (PMV、PPD)などの温熱環境情報とクロス集計を行うことで傾向を読み解いていく。
図 4.1.1.2) 月ごとに集計した窓開閉行動の回数
45
4
実験結果
| 4 . 1 . 1 . 3 各 月 に お け る 時間帯ごとの窓開閉行動回数 月ごと、時間帯ごとの窓開閉回数を見ることで少なからず窓開閉の傾向を把握することが できたが、まだまだ特徴をつかむには不十分であったため、月及び時間帯による窓開閉行動 回数をクロス集計した。以下に示す結果を見てみると、いくつかの傾向が見て取れた。 ・1∼3月、12 月の時期における窓開閉行動では、昼の時間帯を凸の頂上としてピラミッ ド型のデータ数になっており、冬の寒う時期には暖かい時間帯の窓開閉に集中すること がわかる。 ・夏季には、他の時期と比べて夜の時間帯の窓開閉回数が多い。これは1日中温暖であり、 温度による窓開閉に対する壁がなく、多くの人が集まることにより空気が悪くなった状 態を解消するための窓開閉行動が増えたためであると考えられる。 ・6月の窓開閉行動を見ると、2∼ 10 時の午前の時間帯に他の月よりもとりわけて窓開 閉行動が多いことがわかる。これは、湿度が高い時期であるので、起床前後に籠もった 空気を換気させるための行動であると考えられる。 従って、時期や時間帯のよる行動パターンの違いを把握することができるため窓開閉行動 の判定に有意義なデータであると考えられる。
図 4.1.1.3) 各月における時間帯ごとの窓開閉回数
46
4
実験結果
| 4 . 1 . 2 窓 開 閉 時 に お け る時間帯と温熱環境の関係性 | 4 . 1 . 2 . 1 各 時 間 帯 に お ける温度と湿度の状況 各時間帯における窓開閉状況時の温度・湿度という温熱環境情報の中で温熱感覚に与え る影響が強いと感じられ、また、時間帯による変化率が大きいと思われる要素の分布を図 4.1.2.1 に示す。これにより、時間帯ごとのいくつかの特徴が見て取れる。 ・「2:00 ∼ 6:00」・「18:00 ∼ 22:00」・「22:00 ∼ 2:00」 の時間帯では、温度・湿度共に振 れ幅が狭いことがわかる。これは、夜及び朝方の時間帯では、「 寒くない 」・「 湿気が 強い 」 などのある一定の温熱状態がある場合のみ窓開閉行動を起こすと言い換えること ができる。 ・「6:00 ∼ 10:00」・「10:00 ∼ 14:00」・「14:00 ∼ 18:00」 の時間帯では、逆に温度・湿度 共に振れ幅が多いことがわかる。これは、温冷感に対する温度調節のための窓開閉や用 事などの窓開閉が分散しているからであると思われる。 ・「6:00 ∼ 10:00」 の時間帯では、湿度が高い時に窓開閉行動を起こしやすい傾向が見て 取れる。これは、朝方に籠もった空気を入れ換えるための行動が多いということが考え れる。温度の分布を見て取ると、振れ幅が非常に大きいことを考慮するとより湿度の傾 向が強いことがわかる。 ・「18:00 ∼ 22:00」 の時間帯では、夜ということで温度がそれほど高くないことが想像さ
図 4.1.2.1) 窓開閉時間帯ごとの温度・湿度分布
47
4
実験結果
| 4 . 1 . 2 . 2 各 時 間 帯 に お ける簡易 PMV 値ごとの窓開閉回数 本研究では、計測した温熱環境情報から簡易的に PMV 値を算出した窓開閉時の環境評価 値(PMV・PPD)と時間帯という分類によりクロス集計を行うことで、窓開閉行動における 温冷感の傾向を読み解いた。 その結果は、図 4.1.2.2 に示す。図の見方としては、円が大きいほど窓開閉行動の回数が 多いこと意味している。次にあげるような特徴が見て取れる。 ・「6:00 ∼ 10:00」・「10:00 ∼ 14:00」 の時間帯では、「PMV = -1 ∼ -3」 で窓開閉行動が多 いことがわかる。つまり、寒いと感じていると思われるにも関わらず、窓開閉行動を行っ ていることになる。これは、朝の時間帯では、温冷感ではなく、湿度によるじめじめ感 をやわらげるための窓開閉や朝の時間帯に行う家事の中で窓開閉行動が多いということ が考えられる。 ・「18:00 ∼ 22:00」・「22:00 ∼ 2:00」 の時間帯では、「PMV = -1 ∼ -3」 における窓開閉行 動が少なく、「PMV = 1 ∼ 3」 における窓開閉行動が多いことがわかる。つまり、夜の 窓開閉行動では温冷感を理由とした窓開閉行動が多いと考えられる。 ・全時間帯において、「PMV = -1 ∼ 1」 における窓開閉行動が多いことが見て取れ、窓開 閉行動が必ずしも温冷感を理由としていないということがわかる。
図 4.1.2.2) 各時間帯における簡易 PMV 値ごとの窓開閉回数
48
4
実験結果
| 4 . 1 . 2 . 3 各 時 間 帯 に お ける簡易 PPD 値ごとの窓開閉回数 PPD では、温熱に対する不快指数が表現される。つまり、値が大きければ大きいほど温冷 に対して不快に思う人が多いと考えられるということである。 時間帯と PPD による窓開閉行動回数のクロス集計結果を図 4.1.2.3 に示す。これにより、 次のような傾向が見て取れた。 ・「6:00 ∼ 10:00」 の時間帯では、「PPD = 70%以上 」 での窓開閉行動が多く、温熱状態に 対して不快と感じて窓開閉行動が多く起こることがわかる。 ・「10:00 ∼ 14:00」・「14:00 ∼ 18:00」 の時間帯では、PPD の値による窓開閉行動回数の 分散があまり見られない。つまり、温冷感に対して不快と思っての窓開閉行動と用事 などによる窓開閉行動が混在していることが考えられる。 ・「18:00 ∼ 22:00」・「22:00 ∼ 2:00」 の時間帯では、「PPD = 30%以下 」 での窓開閉行動 回数が多いことがわかる。これは、夜の時間帯では温冷感に対して不快と思っての行動 がすくなくいことを意味する。つまり、夜の時間帯において家事などで窓開閉行動を起 こすが少ないことを踏まえると、食事の後やくつろいでいる際に風に当たりたいなどの 理由で窓開閉行動が起こっていると考えられる。
図 4.1.2.3) 各時間帯における簡易 PPD 値ごとの窓開閉回数
49
4
実験結果
| 4 . 1 . 3 窓 開 閉 時 に お け る月と温熱環境の関係性 | 4 . 1 . 3 . 1 各 月 に お け る 窓開閉時と前日平均温度との差ごとの窓開閉回数 次に、窓開閉行動回数を各月と温熱情報(基準値との温度差・湿度差、PMV、PPD)によ るクロス集計を行うことで、時期による窓開閉行動の傾向を読み取った。 本研究では、窓開閉行動では絶対的な温熱環境情報だけではなく、前日からの温熱状態変 化や屋外との温熱状態との差など相対的な値に起因している部分があると考え、相対的な値 として温度差(a・b)と湿度(a・b)を作成した。まずはじめに、各月による前日の平 均温度と窓開閉時の温度との差による窓開閉回数の傾向を読み取った。また、相対的な値と 時間帯による集計を行わなかった理由としては季節に関わらず時間帯による温度及び湿度の 変化量はあまり差異が見て取れないことを考慮したためである。 ・「1 ∼ 4 月、12 月 」 では、「 温度差=0℃以上 」 において窓開閉回数が多いことがわかる。 つまり、この時期では前日の平均温度に比べて高い時に窓開閉行動を起こす傾向がある ことがわかる。これは、晴れているから、暖かいからというような理由により窓開閉を 行う、昼の時間帯に窓開閉を行うなどの理由が考えられる。 ・「6 ∼ 10 月 」 では、「 温度差=1∼ -2℃ 」 において窓開閉回数が多いことがわかる。これは、 前日よりも暑いからという理由で窓開閉を起こすことが少ないことを意味していると思 われる。つまり、夏の時期では単純に温度が高いからという理由で窓開閉をするわけで はないということである。その理由としては、温度の調節であれば、クーラーなどの使 用が優先されるためと考えられる。 ・全体としては、「 温度差=1℃ 」 を基準にそれ以上で多い月、少ない月という風に大き くわけて2つのグループが作れる。これは、後述する分析においてデータの分類わけと して利用できると考えられる。
図 4.1.3.1) 各月における窓開閉時と前日平均温度との差ごとの窓開閉回数
50
4
実験結果
| 4 . 1 . 3 . 2 各 月 に お け る 窓開閉時と午前3時の温度との差ごとの窓開閉回数 次に、各月における窓開閉当日の午前3時時点での温度との差による窓開閉回数の比較を 行った。前述した通り、本研究では1日の中での温熱状態の変化により温熱環境に対する感 じ方に差異があると考えた。そこで、1日の基準となる値を午前3時と設定し、その時点で の値との差を見ることでデータ化を行った。把握することができた傾向は、以下に示す通り である。 ・「1 ∼3月、12 月 」 では、「 温度差=2℃以上 」 において窓開閉回数が多いことがわかる。 つまり、この時期では1日の中で暖かい時間帯に窓開閉行動を起こす傾向があることが わかる。これは、用事や換気など温熱状態ではない要因による窓開閉行動を行いたいが、 冬の時期であるので温度が低く、寒い時間帯での窓開閉を避けていると考えられる。 ・「6 ∼ 10 月 」 では、「 温度差= 2 ∼ -2℃ 」 において窓開閉回数が多いことがわかる。こ れは、冬の時期のように暖かい時間帯に窓開閉を行うということではないことが言える。 ・全体としては、「 温度差=2℃ 」 を基準にそれ以上で多い月、少ない月という風に大き くわけて2つのグループが作れる。これは、後述する分析にデータの分類として利用で きると考えられる。また、各月でそのような特徴がみることができるということは、月 ごとに同じ時間帯に窓開閉が多いという風に読み変えることもできる。
図 4.1.3.2) 各月における窓開閉時と午前3時の温度との差ごとの窓開閉回数
51
4
実験結果
| 4 . 1 . 3 . 3 各 月 に お け る 窓開閉時と前日平均湿度との差ごとの窓開閉回数 各月における窓開閉時の相対的な湿度の値と窓開閉回数の傾向を読み解いていく。まずは、 前日の平均値との相対値について考える。結果は、以下に示す通りである。 ・「1、2、12 月 」 は、「 湿度差 = -5% 」 以下での窓開閉回数が多いことがわかる。前日の 平均湿度よりも低い時に窓開閉行動を行うということである。これは、乾燥する時期に さらに湿度が低い時点において、窓開閉を行うことであり、湿度による要因が少ないこ とが想像される。 ・「6 ∼9月 」 では、「 湿度差=0%以上 」 での窓開閉数が多いことがわかる。これは、前 日よりも湿度が高いと窓開閉回数が多いということを示している。夏の時期では湿度が 高いことによる窓開閉回数が多いと考えられる。とりわけ、6月ではその時期が多いこ とは梅雨の時期であることに起因すると予想される。
図 4.1.3.3) 各月における窓開閉時と前日平均湿度との差ごとの窓開閉回数
52
4
実験結果
| 4 . 1 . 3 . 4 各 月 に お け る 窓開閉時と午前3時の湿度との差ごとの窓開閉回数 次に、各月ごとの1日の中での湿度変化をデータ化したものと窓開閉回数との関係を図 4.1.3.4 に示す。以下に示す結果を見てみると、これまでのデータと傾向が違うのがわかる。 ・どの月においても一様に窓開閉回数が分散している。「 湿度差= -20%以上 」・「 湿度差 = 10%以上 」 の部分を除けば、各月同様に回数が分布している。 ・各月の中での窓開閉回数分布の特徴が見にくいのと同様に、各月ごとの窓開閉回数の傾 向に差が見にくいことがわかる。これらは、温度と違い湿度では前日から急激な変化が ないためであると考えられる。また、雨が降るなどで湿度が変化したとしても、雨が室 内に入ることを避けるため窓開閉行動を行うことが少ないためであると予想される。
図 4.1.3.4) 各月における窓開閉時と午前3時の湿度との差ごとの窓開閉回数
53
4
実験結果
| 4 . 1 . 3 . 5 各 月 に お け る 簡易 PMV 値ごとの窓開閉回数 各月ごとに温冷感をしめす PMV による窓開閉回数の集計を行った。(図 4.1.3.5) この集計により、各月の温冷感による窓開閉の傾向を読み解く。結果は、以下に示す通り である。 ・「1 ∼4月、11月、12 月 」 では、「PMV= -1 以下 」 で窓開閉回数が多いことがわかる。 つまり、寒い時期であり、寒いと感じているにも関わらず窓開閉を行うことである。こ れは、温冷感に対する窓開閉ではなく、家事などの用事のための窓開閉が多いことが考 えられる。 ・「 6月 」 のデータに注目してみると、「PMV 値 =-1 ∼ 1」 という温冷感に対してちょう ど良いというタイミングで窓開閉を行っていることがわかる。これは、総合的に扱われ る温冷感ではなく、湿度などのある特徴的な温熱環境情報による要素によって窓開閉が 行われていると予想される。 ・「7 ∼ 9 月 」 の時期では、「PMV= 1以上 」 において窓開閉回数が多いことがわかる。こ れは、温度差による集計の結果を踏まえると、温度による暑いという感覚ではなく、湿 度などを踏まえた総合的な温冷感が高いため窓を開けるという風に解釈することができ ると考えられる。
図 4.1.3.5) 各月における簡易 PMV 値ごとの窓開閉回数
54
4
実験結果
| 4 . 1 . 3 . 6 各 月 に お け る 簡易 PPD 値ごとの窓開閉回数 各月ごとの PPD の値における窓開閉回数についてクロス集計を行った(図 4.1.3.6)。 全てのデータを俯瞰してみてみると、季節ごとに特徴があることがわかる。具体的な傾向と しては、次に示す通りである。 ・「1 ∼ 3 月、11 月、12 月 」 では、「PPD=70%以上 」 においての窓開閉回数が多いこと がわかる。これは、温冷感に対する不快感が高いにも関わらず窓開閉行動を行うという ことである。つまり、この時期の窓開閉においては総合的な温冷感が要因ではないと考 えられる。 ・「 6∼9月 」 では、「PPD=30%以下 」 においての窓開閉回数が多いことがわかる。これは、 総合的な温冷感に対する不快感は低いにも関わらず窓開閉を行うということであり、風 にあたりたいから、空気を入れかえたいからというように感覚的な要因が存在すると考 えられる。つまり、単純な温熱状態のみから理由から要因をひもとくことはできないと 予想される。 ・「 4、5月、10 月 」 では、PPD の値によらずまんべんなく分布していることがわかる。 これは、春・秋という季節では、総合的な温冷感を要因とした窓開閉行動の推定が難し いということを意味している。夏や冬など温熱状態に特徴がある場合においては、温熱 環境情報による窓開閉行動の推定は可能性があるが、それ以外では別の指標からの推測 が必要となることが想像できる。
図 4.1.3.6) 各月における簡易 PPD 値ごとの窓開閉回数
55
4
実験結果
| 4 . 2 居 住 者 の 歩 行 履 歴統計 各被験者の全実験日程の行動データをメッシュマップとして表現した。このメッシュマッ プをみると各被験者の行動に差があることがわかる。また、この後に記述する分析の項では、 より精細に人間行動情報を読み解くため、1次マルコフによる遷移確率表を作成する。 メッシュマップの比較により傾向をみることができた各被験者の行動の差は以下に示す通 りである。 ■ 被験者A(50 代女性)に見られる特徴 ・2階における広い側のベランダ前の窓周辺の歩行が多いことがわかる。この窓は、窓 開閉行動をセンサリングしている窓であり、この特徴は洗濯などの家事を行うための 窓開閉が多いことからであると思われる。 ・キッチン及びダイニングの歩行において、広い範囲で歩行回数が多いことがわかる。 このように、被験者aでは、リビングなどある2階部分での行動に特徴がある。 ■ 被験者B(50 代男性)に見られる特徴 ・1階の居間及びホールでの歩行が多いことがわかる。また、被験者Aに比べて1階寝 室での歩行が多いこともわかる。このように、被験者Bは1階部分での行動に特徴が あることが読み取れる。
図 4.2-1) 被験者Aの空間利用メッシュマップ
56
4
実験結果
図 4.2-2) 被験者Bの空間利用メッシュマップ
図 4.2-3) 被験者Cの空間利用メッシュマップ
57
5 考察
温 熱 環 境 情 報 に よ る 窓 開 閉 行 動 の 判 断 推 定 【 分 析 1 】
5.1
蓄 積 さ れ た 人 間 行 動 情 報 に よ る 個 人 識 別 【 分 析 2 】
5.2
人 間 行 動 情 報 ・ 温 熱 環 境 情 報 に よ る 窓 開 閉 行 動 に お け る 温 熱 心 理 の 推 定 【 分 析 3 】
5.3
5
|5 考察 | 5.1 温 熱 環 境 情 報 に よ る 窓 開 閉 行 動 の 判 断 推 定 分析1【温熱環境情報による窓開閉行動の判断推定】では、温熱環境情報により 「 窓開閉 」 という日常生活における環境変化を促す特異な行動ともいえる環境調節行動を識別するこ とで、空間を 「 不快から適へ 」 と変化させるアンビエント空間への一端を実現していくこと を目指す。 背景でも述べたように、「 窓開閉 」 という行動の動機には多くの要素が複雑に絡み合って いると考えられている。その複雑に絡み合う要素の1つに、心理などのように窓開閉行動ご とに細かな変化ががなく、絶対的な値で表現される温熱環境情報がある。そこで、データ化 が可能である温熱環境情報を基とした窓開閉行動の判断推定を行う。しかしながら、全ての データを一様に分析しても窓開閉行動の判断推定は難しいと考えられるので、取得したデー タを細分化することでその傾向を読み解いていくことする。
59
考察
5
| 5.1.1 モデル式の構築 ま ず は じ め に 、ロ ジ ス ティック回帰分析によるモデル式を作成するにあたり、デー タ 分 類 及 び 導 入 す る 変 数 を整理 sita 。 データ分類については、窓開閉の時々によってランダム的に変化がないものによ る 分 類 が 必 要 と な る と 考 えられる。そこで、注目したいのが時間情報である。 「 4 . 1 窓 開 閉 時 の 温 熱 情 報 統 計 」 の 結 果 を 見 て み る と、 時 間 帯 や 各 月 ご と に 温 熱 環 境 情 報 の 違 い が あ る こ と を 把 握 す る こ と が で き る。 温 熱 環 境 情 報 が 時 間 情 報 に よ り 違うということは、温熱環境の影響を多少なりとも受ける窓開閉行動を読み解くの に 時 間 情 報 に よ る 分 類 に 効 果 が あ る と と 考 え ら れ る。 し か し、 図 4.1.3.1 ∼ 6 か ら も 見 て わ か る よ う に い く つ か の 月 で 同 じ よ う な 傾 向 が あ る も の も あ る。 こ れ ら を 踏 ま え 、各 月 に よ る 分 類 で なく、季節による分類を行った。よって、分類としては、「 時 間 帯 」 ・ 「 季 節 」 ・ 「 時 間帯×季節 」 という3つとした。 変 数 に つ い て は 、 ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 分 析 に お け る〝 関 係 性 の 強 い 目 的 変 数 は 排 除 し な け れ ば な ら な い 〟 と い う 留 意 点 を 考 慮 し、 同 じ 温 熱 環 境 値 を 基 準 と し て い る 相 対 的 な 値 ( 温 度 差 a と 温 度 差 b・ 湿 度 差 a と 湿 度 差 b ) は 一 方 の み し か 使 用 し な いようにした。 そ れ ら を 踏 ま え 、 整 理 したものが以下の表になる。
表 5.1.1) 窓開閉行動判断推定に使用するデータの分類及び変数
60
考察
5
| 5 . 1 . 2 窓 開 閉 行 動 に 関 係性の高い要因の抽出 ロジスティック回帰分析によるモデルの作成でわかることとして、〝判別における関係性 強弱〟・〝判別におけるその影響度合い〟という2つのものがある。 ここでは、まず前述の判別における関係性の強弱を示す有意確率にについて述べる。有意 確率とは、「 ある要素がモデルに役立たない 」 という仮説に対する有意確率である。有意水 準を5%とした場合、有意確率が 0.05 以下の場合に仮説が棄却され、その要素がモデルの 予測に役立つということになる。つまり、有意確率の値が小さいものほど、モデルの予測に 影響するということである。各分類において、有意確率の小さいものから上位の3つを並べ たものを表として考察した。
| 5 . 1 . 2 . 1 時 間 帯 分 類 に よる窓開閉行動に関係する要因の抽出 時間帯によるデータ分類によって窓開閉行動に関係する要因を抽出した。時間帯による分 類では、全体として窓開閉行動の判断に関係する要因が多いことがわかる。各時間帯の考察 については、以下に示す。 ・全ての時間帯において、「PMV」・「PPD」 の有意確率が小さく、窓開閉行動判断にそ れらが関係していることがわかる。 ・夜の時間帯では、温冷感の指標以上に温度が窓開閉行動に影響していることがわかる。 4章の統計結果を踏まえると、温度が高い時期にしか、夜は窓開閉を行わないという ことを定量的に示していると考えられる。 ・朝・昼の時間帯では、夜と違い湿度・湿度差の要因が影響していることがわかる。4 章の統計結果を踏まえると、これは朝方は籠もった空気による高い湿度を調節するた めの窓開閉が多いことを、1日の中で湿度差が高い朝の時間帯に窓を開放し、比較的 湿度差が低い午後の時間帯に窓の閉鎖を行っていることをそれぞれ示していると考え られる。
表 5.1.2.1) 時間帯分類ごとの窓開閉行動における有意確率の値の小さいもの
61
考察
5
| 5 . 1 . 2 . 2 季 節 分 類 に よ る窓開閉行動に関係する要因の抽出 季節によるデータ分類によって窓開閉行動に関係する要因を抽出した。季節による分類で は、全体として窓開閉行動の判断に関係する要因が多いことがわかる。各季節ごとの考察を 以下に示す。 ・全ての季節において、照度の有意確率が低く、関係性が強いことがわかる。これは、全 体として日中の時間に窓の開放行動が多く、夜の時間帯に窓の閉鎖行動が多いから出た 結果であると考えられる。 ・冬季では、湿度の要因が強く関係性を持っていることがわかる。4章の統計結果と詳細 なデータを見てみると、湿度差が 「 + 」 の値をとる際に窓の開放行動をし、「 − 」 の値 をとる際に窓の閉鎖行動を行っていることがわかった。 ・夏季では、照度以外の有意確率は 0.05 よりも大きくなっており、関係のある要因が少 ないことがわかる。 表 5.1.2.2) 季節分類ごとの窓開閉行動における有意確率の値の小さいもの
62
考察
5
| 5 . 1 . 2 . 3 各 季 節 ご と の 時間帯分類による窓開閉行動に関係する要因の抽出 各季節の時間帯ごとにデータをさらに細分化することで、より詳細な分類で窓開閉行動に 関係する要因を抽出した。全体的な傾向として、冬季∼夏季∼春・秋季の順に窓開閉行動に 関係する要因が多いことがわかる。各分類の詳細な傾向の考察は、以下に示す通りである。 また、冬季の夜の時間帯はデータ数が少なかったため、データとして無効であった。 ・時間帯分類において、朝・昼の時間帯において湿度・湿度差の要因に影響があるという 結果が出ていたが、今回の分類による結果を見てみると冬におけるそれらの時間帯に特 に影響があるということがわかる。 ・春・秋季では全ての時間帯のいて、関係する要因が少ない。これは、夏季や冬季と違い 「 湿度が高い 」 や 「 温度が低い 」 などの特徴的な温熱環境情報が少ないからであると考 えられる。 ・夏では、全ての時間帯で 「PPD」 の要因が窓開閉行動に影響があることがわかる。不快 指数が高い時に窓開放活動を行い、そして、温冷感に対する不快指数が下がった場合に は窓閉鎖行動をするということを示しており、典型的な環境調節のための窓開閉行動の 構図が見て取れる。また、夏の夜の時間帯では温度の要因が高くなっている。これは、 時間帯の分類による結果で出ていた温度の要因に影響がるという結果は、夏季における ところが強いことを示している。 表 5.1.2.3) 各季節の時間帯分類ごとの窓開閉行動における有意確率の値の小さいもの
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考察
5
| 5 . 1 . 2 . 4 窓 開 閉 行 動 に 関係する要因のまとめ 窓開閉行動に関係する要因について言及する前に、相対的な値である 「 温度差 」・「 湿度 差 」 のa・bの結果の差異について検討する。それぞれの値における関係性の高さでは顕著 な差はないものの、全体としてa(平日の平均値との差)の方が関係性が高いことがわかる。 また、分類を細分化するとその傾向は強くなる。よって、今後の分析3では、相対的な値と してはaの値を採用することとする。 ここからは、それぞれの分類でわかった傾向を要因ごとにまとめていく。 【温度】:夏季に窓開閉行動に影響を与える傾向があり、特にその中でも夜の時間帯にその 関係性は強い。 【湿度】:朝の時間帯に窓開閉行動に影響を与える傾向があり、特にその中でも冬季にその 関係性が強い。 【湿度差】:朝∼昼の時間帯において、窓開閉行動に影響を与え、その影響は特に冬季に傾向 が強いことがわかった。 【照度】:季節による分類では、全ての時期に関係性があることがわかった。特に、冬季の 昼、夏季の朝にその傾向が強い。 【PMV】 :朝・夜の時間帯において、窓開閉行動に関係があることわかった。しかしながら、 より詳細な分類ではそれらの傾向を顕著にみることができなかった。 【PPD】:時間帯による分類では、全ての時間帯において関係性をもつことがわかった。そ の傾向は、特に夏季の朝∼昼の時間帯に出ていることがわかった。 表 5.1.2.4) 窓開閉行動における有意確率の値の小さいもの
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考察
5
| 5 . 1 . 3 窓 開 閉 行 動 に 影 響度の高い要因の抽出 次に、窓開閉行動の判別に対する影響度について考える。ロジスティック回帰分析では、 オッズ比として要素のモデルに対する影響度が算出される。 今回のモデルでは、0 ∼ 1 の間の値をとる。そして、「0 ∼ 0.5」の値をとる場合「窓閉鎖 行動を行う」。「0.5 ∼ 1」の値をとる場合「窓開放行動を行う」ということになる。また、 ロジスティック回帰分析を行う際の従属変数の値は、窓開閉距離センサにより得られた「窓 を開放した」もしくは「窓を閉鎖した」という結果を用いた。つまり、得られたモデル式は、 ある属性をもった人の値を式の変数に代入すると、その属性を持つ人は統計的に、窓を開放 しようとするか、閉鎖しようとするかといことが判定される。 窓開閉行動に対する影響度であるオッズ比の値の大きい順に表にまとめた。表において無 表記である要因は、「窓開放行動を行う」方へ影響し、「 − 」 の表記があるものは、「窓閉鎖 行動を行う」方へ影響するという意味である。
| 5 . 1 . 3 . 1 時 間 帯 分 類 ご との窓開閉行動に影響度が高い要因の抽出 まずはじめに、時間帯の分類により窓開閉行動の決定要因に強く影響する要因について考 察してみる。結果は以下の表に示す通りである。 ・時間帯による分類では、全ての時間帯において 「PMV」・「 温度 」・「 温度差 」 の影響度 合いが強いことがわかる。その中でも朝・夜の時間帯における 「PMV」 の要因は、窓開 閉行動に関係するかどうかを判定する有意確率も小さく、その影響度は特に高いと考え られる。表の中で、「 − 」 が追記されているので、PMV の値が上がれば上がるほど 「 窓 を閉鎖 」 し、PMV の値が下がれば下がるほど 「 窓を開放 」 する。さらなる考察について、 より詳細な分類の項で記述することする。
表 5.1.3.1) 時間帯分類ごとの窓開閉行動におけるオッズ比の値の大きいもの
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考察
5
| 5 . 1 . 3 . 2 季 節 分 類 ご と の窓開閉行動に影響度が高い要因の抽出 つぎに、季節による分類したデータの場合の窓開閉行動に影響を強く与える要因について みていく。時間帯による分類の際と同様に全ての分類において同じ要因が影響を与えている 傾向が見て取れる。以下、具体的な考察を示していく。 ・春・秋季、冬季においては、「 湿度・湿度差 」 が窓開閉行動に影響を強く与えることが わかる。 ・全体として、「 温度 」 や温冷感の指標である 「PMV」 の要因が窓開閉行動に強い影響を 与えることがわかる。特に春・秋季においては、窓開閉行動に影響する確率を示す有意 確率の値も小さく、影響する度合いは高くなっている。 ・夏季では、有意確率の小さい要素がオッズ比の値が大きい上位3位までに入っておらず、 季節分類において単純に温熱環境情報から窓開閉行動を判断することは難しいと考えら れる。
表 5.1.3.2) 季節分類ごとの窓開閉行動におけるオッズ比の値の大きいもの
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考察
5
| 5 . 1 . 3 . 3 時 間 帯 分 類 に よる季節ごとの窓開閉行動に影響度が高い要因の抽出 各季節の時間帯ごとにデータをさらに細分化することで、より詳細な分類で窓開閉行動へ の影響度の高い要因を抽出した。全体的な傾向として、オッズ比の値が大きく、窓開閉行動 への影響度が高いかつ有意確率の値も小さく、窓開閉行動に影響する確率が高い要素はあま りみることができなかった。詳細な考察については以下に示す通りである。また、冬季の夜 の時間帯はデータ数が少なかったため、データとして無効であった。 ・時間帯による分類データから窓開閉行動に与える影響が強い要因として 「PMV」 がある ことがわかった。その要因の詳細な考察がこのデータをすることができる。冬の寒い時 期では、「PMV」 の値が大きければ大きいほど窓開放行動を行い、「PMV」 の値が小さけ れば小さいほど窓閉鎖行動を行うという結果になっている。つまり、これは寒いと感じ る場合は窓を閉め、寒さが軽減されている温熱環境では、換気などのために窓開放行動 を行うという傾向を意味している。そして、夏季の暑い時期では、「PMV」 の値に 「 − 」 が追記されており、「PMV」 の値が大きければ大きいほど窓を閉鎖し、小さければ小さ いほど窓を開放するという結果になっている。これは、暑いという感じる場合は、窓を 閉め、空調などにより環境調節を行い、そこまで暑さを感じない場面では窓をあけるこ とにより環境調節をするということが読み取れる。 ・春・秋季では、各時間帯による影響する要因の差異がないことがわかる。そして、要因 となるものとしては、温冷感の指標である 「PMV」、「 温度 」、「 湿度 」 という絶対的な 値として温熱感覚に対する要因が上位を占めている。 ・夏季では、「 温度差 」 や 「 湿度差 」 といった相対的な値が窓開閉行動に強い影響を与え ていることがわかる。特に夏の朝の時間帯では、絶対的な値よりも前日との平均気温と の差である 「 温度差a 」 が強い要因となっているのは特筆すべきことであると考えられ る。
表 5.1.3.3) 各季節の時間帯分類ごとの窓開閉行動におけるオッズ比の値の大きいもの
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考察
5
| 5 . 1 . 3 . 4 窓 開 閉 行 動 に 影響を与える要因のまとめ 窓開閉行動に関係する要因についてまとめるまえに、相対的な値である 「 温度差 」・「 湿 度差 」 のa・bの結果の差異について検討する。それぞれの値における影響する度合いでは 顕著な差はないものの、全体としてa(平日の平均値との差)の方が与える影響度合いが高 いことがわかる。また、温度差・湿度差共に上位3位に入ってきている点も大きい。よって、 前項に記述したとおり、今後の分析3では、相対的な値としてはaの値を採用することとす る。全体の傾向としては、詳細名分類では、なかなか結果をみることができなかったものの、 季節の分類では、窓開放行動に影響する要因を、時間帯の分類では、窓閉鎖行動に影響する 要因を抽出することができた。ここからは、それぞれの分類でわかった傾向を要因ごとにま とめていく。 【温度】:全体として温度の要因は、窓開閉行動に与える影響が大きいことがわかった。特 に春・秋季、冬季においては、窓開閉行動に与える影響は強い。 【湿度】:春・秋季、冬季において、その影響度が高いことがわかる。 【温度差】:相対的な値である温度差では、各時間帯分類において影響度がたかく、特に夏季 での影響度が高いことがわかった。クーラーの使用ではない環境調節として窓開 閉を行う際の判断要素となっていることが予想される。 【湿度差】:冬季において影響度が高いことがわかる。これは、乾燥している時期では湿度に 対する感度が高く、相対的に湿度が高くなると窓開閉による調節を行おうとして いるということが考えられる。 【PMV】:全体として影響度が高い傾向が見られ、特に朝・夜の時間帯においては影響度が 強く、窓開閉行動の判断材料として有効であると考えられる。 【PPD】:夏の昼の時間帯において、影響度が高く、これは温冷感とは関係なく窓開閉行動 を行っていることを示しており、夏における行動には温熱状態のみでは判断が難 しいと思われる。 表 5.1.3.4) 窓開閉行動におけるオッズ比の値の大きいもの
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考察
5
| 5.1.4 モデルの検証 分類分けした各モデルの正誤表を以下に示す。 結果を見てみると、全体として分類が細分化された方が正誤率は高いことがわかる。しかし、 全体として正誤率は概ね 60%以上を保持しており、妥当性のあるものとなっていることが わかる。
表 5.1.4) 窓開閉行動判断推定における正誤表
