移動目的を考慮した都市空間における歩行者の感覚時間モデル
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はじめに
はじめに
ひとつの都市には、いくつもの時間が輻輳して流れている。 瞬間的に移行する刹那の時間。 正確に刻まれる日常の時間。 人の寿命をはるかに超えた悠久の時。 そうしたさまざまな時間のポリフォニーが、 都市そのものではないかと、私は考える。 東西の都市をいくつか思い浮かべると、 あるいは史上名高い古今の都市について、 それぞれの都市に特有の時間の流れを認めることができる。 時間のポリフォニーにはこのようにいくつかのパターンがあって、 それが一種の遺伝子として埋め込まれることによって、 都市に現実の姿が与えられるのではないかという考えも、 あながち空想とはいえないのではないだろうか。 人間が作り出した「時間」という「道具」。 その「道具」に人間が支配されつつある現代だからこそ、 今一度、「時間」について再考し、 人間の手の内に取り戻すべきではないだろうか。
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目次 Index
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目次
第
1 部 : 論文編 第
1 章 : 序章
1 語句の定義
8
2 研究目的
10
第
2 章 : 研究背景
1 時間をデザインするということ
12
1-1 感じる時間の変化ー生活時間の改変ー
12
1-2 時間の厳密化
15
1-3 時間の高速化
16
1-4 時間の均質化
17
1-5 日本時間学会の設立
18
1-6 認知心理学としての時間
19
2 時間と都市
20
2-1 時間と都市の関係
20
2-2 都心の時間と地方の時間
22
第
3 章 : 研究方法
1 既往研究
24
1-1 感覚時間に関する既往研究
24
1-2 認知距離に関する既往研究
25
2 基礎研究
27
1-1 歩行に影響する要素
27
1-2 個々の歩行者の条件と平均速度
28
1-3 人間の意識の中にある歩行距離
29
1-4 歩行速度と空間認識 3 本研究の位置づけ 4 研究フロー 第
4 章 : 実験結果−都市を散策時の感覚時間測定実験−
29 30 31
1 実験方法
34
2 実験結果
38
3 まとめ
54
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目次
第
5 章 : 調査結果−歩行空間を移動時の感覚時間の街頭調査
1 調査方法
56
2 回答者属性
70
3 歩行空間・属性・時間帯と感覚時間
74
4 歩行空間毎にみた感覚時間の比較
81
5 移動目的毎にみた感覚時間の比較
87
6 一日の時間変化と感覚時間
93
7 歩行空間と感覚時間の時系列的解析 第
6 章 : 分析結果
101
1 分析方法
109
2 感覚時間に影響を及ぼす要因
115
3 時間の厳密化の検証
125
第
7 章 : 総括・展望
1 研究総括
132
2 展望
134
おわりに
135
参考文献・参考資料
136
既往研究
138
第
2 部 : 資料編
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第一部 Part Ⅰ
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論文編 Main Chapter
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第 1 章
序章
Chapter 1
1 語句の定義 2 研究目的
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第 1 章 序章
1 語句の定義 ■感覚時間 [ 文 1] 松 田 文 子: 序 章
ある出来事が生じてから時間がどれくらいの速さで過ぎるのか、あるいはどれくらい
現代のアウグスティヌ
の時間が過ぎたのかという主観的時間に関する経験は、心理的時間と呼ばれる。心理
ス , 北大路書房 (1996) ,
学的時間の研究では、これを外的な時計を使わずに内的な時計によって客観的な時間 を評価させる。その際に計測する時間の長さによって、その評価方法が時間知覚(time perception)、時間評価(time estimation)の 2 つに分かれる。時間知覚とは、5 秒ほ ど以内の心理的現在の範囲内でのごく短い時間についての評価であり、その範囲を超え た時間は、時間評価と呼ばれている[文 1]。 本研究では、時間評価による心理的時間のことを『感覚時間』、実際の時間・絶対的時間・ 客観的時間を『物理的時間』と定義する。 また、物理的時間と、感覚時間とを比較した際には、双方の時間にずれが生じる場合 が有る。物理的時間よりも感覚時間が短い場合、物理的時間よりも感覚時間が長い場合、 物理的時間と感覚時間がほぼ等しい場合、のおおよそ 3 つの感じ方がある。「時が過ぎ るのを忘れるほど楽しかった。」というのは、物理的時間よりも感覚時間が短い場合に あたる ( 図 1-1-1)。
感覚時間(心理的時間)
物理的時間 図 1-1-1 感覚時間のイメージ
■歩行空間 本研究では、施設内の歩行空間ではなく、都市の屋外街路を歩行空間と定義する。 ■時間の厳密化 時計の時間として参照できる公共の時間に合わせて生活することを強いられているこ と。特に日本の都市生活においては、公共の交通機関や施設をはじめとして、時計の時 間に対してかなり厳密に対応する様に求められることが多くなっている。詳しくは研究 背景にて述べることとする。
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第 1 章 序章
■感覚時間比 感覚時間と物理的時間の比較を「感覚時間比」を用いて分析を行う。ここでおさらい すると、本調査で感覚時間とは歩行者が、「スタートからゴールまでどの位の時間で歩 いたと思うか」という主観的な時間を指し、物理的時間とは「スタートからゴールまで 歩いた実測時間」という客観的な時間を指すことを示しておく。 感覚時間比とは、感覚時間と物理的時間のずれを割合で表したものであり、以下の様 に立式される(図 1-1-2)。
感覚時間比 =
感覚時間(秒)ー 物理的時間(秒) 物理的時間(秒)
図 1-1-2 感覚時間比の算出方法
例えば、実際は 60 秒かかる空間を歩行した時に、感じた時間が 90 秒であった場合は、 感覚時間比は、「0.5」となる。つまり 1.5 倍に時間を捉えているということである。ま た感じた時間が 30 秒であった場合、感覚時間比は「-0.5」となる。この様に、感覚時 間比が正の値ほど、時間を長く感じていることを示し、負の値ほど、時間を短く感じて いることを示す。 この様に、感覚時間比を用いると、調査経路の距離が異なっても、時間の感じ方が読 み取ることが可能になる。
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第 1 章 序章
2 研究目的 近年、社会では「時間の厳密化」「時間の均質化」「時間の高速化」の 3 つの時間の 捉え方の変化が注目されている。特に、「時間の厳密化」については、我々の日常生活 に恩恵を与えている反面、人間の時間知覚に影響を及ぼしている可能性が示唆されてい る。 本研究では、歩行空間を歩いている人々の感覚時間を計測し、空間、移動目的、時間 帯や歩行者の属性が、どの様に感覚時間に影響を及ぼしているか明らかにし、感覚時間 をモデルとして示す。 また日常生活における感覚時間の変化を時系列的に解析することで、都市における時 間の厳密化としての時間の捉え方が、どの様な場所で、どの様なシチュエーションで起 こりえるか、明らかにすることを目的とする。
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24 (Hour) Place : Station
Place : Street
Place : Shop
Place : Bar
Place : Restaurant
Place : Home
図 1-2-1 人が捉える拡張時間と縮小時間のイメージ
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第 2 章
研究背景
Chapter 2
1 時間をデザインするということ 1-1 感じる時間の変化 ー生活時間の改変ー 1-2 時間の厳密化 1-3 時間の高速化 1-4 時間の均質化 1-5 日本時間学会の設立 1-6 認知心理学としての時間 2 時間と都市 2-1 時間と都市の関係 2-2 都心の時間と地方の時間
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第 2 章 研究背景
2-1 時間をデザインするということ 2-1-1 感じる時間の変化ー生活時間の改変ー 早いもので、気がつけばあっという間に 2011 年になってしまった。このような時間 の経過を早いと思うかどうかには、個人差があるが、時代は確実に高速化の一途を歩ん できた。移動手段や情報通信は、高速化社会の象徴とも言えるように目覚ましく進化し ている。その様な中で、我々人間はどのような「感覚時間」で、生活という旅を続けて いるのだろうか。 [
文 2 ] h t t p : / / w w w.
生活定点調査 [ 文 2][ 文 3] では、生活者の様々な価値観について調査している。
seikatusoken.jp/ 生 活 総 研 ONLINE ホームページ
まず、生活者の「時間感覚」を知るためにシンプルな数字から見てみる(表 2-1-11)。提示した 4 つの出来事のうち、 「あなたは何分くらい待つとイライラし始めますか?」
[ 文 3]JR ガ ゼ ッ ト:
という質問への回答である。最も多いのは「友人を待っている時間」の 86.7%で、イ
2010 年 6 月号 , 株式会社
ライラし始める時間は平均 19.86 分だった。2 位が「スーパーのレジで並んで待つ時間」
交通新聞社
の 80.0%で、平均時間は 6.76 分。3 位が「電車が来るのを待っている時間」の 76.2% で平均 11.27 分、4 位が「結婚式などでスピーチを聞いている時間」の 68.7%で平均 11.74 分であった。これらは、10 年間の時系列データで見ても大きく変動していない。 社会の高速化に反して、精神的な余裕、あるいはおおらかさがあるようにも見える。 表 2-1-1-1 イライラ時間
しかし、生活のゆとりを見てみると、「時間的ゆとりがある方」という回答は 56.0% と過半数を超えているものの、残りの半数近くは「ゆとりがない方」と答えている(表 2-1-1-2)。さらに時系列変化を見てみると、「ゆとりがある方」と答えた人は 1998 年 の 59.3%から下降傾向にあり、生活者は時間的ゆとりを失い、高速化社会に息切れを 感じている様子がうかがえる。 表 2-1-1-2 生活のゆとり度
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第 2 章 研究背景
また、ここ十数年間で、生活者の「時間」に対する価値観に変化が現れているようだ。 「今後増やしたいと思っている時間」は何か。1 位は「趣味にかける時間」(59.4%)、 2 位は「睡眠時間」(57.1%)、3 位は「家族と過ごす時間」(41.4%)。次いで「親しい 友人と過ごす時間」(40.6%)、「休息・静養にあてる時間」(37.5%)、「ひとりで過ご す時間」(32.2%)という結果だった(図 2-1-1-1)。 波形の推移で見ると、「家族との時間を増やしたい」ものの、「睡眠時間」や「ひとり で過ごす時間」といった、よりプライベートな時間を大切にし、さらに「休息」を求め ている。ゆとりを取り戻すため、「生活時間」を改編しようという姿がうかがえる。
図 2-1-1-1 今後増やしたいと思う時間
以上の結果からも分かるように、生活に高速化を感じている生活者だが、その速度に 対する欲求と実態はどうなっているのだろう。「あなたは生活行動を手早くやりたい方 ですか?」という問い対して、53.8%がイエスと回答し、「ゆっくりやりたい方」と答 えた人は 46.1%。これらの速度欲求に対して、実際の行動は「手早くやっている」と 答えた人が 65.7%、「ゆっくりやっている」と答えた人が 34.1%だった(表 2-1-1-3)。 表 2-1-1-3 速度欲求と速度実態
本項では生活者の「時間」に対する価値観変化を見てきたが、長期的に「時間感覚」 に影響を与えたものを考えてみる。1964 年に開業した東海道新幹線は、東京∼新大阪 間をそれまでの約 3 倍のスピードで結び、高度成長期から高速社会への変遷は流通や ビジネスのあり方を変え、人々の意識変化に大きく作用した。もう 1 つは、高速化と 比例するよう伸長した日本人の平均寿命である。50 年間で 15 歳以上延びており、「感 覚時間」に与える影響は大きいと考えられる。
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第 2 章 研究背景
現代の平均寿命を言い換えて、 「人生は 3 万日の旅」という言葉が耳慣れたものになっ た。 成人するまでが約 7500 日。就職して退職するまでが約 1 万 5000 日。定年後が約 7500 日という時間デザインによる生活設計の考え方だ。 時間は 1 日 24 時間と有限だが、高速化と寿命の延びは「時間感覚」を変えようとし ている。生活者は、1990 年代から 2000 年代の不況のなかで生活予算の配分を再編し てきた。増えない収入のなかで削るものと、お金をかけるものとの取捨選択を行った。 同様に「時間」による生活の再編も始まっている。時間編集の手段は生活者によってさ まざまだが、「人生 4 万日」も夢ではない時代に入り、「時間」で分類された市場・サー ビスなども必要になるだろう。
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第 2 章 研究背景
2-1-2 時間の厳密化 我々は社会生活のペースを時計の時間に合わせている。この時計の時間は、原子時計 によって正確に特定される、世界で共通の一様な時間である。すなわち、多様である人 間が体験する時間(感覚時間)と、一様な公共の時間(時計の時間)とは、異なるもの である。 ところが、現代における多くの社会では、誰もが同じ公共の時間として、時計の時間 に従って生活することを強いられている。特に日本では、公共機関をはじめとして、公 共の時間に対して、かなり厳密に対応することが多い。かつて教会や社寺の鐘の音が告 げていた公共の時間は、今や家庭や職場にある時計によって、個々人に告げられている。 そればかりか、誰もが腕時計や携帯電話の時計機能を使って公共の時間をもち歩き、そ れに合わせて行動している。100 年前に比べると、公共の時間は、明らかに小刻みに 規定され、我々の生活パタンの決定過程に入り込んできているのである。 では時間の厳密化の何が問題であるのか。現代社会では、誰もが時計の時間として参 照できる公共の時間に合わせて生活することを強いられている。特に日本の都市生活に おいては、公共の交通機関や施設をはじめとして、時計の時間に対してかなり厳密に対 応する様に求められることが多くなっている。都市での生活では、一人ひとりの人間が、 時を刻む大きな時計の一部になったかのように振る舞っている。現代の都市社会では、 こうした生活パタンはごく当然のものと見なされている。しかし、この様に厳密な社会 は、人類の歴史の中ではつい最近になって登場したもので、時間に厳密に行動するとい うことは、人類にとっては特殊なものであるのだ。 人間の性格類型のひとつに、時間に厳密であろうとする「タイプ A」という性格があ る。これは 1950 年代にアメリカのフリードマンとローゼンマンが、虚血性心疾患の患 者には、ある共通した特徴の行動パタンをとることを発見し、それを「タイプ A」と名 付けた。時間に対する厳密性を要求される現代においては、特徴的な性格であると言え るかもしれない。このタイプの人間は、いつでも時間に追われている様に感じ、予定通 りに事が進まないと、イライラしてしまう。待たされることも苦手であり、何もしない 時間を過ごすことに罪悪感を感じてしまう。また、限られた時間の中で出来るだけ多く のことをしようとする。例えば、昼食の際にも仕事の資料に目を通したりする人を指す。 一定の期間に人よりも多くの仕事をやり遂げることを重視し、それが実現できると強い 満足感を覚える。何をするにも仕事優先、競争好きで、負けることが大嫌いである。 この様に「タイプ A」は時間への厳密性や単位時間あたりで成果を求められる現代の 都市社会の生活があって初めて出現した性格類型かもしれない。 この「タイプ A」という性格は、狭心症や心筋梗塞などの循環器系の疾患の発生と有 意な関係があることが知られている。時間に厳密であろうとする生活態度や何もしない 時間があるといらついてしまうことから、ストレスが生じ、それらが彼らの循環器系の システムを蝕んでいるのである。
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第 2 章 研究背景
2-1-3 時間の高速化 科学技術の発展によって移動手段は高速化した。蒸気機関車の高速化が始まるまでは、 人間自身の走る速度が一般人の体験する最速の移動速度であった。確かに、風力などを 利用した船や馬を使うことによって、自信で走るよりも早く移動することは可能であっ ただろう。しかし、そのような高速の移動は、多くの人には縁が無かったこともまた事 実であろう。 自分自身の足で走る場合、どの程度の速度での移動だったのだろうか。通常、世界最 速の人と呼ばれるのは、陸上競技の 100 メートル走のオリンピック金メダリストや世 界記録保持者である。この様な短距離走選手は、10 秒弱の時間で 100 メートルを駆け 抜けることが出来る。 ところが短距離走の選手やマラソン選手の様に、強靭な肉体を持たなくても、また特 別なトレーニングを積まなくても、自動車さえもっていれば、我々は難なく時速 40km の速度で何百 km も走行出来る。日本の市街地の多くの車道では時速が 40km 以下に制 限されているが、自動車の運転に慣れている人であれば、この制限速度は速いとは感じ られないだろう。だがこの時速 40km という速度は我々の肉体だけで可能な移動速度 の限界をすでに超えているのである。 人間にとっての移動は、もともと歩いたり走ったりという、自分の身体を使った手段 に基づくものだったはずだ。つまり、たいていの人間が経験する最速の移動手段は、せ いぜい平均時速 20km ∼ 40km だったと考えて良いだろう。ところが技術の発達で高 速の移動手段を手に入れた我々は、これまでの自然環境下での進化の過程では、経験す ることのなかった速度で移動しているのである。 では、なぜ時間の高速化が現代の社会の問題であるのか。ここではそれを明らかにし ていこうと思う。 自分の足で走ることがせいぜい最速の移動手段であった頃には、0.1 秒の近くのズレ が致命的な問題に発展することはなかった。ところが我々は、技術の発展により高速の 移動手段を獲得してしまった。高速での移動時にはほんの 0.1 秒の遅れが致命的な結果 につながる可能性は、これまでに無かった程、高くなっていることだろう。
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第 2 章 研究背景
2-1-4 時間の均質化 現在、我々の生活の時間は、均質化される方向に変化しつつある。例えば、日本を はじめとした東アジアの工業地域や、北米、ヨーロッパにおける都市部では、太陽の光 が無くとも人工的に作り出す光のおかげで、時間を気にすること無く生活することが可 能になる。 人類は長い間、地球の自転に伴う太陽の出入りに対応して、生活のリズムを整えてき た。しかし、安定した照明技術を手に入れた今、もはや太陽の出入りや地球の自転の周 期に生活のパタンを合わせる必要は無い。太陽が地平線の向こうに隠れ、夜が訪れた後 でも、蛍光灯や白熱灯の明かりの下で様々な作業を続けることができる。昼間と夜間と いう時間の分節は、かつてほど人間の生活パタンを限定していない。また、農林水産業 における栽培や養殖技術の発展、流通網の正解的な展開によって、季節にそれほど依存 せずに様々な野菜や果物、海産物を得ることが可能になった。このことも、季節や時期 がかつて持っていた特異性を失い、生活の時間が均質化しつつあることを示している。 特に近年の日本では、時間の均質化はこれまでになく急速に進んだ。例えば、一日中 コンビニエンスストアが開いていて、いつでも生活必需品や食品を手に入れたり、公共 料金の支払いをしたりできる。そればかりか、外国紙幣やコンサートチケットも手に入 れることができる。宅配便や郵便で荷物を送ることも出来るし、インターネットで注文 した本等を受け取ることも出来る。その名の通り、とてもコンビニエントな状況といえ る。 この様に、現代の日本社会は、均質化された時間に基づく利便性の恩恵を最もよく体 現している社会といえるかもしれない。あらゆる時間帯において生活雑貨や食品が手に 入ったり、様々なサービスを受けられるという状況は、日本で特徴的かつ急進的に起こっ ている現象と思われる。 24 時間中、国内だけでなく、海外の様々な市場からの情報を収集できたり、さらに インターネットなどを通して、それらの市場に介入することさえ可能である。実際、そ れに関連した経済活動も 24 時間いつでも行われることになる。そのような経済活動に 携わっている人たちにとっては、その活動を自らの選択によって行っている場合でも、 会社や雇用主のような他者から強いられている場合でも、生活の場における朝や昼、夜 といった時間帯は、もはやかつて我々の祖先が見出していた意味を失っていることだろ う。つまりそれぞれの時間帯は、もともと持っていた意味を失い、均質なものへと変化 してしまったと言えるだろう。 この様に、現在の経済活動は、個々人における時間の均質化を押し進める機能を果た している。しかし、いくら経済活動が 365 日 24 時間ずっと可能であっても、人間に は睡眠等の休息が必要である。仮に、一日の周期に関係なく起き続けているという事が 出来たとしても、それは人間の心身状況としては問題があり、健康な状態を維持するの が困難になることもあり得る。睡眠障害は昼間の活動における失敗を引き起こすだけで なく、鬱や代謝異常といった心身の問題へと発展していく危険性をはらんでいる。
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第 2 章 研究背景
2-1-5 日本時間学会の設立 時間学の分野では、日本時間生物学会が 1994 年に発足し、2009 年 6 月には様々 な研究分野の枠を超えて研究を行い、時間額という学問領域の確立を目的とする日本時 [文 4]http://wwwsoc.nii.
間学会が設立された。[ 文 4]( 図 2-1-2-1)
ac.jp/jsts2/shushi.html
時間に関する研究はこれまでにも多数あったが、そのほとんどは個別の学問領域のな
日本時間学会ホームペー
かで行われてきた。時間学の領域においては、文系と理系、基礎理論と応用理論の枠を
ジ
取り払った融合的な研究が目指されている。 例えば、人間の時間認知は時計の時間とどのような「ずれ」を見せるのか、といった 問題群や、生物時計のメカニズム、時間管理の社会政策、文化圏ごとの暦の多様性があ る。 また、哲学や物理学で取り組まれてきた「時間とは何か」についての理論研究も、時 間学の大切な基盤となっている。こうした諸分野の研究を「社会的時間と人間的時間の 調和」という視点から体系化するような融合的研究が、時間学の領域では可能となる。 時間学会では、学際的特徴を生かし、近縁の学会との交流や学術集会の合同開催を通し て、時間学の重要性を伝えるとともに、異なる思想や技術を積極的に取り入れている。 これまで、時間学の主流であった理学系、医学系、農学系などだけでなく、これから はさらに数学系、工学系、社会学系などが加わり、総合科学として発展することが学問 の深化につながると期待されている。 また、2010 年 6 月には第 2 回大会が行われ、時間の豊かさとは何か、といった研究が 行われている。
図 2-1-2-1 日本時間学会
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第 2 章 研究背景
2-1-6 認知心理学における時間 前述した時間学において、1996 年には松田文子 [ 文 5]( 図 2-1-3-1)、2008 年 2009 [ 文 5] 松 田 文 子: 心 理 的
年には一川誠 [ 文 6][ 文 7]( 図 2-1-3-2) が、認知心理学における人間の時間認知に関す
時間ーその広くて深いな
る書籍を発行し、「時間認知」が注目を集めている。
ぞ , 北大路書房 , [1996]
これらの書籍は、さまざまな分野において明らかになった時間学を体系立てて説明し
[ 文 6] 一 川 誠: 大 人 の 時
ている。このようにアプローチすることで、建築学研究もさらに進んでいくと期待でき
間はなぜ短いのか , 集英
る。(時間認知に関する研究は次の既往研究にて述べることとする。)
社新書 ,[2008]
本研究では、「時間の中の都市」の空間−時間概念と、これらの書籍の認知心理学的
[ 文 7] 一 川 誠: 時 計 の 時
な時間研究に着目し、空間における人間の感覚に目を向けることとする
間、心の時間 , 教育評論 社 ,[2009]
図 2-1-3-1 心理的時間
図 2-1-3-2 時計の時間、心の時間
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第 2 章 研究背景
2-2 時間と都市 2-2-1 時間と都市の関係 いつの時代、どの国でも、都市は憧憬の的としてあった。富も情報も、人もモノもみ な、都市に集中していた。誰もが目的地として都市を目指していた。 しかし、新千年紀を迎えた今、都市はむしろ厄介者とみなされている。ゴミも汚染物 質も、熱も騒音も、都市から集中的に排出されている。人やモノの過度の集積が、物理的、 心理的なストレスを生み出しているのである。都市は構造的に疲弊しているといえる。 それでもなお、人は都市から逃れ出ることは出来ない。 なぜなら、活動のポテンシャルを高く維持し、経済的な、文化的な優位性を保つため には、都市を形成する他に有効な道がないことを、歴史が証明しているのである。 多くの都市は、それ自身の機能を更新しながら、時には自ら一部ないし、全部の機能 を停止することさえしていた。その様にして逞しく、生き延びてきたという事実がある。 これからも同様に、都市はその姿を変えながらも、時を超えて地上に存在し続けるに違 いない。 では、今の世にあって、私たちは悲観とともに都市生活を送らなければならないので あろうか。もしそうであったとしたら、例え都市がどうにか生き延びたとしても、私た ちにとって幸せなこととは言えない。 21 世紀の都市で活動し、暮らす人々は、都市からどのような楽しみを得ることが出 来るのであろうか。本研究ではそこに焦点を当てていこうと思う。 これまで都市を測り、計画する際には、規模と密度が主要な尺度として使われてきた。 人口、圏域、交通網、生産・消費量、事務所用床面積、商業店舗数等である。規模が大 きいこと、密度が高いことは、ほとんどの場合、その都市のポテンシャルが上位にあり、 優勢であることを意味していた。 しかし、今の時代、規模が大きいことは都市として力に勝っていることを意味しない ばかりか、むしろマイナス方向に働きがちだと考えられている。密度もまた同様である。 集中度の高さは、より大きな弊害に繋がりやすいことが指摘されている。規模も密度も、 現代では都市の機能、あるいは都市生活の快適性を示す尺度としては相応しくないと思 われているのである。 ひとつの都市にはいくつもの時間が輻輳として流れている。 瞬間的に移行する刹那の時間。正確に刻まれる日常の時間。人の寿命を超えた悠久の 時。 そうした様々な時間のポリフォニー(多数の旋律の組み合わせ)が、都市そのもので はないかと、私は考えている。東西の都市をいくつか思い浮かべると、あるいは史上名 高い古今の都市について、それぞれの都市に特有の時間の流れを認めることが出来る。
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第 2 章 研究背景
時間のポリフォニーにはいくつかのパタンがあり、それが一種の遺伝子として埋め込 まれることによって、都市に現実の姿が与えられるのではないかという考えも、あなが ち空想とは言えないのではないだろうか。 つまり時間を尺度として都市を考えることは有効ではないか、ということである。以 下では、時間都市を一分という尺度で捉えた時の都市の性質を述べる。 一分とは腕時計上の時間を意味する。すなわち一分都市とは、触覚の都市といえる。 秒針が進む毎に、次々に変化する様相。現代都市の表層的な特徴は、この一分都市にお [ 文 8] 伊 藤 公 文 , 松 永 直
いて露になるのではないかと考えられる。奥平らは [ 文 8] の中で、一分都市の性質と
美:時間都市 Chronopolis
して以下を挙げている。
, 東京電機大学出版局 , 2003 年
① SENSORY(知覚性) :一分都市のシステムは、身体感覚に反応する受容体として の性質を持つ。 ② MOVABLE(移動性):一分都市の素材は、身体状況と呼応できる様に、常に移 動を可能とする性質を持つ。 ③ MUTUAL(相互性):一分都市の制度は左右上下という一方的な規則ではなく、 常に相互に受発信しえる状況をつくりだせる性質を持つ。 ④ AESTHETIC(審美性):一分都市の形態は、新鮮な感覚を引き出すためにも、常 に人々の記憶の中で、確かめられた色、形の審美的性質を 持つ。 ⑤ MEMORY(記憶性):一分都市の情景、人々に常に過去の記憶が呼び覚まされ る様な性質を持つ。 ⑥ EXPERIENCE(経験性):一分都市の状況は、一人の又は複数の人々の経験が次 の新しい人々の行動の源流となる性質を持つ。 ⑦ TIME(時間性):一分都市の要素は、ヒトの感覚の中で絶対時間と内的時間を 共用する性質を持つ。
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第 2 章 研究背景
2-2-2 都心の時間と地方の時間 前項では都市と時間の関係について、哲学的な視点で見解を述べた。本項からは、よ り日常生活に即した視点で述べていく。 「島時間」という言葉がある。これは生活環境によって時間との付き合い方が異なる ことを表している。一般的に地方と都市を比べると、地方の方が時間がゆったりと流れ ていて、都市部はせわしないというイメージがあると思う。 例えば、都市部での生活の例として、電車が数分間隔で、狂い無く到着することが挙 げられる。一方地方での生活では、空港から車で 15 分程度の場所であっても、生活環 境周辺は田んぼや畑が広がる環境であり、公共交通は単線のワンマンカーで、時間帯に よっては 1 時間に 1 本も走らないような場所もある。 この様な環境では、公共の交通機関を使い続けるのは簡単ではなく、多くの人の移動 は自動車である。この様な生活スタイルでは電車の時間を気にする必要は無い。目的地 にちょうどいい時間帯に着くように、時間を逆算して、自分で自動車を運転していけば よい。地方から都心に行く際は、鉄道や飛行機といった公共の交通機関を使うが、毎日 の生活では鉄道やバスを使う事は無いのである。そうなると、公共の交通機関の時間に 対応して生活するという習慣はほとんど無くなる。 このように生活環境に違いがあると、明らかに都心と地方での時間の流れは異なるこ とが分かる。地方での生活はゆったりとして、都心の生活は、時間に追われている感覚 を得るのである。
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第 3 章
研究方法
Chapter 3
1 既往研究 1-1 感覚時間に関する既往研究 1-2 認知距離に関する既往研究 2 基礎研究 1-1 歩行に影響する要素 1-2 個々の歩行者の条件と平均速度 1-3 人間の意識の中にある歩行距離 1-4 歩行速度と空間認識 3 本研究の位置づけ 4 研究フロー
-023-
第 3 章 研究方法
3-1 既往研究 3-1-1 空間と感覚時間に関する既往研究 本研究のテーマの一つである「空間と感覚時間」について既往研究を以下にまとめる。 [論文 1]矢川麻紀子:感
矢川ら [1999] は、被験者を市街地の 2 つの歩行コースにて歩行させ、感覚時間を計
覚時間による場と人との
測し、心理評価を行った。結果として、緑視率が大きくなるに従って「好ましい」「の
交換作用の指標化[1999]
んびりする」イメージが大きくなり、時刻の刻みはゆっくりし時間を短く感じた。騒音 が大きくなるに従って、「好ましくない」イメージが大きくなり、刻みは速くなり時間 を長く感じてた。つまり、安らぎや快適さが感じられる環境、好ましい景観であれば、 長く感じていることが分かった。
[論文 2]矢川麻紀子:人
またその後、矢川ら [2001] は、実験場所を広げ、住宅や商店など、都市内のさまざ
と場の関わりと感覚時
まな 8 カ所の歩行空間で感覚時間を計測し、心理評価を行った。結果としては、落ち
間に関する基礎的考察
着いている人ほど感覚時間の短い人が多く出現し、雑然とした場所ほど感覚時間の長い
[2001]
人が多く出現した。しかし、落ち着いてはいるが楽しくはなく、心が沈んでいる人にとっ ては雑然とした寂しい場所に来ると感覚時間の短い人が多く出現した。 以上のように人の感覚時間は人の心理状態によって、また空間の印象によって変化す るが、それらの単なる線形結合によるものではないことが分かった。
[論文 3]藤本麻起子:
また藤本ら[2004]は、実験場所をさらに増やし、計 18 カ所の歩行空間にて、感
歩行空間における感覚時
覚時間を計測し、心理評価を行った。全体的に、都会的なオフィスでは、単調で飽きる、
間に関する研究[2004]
などの理由から感覚時間の長い人が多く出現した。商店街では、うるさい、見ていて飽 きないなどの理由で感覚時間の長い人も短い人も、同様に出現した。 さまざまな場所で実験を行ったが、既存研究と同様の傾向が結果から得られた。
[論文 4]矢川麻起子:
この他にも、矢川ら[2002]、藤本ら[2003]では、実験空間内にて、パーソナルスペー
人と人の位置関係がも
スや、照度・色温度などと感覚時間との変化に関する実験が行われており、さまざまな
たらす居心地と感覚時間
角度から感覚時間に関するアプローチがなされている。
[2002] [論文 5]藤本麻起子:
矢川らは、このような感覚時間に着目し、さまざまな場で人が感じる時間の長さが
照度・色温度を制御した
人と場との関わりの適否を判断する指標となりうるかを考察した。
室内における感覚時間の
人の生活する場は、個別の要因の単なる寄せ集めに依存するのではなく、複合された
変化に関する研究[2003]
複雑な要因の交互作用の結果である。場の環境心理研究において様々な評価方法が存在 しているが、この研究では、心理的問題という尺度から場のアフォーダンスを導くとい う試みがなされている。 以上のように矢川らの研究では、感覚時間が場所と人との交感作用を計測する、心 理的な尺度となりうることを示唆した。しかし、 「感覚時間」に関する研究は、心理状態や、 オフィス、公園などの場所性によって感覚時間が変わることを示している。
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-024-
第 3 章 研究方法
引用[論文 6]大野隆造: 歩行移動時の距離知覚に 及ぼす経路の形状と周辺
3-1-2 認知距離に関する既往研究
環境の影響歩行経路 , 日 本建築学会計画系論文集
認知心理学的アプローチで、現代都市空間を歩行する人を対象に分析するにあたり、
No.580,Pp.79-[2004]
「認知距離」と「認知時間」は強い関連があるといえる。つまり「歩いた距離から歩い
[論文 7]MILGRAM S.:
た時間を感じる」わけであるので、「距離認知」のメカニズムについて、既往研究をま
<no title>, Environment
とめる必要がある。
and cognition[1973]
[ 論 文 8]SADALLA E.
以下、大野ら[論文 6]より引用したものである。
K.:Retrieval prosesses in distance cognition ,
「今までに明らかにされた距離近くに影響を及ぼす要因としては、広域スケールでは場所の地理
Memory and Cognition 7,
的イメージや目的地に対する親近感などが、 歩行スケールでは坂・階段や経路の奥行きの見えといっ
291-296,[1979]
た移動時に直接体験される経路の物理的特徴が報告されている。また、移動スケールの大小に関
[ 論 文 9]SADALLA
わらず共通して影響を及ぼす要因としては経路の曲折・交差点の数があり、これらが経路に関す
E. K.:The percept ion
る記憶情報を増加させたり経路を文節化したりするため距離が長く近くされると説明されている。
o f t r a ve r s e d d i s t a n c e
[論文 7 ∼ 13]」
, Environment and Behavior 12(1), 65-79,
「距離知覚についての主な既往研究と影響要因についてまとめる。影響要因は、経路の物理的特 徴に関わる「刺激中心要因群」と、被験者本人の年齢や性別、所得差などの「被験者中心要因群」 、
[1980] [ 論 文 10]SADALLA
。」 経路や目的地に対するイメージなどの「被験者・刺激中心要因群」に大別される [論文 14]
E. K.:The percept ion of traversed distance-
「
intersections
るとし、
,
[論文
]は所得差や階級意識による社会的な居住領域の認識が距離判断に影響す
ら[論文
]や
[論文
]は、目的地が街の中心部の方向にあるか周辺かと
Environment and
いった場所の意味が影響要因となり、 好ましい目的地ほど距離は短く近くされるとしている。また、
Behavior 12(2), 167-182,
混雑している道路[論文
[1980]
]など障害物のある経路や地形が複雑な経路[論文
]はいずれも長
」 く知覚されることも報告されている。
[ 論 文 11]STAPLIN L. J.:Distance cogntion
「一方、歩行移動による距離知覚に影響を与える要因は「刺激中心要因群」に分類されるものが
in urban environments ,
多く、
Professional Gepgrapher
よりも長く知覚されることを報告しており、その理由として上りの歩行に要する身体的エネルギー
33(3), 302-310,[1981]
負荷に加え、上り下り両方における勾配のある道路を安全に歩くための情報処理に費やされる労
[ 論 文 12]ALLEN G.
」 力の影響を挙げている。
[論文
]や大野ら[論文
]が階段の影響について、上り下りともに距離は平地
L.:A developmental perspective on the
また五十嵐ら[1998]は、実時間を時間認識の側面から考察し、意識距離に影響を
diffects of "subdividing"
及ぼすと考えられる季節や天気などの周辺環境要因に関する不快感度について評価を
macrospatial experience
行った。その結果、「地点間を移動する際、諸要素から受ける不快感度が強いほど意識
, Journal of Experimental
距離は長くなる」ということを実証している。
Psychology, Human
西出ら [1999]は、歩行時における「主観的な距離」と「客観的な距離」との「ずれ」
Learnin and Memory 7,
を分析し、歩行速度と、経験的な要素、流動的な視点をもつ行為の 3 要素が距離認知
120-132,[1981]
に影響を及ぼすことを示唆した。
[ 論 文 13]ALLEN G. L.:
大野ら [2001]は、通い慣れた屋外経路における距離認知に関する研究を行った。結
E f f e c t s o f t h e c o g n i t i ve
果として、坂は上りが長く、下りが短く認知されるが、階段は上り下りどちらも長く認
organization of route
知される傾向があり、人・自転車の多いところは長く、商店や樹木の多いところは 短
knowledge on judgements
く認知される傾向があること、また、閉鎖的な空間を通ってきた場合、開放的なところ
of macrospatial distance ,
は短く認知される傾向を明らかにした。
Memory and Cognition 13, 218-227,[1985]
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-025-
第 3 章 研究方法
[
論
文 14]BRIGGS R.:
Methodologies for the mesurement of cognitive
また大野ら[2004]は曲折角度および T 字路などの交差点の形状に注目し、これら
distance , Environmental
と「自動車交通量」および「経路幅」、 「視覚情報量」の距離知覚に対する影響について、
Knowing, Theories, Research
実際の街路における実験によって確かめた。結果として、 「直角曲折」を含む経路と「経
and Methods,[1976]
路幅」の狭い経路、「自動車交通量」の多い経路の距離が長く知覚されることが確かめ
文 15]APPLEYARD
られた。同時に、これらの要因は、各要因が単独に変化する経路においては多くの人に
D. : S t y l e s a n d M e t h o d s
同様の影響を与えるが、要因同士が混在する経路においてはそれらのうちのどれが影響
of Structuring A City ,
を及ぼすかは人によって異なることが明らかになった。
Environment and Behavior
西出ら [2008]は、地下歩行空間において距離の認識に関する実験を行った。その結果、
2(1), 100-116,[1970]
個人差はあるものの、そこに存在する情報の知覚の仕方が大きな影響を与えていること
[
[
論
論
文 16]CANTER D.:
がわかった。
Distance estimation in cities
鈴木ら[2002]は、地下通路を対象に周辺環境と意識距離の関係について研究した。
, Environment and Behavior
その結果、歩行環境に対して「良い」と感じる空間では意識距離が短縮される傾向があ
7(1), 59-80,[1975]
ることや、地下通路環境における意識距離短縮効果を有する空間特性を明らかにした。
文 17]LEE T. R.:
大野ら[2006]は、地下鉄駅において移動の手段や経路の構成、空間のデザインな
Pe r c e i ve d d i s t a n c e a s a
ど、主観的な移動距離や深さの評定に影響を及ぼすと考えられる環境要因に関する研究
function of direction in
を行った。結果として移動の手段においては、エスカレータおよび階段、歩行による水
the city , Environment
平方向の移動といった移動手段の異なる地下鉄駅構内の経路において、これら移動方法
and Behavior 2(1), 40-51,
によって主観的移動距離が異なることを示した。
[
論
[1970] [論文 18]大野隆造:通い慣 れた屋外経路における歩行
このように、認知距離の研究においても、実験的手法が多数を占め、被験者が非日常 的な空間において感覚時間や認知距離を測定されていることが分かる。
者の距離認知に関する研究 [2001] [
論
文 19]OKABE A.:
Distance and direction
judgment in a large-scale natural environment, Effects of a slope and winding trail , Environment and Behavior 18(6), 755-772, 1986
[論文 20]五十嵐日出夫: 環境要因を考慮した意識 距離に関する研究、土木 学会 第 53 回年次学術講 演 会 講 演 概 要 集 第 4 部、 pp.772- 773[1998] [論文 21]西出和 彦: 歩 行時における空間の距離 認知[1999] [ 論 文 22] 大 野 隆 造: 通い慣れた屋外経路にお ける歩行者の距離認知に 関する研究 , 日本建築学 会 計 画 系 論 文 集 No.549, Pp.193-198,[2001]
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-026-
第 3 章 研究方法
[論文 23]大野隆 造: 歩
3-2 基礎研究
行移動時の距離知覚に及 ぼす経路の形状と周辺環
歩行中の感覚時間の計測を行うにあたり、歩行に関する基礎的な知見をまとめたもの
境の影響歩行経路 , 日本
を、この項にて示す。
建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]
3-2-1 歩行に影響する要素、感覚時間に影響を及ぼすと思われる要素
[論文 24]西出和 彦: 地 下歩行空間における認知
歩行に影響を与える要因は様々なものがある[文 9]( 表 3-2-1-1)。
距離に関する研究[2008]
それらを大別すると、 「個々の歩行者の条件」と、 「歩行者をとりまく周囲の環境条件」
[論文 25]鈴木聡士 : 意識 距離の短縮効果を有する
の 2 つがある。既往研究との比較でも、感覚時間に影響を与える要素はほぼ網羅して いると思われる。
歩行空間の創出に関する 基礎的研究、地域学研究
表 3-2-1-1 歩行に作用するファクター
第 32 巻第 1 号、pp.173188[2002]
! !!" #$%&'
[論文 26]大野隆 造: 地
()*+,-./01/23/456/789/:;/<=/>?@AB CDEFG,HI/JK/DL/MN/DOP$%OQ/DRPST*+Q ! ! ! ! ! ! /MDUV@AB WX/YZ,WX/[\/]\/^_YZ@`AB $%aE,bc/bd/ef/gh/i\/jk/l$/%m@AB
下鉄駅における主観的な no,pq/rs/n"tPucn/vcn@ABQ
移動距離および深さに
wx,yz{|/}~=/•€H/•‚H@AB
影響する環境要因 , 日本
$%ƒ,„…/N†/‡*/ˆ‰Š{‹/Œ•Ž••{/ƒ‘*+ ! ! ! /‡+/_’/“”•–—/˜™AB
建築学会計画系論文集 No.610,P.87-92, [2006]
[文 9]日本建築学会編: 設計資料集成 3 , 単位空間 1 , 丸亀
µ¶
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-027-
第 3 章 研究方法
3-2-2 個々の歩行者の条件と平均速度 [ 論 文 27] 渡 辺 仁 史:
人々は歩行の際に、個々人の条件と、環境的な条件によって歩行速度が変化する [ 論
建築計画における行動シ
文 27][ 論文 28]( 表 3-2-2-1)。
ミュレーションに関する 研究[1978]
表 3-2-2-1 歩行者の違いによる平均歩行速度一覧 !"
