PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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第1章

研究背景

Chapter 1

Research Background

1-1.PET/CT 検査とは  1-1-1.PET/CT 検査と他の医用画像検       査との違い  1-1-2.PET,MRI 等医療検査の普及状況 1-2.PET 等画像診断検査の問題点  1-2-1.患者の声、現場の声  1-2-2.国立国際医療センターの事例 1-3.PET 等画像診断検査の新しい動き  1-3-1.開口付きの検査室  1-3-2.天井にイラスト  1-3-3.壁面に工夫

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1-1-1. PET/CT 検査と他の医用画像 検査との違い  PET とは、positron emission tomography ( 陽電子放出断層 撮影 ) の略で、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種 である(図 1-1-a) 。放射性薬剤を体内に取り込ませ、放出され る放射線をカメラでとらえて画像化する。コンピュータ断層法 (CT)などの画像検査では、通常、頭部、胸部、腹部などと部 位を絞って検査を行うが、PET 検査では、全身を一度に調べる ことが出来る。 (図1-1-b)核医学検査は、使用する薬により、 さまざまな目的に利用されるが、現在 PET 検査では大半がブ ドウ糖代謝の指標となる 18F-FDG という薬を用いた "FDG-PET 検査 " である。 これは、CT 検査などでは形の異常を診るのに 対し、PET 検査では、ブドウ糖代謝などの機能から異常を診て いるからである。臓器のかたちだけで判断がつかないときに、 働きを診ることで診断の精度を上げることができる。

※ 1 名古屋第一赤十 字病院 http://www.nagoya-1st. jrc.or.jp/

図 1-1-a.PET 検査装置(※ 1)

※ 2 国立国際医療セ ンター放射線科核医学 http://www.ncgm. go.jp/sogoannai/ housyasen/kakuigaku/ index.html

図 1-1-b.PET による正常な全身画像(※ 2)

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1-1.PET/CT 検査とは

1-1.PET/CT 検査とは

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第1章 研究背景


さや場所の特定、良性・悪性の区別、転移状況や治療効果の判定、 再発の診断などに利用され、更にはアルツハイマー病やてんか ん、心筋梗塞を調べるのにも利用される。下記の病気で、この 検査が必要とされる条件を満たす場合には、健康保険が適用さ れる。 FDG-PET 検査の保険適用(2010 年 4 月改定) • てんかん • 狭心症や心筋梗塞による心不全 • 早期胃癌をのぞく、すべての悪性腫瘍  他の検査や画像診断により病期診断、転移・再発の診断がで きないときなどの条件が定められている。

1-1-2.PET,MRI 等医療検査の普及状況  PET,MRI 等の医用画像を用いた医療検査は、近年、機器の進 歩が著しく特に、コンピューター断層撮影(CT)をはじめと して、広く普及してる。これらの検査装置は、非常に高価な医 療機器だが、他の先進諸国と比べ、日本はこうした機器の普及 率が群を抜いて高いのが特徴である。この理由の 1 つとして、 機器の導入に関して国による統制的な規制が取られていないた め、病院間の競争が機器の普及を後押ししていることがあると みられている。  経済協力開発機構(OECD)が参加 30 カ国に対し、2 年に 1 回実施している調査の結果によると、日本における、人口 100 万人当たりの CT や MRI の導入状況は、米国や英国など、他の 先進諸国より圧倒的に高いことが分かる。 (図1-1-c)全参加 国の導入状況の平均をみると、 CT は 13.3 台(日本は 92.6 台) 、 MRI は 5.5 台(日本は 35.3 台)となっている。

図 1-1-c.国別の画像診断器の普及状況(※ 2)

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1-1.PET/CT 検査とは

PET 検査は、通常がんや炎症の病巣を調べたり、腫瘍の大き

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第1章 研究背景


揮することから、がんの可能性が疑われながら他の検査で病巣 が発見できない " 原発不明癌 " の診断や、がんの転移・再発を 調べるのに特に重要な検査とされている。 (図 1-1-d)近年こ の特性を利用して、全身のがんのスクリーニング(ふるい分け) を主な目的とする "PET 検診 " が注目され、人間ドックのオプ ション検査として受けられるところも増えてきている。

※ 3 PET 検査ネット http://www.pet-net.jp/

図 1-1-d.癌の成長過程(※ 3)

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1-1.PET/CT 検査とは

また、全身を一度に調べられ、予想外のがんの発見に威力を発

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第1章 研究背景


1-2-1.患者の声、現場の声  医療技術の進歩と共に普及してきているこれらの検査だが、 技術的な面とは別に様々な問題を抱えている。特に、患者への ケアが必要とされるのが、閉所に対して不安を覚えるケースへ の対応だ。非日常的な空間であることに加えて、身体を拘束さ れ狭い機械の中へ仰向けの状態で入っていくことに、強い恐怖 心を覚える患者が非常に多く、検査を拒否する場合も少なくな いのが現状である。  そもそも、一般に「恐怖症」と呼ばれる自覚症状を持つ人は 日本の全人口の約4割前後であり、そのうち治療を受ける人は その5%にも満たないと報告されている。女性のほうが男性の 2∼3倍多いこともわかっており、大部分のケースでは、発症 は小児期とされている。  更にその中で「閉所恐怖症」は意外に多い症状で、基本的に は特定の恐怖症 ( 単一恐怖症 ) とパニック障害に引きつづく広 場恐怖の二つの病気に引き続く症状と考えられる。  MRI や PET などの類似した機械を使う検査の場合、普通の 人であれば狭い穴の中に入れられてうるさい音を感じるだけだ が、閉所恐怖症の人は恐怖心から途中で検査を中断する場合も あるので、事前の問診で閉所恐怖症と判明した人については、 医療機関側が検査を拒否するケースもある。必要に応じて精神 安定剤の点滴投与をして、眠っている間に検査をする医療機関 もあるが、閉所恐怖症とまではいかなくともこの様な検査に漠 然とした不安感を覚える人に対しての措置はとられていない。 閉所恐怖症の疑いのある人を含め、その割合は、MRI の検査現 場では5∼10パーセントともいわれているにも関わらず、現 場では対応に困難をきたしている。

1-2-2.国立国際医療センターの事例  国立国際医療センターでは、早くから PET 検査を放射線科 で取り入れ、その歴史は 1980 年の医療センターの前身の国立 中野療養所にさかのぼる。1993 年現在の病院に統合・移転後 PET は 1995 年に再開され、 2003 年に着任した窪田和雄によっ て様々な改革が行われてきた。2005 年より新しい PET-CT、 SPECT が稼働し、待機室の整備など施設を改修し、2008 年よ り新しい癌の骨転移の疼痛緩和治療、ストロンチウム 89(メ

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1-2.PET 等画像診断検査の問題点

1-2. PET 等画像診断検査の 問題点

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第1章 研究背景


科と共同で悪性リンパ腫の新しい核医学治療をはじめるなど、 常に意識の高い臨床を心がけていた。現在では、年間検査数は 2000 件以上にのぼり、その数からも窪田先生をはじめ国立国 際医療センターの放射線科は核医学会の中でも患者からも信頼 が厚いことが伺える。 (図 1-2-a)

図1-1-a.国立国際医療センターの年度毎 PET 及びシンチグラフィの検査数(※ 2)

しかし、窪田医師も閉所恐怖を訴える患者の存在に気付いて おり、対応に頭を悩ませていたという。以下、その取り組みに ついて:  MRI に対する閉所恐怖を訴える声が最近顕著に聞かれていま すが、PET についての現状はどうか? 〈国立国際医療センター 窪田医師(以下 窪田) 〉

今回、どういった経緯で PET 検査室の改装を決断したのか? 〈窪田〉

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1-2.PET 等画像診断検査の問題点

タストロン)の内用療法を始めた。また、2010 年より血液内

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第1章 研究背景


〈窪田〉

〈村元〉 何か懸念していることはあるか。 〈窪田〉

※ 4 あいち小児保健 医療総合センター http://www.achmc.pref. aichi.jp/

図 1-2-b.検査室にイラストを施した事例:あいち小児保険医療総合センター(※ 4)

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1-2.PET 等画像診断検査の問題点

この計画について、どの様な効果を期待しているか?

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第1章 研究背景


図 1-2-c.イラストを加えた検査室(デザインあり)

図 1-2-d.改装する前の検査室(デザインなし)

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第1章 研究背景


国立国際医療センターでの事例の様に、近年 PET や MRI な どの検査の普及にともない、これらの類似した機材を使用する 検査に対する恐怖・不安に対する対策の事例は世界各地で増え ている。PET はここ数年で普及し始めたため、まだ工夫の多い 事例少ないが、MRI に関しては定着の歴史も長くなっており、 様々な工夫が見られる。参考までのそのいくつかのパターンを 紹介する。

1-3-1.開口付き検査室  MRI は磁気を用いるため、基本的には壁や床などシールドの 役割が必要となる。そのため閉鎖的な空間印とならざるを得な い。そこで「閉鎖的」な印象を与えないように、鹿島建設では ガラス面を利用しつつシールドが可能が技術が開発された、と いう事例もある。 (図 1-3-a・1-3-b)PET での事例はまだあま り見られないが、放射性物質を使用する PET の検査室もシー ルドルームであるため、当然開口部はない。従って、この様な 試みが今後増える可能性は大いに考えられる。  しかし、 「開放的」というのは、閉所恐怖に対する一つの方 策ではあかもしれないが、ガラスを用いた空間であれば不安が 軽減されるのかどうかは不明なままだ。   ※ 5 鹿島建設 h t t p : / / w w w. k a j i m a . co.jp

図 1-3-a.鹿島建設提案のシースルー検査室(※ 5) (岩手県予防医学会人間ドックセンター) ※ 6 大道会グループ http://www.omichikai. or.jp

図 1-3-b.シースルー検査室の事例(森之宮病院診療技術部画像診断科)(※ 6)

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1-3.PET 等画像診断検査の新しい動き

1-3.PET 等画像診断検査の    新しい動き

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第1章 研究背景


1-3-2.天井にイラスト  PET や MRI の場合、撮影している間患者は機械の台の上に 仰向けになり、終始天井を眺めていることになる。この特徴を 活かして、天井に工夫をこらす事例も多い。検査室全体を改装 する必要がないことや、患者の目に一番触れている部分に効果 的にアプローチすることが出来るのが利点と考えられる。 (図 1-3-c・図 1-3-d) ※ 7 株式会社日立メ ディコ http :/ / w w w.hitac himedical.co.jp/

図1-3-c.天井に工夫を凝らした事例1: くどうちあき脳神経外科クリニック(※ 7)

※ 8 山晴建設株式会 社 http://www.sansei-34. co.jp/index.html

図 1-3-d.天井に工夫を凝らした事例2: さとう脳外科クリニック(広島県:山晴建設(株)施工)(※ 8)

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第1章 研究背景


1-3-3.壁面に工夫  検査室の嫌悪感は、入った時の第一印象で決まるとも考えら れる。特に、根拠のない恐怖感に苛まされる人は、苦手意識か ら恐怖心を感じている場合も少なくない。その悪い印象を払拭 するためにも、入室時の第一印象を変えるために、壁面のデザ インを大胆に変えてみるなどして、検査室らしくない雰囲気を 出すための工夫が凝らされた事例も数多く存在する。 (図 1-3e・図 1-3-f)