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考察
5
| 5 . 2 蓄 積 さ れ た 人 間 行動情報による個人識別 分析2【蓄積された人間行動情報による個人識別】では、歩行軌跡や住宅内におけるゾー ン間の移動スタイルなどの人間行動情報により住宅内で生活している人間を判別するシステ ムを確立することで、各個人が求めるサービスに対応できるアンビエント空間の一端を実現 していくことを目指す。 住宅内においては、そこに住まう人の立場によって行動の種類が異なる。例えば、母親は 炊事や洗濯などのためキッチンや洗面所とリビングとの行き来が多くなったり、子供は自分 自身の部屋にいることが多く、住宅内での移動が最小限になったりなどはそのわかりやすい 例であろう。つまり、住宅内において各個人の行動はそれぞれ異なるということである。そ こで、その行動の違いを判別することができれば空間が個人を識別することができると考え られる。行動の判別については、データを蓄積すればするほど精度が高くなっていくと考え られ、行動の仕方が変わることもデータを常に蓄積していくことで対応が可能であろう。 本研究では、3ヶ月分の蓄積データから識別を行った。
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考察
5
| 5.2.1 被験者ごとの識別値の算出 各被験者ごとの全データから作成した遷移確率表を以下に示す。 そして、この遷移確率表で示される 10 行 10 列の値を行列計算し、各被験者の識別値と して算出した。その値は、以下の通りである。 ■ 被験者A(50 代女性):0.588761 ■ 被験者B(50 代男性):0.435823 まずはじめに遷移確率表の値について、以下に示す行動遷移の差が見られる。このような 遷移の仕方の際が識別値としての差を生んでいると考えられる。 ・被験者A(50 代女性)は、B∼E間の移動遷移確率が高く、これは、ダイニング・キッ チンの移動が多いことを示す。また、滞在の値を見てみると、他のゾーンから移動して きた後のAゾーン(リビング)での滞在が多いことがわかる。このように、2階のゾー ンでの特徴が多いことが定量的にわかる。 ・被験者B(50 代男性)は、ゾーンBからゾーンHの移動が多く、これは1階と2階の 移動遷移を示している。また、ゾーンFとH間の移動が多くいことゾーンI・Jでの滞 在が多いことなど1階ゾーンでの特徴があることを定量的に言える。
図 5.2.1-1) 被験者Aの遷移確率表
図 5.2.1-2) 被験者Bの遷移確率表
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考察
5
| 5 . 2 . 2 各 実 験 日 の 個 別 値と識別値との比較 識別値と同様に各実験日ごとに作成された遷移確率表から個別値を算出した。そして、そ の算出結果と各被験者の識別値との絶対距離を比較し、距離が近い被験者であると判定した。 結果は以下に示す通りである。結果を見てみると、被験者が誤判定された場合は 57%の確 率で被験者Aも誤認識されており、休日などで住宅内での振る舞いが逆転していることがこ のような結果をもたらしたと思われる。
表 5.2.2) 各実験微日の個別値算出結果と判定結果
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考察
5
| 5.2.3 モデル精度の検証 判定を行ったについて判定精度を検証した。 検証結果を見てみると、概ね 70%を越えており、モデルの妥当性は高いと考えられる。 しかしながら、各実験微の個別値と識別値との距離を見てみると、個人識別として正答して いてもその距離が遠いものが多いことがわかる。本研究における識別では、被験者が2名で あるため、このような結果が起きていると考えられる。また、2010 年 12 月 16 日以降の被 験者Aの正誤率が下がったことがわかる。この日は床暖房にスイッチを入れた日であり、温 熱環境により行動が変化したことが考えられる。しかし、この時期は年末でもあり、普段と は違う行動が多かったことも予想される。よって、一概に温熱状態の変化により行動が変化 したとは言い切れない。だが、要因の1つになっているという可能性は高いと思われる。 被験者が増えた際のモデル精度を高めるためには、時間帯や曜日などの分類ごとに遷移確 率表を作成し、識別値を算出することで対応できると考えられる。
表 5.2.3) 個人識別の精度一覧
図 5.2.3) 各実験日の個別値の推移
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考察
5
| 5 . 3 人 間 行 動 情 報 ・ 温熱環境情報による窓開閉行動における温熱心理の推定 分析3【人間行動情報・温熱環境情報による窓開閉行動における温熱心理の推定】では、 人間行動情報と温熱環境情報により温熱に対する心理の関係性を明らかにすることで、情報 通信技術をもってしてもデータとして取得することの難しい心理を読み解き、空間が人間が どのような心理であるかということを認識し、「 適 」 へと変化させるアンビエント空間への 一端を実現していくことを目指す。 背景でも述べたように、「 窓開閉 」 という行動の動機には多くの要素が複雑に絡み合って いると考えられている。【分析1】で行ったようにデータの細分化などで温熱環境情報のみ である程度の傾向を読み取ることが出来たが、どのような温熱状態でどのような理由で窓開 閉を行うかということを定量的に読み取ることはできなかった。 そこで、この項では、温熱環境情報と共に人間行動情報を使用して、より詳細な窓開閉行 動の要因を明らかにし、窓開閉行動を行う温熱心理を読み解いていく。
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考察
5
| 5.3.1 モデル式の構築 ベ イ ジ ア ン ネ ッ ト ワ ー ク に よ る モ デ ル 式 を 作 成 す る に あ た り、 デ ー タ 分 類 及 び 導 入する変数を整理する。 本 分 析 で は 、温 熱 に 対 する心理を読み解くことを目的としている。しかしながら、 窓 開 閉 行 動 の 全 て が 温 熱 に 対 し て を 持 っ て い る と い う わ け で は な い。 例 え ば、 洗 濯 物 を 干 す た め な ど の 用 事 の た め に 窓 を 開 け る こ と が こ と が あ る。 そ こ で、 そ の よ う に 温 熱 に 対 す る 心 理 要 因 のデータを除去する必要がある。 ま た 、 温 熱 環 境 情 報 に お い て も 全 く 同 じ 環 境 で あ っ て も、 そ の 時 に し て い る 内 容 に よ っ て 感 じ 方 は 変 わ る と 考 え ら れ る。 例 え ば、 同 じ 気 温 で も 寒 い 外 か ら 帰 っ て 来 た 際 に は 暖 か い と 感 じ る が、 家 の 中 で ず っ と の ん び り し て い る 場 合 は 暑 い と 感 じ る か も し れ な い 。 こ の よ う な こ と が 起 こ り う る の で、 本 分 析 で は 行 動 パ タ ー ン に よ る デ ー タ の 分 類 を 行 っ た 。 そ の 方 法 に つ い て は、 3 章 の 分 析 方 法 に 詳 細 に 記 述 し た。 ま た 、【 分 析 1 】 の 結 果 な どの踏まえ、ベイジアンネットワークによるモデル式を作 成 す る に あ た り 、 デ ー タ 分 類 及 び 導 入 す る 変 数 を 整 理 し た。 そ の 結 果 は 以 下 の よ う になっている。
表 5.3.1) データ分類及びモデル作成に使用した変数の一覧
また、次ページ以降で示す結果の図の見方として、いくつか留意点があるので、以下に記述 する。 ・要因同士の関係性が線の太さにより表現されており、遷移が大きいほど太くなる。 また、遷移を示す線は依存関係の確率が 50%以上の時に発生し、そこから「∼ 65%」、「∼ 80%」、「∼ 100%」の確率で太さは決定されている。 ・ナイーブベイズによるモデル有向性のネットワークになっており、矢印の向いた方向 性に対する遷移があることを示す。 ・各要因の外への矢印が、本分析で最終的に求めたい「温熱心理」への遷移があること を示す。 ・「 平 休 日 」、「 時 間 帯 」 は、 温 熱 環 境 や 人 間 行 動 に よ り 変 化 す る こ と が な く、 予 測 す る 必 要 性 が ないため、独立変数のみに導入した。また、「温熱心理」の 予 測 を 目 的 と し て いるため、従属変数にのみ導入している。
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考察
5
| 5 . 3 . 2 各 行 動 パ タ ー ン ごとの窓開閉行動における温熱心理因子の関係性 | 5.3.2.1 行動パターン A における温熱心理因子の関係性 モデル式作成のために整理した変数を導入したナイーブベイズによるモデルを作成した。 行動パターン A におけるモデルにおける要因同士の関係の結果を図 5.3.2.1 に示す。結果よ り以下のことが考察できる。 ・行動パターン A では、全ての時期において「PMV」が温熱心理の因子となることが わかる。また、温度差の影響についても同様であることがわかる。これは、行動パター ン A では、活動状態であるため自分自身の発熱量などによる影響の方が心理に影響し、 その瞬間の温熱情報よりも相対的な感覚が優先されるからであると考えられる。 ・床暖房を付けている時期では、人間行動と温熱環境関係性が非常に強いことがわかる。 しかし、温熱心理に遷移するのは「PMV」のみであり、「PMV」の依存関係性も大き くない。
図 5.3.2.1) 行動パターン A における温熱心理因子の関係性
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考察
5
| 5 . 3 . 2 . 2 行 動 パ タ ー ン B における温熱心理因子の関係性 次に、行動パターン B における温熱心理因子の関係性について考える。ここで、念のため 確認するが、行動パターン B は「活動状態→滞在状態」というパターンである。 それでは、図 5.3.2.2 の結果より具体的な考察を行っていく。 ・行動パターンBでは、最終滞在ゾーンの関係性が低いことがわかる。つまり、「活動 状態→滞在状態」という行動においては、最後の滞在状態ではなく、滞在にいたった 前の状態が重要になるということである。 ・11月における因子の関係性に注目してみると、相対的な値に比べて絶対的な値の方 が影響する度合いが高いことがわかる。これは、行動パターンAの考察を踏まえると、 後半部分の滞在状態の影響があるものと思われる。つまり、人間行動という視点では、 滞在状態におけるデータはあまり重要な意味をもたないが、温熱環境という視点では 滞在状態でのデータが役立つということとなる。
図 5.3.2.2) 行動パターン B における温熱心理因子の関係性
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考察
5
| 5 . 3 . 2 . 3 行 動 パ タ ー ン C における温熱心理因子の関係性 また、改めて行動パターンの確認しておく。行動パターンCは、「滞在状態→活動状態」 というパターンである。それでは、そのパターンにおける温熱心理因子の関係性について、 図 5.3.2.3 に示す結果を基に考えていくこととする。 ・行動パターンCでは、行動パターンBと逆に最終滞在ゾーンの影響が強いことがわか る。つまり、これは、後半部分の活動状態の影響を受けているということになる。行 動パターンBの考察を踏まえれば、窓開閉行動における温熱心理においては、時間軸 に関わらず、活動状態の影響を強く受けやすいということがわかる。 ・12 月における温熱心理因子では、因子同士の関係性は強いものの温熱心理に影響す る因子は少ないことがわかる。同様な結果が、行動パターンAの結果(図 5.3.2.1) からも見られ、なにかしらの共通する影響があると考えられる。
図 5.3.2.3) 行動パターン C における温熱心理因子の関係性
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考察
5
| 5 . 3 . 2 . 4 行 動 パ タ ー ン D における温熱心理因子の関係性 次に、「滞在状態」というパターンである行動パターンDにおける温熱心理因子の関係性 について考える。結果は、図 5.3.2.4 に示す通り。いか具体的な考察を行っていく。 ・全体として、行動パターンDでは、因子同士の関係性が強いことがわかる。特に、朝 異臭滞在ゾーンの影響が強いことがわかる。また、温熱環境情報はほぼ全ての項目が 何かしらの関係性をゆ有しており、滞在状態では、「どこにいるのか」・「空間環境は どうなのか」という情報が重要となっている。これは、言い換えれば、滞在状態では、 人間の状態ではなく、空間の状態が窓開閉行動における心理へに強く影響していると 言える。
図 5.3.2.4) 行動パターン D における温熱心理因子の関係性
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考察
5
| 5 . 3 . 2 . 5 行 動 パ タ ー ン E における温熱心理因子の関係性 最後に、行動パターンEにおける温熱心理因子の関係性について考える。結果h、図 5.3.2.5 にしめす。以下具体的な考察を行っていく。 ・行動パターンEでは、外出後の窓開閉になるので、空間の内部における人間行動情報 ではなく、温熱環境情報が重要となっていることがわかる。とりわけ、温冷感に強く 寄与すると思われる温度・湿度が温熱心理の影響もあり、重要な因子となることがわ かる。 ・詳細な因子同士の関係性に注目していると、PMVの値とゾーンの遷移数との関係性 が強いことがわかる。これは、、帰宅後に暑いと感じれば、窓を開けたり、空調をつ けたりと活動量がふえ、空調がついていて心地よい状態であれば、そのような行動は しなくなり、活動量は比較的少なくなるという、日常生活における一般的に起こる帰 宅後の行動が発生していると考えられる。
図 5.3.2.5) 行動パターン E における温熱心理因子の関係性
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考察
5
| 5.3.3 各季節ごとの窓開閉行動における温熱心理因子の関係性 | 5.3.3.1 6月における温熱心理因子の関係性 行動パターンごとの温熱心理因子の関係性の結果から季節ごとに関係する因子及びその関 係性に違うと思われる。そこで、各季節ごとに全行動パターンの温熱心理因子の関係性を並 べることで季節による心理特性について考えていく。結果は図 5.3.3.1 に示す通り。以後、 具体的な考察を記述する。 ・全ての行動パターンにおいて、「PMV」の各要因に対する影響が強いことがわかる。 その際、温度のとの関係性が強い。また、活動量が少ない行動パターンにつれ、人間 行動場による因子との影響が強くなっていくことがわかる。これは、活動量が多い場 合は、活動への意識が強く、他の要因の影響を受けにくいからであると考えられる。
図 5.3.3.1) 6月における温熱心理因子の関係性
81
考察
5
| 5 . 3 . 3 . 2 1 1 月 ( 床 暖 房なし)における温熱心理因子の関係性
次 に、11 月 に お け る 温 熱 心 理 因 子 の 関 係 性 に つ い て 考 え る。 結 果 は、 図 5.3.3.2 に示す通りである。以下、具体的な考察を行う。 ・ 寒 い 季 節 で は、 行 動 量 が 少 な い 時 ほ ど、 因 子 の 関 係 性 が 強 く な る こ と が わ か る。 特 に、 行 動 パ タ ー ン D で は、 滞 在 状 態 で あ る た め、 滞 在 す る 温 熱環境が強い意味を持っているということがわかる。 ・ 帰 宅 し た 際 は、 温 熱 環 境 の 影 響 を 強 く 受 け て お り、 ま た そ れ ら の 要 因 が 温熱心理に強く影響していることがわかる。
図 5.3.3.2)11 月(床暖房なし)における温熱心理因子の関係性
82
考察
5
| 5 . 3 . 3 . 2 1 2 月 ( 床 暖 房あり)における温熱心理因子の関係性 最後に 12 月における温熱心理因子の関係性について考える。12 月においては、取得デー タ数が少なかったため、因子同士の関係性が強く出てしまっている(図 5.3.3.2)。その点を 考慮した上で、以下、考察を行っていく。 ・行動パターン B では、活動状態から滞在状態へ移行するが、その移行した結果の場所 の影響は少ないことがわかる。 ・全体的に、時間情報の関係性は確認できるが、その依存確率は低いことがわかる。
図 5.3.3.3) 12 月(床暖房あり)における温熱心理因子の関係性
83
考察
5
| 5 . 3 . 4 各 温 熱 心 理 に お ける要因同士の遷移ネットワーク | 5 . 3 . 4 . 1 「 暑 い 」 と い う心理への遷移ネットワーク | 5.3.4.1.1 夏季における「暑い」という心理への遷移ネットワーク 夏季における「暑い」という心理への遷移ネットワークを図 5.3.4.1-1 に示した。以下、 具体的な考察を示す。 ・暑いと感じて窓を開ける場合は、以外にも活動量が少ない行動パターン C ∼ E に多い ことがわかる。また、遷移数に関しても少ないことがわかる。 ・温熱環境情報の要因では、温度が高い時・湿度が高い時・PMV 値が高い時に集中し ており、夏季における「暑い」という感覚を持つ場合の温熱状況は一般的な傾向道理 推移していることがわかる。
図 5.3.4.1-1) 夏季における「暑い」という心理への遷移ネットワーク
84
考察
5
| 5 . 3 . 4 . 1 . 2 冬 季 に お け る「暑い」という心理への遷移ネットワーク 冬季における「暑い」という心理への遷移を同様にネットワークにより可視化した(図 5.3.4.1-2)。以下、具体的な考察を示す。 ・冬という時期柄もあり、「暑い」という心理を持っていることは少ないことがわかる。 ・「暑い」と感じる遷移は、行動パターン E の外出からの帰宅後によるものが多い。そ の前の遷移としては、相対的な値である温度差及び湿度差がそれぞれ、温度は最も高 いレベル、湿度は最も低いレベルにある。これは、外部での行動状態及び外部環境の 影響を受けている影響であると推察される。
図 5.3.4.1-1) 冬季における「暑い」という心理への遷移ネットワーク
85
考察
5
| 5 . 3 . 4 . 2 「 寒 い 」 と い う心理への遷移ネットワーク
次 に、「 寒 い 」 と い う 心 理 へ の 遷 移 に つ い て 考 え る。 結 果 は、 図 5.3.4.2 に 示 す通りである。「寒い」という心理については、夏季には回答されなかったので 冬季のデータについてのみ検討を行った。具体的な考察は以下に示す通り。 ・ 寒 い と 感 じ る 遷 移 は、 比 較 的 温 度 は 高 い が、 前 日 の 平 均 温 度 と の 差 で あ る温度差の値が最も低いカテゴリにあることがわかる。このことから、 温 度 の 低 い 冬 の 時 期 に 寒 い と 感 じ る 遷 移 は、 絶 対 的 な 値 で は な く、 相 対 的な温度変化による影響が強いと考えられる。 ・寒いと感じる場合の行動パターンは、「滞在状態→活動状態」のパターン で あ る 行 動 パ タ ー ン C が 多 く、 そ の 際、 最 後 に 滞 在 し て い る ゾ ー ン は リ ビング周辺の B ゾーンが多いことがわかる。つまり、リビングに滞在し、 活動量が少ない場合に寒いと感じていると考えられる。
図 5.3.4.2) 冬季における「寒い」という心理への遷移ネットワーク
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考察
5
| 5 . 3 . 4 . 3 「 湿 っ ぽ い 」 という心理への遷移ネットワーク 続いて、 「湿っぽい」という心理への推移について考える。「湿っぽい」という心理では、 「寒 い」という心理の場合と逆で夏季のみで回答されたので、夏季のデータにより遷移ネットワー クを図 5.3.4.3 のように作成した。以下、具体的な考察をしめす。 ・ 「湿っぽい」という心理を抱く場合は、窓開閉行動の直前に活動状態である行動パター ン A 及び C が多いことがわかる。そして、その行動パターンへの遷移としては湿度 の状態が極めて高いことがわかる。湿度・湿度差共に最も高いカテゴリのデータ多い。 ・湿度が高い一方で、温度は低い傾向にあることがわかる。これは、温度が高い際には 「暑い」という心理へ移行するため、「湿っぽい」という心理へ遷移するのは温度が低 く、湿度が高い際に起こると思われる。
図 5.3.4.3) 夏季における「湿っぽい」という心理への遷移ネットワーク
87
考察
5
| 5 . 3 . 4 . 4 「 空 気 が 悪 い 」という心理への遷移ネットワーク | 5 . 3 . 4 . 4 . 1 夏 季 に お け る「空気が悪い」という心理への遷移ネットワーク 最後に、最も窓開閉行動を起こした動機として多かった「空気が悪い」という心理への遷 移について考える。結果は、図 5.3.4.4 に示す通りである。以下、具体的にその遷移につい て考えていく。 ・夏季における「空気が悪い」という心理は、大きくわけて3つのパターンが読み取れ る。まず一つは、行動パターン A に見られる活動量が多い場合。そして、2番目が、 行動パターン D の滞在状態が続いている場合である。この場合は、遷移数が少なく、 時間帯が朝であることから、起床後にこのような心理に至ってることがわかる。最後 のパターンは、外出から帰宅した場合である。この場合は、絶対的な温度が高く、相 対的な湿度が高い傾向にある。これは、帰宅後に部屋がむっとしている感じるという ごく一般的な生活シーンがデータにより再現されていることがわかる。
図 5.3.4.4-1) 夏季における「空気が悪い」という心理への遷移ネットワーク
88
考察
5
| 5 . 3 . 4 . 4 . 2 冬 季 に お け る「空気が悪い」という心理への遷移ネットワーク 次に、冬季における「空気が悪い」という心理への遷移について考える。結果は、図 5.3.4.4-2 に示す通りである。以下、具体的な考察を行う。 ・「空気が悪い」という心理への遷移においては、夏季と冬季では大きな差異があるこ とがわかる。夏季においては、活動量の少ない行動パターン D で起こる場合が多かっ たが、冬季では行動パターン D からの「空気が悪い」という心理への遷移は全く見ら れていない。 ・一方で、冬季では活動量が多い行動パターン A 及び B からの遷移が見られる。また、 温度や湿度に特徴的な傾向は見られない。しかしながら、午前中の時間帯が多いこと から掃除などの家事を行っていることで、「空気が悪い」という心理へ遷移している ことが考えられる。
図 5.3.4.4-2) 冬季における「空気が悪い」という心理への遷移ネットワーク
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考察
6
まとめ
まとめ
6.1
展望
6.2
謝辞
6.3
6
まとめ
| 6 まとめ | 6.1 まとめ 本論文で明らかになったこと、可能になったことは以下に示す通りである。 ■ 温熱環境情報による窓開閉行動の判断推定 ・季節や時間帯などの分類によりデータを細分化することで、窓開閉行動に影響する要 因が抽出され、モデル式が作成できた。 ・時間帯による分類と季節による分類をクロスさせることで、影響する要因を明確にす ることができ、データ分類による分析を行う手法の有効性を示すことができた。 ・人間の感覚的な部分をデータとして表現するため相対的な値を作成し、変数に導入し た結果、窓開閉行動の要因として有効であることがわかった。 ■ 蓄積された人間行動情報による個人識別 ・歩行履歴を基にした個人識別を行った。結果、識別率として概ね 75%を越え、その 実用性を証明することができた。 ・被験者の属性により行動パターンが異なることがわかった。そして、その違いをゾー ン遷移によりデータとして表現することができ、識別に有効なものとして使用するこ とができた。 ■ 人間行動情報・温熱環境情報による窓開閉行動における温熱心理の推定 ・ナイーブベイズを基とした温熱心理への遷移ネットワークモデルを作成するごとで窓 開閉行動における温熱心理を把握することができた。 ・各季節や各心理において、影響する温熱環境や人間行動情報が異なることがわかった。 これは、従来の研究通り窓開閉行動における要因は複雑にからみあうということが示 せたと言える。そして、その要因として人間行動情報、温熱環境情報、時間情報が有 効であり、相互に関係することがわかった。これにより多くの要素をデータとして使 用することが必要であることが示された。
91
6
まとめ
| 6.2 展望 前述の通り、その精度やについてはまだまだ研究としての伸びしろ部分あるいは、課題の 部分があると感じられた。それらについては、以下に示す通りである。 ・冷房機器など全ての環境調節行動をデータとして取得することができれば、温熱環境 などの物理的な要因が明確になり、なかなか見えてこない心理的な要因についても分 析が進むと予想される。 ・人間行動情報・温熱環境情報共に時系列的にデータを取得したものの、まだまだ不十 分な点が多かった。例えば、人間行動情報では、ゾーンの遷移の仕方を計測すること でアンケートにより取得していた行動の流れを無意識的取得することが可能となる、 また、データとして行動の流れを取得できれば、マイニングの要因としても導入でき、 把握できる情報はかなり詳細になると考えられる。温熱環境情報では、窓開閉時での データしか使用しなかったので、窓開閉行動の前及び後のデータも使用することでよ り行動データの一体化が図れ、要因としての精度が上がると考えられる。 ・個人識別の手法として妥当性を得ることは出来たが、まだまだ不十分な部分があった。 また、被験者が3人以上になった場合を見越すとその精度はもっと低いものになって しまうと考えられる。それらを解消するため、曜日及び時間帯によってデータを細分 化したもので識別値を算出し、判定をを行うことで、精度は向上できるのではないか と考えられる。
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6
まとめ
謝辞 本研究は、本当にたくさんの方々の協力により 、なんとか書き上げることが出来ました。 誰よりもまず渡辺先生に感謝の意を表したいと思います。渡辺仁史研究室に所属した3年 間はとても充実したものでした。自分の興味のある研究を自由にさせていただく場を設けて いただいたことをとても感謝しております。ありがとうございました。 この研究の9割5分は遠田さんのものであると思います。その恩返しが少しもできていな く本当に申し訳ございません。そして、ありがとうございました。遠田さんとの出会いがな ければ今の自分はいないであろうと思うほど、自分の中で遠田さんの存在はとても大きいで す。いつか情報ゼミ OB 旅行したいですね。 また、コウスケさんには、データ整理のプログラム作成していただいたり、文章のチェッ クをしていただいたりと本当に最後の追い込みの際にはお世話になりました。ありがとうご ざいます。来年からも情報ゼミがんばってください。 また、ゼミを超えて時に厳しく、時に優しく的確なご指導をして下さった、長澤さん、林 田さんにも本当に感謝しています。いつしかからか 「 おかたつ 」 と呼んでいただき、とても うれしく思っていました。酔っぱらった夏子さん見るということと林田と杯をかわすという ことは夢のまま終わってしまいそうですが、いつの日か実現できたらと思っています。本当 に3年間お世話になりました。ありがとうございました。 ゼミのみなさんには、本当に感謝したらし尽くせないと思います。ありがとうございます。 いつもクールだけど秘湯巡りという変わった趣味をもっていてまだまだ未開発の部分があ りそうなもこみち、担当なのに卒論を全然手伝ってあげられなかったにも関わらず合コンし てくださいとしきりにからんできてくれるまーしー、独特な間とノリを持っていて誰よりも 研究室に入った時からの伸びしろを見せてくれたばーちー氏、子供のようなピュアさを持っ た向野くん、深夜に恋人の作り方を真剣に議論し続けたゆかりん、いつもおしゃれすぎるポ プラのバイト店員たすけ、元気 200%のアドリアーノすぎたつ、本当に楽しい上に優秀な後 輩達に恵まれ、有意義なゼミ生活になりました。ありがとう。たすけ、ゆかりん、すぎたつ には就活やらM1研究やらで忙しい中、修論の手伝いをお願いしてしまって本当にご迷惑を おかけしました。助かりました。あのお手伝いがなかったらまだ執筆でヒーヒー言っていた と思います。ありがとう。 また、卒業された大塚さん、小原さん、多和田さん、森村さん、ヒデ氏、池内さん、入江 さんにもとても感謝しております。情報ゼミでの思い出は、楽しい思い出ばかりです。 他のゼミの後輩達にも様々な場面でお世話になったり、楽しませてもらったりと感謝の気 持ちでいっぱいです。いつもクールガイ河D、チャラ木戸くん、300 円弁当マスターJJ、 コージー三等兵、時にアガシ時にジャンボ、歩く wiki「Ochipedia」、早稲田建築の顔となっ たジョン、Love you only+I'll be back のヒロキ、ノリがなんとなく DAIGO っぽいかんなり くん、いつも元気なガス氏、驚くという感情がなさそうなししょう、TOPPAN のの D、2日 から出勤してたマッチョ、残念なぐらい学校にいるよごちゃん。みんなありがとう。
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6
まとめ
そして、何よりもは楽しい時も辛い時も共に過ごした同期のみんなには深く感謝しており ます。みんながいたから楽しい3年間の研究室生活を過ごすことができたと思います。 「 元気にやっていますか? 」 阿野くん、いつもやばいとか言って誰よりも余裕な飯島さん、 いつも何かしらのおもしろ情報を携えて S 棟から現れるVBA奥津氏、3年間で数え切れな い謎を残してくれた坂田、常に定時で帰ってもすんなり修論を提出した田名網、いつもすさ んだ自分の心をほっこりさせてくれたガッキー、くさいと言いながらくさいところのにおい ばかり嗅ぐニシゴリくん、いつの間にか激やせした上に実験結果ではなく、女子大で出会い もゲットしてきたぶっちー、最後の追い込みで共に泊まり込みをした同期ののみんなにはた くさんの元気と笑いをもらいました。みんながいたからこそ辛い修論執筆を最後まで投げ出 さずにやりきることができました。ありがとう。 また、学部で卒業した安藤先生、たけ、ひろき、じん、なっつ、もりやにもとても感謝し てます。みんなとの思い出は楽しい思い出ばかりです。 今年の年末も記憶がなくなるまで飲みましょう。ビバ★ 12 月 29 日 !! そして、自分の体調を気にかけ、ご飯などの用意をしていただき、支えてくれた父、母、 兄にも深く感謝します。来年からは社会人になって、少しずつ恩返しができたらと思ってい ます。また、来年には年下の姉になるまきさんには差し入れやお手紙などいろいろ心遣いを していただき、とても感謝してます。いつかお姉ちゃんと呼びたいです。 ここに感謝の意を表することができなかった方はまだまだたくさんいます。修士論文の執 筆を通して、本当に自分が周りの方々に恵まれており、幸せ者なのだとということを感じま した。本当にありがとうございます。そして、今後もよろしくおねがいします。 また、修士論文の書くなかで多くの思い出もできました。 自分とは違い結果を残したサッカー日本代表、まぶち BOX のお菓子は何処に…と思った ら溶けたパピコが…事件、M0 と M2 の逆転現象の頻発、やらせビーチフラッグ…。 忙しく辛い時期もありましたが、本当に充実した楽しい研究室生活を送ることができまし た、皆さん本当にありがとうございました、 2011 年2月5日 早稲田大学創造理工学研究科建築学専攻 渡辺仁史研究室 岡本 達也
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参考文献
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参考文献
■ 研究文献 1)wikipedia(情報化社会の項目を参照) http://ja.wikipedia.org/wiki/ 2)IT Job Gate http://itjobgate.jisa.or.jp/about/ 3)ものづくり革命 パーソナルファブリケーションの夜明け ニール・ガーシェンフェルド著 , 糸川 洋訳 , ソフトバンククリエイティブ ,2006/2 4)住居学 後藤久 / 編著 沖田富美子 / 編著 定行まり子 /〔ほか著〕, 朝倉書店 ,2003/6 5)快適さを測る その心理・行動・生理的影響の評価 鈴木浩明著 , 日本出版サービス ,1999/9 6)温熱環境指標を用いた空調ファジィ制御システム 杉浦匠、渡辺幸次、豊田武二 日本建築学会大会講演梗概集 p411-412 1994/9 7)三菱電気 ルームエアコン霧ヶ峰ムーブアイ http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/kirigamine/ 8)夏季から秋季にかけての窓開閉行為の要因に関する研究 鈴木珠美、梅宮典子、吉田治典 日本建築学会計画系論文集 第 556 号 P91-98 2002/6 9)戸建て住宅における窓開閉・冷房使用の行動特性と影響要因解析 屋外空間の微気候と居住者の開放的な住まい方との関わりに関する研究 その2 浅輪貴史、梅干野晁、武澤秀幸、清水敬示 日本建築学会環境系論文集 第 593 号 P87-94 2005/07/30 10)指輪型 RFID リーダを用いた住宅内におけるヒトとモノとの接触行動モデル 平成 20 年度早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻建築計画専門分野 修士論文 11)スリッパ型 RFID リーダによる歩行行動追跡 遠田敦、林田和人、渡辺仁史 日本建築学会計画系論文集 第 630 号 P 1847-1852 2008/08/30