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35$"% 36$#% 33$4% 37$#% 37$#%
[ 論 文 28] 樫 村: 観 覧 空間における歩行速度の 変化に関する研究[2000]
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Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
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-028-
第 3 章 研究方法
3-2-3 人間の意識の中にある歩行距離 [文9]日本建築学会編:
人々は歩行の際に、歩く距離に対しさまざまな意識を持っている [ 文 9]( 表 3-2-3-1)。
設計資料集成 3 , 単位空間
距離 600m ∼ 800m を例にとると、標準速度 60m /分で歩行する際には 10 分程度
1 , 丸亀
歩行すると、バスなどの代替手段を必要とする時間、距離になると示している。 また、ここに示されている最小単位としては、90%の人が満足する距離として、 200m が挙げられている。さらに、歩くことを問題としない距離として、400m が示さ れている。 表 3-2-3-1 人の意識の中にある歩行距離 人間の意識の中にある歩行距離 計測したもの(距離)
属性
どこで
出典
1220
70%の人が歩いて苦としない距離
業務・目的地まで
歩行者意識調査報告書,東京都総合交通対策室
600 800
バスなどの代替手段が必要な距離
イエデポリ
OECD,楽しく歩ける街,PARCO出版局
720
70%の人が歩いて苦としない距離
業務・鉄道駅まで
歩行者意識調査報告書,東京都総合交通対策室 国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
500
50%の人がそれ以上歩くのをいやがる距離
ブーラドン
500
目的地まで歩いて良いとする距離
目的地
外部空間の設計,彰国社
500
81%の人が歩く距離
イエデポリ
OECD,楽しく歩ける街,PARCO出版局
450
最適歩行時間を5分とした距離
ランコーン・ニュータウン ニュータウンの環境計画,彰国社
400
歩くことを問題としない距離
レーベマルク
300 400
歩く意欲が減少している距離
イエデポリ
OECD,楽しく歩ける街,PARCO出版局
350
歩いても良い距離
なし
住環境の理論と設計,鹿島出版社
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
300
70%以上の人が歩いても良いとした距離
バス停まで
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
300
最大許容歩行距離
空港(IATA)
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
300
100%近くの人がバスターミナルまで歩いてくる距離バスターミナル
歩行者の空間,鹿島出版会
300
市民の90%が満足する距離
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
プーラドン
300
普通に気持ち良く歩ける距離
なし
外部空間の設計,鹿島出版会
200
90%の人が満足する距離(最高距離)
なし
国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社
3-2-4 歩行速度と空間認識 [文9]日本建築学会編:
移動速度の違いによって人が認識している空間は異なる[注 9][論文 21]。速度が
設計資料集成 3 , 単位空間
速くなる程、見えているものの密度は疎になりインパクトのあるもののみ目に入ってく
1 , 丸亀
る。速度が遅くなる程、見えているものの密度は密になり、細かなものも目に入ってくる。
[論文 21]西出和 彦: 歩 行時における空間の距離
また見ている範囲 ( 視野 ) も速度によって広くなったり狭くなったりする。 また、歩行速度の違いによって認知距離は異なる。
認知[1999]
歩行速度と認知距離 距離を長く感じられる空間→歩行速度が遅い 距離を短く感じられる空間→歩行速度が速い
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-029-
第 3 章 研究方法
3-3 本研究の位置づけ 多くの感覚時間や認知距離の研究がなされている中で、全ての研究は「人の感覚時間 と物理的時間のずれ」に着目して研究が行われている。つまり、主観的な距離や主観的 な時間と、客観的な距離と客観的な時間との「ずれ」に着目し、そのずれの要因を都市 や空間において把握することを目的に行われている。それらの評価軸は「長い」「短い」 に留まり、どのような要因が感覚時間を長くしているのか、どのような要因が感覚時間 を短くしているのかという分析に特化している。すなわち多くの建築学における感覚時 間や認知距離の研究が、「短ければ短い方が良い」という視点で、研究がなされている ことが事実としてある。 しかし、現代の日本が抱える時間の捉え方として注目されている「時間の厳密化」。 これは、人が時間を正確に捉えすぎていることが、問題として指摘されているのである。 つまり、近年求められている感覚時間や認知距離の研究は、「いかにして人は時間を正 確に捉えているのか」というテーマで研究がなされるべきだと考えている。またこのよ うに「時間の厳密化」をテーマとして挙げ、日常生活における時間の厳密化を示すため には、人間の感覚時間をより日常生活に近い形でデータとして得る必要がある。従来の 手法では、人の歩行状態を「無目的状態」として実験的な手法で行われてっきた。本研 究のように、人の移動目的を考慮し、どの様に時間を正確に捉えているか解明するため には、より日常生活に近い状態で、調査を行うことが重要だと考えている。
本研究の特徴は、都市空間での時間をとらえるのに、より実際的な「歩行」状態の人 を対象として感覚時間の調査をおこなっていることである。これまで、既往研究では、 場所に合わせた特定の目的を行なっているケースや、異なる場所での歩行中の実験など は行われている。しかし、実際の都市ではの同じ場所で時間帯により、景色もそこに集 まる人もそれぞれの目的も異なっている。またそれらは、個別の現象ではない。 「どんな空間を歩いているどんな職業の人はどのように都市空間での時間を捉えてい るか」といったように、都市空間を現象的なアプローチでとらえたものはない。 実際の都市を歩く人を対象としたことで、総合的な感覚時間を得て、これを分析する ことで、実際の都市における感覚時間を変化させる要素の関係を明らかにすることがで きる。
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第 3 章 研究方法
3-4 研究フロー ◆都市の散策行動時の感覚時間測定実験 [論文 29]石井宏樹 : 都市
石井らの基礎研究 [ 論文 27] では、歩行目的の無い状態での空間移動という基礎的な
歩行時における行動と認
実験を行い、感覚時間との関係を明らかにした。しかし、実験的手法であること、基礎
知が感覚時間に及ぼす影
的な実験であるが故、日常の場面を想定しきれていないという課題が残っていた。
響、早稲田大学建築学科
本研究では、既往研究では得ることの出来なかった、より人間が日常生活で行う場面
渡辺仁史研究室卒業論文
を想定し、感覚時間との関係を明らかにしていく。
[2010]
本実験では、都市の散策行動中の「行為」 「場所」 「移動目的」の 3 つの要素に着目し、 感覚時間との関係を明らかにすることを目的とする。追跡実験を行うことにより、より 日常生活に近い状態で感覚時間の測定を行っていく。 ◆丸の内の歩行空間を移動時の感覚時間の街頭調査 歩行空間を歩いている人々の感覚時間を計測し、歩行空間、移動目的、時間帯や人の 属性が、どの様に感覚時間に影響を及ぼしているか明らかにする。 また都市で感じる感覚時間を時系列的に解析することで、都市における時間の厳密化 や均質化を定量的に示すことを目的とする。 次頁に、研究の流れをフローチャートとして示す ( 図 3-4-1)。
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-031-
第 3 章 研究方法
1
3
4
5
都市の散策行動時の感覚時間測定実験
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ ■
都市の散策行動中の「行為」「場所」「移動目的」の 3 つの要素に着目し、 感覚時間との関係を明らかにする。追跡実験を行うことにより、より日常 生活に近い状態で感覚時間の測定を行っていく。 「行為」「空間」「移動目的」
2
調査空間選定のための街頭調査 / 東京駅周辺における空間の印象評価
□ □ □ ■ 調査空間の決定
□ □ ■
丸の内の歩行空間を移動時の感覚時間の街頭調査
□ □ □ ■
歩行空間を歩いている人々の感覚時間を街頭調査にて計測し、歩行空間、 移動目的、時間帯や人の属性が、どの様に感覚時間に影響を及ぼしている か明らかにする。
歩行時の人間の感覚時間に影響を及ぼす要素の抽出ー感覚時間モデルー
□ □ □ ■
感覚時間と構成要素との関係を明らかにし、モデルの作成を行う。
感覚時間モデルをもとに都市における時間の厳密化の検証 都市で感じる感覚時間を時系列的に解析することで、都市における時間の 厳密化や均質化を定量的に示す。
図 3-4-1 研究フロー
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-032-
第 4 章
Chapter 4
実験結果 −都市を散策時の感覚時間測定実験−
1 実験方法 1-1 実験目的 1-2 実験概要 1-3 実験方法 2 実験結果 2-1 都市毎の感覚時間の差 2-2 被験者毎の感覚時間の差 2-3 行動の違いによる感覚時間の差 2-4 移動形態による感覚時間の差 2-5 被験者毎の行動履歴と感覚時間 3 まとめ
-033-
第 4 章 実験結果
4-1 実験方法 4-1-1 実験目的 石井らの基礎研究では、歩行目的の無い状態での空間移動という基礎的な実験を行い、 感覚時間との関係を明らかにした。しかし、実験的手法であること、基礎的な実験であ るが故、日常の場面を想定しきれていないという課題が残っていた。 本研究では、既往研究では得ることの出来なかった、より人間が日常生活で行う場面 を想定し、感覚時間との関係を明らかにしていく。 本実験では、都市の散策行動中の「行為」 「場所」 「移動目的」の 3 つの要素に着目し、 感覚時間との関係を明らかにすることを目的とする。追跡実験を行うことにより、より 日常生活に近い状態で感覚時間の測定を行っていく。
4-1-2 実験概要 本実験では、都市の散策行動中の被験者の追跡実験を行うことで、既往研究では得る ことの出来なかった、日常的な生活の中での感覚時間にせまる。 被験者に都市の散策行動を行ってもらい、どの様な行為をしているのか、どの様な場 所にいるのか、どの様な目的で移動をしているのかを記録し、その行為と行為の間毎に 感覚時間の測定を行う。散策する都市は、丸の内・銀座・秋葉原・新宿の4つの都市で 実験を行う。 そのデータを基に、行為毎に感覚時間に差があるか、場所毎に感覚時間に差があるか、 移動の目的毎に感覚時間に差があるか、都市毎に感覚時簡に差があるかを明らかにして 行く。
図 4-1-2-1 実験風景
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第 4 章 実験結果
4-1-3 実験方法 ■実験日 2010 年 6 月 28 日∼ 2010 年 8 月 23 日 ■被験者 早稲田大学建築学科学生 12 名 ■実施場所 丸の内、銀座、秋葉原、新宿 ■分析対象 丸の内:2 名 銀座:3 名 秋葉原:2 名 新宿:2 名 ■使用機材 ストップウォッチ、記録用紙 ■実験方法 ⃝実験者 1 名、被験者 1 名のペアで実験を行う。 ⃝被験者は普段通りに都市の散策行動を行ってもらう。 ⃝原則、行動の制約は皆無である。(ただし例外もあるので、教示を行う。) ⃝被験者の散策行動を実験者が記録用紙に記入する。 ■実験手順(図 4-1-3-1) 1. 教示を受ける。 2. 都市の散策行動を開始。(移動開始) 3. 移動中、何点か口頭質問に回答する。 4. 移動終了。移動にかかった感覚時間を回答する。 5. 行為開始。 6. 行為中、何点か口頭質問に回答する。 7. 行為終了。行為をしていた感覚時間を回答する。 (以上を散策行動を終えるまで繰り替えし行う)
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第 4 章 実験結果
1
都市の散策行動開始(移動開始)
移 動
2
目的地の有無 【実験者記録】
間の調査
移動している場所、移動軌跡
時間測定終了・感覚時間の調査
□ □ □ □ ■
時間測定開始 【被験者への口頭質問】 行為の目的 【実験者記録】 行為をしている場所、行為
時間測定終了・感覚時間の調査
時間測定開始 【被験者への口頭質問】 目的地の有無 【実験者記録】 移動している場所、移動軌跡
時間測定終了・感覚時間の調査
□ □ □ □ ■
□ ■
□ □ □ □ ■
移動終了・行為開始
行 為
X
【被験者への口頭質問】
行為終了・移動開始
移 動
4
□ ■
時間測定開始
移動終了・行為を開始(買物・食事等)
行 為
3
□ □ □
□ □ □ □ □
□□
時間測定開始 【被験者への口頭質問】 行為の目的 【実験者記録】 行為をしている場所、行為
時間測定終了・感覚時間の調査
都市の散策行動終了
図 4-1-3-1 実験フロー
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第 4 章 実験結果
■教示内容 ⃝あらかじめ指定した都市で都市の散策行動を行ってもらう。 ⃝出発地点より歩いて行ける範囲であれば、どこまで行っても構わない。 ⃝ただし、電車等の交通機関を使用すること(自転車も含む)は認めない。 ⃝散策行動中は、基本的にこちらから行き先の指示は出さない。 ⃝散歩をする、自分が行きたい店で買物をする、お茶をする、ご飯を食べる等、普 段街を散策する行動(以下、行為)と同じ様に散策をしてもらう。 ⃝時間制限は無い。自分が散策行動を終了したいタイミングで散策を終わりにする。 ⃝途中、実験者より何点か質問をするのでその都度、回答を行ってもらう。 ⃝歩きやすい服装で参加すること。 ⃝指示された地点から、目的地に向かって歩くこと。 ⃝自分のペースで歩くこと。 ⃝周囲のものは見ても良いが、途中で立ち止まらないこと。 ⃝時間を数えないこと、時計を外し、時間を見ないこと。 ⃝万が一、現在の時刻を知ってしまった場合、速やかに実験者に報告すること。 ■感覚時間の調査方法 「移動」および「行為」の感覚時間を測定する。回答者には単独で歩行してもらい、 後ろから調査者がストップウォッチを持って追従する。 またゴール地点では、「スタートの合図から「ストップの合図までの間に、どの位の 時間が経過したと感じたか」を口頭で回答してもらい、調査者がストップウォッチで計 測した歩行時間と、先の感覚時間を調査票に記録する。 感覚時間を感覚時間比に変換し、分析を行う。感覚時間比とは、時計時間と感覚時間 のずれを割合で表したものであり、調査経路の距離が異なっても、時間の感じ方が読み 取ることが可能になる。感覚時間比が正の値ほど、時間を長く感じていることを示し、 負の値ほど、時間を短く感じていることを示す。例えば時計時間 60 秒の時の感覚時間 比が 0.5 の場合、感覚時間は 90 秒、つまり 1.5 倍に時間を捉えていることが分かる。 本報では感覚時間の誤差± 20% まで、つまり感覚時間比が± 0.2 までの値を感覚時 間が「正確」と定義する。また誤差が 20% 以上、感覚時間比が 0.2 以上の値は感覚時 間が「長い」、20% 未満、感覚時間比が 0.2 未満の値は感覚時間が「短い」と定義する。
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第 4 章 実験結果
4-2 実験結果 4-2-1 都市毎の感覚時間の差 ここでは、実験を行った 4 つの都市毎に、全被験者の感覚時間比の平均をグラフに 示す ( 図 4-2-1-1)。 ここで特徴的であるのが、丸の内、銀座、新宿で実験を行った被験者においては、正 確に時間を捉えているのに対し、秋葉原で実験を行った被験者においては、時間を長く 捉えていることが分かる。また、銀座で実験を行った被験者は、感覚時間が非常に正確 であることも明らかとなった。
図 4-2-1-1 都市の違いによる感覚時間の差
4-2-2 被験者毎の感覚時間の差 ここでは、被験者毎に、実験の全行程の感覚時間比の平均をグラフに示す ( 図 4-2-12)。グラフの横軸は被験者 ID となる。M は丸の内、G は銀座、A は秋葉原、S は新宿を示し、 後ろの数字は、被験者番号を示す。 時間を正確に捉えている被験者は M!、G1、G2、S1、S2 であり、特に G1 と G2、S1 の被験者が非常に時間を正確に捉えていることが分かる。前項でも明らかになったが、 銀座の被験者は特に正確であり、被験者も時間を正確に捉えていることが分かる。
図 4-2-1-2 被験者毎の感覚時間の差
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第 4 章 実験結果
4-2-3 行動の違いによる感覚時間の差 ここでは、実験中の行動を移動、買物、飲食に分類し、行動毎に、被験者の感覚時間 比の平均をグラフに示す ( 図 4-2-3-1)。 ここで特徴的であるのが、移動している時の人の感覚時間は正確であること、また買 物をしている時の感覚時間はやや長く感じること、飲食をしているときの感覚時間は短 く感じられていることである。
図 4-2-3-1 行動の違いによる感覚時間の差
次に、各行動毎の被験者の分布を以下に示す。まずはじめに、移動中の被験者の感覚 時間比の分布を示す ( 図 4-2-3-2)。 移動中の被験者の感覚時間比の平均は 0.05 であるので、概ね正規分布に従っている といえる。分布図をみても、正確に時間を捉えている人が多いことが分かる。
図 4-2-3-2 移動中の被験者の感覚時間比の分布
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第 4 章 実験結果
次に、買物中の被験者の感覚時間比の分布を示す ( 図 4-2-3-3)。 買物中の被験者の感覚時間比の平均は 0.16 であるので、最もサンプル数の多い 0-0.1 の範囲を逸脱していることが分かる。
図 4-2-3-3 買物中の被験者の感覚時間比の分布
次に、飲食中の被験者の感覚時間比の分布を示す ( 図 4-2-3-4)。 飲食中の被験者のサンプル数が少なく、分析に適していないことが分かる。
図 4-2-3-4 飲食中の被験者の感覚時間比の分布
ここでは、行動別に感覚時間比の違いをみてきたが、買物、飲食などは店舗の持って いるコンテンツ力、コンテンツに対する被験者の興味度、集中度、購買意欲などの人間 の心理状態が大きく起因し、純粋に空間要因等と感覚時間との関係を分析することは出 来ないことが分かった。本研究では、移動という行動に着目し、分析を行っていく。
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第 4 章 実験結果
4-2-4 移動形態による感覚時間の差 前項では、買物や飲食などコンテンツ力に影響を受ける行動ではなく、移動に着目し て感覚時間の分析を行っていくことが有効であることが分かった。 本項では、まず移動形態に分類して感覚時間の分析を行っていく。ここで指す、移動 形態とは「目的を達成するために行う移動」と「無目的にぶらぶらする移動」の二つで ある。これら二つの形態に移動を分類した理由を以下に述べる。 新宿伊勢丹の地下売り場は 2007 年に行った改修により、通路幅を 3.6m と百貨店の 地下売り場通路としては広めな幅に広げた。広い通路は混雑を緩和する機能を持つ。地 下売り場は上層階で買物をした荷物を抱えた買物客も多く、抵抗無く通過しやすいもの となっている。この幅は、買物客に存在する二つの速度を考慮したものである。一つは 全体を見渡すために一回りしたり、目的の店に行くために移動する時の巡航速度で、も う一つが、ケース内の商品を物色する時の停滞に近い速度である。 この様に一つの通路に買物客にあらわれる二つの状態を考慮し、それぞれに対する二 つの速度という特性を計画にうまく活かすという事例もあることは事実である。 先に挙げた例は、あくまで商業施設内の話であるが、都市の散策においても例外では 無い。 現代は効率性と体験性の二極化や状況軸で捉えることの重要であり、都市の散策行動 時の移動も大きく分けて二つの状態があると考える。 そこで本項では、効率性につながる「目的を持っている状態」 (以下、直行行動)と「無 目的にぶらぶらする状態」(以下、ぶらぶら行動)の二つに分類し、分析を行う。 以下に、2つの行動形態毎の感覚時間比の差を示す ( 図 4-2-4-1)。 移動の目的を持っている人々(直行)の感覚時間は正確であり、時間を非常に正確に 捉えていることが分かる。それに対し、無目的状態で移動をしている人々 ( ぶらぶら ) の感覚時間は、長い傾向があり、時間を長く捉えている。 ここで分かることは、人は移動の目的の有無が影響を及ぼしているということである。
図 4-2-4-1 移動形態毎の感覚時間の違い
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第 4 章 実験結果
次に、歩行形態別にサンプル数の分布を以下に示す ( 図 4-2-4-2)( 図 4-2-4-2)。 ここで分かることが、直行で移動を行っている被験者のサンプルは、ばらつきが少な いのに対し、ぶらぶらで移動を行っている被験者のサンプルはばらつきが多いことが分 かる。
図 4-2-4-2 直行移動のサンプルの分布
図 4-2-4-2 ぶらぶら移動のサンプルの分布
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第 4 章 実験結果
4-2-5 被験者毎の散策行動履歴と感覚時間 □被験者 ID : M1 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-1 被験者 ID:M1 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : M2 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-2 被験者 ID:M2 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : M3 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-3 被験者 ID:M3 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : M4 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-4 被験者 ID:M4 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : M5 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-5 被験者 ID:M5 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : G1 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-6 被験者 ID:G1 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : G2 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-7 被験者 ID:G2 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : A1 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-8 被験者 ID:A1 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : A2 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-9 被験者 ID:A2 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : S1 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-10 被験者 ID:S1 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
□被験者 ID : S2 凡例 移動 直行 ぶらぶら 買物 飲食
図 4-2-5-11 被験者 ID:S2 の行動履歴と感覚時間
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第 4 章 実験結果
4-2 まとめ ⃝実験を行う都市毎に正確に時間を捉えられる街、長く時間を捉える街など、感覚時間 に差があることが分かった。 ⃝人は行う行動毎に感覚時間に差があることが分かった。 ⃝飲食・買物行動中の人の感覚時間は、その行為への興味度や満足度、店舗や商品の持っ ているコンテンツ力に影響を受けてしまい、データにばらつきが出ることが分かった。 ⃝移動中の人の感覚時間は、目的地の有無や、歩行空間の違いが大きく起因している可 能性を見出すことが出来た。
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第 5 章
調査結果
Chapter 5
−歩行空間を移動時の感覚時間の街頭調査−
1 調査方法 2 回答者属性 3 歩行空間・属性・時間帯と感覚時間 4 歩行空間毎にみた感覚時間の比較 5 移動目的毎にみた感覚時間の比較 6 一日の時間変化と感覚時間 7 歩行空間と感覚時間の時系列的解析
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第 5 章 調査結果
5-1 調査方法 5-1-1 調査目的 前章では、都市散策中に人間の感覚時間に影響を及ぼす要因として、空間や行動の目 的が起因しているという結果を得た。 本章では、歩行空間を歩いている人々の感覚時間を計測し、歩行空間、移動目的、時 間帯や人の属性が、どの様に感覚時間に影響を及ぼしているか明らかにする。 また都市で感じる感覚時間を時系列的に解析することで、都市における時間の厳密化 や均質化を定量的に示すことを目的とする。
5-1-2 調査地 本研究では、丸の内エリアを調査地とした。丸の内は日本を代表するビジネス街であ るが故、時間の厳密化・均質化が進んでいる場所であること、また一方でビルの低層部 に商業施設を多く設けているため、買物客や観光客が多く、多様な人々が様々な生活を 送っていることがまず第一に挙げられる。 [ 文 10] 大 手 町・ 丸 の 内・有楽町地区まちづく
また東京駅周辺である、大手町・丸の内・有楽町地区[以下、大丸有地区]では、古
り ガ イ ド ラ イ ン 2008:
くから首都東京の玄関として、実に計画的に開発が行われてきた。
http://www.aurora.dti.
現在では、千代田区、東京都、大丸有地区再開発計画推進協議会、JR 東日本の 4 者
ne.jp/ ppp/guideline/
により構成される「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり懇談会」が、公共と民間の
index.html
協力・協調[P. P. P.]によって都心に相応しいまちづくりを進めることを目的としたガ イドライン ( 図 5-1-2-1)[ 文 10] に沿って再開発が行われている。そのガイドラインに
[文 11]大手町・丸の内・
は将来像として、8 つの目標 ( 表 5-1-2-1) があり、その内の 1 つには「便利で快適に歩
有楽町地区まちづくりガ
けるまち」という豊かな歩行者空間を創造することが盛り込まれている。
イドライン 2008 , 資料編
また、2007 年には大手町地区には歩行者の中心となる軸が存在していないとし、回
p7
遊性、快適性向上のため丸の内・有楽町地区の歩行者中心軸である仲通り機能を延伸し、 豊かで快適な歩行の中心軸を形成することを検討した報告書 [ 文 11] が懇談会に提出さ れている ( 図 5-1-2-2)。 表 5-1-2-1 ガイドライン内の 8 つの目標 将来像として掲げる8つの目標 (1)時代をリードする国際的なビジネスのまち (2)人々が集まり賑わいと文化のあるまち (3)情報化時代に対応した情報交流・発信のまち (4)風格と活力が調和するまち (5)便利で快適に歩けるまち (6)環境と共生するまち (7)安心・安全なまち (8)地域、行政、来街者が協力して育てるまち
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第 5 章 調査結果
[ 文 10] 大 手 町・ 丸 の 内・有楽町地区まちづく り ガ イ ド ラ イ ン 2008: http://www.aurora.dti. ne.jp/ ppp/guideline/ index.html
図 5-1-2-1 まちづくりガイドライン
[文 11]大手町・丸の内・ 有楽町地区まちづくりガ イドライン 2008 , 資料編 p7
図 5-1-2-2 大手町仲通ろ延伸計画
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第 5 章 調査結果
次に調査地である、丸の内に多数存在する歩行空間の中から、本調査で調査を行う空 間選定について述べる。 調査空間は、歩行している人々が受ける印象が異なる空間であること、それにより感 じる感覚時間に差があるであろう空間を、調査対象の歩行空間とする。 先に示した東京駅周辺の概要より、実験場所の候補地を決定し、街頭調査をアンケー トにて行った。アンケートでは、以下の項目を調査した。 ◆ 歩きやすさ(とても歩きやすい:5、やや歩きやすい:4、どちらでもない:3 やや歩きにくい:2、とても歩きにくい:1) ◆ 開放感 (とても開放的である:5、やや開放的である:4、どちらでもない:3 やや開放的でない:2、とても開放的でない:1) ◆ 車通り (とても多い:5、やや多い:4、どちらでもない:3 やや少ない:2、とても少ない:1) ◆ 歩行者の多さ(とても多い:5、やや多い:4、どちらでもない:3 やや少ない:2、とても少ない:1) ◆ 店舗の多さ(とても多い:5、やや多い:4、どちらでもない:3 やや少ない:2、とても少ない:1) ◆ 情報量、見るものの多さ(とても多い:5、やや多い:4、どちらでもない:3 やや少ない:2、とても少ない:1) ◆ 騒がしさ(とても騒がしい:5、やや騒がしい:4、どちらでもない:3 やや静か:2、とても静か:1) これらの項目に対して、空間的要因をどう認知したのか、その場にいる歩行者に評価 してもらう。これにより、人々の印象が異なる空間であることを示す。
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第 5 章 調査結果
□実施日時 2010 年 9 月 13 日(月曜日) 9:00 12:00 14:00 17:00 □調査場所の候補地の選定 前項にて示した東京駅周辺の概要より、以下の 2 点を考慮して実験場所の調査地の 選定を行った。 ・東京駅周辺の歩行空間の軸となる日比谷通り、永代通り、仲通り、大名小路、馬場先 通り、などを含めた東京駅周辺の街路を網羅する。 ・「人間の意識の中にある歩行距離」から、「90% の人が歩いても良いとする距離」 200m と、「目的地まで歩いて良いとする距離」500m の間の距離を「快適に歩くこと [論文 21]西出和 彦: 歩
ができる距離」と設定 [ 論文 21] し、実験場所の候補地とする。
行時における空間の距離 認知[1999]
調査の候補地の配置図を ( 図 5-1-2-3) に示し、空間の写真を ( 図 5-1-2-4) に示す。
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第 5 章 調査結果
1
4 5
2
6
3
7
10 1 11 12 1
8
9
13
17 18 14
20
19
15
16
0m 0m
50m
100m
250m
N ↑
500m
図 5-1-2-3 調査候補地の配置図
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第 5 章 調査結果
図 5-1-2-4 調査候補地の写真
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第 5 章 調査結果
□調査場所選定結果
■実施日時 2010 年 9 月 13 日(月曜日) 9:00 12:00 14:00 17:00 ■有効回答数 60 名 ■属性 20 カ所の実験場所候補地につき 3 つの回答を得た。 性別、職業、年齢は以下に示す ( 表 5-1-2-2)( 表 5-1-2-3)( 表 5-1--2-4)。 ■実験結果 アンケートの結果の詳細は資料編に示す。 表 5-1-2-2 性別
性別
人数[人]
割合[%]
男性
32
53.33%
女性
28
46.67%
表 5-1-2-3 年齢
年齢
人数[人]
割合[%]
20代
20
33.33%
30代
15
25.00%
40代
13
21.67%
50代
10
16.67%
60代
2
3.33%
表 5-1-2-4 職業
職業 会社員
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人数[人]
割合[%] 45
75.00%
専業主婦
4
6.67%
学生
9
15.00%
無回答
2
3.33%
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第 5 章 調査結果
街頭調査より得られたアンケートをもとに、調査場所の選定をする。得られた結果の うち特に特徴のあった空間3つを以下に示す(図 5-1-2-5)。
図 5-1-2-5 調査結果
今回は後の調査において、移動目的・職業などに着目することから、選定する調査空 間は、特に様々な属性が歩行すると思われる空間とする。したがって、アンケート結果 より、「歩きやすさ」、「店舗の多さ」に着目し、選定を行う。 以下に、選定を行った際、特徴が顕著にあらわれた 3 つの空間の特徴を示す。 店舗の数については空間 4 に対してとても多いという回答が多く、次いで空間 3、空 間 6 に対しては、とても少ないという認識をしている歩行者が多いことが分かる(図 5-1-2-6)
図 5-1-2-6 店舗の数
歩きやすさについては、空間 6 がとても歩きやすく、次いで空間 3、空間 4 はやや 歩きにくいという認識をしている歩行者が多い(図 5-1-2-7)。
図 5-1-2-7 歩きやすさ
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第 5 章 調査結果
□調査場所概要 以下に実験場所の地図、写真を示す ( 図 5-1-2-7)( 図 5-1-2-7)( 図 5-1-2-7)( 図 5-1-27)。 「街並み形成型まちづくり」を参考に 3 箇所の調査場所の特徴を記述する。 ここにて、調査場所候補地番号を調査場所記号へ変更する。 例)調査場所候補地番号→調査場所記号:特徴の記述。 3 →空間 A: [209m]大名小路、仲通りを横切り、日比谷通りへと向かう空間である。 ヒューマンスケールで親しみを感じさせる。また、整備が行き届いており、整然として いる。 4 →空間 B: [375m]仲通り沿いの歩行空間である。【アメニティ・賑わい軸】として、 街区に整然と建物が建ち並ぶ街並みを再構築し、ヒューマンスケールの「憩い」空間を 創出している。また、建物低層部は、立地特性や建物の特性に応じて店舗や飲食店を誘 導して賑わいのある通りとして整備されている。 6 →空間 C: [325m]有楽町駅前広場周辺から日比谷通りへとのびる歩行空間である。 有楽町のにぎわいが顕著に表れている。
A
B
C
0m 0m
50m
100m
250m
N ↑
500m
図 5-1-2-7 調査地
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第 5 章 調査結果
■空間 A
図 5-1-2-8 空間 A
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第 5 章 調査結果
■空間 B
図 5-1-2-9 空間 B
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第 5 章 調査結果
■空間 C
図 5-1-2-10 空間 C
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第 5 章 調査結果
5-1-3 調査概要 ⃝対象者 :ランダムに選んだ歩行者 111 名(表 5-1-3-1) ⃝日時 :2010 年 11 月 25 日∼ 11 月 30 日 ⃝調査項目:性別、年齢、職業、移動目的、調査場所を 訪れる頻度、感覚時間、時間帯 表 5-1-3-1 調査対象者と分析対象者 時間帯
調査対象者(人)
分析対象者(人)
08:00∼10:00
14
13
10:00∼12:00
23
23
12:00∼14:00
15
14
14:00∼16:00
21
21
16:00∼18:00
22
19
18:00∼20:00
16
16
合計人数
111
106
本研究では、調査項目に移動目的があるため、被験者による実験的手法ではなく、調 査として行った。その理由として、移動目的は実験の教示で設定すると、データの信憑 性が著しく低下することが挙げられ、より日常生活に近い状態でサンプルを採取する必 要があると考えたからである。 調査は、丸の内の 3 つの歩行空間において、街頭調査で行った。調査回答者は、調 査対象の歩行空間に向かって歩いて来ている歩行者を、歩行空間に対して車道を挟んだ 対岸の地点 A にて声かけをし、その中で調査対象の歩行空間に向かって歩行する歩行 者を回答者とした(図 5-1-3-1)。
Start
Goal
地点 A
調査対象 歩行空間
時間計測(実時間)
図 5-1-3-1 回答者への声かけ地点
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-068-
第 5 章 調査結果
5-1-4 調査方法 こちらで予め設定した歩行空間のスタート地点から、ゴール地点まで歩行してもらう。 回答者には単独で歩行してもらい、後ろから調査者がストップウォッチを持って追従 する。スタート地点、ゴール地点共に「スタート」「ゴール」の発声を調査者が行い、 ゴール地点にて調査票の回答を行う。またゴール地点では、「スタートの合図から「ス トップの合図までの間に、どの位の時間が経過したと感じたか」を口頭で回答してもら い、調査者がストップウォッチで計測した歩行時間と、感覚時間を調査票に記録する ( 図 5-1-4-1)。
1
調査協力者の捕捉
□ □ □
2
□ ■
⃝自分のペースで歩くこと。 ⃝時間を数えないこと、時間を見ないこと。 ⃝万が一、現在の時刻を知ってしまった場合、速や かに実験者に報告すること。
時間測定終了・感覚時間の調査
移動開始
移 動
3
教示 ⃝現在地から、指定した目的地に向かって歩くこと。
□ □ □ □ ■
時間測定開始・発声「スタート」 ストップウォッチで時間計測
時間測定終了・発声「ゴール」
移動終了・感覚時間調査・回答用紙記入
図 5-1-4-1 調査フロー
5-1-5 教示内容 ⃝現在地から、指定した目的地に向かって歩くこと。 ⃝自分のペースで歩くこと。 ⃝時間を数えないこと、時間を見ないこと。 ⃝万が一、現在の時刻を知ってしまった場合、速やかに実験者に報告すること
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-069-
第 5 章 調査結果
5-2 回答者属性 5-2-1 歩行空間 以下に、本調査で調査を行った 3 つの空間での、空間毎の人数の比率を示している。 今回の調査では空間毎に人数のばらつきが無い様に調査を行ったため、3 つの空間では ほぼ人数に差が無く、回答者を集めることが出来た。
図 5-2-1-1 空間毎の回答者人数比
5-2-2 性別 以下に、本調査で調査を行った回答者の、性別毎の人数の比率を示している。性別毎 においても人数の比率に偏りは無く、ほぼ同数の回答者となっている。
図 5-2-2-1 性別毎の回答者人数比
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-070-
第 5 章 調査結果
5-2-3 年代 以下に、本調査の回答者の、年代毎の回答者数を示している。回答用紙は 10 代毎に 丸を付ける形式を取ったため、10 代毎の回答者数表記となっている。丸の内という土 地柄もあり、主に回答者の属性は 20 代∼ 50 代がメインとなっている。特に 20 代の 回答者が多い。
図 5-2-3-1 年代毎の回答者数
5-2-4 職業 以下に、本調査の回答者の、職業毎の回答者数を示している。オフィスビルが多いで の調査であったため、会社員が回答者に多い。
図 5-2-4-1 職業別の回答者人数比
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-071-
第 5 章 調査結果
5-2-5 移動目的 以下に、本調査の回答者の、目的毎の回答者数を示している。夕方の時間帯に行った 調査で帰宅者が多かったため、帰宅目的で移動をしている人が多い結果となった。目的 を「その他」と回答した回答者は、営業中や取引先に向かっているなど、仕事中に移動 しているケースが多く見受けられた。
図 5-2-5-1 目的毎の回答者数
5-2-6 頻度 以下に、本調査の回答者の、頻度毎の回答者数を示している。会社員の回答者が多かっ たため、「ほぼ毎日」丸の内に訪れている人が圧倒的に多かった。
図 5-2-6-1 頻度別の回答者数
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-072-
第 5 章 調査結果
5-2-7 時間帯 以下に、本調査の回答者の、時間帯毎の回答者数を示している。各時間帯とも、均等 に回答者を集めたため、ほぼ同数の回答者が各時間帯に回答している。
図 5-2-7-1 時間帯毎の回答者数
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-073-
第 5 章 調査結果
5-3 歩行空間・歩行者属性・時間帯と感覚時間 5-3-1 歩行空間と感覚時間 以下に、3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均を以下に示す。 3つの歩行空間毎に感覚時間比を用いてその差を比較したとき、歩行空間空間 3 お よび空間 6 の空間においては、感覚時間比が 0 に近似しており、感覚時間が正確であ る人が多い傾向がある。また空間 4 の空間では感覚時間比の値が大きいことから、時 間を長く捉えている傾向がある。
図 5-3-1-1 歩行空間毎の感覚時間比
図 5-3-1-2 歩行空間毎の感覚時間比の人数分布
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-074-
第 5 章 調査結果
5-3-2 性別と感覚時間 以下に、性別毎の感覚時間比の平均を以下に示す。 性別毎に感覚時間比を用いてその差を比較したとき、男性回答者、女性回答者共に感 覚時間は正確であることが分かる。 ただし男性よりも女性の方が若干、時間を長く捉えている傾向がある。
図 5-3-2-1 性別毎の感覚時間比
図 5-3-2-2 性別毎の感覚時間比の人数分布
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-075-
第 5 章 調査結果
5-3-3 年代と感覚時間 以下に、年代毎の感覚時間比の平均を以下に示す。 年代毎に感覚時間比を用いてその差を比較したとき、20 代∼ 50 代までの回答者は 概ね、正確に時間を捉えていることが分かる。 70 代の回答者については、大幅に時間を長く捉えているため、データとして分析に 用いるか検討する必要がある。
図 5-3-3-1 年代毎の感覚時間比
図 5-3-3-2 年代毎の感覚時間比の人数分布
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-076-
第 5 章 調査結果
5-3-4 職業と感覚時間 以下に、職業毎の感覚時間比の平均を以下に示す。 職業毎に感覚時間比を用いてその差を比較したとき、学生や会社員の感覚時間は正確 であることが分かる。 主婦に関しては、時間を長く捉えている傾向がみられた。
図 5-3-4-1 職業毎の感覚時間比
図 5-3-4-2 職業毎の感覚時間比の人数分布
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-077-
第 5 章 調査結果
5-3-5 移動目的と感覚時間 以下に、移動目的毎の感覚時間比の平均を以下に示す。 移動目的毎に感覚時間比を用いてその差を比較したとき、まずここで特徴的なのが、 出社・帰宅・帰社などといった仕事関連の移動目的の回答者の感覚時間が正確であると いうことである。仕事関連で丸の内を訪れている人は、訪問頻度などが起因し、時間を 正確に捉えられているのかもしれない。また買物や観光などのプライベートな目的で丸 の内を訪れている回答者は比較的、時間を長く捉えている傾向がみられた。
図 5-3-5-1 移動目的毎の感覚時間比
図 5-3-5-2 移動目的毎の感覚時間比の人数分布
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-078-
第 5 章 調査結果
5-3-6 頻度と感覚時間 以下に、頻度毎の感覚時間比の平均を以下に示す。 頻度毎に感覚時間比を用いてその差を比較したとき、特に差は見られなかった。
図 5-3-6-1 頻度毎の感覚時間比
図 5-3-5-6 頻度毎の感覚時間比の人数分布
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-079-
第 5 章 調査結果
5-3-7 時間帯と感覚時間 以下に、時間帯毎の感覚時間比の平均を以下に示す。 時間帯毎に感覚時間比を用いてその差を比較したとき、特に差はみられなかった。
図 5-3-7-1 時間帯毎の感覚時間比
図 5-3-7-2 時間帯毎の感覚時間比の人数分布
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-080-
第 5 章 調査結果
5-4 歩行空間毎にみた感覚時間の比較 5-4-1 歩行空間毎の回答者属性 【性別】 特に歩行空間毎に男女比に差は見られない。
図 5-4-1-1 性別と歩行空間の関係
【年代】 各歩行空間とも 20 代の回答者が一番多く、その他の年代の回答者に特に特徴は無い ことが分かる。従って空間毎の感覚時間比の差に影響は無いと考えられる。
図 5-4-1-2 年代と歩行空間の関係
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-081-
第 5 章 調査結果
【職業】 各歩行空間共、会社員の割合が高いことが分かる。ここで特徴的なのは、主婦の回答 者の人数である。空間 3 および空間 6 の歩行空間にはほとんど主婦がいないにも関わ らず空間 4 の歩行空間では、主婦の人数が多い傾向がある。
図 5-4-1-3 職業と歩行空間の関係
【移動目的】 空間 3 の歩行空間には買物を目的とした回答者がほぼ 0 人であるのに対し、空間 4 および空間 6 の歩行空間には買物を目的とした回答者が多くいる。
図 5-4-1-4 移動目的と歩行空間の関係
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-082-
第 5 章 調査結果
【頻度】 歩行空間毎に頻度は特に特徴は見られなかった。
図 5-4-1-5 頻度と歩行空間の関係
【時間帯】 歩行空間毎に時間帯の特徴は特に見られなかった。
図 5-4-1-6 時間帯と歩行空間の関係
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-083-
第 5 章 調査結果
5-4-2 歩行空間毎にみた歩行者属性・時間帯と感覚時間の関係 【性別】 空間 4 の歩行空間において女性の感覚時間比の値が大きいことが分かる。空間 4 の 歩行空間・女性回答者について更に分析を行うことが必要である。
図 5-4-2-1 性別と歩行空間の関係と感覚時間
【年代】 空間 3 の歩行空間において 50 代の回答者の感覚時間比の値が大きいことが分かる。 空間 3 の歩行空間・50 代の回答者について更に分析を行うことが必要である。
図 5-4-2-2 年代と歩行空間の関係と感覚時間
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-084-
第 5 章 調査結果
【職業】 歩行空間によっては回答を得られていない職業があるため、一概にグラフから傾向を 読み取ることは難しいが、総じて特徴は見受けられない。しかしながらいずれの歩行空 間においても会社員の回答者の感覚時間は極めて正確であることが分かる。
