すきま時間と都市の「遊び心空間」

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すきま時間と都市の「 遊 び 心 空 間 」 An Improving Methodology of Urban Impression on Time Leeway and Fun-Driven Space


はじめに

1

ふと時間があいたとき 普段のわたしなら 帰宅して昼寝をしていたでしょう そんなとき知り合いの方が 二子玉川のカフェを紹介して下さいました オープンテラスに こだわりを持ってそろえられたお皿 そのお皿にのるやさしい味のお昼ごはん そのカフェは なんとも気持ちよく あたたかで わたしの心を幸せにしてくれました

ふと時間があいたとき わたしだったら昼寝する でもあのこだったらウィンドウショッピングに出かけるだろう あのひとだったらカフェで勉強するかもしれない あいつは公園で散歩でもするのかな わたしが知らないだけで いろいろな時間の過ごし方がある 二子玉川のカフェを発見できたように もっとすてきな過ごし方との出会いがあるかもしれない

ふと時間があいたとき みんなは何をして過ごすのだろう そんな興味から、この研究は始まりました

002


もくじ


第一部 本編 002                                    はじめに 1 008                                    研究背景 2 2.1 都市の視点から   2.1.1 都市マーケティング                        009   2.1.2 おまけとマーケティング                      013   2.1.3 「おまけ」を都市の中で過ごす                    015 2.2 時間の視点から   2.2.1 時間学                              018   2.2.2 都市の中での余暇の過ごし方                    019   2.2.3 時間に制限がある余暇の過ごし方                  020 2.3 既往研究から見た本研究の位置づけ   2.3.1 都市の中での余暇の過ごし方に関する研究              023   2.3.2 時間に制限があるときの過ごし方に関する研究            025 028                                研究概要 3 3.1 用語の定義                               029 3.2 研究目的                                033 3.3 研究フロー                               034 035                                研究方法 4 4.1 実験概要   4.1.1 実験目的                             036   4.1.2 実験内容                             037   4.1.3 実験手順                             040   4.1.4 教示内容                             041 4.2 実験方法   4.2.1 実験場所の検討                          043   4.2.2 すきま時間に嗜好する空間に関するアンケート            044   4.2.3 都市の印象に関するアンケート                   045 4.3 実験フロー                               046


047                                調査結果 5 5.1 統計   5.1.1 男女                               048   5.1.2 性格                               049   5.1.3 すきま時間に関する経験                      050   5.1.4 駅周辺を歩く際の情報源                      051   5.1.5 慣れ・不慣れ                           052   5.1.6 「遊び心空間」の選択動機                      053 5.2 マップ   5.2.1 東京駅周辺のマップ                        057   5.2.2 上野駅周辺のマップ                        075 5.3 都市印象評価                              093 094                                   分析 6 6.1 充実度上下別                              095 6.2 男女別                                 102 6.3 性格別                                 110 6.4 慣れ・不慣れ別                             118 6.5 スポットの形状別                            126 130                                  考察 7 7.1 建物との関係                              131 7.2 各駅の印象評価について   7.2.1 3段階評価マップ                         135   7.2.2 印象評価                             138   7.2.3 景色を見ている・見ていない                    139   7.2.4 静動                               143 147                                 まとめ 8 8.1 結論                                  148 8.2 展望                                  149


150                                おわりに 9 9.1 謝辞                                  151 9.2 参考文献                                152

第二部 資料編


第一部 本編


第二部 資料編 |アンケート |アンケート集計エクセルデータ |各被験者のマップデータ |マップ内自由記述まとめ


研究背景

2

2.1 都市の視点から   2.1.1 都市マーケティング   2.1.2 おまけとマーケティング   2.1.3 「おまけ」を都市の中で過ごす 2.2 時間の視点から   2.2.1 時間学   2.2.2 都市の中での余暇の過ごし方   2.2.3 時間に制限がある余暇の過ごし方 2.3 既往研究から見た本研究の位置づけ   2.3.1 都市の中での余暇の過ごし方に関する研究   2.3.2 時間に制限があるときの過ごし方に関する研究

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2 研究背景 2.1 都市の視点から

2

2.1 都市の視点から 2.1.1 都市マーケティング

近年、都市マーケティングが注目を集めている。都市の活力は、新しい事業機会の発生

を促し、都市発展の契機となり得る。この活力を維持・増進するために、都市自らを消費・ 堪能する顧客を作りだすことが必要となってくる。つまり、都市を「商品」として顧客に 提供することが求められるということである。いま都市は、厳しい社会経済情勢の中で生 き抜いていける「選ばれる都市」となるため、都市全体の価値向上と、積極的な情報発信 が必要不可欠であり、その手法のひとつとして、" 都市マーケティング " が一種の流行とし て注目されてきている。

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2 研究背景 2.1 都市の視点から

2

人々が街中で過ごすことが少なくなってきている原因は、日本が現在、長期不景気時代 の中にあるということにある。企業が行ったいろいろな調査結果から、その様子が具体的 に見て取れる。

株式会社マクロミルが行った「2010 年 クリスマスに関する調査」では、クリスマスの 過ごし方に関して図 2.1.1-1 のような調査結果が得られた。サンプル数 500 のうち、45% が「家でのんびり過ごす」と回答し、1 位。そのあとは、2 位 16.8%「ホームパーティを する」、3 位 15.0%「仕事」と続き、街中で過ごす 4 位「レストランなどで外食をする」 は 10.8%に留まり、トップ3には入らなかった 文 1 )。  また、主婦と消費行動研究所が行った「主婦の不況対策に関するアンケート」では、生活 費抑制に効果的だと思う対策について図 2.1.1-2 のような調査結果が得られた。サンプル 数 407 人のうち、19.7%が「食費や外食代を減らす」と回答し、1 位。そのあとは、2 位 11.5%「外出を控える」、3 位 10.8%「計画的に買い物をする/まとめ買いをする」と続き、 トップ3はいずれも外出や消費に対して消極的意見が揃うといった結果となった 文 2 )。

図 2.1.1-1 2010 年 クリスマスに関する調査

図 2.1.1-2 主婦の不況対策に関するアンケート

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2 研究背景 2.1 都市の視点から

2

人々が街中で過ごすことが少なくなってきた現代であるが、その原因のひとつとなってい るのが、インターネットショッピングの広まりである。インターネットショッピングによっ て生活は大きく変化し、24 時間いつでも手軽に欲しい物が購入できるという点で非常に便

利になった。しかし、その手軽さゆえに、人々が外出する機会が減っており、目的物以外 のものが眼に入ることが少なく、二次的な消費の可能性を減少させてしまっている。

図 2.1.1-3 楽天

[「 楽 天 」 h t t p : / / w w w . r a k u t e n . c o . j p / ]

図 2.1.1-4 amazon.co.jp

[「 a m a z o n . c o . j p 」 h t t p : / / w w w . a m a z o n . c o . j p / ]

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2 研究背景 2.1 都市の視点から

2

前述したような、消費に対して消極的な現代社会を背景に、人々を街に連れ出し、活発

な経済を取り戻すためには、街全体の魅力を挙げる必要がある。そのひとつの策として、マー ケティングの考えを都市に応用する。マーケティングとは、調査・分析を行った上で求め られているサービスや商品を制作、情報発信を通して、顧客に提供する活動である。

図 2.1.1-5 マーケティング

マーケティングには以下の 2 通りの方法がある。  ・市場を調べ上げ、その上で顧客のニーズを満たしたサービスや商品を提供する方法  ・まだ無い新規市場を探して満たし、「市場創造」する方法 前者は、すでに開発された市場で、その商品の買い替えなどのチャンスを狙ったものである。 後者は、未開発の市場に対してサービスや商品を創る新規開拓である。この新規開拓(市場 創造)こそがマーケティングの本質であり、中心となる。未開の地を切り拓く活動には当然、 「顧客に受け入れられない可能性」というリスクが伴うもので、慎重な調査・分析が重要に なってくる。  時代が移り変われば、その時代に生きるひとたちの求める物も、共に移り変わっていく。 都市の発展においてもまた、時代の変化に合わせて現代の人のニーズを知り、そのニーズ に応えていくことが必要である。マーケティングにおける「サービス・商品」を「都市」、 「顧 客」を「住民」と言い換えれば、都市マーケティングにも適用することができる。都市が 担う広域での役割を都市のコンセプトとして、都市の諸資源を活用しながら「市場創造」し、 新しい需要を産み出していくことがその大目的となる。本研究では、「市場創造」の切り口 で都市マーケティングの新たな指標を導きだす 文 3 )。

012


2 研究背景 2.1 都市の視点から

2

2.1.2 おまけとマーケティング

おまけがついてくると、なんとなくワクワクした気持ちになったり、お得な気分になった

りする。おまけとは、ある商品を購入したときに、サービスとして追加で物品をつける行為、 またはその物品自体のことを言う。  おまけの歴史は江戸時代に始まる。富山の薬売りがお得意様に、売薬版画や日用品をサー ビスとして置いていったという記録が残されており、これが起源と考えられている。本格 的に「おまけ」として生産されたものには、19 世紀後半のアメリカにて「タバコカード」、 1919 年の日本にて「グリコ」などが挙げられる。

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2 研究背景 2.1 都市の視点から

2

[ 収集するおまけ ]

グリコやビックリマンシリーズに代表されるように、本来は目的物のおまけとして付加 されたものが、顧客の収集心を煽ってブームとなり、おまけの収集が目的化した例である。 これらのおまけは、購買意欲の持続を促している。