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7
参考文献
12)Arduino・Pachube・SketchUp を連携したローコストモニタリング 遠田敦 2010 年度日本建築学会大会情報システム技術部門研究協議会 「スマートな情報通信技術で実現する建築性能モニタリングの未来像」 2010/9 13)快適性評価 PMV 江見 明彦,米本 洋幸 mikilab.doshisha.ac.jp/dia/monthly/monthly10/20100430/aemi.pdf 14)社団法人 日本冷凍空調学会ホームページ http://www.jsrae.or.jp/annai/yougo/66.html 15)空気温度から平均放射温度を近似した場合の PMV の誤差と快適範囲の検討 原本賢一 空気調和・衛生工学会論文集 第 109 号 P29-32 2006/04/05 16)食行動の自由度からみた生活環境の評価モデル 日下部真世 平成 19 年度早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻建築計画専門分野 修士論文 17)SPSS による多変量データ解析の手順 石村貞夫 東京図書株式会社 2006/10 18)建築計画における行動モニタリングに関する研究 遠田敦 早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻建築計画専門分野 博士論文 2009/2 19)ベイズな予測 ヒット率を高める主観的確率論の話 宮谷隆 リックテレコム 2009/3 20)ベイジアンネットワークの統計的推論の数理 田中和之 コロナ社 2009/10 21)Microsoft Office 2007 用 Microsoft SQL Server 2005 データ マイニング アドイン http://www.microsoft.com/downloads/details.aspx?FamilyId=7c76e8df-8674-4c3ba99b-55b17f3c4c51&displaylang=ja
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■ 温熱環境情報の統計 *温度
各 日 ご と に 温 度 の 最 大 値・ 最 小 値・ 平 均 値 の 推 移 を 並 べ る こ と で、 1 ヶ 月 及 び 1 年 間 の 温 熱 環 境 情 報 の 推 移 を 把 握 す る。 結 果 は 以 下 に 示 す 通 り で ある。
* 湿度
各 日 ご と に 湿 度 の 最 大 値・ 最 小 値・ 平 均 値 の 推 移 を 並 べ る こ と で、 1 ヶ 月 及 び 1 年 間 の 温 熱 環 境 情 報 の 推 移 を 把 握 す る。 結 果 は 以 下 に 示 す 通 り で ある。
ID
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36
時間帯 B B C D D B D B C C C B B B B C C D D B C B D C C C D B D B D B E C D B
平休日 温熱心理 B E B E B F B E B A A A A A A F A C A F A F B E B C B F B F B E B A B F B F A E A A A E A A B E B A A F A A B E B C A E A A A F A C A E A C A E
床暖房 A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A -3 -2.7 -1.26 -1.06 -1.74 -2.62 -2.03 -3 -3 -3 -3 -3 -3 -3 -3 -1.31 -1.89 -1.04 -1.26 -2.11 -1.35 -3 -2.02 -2.01 -2.28 -1.89 -1.96 -3 -2.71 -3 -2.3 -3 -2.25 -2.8 -1.3 -2.54
PMV
照度 542 772 386 136 0 532 83 244 136 9 9 845 459 454 503 806 342 591 581 894 645 273 9 816 229 899 899 263 117 508 161 845 97 830 171 894
温度 温度差1 温度差3 19.51 -2.25 1.97 20.62 -1.42 -6.18 23.41 1.29 -9.84 24.21 2.07 -5.55 22.85 2.78 -0.72 21.42 -0.62 -4.07 22.75 -0.38 -3.49 19.25 -2.79 -1.29 19.54 -3.47 -3.47 20.32 -1.8 2.07 20.22 -1.9 1.97 17.21 -4.55 -3.9 16.4 -5.64 -7.09 16.87 -4.89 3.76 16.35 -5.41 1.78 23.33 1.21 -7.09 22.7 0.58 -10.28 23.38 0.25 -5.55 23.39 0.26 -5.54 21.27 -0.77 -11.38 24.23 2.11 -11.88 18.04 -3.72 0.95 21.4 -0.74 -3.45 21.65 -0.19 -4.61 21.5 -0.62 -4.16 22.84 -0.17 -7.84 22.84 0.7 -2.49 18.48 -3.56 -1.88 20.26 -2.87 -3.19 18.75 -3.29 -3.44 22.36 -0.77 -4.78 20.44 -1.6 -8.95 21.91 2.7 4.79 20.96 -2.05 -12.59 23.22 1.08 -0.02 20.71 -1.33 -8.93
湿度 湿度差1 湿度差3 57.91 0.3 3.6 47.93 -8.63 -4.66 43.62 -9.5 -7.34 45.23 -15.43 -6.74 50.83 -13.96 -1.5 57.91 1.35 5.71 42.91 -9.09 -8.47 70.89 14.33 16.61 59.38 6.37 5.46 62.64 9.52 7.58 63.24 10.12 8.21 66.91 9.3 9.47 55.96 -0.6 1.69 61.15 3.54 5.7 49.98 -7.63 -7.49 52.6 -0.52 0.38 39.31 -13.81 -12.09 46.72 -5.28 -6.74 46.73 -5.27 -6.76 61.13 4.57 9.18 44.28 -8.84 -7.02 67.61 10 11.54 54.11 -6.55 0.22 67.13 21.65 9.58 55.64 2.52 -1.39 44.4 -8.61 -10.09 44.4 -16.26 -11.25 64.83 8.27 7.45 58.93 6.93 2.38 66.66 10.1 7.95 38.7 -13.3 -18.04 58.79 2.23 2.97 42.54 -20.21 -14.87 48.19 -4.82 -4.85 33.61 -27.05 -21.33 48.84 -7.72 -4 0 0.44 0.44 0 0 0 0.22 0 0 0.44 0.67 0.22 0 0 0 0 0 1.33 0.89 0 0.44 0 0 0.67 0 0.22 0 0 0 0 0.44 0.22 0.67 0.22 0.44 0.22
風速
ゾーン1 遷移数1 遷移数5 A 4 17 D 1 36 E 0 0 D 1 3 D 4 4 E 0 9 B 1 11 H 4 23 B 7 7 D 5 12 D 4 13 F 8 42 A 0 8 F 8 14 C 6 13 D 4 0 D 4 5 B 1 12 B 1 12 D 3 6 C 0 17 G 1 18 F 4 0 D 7 11 D 7 24 C 2 1 D 2 4 C 6 36 A 4 18 B 2 25 D 3 5 B 2 2 H 4 0 C 2 15 A 1 0 G 1 19
遷移数 行動パターン 21 A 37 B 0 E 4 B 8 C 9 B 12 B 27 C 14 C 17 C 17 C 50 A 8 B 22 A 19 A 4 E 9 C 13 B 13 B 9 C 17 B 19 B 4 E 18 C 31 A 3 D 6 C 42 C 22 A 27 C 8 C 4 D 4 E 17 C 1 E 20 B
ID
37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72
時間帯 C C C C C C B C C D C D B B C C D C D C D C D B D C D C D B D D D B C C
平休日 温熱心理 A C A B A B A C A E A F A F A C A E A C B B B A B F B C B E B E B A A E A A A E A C A E A C A F A A A B A C B E B C B F B C A A A C A E A F A B
床暖房 A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A A B -3 -2.75 -3 -2.7 -2.97 -2.73 -3 -2.27 -0.98 0.1 -0.19 -1.34 -3 -3 -1.17 -1.04 -1.48 -3 -2.63 -2.54 -3 -2.18 -1.88 -3 -3 -1.25 -2.64 -2.41 -2.25 -2.25 -3 -2.96 -1.76 -1.49 -2.24 -0.5
PMV
照度 337 381 381 332 894 874 894 68 674 527 640 351 498 562 884 884 102 904 171 122 39 865 395 772 342 821 171 845 478 899 498 347 865 865 884 811
温度 温度差1 温度差3 20.62 -1.27 -3.49 21.24 -0.6 -5.81 21.24 -0.6 -5.81 21.45 -0.67 -4.02 21.39 3.24 9.68 21.34 3.19 -12.64 19.1 -1.25 -6.31 21.71 1.14 -2.93 23.65 3.44 -15.44 25.27 6.6 -8.88 26.13 5.92 -9.41 23.84 5.22 -1.77 17.27 -2.79 3.02 17.88 -2.18 3.07 23.85 4.09 -9.25 23.85 4.09 -9.25 23.81 5.19 -1.43 18.41 0.26 -5.35 21.15 2.53 -3.9 20.9 0.33 -6.63 19.79 1.17 -0.28 21.32 1.26 -8.49 22.95 2.89 0.86 17.79 -2.56 -1.44 19.26 -1.09 -4.05 23.8 5.65 -10.13 21.99 3.84 2.07 22.11 2.35 -10.73 22.26 2.5 -7.84 21.77 1.56 -6.78 19.12 -1.09 -7.23 18.86 0.19 -3 22.81 4.14 2.03 22.81 4.19 -8.93 21.68 3.06 -11.27 24.5 5.37 -5.41
湿度 湿度差1 湿度差3 33.79 -11.35 -20.4 37.58 -7.9 -16.49 37.58 -7.9 -16.49 33.35 -19.77 -19.95 42.19 -5.39 -13.57 36.93 -10.65 -13.53 54.67 3.28 1.58 50.07 1.31 -2.29 55.99 3.39 -6.81 46.7 -13.85 -22.53 46.12 -6.48 -10.42 42.92 -18.73 -14.58 60.73 3.22 2.65 48.58 -8.93 -10.19 46.46 -2.05 -8.52 46.46 -2.05 -8.52 33.55 -28.1 -22.6 59.16 11.58 2.57 45.56 -16.09 -8.52 54.11 5.35 -0.18 42.92 -18.73 -13.41 54.37 -3.14 0.64 32.51 -25 -21.13 57.01 5.62 1.04 32.87 -18.52 -18.16 42.88 -4.7 -6.51 29.97 -17.61 -22.77 48.53 0.02 -1 42.4 -6.11 -9.38 53.62 1.02 3.52 61.04 8.44 12.58 61.87 1.32 7.84 52.57 -7.98 -0.34 52.57 -9.08 0.73 31.07 -30.58 -19.54 42.56 -14.28 -8.01
風速 ゾーン1 遷移数1 遷移数5 0.44 B 0 5 0.22 D 1 1 0.22 D 1 1 0.44 D 0 11 0.22 D 1 11 0.22 A 6 14 0.22 G 6 21 0 D 2 10 0 B 6 0 1.11 B 1 4 0.89 H 5 0 0 A 0 37 0 B 0 11 0 B 4 5 0.22 G 1 15 0.22 G 1 15 0.22 D 11 5 0.22 H 3 25 0 A 0 0 0 D 9 0 0.22 F 1 1 0.44 F 1 28 0.89 A 1 23 0.22 F 8 54 0 B 8 3 0 H 9 0 0.22 B 1 16 0.44 H 5 0 1.78 D 2 39 0.22 A 0 9 0 A 0 4 0.44 D 14 0 0.67 H 1 0 0 H 14 32 0.22 H 5 0 0.67 C 7 0
遷移数 行動パターン 5 B 2 D 2 D 11 B 12 B 20 C 27 A 12 C 6 E 5 D 5 E 37 B 11 B 9 C 16 B 16 B 16 C 28 A 0 E 9 E 2 D 29 B 24 B 62 A 11 C 9 E 17 B 5 E 41 C 9 B 4 B 14 E 1 E 46 A 5 E 7 E
73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108
ID
時間帯 D B C F F D C C B C D C C F F B B C D C B B C C C C B C B B B C C D B C
平休日 温熱心理 A C B F B A B F B F A A A E A A B B B A B A A B A C A F A F A F A F A E A E B E B F B F B F B F B E B A B E B A A F A F A F A F A F A E A E A D
床暖房 B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B C C C C
PMV -1.63 -3 -1.29 -2.91 -3 -0.53 -1.29 -1.18 -2.52 -3 -3 -1.29 -1.22 -2.38 -3 -3 -3 -1.63 -1.98 -1.69 -3 -3 -1.29 -1.32 -0.96 -0.92 -3 -3 -3 -3 -2.71 -0.38 -0.84 -0.2 -0.93 -1.05
照度 97 733 464 0 0 645 586 234 894 874 503 430 322 0 0 190 175 312 117 884 738 713 645 645 586 615 728 806 581 606 826 703 102 122 102 166
温度 温度差1 温度差3 23.19 4.06 4.83 19.09 -0.92 -3.06 22.61 2.6 -6.83 19.01 -1 10.56 19.24 -0.77 10.8 25.37 4.54 -9.56 23.1 2.46 -6.71 22.86 2.22 -3.31 21.6 -1.97 1.64 19.75 -3.82 -4.34 20.24 -0.7 -4.17 23.66 3.38 -6.79 24.08 3.8 -5.78 21.43 -0.21 15.24 20.5 -1.14 14.31 17.69 -3.95 9.27 18.42 -3.22 9.76 23.36 1.72 -5.77 22.47 0.83 -0.14 22.66 1.79 -6.89 18.37 -0.63 2.65 16.71 -2.29 -0.28 23.92 4.92 -3.18 23.07 4.07 -3.96 23.49 4.49 -2.47 23.62 4.62 -2.35 20.02 -0.64 -1.8 19.98 -0.68 -6.51 18.74 -2.18 6.46 18.83 -2.09 5.5 20.2 -1.69 -1.45 24.1 2.21 -1.09 24.53 -1.73 -3.15 26.1 -0.16 -3.02 24.14 -1.16 -1.39 24.05 -1.25 -2.14
湿度 湿度差1 湿度差3 31.64 -25.2 -21.67 56.8 7.13 3.75 28.36 -21.31 -22.72 55.06 5.39 2.4 53.49 3.82 0.84 33.27 -18.2 -15.16 58.11 2.41 6.3 50.69 -5.01 -1.33 46.87 7.41 -4.12 22.64 -16.82 -27.42 20.93 -23.32 -27.89 19.88 -23.8 -25.44 15.09 -28.59 -30.58 44.4 2.94 -3.53 37 -4.46 -10.93 50.02 8.56 1.86 47.95 6.49 -0.33 37.82 -3.64 -6.66 27.82 -13.64 -18.12 30.32 -11.99 -15.18 55.84 2 6.92 35.57 -18.27 -12.15 43.78 -10.06 -2.21 41.94 -11.9 -4.15 39.61 -14.23 -6.83 39.52 -14.32 -7.02 44.95 4.43 3.12 26.5 -14.02 -15.19 47.51 8.05 5.77 46.97 7.51 4.34 44.22 3.49 4.08 20.46 -20.27 -18.43 60.08 4.44 12.66 59.74 4.1 12.75 69.59 9.2 20.92 58.58 -1.81 10.14
風速 ゾーン1 遷移数1 遷移数5 0.67 F 11 29 0 F 12 25 0.22 H 2 2 0 A 2 5 0 H 2 0 0.22 A 0 1 0 C 4 9 0 A 0 6 2 G 7 28 0.22 B 1 -1 0.67 G 2 0 0.22 D 2 0 0 A 0 4 0 A 0 3 0 A 0 3 0.22 D 10 22 0 D 12 22 0.22 A 0 21 0.44 D 7 0 0.22 G 14 4 0 B 2 10 0 B 2 7 0.67 C 7 20 0.67 E 3 24 0.89 A 0 12 0.44 A 1 11 0.44 A 0 6 0.44 A 0 27 0 H 11 25 0 H 14 24 0 D 8 9 0.22 A 0 3 0 C 15 30 0.67 D 2 0 0 E 9 7 0 D 8 38
遷移数 行動パターン 40 A 37 A 4 D 7 C 2 E 1 D 13 C 6 B 35 A 0 D 2 E 2 E 4 B 3 B 3 B 32 A 34 A 21 B 7 E 18 C 12 C 9 C 27 A 27 A 12 B 12 B 6 B 27 B 36 A 38 A 17 C 3 B 45 A 2 E 16 C 46 A
ID 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144
時間帯 C E B B F A C B B B B B E A B E D D D D D F F C C A D E A B D B D E A C
平休日 温熱心理 A E A E A E A E A B B E B F A E A F A E A D A F A E A E A D A E A B A F A F A B A D B F A A A E A B A E A B A E A E A D A E A E A F A F B D B F
床暖房 C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C
PMV -0.58 -0.55 -1.39 -0.69 -0.22 -0.37 0.14 -0.53 -0.88 -1.2 -0.9 -0.96 1.14 0.21 0.19 1.25 1.64 1.35 0.97 1.2 1.23 -0.09 0.74 1.07 1.25 0.52 1.63 0.64 0.64 0.18 0.58 0.08 1.67 1.15 0.45 1.47
照度 312 0 161 0 0 24 371 0 92 48 175 180 0 0 4 14 141 136 78 58 9 0 0 317 288 68 141 0 14 122 239 131 185 4 4 239
温度 温度差1 温度差3 25.24 -0.06 -5.69 25.26 -0.04 0.93 23.06 -1.56 -2.26 24.84 -0.44 0.29 25.98 0.7 0.51 25.48 -1.61 -1.16 26.91 -0.18 -7.61 25.18 -1.32 4.19 24.22 -2.28 0.55 23.47 -1.81 -1.67 24.16 -1.12 -2.22 24.03 -1.25 -9.58 29.04 3.76 1.5 26.73 0.52 0.24 26.55 0.34 -0.51 29.52 3.31 0.85 30.76 2.84 -6.58 29.85 1.93 -5.16 28.93 1.01 -4.97 29.46 1.54 -3.83 29.34 1.14 2.85 26.16 -1.97 2.09 28.25 -0.63 -0.14 29.04 0.16 -7.23 29.5 0.62 -8.19 27.53 -0.65 -0.91 30.35 2.17 -3.92 28.17 -0.01 -1.18 27.72 -1.1 -0.21 26.54 -2.28 -0.65 27.88 -0.94 -3.57 26.55 -0.51 -1.3 31.03 2.52 -5.32 29.5 0.99 -2.58 27.46 -0.77 -1.29 29.93 1.7 -4.71
湿度 湿度差1 湿度差3 56.78 -3.61 9.03 59.13 -1.26 9.08 66.77 5.01 16.47 63.82 2.13 12.24 63.41 1.72 11.31 69.22 7.53 16.2 59.62 -2.07 8.44 65.1 2.74 9.43 71.85 9.49 17.31 70.48 3.51 13.36 71.5 4.53 14.63 71.16 4.19 15.23 69.92 2.95 12.04 75.21 6.16 14.97 82.23 13.18 21.91 61.17 -7.88 -1.82 48.92 -25.92 -10.28 57.76 -17.08 -2.33 58.44 -16.4 -1.98 58.75 -16.09 -1.91 66.3 1.18 1.28 69.37 1.2 2.71 64.31 1.42 -1.27 63.64 0.75 1.64 62.27 -0.62 0.98 72.49 8.97 7.78 63.68 0.16 1.32 57.86 -5.66 -7.2 76.19 9.03 10.65 81.65 14.49 15.51 63.21 -3.95 -1.72 69.75 -3.16 3.45 41.89 -13.12 -18.22 52.49 -2.52 -9.24 68.13 9.02 4.68 64.83 5.72 4.18
風速 ゾーン1 遷移数1 遷移数5 0.67 H 2 0 0 B 2 30 0.44 D 2 0 0 A 2 0 0.22 A 1 0 0.67 A 3 0 0.67 D 16 57 0 A 0 0 0.22 D 14 12 0 D 9 0 0.67 D 4 12 0.22 C 12 37 0.44 A 0 8 0.22 E 3 0 1.33 A 8 18 0.67 A 1 10 0.44 C 27 2 0.44 C 6 20 0.22 D 6 37 0.22 F 4 0 1.56 F 8 0 0 B 11 0 0.89 A 0 18 0.44 E 5 6 135 C 3 0 0.44 C 24 16 0.44 B 9 0 1.11 D 18 17 0 C 4 19 0.22 B 8 0 0 A 16 31 0 A 9 0 0.67 C 10 0 0.67 C 1 1 0 F 6 28 2.45 C 3 5
遷移数 行動パターン 2 E 32 C 2 D 2 D 1 D 3 C 73 A 0 D 26 A 9 C 16 A 49 A 8 B 3 C 26 C 11 B 29 C 26 C 43 A 4 E 8 E 11 C 18 B 11 C 3 E 40 C 9 E 35 A 23 A 8 C 47 A 9 C 10 E 2 D 34 A 8 C
ID 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165
E C D D D D E F B B B D D D D E B B F C C
時間帯
平休日 温熱心理 B E B D A E A D A E A B A E A B A E A B A E A B A E A B A B A E B E B E B B A F A F
床暖房 C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C C
PMV 0.86 1.41 1.62 1.78 1.2 0.94 0.37 0.87 0.7 0.41 0.62 1.44 1.1 1.34 1.45 0.25 -0.09 0.33 0.8 1.53 0.89 0 234 63 4 92 0 117 0 185 180 146 283 219 34 48 4 78 83 0 112 381
照度
温度 温度差1 温度差3 28.56 0.33 -2.11 29.69 1.2 -5.1 30.46 1.78 -5.46 30.48 1.8 -3.58 29.46 0.4 -4.1 28.42 -0.64 -1.18 27.36 -1.7 -0.87 28.35 -0.17 1.12 27.92 -0.6 1.33 27.28 -1.24 0.51 27.87 -0.65 -0.26 30.34 2.1 -6.83 29.75 1.51 -8.49 30.23 1.99 -2.75 30.54 2.02 -3.75 28.26 -0.26 -0.93 27.3 -1.3 -2.2 28.15 0.36 -4.14 29.11 1.32 0.84 30.57 1.18 -6.97 29.14 0.31 -8.02
湿度 湿度差1 湿度差3 63.28 4.17 0.57 69.58 3.07 7.47 58.48 -10.68 -4.2 71.78 2.62 7.77 58.61 -3.42 -7.07 76.38 14.35 7.84 64.69 2.66 -4.63 73.04 8.49 3.3 73.46 8.91 3.48 71.89 7.34 1.91 68.32 3.77 -1.13 71.37 -0.08 4.41 68.5 -2.95 2.5 67.39 -4.06 -0.92 64.07 -8.1 -3.69 57.7 -14.47 -13.27 72.07 4.4 2.43 70.78 0.2 2.39 70.44 -0.14 -2.51 68.99 4.03 1.82 77.21 6.18 8.9
風速 ゾーン1 遷移数1 遷移数5 0.89 E 3 6 0.67 F 20 11 0.89 A 0 17 0.22 C 4 0 2 D 0 19 2.67 B 9 0 1.11 A 16 11 0 A 0 29 0.44 A 0 0 0.89 F 13 0 0.22 C 1 14 0.22 D 9 29 0 A 11 8 0.22 F 12 11 1.11 D 11 3 0 C 7 36 0 B 14 0 0.22 F 6 0 0 C 6 8 0.22 D 10 17 0 A 0 7
遷移数 行動パターン 9 C 31 A 17 B 4 E 19 B 9 E 27 A 29 B 0 D 13 C 15 B 38 C 19 A 23 C 14 C 43 A 14 C 6 C 14 C 27 A 7 B
ID
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40
年 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010
月
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
日
20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 22 22 22 22 22 22 22 22 23 23 23 23 24 24 24 24 24 24 25 25 25 25 25 25 26 26 26 26 26 26
時
8 9 10 11 12 14 15 16 16 16 12 12 13 14 15 15 15 15 9 11 12 15 9 9 10 12 13 15 9 9 12 13 14 14 8 9 10 11 12 13
分
51 1 47 50 0 4 44 8 12 18 1 32 23 20 14 24 49 59 42 3 55 1 6 55 16 51 18 16 11 26 33 36 5 10 42 8 41 16 33 31
秒
8 35 48 11 34 2 12 40 1 19 16 43 23 10 48 52 2 41 32 49 23 21 55 21 40 41 37 33 9 8 46 16 44 17 24 42 49 51 59 38
開閉 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0
時間帯 平休日 2 0 2 0 3 0 3 0 3 0 4 0 4 0 4 0 4 0 4 0 3 0 3 0 3 0 4 0 4 0 4 0 4 0 4 0 2 1 3 1 3 1 4 1 2 1 2 1 3 1 3 1 3 1 4 1 2 0 2 0 3 0 3 0 4 0 4 0 2 0 2 0 3 0 3 0 3 0 3 0
曜日 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 5 5 5 5 5 5 5 5 6 6 6 6 7 7 7 7 7 7 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2
照度 747 848 909 904 904 281 130 49 47 37 889 884 180 174 132 117 76 58 781 888 760 116 721 886 888 786 724 398 781 893 883 599 561 536 599 839 903 895 874 821
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月
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
日
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時
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ID
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月
2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
日
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時
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月
2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3
日
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時
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分
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秒