図 5-4-2-3 職業と歩行空間の関係と感覚時間
【移動目的】 空間 4 および空間 6 の歩行空間において買物目的の回答者は、時間が長く感じてい るが、空間 3 の歩行空間の買物目的の回答者の感覚時間は非常に短い。観光を目的に 訪れた回答者は、買物目的の回答者とは逆に、空間 3 および空間 4 の歩行空間の回答 者は感覚時間が長く、空間 6 の歩行空間での回答者は短く感じている傾向がある。
図 5-4-2-4 移動目的と歩行空間の関係と感覚時間
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-085-
第 5 章 調査結果
【頻度】 空間 3 および空間 4 の歩行空間では週に 1 回程度訪れる回答者の感覚時間は長く、 空間 6 の歩行空間の回答者は短く捉えている。また初めて訪れた回答者の中では、空 間 4 の歩行空間での回答者が他の歩行空間によりも長く感じていることが特徴的であ る。年に 1 回程度しか訪れない回答者も同様の傾向がある。空間 4 の歩行空間ではあ まり丸の内に訪れない、つまり丸の内に慣れていない回答者の感覚時間が長くなる傾向 が見られる。
図 5-4-2-5 頻度と歩行空間の関係と感覚時間
【時間帯】 空間 4 の歩行空間では、14:00 ∼ 16:00 の時間帯において回答者の感覚時間が長い ことが特徴的である。また 18:00 ∼ 20:00 の時間帯では空間 3 の歩行空間では感覚時 間が長いが、空間 4 および空間 6 の歩行空間では短く感じている傾向がある。
図 5-4-2-6 時間帯と歩行空間の関係と感覚時間
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-086-
第 5 章 調査結果
5-5 移動目的毎にみた感覚時間の比較 5-5-1 移動目的毎の回答者属性 【空間】 空間 3 の歩行空間には買物を目的とした回答者がほぼ 0 人であるのに対し、空間 4 および空間 6 の歩行空間には買物を目的とした回答者が多くいる。
図 5-5-1-1 空間と移動目的の関係
【性別】 買物目的の回答者は男性よりも女性の方が多い傾向がある。また出社や帰社、帰宅と いった仕事に関連する目的は特に男女の人数比に差は見られない。
図 5-5-1-2 性別と移動目的の関係
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-087-
第 5 章 調査結果
【年代】 ここで特徴的であったのが、観光目的の回答者はほとんどが 40 代であることである。 また買物目的の回答者は 20 代の回答者が多い傾向にある。
図 5-5-1-3 年代と移動目的の関係
【職業】 買物や観光目的以外の全ての項目において会社員の回答者が多いことが明らかであ る。
図 5-5-1-4 職業と移動目的の関係
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-088-
第 5 章 調査結果
【頻度】 観光目的の回答者は、初めて訪れたと回答した人が多い。基本的に回答者の多くがほ ぼ毎日丸の内に訪れている傾向がある。
図 5-5-1-5 頻度と移動目的の関係
【時間帯】 観光目的の回答者は、10:00 ∼ 20:00 までほぼ均等に分布している。また帰宅者は ほとんどが 16:00 以降に回答している。反対に出社している人々は午前中に集中して いる。昼食を目的に移動している人は 12:00 ∼ 14:00 に多い。買い物客は 12:00 以降 に滞在しているが、特に 14:00 ∼ 16:00 の間に多いことが分かる。
図 5-5-1-6 時間帯と移動目的の関係
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-089-
第 5 章 調査結果
5-5-2 移動目的と歩行空間・歩行者属性・時間帯と感覚時間の関係 【空間】 空間 3 の歩行空間に買物目的で滞在している人の感覚時間が短いことが分かる。出 社中の人は概ね感覚時間が正確であるが、空間 3 の歩行空間では長く感じている傾向 がある。また観光を目的にとおずれた人は空間 6 の歩行空間でのみ感覚時間が短い傾 向がある。
図 5-5-2-1 歩行空間と移動目的の関係と感覚時間
【性別】 女性の回答者は帰社以外の全ての目的において感覚時間が長い傾向がある。男性の回 答者は観光での感覚時間が特に長く、次いで出社中においても長い傾向がある。
図 5-5-2-2 性別と移動目的の関係と感覚時間
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-090-
第 5 章 調査結果
【年代】 観光目的の 50 代の回答者、出社中の 60 代の回答者の感覚時間が特に長いことが分 かる。また買物目的で訪れた 60 代の回答者の感覚時間が短い。
図 5-5-2-3 年代と移動目的の関係と感覚時間
【職業】 観光目的、その他の目的の主婦の回答者の感覚時間は長いことが分かる。会社員の回 答者は昼食時以外において非常に正確であることも明らかになった。
図 5-5-2-4 職業と移動目的の関係と感覚時間
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-091-
第 5 章 調査結果
【頻度】 年に一回程度しか訪れない観光目的の回答者の感覚時間が非常に長いことが分かる。 帰社を目的に移動している人でも、訪問頻度の低い回答者の感覚時間は短いことが分か る。また買物を目的に訪れた回答者のうち、訪問頻度が多くても感覚時間にずれがある ことも分かる。
図 5-5-2-5 頻度と移動目的の関係と感覚時間
【時間帯】 観光を目的に訪れた回答者のうち、特に 14:00 ∼ 16:00 の時間帯において感覚時間 が長い傾向がある。また昼食は時間帯に関わらず感覚時間が短い傾向がある。買物目的 で訪れた回答者は、時間帯が遅くなればなるほど感覚時間が長くなる傾向がある。
図 5-5-2-6 時間帯と移動目的の関係と感覚時間
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-092-
第 5 章 調査結果
5-6 一日の時間変化と感覚時間 5-6-1 時系列でみる歩行空間と感覚時間 ここでは、歩行空間毎の時間推移と感覚時間の関係をみていく。 まず歩行空間 A の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-1-1)。 歩行空間 A では、一日を通して時間を正確に捉えながら、人々が移動をしているこ とが分かる。この空間では時間が均質に捉えられていること、また厳密に捉えられてい ることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
歩行空間 A
短 い
図 5-6-1-1 時系列で見る歩行空間 A の感覚時間の推移
次に歩行空間 B の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-1-2)。 歩行空間 B においては、10 時前後および 14 時前後に時間が長く捉えられているこ とが分かる。また 18 時前後では時間が短く捉えられている。正午前後には非常に正確 に時間が捉えられている。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
歩行空間 B
短 い
図 5-6-1-2 時系列で見る歩行空間 B の感覚時間の推移
次に歩行空間 C の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-1-3)。 歩行空間 C では、歩行空間 B と同様に、10 時前後と 14 時前後に時間が長く捉えら れている。また朝 8 時前後の通勤の時間帯、18 時前後の帰宅者の多い時間帯では、時 間が短く捉えられていることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
歩行空間 C
短 い
図 5-6-1-3 時系列で見る歩行空間 C の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-093-
第 5 章 調査結果
最後に、3 つの歩行空間の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-1-4)。 空間 B および空間 C において、一日の感覚時間の推移は同じ様な推移をしているこ とが分かる。また空間 A では、その他の歩行空間が振り幅が大きいのに対し、非常に 正確な時間の捉え方がされていることが分かる。 全体的な傾向として、まず歩行空間毎に一日の感覚時間の推移に違いがあることが分 かった。しかし、異なる空間でも時間の推移が近似している空間がある。また同じ時間 帯であっても歩行空間毎に感覚時間の推移が異なることも明らかになった。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4
歩行空間 A
0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
短 い
歩行空間 B 歩行空間 C
図 5-6-1-4 時系列で見る歩行空間毎の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-094-
第 5 章 調査結果
5-6-2 時系列でみる性別と感覚時間 男性の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-2-1)。 男性は、一日を通して時間を非常に正確に捉えていることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
男性
短 い
図 5-6-2-1 時系列で見る男性の感覚時間の推移
次に女性の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-2-2)。 女性も概ね時間を正確に捉えているが、8 時前後の早い時間帯には時間を短く捉え、 10 前後には長く捉えていることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
女性
短 い
図 5-6-2-2 時系列で見る女性の感覚時間の推移
最後に性別の感覚時間の推移を時系列で以下に示し、性別毎に比較する ( 図 5-6-23)。 男女とも一日を通して、正確に時間を捉えていることが分かる。特に男性に関しては 常に時間を正確に捉えていることが分かる。女性に関しては午前中の時間帯に時間知覚 の上下が激しく、08:00 ∼ 10:00 の間は時間を短く捉え、10:00 ∼ 12:00 の間は時間 を長く捉えている。その要因として、10:00 以降、路面店等がオープンし、女性の買物 客が増加すること、買物客の多くが時間を長く捉えていることが挙げられる。全体的な 傾向として、男女別に比較したとき、一日を通して共に正確に時間を捉えているか、女 性に関しては、午前中の時間帯において正確に捉えられなくなる傾向があることが分か る。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
男性 女性
短 い
図 5-6-2-3 時系列で見る性別毎の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-095-
第 5 章 調査結果
5-5-7 時系列でみる年代と感覚時間 20 代の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-5-7-1)。 20 代の歩行者は、一日を通して時間を正確に捉えていることが分かる。しかし、18 時前後の帰宅者が増える時間帯になると、時間を短く捉える様になる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20 代
短 い
図 5-5-7-1 時系列で見る 20 代の感覚時間の推移
次に 30 代の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-5-7-2)。 30 代の歩行者も、概ね時間を正確に捉えているが、10 時前後から 16 時前後にかけ てやや長く捉える傾向がある。8時前後に一度時間を短く捉えていることが分かるが、 あとは概ね変化の少ない属性であると言える。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
30 代
短 い
図 5-5-7-2 時系列で見る 30 代の感覚時間の推移
次に 40 代の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-5-7-3)。 40 代の歩行者は、全体的に時間を短く捉えていることが分かる。特に、通勤者の多 い 8 時前後の時間帯において時間を非常に短く捉えている。また 16 時前後の時間帯に おいても同様のことがみてとれる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
40 代
短 い
図 5-6-2-3 時系列で見る 40 代の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-096-
第 5 章 調査結果
50 代の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-5-7-4)。 50 代の歩行者は、一日を通して感覚時間の推移が大きいことが分かる。特に正午前 後の時間では、非常に短く捉えている。また、他の年代では8時前後の時間帯は、正確 または短く時間が捉えられているのに対し、50 代の歩行者は、反対に時間を長く捉え ている。14 時前後においても時間が長く捉えられている。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
50 代
短 い
図 5-5-7-4 時系列で見る 50 代の感覚時間の推移
次に 60 代の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-5-7-5)。 60 代の歩行者も、一日を通して感覚時間の推移が大きいことが分かる。特に 10 陣 前後に時間が長く捉えられていること、また 14 時前後に非常に短く捉えられているこ とが特徴的である。その他の時間帯では、総じて正確に時間を捉えている。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
60 代
短 い
図 5-5-7-5 時系列で見る 60 代の感覚時間の推移
最後に年代毎の感覚時間の推移を時系列で以下に示し、年代毎に比較する ( 図 5-6-26)。 20 代および 30 代の回答者は一日を通して、正確に時間を捉えていることが分かる。 これは 30 代の回答者の属性が会社員の割合が高いことが要因であると考えられる。40 代の回答者は 08:00 ∼ 10:00 の間に、時間を非常に短く感じている。50 代、60 代の 回答者はその他の年代の回答者に比べて、時間を正確に捉える時間帯が少ないことが分 かる。全体的な傾向として、20 代、30 代などの年齢が若いうちは一日を通して正確に 時間を捉えることが出来るが、年齢を重ねるにつれて、一日を通して感覚時間の長短の 振り幅が大きくなる傾向があるといえる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
短 い
20 代 30 代 40 代 50 代 60 代
図 5-6-2-6 時系列で見る年代毎の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-097-
第 5 章 調査結果
5-6-4 時系列でみる移動目的と感覚時間 買物目的の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-4-1)。 買物目的で移動しているの歩行者は、一日を通して時間を正確に捉えていることが分 かる。しかし、16 時以降の時間帯になると時間を長く捉えている傾向がみてとれる。
0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
買物
短 い
図 5-6-4-1 時系列で見る買物目的の感覚時間の推移
昼食目的の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-4-2)。 昼食目的で移動している歩行者は、比較的正確に時間を捉えていることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
昼食
短 い
図 5-6-4-2 時系列で見る昼食目的の感覚時間の推移
出社目的の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-4-3)。 出社目的で移動している歩行者のうち、8 時前後に出社している人々の感覚時間は正 確であるが、10 時前後に出社している人々は時間を長く捉えている傾向がある。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
出社
短 い
図 5-6-2-3 時系列で見る出社目的の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-098-
第 5 章 調査結果
帰宅目的の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-4-4)。 帰宅目的で移動している人々の歩行者は、一日を通して時間を正確に捉えていないこ とが分かる。午後に帰宅する人々は、時間を短く捉えているのに対し、午前中に帰宅す る人々は時間を長く捉えていることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
帰宅
短 い
図 5-6-4-4 時系列で見る帰宅目的の感覚時間の推移
次に、帰社目的の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-4-5)。なお ここで示す、帰社とは外出先から自分の会社に戻る行為を示す。 帰社目的で移動している人々は、時間を正確に捉えていることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
帰社
短 い
図 5-6-4-5 時系列で見る帰社目的の感覚時間の推移
次に、観光目的の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-4-6)。 観光目的で移動している人々の感覚時間は、推移が大きいことが分かる。特に 14 時 前後に観光をしている人々は、時間を非常に長く捉えていることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
観光
短 い
図 5-6-4-6 時系列で見る観光目的の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-099-
第 5 章 調査結果
既出以外の目的の歩行者の感覚時間の推移を時系列で以下に示す ( 図 5-6-4-7)。 既出以外の目的の歩行者は、一日を通して正確に時間を捉えていることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
その他
短 い
図 5-6-4-7 時系列で見るその他の目的の感覚時間の推移
最後に移動目的毎の感覚時間の推移を時系列で以下に示し、移動目的毎に比較する ( 図 5-6-4-8)。 移動目的毎に感覚時間の時間の移り変わりを示す。特に特徴的であったのが、出社目 的で移動している人は、08:00 ∼ 10:00 に出社している人々と、10:00 ∼ 12:00 に出 社している人々の間に、感覚時間に大きく差があることが分かる。一般的な出社時間で ある前者は正確に時間を捉えているのに対し、10 時以降に出社している人々は、時間 を長く捉えている傾向がある。 0.8
長 い
0.6 感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
短 い
観光 帰社 帰宅 出社 昼食 買物 その他
図 5-6-4-8 時系列で見る目的毎の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-100-
第 5 章 調査結果
5-7 歩行空間と感覚時間の時系列的解析 5-7-1 歩行空間と性別からみた感覚時間の時系列推移 次の分析では、歩行空間毎に時系列的解析を行っていく。 以下は、男性回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系列で表した ものである ( 図 5-7-1-1)。 ここで特徴的であるのが、歩行空間 A と歩行空間 B では、8 時前後の時間帯∼ 18 時 前後の時間帯までは、感覚時間比がほぼ同様の推移をしているが、18 時前後の時間帯 では歩行空間 A は長く、歩行空間 B では短く時間を捉えていることが分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
正 確
0.0 -0.5
短 い
-1.0 -1.5
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
歩行空間 A 歩行空間 B 歩行空間 C
18:00
図 5-7-1-1 時系列で見る男性の歩行空間毎の感覚時間の推移
次に、女性回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系列で示す ( 図 5-7-1-2)。 男性とは異なり、女性では歩行空間 B と歩行空間 C の感覚時間の推移が、ほぼ一致 していることが分かる。ただし女性のケースでも一日の感覚時間の推移が近似している 空間同士であっても、18 時前後の時間帯に、ずれを生じていることが分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B 歩行空間 C
-0.5
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-1-2 時系列で見る女性の歩行空間毎の感覚時間の推移
男性、女性ともに歩行空間が異なっていても、時間の捉え方が似ている空間があるこ とが分かる。ただし、いずれの場合も、一日を通して全く同じ推移であることは無く、 特定の時間帯においては、時間の捉え方が異なる場合がある。本研究においては 18 時 前後の時間帯にずれが生じる傾向があった。
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-101-
第 5 章 調査結果
5-7-2 歩行空間と年代からみた感覚時間の時系列推移 以下は、年齢が 20 代の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系列 で表したものである ( 図 5-7-2-1)。 まず 8 時前後の時間帯では、空間毎に時間の捉え方が大きく異なることが分かる。 空間 A では正確に時間が捉えられ、厳密な時間が流れていること、空間 B では時間が 長く捉えられていること、空間 C では短く時間が捉えられていることが分かる。 また 12 時前後の時間帯から 16 時前後の時間帯までは、空間 B と空間 C において、 時間の捉え方がやや近似している傾向がある。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0
歩行空間 C
-0.5
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-2-1 時系列で見る 20 代回答者の歩行空間毎の感覚時間の推移
以下は、年齢が 30 代の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系列 で表したものである ( 図 5-7-2-2)。 まず全体的な傾向として、どの空間においても 30 代の回答者に関しては、とても正 確に時間が捉えられていることが分かる。つまり 30 代はどの空間においても時間の厳 密化が起きていることが分かる。 特に、空間 A が一日を通して非常に正確に時間を捉えており、時間の厳密化が起き ていることが明らかである。 また空間 B と C においては、12 時前後の時間帯から 18 時前後の時間帯においてや や長く時間が捉えられているものの、両空間の感覚時間の推移は近似していることが分 かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0
歩行空間 C
-0.5
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-2-2 時系列で見る 30 代回答者の歩行空間毎の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-102-
第 5 章 調査結果
以下は、年齢が 40 代の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系列 で表したものである ( 図 5-7-2-3)。 まず空間 A と空間 C において、8 時前後の時間帯から12時前後の時間帯、すなわ ち午前中において感覚時間の推移が近似していることが分かる。 また空間 A と空間 B においても 14 時前後の時間帯以降では、感覚時間が正確に捉え られ、推移が近似していることが分かる。特にこの 2 つの空間においては、10 時前後 の時間帯で空間 A が長く、空間 B は短く時間が捉えられ、差異が生じていることを除 けば、一日通して、40 代回答者の感覚時間の推移は、空間 A と空間 B は極めて似てい るということが出来る。 つまり空間 B における 10 時前後の時間帯の感覚時間のずれを除けば、40 代回答者 の感覚時間は、午前中の時間帯のみ空間毎にあまり差異が無いことが分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B 歩行空間 C
-0.5
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-2-3 時系列で見る 40 代回答者の歩行空間毎の感覚時間の推移
以下は、年齢が 50 代の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系列 で表したものである ( 図 5-7-2-4)。なお、50 代の回答者については、空間 A におい 18 時前後の時間帯以外のサンプルが少なく、時系列的解析に用いていない。 まず空間 B と空間 C において、8 時前後の時間帯と 18 時前後の時間帯において感覚 時間が近似していることが分かる。この時間帯は出社、帰宅の人が多い時間帯であるこ とが原因であると考えられる。 また空間 B において 14 時前後の時間帯で時間がとても長く捉えられていることが分 かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0 -0.5
歩行空間 C
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-2-4 時系列で見る 50 代回答者の歩行空間毎の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-103-
第 5 章 調査結果
5-7-3 歩行空間と職業からみた感覚時間の時系列推移 以下は、職業が会社員の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系 列で表したものである ( 図 5-7-3-1)。 まず空間 A および空間 B においては、8 時前後の時間帯において時間が正確に捉え られていることが分かる。通勤者の多い時間帯では一般的に時間が厳密に捉えられてい ると思われがちだが、空間 A と空間 B では厳密に捉えられているのに対し、空間 C で は非常に短く捉えられていることが分かる。必ずしも出勤時に時間を正確に捉えている 訳ではなく、空間によって捉え方が異なることが分かる。 空間 A と空間 B は通勤時簡に推移が近似していることが明らかになったが、空間 B と空間 C は 16 時前後の時間帯から 20 時前後の時間帯において、推移が近似している ことが分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0
歩行空間 C
-0.5
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-3-1 時系列で見る会社員の歩行空間毎の感覚時間の推移
以下は、職業が学生の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系列 で表したものである ( 図 5-7-3-2)。 まず全体的な傾向として、いずれの空間においても感覚時間の推移は近似しているこ とが分かる。特に、空間 B と空間 C が極めて近似していることが分かる。 また空間 A に関しては、一日を通して非常に正確に時間を捉えており、時間の厳密 化が起きていることが分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0 -0.5
歩行空間 C
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-3-2 時系列で見る学生の歩行空間毎の感覚時間の推移
ここで明らかになったことが、会社員は一日を通して時間の捉え方の推移が大きいの に対し、学生は比較的安定して時間を捉えていることが分かる。つまり学生は会社員よ りも均質に時間を捉えているということである。
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-104-
第 5 章 調査結果
5-7-3 歩行空間と職業からみた感覚時間の時系列推移 以下は、職業が会社員の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系 列で表したものである ( 図 5-7-3-1)。 まず空間 A および空間 B においては、8 時前後の時間帯において時間が正確に捉え られていることが分かる。通勤者の多い時間帯では一般的に時間が厳密に捉えられてい ると思われがちだが、空間 A と空間 B では厳密に捉えられているのに対し、空間 C で は非常に短く捉えられていることが分かる。必ずしも出勤時に時間を正確に捉えている 訳ではなく、空間によって捉え方が異なることが分かる。 空間 A と空間 B は通勤時簡に推移が近似していることが明らかになったが、空間 B と空間 C は 16 時前後の時間帯から 20 時前後の時間帯において、推移が近似している ことが分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0
歩行空間 C
-0.5
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-3-1 時系列で見る会社員の歩行空間毎の感覚時間の推移
以下は、職業が学生の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時系列 で表したものである ( 図 5-7-3-2)。 まず全体的な傾向として、いずれの空間においても感覚時間の推移は近似しているこ とが分かる。特に、空間 B と空間 C が極めて近似していることが分かる。 また空間 A に関しては、一日を通して非常に正確に時間を捉えており、時間の厳密 化が起きていることが分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0 -0.5
歩行空間 C
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-3-2 時系列で見る学生の歩行空間毎の感覚時間の推移
ここで明らかになったことが、会社員は一日を通して時間の捉え方の推移が大きいの に対し、学生は比較的安定して時間を捉えていることが分かる。つまり学生は会社員よ りも均質に時間を捉えているということである。
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-105-
第 5 章 調査結果
5-7-4 歩行空間と移動目的からみた感覚時間の時系列推移 以下は、移動目的が出社の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時 系列で表したものである ( 図 5-7-4-1)。なお出社目的の回答者は 12 時前後の時間帯以 降はデータが無いため、分析は午前中のみのデータで行う。 ここで特徴的であるのが、出社を目的とした人々の、特に8時前後の時間帯に出社し ている人々は、空間毎に時間の捉え方が大きく異なることが分かる。空間 A では長く 捉えられ、空間 B では正確に捉えられ、空間 C では短く捉えられている。 また空間 B においては出社時は時間が正確に捉えられ、厳密化が起きていることが 分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0 -0.5
歩行空間 C
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-4-1 時系列で見る出社目的の歩行空間毎の感覚時間の推移
以下は、移動目的が買物の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時 系列で表したものである ( 図 5-7-4-2)。なお買物目的の回答者は午前中の時間帯のデー タが無いため、分析は午後のみのデータで行う。これは店舗の開店時間が影響している と考えられる。また空間 A の買物目的の回答者のデータは 14 時前後の時間帯のみのデー タで分析を行う。 ここで特徴的であるのが、14 時前後の時間帯において、空間毎の時間の捉え方が大 きく異なることである。空間 C では長く捉えられ、空間 B では正確に捉えられ、空間 A では短く捉えられていることが分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B 歩行空間 C
-0.5
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-4-2 時系列で見る学生の歩行空間毎の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-106-
第 5 章 調査結果
以下は、移動目的が帰宅の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を時 系列で表したものである ( 図 5-7-4-3)。なお帰宅目的の回答者は午前中の時間帯のデー タが無いため、分析は午後のみのデータで行う。 まず 16 時前後の時間帯まではどの空間も時間の捉え方は似ていることが分かる。い ずれの空間も時間帯が遅くなればなるほど、時間を短く捉える傾向がある。 また空間 A においては 16 時前後の時間帯以降は、時間が正確に捉えられていること が分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0 -0.5
歩行空間 C
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-4-3 時系列で見る帰宅目的の歩行空間毎の感覚時間の推移
以下は、移動目的がその他の回答者の 3 つの歩行空間毎の感覚時間比の平均推移を 時系列で表したものである ( 図 5-7-4-3)。なおその他の回答には、営業、就職活動など が挙げられていた。 まずいずれの空間においてもそれぞれ特徴のある感覚時間の推移が起きている中で、 12 時前後の時間帯、16 時前後の時間帯では、各空間とも時間が正確に捉えられている ことが特徴的であった。 また空間 C では午前中の時間帯に、時間が正確に捉えられ、時間の厳密化が起きて いることが分かる。 1.5
感覚時間比
1.0
長 い
0.5
歩行空間 A
正 確
0.0
歩行空間 C
-0.5
短 い
-1.0 -1.5
歩行空間 B
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
図 5-7-4-4 時系列で見るその他目的の歩行空間毎の感覚時間の推移
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-107-
第 6 章
分析結果
Chapter 6
1 分析方法 1-1 分析概要 1-2 分析手法 1-3 分析の流れ 1-4 感覚時間の取り扱い方 1-5 歩行空間の表記の変更 2 感覚時間に影響を及ぼす要因 2-1 感覚時間モデルⅠ 2-2 感覚時間モデルⅡ 2-3 感覚時間モデルⅢ 3 時間の厳密化の検証 3-1 移動目的・時間帯と時間の厳密化 3-2 歩行空間・職業と時間の厳密化
-108-
第 6 章 分析結果
6-1 分析方法 6-1-1 分析概要 本研究の目的は、感覚時間にはどういった要因が影響を及ぼしているか、またその影 響力はどの程度かを算出するものである。 本分析では、どの要因について、感覚時間との関係を読み取れば、どういったシーン で人の時間の厳密化が起きているか検証できるかを明らかにしていく。 そのため、本研究では調査によって得たデータと感覚時間の関係のモデル式の作成を 行う。よりモデル式の当てあまりを良くするために、どのような手順をふんで分析を行っ ていくか、概略を本項で説明する。 本来ならば取得したデータの要因の全てを説明変数として組み込むことが理想である が、影響の少ない変数がモデル式に組み込まれるため、式の当てはまりが悪くなる。そ こで説明変数の絞り込みを以下の行程で行うこととする。 1. 取得データの全てを説明変数に置き換え、感覚時間の関係を示す →影響をあまり及ぼさない説明変数が、モデル式に多数組み込まれているた め、モデル式の当てはまりが悪い結果となった。 2. 説明変数を絞り込み、感覚時間との関係を示す →説明変数間の相関の強いものをグループにし、説明変数を絞った。 例えば、時間帯と移動目的の相関が強いので、時間帯を説明変数から外す といった作業を行った。しかしながらこの方法においても、モデル式の当 てはまりが悪い結果となった。 3. 説明変数をなくすのでは無く、カテゴリー化する → 2 の行程では、説明変数を除外したが、今度は説明変数間の相関の強い ものをカテゴリとして分類した。 たとえば時間帯と目的であったら、今までは「18:00」と「帰宅」とバラ バラに分析にかけていたものを、今回は「18:00 の帰宅」、 「12:00 の昼食」 といったカテゴライズをし、説明変数とした。その結果、当てはまりの良 いモデルが出来た。 以上の行程を順に行いながら、最終的に「どんな時間帯のどんな目的の人はどういう 風に時間を捉えているか」「どんな空間を歩いているどんな職業の人はどういう風に時 間を捉えているか」というのを読み解き、都市における時間の厳密化を検証していく。
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-109-
第 6 章 分析結果
6-1-2 分析手法 本章では、感覚時間に影響を及ぼす要素を抽出し、その要素がどの程度影響を与えて いるか明らかにしていく。 [ 文 12] 石村貞夫 , 有馬哲:
なお分析方法として、感覚時間を予測するモデル式の立式に数量化理論Ⅰ類を用いた。
多変量解析のはなし , 東
数ある多変量解析の中(表 6-1-2-1)で、質的データを用いる際に最適であるものが数
京図書 , [1987]
量化理論である。本研究では、数量化理論Ⅰ類を用いて分析を行っていく。 表 6-1-2-1 多変量解析の種類
[ 文 13] 石村貞夫:すぐわ
分析内容
かる多変量解析 , 東京図
目的変数に影響を及ぼしているいくつかの変数との関係 を分析し、目的とその要因となる変数の解明。
書 , [1992]
目的変数の値の今後の予測。 目的変数の各グループを識別している要因を明らかに
[ 文 14] 石 村 貞 夫:SPSS
し、どのグループに属するか予測する。
による多変量データ解 目的変数はなく、各変数相互の関係を分析し、数多く
析の手順, 東京図書,
ある変数を少数の因子に集約する。求められた因子ご
[2006]
とにサンプルの得点を計算する。 サンプルの中で似たものを集めて、グループ化する。
手法
目的変数
重回帰分析
量的データ
数量化1類
量的データ
判別分析
質的データ
数量化2類
質的データ
主成分分析
×
因子分析
×
数量化3類
×
クラスター分析
×
また多変量解析の説明変数のカテゴリ化にはカテゴリカル主成分分析を用いた。説明 変数のカテゴライズには以下の方法がある。 ⃝多重コレスポンデンス分析(Mulfiple correspondence) [ 文 15] 石村貞夫:すぐわ
多重コレスポンデンス分析は、分析されるすべての変数が名義尺度(順序のないカテ
かる SPSS によるアンケー
ゴリ)である多変量カテゴリ型データを分析する。この分析はコレスポンデンス分析に
トのコレスポンデンス分
似ているが、3つ以上の変数を扱う点で異なる。たとえば、多重コレスポンデンス分析
析 , 東京図書 , [2006]
を使うと、好きなテレビ番組、年齢層、性別間の関係を調べることができる。低次元マッ プを検討することで、どのグループが特定の番組に関連しているのか、また各番組間の 類似性も把握することができる。 ⃝カテゴリ主成分分析(CATPCA:categorical principal component analysis)
[ 文 16] 石 村 貞 夫:SPSS
カテゴリ主成分分析は、最適尺度法を使用して主成分分析を一般化し、異なる測定尺
によるカテゴリカルデー
度が混在する変数を扱えるようにしたものである。多重コレスポンデンス分析の場合と
タ分析の手順 , 東京図書 ,
は違って、変数ごとに分析の尺度(名義、順序、数値型)を指定できる。たとえば、自
[2001]
動車のさまざまなブランドと、価格、重量、燃費等の特徴との関係を表示できる。ある いは車を種類ごと(軽、中型、コンバーチブル、SUV 等)に記述したあと、これらの 分類を使用して、CATPCA で車のポイントをグループ分けすることができる。
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-110-
第 6 章 分析結果
⃝ OVERALS(非線型正準相関分析) OVERALS は、最適尺度法を使用して正準相関分析を一般化し、異なる測定尺度が混 在する変数を扱えるようにした分析手法である。 この分析では、1つのグラフ内で変数のセット2つ以上を比較することができる(先 にセット内の相関を除去する)。たとえばセットの例としては、味覚の研究における製 品(スープ等)の特徴などが考えられる。この場合、審査員はセット内の変数となり、スー プはケースとなる。次に OVERALS(非線型正準相関分析)は、相関を除去した判定を 平均化し、さまざまな特徴と組み合わせてスープ間の関係性を表示す。もう1つの方法 としては、個々の審査員がスープの特徴(変数)に基づいて判断をしている場合がある。 この際には審査員の1人1人が1セットとなる。この場合、OVERALS(非線型正準相 関分析)は相関を除去した特徴を平均化し、審査員ごとに得点を結合する。 ⃝ PROXSCAL(多次元尺度法) PROXSCAL は、1つあるいは複数の行列に対して、類似度 / 非類似度(近接性)に 関して多次元尺度法を実行する。あるいは、PROXSCAL に入力された多変量データに 含まれるケース間の距離を計算することもできる。PROXSCAL は、近接度をマップ内 に距離として表すので、オブジェクト同士がどのように関連しているのかを空間的に把 握できる。多重近接行列の場合には、PROXSCAL はそれらの類似性と差異を分析する。 たとえば PROXSCAL を使って、さまざまな年齢層の消費者がコーラの味の類似性をど のように認識しているのかを表示することができる。この場合、若年層は従来の味と新 製品の味の違いをより意識しているのに対し、大人はダイエット対ノンダイエットの区 別をより意識していることなどが想定できる。 ⃝ Preference scaling(PREFSCAL) Preference scaling を 使 う と 変 数 間 の 関 係 性 を 視 覚 的 に 検 討 す る こ と が で き る。 Preference scaling は、2組のオブジェクトに対して多次元展開を実行し、共通する定 量的尺度を発見します。これによって複数の変数に関するクラスタを発見できる。たと えば、運転手のグループが 26 種の車を 10 個の属性に関して6点満点で採点したとする。 この場合、どのモデルが類似しているのかを示すクラスタが得られ、またそれに関連す る属性は何なのかを把握することができる。 本研究では、性別、年代、職業などの歩行空間や時間帯、移動目的、異なる測定尺度 が混在している。このような混在する測定尺度を点数化し、説明変数として変数を扱え るようにしたものがカテゴリカル主成分分析である。多重コレスポンデンス分析の場合 とは違って、変数ごとに分析の尺度(名義、順序、数値型)を指定できるメリットがあ ることから、6-2-3 の項ではカテゴリカル主成分分析を用いて、分析を行っていく。
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第 6 章 分析結果
6-1-3 分析の流れ 本研究では、先に述べたように数量化 1 類を用いて分析を行うが、より当てはまり の良いモデルを作成するために、以下の手順で分析を行っていく(図 6-1-2-1)。
0
1
2
3
分析で用いる説明変数は以下の通りである
□ □ □ □
移動目的
時間帯
職業
性別
年代
歩行空間
全調査項目を説明変数とし、感覚時間との関係を探るー感覚時間モデルⅠー
□ □ □ □ □ □ □ □ □
モデルイメージ 目的変数(感覚時間比)
利用する 説明変数 除外する 説明変数
相関の高い説明変数を減らし、感覚時間との関係を探るー感覚時間モデルⅡー
□ 説明変数間の相関が高い変数をグルーピングし説明変数を減らす モデルイメージ □ 目的変数(感覚時間比) □ □ □ 利用する 説明変数 □ □ 除外する 説明変数 □ □ □
説明変数をまとめ、感覚時間との関係を探るー感覚時間モデルⅢー 説明変数を減らすことなく、カテゴライズし、それを新たな変数として記号化を行う モデルイメージ 目的変数
利用する 説明変数 除外する 説明変数
図 6-1-3-1 分析フロー
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第 6 章 分析結果
6-1-4 感覚時間の取り扱い方 本研究では、感覚時間をテーマに行っている。しかし本研究の感覚時間の測定方法で は、調査協力者それぞれ歩行時間(物理的時間)が異なり、一概に感じた時間を「x 秒」 などといって比較することは出来ない。 そこで本研究では、感覚時間と物理的時間の関係を「感覚時間比」に変換し、分析を 行う。ここでおさらいすると、本調査で感覚時間とは歩行者が、「スタートからゴール までどの位の時間で歩いたと思うか」という主観的な時間を指し、物理的時間とは「ス タートからゴールまで歩いた実測時間」という客観的な時間を指すことを示しておく。 感覚時間比とは、感覚時間と物理的時間のずれを割合で表したものであり、以下の様 に立式される(図 6-1-4-1)。
感覚時間比 =
感覚時間(秒)ー 物理的時間(秒) 物理的時間(秒)
図 6-1-4-1 感覚時間比の算出方法
例えば、実験場所で予め決めておいた一定の距離を、被験者 A さんは 60 秒かかって 歩いた。そのとき答えた感じた時間」は、90 秒だった場合は、感覚時間比は「0.5」と なる。つまり 1.5 倍に時間を捉えているということである。また感じた時間が 30 秒で あった場合、感覚時間比は「-0.5」となる。この様に、感覚時間比が正の値ほど、時間 を長く感じていることを示し、負の値ほど、時間を短く感じていることを示す。 この様に、感覚時間比を用いると、調査経路の距離が異なっても、被験者個人個人の その時の時間の感じ方が読み取ることが可能になる。 感覚時間比を用いた際の、回答者の感覚時間比の分布をみると以下の様になる ( 図 6-1-4-2)。本研究では感覚時間の誤差± 20% まで、つまり感覚時間比が± 0.2 までの 値を感覚時間が「正確」と定義する。また誤差が 20% 以上、感覚時間比が 0.2 以上の 値は感覚時間が「長い」、20% 未満、感覚時間比が 0.2 未満の値は感覚時間が「短い」 と定義し、分析を行う。
図 6-1-4-2 感覚時間比の人数分布
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第 6 章 分析結果
6-1-5 歩行空間の表記の変更 本項では、歩行空間・年代と職業の関係と、感覚時間との関係を分析していく。なお 本項からは歩行空間毎の特徴を捉えやすくするため、空間表記を変更する(図 6-1-51)。第 5 章で述べた、調査地選定調査で得た結果より、歩行者が認知している「店舗の数」 「歩道の歩きやすさ」の 2 つのデータを分析し、空間表記に用いることとする。 店舗の数については空間 B に対してとても多いという回答が多く、次いで空間 A、空 間 C に対しては、とても少ないという認識をしている歩行者が多いことが分かる(図 6-1-5-2)
図 6-1-5-2 空間毎の店舗の数の印象
歩きやすさについては、空間 C がとても歩きやすく、次いで空間 A、空間 B はやや 歩きにくいという認識をしている歩行者が多い(図 6-1-5-3)。
