A Saptio-Temporal Transition Model of Architectural Value based on Bonds and Communication between Tenants and Visitors in Shared Space
23
5210A040
001
第Ⅰ部
論文編
Part Ⅰ
main issue
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
002
第 1 章
序章
Chapter 1
Preface
#1.語句の定義 #2.研究概念 #3.研究目的 #4.研究の流れ
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
003 第 1 章 序章 #1.語句の定義
#1.語句の定義 シェア空間 本論が対象とする空間である。一般的にはもう少し広義な空間を指すことが多いが、本論においては限定 的に以下の2つの空間を合わせてシェア空間と呼ぶ。 【住まいのシェア】 家族関係や恋愛関係にない他人同士が、キッチン、リビング、浴室、トイレ等の設備を3人以上の入居者 が共同で使用する住居。従来の風呂無しアパートのように経済性のみを訴求点としたものではなく、共用設 備の利用に際し発生する入居者同士のコミュニケーションを主要な訴求点としているのが特徴である。 【働く場のシェア】 自分の会社以外の他人と共に、3人以上で仕事をしている空間。LAN が繋がったり、集中して作業の出 来るスペースがあるという空間/設備的動機ではなく、利用に際し発生する利用者同士のコミュニケーショ ン、知識やスキルの共有を主要な訴求点としているのが特徴である。
利用者 住まいのシェア、働く場のシェアを行っている人のこと。
接触行動 他者と会話すること、及び他者とのつながり(知り合いになり、連絡を取り合ったり食事を共にしたりす る)を生じること。この2つの行動を合わせて接触行動と呼ぶ。
創発 利用者やその知人との接触行動によりもたらされる、仕事や自分の目標、悩みに対するアイデアやスキル、 解決策。
生活の充実感 日々の生活の中で感じる自己肯定的な感情,満ち足りているという心情。
(空間の)動的な価値 シェア空間を構成する要素を空間要素と人間要素に分けた際に、人間要素により生じる付加価値のこと。 創発と生活の充実感を合わせてこのように表現する。シェア空間はどちらの場合も、利用者が滞在する期間 が短期的であるため、立地や部屋面積などの固定的な価値( 不動 産価値)と対比させる意味で 動的 と いう言葉を用いている。
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004 第 1 章 序章 #2.研究概念
#2.研究概念 本論は以下の2つの社会背景に立脚したものである。 利用の時代(ストックの活用) つながり社会 上記2点から、これまでのような空間を利用する人が固定的な(空間:人=1:1の)利用の仕方ではな く、これからは空間を使う人が流動的な(空間:人=1:n の)利用の仕方がどんどん増えていくことが容 易に想像出来る。 このように複数の人に利用される空間には、従来の立地や空間のスペックにより表される 不動 産価値 では量れない、『その時にそこを利用している人との接触という 動的な価値 』が存在するのではないか。 そして、その動的な価値こそがシェア空間の持つ最大の価値である。 「そこに自分の日々の生活に刺激を与えてくれる人がいるから」その空間を利用しているというモチベーショ ンがあるのではないか。 これが本論の基本概念である。
不動産ストックー利用の時代
空間を共に利用することでつながる
つながり社会
fig.1-1 研究概念−シェア利用の時代へ
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005 第 1 章 序章 #3.研究目的
#3.研究目的 本論ではまず、シェア空間における空間構成(固定要素)とその利用者構成(可変要素)が、会話とつな がりという2つの接触行動にどのように影響を与えているのか明らかにし、 「時間変化を考慮に入れたシェ ア空間の接触行動」をモデル化する。さらに、接触行動と利用者の生活における創発性、充実度との関係を 分析することで、接触行動の付加価値を定義し、最終的に「シェア空間における時間変化を考慮に入れた空 間価値」をモデルとして提示することを目的とする。
付加価値
接触行動
創発
会話
充実感
つながり
要因
固定要素 利用者属性
シェア空間の構成要素
可変要素
fig.1-2 シェア空間における時間変化を考慮に入れた空間価値モデル
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006 第 1 章 序章 #4.研究の流れ
#4.研究の流れ
step1) シェア空間の事例調査
step2) シェア空間における接触行動と充実感アンケート調査 住まいのシェアを行ってる人 / 働く場のシェアを行っている人 / シェア空間を利用し ていない人に対し、行動・意識に関するアンケート調査を行う
step3) シェア空間の付加価値検討 シェア空間利用者と非利用者の比較から、シェア空間の有意性を検討する
step4) 固定要素と可変要素による接触行動のモデル化 住まいのシェア / 働く場のシェアごとに、空間構成と利用者構成がどのように会話・ つながりに影響を及ぼしているのかを多変量解析により示す
step5) 接触行動による付加価値の定義付け 会話・つながりと生活における創発性・充実度との関係を分析し、シェア空間におけ る付加価値を明らかにする
goal) シェア空間における時間変化を考慮に入れた空間価値モデル
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007
第 2 章
研究背景
Chapter 2
Background
#1.新しいシェアのはじまり #2.モノのシェア #3.ヒトのシェア #4.空間のシェア #5.既往研究 5-1.シェア空間に関する知見 5-2.接触行動に関する知見 #6.研究の位置付け
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008 第 2 章 研究背景 #1.新しいシェアのはじまり
#1.新しいシェアのはじまり ここでは、研究概念に記した以下の2点の社会背景について、シェアに関してまとめ られた数点の著書を引用しながら述べていく。 1.利用の時代(ストックの活用)−エコ、サスティナビリティ 2.つながり社会−コミュニティ
<新しいシェアの前夜> [文1] Douglas Rushkoff,LIfe
家はその持ち主の王国だとみなされた。自分で成功を勝ち取り家を建てることが自立
Inc.:How the World
した人間の証明だとされ、地域の共有資源や共同駐車場、それになんであれ、人と共有
Became a Corporation
することは郊外の暮らしではよしとされず、忌み嫌われた。
a n d H o w t o Ta l k I t
Back (Random House,
ダグラス・ラシュコフは著書[文1]の中にこう書いている。
2009),51.
また、レイチェル・ボッツマンはその著書[文2]の中で以下のように述べている。
[文2] レイチェル・ボッツマ
1950 年代、ハイパー消費主義 *の幕が上がる頃には、人々はまずなにより第一に、
ン , ルー・ロジャース:
消費者として自分を意識し、市民としての意識は二の次になっていた。お互いに助け合
『SHARE -What's Mine
うより企業に頼る方が身の為だと思うようになったのだ。集団やコミュニティの価値観
Is Yours-
よりも、消費者としての自立や「何をおいてもまず私」という心理が先だった。
(邦題:シェア<共有>
ハイパー消費主義社会では、「自分のものは自分のもの」として、完全に自己完結し
からビジネスを生み出
ていることが究極のゴールだというコンセプトが、あたかも個性と自立の尊重のように
す新戦略)』,NHK 出版
唱えられた。 ∼中略∼
*ハイパー消費主義:
フェンスの向こうに住んでいるお隣さんとは、もはやはしごを借りるような親しい間
1920 年 代 に 始 ま り、
柄ではない。悲しいかな、この頃では隣人が「赤の他人」という方が普通だ。
1950 年 代 の 半 ば に 爆
∼中略∼
発的に拡大した過剰な
「もっと、もっと」のハイパー消費文化は企業の拡大には役立ったが、人間同士を引
大量消費の饗宴。次か
き離してしまったようだ。
ら次に際限なくたくさ んのものを手に入れる こと。
経済成長の時代に、消費者と呼ばれる人々が過剰な消費主義に走った結果、モノを生 産するためのリソースやつながり・コミュニティといった社会資本が劇的に失われてし まったことが述べられている。ハイパー消費主義が幕開けしてから50年ほどが経ち、 彼らがその事実に意識的になり始めた昨今、新たなシェア型利用社会へと流れは転換し つつある。
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009 第 2 章 研究背景 #1.新しいシェアのはじまり
<新しいシェアの幕開け> では、人々は一体どんな意識を持って シェア を始めたのか。 [文2] レイチェル・ボッツマ
経済成長は頭打ちなのに、リソースは無限であるかのように消費し続けていてはうま
ン , ルー・ロジャース:
くいくはずがないという消費者意識が広まってきている。我々は「買ったもの」をより
『SHARE -What's Mine Is Yours(邦題:シェア<共有> からビジネスを生み出
有効に活用し、さらに重要なことに、「買わないもの」からも何かを得ようとしている。 また同時に、ものを追い求め続けることで、友人や家族、隣人、さらに地球との関係を 犠牲にしてことに我々は気付きはじめている。それが、コミュニティを再生させたいと いう強い思いに繋がっている [文2]。
す新戦略)』,NHK 出版
「所有や私有」よりも「利用」に、「モノ自体」よりも「人とのつながり」に重きが置 かれる シェア の価値観が広まってきているのである。 また、マーケティング・アナリスト三浦展は、その著書[文3]の中でシェア型消費が 台頭してきた理由について以下の4点を挙げている。 [文3] 三浦展:『これからの日
1)高齢社会の急速な進展:高齢社会とともに未婚者、死別者、離別者といった単身者
本 の た め に「 シ ェ ア 」
が増加する(fig.2-1)と、高齢者が自分で自分のことをしなくてはならない。ケアをシェ
の話をしよう』,NHK 出
アする必要があるということに皆気付きはじめている。
版
2)コミュニケーション、共感の重視:モノを所有するという物質主義的な幸福感より、 他人とのコミュニケーション、共感によろこびを感じる人が増えている。 3)エコ意識の拡大:シェア意識の高い人は環境問題への関心も高く、共有、レンタル への志向性も強い。 4)情報化:情報はただで皆とシェアできるという意識をもたらした。また、それまで は見ず知らずだった人とも簡単に友達になれるようになったことが、人とコミュニケー ションしたい、共感したいというニーズを満たした。 (千世帯) 60,000
50,000
40,000
30,000 その他
20,000
ひとり親と子 夫婦と子 夫婦のみ
10,000
単独
0 1980年 1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2015年 2020年 2025年 2030年
fig.2-1 日本の世帯数の将来推計(2008 年 国勢調査)
この中でも、本論で注目しているのは「2)コミュニケーション、共感の重視」の部 分である。次項でその内容について、詳細に述べる。 利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
010 第 2 章 研究背景 #1.新しいシェアのはじまり
[文3]
時代感覚の変化を概観すれば、1980 年代までは「have」の時代。所有を拡大するこ
三浦展:『これからの日
とによろこびを見出した時代である。
本 の た め に「 シ ェ ア 」
それが 1990 年代になると、「be」の時代になる。それは、自分が何であるか、何に
の話をしよう』,NHK 出
なりたいかが重要になった時代ということである。自分らしさの追求の時代だとも言え
版
る。 それが今は、だんだんと「share」の時代になってきた。自分が何を持つか、何であ るかよりも、自分たちが何を一緒に持つか、使うか、みんなで何をするか、何に共感す るかということが重要視される時代になったのである [文3]。(fig.2-2) ∼1980年代
1990年代
2010年代∼
have
be
share
I have
I am
We share
私有
自分とは何か
共同利用、共有
消費
自分探し
他者との関係、つながり *資料:カルチャースタディーズ研究所
fig.2-2 時代の変遷による欲求の変化
シェアすることでつながりたい。でも、しばられたくない (−この関係性を三浦は、 共異体 と呼んでいる(fig.2-3))この価値観が今、新しいシェアを実践している人々の 価値観として共通している点だろう。 共同体(かつてのシェア)
共異体(新しいシェア)
成員が固定されており、束縛される
成員が固定されておらず、束縛されない
空間的に限定されている
空間的に限定されない
時間的に永続的である
時間的に限定的である
共同体同士が排除し合い、競争する
共異体同士は排除し合わず、競争しない
fig.2-3 共同体と共異体の違い
次項からは、具体的なシェアの形態を 1)モノのシェア 2)ヒトのシェア 3)空間のシェア の3つのカテゴリーごとに「かつてのシェア」と「新しいシェア」を比較しながら事例 を見ていく。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
011 第 2 章 研究背景 #2.モノのシェア
#2.モノのシェア シェアの具体的な事例として、はじめに「モノのシェア」を取り上げる。 モノのシェアで取り上げる事例は、 本論の立脚する背景のうちの片方 「1.利用の時代」 の色が濃く、「2.つながり社会」に関してはあまり当てはまらない ドライ なシステ ムであるため、簡単に触れるのみにしておく。
<かつてのモノのシェア> 昔から日本には共同体と呼べるものが多く存在していた。古くは藩や農村、 長屋といっ た共同体が、今でも残っているものとしては、家族や会社といった共同体が挙げられる。 ただし、この今でも残っている共同体は、今や共同体としては機能しなくなっていると 言われている。雇用はより流動的になり、 非正社員が増えて雇用者の立場は不安定になっ た。離婚が増え、シングルマザーが増え、 「個食」或いは「孤食」と呼ばれる食事風景 が増えた。一緒にテレビを見ながら団欒することも少なくなった。近所付き合いも減っ た。商店街も衰退した。 かつて日本にあった共同体では、 モノの貸し借り や 共同利用 が頻繁に行われて いた。江戸時代の長屋での共同体では、醤油や味噌の貸し借り、余ったおかずのお裾分 け、裁縫用具や大工道具の貸し借りなど。これは間違いなく「シェア」である。しかし、 このシェアはあくまでも 共同体を前提としたシェア である。一つの長屋に住まって いるという「空間のシェア」が前提となっており、そこには同時に「束縛」がつきまと うものであった。
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012 第 2 章 研究背景 #2.モノのシェア
[文4]
<新しいモノのシェア>
交通エコロジー・モビ
本論で取り上げる新しいシェアは、 共同体を前提としたシェア ではない。特にこ
リティ財団
こで取り上げる事例は、モノのシェアは行うが場の制限が存在しないものである。
h t t p : / / w w w. e c o m o . or.jp/index.html
□カーシェアリング モノのシェアとして最近最も話題に上っている事例の一つがカーシェアリング(fig.24)である。カーシェアリングとは、民間企業、行政、NPO などの運営主体が車を所有し、
その車を共同利用する会員を集め、登録した会員が事前に予約して車を利用するという もの。この会員登録を行うという点において、レンタカーのシステムとは異なる。登録 をしておけば、24時間好きな時に、また30分などの短い時間でも利用することがで きる。車の管理は運営主体が行い、自動車税、駐車場代、自動車保険代、車検代、整備 費なども運営主体が支払う。 交通エコロジー・モビリティ財団による 2011 年 1 月の調査では、我が国のカーシェ アリング車両ステーション数は 2,917 ヶ所(前年の 3.4 倍) 、 車両台数は 3,911 台(同 3.0 fig.2-4 カーシェアリング大手4社
[文 4] 倍)、会員数は 73,224 人(同 4.5 倍)と急増している(fig.2-5 ) 。 また、 最近ではカー
シェアリングを付けた分譲マンションが増え始めている。携帯電話から利用の予約がで き、そのまま携帯が車のキーになるというサービス(careco)も開始され、ますます利 用のハードルは下がってきているようだ。 車両台数(台)
会員数(人)
80000
4500 4000
70000
3500
60000
3000
50000 40000 30000
車両台数
2000
会員数
1500
20000
1000
10000 0
2500
500
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
0
fig.2-5 日本におけるカーシェアリングの車両台数と会員数の推移
□自転車シェアリング カーシェアリングと同様、 注目を集めているのが自転車のシェアである。こちらはカー シェアよりも顔が見える人間関係を促進する効果が期待されるので、各自治体がまちの コミュニティづくりの一環として取り入れている事例が多く見られる。こちらもカー シェアリングと同様に利用者は事前に登録を行い、各ステーションから自転車を利用す ることが可能で、任意のステーションに返却することができるという交通システムであ る。富山市や堺市、神戸市で試験的に運用が行われている。富山市の事例では、フラン ス系のレンタルサイクル会社シクロシティが事業主体となり、富山市中心部に15カ所 のステーションを設置し、150台の自転車が利用可能となっている。 利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
013 第 2 章 研究背景 #3.ヒトのシェア
#3.ヒトのシェア 次にヒトのシェアを取り上げる。ヒトのシェアとは、ヒトの持つ無形の資産である知 識や技術をシェアすることを意味している。自らの持つ知識や技術を他人に伝える、或 いは提供することになるので、そこには前述のモノのシェアよりも 人と人のつながり が生まれやすいシェアのかたちだと言える。 <かつてのヒトのシェア> ここで取り上げる「かつてのシェア」は、共同体としてのシェアよりも、むしろ「新 しいシェア」の概念である共異体の概念に近いものとして存在していた事例である。 □ボローニャ大学 「母なる大学」を呼ばれ、世界最古の総合大学だとされるボローニャ大学は11世紀、 [文5]
ジョズエ・カルドゥッチ他による委員会により創立されたと言われている。ボローニャ
http://www.kaho.biz/
は主要な街道が交差する都市であり、イタリアのみならずドイツやフランスからも法
daigaku.html
律を学ぼうとする人々(つまり学生)が数百人も群れ集まるようになっていた。遠方 から単身やってきた学生たちは、まず下宿代や生活必需品の値段をつり上げるボロー ニャ市民に対抗するために「組合(ウニヴェルシタス) 」を結成した。これが現在の University の語源になっている。校舎などなく、 学生は教授の家や街の広場や教会に行っ て勉強を行っていた。そもそも学生から発生した組織であるため、教授の人選や給料、 授業の内容なども全て学生が決めていたという[文5]。ボローニャ大学が学生の大学と 呼ばれる所以である。従ってもともと大学とは、知識のシェアを目的にした共同利用機 関だったのであった。
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014 第 2 章 研究背景 #3.ヒトのシェア
<新しいヒトのシェア> ∼知識・技術のシェア∼ 現在では大学というと、固定されたキャンパスに通って、教授から知見を教えて頂く というイメージになってしまっている(そこには知識をシェアしているという概念はあ まり存在しないように思われる)が、その起源であるボローニャ大学と非常に良く似た システムの大学も存在する。 □シブヤ大学 2006 年9月に創立された NPO 法人シブヤ大学(fig.2-6)。非常にボローニャ大学と似 た組織である。
fig.2-6 シブヤ大学 [文6]
シブヤ大学には校舎がありません。シブヤがまるごとキャンパスです。
http://www.shibuya-
シブヤ大学の場合、生徒は、先生にもなれます。
univ.net/
いつまでたっても卒業しない。それがきっと、シブヤ大学の優等生です。[文6] これらの言葉が、シブヤ大学という組織をよく表している。活動を通して、人と人の つながりをつくり、まちづくりの起点となることを目標としている。これは知識や技術 をシェアする、新しい(ある意味で原初的な)ヒトのシェアのかたちである。 □墨東大学 シブヤ大学と似たヒトのシェアの事例として、墨東大学というプロジェクトがある。
[文7]
こちらもシブヤ大学と同様、墨東エリア(墨田区、江東区を指す)の活性化を目指し、
http://bokudai.net/
人びとが集いのびやかに語らう〈学びの場〉として設計・演出し、コミュニケーション
index.html
の誘発を試みるプロジェクト [文7] である。シブヤ大学と同様、正規の大学ではなく、 入学試験はない。入学には、在学生や教員からの承認が必要であり、これは正に SNS (Social Networking Service)のシステムと同じである。
上記のどちらもが、地域に既に存在する資源や場所を「利用」し、ヒトの(知識や技術 の)シェアを通して人と人が「つながる」という事例である。
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015 第 2 章 研究背景 #3.ヒトのシェア
∼行動のシェア∼ □時間銀行 上海の都会化とともに「隣の人がどういう人かも知らない」という地域の人間関係の 希薄化に危機感を感じた女性が立ち上げた仕組みである。団地の掲示板に、さまざまな 人が自分の特技(「パソコンに詳しい元エンジニア」 、 「電気器具の扱いに詳しい工事業 者」、「英語教えます」など)を顔写真と電話番号とともに掲示する。団地内の住人は、 [文8]
何か助けて欲しいことがある際にこの掲示板を見て、依頼をする。依頼を受けた人は無
http://tobefreedom.
償で奉仕をし、時間銀行の「通帳」にその時間と内容を書き込む。これは預金にあたり、
s e e s a a . n e t /
自分が何か助けて欲しいときにその預金の「時間」を引き出して、自分の苦手なことを
art icle/156974244.
援助してもらうというシステム[文8]。金銭やモノを介さずに、住人同士が手を貸しあっ
html
たり知恵を貸しあったりすることで、次第に「つながり」が形成されていくというヒト のシェアである。 □ソーシャルランチ ソーシャルランチとは、毎日のランチを価値ある時間に変えることを目的にリリース
[文9]
された、ランチ相手をマッチングするサービス(fig.2-7)。利用者は自分の普段ランチを
http://www.so cial-
している相手とペアを組み、facebook の実名制を活用して相手ペアにリクエストを送
lunch.jp/
信し、承諾されれば2対2でランチを行うことができる[文9]。毎日の昼食という行動 を普段とはことなる人とシェアすることで、知識や考え方のシェアが可能になり、新た な「つながり」が増えていくというヒトのシェアである。
fig.2-7 ソーシャルランチ
行動のシェアで取り上げた2つの事例は行動を介したシェアであり、本論の立脚する 背景のうち「つながり」の要素の強いものであった。時代は確実にシェアにシフトして きているのである。
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016 第 2 章 研究背景 #4.空間のシェア
#4.空間のシェア 最後に本論の主旨である空間のシェアについて取り上げる。 ここでまず明らかにしておきたい点が2点ある。1点目に、本論で扱う空間のシェ アとは、先に述べた「1. (所有・私有できるものの)利用の時代」 「2.つながり社会」 に基づいた空間利用の仕方であるという点。つまり、図書館や公民館、公園などの官が 設ける公共のサービス空間を利用することではなく、個人(或いは中小企業や個人商店) が所有するものを共同利用するというケースであるという点。2点目にその中でも特に、 大半の人が生活時間の多くを過ごす場である「住まい」と「働く場」を対象としている という点である。 本章では1点目に関して、建築・都市における「1. (所有・私有できるものの)利用 の時代」 「2.つながり社会」 が意味するところを具体的に述べていく。2点目に関しては、 具体的な事例を元に次章で詳しく述べていくこととする。
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017 第 2 章 研究背景 #4.空間のシェア
<利用の時代−ストック利用【所有側の視点】> 現在利用されているシェア空間は、 新築で建てられるケースが少ない。 「住まい」 のシェ アに関しても、「働く場」のシェアに関しても既存の物件のリノベーションやコンバー ジョンによるものが主流である。この現象は、主に以下の2点の背景によるものである [文10]
と考えられる。
リクルート住宅総研: 既存住宅流通活性化
1.既存ストック(空き家)の増加[文10]
プロジェクト報告書
日本社会全体のシュリンク化(人口減少、 高齢社会、 家族の縮小、 単身者の増加)により、
(2008.2)
経済成長の時代に大量供給された建築、中でも大型の戸建住宅、寮、マンション・アパー ト、中小規模ビルに対する需要が現象してきていることは周知の事実である(fig.2-8)。 当然、既存ストックには多くの空いた空間が存在する。この状況は、その空間を所有す る者にとっては、レンタル倉庫に入りっ放しの 使いもしないガラクタ のためにお金 を払い続けているのと、さほど変わりがなく、不利益を生むばかりである。従って、そ の空間を必要とする人に利用してもらい、その分の賃料を回収する方が賢いと考えるの が当然であろう。
(千戸)
(%)
10000
15.0
8000
12.0
6000
9.0
4000
6.0
2000
3.0
空き家率 空き家総数
0
1963
1968
1973
1978
1983
1988
1993
1998
2003
2008
0.0
参照:住宅・土地統計調査(総務省 ,2008)
fig.2-8 空き家数及び空き家率の推移(全国)
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
018 第 2 章 研究背景 #4.空間のシェア
[文3]
2.建築計画的理由(平面構成)[文3]
三浦展:『これからの日
ストックの所有者が場所を必要とする人にストック空間を提供する場合を考えてみ
本 の た め に「 シ ェ ア 」
る。ただし、大抵の場合そのままでは需要があまりない。なぜなら建てられた時代が今
の話をしよう』,NHK 出
とは異なるので、平面構成や立地が現在のニーズに合っていないからである。そこで登
版
場するのが、シェアという利用の仕方である。具体的に3つのケースを想定して考えて みよう。 CASE1)中小企業の持つ社員寮: 高度経済成長期、企業は地方から出てきた社員や所得の低い若い社員のために独身寮 を多く建設した。しかし、寮を嫌い一人暮らしをする者が増加したり、親元から通うこ との出来る者が増加したことが原因となり、独身寮の需要は減少した。独身寮はその平 面計画上、個室数が多いため構造的にもシェアハウスには転換しやすいポテンシャルを 持っていると言える。 CASE2)親と死別した子の持つ二世帯住宅: 1980 年代以降に流行した二世帯住宅は、しばらくして親が亡くなると子どもの手に 余る。もともと各階にキッチン、風呂、トイレがあり、個室数の多い二世帯住宅はシェ アハウスに向いている。ただしこの頃の戸建住宅は、いわゆる nLDK 型であり、ドアや 間仕切りで仕切られた個室で構成されているものがほとんだが、これは現在のファミ リーにはあまり人気がない。それに対して今人気のある空間構成は、部屋数を減らして でも開放的なリビング空間を設けた構成であり、二世帯住宅のストックをそのままファ ミリー向けに転売、貸し出してもニーズがあまりないのだ。 CASE3)都心部の中小オフィスビルの空室: 都心部の古いオフィスビルの空室率の高さは、改めて述べるまでもないことだが、こ れらの物件はそのままスクラップ&ビルドしても現在人気のある地区の大規模ビルには 絶対に勝ち目がない。かといってそのまま放っておいても、不動産価値が上がる見込み はほとんどないと言っても良い。そこでシェアオフィスや Coworking という利用方法 が登場する。大企業ではなく、フリーランスやデザイナー、ベンチャー企業には人気の 立地にオフィスを設ける程の資金力は無い。それでも少しでも立地の良い都心にオフィ スを持ちたいというニーズは確実に存在する。一室を一つの会社に貸し出すのではなく、 彼らが共同利用する場として開放すれば、所有者と利用者のニーズが合致した空間利用 が可能なのである。
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019 第 2 章 研究背景 #4.空間のシェア
<つながり社会−共同体から共異体へ【利用側の視点】> ここまでは空間の所有者側の視点から、空間のシェアの背景を述べてきた。次に、利 用者側の視点から空間のシェア利用拡大の背景について言及する。これは一言で言うな らば、前述した「共異体」の概念である。主に20代∼30代の間で、 「しばられたく はないけれども、つながりたい」という意識が生活空間のシェアを押し進めているので ある(fig.2-9)。
10代 20代前半 20代後半 30代前半 30代後半 40代前半 40代後半 50代 60代
fig.2-9 シェアハウス利用者の年齢構成
∼かつての空間のシェア∼ [文3]
かつての日本では、生活空間のシェア利用は当たり前だった。同じ地域、同じ会社、
三浦展:『これからの日
同じ集団に、同じ住民、同じ社員、同じメンバーがいて、その地域、会社、集団が永続
本 の た め に「 シ ェ ア 」
することを願って活動する。そのため、成員は集団の規律に従わねばならず、他の成員
の話をしよう』,NHK 出
から束縛されるし、集団の一員として画一化される。ここには、 「共同体」という概念
版
が根底にあり、人々は「つながることでしばられて」いた[文3]。 経済成長の時代、ある程度の資金力を持った層が持ち家を建てていた頃、そうでない 人たちはどんな所に住まっていたのか。その答えの一つが、ゲストハウスである。かつ
[文11]
てゲストハウスは、 「外人ハウス」とも呼ばれ、日本に滞在中の外国人が多く住まう、
http://blog.roommate.