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温度 温度差a温度差b温度差c 湿度 湿度差a湿度差b湿度差c外部温度外部湿度 風速 25.11 3.75 5.03 37.25 -11.8 -13.25 22.99 1.63 2.91 29.89 -19.16 -20.61 24.59 3.23 4.51 25.72 -23.33 -24.78 25.01 3.65 4.93 23.46 -25.59 -27.04 22.71 0.09 0.31 45.03 1.36 -6.59 23.89 1.27 1.49 32.89 -10.78 -18.73 25.91 3.29 3.51 35.21 -8.46 -16.41 26.74 4.12 4.34 30.55 -13.12 -21.07 22.06 -2.48 -0.95 45.42 3.35 -2.54 21.12 -3.42 -1.89 46.32 4.25 -1.64 25.54 1 2.53 41.65 -0.42 -6.31 24.04 -0.5 1.03 41.85 -0.22 -6.11 23.07 -1.08 -0.58 55.74 1.97 -3.45 21.98 -2.17 -1.67 57.85 4.08 -1.34 22.69 -1.46 -0.96 60.74 6.97 1.55 22.84 -1.31 -0.81 58.6 4.83 -0.59 22.72 2.82 4.09 60.63 3.02 0.63 22.96 3.06 4.33 60.86 3.25 0.86 23.24 3.34 4.61 58.15 0.54 -1.85 23.21 3.31 4.58 55.72 -1.89 -4.28 20.76 -0.96 -0.295 53.6 6.3 -0.5 19.79 -1.93 -1.265 41.17 -6.13 -12.93 20.6 -1.12 -0.455 51.57 4.27 -2.53 20.59 -1.13 -0.465 49.63 2.33 -4.47 20.11 -0.76 0.09 52.79 0.07 -4.08 18.81 -2.06 -1.21 48.18 -4.54 -8.69 23.33 2.46 3.31 42.53 -10.19 -14.34 22.8 1.93 2.78 52.78 0.06 -4.09 24.38 3.51 4.36 50.05 -2.67 -6.82 23.65 2.78 3.63 52.83 0.11 -4.04 23.06 1.3 0.275 61.12 8.53 1.31 21.96 0.2 -0.825 52.5 -0.09 -7.31 19.07 1.13 0.785 59.25 -1.5 -1.17 17.34 -0.6 -0.945 35.03 -25.72 -25.39 20.96 3.02 2.675 52.18 -8.57 -8.24 20.89 2.95 2.605 48.06 -12.69 -12.36 21.69 3.75 3.405 48.63 -12.12 -11.79 21.46 3.52 3.175 45.93 -14.82 -14.49 22.07 4.13 3.785 48.74 -12.01 -11.68 22.25 4.31 3.965 40.42 -20.33 -20 -
PMV -0.8 -1.69 -1.1 -0.95 -1.69 -1.32 -0.49 -0.2 -1.95 -2.32 -0.59 -1.19 -1.47 -1.89 -1.59 -1.54 -1.58 -1.48 -1.38 -1.41 -2.41 -2.87 -2.49 -2.5 -2.67 -3 -1.47 -1.6 -0.99 -1.26 -1.43 -1.94 -3 -3 -2.34 -2.39 -2.07 -2.18 -1.92 -1.91
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月
3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3
日
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時
12 12 13 13 9 10 10 10 14 14 8 14 9 13 10 11 12 12 13 13 15 15 19 19 7 8 10 10 9 14 9 9 12 12 14 14 9 13 10 10
分
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秒
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温度 温度差a温度差b温度差c 湿度 湿度差a湿度差b湿度差c外部温度外部湿度 風速 22.85 2.63 3.7 44.84 -8.87 -11.7 21.79 1.57 2.64 33.3 -20.41 -23.24 22.93 2.71 3.78 39.51 -14.2 -17.03 22.31 2.09 3.16 37.33 -16.38 -19.21 22.25 1.02 1.37 53.87 1.34 -3.55 22.49 1.26 1.61 44.33 -8.2 -13.09 22.37 1.14 1.49 48.64 -3.89 -8.78 22.01 0.78 1.13 45.86 -6.67 -11.56 25.27 4.04 4.39 44.72 -7.81 -12.7 25.11 3.88 4.23 44.03 -8.5 -13.39 21.84 -1.14 -0.19 56.86 5.14 0.225 20.77 -2.21 -1.26 23.76 -27.96 -32.88 23.05 1.53 0.13 54 -0.72 -4.15 24.39 2.87 1.47 55.73 1.01 -2.42 21.74 -0.19 0.84 53.97 -0.09 -3.74 22.14 0.21 1.24 44.55 -9.51 -13.16 23.04 1.17 2.705 50.83 -4.69 -7.635 22.06 0.19 1.725 38.35 -17.17 -20.12 23.15 1.28 2.815 43.77 -11.75 -14.7 22.05 0.18 1.715 33.94 -21.58 -24.53 23.08 1.21 2.745 46.86 -8.66 -11.61 23.04 1.17 2.705 44.86 -10.66 -13.61 25.15 3.51 4.525 54.29 1 -3.7 24.53 2.89 3.905 54.57 1.28 -3.42 24.14 1.27 -0.36 58.97 3.67 0.66 23.27 0.4 -1.23 49.82 -5.48 -8.49 24.2 1.33 -0.3 53.49 -1.81 -4.82 24.12 1.25 -0.38 47.75 -7.55 -10.56 20.73 -3.84 0.39 56.08 5.74 1.07 20.96 -3.61 0.62 26.27 -24.07 -28.74 20.81 -0.14 0.26 51.92 7.94 -1.65 20.8 -0.15 0.25 46.53 2.55 -7.04 22.62 1.67 2.07 51.57 7.59 -2 22.64 1.69 2.09 51.19 7.21 -2.38 23.66 2.71 3.11 50.32 6.34 -3.25 23.15 2.2 2.6 48.51 4.53 -5.06 19.67 0.16 -0.065 60.27 2.06 1.05 20.92 1.41 1.185 44.8 -13.41 -14.42 19.85 -0.68 0.36 46.23 -9.08 -14.26 19.93 -0.6 0.44 35.8 -19.51 -24.69 -
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月
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月
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日
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月
6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6
日
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時
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秒
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月
6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7
日
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月
7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8
日
11 11 11 11 12 12 12 17 17 24 31 1 1 2 2 2 2 2 2 3 3 3 4 5 5 5 5 5 5 5 5 6 6 6 6 7 7 8 8 8
時
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分
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月
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日
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時
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照度
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年 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010
月
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月
9 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10
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時
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月
10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11
日
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11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11
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4 6 6 6 6 7 7 7 7 8 8 8 8 9 9 9 9 10 10 10 10 10 10 10 10 11 11 12 12 12 12 13 13 15 15 15 15 18 18 19
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月
11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12
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年 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010
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12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12
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7 8 8 9 9 10 10 11 11 12 12 14 14 15 15 17 17 18 18 18 18 20 20 22 22 24 24 24 24 25 25 26 26 27 27 28 28 28 28 28
時
15 10 14 8 14 12 15 11 14 9 14 14 14 9 10 12 15 9 13 23 23 12 14 12 12 12 13 14 14 9 11 10 14 12 13 0 0 8 8 11
分
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秒
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年 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011
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12 12 12 12 12 12 12 12 12 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
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28 29 29 31 31 31 31 31 31 4 4 5 5 8 8 9 9 9 9 10 10 10 10 11 11 17 17 17 17 17 17 19 19 19 19 20 20 20 20
時
14 10 14 8 8 13 13 13 13 9 15 9 14 12 14 9 10 12 16 8 8 18 18 9 13 9 9 10 10 11 11 9 13 13 14 12 13 15 16
分
30 29 46 48 55 18 24 51 52 9 24 54 12 27 56 28 50 37 5 47 50 14 15 28 35 30 35 51 52 11 12 46 54 55 8 46 55 13 8
秒
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曜日 2 3 3 5 5 5 5 5 5 2 2 3 3 6 6 7 7 7 7 1 1 1 1 2 2 1 1 1 1 1 1 3 3 3 3 4 4 4 4
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1
温熱環境情報のまとめ
年間の温熱環境情報
1.1
1
温熱環境情報のまとめ
窓開閉時の温熱情報 人間行動情報なしの場合
1.2 1.2.1
1
温熱環境情報のまとめ
窓開閉時の温熱情報 人間行動情報ありの場合
1.2 1.2.2
2
人間行動情報のまとめ
窓開閉行動の動機アンケート
2.1
2
人間行動情報のまとめ
温熱環境情報・人間行動情報・温熱心理の関係性
2.2
A
行動パターン
温熱環境情報・人間行動情報・温熱心理の関係性
2.2
B
行動パターン
温熱環境情報・人間行動情報・温熱心理の関係性
2.2
C
行動パターン
温熱環境情報・人間行動情報・温熱心理の関係性
2.2
D
行動パターン
温熱環境情報・人間行動情報・温熱心理の関係性
2.2
E
行動パターン
温熱環境情報・人間行動情報・温熱心理の関係性
2.2
第
2
部
資料編
■ 温熱環境情報の統計 *温度
各 日 ご と に 温 度 の 最 大 値・ 最 小 値・ 平 均 値 の 推 移 を 並 べ る こ と で、 1 ヶ 月 及 び 1 年 間 の 温 熱 環 境 情 報 の 推 移 を 把 握 す る。 結 果 は 以 下 に 示 す 通 り で ある。
* 湿度
各 日 ご と に 湿 度 の 最 大 値・ 最 小 値・ 平 均 値 の 推 移 を 並 べ る こ と で、 1 ヶ 月 及 び 1 年 間 の 温 熱 環 境 情 報 の 推 移 を 把 握 す る。 結 果 は 以 下 に 示 す 通 り で ある。
1
温熱環境情報のまとめ
年間の温熱環境情報
1.1
1
温熱環境情報のまとめ
窓開閉時の温熱情報 人間行動情報なしの場合
1.2 1.2.1
1
温熱環境情報のまとめ
窓開閉時の温熱情報 人間行動情報ありの場合
1.2 1.2.2
2
人間行動情報のまとめ
窓開閉行動の動機アンケート
2.1
2
人間行動情報のまとめ
温熱環境情報・人間行動情報・温熱心理の関係性
2.2
参考文献
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
参考文献リスト 【1】バルザック(山田登紀子訳):「風俗のパトロジー」, 新評論 , 1982 【2】吉岡昭雄:「歩行者交通と歩行空間(Ⅱ)−歩行速度・密度・交通量について−」, 交通工学 Vol.13 No.5, pp.41-53, 1978 【3】竹内伝史 , 岩本広久:「細街路における歩行者挙動の分析」, 交通工学 Vol.10 No.4, pp.3-14, 1975 【4】渡辺美穂 , 羽藤英二:「移動軌跡に着目した都市空間の歩行速度分析」, 第 42 回都市 計画論文集,pp535-540,2007. 【5】松永文彦 , 中村克行 , 佐久間哲哉 , 柴崎亮介:「携帯電話使用が歩行行動に及ぼす影 響に関する基礎的研究」, 日本行動計量学会大会発表論文抄録集 32, 92-93, 2004-09 【6】吉沢進 , 高柳英明 , 木村謙 , 渡辺仁史:「都市における携帯電話使用者の行動特性に 関する研究」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.775-776, 2001 【7】秦野晃一:「携帯型オーディオプレーヤー使用時の空間認知に関する研究」, 早稲田 大学理工学部建築学科卒業論文 , 2007 【8】杉本助男:「感覚遮断環境下の人の心的過程」, 社会心理学研究 1(2), pp.27-34, 1986 【9】教育機器編集委員会:「産業教育機器システム便覧」, 日科技連出版社 , 1972 【10】吉岡陽介 , 一色高志 , 岡崎甚幸:「探索歩行時における周辺視の役割を調べるための 実験方法の開発 : 制限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その 1」,社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.687-688, 2002 【11】一色高志 , 吉岡陽介 , 岡崎甚幸:「制限視野下と通常視野下での探索歩行時における 行動特性の比較 : 制限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その 2」, 社団法人日本建築学 会 , 学術講演梗概集 E-1, pp. 689-690, 2002 【12】渡辺聡 , 後藤春彦 , 三宅論 , 李彰浩:「商業地街路における歩行者の看板注視傾向 に関する研究 - 銀座中央通りにおける歩行実験の分析 -」, 日本建築学会論文集 (574), pp.113-120, 2003 【13】山川琴音 , 有馬隆文 , 坂井猛: 「商業地街路における街路環境と歩行者の視認・認知・ 評価の関係性について」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 F-1, pp.327-328, 2005 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
116
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
【14】舟橋國男:「初期環境情報の差異と経路探索行動の特徴 - 不整形街路網地区における 環境情報の差異と経路探索行動ならびに空間把握に関する実験的研究その 1-」, 日本建築 学会論文集 No.424, pp.21-30, 1991 【15】日色真帆 , 原広司 , 門内輝行:「迷いと発見を含んだ問題解決としての都市空間の経 路探索」, 日本建築学会論文集 No.466, pp.65-74, 1994 【16】鈴木利友 , 岡崎甚幸 , 徳永貴士:「地下鉄駅舎における探索歩行時の注視に関する研 究」, 日本建築学会論文集 No.543, pp.163-170, 2001 【17】宮岸幸正 , 西應浩司 , 杉山貴伸:「自由散策における経路選択要因と空間認知」, デザ イン学研究 50(2), pp.1-8, 2003 【18】砂金眞司 , 長澤泰 , 岡ゆかり , 伊藤俊介:「街路における散策行動の構造について」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.751-752, 1997 【19】森村祐子 , 遠田敦 , 渡辺仁史:「情報焦点距離からみた都市空間歩行時の空間認知」, 社団法人日本建築学会 , 研究報告集 II, pp.81-84, 2009 【20】Allan Pease, Barbara Pease: 「話を聞かない男、地図を読めない女」藤井 留美 ( 翻訳 ), 主婦の友社 , 2000 【21】小林敬一 : 論争的な複数テキストの理解−発話思考法を用いた分析− , 静岡大学教育 学部研究報告 , 人文・社会科学篇 58, 159-169, 2007 【22】杉之原正純 , 平伸二 , 武藤玲路 , 今若修 :「精神テンポの基礎的実験研究 (2)」- 精神 テンポの機制に関する実験的研究 -, 広島修道大学研究叢書 , 第 76 号 , 1993 【23】阿部麻美 , 新垣紀子 :「BGM のテンポの違いが作業効率に与える影響」, 日本認知科 学会大会発表論文作成要領 , 2008 【24】環境省 HP : http://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html 【25】竹内謙彰 :「空間認知の発達・個人差・性差と環境要因」, 風間書房 , 1998 【26】西田信夫 :「プロジェクターの技術と応用」, シーエムシー出版 , 2010 【27】新垣紀子 , 野島久雄:「方向オンチの科学」- 迷いやすい人・迷いにくい人はどこが 違う? -, 講談社 , 2001
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資 料
Chapter 6
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
6 総括 6.1 総括 本研究における結果/分析の総括を、 ■ 行動データ ■ 距離別データ ■「迷い」からみたデータ の順で行う。それらを次頁以降に示す。
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098
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
■ 行動データ ・空間情報の取得量 tab.6.1.1 空間情報の取得量のまとめ 平均取得割合 通常歩行 43.19%
56.81%
聴かない
48.84%
51.16%
聴く
40.36%
59.64%
男性
43.42%
56.58%
女性
42.96%
57.04%
上位群
42.06%
57.94%
下位群
44.00%
56.00%
高
39.05%
60.95%
低
47.32%
52.68%
高
43.99%
56.01%
低
42.61%
57.39%
全体 習慣
性別
方向感覚成績
方位に関する意識
空間行動における記憶
聴覚遮断歩行
有意差
相関比
聴く属性
◎
歩行形態
○
歩行形態
○
意識 高
◎
歩行形態
○
◎:非常に高い相関がある ○:やや強い相関がある
:歩行形態による比較 大
△:非常に弱い相関がある ×:相関がない
:属性間による比較 大
◇ 通常歩行より聴覚遮断歩行の方が、空間情報の取得量の平均割合が大きい ◇ 習慣属性における聴く属性/方位に関する意識に属性における意識が高い属性は、分 散分析の結果、5%水準で有意な差が見られ、非常に高い相関がある →聴く属性/方位に関する意識が高い属性における聴覚遮断歩行は、空間情報取得量を 増加させる強い力がある ◇ 性別属性/方向感覚の成績属性/空間行動における記憶属性は、属性間による差は見 られなかったが、歩行形態に 5%水準で有意な差があり、やや強い相関が見られた →通常歩行より聴覚遮断歩行の方が空間情報取得量を増加させる
以上の考察から空間情報の取得量は、 ◆ 聴覚遮断歩行が取得情報量を増加させることがわかった ◆ 聴覚遮断歩行が習慣属性における聴く属性/方位に関する意識属性の意識が高い属性 に対し、空間情報の取得量増加に、より大きな効果を発揮することが明らかとなった
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099
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得意欲 tab.6.1.1 空間情報の取得意欲のまとめ 平均意欲割合(垂直方向) 通常歩行 全体 習慣
性別
方向感覚成績
方位に関する意識
空間行動における記憶
聴覚遮断歩行
平均意欲割合(水平方向) 通常歩行
聴覚遮断歩行
19.28%
21.80%
80.72%
78.20%
聴かない
22.22%
26.41%
77.78%
73.59%
聴く
17.81%
19.50%
82.19%
80.50%
男性
15.07%
16.33%
84.93%
83.67%
女性
23.49%
27.28%
76.51%
72.72%
上位群
17.92%
18.04%
82.08%
81.96%
下位群
20.25%
24.49%
79.75%
75.51%
高
19.67%
21.70%
80.33%
78.30%
低
18.89%
21.91%
81.11%
78.09%
高
18.12%
18.04%
81.88%
81.96%
低
20.11%
24.49%
79.89%
75.51%
有意差
相関比
×
×
性別属性
◎
×
×
×
×
×
×
◎:非常に高い相関がある ○:やや強い相関がある
:歩行形態による比較 大
△:非常に弱い相関がある ×:相関がない
:属性間による比較 大
※注)各歩行形態による垂直/水平方向の和が 100%であるため、色塗りは垂直方向のみとした
垂直方向における空間情報の取得意欲は、 ◇ 通常歩行より聴覚遮断歩行の方が、空間情報の取得意欲の平均割合が大きい ◇ 分散分析の結果、性別属性間に 5%水準で有意な差があり、非常に強い相関がある →男性より女性の方が空間情報の取得意欲が高い ◇ 性別属性間以外では、属性間にも歩行形態にも有意な差は見られない
以上の考察から空間情報の取得意欲は、 ◆ 女性の方が空間情報の取得意欲が高い傾向にあることがわかった ◆ 性別属性間以外では、どれも関係性が希薄であることが明らかとなった
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離 tab.6.1.3 空間情報取得までの距離のまとめ 情報までの平均距離(m) 通常歩行 全体 習慣
性別
方向感覚成績
方位に関する意識
空間行動における記憶
聴覚遮断歩行
15.58
23.43
聴かない
14.05
20.64
聴く
16.34
24.83
男性
16.93
27.08
女性
14.22
19.79
上位群
14.44
24.40
下位群
16.39
22.74
高
15.82
23.18
低
15.33
23.68
高
15.67
23.24
低
15.51
23.57
有意差
相関比
歩行形態
△
歩行形態
△
歩行形態
△
歩行形態
△
歩行形態
△
◎:非常に高い相関がある ○:やや強い相関がある
:歩行形態による比較 大
△:非常に弱い相関がある ×:相関がない
:属性間による比較 大
◇ 通常歩行より聴覚遮断歩行の方が、空間情報取得までの平均距離が長い ◇ 全属性における歩行形態に 5%水準で有意な差があるが、相関は非常に弱い →歩行形態が空間情報取得までの距離の長短に影響を与える ◇ 全属性間に有意な差はない
以上の考察から空間情報取得までの距離は、 ◆ 聴覚遮断歩行がより遠くの情報取得に効果を発揮することがわかった ◆ 聴覚遮断歩行が属性を問わず、効果を発揮することが明らかとなった
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・行動データの総括 tab.6.1.4 行動データからみた聴覚遮断による空間情報取得モデル 空間情報の取得量
空間情報の取得意欲
空間情報取得まで距離
通常歩行との平均値比較
増加
増加
増加
習慣
聴く ◎
×
歩行形態 ○
性別
歩行形態 ○
性別 ◎
歩行形態 ○
方向感覚の成績
歩行形態 ○
×
歩行形態 ○
◎
×
歩行形態 ○
歩行形態 ○
×
歩行形態 ○
方位に関する意識 空間行動における記憶
意識 高
◎:非常に高い相関がある ○:やや強い相関がある △:非常に弱い相関がある ×:相関がない
◇ 聴覚遮断歩行おける、空間情報取得に対する通常歩行との比較は、いずれにおいても 増加傾向にあることがわかった ◇ 空間情報の取得量における習慣による聴く属性と方位に関する意識が高い属性、空間 情報の取得意欲における性別属性は、聴覚遮断歩行を行うことで、より空間情報の取得量 の増加や、取得意欲の向上に大きな効果を発揮することが言えた ◇ 上記以外にも、tab.6.1.4 における「歩行形態 ○」の部分は、歩行形態による違いが 情報取得に有意な差を与えることが明らかとなった ◇ 性別属性以外における空間情報の取得意欲は、属性間/歩行形態の双方に有意な差は 見られなかった
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
■ 距離別データ ・空間情報の取得量 ◇ 通常歩行では距離が進むにつれ空間情報の取得量が減少するが、聴覚遮断歩行では距 離に関わらず一様に空間情報を取得する傾向にある ◇ 通常歩行における 300 ∼ 400m の区間、1000 ∼ 1100m の区間において、被験者ご とによる空間情報取得量の分布が広範囲に渡った →両ルートにおける 300 ∼ 400m の区間は、空間形態(住宅街や道幅を指す)が大きく 変化するポイントであり、そのようなポイントでほとんど情報を取得しようとしなかった 被験者が見られた →両ルートにおける 1000 ∼ 1100m の区間は、道幅の広い一直線の通りで視線の抜けが あるが、このような区間においても、通常歩行時ではほとんど情報を取得しようとしなかっ た被験者が見られた
・空間情報の取得意欲 ◇ 垂直/水平方向において各区間における平均値を結んだグラフの形状が、通常歩行時 では上に凸、聴覚遮断歩行時では下に凸となった →通常歩行時ではルートの中盤に、聴覚遮断歩行時ではルートの序盤と終盤に情報取得 意欲が強く見られた ◇ 垂直方向における情報取得意欲の分布が、聴覚遮断歩行時において広範囲に渡ること がわかった →聴覚遮断による効果が被験者ごとに異なることがわかった ◇ 垂直方向では聴覚遮断歩行時において、視線の広がりが情報取得意欲に影響すること がわかった →視線の広がりが見られる空間では、聴覚遮断歩行時の方が情報取得意欲が向上する ◇ 水平方向では、両歩行形態ともに似た分布が見られた →水平方向の情報取得意欲は、歩行形態とあまり関係のないことが明らかとなった
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離 ◇ 各区間で見ると、聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報を取得していることがわかる ◇ 空間形態が大きく変化するポイントを含む区間では、聴覚遮断歩行時においてより遠 くの情報を取得する傾向にあることがわかった →より遠くにある情報を取得していることは、空間をより広く捉えていることが挙げら れる
以上の考察より、距離別データからみる聴覚遮断による情報取得モデルは、 ◆ 空間情報の取得量が一様 ◆ ルートの序盤と終盤において、空間情報の取得意欲が向上する ◆ 垂直方向における空間情報の取得意欲が向上する ◆ 空間形態が変化するポイントを含む区間では、情報取得量と取得距離において有効 ◆ 視線の抜けがある空間を含む区間では、情報の取得量、垂直方向の取得意欲、取得距 離のそれぞれに有効
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104
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
■「迷い」からみたデータ ・空間情報の取得と「迷い」 実験から得られた情報取得の内容を、「常時」、「一時」、「その他」の 3 つに分類した。 「迷いにくい人」は歩行中に「常時」に関する情報を取得する傾向にあるという点から 本研究では、 ★「常時」と「一時」の比較 ★「常時」と「一時+その他」の比較 を行い、そのまとめを次頁以降に示す。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
★「常時」と「一時」の比較
40%
「常時」情報取得割合の増減率
30% 20% 10% 0% 02
04
-10%
06
09
12
01
03
迷いにくい人
05
07
08
10
11
迷いやすい人
-20% -30% -40%
被験者 No.