図 6-1-5-3 空間毎の歩きやすさの印象
以上より、各空間を次のように表記する(表 6-1-5-1)。 ⃝空間 A については、店舗がなく、整備の非常に行き届いた、歩きやすい街路である ことから、「移動街路」と表記する。 ⃝空間 B については、商業店舗が非常に多く、丸の内の商業地区らしい、賑わいを見 せいている。「商業街路」と表記する。 ⃝空間 C については、空間 A と空間 B の中間に位置し、商業店舗も少なからずあり、 また歩行空間としての整備も行き届いていることから、「移動商業街路」と表記する。 表 6-1-5-1 空間表記の変更
歩行空間としての整備 商業空間としての賑わい
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表記
空間A
◎
×
空間B
×
◎
商業街路
空間C
⃝
⃝
移動商業街路
移動街路
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第 6 章 分析結果
6-2 感覚時間に影響を及ぼす要因 6-2-1 感覚時間モデルⅠ ここでは数量化Ⅰ類を用いて感覚時間の予測式を立式していく。 まずはじめに感覚時間と歩行空間・性別・年代・移動目的・職業・時間帯、全ての調 査項目との関係を明らかにしていく。 モデル式のあてはまりの良さを(表 6-2-1-1)に示す。R は重相関係数を指し、1 に 近い程、モデル式の当てはまりが良いことが分かる。ここでは R=0.306 であり、1 に 遠いため、モデル式の当てはまりが悪いことがわかる。 また R2 乗は決定計数のことであり、この値が 0.094 であることから、モデル式の当 てはまりが悪いことが分かる。 表 6-2-1-1 重相関係数
次に、このモデル式が、予測に役に立つかどうかを検証する(表 6-2-1-2)。ここでは、 「仮説:求めたモデル式が役に立たない」という仮説を検証している。 ここでは有意確率が、0.128 であり、12.8% の確率でこのモデル式が役に立たないこ とを指す。これは有意水準であるα =0.05 より大きいため、仮説は証明され、予測の 役に立たないことが分かる。 表 6-2-1-2 分散分析表
最後に、各項目がどの程度、感覚時間に影響を及ぼしているかを検証する(表 6-2-13)。 標準化係数をみると、感覚時間に大きく影響を及ぼしているものは、年代が最も影響 していることが分かる。しかし、この係数においても係数の数値が微小なため、影響は 少ないことが分かる。有意確率においては年代が有意水準を下回っていることが分かる。 表 6-2-1-3 偏回帰係数
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第 6 章 分析結果
本項では、感覚時間と歩行空間・性別・年代・移動目的・職業・時間帯、全ての調査 項目との関係を明らかにしたが、モデル式の当てはまりが低いことが分かった。 この原因として、説明変数の数が多すぎることが挙げられる。 次項では、説明変数間の相関を読み解きながら、もう一度モデル式を立式していく。
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第 6 章 分析結果
6-2-2 感覚時間モデルⅡ 前項では相関の低い説明変数の数が多いことから、モデルの当てはまりが悪い結果と なってしまった。本項では、説明変数間の相関を見ながら、モデル式の立式を行っていく。 以下は、説明変数間の相関を表したものである(表 6-2-2-1)。ここで明らかであるのが、 歩行空間と職業、年代と職業、移動目的と時間帯に強い相関があることである。つまり、 歩行空間が分かれば、職業も定まり、年代が分かれば、職業も定まり、移動目的が分か れば、時間帯が定まることを指している。つまり職業という説明変数が無くとも、予測 式の立式に問題が無いことをあらわしている。 表 6-2-2-1 説明変数間の相関
前項では、職業と時間帯の標準化係数の値が低いことが明らかになっているので、本 分析では、感覚時間と歩行空間、性別、年代、移動目的のみに説明変数を集約し、同様 の分析を行っていく。 まず、モデル式のあてはまりの良さを(表 6-2-2-2)に示す。R は重相関係数を指し、 1 に近い程、モデル式の当てはまりが良いことが分かる。ここでは R=0.287 であり、 1 に遠いため、モデル式の当てはまりが悪いことがわかる。 また R2 乗は決定計数のことであり、この値が 0.082 であることから、モデル式の当 てはまりが悪いことが分かる。
表 6-2-2-2 重相関係数
次に、このモデル式が、予測に役に立つかどうかを検証する(表 6-2-1-2)。ここでは、 「仮説:求めたモデル式が役に立たない」という仮説を検証している。 ここでは有意確率が、0.068 であり、12.8% の確率でこのモデル式が役に立たないこ とを指す。これは有意水準であるα =0.10 より小さいため、この仮説は棄却され、モ デル式が成り立つことがわかる。 表 6-2-2-3 分散分析表
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第 6 章 分析結果
最後に、各項目がどの程度、感覚時間に影響を及ぼしているかを検証する(表 6-2-24)。 標準化係数をみると、感覚時間に大きく影響を及ぼしているものは、年代が最も影響 していることが分かる。しかし、この係数においても係数の数値が微小なため、影響は 少ないことが分かる。有意確率においては年代が有意水準を下回っていることが分かる。 表 6-2-2-4 偏回帰係数
本項では、感覚時間と歩行空間・性別・年代・移動目的・職業・時間帯の項目を、 歩行空間・性別・年代・移動目的に集約して分析を行った。その結果、モデル式の当て はまりは悪いものの、有意確率が有意水準を下回り、予測が成り立つことが分かった。 以上より、次のことが分かった(図 6-2-2-1)。 移動目的・歩行空間・歩行者の年代・歩行者の性別が感覚時間に影響を及ぼしている。 また歩行している時間帯により移動目的は決定され、また職業により、歩行空間と年代 が決定される傾向がある。また、歩行している状態(移動目的や歩行空間)よりも、歩 行者の属性(年代や性別)の方が感覚時間に影響を及ぼす影響力が強いことが分かった。 しかし、説明変数の相関により、説明変数を除去する方法を用いたモデルでは、当ては まりが悪く、与える影響力が弱い。次項では説明変数を除去すること無く、カテゴリー に分け、モデルを作成していく。
感覚時間
-0.114
-0.050
移動目的
歩行空間
-0.406
-0.406
時間帯
0.227
年代
0.137
性別
-0.532
職業
図 6-2-2-1 感覚時間に影響を及ぼす要因と関係の強さ
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第 6 章 分析結果
6-2-3 感覚時間モデルの作成Ⅲ 本項では、説明変数を除去すること無く、いくつかのカテゴリーに分類しながら、感 覚時間の比較を行っていく。 以下に、カテゴリポイントのプロットを示す ( 図 6-2-3-1)。この図では、横軸に項目 を数量化した際の、第一主成分の値を、縦軸には第二主成分の値をプロットしたもので ある。ここでは、それぞれの項目の結合軸が、平行であればあるほど相関が強いことを 指している。 まず大まかな二つの群に分類を行うと、「性別・移動目的・時間帯」と「空間・年代・ 職業」の二つの軸の方向性があることが見てとれる。
70 代
08:00
出社
60 代
10:00 その他 観光客
その他 主婦
50 代 時間帯
空間 B
男性
職業
会社員 学生
12:00 女性 観光 帰社
歩行空間 性別 年代
空間 C 30 代 空間 A 40 代 14:00 20 代
目的
18:00
帰宅
16:00
10 代
買物
図 6-2-1-1 カテゴリポイントの結合プロット
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第 6 章 分析結果
では、その二つのグループ内でどの様な相関があるかを見ていく。以下の表は、それ ぞれの項目間の相関係数である(表 6-2-1-1)。 相関係数が 40% 以上の項目に着目すると、「空間−職業」、「年代−職業」、「目的−時 間帯」の相関が強いことが分かる。 表 6-2-1-1 項目の相関係数
またここでは性別の項目の相関が弱いことが分かる。前頁の結合のプロットの図より、 性別の項目を排除すると、以下の様になる(図 6-2-1-2)。 カテゴリは、「空間−職業」、「空間−年代」、「時間帯−目的」の 3 つに分類できるこ とが分かった。 70 代
08:00
出社
60 代
10:00 その他 観光客
その他 主婦
50 代 時間帯
空間 B
歩行空間
12:00
観光 帰社
職業
会社員 学生
年代 目的
空間 C 30 代 空間 A 40 代 14:00 20 代 18:00
帰宅
16:00
10 代
買物
図 6-2-1-2 カテゴリポイントの結合プロット(補正後)
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第 6 章 分析結果
◆カテゴリーⅠ 移動目的ー時間帯 まずはじめに、移動目的と時間帯のカテゴリの記号化を行う。移動目的が 7 通り、 時間帯が 6 通りあるため、全部で 42 通りである(図 6-2-1-4)。 目的
時間帯
買物
記号化 B1
08:00∼10:00
観光
B2
10:00∼12:00
出社
・
12:00∼14:00
昼食
・
14:00∼16:00
帰社
・
16:00∼18:00
帰宅
・
18:00∼20:00
その他
B42
図 6-2-1-4 移動目的・時間帯の記号化
次に、調査で得たデータを記号化すると、20 通りに分類することが出来た。この 32 通りのデータのデータ数を算出し、データが 1 つしか無いものを除去する(表 6-2-12)。 以上より、今回の分析においては、9 サンプルを除去したデータでモデル化を行う。 表 6-2-1-2 利用データと除去データ
利用データ
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除去データ
目的
時間帯
人数
目的
時間帯
人数
その他
10:00∼12:00
12
買物
18:00∼20:00
1
帰宅
16:00∼18:00
9
観光
12:00∼14:00
1
その他
14:00∼16:00
8
観光
14:00∼16:00
1
出社
08:00∼10:00
7
観光
16:00∼18:00
1
帰宅
18:00∼20:00
7
観光
18:00∼20:00
1
買物
14:00∼16:00
6
帰社
10:00∼12:00
1
その他
08:00∼10:00
6
帰社
16:00∼18:00
1
買物
16:00∼18:00
5
帰宅
12:00∼14:00
1
その他
18:00∼20:00
5
帰宅
14:00∼16:00
1
出社
10:00∼12:00
4
出社
12:00∼14:00
4
買物
12:00∼14:00
3
観光
10:00∼12:00
3
帰社
14:00∼16:00
3
帰宅
10:00∼12:00
3
その他
12:00∼14:00
3
その他
16:00∼18:00
3
出社
14:00∼16:00
2
帰社
12:00∼14:00
2
帰社
18:00∼20:00
2
-121-
第 6 章 分析結果
◆カテゴリーⅡ 歩行空間ー職業ー年代 カテゴリーⅡと同様に、歩行空間と職業と年代のカテゴリの記号化を行う。歩行空間 が 3 通り、職業が5通り、年代が7通りあるため、全部で 105 通りである(図 6-2-14)。
空間
職業
年代
記号化
10 代
A1
会社員
20 代
A2
空間 A
主婦
30 代
・
空間 B
学生
40 代
・
空間 C
観光客
50 代
・
その他
60 代
・
70 代
A105
図 6-2-1-4 歩行空間・職業・年代の記号化
次に、調査で得たデータを記号化すると、32 通りに分類することが出来た。この 32 通りのデータのデータ数を算出し、データが 1 つしか無いものを除去する(図 6-2-13)。 以上より、今回の分析においては、13 サンプルを除去したデータでモデル化を行う。 表 6-2-1-3 利用データと除去データ
利用データ 空間
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職業
除去データ
年代 人数
空間
職業
年代 人数
空間C 会社員 20代
10
空間A 会社員 50代
1
空間C 会社員 40代
10
空間A 会社員 70代
1
空間A 会社員 40代
8
空間A その他 60代
1
空間A 会社員 20代
7
空間B
主婦
30代
1
学生
空間B 会社員 20代
7
空間B
30代
1
空間C
学生
20代
7
空間B 観光客 60代
1
空間B
学生
20代
6
空間B その他 20代
1
空間B 会社員 40代
5
空間B その他 60代
1
空間A 会社員 30代
4
空間B その他 70代
1
空間A
20代
4
空間C 会社員 60代
1
空間B 会社員 50代
4
空間C
主婦
30代
1
空間C 会社員 50代
4
空間C
主婦
50代
1
空間A 会社員 60代
3
空間C
学生
10代
1
空間B
50代
3
空間C 会社員 30代
3
空間B 会社員 30代
2
空間B
主婦
20代
2
空間B
主婦
60代
2
空間B
主婦
70代
2
学生
主婦
-122-
第 6 章 分析結果
これらのカテゴリを用いて、感覚時間との関係を考察していく。 モデル式のあてはまりの良さを(表 6-2-2-1)に示す。R は重相関係数を指し、1 に 近い程、モデル式の当てはまりが良いことが分かる。ここでは R=0.841 であり、1 に 近いため、モデルの当てはまりが良いことが分かる。今までの考察では、重相関係数が 小さく、モデルの当てはまりが悪いケースが多かったが、カテゴライズして分析を行っ た結果、重相関係数が向上した。 また R2 乗は決定計数のことであり、この値が 0.608 であることから、これからもモ デル式の当てはまりが良いことが分かる。 表 6-2-2-1 重相関係数
次に、このモデル式が、予測に役に立つかどうかを検証する(表 6-2-2-2)。ここでは、 「仮説:求めたモデル式が役に立たない」という仮説を検証している。 ここでは有意確率が、0.085 であり、8.5% の確率でこのモデル式が役に立たないこ とを指す。これは有意水準であるα =0.10 より値が小さいため、仮説が棄却され、こ のモデル式が予測の役に立つことが明らかになった。 表 6-2-2-2 分散分析表
最後に、各項目がどの程度、感覚時間に影響を及ぼしているかを検証する(表 6-2-23)。 標準化係数をみると、感覚時間に大きく影響を及ぼしているものは、カテゴリーⅡの 方が、カテゴリーⅠよりも強い影響を与えていることが分かる。有意確率をみてみても、 どちらのカテゴリーも有意水準である 0.10 を下回っているため、モデル式の予測に有 効な要因であることが分かった。なお、性別は有意確率が大きい値のため、予測から除 外するものとする。 表 6-2-2-3 偏回帰係数
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-123-
第 6 章 分析結果
以上より、感覚時間に影響を及ぼしている要因として、2 つのカテゴリーがあること が分かった(図 6-2-1-2)。 1つ目が、移動目的と時間帯である。移動目的と時間帯には強い相関が見られ、また それらは感覚時間に影響を与えていることが分かった。 2つ目が、職業と歩行空間と年代である。歩行空間と職業、年代と歩行空間には強い 相関が見られ、それらは感覚時間に影響を与えていることが分かった。歩行空間と年代 の間には相関は見られなかった。 次項では移動目的・時間帯と感覚時間との関係、職業・歩行空間、職業・年代と感覚 時間との関係を探っていく。
感覚時間
-0.300
-0.293
職業
移動目的
-0.545
時間帯
-0.406
歩行空間
-0.532
年代
図 6-2-1-2 感覚時間に影響を及ぼす要因と関係の強さ
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-124-
第 6 章 分析結果
6-3 時間の厳密化の検証 6-3-1 移動目的・時間帯と時間の厳密化 本項では、移動目的と時間帯の関係と、感覚時間との関係を分析していく。以下の図 表は、各時間帯の移動目的毎の人数の割合 ( 図 6-3-1-1) と、それぞれの時間の捉え方 ( 表 6-3-1-1)を表したものである。なお、データは 08:00 ∼ 10:00 が 13 名、10:00 ∼ 12:00 が 23 名、12:00 ∼ 14:00 が 14 名、14:00 ∼ 16:00 が 21 名、16:00 ∼ 18:00 が 19 名、18:00 ∼ 20:00 が 16 名の全 106 サンプルを用いている。
図 6-3-1-1 移動目的と時間帯の人数の割合 (N=106) 表 6-3-1-1 移動目的と時間帯と時間の捉え方
時間帯
買物
昼食
出社
08:00∼10:00
正確
10:00∼12:00
長い
帰宅
帰社
観光
長い
正確
長い
12:00∼14:00
正確
正確
長い
正確
短い
14:00∼16:00
正確
正確
短い
正確
長い
16:00∼18:00
長い
短い
正確
長い
18:00∼20:00
長い
短い
長い
正確
感覚時間比: 【正確】-0.2∼0.2 【長い】0.2以上 【短い】-0.2未満 0.8
長 い
0.6 感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
短 い
観光 帰社 帰宅 出社 昼食 買物 その他
図 6-3-1-2 移動目的と感覚時間の時系列変化
これらの項目について、移動目的毎に考察していく。
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-125-
第 6 章 分析結果
【買物】 買物目的で移動をしている人は、午前中には全くおらず、12 時以降から徐々に現れ はじめる。また、12:00 ∼ 16:00 の間に買物をしている人は、時間を正確に捉えてい ることが分かる。16:00 以降の遅い時間帯に買物目的で移動をしている人々は、時間を 長く捉えている(図 6-3-1-3)。 一般的に買物は楽しく感じていることが多く、時間を短く捉えていると考えがちだが、 本研究においては、一日を通して買物を目的に移動している人々は、短く時間を捉えて いることは無かった。また 12:00 ∼ 16:00 に買物を目的に移動している人々は、時間 を正確に捉え、厳密な時間で移動をしていることが分かった。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
買物
短 い
図 6-3-1-3 買物目的の人々の感覚時間の時系列的変化
【昼食】 昼食目的で移動をしている人は、12:00 ∼ 16:00 までのみで、特に 12:00 ∼ 14:00 の割合が高いことが分かる。いずれの時間帯においても昼食目的で移動している人々は 時間を正確に捉えていることが分かる(図 6-3-1-4)。 丸の内において昼食とは、仕事の合間の休憩という認識があると考えられ、決められ た時間の中で、行動しなければならない。一日のわずかな休息の時間においても、人々 は時間を正確に捉え、時間に追われながら、厳密な時間で移動していることが分かる。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
昼食
短 い
図 6-3-1-4 昼食目的の人々の感覚時間の時系列的変化
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-126-
第 6 章 分析結果
【出社】 出社目的で移動をしている人は、08:00 ∼ 12:00 までのみで、特に 08:00 ∼ 10:00 のの割合が高いことが分かる。特に早い時間帯である 08:00 ∼ 10:00 までに出社して いる人々は時間を正確に捉え、反対に 10:00 ∼ 12:00 のゆっくりとした時間に出社し ている人々は時間を長く捉えている(図 6-3-1-5)。 出社とは一般的に決められた時間までに到着しなければならず、常に時間を意識して 移動しなくてはならない。その典型的な結果が、08:00 ∼ 10:00 の時間帯にあらわれ ていることが分かる。早い時間帯に出勤している人々は、正確に時間に捉え、時間に追 われながら、厳密な時間で移動していることが分かる。しかし 10:00 以降のゆっくり とした時間帯に出社している人々は、時間を長く捉えているため、ゆったりとした時間 を感じながら出社していることが分かる。時間に厳密でなければならない出社目的での 移動においては、一概に厳密な時間が流れているとはいえず、時間帯によって時間の感 じ方が異なることが分かった。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
出社
短 い
図 6-3-1-5 出社目的の人々の感覚時間の時系列的変化
【帰宅】 帰宅目的で移動をしている人は、多くの人々が 16:00 以降に移動していることが分 かる。それらの時間帯に帰宅目的で移動している人々は、時間を短く捉えていることが 分かる。また 10:00 ∼ 16:00 までの間にも割合が低いもの帰宅目的で移動している人 がいることが分かる。それらの時間帯に移動している人々は時間を長く捉えていること が分かる(図 6-3-1-6)。 帰宅目的で移動をしている人々は、あまり時間を意識する必要がないと考えられるが、 本研究においても、帰宅目的で移動している人々は、時間を正確に捉えておらず、時間 を意識せず移動している人々が多いことが分かった。また帰宅の時間帯によっても時間 を長く捉えていたり、短く捉えているケースがあることが分かった。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
帰宅
短 い
図 6-3-1-6 買物目的の人々の感覚時間の時系列的変化
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-127-
第 6 章 分析結果
【帰社】 帰社目的とは、仕事中に外出をし、自分の会社に戻ることを指す。帰社目的の人々 は、10:00 以降の全ての時間帯に移動している人々がいることが分かる。また 18:00 ∼ 20:00 を除く時間帯において正確に時間を捉えていることが分かる(図 6-3-1-7)。 帰社目的で移動をしている人々は、あくまで仕事中という認識のため、時間を常に意 識しなければならず、時間に追われながら時間を厳密に捉えていることが明らかになっ た。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
帰社
短 い
図 6-3-1-7 帰社目的の人々の感覚時間の時系列的変化
【観光】 観光目的で移動している人々は、10:00 以降の全ての時間帯に移動している人々がい ることが分かる。多くの時間帯において時間を長く捉えているが、12:00 ∼ 14:00 の 時間帯と、18:00 以降の遅い時間帯ではそれぞれ、短く捉えたり、正確に時間を捉える ケースがある。 観光目的で移動をしている人々は、時間帯によって、時間を長く捉えたり、短く捉え たり、正確に捉えたりするケースがあり、他の目的で移動している人々よりも、時間を 非均質的に捉えていることが明らかになった。 0.8 0.6
長 い
感覚時間比
0.4 0.2
正 確
0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8
06:00
08:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
観光
短 い
図 6-3-1-8 観光目的の人々の感覚時間の時系列的変化
【まとめ】 前項では人が感じている時間は、移動目的と時間帯に影響を受けることが分かった。 時間の厳密化が顕著にあらわれたケースとして、昼食目的で移動をしている人、帰社 目的で移動をしている人、早い時間帯に出社をしている人、12:00 ∼ 16:00 の間に買 物を目的に移動している人が、厳密に時間を捉えていることが分かった。多くのケース では、仕事関連や仕事の間の目的に移動をしている人々が多いことが分かった。すなわ ち職業が会社員である人々は時間を厳密に捉えている可能性がある。次項ではそれらを 明らかにしていこうと思う。 また時間を短く捉えているケースとして帰宅目的に移動をしているケースが挙げら れ、一日外で活動をし、目的を終えた人々は、時間を短く捉えていることが分かった。
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-128-
第 6 章 分析結果
6-3-2 歩行空間・職業と時間の厳密化 本項では、歩行空間・年代と職業の関係と、感覚時間との関係を分析していく。なお 本項からは歩行空間毎の特徴を捉えやすくするため、空間表記を変更する(図 6-3-21)。 空間 A については、店舗がなく、整備の非常に行き届いた、美しい街路であることから、 「移動街路」と表記する。 空間 B については、商業店舗が非常に多く、丸の内の商業地区らしい、賑わいを見 せいている。「商業街路」と表記する。 空間 C については、空間 A と空間 B の中間に位置し、商業店舗も少なからずあり、 また歩行空間としての整備も行き届いていることから、「移動商業街路」と表記する。 表 6-3-2-1 歩行空間表記の変更
歩行空間としての整備 商業空間としての賑わい
表記
空間A
◎
×
移動街路
空間B
×
◎
商業街路
空間C
⃝
⃝
移動商業街路
まずはじめに、歩行空間、職業と感覚時間の関係をみていく。 以下の図表は、職業別の移動目的毎の人数の割合 ( 図 6-3-2-1) と、それぞれの時間の 捉え方 ( 表 6-3-2-2)を表したものである。
図 6-3-2-1 歩行空間と職業の人数の割合 (N=106) 表 6-3-2-2 歩行空間、職業と感覚時間の捉え方
職業
歩行空間 移動街路
商業街路
移動商業街路
会社員
正確
正確
正確
学生
正確
正確
正確
観光客
長い
主婦
長い
その他
短い
長い
正確
感覚時間比: 【正確】-0.2∼0.2 【長い】0.2以上 【短い】-0.2未満
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-129-
第 6 章 分析結果
【会社員】 会社員は全ての歩行空間において均等に移動をしていることが分かる。例え商業施設 が多く買物客が多い空間であっても、目的地に向かうためであれば利用する傾向がある。 また、どの空間においても会社員の感覚時間は正確であることが分かる。 前項でも考察した通り、会社員は時間を正確に捉えていることが分かる。日本のビジ ネス街の代表の一つでもある丸の内にいる会社員は、厳密に時間を捉え、時間に追われ ながら生活を送っていることが明らかになった。例えそれは買物客の多い商業街路にお いても例外ではないことが分かる。つまり会社員はあらゆる空間において時間を厳密に 捉えていることが分かった。 【学生】 学生は全ての歩行空間において均等に移動している人がいることが分かる。学生も会 社員同様、感覚時間が正確であることが分かる。 この要因として、丸の内に訪れている学生のほとんどは企業へ行くために丸の内を訪 れている傾向がある。すなわち時間を常に意識しながら移動していること、時間を厳密 に捉えていることが分かった。 【観光客・主婦】 観光客および主婦は商業店舗のある街路において移動している人がいることが分か る。また時間を長く捉えている傾向がある。 【まとめ】 会社員や丸の内にいる学生は、決められた時間までに目的を遂行すること、すなわち 時間を常に意識することが義務のように課せられているため、時間を厳密に捉え、時間 に追われながら生活していることが分かった。またこれらの傾向は、あらゆる空間にお いても同様の傾向があることが分かった。 また観光客や主婦等、プライベートで丸の内を訪れている人々は、時間を長く捉えて いることが分かった。これらにおいても空間毎に感覚時間の差異は無いものの、主婦や 観光客については、商業店舗のある街路においてのみ移動をする傾向が見られ、商業店 舗の無い空間は、移動経路として選択しないことが分かった。
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-130-
第 7 章
総括・展望
Chapter 7
1 研究総括 2 展望 終わりに 参考文献・参考資料 既往研究
-131-
第 7 章 総括・展望
7-1 研究総括 本研究で得られた知見を以下に示す。 7-1-1 日常生活での感覚時間について ⃝都市の散策行動における感覚時間の実験から、都市毎に正確に時間を捉えられる街、 長く時間を捉える街など、感覚時間に差があることが分かった。 ⃝人は移動・買物・飲食の行動毎に感覚時間に差があることが分かった。 ⃝飲食・買物行動中の人の感覚時間は、その行為への興味度や満足度に影響を受けてし まい、データにばらつきが出ることが分かった。 ⃝歩行中の人の感覚時間は、目的地の有無や、何が目的で歩行をしているか、歩行空間 の違いに起因していることが分かった。
7-1-2 歩行空間を移動中の感覚時間について ⃝歩行中の感覚時間には、歩行空間・移動目的・時間帯・職業・年代が影響を及ぼして いることが明らかになった。またそのモデルを示すことが出来た(図 7-1-2-1)。
感覚時間
-0.300
-0.293
職業
移動目的
-0.406
-0.545
時間帯
歩行空間
-0.532
年代
図 7-1-2-1 感覚時間に影響を及ぼす要因と関係の強さ
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-132-
第 7 章 総括・展望
⃝移動目的は時間帯と強い相関を持つことが分かり、感覚時間には「何時にどのような 目的で移動をしているか」という要因が影響していることが分かった。 ⃝昼食目的で移動をしている人、帰社目的で移動をしている人、早い時間帯に出社して いる人、午後の早い時間帯に買物をしている人は正確に時間を捉えている傾向がみられ た。 ⃝また時間を短く捉えているケースとして帰宅目的に移動をしているケースが挙げら れ、一日外で活動をし、目的を終えた人々は、時間を短く捉えていることが分かった。 ⃝職業は歩行空間、年代と強い相関を持つことが分かり、感覚時間に「移動している人 は、どのような空間を移動している、どのような職業の人であるか」また、「移動して いる人は、何歳のどのような職業の人であるか」といった要因が影響を及ぼしているこ とが分かった。 ⃝会社員や丸の内にいる学生は、どのような空間においても、時間を厳密に捉え、時間 に追われながら生活していることが分かった。 ⃝観光客や主婦等、プライベートで丸の内を訪れている人々は、時間を長く捉えている ことが分かった。これらにおいても空間毎に感覚時間の差異は無いものの、主婦や観光 客については、商業店舗のある街路においてのみ移動をする傾向が見られ、商業店舗の 無い空間は、移動経路として選択しないことが分かった。
7-1-3 時間の厳密化について 時間の厳密化が顕著にあらわれたケースとして、以下のケースが挙げられる。 ⃝時間を厳密に捉えている歩行者の目的と時間帯 ・食目的で移動をしている人 ・帰社目的で移動をしている人 ・早い時間帯に出社をしている人 これらのケースでは、仕事関連や仕事の間の目的に移動をしている人多い。
⃝時間を厳密に捉えている歩行者の職業と歩行空間 ・会社員(商業街路、移動街路、移動商業街路) ・学生 (商業街路、移動街路、移動商業街路) これらのケースでは、会社員や丸の内にいる学生は、決められた時間までに目的を遂 行すること、すなわち時間を常に意識することが義務のように課せられているため、時 間を厳密に捉え、時間に追われながら生活していることが分かった。またこれらの傾向 は、あらゆる空間においても同様の傾向があることが分かった。
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-133-
第 7 章 総括・展望
7-2 展望 本研究では、都市空間での時間をとらえるのに、より実際的な「歩行」状態の人を 対象として感覚時間の調査を行った。これによりより日常生活に近い状態で、都市空間
を現象的なアプローチで捉えた。それにより、実際の都市を歩く人を対象としたことで、 総合的な感覚時間を得て、これを分析することで、実際の都市における感覚時間を変化 させる要素の関係を明らかにすることができた。 本研究で得た結果をみてみると、プライベートとビジネス、いわゆる日常生活におけ る ON のシーン、OFF のシーンによって、時間の捉え方が大きく異なることがわかった。 これはいわゆるビジネスシーンが On Time と言われ、プライベートなシーンが Time Off と言われている様に、ビジネスのシーンでは時間を正確に捉え、反対にプライベー トシーンでは時間を長く捉えたり、短く捉えたり場面があらわれる。 つまり、プライベートなシーンでは、時間を自分だけが持つ「個人の時間」として捉 えており、人の感覚時間は正確でなくなる。それにより、長く捉えたり短く捉えたりす る場面があらわれる。 一方、自分だけでなく他人の時間が関わって来ているシーン、例えばビジネスシーン では、常に時間を正確に捉える傾向がある。これは出勤中や、仕事の合間の昼食の時間 においても、その時間は「個人の時間」では無く、他人と共有する時間という認識のも と、時間を捉えていることが、時間の厳密化が起きている原因だと考えられる。 では、我々が、建築計画を考える上で、時間の厳密化とどう向き合っていけば良いの か。 人間が日常生活を送る上で、時間を厳密に捉えることは必ずしも避けられることでは ない。時間を正確に捉えるべきシーン、正確に捉える必要がないシーン、様々なシーン の重なりで、我々の日常生活が構成されている。 またその様なシーンの重なりは、歩行空間に対しても同様であり、プライベートな目 的の人々が集まる場所、ビジネスシーンにおいて移動のためだけに使われる空間、それ ら両者が入り交じる空間がある。 すなわち、厳密に捉えるべき人々が集まる歩行空間には、きちんと時間を認知させる 仕掛けが必要であり、逆に時間を正確に捉える必要の無い歩行空間・シーンには、時間 を忘れさせる仕掛けが必要である。同様の歩行空間であっても、朝、出勤者の多い時には、 時間をきちんと認知させ、昼食の時間には、時間を忘れさせ、 「個人の時間」を感じさせる。 単に空間を変化させることで感覚時間を操作するのでは無く、空間とシーンに合わせた アプローチが必要であると考えられる。
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-134-
おわりに
おわりに 今は、17 時 49 分。いやぁいたって普通の時間だね。こういう時、普通は「朝 4 時」 とか書くのかもね。まっ、いいか。 渡辺先生。先生の研究室で学生生活を送ることが出来たこと、仁史研の卒業生になれる ことを、誇りに思います。たとえ物理的な距離は遠くとも、いつもそばで見守ってくだ さっていたように感じます。もしも生まれ変わったら、4 年生の卒業判定で「不可」が 付かないように、頑張ります。 久美子さん。久美子さんとの mixi でのやりとり、実は結構ツボだったりします。私の 父は、タクシー運転手です。 夏子さん。夏子さんは怖いです。でも好きです。あっ喜一郎氏がいるからだめか。航喜 さんがご結婚なさるときは、司会やりに行きます。酔っぱらって式をめちゃくちゃにし たらごめんなさい。卒業しても、一緒に飲みに行っていじめてください。 林田先生。先生の海老狸、おいしかったです。ありがとうございました。まっ、実はほ とんど僕が食べましたけどね。 謝辞って、色々「ありがとう」とか書くだろうけど、たぶんゴリラは「サンクス」とか 「thanX」とか、少し調子にのった書き方をするんだろうな。今のうちに予言しておくね。 M2 の諸君。3 年間の研究室生活、お疲れ様でした。長いようで短い研究室生活は、感 覚時間比 -0.5 くらいの感覚で過ぎていきましたね。ありがとう。 M1 の諸君。ナイスサポートでした。ありがとう。まっ、イケメンが多くて憎いけどね。 卒論生の諸君。一緒に卒業ですね。ありがとう。まっ、あんま話したこと無いけどね。 特に頑張ってくれた方々。特にお疲れ様でございました。ガースーの街頭調査での活躍、 一生忘れません。秀太の出現率の高さ、一生忘れません。オッチーのイラレ作業のスピー ド、一生忘れません。宏樹の髪の毛の固さ、一生忘れません。タスケの存在、一生忘れ ません。亜沙が自分で自分のことを「私はバンビ」といってしまったこと、一生忘れま せん。あと鷲谷くん、タイトルの英訳ありがとうね、一生忘れません。まっ、きっと全 部忘れちゃうけどね。ってかすでに誰か忘れてたりして。気づいたら手書きで書き足し ておいて。 そして、ここまで育ててくれた、父と母と祖母、そして亜沙に、ありがとうと言いたい。 来年からはいよいよ社会に飛び出します。今まで貯めていた「ありがとう」をようやく 還元する時が来ました。期待していて下さい。まっ、あんま期待されても困るけどね。 そして最後に、宙丸はお姉ちゃんたちにいじめられないように強い男になるんだぞ。 まっ、会ったこと無いけどね。忠太は就職活動頑張るんだぞ。まっ、宙丸に名前が似て いるだけだけどね。 来年も、再来年も、笑顔の絶えない研究室だといいね。 まっ、俺がいなくなるから無理だけどね。なんてね。HAHAHA!! 売買!じゃなくてばいばい。
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参考文献
ー参考文献ー ■参考文献・参考資料
[文 1]松田文子:序章 現代のアウグスティヌス , 北大路書房 ,(1996)
[文 2]http://www.seikatusoken.jp/ 生活総研 ONLINE ホームページ (2010)
[文 3]JR ガゼット:2010 年 6 月号 , 株式会社交通新聞社
[文 4]http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsts2/shushi.html 日本時間学会ホームページ (2010)
[ 文 5] 松田文子:心理的時間ーその広くて深いなぞ , 北大路書房 , [1996]
[ 文 6] 一川誠:大人の時間はなぜ短いのか , 集英社新書 ,[2008]
[ 文 7] 一川誠:時計の時間、心の時間 , 教育評論社 ,[2009]
[ 文 8] 伊藤公文 , 松永直美:時間都市 Chronopolis , 東京電機大学出版局 , 2003 年
[文9]日本建築学会編:設計資料集成 3 , 単位空間 1 , 丸亀
[文 10]大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドライン 2008:http://www. aurora.dti.ne.jp/ ppp/guideline/index.html
[文 11]大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドライン 2008 , 資料編 p7
[ 文 12] 石村貞夫 , 有馬哲:多変量解析のはなし , 東京図書 , [1987]
[ 文 13] 石村貞夫:すぐわかる多変量解析 , 東京図書 , [1992]
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参考文献
[ 文 14] 石村貞夫:SPSS による多変量データ解析の手順 , 東京図書 , [2006]
[ 文 15] 石村貞夫:すぐわかる SPSS によるアンケートのコレスポンデンス分析 , 東京図 書 , [2006]
[ 文 16] 石村貞夫:SPSS によるカテゴリカルデータ分析の手順 , 東京図書 , [2001]
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参考文献
■既往研究 [論文 1]矢川麻紀子 , 田村明弘:感覚時間による場と人との交感作用の指標化 , 1998 年度日本建築学会学術講演梗概集 , pp.801-802, 1998.09 [論文 2]矢川麻紀子 , 田村明弘:人と場の関わりと感覚時間に関する基礎的考察 , 日本 建築学会計画系論文集 第 540 号 , pp.73-80, 2001.02
[論文 3]藤本麻起子 , 田村明弘:歩行空間における感覚時間に関する研究 , 2004 年度 日本建築学会学術講演梗概集 , pp.911-912, 2004.08
[論文 4]矢川麻起子 , 田村明弘:人と人の位置関係がもたらす居心地と感覚時間 , 2002 年度日本建築学会学術講演梗概集 , pp.837-838, 2002.08
[論文 5]藤本麻起子 , 田村明弘:照度・色温度を制御した室内における感覚時間の変 化に関する研究 , 2003 年度日本建築学会学術講演梗概集 , pp.321-322, 2003.09 [論文 6]片山めぐみ , 大野隆造 , 添田昌志:歩行移動時の距離知覚に及ぼす経路の形状 と周辺環境の影響歩行経路 , 日本建築学会計画系論文集 第 580 号,pp.79-85, 2004.06
[ 論 文 7]MILGRAM S.: Environment and cognition, in Ittelson, W.H.(eds), Seminar Press, New York, 1973
[ 論 文 8]SADALLA E. K., Staplin, L.J. and Burroughs, W.J,:Retrieval prosesses in distance cognition , Memory and Cognition 7, pp.291-296, 1979
[
論
文 9]SADALLA E. K., Staplin, L.J.:The perception of traversed distance ,
Environment and Behavior, Vol.12, No.2, pp.65-79, 1980
[
論
文 10]SADALLA E. K., Staplin, L.J.:The perception of traversed distance-
intersections , Environment and Behavior, Vol.12, No.2, pp.167-182, 1980
[論文 11]STAPLIN L. J. and Sadalla, E.K.:Distance cogntion in urban environments, Professional Gepgrapher ,33(3), pp.302-310, 1981
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-138-
参考文献
[ 論 文 12]Allen, G. L.:A developmental perspective on the diffects of "subdividing" macrospatial experience , Journal of Experimental Psychology, Human Learnin and Memory 7, pp.120-132, 1981
[論文 13]Allen, G. L. and Kirasic, K.C.:Effects of the cognitive organization of route knowledge on judgements of macrospatial distance , Memory and Cognition 13, pp.218-227, 1985
[ 論 文 14]Briggs, R.:Methodologies for the mesurement of cognitive distance, in Moor G.T. and Golledge R. G.(eds.), Environmental Knowing, Theories, Research and Methods, Stroudsburg, Dowden, Hutchinson & Ross, pp.325-334,1976
[論文 15]Appleyard D., Styles and Methods of Structuring A City , Environment and Behavior, Vol.2, No.1, pp.100-116, 1970
[論文 16]Canter D. and Tagg, S. K.:Distance estimation in cities , Environment and Behavior Vol.7, No.1, pp.59-80, 1975
[
論
文 17]LEE T. R.:Perceived distance as a function of direction in the city ,
Environment and Behavior Vol.2, No.1, pp.40-51, 1970
[論文 18]片山めぐみ , 大野隆造:通い慣れた屋外経路における歩行者の距離認知に関 する研究 , 日本建築学会計画系論文集 第 549 号 , pp.193-198, 2001.11
[
論
文 19]OKABE A.:Distance and direction judgment in a large-scale natural
environment, Effects of a slope and winding trail , Environment and Behavior, Vol.18, No.6, pp.755-772, 1986
[論文 20]五十嵐日出夫:環境要因を考慮した意識距離に関する研究、土木学会 第 53 回年次学術講演会講演概要集第 4 部、pp.772- 773[1998]
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参考文献
[論文 22]片山めぐみ , 大野隆造:通い慣れた屋外経路における歩行者の距離認知に関 する研究 , 日本建築学会計画系論文集 第 549 号 , pp.193-198, 2001.11
[論文 23]片山めぐみ , 大野隆造 , 添田昌志:歩行移動時の距離知覚に及ぼす経路の 形状と周辺環境の影響歩行経路 , 日本建築学会計画系論文集 第 580 号,pp.79-85, 2004.06
[論文 24]深井祐紘 , 西出和彦:地下歩行空間における認知距離に関する研究 , 2008 年度日本建築学会大会学術 l 講演梗概集 , pp.965-966, 2008.09
[論文 25]米谷一心 , 鈴木聡士 , 東本靖史 : 意識距離の短縮効果を有する歩行空間の創 出に関する基礎的研究 , 地域学研究 第 32 巻 第 1 号 , pp.173-188, 2002
[論文 26]大野隆造 , 小倉麻衣子 , 添田昌志 , 片山めぐみ:地下鉄駅における主観的 な移動距離および深さに影響する環境要因 , 日本建築学会計画系論文集 第 610 号, pp.87-92, 2006.12
[論文 27]渡辺仁史:建築計画における行動シミュレーションに関する研究 , 早稲田大 学建築学科学位論文 , 1978
[論文 28]樫村奈美 , 長澤夏子 , 木村謙 , 林田和人 , 渡辺仁史:観覧空間における歩行速 度の変化に関する研究 , 2000 年度日本建築学会大会学術講演梗概集 , pp.1053-1054, 2000.09
[論文 29]石井宏樹 , 長澤夏子 , 渡辺仁史:都市歩行時における行動と認知が感覚時間 に及ぼす影響 , 早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室卒業論文 , 2010
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第二部 Part Ⅱ
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資料編 Data
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第 2 章 時間の感じ方が変わる様々な場面(ブレインストーミングより)
感覚時間が長い場合 時間が遅く過ぎ去ったと感じる場合
夜
天候気候
昼
感覚時間が短い場合 時間が速く過ぎ去ったと感じる場合
天候気候
昼 晴れた日
気持ち
不安 笑っている
湿度
考え事をしている
気温
わくわくしている
体調
酔っている
天候
空腹
歩行状態
気持ち
不安 焦り
川のそば
緊張
ショッピング
場所
体調
ナビをしてもらっている時
あり
なし
興味の有る場所
周辺環境
往路か復路か
歩行環境
信号の量
人の流れの方向
何も考えていない時 考え事をしている時 見知らぬ場所
人ごみ
群衆密度
曲がり道 往路か復路か
目的地 考え方
寄り道をしている
商店街
睡眠不足
人ごみ
下北沢ぶらぶら ディズニーランド
空腹
今、 自分がどれくらい 歩いたか自覚している時
森 腹痛
何も考えずに歩けるとき
歩行環境
信号の量
∼しながら
風景が変わる
サンダルをはいた時
歩きやすさ あえて 「歩く」 という手段をとった時
人がいるかいないか
探し物をしながら デート中
直線かどうか
∼しながら
坂
迷っている時
同じ風景
ヒールを履いている時
歩きやすさ
空いている
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新しい靴を履いた時
音楽を聴きながら 友人といるとき 話しながら
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第 2 章 歩行目的別にみた時間の感じ方とその理由
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第 4 章 散策実験データ 被験者:S2 !"