図 2.1.2-1 グリコ

[「 江 崎 グ リ コ 」 h t t p : / / w w w . g l i c o . c o . j p / ]

図 2.1.2-2 ビックリマンシリーズ

[「 食 玩 王 国 」 h t t p : / / w w w . s y o k u g a n - o h k o k u . c o m / ]

[ お得感のあるおまけ ]  最近、女性誌とブランド各社がコラボレーションして制作したオリジナルのおまけを付 加しているブランドムックが流行している。本物のブランド商品とは違って気軽に使用で きるため、極めてカジュアルなブランドバッグとして若い女性層に受け入れられている。 自分と同じように持って歩いている仲間がいるという、ある種の同胞感が得られることで、 これらのおまけは、購買意欲の拡大・増進を促している。

図 2.1.2-2 宝島社 ×marimekko のロゴ柄トート & ポーチ [「 宝 島 社 」 h t t p : / / t k j . j p / ]

購買意欲の持続や拡大・増進を促すおまけという手法は、マーケティングにおいて極め て有用である。

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2 研究背景 2.1 都市の視点から

2

2.1.3「おまけ」を都市の中で過ごす

以前、街の中にいたときに、予期せずして暇な時間ができてしまい、本来ならば行く予

定ではなかった喫茶店に訪れることになった。その喫茶店には気持ちの良いオープンテラ スがあり、小春日和の中でおいしいランチをいただくことができた。この経験によって私は、 その喫茶店のみならず、その街に対して好印象を抱くきっかけとなった。  予期せずして生まれた暇な時間を豊かに過ごすことができたからこそ、その都市につい て思わぬ良い印象の変化が私の中で起きたのである。こうした予期せずして生まれた暇な 時間をいかに過ごせるかが、都市の印象を変えると言っても過言ではない。  都市の中で暇な時間を過ごせそうな場所として、たとえば公開空地というものがある。公 開空地とは、オープンスペースの一種で、開発プロジェクトの対象敷地に設けられた空地 のうち、一般に開放され、自由に通行・利用できる区域のことを指す。都市空間における 建築物と建築物のあいだ、住宅地における敷地と建築物のあいだなどに見られる余った空 間がそれである。以下にふたつの事例を示す。

015


2 研究背景 2.1 都市の視点から

[ 三井 55 広場 ]

2

三井ビルの足元の設けられた公開空地。1974 年に完成したこの広場は、いつまでも色あ せずに人々に愛される公開空地となっている。

図 2.1.3-1 三井 55 広場

[ 原宿団地 ] 文 4 )  原宿団地は、総合設計制度の適用を受けるために公開空地を提供するとしていたが、大 半が日照ゼロ時間であるその区域は、公開空地に期待される公園としての機能を発揮でき ていない。総合設計制度の適用できない空地には門扉が設置され、住民以外は入れない区 域となっている。

図 2.1.3-2 原宿団地

前者、三井 55 広場のような魅力的な公開空地が存在している一方で、後者、原宿団地の ように、開発当初に想定された利用目的が周辺住民に理解されない・または達成できず、有 効活用されていない公開空地も存在しているのが現状である。

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2 研究背景 2.1 都市の視点から

2

このように、都市の中に魅力的な空間があるにも関わらず有効活用されていない、とい

う現状がある。これに対して、都市マーケティングの思想から、都市におけるニーズを探り、 都市の魅力となる「おまけ」の空間を増やすことが、街に人を引き込む方法のひとつである。 現状を改善するためには、都市マーケティングの観点から顧客を増やすという意味で、顧客 が豊かな時間を過ごせるようにするにはどのようにすれば良いか、という視点が必要になっ てくる。

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2 研究背景 2.2 時間の視点から

2

2.2 時間の視点から 2.2.1 時間学

時間は、できごとや変化を認識するための基礎的な概念であり、芸術、哲学、自然科学、 心理学などの重要なテーマとなっている。多岐に渡る分野にまたがる時間という概念につ いて、分野の枠を越えた統合を図る、時間学という学問がある。  2009 年 6 月に、時間学の確立を目指す日本時間学会が設立された。日本時間学会では時 間学を用いて、生物時計のメカニズム、生活のリズムと病気の関連、時間管理の社会政策、 文化圏ごとの暦の多様性、など、時間に関する諸分野の研究を「社会的時間と人間的時間 の調和」という視点からの体系化を目指している。  人間は、時空間の中で生きている。同じ時間でも、豊かに過ごせたときとそうでなかっ たときとでは、過ごした場所、そのときおこなった行為、その後の満足感など、関連する様々 な事柄への印象が大きく異なってくるはずである。時間に関する多くの研究が、時空間とい う概念をおろそかに、時間と空間を別次元で捉えた研究をおこなってきた。時間学は、こ れまで科学的合理性のみから解釈されていた時間を人間的な視点に立ち返って解釈し直し、 より豊かな時間を過ごすためにはどのようにすれば良いかを明らかにしようとする学問で ある。「時間とは何か」という疑問が時間学の基盤であり、時間学によって、時間の持つ多 様な性質が人間に及ぼす影響を明らかにされることが期待されている 文 5 ) 文 6 )。

図 2.2.1-1 日本時間学会

018


2 研究背景 2.2 時間の視点から

2

2.2.2 都市の中での余暇の過ごし方

個性化・多様化していく時代の中で、都市に暮らす人々の生活には、余った時間、余暇が

生じる。余暇にも多様な余暇が存在するがその中でも、特別な制限の無い、全く自由な余暇、 「休日」の過ごし方について述べる。 [ 東京に暮らす人の休日の過ごし方/東京ガス都市生活研究所 ] 文 7 )  2003 年 6 月の調査結果によると、近年、スポーツ・レジャー人口が減少しているという。 都市生活研究所が実施した「生活定点観測調査」によると、「好きでよくするスポーツや趣 味がある」と答えた人は 1996 年の 70.1%から 2002 年の 58.7%へ、「キャンプや森林浴 など自然の中でレジャーを楽しむこと」が「よくある」「たまにある」と答えた人は同じく 1996 年の 54.0%から 2002 年の 44.3%へと、わずか 5 年の間に大きく減少しているこ とがわかった。  原因として考えられるのは、街情報の増加と、入手方法の易化である。近年「街情報」は、 テレビや雑誌、インターネットなどで数多く発信されている。「行きたい」と感じる場所が あちこちにあるため、スポーツ・レジャーなどのために遠出をしなくとも、充実した休日 を送るためのヒントが十分にあるのである。  また郊外では、休日を過ごす場所として、複合商業施設が台頭している。複合商業施設は、 「施設=ひとつの街」として捉えられており、ひとつの場所でたくさんのイベントが楽しめ るのに加え、くつろぎのためのスペースも設けられているのが特徴である。  この調査によって、人々が都市や郊外どちらで過ごすにせよ、「休日を街で手軽に」過ご したいと感じる傾向へと変化していることが示されている。

図 2.2.2-1 ぐるなび             図 2.2.2-2 datespots.com [「 ぐ る な び 」 h t t p : / / w w w . g n a v i . c o . j p / ]

[「 d a t e s p o t s .c o m 」h t t p : / / w w w . d a t e s p o t s . c o m / ]

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2 研究背景 2.2 時間の視点から

2

2.2.3 時間に制限がある余暇の過ごし方

全く自由な余暇があるのに対して、都市生活の中には時間に制限のある余暇も存在する。 このような余暇の中でも、特に「待ち合わせ」「待ち時間」「可処分時間」について述べる。 [ 京都駅でのインクルーシブデザインワークショップ/京都大学情報学研究科 ] 文 8 )  2008 年 10 月、観光シーズンまっただ中の京都駅で、 「待ち合わせ」に関するワークショッ プが行われた。目の見えない方や車イスの方を始め、京都駅を普段利用しない遠方の方、デ ザイナー、建築家、京都市の職員、学生など、多種多様な参加者を募ったこのワークショッ プでは、観察から新たな「気づき」を得、多種多様な利用者に適したデザインの方向性を 得ることを目的としている。  ワークショップでは、フィールドワークを通していくつかの問題点が浮き彫りになった。  ・駅構内案内音は、同じ鉄道会社の中でも駅ごとに音の表す意味が異なっており、わか   りづらい  ・五感にうったえる場所が集合場所としては適しているが、そういった場所が少ない  ・京都駅には様々な名前のついた出口が存在するため、出口の名前で待ち合わせをする   と紛らわしく、わかりづらい  挙がったいくつかの問題点を解決するいくつかの策を挙げ、以下のようなインクルーシ ブデザインのヒントを導きだしている。  ・床を色分けする  ・待ち合わせゾーンを設置する  ・五感を使える待ち合わせ場所づくりを検討する  普段何気なく過ごしている駅構内という空間も、より良い時間を過ごすために改善でき ることは無いだろうか、と意識して歩いてみると、新たな発見や可能性があるということ がこのワークショップで示されている。

図 2.2.3-1 京都駅ワークショップのようす

020


2 研究背景 2.2 時間の視点から

[ ビジネスパーソンの「待ち時間」意識調査/ CITIZEN] 文 9 )

2

2003 年 5 月、時計会社 CITIZEN がおこなった、日常生活で発生するさまざまな「待ち 時間」を現代人がどのように捉えているかを明らかにした調査。  まず、さまざまな状況に分けて、何分待つと不快に感じるか、ということについて統計