※ 9 くろき脳神経ク リニック http://kurokinc. at.webry.info/200802/ article_7.html

図 1-3-e.壁面に工夫を凝らした事例1:くろき脳神経クリニック(※ 9)

※10 University Medical Imaging http://umimri.com/ patients.html

図 1-3-f.壁面に工夫を凝らした事例2:University Medical Imaging(※ 10)

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第1章 研究背景


第 2 章

研究概要

Chapter 2

Research brief

2-1.研究目的 2-2.語句の定義 2-3.仮説 2-4.研究フロー 2-5.研究の位置付け

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


病院は患者にとって不安に感じる場所の一つである。近年、 空間計画の面から、待合室や診療室などの不安を解消する工夫 がなされている。しかし検査室に関しては、単に検査機の設置 場所として捉えられ、そこで検査を受ける患者の視点からみれ ば、恐怖や不安を生じる場所となっていることも多いのが現状 である。  そこで本調査では、特に検査機の特性から空間的不安・恐怖 感が訴えられている、PET/CT 検査室を取り上げ、内装の違い により検査を受ける患者への心理的影響を明らかにし、不安感 低減のためのデザイン評価の指標となることを目的とする。

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2-1.研究目的

2-1.研究目的

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第2章 研究概要


以下、本研究で使用した語句の定義である。   ■不安感  日常生活において、特定の状況や場所、物事に対して心配に なったり、恐怖を感じたりすること、またその様。また恐怖と も期待ともつかない、何か漠然として落ち着かない心的状態に あるときに感じるものを指す。本調査では、PET/CT 検査室に 対する心配な感情、及び PET/CT 検査室全体を通して患者の心 配の対象となるもの全てへの感情を不安感と表現する。   ■不安度  上記の「不安感」を、アンケート調査によって定量化したも のを指す。 「不安感」が漠然とした不安であるという状態の感 情を指すのに対し、 「不安度」はそれを具体的に数値で表した 度合いのことをいう。   ■ PET/CT 検査   ポ ジ ト ロ ン 断 層 法( ポ ジ ト ロ ン だ ん そ う ほ う、positron emission tomography)の略で、陽電子検出を利用したコン ピューター断層撮影技術である。CT や MRI が主に組織の形態 を観察するための検査法であるのに対し、PET は SPECT など 他の核医学検査と同様に、生体の機能を観察することに特化し た検査法である。国立国際医療センターでは、PET と CT を同 時に行うことができる複合機を用いているため、検査は一般的 にこの名称で呼ばれる。   ■検査  PET/CT 検査において、検査とは受付をしてから撮影が終わ るまでの全行程を指す。調査の対象を、PET/CT 検査室にいる 時だけでなく全ての行程を経る段階に設定しているためこの語 句を用いる。   ■撮影  検査に対して、撮影とは実際に PET/CT 検査室内で装置を用 いて画像撮影をする行程を指す。今回調査対象である PET/CT 検査室とは、この撮影時に利用する部屋のことを指す。

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2-2.語句の定義

2-2.語句の定義

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第2章 研究概要


壁面及び PET 装置にイラストが施された検査室を利用した 患者の方が、検査後の不安感が低減している。また、この仮説 を調査するにあたって、検査室のデザインの心的効果を明らか にする。

図 2-3-a.研究概念図

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2-3.仮説

2-3.仮説

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第2章 研究概要


2-4.研究フロー

2-4.研究フロー  本研究は以下のフローで行った。  まず、空間と不安の関連性という視点から MRI 検査におけ る閉所恐怖について考え、一方で不安と強く連動すると思われ る「安心、安全」のメカニズムについて基礎研究を行った。  次に、実際に現場を見学した上で問題点を抽出し、アンケー ト作成に取りかかった。その上で、 アンケート構成の大枠を「不 安」「気分」 「印象評価」をいう3軸で考えた。  得られた結果の分析は、デザインの有無をベースに男女別、 年齢別と考えられるパターンから有為な差が現れたものについ て詳しく分析を進めた。

基礎研究 PET,MRI 検査に

PET 検査での

おける閉所恐怖

恐怖の分類

現場スタッフへのヒアリング

現場視察・写真撮影 計画予定図面参照

気分評価/印象評価 検査室改装終了

アンケート作成 不安の時系列的計測

アンケート調査実施

アンケート結果集計

分析 デザインの 効果

図 2-4-a.研究フロー図

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男女別

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第2章 研究概要

不安要素別


2-5.研究の位置付け

2-5.研究の位置付け  図 2-5-a に、本研究の位置付け図を示す。  本研究は、病院建築に関する研究の中でも、PET/CT 検査室 という特殊な空間の内装が人間の心理に及ぼす影響を明らかに することを目的とする。そのため、これまで既往の研究でなさ れてきた待合室や診察室といった誰もが訪れる空間ではなく、 特殊な検査を行うために訪れる空間を取り扱う。また、これま で病院建築計画の研究で考えられて来た環境工学や建築計画の 分野とも違い、人間行動学に基づいた建築と心理の関連を解き 明かす。

病院建築の研究

本研究 MRI 検査室

診察室

(7)

(4)

(5)

(2)

(6)

(3) (1)

病室

待合室

(8)

・・・ 環境工学 ・・・ 心理学 ・・・ 建築施工技術

図 2-5-a.研究位置付け図

(1)「千葉県の病院外来部待合空間に設置された 植物の現状調査と評価に関する 研究」上野 勝・岩崎 寛(千葉大学大学院園芸学研究科)、2009 (2)「病院の照明 (< 特集 > 小店舗の照明デザイン )」手塚 昌宏、1999 (3)「病院待合室の音環境に関する研究」豊増 美喜ら、2004 (4)「アンケート調査ならびに環境測定からみた病院歯科診療室の快適性」米永 哲朗ら、1998 (5)「病院内の色彩計画における原色利用の可能性−医療福祉施設における色彩計 画の建築計画的研究−」大竹 さつきら、2003 (6)「ストレス関連疾患病棟の空間構成に関する研究−不知火病院・海の病棟にお ける病気回復と空間構成の相関について」前田 圭子ら、2003 (7)「シースルー MRI 検査室」安村 茂、2008 (8)「病室における木材が人体に与える影響」西垣 康広、2009

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第2章 研究概要


第3章

PET 検査室における不安感の調査

Chapter 3

Research about uneasiness in PET examination room 3-1.検査行程について  3-1-1.検査のフロー  3-1-2.検査中に想定される不安の分類 3-2.調査方法  3-2-1.STAI  3-2-2.短縮版 POMS  3-2-3.検査に対する不安アンケート  3-2-4.検査室の印象評価(SD 法) 3-3.調査のフロー 3-4.調査内容  3-4-1.調査概要  3-4-2.アンケート内容

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3-1.検査行程について

3-1.検査行程について  3-1-1.検査のフロー  図(図 3-1-a) の手順で PET 検査が行われていく。そのうち、 「受 付・待ち合い」 「待機」 「検査終了」の 3 箇所でアンケート調査 を依頼した。各工程について詳しく説明していく。また、同時 に核検査行程で考えられる患者の不安や恐怖を列挙して、後に それを分類することで検査を受ける患者の不安感の理解を深め ることとする。

受 付

待 機

(1時間)

PET

(30 分

50 分)

図 3-1-a.検査のフロー図

⑧PET 室Ⅱ ④更衣室

シンチグラフィ 検査室

①受付

操作室 0. エントランス ホール

③中待合室 ⑤投与室

⑦PET 室Ⅰ ②待合室

⑥待機室

図 3-1-b.国立国際医療センター放射線科平面図

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第3章 PET 検査室における不安感の調査


PET 検査を受ける全ての患者は、図 3-1-b の「①受付」で受 付を済ませたあと、 「②待合室」 (図 3-1-c)または「③中待合室」 (図 3-1-d)に通され、検査の順番を待つ。このタイミングで、 アンケート対象者に研究・及び調査内容の説明をし、同意書に 記入してもらう。アンケート1も同じ場所で記入を済ませても らい、検査開始を待つ。

図 3-1-c.待合室

図 3-1-d.中待合室

〈想定される不安感〉 ・何をされるか分からない。いつもとは違った手順に戸惑う。 ・なされるがまま感 〈想定される安心感〉 ・同じ境遇の人がいる。

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3-1.検査行程について

■ 受付・待ち合い

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第3章 PET 検査室における不安感の調査


図 3-1-b の「④更衣室」で検査着に着替える。ただし、本人 が軽装であるまたは検査の撮影部位が普段着でも支障のない場 合、この行程を省く場合もある。 〈想定される不安感〉 ・検査着の無防備感     ■ 造影剤投与  着替えが終わると、荷物をカートに乗せ「⑤投与室」 (図 3-1-e)へ移動し、撮影にあたって必要なブドウ糖と放射性物 質を投与する。 〈想定される不安感〉 ・注射自体 ・関係のない医薬品の存在が、非日常感を増長させる。 ・いよいよ検査が近づいてきたという緊迫感。

図 3-1-e.投与室

■ 待機  造影剤が全身に行き渡るまで、およそ1時間の時間を要する。 この間、患者は「⑥待機室」 (図 3-1-f)という個室で待機し、 自由に時間を過ごす。この待ち時間を利用して、アンケート2 に回答してもらった。 〈想定される不安感〉 ・長居待ち時間に不安が募る(時計がない) ・ニュークリアーマーク(法律上定められている) ・次に怒る検査について考えてしまう(検査器を見ていない) ・検査結果への不安

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3-1.検査行程について

■ 着替え

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第3章 PET 検査室における不安感の調査


・万一の時のためのモニタリング

図 3-1-f.待機室

■ 撮影  PET / CT の撮影は、 「⑦ PET 検査室Ⅰ」 (図 3-1-g)または「⑧ PET 検査室Ⅱ」 (図 3-1-h)で行われ、検査の部位により20 分∼50分程かかる。患者は台の上に仰向けになり、撮影時に 体が動いてしまわない様、バンドと毛布で固定される。撮影の 最中、医療スタッフは検査室より退出し、隣にある「操作室」 にて機械を操作し、マイクを使って患者に随時話しかける。

図 3-1-g.デザインありの検査室

図 3-1-h.デザインなしの検査室

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3-1.検査行程について

〈想定される安心感〉

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第3章 PET 検査室における不安感の調査


・初めて見る検査機に戸惑い ・検査中一人にさせられること ・劣悪な環境(騒音、身体の固定、機械のための空調、無機質 な空間) ・いよいよ機械に入る緊張感

■ 検査終了  撮影が終わり、処理された画像の簡単な確認が済むと、患者 は「④更衣室」にて再度着替えを済ませ、検査終了となる。ア ンケート対象患者は、この際もう一度「①待合室」に戻ってア ンケート3に記入をしてもらい、 「受付」で返却した後、検査 終了となる。 〈想定される不安感〉 ・自分んお病名が明らかになること