生活水準の低い住まいというイメージであった。
jp/guide/roomshare-
つまり、かつての日本人でこういった住まいを選択する人の動機の多くは、経済性と
history/
いうネガティブなものだった[文11]。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
020 第 2 章 研究背景 #4.空間のシェア
∼新しい空間のシェア∼ 少しずつ状況が変わってきたのはここ6年∼7年のことである(fig.2-10)。ゲストハ ウスと呼ばれていた住形態が、シェアハウスという言葉に置き換わり、ニュースでこう した生活空間のシェア利用が取り上げられるようになってきた。ドラマでもこうした生 活スタイルが取り上げられるようになり、それまで経済性というネガティブな動機に加 え、リノベーション空間の持つ独特の味や血縁関係の無い者同士で生活を共にすること の楽しさや安心感というポジティブな動機が表れてきた。 このように生活空間のシェア利用を取り巻く環境が変わってきた背景として、主に以 下の2点が挙げられている。1点目に海外生活を体験した人の増加である。欧米諸国で は、このような生活スタイルは一般的に普及しており、留学や転勤、旅行などで空間の シェア利用を体験してきた人が、日本でも同じような住まい方をしたいという動機から シェアハウスを始める人が増えたという点である。2点目は、働く単身女性の増加であ る[文3]。シェアハウスの住人の7割近くが女性である。シェアハウスの住人の7割近
[文3] 三浦展:『これからの日
くが女性だと言われている(fig.2-11)。女性は健康や美容、住空間設備に対するこだわ
本 の た め に「 シ ェ ア 」
り意識が男性よりも高い。一人暮らしをしていては揃わない価格の家電やキッチン設備
の話をしよう』,NHK 出
が、シェアハウスでならば、男性よりも所得が低い女性でも利用することができる。ま
版
た、女性は会話をすることでストレスを解消することの出来る人が多く、少し自分の部 屋を出ればその相手が見つかるシェアハウスは非常に女性向きの空間なのである。 こうした近年のシェア空間利用の根底には「共同体」ではなく、 「共異体」という概 念がある。前述の通り、シェア空間の持つ特性である「成員が固定的ではなく、束縛さ れない」ことが「つながりたい。でも、しばられたくはない」というニーズを持つ人た ちにぴたりとはまっているのである。 次章では、現在具体的にどんな空間のシェアが行われているのを述べていく。
(件)
500
450 400
男性 31.4%
350 300 250
女性 68.6%
200 150 100 50 0
1980 1985 1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
fig.2-10 東京圏におけるシェア住居物件数遷移
fig.2-11 シェアハウス利用者の男女比
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
021 第 2 章 研究背景 #4.空間のシェア
<シェア空間と情報> 実際に住まいのシェアや働く場のシェアを行っている人の調査によると、 「シェアを 利用する人」が重要である。これは1人でもなく、家族でもない人と生活空間を共にし ているのだから当然と言えば当然だろう。以下に利用者の声を抜粋して見てみる。 [文12] http://jj.jp.msn.
∼住まいのシェア∼[文12、文13]
com/edit/chintai/
「帰ったら誰かいる。従来の生活、日常では出会わない人との交流ができる。 」
share/100407/
「楽しい!!友人作りにはとても良い。やっぱりシャア住居を選ぶだけあって、みん な海外経験があったり、面白い経歴だったり…とても勉強になるし、新しい発見もあ
[文13]
る。」
http://www.hituji-
「いろいろな人生を歩む人との交流、刺激があるのが良い。 」
report.jp/report/2008/
「入居者との交流によって違う価値観を知ることができ興味の幅が広がった。 」
daily-life/episode-offun.html
∼働く場のシェア∼[文14、文15] 「出会う人達を見ていると、色んな人生がある中で、自分はどんな仕事(の仕方)や
[文14]
生き方を選ぶのか、をより考えるようになった」
http://nskw-style.
「知識と技術の共有。一瞬の教え合いのようなことは、ほんとにしょっちゅう起こっ
com/2011/coworking/
ています。」
coworking-before-after.
「ゆるいつながりの中で、たまに話をしながらの作業だったのだけれど、これがなか
html
なか面白いシステムだと思う。適度に集中でき、適度にリラックスできる。 」 「他の業種の人の仕事の仕方や風景が見れるのは一つの魅力。 」
[文15]
「仕事上のパートナーを越える関係性が作れる。 」
http://souzou.fuzimoto. info/2012/01/ ver20120118.html
ここにはシェア空間を利用することのメリットのみを抜粋したが、もちろん『人』と いうキーワードが結びつくのは良いことばかりではない。シェア空間内のルールやマ ナーを守らない人への苛立ち、プライバシーが守れないなど、 『人』がいるからこその デメリットも多く見かける。こうしたメリット・デメリットはシェア空間ならではのこ とであり、従来の不動産情報サイトには決して現れてこなかった情報である。 さらに、シェア空間は比較的短期間でそこを構成メンバーが移り変わるものであり、 尚更、不動 産では量ることの出来ない 「動的な価値」 を持っていると言える。空間をシェ アする時代においては、そこにいる人が作り出す「動的な価値」を評価する指標が必要 なのではないか。これが本論の立脚する背景である。
次章では、現在具体的にどんな空間のシェアが行われているのを述べていく。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
022 第 2 章 研究背景 #5.モノのシェア
#5.既往研究 5-1.シェア空間に関する知見 まずは、本論の対象とする空間であるシェア空間に関する、これまでの研究から得ら れた知見を以下にまとめる。 [論文1、2]
<シェア空間の基礎的知見>
藤 田 み な か 他: シ ェ ア
藤田ら[2006]は東京におけるシェア居住者の住まい方調査から、シェア居住者が住
居住からみる都市共住の
まいに求める要件として以下の6項目を抽出している。
在り方 その 1 ∼その 2
① Shelter(個人生活を維持するための1人の居場所)② HOME(居住者が安心して集
[2007]
まる共有空間)③ SOHO(住居内で仕事/作業のできる場)④ Guest room(大人数の 来訪者に対応でき、また居住者と自然な交流が発生する場)⑤ Workshop(改装やイベ ントを共に行う活動拠点)⑥ Satellite(住居での滞在期間が短い、第二の住まいとして など外部からの中継地点)これら6つの要素の重要度の比率により、シェア居住者は立 地/居住空間/居住メンバー/生活スタイルを選択しており、個人の選択や意識が重な
[論文3]
り合うことで、各居住者の共住要式が編み出せるとしている。
木俣賜美 他:若年単身者
木俣ら[2007]は都心部におけるシェア居住者の基本的属性、入居理由や居住期間、
向けのシェア居住に関す
供給側のシェア住居開設背景の調査を行っている。結論として、若年単身者の一時的な
る近年の動向 都心部に
ホテル代わりの受け皿としても存在しているが、経済性・居住者同士の触れ合いのある
おける単身者向けシェア
住居スタイルとしての可能性を示唆し、また供給側からは既存ストック活用策として位
居住に関する研究 その 1
置付けられていると述べている。
[2007]
<シェア空間の価値評価> [論文4]
深谷ら[2007]はコレクティブハウスの一事例を取り上げ、居住者の入居動機と入居
深 谷 真 里 他: 居 住 者 参
後評価から、コレクティブハウスという住まい方の価値を住人がどう感じているかを分
加型の賃貸コレクティ
析した。年代、家族型、居住年数によってその暮らしに対する評価が異なるが、居住者
ブハウジングに関する
間の交流やコモンスペースに対して感じている価値は変化しないことという結論を得て
研 究 (4) 居 住 者 の 生 活
いる。
価値の認識に関する考察
山口ら[2009]は同コレクティブハウスにおける居住者の満足度とその要因について
[2007]
調査している。生活の中で他者と関わる時間を非常に多く割いているが、それ自体をプ ラスに評価しており、結果として生活に関する満足度が向上しているとの結論を得てい
[論文5]
る。
山 口 紗 由 他: 居 住 者 参 加型の賃貸コレクティブ ハウジングに関する研 究 (7) コ レ ク テ ィ ブ ハ ウスかんかん森における 居住満足度とその要因 [2009]
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
023 第 2 章 研究背景 #5.モノのシェア
[論文6]
<シェア空間の生活行動>
大橋寿美子 他:居住者参
大橋ら[2007]は同コレクティブハウスにおいて、共用空間における生活行動調査を
加型の賃貸コレクティブ
行い、空間要素と居住者間共同行為や私的生活行為発生の関係、共用空間の心理的位置
ハウジングに関する研究
付けを明らかにしている。
(6) 共用空間での生活行
宮原ら[2011]は今後増加が見込まれる高齢者単身居住の在り方に関して、アメリカ
動の実態[2007]
で行われている異世代シェア居住の事例調査から探っている。生活行動の共有と他者の 存在に対する認識の範囲から考察を行い、日本におけるホームシェア(戸建住宅のシェ
[論文7]
ア)の目指す方向を、在宅で個人の生活を継続しながらも、他者との関わりも可能であ
宮 原 真 美 子 他: 異 世 代
り、一つ屋根の下で暮らす安心・安全を得ることが可能な居住形態であるとの結論を得
間シェア居住の可能性
ている。
--USA に お け る 高 齢 者 -
宮野ら[2011]は親子・配偶関係を含まない同居事例における共同空間と占有空間の
若者シェアの事例を通し
行動調査から、共用空間の多様な在り方を明らかにし、単独行為と共同行為の発生に影
て (1)[2011]
響を及ぼす空間構成・設備配置に関しての考察を行っている。 大森ら[2007]は都心部におけるシェア居住者へのアンケートから、シェア居住の人
[論文8]
数規模と共用空間での交流との関係を考察し、10 人以下のシェア住居では特に交流頻
宮 野 順 子 他: 親 子・ 配
度が高いが、人間関係の悪化を懸念してトラブルを未解決にする傾向があるなどの結果
偶関係を含まない同居の
を得ている。
住まい方からみた住戸内
横尾ら[2006]は共同生活をすることにより生じる生活情報として「音」に着目し、
共用空間に関する研究
入居者同士が同居者の存在をどのように意識しているのかを探った後、居間への滞在の
[2011]
有無を音により表現するシステムにより行動がどのように変化するかの調査を行った。 結果として、プライベートとパブリックを完全に切り離すのではなく、プライベートな
[論文9] 大 森 一 樹 他: 規 模 別 に
空間の中にもパブリックの情報(音)を導入することで、入居者にとってより快適な共 同生活を営むことが可能であるとの結論を得ている。
おける共用空間の使われ 方とその影響 都心部に おける単身者向けシェア 居住に関する研究 その 2 [2007]
以上までで述べてきたように、これまでに行われてきたシェア空間に関する研究は、 住まいのシェアを対象としたものがほとんどであり、働く場のシェアについて述べられ た研究はない。住まいのシェアについて述べているものも、空間構成という固定的な要
[論文10]
素と接触行動、空間の価値評価に関して言及されているものが多い。
横 尾 貴 之 他: 生 活 情 報
これらに対し本論では、住まいのシェアに加え、働く場のシェアを対象とし、接触行
としての音によるルーム
動に影響を与える要因として、利用者の構成などにより時間変化する要素について言及
シェアでの生活意識・行
し、且つ、要因/行動/効果の関係性を明らかにしようという点に研究の意義がある。
動の変化に関する研究 [2006]
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
024 第 2 章 研究背景 #5.モノのシェア
5-2.接触行動に関する知見 [論文11]
次に、本論が対象とするシェア空間以外の空間を扱った研究の中で、接触行動に着目
菊地菜穂子 他:会話の発生
し得られた知見を以下にまとめていく。ここでは、接触行動が着目されやすい空間とし
と空間構成の関係 : グループ
て、高齢者施設とオフィスを題材とした研究を取り上げる。接触行動の発生に影響を与
ホームにおける心理的介護
える要因に照準を当てたものと、接触行動による効果に照準を当てたものとに分類を
と空間構成に関する研究 そ
行った。
の 2[2002]
<接触行動の発生に影響を与える要因に関する知見> [論文12]
◎高齢者施設
濱洋子 他:小規模生活単位
菊地ら[2002]はグループホームにおけるスタッフ−入居者間の会話発生に着目し、
特別養護老人ホームにおけ
共有空間とスタッフの人数体制による会話発生への影響を調査している。結果として、
る入居者の生活交流に関す
スタッフ−入居者間の会話発生は空間構成やスタッフの人数体勢に強く影響されるが、
る研究[2004]
入居者の症状や性格に合わせて様々な意味を持つものであり、入居者からも感覚的に常 にスタッフを把握出来る環境であることが必要であるとの知見を得ている。
[論文13]
濱ら[2004]は特別養護老人ホームにおける入居者の生活展開の実際と会話の発生状
森明生 他:オフィスにおけ
況に関する把握を行い、ユニットケアにおいてはユニット外への行動範囲の拡張を行い、
る平面構成 , ワークスタイ
入居者の交流を促すための建築計画上の配慮が求められると述べている。
ル , 交流行動の相互関係に関 する研究[2002]
◎オフィス 森ら[2002]はオフィスにおけるワーカーの業務行動の中でも会話を中心とする交流
[論文14]
行動と平面構成としての通路形状を取り上げ、それらの関係について考察を行っている。
藤 田 敏 郎 他: オ フ ィ ス レ
設計部門や営業部門における業務の特性とその動線や行動領域ごとに、1対1で平面構
イアウトの変更によるワー
成を当てはめるのは適当ではなく、セル型/ツリー型/ラティス型といった異なる平面
カーの行動変化に関する研
構成が適しているとの結論を得ている。
究[2003]
藤田ら[2003]も同様に、ワーカーの動線や会話を中心とする交流行動とオフィス内 レイアウトの関係を調査している。結論として、座席位置と共用スペース等の頻繁に使
[論文15∼18]
うゾーンの距離が長くなれば経路の選択性が増加し広範囲に動くようになり、業務上の
松 本 裕 司 他: ワ ー ク プ レ
つながりがなかった部門間での偶発的会話が増加すると述べている。
イスにおけるコミュニケー
松本ら[2007 ∼ 2008]は行動観察調査にもとづいて、オフィス内レイアウト環境の
ションに関する研究 その 1
変更による組織の特性を考慮したコミュニケーション活動とその内容に関する基礎的な
∼その 4[2008 ∼ 2009]
示唆を得ている。 谷口ら[2010]は内部/外部/中間領域などの多様な環境を合わせ持つオフィスを対
[論文19、20]
象として、オフィス内における場所の性質がコミュニケーションに与える影響を分析し
谷口美虎人 他:オフィスに
ている。内部環境でも、座席ルールの違いにより情報共有の可能性が異なること、外部
おける場所の性質がコミュ
環境では、全体としてコミュニケーション相手の多様性が増すこと、場所の選択性が高
ニケーションに与える影響
い環境ほど様々なワーカーとのコミュニケーションを促すという示唆を得ている。
その 1 ∼その 2[2010]
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
025 第 2 章 研究背景 #5.モノのシェア
<接触行動が与える効果に関する知見> [論文21]
◎高齢者施設
羽竜清也 他:高齢者の生
羽竜ら[2004]は戦後農地開拓され、現在においてもその部落形態を維持している地
活行為と会話実態からみ
域を対象とし、対象地に住む高齢者の生活行動と会話実態が展開される場所、特にリビ
るリビングに関する研究
ングにとの関係について「地縁」をキーワードに述べている。結論として、調査対象地
: 戦後開拓農村の地縁実
のような地域交流が盛んで、開放的な住まい地域において、重要な場所は個室ではなく
態を事例として[2004]
リビングであると述べている。それは本来リビングが持つ「開放的な共用空間で家族団 らんや接客などを行う」活用に加え、 「個人として趣味などの余暇を楽しむ」場である
[論文22]
として、Relax for myself and Common space という新たな空間概念を提示している。
石井敏:3 つのユニット
石井[2005]はユニットケア施設において、同様の空間や介護の考えを持ちながらも、
における利用者・スタッ
そこから生み出される生活、その雰囲気には相違があることに着目し、空間利用や介護
フ相互の関わり方からみ
の様態、生活行動からそれらに影響を与える環境要因の抽出を試みている。
た考察 生活の質や雰囲 気に影響を与える環境要
◎オフィス
素に関する研究 その 1
八塚ら[2008 ∼ 2009] は知的生産性向上を目指したオフィス計画事例を取り上げ、
[2005]
その具体策(空間、組織デザイン)と行動、その効果の関係性について検討を行ってい る。得られた知見から、コミュニケーション発生プロセスのモデル化が行われ、これに
[論文23] 八塚裕太郎 他:知的生産
より、個々のワーカーの視点から相手との環境条件の変化を捉え、それが及ぼす効果を 捉える枠組みとして用いることが可能となると述べている。
性向上に向けてオフィス に期待される効果と空間 デザインに関する予備的 研究[2008]
ここで取り上げた2つの空間における接触行動に関する知見は、空間要素のみでなく、 人間関係という非固定的な要素を取り上げているという点において本論の目指すものと
[論文24]
近しいと言える。しかし、本論が取り上げている住まいのシェアにおける接触行動と高
八塚裕太郎 他:知的生産
齢者施設での接触行動では対象となる属性(年齢や職業、普段の生活行動)が異なり、
性向上に向けてオフィス
空間形態も異なるため、同様の現象として扱うことは出来ない。また、オフィスにおけ
に期待される効果と空間
る上記の知見も、ある程度固定されたメンバー間での結果にもとづいたものであり、本
デザインに関する予備的
論が扱う働く場のシェアとは共有する時間が異なるという点、共有するメンバーの所属
研究 その 2[2009]
がばらばらであるという点などから、やはり改めて検証する必要があると言えるだろう。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
026 第 2 章 研究背景 #6.モノのシェア
#6.研究の位置付け 前項までのまとめとして、本研究の位置付けを以下に示す。
本研究 働く場に関する既往研究 住まいに関する既往研究
要因
固定要素
動的(可変)要素
空間構成
利用者構成 / イベント / 滞在期間
論文6∼9 論文13∼20
接触行動
利用者間の交流
論文1 2 11 12 22
つながり (交友関係のネットワーク) 本研究 論文23 24
論文4 5
付加価値
刺激
生活の充実
触発
知的生産性
fig.2-12 既往研究に対する本研究の位置付け
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
027
事例調査 第 3 章
‒ 近年の空間におけるシェアの事例 -
Chapter 3
Examples of Shared space
#1.住まいのシェア 1-1.住まいのシェアの定義 1-2.住まいのシェア事例 #2.働く場のシェア 2-1.働く場のシェアの定義 2-2.働く場のシェア事例 #3.シェア空間と情報媒体
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
028 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 -
前章で述べた通り、 本論が対象とするのは「住まい」と「働く場」のシェアである。シェ ア空間の実態を調査するにあたり、まずは「住まいのシェア/働く場のシェア/その他 の空間シェア」の3項目に分けて、近年の空間のシェアの具体的な事例を見ていく。本 論を読み進めるにあたって、現在行われている空間のシェアをイメージしやすくなれば 幸いである。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
029 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
#1.住まいのシェア 1-1.住まいのシェアの定義 ここまでは、一言に「住まいのシェア」と表現してきたが、実際にはこうした居住形 態は様々な呼称で表されている。現在の所、これらには明確に統一された定義が存在し ない。以下に示すのは、 「一般的にそのように呼ばれることが多い」という定義である。 [文13] http://www.hitujireport.jp/index.html
・ルームシェア:管理事業者の仲介を通さずに、個人間の契約において 2DK や 3DK といっ た間取りの集合住宅をの 1 住戸をベース物件とするもの。 ・ゲストハウス:ルームシェアとは異なり、管理事業者が経営している物件の一部屋を 借りて住まうというもの。滞在が短期的なものも多く存在する。 ・シェアハウス:恐らく、現在最もよく使われており、それ故に定義が非常にしづらい 呼称である。ゲストハウスと同様の形態も存在するが、管理事業者の仲介を通さない、 戸建住宅をベース物件とした形態も存在する。 ・ハウスシェア/シェアードハウス:管理事業者の仲介を通さずに、個人間の契約にお いて1軒の戸建住宅をベース物件とするもの。 ・コレクティブハウス/コハウジング:共同の食堂や保育室などを持つが、それぞれの 住宅は各戸に台所、浴室、トイレを備えた独立したもの。北欧ではよく知られた住まい 方である。[文13] 本論では、混乱を避けるため「住まいのシェア」という表現を用いていく。 「住まい のシェア」が意味する所は以下の通りである。 【住まいのシェア】 家族関係や恋愛関係にない他人同士が、キッチン、リビング、浴室、トイレ等の設備 を3人以上の入居者が共同で使用する住居。従来の風呂無しアパートのように経済性の みを訴求点としたものではなく、共用設備の利用に際し発生する入居者同士のコミュニ ケーションを主要な訴求点としているのが特徴。
本論で用いている「住まいのシェア」という言葉の定義において、特徴的な点は太字 で示された点である。定義文の2文目にあるように、本論が対象としているのは、経済 性という動機のみでなく、他者との関わり合いという付加価値に重点を置いた住まい方 であるため、その対象が非常に限定的になってしまう2人でのシェアは対象から外して いる。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
030 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
1-2.住まいのシェア事例 [文16] http://www.share-
まずは、近年の住まいのシェアの特徴を掴むため、3つの運営管理会社の物件情報サ イトを取り上げて動向を見ていく。
place.com/
株式会社リビタ SHARE PLACE[文16]
fig.3-1 SHARE PLACE の HP
HP(fig.3-1)に記載されている説明を見ると、シェアプレイスとは、新しいスタイル のシェア型賃貸マンションであり、以下のような特徴が挙げられている。 ・ワンルームや一軒家に何人かで住むのではなく、プライバシーの確保された個室を一 人で借りて住むスタイル ・1年で賃貸借契約を結ぶ定期賃貸借契約 ・1人で使うには贅沢な先端設備(IH クッキングヒーターやラウンジ、 娯楽設備)が揃っ ている ・共用スペースの清掃は専門のスタッフが行う 次項では、リビタで現在扱われている物件の一部を紹介する。 利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
031 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文17]
【THE SHARE】[文17]
https://www.the-share.