を取っている。結果によると、総合病院や役所など、公共施設での待ち時間では 30 分程度、 エレベーターや信号待ちなど、日常的な場面での待ち時間では 30 秒程度、携帯・パソコン などでの待ち時間では 1 分程度で不快感を覚えると言う。  次に、長時間待つと予想される状況についての調査を行っている。この調査によると、記 念品、限定品、前売り券などの売り出しの場面では、1 時間という待ち時間までが一般的と されている。こういった長時間待っている間に何をしていることが多いか、という問いに 対して  1位 「新聞・雑誌・本を読む」(47.8%)  2位 「携帯電話を操作する」(36.8%)  3位 「ぼーっとしている」(28.8%) が上位3項目に上がった。  この調査では、意識してみると都市生活の中にはいろいろな状況・長さの「待ち時間」が 存在しており、基本的には「イライラする時間」「持て余している時間」という風に、消極 的な捉えられ方をしている、ということが示されている。

図 2.2.3-2 ビジネスパーソンの「待ち時間」意識調査

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2 研究背景 2.2 時間の視点から

[ ビジネスマン・OL400 人に聞く「私の”可処分時間”」/ CITIZEN] 文 9 )

2

1998 年 3 月に行われた、ビジネスパーソンに対する「可処分時間」についての意識調査。 「自分の裁量で好きなように使える時間」を意味する「可処分時間」であるが、ビジネスパー ソンがいま最もほしいものに、 「誰からも拘束されない自由な時間」が挙げられているのは、 「可処分時間」への欲求をあらわしている。  可処分時間を増やすために減らしたい生活時間に関する調査では、「通勤」や「仕事」な ど、仕事に関する生活時間を節約したいという傾向にある。日常生活のすきまに生まれる 可処分時間について、その過ごし方を聞いてみると、多くは「情報ツールとの接触(テレ ビ・新聞・本・インターネットなど各種メディア)」と答え、そのあとを「骨休め・ゴロ寝」、 「趣味・スポーツ」と続く。一方で、増やしたい時間として「趣味・スポーツ」が挙げられ、 減らしたい時間として「骨休め・ゴロ寝」が挙げられている。  この調査では、多くの人がより積極的に可処分時間を楽しみたいという欲求を持ってい ることが示されている。

022


2 研究背景 2.3 既往研究から見た本研究の位置づけ

2.3 既往研究から見た本研究の位置づけ 2.3.1 都市の中での余暇の過ごし方に関する研究 [ 休憩行為に関する研究 ]

2

鈴木らは 文 1 0 )、消費者が商業地内でいくつかの店舗を回遊するときに、消費者の潜在的休 憩需要がどのような分布になるかを理論的・数値的に明らかにした。この研究により、訪 問店舗が一様な密度で分布するとしても、休憩需要は駅近辺に引き寄せられ、訪問店舗数 や休憩歩行距離の大小、店舗を訪れる順番によって、その分布が左右されることがわかった。  井上らは 文 1 1 )、施設利用者における休憩に対する需要の空間的広がりを求めるため、施設 ごとの異なる休憩需要と休憩空間までの理想的な距離を明らかにし、休憩空間を配置する 際の指針を示した。  鳥海らは 文 1 2 )、休憩スペースに対する印象評価により、各休憩スペースの特徴を明らかに し、その空間構成要素が利用者に与える影響を明らかにした。この研究により、緑がある 休憩スペースは自然感や落ち着きに関する利用者評価が高くなること、椅子や段差など着 座場所の種類が評価性に大きく影響を与えること、利用者と通行者の多寡が活動性に大き く影響を与えることがわかった。  土田寛、積田洋は 文 1 3 )、パブリックスペースの類型化を行い、P.M 実験により P.M 図を 作成することで、休憩行為に関する嗜好空間を定量的に捉え、実際の空間構成と照らし合 わせて、その関連性について数量的に明らかにした。この研究により、休憩行為の嗜好空 間は内側のパブリックスペースに多く存在することが示され、ベンチや段差など着座を促 す装置が配されることで休憩空間としての評価を高めることがわかっている。  これらの研究は、買い物など、ある一連の目的意識を持った行動の中で必要性を伴って 行われる休憩行為について研究したものである。本研究は、目的意識を持った行動と行動 の間に生まれる「すきま時間」におこなわれる行為について研究したものである。

023


2 研究背景 2.3 既往研究から見た本研究の位置づけ

2

[ 着座空間に関する研究 ]  阿部らは

、パブリックスペースにおいて着座場所として好まれる空間に関する研究を

文 14)

行い、目的・属性別により好まれる着座空間について明らかにした。この研究により、ど の属性に対しても、着座場所を選択する場合には、空間の要素として動線からの距離や出 発地点からの距離という、距離のパラメーターの影響度が強く、着座場所を目的別に決定 するためには、ほかのパラメーターを操作することにより、効果的に各属性・目的にあっ た着座場所の計画が可能になるということがわかった。  小林らは 文 1 5 )、街路に置かれたベンチの一般利用者の行動観察調査と、被験者による評価 実験をおこない、着座者の行為に与える影響を明らかにした。この研究により、様々な行 為が行われる着座空間において、そこに配置されたベンチの向きや位置によって、利用者 や着座時の行為のしやすさに影響を与えることがわかった。  これらの研究は、パブリックスペースでの着座場所の選択について研究したものである。 本研究は「着座」にのみ焦点を当てたものではなく、「すきま時間」におこなわれるすべて の行為について研究したものである。

024


2 研究背景 2.3 既往研究から見た本研究の位置づけ

2.3.2 時間に制限がある余暇の過ごし方関する研究 [ 気分転換に関する研究 ]

2

本田らは 文 1 6 )、オフィス空間などでのストレスマネジメントに有効な空間を提案すること を目的に、「気分転換を促す空間」(=スイッチ空間)の特徴を、心理・生理反応の実験に より明らかにした。この研究により、気分転換は空間の構成・空間の推移によって促すこ とができるものであること、閉鎖的な空間もスイッチ空間として機能すること、休憩時には、 作業空間を異なる空間で過ごす方が休憩後の作業効率を上げることができることがわかっ た。  榎らは 文 1 7 )、屋外環境を取り込んだオフィス事例における室内オフィスと屋外環境との比 較において、屋外環境の働く場としての一側面を明らかにした。この研究により、オフィ スワーカーがコミュニケーションなどにより無意識に気分転換を行っていること、屋外環 境での執務行動も気分転換になりやすく、その効果も高いことがわかった。  これらの研究は、オフィスワーカーの作業途中に行われる気分転換について研究したもの である。本研究では、都市の中における「すきま時間」におこなわれる行為について取り扱う。

025


2 研究背景 2.3 既往研究から見た本研究の位置づけ

2

[「待ち合わせ行為」に関する研究 ]  白井らは

、建築的な待ち合わせ空間の「構成要素」と「改札口からの移動時間」の 2

文 18)

点の関係性を明らかにした。この研究により、待ち合わせ空間としていくら都市の特異点 となりうる要素を持っていても、そこで「快適に行動する為の要素」をもっていないと待 ち合わせ空間としては成立しないということがわかっている。  吉富らは 文 1 9 )、客観的な視点からではなく、ひとりひとりの行動背景をも含めて「待ち合 わせ行為」を解明することを目的とし、行動と場所の認識との関係や、場の変化と評価に ついて明らかにした。この研究により、人は各自の行動に適した場を選択し行動していて、 また、その行動に対して制約の少ない場に対して評価が高くなるということがわかってい る。  櫻井らは 文 2 0 )、都市に対するイメージの想起のレベルと、段階的に設定した質問事項を対 応させることで、「待ち合わせ行為」を通した都市空間のイメージ構造について明らかにし た。この研究により、「都市と場所における目印」を中心として、抽象的なイメージ・具体 的なイメージ・実際の空間が対応していることがわかっている。

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2 研究背景 2.3 既往研究から見た本研究の位置づけ

2

[「待つ行為」に関する研究 ]  小川らは

、サービス施設における「待つ行為」での積極的行動に関する行動特性を明

文 21)

らかにした。この研究により、人は 30 分以上の待ち時間は退屈に感じ、サービス施設での 第1の目的の中で待ち時間が発生すると、別の場所で第 2 の目的を持った行動をとりたく なること、行動範囲が狭くなる短い待ち時間には新宿が、行動範囲が大きくなる長い待ち 時間には吉祥寺が適しているということがわかっている。  本研究は、「待つ」という目的のある時間での行動ではなく、自由に行動できるが、時間 に制限のある「すきま時間」における都市の中での行動について扱うものである。また、都 市の中でどんな空間が「すきま時間」を過ごすのに適しているかを明らかにするものである。

027


研究概要

3.1 用語の定義 3.2 研究目的 3.3 研究フロー

028

3


3 研究概要 3.1 用語の定義

3

3.1 用語の定義 [ すきま時間 ]

日常に生まれる余った時間で、時間の長さに制限があっても、自由に行動できる程度の

時間のこと。具体的には「予定あいま」、「遅延あいま」、「消失あいま」の3種類の状況が 考えられる。

予定Aと予定Bのあいまに生まれる すきま時間

予定すきま

ある予定が遅延したために予期せずして 生まれたすきま時間  例)待ち合わせしていた友人から遅刻の連絡がきた    電車が遅延した ある予定が中止となったために予期せずして 生まれたすきま時間 例)会う予定だった友人にドタキャンされた

遅延すきま

消失すきま

すきま時間発生 どう過ごそうか?

カフェで読書しようか?

商店街で散歩しようか?