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Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
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-153-
第 4 章 散策実験データ 被験者:G2 !" ,-./0
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Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-154-
第 5 章 調査地選定アンケート用紙 現在早稲田大学で建築学を学んでいる石井宏樹と申します。卒業論文で、東京駅周辺をテーマに研究しようと 考えております。東京駅周辺を訪れる人の意識調査にご協力お願いします。なお、本アンケートは、卒業論文の 業基礎調査以外に使用することはありませんので、 ご理解のほど、 ご協力お願いいたします。 当てはまるところのチェックボックス に、チェック または、答えをご記入ください。 性別
男性
女性
年代
10代
20代
30代
40代
50代
60代
70代
職業
会社員
専業主婦
学生
その他
自営業
本日、 この場所に来た目的をお教えください。
仕事
ショッピング
その他
この場所にはどのくらいの頻度で来られますか?
ほぼ毎日
毎日ではないが良く来る
たまに来る
ほとんど来ない
現在いる場所から受ける印象について、以下の形容詞対から近いものに○をつけて下さい。 例) 車通りが多い
1
2
多いにそう思う
3
4
5
特に何も思わない
車通りが少ない
多いにそう思う
歩道が狭い
1
2
3
4
5
歩道が広い
閉鎖的
1
2
3
4
5
開放的
車通りが少ない
1
2
3
4
5
車通りが多い
歩行者が少ない
1
2
3
4
5
歩行者が多い
店舗が少ない
1
2
3
4
5
店舗が多い
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
見るもの(情報量)が少ない 寂しい
見るもの(情報量)が多い 騒がしい
アンケートは以上です。お忙しい中、 ご協力ありがとうございました。 nom
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
speed
nowdo
place
-155-
第 5 章 調査地選定データ 回答者
場所
性別 年代
職業
来た目的
来る頻度
歩道
閉鎖-開放
車通り
歩行者
店舗
情報量
狭い-広い
閉鎖-開放
少ない-多い
少ない-多い
少ない-多い
少ない-多い
寂し-騒がし 寂し-騒がしい
1
1 女
20代 会社員
仕事
毎日
4
3
5
4
4
5
4
2
1 男
40代 会社員
仕事
頻繁に
4
4
5
4
1
4
3
3
1 男
30代 会社員
仕事
毎日
4
3
5
4
1
3
4
4
2 女
50代 会社員
仕事
毎日
5
5
5
4
1
4
5
5
2 男
30代 会社員
仕事
毎日
5
5
4
4
1
1
3
6
2 女
30代 会社員
仕事
毎日
5
5
3
4
1
1
4
7
3 女
60代 会社員
仕事
たまに
5
4
5
4
4
1
3
8
3 女
20代 学生
無回答
まれに
5
5
3
4
4
4
3
9
3 男
20代 学生
買い物
たまに
5
5
5
3
4
4
3
10
4 女
40代 専業主婦
友人と会う
まれに
5
4
4
3
1
4
4
11
4 男
30代 会社員
仕事
頻繁に
5
5
4
4
1
1
4
12
4 男
20代 会社員
仕事
頻繁に
5
4
5
4
1
1
4
13
5 男
50代 会社員
仕事
たまに
5
3
3
3
4
3
4
14
5 男
50代 会社員
仕事
毎日
4
3
4
4
1
3
4
15
5 女
20代 会社員
仕事
毎日
4
3
3
3
1
3
4
16
6 男
30代 会社員
仕事
毎日
5
1
5
5
1
3
5
17
6 男
40代 会社員
仕事
たまに
4
4
4
4
4
4
3
18
6 男
40代 会社員
仕事
頻繁に
5
3
5
4
4
3
5
19
7 男
50代 会社員
仕事
たまに
5
5
1
5
4
4
4
20
7 男
20代 会社員
仕事
毎日
5
4
4
4
3
1
4
21
7 女
40代 会社員
仕事
頻繁に
5
5
1
4
4
4
4
22
8 男
60代 会社員
仕事
頻繁に
5
5
4
5
1
4
3
23
8 女
20代 学生
買い物
まれに
4
5
4
4
4
4
3
24
8 女
20代 会社員
仕事
頻繁に
5
5
4
3
4
3
3
25
9 男
50代 会社員
仕事
まれに
5
5
4
1
1
1
3
26
9 男
30代 会社員
仕事
毎日
5
5
5
3
4
4
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27
9 男
40代 会社員
仕事
たまに
5
4
5
5
1
3
28
10 男
20代 会社員
仕事
たまに
4
3
5
3
4
3
3
29
10 女
30代 会社員
仕事
まれに
4
5
4
4
1
1
4
30
10 男
40代 会社員
仕事
毎日
4
4
5
4
1
1
3
31
11 女
40代 その他
その他
まれに
5
5
4
1
1
1
3
32
11 男
40代 会社員
仕事
毎日
4
5
3
1
4
3
3
33
11 女
30代 専業主婦
買い物
まれに
5
5
3
3
5
4
3
34
12 女
20代 会社員
買い物
まれに
5
1
5
1
4
1
3
35
12 男
30代 会社員
仕事
毎日
5
3
4
1
4
4
4
36
12 女
40代 専業主婦
買い物
たまに
5
3
5
3
3
4
4
37
13 女
20代 学生
バイトの面接
まれに
3
4
1
4
5
4
4
38
13 男
50代 会社員
その他
たまに
1
1
4
1
4
4
3
39
13 女
20代 学生
買い物
たまに
1
1
4
4
4
4
3
40
14 男
30代 会社員
仕事
たまに
5
3
5
5
1
5
4
41
14 男
50代 会社員
仕事
頻繁に
4
3
4
5
5
5
5
42
14 女
20代 会社員
仕事
頻繁に
4
1
4
5
3
5
5
43
15 男
50代 会社員
買い物
毎日
3
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4
4
4
4
44
15 女
20代 学生
買い物
たまに
1
4
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5
5
4
45
15 女
20代 学生
買い物
まれに
1
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3
3
5
46
16 男
50代 会社員
仕事
たまに
1
1
5
4
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1
5
47
16 女
20代 学生
買い物
たまに
5
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1
1
48
16 女
50代 会社員
仕事
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4
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49
17 女
20代 学生
ライブ
まれに
5
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50
17 女
30代 無回答
買い物
たまに
5
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5
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1
1
4
51
17 男
40代 会社員
仕事
たまに
5
4
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1
1
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18 女
30代 会社員
仕事
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18 女
30代 専業主婦
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54
18 男
40代 会社員
仕事
毎日
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55
19 女
40代 会社員
その他
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1
56
19 女
20代 会社員
仕事
毎日
4
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5
5
5
5
5
57
19 男
20代 会社員
仕事
毎日
4
1
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58
20 男
30代 会社員
仕事
たまに
3
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3
59
20 男
20代 会社員
仕事
毎日
4
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60
20 男
30代 会社員
仕事
頻繁に
1
1
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5
5
5
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-156-
第 5 章 調査アンケート用紙 早稲田大学の田名網祐と申します。現在、修士論文のテーマで、東京駅周辺の歩行空間の快適性につい て調査をしており、駅周辺を訪れる人の意識調査をお願いしています。お忙しい中、大変恐縮ですが、 ご協力をお願い致します。本アンケートの結果は集計して、卒業や建築学会への発表など学術目的のみ で使用し、お答えいただいた方の個人を特定したり、ご迷惑をおかけすることはありません。 早稲田大学理工学部 建築学科渡辺仁史研究室 田名網祐 〒169-8555 新宿区大久保 3-4-1 55号館 N801 tel: 03-5286-3276 当てはまるところのチェックボックス に、チェック または、答えをご記入ください。 性別
男性
女性
年代
10代
20代
30代
40代
50代
60代
70代
職業
会社員
専業主婦
学生
観光客
その他
目的
出社
昼食
帰社
買物
観光
帰宅
その他
頻度 ほぼ毎日
週に2 3回程度
週に1回程度
月に1回程度
年に1回程度
初めて訪れた
歩いていただいた時間をどのくらいの時間に感じられたかお答えください。 感覚時間 minute
:
second
アンケートは以上です。お忙しい中、 ご協力ありがとうございました。 Physical Time minute
Place Number
Sample Number
second :
Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-157-
第 5 章 調査データ 1 !"
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-158-
第 5 章 調査データ 2 !"
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-159-
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-160-
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第 5 章 調査データ 5 !"
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第 6 章 分析用データ 1(修正後) !"
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-163-
第 6 章 分析用データ 2(修正後) !"
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Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-164-
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Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-165-
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Hitoshi Watanabe Lab. Waseda Univ.
-166-
参考文献
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
参考文献リスト 【1】バルザック(山田登紀子訳):「風俗のパトロジー」, 新評論 , 1982 【2】吉岡昭雄:「歩行者交通と歩行空間(Ⅱ)−歩行速度・密度・交通量について−」, 交通工学 Vol.13 No.5, pp.41-53, 1978 【3】竹内伝史 , 岩本広久:「細街路における歩行者挙動の分析」, 交通工学 Vol.10 No.4, pp.3-14, 1975 【4】渡辺美穂 , 羽藤英二:「移動軌跡に着目した都市空間の歩行速度分析」, 第 42 回都市 計画論文集,pp535-540,2007. 【5】松永文彦 , 中村克行 , 佐久間哲哉 , 柴崎亮介:「携帯電話使用が歩行行動に及ぼす影 響に関する基礎的研究」, 日本行動計量学会大会発表論文抄録集 32, 92-93, 2004-09 【6】吉沢進 , 高柳英明 , 木村謙 , 渡辺仁史:「都市における携帯電話使用者の行動特性に 関する研究」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.775-776, 2001 【7】秦野晃一:「携帯型オーディオプレーヤー使用時の空間認知に関する研究」, 早稲田 大学理工学部建築学科卒業論文 , 2007 【8】杉本助男:「感覚遮断環境下の人の心的過程」, 社会心理学研究 1(2), pp.27-34, 1986 【9】教育機器編集委員会:「産業教育機器システム便覧」, 日科技連出版社 , 1972 【10】吉岡陽介 , 一色高志 , 岡崎甚幸:「探索歩行時における周辺視の役割を調べるための 実験方法の開発 : 制限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その 1」,社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.687-688, 2002 【11】一色高志 , 吉岡陽介 , 岡崎甚幸:「制限視野下と通常視野下での探索歩行時における 行動特性の比較 : 制限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その 2」, 社団法人日本建築学 会 , 学術講演梗概集 E-1, pp. 689-690, 2002 【12】渡辺聡 , 後藤春彦 , 三宅論 , 李彰浩:「商業地街路における歩行者の看板注視傾向 に関する研究 - 銀座中央通りにおける歩行実験の分析 -」, 日本建築学会論文集 (574), pp.113-120, 2003 【13】山川琴音 , 有馬隆文 , 坂井猛: 「商業地街路における街路環境と歩行者の視認・認知・ 評価の関係性について」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 F-1, pp.327-328, 2005 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
116
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
【14】舟橋國男:「初期環境情報の差異と経路探索行動の特徴 - 不整形街路網地区における 環境情報の差異と経路探索行動ならびに空間把握に関する実験的研究その 1-」, 日本建築 学会論文集 No.424, pp.21-30, 1991 【15】日色真帆 , 原広司 , 門内輝行:「迷いと発見を含んだ問題解決としての都市空間の経 路探索」, 日本建築学会論文集 No.466, pp.65-74, 1994 【16】鈴木利友 , 岡崎甚幸 , 徳永貴士:「地下鉄駅舎における探索歩行時の注視に関する研 究」, 日本建築学会論文集 No.543, pp.163-170, 2001 【17】宮岸幸正 , 西應浩司 , 杉山貴伸:「自由散策における経路選択要因と空間認知」, デザ イン学研究 50(2), pp.1-8, 2003 【18】砂金眞司 , 長澤泰 , 岡ゆかり , 伊藤俊介:「街路における散策行動の構造について」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.751-752, 1997 【19】森村祐子 , 遠田敦 , 渡辺仁史:「情報焦点距離からみた都市空間歩行時の空間認知」, 社団法人日本建築学会 , 研究報告集 II, pp.81-84, 2009 【20】Allan Pease, Barbara Pease: 「話を聞かない男、地図を読めない女」藤井 留美 ( 翻訳 ), 主婦の友社 , 2000 【21】小林敬一 : 論争的な複数テキストの理解−発話思考法を用いた分析− , 静岡大学教育 学部研究報告 , 人文・社会科学篇 58, 159-169, 2007 【22】杉之原正純 , 平伸二 , 武藤玲路 , 今若修 :「精神テンポの基礎的実験研究 (2)」- 精神 テンポの機制に関する実験的研究 -, 広島修道大学研究叢書 , 第 76 号 , 1993 【23】阿部麻美 , 新垣紀子 :「BGM のテンポの違いが作業効率に与える影響」, 日本認知科 学会大会発表論文作成要領 , 2008 【24】環境省 HP : http://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html 【25】竹内謙彰 :「空間認知の発達・個人差・性差と環境要因」, 風間書房 , 1998 【26】西田信夫 :「プロジェクターの技術と応用」, シーエムシー出版 , 2010 【27】新垣紀子 , 野島久雄:「方向オンチの科学」- 迷いやすい人・迷いにくい人はどこが 違う? -, 講談社 , 2001
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
117
資 料
Chapter 6
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
6 総括 6.1 総括 本研究における結果/分析の総括を、 ■ 行動データ ■ 距離別データ ■「迷い」からみたデータ の順で行う。それらを次頁以降に示す。
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
098
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
■ 行動データ ・空間情報の取得量 tab.6.1.1 空間情報の取得量のまとめ 平均取得割合 通常歩行 43.19%
56.81%
聴かない
48.84%
51.16%
聴く
40.36%
59.64%
男性
43.42%
56.58%
女性
42.96%
57.04%
上位群
42.06%
57.94%
下位群
44.00%
56.00%
高
39.05%
60.95%
低
47.32%
52.68%
高
43.99%
56.01%
低
42.61%
57.39%
全体 習慣
性別
方向感覚成績
方位に関する意識
空間行動における記憶
聴覚遮断歩行
有意差
相関比
聴く属性
◎
歩行形態
○
歩行形態
○
意識 高
◎
歩行形態
○
◎:非常に高い相関がある ○:やや強い相関がある
:歩行形態による比較 大
△:非常に弱い相関がある ×:相関がない
:属性間による比較 大
◇ 通常歩行より聴覚遮断歩行の方が、空間情報の取得量の平均割合が大きい ◇ 習慣属性における聴く属性/方位に関する意識に属性における意識が高い属性は、分 散分析の結果、5%水準で有意な差が見られ、非常に高い相関がある →聴く属性/方位に関する意識が高い属性における聴覚遮断歩行は、空間情報取得量を 増加させる強い力がある ◇ 性別属性/方向感覚の成績属性/空間行動における記憶属性は、属性間による差は見 られなかったが、歩行形態に 5%水準で有意な差があり、やや強い相関が見られた →通常歩行より聴覚遮断歩行の方が空間情報取得量を増加させる
以上の考察から空間情報の取得量は、 ◆ 聴覚遮断歩行が取得情報量を増加させることがわかった ◆ 聴覚遮断歩行が習慣属性における聴く属性/方位に関する意識属性の意識が高い属性 に対し、空間情報の取得量増加に、より大きな効果を発揮することが明らかとなった
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
099
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得意欲 tab.6.1.1 空間情報の取得意欲のまとめ 平均意欲割合(垂直方向) 通常歩行 全体 習慣
性別
方向感覚成績
方位に関する意識
空間行動における記憶
聴覚遮断歩行
平均意欲割合(水平方向) 通常歩行
聴覚遮断歩行
19.28%
21.80%
80.72%
78.20%
聴かない
22.22%
26.41%
77.78%
73.59%
聴く
17.81%
19.50%
82.19%
80.50%
男性
15.07%
16.33%
84.93%
83.67%
女性
23.49%
27.28%
76.51%
72.72%
上位群
17.92%
18.04%
82.08%
81.96%
下位群
20.25%
24.49%
79.75%
75.51%
高
19.67%
21.70%
80.33%
78.30%
低
18.89%
21.91%
81.11%
78.09%
高
18.12%
18.04%
81.88%
81.96%
低
20.11%
24.49%
79.89%
75.51%
有意差
相関比
×
×
性別属性
◎
×
×
×
×
×
×
◎:非常に高い相関がある ○:やや強い相関がある
:歩行形態による比較 大
△:非常に弱い相関がある ×:相関がない
:属性間による比較 大
※注)各歩行形態による垂直/水平方向の和が 100%であるため、色塗りは垂直方向のみとした
垂直方向における空間情報の取得意欲は、 ◇ 通常歩行より聴覚遮断歩行の方が、空間情報の取得意欲の平均割合が大きい ◇ 分散分析の結果、性別属性間に 5%水準で有意な差があり、非常に強い相関がある →男性より女性の方が空間情報の取得意欲が高い ◇ 性別属性間以外では、属性間にも歩行形態にも有意な差は見られない
以上の考察から空間情報の取得意欲は、 ◆ 女性の方が空間情報の取得意欲が高い傾向にあることがわかった ◆ 性別属性間以外では、どれも関係性が希薄であることが明らかとなった
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
100
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離 tab.6.1.3 空間情報取得までの距離のまとめ 情報までの平均距離(m) 通常歩行 全体 習慣
性別
方向感覚成績
方位に関する意識
空間行動における記憶
聴覚遮断歩行
15.58
23.43
聴かない
14.05
20.64
聴く
16.34
24.83
男性
16.93
27.08
女性
14.22
19.79
上位群
14.44
24.40
下位群
16.39
22.74
高
15.82
23.18
低
15.33
23.68
高
15.67
23.24
低
15.51
23.57
有意差
相関比
歩行形態
△
歩行形態
△
歩行形態
△
歩行形態
△
歩行形態
△
◎:非常に高い相関がある ○:やや強い相関がある
:歩行形態による比較 大
△:非常に弱い相関がある ×:相関がない
:属性間による比較 大
◇ 通常歩行より聴覚遮断歩行の方が、空間情報取得までの平均距離が長い ◇ 全属性における歩行形態に 5%水準で有意な差があるが、相関は非常に弱い →歩行形態が空間情報取得までの距離の長短に影響を与える ◇ 全属性間に有意な差はない
以上の考察から空間情報取得までの距離は、 ◆ 聴覚遮断歩行がより遠くの情報取得に効果を発揮することがわかった ◆ 聴覚遮断歩行が属性を問わず、効果を発揮することが明らかとなった
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101
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・行動データの総括 tab.6.1.4 行動データからみた聴覚遮断による空間情報取得モデル 空間情報の取得量
空間情報の取得意欲
空間情報取得まで距離
通常歩行との平均値比較
増加
増加
増加
習慣
聴く ◎
×
歩行形態 ○
性別
歩行形態 ○
性別 ◎
歩行形態 ○
方向感覚の成績
歩行形態 ○
×
歩行形態 ○
◎
×
歩行形態 ○
歩行形態 ○
×
歩行形態 ○
方位に関する意識 空間行動における記憶
意識 高
◎:非常に高い相関がある ○:やや強い相関がある △:非常に弱い相関がある ×:相関がない
◇ 聴覚遮断歩行おける、空間情報取得に対する通常歩行との比較は、いずれにおいても 増加傾向にあることがわかった ◇ 空間情報の取得量における習慣による聴く属性と方位に関する意識が高い属性、空間 情報の取得意欲における性別属性は、聴覚遮断歩行を行うことで、より空間情報の取得量 の増加や、取得意欲の向上に大きな効果を発揮することが言えた ◇ 上記以外にも、tab.6.1.4 における「歩行形態 ○」の部分は、歩行形態による違いが 情報取得に有意な差を与えることが明らかとなった ◇ 性別属性以外における空間情報の取得意欲は、属性間/歩行形態の双方に有意な差は 見られなかった
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102
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
■ 距離別データ ・空間情報の取得量 ◇ 通常歩行では距離が進むにつれ空間情報の取得量が減少するが、聴覚遮断歩行では距 離に関わらず一様に空間情報を取得する傾向にある ◇ 通常歩行における 300 ∼ 400m の区間、1000 ∼ 1100m の区間において、被験者ご とによる空間情報取得量の分布が広範囲に渡った →両ルートにおける 300 ∼ 400m の区間は、空間形態(住宅街や道幅を指す)が大きく 変化するポイントであり、そのようなポイントでほとんど情報を取得しようとしなかった 被験者が見られた →両ルートにおける 1000 ∼ 1100m の区間は、道幅の広い一直線の通りで視線の抜けが あるが、このような区間においても、通常歩行時ではほとんど情報を取得しようとしなかっ た被験者が見られた
・空間情報の取得意欲 ◇ 垂直/水平方向において各区間における平均値を結んだグラフの形状が、通常歩行時 では上に凸、聴覚遮断歩行時では下に凸となった →通常歩行時ではルートの中盤に、聴覚遮断歩行時ではルートの序盤と終盤に情報取得 意欲が強く見られた ◇ 垂直方向における情報取得意欲の分布が、聴覚遮断歩行時において広範囲に渡ること がわかった →聴覚遮断による効果が被験者ごとに異なることがわかった ◇ 垂直方向では聴覚遮断歩行時において、視線の広がりが情報取得意欲に影響すること がわかった →視線の広がりが見られる空間では、聴覚遮断歩行時の方が情報取得意欲が向上する ◇ 水平方向では、両歩行形態ともに似た分布が見られた →水平方向の情報取得意欲は、歩行形態とあまり関係のないことが明らかとなった
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103
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離 ◇ 各区間で見ると、聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報を取得していることがわかる ◇ 空間形態が大きく変化するポイントを含む区間では、聴覚遮断歩行時においてより遠 くの情報を取得する傾向にあることがわかった →より遠くにある情報を取得していることは、空間をより広く捉えていることが挙げら れる
以上の考察より、距離別データからみる聴覚遮断による情報取得モデルは、 ◆ 空間情報の取得量が一様 ◆ ルートの序盤と終盤において、空間情報の取得意欲が向上する ◆ 垂直方向における空間情報の取得意欲が向上する ◆ 空間形態が変化するポイントを含む区間では、情報取得量と取得距離において有効 ◆ 視線の抜けがある空間を含む区間では、情報の取得量、垂直方向の取得意欲、取得距 離のそれぞれに有効
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104
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
■「迷い」からみたデータ ・空間情報の取得と「迷い」 実験から得られた情報取得の内容を、「常時」、「一時」、「その他」の 3 つに分類した。 「迷いにくい人」は歩行中に「常時」に関する情報を取得する傾向にあるという点から 本研究では、 ★「常時」と「一時」の比較 ★「常時」と「一時+その他」の比較 を行い、そのまとめを次頁以降に示す。
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105
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
★「常時」と「一時」の比較
40%
「常時」情報取得割合の増減率
30% 20% 10% 0% 02
04
-10%
06
09
12
01
03
迷いにくい人
05
07
08
10
11
迷いやすい人
-20% -30% -40%
被験者 No.
fig.6.1.5 聴覚遮断歩行時における「常時」−「一時」情報取得割合の増減率 ※注)「常時」情報取得割合= (「常時」情報取得数 ) /(「常時+一時」情報取得数) 「常時」−「一時」情報取得割合の増減率 =(聴覚遮断歩行時「常時」情報量取得割合)/(通常歩行時「常時」情報量取得割合)− 1 として求めた。
◇ 全被験者における「常時」情報取得量の平均増減率は 8.11% ◇「迷いにくい人」は増減率にばらつきが見られるが、「迷いやすい人」は近い値をとる ◇「迷いやすい人」として分類された方向感覚の成績下位群は、「常時」情報取得量の増 減率が「迷いにくい人」ほどではないが、増加する傾向にある
以上の考察から「常時」情報取得量の増減率は、 ◆ 聴覚遮断歩行が増減率を増加させることがわかった ◆「迷いやすい人」にとっても増加傾向にあり、聴覚遮断歩行が「常時」情報取得に有効 であることがわかった →「迷いやすい人」が聴覚遮断歩行を行うと、「常時」情報量が増加し、迷いにくくなる ことが言える
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
★「常時」と「一時+その他」の比較
40%
「常時」情報取得割合の増減率
30% 20% 10% 0% 02
04
-10%
06
09
12
01
03
迷いにくい人
05
07
08
10
11
迷いやすい人
-20% -30% -40%
被験者No. 「常時」−「一時」
「常時」ー「 一時+その他」
fig.6.1.6 聴覚遮断歩行時における「常時」−「一時+その他」情報取得割合の増減率 ※注)「常時」情報取得割合= (「常時」情報取得数 ) /(「常時+一時+その他」情報取得数) 「常時」−「一時+その他」情報取得割合の増減率 =(聴覚遮断歩行時「常時」情報量取得割合)/(通常歩行時「常時」情報量取得割合)− 1 として求めた。 また、青グラフ部分は fig.6.1.5 との比較用のための参考として、合わせて図示した。
◇ 全被験者における「常時」情報取得量の平均増減率は 3.11% ◇ ほとんどの被験者の増減率は fig.6.1.5 と比較して、減少傾向にある ◇「迷いやすい人」のうち二人に大きな増減率の増加が見られた
以上の考察から「常時」情報取得量の増減率は、 ◆ 聴覚遮断歩行がわずかながら、増減率を増加させることがわかった ◆「迷いやすい人」にとっても増加傾向にあり、その平均は「常時」−「一時」よりも増 加した →「迷いやすい人」が聴覚遮断歩行を行うと、「常時」情報量が増加し、迷いにくくなる ことが言える ◆「その他」の情報が加わることで、本来ならば増減率は減少するはずだが、「迷いやす い人」のうち、二人に非常に大きな増加傾向が見られた →空間情報の取得に不必要な「その他」の情報が著しく減少したため、この増加傾向が 見られ、聴覚遮断歩行が有効に働いたと考えられる
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107
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
続いて、空間情報の取得内容を更に細分化し、 「空間」、 「ランドマーク」、 「オブジェクト」、 「サイン」、「その他」の 5 つに分類した。 「迷いにくい人」は歩行中に「空間」と「ランドマーク」に関する情報を取得する傾向 にあるという点から本研究では、 ★ 全体平均 ★ 習慣属性比較 ★ 性別属性比較 ★ 方向感覚の成績属性比較 を行い、そのまとめを次頁以降に示す。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
tab.6.1.7 「空間」と「ランドマーク」の増減 全体平均 空間
ランドマーク 空間+ ランドマーク 習慣属性 聴かない属性
聴く属性
空間
空間
ランドマーク
ランドマーク
空間+
空間+
ランドマーク
ランドマーク 性別属性 男性
女性
空間
空間
ランドマーク
ランドマーク
空間+
空間+
ランドマーク
ランドマーク 方向感覚の成績属性
上位群
下位群
空間
空間
ランドマーク
ランドマーク
空間+
空間+
ランドマーク
ランドマーク
◇ 全体平均から「迷いにくい人」がより多く取得する情報は、通常歩行の方が取得する 傾向が見られた ◇ 習慣属性では双方ともに「空間」に関する情報量は大きく減少するが、聴かない属性 の「ランドマーク」の増加が大きいため、結果として、「空間+ランドマーク」は少量で あるが、増加する傾向となった ◇ 性別属性では属性間に増減のばらつきが見られたが、結果として、通常歩行の方が少 量ながら、増加する傾向が見られた ◇ 方向感覚の成績属性では、属性間に真逆の増減が見られ、「空間+ランドマーク」の情 報量は聴覚遮断歩行において、成績上位群で大きく増加、成績下位群で大きく減少した
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109
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
以上のことから、「空間」と「ランドマーク」に関する情報量は、 ◆ 聴覚遮断歩行においては、全体的に減少する傾向が見られた →しかし、普段から音楽を聴かない属性、方向感覚の成績上位群には増加傾向が見られ た ◆ 方向感覚の成績属性の間で一番大きな差が見られた ◆ 聴覚遮断歩行はあまり「迷い」に有効でないことがわかった
また、「ランドマーク」の情報量を取得した位置によって更に細分化したところ、 ◇「スタート地点」、「交差点付近」、「遠方」の 3 つにおいて、聴覚遮断歩行がそれらの割 合において増加している傾向が見られた
つまり、 ◆「空間」と「ランドマーク」における情報量では、聴覚遮断歩行時の方が減少してしま うことが明らかとなったが、 「ランドマーク」におけるその取得地点で比較すると、 「スター ト地点」、「交差点付近」、「遠方」において、情報量が増加する傾向にあった →つまり聴覚遮断歩行では、例え情報の取得量が少なくても、その取得位置が「迷いに くい人」に見られるような地点で取得している 以上のことから、空間情報の取得量における「迷い」からみた考察では、聴覚遮断歩行 の有効性が示せた。
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110
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離と「迷い」 空間情報取得までの距離と「迷い」の分析では、 「空間情報取得までの距離推移値」と「空 間情報取得遷移率」の二つの視点から、「迷い」を考察した。 「空間情報取得までの距離推移値」においては、 ◆ 歩行形態による平均値が聴覚遮断歩行時において、7.72m 長いことがわかった →聴覚遮断歩行時はただ遠方に位置する情報を取得しているだけでなく、情報間の遠近 の差が大きく、視線の遠近移動が活発に行われていることが明らかとなった 「空間情報取得遷移率」においては、 ◆ 任意の範囲を 15m に設定した所、12 人中 10 人の被験者が、聴覚遮断歩行時の遷移率 が高くなるという傾向が見られた →聴覚遮断歩行時では 15m を境界とした場合、その視線の推移が通常歩行と比較して、 非常に活発に行われることが明らかとなった 従って、この推移値、遷移率からみても、単に情報取得までの距離が長いだけでなく、 取得するまでの視線の動きが聴覚遮断歩行によって、活発になることが明らかとなった。
以上のことから、空間情報取得までの距離における「迷い」からみた考察では、聴覚遮 断歩行の有効性が示せた。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
以上の考察より、「迷い」からみる聴覚遮断による情報取得モデルは、 ◆「常時」、「一時」、「その他」における情報内容分類では、「常時」−「一時」の情報取 得量の増減率において、「迷いにくい人」に分類される被験者から増加する傾向にある ◆「その他」を含めた場合でも、「迷いにくい人」における情報取得量の増減率も増加す る傾向がある ◆「空間」、「ランドマーク」、「オブジェクト」、「サイン」、「その他」における情報内容分 類では、「空間」と「ランドマーク」に関する情報取得量は通常歩行の方が多く取得する ◆「ランドマーク」における空間情報取得地点別に比較すると、「スタート地点」、「交差 点付近」、「遠方」において、聴覚遮断歩行はいずれにおいても情報取得量が高い ◆ 空間情報までの距離を長さだけでなく、「空間情報までの距離推移値」と「空間情報取 得遷移率」という視点からも分析を行った結果、聴覚遮断歩行の方が距離推移値、遷移率 ともに高く、視線の遠近推移が活発に行われる
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
6.2 展望 本研究では、環境音からの遮断するという歩行者属性に焦点を当て、研究を行ったが、 都市歩行空間にはもっと様々な歩行者属性が存在し、現在にはない、新たな歩行者属性が 出現するかもれない。このような類いの研究が今後も生まれていくのであれば、まだ着目 されていない、新たな歩行者属性に焦点を当て、研究を行ってもらいたい。 本研究の実験で取り扱った音楽を聴きながらの歩行は、現在、注意力が散漫になると言 われており、街で音楽を聴きながら歩行することを禁止にする地域もでてきた。しかし、 この結果を元に、それを再考するきっかけとなれば幸いである。多種多様な歩行者属性が 存在する都市空間を生むためにも、排除するのではなく、守っていくような傾向が生まれ てくれればと願いたい。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
6.3 謝辞 現在、2011 年2月 4 日(金)午前一時。論文を自宅で印刷しながらこの文章を書いている。渡辺仁史 研究室に入った時は、まさか自分が修士論文を執筆するとは夢にも思っていなかっな。修士論文ってなん か手の届く所にない感じだったし…まあ、一時はどうなることかと思ったけど、とりあえず書き終えたか な? w 今一番の心配はガタガタいってるプリンター君が最後まで絶えられのかどうか…
そんなことはさておき、この三年間を振り返るとメッチャ濃い三年間だった。まず学生生活で一番辛かっ たと今でも思っている卒業論文。なかなかテーマ決まんなくて、S 棟に 12 連泊ぐらいして、先輩にスゲー 迷惑かけて。修論こそはと意気込んだけど、まぁ、こんなもんだよね w 修士一年の時は遊んだね∼!毎 日飲んで、ダイビング始めて、また飲んで。学校にもずっといて、大学入ってから一番大学来てたな、きっと。 それでシューカツやって、修士二年になった。夏はずっと旅行行って、これでもかってくらい肌を焼いた。 夏は楽しかったな∼!夏よ、早く来い!!