TOKYO NEW SHARE STYLE
jp/?page_id=22
仕事・暮らし・遊び・情報を共有し、いつも新鮮でソーシャルな「新しいシェアのカタチ」
fig.3-2 THE SHARE 内観写真
原宿に建てられた S H O P・O F F I C E・A P A R T M E N T 機能が一つになった新し い複合シェア施設(fig.3-2)。6階+屋上テラスガーデンから成る。 建物内に内包された様々なコンテンツやモノ・コトをシェアし、集う・暮らす・創造す るといった時間を楽しく、魅力的に過ごせる空間を目指している。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
032 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文18] http://bluestudio. typepad.jp/tamadaira/
【りえんと多摩平】[文18] 団地に住んでみませんか?
fig.3-3 りえんと多摩平 内観・概観写真
多摩平の森団地を再生させるプロジェクトの一環として住まいのシェアが提案された (fig.3-3) 。団地ならではの豊かな緑と大地に囲まれた贅沢なゆとりのなかのシェア生活。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
033 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文19] http://www.shareplace.com/06_06.shtml
【TOKYO SYNC 赤坂】[文 19] 都心の隠れ家
fig.3-4 TOKYO SYNC 赤坂 内観・外観写真
東京赤坂に位置する SHARE PLACE。屋上デッキが特徴的な物件である(fig.3-4)。 プロジェクトテーマは、 「同期する = SYNCする」 互いの体験や情報を、シェアでの暮らしで同期する。個人のバージョンアップ(アップ グレード)を同期する。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
034 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文20]
株式会社グローバルエージェンツ SOCIAL APARTMENT[文20]
http://www.so cialapartment.com/
fig.3-5 SOCIAL APARTMENT の HP
HP(fig.3-5)に記載されている説明を見ると、ソーシャルアパートメントとは、 「世 界が広がる 居住スタイル」とあり、以下のような特徴が挙げられている。 ・プライバシーがしっかり確保された従来通りのワンルームに加えて、入居者同士が集 まるラグジュアリーな共用ラウンジ ・ハイスペックな共用ラウンジ ・セミパブリックなスペースで行われる多様な入居者間コミュニケーション 次項では、SOCIAL APARTMENT で現在扱われている物件の一部を紹介する。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
035 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文21] http://www.so cial-
【麻布十番クラウド】[文21] 集え。ガラパゴス系ライフスタイルへ。
apartment.com/builds/ view/81
fig.3-6 麻布十番クラウド 内観写真
8 階建てのマンションをリノベーションした麻布十番の物件(fig.3-6)。8 階のラウン ジはバリ風のインテリアで飾られ、 窓からはビル街やタワーマンションが見渡せる。マッ サージソファ、フットマッサージ器具、イオンスチーマー、美顔器、ストレートアイロ ン、ビューラー、リラックス音楽、美容関連の書籍等が利用出来る BEAUTY ROOM が 備え付けられている。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
036 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文22] http://www.so cial-
【ソーシャルアパートメント恵比寿】[文22] 恵比寿の情報発信拠点
apartment.com/builds/ view/64
fig.3-7 ソーシャルアパートメント恵比寿 内観・外観写真
恵比寿駅と目黒駅から徒歩 12 − 14 分程度の大使館等が連ねる高級住宅街に凛と佇 む大人のソーシャルアパートメント(fig.3-7) 。元々高級マンションだった建物をソー シャルアパートメントにリノベーションしている。共用ラウンジと同等に人気なスペー スがルーフトップバルコニー。週末のお昼はコーヒーでも飲みながら読書、夜には友達 を呼んで屋上でビアガーデン。そんなライフスタイルを送ることができる物件である。
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037 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文23]
株式会社オークハウス OAK HOUSE[文23]
http://www.oakhouse. jp/
fig.3-8 OAKHOUSE の HP
上記の HP(fig.3-8)に記載されている通り、 ・女性専用シェアハウス ・プレミアシリーズ ・ガーデンシリーズ ・駅近シリーズ などのシリーズ化された住まいのシェアを扱っている。これまでに紹介した2つの情報 媒体が扱っている物件に比べると、庶民的な空間の設えが為された物件が多い。 次項では、OAKHOUSE で現在扱われている物件の一部を紹介する。
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038 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文24]
【プレミア WARABI】[文24]
http://www.oakhouse. jp/es_search_details. php?h00id=329
fig.3-9 プレミア WARABI 内観・外観写真
このハウスのテーマは『和み』 。広々とした個室や2種類のラウンジ、充実した水回 りが特徴。所々に意匠がこらされているが、やはりシェアプレイスやソーシャルアパー トメントと比べると、ラグジュアリーというよりも親しみやすい空間である(fig.3-9)。
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039 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文25]
ここからは、少し特殊な住まいのシェアの事例を何点か紹介する。
http://www.mare-bito. net/
【まれびとハウス】[文25]:ふらっと寄れるプラットフォーム まれびとハウスは、暮らし、職業の新たなカタチを実践してみる人たちが集う " 新職 感シェアハウス " です。
fig.3-10 まれびとハウスの HP
この事例は本論にとって非常に興味深いものだ。その興味の対象は、この空間のコン セプトである。 そもそも「まれびと」とは何か? HP(fig.3-10)にはこう書いてある。
「まれびと(客人)」とは、民俗学者である折口信夫が生み出した用語で、時を定めて 他界から来訪する、霊的もしくは神的存在を指します。つまり、文字通り「外界からの 来訪者」、「異邦の客人」の事をあらわしています。一時的にこの家に訪れた人々に、閃 きや企みが生まれてしまうような状況を多量に発生させることを意図しています。 [文26]
また、別のブログ[文26]にはこう書かれている。
http://blog.livedoor.
・住民の家ではなく、「まれびと」の家:「まれびと(客人)」ハウスです
jp/mattsun00/
・プライベートなしの家:プライベート欲しけりゃスタバ@田端へ GO!
archives/2712000.
・お金を生み出す家:家賃分は PAY しちゃいます
html
・新しい何かを生み出すための実験場: 「職場」でなく「家」だからこそ許される「実験場」 この2つの解説を読めばわかる通り、ここは住人のためだけの住まいではない。ここ は、人が訪れることを前提にして成り立っている。まれびとが訪れることで初めて完成 される場なのだ。
[文27]
また別の記事[文27]を引用すると、 創造志向というか、 「ここから新しいつながり
http://www.tate-lab.
が生まれて、いままでにないものを生み出すのだ」という気概を感じる と述べられて
net/mt/2010/07/
いる。この場所の空気感をよく表している。
share.html
経済性、快適性、住人間の交流を越えた、新しい住まいのシェアとしての可能性を感 じさせる事例である。
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040 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #1.住まいのシェア
[文28] http://motoazabu-farm.
【元麻布農園】[文28] 農家さん付きシェアハウス
com/
fig.3-11 元麻布農園の HP
HP(fig.3-11)には以下のように書かれている。 都心の真ん中で気軽に土いじりを
したいひとたちが集まる元麻布農園。ここでは実際に農家さんが来て、野菜の育て方や 郷土料理を教えてくれるなど、農家さんとのつながり・交流があります。元麻布農園 は農園・シェアハウスそして農家さんが一体となった、農家さん付き都市型菜園です。 ここの最大の特徴は、農園付きではなく農家さん付きであるという点だろう。つまり、 人と人のつながりが生まれるということ。しかも、普段都心で生活しているとまず出会 わないであろう人とのつながりである。農家さんは地方に自分の家を持っている方であ るため、つながりはここだけで終わらない。地方の農園へとつながっていくのだ。 前項で紹介した【まれびとハウス】との共通点は、住人以外とのつながりをメインコ ンセプトとして成立している住まいのシェアであるという点だろう。本論では、この2 つの事例は、住まいのシェアの新しい方向性を示していると考えている。これまでの住 まいのシェアを越える概念として、今後注目される住まい方モデルなのではないだろう か。
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041 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #2.働く場のシェア
#2.働く場のシェア 2-1.働く場のシェアの定義 次に、本論が取り上げる空間のシェアの2つ目である「働く場のシェア」について述 べていく。働く場のシェアには、大きく分けて2つの呼称が存在する。 1)シェアオフィス / レンタルオフィス 2)Coworking space(コワーキングスペース) [文29]
現在の所、2つの呼称の統一された明確な違いは存在していないようだ。近年の動向と
http://cahootz.
しては、コワーキングスペースと呼ばれる空間が徐々にその数を増やしている。
jp/?page_id=4
コワーキングスペースとは、個々に仕事を持ち働く人たちが、働く場所(空間)を同
じくするだけではなく、コミュニケーションを図ることで、互いに情報と知恵を共有す るという概念およびそのための施設 [文29] のことである。ポイントとなるのは、コミュ ニケーションによる情報や知恵の共有である。これこそがこの空間の持つ最大の価値で あると言われている。つまり、コワーキングスペースを利用するワーカーたちは、空間 や設備よりもむしろ、そこに来る他の人との交流やつながりを求めているのである。こ のように他者とのコミュニケーション/つながりを求めるという利用動機は、 「住まい のシェア」と重なる部分である。 今後、本論では混乱を避けるため、 「働く場のシェア」という表現を用いていく。そ の定義は以下の通りである。 【働く場のシェア】 自分の会社以外の他人と共に、3人以上で仕事をしている空間。LAN が繋がったり、 集中して作業の出来るスペースがあるという空間/設備的動機ではなく、利用に際し発 生する利用者同士のコミュニケーション、知識やスキルの共有を主要な訴求点としてい るのが特徴。
次項からは、現在どのような働く場のシェアが存在するのか、その事例を見ていく。
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042 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #2.働く場のシェア
2-2.働く場のシェア事例 働く場のシェアは現在日本各地に広がってきている。ここでは、その中から5つの事 例を取り上げ、その実態を見ていく。 [文30] h t t p : / / w w w. m o b o f f .
【moboff】[文30] 日本初のコワーキングスペース
co.jp/
fig.3-12 moboff 原宿、新宿、四ツ谷麹町の内観写真
moboff(モバフ)はアントレプレナー、クリエイター、デザイナー、フリーランス、
又その他の異業種仕事人のためのコワーキングスペース(fig.3-12) であり、その名前の 由来は 「モバイル」と「オフィス」の組み合わせ だという。創業者は、 東京という
街には若くて、クリエイティブな、活気のある人々が山ほどおり、その人々が集められ、 交流やコラボレーションもでき、イノベーションを生み出せる場を創造することが目標 であったと語っている。 街をオフィスにする リアルなソーシャルネットワーク といった概念が基盤にある空間である。現在、原宿、新宿、四ツ谷麹町、紀尾井町の4 カ所にスペースを持つ。
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043 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #2.働く場のシェア
[文31] http://pax.coworking.
【PAX Coworking】[文31] 空間と成果をシェアするアントレプレナーのためのオフィス
jp/
fig.3-13 PAX Coworking の内観写真
世田谷区経堂にある日本で2つ目と言われているコワーキングスペース(fig.3-13)。 東京周辺でのコワーキングの隆盛は、この場所が牽引していると言っても過言ではない。
独立事業者や起業前後のアントレプレナーのためのオフィス空間で、単に場所をレンタ ルするだけではなく、業種や考え方の異なる事業者同士でコミュニティを作り、コラボ レーションを促進し、成果をもシェアしていこうという新しい試みである と説明されて いる。 このコワーキングスペースの面白さは、入居するビルの1つ下の階に 交流する飲食 店 と呼ばれる「パクチーハウス東京」があることだろう。パクチーハウス東京も、単 に食事をするだけではなく、 面白い人 が集まる場として注目を集め、この場所を拠 点にビジネスマッチングなども起こっているお店。運営はどちらも同じ会社が行ってい る。このように、飲食店とコワーキングスペースが組合わさっている事例は世界でも珍 しいようだ。
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044 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #2.働く場のシェア
[文32] http://massmass.jp/
【mass×mass 関内フューチャーセンター】[文32] クリエイティブ・インダストリー
fig.3-14 mass×mass 関内フューチャーセンターの内観写真
横浜という港町 関内/関外 を拠点とし、新しいワークスタイルを提案し、横 浜の地で仕事を楽しむ人が集まる場所を目指すために生まれたコワーキングスペース。 それぞれのワークスタイルに合わせて、コモンエリア(フリーアドレス型ワークプレイ ス)、プライベートエリア(個別専有型ワークプレイス) 、ワークショップスタジオ(劇 場型スタジオ)、カフェスペース(打合せスペース)等、毎日選びながら仕事を楽しめ るような空間構成となっている(fig.3-14)。 このコワーキングスペースの特徴は、外へ向けた意識だろう。欧米やアジアに存在す る他のコワーキングスペースとの連携や、地元のワーカーへ向けて、NPO などのソー シャルビジネス、まちづくりなどに関わることのできる場を提供している。こうした新 しい働き方から、まちを元気にしたいという目標を明確に有している点が、他の働く場 のシェアとは一味違うのである。
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045 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #2.働く場のシェア
[文33] http://co-ba.jp/
【co-ba】[文33][文33][文35] co-ba(=工場)クリエイターの集う空間
[文34] http://news.ameba. jp/20111212-371/
[文35] h t t p : / / j a p a n . cnet.com/news/ society/35011343/2/
fig.3-15 co-ba の内観写真
クリエイターのためのコワーキングスペース【co-ba】は、東京・渋谷を拠点に活動 するクリエイターが集い、新しい価値を世の中に発信し、そして自分たちのプロジェク トが生まれる空間を目指している。内装が特徴的であり、家具は再利用し、デスクや床、 壁の 1 つ 1 つを自分たちで施工するなどして、すべてを作り上げている。壁面は前面 が黒板になっており、自由に議論や連絡に使うことができる。ここにも、自分たちで空 間を作っていくという意図が込められている。デスクも自作してあり、枝分かれする大 樹をイメージしたデザインが施されている(fig.3-15)。 働く場のシェアにおいては、そこにいる人が重要視され、空間計画にはあまり議論が 及ばないことが多い。その中においても、空間づくりに非常にこだわりを感じる事例で ある。
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046 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #2.働く場のシェア
[文36] http://cococi-
【 cococi coworking space】[文36][文37] ワンランク上のステージに飛躍するための場所
coworking.com/
[文37] http://ichikawanozomi. blog.fc2.com/blogentry-44.html
fig.3-16 cococi の内観写真
調布市仙川にある働く場のシェア。 ライフステージに合わせ、ワークもライフも犠
牲にしないで、新しいはたらきかたを実現するための場 と銘打たれたコワーキングス ペースである。ここに集まるワーカーたちは、これまでに紹介した事例とは少し赴きが 異なるかもしれない。そもそも、 cococi は子育て支援活動などを行ってきた女性たち が、子どもがいる暮らしの中で、地域の中でゆるやかなペースで働くための拠点として 開設された空間(fig.3-16)である。空間的にも、赤ちゃんのいる畳の部屋があるなどの 配慮が為されている。 このような、都下の住宅地からアクセスの良い働く場のシェアは、子育てや家事と仕 事を両立する女性たちからの需要が大きいのではないか。今後数を増すことが予想され るシェア空間だと言える。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
047 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #3.シェア空間と情報媒体
#3.シェア空間と情報媒体 最後に、空間のシェア利用を促進する情報媒体について取り上げる。ここでは、3つ の媒体を見ていくが、そのどれもが空間の情報に加えて『人の情報』を掲載している点 が特色である。 [文38]
オシャレオモシロフドウサンメディア ひつじ不動産[文38]
http://www.hituji.jp/
fig.3-17 ひつじ不動産サイトトップ画面
全国規模で、非常に豊富な住まいのシェアに関する物件情報を掲載している(fig.3-17)。 ひつじ不動産の最大の特徴は、スタッフが全ての掲載物件を訪問・撮影する事により、 客観的な物件写真と信頼性の高い設備・運営情報の提供を実現している事である。中で も、 「シェア住居探検隊」というコンテンツの充実度は圧倒的である。他の住まいのシェ アに関するポータルサイトと比較しても、圧倒的な物件の空間、設備に関する写真情報 の量を誇り、そこで開かれるイベントや運営担当者、入居者の情報も掲載されている (fig.3-18)物件が多い。
fig.3-18 「シェア住居探検隊」
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
048 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #3.シェア空間と情報媒体
[文39]
SHARE PARADE[文39]
http://sharepare.jp/
fig.3-19 SHARE PARADE サイトトップ画面
東京を中心に、 『女子会』の楽しめるシェアハウス、 『英語』で遊べるシェアハウスなど、 キャッチーでコミュニティーのあるシェアハウスの日常や雰囲気を紹介。 「毎日がパレー ドみたいな生活」のお手伝い。 トップ画面(fig.3-19)の紹介にもあるように、この媒体は様々な特色を持った住まい のシェアを紹介してくれている。情報媒体として特徴的な点は、既に入居している住人 の情報が豊富に紹介されていると言う点(fig.3-20)。物件を選ぶ際の視点として、空間 デザインや立地、設備だけでなく、シェアするからこそ大切になる「人」という情報だ が、このように提供している媒体は以外と数少ない。
fig.3-20 SHARE PARADE の物件情報における入居者データ
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
049 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #3.シェア空間と情報媒体
[文40] http://ma-ga-ri.com/
MaGaRi[文40] 街のユニークなスキマ空間を MaGaRi (間借り)できるサービス、初めます。
fig.3-21 MaGaRi サイトトップ画面
MaGaRi(fig.3-21)はここまで取り上げてきた情報媒体とは目的が異なるものである。 ここで紹介されている物件情報の中には、基本的には住まいのシェアは含まれていない。 MaGaRi とは、 既に所有者のいる店舗やオフィス、商店街、ビルなどの空いている空
間や時間を発見し、その情報を、拠点を持ち活動したい人たちに紹介していくメディア である。街中にあるオフィスや店舗、ビル、商店街などに存在する、利用されていない スペースや時間が「もったいない」 。自分の店を持ちたい、オフィスが欲しい、イベン トをやりたいなど、場所を必要としている会社や個人が多く存在するのに、金銭的な理 由から、なかなか場所を持てないことが「もったいない」 。この 2 つをマッチングさせ ることが MaGaRi の目的である。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
050 第 3 章 事 例 調 査 ‒ 近 年 の 空 間 に お け る シ ェ ア の 事 例 #3.シェア空間と情報媒体
ここで MaGaRi を取り上げた理由は、サービスの中の一つである「Talent( 逆 不動 産情報)」の考え方に、本論と近しいものを感じたからである。MaGaRi は、通常の不
動産情報にある「場所」の情報紹介ではなく、活動場所を探す「法人」「団体」「個人」 の紹介をする サービスである。これは不動産を所有するオーナーへ向けた情報発信であ り、「空間に対して人をマッチングする( 「空間:人=1:1」のマッチング)」のでは なく、「人に対して空間を所有する人をマッチング(「空間:人=1:n 」のマッチング) 」 しているという点において、本論の主旨である「空間要素に加えて、シェアする者(利 用者)により変化する空間の価値」と通ずると考えられるだろう(fig.3-22)。
「空間:人=1:1」におけるマッチング 不動 産価値 立地・空間のスペック
利用したい人のニーズ
「空間:人=1:n」の時代に求められるマッチング
? ? ?
? ?
動的価値の見える化
? ? ?