fig.6.1.5 聴覚遮断歩行時における「常時」−「一時」情報取得割合の増減率 ※注)「常時」情報取得割合= (「常時」情報取得数 ) /(「常時+一時」情報取得数) 「常時」−「一時」情報取得割合の増減率 =(聴覚遮断歩行時「常時」情報量取得割合)/(通常歩行時「常時」情報量取得割合)− 1 として求めた。
◇ 全被験者における「常時」情報取得量の平均増減率は 8.11% ◇「迷いにくい人」は増減率にばらつきが見られるが、「迷いやすい人」は近い値をとる ◇「迷いやすい人」として分類された方向感覚の成績下位群は、「常時」情報取得量の増 減率が「迷いにくい人」ほどではないが、増加する傾向にある
以上の考察から「常時」情報取得量の増減率は、 ◆ 聴覚遮断歩行が増減率を増加させることがわかった ◆「迷いやすい人」にとっても増加傾向にあり、聴覚遮断歩行が「常時」情報取得に有効 であることがわかった →「迷いやすい人」が聴覚遮断歩行を行うと、「常時」情報量が増加し、迷いにくくなる ことが言える
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
★「常時」と「一時+その他」の比較
40%
「常時」情報取得割合の増減率
30% 20% 10% 0% 02
04
-10%
06
09
12
01
03
迷いにくい人
05
07
08
10
11
迷いやすい人
-20% -30% -40%
被験者No. 「常時」−「一時」
「常時」ー「 一時+その他」
fig.6.1.6 聴覚遮断歩行時における「常時」−「一時+その他」情報取得割合の増減率 ※注)「常時」情報取得割合= (「常時」情報取得数 ) /(「常時+一時+その他」情報取得数) 「常時」−「一時+その他」情報取得割合の増減率 =(聴覚遮断歩行時「常時」情報量取得割合)/(通常歩行時「常時」情報量取得割合)− 1 として求めた。 また、青グラフ部分は fig.6.1.5 との比較用のための参考として、合わせて図示した。
◇ 全被験者における「常時」情報取得量の平均増減率は 3.11% ◇ ほとんどの被験者の増減率は fig.6.1.5 と比較して、減少傾向にある ◇「迷いやすい人」のうち二人に大きな増減率の増加が見られた
以上の考察から「常時」情報取得量の増減率は、 ◆ 聴覚遮断歩行がわずかながら、増減率を増加させることがわかった ◆「迷いやすい人」にとっても増加傾向にあり、その平均は「常時」−「一時」よりも増 加した →「迷いやすい人」が聴覚遮断歩行を行うと、「常時」情報量が増加し、迷いにくくなる ことが言える ◆「その他」の情報が加わることで、本来ならば増減率は減少するはずだが、「迷いやす い人」のうち、二人に非常に大きな増加傾向が見られた →空間情報の取得に不必要な「その他」の情報が著しく減少したため、この増加傾向が 見られ、聴覚遮断歩行が有効に働いたと考えられる
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
続いて、空間情報の取得内容を更に細分化し、 「空間」、 「ランドマーク」、 「オブジェクト」、 「サイン」、「その他」の 5 つに分類した。 「迷いにくい人」は歩行中に「空間」と「ランドマーク」に関する情報を取得する傾向 にあるという点から本研究では、 ★ 全体平均 ★ 習慣属性比較 ★ 性別属性比較 ★ 方向感覚の成績属性比較 を行い、そのまとめを次頁以降に示す。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
tab.6.1.7 「空間」と「ランドマーク」の増減 全体平均 空間
ランドマーク 空間+ ランドマーク 習慣属性 聴かない属性
聴く属性
空間
空間
ランドマーク
ランドマーク
空間+
空間+
ランドマーク
ランドマーク 性別属性 男性
女性
空間
空間
ランドマーク
ランドマーク
空間+
空間+
ランドマーク
ランドマーク 方向感覚の成績属性
上位群
下位群
空間
空間
ランドマーク
ランドマーク
空間+
空間+
ランドマーク
ランドマーク
◇ 全体平均から「迷いにくい人」がより多く取得する情報は、通常歩行の方が取得する 傾向が見られた ◇ 習慣属性では双方ともに「空間」に関する情報量は大きく減少するが、聴かない属性 の「ランドマーク」の増加が大きいため、結果として、「空間+ランドマーク」は少量で あるが、増加する傾向となった ◇ 性別属性では属性間に増減のばらつきが見られたが、結果として、通常歩行の方が少 量ながら、増加する傾向が見られた ◇ 方向感覚の成績属性では、属性間に真逆の増減が見られ、「空間+ランドマーク」の情 報量は聴覚遮断歩行において、成績上位群で大きく増加、成績下位群で大きく減少した
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
以上のことから、「空間」と「ランドマーク」に関する情報量は、 ◆ 聴覚遮断歩行においては、全体的に減少する傾向が見られた →しかし、普段から音楽を聴かない属性、方向感覚の成績上位群には増加傾向が見られ た ◆ 方向感覚の成績属性の間で一番大きな差が見られた ◆ 聴覚遮断歩行はあまり「迷い」に有効でないことがわかった
また、「ランドマーク」の情報量を取得した位置によって更に細分化したところ、 ◇「スタート地点」、「交差点付近」、「遠方」の 3 つにおいて、聴覚遮断歩行がそれらの割 合において増加している傾向が見られた
つまり、 ◆「空間」と「ランドマーク」における情報量では、聴覚遮断歩行時の方が減少してしま うことが明らかとなったが、 「ランドマーク」におけるその取得地点で比較すると、 「スター ト地点」、「交差点付近」、「遠方」において、情報量が増加する傾向にあった →つまり聴覚遮断歩行では、例え情報の取得量が少なくても、その取得位置が「迷いに くい人」に見られるような地点で取得している 以上のことから、空間情報の取得量における「迷い」からみた考察では、聴覚遮断歩行 の有効性が示せた。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離と「迷い」 空間情報取得までの距離と「迷い」の分析では、 「空間情報取得までの距離推移値」と「空 間情報取得遷移率」の二つの視点から、「迷い」を考察した。 「空間情報取得までの距離推移値」においては、 ◆ 歩行形態による平均値が聴覚遮断歩行時において、7.72m 長いことがわかった →聴覚遮断歩行時はただ遠方に位置する情報を取得しているだけでなく、情報間の遠近 の差が大きく、視線の遠近移動が活発に行われていることが明らかとなった 「空間情報取得遷移率」においては、 ◆ 任意の範囲を 15m に設定した所、12 人中 10 人の被験者が、聴覚遮断歩行時の遷移率 が高くなるという傾向が見られた →聴覚遮断歩行時では 15m を境界とした場合、その視線の推移が通常歩行と比較して、 非常に活発に行われることが明らかとなった 従って、この推移値、遷移率からみても、単に情報取得までの距離が長いだけでなく、 取得するまでの視線の動きが聴覚遮断歩行によって、活発になることが明らかとなった。
以上のことから、空間情報取得までの距離における「迷い」からみた考察では、聴覚遮 断歩行の有効性が示せた。
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111
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
以上の考察より、「迷い」からみる聴覚遮断による情報取得モデルは、 ◆「常時」、「一時」、「その他」における情報内容分類では、「常時」−「一時」の情報取 得量の増減率において、「迷いにくい人」に分類される被験者から増加する傾向にある ◆「その他」を含めた場合でも、「迷いにくい人」における情報取得量の増減率も増加す る傾向がある ◆「空間」、「ランドマーク」、「オブジェクト」、「サイン」、「その他」における情報内容分 類では、「空間」と「ランドマーク」に関する情報取得量は通常歩行の方が多く取得する ◆「ランドマーク」における空間情報取得地点別に比較すると、「スタート地点」、「交差 点付近」、「遠方」において、聴覚遮断歩行はいずれにおいても情報取得量が高い ◆ 空間情報までの距離を長さだけでなく、「空間情報までの距離推移値」と「空間情報取 得遷移率」という視点からも分析を行った結果、聴覚遮断歩行の方が距離推移値、遷移率 ともに高く、視線の遠近推移が活発に行われる
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112
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
6.2 展望 本研究では、環境音からの遮断するという歩行者属性に焦点を当て、研究を行ったが、 都市歩行空間にはもっと様々な歩行者属性が存在し、現在にはない、新たな歩行者属性が 出現するかもれない。このような類いの研究が今後も生まれていくのであれば、まだ着目 されていない、新たな歩行者属性に焦点を当て、研究を行ってもらいたい。 本研究の実験で取り扱った音楽を聴きながらの歩行は、現在、注意力が散漫になると言 われており、街で音楽を聴きながら歩行することを禁止にする地域もでてきた。しかし、 この結果を元に、それを再考するきっかけとなれば幸いである。多種多様な歩行者属性が 存在する都市空間を生むためにも、排除するのではなく、守っていくような傾向が生まれ てくれればと願いたい。
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113
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
6.3 謝辞 現在、2011 年2月 4 日(金)午前一時。論文を自宅で印刷しながらこの文章を書いている。渡辺仁史 研究室に入った時は、まさか自分が修士論文を執筆するとは夢にも思っていなかっな。修士論文ってなん か手の届く所にない感じだったし…まあ、一時はどうなることかと思ったけど、とりあえず書き終えたか な? w 今一番の心配はガタガタいってるプリンター君が最後まで絶えられのかどうか…
そんなことはさておき、この三年間を振り返るとメッチャ濃い三年間だった。まず学生生活で一番辛かっ たと今でも思っている卒業論文。なかなかテーマ決まんなくて、S 棟に 12 連泊ぐらいして、先輩にスゲー 迷惑かけて。修論こそはと意気込んだけど、まぁ、こんなもんだよね w 修士一年の時は遊んだね∼!毎 日飲んで、ダイビング始めて、また飲んで。学校にもずっといて、大学入ってから一番大学来てたな、きっと。 それでシューカツやって、修士二年になった。夏はずっと旅行行って、これでもかってくらい肌を焼いた。 夏は楽しかったな∼!夏よ、早く来い!!
とりあえず修士の思い出はこれくらいにして、謝辞らしいこと書きます! まず始めに、渡辺先生に感謝の気持ちを述べたいと思います。先生からは物事に対する姿勢、新しいこ とに挑戦し続ける大切さなど、様々な刺激を頂きました。また研究室の届けられる沖縄の風は新鮮で、論 文が終わった頃には沖縄に行きたいと思います。私の学生生活が先生のご指導の元で最後を迎えられるこ とを心から嬉しく思います。ありがとうございました。 そして、いつもいつも自分の面倒を見て頂いた林田先生。本当にデキが悪くて、ご迷惑しかかけてませ んね。そんな自分をいつも暖かく見守ってくださった先生には感謝しきれません。本当にありがとうござ いました。どうか暖かい格好をして、弁当ばかり食べてないで、お身体を大事にしてください。そして、 海老狸の味は忘れません! なっちゃんや遠田さんにも色んなことを教わりました。これからもお身体に気をつけて、今後のご活躍 をお祈りしています。またご一緒に飲み行きましょう!
M 0のみんなからは自分が知らなかった世界を教えてもらった。特に行動ゼミの 4 人は個性があって、 刺激あったな∼ w 学院上がりで親近感があるししょー。カメラ大好きの D、東大でもガンバ。キッズお 疲れ、ジョン三等兵。差し入れとかお見舞いとかありがとう、ガースー。忙しいのに分析手伝ってくれて ありがとう。それからまたたこ焼き食べような、ヒロキ。他のみんなもありがとう! M 1のみんなからは真面目さを教えられたな。いっつも研究しついて、作業してたね。俺が言うのもな んだけど、もっと遊びな!今だけだよ!そんな M 1も行動ゼミの皆は特にありがとう!気付いたらいな くなってたゆかりんちょ。バンジーの敬礼は忘れません、コージー。はうあ∼、ジャンボ。いつもクール で兄貴肌な河 D、来年のゼミを引っ張って行ってください!そして、ちゃっきーにはキッズも一緒にやっ てたし、お見舞いにも来てくれたし、香港も大阪も行ったし、一番感謝しなきゃね。就活忙しいのに論文 手伝ってくれてありがとう。これからもチャラチャラしていてください。w 他の M 1も色んな所でお世 話になってると思うし、本当にありがとう!来年の研究室を頼んだ!!
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114
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
そして、何より感謝しなきゃいけないのが、同期のみんなだね。この論文が書けたのも、研究室ライフ がこんなに楽しかったのも、皆のおかげです!本当にありがとう!
エロ:あなたのしゃべり方とダンスのモノマネとこのあだ名はこれからもずっと続くんだろうね。w 修 士からの入学で大変な面もあっただろうけど、さすがチャンピオンだね。就職先でタカジにヨロシク。
ガッキー:キッズではお世話になりました。ちゃんと飯食って、体調には気をつけてね!皆心配してるか らね!またバンジー行こうね!
ぶっちー:そろそろ3画面から4画面にしてもいいんじゃん? Mac は便利だよ∼ w 早く彼女できると 良いね!あと、富山では色々ありがとう!一週間もお世話になりました!ご家族に宜しくお伝え下さい。
プリンス:もうこのあだ名もしっくりきてるよね。w プリンスはなんか感性が違うよね。いつもカッコ イイ横文字使うし、例えはたまにわかんないけどね。w パナでも頑張って!今度は社会人として仁史研 に関わるのも、面白そうだね!
バービー:もう、ただただあなたのこれからが心配です。周りに気を使える人間になりましょう。ガキみ たいに一つのこと集中し過ぎて、周りを無視しないようにしましょう。飲んで、潰れても靴は履きましょう。 以上。
オカタツ:米を一合ずつ持ってきたときはさすがにビックリしたわ。さすがマメタツ。w いつも真面目で、 色んなこと知ってて、なんか兄貴みたいな感じだね。ホントにありがとう!4月から、夜の新橋/銀座で お世話になります! w
田名網:あなたの行動力にはただただ脱帽です。ダイビングしたり、ゴルフしたり、色んなことが出来た のも田名網のおかげだと思ってます。本当にありがとう!就職してもちょいちょい飲み行こうな∼
研究室以外にも、WASABI の皆とも色んな思い出が出来たし、感謝感謝です。 それから、高校から9年間お世話になった早稲田にも感謝の気持ちを述べておこうと思います。
そして最後に、ここまで育ててくれた両親に感謝したいと思う。これから少しずつですが、親孝行して いきたいなと思ってます。どうか身体に気をつけてください。
2011 年 2 月 4 日 西 隆明
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115
Chapter 5
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
5 分析 5.1 行動データの属性比較分析 ここで述べる行動データとは、実験から得られた、以下 3 つのデータである。 ◇ 空間情報の取得率 被験者の空間情報の総取得量に対する、通常歩行時と聴覚遮断歩行時における情報取得 数の百分率を示す。 ◇ 空間情報の取得意欲 被験者の各歩行時における空間情報の取得意欲に対する、垂直方向と水平方向における 情報取得意欲の百分率を示す。 ◇ 空間情報取得までの平均距離 被験者の空間情報取得までの距離の総和を情報の数で割った距離の平均値である。
この 3 つのデータを用いて、アンケートで得られた被験者の各属性との相関を検証する。 なお、その属性は以下の通りであり、該当する被験者 No. を tab.5.1.1 に示す。 ◇全体 ◇習慣属性 普段からの散策行動において、普段から音楽を聴きながら歩行するかどうかを比較する。 ◇性別属性 性別による比較を行う。 ◇方向感覚の成績属性 方向感覚質問用紙の全体合計点を元に、成績上位群と下位群に分けて比較を行う。なお、 その境界は 60 点とした。 ◇方位に関する意識属性 ◇空間行動における記憶属性 この二つの属性に関しては、tab.4.4.2 で示した全国平均との比較において、その成績 を上回った被験者を「高」、下回った被験者を「低」とした。
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043
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
tab.5.1.1 属性の種類と被験者の割り振り 属性の種類 習慣
性別
方向感覚の成績
被験者No.
聴かない
01, 04, 10, 11
聴く
02, 03, 05, 06, 07, 08, 09, 12
男
02, 03, 04, 05, 06, 09
女
01, 07, 08, 10, 11, 12
上位群
02, 04, 06, 09, 12
下位群
01, 03, 05, 07, 08, 10, 11
方位に関する
高
02, 03, 05, 09, 11, 12
意識
低
01, 04, 06, 07, 08, 10
空間行動における
高
04, 06, 07, 09, 12
記憶
低
01, 02, 03, 05, 08, 10, 11
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044
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得率による属性別比較 通常歩行と聴覚遮断歩行における、情報取得率の各属性別による比較を fig.5.1.2 ∼ fig.5.1.7 に示す。
25%
50%
75%
100%
全体
0%
通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.2 全体平均 fig.5.1.2 では情報取得率の通常歩行と聴覚遮断歩行における全体に対する割合を算出し た。その結果は、通常歩行時が 43.19%、聴覚遮断歩行時が 56.81%と、聴覚遮断歩行時 の方が空間情報の取得率が高い結果となった。
0%
25%
50%
75%
100%
聴かない
01 04 10 11
02 03
聴く
05 06 07 08 09 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.3 習慣属性による比較 fig.5.1.3 では習慣による属性の比較を表した。この結果を見ると、普段の散策行動で音 楽を聴く属性の方がそうでない属性より、聴覚遮断歩行時における情報取得率が全体的に 高い傾向にあることが見て取れる。また、普段から音楽を聴かない属性の情報取得率は被 験者によってまちまちだが、聴く属性に関しては多少の誤差はあるものの、全体的に同じ ような割合であることがわかった。
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045
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
25%
50%
75%
100%
02
男性
03 04 05 06 09
01
女性
07 08 10 11 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.4 性別属性による比較 fig.5.1.4 では性別による属性の比較を表した。この結果を見ると、被験者 No.04 を除 く男性属性において、ほぼ同じような情報取得率の割合であり、その平均は 60%に達す るほど、聴覚遮断歩行時の情報取得率が高い結果となった。一方、女性に関してはその割 合が被験者ごとでバラバラな割合であり、関係性が見られなかった。
方向感覚の成績上位群
0%
25%
50%
75%
100%
02 04 06 09 12
方向感覚の成績下位群
01 03 05 07 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.5 方向感覚の成績属性による比較 fig.5.1.5 では方向感覚の成績による属性の比較を表した。成績上位群における被験者 No.04 以外の被験者は 7 割以上の成績を残しており、聴覚遮断歩行時での情報取得率が 非常に高い傾向にあることが明らかとなった。成績下位群に関しては上位群ほどの顕著な 差が見られなかった。以上より、方向感覚の成績上位群には両歩行における情報取得に違 いが見られた。
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046
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
方位に関する意識 低
方位に関する意識 高
0%
25%
50%
75%
100%
02 03 05 09 11 12
01 04 06 07 08 10 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.6 方位に関する意識属性による比較 fig.5.1.6 では方位に関する意識による属性の比較を表した。この結果からは、通常歩行 と聴覚遮断歩行で顕著な差が表れた。情報取得率が高い属性における聴覚遮断歩行時の情 報取得率平均は、60%を超え、頻繁に情報を取得したことが明らかとなった。意識が低
空間行動における記憶 低
空間行動における記憶 高
い属性に関しては、被験者間に統一性が見られず、様々な割合が検出された。
0%
25%
50%
75%
100%
04 06 07 09 12
01 02 03 05 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.7 空間行動における記憶属性による比較 fig.5.1.7 では空間行動における記憶による属性の比較を表した。この結果からは他の属 性比較とは対照的に、記憶の低い属性に情報取得率の割合に統一感が見られたが、もう一 方では統一感はなかった。つまり、空間行動にける記憶が低い属性には聴覚遮断歩行が均 質的に有効に働いたと考えられる。
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047
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・情報取得意欲による属性別比較 通常歩行と聴覚遮断歩行における、情報取得意欲の各属性別による比較を fig.5.1.8 ∼ fig.5.1.13 に示す。
0%
25%
50%
75%
100%
垂直方向全体 水平方向全体 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.8 方向別全体平均 fig.5.1.8 では情報取得意欲の方向別による全体の平均を表した。このグラフから、水平 方向にはほとんど差が見られなかったが、垂直方向においては若干ではあるが、聴覚遮断 歩行時の方が情報取意欲の割合が大きいということがわかった。
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048
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
25%
50%
75%
100%
75%
100%
聴かない
01 04 10 11 02 03
聴く
05 06 07 08 09 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.9.1 習慣属性による比較(垂直方向) 0%
25%
50%
聴かない
01 04 10 11 02 03
聴く
05 06 07 08 09 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.9.2 習慣属性による比較(水平方向) fig.5.1.9.1 ∼ fig.5.1.9.2 では習慣による属性の比較を表した。垂直方向では聴覚遮断歩 行時の方が、水平方向では通常歩行時の方が、若干ではあるが情報取得意欲が高い傾向に あるが、ごく微量なので明確に差があるとは言い難い。ただ、両歩行における水平方向の 属性差はほとんどばらつきがなかったが、垂直方向では被験者によってバラバラな割合が 検出された。従って、聴覚を遮断しながら歩行することは、水平方向の情報取得意欲には あまり影響を与えないが、垂直方向に影響を与えることがわかった。
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049
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
25%
50%
75%
100%
75%
100%
02
男性
03 04 05 06 09 01
女性
07 08 10 11 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.10.1 性別属性による比較(垂直方向) 0%
25%
50%
02
男性
03 04 05 06 09 01
女性
07 08 10 11 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.10.2 性別属性による比較(水平方向) fig.5.1.10.1 ∼ fig.5.1.10.2 では性別による属性の比較を表した。性別による比較でも垂 直方向、水平方向共に性別に関する大きな差は見られなかった。ほんの少しの差であれば、 男性よりも女性の方が聴覚遮断歩行時において、垂直方向で高く、水平方向で低い情報取 得意欲を得ることが読み取れる。
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050
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行感覚の成績上位群
0%
25%
50%
75%
100%
02 04 06 09 12
方向感覚の成績下位群
01 03 05 07 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.11.1 方向感覚の成績属性による比較(垂直方向) 歩行感覚の成績上位群
0%
25%
50%
75%
100%
02 04 06 09 12
方向感覚の成績下位群
01 03 05 07 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.11.2 方向感覚の成績属性による比較(水平方向) fig.5.1.11.1 ∼ fig.5.1.11.2 では方向感覚の成績による属性の比較を表した。垂直方向の 聴覚遮断歩行時において、成績下位群の方が上位群より、情報取得意欲が高い傾向がある とわかった。しかし、水平方向に関しては、方向感覚の成績による違いはあまり見られな かった。
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051
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
方位に関する意識 低
方位に関する意識 高
0%
25%
50%
75%
100%
02 03 05 09 11 12
01 04 06 07 08 10 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.12.1 方位に関する意識属性による比較(垂直方向)
方位に関する意識 低
方位に関する意識 高
0%
25%
50%
75%
100%
02 03 05 09 11 12
01 04 06 07 08 10 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.12.2 方位に関する意識属性による比較(水平方向) fig.5.1.12.1 ∼ fig.5.1.12.2 では方位に関する意識による属性の比較を表した。垂直方向 においては全体的に聴覚遮断歩行時の方が情報取得意欲を示している傾向にあることがわ かる。しかし、水平方向に関しては差はほとんど見られなかった。
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052
空間行動における記憶 低
空間行動における記憶 高
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
25%
50%
75%
100%
04 06 07 09 12
01 02 03 05 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
空間行動における記憶 低
空間行動における記憶 高
fig.5.1.13.1 空間行動における記憶属性による比較(垂直方向) 0%
25%
50%
75%
100%
04 06 07 09 12
01 02 03 05 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.13.2 空間行動における記憶属性による比較(水平方向) fig.5.1.13.1 ∼ fig.5.1.13.2 では空間行動における記憶による属性の比較を表した。水平 方向は他の属性比較と同様に、点数の高低に関わらず情報取得意欲に差は見られなかった。 しかし一方で、垂直方向に関しては、比較的大きな差が見られた。従って、空間行動にお ける記憶に関しては、その点数が高いと垂直方向における情報取得意欲に差があり、聴覚 遮断歩行時の情報取得意欲が高くなるという傾向がわかった。
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053
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離による属性別比較 通常歩行と聴覚遮断歩行における、空間情報取得までの距離の各属性別による比較を fig.5.1.14 ∼ fig.5.1.19 に示す。
5
10
15
20
25
30 (m)
全体平均
0
通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.14 全体平均 fig.5.1.14 に両歩行における空間情報取得までの距離の平均値を示した。このグラフか ら、聴覚遮断歩行時の方が通常歩行時よりも約 8 メートル遠くの情報を取得しているこ とが明らかになった。
50
(m)
40
30
20
10
0 01
04
10
11
02
03
05
06
聴かない
07
08
09
12
聴く 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.15 習慣属性による比較 fig.5.1.15 では習慣による属性の比較を表した。この結果を見ると、普段から音楽を聴 かない属性では 4 人中 3 人が、普段から音楽を聴く属性では 8 人中 6 人が、聴覚遮断歩 行時において、通常歩行時より遠くの情報を取得していることがわかる。また、その平均 距離も聴覚遮断歩行時の方が遠い距離の情報を得ていることが読み取れる。
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054
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
50
(m)
40
30
20
10
0 02
03
04
05
06
09
01
07
男性
08
10
11
12
女性 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.16 性別属性による比較 fig.5.1.16 では性別による属性の比較を表した。この結果を見ると、歩行の形態を問わず、 全体的に男性の方が女性より遠くの情報を取得していることが見て取れる。性別属性全体 の平均値も 5 メートルの差があった。更に、聴覚遮断歩行時の方が空間情報取得までの 距離が短い被験者数も男性の方が少ないことがわかった。
50
(m)
40
30
20
10
0 02
04 06 09 方向感覚の成績上位群
12 通常歩行
01
03
05 07 08 方向感覚の成績下位群
10
11
聴覚遮断歩行
fig.5.1.17 方向感覚の成績属性による比較 fig.5.1.17 では方向感覚の成績による属性の比較を表した。このグラフから、被験者の まとまりが見て取れる。まず成績上位群の被験者 No.06 以外の聴覚遮断歩行時の空間情 報取得までの距離は約 20 メートル前後であり、成績下位群の被験者 No.01、03、05 の 聴覚遮断歩行時における空間情報取得までの距離は約 30 メートル、被験者 No.07、08、 11 のそれは約 15 メートル前後に分布する結果となった。
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055
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
50
(m)
40
30
20
10
0 02
03 05 09 11 方位に関する意識 高
12
通常歩行
01
04 06 07 08 方位に関する意識 低
10
聴覚遮断歩行
fig.5.1.18 方位に関する意識属性による比較 fig.5.1.18 では方位に関する意識による属性の比較を表した。この属性に関しては、被 験者のまとまりは見られず、特別な傾向は見て取れなかった。
50
(m)
40
30
20
10
0 04
06
07
09
12
空間における記憶 高
01
02
03
05
08
10
11
空間における記憶 低 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.19 空間行動における記憶属性による比較 fig.5.1.19 では空間行動における記憶による属性の比較を表した。この結果も fig.5.1.18 同様、属性間による大きな違いは見られなかった。また、通常歩行、聴覚遮断歩行共に、 平均値の差は 1 メートル以内と、ほとんど変わらない結果となった。
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056
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・行動データの比較分析方法 本実験から得られた発話回数や首振り回数といった数値(回数)データは、被験者ごと に比較出来ないので、これまでの比較分析はパーセンテージによる比較を行った。次に、 この属性ごとに比較したデータの差を検証するための分析を行う。なお、分析には SPSS 17.0 を用いた。 本データはパーセンテージによる値であるため、t 検定は使用出来ない。従って、分散 分析を用いた。本研究で取り扱う因子は属性と歩行形態の二種類の対応のない因子である。 従って、本分析では 2 元配置の分散分析を用いることとした。これらの属性ごとに比較 した行動データを、以下のフローに従って分析を行う (fig.5.1.20)。
2元配置の分散分析
交互作用の検定
=
yes
no
有意確率 < 有意水準α=0.05
交互作用 ナシ
交互作用 アリ
属性間効果の検定
属性ごとに分散分析
有意確率 < 有意水準α=0.05
相関比の算出 fig.5.1.20 属性による比較の行動データの分析フロー
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057
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得量による属性別比較の分析結果と考察 fig.5.1.20 の 分 析 フ ロ ー に 基 づ い た、 各 属 性 間 比 較 の 分 析 結 果 と そ の 考 察 を 次 の fig.5.1.21 ∼ fig.5.1.25 に記す。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.002<有意確率α= 0.05 → 交互作用 アリ → 1元配置の分散分析へ ② 1元配置の分散分析 → 聴かない ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 ・分散分析 有意確率0.636>有意確率α= 0.05 → 聴く ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 ・分散分析 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 ③ 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.8253
→ 等分散性が成り立っている → 歩行形態には差がない
→ 等分散性が成り立っている → 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に強い相関がある
fig.5.1.21 習慣属性による比較分析結果 空間情報の取得率における習慣属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互作用検 定において交互作用ありと検出されたので、1 元配置の分散分析を行った。その結果、両 属性に等分散性が成り立つことが明らかとなった。また、普段から音楽を聴きながら散策 行動を行う属性の分散分析において、5%水準で有意な差が見られた。更に相関比を求め たところ、非常に強い相関があることが明らかとなった。 つまり普段から音楽を聴く属性は、音楽を聴きながら歩行することで、街の情報を取得 する確率が高くなり、その確率も普段聴かない属性よりも大きくなることが明らかとなっ た。
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058
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.874>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 性別 ・属性間効果の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.5378
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 性別属性には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → やや強い相関がある
fig.5.1.22 性別属性による比較分析結果 空間情報の取得率における性別属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互作用検 定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立っている ことが明らかとなった。また性別属性には差が見られなかったが、歩行形態には差がある ことが認められ、やや強い相関があることがわかった。 つまり、性別による情報取得の差はあまり見られなかったが、性別に関わらず、聴覚遮 断歩行時の方が情報を取得する割合が通常歩行時と比較して、大きくなるという傾向があ ることが証明された。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.502>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.437>有意確率α= 0.05 → 方向感覚 ・属性間効果の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.5378
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方向感覚には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → やや強い相関がある
fig.5.1.23 方向感覚の成績属性による比較分析結果 空間情報の取得率における方向感覚の成績属性の分析では、2 元配置の分散分析による 交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り 立っていることが明らかとなった。また方向感覚の成績属性には差が見られなかったが、 歩行形態には 5%水準で有意な差があることが認められ、やや強い相関があることがわ かった。 つまり、方向感覚の成績による情報取得率の差はあまり見られなかったが、方向感覚の 成績に関わらず、聴覚遮断歩行時の方が通常歩行時よりも情報を取得する割合が大きくな るという傾向が明らかとなった。
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059
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.001<有意確率α= 0.05 → 交互作用 アリ → 1元配置の分散分析へ ② 1元配置の分散分析 → 方位に関する意識 高 ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 等分散性が成り立っている ・分散分析 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 → 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 方位に関する意識 低 ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 等分散性が成り立っている ・分散分析 有意確率0.167>有意確率α= 0.05 → 歩行形態には差がない ③ 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.8996
→ 非常に強い相関がある
fig.5.1.24 方位に関する意識属性による比較分析結果 空間情報の取得率における方位に関する意識属性の分析では、2 元配置の分散分析によ る交互作用検定において交互作用ありと検出されたので、属性の違いごとに 1 元配置の 分散分析を行った。その結果、両属性に等分散性が成り立つことが明らかとなった。また、 方位に関する意識の低い属性の分散分析において、5%水準で有意な差が見られた。更に 相関比を求めたところ、非常に強い相関があることが明らかとなった。 つまり、属性と歩行形態に関係性が見られず、また、属性間による違いもあまり見られ ないという結果となった。しかし、方位に関する意識が高い歩行者のみを見てみると、聴 覚遮断歩行時において、非常に高い情報の取得率を示すことが明らかとなった。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.632>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.069>有意確率α= 0.05 → 空間行動における記憶 ・属性間効果の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.5378
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 空間行動における記憶には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → やや強い相関がある
fig.5.1.25 空間行動における記憶属性による比較分析結果 空間情報の取得率における空間における記憶に関する属性の分析では、2 元配置の分散 分析による交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、 それが成り立っていることが明らかとなった。また空間における記憶属性には差が見られ なかったが、歩行形態には 5%水準で有意な差があることが認められ、やや強い相関があ ることがわかった。 つまり、空間行動における記憶による情報取得の差はあまり見られなかったが、空間行 動における記憶に関わらず、聴覚遮断歩行時の方が通常歩行時よりも情報を取得する割合 が大きくなるという傾向が明らかとなった。また、空間行動における記憶が低い属性には 聴覚遮断歩行が均質的に働くと考えられる。 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