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-1.検査行程について

〈想定される不安感〉

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第3章 PET 検査室における不安感の調査


検査行程中に挙げられた様々な不安感を、不安の種類で分類 したものが図 3-1-i である。    表 3-1-i.検査行程中に想定される患者の不安の分類

表の様に、検査中の不安は全部で4つのタイプで分類するこ とが出来た。検査手順に関する不安、非主体感による不安、病 気・検査そのものに対する不安、無機質さによる不安の4つで ある。中でも、部屋から部屋へ移動させられたり、着慣れない 服装に着替えさせられたりすることなどによる、非主体感によ るものがある。時間が分からないことも不安を煽る要因となり、 これらを改善するために、例えば待機室に時計に替わるものを デザインしたり、検査の様子の映像を見せる事も出来る。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-1.検査行程について

3-1-2.検査中に予想される不安の分類

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第3章 PET 検査室における不安感の調査


今回、検査室における不安感を調査するにあたって、撮影が 行われる検査室での不安度だけを調査することは困難と思わ れ、また一連の検査の過程での不安の推移を調査する必要があ ると考えた。その結果、様々な観点から複数の心理テスト及び 調査法を用いてアンケートを作成した。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-2.調査方法

3-2.調査方法

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第3章 PET 検査室における不安感の調査


(※ 1)出典:実務教育出 版「新版 STAI マニュアル」

『新版 STAI(STAI-JYZ) 』 (※ 1)の項目は、 英語版『STAI(Form Y)』の項目を翻訳し、更に状態不安、特性不安についての日 本の文化に見合う新しい項目を加え、精巧な統計的プロセスを 用いて因子構造を検討し、さらに状態、特性という2つの不安 尺度について心理測定の特性の視点から、不安存在および不安 不在の下位尺度となりうる最も適切な項目を選択した心理テス トである。(図 3-2-a)不安存在および不安不在の項目数を等 しくした点で『STAI-JYZ』は概念的にも、方法の上でも、 『STAI (Form Y) 』より進んだものとなっている。 不安存在と関連し たネガティブな感情と不安不在を示すポジティブな感情を測定 する下位尺度を独立に作成したことにより、不安における重要 な 2 つの構成要素を識別することができます。このことによっ て、『新版 STAI』は状態不安と特性不安について慎重な測定を 可能にした。加えて、それぞれの尺度における不安の存在と不 在を示す感情を測定する下位尺度を備えている。  本調査では、患者がその時おかれた状況により変化する状態 不安のテストである STAI Y-1 をアンケート1・2・3のそれ ぞれで実施し、また患者が普段潜在的に抱えている不安度を調 べる特性不安のテストである STAI Y-2 はアンケート2で実施 した。

図 3-2-a.STAI-JYZ のアンケート原本(出店;実務教育出版「新版 STAI」

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-2.調査方法

3-2-1.STAI(State-Trait Anxiety Inventory-Form JYZ)

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第3章 PET 検査室における不安感の調査


(※ 2)出典:金子書房、

POMS(Profile of Mood States)(※ 2)は、気分を評価する

POMS 短 縮 版  手 引 き と

質問紙法の一つとして、McNair らにより米国で開発され、対

事例解説

象者がおかれた条件により変化する一時的な気分、感情の状 態を測定できるという特徴を有している。また、 「緊張−不安 (Tension-Anxiety) 」 「抑うつ−落ち込み(Depression-Dejection) 」 「怒り−敵意(Anger-Hostility) 」 「活気「Vigor」 」 「疲労(Fatigue) 」 「混乱(Confusion) 」の6つの気分尺度を同時に評価すること が可能である。 (図 3-2-b)今回は、不安に類似した項目は取 り除き、検査後の活気度と疲労度着目して「活気」と「疲労」 の尺度についてのみを、撮影の前後のアンケート2及び3で実 施した。  日本語版 POMS 短縮版は、精神障害(うつ病・不安障害など) の治療経過、身体疾患をもつ人々の精神面の変化、職場でのス クリーニング、運動やリラクゼーション効果などの評価測定と いった幅広い分野での応用することを目的に作成された。その ため医療者だけでなく、看護、福祉、教育関係専門家、産業医、 雇用決定担当者、スポーツ医学研究者や指導者、フィットネス 関係者などの健康に関わるあらゆる人々による使用を意図して いる。短縮版の特徴としては、65項目版と同様の測定結果を 提供しながらも、項目数を30に削減することにより対象者の 負担感を軽減し、短時間で変化する介入前後の気分、肝要の変 化を測定することが可能であることが挙げられる。

白山の恵み hakusan-no-megumi.jp/ monitortour5.php

図 3-2-b.POMS を使った測定の事例:白山麓健康体験 モニターツアー前後にお ける参加者の気分評価

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-2.調査方法

3-2-2.短縮版 POMS     (Profile of Mood States)

034

第3章 PET 検査室における不安感の調査


「3-1.検査行程について」で前述した、検査行程中に想定さ れる患者の不安の分類を元に、その中でも段階を経て最も顕著 に表れると考えられるものを対象に、独自の質問紙法によるア ンケート調査も行った。検査の7つの過程や障害となりうるも のに関して、どの程度不安に感じるかを問うアンケートになっ ている。質問は以下の通りである。 次の項目について、どの程度の不安を感じますか? ①検査着に着替える ②注射を打つ ③検査に放射性物質を使用する ④検査時間が長い ⑤ PET/CT 検査室に入る ⑥ PET/CT 検査の装置に入る ⑦検査中、体が固定される  被験者は、これらの質問項目について 5 段階で回答する。こ のアンケートの目的は、検査室に対する直接の不安と検査の行 程やそれ以外の要因の不安の変動とを区別することである。ま た、検査のどの過程でより不安が大きくなるのかも調査するこ とが出来る様に、全てのアンケートにて実施する。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-2.調査方法

3-2-3.検査に対する不安アンケート

035

第3章 PET 検査室における不安感の調査


本調査では、患者の不安や気分の推移に加えて、検査室に対 する直接的な評価が必要と考えられたため、20の形容詞対を 利用した印象評価を行った。この調査では、それぞれの検査室 を利用した患者が検査室のどの様な印象を持ったか、具体的な 言語化をはかることで分析に役立てられると予想した。以下が 調査に使用した形容詞対であり(表 3-2-a) 、また選択肢は5 段階とした時にどちらの形容詞により近いか、という評価基準 とした。   表 3-2-a.検査室に対する印象評価で使用した形容詞対一覧

明るい 広い 開放された 整然とした 親しみやすい 落ち着いた 軽やかな 陽気な 無機的な 柔らかい うるさい 粗野な 豪華な 不快な 安心感のある 楽しい 面白い 多彩な 清潔な 日常的な

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

暗い 狭い 閉鎖された 雑然とした 親しみにくい 落ち着かない 重苦しい 陰気な 有機的な 堅い 静かな 洗練された 質素な 快適な 不安感のある 退屈な つまらない 無色な 不潔な 非日常的な

3-2.調査方法

3-2-4.検査室に対する印象評価(SD 法)

036

第3章 PET 検査室における不安感の調査


以上を踏まえて、検査行程と調査のフロー図を作成すると図

〈アンケートの構成〉

受付・待ち合い

ST

S

Y-

2

ST

PO M

AI

AI

Y-

1

〈検査の流れ〉

ア ケ 印 象 ト 評 価

(図 3-3-a)の様になる。

アンケート1

着替え

評 価

ST

PO M

ST

S

2 Y-

AI

AI

Y-

1

薬剤投与

PET/CT 撮影

ア ケ 印 象 ト 評 価

アンケート2

待機

検査終了

S

2 YST

PO M

ST

AI

AI

Y-

1

アンケート3

図 3-3-a.調査フロー図

また、アンケートの内容とともに、アンケート2では被験者 が使用する予定の検査室の写真を提示する。これは、写真を見 ることで検査室の空間を想像しやすくなり、不安感が低減する という予想と、検査室の調査であるということを被験者に意識 づけるという2つの意図がある。  写真による情報提示の具体的な方法については、巻末の資料 編のアンケート原本を参照のこと。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-3.調査のフロー

3-3.調査のフロー

037

第3章 PET 検査室における不安感の調査


3-4-1.調査概要 ・日時:平成23年8月30日∼10月14日 ・場所:国立国際医療センター放射線科核医学棟 ・被験者:PET/CT 検査を受験する20∼80代の男女 ・被験者数:55名 ・調査内容:紙面アンケートによる検査中の患者の不安推移

3-4-2.アンケート内容  以下に実際に使用したアンケート及び質問番号と、その内容 の対応を一覧にする。アンケート及び質問番号の詳細は、資料 編の「アンケート原本」参照のこと。    表.アンケート番号、質問番号、質問内容の対応一覧表

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-4.調査内容

3-4.調査内容

038

第3章 PET 検査室における不安感の調査


第 4 章

調査結果

Chapter 4

Results 4-1.全体統計  4-1-1.デザイン別統計  4-1-2.年代別男女統計  4-1-3.デザイン別男女統計 4-2.STAI 集計結果  4-2-1.質問項目及び選択肢について  4-2-2.標準得点算出方法  4-2-3.各被験者の結果  4-2-4.パターンと傾向 4-3.短縮版 POMS 集計結果  4-3-1.6 つの気分尺度と質問項目  4-3-2.標準化得点算出方法  4-3-3.各被験者の結果  4-3-4.パターンと傾向 4-4.検査に対する不安アンケート集計結果  4-4-1.質問項目と選択肢について  4-4-2.得点算出方法  4-4-3.各被験者の結果  4-4-4.パターンと傾向 4-5.SD 法による検査室の印象評価 集計結果

4-5-1.形容詞対について  4-5-2.各被験者の結果  4-5-3.傾向

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


4-1-1.デザイン別統計  今回、被験対象者は 20 代から 80 代の男女とし、属性とし ては性別・年齢・特性不安得点に分けられる。 (特性不安得点 については、 「4-2.STAI 集計結果」参照のこと。 )表 4-1-a.が、 被験者の一覧である。       表 4-1-a.被験者一覧

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-1.全体統計

4-1.全体統計

040

第 4 章 調査結果


4-1.全体統計

4-1-2.デザイン別男女統計  本調査の被験者総数は 55 名、うち改装されたデザインあり の検査室(以下、デザインあり)を利用した患者は 26 名、改 装していない通常のデザインなしの検査室(デザインなし)を 利用した患者は 22 名、無回答が7名であった(表 4-1-a、図 4-1-a) 。 表 4-1-b.デザイン別男女総数

13%

40%

(22名) (26名)

47%

図 4-1-a.デザイン別被験者統計

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

041

第 4 章 調査結果

(7名)


次に、年代別で男女の総数を比較していく。年代別で見てい くと、20 代が女性1名、30 代が男性 1 名女性2名、40 代が 男性 4 名女性 3 名、50 代が男性7名女性 6 名、70 代が男性 6 名女性4名、80 代が男性 1 名であった。 (図 4-1-b)  デザイン毎の年代別男女統計は表の様になっている。 (表 4-1-c)