図 3.1-1 すきま時間の定義ダイアグラム

029

公園で昼寝しようか?


3 研究概要 3.1 用語の定義

3

[ 遊び心空間 ]

すきま時間を過ごすのに適している空間。ここでの「遊び心」は、第一に工学における「遊 び」の意味を、第二に「おまけ」における遊び心の意味を、二重に含んだ言葉である。

第一に、工学における「遊び」の意味について述べる。工学における「遊び」は、機械装 置に組み込まれる安全装置の一種で、操作できる範囲のうち、操作の動作に反映されない 範囲のことである。たとえば、自動車のハンドルやブレーキにも「遊び」は見られる。ド ライバーがくしゃみをした、とか、背中がむずむずしたので身じろぎした、とか、運転す るという本来の目的のための動作の他に行われる、些細で無意識な予期しない動作は、急 ハンドルや急ブレーキに直結しかねない。そういった動作を制限しようと意識しながらの 運転は、ドライバーにとって多大なストレスになる。その意味において、「遊び」は操作側 の負担を軽減させている。  工学における「遊び」は、「動作しない範囲」と「動作する範囲」のすきまにはさまれ、 緩衝材のような役割を果たしている。この「遊び」を都市の中に置き換えるとすると、人々 の生活の中のあらゆる「予定」と「予定」にはさまれたすきま時間は緩衝材の役割を果たし ている「遊び」であると考えることができる。すきま時間をどのような「遊び心空間」で 過ごすか、という内容が、緩衝材としての質を良いものにも悪いものにも変えるはずである。 「遊び」 =

動作しない範囲

動作する範囲

動作する範囲

工学における遊び

動作する

遊び

動作する

予定A

すきま時間

予定B

都市の中に置き換える

都市における遊び

図 3.1-2「遊び心空間」の人に対する位置付け

030


3 研究概要 3.1 用語の定義

3

第二に、「おまけ」における遊び心の意味について述べる。「2.1.2 おまけとマーケティ ング」に記したように、マーケティングにおいて、本来は目的物に「おまけ」として負荷

されたものが、その質や遊び心を買われて、 「おまけ」自体が目的化した例がある。この「お まけ」を都市の中に置き換えるとすると、ある都市を訪れた本来の目的である「予定」に 負荷されたすきま時間を「おまけ」と考えることができる。この「おまけ」としてのすき ま時間で過ごす「遊び心空間」が良いものであれば、本来「おまけ」であるはずのすきま 時間が目的化されて、顧客(住民)の流入を増進する契機となる可能性がある。

おまけ = 遊び心

本来の目的物 (商品)

「おまけ」における遊び心

おまけ

本来の目的物 (商品)

すきま時間

本来の目的 (予定)

都市の中に置き換える

都市における遊び心

図 3.1-3「遊び心空間」の都市に対する位置付け

031


3 研究概要 3.1 用語の定義

3

以上のように、すきま時間で嗜好する過ごし方や過ごす空間を総称して「遊び心空間」と する。

仕事の打ち合わせ

予定A

カフェで読書しようか?

友人と飲み会

すきま時間

商店街で散歩しようか?

図 3.1-4 遊び心空間

032

予定B

公園で昼寝しようか?


3 研究概要 3.2 研究目的

3.2 研究目的

3

都市ごとのすきま時間に嗜好される空間(=遊び心空間)を明らかにし、都市マーケティ ングの指標のひとつとすることを目的とする。

033


3 研究概要 3.3 研究フロー

3

3.3 研究フロー  以下に、本研究の研究フローを示す。

基礎研究 都市マーケティング 都市の中での余暇の過ごし方 時間に制限のある余暇の過ごし方

都市マーケティングに関する基礎研究 休憩空間、余暇空間、着座場所選択など、街の中で の過ごし方に関する基礎研究 待ち合わせ時間、待たされ時間など、時間制限が ある状況下においての過ごし方に関する基礎研究

基礎調査 すきま時間の捉え方についてのアンケート調査

実験方法の検討

すきま時間に嗜好する空間(=遊び心空間)の抽出実験 都市におけるすきま時間に嗜好する空間と行為についての調査 実験前後における都市イメージの変化 (東京駅周辺・上野駅周辺にて実施)

分析 マップの作成 都市の中での「遊び心空間」の発見

考察

都市ごとのすきま時間に嗜好する空間を明らかにし 都市マーケティングの指標のひとつとする    図 3.3-1 研究フロー

034


研究方法

4

4.1 実験概要   4.1.1 実験目的   4.1.2 実験内容   4.1.3 実験手順   4.1.4 教示内容 4.2 実験方法   4.2.1 実験場所の検討   4.2.2 すきま時間に嗜好する空間に関するアンケート   4.2.3 都市の印象に関するアンケート 4.3 実験フロー

035


4 研究方法 4.1 実験概要

4

4.1 実験概要 4.1.1 実験目的

都市ごとのすきま時間に嗜好する空間(=遊び心空間)を明らかにし、マップにして視 覚化すること。また、その空間が都市にどのように分布しているのか分析すること。

036


4 研究方法 4.1 実験概要

4

4.1.2 実験内容 [ 概要 ]

被験者に、東京・上野の2都市を1時間ずつ自由に行動してもらう。その際、30 分∼ 1 時間のすきま時間ができたと仮定し、その状況下で「すきま時間を過ごしたい」と感じる場 所をできるだけ多く探してもらい、各場所について、マップにその範囲・その場所の満足度・ その場所でするであろう行為・補足・そこまでの軌跡を書き込んでもらう。また、実験前 後で各都市について印象評価をしてもらうことで、自由行動前後でどのように都市の印象 が変化したかを求める。 [ 実験日時 ]  10 月 8 日∼ 10 月 14 日の 12:00 ∼ 16:00(通勤時を避けた) [ 被験者 ]  20 代学生 男性 12 名、女性 12 名、計 24 名

037


4 研究方法 4.1 実験概要

[ すきま時間の設定 ]

4

基礎調査より、3 種類のすきま時間でイメージする時間の長さとして、最も票数の多かっ た 30 分∼1時間を、本実験でのすきま時間に設定した。

図 4.1.2-1 すきま時間の捉え方に関する基礎調査結果

図 4.1.2-2 すきま時間の凡例

038


4 研究方法 4.1 実験概要

[ 実験場所 ]  東京駅周辺、上野駅周辺。 各駅を中心とした、徒歩約 15 分圏内の円内を基準として行動してもらった。

図 4.1.2-3 実験場所1 東京駅周辺

図 4.1.2-4 実験場所2 上野駅周辺

039

4


4 研究方法 4.1 実験概要

4

4.1.3 実験手順  以下のような手順で実験を行った。 1. 被験者に、駅①出口 A に集合してもらう

2. バインダー・ボールペン・アンケート 1 ∼ 8 ・記入用マップを渡し、口頭で説明を行   う 3. アンケート 1,2 について回答してもらう(※1) 4. アンケート 1,2 回収後、1 時間後の時刻と集合場所をマップ上で確認し、1時間の自   由行動を始めてもらう 5. 1時間の自由行動の中で、すきま時間を過ごしたいと感じる場所をできるだけ多く探   してもらい、マップに必要事項とともに記入してもらう(※2) 6. 1時間後、駅①出口 B に集合してもらう 7. アンケート 3 回収後、アンケート 4,5(または 6,7。ひとつめの都市による)について   回答してもらう(※3) 8. 駅②へ移動 9. 駅②出口 C より、1 時間後の時刻と集合場所をマップ上で確認し、1時間の自由行動   を始めてもらう 10. 1時間の自由行動の中で、すきま時間を過ごしたいと感じる場所をできるだけ多く探   してもらい、マップに必要事項とともに記入してもらう 11. 1時間後、駅②出口 D に集合してもらう 12. アンケート 6,7,8(または 4,5,8。ひとつめの都市による)について回答してもらう (教示内容については 4.1.4 教示内容に記載)

040


4 研究方法 4.1 実験概要

4

4.1.4 教示内容 【はじめに】

本日はお忙しい中、本実験にご協力いただき、本当にありがとうございます。本実験は 以下のような内容になります。 【すきま時間とは】  日常に生まれる余った時間で、時間の長さに制限があっても、自由に行動できる程度の 時間を言います。具体的には、以下の図(図 4.1.4-1)の 3 種類の状況をすきま時間とし て想像してください。本実験でのすきま時間は、どの状況を想像していただいてもかまい ませんが、時間の長さのみ、30 分∼1時間に設定します。

図 4.1.4-1 すきま時間の概念ダイアグラム

041


4 研究方法 4.1 実験概要

4

【アンケートの書き方】 (※1)[ アンケート 1,2]

前半では、あなた自身のことについてお聞きします。後半では、自由行動する前の各都 市の印象についてお聞きします。 (※2)[ アンケート 3]  東京駅周辺、上野駅周辺を各1時間ずつ、単独で自由行動していただき、実験を行いま す。自由に歩いていただいてかまいませんが、1 時間で行動出来る範囲、徒歩 15 分圏内を 基準に行動してください。気になるところがあれば、円を出てもかまいません。自由行動