とりあえず修士の思い出はこれくらいにして、謝辞らしいこと書きます! まず始めに、渡辺先生に感謝の気持ちを述べたいと思います。先生からは物事に対する姿勢、新しいこ とに挑戦し続ける大切さなど、様々な刺激を頂きました。また研究室の届けられる沖縄の風は新鮮で、論 文が終わった頃には沖縄に行きたいと思います。私の学生生活が先生のご指導の元で最後を迎えられるこ とを心から嬉しく思います。ありがとうございました。 そして、いつもいつも自分の面倒を見て頂いた林田先生。本当にデキが悪くて、ご迷惑しかかけてませ んね。そんな自分をいつも暖かく見守ってくださった先生には感謝しきれません。本当にありがとうござ いました。どうか暖かい格好をして、弁当ばかり食べてないで、お身体を大事にしてください。そして、 海老狸の味は忘れません! なっちゃんや遠田さんにも色んなことを教わりました。これからもお身体に気をつけて、今後のご活躍 をお祈りしています。またご一緒に飲み行きましょう!
M 0のみんなからは自分が知らなかった世界を教えてもらった。特に行動ゼミの 4 人は個性があって、 刺激あったな∼ w 学院上がりで親近感があるししょー。カメラ大好きの D、東大でもガンバ。キッズお 疲れ、ジョン三等兵。差し入れとかお見舞いとかありがとう、ガースー。忙しいのに分析手伝ってくれて ありがとう。それからまたたこ焼き食べような、ヒロキ。他のみんなもありがとう! M 1のみんなからは真面目さを教えられたな。いっつも研究しついて、作業してたね。俺が言うのもな んだけど、もっと遊びな!今だけだよ!そんな M 1も行動ゼミの皆は特にありがとう!気付いたらいな くなってたゆかりんちょ。バンジーの敬礼は忘れません、コージー。はうあ∼、ジャンボ。いつもクール で兄貴肌な河 D、来年のゼミを引っ張って行ってください!そして、ちゃっきーにはキッズも一緒にやっ てたし、お見舞いにも来てくれたし、香港も大阪も行ったし、一番感謝しなきゃね。就活忙しいのに論文 手伝ってくれてありがとう。これからもチャラチャラしていてください。w 他の M 1も色んな所でお世 話になってると思うし、本当にありがとう!来年の研究室を頼んだ!!
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
そして、何より感謝しなきゃいけないのが、同期のみんなだね。この論文が書けたのも、研究室ライフ がこんなに楽しかったのも、皆のおかげです!本当にありがとう!
エロ:あなたのしゃべり方とダンスのモノマネとこのあだ名はこれからもずっと続くんだろうね。w 修 士からの入学で大変な面もあっただろうけど、さすがチャンピオンだね。就職先でタカジにヨロシク。
ガッキー:キッズではお世話になりました。ちゃんと飯食って、体調には気をつけてね!皆心配してるか らね!またバンジー行こうね!
ぶっちー:そろそろ3画面から4画面にしてもいいんじゃん? Mac は便利だよ∼ w 早く彼女できると 良いね!あと、富山では色々ありがとう!一週間もお世話になりました!ご家族に宜しくお伝え下さい。
プリンス:もうこのあだ名もしっくりきてるよね。w プリンスはなんか感性が違うよね。いつもカッコ イイ横文字使うし、例えはたまにわかんないけどね。w パナでも頑張って!今度は社会人として仁史研 に関わるのも、面白そうだね!
バービー:もう、ただただあなたのこれからが心配です。周りに気を使える人間になりましょう。ガキみ たいに一つのこと集中し過ぎて、周りを無視しないようにしましょう。飲んで、潰れても靴は履きましょう。 以上。
オカタツ:米を一合ずつ持ってきたときはさすがにビックリしたわ。さすがマメタツ。w いつも真面目で、 色んなこと知ってて、なんか兄貴みたいな感じだね。ホントにありがとう!4月から、夜の新橋/銀座で お世話になります! w
田名網:あなたの行動力にはただただ脱帽です。ダイビングしたり、ゴルフしたり、色んなことが出来た のも田名網のおかげだと思ってます。本当にありがとう!就職してもちょいちょい飲み行こうな∼
研究室以外にも、WASABI の皆とも色んな思い出が出来たし、感謝感謝です。 それから、高校から9年間お世話になった早稲田にも感謝の気持ちを述べておこうと思います。
そして最後に、ここまで育ててくれた両親に感謝したいと思う。これから少しずつですが、親孝行して いきたいなと思ってます。どうか身体に気をつけてください。
2011 年 2 月 4 日 西 隆明
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Chapter 5
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
5 分析 5.1 行動データの属性比較分析 ここで述べる行動データとは、実験から得られた、以下 3 つのデータである。 ◇ 空間情報の取得率 被験者の空間情報の総取得量に対する、通常歩行時と聴覚遮断歩行時における情報取得 数の百分率を示す。 ◇ 空間情報の取得意欲 被験者の各歩行時における空間情報の取得意欲に対する、垂直方向と水平方向における 情報取得意欲の百分率を示す。 ◇ 空間情報取得までの平均距離 被験者の空間情報取得までの距離の総和を情報の数で割った距離の平均値である。
この 3 つのデータを用いて、アンケートで得られた被験者の各属性との相関を検証する。 なお、その属性は以下の通りであり、該当する被験者 No. を tab.5.1.1 に示す。 ◇全体 ◇習慣属性 普段からの散策行動において、普段から音楽を聴きながら歩行するかどうかを比較する。 ◇性別属性 性別による比較を行う。 ◇方向感覚の成績属性 方向感覚質問用紙の全体合計点を元に、成績上位群と下位群に分けて比較を行う。なお、 その境界は 60 点とした。 ◇方位に関する意識属性 ◇空間行動における記憶属性 この二つの属性に関しては、tab.4.4.2 で示した全国平均との比較において、その成績 を上回った被験者を「高」、下回った被験者を「低」とした。
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043
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
tab.5.1.1 属性の種類と被験者の割り振り 属性の種類 習慣
性別
方向感覚の成績
被験者No.
聴かない
01, 04, 10, 11
聴く
02, 03, 05, 06, 07, 08, 09, 12
男
02, 03, 04, 05, 06, 09
女
01, 07, 08, 10, 11, 12
上位群
02, 04, 06, 09, 12
下位群
01, 03, 05, 07, 08, 10, 11
方位に関する
高
02, 03, 05, 09, 11, 12
意識
低
01, 04, 06, 07, 08, 10
空間行動における
高
04, 06, 07, 09, 12
記憶
低
01, 02, 03, 05, 08, 10, 11
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044
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得率による属性別比較 通常歩行と聴覚遮断歩行における、情報取得率の各属性別による比較を fig.5.1.2 ∼ fig.5.1.7 に示す。
25%
50%
75%
100%
全体
0%
通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.2 全体平均 fig.5.1.2 では情報取得率の通常歩行と聴覚遮断歩行における全体に対する割合を算出し た。その結果は、通常歩行時が 43.19%、聴覚遮断歩行時が 56.81%と、聴覚遮断歩行時 の方が空間情報の取得率が高い結果となった。
0%
25%
50%
75%
100%
聴かない
01 04 10 11
02 03
聴く
05 06 07 08 09 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.3 習慣属性による比較 fig.5.1.3 では習慣による属性の比較を表した。この結果を見ると、普段の散策行動で音 楽を聴く属性の方がそうでない属性より、聴覚遮断歩行時における情報取得率が全体的に 高い傾向にあることが見て取れる。また、普段から音楽を聴かない属性の情報取得率は被 験者によってまちまちだが、聴く属性に関しては多少の誤差はあるものの、全体的に同じ ような割合であることがわかった。
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045
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
25%
50%
75%
100%
02
男性
03 04 05 06 09
01
女性
07 08 10 11 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.4 性別属性による比較 fig.5.1.4 では性別による属性の比較を表した。この結果を見ると、被験者 No.04 を除 く男性属性において、ほぼ同じような情報取得率の割合であり、その平均は 60%に達す るほど、聴覚遮断歩行時の情報取得率が高い結果となった。一方、女性に関してはその割 合が被験者ごとでバラバラな割合であり、関係性が見られなかった。
方向感覚の成績上位群
0%
25%
50%
75%
100%
02 04 06 09 12
方向感覚の成績下位群
01 03 05 07 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.5 方向感覚の成績属性による比較 fig.5.1.5 では方向感覚の成績による属性の比較を表した。成績上位群における被験者 No.04 以外の被験者は 7 割以上の成績を残しており、聴覚遮断歩行時での情報取得率が 非常に高い傾向にあることが明らかとなった。成績下位群に関しては上位群ほどの顕著な 差が見られなかった。以上より、方向感覚の成績上位群には両歩行における情報取得に違 いが見られた。
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046
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
方位に関する意識 低
方位に関する意識 高
0%
25%
50%
75%
100%
02 03 05 09 11 12
01 04 06 07 08 10 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.6 方位に関する意識属性による比較 fig.5.1.6 では方位に関する意識による属性の比較を表した。この結果からは、通常歩行 と聴覚遮断歩行で顕著な差が表れた。情報取得率が高い属性における聴覚遮断歩行時の情 報取得率平均は、60%を超え、頻繁に情報を取得したことが明らかとなった。意識が低
空間行動における記憶 低
空間行動における記憶 高
い属性に関しては、被験者間に統一性が見られず、様々な割合が検出された。
0%
25%
50%
75%
100%
04 06 07 09 12
01 02 03 05 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.7 空間行動における記憶属性による比較 fig.5.1.7 では空間行動における記憶による属性の比較を表した。この結果からは他の属 性比較とは対照的に、記憶の低い属性に情報取得率の割合に統一感が見られたが、もう一 方では統一感はなかった。つまり、空間行動にける記憶が低い属性には聴覚遮断歩行が均 質的に有効に働いたと考えられる。
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047
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・情報取得意欲による属性別比較 通常歩行と聴覚遮断歩行における、情報取得意欲の各属性別による比較を fig.5.1.8 ∼ fig.5.1.13 に示す。
0%
25%
50%
75%
100%
垂直方向全体 水平方向全体 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.8 方向別全体平均 fig.5.1.8 では情報取得意欲の方向別による全体の平均を表した。このグラフから、水平 方向にはほとんど差が見られなかったが、垂直方向においては若干ではあるが、聴覚遮断 歩行時の方が情報取意欲の割合が大きいということがわかった。
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048
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
25%
50%
75%
100%
75%
100%
聴かない
01 04 10 11 02 03
聴く
05 06 07 08 09 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.9.1 習慣属性による比較(垂直方向) 0%
25%
50%
聴かない
01 04 10 11 02 03
聴く
05 06 07 08 09 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.9.2 習慣属性による比較(水平方向) fig.5.1.9.1 ∼ fig.5.1.9.2 では習慣による属性の比較を表した。垂直方向では聴覚遮断歩 行時の方が、水平方向では通常歩行時の方が、若干ではあるが情報取得意欲が高い傾向に あるが、ごく微量なので明確に差があるとは言い難い。ただ、両歩行における水平方向の 属性差はほとんどばらつきがなかったが、垂直方向では被験者によってバラバラな割合が 検出された。従って、聴覚を遮断しながら歩行することは、水平方向の情報取得意欲には あまり影響を与えないが、垂直方向に影響を与えることがわかった。
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049
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
25%
50%
75%
100%
75%
100%
02
男性
03 04 05 06 09 01
女性
07 08 10 11 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.10.1 性別属性による比較(垂直方向) 0%
25%
50%
02
男性
03 04 05 06 09 01
女性
07 08 10 11 12 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.10.2 性別属性による比較(水平方向) fig.5.1.10.1 ∼ fig.5.1.10.2 では性別による属性の比較を表した。性別による比較でも垂 直方向、水平方向共に性別に関する大きな差は見られなかった。ほんの少しの差であれば、 男性よりも女性の方が聴覚遮断歩行時において、垂直方向で高く、水平方向で低い情報取 得意欲を得ることが読み取れる。
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050
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行感覚の成績上位群
0%
25%
50%
75%
100%
02 04 06 09 12
方向感覚の成績下位群
01 03 05 07 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.11.1 方向感覚の成績属性による比較(垂直方向) 歩行感覚の成績上位群
0%
25%
50%
75%
100%
02 04 06 09 12
方向感覚の成績下位群
01 03 05 07 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.11.2 方向感覚の成績属性による比較(水平方向) fig.5.1.11.1 ∼ fig.5.1.11.2 では方向感覚の成績による属性の比較を表した。垂直方向の 聴覚遮断歩行時において、成績下位群の方が上位群より、情報取得意欲が高い傾向がある とわかった。しかし、水平方向に関しては、方向感覚の成績による違いはあまり見られな かった。
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051
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
方位に関する意識 低
方位に関する意識 高
0%
25%
50%
75%
100%
02 03 05 09 11 12
01 04 06 07 08 10 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.12.1 方位に関する意識属性による比較(垂直方向)
方位に関する意識 低
方位に関する意識 高
0%
25%
50%
75%
100%
02 03 05 09 11 12
01 04 06 07 08 10 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.12.2 方位に関する意識属性による比較(水平方向) fig.5.1.12.1 ∼ fig.5.1.12.2 では方位に関する意識による属性の比較を表した。垂直方向 においては全体的に聴覚遮断歩行時の方が情報取得意欲を示している傾向にあることがわ かる。しかし、水平方向に関しては差はほとんど見られなかった。
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052
空間行動における記憶 低
空間行動における記憶 高
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
25%
50%
75%
100%
04 06 07 09 12
01 02 03 05 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
空間行動における記憶 低
空間行動における記憶 高
fig.5.1.13.1 空間行動における記憶属性による比較(垂直方向) 0%
25%
50%
75%
100%
04 06 07 09 12
01 02 03 05 08 10 11 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.13.2 空間行動における記憶属性による比較(水平方向) fig.5.1.13.1 ∼ fig.5.1.13.2 では空間行動における記憶による属性の比較を表した。水平 方向は他の属性比較と同様に、点数の高低に関わらず情報取得意欲に差は見られなかった。 しかし一方で、垂直方向に関しては、比較的大きな差が見られた。従って、空間行動にお ける記憶に関しては、その点数が高いと垂直方向における情報取得意欲に差があり、聴覚 遮断歩行時の情報取得意欲が高くなるという傾向がわかった。
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053
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離による属性別比較 通常歩行と聴覚遮断歩行における、空間情報取得までの距離の各属性別による比較を fig.5.1.14 ∼ fig.5.1.19 に示す。
5
10
15
20
25
30 (m)
全体平均
0
通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.14 全体平均 fig.5.1.14 に両歩行における空間情報取得までの距離の平均値を示した。このグラフか ら、聴覚遮断歩行時の方が通常歩行時よりも約 8 メートル遠くの情報を取得しているこ とが明らかになった。
50
(m)
40
30
20
10
0 01
04
10
11
02
03
05
06
聴かない
07
08
09
12
聴く 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.15 習慣属性による比較 fig.5.1.15 では習慣による属性の比較を表した。この結果を見ると、普段から音楽を聴 かない属性では 4 人中 3 人が、普段から音楽を聴く属性では 8 人中 6 人が、聴覚遮断歩 行時において、通常歩行時より遠くの情報を取得していることがわかる。また、その平均 距離も聴覚遮断歩行時の方が遠い距離の情報を得ていることが読み取れる。
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054
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
50
(m)
40
30
20
10
0 02
03
04
05
06
09
01
07
男性
08
10
11
12
女性 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.16 性別属性による比較 fig.5.1.16 では性別による属性の比較を表した。この結果を見ると、歩行の形態を問わず、 全体的に男性の方が女性より遠くの情報を取得していることが見て取れる。性別属性全体 の平均値も 5 メートルの差があった。更に、聴覚遮断歩行時の方が空間情報取得までの 距離が短い被験者数も男性の方が少ないことがわかった。
50
(m)
40
30
20
10
0 02
04 06 09 方向感覚の成績上位群
12 通常歩行
01
03
05 07 08 方向感覚の成績下位群
10
11
聴覚遮断歩行
fig.5.1.17 方向感覚の成績属性による比較 fig.5.1.17 では方向感覚の成績による属性の比較を表した。このグラフから、被験者の まとまりが見て取れる。まず成績上位群の被験者 No.06 以外の聴覚遮断歩行時の空間情 報取得までの距離は約 20 メートル前後であり、成績下位群の被験者 No.01、03、05 の 聴覚遮断歩行時における空間情報取得までの距離は約 30 メートル、被験者 No.07、08、 11 のそれは約 15 メートル前後に分布する結果となった。
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055
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
50
(m)
40
30
20
10
0 02
03 05 09 11 方位に関する意識 高
12
通常歩行
01
04 06 07 08 方位に関する意識 低
10
聴覚遮断歩行
fig.5.1.18 方位に関する意識属性による比較 fig.5.1.18 では方位に関する意識による属性の比較を表した。この属性に関しては、被 験者のまとまりは見られず、特別な傾向は見て取れなかった。
50
(m)
40
30
20
10
0 04
06
07
09
12
空間における記憶 高
01
02
03
05
08
10
11
空間における記憶 低 通常歩行
聴覚遮断歩行
fig.5.1.19 空間行動における記憶属性による比較 fig.5.1.19 では空間行動における記憶による属性の比較を表した。この結果も fig.5.1.18 同様、属性間による大きな違いは見られなかった。また、通常歩行、聴覚遮断歩行共に、 平均値の差は 1 メートル以内と、ほとんど変わらない結果となった。
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056
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・行動データの比較分析方法 本実験から得られた発話回数や首振り回数といった数値(回数)データは、被験者ごと に比較出来ないので、これまでの比較分析はパーセンテージによる比較を行った。次に、 この属性ごとに比較したデータの差を検証するための分析を行う。なお、分析には SPSS 17.0 を用いた。 本データはパーセンテージによる値であるため、t 検定は使用出来ない。従って、分散 分析を用いた。本研究で取り扱う因子は属性と歩行形態の二種類の対応のない因子である。 従って、本分析では 2 元配置の分散分析を用いることとした。これらの属性ごとに比較 した行動データを、以下のフローに従って分析を行う (fig.5.1.20)。
2元配置の分散分析
交互作用の検定
=
yes
no
有意確率 < 有意水準α=0.05
交互作用 ナシ
交互作用 アリ
属性間効果の検定
属性ごとに分散分析
有意確率 < 有意水準α=0.05
相関比の算出 fig.5.1.20 属性による比較の行動データの分析フロー
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057
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得量による属性別比較の分析結果と考察 fig.5.1.20 の 分 析 フ ロ ー に 基 づ い た、 各 属 性 間 比 較 の 分 析 結 果 と そ の 考 察 を 次 の fig.5.1.21 ∼ fig.5.1.25 に記す。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.002<有意確率α= 0.05 → 交互作用 アリ → 1元配置の分散分析へ ② 1元配置の分散分析 → 聴かない ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 ・分散分析 有意確率0.636>有意確率α= 0.05 → 聴く ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 ・分散分析 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 ③ 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.8253
→ 等分散性が成り立っている → 歩行形態には差がない
→ 等分散性が成り立っている → 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に強い相関がある
fig.5.1.21 習慣属性による比較分析結果 空間情報の取得率における習慣属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互作用検 定において交互作用ありと検出されたので、1 元配置の分散分析を行った。その結果、両 属性に等分散性が成り立つことが明らかとなった。また、普段から音楽を聴きながら散策 行動を行う属性の分散分析において、5%水準で有意な差が見られた。更に相関比を求め たところ、非常に強い相関があることが明らかとなった。 つまり普段から音楽を聴く属性は、音楽を聴きながら歩行することで、街の情報を取得 する確率が高くなり、その確率も普段聴かない属性よりも大きくなることが明らかとなっ た。
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058
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.874>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 性別 ・属性間効果の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.5378
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 性別属性には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → やや強い相関がある
fig.5.1.22 性別属性による比較分析結果 空間情報の取得率における性別属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互作用検 定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立っている ことが明らかとなった。また性別属性には差が見られなかったが、歩行形態には差がある ことが認められ、やや強い相関があることがわかった。 つまり、性別による情報取得の差はあまり見られなかったが、性別に関わらず、聴覚遮 断歩行時の方が情報を取得する割合が通常歩行時と比較して、大きくなるという傾向があ ることが証明された。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.502>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.437>有意確率α= 0.05 → 方向感覚 ・属性間効果の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.5378
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方向感覚には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → やや強い相関がある
fig.5.1.23 方向感覚の成績属性による比較分析結果 空間情報の取得率における方向感覚の成績属性の分析では、2 元配置の分散分析による 交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り 立っていることが明らかとなった。また方向感覚の成績属性には差が見られなかったが、 歩行形態には 5%水準で有意な差があることが認められ、やや強い相関があることがわ かった。 つまり、方向感覚の成績による情報取得率の差はあまり見られなかったが、方向感覚の 成績に関わらず、聴覚遮断歩行時の方が通常歩行時よりも情報を取得する割合が大きくな るという傾向が明らかとなった。
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059
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.001<有意確率α= 0.05 → 交互作用 アリ → 1元配置の分散分析へ ② 1元配置の分散分析 → 方位に関する意識 高 ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 等分散性が成り立っている ・分散分析 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 → 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 方位に関する意識 低 ・等分散性の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 等分散性が成り立っている ・分散分析 有意確率0.167>有意確率α= 0.05 → 歩行形態には差がない ③ 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.8996
→ 非常に強い相関がある
fig.5.1.24 方位に関する意識属性による比較分析結果 空間情報の取得率における方位に関する意識属性の分析では、2 元配置の分散分析によ る交互作用検定において交互作用ありと検出されたので、属性の違いごとに 1 元配置の 分散分析を行った。その結果、両属性に等分散性が成り立つことが明らかとなった。また、 方位に関する意識の低い属性の分散分析において、5%水準で有意な差が見られた。更に 相関比を求めたところ、非常に強い相関があることが明らかとなった。 つまり、属性と歩行形態に関係性が見られず、また、属性間による違いもあまり見られ ないという結果となった。しかし、方位に関する意識が高い歩行者のみを見てみると、聴 覚遮断歩行時において、非常に高い情報の取得率を示すことが明らかとなった。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.632>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.069>有意確率α= 0.05 → 空間行動における記憶 ・属性間効果の検定 有意確率1.000>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.5378
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 空間行動における記憶には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → やや強い相関がある
fig.5.1.25 空間行動における記憶属性による比較分析結果 空間情報の取得率における空間における記憶に関する属性の分析では、2 元配置の分散 分析による交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、 それが成り立っていることが明らかとなった。また空間における記憶属性には差が見られ なかったが、歩行形態には 5%水準で有意な差があることが認められ、やや強い相関があ ることがわかった。 つまり、空間行動における記憶による情報取得の差はあまり見られなかったが、空間行 動における記憶に関わらず、聴覚遮断歩行時の方が通常歩行時よりも情報を取得する割合 が大きくなるという傾向が明らかとなった。また、空間行動における記憶が低い属性には 聴覚遮断歩行が均質的に働くと考えられる。 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
060
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◇ 空間情報取得率の総括 空間情報の取得率は属性の全体を通じて有意な差が見られ、非常に強い相関が見られた。 重ねて、等分散検定においても全てにおいて成り立っている結果となった。つまり、各属 性や歩行形態が効果的に情報取得率に関して働いたのだと考えられる。 更に詳細に見ていくと、習慣属性と方位に関する意識属性における交互作用検定におい て、交互作用ありということがわかった。その時、習慣属性では普段の散策行動から音楽 を聴く属性、方位に関する意識属性ではその意識が高い属性において、非常に強い相関が 見られ、情報取得率に大きな影響を与えることが明らかとなった。この二つの属性以外に 関してはどれも交互作用が見られず、属性ではなく歩行形態に強い相関が見られた。それ は通常歩行時よりも聴覚遮断歩行時の方がより情報を取得する割合が高いというものであ る。 これらの分析結果より、情報取得率という行動データは各属性と歩行形態に大きな影響 を及ぼすことが明らかとなった。全体を通じて通常歩行時よりも聴覚遮断歩行時の方が情 報を取得する割合が高くなるという傾向が明らかとなった。更には、普段の散策行動から 音楽を聴く習慣があるかどうかと、方位に関する意識が高いことが、歩行形態に大きな影 響力を及ぼすことがこの分析結果から言えるであろう。
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061
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得意欲による属性別比較の分析結果と考察 fig.5.1.20 の 分 析 フ ロ ー に 基 づ い た、 各 属 性 間 比 較 の 分 析 結 果 と そ の 考 察 を 次 の fig.5.1.26 ∼ fig.5.1.30 に記す。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.685>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.706>有意確率α= 0.05 → 習慣 ・属性間効果の検定 有意確率0.077>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.344>有意確率α= 0.05
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 習慣属性には差がない
→ 歩行形態には差がない
fig.5.1.26 習慣属性による比較分析結果 空間の情報取得意欲における習慣属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互作用 検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立ってい ることが明らかとなった。しかし、習慣属性、歩行形態共に有意な差を見ることが出来な かった。 つまり、情報取得意欲と普段の街歩きで音楽を聴くか聴かないかという習慣はあまり関 係がないことが明らかとなった。結果を見てみても、聴覚遮断歩行時における垂直方向の 情報取得意欲が通常時より大きいが、あまり変わらない。更に水平方向では、もうほとん ど半々の結果が得られ、情報取得意欲と習慣には関係があまりないことがわかる。
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
062
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.575>有意確率α= 0.05 → 交互作用 ナシ ・等分散性の検定 有意確率0.802>有意確率α= 0.05 → 等分散性が成り立っている → 性別 ・属性間効果の検定 有意確率0.000<有意確率α= 0.05 → 性別属性には差がある → 相関比の算出へ → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.268>有意確率α= 0.05 → 歩行形態には差がない ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.9603
→ 非常に強い相関がある
fig.5.1.27 性別属性による比較分析結果 空間情報の取得意欲における性別属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互作用 検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立ってい ることが明らかとなった。また、歩行形態には見られなかったが、性別属性には 5%水準 で有意な差が見られ、その相関も非常に強いことが明らかとなった。 つまり、情報取得意欲は歩行形態にはあまり関係ないが、性別の違いによってその割合 が異なってくることが明らかとなった。その違いとは、男性より女性の方が聴覚遮断歩行 時において、垂直方向に対する情報の取得意欲の割合が高く、水平方向では低くなる傾向 があるということがわかった。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.495>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.399>有意確率α= 0.05 → 方向感覚 ・属性間効果の検定 有意確率0.155>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.471>有意確率α= 0.05
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方向感覚には差がない
→ 歩行形態には差がない
fig.5.1.28 方向感覚の成績属性による比較分析結果 空間情報の取得意欲における方向感覚の成績属性の分析では、2 元配置の分散分析によ る交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成 り立っていることが明らかとなった。しかし、方向感覚の成績属性、歩行形態共に有意な 差を見ることが出来なかった。 つまり、情報取得意欲と方向感覚の成績はあまり関係がないことが明らかとなった。結 果を見てみても、方向感覚の成績下位群における聴覚遮断歩行時・垂直方向の情報取得意 欲がその上位群より大きい割合だが、大きな差ではない。更に水平方向では、両属性・歩 行形態においてほとんど差が見られない結果となった。
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063
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.873>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.717>有意確率α= 0.05 → 方位に関する意識 ・属性間効果の検定 有意確率0.927>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.426>有意確率α= 0.05
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方位に関する意識には差がない
→ 歩行形態には差がない
fig.5.1.29 方位に関する意識属性による比較分析結果 空間情報の取得意欲における方位に関する意識属性の分析では、2 元配置の分散分析に よる交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが 成り立っていることが明らかとなった。しかし、方位に関する意識属性、歩行形態共に有 意な差を見ることが出来なかった。 つまり、情報取得意欲と方位に関する意識はあまり関係がないことが明らかとなった。 結果を見てみても、垂直方向・水平方向共に、両属性・歩行形態においてほとんど違いが 見られないことがわかる。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.461>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.366>有意確率α= 0.05 → 空間行動における記憶 ・属性間効果の検定 有意確率0.171>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.477>有意確率α= 0.05
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 空間行動における記憶には差がない
→ 歩行形態には差がない
fig.5.1.23 空間行動における記憶属性による比較分析結果 空間情報の取得における空間行動における記憶属性の分析では、2 元配置の分散分析に よる交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが 成り立っていることが明らかとなった。しかし、空間行動における記憶属性、歩行形態共 に有意な差を見ることが出来なかった。 つまり、情報取得意欲と空間行動における記憶はあまり関係がないことが明らかとなっ た。結果を見てみても、方向感覚の成績や方位に関する意識同様、全てにおいて違いを見 つけることは困難であった。
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064
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◇ 情報取得意欲の総括 情報取得意欲と各属性との比較分析においては性別属性のみでしか、その関係性がある とは言えない結果となった。しかしその相関は非常に高く、女性の方が聴覚遮断歩行時に おいて、垂直方向の情報を多く取得する意欲がある傾向が言える。 次に、各属性だけでなく歩行形態においても有意な差が見られず、性別属性以外は情報 取得意欲において、ほとんど関係性が見られなかったという結果となった。それ以外にお いては全ての属性において、等分散性が成り立ち、交互作用検定においても、交互作用な しという結果となった。
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065
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離による属性別比較の分析結果と考察 fig.5.1.20 の 分 析 フ ロ ー に 基 づ い た、 各 属 性 間 比 較 の 分 析 結 果 と そ の 考 察 を 次 の fig.5.1.31 ∼ fig.5.1.35 に記す。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.787>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.902>有意確率α= 0.05 → 習慣 ・属性間効果の検定 有意確率0.362>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.042<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方向感覚には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.31 習慣属性による比較分析結果 空間情報取得までの距離における習慣属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互 作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立っ ていることが明らかとなった。また習慣属性には差が見られなかったが、歩行形態には非 常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認められたことが明らかとなった。 つまり、習慣による空間情報取得までの距離の差はあまり見られなかったが、習慣に関 わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報を取得する割合が大 きくなるという傾向があることが証明された。
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066
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.471>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.371>有意確率α= 0.05 → 性別 ・属性間効果の検定 有意確率0.125>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.020<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 性別属性には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.32 性別属性による比較分析結果 空間情報取得までの距離における性別属性の分析では、2 元配置の分散分析による交互 作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それが成り立っ ていることが明らかとなった。また性別属性には差が見られなかったが、歩行形態には非 常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認められたことが明らかとなった。 つまり、性別による空間情報取得間での距離の差はあまり見られなかったが、性別に関 わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報を取得する割合が大 きくなるという傾向があることがわかった。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.598>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.997>有意確率α= 0.05 → 方向感覚 ・属性間効果の検定 有意確率0.967>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.025<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方向感覚には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.33 方向感覚の成績属性による比較分析結果 空間情報取得間での距離における方向感覚の成績属性の分析では、2 元配置の分散分析 による交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、それ が成り立っていることが明らかとなった。また方向感覚の成績属性には差が見られなかっ たが、歩行形態には非常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認められたこ とが明らかとなった。 つまり、方向感覚の成績による空間情報取得間での距離の差はあまり見られなかったが、 方向感覚の成績に関わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報 を取得する割合が大きくなるという傾向があることがわかった。