14 12 10 8 6 4 2 0

20代  30代  40代  50代  60代  70代  80代 1    2     3     6     5     4     0 0    1     4     7     8     6     1

図 4-1-b.年代別男女統計

表 4-1-c.デザイン別男女被験者数一覧

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-1.全体統計

4-1-3.年代別男女統計

042

第 4 章 調査結果


4-2-1.質問項目及び選択肢について  STAI では、対象者が置かれた状況により変化する不安度を 表す「状態不安尺度」と、対象者が日常生活から抱えている不 安を表す「特性不安尺度」の2つの尺度を測定する。それぞれ の不安尺度について 20 問の質問項目が設定されており、4段 階の選択肢から評価する。 「状態不安尺度」 はその時の心境に 「全 くあてはまらない」から「非常にあてはまる」の4段階で評価 し(表 4-2-a) 、 「特性不安尺度」については普段のそういった 感情になることが「ほとんどない」から「ほとんどいつも(な る)」の4段階で評価する(表 4-2-b) 。  本調査では、検査中の時系列的な不安の推移を詳細に調査す るため、状態不安を全てのアンケートで実施する。外部の情報 に比較的影響されにくい特性不安については、時間の都合上ア ンケート2で実施した。

表 4-2-a.STAI 状態不安質問項目 全く

いく分

かなり

非常に

あてはまらない あてはまる あてはまる あてはまる 例)冷静である

1

2

3

4

①おだやかな気持ちだ

1

2

3

4

②安心している

1

2

3

4

③緊張している

1

2

3

4

④ストレスを感じている

1

2

3

4

⑤気楽である

1

2

3

4

⑥気が動転している

1

2

3

4

1

2

3

4

⑦なにかよくないことが  おこるのではないかと心配している ⑧満足している

1

2

3

4

⑨おびえている

1

2

3

4

⑩快適である

1

2

3

4

⑪自信がある

1

2

3

4

⑫神経過敏になっている

1

2

3

4

⑬いらいらしている

1

2

3

4

⑭ためらっている

1

2

3

4

⑮くつろいでいる

1

2

3

4

⑯満ち足りた気分だ

1

2

3

4

⑰悩みがある

1

2

3

4

1

2

3

4

⑲安定した気分だ

1

2

3

4

⑳楽しい気分だ

1

2

3

4

⑱まごついている

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI 集計結果

4-2.STAI 集計結果

043

第 4 章 調査結果


ほとんど ない

ときどき ある

たびたび ある

ほとんど いつも

例)すぐに緊張する

1

2

3

4

①楽しい気分になる

1

2

3

4

②神経質で落ち着かない

1

2

3

4

③自分に満足している

1

2

3

4

④とりのこされたように感じる

1

2

3

4

⑤気が休まっている

1

2

3

4

⑥冷静で落ち着いている

1

2

3

4

1

2

3

4

1

2

3

4

⑨しあわせだと感じる

1

2

3

4

⑩いろいろ頭にうかんできて仕事や  勉強が手につかない

1

2

3

4

⑪自信がない

1

2

3

4

⑫安心感がある

1

2

3

4

⑬すぐにものごとをきめることができる

1

2

3

4

⑭力不足を感じる

1

2

3

4

⑮心が満ち足りている

1

2

3

4

⑯つまらないことが頭にうかび悩まされる

1

2

3

4

⑰ひどく失望するとそれが頭から離れない

1

2

3

4

⑱落ちついた人間だ

1

2

3

4

⑲気になることを考えだすと  緊張したり混乱したりする

1

2

3

4

⑳うれしい気分になる

1

2

3

4

⑦困ったことが次々におこり  克服できないと感じる ⑧本当はそう大したこともないのに  心配しすぎる

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI 集計結果

表 4-2-b.特性不安質問項目

044

第 4 章 調査結果


出 典: 実 務 教 育 出 版「 新

各質問項目には1点から4点までの重み付けが与えられ、4

版 STAI マニュアル」

点は状態不安尺度の 10 項目および特性不安の 10 項目におい ては高いレベルの不安の存在を示し、それらを不安存在項目 (anxiety-present items : P 項目)と呼ぶ。各尺度の残りの 10 項目では高い得点は不安がないことを示し、これらの得点には 逆の重みが与えられる。これらの項目を不安不在項目(anxietyabsent items : A 項目)とし、1、2、3、4 の回答には 4、3、2、 1 の重みが与えられる。不安不在項目は以下の通りである。  □状態不安尺度:1、2、5、8、10、11、15、16、19、20  □特性不安尺度:1、3、5、6、9、12、13、15、18、20  この様に重み付けをした各項目の得点を合計して、状態不安 と特性不安それぞれの不安存在尺度(P 項目)と不安不在尺度 (A 尺度)と算出する。各尺度の得点は最低 10 点から最高 40 点の間に分布する。  次に、状態不安の P 尺度得点と A 尺度得点を合計して状態 不安尺度の得点を求める。同様に、特性不安尺度の得点も求め る。これらの尺度得点はいずれも 20 点から 80 点までの間に 分布する。  この様にして得られた P 尺度、A 尺度のそれぞれの素点から、 標準得点に換算するには、表 4-2-c の換算表を使用した。この 換算表は、大学生の集団を標準化標本として得た P 尺度、A 尺 度および全尺度の得点の平均、標準偏差、α 係数を元に作成 されたものである。標本については、対象は大学生であり、東 京都、茨城県、埼玉県、静岡県に所在する国立、私立7大学の 学生 2253 名(男性 1088 名、女性 1165 名)であり、1、2 年生が大多数である。検査は授業中に実施された。  臨床場面で不安を判定する場合には、細かい得点よりも段階 による比較の方が実用的とされ、その場合は、段階4、5 は高 不安、段階 1、2 は低不安と判定するのが一般的である。標準 得点に基づいて次のように段階が区分される。  段階5   標準得点 65 以上  段階4   標準得点 55 以上、65 未満  段階3   標準得点 45 以上、55 未満  段階2   標準得点 35 以上、45 未満  段階1   標準得点 35 未満  本調査では、この様な段階分けの評価は行わずに、純粋な得 点の値の推移で不安の傾向を評価することとする。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI 集計結果

4-2-2.標準化得点算出方法

045

第 4 章 調査結果


PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI 集計結果

表 4-2-c.大学生の全尺度の標準得点に基づく換算表

046

第 4 章 調査結果


を一覧にしたのが表 4-2-d である。         表 4-2-c.STAI 標準化得点一覧

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI 集計結果

素点から換算表を使って標準得点を算出し、各被験者の得点

047

第 4 章 調査結果


「4-2-2.標準得点算出方法」で一覧にした被験者のデータ を、比較のためグラフ化したものを掲載する。また、特性不安 については前述した段階分けを参考に3段階に分けて色付けを した。具体的には、特性不安の標準得点が 55 以上を高不安と して青色、標準得点が 45 以上 55 未満を中不安としてオレン ジ色、標準得点が 45 未満で低不安として緑色に分類する(表 4-2-d) 。    表 4-2-d.特性不安標準得点別不安の度合いとグラフの色の早見表

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI 集計結果

4-2-3.各被験者の結果

048

第 4 章 調査結果


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4-2.STAI 集計結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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049

第 4 章 調査結果


4-2.STAI 集計結果

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第 4 章 調査結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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第 4 章 調査結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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4-2.STAI 集計結果

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第 4 章 調査結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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4-2.STAI 集計結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

053

第 4 章 調査結果

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4-2.STAI 集計結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

054

第 4 章 調査結果

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全被験者の状態不安の標準得点の推移をグラフにした結果、 次の4パターンの傾向があることが分かった。常に不安が下 降していく場合(図 4-2-a)、常に不安が上昇していく場合(図 4-2-b) 、アンケート2で一旦不安が上がったが最終的な値は下 がっている場合(図 4-2-c) 、アンケート2で一旦不安が下がっ たにも関わらずまた上昇する場合(図 4-2-d)の4つである。 代表的な例を以下に掲載する。              〈1.常に不安が下降していく場合〉             状態不安は検査を通して下降し続け             最終値は初期値を下回る。             (No.2,3,4,6,7,13,16,18,20,26,30,31 ,1,           32,36,38,39,41,44,54)                  図 4-2-a.常に不安が下降する場合のグラフ

〈2.

常に不安が上昇する場合〉

状態不安は検査を通して上昇し続け

最終値は初期値を上回る。             (No.15,24,27,34,48)                       図 4-2-b..常に不安が上昇する場合のグラフ

〈3. 一度不安が上昇し、また下降す る           場合〉                  状態不安は検査中一旦上昇するが、

最終値は初期値を下回るまたはほぼ             変わらない。(No.10,17,23,25,38,40,             42,47,52,53) 図 4-2-c..一度不安が上昇し、また下降する場合のグラフ

〈4.一度不安が下降し、また上昇 す           る場合〉                  状態不安は検査中一旦下降するが、

検査の最後には初期値より高い得点             を示す、またはほぼ変わらない。              (No.9,28,35,43,46) 図 4-2-d.一度不安が下降し、また上昇する場合のグラフ

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI 集計結果

4-2-4.パターンと傾向

055

第 4 章 調査結果


4-3-1.質問項目と選択肢について  POMS では、6つの気分尺度の変化を、ある事象の前後で測 定することができる。本調査では、不安や落ち込みといったマ イナスな気分の要素は STAI などで測定済みであるとみなし、 プラスの気分評価である「活気」と、 患者の疲労度を表す「疲労」 についてのみ測定をした。6つの気分尺度にを測定する質問項 目に対して、 「まったくない」 「少しある」 「まあまあある」 「か なりある」 「非常にある」の 5 段階で評価する。以下、全ての 質問項目である(図 4-3-a)。  本調査では、撮影の前後における気分の変化を測定するため、 撮影直前であるアンケート2と撮影後にあたるアンケート3に て POMS の測定を実施した。

質問項目 気が張りつめる 緊張ー不安 (T-A)

落ち着かない 不安だ 緊張する あれこれ心配だ 生き生きする 積極的な気分だ

活気(V)

精力がみなぎる 元気がいっぱいだ 活気がわいてくる 悲しい

抑うつー落ち込み (D−D)

自分はほめられるに値しないと感じる がっかりしてやる気をなくす 孤独でさびしい 気持ちが沈んで暗い ぐったりする 疲れた

疲労(F)

へとへとだ だるい うんざりだ 怒る

怒りー敵意 (A−H)

ふきげんだ めいわくをかけられて困る はげしい怒りを感じる すぐかっとなる 頭が混乱する 考えがまとまらない

混乱(C)