060
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◇ 空間情報取得率の総括 空間情報の取得率は属性の全体を通じて有意な差が見られ、非常に強い相関が見られた。 重ねて、等分散検定においても全てにおいて成り立っている結果となった。つまり、各属 性や歩行形態が効果的に情報取得率に関して働いたのだと考えられる。 更に詳細に見ていくと、習慣属性と方位に関する意識属性における交互作用検定におい て、交互作用ありということがわかった。その時、習慣属性では普段の散策行動から音楽 を聴く属性、方位に関する意識属性ではその意識が高い属性において、非常に強い相関が 見られ、情報取得率に大きな影響を与えることが明らかとなった。この二つの属性以外に 関してはどれも交互作用が見られず、属性ではなく歩行形態に強い相関が見られた。それ は通常歩行時よりも聴覚遮断歩行時の方がより情報を取得する割合が高いというものであ る。 これらの分析結果より、情報取得率という行動データは各属性と歩行形態に大きな影響 を及ぼすことが明らかとなった。全体を通じて通常歩行時よりも聴覚遮断歩行時の方が情 報を取得する割合が高くなるという傾向が明らかとなった。更には、普段の散策行動から 音楽を聴く習慣があるかどうかと、方位に関する意識が高いことが、歩行形態に大きな影 響力を及ぼすことがこの分析結果から言えるであろう。
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061
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得意欲による属性別比較の分析結果と考察 fig.5.1.20 の 分 析 フ ロ ー に 基 づ い た、 各 属 性 間 比 較 の 分 析 結 果 と そ の 考 察 を 次 の fig.5.1.26 ∼ fig.5.1.30 に記す。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.685>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.706>有意確率α= 0.05 → 習慣 ・属性間効果の検定 有意確率0.077>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.344>有意確率α= 0.05
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 習慣属性には差がない
→ 歩行形態には差がない
fig.5.1.26 習慣属性による比較分析結果 空間の情報取得意欲における習慣属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互作用 検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立ってい ることが明らかとなった。しかし、習慣属性、歩行形態共に有意な差を見ることが出来な かった。 つまり、情報取得意欲と普段の街歩きで音楽を聴くか聴かないかという習慣はあまり関 係がないことが明らかとなった。結果を見てみても、聴覚遮断歩行時における垂直方向の 情報取得意欲が通常時より大きいが、あまり変わらない。更に水平方向では、もうほとん ど半々の結果が得られ、情報取得意欲と習慣には関係があまりないことがわかる。
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062
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.575>有意確率α= 0.05 → 交互作用 ナシ ・等分散性の検定 有意確率0.802>有意確率α= 0.05 → 等分散性が成り立っている → 性別 ・属性間効果の検定 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 → 性別属性には差がある → 相関比の算出へ → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.268>有意確率α= 0.05 → 歩行形態には差がない ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.9603
→ 非常に強い相関がある
fig.5.1.27 性別属性による比較分析結果 空間情報の取得意欲における性別属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互作用 検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立ってい ることが明らかとなった。また、歩行形態には見られなかったが、性別属性には 5%水準 で有意な差が見られ、その相関も非常に強いことが明らかとなった。 つまり、情報取得意欲は歩行形態にはあまり関係ないが、性別の違いによってその割合 が異なってくることが明らかとなった。その違いとは、男性より女性の方が聴覚遮断歩行 時において、垂直方向に対する情報の取得意欲の割合が高く、水平方向では低くなる傾向 があるということがわかった。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.495>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.399>有意確率α= 0.05 → 方向感覚 ・属性間効果の検定 有意確率0.155>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.471>有意確率α= 0.05
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方向感覚には差がない
→ 歩行形態には差がない
fig.5.1.28 方向感覚の成績属性による比較分析結果 空間情報の取得意欲における方向感覚の成績属性の分析では、2 元配置の分散分析によ る交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成 り立っていることが明らかとなった。しかし、方向感覚の成績属性、歩行形態共に有意な 差を見ることが出来なかった。 つまり、情報取得意欲と方向感覚の成績はあまり関係がないことが明らかとなった。結 果を見てみても、方向感覚の成績下位群における聴覚遮断歩行時・垂直方向の情報取得意 欲がその上位群より大きい割合だが、大きな差ではない。更に水平方向では、両属性・歩 行形態においてほとんど差が見られない結果となった。
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063
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.873>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.717>有意確率α= 0.05 → 方位に関する意識 ・属性間効果の検定 有意確率0.927>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.426>有意確率α= 0.05
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方位に関する意識には差がない
→ 歩行形態には差がない
fig.5.1.29 方位に関する意識属性による比較分析結果 空間情報の取得意欲における方位に関する意識属性の分析では、2 元配置の分散分析に よる交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが 成り立っていることが明らかとなった。しかし、方位に関する意識属性、歩行形態共に有 意な差を見ることが出来なかった。 つまり、情報取得意欲と方位に関する意識はあまり関係がないことが明らかとなった。 結果を見てみても、垂直方向・水平方向共に、両属性・歩行形態においてほとんど違いが 見られないことがわかる。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.461>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.366>有意確率α= 0.05 → 空間行動における記憶 ・属性間効果の検定 有意確率0.171>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.477>有意確率α= 0.05
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 空間行動における記憶には差がない
→ 歩行形態には差がない
fig.5.1.23 空間行動における記憶属性による比較分析結果 空間情報の取得における空間行動における記憶属性の分析では、2 元配置の分散分析に よる交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが 成り立っていることが明らかとなった。しかし、空間行動における記憶属性、歩行形態共 に有意な差を見ることが出来なかった。 つまり、情報取得意欲と空間行動における記憶はあまり関係がないことが明らかとなっ た。結果を見てみても、方向感覚の成績や方位に関する意識同様、全てにおいて違いを見 つけることは困難であった。
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064
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◇ 情報取得意欲の総括 情報取得意欲と各属性との比較分析においては性別属性のみでしか、その関係性がある とは言えない結果となった。しかしその相関は非常に高く、女性の方が聴覚遮断歩行時に おいて、垂直方向の情報を多く取得する意欲がある傾向が言える。 次に、各属性だけでなく歩行形態においても有意な差が見られず、性別属性以外は情報 取得意欲において、ほとんど関係性が見られなかったという結果となった。それ以外にお いては全ての属性において、等分散性が成り立ち、交互作用検定においても、交互作用な しという結果となった。
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065
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離による属性別比較の分析結果と考察 fig.5.1.20 の 分 析 フ ロ ー に 基 づ い た、 各 属 性 間 比 較 の 分 析 結 果 と そ の 考 察 を 次 の fig.5.1.31 ∼ fig.5.1.35 に記す。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.787>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.902>有意確率α= 0.05 → 習慣 ・属性間効果の検定 有意確率0.362>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.042<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方向感覚には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.31 習慣属性による比較分析結果 空間情報取得までの距離における習慣属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互 作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立っ ていることが明らかとなった。また習慣属性には差が見られなかったが、歩行形態には非 常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認められたことが明らかとなった。 つまり、習慣による空間情報取得までの距離の差はあまり見られなかったが、習慣に関 わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報を取得する割合が大 きくなるという傾向があることが証明された。
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066
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.471>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.371>有意確率α= 0.05 → 性別 ・属性間効果の検定 有意確率0.125>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.020<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 性別属性には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.32 性別属性による比較分析結果 空間情報取得までの距離における性別属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互 作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立っ ていることが明らかとなった。また性別属性には差が見られなかったが、歩行形態には非 常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認められたことが明らかとなった。 つまり、性別による空間情報取得間での距離の差はあまり見られなかったが、性別に関 わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報を取得する割合が大 きくなるという傾向があることがわかった。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.598>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.997>有意確率α= 0.05 → 方向感覚 ・属性間効果の検定 有意確率0.967>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.025<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方向感覚には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.33 方向感覚の成績属性による比較分析結果 空間情報取得間での距離における方向感覚の成績属性の分析では、2 元配置の分散分析 による交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それ が成り立っていることが明らかとなった。また方向感覚の成績属性には差が見られなかっ たが、歩行形態には非常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認められたこ とが明らかとなった。 つまり、方向感覚の成績による空間情報取得間での距離の差はあまり見られなかったが、 方向感覚の成績に関わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報 を取得する割合が大きくなるという傾向があることがわかった。
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067
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.883>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.623>有意確率α= 0.05 → 方位に関する意識 ・属性間効果の検定 有意確率0.999>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.030>有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方位に関する意識には差がない
→ 歩行形態には差がない → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.34 方位に関する意識属性による比較分析結果 空間情報取得間での距離における方位に関する意識属性の分析では、2 元配置の分散分 析による交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、そ れが成り立っていることが明らかとなった。また方向感覚の成績属性には差が見られな かったが、歩行形態には非常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認められ たことが明らかとなった。 つまり、方位に関する意識による空間情報取得間での距離の差はあまり見られなかった が、方位に関する意識に関わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方がより遠く の情報を取得する割合が大きくなるという傾向があることがわかった。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.944>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.722>有意確率α= 0.05 → 空間行動における記憶 ・属性間効果の検定 有意確率0.981>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.033<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 空間行動における記憶には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.35 空間行動における記憶属性による比較分析結果 空間情報取得間での距離における空間行動における記憶属性の分析では、2 元配置の分 散分析による交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、 それが成り立っていることが明らかとなった。また空間行動における記憶属性には差が見 られなかったが、歩行形態には非常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認 められたことが明らかとなった。 つまり、空間行動における記憶による空間情報取得間での距離の差はあまり見られな かったが、空間行動における記憶に関わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方 がより遠くの情報を取得する割合が大きくなるという傾向があることがわかった。
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068
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◇ 空間情報取得までの距離の総括 空間情報取得間での距離における全属性との比較において、有意な差は見られなかった。 しかし、相関は弱かったものの、空間情報取得間での距離と歩行形態は全てにおいて相関 が見られた。つまり、空間情報取得間での距離は属性ごとの比較では違いが見られないが、 歩行形態の違いには大きな影響力を及ぼすことが明らかとなった。その影響は、聴覚遮断 歩行時の方が通常歩行時よりもより遠くの情報を取得する傾向にあることが明らかとなっ た。 その他に関しては、全属性比較における交互作用検定において交互作用なし、等分散検 定において等分散が成り立つという分析結果が得られた。
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069
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・行動データにおける属性比較分析の総括 本分析では、通常歩行と聴覚遮断歩行における、情報取得率/情報取得意欲/空間情報 取得までの距離といった 3 つの行動データを元に、習慣属性/性別属性/方向感覚の成 績属性/方位に関する意識属性/空間行動における記憶属性といった 5 つの属性を設け、 それぞれにおいて比較分析を行った。その結果概要を、行動データごとに次に示す。 ◆ 空間情報の取得率 空間情報の取得率においては他の行動データの分析結果よりも、一番顕著に違いや傾向 が見られた。一番顕著な結果は、習慣属性と方位に関する意識属性における比較である。 習慣属性では普段の散策行動から音楽を聴く属性、方位に関する意識属性ではその意識が 高い属性において、非常に強い相関が見られ、空間情報の取得率に大きな影響を与えるこ とが明らかとなった。それ以外の属性では歩行形態に強い相関が見られた。以上のことか ら、情報取得率という行動データは各属性と歩行形態に大きな影響を及ぼすことが明らか となった。全体を通じて通常歩行時よりも聴覚遮断歩行時の方が情報を取得する割合が高 くなり、普段の散策行動から音楽を聴く習慣があるかどうかと、方位に関する意識が高い ことが、歩行形態に大きな影響力を及ぼすことが明らかとなった。 ◆ 情報取得率 情報取得率に関しては、空間情報の取得率とは対照的にほとんどその関係性が見られな かった。唯一関係性が見られたのが、性別属性である。情報取得率と性別の相関は非常に 高く、女性の方が聴覚遮断歩行時において、垂直方向の情報を多く取得する傾向にあるこ とが言える。性別属性以外では、属性比較ではもちろん、歩行形態に関しても関係性を見 つけることは難しかった。 ◆ 空間情報取得間での距離 空間情報取得間での距離は他の行動データとは更に違った傾向が見られた。空間情報取 得間での距離はどの属性比較に対しても相関を見ることは出来なかったが、その全てにお いて歩行形態でわずかながらだが、相関が見られた。つまり、空間情報取得間での距離は 属性に関係なく、通常歩行と聴覚遮断歩行で大きく違うことが明らかとなった。その結果 は、通常歩行時よりも聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報を取得する傾向にあることが 明らかとなった。 以上のように、それぞれの行動データから読み取れたことは様々であるが、全体を通じ て明らかとなったのは、通常歩行と聴覚遮断歩行では明らかに行動特性が異なっているこ とである。
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070
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
5.2 行動データの歩行距離別分析 本節では、得られた行動データを歩行距離別に 100 メートルごとに分割し、歩行距離 別による分析を行った。それぞれの行動データに基づいた分析を下記に示す。 ・空間情報の取得量と歩行距離
18% 16% 14%
情報取得量
12% 10% 8% 6% 4% 2% 0%
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.1 通常歩行における歩行距離別空間情報の取得量
18% 16% 14%
情報取得量
12% 10% 8% 6% 4% 2% 0%
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.2 聴覚遮断歩行における歩行距離別空間情報の取得量
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071
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行距離別にみた空間情報の取得量は、通常歩行においては歩行距離が長くなるにつれ、 情報取得量は減少傾向にある。一方、聴覚遮断歩行においては距離別による違いはほとん どみられず、常に 6%∼ 8%の間で推移していることが見て取れる。通常歩行における空 間情報の取得量は減少傾向にあるものの、それは約 1000m を超えた辺りからであり、そ れまでは聴覚遮断歩行における空間情報の取得量にあまり大きな差は見られなかった。 また、通常歩行時における空間情報の取得量には全体的に値のばらつきが目立つ。例え ば、300 ∼ 400m の区間と 1000 ∼ 1100m の区間において、その情報の取得量が 14% 近い被験者も入れば、0%であった被験者もいた。つまり通常歩行時では被験者ごとによ る情報の取得に対する意識の違いが表れてしまったことから、取得量に違いが生まれてし まったのではないかと考えられる。300 ∼ 400m の空間を見てみると、両ルートともに、 曲折による空間の形態が変化する地点が含まれているような類似した区間であったが、情 報に対する意識の内容に差が見られた。聴覚遮断歩行時では空間形態の変化点以外にも意 識を働かせていた。しかし通常歩行では、空間形態の変化を意識する被験者と意識しない 被験者との差が明確に表れてしまったため、この様な情報に対する意識の分布が見られて しまったのではないか。その点、聴覚遮断歩行時ではそれほど大きなデータのばらつきは 少なく、聴覚遮断が被験者に対し、一様に働いたのではないかと考えられる。
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072
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得意欲と歩行距離 ◇ 垂直方向による比較
10 9 8
情報取得意欲 (回)
7 6 5 4 3 2 1 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.3 通常歩行における歩行距離別空間情報の取得意欲
10 9
情報取得意欲
(回)
8 7 6 5 4 3 2 1 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離(m)
fig.5.2.4 聴覚遮断歩行における歩行距離別空間情報の取得意欲
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073
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行距離別にみた空間情報に対する垂直方向の取得意欲は、通常歩行時より聴覚遮断歩 行時の方が全体的に割合が多いことが見て取れる。また、通常歩行時は平均値を結んだ線 が上に凸であるが、聴覚遮断歩行時では下に凸であることがわかる。つまり、聴覚遮断歩 行時ではスタートとゴール地点において情報取得意欲が高くなることが言える。その反対 として通常歩行時は約 900m までは増加傾向にあるものの、それ以降では減少傾向にあ ることがわかった。 次に情報取得意欲の分布だが、聴覚遮断歩行時の方が被験者ごとの分布が激しいことが わかる。つまり、聴覚遮断が被験者によって効果的に働いた場合とそうでない場合の差が 大きかったということが見て取れる。特に分布が激しかったスタート地点∼ 200m の区 間は両ルートとも駅前の比較的栄えた地域である。同じような形態の街区においてこのよ うな差が生まれたということは、駅前のような比較的栄えた空間において聴覚遮断歩行時 の方がより空間情報に対する取得意欲が、被験者ごとにばらつきはあるものの向上するこ とが明らかとなった。更に分布が激しかった 1300 ∼ 1500m の区間では、ルート A にお いては中学校の校庭、ルート B では道幅の広い道路と、視線の広がりが生まれる空間が 出現する。つまり、前述の区間同様、聴覚遮断歩行時における視線の広がりが空間情報の 取得意欲に影響することが明らかとなった。
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074
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◇ 水平方向による比較
20 18 16
情報取得意欲
(回)
14 12 10 8 6 4 2 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.5 通常歩行における歩行距離別空間情報の取得意欲
20 18 16
情報取得意欲回数 (回)
14 12 10 8 6 4 2 0
100
200
300
400
500
600
700 800 900 歩行距離(m)
1000 1100 1200 1300 1400 1500
fig.5.2.6 聴覚遮断歩行における歩行距離別空間情報の取得意欲
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075
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行距離別にみた空間情報に対する水平方向の取得意欲は、平均値を結んだ線が垂直方 向と同様に通常歩行時が上に凸、聴覚遮断歩行時が下に凸の形を表している。その中で、 聴覚遮断歩行時にけるスタートとゴール地点付近では非常に大きな値が得られたことが見 て取れる。つまり、聴覚遮断歩行による情報取得の意欲はスタート地点とゴール地点で強 まる傾向があると判断出来る。しかし、情報取得意欲全体の平均値に大きな差は見られず、 歩行形態による空間情報に対する取得意欲に差は見られなかった。 データの分布に関しては、両歩行形態共に、垂直方向に見られたような分布のばらつき の差はあまり見られなく、どちらも同じような分布の広がりを示す結果となった。つまり、 空間情報に対する水平方向の取得意欲は、歩行形態を問わず被験者ごとに様々な値を取る ことが明らかとなった。
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076
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得までの距離と歩行距離
200 180
情報取得までの距離 (m)
160 140 120 100 80 60 40 20 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.7 通常歩行における歩行距離別空間情報の取得までの距離
200 180
情報取得までの距離 (m)
160 140 120 100 80 60 40 20 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.8 聴覚遮断歩行における歩行距離別空間情報の取得までの距離
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077
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行距離別にみた空間情報に対する取得距離は、聴覚遮断歩行時のほうが全体的に遠く の情報を取得していることが明らかである。更に各距離ごとで見てみると、300 ∼ 400m / 1100 ∼ 1200m の区間において、聴覚遮断歩行時の方が遠くの距離にある情報を取得 しているという顕著な差が見られた。この二つの空間は両ルートともに、曲折による空間 の形態が変化する地点が含まれている。このような空間情報が一新する区間において、近 い距離の情報を取得している通常歩行では空間全体を捉えていない傾向があると考えられ る。取得情報までの距離が遠い、つまり広く空間を捉えている聴覚遮断歩行において、聴 覚を遮断することが遠くの情報を、空間を広く認識する傾向が生まれることが明らかと なった。 また、上記の二つの区間は空間情報に対する取得距離の分布が広範囲に渡っていること が見て取れる。この二空間は曲折による空間の形態が変化する以外に、駅前方向に向かっ て視線の抜けが得られる場所でもある。従って、両ルートにおける 1000 ∼ 1200m の 区間で情報取得までの距離に大きな分布が生まれたことが挙げられる。しかし、300 ∼ 400m の区間では、聴覚遮断歩行時では広範囲に渡る分布が見られるが、通常歩行では見 られない。つまり、聴覚遮断歩行では遠くの情報を取得することを可能にするポテンシャ ルのようなものが生まれることが明らかとなった。
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078
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・行動データの歩行距離別分析の総括 行動データから得られた歩行距離別分析では、以下のことがわかった。 ◆空間情報の取得量 歩行距離別にみた空間情報の取得量は、通常歩行においては歩行距離が長くなるにつれ、 情報取得量は減少傾向にあるものの、それは約 1000m を超えた辺りからであり、それま では聴覚遮断歩行における空間情報の取得量にあまり大きな差は見られなかった。 また、通常歩行時における空間情報の取得量には全体的に値のばらつきが目立ち、被験 者ごとによる情報の取得に対する意識の違いが表れたことから情報取得量に差が生まれた のではないか。更に、曲折による空間の形態が変化する地点が含まれているような類似し た区間において、情報に対する意識の内容に差が見られた。通常歩行では、空間形態の変 化を意識する被験者と意識しない被験者との差が明確に表れてしまったため、情報に対す る意識の分布が見られてしまった。その点、聴覚遮断歩行時ではそれほど大きなデータの ばらつきは少なく、聴覚遮断が一様に働いたのではないかと考えられる。 ◆空間情報取得意識 ・垂直方向比較 通常歩行時は平均値を結んだ線が上に凸であるが、聴覚遮断歩行時では下に凸でとなっ た。つまり、聴覚遮断歩行時ではスタートとゴール地点において情報取得意欲が高くなる ことが言える。 情報取得意欲の分布は、聴覚遮断歩行時の方が激しいことから、聴覚遮断が被験者によっ て効果的に働いた場合とそうでない場合の差が大きかったということがわかった。また、 聴覚遮断歩行時では視線の広がりが空間情報の取得意欲に影響することが明らかとなっ た。 ・水平方向 平均値を結んだ線が垂直方向と同様に通常歩行時が上に凸、聴覚遮断歩行時が下に凸の 形を表し、聴覚遮断歩行による情報取得の意欲はスタート地点とゴール地点で強まる傾向 があると判断出来た。 データの分布は両歩行形態共に、同じような分布の広がりを示す結果となった。つまり、 空間情報に対する水平方向の取得意欲は、歩行形態を問わず被験者ごとに様々な値を取る ことが明らかとなった。
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079
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◆空間情報取得までの距離 各距離ごとで見ると、聴覚遮断歩行時の方が遠くの距離にある情報を取得しているとい う顕著な差が見られた。両ルートともに曲折による空間の形態が変化する地点では、聴覚 を遮断することが遠くの情報を、空間を広く認識する傾向が生まれることが明らかとなっ た。 またこのような空間では、空間情報に対する取得距離の分布が広範囲に渡っていること が言える。その中で、聴覚遮断歩行では遠くの情報を取得することを可能にするポテンシャ ルのようなものが生まれることが明らかとなった。
以上のことから、歩行距離別による行動データの違いについて分析/考察を行い、聴覚 遮断歩行と通常歩行では、スタート地点からの距離(100m 区切り)と空間の形態(視線 の抜け、駅前空間など)によって異なる空間情報の取得をすることが明らかとなった。
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080
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
5.3 「迷い」からの分析 ・行動データと「迷い」 5.1 では実験から得られた行動データを元に、それぞれ属性ごとに分類し、その関係性 を導いた。5.2 では更にそれらのデータを歩行距離別に分割し、スタート地点からの距離 や空間との比較を行った。これらの分析結果から共通して言えることは、通常歩行と聴覚 遮断歩行では明らかにその行動特性が異なるということである。そこで本節では、行動デー タにおいて歩行形態の違いに有効な差が見られた、「空間情報の取得量」と「空間情報取 得間での距離」に焦点を当て、「迷い」という視点から分析を行っていく。 まず始めに、なぜ「迷い」に視点を当てたかを説明する。新垣ら 27 は「方向オンチの科学」 において、迷いやすい人と迷いにくい人の違いを検証する発話プロトコルによる歩行実験 を行い、次のような結果を導いた。
実験の結果、迷いやすいと判断された人は外界に関するモデル(認知地図)を構築する 段階で、移動に役立つ情報に「注意が向いていない」ことが多い。 ここで述べてる情報とは、歩行中に被験者が発話した内容(例:場所を特定する情報、 移動方向に関する情報など)を指している。つまり、迷いやすい人が移動に役立つ情報に 対して注意が向いていないということは、その情報に関する発話量が少ないということが 挙げられる。また、単に発話量だけで見るのであれば、5.1 で行った空間情報のの分析の みでそれが言えてしまう。しかし、本実験から得られた発話の内容をより深く分析するこ とで、歩行形態別による移動に役立つ情報への注意力やその質を測り、迷いやすさという 視点からも検証出来るのではないかと考えた。 空間情報に対する取得までの距離に関しては、森村ら 19 の研究を参考にした。情報焦 点距離と迷いに着目したこの研究は、迷いにくい人は迷いやすい人に比べ、平均情報焦点 距離が長いという考察をしている。つまり、迷いにくい人はそうでない人より、より遠く にある情報を取得しながら歩行していることが言える。従って、5.1 で得られた空間情報 取得までの距離の平均値だけでなく、本実験から得られた結果を更に深く分析し、そのデー タを元に歩行形態別による迷いやすさを検証出来るのではないかと考えた。 これら二つのデータを用いて、「迷い」に焦点を当てた分析を行っていく。なお、新垣 らの「方向オンチの科学」は本節以降においても重要な文献として、様々な知見を元に分 析を行っていく。
27
新垣紀子 , 野島久雄:「方向オンチの科学」- 迷いやすい人・迷いにくい人はどこが違う? -, 講談社 , 2001 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
081
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得量と迷い 前頁で述べた移動に役立つ情報だが、ここで言う情報とは、様々な定義が込められて いる。新垣らはその情報を大きく、3 つのグループに分類している。それらは、場所を特 定するために利用する情報、移動方向に関する情報、次回訪れたときには変わってしま う情報である。この分類の結果、迷いにくい人は発話した情報の約 80%が場所を特定す るための情報と移動方向に関する情報であると示している。一方で迷いやすい人の割合は 64%と低く、次回訪れたときには変わってしまう情報を発話する回数が多かったことを 明らかにしている。 本研究における発話、つまり空間情報に対する取得量の目的は、歩行中に意識して見た ものや、意識したことを発話してもらったことと、歩行の目的が道を記憶するためではな いので、上記の分類方法とは異なる。従って、本研究では空間情報取得量を次のように分 類した。 ◇ 常時 →歩行空間にある情報のうち、次回訪れたときも変わらない情報 例:建物、空間、商業店舗、看板など ◇ 一時 →歩行空間にある情報のうち、次回訪れたときには変わってしまう情報 例:一般歩行者、車、一時的な看板(チラシ)など ◇ その他 →上記以外の情報 例:感情面の発話、思ったこと、記憶の再生など 以上、3 つのグループを元に分析を行っていく。
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082
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
3 つのグループによる分類結果を下記に示す (tab.5.2.1)。この分類を元に、分析を進める。 tab.5.3.1 空間情報の取得量の分類 被験者No. 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
歩行形態
常時
一時
その他
合計
通常歩行
57
29
24
110
聴覚遮断歩行
70
29
14
113
通常歩行
27
16
8
51
聴覚遮断歩行
40
24
16
80
通常歩行
35
18
18
71
聴覚遮断歩行
50
20
35
105
通常歩行
61
36
18
115
聴覚遮断歩行
27
25
32
84
通常歩行
29
43
2
74
聴覚遮断歩行
49
52
5
106
通常歩行
79
27
24
130
聴覚遮断歩行
111
35
32
178
通常歩行
54
20
31
105
聴覚遮断歩行
54
20
37
111
通常歩行
61
36
22
119
聴覚遮断歩行
93
37
46
176
通常歩行
28
24
17
69
聴覚遮断歩行
53
25
25
103
通常歩行
34
26
35
95
聴覚遮断歩行
49
29
35
113
通常歩行
32
20
11
63
聴覚遮断歩行
34
25
26
85
通常歩行
15
12
3
30
聴覚遮断歩行
43
15
8
66
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083
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
迷いにくい人は次回訪れたときに変わってしまう情報に対しあまり注目しなかったとい う新垣らの結果から、本研究における「常時」と「一時」の空間情報取得量を歩行形態別 に比較する。なお、被験者によって情報意識量が異なるので、比較するためにパーセンテー ジ表記で表す。
01
通常歩行 聴覚遮断歩行
02
通常歩行 聴覚遮断歩行
03
通常歩行 聴覚遮断歩行
04
通常歩行 聴覚遮断歩行
05
通常歩行 聴覚遮断歩行
06
通常歩行 聴覚遮断歩行
07
通常歩行 聴覚遮断歩行
08
通常歩行 聴覚遮断歩行
09
通常歩行 聴覚遮断歩行
10
通常歩行 聴覚遮断歩行
11
通常歩行 聴覚遮断歩行
12
被験者No.と歩行形態
0%
通常歩行 聴覚遮断歩行
10%
20%
30%
40%
常時
50%
60%
70%
80%
90%
100%
一時
fig.5.3.2 常時と一時の比較 この結果を見ると、ほとんどの被験者は「常時」に分類される空間情報取得量が 60% を超える結果となった。この結果から、「その他」に関する空間情報取得量を除くと、そ のほとんどの空間情報取得量は歩行形態に関係なく、60%を超える「常時」に分類され る情報を取得していることが明らかとなった。
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084
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
通常歩行時と聴覚遮断歩行時を比較して、聴覚遮断歩行時における空間情報取得量の増 減率を求めた。通常歩行時と聴覚遮断歩行時を比較すると、被験者 12 人中 8 人が聴覚遮 断歩行時の方が「常時」に対する空間情報取得量が高まるという傾向が見られた。また被 験者 No.07 においては、空間情報取得量に変化が見られなかったので、聴覚遮断歩行時 において空間情報取得量が減少した被験者は 3 人に留まった。下に聴覚遮断歩行時にお ける空間情報取得量の増減率を示す (fig.5.2.3)。
40% 30% 20% 10% 0% 01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
-10% -20% -30% -40%
被験者No.