中にすきま時間を過ごしていただく、というわけではなく、1時間でできるだけ多くの「す きま時間を過ごしたい」と感じる場所を探してください。  ① マップに「すきま時間を過ごしたい」を感じるエリアを線で囲んでください。その際、    歩いた軌跡も記入してください。お手持ちの地図アプリなども参考にしながら、正    確に位置を記入してください。  ② それぞれの場所について ◎:とても過ごしたい、⃝:過ごしたい、△:まあまあ    過ごしたい の3段階で評価してください。  ③ その場所でするであろう行為を選択肢から選び、記号を記入してください。  ④ 補足などあれば、囲んだ線の付近にわかりやすく自由記述してください。 そのほかに、すきま時間を過ごしたいと感じる空間の選定について、注意点があります。  ・外部公共空間でも、座りたいと感じる範囲も選択可  ・カフェ/店など、ピンポイントでも選択可(店名明記)  ・公園内などでも場所は正確に明記   例)ここのベンチ、ここの噴水、など  ・駅ビル内は選択不可だが、他のビルは選択可   ビル内の1店舗の場合、階数と店名明記 (※3)[ アンケート 4-7]  前半では、自由行動したあとの各都市の印象についてお聞きします。後半では、すきま 時間を過ごしたいと感じた場所を選択するのに意識されたことについてお聞きします。形 容詞対のうち、持っている印象に近いものを選んでください。 【集合場所】  集合場所は、⃝​⃝時に東京駅は日本橋口、上野駅は浅草口です。

042


4 研究方法 4.2 実験方法

4

4.2 実験方法 4.2.1 実験場所の検討  実験場所として、  ・東京駅周辺  ・上野駅周辺

の2都市を選定した。この2都市は、互いに相反する特徴を持っており、すきま時間の過 ごし方に顕著な違いが出ると考えたからである。以下に、この2都市の特徴を示す。

東京駅周辺の特徴

上野駅周辺の特徴

オフィス街である

繁華街である

高層建築が多い

低層建築が多い

労働者が多い

家族連れ・高齢者・カップルが多い

道路のグリッド幅が広い

道路のグリッド幅が狭い

ビル風が強い

ビル風はない

地下にも多くの施設を有している

施設は地上に集中している

< 代表的な施設 >

< 代表的な施設 >

復元された駅舎

上野公園

丸ビル・新丸ビル

アメヤ横丁

皇居周辺

不忍池

和田倉噴水公園     図 4.2.1-1 実験場所の検討

043


4 研究方法 4.2 実験方法

4.2.2 すきま時間に嗜好する空間に関するアンケート  本実験では、以下のような手順を踏む。

4

① マップに「すきま時間を過ごしたい」を感じるエリアを線で囲んでもらう。 ② それぞれの場所について    ◎:とても過ごしたい    ⃝:過ごしたい    △:まあまあ過ごしたい   の3段階で評価してもらう。 ③ その場所でするであろう行為を選択肢から選び、記号を記入してもらう。   A. 雑誌・本を読む/勉強する   B. ケータイ・スマホを使う   C. パソコンを使う   D. ぼーっとする   E. 飲食する   F. お酒を飲む   G. ゲームをする   H. タバコを吸う   I.

ウィンドウショッピング・散歩をする

J.

写真を撮る/絵を描く

K. 寝る   L. その他(それぞれについて自由記述) ④ 補足などあれば、囲んだ線の付近にわかりやすく自由記述してもらう。  すきま時間に過ごしたい場所であるかの3段階評価が、嗜好空間の特徴を有することか ら、数量的な集計を行い、定量的なデータにし、視覚的に表現することで嗜好空間を把握 する。

044


4 研究方法 4.2 実験方法

4.2.3 都市の印象・その他に関するアンケート

4

質問に回答してもらい、以下のような要素を抽出するアンケートをおこなった。  ・すきま時間ができた際に好む行動(性格の判別)  ・すきま時間に関する過去の経験(不毛だと感じたことがあるかどうか)  ・普段、駅周辺を歩きまわる際に頼りにする情報  ・東京駅周辺、上野駅周辺へ行く頻度  ・自由行動前後での各都市に対する印象評価

045


4 研究方法 4.3 実験フロー

4

4.3 実験フロー  実験の手順を、以下の図に示す。

教示 4.1.4 教示内容参照

都市の印象アンケート① 東京駅周辺と上野駅周辺、両方について回答

自由行動(1時間) すきま時間を過ごしたいと感じる場所をできるだけ多く探す 注意点  ・外部公共空間でも、座りたいと感じる範囲も選択可  ・カフェ/店など、ピンポイントでも選択可(店名明記)  ・公園内などでも場所は正確に明記   例)ここのベンチ、ここの噴水、など  ・駅ビル内は選択不可が、他のビルは選択可   ビル内の1店舗の場合、階数と店名明記

すきま時間を30分∼1時間と想定 事前調査によると、 「すきま時間」の長さを想像したときに、 いちばん多かった解答が30分∼1時間であった。

すきま時間を過ごしたいと感じる場所をマップに記入 ① マップに「すきま時間を過ごしたい」を感じるエリアを線で囲む。 ② ◎:とても過ごしたい、 ⃝:過ごしたい、△:まあまあ過ごしたい、の3段階で評価。 ③ その場所でするであろう行為を選択肢から選び、記号を記入。 ④ 補足などあれば、囲んだ線の付近にわかりやすく自由記述。

都市の印象アンケート② 基礎調査 実験で自由行動した都市のみについて回答

以上を2都市について1度ずつおこなう    図 4.3-1 実験フロー

046


調査結果

5.1 統計   5.1.1 男女   5.1.2 性格   5.1.3 すきま時間に関する経験   5.1.4 駅周辺を歩く際の情報源   5.1.5 慣れ・不慣れ   5.1.6 「遊び心空間」の選択動機 5.2 マップ   5.2.1 東京駅周辺のマップ   5.2.2 上野駅周辺のマップ 5.3 都市印象評価

047

5


5 調査結果 5.1 統計

5.1 統計 5.1.1 男女  以下に、被験者の性別ごとの人数の比率を示す。  本実験においては、男女の比率は同じであった。

表 5.1.1-1 男女別の人数

図 5.1.1-1 男女の人数比率

048

5


5 調査結果 5.1 統計

5.1.2 性格  すきま時間が生まれた場合に、以下のふたつの行動パターンが考えられる。

5

・有効に活用し、できるだけ作業・勉強するなどの目的意識を持って過ごしたい    =目的決定型  ・目的があっても無くても、のんびり自由に過ごしたい    =目的探索型 以上のうちどちらを好むかを、根本的な性格を考慮して選択してもらった。  以下に、被験者の性格ごとの人数の比率を示す。  本実験においては、目的探索型のが、目的決定型の2倍の人数となった。

表 5.1.2-1 性格別の人数

図 5.1.2-1 性格で分類した場合の人数比率

049


5 調査結果 5.1 統計

5

5.1.3 すきま時間に関する経験

以下に、アンケートで行った、「すきま時間を持て余し、不毛な使い方をしたな、と感じ ることがありますか?」という質問に対する回答ごとの人数の比率を示す。  本実験においては、およそ 67%の被験者が、不毛なすきま時間を経験したことがあると 回答おり、以下のような状況のときに特に不毛さを感じている。  ・落ち着く場所(ベンチ、喫煙所など)をなかなか見つけられなかったとき  ・すきま時間の長さが不明確なとき  ・歩くことも億劫になっているとき  ・ケータイをいじっているだけのとき  ・同じ場所でひたすら待っているとき  ・なにか作業をしようと思ってカフェに入ったのに、だらだらしてしまったとき

表 5.1.3-1 すきま時間を不毛に感じたかどうかの人数

図 5.1.3-1 すきま時間を不毛に感じたかどうかの人数比率

050


5 調査結果 5.1 統計

5.1.4 駅周辺を歩く際の情報源  以下に、普段駅周辺を歩く際に頼りにしている情報源と、その人数を示す。

5

本実験の被験者においては、「もともと知っていた情報」、「スマートホンの地図アプリ」、 「とくに何も頼りにせず気の向くまま歩く」を選択する人数が多く、 「事前に調べた情報」、 「歩 行者に聞いた情報」を選択する人数は少なかった。全体的に手軽に情報を得ようとする傾 向にある。

図 5.1.4-1 駅周辺を歩く際に頼りにする情報源と人数

051


5 調査結果 5.1 統計

5.1.5 慣れ・不慣れ  以下に、東京駅周辺を訪れる頻度別の人数の比率を示す。

5

「よく行く」 「たまに行く」を慣れている、 「めったに行かない」 「はじめて」を不慣れである、 とすると、本実験の被験者においては、半数以上が東京駅周辺に慣れている。  表 5.1.5-1 東京駅周辺を訪れる頻度別の人数

図 5.1.5-1 東京駅周辺を訪れる頻度別の人数比率  以下に、上野駅を訪れる頻度ごとの人数の比率を示す。  「よく行く」 「たまに行く」を慣れている、 「めったに行かない」 「はじめて」を不慣れである、 とすると、本実験の被験者においては、4分の3近くが上野駅周辺に不慣れである。  表 5.1.5-2 上野駅周辺を訪れる頻度別の人数

052

図 5.1.5-1 上野駅周辺を訪れる頻度別の人数比率


5 調査結果 5.1 統計

5

5.1.6「遊び心空間」の選択動機

以下に、すきま時間を過ごす場所を選択するのに意識したことと、その人数の比率を示す。 ① 動線から [ 近い 気にしない 遠い ] ほうが良い

図 5.1.6-1 東京駅/動線からの距離について  図 5.1.6-2 上野駅/動線からの距離について

東京駅周辺では動線から「近い」方が好まれるのに対し、上野駅周辺では「近い」のを 好む意見も多いが、「気にしない」との意見が最も多くなった。 ② 人が [ たくさんいる 気にしない 少ない ] ほうが良い