とほうに暮れる 物事がてきぱきできる気がする どうも忘れっぽい

図 4-3-a.POMS の6つの気分尺度に対する質問項目と 本調査で使用した2つの尺度

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

・・・本調査で使用した気分尺度

4-3.短縮版 POMS 集計結果

4-3.短縮版 POMS 集計結果

056

第 4 章 調査結果


各項目における 5 段階の回答には、それぞれ0点から4点 の重みが与えられる。採点は、全部の項目が記入されたことを 確認した後、5 項目ずつの各気分尺度ごとに合計点を算出する。 この得点を「素得点」とする。  分析にあたって、この素得点を定められた T 得点(標準化 得点)に換算する。T 得点は、次式により求められる。  T 得点= 50 − 10×(素得点−平均値)/標準偏差  日本版 POMS 短縮版には全年齢を対象とした T 得点換算表 が添付されており、これを用いることで計算を行わなくとも T 得点が割り出せる仕様になっている。また、別途全年齢及び性 別を標本とした標準偏差及び平均値も添付されており、これら の数値を使って上式から T 得点を算出する方法も可能である。 本調査では、標準偏差と平均値の一覧を使用して、上式から T 得点を算出した。標準偏差と平均値の一覧は、次ページに表 4-3-a で掲載する。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版 POMS 集計結果

4-3-2.標準化得点算出方法

057

第 4 章 調査結果


PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版 POMS 集計結果

表 4-3-a.年齢階級別男女得点一覧(19 歳以下は今回被験対象外)

058

第 4 章 調査結果


一覧が表 4-3-b である。           表 4-3-b.全被験者標準化得点一覧

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版 POMS 集計結果

表 4-3-a を使用して算出した被験者毎の実験前後の T 得点の

059

第 4 章 調査結果


「4-3-2.標準化得点算出方法」の方法で得られた各被験者の 実験前後における疲労と活気についての標準化得点のグラフを 以下に掲載する。それぞれの被験者の属性については、 「4-1. 全体統計」を参照のこと。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版 POMS 集計結果

4-3-3.各被験者の結果

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第 4 章 調査結果


061

第 4 章 調査結果

4-3.短縮版 POMS 集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


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第 4 章 調査結果

4-3.短縮版 POMS 集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


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第 4 章 調査結果

4-3.短縮版 POMS 集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


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第 4 章 調査結果

4-3.短縮版 POMS 集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


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第 4 章 調査結果

4-3.短縮版 POMS 集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


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第 4 章 調査結果

4-3.短縮版 POMS 集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


全被験者の撮影前後(アンケート2・アンケート3)におけ る「活気」と「疲労」に関する気分評価のグラフを作成した ところ、5 パターンの気分の変化を観察することが出来た。活 気も疲労も上がった場合(図 4-3-a) 、活気も疲労も下がった 場合(図 4-3-b) 、活気は上がったが疲労が下がった場合(図 4-3-c) 、活気は下がったが疲労は上がった場合(図 4-3-d) 、ど ちらも変わらなかった場合の5パターンである。グラフは、特 に顕著にその傾向が見られた被験者の例である。                         〈1.活気・疲労ともに増加〉         撮影の前後で活気が上がっているが疲労も上         がっている。大多数の被験者がこのパターン         に属する。(No.2,5,10,12,14,15,18,23,33,35,         37,38,40,44,49,50) 図 4-3-a.活気・疲労ともに増加しているグラフ

〈2.活気・疲労ともに減少〉         撮影の前後で、活気が下がっているが疲労も     も   下がっている。(No.17,2431,36)               図 4-3-b.活気・疲労ともに減少しているグラフ

〈3.活気が増加/疲労が減少〉         撮影の前後で、活気が上がって且つ疲労が下     下   がっている、もしくはほぼ変化しない。            (No.6,13,25,28,39,54)               図 4-3-c.活気が増加し、疲労が減少しているグラフ

〈4.活気が減少/疲労が増加〉         撮影の前後で、活気が下がっている、             もしくはほぼ変化せずしかも疲労が上がって い       いる。(No.3,8,16,41,4547,51,52,53) 図 4-3-d.活気が減少し、疲労が増加しているグラフ

図 4-3-d.活気が減少し、疲労が増加しているグラフ

〈5.どちらも変動なし〉         撮影の前後で、活気も疲労も変化しない。          (No.4,11,22)

図 4-3-e.活気・疲労ともに変動のないグラフ

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版 POMS 集計結果

4-3-4.パターンと傾向

067

第 4 章 調査結果


4-4-1.質問項目と選択肢について

本調査では、検査室に対する直接の不安感や恐怖と、検査自 体や、病気が明らかになることへの一般的に患者が持つとされ る不安感とを区別する目的で、 「検査に対する不安アンケート」 として独自の質問紙による調査を行った。内容は、検査で患者 が不安に思うと想定される項目を7つ設定し、それぞれにどの 程度不安を感じるか答えてもらうものである。  これを一連の検査中の全てのアンケートで実施することで、 検査のどの項目について一番不安を感じるのかを洗い出すこと ができると考えた。以下がその質問内容である(表 4-4-a) 。 表 4-4-a.検査に対する不安アンケート(アンケート1) 全く

あまり

不安はない 不安はな

どちら

やや

非常に

でもない 不安に思う 不安に思う

例)検査にたいくつしてしまう

1

2

3

4

5

①検査着に着替える

1

2

3

4

5

②注射を打つ

1

2

3

4

5

③検査で放射性物質を使用する

1

2

3

4

5

④検査時間が長い

1

2

3

4

5

⑤検査室に入る

1

2

3

4

5

⑤PET/CT検査の装置に入る

1

2

3

4

5

⑥PET/CT検査中に体が固定される

1

2

3

4

5

本来なら、同じ質問項目をアンケート2と3でも尋ねたいと ころである。しかし、質問①や②の様に、アンケート2の段階 ですでに体験済みになってしまう項目に対して、 「不安がある か」という質問より、 「当初自分が思っていたより怖かったか」 という選択肢に変えることによって、予想していた不安と現実 のギャップを意識して回答できる工夫をした (表 4-4-b) 。また、 アンケート2の段階でまだ体験していない③∼⑦の質問に関し ては、選択肢はアンケート1の時と同じ設定で、検査の段階を 経てその不安の度合いが変化しているかを単純に比較すること ができる(表 4-4-c) 。 表 4-3-b.検査に対する不安アンケート(アンケート2:質問①、②) 全く

あまり

思っていた

やや

怖くなかった 怖くなかった 通りだった 怖かった

非常に 怖かった

例)いつもと違う病棟にいる

1

2

3

4

5

①検査着に着替える

1

2

3

4

5

②注射を打つ

1

2

3

4

5

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

4-4. 検査に対する   不安アンケート集計結果

068

第 4 章 調査結果


非常に

全く

あまり

不安はない

不安はない

例)検査に退屈してしまう

1

2

3

4

5

③検査で放射性物質を使用する

1

2

3

4

5

④検査時間が長い

1

2

3

4

5

⑤検査室に入る

1

2

3

4

5

⑤PET/CT検査の装置に入る

1

2

3

4

5

⑥PET/CT検査中に体が固定される

1

2

3

4

5

どちら

やや

でもない 不安に思う 不安に思う

アンケート3に関しては、全ての質問項目について体験済 みであるので、アンケート2の質問①と②と同様に、 「思った より怖かったか」という選択肢を設定した。 (表 4-4-d)また、 アンケート2で体験済みであった質問①と②はアンケート3に は再出しない。 表 4-4-d.検査に対する不安アンケート(アンケート3)

全く あまり 怖くなかった 怖くなかった

思っていた 通りだった

やや 怖かった

非常に 怖かった

例)検査にたいくつしてしまう

1

2

3

4

5

①検査で放射性物質を使用する

1

2

3

4

5

②検査時間が長い

1

2

3

4

5

③検査室に入る

1

2

3

4

5

⑤PET/CT検査の装置に入る

1

2

3

4

5

⑥PET/CT検査中に体が固定される

1

2

3

4

5

4-4-2.不安得点算出方法  本アンケートでは、各質問項目に設けられた 5 段階の選択 肢に、順番に1点から5点の点数が与えられ、それらを合計し たものを得点とする。この得点を「不安得点」と呼ぶ。  ただし、アンケート2と3において、選択肢が「思ったより 怖かった」かどうかに変化した時、素得点ではなく以下の得点 を直前のアンケートの点数に加えて得点算出を行う。  1.全く怖くなかった・・・− 2  2.あまり怖くなかった・・・− 1  3.思っていた通りだった・・・+0  4.やや怖かった・・・+1  5.非常に怖かった・・・+2  例えば、 「⑤検査室に入る」ことに関して、 アンケート2で「4. やや不安に思う」と回答し、アンケート3で「2.あまり怖く なかった」と回答したら、アンケート3での得点は4− 2 で 2 点となる。また、アンケート作成時の意図として、 「思ったより」 0000009/12ページ

と問われた時、直前の回答と比較するものとして設定したので、 今回は直前の回答を使用して得点算出を行った。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

表 4-4-c.検査に対する不安アンケート(アンケート2:質問③∼⑦)

069

第 4 章 調査結果


験者のデータの一覧である。       表 4-4-e.検査に対する不安アンケート全被験者得点一覧

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

表 4-4-e は、 「4-4-2.不安得点算出方法」に従って得た前被

070

第 4 章 調査結果


全ての被験者の不安得点を、質問項目毎にグラフ化したデー タを掲載する。なお、各被験者の属性は「4-1.全体統計」を 参照のこと。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

4-4-3.各被験者の結果

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第 4 章 調査結果


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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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第 4 章 調査結果


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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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第 4 章 調査結果


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4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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第 4 章 調査結果


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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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第 4 章 調査結果


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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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第 4 章 調査結果


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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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第 4 章 調査結果


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第 4 章 調査結果

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


全被験者の全ての質問に対しての回答を、時系列でグラフに したところ、4つのパターンを見てとることが出来た。全質問 を通して不安度が下がっている場合(図 4-4-a) 、全質問を通 して不安度が上がっている場合(図 4-4-b) 、質問によって不 安度にばらつきがある場合、 (図 4-4-c) 、質問系統によって不 安度の推移が同じな場合(図 4-4-d)の4パターンである。グ ラフは、その傾向を顕著に示している被験者を代表的に掲載し たものである。

図 4-4-a.パターン1のグラフ

〈1.全質問を通して不安が下降し ている場合〉 ほぼ全質問を通して、検査開始時よ り検査終了時の不安度の方が下がっ ている。

図 4-4-a.全質問を通して不安が下降しているグラフ

〈2.全質問を通して不安が上昇し ている場合〉

全質問を通して、検査開始時より検 査終了時の不安度の方が上がってい る。

図 4-4-b.全質問を通して不安が上昇しているグラフ

〈3 質問によってばらつきが診られ る場合〉 質問系統によって不安度の推移にば らつきがあり、傾向が一つに絞られ ていない。

図 4-4-c.質問によってばらつきがみられるグラフ

〈4.質問によって不安の推移が重 なっている場合〉 質問系統によって不安度の推移が似 通っており、傾向が絞られる。ほと んどの場合、質問①と②、質問③∼ ⑦という偏り方をしている。 図 4-4-d.質問によって不安の推移が重なっているグラフ