fig.5.3.3 聴覚遮断歩行における「常時」の情報意識の増減率 本研究における迷いやすい人、つまり、アンケートで得られた方向感覚に関する質問の 成績が下位群の人は、被験者 No.01, 03, 05, 07, 08, 10, 11 である。彼らの増減率を観て みると、被験者 No.11 以外の被験者において聴覚遮断歩行時の方が、通常歩行時より空 間情報取得量が増加することが見て取れる(なお、被験者 No.07 は増減率 0%だったので、 本分析では扱わないこととする)。「常時」の情報を聴覚遮断歩行によって通常歩行時より 取得する割合が大きいということは、方向感覚の成績下位群の人、つまり「常時」の情報 を取得する割合が少ない人にとって、聴覚遮断歩行が有効に働くと考えられる。聴覚遮断 歩行により「常時」に対する情報の取得割合が高まれば、迷いやすい人(方向感覚の成績 下位群)がそれを行えば、現状より迷いにくくなる可能性が高まることが言えるであろう。 次に、空間情報取得における増減率が減少傾向にあった被験者について考察する。被験 者 No.02 に関しては、その増減率が 1%未満だったので割愛するが、特に減少傾向が強 かったのは被験者 No.04 と 11 である。5.1 で扱った属性分類から彼らが該当する属性を 見てみると、彼らは二人とも普段の散策行動においてあまり音楽を聴かない属性であった。 音楽を聴きながら歩行するという、少し特殊な歩行形態に対する不慣れが彼らの減少傾向 につながったのではないかと考えられる。しかし一方で、同じ不慣れな習慣のある被験者 No.01 と 10 は増加傾向にあり、一概には聴覚遮断歩行の不慣れが減少傾向に起因したと は言えないのかもしれない。
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085
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
続いて、空間情報取得量の分類における「その他」について分析を行う。上記で述べた ように、「その他」に分類された情報意識の内容は、「常時」と「一時」以外のもので、被 験者の感情面や思ったこと、これまでの記憶を再生するなど、歩行には関係のないものを 分類した。それでは、通常歩行と聴覚遮断歩行ではどのような割合で「その他」に関する 情報意識が出現するのだろうか。「常時」と「一時+その他」の増減率を求め、 それを下記に示す (fig.5.2.4)。また、比較用に fig.5.2.3 と重ねたグラフにした。
40% 30% 20% 10% 0% 01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
-10% -20% -30% -40%
被験者 No. 常時 - 一時
常時 - 一時+その他
fig.5.3.4 聴覚遮断歩行における「常時」の情報意識の増減率 fig.5.2.3 で示した、 「常時」と「一時」の比較における空間情報取得量の増減率に加え、 「一 時」側に「その他」を加えた空間情報取得量の増減率を示した。両歩行形態における「そ の他」に関する発話の割合が全体に対して同等であれば、空間情報取得量の増減率に差が 出ないが、fig.5.2.4 を見ると、12 人中 8 人において「常時」と「一時+その他」を比較 した空間情報取得量の増減率の方が減少していることがわかる。つまりこれは、聴覚遮断 歩行時において、「その他」に関する空間情報取得量が多いことが言える。被験者の感情 面や記憶の再生などに関する情報の出現率が高まるということは、被験者が見た情報に加 え、自分の感情や記憶を情報に重ねていることを意味する。Chapter 1 の fig.1.3.1 で、人 間は行動を起こすプロセスのの過程で、環境から五感を用いて情報を取り込み、過去の記 憶や経験とバッファさせて、行動へアウトプットすることを述べている。つまり、聴覚遮 断歩行時において「その他」に関する空間情報取得量の出現率が通常歩行時と比較して増 加しているということは、このバッファを行う機会の増加につながっていると考えられる。 このバッファの機会が増加すれば、人はより環境を認知し、それとの相互関係をより把握 するようになると考えられる。 次に、情報意識の増減率が減少しなかった被験者は被験者 No.01 と 10 である。この二 人も先程同様、音楽を聴かない習慣がある属性であったが、「常時 - 一時」比較の際は増 加しているため、一概にはこの原因が起因しているとは言えない。
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086
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得量とその内容 「常時」の空間情報に対する取得量の増減率に引き続き、更に別の角度からの分類方法 から空間情報取得量を分類する。下記にその分類の種類を示す。 ◇ 空間 →空間に対する発話を指す 例:街並が落ち着いてきた、道路のタイルがキレイ、細い道に入ってきた、など ◇ ランドマーク →特徴のある建物や広範囲に展開している店舗、学校や公園など目印になりそうなもの 例:あのマンション高いな、ファミマ、小学校、電車が走っている、など ◇ サイン →店舗の看板や道路標識、区掲示板などを指す。 例:もうすぐ町内会の集まりがあるみたいだ、止まれのマーク、など ◇ オブジェクト →車や一般的でない店や物など、上記の 3 つに分類されないようなもの 例:この車かわいい、花がキレイ、大きな時計がある、など ◇ その他 →被験者の感情や記憶の再生、匂いや寒いなどの五感情報など 例:寒い、ラーメン屋の匂いがする、子どもの声が聞こえる この分類も新垣の知見を元に行った。迷いにくいとされている人は、空間やランドマー クといった、街を移動するために役立つ情報を多く取得していることが多いと記されてい る。そこで本研究では、上記の分類方法を用いて、空間に対する情報の内容別による取得 割合を歩行形態別に比較した。
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087
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
10%
20%
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60%
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80%
90%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.5 全体平均による空間情報内容の比較 fig.5.3.5 の全被験者による空間情報内容の全被験者による平均割合を、歩行形態別比較 を見ると、迷いにくい人が迷いやすい人より取得しやすい情報とされているランドマーク に分類される情報は、わずかながらだが増加していることがわかった。しかし空間に分類 される情報は減少傾向にあった。この減少幅が大きいため、空間とランドマークに関する 情報の取得量は、通常歩行の方が大きいという結果となった。また、空間やランドマーク 以外にもその他以外で通常歩行の方が取得割合が大きいという結果になった。つまり、聴 覚遮断歩行より通常歩行の方が迷いにくいとされている情報の内容を多く取得しているこ とが明らかとなった。 しかし、元々の空間情報の取得量は聴覚遮断歩行時の方が多いので、空間とランドマー クに関する取得情報の平均個数で比較したところ、通常歩行時では 26.75 個 / 人、聴覚 遮断歩行時では 32.25 個 / 人と、聴覚遮断歩行時の方が多い。従って、実際に取得して いる情報数に関しては聴覚遮断歩行時の方が多いが、割合から見ると減少してしまう傾向 にあった。
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088
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
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20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
80%
90%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.6 音楽を普段から聴かない属性による空間情報内容の比較
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.7 音楽を普段から聴く属性による空間情報内容の比較 普段の散策行動から音楽を聴くか聴かないかによる習慣属性による比較を fig.5.3.6 ∼ fig.5.3.7 で行った。習慣属性による違いから見られる傾向は、双方ともに聴覚遮断歩行時 において、空間に分類される情報の取得割合が減少していることである。さらにその他に 分類される情報が増加する傾向が見られた。 次に、聴かない習慣属性の空間情報取得内容の内、空間+ランドマークに関する情報は 通常歩行時より聴覚遮断歩行時の方が、その割合が大きいという結果となった。通常歩行 より聴覚遮断歩行の方が情報取得量の割合が多いにも関わらず、空間とランドマークの情 報取得量の割合が大きいということは、聴覚遮断歩行が有効に働いたと考えられる。 一方、聴く属性ではその反対の結果となった。普段から音楽を聴く属性は、fig.5.1.21 より空間情報取得量が聴かない属性よりも多いことから、迷いにくい人に多く見られる傾 向にあるとされてる情報取得量の割合に差が見られてしまったと予想される。
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089
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
80%
90%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.8 男性属性による空間情報内容の比較
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.9 女性属性による空間情報内容の比較 性別属性による比較を fig.5.3.8 ∼ fig.5.3.9 で行った。性別属性による違いから見られ る傾向は、双方ともに聴覚遮断歩行時において、空間に関する情報取得量の割合が減少し、 更には空間とランドマークに関する情報取得量の合計割合にも減少傾向が見られた。 次に、男性属性に関しては、歩行形態別によるランドマークに関する情報取得量に大き な差は見られなかった。つまり、迷いにくい人が多く取得される傾向にある情報に関して は、空間に関する情報の取得量のみが影響したと見て取れる。 女性属性に関しては、ランドマークに関する情報取得の割合が、聴覚遮断歩行時におい て大きく増加したにもかかわらず、空間に関する情報との和で差が出てしまったのは、空 間に関する情報量の差が影響した。 つまり性別属性を問わず、空間に関する情報取得の割合は減少する傾向にあることが言 える。
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090
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
80%
90%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.10 方向感覚の成績上位群属性による空間情報内容の比較
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.11 方向感覚の成績下位群属性による空間情報内容の比較 方向感覚の成績属性による比較を fig.5.3.10 ∼ fig.5.3.11 で行った。方向感覚の成績属 性による違いから見られる傾向は、他の属性とは異なり、明確な違いが生まれた。 方向感覚の成績上位群、つまり迷いにくいとされている属性に関しては、聴覚遮断歩行 時における空間とランドマークに関する情報取得量の双方で増加する傾向にあった。つま り、もともと迷いにくい属性であるにもかかわらず、聴覚遮断歩行を行うことで、更に空 間とランドマークに関する情報をより多く取得する傾向にあることが明らかとなった。 一方で方向感覚の成績下位群、つまり迷いやすいとされている属性に関しては、聴覚遮 断歩行におけるランドマークに関する情報はあまり変化がなかったが、空間に関する除法 取得量が著しく減少してしまったため、結果的に双方の和が減少する形となった。つまり、 方向感覚の成績下位群に対しては、迷いにくいとされる人が取得する傾向にある情報の取 得量が、聴覚遮断歩行において、更に減少してしまう傾向にあり、決して有効とは言えな い結果となった。
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091
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
次に、上記の空間情報取得量の形態分類における「ランドマーク」に焦点を当て、ラン ドマークに関する情報の歩行空間における取得位置ごとに分類する。その分類方法を下記 に示し、fig.5.3.12 に全被験者における各情報取得位置の平均割合を歩行形態別に比較し たグラフを示す。 ◇ スタート地点 →歩行を開始してから 50m までの区間を指す ◇ 交差点付近 →交差点から半径 50m 以内の範囲を指す ◇ 遠方 →空間情報取得までの距離が 100m を超えたものを指す ◇ その他 →上記の3つ以外のものを指す
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
スタート地点
交差点付近 通常歩行平均
遠方
その他
聴覚遮断歩行平均
fig.5.3.12 ランドマークに関する情報取得量の位置による歩行形態別比較 fig.5.3.12 より、スタート地点/交差点付近/遠方のいずれにおいても聴覚遮断歩行時 の方が通常歩行時より多く情報を取得していることが明らかである。これらの地点や場所 における情報取得量が多いことは迷いにくい人に見られる傾向があると新垣らは述べてお り、本研究における聴覚遮断歩行の有効性が示されたのと言えるであろう。
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092
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離と迷い 森村らの研究から情報焦点距離、本研究における空間情報取得までの距離、が遠い人ほ ど迷いにくい傾向があると示されている。しかし、遠い所にある情報ばかりを取得してい る人は迷わないのかと問われば、そうとは言い切れない。この問題を解決するために、空 間情報取得までの距離がどのように推移しているのかを計測する必要があると考えた。そ こで、空間情報取得までの距離推移値を定め、この値を歩行形態ごとに比較する。
空間情報 a
Xm
空間情報 a-b 間の空間情報までの距離推移値 = ¦ 空間情報 a ー 空間情報 b ¦ =¦XmーYm¦
Ym
空間情報 c
fig.5.3.13 空間情報までの距離推移値の概要 まず始めに、空間情報取得までの距離推移値の定義を fig.5.3.13 を元に説明する。被験 者が空間情報 a、b の順で空間情報を取得したとする。それぞれの空間情報取得までの距 離がそれぞれ Xm、Ym だとすると、空間情報取得までの距離推移値は Xm - Ym の絶対値 で求める。つまり、空間情報間の空間情報までの距離の差を全ての情報間で求めることで、 時系列による空間情報取得までの距離がどれほどの頻度で推移しているかがわかる。つま り、このデータによってただ遠くを見ているだけの人であれば、空間情報取得までの距離 推移値の平均は低い値となり、近くを見る傾向にある人でも様々な位置にある空間情報を 取得する傾向にあることが言える場合もある。 次頁以降に、被験者ごとの空間情報取得までの距離推移値の平均を示す。
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093
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
01
通常歩行 聴覚遮断歩行
02
通常歩行 聴覚遮断歩行
03
通常歩行 聴覚遮断歩行
04
通常歩行 聴覚遮断歩行
05
通常歩行 聴覚遮断歩行
06
通常歩行 聴覚遮断歩行
07
通常歩行 聴覚遮断歩行
08
通常歩行 聴覚遮断歩行
09
通常歩行 聴覚遮断歩行
10
通常歩行 聴覚遮断歩行
11
通常歩行 聴覚遮断歩行
12
通常歩行 聴覚遮断歩行
平均
0
通常歩行 聴覚遮断歩行
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50 (m)
fig.5.3.14 歩行形態別空間情報取得までの距離推移値 fig.5.3.14 における空間情報取得までの距離推移値の全被験者平均より、聴覚遮断歩行 時の方がその値が大きいことが見て取れる。この値を方向感覚の成績属性別に比較したと ころ、方向感覚成績上位群の5人中2人が通常歩行時の方が推移値が高くなったが、成績 下位群では7人中5人において、聴覚遮断歩行時の方が推移値が高い傾向にあった。つま り、迷いやすい人にとって聴覚遮断を行うことが空間情報取得までの距離推移値にも有効 に働くことが明らかとなった。
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094
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得遷移率と迷い 次に情報取得遷移率からみた分析を行う。情報取得遷移率とは、ある任意の範囲を定め、 その範囲の境界線と空間情報取得対象の変移線が交わった回数を全情報取得対象の変移で 割ったものを、情報取得遷移とする。その概要を fig.5.3.15 に示す。
X m 以内
この場合、空間情報取得対象数:5 空間情報取得対象変移:4 空間情報取得 対象の変移
任意の範囲 (Xm) 遷移数:3 つまり、空間情報取得遷移率 =3/4= 75% 範囲内情報 範囲外情報 取得変移
fig.5.3.15 空間情報取得遷移率の概要 本研究では、その範囲を 5m、10m、15m とし、次頁にその結果を示す。
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095
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
fig.5.3.16 各設定範囲における空間情報取得遷移率
5m 01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
10m
15m
通常歩行
36.90
32.14
21.43
聴覚遮断歩行
37.50
40.91
50.00
通常歩行
36.36
36.36
30.30
聴覚遮断歩行
50.00
54.00
42.00
通常歩行
38.10
42.86
42.86
聴覚遮断歩行
52.54
49.15
55.93
通常歩行
41.94
39.78
26.88
聴覚遮断歩行
29.09
25.45
25.45
通常歩行
55.56
42.22
28.89
聴覚遮断歩行
57.58
45.45
40.91
通常歩行
50.91
50.00
46.36
聴覚遮断歩行
34.31
41.79
37.31
通常歩行
50.00
50.00
34.85
聴覚遮断歩行
44.59
44.59
43.24
通常歩行
40.26
32.47
19.48
聴覚遮断歩行
45.95
40.54
31.53
通常歩行
36.11
41.67
36.11
聴覚遮断歩行
48.48
50.00
56.06
通常歩行
48.78
43.90
34.15
聴覚遮断歩行
47.54
44.26
49.18
通常歩行
38.78
38.78
22.45
聴覚遮断歩行
44.23
44.23
34.62
通常歩行
42.31
30.77
23.08
聴覚遮断歩行
48.00
44.00
44.00
歩行形態別に比較して、空間情報取得遷移率が高い方を黄色に塗った。tab.5.3.16 を みると、設定範囲 5m においては 12 人中 4 人、設定範囲 10m においては 12 人中 3 人、 設定範囲 15m においては 12 人中 2 人が、聴覚遮断歩行時において、空間情報遷移率が 高い傾向にあった。つまり、空間情報遷移率においても聴覚遮断歩行時の方が様々な距離 にある情報を取得し、設定範囲 15m においては、その動きが最も活発であることがわかっ た。
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096
Chapter 4
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
4 結果 4.1 空間情報の取得量 tab.4.1.1 被験者ごとの空間情報の取得量 被験者No.
0%
通常歩行発話数
聴覚遮断発話数
01
110
02
51
80
03
71
105
04
115
84
05
74
106
06
130
178
07
105
111
08
119
176
09
69
103
10
95
113
11
63
85
12
30
66
25%
50%
113
75%
100%
01 02 03 04
被験者No.
05 06 07 08 09 10 11 12 通常歩行発話数
聴覚遮断発話数
fig.4.1.2 通常歩行−聴覚遮断歩行の空間情報の取得割合 tab.4.1.1 は各被験者が通常歩行と聴覚遮断歩行における空間情報の取得量を示した。 空間情報の取得量のみでは被験者間での比較が出来ないため、次のグラフでその割合を示 す。また、空間情報の取得量の内容は資料編 (pp.119 ∼ ) に記載する。 fig.4.1.2 から被験者 No.04 を除く全ての被験者で、聴覚遮断歩行時の空間情報の取得量 が通常歩行時よりも多いことが明らかとなった。また被験者 No.04, 07, 10 以外では、聴 覚遮断歩行時の空間情報の取得量が 60%前後あり、被験者 No.12 ではその値が 70%近 い値が得られた。
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032
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
4.2 空間情報の取得意欲
06 07 12
11
10
09
08
被験者No.と歩行携帯
05
04
03
02
01
0%
25%
50%
75%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 上下
左右
fig.4.2.1 通常歩行−聴覚遮断歩行の空間情報の取得意欲の割合 fig.4.2.1 では、通常歩行時と聴覚遮断歩行時における、空間情報の取得意欲割合を算出 したものである。両歩行とも左右への取得意欲が圧倒的に多いことがわかる。そして被験 者 No.06, 12 以外では、聴覚遮断歩行時の「上下」の空間情報取得意欲が通常歩行のそれ より割合が大きくなる傾向が見られた。反対に、聴覚遮断歩行時の「左右」の空間情報取 得意欲の割合が通常歩行では減少する結果となった。
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033
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
4.3 空間情報取得までの距離 各被験者ごとにおける空間情報取得までの距離分布の割合と、それぞれの考察を下記に 示す。なお、情報焦点距離 5 メートル以下のものは全て 5 メートルとして扱う。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.1 被験者 No.01- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.2 被験者 No.01- 聴覚遮断歩行時
通常歩行時の空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が 60%を超えているのに対し、 聴覚遮断歩行時では、50%にも満たない結果となった。通常歩行時では分布が距離とと もに減少して行くのに対し、聴覚遮断歩行時では 5m ∼ 10m は低い割合だが、10m ∼ 20m では 20%を超え、ばらつきのある減少傾向が見られた。全体的に聴覚遮断歩行時の 方がより遠くを見ていることがわかった。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10 0
(%)
10 5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.3 被験者 No.02- 通常歩行時
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.4 被験者 No.02- 聴覚遮断歩行時
通常歩行時の空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が約 40%と少なく、5m ∼ 10m の割合が約 25%と大きい結果となった。一方、聴覚遮断歩行時では 5m 以下の割合が 50%を超え、5m ∼ 10m の割合では約 10%に留まった。通常、距離が大きくなるにつれ 割合は減少傾向にあるが、被験者 No.02- 聴覚遮断歩行時において、5m ∼ 30m までの割 合で、増加傾向にあるとわかった。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.5 被験者 No.03- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.6 被験者 No.03- 聴覚遮断歩行時
両歩行とも、空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が 40%程と、ほとんど差がない 結果となった。それ以外を見てみると、通常歩行時では 20m ∼ 30m での割合、聴覚遮 断歩行時では 10m ∼ 20m の割合で約 20%の値が見られ、それを中心に増加−減少傾向 にあった。あまり大きな差はないが、通常歩行時の方が聴覚遮断歩行時より遠くの情報を 取得している傾向が見られた。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10 0
(%)
10 5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.7 被験者 No.04- 通常歩行時
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.8 被験者 No.04- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.04 では空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が、通常歩行時では約 70%、 聴覚遮断歩行時では 60%を超える結果となり、被験者 No.04 は非常に近い距離の情報を 取得する傾向にあるとわかった。また、通常歩行時では全割合が 40m 以下に留まってい るが、聴覚遮断歩行時では最大 154m とより遠くの情報まで見ており、空間を広く捉え ていることが明らかとなった。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.9 被験者 No.05- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.10 被験者 No.05- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.5 は両歩行共に空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が約 40%と、ほとん ど差がないことがわかった。次に通常歩行時では空間情報取得までの距離の割合が緩やか に減少ているが、聴覚遮断歩行時ではその傾向が見られなかった。10m ∼ 20m、20m ∼ 30m の値で共に 10%を超えていることがわかり、それ以外の値でもばらつきが見られ、 様々な距離に位置する情報を取得していることが明らかとなった。
70
(%)
70
60
60
50
50
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40
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30
20
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5
10
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75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.11 被験者 No.06- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.12 被験者 No.06- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.06 における空間情報取得までの距離 5m 以下の割合では約 20%程の大きな 差が見られ、他の被験者と比較しても、非常に緩やかな減少傾向であることが明らかと なった。通常歩行における 10m ∼ 20m の割合で 20%を超える大きな値こそ見られるが、 聴覚遮断歩行時では様々な距離に位置する情報をまんべんなく取得している傾向が見られ た。特に 200m を超える長距離の情報も多く取得しており、広く空間を認知している。
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
036
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
70
(%)
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100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.13 被験者 No.07- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.14 被験者 No.07- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.07- 通常歩行における空間情報取得までの距離 5m 以下の割合は約 40%と低 いのに対し、聴覚遮断歩行時では 50%以上と高い結果となった。また被験者 No.07 の特 徴として、両歩行とも空間情報取得までの距離 5m 以下以外の割合で、10m ∼ 20m の値 が他より一番大きい割合にあるとわかった。そして、通常歩行時より聴覚遮断歩行時の方 が滑らかな減少傾向が見られた。
70
(%)
70
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60
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100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.15 被験者 No.08- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.16 被験者 No.08- 聴覚遮断歩行時
両歩行とも空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が 50%を超え、非常に近い情報を 取得する傾向のある被験者だとわかった。更に通常歩行では、5m ∼ 10m の割合がその 次の級より割合が多く、聴覚遮断歩行時より近い位置に視線を置いていることがわかった。 一方聴覚遮断歩行時においては、10m ∼ 20m の割合が 20%を超え、それ以上の距離に おいても多くの情報を取得していることが明らかとなった。
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037
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
70
(%)
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5
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100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.17 被験者 No.09- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.18 被験者 No.09- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.09 は他の被験者と比較しても、両歩行共に空間を全体的に広く捉えている 傾向にあることがわかった。空間情報取得までの距離 5m 以下の割合も大きな差はなく、 聴覚遮断歩行時の 20m ∼ 175m の間で多少のばらつきがあるものの、同じような減少傾 向が見られた。従って被験者 No.09 において、通常歩行時と聴覚遮断歩行時における空 間情報取得までの距離ではあまり大きな差が見られなかった。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10 0
(%)
10 5
10
20
30
40
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100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.19 被験者 No.10- 通常歩行時
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.20 被験者 No.10- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.10 における通常歩行時と聴覚遮断歩行時で大きな差が見られた。通常歩行 時は空間情報取得までの距離 5m 以下で聴覚遮断歩行時よりも 30%以上も多く、分布も 範囲が狭く、ほとんど近くの情報しか取得していないことが明らかとなった。一方聴覚遮 断歩行時においては、5m ∼ 10m の範囲での割合が低いものの、20m ∼ 40m では合計 して 40%もの情報を取得していることがわかった。更に空間情報取得までの距離の分布 も広範囲に渡り、広く空間を認知していることが明らかとなった。
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038
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
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(%)
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5
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100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.21 被験者 No.011- 通常歩行時
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.22 被験者 No.11- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.11 は両歩行共に空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が全体のほとんど を占め、非常に近い距離の情報を取得している傾向にあった。また 10m ∼ 20m の割合 も両歩行共に多く、聴覚遮断歩行時の方が 5m ∼ 50m の間で割合が大きいが傾向的には 通常歩行と大きな差は見られなかった。つまり、二つの歩行において大きな差が見られな かった。
70
(%)
70
60
60
50
50
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40
30
30
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10
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10
20
30
40
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100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.23 被験者 No.12- 通常歩行時
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.24 被験者 No.12- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.12 では通常歩行時と聴覚遮断歩行時で大きな差が見られた。空間情報取得 までの距離 5m 以下の割合に関しては、通常歩行時は約 70%もあるのに対し、聴覚遮断 歩行時ではたった 25%と、全被験者と比較しても一番顕著な差が見られた。更に聴覚遮 断歩行時では空間情報取得までの距離の分布が広範囲に渡っているが、通常歩行時では 30m の級までしか分布が広がっていない。また聴覚遮断歩行時では、全被験者を通じて、 一番緩やかな減少傾向にあることがわかった。
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039
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
4.4 アンケート 12 名の被験者より得られたアンケート結果を下記の表にまとめた。 tab.4.4.1 アンケート結果 被験者No.
A群 習慣
B群
性別 楽曲のテンポ 合計点 方位に関する意識 空間行動における記憶
01
聴かない
女
160.00
32
15
14
02
聴く
男
190.04
69
30
29
03
聴く
男
109.98
59
30
30
04
聴かない
男
172.00
65
24
35
05
聴く
男
130.02
59
30
23
06
聴く
男
143.98
72
27
34
07
聴く
女
167.38
53
12
33
08
聴く
女
127.00
35
13
19
09
聴く
男
121.15
84
37
35
10
聴かない
女
178.00
50
13
19
11
聴かない
女
134.82
49
28
16
12
聴く
女
125.03
73
27
36
(注:「習慣」は普段街歩きを行う際、音楽を聴くかどうかを表している。)
A 群に関する結果は上記の通りである。「習慣」の項目では、12 人中 8 人が普段街歩き をしている時に音楽を聴いていることがわかった。楽曲のテンポでは、歩きやすい音楽と しか制限を持たせなかったため、テンポに大きなばらつきが見られてしまった。 B 群に関しては、竹内 25 が大学生 532 名を対象に行った調査における、それぞれの項 目の平均値は次の通りである (tab.4.4.2)。ただし、合計点は記載されていなかったので割 愛する。 tab.4.4.2 項目ごとの平均値 方位に関する意識 空間行動における記憶 男性(159名)
27.99
30.52
女性(373名)
22.1
27.19
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040
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
本アンケートで得られた回答と平均値を比較すると、次の結果が得られた (tab.4.4.3)。 tab.4.4.3 項目ごとの平均値との比較 被験者No. 合計点 方位に関する意識 空間行動における記憶 01
32
15
14
02
69
30
29
03
59
30
30
04
65
24
35
05
59
30
23
06
72
27
34
07
53
12
33
08
35
13
19
09
84
37
35
10
50
13
19
11
49
28
16
12
73
27
36
水色で塗られた部分が平均値を上回った部分である。被験者 No.01, 08, 10 以外の被験 者はいずれかの項目で平均値を上回り、被験者 No.09, 12 は双方とも上回り、方向感覚が 良いと言える。
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041
Chapter 3
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
3 研究方法 3.1 実験概要 ・実験フロー 本研究における実験フローを下記に示す。
被験者へ教示
聴覚遮断歩行 通 常 歩 行
×
ルート A
歩行映像・発話
ルート B
の記録
アンケートに回答 fig.3.1.1 実験フロー
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021
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・聴覚遮断歩行実験概要 本実験は、『人間は歩行中にどのようなものを意識して見ているか』を計ることを目的 としている。その際、通常歩行と聴覚遮断歩行ではどのような違いが生まれるのかに焦点 を当て、実験を行った。 ◇ 日時 2010 年 12 月 13 日 ( 月 ) ∼ 2010 年 12 月 29 日 ( 水 ) ◇ 実験対象地 本実験は人間が何を意識して見ているかを計る実験であるため、被験者が実験対象地に 対する知識の差が出ないようにしなければならなかった。従って、被験者が訪れたことの ない土地を選定することで、知識の差を埋めた。また、その土地を象徴するようなランド マークがなく、被験者があまり興味を持たないような土地を選定する必要があった。これ らの条件を満たすような対象地として、本実験では JR 日暮里駅周辺 (fig.3.1.4) を選定した。 ◇ 被験者 20 代学生の男女 それぞれ各6名 いずれも実験対象地に対する知識や印象を持っておらず、またその地理に詳しくない者。 ◇ 使用機材 メガネ型カメラ ATEX VIDEO EYEWEAR RECORDER ALY-29V Ⅱ (fig.3.1.2) IC レコーダー
SONY IC RECORDER ICD-UX71(fig.3.1.3)
fig.3.1.2 メガネ型カメラ
fig.3.1.3 IC レコーダー
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022
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
fig.3.1.4 JR 日暮里駅周辺
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023
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・実験内容 被験者にはこちらであらかじめ指定した二つのルートを、通常歩行・聴覚遮断歩行の双 方で歩行してもらった。実験者は被験者にルートを示すため、被験者の約 10 メートル先 を歩行し、案内した。しかし実験者はあくまでも被験者に道順を伝えるためだけの者であ り、被験者には実験対象地を一人で歩いているかのように、実験者の存在は無視して実験 を行うよう伝えた。また実験の慣れを避ける為に、聴覚遮断歩行と通常歩行の順番をラン ダムとした。
・データの取得方法 歩行中、被験者がどこを見ているかを得るための動画を撮影するためにメガネ型カメラ を装着してもらい、意識に残ったものを記録するために IC レコーダーに発話してもらう ことで記録した (fig.3.1.5)。メガネ型カメラでは眼球運動のみによる対象物への視線は測 れないので、首をしっかり振って、正面で見てもらうよう注意した。また意識を発話する 際には、「発話思考法 21 ※ 1」を用いて、ただ見たものを発話するだけでなく、普段の待ち 歩き同様、感情面や推測面など、制限を持たせず自由に発話してもらった (fig.3.1.6)。
fig.3.1.5 機材装着位置 ※1
発話思考法
認知心理学の分野でよく用いられるデータの収集の方法である。「その場その場で思っ ていること、目に留めた内容をその都度口に出して言いながら進んでください」のように、 被験者に教示して発話プロトコルデータの収集を行うものである。この発話プロトコルを 分析することで、被験者が歩行中に何を意識して見たかを明らかにするために採用した。
21
小林敬一 : 論争的な複数テキストの理解−発話思考法を用いた分析− , 静岡大学教育学部研究報告 , 人文・ 社会科学篇 58, 159-169, 2007 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
突き当たりは大通りかな? 奥のマンション高いな !!