fig.3-22 シェア利用の時代に求められるマッチング
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
051
第 4 章
アンケート調査 - シェア空間利用者の接触行動と充実感 -
Chapter 4
Questionnaire survey
#1.調査概要 #2.詳細 2-1.調査項目の検討 2-2.調査項目の詳細
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
052 第 4 章 ア ン ケ ー ト 調 査 - シ ェ ア 空 間 利 用 者 の 接 触 行 動 と 充 実 感 #1.調査概要
#1.調査概要 調査目的 第一に、シェア空間における空間構成(固定要素)とその利用者構成(可変要素)が、 会話とつながりという2つの接触行動にどのように影響を与えているのか明らかにし、 「時間変化を考慮に入れたシェア空間の接触行動」をモデル化する。第二に、接触行動 と利用者の生活における創発性、充実度との関係を分析することで、接触行動の付加価 値を定義し、最終的に「シェア空間における時間変化を考慮に入れた空間価値」をモデ ルとして提示することを目的とする。
対象者 *1:
①住まいのシェアを行っている / ②働く場のシェアを行っている / ③シェア空間を利
facebook/Twitter を 用
用していない 20 代∼ 50 代の男女 349 名(+ α *1)
いて拡散を行ったため、 正確な依頼人数は把握
調査期間
が出来ない。349 名は、
2012 年 1 月 13 日∼ 2012 年 1 月 23 日
直接メッセージを送り 依頼した人数。
調査方法 Google Docement における表計算のスプレッドシートの追加機能によりアンケート フォームを作成し、facebook/twitter のメッセージ機能を用いて回答を依頼した。 アンケートフォームは資料編に記載する。
*2:
回収率
直接メッセージを送っ
有効回答数:104 件(29.8%*2)
た 349 名中の値。
回答者の内訳を以下に示す(table.4-1) 。 table.4-1 回答者内訳
男
女
計
住まいのシェアを行っている
21
11
32
働く場のシェアを行っている
17
8
25
どちらとも行っている
1
1
2
シェア空間を利用していない
28
17
45
計
67
37
104
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
053 第 4 章 ア ン ケ ー ト 調 査 - シ ェ ア 空 間 利 用 者 の 接 触 行 動 と 充 実 感 #2.詳細
#2.調査内容の詳細 2-1.調査項目の検討 調査を行うにあたり、質問項目の検討を行う必要がある。そこでまずは、シェア空間 の持つ価値の整理を行った(fig.4-1)。 シェア空間の価値 計画/運営
経済性 簡易性
賃料が安い 高価な設備が使える 家具家電を用意しなくて良い 契約期間の短さ(転々としやすい)
距離性
基本 価値
存在 交流
安心性
管理者の存在(清掃や手続きなど) 人との適度な距離感 管理者の存在による距離感 他者の存在による…
精神安定性
互助性
安心感(非常時/防犯的な) 寂しくない(普段) 憂さ晴らし 楽しい
困った時の助け(家事/仕事のスキル)
生活の充実
子供の面倒を見てもらえる
ネットワーク性 友人の増加
他のシェア空間との交流
接触行動
付加
街の人とのつながり
情報共有性
価値 着目する 付加価値
創発性
仕事のつながりの増加 体験のシェア 相談
着目しない 自己改革性 付加価値 (成長性)
価値観/知識/興味の広がり 仕事のアイデア/ビジネスチャンス モチベーションの維持(その場の/日々の) 性格改善 コミュニケーション能力の向上
fig.4-1 シェア空間の持つ価値の分類
分類から、シェア空間の価値を「基本価値」と「付加価値」に大別した。その中でも、 本論ではシェア空間の持つ「付加価値」に着目し、調査を行う。さらに上記の分類によ り、付加価値を2つのフェーズに段階分けした。即ち、 (接触)行動のフェーズとそれ により生じる付加価値のフェーズである。本論で使用する「付加価値」とはこの行動に より生じる価値の中でも、 「創発性」と「生活の充実」のことを指す。 この分類により、本調査では「互助性」 「ネットワーク性」 「情報共有性」から成る接 触行動と、それにより生じる「創発性」と「生活の充実」から成る付加価値を質問項目 として使用することを決定した。 [論文25]
接触行動と付加価値に影響を与える要因としては、シェア空間の持つ空間構成と利用
斎 藤 和 志 他: 対 人 的
者構成がある。中でも、利用者自身の性格は2項目に対し、大きな影響を及ぼすであろ
志向性尺度作成の試み
うという仮説のもと、斎藤ら[1987]により作成された、対人関係の中での行動決定要
[1987]
因の一つである「対人的志向性」を項目として使用することとする。 ここまで挙げた項目の中で、最も測ることが難しいと考えられる「生活の充実」の測 定法に関しては、次項で述べる。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
054 第 4 章 ア ン ケ ー ト 調 査 - シ ェ ア 空 間 利 用 者 の 接 触 行 動 と 充 実 感 #2.詳細
[論文26]
充実感尺度
大野久:現代青年の充
生活の充実度を測る尺度として、大野[1984]により構成された「充実感尺度」を使
実感に関する一研究 現
(文41) 用こととする。これは、 大野[1984]が、 Erikson[1950] の論じたアイデンティティ
代日本青年の心情モ
の感覚(a sense of identity)という考え方を念頭に、アイデンティティの感情・感覚的
デルについての検討
側面に観点を絞り、 「生活にハリがある」 、 「生活に充実感で満ちた楽しさがある」など
[1984]
の青年期に感じられる充実感について、尺度構成とその構造について因子分析による研 究を行った。その結果、53の質問項目から4つの因子が抽出された。第一因子は、 「生
[文41]
活に充実感で満ちた楽しさがある」 、 「私は生きがいのある生活をしている」など、生活
Erikson, E.H. :Childhood
における充実した気分を測定する「充実感気分ー退屈・空虚感因子」 。第二因子は、 「私
and society.(New York
は精神的に自立していると思う」 、 「私は主体的に生きていると思う」など、主体性に基
,Norton,1950)
づいた自立感とその自信を測定する「自立・自信ー甘え・自信のなさ因子」 。第三因子は、 「だれも私を相手にしてくれないような気がする」、「私ひとりがとり残されているよう で寂しい」とが逆転項目で構成されているが、社会とのつながりある感じや連帯感を測 定する「連帯ー孤独因子」 。第四因子は、 「自分の責任を果たすことに喜びを感じる」 、 「生 まれて来てよかったと思う」など、自分の人生に関する意味感と人生への肯定感を測定 する「信頼・時間的展望ー不信・時間的展望の拡散因子」である。また、このうちのど れにも含まれない項目が17項目存在する。 本調査では、『シェア空間を利用することによる日々の生活の充実』を測ることを目 的としている。回答者への負担を考慮し、調査目的をもとに、使用する評価項目の検討 を以下のような手順で行い、21項目を使用することとした。 1)4因子に含まれる項目のうち、因子負荷量上位5項目(計20項目)を抽出
[論文27]
2)「充実感気分ー退屈・空虚感因子」の上位5項目に関しては、大野による先行研究
大 野 久: 現 代 青 年 の
[1980]において同一の分類に属する項目が多く、因子負荷量が特に高いものが目立っ
充実感に関する研究 1
た。これはつまり、解答者にとって非常に似通った基準で回答が行われる項目群である
[1980]
と判断出来る。そこで、上位2項目のみを抜粋し、この因子に属する低因子負荷量の3 項目(高因子負荷量の項目群では表されない項目)を加えた5項目を抽出 3)手順2で抽出された低因子負荷量のうち、 (50)については「信頼・時間的展望ー不信・ 時間的展望の拡散因子」にも含まれるため、除外 4)上記4因子に含まれない17の項目のうち、調査目的との照らし合わせから必要で あると判断された2項目を抽出
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
055 第 4 章 ア ン ケ ー ト 調 査 - シ ェ ア 空 間 利 用 者 の 接 触 行 動 と 充 実 感 #2.詳細
2-2.調査項目の詳細 1章の研究目的において示したように、本調査は以下のモデル(fig.4-2)を示すこと を目的として行った。ここでは、検討の結果決定した質問項目を述べていく。 付加価値
接触行動
創発
会話
充実感
つながり
要因
固定要素 利用者属性
シェア空間の構成要素
可変要素
fig.4-2 シェア空間における時間変化を考慮に入れた空間価値モデル
【要因】項目 *3:
利用者属性
自分の個室まで共用空
属性を把握するため、 「性別 / 年代 / 職種 / 対人的志向性尺度(次項 fig.4-3)」を項目
間を通らずにいけるか
として用いた。
否か
固定要素 建築計画時に決定される空間構成であり、時間変化することのない要素として、以下
*4:
の項目を用いた。
利用者それぞれの個室
・共通項目:空間の定員 / 共用空間の広さ / 共用空間の機能種類
が、同一フロアにある
・住まいのシェア:アクセス*3/ フロア分け*4
のか異フロアにあるの
・働く場のシェア:パーテーションの有無*5
か
可変要素 時間変化するシェア空間ならではの要素として、以下の項目を用いた。
*5:
・共通項目:現状利用人数 / イベント頻度・場所 / 利用者の所属の違い
作業空間がパーテー
・住まいのシェア:男女比 / 国籍比 / 滞在期間
ションによって区切ら
・働く場のシェア:利用期間 / 利用頻度 / 利用時間
れているか否か
【接触行動】項目 *6:
会話
滞在期間によって異な
過去1ヶ月間での*6、利用者及びその知人との会話の頻度 / 時間 / 場所 / 内容
るだろうと考え、最近
つながり
の行動について聞いて
過去1ヶ月間での*6知り合いになった人の人数
いる。
【付加価値】項目 創発 過去1ヶ月間での*6、利用者及びその知人から仕事 / 目標に関するアイデアをもらっ た数 充実感 次々項にて内容を示す。 利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
056 第 4 章 ア ン ケ ー ト 調 査 - シ ェ ア 空 間 利 用 者 の 接 触 行 動 と 充 実 感 #2.詳細
対人的志向性尺度 以下の18項目(fig.4-3)に対し、 「1全くあてはまらない」 「2あまりあてはまらない」 「3ややあてはる」 「4非常にあてはまる」の4段階で普段の自分の考え方を答えてもらっ た。 人間関係志向性
日頃から人間関係を大事にしている。 人付き合いがよい方だと思う。
人から個人的な話を持ちかけられるのは煩わしいものだ。 自分にとって人間関係は煩わしいものである。
同じゲームをやるなら、一人でできるものよりも相手がいてできるものの方が良い。 出会った人とは、できるだけ親密になろうと努力する。 他人事でも、一喜一憂することが多い。
他人の感情や気持ちを考えることは意味がない。
仕事上の付き合いでは、個人的に親しくなることは重要ではない。
対人的関心・反応性
人からの批判が気になる。
微笑みかけたり嫌な顔をする人が気にかかる。
人が私の行為についてどのように考えているかということは重要ではない。 他人の行動の動機を知ることに関心がある。
自分と関わりのある人については、なるべく色々なことを知りたいと思う。 人が本当はどんな人物であるかに関心がない。
個人主義的傾向
自分は自分、他人は他人と割り切って物事を考える方である。 人のことには構わずマイペースで行動する方である。 あまりの人のことには立ち入らない方である。
fig.4-3 対人的志向性尺度項目
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
057 第 4 章 ア ン ケ ー ト 調 査 - シ ェ ア 空 間 利 用 者 の 接 触 行 動 と 充 実 感 #2.詳細
充実感尺度 以下の21項目(fig.4-4)に対し、 「1全くあてはまらない」 「2あまりあてはまらない」 「3ややあてはる」 「4非常にあてはまる」の4段階で今の自分に近いものを答えてもらっ た。
因子
充実感気分ー退屈・空虚感因子
下位分類
一般的充実感気分 希望・目標 希望・目標 退屈感
自立・自信ー甘え・自信のなさ因子
無力感 甘え 自信 自信 自立
連帯ー孤独因子
自立
孤独感 孤独感 孤独感
自己嫌悪感 信頼・時間的展望ー不信・時間的展望の拡散因子
焦燥感
一般的充実感気分 自信
連帯感 その他
連帯感 自信
連帯感
項目
生活に充実感で満ちた楽しさがある
毎日の生活の中でものをやり遂げる喜びがある
私には打ち込める(夢中になれる・没頭できる)ことがある 毎日、毎日、変化のない単調な日々でつまらない 日頃、何もやる気がしないと感じる
いざとなるとどうしても人を頼ってしまう 私は主体的に生きていると思う
自分の信念にもとづいて生きている 私は独立心が強いと思う
私は精神的に自立していると思う
誰も私を相手にしてくれないような気がする 私をわかってくれる人がいないと思う
私ひとりが取り残されているようで寂しい 自分がなさけなくいやになる
自分の理想とはかけ離れた今の生き方に焦燥感を感じる 生まれてきてよかったと思う
私は価値のある生活をしていると思う
私には毎日の生活の中でなにかへの使命感がある 自分の責任を果たすことに喜びを感じる 今の私に誇りを感じる
自分の周囲の人たちにとって私の存在は意味があると思う
fig.4-4 充実感尺度項目
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
058
第 5 章
調査結果 - シェア空間の有意性 / 接触行動と創発・充実度の関係 -
Survey results
Chapter 5
#1.回答者属性 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ #3.非利用者のシェア空間への意識 #4.シェア空間と創発/充実度の関係 #5.シェア空間と接触行動の関係 5-1.シェア空間と非シェア空間の比較 5-2.住まいのシェアにおける固定要素と接触行動 5-3.住まいのシェアにおける可変要素と接触行動 5-4.働く場のシェアにおける固定要素と接触行動 5-5.働く場のシェアにおける可変要素と接触行動 #6.接触行動と創発 / 充実度の関係
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
059 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #1.回答者属性
#1.回答者属性 本章ではアンケート調査の結果を述べていくが、まず始めに回答者の基本的なデータを押さえてお く。
回答者の利用する空間
30.8%
住まいのシェアを行っている 働く場のシェアを行っている
43.3%
どちらとも行っている
1.9%
どちらとも行っていない
24%
fig.5-1 回答者の利用する空間
全回答者 104 名の内、シェア空間を利用している者は 56.7%であった(fig.5-1) 。
回答者の年代 (人)
50
40
30
50代 40代 30代
20
20代 10代
10
0
住まいのシェア
働く場のシェア
どちらとも利用
シェア空間を利用していない
fig.5-2 回答者の年代
全回答者 104 名の内、シェア空間を利用している者は 56.7%であった(fig.5-1) 。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
060 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #1.回答者属性
回答者の性別
女性
37人
男性
67人
利用空間ごとの性別内訳 (人) 50
40 30 女性
20
男性
10 0
住まいのシェア 働く場のシェア
どちらとも
シェア空間を利 用していない
fig.5-3 回答者の性別内訳
全回答者 104 名の内、シェア空間を利用している者は 56.7%であった(fig.5-1) 。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
061 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #1.回答者属性
回答者の職種 (人) 20 18 16 14 12 10
住まいのシェア
8
働く場のシェア どちらとも利用
6
シェア空間を利用していない
4 2
職 無
業
員
述 著
務 公
PO N
産
グ
動
ン テ ィ
不
者 ケ
夫
営 経
/
主
生 婦
企
画
/
マ ー
主
連 関 供
学
連 サ
ー
ビ
ス
提
売
関
連 販 / 業 営
連
関 務 事
連
関 理 管
関
関 術
ザ イ
技 /
デ
専
門
/
研
究
ン
連
0
fig.5-4 回答者の職種
全回答者 104 名の内、シェア空間を利用している者は 56.7%であった(fig.5-1) 。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
062 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
#2.回答者の利用するシェア空間のタイプ 以下では、住まいのシェア / 働く場のシェアごとに、回答者の利用するシェア空間のタイプを見て いく。
住まいのシェア 定員 / 空室率 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
3人
4人
5人
6∼9人
10∼15人
16∼20人
21∼30人
31∼40人
41∼50人
51∼100人 101人以上
14
12
10
8
6
4
2
0
0%
1∼10%
11 20
21 30
31 40
41 50
51 100%
fig.5-5 住まいのシェアの人数規模と空室率
定員3名の小さな規模のものから、100人以上の大規模なものまであった。 定員と現在の利用者から、空室率を求めた。満室の物件が最も多かったが、なかには空室率が50% を越える物件もあった。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
063 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
女性率 / 外国人率
9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
25
20
15
10
5
0
fig.5-6 住まいのシェアの女性 / 外国人率
利用者全てが男性の物件が最も多かった。女性のみという物件は3ケースに留まり、全体としても男 性の方が多い物件が多かった。 今回の調査では、外国人と共に暮らしているというケースは少数派であった。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
064 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
所属先構成 (軒) 25
20
15
10
5
5
「全員が異なる所属」というパターンが最も多い。
fig.5-7 住まいのシェアの所属先構成
「全員が異なる所属」というパターンが最も多い。
滞在期間 (人) 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
fig.5-8 住まいのシェアの滞在期間
入居1ヶ月∼3ヶ月の回答者もいれば、3年以上になる者もいた。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
065 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
共用空間
35 30 25 20 15 10 5 0
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
10㎡未満
10㎡以上20㎡未満 20㎡以上30㎡未満 30㎡以上40㎡未満 40㎡以上50㎡未満
50㎡以上
fig.5-9 住まいのシェアの共用空間
トイレは全ての物件において共用であったが、リビングやダイニングを共用で使用しないという物件 もあった。また、特徴的な物件として農場を共用空間として有するものもあった。 把握出来る者には、共用リビングの広さを聞いている。共用リビングの広さとしては、10∼20㎡ の規模のものが多くあった。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
066 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
アクセス / フロア構成
25
20
15
10
5
0
共用部分を通らないと自室に行けない
共用部分を通らずに自室に行ける
25
20
15
10
5
0
全員の個室が同じフロア(階)にある
個室が複数のフロア(階)に分かれている
fig.5-10 住まいのシェアのアクセス / フロア構成
「自室に入る前に必ず共用部分を通る」という物件が「共用部分を通らずに入ることができる」物件 の2倍近かったが共用部分を通らずに自室に行くことの出来る物件がこれだけあったことも、以降の 分析においては注目すべき点である。 今回の調査の中では、利用者それぞれの個室が複数のフロアに分かれている物件が多くを占めた。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
067 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
利用者内でのイベント イベントの頻度 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
A 週に何度も
B 週1∼月2、3回程度
C 月に1回程度
D 数ヶ月に1回程度
E 開催されない
イベントの開かれる場所 30
25
20
15
10
5
0
fig.5-11 住まいのシェアの利用者内でのイベント
利用者のみで開催されるイベントの頻度に関しては、どの物件もまちまちであった。 利用者のみで開かれるイベントは、共用リビング / ダイニングにおいて行われることが多いようであ る。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
068 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
来訪者を含めたイベント イベントの頻度 12
10
8
6
4
2
0
A 週に何度も
B 週1∼月2、3回程度
C 月に1回程度
D 数ヶ月に1回程度
F 開催されない
イベントの開かれる場所 30
25
20
15
10
5
0
fig.5-12 住まいのシェアの来訪者を含めたイベント
これからも物件によりけりであるが、利用者のみと比較すると少し頻度が低いようである。 開催場所としては、利用者のみのイベントと同じ場所で行われることが多いようである。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
069 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
働く場のシェア
定員 / 普段の人数規模
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
fig.5-13 働く場のシェアの定員 / 普段の人数規模
働く場のシェアの人数規模としては、 「15∼20人」規模の所が最も多かった。 最大でも20名程度の規模であり、比較的小規模な単位で働く場のシェアは行われているようである。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
070 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
共用空間 共用空間の種類 25
20
15
10
5
0
作業空間
ミーティング空間
休憩空間(ソファコー 休憩空間(バーコー ナー) ナー)
休憩空間(喫煙コー ナー)
ライブラリー
シェア空間の広さ(㎡) 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0
∼30㎡
31∼50㎡
51∼70㎡
71∼100㎡
101㎡以上
fig.5-14 働く場のシェアの共用空間
「作業空間とミーティング空間」は働く場として当然必要な機能だと言える。 特徴的なのは、休憩空間としてのソファーコーナーを備えた物件が多いことである。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
071 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
パーテーションの有無
25
20
15
10
5
0
1人1人の作業場が仕切られている
数名単位で作業場が仕切られている
仕切られていない
fig.5-15 働く場のシェアのパーテーションの有無
共用空間はパーテーションによって区切られていないオープンなタイプが圧倒的に多かった。
利用施設数 (人) 16
14
12
10
8
6
4
2
0
1カ所
2カ所
3カ所
4カ所
5カ所以上
fig.5-16 働く場のシェアの利用施設数
回答者のうち半数が1ヵ所のみの利用だが、中には5ヵ所以上を利用していると回答した者もいた。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
072 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
利用期間 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
利用頻度 12
10
8
6
4
2
0
毎日
週3∼4回程度
週2回程度
週1回程度
月2∼3回程度
月1回程度
利用時間 14
12
10
8
6
4
2
0
3時間未満
3時間以上6時間未満
6時間以上9時間未満
9時間以上
fig.5-16 働く場のシェアの利用施設数
利用期間はまちまちだが働く場のシェア自体、日本で注目され始めたのが近年のことであるため、一 年以上利用しているという者は少なかった。 毎日、週3∼4回利用しているという者が多かったが、中には月に一回程度という者もおり、利用者 によってその位置づけが異なることが伺える。 利用者によって異なるようだが、どうやら一時的な働く場として利用している者もいるようである。 利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
073 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
利用者内でのイベント イベントの参加頻度 16
14
12
10
8
6
4
2
0
週に何度も
週1∼月2、3回程度
月に1回程度
数ヶ月に1回程度
年に1回程度
参加しない
イベントの場所 25
20
15
10
5
0
1シェア空間内
2外部のレンタルイベントスペース
3外の飲食店
fig.5-17 働く場の利用者内でのイベント
週に1回∼月にに2、3回程度は利用者内でのイベントに参加しているという者が多かった。 この項目は、接触行動に大きな影響を及ぼすと予想させる。 シェア利用者内でのイベントは圧倒的に空間内で行われることが多かった。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
074 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #2.回答者の利用するシェア空間のタイプ
来訪者を含めたイベント イベントの参加頻度 16
14
12
10
8
6
4
2
0
週に何度も
週1∼月2、3回程度
月に1回程度
数ヶ月に1回程度
年に1回程度
参加しない
イベントの場所 25
20
15
10
5
0
1シェア空間内
2外部のレンタルイベントスペース
3外の飲食店
fig.5-18 働く場の来訪者を含めたイベント
シェア利用者のみのイベントよりもこちらの方が頻度が高い。 利用者のみでなく外部の者も含めたイベントでは、シェア空間外で行われるというケースが増える。 空間自体のキャパシティや設備の充実が求められている可能性も考えられるだろう。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
075 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #3.回答者の利用するシェア空間のタイプ
#3.非利用者のシェア空間への意識 以下では、シェア空間を利用していない回答者による、シェア空間への意識調査の結果を示す。
シェア空間に対する認知度 住まいのシェア
16
14
12
10
8
6
4
2
0
fig.5-19 住まいのシェアの認知度
聞いたことがない、よくわからないと答えた人はほとんどおらず、全体の半数以上の人が、訪れたこ とがある、または昔住んでいたと答えている。住まいのシェアは認知度がとても高いといえる。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
076 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #3.回答者の利用するシェア空間のタイプ
働く場のシェア
14
12
10
8
6
4
2
0
fig.5-20 働く場のシェアの認知度
訪れたことがあると答えた人が多かった。しかし、逆に聞いたことがないと答えた人も全体の3分の 1ほどおり、働く場のシェアは住まいのシェアに比べまだ認知度が低いといえる。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
077 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #3.回答者の利用するシェア空間のタイプ
シェア空間の利用意欲 25
20
15
10
5
0
fig.5-21 住まいのシェアの利用意欲
利用したことがあると答えた人が3分の1ほどいる。利用したことがない人の中で、利用してみたい と思わないと答えた利用意欲の低い人は、4分の1ほどであるが存在する。
シェア空間を利用したいと思わない理由 利用したくない理由
いまの生活範囲や経済状況を考えると、実家のほうが便利なので。また、あまりにも周り でそういうことをしているひとが多いので、自分はいいや、と思う感じです(みんな
iPhoneをもっているので、じぶんは別のものをもちたいと思う気持ちに近いです) 一時期、かなり初期段階に本気で探したことがある。 でも今はテレビドラマの影響で合コン的、ミーハー的で
「ただの変な人の集まり」になりつつあると思う (バイアスかかってます)
一人の時間がないと耐えられない。
サークルの友人とやってみようかとも思ったことはあったが、共用スペース(風呂、トイレ
等)の問題もあって私が乗り気ではなくなったし、実家の方が居心地がいい。 個人的に静かになりたいという時、自分から動く必要があるので。
精神衛生上悪そう。他人といることで、やっぱどこか気を張ると思うから疲れそう。 他の人がいると気が散るから。個室などの方が落ち着く。 風呂トイレの共有が嫌
騒音や生活空間管理の問題が起こりそう
fig.5-22 住まいのシェアを利用したいと思わない理由
シェア空間を利用したいと思わない理由の多くは、 「一人の時間が欲しい」 「テレビドラマの影響でミー ハー色が強い人が多そう」というような同居者との人間関係に心配を抱いているようだ。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
078 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #3.回答者の利用するシェア空間のタイプ
シェア空間に対するイメージ
シェア空間のイメージ 一人の時間を家に求めなくても大丈夫な人しか住めなさそう。 繊細な人は住めなさそう。 ある程度、鈍感な面を持っている人は住めそう。 学生・留学生が多い 日本人同士の場合は女性が3名程度でマンションをシェアするイメージ 日常生活の中で、新しい刺激を受けたいと考えている人が利用するイメージ わいわいと楽しいイメージ。いつでもパーティーできる。経済的に独立している人も使用するようになって きた。トキワ荘のようにいつでも高め合う議論などができる。 新しい発見とストレス。 シェアをする前の印象では、女子二人のシェアはネチネチしていて大変そう。リーズナブル。学生にとって は、良い空間が出来上がる。家族のような空間が出来る。と思っていました。 友達3人とシェアを始めてからの印象は、友達の短所も見えてくるので、どんだけ我慢するか。そして我慢 してる事をどこまで伝えるか。という気遣いが一番大事という事に気づきました。 私にとってシェア空間のイメージは人間関係がよくもわるくも複雑化するか単純化する場だ。ここではあく までイメージを問われているので、昔住んでいたことによる経験からのイメージとのギャップを詳しく書く のは割愛させていただくが、シンプルにシェア空間というのはおもろかった。ゆえに、結論を簡潔に言え ば、私にとってシェア空間のイメージは様々な人間関係を学べる楽しい場である。 ・距離感をほどよく持てる関係でないと難しそう。 ・一人では気づけない、物事がある。 ガイジン アーティスト テレビドラマ 若者 新形態 貧乏人 色々な考えの人が居る これから期待できる空間利用方法のひとつ。ワークショップなどと同様なコミュニケーションテクノロジー の空間版。 楽しそうではあるけど、性格が合わない人だと、大変そう。やっぱ他人だから、通帳とか置いたまま出かけ るのが不安。 やっている人はたくさんしっていますし、訪れたこともあります。社交的な人が多いイメージです。プライ バシーはお互いに守るような規範意識の高い人が集まっていて、もちろんストレスは他所なりともあるで しょうが、基本的にそこをうまくカバー出来る人達が集まっているイメージです。 たくさんの人と知り合いたい人、今までに旅先などでたくさんの知らない人にお世話になった人、実家など ではない自由に使える空間が欲しい人などが使うイメージ。