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067
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.883>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.623>有意確率α= 0.05 → 方位に関する意識 ・属性間効果の検定 有意確率0.999>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.030>有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 方位に関する意識には差がない
→ 歩行形態には差がない → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.34 方位に関する意識属性による比較分析結果 空間情報取得間での距離における方位に関する意識属性の分析では、2 元配置の分散分 析による交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、そ れが成り立っていることが明らかとなった。また方向感覚の成績属性には差が見られな かったが、歩行形態には非常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認められ たことが明らかとなった。 つまり、方位に関する意識による空間情報取得間での距離の差はあまり見られなかった が、方位に関する意識に関わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方がより遠く の情報を取得する割合が大きくなるという傾向があることがわかった。
① 2元配置の分散分析 → ・交互作用検定 有意確率0.944>有意確率α= 0.05 ・等分散性の検定 有意確率0.722>有意確率α= 0.05 → 空間行動における記憶 ・属性間効果の検定 有意確率0.981>有意確率α= 0.05 → 歩行形態 ・歩行形態 有意確率0.033<有意確率α= 0.05 ② 相関比(n^2)の算出
→ 相関比(n^2) = 0.2152
→ 交互作用 ナシ → 等分散性が成り立っている
→ 空間行動における記憶には差がない
→ 歩行形態には差がある → 相関比の算出へ → 非常に弱い相関がある
fig.5.1.35 空間行動における記憶属性による比較分析結果 空間情報取得間での距離における空間行動における記憶属性の分析では、2 元配置の分 散分析による交互作用検定において交互作用なしと検出され、等分散性の検定においては、 それが成り立っていることが明らかとなった。また空間行動における記憶属性には差が見 られなかったが、歩行形態には非常に弱い相関だが、5%水準で有意な差があることが認 められたことが明らかとなった。 つまり、空間行動における記憶による空間情報取得間での距離の差はあまり見られな かったが、空間行動における記憶に関わらず、通常歩行時と比較して聴覚遮断歩行時の方 がより遠くの情報を取得する割合が大きくなるという傾向があることがわかった。
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068
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◇ 空間情報取得までの距離の総括 空間情報取得間での距離における全属性との比較において、有意な差は見られなかった。 しかし、相関は弱かったものの、空間情報取得間での距離と歩行形態は全てにおいて相関 が見られた。つまり、空間情報取得間での距離は属性ごとの比較では違いが見られないが、 歩行形態の違いには大きな影響力を及ぼすことが明らかとなった。その影響は、聴覚遮断 歩行時の方が通常歩行時よりもより遠くの情報を取得する傾向にあることが明らかとなっ た。 その他に関しては、全属性比較における交互作用検定において交互作用なし、等分散検 定において等分散が成り立つという分析結果が得られた。
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069
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・行動データにおける属性比較分析の総括 本分析では、通常歩行と聴覚遮断歩行における、情報取得率/情報取得意欲/空間情報 取得までの距離といった 3 つの行動データを元に、習慣属性/性別属性/方向感覚の成 績属性/方位に関する意識属性/空間行動における記憶属性といった 5 つの属性を設け、 それぞれにおいて比較分析を行った。その結果概要を、行動データごとに次に示す。 ◆ 空間情報の取得率 空間情報の取得率においては他の行動データの分析結果よりも、一番顕著に違いや傾向 が見られた。一番顕著な結果は、習慣属性と方位に関する意識属性における比較である。 習慣属性では普段の散策行動から音楽を聴く属性、方位に関する意識属性ではその意識が 高い属性において、非常に強い相関が見られ、空間情報の取得率に大きな影響を与えるこ とが明らかとなった。それ以外の属性では歩行形態に強い相関が見られた。以上のことか ら、情報取得率という行動データは各属性と歩行形態に大きな影響を及ぼすことが明らか となった。全体を通じて通常歩行時よりも聴覚遮断歩行時の方が情報を取得する割合が高 くなり、普段の散策行動から音楽を聴く習慣があるかどうかと、方位に関する意識が高い ことが、歩行形態に大きな影響力を及ぼすことが明らかとなった。 ◆ 情報取得率 情報取得率に関しては、空間情報の取得率とは対照的にほとんどその関係性が見られな かった。唯一関係性が見られたのが、性別属性である。情報取得率と性別の相関は非常に 高く、女性の方が聴覚遮断歩行時において、垂直方向の情報を多く取得する傾向にあるこ とが言える。性別属性以外では、属性比較ではもちろん、歩行形態に関しても関係性を見 つけることは難しかった。 ◆ 空間情報取得間での距離 空間情報取得間での距離は他の行動データとは更に違った傾向が見られた。空間情報取 得間での距離はどの属性比較に対しても相関を見ることは出来なかったが、その全てにお いて歩行形態でわずかながらだが、相関が見られた。つまり、空間情報取得間での距離は 属性に関係なく、通常歩行と聴覚遮断歩行で大きく違うことが明らかとなった。その結果 は、通常歩行時よりも聴覚遮断歩行時の方がより遠くの情報を取得する傾向にあることが 明らかとなった。 以上のように、それぞれの行動データから読み取れたことは様々であるが、全体を通じ て明らかとなったのは、通常歩行と聴覚遮断歩行では明らかに行動特性が異なっているこ とである。
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070
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
5.2 行動データの歩行距離別分析 本節では、得られた行動データを歩行距離別に 100 メートルごとに分割し、歩行距離 別による分析を行った。それぞれの行動データに基づいた分析を下記に示す。 ・空間情報の取得量と歩行距離
18% 16% 14%
情報取得量
12% 10% 8% 6% 4% 2% 0%
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.1 通常歩行における歩行距離別空間情報の取得量
18% 16% 14%
情報取得量
12% 10% 8% 6% 4% 2% 0%
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.2 聴覚遮断歩行における歩行距離別空間情報の取得量
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071
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行距離別にみた空間情報の取得量は、通常歩行においては歩行距離が長くなるにつれ、 情報取得量は減少傾向にある。一方、聴覚遮断歩行においては距離別による違いはほとん どみられず、常に 6%∼ 8%の間で推移していることが見て取れる。通常歩行における空 間情報の取得量は減少傾向にあるものの、それは約 1000m を超えた辺りからであり、そ れまでは聴覚遮断歩行における空間情報の取得量にあまり大きな差は見られなかった。 また、通常歩行時における空間情報の取得量には全体的に値のばらつきが目立つ。例え ば、300 ∼ 400m の区間と 1000 ∼ 1100m の区間において、その情報の取得量が 14% 近い被験者も入れば、0%であった被験者もいた。つまり通常歩行時では被験者ごとによ る情報の取得に対する意識の違いが表れてしまったことから、取得量に違いが生まれてし まったのではないかと考えられる。300 ∼ 400m の空間を見てみると、両ルートともに、 曲折による空間の形態が変化する地点が含まれているような類似した区間であったが、情 報に対する意識の内容に差が見られた。聴覚遮断歩行時では空間形態の変化点以外にも意 識を働かせていた。しかし通常歩行では、空間形態の変化を意識する被験者と意識しない 被験者との差が明確に表れてしまったため、この様な情報に対する意識の分布が見られて しまったのではないか。その点、聴覚遮断歩行時ではそれほど大きなデータのばらつきは 少なく、聴覚遮断が被験者に対し、一様に働いたのではないかと考えられる。
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072
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得意欲と歩行距離 ◇ 垂直方向による比較
10 9 8
情報取得意欲 (回)
7 6 5 4 3 2 1 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.3 通常歩行における歩行距離別空間情報の取得意欲
10 9
情報取得意欲
(回)
8 7 6 5 4 3 2 1 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離(m)
fig.5.2.4 聴覚遮断歩行における歩行距離別空間情報の取得意欲
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073
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行距離別にみた空間情報に対する垂直方向の取得意欲は、通常歩行時より聴覚遮断歩 行時の方が全体的に割合が多いことが見て取れる。また、通常歩行時は平均値を結んだ線 が上に凸であるが、聴覚遮断歩行時では下に凸であることがわかる。つまり、聴覚遮断歩 行時ではスタートとゴール地点において情報取得意欲が高くなることが言える。その反対 として通常歩行時は約 900m までは増加傾向にあるものの、それ以降では減少傾向にあ ることがわかった。 次に情報取得意欲の分布だが、聴覚遮断歩行時の方が被験者ごとの分布が激しいことが わかる。つまり、聴覚遮断が被験者によって効果的に働いた場合とそうでない場合の差が 大きかったということが見て取れる。特に分布が激しかったスタート地点∼ 200m の区 間は両ルートとも駅前の比較的栄えた地域である。同じような形態の街区においてこのよ うな差が生まれたということは、駅前のような比較的栄えた空間において聴覚遮断歩行時 の方がより空間情報に対する取得意欲が、被験者ごとにばらつきはあるものの向上するこ とが明らかとなった。更に分布が激しかった 1300 ∼ 1500m の区間では、ルート A にお いては中学校の校庭、ルート B では道幅の広い道路と、視線の広がりが生まれる空間が 出現する。つまり、前述の区間同様、聴覚遮断歩行時における視線の広がりが空間情報の 取得意欲に影響することが明らかとなった。
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074
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◇ 水平方向による比較
20 18 16
情報取得意欲
(回)
14 12 10 8 6 4 2 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.5 通常歩行における歩行距離別空間情報の取得意欲
20 18 16
情報取得意欲回数 (回)
14 12 10 8 6 4 2 0
100
200
300
400
500
600
700 800 900 歩行距離(m)
1000 1100 1200 1300 1400 1500
fig.5.2.6 聴覚遮断歩行における歩行距離別空間情報の取得意欲
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075
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行距離別にみた空間情報に対する水平方向の取得意欲は、平均値を結んだ線が垂直方 向と同様に通常歩行時が上に凸、聴覚遮断歩行時が下に凸の形を表している。その中で、 聴覚遮断歩行時にけるスタートとゴール地点付近では非常に大きな値が得られたことが見 て取れる。つまり、聴覚遮断歩行による情報取得の意欲はスタート地点とゴール地点で強 まる傾向があると判断出来る。しかし、情報取得意欲全体の平均値に大きな差は見られず、 歩行形態による空間情報に対する取得意欲に差は見られなかった。 データの分布に関しては、両歩行形態共に、垂直方向に見られたような分布のばらつき の差はあまり見られなく、どちらも同じような分布の広がりを示す結果となった。つまり、 空間情報に対する水平方向の取得意欲は、歩行形態を問わず被験者ごとに様々な値を取る ことが明らかとなった。
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076
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報の取得までの距離と歩行距離
200 180
情報取得までの距離 (m)
160 140 120 100 80 60 40 20 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.7 通常歩行における歩行距離別空間情報の取得までの距離
200 180
情報取得までの距離 (m)
160 140 120 100 80 60 40 20 0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
歩行距離 (m)
fig.5.2.8 聴覚遮断歩行における歩行距離別空間情報の取得までの距離
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077
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
歩行距離別にみた空間情報に対する取得距離は、聴覚遮断歩行時のほうが全体的に遠く の情報を取得していることが明らかである。更に各距離ごとで見てみると、300 ∼ 400m / 1100 ∼ 1200m の区間において、聴覚遮断歩行時の方が遠くの距離にある情報を取得 しているという顕著な差が見られた。この二つの空間は両ルートともに、曲折による空間 の形態が変化する地点が含まれている。このような空間情報が一新する区間において、近 い距離の情報を取得している通常歩行では空間全体を捉えていない傾向があると考えられ る。取得情報までの距離が遠い、つまり広く空間を捉えている聴覚遮断歩行において、聴 覚を遮断することが遠くの情報を、空間を広く認識する傾向が生まれることが明らかと なった。 また、上記の二つの区間は空間情報に対する取得距離の分布が広範囲に渡っていること が見て取れる。この二空間は曲折による空間の形態が変化する以外に、駅前方向に向かっ て視線の抜けが得られる場所でもある。従って、両ルートにおける 1000 ∼ 1200m の 区間で情報取得までの距離に大きな分布が生まれたことが挙げられる。しかし、300 ∼ 400m の区間では、聴覚遮断歩行時では広範囲に渡る分布が見られるが、通常歩行では見 られない。つまり、聴覚遮断歩行では遠くの情報を取得することを可能にするポテンシャ ルのようなものが生まれることが明らかとなった。
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078
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・行動データの歩行距離別分析の総括 行動データから得られた歩行距離別分析では、以下のことがわかった。 ◆空間情報の取得量 歩行距離別にみた空間情報の取得量は、通常歩行においては歩行距離が長くなるにつれ、 情報取得量は減少傾向にあるものの、それは約 1000m を超えた辺りからであり、それま では聴覚遮断歩行における空間情報の取得量にあまり大きな差は見られなかった。 また、通常歩行時における空間情報の取得量には全体的に値のばらつきが目立ち、被験 者ごとによる情報の取得に対する意識の違いが表れたことから情報取得量に差が生まれた のではないか。更に、曲折による空間の形態が変化する地点が含まれているような類似し た区間において、情報に対する意識の内容に差が見られた。通常歩行では、空間形態の変 化を意識する被験者と意識しない被験者との差が明確に表れてしまったため、情報に対す る意識の分布が見られてしまった。その点、聴覚遮断歩行時ではそれほど大きなデータの ばらつきは少なく、聴覚遮断が一様に働いたのではないかと考えられる。 ◆空間情報取得意識 ・垂直方向比較 通常歩行時は平均値を結んだ線が上に凸であるが、聴覚遮断歩行時では下に凸でとなっ た。つまり、聴覚遮断歩行時ではスタートとゴール地点において情報取得意欲が高くなる ことが言える。 情報取得意欲の分布は、聴覚遮断歩行時の方が激しいことから、聴覚遮断が被験者によっ て効果的に働いた場合とそうでない場合の差が大きかったということがわかった。また、 聴覚遮断歩行時では視線の広がりが空間情報の取得意欲に影響することが明らかとなっ た。 ・水平方向 平均値を結んだ線が垂直方向と同様に通常歩行時が上に凸、聴覚遮断歩行時が下に凸の 形を表し、聴覚遮断歩行による情報取得の意欲はスタート地点とゴール地点で強まる傾向 があると判断出来た。 データの分布は両歩行形態共に、同じような分布の広がりを示す結果となった。つまり、 空間情報に対する水平方向の取得意欲は、歩行形態を問わず被験者ごとに様々な値を取る ことが明らかとなった。
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079
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
◆空間情報取得までの距離 各距離ごとで見ると、聴覚遮断歩行時の方が遠くの距離にある情報を取得しているとい う顕著な差が見られた。両ルートともに曲折による空間の形態が変化する地点では、聴覚 を遮断することが遠くの情報を、空間を広く認識する傾向が生まれることが明らかとなっ た。 またこのような空間では、空間情報に対する取得距離の分布が広範囲に渡っていること が言える。その中で、聴覚遮断歩行では遠くの情報を取得することを可能にするポテンシャ ルのようなものが生まれることが明らかとなった。
以上のことから、歩行距離別による行動データの違いについて分析/考察を行い、聴覚 遮断歩行と通常歩行では、スタート地点からの距離(100m 区切り)と空間の形態(視線 の抜け、駅前空間など)によって異なる空間情報の取得をすることが明らかとなった。
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080
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
5.3 「迷い」からの分析 ・行動データと「迷い」 5.1 では実験から得られた行動データを元に、それぞれ属性ごとに分類し、その関係性 を導いた。5.2 では更にそれらのデータを歩行距離別に分割し、スタート地点からの距離 や空間との比較を行った。これらの分析結果から共通して言えることは、通常歩行と聴覚 遮断歩行では明らかにその行動特性が異なるということである。そこで本節では、行動デー タにおいて歩行形態の違いに有効な差が見られた、「空間情報の取得量」と「空間情報取 得間での距離」に焦点を当て、「迷い」という視点から分析を行っていく。 まず始めに、なぜ「迷い」に視点を当てたかを説明する。新垣ら 27 は「方向オンチの科学」 において、迷いやすい人と迷いにくい人の違いを検証する発話プロトコルによる歩行実験 を行い、次のような結果を導いた。
実験の結果、迷いやすいと判断された人は外界に関するモデル(認知地図)を構築する 段階で、移動に役立つ情報に「注意が向いていない」ことが多い。 ここで述べてる情報とは、歩行中に被験者が発話した内容(例:場所を特定する情報、 移動方向に関する情報など)を指している。つまり、迷いやすい人が移動に役立つ情報に 対して注意が向いていないということは、その情報に関する発話量が少ないということが 挙げられる。また、単に発話量だけで見るのであれば、5.1 で行った空間情報のの分析の みでそれが言えてしまう。しかし、本実験から得られた発話の内容をより深く分析するこ とで、歩行形態別による移動に役立つ情報への注意力やその質を測り、迷いやすさという 視点からも検証出来るのではないかと考えた。 空間情報に対する取得までの距離に関しては、森村ら 19 の研究を参考にした。情報焦 点距離と迷いに着目したこの研究は、迷いにくい人は迷いやすい人に比べ、平均情報焦点 距離が長いという考察をしている。つまり、迷いにくい人はそうでない人より、より遠く にある情報を取得しながら歩行していることが言える。従って、5.1 で得られた空間情報 取得までの距離の平均値だけでなく、本実験から得られた結果を更に深く分析し、そのデー タを元に歩行形態別による迷いやすさを検証出来るのではないかと考えた。 これら二つのデータを用いて、「迷い」に焦点を当てた分析を行っていく。なお、新垣 らの「方向オンチの科学」は本節以降においても重要な文献として、様々な知見を元に分 析を行っていく。
27
新垣紀子 , 野島久雄:「方向オンチの科学」- 迷いやすい人・迷いにくい人はどこが違う? -, 講談社 , 2001 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
081
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得量と迷い 前頁で述べた移動に役立つ情報だが、ここで言う情報とは、様々な定義が込められて いる。新垣らはその情報を大きく、3 つのグループに分類している。それらは、場所を特 定するために利用する情報、移動方向に関する情報、次回訪れたときには変わってしま う情報である。この分類の結果、迷いにくい人は発話した情報の約 80%が場所を特定す るための情報と移動方向に関する情報であると示している。一方で迷いやすい人の割合は 64%と低く、次回訪れたときには変わってしまう情報を発話する回数が多かったことを 明らかにしている。 本研究における発話、つまり空間情報に対する取得量の目的は、歩行中に意識して見た ものや、意識したことを発話してもらったことと、歩行の目的が道を記憶するためではな いので、上記の分類方法とは異なる。従って、本研究では空間情報取得量を次のように分 類した。 ◇ 常時 →歩行空間にある情報のうち、次回訪れたときも変わらない情報 例:建物、空間、商業店舗、看板など ◇ 一時 →歩行空間にある情報のうち、次回訪れたときには変わってしまう情報 例:一般歩行者、車、一時的な看板(チラシ)など ◇ その他 →上記以外の情報 例:感情面の発話、思ったこと、記憶の再生など 以上、3 つのグループを元に分析を行っていく。
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082
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
3 つのグループによる分類結果を下記に示す (tab.5.2.1)。この分類を元に、分析を進める。 tab.5.3.1 空間情報の取得量の分類 被験者No. 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
歩行形態
常時
一時
その他
合計
通常歩行
57
29
24
110
聴覚遮断歩行
70
29
14
113
通常歩行
27
16
8
51
聴覚遮断歩行
40
24
16
80
通常歩行
35
18
18
71
聴覚遮断歩行
50
20
35
105
通常歩行
61
36
18
115
聴覚遮断歩行
27
25
32
84
通常歩行
29
43
2
74
聴覚遮断歩行
49
52
5
106
通常歩行
79
27
24
130
聴覚遮断歩行
111
35
32
178
通常歩行
54
20
31
105
聴覚遮断歩行
54
20
37
111
通常歩行
61
36
22
119
聴覚遮断歩行
93
37
46
176
通常歩行
28
24
17
69
聴覚遮断歩行
53
25
25
103
通常歩行
34
26
35
95
聴覚遮断歩行
49
29
35
113
通常歩行
32
20
11
63
聴覚遮断歩行
34
25
26
85
通常歩行
15
12
3
30
聴覚遮断歩行
43
15
8
66
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083
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
迷いにくい人は次回訪れたときに変わってしまう情報に対しあまり注目しなかったとい う新垣らの結果から、本研究における「常時」と「一時」の空間情報取得量を歩行形態別 に比較する。なお、被験者によって情報意識量が異なるので、比較するためにパーセンテー ジ表記で表す。
01
通常歩行 聴覚遮断歩行
02
通常歩行 聴覚遮断歩行
03
通常歩行 聴覚遮断歩行
04
通常歩行 聴覚遮断歩行
05
通常歩行 聴覚遮断歩行
06
通常歩行 聴覚遮断歩行
07
通常歩行 聴覚遮断歩行
08
通常歩行 聴覚遮断歩行
09
通常歩行 聴覚遮断歩行
10
通常歩行 聴覚遮断歩行
11
通常歩行 聴覚遮断歩行
12
被験者No.と歩行形態
0%
通常歩行 聴覚遮断歩行
10%
20%
30%
40%
常時
50%
60%
70%
80%
90%
100%
一時
fig.5.3.2 常時と一時の比較 この結果を見ると、ほとんどの被験者は「常時」に分類される空間情報取得量が 60% を超える結果となった。この結果から、「その他」に関する空間情報取得量を除くと、そ のほとんどの空間情報取得量は歩行形態に関係なく、60%を超える「常時」に分類され る情報を取得していることが明らかとなった。
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084
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
通常歩行時と聴覚遮断歩行時を比較して、聴覚遮断歩行時における空間情報取得量の増 減率を求めた。通常歩行時と聴覚遮断歩行時を比較すると、被験者 12 人中 8 人が聴覚遮 断歩行時の方が「常時」に対する空間情報取得量が高まるという傾向が見られた。また被 験者 No.07 においては、空間情報取得量に変化が見られなかったので、聴覚遮断歩行時 において空間情報取得量が減少した被験者は 3 人に留まった。下に聴覚遮断歩行時にお ける空間情報取得量の増減率を示す (fig.5.2.3)。
40% 30% 20% 10% 0% 01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
-10% -20% -30% -40%
被験者No.
fig.5.3.3 聴覚遮断歩行における「常時」の情報意識の増減率 本研究における迷いやすい人、つまり、アンケートで得られた方向感覚に関する質問の 成績が下位群の人は、被験者 No.01, 03, 05, 07, 08, 10, 11 である。彼らの増減率を観て みると、被験者 No.11 以外の被験者において聴覚遮断歩行時の方が、通常歩行時より空 間情報取得量が増加することが見て取れる(なお、被験者 No.07 は増減率 0%だったので、 本分析では扱わないこととする)。「常時」の情報を聴覚遮断歩行によって通常歩行時より 取得する割合が大きいということは、方向感覚の成績下位群の人、つまり「常時」の情報 を取得する割合が少ない人にとって、聴覚遮断歩行が有効に働くと考えられる。聴覚遮断 歩行により「常時」に対する情報の取得割合が高まれば、迷いやすい人(方向感覚の成績 下位群)がそれを行えば、現状より迷いにくくなる可能性が高まることが言えるであろう。 次に、空間情報取得における増減率が減少傾向にあった被験者について考察する。被験 者 No.02 に関しては、その増減率が 1%未満だったので割愛するが、特に減少傾向が強 かったのは被験者 No.04 と 11 である。5.1 で扱った属性分類から彼らが該当する属性を 見てみると、彼らは二人とも普段の散策行動においてあまり音楽を聴かない属性であった。 音楽を聴きながら歩行するという、少し特殊な歩行形態に対する不慣れが彼らの減少傾向 につながったのではないかと考えられる。しかし一方で、同じ不慣れな習慣のある被験者 No.01 と 10 は増加傾向にあり、一概には聴覚遮断歩行の不慣れが減少傾向に起因したと は言えないのかもしれない。
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085
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
続いて、空間情報取得量の分類における「その他」について分析を行う。上記で述べた ように、「その他」に分類された情報意識の内容は、「常時」と「一時」以外のもので、被 験者の感情面や思ったこと、これまでの記憶を再生するなど、歩行には関係のないものを 分類した。それでは、通常歩行と聴覚遮断歩行ではどのような割合で「その他」に関する 情報意識が出現するのだろうか。「常時」と「一時+その他」の増減率を求め、 それを下記に示す (fig.5.2.4)。また、比較用に fig.5.2.3 と重ねたグラフにした。
40% 30% 20% 10% 0% 01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
-10% -20% -30% -40%
被験者 No. 常時 - 一時
常時 - 一時+その他
fig.5.3.4 聴覚遮断歩行における「常時」の情報意識の増減率 fig.5.2.3 で示した、 「常時」と「一時」の比較における空間情報取得量の増減率に加え、 「一 時」側に「その他」を加えた空間情報取得量の増減率を示した。両歩行形態における「そ の他」に関する発話の割合が全体に対して同等であれば、空間情報取得量の増減率に差が 出ないが、fig.5.2.4 を見ると、12 人中 8 人において「常時」と「一時+その他」を比較 した空間情報取得量の増減率の方が減少していることがわかる。つまりこれは、聴覚遮断 歩行時において、「その他」に関する空間情報取得量が多いことが言える。被験者の感情 面や記憶の再生などに関する情報の出現率が高まるということは、被験者が見た情報に加 え、自分の感情や記憶を情報に重ねていることを意味する。Chapter 1 の fig.1.3.1 で、人 間は行動を起こすプロセスのの過程で、環境から五感を用いて情報を取り込み、過去の記 憶や経験とバッファさせて、行動へアウトプットすることを述べている。つまり、聴覚遮 断歩行時において「その他」に関する空間情報取得量の出現率が通常歩行時と比較して増 加しているということは、このバッファを行う機会の増加につながっていると考えられる。 このバッファの機会が増加すれば、人はより環境を認知し、それとの相互関係をより把握 するようになると考えられる。 次に、情報意識の増減率が減少しなかった被験者は被験者 No.01 と 10 である。この二 人も先程同様、音楽を聴かない習慣がある属性であったが、「常時 - 一時」比較の際は増 加しているため、一概にはこの原因が起因しているとは言えない。
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086
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得量とその内容 「常時」の空間情報に対する取得量の増減率に引き続き、更に別の角度からの分類方法 から空間情報取得量を分類する。下記にその分類の種類を示す。 ◇ 空間 →空間に対する発話を指す 例:街並が落ち着いてきた、道路のタイルがキレイ、細い道に入ってきた、など ◇ ランドマーク →特徴のある建物や広範囲に展開している店舗、学校や公園など目印になりそうなもの 例:あのマンション高いな、ファミマ、小学校、電車が走っている、など ◇ サイン →店舗の看板や道路標識、区掲示板などを指す。 例:もうすぐ町内会の集まりがあるみたいだ、止まれのマーク、など ◇ オブジェクト →車や一般的でない店や物など、上記の 3 つに分類されないようなもの 例:この車かわいい、花がキレイ、大きな時計がある、など ◇ その他 →被験者の感情や記憶の再生、匂いや寒いなどの五感情報など 例:寒い、ラーメン屋の匂いがする、子どもの声が聞こえる この分類も新垣の知見を元に行った。迷いにくいとされている人は、空間やランドマー クといった、街を移動するために役立つ情報を多く取得していることが多いと記されてい る。そこで本研究では、上記の分類方法を用いて、空間に対する情報の内容別による取得 割合を歩行形態別に比較した。
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087
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.5 全体平均による空間情報内容の比較 fig.5.3.5 の全被験者による空間情報内容の全被験者による平均割合を、歩行形態別比較 を見ると、迷いにくい人が迷いやすい人より取得しやすい情報とされているランドマーク に分類される情報は、わずかながらだが増加していることがわかった。しかし空間に分類 される情報は減少傾向にあった。この減少幅が大きいため、空間とランドマークに関する 情報の取得量は、通常歩行の方が大きいという結果となった。また、空間やランドマーク 以外にもその他以外で通常歩行の方が取得割合が大きいという結果になった。つまり、聴 覚遮断歩行より通常歩行の方が迷いにくいとされている情報の内容を多く取得しているこ とが明らかとなった。 しかし、元々の空間情報の取得量は聴覚遮断歩行時の方が多いので、空間とランドマー クに関する取得情報の平均個数で比較したところ、通常歩行時では 26.75 個 / 人、聴覚 遮断歩行時では 32.25 個 / 人と、聴覚遮断歩行時の方が多い。従って、実際に取得して いる情報数に関しては聴覚遮断歩行時の方が多いが、割合から見ると減少してしまう傾向 にあった。
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088
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
80%
90%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.6 音楽を普段から聴かない属性による空間情報内容の比較
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.7 音楽を普段から聴く属性による空間情報内容の比較 普段の散策行動から音楽を聴くか聴かないかによる習慣属性による比較を fig.5.3.6 ∼ fig.5.3.7 で行った。習慣属性による違いから見られる傾向は、双方ともに聴覚遮断歩行時 において、空間に分類される情報の取得割合が減少していることである。さらにその他に 分類される情報が増加する傾向が見られた。 次に、聴かない習慣属性の空間情報取得内容の内、空間+ランドマークに関する情報は 通常歩行時より聴覚遮断歩行時の方が、その割合が大きいという結果となった。通常歩行 より聴覚遮断歩行の方が情報取得量の割合が多いにも関わらず、空間とランドマークの情 報取得量の割合が大きいということは、聴覚遮断歩行が有効に働いたと考えられる。 一方、聴く属性ではその反対の結果となった。普段から音楽を聴く属性は、fig.5.1.21 より空間情報取得量が聴かない属性よりも多いことから、迷いにくい人に多く見られる傾 向にあるとされてる情報取得量の割合に差が見られてしまったと予想される。
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089
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
80%
90%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.8 男性属性による空間情報内容の比較
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.9 女性属性による空間情報内容の比較 性別属性による比較を fig.5.3.8 ∼ fig.5.3.9 で行った。性別属性による違いから見られ る傾向は、双方ともに聴覚遮断歩行時において、空間に関する情報取得量の割合が減少し、 更には空間とランドマークに関する情報取得量の合計割合にも減少傾向が見られた。 次に、男性属性に関しては、歩行形態別によるランドマークに関する情報取得量に大き な差は見られなかった。つまり、迷いにくい人が多く取得される傾向にある情報に関して は、空間に関する情報の取得量のみが影響したと見て取れる。 女性属性に関しては、ランドマークに関する情報取得の割合が、聴覚遮断歩行時におい て大きく増加したにもかかわらず、空間に関する情報との和で差が出てしまったのは、空 間に関する情報量の差が影響した。 つまり性別属性を問わず、空間に関する情報取得の割合は減少する傾向にあることが言 える。
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090
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
80%
90%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.10 方向感覚の成績上位群属性による空間情報内容の比較
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
通常歩行 聴覚遮断歩行 空間
ランドマーク
オブジェクト
サイン
その他
fig.5.3.11 方向感覚の成績下位群属性による空間情報内容の比較 方向感覚の成績属性による比較を fig.5.3.10 ∼ fig.5.3.11 で行った。方向感覚の成績属 性による違いから見られる傾向は、他の属性とは異なり、明確な違いが生まれた。 方向感覚の成績上位群、つまり迷いにくいとされている属性に関しては、聴覚遮断歩行 時における空間とランドマークに関する情報取得量の双方で増加する傾向にあった。つま り、もともと迷いにくい属性であるにもかかわらず、聴覚遮断歩行を行うことで、更に空 間とランドマークに関する情報をより多く取得する傾向にあることが明らかとなった。 一方で方向感覚の成績下位群、つまり迷いやすいとされている属性に関しては、聴覚遮 断歩行におけるランドマークに関する情報はあまり変化がなかったが、空間に関する除法 取得量が著しく減少してしまったため、結果的に双方の和が減少する形となった。つまり、 方向感覚の成績下位群に対しては、迷いにくいとされる人が取得する傾向にある情報の取 得量が、聴覚遮断歩行において、更に減少してしまう傾向にあり、決して有効とは言えな い結果となった。
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091
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
次に、上記の空間情報取得量の形態分類における「ランドマーク」に焦点を当て、ラン ドマークに関する情報の歩行空間における取得位置ごとに分類する。その分類方法を下記 に示し、fig.5.3.12 に全被験者における各情報取得位置の平均割合を歩行形態別に比較し たグラフを示す。 ◇ スタート地点 →歩行を開始してから 50m までの区間を指す ◇ 交差点付近 →交差点から半径 50m 以内の範囲を指す ◇ 遠方 →空間情報取得までの距離が 100m を超えたものを指す ◇ その他 →上記の3つ以外のものを指す
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
スタート地点
交差点付近 通常歩行平均
遠方
その他
聴覚遮断歩行平均
fig.5.3.12 ランドマークに関する情報取得量の位置による歩行形態別比較 fig.5.3.12 より、スタート地点/交差点付近/遠方のいずれにおいても聴覚遮断歩行時 の方が通常歩行時より多く情報を取得していることが明らかである。これらの地点や場所 における情報取得量が多いことは迷いにくい人に見られる傾向があると新垣らは述べてお り、本研究における聴覚遮断歩行の有効性が示されたのと言えるであろう。
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092
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得までの距離と迷い 森村らの研究から情報焦点距離、本研究における空間情報取得までの距離、が遠い人ほ ど迷いにくい傾向があると示されている。しかし、遠い所にある情報ばかりを取得してい る人は迷わないのかと問われば、そうとは言い切れない。この問題を解決するために、空 間情報取得までの距離がどのように推移しているのかを計測する必要があると考えた。そ こで、空間情報取得までの距離推移値を定め、この値を歩行形態ごとに比較する。
空間情報 a
Xm
空間情報 a-b 間の空間情報までの距離推移値 = ¦ 空間情報 a ー 空間情報 b ¦ =¦XmーYm¦
Ym
空間情報 c
fig.5.3.13 空間情報までの距離推移値の概要 まず始めに、空間情報取得までの距離推移値の定義を fig.5.3.13 を元に説明する。被験 者が空間情報 a、b の順で空間情報を取得したとする。それぞれの空間情報取得までの距 離がそれぞれ Xm、Ym だとすると、空間情報取得までの距離推移値は Xm - Ym の絶対値 で求める。つまり、空間情報間の空間情報までの距離の差を全ての情報間で求めることで、 時系列による空間情報取得までの距離がどれほどの頻度で推移しているかがわかる。つま り、このデータによってただ遠くを見ているだけの人であれば、空間情報取得までの距離 推移値の平均は低い値となり、近くを見る傾向にある人でも様々な位置にある空間情報を 取得する傾向にあることが言える場合もある。 次頁以降に、被験者ごとの空間情報取得までの距離推移値の平均を示す。
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093
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
01
通常歩行 聴覚遮断歩行
02
通常歩行 聴覚遮断歩行
03
通常歩行 聴覚遮断歩行
04
通常歩行 聴覚遮断歩行
05
通常歩行 聴覚遮断歩行
06
通常歩行 聴覚遮断歩行
07
通常歩行 聴覚遮断歩行
08
通常歩行 聴覚遮断歩行
09
通常歩行 聴覚遮断歩行
10
通常歩行 聴覚遮断歩行
11
通常歩行 聴覚遮断歩行
12
通常歩行 聴覚遮断歩行
平均
0
通常歩行 聴覚遮断歩行
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50 (m)
fig.5.3.14 歩行形態別空間情報取得までの距離推移値 fig.5.3.14 における空間情報取得までの距離推移値の全被験者平均より、聴覚遮断歩行 時の方がその値が大きいことが見て取れる。この値を方向感覚の成績属性別に比較したと ころ、方向感覚成績上位群の5人中2人が通常歩行時の方が推移値が高くなったが、成績 下位群では7人中5人において、聴覚遮断歩行時の方が推移値が高い傾向にあった。つま り、迷いやすい人にとって聴覚遮断を行うことが空間情報取得までの距離推移値にも有効 に働くことが明らかとなった。
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094
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・空間情報取得遷移率と迷い 次に情報取得遷移率からみた分析を行う。情報取得遷移率とは、ある任意の範囲を定め、 その範囲の境界線と空間情報取得対象の変移線が交わった回数を全情報取得対象の変移で 割ったものを、情報取得遷移とする。その概要を fig.5.3.15 に示す。
X m 以内
この場合、空間情報取得対象数:5 空間情報取得対象変移:4 空間情報取得 対象の変移
任意の範囲 (Xm) 遷移数:3 つまり、空間情報取得遷移率 =3/4= 75% 範囲内情報 範囲外情報 取得変移
fig.5.3.15 空間情報取得遷移率の概要 本研究では、その範囲を 5m、10m、15m とし、次頁にその結果を示す。
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095
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
fig.5.3.16 各設定範囲における空間情報取得遷移率
5m 01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
10m
15m
通常歩行
36.90
32.14
21.43
聴覚遮断歩行
37.50
40.91
50.00
通常歩行
36.36
36.36
30.30
聴覚遮断歩行
50.00
54.00
42.00
通常歩行
38.10
42.86
42.86
聴覚遮断歩行
52.54
49.15
55.93
通常歩行
41.94
39.78
26.88
聴覚遮断歩行
29.09
25.45
25.45
通常歩行
55.56
42.22
28.89
聴覚遮断歩行
57.58
45.45
40.91
通常歩行
50.91
50.00
46.36
聴覚遮断歩行
34.31
41.79
37.31
通常歩行
50.00
50.00
34.85
聴覚遮断歩行
44.59
44.59
43.24
通常歩行
40.26
32.47
19.48
聴覚遮断歩行
45.95
40.54
31.53
通常歩行
36.11
41.67
36.11
聴覚遮断歩行
48.48
50.00
56.06
通常歩行
48.78
43.90
34.15
聴覚遮断歩行
47.54
44.26
49.18
通常歩行
38.78
38.78
22.45
聴覚遮断歩行
44.23
44.23
34.62
通常歩行
42.31
30.77
23.08
聴覚遮断歩行
48.00
44.00
44.00
歩行形態別に比較して、空間情報取得遷移率が高い方を黄色に塗った。tab.5.3.16 を みると、設定範囲 5m においては 12 人中 4 人、設定範囲 10m においては 12 人中 3 人、 設定範囲 15m においては 12 人中 2 人が、聴覚遮断歩行時において、空間情報遷移率が 高い傾向にあった。つまり、空間情報遷移率においても聴覚遮断歩行時の方が様々な距離 にある情報を取得し、設定範囲 15m においては、その動きが最も活発であることがわかっ た。
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
096
Chapter 4
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
4 結果 4.1 空間情報の取得量 tab.4.1.1 被験者ごとの空間情報の取得量 被験者No.
0%
通常歩行発話数
聴覚遮断発話数
01
110
02
51
80
03
71
105
04
115
84
05
74
106
06
130
178
07
105
111
08
119
176
09
69
103
10
95
113
11
63
85
12
30
66
25%
50%
113
75%
100%
01 02 03 04
被験者No.