図 5.1.6-3 東京駅/人の多寡について    図 5.1.6-4 上野駅/人の多寡について

東京駅周辺でも、上野駅周辺でも、人数比率に大きな差は見られず、どちらの場合も人 が「少ない」方を好む意見が半数近くを占めている。

053


5 調査結果 5.1 統計

③ 視界が [ 開けている 気にしない 囲われている ] ほうが良い

5

図 5.1.6-5 東京駅/視界について       図 5.1.5-6 上野駅/視界について

東京駅周辺では視界が「開けている」のを好む意見が約半数、上野駅周辺では「開けている」 のを好む意見が 75%と多くの割合を占めている。これは、上野公園の存在によるところが 大きいと考えられる。 ④ 周辺の音が [ ざわついている 気にしない 静かな ] ほうが良い

図 5.1.6-7 東京駅/周辺の音について

図 5.1.5-8 上野駅/周辺の音について

東京駅周辺では 70%近くが「気にしない」と回答し、上野駅周辺では 70%近くが「静かな」 方が良いと回答している。これは、東京駅周辺はどこも基本的に同じような音環境である のに対し、上野駅周辺は静かな上野公園とざわついているアメヤ横丁が隣接しているなど、 場所によって音環境が大きく異なるために差が現れたと考えられる。

054


5 調査結果 5.1 統計

⑤ ランドマークを [ 気にする 気にしない ]

5

図 5.1.6-9 東京駅/ランドマークについて   図 5.1.5-10 上野駅/ランドマークについて

東京駅周辺でも、上野駅周辺でも、人数比率に大きな差は見られず、どちらの場合もラ ンドマークを「気にしない」意見が 4 分の 3 近くを占めている。 ⑥ 空間が [ 広い 気にしない せまい ] ほうが良い

図 5.1.6-11 東京駅/空間の広狭について   図 5.1.5-12 上野駅/空間の広狭について

東京駅周辺でも、上野駅周辺でも、人数比率に大きな差は見られず、どちらの場合も空 間が「広い」方を好む意見が 70%近くを占めている。

055


5 調査結果 5.1 マップ

5

⑦ 周辺の雰囲気が [ 落ち着いている 気にしない 落ち着きのない ] ほうが良い

図 5.1.6-13 東京駅/周辺の雰囲気について  図 5.1.5-14 上野駅/周辺の雰囲気について

東京駅周辺では全員が「落ち着いている」方を好むと回答し、上野駅周辺では若干名で はあるが、「気にしない」「落ち着きの無い」方を好むとした回答が見られた。これは、東 京駅周辺が元々落ち着いたオフィス街であり、また、上野駅周辺が観光地としての繁華街 であることが大きく起因しており、それぞれに求められる「街の像」が異なるからである と考えられる。

056


5 調査結果 5.2 マップ

5

5.2 マップ 5.2.1 東京駅周辺のマップ [ 図 5.2.1-1 スポットの分布 ]  被験者全員分の、「遊び心空間」として選択したスポットの位置を記載。 [ 図 5.2.1-2 ∼図 5.2.1-13 行為別の分布 ]

被験者全員分の、「遊び心空間」として選択したスポットの位置を、そこでおこなうであ ろう行為別に記載。 [ 図 5.2.1-14 全体評価の分布 ]  被験者全員分の、「遊び心空間」として選択したスポットの位置とそのスポットの満足度 に関する3段階評価を記載。 [ 図 5.2.1-14 ∼図 5.2.1-17 評価別の分布 ]  被験者全員分の、「遊び心空間」として選択したスポットの位置とそのスポットの満足度 に関する3段階評価を、評価別に記載。

057


5 調査結果 5.2 マップ

5

5.2.2 上野駅周辺のマップ [ 図 5.2.2-1 スポットの分布 ]  被験者全員分の、「遊び心空間」として選択したスポットの位置を記載。 [ 図 5.2.2-2 ∼図 5.2.2-13 行為別の分布 ]

被験者全員分の、「遊び心空間」として選択したスポットの位置を、そこでおこなうであ ろう行為別に記載。 [ 図 5.2.2-14 全体評価の分布 ]  被験者全員分の、「遊び心空間」として選択したスポットの位置と、そのスポットの満足 度の3段階評価を記載。 [ 図 5.2.2-15 ∼図 5.2.2-17 評価別の分布 ]  被験者全員分の、「遊び心空間」として選択したスポットの位置とそのスポットの満足度 の3段階評価を、評価別に記載。

075


5 調査結果 5.3 都市印象評価

5.3 都市印象評価

5

以下のグラフは、全データの各都市の印象評価の平均値を、自由行動の前後で比較した

ものである。値が 0 に近づくほど、グラフ左の形容詞の印象が強く、値が 4 に近づくほど、 グラフ右の形容詞の印象が強いことを示す。

各形容詞対について自由行動前後で様々な印象変化が見られるが、それぞれがどのよう な要因によって変化したのかは、この情報だけではわからない。6 章では、これらの情報を 含めて多角的に「遊び心空間」と都市の印象評価や満足度との関係を分析していく。

図 5.3-1 東京駅周辺の自由行動前後の印象評価の変化

図 5.3-2 上野駅周辺の自由行動前後の印象評価の変化

093


分析

6.1 充実度上下別 6.2 男女別 6.3 性格別 6.4 慣れ・不慣れ別 6.5 スポットの形状別

094

6


6 分析 6.1 充実度上下別

6

6.1 充実度上下別

都市への印象評価について、総合的な都市の印象に大きく影響すると考えられる「充実し た−空虚な」の形容詞対について、自由行動前よりも自由行動後の評価が「充実した」に偏っ た場合、 「印象が向上した」とする。各都市について印象が「向上した」群、 「変化が無かっ た」群、「低下した」群の3つに分ける。各群の人数は以下のようになった。  今回はとくに「向上した」群(以下「↑群」)と「低下した」群(以下「↓群」)についてスポッ トごとの 3 段階評価をまとめたマップを作成し、比較・分析をおこなう。

表 6.1-1 印象評価変化別人数表

表 6.1-2 3段階評価別スポット数

※「↑群」:都市印象評価で充実度が向上した群  「↓群」:都市印象評価で充実度が低下した群

095


6 分析 6.1 充実度上下別

6

[ 東京駅周辺 ]   | 3 段階評価

合計のひとりあたり平均のスポット数に差は見られないが、その内容には大きく差があ る。「◎:とても過ごしたい」と評価したスポットの数が、「↑群」が 15 箇所でひとりあた り 3 箇所、「↓群」が 5 箇所でひとりあたり 0.71 箇所であった。合計数を見ても、「↑群」 のほうがひとりあたり平均 10.2 箇所と、「↓群」の 5.14 箇所と比べて2倍の数のスポッ トを遊び心空間として選定していることがわかる。 |分布  分布している範囲に特徴的な差異は見られない。 |まとめ  「充実した−空虚な」の形容詞対評価について、東京駅周辺の場合は場所に依存すること は少ないが、どれだけの数の「遊び心空間」を発見できるかどうかが評価に大きく関わっ ていると考えられる。

100


6 分析 6.1 充実度上下別

6

[ 上野駅周辺 ] | 3 段階評価

合計のひとりあたり平均のスポット数に差は見られないが、その内容には大きく差があ る。「◎:とても過ごしたい」と評価したスポットの数が、「↑群」が 22 箇所でひとりあた り 2.75 箇所、「↓群」が 5 箇所でひとりあたり 1.25 箇所であった。また、「△:まあまあ 過ごしたい」と評価したスポットの数が、「↑群」が 8 箇所でひとりあたり 1 箇所、「↓群」 が 8 箇所でひとりあたり 2 箇所であった。 |分布  「↑群」はスポットが駅をはさんで西側に偏り、 「↓群」は駅をはさんで東側に偏っている。 |まとめ  「充実した−空虚な」の形容詞対評価について、上野駅周辺の場合は駅をはさんで西側で 過ごすと満足度の高い「遊び心空間」を多く発見できるために印象が向上し、東側で過ご すと満足度の高い「遊び心空間」があまり発見できずに印象が低下することがわかる。駅 の西側東側どちらで過ごすかが評価に大きく関わっていると考えられる。

101


6 分析 6.2 男女別

6

6.2 男女別

男女の人数、印象評価は以下のようになった。男女で分けた 3 段階評価マップにより比 較分析をおこなう。

表 6.2-1 男女の人数表

表 6.2-2 3段階評価別スポット数

102


6 分析 6.2 男女別

6

図 6.2-5 東京駅周辺の印象評価(左:男性 右:女性)

図 6.2-6 上野駅周辺の印象評価(左:男性 右:女性)

107


6 分析 6.2 男女別

6

[ 東京駅周辺 ] | 3 段階評価

合計のひとりあたり平均のスポット数も、段階ごとのスポット数も、男女で特徴的な差 異は見られない。 |分布  男性の方が女性よりも全体の分布が拡散しており、その評価も、男性は拡散気味であるが、 女性は駅に近いスポットに「◎:とても過ごしたい」の評価が集まっている。 |印象評価  男性は「豊かな」 「充実した」 「開放的な」 「おもしろい」といった印象評価の向上が見られ、 女性は「快適な」「落ち着きのある」といった印象評価の向上が見られた。 |まとめ  男性は広範囲を歩きまわることで、好奇心を掻き立てられるような「遊び心空間」を発 見できた。女性は狭い範囲を歩きまわり、男性よりも見つけたスポット数が多かったので、 コンパクトに東京駅周辺を楽しんでいたようだった。