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079 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #3.回答者の利用するシェア空間のタイプ
たくさんの人と知り合いたい人、今までに旅先などでたくさんの知らない人にお世話になった人、実家など ではない自由に使える空間が欲しい人などが使うイメージ。 日本にはあまりまだ根付いていないイメージ。けれど、今後日本でも受け入れられて行くのでは、と思って います。 人と人を繋げる場所で『出会いは命』と考えているので、 自分の人生を変えることができる場所だと思います。 なにごとでもそうであるように、物事には良い面と悪い面がある。 シェアハウスはプライバシーが守られない場合もあり、また、プライバシーを守ろうとすることで、ストレ スが溜まってしまうこともある。 しかしながらひとりで暮らしているだけでは得られない充足感、連帯感などを得られることもあり、孤独を 感じにくい。 お金のなさをシェアで埋める。 誰かといることが好きな人が利用。 偶然で物事が始まりそう。 プライベートの線引きが難しそう 資源(不動産も含め)の有効利用として皆がもっとやるべき。。 1+1=3以上になるようなイメージ 一応専門的にやっているので長くなりがちですが、まだまだこれからの分野だと感じています。やはり 「シェア=効率」の観点で見られてしまうので、たとえばホテルのベッドや公共空間のように如何にして自 然にシェアできている状態に市場として持っていけるか?が今後の鍵だろうと思っています。 またシェア以前にネット上での世界が拡がる中で「如何にして人が集まる原動力」を創りだせるか?に非常 に興味があります。 研究の方がんばってください。 ●起業家。 ●起業家を支援することを生業にしようとしている人。 ●アンテナ高く世の事象を吸い上げ自らの仕事と関連づけることでビジネス創出しようとしている人。 ●タッチダウンスペースとして利用 ●刺激を受けようとしている人 ●普段とは違う空間と人と出会いたい人
専門や価値観が様々な人間が集まる。 毎日が修学旅行。 友人のやっているシェアハウスは金がかからないのは事実だけど、その中の一人が女性を連れ込んで、他の 同居人は無関心な感じを見ると、同じアパートならともかく、私ならば他人の生活を覗いているような感じ になってしまい、気持ち悪くて耐えられない。シェアハウスにもいろいろあるけれど、社会的地位の高めな 人はやらない印象がある。 コミュニティが醸成される場所
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
080 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #3.回答者の利用するシェア空間のタイプ
コミュニティが醸成される場所 ドラマのように住む人と親密になることができ、楽しいイメージ。 自分の自意識が休まる暇がなく、苦しいイメージ。 生活の仕方の違いでぶつかり合うイメージ ・自由で開放的なイメージ ・いろいろなアイディアを共有できるというイメージ ・楽しそうなイメージ ・いろいろな人の意見に触れられる場であるというイメージ 活発と調和 楽しいし、メリットが多い。 各自がプライバシーや最低限のマナーを気をつければ問題ない。 第2の家族 多層間交流ができそう シェアハウスとまではいかないが、ノマドやコワーキングの類のもの。 価値観をシェアできる。借りぐらし。持ちつ持たれつ。 海外経験がある人が多い フレンドリーな人が多い マイペースな人が多い 一風変わった人がちらほらいる
…イメージ。 他人に対しフレンドリーに振るまおうという意志がある人たちで構成されているなら、居心地よく過ごせる こと以上の価値がある。 家族がいなければ自分もそうした場に住んだり仕事をしたりしてみたい。 自分らしく生きるための自然な仕組み コミュニティを求め 自分にないスキルを引き寄せるため ナナメの関係を築くことができる プライバシー空間とパブリック空間との棲み分けが明確であれば非常に興味がある。single空間では得られ ない生きがい働きがいが得られると思う。昨今話題の無縁死とも無縁。 かつての日本によくあった「路地裏コミュニティ」に近いものを、プライバシーの尊重を加えつつ再現した 空間利用方法。
創発的な空間 fig.5-23 シェア空間に対するイメージ
シェア空間に対するイメージとしては、他人と一緒に暮らすということによる社交性の高い場だとい う意見が多くみられた。同居者と親身になって話したり、ときには喧嘩をしたり、というようなテレ ビドラマなどの影響からのイメージがとても強いといえる。
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081 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #3.回答者の利用するシェア空間のタイプ
本論の目的は、時間遷移するシェア空間の価値をモデル化する(fig.5-x)ことである。モデル化を 行うために、次章では2つのフェーズに分けて分析を行っていく。 1)シェア空間を構成しているのは、 「空間構成などの固定要素」と「利用者の作り出す可変要素」 の2つであるという前提のもと、それらの要因と接触行動(会話、交友関係の広がり)との関係を明 らかにする。 2)接触行動により、シェア空間の利用者自身にもたらされる付加価値としての「創発 / 生活の充実 感」と接触行動との関係を明らかにする。 そこで、本章では以降の頁において、上記分析の前段階としてこれら3つ(要因 / 行動 / 付加価値) の関係を概観していく。
付加価値
接触行動
創発
会話
充実感
つながり
要因
固定要素 利用者属性
シェア空間の構成要素
可変要素
fig.5-24 時間遷移するシェア空間の価値モデル
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082 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #4.シェア空間と創発/充実度の関係
#4.シェア空間と創発/充実度の関係 まず始めに、接触行動を間に介さずに、シェア空間と非シェア空間における利用者の「創発 / 充実 度」を比較検討していく。
創発 創発の項目は、アンケート上では以下のように質問されている。 ∼シェア空間利用者∼ ◇過去1ヶ月を振り返ってお答え下さい。 『シェア仲間』とのつながりの中で、仕事や自分の目標に 関するアイデアをもらったり、スキルを教えてもらったなと思う回数はどのくらいでしたか? ∼シェア空間非利用者∼ ◇過去1ヶ月を振り返ってお答え下さい。戸建ならば同居する家族との、集合住宅ならば同じ建物に 住んでいる人とのつながりの中で、仕事や自分の目標に関するアイデアをもらったり、スキルを教え てもらったなと思う回数はどのくらいでしたか? ◇過去1ヶ月を振り返ってお答え下さい。同じ職場(学校)の人やその知人とのつながりの中で、仕 事や自分の目標に関するアイデアをもらったり、スキルを教えてもらったなと思う回数はどのくらい でしたか? 上記の質問に対して得られた回答(創発回数)の平均値をとり、比較を行った。
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083 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #4.シェア空間と創発/充実度の関係
住まいにおける創発 5
4
3
2
1
0
fig.5-25 住まいでの創発得点の比較
働く場における創発 5
4
3
2
1
0
fig.5-26 働く場での創発得点の比較
住まいのシェアでは、利用している人のほうがどちらも利用していないと答えた人より二倍以上の創 発得点を得た。しかし反対に働く場のシェアでは、どちらも利用していない人のほうが創発得点が高 くなった。これは、働く場のシェアは住まいのシェアに比べ、シェアを行っている人と行っていない 人での環境の違いがあまりなく、働く場のシェアを利用していない人の中には、普段それぞれの会社 のオフィスに通って他の社員との交流を行っており、十分な創発をしている人もいるからだと考えら れる。
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084 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #4.シェア空間と創発/充実度の関係
変わったと感じる点 シェア空間利用者を対象に、シェア空間を利用し始めてから自分が変わったと感じている点につい て、自由記述で答えてもらった。以下はその抜粋である。
住まいのシェア利用者 より社交的になった。
自分のやりたい事について深く考える様になった。
価値観が広がった。 より外交的になり、様々な人間関係を構築する中で差異認知をし自分の内なる意志で自分というのがどう いう存在か明確に規定できるようになった。 世界にはいろんな人がいて、それに「気付く」ということ、それを「受け入れる」ということ、がとても大切
だと思うようになった。 ・(仕事面でもプライベートでも)視野が広がった
・料理をするようになった
・社交範囲が圧倒的に広がった
・チームリーダーとしての自覚が持てるようになった
・他人への気遣いがより出来るようになった
NPOや社会貢献に興味をもつようになった。 飲みの回数が増えた。知り合いが増えた。仕事に役立つ知識が増えた。 人間的にかなり丸くなったと思うし、社交的になった。
自分ひとりの事よりも皆の事を優先することの方が大切だと思うようになった。 知識も人脈もかなり広がったと思う。
fig.5-4 住まいのシェアの人数規模と空室率
それから、住んでいる町に対してや近所の人々に対して愛着が出てきて、町内会のイベントや近所の方と
の付き合いが楽しくなった。そして、町をもっと面白くするために自分たちは何ができるのか考えるよう
海外にも興味を持つようになった。
fig.5-27 住まいのシェアの変わったと感じる点
住まいのシェアでは、このように「外向性、多様性の受容、視野の広がり、知識の広がり」を挙げ る者が多かった。
働く場のシェア利用者 働く場のシェア
コワーキングという新しい働き方を知ったことが一番大きいです。ほとんど自分よりも年下の方なので、 自分とは違う考え方や価値観を知ることができました。 知識の幅が広がった。 他業種の人と会い刺激をもらっている。自分の常識が、周りの常識で無いと知る。 ネコワーキングでの、障害者イベントを見て人生の働く意味を考えた。 NPO系の人と話して、社会的責任を考えた。
など、覚えきれない多数。 仕事の見方、提案の仕方が幅広くなる、もっと外に出ないとな、と思う。モチベーションが高まる 外交的な性格になってきた。
社会的な立場で自分の仕事がどうあるべきかを考えるようになった。
fig.5-28 働く場のシェアの変わったと感じる点
働く場のシェアでは、このように「価値観/視野の広がり」を挙げる者が多かった。
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085 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #4.シェア空間と創発/充実度の関係
充実度 充実度の測り方に関しては、前章で述べた通りである。 「1全くあてはまらない」 「2あまりあては らない」「3ややあてはまる」「4非常にあてはまる」の4段階評価により得られた結果を総計するこ とで、 【充実度】を算出している。その際、 逆転項目(ネガティブな内容を質問することで充実度を測っ ている項目)と呼ばれる項目群に関しては、得られた結果に「−」をつけて計算を行った。 例) 「日頃、何もやる気がしないと感じる」の項目に対し「4」をつけた。 ⇒「−4」として加算式に加える。 以上の工程により、各回答者の充実度を総計し、平均をとったものが以下である。
50
40
30
20
全体平均得点 ポジ平均 ネガ平均
10
0
住まいのシェア
働く場のシェア
利用していない
-10
-20
fig.5-29 充実度の平均得点
働く場のシェアでは、このように「価値観/視野の広がり」を挙げる者が多かった。
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086 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
#5.シェア空間と接触行動の関係 次に、モデルの1つ目のフェーズである、シェア空間と利用者の接触行動の関係について見ていく。
5-1.シェア空間と非シェア空間の比較 まずは、住まいと働く場のそれぞれに関して、シェア空間と非シェア空間における接触行動を比較 検討する。
会話 会話頻度 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
fig.5-30 住まいでの会話頻度
(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
fig.5-31 働く場での会話頻度
どちらも、一日に何度もと答えた人が多かった。住まいのシェアを利用している人は、利用していな い人よりも会話頻度が高いといえる。
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087 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
会話時間 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
fig.5-32 住まいでの会話時間 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
fig.5-33 働く場での会話時間
住まいのシェアの方が、挨拶程度の会話で終わることが多く、働く場での会話の方がより長い時間会 話することが多い傾向がみられる。 働く場のシェアでは、11∼30分程度の会話が一番多いという結果になり、短かい会話は少ない。 1時間を超える長い会話も少ないようだ。 また、住まいでは、シェアを利用していない人ほど、数秒の短い会話が多く、長い会話は少ない。 働く場でも、シェアをしていない人のほうが、短い会話が多くなっている。
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088 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
会話内容
fig.5-34 住まいでの会話内容
fig.5-35 働く場での会話内容
住まいのシェアをしている人は、していない人に比べて仕事のことやプライベートのことについて話 している割合が多い。 働く場に関しては、住まいでの会話に比べて仕事や目標のことが多く、全体としてその他の会話がと ても少ない。また、働く場のシェアをしている人の方が、していない人よりもプライベートのについ て話すことが多い。 プライベートのことを話すのは、どちらもシェアをしている人のほうが多いようだ。
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089 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
つながり ソーシャル得点 ソーシャル得点= Σ 回答者数 × 知り合った人数(平均値)/各回答者数
10 18 16 14 12 10 8 6 2 2 0
fig.5-36 ソーシャル得点の比較
各回答者の知り合った人数の結果を空間ごとに平均し、その値(ソーシャル得点)を比較した。する と、シェア空間を利用している者の方がそうでない者に比べ、多くのつながりがある生活をしている 傾向が見られた。
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090 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
以下では、シェア空間利用者に特有の質問項目に関して、住まいのシェアと働く場のシェアの結果 を比較する。
来訪者を含めた会話の頻度 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
fig.5-37 来訪者を含めた会話頻度
働く場のシェアでは一カ月に一度という回答が多かったが、一日に何度もという高い頻度で来訪者と 会話する場合もあるようだ。 また、住まいのシェアでは来訪者を含めた会話はないという回答もみられた。
来訪者を含めた会話時間 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
fig.5-38 来訪者を含めた会話時間
住まいのシェアの方が、挨拶程度の会話で終わることが多く、働く場での会話の方がより長い時間会 話することが多い傾向がみられる。また、逆に働く場のシェアでは、住まいのシェアに比べて、30 分以上の長時間にわたる会話は少なくなっている。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
091 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
来訪者を含めた会話内容
fig.5-39 来訪者を含めた会話内容
来訪者を含めた会話内容では、働く場のシェアのほうが、住まいのシェアよりも仕事のことを話す割 合が二倍近くと多かった。
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092 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
会話場所 30 25 20 15 10 5 0
fig.5-40 住まいのシェアでの会話場所
30 25 20 15 10 5 0
fig.5-41 働く場のシェアでの会話場所
住まいのシェアでの会話を行う場所は、リビング・ダイニング・キッチンが多いようだ。住んでいる 人同士では、個室やキッチンでの会話も多いが、外部の人を含めて行われる会話は、リビングか外部 の飲食店で行われることが多いようだ。 働く場のシェアでの会話は、作業空間で行われることが多いようだ。作業空間・ミーティング空間・ ソファーコーナーという場が会話が行われる場所であるが、すべて外部の人と行われる会話では少な くなっている。代わりに外部の人を含めた会話は外の飲食店で行われるようだ。
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093 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
つながり 仕事へのつながり
A B C D E F G H
fig.5-42 仕事をした人数
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094 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
5-2.住まいのシェアにおける固定要素 / 可変要素と接触行動
ここからは、住まいのシェア/働く場のシェアごとに、その固定要素と可変要素と接触行動の関係 を見ていく。本論の仮説である、 「シェア空間においては空間構成などの固定要素に加え、自分とと もに利用する他者との関係など時間変化する可変要素が利用者の行動や意識に影響を与えている」こ とを確認することが目的である。 接触行動の項目の中から、創発/充実度との関係から影響を強く与えていると考えられる「会話の 頻度」と「会話の時間」、「つながり」の3項目をピックアップし、空間要素との関係を述べる。 ・頻度得点:会話の頻度に関する選択肢をすべて数値に置き換えたもの。頻度に幅があるに関しては、 その平均値をとることで算出した。 「1 日にその数値の回数会話をする」という意味。 ・会話時間時間:1 回の会話の時間に関する選択肢をすべて数値に置き換えたもの。頻度に幅がある ものに関しては、その平均値をとることで算出した。 ・ソーシャル得点:「過去 1 ヶ月で知り合った人数」に関する選択肢を数値に置き換えたもの。頻度 に幅があるに関しては、その平均値をとることで算出した。 を算出し、これらを目的変数としてそれぞれの要素を比較していく。 なお、固定要素と可変要素とは以下の項目を指す。
住まいのシェア 固定要素
定員
アクセス方法
フロア構成
共用空間の種類 共用空間の広さ 会話の場所
可変要素
現状居住者数
空室率
所属先構成
滞在期間
女性率
外国人率
働く場のシェア 固定要素
定員
可変要素
普段の利用者数 利用空間数
パーテーションの有無 共用空間の種類 広さ 利用期間
利用頻度
会話の場所 利用時間
fig.5-43 それぞれのシェア空間における固定要素と可変要素
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095 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
住まいのシェア 会話頻度と固定要素の関係 住まいのシェア 固定要素
定員
アクセス方法
フロア構成
共用空間の種類 共用空間の広さ 会話の場所
可変要素
現状居住者数
空室率
所属先構成
滞在期間
女性率
アクセス方法と利用者間での会話頻度
アクセス方法と来訪者を含めた会話頻度
フロア構成と利用者間での会話頻度
フロア構成と来訪者を含めた会話頻度
共用空間の数と利用者間での会話頻度
共用空間の数と来訪者を含めた会話頻度
外国人率
fig.5-44 住まいのシェアの会話頻度と固定要素の関係
住まいの構成では、アクセス共用部分を通らないと自室に行けないようになっている構成よりも、共 用部分を通らずに自室に行ける構成のほうが、利用者間でも来訪者含めても会話頻度が多くなってい る。 共用空間の数が多いほど会話頻度は高いといえる。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
096 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
住まいのシェア
会話頻度と可変要素の関係 住まいのシェア 固定要素
定員
アクセス方法
フロア構成
共用空間の種類 共用空間の広さ 会話の場所
可変要素
現状居住者数
空室率
所属先構成
滞在期間
女性率
現状人数と利用者間の会話頻度
現状人数と来穂者を含めた会話頻度
空室率と利用者間での会話頻度
空室率と来訪者を含めた会話頻度
所属先構成と利用者間での会話頻度
所属先構成と来訪者を含めた会話頻度
滞在期間と利用者間での会話頻度
滞在期間と来訪者を含めた会話頻度
外国人率
fig.5-45 住まいのシェアの会話頻度と可変要素の関係
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
097 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
住まいのシェア
会話時間と固定要素の関係 住まいのシェア 固定要素
定員
アクセス方法
フロア構成
共用空間の種類 共用空間の広さ 会話の場所
可変要素
現状居住者数
空室率
所属先構成
滞在期間
女性率
外国人率
アクセスと利用者間の会話時間 MAX
アクセスと来訪者を含めた会話時間 MAX
フロア構成と利用者間の会話時間 MAX
フロア構成と来訪者を含めた会話時間 MAX
共用空間の数と利用者間の会話時間得点
共用空間の数と来訪者を含めた会話時間得点
fig.5-46 住まいのシェアの会話時間と固定要素の関係
共用空間の数が多いほど利用者間の会話時間は長いといえる。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
098 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
住まいのシェア
会話時間と可変要素の関係 住まいのシェア 固定要素
定員
アクセス方法
フロア構成
共用空間の種類 共用空間の広さ 会話の場所
可変要素
現状居住者数
空室率
所属先構成
滞在期間
女性率
外国人率
所属先構成ごとの利用者間会話時間
所属先構成ごとの来訪者を含めた会話時間
滞在期間と利用者間での会話時間
滞在期間と来訪者を含めた話時間
fig.5-47 住まいのシェアの会話時間と可変要素の関係
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
099 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
住まいのシェア
つながりと固定要素の関係 住まいのシェア 固定要素
定員
アクセス方法
フロア構成
共用空間の種類 共用空間の広さ 会話の場所
可変要素
現状居住者数
空室率
所属先構成
滞在期間
女性率
人数規模とつながり
フロア構成と知り合った人数
アクセスと知り合った人数
共用空間の数と知り合った人数
外国人率
fig.5-48 住まいのシェアのつながりと固定要素の関係
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
100 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
住まいのシェア
つながりと可変要素の関係 住まいのシェア 固定要素
定員
アクセス方法
フロア構成
共用空間の種類 共用空間の広さ 会話の場所
可変要素
現状居住者数
空室率
所属先構成
滞在期間
女性率
外国人率
空室率とつながり
所属先構成とつながり
滞在期間と知り合った人数
fig.5-49 住まいのシェアのつながりと可変要素の関係
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
101 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
働く場のシェア
会話頻度と固定要素の関係
働く場のシェア 固定要素
定員
可変要素
普段の利用者数 利用空間数
パーテーションの有無 共用空間の種類 広さ 利用期間
会話の場所
利用頻度
利用時間
パーテーションの有無と利用者間の会話頻度
パーテーションの有無外部者を含めた会話頻度
利用者間での会話場所と会話頻度
来訪者を含めた会話場所と会話頻度
fig.5-50 働く場のシェアの会話頻度と固定要素の関係
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
102 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
働く場のシェア
会話頻度と可変要素の関係
働く場のシェア 固定要素
定員
可変要素
普段の利用者数 利用空間数
パーテーションの有無 共用空間の種類 広さ 利用期間
利用頻度
会話の場所 利用時間
利用期間と利用者間での会話頻度
利用期間と外部者を含めた会話頻度
利用時間と利用者間での会話頻度
利用時間と他の利用者からのつながりによる会話頻度
普段の利用者数と利用者間での会話頻度
普段の利用者数と他の利用者からのつながりによる会話頻度
fig.5-51 働く場のシェアの会話頻度と可変要素の関係
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
103 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
働く場のシェア
会話時間と固定要素の関係
働く場のシェア 固定要素
定員
可変要素
普段の利用者数 利用空間数
パーテーションの有無 共用空間の種類 広さ 利用期間
利用頻度
会話の場所 利用時間
定員と利用者間での会話時間の最大
定員と来訪者を含めた会話時間の最大
パーテーションの有無と利用者間での会話時間の最大値
パーテーションの有無と来訪者を含めた会話時間の最大値
fig.5-52 働く場のシェアの会話時間と固定要素の関係
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104 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
働く場のシェア
会話時間と可変要素の関係
働く場のシェア 固定要素
定員
可変要素
普段の利用者数 利用空間数
パーテーションの有無 共用空間の種類 広さ 利用期間
利用頻度
会話の場所 利用時間
利用期間と利用者間での会話数
利用期間と来訪者を含めた会話数
利用時間と利用者間での会話時間
利用時間と来訪者を含めた会話時間
fig.5-53 働く場のシェアの会話時間と可変要素の関係
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
105 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
働く場のシェア
つながりと固定要素の関係
働く場のシェア 固定要素
定員
可変要素
普段の利用者数 利用空間数
パーテーションの有無 共用空間の種類 広さ 利用期間
利用頻度
会話の場所 利用時間
定員と知り合った人数
定員と仕事へのつながり率
パーテーションの有無とつながり
パーテーションの有無と仕事へのつながり率
fig.5-54 働く場のシェアのつながりと固定要素の関係
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106 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #5.シェア空間と接触行動の関係
働く場のシェア
つながりと可変要素の関係
働く場のシェア 固定要素
定員
可変要素
普段の利用者数 利用空間数
パーテーションの有無 共用空間の種類 広さ 利用期間
利用期間とつながり
利用時間とつながり
利用頻度
会話の場所 利用時間
利用期間と仕事へのつながり
利用時間と仕事へのつながり
fig.5-55 働く場のシェアのつながりと可変要素の関係
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107 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #6.接触行動と創発 / 充実度の関係
#6.接触行動と創発 / 充実度の関係 最後に、接触行動と創発 / 充実度との関係を見ていく。ここでは、シェア空間利用者と非利用者を 区別することなく、住まいにおける接触行動と創発 / 充実度、働く場における接触行動と創発 / 充実 度の関係について検討する。
創発 住まいにおける接触行動と創発 会話頻度と創発 創発得点 10 8 6 4 2 0
会話時間と創発 創発得点 10 8 6 4 2 0
会話内容 ( 仕事についての割合 ) と創発 創発得点 10 8 6 4 2 0 0
5
10
15
20
30
33
40
50
60
70
80 90 (%) 会話内容の仕事についての割合
fig.5-56 住まいにおける接触行動と創発得点
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108 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #6.接触行動と創発 / 充実度の関係
創発 住まいにおける接触行動と創発 つながりと創発
創発得点 10 8 6 4 2 0 0
3
8
12.5
18
25.5
40/5
51
ソーシャル得点
fig.5-57 住まいにおけるつながりと創発得点
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109 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #6.接触行動と創発 / 充実度の関係
創発 働く場における接触行動と創発 会話頻度と創発 創発得点 12 10 8 6 4 2
週
1
回
0
会話時間と創発 創発得点
会話内容 ( 仕事についての割合 ) と創発 創発得点
(%) 会話内容の仕事についての割合
fig.5-58 働く場における接触行動と創発得点
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110 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #6.接触行動と創発 / 充実度の関係
創発 働く場における接触行動と創発 つながりと創発 創発得点
ソーシャル得点
仕事加算のつながりと創発 創発得点
ソーシャル得点
fig.5-59 働く場におけるつながりと創発得点
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111 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #6.接触行動と創発 / 充実度の関係
充実度 住まいにおける接触行動と充実度 会話頻度と充実度 充実度 40 35 30 25 20 15 10 5 0
会話時間と充実度 充実度 40 '!" 35 &#" 30 &!" 25 %#" 20 %!" 15 $#" 10 $!" 5 #" 0 !" !"