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

4-4-4.パターンと傾向

079

第 4 章 調査結果


4-5-1.形容詞対について  本調査において、検査室の空間そのものに対する評価の手 法として SD 法を採用した。形容詞対の決定については、 「広いー 狭い」など空間を具体的に評価するものから、 「粗野なー洗練 された」といった抽象的なものまで、なるべく多岐に渡る様、 また検査室という空間を評価しやすい形容詞対を選定した。こ れらの形容詞対について、5 段階の中でより検査室の空間をよ く表現していると思う方を選択して評価してもらう方式をとっ た。検査室の印象評価で使用した質問項目と回答法を以下に示 す(表 4-5-a) 。 表 4-5-a.検査室の印象評価で使用した質問項目と回答法 非常に

やや

普通

やや

非常に

例)

大きい

1

2

3

4

5

小さい

明るい

1

2

3

4

5

暗い

広い

1

2

3

4

5

狭い

開放された

1

2

3

4

5

閉鎖された

整然とした

1

2

3

4

5

雑然とした

親しみやすい

1

2

3

4

5

親しみにくい

落ち着いた

1

2

3

4

5

落ち着かない

軽やかな

1

2

3

4

5

重苦しい

陽気な

1

2

3

4

5

陰気な

無機的な

1

2

3

4

5

有機的な

柔らかい

1

2

3

4

5

堅い

うるさい

1

2

3

4

5

静かな

粗野な

1

2

3

4

5

洗練された

豪華な

1

2

3

4

5

質素な

不快な

1

2

3

4

5

快適な

安心感のある

1

2

3

4

5

不安感のある

楽しい

1

2

3

4

5

退屈な

面白い

1

2

3

4

5

つまらない

多彩な

1

2

3

4

5

無色な

清潔な

1

2

3

4

5

不潔な

日常的な

1

2

3

4

5

非日常的な

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-5.SD 法による検査室の印象表集計結果

4-5.SD 法による検査室の    印象評価集計結果

080

第 4 章 調査結果


全被験者の回答結果を表 4-5-b で一覧にした。また、被験者 毎のグラフを次ページより掲載する。なお、 グラフの色は「4-2. STAI」で定義した特性不安によるものである。           表 4-5-b、全被験者回答結果一覧

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-5.SD 法による検査室の印象表集計結果

4-5-2.各被験者の結果

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第 4 章 調査結果


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第 4 章 調査結果

4-5.SD 法による検査室の印象表集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


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第 4 章 調査結果

4-5.SD 法による検査室の印象表集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


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第 4 章 調査結果

4-5.SD 法による検査室の印象表集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


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第 4 章 調査結果

4-5.SD 法による検査室の印象表集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


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第 4 章 調査結果

4-5.SD 法による検査室の印象表集計結果

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


全被験者を、デザインあり/なしの検査室を利用した患者、 またその中で更に男女別に分けて、検査室の印象評価に対する 得点を平均化したものをグラフ化した(図 4-5-a、図 4-5-b) 。 これらから、それぞれの傾向を読み取った。

図 4-5-a.SD 法デザイン別グラフ

まず、デザイン別で見ると、特に差が見られた形容詞は「う るさい−静かな」 「粗野な−洗練された」 「楽しい−退屈な」 「多 彩な−無色な」などであった。デザインなしの検査室を利用し た被験者は、検査室に対して「静かな」 「洗練された」という 肯定的な印象を持ったと同時に、 「退屈な」 「無色な」といった、 淡白な印象を受けたという傾向が見られた。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-5.SD 法による検査室の印象表集計結果

4-5-3.傾向

087

第 4 章 調査結果


088

第 4 章 調査結果

4-5.SD 法による検査室の印象表集計結果

図 4-5-b.SD 法デザイン毎男女別グラフ

また、デザイン毎の男女別の得点平均を読み取ると、特に顕 著に見られたのはデザインありを利用した女性の被験者の「安 心感のある」 「やわらかい」などといった好印象の評価であった。 その一方で、デザインなしを利用した特に男性の被験者は、検 査室に対して「非日常的な」といった違和感を抱いたことも読 み取ることができた。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


第 5 章

分析・考察

Chapter 5

Analyse/Consideration 5-1.STAI  5-1-1.デザイン別評価  5-1-2.男女別評価  5-1-3. 年代別評価  5-1-4.特性不安得点別評価 5-2.短縮版 POMS  5-2-1.デザイン別評価  5-2-2.男女別評価  5-2-3. 年代別評価  5-2-4.特性不安得点別評価 5-3.検査に対する不安アンケート  5-2-1.デザイン別評価  5-2-2.男女別評価  5-2-3. 年代別評価  5-2-4.特性不安得点別評価 5-4.SD 法による検査室の印象評価  5-4-1.因子の抽出  5-4-2.因子得点の分析

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究


5-1-1.デザイン別評価  STAI では、検査全体を通して被験者のその時々の不安感を 示す「状態不安」がどの様に変化しているか、またそれらの変 化が有意なものかどうかで検査室のデザインの効果を評価す る。  まず、検査室のデザインの有無のみで見た場合の全被験者の 状態不安の標準得点の平均値の推移を比較する(図 5-1-a、図 5-1-b) 。

図 5-1-a.STAI 状態不安標準得点デザイン別平均値

グラフからも読み取れる様に、デザインあり・なしともに 得点にすると 5.7 点下がっており、変化率もどちらも 12% となり差異はない様に見られる。変化率は、 [ (アンケート1の 標準得点の平均値 ‒ アンケート3の標準得点の平均値)/アン ケート1の標準得点の平均値]で求めた。  次に、デザインありとなしそれぞれに検査室について、アン ケート1の得点とアンケート 3 の得点の差に関して、グラフ のデータを元に差の検定を行った。その結果、デザインありの 状態不安標準得点では P(T ≦ t)の値が 0.0007(であったの に対し、デザインなしの P 値は 0.019 であった。どちらも 5% 水準で有意差が見られ、デザインによる大きな差異は確認され なかった。次項より、より詳細な分析にてその理由を明らかに していく。なお、全ての検定結果の詳細な表は巻末の「第2部: 資料編」を参照のこと。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-1.STAI

5-1.STAI

090

第 5 章  分析・考察


5-1.STAI

5-1-2.男女別評価  デザインの有無だけでは有効な差は見られなかったので、更 に属性を分けて検査室の評価を行う。まず、男女別で状態不安 の標準得点の平均値の推移を比較する(図 5-1-b ∼図 5-1-e) 。 【

図 5-1-b.デザインあり女性被験者標準得点 【

図 5-1-d.デザインなし女性被験者標準得点推移

図 5-1-c.デザインあり男性被験者標準得点推移

図 5-1-e.デザインなし男性被験者標準得点推移

図 5-1-b ∼図 5-1-e をそれぞれ平均してグラフ化したものが、 図 5-1-f、図 5-1-g である。 【

図 5-1-f.デザインなし男女別標準得点推移

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

091

第 5 章  分析・考察

図 5-1-g.デザインあり男女別標準得点推移


のそれぞれの検査室を利用した被験者の状態不安の推移を男女 別に比較すると、検査開始時の状態不安の標準得点(アンケー ト1)と検査終了時の状態不安の標準得点(アンケート3)の 差と、その変化率は表 5-1-a の様になっている。     表 4-5-1.男女別状態不安標準得点差異及び変化率

表からも分かる様に、全体的に状態不安の標準得点は検査の 前後で下がっており、中でもデザインありの検査室を利用した 女性についてその変化が顕著に見られた。  その変化について、4つのパターン全てにおいて差の検定を 行った。その結果、デザインありの女性の P(T ≦ t)の値は 0.0007、デザインなしの女性は 0.017、デザインなしの男性 では 0.02 と、全て 5% 水準で有意差が見られた。しかし、デ ザインありの男性だけ、P 値が 0.462 となり有意差は認められ なかった。  従って、男女によるデザインへの評価の違いが見られ、特に 女性にとって検査室のデザインは状態不安の低減に効果的であ ることが判明した。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-1.STAI

グラフからも読み取れる様に、デザインありとデザインなし

092

第 5 章  分析・考察


5-1.STAI

5-1-3.年代別評価  次は年代別で状態不安の推移を比較・考察する。本調査で は、対象者を 20 代∼ 80 代の男女としてきた。しかし、 「4-1. 全体統計」からも分かる様に、年代による偏りがあり、特に 50・60 代の被験者が目立った。そのため、年代別の評価では、 49 歳以下、50 ∼ 59 歳、60 ∼ 69 歳、70 歳以上、という4 つの区切りでまず検討することとする。図 5-1-h はデザインあ り、図 5-1-i はデザインなしの年代別でみた状態不安の推移の グラフである。

図 5-1-h.デザインあり年代別標準得点推移

図 5-1-i.デザインなし年代別標準得点推移

更に、それぞれの年代に分けてデザイン別の状態不安の標準 得点の平均値推移を比較する(図 5-1-j ∼ 5-1-m) 。 【

図 5-1-j.49 歳以下状態不安標準得点推移 【

図 5-1-k.50 ∼ 59 歳状態不安標準得点推移 【

図 5-1-l.60 ∼ 69 歳状態不安標準得点推移 図 5-1-m.70 歳以上状態不安標準得点推移

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

093

第 5 章  分析・考察


ける状態不安の標準得点の差と、その変化率を示した。 表 5-1-b.年代別で見たアンケート1とアンケート3の差及び変化率

表からも読み取れる様に、年代別に検査前後の状態不安の変 化率を観察すると、デザインの有無に関わらず顕著な差は見ら れなかった。また、これらの数値を元に差の検定を行ったが、 5%水準での有意差はどの年代にも認められなかった。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-1.STAI

また、表 5-1-b にグラフのアンケート1とアンケート3にお

094

第 5 章  分析・考察


全年代を2分して同じ分析を行う(図 5-1-n、5-1-o) 。 【

図 5-1-n.60 歳以下状態不安標準得点推移

図 5-1-o.60 歳以上状態不安標準得点推移

このグラフのデータから、検査前後の状態不安標準得点の差 と変化率を求めた一覧表が次項の表 5-1-c である。 表 5-1-c.60 歳以上・以下の状態不安の変化率

年代を細かい区切りから 60 歳で区切ぎる分類に変えたこと で、年齢層毎の変化が顕著に現れたと言える。表からも分かる 様に、変化率でみると特にデザインありの検査室を利用した 60歳以上の被験者に状態不安の減少が見られる。  この年齢層の分類で得られた状態不安の標準得点の平均から 差の検定を行うと、 60 歳以上の被験者ではデザインありの P(T ≧ t)の値が 0.05、デザインなしの P 値が 0.02 と、どちらも 5% 水準で有意差があることが判明した。しかし、60 歳未満で はデザインなしで P の値が 0.02 と、5% 水準の有意差は見ら れたものの、デザインありに関しては P 値は 0.1 となり有意差 は見られなかった。  この結論から、若い年齢層(60 歳未満)ではデザインのな い検査室の方が不安感低減に効果的に働いたといえる。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-1.STAI

そこで、年代がおおよそ2つに分かれる 60 歳を基準として、

095

第 5 章  分析・考察


今回、もう一つの属性として、STAI で測定した2つ目の不 安尺度である「特性不安」の標準得点で被験者を分類した。被 験者それぞれが普段から抱えている不安の度合いを示す「特性 不安」の標準得点を大きく3つに分類し、状態不安との関係性 を比較する(図 5-1-p、図 5-1-q) 。 「特性不安」の分類には、 「第4章:調査結果」で分類した3つ の度合い(高、中、低)を使用する。