コンビニがある 工事現場だ 道幅が狭いな fig.3.1.6 実験の様子
・教示 自然な歩行を行ってもらうために、実験前に被験者には、「あなたは今、知らない街、 日暮里駅に下り立ちました。日暮里を特に目的地を定めることなく、散策してください。」 という教示を行った。両ルート共に、日暮里駅の異なる出口から出た所をスタート地点と し、実験を行った。
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025
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・聴覚遮断歩行について 用語の定義で記述したように、本研究における聴覚遮断とは、音楽を聴くことで周囲の 環境音を遮断することとした。つまり、聴覚遮断歩行は音楽を聴きながら歩行することで ある。 本実験で使用した楽曲は、精神テンポ 22 という概念から使用楽曲は一様とせず、被験 者それぞれが歩行中聞きやすい楽曲とした。ただし、テンポが早めな楽曲という条件はつ けた。その理由として、人間は行動ごとに聴きやすいテンポがあると言われており、中で も歩行に関しては、人間の歩行リズムが楽曲のテンポと合致していると非常に歩きやすい と、阿部ら 23 が報告している。 次に実験中の音量については、環境省が発表している「騒音の大きさ 24」を参考にした。 この資料によると、約 60dB の音量が普通の会話音に相当すると示されているため、楽曲 再生中に 60 デシベル以下の音量が聞こえない音量に調節し、実験を行った。 最後に楽曲を聴くためのヘッドホンは、構造上密閉度が高く、外音遮断性能が極めて高 い、カナル型のヘッドホン (fig.3.1.7) を採用した。
fig.3.1.7 カナル型ヘッドホン
22
杉之原正純 , 平伸二 , 武藤玲路 , 今若修 :「精神テンポの基礎的実験研究 (2)」- 精神テンポの機制に関す る実験的研究 -, 広島修道大学研究叢書 , 第 76 号 , 1993 23
阿部麻美 , 新垣紀子 :「BGM のテンポの違いが作業効率に与える影響」, 日本認知科学会大会発表論文作 成要領 , 2008 24
環境省 HP : http://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・ルート概要 次に本実験で使用したルートの概要を説明する。ルート選定に当たり、以下の点を基準 を設けた。 *同距離であること *右左折数が同じであること *同じ様な特徴を持ったルートであること *スタートが駅からであること これらを元に選定した二つのルートである (fig.3.1.8)。
Goal
Goal
Start
Start
ルート A ルート B 距離:1.5km
fig.3.1.8 実験ルート概要
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027
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
3.2 アンケート概要 実験終了後、以下の項目に関して回答を得た。 ・被験者の属性(A 群) ここで言う被験者の属性とは、性別などの基本的な情報に加え、以下の項目も合わせて 回答を得た。 ⅰ)普段街歩きを行う際、音楽を聴くかどうか ⅱ)聴覚遮断歩行時に使用した楽曲名 ・方向感覚質問紙(B 群) 被験者の方向感覚の良さ(迷いやすさ)を評価するため、愛知教育大学の竹内謙彰氏に よって作成された方向感覚質問紙簡易版(SDQ-S)25(tab.3.2.1) への回答を得た。この質 問紙は 20 の質問からなり、それぞれの質問に対し 5 段階での回答を行いその合計得点で 評価を行うものであるが、多様な質問を組み合わせることにより自己評価の誤りや歪みを 減らすよう工夫されている。 20 の質問のうち 1 から 9 までは「方位に関する知識」に関して、「方位の認知や方向 の回転」について問うものである。10 から 17 までのして質問は「空間行動に関する記憶」 に関して、「目印となる者の記憶や場所の違いの弁別、および経路の知識」について問う ものである。なお、18 から 20 の三項目は、「方位に関する意識」および「空間行動にお ける記憶」のどちらにも属さない項目である。また、合計得点が高いと方向感覚が優れて いると言えるが、何点以上得点すれば方向感覚が良いというのは定められていない。
25
竹内謙彰 :「空間認知の発達・個人差・性差と環境要因」, 風間書房 , 1998
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
tab.3.2.1 方向感覚質問用紙簡易版 1.知らない土地へ行くと、とたんに東西南北がわからなくなる 2.知らないところでも東西南北をあまり間違えない 3.道順を教えてもらうとき、「右・左」で指示してもらうとわかるが、「東西南北」 で指示されるとわからない 4.電車の進行方向を東西南北で理解することが困難 5.知らないところでは自分の歩く方向に自信が持てず不安になる 6.ホテルや旅館の部屋にはいると、その部屋がどちら向き(東西南北)かわからな い 7.事前に地図を調べていても初めての場所へ行くことはかなり難しい 8.地図上で自分のいる位置をすぐに見つけることが出来る 9.頭の中に地図のイメージをいきいきと思い浮かべることが出来る 10.所々の目印を記憶する力がない 11.目印となるものを見つけられない 12.何度も行ったことのあるところでも目印になるものをよく覚えていない 13.景色の違いを区別して覚えることができない 14.特に車で右折左折を繰り返して目的地に着いたとき、帰り道はどこでどう曲がっ たらよいかわからなくなる 15.自分がどちらに曲がってきたかを忘れる 16.道を曲がるところでも目印を確認したりしない 17.人に詳しく言葉で教えてもらっても道を正しくたどれないことが多い 18.住宅街で同じような家が並んでいると目的の家が分からなくなる 19.見かけのよく似た道路でも、その違いをすぐに区別することができる 20.二人以上で歩くと、人についていって疑わない
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029
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
3.3 データ取得方法 ・歩行実験 IC レコーダーに録音された音声データとメガネ型カメラで撮影された動画を同期させ、 以下のデータを抽出する。 ◇ 発話プロトコルによる『空間情報の取得量』 実験中における被験者の発話を記録する。 ◇ 首振り回数による『空間情報の取得意欲』 西田 26 の報告によると、人間の注視点が迅速に安定して見える安全注視野は水平に 60 °∼ 90°、垂直に 45°∼ 70°程度であるとしている。これを参考に、本実験では進行方向 に対して、水平視野 60°/垂直視野 45°を超えたものを首振りとし、その回数を水平/垂 直それぞれカウントした。 ◇ 情報距離による『空間情報取得までの距離』 被験者が発話した地点と発話対象物との距離を、以下のツールを用いて計測した。 Google Map:http://maps.google.co.jp/maps マイマップ編集ツール
・アンケート アンケートから下記のデータを抽出する。 ◇ 方向感覚 3.2 でも記述したように、方向感覚質問用紙簡易版より得られた回答から以下の項目ご との点数を算出する。 *合計点(質問 1 ∼ 20) *方位に関する知識(質問 1 ∼ 9) *空間行動に関する記憶(質問 10 ∼ 17) ◇ 楽曲のテンポ 楽曲のテンポは BPM(Beat Per Minute) で表される。本研究では下記のフリーソフトを 用いて、楽曲の BPM、つまりテンポを計測した。 MixMeister BPM ANALYZER(http://www.mixmeister.com/)
26
西田信夫 :「プロジェクターの技術と応用」, シーエムシー出版 , 2010
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030
Chapter 2
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
2 研究概要 2.1 研究目的 聴覚遮断を行い都市空間を歩行する際、空間情報の取得量、空間情報の取得意欲、また 空間情報取得までの距離に関して様々な属性による違いを明らかにし、聴覚遮断歩行時に おける都市歩行時における空間情報の取得モデルを作成することが本研究の目的である。
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017
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
2.2 用語の定義 ◇ 情報 本研究における情報とは、都市空間歩行時において見えるものや、それによって生まれ る感情など、発話の対象となったもの ◇ 聴覚遮断 本研究における聴覚遮断は、完全な聴覚機能の遮断を意味するものではなく、環境音に 別の音を被せるマスキング効果により、環境音を遮断することを指す。本研究においては、 音楽を聴くことがマスキング効果に相当するとし、これを聴覚遮断とした。
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018
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
2.3 研究の流れ
基礎調査 ・聴覚遮断の基礎調査 ・実験概要の決定
歩行実験 ・映像と発話の記録
実験結果 ・空間情報の取得量 ・空間情報の取得意欲 ・空間情報取得までの距離
分析 ・属性比較 ・距離別比較 ・「迷い」からの分析
まとめ ・考察と展望
fig.2.3.1 研究フロー
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
019
Chapter 1
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1 研究背景 1.1 多様化する歩行者属性 人にとって動きの基本は「歩き」である。 ちょこちょこ歩く人。 力無く歩く人。 膝が伸びない人。 肩で風切って歩く人。 うつむいて歩く人。 せっかちに歩く人。 などなど様々だ。歩くことは、誰もが毎日の生活のなかで普通に行っている。 『歩き方は身体の表情である 1』 オノレ・ド・バルザックは「歩き方の理論」でこのような言葉を残している。この言葉 が示すように、人の数ほど歩行の種類は異なるものである。それに加え、社会の近代化の 波が後を押すように、人の歩行は時々刻々と変化している。バルザックが近代には近代の 歩き方があると述べているように、社会的規範により歩行文化は変容し、規定されること が予想される。我々日本人の歩行も近代とそれ以前では、異なった歩き方をしていたと指 摘されている。「ナンバ」という歩き方である (fig.1.1.1)。ナンバの基本は「右手と右足、 左手と左足を同時に出す」ところにあるが、当然、当時の映像などは残っていないため推 測することしか出来ない。このようにナンバに関しては諸説あるが、歩行形態が現代のそ れとは異なっていたことは明白である。
fig.1.1.1 ナンバ歩行 1
バルザック(山田登紀子訳):「風俗のパトロジー」, 新評論 , 1982
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007
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
このように歩行に関する形態や属性の違いは古くから言い続けられてきた。近代では、 ナンバ歩きのような身体的変化の大きい歩行属性の違いこそ見られないが、これまでの研 究において、属性の違いによる歩行者の特性は数多く述べられてきた。その代表的なもの が性別、年齢、歩行目的による違いである。その一例として、吉岡 2 は、歩行速度と密度 の関係において歩行目的別、男女別に差があることを示した。また竹内ら 3 は、歩行目的 に加え、歩行者の年齢が歩行速度の大きな決定要因となることを示している。更に近年で は、渡辺ら 4 がプローブパーソン技術を用いて、より詳細な個人データを収集し、歩行者 の行動文脈を考慮した歩行速度の分析を行っている。その他にもより詳細な歩行者属性に よる挙動の分析がなされ、論じられている。 時代の移り変わりと伴に多様化する歩行者属性を踏まえた研究は、今後、更に増加の一 途を辿るであろう。本研究ではこれまで対象とされてこなかった属性の違いが引き起こす 行動特性について論じていく。
2
吉岡昭雄: 「歩行者交通と歩行空間(Ⅱ)−歩行速度・密度・交通量について−」, 交通工学 Vol.13 No.5, pp.41-53, 1978 3
竹内伝史 , 岩本広久:「細街路における歩行者挙動の分析」, 交通工学 Vol.10 No.4, pp.3-14, 1975
4
渡辺美穂 , 羽藤英二: 「移動軌跡に着目した都市空間の歩行速度分析」, 第 42 回都市計画論文集 , pp.535540, 2007 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
008
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1.2 感覚遮断 近年、携帯やオーディオプレーヤーなどの電子端末を使用しながら歩行する人々をよく 見かける。これに伴い、次のような研究が盛んに行われるようになった。松永ら 5 や吉沢 ら 6 は、携帯電話を使用している人という属性を確立し、通話中やメールを打っているな ど更にその属性を細分化することで、その属性が生む人間の行動特性について研究してい る。秦野ら 7 も携帯型オーディオプレーヤーを使用している人という属性を確立し、研究 を行っている。これらの属性は、携帯電話で通話を行うことや携帯型オーディオプレーヤー で音楽を聴くといった行為はつまり、人間の聴覚を周りの環境音から遮断していると言え よう。しかしながら、人の聴覚を遮断して歩行するといった研究はこれまで行われていな い。 先程述べたように、これまでの研究では感覚を遮断する行為はマイナスイメージとして 捕われがちであり、歩行分野ではほとんど研究がなされていない。感覚遮断に関連する多 くの既往研究は、杉本 8 のように感覚遮断中の心理変化を分析したものであり、その遮断 感覚は「視覚」がほとんどである。また感覚遮断と似たような属性、つまり、視覚や聴覚 に障害を持った人々を対象に行った歩行に関連する研究はあるが、健常者が遮断するとい う行為は研究の対象になっていない。 本研究では、歩行時における聴覚遮断時と通常時といった属性間を比較することに着目 し、心理面ではなく、行動面の特性の違いについて展開していく。
5
松永文彦 , 中村克行 , 佐久間哲哉 , 柴崎亮介: 「携帯電話使用が歩行行動に及ぼす影響に関する基礎的研究」, 日本行動計量学会大会発表論文抄録集 32, 92-93, 2004-09 6
吉沢進 , 高柳英明 , 木村謙 , 渡辺仁史:「都市における携帯電話使用者の行動特性に関する研究」, 社団法 人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.775-776, 2001 7
秦野晃一:「携帯型オーディオプレーヤー使用時の空間認知に関する研究」, 早稲田大学理工学部建築学 科卒業論文 , 2007 8
杉本助男:「感覚遮断環境下の人の心的過程」, 社会心理学研究 1(2), pp.27-34, 1986
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009
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1.3 人間の視野 人が歩行する際、どのような状況下に置かれても環境との関わりは必ず存在する。 fig.1.3.1 は人間が環境を知覚し、行動を起こすまでの一連のプロセスを簡単な図にまとめ たものである。人が環境を知覚するためには『五感』を用いる。五感情報を駆使しながら 環境情報をインプットし、それを過去の記憶や経験などとバッファすることで、行動へと アウトプットがなされる。こうした一連のプロセスを何度も繰り返し行うことで、行動が 生まれてくる。『産業教育機器システム便覧 9』によると、五感による知覚の割合は視覚 器官が 83%、聴覚が 11%、臭覚 3.5%、触覚 1.5%、最後の味覚が 1.0%、であるとして いる。つまり、視覚による環境情報の取得が行動の大部分を決定していると言っても過言 ではない。
過去の記憶 バッファ
環境
五感情報 input
人間
行 output
動
fig.1.3.1 人間が行動を起こすまでのプロセス図 人間の視覚と情報取得に関する研究はこれまで多く発表されてきた。人が空間という情 報を得たり、理解したりする上で最も重要となってくるのが注視行動である。歩行者は自 分と環境の相互関係を把握するために、注視行動を行いながら行動を遂行し、その手がか りとなるものを取得している。
9
教育機器編集委員会:「産業教育機器システム便覧」, 日科技連出版社 , 1972
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010
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
吉岡ら 10 11 が行った制限視野法を用いた研究では、探索歩行時における周辺視野を制 限した制限視野状態と通常の視野状態との歩行および注視行動特性の比較を行うことで、 通常視野下における周辺視野機能を考察することを目的とし、探索歩行時における周辺視 野の役割に関する基礎的な知見を得ている。 更に情報を取得する過程に特化した研究として、渡辺ら 12 は看板注視傾向に関する研 究をまとめている。歩行者は商業地街路において、ファサードに対して垂直に設置された 置看板袖看板を先に注視し、続けてファサードに対して平行に設置された平看板を注視し、 最終的にはショーウィンドウを注視すると言う、一連の注視傾向がある事を明らかにした。 また山川ら 13 は街路環境と歩行者の視認・認知・評価の関係性について論じ、商業地街 路において、通常歩行時と社会実験時の視認の比較を行った。商業地街路での主要な視認 要素は店舗と人としており、街路にアートオブジェやパラソル等が置かれることで、その 周りにいる滞留者とともに誘目性が高くなるとしている。 渡辺らの研究は、看板というサインのみに留まった研究であり、空間の全ての情報に着 目していない。山川らは、注視した対象物については述べられているが、どのような理由 で誘目されたかという点については触れられていない。更にこの二つの研究はアイマーク レコーダーを用いた研究であり、それは眼球運動の過程のみで情報に注視したと判断する。 従って、例えアイマークレコーダーが注視したと判断しても、情報が歩行者の意識や記憶 に残らなければ情報の意味をなさない。 本研究では、人間の視野内に飛び込んできた歩行空間に点在する情報がどの程度意識さ れているのかを明らかにする。
10
吉岡陽介 , 一色高志 , 岡崎甚幸:「探索歩行時における周辺視の役割を調べるための実験方法の開発 : 制 限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その 1」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.687-688, 2002 11
一色高志 , 吉岡陽介 , 岡崎甚幸:「制限視野下と通常視野下での探索歩行時における行動特性の比較 : 制限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その 2」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp. 689690, 2002
12
渡辺聡 , 後藤春彦 , 三宅論 , 李彰浩:「商業地街路における歩行者の看板注視傾向に関する研究 - 銀座中 央通りにおける歩行実験の分析 -」, 日本建築学会計画系論文集 (574), pp.113-120, 2003 13
山川琴音 , 有馬隆文 , 坂井猛:「商業地街路における街路環境と歩行者の視認・認知・評価の関係性につ いて」, 学術講演梗概集 F-1, pp.327-328, 2005 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1.4 歩行の形態 一口に空間の情報と言っても、それは無数に存在する。また情報を受け取る側、つまり 歩行者も、例え同じ空間であったとしても、歩行目的や状態などによって情報取得は大き く異なってくる。情報を獲得することに重きを置くという視点から見れば、歩行は大きく 分けて2つに分類される。一つ目は経路探索行動である。経路探索行動は Wayfinding と も呼ばれ、主に 80 年代から環境認知や建築都市空間の評価の分野で関心を持たれてきた。 現代の都市では移動する人間と複雑な都市空間の増加のため人間と都市空間の関係はきわ めて複雑になってきており、そのため多様な経路探索の状況のいずれにおいても基本的な わかりやすさを確保した都市空間のデザインが必要とされている (fig.1.4.1)。二つ目は、 特定の目的地に到達することではなく、経路探索の経験自体が移動の目的とされる散策行 動である。興味深い場所の偶然による発見や、深刻でない迷いのある商業空間などはその 経験が魅力的なものとされている。
環境のスケールレベル
建築物 都市圏 都市・地域
環境のエレメント 環境の異質性・等質性 環境の空間的構造 対象となる範囲 対象の特性 サイン
全体 部分 シンプル/複雑 レジビリティ (わかりやすさ) 広狭・見通し
fig.1.4.1 「経路探索のしやすさ」に関する物理的特性 一つ目の経路探索行動は Wayfinding に代表されるように、様々な研究が行われてきた。 舟橋 14 は初期情報の差異による行動実態と空間把握との関係を扱った研究を行い、日色 ら 15 は問題解決プロセスとしての経路探索に注目しプロトコル分析を用いた研究、鈴木 ら 16 は視線と頭部の動きなどの局部的運動をアイカメラを用いて解析した研究などが挙 げられる。
14
舟橋國男:「初期環境情報の差異と経路探索行動の特徴 - 不整形街路網地区における環境情報の差異 と経路探索行動ならびに空間把握に関する実験的研究その 1-」, 日本建築学会論文集 No.424, pp.21-30, 1991 15
日色真帆 , 原広司 , 門内輝行:「迷いと発見を含んだ問題解決としての都市空間の経路探索」, 日本建築 学会論文集 No.466, pp.65-74, 1994 16
鈴木利友 , 岡崎甚幸 , 徳永貴士:「地下鉄駅舎における探索歩行時の注視に関する研究」, 日本建築学会 論文集 No.543, pp.163-170, 2001 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
次に散策行動に関する研究をまとめる。 散策行動は、非難や探索行動ほどの緊急性を要さない状況のため、それらに比べるとや や遅れ、近年になってから研究されるようになった。主体が目的を持たない長距離移動を 行うには、空間に連続して行動を誘発するような要素が点在することと、初めて訪れる主 体であっても不安を感じることなく自由に『迷い』と『発見』を楽しめる程度の基本的な レジビリティーが形成されることが条件となる。 宮岸らによる「自由散策における経路選択要因と空間認知 17」は、実空間の交差点にお ける経路選択時のインタビューにより、空間把握に結びつく行動ととれを誘発する要因に ついての情報の主体属性による特性を明らかにした。経路選択要因は「街区構造把握型」 「景 観構成要素選択型」「雰囲気型」「不明瞭型」に分類され「街区構造把握型」と「景観構成 要素型」の要因が多い主体は空間把握能力が高く、「雰囲気型」「不明瞭型」要因の多い主 体は空間把握を行おうとせずスケッチマップによる再生率も低かった。 砂金らによる「街路における散策行動の構造について 18」は、歩行者の自由な散策行動 の構造を、積極的な興味に誘発される「目的歩行」と慣性的な歩行による「パッシブ歩行」 による繰り返しによって説明している。 森村らによる「情報焦点距離からみた都市空間歩行時の空間認知 19」は、情報焦点距離 を介して、迷いにくい人は迷いやすい人より遠くを見ながら歩いていることを明らかにす るなど、方向感覚自己評価との相関を測った研究である。
17
宮岸幸正 , 西應浩司 , 杉山貴伸:「自由散策における経路選択要因と空間認知」, デザイン学研究 50(2), pp.1-8, 2003 18
砂金眞司 , 長澤泰 , 岡ゆかり , 伊藤俊介:「街路における散策行動の構造について」, 社団法人日本建築 学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.751-752, 1997 19
森村祐子 , 遠田敦 , 渡辺仁史:「情報焦点距離からみた都市空間歩行時の空間認知」, 社団法人日本建築 学会 , 研究報告集 II, pp.81-84, 2009 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1.5 空間認知の方法と迷いやすさ 空間認知において古くから言われ続けているのが、1.1 でも述べたように、男女の差で ある。2000 年に日本で発売された、「話を聞かない男、地図が読めない女 20」という書 籍はあっという間に 200 万部近くを売り上げるベストセラーとなった。この本は男性と 女性の脳の働きの違いによる男女の行動や思考のすれ違いを、専門家以外の人々の分かり やすいように書かれたものであるが、この本が発売されるより以前、1980 年代後半から、 男女の違い、特に脳の働きについての研究は多くなされてきた。高度な脳スキャン技術の 登場により医学、心理学、社会学他様々な分野において、生きたままの脳を観察する事が 可能となった。その結果女性と男性の脳は生物学的に異なる働き方をするものであり、得 意とする学問の分野や作業、情報の認知の仕方が異なるのは当然であるという事が分かっ てきた。もちろん成育過程での社会から要求される役割や周囲の大人達の接し方により男 性らしさ、女性らしさが形成されるという考え方も間違いではないが、思考パターンの形 成の仕方というのは脳やホルモン、神経回路の働きによるものであり、後天的に身につけ られるものではないというのが現在の通説となっている。 これらの研究から分かっている経路探索に関わる認知に関する男女の性差として「男性 はトンネル視が得意で、女性は周辺視野が広い」というものがある。女性は網膜にある状 態細胞の数が多く、周辺視野は頭の端から 45 度外まで及ぶ。女性は古来より家を守るの が仕事であったため近距離のものを広い視野でとらえることが出来るようになり、またエ ストロゲンというホルモンの作用により規則性の無い位置関係を覚えている事が出来る。 それにひきかえ狩猟者であった男性は遠くに居る獲物を追跡するため、注意がそれないよ うもっぱら前方が見えるよう進化した。そのため長距離を見通す「トンネル視」が得意と なり眼の延長線上に有るものなら遠くでもはっきりと見る事が出来る。 また地図を読んで理解したり、対象物までの距離や速度を見極めたりする能力の事を「空 間能力」とよぶがこの空間能力は男性の方が優れている。空間能力とは対象物の形や , 大 きさ、空間に閉める割合、動き、配置などを思い浮かべること、さらには対象物を回転さ せたり障害を回避しながら進んだり、立体的に物を眺めるといった能力のことを言う。カ ミラ・ベンボウの研究によると、4 歳児にしてすでに男の子は女の子よりも三次元的に立 体を捉えるテストにおいて顕著に良い成績を示すという事が分かっている。空間能力に優 れている男性は頭の中で地図を回転させどちらに進むべきか理解する事が出来る。しかも その情報を頭の中に蓄積しておき、地図を見ずに元の場所に戻る事が出来る。しかし女性 は平面に書かれた地図を読み、それを頭の中で立体に立ち上げ実際の道を選ぶことに困難 を感じる人が多い。女性は地図を見せられるよりも、「銀行の角を右に曲がって、コンビ ニの向い」などと目印を織り込んで説明してもらい、広い視野を活かしてそれを拾ってい く方が正確に道をたどれる。
20
Allan Pease, Barbara Pease:「話を聞かない男、地図を読めない女」藤井 留美 ( 翻訳 ), 主婦の友社 , 2000 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
014
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
このような、男女を比較すると男性の方が空間的能力が高いと言う研究結果は必ずしも 全ての男性、女性において当てはまる事ではない。これらの結果は統計的に正しいという だけで、もちろん空間把握の得意な女性も、苦手な男性もいる。ただ明らかなことは、人 間の経路選択の認知方法は一通りではないという事、その方法には、女性が多く取る見え るものを目印とし、それをつなげていくやり方と、男性が多く取る街区の構造を理解し俯 瞰的に自分の居場所を把握するやり方があるという事実である。 また、空間認知と切っても切り離せない関係にあるのが、「迷い」である。空間認知の 方法には俯瞰的に街区や都市の構造を把握するタイプ ( 仮に俯瞰派 ) と、瞬間的に受け取 れる五感情報のみを判断材料としていくタイプ ( 仮に見えるもの派 ) がある。後者はより 迷いやすく、都市内、建築内の移動において問題を抱えていると言われている。これまで 主に研究対象とされてきた、地図や方向感覚といった俯瞰的な空間の捕らえかたに適合し にくく、認知地図も殆ど形成されないためである。特に特定の目的地を設定しないような 散策行動においては、携帯電話によるナビゲーションのような常時周辺環境と画面上の情 報の適合性の参照が必要な方法は不適切であり、彼らに適切なタイミングで適切な情報を 提示する方法を提示することは、これまで行われてきた空間認知研究の結果によるナビ ゲーションのユーザビリティの向上にも関わらず、相変わらず道に迷い続けてきた「最も 空間認知を苦手とする人たち」のための解決策を示し、全ての属性の利用者にとって地図 を持たずとも歩ける都市の実現を可能にするものとなる。そのためにまず、 「見えるもの派」 の情報処理の特質と行動パターンを明らかにし、人はどのようなものを、どのようなタイ ミングで見ているのかを明らかにする必要がある。 そこで本研究では、『空間情報の取得量』・『空間情報の取得意欲』・『空間情報取得まで の距離』の三点に着目し、「聴覚遮断歩行」と「通常歩行」において、この三点から見た 空間情報をどのように認知しているのかについて論じていく。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル An Information Acquisition Model on Urban Pedestrian through Aural Isolation
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010 5209A083-5 西 隆明
Chapter 0
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0 はじめに 0.1 はじめに 早いもので、渡辺仁史研究室の門を叩いてもうすぐ三年になる 自分はこの三年間で何を学んだのだろう 何をやってきたんだろう 何に興味を持ったんだろう そう思った時、これまでを振り返ってみた すると、ある共通点が見つかった 「ヒトノコウドウ」 これまで色々やったが、結局これに落ち着いた 自分にはこれしかない これが、この論文を始めるキッカケとなった
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003
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0.2 目次 Chapter 0 はじめに
pp.002 ∼ 005 0.1 はじめに 0.2 目次
Chapter 1 研究背景
pp.006 ∼ 015 1.1 歩行者属性の多様化 1.2 感覚遮断 1.3 人間の視野 1.4 歩行の形態 1.5 空間認知の方法と迷いやすさ
Chapter 2 研究概要
pp.016 ∼ 019 2.1 研究目的 2.2 用語の定義 2.3 研究の流れ
Chapter 3 研究方法
pp.020 ∼ 030 3.1 実験概要 3.2 アンケート概要 3.3 データ取得方法
Chapter 4 結果
pp.031 ∼ 041 4.1 空間情報の取得量 4.2 空間情報の取得意欲 4.3 空間情報量までの距離 4.4 アンケート
Chapter 5 分析
pp.042 ∼ 096 5.1 行動データの属性比較分析 5.2 行動データの歩行距離別分析 5.3 「迷い」からの分析
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004
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
Chapter 6 総括
pp.097 ∼ 114 6.1 総括 6.2 展望 6.3 謝辞
参考文献
pp.115 ∼ 118
資料
pp.119 ∼
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005