#"
$!"
$#"
%!"
&!"
&&"
'!"
#!"
(!"
)!"
40
50
60
70
*!"
+!"
会話内容 ( 仕事についての割合 ) と充実度 充実度 40 35 30 25 20 15 10 5 0
0
5
10
15
20
30
33
80 90 (%) 会話内容の仕事についての割合
fig.5-60 住まいにおける接触行動と充実度
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112 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #6.接触行動と創発 / 充実度の関係
充実度 住まいにおける接触行動と充実度 つながりと充実度
充実度 40 35 30 25 20 15 10 5 0
0
3
8
12.5
18
25.5
40.5
51
ソーシャル得点
fig.5-61 住まいにおけるつながりと充実度
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113 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #6.接触行動と創発 / 充実度の関係
充実度 働く場における接触行動と充実度 会話頻度と充実度 充実度
会話時間と充実度
F
A
E
D
C
B
("
充実度
会話内容 ( 仕事についての割合 ) と充実度 充実度
(%) 会話内容の仕事についての割合
fig.5-62 働く場における接触行動と充実度
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114 第 5 章 調 査 結 果 - シ ェ ア 空 間 の 有 意 性 / 接 触 行 動 と 創 発 ・ 充 実 度 の 関 係 #6.接触行動と創発 / 充実度の関係
充実度 働く場における接触行動と充実度 つながりと充実度 充実度
ソーシャル得点
仕事加算のつながりと充実度 充実度
ソーシャル得点
fig.5-63 働く場におけるつながりと充実度
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115
第 6 章
分析 - 考察 −シェア空間における時間遷移価値モデル−
Chapter 6
A S p a t i o - Te m p o r a l Tr a n s i t i o n M o d e l o f A r c h i t e c t u r a l Va l u e
#1.分析の流れ #2.接触行動と創発 / 充実度のモデル化 #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化 3-1.住まいのシェアにおける接触行動のモデル化 3-2.働く場のシェアにおける接触行動のモデル化 #4.シェア空間における時間遷移価値モデル
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116 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #1.分析の流れ
#1.分析の流れ 本論の目的は、時間遷移するシェア空間の価値をモデル化することである。 シェア空間を構成している「空間構成などの固定要素」と「利用者の作り出す可変要 素」による接触行動のモデル化を行うにあたり、多岐に渡る「接触行動」の項目を絞り こむ必要がある。そこで、 本章では以下のような流れ(fig.6-1)でモデル化を進めていく。 Phase1) 接触行動によりシェア空間の利用者自身にもたらされる付加価値としての「創発」と 接触行動との関係を明らかにする。これにより、Phase2 において行う分析の目的とな る接触行動項目を絞り込む。 Phase2) Phase1 により明らかとなった「創発」をもたらす接触行動項目と、シェア空間を構 成する「空間構成などの固定要素」と「利用者の作り出す可変要素」との関係を明らか にする。 付加価値
接触行動
要因
固定要素
会話
創発
利用者属性
つながり
シェア空間の構成要素
可変要素
Phase1 創発 - 接触行動モデル Phase2 接触行動 - 構成要素モデル
シェア空間における時間遷移価値モデル
fig.6-1 分析方針
モデル化を行うにあたっては、予測型多変量解析手法の一つである重回帰分析(ある いは数量化理論Ⅰ類)を用いている。 [文42]
今回の分析においては、回数や頻度などの量的データを予測することを目的としてい
内田治 , 松木秀明 , 上
る。予測のための説明変数としては、広さや人数などの量的変数とともに、 「個室が複
野真由美:すぐわかる
数のフロアに分かれているか」などの択一式の設問により得られる質的データも存在す
JMP による多変量解析 ,
る。「量的 / 質的データを説明変数として用い、量的データである目的変数をどの程度
東京図書(2005)
説明することが出来るのか」を統計手法により定量的に分析する手法が重回帰分析であ る(説明変数が質的データを含んだ項目群であった場合、重回帰分析の特殊な用法であ る数量化理論Ⅰ類を用いることになる)[文42]。 尚、解析には統計ソフト「JMP9」を用いた。
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117 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
#2.接触行動と創発のモデル化 ここでは利用者の接触行動データから、シェア空間において「創発」を生み出す要因 を多変量解析により明らかにしていく。解析を行うにあたり、まずは目的変数と説明変 数を以下のように明示しておく。 <目的変数> ・創発得点(量的データ) :本論では、創発を「シェア空間利用者やその知人との接触 行動によりもたらされる、仕事や自分の目標、悩みに対するアイデアやスキル、解決策」 と定義している。アンケート調査においては、 「 (過去1ヶ月において)仕事や自分の目 標に関するアイデアをもらったり、スキルを教えてもらったなと思う回数はどのくらい でしたか?」という質問項目に対し、その回数を回答してもらった。過去1ヶ月におけ るシェア仲間からの創発、来訪者からの創発の回数を合算したものを創発得点と呼び、 以降この尺度によりシェア空間の付加価値を定義する。 <説明変数> ⃝会話 ・会話頻度:【頻度得点】会話の頻度に関する選択肢をすべて数値に置き換えたもの。 頻度に幅があるに関しては、その平均値をとることで算出した。 「1日にその数値の回 数会話をする」という意味。 ・会話時間:【最長会話時間】1回の会話の時間に関する選択肢をすべて数値に置き換 えたもの。会話時間の質問項目では、選択肢のうち頻度の高い3つを選んでもらったた め、そのうちの最長のものをプックアップしている。以降の分析では、複数選択をした 者に関しては、そのうちの最も長い時間をピックアップして評価対象とする。頻度に幅 があるに関しては、その平均値をとることで算出した。 ・会話内容:【プライベート/仕事】今回の調査では、会話の内容を自己判断で「仕事: プラベート:その他」=⃝%:⃝%:⃝%」という形式で回答してもらっている。目的 変数である、創発につながるという仮説のもと、ここではプライベートの内容と仕事の 内容の比をとり、会話内容を評価している。 *上記の3項目に関しては、質問の際に「利用者間での会話」と「来訪者を含めた会話」 の2種類の会話に関する状況を聞いている。 ⃝つながり ・つながり:【ソーシャル得点】 「過去1ヶ月で知り合った人数」に関する選択肢を数値 に置き換えたもの。頻度に幅があるに関しては、その平均値をとることで算出した。 ⃝個人属性(年齢、性別、職種、対人的志向性)
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118 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
#2.接触行動と創発のモデル化 接触行動 - 創発得点モデルⅠ まず、7つ全ての(会話3項目 × 2+つながり1項目)接触行動項目を説明変数として採用し、 創発得点の予測を行った。 予測モデルのあてはまりの良さを示す数値である R2 乗は非常に小さな値を示しており、この モデル式はあてはまりが非常に悪いことがわかる(table4-1)。このモデルでは 25%しか創発得点 の予測に寄与しないということである。 table.6-1 接触行動 - 創発得点モデルⅠのあてはめの要約 あてはめの要約 R2乗
0.258918057
誤差の標準偏差(RMSE)
3.489573503
自由度調整R2乗
0.1354044
Yの平均
5.15
オブザベーション(または重みの合計)
50
では、この予測モデルが役に立つかどうかを検証してみる。 「求めたモデル式は役に立たない」 という帰無仮説を立て、有意確立を検証してみる。下記(table4.-2)の通り、p 値= 0.0651 で あり、6.5%の確立でこの予測モデルは外れることがわかる。これは有意水準の α = 0.05 を上回っ ており、帰無仮説は証明され、このモデル式が役に立たないとわかる。
分散分析
table.6-2 接触行動 - 創発得点モデルⅠの分散分析結果
要因
自由度
モデル 誤差
7
平方和
42
全体(修正済み)
49
178.68582
平均平方
25.5265
511.43918
F値
12.1771
690.125
2.0963
p値(1Prob>F)
0.0651
次に作成するモデルを検討するため、このモデルの各説明変数に対する詳細な結果を見てみる と、t 値が最も大きいのは「ソーシャル得点」である(table.5-3) 。ここから「ソーシャル得点」 が最も「創発」に対して与える影響が大きいことを表している。 table.6-3 接触行動 - 創発得点モデルⅠの分散分析結果 パラメータ推定値 項
切片
利用者間の会話頻度得点
来訪者を含めた会話頻度得点
推定値
3.089275301
0.324596848
-0.00526165
0.014290477
利用者間での会話内容
-0.006603237
ソーシャル得点
-0.470383447 0.106225767
t値
0.26304687
0.286628091
-0.004499905
来訪者を含めた会話内容
1.259154322
0.257125513
利用者間の最長会話時間
来訪者を含めた最長会話時間
標準誤差
2.45 1.23
0.2241
0.3748
-0.37
0.7146
-0.26
0.295744269
-0.02
0.046564161
0.0184
0.9
0.017428101
0.263945087
p値 Prob>¦t¦
-1.78
2.28
0.7975 0.9823 0.082
0.0277
今回のモデル式がうまくあてはまらなかった原因として、説明変数が過多だった可能性が考え られる。そこで、次は説明変数間の相関関係を見てみる。
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119 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
table.6-4 説明変数間の相関係数 利用者間の会話頻度得点
利用者間の会話頻度得点
1
来訪者を含めた会話頻度得点
0.321310265
来訪者を含めた最長会話時間
0.108913665
利用者間の最長会話時間
利用者間での会話内容
来訪者を含めた会話内容 ソーシャル得点
0.139848128
来訪者を含めた会話頻度得点 利用者間の最長会話時間 来訪者を含めた最長会話時間 利用者間での会話内容 0.321310265
1
0.148182441
0.148556859
0.227197938
-0.113019618
0.208720326
0.154210702
0.21294029
-0.09399818
0.139848128
0.108913665
1
0.513902971
-0.048512497
-0.064479591
0.273289457
0.140010797
0.148182441
0.227197938
0.148556859
0.513902971
-0.032083135
0.21294029
0.208720326
-0.048512497
-0.032083135
0.273289457
1
0.168129865
-0.18112981
-0.181129808
-0.042501676
-0.113019618
1
-0.064479591
0.05120779
来訪者を含めた会話内容 ソーシャル得点
0.168129865
-0.09399818
0.05120779 1
0.154210702
0.140010797
-0.04250168 1
変数をまとめる目的で相関係数を算出したが、高い相関が見られたのは「利用者間の最長会話 時間」「来訪者を含めた最長会話時間」の 2 項目間のみであった。 上記より、以降は相関が高く、モデルⅠの結果よりp値が高い値を示している「利用者間の最 長会話時間」と「来訪者を含めた最長会話時間」を省いて検討を行うこととする。これら 2 項 目を足し合わせ、「最長会話時間」として扱っていく。
接触行動 - 創発得点モデルⅡ 最大会話時間を説明変数として、創発得点を予測するモデルをもう一度求める。 table.6-5 接触行動 - 創発得点モデルⅠの分散分析結果 あてはめの要約 R2乗
0.58128056
誤差の標準偏差(RMSE)
62.5559754
自由度調整R2乗
0.18719168
Yの平均
79.2088235
オブザベーション(または重みの合計)
34
依然として R2 乗は小さな値をとっており、 このモデルも寄与率は低いままである(table.6-5) 。 しかし、p値は小さくなり、有意水準の α = 0.05 を下回った (table.6-6) 。モデルの有効性はフェー ズ1よりも上がっている。 分散分析 要因
モデル 誤差
全体(修正済み)
table.6-6 接触行動 - 創発得点モデルⅡの分散分析結果 自由度
6
平方和
43 49
178.677
511.448 690.125
平均平方
29.779
F値
11.894
2.504
p値(1Prob>F)
0.036
接触行動により創発得点を予測するモデル式の当てはまりが悪いため、次項では属性調査のた め質問した「対人的志向性」の項目を説明変数として追加する。
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120 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
table.6-7 説明変数間の相関係数 日頃から人間関係を大事にしている
出会った人とは、できるだけ親密になろうと努力する
自分と関わりのある人については、なるべく色々なことを知りたいと思う
人付き合いがよい方だと思う
同じゲームをやるなら、一人でできるものよりも相手がいてできるものの方が良い
他人の行動の動機を知ることに関心がある
他人事でも、一喜一憂することが多い
微笑みかけたり嫌な顔をしたりする人が気にかかる
人が私の行為についてどのように考えているかということは重要ではない
人が本当はどんな人物であるかに関心がない
人のことには構わずマイペースで行動する方である
自分は自分、他人は他人と割り切って物事を考える方である
人からの批判が気になる
他人の感情や気持ちを考えることは意味がない
仕事上の付き合いでは、個人的に親しくなることは重要ではない
あまりの人のことには立ち入らない方である
人から個人的な話を持ちかけられるのは煩わしいものだ
自分にとって人間関係は煩わしいものである
交際性
0.728
0.722
関心性
0.034
干渉性
-0.240
孤高性
-0.145
0.082
-0.043
0.526
-0.092
-0.082
0.304
0.147
-0.170
-0.390
0.444
-0.159
-0.005
-0.229
0.967
0.108
0.562
0.490
0.284
0.051
-0.003
-0.038
-0.052
0.320
0.251
0.382
-0.451
-0.124
-0.082
-0.104
-0.105
-0.385
-0.090
-0.106
-0.275
-0.431
-0.489
0.780
0.030
0.118
0.083
0.120
0.043
0.137
-0.142 0.016
0.146
0.015
-0.153
-0.023
-0.079
-0.027
0.017
0.387
0.303
0.763
0.109
-0.085
0.364
0.298
0.381
0.120
0.360
0.129
0.295
0.396
0.286
0.308
18 項目の対人的志向性尺度に対し、因子分析を行った結果が上記の表(table6-7)である。 これにより、18 個の項目は4つの因子に集約される。即ち、 「交際性因子」 「関心性因子」 「干渉 性因子」「孤高性因子」の4因子である。 回答者に対して行った外的志向性調査の結果を上記の4項目の得点として説明変数に加え、再 度モデル化を行った。
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121 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
接触行動 - 創発得点モデルⅢ table.6-8 接触行動 - 創発得点モデルⅢのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.481
誤差の標準偏差(RMSE)
3.030
自由度調整R2乗
0.348
Yの平均
5.15
オブザベーション(または重みの合計)
50
table.6-9 接触行動 - 創発得点モデルⅢの分散分析結果 分散分析 要因
モデル
自由度
誤差
10
39
全体(修正済み)
49
平方和
332.078
平均平方
33.208
358.047
F値
9.181
690.125
3.617
p値(1Prob>F)
0.002
これまでのモデルに比べ、R 2乗の値は増大しているが、それでも依然としてあてはまりは悪 い(table6-8、6-9)。 そこで、対人的志向性4因子間の相関関係を見てみる。 table.6-10 対人的志向性4因子間の相関係数 交際性
交際性
関心性 干渉性 孤高性
1
関心性
0.434
-0.278
-0.475
0.434
干渉性
1
-0.423 -0.340
-0.278
-0.423 1
0.399
孤高性
-0.475 -0.340
0.399 1
対人的志向性の4因子間の相関を見てみると、 「交際性」と「関心性」と「孤高性」 、 「関心性」 と「干渉性」の間に比較的強い相関があることがわかる。 多変量解析において、説明変数間の相関が高い場合、多重共線性(マルチコリニアリティ)によ り影響が2重に評価されている場合があるといわれている。 そこで、対人的志向性を評価する因子を「交際性」と「関心性」 「干渉性」の3項目に絞り、 もう一度モデル式を立ててみる。
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122 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
接触行動 - 創発得点モデルⅣ table.6-11 説明変数間の相関係数 あてはめの要約 R2乗
0.481
誤差の標準偏差(RMSE)
2.993
自由度調整R2乗
0.364
Yの平均
5.15
オブザベーション(または重みの合計)
50
table.6-12 説明変数間の相関係数 分散分析 要因
モデル
自由度
誤差
9
平方和
40
全体(修正済み)
49
331.875
平均平方
358.250 690.125
36.875
F値
8.956
4.117
p値(1Prob>F)
0.001
これでもやはり、あてはまりを表す R 2乗の値は上がらなかった(table6-11) 。 そこで、属性項目から創発に関係のありそうな項目だと考えられる「年齢」の項目を説明変数 に加えてモデル式を検討してみる。
接触行動 - 創発得点モデルⅤ table.6-13 接触行動 - 創発得点モデルⅤのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.521
誤差の標準偏差(RMSE)
2.988
自由度調整R2乗
0.366
Yの平均
5.15
オブザベーション(または重みの合計)
50
ようやく R2 乗の値が 0.50 を超えるモデル式を立てることができた。 このモデル式が、創発得点を予測することに役立つのかどうかを検証する。まず、 「求めたモ デル式が役に立たない」という仮説を立て、有意確率を検証する。上記のとおり、有意確率を表 す p 値= 0.0022(table.6-14)であり、0.22% の確率でこのモデル式が役に立たないというこ とが明らかになった。この値は一般的な有意水準と言われている α = 0.05、より厳密な水準で ある α = 0.01 をも下回っており、モデル式が役に立たないという帰無仮説を棄却し、このモデ ル式が予測に役立つことが明らかになった。 table.6-14 接触行動 - 創発得点モデルⅢの分散分析結果 分散分析 要因
自由度
平方和
モデル
12
359.887
全体(修正済み)
49
690.125
誤差
37
330.238
平均平方
F値
29.991 8.925
p値(1Prob>F) 3.360
0.002
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
123 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
接触行動 - 創発得点モデルⅤ では、各説明変数がどのよにうに創発に影響を及ぼしているのかを見ていく。 (table.6-15) table.6-15 接触行動 - 創発得点モデルⅤ効果の検定 効果の検定 要因 年代
交際性 関心性 干渉性
利用者間の会話頻度得点
来訪者を含めた会話頻度得点 最長会話時間
来訪者を含めた会話 ソーシャル得点
パラメータ数
4
自由度
1 1 1 1 1 1 1 1
4
平方和
1 1 1 1
28.102 22.736 83.987
74.057 2.298
1
10.098
1
10.059
1 1
19.538 96.098
F値
0.787
p値(Prb>F)
2.547 9.410 8.297 0.258 1.131 2.189 1.127
10.767
0.541 0.119
0.004 0.007 0.615
0.294 0.148 0.295 0.002
F 値を見ると、説明変数の中でも、 「ソーシャル得点」が最も大きな値をとっており、創発に 強い影響を与えていることがわかる。p 値を見ても、p = 0.0023 であり有意水準 α = 0.05 を 大きく下回っているため、この変数を創発予測モデル式に使用することの危険性が極めて低いこ とが示されている。 これはまた、対人的志向性因子である「関心性」と「干渉性」にも同様のことが言える。 逆に「利用者間の会話頻度得点」 に関しては、 F 値が最も低く、 p 値も大きな値をとっているため、 予測に用いる変数としての危険度が高いと言える。 接触行動 - 創発モデルⅤを以後は、単に接触行動 - 創発モデルと呼んでいく。
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124 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
#3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化 3-1.住まいのシェアにおける接触行動のモデル化
ここからは、住まいのシェアと働く場のシェアに分けて、構成要素と接触行動をモデ ル化していく。まずは、以下にモデル式における目的変数と説明変数を示す。 <目的変数> 前項において示した「接触行動による創発得点の予測モデル」において、説明変数とし て用いていたものをここでは目的変数として扱う。 特に上記モデルにおいては、5つの接触行動が説明変数として使われたが、その中でも 創発への影響が強かった項目である「ソーシャル得点」と「最大会話時間」の2項目を 予測するモデル式の立式を目的とする。 <住まいのシェアにおける説明変数> アンケート調査により取得した説明変数データは、以下の通り膨大な種類に及ぶ。こ のまま多変量解析を行ってもモデルへのあてはまり(R2 乗)が悪いことは目に見えて いるので、次項からは、まず始めに設定した目的変数との相関関係を見ていくこととす る。 ⃝固定要素 ・シェア空間の定員 ・共用空間の種類:【共用空間の種類数】 ・アクセス:【共用部分を通らずに個室へアクセスできるか否か】 ・共用リビングの広さ(㎡) ・フロア構成:【個室が複数のフロアに分かれているか否か】 ・会話の行われる場所 ⃝可変要素 ・空室率 ・女性率 ・外国人率 ・所属先構成 ・滞在期間
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125 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
説明変数の絞り込み はじめに、4章の結果の比較から、目的変数と相関があるだろうと予測される2つの質的デー タ項目「アクセス」と「フロア構成」を抜いた固定要素と目的変数との相関係数を算出した。 table.6-16 最長会話時間 / ソーシャル得点と固定要素との相関関係 目的変数「最長会話時間」と固定要素との相関係数 最長会話時間
ソーシャル得点
シェア空間の定員 共用空間の種類数
共用リビングの広さ(㎡)
最長会話時間
1
0.315
ソーシャル得点
0.315 1
0.401
0.027
-0.136
0.062
0.378
0.229
利用者間での個室での会話の有無
-0.033
-0.009
利用者間でのダイニングでの会話の有無
-0.013
0.293
利用者間でのリビングでの会話の有無 利用者間でのキッチンでの会話の有無 利用者間での作業場での会話の有無
利用者間での洗面/浴室での会話の有無
来訪者との個室での会話の有無
来訪者とのリビングでの会話の有無
来訪者とのダイニングでの会話の有無 来訪者とのキッチンでの会話の有無 来訪者との作業場での会話の有無
来訪者との外の飲食店での会話の有無
0.291 0.111
-0.032
0.215
0.257
-0.102
0.409
0.039
-0.035
0.351 0.191 0.218 0.257
0.219
0.019 0.071 0.179 0.135
-0.102
0.050
この相関は、多量の説明変数を絞るという目的のもと行ったものである。まずは2つの目的変 数ともに対して、明らかに相関のない値(= ¦0 ∼ 2.0¦)を示した固定要素4項目を除く。積極 的に説明変数を取り除いていく必要があるため、続いて ¦2.0¦ を少し超えた項目でも、もう一方 の目的変数に対して明らかに相関の見られないものも除く。残った固定要素は以下の10項目で ある。 ・シェア空間の定員 ・共用空間の種類数 ・アクセス ・フロア構成 ・利用者間でのリビングでの会話の有無 ・利用者間でのダイニングでの会話の有無 ・利用者での作業場での会話の有無 ・来訪者との個室での会話の有無 ・来訪者とのリビングでの会話の有無 ・来訪者との作業場での会話の有無 この中でも、回答数の著しく少ない作業場での会話に関する2つの項目は、モデル化を検討する 上で妥当ではないと判断し、この2つを省いた8項目を固定要素として扱う。 利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
126 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
説明変数の絞り込み 続いて、同様に可変要素と目的変数との相関を検証する。4章の結果の比較から、目的変数と 相関があるだろうと予測される2つの質的データ項目「所属先構成」と「滞在期間」を抜いた固 定要素と目的変数との相関係数を算出した。 table.6-17 最長会話時間 / ソーシャル得点と可変要素との相関関係 目的変数「最長会話時間」と可変要素との相関係数 最大会話時間
ソーシャル得点 空室率 女性率
外国人率
最長会話時間
1
0.315 0.050
-0.167 -0.316
ソーシャル得点
0.315 1
0.150
-0.205 -0.112
2つの目的変数ともに対して、明らかに相関のない値を示した項目、また回答数の偏りが激し い「外国人率」の項目を除き、以下の項目を以後の分析に用いることとする。 ・所属先構成 ・滞在期間
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127 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅠ ここからは、前頁の検討の結果残った固定要素 / 可変要素による、最長会話時間予測モデルを 作成するのための検討を行っていく。まずは、全ての説明変数によるモデル化を試みる。 table.6-18 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅠのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.58128056
誤差の標準偏差(RMSE)
62.5559754
自由度調整R2乗
0.18719168
Yの平均
79.2088235
オブザベーション(または重みの合計)
34
モデル式のあてはまりを表す R2 乗の値は 0.58 であり、まずまずのあてはまりだと言える。 しかし、n数を考慮した調整後の R2 乗の値は非常に低く、厳密には決してあてはまりの良いモ デルではない。
table.6-19 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅠの分散分析結果 分散分析 要因
モデル
自由度
誤差
16 17
全体(修正済み)
33
平方和
92352.62
平均平方
5772.04
66525.25
3913.25
158877.87
F値
1.475
p値(1Prob>F)
0.217
そこで、このモデル式が目的変数「最長会話時間」を予測するモデル式として役に立つのかど うか検証を行う。「求めたモデル式が役に立たない」という仮説を立て、有意確率を検証する。 上記のとおり、有意確率を表す p 値= 0.2173 であり、これは有意水準 α = 0.05 を上回ってし まっている。よって帰無仮説は成立し、このモデル式が役に立たないことが証明された。 table.6-20 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅠの効果の検定 効果の検定 要因
シェア空間の定員
パラメータ数
共用空間の種類数 アクセス
フロア構成
利用者間でのリビングでの会話の有無
利用者間でのダイニングでの会話の有無 来訪者との個室での会話の有無
来訪者とのリビングでの会話の有無 所属先構成 滞在期間
1
1
1
1
1 1
1
1
2 6
自由度
1
1
平方和
1059.318 146.641
1
6542.376
1
88.051
1
1750.868
1
1464.098
1
4570.808
1
2 6
175.166
16404.296 15676.734
F値
0.271
p値(Prb>F)
0.038
1.672
0.447 0.023
0.374
0.045 1.168 2.096 0.668
0.610
0.849 0.213
0.513 0.883
0.549 0.835
0.295
0.154 0.677
最後に、説明変数の各項目がどの程度最長会話時間に影響を及ぼしているのかを見てみる。F 値を見てみると、「アクセス」と「所属先構成」が比較的大きな値を示しており、これら2つの 説明変数が最長会話時間に影響を及ぼす項目と言えそうだ。しかし、そのどちらも p 値は有意水 準を上回っており、最長会話時間を予測する際に使用する危険度は高いと言える。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
128 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
前項で立式したモデルはあてはまりが悪く、役に立たないモデル式であった。原因としては、 説明変数の数が多すぎることが考えられる。説明変数の中に相関が高い項目があり、多重共線性 (マルチコリニアリティ)により影響が2重に評価されてい可能性を考え、説明変数間の相関関 係を見てみる。下の表に示すように、 「シェア空間の定員」と「来訪者との個室での会話の有無」 が非常に強い相関関係にあることがわかる。また、 「利用者間のリビングでの会話の有無」と「来 訪者とのリビングでの会話の有無」の2項目間にも強い相関がある。 table.6-21 説明変数間の相関係数 利用者間のリビングでの 利用者間のダイニングでの