図 5-1-p.デザインあり特性不安標準得点別状態不安標準得点推移

図 5-1-q.デザインなし特性不安標準得点別状態不安標準得点推移

グラフからは、デザインありとなしで特性不安の標準得点 毎に差が明確にあるかは読み取ることが困難であるため、表 5-1-d にアンケート1からアンケート3への変化率を示した。

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5-1.STAI

5-1-4.特性不安標準得点別

096

第 5 章  分析・考察


変化率で考察すると、デザインあり・なしともに特性不安の

標準得点が高い被験者と低い被験者に、状態不安の大きな変化 が見られた。中程度の不安の人に対しては顕著な減少は見られ ない。  これらの値の差の検定を行うと、5% 水準で有意差が見られ たのは、デザインなしの低不安(P(T ≧ t)値:0.004)だけ であった。デザインありでは、どの不安度においても有意な差 は見られなかった。  この分析の結果、特性不安尺度による標準得点が低い人に対 しては、デザインなしの検査室の方が、不安感の低減に効果的 働くといえる。

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5-1.STAI

表 5-1-d.特性不安標準得点別に見た状態不安標準得点の変化率

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第 5 章  分析・考察


5-2.短縮版 POMS

5-2.短縮版 POMS  5-2-1.デザイン別評価  本調査では、短縮版 POMS の「活気」と「疲労」について 調査を実施した。撮影の前後であるアンケート2とアンケート 3で実施することで、検査室を体験することが気分評価にどの 様な影響を与えるかを明らかにする。  まず、検査室のデザインの有無のみで被験者を分けた時の、 「活気」 「疲労」それぞれの T 得点の変動を比較する(図 5-2a、図 5-2-b) 。

図 5-2-a.撮影前後の POMS T 得点(デザインあり)

図 5-2-b.撮影前後の POMS T 得点(デザインなし)

デザイン別に POMS による気分の変化を見ると、デザイン ありでは「活気」が 1.5 点上がっているが「疲労」も 2.5 点上がっ ている。デザインなしでも、 「活気」は 1.6 点上がっているが 同様に拾うも 2.0 点上昇している。では、この中で何人中何人 の「活気」と「疲労」が上がったのかを比較する(図 5-2-c、 図 5-2-d) 。 【

図 5-2-c.活気が上がった人、もしくは下がった人の比較

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

098

第 5 章  分析・考察

図 5-2-d.疲労が上がった人、もしくは下がった人の比較


たもしくはほとんど変わらなかった人の人数を比較すると、 「活 気」に関してはデザインの有無で顕著な差は現れないことが分 かる。しかし、 「疲労」に関してはデザインありの検査室を利 用した被験者は 26 人中 6 人(23%)の疲労度が下がった、も しくはほぼ変化していないのに対し、デザインなしの検査室の 被験者は 19 人中 3 人(14%)の「疲労」が減少もしくは変動 していない。  この分析から、デザインありの検査室を利用した被験者の方 が「疲労」が軽減する傾向にあることがわかる。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-2.短縮版 POMS

デザイン別に、 「活気」と「疲労」がそれぞれ上がった人、 下がっ

099

第 5 章  分析・考察


デザイン別の評価では、デザインありの方が疲労感を与えな いことがわかったが、属性を細かく分類することでその効果を 確かめる。 、まずは、デザインのあり・なしの他に、性別のパ ラメータを追加した。その結果が図 5-2-e、図 5-2-f である。

図 5-2-e.デザインあり男女別 POMS T 得点平均

図 5-2-f.デザインなし男女別 POMS T 得点平均

男女別の気分評価は、デザインありではあまり顕著に差が現 れないことがグラフから分かる。しかし、デザインなしでは女 性の「疲労」も上昇しているが特に「活気」が顕著な増加をみせ、 また男性の場合「活気」に変動は見られにくいが「疲労」が下がっ ていることに着目したい。これらはあくまで平均値であるので、 それを踏まえて次項の図 5-2-g、 図 5-2-h では実際に何人の「活 気」や「疲労」が上がっているか、また下がっているかを比較 する。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-2.短縮版 POMS

5-2-2.男女別評価

100

第 5 章  分析・考察


図 5-2-g.男女別活気変動人数比較

男女別統計【疲労】

図 5-2-h.男女別疲労変動人数比較

男女別でデザインありとなしの検査室における「活気」と「疲 労」の変動に差があることが分かる。まず、男性よりも女性の 気分評価の変動の方が顕著に出易いという傾向があることが判 明した。その中でも特に強い傾向として、デザインありの検査 室を利用した被験者の「活気」は、男女ともに「活気」が増加 を見せている(表 5-2-a) 。それに対してデザインなしの検査 室利用した男性の「活気」は僅かにしか増加していない。また、 男女別でみると、女性は男性より「疲労」があがりやすいこと が分かる。特にデザインなしの検査室を利用した女性の 82% の人の「疲労」が増加しており、同じ検査室を利用した男性で は 45%しか増加していない。  これらのことから、デザインありの検査室の方が「活気」を 増加させる効果があるといえる。また、女性はデザインなしの 検査室を利用した人の方が「疲労」の増加率は高かったため、 デザインの有無が訪れる人の「疲労」感に影響していることが 明らかになった。         表 5-2-a、デザイン別/男女別 疲労・活気の増加率

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5-2.短縮版 POMS

男女別統計【活気】

101

第 5 章  分析・考察


年代別に POMS による気分評価の変動を比較する。ここでは、 年代を 49 歳以下、50 ∼ 59 歳、60 ∼ 69 歳、70 歳以上の4 つの年齢層に分けて評価を行う(図 5-2-i ∼図 5-2-l) 。

図 5-2-i.デザイン別気分評価(49 歳以下) 【

図 5-2-j.デザイン別気分評価(50 ∼ 59 歳) 【

図 5-2-k.デザイン別気分評価(60 ∼ 69 歳) 【

図 5-2-l.デザイン別気分評価(70 歳以上)

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5-2.短縮版 POMS

5-2-3.年代別評価

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第 5 章  分析・考察


向にある。これは、検査が終わったという安堵からくる活気と、 長時間に渡る検査からくる疲労感が共通してあるからであると 考えられる。しかし、その中でもデザインありの検査室を利用 した 50 歳代と 70 歳以上の被験者に関しては、 検査後の「疲労」 が減少している。また、デザインなしの検査室を利用した 49 歳以下の被験者は、 「活気」が下がっている唯一の年代である。  これらのデータについて、全体で何人の「活気」や「疲労」 が増加しているかを検証する(図 5-2-m、図 5-2-n) 。 【

図 5-2-m.デザインあり年代別人数統計(活気/疲労)

図 5-2-n.デザインなし年代別人数統計(活気/疲労)

これらのグラフから読み取れるのは、まず若い世代(49 歳 以下)と熟年層(70 歳以上)では検査前後の気分評価に差が あり、感じ方が違うということである。特に、デザインありを 利用した 70 歳以上の人の全ての被験者の「疲労」が低減して いるのに対し、同じ部屋を体験んした 49 歳以下の被験者の 6 人中 5 人の人の「疲労」が増加している。反対に、デザイン なしの検査室を利用した 70 歳以上の全ての被験者が、検査後 に「疲労」の増大を示しているが、49 歳以下の被験者は 5 人 中3人の「疲労」が軽減していることが分かる。  以上のことから、デザインのある検査室は高齢者に対して、 「疲労」の低減により効果的に作用するといえる。

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5-2.短縮版 POMS

どの年代も、実験の前後で「活気」 「疲労」ともに増加の傾

103

第 5 章  分析・考察


STAI の分析で算出した「特性不安」の標準得点毎に、POMS ではどの様な傾向が見られるか比較する(図 5-2-o ∼図 5-2q)。

図 5-2-o.デザイン別気分評価(特性不安「低」) 【

図 5-2-p.デザイン別気分評価(特性不安「中」) 【

図 5-2-q.デザイン別気分評価(特性不安「高」

グラフからも読み取れる様に、特性不安の度合いによって、 検査前後における気分評価に違いがある。デザインの有無に関 しては、デザインありの検査室を利用した被験者のうち、特性 不安の標準得点が低い人程、 「活気」についても「疲労」につ いても変化が出易い傾向が見られた。しかし、特性不安が大き い人程、デザインがあることによって気分が変動する傾向が少 なく、逆にデザインなしの検査室を利用した被験者の多くに、

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5-2.短縮版 POMS

5-2-5.特性不安得点別評価

104

第 5 章  分析・考察


これらのデータを個別に見ると、図 5-2-s、図 5-2-t のグラフ が作成できた。 【

図 5-2-s.デザインあり 特性不安標準得点別気分評価(活気/疲労) 【

図 5-2-t.デザインなし 特性不安標準得点別気分評価(活気/疲労)

特性不安の標準得点別に考察する。特性不安が低い被験者は、 デザインありの検査室を利用した人よりデザインなしの検査室を 利用した人の方が「活気」が上がった人が多く、 「疲労」が下がっ た人が多かった。特性不安が中程度の被験者は、デザインありを 体験した人の方が活気が上がった人数が多かったが、 「疲労」が 上がった人数も同様に多かった。特性不安が高い被験者について は、ごく少数であったので大きな傾向は見られなかった。  この分析から、検査室のデザインは特性不安得点が低い人に対 してより気分に効果的な影響を与えることが分かった。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-2.短縮版 POMS

検査前後における「活気」の増加が見られた。

105

第 5 章  分析・考察


5-3-1.デザイン別評価  検査に対する不安アンケートでは、検査で不安を感じると想 定した項目についての不安得点を算出した。検査の行程が進 むにつれて、各項目に対する不安得点がどの様に変化したか、 まずは検査室のデザインの有無のみで比較する(図 5-3-a、図 5-3-b) 。なお、各質問項目については、 「第2章:PET/CT 検査 室における不安感のアンケート調査」及び巻末の「第2部:資 料編」のアンケート原本を参照のこと。

図 5-4-a.デザインありの検査室における不安感の推移

図 5-4-b.デザインありの検査室における不安感の推移

この2つのグラフから、デザインありの検査室を利用した被 験者の方が検査開始時と比べて不安感の減少率が高いことがう かがえる。表 5-4-a、は、各質問項目毎に検査前後における得 点の平均を比較したものと、その減少による変化率を算出した のもである。変化率は前章と同様の算出方法とする。なお、 「質 問①検査着に着替える」 「質問②注射を打つ」ことに関しては、 アンケートに2の段階で体験済みとなり、ほとんどの被験者に 不安度の低減が見られ、デザインの有無による違いが見られな いため、比較の対象外とする。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-3.検査に対する不安アンケート

5-3.検査に対する    不安アンケート

106

第 5 章  分析・考察


5-3.検査に対する不安アンケート

表 5-3-a.検査に対する不安感の減少値及び変化率

5. 6. 7.