108


6 分析 6.2 男女別

6

[ 上野駅周辺 ] | 3 段階評価

合計のひとりあたり平均のスポット数も、段階ごとのスポット数も、男女で特徴的な差 異は見られない。 |分布  分布している範囲に特徴的な差異は見られない。スポットの形状は、男性の方が広範囲 を指し示す場合が多く、女性はスポットを小さく描き、細かく「遊び心空間」を検討する 傾向にあった。この傾向は、とくに公園内に顕著に見られる。 |印象評価  「寂しい−にぎやかな」の形容詞対について、自由行動後に男性は大きく「寂しい」に偏 るといった印象評価の低下が見られたが、女性は全体的に印象評価の向上が見られる。 |まとめ  公園内で、女性は細かくいろいろな視点から遊び心空間を発見できていたが、男性は大 雑把に遊び心空間を捉えていた。印象評価に違いが見られたのは、公園内での人の動きを 好意的に捉えたか否かの違いであると考えられる。

109


6 分析 6.3 性格別

6

6.3 性格別

性格別の人数、印象評価は以下のようになった。性格別でまとめた 3 段階評価マップに より比較分析をおこなう。

表 6.3-1 性格別の人数表

表 6.3-2 3段階評価別スポット数

110


6 分析 6.3 性格別

6

図 6.3-5 東京駅周辺の印象評価(左:目的決定型 右:目的探索型)

図 6.3-6 上野駅周辺の印象評価(左:目的決定型 右:目的探索型)

115


6 分析 6.3 性格別

6

[ 東京駅周辺 ] | 3 段階評価

合計のひとりあたり平均のスポット数も、段階ごとのスポット数も、性格で特徴的な差 異は見られない。 |分布  分布している範囲に特徴的な差異は見られない。評価は、目的探索型は拡散気味であるが、 目的決定型は駅に近いスポットに「◎:とても過ごしたい」の評価が集まっている。 |印象評価  「つまらない−おもしろい」の形容詞対について、自由行動後に目的決定型は大きく「つ まらない」に偏るといった印象評価の低下が見られたが、目的探索型は「おもしろい」に 偏るといった印象評価の向上が見られ、性格によって差異が生じた。 |まとめ  目的決定型は効率的に次の予定に移行することを想定してか、駅周辺に満足度の高いス ポットが集まり、都市に対してとくにおもしろいといった印象は持たなかったが、目的探索 型は広い範囲を動きまわり、駅周辺から遠くとも満足度は高く、おもしろみを感じながら「遊 び心空間」を発見できていたと考えられる。

116


6 分析 6.3 性格別

6

[ 上野駅周辺 ] | 3 段階評価

合計のひとりあたり平均のスポット数も、段階ごとのスポット数も、性格で特徴的な差 異は見られない。 |分布  分布している範囲に特徴的な差異は見られない。 |印象評価  「貧しい−豊かな」の形容詞対について、自由行動後に目的決定型は大きく「貧しい」「空 虚な」に偏るといった印象評価の低下が見られたが、目的探索型は「豊かな」「充実した」 に偏るといった印象評価の向上が見られ、性格によって差異が生じた。 |まとめ  東京駅周辺に対して、上野駅周辺では性格による特徴的な差異は見られなかった。これ は上野駅周辺がもともと、上野公園やアメヤ横丁の存在によって繁華街としてのイメージ が強く、作業するために有効に過ごす、というよりは、歩いて楽しみながら過ごすのに適 した都市であるからだと考えられる。

117


6 分析 6.4 慣れ・不慣れ別

6

6.4 慣れ・不慣れ別

各都市への訪れる頻度について、 「よく行く」 「たまに行く」と回答した人を「慣れている」 群、「めったに行かない」「はじめて」と回答した人を「不慣れである」群の 2 つに分ける。  慣れ・不慣れ別の人数、印象評価は以下のようになった。慣れ・不慣れ別にまとめた 3 段階評価マップにより比較分析をおこなう。

表 6.4-1 慣れ・不慣れの人数表

表 6.4-2 3段階評価別スポット数

118


6 分析 6.4 慣れ・不慣れ別

6

図 6.4-5 東京駅周辺の印象評価(左:慣れている 右:不慣れである)

図 6.4-6 上野駅周辺の印象評価(左:慣れている 右:不慣れである)

123


6 分析 6.4 慣れ・不慣れ別

6

[ 東京駅周辺 ] | 3 段階評価

合計のひとりあたり平均のスポット数では、「慣れている」群が 73 箇所でひとりあたり 5.21 箇所、 「不慣れである」群が 75 箇所でひとりあたり 7.5 箇所と、若干の差異が見られた。 また、段階ごとのスポット数でも、 「△:まあまあ過ごしたい」と評価したスポットに着いて、 「慣れている」群が 13 箇所でひとりあたり 0.93 箇所、「不慣れである」群が 22 箇所でひ とりあたり 2.2 箇所と、若干の差異が見られた。 |分布  分布している範囲に特徴的な差異は見られない。 |印象評価  形容詞対ごとの変化には特徴的なものは見られなかったが、全体的に、「慣れている」群 は自由行動前後で変化が小さく、「不慣れである」群は、自由行動前の印象評価には大きな ばらつきが見られたが、自由行動後にそのばらつきは収まり、各形容詞対について平均な 評価がなされた。 |まとめ  東京駅周辺では、慣れ・不慣れによる特徴的な差異は見られないが、「不慣れである」群 の方が「遊び心空間」として発見したスポットの数が多かったのは、東京駅周辺の道路が グリッド状に広く敷かれており、不慣れでも歩きやすいためであると考えられる。また、 「慣 れている」群は、事前に自分が知っていた情報を頼りに「遊び心空間」を探し、新しい空 間を見つけようという意識があまり大きくはなかったために、スポットの数が少なくなっ たと考えられる。

124


6 分析 6.4 慣れ・不慣れ別

6

[ 上野駅周辺 ] | 3 段階評価

段階ごとのスポット数には特徴的な差異は見られない。合計のひとりあたり平均のスポッ ト数では、「慣れている」群が 56 箇所でひとりあたり 8.00 箇所、「不慣れである」群が 112 箇所でひとりあたり 6.59 箇所と、若干の差異が見られた。 |分布  分布している範囲に特徴的な差異は見られない。 |印象評価  形容詞対ごとの変化には特徴的なものは見られなかったが、全体的に、「慣れている」群 は自由行動前後で変化が小さく、「不慣れである」群は、自由行動前の印象評価には大きな ばらつきが見られたが、自由行動後にそのばらつきは収まり、各形容詞着対について平均 な評価がなされた。 |まとめ  上野駅周辺では、慣れ・不慣れによる特徴的な差異は見られないが、「不慣れである」群 の方が「遊び心空間」として発見したスポットの数が少なかったのは、上野駅周辺の道路 が一部入り組んでいたり、細い路地が多くあったりと、不慣れな人には歩きにくいためで あると考えられる。

125


6 分析 6.5 スポットの形状別

6

6.5 スポットの形状別

スポットの形状によって 3 種類に分類し、マップを作成した。分類方法は以下の図に従う。

ピンポイント型

シークエンス型

エリア型

ある特徴を持ったその一点

一定の距離を持ち、直線的に移動できる周辺一帯

ある特徴を持ったその周辺一帯

ex) カフェ・ベンチ

ex) 通り・歩道橋

ex) 噴水のまわり・神社

図 6.5-1 凡例

以上のようにスポットを分類し、評価ごとにスポット数を数えたものが以下の表である。

表 6.5-1 スポットの形状ごとの評価別スポット数

126


6 分析 6.5 スポットの形状別

6

[ 東京駅周辺 ] | 3 段階評価  スポットの形状と評価に相関は見られない。 |分布

エリア型は西側にかたより、シークエンス型はグリッド状に沿うように分布しており、ピ ンポイント型は散在している。 [ 上野駅周辺 ] | 3 段階評価  スポットの形状と評価に相関は見られない。 |分布  エリア型は公園内に多く分布し、ピンポイント型とシークエンス型は散在している。

129


考察

7.1 建物との関係 7.2 各駅の印象評価について   7.2.1 3 段階評価マップ   7.2.2 印象評価   7.2.3 景色を見ている・見ていない   7.2.4 静動

130

7


7 考察 7.1 建物との関係

7

7.1 建物との関係

スポットをそれぞれ、建物との関係によって 3 種類に分類し、マップを作成した。分類 方法は以下の図に従う。

箱型

すきま型

広場型

「遊び心空間」が建物の中にある

「遊び心空間」が建物と建物の間にある

「遊び心空間」が建物に関与せず独立している

ex) カフェ・カラオケ

「遊び心空間」がでこぼこした建物のへこみなどの余った敷地にある

ex) 噴水のまわり・ベンチ

ex) 通り・歩道橋・ベンチ

図 7.1-1 凡例

以上のようにスポットを分類し、評価ごとにスポット数を数えたもの、積み上げ棒グラ フにしたものが、以下のようになる。

表 7.1-1 建物との関係ごとの評価別スポット数

131


7 考察 7.1 建物との関係

7     図 7.1-4 建物との関係ごとの評価別スポット数の満足度による推移(東京駅周辺)

図 7.1-5 建物との関係ごとの評価別スポット数の満足度による推移(上野駅周辺)