シェア空間の定員 共用空間の種類数
シェア空間の定員
共用空間の種類数
利用者間でのリビングでの会話の有無
利用者間でのダイニングでの会話の有無 来訪者との個室での会話の有無
来訪者とのリビングでの会話の有無
会話の有無
1
0.123
0.123
1
0.284
0.355
-0.142
0.254
0.669
0.048
0.284
0.985
0.095
-0.134 0.066
0.048
会話の有無
来訪者との個室での
-0.134
会話の有無
0.985
来訪者とのリビングでの 会話の有無
0.066
0.355
0.095
0.254
1
-0.129
-0.147
-0.147
0.120
1
1
-0.142
0.081
-0.129
0.081
0.669
1
0.120
よって、これらの項目のうち前項のモデル式における t 値の低い方を説明変数から削除し、再 度モデル化を行う。
住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅡ table.6-22 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅡのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.580
自由度調整R2乗
0.270
誤差の標準偏差(RMSE)
59.276
Yの平均
79.209
オブザベーション(または重みの合計)
34
前項のモデル式と比較すると、R2 乗は同じくらいの値を示しているが、調整後の R2 乗の値 は少し上昇した。しかし、依然としてあてはまりの悪い式だと言える。p 値に関しても、前項の モデルよりも値は小さくなり有意水準に近づいている。 table.6-23 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅡの分散分析結果 分散分析 要因
モデル 誤差
全体(修正済み)
自由度
14
平方和
19 33
92117.56 66760.31
158877.87
平均平方
6579.83
3513.7
F値
1.8726
p値(1Prob>F)
0.1011
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
129 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
各説明変数を見ると、「シェア空間の定員」が最も影響が大きく、p 値も有意水準を下回って いることがわかる。また、「所属先構成」も最長会話時間に比較的大きな影響を与えていること が示されている。 table.6-24 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅡの効果の検定 効果の検定 要因
パラメータ数
シェア空間の定員
1
共用空間の種類数
自由度
1
1
アクセス
1
利用者間でのダイニングでの会話の有無
1
所属先構成 滞在期間
1
6983.824
1
2243.821
1.988
0.453 0.639
1.597
16591.981
6
p値(Prb>F)
0.019
5610.641
2
6
4.733
1591.649
1
2
F値
66.919
1
1
来訪者とのリビングでの会話の有無
16630.774
1
1
フロア構成
平方和
2.361
15814.142
0.750
0.042 0.892
0.175
0.509
0.434 0.222
0.121
0.617
住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅢ t 値が著しく小さな「共用空間の種類数」を外し、 対人的志向性の4因子を取り入れて検証した。 table.6-25 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅢのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.660
自由度調整R2乗
0.299
誤差の標準偏差(RMSE)
58.109
Yの平均
79.209
オブザベーション(または重みの合計)
34
table.6-26 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅢの分散分析結果 分散分析 要因
モデル
自由度
誤差
全体(修正済み)
12 21 33
平方和
3148.514
平均平方
2043.582 5192.096
262.376
97.313
F値
2.6962
p値(1Prob>F)
0.0225
R2 乗は上昇したが、依然としてモデルの有効性が低い。 次項では、もう一度 t 値から説明変数項目を選定する。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
130 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅣ まず、対人的志向性の4因子の中で、前項のモデルにおいて最も t 値が低かった「交際性」を 説明変数から除外した。その後、モデル化後のフィードバックがしづらい項目である「利用者間 でのダイニングでの会話の有無」 、 「来訪者とのリビングでの会話の有無」の2変数を除外し、改 めて解析を行った結果が以下である。 table.6-27 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅣのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.633
自由度調整R2乗
0.362
誤差の標準偏差(RMSE)
55.431
Yの平均
79.209
オブザベーション(または重みの合計)
34
R2 乗は 0.63 とまずまずのあてはまり度であり、調整後の R2 乗の値も前回のモデルを上回っ ている。 そこで、「このモデル式は役に立たない」という帰無仮説を立て、この検証を行う。分散分析 の結果の p 値は 0.0432(< 0.05 =有意水準 α)であり、この仮説は棄却された。よって、こ のモデル式は最長会話時間を予測する際に役に立つことが明らかとなった。 table.6-28 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅣの分散分析結果 分散分析 要因
モデル
自由度
誤差
平方和
14
100499.46
19
全体(修正済み)
平均平方
7178.53
58378.4
33
F値
2.3363
3072.55
158877.87
p値(1Prob>F)
0.0432
次に、各説明変数と最長会話時間予測モデルの関係について見ていく。本モデルにおいて最も 影響が強い説明変数は t 値より、 「シェア空間の定員」であることがわかる。また、その他にも 対人的志向性の1因子である「干渉性」 、 「所属先構成」も強い影響を与えることが読み取れる結 果となった。 table.6-28 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅣの効果の検定 効果の検定 要因
シェア空間の定員
パラメータ数
関心性
干渉性
孤高性
アクセス
フロア構成
所属先構成
滞在期間
1
自由度
1
1
1
1
1
2
6
1
1
1
1
1
1
2
6
平方和
28254.252 1017.559
15538.996 6056.025
2967.285
6307.988
28268.852
29861.833
F値
9.196
0.331
5.057
1.971
0.966
2.053
4.600
1.620
p値(Prb>F)
0.007
0.572
0.037
0.177
0.338
0.168
0.024
0.196
以後、住まいのシェアにおける最長会話時時間 - 構成要素モデルⅣを単に住まいのシェアにお ける最長会話時時間 - 構成要素モデルと呼ぶ。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
131 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅠ 説明変数として空間要素に加え、既に示してあるソーシャル得点と説明変数との相関関係から、 相関の強い「利用者間でのダイニングでの会話の有無」の項目をピックアップした。これに、対 人的志向性の4因子を加えた11項目によるモデル化を試みた。 table.6-29 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅠのあてはめ要約
あてはめの要約 R2乗
0.5463815
誤差の標準偏差(RMSE)
12.132679
自由度調整R2乗
0.0644119
Yの平均
15.220588
オブザベーション(または重みの合計)
34
調整後の R2 乗の値が著しく小さく、非常にあてはまりの悪いモデル式であることがわかる。 table.6-30 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅠの分散分析結果 分散分析 要因
モデル
自由度
誤差
全体(修正済み)
17
平方和
16
33
2836.8651
平均平方
166.874
2355.2305
F値
147.202
5192.0956
1.1336
p値(1Prob>F)
0.403
p 値も 0.403 と有意水準をはるかに超えており、ソーシャル得点を予測するモデル式としては 役に立たないことがわかった。 t値に着目すると、「交際性」 「関心性」の2項目が非常に小さく、ほとんど予測に影響を与え ていないことがわかる。逆に「フロア構成」は唯一p値が有意水準を満たしており、t値から見 ても最も予測に影響を与えている要素である。 table.6-31 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅠのパラメタ推定値 パラメータ推定値 項
切片
推定値
9.973
交際性
-0.189
干渉性
-4.074
関心性 孤高性
シェア空間の定員
共用空間の種類数
-0.179
3.316
0.017
1.178
アクセス[1共用部分を通らないと自室に行けない]
-3.374
利用者間でのダイニングでの会話の有無
11.989
フロア構成[1全員の個室が同じフロア(階)にある]
所属先構成[1全員が同じ所属]
所属先構成[2同じ所属の人も異なる所属の人もいる]
滞在期間[C 1ヶ月∼3ヶ月未満]
8.381
-6.180
5.808
4.270
標準誤差
22.097
t値
0.45
1.168
-0.16
2.000
-2.04
1.081 1.700
0.018
2.898
2.854 3.507
7.278
6.514 5.151
6.567
-0.17
1.95
0.94
p値 Prob>¦t¦
0.658
0.874 0.870 0.059
0.069
0.363
0.41
0.690
2.39
0.030
-1.18
0.255
1.65
0.119
1.13
0.276
-0.95
0.65
0.357
0.525
滞在期間[D 3ヶ月∼半年未満]
-0.594
5.639
-0.11
滞在期間[F 9ヶ月∼1年未満]
10.527
13.819
0.76
0.457
滞在期間[H 2年∼3年未満]
-0.676
7.554
-0.09
0.930
滞在期間[E 半年∼9ヶ月未満] 滞在期間[G 1年∼2年未満]
-7.715
-0.732
5.601
6.914
-1.38 -0.11
0.917 0.187
0.917
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
132 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅡ 前項における各説明変数の t 値を考慮し、 「交際性」 「関心性」と「共用空間の種類数」を除いた。 table.6-32 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅡのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.540
自由度調整R2乗
0.200
誤差の標準偏差(RMSE)
11.216
Yの平均
15.221
オブザベーション(または重みの合計)
34
調整後の R2 乗の値が大きくなったが、依然としてあてはめの悪いモデルであり、p値も有意 水準を上回っていることがわかる。 table.6-33 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅡの分散分析結果 分散分析 要因
モデル 誤差
全体(修正済み)
自由度
14 19 33
平方和
2801.755 2390.34
5192.096
平均平方
200.125 125.807
F値
1.591
p値(1Prob>F)
0.171
そこで、次項では既にモデル式を求めた「最長会話時間」を説明変数として用いて検証を試みる。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
133 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅢ 前項における各説明変数の t 値を考慮し、 「交際性」 「関心性」と「共用空間の種類数」を除いた。 table.6-34 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅢのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.611
自由度調整R2乗
0.28601757
Yの平均
15.2205882
誤差の標準偏差(RMSE)
10.598835
オブザベーション(または重みの合計)
34
調整後の R2 乗の値が大きくなったが、依然としてあてはめの悪いモデルであり、p値も有意 水準を上回っていることがわかる。 table.6-35 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅢの分散分析結果 分散分析 要因
モデル 誤差
全体(修正済み)
自由度 平方和 15
3170.0601
33
5192.0956
18
2022.0355
平均平方
F値
211.337 1.881 112.335
p値(1Prob>F)
0.101
次項では、ここからさらに t 値の小さい項目「シェア空間の定員」 「所属先構成」の項目を除外し、 再度モデル化を行う。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
134 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 接触行動モデルⅣ
table.6-36 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅣのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.606
自由度調整R2乗
0.381
誤差の標準偏差(RMSE)
9.865
Yの平均
15.221
オブザベーション(または重みの合計)
34
R2 乗の値も上昇し、p 値も有意水準を下回り、このモデルがソーシャル得点の予測に役立つ ことがわかる。 table.6-37 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅣの分散分析結果 分散分析 要因
モデル
自由度
誤差
全体(修正済み)
12
平方和
21 33
3148.514
平均平方
2043.582 5192.096
262.376
F値
97.313
2.6962
p値(1Prob>F)
0.0225
table.6-38 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅣの効果の検定 効果の検定 要因
干渉性
パラメータ数 自由度
孤高性
アクセス
フロア構成
利用者間でのダイニングでの会話の有無
滞在期間
最大会話時間
1
1
1
1
1
6
1
1
1
1
1
1
6
1
平方和
235.490
808.414
427.423
747.949
781.302
694.008
689.088
F値
2.420
8.307
4.392
p値(Prb>F)
0.135
0.009
0.048
7.686
0.011
1.189
0.350
8.029
7.081
0.01
0.015
住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルにおいては、属性要素である孤高性、 固定要素であるアクセス・フロア構成、ダイニングでの会話の有無、接触行動である最大会話時 間の影響が強いことがわかった。
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135 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
3-2.働く場のシェアにおける接触行動のモデル化
働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅠ こちらも住まいのシェアと同様、まずは変数を絞りこむために目的変数である「最長会話時間」 「ソーシャル得点」と説明変数候補との相関関係を求めた。 table.6-39 最長会話時間 / ソーシャル得点と可変要素との相関関係 最長会話時間
定員
共用空間の種類数
シェア空間広さ(㎡)
0.25171629
ソーシャル得点
0.06607506 -0.1361344
0.20355237 -0.0701751
0.31878477
作業空間以外の会話場所の有無
0.07253947
普段の人数
-0.2387201
0.23818483
0.07962309
1
利用している空間の数 最長会話時間
ソーシャル得点
-0.0029381 1
0.09546478 -0.1160441
0.07962309
その結果、明らかにどちらともに相関がみられない3つの項目を除外した。残った説明変数は 以下の7つである。 定員
固定要素
パーテーションの有無
固定要素
シェア空間広さ(㎡) 普段の人数 利用期間 利用頻度 利用時間
固定要素 可変要素 可変要素 可変要素 可変要素
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136 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #3.シェア空間構成要素と接触行動のモデル化
説明変数の絞り込み 次に、説明変数間の相関関係をみてみる。 「定員」 「シェア空間広さ」 、 「シェア空間広さ」 「普 段の人数」の間に強い相関が、 「定員」 「普段の人数」の間に比較的強い相関が見られた。 table.6-40 説明変数間の相関係数
定員
シェア空間広さ(㎡)
利用期間 利用頻度
普段の人数
定員
1
0.7202995
シェア空間広さ(㎡) 利用期間 0.720299501
利用頻度
0.1469958
普段の人数
0.5944099
1
-0.3242798
0.3640744
0.8089584
0.364074409
0.1370282
1
0.0950915
-0.2767468
-0.324279802
0.59440987
0.808958361
0.14699579
-0.2767468 1
0.0262532
0.1370282 0.0950915
0.0262532 1
これらの中で、任意回答項目であったために回答数の少ない「シェア空間広さ」を除外し、計 6つの説明変数を用いてモデル化を行っていく。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
137 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
働く場のシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅠ ここでは、前頁の検討の結果残った固定要素 / 可変要素による「最長会話時間」 「ソーシャル 得点」の予測モデルを作成のための検討を行っていく。まずは、全ての説明変数によるモデル化 を試みる。 table.6-41 働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅠのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.5525
自由度調整R2乗
0.3156
誤差の標準偏差(RMSE)
52.97
Yの平均
オブザベーション(または重みの合計)
70.122 27
R2 乗は 0.55 であり、これはまずまずのあてはまりである。 table.6-42 働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅠの分散分析結果 分散分析 要因
自由度
モデル 誤差
全体(修正済み)
9
17
平方和
58896
47699
26 106595
平均平方 F値 6544
2.3323
2805.8
p値(1Prob>F)
0.0634
p 値は 0.0634 であり、有意水準 α = 0.05 を少し上回ってしまった。この数値はこのモデル 式が役に立たないことを示している。
table.6-43 働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅠの効果の検定 効果の検定 要因
定員
パラメータ数
パーテーションの有無 利用期間 利用頻度 利用時間
普段の人数
1 2 1 1 3 1
自由度
1
平方和
34285
2
8623.3
1
20.467
1 3 1
6113.2
4348.3 28533
F値
12.219 1.5367 2.1787 0.0073 0.5166
10.1692
p値(Prb>F)
0.0028
0.2435 0.1582 0.9329
0.6764 0.0054
次に説明変数の各項目のt値を見てみると、 「定員」 「普段の人数」が予測に対して最も大きな 影響を与えていることが分かる。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
138 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
働く場のシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅡ ここでは、前頁のモデル結果から、 「利用頻度」を説明変数から除き、モデル式を立式した。 table.6-44 働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅡのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.552
自由度調整R2乗
0.353
誤差の標準偏差(RMSE)
51.489
Yの平均
70.122
オブザベーション(または重みの合計)
27
調整後の R2 乗の値が大きくなり、式のあてはまりは増したと言える。 table.6-45 働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅡの分散分析結果 分散分析 要因
モデル
自由度
誤差
全体(修正済み)
8
18
26
平方和
58875.3
47719.73
106595.03
平均平方
7359.41
2651.1
F値
2.776
p値(1Prob>F)
0.034
p 値を見ると、有意水準 α =を下回っており、この予測モデル式が役に立つことを示している。 次項では、さらにモデルのあてはめを良くするため、対人的志向性の4因子を説明変数に加え て、再度モデル化を行った。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
139 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
働く場のシェアにおける最長会話時間 - 接触行動モデルⅢ 「交際性」因子以外の3項目は t 値が非常に低い値をとり、ほとんど予測に影響を与えないこ とが判明したので、「交際性」のみを残し、最後にもう一度解析を行った。 table.6-46 働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅢのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.548
自由度調整R2乗
0.413
誤差の標準偏差(RMSE)
49.069
Yの平均
70.122
オブザベーション(または重みの合計)
27
調整後の R2 乗が 0.41 になり、モデルのあてはまりは向上した。
table.6-47 働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅢの分散分析結果 分散分析 要因
自由度
モデル 誤差
6
平方和
20
全体(修正済み)
26
58439.18
平均平方
9739.86
48155.84
F値
4.045
2407.79
106595.03
p値(1Prob>F)
0.008
p 値も有意水準 α = 0.05 を大きく下回る結果となり、この予測式が役に立つことが明らかに なった。
table.6-47 働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅢの効果の検定 効果の検定 要因
交際性
パラメータ数
定員
パーテーションの有無 利用期間
普段の人数
1
自由度
1 2 1 1
1 1 2 1 1
平方和
4369.965
F値
1.815
32217.23
13.380
2710.655
1.126
8881.679 24147.5
1.844
10.029
p値(Prb>F)
0.193 0.002
0.184 0.301 0.005
説明変数それぞれを見ると、 「定員」 「普段の人数」が予測に非常に大きな影響を与えているこ とがわかる。以降は、働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルⅢを単に働く場の シェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルと呼ぶ。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
140 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅠ まずはじめに、相関係数から絞りこんだ6つの説明変数に対人的志向性の4項目を加え、10 個の説明変数によるモデル化を試みる。 table.6-48 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅠのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.528
自由度調整R2乗
0.055
誤差の標準偏差(RMSE)
12.518
Yの平均
17.444
オブザベーション(または重みの合計)
27
調整後の R2 乗の値は 0.05 であり、これはこのモデル式が5%の寄与率しかないということ である。 table.6-49 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅠの分散分析結果 分散分析 要因
自由度
モデル 誤差
全体(修正済み)
13
平方和
13 26
2275.908
平均平方
2037.259
4313.167
175.07
F値
156.712
1.1171
p値(1Prob>F)
0.4224
p 値も 0.42 という値をとっており、この予測式が 42% の確率で外れるということである。
table.6-50 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅠのパラメタ推定値 パラメータ推定値 項
切片
推定値
3.680
交際性
-0.025
干渉性
-0.124
関心性
孤高性 定員
パーテーションの有無[A 1人1人の作業場が仕切られている] パーテーションの有無[B 数名単位で作業場が仕切られている] 利用期間 利用頻度
-0.651
-0.890
0.412
22.046
t値
0.17
1.090
-0.02
3.781
-0.03
1.411 1.480 0.315
7.641
-0.46 -0.6
1.3
2.89
10.755
-2.09
0.283
1.566
0.18
0.763
-7.576
利用時間[C 6時間以上9時間未満]
-0.388
普段の人数
21.103
-22.522
利用時間[A 3時間未満]
利用時間[B 3時間以上6時間未満]
標準誤差
-3.515
0.667
0.626
1.22
6.925
-1.09
7.332
-0.05
6.939
0.861
-0.51
0.78
p値 Prob>¦t¦
0.864 0.982
0.652
0.974 0.558 0.215 0.013
0.056
0.245 0.860
0.294 0.621
0.959
0.452
説明変数の中では、「パーテーションの有無」が最も予測に対して大きな影響を与えているこ とが読み取れる。またt値を見ると、外的志向性の4項目はどれも値が小さく、予測に大きな影 響を与えていないことが判明した。そこで、次のモデルでは属性項目として「性別」 「年代」 「職」 の3項目を追加して、検証を行っていく。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
141 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅡ R2 乗によりあらわされるモデルのあてはまりが非常に高くなっているが、これは単純に項目 の数を増加させたことによるものだと考えられる。その証拠に調整後の R2 乗は依然として微小 な値をとっており、p 値も有意水準を大きく上回っているため、 「このモデル式は役に立たない」 ことが明らかである。 table.6-51 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅡのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.891
自由度調整R2乗
0.293
誤差の標準偏差(RMSE)
10.832
Yの平均
17.444
オブザベーション(または重みの合計)
27
table.6-52 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅡの分散分析結果 分散分析 要因
自由度
モデル 誤差
22 4
全体(修正済み)
26
平方和
3843.818
平均平方
174.719
469.349
F値
117.337
4313.167
1.489
p値(1Prob>F)
0.381
説明変数の各項目に着目すると、 「性別」 「利用期間」 「定員」がいずれも微小な F 値をとっており、 予測への影響が小さいと言える。そこで次はこの3項目を除いたモデルを検証する。
table.6-53 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅡの効果の検定 効果の検定 要因
性別
パラメータ数
年代 職
定員
パーテーションの有無 利用期間
利用頻度
利用時間
普段の人数
1
4 8 1
2 1
1
3 1
自由度
1
4
平方和
2.526
607.461
8
1261.672
2
1573.682
1
75.545
1
1
3 1
26.980 3.845
305.660
137.442
F値
0.022
1.294
1.344 0.230 6.706
0.033
0.644 0.868
1.1713
p値(Prb>F)
0.890
0.404 0.412 0.657 0.053
0.865
0.467 0.527 0.34
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
142 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #2.接触行動と創発のモデル化
働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅢ R2 乗は 0.88 であり、モデルのあてはまりが良いことが示されている。しかし、p 値は有意水 準 α = 0.05 を上回ってはいるが、α = 0.10 を下回ってはいるため、本モデルには有意傾向が あると言える値である。 table.6-54 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅢのあてはめ要約 あてはめの要約 R2乗