表の値からも読み取れる様に、5.、6.、7. でデザインありの 検査室を利用した被験者の不安感の方が、減少した変化率が高 いことがわかる。各質問毎に得点の検定を行うと、 「質問④検 査時間が長い」以外の全ての質問について、デザインの有無に 関わらず 5% 水準で有意差が見られた。そのため、デザインの ありの検査室の利用した被験者の不安感の変化率の方が高い値 を示しているが、明確な差は見られないことになる。  また、 「質問③検査時間が長い」ことに関する不安は、空間 に関係なく検査行程を経るに連れて増大するものと思われ、有 意差が見られなかったのではないかと考察する。従って、検査 室のデザインが不安感の低減に効果的な影響を与えることは非 常に難しいと考えられる。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

107

第 5 章  分析・考察


検査に対する不安度を、男女別で比較して有意な差があるか 分析をする(図 5-3-c ∼図 5-3-f) 。

図 5-3-c.不安感得点推移(デザインあり/男性)

図 5-3-d.不安感得点推移(デザインあり/女性)

図 5-3-e.不安感得点推移(デザインなし/男性)

図 5-3-f.不安感得点推移(デザインなし/女性)

グラフで比較を行うと、男女で質問項目に対しての捉え方の 違いが見られる。例えば、男性では「質問④検査時間が長い」 ことに対する不安がデザインに関わらず突出しているが、女性 では全質問を通して不安度が高いことがうかがえる。また、男 女ともにデザインありの検査室を利用した被験者の方が不安感 が減少しているように見られる。  この属性分けの中で、アンケート1とアンケート3における 各質問の得点の差の検定を行った。なお、この検定においても 質問①と質問②は除外して行った。各質問項目の検定結果は、 巻末の資料編を参照のこと。  その結果、 男女ともにデザインありの P(T ≦ t)の値は 0.05 を下回り、5% 水準で有意差が見られた(表 5-3-b) 。ただし、 デザインありの女性については「質問③検査で放射性物質を使 用する」 、男性については「質問④検査時間が長い」ことに関 してのみ有意差が見られなかった。デザインなしの検査室に関 しては、質問③のみ男女ともに有意差が見られ、デザインによ る差はないという結果になった。  しかし、他の3つのパターン全てにおいて有意差の見られな

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-3.検査に対する不安アンケート

5-3-2.男女別評価

108

第 5 章  分析・考察


のみ 5% 水準で有意な差が認められた。反対に、他の属性では 有意差が見られた「質問⑤ PET/CT 検査の装置に入る」ことに 対する不安では、デザインなしを使用した女性にのみ有意な差 が見られなかった。  以上のことから、デザインのある検査室はより女性に有効に 働き、特に時間の感覚や機械そのものへの不安感を低減するこ とに効果的であるといえる。 表 5-3-b.デザインあり/なし 男女別不安得点推移の有意差一覧

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-3.検査に対する不安アンケート

かった「質問④」に関しては、デザインありを使用した女性に

109

第 5 章  分析・考察


同じデータを、年代毎に比較しその傾向を考察する(図 5-3-g ∼図 5-3-j) 。なお、年代の分類は前章と同じものとする

図 5-3-g、49 歳以下デザイン別不安感の推移

図 5-3-h、50 ∼ 59 歳デザイン別不安感の推移

図 5-3-i、60 ∼ 69 歳デザイン別不安感の推

図 5-3-j、70 歳以上デザイン別不安感の推

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-3.検査に対する不安アンケート

5-3-3.年代別評価

110

第 5 章  分析・考察


かる。1つは、50 代、60 代の被験者に共通して見られる傾向 で、デザインありよりもデザインなしの検査室を利用した被験 者の方が、全ての質問項目に対して不安感が明確に減少してい る。反対に、49 歳以下と 70 歳以上については、デザインあ りの検査室を利用した被験者の方が全ての質問を通して不安感 が低減しているが、デザインなしの方を利用した被験者は検査 を通して不安感がほとんど変わっていない。  以上のことから、検査室のデザインは、若年層及び熟年層に は効果的であるが、中年層にはあまり効果が見られないことが 分かった。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-3.検査に対する不安アンケート

年代別のグラフを比較すると、2種類の傾向があることがわ

111

第 5 章  分析・考察


最後に、属性を STAI の特性不安による標準得点で分類した もので分析をする(図 5-4-k ∼図 5-4-m) 。

図 5-3-k.低不安の不安得点推移(デザイン別)

図 5-3-l.中不安の不安得点推移(デザイン別)

図 5-3-m.高不安の不安得点推移(デザイン別)

STAI の特性不安標準得点別に見ると、特性不安の低い「低 不安」と「中不安」については、デザインありの検査室を利用 した被験者の方がより不安得点の減少が顕著に見られる。 「高 不安」については、デザインなしの方が顕著な減少を見せてい るが、サンプル数が少ないので偶然によるものかもしれない。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-3.検査に対する不安アンケート

5-3-5.特性不安別評価

112

第 5 章  分析・考察


5-4-1.因子の抽出  形容詞対の因子を抽出するために、被験者全体の回答に対す る因子分析を行った。最尤法を用いて抽出し、バリマックス法 を用いて回転した。2つの共通因子が抽出され、 第一因子を「好 感」因子、第二因子を「活気」因子と名付けた(表 5-4-a) 。      表 5-4-a.共通因子と形容詞対の相関

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-4.SD 法による検査室の印象評価

5-4.SD 法による検査室の    印象評価

113

第 5 章  分析・考察


抽出した2個の共通因子をもとに、各被験者の検査室に対す る印象評価の因子得点を2因子軸上にプロットした結果を図 5-4-a に示す。

デザインあり

図 5-4-a.被験者因子得点の「活気」−「好感」平面上プロット デザインなし 被験者因子得点の「活気」−「好感」平面上プロット

因子分析を行った結果、デザインによって影響され易い因子 があることが分かった。平面プロット図にも現れている様に、 デザインなしの検査室を利用した被験者は、好感因子の因子得 点が高いが、活気因子は負の値になっていることが見て取れる。 また、デザインありの検査室を利用した被験者については、活 気因子は非常に高い因子得点になっているが、好感因子につい ては負の因子得点として現れている。  これについて考察すると、デザインありの検査室は、訪れる 患者に快適で活発な印象を与えるが、必ずしもそれが好感の持 てる空間ではないことを示している。実際に、自由記述のコメ ントなどで、 「楽しげだが、 親しみの持てる空間ではない」といっ た様な記述もあり、多彩な空間構成に戸惑いもある様に見受け られた。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-4.SD 法による検査室の印象評価

5-4-2.因子得点の分析

114

第 5 章  分析・考察


第6章

まとめ

Chapter 6

Conclusion

6-1.STAI 6-2.短縮版 POMS 6-3.検査に対する不安アンケート 6-4.SD 法による検査室の印象評価 6-5.検査室のデザインの違いによる    効果の比較 6-6.展望

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□ 全被験者を利用した検査室のデザインの有無だけで分類 する場合、デザインありの検査室とデザインなしの検査室で は、検査を通した状態不安の変化率にあまり顕著な差は見られ なかった。  □ デザイン別の中でも、被験者を男女別に分類すると、デ ザインありの検査室を利用した女性は状態不安が大幅に減少 し、検査室のデザインの効果が見られた。  □ 60 歳未満の被験者に対しては、デザインのない検査室 の方が状態不安の低減に効果的に働いたことから、この世代に は通常のデザインなしの検査室の方が安心感を与えるといえ る。  □ 特性不安によって表される、普段から抱えている不安度 が低い人は、デザインなしの検査室の方が状態不安の低減に有 効に働く。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-1.STAI

6-1.STAI 状態不安の推移

116

第 6 章 まとめ・展望


□ デザイン別で見ると、 「活気」が変動している人は同程 度だが、デザインありの検査室を利用した人の「疲労」が軽減 する傾向がある。  □ 女性は、デザインなしの検査室を利用した人の方が疲労 の増加が見られた。  □ 70 歳以上の世代では、検査室のデザインがあることに よって疲労が軽減する傾向にある。  □ 特性不安の得点が低い人の方が、デザインありの検査室 を利用した人の方が活気が増加し、疲労が下がった人が多かっ たことから、気分の変化に良い効果をもたらしたといえる。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-2.短縮版 POMS

6-2.短縮版 POMS

117

第 6 章 まとめ・展望


□ デザインありの検査室は、特に女性により効果的に作用 し、検査そのものの不安だけでなく時間に対する不安や、PET 装置に入っていくことへの不安感も低減する。  □ 中年層(50 ∼ 69)の世代には、検査室のデザインは不 安感の低減に効果的ではない。それに対して、若い世代(49 歳以下)と高齢者(70 歳以上)においては、デザインありの 検査室を利用した人には検査に対する不安感の顕著な減少が見 られた。  □ 特性不安が低い、または中程度の被験者は、デザインあ りの検査室の方が検査を通しての不安感に大きな減少が見られ た。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-3.検査に対する不安アンケート

6-3.検査に対する    不安アンケート

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第 6 章 まとめ・展望


□ デザインなしの検査室を利用した被験者は、好感因子が 正の値を示すものが多かったが、活気因子は負の値を示すもの が多く、検査室に好感は持っているものの活気的な印象を受け ない。  □ デザインありの検査室を利用した被験者は、活気因子が 正の値を示すが、好感因子は負の値になっているものが多い。 これらの被験者は、検査室の活気や快適性が感じられても、好 感を持つ人が少なかったことを示している。  □ SD 法による因子分析の結果、検査室のデザインがある ことで快適な印象を与えることが分かった。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-4.SD 法による検査室の印象評価

6-4.SD 法による検査室の    印象評価

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第 6 章 まとめ・展望


本研究を通して判明した、PET/CT 検査室のデザインの有無 による患者への心理的な効果の比較を表 6-5-a に示す。     表 6-5-a.検査室のデザインによる効果の比較表

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-5.検査室のデザインによる効果の比較

6-5.検査室のデザインによる    効果の比較

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第 6 章 まとめ・展望


今回の調査では、検査室のデザインが患者の不安感低減に効 果的であるかどうかを検証した。しかし、検査室そのものに対 する不安感だけを抽出することが困難であったため、複数のア ンケートを利用してアプローチを図った。  その結果、様々な傾向が見られたが、顕著に出たものは少な く、個人差や、テストの回答のしやすさなどによって偏りが出 たものと思われる。  しかし、特に強い傾向として見られたのは、検査室のデザイ ンは男性より女性に効果的であるということだ。逆に、データ にはそれほど顕著に現れなかったが、男性のコメントには「絵 が不気味だ」など、検査室のデザインに違和感を覚えるものが 多かったことなどから、デザインのない検査室の方が不安感を 与えないという可能性もある。  今後は、男女の空間の捉え方の違いに焦点を当て、検査室の デザインだけでなく植栽や音楽など、様々なしかけを用意して 検証することで、双方にとってより快適な病院空間を提案する ことができると考える。また、デザインの内容によっても与え る印象が変わることを検証し、一人一人の患者にあった検査空 間を設計の指針とすることができる。

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-4.展望

6-5.展望

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第 6 章 まとめ・展望


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