05 06 07 08 09 10 11 12 通常歩行発話数
聴覚遮断発話数
fig.4.1.2 通常歩行−聴覚遮断歩行の空間情報の取得割合 tab.4.1.1 は各被験者が通常歩行と聴覚遮断歩行における空間情報の取得量を示した。 空間情報の取得量のみでは被験者間での比較が出来ないため、次のグラフでその割合を示 す。また、空間情報の取得量の内容は資料編 (pp.119 ∼ ) に記載する。 fig.4.1.2 から被験者 No.04 を除く全ての被験者で、聴覚遮断歩行時の空間情報の取得量 が通常歩行時よりも多いことが明らかとなった。また被験者 No.04, 07, 10 以外では、聴 覚遮断歩行時の空間情報の取得量が 60%前後あり、被験者 No.12 ではその値が 70%近 い値が得られた。
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032
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
4.2 空間情報の取得意欲
06 07 12
11
10
09
08
被験者No.と歩行携帯
05
04
03
02
01
0%
25%
50%
75%
100%
通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 通常歩行 聴覚遮断歩行 上下
左右
fig.4.2.1 通常歩行−聴覚遮断歩行の空間情報の取得意欲の割合 fig.4.2.1 では、通常歩行時と聴覚遮断歩行時における、空間情報の取得意欲割合を算出 したものである。両歩行とも左右への取得意欲が圧倒的に多いことがわかる。そして被験 者 No.06, 12 以外では、聴覚遮断歩行時の「上下」の空間情報取得意欲が通常歩行のそれ より割合が大きくなる傾向が見られた。反対に、聴覚遮断歩行時の「左右」の空間情報取 得意欲の割合が通常歩行では減少する結果となった。
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033
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
4.3 空間情報取得までの距離 各被験者ごとにおける空間情報取得までの距離分布の割合と、それぞれの考察を下記に 示す。なお、情報焦点距離 5 メートル以下のものは全て 5 メートルとして扱う。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.1 被験者 No.01- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.2 被験者 No.01- 聴覚遮断歩行時
通常歩行時の空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が 60%を超えているのに対し、 聴覚遮断歩行時では、50%にも満たない結果となった。通常歩行時では分布が距離とと もに減少して行くのに対し、聴覚遮断歩行時では 5m ∼ 10m は低い割合だが、10m ∼ 20m では 20%を超え、ばらつきのある減少傾向が見られた。全体的に聴覚遮断歩行時の 方がより遠くを見ていることがわかった。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10 0
(%)
10 5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.3 被験者 No.02- 通常歩行時
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.4 被験者 No.02- 聴覚遮断歩行時
通常歩行時の空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が約 40%と少なく、5m ∼ 10m の割合が約 25%と大きい結果となった。一方、聴覚遮断歩行時では 5m 以下の割合が 50%を超え、5m ∼ 10m の割合では約 10%に留まった。通常、距離が大きくなるにつれ 割合は減少傾向にあるが、被験者 No.02- 聴覚遮断歩行時において、5m ∼ 30m までの割 合で、増加傾向にあるとわかった。
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034
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.5 被験者 No.03- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.6 被験者 No.03- 聴覚遮断歩行時
両歩行とも、空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が 40%程と、ほとんど差がない 結果となった。それ以外を見てみると、通常歩行時では 20m ∼ 30m での割合、聴覚遮 断歩行時では 10m ∼ 20m の割合で約 20%の値が見られ、それを中心に増加−減少傾向 にあった。あまり大きな差はないが、通常歩行時の方が聴覚遮断歩行時より遠くの情報を 取得している傾向が見られた。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10 0
(%)
10 5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.7 被験者 No.04- 通常歩行時
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.8 被験者 No.04- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.04 では空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が、通常歩行時では約 70%、 聴覚遮断歩行時では 60%を超える結果となり、被験者 No.04 は非常に近い距離の情報を 取得する傾向にあるとわかった。また、通常歩行時では全割合が 40m 以下に留まってい るが、聴覚遮断歩行時では最大 154m とより遠くの情報まで見ており、空間を広く捉え ていることが明らかとなった。
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035
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.9 被験者 No.05- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.10 被験者 No.05- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.5 は両歩行共に空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が約 40%と、ほとん ど差がないことがわかった。次に通常歩行時では空間情報取得までの距離の割合が緩やか に減少ているが、聴覚遮断歩行時ではその傾向が見られなかった。10m ∼ 20m、20m ∼ 30m の値で共に 10%を超えていることがわかり、それ以外の値でもばらつきが見られ、 様々な距離に位置する情報を取得していることが明らかとなった。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.11 被験者 No.06- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.12 被験者 No.06- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.06 における空間情報取得までの距離 5m 以下の割合では約 20%程の大きな 差が見られ、他の被験者と比較しても、非常に緩やかな減少傾向であることが明らかと なった。通常歩行における 10m ∼ 20m の割合で 20%を超える大きな値こそ見られるが、 聴覚遮断歩行時では様々な距離に位置する情報をまんべんなく取得している傾向が見られ た。特に 200m を超える長距離の情報も多く取得しており、広く空間を認知している。
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036
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.13 被験者 No.07- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.14 被験者 No.07- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.07- 通常歩行における空間情報取得までの距離 5m 以下の割合は約 40%と低 いのに対し、聴覚遮断歩行時では 50%以上と高い結果となった。また被験者 No.07 の特 徴として、両歩行とも空間情報取得までの距離 5m 以下以外の割合で、10m ∼ 20m の値 が他より一番大きい割合にあるとわかった。そして、通常歩行時より聴覚遮断歩行時の方 が滑らかな減少傾向が見られた。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.15 被験者 No.08- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.16 被験者 No.08- 聴覚遮断歩行時
両歩行とも空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が 50%を超え、非常に近い情報を 取得する傾向のある被験者だとわかった。更に通常歩行では、5m ∼ 10m の割合がその 次の級より割合が多く、聴覚遮断歩行時より近い位置に視線を置いていることがわかった。 一方聴覚遮断歩行時においては、10m ∼ 20m の割合が 20%を超え、それ以上の距離に おいても多くの情報を取得していることが明らかとなった。
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037
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.17 被験者 No.09- 通常歩行時
0
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.18 被験者 No.09- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.09 は他の被験者と比較しても、両歩行共に空間を全体的に広く捉えている 傾向にあることがわかった。空間情報取得までの距離 5m 以下の割合も大きな差はなく、 聴覚遮断歩行時の 20m ∼ 175m の間で多少のばらつきがあるものの、同じような減少傾 向が見られた。従って被験者 No.09 において、通常歩行時と聴覚遮断歩行時における空 間情報取得までの距離ではあまり大きな差が見られなかった。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10 0
(%)
10 5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.19 被験者 No.10- 通常歩行時
0
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.20 被験者 No.10- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.10 における通常歩行時と聴覚遮断歩行時で大きな差が見られた。通常歩行 時は空間情報取得までの距離 5m 以下で聴覚遮断歩行時よりも 30%以上も多く、分布も 範囲が狭く、ほとんど近くの情報しか取得していないことが明らかとなった。一方聴覚遮 断歩行時においては、5m ∼ 10m の範囲での割合が低いものの、20m ∼ 40m では合計 して 40%もの情報を取得していることがわかった。更に空間情報取得までの距離の分布 も広範囲に渡り、広く空間を認知していることが明らかとなった。
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038
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
0
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.21 被験者 No.011- 通常歩行時
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.22 被験者 No.11- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.11 は両歩行共に空間情報取得までの距離 5m 以下の割合が全体のほとんど を占め、非常に近い距離の情報を取得している傾向にあった。また 10m ∼ 20m の割合 も両歩行共に多く、聴覚遮断歩行時の方が 5m ∼ 50m の間で割合が大きいが傾向的には 通常歩行と大きな差は見られなかった。つまり、二つの歩行において大きな差が見られな かった。
70
(%)
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
10
20
30
40
50
75
0
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.23 被験者 No.12- 通常歩行時
(%)
5
10
20
30
40
50
75
100 125 150 175 200 次の級 (m)
fig.4.3.24 被験者 No.12- 聴覚遮断歩行時
被験者 No.12 では通常歩行時と聴覚遮断歩行時で大きな差が見られた。空間情報取得 までの距離 5m 以下の割合に関しては、通常歩行時は約 70%もあるのに対し、聴覚遮断 歩行時ではたった 25%と、全被験者と比較しても一番顕著な差が見られた。更に聴覚遮 断歩行時では空間情報取得までの距離の分布が広範囲に渡っているが、通常歩行時では 30m の級までしか分布が広がっていない。また聴覚遮断歩行時では、全被験者を通じて、 一番緩やかな減少傾向にあることがわかった。
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039
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
4.4 アンケート 12 名の被験者より得られたアンケート結果を下記の表にまとめた。 tab.4.4.1 アンケート結果 被験者No.
A群 習慣
B群
性別 楽曲のテンポ 合計点 方位に関する意識 空間行動における記憶
01
聴かない
女
160.00
32
15
14
02
聴く
男
190.04
69
30
29
03
聴く
男
109.98
59
30
30
04
聴かない
男
172.00
65
24
35
05
聴く
男
130.02
59
30
23
06
聴く
男
143.98
72
27
34
07
聴く
女
167.38
53
12
33
08
聴く
女
127.00
35
13
19
09
聴く
男
121.15
84
37
35
10
聴かない
女
178.00
50
13
19
11
聴かない
女
134.82
49
28
16
12
聴く
女
125.03
73
27
36
(注:「習慣」は普段街歩きを行う際、音楽を聴くかどうかを表している。)
A 群に関する結果は上記の通りである。「習慣」の項目では、12 人中 8 人が普段街歩き をしている時に音楽を聴いていることがわかった。楽曲のテンポでは、歩きやすい音楽と しか制限を持たせなかったため、テンポに大きなばらつきが見られてしまった。 B 群に関しては、竹内 25 が大学生 532 名を対象に行った調査における、それぞれの項 目の平均値は次の通りである (tab.4.4.2)。ただし、合計点は記載されていなかったので割 愛する。 tab.4.4.2 項目ごとの平均値 方位に関する意識 空間行動における記憶 男性(159名)
27.99
30.52
女性(373名)
22.1
27.19
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040
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
本アンケートで得られた回答と平均値を比較すると、次の結果が得られた (tab.4.4.3)。 tab.4.4.3 項目ごとの平均値との比較 被験者No. 合計点 方位に関する意識 空間行動における記憶 01
32
15
14
02
69
30
29
03
59
30
30
04
65
24
35
05
59
30
23
06
72
27
34
07
53
12
33
08
35
13
19
09
84
37
35
10
50
13
19
11
49
28
16
12
73
27
36
水色で塗られた部分が平均値を上回った部分である。被験者 No.01, 08, 10 以外の被験 者はいずれかの項目で平均値を上回り、被験者 No.09, 12 は双方とも上回り、方向感覚が 良いと言える。
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041
Chapter 3
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
3 研究方法 3.1 実験概要 ・実験フロー 本研究における実験フローを下記に示す。
被験者へ教示
聴覚遮断歩行 通 常 歩 行
×
ルート A
歩行映像・発話
ルート B
の記録
アンケートに回答 fig.3.1.1 実験フロー
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021
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・聴覚遮断歩行実験概要 本実験は、『人間は歩行中にどのようなものを意識して見ているか』を計ることを目的 としている。その際、通常歩行と聴覚遮断歩行ではどのような違いが生まれるのかに焦点 を当て、実験を行った。 ◇ 日時 2010 年 12 月 13 日 ( 月 ) ∼ 2010 年 12 月 29 日 ( 水 ) ◇ 実験対象地 本実験は人間が何を意識して見ているかを計る実験であるため、被験者が実験対象地に 対する知識の差が出ないようにしなければならなかった。従って、被験者が訪れたことの ない土地を選定することで、知識の差を埋めた。また、その土地を象徴するようなランド マークがなく、被験者があまり興味を持たないような土地を選定する必要があった。これ らの条件を満たすような対象地として、本実験では JR 日暮里駅周辺 (fig.3.1.4) を選定した。 ◇ 被験者 20 代学生の男女 それぞれ各6名 いずれも実験対象地に対する知識や印象を持っておらず、またその地理に詳しくない者。 ◇ 使用機材 メガネ型カメラ ATEX VIDEO EYEWEAR RECORDER ALY-29V Ⅱ (fig.3.1.2) IC レコーダー
SONY IC RECORDER ICD-UX71(fig.3.1.3)
fig.3.1.2 メガネ型カメラ
fig.3.1.3 IC レコーダー
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022
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
fig.3.1.4 JR 日暮里駅周辺
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023
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・実験内容 被験者にはこちらであらかじめ指定した二つのルートを、通常歩行・聴覚遮断歩行の双 方で歩行してもらった。実験者は被験者にルートを示すため、被験者の約 10 メートル先 を歩行し、案内した。しかし実験者はあくまでも被験者に道順を伝えるためだけの者であ り、被験者には実験対象地を一人で歩いているかのように、実験者の存在は無視して実験 を行うよう伝えた。また実験の慣れを避ける為に、聴覚遮断歩行と通常歩行の順番をラン ダムとした。
・データの取得方法 歩行中、被験者がどこを見ているかを得るための動画を撮影するためにメガネ型カメラ を装着してもらい、意識に残ったものを記録するために IC レコーダーに発話してもらう ことで記録した (fig.3.1.5)。メガネ型カメラでは眼球運動のみによる対象物への視線は測 れないので、首をしっかり振って、正面で見てもらうよう注意した。また意識を発話する 際には、「発話思考法 21 ※ 1」を用いて、ただ見たものを発話するだけでなく、普段の待ち 歩き同様、感情面や推測面など、制限を持たせず自由に発話してもらった (fig.3.1.6)。
fig.3.1.5 機材装着位置 ※1
発話思考法
認知心理学の分野でよく用いられるデータの収集の方法である。「その場その場で思っ ていること、目に留めた内容をその都度口に出して言いながら進んでください」のように、 被験者に教示して発話プロトコルデータの収集を行うものである。この発話プロトコルを 分析することで、被験者が歩行中に何を意識して見たかを明らかにするために採用した。
21
小林敬一 : 論争的な複数テキストの理解−発話思考法を用いた分析− , 静岡大学教育学部研究報告 , 人文・ 社会科学篇 58, 159-169, 2007 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
突き当たりは大通りかな? 奥のマンション高いな !!
コンビニがある 工事現場だ 道幅が狭いな fig.3.1.6 実験の様子
・教示 自然な歩行を行ってもらうために、実験前に被験者には、「あなたは今、知らない街、 日暮里駅に下り立ちました。日暮里を特に目的地を定めることなく、散策してください。」 という教示を行った。両ルート共に、日暮里駅の異なる出口から出た所をスタート地点と し、実験を行った。
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025
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・聴覚遮断歩行について 用語の定義で記述したように、本研究における聴覚遮断とは、音楽を聴くことで周囲の 環境音を遮断することとした。つまり、聴覚遮断歩行は音楽を聴きながら歩行することで ある。 本実験で使用した楽曲は、精神テンポ 22 という概念から使用楽曲は一様とせず、被験 者それぞれが歩行中聞きやすい楽曲とした。ただし、テンポが早めな楽曲という条件はつ けた。その理由として、人間は行動ごとに聴きやすいテンポがあると言われており、中で も歩行に関しては、人間の歩行リズムが楽曲のテンポと合致していると非常に歩きやすい と、阿部ら 23 が報告している。 次に実験中の音量については、環境省が発表している「騒音の大きさ 24」を参考にした。 この資料によると、約 60dB の音量が普通の会話音に相当すると示されているため、楽曲 再生中に 60 デシベル以下の音量が聞こえない音量に調節し、実験を行った。 最後に楽曲を聴くためのヘッドホンは、構造上密閉度が高く、外音遮断性能が極めて高 い、カナル型のヘッドホン (fig.3.1.7) を採用した。
fig.3.1.7 カナル型ヘッドホン
22
杉之原正純 , 平伸二 , 武藤玲路 , 今若修 :「精神テンポの基礎的実験研究 (2)」- 精神テンポの機制に関す る実験的研究 -, 広島修道大学研究叢書 , 第 76 号 , 1993 23
阿部麻美 , 新垣紀子 :「BGM のテンポの違いが作業効率に与える影響」, 日本認知科学会大会発表論文作 成要領 , 2008 24
環境省 HP : http://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html
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026
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
・ルート概要 次に本実験で使用したルートの概要を説明する。ルート選定に当たり、以下の点を基準 を設けた。 *同距離であること *右左折数が同じであること *同じ様な特徴を持ったルートであること *スタートが駅からであること これらを元に選定した二つのルートである (fig.3.1.8)。
Goal
Goal
Start
Start
ルート A ルート B 距離:1.5km
fig.3.1.8 実験ルート概要
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
3.2 アンケート概要 実験終了後、以下の項目に関して回答を得た。 ・被験者の属性(A 群) ここで言う被験者の属性とは、性別などの基本的な情報に加え、以下の項目も合わせて 回答を得た。 ⅰ)普段街歩きを行う際、音楽を聴くかどうか ⅱ)聴覚遮断歩行時に使用した楽曲名 ・方向感覚質問紙(B 群) 被験者の方向感覚の良さ(迷いやすさ)を評価するため、愛知教育大学の竹内謙彰氏に よって作成された方向感覚質問紙簡易版(SDQ-S)25(tab.3.2.1) への回答を得た。この質 問紙は 20 の質問からなり、それぞれの質問に対し 5 段階での回答を行いその合計得点で 評価を行うものであるが、多様な質問を組み合わせることにより自己評価の誤りや歪みを 減らすよう工夫されている。 20 の質問のうち 1 から 9 までは「方位に関する知識」に関して、「方位の認知や方向 の回転」について問うものである。10 から 17 までのして質問は「空間行動に関する記憶」 に関して、「目印となる者の記憶や場所の違いの弁別、および経路の知識」について問う ものである。なお、18 から 20 の三項目は、「方位に関する意識」および「空間行動にお ける記憶」のどちらにも属さない項目である。また、合計得点が高いと方向感覚が優れて いると言えるが、何点以上得点すれば方向感覚が良いというのは定められていない。
25
竹内謙彰 :「空間認知の発達・個人差・性差と環境要因」, 風間書房 , 1998
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
tab.3.2.1 方向感覚質問用紙簡易版 1.知らない土地へ行くと、とたんに東西南北がわからなくなる 2.知らないところでも東西南北をあまり間違えない 3.道順を教えてもらうとき、「右・左」で指示してもらうとわかるが、「東西南北」 で指示されるとわからない 4.電車の進行方向を東西南北で理解することが困難 5.知らないところでは自分の歩く方向に自信が持てず不安になる 6.ホテルや旅館の部屋にはいると、その部屋がどちら向き(東西南北)かわからな い 7.事前に地図を調べていても初めての場所へ行くことはかなり難しい 8.地図上で自分のいる位置をすぐに見つけることが出来る 9.頭の中に地図のイメージをいきいきと思い浮かべることが出来る 10.所々の目印を記憶する力がない 11.目印となるものを見つけられない 12.何度も行ったことのあるところでも目印になるものをよく覚えていない 13.景色の違いを区別して覚えることができない 14.特に車で右折左折を繰り返して目的地に着いたとき、帰り道はどこでどう曲がっ たらよいかわからなくなる 15.自分がどちらに曲がってきたかを忘れる 16.道を曲がるところでも目印を確認したりしない 17.人に詳しく言葉で教えてもらっても道を正しくたどれないことが多い 18.住宅街で同じような家が並んでいると目的の家が分からなくなる 19.見かけのよく似た道路でも、その違いをすぐに区別することができる 20.二人以上で歩くと、人についていって疑わない
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
3.3 データ取得方法 ・歩行実験 IC レコーダーに録音された音声データとメガネ型カメラで撮影された動画を同期させ、 以下のデータを抽出する。 ◇ 発話プロトコルによる『空間情報の取得量』 実験中における被験者の発話を記録する。 ◇ 首振り回数による『空間情報の取得意欲』 西田 26 の報告によると、人間の注視点が迅速に安定して見える安全注視野は水平に 60 °∼ 90°、垂直に 45°∼ 70°程度であるとしている。これを参考に、本実験では進行方向 に対して、水平視野 60°/垂直視野 45°を超えたものを首振りとし、その回数を水平/垂 直それぞれカウントした。 ◇ 情報距離による『空間情報取得までの距離』 被験者が発話した地点と発話対象物との距離を、以下のツールを用いて計測した。 Google Map:http://maps.google.co.jp/maps マイマップ編集ツール
・アンケート アンケートから下記のデータを抽出する。 ◇ 方向感覚 3.2 でも記述したように、方向感覚質問用紙簡易版より得られた回答から以下の項目ご との点数を算出する。 *合計点(質問 1 ∼ 20) *方位に関する知識(質問 1 ∼ 9) *空間行動に関する記憶(質問 10 ∼ 17) ◇ 楽曲のテンポ 楽曲のテンポは BPM(Beat Per Minute) で表される。本研究では下記のフリーソフトを 用いて、楽曲の BPM、つまりテンポを計測した。 MixMeister BPM ANALYZER(http://www.mixmeister.com/)
26
西田信夫 :「プロジェクターの技術と応用」, シーエムシー出版 , 2010
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Chapter 2
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
2 研究概要 2.1 研究目的 聴覚遮断を行い都市空間を歩行する際、空間情報の取得量、空間情報の取得意欲、また 空間情報取得までの距離に関して様々な属性による違いを明らかにし、聴覚遮断歩行時に おける都市歩行時における空間情報の取得モデルを作成することが本研究の目的である。
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017
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
2.2 用語の定義 ◇ 情報 本研究における情報とは、都市空間歩行時において見えるものや、それによって生まれ る感情など、発話の対象となったもの ◇ 聴覚遮断 本研究における聴覚遮断は、完全な聴覚機能の遮断を意味するものではなく、環境音に 別の音を被せるマスキング効果により、環境音を遮断することを指す。本研究においては、 音楽を聴くことがマスキング効果に相当するとし、これを聴覚遮断とした。
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
2.3 研究の流れ
基礎調査 ・聴覚遮断の基礎調査 ・実験概要の決定
歩行実験 ・映像と発話の記録
実験結果 ・空間情報の取得量 ・空間情報の取得意欲 ・空間情報取得までの距離
分析 ・属性比較 ・距離別比較 ・「迷い」からの分析
まとめ ・考察と展望
fig.2.3.1 研究フロー
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Chapter 1
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1 研究背景 1.1 多様化する歩行者属性 人にとって動きの基本は「歩き」である。 ちょこちょこ歩く人。 力無く歩く人。 膝が伸びない人。 肩で風切って歩く人。 うつむいて歩く人。 せっかちに歩く人。 などなど様々だ。歩くことは、誰もが毎日の生活のなかで普通に行っている。 『歩き方は身体の表情である 1』 オノレ・ド・バルザックは「歩き方の理論」でこのような言葉を残している。この言葉 が示すように、人の数ほど歩行の種類は異なるものである。それに加え、社会の近代化の 波が後を押すように、人の歩行は時々刻々と変化している。バルザックが近代には近代の 歩き方があると述べているように、社会的規範により歩行文化は変容し、規定されること が予想される。我々日本人の歩行も近代とそれ以前では、異なった歩き方をしていたと指 摘されている。「ナンバ」という歩き方である (fig.1.1.1)。ナンバの基本は「右手と右足、 左手と左足を同時に出す」ところにあるが、当然、当時の映像などは残っていないため推 測することしか出来ない。このようにナンバに関しては諸説あるが、歩行形態が現代のそ れとは異なっていたことは明白である。
fig.1.1.1 ナンバ歩行 1
バルザック(山田登紀子訳):「風俗のパトロジー」, 新評論 , 1982
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007
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
このように歩行に関する形態や属性の違いは古くから言い続けられてきた。近代では、 ナンバ歩きのような身体的変化の大きい歩行属性の違いこそ見られないが、これまでの研 究において、属性の違いによる歩行者の特性は数多く述べられてきた。その代表的なもの が性別、年齢、歩行目的による違いである。その一例として、吉岡 2 は、歩行速度と密度 の関係において歩行目的別、男女別に差があることを示した。また竹内ら 3 は、歩行目的 に加え、歩行者の年齢が歩行速度の大きな決定要因となることを示している。更に近年で は、渡辺ら 4 がプローブパーソン技術を用いて、より詳細な個人データを収集し、歩行者 の行動文脈を考慮した歩行速度の分析を行っている。その他にもより詳細な歩行者属性に よる挙動の分析がなされ、論じられている。 時代の移り変わりと伴に多様化する歩行者属性を踏まえた研究は、今後、更に増加の一 途を辿るであろう。本研究ではこれまで対象とされてこなかった属性の違いが引き起こす 行動特性について論じていく。
2
吉岡昭雄: 「歩行者交通と歩行空間(Ⅱ)−歩行速度・密度・交通量について−」, 交通工学 Vol.13 No.5, pp.41-53, 1978 3
竹内伝史 , 岩本広久:「細街路における歩行者挙動の分析」, 交通工学 Vol.10 No.4, pp.3-14, 1975
4
渡辺美穂 , 羽藤英二: 「移動軌跡に着目した都市空間の歩行速度分析」, 第 42 回都市計画論文集 , pp.535540, 2007 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1.2 感覚遮断 近年、携帯やオーディオプレーヤーなどの電子端末を使用しながら歩行する人々をよく 見かける。これに伴い、次のような研究が盛んに行われるようになった。松永ら 5 や吉沢 ら 6 は、携帯電話を使用している人という属性を確立し、通話中やメールを打っているな ど更にその属性を細分化することで、その属性が生む人間の行動特性について研究してい る。秦野ら 7 も携帯型オーディオプレーヤーを使用している人という属性を確立し、研究 を行っている。これらの属性は、携帯電話で通話を行うことや携帯型オーディオプレーヤー で音楽を聴くといった行為はつまり、人間の聴覚を周りの環境音から遮断していると言え よう。しかしながら、人の聴覚を遮断して歩行するといった研究はこれまで行われていな い。 先程述べたように、これまでの研究では感覚を遮断する行為はマイナスイメージとして 捕われがちであり、歩行分野ではほとんど研究がなされていない。感覚遮断に関連する多 くの既往研究は、杉本 8 のように感覚遮断中の心理変化を分析したものであり、その遮断 感覚は「視覚」がほとんどである。また感覚遮断と似たような属性、つまり、視覚や聴覚 に障害を持った人々を対象に行った歩行に関連する研究はあるが、健常者が遮断するとい う行為は研究の対象になっていない。 本研究では、歩行時における聴覚遮断時と通常時といった属性間を比較することに着目 し、心理面ではなく、行動面の特性の違いについて展開していく。
5
松永文彦 , 中村克行 , 佐久間哲哉 , 柴崎亮介: 「携帯電話使用が歩行行動に及ぼす影響に関する基礎的研究」, 日本行動計量学会大会発表論文抄録集 32, 92-93, 2004-09 6
吉沢進 , 高柳英明 , 木村謙 , 渡辺仁史:「都市における携帯電話使用者の行動特性に関する研究」, 社団法 人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.775-776, 2001 7
秦野晃一:「携帯型オーディオプレーヤー使用時の空間認知に関する研究」, 早稲田大学理工学部建築学 科卒業論文 , 2007 8
杉本助男:「感覚遮断環境下の人の心的過程」, 社会心理学研究 1(2), pp.27-34, 1986
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1.3 人間の視野 人が歩行する際、どのような状況下に置かれても環境との関わりは必ず存在する。 fig.1.3.1 は人間が環境を知覚し、行動を起こすまでの一連のプロセスを簡単な図にまとめ たものである。人が環境を知覚するためには『五感』を用いる。五感情報を駆使しながら 環境情報をインプットし、それを過去の記憶や経験などとバッファすることで、行動へと アウトプットがなされる。こうした一連のプロセスを何度も繰り返し行うことで、行動が 生まれてくる。『産業教育機器システム便覧 9』によると、五感による知覚の割合は視覚 器官が 83%、聴覚が 11%、臭覚 3.5%、触覚 1.5%、最後の味覚が 1.0%、であるとして いる。つまり、視覚による環境情報の取得が行動の大部分を決定していると言っても過言 ではない。
過去の記憶 バッファ
環境
五感情報 input
人間
行 output
動
fig.1.3.1 人間が行動を起こすまでのプロセス図 人間の視覚と情報取得に関する研究はこれまで多く発表されてきた。人が空間という情 報を得たり、理解したりする上で最も重要となってくるのが注視行動である。歩行者は自 分と環境の相互関係を把握するために、注視行動を行いながら行動を遂行し、その手がか りとなるものを取得している。
9
教育機器編集委員会:「産業教育機器システム便覧」, 日科技連出版社 , 1972
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
吉岡ら 10 11 が行った制限視野法を用いた研究では、探索歩行時における周辺視野を制 限した制限視野状態と通常の視野状態との歩行および注視行動特性の比較を行うことで、 通常視野下における周辺視野機能を考察することを目的とし、探索歩行時における周辺視 野の役割に関する基礎的な知見を得ている。 更に情報を取得する過程に特化した研究として、渡辺ら 12 は看板注視傾向に関する研 究をまとめている。歩行者は商業地街路において、ファサードに対して垂直に設置された 置看板袖看板を先に注視し、続けてファサードに対して平行に設置された平看板を注視し、 最終的にはショーウィンドウを注視すると言う、一連の注視傾向がある事を明らかにした。 また山川ら 13 は街路環境と歩行者の視認・認知・評価の関係性について論じ、商業地街 路において、通常歩行時と社会実験時の視認の比較を行った。商業地街路での主要な視認 要素は店舗と人としており、街路にアートオブジェやパラソル等が置かれることで、その 周りにいる滞留者とともに誘目性が高くなるとしている。 渡辺らの研究は、看板というサインのみに留まった研究であり、空間の全ての情報に着 目していない。山川らは、注視した対象物については述べられているが、どのような理由 で誘目されたかという点については触れられていない。更にこの二つの研究はアイマーク レコーダーを用いた研究であり、それは眼球運動の過程のみで情報に注視したと判断する。 従って、例えアイマークレコーダーが注視したと判断しても、情報が歩行者の意識や記憶 に残らなければ情報の意味をなさない。 本研究では、人間の視野内に飛び込んできた歩行空間に点在する情報がどの程度意識さ れているのかを明らかにする。
10
吉岡陽介 , 一色高志 , 岡崎甚幸:「探索歩行時における周辺視の役割を調べるための実験方法の開発 : 制 限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その 1」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.687-688, 2002 11
一色高志 , 吉岡陽介 , 岡崎甚幸:「制限視野下と通常視野下での探索歩行時における行動特性の比較 : 制限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その 2」, 社団法人日本建築学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp. 689690, 2002
12
渡辺聡 , 後藤春彦 , 三宅論 , 李彰浩:「商業地街路における歩行者の看板注視傾向に関する研究 - 銀座中 央通りにおける歩行実験の分析 -」, 日本建築学会計画系論文集 (574), pp.113-120, 2003 13
山川琴音 , 有馬隆文 , 坂井猛:「商業地街路における街路環境と歩行者の視認・認知・評価の関係性につ いて」, 学術講演梗概集 F-1, pp.327-328, 2005 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1.4 歩行の形態 一口に空間の情報と言っても、それは無数に存在する。また情報を受け取る側、つまり 歩行者も、例え同じ空間であったとしても、歩行目的や状態などによって情報取得は大き く異なってくる。情報を獲得することに重きを置くという視点から見れば、歩行は大きく 分けて2つに分類される。一つ目は経路探索行動である。経路探索行動は Wayfinding と も呼ばれ、主に 80 年代から環境認知や建築都市空間の評価の分野で関心を持たれてきた。 現代の都市では移動する人間と複雑な都市空間の増加のため人間と都市空間の関係はきわ めて複雑になってきており、そのため多様な経路探索の状況のいずれにおいても基本的な わかりやすさを確保した都市空間のデザインが必要とされている (fig.1.4.1)。二つ目は、 特定の目的地に到達することではなく、経路探索の経験自体が移動の目的とされる散策行 動である。興味深い場所の偶然による発見や、深刻でない迷いのある商業空間などはその 経験が魅力的なものとされている。
環境のスケールレベル
建築物 都市圏 都市・地域
環境のエレメント 環境の異質性・等質性 環境の空間的構造 対象となる範囲 対象の特性 サイン
全体 部分 シンプル/複雑 レジビリティ (わかりやすさ) 広狭・見通し
fig.1.4.1 「経路探索のしやすさ」に関する物理的特性 一つ目の経路探索行動は Wayfinding に代表されるように、様々な研究が行われてきた。 舟橋 14 は初期情報の差異による行動実態と空間把握との関係を扱った研究を行い、日色 ら 15 は問題解決プロセスとしての経路探索に注目しプロトコル分析を用いた研究、鈴木 ら 16 は視線と頭部の動きなどの局部的運動をアイカメラを用いて解析した研究などが挙 げられる。
14
舟橋國男:「初期環境情報の差異と経路探索行動の特徴 - 不整形街路網地区における環境情報の差異 と経路探索行動ならびに空間把握に関する実験的研究その 1-」, 日本建築学会論文集 No.424, pp.21-30, 1991 15
日色真帆 , 原広司 , 門内輝行:「迷いと発見を含んだ問題解決としての都市空間の経路探索」, 日本建築 学会論文集 No.466, pp.65-74, 1994 16
鈴木利友 , 岡崎甚幸 , 徳永貴士:「地下鉄駅舎における探索歩行時の注視に関する研究」, 日本建築学会 論文集 No.543, pp.163-170, 2001 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
次に散策行動に関する研究をまとめる。 散策行動は、非難や探索行動ほどの緊急性を要さない状況のため、それらに比べるとや や遅れ、近年になってから研究されるようになった。主体が目的を持たない長距離移動を 行うには、空間に連続して行動を誘発するような要素が点在することと、初めて訪れる主 体であっても不安を感じることなく自由に『迷い』と『発見』を楽しめる程度の基本的な レジビリティーが形成されることが条件となる。 宮岸らによる「自由散策における経路選択要因と空間認知 17」は、実空間の交差点にお ける経路選択時のインタビューにより、空間把握に結びつく行動ととれを誘発する要因に ついての情報の主体属性による特性を明らかにした。経路選択要因は「街区構造把握型」 「景 観構成要素選択型」「雰囲気型」「不明瞭型」に分類され「街区構造把握型」と「景観構成 要素型」の要因が多い主体は空間把握能力が高く、「雰囲気型」「不明瞭型」要因の多い主 体は空間把握を行おうとせずスケッチマップによる再生率も低かった。 砂金らによる「街路における散策行動の構造について 18」は、歩行者の自由な散策行動 の構造を、積極的な興味に誘発される「目的歩行」と慣性的な歩行による「パッシブ歩行」 による繰り返しによって説明している。 森村らによる「情報焦点距離からみた都市空間歩行時の空間認知 19」は、情報焦点距離 を介して、迷いにくい人は迷いやすい人より遠くを見ながら歩いていることを明らかにす るなど、方向感覚自己評価との相関を測った研究である。
17
宮岸幸正 , 西應浩司 , 杉山貴伸:「自由散策における経路選択要因と空間認知」, デザイン学研究 50(2), pp.1-8, 2003 18
砂金眞司 , 長澤泰 , 岡ゆかり , 伊藤俊介:「街路における散策行動の構造について」, 社団法人日本建築 学会 , 学術講演梗概集 E-1, pp.751-752, 1997 19
森村祐子 , 遠田敦 , 渡辺仁史:「情報焦点距離からみた都市空間歩行時の空間認知」, 社団法人日本建築 学会 , 研究報告集 II, pp.81-84, 2009 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
1.5 空間認知の方法と迷いやすさ 空間認知において古くから言われ続けているのが、1.1 でも述べたように、男女の差で ある。2000 年に日本で発売された、「話を聞かない男、地図が読めない女 20」という書 籍はあっという間に 200 万部近くを売り上げるベストセラーとなった。この本は男性と 女性の脳の働きの違いによる男女の行動や思考のすれ違いを、専門家以外の人々の分かり やすいように書かれたものであるが、この本が発売されるより以前、1980 年代後半から、 男女の違い、特に脳の働きについての研究は多くなされてきた。高度な脳スキャン技術の 登場により医学、心理学、社会学他様々な分野において、生きたままの脳を観察する事が 可能となった。その結果女性と男性の脳は生物学的に異なる働き方をするものであり、得 意とする学問の分野や作業、情報の認知の仕方が異なるのは当然であるという事が分かっ てきた。もちろん成育過程での社会から要求される役割や周囲の大人達の接し方により男 性らしさ、女性らしさが形成されるという考え方も間違いではないが、思考パターンの形 成の仕方というのは脳やホルモン、神経回路の働きによるものであり、後天的に身につけ られるものではないというのが現在の通説となっている。 これらの研究から分かっている経路探索に関わる認知に関する男女の性差として「男性 はトンネル視が得意で、女性は周辺視野が広い」というものがある。女性は網膜にある状 態細胞の数が多く、周辺視野は頭の端から 45 度外まで及ぶ。女性は古来より家を守るの が仕事であったため近距離のものを広い視野でとらえることが出来るようになり、またエ ストロゲンというホルモンの作用により規則性の無い位置関係を覚えている事が出来る。 それにひきかえ狩猟者であった男性は遠くに居る獲物を追跡するため、注意がそれないよ うもっぱら前方が見えるよう進化した。そのため長距離を見通す「トンネル視」が得意と なり眼の延長線上に有るものなら遠くでもはっきりと見る事が出来る。 また地図を読んで理解したり、対象物までの距離や速度を見極めたりする能力の事を「空 間能力」とよぶがこの空間能力は男性の方が優れている。空間能力とは対象物の形や , 大 きさ、空間に閉める割合、動き、配置などを思い浮かべること、さらには対象物を回転さ せたり障害を回避しながら進んだり、立体的に物を眺めるといった能力のことを言う。カ ミラ・ベンボウの研究によると、4 歳児にしてすでに男の子は女の子よりも三次元的に立 体を捉えるテストにおいて顕著に良い成績を示すという事が分かっている。空間能力に優 れている男性は頭の中で地図を回転させどちらに進むべきか理解する事が出来る。しかも その情報を頭の中に蓄積しておき、地図を見ずに元の場所に戻る事が出来る。しかし女性 は平面に書かれた地図を読み、それを頭の中で立体に立ち上げ実際の道を選ぶことに困難 を感じる人が多い。女性は地図を見せられるよりも、「銀行の角を右に曲がって、コンビ ニの向い」などと目印を織り込んで説明してもらい、広い視野を活かしてそれを拾ってい く方が正確に道をたどれる。
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Allan Pease, Barbara Pease:「話を聞かない男、地図を読めない女」藤井 留美 ( 翻訳 ), 主婦の友社 , 2000 早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
このような、男女を比較すると男性の方が空間的能力が高いと言う研究結果は必ずしも 全ての男性、女性において当てはまる事ではない。これらの結果は統計的に正しいという だけで、もちろん空間把握の得意な女性も、苦手な男性もいる。ただ明らかなことは、人 間の経路選択の認知方法は一通りではないという事、その方法には、女性が多く取る見え るものを目印とし、それをつなげていくやり方と、男性が多く取る街区の構造を理解し俯 瞰的に自分の居場所を把握するやり方があるという事実である。 また、空間認知と切っても切り離せない関係にあるのが、「迷い」である。空間認知の 方法には俯瞰的に街区や都市の構造を把握するタイプ ( 仮に俯瞰派 ) と、瞬間的に受け取 れる五感情報のみを判断材料としていくタイプ ( 仮に見えるもの派 ) がある。後者はより 迷いやすく、都市内、建築内の移動において問題を抱えていると言われている。これまで 主に研究対象とされてきた、地図や方向感覚といった俯瞰的な空間の捕らえかたに適合し にくく、認知地図も殆ど形成されないためである。特に特定の目的地を設定しないような 散策行動においては、携帯電話によるナビゲーションのような常時周辺環境と画面上の情 報の適合性の参照が必要な方法は不適切であり、彼らに適切なタイミングで適切な情報を 提示する方法を提示することは、これまで行われてきた空間認知研究の結果によるナビ ゲーションのユーザビリティの向上にも関わらず、相変わらず道に迷い続けてきた「最も 空間認知を苦手とする人たち」のための解決策を示し、全ての属性の利用者にとって地図 を持たずとも歩ける都市の実現を可能にするものとなる。そのためにまず、 「見えるもの派」 の情報処理の特質と行動パターンを明らかにし、人はどのようなものを、どのようなタイ ミングで見ているのかを明らかにする必要がある。 そこで本研究では、『空間情報の取得量』・『空間情報の取得意欲』・『空間情報取得まで の距離』の三点に着目し、「聴覚遮断歩行」と「通常歩行」において、この三点から見た 空間情報をどのように認知しているのかについて論じていく。
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル An Information Acquisition Model on Urban Pedestrian through Aural Isolation
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010 5209A083-5 西 隆明
Chapter 0
都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0 はじめに 0.1 はじめに 早いもので、渡辺仁史研究室の門を叩いてもうすぐ三年になる 自分はこの三年間で何を学んだのだろう 何をやってきたんだろう 何に興味を持ったんだろう そう思った時、これまでを振り返ってみた すると、ある共通点が見つかった 「ヒトノコウドウ」 これまで色々やったが、結局これに落ち着いた 自分にはこれしかない これが、この論文を始めるキッカケとなった
早稲田大学 創造理工学研究科 建築学専攻 渡辺仁史研究室 2010 年度修士論文 WASEDA UNIVERSITY HITOSHI WATANABE LABORATORY 2010
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
0.2 目次 Chapter 0 はじめに
pp.002 ∼ 005 0.1 はじめに 0.2 目次
Chapter 1 研究背景
pp.006 ∼ 015 1.1 歩行者属性の多様化 1.2 感覚遮断 1.3 人間の視野 1.4 歩行の形態 1.5 空間認知の方法と迷いやすさ
Chapter 2 研究概要
pp.016 ∼ 019 2.1 研究目的 2.2 用語の定義 2.3 研究の流れ
Chapter 3 研究方法
pp.020 ∼ 030 3.1 実験概要 3.2 アンケート概要 3.3 データ取得方法
Chapter 4 結果
pp.031 ∼ 041 4.1 空間情報の取得量 4.2 空間情報の取得意欲 4.3 空間情報量までの距離 4.4 アンケート
Chapter 5 分析
pp.042 ∼ 096 5.1 行動データの属性比較分析 5.2 行動データの歩行距離別分析 5.3 「迷い」からの分析
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都市歩行時の聴覚遮断による空間情報の取得モデル
Chapter 6 総括
pp.097 ∼ 114 6.1 総括 6.2 展望 6.3 謝辞
参考文献
pp.115 ∼ 118
資料
pp.119 ∼
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