0.880
自由度調整R2乗
0.554
誤差の標準偏差(RMSE)
8.606
Yの平均
17.444
オブザベーション(または重みの合計)
27
table.6-55 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅢの分散分析結果 分散分析 要因
モデル
自由度
19
誤差
平方和
7
全体(修正済み)
26
3794.7427
平均平方
199.723
518.424
74.061
4313.1667
F値
2.6968
p値(1Prob>F)
0.0919
説明項目を詳細に見ていくと、 「パーテーションの有無」がソーシャル得点の予測には最も大 きな影響を与えることがわかる。各項目の p 値を見てみると、 「年代」 「職」 「パーテーション」 の3項目は有意水準である 0.10 を下回っており、モデル式の予測に有効な要因であることがわ かる。なお、 「利用頻度」「利用時間」 「普段の人数」の 3 項目に関しては、p 値が大きな値であり、 予測に用いるには妥当な結果を得られないという危険を伴うと言える。
table.6-56 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅢの効果の検定 効果の検定 要因
年代
パラメータ数
4
自由度
4
職
8
8
利用頻度
1
1
普段の人数
1
1
パーテーションの有無
利用時間
2
3
2
平方和
977.669
1725.393
F値
3.300 2.912
p値(Prb>F)
0.081 0.088
1798.842
12.144
0.005
382.632
1.722
0.249
3
81.294
114.559
1.098
1.547
0.330
0.254
以降では、働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルⅢを単に働く場のシェア におけるソーシャル得点 - 構成要素モデルと呼んでいく。
利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
143 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #4.シェア空間における時間遷移価値モデル
#4.シェア空間における時間遷移価値モデル ここでは、これまでの分析で明らかになったシェア空間の構成要素、接触行動、付加価値とし ての創発の関係についてまとめていく。 【接触行動 - 創発モデル】 □属性要素:交際性/関心性/干渉性 □行動要素:ソーシャル得点/最長会話時間 これらの要因によって、創発得点は強く影響を受けるが、特にソーシャル得点の持つ影響が大 きい。
【住まいのシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデル】 □属性要素:干渉性 □固定要素:シェア空間の定員 □可変要素:所属先構成 これらの要因によって、最長会話時間は影響を受けるが、特にシェア空間の定員の持つ影響が 大きい。 【住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデル】 □属性要素:孤高性 □固定要素:アクセス/フロア構成/会話の出来るダイニング □行動要素:最大会話時間 これらの要因によって、ソーシャル得点は強い影響を受けるが、特にアクセスを除いた4要素 に強い影響を受ける。 【働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデル】 □固定要素:定員 □可変要素:普段の人数 これらの2要素に強い影響を受ける。 【働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデル】 □属性要素:年代/職種 □固定要素:パーテーションの有無 これらの要素に強い影響を受けるが、特にパーテーションの有無による影響を強く受ける。 以降の頁において、1つ1つのモデルについて考察していく。
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144 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #4.シェア空間における時間遷移価値モデル
【接触行動 - 創発モデル】 □属性要素:交際性/関心性/干渉性 □行動要素:ソーシャル得点/最長会話時間 4
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fig.6-2 接触行動 - 創発モデルにおける各説明変数の t 値
グラフ(fig.6-2)より、創発得点は属性要素[関心性、 干渉性]から負の影響を、 行動要素[ソー シャル得点]から正の影響を受けることが見て取れる。これはつまり、より他人のことに干渉す る人は創発性が低く、より多くの人と知り合う程創発性が高くなることを示している。また、最 大会話時間が負の影響を及ぼしている点も興味深い点である。これはつまり、長々と話し込んで いる人は創発的な会話が行われていないということを示していると推察される。 創発とは、日常生活の中で、他者と何らかのかたちで交流を持った際に生まれやすい。ここで 大切なことは、当人にとってその交流にどの程度の刺激があるかということである。本調査で扱っ たソーシャル得点は「最近1ヶ月で」という限定条件をつけて、知り合った人の数を聞いている。 この項目と創発の依存度が高いということは、日々様々な変化の中に身を置くことで刺激を受け、 自らの発想のヒントとなる価値を手に入れられるということを示している。 、また、最長会話時 間に影響を受けているということは、知り合うことと同時に、その程度の関係性を作ることがで きるかが重要であるということであろう。
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145 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #4.シェア空間における時間遷移価値モデル
【住まいのシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデル】 □属性要素:干渉性 □固定要素:シェア空間の定員 □可変要素:所属先構成
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fig.6-3 住まいのシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルにおける各説明変数の t 値
グラフ(fig.6-2)より、会話時間は固定要素[定員、共用部分を通らないと個室に行けない、 全員の個室が同じフロアにある]と可変要素[同じ所属の人も違う所属の人もいる]より正の影 響を、可変要素[全員が同じ所属]より負の影響を受けることがわかる。また、滞在期間をモい ると、始めのうちは正の影響を受けるが、滞在期間が伸びるほど負の影響を強く受けることがわ かる。このことから、空間構成としては、なるべくシェア仲間と出会う頻度が高くなるような動 線作りをしておくと、会話時間が長くなることが期待出来るということである。しかし、接触行 動 - 創発モデルのグラフに示されている通り、会話時間が伸びすぎてしまうと、創発性が低くな ることが予想されるので、この点には注意が必要である。
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146 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #4.シェア空間における時間遷移価値モデル
【住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデル】 □属性要素:孤高性 □固定要素:アクセス/フロア構成/会話の出来るダイニング □行動要素:最大会話時間
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fig.6-4 住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルにおける各説明変数の t 値
グラフ(fig.6-4)を見るとまず気付くのが、強い影響を及ぼす要素が多いという点である。何 か1つの要素だけではなく、複数の要因が絡み合って人と人のつながりが生まれているというこ とだろう。また、属性要素[孤高性]が高まる程、つながりが多く生まれ、逆に干渉性が高まる ほど、つながりには負の影響を及ぼす。また、全員の個室が同じフロアにあると、外部とのつな がりは生まれやすく、逆に共用部分を通らないと個室に行けないようなプランでは、繋がりに対 しては負の影響を与えるということがわかる。 このモデルにおいて興味深いのは、固定要素が数多く影響しているという点である。ソーシャ ル得点という「過去1ヶ月に」何人の人と知り合いになったか、という尺度に対し、可変要素 ではなく、固定的な要素が影響しているため、ソーシャル得点の先にある付加価値―創発を生む ような住まいや働く場の計画(創発空間)が可能であると示している。また、利用者側から見れ ば、こういった自分ではなかなか変えることの出来ない要素を考慮してシェア空間を選択するこ とで、創発という付加価値に出会えるかどうかが決定する可能性があるということである。
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147 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #4.シェア空間における時間遷移価値モデル
【働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデル】 □固定要素:定員 □可変要素:普段の人数 これらの2要素に強い影響を受ける。
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fig.6-5 働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデルにおける各説明変数の t 値
グラフ(fig.6-5)を見ると分かる通り、会話時間に関しては固定要素[パーテーションにより 仕切られている]が圧倒的に影響が大きい。また、属性要素[年代]を見ると、20ダイがピー クで年齢を重ねるごとに影響が小さくなっていく。 最長会話時間がそのシェア空間の定員から強い影響を受けているという点において、住まいの シェアと働く場のシェアには共通点が見られるモデルとなった。ただし、住まいの場合には所属 先であった影響する可変要素が、働く場であると普段の人数になっている。
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148 第 6 章 分 析 - 考 察 - シ ェ ア 空 間 に お け る 時 間 遷 移 価 値 モ デ ル #4.シェア空間における時間遷移価値モデル
【働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデル】 □属性要素:年代/職種 □固定要素:パーテーションの有無
fig.6-7 働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデルにおける各説明変数の t 値
このモデルでは、定員と普段の人数が全く逆の作用として働いていることが見て取れる(fig.67)。定員は強い正の影響を与え、 普段の人数は強いふの影響を与えている。他のモデルに p 比べ、 説明変数が絞り込まれているので、比較的影響の予測が立てやすいモデルであると言えるだろう。 パーテーションの項目を見ると、どちらも t 値が微小な値をとっており、パーテーションの有無 はつながりという点から見ると、大きな差はないと言える。
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149
第 7 章
総括
Chapter 7
Summary #1.研究総括 #2.展望
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150 第 7 章 総括 #1.研究総括
#1.研究総括 以下に本研究の成果を記す。 ⃝シェア空間利用者と非利用者では、日常的に出会う人の数が異なり、シェア空間利用者は 非利用者に比べ、新たな人とのつながり頻度が低い。 ⃝シェア空間利用者は、それぞれが異なる所属先であるケースが多く、そのため会話の内容 として仕事や自分のプライベートな会話が多くなる傾向がある。また逆に利用していない人 は、その他に属する会話を行っていることが多い。 ⃝住まいのシェアにおいては、共用空間の種類が多いほど、利用者間の会話も頻繁に行われ る傾向にある。 ⃝シェア空間における5つのモデルを作成し、各人の属性を考慮したシェア空間の構成と会 話行為や他者とのつながりの関係、会話や他者とのつながりと創発の関係の一端を明らかに することが出来た。 本研究で作成したモデル: 【接触行動 - 創発モデル】 【住まいのシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデル】 【住まいのシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデル】 【働く場のシェアにおける最長会話時間 - 構成要素モデル】 【働く場のシェアにおけるソーシャル得点 - 構成要素モデル】 上記モデルを用いることで、シェア空間における構成要素と接触行動、創発の関係を求める ことが出来る。
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151 第 7 章 総括 #2.研究総括
#2.展望 本研究は、共住、共働、共費などのシェアの流れが徐々に世の中に広まりつつある中、こ れまでの空間の捉え方では捉えきれていないであろう「人のいる空間」の価値についてモデ ル化を行った。 シェア空間の構成要素と利用者の会話、つながりの関係に加え、 「創発」をキーワードに 日常生活の中での他者とのかかわり合いから生まれるアイデアや気づき、スキルの習得とい う行動の付加価値までを含め、その関係性を明らかにできた。 しかし、「共異体」という概念を持った若い世代による、新しい空間のシェア利用の時代 はまだ始まったばかりであり、課題はまだまだ残されている。以下に、本研究が踏み込めず に終えてしまった課題点をいくつか挙げておく。 .本研究で行った調査は、不特定多数のシェア利用者を対象にしていたため、シェア空間を 数点に絞り、詳細な行動調査を行うことは出来ていない。加えて、同じシェア空間を利用す る者同士でのデータの比較検討を行うことで、より「空間に人のいる価値」の本質に迫るこ とが出来ると思われる。 ・本研究では、利用者の入れ替わりとともに時間変化していくシェア空間の価値遷移につい て網羅的なモデル化を行うには至っておらず、利用者の所属先構成や利用期間などの限られ た情報によるあてはめを行った。本研究で取り上げていない、そこにいる人が生み出す空間 の価値に言及する後続研究に期待する。
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謝辞
今、1月30日、午後3時41分。早苗のおじちゃんには17時までに来いと言われて いるので、あと…うぅ頭働いてないね。 卒論に引き続き、修論までこんなギリギリな感じになるとは。いやはや。 今日の疑問:なぜみんな謝辞、謝辞って言うのに、 「おわり」にっていうタイトルなの? だったら謝辞ってタイトルつけて謝辞書いた方がいいんじゃない?「おわりに」なのに 謝辞を書くのが当然みたいな雰囲気がありますよね。 はい。 では僕もここからは本格的に謝辞を。つらつらと。 仁史先生、この1年間先生と一緒に過ごせて本当に良かったと思っています。よく林田 先生が、 「俺らの頃なんかより、よっぽど先生と一緒にいるよ、お前らは」っておっしゃっ ています。もしそうだとしたら、本当に良かった。失礼な言い回しかもしれませんが、 先生はやっぱり凄いんだな!と感じたのが、P 社との会議の時でした。先生が話されて いる横で、この人はデザイナーなんだなと感じていました。この研究室に入って良かっ た。改めて感じた日でした。僕は本当は古谷研に行こうとずっと思っていたんです。実 は。でも、気が付いたらなぜだか、ここにいました。本当に、そんな感覚なんです。も しこの研究室に入っていなかったら、これから進もうと思っている道にも気付かないで 通り過ぎていたかもしれません。そんな、視野を広げてくれる、とてもいい環境でした。 改めて、ありがとうございました! 林田先生、正直に言います。最初、誰なんだこのおじさんは、って思ってました。 。す みません。でも、僕は林田ゼミに入れて良かった。行動ゼミではなく、僕らの代にとっ ては林田ゼミでした。ええ、本当に。 「偉くなったら奢ってね」ってこの前言ってまし たよね。ぜひ奢らせて下さい。偉くなってからですけどね!林田先生にはいつも、お前 はどう思ってるんだって聞かれてましたよね。これ、実はかなりいい訓練になったと思 います。いつもほとんど何も考えずに、とりあえず話し出してしまう僕にとっては、一 番苦手な質問だったかもしれませんね(笑) 夏子さん、一回夏子さんと一緒にプロジェクトやりたかったです。僕は本当に絡みが少 なかったので、いつも家族みたいな健康ゼミは見ていて大好きな雰囲気でした。 こうすけ氏、尊敬してます。これ、本当です。 ばっちーさん、、、、、 、 、 、?、 、 、 、 、ぶっちーさん、いつものムードメーカーなぶっちーさ んも、真剣に図面引いてるぶっちーさんも、大好きです。 あれ、もう 1 枚目終わる、 、 、今午後4時8分。時間なくなってきた、 、 利用者 ‒ 来訪者との接触行動から見たシェア空間の時間遷移に関する研究 Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2011
謝辞
M 2の皆様、お疲れさまでした!卒業おめでとう! S 棟の住人たち、この1ヶ月間はやっぱりなんだかんだ楽しかったですね。本当は一人 一人にコメントしたいんだけど、早苗のおっちゃん待たせらんないからね。旅行でいく らでも話しましょ。 あ、とりあえずこれだけ。木戸!たばこやめてんじゃねーよ!
ひろき、ひろきは本当に頼もしい後輩です。その決断力と計画性、見習います。 M 0のみんな、恐らくあとの2人はこれを読むことも無さそうなので、仲良し4人組 宛で。お前らの関係性、好き。良い感じ。 そして、この論文に協力してくれた皆様、本当にありがとうございました! もえこ、肉食いにいこう、肉! ししょー、なんだか卒論の時のあなたとは別人な感じよね。出来るコって感じです。 そして最後に、最後の最後までホント色々手伝ってくれたゆりか、本当にありがとう。 あなたがいなければ絶対終わりませんでした。ホントにいろいろありがとう!まぁ、2 人で勝手にやれよって感じだと思うので、この辺で。 この論文のアンケートに回答して下さった皆様、本当にありがとうございました。この 場を借りて御礼申し上げます。 今、午後4時21分。そろそろこれもプリントアウトして、行かなきゃ。
じゃあね!!
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参考文献・引用資料 [文1] Douglas Rushkoff,LIfe Inc.:How the World Became a Corporation and How to Talk It Back (Random House, 2009),51. [文2] レイチェル・ボッツマン , ルー・ロジャース: 『SHARE -What's Mine Is Yours-(邦題:シェア<共有>から ビジネスを生み出す新戦略)』,NHK 出版 [文3] 三浦展:『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』,NHK 出版 [文4] 交通エコロジー・モビリティ財団 http://www.ecomo.or.jp/index.html [文5] http://www.kaho.biz/daigaku.html [文6] シブヤ大学 http://www.shibuya-univ.net/ [文7] 墨東大学 http://bokudai.net/index.html [文8] http://tobefreedom.seesaa.net/article/156974244.html [文9] ソーシャルランチ http://www.social-lunch.jp/ [文10] リクルート住宅総研:既存住宅流通活性化プロジェクト報告書(2008.2) [文11] ルームシェア ルームメイト http://blog.roommate.jp/guide/roomshare-history/ [文12] http://jj.jp.msn.com/edit/chintai/share/100407/
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[文39] SHARE PARADE http://sharepare.jp/ [文40] MaGaRi http://ma-ga-ri.com/ [文41] Erikson, E.H. :Childhood and society.(New York ,Norton,1950) [文42] 内田治 , 松木秀明 , 上野真由美:すぐわかる JMP による多変量解析 , 東京図書(2005)
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[論文10] 横尾 貴之 , 遠田 敦 , 林田 和人 , 渡辺 仁史:生活情報としての音によるルームシェアでの生活意識・行動の 変化に関する研究 , 学術講演梗概集 . E-2, 建築計画 II ,pp.43-44 (2006) [論文11] 菊地 菜穂子 , 早川 敬之 , 戸波 幸子 , 真野 洋介 , 初見 学:会話の発生と空間構成の関係 : グループホームに おける心理的介護と空間構成に関する研究 その 2(2002 年度大会 ( 北陸 ) 学術講演梗概集 ) , 学術講演梗概集 . E-1 ,pp.937-938 (2002) [論文12] 濱 洋子 , 山田 あすか , 芦沢 由紀 , 上野 淳:小規模生活単位特別養護老人ホームにおける入居者の生活交流 に関する研究 , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.303-304 (2004) [論文13] 森 明生 , 恒川 和久 , 加藤 彰一 , ロウ ピータ ル:オフィスにおける平面構成 , ワークスタイル , 交流行動の 相互関係に関する研究 , 日本建築学会計画系論文集 (551) ,pp.129-134 (2002) [論文14] 藤田 敏郎 , 谷口 元 , 恒川 和久 , 籾山 明久:オフィスレイアウトの変更によるワーカーの行動変化に関する 研究 , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.191-192 (2003) [論文15] 五十嵐 貴子 , 水野 里美 , 松本 裕司 , 仲 隆介 , 山口 重之:ワークプレイスにおけるコミュニケーションに関 する研究 その 1 量的な視点からの活動把握 , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.557-558 (2007) [論文16] 現海 紘次 , 水野 里美 , 松本 裕司 , 仲 隆介 , 山口 重之:ワークプレイスにおけるコミュニケーションに関す る研究 その 2 対面によってやりとりされる情報内容とその状況に着目して , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計 画 I ,pp.559-560 (2007) [論文17] 現海 紘次 , 篠原 亨 , 松本 裕司 , 仲 隆介:ワークプレイスにおけるコミュニケーションに関する研究 その 3 異なる環境でのコミュニケーション行動の量的分析 , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.273-274 (2008) [論文18] 花田 陽一 , 現海 紘次 , 松本 裕司 , 仲 隆介:ワークプレイスにおけるコミュニケーションに関する研究 その 4 : 異なる環境でのコミュニケーション行動の関係構造分析 , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.275-276 (2008)
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[論文19] 八塚 裕太郎 , 谷口 美虎人 , 坂下 義明 , 松本 裕司 , 城戸崎 和佐 , 仲 隆介:オフィスにおける場所の性質がコ ミュニケーションに与える影響 その 1 内部・外部・中間領域をもつオフィスを事例として , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.405-406 (2010) [論文20] 谷口 美虎人 , 八塚 裕太郎 , 坂下 義明 , 松本 裕司 , 城戸崎 和佐 , 仲 隆介:オフィスにおける場所の性質がコ ミュニケーションに与える影響 その 2 内部・外部・中間領域をもつオフィスを事例として , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.407-408 (2010) [論文21] 羽竜 清也 , 山本 和恵:高齢者の生活行為と会話実態からみるリビングに関する研究 戦後開拓農村の地縁実 態を事例として , 日本建築学会東北支部研究報告集 . 計画系 (67) ,pp.299-302 (2004) [論文22] 石井 敏:3 つのユニットにおける利用者・スタッフ相互の関わり方からみた考察 生活の質や雰囲気に影響 を与える環境要素に関する研究 その 1 , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.281-282 (2005) [論文23] 八塚 裕太郎 , 松本 裕司 , 仲 隆介:知的生産性向上に向けてオフィスに期待される効果と空間デザインに関 する予備的研究 , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.289-290 (2008) [論文24] 八塚 裕太郎 , 松本 裕司 , 仲 隆介:知的生産性向上に向けてオフィスに期待される効果と空間デザインに関 する予備的研究 その 2 , 学術講演梗概集 . E-1, 建築計画 I ,pp.529-530 (2009) [論文25] 斎藤 和志 , 中村 雅彦:対人的志向性尺度作成の試み , 名古屋大學教育學部紀要 . 教育心理学科 34, pp.97109 (1987) [論文26] 大野 久:現代青年の充実感に関する一研究 : 現代日本青年の心情モデルについての検討 , 教育心理学研究 32(2) ,pp.100-109 (1984) [論文27] 大野 久:現代青年の充実感に関する研究 1 , 日本教育心理学会総会発表論文集 (22) ,pp.548-549(1980)
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第Ⅱ部
資料編
Part Ⅱ
Appendix
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調査に使用したアンケートフォーム
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1.している
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1住まいのシェア
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2働く場のシェア
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2.していない
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アンケート回答者の利用するシェア空間 住まいのシェア 【三茶ハウス】 ・所在地:東京都世田谷区太子堂 【AP ハウス】 ・所在地: ・HP:http://www.apumate.net/aphouse/index.html 【やかまし東京シェアハウス】 ・所在地:大塚 ・HP:http://www.noisyvillage.org/b/archives/116 【トーキョーよるヒルズ】 ・所在地:東京都港区六本木 ・HP:http://ja-jp.facebook.com/YoruHill 【ギークハウス水道橋】 ・所在地:千代田区三崎町 ・HP:http://geekhouse.tumblr.com/post/1421779139/suidoubashi 【渋家】 ・所在地:恵比寿 ・HP:http://shibuhouse.com/ 【シェアハウスむらびと】 ・所在地:東京都豊島区東池袋 ・HP:http://www.murabito.co.jp/ 【シェアハウス 『ツチラボ (Tsuchi Lab.)』 】 ・所在地:池袋 ・HP:http://ja-jp.facebook.com/tsuchilab 【福岡シェアハウス またたび】 ・所在地:福岡県博多区/早良区/南区 ・HP:http://share-house.info/
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アンケート回答者の利用するシェア空間 【イロハビル】 ・所在地:東京都千代田区東神田 ・HP:http://web.me.com/myrelalixfe/ILOHA_bldg/Welcome.html 【Yokobayashi】 ・所在地:新宿 ・HP:http://www.yokobayashi.net/
働く場のシェア 【Lightning Spot 渋谷】 ・所在地:東京都渋谷区渋谷 ・HP:http://lightningspot.com/ 【PAX Coworking】 ・所在地:世田谷区経堂 ・HP:pax.coworking.jp 【ネコワーキング】 ・所在地:東京都千代田区三崎町 ・HP:http://necoworking.com/ 【タネマキ】 ・所在地:神奈川県横浜市西区岡野 ・HP:http://tane-maki.net/ 【下北沢 OSSCafe】 ・所在地:東京都世田谷区代田 ・HP:http://www.osscafe.net/ 【勉強カフェ】 ・所在地:東京都港区芝浦 東京都千代田区外神田 東京都渋谷区千駄ヶ谷 ・HP:http://benkyo-cafe.net/
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アンケート回答者の利用するシェア空間 【カフーツ】 ・所在地:神戸市中央区多聞通 ・HP:http://cahootz.jp/ 【JUSO Coworking】 ・所在地:大阪 十三 ・HP:http://juso-coworking.com/ 【新大阪コワーキング】 ・所在地:大阪市淀川区西宮原 ・HP:http://www.shin-osaka.in/ 【kyobayashi TORSO】 ・所在地:東京都中央区京橋 ・HP:http://kyobashitorso.wordpress.com/
http://www.facebook.com/kyobashiTORSO
【cococi Coworking Space】 ・所在地:東京都調布市仙川町 ・HP:http://cococi-coworking.com/ 【THE SHARE】 ・所在地:東京都渋谷区神宮前 ・HP:https://www.the-share.jp/ 【カタリスト BA】 ・所在地:東京都世田谷区玉川 ・HP:http://creative-city.jp/about/catalystba.html 【アントレハウス駒沢】 ・所在地:東京都世田谷区駒沢 ・HP:http://www.nanoni.co.jp/komazawa/ 【202cafe】 ・所在地:京都市左京区修学院大林町 ・HP:http://202cafe.com/
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アンケート回答者の利用するシェア空間 【小春日和 函館】 ・所在地:北海道函館市八幡町 ・HP:http://www.8space.info/ 【Open Network Lab】 ・所在地:渋谷区恵比寿南 ・HP:http://onlab.jp/
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