このグラフを見ると、東京駅周辺では箱型が好まれ、上野駅周辺では広場型が好まれて いることがわかる。  もともと、東京駅はオフィスビル街の代表として選定し、上野駅は繁華街の代表として 選定した。オフィスビル街である東京駅周辺は、その性質から箱状のビルや建物が多くあ るであろうことは容易に想像でき、一方で繁華街である上野駅周辺は、上野公園があるた めに広場状のスペースが多くあるであろうことは容易に想像できる。こういった、元々持っ ている都市の「イメージ」と、建物との関係で分類した際に好まれるスポットの種類は、見 事に合致している。  この分類によって、元々持っている都市の「イメージ」とそぐうようなスポットが好ま れることがわかる。

134


7 考察 7.2 各駅の印象評価について

7

7.2 各駅の印象評価について 7.2.1 評価マップ

マップを見てみると、東京駅周辺と上野駅周辺どちらに関しても、「遊び心空間」として 選択されたスポットが、駅をはさんで西側にかたよって分布している。

135


7 考察 7.2 各駅の印象評価について

7

7.2.2 印象評価

西側を主に自由行動した群(以下「西」群)と、東側を主に自由行動した群(以下「東」 群)のふたつに被験者を分類すると、印象評価に大きな差異が見られた。自由行動後、 「西」 群は大きく印象評価が向上したのに対し、「東」群は大きく印象評価が低下した。  東京駅の西側には丸ビル・新丸ビルや復元された駅舎、お堀などの有名で開放的な場所 があり、対して東側はオフィスビル街で占められた閉鎖的な地域であるため、大きな差異 が見られたと考えられる。  上野駅の西側には上野公園やアメヤ横丁などの有名で開放的な場所があり、対して東側 は住宅街で占められた閉鎖的な地域であるため、大きな差異が見られたと考えられる。  具体的に、西側のどのような環境が「すきま時間に過ごしたい」と感じさせるのか、考 えられる例を以下に挙げる。

図 7.2.2-1 東京駅周辺の印象評価          図 7.2.2-2 上野駅周辺の印象評価

138


7 考察 7.2 各駅の印象評価について

7

7.2.3 景色を見ている・見ていない

周りの景色を「見ている」か「見ていない」かのふたつにスポットを分類・色分けした ものをマップにまとめた。

東京駅周辺では、「見ている」スポットが、丸ビル・新丸ビル内、お堀周辺、丸ビル脇の 並木道などの、駅を挟んで西側に偏っていることがわかる。これらはどれも計画された建築・ 敷地である。  上野駅周辺では、「見ている」スポットが、上野公園やアメヤ横丁などの、駅を挟んで西 側に偏っていることがわかる。

139


7 考察 7.2 各駅の印象評価について

7

また、以下に満足度によるスポット数の推移を積み上げ棒グラフにしたものを示す。こ のグラフを見ると、何か見るものがあるスポットが好まれる傾向にあることがわかる。各

駅の西側の印象評価が高いことには、見る景色があるスポットが多いことが起因している と考えられる。また、東京駅周辺に関しては、意図的にこのようなスポットを計画してい ると考えられる。

図 7.2.3-3 景色を見ているか見ていないかで分類したスポット数の満足度による推移                                   (東京駅周辺)

図 7.2.3-4 景色を見ているか見ていないかで分類したスポット数の満足度による推移                                   (上野駅周辺)

142


7 考察 7.2 各駅の印象評価について

7

7.2.4 静動

被験者が「動いている」か「動いていないか」のふたつにスポットを分類・色分けした

ものをマップにまとめると、東京駅周辺については、「動いている」スポットが西側に偏っ ていることがわかる。一方、上野駅周辺では「動いている」スポットは散在している。

143


7 考察 7.2 各駅の印象評価について

7

また、以下に満足度によるスポット数の推移を積み上げ棒グラフにしたものを示す。こ のグラフを見ると、東京駅については、被験者が動いている方が好まれる傾向にあること

がわかる。東京駅の西側の印象評価が高いことには、被験者が動けるスポットが多いこと が起因していると考えられる。  一方、上野駅ではとくに「動いている」スポットの数は印象評価に大きな影響は及ぼし

ていない。これは、上野駅周辺が全体として「動ける」都市であり、東西で大きな差異が 無いことに起因していると考えられる。

図 7.2.4-3 被験者の静動で分類したスポット数の満足度による推移(東京駅周辺)

図 7.2.4-4 被験者の静動で分類したスポット数の満足度による推移(上野駅周辺)

146


まとめ

8.1 結論 8.2 展望

147

8


8 まとめ 8.1 結論

8.1 結論

8

良質な「遊び心空間」はどの都市にも、その都市の良さを活かしながら存在している。

都市それぞれに適した「遊び心空間」のあり方があり、都市の性質を見極め、長所を活 かすような「遊び心空間」づくりが必要である。

本研究によって、都市ごとのすきま時間に嗜好される空間(=遊び心空間)がどのよう なものであるかを明らかにすることができた。

148


8 まとめ 8.2 展望

8

8.2 展望

「遊び心空間」の存在によって、目的に追われた生活の中であっても、私たちの心にゆと りを生み出すことができる。

この研究によって、日常生活の中に生まれるすきま時間に遊びを持たせることを可能に し、都市に付加されるおまけとして、都市の新たな魅力を発見する契機となり得る。これは、 都市を「商品」とし、住民や来訪者を「顧客」と置き換えた場合に、「顧客」を継続的に得 る手段として有効である。  本研究によって「遊び心空間」に関する基礎的研究が成されたことで、都市マーケティ ングの新たな指標のひとつとして示すことができた。  しかし本研究では、日常生活の中ですきま時間の存在を多く感じていると考えられる大 学生を被験者としたため、他の職業や年齢層に関する検討はできていない。  今後実際の都市マーケティングに役立て、より汎用性のある指標とするためには、様々 な職業や年齢層を対象とした調査・実験を行い、検討していく必要がある。

149


おわりに

9.1 謝辞 9.2 参考文献

150

9


9 おわりに 9.2 参考文献

9.2 参考文献 1)  マクロミル株式会社 2010 年クリスマスに関する調査

9

http://monitor.macromill.com/researchdata/20101209christmas/index.html    (2012/10/15 閲覧) 2)  主婦と消費行動研究所    http://www.c-mam.co.jp/shufu-labo/research/data/090501.html    (2012/10/15 閲覧) 3)  マーケティングの基礎知識    http://www.graymansolutions.com/    (2012/10/15 閲覧) 4)  渋谷オンブズマン    http://shibuyaopen.blog17.fc2.com/    (2012/10/15 閲覧) 5)  山口大学時間学研究所    http://www.rits.yamaguchi-u.ac.jp/    (2012/10/21 閲覧) 6)  日本時間学会    https://sites.google.com/site/timestudies/    (2012/10/15 閲覧) 7)  東京ガス    http://www.toshiken.com/column/2003/06/post-19.html    (2012/10/05 閲覧) 8)  京都大学情報学研究科    http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/inclusive/081018kyoto/index.htm    (2012/10/05 閲覧) 9)  CITIZEN 意識調査    http://www.citizen.co.jp/research/index.html    (2012/10/05 閲覧)

152


9 おわりに 9.2 参考文献

9

10)  鈴木勉,江村竜哉:「回遊行動に着目した商業地における休憩需要分布」    日本建築学会関東支部研究報告集,pp101-104,2000 11)  井上友香理,江原徹朗,林田和人,渡辺仁史:    「施設利用者における休憩需要の空間的広がりに関する研究」    日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸),pp731-732,2009 12)  鳥海良将,三橋伸夫,金俊豪,坪井純:

「休憩スペースの利用者評価と構成要素との関連 - 地方中核都市の中心商店街に                おける休憩スペースの利用と評価に関する研究 その 2-」    日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),pp1057-1058,2005 13)  土田寛,積田洋:    「休憩行為に関する嗜好空間の分析 ‒ 都市のパブリックスペースの研究 その 1-」    日本建築学会計画系論文集,第 591 号,pp87-94,2005 14)  阿部真大,林田和人,江原徹朗,渡辺仁史:    「広場において属性・目的別に着座場所として好まれる空間に関する研究」    日本建築学会大会学術講演梗概集(東北),pp769-770,2009 15)  小林茂雄,勝又亮:「街路におけるベンチの向きが着座者の行為に与える影響」    日本建築学会計画系論文集,第 621 号,pp69-75,2007 16)  本田悠夏,長澤夏子,渡辺仁史:「気分転換を促す空間に関する研究」    日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),pp1155-1156,2007 17)  榎真梨子,八塚裕太郎,松本裕司,城戸崎和佐,仲隆介:    「屋外環境をとりこんだオフィスにおけるワーカーの気分転換と                           知的活性度に関する研究 その 2」    日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸),pp437-438,2010 18)  白井宏昌,佐野友紀,林田和人,渡辺仁史:    「待ち合わせ空間における構成要素・位置と利用度の関係性に関する研究」    日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道),pp729-730,1995

153


9 おわりに 9.2 参考文献

19)  吉富良輔,中村芳樹:「待ち合わせにおける行動と場所の認識」    日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),pp815-816,1996 20)  櫻井康雄,志水英樹,鈴木信弘,山口満:    「都市空間における待ち合わせ場所のイメージ構造に関する研究」    日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸),pp715-716,1992

21)  小川純,林田和人,渡辺仁史:    「サービス施設における「待つ」時間の有効活用に関する研究」    日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),pp873-874,2005

154

9


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